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現金輸送車を襲撃せよ!〜マンション編〜

#デビルキングワールド #6/9第三章断章公開

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#デビルキングワールド
#6/9第三章断章公開


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●とあるマンションの最上階にて
 マンションの最上階にある広くて天井が高い部屋。チェス盤のように白と黒の大理石が並べられた瀟洒な床の上に置かれた特注のソファーの上で体を横たえるのは、このマンションを牛耳る「姫様」である。
「姫様、Dを持ってまいりました!」
 ジュラルミンケースを両手に下げた警備員の服装をした手下悪魔が入口に立って敬礼し、部屋の端に設えられた巨大な立方体のほうに歩いていく。
 警備員が梯子を登り、ジュラルミンケースの中のDを投入口からすべて流し入れると、立方体の上に掲げられている表示板の数字がちょうど1億増える。
「あと少し……妾の悲願が叶うのももうすぐよのぅ……」
 「姫様」は「貯金箱」のデジタル数字を感慨深げに見つめながらつぶやく。

 そして、作業を終えた警備員は姫様の御前に直立し、ご褒美を待ちわびたような物欲しげな顔で主人を見ている。

「ふふふ……其方の飢えた豚のような顔、そそるのぅ。褒美を取らすぞ。ささ、近う寄れ……」
 緊張の面持ちで一歩、二歩と前に出る手下悪魔。すると、姫様の長くて太い「尻尾」が伸ばされ、手下悪魔の体にシュルシュルと巻きついていく。肋骨がギシギシと軋む音。肺が強烈に圧迫されうめき声が漏れるが、表情は恍惚としている。その痛みは彼にとって快楽だった。ご褒美と言いつつ苦痛を与えるのも王道のワルだ。
 そして、妖艶な笑みを浮かべる姫様の尊顔を至近距離で眺められるのも、この「憐れな豚」にとって至福の時間。嗜虐趣味を持つ下僕をいたぶりながら、加虐趣味を持つ「姫様」は高笑いをするのだった。

●グリモアベースにて
「お前らにはこれからデビキンに行って、現金輸送車を襲撃してもらうぜ!」
 グリモア猟兵の切夜緋文(HMDのバトルゲーマー・f32250)は、グリモアベースに集まった猟兵たちに向かって開口一番に言い放った。
「ちょっと切夜さん、唐突過ぎますよ!お集まりの皆さんが呆れた顔でこちらを見ています……」
 椅子にちょこんと座り大人しく緋文の「台座」になっていた美柳真夜(f33205)は、ヘッドマウントディスプレイを脱いでデスクの上に乗せる。
「そんじゃ、真夜、後はよろしく頼む!」
「え?ち、ちょっと、面倒くさいからって私に丸投げしないでよ。もう、これだから切夜さんは……」
 普段通りともいえる緋文と真夜のやりとりを経て本題に戻る。

「あの、えっと……お騒がせしてすみません。詳細は私からお話させていただきますね。実はですね……とあるマンションに住み着いたオブリビオンが大量に集めたDを使ってカタストロフ級の儀式魔術を行う……私たちはそんな予知が見えたんです!」

 デビルキングワールドには、住民が家賃の取り立てを妨害するために、マンションを迷宮のように改造した違法建築物「マンションダンジョン」が数多く存在する。
 そうしたマンションでは通常、大家に雇われた取り立て人がダンジョンを踏破することで家賃を回収しているが、問題のマンションでは、ここ1年は家賃の取り立てが全くできていない状態だという。

「その原因となったのは、住民たちから『姫様』と呼ばれている一体のオブリビオンです」

 1年前、どこからともなくやってきた「姫様」は、その美貌と悪のカリスマ性により住民から崇拝される存在となった。
 そして、彼女の発案で各階に設置されたのが、「関所」と呼ばれる巨大な扉だ。

「関所を通るには、通行料として100万D(デビル)を扉の脇にある『徴収箱』に入れなければいけないそうです。また、扉を破壊すれば大爆発が起こるので強行突破はできません」

 D(デビル)とはデビルキングワールドの統一通貨だ。100万Dはこのマンションの家賃の8ヶ月分に相当する額だという。当然ながら取り立てのたびに通行料を支払っていれば大赤字だ。
 しかも、扉は建物を支える重要な柱の近くに設置されているので、扉を爆発させながら進めばマンションが倒壊してしまう。大家はもはやお手上げ状態だという。

「他人の建物を占拠した上に通行料まで取るなんて無茶苦茶ですが、これがデビルキングワールドなんですよね……」
 要するにオブリビオンのいる最上階まで行くには通行料を支払って通過するしかない。「本当に不本意なことです」と、不服そうにつぶやき、真夜は次の話題に移る。

「これでDが大量に必要なことはわかりましたよね。それで現金輸送車をなぜ襲撃しなければいけないかということですが……」

 それはマンションの住民たちが「姫様」の発案で金融機関などの警備員として紛れ込み、現金輸送車で運ばれてくるDが収納されたジュラルミンケースを掠め取っているからだ。そして、彼らが手に入れた大量のDは「姫様」に上納される。
 元々善良な悪魔が多かったデビルキングワールドでは、他人を簡単に信じてしまう悪魔が依然として多く、稚拙な知能犯でも成立してしまうのが残念なところである。

「……それでも何度も同じことを繰り返せば、犯罪の手口が浸透してきますよね。そこで彼らは最後に、大型商業施設やカジノなどの多額の売上金を運ぶ現金輸送車の出動が集中する日に合わせて偽の警備員を大量動員し、Dを根こそぎ奪う計画を実行することにしたわけです!」

 計画が成功すれば、カタストロフ級の儀式魔術を発動させるに十分なDが集まってしまう。
 とはいえ、少数精鋭の猟兵たちが、善良な警備員の中に紛れ込んでいる偽の警備員を潰して回るのは現実的ではない。
 それならば猟兵たちが先に現金輸送車を襲撃し、敵に盗まれる前にDを根こそぎ奪い取ってしまおうという作戦なのである。
 なんだか無理やり感がある作戦だが、あえて派手な作戦でこの世界の住民に猟兵のワルさを知らしめることも、今後の活動をやりやすくするために必要なのだ。

「一石二鳥、一挙両得の作戦というわけだ。なかなか面白いゲームだろ? ホンモノのワルがどういうものか、腰巾着の悪魔どもに知らしめてやれば、少しは改心するだろうぜ!」
「現実をゲームと一緒にしないでください!」
 唐突に話に割り込んでくる緋文にツッコミつつも、真夜は補足を加える。
「任務の後で徴収箱から回収すれば奪ったDを返すこともできます。まあ、悪魔さんたちはDにそれほど執着してないみたいですし、細いことはあまり気にしないで奪っちゃっても大丈夫ですよ!」
「つーわけで……デビキンにリンクするぜ!」
 ヘッドマウントディスプレイが宙に浮かび、猟兵たちの転移が始まる。
「あ、ちなみに、向こうの世界の現金輸送車には極ワルな悪魔が乗っているようです。気をつけてくださいね!」
 今思い出したと言うように重大な事実を付け加える真夜。凸凹コンビの見送りを受けて猟兵たちは旅立つのだった。


刈井留羽
 こんにちは。新人マスターの刈井留羽です。
 二作目のシナリオは「デビルキングワールド」のマンションシナリオをご提供します。

 第一章では、マンションの最上階でカタストロフ級の儀式魔術の発動を目論む黒幕の野望を阻止するために、目的地につく前の現金輸送車を襲ってDが収納されたジュラルミンケースを奪っていただきます。

 デビルキングワールドの現金輸送車は海外の現金輸送車のような堅牢なトラックで、深夜の公道を一台だけで移動します。警備用の車両はついていません。
 現金輸送車はデビルキング法の影響を受け、銃・重火器で強奪犯を容赦なく殲滅する極ワルな悪魔が乗っているので、本気で戦っていただいても問題ありません。

 既に現金輸送車の出発場所から目的地までのルートは予知され、猟兵達は資料として渡されているため、任意の場所での待ち伏せ、事前の仕込みなどが可能です。
 デビキンなので結構何でもありな感じです。どんな作戦でもノリと勢いで実行すれば、大抵の場合は大丈夫だと思います。

 第一章は深夜の公道や駐車場などが舞台となるため、バイクや車、その他所有する乗り物の持ち込みも可能です。
 第一章及び、第二章、第三章にはそれぞれ断章(導入・補足説明)があります。
 すべての章は断章の投稿後にプレイング受付開始となります。
 プレイング受付状況はタグをご参照ください。
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第1章 冒険 『現金輸送車を奪え』

POW   :    運転手を脅し、車から引きずり下ろす

SPD   :    輸送ルートの死角に潜んでおき、奇襲する

WIZ   :    根回しで協力者を作っておく

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●殲滅戦車
 デビルキングワールドの某所。深夜のハイウェイで、黒塗りの現金輸送車が爆音を響かせながら、法定速度を大幅に上回る速度で激走している。後方には黒いライダースーツで統一されたバイクの一団。その手には鉄パイプやらチェーンやら棘付き棍棒やらが握られ、一部のバイクに付属したサイドカーに乗る者の手にはライフル銃が握られている。彼らは現金輸送車を狙う悪魔たちのチームだ。
 距離はまだあるが、彼らが乗る改造バイクの最高速度は現金輸送用トラックのそれを上回るため、時間ともにぐんぐんと距離が縮められていく。
 サイドカーに乗る射撃手たちが次々に発砲したが、その弾丸はすべてぶ厚い装甲に弾かれ、現金輸送車は全くの無傷だった。

 すると、唐突に現金輸送車の助手席の天井が開き、警備員服を着た屈強な悪魔が上半身を出す。彼が肩に担いでいるのはグレネードランチャー。着弾時に炸裂し、広範囲を攻撃できる「擲弾」を発射する破壊兵器である。
 ライダースーツの男たちは、過剰な威力を持つ兵器に怯んで速度を落とすも、時既に遅し。警備員が打ち出す砲弾が彼らの中心で次々に炸裂し、バイクの一団の前衛が壊滅する。

 しかし、後続の悪魔たちは無傷だ。潰された仲間の弔い合戦とばかりに士気があがり、サイドカーの狙撃手が破れかぶれに発砲を始める。
 すると、唐突に、現金輸送車の平坦な屋根の上で黒い影が二体、ムクリと起き上がる。暗色の布を被って潜んでいたブギーモンスターたちだ。
 彼らの傍らにはどこに隠されていたのか、固定式のガトリング砲があった。ガガガガガッ。砲身が高速で回転し、派手な銃撃音とともに大量の弾丸がバラ撒かれる。
 さらに荷台の左右の鎧戸が開き、顔を出す2体のブギーモンスター。彼らの手には狙撃銃が握られており、後方の敵狙撃手を次々に無力化していく。

 こうして、深夜のハイウェイは炎と硝煙と悪魔たちの叫喚の声に包まれ、黒塗りの現金輸送車は目的地に到着するのだった。


 デビルキング法の施行によって悪事が奨励されるようになったこの世界では、他人の所有する通貨Dを強奪する迷惑行為がトレンドとなっていた。
 それは過激化の一途を辿り、最近では現金輸送車を集団で襲う強奪チームが増加している。
「現金輸送車から力づくでDを奪っちゃうオレたちって激ワルだぜ! カッコイイだろ!」 
 要するにそんなノリである。そんなわけで、デビルキングワールドの現金輸送車の警備体制は襲撃の増加とともに強化され、現在ではその過剰な防衛ぶりから「殲滅戦車」と呼称されるようになったのである。
シエナ・リーレイ
■アドリブ可
強盗をしないといけないの?とシエナは困惑します。

その有り方故に自発的に悪事をする事に抵抗のあるシエナ、悩んだ末に『怪我人を治療してお礼としてお金を貰う』事を思いつきます

大丈夫!?とシエナは慌てて駆け寄ります。

猟兵の襲撃により輸送車が止まるのを見計らい輸送車に駆け込んだシエナ、怪我をした乗組員に鎮痛剤を飲ませると応急処置を施してゆきます
そして、一通りの治療を終えたシエナは必要最低限の治療費を頂くと痙攣する乗組員達を他所に揚々と去るのでした

あれ、なんで鎮痛剤があるの?とシエナは首を傾げます。

尚、シエナは治療の際に鎮痛剤と髑髏マークな魔法のお薬を間違えている事に最後まで気づきませんでした



●鎮痛剤
 深夜のサービスエリア。そこは現金輸送車が立ち寄ることが予知されている「襲撃」スポットだ。
フードコートの飲食スペースに猟兵たちが集まり、襲撃計画の確認をしている。彼らの席から少し離れた席に一人で座るシエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は浮かない顔をしていた。
「強盗をしないといけないの? とシエナは困惑します」
 依頼を引き受けたものの、シエナは人様のものを強奪することに抵抗があった。
 シエナは「呪殺人形」だった自分を死の瞬間まで愛してくれた少女・ジュリエッタの遺志を受け継いでいる。
 優しくて思いやりのある彼女が生きていたら、絶対に悪事に手を染めたりはしない。シエナはそのことを確信しているが故に、思い悩んでいるのだ。

 しばらくの間、困り顔で思案していたシエナは、ようやく一つの方法を思いつく。
「怪我人を治療したお礼としてならお金をもらってもいいよね! とシエナはひらめきます」
 そして、我ながら完璧な計画だと、シエナは何度もうなずく。
 なんだか依頼の趣旨から相当ズレているようだが、そんなことは彼女にとっては瑣末事だ。悪事を働かなくて済む方法を思いつき、憂いがなくなったシエナは、無邪気に微笑むのだった。


 正面からの派手な戦いを好む猟兵たちで編成された部隊は、サービスエリアの駐車場に入ってきた現金輸送車を襲撃する作戦を立てた。
 現金輸送車には、銃や重火器が大量に積まれている。戦闘では、それに対抗するためにまず遠距離から攻撃し、可能ならば各自、接近戦を挑むという方針だ。
 一般の悪魔を巻き込まないように、猟兵たちは事前に入口付近のエリアの人払いを実施し、万全の態勢を整える。
 そして、作戦決行の時間となり、何も知らずにサービスエリアに入ってくる黒塗りの現金輸送車。
「攻撃開始!」
 部隊の猟兵の一人が号令を出すと、メンバーの一人が盛大な攻撃魔法を見舞う。
 すると、大地が激しく振動し、輸送トラックが横転する。
 トラックの運転席から出てくる屈強な二人の悪魔。彼らの手には、グレネードランチャー。
 警備のために乗り込んでいたブギーモンスターたちもわらわらと飛び出し、アサルトライフルを構えて応戦し、銃撃戦が始まる。
 そして、激しい銃撃戦の最中、トラックの中に潜んでいた一体のブギーモンスターがこっそりと出てくる。その手には大きなジュラルミンケースが2つ。
「そこっ、逃さんぞ!」
 猟兵の一人がそれを見つけ、遠距離から矢を放つ。
 それはブギーモンスターの男の太腿を貫通し、彼は悲鳴を上げて倒れた。激痛で立ち上がることができず、地面に倒れ伏した男はなんとか這って移動し、横転した現金輸送車の後ろに身を隠す。
 そこには彼と同じように敵の攻撃で負傷した仲間が何人も横たわっていた。
「もうだめだ……」
 ブギーモンスターの男は絶望し、思わず弱音を吐く。
「大丈夫!?」
 そこへ駆け寄ってきたのは「戦場」には場違いの可憐な少女。それは戦闘に巻き込まれないように、隠れて様子をうかがっていたシエナだった。
「……うぅ……お嬢ちゃん。こんなところにいちゃあ、危ねえぜ!」
「……わたし、看護学生なの。この怪我、痛いよね……応急処置します? とシエナは心配そうに尋ねます」
「応急処置か……ありがてぇ……俺はまだ大丈夫だから仲間を先に手当してくれ……」
「でも治療費と引き換えだよ。お金貰わないとわたし、先生に怒られちゃうから。とシエナは困り顔をします」
「うぅ……そうか、治療費……ああ、Dならそこに大量に……」
 ブギーモンスターはうわ言のようにつぶやきながら、少し離れたところに落ちているジェラルミンケースを指差す。無事交渉が成立(?)し、救助活動と医術の心得のあるシエナは、負傷した悪魔たちに鎮痛剤を少しずつ飲ませながら、手際よく応急処置を施していく。
 そして、シエナがすべての悪魔に応急処置を施し終えると、最初の男が涙ぐみながら感謝の言葉を紡ぐ。
「うぅ……大分マシになったぜ……お嬢ちゃん……ありがとな……」
「はい、これ鎮痛剤だよ。残り少ないから一度に全部飲んでね! とシエナは満面の笑みを浮かべてよく効く鎮痛剤を手渡します」
 瓶の中の鎮痛剤を一気に飲み干す男を見届けると、シエナはすぐさま踵を返し、少し離れたところにあるジェラルミンケースの前まで移動する。
「あれ? この世界の通貨ってどのくらいの価値なのかな? う〜ん、必要最低限でいいんだけど……とりあえずこれを全部持っていけば足りるよね。とシエナはジュラルミンケースを一つ持っていきます」

 そんなこんなで、正当な対価(?)としてジュラルミンケースの中の大量のDを治療費として受け取り、意気揚々と去っていくシエナ。
 ふと、ポケットの中に鎮痛剤の瓶があることに気づく。背後では「髑髏マーク」のラベルのついた魔法のお薬を飲んだ男が全身を痙攣させながら泡を吹いていたが、全くシエナは気づいてはいない。
「あれ、なんで鎮痛剤があるの? とシエナは首を傾げます」
 少し考えて同じ薬を間違えて2つ持ってきちゃったのかなと、シエナは納得するのだった。

 ちなみに、彼女が手当していた悪魔たちは「鎮痛剤」がトドメの一撃となり、そのまま昏睡状態に陥る。彼らは頑丈な悪魔なので死ぬことはないが、当分は目を覚まさないだろう。
 そして、目を覚ましたときに、彼らは仲間たちに得意顔で語るのだ。見かけで判断するヤツは三流のワルだ、かわいい顔して無自覚のワルこそ、ワルカッコいい最凶のワルなのだと。
 当然、シエナは自分が悪魔たちに密かに尊敬の念を抱かれていることを知らなかった……。

成功 🔵​🔵​🔴​

藤間・宗一郎
「これも仕事のうちってやつだ。全部いただいてくぞ」
SPDを選択
輸送ルート近辺でキャバリアに騎乗し待機
輸送車が近づいたら不意を突いて襲撃
UCを使用して自分とキャバリアで攻撃しつつ別方向から自身でも攻撃
前衛をキャバリアが行い、自身が射撃でそれを援護する
挟み撃ちを行い確実に制圧
沈黙したところでキャバリアで現金を持てるだけ持ち、早々に退散する
アドリブOK



●待ち伏せ
 公道に面した寂れた雑居ビルの裏手の空き地は閑散としていた。このあたりは深夜の人通りは一切なく、邪魔は入ることはないだろう。ティラノサウルス型のクロムキャバリア・『クロムレックス』に搭乗した藤間宗一郎(マシーナリーノーマッド・f32490)はビルの陰に隠れ、標的が来るのを待ち構えていた。
 彼は輸送ルートを通過する現金輸送車を待ち伏せし、不意を突いてキャバリアで襲撃する計画のようだ。まさに正攻法といえる作戦だ。
 とはいえ、現金輸送車には武装した悪魔たちが警備に当たっているとの情報がある。キャバリアに搭乗しているとはいえ、一筋縄ではいかないだろう。
 そのことは宗一郎も十分承知だ。彼はより確実に敵を制圧する策を用意しているのだった。

●巨大な影
「ふぁあ……それにしても今夜は退屈だな……こう暇だと眠くなっちまうぜ」
「そうっすね。グレネードをぶっ放すと、眠気もスカッとするんすよね。今日も身の程知らずなヤンキーどもが襲って来るといいんすけど……ふわぁぁ……ホントぉ……退屈過ぎて眠くなりますね」
「おいおい、運転手が寝るなよ。ほら、ガムでも喰うか?」
 深夜の公道を走る現金輸送車の中では、助手席の先輩悪魔と運転手の後輩悪魔との間で平和な日常会話が行われていた。 
 彼らは数多の強奪犯を殲滅してきた百戦錬磨の警備員たちだ。荷台のコンテナの中には大勢のブギーモンスターたちが控えており、迎撃態勢はすっかり整っている。
 今日も襲撃犯は彼らに一掃される……はずだった。

 最初に異変を察知したのは、助手席の屈強な男だった。
「おい、アレ……なんだ? 怪獣……じゃねぇよな」
 道の先にあるビルの背後から、ヌッと突き出した巨大な影。
 その頭部は紛れもなく、肉食恐竜のものだ。運転手は怪訝な顔で正面に目を凝らす。
「先輩……寝ぼけてんすかぁ……え?あれは……Tレックス!?」
 突然、道路の真ん中に飛び出した巨大な影に驚き、急ブレーキを踏む運転手。
 間一髪、正面衝突を回避したものの、隠れ恐竜マニアの運転手は、ただ車の中から巨大な影をぼんやりと見上げる。
 シルエットはTレックスのものだが、近くで見ると車のような硬質なボディ。機械の体と恐竜の躍動感が頭の中で結びつかず、彼らはしばしお互いの顔を見合わせ、沈黙する。
 すると唐突に恐竜が横を向く。ドゴォォン。大きな破砕音とともに車体が「巨大な尻尾」に薙ぎ払われ、横転する輸送トラック。
 ゴロゴロと何度も天地が入れ替わり、逆さまの状態で止まった運転席の中で、二人の悪魔はお互いの無事を確かめ合うと、銃器を持って外に飛び出す。
「……とにかく、こいつは敵だ。殲滅するぞ!」
 リーダー格の悪魔の号令で、荷台のコンテナに待機していた大勢のブギーモンスターたちも飛び出し、今まで出会ったことがない「異質な敵」に立ち向かうのだった。 

●制圧
「うまく行ったようだな……だが、少し派手にやりすぎたか」
 ユーベルコード・『リモート・レプリカント』で遠隔操作したクロムレックスがアイアンテイルを振り回し、現金輸送車が派手に転がる様を物陰から見ていた宗一郎は、苦笑いを浮かべる。
 ほどなくして車から悪魔とブギーモンスターがわらわらと飛び出してくる。運転席にいた警備服を着た悪魔が2体。暗色の布を被ったブギーモンスターが10体。現金輸送車を無力化したため、車載の固定式ガトリング砲は使えない。それでもブギーモンスターたちはアサルトライフルを首から下げたまま手榴弾を投げ、警備服の悪魔は肩に担いたグレネードランチャーで応戦する。 
 グレネード弾と手榴弾が次々とレックスの装甲に着弾し、炸裂していく。爆発音と装甲板が軋む音。それを聞いた宗一郎は思わず顔をしかめる。
(アイツら、死ぬほど武装してんな……あのまま攻撃されたらレックスの装甲が持たねぇぜ)
 意を決した宗一郎は遠隔操作でレックスのアイアンテイルを激しく振り回し、敵の注意を正面に引きつけながら、アサルトライフルを構えて突撃する。
「こっちにもいるぜ!」
「うげっ!」
「うがっ!」
「うごっ!」
 背後を突かれたブギーモンスターたちは態勢を立て直す前にアサルトライフルの銃撃を受け、次々と倒れていく。
 一体、二体、三体……五体目まで無力化したところで、前衛のブギーモンスターたちが振り向き、一斉にアサルトライフルを構える。5対1。5つの銃口を向けられた絶対絶命のピンチに、宗一郎は不敵な笑みを浮かべる。
「お前ら、俺に気を取られすぎだろ……」
 手榴弾の攻撃が止まり、反撃の好機を得たレックスがグレネードランチャーを持つ二体の悪魔を蹴散らし、ブギーモンスターたちの上に倒れ込んだ。単純明快なボディプレス。1トンは優に超えるキャバリアに押しつぶされれば、頑強な悪魔といえどもひとたまりもない。
「ぷぎゃん!」
 ちょっとかわいらしい声を上げながら、泡を吹いて気絶するブギーモンスターたち。彼らは先に倒された仲間と同様、朝まで目を覚まさないだろう。
 これにて制圧完了。警備の悪魔たちを全員蹴散らした宗一郎は悠々と戦利品を回収し、キャバリアに積み込んでいく。 
「1、2、3、4、5……これで全部か。悪いな。これも仕事のうちってやつだ。全部いただいてくぞ」
 輸送車に残されていたジュラルミンケースをすべて積み込むと、宗一郎は騒ぎになる前に早々に退散するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

徳川・家光
「強盗といえば騎馬強盗だと、UDCアースの古い映画(僕からすると新しい)で見たことがあります。ハイヤー、火産霊丸(ほむすびまる)!」
 そういって、火産霊丸を召喚し、ロデオ馬のようにアクロバティックな乗馬術(技能あります)で、予定ルートの曲がり角で輸送者が減速した所を見計らって並走し、左手の羅刹伽藍手(ガントレット)で、横の壁をガンガン叩き続けます! この攻撃は、壁をへこませるだけで、決して有効打というわけではありません。でも、本当の目的は、予定進路の端を進ませる事により、タイヤにダメージを与える悪路(尖った側溝など)を進ませる事です。僕の番でなくても、そのうちいずれタイヤがバーストするでしょう



●上様見参!(生放送お疲れ様でした!)
深夜の公道。現金輸送車の輸送ルートに待ち構えているのは、なんだかキケンな匂いがする男・徳川家光(f04430)だ。
「強盗といえば騎馬強盗だと、UDCアースの古い映画(僕からすると新しい)で見たことがあります。ハイヤー、火産霊丸(ほむすびまる)!」
 まるでお茶の間で視聴者が見ているかの如く博識を披露しつつ、家光が呼び出したのは、体長3メートル43.2センチもある白馬。しかもそれは驚くべきことに、全身がバーニングしているのだ。
 これ、乗物だよな。すごく燃えてるけど、上様、大丈夫かな。そんな心配の声も聞こえて来そうだが、家光はものすごい後光(オーラ)を出すことができる。騎乗スキルもすごい。しかも一国一城の主としての「覚悟」も常人のそれを遥か凌駕するすごさなので、馬が山火事のように炎上していても全然平気なのである。
 なんだか語り手のテンションがおかしくなっている気もするが、とにかく家光はすごいので燃える馬でも平然と乗りこなすというわけだ。

 そして、ようやく現金輸送車が予定のルートの曲がり角に差し掛かり減速すると、将軍、徳川家光の出陣と相成ります。
 
 公道を走る現金輸送車に、猛然と並走しているのは燃える白馬に乗った家光。
 それをサイドミラー越しに目撃した助手席の警備員悪魔は目を疑った。
 炎上する馬を平然と乗りこなすのは角の生えた男。しかも、馬は騎乗者を振り落とそうと、ロデオ馬のように後ろ足を激しく蹴り上げ、グワングワンと縦に体を揺らしながら走っている。
 それは百鬼夜行から離脱した一匹狼の極ワル妖怪のようにも見えなくもない。
「アイツ、ぜってー、やべー奴だよ。ミラー越しでも目を合わせるんじゃねーぞ。呪われるぞ」
「は、はい、そ、そうっすね……ガタガタガタ……」
 運転手はガタガタと体を震わせ、歯をガチガチと鳴らしはじめる。彼は悪魔のくせに妖怪変化の類が苦手なのである。
「おめー、運転手のくせにビビってんじゃねーよ、お、俺も怖くなって来ちまったじゃねーか……ガタガタガタ……」
 助手席の悪魔もつられて震えだす。荷台のコンテナには警備のブギーモンスターたちが乗っているが、彼らもお化けは苦手らしく、監視用の車載カメラの映像を見てみんなでガクブルしていた。
 
 そして、家光はおもむろに羅刹伽藍手(ガントレット)で荷台のコンテナの側面を激しく叩き出す。
「「「ひぃぃぃっ!」」」
 現金輸送車に乗る悪魔たちが一斉に悲鳴を上げ、運転手がハンドルを大きく切った。

 公道の路肩にはみ出し、そのままタイヤの側面が歩道との境界ブロックにぶつかり、激しく擦られる。
 再びハンドルを切って車道に戻すも、ガンガンガン。再びハンドルを切って路肩にはみ出す。車道に戻す。ガンガンガン。路肩にはみ出す。車道に戻す。ガンガンガン……これを延々と繰り返しているうちに、現金輸送車は自然と路肩の悪路をばかりを走ることになる。
 
 実はこの世界の路肩はキケンが一杯なのである。タイヤが嵌りやすいように蓋が空いた側溝。トラップのように落ちているガラス片や金属片。壊れかけの側溝の蓋は補修されないままギザギザに尖っている。
 そんなわけで悪路を走り続けた現金輸送車のタイヤの消耗は加速度的に進んでいくのだった。

 ガンガンガン。ガンガンガン。ガンガンガンガン、ガンガンガン。やってるうちに楽しくなってきたのか、コンテナの側面を三三七拍子のリズムでノリノリで叩き続ける家光。
 輸送車内はホラー映画ばりの大絶叫だ。運転手に至っては既に漏らしてしまっている。
 そして、唐突に前輪左側のタイヤがバースト。現金輸送車は車道の中央でスピンしながら停止し、悪魔たちが車を捨てて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「ひぃぃぃ!Dならいくらでも差し上げますんで勘弁してください!」
 炎上する馬に乗って見下ろす家光と目が合った悪魔の一人はそう叫んで逃げていく。
「うむ。そうさせてもらおう」
 上様は作戦が成功して御満悦。爽やか過ぎるスマイルを見せてくれるのだった

成功 🔵​🔵​🔴​

エーテル・エトワール
D強盗ねぇ。本気の演技見せてやるぜ?
(SPD・アドリブ歓迎)
スタントマン並の名演技で輸送車の前に飛び出す!
「うわぁぁぁぁぁ骨がァァァ!!内臓がァァァ!!」
とか大声出せば車から降りて来るだろ。一ミリも怪我してないけどな!
降りなくてもあらかじめ赤いペイントしといた身体を起き上がって見せればビビるはずだぜ?
ついでにUCで警備の悪魔どもに瞳をギラつかせながら運気を奪う!
悪霊なりたてみたいな風貌の俺から逃げる時はDなんか忘れちまうだろう。ついでに不運になって呪われたように思え!
Dの入ったドアいい感じに歪んでるぜ。色々襲撃受けた跡なんだろうな…ンじゃ、ありがたく轢いた分賠償金頂くぞオラァ!!※轢いてない



●狡猾な作戦
 今回の依頼はデビルキングワールドの現金輸送車から現地通貨Dを強奪すること。要するに他人のものを力づくで奪うということだ。いくら悪事が推奨されている世界であるとはいえ、犯罪行為に忌避感を示す猟兵が多い中で並々ならぬやる気を見せてる男が一人いた。
「D強盗ねぇ。本気の演技見せてやるぜ?」
 狡猾な作戦を思いつきニヒルな笑みをこぼすのは、魔界盗賊のエーテル・エトワール(二十の流星・f33307)である。
 とはいえ、この作戦には準備が必要だった。それで彼が訪れたのはとあるホームセンター。エーテルは真っ赤な絵の具、いわゆる「ポスターカラー」を大量に購入する。これが作戦にどう生かされるのか、お楽しみである。

 深夜の公道を走る現金輸送車。
 今日も助手席に乗るイケメン風の悪魔が自慢話に花を咲かせている。
「いやぁ、まさかあの女が俺のファンだとはなぁ。泣く子も黙る激ワル警備員はやっぱ女にモテるよなぁ。まあ俺がイケメンってのも理由だろうけどな!」 
「そ、そうっすね。先輩はカッコいいっすからね〜(また始まったよ。コイツ、うぜぇ……)」
 運転席の気弱な後輩は、内心で悪態をつきながらも適当に相槌を打つ。
 これが彼らの平和な日常だ。今日も襲撃もなかった。そもそも彼らは安全なルートを任されているため、ここ二週間ほどは目立った襲撃はない。それでも彼らは大満足だった。彼らはスリルと闘争を求めるタイプではない。激ワル警備員ってカッコイイよな。女にモテそうだから現金輸送車の警備でもするか。そんな軽いノリで現金輸送車に乗っている志低き者たちなのだ。
 ついでに荷台のコンテナに控えるブギーモンスターたちも似たようなマインドの悪魔たちだった。

 そんな平和主義な小心者集団が乗る現金輸送車に、災難が訪れる。
 カーブに差し掛かり減速する現金輸送車。異変が起こったのはカーブを曲がった直後、速度を上げ始めたときだった。
 突然、何の前触れもなく、車の前をよぎる黒い影。
「うわっ!」
 運転者は咄嗟に急ブレーキを踏むが間に合わない。ドガシャン。派手な衝突音を立てて何かがぶつかり、正面に吹っ飛んだ。
 フロントガラスには真っ赤な血のようなものが人型に付着している。まるで全身から大量出血しているような血の量だ。 
 顔面蒼白で半べそをかく運転手。助手席の男も青白い顔で引きつった笑みを浮かべている。
「お、お前、や、殺っちまったなぁ……オレ、知らねーぞ。運転手はお前だから、オレは関係ねー。お前が責任取れよな。あ、そうだ……オレ、今日、腹痛で途中で降りたことにするわ……」
 完全に責任転嫁モードに入るイケメン風悪魔。運転手は彼の胸ぐらを掴んで涙目で睨みつける。
「あんたなぁ……男じゃねぇよ!ちょっと女にモテるからって、いつもいつも調子にノリやがってぇえ!ここで逃げるつもりなら、その前にオイラがあんたに引導を渡してやる!」
 腰のオートマチック拳銃に手をかけながらキレ散らかす運転手。ビビり散らかすイケメン風悪魔。
「わ、わかった。オレが悪かった……責任はみんなで取るってことで……いいよな?」
 そんなこんなで今回の事故は連帯責任ということで決着がつき、とりあえずみんなで「被害者」の様子を見に行くこととなった。

 フロントライトに照らされる路上。倒れているのはまるで頭から真っ赤な絵の具を被った(実際に被ってる)ように、鮮やかな赤に染まる男。二人はその姿に絶句する。あーあ、これは死んでるよ。二人がそう思った矢先、男は派手な声を上げてもがき出した。
「うわぁぁぁぁぁ骨がァァァ!!内臓がァァァ!!」 
「い、生きてるな……」
「生きてるっすね……」
 安堵する二人。ブギーモンスターたちからも安堵のため息が漏れる。それにしても声デカイな。案外元気そうじゃん。安堵感からそんな声も上がるが、とにかく救助しなくてはと、タンカを取りに行くブギーモンスターたち。
 そして、みんなで仲良く被害者を取り囲み、運転手とイケメン風悪魔が代表して声をかけることとなった。
「お、おい大丈夫か?」
「大丈夫っすか?」
 声を駆けながらうつ伏せに倒れている男をとりあえず仰向けにすると、息を呑んで静止する二人。
 真っ赤な血に染まった顔はゾンビのように生気がなかったが、金と銀のオッドアイが輝き、鋭い眼光でギロリと睨まれる。
「「「ひぃぃぃ!」」」
 あまりの不気味さに悲鳴を上げた一同は、既にエーテルの術中にハマっていた。
 ユーベルコード・奪守護星雲(スティール・ラック・スター)。その効果は戦場の敵全員の守護星を奪うことで不幸を与え、奪った不幸を自らの幸運へと変換するというものである。
 つまり、どう転んでもエーテルの勝ちは確定したようなものだった。

「ひでぇ血だな……どこを怪我してんのかまるでわかんねぇぜ!」
「そうっすね。とりあえずこのまま運べばいいんじゃないっすか……どうせ病院に連れて行くんすから」
 全身に絵の具を被ったように(実際に被ってます)、血まみれの男のグロい傷を見たくないので、なおざりな判断する悪魔たち。エーテルはタンカに乗せられて荷台のコンテナの中へと運ばれ、ブギーモンスターたちと移動することになった。

 そして、エーテルを乗せて移動する現金輸送車の運転席。
「なあ見たか?アイツの顔……目がギラギラ光ってたぜ……なんかヤベー奴、拾っちゃったんじゃね?オレ、さっきから寒気すんだけど……まさか呪われてたりしねーよな……」
「お、オイラも同じこと……今、考えてたっす……」
 真顔で身震いをするイケメン風悪魔と運転手。
 そして、人通りの少ない交差点を通過しようとしたとき、異変が起こった。
 ドガシャーン。現金輸送車のコンテナに、横から衝突する輸送トラック。幸い、双方とも大した破損はなかったものの、反動でスピンしたトラックの荷台から、真っ黒な鶏が大量に飛び出してくる。
 その数、200羽。通称「ブラックチキン」と呼ばれる食肉用の鶏は、出荷される間際の最後の抵抗のように逃げ出し、悲鳴のような鳴き声を発しながら暴れまわる。
「もうだめだ……オレたち完全に呪われてるぜ……ガタガタガタガタ……」
「あああぁあああ!」
 震えだすイケメン風悪魔。運転手の悪魔は発狂し、黒い鶏の海となっている路上に飛び出し、そのままどこかに走り去った。
 荷台でも監視用のカメラの映像を見ていたブギーモンスターたちが震え出す。
 そんな混乱の最中、怪我人のふりをしていたエーテルがムクリと起き上がり、奇声を上げる。
「お前らを……呪い殺してやるぞぉおおお!」
「「「ひぃぃぃぃ!」」」
 ブギーモンスターたちは荷台から飛び出だして、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。その後を追うように運転席に残されたイケメン風悪魔も逃げていき、車内に残されたのはエーテルただ一人。

「……ンじゃ、ありがたく轢いた分の賠償金頂くぞオラァ!!」
 計画が成功したエーテルが、いろいろおかしなことを言い出してるが、それをツッコむ者は誰もいない。彼は不吉な黒い鳥が暴れまわる公道を、戦利品のジュラルミンケースを持ち、悠々と去っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アテナ・カナメ(サポート)
『燃える正義の炎!アテナマスク見参!』
私はアテナマスク!本名は秘密!仮に中の人の名前を逆読みにしてアテナ・カナメと名乗っているわ! 
ヒーローマスクのサイキッカー×スーパーヒーローよ!私に肉体を貸しているのは要・宛那!18歳よ!
 私の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、私の中の人、宛那の口調は「(わたし、あなた、呼び捨て、です、ます、でしょう、ですか?)」よ!

誰にも迷惑はかけず正義のために活動するわ!どうかよろしくね!


大豪傑・麗刃(サポート)
まじめなこと『だけ』はやりたくないのだ!
いかなるシリアスな場面でも最低一か所はネタを挟みたい。ダジャレ、奇怪な言動、一発ギャグ、パロネタ、メタネタ等何でもよい。ただまあ一応状況をちゃんと前進させる意図はあるので、状況が悪化するような行為は……本当に悪化するならやらない。一見悪化するけどネタとして許されるならむしろやりたい。場合によってはギャグを『変態的衝動』に繋げて身体能力を強化し無理やり状況の改善を狙う事も。

あまりに超どシリアスな雰囲気のためギャグなんか絶対に許さないとMSが判断するのなら、シリアスオンリーも一応できなくはないが、その時は頭痛が痛くなるのだ(強調表現としての二重表現肯定派)。



●ヒーローショー
 深夜のサービスエリアに設置された特設ステージ。ステージには「ヒーローショー」の横断幕が掲げられ、ステージ脇では「観覧無料」と書かれたのぼり旗がたなびいている。
 夜間照明でライトアップされた舞台。その正面には長椅子が並べられ、即席の観客席も設置されていた。
 座っているのは、休憩のためにサービスエリアに立ち寄った現金輸送車の運転手と警備員たちである。
   
 現金輸送車を襲うことに忌避感を示したアテナ・カナメ(アテナマスク・f14759)と、まじめなこと『だけ』はやりたくないという反骨精神(?)の持ち主、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)。この二人が立案したのが、無料のヒーローショーを催し、警備員たちを引きつけている間に、仲間の猟兵が現金輸送車からDを持ち出すという作戦だ。この作戦なら誰も傷つけずに目的を達成できる。正義のスーパーヒロインのアテナも協力できる妥協案だった。
 
 こうしてヒーローショーの舞台の幕が上がり、舞台の中央には警備員服を着た要宛那が心細げに立っている。
 すると、ナレーションを担当するイケメンボイスの猟兵、通称「イケボ猟兵」による状況説明が始まった。

――要宛那、18歳。悪のスーパーヒロインとして日夜活動する彼女は、今日は警備員に扮装し、最近、深夜の公園に出没しているという、正義の怪人『タカアシガニ男(おとこ)』の調査をしていた。
 
「ほ、本当にここに正義の怪人がいるのでしょうか。私、こういうひと気がないところ、苦手なんです……」
 小さく身震いをしながら、あたりをキョロキョロと見回す宛那。すると、麗刃が演じる怪人・タカアシガニ男(関西弁キャラ)が両手を翼のように動かしながら、つま先立ちで歩いてくる。観客席からどっと笑いが起こる。
 麗刃の頭にはカニを模した被り物。体には真っ白なバレリーナの衣装(チュチュ)を身に着け、その股間からは白鳥の首が伸び、胸には「高足」と書かれた名札がついている。完全なる出オチである。
 麗刃が舞台の中央に到着すると、宛那は腰を抜かし、悲鳴を上げる。
「キャー! 変態です! 変態がいます! 警備員さーん!」
「『警備員さーん』って、警備員はきみやろ! なんでやねん!」
 すかさずツッコミを入れる麗刃。宛那は照れ笑いを浮かべながら、頭をポリポリとかく。
「あっ、そうでした……私が警備員です! ええと、とりあえず職務質問でもしましょうかね?」
「ギクッ! し、職務質問できるのは警察官だけとちゃいますか?」
「警備員を馬鹿にしないでください! 警備員だって職務質問くらいできますよ!」
 警備員を代表するように胸を張って断言する宛那。客席の警備員たちからも、「そうだ、そうだ!」と共感の声が上がる。そんなこんなでタカアシガニ男の麗刃は押し切られ、職務質問が始まった。
「では、さっそくお聞きします。服に『名札』がついてますが、それは名字ですよね。ええと、『こうそく』さんでよろしいでしょうか?」
「なんでやねん! どう見ても『たかあし』やろ!」
 思わずツッコんでしまい、慌てて口を手で塞ぐ麗刃。だが、宛那は感心したように頷くだけだ。
「ほうほう、その漢字って『たかあし』って読むんですね。ではお名前は?」
「ガニオやで……」
「タカアシ、ガニオさん! 素敵なお名前ですね。それでは次はご職業をお聞きしましょうか?」
「正義の秘密結社……あっ、ゲフン、ゲフン。職業はバレリーナやで!」
 本当のことを言ってしまい、麗刃は慌てて咳払いでごまかすが、宛那の耳には届いていた。
「はい、正義の秘密結社の……バレリーナですね。わかりました。ご協力感謝します!」
「そこ、スルーすんのかい!」
 腰を前後に振り、股間の白鳥を揺らしながら軽快にツッコむ麗刃に、会場も大笑いである。
 そして、宛那はようやく何かに気づいたように、手帳から顔を上げる。
「はっ! カニの被り物、タカアシガニオ、正義の秘密結社。これは!」
「ドキッ!」
「……どういうことなんでしょうか?」
 首を傾げながら尋ねる宛那に、麗刃は盛大にズッコケる。
 そして、タカアシガニ男の麗刃は立ち上がり、警備員の宛那に向かって正体を告げる。
「もうやってられへんわ。わいが噂のタカアシガニ男や! 知ったからには覚悟はできてるんやろな!」
「まさか……当然、私は最初からわかっていましたよ!」
「嘘つけ! 最初に『まさか』って、言うとるやんけ!」
 慣れない関西弁での台詞を最後まできっちりと決めた麗刃は起爆の合図を舞台袖へと送る。
 すると、舞台上で突然起こる小さな爆発。それとともに舞台に白いスモークがモウモウと立ち込める。
 客席からざわめきが起こる中、スモークが晴れて舞台上に現れたのは、タカアシガニの着ぐるみを身につけ、ソードを手に持った麗刃と、ヒーローマスク装着し、ヒーローコスチュームを身に着けたアテナ・カナメだ。
「お……お前は!」
「この世に正義が栄えた試しなし。燃える悪の炎。アテナ・マスク見参!(悪と正義が逆だと、なんだか調子が狂うわね……)」
 スーパーヒロインらしく名乗りを上げ、セクシーでキュートなポーズを決めるアテナ。客席から大歓声が起こり、よようやく「ヒーローショー」の本編が始まる。

 タカアシガニ男がソードを振るい、アテナは連続バック転でかっこよく躱す。さらにアテナは大きく跳躍し、前方宙返りで勢いをつけ、そのまま空中でキックを放つ。それをまともに喰らい、後方に倒れるタカアシガニ男。
 ぐぐぐと、歯を食いしばり、なんとか立ち上がったタカアシガニ男は、不敵な笑みを浮かべる。
「小手調べはこれで終わりなのだ!」
 気合いを入れ、隠していた力を解放するタカアシガニ男。
 これをきっかけにアテナは次第に劣勢に立たされていき、唐突にイケボ猟兵による熱のこもったナレーションが降ってくる。

―――圧倒的な力を持つタカアシガニ男にジリジリと追い詰められていくアテナ。渾身の飛び蹴りもあっさりと躱され、タカアシガニ男は勝ち誇ったように笑う。苦戦し、息を切らすアテナ。絶体絶命のピンチだ。だが、アテナはどんな苦境に立たされても諦めない。なぜなら彼女は「悪」のスーパーヒロインなのだから!

「うおおおおお! アテナ! アテナ! アテナ!」
 観客席もヒートアップし、アテナコールが響き渡る。
「もうこうなったら、一か八かの必殺技よ!」
 ユーベルコードを発動し、炎の鎧を纏うアテナ。
「ウルトラスペシャル、デンジャラス、ファイアーキック!!」
 それっぽい必殺技名を叫び、アテナは炎を纏ったまま高く飛翔し、ドロップキックを放つ。それはタカアシガニ男の着ぐるみの体を直撃し……燃え上がった!
「あちあち!」
 炎上する着ぐるみを着たまま、舞台上を駆け回る麗刃。大爆笑の観客席。着ぐるみの内側には耐火服が仕込まれている。それは予定通りの行動だった。
 ところが、想定外のことが起こる。突風が吹き、飛び散った火の粉が舞台の塀に引火したのだ。山火事のように燃え上がる舞台。唖然としつつも舞台を降りて避難誘導に当たるアテナ。炎の中を元気に走り回る麗刃。
「これ、ヤベーんじゃね?」
「早く逃げようぜ!」
「案外面白かったのに、こいつらただの馬鹿だぜ!」
 非難の声が観客席から漏れ、観客からブーイングの嵐が起こり始める。そんな険悪な空気を察した麗刃が取った行動は……。

「だめだこりゃ!」
 
 地面を蹴って高く跳躍し、自爆する麗刃。爆風によって瞬時に消化される炎。「爆発オチなんてサイテー」との声が漏れつつも、麗刃の機転によって大惨事は免れ、怪我人が出ることはなかった。
 そして、彼らの作戦は成功し、現金輸送車に積まれていた大量のDを入手したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『デビルセキュリティ』

POW   :    叩き出す
【直線的な】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    作戦タイム
予め【今後の行動について仲間と相談しておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ   :    凶悪な仲間
【敵味方の区別なく暴れまわる仲間】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●デビルセキュリティ
 現金輸送車から強奪したDを持ってマンションに乗り込む猟兵たち。
 彼らは入手したDを使って『関所』を次々に突破し、マンションダンジョンを順調に進んでいく。
 ところが、唐突に警報音が鳴り響く。ほどなくして、館内放送が始まる。

「マンション内に賊が侵入し、最上階へ向かっている。見つけ次第、排除せよ! 見つけ次第排除せよ!」

 切迫した声を合図に自室から次々と飛び出てくる警備員の服を着た悪魔たち。彼らは「デビルセキュリティ」と呼ばれる警備員悪魔たちだ。
 猟兵たちが現金輸送車からDを強奪したことで計画が頓挫し、その原因を調べた結果、猟兵たちがマンションに侵入し、最上階に向かっていることが発覚したのだろう。
 結局、猟兵たちは最上階に向かうために、住民であるデビルセキュリティの対処に負われることとなった。 

 デビルセキュリティは、最上階でDの貯金に勤しむオブリビオンに心酔しているだけの悪魔たちだ。彼らの目を完全に覚まさせるにはボスのオブリビオンを倒すしかないが、加虐趣味のあるオブリビオンの影響なのか、少し被虐趣味のある者が多いようである。
 尊厳を傷つけたり過剰に痛めつけたりする虐待行為は禁物だが、適度に痛みを与える程度なら逆に悦ばれるかもしれない。
 また、彼らはチームワークがよく統制の取れた行動をしてくるので、集団行動を阻害をする作戦も有効かもしれない。
 もちろん、力技で強行突破したり、彼らと戦わずに突破する方法を考えるのもよいだろう。どんな方法であれ、とにかく最上階までたどり着けばいいのだ!

※第二章からのご参加も大歓迎です。その場合、仲間の猟兵から余分なDをもらって潜入したことになります。第一章からご参加の方との間で大きな差異が生じることはありませんので、お気軽にご参加ください!
エーテル・エトワール
(WIZ・アドリブ歓迎)
ほー、お前らがいわゆる『中ボス』か。
痛みに強いって?……ンじゃ、そうさせてもらいますかねェ!!
「美少女怪盗団……人呼んで、二十の流星エトワール参上!」(口上)
相手が気づいたと同時に、願い星のUCで奴らの『苦手』な属性の弾丸を創造。コレがお望みなんだろ?ン?
スターダストシューターで【早業】の【先制攻撃】を撃ち込んでやる。
お前らの苦手は何だァ!麻痺か?毒か?それともジワジワとヤバめな【継続ダメージ】受けたいか?※想像にお任せします
凶悪な仲間が出てきたら明星(バイク)召喚、華麗に退避。ついでにバイクで踏んで【騎乗攻撃】ってモンよ。
「気持ちいいか?それがお望みなんだろう?ン?」



●テンアゲ魔界盗賊
 狡猾な計略と見事な演技力で現金輸送車からDを奪い取ったエーテル・エトワール(二十の流星・f33307)は、オブリビオンが占拠する最上階を目指し、マンションダンジョンを進んでいた。
 楽勝だぜ。最上階にはお宝もあるかもな。魔界盗賊らしくそんな期待を膨らませながら先を急いでいると、突然、警報音が鳴り響き、部屋から飛び出して来た、警備服姿の悪魔たちが行く手を塞ぐ。
「ほー、お前らがいわゆる『中ボス』か。揃いも揃って同じ服を着るとは、自分のポリシーがないのかねェ……」
「お前、何者だ!」
 警備員悪魔の一人が鋭い声を上げ、スチール製の警棒を構える。
「俺はなァ、美少女怪盗団……人呼んで、二十の流星エトワール参上!」
「……」
 エーテルはドヤ顔で口上を発したが、警備員悪魔たちは引きつった笑みを浮かべるだけである。

(おいおい、ヤベー奴が来たよ。あの顔で美少女怪盗団とか言ってるぜ)
(それよりアイツの目見たか、異様にギラギラしてて、見ただけで呪われそう……)
(あ、そうだ。「親分」を呼んでこよう!じゃあな、お前ら後は任せたぜ!)
(ちょっ、待てよ! お前だけ逃げんじゃねぇよ)

 後列の悪魔たちの間で、そんなヒソヒソ話が行われていることも露知らず、エーテルは星屑銃(スターダストシューター)を構え、即座にユーベルコードを発動する。
 星屑銃に「願いの星」の力が集束し、敵の苦手属性を持つ「魔星の弾丸」が創造され、装填される。装填された弾丸は、炎か、氷か、はたまた雷か。だが、願い星が選んだのはそのどれでもなかった。
「お前ら、痛みに強いって?……ンじゃ、そうさせてもらいますかねェ!!」
 嘲りの声とともに放たれた弾丸は、正面のデビルセキュリティに向かって、大きくうねりながら飛んでいく。それは「蛇属性」を持つ細長い蛇のような弾丸。それは警備員悪魔たちの首に次々に着弾し、巻き付き、締め付けていく。

「わふぅぅ……このひんやりヌルヌルとした感触……たまらねぇぜ!」
「あふぅぅ……ホントっすね……ジワジワと締め付けられるのも、たまんねぇっす」
「ぬふぅぅ……オレ、もうこのまま……死んでもいい……」
 警備員悪魔(男)たちは恍惚の表情を浮かべ、首の蛇を振りほどくこともなく受け入れ、泡を吹いてバタバタと倒れていく。
 
 ユーベルコード・創填魔星弾(マジカル・スター・バレット)は、願い星の力を借りて敵が「苦手な属性の弾丸」を創造する。それは願いを叶えるために与えられた弾丸。その種類を自分で選ぶことはできないのだ。
 エーテルは不気味な弾丸の効果に首を傾げつつも、わらわらとやってくる警備員たちに蛇弾を放つ。
 「お前らもコレがお望みなんだろ?ン?」
 軽蔑のまなざしを向けながら前進し、弾丸を連射し、警備員悪魔を次々に失神させていくエーテル。
 そんな彼の前に、屈強な悪魔が立ちふさがる。
「親分、やっちゃってください!」
 子分肌の悪魔に「親分」と呼ばれた警備員悪魔は、身長2メートル近い巨躯。その豪腕は巨岩をも砕くと恐れられるデビルセキュリティの精鋭である。
 さすがに分が悪いと見たのか、エーテルは「明星」を召喚する。
 「明星」とは、金星の加護を受けたモンスターバイク。エーテルが跨ると猛獣の唸り声のようなエンジン音を上げ、始動する。
「いくぜ!明星!」
 エーテルは相棒に声をかけ、グリップを強く握ってアクセルを回し、吠えるようなエンジン音を響かせながら「親分」へと突進していく。予想外の攻撃にたじろぐ警備員悪魔たち。
 そんな相手にも、魔界盗賊は容赦がない。前輪を浮かせ、ウイリー走行をしながらジャンプし、顔面に向かってライダーキック。
「わっ、それはひきょっ……ぶげっ!」
 親分をノックアウトし、そのまま轢いていく。モンスターバイクの爆音を聞きつけて他の警備員悪魔たちのわらわらとやってくるも、明星とともに容赦なく蹂躙していくエーテル。
「気持ちいいか?それがお望みなんだろう?ン?」
 嗜虐心が暴走し、エーテルはテンションアゲアゲだ。こうなるともう止まらない。魔界盗賊のやりたい放題である。
 そして、散々暴れて満足すると、エーテルは明星とともに意気揚々と去っていくのだった。
 
 ちなみに、彼に蹂躙された悪魔たちはエーテルの清々しいワルっぷりに感銘を受け、その後しばらく、マンション内でバイクを乗り回す行為が流行したという。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
■アドリブ絡み可
あなた達のご主人様と仲良くなりにきたの。とシエナは目的を告げます。

『お友達』候補の住処を目指しマンションに乗り込んだシエナ、自身の目的を正直に告げて通して貰おうとします

それならわたしにも考えがあるよ!とシエナは『お友達』を呼び出します。

先に通す様子のない警備員に対しシエナは巨大な恐竜の『お友達』を呼び出すとマンションの柱や天井を壊し始めました
どうやらマンションの天井或いは階層そのものを壊して上を目指す事にしたようです
そして、破壊活動で気分が高揚としてくれば凶行を止めようとした者達に無差別に襲い掛かります

暫くして気分が落ち着いたシエナは警備員の消えた道を通って最上階を目指します



●大怪獣
 現金輸送車の襲撃で負傷した悪魔たちからもらった治療費でマンションダンジョンの関所の扉を次々と開け、シエナ・リーレイ(取り扱い注意の年代物呪殺人形・f04107)は、最上階を目指していた。
 彼女の目的はただ一つ。『お友達』候補の住処を訪問することだ。
 ところが、順調に最上階へと向かっていた彼女の前に「邪魔者」が現れる。警備員姿の悪魔・デビルセキュリティである。
 
「へへへ……お嬢ちゃん、かわいいね。だけど、人様のお家に勝手に侵入するのは悪い子だなぁ。さっそく取り調べをするから警備員室まで来てもらおうかな!」
 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべる警備員服を着た男たち。彼らは上から下まで舐め回すような視線をシエナに向けていた。
 しかし、シエナはそんな視線を気にも留めず、マイペースに自らの目的を告げる。
「あなた達のご主人様と仲良くなりにきたの。とシエナは目的を告げます」
 
 (……今の聞いたか?)
 (ああ、聞き間違いじゃねーよ)
(そうだよな……) 

 シエナの目的を知り、悪魔たちは突然静まり返る。すると、ニヤケ面の男たちの表情が一転して険しくなり、次々に罵声を浴びせ始める。

「姫様と仲良くなりたい? 無礼にもほどがあるぞ、このガキがぁ!」
「どの面下げて言ってんだゴラァ!」
「あんま舐めてっと、シバキ倒すぞ、オラァ!」

 警備員悪魔たちは憤怒の形相で、無礼な小娘にお仕置きをしようと迫ってくる。
 豹変した男たちに驚き、シエナはキョトン顔で口を開く。

「おじさんたち、わたしを通してくれないの? とシエナは尋ねます」
「はぁ? まだ寝ぼけたこと言ってるのか、このクソガキがぁ!」
 キレた男が発する耳を劈くような怒鳴り声。その不快な響きに、シエナの顔も険しくなる。

「それならわたしにも考えがあるよ! とシエナは『お友達』を呼び出します」
 お友達。それはシエナが抱いているティラノサウルス怪人の人形。それは彼女の呼びかけに反応し、ギャオーンと凶暴な鳴き声を発する。
 それを合図にするかのように、急速に大きくなるティラノサウルス。その大きさはシエナを取り囲むデビルセキュリティの男たちを遥かに超え、十秒足らずでマンションダンジョンの高い天井付近まで到達する。

「ティラノサウルス怪人さん、道を切り開いて! とシエナは命じます」
 
 背中に跨るシエナの命令を受け、ティラノサウルスは通路の壁に尻尾アタック。
 ドゴーンと大きな音を立てて壁が崩れ、その向こうの部屋の内装が丸見えになる。それは美少女キャラのポスターがベタベタ貼られた部屋だった。
「おわっ、俺の部屋がぁぁぁ!」
 最初にシエナに話しかけてきた警備員悪魔が悲鳴を上げる。さらにティラノサウルスは天井に頭突き。さらに通路の柱に体当たりを食らわせる。
 容赦なく振り回される尻尾で次々に破壊される壁。度重なる体当たりで地割れのようなヒビが入る太い柱。頭突きで粉砕され、天井からバラバラと降りそそぐ瓦礫。まさに傍若無人の大暴れだ。
「やめろ! やめてくれ! マンションが壊れる!」
 警備員悪魔たちから悲痛な声が漏れるが、シエナは怪獣の破壊活動を見るのに夢中で全く聞こえてはいない。
 マンションを揺るがす地響き。凶暴な怪獣の鳴き声と逃げ惑う悪魔たちの悲鳴。マンションは怪獣映画さながらの地獄と化す。
 そして、暴れ回る怪獣に対処すべく、デビルセキュリティが誇る精鋭部隊10名が招集された。
「待たせたなぁ! 我ら、デビルセキュリティの精鋭部隊! 見参!」 
 それっぽい口上を発しながら現れたのは、身長二メートル。その豪腕は巨岩をも砕くとされるマッスル悪魔たちだ。
 巨大な怪獣を目の当たりにした彼らは、早くも腰が引けていた。それでも精鋭を名乗る以上、引くわけにはいかなかないのだ。
「い、いくぞ! とりあえずアイツの体勢を崩すぞ!」
 マッスル悪魔のリーダーが号令をかけ、一斉に脚部へのショルダー・タックルが始まる。ドーン。ドーン。ドーン。和太鼓のように小気味良い音を奏でるも、怪獣の強靭な下肢はびくともしない。
 そこでようやく彼らの存在に気づく巨大怪獣。報復にマッスル悪魔の一人にかぶりつき、そのまま咀嚼してペッと吐き出す。
「「「ひいぃぃい!」」」
 仲間が喰われ、吐き出されたマッチョ悪魔たちは一斉に悲鳴を上げる。
「ふふっ、凄く楽しくなってきたよ! とシエナは気分の高揚を訴えます」
 狂気的な笑みを浮かべ、心から楽しむシエナ。その高揚感に呼応するかのように、怪獣による無差別攻撃が始まり、シエナは無邪気な笑い声を上げ続ける。こうなった彼女を止められる者は誰もいない。
 
 そして、戦場は阿鼻叫喚に包まれ、戦意を喪失したデビルセキュリティの面々が、蜘蛛の子を散らすように逃げていくと、シエナの周囲はにわかに静かになった。

「……誰もいなくなっちゃったね。とシエナは少し寂しそうにつぶやきます」
 
 高揚感はすっかり冷め、気分が落ち着いたシエナは、デビルセキュリティたちが逃げていった通路を見つめる。
 邪魔者を排除したシエナは、最上階にいる『お友達』候補に会うために、先に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大豪傑・麗刃
アドリブOK

さてサポートに拾われたのも何かの縁。ここはひとつどげんかしてやらんといかんのですたいなのだ。
あー。きみたち!ひとりに対してみんなで攻撃するのは卑怯じゃないかね!
きみたちには人の心がないのかね!
(注:人ではない)

きみたちの名前は石油機器くんか!
もう暖房が必要な季節ではないだろう!

と。
たぶんこのテの連中はネタが通じない(通じるなら苦戦以下あるいはボツやむなし)なので、速度は1/5になる。もともと見破られやすい動きがさらに悲惨な事になることだろう。
あとはてきとーに叩く。被虐趣味だっけ?変態なのだ。おっと。わたしも変態と呼ばれるがそれは奇人変人程度の意味なのできみたちとは方向性が違うのだ。



 ヒーローショーで手に入れたDを使って関所の扉を次々に突破し、マンションダンジョンを順調に進んでいた大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は、館内放送の後に部屋を飛び出してきたデビルセキュリティたちに見つかり、追いかけられていた。

「怪しい男がいたぞ。総員突撃!」
「『姫様』の居城に立ち入る者は万死に値する。骨一つ残すな。木っ端微塵にしてやれ!」
 さらに二つの方向から、デビルセキュリティが大挙して押し寄せてくる。彼らは職務に忠実な警備員悪魔たちなので、逃げても逃げても賊を排除しようとしつこく追いすがってくるのだ。
 逃げ続けているうちに、脇道から続々と合流してくる警備員悪魔。麗刃は次第に逃げ場を失っていき、ついに行き止まりの壁際まで追い詰められてしまう。
 
「もう逃げられんばい!」
「覚悟するでごわす!」
「八つ裂きにしちゃるけん!」
 
 麗刃は壁を背にしてデビルセキュリティの大群を見据える。こう見ても彼は由緒ある武人の家系の生まれである。ピンチに立たされても、全く動じることはなかった。
「あー。きみたち!ひとりに対してみんなで攻撃するのは卑怯じゃないかね!きみたちには人の心がないのかね!」
「はぁ? 俺たちは悪魔だぞ。そもそも人じゃねーし、そんな説教は通用しねーんだけど!」
 麗刃はデビルセキュリティたちに説得を試みるも、なんだか反抗期の少年のような態度で突っぱねられてしまう。
「どうやら、絶体絶命のようなのだ」
 万策尽きたと言わんばかりの台詞をつぶやくも、麗刃の目は死んではいない。むしろ作戦通りといった様子だ。
 そして、彼が取った行動は……。

「きみたちの名前は石油機器くんか!もう暖房が必要な季節ではないだろう!」

 自信満々に一発ネタを繰り出すことだった。石油機器、セキユキキ、セキュキキ、セキュリティ!ダジャレ好きだけがわかるアウトコースギリギリのゾーンに投げ込まれた、苦しすぎるダジャレに反応できる猛者はこの場にはいなかった。

 (はぁ? コイツ何言ってんだ)
 (オレら、石油機器はもうしまってるぞ)
 (勝手にあだ名つけんじゃねーよ)

 デビルセキュリティの面々の脳裏に幾つも疑問符が浮かび、静寂が訪れる。その空気は冷たく、まるで木枯らしがビュービューと吹いているようだった。
 そして、麗刃のユーベルコードが発動する。彼のギャグ給仕を楽しめない者の行動速度を5分の1にしてしまう恐るべき特殊能力である。要するにギャグを楽しんで戦闘中に隙を見せるか、行動速度が5分の1になるかの二者択一。
 今回は後者となったが、いずれの場合でも、彼ならば絶体絶命のピンチを打開できていたのだろう。

「か〜ら〜だ〜が〜お〜か〜し〜ぞぉ〜」
「お〜の〜れぇぇ。た〜ばぁ〜かぁ〜た〜なぁ」
「ゆ〜るぅ〜さ〜ん〜ぞぉ〜」

 スローモーションになった警備員悪魔たちは、まるで狂言師のような節回しでゆっくりと喋りながら、警棒を持って襲ってくる。そんな彼らを見据え、麗刃はサムライブレイドを抜き放ち、刃を返すと、単調でスローな悪魔たちの攻撃を最小限の動きで躱しては、刀の背で打ち据えていく。
「安心するのだ。峰打ちなのだ!」
 峰打ちでも剣豪である麗刃の打ち込みは強烈だ。悪魔たちを一撃で無力化していき、ものの数十秒で全員を気絶させてしまう。
 こうして、デビルセキュリティを一箇所に集めて一網打尽にした麗刃は、敵の気配がなくなったマンションダンジョンの通路を颯爽と駆け抜け、最上階へと急ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルディア・ディアマンテ(サポート)
助けが必要なようね。助太刀いたしますわ!

サポートでの参加なので人々の避難や救出、敵の陽動のような支援になるような事を中心にこなしますわ。
事情がわからないまま行動すると事態を悪化させる恐れがあるので、その辺りは気をつけないとね。
指示をしてくれる仲間がいれば素直に従いますわ。

支援中心とはいえ戦闘は避けられないもの
その時は武器は白銀のバルバードを使いその遠心力と、UC金色の風で強化された速度を利用し一撃離脱戦法で戦いますわ!その姿はまさに金色の風の如し!

騎士の誇りを胸に、堂々と恥じない行動を!


コノハ・ライゼ(サポート)
使用UCはPOW/WIZの内でお任せ。

態度口調、一人称までも気分次第、嘘吐きで気紛れなお調子者。
オブリビオンは喰らうもの、猟兵業は餌場で狩場、悪食。
楽しい事と人の笑顔が好きで戦闘中も飄々と笑みを絶やさない。
敵に対しては嫌味や挑発もよく吐く。

※妖孤だが耳と尻尾は晒さない

・以下PC口調
『範囲攻撃/マヒ攻撃』からの『2回攻撃/傷口をえぐる/生命力吸収』の流れが多いかしらネ、負った傷分喰らってやるわ。
『見切り/オーラ防御』で防御はするケド、怪我とか気にしないタイプ。
敵へ言葉掛ける時は呪詛や誘惑目的が多いねぇ。
自分の価値観が一番ダケド、公では公序良俗には反しないようにしてるヨ。
敵を喰らう事以外は、ネ。


氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●総力戦①
 象の群れのように地面を震わせ、マンションダンジョンの通路を占領するように悪魔たちが押し寄せてくる。
 彼らは日々過酷な筋力トレーニングに励み、屈強な肉体を手に入れた精鋭のマッスル警備員たちである。
 ここは姫様のいる最上階の一つ下の階。絶対に侵入者を止める。筋肉こそ力。我らが力を合わせれば無敵なのだと確信し、脳筋戦士たちは侵入者達に襲い掛かる。
 道を埋めるマッスル警備員にいかにして対処するのか。
 潜入した猟兵たちは何人かのチームに別れ、四方八方から押し寄せてくる警備員たちと対峙するのだった。


「この戦いでは相手をできるだけ傷つけずに無力化すること。お二人ともおわかりですわね」
 ルディア・ディアマンテ(金色の風・f18851)は月灯りのように輝くハルバートを構え、チームのメンバーに念を押す。
「相手は普通の悪魔さんですもんね。急所を狙わないようにしないとですね」
 氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)は、腕にはめたサイコキャノンをそっと撫でながら応じる。
「手加減はあまり得意ではないのダケド……要は相手を殺さずに抵抗できなくすればいいのヨネ」
 コノハ・ライゼ(空々・f03130)は、満面の笑みを浮かべながら一歩前に出る。
 そして、彼は通路を埋め尽くすように突進してくるマッスル警備員たちを指差した。
「くーちゃん、やっちゃって!」
 命令の言葉ともにコノハの影に波紋が描かれ、その中心から狐のシルエットがぬうっと出現する。現れたのはコノハが「くーちゃん」と呼ぶ黒き管狐。
 くーちゃんは出現して早々、コノハの周りを人懐っこく一回りすると、地面を蹴って通路を駆け出す。
 雫のような影の種子をばら撒きながら疾走する影狐。影の種は地面に落ちると芽吹き、膨らみ、影狐へと変わり、先頭の影狐の後に続く。その影狐も同様に、影の種をばら撒いていく。
 そして、ねずみ算式に増加し、またたく間に群れを形成した黒狐は、次々と警備員の群れに襲い掛かる。
「うがっ!」
「ぎゃー!」
「ひぐっ!」
 黒狐の急襲に怯み、その爪や牙を受けた警備員悪魔たちは、体を弛緩させてバタバタと倒れていく。
 だが、警備員悪魔たちも心身を鍛え上げた精鋭である。黒狐の攻撃にもすぐに慣れ始め、特殊警棒を振り回して応戦する。
 結果、両者とも痛み分けの展開となるが、警備員悪魔たちのほうは続々と増援がやってくる。そして、黒狐たちも徐々に押され始め、とうとう突破されてしまう。
「今度は私が足止めします。このブリザードキャノンで!」
 雪菜は長い青髪をなびかせながら前に出ると、腕のサイコキャノンの砲口を敵に向ける。そして、放たれるのは氷塊の弾丸。
 足を狙う。相手を動けなくするにはそれで十分だ。過剰な攻撃はしたくない。そんな思いを込めて放たれた弾丸は、管狐の攻撃をくぐり抜けて突進してくる警備員悪魔の脚部に命中し、次々に転倒させていく。

 だが、総力戦に出たデビルセキュリティの精鋭たちの勢いは衰えない。
「お前ら、ここは絶対に死守するぞぉぉぉ!」
「うおぉぉぉぉ!」
 リーダー的な男の鼓舞の声に応じ、雄叫びを上げるマッスル警備員たち。彼らは仲間の屍を乗り越える戦士の如く、闘争本能を燃え上がらせる。
 すると、オラトリオの魔力を解放したルディアが動く。
「だいぶ向こうの戦力も減ってきたようですわね。ここはわたくしが参りますわ!」
 その背には天使の如き白き翼。凛々しい鎧姿の戦乙女・ルディアは軽快に地を蹴って、ふわりと舞い上がる。さらに、解放された魔力を推進剤にして急加速したルディアは、デビルセキュリティの群れへと敢然と飛び込んでいく。

 黒き管狐との乱戦が続く戦場に現れた白き翼を持つ天使。
 デビルセキュリティはその神々しき姿に一瞬目を奪われる。
 ルディアはその隙を見逃さず、敵に捕捉されないように絶えず飛翔しながら、白銀のハルバートで悪魔たちを打ち据えていく。それは最小限のダメージで動きを封じる慈悲深き一撃だった。

「くっ、こいつ天使なのに容赦ねぇな……だが、そのギャップがサイコーにワルだぜ!」

 仲間の叫喚の声とともに、場違いな台詞を発した一人の悪魔は、その数秒後にあっさりと気絶させられてしまう。
 ルディアの突撃によって敵陣は完全に崩れ、影狐のくーちゃん部隊も息を吹き返し、残る悪魔たちを次々にマヒさせていく。制圧はもうすぐだろう。皆がそう思ったときだった。 

 ダダダダダッ。背後から鳴り響くのはアサルトライフルの銃撃音。虚空を劈く弾丸の嵐は、後方でサイコキャノンを放っていた雪菜へと襲い掛かる。
 危ない。弾丸を遮るように立ち塞がる一つの影。それはコノハだった。
 彼は咄嗟にオーラを噴出させ、弾丸の軌道をそらして凌ぐも、弾丸の一部は腕や脚をかすめ、切り傷を作っていく。
 盾となり雪菜を庇うコノハの視線の先には、アサルトライフルを構える警備員悪魔たちの姿があった。
 精鋭部隊のように筋骨隆々ではないものの、銃器を持った彼らは、特殊な力に突き動かされるように暴走する「凶暴な悪魔」だった。
「ありがとうございます。コノハさん……」
 心配そうに腕の傷を見つめる雪菜に、コノハは変わらぬ笑みを見せる。
「こんな傷、なんてことないわ。それにしても……か弱い女の子を背後から撃つなんて、おいたが過ぎるわネ」
 静かに憤るコノハに向かって、さらに容赦のない銃弾の雨が降りそそぐ。
 しかし、雪菜は怯まずにコノハの後ろから出てくる。彼女が見据えるのは、アサルトライフルを乱射する凶暴な悪魔の集団。
「これはお返しです! 絶対零度の氷柱よ、敵に向かい発射しなさい!」
 すると、雪菜の正面に水と冷気が凝集し、巨大な氷柱が出現する。
 それは轟音を上げながら飛翔し、飛来するライフル弾を弾きながら直進する。
 だが、悪魔たちも冷静だった。彼らは氷柱の軌道を読んで落下地点から避けてしまう。結局、氷柱は悪魔たちが中央に空けたスペースに、墓標のように虚しく突き刺さる。
 悪魔たちは安堵のため息を漏らすも、その息は真っ白だ。
 彼らがそのことに気づいたときには、時すでに遅し。氷柱は周囲の気温を急激に下げ、周囲にいる者すべてを凍えさせていく。
 そして、寒さで指先の感覚がなくなった悪魔たちは、持っていた銃を落としてしまう。慌てて拾おうとするも、床に落ちた銃は凍りついて剥がれない。
「こうなりゃヤケだ。野郎ども、アイツらを血祭りに上げてやるぜ!」
 武器を失った男たちは絶対零度の領域から逃れるよう飛び出すと、そのまま腰の警棒を抜いて地面を蹴った。
「ぐおぉぉぉ!」
 警備員悪魔の軍団は獣のような咆哮を上げ、暴徒のように押し寄せてくる。
 これに対し、いち早く動いたのはコノハだった。彼は骨董鍵「Cerulean」を携え、敵を迎え撃つべく猛然と走る。その表情は清々しいほどの笑顔だった。
「ふふっ、この傷の借りもあるし、少し懲らしめてあげようかしらネ!」 
「わたくしも加勢しますわ!」
 正面の敵をほぼ制圧したルディアも合流し、敵に向かっていく。

 無駄のない動きで骨董鍵を振るい、的確な打撃で次々と悪魔たちを気絶させていくコノハ。
 戦場を縦横無尽に飛翔し、悪魔たちを翻弄するルディアは、天使のように華麗に戦う。
 さらに雪菜はブリザードキャノンの砲撃で後方の悪魔の足止めし、二人を援護する。
 三者三様の戦い方がうまく噛み合い、闘争本能剥き出しのデビルセキュリティを圧倒していく。
 そして、3人の活躍により、この区画の悪魔たちは一掃され、最上階への道を開くのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アラン・スミシー(サポート)
基本突然現れて仕事を終えたら去っていく人物です。

基本的に【乱戦】か【銃撃戦】での援護がメインとなります。
他の猟兵の手の足りない所に現れては銃で攻撃し、気を引いたり足止めをしたり敵の頭数を減らしたりします。

説得や交渉等が必要ならなんか良い感じの言葉を言います。
例:君の正義は分かった。しかしその正義は君を救ったかい?

ユーベルコードのセリフを参照し、MSの言って欲しい都合の良い言葉をアレンジしてやってください。
大体無意味に格好いいこと言ってます、割と適当に。

状況次第では不意打ちとかもするかもしれません。適当にお使い下さい。


七星・彩華(サポート)
 羅刹の妖剣士×宿星武侠の女です。
『憎悪怨恨乱れ咲く戦場、その呪詛は私の物だ!』
 普段の口調は「我が道を行く姐さん(私、お前、呼び捨て、言い捨て)」「仲間にはフレンドリーな姐さん(私、お前、呼び捨て、言い捨て)」

自身が支配する呪詛も武器として扱う戦闘狂、闘うためなら容姿も使う。
闘う事を至高と考える一方で守る者や仲間との共闘も戦闘の重要な要因と考えている。
基本は天上天下唯我独尊を貫く。
これでも子持ち人妻。


 ユーベルコードは指定した物を使用、怪我は厭わず行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
 あとはお任せ。よろしくお願いします!


鳳凰院・ひりょ(サポート)
アドリブ・連携〇

同伴者がいる場合は同伴者をサポートするよう行動。
戦い方は遠近両用、接近戦では【破魔】を付与した破魔刀で、遠距離では精霊の護符の【乱れ撃ち】で対応。
同伴者が苦手な方を受け持つ動きを取ります。
単独で戦う場合は相手の苦手とする方での戦い方を主軸に。
護衛対象がいる場合は自分の身を挺して【かばう】。
何より周りの誰かが傷付く事を嫌う為、仲間達に危害を加えるような行動は取りません。
誰かを傷付けるくらいならば自分が傷付く方を選ぶ性格です。
携帯した飴を媒体にUCを発動。
【多重詠唱】で複数疑似精霊を召喚し攻防で使用します。
地や風は守りの壁として火や水は弾として攻撃に使うことが多いです。



●総力戦②
 猟兵たちは首謀者のオブリビオンがいるマンションの最上階まであと一歩のところまできていた。
 ところが、このマンションの住民であるデビルセキュリティは精鋭部隊を投入し、侵入者を食い止めるために総力戦を仕掛けてきたのだ。
 通路に密集し、隊列を組んで闊歩する警備員悪魔の軍団。一人一人が二メートルを超える巨体で、腕は丸太のように太い。そんな屈強な悪魔たち数十人が集まり、索敵していたところにアラン・スミシー(パッセンジャー・f23395)は出くわしてしまう。
 彼は前衛で戦うタイプではなく、警戒心も強い。今回も仲間の猟兵の後方支援を担うために慎重に移動していた矢先の出来事だった。要するに運が悪かったのだろう。
「オラ、逃げんな! 待ちやがれ!」
「やれやれ、猫に追われる鼠の心境だねぇ」
 背後から怒声を浴びせながら追いかけてくる警備員姿の悪魔たちを振り返り、表情を曇らせるアラン。だが、彼はすぐにニヒルな笑みを浮かべ、唐突にその場で立ち止まると、ソードオフ・ショットガンの銃口を敵に向ける。
「窮地に立たされた鼠は猫にも噛み付く。そんなことわざもあるのさ」 
 そして、重厚な発砲音とともに、ショットガンの弾丸が放たれる。それは発射後に広範囲に散らばる特殊弾。射程距離外では散弾の威力は大幅に落ちるが、敵を威嚇し、牽制するには十分な攻撃だった。

「なんだ。アイツ、いきなり撃ってきたぞ!」
「ショットガンは近づくと厄介だ。おい、お前ら盾持ってっこい、盾!」
 
 デビルセキュリティの群れがにわかに慌ただしくなり、すぐに防弾用の大盾が用意される。

(まあ、そうくるよねぇ……でもここは合流地点のすぐそばなんだよねぇ。すぐに仲間が……)

「銃声はこっちか。今、助けに行く!」

 アランの思惑通り、背後から聞こえてくる仲間の猟兵の声。
 ほどなくして彼の前に現れたのは、呪詛をまとう赤髪の女剣士、七星・彩華(鮮血狂い咲く呪詛使い・f32940)だった。
 彼女は到着して早々、屈強な警備員悪魔の軍勢を視界に入れ、漆黒の瞳を輝かせる。
「これは戦いがいのありそうな敵だ。ここは私に任せておけ!」
 彩華は相手を過剰に傷つけぬように刀の刃を返すと、通路を疾駆し、敵軍の群れに突っ込んでいく。
 正面には防弾用の大盾を構える警備員たち。
「邪魔するな!」
 刀で虚空を薙ぎ払う彩華。すると衝撃波が発生し、大盾が弾き飛ばされる。
 重厚な大盾を失った警備員たちはわずかに怯むも、相手を迎え撃つべく警棒を構える。
 
 彩華はその姿に口元を緩め、闘争本能のままに刀を振るう。
 ガキン。一体目の警備員悪魔が突き出した金属製の警棒と刀が衝突し、火花が散る。
 しかし、彩華はそのまま体をひねり、相手の脇腹に強烈な一撃を叩きこむ。
「遅いぞ! 次だ。来い!」
 一体目の悪魔を気絶させ、武人の覇気を発しながら二人目を見据える彩華。
 彼女に感化されたように悪魔たちも闘気をみなぎらせ、迎え撃つ。
「うぉぉおお!」
 ドガッ。雄叫びを上げて突進してくる二人目をすれ違いざまに打ち据え、あっさりと倒した彩華は、そのままの勢いで次の敵を打ちのめす。さらに、返す刀で打撃を放ち、侵入者を排除せんとする警備員たちを淀みのない太刀筋で気絶させていく。
 だが、倒しても倒しても敵はいっこうに減る気配はなかった。屈強な悪魔たちの攻撃は途切れるどころか、勢いを増し、彩華も少しずつ消耗していく。
(少し数が多いか……戦いを楽しんでる余裕がないのが惜しいな)
 彩華は眼前の敵を刀の峰で打ち倒すと、体内の呪詛を開放する。
「コイツ、やべえぞ……」 
 敵が放つオーラの禍々しさに気づき、後ずさりする一人の悪魔。
 彩華は勘のいい悪魔を素早く打ち据えると、その隙をついて別の悪魔が背後から殴り掛かってくる。
 ドガッ。背後の悪魔を殴り飛ばす禍々しい何か。吹き飛ばされ壁に衝突した悪魔はガタガタと震えだし、やがて気絶してしまう。
「私の呪詛は可愛いだろう?」
 自らが支配する呪詛の攻撃を誇示するかのように、微笑む彩華。
 仲間を襲った得体の知れない攻撃に、百戦錬磨の悪魔たちにも動揺が広がる。
 だが、その空気を察したリーダー的な男が、仲間たちに号令をかける。
「い、いくぞ! とにかく本体を叩けば、この奇怪な攻撃も止むはずだ!」
 統率のとれた軍団は彩華と一定の距離を保ちながら周囲を取り囲むと、そのうちの5人が一斉に殴り掛かってくる。
 対する彩華は刀を構えたまま微動だにしない。
 しかし、5人の悪魔はまるで巨大な腕に薙ぎ払われたように弾き飛ばされ、最初の悪魔と同じように震えだし、気絶する。
「怯むな! 休まず攻撃しろ!」
 リーダーの号令ともに、次の悪魔たちが飛びかかってくるも、結果は同じだった。
 呪詛はまるで自動迎撃システムのように敵の動きに反応し、瞬時に薙ぎ払う。呪詛の攻撃を受けた悪魔は恐れ、慄き、意志を挫かれ、戦意を喪失していく。
 彩華が支配する呪詛の脅威に屈強な悪魔たちはなす術もなく、次々に倒れていくのだった。
 

 一方、彩華の危なげない戦いぶりを見たアランはすぐに後退し、奮戦していた。
 背後から徒党を組んでやってくる警備員悪魔に牽制の弾丸を放ち、逃げるふりをしながら敵を分断する囮役。
 それは彩華が挟み撃ちにされないようにするための後方支援だった。
(それにしても数が多すぎるねぇ。足止めはできるが、これ以上増えたら……)
 そう考えた矢先のことだった。彼が危険な奴らに出くわしたのは。
 ダダダダダダッ。アサルトライフルの銃声が耳を劈く。咄嗟に物陰に隠れるアラン。
 彼の前に現れたのは特殊な催眠術によって理性を失った「凶暴な悪魔」だった。彼らは洒落にならない銃器を持ち出し、徘徊している。理性を喪失している彼らは敵味方の区別なく攻撃するが、「同類」は本能的に仲間と見なしているようだった。

(どいつもこいつも目が据わってるねぇ…‥とりあえずあの銃をなんとかしないとな……)

 アランはユーベルコードで照準精度を高めると、リボルバー銃を抜いて、狙撃を開始する。
 狙うのは腕。武器を持てなくしてしまえば、無力化は容易だろう。
 そう考えたアランは、リボルバー銃で次々に悪魔たちの腕を打ち抜き、ライフル銃を地面に落下させていく。
 しかし、攻撃のたびに伏兵が現れ、敵の数は減るどころか、その攻撃はさらに激しくなっていった。

 やはり数が多すぎる。ここまでか。アランが撤退を決断をしようとした刹那、彼の背後から放たれた護符が突風を起こし、弾幕を蹴散らしていく。
「加勢します!」
 一陣の風とともに現れたのは精霊術使いの鳳凰院・ひりょ(f27864)だった。彼は、周囲に風の護符をばら撒き、風の精霊の力で暴風を発生させる。
 突然、発生した猛烈な風に怯み、悪魔たちの射撃が止まる。ひりょはアランに視線を向け、後方を指差す。
「ここは俺がなんとかします。少し離れててください。あなたの持ち物も変わってしまうといけないので……」
 真剣な目で訴える仲間に無言でうなずき、素早く後退するアラン。
 ひりょは態勢を立て直しつつある凶暴な悪魔たちを静かに見つめ、小さくうなずく。

(まだ奥に伏兵がいる……それならもっと近づかないと)

 勝負は一瞬。ひりょは決然と風と地の護符を取り出すと、それを前方に乱れ撃ちしながら一気に距離を詰める。
 猛然と突っ込んでくる青年を迎撃しようと、アサルトライフルを構える悪魔たち。
 その刹那、宙空の護符から風の精霊と地の精霊の力が発動し、無数の小石と土埃が突風とともに襲いかかる。
 土埃が視界を遮り、雨のように降りかかる小石が手足に直撃し、トリガ−にかけた指を弾く。
 これではでたらめに乱射することすらままならないだろう。

 そして、突風が止み、悪魔たちの視界に現れる黒髪の青年。
 警備員悪魔たちは反射的に銃口を向け、引き金に指をかけようとするも、銃は見えない力で彼らの手を払い除け、宙にふわりと浮かび上がる。
「なんだ!?」
「もう遅いよ。既に結界が展開された後だ……」
 今しがた起こった怪異に驚愕する悪魔たちに、ひりょは静かに告げる。
 瞬時に距離を詰め、彼が展開したのは固有結界・黄昏の間。結界の内部の無機物はひりょが操る疑似精霊へと姿を変える。
「この物騒な武器も無機物だよね。これは僕が少しの間、借りるよ」
 まるで意志を持ったかのように宙へと浮かび上がった銃は蒼い光を放ち、精霊の形を成していく。
 その体はガラスのように透き通り、神秘的な容姿をしていた。それは水の元素を司る水の疑似精霊。
 
 水の疑似精霊たちはまたたく間に悪魔たちを取り囲むと、一斉に手のひらから激流を放ち始めた。
 それは一つの流れを成し、やがて巨大な渦潮へと成長を遂げ、竜巻のように周囲の悪魔を巻き込んでいく。

 水の中で激しく撹拌され、悪魔たちは窒息寸前にまで追い込まれると、気を失ってしまう。
 酸欠で気を失った悪魔は渦潮から弾き飛ばされ、床に次々と落下していく。
 その攻撃は最小限のダメージで相手を戦闘不能にするという、ひりょの意志に従ったものだ。
 そして、渦潮が消え去ると、通路には失神した警備員悪魔たちが山のように積み重なっていた。
 
 制圧を終えたひりょは安堵のため息をつき、背後を振り返る。
 しかし、そこにはトレンチコートの男の姿はなかった。ここでは自分の支援は不要だと判断し、他の場所に向かったのだろう。
「フットワークの軽い人だね。僕も見習わないと……」
 ひりょは苦戦している仲間を助けるために、再び駆け出すのだった。
● 
 こうして最上階への道は切り開かれ、猟兵たちは続々と最上階へと踏み込むことになる。
 そこにはDを集収し、カタストロフ級の儀式魔術の発動を目論む「姫様」が待っているのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『十字皇シュラウヴィベラ』

POW   :    緋燕十字斬
【武器を手にした四腕による疾風怒涛の攻撃 】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    逆十字の光矢
【手にするいずれかの武器 】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、手にするいずれかの武器 から何度でも発動できる。
WIZ   :    双刃一閃
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【予め貯蓄してあるD 】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●女王の間
「姫様、侵入した賊が精鋭部隊の包囲網を突破し、ここまで向かっているそうです!」
 デビルセキュリティの伝令係の報告を受けた『十字皇シュラウヴィベラ』は、四本の腕で武器を振り回しながら怒り狂う。
「この妾に牙を剥く無礼な逆賊どもが! 許さん、許さんぞ!」
「はぁん、もっとぉ!」
 怒り狂う姫様が振り回す鈍器の一撃を受けた伝令係は、野太い声で歓喜の叫びを上げる。被虐嗜好の男の叫びを聞き、満足げに微笑むシュラウヴィベラ。
「もうよい。其方たちは下がっておるがよい。賊どもは妾がこの手で葬ってくれるわ!」
 四本の腕に武器を持ち、素振りをしながら、蛇女は部屋の端に設えられた立方体の貯金箱に視線を向け、妖艶に微笑む。
「妾はDが在る限り負けはせぬ。幸い、ここにはDが大量にあるからのう。妾が負けることはないのじゃ!」
 耐熱・耐酸・耐衝撃性に優れた特殊合金製の箱に大量に貯蓄されたD。それは彼女のユーベルコードの燃料でもあった。
 ピンチのときはそのユーベルコードで回避や防御をすれば妾は無敵なのだと、彼女は勝利を確信し、高笑いをする。
 しかし、それは苛烈な攻撃を受け、ピンチに陥れば陥るほどDが減っていくことを意味していた。
「たっぷりいたぶってくれるわ」
 そして、シュラウヴィベラは、デビルセキュリティを突破し、マンションの「女王の間」に続々とやってくる猟兵たちに、殺意を向けるのだった。
大豪傑・麗刃
えっときみの名前は、しゅ、しゅら、う、う、う゛ぃ……

う゛ぃべらっっっ!!(舌をかんだ悲鳴)

なんて長い上に言いづらい名前なのだ!その名前が既に凶器なのだ!敵に名前を言わせて舌をかませようという策略なのだ!さすがデビルキングワールド!たいした悪党ぶりなのだ!
きみの名前なんかシュラシュシュシュちゃんでいいのだ!

さて。
ムッシュムラムラちゃんとかけ、ダイエット中ととく。その心は?
どちらも

ヘビィ

でたぶん相手の速度は低下するので二刀流で斬る。

ところできみはわたしのユーベルコードをコピーするそうではないか。
女王様ならばさぞすばらしいネタを持っているだろう。ぜひわたしに見せて欲しいのだ。きみの最高のギャグを!!



 マンションダンジョン最上階。ワンフロアぶち抜きで作られた瀟洒なホールには、『十字皇シュラウヴィベラ』が猟兵たちを待ち構えていた。
 そこへ鼻歌交じりでやってくるのは由緒正しき武人の家系の剣豪、大豪傑麗刃(変態武人・f01156)である。
彼はやってきて早々、女王様然としたシュラウヴィベラの前に立ち、礼儀正しく自らの名を名乗る。

「わたしの名は大豪傑麗刃、きみの名前は何て言うのかね?」
 異様な存在感を放つその人物に、シュラウヴィベラは困惑しながらも自らの真名を名乗る。
「妾の名は、十字皇シュラウヴィベラじゃ……」
「えっと……きみの名前は、しゅ、しゅら、う、う、う゛ぃ……う゛ぃべらっっっ!!」
 麗刃は相手の名前を復唱するも盛大に舌を噛み、絶叫しながらチェック柄の床をゴロゴロと転げ回る。
 その様子をシュラウヴィベラは唖然とした顔で見つめる。
「なんじゃ、騒がしい奴よのう」
 すると、麗刃がゾンビのように起き上がる。目を剥き、口の端から鮮血を流す姿はちょっとしたホラーだ。
「なんて長い上に言いづらい名前なのだ! その名前が既に凶器なのだ! 敵に名前を言わせて舌をかませようという策略なのだ! さすがデビルキングワールド! たいした悪党ぶりなのだ! きみの名前なんかシュラシュシュシュちゃんでいいのだ!」
「妾は忙しいのじゃ。遊びに来たのなら帰るがよい」
 血だらけの舌による捨て身の長広舌で抗議する麗刃だったが、全く取り合おうとしないシュラウヴィベラ。
 そして、一通り前フリを済ませ、場の空気が冷蔵庫の中のようにほどよく冷却されたところで麗刃が放ったのは、彼の得意技だった。

「さて……ムッシュムラムラちゃんとかけ、ダイエット中ととく。その心は? どちらも、ヘビィ!」
 
 麗刃の脳内でドドンと効果音が鳴り響き、自信満々に繰り出されたギャグ(謎掛け)に対する反応は、単純な怒りだった。
「妾をヘビなどと……愚弄するつもりか!」
 ダチョウの三人組が流行させたギャグをなぜ自分ことだと思ったのかはさておき、とにかく女王様はご立腹なのである。当然、麗刃の「ギャグ給仕」を楽しんでいるそぶりはない。
 よって、ユーベルコードは発動される。
 漠然とした威圧感と、確かな強制力を持った力の波動。それは虚空を伝播し、敵へと襲いかかる。
 シュラウヴィベラはそれを防ごうと、武器を持った四本の腕を反射的に突き出す。
 バチッ。力の波動を一瞬受け止めたが、それは一時しのぎに過ぎなかった。力の波動は蛇女の腕をすり抜け、その体内へと吸い込まれていき、行動速度を5分の1へと減退させる。
 そこへ飛び込んでくるのは、左右の手に得物を持った麗刃。そして、彼の斬撃は十字の軌跡を描き、巨大な蛇女の体をザックリと切り裂く。
 だが、この戦いはこれだけでは終わらなかったのである。


 ダメージを受けながらもシュラウヴィベラは難なく立ち上がり、武器を構える。
「コピーしたぞ。其方の能力を……自らの力を思い知るがよい!」
「ほう、わたしのユーベルコードをコピーしたとな。女王様ならば、さぞすばらしいネタを持っていることだろう。ぜひわたしに見せて欲しいのだ。きみの最高のギャグを!!」
「まさか……其方の能力は……」
 シュラウヴィベラの表情が引きつり、冷や汗がこぼれ落ちる。
 彼女のコピー能力は一度発動してしまうと、己の中に写し取られた能力を使い切ってしまわないと、他のユーベルコードを発動できない仕組みになっているようだった。
 要するにここでギャグ給仕をする以外、シュラウヴィベラに打開策はない。
 そして、追い詰められた女王様は、しばらくウンウンと唸った挙句、自信満々に口を開く。
「妾はシュラウヴィベラなるぞ。ギャグなんぞ、知らんべな!」
 シュラウヴィベラ、しゅらうびべら、しらうびべら……知らんべな!
 苦しすぎる。それどころかギャグにすらなってないレベルである。
 場の空気が冷凍庫の中のように冷却され、これはカウンターでユーベルコードが決まるのでないか。そう思われたが……。
「どこの方言やねん! 苦しすぎるわ!」
 すかさず関西風のツッコミをしながら、二本の刀で斬りつける麗刃。
 そう、彼は芸人(?)として敵のギャグ給仕を楽しんでいたのである。
「まだまだ、妾は負けはせぬぞ!」
 シュラウヴィベラはダメージを受けながらも、即座に起き上がり武器を構える。
「まだ元気そうなのだ! 面白そうだから、これから『ギャグ道場』を開幕するのだ!」
 ニンマリと微笑む麗刃。その瞳には芸人魂(?)が焚き火のようにメラメラと燃えていた。

「妾の下半身とかけて、関西の母親にとっての息子・娘ととく、その心は……どちらも、大蛇(大事や)!」
「予想外にハートフルなのが来て、ツッコミづらいのだ!」
 ツッコミついでに斬撃を放つ麗刃。
 そして、再び立ち上がったシュラウヴィベラは、ぴょんぴょんと小さく飛び跳ねた後、今度は高く跳躍する。
「大蛇だけに、大ジャンプ!」
「若手芸人の勢いだけのギャグなのだ!」
「妾の上半身とかけて、たわわに実った果実ととく……」
「それ以上はセンシティブ! シモネタは禁止なのだ!」
 四本の手を上下に激しく振るシュラウヴィベラ。
「ブンブンブンブン! 手が四本なのに千手観音!」
「意味不明なのだ! ヤケクソ過ぎなのだ!」

 そんなこんなでキャラ崩壊を恐れないシュラウヴィベラさんの渾身のギャグに対し、麗刃はツッコミのノリで斬撃を放ち、心身ともに消耗させていく。
 これボス戦だよな。大丈夫かこんなんで。そんなツッコミも聞こえてきそうだが、ここはデビルキングワールド。なんとかなってしまうのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エーテル・エトワール
成程なァ、この蛇女が全ての元凶ってワケか。
じゃあ行くぜお前ら!
UC【暴召星戦士】は生命力じゃなく星命力、つまり俺が星々に命じる力を代償に星座由来の戦士達を召喚させる。
つまり最大数召喚すればみんな俺の言う事なんか聞かないで暴れ回るって寸法だ!というわけで【十二星座の守護戦士】を12体全員召喚するぜ!思いっきり暴れて来い!
その間に俺はビッグバンポーチ(どろぼう袋)にDを【早業】【宝探し】【略奪】【盗み】の技能で【詰め込み】まくるぜ。
十二星座の守護戦士がこっちに来たら……乗って一緒に【騎乗突撃】してやるか。ホラよ、至近距離からのダブル【踏みつけ】攻撃喰らえ!!
(胴より足が長いエトワールなのだった)



●十二星座の守護戦士
 マンションダンジョン最上階。十字皇シュラウヴィベラは部屋の端にある巨大な立方体の箱を見つめ、邪悪な意志を宿す瞳を輝かせる。
「ふふふっ……妾のDはあの箱の中にまだまだたっぷりある。逆賊どもを屠り、カタストロフを実現してくれようぞ!」
 そこへやってきたのは、魔界盗賊のエーテル・エトワール(二十の流星・f33307)だ。
 彼は親玉のオブリビオンを視界に入れると、即座に動く。
「成程なァ、この蛇女が全ての元凶ってワケか。じゃあ行くぜお前ら! 思っきり暴れてこい!」
 
 エーテルの頭上に12種の星の連なりが出現し、唐突に閃光を放つ。
 そして、出現したのは十二星座の守護戦士。
「ほう、眷属を召喚する力か……数が多ければ妾に勝てると思うてるなら浅はかじゃのう!」
 四本の武器を構え、殺気を発するシュラヴィベラ。おのおのの個性を持つ12体の戦士たちは猛烈な殺気を放つ相手を敵と認識し、シュラウヴィベラを取り囲む。
 
「なかなかに勇ましいのう。だが、所詮は有象無象の集団。妾に勝てると思うな!」
 
 かくして戦端が開かれ、十二星座の守護戦士を迎え撃つシュラウヴィベラ。彼女には、戦闘のどさくさに紛れて貯金箱に向かうエーテルの姿は見えてはいなかった。

●盗賊のお仕事
 エーテルは、Dがぎっしり詰まった巨大な金属製の箱を手で触りながら、浮かない顔で周囲を調べていた。
 貯金箱は特殊な合金製だ。硬質で耐火・耐酸性能が高く、外からの衝撃では簡単に壊せないのは明らかだった。
(コイツをブチ破るのは無理だぜ……そんならどっかにあるはずなんだが……)
 壁を念入りに調べていたエーテルは、ようやく探しものを見つけた。
 一見してわかりにくい、高い位置にあるかすかな凹み。そこを強く押すと、スイッチを押したような手応えがあり、小さな振動とともに箱の上から金属製の梯子が降りてくる。

 エーテルは梯子を昇り、箱の上の投入口の蓋を開けると、念のため星屑銃でフック付きロープを射出する準備をして飛び降りる。
 そして彼が着地したのは大量のDの上。それはまさにお宝の山だった。
(コイツは盗みがいがありそうだぜ!)
 テンション爆上がりのエーテルは盗品ならいくらでも入るビッグバンポーチを取り出すと、掴んだDを手当たりしだいに詰め込んでいく。
 だが、貯金箱には警報装置がついていた。唐突にブザー音が周囲に鳴り響き、女性の機械音声が警告を発する。

――金庫内に侵入者を発見! 侵入者排除システムを作動! パージします!

 唐突に箱の側面が倒れ、サイコロの展開図のように立方体が平面に変わる。
 同時に支えを失ったDの山が崩壊し、エーテルは大量のDとともに床の上になだれ落ちていく。

「おのれぇ! 妾のDを掠め取るとは、手癖の悪いドブネズミがぁああ!」
 大事に貯蓄してきたDを奪われたシュラウヴィベラはブチ切れる。
 さらに、十二星座の守護戦士たちもつられるように怒気を帯び、矛先をエーテルへと変えた。
 守護戦士どもが俺に向かってきやがる。やっぱ暴走してるな。まァ、星命力を気にせず全員まとめて召喚したから当然だろうなと、エーテルは現状を冷静に受け入れる。
 そして、エーテルは立ち上がると、先陣を切って突っ込んできた半人半馬の射手に飛び乗った。
 射手座の戦士は暴れ馬のように上下に体を揺らすも、エーテルはバイクの二人乗りのようにガッチリとホールドし、そのまま力づくで方向転換させてしまう。
「オラァ! このまま突っ込むぜ!」
 エーテルに発破をかけられた射手座の戦士は、速度を上げて蛇女に突進していく。
 そして、至近距離まで接近すると、エーテルは背中の上で立ち上がり、敵に向かって跳躍する。
 さらに射手座の戦士はそのまま全速力で敵に体当たりし、バランスを崩した蛇女の顔面にエーテルの足裏が叩きつけられる。
「ホラよ、喰らえ! ダブル踏みつけ攻撃!!」
 ガガガガガガッ。空中を駆けるように長い足で高速で足踏みし、敵の視界を奪うエーテル。すると、後方から彼らを追いかけてきた十二星座の戦士たちが殺到する。
 エーテルは最後にシュラウヴィベラの顔面を強く蹴って飛び降りると、そのまま一目散に退散する。
 ほどなくして到着するのは十二星座の戦士たち。
 蛇女は戦士たちの全力の体当たりを次々に受け、大型トラックに跳ね飛ばされたように宙を舞う。
 それをきっかけに、十二星座の守護戦士たちと十字皇シュラウヴィベラの戦いが再開する。
 そして、エーテルは悠々とDの山にところに戻り、残りのDの回収に励むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
■アドリブ可
おじゃましまーす!とシエナは部屋に入室します。

無事に部屋へと辿り着いたシエナは恐竜に跨り部屋の入口を破壊しながら入室すると部屋の主と仲良くなる為に遊び始めます
少ししてはしゃぎ過ぎて部屋を半壊させた恐竜は部屋の主に懇願されてスカートの中へ帰るのでした

どうしたの?とシエナは『お友達』候補に問い掛けます。

気を取り直して部屋の主と遊び始めたシエナは気分が高揚するにつれて動きが速くなり無意識の内に怪力で部屋を壊し始めます

部屋の主がシエナのユーベルを利用して止めようとすれば何故か動きを速める事が出来ず、無意識の内に部屋の崩壊による貯金箱の紛失を防ぐ為にDを消費して部屋を治し始めるかもしれません



 ズシン、ズシン。マンションダンジョン最上階に近づいてくる巨大な足音。
「な、なんじゃ……この揺れは……」
 最上階に君臨する十字皇シュラウヴィベラは、地響きのような不穏な揺れを感じ、体をこわばらせる。
 ドゴッ。唐突に入口の金属扉が吹き飛び、巨大なトカゲのような頭部がヌッと顔を出し、さらに入口の壁をバキバキと破壊しながら、肉食恐竜が入ってくる。
 直後に発せられた威圧するような咆哮に、思わず後ずさりをするシュラウヴィベラ。
 すると、恐竜の背に跨るシエナ・リーレイ(f04107)が元気に挨拶をする。
「おじゃましまーす! とシエナは部屋に入室します」
「ぶ、無礼者! 其方は礼儀というものを知らんのか!」
 シュラウヴィベラはオブリビオンらしからぬ正論を吐いたが、シエナの耳には全く届いてはいない。
「あなたがこのお部屋の主さんだね。仲良くなりに来たよ。とシエナは『お友達』候補に目的を告げます」
「妾と仲良くなるだと……小娘が、笑わせるな!」
 入口を壊されたことに腹を立て、ピキピキと青筋を立てて怒鳴るシュラウヴィベラ。
 だが、シエナはその声が全く聞こえていないかのように、無邪気な笑みを浮かべる。
「さっそく遊ぼうよ。とシエナは勇気を出して遊びに誘います」
「……」
 シュラウヴィベラは無言で武器を構える。もう話す意欲を失ったらしい。初めて対峙した異質な存在に戸惑ってもいるようだった。
 彼女は嫌な汗をかきながら、大蛇の尻尾を地面に叩きつけるようにして跳躍すると、恐竜の背中に跨る少女に湾刀を振り下ろす。
 だが、巨大恐竜の動きは予想以上に俊敏だった。
 背中の少女を護るように上体をひねると、硬質な頭部を突き出す。ガツッ。カウンターで頭突きが決まり、弾き飛ばされる蛇女。
「くっ!」
 壁にぶつかる直前、左上腕の鈍器を叩きつけ、落下の衝撃を緩和した蛇女に、巨大な尻尾の追撃が襲いかかる。
 ズドン。蛇女は地面に転がって間一髪で避けるも、壁には大きな穴が空いていた。穴の向こうは都会の夜景。
● 
 その後も何度も攻撃を仕掛けては返り討ちに遭うシュラウヴィベラ。
 少女の無邪気な笑い声をBGMにして、巨大恐竜は大暴れする。
 壁や天井に容赦無く穿たれる大穴。次々に破壊される家具や調度品。バーカウンターの酒瓶は粉々に砕け散って散乱し、室内プールの外壁も破壊されて洪水が起こり、床を水浸しにしていく。

 それはシュラウヴィベラにとって地獄絵図そのものだった。
 こんな小娘に妾の築き上げた城が蹂躙されるとは……。
 憤怒と絶望で小きざみに震えだすマンションダンジョンの女王。
 すると、破壊衝動を発散させたシエナが我に返り、お友達候補を不思議そうに見つめる。
「どうしたの? とシエナは『お友達』候補に問い掛けます」
「……わ、妾とお友達になりたいなら、そこから降りてきて遊べばよかろう? その恐竜は妾と其方が友達になるためには不要だと思うがのう……」
 シエナは懇願するような顔をした相手に憐れみの目を向ける。
「ちょっとはしゃぎ過ぎたね。とシエナは反省します」
 反省の弁とともに、ティラノサウルスは小さくなっていく。
 そして、シエナのスカートの中にお友達が戻っていくと、シュラウヴィベラはほくそ笑む。
「馬鹿め。デカブツさえいなくなれば、妾が其方に遅れを取ることなどないのじゃ!」
 殺気を迸らせ、己の射程距離まで一気に接近する蛇女。
 だが、不意打ち気味に放たれた湾刀による渾身の斬撃は、シエナにふわりと躱される。
 避けられた。だが、まぐれは何度も続かないだろう。
 さらに蛇女は四本の上肢を使った疾風怒濤の連撃を放つも、ことごとく躱されてしまう。
「この! この! この! なんで、当たらんのじゃ!」 
 このとき、シエナはユーベルコードによって身体能力が強化され、動きも俊敏になっていた。
 お友達と仲良くなるという目的に対し、相手の家を破壊するという暴挙。
 目的の実現に対して不利な行動を取ることは、能力の発動条件でもあったのだ。

 何度目かのシュラウヴィベラの攻撃が空を切り、左上腕の鈍器が壁を直撃。盛大に穴が穿たれる。
 シエナも相手の攻撃をひらりひらりと避けながら反撃し、その怪力で壁や柱を無意識に破壊していく。
 激しい戦いの余波で、加速度的に破壊されていく女王の間。
 そして、シエナの拳が中央の太い柱を破壊したとき、ようやくシュラウヴィベラは我に返る。
「こら! やめるのじゃ!」
 周りを見れば、部屋を支える柱のほとんどが破壊され、天井から瓦礫の雨が降りそそいでいた。崩壊は目前だ。このままではDの貯金箱も無事では済まない。
 焦った蛇女は相手の気を引くためにクローゼットの扉の一つを開く。そこには大量の人形が収納されていた。
「娘よ。ここに可愛らしい人形もあるぞ。休憩がてら覗いてみてはどうじゃ?」
 それは警備員悪魔の貢物だった。何かの役に立つかもしれないと、保管しておいたものだ。
「その子たち、みんな可愛い服を着てるんだね。とシエナは衣服に興味を持ちます」
 休戦の提案を受け入れたシエナはクローゼットから取り出した人形たちをチェック柄の床の上に無造作に並べていく。
 シュラウヴィベラは安堵のため息をつき、Dを代償にあらゆる行動が確実に成功するユーベルコードを使用し、「超高速修繕」を実行する。
 貯蓄したDの半分以上が消費され、みるみるうちに荒れた室内が修復されていく。 
(あとはあの小娘にどうやって帰ってもらうかじゃのう……)
 修繕を終えたシュラウヴィベラはがっくりと肩を落とし、苦悶の表情を浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朧百合・祈來璃(サポート)
幽世に住まう東方の白蛇妖怪。
元は東洋の白蛇の怪談や逸話等の集りから生まれ、後に蝶化身などが融合している。 

外見年齢20代前半/実年齢100歳以上

通常口調『静かにゆったりと(わたくし、~様、ございます、ございましょう、ございますか?)』
真剣な時は『信念のある(我、あなた、呼び捨て、まし、ませ、ましょう、ますわね?)』

よく番傘をさしてるどこか憂いを帯びた物静な女性。
落ち着いていて戦闘も苦戦しても余り動じない。

必要ならば多少の怪我は致し方ないと思っている。
他の猟兵に迷惑をかける行為や公序良俗に反する行動はしない。

連携:お好きにどうぞ


ハンナ・レドウィッチ(サポート)
ふふん、どうやら大天才邪竜神様の手助けが必要なようね。
不要と言われても助けに行くから、安心して崇め奉りなさい!

超自信過剰なオラトリオの自爆魔法使い。UC大召喚を使用しない間(使用予定無し)、UCの成功率が下がる(お任せ)為、よく自爆して気絶します。
棒術に長け、マイケルくんでの接近戦が得意ですが見た目は若くてもお婆ちゃんなので腰に来ると戦闘不能に。
UCは選択した物を自爆を何故か恐れず強気で使用し、成功すると小躍りして喜びます。

接近戦ではマイケルくんで攻防一体の戦闘を行い、他猟兵と積極的に連携。
隙を見て、あるいは調子に乗ってUCを使用します。
アレンジその他全てお任せ致します!


鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

相手はDが大量にある限り優位な状況が続くわけか…
Dって、お金だから命を持たない、無機物、だよね?
なら!
俺には無機物を媒体にするUCがあるじゃないか!

媒体とするのはDのみに絞りつつ、固有結界・黄昏の間を発動
【高速詠唱】+【多重詠唱】で周辺のDを可能な限り素早く疑似精霊へと変換

貴方にとって頼みの綱だったDが今度は貴方自身へ終止符を打つ為に襲い掛かるんだ!因果応報って奴だね

4種の疑似精霊を召喚し、それぞれ発生させた火球・水弾・岩弾・鎌鼬を【破魔】を付与し敵へ向けて【一斉発射】!
俺の【全力魔法】力を注いだこの攻撃、受けてみろ!

俺が疑似精霊にするか、貴方が消費仕切るのが先か勝負だ!



●決戦
 マンションダンジョン最上階。脱線に脱線を重ねたこの戦いにようやく終止符が打たれようとしていた。
 女王の玉座から立ち上がった十字皇シュラウヴィベラは、三人の猟兵に値踏みするような視線を向ける。
「ほう、三人か……なかなか賢い者どもよ。だが、雑魚がいくら集まろうと無敵の妾には勝てんぞ!」
 シュラウヴィベラは四本の腕に異なる武器を構え、冷たい殺気を猟兵たちに放つ。 
 対する三人の猟兵は即座に陣形を整え、臨戦態勢を取る。
「後はよろしく頼みます。俺は向こうを……」
 鳳凰院・ひりょ(f27864)は、ダンジョンの途中で合流した心強いメンバーに礼儀正しく頭を下げ、事前に打ち合わせた作戦通りに後方へと下がる。
「任せておきなさい。この大天才邪竜神様に不可能という文字はないのよ!」
 ハンナ・レドウィッチ(f31001)は相棒の箒、「マイケルくん」を構え、自信満々に敵を見据える。
 その少し後方に立つのは、東方妖怪の朧百合・祈來璃(f28847)だ。彼女はたおやかに番傘をさしているが、琥珀色の瞳に確かな信念を宿らせ、大蛇の下半身を持つ敵を静かに見据える。
「足止め、撹乱は妾が務めましょう。準備はよろしいですわね?」
「はい!」
 ひりょは決戦の合図とでも言うように、後方から護符を乱れ撃つ。敵と味方の中間地点で風と土の精霊の力が解放され、土煙が吹き荒れる。
 すると、土煙の中から飛び出す二つの影。一つはシュラウヴィベラに突撃するハンナ。もう一つはDの貯金箱へと向かうひりょだった。
「おのれ! かような小細工などに惑わされんぞ!」
 意表をついた奇襲攻撃に憤怒の声を上げ、武器を激しく振り回すシュラウヴィベラ。
 その風圧で土煙が吹き飛ばされ、視界が戻ってくると、今度はきらびやかな蝶の群れが視界を被う。
 それは祈來璃の放った「幽還蝶」だった。
 霊気を放ちながら艶やかに宙を舞う、幽世の蝶。それは思わず見とれてしまうような美しい光景だったが、この場にいる者にそんな余裕はなかった。
 シュラウヴィベラは蝶を蹴散らそうと武器を振り回すも、蝶は振り払っても振り払ってもまとわりついてきて離れない。
 そこへハンナが飛び込んでくる。突進とともに放たれる突き。
 蝶の群れを貫通してきた箒の穂先に無防備な肩を穿たれ、蛇女は後方に弾き飛ばされる。
「なかなかやるのぅ。だがそんな得物で妾を倒せるか!」
 だが、蛇女は即座に体勢を立て直すと、さらに地面を蹴って相手との距離を詰め、反撃とばかりに右上腕の湾刀、さらに右下碗の短刀による連撃を放つ。
「この大天才はその程度の攻撃では倒せないわよ!」
 キィン。箒の柄を器用に使って湾刀と短刀を上下にさばくハンナ。すると、間髪入れずに左上腕の鈍器の打撃が飛んでくる。
 ガツッ。咄嗟に後方に退きながら箒の柄で受けるハンナ。だが、想像以上に重い打撃に、体勢を崩してしまう。
 そこを狙って蛇女の左下腕のスピアが突き出される。危ない。直撃を受ける寸前、後方から破魔の護符が飛んできて、スピアを持つ腕を弾く。
 護符を投げたのは、後方支援を担当する祈來璃である。
「妾がいることをお忘れにならないでくださいませ!」
 後方からよく通る声で発せられた言葉は、シュラウヴィベラにも届いていた。
 だが、視線を向ける前に、体勢を立て直したハンナが箒を振るい、彼女の横腹を打つ。
「うぐっ!」
「よそ見してると、足を掬われるわよ!」
 ハンナの声に気を取られ、シュラウヴィベラは再び眼前の敵と対峙することになる。
 こうして二人の猟兵の連携により敵は足止めされ、作戦の成否はひりょに託されるのだった。
 
●Dの貯金箱
(これがDの貯金箱か……なかなか頑丈そうだね)
 作戦通りに動いたひりょは、巨大な金属製の立方体を見上げていた。
 その上に掲げられた電光掲示板のデジタル数字は貯蓄されたDの総額だった。
 十字皇シュラウヴィベラはDを消費し、あらゆる行動を成功させるユーベルコードを持つ。
 それを用いれば、Dが残っている限り攻撃も防御も回避も思いのままだ。
 まだかなりのDが残っている。普通に戦えば消耗戦になるのは必至だった。
 一気に勝負をつけるための秘策。大役を担うひりょは空中を浮遊して箱の上に降り立つと、Dの投入口の蓋を開放し、下準備を済ませるのだった。

●決着
「ふふふっ、本気を出した妾を止めるのは無理のようじゃのぅ。後ろの女も、よく見えておるぞ!」
 四本の上肢による疾風怒濤の攻撃を放つシュラウヴィベラ。
 対するハンナは相棒のマイケルくんでなんとか直撃を防いでいるものの、防戦一方だった。
 祈來璃の援護射撃も空を切り、二人の顔には疲労の色が浮かんでいるように見えた。
 余裕綽々の女王はそこでようやく、ひりょの存在を思い出す。
「そういえば、もう一人いたはずじゃが……」
 戸惑いの表情を浮かべるシュラウヴィベラ。攻撃が緩んだ隙に後方に飛び退き、そのまま後衛まで下がったハンナは、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「この大天才邪竜神様にまんまと騙されたわね。後は任せたわよ!」
 ハンナの視線の先には幽還蝶のカーテン。祈來璃が幽還蝶を飛び去らせると、そこに立っていたのはひりょだった。その漆黒の瞳はまっすぐにシュラウヴィベラに向けられ、背後にある巨大な箱の上からは、四色の光が噴出していた。
 その幻想的な光の主は、精霊術使いのひりょが貯金箱のDを使って召喚した疑似精霊。
 固有結界・黄昏の間。無機物を擬似精霊に変換し、自在に操る結界は既に室内に展開されていた。

「これが因果応報って奴だね。貴方にとって頼みの綱だったDが今度は貴方自身へ終止符を打つために襲い掛かるんだ!」
 
 冷ややかな言葉とともに、風、火、水、土の疑似精霊の群れが敵に向かって飛翔する。
 幾重にも連なる四色の光がシュラウヴィベラを即座に包囲し、逃げ場を塞ぐ。
 そして、疑似精霊たちは自らの体に精霊力を集束させると、それを敵に向けて一斉に放った。
 鎌鼬、火球、水弾、岩弾。四属性の精霊の力の結晶は、ひりょから発せられた破魔の力を帯びて襲いかかる。
 それでもシュラウヴィベラの瞳には絶望は浮かんではいない。瞳に宿るのは猟兵たちを憎み、蹂躙せんとする邪悪な意思。
「こんなもの! 妾の力で消し去ってくれるわ!」
 シュラウヴィベラは切り札のユーベルコードを発動しながら、四本の武器を嵐の如く振り回し、大蛇の尾を軸にして竜巻の如く高速回転を始める。全方位絶対防御の技。それはただ守るだけでなく、周囲に烈風を撒き散らし、疑似精霊たちを吹き飛ばしていく。だが、それはDを大量に消費し続けることで実現する技だった。
 
 擬似精霊への変換に使用されるDと、シュラウヴィベラの絶対防御に費やされるD。
 二つのユーベルコードが衝突し、魔界の貨幣は疑似精霊へと変じ、あるいは燃料として消費されて蒸発する。
 そのたびに箱の上に掲げられた電光掲示板の数字も、ゼロに向けたカウントダウンを加速させた。

「俺が疑似精霊にするか、貴方が消費し切るのが先か勝負だ!」

 ひりょは高速詠唱と多重詠唱によって疑似精霊への変換をさらに活性化させる。

 虚空を切り裂く風の刃。
 劫火の如く燃え盛る火球。
 邪悪を浄化するかの如く清澄な水弾
 流星の如く落下し破壊をもたらす岩弾。

 疑似精霊たちによる絨毯爆撃が激しさを増し、熱風と炎が高温高圧の蒸気とともに吹きすさび、岩石をも巻き込んで渦を作り、シュラウヴィベラを押し潰していく。
「ぐわぁああ! だが、負けないのじゃ。妾はこんなところで……妾は絶対にィィィ!」
 圧搾されるような苛烈な攻撃の中で、シュラウヴィベラは自らの生命すらも燃やし尽くすかのように叫び、邪悪なオーラを噴出させる。それは最後の抵抗。回転速度も上がり、猛烈な突風によって疑似精霊たちが押し返されていく。
「俺も、絶対に負けない! 骸の海に還れぇえ!!」 
 ひりょも負けじと叫び、自らに残る力を擬似精霊たちに注ぎ込み、懸命に堪える。
 まさに意地と意地、全力と全力のぶつかり合い。だが、膠着状態は長くは続かなかった。
 唐突に貯金箱のDが枯渇し、疑似精霊たちの爆撃の渦中に呑み込まれていくシュラウヴィベラ。
 さらにその体には破魔の力が矢のように突き刺さり――女王の間に断末魔の絶叫が響き渡った。
 
 戦いを終えたひりょは安堵のため息をつくと、糸が切れたように脱力して膝をつく。ギリギリの勝負だったのだ。
 役目を終えた疑似精霊たちが空中で力を失う。そして、黒い煙を上げながら骸の海へと還っていく十字皇シュラウヴィベラに、魔界の貨幣が雨のように降りかかる。
 それは、この世界を滅ぼすためにひたすらDを貯蓄し続けた堅実な女王様を見送る涙雨のようだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年06月18日
宿敵 『十字皇シュラウヴィベラ』 を撃破!


挿絵イラスト