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忘れないでメモリー

#カクリヨファンタズム #にゃんこ #一人称リレー形式

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#カクリヨファンタズム
#にゃんこ
#一人称リレー形式


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●カクリヨファンタズムにて
 絵に描いたような大きな満月が夜空に浮かんでいる。
 その下にある情景もまた絵に描いたような代物だった。
 剥き出しの土管が置かれた空き地だ。
 砂色の地面に雑草の緑色が疎らに散り、ところどころに落書き(グラフィティではなく、へのへのもへじや相合い傘のような他愛のないもの)された板塀が三方を囲み、三角ベース等で使い込まれたであろう薄汚れたゴムボールが転がっている。昭和の漫画でしかお目にかかれないような環境がこうして実在するのも、郷愁の吹き溜まりであるカクリヨファンタズムなればこそであろう。
 そんな懐かしくもリアリティ皆無な空間に人だかりならぬ妖怪だかりができていた。
 月見に興じているのだ。一匹を除いて。
「いい月だぜ。わおーん!」
 月光を全身に浴びて遠吠えする人狼。
「心が洗われるようだわ」
 目のない顔で月を見上げるのっぺらぼう。
「あたし、メリーさん。今、お月見しているの」
 骨董品クラスの携帯電話で誰かに話しかけているメリーさん。
「にぃあ」
 そして、板塀の笠木の上で香箱を組んでいる白猫。
 二股に分かれたしなやかな尻尾を有するその猫こそが月見に興じていない『一匹』だった。
「だれのいのちをもらおうかな?」
 琥珀色の愛らしい瞳を妖怪たちに向けて、白猫は呟いた。小さな声なので、妖怪たちの耳には届いていない。仮に届いたとしても、警戒心を抱く者はいなかっただろう。白猫の眼差しや声音には悪意が微塵も込められていないのだから。
「やさしいいのちがいいなぁ」
 二本の尻尾を揺らしながら、白猫は悪意なき瞳で獲物の物色を続けた。

●グリモアベースにて
「かつてUDCアースの日本で流行ったというスイーツをカクリヨファンタズムで買ってきたぜぇ」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前でラズベリーソースがけのパンナコッタを貪っていた。
 グリモア猟兵のJJことジャスパー・ジャンブルジョルトである。
 パンナコッタを欠片も残さずに食べ終え、皿についたラズベリーソースを舐め取った後、JJは本題に入った。
「カクリヨファンタズムに危険な骸魂が出現する! ……らしい。いや、実は詳しいことはよく判らないんだよ。骸魂の正体も目的も出現場所も不明と来たもんだ。参ったね、こりゃ。にゃはははははー」
 脳天気に笑うJJ。
 しかし、猟兵たちから『この役立たずが!』という非難の眼差しを向けられていることに気付いたのか、慌てて付け加えた。
「いやいやいやいや! だいじょーぶ、だいじょーぶ! 心配御無用! 骸魂が起こす事件そのものは予知できなかったけども、幽世蝶の群生を予知できたからー」
 幽世蝶とは、カクリヨファンタズム崩壊の兆しを示す不可思議な蝶。朧気な存在であるにもかかわらず、猟兵たちはそれを認識することができる。カクリヨファンタズムを何度も危機から救ったことが影響しているのかもしれない。
「つーことで、まずは『崩壊の兆し』であるところの幽世蝶を追っかけてくれ。そうすりゃあ、崩壊の原因となる骸魂を見つけ出せるはずだ。その骸魂を退治すれば、万事解決ってわけよ」
 幽世蝶が出現するのは、とある町の一角。そこは街路が複雑に入り組み、迷宮の様相を呈しているという。
 しかも、ただの迷宮ではない。
「その迷宮に足を踏み入れると、否応もなく思い出が蘇っちまうらしい。どんな思い出なのかは判らない。楽しい思い出かもしれないし、辛い思い出かもしれないし、楽しいとも辛いとも言い切れない思い出かもしれないし……まあ、なんであれ、惑わされちゃいけねえ。過去にとらわれて幽世蝶を見失ったりしないよーに!」
 JJは強い調子で警告した。脳天気に見えた表情も真剣なものに変わっている。
 口の端にラズベリソースがついていたが。


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 本件は、不思議な蝶の群れを追いかけて、その先にいる骸魂を退治するシナリオです。

 第1章は冒険編。迷宮と化した街路で自らの記憶と向き合うことになります。記憶の内容はお好きにどうぞ。シリアスな記憶もよし。ギャグっぽいも記憶もよし。

 第2章は日常編。蝶を追って辿り着いた先(昭和の漫画めいた空き地)でお月見に興じる振りをしつつ、骸魂である白猫の注意を引いたり、妖怪たちをさりげなく避難させたりしてください。

 第3章はボス戦編。白猫との戦闘です。オープニングでも言及されているように白猫は悪意を以て行動しているわけではありませんが、善良というわけでもありません。そもそも、善悪という概念がないようです。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 冒険 『とおりゃんせ、とおりゃんせ』

POW   :    過去の記憶に惑う。

SPD   :    忘れた感情に揺れる。

WIZ   :    誰かの幻が浮かぶ。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 猟兵たちが転送されたのは殺風景な路地。
 そこは薄暗かった。空には大きな満月が浮かんでいるのだが、目に見えぬなにかが月光を遮っているらしい。
 完全な闇に包まれていないのは、くたびれた街灯が弱々しい光を発していから。
 そして、淡い輝きを帯びた青白い蝶の群れが舞っているから。
 路地の奥に消え行こうとするその群れを追って、猟兵たちは足を踏み出した。
 途端に記憶の奥底から浮上してきた。
 忘れたはずの思い出が。
 あるいは、忘れたい思い出が。
 あるいは、決して忘れられぬ思い出が。


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●JJからのお知らせ。

 第1章では自分の中の記憶と御対面するわけだが、御対面の形は自由だ。頭の中に思い浮かぶだけかもしれないし、幻影として目の前に現れるかもしれないし、サウンドオンリー(幻聴)ってのもアリかもな。それらを乗り越えて、先に進んでくれ。
 二人以上で参加することもできるけど、共通の記憶があるからといって同じものを見るとは限らないぜ。記憶ってのは主観的なもんだし。
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江・永芳
(パンナコッタ美味しそうだったなぁ)
……と、いけない
幽世蝶というものを追いかければいいんだよねぇ
そのためには街路を超えないといけない、と

街路に踏み入れた瞬間蘇るのは懐かしい香り
そちらに視線を向ければ……あ、昔の父さんと母さんだ
側にいるのは小さい時の私
あれはきっと、初めて両親に料理を作った時の記憶
作ったのは確か餃子だったなぁ

……懐かしいなぁ
皮とかちょっと焦がしちゃったし
でも、父さんも母さんも美味しい美味しいって食べてくれて
それが嬉しくて、私は料理人を目指したんだよ

ヘビ人間になってからは実家にも帰ってないけど
もうちょっと猟兵として頑張れたら、また帰ろうかな
そのためにも、今は蝶を追いかけないとだねぇ



●追憶の途
 満月の明かりが届かぬ薄暗い路地を人影が行く。
 青白く輝く蝶の群れを追って。
 人影といっても、街灯が映し出すそのシルエットは人の形をしていなかった。体の横幅を越えるほどに膨れ上がった大きな鞄を背負っているからだ。
 鞄がなければ、ごく普通の若い女に見えるだろう。
 しかし、彼女は『普通』の範疇に入る存在ではない。猟兵であるという点を差し引いたとしても。
 蛇の呪いを受けた怪奇人間なのだから。

●江・永芳(歴遊日和・f32731)
 この不思議な場所に足を踏み入れると、否応もなく思い出が蘇る……らしいけど、ここに来る前から既に蘇っているというか、頭の中にしっかりと焼き付いているんだよね。
 それは数分前にグリモアベースで見た食べ物の思い出。
 そう、JJが食べていたパンナコッタ! 美味しそうだったなぁ。あと、他の猟兵さんがJJに贈った籠いっぱいの野いちごも美味しそうだった。そういえば、パンナコッタはカクリヨファンタズムで買ったとか言ってたっけ? 私も買って帰ろうかな……って、そんなことを考えてる場合じゃない! 任務に集中しなきゃ!
 気合いを入れ直した途端、懐かしい香りが漂ってきた。
『任務に集中』という決意もどこへやら、私は思わず足を止めて横手を見た。
 そこにあるのは、なんの変哲もないブロック塀。
 でも、すぐに『変哲』が生じた。ブロック塀が溶けるように消え去り、テーブルを囲む家族らしき三人組が見えたの。
 ……あ? テーブルの端にいる男女は若かりし頃の父さんと母さんだ。そして、二人の間にいるのは、小さい時の私。期待と不安が入り交じった顔をして、餃子が乗った皿をテーブルに置いてる。
 うん。思い出した。これは初めて両親に料理を作った時の記憶。懐かしいなぁ……皮をちょっと焦がしちゃったし、それでいて中の餡は生焼けだったりしたのだけれど、父さんも母さんも『美味しい、美味しい』って言って食べくれたっけ。
 記憶が脳裏に浮かび上がってくると、目の前でも同じ光景が繰り広げられた。お世辞にも上出来とは言えない餃子(でも、初めて作ったにしては悪くないほうだったと思うよ)を父さんと母さんは食べてくれている。記憶の通りに。目を細めて。とても嬉しそう。
 小さい時の私も嬉しそうにしている。もう、その表情に不安の色はない。ああ、そうだ……この時に感じた想いこそ、私が料理人を目指した切っ掛けだった。
 私は目を閉じて、そして、ゆっくりと開いた。
 三人家族は消えた。
 そこにあるのは、なんの変哲もないブロック塀。
 前に向き直ると、蝶の群れが見えた。思い出に耽っていた時間がどれほどなのかは判らないけど、群れとの距離はさして開いていない。もしかして、蝶たちは待ってくれていたのかな?
 私は再び気合いを入れ直し(今度は『任務に集中』という決意はどこにも行かなかった)、歩き始めた。

 蛇人間になってからこっち、実家には一度も帰ってないなぁ。
 もうちょっと猟兵として頑張れたら、帰ってみようか。
 そして、父さんと母さんに餃子を振る舞おう。
 もちろん、皮が焦げてないやつをね。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

インディゴ・クロワッサン
「うーん、予知も楽じゃないねー」
JJ君に直前のお仕事のお土産の野いちごを籠で渡したら、僕も転移しよーっと
「さてさて、どうなるかなー…」
僕、過去の記憶がなくて思い出とかとも無縁だから、知り合いの猟兵がそーゆー予知してくれると、とっても助かるんだよねー
「…思い出せるかは別だけどさ」
だから、聞こえてくる声は聞こえないフリをする。
『助けて』『止めて』『何故』『■■様』
…何れも此れも覚えがない。だからこれはきっと『幻』だ。
それに、最後なんて、名前すら聞こえなかったもんね!
「…確かに思い出したい。確かにそうなんだけど…でも、やっぱり怖いなぁ…」
ちょっと呟いたら、UC:影鳥召喚 を使って蝶の群れを追うよ



●追憶の途
 満月の明かりが届かぬ薄暗い路地を人影が行く。
 青白く輝く蝶の群れを追って。
 人影の主は、藍色の髪で片目を隠した小柄な青年。外套もその下の衣装も腰に差した直剣も黒一色。闇に溶け込んでしまいそうな出で立ちだが、不気味な印象は受けない。当人がのほほんとした空気を漂わせているからだろう。
 しかし、鋭敏な者ならば(あるいは闇の世界で生きてきた者ならば)、感じ取るかもしれない。
 のほほんとした空気に隠されたものに。
 当人も自覚していないであろう冥い想いに。

●インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)
 ここに転送される前、籠いっぱいの野いちごをJJくんにあげたんだ。アックス&ウィザースでのお土産と予知のお礼を兼ねて。JJくんに限らず、グリモア猟兵の皆さんにはどんなにお礼をしても足りないね。感謝、感謝。
 とくに今回みたいな任務を紹介してくれるのは本当に助かるよ。僕、過去の記憶がないからさ。ずっと無縁だった『思い出』ってやつを見つけられるかもしれない。
 まあ、あくまでも『かもしれない』なんだけどね。見つけられるかどうかは――

「タスケテ」

 ――判らない。うん、判らない。
 それにしても、幽世蝶ってのは幻想的で綺麗だな。カタストロフの兆しがない時にしか見られないというのはちょっと残念かも。
 ここに来た当初はもっと幻想的な感じだったんだよ。キラキラ成分が混じったブラックタールの同僚も視界に入っていたからね。今はもう――

「ヤメテ」

 ――はぐれちゃったけど。でも、肝心の幽世蝶のほうは見失ってないから、問題なーし。蝶を追いかけていけば、はぐれた仲間ともまた逢えるはず。

「ナゼ?」

 あー! もう、うっとうしい! さっきからずっと妙な幻聴が思考に割り込んでくるんだよね。なんなの、これ? こっちは聞こえない振りしてるんだから、空気を呼んで黙ってよ。

「■■■様」

 いやいやいやいや! 黙るのなら、完全に黙ってくれないかな? 中途半端に声量を落として、肝心の名前をぼやかさないでよ。
 ……ん? 肝心?
 なんで、僕はその名前を肝心だなんて思ったんだろう?

「■■■様」

 もしかして、この声こそが僕の求めていた思い出? 無意味な幻聴なんかじゃなくて……。

「■■■様」

 なにかを思い出せそうな気がする。
 思い出したい。
 でも……思い出すのが……怖い。
 怖い。

「■■■様」

 おっと! 幻聴に気を取られている間に幽世蝶に引き離されちゃってるじゃないか。
 念のためにユーベルコード『影鳥召喚(コールシェイド)』を発動。僕と五感を共有できる小鳥(影と同化できる優れもの)にも幽世蝶を追わせよう。
 万が一、僕が幽世蝶を見失ったとしても、この小鳥が張り付いてくれている限り、すぐにまた見つけ出すことができる。
 思い出は見つけ出せなかったけどね。
 例の幻聴ももう聴こえなくなったし。

「■■■様」

 聴こえないよ。

「■■■様……」

 聴こえないってば。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

アイグレー・ブルー
アドリブ歓迎

想い出ですか
蝶を追って街を歩くと聴こえてくるのはわたくしがただの水溜りの様だった頃、優しいマザーとのやりとりであります

『aiぐれー、なmaえ?』
─ええ、銀河命名辞典より出典されました

『きしさま!すてき!まざー?あいぐれー、きしさまなる』
─はい、アーカイブから「やさしい防衛術」「騎士の心得」を用意します

『マザー!わたくしもっと可愛くなりたいであります……!』
─「もっとカワイイ!特殊メイク術」なら…


船に在った託児所管理AI"マザー"はもう応えてはくれませんが
今わたくしは「船を守る防衛隊長で、皆様を護る騎士の女の子」になりました
ちゃんと前を歩けていますよ
感傷ではなくとても優しい想い出です



●追憶の途
 満月の明かりが届かぬ薄暗い路地を人影が行く。
 青白く輝く蝶の群れを追って。
 それは『人影』と呼ぶに相応しいものだった。
 ブラックタールなのだから。
 しかし、十代前半の少女であろうそのブラックタールの体は暗色だけで構成されているわけではない。星粒のような小さな光点がちりばめられている。体を崩して地に這えば、夜空の星々を映し出す水溜まりに見えるかもしれない。
 もっとも、彼女のことをよく知る者ならば、逆の見方をするだろう。
 暗い夜空のほうが彼女の星粒を映し出ししているのだと……。

●アイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿す・f20814)
 グリッターを飲んで(そう、塗ったのではなく、飲んだのです。ブラックタールでないかたは真似しないでください)キラキラになった体を念動力で操り、ふよふよと移動しているわけですが……ついつい体を揺らして『ふよふよ』に『ぷるぷる』を加えてしまうのは、心地よい音楽が聞こえてくるからであります。
 それは『べんべん♪』というギターのリズム。他の猟兵さんが爪弾いているんです。幽世蝶のぱたぱたという羽ばたきに合わせるかのように。
 ぱたぱたを追って、ふよふよと進み、べんべんを聞いて、ぷるぷると揺れる、実に楽しい道行き……と思っていたら、べんべん以外のものも聞こえてきました。
 舌足らずな声と電子音声のやりとりです。

「aiぐれー、なmaえ?」
「はい。『銀河命名辞典『を参考にして名付けました」

 前者は、幼かった頃のわたくしであります。舌足らずなのも当然。当時はまだ水溜まりも同然の状態だったので、舌がまともに形作られていなかったのです。
 そして、水溜まりの相手をしている電子音声はマザー。
 そう、これはマザーに名前をもらった時の思い出。

「きしさま? すてき! まざー! あいぐれー、きしさま、なる!」
「はい。アーカイブから『やさしい防衛術』と『騎士の心得』を用意します」

 これは騎士になることを決意した時の思い出。
『やさしい防衛術』で覚えた技術と『騎士の心得』で学んだ精神は心身にしっかりと刻みつけられております。

「マザー! わたくし、もっと可愛くなりたいであります!」
「では、『もっとカワイイ! 特殊メイク術』を……」

 こ、これは可愛さに目覚めた頃の思い出。こうして客観的に聞くと、なにやら気恥ずかしい……。
 まあ、なんにせよ、わたくしがこうして『きしさま』になれたのはマザーのおかげなのであります。
 宇宙船内の託児所管理AIである彼女がわたくしに応えてくれることはもうありませんが……今のわたくしの姿を見たら、きっと誇りに思ってくれるはず。
 より誇れるように今回の任務もビシッと完遂してみせましょう。

 決意を新たにして、わたくしは幽世蝶の追跡を再開しました。
 ぱたぱた、ふよふよ、べんべん、ぷるぷる……。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
詳細不明だけど
世界の危機は見逃せないぜ

甦る思い出、か
俺はあんま過去は振り返らない主義なんだけど
何が出てくるか
楽しみにしておくぜ

行動
蝶の群れの動きに合わせるように
ギターを爪弾きながら
蝶を追う

万が一逃げられてしまいそうならUC

蝶が乗ってくれるんなら
それはそれで楽しそうだけどな

路地の影に見えるのは…
うん鼠色のケットシーだ

なんか喰ってる
ありゃイカ墨のスパゲッティか
もしゃもしゃ咀嚼音もリアルだ

横目で通り過ぎると
また影から鼠色が

ビッシュ・ド・ノエルを丸ごと喰ってる
チョコのいい香りがするな

コンビーフや骨付き肉
バナナにチーズケーキ…

次から次に美味そうに喰ってる姿が

確かに忘れられない思い出だな
腹減ってきたぜ



●追憶の途
 満月の明かりが届かぬ薄暗い路地を人影が行く。
 青白く輝く蝶の群れを追って。
 その追跡行は軽快なBGMを伴っていた。
 BGMの発生源は、追跡者たる人影――額に傷のある少年が抱えているギターだ。
 そう、少年はギターを爪弾いていた。蝶たちの羽ばたきに合わせるかのように。
 しかし、やがて立場が逆転した。
 蝶たちのほうがギターのメロディに合わせて羽ばたき始めたのだ。
 少年の演奏が気に入ったらしい。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 俺が弾いているギターは『ワイルドウィンド』。苦楽をともにしてきた相棒だ。
 残念なのは、相棒の弦の音を聴いてるのが幽世蝶だけだってこと。この路地を歩き始めた時には個性豊かかつ頼り甲斐のありそうな猟兵たち(三人組の家族連れとかな)が傍にいたんだが、いつの間にか消えちまった。本当に消えたわけじゃなく、認識できなくなっただけだと思うけど。
 仲間の姿が見えなくなった代わりに、思い出ってやつが見えてくるんだろうが……さて、どんな思い出が甦るのかねえ? あんま過去は振り返らない主義なんだけど、せいぜい楽しみに……あ?
 見えたぜ。
 見えちまったぜ。
 路地の端っこのほうにちょこんと立っている鼠色のケットシーの姿が……。
 そう、ついさっきグリモアベースで会ったばかりのあいつだよ、あいつ。グリモアベースではパンナコッタをかっこんでたけど、ここでもなにかを立ち食いしてやがる。ありゃあ、イカスミのスパゲッティーか? そういえば、羅針盤戦争の時に同じような光景を見たっけ。これはその時の思い出ってわけだな。
 しかし、記憶から生まれた幻のくせして、やけにリアルだ。スパゲッティーをずるずる啜る音やもしゃもしゃいう咀嚼音(マナーもなにもあったもんじゃねえ)まで聞こえてくる。
 まさか、こんな緊張感ゼロの思い出が甦るとは……まあ、いいか。気を取り直して、先に進むぜ!
 ……と、思ったら、また新しい幻が見えたぁ!
 今度の幻も鼠色(って言ったら、気を悪くするんだっけ?)のあいつの姿を取っていたが、食ってるもんが違う。ブッシュ・ド・ノエルだ。顔をチョコまみれにして丸かじりしてる。これは去年のクリスマスの時の思い出だな。
 鼻の穴の中に潜り込んでくるチョコの甘い香り(そう、匂い付きの幻なんだ)を無視して、俺はあいつの横を通り過ぎた。
 すると、第三のあいつが現れた。コンビーフの枕缶(賞味期限がヤバそうな代物)を開けている。
 第四のあいつも現れた。大きな骨付き肉にがぶりついてる。
 その後もあいつは現れ続けた。
 そして、食べ続けた。
 チーズケーキをもぐもぐ頬張り、梅ジャムせんべいをばりばり囓り、ココナッツミルクをストローでちゅうちゅう吸い、ストロベリーチョコソースをかけたフルーツの盛り合わせをくちゃくちゃ貪り……咀嚼音の大合奏。耳に来る飯テロだ。
 その音に負けないよう、俺は『ワイルドウィンド』をより激しくかき鳴らした。

 あー。なんか腹減ってきたぜ。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
いつもは子供達と一緒だが、思い出を振り返るなら一人がいい。


幽世蝶を追ってると夫との馴れ初めとか思い出のあれこれが。暴漢から救ってくれて助け起こしてくれた逞しい背中、立ち寄った場所で結婚指輪を買ってくれたこと、獣に襲われて預けあった背中、奏が生まれるときに繋いでくれた手・・・

ああ、思いだしたらキリが無い。律、アンタはもういないが、アンタがいてくれたからこそアタシはここにいる。思い出に手を振って、先に進むよ。赫灼のグロリアを口ずさみながら。


真宮・奏
今日は思い出を振り返るようで、一人で振り返った方がいいだろう、と母さんが言うので、一人で幽世蝶を追いますね。歩いていたら目の前にいるのは死んだお父さん。

1人で危ない所にいった私を怒る怖い顔、私に剣を教えてくれる真剣な顔、私が身体の調子が悪い時に抱っこして眠ってくれた温もり、私を危険から守ってくれた背中の逞しさ・・・

お父さんはもういないですけど、お父さんのように大事な人を護るのが私の目標です。お父さん、見守っててくださいね。もふもふなお友達に先導を頼み、先に進みます。


神城・瞬
いつもは家族で行動するんですが、思い出を振り返るなら一人がいいだろうと母さんがいうので、一人で歩きますね。

歩いていくと見えてくるのは死んだ生みの母、麗奈の姿が。一緒に湖に言って薬草を摘んだ時手取り足取り薬草の使い方を教えてくれた、術を教えてくれる時の真剣な顔、上手く術を扱えた時に撫でてくれた手の温もり、何より、修行が終わった時のおやつの美味しさは忘れる事が出来ません。

麗奈母さん、生きる術を教えてくれてありがとうございます。そのおかげで、僕は響母さんと奏を護れています。見守っててくださいね。月白の使者と共に先に進みます。



●追憶の途
 満月の明かりが届かぬ薄暗い路地を人影が行く。
 青白く輝く蝶の群れを追って。
 人影の数は三つ。三十後半と思わしき女、十代後半と思わしき娘、そして、長身の青年。
 女二人は母子なのか、顔立ちがどこか似ている。青年の容貌には女たちの相似点がない。そもそも、種族が違うのだろう。女たちは普通の人間のようだが、青年はヒトに似てヒトならざる者特有の冥い空気を漂わせている。
 にもかかわらず、彼は浮いて見えなかった。
 三人を強く結びつけているであろう絆のせいかもしれない。

●真宮・奏(絢爛の星・f03210)
 思い出を振り返るなら、一人がいい。
 母さんがそう言ったので、私は母さんと兄さんから離れ……ようと思ったのだけれど、離れるより先に二人の姿は視界から消えた。
 母さんたちだけじゃなくて、他の人たち(不思議なランタンで夜道を照らしていたドワーフの女の子とか)も見えなくなった。
 でも、一人ぼっちになったわけじゃない。もふもふな可愛い動物たちをユーベルコードで召喚したから。百匹以上もね。
 小さいながらも頼りになるその子たちは幽世蝶の群れの後にちょこちょこぞろぞろと続き、私を先導してくれている。この分なら、幽世蝶を見失うことも道に迷うこともなさそう。
 しばらくすると、行進する動物たちの横に男の人の幻が現れた。半透明なんだけど、そうでなかったとしても幻だということは一目で判ったと思う。だって、その男の人はお父さんだったから。十年以上も前、私が五歳の頃に死別した……。
 お父さんはとても怖い顔をして、私を睨んでいた。この時のことはよく覚えてる。私が一人で危ないところに行ったもんだから、叱られちゃったの。
『ごめんね』と伝える前に幻は消えて、新たな幻が現れた。もちろん、それもお父さん。さっきと違って怖い顔はしていないけれど、とても真剣な表情。これは剣術を教えてもらっていた時の思い出ね。私はまだ小さかったけど、父さんは決して手を抜いたりしなかったな。
 その幻も消えて、別の思い出の中のお父さんが見えた。体の調子が悪かった時に抱っこをしてくれたお父さん。少しぼやけているのは、当時の私が朦朧としていたからかな? でも、見た目がぼやけていようとも、温もりだけは忘れてないよ。
 続いて現れたお父さんは背中を向けていた。私を危険から守るために……。
 とても逞しく、そして、かっこいい後ろ姿。母さんが惚れるのも当然ね。
 この時のお父さんのように大事な人を守る――それが私の目標。
「見守っててくださいね、お父さん」
 私が声をかけると、後ろ姿は薄れゆき、消え去った。
 消える直前に頷いたようように見えたのは気のせいかな?

●神城・瞬(清光の月・f06558)
 僕は幽世蝶の群れを追って路地を歩きつつ、同じ群れを空から見下ろしていました。ユーベルコードで召喚した白い鷺『月白の使者』と五感を共有しているのです。
 僕と『月白の使者』、どちらの視界にも母さんや奏や他の方々の姿はありません。この不可思議な場所が(あるいは幽世蝶が?)生み出すなんらかの力によって、視覚で捉えることができなくなったようです。まあ、こちらとしては好都合ですけどね。母さんは『思い出を振り返るなら、一人がいい』と言っていましたから。
 歩き続け/飛び続けているうちに、僕と『月白の使者』が見ている対象に差異が生じました。後者が見ているのは蝶の群れだけ。でも、僕の前には女性が立っています。
 それは母さんでした。
 もっとも、さきほどまで一緒に歩いていた母さん――育ての親である響母さんじゃありません。
 僕を産んでくれた……そして、僕を残して死んでしまった母さんです。
 足を止めた僕を真正面から見つめて、母さんは微笑みました。優しげに。
 その笑顔が引き金となって、僕の心の中で様々な思い出が次々と沸き上がってきました。

 湖の畔で一緒に薬草を摘んだ時のこと。

 その薬草の使い方や様々な術を教えてくれた時の真剣な顔。

 術を上手く行使できた時に撫でてくれた手の温もり。

 そして、それらの修行が終わった後に振る舞ってくれたおやつの美味しさ。

 奔流となって渦巻く無数の思い出に息が詰まり、僕は思わず目を閉じてしまいました。一秒でも長く、母さんの笑顔を見ていたかったのですが……。
 すぐに目を開けたものの、そこにはもう母さんはいませんでした。
 でも、あの優しい笑顔が与えてくれたものまでは消えていません。
「僕がもう一人の母さんと奏を守れているのは――」
 見えなくなった母さんに向かって、僕は語りかけました。
「――生きるための術をあなたが教えてくれたからです。本当にありがとうございます」
 当然のことながら、返事はかえってきませんでした。
 代わりに歌声が聞こえてきました。
『もう一人の母さん』の歌声が……。

●真宮・響(赫灼の炎・f00434)
 他の猟兵たちはどうだか知らないけど、アタシの前には思い出は現れなかった。
 目に見える幻という形ではね。
 その代わり、心の中で次から次へとフラッシュッバクした。
 あの人と……そう、今は亡き夫と過ごした日々が。

 たとえば、暴漢から救ってくれた時のこと。
 この話を瞬や奏に聞かせても、なかなか信じちゃくれないんだよね。アタシが暴漢に襲われて助けを必要としているなんて状況が想像できないんだとさ(こう見えても、若い頃は箱入り娘だったんだよ)。

 たとえば、立ち寄った場所で結婚指輪を買ってくれた時のこと。
 この話は子供たちに信じてもらえてる。とくに奏はお気に入りで、ことあるごとに『指輪をもらった日の話を聞かせて!』とせがんでくるんだ。

 たとえば、背中を預け合って、獣たちと戦った時のこと。
 一応、この話も信じてもらえてる。凶暴な獣たちをアタシが倒していく様が目に浮かぶようだとさ。アタシだけじゃなくて、あの人も戦ったっていうのね。

 そして、奏が生まれた時のこと。
 あの人はずっとアタシに寄り添い、手を繋ぎ、励ましてくれたっけ……。

 あの人の手の温もりがアタシの手の中で甦った。
 一瞬だけ。
 ほんの一瞬だけ。
 でも、一瞬で充分だ。
「律……」
 あの人の名を声に出してみた。
「アンタはもういないが、アンタがいてくれたからこそ、アタシはここにいる。それに瞬や奏も……」
 永遠の温もりを宿した手を心の中で振り、アタシは思い出に別れを告げた。
 そして、一瞬だけ温もりを感じた現実の手を握り締めて、『赫灼ののグロリア』を歌い始めた。
 それは力を高めるユーベルコードの歌。
 瞬と奏にも聴こえてるかな?
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ペイル・ビビッド
うーん、まずは幽世蝶を追いかけなくちゃだね

灯りがあればいいかなと
UC「複製描画」でランタンを出して歩く
街路の間で見えたのは…3年前のある日の光景

絵を描いているおとーさんと
隣で画材の片付けを手伝ってるおかーさん
そしてスケッチブックに
りんごの絵を描いてるあたし
本物そっくりに描けた、と思ったら
突然…スケッチブックからりんごが飛び出したの
すぐに消えちゃったけど

まさかこれが
あたしが猟兵として覚醒したきっかけだったなんて

あれよあれよと振り回されて
オブリビオンと戦うことになって戸惑った
けど…おとーさんもおかーさんも理解してくれたし
応援してくれる
今の自分になったこと
無駄じゃないって思えるよ



●追憶の途
 満月の明かりが届かぬ薄暗い路地を人影が行く。
 青白く輝く蝶の群れを追って。
 人影は小さかった。年端もいかぬ少女だったから。そして、ドワーフだったから。
 しかし、彼女が背負っている武器は規格外の大きさだった。全長は一メートルほどだが、その程度でも間違いなく『規格外』だ。
 それは絵筆なのだから。

●ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
 お月様は明るく輝いているのに路地はなぜか薄暗い。
 あたしたちが追いかけているもの――沢山の幽世蝶はぼんやり光っているから、そうそう見失うことはないと思うけど、念のためにランタンを取り出した。いえ、『描き出した』と言うべきかな? スケッチブックに描いた絵を実体化するユーベルコード『複製描画(ドッペル・ドローイング)』を使ったんだから。
 てくてく歩いているうちに他の猟兵さんたちが一人また一人と消え……やがて、蝶を追っているのはあたしだけになった。
 だけど、心細さを感じる間もなく、ランタンの光(と、街灯のちょっと頼りない光)が照らし出した。
 あたしの思い出を。

 三年前……あたしが今よりもちょっと小さかった頃のこと(『今も小さいじゃん』とか言わないよーに!)。
 あたしはスケッチブックに絵を描いていた。イーゼルの前でせっせと筆を動かしているおとーさんを真似してね(おとーさんは画家なんだ)。おかーさんも傍にいた。おとーさんが散らかしまくった画材のお片づけをしてたの。
 あたしが描いていたのはリンゴの絵。今ほど上手じゃなかったけど、九歳の子が描いたにしてはなかなかのものだったと思う。
 それが完成した瞬間――、
「……わっ!?」
 ――あたしは思わず叫んじゃった。
 だって、スケッチブックの中からリンゴが転がり落ちたんだもん。そう、今のあたしが手にしているランタンと同じように実体化したの。意識してやったわけじゃないけどね。
 おかーさんが(たぶん反射的に)手を伸ばしてリンゴを受け止めようとしたけれど、まだ空中にあるうちに消えちゃった。
 代わりに筆が床に落ちて、カラーンという音が響いた。おとーさんが吃驚仰天して取り落としちゃったんだよ。
 おとーさんもおかーさんも目をまん丸に見開いて、ぽかーんとしていた。
 きっと、あたしの目もまん丸になっていただろうね。

 それが、あたしが猟兵として覚醒したきっかけ。
 で、あれよあれよという間にオブリビオンと戦うことになっちゃって、いろいろと戸惑ったりもしたけれど……オブリビオンをやっつけて誰かを助けたり、世界を救ったりする度に思うんだよね。猟兵になったことは無駄じゃなかったんだって。
 おとーさんとおかーさんも猟兵の仕事のことを理解してくれてるし、応援もしてくれてる。だから、頑張れる。うん。
 ……あ? 蝶たちとあたしとの間にまた人影が現れた。今度のそれは過去の光景じゃない。見えなくなっていた猟兵さんの一人――ぱんぱんに膨らんだ鞄を背負ったお姉さんの後ろ姿。
 そして、他の猟兵さんも次々と現れた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 日常 『幽世の月見』

POW   :    郷愁に浸りつつ、月を愛でる

SPD   :    旅愁を覚えつつ、月を愛でる

WIZ   :    哀愁を感じつつ、月を愛でる

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
 幽世蝶の群れを追って行き着いたのは、郷愁を呼び起こす昭和の漫画めいた空き地。
 そこでは様々な妖怪たちが月見に興じていた。
「お? おまえらも月見に来たのか?」
 夜空に掲げていた首を猟兵たちに向けるデュラハン。
「団子、食うかい?」
 供え物であろう団子を差し出すぬらりひょん。
「……」
 猟兵たちに気付いていないのか、あるいは無視しているのか、なにも言わずに月を眺め続ける竜神。
 どの妖怪にも幽世蝶は見えていないらしい。
 幽世蝶の群れは空き地を突っ切ると、白い猫が香箱を組んでいる塀の傍で停止し、そこで滞空を始めた。
 二股の尻尾を持つその猫を取り囲むように。
 他の妖怪たちと同様、猫は幽世蝶を認識していないらしい。
 しかし、猟兵には興味を抱いたらしく、琥珀色の双眸を向けて――
「にぃあ」
 ――と、愛らしい声で鳴いた。


========================================
●JJからのお知らせ。

 骸魂(白猫)を発見することはできたが、まだ戦いを仕掛けちゃいけないぜ。他の妖怪たちを巻き込んじまう恐れがあるからな。
 つーことで、お月見を楽しんでいる振りをしつつ、白猫を空き地から引き離してくれ。
 白猫は、自分の正体が骸魂だとバレたことに気付いてない。なおかつ、猟兵に対して興味津々。警戒心ゼロ&好奇心マシマシだからして、誘導するのはそんなに難しくないと思う。
 あと、白猫には人間の言葉が通じるし、本人(本猫?)も人間の言葉を喋ることができるぜ。ひらがな多めだけどな。
========================================
 
インディゴ・クロワッサン
(へー…あの蝶々、僕らにしか見えないんだ…)
これは言葉にしないように気をつけて…っと
ホント、世界って面白いねぇ
「お団子?お供え物っぽいけど良いの?」
まぁ、貰っちゃうけど!
「いっただっきまーす」
ん~ 美味し~
「お団子のお礼って訳じゃないけど、お月見にはお酒欲しくなっちゃうよね~」
とか言いながら、僕も飲みたくなってきたのを理由に、UC:無限収納 からお酒とか持ってこよーっと
白猫又ちゃんが寄ってきたら
「君は何食べたいー?」
って聞いたり撫でたりしながら、それとなーく別の所に誘導しようか
「僕も一緒に…いや、離れた所の方が、月が綺麗に見えたりするかも」
こんな理由なら、不審には思われないでしょ、きっと(笑)


真宮・響
【真宮家】で参加

月見ね。妖怪達も楽しんでるようだから、アタシたちも楽しもうか。楽しまないともったいない程の見事な月だし。

瞬が月の守護を受けているように、アタシも奏も穏やかな月である瞬にいつも支えられてる。いつも世話をかけるね、瞬。おや、奏が件の白猫を追いかけて走って行ってしまったよ。急いで追いかけるのは瞬に任せてアタシはゆっくり歩いて行こうかね。

白猫にアンタは一人かい、と気軽に話しかける。娘がアンタを気に入ってるようだから、一緒に月見でもどうだい、とさり気なく邪魔されない所に誘導。景気付けに赫灼のグロリアでも歌おうかね。


真宮・奏
【真宮家】で参加

うわあ、綺麗な月ですねえ。(団子を受け取り)、ありがとうです。(団子をもぐもぐ)月というとやっぱり兄さんを思いだします。月の守護を受けた兄さんが穏やかにいつも寄り添ってくれてると、いつも安心するんです。

あ、可愛い白猫さんがいます。可愛いしぐさにハートを撃ち抜かれ、白猫さんに向けてダッシュ。白猫さんに話しかけます。初めまして、白猫さん。頭撫でていいですか?出来ればその尻尾にも。

母さんと兄さんが追い付いてきても白猫さんに夢中。そうですね、邪魔されない所でゆっくり月見、いいですね。白猫さんも一緒にどうですか?とさり気なく誘導。絢爛のクレドで楽しそうにステップを踏みながら進みます。


神城・瞬
【真宮家】で参加

たとえしょっちゅう滅亡の危機にある世界でも、月は綺麗ですよね。ちょっと生まれ故郷での宴を思いだすかも。はい、僕はいつも二つの光を照らす穏やかな月でありたい。まあ、わき目もふらず突進する手間のかかる光ですが。

あ、奏が白猫を追って走って行ってしまいました。可愛いもふもふとしたものには目が無いですからね奏。急いで追いかけます。穏やかに会話している姿に胸をなでおろしてみたり。

そうですね、静かな所で月見もいいでしょう。もちろん白猫さんも一緒に。清光のベネディクトゥスで精霊を呼び出して、白猫さんと同行させます。あくまでさり気なく誘導しますね。



●神城・瞬(清光の月・f06558)
「うわあ! 綺麗な月!」
 妖怪たちと一緒に奏が満月を見上げています。
 彼女が言うとおり、とても美しい月ですね。カタストロフの危機が日常茶飯事となっている世界だというのに……いえ、そんな世界だからこそ、美しく見えるのでしょうか?
「そこのお嬢ちゃん。団子はどうだい?」
 ゴツゴツした西洋妖怪(ガーゴイルだと思われます)が奏に声をかけ、団子が積み上げられた皿を差し出しました。
「ありがとうです。いただきまーす」
 夜空に向けていた視線を下げ、世にも幸せそうな顔をして団子を摘む奏。
 月より団子なのは彼女だけではありません。
「ん~! おいし~!」
 と、インディゴさんも舌鼓を打っています。
「お団子のお礼というわけでもないけど……いいものを持ってくるね」
 妖怪たちに語りかけるインディゴさんの横に扉が出現しました。茨が絡みついた奇妙な扉。おそらく、ユーベルコードで生み出されたものでしょう。
 インディゴさんは扉を開けて、その奥へと消え……そして、すぐに戻ってきました。
「やっぱ、お月見にはこれがないとね」
 掲げてみせたのは洋酒の瓶。
 それを見た妖怪たちは――
「うぉー! やったぁー!」
「気が利くなぁ、兄ちゃん!」
「呑もうぜ! 呑もうぜぇー!」
 ――やんややんやの大喝采。皆さん、いけるクチのようで。
「宴会場の様相を呈してきましたね」
「まあ、いいじゃないか」
 と、私の呟きに苦笑まじりに応じたのは母さんです。言うまでもないとは思いますが、路地で見た母さんじゃなくて、響母さんのほうですよ。
「私たちも楽しませてもらおうじゃないか」
 視線を夜空へと向ける母さん。
 月を見上げる横顔は奏のそれにそっくりです。
「こんなに見事な満月なんだから、楽しまないともったいよ」

●インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)
 妖怪たちに酒が行き渡ると、心地よい音楽が流れ始めた。
 ウタくんがギターが爪弾いているんだ。
「それにしても……」
 じっと手を見る僕。正確に言うと、手に乗ってる団子を見てるんだけど。
「これって、お供え物だよね? 食べちゃってもいいのかな?」
「構いやしないよぉ」
 ろくろっくびのお姉さんが(首が長いから、他の人よりも月が近くに見えるかもね)ぐにゃりと首を曲げて顔を近付け、酒臭い息を吐きかけてきた。
「お供え物は供えた瞬間に役目を終えるって言うじゃないか」
「いや、『言うじゃないか』って……そんな解釈、初めて聞いたよ」
 なんだか釈然としない。まあ、いいか。
 お団子をぱくり。
 そして、お酒をごくり。
 月を見上げて、にっこり。
 ……と、さもお月見を楽しんでいるように振る舞いつつ、僕は横目で窺っていた。
 塀の上で香箱を組んでいる白い猫の様子を。
 猫の周囲では幽世蝶の群れが舞っている。でも、猫のほうは気にも留めていない……というか、見えてないっぽい。猫だけじゃなくて、他の妖怪たちにも。ホント、世界っていうのは不思議で面白いね。
 不思議で面白い世界から与えられた『幽世蝶が見える』という特権を活かして白猫の観察をさりげなく続けていると、同じ特権を持つ人たちのやりとりが聞こえてきた。
「こうやって月を見ていると……やっぱり、兄さんが思い浮かぶな。月の守護を受けた兄さんが寄り添ってくれていると、心が安まるのよね」
「そうだね。穏やかな月である瞬にアタシも奏も支えられてる。いつも世話をかけるね、瞬」
 真宮家の母子だ。二人が語りかけている相手は瞬くん。
『月の守護を受けた』という瞬くんは優しく微笑んでみせた。僕には縁遠いホームドラマ(そういうのがUDCアースにはあるんだって)的な世界。
「僕も、母さんと奏という二つの光を照らす穏やかな月でありたいと思っています。まあ、脇目もふらずに突進する手間のかかる光ではありますが……」
「あ!? 猫だぁーっ!」
 瞬くんがすべてを言い終える前に奏ちゃんが走り出した。『脇目もふらずに突進する云々』という言葉を証明するかのように。

●真宮・奏(絢爛の星・f03210)
「あ!? 猫だぁーっ!」
 大声をあげて駆け出したりしたけれど、半分くらいは演技だからね。この空き地に来た時から(幽世蝶が群がっていたので)白猫さんの姿には気付いていたし。
 でも、残りの半分は本気だったりして。可愛い生き物を見たら、どうしてもテンションがあがっちゃう。
 その本気っぷりが功を奏したのかどうかは判らないけれど、白猫さんは警戒する素振りを見せなかった。塀の上で香箱を組んだまま、二本の尻尾をゆらゆら動かしている。
「はじめまして、白猫さん」
 私が挨拶すると、白猫さんは小首をかしげて可愛い声で鳴いた。
「にゃあ」
「頭、撫でていいですか?」
「うーん」
 と、一秒半ほど考え込んだ後、白猫さんは首の傾きを正した。
「ちょっとだけよ」
「ありがとうございまーす」
 小さな頭に手を乗せ、慎重に撫で撫で。
 なかなか良い感じの撫で方だったらしく、白猫さんは目を細めて喉を鳴らし始めた。ごろごろごろごろ……あー、心休まる音だわ。いつまでも聞いていられる。
「アンタ、一人かい?」
 横手から声が聞こえ、私は我に返った。
 声の主は母さん。周りには兄さんや他の猟兵さんもいる。私がごろごろ音に魂を持っていかれている間に集まっていたのね。
 兄さんの顔には安堵の色が見える。安堵ってことは、その前に『心配』の段階があったということかな? 私が無防備に白猫さんに近付いたもんだから、気が気でなかったのかも(どんなに見た目が可愛かろうと、オブリビオンだものね)。後で謝っておこう。
「いまはひとり」
 と、オブリビオンの白猫さんが目を開けて、母さんの問いに答えた。
「でも、むかしはちがった。ごしゅじんさまがいたの」
 ごしゅじんさま?
「ごしゅじんさまが……いたの……」
 白猫さんは繰り返した。
 寂しげに。
 悲しげに。

●真宮・響(赫灼の炎・f00434)
 故人であろう『ごしゅじんさま』とやらのことを口にして白猫は表情を曇らせたけど――
「尻尾も撫でさせてもらっていいですか?」
「ちょっとだけよ」
 ――奏が遠慮がちに頼み込むと、澄まし顔になって尻尾を揺らすテンポを緩めた。
「なにか食べたいものある?」
 奏と一緒に白猫を撫でながら、インディゴが尋ねた。
「うーん。べつにー」
 気のない返事をした白猫だったけれど、ペイルと永芳が食べ物を差し出すと(ちなみにペイルのはパンの欠片で、永芳のは鰹節だ)、はぐはぐと食べ始めた。尻尾が二股になっていることを無視すれば、食事中の姿も普通の可愛らしい猫にしか見えない。もふもふ好きな奏が夢中になるのも無理からぬことか。
 だけど、撫でまくって終わりってわけにはいかない。この子はオブリビオンなんだから。
「もう少し静かなところで月見をしませんか?」
 白猫が食事を終えると、瞬が誰にともなく提案した。本当は『誰にともなく』じゃなくて、白猫を意識してるんだろうけど。
「いいね。離れたところのほうが、月が綺麗に見えたりするかもしれないし」
 インディゴが同意した。すっとぼけた振りしてるけど、仕事のことは忘れちゃいないようだ。
「アンタたちも一緒にどうだい?」
 さりげない調子でアタシは白猫を誘った。『たち』が付いているのは、いつの間にやら相手が一匹じゃなくなっていたから。ブラックタールのアイグレーが猫みたいな形を取って、白猫の傍に控えているんだよ。
 そのアイグレーにも誘われて、白猫は塀から飛び降りた。
「いってみようかな」
「うん。行ってみよう、行ってみよう」
 インディゴが歩き出した。
 二股の尻尾をピンを立て、白猫がその後に続く。

 いざ、戦場へ……。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ペイル・ビビッド
さっきの蝶たちがあの猫の周りにだけ
集まっている…
ということはあれが骸魂、ってこと?

ほかの妖怪たちを巻き込まないように
あの猫だけここから引っ張り出さないと

出せる限りのコミュ力と優しさと
動物と話す能力を駆使して猫に接触だ

こんばんわ
真ん丸なお月様だね
あたしも街路を歩いていたらここにたどり着いたんだ

乾いた食パンの欠片を差し出し
お腹がすいてたらおひとつどーぞ

人が増えてきて騒がしくなってきたから
もう少し静かで広いところに
移動してみようか
こんなに大きなお月様
独り占めできるところあるかなぁ…

さて、と
相手が本性を現すなら
こっちも覚悟しとかないと…
平筆の背負いひもを強く握った


木霊・ウタ
心情
あの猫がオブリビオンか
可愛らしい姿だけど
油断せずに行くぜ

行動
まずは月見に興じる

折角だから団子も貰って腹ごなし

追いかけてきたし
色々見て腹減ったしな

月を愛でながら
ぽろぽろんと弦を爪弾く

月見の邪魔にならない程度に

で月を愛でるけど
時々白猫にも目をやって笑顔
綺麗な月だよなと声掛け

警戒させない為だけど
実際可愛いしな

ひとしきり爪弾いたら
猫撫で

(温かくて柔らかいよな
オブリビオンだけど)

お月さまのお陰でノッて来た
いい曲が出来そうだ

ちょいと騒がしくなるから
俺は他所に移るぜ

よければお前も来るか?
曲にアドバイスをくれよ>白猫


江・永芳
わあ、綺麗なお月さま
妖怪達もいっぱいで賑やかだねぇ
今はまだ戦わなくていいみたいだし、のんびりしよっか

そして……あの猫が例の、かな
悪意はなさそうだし、ちょっと近付いてみよう
こんにちは、猫さん
猫さんには何をあげればいいのかな……かつおぶし、とかいう食材が好きだと聞いたけど
ちょっと差し出してみよう

あなたのおめめ、お月さまみたいな色をしていて綺麗だねぇ
猫さんもお月さまは好きかな?
私は好きだよ
色んな場所を旅してきたけど、見上げる月はどこでも綺麗に感じられたなぁ

もっと綺麗に月が見える場所を探さない?って感じで猫さんを誘ってみよう
可愛らしい子と一緒に歩くのは楽しいからね
のーんびり、のんびり行こうか


アイグレー・ブルー
【化術】というか、わたくしブラックタールですので動物には形を変えることが出来るであります!猫さんに変身してそっと白猫さんに近付いてみましょう。目の前で変身したらびっくりするでしょうか?猟兵だからこんな事も出来てしまうのです えへん

白猫殿、わたくしとご一緒に白いお月様の下ご一緒にお散歩しませんか?
月虹蝶々をひらひらと飛ばし一緒にゆっくり追いかけようと空地の外へお散歩という名の誘導をしたいと思います
白猫殿、お名前はありますか?わたくしはアイグレーと申します
どんな食べ物がお好きですか…!白猫殿のように真っ白な月ですね。にゃあにゃあ



●ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
「お月様は綺麗だし――」
 満月を眺めていた永芳さんが視線を下ろし、笑顔で空き地を見回した。
「――地上も賑やかだねぇ」
 うん。とっても賑やか。あたしたちが来た時から妖怪さんたちは楽しそうに騒いでいたけれど、今はもっと騒がしい。それというのも、インディゴさんがお酒を差し入れしたから。月見というより酒盛りみたいな感じになってるよ。
「ほらほら、あんたも呑みなって」
 マスクをつけたお姉さん(口裂け女かな?)がお酒の入った茶碗を永芳さんに押し付けるように渡した。
 そして、あたしのところにも近寄ってきたけれど――
「あんたはこっちのほうがいいかもね」
 ――さすがにお酒を勧めたりはせず、団子が山盛りのお皿を突き出してきた。
「サンキュー」
 と、あたしに先んじて、ウタさんが団子をひょいと摘んだ。
「ちょうど、腹が減ってたところなんだ。さっきの路地でいろいろ見ちまったからな」
「いろいろって、なあに? ご馳走やお菓子の幻とか?」
「うーん。まあ、そんな感じかな……」
 あたしが尋ねると、ウタさんは言葉を濁した。ちょっと疲れたような呆れたような顔をしている。お腹が空いて、なおかつ脱力しちゃうような幻だったのかな? どんなのか想像もつかないけど。
 口裂け女さんが離れていくと、永芳さんが空き地の塀をちらりと見た。
 団子を囓りつつ、あたしも同じ方向を見た。
 塀の上で白猫が香箱座りして、その周囲に幽世蝶が群がっている。
「蝶が集まってるということは、あの猫が――」
「――例の骸魂なんだろうね」
 あたしと永芳さんがやりとりしている間に別の猟兵さんたちが白猫に近付いていった。はしゃいでダッシュする奏さん、それを心配そうに追いかける瞬さん、その後ろを悠々と歩く響さんと飄々と歩くインディゴさん。
「わたくしたちも接触してみるであります」
 と、足下から声が聞こえてきた。
 視線を下げると、そこにはブラックタールのアイグレーさんがいた。さっきまでは人の形を取っていたのだけれど、今はスライムみたいになって地面に這いつくばっている。
 そのスライム状の体がぐにゃりぐにゃりと蠢いて――
「わたくし、少しばかり化術の心得がありますし、なによりもブラークタールですから、こういうことができるのでありますよ」
 ――あっという間に猫の形になっちゃった。

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 満月と団子と酒(言っとくけど、俺は呑んでないからな)で良い感じに盛り上がっているが、まだ一つだけ足りないものがある。
 そう、音楽だ。
 ……ってなわけで、俺は相棒『ワイルドウィンド』を爪弾くことにした。月夜の情緒が台無しにならないように(酒好きの妖怪たちのせいで既に台無しになってるような気がしないでもないけど)やや控え目にな。
 で、しばらく演奏していると――
「えっへん!」
 ――なにやら誇らしげ声が『ワイルドウィンド』の音色に被さってきた。
 見ると、アイグレーが猫に姿を変えて、ドヤ顔を決めている(猫ってのはドヤ顔が似合う生き物だよなぁ)。
 実際、それはドヤるに相応しい見事な変身だった。本物の猫よりもだいぶ大きいし、黒い体のそこかしこにキラキラした星が散っているが、だからといって不自然に見えるってことはない。なにせ、ここは不自然極まりない姿をした妖怪たちの世界なんだから。
「同じ猫型妖怪ならば、心のガードも下がるはずであります」
 綺羅星つきの黒猫アイグレーは白猫のほうにしゃなりしゃなりと歩き出した。後に続くは永芳とペイル。
 でも、俺はその場に留まった。白猫とのコミュニケーションを図るのは演奏を終えてからでも遅くはない。というか、この演奏も一つのコミュニケーションだ。控え目に爪弾いているとはいえ、『ワイルドウィンド』の音は白猫の耳にも届いているだろうし。

 二分ほど過ぎたところで演奏終了。
 アンコールをせがむ妖怪たちを『また後でな』となだめすかせて、俺は白猫のところに移動した。
「いまはひとり。でも、むかしはちがった。ごしゅじんさまがいたの」
 ペイル、アイグレー、永芳、インディゴ、真宮一家に囲まれて、猫はなにごとかを語っている。
「ごしゅじんさまが……いたの……」
 寂しそうで悲しそうな声。
 でも、すぐに白猫は機嫌を直した。
 尻尾の付け根のあたりを奏に撫でられたから。
「俺も撫でさせてもらっていいかな?」
「ちょっとだけよ」
 白猫が許可してくれたので、俺は頭を撫で、それから喉をかいてやった。
 温かくて……柔らかい。
 でも、こいつはオブリビオンなんだよな。

●アイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿す・f20814)
 ウタ殿に撫でられている白猫殿の顔を永芳殿が覗き込みました。
「あなたのおめめ、お月様みたいな色をしていて綺麗だねぇ」
「にぃあ?」
「あなた、お月様は好きかな?」
「うーん」
 永芳殿に問いかけられると、白猫殿は夜空を仰ぎました。そこに浮かぶ満月の存在に初めて気付いたかのように。
「私は好きだよ」
 そう言いながら、永芳殿もまた夜空を見上げました。
「いろんな場所を旅してきたけど、見上げる月はどこでも綺麗に感じられたなぁ」
「……あれって、きれいなの?」
 白猫殿は首を傾げています。月の美しさというのが理解できないのかもしれませんね。あるいは、別のこと(たとえば、『ごしゅじんさま』とやらのこと)が気になって、美しさを感じる余裕がないとか……。
 とはいえ、余裕が皆無というわけではないようです。
「お腹が空いてたら、おひとつどーぞ」
 と、ペイル殿がパンの欠片を差し出すと、体を乗り出してきましたから。
「そんなにおなかはすいてないけど……もらっとこうかな」
 ペイル殿の掌に乗ってるパンを白猫殿は鼻先でちょんちょんとつついた後、二口か三口でたいらげました。
「いい食べっぷりだな。誰かさんほどじゃねえけどよ」
 ウタさんが笑っています。『誰かさん』というのは、今頃はパンナコッタの後味を楽しんでいるであろう(それとも、新たなお菓子を食べている?)あのかたのことですね。
「私もおやつを持ってきたよ」
 ペイル殿に続いて、永芳殿が手を差し出しました。
 そこにこんもりと盛られているのは、琥珀色の木屑めいたもの。いい香りを漂わせています。
「大抵の猫はこのカツオブシとかいうのが好きだと聞いたんだけど……」
「そんなにすきでもないけど、きらいでもないよ」
 カツオブシなるものを貪る白猫殿。『きらいでもない』というクールな言葉に反して、猛烈な勢いです。頭の動きが激しいためか、それとも鼻息が荒かったのか、幾片かのカツオブシが永芳殿の手からこぼれ、風に舞い、猫の形をしているわたくしの口の中に入ってきました。
 思わず、もぐもぐ……うん。この味、嫌いじゃありません。

●江・永芳(歴遊日和・f32731)
 白猫はカツオブシとかいうものを気に入ってくれたみたい。用意してきた甲斐があったね。
 彼女(雌だよね?)が食事を終えると、インディゴや瞬や響がさりげなく移動を促し始めた。
「うん、そうだねぇ。インディゴが言うように、月がもっと綺麗に見える場所があるかもしれない」
 と、私はインディゴたちの言葉に乗っかった振りをして、白猫を散歩に誘った。
「そんな場所を一緒に探してみない?」
「もしかしたら、大きなお月様を独り占めできる場所もあるかもね」
 ペイルが楽しげにそうに言った。
 そして、すぐに訂正した。
「いえ、独り占めじゃなくて、十人くらい占めかなー?」
「その『十人くらい』の中にわたくしも入れてください」
 猫型アイグレーが後足で立ち上がり、爪を研ぐように前足で塀を軽く引っかきながら、上目遣いで白猫を見た。
「それに白猫殿も……ね?」
「うん」
 白猫は小さく頷くと、塀から飛び降り、アイグレーの横に着地した。
「いってみようかな」

 ぞろぞろと連れ立って夜道を行く。
 先頭にいるのは、淡い光を翅に映し出した蝶。白猫の居場所を教えてくれた幽世蝶じゃなくて、宝石でできたような奇妙かつ綺麗な蝶だよ。
 その後に続くのは大小二匹の猫。宝石製の蝶の主人であるアイグレーと、あいかわらず幽世蝶の群れに纏わりつかれている(でも、当人は気付いていない)白猫。
 そして、更に後ろにいるのが私たち。
「綺麗なお月様のおかげで良い曲ができそうだ」
 ウタがギターの弦を軽く鳴らした。なにも知らない人からすれば、ギターを抱えて暢気に歩いているようにしか見えないだろうね。でも、同じように暢気に歩いてる(ように見せかけている)私には判る。白猫の後ろ姿に向けた目を油断なく光らせていることが。
「なあ、猫よ。作曲のアドバイスとかしてくれないか」
「むり。おんがくのことはわからないから」
 冗談半分のウタの頼みを白猫は真面目に断った。
 それを聞いて、ペイルとくすりと笑う。でも、気を抜いているわけじゃないだろうね。大きな筆の背負い紐を握る拳にぎゅっと力を込めているから。
「わたくしはアイグレーと申すのですが――」
 白猫の横を歩くアイグレーが名乗った。
「――白猫殿にお名前はありますか?」
「なまえ?」
 白猫は聞き返した。
 あるいは自分自身に対して問いかけたのかも。
 そして、足を止めて暫し考え込んだ後(たぶん、忘れていた名前を思い出そうとしていたんじゃないかな)、呟くように答えた。
「『あられ』っていうの」
 あられ、か……。
 ごしゅじんさまが付けてくれた名前なのかねぇ。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『彷徨う白猫『あられ』』

POW   :    ずっといっしょに
【理想の世界に対象を閉じ込める肉球】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    あなたのいのちをちょうだい
対象への質問と共に、【対象の記憶】から【大事な人】を召喚する。満足な答えを得るまで、大事な人は対象を【命を奪い魂を誰かに与えられるようになるま】で攻撃する。
WIZ   :    このいのちをあげる
【死者を生前の姿で蘇生できる魂】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠香神乃・饗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●幕間
「『あられ』っていうの」
 白猫は歩みを止めて、自分の名を口にした。
 そして、再び歩き出す……かと思いきや、その場で体の向きを変え、猟兵たちを見た。
 途端に光が舞い散った。
 あられに群がっていた幽世蝶が一斉に飛び立ち、夜気と溶け合うように消え去ったのだ。
「ここなら――」
 あられは呟いた。
「――だれにもじゃまされないよね」
 猟兵たちは悟った。彼らや彼女らはあられを空き地から引き離そうとしていたが、あられもまた猟兵たちを空き地から引き離そうとしていたのだ。妖怪たちに狩りの邪魔されないように。
「いろいろとはなしてみて、わかったよ。あなたたちはやさしいひとだって……」
 狩りの獲物である『やさしいひと』たちにあられは語りかけた。
「やさしいいのちがあれば、ごしゅじんさまはいきかえるの。だから、あなたたちのいのちをもらうね。べつにいいでしょ?」
 悪意が微塵も含まれていない声であられはそう尋ねると、返事を聞く前に愛らしく鳴いてみせた。
「にぃあ!」
 嬉しそうに目を細めて。


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●JJからのお知らせ。

 第3章はあられとのバトルだ。
 あられは猟兵たちに憎しみや怒りを抱いているわけじゃないが、説得等の穏便な方法で戦闘を回避することはできないし、『やさしいいのちをうばえば、ごしゅじんさまがいきかえる』という根拠なき思い込みを正すこともできないぜ(だからといって説得禁止というわけじゃないけどな。無理だと判った上で語りかけるのもまたロールプレイ)。可哀想だが、倒すしかねえ。あられ(骸魂)に飲み込まれてる妖怪は戦闘終了時に解放されるだろうから、それがせめてもの救いか。
 プレイングの送信は17日(月曜日)の朝8:00以降にしてくんな。
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ペイル・ビビッド
あられの声色と笑顔に身震い
これは…悪気のない悪意ってものなんだろうか
ご主人さまの代わりになるなら
相手が誰でも命を奪うつもりだった、って…

真の姿を開放し
…この命はあげられないよ

オーラ防御と呪詛耐性で堪えつつ
平筆で武器受け
第六感と聞き耳であられの動きを見切りながら
早業で視界遮断之鶏餅弾を乱れ打ち
攻撃が当たって動きが止まったら
みんな、今のうちに!
あたしも思い切りジャンプからの
全力攻撃で応戦

…するけれど…

戦いのあとにこらえきらず号泣
戦っていると
なんだかやるせない気持ちにもなってきて
骸の海に送ることで
せめてあられが
ご主人さまのところに行けるなら…って…

ごめんね、そしておやすみなさい


木霊・ウタ
心情
あられへ
沢山の愛を注いだご主人なら
自分の為に
愛しい存在が他者の命を奪うなんてことしたら
きっと凄い悲しむ

あられを海へ還してやろう

戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

動きは素早いだろうから
刃を囮として
炎の剣風や
そこからの延焼でダメージを与えたり
周囲の地形に炎を這わせて
徐々に行動範囲を狭めて
一撃の機を狙う

肉球を剣で受け
例え効果を発揮しても
理想の世界とやらを
俺の内側から膨れ上がる炎で焼却

ルール破りのダメージも
その傷から獄炎を放つ

ご主人さまはお前の心の中にいる
思い出を胸に前へ進めばよかったのにな
紅蓮に抱かれて眠れ

紅蓮の光刃を一閃

事後
鎮魂曲を奏でる
海でご主人と再会できるぜ
きっと

取り込まれてた妖怪>
大変だったな


インディゴ・クロワッサン
(SPD/宿敵:アンリの首から上が黒く塗り潰されていて見えないver 希望)
「え、やだ!」(きっぱり)
僕の命はキミのご主人さんの為にある訳じゃないもん!
「へぇ…キミが僕の『大切なヒト』なんだ…」
って言うか、顔見えないじゃん!
「んもー…ちょっと期待してたのにー…」
こーなったら、真の姿で八つ当たりだー!
基本的に、攻撃は武器受け/見切りで防いで、カウンターでなぎ払ったり、足癖悪めのキック(踏みつけ)したりして…
隙が出来たら、UC:魔祓イノ太刀 で斬りつけちゃうぞー!
それじゃ、〆は吸血して生命力を…あれ?
「消えちゃってるよ…じゃ、仕方ないねー」
悪いけど、キミから血と生命力、吸収させてもらうねー(がぶ


真宮・響
【真宮家】で参加

そうか、あられって言うんだね。大事な人と別れたんだね。アタシも大事な夫と別れたから会いたい気持ちは凄く良く分かる。でも、人の命を奪ったって大事な人は帰ってこない。殴って分からせるか。

【目立たない】【忍び足】で敵の背後を取り、【オーラ防御】【見切り】【残像】で攻撃をかわすが、夫の姿が出ても惑わされないよ。夫の律はアタシと奏を命を捨ててまでも護った。他人の記憶を引き出しても実態がわからなければ意味がない。さあ、この子から離れな!!【気合い】【怪力】を込めた飛竜閃で攻撃する!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

あられさんですか。はい、独りぼっちは寂しいですし、大事な人に会いたいという気持ちは分かります。でも、他人の犠牲で生まれる命はむなしいものですよ。不本意ですが、その身体、本来の持ち主に返して貰いましょう。

【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】【受け流し】で防御を固めますが、お父さんが生きている世界に閉じ込められます。

でもお父さんがいないのが今だという事は良くわかりますので、【激痛耐性】も利用して歯を食いしばってダメージに耐え、【怪力】【二回攻撃】を併せた信念の拳で、今を精一杯生きるという決意を込めた一撃を。今を生きるものに、道を譲ってください!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

あられさん、僕も生みの両親を失ってますし、大事な人と会いたい気持ちも分かります。でも人の命を奪っても大事な人は帰ってこない。無用な殺戮を防ぐ為にも、貴方を倒します。

おそらく、僕の前には死んだ両親があらわれるはず。でもあくまで幻影。僕の今の家族は響母さんと奏です。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】と裂帛の束縛で幻影と敵をまとめて束縛。その歪んだ姿から、今解放します!!あられさん、来世で大事な人に会えるといいですね。【浄化】を込めた【衝撃波】で攻撃します。


江・永芳
あなた、あられって言うんだねぇ
良い名前だと思うよ
きっとご主人様に大切にされてきたんだよね
だからこそ……あなたを止めさせてもらうよ

ぷにぷにの肉球に触れられて見えるのは、蛇の鱗のない私の姿
ああ、本当にこうなればいいのになぁ
ただの人間の私、何も心配せずに済む家族、そしてその中にあなたもいるのかな?
でもね……こうはならないんだ

私はまだまだ旅をしたい
決して呪われているからってだけじゃない
広い世界を見て行きたいんだ
だから、ダメージ覚悟で約束を破る
あなたとは一緒にいられない

理想を打ち破れたら相手を驚かせられないかなぁ?
そのチャンスを狙い、痛みは歯を食いしばって耐えて拳を振るう
出来るだけ痛みはないよう、確実に


アイグレー・ブルー
とても、とても残念ではありますが、あられ殿の願いを叶える事が出来ないわたくしは『やさしいいのち』ではありません。……どうかご覚悟くださいね

サイキックによる空中浮遊。槍による下突きにて流星群の如く圧して参ります
相手の攻撃はわたくしの"髪"の盾で受けます。他の猟兵殿達もお守りしますよ……!
ちいさなあられ殿、体力も無尽蔵ではありません。隙を突き【星周塵のクーベルチュール】ですっ

護る、という事はただ盾になるだけではなく心にも寄り添う事もきっと大事で、とても難しい事であります……!まだまだ学ぶべき事は多いですね。



●真宮・響(赫灼の炎・f00434)
「やさしいいのちがあれば、ごしゅじんさまはいきかえるの。だから、あなたたちのいのちをもらうね。べつにいいでしょ?」
 あられはアタシたちにそう問いかけた……いえ、『問いかけた』とは言えないか。アタシたちに拒否されるとは思ってもいないだろうから。
「にぃあ!」
 ねだるように、媚びるように、そして、絶対に拒否することがない(と決めつけている)『やさしいいのち』の提供者たちに感謝を示すように、あられは鳴いた。
 とても愛らしいけど、どこか悲しい鳴き声。
 でも、アタシは絆されたりしないよ。きっと、他の皆もね。
「え!? やだ!」
 ほうら。インディゴが速攻で撥ねつけた。
「だって、僕の命はキミのご主人さんのためにあるわけじゃないもん!」
「にゃん?」
 インディゴの正当極まりない主張に対して、あられは戸惑いの声と表情を返した。やっぱり、拒否されることは想定外だったみたい。
「あられさん」
 と、瞬が語りかけた。
「大事な人と会いたいという気持ちは判ります。僕も実の両親を失っていますからね。でも、誰かの命を奪ったところで、あなたの大事な人である『ごしゅじんさま』とやらは帰ってきませんよ」
「なんで、かえってこないっていいきれるの? ごしゅじんさまのこと、なにもしらないくせに!」
 あられは初めて怒りを示し、頭を下げて尻をもたげた。獲物に飛びかかる姿勢。
 だけど、飛びかかる代わりに彼女は問いかけた。今度は『問いかけた』と言っていいと思う。
「それとも、しっているっていうの? じゃあ、ごしゅじんさまのなまえをいってみて!」
「……え?」
 それは問いかけであると同時にユーベルコードでもあったようだ。答えに詰まった瞬の前に二つの人影が現れ出たからね。
 そう、質問とともに攻撃的な存在を召喚するユーベルコード。
「兄さん!」
「大丈夫。大丈夫です……」
 駆け寄ろうとする響を制する瞬。
 直後、二つの人影が瞬に襲いかかった。

●インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)
 あられが召喚した二人組はヴァンパイア(だと思う)と人間(じゃないかなー)という取り合わせの美男美女。
 たぶん、どちらも瞬くんの肉親だね。顔立ちが似てるから。
 二人組は同時に瞬くんを攻撃した。男は剣で斬りかかり、女のほうは魔法の光線みたいなものを手から撃ち出して。
 でも、瞬くんは横っ飛びで斬撃も魔法も躱した。
 そして、着地と同時に反撃。両腕を振り上げ、袖口から茨だの枝だのをぞろぞろ伸ばし、あっという間に二人組を雁字搦めにした。いや、二人組だけじゃなくて、その後ろにいたあられも。
「……父さん、母さん」
 はい、ビンゴ! やっぱり、肉親だった。
「その歪んだ姿から……今、解放します!」
 周囲の空気がびりびりと震えた。瞬くんの叫びが激しかったから……というわけじゃなくて(激しかったのは事実だけどね)、衝撃波が走ったからだよ。瞬くんから二人組&あられに向かって。
 二人組は自分たちを拘束していた茨や枝もろとも砕け散った。まさに粉微塵。だけど、無数の破片が地面を汚すことはなかった。まだ宙を舞っているうちに消えちゃったから。
 一方、あられはダメージを受けたものの、粉微塵にはなっていない。細くて柔軟な体を捻ったりなんなりして、直撃を受ける前に茨の拘束から抜け出したんだ。
「ごしゅじんさまのすきなたべものをいってみて!」
 あられが再び質問(という形のユーベルコード)をぶつけてきた。今度の標的は僕らしい。もちろん、『ごしゅじんさま』の好物なんか知らないけど、なーんにも困らないよ。むしろ、好都合だ。瞬くんの前に彼の両親の幻が出現したように、僕の過去に関わる誰かが出現するかもしれないし。
「パンナコッタ!」
 適当に思いついた答えを僕は叫んだ。『不正解でありますように』と祈りながら。
 その祈りは天に通じたみたい。
 怪しげな人影が目の前に浮かび上がってきたんだから。
 さあ、ついに来たぞ!
 失われた記憶の一端が明かされる時が!

●神城・瞬(清光の月・f06558)
 父さんと母さんの姿をした敵を倒すことに躊躇いはありませんでした。僕の今の家族は響母さんと奏以外にありませんから。それに、その父さんと母さんが幻に過ぎないことも判っていましたから。
 とはいえ、躊躇いがなかったからといって、まったく動揺しなかったわけではありません。
 きっと、インディゴさんも同じでしょう。あられが召喚した人影――燕尾服を着た男性の幻を前にして、心が乱れているはず。声を失うほどに。
「えー!? 顔、見えないじゃん!」
 ……訂正します。声は失っていませんでした。
 インディゴさんが言うように、燕尾服を着た男性の顔は見えませんでした。黒塗りになっているのです。インディゴさんはそれが不満な様子。
「顔が判らないんじゃあ、記憶を知る手かがりにもならないよ。んもー、期待してたのにー」
「……」
 ぶつぶつこぼすインディゴさんと、無言で彼に迫っていく燕尾服姿の幻。どちらもマイペースですね。
 幻は流れるような動きで間合いを詰め、攻撃を仕掛けましたが――
「おっと!」
 ――インディゴさんは飛翔して回避しました。
『飛翔』というのは比喩ではありません。翼を広げて、本当に飛んだのです。念のために言っておくと、『翼』というのも比喩ではありません。二対の黒い翼がインディゴさんの背中に現れたのです。真の姿を解放したのでしょう。
「さっきの路地での幻聴とか、今回の黒塗りの顔とか……期待させるだけさせといて、ガッカリな結果に落とし込まないでよねー」
 八つ当たり的な文句を並べながら、インディゴさんは長い髪を翻して(先程まで髪は束ねていたのですが、翼を広げた時に解けたのです)急降下し、幻の顔面を蹴りつけました。いえ、『踏みつけた』という表現のほうが的確ですね。
「とても……とても残念ではありますが……」
 アイグレーさんの声。インディゴさんが幻を蹴りつけて/踏みつけている間に彼女もまた飛翔していました。念動力で自分の体(猫型から人型に戻っています)を浮遊させているのだと思われます。
「わたくしは『やさしいいのち』と呼ばれるに相応しい者ではありません。あられ殿の願いを叶えることはできませんので……」
「あたしもそうだよ」
 と、アイグレーさんに同調したのはペイルさんです。
「この命はあげられない!」

●木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)
 あられに向かって疾走するペイル。真の姿を解放したらしく、その体がみるみる大きくなっていく。といっても、巨大化したわけじゃねえぞ。ドワーフサイズから人間サイズに急成長したんだ。
 大人バージョンのペイルが地上から迫ると同時に、サイキックで浮遊しているアイグレーも――
「ご覚悟くださいね」
 ――キラキラした槍(透明の穂先の中に花が咲いているという綺麗な代物)を突き出して、空から迫っていた。
 だが、あられはゴカクゴするつもりはないらしい。全身の毛を逆立てて『ふみゃあ!』と甲高く鳴き、青白い人魂か漫画の吹き出しみたいな……よく判らないが、なにかフワフワしたものを放った。
 ユーベルコードの産物だろうから、フワフワしていてもノーダメージなんてことはないだろう。ペイルとアイグレーもそれは判っているらしく、素早く反応して受け流した。ペイルはトレードマークとも言える特大サイズの筆で、アイグレーはなんと髪の毛で。もちろん、本物の髪じゃない(ブラックタールだもんな)。だからこそ、盾として使えるわけだが。
 そのフワフワVS筆&髪という攻防の隙をつくようにして、奏と永芳があられに突進した。左右から挟み撃ち。二人とも素手だ。いや、奏のほうは籠手を装備しているな。
「あられって、良い名前だと思うよ。きっと、ご主人様に大切にされてきたんだろうね。だからこそ――」
 優しく語りかけながら、永芳がパンチを繰り出した。
「――あなたを止めさせてもらうよ」
「やだ! あられはとまらない! ごしゅじんさまがかえってくるまで!」
 駄々っ子のように叫びながら、あられは四本足のフットワークで永芳のパンチを避けた。永芳にタイミングを合わせて放たれた奏のパンチも。
 しかも、避けるだけでは終わらず、反撃した。残像を生み出すほどのスピードで前足を伸ばし、永芳の拳と奏の籠手にちょんちょんと触れたんだ。
 カウンターと呼ぶには緩すぎる反撃だけど、効果はあったらしい。
 永芳と奏の姿が消えちまったんだからな。

●真宮・奏(絢爛の星・f03210)
「奏!」
 兄さんの声が聞こえた。でも、姿は見えない。
「そこはあなたのりそうのせかい。ルールをまもらないと、きずついてしまうせかい」
 あられの声が聞こえた。でも、姿は見えない。
「ルールはかんたん。そのせかいから出ようとしないこと」
 兄さんとあられだけじゃなくて、他の人たちの姿も見えない。
 逆に兄さんたちには私が見えなくなったんじゃないかな? あられの言ったことが本当なら、私は『りそうのせかい』とやらに閉じこめられたんだろうね。
 私にとっての理想の世界……そんなものは考えるまでもない。父さんが生きている世界に決まってる。ここでずっと過ごしていれば、生きている父さんにまた会えるってことよね。
 だけど――
「うおぉーっ!」
 ――私は目の前の空間に拳を突き出した。
 手応えなし。
 にもかかわらず、全身に激痛が走った。
「うおぉぉぉーっ!」
 激痛に耐えて、もう一発。
 今度も手応えはなかった。
 今度も激痛が走った。
 でも、それだけじゃなかった。ガラスが割れるような音が響き、兄さんたちがまた視界に戻ってきたの。いえ、私が現実の世界に戻ってきたの。
「……にゃ!?」
 あられが目を剥いてる。思いもよらなかったんだろうね。『りそうのせかい』から出ることを望む人がいるなんて。
「にゃにゃにゃ!?」
 再び、あられが驚きの声を発した。
 目の前に男の人が倒れ込んできたから。
 顔が真っ黒に塗り潰された男の人。そう、インディゴさんの記憶から生み出された幻。
「さぁーて、締めは吸血で決めさせてもらうね」
 翼を生やしたインディゴさんが地面に降り立ち、幻の襟首を掴んで強引に立たせ、喉笛に噛みつこうとした。
 でも、牙が触れる寸前、幻は消えてしまった。倒れた時点で既に事切れていたのかもしれない。
「あー、消えちゃった。じゃあ、しかたないねー」
 インディゴさんはあられに向き直った。
「悪いけど、キミから血と生命力を吸収させてもらうよ」

●江・永芳(歴遊日和・f32731)
 皆の姿が消え、あられの声がどこか遠くから聞こえてきた。
「そこはあなたのりそうのせかい。ルールをまもらないと、きずついてしまうせかい」
 その言葉の真偽を確かめるため、私は袖をめくってみた。
 ……ふむ。どうやら、本当にここは『りそうのせかい』らしい。
 腕にびっしりと生えていた鱗がなくなっているから。一枚残らず。
 私は蛇の呪いから解放されたんだ。
 怪奇人間ではなく、普通の人間になったんだ。
 父さんや母さんももうなにも心配せずに済むね。

 ……ああ、これが本当のことならいいのになぁ。
 いいのになぁ……。

 でも、本当のことじゃない。
 本当のことじゃないんだ。
「あなたもこの世界にいるのかな?」
 どこかにいるかもしれないあられに声をかけながら、私は腰をゆっくりと屈めた。
「私はまだまだ旅をしたい。決して呪われているからってだけじゃないよ。広い世界を見て回りたいんだ。だから――」
 地面に拳を振り下ろした。おもいっきり。
「――あなたとは一緒にいられない」
 とても痛い。拳が潰れそう。それでも私は地面を殴りつけた。殴り続けた。この世界から抜け出さなかったら、拳よりも大事なものが潰れてしまうことが判っているから。
 そして、十何回目か(あるいは何十回目かも)の殴打で世界は正常に戻った。私も蛇人間に戻った。
「……にゃ!?」
 あられがびっくりしてる。お月様みたいな綺麗な目を見開いて。
 その目の前に、燕尾服を着た死体が倒れ込んできて――
「にゃにゃにゃ!?」
 ――二度、びっくり。こんな時でなかったら、可愛いって思えたかも。
 私は『こんな時』にするべきことをした。
 そう、びっくりしている隙をついて殴りかかったんだ。
「ふにゃあぁーっ!?」
 私の拳を小さな体に受けて、あられが吹き飛んだ。なるべく痛みを感じることのないように一撃で仕留めたかったんだけど……さすがに無理だったみたい。
「あられよぉ!」
 叫んだのはウタ。地面に落ちたあられに突き進んでいく。
「ご主人様ってのが、おまえに沢山の愛を注いでくれたような良い奴だったのなら……きっと、すごい悲しむぞ!」
 ウタが手にしている巨大な鉄塊剣は炎を帯びていた。たぶん、ブレイズキャリバーである彼の体から噴出した地獄の炎。
「愛を注いだ相手が他人様の命を奪おうとしているんだからな!」

●ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)
『だから、あなたたちのいのちをもらうね』
 あられにそう告げられた時、あたしは思わず身震いした。
『べつにいいでしょ?』
 自分の大切な人のため、誰かの命を平気で奪う――そんな悪気のない悪意が怖かったから。
 なので、怒りを剥き出しにしている今のあられを見て、ほんのちょっぴり安堵してたりするんだよね。あと、悲しかったりもする(そっちは『ほんのちょっぴり』じゃない)。
「ごしゅじんさまはかなしんだりしない!」
 あられがウタくんに飛びかかった。
「あられがよろこべば、ごしゅじんさまもよろこぶ! ごしゅじんさまがかえってきたら、あられはよろこぶ! だから、ごしゅじんさまもよろこぶ!」
 滅茶苦茶なサンダンロンポーを喚き散らしながら、ウタくんめがけて肉球パンチ。理想の世界とやらに送り込むユーベルコードだね。
 でも、ウタくんはどこにも送り込まれなかった。燃える大きな剣で肉球を受け止めたから。
「にぃあっ!?」
 肉球を火傷して、あられは飛び退った。
 すかさず、ウタくんは追撃。ダイナミックに剣を振り回し、刀身の炎を撒き散らしていく。
 あられはジグザクの軌道を描いて飛び跳ね、炎を次々と躱したけど――
「ふに゛ぁ!?」
 ――またもや悲鳴をあげることになった。
 背後に回り込んでいた猟兵にお尻の辺りを斬り裂かれたの。
 その猟兵は響さん。手にしているのは赤いフォースセイバー。
「瞬やインディゴと同様、アタシも幻を見たよ。アタシと奏を守ってるために命を落としたあの人の幻を……」
 一瞬、響さんは奏さんと目を交わした。『あの人』っていうのは奏さんのお父さん?
「でも、惑わされやしなかった。ユーベルコードで他人の記憶を引き出したところで――」
 フォースセイバーが何度も閃いた。赤い軌跡を刻んだのは刀身の残光だけじゃない。あられの血も混じってる。
「――実態が理解できなければ、意味はないんだよ」
「にゃあ!」
 あられが鳴いた。今度のそれは悲鳴じゃなくて、気合いの叫び。例のフワフワしたなにかが放たれたのがその証拠。
 だけど、フワフワは誰にも命中しなかった。
 空中にいるアイグレーさんが髪を伸ばして防いでくれたから。
「ありがと、アイグレー」
「礼には及びません。盾として誰かを守ることもまた――」
 髪に守られた一人である永芳さんの言葉に答えながら、アイグレーさんはギュッと体を縮めた。
「――騎士の務めであります」
 そして、一気に膨らませた。
 キラキラを帯びた黒い体から水滴みたいなものが飛び散った。何十個も。
 それらは複雑な軌道を描いてあられを包囲したかと思うと、一斉に襲いかかった。

●アイグレー・ブルー(星の煌めきを身に宿す・f20814)
 わたくしの体から分離した飛礫があられ殿を次々と打ち据えていきます。
「僕は盾よりも剣の役割のほうが性に合ってるな」
 飛び交う飛礫の間を縫うようにして、インディゴ殿があられ殿に近付き始めました。宙に浮かんでいる無数のサムライブレイド(わたくしと同じようにサイキックの類で操っているのでしょう)を伴って。
「いや、剣じゃなくて、牙かな? さっきの予告通り、吸血させてもらうねー」
 サムライブレイドの群れが飛礫の群れに加わり、ともにあられ殿を攻め立てました。
 それに乗じて、インディゴ殿は更に間合いを詰めていきます。口の端から覗く牙のなんと鋭いことか。
「――っ!」
 高すぎて聞き取り難い叫びを発して、あられ殿は飛び退りました。飛礫から、サムライブレイドから、そして、インディゴ殿から逃れるために。
 深傷を負っているとはいえ、猫特有の機敏さは完全に失われてはいません。でも、動きを見切るのは難しくありませんでした。ウタ殿が路上のあちこちに炎を撒いたため、行動範囲が狭められているからです。
「……」
 意図的に炎を散乱させたであろうウタ殿に永芳殿が目を向け、無言で頷きました。
 そして、あられ殿の動きを先読みして回り込み――
「ごめんよ!」
 ――拳を叩きつけました。
 その強烈な殴打(たぶん、ユーベルコードの『一撃必殺』ですね)で再び吹き飛ばされるあられ殿。
 すかさず、次の攻撃が来ました。ペイル殿が筆を一振りして放った塗料であります。
「うにゃ!?」
 粘つく塗料を頭から被り、あられ殿は地面に磔ならぬ貼り付けのような状態となりました。
「みんな! 今のうちに!」
 ペイル殿がジャンプし、着地ざまに筆をあられ殿めがけて振り下ろしました。
「瞬が言ってたようにね。誰かの命を奪っても――」
 響殿もフォースブレイドを振り下ろしたのであります。
「――大事な人は帰ってこないんだよ」
「独りぼっちは寂しいですよね、あられさん」
 奏殿が振り下ろしたのは鉄拳。
「でも、他人の犠牲で生まれる命なんて、むなしいものですよ!」
「むなしくてもかまわない! さびしいよりはマシだもん! にぃあー! にぃあー! にぃあぁぁぁーっ!」
 連続攻撃を受けて血塗れになりながら、あられ殿は鳴き声を……いえ、泣き声を響かせました。
 そこにインディゴ殿が覆い被さるようにして――
「……」
 ――無言で牙を突き立てたのであります。
 その様子を見ながら、瞬殿が呟きました。
「来世でご主人様に会えるといいですね」
 ええ、会えるといいですね。

 血と塗料にまみれたあられ殿の亡骸がドライアイスのように昇華し、小さな三毛猫の猫又が現れ出ました。あられ殿に呑み込まれていた妖怪でしょう。
「大変だったな」
 と、まだ意識を失ったままの三毛殿にウタ殿が声をかけました。
 そして、ギターを奏で始めたのであります。あられ殿への鎮魂歌でしょうか?
 その音色に紛れて、嗚咽の声が聞こえてきました。
 見ると、本来の姿に戻ったペイル殿がしくしくと泣いています。
 あられ殿に謝りながら。
「……ご、ごめんね……ごめんね……」
 わたくしはペイル殿の傍に寄り、そっと肩を抱きました。
 これも騎士の務め。
 誰かを守るとは、ただ盾になるだけではなく、心に寄り添うことでもありますから。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月21日
宿敵 『彷徨う白猫『あられ』』 を撃破!


挿絵イラスト