他人のメダルでゲームがやりたい
●怪人だって勝ちたい
じゃらじゃらじゃらばりばりじゃらじゃら。激しいメダルの流れる音と喧しい音楽。メダルゲームだらけのゲームセンターの片隅で嘆いているのは可愛らしい怪人達だった。
「あっあー!また外したウサーッ!」
嘆きと共に台をバンッと叩くのはウサちゃん怪人。どんなに腹立っても台パンはしちゃ駄目って習わなかったのだろうか。何度も何度もバンバン叩く。やめろや。
「うるせークマ!さっさと次行くクマ!!」
「次こそ当てるワン!」
一緒に来ていたクマさん怪人とワンちゃん怪人も負けているのかイライラしている。底が見え始めたカップに大きな溜息一つ、追加のメダルを買うことにして席を立つ。
「次何枚行くクマ」
「もうドーンと1000枚いくワン」
「3000でもいいウサ」
「――そこまでして勝ちたいガネ?」
殺気立つ三人に声を掛けたのは先程まで誰もいなかったはずの受付にいる金色の竜――集円竜エンドラゴンだった。
「そりゃ勝ちたいウサ!」
「ほーう。ならばこの勝利を約束した特別なメダルをやるガネ。その代わり、ウチで遊んでメダルを借りてるクセに、そのメダルを返さないバトルゲーマー達を連れてくる仕事をして欲しいんだガネ。さあさあどうする?決めるのは今だけガネ」
キラリ。エンドラゴンの見せるメダルは他のメダルと違い、虹色の光を纏っている。それがあれば確かに勝てそう――そう思った三人の答えはすぐに出る。
「……行くぞクマ!」
斯くして、三人はゲームセンターの地下にあるエンドラゴンのアジトに連れていかれ、約束された勝利のメダルを手に入れた。
ついでにメダルゲーム怪人に改造されてメダルがじゃらじゃら貼り付けられたが、自分では剥がせずゲームに使うことは出来なかった。三人ががっかりしたのは言うまでもない。
●知らぬ間に増える返済額
「くそっ……くそっ……何で外れるんだ……!」
キマイラフューチャーで活動するバトルゲーマー達の中にはゲームセンターを見つけてしまうと攻略したくなってしまう者もそれなりにいる。攻略出来ないゲーム程熱くなってしまうのも困った職業病(?)だろう。今ここで歯軋りしながらスロットのリールの動きを見ている少年、タクミもそうだ。
「次こそは当たる……当てる……!」
先程投じたメダルが最後の一枚だった。もうここで負けるわけにはいかない。最後のリールを狙い通りに止めるべく、ボタンを押した――が、無情にも派手な7は滑って行った。
「くそっ……!何でだ!?このタイミングなら普通、止まるだろ……!?」
「お客さん、もうやめとくウサ」
「タイミングは間違ってないはずだ、だからもう少しやれば当たるはずなんだ!だからっ」
「お客さんが借りてるメダル、利子含めて一億枚近いワン。返せるワン?」
「は……?んなバカな!?そんなに借りてないっつの!っていうか利子ってなんだよ!おい!」
「はーい一名様ご案内クマ」
三人がかりでタクミを抑え込み、ずるずると引きずっていくアニマルズ。
「ちょっと待てよ!どこに連れていく気だ!?」
「返せないなら地下労働って決まってるワン」
「決まってるのか!?」
「決まってないかもウサ」
「どっちだよ!?」
「まーまー、エンドラゴンのとこ行って決めるクマ。あ、そうだお客さん。猟書家の所に連れていかれたくないなら一つ案があるクマ」
「な、なんだよ……?」
「ぼくらの分までメダル借りてこいやクマ」
アニマルズの目は死んでいた。――約束された勝利のメダルなんてなかったんだよ。
●ゲームのやめどきがわからない
「メダルだとしても借金て嫌なもんだよな」
やってきた猟兵に「そうだろ?」と聞いたのは青梅・仁。
「キマイラフューチャーで『集円竜エンドラゴン』っつー、何か趣味悪そうな竜と『つよくてかわいいアニマルズ』っていう自称つよ~い動物ちゃん達がバトルゲーマー相手にイカサマすんだって」
まずメダルゲーム専門のゲームセンターを設立し、メダルを貸し出す。ここまでは普通。問題はここから。そのメダルゲームは絶対に勝てず、更には実はメダルには凶悪な利子があり、知らない間に返済すべきメダル数がどんどん増えていく。
こうしてどうしようもなくなったバトルゲーマーを支配してしまおうというのがエンドラゴンの企みだ。
「キマイラフューチャーで貨幣復活。ぱっと見は平和そうな世界征服計画だが、案外こういうのって侮れねえのよな。てなわけでサクッとボコってきてくれ。……動物ちゃん達の方はちと可哀想な気もするが」
彼らもある意味被害者なのだ。被害者だが彼らの活動は止める必要がある。仕方ないのだ。約束された勝利のメダルなんてないことに気づけなかった彼らの運命だったのだ、たぶん。
「皆が行くタイミングはアニマルズがバトルゲーマーを連行しようとするタイミングだな。うまく割り込んでバトルゲーマーを助けてやってくれ。今回巻き込まれてるのはタクミっつー男の子なんだわ。助けりゃ応援してくれるしちょっとくらいなら一緒に戦ってくれるかもしれん。何か声かけてやってもいいかもな」
お説教はしても良いけど傷ついてるみたいだから控えめにしてやってくれな、と苦笑い。
タクミはバトルゲーマーのプライドで戦っていたのだ。ちょっと引き際わかってなかっただけで。
「あ、あと、アニマルズを殴ると何故かメダルが転がり出てくるっぽいし、それで戦っても面白いかもしれんね」
なんでだよ。どう戦うんだよ。そんな雰囲気を感じ取った仁だったが知らん顔で話を締める。
「じゃ、がっつり勝ちを掴んできてくれ!」
何故かガッツポーズをしながら、猟兵を見送った。
春海らんぷ
春海です。メダルゲームって帰ろうとした時ほど当たるの何でですかね。
イカサマありの正々堂々メダル争奪合戦+α、開戦です。
●シナリオについて
このシナリオは猟書家幹部シナリオで、二章構成です。
なおこのシナリオには以下のプレイングボーナスがあります。
●プレイングボーナス
『バトルゲーマーに応援される(そこそこ戦えます)/敵のインチキを破り、メダルを奪う』
タクミは17歳の男の子です。割と子供っぽいです。バトルセンスは悪くないので指示すれば支援してくれます。
●第一章
『つよくてかわいいアニマルズ』さんとの戦いになります。
自称「つよくてかわいい」、丸太クマさん怪人、鉄球ワンちゃん怪人、ピコハンウサちゃん怪人の愉快な三人組です。
ゲームに負けに負けて八つ当たりモードです。
何故かメダルが張り付けられていますが本人達には剥がせず、攻撃されることで剥がれます。ちゃりりんと落ちます。集めておくとエンドラゴンとの戦いがちょっと有利になります。
負けに負けてる癖に「××で勝負だ!」とか言うとノります。メダルゲームに限らずノります。
●第二章
『集円竜エンドラゴン』さんとの戦いになります。
キマイラフューチャーでの貨幣復活を企んでいます。金で暴かれる人の醜さを嘲笑うのが好きだそうです。多分アニマルズの荒みっぷりも楽しかったのではないでしょうか。
きんきらメダルばかりの謎空間での戦闘になります。ここではメダルや貨幣の所持数が多いほど力が増します。
アニマルズとの戦いからの貯金や、この空間のメダルを奪取したりしてメダルを集めてみてください。いっぱい集めるといっぱいHappy。
また、相手のメダルを失わせたり、お金を持ち込んでみたりしても有効かもしれません。
●注意事項
・ゆるふわネタシナリオです(エンドラゴン戦もそうなる可能性が高いです)。
・アドリブが入りやすいのでアドリブがNGの場合、お手数ですがプレイングの最初に「×」を入れていただけますと幸いです。
以上、よろしくお願いいたします。
第1章 集団戦
『つよくてかわいいアニマルズ』
|
POW : 丸太クマさん怪人・ウェポン
【丸太兵器 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 鉄球ワンちゃん怪人・ジェノサイド
【鉄球攻撃 】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ピコハンウサちゃん怪人・リフレクション
対象のユーベルコードに対し【ピコハン 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
冬原・イロハ
アドリブ・連携歓迎
????
メダルゲームのおしごとをしているのに報酬のお給料(メダル)が出てこないんです?
なんてひどい組織(ゲーセン)なのでしょう
(キマフュもゲーセンも初めて来た感想)
ま、待ってください、タクミさんを連れて行かないでください!
と、駆け寄ります
そして私、転びます「あっ(棒読み)」
今月のバイト代である金貨をばら撒くように投げつけますね
風属性でUC!
敵さんはメダルに似たような金貨を見て怯んだりするかしら?
飛翔する金貨たちで攻撃
タクミさんに鉄球攻撃が来そうなら教えてくださいと頼みましょう
目押しが得意みたいなので、適切に回避できる時を指示してくれそう
金貨で撃ちます
落ちたメダルはなるべく集め
「……????」
冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)は困惑していた。怪人がお給料のメダルを貰っていないという事に困惑していた。
イロハは普段スペースシップワールドでバイトをしてきちんとお給料を受け取っている。キマイラフューチャーには貨幣概念がないのは知っていても、バイトをしている身としてははっきりと言えることがある。
「なんてひどい組織(ゲーセン)なのでしょう……」
キマイラフューチャーの貨幣概念の有無以前に猟書家が作ったゲーセンなのでお給料が出ないのも致し方ないのだが、そう言われたとしてもイロハは納得しないだろう。
その言葉が聞こえていたのかタクミを押さえつけていた三人の怪人がバババッとイロハの方に勢いよく向いた。
「そうなんだワン。ひっどいゲーセンなんだワン」
「ハメられたんだウサ」
イロハの呟きに同情を求めるように返すワンちゃん怪人とウサちゃん怪人。
「だから邪魔しないで欲しいクマ、可愛くてバイト代の大切さがわかる猟兵さんなら分かってくれるクマね?」
切ない顔をしてタクミを引き摺っていく三人。イロハはハッとして三人に駆け寄る。
「ま、待ってください、タクミさんを連れて行かないでください!」
「ぼくらは仕事しないといけないんだクマ……」
「でも、お給料を貰ってないのに働くなんて良くないと思うんです!……あっ」
イロハの足が縺れ、ぱたりと倒れた。ちゃりちゃりちゃりん、とイロハのバイト代がばら撒かれるように落ちる。メダルの音によく似た金貨の落ちる音に怪人達とタクミは思わず視線を向けてしまう。……転んだ時の声が凄い棒読みだった気がしないでもないが、ゲームセンターの騒音の中ではそんなことは分からない。
「だ、大丈夫ワン……?」
手を差し伸べたのはワンちゃん怪人。一瞬だけ金貨の方に手が伸びたが頑張って軌道修正した。「偉いぞ……」って顔する怪人二人。
その横でタクミは僅かな風の流れに気が付いた。ゲームセンターの空調は大して強くないはずなのに、落ちていた金貨が数枚ころころと転がっているではないか。
「おい、この店傾いてるのか?」
「は?何言って――ウサーッ!?」
ズビシと手裏剣の様にウサちゃん怪人の額にヒットする金貨。それを皮切りに全ての金貨が浮かび上がったかと思うと意思を持ったかのように怪人達に襲い掛かる。
「タクミさん、早くこちらへ!」
「あ、ああ!」
ぱっと起き上がり手を伸ばすイロハ。タクミは金貨の竜巻に巻き込まれそうになりながらも、どうにかイロハの手を取った。怪人達の拘束から漸く逃れたことに安堵したように息を吐く。
一方でビシバシと当たり続ける金貨にビビりながらもどうにか掴もうとする怪人達。金貨がぶつかる程メダルが零れ落ち、それも金貨と共に舞い上がって次々にぶつかる物が増えていく。
「あたたた、早くメダル集めて追いかけるクマ!」
「あ、それメダルじゃないです」
「えっ!?じゃあこれ何ウサ?」
「今月のバイト代の金貨です」
「「……えっ?」」
タクミとウサちゃん怪人の声がハモった。二人の顔色が一瞬で悪くなる。
「な、なあ、バイト代ってかなりヤバいんじゃないか?大丈夫か?」
「そうウサ、命とお金とメダルは大切にするウサ!――じゃなくて!二兎を追う者は一兎をも得ず!手分けするウサ!ワンちゃん怪人、鉄球で二人纏めて捕まえるウサ!」
「分かったワン!金貨集めは任せたワン!」
ビシバシ当たる金貨とメダルに「いてっ」とか言いながら、ワンちゃん怪人が二人に迫る。ぐるるんと振り回した鉄球は存外速く重そうだ。
「タクミさん、鉄球攻撃が来そうなタイミングを教えてくれませんか?」
「ん、わかった」
イロハの意図を理解したのか余計なことを聞かずワンちゃん怪人の攻撃を注視するタクミ。
「――避けろ!」
タクミの声に合わせ、投げられた鉄球を軽やかに回避するイロハ。そのままがら空きになったワンちゃん怪人に向けて残っていた金貨全てを放ち攻撃する。
一層強く込められた風の魔力で大砲の如き勢いになった金貨はワンちゃん怪人を吹き飛ばし、金貨を集めようと必死になっている二人も巻き込み壁に叩きつけた。
ちゃりじゃりちゃりりーん!派手な音を立て転がり落ちる金貨とメダル。壁に叩きつけられた怪人達がぐったりとしている隙にイロハとタクミは手分けしてせっせとメダルを拾い集める。バイト代も無事にほぼ全額回収できた。
バイト代、大事に使ってください。
成功
🔵🔵🔴
ラガルルク・デンケラ
あらまあ。賭けの溝にすっぽりハマっているね。自力で抜け出すのは大変だろう。鬼の手は必要かしら?
さて、挨拶代わりにアニマルズを海竜に殴ってもらおう。いやね、その張り付いているメダル欲しさについね? でもお前は僕に謝罪を要求するより感謝を述べるべきだ
僕がメダルを落としたから、お前は自分に張り付いていたメダルを手にすることができる
ほら拾いなよ。拾わないなら僕のものよ判断が遅いもうコレ僕のものだから
返して欲しいなら、勝負しようか。こういうの好きだろう?
タクミ、あれはないかしら。腕力がモノをいうゲーム、ゲーム機? こう、パンチするやつ……パンチングマシンか! それで競おう
じゃあ僕の代わりを頼んだよ、赤星
ラガルルク・デンケラ(先見の魔女・f28988)はあらまあ、と呟く。
「賭けの溝にすっぽりハマっているね。自力で抜け出すのは大変だろう。鬼の手は必要かしら?」
そう聞いたラガルルクは相手の答えも聞かぬうちにロブスターに似た海竜『赤星』をけしかける。赤星が勢いよく三人の怪人を殴ればじゃりじゃりと音を立ててメダルが落ちた。
もしかすれば殴る事で賭けの溝にハマった相手を抜けるのかもしれないが、聞いた意味、ありましたか……?
なお、ラガルルクの問いにタクミも何か言おうとしていたのだが、開きかけた口から声が出ることはなかった。
「答える前から何するウサァ!!」
「いやね、その張り付いてるメダル欲しさに、ついね?」
ふふ、と笑い、「でも」と続ける。
「お前達は僕に謝罪を要求するより感謝を述べるべきだ」
「は?何言ってんだクマ?」
美しい大魔女の言葉に揃って首を傾げる三人。
「僕がメダルを落としたから、お前達は自分に張り付いていたメダルを手にすることができる。ほら、拾いなよ」
ラガルルクの言葉に三人が固まる。全く気づいていなかった事実。数瞬、言われた事を理解できずぽかんとしていた。
「拾わないなら僕のものよ判断が遅いもうコレ僕のものだから」
捲し立てられてやっと正気に戻り手を伸ばす怪人達の前でじゃらり、とラガルルクがメダルをかき集めた。その手際の良さはカジノのディーラーのよう。そのまま集めた大量のメダルをしまう。ちょっと持ちきれない分はタクミに預けた。
「えっ、あっ、独り占めは狡いワン!」
「判断が遅いのが悪い」
勝負は常に判断力が大事だ。それが出来ないアニマルズはエンドラゴンにカモられても仕方なかったと言えよう。
「大体そのメダルはぼくらについてたウサ!だからそれはぼくらのものでお前のものじゃないウサ!」
「そうだワン!絶対に返してもらうワン!」
やっぱり賭けの溝にすっぽりハマっている――というか沼に沈みかけているとも言える程にメダルを欲するアニマルズにラガルルクは少し考える。勝負というものを教えてやるべきか。
「返して欲しいなら、勝負しようか。こういうの好きだろう?」
「ぼくらに勝負をふっかけるなんていい度胸してるクマ。負けに負けまくった分、運はぼくらに回ってきてるはずクマ!」
ありもしない根拠にドヤりつつ受けて立とうとする怪人達。怪人達のドヤ顔をスルーしてラガルルクはタクミに振り返り、一つ質問。
「タクミ、あれはないかしら。腕力がモノをいうゲーム、ゲーム機?こう、パンチするやつ……」
そんなゲームがあると聞いたことがあるけれども名前が出てこないラガルルクがしゅっしゅっとパンチして見せる。その横で赤星もしゅっしゅっとアタックするように動く。タクミは暫く二人を見て唸っていたが徐に口を開いた。
「……パンチングマシンのこと?ないけど……疑似的には作れると思う」
「よし、それで競おう。どうかな?」
「ふっふん、そんな細腕でどう勝とうっていうクマ?パワー勝負ならぼくが最強クマ。可愛いからってナメてもらっちゃ困るクマ」
クマさん怪人がズカズカ歩み寄る。勝利を確信しているのかふんぞり返っている。ラガルルクは相手の態度を見ても笑みを崩さない。
そんな二人の間にゴリラ型のキャラクターが現れた。タクミが作り出したバトルキャラクターだ。
「これがパンチングマシンになるのかい?」
まじまじと見るラガルルクにタクミはこくりと頷く。
「こいつは防御特化させたゴリラモンスターだ。こいつのHPを多く減らした方が勝ち……ってことならわかりやすいだろ?」
「いいね」
「わかりやすいクマ」
タクミの説明に納得したように返す二人。
「じゃあ、手本を見せてもらおうかな」
微笑むラガルルクの前でクマさん怪人が気合を入れるようにぐるりと肩を回した。
「ぼくのパワーに惚れるんじゃないクマよ」
丸太を構え、ゴリラに突撃する。バコン、と音がしてダメージは5000と表示された。結構なダメージだ。
「さ、おねーさんもやるクマ。どうせ勝てないだろうけどクマ」
「……赤星、僕に格好いい所を見せるチャンスが来たよ。惚れ直させちゃくれないかい?」
その言葉にふんすふんすと気合を入れるタフガイな海竜。クマさん怪人の血の気が引く。先程挨拶代わりにぶん殴られた時、滅茶苦茶痛かった。そんな奴が代打だなんて聞いてない。
「そそそそそんなの卑怯クマ!おねーさんがやるクマ!」
「最初から僕がやるなんて言ってないよ」
クマさん怪人の動揺をよそにバシィィン!と赤星がゴリラをぶん殴った。爆発四散するゴリラ。ダブルスコアってレベルじゃねえ。
「勝負あったね。メダルは僕達のものだ」
ラガルルクはにこやかに勝利宣言。撫でられている赤星は満足そうだ。
成功
🔵🔵🔴
祓月・清十郎
タクミ殿
よく見るでござるよ
あいつら滅茶苦茶メダル塗れでござるでしょ?
メダル足りないなら二人で奴らの身ぐるみ全部引っぺがして山分けにするでござるよー
そんな訳で怪人共。叩いて被ってじゃんけんポンで勝負でござる
ルールは知ってるでござるな? そう、どんな手段を使っても最後まで立っていた方の勝ちでござるね
タクミ殿には攻撃役をお願いするでござる隙を見つけたら即座にぶん殴るでござるよ
拙者はどなべで身を守りつつ、運動神経へちょいので、後は全部全一の人に任せるでござる
え?何でござる全一の人?こんなの格ゲーじゃない?まぁそう言わず
全一の人なら、攻撃を防ぎつつ奴らをどなべとかでぶっ倒す事も容易でござるよ。きっと。
サバトラのケットシー、祓月・清十郎(異邦ねこ・f16538)。普段はあちらこちらの世界をふらふら放浪している彼だが、今日はちゃんと任務を果たすためにやって来た。決して迷子になったりトラブルに巻き込まれちゃったわけではない。
「タクミ殿、よーく見るでござるよ」
清十郎がゲームセンターの騒音に負けない程度のこそこそ声でタクミに話しかける。
「え、何」
しゃがみこんで耳を澄ませるタクミ。
「あいつら滅茶苦茶メダル塗れでござるでしょ?」
「ああ、うん」
何を今更?と不思議に思いながらタクミが返すと清十郎は楽し気にとんでもないことをのたまった。
「メダル足りないなら二人で奴らの身ぐるみ全部引っぺがして山分けにするでござるよー」
気楽なテンションで物騒な発言である。だがタクミもこれまで散々このゲームセンターや怪人達に痛い目に合わされてきたので、ノった。この二人、鬼では?
「オレは助けて貰ってる側だし、別に山分けにしなくてもいいけどボコボコにして身ぐるみ全部引っぺがしてやろう」
「その意気でござる!」
すっくと立ちあがるタクミとどこからともなく取り出した扇子で応援する清十郎。そのノリに危機を察したのか怪人達がちょっと引いた。
「そんな訳で怪人共。叩いて被ってじゃんけんポンで勝負でござる」
「そんな訳ってどんな訳ワン」
こいつら絶対ヤバイこと考えてるワン……と思いつつ勝負にノってしまう怪人達。
「タクミ殿には攻撃役をお願いするでござる」
「わかった」
「待て待て待て待てウサ」
「なんでござるか?」
ウサちゃん怪人のストップに不思議そうにする清十郎とタクミ。
「叩いて被ってじゃんけんポンって普通一対一クマ、分担なんてずるいクマ!!」
「じゃあ怪人共も同じようにしていいでござるよ?」
しれっと返す清十郎。チーム戦にしてしまえば問題ないはず、たぶん。
「三人でかかってきても構わないでござるよ。こちらはプロのバトルゲーマー、タクミ殿がいるでござる」
えっ、と一瞬タクミが横を見たが、やるしかないのがバトルゲーマー。気を取り直して攻撃用のハンマーを構えた人型キャラを召喚。回数制限はあるようだが、一狩りやれそうなゴツさがあるのは気にしてはいけない。
「ルールは知ってるでござるな?」
「当たり前ワン。じゃんけんに勝ったら叩く、負けたら防御だワン」
「そう、どんな手段を使っても最後まで立っていた方の勝ちでござるね」
清十郎以外の四人がそのルールに頷いたが、叩いて被ってじゃんけんポンはどんな手段を使っても良いというルールはない。
「タクミ殿、隙を見つけたら即座にぶん殴るでござるよ」
「じゃんけん関係なく?」
「関係なく。メダルの恨みを晴らす感じで、ぶんっ、と」
「なるほど」
叩いて被ってじゃんけんポンという名の不意打ち大作戦。そんな物騒な作戦が立てられたとも知らず、クマさん怪人が開始を急かす。
「準備できたクマ?いい加減やるクマ」
「できたでござる。いくでござるよ」
たーたいて♪かーぶって♪じゃんけん――ドゴォオォオォン!!
さっと土鍋を被って完全防御した清十郎の目の前で人型キャラが振るったハンマーがウサちゃん怪人のヘルメットをかち割った。想定以上の火力に「ひえっ……」となりつつ、清十郎はとある人物を召喚する。
光の中から腕組みをして現れたのはキマフュ全一格ゲーマー。全一の称号は維持するのは難しいので召喚される人はころころ変わる。今回召喚されたのは格ゲーの中に居そうなゴッツイ男性だった。
「拙者を操って勝利に導いて欲しいでござる!あとは任せるでござる!」
「ぇえ……」
召喚されて早々にそんなことを頼まれて困惑する全一の人。とりあえず頼まれた通りに操作してみるが――あれ?このケットシー、土鍋から手を離しませんね?
「おい、お前防御しか出来ないのか」
「? だって拙者はディフェンスでござるからね」
不思議そうに返す清十郎に全一の人はでっかい溜息を吐いた。こんなの格ゲーじゃない。
「全一の人なら攻撃を防ぎつつ奴らを土鍋とかでぶっ倒すことも容易でござるよ」
きっと。そこまで言われれば全一の人だってやらねばならぬ。土鍋を被ったままの清十郎を操り、ワンちゃん怪人に飛び蹴り。クマさん怪人が振るってきた丸太をくるりと回避し土鍋で頭突き。タクミのキャラがクマさん怪人にハンマーを振るった後にトドメの顔面キック!
「決まったでござるね……」
清十郎は清々しい表情で土鍋を帽子のようにくいっと上げた。
成功
🔵🔵🔴
葛籠雄・九雀
SPD
引き際がわかっていない時点でアウトであるが?
それとイカサマも、賭けがつまらなくなる故よくないであるな。
…ふむ。
バトルゲーマーのプライドがあると言うなら、とりあえずこの怪人を一緒に殴ってメダルを奪い、ついでに黒幕も殴ってイカサマなしの機械でもう一度挑戦してみるというのはどうか?
まあ、結果の責任は負わんであるがな。
怪人には早撃ち勝負でも持ちかけるか。当たった方の負け。
【投擲、2回攻撃、カウンター、騙し討ち】+リコリスにて目潰し。相手の攻撃は【ジャンプ、逃げ足、ダッシュ、見切り】で避ける。後は…リコリスで針鼠にでもするか。タクミも好きに殴ってよいぞ。
さぁて、どれだけメダルを剥がせるであるかな。
バトルゲーマーのプライド。そういったものがある、というのは何となくわからないでもない。が。
「引き際がわかっていない時点でアウトであるが?」
「……ごもっともです」
葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)の言葉にタクミは俯いた。自覚はあったらしい。ちょっとしゅんとした感じのタクミをフォローするように今度は怪人達にびしりと一言。
「それとイカサマも賭けがつまらなくなる故よくないであるな」
「それをぼくらに言わないで欲しいクマ」
「ぼくらは被害者ウサー!」
ぴょんこぴょんこ跳ねて抗議する怪人達。言い分はあるようだが、イカサマする側に加担している怪人達に同情する余地はない。
「ふむ。タクミ、バトルゲーマーのプライドがあると言うなら、とりあえずこの怪人を一緒に殴ってメダルを奪い、ついでに黒幕も殴ってイカサマなしの機械でもう一度挑戦してみるというのはどうか?」
結果の責任は負わんであるがな、と言いながらもタクミの腕前を楽しみにするような九雀の言葉にタクミの表情も和らいだ。
「……それなら勝てると思う。いや、勝つ」
「うむ」
その意気やよし。そうと決まれば怪人達を共に殴ってメダルをがっつりと奪おうと二人は頷き合う。怪人達は大した強さもないのでそのまま突っ込んでも構わないが、ここは勝負狂いになっている性質を使おうと九雀は呼びかける。
「怪人達よ、一つ勝負をしないか?」
「受けて立つウサ!」
内容も聞かずに受けて立っちゃうあたり、やはり勝負狂いになってしまっている。予想通りノってきた相手に少し考えるふりをして見せ、勝負を提案してみる。
「ゲームらしく早撃ち勝負で良いか?」
「格好いいクマ。それならワンちゃん怪人のがコントロールが良さそうクマ」
「かっこよく決めるウサー!」
「任せろワン!」
子供のようにはしゃぐ怪人達。どうやら好みにドンピシャだったらしい。当たったほうが負けという明確なルールも良かったのだろう。
「鉄球使い怪人界ナンバーワンと言われるぼくと戦って無傷でいられると思わない方が良いワン」
随分小さそうなジャンルだなと思いつつ九雀は突っ込まないであげた。本人が自信を持っているということは、油断しやすいという一面もあるはず。であれば、今わざわざ指摘してそこを正させる必要もない。
「こちらも攻撃のコントロールにはそれなりに自信があるぞ」
「その自信、叩き潰してやるワン」
威嚇するようにぐるんぐるんと鉄球を振り回すワンちゃん怪人。その鉄球は勢いこそ良いが、本当にコントロールが良いのかは分からない揺れ方をしている。
「そうだ、ウサちゃん怪人よ。始まりの合図をしてくれ」
タクミに声を掛けてはイカサマを疑われかねない。敢えてウサちゃん怪人に頼むことで相手の警戒を薄れさせる。
「わかったウサ。やっぱあれウサ?振り返ってバンってやるウサ?」
キラキラとした眼差しで九雀を見つめるウサちゃん怪人。そこまでは考えていなかったがご希望があるのなら沿っておこうと九雀は頷いた。優しい。
「こういうのは背を向けて三歩歩くんだクマ?」
「そうウサ。ワクワクするウサ~」
自分が戦いもしないのにワクワクしているクマさん怪人とウサちゃん怪人。まあ楽しそうなら何よりであると思いつつ、九雀はウサちゃん怪人に合図をするよう促す。
「……はっ、そうウサ。お仕事ウサ。いくウサよ。……いち、に、」
ウサちゃん怪人の声に合わせ、歩む九雀とワンちゃん怪人。室内なのにタンブルウィードが転がっていそうな雰囲気すらある。
「さん!」
運命の三歩目。ワンちゃん怪人が振り向くとそこに九雀はいなかった。気配を感じて視線を僅かに下げると潜り込むような形で迫っていた九雀が掌を向けていた。
「っひいい、速すぎワン!」
慌てるワンちゃん怪人に向けて勢いよく飛ぶ無数の針。顔にグサグサと刺さる針はワンちゃん怪人の血を奪わんとその力を発揮する。
「ギニャーッ!?」
激痛に泣くワンちゃん怪人。続けて全身に刺される針と痛みによる涙で殆ど前が見えない。これではワンちゃん怪人ではなく泣いて震える針鼠怪人だ。
「タクミも好きに殴ってよいぞ」
ここまで追い込めば安全だとタクミに声を掛け、まだまだ残っていた針を手にする。
「さぁて、どれだけメダルを剥がせるであるかな」
ちょっと楽しそうに呟く九雀が針を刺すとそれを深く埋めるようにタクミの動かすキャラがハンマーで押し込んだ。延々とそれが繰り返されじゃりじゃりとメダルが落ちる。まるで家具作りのような光景だが、やっていることは拷問に近い。クマさん怪人とウサちゃん怪人は震え泣きながらそれを見ていることしか出来なかった。
成功
🔵🔵🔴
神楽・鈴音
久しぶりにご寄進がたくさん集まりそうね(悪い笑顔
まずはタクミに接触して、勝負を交代してもらえるよう説得
「残念だけど、引き際を心得るのが優れた賭博師よ
勝負の相手は兎怪人を指名
懐から護符を出しカード勝負と思わせる
「あなた達も遊び人なら、札を使った遊びは知ってるわよね?
まあ、相手が乗って来た瞬間にUC発動させて変身するのですが
全身から金色の闘気を発し、上半身はサラシのみな、巨漢と見紛うムキムキ状態に!
カード勝負?
相手を騙すための嘘です
呆気に取られた隙を突いて、賽銭箱ハンマーで叩き潰す!
「そんな柔い槌で勝てると思わないことね!メダルになれぇぇぇっ!
キマフューに小銭はないので敵をメダルに変えて回収します
「久しぶりにご寄進がたくさん集まりそうね」
重そうな賽銭箱――正しくは賽銭箱に棒を突き刺したハンマーを持ってやってきた神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)は……あれれ、なんだかわる~い笑顔を浮かべてますね?
彼女は賽銭箱のヤドリガミ。百年の間ほぼ放置に近い状態だった為に彼女はお金に目が無くなっていた。メダルなのはちょっと物足りないが、それでもキマフューにおける小銭代わり。ありがたく頂戴しにやって来たという訳だ。たくさん集まる可能性があるならそりゃもう笑顔になる。
「タクミ。勝負は任せて頂戴。私がやるわ」
「え、でも」
「残念だけど、引き際を心得るのが優れた賭博師よ」
「……わかった」
はっきりと言われ、きちんと引くタクミ。それでよし、と頷いて怪人の方へ向き直り、鈴音は懐からするりと札を取り出した。
「ウサちゃん怪人っていったわね。私と勝負しなさい」
いきなりの指名にウサちゃん怪人がきょとんとしたが、勝負を持ちかけられて逃げるような性格はしていない。
「いいウサよ。その札で勝負するウサ?」
「あなた達も遊び人なら、札を使った遊びは知ってるわよね?」
「この世全てとは言わないけど大体知ってるウサ」
「そう、なら良かった」
札を配るようにウサちゃん怪人に数枚渡し、とんとんと自分の持つ札を揃える鈴音。そういえば何のゲームをするのだろうとウサちゃん怪人は問いかけようとして、配られた札を見た。
「……護符じゃねーかウサ!!!」
札を使った遊びと言われたはずなのにトランプでもカードゲームでも何でもない護符を握らされて思わず叫ぶウサちゃん怪人。
ちなみに護符はやたら高そうな素材が用いられていてなんか凄そうなリッチな仕上がりである。ありがたみの光とかそれ以外の光も発しそうなクオリティ。
「しかもこんな高そうな護符で遊んじゃだめウサ……ウサ?」
半ギレ状態で鈴音に説教をしようとしたウサちゃん怪人の言葉が止まった。護符とは違う方向から金色の光が溢れている。その光を受けて更なる輝きを放つ護符。眩い光が一帯を照らし、怪人達もタクミも何が起きているか全く分からない。
ウサちゃん怪人は目が焼けると錯覚する程の光に耐え、薄らと目を開いた。そこには金色の光を纏い、上半身はサラシのみ、巨漢と見紛うムッキムキの人物が立っている。その手に握られた賽銭箱ハンマーも心なしか発光しているように見える。あまりの眩しさにまた目を閉じてしまったが、目を閉じながらその輝きを放つ人物に恐る恐る問いかけた。
「……どなた様ですかウサ?」
「さっきまであなたと戦ってた猟兵よ」
ムッキムキの猟兵――女神の加護を受け、筋骨隆々な姿に変身した鈴音が静かに答える。鈴音としてはこの姿はゴツイので人には見せたくないのだ。見せたくはないが、大量のご寄進ゲットの為には多少の犠牲は致し方ない。
「……あの、あの、カード勝負はどうなったウサ」
あまりの事に理解が追い付かないウサちゃん怪人が鈴音を見上げ、抑揚がなくなりつつある声で聞いた。
「カード勝負?あなたを騙すための嘘です」
呆然とするウサちゃん怪人。だが、このまま固まっていたら確実にヤバイ。手にしていた高級護符を放り投げ、急いでピコハンを構えた。
「ハンマー勝負ならどうにかなるウサ……!」
ガクガク震えながら自分を叱咤するようにピコハンを握るウサちゃん怪人。ウサちゃん怪人のピコハンにはユーベルコードを打ち消す力がある。いくら女神の加護を受けた鈴音の攻撃だとしてもユーベルコードには違いはない、なんて自己暗示をするが膝はずっとガクガクしている。
そんなウサちゃん怪人に構わず、容赦なく振り下ろされる賽銭箱ハンマー。リィン、とつけられた鈴が涼やかに鳴るが絵面は涼やかから程遠い。ウサちゃん怪人はピコハンでそれを受け止めようとして――ベシャンと潰れた。何故ピコハンで勝てると思ったのか。
「そんな柔い槌で勝てると思わないことね!メダルになれぇぇぇっ!」
餅つきよろしくドスドス叩きまくる鈴音。どんどこ出てくるメダル。ウサちゃん怪人がぺらっぺらの紙のようになるまでドスドス叩けばあたりにはメダルが溢れかえった。それをささっと集め賽銭箱に流し込む。
「今回はなかなかいいご寄進だったわね……」
満足そうに、でもやっぱりちょっぴり悪い顔で笑う鈴音。
ところで、彼女の言う『ご寄進』は倒した敵の貴重品を没収することを指す。――ご寄進って、なんだっけ。
成功
🔵🔵🔴
乱獅子・梓
【不死蝶】
経済面で世界征服って、力押しで侵略しようとする
他の猟書家たちよりも賢くて恐ろしい気がするな…
キマイラフューチャーの猟書家、
ヘンテコそうに見えて実は侮れない?
まずはあの闇金の取り立てのような状況を何とかせねば
俺たちのナリの方が取り立て屋っぽい?
やかましいわ(セルフツッコミ
何か勝手に話が進んでいる…!?
雰囲気に押されながら観戦
綾は見事なハンマーさばきだな…
見ていたら俺も出来そうな気がしてきた(フラグ
で、俺の番
……クッ!! 何てすばしっこいワニ共だ…!!
終始ワニの動きに翻弄されて
ロクな点数が取れず敢えなく敗北
綾の容赦なさに慄きつつも
自分もUCでドラゴンを呼んでボコボコに
灰神楽・綾
【不死蝶】
まぁお金は強いもんねー
お金さえあれば「次は当たる」に賭けなくても
「当たるまで回す」しちゃえばいいもんね
アニマルズのうさぎさんのピコハンを見ていいこと思いついた
よーし、そこのワニを叩くゲームで勝負だ
こっそりとワニ叩き用ハンマーに自身の血を付けUC発動
(これは立派な武器だよ武器)
超強化した反応速度で、的確にワニを叩いて勝利をもぎ取ろう
梓は…前やったトランプもそうだったけど
ゲームになるととことんポンコツになるの何でだろうね…?
あーあ、梓負けちゃったかぁー
まぁ十分楽しませてもらったし…
気を取り直してワニ叩き用ハンマーで敵をボコボコに
え、ワニ叩き勝負に勝っても負けても倒すつもりだったし??
「経済面で世界征服って、力押しで侵略しようとする他の猟書家達よりも賢くて恐ろしい気がするな……」
乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)はふむ、と考える。彼が言うように力押しで侵略しようとする猟書家は多い。その中で異色の世界征服を目論んでいるのがこのゲームセンターを作り上げたエンドラゴン。キマイラフューチャーの猟書家は変わり者ばかりだが、ヘンテコそうに見えて実は侮れないのかもしれない。
「まぁお金は強いもんねー。お金さえあれば『次は当たる』に賭けなくても『当たるまで回す』にしちゃえばいいもんね」
出るまで回せば実質確定!とは、誰が言いだしたことなのだろう。どこかでそんなこと聞いたし事実だよねぇと灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は一人うんうんと頷いている。
「……そんなことしてるのか」
「してないよ」
財布の心配をしたのかは分からないがぼそっと梓が呟いたのを聞いた綾はにこやかに返す。彼はガチャにのめり込むようなタイプではない。そんなお金があれば食材でも買って梓に料理をしてもらった方が良い派だ。
「なら良い。まずは闇金の取り立てのような状況を何とかせねば……」
タクミを再度捕えようとするアニマルズに視線を向けると彼らから逃げるタクミと目が合う。少年の視線が梓に何かを訴えようとしている。
「……え、俺達のナリの方が取り立て屋っぽい? ……やかましいわ!」
見事なセルフツッコミを披露する梓。ちなみに視線の答えは「オレどうしたらいい?」だった。梓の言葉に「確かに……」みたいな顔もしたけれども。
タクミと怪人達の追いかけっこにどう介入するかと考えていた綾の目に入ったのは獲物を捕らえようと爆走するウサちゃん怪人が握るピコハン。――ぴこーん!綾の頭上に豆電球が灯った。
「勝負しようよ」
その一言にビタリと動きを止めるアニマルズ。タクミを追うのもやめ、綾をじっと見た。ぜーはーと息を荒げているが、勝負する気はあるようだ。その隙に梓の近くに逃げるタクミ。……やはり見た目でビビったのか足に迷いがあったが、そんな見た目の人に庇って貰えれば心強いと思ったのだろう。
「な、なにで、しょ、勝負、するワン……」
「あ、落ち着いてからでいいよ」
「ありがとクマ……」
あまりの息の上がりっぷりに綾が情けを掛けた。勝負をするのならお互いに良い状態でしたいのもある。少しして落ち着いたアニマルズが改めて礼を述べ、会話を再開した。
「……で、何するウサ?」
「うさぎさんを見て思いついたんだけど、そこのワニを叩くゲームで勝負するのはどうかな」
びしり、綾が指さした先にはワニ叩きゲームがある。何故かメダルゲームに改造されているようで、点数によってメダルが返ってくる仕様らしい。当然イカサマ設定だが、この場にいる誰もがそれを知らない。
「ウサ!?おにーさん、いくら何でも優しすぎるウサよ!?落ち着くのも待って、ぼくに有利なゲームを持ちかけるなんて……!?」
「ウサちゃん怪人、ここは優しさに漬け込むクマ。ここまでたくさんボコボコにされたクマ。ちょっとここでやり返しても許されるクマ」
「……この怖い見た目の人達にやり返せると思うワン?」
ワンちゃん怪人の一言に沈黙する三人。たとえ出来たとしてその後のお返しは絶対怖い。それ以前に怖い見た目をしている二人にやり返すなんて度胸は、正直ない。
「大丈夫?別のゲームにする?」
こそこそ話を始めてしまったアニマルズに不思議そうに声を掛ける綾。ウサちゃん怪人はブンブンと勢いよく首を振ってゲームへ向かう。
そこから少し離れたところで、クッキーを振る舞うことでタクミの警戒心を解くことに成功していた梓とすっかり餌付けされた――否、警戒心を解いたタクミがさくさくとクッキーを食べていた。飲み物もあれば良かったな、コンコンコンで出ないかな等と話している間に近くから綾とアニマルズが消えているではないか。
「綾……!?」
簡単にやられるような相棒ではないが、何処に行ったかは心配になる。梓が見回せばそこまで離れていないところで楽しそうにワニ叩きのハンマーを素振りする綾が居た。
「何か勝手に話が進んでいる……!?」
「凄く勝手に話が進んでる……!」
すっかり意気投合している梓とタクミ。綾がいくら強くても何があるかは分からない。駆けよれば異様な雰囲気。無駄に熱い戦場の風がそこにはあった。
二人が到着したのを見てひらりと手を振る綾。見てて、と笑い、メダルを入れる。――一瞬、ハンマーの面に不自然に指をつけたことに誰も気づかない。
開始と共にイカサマ設定の所為で異常な速さで出現し消えるワニ。それに負けることなくほぼ全てのワニを叩きまくる綾。
「凄い……!」
バトルゲーマーであるタクミでもこの反応力はなかなか見ないのか目を輝かす。素早くもしっかりカウントされる強さでワニを叩き続ける。
最後の数秒、全てのワニが現れ、すぐさま引っ込もうとするのも逃がさず右から左に全てを叩く。
ぴぴーっ、とゲーム終了を知らせる音がして点数が表示される。98点。
「見事なハンマー捌きだったな……」
感心したように声を掛ける梓。それに対して綾は複雑そうな顔をする。
「2点落としちゃった」
残念、とちょっとしょんぼりと返した。折角なら梓とタクミの前で満点を取ってみせたかった。褒められて嬉しいけれど、なんだか悔しい。
繰り返すがこれはイカサマ設定されているゲームである。普通5点も取れないので2点しか落とさない方が異常なのだ。
「ウサ……おにーさん中々凄いウサ……」
余りの速度と点数に怯んだのかウサちゃん怪人が数歩下がる。だが、ハンマー勝負なら負けるわけにはいかない。ワニ叩きハンマーを掲げて目標を叫ぶ。
「ぼくが満点取って見せるウサ!」
「頑張ってー」
ゆるーいノリで応援する綾。ウサちゃん怪人がメダルを投じ――ワニが荒ぶる。
「ひぇ、はえ、あぁっ、ちょっ、な、何で下がるウサーッ!!!」
次々に討ち漏らすウサちゃん怪人。満点とは程遠い。それでもやはりハンマーの扱いに慣れている所為か徐々に追い付くようになり、後半では難易度が上がっていくにも関わらず、ほぼしっかりとワニを叩いていた。終了の音と共に手を止める。
「ぜぇ……はぁ……う、ウサ……何点、ウサ……」
ぱ、と表示されたのは62点。点数を知ったウサちゃん怪人はガクリと地に手をついた。
「分かってたけど負けたウサ……」
「やった、勝てた」
勝てたことに喜びつつ、それでも満点を取り逃したことはやはり悔しい。折角だしもう一度やってみようかな、と思いながら綾がくるりとハンマーを回していると、梓がすっと前に歩み出る。
「綾のハンマー捌きは凄かった」
「うん?」
「見ていたら俺も出来そうな気がしてきた」
はいフラグ、フラグ立ちましたよー!!!綾は未来が見えた気がしたが面白そうなので黙っておいた。
「誰か俺と対戦しろ。ウサちゃん怪人は休め」
「ありがとウサ……」
息が上がっているウサちゃん怪人を気遣う紳士さを発揮しつつ、いつものようにデカい態度で対決相手を募る。
「じゃあおにーさんめっちゃ強そうだしぼくが行くクマ」
パワー勝負ならぼくが最強クマ、とズレたことを言いながら寄ってくるクマさん怪人。
「よし、じゃあやれ」
「ぼくが先攻でいいクマ?じゃあやってみるクマ」
クマさん怪人がメダルを入れればやはり荒ぶるワニ。心なしか先程よりもスピードアップしているように見える。目をぐるぐる回しながらハンマーを振るクマさん怪人。
「グアーッ何かぐるぐる……クマァ!」
終了の音がする直前で倒れるクマさん怪人。それを支え起こして一緒に点数を見てあげる梓。5点。
「ハンマー慣れしていないのに頑張ったな……」
「おにーさん見た目によらず優しいクマ……ありがとクマ……褒められて嬉しいクマ……」
召されそうな顔をして譫言の様に梓の言葉に返すクマさん怪人。余程目が回ったらしい。そっと寝かせてやって梓はしっかとハンマーを握った。5点なら勝てる。負けるはずがない。
「見ていろ」
いつものように堂々と言いながらメダルを入れる。これまでのように高速で出現するワニ。梓は勢いよく振り――思いっきり何もない場所を叩いた。
「何てすばしっこいワニ共だ……!!」
イカサマ仕様なので。目は追いついているのだが、ハンマーを振るとそこにはもうワニはいない。
「何故だ……見えているのに!」
必死にハンマーを振るう梓を見ながら綾は以前の事をふんわりと思い返す。
(前やったトランプもそうだったけど……ゲームになるととことんポンコツになるの、何でだろうね……?)
普段はポンコツからほど遠い人物のはずなのだが、どうしてかゲームが絡むとこうなってしまう。不思議に思いつつも、見ていて楽しい一面でもある。だからゲームをするのを止めなかった。
一生懸命に梓が振るうハンマーはバンバンと物凄い音を出しているのに悉く空ぶって、無情にもゲーム終了の音がした。
(だが……クマさん怪人よりは叩いたはず……!)
確信を持って、画面を見る。表示された点数は――3点。
「は……!?」
ある意味正常な点数なので安心なのだが、そんな設定など知るはずもなく。
「あーあ、梓負けちゃったかぁー。まぁ、十分楽しませて貰ったよね」
自らの点数に愕然とし、半ば呆けている梓の肩にぽんと手を乗せながら綾はふふ、と笑う。
「気を取り直してボコボコにしようか」
「「「「えっ」」」」
梓と怪人達の声が重なった。
「ワニ叩きもう一回するワン?」
「違うよ?」
答えながらワニ叩きハンマーをワンちゃん怪人に一発。パァン、と音を立てて複数のゲーム機諸共ワンちゃん怪人を吹き飛ばす。そのハンマーの面には綾の血が僅かについていた。――この人、しれっとゲーム開始前にハンマーに指の血を塗ってユーベルコード仕込んでました。
突然のことに驚くクマさん怪人とウサちゃん怪人。何故ワニ叩きハンマーがこんな威力になっているのか理解できないので一応聞いてみることにした。
「何でそんな威力になるク」
「ワニ叩き勝負に勝っても負けても倒すつもりだったし??」
疑問を言い切らないうちにハンマーに叩き飛ばされるクマさん怪人。綾からすればワニと違って高速で逃げない怪人達はとても叩きやすい。ウサちゃん怪人も良い音を立ててぶっ飛ばす。吹き飛ぶ彼らの身体からメダルが落ち、金色の軌跡を描いた。
(容赦がない……)
綾の暴挙に慄き、怪人達に何となく憐みと申し訳なさを感じつつも、彼らを倒しに来たのが自分達なので、間違った行動はしていない。吹き飛ばされてぐったりする怪人達が起き上がってこないようにと、トドメを刺すためにドラゴンを呼ぶ。
「零、頼んだ」
「ガウ」
呼び出してすぐに一声かけるだけでクールな仔竜は怪人達へと飛んでいき、順番にふーっ、と氷の吐息を吹きかけ怪人達を追撃する。寒さで完全に戦意を喪失した怪人達だったが、叩きつけられた痛みはほんのり薄れた気がした。アイシング代わりになったのかもしれない。もしかすると、梓と零の気遣いだったのかも……?
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『集円竜エンドラゴン』
|
POW : ゼニャハハ!これが喰らって来た《人の業》だガネ!
戦闘中に食べた【貨幣】の量と質に応じて【体内で燃えているエンシェントブレスを放ち】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : どうしたどうした諦めたらここでジ・エンドだガネ!
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【体内に蓄えた貨幣】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : いずれ怨嗟が世界を包むガネ!
戦闘力のない、レベル×1体の【メダルに心を奪われた一般住民達】を召喚する。応援や助言、技能「【略奪】」を使った支援をしてくれる。
イラスト:なかみね
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠勝堀・円稼」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「全く、やっぱり鈍くさいヤツらだったガネ!」
ドスドスと重い音を立てながら現れたのは黄金の竜――集円竜エンドラゴン。この事件の黒幕だった。
「ゲーム好きっぽくて扱いやすそうだったから勧誘したけど……やーっぱりこっちでも勝てなかったガネ?」
「う、ぐぬぬ……」
既に消滅しかかっているアニマルズが悔しそうに呻く。
「負けるヤツは負ける。勝つヤツは勝つ。お前らみたいのが居たらこのエンドラゴン様がうっかり負けるかもしれないガネ。そんな訳で……貧乏神はサヨナラ、ガネ!」
エンドラゴンの尾が床を叩く。そこから金色が広がり、世界を塗り替えていく。アニマルズを容赦なく排除し、構築された世界はメダルや異世界の金貨などが転がる黄金の空間だった。宝物庫を思わせるその空間でエンドラゴンは哄笑する。
「ゼニャハハハハハハハハハ!!!ここは『財』こそが力の世界!更にここにあるメダルや金貨はオレ様の物ガネ!つまり!オレ様が!!最強ガネ!!!」
勝ち誇ったように笑うエンドラゴン。揺れた尾がメダルの山に触れ、ざらりと崩す。
「……あれ?」
猟兵と共に世界に閉じ込められたタクミは妙なことに気づく。
「何ガネ」
「今、お前の倒したメダル……音、しなかったよな?」
ギクゥッ、分かりやすいくらいに動くエンドラゴン。
「そ、そそんんなことないガネ!お前の耳がゲーセンの音でバグっただけガネ!」
「そうか……?」
「そうがネ!」
エンドラゴンが前のめりになる。うっかりメダルを踏んづけて――ぱきり、と音がした。金属が割れた音ではない。もっと軽い音に猟兵とタクミ、エンドラゴンは沈黙する。
エンドラゴンがそ~っと足を上げると、壊れたメダルの金色の隙間から茶色が見えている。慌てて拾い上げてムシャムシャ食べるエンドラゴン。
「お前、それ……メダルチョコ……」
「……お~っと何でもないガネよ?」
目が泳ぎっぱなしのエンドラゴン。どうやら今回のエンドラゴンはメダルや金貨だけでなく、ダミーのチョコまで混ぜて自分の力を大きく見せたかったらしい。チョコの分は『財』にカウントされているのかはエンドラゴンにも分からない。
「……ええーい、細かいことは良いんだガネ!かかってこいガネ、貧乏人にはこのエンドラゴン様は倒せないんだガネ!ゼニャハハハハハ!」
色々誤魔化すようにエンドラゴンは高笑い。猟兵は何とも言えない気持ちで武器を構えたのだった。
オッズ・チェイス
アドリブ・アレンジ◎
「おや、面白そうな事になってるねぇ」
▼行動
「どれ、ひとつアタシとゲームをしないかい?」と、賭けを持ちかけるよ。
ルールは、[お互いにダイスを振って出目が大きい方が勝ち。勝った方が負けた方の賭け金を貰える。]という簡単なもの。
▼武器【バンクロール】
受けてもらえるならメダルの代わりにバンクロールのチップを賭けるよ。
……取られても創造できるしね。
▼武器【サーベイランス】
賭け金にダミーを混ぜるのはナンセンスじゃないかい?
「サーベイ、重さでダミーと本物を選り分けな。」
「かしこまりました。」
▼UC【神ノ賽:剣】
あぁ、言い忘れてた。
アタシがダイスを振ったら剣が飛んでくから、気をつけとくれ。
「おや、面白そうな事になってるねぇ」
金色の世界に降り立った一柱の女神。彼女こそは富と運、規定と勝負を司る賭博神――オッズ・チェイス(賭博神・f33309)。彼女の前ではイカサマは赦されはしない。
その力を感じ取ったのか、エンドラゴンが僅かにたじろいだ。
「どうもギャンブルに強そうな雰囲気を感じるが、オレ様の勝利は変わらない……、いや」
何かに気づき、エンドラゴンはオッズを睨みつける。
「お前、何か持ってるガネね?」
「気づいたかい?」
ふ、と笑ってオッズが見せたのはチップの入った袋。そのチップは確かに財の力を宿していた。エンドラゴンの持つメダルの数には及ばないが、神の武具としての力もある為か、この異空間における影響力は大きい。
「……面倒なモン持ってきたガネ。まあ、ブン取ってしまえば関係ないガネ!」
「ブン取るなんて随分手荒だね。どれ、ひとつアタシとゲームをしないかい?勝負は楽しんでこそだろう?」
踏みつけようと足を上げたエンドラゴンに挑発するように笑む。エンドラゴンは足を止め――静かに地へ戻した。
「このエンドラゴン様とゲーム!?ゼニャハハハハハハハ!!負けるのが分かっているのに愚かガネ!まあいいガネ、そのチップも貰って、猟兵全員ボコボコにしてやるガネ。ゲーム内容はお前が決めていいガネよ!」
「じゃあ、ルールはお互いにダイスを振って出目が大きい方が勝ち。勝った方が負けた方の掛け金を貰える……なんて、簡単なものでどうだい?」
「シンプルにしたほうがイカサマされないって考えガネか。フン、そんなゲームならイカサマする方が面倒なだけガネ」
嘲り笑うエンドラゴンに対しても余裕を崩さぬオッズ。袋からチップをごそりと取り出し、エンドラゴンの前に置く。
「随分強気な枚数ガネ。その精神は褒めてやる、オレ様も同等に賭けてやるガネ」
す、とエンドラゴンも同じようにオッズの前に置く――が、彼女と、そして彼女の相方がゲーム前からのイカサマに気づかないはずはない。
「サーベイ、重さでダミーと本物を選り分けな」
「かしこまりました」
命じれば相方のサーベイ――『サーベイランス』、意志を持つ天秤がするりとエンドラゴンのメダルに近寄る。
「な……」
「開始前ならバレない、なんて思ったのかい?馬鹿だね、アタシを誰だと思ってるんだい?」
サーベイがエンドラゴンのメダルを選り分けると、ほぼ全てがダミーではないか。
「失礼ですがエンドラゴン様。賭けメダルの枚数は本当に同等ですか?」
「ぐ、ぬぬ……!」
公平を体現するサーベイの前では言い逃れは出来ない。エンドラゴンは重さを確かめながら本物のメダルをサーベイに渡した。
「確かにこちらで同等です。ありがとうございます」
サーベイは器用に選り分けたチョコレートを避け、オッズのチップとエンドラゴンのメダルを自身に乗せた。
「よし。じゃあ、勝負と行くかね。先攻?後攻?どっちがいい」
「それこそメダルで決めるガネ。表ならお前、裏ならオレ様が先攻ガネ」
容易にイカサマを仕掛けられないと理解したからか、エンドラゴンはどことなく心地の悪そうな顔をして返す。
それを聞いてオッズはピン、と手慣れた風にメダルを指で弾く。ぱし、と掴んで表か裏か確認。
「表。アタシが先攻か」
その時、エンドラゴンが僅かに口の端を上げた。後攻であれば相手の数字を知ってから振れる。ほんの少し爪に引っ掛けるだけで多少のダイスの調整は出来る。それは流石にイカサマには数えられまい。オッズの出目によってはイカサマが無くても勝ててしまう。好機が来たと笑うエンドラゴンの前でオッズが十面ダイスを二つ握り、投じる。
「――あぁ、言い忘れてた」
こん、ダイスが床に転がった瞬間に剣が現れ、エンドラゴンに飛翔する。
「ガネッ……!?」
突然のことに驚くエンドラゴン。避ける間もなく二十七の剣が突き刺さる。
「アタシがダイスを振ったら剣が飛んでくから、気をつけとくれ……って遅かったね」
突き刺さった刃に呆然としているエンドラゴンの前でダイスを拾うオッズ。
「次はそっちの番だ。どうする?」
答えぬ相手。勝負から逃げたと認識したオッズはダイス、メダル、チップをしまい、メダルチョコを数枚拾いあげた。一枚だけ包みを開く。
「うん、美味い」
オッズは甘い戦果に頬を緩めるのであった。
成功
🔵🔵🔴
葛籠雄・九雀
SPD
ふむ。
【逃げ足、ジャンプ、ダッシュ、見切り】で逃げつつ、【物を隠す】でメダルを回収してまわる。重くならぬよう程々にな。それから、回収したメダルの一部に、アイテムの毒瓶から【毒使い】にて嘔吐作用のある毒を付与。
次に【投擲】+ペルシカム。これは別に避けられてもよい。
元々『このメダル』を増やすために悪徳高利貸しをやっておったのなら、オレのメダルで【おびき寄せ、挑発】できるであるよな?
メダルを食おうとでもした隙に口へ毒メダルを【投擲】するか。
ま、口が開いていれば何でもよい。
彼奴が『メダルを食うことに成功する』ならな。
あとは再度ペルシカムで【2回攻撃】。
ワハハ、滝のように吐くことになるであろうな!
次の敵の存在にハッとしたエンドラゴンは刺さっていた全ての剣を振るい落とし視線を上げる。
「ふむ」
いつの間にか至近距離にいた葛籠雄・九雀。その一言は少し残念そうにも聞こえる。
「今、ひっそり刺そうとしてたガネ?」
「なんのことやら」
手に握っていた針をすっと戻してエンドラゴンから離れる。
「逃げて誤魔化そうったって――ってガネェ!堂々と盗むなガネ!!」
九雀はエンドラゴンのメダルの山に突っ込んでいき、懐にしまい込んでいく。エンドラゴンが抑え込もうとしてもするりと避けて身軽な動きで次々にメダルを回収していく。念のためチョコと思われるメダルもいくつか回収。
「返せガネ!これっぽちの枚数で形勢逆転はしないガネ、諦めて返すガネッ!!」
「形勢逆転しないのならば何故落ち着いていられぬのか?」
「ぐ……ぬぬぅ、確かにそうガネ……いやなんか嫌なんだガネ!」
九雀の問いに対し、何かしらの言い訳もつけられない程度には奪われるのは嫌だったらしいエンドラゴン。そんな相手に考慮してやる必要もない。エンドラゴンの攻撃をひょいひょい避けてメダルをどんどん奪っていく。
「……む。少し集め過ぎたやもしれん」
ちょっと楽しくて集めすぎた感はあったが、動きに支障がない程度であれば武器は多ければ多い方が良い。エンドラゴンから更に距離を取り、普段持ち歩く毒瓶をするりと取り出して集めたメダルに毒を宿す。
「集め過ぎたって言ったガネ!?言ったガネね!?じゃあ返すガネ!返せガネ!!」
怒鳴りながら突進してくるエンドラゴン。九雀は暴走する竜に向けて毒針を放つ。だが、エンドラゴンはギリギリで回避し、九雀に襲い掛かる。
「返せと言われてはいそうですか、と返す奴はこれまでいたのであるか?」
「お前には絶対に返させるガネ……!」
世間話をするかのように笑いながらエンドラゴンから離れる九雀。怒り狂うエンドラゴンは絶対に九雀からメダルを取り返そうと――その為に全ての行動を成功させようと空間に転がるメダルを喰らう。じゃらじゃら、ごくん。エンドラゴンの纏う気が変わる。九雀を追う足が早まり、肉薄する。
「おお、少し速くなったであるな」
それでも九雀は高速で逃げ回り、エンドラゴンの手から逃れ続ける。
「どうした?返して貰うのではなかったのか?」
メダルをちらつかせ、エンドラゴンを挑発する九雀。掴めそうなギリギリで避け続けられているエンドラゴンが苛立ちを募らせる。
「返さないというなら――お前ごとメダルを喰うまでガネ!」
「そうか、そんなにメダルが欲しいであるか。――ほら」
ぽいっ。これまで集めまわっていたメダルの一部をエンドラゴンの口の中に放り込んだ。
「メダルを喰らう事で力が強まるのであれば、このままではオレはピンチであるな!ハハハ」
自ら危機に陥っているにも関わらず、笑いながらひょいひょいと逃げ回っている。
「……わざわざ喰わせてくれるなんて優しいのかそれとも煽ってるのか……絶対後者ガネね。バラバラになるまで噛み砕いてやるガネ!!オレ様にメダルを寄越したこと、後悔するが良いガネ!!ゼニャハハハハハ!!」
メダルの力により、更に速度を上げ九雀を追うエンドラゴン。ついに九雀を噛み砕ける距離まで迫り、彼を噛み殺そうと口を開ける。
「貰ったガ……」
うぷ。エンドラゴンは咄嗟に自分の手で口を押さえた。
「どうしたのだ?」
「きもちわるいがね……」
先程までの勢いはすっかり消え、ふるふると震えている。
「なんかやりやがったがねね……!」
「何の事であるか?」
とぼけてみせる九雀。震えるエンドラゴンの前で再び毒針を構え、投げる。針が見事にエンドラゴンに突き刺さり、ユーベルコードによる反撃を封じる。念のために、そしてエンドラゴンをより追い詰める為に、九雀は再び針を投げた。
針は全て毒を持つ。その中の毒の一つに『嘔吐作用』のある毒がある。そして、先程使った毒瓶の中身もその毒である。つまり。
「う、うぐ、うぐぇーーーー!!!」
ついに耐えきれず吐き出すエンドラゴン。チロチロと火が散りながら吐き出されるのは大量のメダル。
「ワハハ、滝のようにメダルを吐いておるな!」
大当たりである、と九雀は楽しそうだ。
成功
🔵🔵🔴
乱獅子・梓
【不死蝶】
なんて非道なオブリビオンなんだ…!
…と最初は思ったけど、キマフューらしいポンコツさも
持ち合わせているようで少し安心したなど
一枚一枚メダルかチョコかを確かめて
メダルだけを集める…そんな面倒なことは必要ない
UC発動し、周囲のメダルをドラゴンへと変換!
このUCは無機物のみを変化させる…つまり
無機物ではないダミーのチョコのみその場に残るわけだ
チョコは焔や零に食わせてやろう
ドラゴンたちは敵にベシベシッと攻撃したあとに
俺のもとに集合させてUC解除
動かずしてメダルを集められる!
チョコもあとで集めて持って帰ろうか
数週間分のおやつにはなるだろう
チョコを使ったお菓子を作るのもいいかもしれない
灰神楽・綾
【不死蝶】
へぇ、メダルチョコも混ざってるんだ
俺、メダルよりもチョコの方がいいな
メダルは食べられないけどチョコは美味しく食べられるし
梓によって集められたメダルを見て
わぁ、何だか大金持ちになった気分
タクミ、これでまたゲームがいっぱい出来るーとか考えてないよね
敵の召喚した一般人たちにメダルを奪われないように
集めたメダルの周囲にPhantomを舞わせておく
メダルに触れようとした人を、UCで鎖に変化した蝶が捕まえるよ
あとはひたすら敵を叩くのみ
Emperorを持ち、メダルで強化されたパワーでゴリ押し
これだけチョコがあったら色んなお菓子作れそうだよね
ガトーショコラとかチョコプリンとか食べたいなぁ~
エンドラゴン、なんて非道なオブリビオンなんだ……!……と最初は思ったけれども。
「キマフューらしいポンコツさも持ち合わせているようで少し安心したなど」
「……ポンコツ言うなガネ!!お前だってワニ叩きポンコツだったガネ!!」
「何!?見てたのか!?」
乱獅子・梓の素直な感想に言い返すエンドラゴン。言い返された梓はあの失態(?)を見られていたのは流石に少し恥ずかしかったのかショックを受けたような顔をした。
「へぇ、メダルチョコも混ざってるんだ。俺、メダルよりもチョコの方がいいな」
灰神楽・綾は辺りを見回して少し楽しくなる。ここからチョコを探すのはなんだか宝探しみたいで楽しそう。メダルは食べられないし、ゲームセンター専用だ。だが、チョコは美味しく食べられる。金色の包み紙もなんだかわくわくする。
「チョコはオレ様でも力になってるかどうかわからん程度の価値しかないガネ。そっちの方が好きなんて物好きガネね~!ゼニャハハハ!」
「でもその力になるかどうかわからない程度のものに縋ってるんでしょ?」
綾の言葉のカウンターがエンドラゴンに綺麗にぶち込まれる。ぐうの音もでない。
「……言葉が強くてもここでは財こそが全て!ゼニャハハハ!お前らが持っているメダルはオレ様のメダルには遠く及ばない!さあて……」
メダルを喰らい、力を高めるエンドラゴンは二人に爪を下ろそうとして――急激に下がる力と、異様な光景に手を止めた。
「な、んだガネ?」
メダルがふわりと光を纏って浮き上がっている。その光はメダルの輪郭を融かし、別のものへ変化させる。
「一枚一枚メダルかチョコかを確かめてメダルだけを集める……そんな面倒なことは必要ないんでな」
梓がニッと口の端を上げる。どういうことだとエンドラゴンが問う前に、浮き上がっていたメダルが全て竜に変わった。大体が金色の仔竜だったが、エンドラゴンのような禍々しさはなく純粋な眼差しの竜たちだった。一部成竜もいたが、それもやはりエンドラゴンとは違い、清浄さすら感じさせる姿だった。
「な……なんだこの竜共は!?何ガネ!?どっから来たガネ!?」
梓が発動させたのは【万物竜転≪サムシングドラゴン≫】。場の無機物を竜に変換し、従えるという竜と共に戦う彼が得た竜喚びの力。無機物を変換するという性質上、メダルチョコは竜にはならない。ここで変化した竜は、本物のメダルだという事が証明された。そのまま自身の元に集める――で、済まさないのが猟兵。
梓は金色の竜達がじっとりとした目でエンドラゴンを睨んでいることに気づいた。彼らは無機物の時の記憶を持っている。
「……何か恨みでもあるのか」
聞いてみれば、成竜がテレパシーで返してくる。
『エンドラゴンは、我々の扱いが酷すぎる。我々は投げられ、踏まれて来た。他の世界から来た金貨達も同じように扱われてきた。他世界から迷い込んでそんな扱いではあまりにも哀れだ』
「……ふむ」
メダル達はエンドラゴンに作られたのだとしても、エンドラゴンに好意的という訳ではないらしい。ならば、彼らの不満をぶつけさせてやれば一石二鳥ではないか。
「……よし、行け!」
金色の竜の群れが、強大な金色の猟書家に襲い掛かる。
「ギャアアアアなんだガネ!?なんなんだガネお前らァアァアァア!?」
流石のエンドラゴンも群れにはたじたじだ。これまでの恨みを晴らさんと攻撃を加え続けるメダルの竜達。エンドラゴンは未だそれがメダルであったことに気づいていないのか反撃するのに必死だ。仔竜を薙ぎ払い、成竜に火を吐き。薙ぎ払われた仔竜は再びエンドラゴンに組み付き、成竜は火を避け、反撃とばかりにエンドラゴンの顔面に火を噴きかける。
ひとしきりエンドラゴンを攻撃した竜達を見届けた梓は彼らを呼ぶ。
「来い」
竜達は素直に梓の元に集まる。――数匹の竜が、まだ叩き足りぬと言いたげに渋るようにうろうろしたが、他の竜に押され集合。
梓がユーベルコードを解除する直前、成竜の声が聞こえた。
『爽快だった。礼を言う』
「それは良かった」
ユーベルコードの解除と共に、じゃりりりりん!!と音を立てながら梓と綾の前にメダルの雨が降る。
その雨を潜り抜けて、紅と蒼の仔竜が奥へ翔ける。エンドラゴンに突撃――と思いきや、突撃したのは残っていたメダルチョコの方だった。梓に許可を貰った焔と零はメダルチョコを拾い、器用にぺりぺりと包みを剥がし、もぐっと一噛み。おいしー!と言いそうな雰囲気で目をキラキラと輝かせている。焔は次々に食べ進めていき、零は一口一口味わいながら食べている。食べ方は違えど、二匹とも幸せそうだ。
そんな仔ドラゴン達のおやつタイムに和んでいた梓の横で、無邪気にメダルに喜ぶ綾。こちらもこちらで和む雰囲気がある。
「わぁ、なんだか大金持ちになった気分」
メダルよりチョコ派ではあるものの、やはり手元にメダルが大量となればテンションは上がってしまう。大量のメダルといえば、もしかして。
「……タクミ、これでまたゲームがいっぱい出来るーとか考えてないよね」
「考えないよ……。それに、普通のスロットなら五枚あれば十分自分で増やせる」
「あはは、だよねー」
苦笑いするタクミに安心して笑い返す綾。タクミが少し照れくさそうに呟く。
「今はチョコのが欲しいかな……」
彼もメダルよりチョコ派だったらしい。一緒だーと綾は笑ってからそういえば、と梓に聞く。
「あの竜達、凄い勢いだったね」
「恨みがあったらしい……」
「へぇ、メダルにも恨まれるなんていっそ才能じゃない?」
凄いね、と挑発的にエンドラゴンに笑う綾。メダルのドラゴン達に叩かれたエンドラゴンがむくりと起き上がる。
「……ヤツらメダルだったガネか。フン、メダルの分際でな~に恨みだのなんだの言ってるガネ。そこまで言ってるなら取り返して文句言う気もなくなるくらいにこき使ってやるガネ!!」
エンドラゴンの周囲に黒い影が現れる。――猟兵であれば見れば分かる、力を持たぬ一般人のキマイラ達がぞろぞろと現れた。
「ゼニャハハハハハ!こいつらはなぁ、メダルが好きで好きで好きで好きで、人から奪うくらいにメダルだーーーいすきな連中なんだガネ!!お前らがいくらかき集めようが、こいつらで奪い返してやるガネ!ゼニャハハハハハ!」
最初はゆっくりと。そして急に勢いをつけて走り出す淀んだ目の一般人。ゾンビのような襲い掛かり方をする彼らだが、エンドラゴンに利用されているだけなのだ。綾はそんな彼らを傷つけるつもりはない。
「狡い手を使うよね」
「ゼニャハハハハハ!褒め言葉ガネ!」
呆れちゃうな、と言いながらも笑顔を崩さず、綾はふわりとメダルの周囲に蝶を放つ。
赤く光る蝶の群れを気にすることなく、梓と綾の持つメダルを奪わんと突っ込んでくるキマイラ達。
「蝶々ごときで抑えられると思ってるガネ?欲の力ってもんを教えてやるガネ!奪え、奪え!お前らのだぁーいすきなメダルを奪ってまたゲームで負け続けるガネ!ゼニャハハハハハハ……は?」
じゃらじゃらじゃら、と次々に重い音が聞こえてくる。メダルの音ではない。エンドラゴンが音の方へ目を向ければ、キマイラ達は鎖に囚われていた。
「何ガネその鎖?! ええい、鎖なんかに負けてどうするガネ?ほらほらお前らの欲しいメダルは目の前ガネ!鎖なんか解いてとっとと奪えガネ!」
「無駄だよ。その鎖は俺にしか壊せないから」
皇帝の名を持つハルバードを持ち直し、エンドラゴンを強襲する綾。
(わ、ほんとに強化されるんだね)
地を一蹴りしただけで分かる。身体が軽い。一気にエンドラゴンに迫り、頭目掛けて斧を振り下ろす。
「ガァッ!」
エンドラゴンを攻撃するだけならば普段の綾でも的確に殴れるが、メダルの力のおかげか一撃も重く、次の攻撃に移るのもいつもより速く出来ているように感じる。
「っく……早くコイツからメダルを奪うガネ!」
「させないよ」
更に人々を召喚しようとしたエンドラゴンにハルバードの先端を突き立てる。深く刺さった痛みにエンドラゴンが呻き暴れる。速やかに抜いて、エンドラゴンの頭をハンマーで強く叩く。ワニ叩きならぬドラゴン叩きだ。
「ガネェッ」
間抜けな声を上げて倒れ込むエンドラゴン。ここまで叩けば自分達の仕事は十分だろうと綾は近くに転がっていたメダルチョコを数枚拾いあげる。
梓達の居る場所へ戻ると、梓も、焔も、零も、タクミも同じ考えだったらしくメダルチョコを集めていた。
「これを集めておけば数週間分のおやつにはなるだろう」
「お得だねー」
「これ、やっぱり価値あると思うんだよな……」
三人で喋りながらチョコ集め。タクミから渡された分も含め、持てるだけ持っておやつ補充を完了。
「チョコを使ったお菓子を作るのもいいかもしれないな」
たくさんのチョコに梓のお料理スイッチがオン。そのまま食べるのも良いが、チョコはお菓子作りの材料としても大活躍。
「これだけチョコがあったら色んなお菓子作れそうだよね」
「例えば何が食べたい?」
梓が聞けば綾はうーん、と少し考えてから希望を回答。
「ガトーショコラとか、チョコプリンとか食べたいなぁ~」
一仕事した後のおやつはちょっとリッチだと嬉しいものだ。明日の二人のおやつが決まった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冬原・イロハ
さすがタクミさん、目が良いですね
教えて下さってありがとうございます
メダルチョコ、美味しいですよねぇ
(と、先程拾ったメダルを持ち)
エンドラゴンさん、このメダルとチョコのメダル、交換しませんか?
結構拾えた感じがするのですよ、ほら――
あっ、でもこっちは本物のメダルだから、チョコのメダル、たっくさんください!!
たくさん持ってきてくれたら両手塞がりますよね?
メダル食べますか? それなら「あーん」してください。
ってメダルを放り込もうとします。
が、
UC。エンドラゴンさんのお口の中めがけて、氷属性のドラゴンさんでバーンします
後は戦斧で攻撃~
ブレス吐かれたら武器受けしたり、オーラ防御しながら逃げます
「さすがタクミさん、目が良いですね。教えて下さってありがとうございます」
先程は鉄球、今度はメダルチョコ。タクミの視力の良さに感心する冬原・イロハ。褒められたタクミはそんなことない、と言いながらも嬉しそうに笑んでいる。
「メダルチョコ、美味しいですよねぇ。私、チョコの方が良いです」
イロハはチョコを思い浮かべ、うっとりと呟きながら持っていた鞄からメダルをたっぷり取り出した。アニマルズとの戦闘で拾い集めたメダルは、改めて見るととんでもなく多い。
「エンドラゴンさん、このメダルとチョコのメダル、交換しませんか?」
「……は?」
メダルを奪われ、ボコボコにされ。疲れ始めて来たエンドラゴンは理解が出来ないというようにイロハを見る。
「何ガネ。お前も何か企んでるガネ?」
「違います!私、チョコのメダルの方が欲しいんです。本物のメダル、結構拾えた感じがするのですよ、ほら!」
成果を見せるようにエンドラゴンに向けた手にはいっぱいのメダル。キラキラと輝くそれをキラキラとした眼差しで見せるイロハにエンドラゴンは困惑する。何が狙いかは全く分からない。だが、エンドラゴンもメダルが欲しい。チョコを渡すだけで奪われたメダルに比例して下がった力を少しでも補えるのであれば、この話は旨すぎる。
「……わかったガネ」
ひとまず、メダルを得てしまおう。猟兵が何かを企んでいようが、メダルを得てからならば対抗するのも楽になる。そう考えたエンドラゴンはメダルチョコを拾い始める。あっ、とイロハが声をあげた。
「……何ガネ」
「こっちは本物のメダルだから、チョコのメダル、たっくさんください!!」
少女の純粋な眼差しとお願い。流石のエンドラゴンもチョコくらいならくれてやる、という気持ちになる。
「これくらいガネ?」
「もっとです!」
意外とガンガン要求するイロハ。まあチョコだしと思いエンドラゴンは手に持てるだけのメダルチョコを持ってイロハに近づいた。
「わぁ、たくさん!ありがとうございます!……あっ、エンドラゴンさんはメダルを食べてらっしゃるんですよね。今は両手が塞がってますし……メダル、食べますか?」
(随分親切な猟兵ガネね……)
少しばかり不審には思うものの、これまで戦った猟兵よりも圧倒的に敵意を感じられない。警戒心が薄い猟兵なのかもしれないと思い、利用できるならばどこまでも利用してやろうとエンドラゴンは考え――即座にそれを実行した。
「食べるガネ」
「それなら、『あーん』してください」
はい、あーん、とイロハが微笑む。エンドラゴンはメダルを喰らったら即座に火を噴いてやろうとほくそ笑みながら、あーんと口を開けた。
イロハはそこにメダルを数枚だけ放り込んで――素早くバルディッシュを握った。ゴスン、と重い一撃がエンドラゴンの口に叩き込まれる。
「グゲェ!?」
突然の痛みに悶絶。更にはその戦斧からは白銀のドラゴンが現れ、エンドラゴンを中から凍らせようと口へ飛び込んだ。
「ぎぇ、ゲフ、ごふ」
噎せたような、苦しそうな声を上げて体内が凍っていく感覚にのたうち回るエンドラゴン。容赦のないコンボを決めたイロハは好機を逃さず更にバルディッシュで殴り続ける。
おっとりとしたイロハだが、実は割と怪力なので、一撃はとにかく重い。更にそこでメダルの加護があるわけで――絵面と破壊力が全く釣り合わない。
「えいっ」
「ガァアッ!!おま、おまえ、容赦なさすぎガネェッ!!!可愛いからって許されるとか思ってんじゃねえガネよぉおおぉおぉ!!?!!」
「えっ、そんなことは思ってないです」
答えながらもう一撃ドスリと叩き込む。痛みに絶叫するエンドラゴン。
「……ンの、ケットシー!!!許さねえガネ!!!絶対丸焼きにしてやるガネェエェ!!!」
ついにブチギレたエンドラゴンはイロハに向かってエンシェントブレスを吐きかける。火を吐く姿勢として少し苦しいものの、至近距離にいるイロハを捉えるには問題はない。ぶわり、炎がイロハを包み込む。漸く起き上がることが出来たエンドラゴンは勝利の高笑い。
「ゼニャハハハハハ!!丸焼きになれガネ!!」
ドスン。腹部にまた一撃。
「ガネェッ!?」
猟兵は焼き焦げたはず。では、あのバトルゲーマーだろうか?――否。
「私、丸焼きになんてなりません!」
オーラに守られていたイロハの一撃だった。炎に焼かれなかった彼女の攻撃は弱まっていない。エンドラゴンの顎目掛けてバルディッシュを振り上げる。
「ゼニャンッ!!」
顎を強く叩かれたエンドラゴンが短い鳴き声を上げ、ばたりと横に倒れた。
大成功
🔵🔵🔵
神楽・鈴音
虚飾で強がろうなんて、いい根性してるわね
敵がメダルを食べて強くなるなら、その性質を逆利用
賽銭箱の中からメダルを取り出し、それを護符で包んで相手の口の中へ投擲
「そんなにメダルが欲しいなら遠慮なくあげるわよ!
まあ、メダルを包んでいる護符がUCに使う護符なのですが
つまり、飲み込んだ瞬間にUCが発動して、相手の体内から護符が抜けなくなるというわけ
「引っかかったわね。これであなたは、もうメダルを食べられないわよ
拒絶する事象は『食事』
故に、決まったが最後、メダルを食べることは絶対にできなくなる
後は【怪力】で握り締めた賽銭箱ハンマーを脳天にブチ込んでやるわ
「その身体についてるメダル、全部私に寄進しなさい!
「虚飾で強がろうなんて、いい根性してるわね」
呆れたように神楽・鈴音は溜息を吐く。
「ゼニャハハハ!強がってる訳じゃないガネ!オレ様は!強いんだガネ!」
「どこが?」
ツッコミのような、エンドラゴンの心を抉るような一言が転がり出た。
今のエンドラゴンは強いとは言い難い。猟兵にメダルを奪われ続けていた彼が取り返したのはほんのわずかな量。疲労も重なり、最初に比べれば結構な弱体化っぷりだろう。鈴音の言葉が出るのは当然だが、それを受け入れられないのがエンドラゴンの性格なのである。
「……そっちはいい神経してるガネ。このオレ様に喧嘩売るなんてどういうことガネ?」
「あら、喧嘩売った気なんてないわよ。本当にそう思ったから聞いただけ」
「ッハァー!そういうのが喧嘩売ってるって言うんだガネよおぉ!」
怒りをむき出しにして叫びながら鈴音に噛みつかんと牙を剥く。
「メダルさえあればなぁ、お前ら猟兵なんてこのエンドラゴン様の敵じゃねーんだガネ!」
じゃららら、と転がるメダルを拾い上げて口に含むエンドラゴン。
「そんなにメダルが欲しいなら――」
鈴音はじゃりじゃり、と賽銭箱からメダルを取り出し、手早く護符で包む。リッチな護符で巻かれたメダルの価値は、数倍は上がっているだろう。
「遠慮なく、あげるわよ!」
シュッ、メダルの束をエンドラゴンに向けて放つ。賽銭箱へ小銭を入れる時の様に丁寧で、それでいて的確な位置に投げられるメダルの束。
「ゼニャハハハ、さっきの打撃はメチャクチャ痛かったけどただ投げるだけじゃあエンドラゴン様には効果ないガネ!ありがたく貰ったガネ!」
ややフラグ的な何かを感じなくもないが、メダルの束であれば喰らえばそれなりに力を回復できる。エンドラゴンはバクンとそれを飲み込んだ。
「ゼニャハハハハ!!燃えて来た燃えて来た燃えて来たガネーッ!!!このままドンドン食べてお前を丸焼きにしてやるガネ!ゼニャーハハハハハ!」
エンドラゴンが鈴音に迫りながら、メダルを拾い上げてエンシェントブレスを吐く準備をする。ざらり、追加のメダルを口に入れた時に、激しい痛みを感じた。
「ガッ……!?」
口に含んでいたメダルを全て零し、激しく咳込むエンドラゴン。咳込めば咳込むほど喉あたりに感じる痛みが強まる。
「引っかかったわね。あなたはもうメダルを食べられないわよ」
「は……?」
鈴音がにやりと笑う。意味が分からず睨みつけることしか出来ないエンドラゴン。
「教えてあげるわ。さっき、あなたが食べたメダルは私の護符が付いていたの。その護符の力で、あなたの『食事』を拒絶してやったのよ」
【絶符・事界抗壁】。鈴音の持つ護符の神力が為す、指定した事象を拒絶し無効化する楔を生み出すユーベルコード。体内に神力の楔を打ち込まれ、『食事』を禁じられたエンドラゴンはメダルどころか物を喰らうことが出来なくなっていた。
「はぁ……?無茶苦茶ガネ!どうせそんなの嘘ガネ!」
今度は数枚だけ口に含もうとする。だが、口に入れる前から楔による痛みが激しくなりエンドラゴンはまた激しく咳込んだ。
「……ほんとのようガネな。フン、小賢しい真似をする猟兵ガネ」
「あなた程じゃないわよ」
ぎゅっと賽銭箱ハンマーを握りしめ、鈴音がエンドラゴンへ走り寄る。
「ゼニャハハハハ!食事は封じてもユーベルコードは封じてないのを忘れてるガネ!?焼いてやるガネ!!」
ぶわり、エンシェントブレスを吐きかけるエンドラゴン。鈴音はその炎に構わず突っ込み、エンドラゴンの前に飛び出した。
「は……?!」
「炎如きで私を止められると思うんじゃないわ!」
オーラによる守りと火炎への耐性で無理矢理突破した鈴音は跳躍、エンドラゴンの脳天目掛けて賽銭箱ハンマーをぶち込む。
「その身体についてるメダル、全部私に寄進しなさい!」
鎧さえ砕く鈴音の寄進への執念がエンドラゴンを殴り続ければ、形容しがたい程の爆音を立てて激しくメダルが転がる。
「あ゛ぁ゛あ゛やめろガネェーッ!!」
エンドラゴンは自らの身体から剥がれ落ちるメダルと、それに伴い消失していく力を感じ、どうにもならぬと分かっていながら叫ぶ。鈴音はそんな叫びを歯牙にもかけず、殴り続け、ついにエンドラゴンが声を出さなくなってから殴るのをやめた。大量に転がったメダルを拾い上げて賽銭箱にざらざらと流し込む。
「今回はたっくさんご寄進が集まったわ……」
ご覧ください、このやり遂げた顔。
ご満悦の鈴音が去って数分、漸くエンドラゴンの喉の痛みが消える。転がったメダル一枚をそっと噛みしめるエンドラゴン。食事のありがたみを感じた。
成功
🔵🔵🔴
ラガルルク・デンケラ
金貨がチョコでコーティングされているわけじゃあなく、チョコが金紙で包装されているのか。……派手な見た目と違って優しい味ね。タクミもどうだい、チョコだから甘いよ?
おうおう吠えるんじゃないよ、食べたものは戻ってこないに決まっているだろう? お前も腹の中に財を収めたらどうだ。美味しいのに口にしないなんてああ勿体無い勿体無い、代わりに僕らで食べてやろう
……さて少しは甘菓子のダミーは減ったかしら
どちらにせよ、金色にはプラズマを添えてドロドロに溶かすまでだ。おっとタクミ、一般住民達に防壁を貼れたりしないか!
誘導弾として当たらないように軌道修正してみるが、痺れるのは親玉だけがいいだろう。また僕を助けておくれ
「金貨がチョコでコーティングされているわけじゃあなく、チョコが金紙で包装されているのか」
なら食べられるね、とラガルルク・デンケラは近くに転がっていたメダルチョコを拾ってぺりぺりと紙を剥がす。ぱくりと一口。派手な見た目と違って優しい味に顔をほころばせる。
「タクミもどうだい、チョコだから甘いよ?」
メダルチョコを拾ってタクミへパス。タクミもラガルルクと同じようにぺりぺり開けてもぐもぐ。
「うん、やっぱりチョコは美味しくて好き」
「うんうん、美味しいね」
タクミの子供らしい反応に少し和みながらラガルルクも次のメダルチョコをぺりぺり。メダルそっちのけである。
唐突なおやつタイムに意味が分からず硬直していたエンドラゴンが漸く動いた。
「わざわざ目の前でチョコ食ってるだなんて余裕かましてるんじゃねえガネ!あとそんな二人がかりでいっぱい食べてるんじゃねえガネ!少しは遠慮を覚えろガネェッ!!」
「おうおう吠えるんじゃないよ、食べたものは戻ってこないに決まっているだろう?価値がないとかなんだとか言いながらやっぱり気にしてたのかい?」
「…………そんなことはないガネ!ああああ喰うのをやめろガネッ!」
間があった。気にしていました、と言わんばかりの間があった。ラガルルクは察したが気にせずメダルチョコをもぐもぐ。
「お前も腹の中に財を収めたらどうだ。チョコレートの方が美味しいのに口にしないなんてああ勿体無い勿体無い、代わりに僕らで食べてやろう、ね、タクミ」
「うん」
苛立つエンドラゴンを無視して、次々にメダルチョコを拾い上げて食べる二人。
価値がないだのなんだの言った手前、チョコレートを食べる訳にはいかないエンドラゴン。少し気まずそうにメダルや貨幣を口へ放る。
エンドラゴンとしては猟兵がメダルに興味を示さない方が都合が良い上に、自分がメダルを喰えとまで言われたのだ。大チャンスなのだが、なんだか素直に喜べない。
「……」
苛立ちが消えぬエンドラゴンは、ここではたと気づく。今すぐ、攻撃すれば良いだけじゃないか、と。
「……ゼニャハハハハハ!余裕ぶっこいてるヤツらに容赦してやる義理はなかったガネ!チョコ諸共溶けろガネ!」
「さて、少しは甘菓子のダミーは減ったかしら」
「ん?」
ラガルルクが呟いた言葉にエンドラゴンは警戒する。彼女達はメダルチョコを楽しんでいただけではない。わざわざチョコを食べて、ダミーを減らした、ということはエンドラゴンにも分かる。では、何のため?
「わざわざ待っていてくれたなんて、お前も優しいところがあるんだね」
柔らかに笑むラガルルクの前に魔法陣が浮かび上がる。煙のようなものを纏うその魔法陣が輝くと戦場にプラズマが奔った。
「金色にはプラズマを添えてドロドロに溶かすまでだ」
「ゲェッ!?……お前ら!メダルを守れガネェ!」
予想外の方法に慌てるもなんとか一般人キマイラ達を召喚するエンドラゴン。残酷に、身体を張ってでもメダルを守れと命じる。
「おっと、タクミ、一般住民達に防壁を張れたりしないか!痺れるのは親玉だけがいいだろう。また僕を助けておくれ」
誘導弾として放てば軌道修正は出来るが、キマイラ達を傷つける可能性はゼロに近づけたい。タクミのバトルキャラクターに活躍して貰うべきだと判断したラガルルクが声を掛ける。
「……ああ!」
誰だって頼られれば応えたい。キマイラフューチャーでは猟兵に頼られるのは名誉なことである。先の事を評価するような言葉であったこともあり、タクミの気合いは十分だ。
五つの星を纏って現れたのは可愛らしいロボット。高速で一般人達の元へ走る。
『ピキュ~』
ゆるい声を出しながらロボットがびびび、とバリアを張った。薄く虹色に光るそれはキマイラ達を閉じ込め守る。結界にも似た守りは如何なる攻撃も通さないだろう。
「メダルを狙ってたんじゃないガネか!?」
「何言ってるんだい、お前も金色だろう?」
巻き込みの心配がないならもう全力で攻撃しても問題ない。ラガルルクは魔法陣により多くの魔力を流し込む。
魔力を得た魔法陣からは無数の極太プラズマスパークが飛び――エンドラゴンを包み溶かす。
「ガネエエエエエエエッ!!!な、あああ、いや、嫌ガネ!溶けるのは勿体ないガネェーーーッ!!」
最後まで自身についていたメダルを気にするような事を言って消えた猟書家にラガルルクは肩を竦めた。
黄金の空間も主の消失と共に失せる。残っていたのはラガルルクとタクミが持っていたメダルと、転がるメダルチョコだけだった。
「もう数枚いただいてもいいかしら」
「いいと思う」
別の日のお菓子に、とラガルルクとタクミはメダルチョコを拾い、ボロボロになった悪徳ゲームセンターから立ち去った。
――余談だが、後日タクミは別のゲームセンターでスロットに挑戦し、無事当てまくったそうだ。
身を以て、そして猟兵達に教えられた事で『引き際が大事』と学び直したタクミはもう同じ失敗はしないだろう。
大成功
🔵🔵🔵