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銀河帝国攻略戦⑤~煙霧号 悪意眠りし格納庫

#スペースシップワールド #戦争 #銀河帝国攻略戦

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●星海の叙事詩、穿たれる希望
 迫り来る脅威に抗う為、立ち上がった者達がいた。
 絶望に染まる星海で、傷つき斃れる者達がいた。
 ――終わり逝く世界の中で、一条の煌きを見た者達がいた。

 突如として現れた古の宙船は、甦る悪夢を次々と打ち払い、人々に新たな希望を与えながら先の見えぬ暗闇を征く。

 ある人は言う、あれこそが、希望の導き手だと。
 ある人は言う、あれこそが、伝説の再来だと。
 ――人々は叫ぶ、彼らこそが、この世界に平和を齎す者なのだと。

 帝国軍と解放軍が繰り広げるスペースシップワールドの存亡を賭けた一戦は、徐々に激しさを増しつつある。
 そんな中で、一隻、また一隻と、主戦場から少し離れた宙域に集う新たな艦船の姿があった。
 遅れて現れた彼らもまた、自由の旗の下に集いし者。
 長きに渡る戦いで疲弊し、辺境の星域を流離うように航行していたかつての勇士達。
 一度は未来を諦めた者達が今、新たな希望を信じ、解放軍と合流すべく再び決起したのだ。
 しかし、そんな彼らの進軍を見過ごすほどには帝国軍も甘くはない。
 その対応こそ遅れてはいたものの、帝国軍の動きは彼らの二手、三手先を行くのだから。

 ――先急ぐ艦隊を迎えたのは、希望を摘み取る終わりの景色。
 眼前にワープアウトしてきた戦艦から放たれる数多の艦載機は、鈍重な艦船へと取り付き、その装甲を瞬く間に削ぎ落としていく。
 穿たれた外壁から侵入した機械兵が、乗員達を血煙へと変えていく。
 そして、大口径の主砲から放たれた光条が宇宙を引き裂いた時、夜明けと見間違うほどの輝きが全てを呑み込んだ。
 船が、墜ちていく。
 一つ、また一つと、希望の灯火が消えていく。
 されど、彼らは決して絶望しない。迫る最期を恐れることはない。
 沈みゆく船体から生き残った艦船へと送られてくる通信はただ一言、『諸君らの武運を祈る』。
 たとえ自分達が志半ばで斃れたとしても、きっと、生き残った者達は成してくれる。
 解放軍が――伝説の再来たる猟兵達が、この世界に真の平和を齎してくれる。
 今を生きる者達の為に――そして、いずれ生まれくる次の世代を担う者達の為に、必ずや未来を切り拓いてくれるのだと。そう、信じているから。
 そうしてまた一隻、傾いた船体が強い光に包まれて――。

●たとえ広げたその手が小さくとも
「――そんな未来、オレはお断りだ!」
 いつになく真剣な顔つきの狼谷・賢太郎(イマチュアエレメントマスター・f09066)が声を荒らげる。
 猟兵達の前に広がる風景はスペースシップワールドのもの。
 先日開戦した世界の命運を賭けた大戦争、『銀河帝国攻略戦』の主戦場とは少し離れた場所に位置する宙域だ。
 賢太郎によると、解放軍と合流すべくこの宙域に現れたとある友軍艦隊が、その動きを察知した帝国軍の猛攻により為す術なく撃沈されてしまうという未来が見えたらしい。
 しかし、無限に湧き出てくるオブリビオン達とは違い、猟兵達の数は有限。
 正直なところ、現時点では他に戦力割くべき重要な戦場はいくらでもあるはずだ。だが――。
「……でも、オレはこの人達を見捨てたくない。未来を信じて戦っているみんなを……オレたち猟兵を信じて集まってくれたみんなを、見殺しになんてできねーんだ!」
 攻撃目標は『エアロゾル・バトルシップ』――通称『煙霧号』と呼ばれる、帝国軍の戦艦。
 この戦艦さえ落とす事できれば、友軍への被害は最小限に抑える事ができるだろう。
 また、今回の作戦は複数人のグリモア猟兵により多数の猟兵達を敵戦艦内へと送り組む、言わば共同作戦となる。
 攻撃予定箇所は戦艦内に存在する『動力部』、『主砲』、戦闘艇の『ドック兼発着場』、そして機械兵の『格納庫』の計四箇所。
 その中で、賢太郎のチームが担当するのは機械兵の『格納庫』。
 これら四地点は戦艦内でも離れた場所に配置されており、一ヶ所を潰されても別の箇所には影響が及びにくい構造になっている。
 また、仮にいずれか一箇所が潰されたとしても、これらは単体で十分な脅威となる。
 つまり、この戦艦を完全に無力化するには、四地点全てを攻略する必要があるだろう。
 ただし、共同作戦とは言っても各チーム間での連携を考える必要はなく、また他チームの行動を考慮する必要もない。
 要は何も考えずに暴れても問題はないという事だ。
「格納庫には主に大量の機械兵――帝国軍のバトルドロイドが格納されててさ。みんなにはこいつらをぶっ壊してきて欲しいんだ。それと、できれば格納庫自体もぶっ壊してきてくれると助かる!」
 そうすれば煙霧号の戦力を削ぐことが出来るし、他のチームの援護にも繋がるはずだ、と賢太郎は強く拳を握る。
「あ、もしこれ以上戦うのは危ないと感じたり、船が持たなくなりそーな時は、オレがみんなを安全な場所へテレポートさせるから安心してくれよな!」
 と、一瞬の逡巡。
 俯いた後、ぽつり、ぽつりと漏れ出したのは、その胸に秘めたる想いの全て。
「……オレたち一人ひとりの両手ってさ、思ってたよりもずっと小さいんだ。守りたいなーって思ったものも、一人じゃロクに守れなくってさ」
 だが、猟兵は一人ではない。
 幾百人、幾千人もの猟兵達が力を合わせる事で、この世界に住む全ての人々を――いずれは、遥か彼方に望んだ未来をも掴み取ることができるだろう。
「だから、頼む! みんなの力を貸してくれ!」
 ――みんなを信じてくれた人達のことを、守ってくれ!


空蝉るう
 猟兵の皆様、こんにちは。空蝉るう(うつせみ・――)と申します。
 遅れて現れた友軍艦隊を救援する為、ひいてはスペースシップワールドの未来を守る為に、どうか皆様の力をお貸しください。

●だいじなこと
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 一フラグメントで完結し、「銀河帝国攻略戦」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●やるべきこと
 煙霧号船内の格納庫及び格納された全バトルドロイドの破壊。
 シナリオは猟兵の皆様が格納庫内にテレポートしたところからスタートします。
 バトルドロイド達は侵入者の存在を感知した瞬間に戦闘状態へと移行して襲いかかってきますので、これを撃破してください。
 また格納庫内はとても広く、全員が自由に動き回れるだけのスペースがあります。
 皆様の思うまま、気持ちよく戦って頂ければと思います。

 仮に戦闘中、船外へと通じる風穴を空けてしまうなどの事故が発生しても問題はありません。
 猟兵の皆様は『ヘロドトスの戦い』にて入手した高機能な宇宙服を身に着けている為、どのような環境下でも何の支障もなく活動することができます。
 宇宙空間に吹き飛ばされたりといった事態は起こりませんので、ご安心ください。バトルドロイドは何体か飛ぶかもしれません。

●おしらせ
 このシナリオは、タイトルに『煙霧号』と名のつくシナリオ間で同舞台となっております。
 全ての戦場を巡って頂いても、どこか一箇所の攻撃に専念して頂いても構いません。
 どの戦場でどう立ち回るかは皆様次第となります。

 各シナリオ間での時系列の考慮や連携・相談等は必要ありませんので、お気軽にご参加ください。
 また、仮に各シナリオ間で連携する旨のプレイングを頂いたとしても反映は致しかねますのでご注意ください。

 それでは、皆様の熱いプレイングを心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『バトルドロイド』

POW   :    バトルスイッチオン
【超戦闘モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    精密射撃
【狙撃用プログラム】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【熱線銃(ブラスター)】で攻撃する。
WIZ   :    シュートダウン
対象のユーベルコードに対し【正確にタイミングを合わせた射撃】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シキ・ジルモント
◆SPD
見捨てたくない、か…戦場では甘い考えだ
だが、俺も同感だ
この場で戦う同胞を易々と失わせたりはしない

敵の精密射撃は体と銃口の向きを見て攻撃を『見切り』回避を試みる
周囲の物陰などは『地形を利用』し遮蔽物として使う

格納庫の設備が背後にある状況なら敵の攻撃を誘導、ギリギリで躱し設備に当て、格納庫自体の破壊も意識する

敵の数は早い段階で減らしたい
戦いながら敵を『おびき寄せて』一箇所にまとめ、
改良型フック付きワイヤーで絡めとった設備やバトルドロイドの残骸を『投擲』してぶつける
狙いは体勢を崩して隙を作る事
隙ができたらユーベルコードも発動して頭部を狙撃(『スナイパー』)
立て直す前に弱点を撃ち抜き手早く倒す


ダビング・レコーズ
任務了解です
依頼内容並びに当機の最終命令履歴に基き、銀河帝国と交戦
これを排除します

【POW】

戦闘領域の空間的な広さは十分確保されていると判断
火器管制機能、広域殲滅モードに設定
重火力兵装による効力射を開始します
友軍各位は射線軸に留意して下さい

転送直後にユーベルコードを発動(一斉発射4範囲攻撃1)
敵勢力の迎撃陣形を崩し戦闘の主導権を確保します
この攻撃には格納庫自体への損傷を与える目的も含みます

以後はマイクロミサイルのマルチロックオンとメガ・ガトリングカノンの水平掃射を主軸に、対多数を前提とした戦闘を展開(誘導弾5なぎ払い8)
近接戦闘時にはメタルステークによる反撃を行います(武器受け1カウンター2)


アマニア・イェーガー
リザレクト・パイレーツ抜錨!
カルバリン砲よーぅい!撃てぇ~!


テレポートと同時にユーベルコード【逆巻く嵐の王】を発動して乗りこむね
戦争はあんまり好きじゃないんだけど、誰かが助かるならわたしも頑張るよ!

んじゃ全速ぜんしーん!体当たりでバトルドロイド達を蹴散らしながらカルバリン砲で攻撃!

余裕があったら格納庫自体を攻撃したり周囲の味方に支援砲撃とか、もちろん誰かを乗せたり勝手に乗られたりしてもok!
ついでにわたしも守って☆

あと【情報収集】や【視力】で戦況を把握したり、可能なら【ハッキング】で足止めをやってみる!これでもハッカーだからね!


八津崎・くくり
ああ、犠牲となる船を救うためにも、とにかく壊せば良いのだろう?
シンプルで分かりやすくて何よりだ!
…ところでエアロゾルというのは美味しいのかね? なんだ、知らない?

髪の毛に似たUDCを操作し、大蛇のようになったそれで荒らしにかかろう
フィールドもドロイドもまとめて食い散らかしてやろうじゃないか

目覚めたドロイドがこっちにちょっかいをかけてくるなら、UCで応戦だ
このフォークでまとめて串刺しにしてくれよう!
丁度小腹が空いていてね、良い速度が出ると思うのだが?

敵が超戦闘モードになっても、恐れず行動は同様に
なに、私は一人切りってわけじゃない
私を囮に、うまい事やってくれたまえ!

ドロイドか…これ、美味しくないわ


鴛海・エチカ
ふむ、少数を見捨てるなど言語道断
チカ達が来たからには最早なんの心配も要らぬ。総て蹴散らしてやろうぞ!

杖を構え、『二律排反』で敵と周囲に流星の矢を撃って破壊してゆく
たとえ外したとて構わず連続で放とう
幾つも陣が描ければその上を移動しつつ立ち回るぞ
危険時はチェシュカの箒星にひょいと乗って回避
そのまま飛行して挑み、共に戦う仲間と合わせて各個撃破じゃ

合間に『定言命法』も交えてどーんと敵を穿ってやろう
告げる言葉は「宇宙の平和を乱すでない!」との宣言

たとえ傷付こうともチカは退くつもりはないのじゃ
本当に危うくなれば頼れる者達もいるからのう

我らが繋ぐのは希望。そして、未来
過去の骸よ、大人しく星の海に散るが良い!



●闇を裂く光となりて
 照明の落とされた格納庫内に迸るは一条の稲光。
 待機状態のバトルドロイド達がその存在を感知するよりも早く、煙霧号全域を揺るがすかのような衝撃と共に、それは訪れた。
 地を裂き、空を裂き、轟音と共に切り拓かれるは海の道。
 これこそがアマニア・イェーガー(謎の美少女アンティークマニア・f00589)の誇るユーベルコード。
 世界を書き換え、道を阻むものの全て奪い去る嵐の王の具現。
「リザレクト・パイレーツ、抜錨! 全速前進、よーそろー!」
 瞬く間に格納庫内を満たしていく大量の海水に、足を取られながらも次々と目覚め始めるドロイド達。
 そんなドロイド達の目に映ったのは、彼らにとって遥か昔に滅び去ったはずの過去の遺物たる、全長15m程の古めかしい海賊船だった。
「カルバリン砲、よーぅい! ……撃てぇ~!」
 意気高らかに告げるその瞳に一点の迷いなく。
 容赦なく降り注ぐ砲弾の雨が、荒波に押し流される黒鉄の躯体をジリジリと焼き焦がしていく。
「戦争はあんまり好きじゃないんだけど、これで誰かが助かるなら話は別! わたしも頑張るよ!」
 立ち込める硝煙の匂いの中、一つの決意と共にそう宣言するアマニア。
 しかし、ドロイド達も黙ってやられているばかりでは終わらない。
 その身に取り付けられた強襲用ブースターが火を吹けば、即座に体勢を立て直し、そのままの勢いで空中へと飛び上がる。
 加速する躯体は視界を覆う黒煙をかき分け、手にした熱線銃を構えたままに海賊船へと迫っていく。
 そうして向けられた数多の銃口が船体を――無防備なアマニアの姿を捉え、引き金に指が掛けられようとした、その刹那。
「――火器管制機能、広域殲滅モードに設定。重火力兵装による効力射を開始します」 
 風を切る独特なスピンアップ音と共に響き渡ったのは船首からの声。
 過剰とも言えるほどの兵装を搭載した白い影――ダビング・レコーズ(RS01・f12341)のものだった。
 ダビングから発せられる一切の感情を含まない機械的な音声が告げるのは、機械兵へと向けられた無慈悲なカウントダウン。
「射程内の全敵目標ロックオン完了。照準補正、全射撃準備完了」
 突然の闖入者に、ドロイド達の標的がアマニアからダビングへと切り替わるものの、時は既に遅く。
 今や高速で回転を始めたメガ・ガトリングキャノンの銃身が、そして迸る雷電を弾けさせながら眩く白熱するプラズマ・バスターの砲口を始めとする、ダビングの持ち得る全ての射撃兵装が、眼前に迫るドロイドの一群へと向けられていた。
 異常なエネルギー値を観測したドロイドの内の何体かが、咄嗟の回避運動に移ろうとするが――。
「――攻撃、開始」
 次の瞬間にその視界を覆い尽くしたのは一面の白。雷を纏った、粒子の奔流。
 嵐の如き勢いで放たれる銃弾と収束した光の渦が、船体の正面に展開していたドロイド達を格納庫の内壁ごと抉り、薙ぎ払っていく。
「やあ、随分と派手にやるものだ」
 甲板からその様子を眺めていた八津崎・くくり(虫食む心音・f13839)は紳士然とした声音で、驚き半分感心半分にそんな言葉を漏らしていた。
 迎撃され、黒煙を上げながら海面へと沈んでいく黒鉄。それを見送れば至極残念そうに。
「うーむ、流石にああなってしまったものは食べられそうもないな」
 そもそもエアロゾルというものは美味しいのだろうかなどと、詮の無い考えを巡らせながらも独りごち。
「だが――」
 首を傾げた先でその瞳が映したのは、ダビングの展開する弾幕を避け側面から飛来する機械兵の群れ。
「……どうやらいらぬ心配だったようだね。尤も、そうでなければこちらとしても張り合いがない」
 先行してくくりの元へと飛び込んで来るドロイドを待ち受けていたのは、彼女の赤黒い頭髪――もといくくりと共生するUDC、認識番号:64-91から放たれる瞬速の一閃。
 まるで大蛇を思わせるようなその動きは、絡め取ったドロイドの体躯を易々と捩じ切り、船外へと放り投げる。
「こうして壊し尽くしてみせれば良いのだろう? シンプルで分かりやすくて何よりだ!」
 かかってくるが良い、と、射抜くような視線を向けた先には次なる獲物。
 放たれる熱線の隙間を縫うように掻い潜り、マストを足蹴に空を翔ける。
 迫るドロイドに怯むことなく手にした巨大なフォーク――逸を振るっての一打、二打。
 腹部を穿たれ、その身を二分されたドロイドを待ち受ける未来は悲惨なもので。
 裂けんばかりに大口を開けたUDCに喰まれ、砕かれ、そしてどこまでも貪欲な暗闇の中へと消えていった。
「ドロイドか……これ、美味しくないわ」
 ぽつりと漏れた呟きは、はたして誰の物だったか。

 船上で戦う猟兵達の更に上空――メインマストに設置された見張り台から、その様子を見下ろす影が一つ。
 それは愛銃たるハンドガン・シロガネを眼下へと構えた、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の姿だった。
「未来を信じて戦う者を見捨てたくない、か……」
 思い返すのはグリモアベースを発つ前に耳にした、一人の少年の願い。
 戦場に立つ者としてはどこまでも青く、甘い考えだと、シキは目を伏せて頭を振る。
「……だが」
 そんな思いとは裏腹に、シキの口元に浮かんだのは微かな笑み。
「俺も、その考えには同感だ。――この場で戦う者達を……俺達を信じて命をも擲とうとする同胞を、そう易々と失わせたりはしない」
 アマニアの死角へと回り込んでいた機械兵の頭部に突き刺さる二発の銃弾。
「――弾ならばいくらでもある。あんた達が摘み取ろうとした希望の代わりと言ってはなんだが……気が済むまで、好きなだけ持っていけ」
 決してドロイド達に気づかれることの無いように、見張り台を遮蔽物とした一方的な狙撃。
 揺るぎない決意と共に音速の壁を超えて飛来した二連の衝撃は、自らが撃たれたという事実を認識させるよりも早く、穿たれたそれを物言わぬ鉄塊へと変えていく。
「うむ、少数を見捨てるなど言語道断!」
 同じく見張り台から身を乗り出し、シキの言葉に頷くよう声を上げたのは鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)だ。
「敵は多勢かつ強大。じゃが、チカ達が来たからには最早なんの心配も要らぬ」
 自信に満ちた言葉と共にエチカがひとたび七色の宝玉で飾られた星杖を構えれば、その杖先から放たれたのは星の軌跡。
「さあ、その総てを蹴散らしてやろうぞ!」
 空を彩る流星の矢雨は、前方に注意を奪われていた黒鉄の体躯へと絶えることなく降り注ぎ、その外装を削ぎ落としていく。
 たとえ狙いが逸れようとも、その攻勢を緩めることはせずただひたすら撃ち続けるのみ。
 そうして甲板というカンバスに突き刺さった流星群は幾多もの小さな六芒星を描いてゆく。
 上方から現れた新たな二つの脅威。ドロイド達の向ける銃口は上へ上へと。
 そうして返礼とばかりに放たれた赤色の熱を帯びた悪意の群れが、時を同じくして別方向から現れた複数体のドロイドが、帆を焼き払いながら、シキとエチカの元へと殺到する。
 為す術なく煌々と燃え上がる見張り台。しかし、そこにあるべき姿は既になく。
「悪いが、後ろががら空きだ」
 視界外から襲い来る、再びの衝撃。
 何事かとドロイド達が後ろを見やれば、そこにあったのはエチカの箒型ガジェットに片腕でぶら下がるシキの姿。
 不意を突く形でシキが放ったフック付きのワイヤーは、複数の黒鉄の躯体を雁字搦めに絡め取る。
 瞬く間に一括りにされた黒鉄の体躯は、飛行することはおろか最早抵抗することさえも叶わず。
 艦内に展開されている重力の波に引かれ、後は望まぬ形で落ちてゆくだけ。
「ふふん、中々によい手際じゃのう」
 そんなドロイド達を満足気に見上げるのは、一足先にと甲板に降り立っていたフィエスタローズの双眸。
 足元の六芒星――星屑で描かれた魔法陣へと飛び乗れば、漲る魔力の奔流がエチカの小さな体の隅々へと巡り、そして迸る。
 最大限に高められたその輝きを星霊杖へと流し込めば、凛とした眼差しで眼前のドロイド達を見据えて。
「我らが繋ぐは人々の希望。そして、未来……。過去の骸よ、大人しく星の海へと散るが良い!」
 平和を願う、ありったけの想いを乗せて紡がれた言の葉一つ。
 大気を震わす程の爆発的な衝撃と共に星霊杖から放たれた星の煌きが、身動きの取れないドロイド達を包み込んで。
「チカが定めるルールは一つ! ――『宇宙の平和を乱すでない!』」
 ドロイド達がエチカの宣告を受けたその刹那、帝国を体現した存在――その黒鉄の体躯は、一片の欠片を残すこともなく、星の業火に焼かれて爆ぜ消えていった。

●星海の叙事詩、未来を紡ぐ協奏曲
 猟兵達の活躍により、残るバトルドロイドの総数は既に三分の一を切っていた。
 しかし、消耗が激しいのは猟兵達とて同じこと。
「これは流石に、厳しいかな……っ!」
 猟兵達を乗せていた海賊船も、格納庫を覆い尽くしていた一面の大海原も既に無く。
 ユーベルコードの全力展開を続けていたが為に誰よりも消耗の激しかったアマニアは、今はその情報収集能力と目の良さを活かし、物陰からのバックアップを中心に立ち回っている。
「右正面から三体! こっちを狙ってるよ!」
 振り返りざまに放たれたメガ・ガトリングカノンによる水平掃射が迫り来る機械兵を薙ぎ払うも、度重なる熱線の嵐による損傷は、確実にダビングの装甲を溶かし始めていた。
「損傷軽微。戦闘行動に支障ありません」
 ダビングが肉薄してきたドロイドの一体をすれ違いざまのメタルステークで貫き穿ったその瞬間、ダビングを見据える眼光が紅色に輝いて。
「これは……最早形振り構わず、というヤツか!」
 ドロイド達から放たれる弾幕は、先程までとは比べ物にならないほどに激しさを増し、そしてその躯体はいくら穿てども決して歩みを止めようとしない異常な耐久性を誇る。
 超戦闘モード――自身を縛る理性の糸を断ち切り、猟兵達を確実に葬るため、最後の攻勢に移ったのだ。
 今やダビングから放たれる数多のマイクロミサイルすらも、枷を外し、半ば暴走状態となったバトルドロイドに対する足止めとしてはその役目を十分には果たせずにいた。
「だが、その程度で私達が怯むなど思わないことだ! それに……なに、丁度小腹が空きはじめてきたところでね!」
 飛び交う熱線や繰り出される近接の一撃を紙一重で潜り抜けながら、くくりは手にした揺で多数のドロイドを串刺しに、格納庫の内壁へと力強く打ち付ければ猟兵達へと向き直り。
「私が囮になっている間に、うまい事なんとかやってくれたまえ!」
 超戦闘モードを起動したバトルドロイドは、速く動き回る物を無差別に攻撃し続けるという特性がある。
 即ち、今現在くくりに降り注いでいるのは全ドロイドによる熱線銃の一斉射撃。
 体を掠める熱線の跳弾が肌を焼くも、後を止めた瞬間に蜂の巣になるであろうことを考えれば、この程度の痛みなど気にもならなかった。
 そして、なにより――。
「私は一人きりってわけじゃないのだからな! 信じているぞ!」
 残る希望を仲間たちへと託しながら、くくりは戦場を駆け抜ける。
 今はまだ辛うじて避け切れてこそいるものの、それもあまり長くは保たないであろうことは火を見るよりも明らかだ。
「ええい、勝手な事を言って無茶しおって!」
 エチカの放つ渾身の矢弾がドロイド達を弾き飛ばすも、未だ止めを刺すには至らない。
 底の見えてきた自身の魔力に歯噛みしながらも、それでも決して手を止めることはない。
 時折迫る流れ弾を受け流しながら、信じると叫んでくれた仲間の為に、前へ、前へ。
「たとえ傷付こうとも、チカは引くつもりなどないのじゃ!」
「……ああ、その通りだ」
 手近なコンテナを盾に遠距離からの頭部への狙撃を行っていたシキも、今やその全身を曝け出し、ドロイド達へ向けて絶えることのない銃弾の雨あられを浴びせていた。
 ――不意に、シキの脳裏を過去の記憶――かつて、共に育った仲間に裏切られたという苦い思い出が掠めていく。
「……俺は、決して仲間を見捨てたりはしない」
 シキの眼前には放たれる攻撃の全てを一身に受けながら、仲間を信じて走り続ける姿がある。
「ああ、そうだとも。今この瞬間も、これからも……!」
 フック付きワイヤーで絡め取ったガスボンベをドロイド目掛けて渾身の力で投擲すれば、返す手に握られたシロガネが瞬速の二連射でそれを撃ち抜き、くくりへと押し寄せるドロイド諸共爆ぜ飛ばす。
 これ以上仲間を傷つける事は許さないと、内に秘めたる静かな闘志を煌々と燃え上がらせて。
「……わかった。あのコンテナよ、壁際に積まれたあのコンテナを狙って」
 暴走するバトルドロイド達の動きを止める為に煙霧号の内部情報へのハッキングを試みていたアマニアが、先程までとは異なる真面目な口調で鋭く声を上げた。
 何重にも仕掛けられたシステムトラップを潜り抜け、0と1で構成された果てのない電子の海を渡り、苦心の末漸く辿り着いた先で見つけた答え。
 それこそが猟兵達の起死回生の手段となり得る、逆転の一手。
「あのコンテナの中には煙霧号のコアマシンが不測の事態に見舞われた時を想定して搭載された、予備の推進エネルギーが格納されているみたいなの」
 アマニアの指差す先、格納庫端の壁際に積まれていたのは、堅牢な外殻に覆われた六基の巨大なコンテナ。
「コアマシンが精製する推進エネルギーがどんなものかまではわからないけれど、これだけの質量を動かすエネルギーであれば、もし上手く誘爆させることが出来たなら……」
 猟兵達は互いに視線を交わし合い、全員の狙いが壁際のコンテナへと向けられる。
「目標再設定。全射撃兵装による一斉掃射を開始します」
「うむ、今のチカ達に出せる全力の一撃を……!」
「ああ、やってみるだけの価値はある」
「一斉攻撃の直後、すぐに転移してもらえるように無線連絡を入れておいたわ。だから……後のことは考えないで、全力で行っちゃおう!」
 三、二、一――。
 ダビングの全兵装が、星杖から放たれる数多の煌きが、シロガネから放たれる絶え間ない連続射撃が、そして部分的ながらも再度姿を現した海賊船から放たれる、カルバリン砲の連続砲火が。
 今の猟兵達が持ち得る最大の火力が、眼前のコンテナへと注ぎ込まれていく。
 押し寄せる数多のユーベルコードがコンテナへと届いたその瞬間、格納庫全体が目が眩むほどの光の奔流に包まれて――。

 猟兵達が目を開けた時、そこは既にグリモアベースの内部であった。
「っ、煙霧号は……」
 誰とはなしにモニターへと向けられた指先。
 指し示す先に映し出されていたのは、大きく傾き、白い光に包まれたままゆっくりと沈んでいく煙霧号の姿。

 ――猟兵達の高らかな歓声が、グリモアベース中に響き渡った。

 迫り来る脅威に抗う為、立ち上がった者達がいた。
 絶望に染まる星海で、傷つき斃れる者達がいた。
 ――終わり逝く世界の中で、一条の煌きを見た者達がいた。

 斯くして暗闇から甦りし絶望の宙船は、数多の勇士達の手によって打ち払われた。
 だがしかし、彼らの齎してくれたあの輝きすらも、いずれは歴史の影に埋もれ、捨てられた過去として消え行くのだろう。
 だから、我々は語り継ごう。
 未来を切り拓き、尽きぬ希望を与えてくれた彼らの事を決して忘れることが無いように、ここで語り継ごう。

 ある人は言う、あれこそが、希望の導き手だと。
 ある人は言う、あれこそが、伝説の再来だと。
 ――人々は叫ぶ、彼らこそが、この世界に平和を齎す者なのだと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月16日


挿絵イラスト