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かませ速攻！　五行島制圧作戦・火

作者：鳴声海矢

●炎上の島
　ここに『五行島』と呼ばれる五つの島があった。
　この五つの島は離れた場所にありながら、兄弟島として互いに干渉しあいその歴史を紡いできた。
　その中の一つ、『火の島』。ここは灼熱の太陽照り付ける熱気あふれる島で、五つの島の中でも勢い盛んな島である。その島に、今一人の海賊が迫っていた。
「五面同時作戦、こいつはさすがに防げないだろ。五つの宝は全て私が貰う！」
　羅針盤戦争を生き抜いた賞金稼ぎ、メリー・バーミリオンが、お宝発見アイを輝かせその島に迫っていた。

●その意味は勢い
「みんな、猟書家がグリードオーシャンに現れたわ」
　子豚・オーロラ（豚房流剣士・f02440）が猟兵を見回して言う。
「敵はメリー・バーミリオン。羅針盤戦争でも出てきた敵ね」
　奔放な賞金稼ぎではあるが、その実力が本物であるということは猟兵たちは嫌というほど知っている。
「今回、彼女が『五行島』という島を襲おうとしてるわ。この島はグリードオーシャンに点在する五つの島で、兄弟島でありつつ支え合い、またときに悪しき影響も与えつつ共にあった島の様で」
　島同士が同盟、あるいは敵対するのは珍しいことではないが、行き来が難しいグリードオーシャンで離れながらそれをしてきたというのはいかにしてか。
「この島々にはそれぞれ『五行の力』とされるメガリスがあって、それによって不思議な縁を繋いでいたみたいね」
　元々同じ地にあった島なのか、それが縁で結ばれたのか。それは分からないけど、そうオーロラは続ける。
「そのメガリスを含めた島の宝を求め、メリー・バーミリオンが五行島を襲おうとしているわ。私が紹介するのは『火の島』。五つの中で最も暑く血気盛んな島よ。ここには火山岩が降り注ぐ焼けるような砂浜があるから、そこを駆け抜け敵の元へ向かってちょうだい」
　オーロラはそう言って猟兵を見渡す。
「敵は五面同時作戦を駆けているわ。時間がないから船はみんなを下ろしたら別の猟兵がすぐ次の島へ向かうのに使うの。急かして悪いけど、頑張ってちょうだい」
　オーロラは急いだ口調でそう言うと、鉄甲船を北東へ回頭させた。

第1章 冒険 『海岸ダッシュ！』

POW   :    スタミナが切れるまで全速力スパート！ SPD   :    テクニカルに最短コースをキメていけ！ WIZ   :    ダッシュ出来なければ魔法で飛べばいいじゃない！ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　メリー・バーミリオンの狙う『五行島』の一つ『火の島』。太陽照り付ける灼熱の島である一方、変化に富み不定と言わんばかりの柔軟性がある、創造と破壊の両極を行き来するそんな島。その島の砂浜を、今猟兵たちはかけていた。
「ゴーグルつけて良かった……いやこう言うののためじゃないんだけど！」
　リリスフィア・スターライト（プリズムジョーカー・f02074）は電脳ゴーグルで周囲を見渡しながら砂浜を駆けていく。何しろ強烈な直射日光が照りつける美しき白浜である。光の照り返しも半端ではない。本来は周囲の状況を分析するためのゴーグルだが、今回に限っては目の保護というゴーグル本来の用途の方で役に立っていた。
　さらに電脳分析の方も、空から降り注ぐ火山岩の飛来を予測するのに役に立つ。
　なぜこんな危険極まりない場所を走り抜けなければならないのか……それは迫るメリー・バーミリオンを迎え撃つため。相手の来る場所の方に船をつけることができず、やむを得ずこの砂浜を抜けていくルートしか取れなかったのだ。
「皆様のお役に立てるよう、頑張りますわね」
　そんなルートを進むのを、響納・リズ（オルテンシアの貴婦人・f13175）は躊躇はしない。【ライオンライド】で呼び出したライオンにまたがり、急ぎ砂浜を駆けていく。
「頑張ってくださいまし」
　灼熱の砂浜を足が焼けないよう跳ねるように走りながら、上から襲い来る火山岩を右に左に動いて躱すライオンに、リズも声援を送る。
　無論応援しているだけではない。周囲にも気を配り、苦戦している者がいないかを確認することも必要だ。リリスフィアもまた同じく、周囲に進むのに手間取っている仲間がいないかにも注意をはらう。
　すると果たして。
「はぁ……思いの外、煩わしいものね。太陽の光というのは……」
「後衛職……なんですけど……」
　リーヴァルディ・カーライル（ダンピールの黒騎士・f01841）と杉崎・まなみ（村娘・f00136）が、息も絶え絶えという様子で砂浜を駆けていた。
　リーヴァルディは本人も決して日の光を好まないが、今の彼女は【限定解放・血の化身】で呼び出されたより吸血鬼度の高い分体。はっきり言ってこんな灼熱の太陽島はアウェー中のアウェーである。何故来てしまったのか……そんな自問をするが、それに答える者はこの場にはいない。
　まなみも本職は治癒をメインにする、神官、僧侶系の魔法学生である。どちらかと言えばゴール地点に控え、疲れ果てた誰かを迎えて回復させることこそ本業。自力で突破するのはあまり得意分野とは言えない。
『ちょっと暑くて火山が暴れることがあるが、いい島だぜ！』
　出発前に聞いた現地の冒険商人の言葉が頭をよぎる。つくづく現地人の基準とはあてにならないものなのだ。
　とはいえそこで職務放棄を出来る程二人は不誠実ではない。リーヴァルディは得手とする闇の力を全開にし、日の光と火山岩を遮り砂浜を進み続ける。元より七大海嘯と王笏島全てを相手取ったことのある手練れなのだ。いくらきついとはいえ自然現象程度が何ほどの者か。
　まなみもまた、ここで倒れるつもりはない。
「地の神よ……私たちをお救いください……！」
　【大地の奇跡（ダイチノキセキ）】にて地の神に願うは属性と自然現象を合成した力。神がそれに答えたかのように、俄かに空は曇り、灼熱の大地を冷やす雨が降り始めた。それはまなみのみならず、周囲の仲間の負担も一気に軽減する。
「大丈夫、これぐらい平気だからね」
　ユーベルコードを使いながら駆けるまなみをリリスフィアが励まし。
「こういった者は受け付けますでしょうか？」
「感謝するわ」
　リズがリーヴァルディを回復させ、リーヴァルディは闇の帳を広げ仲間までをもそれで覆う力を取り戻す。
　こうなればあとは岩だけを避けて駆け抜けていくのみ。一般人にとっては大災害でも猟兵にとってはちょっとした障害物程度のものでしかない。
　四人の猟兵はそれぞれの力を使い、得意を活かし苦手を補い、灼熱の島を敵へと向けて駆け抜けていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

「ハーイ！　ワタシがサポートに来た、バルタンデース！」
　再び灼熱に戻った砂浜に、雇われバトルサイボーグメイドの堂々たる宣言が響く。
　バルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）が火山岩降る砂浜にその一歩を踏み出した。
「ワタシが得意なのは【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】……」
　メイドらしく人を世話する技能が揃うが、残念ながらこの状況でそれは役に立ちそうにない。
「と【一斉発射・焼却・武器受け・残像・カウンター・受け流し】デスネ！」
　こちらは戦闘特化な攻撃的技能の数々。まさにバトルサイボーグメイドのバトル部分を詰め込んだその技能で、バルタンは砂浜を突破していく。
　残像を残すほどの速さで火山岩を交わして走り、目の前にあるものは適当に受け流す。受け流せないほどでかいのが来たら、カウンターを叩き込んでブチ砕く！
「六式武装展開、雷の番！」
　走り続けていくうちに興が乗ったか、【荷電粒子体】を発動しボルテージマックスな電撃ボディにもなって走り抜けるバルタン。
　こうなればもう彼女を止めるものは何もない。その圧巻の機動力で、バルタンはこの火の島を『制圧』し進んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『メリー・バーミリオン』

POW   :    野郎共、仕事の時間だ！ レベル×1体の【海賊船団員】を召喚する。［海賊船団員］は【したっぱ】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。 SPD   :    お宝発見アイ〜伝説の海賊を添えて〜 対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【大海賊の霊】が出現してそれを180秒封じる。 WIZ   :    大逆転！ 元の木阿弥大津波 自身の【サーベル】から、戦場の仲間が受けた【屈辱の数】に比例した威力と攻撃範囲の【津波】を放つ。 イラスト：和狸56 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

「うう、厚い……だがお宝のため、ここは我慢だ！」
　独自のルートで火の島に乗り込んできた猟書家メリー・バーミリオン。だが彼女のお宝アイはこの程度で鈍りはしない！
　そしてそれと同様に、猟兵たちの戦う意思もこの程度の暑さで揺らぐことなど一切ないのだ。
「これが全ワールド共通で王道な水着だと聞きましたよ？　というわけでノエル・スカーレット見参！」
　この灼熱ビーチにある種ぴったりなスクール水着姿で、ノエル・スカーレット（チビッ子ダンピール・f00954）が元気よく登場した。ちなみに彼女はダンピールだが、いわゆるデイウォーカーの類に属し、日の光も何でもない。
「そしてというわけで、全てを燃やし尽くす我が炎‐スカーレッド・ノヴァ‐」
「何がどういうわけだおい！」
　何しろ彼女は基本的に元気ないい子なのだ。何かありそうならとりあえず首を突っ込み、とりあえず【スカーレッド・ノヴァ】をぶっぱなすのが基本行動。もちろん人に迷惑をかけるような使い方はしないが、目の前の相手が倒すべき敵なのは分かり切ったこと。つまりぶっぱなしてもいい相手なのである。
「お、おのれ……奇襲とは卑怯なうぐっ！？」
　ノエルに向かおうとするメリーを、極楽長花の花びらが覆った。それはただの花びらではなく、相手を傷つけ、命を啜る魔法の花びら。
「油断大敵ってね」
　それを放ったのは筒石・トオル（多重人格者のマジックナイト・f04677）。ど派手に動いて注目を集めるノエルの後方で、逃げ場をなくすための攻撃を用い相手を包囲しておく。この場で出会った相手だが、お互い真逆な行動を得意とするが故に自身の得意とする後方支援をするための良き相方となってくれた。
「貴様も……」
「戦いは非情なものだよ」
　だから好きじゃないんだけど。トオルはその言葉だけを心に飲み込み、さらに花弁を撒き散らす。その都度脳のどこかで懐かしき兄の声が聞こえる気がするが、決してそれは力を妨げるようなものではない。
「うぐぐ……この屈辱、晴らさせてもらうぞ！　いけー！」
　メリーがサーベルを振り下ろすと、それに呼ばれるよう真っ青な海から巨大な津波が現れ二人を襲う。
「一緒に行くよ！」
「助かる」
　それをノエルが『ヴァンパイアの血』の力でトオルを連れ宙を舞って躱す。そして上を取ったトオルは懐から熱線銃を取り出す。
「ここは任せて」
　その熱線銃を乱射しメリーに浴びせてから、手を放してもらい並の引いた破魔に降りるトオル。
「てやー！」
　そしてその後を追うように入るノエルの大鎌による強襲の斬撃。メリーは初手を制されたところから、巻き返すことなく猟兵の攻撃を受け続けることとなったのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　上陸早々の敗戦に意気を挫かれ描けるメリー・バーミリオン。その彼女の前に、対照的に元気はつらつ、とも言える少女が姿を現した。
「皆に元気を分け与えにやって来たよ！」
　シフィル・エルドラド（ハイカラさんの勇者・f32945）の明るい宣言に、メリーは鼻で笑って答える。
「じゃああたしにお宝ちょうだいよ！　そしたら元気になるから」
「人を困らせる人は対象外！」
　びしっと指さし言うシフィル。そもそも彼女は猟兵であり、猟書家の凶行を止めにここへやってきたのだ。その相手に元気をくれてやる必要性など当然ながらない。
「あなたのような人がいるせいで、私の姉は眠れなくなったのです。それを差し置いて元気などと……」
　はっきりと怒りを込めた口調でそう言うのは雫石・凛香（鞘の少女・f02364）。
「いやそんなの知らないし」
　メリーがばっさり切り捨てるように言うが、彼女にとって他人事でも凛香にとっては猟兵としての生き方の根幹にある大事なこと。そしてそれを否定されて黙っていられるほど、彼女は大人ではなかった。
「【鞘】、応えて！」
　魔剣【鞘】を構え、一直線にメリーに切りかかる凛香。その動きははやく、メリーに構える隙を与えない。
「くっ！」
　だがメリーも羅針盤戦争を生き残った者。とっさに自身の剣を構え初撃をずらす。それに構わず凛香は【鞘】の形状を刺突剣へと変えスピードを活かした連続突きで相手の体勢を崩さんと攻め立てた。
「く、こ、この……！　だが、見切った……！」
　防御するメリーは、受けながら凛香の特徴を捉えていたとてつもなく早い変幻自在な攻めだが、パワーははっきりいってない。これならば力圧しこそが最上と、海賊霊の力を借りてその弱点を指摘せんとした。
　だあ、その瞬間凛香はすっと横にどく。
「勇者シフィルの一撃、受けてみなさい！」
　代わりに出てきたシフィルが、あらゆるものを断つ【勇者の一閃】で彼女を切り裂いた。こちらはシフィルの勇者の力がこの上なく込められた、触れたものをすべて断つ一撃。
　凛香は怒っていれど冷静さは失っていない。そしてシフィルは困っている人や危機に陥っている人を頬っておけず、他人の苦しみに寄り添える勇者。仲間の悲しき怒りを受けた一撃にて、勇者の刃が敵を断った。
「……ありがとう」
「あなたが攻めてくれたおかげだよ！」
　互いの力をたたえ合う二人。その前で、配下はいれど絆で繋がる仲間はいないメリーは一人膝をつくのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「僅かばかりには御座いますが、御協力致します。宜しくお願い申し上げます」
　先に戦い、引いた猟兵たちに一礼しつつ、豊雛院・叶葉（豊饒の使徒・叶・f05905）がメリー・バーミリオンの前に立つ。
「此の地に於いては『五行思想』が力となっております以上、その影響は強く働きうるやもしれませぬ」
　メリーが同時に狙う島、そしてその根幹となるメガリスの名を考え、叶葉はこの島に特殊な力があるのではと考えていた。
「諸々の禍事・罪・穢　有らむをば　祓へ給ひ清め給へと　白すことを聞こし召せと　恐み恐みも白す」
　それを確かめることも兼ねて、【豊乳女神の神勅・浄帛】を使用。御幣訴訟監視、それを手に持って降った。
「生憎乳には困ってないんだよ！　押し流せ！」
　宝は宝、思想や宗教を気にしないメリーは叶葉の祈る仕草もダンスとしてしか見ず、大津波を召喚し押し流さんとした。それに応え津波が迫るが、叶葉もまた土属性の障壁を出す事でそれを防ごうとする。
「ふむ、やはり」
「なに！？」
　津波はその土の障壁にぶつかり、そのまま砕けて消えた。ユーベルコード同士のぶつかり合いとはいえ、余りにも力の差がありすぎである。これは一体如何なることか。
「『津波』はまず『水行』に含まれます故に『土剋水』の理にて優位となり、更に此の地は『火行』の力を持つとなれば『火生土』の力も得られましょう……お分かりで？」
「知るかそんなの！　一旦引くぞ！」
　五行における相克、相生の説明をするが、メリーはそんなもの知ったことではないとばかりに逃げを打つ。叶葉はそれを光線を撃って覆うとするが、メリーの逃げ足も速く中々とらえられないでいた。
「血気盛んデスネー、メリー殿。熱い中ご苦労様デース！」
　そんなメリーの前に現れた一人の猟兵。灼熱の砂浜を駆け抜けてなお、バルタン・ノーヴェ（雇われバトルサイボーグメイド・f30809）は元気であった。
「五面同時攻略という電撃作戦には驚きデスガ、猟兵の眼からは逃れられマセーン！」
　彼女は最後はメリーが逃げ出すであろうことまで見越して、彼女を通り過ぎその退路を塞ぐようなところまで駆け抜けていた。なんという体力、なんという眼力か。
　メリーも羅針盤戦争を生き残った者だが、バルタンは羅針盤戦争を戦い抜いたもの。場数と言う点で言えば、そこにおいても天と地ほどの差があった。
　そして相手の動きを予想していたのならば、その迎撃準備もそれ相応に整えてある。
　バルタンはこの灼熱の地において、より熱く燃える内蔵式火炎放射器をスタンバイしていた。
「六式武装展開、炎の番！」
　粘着性のある炎が一気にメリーを炙った。
「あ、あつ、こっち……うべ！？」
　たまらず逆側へ逃げようとするが、そこにはバルタンの炎燃えてより『生まれた』叶葉の土の壁が。
「上からは火山岩、下からは焼ける砂浜、正面からファイア―デース！」
　短い間とはいえ駆け抜けた島。その特性は分かり切っている。ついでにこの炎は水で消えない粘着性。傍らの海にだって逃げ場はない。
　前後左右、全てを囲まれたメリーに最早成す術はなかった。
「アディオス！　メリー！」
「まだ……３つ……！」
　崩れ落ち灰も残さず消えるメリー。灼熱の地での戦いはこうして終わったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年04月26日