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桜ノ匣庭~極彩浄土

#サクラミラージュ #桜ノ匣庭

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#サクラミラージュ
#桜ノ匣庭


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●極彩浄土
「ああ、ああ、とても素敵。ほれぼれしてしまう、この傑作を、芸術をもっと皆様に――」
 その女は、懸想していた。その男にではなく、男の書く世界に。
 それは女が編集者であったから。彼女は、その芸術をもっと広く、沢山の人々に届けたいと思っていた。
 そして先生を支えてくれる皆様を大事にしなければ、お礼をしなければと。
 先生のことが大好きな皆様に喜んでいただきたい。
 お礼――ああ、そうだ。
 先生のサイン会をしましょう。
 けれど、ただ普通に対面するサイン会ではいけない。
 だからここはお願いして先生の手を借りなければ。最新作の執筆――それを行っている先生にもうひとつ書いてほしい、なんてお願いするのはおこがましいのかもしれないけれども。
 女は、その先生へと自分の考えを告げた。
 先生は表に顔をあまり出さないミステリアスな作家。けれど、やはり熱心な者達はいるもの――そんな方々を大切にしたいのだと。
「――というような感じで先生、素敵な館をご用意いたします。そこでサイン会をしてくださいませんか?」
「サイン会? いいよ~」
 面白そうだし~と、ちゃらい小説家は笑って軽く頷く。
「ところで、先生そちらは?」
 もしかして新作、と女は瞳輝かせる。小説家はそうなんだけどねと言いながら、原稿用紙を横に寄せた。それを見せるつもりはない様子だし、女もまた興味はあるが深くは問わない。それはきっと出来上がったら、最初の読者になれるはずだから。
「あとは結末だけなんだけどな~」
 そこだけがまだ落とし込めない。
 気分転換にもう一本書いたら、書けるかもねといいながら綴り始めた小説は遊びを含めたので僕が書くいつものとは違うと、彼は笑う。
 そのタイトルは――極彩浄土と、記された。

●予知
 サイン会がある、と終夜・嵐吾(灰青・f05366)は紡いだ。
 それはサクラミラージュにいるとある影朧のだ。
「影朧の名は、名というかペンネームか。会ったことあるものもおるじゃろうけど」
 櫻居・四狼という名前なのだと嵐吾はその名を告げる。
 何度か、姿を見せ――けれど転生は未だ。その彼がまた現れるので、対処してほしいのだと嵐吾は言う。
「んで、サイン会の場所は、極彩の館という所なんじゃ」
 そこは奇矯な建築家が手がけた、極彩色に彩られた華麗な建物。
 大小さまざまな部屋が連なるその屋敷は、利便性などはまったくない。この部屋はこの花で彩るというように一部屋ごとに強い意志を感じさせるもの。
 その中のいくつかの部屋はサロンのようになっており、茶などを楽しむこともできるのだとか。
 そして、そこで作家とのサイン会が行われているが――彼は、座って待っているわけではない。
 どうやら、事前に参加者に配布される短編――それにどこにいるかのヒントが隠されているようなのだ。
 が、そのヒントの場所にずっといるわけでもなく。何か所かを気侭にめぐっているようで。
「まぁ要するに、その短編を読みどこにおるか予想し、足を運んだ先に居ればサインをしてくれる、という事らしいんじゃよ」
 だが、そこで出会ったとしても、戦闘を仕掛けるわけにはいかない。他にも、この催しを楽しんでいる一般人はいるのだ。
「なのでこの時間は、何処にいるのかを探りつつ。出会ったとしてもただの一ファンとしてふるまうのが良かろうよ」
 サイン会が終われば影朧はまたどこかに隠れてしまうだろうが、追うことも可能となるだろう。
 あとは、いつもの如く猟兵として――やれることをするだけ。
「この影朧は――いや、まぁええか。皆よろしく頼む」
 そう言って、嵐吾は手の内のグリモアを輝かせる。
 そしてサクラミラージュへと皆をいざなうのだった。


志羽
 御目通しありがとうございます、志羽です。
 詳細な受付期間については【マスターページ】【シナリオ上部のタグ】で案内しますのでお手数ですが確認お願いいたします。

●シナリオについて
 第一章:日常『極彩の館』
 第二章:冒険『眠らない街』
 第三章:ボス戦『或る作家の残影』
 以上の流れとなっております。

●一章について
 こちらは問題ないプレイングはすべて採用します。
 サイン会といっても座って待っていてはくれません。別にサインをもらいにいかなくても大丈夫です。
 この極彩の館を巡って遊ぶ、というお散歩気分で大丈夫です。
 館は、季節の花々ももちろんありますが、花の名前を冠した部屋がたくさんあります。
 大きな部屋も小さな部屋もいろいろと。奇抜なデザインの部屋もあったりとそういった部屋を楽しむこともでき。また、いくつかの場所は茶とお菓子が楽しめるようになっています。
 作家は極彩の館をうろうろしています。どの辺にいるかは事前配布の短編にヒントがあるとか。なお、他にも一般の方がいらっしゃいますのでここで出会っても戦闘はできません。
 すべて終わってから、となります。
 出会えたなら――しばしお喋りには興じてくれるでしょう。

●二章について
 影朧はそこで遊んでいます。
 彼のいるところまでだれかひとりがたどり着けば、全員最終的に見えることとなります。
 詳しくは冒頭にて。

●お願い
 複数人数でのご参加の場合は、ご一緒する方がわかるように互いに【ID】は【チームタグ】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。(続けて二章、三章参加の場合、IDについては必要ありません)
 ご協力よろしくお願いします。

 以上です。
 ご参加お待ちしております。
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第1章 日常 『極彩の館』

POW   :    細かいことは気にせず力いっぱい楽しむ。

SPD   :    その場に馴染めるよう気を使いつつ楽しむ。

WIZ   :    何かハイカラな楽しみ方を思いついてみる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 極彩色の館――その館は大小さまざまな部屋が連なる館だ。
 くるりと、中庭を囲むような作り。それぞれの部屋には花の名前が冠されていた。
 そして部屋の丁度も、その花のもので統一される。
 たとえば桜の部屋であれば――天井を覆い尽くす桜の花。壁から連なるそれは見事なものだ。テーブルや椅子などは桜の花が各所にあしらわれている。
 ほかにも、部屋の中に螺旋階段があり一階と二階がつながっている藤の部屋や、可愛らしい調度の並ぶたんぽぽの部屋。
 アザレアの部屋。アマリリスの部屋。松、竹、梅の部屋は連なっていたり。桔梗、百合、薔薇。他にもさまざまな花の部屋がある。
 己の好きな花の部屋に向かうのも、気ままにいろいろ巡ってみるのも楽しいだろう。
 いくつかの部屋では、そこで茶を楽しむこともできるようだ。
 桜と薔薇、それから楓の部屋では茶と甘いものが楽しめる準備があるようだ。
 そしてその館の中を――小説家の先生は巡っている。
 さぁて次はどの部屋にいこうかなぁと笑いながら。時には好みの御嬢さんを口説いたりもするかもしれない。
 入口では彼の本『桜ノ匣庭』も売っている。それを手に、館の中で先生と出会えばその本にサインをしてくれるだろう。そして少しの、おしゃべりも。
 彼は――楽しい事、おもしろい事が大好きなのだから。

====================

『極彩浄土』

 眼を開いたならば、そこは知らぬ世界。最
後にみた光景とは違うものであった。
 男は思ふ。ここは何処なのだろうかと、後
を振り返るが己が辿った道はない。
 突然、この場所に放り出されたと云う事は
確かだ。そして、知る場所でもなかった。
 見たことも無い色彩が、いやこの色は、桜
の色は知っている。それは己が生きる世界の
いろなのだから。
 そのいろ故に、ここは己の生きる世界の下
であるのだろうと、男はふんわり思ふのだ。
 男は、それから異変に気付いた。己の手は
しわしわにしわがれていたはず。しかし、す
っきりとした骨ばった手である。
 この手は見覚えがある。そう、己のものだ。
己の若いころの手である。しかし貧相であり、
なんとも物悲しい。だが、老け衰えた手であ
るよりは良い。
 異変は他にもある。不健康であった肌はあ
たたかみを帯び、誰かが顔色だけを見て、ね
くらであるといったがそう云えぬ血色だ。も
う誰が云うたか覚えてはいない。だがそのね
くらという言葉は心にささったままである。
 しかし不思議なものだ。
 齢八十を超えた爺であったはず。しかしぼ
くとつとしていたあの頃の姿であるのだ。く
るしみに喘ぎ、みすぼらしい姿であるよりは、
まし。
 己の足で、歩ける。若い時分にあって、そ
れは当たり前であった。男は、このままどこ
かへ行こうと一歩踏み出した。
 長い間、寝台に伏していたからこのように
歩くことができるという事は、きっと己はい
きてはいない。死んだのだろう。
 ならばここは極楽か、地獄か。
 それともその道行か。
 男はまあいいか、と思うのだ。
 見たことも無い花々が咲き誇る。己が知る
は窓辺からみた散っていく桜。
 そして萎れ、枯れていく、一輪挿しの花。

(中略)

「ふふ、ふふふ」
 鈴を転がすような、笑い声であった。
 誰だ、どこからと見回せば、樹上にたおや
かな、女がいた。しかしそれは――化生。
 その腕は、極彩色の翼。きらきら輝くその
ただならぬいろ。
 私はその色に酩酊させられる心地だ。なん
らかの、誘惑か。それとも。
「お迎えかい?」
 私の問いに女は笑い声を返すだけである。
おだやかな表情で、私を見つめるその瞳は、
うつくしかった。
 その瞳に引かれるように私は近づく。なあ
君、と声向ければ笑い声はぴたりと、とまっ
た。
 化生の瞳が私を射抜いたその瞬間からちり
ちりと、背筋を泡立つものが駆け抜ける。
 それは捕食者の視線。
 喰われる――私はあわてて踵を返す。
 後ろを振り返ってはいけないと思った。私
はなりふり構わずといった体。
 逃げなければ。しかし羽ばたきの音が私を
おいかけてくる。
 付かず離れず追いかけてくる。私の意識は
もう突きそうでまた焦る。そして呼吸はくる
しい。
 くるしい、くるしい、くるしい。
 それだけに意識は塗り潰されるが、おもし
ろがっているような声色に追い立てられる。
 こんなくるしさはもういらぬと私は思う。
いらぬ、とそう思うのは――嘗て。
 嘗て、似たような苦しさがあったからだ。
 ああ、そうだ。
 それは私が死ぬときのもの。

(中略)

 やがて私は終わりを迎える。ただ独り、極
彩の羽ばたき持つ女たちが笑う浄土にて。

(了)

====================
夜鳥・藍
POW
桜ノ匣庭は知ってます。作者の櫻居・四狼という方も。
ただ名前だけ知っているというもので、書籍の方は読んだことはないのです。
配られた短編も読んだけど、居所のヒントはさっぱり。よくある文章の頭の文字だけ読むのかと思ったけど違うみたい。
ただ非常に、趣深いとは思うわ。

花もあまり詳しくないけど部屋巡りでも。桜はともかく、季節の花はよく見かける物ぐらいの知識。
今日はこの間お仕事で見た秋桜のお部屋がいいかな。
あの後調べたら、コスモスという呼び名は宇宙の事のらしく。
ピンクの花を秋の桜とみた人、星がそろう宇宙と見た人。そんな風に感性によって変わるのねと感心したわ。
そうそう、桜のお部屋も見比べるのも楽しそう。



 館の中へと、夜鳥・藍(占い師・f32891)も足を踏み入れる。
 此処で行われているサイン会――『桜ノ匣庭』という小説を藍走っていた。
 作者の櫻居・四狼という名を。
 しかし、ただその小説の名と作者の名を知っているというもので、小説は読んだことはない。
 藍は手元の小説に目を落とす。
 貰った短編も読んだ。この中に作者たる彼の居場所が書かれているという。
 藍はそれを再度読んでみるけれど――居場所のヒントはさっぱり。「よくある文章の頭の文字だけ読むのかと思ったけど違うみたい」
 文章の頭の文字を読んでみるけれど、文章にはならない。
 本当にヒントが隠れているのかと思う。
 けれど――
「ただ非常に、趣深いとは思うわ」
 櫻居・四狼はどんな人なのでしょうと思いながら、館の中を歩む藍。
 館はどこもかしこも、花々の誂えだ。
 壁紙であったり、窓や扉などの装丁。様々なものに花のモチーフが使われている。
 花もあまり詳しくないけれど、藍は巡る。
 桜はともかく、季節の花はよく見かける物ぐらいの知識だ。
 そして足を向ける先――『秋桜の部屋』と書かれた扉がある。
 秋桜はこの間仕事で見た花だ。
 藍の足は自然とそちらに向く。
 仕事の後調べたら秋桜――コスモスという呼び名は宇宙の事だという。
 ピンクの花を秋の桜とみた人、星がそろう宇宙と見た人。
 そんな風に感性によって変わるのねと藍は感心したのだ。
 秋桜の部屋は可愛らしい雰囲気だった。柔らかな花の色のような壁紙。
 テーブルとソファも格式高く重厚な、という者ではなくどこか穏やかで可愛らしい雰囲気。
 団欒するために誂えられた部屋のようだ。
「そうそう、桜のお部屋も見比べるのも楽しそう」
 秋桜と桜は違う花。だからこの部屋と違いがあるだろう。
 それがどんな違いか探すのを楽しみに、藍はまた次の部屋へと向かう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

永倉・祝
【黒椿】

櫻居四狼。彼の作品はサイン会の前に全て読んでみましたが。確かに素晴らしい文章を書く作家だと言うのは間違いないでしょう。
ただ、まぁ、作家といえば破天荒な方も多いですが…。

ふふ、極彩の館に秋人くんが選んでくださった黒のデートコーデはよく映えますね。
さて、件の作家さんには最終的には会えると思いますのでまずは君との時間を過ごしましょう。

いろいろな花の部屋を巡り巡った部屋の花を休息しながら折り紙で折る事に。
はぁ…秋人くんは器用ですね。僕はどうも不器用で上手く折れません。(こうするんですよと触れる指に照れながら)出来ました…!
(折ったのは椿の花)
はい、椿は大事な思い出ですから


鈴白・秋人
【黒椿】
あら?
では祝さんも破天荒なのかしら?ふふ。
(自身と揃いの黒のドレスを彼女が着ている姿に心で歓喜しながら)
そうですわね。
わたくしは、破天荒な作家よりも祝さんに興味がありますもの。
さぁさ、参りましょう?
(クラッチバッグに折り紙と安全ピンを忍ばせ)
2人の時間をゆっくり楽しむ為にお茶をしながら各部屋モチーフの花の折り紙ブローチを作ろうと

あら?…ふふ(可愛らしいと思いながら)
ここは、こうやって折るんですのよ?
(まぁまぁ、頬をこんなに染めて…)
椿はわたくし達にとって大切な思い出の花ですものね。
こうしてまた、新しい思い出を沢山作って参りましょう?
これからも、ずぅっと。
(綺麗な黒髪のひと房に口付けし)



 櫻居四狼――彼の書いた小説を、サイン会の前に永倉・祝(多重人格者の文豪・f22940)は全て読んでみた。
 確かに素晴らしい文章を書く作家だと言うのは間違いないでしょうと祝は思う。
 しかし、作家というものは――
「ただ、まぁ、作家といえば破天荒な方も多いですが……」
 果たしてこの方は、と思う。けれどそう思う祝もまた、文豪であった。
 その言葉を耳にして、鈴白・秋人(とうの経ったオトコの娘・f24103)は、あら? と首傾げた。
「では祝さんも破天荒なのかしら? ふふ」
 秋人は柔らかに笑って、祝の姿を見詰めていた。
 祝と秋人は揃いの黒のドレスを着ていた。
 揃いのドレスを彼女が来ている――それは秋人の心を歓喜で満たす。
 祝はその喜びを知ってか、知らずか。祝は微笑みを秋人へと向ける。
「ふふ、極彩の館に秋人くんが選んでくださった黒のデートコーデはよく映えますね」
 ひらりと裾を翻す。
 沢山のいろが溢れるこの館の中で黒は映える。
 回って、ふわりと裾が閃くのは――花のようにも見えた。
「さて、件の作家さんには最終的には会えると思いますのでまずは君との時間を過ごしましょう」
 祝の言葉に、秋人はそうですわねと微笑んで頷いた。
「わたくしは、破天荒な作家よりも祝さんに興味がありますもの」
 さぁさ、参りましょう? と秋人はクラッチバックを手に。その中には折り紙と安全ピンを忍ばせていた。
 二人の時間をゆっくり楽しむ。お茶をしながらそれぞれの部屋のモチーフの折り紙ブローチを作ろうと思って。
 様々な部屋を巡っていく。
 薔薇の部屋はいくつかあった。色鮮やかに数色使った部屋もあれば、一色だけで描かれた部屋も。
 同じ種類の花でも違いのある部屋は巡るだけで楽しい。
 祝も、こんな館での話をなんて少し考えてみたり。
 いろいろな部屋を巡って――しばし休憩。
 茶と菓子をふるまってくれる部屋にて一息だ。二人が案内された場所は窓から柔らかに光が降り注ぐ席だった。
 秋人は折り紙などを取り出して、祝にも進める。
 これで見た花を作りましょうと。
「はぁ……秋人くんは器用ですね。僕はどうも不器用で上手く折れません」
 しかし祝は手の中の折り紙を見詰めて、ため息一つ。
「あら? ……ふふ」
 その姿を可愛らしいと思いながら、明人は手を伸ばした。
「ここは、こうやって折るんですのよ?」
 そうっと、秋人の指先がふれる。その指に導かれて、祝も折り紙を折りつつその頬は照れて赤く染まっていた。
(「まぁまぁ、頬をこんなに染めて……」)
 そのいろを秋人は見詰め、小さく笑み零す。
 そして、ぱっと祝の声が華やいだ。
「出来ました……!」
 祝の手に花開いたのは――椿の花だ。
 その花に秋人は瞳細める。
「椿はわたくし達にとって大切な思い出の花ですものね」
「はい、椿は大事な思い出ですから」
 その花を、秋人は祝の手ごと、己の手で包み込む。
「こうしてまた、新しい思い出を沢山作って参りましょう?」
 これからも、ずぅっと――そう続けて、その手のひとつは祝の黒髪へと伸ばされる。
 綺麗な黒髪ひと房。その髪に秋人が口付けると祝は瞬いて、その頬の色をまた、赤くさせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
【羽花獣】
花がいっぱいの部屋で楽しそうですよね!
本も読みましたが…わぁ、澪君すごいですね!
なるほどね…(分かってない顔)

では、その順番で回ってみましょう
どのお部屋も見応えがありそうです!
『極彩浄土』というタイトルですし、蓮と輪廻転生の流れもあながちという気はしますね
皆さん冴えてる…と思いつつ推理は諦め全力で部屋を楽しむ
花と部屋の組み合わせ、色々と内装も凝られていて素敵ですね

綺麗なお花と美味しいお菓子!
奢りとはヴォルフガングさん太っ腹!
せっかくですから皆で食べれるやつがいいですねぇ

作家先生に会えたならせっかくなのでサインはもらってみたいミーハー心
サインなんてもらったことがなかったのでつい…


栗花落・澪
【羽花獣】
短編の改行位置から解読を
見落としもあるかもしれないけど

最後は桜の下。蓮、ダリア、アネモネ。僕はそこにいる。
語らおう君たちはおもしろい

桜の下は…死体……
天竺牡丹に愛の象徴…?
んー……もしかしたら一部屋に絞ることも出来るのかもだけど
とりあえず桜を最後にして順番に部屋まわってみようか
折角だから各部屋の雰囲気も楽しみたいよね

花は好き
咲いている花も装飾も心から楽しむよ
折角だし【ハレン】も遊ばせる
精霊仲間もいるかもだしね
あ、この調度品可愛い…模造品でもいいから売ってないかな…

えっ、甘味?
わーいおじいちゃん大好きー♪(ちょろりん

サインは喜んで貰っておきます
デザインに人柄出るから見るの好きなんだよね


木常野・都月
【羽花獣】

サイン会?
有名な人から名前を書いてもらう?
そうか、人の文化だな。
まずは短編?読んでみるか。

……。
文字慣れしてない俺には、難しい漢字が多い。
先輩達は分かりました?
(リンネ…先輩達、難しい話してる)
お勉強します!

先輩達について行こう。
通りすがりに花の精霊様達に挨拶しながら。
チィも出ておいで。
ハレンさん、こんにちは!

もし先生に出会えたら、俺もサイン貰おうかな。
帰ったら飾るか!

後、こっそりバレないように。
可能なら先生…影朧の匂いを覚えておこう。
風の精霊様、こそっとそよ風で。よろしくお願いします。
覚えておけば何かの役に立つかもしれない。

ヴォルフガングさん、ありがとうございます!
いただきまーす!


ヴォルフガング・ディーツェ
【羽花獣】
美しき極彩色の館に、謎めくミステリー
此れは実に興味深いねえ…謎解きは任せた!

成程「どの部屋か」ではなくて「どう回るか」が重要なんだ
千夜子のリアクションが完全に分かんなかった同類で笑いを噛み殺しつつ、都月の漢字は一緒に調べよう。お互い勉強だね
ああ、順に回って行こう。花も甘味も楽しみたいね!
しかし…最初が蓮なのは意味深だね、輪廻転生の象徴花か

澪に倣って部屋をきょろきょろ
調度品って見るの楽しいよね。時代で全然技法や見た目も違うし
お土産コーナーも探していこ(微笑まし気に頷いて)

甘味は当然全力確保
どんなのがあるかな、楽しみだ
確か3人とも甘味大丈夫だったね?
おじーちゃんが奢っちゃうぞう!(きり)



「花がいっぱいの部屋で楽しそうですよね!」
 薄荷・千夜子(陽花・f17474)は玄関だけでもすごい、とくるりと回る。
 花で彩られる極彩色の館は、なかなか奇抜なつくりの様だ。
 ここでサイン会をするという――サイン会。
 サイン会? と木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は首を傾げた。
「有名な人から名前を書いてもらう?」
 なるほど、それはと都月は言葉続ける。
「そうか、人の文化だな。まずは短編? 読んでみるか」
 と、読み始めたそれは。
「……」
 文字慣れしていない俺には、難しい漢字が多い、と都月はそっとその短編を伏せた。
「先輩達は分かりました?」
 そう言って、都月は皆へ視線を。
「美しき極彩色の館に、謎めくミステリー。此れは実に興味深いねえ……」
 と、知的な眼鏡をかけていたらきりっと決まっている表情でヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は紡ぐ。
 短編を読むのも様になっており――しかし。
「……謎解きは任せた!」
 任せた――謎解きを託すのは、あるひとり。
 貰った短編と栗花落・澪(泡沫の花・f03165)はにらめっこしていた。
 そして気付いたのだ。改行位置――見落としもあるかもしれないけれど。

 最後は桜の下。蓮、ダリア、アネモネ。僕はそこにいる。
 語らおう君たちはおもしろい

 そう、綴られていることを。
「桜の下は……死体……天竺牡丹に愛の象徴……?」
 と、うーんと唸る澪。まだ何かありそうな気もするけど、そういうものもない? と首をひねる。
「んー……もしかしたら一部屋に絞ることも出来るのかもだけど」
 でもそれらしきものは、今のところ見つかっていない。
「本も読みましたが……わぁ、澪君すごいですね!」
 澪の言葉に、分かってない顔でなるほどね……と頷く千夜子。謎解きはおまかせの気持ちだ。
 その表情は完全に分かんなかった同類で、ヴォルフガングは笑いを噛み殺しつつ。
「成程『どの部屋か』ではなくて『どう回るか』が重要なんだ」
 きり、とわかった顔をするヴォルフガング。
「とりあえず桜を最後にして順番に部屋まわってみようか」
 折角だから各部屋の雰囲気も楽しみたいよね、と澪は言う。
「では、その順番で回ってみましょう。どのお部屋も見応えがありそうです!」
「ああ、順に回って行こう。花も甘味も楽しみたいね!」
 甘味も忘れちゃいけない今回の楽しみのひとつ、とヴォルフガング。
 千夜子はそう言えばと零す。
 もらった短編のタイトルは『極彩浄土』という。
「しかし……最初が蓮なのは意味深だね、輪廻転生の象徴花か」
「蓮と輪廻転生の流れもあながちという気はしますね」
 千夜子はヴォルフガングへと頷いて、都月はぴんと耳を立てる。
(「リンネ……先輩達、難しい話してる」)
 その表情に、ヴォルフガングは都月君と声かけて。
「漢字は一緒に調べよう。お互い勉強だね」
 お勉強します! とぐっと拳握って難しい漢字が並ぶ本も、そのうち読めるようになりたいと紡ぐ。
 と、皆の言葉を聞きながら、皆さん冴えてる……と思いつつ推理をあきらめていく千夜子。
 最初に向かうのは、蓮の部屋。
 蓮の部屋は――足元に視線が向く。
 足元に広がる蓮の柄の絨毯と、水音。この部屋は、川が流れていた。
 その先に大きな池があり、蓮池となっていた。
「調度品って見るの楽しいよね。時代で全然技法や見た目も違うし」
 澪はそうっと、暖炉を撫でてみる。その姿を見てヴォルフガングも暖炉の傍に。
 それもまた、蓮の花が描かれているのだ。
「花と部屋の組み合わせ、色々と内装も凝られていて素敵ですね」
 お部屋に蓮池なんて、すごいと千夜子は傍にしゃがみこむ。
 澪は池がある、と瞬く。
 花は好きだ。咲いている花も、こうして装飾として扱われている花も。
 折角だし、と金蓮花の精霊を呼び出せばふわり漂って共に楽しんでいる様子。
「精霊仲間もいるかもだしね」
 その言葉に、チィも出ておいでと都月は月の精霊の子を召喚する。
「ハレンさん、こんにちは!」
 チィに挨拶しにきたハレンに都月も笑って。
 そういえば、と都月はあたりを見回す。
 もし先生に出会えたら、俺もサイン貰おうかなと思ったがまだ姿は見えない。
 そしてサインを貰ったら――帰ったら飾るか! と思うのだ。
 そしてこの蓮の部屋、甘味と茶をふるまってくれるようだ。
 どんなのがあるかな、楽しみだとヴォルフガングは部屋についていた給仕へとお願いを。
 どうぞこちらへ、と蓮池近くの席を案内される。
「確か3人とも甘味大丈夫だったね? おじーちゃんが奢っちゃうぞう!」
 きり、といくらでもご馳走しようとヴォルフガングは胸張って。
「えっ、甘味?」
 わーいおじいちゃん大好きー♪ と澪はちょろりんと、ぱっとそちらへ。
「奢りとはヴォルフガングさん太っ腹!」
 綺麗なお花と美味しいお菓子! と千夜子も大賛成。
 せっかくですから皆で食べれるやつがいいですねぇ、とリクエストも。
「ヴォルフガングさん、ありがとうございます! いただきまーす!」
 都月も、喜んでとわくわく。甘いものにお茶、それを楽しまないなんて選択はない。
 茶は、この部屋に倣って蓮茶だ。蓮の香りを茶葉につけているのだが、多くの蓮を使って作れるのは少しという手間のかかる茶。水色はオレンジですっきりとした味わいだ。
 そしてお菓子は月餅。中には蓮の実が入っているという。
 そのほかにもクッキーなど、蓮を模したものが色々と並んでいた。
 お菓子と茶の並ぶテーブル。その上にあるものに澪の眼は止まる。
「あ、この調度品可愛い……模造品でもいいから売ってないかな……」
 それは蓮の卓上ランプだ。
 花開く前の大きなつぼみの中でぽうと柔らかなひかりが溢れている。
 けれどそれは、とても大きくて。
「お土産コーナーも探していこ」
 もしかしたら小さいのもあるかもとこれいいなぁと見詰める姿を微笑まし気に頷いてヴォルフガングが紡いだ矢先。
「可愛い子ちゃんたちはそれが気になるの?」
 声が、かかる。
 わ、と澪が見上げるとそれいいよねーなんて笑う先生が――櫻居・四狼がいた。彼は持っている短編に気付いて嬉しそうに。
「あっ、僕のファン?」
 じゃあサインしてあげる~と軽薄に笑ってほらほら、と先生はどこにする? と言う。
「あっ、じゃあここに!」
 澪が差し出したのは短編。いいよ~とさらさらっとそこに文字が躍る。
「これが……ありがとうございます」
 デザインに人柄出るから見るの好きなんだよね、と澪はそのサインを見る。にこにこ笑顔マーク付きとはなかなかお茶目な性分のようだ。
「サインください!」
 と、千夜子もお願いを。もちろんもちろん、可愛い子にはいくらでもしちゃうよ~と言って先生は鼻歌交じりにサインをしていく。これがサイン、と受け取って、千夜子はほとりと零す。
「初めてのサイン……」
「えっ、僕が初めて? 可愛い子ちゃんの初めてありがと~!」
「俺も初めて」
「そうなんだ? 君の初めてもありがと~!」
 都月にも先生はさらりとサインを。君にもあげるね~、とヴォルフガングにサインするもの頂戴と先生は紡ぐ。
 その間にすん、と都月は鼻を鳴らす。こっそり、バレないように。
 先生の――影朧の匂いを覚えておこうと。
「風の精霊様、こそっとそよ風で。よろしくお願いします」
 小声で都月は精霊へとお願いを。覚えておけば何かの役にも立つかもしれないから。
 そしてふわりと、そよ風が吹く。
「あ、お茶の邪魔しちゃったね。蓮も良いよね~」
 なんて言ってると、先生がいらっしゃったわ! とこの部屋を訪れた娘たちが小声できゃあきゃあと。
 そちらにひらりと手を振って、先生はゆっくり楽しんでねと言う。
「僕はしばらくうろうろしてるから、またどこかで会うかもしれないけど」
 じゃあね~と彼は手を振ってファンの下へと向かう。彼女たちにもサインを、そしてしばしのおしゃべりをということらしい。
 気侭に、自由に。今はまだ、あの先生と――影朧と対する時ではない。
 今は、この蓮茶と月餅を楽しむ時間。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

樹・さらさ
天瀬君(f24482)と。

サイン会か。
終夜君が言いかけていた言葉が少し気になるが、とりあえずは本を購入してサインを頂いてくるとしようか。
そのためには居場所を探さねばならないと。
亡くなった作家のサイン、か。貰ったとして真新しいそれを他人はどう思うのだろう。

何となく色々な部屋を見て歩いて…藤、か。これは綺麗だ。
ん、写真?撮って何になるのか……微妙に照れ臭いぞ。
一応目的地は蓮華の部屋、だな。

あれの中身を読み解くならば――作家殿は化生に囚われているのだろうか、今もまだ。
それとはなしに問いかけてみて……まあ、だからと言ってどうにかするという事も無い。
貴方の物語は興味深い…もっと早くに知りたかったよ。


天瀬・紅紀
さらささん(f23156)と

迦陵頻伽、だろうね
極楽浄土に住む仏教の鳥だよ
この短編…もしかして作家さんの体験そのものかも、ね
だって彼、亡くなってるんでしょ?
蓮花の部屋があるならば、きっと其処は極楽を模しているだろうね

なんて適当にあたりをつけつつ散策
最後は蓮華の部屋になるように回ってみようか
花の種類毎の趣向は興味深いよね
…あ、さらささん其処に立って見て
美人さんと花、絵になるな(スマホで写真撮り)

作家さんと出会えたら著書にサイン頂き
僕は文学研究を生業にしてまして
あの短編、実録じゃあないですよね?
なんて微笑みながら冗談めかして問い掛け
正否はどうだって良い
彼の反応を楽しめたら充分かな、一人の読者としてね



 手にした短編――そして、この館。
 樹・さらさ(Dea della guerra verde・f23156)はサイン会か、と零す。
「終夜君が言いかけていた言葉が少し気になるが、とりあえずは本を購入してサインを頂いてくるとしようか」
 入口に手売られていた小説――桜ノ匣庭。
 それを手に、さらさは居場所を探さねばならないのかと零す。
(「亡くなった作家のサイン、か。貰ったとして真新しいそれを他人はどう思うのだろう」)
 そう、さらさは思い抱いて傍らへと視線向けた。そこには短編から顔あげた天瀬・紅紀(蠍火・f24482)。
 紅紀は、この話の中に出てくる女――それはきっとと紡ぐ。
「迦陵頻伽、だろうね」
 それは極楽浄土に住む仏教の鳥。一通り読んで思ったのは。
「この短編……もしかして作家さんの体験そのものかも、ね。だって彼、亡くなってるんでしょ?」
 亡くなっていなければ、影朧とはならないのだ。この話が体験から着想を得た、なんて可能性もある。
「蓮花の部屋があるならば、きっと其処は極楽を模しているだろうね」
 そう話しながら二人は部屋を巡っていく。
 最後は蓮華の部屋になるように回ってみようか、と紅紀は提案する。
 この短編を読んで思ったこと、感じた事から適当に辺りをつけてだ。
 ふたりが足を運んだ部屋の一つ――そこは藤の部屋。
「……藤、か。これは綺麗だ」
 天井一杯の藤の花――それはきらきらと輝くガラス細工。シャンデリアのようだ。
「花の種類毎の趣向は興味深いよね」
 すごいね、と紅紀はそれを見上げてそうだとスマートフォンを取り出した。
「……あ、さらささん其処に立って見て」
「ん、写真? 撮って何になるのか……微妙に照れ臭いぞ」
 少しばかり照れつつ、紅紀の言われるままに立ってさらさは写真を撮られる。撮ったそれをみて紅紀は穏やかに、柔らかに微笑んで。
「美人さんと花、絵になるな」
 ここも良いけれど、今度は本物の藤の下でも撮ろう、なんて言って次の部屋へと向かう。
 そしてふとさらさは零す。
「あれの中身を読み解くならば――作家殿は化生に囚われているのだろうか、今もまだ」
 気になるなら聞いてみれば、と紅紀は紡ぐ。
 他にも様々な部屋を巡って向かった先――楽し気な女性たちの声が聞こえてきた。
 そこは、蓮の部屋だ。
 そこに女性たちに囲まれた先生がいる。そしてその先生は、紅紀とさらさが短編、そして本を持っていることに気づいて女性たちをそろそろと促した。
 女性たちは名残惜しそうに先生またあとで、と紡いで離れていく。
「サイン会にきた子かな? あっ、桜ノ匣庭、それにしてあげるね」
 紅紀はお願いしますと本を渡す。
 さらさらっと書いているところへ紅紀は微笑み、冗談めかして問いかける。
「僕は文学研究を生業にしてまして。あの短編、実録じゃあないですよね?」
「化生に囚われているのだろうか、と思うのだが」
 どうなのだろうかと、さらさもそれとはなしに問いかけてみた。
(「……まあ、だからと言ってどうにかするという事も無いのだが」)
 その問いに、先生は笑う。
「それを答えてしまうのは簡単だけれど、僕はミステリアスな作家だからね」
 それに秘め事が多い方がご婦人やお嬢さん方にモテる、なんて笑う。
 問いかけた紅紀は、釣られるようにまた笑い零した。
 正否はどうだってよかったのだ。
 彼の反応を楽しめたら充分。一人の読者として――そう思っていたのだから。
「貴方の物語は興味深い……もっと早くに知りたかったよ」
 サインのされた本を受け取りながらさらさは紡ぐ。
 先生は嬉しい言葉をありがとうと笑っていた。そして、新作もあと少しなんだよね~とゆるく紡いでいく。
 サインをして、館はまだ面白い所もあるから楽しんでねと笑って先生はファンたちの下へ。
 その姿をふたりで見送ってまた館を巡る。まだサイン会は終わらないようだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
“はす”の部屋にて。
もう幾度も目を通したと判るだろう『桜ノ匣庭』の頁を捲りながら、
一通り目を通した短編小説は本に挟んで。
只々ゆるり、お待ちしようと思います。
勿論、先生にお会いして、この本にサインを頂く時を。

さくらの下――
メインイベントじみたそこは。
僕より、先生の大切な『桜の君』の如く、雅やかな…
殿方の方がお似合いかと思いまして~♪

相手は人気作家。
野郎一人の顔など憶えては無さそうですが、
えぇ、それでも今回も、全力でお馴染みのフレーズで、
ツッコミ待ちは忘れませんとも!

なぁんて遣り取りしても無事サインを頂けたなら…
ふと浮かんだ興味本位。
もしも。
『桜の君』が心中するなら…
相手はどんな方だと描かれます?



 はす――蓮の部屋。
 そこでクロト・ラトキエ(TTX・f00472)はゆるりと本の頁を捲っていた。
 もう幾度も目を通したと分かるだろう『桜ノ匣庭』と、一通り目を通した短編は本に挟んで、只々ゆるり、先生をお待ちしようと思っていたのだ。
 しかし、その先生は己のファンだという女性たちに囲まれて楽しそうにお喋りしている。
 それをお邪魔するのも、とクロトはしばし待つことに。
 先生もそれにはきっと気づいているだろう。わずかに視線が合った気がした。
 少し待っててね~、というように。クロトはええ、もちろんですと微笑む。
 そしてしばしすると、先生はおまたせ~と笑いながらやってきた。
「サインするよ~。どこに、あっ、その本だね」
 貸して~と手を出す。その手の上にお願いしますとクロトは本を置いた。
「よく読み込んでくれてる、ありがと~。どこにいるか、わかりやすすぎたかな?」
 わかってもらえないと僕も寂しかったけど、と彼は言う。
 きっと、彼は最後はさくらの下――桜の部屋に向かうのだろう。
 クロトが最後は桜の下、ですよねと紡げば、そうそうと言う。そこの部屋でもよかったんだよ~と。
 その言葉にふるりと、クロトは首を横にふり彼が持つ硯箱に目を向けた。
「僕より、先生の大切な『桜の君』の如く、雅やかな……」
 そして思わせぶりに、言葉を切って。
「殿方の方がお似合いかと思いまして~♪」
「殿方~? そこは絶世の美女だよ! こんな麗しい『桜の君』が殿方のわけないし!」
 こんなやりとりを過去にもした。
 野郎一人の顔など憶えてはなさそうだとは、思う。
(「えぇ、それでも今回も、全力でお馴染みのフレーズで、」)
 ツッコミ待ちは忘れませんとも! とクロトは思っていた。
 そして思っていた通りの反応が楽しくもあるのだ。
 絶対美女、なんて駄々をこねるように言いながらサインした本を彼は渡してくる。
 それをありがとうございますと受け取りながら――ふと浮かんだ興味本位。
「先生」
 もしも――もしも、だ。
「『桜の君』が心中するなら……相手はどんな方だと描かれます?」
 その問いに、先生はどやっと胸張って。
「それは、ぼく! 僕に決まってるでしょ!」
 だって『桜の君』は一等別嬪な良い女に違いないから! と先生は聞くまでもないよね、というような様子。
 クロトはその答えになるほど、ですよね~と笑って返す。
 そして楽しみでもある。それは知っているから――『桜の君』は、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

森宮・陽太
櫻井・四狼、ねぇ…
俺にしちゃ、影朧化して方々で騒ぎを起こす作家先生という印象しかねぇが
現れたなら、いつも通り対処するだけだ

…ああ
俺にとっては影朧対応の「仕事」にすぎねぇよ

短編貰って本も買ってみたが…ふむ
居場所のヒントは確かにあるか
作家先生が影朧化する前に「見たことがない」
かつ「一輪挿しが似合う」花の名を冠した部屋だろう
もっとも、数が多すぎて絞り込めねぇ
館内をくまなく散策し
部屋の名を全て控えつつ探すしかねえか
…効率は良くないが

もし偶然作家先生に出会ったら
本にサインをもらいつつ
「未練はないのか」とカマかけ

まっ、未練がなけりゃ影朧にはならねえけどな
その気配、しっかり覚えさせてもらうぜ

アドリブ大歓迎



 館の中を歩みながら、森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は零す。
「櫻居・四狼、ねぇ……」
 俺にしちゃ、影朧化して方々で騒ぎを起こす作家先生という印象しかねぇが、と陽太は思う。
 しかし、そうだからといって何か特別な対応をするわけでもない。
「現れたなら、いつも通り対処するだけだ」
 そう、紡ぐ。
「……ああ、俺にとっては影朧対応の『仕事』にすぎねぇよ」 陽太はほとりと零し、その手にあるものを見つめる。
 それはもらった短編。そして、本だ。
「短編貰って本も買ってみたが……ふむ」
 短編を読み込み、そして小説も読んでみた。
「居場所のヒントは確かにあるか」
 陽太はもう一度、短編の文字を追う。
 ここに書かれている事――それから拾い上げられるいろいろなこと。
(「作家先生が影朧化する前に『見たことがない』かつ『一輪挿しが似合う』花の名を冠した部屋だろう」)
 そう、小説を思って読んだものの――ふ、と陽太は息を吐く。
「もっとも、数が多すぎて絞り込めねぇ」
 この館に部屋はいくつあるのか――人が多く集う広い部屋もあれば小さな、隠し部屋のようなところまであるのだ。
「くまなく散策しつつ、部屋の名を全て控えつつ探すしかねえか」
 それはとても手間のかかることで、効率は良くないことはわかる。
 でも、今とれる手段はそれしかないかと陽太は歩み始める。
 この部屋にもいないか、と中をちらりと見たのは梅の部屋。
 そこは落ち着いた色合い。畳の敷かれた座敷と洋風のたたずまいが調和した、少し不思議な空間だった。
 そこから違う部屋に向かいつつ、もし偶然作家先生に出会ったらと思うのだ。
(「未練はないのか」)
 そう、問うてみようと。
「まっ、未練がなけりゃ影朧にはならねえけどな」
 その気配、しっかり覚えさせてもらおうと思う。
 ここでは戦いにはならないが、この後はそうではないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・エルフェルト
短編の頁を指先でゆっくり繰る
――死した後の世で独り、再び死ぬ
彼の逝き先は、浄土か。地獄か。
さんざ振り回されたけど
何処か憎めない、お茶目な影朧
叶うのであれば、穏やかに転生への道を歩んでほしい

目星を付けたのは二箇所

彼の代名詞とも言える花だけど
あまりに安直に過ぎる
ならば、屹度一輪挿しのほう

……ん。困った、名前が無い。
薔薇。向日葵。……違う、気がする。
百合。菊。病人の枕元に置く花じゃない。
……。

本来咲く筈の無い秋に、桜
それは、まるで居る筈のない時に居る影朧
秋桜の部屋へ足を向ける

もし逢えたなら
桜ノ匣庭にサインを貰って
甘味の話でもしてみようか
……ん、ん?
美味しい茶店を知ってる?
そう、だね
機会があれば――



 短編の頁を指先でゆっくりと繰る。
「――死した後の世で独り、再び死ぬ」
 彼の逝き先は、浄土か。地獄か。
 どちらだろうかと、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は瞳伏せた。そしてその口端には僅かに、笑みが寄せられる。
「さんざ振り回されたけど」
 何処か憎めない、お茶目な影朧――櫻居・四狼という作家。
 彼との思い出、というのは違うかもしれない。しかし記憶、と言うのも少し違う。そんな想いがクロムにはある。
「叶うのであれば、穏やかに転生への道を歩んでほしい」
 今まで紡いだ――今日、ここにいる彼とは違う彼とだが――縁があるから、そう思うのだ。
 ともあれ、どこにいるのだろうか。
 クロムが目星を付けたのは二か所。
 桜――この花は彼の代名詞ともいえる花だ。
 でもその部屋にいる、というのは。
「あまりに安直に過ぎる……」
 ならば、屹度一輪挿しのほうとクロムは思うのだ。
「……ん。困った、名前が無い」
 短編にもう一度目を走らせつつ、零す。
 色々な花の名を冠する部屋がある。それらを巡るクロム。
「薔薇。向日葵。……違う、気がする」
 その花を思い浮べ、クロムは首を振る。他には、と思い浮かべた花も。
「百合。菊。病人の枕元に置く花じゃない」
 それも、きっと違うだろう。
「……」
 クロムはううん、と唸る。
 そして、ふと思ったのだ。本来咲く筈の無い秋に、桜。
 それは、まるで――居る筈のない時に居る影朧のようだ。
 クロムは秋桜の部屋へ足を向ける。
 と――その途中、その後ろ姿。
 あ、とクロムは小さく声を零した。そしてその声はその彼にも聞こえていたようだ。
「可愛い狐ちゃん! こんにちは~」
 僕のファンかな~とへらりと笑いながらサインするよと両手を出した。
 クロムはそこへお願いしますと『桜ノ匣庭』を渡す。
 サインを貰いながら、そうだとクロムは先生へと言葉向ける。
「甘味は……好きですか? プリンとか」
「甘味? それならいいお店知ってるんだよ~」
 そう言って、きょろきょろ。他のファンの子はいないね、と先生は確認して。
「美味しい甘味のお店があるんだけど、僕といかない?」
 狐ちゃん可愛いから、他の子には内緒でお誘い、なんて言う。
「……ん、ん? 美味しい茶店を知ってる?」
 わかってない? デートのお誘いだよ~、と茶目っ気たっぷりに笑って。
「そう、だね。機会があれば――」
「機会があればって。僕のこと好きじゃないの?」
 他の子はすぐ行くって喜んじゃうんだけどな~といいながら、彼は本を返す。
 そのサインには笑顔マークが添えてあり、この人らしいなとクロムは思った。
「狐ちゃんはどこに行くの? 僕はこれから」
 桜の部屋に行くんだけど、一緒にいく? と彼は誘う。
 その部屋はまだ、訪れていない部屋だ。
 クロムはじゃあそこまで、と先生が色々お喋りするのを聴きながら、部屋まで共に歩む。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
あの人には後で会いにいくとして
楓の部屋で甘味頂き
彼の話をする人々の声に耳を傾ける

昔からろくでもなくて世話が焼けるが
多才で唯一無二で、人に愛されていて
共に居て、楽しかった
だから俺は今、この姿なのだろう
…何やら視線感じるが、まぁ仕方ないな(笑んでおく

その後、桜の部屋へ
漸くお会いできて嬉しい
サインと握手をお願いできれば
名前は…結構だ、サインのみで

暫し純粋に彼と会話楽しむ
声向けられる事は常であったが
言の葉交わせる日が来るとはな

俺も、貴方の小説の舞台には実際に赴いた
桜の憧憬も蛍の迷ひ路も、紅葉行灯も桜雪列車も

どれも、主――貴方と見た四季の彩

…その硯箱、と口にすれば
続く言葉には微笑み
一言、有難う、と握手を



 楓の部屋で振舞われているのは紅茶と、メープルシロップのシフォンケーキ。
 それを頂きながら、筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)は人々の声に耳を傾ける。
 どこにいらっしゃるのかしら、先生にお会いしたいわぁ。サインを頂いたのよ、などなど。
 サイン会の話、そして彼に向けられる言葉は好意に満ちていた。
(「昔からろくでもなくて世話が焼けるが」)
 多才で唯一無二で、人に愛されていて――共に居て、楽しかった。
 だから俺は今、この姿なのだろう、とちらちらと向けられる視線を感じ、清史郎はそちらへ微笑みを向けた。
 何やら視線を感じるが、まぁ仕方ない。己の姿はあの人と似ているのだから。
 甘味を美味しく頂き、さてと清史郎は立ち上がる。
 向かうのは――桜の部屋だ。そこにいるはずだろう。
 そう思った通り――彼はそこにいた。
 短編に掛かれた居場所を読んだファンたちに囲まれていた。そのファンたちの波が途絶えた所で、清史郎は歩み寄る。
「漸くお会いできて嬉しい」
 サインと握手をお願いできれば、と手を差し出せば先生は瞬いて、その手を取り引き寄せる。
 近い場所で、じーっと清史郎の顔を見詰めてうーんと唸る先生。
「僕達似てない? 遠い親戚?」
「ふふ、そのようなことはないが」
「他人の空似かな~。ま、世界に似た人は三人いるっていうし」
 でもこんな簡単に会えるのかな。いや僕が有名だから見つけるのは簡単だよね、と笑って。
「あ、サインに名前は?」
「名前は……結構だ、サインのみで」
 己の名は、今告げるべきではないだろうから。
 共に、近い場所にいたけれど――声を向けられる事は常であったが。
(「言の葉交わせる日が来るとはな」)
 そんな日が来るとは思ってもいなかったのだ。
「俺も、貴方の小説の舞台には実際に赴いた。桜の憧憬も蛍の迷ひ路も、紅葉行灯も桜雪列車も」
「どこもいい場所だよね!」
「ああ、とてもいい場所だった」
 どれも、主――貴方と見た四季の彩、と胸の内で紡いで。
 そして目がいくのは彼が持つ――
「……その硯箱」
 その言葉に、先生はぱっと顔を輝かせた。
「この硯箱は『桜の君』っていってね」
 僕を一目で虜にした大事な硯箱なんだよ~と大事そうに抱えて撫でる。
 その言葉に、清史郎は微笑みを向け。
「有難う」
 叶うなら、もう一度握手をと。
 主が己をどう思っているのか知っている。しかしこうして人の身をもって聞くのはなんだか不思議だ。
 先生は、はい握手~とそれに応えた。そして清史郎は新たに来たファンの為にその場を離れる。楽しそうに次のファンの相手始めたその姿に、笑み向けて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葬・祝
【彼岸花】

桜の間で甘い物でも食べて、のんびり謎解きしましょうか
君、こういう謎解き遊びお好きでしょ?

ふふ、本当に天井が桜で埋め尽くされてるんですねぇ
花見には良いですけど、君の気は散りますかね
あ、お抹茶美味しいですねこれ

はいはい、それではお手並み拝見と行きましょうか神狩カフカ先生
…………完全に本とにらめっこしちゃってますねぇ
ま、わざわざ謎解きするのも面倒なので、カフカが考えてくださるなら楽で良いですけど
………………、……(そっとカフカの前に一口大に切った練り切りを差し出してみる)
(まあ無防備に食べますよねぇ、面白い……)
(無くなるまで餌付けする)

はいな、それじゃあ桜の下へ向かいましょうか


神狩・カフカ
【彼岸花】

ふふ、もちろん
甘味に茶に遊び(謎解き)まで用意されてるたァ
此処は極楽か?

天井も見事なもンだ
いやいや
おれの恋しい花が見守ってくれてると思うと
気分がいいぜ

さて、謎解きと洒落込むか
サインには興味ねェけど
人気があるのは識ってるぜ?
おれとは毛色が違うっつーか
おれァ、カルト的人気なんて称されたこともあったか
こちらの先生は世間的にも人気があるだろうしな

いつのまにか読み耽り
無意識に口元の練りきりをぱくり
うお!?お前さん何してンだ?

…まあ、いいサ
おれ好みの短編だったな
ああ、謎ならとっくに解き終わってるぜ
単純な縦読みだがよくできてらァ
最後は桜の下にいるらしい
それじゃ、お望み通り
語り合おうじゃねェか先生



 極彩色の館は二人を迎える。
 短編うけとり、さてどうするか――葬・祝(   ・f27942)は神狩・カフカ(朱鴉・f22830)へと提案をする。
「桜の間で甘い物でも食べて、のんびり謎解きしましょうか」
 君、こういう謎解き遊びお好きでしょ? と祝は瞳細めて、笑むのだ。その笑みに、カフカも口端に笑みのせて。
「ふふ、もちろん」
 桜の間はどこだろうか。こっちのようだと二人の足は向く。
「甘味に茶に遊びまで用意されてるたァ、此処は極楽か?」
 ぱし、と短編を緩く指先で弾いて、カフカは言う。
 そして向かった先。
 桜の間は――絢爛の一言だろう。
 天井を覆いつくす桜の枝葉。それはすべて手書きのようだ。
 天井から、壁から――足元も、桜が散った地面を模したデザインとなっている。
 足元からなぞって、見上げて、見入ってしまう。
「天井も見事なもンだ」
「ふふ、本当に天井が桜で埋め尽くされてるんですねぇ」
 そんな話をしながら、茶をと席探せば給仕がこちらにどうぞとすぐに対応してくれる。
 二人が案内された席は窓の近く。その窓からは、外の幻朧桜もよく見える。
 その椅子も、テーブルも上品な桜のあしらいが施されていた。
「花見には良いですけど、君の気は散りますかね」
 そう言って祝は、カフカに意味ありげに視線を向ける。カフカはその意味を理解して、いやいやと首を横に振った。
「おれの恋しい花が見守ってくれてると思うと」
 気分がいいぜ、と部屋に咲く桜を見詰める。その先には――誰のすがたを見ているのか。
 そうしていると運ばれてくるのは抹茶と菓子。桜を模した茶菓子はねりきりだ。
「あ、お抹茶美味しいですねこれ」
 その抹茶を一口頂いて、祝はふと一息。
「さて、謎解きと洒落込むか」
「はいはい、それではお手並み拝見と行きましょうか神狩カフカ先生」
 カフカは短編へと目を向けつつ、これを書いた作家について零す。
「サインには興味ねェけど、人気があるのは識ってるぜ?」
 櫻居・四狼――それがこれを書いた作家の名前だ。
 カフカはその文字をなぞってふぅんと零す。
「おれとは毛色が違うっつーか」
 おれァ、カルト的人気なんて称されたこともあったか。こちらの先生は世間的にも人気があるだろうしなと己とは立ち位置の違う作家の在り様を目で追っていく。
 カフカもまた文豪である。
 読み耽る――没入している。
「…………完全に本とにらめっこしちゃってますねぇ」
 じぃ、と見詰めてもその視線には気付かぬようだとぽとりと祝は落す。
(「ま、わざわざ謎解きするのも面倒なので、カフカが考えてくださるなら楽で良いですけど」)
 そう思いながら――祝は茶菓子を黒文字で一口分切った。
 それを見詰め、カフカを見詰め。
「………………、……」
 ぷす、と刺したそれをそっとカフカの口元へと差し出してみる。
 ぱく。もぐもぐ。
(「まあ無防備に食べますよねぇ、面白い……」)
 もう一口、と祝はまた切って口元へ。
 すると――ぱく。もぐもぐ。
 あと一口ある、と運んで――ぱく、もぐもぐとしたところで。
「うお!? お前さん何してンだ?」
 口ん中が甘い。菓子か、とカフカはそこで改めて味わって、美味いと紡ぐ。
 やっと気付いた、と祝が笑って零す様にカフカは抹茶を味わい、餌付けになんとも言えない顔。
「……まあ、いいサ。おれ好みの短編だったな」
「それで、読み解けましたか?」
「ああ、謎ならとっくに解き終わってるぜ」
 単純な縦読みだがよくできてらァ、とカフカその文字を指でなぞっていく。
「最後は桜の下にいるらしい」
 それじゃ、お望み通り――語り合おうじゃねェか先生とカフカは瞳細める。
「はいな、それじゃあ桜の下へ向かいましょうか」
 丁度、御抹茶もお菓子も食べ終えたことですしと祝は言う。
 最後は桜の下――つまりは、この部屋へと彼はやってくる。
 この部屋の一番見事な桜の下に最後はきっと、くるのだろう。
 しばしすると――賑やかな声が近づいてくる。先生の登場だと、語り合うために二人、足向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
沢山の花がある
名前はあまり覚えていないけれどどれも綺麗だ

櫻居先生とはミステリートレインの時に一度お会いした
あの時は楽しかったから珍しく覚えているのだけど
こういう時に限って相手は忘れている
居場所は…やっぱり桜の部屋な気がする
その辺りを探してみようかな

サインは実はもう貰っているんだ
もし会えたら桜ノ匣庭の代わりに
カブトムシの絵本を出してみよう
これね、櫻居先生が本文を書いて僕が絵をつけたんだ
記憶に無いだろうから
変なファンと思って貰っても構わないけど

死は恐ろしいものだから
焦がれる程鮮やかに彩りたくなるのだろうね
僕もきっと蝶を追うのに夢中になって
そういえば蛾の方が好きだったなと
急に思い出したりするんだろう



 沢山の花がある、と鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は視線を巡らせる。
 名前はあまり覚えていないけれどどれも綺麗だ、と章は思う。
 そして今日――これから会うであろう影朧の姿を、思い浮かべた。
 櫻居・四狼――櫻居先生。
(「櫻居先生とはミステリートレインの時に一度お会いした」)
 あの時は楽しかったから珍しく覚えているのだけど、と章は瞳伏せる。
 こういう時に限って相手は忘れている――
「居場所は……やっぱり桜の部屋な気がする」
 その辺りを探してみようかな、と章は歩む。
 館の中は様々な部屋がある。どの部屋も趣向が凝らされて、じっくり見れば面白いのだろう。
 けれど館をじっくり見る事に章の意識は向いていない。
 先生のサイン会。けれど、章はすでに先生のサインはもう貰っていた。
(「もし会えたら」)
 桜ノ匣庭の代わりに、カブトムシの絵本を出してみよう――知らず、その絵本を持つ手には力が入る。
 そして桜の間にて、ファンに囲まれている先生を見つける。
 その姿は、ミステリートレインで出会った姿と変わらない。
「あっ、君も僕のファン? サインするよ~」
 おいでおいで、と手招く先生。その先生へと、章は絵本を差し出した。
「これね、櫻居先生が本文を書いて僕が絵をつけたんだ」
 きっと記憶に無いだろう。だから変なファンと思って貰っても構わないけど、とそっと見る。
 しかし変な顔をするよりも、先生は興味を持ったようだ。
「絵本? 見せて~」
 絵本を受け取って、丁寧に頁をめくりながら先生は読み始める。
「カブトムシが主役か! うん、それに」
 これは僕が書いたものだね~と言う。
 いつ書いたんだろう? なんかの時に寝ぼけて書いた? 僕天才だからそういうことが無いとも言えない――そう言って、唸る。
 先生は、自分が書いたものだと言っている。
 そのことが、じんわりと章の心に響いていた。
「ヘラヘラかっこいいな~」
「カブトムシ、好きなんです」
 僕も好きだよ~と先生は言う。こうして笑っている先生を前に章はふと、思うのだ。
(「死は恐ろしいものだから、焦がれる程鮮やかに彩りたくなるのだろうね」)
 僕もきっと蝶を追うのに夢中になって――そういえば蛾の方が好きだったな、と急に思い出したりする。
 あれ、なんで蛾の方が好きなんだろうと思ったりもしつつ、先生とのこの一時は鮮やかに息づくのか。
 それはまだ、今はわからない。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『眠らない街』

POW   :    とにかくぶらぶら歩いてお店を見て回る

SPD   :    路地裏や裏通りに隠れた名店や人を求めてみる

WIZ   :    雑誌や口コミなどの情報から手掛かりを得る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 最後は桜の下
 はす だりあ あねもね
 ぼくはそこにいる

 僕は居場所をそう綴った。
 いろんな部屋があるけど、気になった部屋を回って。
 やっぱり最後は桜だよね~ってところ。
 内容に色々仕込むよりは分かりやすいかな~ってそのまま書いておいたんだよね。
 そして終わりの方に――

 かたらおう
 君たちはおもしろい

 そう綴ってみた。これはちょっとした僕の気持ち。
 ほんと、おもしろいよね。人って。

●眠らない街
 サイン会が終わり――先生はじゃあね~と街の中へと消えていく。
 極彩色の館がある街は夕暮れから夜へと変わっていく途中にある。
 先生はちょっと遊んで帰ろうかな~と軽い足取りだ。
 かわいい給仕のいる甘味の店。バー、立ち飲み屋も馴染みがいて色男の兄ちゃん、なんて声を掛けられている様子。
 楽しそうに歩くその通りの花屋で足を止め、花を買ってその場で売り子にプレゼントしてみたり。
 自由気ままに彼は過ごす。ちょこちょこ出歩いているのか、彼のことを知っている者もいるようだ。
 そして、その夜の街の先には――一等綺麗な、幻朧桜があった。
 小高い丘の上にあるその幻朧桜は枝を大きく伸ばし、咲いていた。
 咲いている。咲いて、散って。
 散って、また咲き。咲いて散る。
 咲いて、また散り。散って咲く。
 その繰り返しだ。生と死の再生のように。輪廻のように。
 彼はそこへと向かっているのだろう。だって最後は、と綴っていたのだから。
 最後は、桜の下で。
 綴ったその時は、終わりなんてものが来るとは思っていなかったのだろうけれど。

 猟兵達は夜の街を歩む。
 先生を追って――彼の姿を、在り様を。またそこで追うこともできるかもしれない。
 そこでまた、話すことも――できるかも、しれない。
永倉・祝
【黒椿】
櫻居四狼は夜の街に繰り出したようですね。
僕達もその足跡を辿ってみましょうか…。
…あぁ、でも未成年の君を連れ回すのは少しばかり申し訳ないと言うか。
君は大人っぽいですからつい忘れそうになるんですけれど…君はまだ未成年。
不条理からは僕が必ず守りますから

櫻居四狼は実に奔放で影朧だと言うことを忘れさせられますが彼もれっきとした影朧。
桜の廻りに戻ってもらわなくては…。

さいて、ちって、さいて
この世界の桜は廻りを促してくれる
これは別の世界から来たであろう僕には眩しいモノでした。
輪廻転生が約束された世界だから。

確かに君と廻りに会えたことには感謝ですね。

そして君は僕が望まない僕になるのなら必ず…


鈴白・秋人
【黒椿】
さぁ参りましょう
あら祝さん、張り切っていらっしゃるのね
では、わたくし、お言葉に甘えて存分に頼りにさせていただきますわ。ふふ(とても可愛らしいけれど…何かあったら俺が守り抜かないと、な。※腕っ節は強い)

…そうですわね
影朧をそのままにはして置けませんもの
確かな意思がある内に、次の生へと廻らせましょう

この世界ではないところ…
わたくしとは違う世界から此処へ巡ってくださったのなら…
わたくしは、その巡り合わせに感謝致しますわ
わたくしと出逢ってくださって、ありがとう
此処へ来てくださって、ありがとう

貴方が今、不安にかられているのなら…わたくしはその憂いを拭い去る為に助力致しますわ
喩え、その先が別れでも



 きらきらと、輝くような夜の街。
 その姿を永倉・祝(多重人格者の文豪・f22940)は見つめていた。
 この、夜の街へと繰り出した櫻居・四狼。
 鈴白・秋人(とうの経ったオトコの娘・f24103)は祝へと、さぁ参りましょうと言葉向ける。祝はそれに頷いて。
「僕達もその足跡を辿ってみましょうか……」
「あら祝さん、張り切っていらっしゃるのね」」
 そうかなと祝は返し――じぃと秋人を見つめる。
 そうだった、と思い出すのだ。その視線をどうしましたかと秋人は受け止める。
「……あぁ、でも未成年の君を連れ回すのは少しばかり申し訳ないと言うか」
 秋人は連れまわす、と復唱する。連れ回されるとは少し違う気もするけれど、そうは言わずに続く言葉を待った。
「君は大人っぽいですからつい忘れそうになるんですけれど……」
 君はまだ未成年。だから、と祝は秋人をきゅっと見つめ。
「不条理からは僕が必ず守りますから」
「では、わたくし、お言葉に甘えて存分に頼りにさせていただきますわ。ふふ」
 秋人は緩やかに微笑む。しかしそうは言っても、秋人は女性らしい恰好をしていても男。腕っぷしは強い。
(「とても可愛らしいけれど……何かあったら俺が守り抜かないと、な」)
 ふたり、ならんで進む通りはにぎやかだ。
 がやがやと人々の話す声。これはいつものにぎわいなのだろう。
「櫻居四狼は実に奔放で影朧だと言うことを忘れさせられますが」
 彼もれっきとした影朧なのだと、祝は知っている。
 だから――やがては到る場所へと導かなければならない。
「桜の廻りに戻ってもらわなくては……」
「……そうですわね。影朧をそのままにはして置けませんもの」
 確かな意思がある内に、次の生へと廻らせましょうと秋人も零す。楽しそうに、彼は今を満喫しているのだろう。
 でもそれは何時までも、許されていることではない。
「さいて、ちって、さいて」
 祝は歌うように紡ぐ。それはこの世界に咲き廻る花の事。
「この世界の桜は廻りを促してくれる」
 これは別の世界から来たであろう僕には眩しいモノでした、と祝は紡ぐのだ。
 輪廻転生が約束された世界であることが。
「この世界ではないところ……」
 秋人は瞬いて。そして瞳はやわらかに細められる。
「わたくしとは違う世界から此処へ巡ってくださったのなら……わたくしは、その巡り合わせに感謝致しますわ」
 秋人は歩みを止める。祝もつられるように足を止めて、秋人を見上げた。
「わたくしと出逢ってくださって、ありがとう」
 此処へ来てくださって、ありがとう。
 秋人はまっすぐ、祝へと紡いだ。
 そんな風に改めて言われるのはなんだかむず痒い気もする。
 ひらりひらり。
 祝の前に花弁が気まぐれにやってきた。それを手のひらに受け止めて。
「確かに君と廻りに会えたことには感謝ですね」
 そして――思うのだ。
(「そして君は僕が望まない僕になるのなら必ず……」)
 その先は心の底に沈めて。ふと、表情にそれが浮かぶ一瞬を秋人は見逃さない。
(「貴方が今、不安にかられているのなら……わたくしはその憂いを拭い去る為に助力致しますわ」)
 喩え、その先が別れでも。
 そうなっても、互いに――理解し、覚悟をし、受け入れているだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

櫻居四狼ね。アタシたち家族は一度会ったきりだが、色々騒動を起こしてるようだね。いつもは散々搔きまわした上で登場、が多い男が最初から表に出てるのは珍しい。まあ、もう一度話してみたい、そんな男だね。

まあ、子供達が夜の街にいることが心配だし、保護者として付いていくよ。持ち帰りの食べ物は子供達も好きだ。花が買いたいなら家族で選ぼうか。アタシはピンクの薔薇を選ぼうか。買い物をしながらさり気なく櫻居四狼の事を聞いてみる。有名な作家らしいしね。まあ、櫻居四狼に詳しい猟兵は他にもいるだろうから、アタシ達家族は街を楽しむのに集中するか。昼のサクラミラージュは良くしってるが、夜は馴染みがないし。


真宮・奏
【真宮家】で参加

櫻居四狼先生ですか。一度会ったきりですが、本当は何考えてるんだがわかんない不思議な人でしたね。最後に登場が多かった先生が最初から表に出てるのは珍しい。もう一度話してみたいと思ってました。その心の内を。

サクラミラージュを夜に歩くのは滅多にないことで。お腹が一杯になる持ち帰りフードなんかあるかな?とわくわくしちゃいます。そうですね、家族で家に飾る花を買いましょう。ネモフィラがいいです。櫻居先生は有名な作家みたいですし、持ち帰りの店や花屋さんに噂を聞いてみたり。

私達は先生と一度会ったきりですので、偶然に遭う確率は低いかと。詳しい方にお任せして夜の街を楽しみますか。


神城・瞬
【真宮家】で参加

櫻居四狼ですか。サクラミラージュの文豪の本は良く読みますので、櫻居四狼の作品も読みましたが、もう影朧となっているのが惜しいほど読み応えがありました。煙に巻くのが得意な作家先生が本当は何を考えてるのか。もう一度、あってみたいですね。

夜のサクラミラージュは見慣れない景色。好物の持ち帰りフードを食べながら家族に何かないように気を付けてあるきます。家に飾る花ですか。僕はかすみ草を選びます。有名な人みたいですから、立ち寄った店で噂を聞いてみたり。

僕達家族は一度会ったきりですから、作家先生の居そうな場所は詳しい方が見当つけるでしょう。滅多に訪れない夜のサクラミラージュ、楽しみますか。



 そこは夜の街。賑やかで人々が楽し気に過ごしているのがよくわかる。
 きらきらと輝くひかり。
 飲み屋からは楽しそうな笑い声が消えたり。花屋では家で待つ相手に送る花を選ぶものも。
 持ち帰りのできる食事や甘味を買い求めるものもいるようだ。
 その様を真宮・響(赫灼の炎・f00434)は眺めていた。
 この中のどこかに、櫻居・四狼はいるという。小説家――そして影朧だ。
「櫻居四狼ね」
 アタシたち家族は一度会ったきりだが、と響は零す。色々騒動を起こしてるようだね、と。
「いつもは散々搔きまわした上で登場、が多い男が最初から表に出てるのは珍しい」
 まあ、もう一度話してみたい、そんな男だねと響は零す。
「サクラミラージュの文豪の本は良く読みますので、櫻居四狼の作品も読みましたが、もう影朧となっているのが惜しいほど読み応えがありました」
 神城・瞬(清光の月・f06558)は『桜ノ匣庭』を思い出す。
「煙に巻くのが得意な作家先生が本当は何を考えてるのか。もう一度、あってみたいですね」
 一度会ったきりとその姿を真宮・奏(絢爛の星・f03210)は思い出す。
「本当は何考えてるんだがわかんない不思議な人でしたね」
 もう一度話してみたいと思ってましたと奏も思う。その心の内を、知れたらと。
 でも今は、この夜の街に心惹かれる。
 サクラミラージュを夜に歩くのは滅多にないことで、奏の足取りは軽い。
「お腹が一杯になる持ち帰りフードなんかあるかな?」
 わくわくと奏は色んな店先をのぞく。揚げ物たくさんの詰め合わせもあるよなんて声。
 いい香りが鼻を擽り、食欲を誘ってくる。
 奏は一口焼きカステラの店を見つけ覗いて、櫻居先生って知ってますか? と訊ねる。すると、時々試食していきますよ、なんて笑ってあなたもどうぞとおすすめをされる。
 子供達が夜の街にいることが心配だし、と保護者として響は付いていく。
 持ち帰りできる食べ物。
 瞬も好物を手にしつつ、二人に何もないよう気を付けて歩く。危険は無いだろうけれども、それは絶対とは言えないから。
 と、花屋を見つけて三人の足はそちらに向く。
「花?」
 なら皆で選ぼうかと響きは言って、一つ指差した。
「そうですね、家族で家に飾る花を買いましょう」
 ネモフィラがいいです、と奏は言う。ではこれを、と店員は選んでくれた。
「家に飾る花ですか。僕はかすみ草を」
「アタシはピンクの薔薇を選ぼうか」
 そう言って――店員にふとなげかける。
 ここに有名な小説家の先生がきたりしないかい? と。
 すると店員は時々来られますよと笑う。来ては花を一輪かって、くれるのだと。
 そんな話を聞いて響はそうなんだねと笑って返す。
 そして改めてみる、この街。
 響きはそう言えば、と思うのだ。
「昼のサクラミラージュは良くしってるが、夜は馴染みがないし」
 櫻居・四狼に詳しい猟兵はきっとほかにもいるだろう。だから今は、楽しもうと響は思う。今は瞬と奏と共にこの夜を楽しく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

樹・さらさ
天瀬君(f24482)と。

最後は桜の下で、か。確かに別れと桜は良く似合うと思うが。
さて、彼の足取りを邪魔したくは無い。行く先は分かっているのだし、ゆっくりと、後を追ってみようか。
花屋で青のサルビアがあれば買って胸にさす。これの花言葉は尊敬と知恵。
彼と相対するには相応しいんじゃないかと思ってね。
途中で丘が見えるカフェーに入る。
天瀬君は彼と同じで物語を作る側だからね、感じた事は正解に近い気がする。
確かに、人は面白いと思う。そこは同意するよ。
桜を見上げて、大きく息を吐く。こんなに素晴らしい場所があったとはね。今ここは彼の為だけの、舞台だ。
今何を思っているんだろうね。話を聞けたら、良いのだけれど。


天瀬・紅紀
さらささん(f23156)と

あの人もなかなか面白いとは思うのだけれども
そも、物語なんてのは人が生き営む中で生まれたものだ
事実にしろ、虚構にしろ――
人の面白さを観察した結果かも知れない
――作家としては僕はまだまだだけどね

丘の上が見えるカフェーに入って一休み
行き先解ってるし急ぐ必要無いよね
ミルクコーヒーでも頂きつつ
さらささんが買った花に、実は花はそんなに詳しくないと告げ

あの人が桜の元に行こうとしてるのは…呼ばれてるとでも思っているのかも知れないね
そろそろ転生してみない?なんてさ
そんな気易いモノじゃないだろうけど
輪廻の中に飲まれるべきなんだろう、彼が影朧である限り
見届けたいな、作家として作家の最期は



 サクラミラージュの夜の街へと繰り出す。
 にぎわう通りを歩みながら樹・さらさ(Dea della guerra verde・f23156)はふと、零した。
「最後は桜の下で、か。確かに別れと桜は良く似合うと思うが」
 その言葉を拾い上げ、天瀬・紅紀(蠍火・f24482)は小さく笑い零す。
 これから向かうのは、櫻居・四狼という影朧のもと。
 紅紀はその姿を思い出し、笑い零す。
「あの人もなかなか面白いとは思うのだけれども」
 小説家という仕事。物語を紡いでいく生き物である彼もまた、ただの人ではないのだろうから。
「そも、物語なんてのは人が生き営む中で生まれたものだ」
 事実にしろ、虚構にしろ――と、作家でもある紅紀は零す。
 物語を紡いでいく、それは。
「人の面白さを観察した結果かも知れない」
 そう言って、ふと口端を緩め。
「――作家としては僕はまだまだだけどね」
 己はまだまだなのだと言うのだ。自分自身納得がいくものが書けるのはいつになるかというように。
 その言葉を聞きつつさらさはゆるりと歩む。
 櫻居・四狼の足取りを邪魔したくは無い。行く先は――この街の先だと分かっている。
「ゆっくりと、後を追ってみようか」
 何かわかるかもしれないよ、と言いつつ。
 ゆるりと夜の街を歩めば花屋が見えた。さらさの足は自然とそちらへ向く。
「青のサルビアは……ああ、それを」
 短くしてくれるか、と店員へと告げる。胸元にさしたいんだと告げると、そうできるようにしてくれた。
 どうしてそれを、と紅紀が視線で問いかける。
 この花言葉は、尊敬と知恵と答えながらさらさはそれを胸へと飾った。
「彼と相対するには相応しいんじゃないかと思ってね」
「花はそんなに詳しくないんですけど、そんな花言葉なんですね」
 そして紅紀は、ある場所を示した。
 丘の見えるカフェーだ。
「あそこで一休みはどうです?」
 それはいいとさらさは頷いて、二人でカフェーへ。
 丘の上――幻朧櫻が咲き乱れるのを見つつ、一服。
 花弁が舞い踊るのは、この世界ではどこでだって、当たり前だ。
「あの人が桜の元に行こうとしてるのは……呼ばれてるとでも思っているのかも知れないね」
 そろそろ転生してみない? なんてさと言って紅紀はああ、でもと言葉続ける。
「そんな気易いモノじゃないだろうけど」
 その言葉を聞きながら、さらさはふうんと零す。
「天瀬君は彼と同じで物語を作る側だからね、感じた事は正解に近い気がする」
 そしてさっきの、と思うことを言葉へと変えていくのだ。
「確かに、人は面白いと思う。そこは同意するよ」
 遠く――咲き誇る、それを目にさらさは瞳細める。
 そして大きく、息を吐いた。
 見惚れてしまうよう。広く、大きく枝を伸ばして咲き誇るそれはこの世界の象徴だ。
「こんなに素晴らしい場所があったとはね」
 きっと、と思う。
 今ここは彼の為だけの、舞台だと。
「今何を思っているんだろうね。話を聞けたら、良いのだけれど」
 そういってカップの中身を見つめる。
 そこに揺れるものはあとひとくちか、ふたくちか。
 飲みきってしまえば――あの丘へと向かうべきなのだろう。
「そのあたり、まだふらふらしてそうだよね」
 紅紀の言葉にさらさは確かにと小さく笑い零す。
 そして紅紀は――瞳細めて思うのだ。
(「輪廻の中に飲まれるべきなんだろう、彼が影朧である限り」)
 何度、果ててもまた蘇る。それは転生でしか、終わりを迎える事はない。
 影朧の輪廻はひとつどころにとどまるかのように。けれど転生の、その輪廻へと至れば終わりはやってくる。
「見届けたいな、作家として作家の最期は」
 だから、と紅紀もミルクコーヒー飲み干してさらさへと視線向ける。
 さて、行きましょうかと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
【羽花獣】
さて、先生にはもう一度逢えるでしょうか
その前に寄りたいところが…あ!甘味屋さん!?是非!!
甘いものは別腹ですよー
色々食べれるのはいいですね、皆で分けっこ大丈夫ですよ
何がいいかな…せっかくだからこの桜クッキーにしましょう

皆でお菓子を楽しんだら花屋へ
ハス、ダリア、アネモネ…
ハスは「清らかな心」「離れゆく愛」
ダリアは「華麗」「移り気」「裏切り」
アネモネは「あなたを愛します」「はかない恋」
良い言葉と少し不穏な言葉と入り混じってるんですよね
先生はどの意味で選んだんでしょうね…
そんなことを考えつつ花屋で白いアネモネを
どんな結末になるのか見届けないとですね


ヴォルフガング・ディーツェ
【羽花獣】
彼方に、叶うならば来世にゆく、か
満足したなら余人に口は挟めまいよ

だが、見送りはきっと多い方が良いだろう
皆で彼を探してみようか
都月の記憶した匂いが頼りだ…あっれ、皆、甘味に惹かれまくり…?
仕方ないなあ、先ずは食べながて英気を養おうか
決して俺も食べたいとかそんなははは

俺はアップルパイかな、桜クリームの季節越えコラボはアリだよアリ
皆でしっかりシェアして楽しんだら花屋へ

(花言葉を聞きながら)…ま、憶測でしかないけど
糸を通すなら「大切なあなたの心が離れても、それでも愛しています」ってところ?
2人とも詳しいね、流石女の子…え、澪は違うって?
ソウダッタカナー

選ぶ花はフィットニア
理由はまたいずれ、ね


木常野・都月
【羽花獣】

さっき覚えた影朧先生の匂いを辿ろう。
風の精霊様、先生の匂いを運んできて欲しいな。

道すがら、美味しそうなお店が…尻尾がそわそわする。

あの!あのお店、寄りませんか?(そわそわ)
おやつ、綺麗で素敵なものが多いですね!
飲み物…俺はしゅわしゅわなジュースにしようかな。

分けっこ!色んな味が楽しめますね!

おやつと、影朧と、花の香り。
色んな香りでよく分からなくなってきた。
(栗花落先輩の推理もあるし、きっと何とかなるかな)

千夜子さんも栗花落先輩も花を買ったんですね。
俺も何か…花には詳しくないから、精霊様で決めよう。
君の名前は?シンビジウム?よろしくね!
ヴォルフさんの花も綺麗!
花言葉、合体ですね!


栗花落・澪
【花羽獣】

最後は桜の下
桜、じゃなく桜の下っていう書き方がずっと引っかかってたけど
本物を指してる可能性も有り、か

折角だから寄り道しちゃお
まずは皆で甘味処へ

さっき食べたばっかりでいっぱいは無理だけど…でも…
よし、皆、僕から一つ交渉だ
一緒に分けっこしよー、お願い!
選べない…色んな味食べてみたい…(小食の必殺おねだり
飲み物は紅茶があると嬉しいな

食後ちょっと休んだらお花屋さんへ
僕は…ベルフラワーを買おうかな
理由は花言葉由来ではあるけど…まだ秘密
後で先生にあげようと思って
彼なら察してくれるかな
それとも…

僕は男ですぅー

(本当は、先生とは初対面じゃない
敵同士だとしても
貴方と話すのは、いつだって…楽しかったよ)



 きっともうすぐ終わりの時がくる。
 そんな予感をヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は抱いていた。
「彼方に、叶うならば来世にゆく、か」
 満足したなら余人に口は挟めまいよ、とヴォルフガングは紡ぐ。
「だが、見送りはきっと多い方が良いだろう」
 皆で彼を探してみようかと一言。
 さっき覚えた影朧先生の匂いを辿ろうと木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は提案一つ。
「風の精霊様、先生の匂いを運んできて欲しいな」
 そうお願いすると、風がふわりと動きだした。
 賑やかな街並みを、薄荷・千夜子(陽花・f17474)もくるりと見回した。しかしぱっとみて――彼の姿はない。
「さて、先生にはもう一度逢えるでしょうか」
 その言葉を耳にしつつ栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は唸っていた。
「最後は桜の下……桜、じゃなく桜の下っていう書き方がずっと引っかかってたけど」
 本物を指してる可能性も有り、かと澪が向けるのは丘だ。
 桜の咲き誇る――丘。
 そこへはすぐ向かおうと思えば、向かうことができる。
 でも。
「折角だから寄り道しちゃお」
 澪の言葉にうんうんと千夜子も頷く。
「その前に寄りたいところが……」
 その声に都月の耳はぴこりと動く。
 風の精霊様、先生の匂いも僅かに運んでくれているけれど――それよりももっと良い匂いを運んできて、そちらを見ればおいしそうなお店で都月の尻尾はそわそわ。
 だから、寄りたいところがという千夜子の声に、今ならと都月は手をあげた。
「あの! あのお店、寄りませんか?」
「あ! 甘味屋さん!? 是非!!」
 先程も茶と菓子をいただいたけれども千夜子は笑って。
「甘いものは別腹ですよー」
 そう、それを見つけてしまったらもう気持ちはそこへ向いてしまう。
「皆で甘味処にいこ!」
 と、三人の足はそっちへ。
 真面目にどこだろうかと探していたヴォルフガングはその瞬間に一歩遅れて。
「都月の記憶した匂いが頼りだ……あっれ、皆、甘味に惹かれまくり……?」
 楽し気に甘味へと意識が向いてしまった皆の後を、まぁそうだねとちょっとだけ置いていかれた一瞬を隠してすぐに混ざる。
「仕方ないなあ、先ずは食べながら英気を養おうか。決して俺も食べたいとかそんなははは」
 ということで、オシャレな甘味屋さんへ。
 落ち着いた雰囲気の店内。そこを見回すと――『桜ノ匣庭』のサイン本が入ってすぐに飾ってあった。
 どうやらここも訪れている様子。
「おやつ、綺麗で素敵なものが多いですね!」
 都月の尻尾はそわそわ落ち着きない。それは楽しみだから。
「飲み物……俺はしゅわしゅわなジュースにしようかな」
「何がいいかな……せっかくだからこの桜クッキーにしましょう」
「俺はアップルパイかな、桜クリームの季節越えコラボはアリだよアリ」
 ヴォルフガングは、あつあつアップルパイに少し蕩けたところを想像して、ヴォルフガングはほっこり。
「さっき食べたばっかりでいっぱいは無理だけど……でも……」
 お腹は一杯。でも食べたい――そこで澪が取れる手は。
「よし、皆、僕から一つ交渉だ」
 きりっと真面目に、真摯な表情で。
「一緒に分けっこしよー、お願い!」
 選べない……色んな味食べてみたい……とへちょりと澪は訴えてお願いを。
 それをいや、という人は此処にはいなくて。
「シェアもできそうだしね」
「色々食べれるのはいいですね、皆で分けっこ大丈夫ですよ」
 いろんな味が楽しめますね! と都月も笑う。
 その言葉にありがとー! と澪は笑顔浮かべる。
 飲み物は紅茶で、と頼んだものがやってくるのが楽しみ。
 テーブルの上に並ぶお菓子と飲み物と。
 さっき食べたものはどこへやら。おいしいと皆と楽しみつつ都月はすんと鼻を鳴らす。
 おやつと、影朧と、花の香り。
 色んな香りでよく分からなくなってきたと思うけれど、まだその匂いは追えている。
 それに、と都月は思う。
(「栗花落先輩の推理もあるし、きっと何とかなるかな」)
 きっと大丈夫、とはぐりと一口。
 そしてお菓子を楽しんで、丘へと向かう道すがら、花屋があった。
 花――それは今日、深く関わりのあるものだった。
「ハス、ダリア、アネモネ……」
 千夜子はぽつりと零す。それは短編に綴られていた、彼が選んだ花。
 ハスは――『清らかな心』『離れゆく愛』
 ダリアは『華麗』『移り気』『裏切り』
 アネモネは『あなたを愛します』『はかない恋』
 そう、花言葉を千夜子は紡ぐ。
「良い言葉と少し不穏な言葉と入り混じってるんですよね」
「先生はどの意味で選んだんでしょうね……」
 千夜子はほとりと零しながら花に手を伸ばす。
 その手に触れたのは、白いアネモネだ。
 この花を、と千夜子は選ぶ。
 そして澪も、手を伸ばす。
「僕は……ベルフラワーを買おうかな」
 その花を選ぶ理由は、花言葉だ。でもそれはまだ、秘密。
「千夜子さんも栗花落先輩も花を買ったんですね」
「後で先生にあげようと思って」
 彼なら察してくれるかな、と澪は手にした見詰めて。
 それとも……とその先の言葉を飲み込んだ。
 俺も何か、と都月もきょろきょろ。でもどれが何なのか、詳しくはない。
 精霊様で決めようと都月は花々を見回して。
「君の名前は? シンビジウム? よろしくね!」
 君にすると都月も華をひとつ選んだ。
「……ま、憶測でしかないけど」
 こほんと咳払い一つして、ヴォルフガングは紡ぐ。
「糸を通すなら『大切なあなたの心が離れても、それでも愛しています』ってところ?」
「花言葉、合体ですね!」
 それになるほど、と都月は感心する。そしてそれにしても、とヴォルフガングの言葉は続いた。
「2人とも詳しいね、流石女の子……」
「僕は男ですぅー」
「え、澪は違うって?」
 ソウダッタカナーと棒読みで返して。
 ヴォルフガングはフィットニアを貰おうと手を伸ばす。
「ヴォルフさんの花も綺麗!」
 それを選んだ理由は、またいずれ、ねと小さくウィンクして。
「どんな結末になるのか見届けないとですね」
 そうだね、と澪は頷く。
 だって出会ったのは――今回が初めてではない。
(「先生は覚えてなかったけど本当は、先生とは初対面じゃない」)
 彼は影朧だ。倒されてもまた蘇る。だからすべてを覚えているわけではないのだろう。
(「敵同士だとしても貴方と話すのは、いつだって……楽しかったよ」)
 その花に、澪は今抱いている気持ちを込めて。
 この後会ったら、きっと――そんな予感は、していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

森宮・陽太
アドリブ大歓迎

(ようやっと仕込まれた暗号に気づき嘆息)
…あの野郎
最後の最後まで読者をからかうつもりか
まあ、今回はミステリートレインのように
読者を危険に晒すようなことはしねえだろうが
アレを何度もやられても困るからな

夜の街に出やがったな
飲み屋や飲食店中心に居場所を探し
発見次第後をつけはするが、道中で接触はしない

…ったく、好き放題ほっつき歩いてやがる
櫻居・四狼は影朧となる前もこんな性格だったのか?
これだけ奔放だと、追いかけるだけで大変だぜ

おそらく終着点は、あの幻朧桜の下だろう
櫻居・四狼、てめえは何を求めて桜に向かう?
ただの享楽か、己が未来を察しているか
…幻朧桜は、てめえに優しいとは限らねえぞ



 短編を手に、森宮・陽太(人間のアリスナイト・f23693)は独り言ちる。
「……あの野郎」
 最後の最後まで読者をからかうつもりか、とようやっと仕込まれた暗号に気づいて嘆息する。
 気づけばなんて簡単なコトかと。
「まあ、今回はミステリートレインのように、読者を危険に晒すようなことはしねえだろうが」
 いや、アレを何度もやられても困るからなと陽太は緩く頭を振る。
 そしてどこへいったか――夜の街へと聞いた。
 どこへいったのか。
 飲み屋や飲食店中心に陽太はその姿を探す。
 そして――ああ、いたと見つけ。接触はせずその姿を追った。
「……ったく、好き放題ほっつき歩いてやがる」
 あの店は何件目か。賑やかに楽しそうな声が聞こえてくるのはわかった。
「櫻居・四狼は影朧となる前もこんな性格だったのか? これだけ奔放だと、追いかけるだけで大変だぜ」
 そう言って、ふと目を向けたのは――丘だ。
 おそらく終着点は、あの幻朧桜の下だろう、と。
「櫻居・四狼、てめえは何を求めて桜に向かう?」
 陽太は、答えがないのをわかっていて空へと投げかけた。
 ただの享楽か、己が未来を察しているか――
 ひらりはらりと踊る花弁はいつだってこの世界にひとしく。
「……幻朧桜は、てめえに優しいとは限らねえぞ」
 だがもう少し、もうしばらく。
 好きにさせてやるかと陽太は離れて、彼を追う。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
あの人が行く場所の予想はつく
行きつけは沢山思い当たるが

きっとあの店
気分が良い日に訪れる、あの幻朧桜が臨める隠れ家的飲み屋

店に入れば、店員口説く姿
落ち着いた頃に声を

これも何かの縁
少しご一緒してもいいだろうか
酒を酌み交わし他愛のない会話を

ふふ、そんなに飲んだらまた外で寝て風邪を引く事になるのでは
それほど酒は強くないだろう
…どの店員が好みかと?
そうだな、あの反応の大きな子か
同じで奇遇?そうだろうな
…ん?頼むものも同じ?
ふふ、俺も甘味は好きだし、生トマトは苦手だ

最後に訊いてみようか
貴方にとって今は幸せか、と

楽しかった、有難う
あまり飲みすぎないようにな、と微笑んで
…ああ、またいつか、一緒に飲めると良いな



 あの人が行く場所の予想はつく、と筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の足は迷うことなかった。
 行きつけは沢山思い当たるが――きっとあの店だと。
 気分が良い日に訪れる、あの幻朧桜が臨める隠れ家的飲み屋。
 賑わう通り。一歩入って――さらにもう一歩。
 低い入口を潜って二階への階段。扉を開けばカウンターがあり、大きな窓からは丘が、幻朧桜がよく見えた。
「え~、一杯くらい一緒に呑も?」
「あら、先生。私仕事中ですからね。あら、いらっしゃいませ」
「じゃあ仕事のあとでさ~って、あれ」
 さっきも会ったねと、彼は笑う。また会うなんて奇遇だね~と言うが、知っているからだ。
「これも何かの縁。少しご一緒してもいいだろうか」
 いいよ~と彼は清史郎を手招く。その横に、桜の硯箱があるのを見つけ清史郎は微笑んだ。
 冷酒のグラスを貰って、とくとくと注ぐ。清史郎も、彼の空いたグラスに注いで乾杯し酒を喉に落として美味しいと笑う。
「これ、飲み易くていい酒だね。いくらでも飲めそう」
 もう一本ほしいなとすぐさま注文する。その様に清史郎は笑い零した。
「ふふ、そんなに飲んだらまた外で寝て風邪を引く事になるのでは」
 それほど酒は強くないだろうと清史郎はもう一口。
「ええ? そんなへましないよ~」
 と、子供のように言ってこそりと清史郎に顔寄せる。
「ね、この店にいる子、どの子が好み?」
「……どの店員が好みかと?」
 問われて、清史郎は店をくるりと見回す。静かに客の注文を取っている子もいれば、笑顔を向ける子も。そしてあわあわと慌てている子もいる。
「そうだな、あの反応の大きな子か」
「え、僕もあの子だよ。奇遇だね~」
「同じで奇遇?」
 そうだろうな、と清史郎は小さく紡ぐ。
 と、そろそろ頼まなきゃねとお品書きを広げ、これにしよ~と決めている様子。そして清史郎に君は? と訊ねた。
「ひとまずこれと、これだろうか」
「え、また同じものだ」
「……ん? 頼むものも同じ?」
「串焼きのセットと、サラダ。あ、でもトマトは抜いてもらわないとね! それからデザートは甘味のセット」
「ふふ、俺も甘味は好きだし、生トマトは苦手だ」
 それも気が合うねと笑って酒を酌み交わし他愛ない会話を重ねる。
 他愛ない話。どれも、知っている話だ。一番近くて聞いて、見てきたのだから。
 そして――酒も、あと少し。この時間ももうすぐ終わりだろうと清史郎はふと、瞳伏せて最後に訊いてみようかと思う。
「一つ訊ねても?」
「もちろん。楽しい時間のお礼に答えてあげる!」
 その答えも、わかっているのだけれど清史郎は問いかける。
「貴方にとって今は幸せか」
「もちろん。毎日楽しくて愉快で、幸せだよ」
 彼は――笑う。本当に楽しそうに。
 清史郎はそうか、と微笑んでこの場での別れを告げる。
「楽しかった、有難う」
 あまり飲みすぎないようにな、と微笑むとそんなに飲んでないよ~と言いながら杯傾けて。
「僕も楽しかったよ。またどこかで会ったら一緒に飲もう」
 ことり。
 カウンターにグラス置いて頬づいて付いて、彼は微笑んだ。
 こんなに趣味が合う相手、出会った事なくて面白かったと。
 しかしその誘いに清史郎がすぐ頷くことはできなかった。それは彼が、影朧であるから。
「……ああ、またいつか、一緒に飲めると良いな」
 清史郎は口端に笑み乗せて頷く。
 またいつか――

大成功 🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
わかってもらえて正直驚いた
櫻居先生は天才…僕もそう思う
僕はなんと自分の書いた作品の見分けがつかない
先生は何度生まれ変わっても
ヘラヘラの事をヘラヘラと呼ぶのだろうな

楽しい一時をもう少し続けたいから
また先生を探してみる
失礼ながら僕らはどこか似ていると思うのだけど
華やかな場所ばかり巡る先生は
花から花へ遊ぶ蝶みたいだ
僕は夜に炎の中へ突っ込んで燃える蛾
先生も大分そういう所あると思うけど、なんて笑って

ずっと気になっていたんだけれど
先生はどうして心中にこだわるの
何度も訊かれているだろうけど
今あえて問う事に意味がある気がしてね

先生は僕らを面白いと書いてくれたけど
先生も凄く面白いよ
偉大なる天才作家さんには失礼か



 夜の街を、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は歩く。
 その心にあるのは、驚きだった。
(「わかってもらえて正直驚いた」)
 やっぱり、櫻居先生は天才――と。
(「僕もそう思う」)
 章は思う。櫻居先生は僕とは違うと。
 違うというのは当たり前なのだけれども。章は自分の書いた作品の見分けがつかないのだ。
 でも、と思う。
 影朧である櫻居先生。現れて、消えて。その時のことを全て覚えているわけはない。
 でも、この絵本は確かに先生が書いたと己の持つ物を思う。
 あの櫻居先生ではない櫻居先生が書いたもの。それを自分が書いたと言ってくれた。
「先生は何度生まれ変わっても、ヘラヘラの事をヘラヘラと呼ぶのだろうな」
 それはすごい事なのだと思う。
 だから、楽しい一時をもう少し続けたいから――先生を探してみよう。
 そう思っているとふらりと、ご機嫌の足取りで先生が路地から出てきた。
「あっ、櫻居先生」
 こんなにすぐ会えるとは思っていなくて章はぱちりと瞬いた。
 そしてその声は先生に届いていたのだろう。
 振り返りさっき会ったね~とへらりと笑う。どうやら酒をちょっとばかり飲んできたようだ。
「失礼ながら僕らはどこか似ていると思うのだけど」
「似てる? どのへんか聞いてみていい?」
「華やかな場所ばかり巡る先生は、花から花へ遊ぶ蝶みたいだ」
「蝶か~。確かに、綺麗な花から花へ飛ぶのは楽しそうだね」
 そう言って、じゃあ君は? と先生は章に問う。
「僕は蛾」
 夜に炎の中へ突っ込んで燃える蛾――そう章は言って先生へと笑いかけた。
「先生も大分そういう所あると思うけど」
「あるかな? その炎が楽しそうならいっちゃうかもね」
 先生は笑う。ご機嫌で街を歩く、その隣を章は歩きながらずっと気になっていたんだけれど、と切り出した。
「先生はどうして心中にこだわるの」
「気になる?」
「何度も訊かれているだろうけど、今あえて問う事に意味がある気がしてね」
 その言葉に、その言い回しいいねと先生は笑う。
「心中ってさ、心惹かれない? だって愛し合いながら一緒に死ねるって美しいでしょー?」
 先生は笑って、くるりと回って見せる。その手にしっかりと桜の硯箱をもって。
「これ以上に美しい最期はないよ、僕もしたいな~」
 その言葉に重みはなく、とても軽い。まるで気に入りの靴を履いて散歩にいくような、そんな心地だ。
「先生にとっての心中ってそういう感じなんですね」
 章は先生のことがちょっとわかった――いや、やっぱりわからないやと言って。
「もうひとつ、気になっていたんだけれど。先生は僕らを面白いと書いてくれたけど、先生も凄く面白いよ」
 章はそう言って、あ、と零す。
「偉大なる天才作家さんには失礼か」
「面白いは誉め言葉だよ。でもそこは、面白くてかっこよくてすごーい、くらいつけないと」
 だって僕は天才だからねーと言って、あのお店に次はいこうかなーと自由に動く。
 本当に、蝶みたいだと章は思う。そう思っている間に――先生は、人の波の中へ消えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
むう、深読みしすぎた
行頭縦読みだったなら、気付いたかも知れない
ん。でもサインも貰えたから、佳としよう
桜の装丁を嬉しそうに撫ぜる

先程「でーと」を断ったのに
甘味の店等で居合わせたらバツが悪い
道中鉢合わせないよう注意しつつ歩く
花屋に立ち寄り、花を見る
珍しい、白い彼岸花
「また会う日を楽しみに」
花言葉を聞いて一輪買い
髪飾りにして貰えないか聞いてみる

喧騒を抜け、丘へ向かう
この辺りなら、作家先生と合流しても構わない
丘に続く道を幻朧桜を見ながら歩く
散っては咲きを繰り返す
一つ終わっては、新たに始まる
まるで、先生が紡ぐ物語みたい

私は物語は紡げないけど、歌ならば一つ
惜しまれど無常なる世の擱筆に
何をや思う永久の桜よ



「むう、深読みしすぎた」
 行頭縦読みだったなら、気付いたかも知れないとクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は再び短編を見詰めていた。
 まさか最後に仕込んでいるとは、というところ。
「ん。でもサインも貰えたから、佳としよう」
 彼の小説『桜ノ匣庭』、その桜の装丁を嬉しそうに撫ぜるクロムの足は、甘味の店へと向いていた。
 この後また――対するのだろう。その前にちょっとだけ。
 しかし気を抜いて歩くわけにはいかない。夜の街に出たという彼は、近くから突然現れてくる気も、しないでもないのだ。
 それに先程『でーと』を断ったのだ。甘味の店等で居合わせたらバツが悪い。
 クロムは周囲に細心の注意を払い、鉢合わせしないように歩いていた。
 甘味をちょっと楽しんで、そしてまた通りに。
 人の流れは、先ほどよりも増えているようだ。それに逆らわぬように、丘へと足を向ける。
 と、その途中で花屋が目に入りクロムは立ち止まった。
 店へと足を向け、並ぶ花をひとつずつ、見詰める。
 色々な花があった。あの短編に描かれていた花も。
 そしてその中でクロムの視線を引き寄せたのは、珍しい、白い彼岸花。
「そちらが気になりますか?」
 じっと見つめていると店員が声をかけてくる。そして、そちらの花言葉はと紡ぐ。
 白い彼岸花が持つ花言葉は――また会う日を楽しみに。
 それを聞いてクロムはじゃあ、一輪とお願いする。その花言葉が、クロムの胸に響いたから。
「あ、髪飾りにして貰えますか?」
「ええ、もちろん」
 少しお待ちくださいと花の茎を短くして。そしてすぐに萎れぬように処理をし髪に飾れるように。
 店員はどうぞ、と鏡も用意してくれた。それを借り、クロムは花を飾る。
 金色の髪に、白い花。これでよしと、頷いて。
 そしてそろそろ行こうと、足を丘へと向けた。足取りは、早くもなく遅くもなく。
 喧騒を抜けて――人が少なくなって。
 この辺りなら、先生と会っても構わないと思いながら、ゆっくりと幻朧桜を見ながら歩んでいた。
 散っては咲きを繰り返す、とクロムは瞳細める。
 一つ終わっては、新たに始まる。それはまるで。
「まるで、先生が紡ぐ物語みたい」
 クロムの歩みが止まる。
 見上げる夜空、舞い踊る桜の花弁がいっぱいに広がっているようだ。
「私は物語は紡げないけど」
 歌ならば一つと――惜しまれど無常なる世の擱筆に 何をや思う永久の桜よ。
 クロムは歌を、桜の花弁に乗せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
ああ賑やかな場所で無く、先生と語ってみたいなら、
桜の下へ。向かう足は迷いなく。
…っと。途中、お好きだという甘味も買って手土産に。
僕、顔は良くても男なので!

世は匣庭の様だ、と。思った事、ありません?
花が咲き散るも。
産まれ、次代の命を繋ぎ、死に至るも。
決して思い通りにはならない。
まるで何者かの掌の上の様。

――『桜ノ匣庭』。心中で途切れる数多の生。
それは抗いの物語の様…
なんて、個人の所感ですけど〜。

いつか聞いた気のする言の葉
『今が楽しければ』
――では『櫻居・四狼』でなかった貴方は?
一片の悔悟も欺瞞も無く、そう仰れるのかと…
おっと、余計な事が気になる悪癖なんです。
どうかご看過を。

答えは、きっとまもなく



 クロト・ラトキエ(TTX・f00472)は最初から、丘へ――桜の下へと向かっていた。
 夜の街へ消えていった、もとい遊びにでた先生。しかし彼が最後に向かう先はそこだから。
 そしてああ賑やかな場所で無い場所で、先生と語ってみたいから。
 だから、足は迷いなく――けれど途中、彼が好きだという甘味は買って手土産に。
 まだこの丘には誰も来ていないはず――と、思えばすでに先生はいた。
 桜を見上げていた彼は、クロトに気づく。酒を飲んできたのか少し頬はあかく、上機嫌なようだ。
「さっきあった美人さん、また会ったね」
「僕、顔は良くても男なので!」
「それはわかってる~」
 でももったいないよね~なんて、からかい交じりに。
 その様子に嘆息しつつ、クロトは近くに歩み寄って、食べます? と甘味を差し出した。
 それはどら焼き。桜餡のどら焼きだった。
「貰っていいの? 食べる食べる。甘いものっていいよね~」
 ありがとーと笑って、これ食べてる間くらいは話聞いてあげるよーと言う。
 クロトはそうですね、とちょっと考えて。
「世は匣庭の様だ、と。思った事、ありません?」
 花が咲き散るも、と紡ぐ。
 産まれ、次代の命を繋ぎ、死に至るも――決して思い通りにはならない。
 まるで何者かの掌の上の様、と落ちてくる花弁をクロトは掌で受け止める。
 その様を先生は見つつ、どら焼きを食む。
「――『桜ノ匣庭』。心中で途切れる数多の生。それは抗いの物語の様……なんて、個人の所感ですけど~」
 真面目に、静かに紡いで――最後にぺろっという感じでクロトは言う。
 先生は感想は読んだ人次第だからねと。でも君がそう感じたなら、そうなんでしょと言う。
 そしてクロトは、いつか聞いた気のする言の葉を思い出す。
「今が楽しければ」
「うん、今が楽しければそれでいいよね」
 即答だった。クロトはそれなら、と。
「――では『櫻居・四狼』でなかった貴方は?」
 その問いかけに、先生は、櫻居・四狼は瞬く。そしてクロトは言葉重ねた。
「一片の悔悟も欺瞞も無く、そう仰れるのかと……」
 そう言って、おっと、と口元隠しクロトは苦笑する。
「余計な事が気になる悪癖なんです。どうかご看過を」
 別に答えはなくてもいい。そう思っていたクロトに、櫻居・四狼は笑って。
「悔悟? 欺瞞? そんなのないよ~」
 己の言葉を、返す。
 今が楽しければ、それでいいからと、心からそう思っているのだとわかる表情で彼は言う。ゆっくりと紡ぐ。
「だって僕はこの世界では、櫻居・四狼でしかないから」
 その言葉にどんな意味があるのだろうか。
 紡いだままのものなのだろうか。それとももっと深い意味があるのか。
 クロトはそれを、この場では問わない。
 だって――その答えも、きっとまもなく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『或る作家の残影』

POW   :    蒼桜心中
【心中用に持ち出した桜の意匠が凝らされた刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    心中遊戯
【甘く蕩ける桜色の毒物】【切腹できる桜模様の短剣】【桜の木で首を吊る為の丈夫なロープ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    乱桜吹雪
自身の装備武器を無数の【原稿用紙と乱れ舞い散る桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠筧・清史郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 桜餡のどら焼きをぺろりと食べて、或る作家の残影は笑った。
「お喋りはこのくらいにしとく? お喋りしながらでもいいけど」
 物語の最後にはおあつらえの舞台だよねと言う。
 咲き誇る桜の下っていいよね~と紡ぎながら、これからのこともわかっているようだ。
 ふふ、と笑う。笑み零す。桜零すように。
「僕は影朧だからね~。もう少し遊びたいから見逃して……くれるわけないか」
 仕方ない、と肩をすくめて言う。その手にある硯箱――『桜の君』を撫で、うーんと唸って。
「小説にするなら、桜の下にて影朧は拒む。まだ己は満たされてはいないのだから、って感じの場面かな。もちろんクライマックスシーンだよ。いい話が書けそう」
 結末を綴るなら、影朧は逃げてそのままどこかへ消えた。それともここで果てる、どっちがいいかななんて笑って。
 そして――でも、という。
「でも、転生するとは思えないんだよね。転生する理由が、その影朧にはないから」
 その理由を見つけられたら転生するかもしれないけど、簡単に見つかるわけないよねと彼は――櫻居・四狼は紡ぐ。
 戦わずとも、僕の心揺らすことが出来たら、僕は転生してもいいよ、なんて。
 まったくする気がないような表情で続けて。
真宮・響
【真宮家】で参加

ふうん、随分楽しんでた癖にそう言い切れるんだね。自分の事なのに客観的になれるのはこの男らしいと言うか。

あまり面識のないアタシ達家族の言葉がどれだけ響くか不明だが、やってみるか。

まず刀の一撃を避ける為に【目立たない】【忍び足】で敵の背後に回り込み、【残像】【見切り】で敵の攻撃を回避、【オーラ防御】でダメージを軽減。【怪力】【グラップル】【気合い】で拳で浄火の一撃で自分の心さえごまかすその戯けた信念を焼き尽くす。

今までこれだけ事件を起こしたって事はまだまだこの世を楽しみたいって事だろう?未練あるように見えるねえ?いつまでもごまかしてんじゃないよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

櫻居先生はこの状況でも他人を煙に巻くのがお好きのようで。一度会った時のコンニャクや落とし穴のいたずらのようにまだまだ遊びたいように感じられるんですが?まあ、あんまり面識ない私達がいっても心に響かないでしょうが。

トリニティ・エンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】【ジャストガード】で攻撃に耐え、【怪力】【グラップル】で拳の一撃を。

はっきりいって、これで終わりなんて、もったいないかと。数々の事件を起こして色々おもしろい人間と会いましたよね?この世界は広いです。もっと知りたくありませんか?小説家って、そういうものじゃないかと。


神城・瞬
【真宮家】で参加

自分のことさえそこまで他人事のように話せるとはこの人らしいというか。読者としてそんな結末を許す訳にはいきません。櫻居先生、最早貴方の人生は貴方だけのものじゃないんです。

【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】を仕込んだ【結界術】を展開、【オーラ防御】【第六感】で敵の攻撃を凌いだ後、月下美人の嵐を。この世には美しいものが沢山あります、との心を込めて。

さて、これで絶筆でいいんですか?櫻居先生。まだまだ世界には先生の知らない事が沢山あるのに。僕のように、先生の新作待っているひと沢山いるのに。人生、続けてみませんか?



 自分のことさえそこまで他人事のように話せるとはこの人らしいというか、と彼の小説を読んできた神城・瞬(清光の月・f06558)は思う。
 しかし――
(「読者としてそんな結末を許す訳にはいきません」)
 瞬は華麗へと言葉投げかける。一読者としても。
「櫻居先生、最早貴方の人生は貴方だけのものじゃないんです」
「僕の人生は、僕のものだよ。僕が僕であるための人生なんだから」
 それは影朧でも、きっとそうでない時でも、同じように紡ぐ言葉なのだろう。
 そう思わせる気軽さがあった。
「転生したら、もうそれは僕じゃないんじゃない?」
 僕の人生が僕だけのものじゃないなら、今ここで消えていなくなっちゃうほうが問題なんじゃない? と切り返して。
「ふうん、随分楽しんでた癖にそう言い切れるんだね」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は、櫻居・四狼の前へと立ち思うのだ。
 自分の事なのに客観的になれるのはこの男らしいと言うか――そう、響きは思うのだ。
(「あまり面識のないアタシ達家族の言葉がどれだけ響くか不明だが、やってみるか」)
 そして真宮・奏(絢爛の星・f03210)は僅かに表情を曇らせる。
(「櫻居先生はこの状況でも他人を煙に巻くのがお好きのようで」)
 そして奏が思い出すのは蛍の美しい宿でのこと。
「一度会った時のコンニャクや落とし穴のいたずらのようにまだまだ遊びたいように感じられるんですが?」
「そんなことしたっけ? でも、いたずらとかするのは好きかな~」
 櫻居・四狼は首傾げる。でも、そういういたずら楽しそうだよねと返すのだから、やはり彼自身であることには変わりないのだ。
(「まあ、あんまり面識ない私達がいっても心に響かないでしょうが」)
 でも、言える言葉は少しはありそうだと奏は思う。
 この男の心に響くかどうかはわからない。けれど、と動いて響は背後を取る様に回り込む。
 そしてその拳に、己の情熱を含めるのだ。
「今までこれだけ事件を起こしたって事はまだまだこの世を楽しみたいって事だろう? 未練あるように見えるねえ?」
 自分の心さえごまかすその戯けた信念を焼き尽くすと拳突き出して。
「いつまでもごまかしてんじゃないよ!!」
 その拳を身に受けて、櫻居・四狼はよろめいた。
 すらりと抜き放った桜の意匠が凝らされた刀は、心中の為のものだが今は攻撃に使われる。
「いたた、したいことやりたいことはたくさんあるけどね」
 そこへ踏み込んだ奏。
 炎、水、風の魔力で守りの力を高め響に続いて拳を向ける。
「はっきりいって、これで終わりなんて、もったいないかと」
「うん、だから見逃してほしいんだけどな~って」
「数々の事件を起こして色々おもしろい人間と会いましたよね?」
 人は誰でも、面白いよと櫻居・四狼は言う。そして向けられる言葉には笑って返すだけだ。
「この世界は広いです。もっと知りたくありませんか? 小説家って、そういうものじゃないかと。」
「そうだね~、世界はとっても広いね」
 そして、美しいものも沢山ありますと、その心を込めて瞬は月下美人の花弁を櫻居・四狼へと向ける。
「さて、これで絶筆でいいんですか? 櫻居先生」
 瞬は問いかける。まだ描きたいものがあるのではないかと、言うように。
「まだまだ世界には先生の知らない事が沢山あるのに。僕のように、先生の新作待っているひと沢山いるのに。人生、続けてみませんか?」
「それって今のこの、櫻居・四狼って僕に生きててほしいってことでしょ?」
 なら見逃してくれたら、それでいいんじゃない? と櫻居・四狼は言う。
 そしたら僕は、まだまだ色々書いていけるからねと。
「これだけ囲まれちゃったら逃げるのも無理そうじゃない?」
 だから、別にここでこの命を終えるのは――いいのだ。
 でもそれと転生するかどうかは違うのだと櫻居・四狼は言う。
 それは、僕が僕ではなくなってしまうかもしれないでしょ、と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夜鳥・藍
何というか変な人ね。だから追いかけっこは流してしまったけれど。
満たされてなくても転生する事はあるんじゃない?少なくとも過去の私はそうだったみたいだし。むしろ影朧のままで満たされるのかしら?
それはそれで理由がわからない想いに振り回されて大変なのは変わらないけれどね。

影朧は過去からにじみ出た未来がないオブリビオンなのだから。これからを考えるなら、今の自分を変えたら……変えられたら。
折角なんだし人として人と関わってみたら?
もしくはまた一から名声というか作家人生歩んでも面白いんじゃない?作家でなくともまた違った視線で見たら何か見つかるかもしれないし。

ちなみに私はどら焼きは粒あんか、生クリームが好みよ。



 何というか変な人ね、と夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は櫻居・四狼を前に思うのだ。
 だから追いかけっこは――流してしまったけれど、と藍は零して。
 その視線に櫻居・四狼は気付いて、笑いかける。
「君も何かある? 今なら聞いてあげるよ~」
 その言葉に、そうね、と少しおいて。
「満たされてなくても転生する事はあるんじゃない?」
 少なくとも、過去の私はそうだったみたいだしと藍は言う。
 それに、と思うのだ。この櫻居・四狼のありようをみていれば。
「むしろ影朧のままで満たされるのかしら?」
「このままでも、楽しいことは楽しいよ~」
 へらりと笑って言う。
 けれど、藍は違うわと首を降る。楽しいのと満たされるのは違うからと。
「それはそれで理由がわからない想いに振り回されて大変なのは変わらないけれどね」
 影朧は過去からにじみ出た未来がないオブリビオンなのだから――そう、藍は言葉向ける。
「これからを考えるなら、今の自分を変えたら……変えられたら。折角なんだし人として人と関わってみたら?」
「人か~。人でも影朧でも、そんなに変わらないと僕は思うんだけど」
 櫻居・四狼の返す言葉に重みはない。
 藍はその様子に少し方向を変えて。
「もしくはまた一から名声というか作家人生歩んでも面白いんじゃない? 作家でなくともまた違った視線で見たら何か見つかるかもしれないし」
「一から? 転生してからってこと? でも作家になるかどうか、わかんないし」
 僕が僕の人生歩んできたから今の僕だけど、次の僕もまったく同じ人生歩むとは限らないじゃないと、彼は返す。
 それもそうね、と藍は呟いて――好みもそうかしら、と言う。
「ちなみに私はどら焼きは粒あんか、生クリームが好みよ」
「甘いものは何でも美味しいよ~!」
 瞬いて、笑ってそう答える櫻居・四狼は人と変わりない。
 それからどら焼きはね~なんて話始めるのはただの甘味好きの姿。

大成功 🔵​🔵​🔵​

永倉・祝
【黒椿】
僕としては貴方を説得する自信はまったくないですね。貴方の生き方はある意味作家の僕には羨ましいとさえ思う。
ですが影朧として過ごせる時間はそんなに長く無いでしょう。
この世界におけるオブリビオン=影朧には「転生」の機会が与えられますが…この世界自体がなくなってしまえばそれもできない。

人生の延長戦はそろそろ終わりにしませんか?
他のオブリビオンはただ骸の海に還るのみ。
いっそ影朧として美しく転生して終わりにしません?

まぁ、僕から言えるのはこれくらいですかね。
僕としては大事な人と出会えた世界を無くしたくは無いので遠慮なく行きますが。

【指定UC発動】


鈴白・秋人
【黒椿】
無欲なんですのね。貴方って
この世に未練も愛着も無い
風のように流れのままに動いているだけ
そんな人の…いえ、自分の生に…意味も何も感じない

だからそんな自分が転生した所で変わらない。また、感じない
では…貴方は、何故死んだのかしら?
そこに『何』があったのかしら?

そして何故『影朧』として生まれ直したのかしら?
何かの未練?
唯の興味?
其れこそ、初めて出来た望み?

わたくしは貴方に対して気になる事を勝手に話し、勝手に聞きますわ

影朧として居られたこと、その時間に、満足はしたかしら?

転生するもしないも好き勝手、自由気ままにするといいですわ

唯、このまま影朧でいる事だけは不都合ですので討ち取らせて頂きますけれど



「無欲なんですのね。貴方って」
 櫻居・四狼へと向かって鈴白・秋人(とうの経ったオトコの娘・f24103)は投げかける。
 永倉・祝(多重人格者の文豪・f22940)も櫻居・四狼へと視線向けた。
「僕としては貴方を説得する自信はまったくないですね。貴方の生き方はある意味作家の僕には羨ましいとさえ思う」
 祝も文豪であるから――相いれないところもあるし、自由な彼に羨むところもあるのだ。
 だが――影朧として過ごせる時間はそんなに長く無いはずだ。
(「この世界におけるオブリビオン――影朧には『転生』の機会が与えられますが……この世界自体がなくなってしまえばそれもできない」)
「無欲かなぁ。やりたいことはいっぱいあるよ」
 櫻居・四狼の言葉に、秋人は本当にそうかしらと、返す。
「この世に未練も愛着も無い。風のように流れのままに動いているだけ」
 秋人に、彼はそう見えているのだ。
「そんな人の……いえ、自分の生に……意味も何も感じない」
 櫻居・四狼はその言葉にしばし考えて――櫻居・四狼である意味はあるかなぁと笑う。
 でもそれも上っ面だけのように見えるのだ。
 秋人はいくらでも言葉はつくろえると思うのだ。
「だからそんな自分が転生した所で変わらない。また、感じない」
 とうとうと、言葉向ける。
 その言葉が彼に響いているのかどうかは――まだ、わからない。
「では……貴方は、何故死んだのかしら? そこに『何』があったのかしら?」
 そして何故、と秋人は紡ぐ。
 何故『影朧』として生まれ直したのかしら? と。
「何かの未練? 唯の興味? 其れこそ、初めて出来た望み?」
「言われてみれば……なんだろうね。それは僕が僕だからかなぁ」
 影朧となっても、楽しく過ごせたらよかった。
 でもそう、やり残した事――やりたいことはと櫻居・四狼は考える。
 そこへ、秋人はまた投げかけるのだ。
「わたくしは貴方に対して気になる事を勝手に話し、勝手に聞きますわ」
 影朧として居られたこと、その時間に、満足はしたかしら?
 それにはもちろん、と彼は答える。
 でも、まだ遊べるならこの世にとどまっていたいのも本当の気持ちなのだと。
 秋人はまだ決めかねているようと思う。
「転生するもしないも好き勝手、自由気ままにするといいですわ」
 唯、このまま影朧でいる事だけは不都合ですので討ち取らせて頂きますけれどと秋人はダイモンデバイスを手にし、獄炎操る悪魔を呼び出した。
 そして祝も紡ぐ。
「人生の延長戦はそろそろ終わりにしませんか?」
 他のオブリビオンはただ骸の海に還るのみ。それが嫌だというのならばとれる道筋はもうひとつ。
「いっそ影朧として美しく転生して終わりにしません?」
 美しくか~。
 僕にとっては心中するのが一番美しい終わりなんだけどね~と言って彼はその硯箱をちらりと見る。
 この『桜の君』が美しい女の姿を取って――共に心中してくれたら。
 それは最高の、美しい死ではないだろうかと思っているのだ。
 だがその心を祝も秋人も知らない。
 でも祝も秋人もこの影朧に譲れぬものがあるのだから、戦う道をとる。
「まぁ、僕から言えるのはこれくらいですかね」
 僕としては大事な人と出会えた世界を無くしたくは無いので遠慮なく行きますが、と祝は手元からひらりと、紙を躍らせる。
 獄炎と、そして紙の花弁が櫻居・四狼へと向かう。
 それを打ち消そうとしているのか、櫻居・四狼の手から原稿用紙と、乱れ舞い散る桜の花弁が離れていく。
 原稿用紙は炎と交わって、紙と桜が互いに打ち合っている中で櫻居・四狼は身を翻した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

樹・さらさ
天瀬君(f24482)と

申し訳無いが見逃すことは出来ないな、それに…満たされる、か
人の一生で満たされたと終われる者がどれくらいいるのだろうね?
最後に残るのは未練と、後悔と…僅かの満足。そんなものだろう
普通の人ならば満たされていない事、が転生の理由になるのではないのかな

それが理由にならない程に、貴方が求めているものは何だろう
どちらにしろ、ここで幕は引かせて貰うのだけどね
周囲に翠玉の刃を舞わせ、真っ直ぐに手を差し伸べる
この舞台から降りるのは貴方だ、私は私の力で道標を作ろうか

呼び出した剣は天瀬君の攻撃をサポートするように動かそう
どうせなら彼の問いに応え最後まで聞かせてくれ給え、貴方の事を


天瀬・紅紀
さらささん(f23156)と

…いいんじゃないかな、無理に転生はしなくても

物書きなんて職業において、満たされる時など存在しない
書いても書いても終わりの見えない無間地獄――極楽でもあるけど

と言ってはみたけども
満たされぬ貴方の思いが何かはもう少し問うてみたい
炎の槍を己の影に突き刺し、首もたげるは深紅の影獣

貴方は何を求めている?
貴方をこの世に縛り付ける其れは何?

僕には叶えられないとしても
貴方を輪廻の理に叩き落とす前に聞くべきかと思ってね
こう見えて僕は乱暴な質で…まだこれでも抑えてる方なんだ
のらりくらりと濁した回答には獣が飛びかかるだろう

貴方が亡くとも、魂は永遠に残るんだよ
作品の中に、ね(例の本を手に)



 こんなに囲まれていちゃ、逃げるのは本当に難しそうと笑う。でも余裕がまだあるようだ。
 櫻居・四狼はこんなクライマックスも面白いねとこの場を楽しんでいる。
 そして――猟兵へと投げかけるのだ。
「君も、やっぱり転生しなよっていう派?」
「……いいんじゃないかな、無理に転生はしなくても」
 櫻居・四狼へ向けられた、天瀬・紅紀(蠍火・f24482)の言葉。
 彼は瞬いて、そういう風に思う人もいるんだねと紡ぐ。
「物書きなんて職業において、満たされる時など存在しない」
 それは紅紀自身が思う事だ。彼もまた、紡ぐものだから――
「書いても書いても終わりの見えない無間地獄――極楽でもあるけど」
 その苦しみも楽しさも。櫻居・四狼が感じるものとまったく同じではないだろうが、紅紀もそれを知っている。
「じゃあこのまま見逃して、僕を通してくれると嬉しいんだけどな」
 なんて手を合わせて頼んでみるそぶり。しかしそれに紅紀は苦笑する。
 見逃すことは、できないのだ。
 その言葉を代わりに紡いだのは、樹・さらさ(Dea della guerra verde・f23156)だ。
「申し訳無いが見逃すことは出来ないな、それに……満たされる、か」
 さらさはわずかに瞳細めて――問いかける。
「人の一生で満たされたと終われる者がどれくらいいるのだろうね?」
「満たされて誰もが終われるなら幸せだよね~」
 でもそうじゃないから、ここにいるのだろうけれどもと彼は言う。
「最後に残るのは未練と、後悔と……僅かの満足。そんなものだろう」
 櫻居・四狼は、満たされていなかったからここにいるという。
 けれど影朧としてずっとあっても――満たされることはないのでは、ともいえるのだ。
「普通の人ならば満たされていない事、が転生の理由になるのではないのかな」
「ああ、なるほど~。満たされていないから満たされるために影朧ではなくて、ちゃぁんと転生の輪の中に戻るってことかな」
 そういう考え方もあるねと櫻居・四狼は頷く。
 でも、僕はそうなれないなぁと――わかるのだが、わからないというように。
 そのはぐらかす様な、丸め込もうとするような言葉の紡ぎ方にさらさはなるほど、手強いと思う。
「それが理由にならない程に、貴方が求めているものは何だろう」
 さらさの言葉に紅紀も、僕も、とは言ってみたけどと笑って。
「満たされぬ貴方の思いが何かはもう少し問うてみたい」
 紅紀はその手に炎の槍を生み出し、己の影を突き刺した。
 その影から首もたげるは――深紅の影獣。
 深紅の影獣は紅紀の傍らから、獲物定めるように櫻居・四狼へ、視線を向けていつでも飛び掛かりそうだ。
「貴方は何を求めている? 貴方をこの世に縛り付ける其れは何?」
「求めていること? それは僕が僕であることだね!」
 僕が――櫻居・四狼であること。
 それを聞いて紅紀は、それは僕には叶えられないことだねと紡ぐ。
 それは自分でしか、決められないし叶えられない事だと。
 そして――でも、と口端に笑みを乗せて。
「僕には叶えられないとしても――貴方を輪廻の理に叩き落とす前に聞くべきかと思ってね」
「納得のいく答えだった?」
 なんて話すのも、そろそろ終わりだろうか。
 紅紀の傍ら影獣が唸り、飛び出していく。
「こう見えて僕は乱暴な質で……まだこれでも抑えてる方なんだ」
 櫻居・四狼は影獣に噛みつかれ牙を突きたてられる。
 痛いよと言って、やっぱり逃げられそうにないなぁと零す。
「どちらにしろ、ここで幕は引かせて貰うのだけどね」
 そしてさらさが、翠玉の刃を舞わせ、真っ直ぐに手を差し伸べた。
「この舞台から降りるのは貴方だ、私は私の力で道標を作ろうか」
 さらさは剣を躍らせる。紅紀の攻撃をサポートするように動かして、櫻居・四狼の動きを狭めていく。
「どうせなら彼の問いに応え最後まで聞かせてくれ給え、貴方の事を」
「僕の事はいろいろ話してるよ」
 はぐらかさず、正直に。それがはぐらかしてるように聞こえるなら僕の言い方がわるいのかなぁと零して。
 彼の言葉に紅紀は性格的なものもあるのかもしれないね、と言う。
「貴方が亡くとも、魂は永遠に残るんだよ」
「ふふ、どこに残るのかな?」
「作品の中に、ね」
 と、紅紀は櫻居・四狼の『桜ノ匣庭』を見せる。
 その本に――確かに、そうだねと櫻居・四狼は頷いた。確かにそこに僕は、残ってるねと笑って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鵜飼・章
また会いましたね
では怪しいファンの僕と心中しよう
なんちゃって

さてどうしようか
猟兵失格の僕は先生を見逃してもいいのだけど

少しわかるよ
僕も転生とかはお断りだな
楽しさを求めるのは永遠に満たされないせい
そんな人生に飽きたから
先生の作品に惹かれるんだろう

ところで前世の記憶は信じる?
この絵本を書いたのは本当に先生だし
その時もヘラヘラをヘラヘラと言っていたよ
転生しても意外とわかるんじゃない
面白くてかっこよくて凄ーい天才ですから

愛されたら
満たされたら
生まれ変わりたいと思えるのかな
それなら僕の出る幕じゃない

けど思うよ
きみは何度生きても文豪だろうから
僕は先生の作品をきっとまた見つける
その時は前世の話をしてあげるね



 猟兵の攻撃をかわして――逃げる気はもうないのだろう。
「また会いましたね」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、櫻居・四狼へと言葉向け微笑んだ。
「では怪しいファンの僕と心中しよう――なんちゃって」
 と、続ける。
 櫻居・四狼はその言葉にぱちりと瞬いて、誘いには乗れないからよかったというのだ。
「心中するなら、その相手は一人って決めてるんだよね」
 心中するなら――『桜の君』となのだからと硯箱を撫で、愛おし気に見詰めて笑っている。
「君も、僕をここで終わらせちゃう? それとも見逃して逃げていいよってしてくれるのかな?」
「さてどうしようか。猟兵失格の僕は先生を見逃してもいいのだけど」
 章は櫻居・四狼を真っすぐ見詰める。
 そして自然と、零していた。
「少しわかるよ」
 僕も転生とかはお断りだな、と言う。
「楽しさを求めるのは永遠に満たされないせい」
 そんな人生に飽きたから、先生の作品に惹かれるんだろうと章は思うのだ。
 なんとなく、しんみりとした気配。
 かと、思ったのだけれども。
「ところで前世の記憶は信じる?」
 章は櫻居・四狼へとぱっと問いかける。
「前世の記憶? まったく信じてないわけじゃないけど」
 でもなかには妖しいほら吹きもいるからね、僕は騙されたりはしないよ! と櫻居・四狼は言うのだ。
 章はその答えに小さく笑って、さっき見せたと絵本を取り出す。
「この絵本を書いたのは本当に先生だし、その時もヘラヘラをヘラヘラと言っていたよ」
「うん? だってヘラヘラは、ヘラヘラでしょ?」
 それ以外にどう呼べっていうのと櫻居・四狼は返す。彼にとってはそう呼ぶのが、当たり前なのだろう。
 章はその様子にそうだね、ヘラヘラはヘラヘラだと言って。
「転生しても意外とわかるんじゃない。面白くてかっこよくて凄ーい天才ですから」
「ま、その通りだからね。もしかしたら、わかるかもしれないね」
 ふふと胸を張る。先生はそれでこそ先生だ。
(「愛されたら、満たされたら」)
 生まれ変わりたいと思えるのかな――章はふと、思う。
 もし、そうなら――それなら僕の出る幕じゃない。
 けれど、だ。
「きみは何度生きても文豪だろうから」
 僕は先生の作品をきっとまた見つける。
 章はいや、と首を緩く振る。きっと、ではなく必ずと。
「でも僕は転生したら赤ん坊からやり直しだよ。それは僕の記憶があるかもしれない、僕だったやつだよ」
 それでもいいの? と櫻居・四狼は言うのだ。
 それでもいいと章は返す。それでも、きっと変わらぬものはあるだろうから。
「その時は前世の話をしてあげるね」
 転生してまた出会えたなら――その時は今とは違う関係でいられるだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄荷・千夜子
【羽花獣】
常桜の場ですが、桜で終わらず次の季節に進むのも良いかと思いますよ
UCを使用して藤の花を澪君の風と合わせて辺りを彩り、鉄扇を舞の扇として使って軽やかに
藤の花弁に【結界術】も纏わせて対抗
心も楽しくなるように、未来へ進んでみたいと思えるように
藤の花とともに白いアネモネを
貴方が選んだ花々の想い、私は貴方と会うのは初めてだから本当の想いを知らないけれど
こうやって話をしたりしながら貴方の本当の想いが知れたらいいなと思います
白いアネモネは『真実』『希望』
藤は『優しさ』『歓迎』
貴方が花を通して伝えてきたようにこちらも花を通して気持ちを伝えましょう
未来で新たな物語に出会えるように


ヴォルフガング・ディーツェ
【羽花獣】
そうかい君、死出の花を纏うのかい
その前に少しだけ時間をくれないかな?

差し出すフィットニア、花言葉はそうさね、羨望だ
君は何処かこの世からの脱稿を望み、羨んでいる気がしてね

しかし、精神医学も齧った人間としては違和感もある
物語を作る事は負荷が掛かるものだ、作家であれば尚更だろう。俺が触れた君の物語は美しく、唯の手慰めの域ではない様に感じたがね

ご覧、君の心に触れんとする若く健やかな魂の躍動を
君の心を知り、けれど開放も願う真っ直ぐな言葉を
自分は何故何度も綴り続けたのか、考えてみるに値する献身ではないかな、作家殿?

【指定UC】にて幻想の大樹で皆の道筋に彩を添えようか
花よ咲け、我らそれぞれの道筋へ


栗花落・澪
【花羽獣】

その場所にたどり着いたなら
購入した花を差し出して
受け取るかは貴方の自由だけどね

ベルフラワーの花言葉は知ってるかな
感謝、誠実、楽しいおしゃべり
プレゼントだよ

戦うにしても彼とは楽しくやりたいな
★Venti Alaに風魔法を宿しつつ
せんせ、僕と一曲いかが?

足止めのための【誘惑催眠術】を乗せた【歌唱】を奏でながら
【ダンス】の要領で回避も兼ねて動き回りつつ
【浄化と祝福】発動により、【破魔】を宿した炎の鳥をレベル匹分召喚
どんなに広範囲の桜吹雪も浄化の炎で受け止め、華麗に散らしてあげる

死した今だからこそ見える景色もあるのかもしれないけど
有限の命あるからこそ、向き合える想いもあると思うけどな


木常野・都月
【花羽獣】

??
俺には難しい事は分からないけど…
遊びたいなら転生して遊べばいいじゃないか。
そうすれば猟兵に邪魔されずに遊べると思うんだけど…。

……何か俺には分からない、難しい事情があるのかもしれないな。

皆で買った花束達。
先生とは何回か会ったことある。
俺は花言葉は詳しくないけど、きっと思いは、精霊様が届けてくれるから。
そうか…シンビジウムの精霊様が「飾らない心」「華やかな恋」だって。
先生の心に、何か心残りがあるのかも知れないなぁ。

UC【精霊の歌】で、皆に力を。
風の精霊様、チィの声を仲間に届けて欲しい。

チィ聞いて。
チィの歌に合わせて、栗花落先輩踊ってる!

先生の攻撃は[カウンター]で対処しよう。



 このまま果てるかと。けれど猟兵達とまだ話す時間はありそうだ。
 彼の紡ぐ言葉――木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)は首を傾げる。
「俺には難しい事は分からないけど……遊びたいなら転生して遊べばいいじゃないか」
 そうすれば猟兵に邪魔されずに遊べると思うんだけど……と都月は言う。
 すると櫻居・四狼は笑って。それもそうだねと言うのだ。
「でも、転生しちゃったら僕はもう僕じゃないでしょ?」
 櫻居・四狼じゃない僕は、何者だろうねと。
 だから転生せず影朧として何度でもっていうのは、駄目? と桜を躍らせて。
(「……何か俺には分からない、難しい事情があるのかもしれないな」)
 都月はむむ、と小さく唸って、その花弁に手を伸ばす。
「そうかい君、死出の花を纏うのかい」
「いい花でしょ? 綺麗で履かなくて」
「その前に少しだけ時間をくれないかな?」
 その花の散る様を目に、ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)は瞳細める。
 浄化の舞と共に藤の花雨を薄荷・千夜子(陽花・f17474)は贈る。
「常桜の場ですが、桜で終わらず次の季節に進むのも良いかと思いますよ」
「藤も素敵な花だよね~」
 そして栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、櫻居・四狼へと花を差し出した。
「受け取るかは貴方の自由だけどね」
「え、可愛い子ちゃんからのお花とかもらうに決まってるよ~」
 ありがと~とその手に渡ったのはベルフラワーだ。
「ベルフラワーの花言葉は知ってるかな」
「花言葉?」
「その花言葉は、感謝、誠実、楽しいおしゃべり。プレゼントだよ」
 藤の花と共に白いアネモネを千夜子は手にし。
「貴方が選んだ花々の想い、私は貴方と会うのは初めてだから本当の想いを知らないけれど」
 その花を櫻居・四狼へと差し出して。
「こうやって話をしたりしながら貴方の本当の想いが知れたらいいなと思います」
 差し出すその花へと込めた思い。
 白いアネモネは『真実』『希望』を。
 藤は『優しさ』『歓迎』を。
 貴方が花を通して伝えてきたようにこちらも花を通して気持ちを伝えましょうと渡す。
 これを、と櫻居・四狼へとヴォルフガングが差し出すのはフィットニアだ。
「男から花を貰うなんて~」
 そうは言わないでくれと笑って。
「花言葉はそうさね、羨望だ。君は何処かこの世からの脱稿を望み、羨んでいる気がしてね」
 そして都月も己の手にある花を見る。
 先生とは何回か会ったことある、と思い出して。
「俺は花言葉は詳しくないけど、きっと思いは」
 精霊様が届けてくれるから――そう思っていると、ささやきが聞こえる。
「そうか……シンビジウムの精霊様が『飾らない心』『華やかな恋』だって」
 先生の心に、何か心残りがあるのかも知れないなぁと都月は櫻居・四狼を見詰める。
 貰った花――それらの持つ意味は己に向けられた気持ちなのだと櫻居・四狼もわかっている。
 しかし素直にそれを受け取れない大人でもあるのだ。
 しかし、とヴォルフガングの言葉は続く。
「精神医学も齧った人間としては違和感もある」
 それはどんな違和感? と櫻居・四狼は問う。自分としては、そんなのまったくないからねと笑って。
 物語を作る事は負荷が掛かるものだ、作家であれば尚更だろう。
「俺が触れた君の物語は美しく、唯の手慰めの域ではない様に感じたがね」
 そこへ都月が、これもあげるねと言う。贈るものは、歌だ。
 都月の傍、風の精霊様、チィの声が仲間たちへと力を与える。
「未来で新たな物語に出会えるように」
 そう願っていますと千夜子は紡ぎ、澪の風に藤を合わせて辺りを彩る。
 鉄扇をそよがせ軽やかに。その花弁に結界を纏わせ――櫻居・四狼の原稿と桜の花弁に対抗する。
 心も楽しくなるように、未来へ進んでみたいと思えるように――それが千夜子が花と共に櫻居・四狼へと向けるもの。
「ふふ、綺麗でいいね」
 でも、僕はここで終わりたくはないと彼は言う。
 澪はそれもわかってるけど、やっぱり終わりはあるんだよと紡ぐ。
「戦うにしても楽しくやりたいよね。せんせ、僕と一曲いかが?」
 風の魔力を乗せて、翼を得る澪の靴。
 軽やかに踊りながら、歌って――踊って。
「チィの歌に合わせて、栗花落先輩踊ってる!」
 都月はすごいねと笑んだ。先生もそう思わない? と問い掛けて。
 それに応えるように櫻居・四狼は己の原稿用紙と桜の花弁を躍らせる。
 一緒に踊るのはそれだけれども――攻撃の意志はなく。
 ただ、戯れのように攻撃を交えているようだ。
 炎の鳥を召喚して、華麗に散らしてあげると浄化の炎で受け止めて。
「ご覧、君の心に触れんとする若く健やかな魂の躍動を」
 君の心を知り、けれど開放も願う真っ直ぐな言葉をとヴォルフガングは櫻居・四狼へ告げる。
「自分は何故何度も綴り続けたのか、考えてみるに値する献身ではないかな、作家殿?」
「皆が僕の事、好いてくれてるのはわかるよ」
 物語を紡ぐ。人の心の機微が決してわからないわけではないのだ。
 そしてヴォルフガングは、幻想の大樹をこの場へと生み出す。
 皆の道筋に彩を添えようかと――巡りのために。
「花よ咲け、我らそれぞれの道筋へ」
 君の辿る道筋はどうだろうねと言って。
 まだ向かわねば、対さねばならないものがきっといるだろうからと。
「死した今だからこそ見える景色もあるのかもしれないけど」
 ねぇ、せんせと澪は、僕はこう思うんだよと紡ぐ。
「有限の命あるからこそ、向き合える想いもあると思うけどな」
「確かに、そういう想いもあるよねぇ」
 いまが向き合う時なのかなと言う。
 このままあることに対して、永遠はないと櫻居・四狼も思ってはいるのだろう。
 けれどまだ、まだ転生には踏み切れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
では是非、お喋りしながら♪
若しくはクライマックスを描きながら?
えぇ。見逃せない。お仕事ですので。

転生もねぇ。
己が己で在れないなら。
望まれるだけの、望まぬ其れなら。
僕的には、ナシもアリだと思うんですよね。

ま、同時に無茶申しますと。
逃がせませんが、新作は完結希望でして!

『桜の匣庭』
奥付には初版日も載っていて…

転生しないなら…託してみます?
百年。
器物にも魂は宿り、人の体を得る事もあると云う…
片時も離れず…否、手離さず、
貴方のお側に在り続けた――
『桜の君』に。
ま、モテモテでも知りませんが♪

とか?
UCで防御力強化。
刃の向き、踏込み…
攻撃の挙動を見切り避け乍、お喋りの続き。
それ位は、お許し頂けるでしょう?



 転生への道筋はあることを、櫻居・四狼は知っている。でもまだその道には、到れない。
 でも、それに大人しく向かい合うものではないと――クロト・ラトキエ(TTX・f00472)も知っていて。
「では是非、お喋りしながら♪ 若しくはクライマックスを描きながら?」
「終わるなら、綺麗に美しくいきたいんだよね。一等綺麗で別嬪な『桜の君』と一緒に桜の木の下で、とか? それ以外の終わりをみたいの?」
 それを聞いてクロトは――笑み零す。
「えぇ。見逃せない。お仕事ですので」
 だって知っているからだ。その『桜の君』は、と。
「でも転生しても次は赤ん坊からやりなおし。僕は僕じゃなくなるんだよね」
「転生もねぇ。己が己で在れないなら。望まれるだけの、望まぬ其れなら」
 僕的には、ナシもアリだと思うんですよね。
 クロトの言葉に、じゃあこのまま見逃してよというけれど、それはできませんと返すだけ。
「ま、同時に無茶申しますと。逃がせませんが、新作は完結希望でして!」
「それはとってもわがまま!」
「ええ、そうですとも! わがままですよ!」
 だって読者はいつだって待っているものですからね、と言いながらクロトはその本を取り出す。
 櫻居・四狼の書いた『桜ノ匣庭』だ。奥付には初版日も載っていて……と、その頁をなぞる指先。
 そして、思い立つのだ。
「転生しないなら……託してみます?」
「託す? 何を」
「百年」
 百年の時を――
「器物にも魂は宿り、人の体を得る事もあると云う……片時も離れず……否、手離さず、」
 と、クロトは櫻居・四狼の手元へと視線投げる。
 そこにあるのは、硯箱。美し桜模様の、硯箱だ。
「貴方のお側に在り続けた――『桜の君』に」
 ま、モテモテでも知りませんが♪ とおどけて見せる。
 すると櫻居・四狼は違うから、というのだ。
「一等別嬪で綺麗な『桜の君』は女だよ」
 ふふ、そういうと思ってましたとクロトは笑う。
 そしてもう少しお喋りします? と踏み込む。魔力を纏って守りを固めて。
 対するように、櫻居・四狼も戦い仕掛けるけれど――それを避ける事は容易だ。
 もう少しだけ、お喋りの続きを。
「それ位は、お許し頂けるでしょう?」
「ずっと話してる間に、僕が格好良ぉく逃げ出す算段をつけちゃうかもしれないよ」
 その時は、その時で。止めて見せますよともうしばし、お喋り。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
"転生する気はないが、果ててもいい"
彼は、此の儘消えてしまうのだろうか
……それは、イヤだな
正しく時を刻む者として共に在って欲しい
話が通じる余地があるのなら――

抜刀の構え解き、ベンチに座る
ハンケチを広げて金平糖を開け
一緒に食べませんか、と誘う

その遊びは、櫻居先生じゃなきゃ駄目なの?
女の子からきゃあゝ言われるから、櫻居・四狼の方が心地良い?
んん……それ、また心中オチになる気が
同じ結末ばかり辿るのは、作家としてどうなのかな
骸の海に浸る以上、"生前"の呪縛からは逃れぬと思う
その姿が、変わらない様に

居合いの極意は"鞘の内"
言の刃が届いたか否かは最後まで分らないけど

……転生後の『でーと』、期待してる。ね。



『転生する気はないが、果ててもいい』
 その言葉がクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)の胸に引っかかっていた。
 彼は、此の儘消えてしまうのだろうか――そう思うと。
「……それは、イヤだな」
 自然と零れていた。
 クロムの心は櫻居・四狼へと願いを抱く。
 正しく時を刻む者として共に在って欲しい。そう、思うのだ。
 話が通じる余地があるのなら――話をもう少し。
 抜き放った刃を、クロムは収める。
 櫻居・四狼はその様に瞬きひとつ。あれ、戦わないんだというような顔をしているのを見つつクロムは近くのベンチに腰掛け、ハンケチ広げて金平糖を開ける。
「一緒に食べませんか」
 お誘いなら喜んで! と櫻居・四狼はその隣に座りごちそうになるね~と金平糖を口へ。
「ん、甘くておいしいね」
 幸せそうに笑う。そんな彼へと、クロムは問いかけた。
「その遊びは、櫻居先生じゃなきゃ駄目なの?」
 女の子からきゃあゝ言われるから、櫻居・四狼の方が心地良い? と重ねて。
「そうだよ、僕じゃなきゃダメだよ。僕は櫻居・四狼だからね! 女の子たちともいっぱい遊んで、美味しいものに甘味も楽しんでさ」
 まだまだやりたいこと、やれること沢山あるでしょと笑う。
 その答にクロムは――その遊んだ姿を想像して、そして。
「んん……それ、また心中オチになる気が」
「えっ」
「同じ結末ばかり辿るのは、作家としてどうなのかな」
「それはっ……ちょっとひねりがない、かも……」
 ううんと唸る櫻居・四狼。クロムは小さく笑い零して――思うのだ。
 骸の海に浸る以上、"生前"の呪縛からは逃れぬのだろう。
(「その姿が、変わらない様に」)
 クロムは刀は抜かず、刃を向ける。
 居合いの極意は"鞘の内"だ。
 向ける刃は言の葉――言の刃。
「……転生後の『でーと』、期待してる。ね」
 言の刃が届いたか否かは最後まで分らないけど――クロムの言葉に櫻居・四狼は困ったなと苦笑する。
 困ったな、転生後の約束を違えない為には、転生しないといけないじゃないと。
 でも転生を望んでしたいとは――『でーと』の約束だけではまだ、少し弱い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

筧・清史郎
主、俺は『桜の君』だ

まぁ信じられないだろうな
では昔話をしよう
俺と主しか知らぬ思い出を幾つか

では…これならどうだろうか
俺の名は、筧・清史郎という
この桜の世界で主が口にした事のない、貴方の名だ

俺と心中するか?
ふふ、それは嫌だろう

主の傍に在った刻は楽しかった、感謝もしている
だから俺はこの姿なのだろう

だが、ひとの身を得た今、俺は毎日がとても楽しい
貴方は苦労もしているから
得たものを手放したくないのもわかる
けれど貴方ならば、新たな巡りも楽しいものに出来るはず
主に似た俺の心は今、未知への好奇で満ち溢れている

主の心残りは、必ず果たすと約束しよう
作品完結と…そして、正しい輪廻への導きは
桜の君である、この俺の手で



 転生するかどうか、迷いはする。心が傾いたなんてところもあるが踏み切れない。
「僕にそっくりな君、君も何かある?」
 そう、櫻居・四狼が投げかけたのは筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)だった。清史郎はふとエンデ。
「主、俺は」
「主?」
 告げればこの人はどんな顔をするだろうかと、少しの楽しみを持って。
「『桜の君』だ」
「……はい? いやいやいや、え? いや、男だし。ないないない」
 大きく瞬いて、首を振る。その反応が清史郎にとっては楽しい。
「まぁ信じられないだろうな」
 そういう反応をすると、思っていたから。
 では昔話を――俺と主しか知らぬ思い出を幾つかと紡ぐ。
「締め切り前に逃げようと二階の窓から落ちたり」
「えっ、それ僕した……けどやるでしょ、編集者からの逃亡」
「ご機嫌で茶屋にいった帰り、昨日遊んでいた可愛らしい子とその一昨日に遊んだ美人と鉢合わせをし」
「!?」
「そのあとすったもんだで川に落ちるという修羅場を」
「そ、そういう修羅場よくある! ある……あるったら、ある!」
 櫻居・四狼は覚えがあるけどそんなの誰だってよくある話と首を振る。
 清史郎はその様に少し考えて。
「では……これならどうだろうか」
「何? どんな話でも、絶対僕じゃないからね」
 腕を組み、どんな話でもいいよと構える櫻居・四狼。
 そんな彼へと清史郎は紡ぐ。俺の名は、と。
「俺の名は、筧・清史郎という」
 その名前に、櫻居・四狼は瞳見開きひゅっと喉ならして息をのんだ。
 だってその名は。
「この桜の世界で主が口にした事のない、貴方の名だ」
 それを知っている。それだけで、意味はある。
『櫻居・四狼』は『筧・清史郎』という己の名を誰にも告げていない。
 知っているのは、傍らにいるこの『桜の君』、美しい硯箱だけ。
「え、嘘でしょ……本当に……『桜の君』?」
 力の抜けたような声にそうだ、と清史郎は頷く。そして、貴方の望む終わりは――と笑って。
「俺と心中するか? ふふ、それは嫌だろう」
「やだ! 絶対、やだ! ええ~~~~、ええ~~~~~~~~~~」
 何とも言えない言葉を零す。
 僕の愛しい『桜の君』は一等別嬪さんで嫋やかで可愛く美人な娘――男ではない。
 決して男であって、ほしくなかった。
「………絶対やだ……」
 駄々っ子のような物言いに清史郎は笑って、主と言葉向けるのだ。
「主の傍に在った刻は楽しかった、感謝もしている」
 だから俺はこの姿なのだろう――あなたと、そっくりな。
「ほんとに、そっくり。性格も、似てる?」
 櫻居・四狼はまたじぃと見つめてううんと唸る。
「……『桜の君』、うわ、なんかそう呼ぶのもちょっと微妙な心地……」
「ふふ。だが『桜の君』でいいぞ」
 清史郎は、また主と――呼ぶ。
「だが、ひとの身を得た今、俺は毎日がとても楽しい」
 貴方は苦労もしているから、得たものを手放したくないのもわかると、清史郎は瞳細める。
 それは傍らにあったからこそ、知っていることだ。
「けれど貴方ならば、新たな巡りも楽しいものに出来るはず」
 主に似た俺の心は今、未知への好奇で満ち溢れていると日々を語る。
 その姿に、櫻居・四狼はこれみよがしに。
「は~~~~~~~~~~~~~~」
 ため息ついて。
「『桜の君』は男だし僕に似てるし」
 ちらっと清史郎を見て、またため息をつく。
 僕の『桜の君』と、それでも硯箱を撫でる手は優しく。
 そして――今まで言葉重ねてくれた皆を想い、転生すると零した。
「転生して次の生でいっぱいいろんなことして楽しむ。そうする」
 もう願いかなわないのは知ってしまった。心残りあるとすれば『桜の君』と綺麗に美しく心中する事くらいだが――男だし。野郎と心中する気なんてない。やだ、絶対、やだ。
 だからもういいや~と櫻居・四狼は言うのだ。諦めたかのように。
 でもそれはきっと、必要な事でもある。
「主の心残りは、必ず果たすと約束しよう」
「僕の心残り? ああ、うん……『桜の君』にならお願いできるかな」
 しょうがないからしてあげると紡げば、その体の一遍は桜の花弁と化して散っていく。
 文句言いながらその身を崩す者へと清史郎は紡ぐ。
「作品完結と……そして、正しい輪廻への導きは」
 ふと、視線を和らげ、
『桜の君』である、この俺の手でと。
 清史郎は影朧たる或る作家の残影を、己の主であった櫻居・四狼を葬る。
 櫻居・四狼は、彼は最後に笑って――紡ぐ。
 頼むよ、僕の『桜の君』と。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年06月03日
宿敵 『或る作家の残影』 を撃破!


挿絵イラスト