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銀河の彼方で抱きしめて

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドクトル・アメジスト #電脳魔術士

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●絶体絶命
「貴様との婚約は破棄させてもらう! 己の罪を悔い改めろ、この悪女め!」
 声高に告げられる台詞に、少女は目が丸くなった。
 豪奢なダンスホール。華やかに着飾った人達。その全てが悪意に満ち、少女を断罪する。
「……え?」
「この期に及んで惚ける気か。捕えよ!」
「え、えぇ、ちょ、待って……!」
 踵を返した少女は、ふわり、華美なドレスを翻し、ヒールの音を響かせて逃げ出す。
 どうして、どうしてこんなことに……。
「断罪スタートなんて……そんな設定作ってない!!」

●悪役令嬢
「皆様は乙女ゲームというものをなさったことはございますか?」
 グリモア猟兵、ソフィア・エーデルシュタイン(煌珠・f14358)は、小首を傾げて尋ねた。
 乙女ゲーム。その中でも、剣と魔法の異世界ファンタジーに学園と恋愛を詰め込んだタイプのもの。
 とある宇宙船の電脳空間を制御している電脳魔術士が、戯れに作ったゲームが、そんな世界観なのだという。
「このゲームが、猟書家幹部『ドクトル・アメジスト』の遺志を継ぐオブリビオンにハッキングされましたの」
 それは魂を奪い帰れなくする、呪いのオンラインゲームとして電脳空間にインストールされた。
 このゲームを起動すれば、魂がゲーム世界に転送され、ゲームの登場人物と化してしまうのだ。
 無論、ゲームの中に魂が存在する以上、その中で死亡すれば、現実世界でも本当に死亡してしまう。呪いのと謳われる所以だ。
「皆様にはこのゲームの中に入って頂き、ゲームに捕らわれた電脳魔術士と協力し、ボス敵となったオブリビオンを倒していただきたいのです」
 ですが、とソフィアは眉を顰め。そうして、このゲームの中では、ユーベルコードが封じられてしまうのだと語る。
 そのような状態で、迫りくる敵を対処せねばならないのだ。
「ですが、電脳魔術士の方が内側からチートコードを入力することによって、その量に応じた回数制限が付きますが、ユーベルコードの使用が可能になるのですわ」
 ですので、と。ソフィアは微笑む。
「皆様は悪役令嬢として攻略対象となるイケメン達をどんどん口説き落としていってくださいまし」
 ……うん?
「ゲームスタートの時点で皆様は権威ある元婚約者によって断罪され、処刑を免れない状態という設定が付与されますの。騎士団の方々が皆様を追って迫ってまいりますわ」
 そう、老いも若きも男も女も皆、等しく令嬢となるのだ。
 華美なドレスとヒールはいわゆる初期装備だ。望むなら縦巻きロールも付けたっていい。
 なお、そのような姿でも動きに制限はないので安心してほしい。
「電脳魔術士の方がチートコードを打ち込むとはいえ、根幹である乙女ゲーム世界という設定だけはどうしても覆せませんの。そこで、元々攻略対象として配置されている各種イケメンを口説き、味方にするというプロセスを経由いたしますの。イケメンとの親密度が上がるほどユーベルコードが使えるようになるという寸法ですわ」
 電脳魔術士の方に言えば、どんなシチュエーションでもどんなイケメンでも用意して下さるので、好みの問題は解消できますわね、とソフィアは笑顔で語る。
 チートコード制の攻略対象なので、落としやすくも仕上がっているから難易度はスーパーイージーだとも。
「あ、でも、イケメンしかご用意できませんの。女性キャラとの友情エンドは実装されておりませんので、悪しからずご了承くださいまし」
 変なところで申し訳なさそうに眉を下げて。
 皆様のお力添えを宜しくお願い致しますと、深く礼をした。


里音
 SSWより猟書家戦をお届けします。
 猟書家戦ですわ!!
 なおシナリオタイトルは攻略する乙女ゲームのタイトルです。

 冒険、ボス戦の二章仕立て。全章通してチートコードを打ち込み続ける電脳魔術士を守る事でプレイングボーナスが得られます。
 が、一章は電脳魔術士にご要望をお伝えしてイケメンを配置してもらったところからプレイングをかけて頂いて大丈夫です。

●第一章
 電脳魔術士さんのお名前は「ベロニカ」さんです。
 乙女ゲームの世界観を守るためイケメンを口説き落とす形でチートコードを実装していきます。親密度が上がるほどにユーベルコードの使用回数が増えます。
 一人のイケメンに狙いを定めず複数人口説いていただいても構いません。
 皆様は悪役令嬢という肩書を背負うので、華美なドレス姿にヒールを装備しております。その他の要素は好きに盛ってください。
 イケメンとの親密度をどんどん上げて、迫りくる騎士団から華麗に逃げおおせてくださいませ。
 口説き方はご自由にお任せいたしますが、公序良俗に反する内容は採用を控えさせていただきます。

●第二章
 ボス戦です。敵詳細は二章移行時に。
 ここまでに味方にしたイケメン達は電脳魔術士さんと一緒に大人しく待機してくれます。なお、例え屈強な冒険者設定のイケメンでも、戦力的なものは一切期待できません。自衛はします。

 4月の満月までに完結したいなを目標にしていますので、場合によってサポートさんのお力を借りてのサクサク進行を想定しております。
 内容如何を問わず、タイミング次第での失効が発生する可能性もありますが、物理的に送信できる間は受付期間ですので、お心変わりなければ再送いただけますと幸いです。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『呪いのオンラインゲームをクリアせよ』

POW   :    困難な状況に対して正面から挑戦し、その困難を打ち砕きゲームをクリアに導く

SPD   :    裏技や抜け道を駆使する事で、ゲームの最速クリアを目指す

WIZ   :    多くのデータを検証して、ゲーム攻略の必勝法を編み出す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マホルニア・ストブルフ
――場違いなものに参加していないか、これ。
走りつつ、申し訳程度に姿だけでも変えられんか試してみるよ。【ハッキング】で10代後半から20代前半程度になれるかね。

ある程度撒いたか?バルコニーのカーテンなどを利用して下の階に降りるよ。降下は軍で慣れてるからね。
と、まずいな、誰かいるのか――ベロニカ?何々、ふむ、あれが例の"イケメン"ね。"私"を知っているようだな。"私"のした過ちを信じられない、と言っているのか。

私、こんな事になるなんて。やる事なす事すべて裏目に出てしまって。どうしたらいいか……。謝罪をしたいのだけれど――騒ぎが落ち着くまで匿ってくださらないかしら……貴方だけが頼りなの。

――うぐぅ。




 己はもしかして場違いなものに参加していないだろうか。
 そんな不安が、マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)にはあった。
 おそらくは悪役令嬢なる存在は二十歳前の華奢な少女を想定して設定されているのだろうが、その設定と比較すると、年も、体格も、合わないのではないか。
 嫌だとかそういう話ではなく……イケメンとやらに申し訳ない心地になってしまう。
 背後から迫る騎士達の足音を聞き留めながら駆け抜けるマホルニアのヒールは、従軍経験が活きているのか無駄な音すらしない軽やかさで、ぐんぐんと後続との距離を離す。
 その最中、マホルニアはゲームシステムへのハッキングを試み、せめて外見だけでも十代後半から二十代前半の見た目へと転じる。
 ちらり、磨き抜かれた硝子に映る姿がドレスにマッチしたそれらしいものになるのを確かめて。
 よし、と一つ頷いて、バルコニーを開け放つと、揺蕩うカーテンを利用して、するりと下の階へ。その頃には、騎士達はマホルニアを見失ってくれているようだった。
「上手く撒いたか? ……と、まずいな、誰かいるのか……」
 安堵もつかの間、人の気配に身構えれば、柱の影から覗き見えたのは華やかなドレスで。
 そろり、窺うように見えた顔が、何やら画面らしきものと見比べて、ぱぁ、と嬉しそうに綻んだ。
「猟兵さんですね、猟兵さんですね!? 私、ベロニカと申します。た、助けてください~!」
 噂の電脳魔術士ベロニカと無事に合流したマホルニアは、グリモア猟兵からの話とベロニカからの話とを聞き、なるほど、と一つ頷く。
 なんとかしてみよう、と頷くマホルニアに、ベロニカは素早くチートコードを打ち込み。宜しくお願いします、と頭を下げた直後、潜んでいた柱の向こうから、何やら嘆く声が聞こえてきた。
「マホルニア嬢、マホルニア嬢はどこへ!?」
 その声はマホルニアを呼び、探し回っていた。
 けれど、どうやら騎士達とは異なって、マホルニアを断罪しようとする存在ではない様子。
「私は知っている。貴方があんなことをするはずはないと! 返事をしておくれマホルニア嬢! 私が力になるから!」
「ふむ……あれが例の"イケメン"ね」
 ――若い!
 ベロニカ曰く、男爵家の嫡男だそうだ。それにしても若い。キースと言うのか、そうか。
 外見をいじってごまかした申し訳なさとあれを口説くという気恥ずかしさが急に湧いてきたマホルニアだが、あれを懐柔せねばユーベルコードが使えないとなれば、行くしかあるまい。
「キース様!」
「ああ、マホルニア嬢!」
「私、こんな事になるなんて。やる事なす事すべて裏目に出てしまって。どうしたらいいか……」
「分かっている、分かっているとも! 君は正しかったとも!」
 寄り添うキースに、マホルニアは精一杯健気な素振りで瞳を伏せる。いまなら涙も零せる気がする。
「謝罪をしたいのだけれど――騒ぎが落ち着くまで匿ってくださらないかしら……貴方だけが頼りなの」
「勿論だ! さぁ、こちらへ!」
 そう言って、キースはマホルニアの手を取り、喧噪の中を駆け抜けていく。
 その横顔は決意に満ち、必ず助けると言う言葉が力強く響くのであった。
(――うぐぅ)
 ときめきよりも先行してしまう色々と複雑な気持ちばかりは、拭い去ってくれなかったけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セラフィール・キュベルト
あの…私、一応男なのですが。
それでも悪役令『嬢』になるのですか…?
…わかりました、頑張ってみます。
(女性として振舞うのはデフォなので問題ない模様)

逃亡の末、とある教会に逃げ込むこととなった私。
そこで出会った二十代半ばくらいの神父様が、私の攻略対象のイケメンさんです。
多少意地の悪いお方で、事情をお話しても騎士団への引き渡しを仄めかしたり、ご自身の保身を優先する物言いがちらほら見受けられたりしますが。
その実、貧しい民の有様に心を痛めておられて。彼らへ【優しさ】以て接する私を見て惹かれた様子。
ならばと仕上げに、追手の騎士団も巻き込んだ聖輝光輪・心恨浄化にて聖女覚醒ムーブを決めて見せて差し上げます。




「あの……私、一応男なのですが。それでも悪役令『嬢』になるのですか……?」
 セラフィール・キュベルト(癒し願う聖女・f00816)の素朴な疑問に、電脳魔術士ベロニカは何度も頭を下げながら詫びる。
 しかしベロニカの目には、セラフィールが男性だとはとても見えない。
 煌びやかなドレスも馴染むブロンドに、柔らかな青の瞳なんてもはやお人形さんのようで。
 あ、でも確かに胸がない……とか思ったけど、この可憐さを見れば些細な事でしかない。
 セラフィール自身もまた、己の容姿を理解しており、常日頃から男子禁制の修道院で少女として育てられた影響もあって、ドレスは少し派手ですね、くらいの心地だ。
「……わかりました、頑張ってみます」
 渋るでも食い下がるでもなく素直に頷いたセラフィールに、なにとぞよろしくお願いしますとベロニカは再び頭を下げて、行くべき道を示す。
 ――ヒールを鳴らすセラフィールの背後から、彼女(彼)を探す声が聞こえてくる。
 息を切らし、何とか駆け込んだ教会には、一人の神父が佇んでいた。
「あ、あの……追われていて、匿って頂きたいのです」
 震えるような声でそう告げれば、おや、と驚いたような素振りで歩み寄ってくる。
 見上げるセラフィールの前に立った神父は、二十代半ばと言ったところだろうか。整った顔立ちをしているけれど、少し、そう、少し意地悪そうな顔を、していた。
 そんな神父に、いつの間にか悪者にされていたのだと事情を訴えるセラフィールに、神父はやれやれと首を振って、まるで幼子を諭すように言うのだ。
 悪くないというなら逃げなければいいのに。こんなところに逃げ込まれても、貴族様をおもてなしなんてできない。この教会まで悪とみなされては困るのだ。
 至極もっともなようで、けれどどこか、貴族と言う存在に偏見を持つような言い分は、不意に教会へ訪れた者の姿で、遮られる。
「神父様! 妹が、妹が倒れて……あ……ごめんなさい、お客様、ですか……」
 少年が、少女を抱えて飛び込んできたのだ。
 ぼろぼろの服に薄汚れた姿は、彼らが貧しい身分の物であると窺わせ、それゆえか、豪奢なドレスのセラフィールを見て、躊躇ったようにまごまごしていた。
 はっとして、セラフィールは彼らににこりと微笑むと、そっと道を開ける。
「いいえ、私はもう行かねばなりません。どうぞ神父様、彼らを助けて差し上げてくださいまし」
 小さな少年が抱えるにはつらかろうと、手を差し伸べて少女を共に支える姿に、少年も神父も、目を丸くする。
 令嬢が庶民に対しこんなにも優しく接してくれるなんて、と心の揺れる神父。
 そこへ、新たな闖入者が表れた。
「セラフィール・キュベルト! 大人しく我々と来てもらおう!」
「貴様ら、この女を匿おうとしていたな! 庶民の分際で生意気な!」
「やめてください!」
 少年達へも処断の手を伸ばそうとする騎士達へ、セラフィールは立ちはだかる。
 その刹那、セラフィールの頭上に光輪が浮かび、優しい光の波動が、周囲の戦意や敵意を静かに宥めていった。
「どうか恐れないで、どうか怯えないで。私の光を、私の声を。荒ぶる刃を、今はお収めください――」
 祈るような声に、騎士達は呆気にとられたように立ち尽くし、神父は跪く。
「聖女様……!」
 かくして、貴族嫌いの意地悪な神父は、セラフィールの聖女ムーブに無事陥落したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリシャ・パルティエル
あたしは待っていたの!
オンラインゲームって戦略ものとかが多いから
よくわからなかったけど
乙女ゲーム…これならいけるわ!

というわけでベロニカ
あなたのことは助けるから安心して
攻略したいのは黒髪短髪の孤独を抱えてそうなタイプ
…昔の恋を引きずりすぎかしら
他の設定はお任せよ

ドレスを翻しながらあの人の元へ駆けるわ
あたしは罠にかけられたの
あの婚約者の悪事を暴くつもりが
逆に断罪されるなんて…

いつもは強気でも特定の人にだけ
弱さを見せるの
悪役令嬢だからこそのギャップ萌えよ!

あの人の孤独も埋めてあげたい
一緒に逃げるうちに絆が深まっていくの

どうしよう楽しいわ…
でもゲームだからこそ味わえる楽しさ
命を懸けるのはやりすぎよね




 エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は待っていた。
 こういうタイプのオンラインゲームが表れるのを。
「オンラインゲームって戦略ものとかが多いからよくわからなかったけど、乙女ゲーム……これならいけるわ!」
 ぐっ、と握りこぶしを作ったエリシャを、ベロニカは頼もしげな眼差しで見つめている。
 あなたのことは助けるから安心して、と微笑まれれば、もう彼女の望むままのイケメンを創造するよりほかあるまい。
 上手く実装されました、と親指立てるベロニカに、エリシャもサムズアップして、ドレスを翻した。
 大理石の廊下を駆け抜けるヒールが甲高く響き、美しい庭園へ抜けていく。
 エリシャが向かうのはいつもあの人が居る真っ白なガゼボ。
 今日もきっと、彼はこの場所に居る。居てくれるはずだ。
 ――配置したので間違いなく居るだろうがこういうのは感情移入してこそだ。
 祈りを込めてたどり着いたその場所に、果たして彼はいた。
 短く整えた黒髪。ガゼボに絡む薔薇を剪定する青年は、ちらとエリシャを一瞥だけして、すぐに視線を背ける。
 静かで近寄りがたい雰囲気だけれど、はぁ、と息を切らして彼の――庭師の青年の前に立ったエリシャは、ぐ、と唇を噛みしめる。
「失敗してしまったの……」
 絞り出すように吐き出して、エリシャはその場に崩れ落ちた。
「あたしは罠にかけられたの! あの婚約者の悪事を暴くつもりが、逆に断罪されるなんて……」
 婚約者として近づくまでは上手くいったのに、怪しまれないように気を付けながら、家格に相応しい振る舞いをしてきたはずなのに。
 上手くいかなかった。婚約者はエリシャに振り向いてはくれず、証拠をつかみきれなかった。
 こんなことになるなんて、と肩を震わせるエリシャに、男は歩み寄る。
「もうおしまいよ……どうして、どうしてこんなことに……」
「お嬢様」
 差し伸べられた掌に、エリシャは顔を上げる。見上げた瞳は、案じるような優しい眼差しをしていた。
「普段は気丈な貴方がこんなにも弱る姿なんて、見ていられない。立ってください。この庭を抜けて、城を離れるまでなら……助けてあげられます」
「……あたしを助けたら、貴方は殺されるかもしれないのよ」
「構いません。俺には……何もありませんから」
 せめて貴方を救えたなら、誇りの一つにくらいはなるだろうと寂しげに微笑む青年に、エリシャは目を剥いた。
 ――あぁ、そうか。心の中に、一つの納得が生まれる。
「……あの人が、あたしを好きにならなかったのも、仕方のない話ね」
 青年の手を取って立ち上がったエリシャは、その瞳を見上げ、見つめる。
 いつも一人で庭園を整えている青年を、エリシャはずっと見つめていた。
「あたしの心に貴方が居ることを、きっと、気付かれていたのね」
「お嬢様……」
「連れて行って。貴方が導いてくれるなら、あたしはどこへ行くのも怖くない。一緒に……逃げてくれないかしら」
 今度は、青年が目を丸くして。重ねられた手を、力強く、握りしめてくれた。
(どうしよう楽しいわ……)
 想像以上になり切れてしまうものだった。
 だが、これはゲームだと理解しているからこそ味わえる楽しさであるべきで。命を懸けるなんて、やりすぎだ。
 それにしても、昔の恋愛を引きずりすぎだろうか、と。自身の選んだ攻略対象の姿を見て、エリシャは小さく苦笑するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『実験体N17号』

POW   :    うごかす
見えない【高濃度サイキックエナジー】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    よける
【まるで11秒先の未来を見てきたかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    みなごろし
【熱線銃や熱線剣】で武装した【銀河帝国軍の特殊部隊】の幽霊をレベル×5体乗せた【小型ホワイトホール】を召喚する。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニトロ・トリニィです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●最終決戦
「どうした、あの女はまだ捕まらないのか!」
 吼える男は、それだけで何をするでもない。
 実働する騎士団達は、幾つも紛れ込んだイレギュラーに翻弄されて、その責務を果たせていない。
 このままでは、成り立たない。
 このままでは――誰も殺せない。
「あっ、ボスです、ボスが現れました!」
 電脳魔術士ベロニカは、己が作ったはずのゲームの設定画面を凝視しながらそう叫ぶ。
 いつまで経っても『悪役令嬢』が断罪による死を迎えないために、ラスボス自らが手を下しに現れたようだ。
 しかし、その姿はベロニカが想定していたような禍々しい魔物ではなく。
 スペースシップワールドではなじみのある、ブラックタールの少女だった。
「えっと本来の設定では悪役令嬢が断罪された後にその怨念が闇の魔法に干渉して異形化して……あれ? でも悪役令嬢は死んでないから、これは私の用意した敵では……」
 ない。確信すると同時に、ブラックタールの少女――『実験体N17号』は真っ直ぐに彼らを見据え、口を開く。
「人類を抹殺します」
 淡々とした言葉と同時に、少女の周囲にサイキックエナジーが膨れ上がる。
 そうして、ゲーム世界に住むシステムの住民も、取り込まれた存在である者達もお構いなしに、攻撃を仕掛けてくる。
 少女の目的は、人類の抹殺。それが、少女へ冒涜的な実験を施した者からの最後の命令であるから。
「こ、コードは十分に打ち込めています。皆さんのユーベルコードは問題なく使えるはずです! なので、私達は避難させていただきますー!」
 逃げ惑うしかないベロニカと攻略対象達は、崩壊に巻き込まれぬよう避難し始めた。
 そう、今やこのゲームの主人公は君達『悪役令嬢』である。
 攻略対象との親密度アップによって稼いだチートコードによって、ユーベルコードを駆使し、ゲーム世界にインストールされたオブリビオンを討伐してこそハッピーエンドを迎えることができるのだ!
マホルニア・ストブルフ
ふむ、何者かの干渉でゲームに登場するもの以外が、ね。ユーベルコードも使えるようになったし――って待て待て待て。

お待ち下さいキース様、私は大丈夫ですのでキース様はお逃げになって下さい。

ああくそ、押し問答している暇はないというのに。……おやおや、この若者、見所もあるのね。戦ってばかりで女性扱いされていなかったから、令嬢も悪くはないかも、なんて。

キース様――いえキース。私は最初、謝罪をしたいと言ったでしょう。それは貴方になのよ。あれと戦うために、どうしても断罪されるわけにはいかなかったの。

UCを始動。回避されたところで関係ない。力場の本流に引き摺り込んでやろう。

ほら、大丈夫――騙してごめんなさいね。




 本来の制作者であるベロニカも知らないような敵……いや、オブリビオンがゲームを乗っ取った際、本来の設定のみを引き継いで自身をインストールしたという方が正確か。
 いずれにせよ、このボス敵を倒すことでゲームとしても現実の事件としてもクリアとなることは悟れて。
 マホルニア・ストブルフは、男爵家の令息であるキースの懐柔によりユーベルコードの使用が可能になったことを確認して、早々に敵へと仕掛けようとして――。
「私がなんとか時間を稼ぐから、君は逃げるんだマホルニア嬢!」
「――って待て待て待て」
 どうしてそうなる?
 ベロニカなどは早々に自身の役割を理解して退いたではないか。ベロニカの作ったゲームキャラなら彼女の意に沿って猟兵に現場を託してくれてもいいのでは?
「お待ち下さいキース様、私は大丈夫ですのでキース様はお逃げになって下さい」
「逃げるなら君も一緒に行こう!」
「私はやるべきことがありますので」
 思ったより頑固だ。そういう設定なのだろうか。
 こんな押し問答をしている間にも、街は次々と破壊されていくというのに。
「このままでは貴方も危険です、どうか……」
「君を置いてなど行けるものか!」
 手を握ることも、腕を引くこともなく、ただマホルニアの前に立ち、その背に庇おうとする青年の言葉に、マホルニアは目を丸くする。
 同時に、理解する。彼は、どこまでも『マホルニアを慕う男爵令息』なのだ。
 好いた女性を置いて逃げるという行動に至れない。そんな、見所のある若者の姿に、マホルニアはつい、表情を和らげていた。
(戦ってばかりで女性扱いされていなかったから、令嬢も悪くはないかも、なんて)
 悪くはないと思っていても、己は猟兵で、彼は――守られるべきシステムだ。
 想定外の反応に動揺したマホルニアだが、背筋を伸ばし、するりとキースの前に立つ。
「マホルニア嬢……!」
「キース様――いえキース。私は最初、謝罪をしたいと言ったでしょう。それは貴方になのよ」
 前に出ては危険だとキースが食い下がれなかったのは、その姿があまりに凛と強く、見えた横顔が、あまりに勇ましかったからだろう。
 頼もしさを湛えた表情で笑みを向けたマホルニアはもうとっくに、令嬢の皮をかぶってはいない。
 煌びやかなドレスを纏っていようとも、そこに居るのは、一人のエンジニアだった。
「あれと戦うために、どうしても断罪されるわけにはいかなかったの」
 ――さようなら。囁くように紡がれる言葉は、キースへ向けられたものではなく。
 ユーベルコードを発動させる鍵となる、敵への問いかけ。
 真っ直ぐに敵を――実験体実験体N17号と区分されたブラックタールの少女を見据えたマホルニアは、高速演算を開始する。
 電荷を付与し、加速する素粒子が生み出すのは事象の地平線。
 それが齎す攻撃を、少女は予測する。未来を見てきたかのように、先回りして回避するために。
 けれど、避けても、逃げても、それは少女を追うほどに、周囲の物質を消費し、光さえも引きずり込む高密度の重力と化す。
 逃れようがないものを叩きつけられた少女が、抗い翻弄する間に、マホルニアはキースを振り返った。
「ほら、大丈夫――騙してごめんなさいね」
「……それでも私は、君を守るよ。マホルニア嬢」
 共に戦うほどの力はないけれど。謂れのない断罪からは、必ず。
 語る男に、マホルニアはまた、悪くはないかと笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

七星・彩華(サポート)
 羅刹の妖剣士×宿星武侠、45歳の女です。
 普段の口調は「我が道を行く姐さん(私、お前、呼び捨て、言い捨て)」、仲間にはフレンドリーな姐さん「無口(私、お前、呼び捨て、言い捨て)」です。

呪詛も武器として扱う戦闘狂、魅惑的な身体すらも平気で使う。
闘う事を至高と考える一方で守る者や助け合う事の重要性も戦闘の1つの重要な要因と考えている。
基本的には天上天下唯我独尊を貫く生き様


 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ルイズ・ペレンナ(サポート)
『お代は結構ですわよ。けれど懐には注意なさいませね?』
ブラックタールのシーフ × スターライダー
特徴 金目の物が好き 錠前マニア グルメ 快楽主義者 実は恋をしていた
口調 貴婦人(わたくし、あなた、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
敵には 高慢(わたくし、あなた、呼び捨て、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

・金目の物をお宝と認識し獲得するのが行動理念
 直接の機会でなくても獲得出来るかも知れないと思えば動きます

・愛情や人助けのような金銭にならない価値は興味ないですが
 それを大事にする人を貶めもしません。趣味の相違

・利害が一致すれば他人との共闘やサポートはむしろ積極的です




「乙女ゲームだとかはよくわからないが、今の状況は敵を倒せばいいだけという事はよく解るな」
「ええ、本当に。親密度だとかはよくわかりませんけれど、お陰で戦うのに支障のないという事は、よくわかりましてよ」
 崩壊する街の瓦礫を踏みしめ、七星・彩華(鮮血が狂い咲く呪詛使い・f32940)はその元凶たるブラックタールの少女を見据える。
 電脳魔術士ベロニカの気まぐれが生み出したゲームとやらは、どうにも通常のオンラインゲームとは趣が異なるという事は理解したが、こうして戦うに至るまでに回りくどいことが必要だとは、難儀なことだと辟易したように肩を竦める。
 ルイズ・ペレンナ(怪盗淑女・f06141)も同様に、敵を倒して金銭を取得するような単純明快な作りではないゲームの攻略にはあまり興味がなかった。
 しかし考えようによっては、幅広い好みに合わせて攻略対象を生成しうるシステムは金銭を生む可能性があるのではないか。
 製作者に恩を売っておくことは、悪くもない。
 戦闘狂を自覚し、戦闘によって至上の快楽を得る彩華と、ゲームに捕らわれた電脳魔術士を解放することで利益を得られそうなルイズの利害は、一致した。
「そうと決まれば早速、相手をしてもらおうか!」
 己を蝕む呪詛をも武器とする彩華は、常闇の呪詛で鍛えた刀を手に、駆ける。
 少女は街を、そしてこの『世界』に存在する人類を破壊すべく、かつての銀河帝国が有した軍の特殊部隊の幽霊を召喚し、散開させている。
 まずは、手近な敵を。向けられる熱線銃がわずかに肌を焼こうが、構わず駆けた彩華は、幽霊へ刀を振るう瞬間、口角を釣り上げて笑う。
「幽霊とはいえ、手ごたえは十分か」
 それでいいと言わんばかりに笑った彩華に、まぁ、とルイズは楽し気に口元を緩める。
「頼もしい限りですわね」
 彩華が大きく暴れてくれるならば、自身は違った方向性で助力をしようか。
 くるりと踵を返したルイズは、街の崩壊に巻き込まれないように右往左往している人々――中でもチートコードの実装の要となる攻略対象と呼ばれるイケメンへ、声を掛けていく。
「さぁさ、皆様どうぞこちらへ」
 ルイズが取り出すのは、小さなダイヤル付きの金庫。
 一体これが何なのだろうと不思議そうな目をする者らを、ルイズは見渡し微笑む。
「この『中』は、皆様をお守りする場所ですのよ。世界で此処より安全な場所はそうそう無いと自負しておりますわ」
 百聞は一見に如かず。ともかく触れて御覧なさいましと説くルイズ。
 イージーモードのイケメン達はルイズの言葉に素直に頷き、金庫に触れ、その中に吸い込まれていく。
 そこは、荘厳華麗な博物館だった。
 この世界の王侯貴族しか持ちえないような品々が整然と陳列される光景は、まさしく息をのむばかりで。
「絢爛豪華な世界の秘宝、心行く迄ご覧あそばせ」
 金庫を撫でるルイズは、中にしまった品々を思って、穏やかな笑みを湛える。
 ――その全てが盗品であることを、彼女以外が知る由もないのだけれど。
 ルイズが避難活動に勤しんでいる間にも、彩華は次々と敵を屠る。
 やがて、ただ切り捌くのにも飽きてきたと言わんばかりに、昂揚に滴る汗を拭い、まばらながらもひるむことなく迫ってくる敵を、見据えて。
「この恐怖に耐えれるかい?」
 突き付けた刀から、濃密な呪詛を、周囲へと放った。
 それは彩華を中心として広がり、彼女に近づく敵を絡め取り、蝕むわざわい。
 たちまちの内に、屈強な精神を持つ軍の特殊部隊であり、死を恐れる必要のない幽霊であるはずの彼らを、恐怖に陥れる。
「戦場では、立ち止まった奴から死んでいくのさ!」
 軍人のお前達は知っているだろうと言わんばかりに吼えて、彩華は敵を斬り捨てた。
 その光景を、少女は、ただただ無感情な瞳で見つめているばかりであった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セシル・ローズキャット(サポート)
『神様なんていないわ』
『あなたみたいな人、嫌いよ。だからここで終わらせるの』

 ヴァンパイアの父と修道女の母に大切に育てられた、ダンピールの少女です。
 母が同じ人間に迫害されてきたため神を信じず人間嫌いな性格ですが、猟兵としての仕事には真剣に臨みます。
 普段の口調はやや大人びた感じですが、親しみを覚えた仲間に対しては「ね、よ、なの、なの?」といった子供らしい口調で話します。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、依頼の成功を目指して積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはマスターさんにおまかせします!




 人間なんて大嫌い。そう言い切れるセシル・ローズキャット(ダンピールの人形遣い・f09510)は、人類を抹殺するというブラックタールの少女――実験体N17号の言葉に、少しだけ、気持ちが揺れた。
 自分や、自分を庇護する父が、母を迫害した人間に対してそれくらいのことが出来たなら、今頃何か変わっていただろうか。そんな思案が、ふと、過る。
 ――けれど、それは考えても詮無いこと。父は力の行使を選ばず、自分は人間を嫌うに留まっているのが現状。
 そして、自分は猟兵だ。その務めを果たすべくこの場所へ立ったのだから、セシルは何も迷わない。
 敵対するなら、倒す。それだけだ。
「――破壊します」
 少女が放つ高濃度のサイキックエナジーは、セシルの目には見えない。
 けれど少女がセシルへと明確に抱いている殺意が、彼女の攻撃を単調なものにしているようで。
 動き回るセシルの背後で、サイキックエナジーを受けた建物が音を立てて崩れていった。
「建物を壊すだけじゃ、人間は殺せないのよ」
 こと、電脳魔術士であるベロニカという製作者を持つ仮想空間であるならば、なおのこと。壊れた建物など、システムの再構築であっという間に修復されるだろう。
 そんなことには思い至らない少女を、少しばかり哀れむように見つめたセシルの瞳が、赤く輝く。
 真紅の瞳は、セシルに流れるヴァンパイアの血を呼び起こし、その力を覚醒させた。
 相変わらずサイキックエナジーは見えないし、少女が放ったエネルギーは、崩落した建物の瓦礫を操作し、セシルを押し潰さんと迫ってくる。
 けれど、戦闘力が爆発的に増大した今のセシルならば、蹴散らせるものだ。
 爪先で蹴りつけ跳ね上げ、隙間を駆け抜けて、セシルは少女との距離を詰める。遠距離への攻撃に優れた技の裏をかくように、懐近くへ。
 そうして、セシルは少女に捧げるように、歌を響かせた。
 静かで透明で、どこか神秘的な歌声は、けれどその柔らかさに反して、鋭いまでの攻撃性を持つ。
 少女の脳を揺さぶり、よろめかせれば、操っていた瓦礫も制御を失い、がらがら、音を立てて元のように崩れていった。
 ふわり、一度距離を取ってその瓦礫の上に立って、セシルは手にしたぬいぐるみをきゅっと抱きしめる。
 母が作ってくれた、猫のぬいぐるみを。
「あなたはどうして人類を抹殺したいの?」
「命令ですから」
 淡々とした返答は、その問いかけになんの意味も持たないことを示していて。
 セシルは、そう、と小さく呟いて、また、歌声を紡ぐ。
 二度同じ手を食らうまいとしてか、歌を邪魔するようにサイキックエナジーを操る少女。
 だが、どれだけ瓦礫を操り、サイキックエナジーを叩きつけても、セシルは歌をやめない。
 羽もないのに軽やかに飛び、デバイスから歌声を響かせ続けた。
(命令をした誰かは、あなたにとっての神様なのかしら)
 何を顧みることなく、ただ従順に命令を遂行するに値する存在。
 その存在のために、相容れないものを排除しようとする姿は――信仰に執着した人間と、変わらないように見えた。
「あなたみたいな人、嫌いよ」
 だからここで終わらせるの――。

成功 🔵​🔵​🔴​

セラフィール・キュベルト
人の悪性しか知らぬが故に、人へ憎悪しか向け得ない。
なんと恐ろしく、そして悲しい方でしょうか…。

作り物の世界とはいえ、人々が傷つく様を捨て置くことはできません。
彼女と対峙し、周囲の人々への攻撃は【結界術】にて展開した光の障壁で食い止めましょう。
とはいえ、帝国の軍勢を前とすれば結界も長くは持ちません。
なれば私は【祈り】ましょう。天に――この宙の果てにおわす尊き御方への信心を通し、己の内に眠る力を励起します。
以て神輝光臨・聖光鎮呪を発動、生ずる光で以て、現れたる帝国の軍勢を、ホワイトホールを【浄化】し骸の海へ還していきます。
残った少女には【全力魔法】による【破魔】の魔術攻撃を撃ち込もうかと。




 崩落する街から、人々の姿は殆どなくなっていた。
 自主的に非難したり、猟兵が力を貸したり……電脳魔術士であるベロニカが何か操作をしたのかもしれない。
 ともかく、セラフィール・キュベルトにとっては憂うことがなくなった状態となり、ブラックタールの少女『実験体N17号』にとっては、目的である抹殺対象が居なくなった状態。
 にも拘らず、少女は破壊活動を繰り返す。まるで、人類が関わる全てを憎むかのように。
「人の悪性しか知らぬが故に、人へ憎悪しか向け得ない。なんと恐ろしく、そして悲しい方でしょうか……」
 それは、少女へ冒涜的な実験を施した誰かの憎しみなのだろうか。それとも、少女自身の意志なのだろうか。
 いずれにせよ、セラフィールにとっては、作り物とは言え世界が、人々が傷つくさまを捨て置くことはできない。
 強い意志を伴い、真っ向から対峙したセラフィールを見とめると、少女は銀河帝国軍の特殊部隊の幽霊を呼び寄せる。
「人類の、抹殺を」
 命じるような声に従い向かってくる幽霊達が逃げ遅れた人を攻撃する事の無いよう結界術を展開させたセラフィール。
 イケメン神父を口説き落とす際に聖女ムーブを披露した彼らしく、その障壁は暖かな光で構築され、幽霊達の侵攻を阻んでいる。
 とはいえ、相手は軍隊だ。セラフィール一人で阻み切れるものではない。
 守るばかりでは、いずれ突破されてしまう事は、目に見えていた。
「なれば私は祈りましょう」
 両掌を組んで、瞳を伏せる。
 その祈りは、ただの心の安らぎを齎すものではない。
 セラフィールが祈りをささげる対象は、この宙の果てにおわす尊き御方。揺ぎ無い信心を通し、己の内に眠る力を励起するための、いわば儀式。
「生命見守りし大いなる御方、彼の災厄より小さきものをお守りください――」
 祈りは、届いたのか。答えは、返されたのか。
 そんなことは問うまでもない。セラフィールが得るのは誰かに与えられる力ではなく、己を奮い立たせた力。
 見返りを求めぬ心からの祈りが、光を生んだ。
「どうぞお帰り下さい」
 骸の海で、静かに眠ることが叶いますように。願うような声に呼応するように、光が広がり、帝国の軍勢を飲み込む。
 鎮静の祈りを込めた光は、幽霊達をホワイトホール諸共浄化し、跡形もなく消し去っていくのであった。
 迸るほどの強さはなく、ただ優しく広がる光の帯を見つめて、聖女様、と誰かが呟く。
 聞き留め、慈愛に満ちた笑みを湛えたセラフィールは、一人残った少女を、真っすぐ、見つめる。
 自らが呼び寄せた軍勢を消し去られても、動揺した様子はない。
 どこまでも静かな表情で、淡々とした声で、少女は、言う。
「人類を抹殺します」
 それこそが、己の存在意義であるかのように。
 瞳を伏せ、いいえ、とセラフィールは首を振る。
「あなたに、そんなことはさせません」
 溢れ出る光を、破魔の力に変えて。セラフィールは全力を込めて少女へと放った。
 優しく、温かく、包み込むような光で、冒涜的な実験の被害者である少女の心が少しでも、癒えるように――。
 願いの籠った一撃は、そのまま少女を消し去った。
 同時に、オブリビオンであった少女に乗っ取られていたゲームシステムの制御は、全てベロニカの元に帰ってくる。
 崩壊した街に、ベロニカが打ち込んだコードが光の雨となって降り注ぎ、元の街並みを取り戻していき、やがて人々の歓声が響き渡る。
 かくして、悪役令嬢と呼ばれた少女達は大いなる闇を打ち払い、国に平和を齎したのであった。
 エンディングは、そんな締めくくりとなるに、違いない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月28日


挿絵イラスト