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効果は未知数? 猟書家主催のダイエット講座!

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #書の悪魔ダンタリオン #迷宮大図書館

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●乙女の夢と狂気と
「ご飯は悪。カロリーは敵……」
 ぶつぶつとつぶやきながら、きゅうきゅうと腹の虫を鳴かせながら、虚ろな目で虚空を見据える少女がある。
「牛乳、煮干し……」
 ごぶごぶと牛乳を飲みつつ、ぼりぼりと煮干しをむさぼりつつ、虚ろな目で床を見つめる少女がある。
 彼女たちのみならず、そこには数多の少女があって、儀式か何かのようにそれぞれが一つ事を繰り返し行っている。彼女たちは例外なく、生気を根こそぎ失ったような昏い表情で――いや、そんな中でただ一人だけ、つややかな顔をした存在もある。
 中程で開かれた、分厚く巨大な百科事典めいた一冊の本。空間をねじ曲げたページから、悩ましいラインを描く上半身を乗り出させた、女型の悪魔。
 うっとりと己の生み出した災魔たちを眺めやる彼女こそ、アルダワを脅かす猟書家幹部が一体、ダンタリオンである。

●デタラメダイエット大全集
 大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)の前にあるテーブルには、集った猟兵たちをもてなすためだろうか、種々様々な菓子が展開されている。ポテトチップス、クッキー、キャンディ包みのチョコ、渋いところで落雁やかりんとうなども。
「芸術、スポーツ、学問……どんなことでも、楽なやり方で成果を得るなんてのは無理な話さ。ダイエットも、な」
 それでも、簡単にやせたいとか、楽に理想のプロボーションを手に入れたいとかいう煩悩が、人々から消えることはなかった。遥か昔から今日にいたるまで、ずっとだ。ゆえに、ダイエットに関わる誤情報や詐欺といったものもまた、世に溢れ続けて絶えたためしがない。
 警告を促す目的で編集されたのか、そのようなダイエットに関わるガセ情報の諸々を取りまとめた本が、アルダワの『迷宮大図書館』の蔵書の中にあった。
 そしてその本が、猟書家幹部たる書の悪魔ダンタリオンの目に留まった。彼女によって災魔の卵を植え付けられたその書物は、無尽蔵に災魔、つまりオブリビオンを生み出す装置と成り果てているという。
「まず一手、湧いて出てくるオブリビオンを討ち尽くす。んで、元凶の本を焼いちまう……って言いたいとこだけど、あれでも貴重な資料であり調査対象ってカンジでな。簡単に処分するわけにもいかん」
 ポイとマシュマロを一つ口に放り込んでから、朱毘は言った。
「だから、次は猟書家幹部を直接狙う。そいつを討伐できりゃ本は元通りになるからな。幹部、集団含めて敵連中は大図書館からちょっと移動して、味も素っ気もない石組みの迷路が延々続いてる区画で……えー、何て言やいいんだ? 増殖? 量産? を続けてる」
 甘いの食べたら次はしょっぱいの欲しくなるよね、とばかりにポテトチップスをぱくつきつつ、朱毘はさらに続けた。
「で、だ。迷宮の地理に関しては、今もずっと調査活動に勤しんでる魔法学園の学生たちの方が、あたしら猟兵よりかずっと明るい。そこで今回、道案内や何かの面で彼らにも協力してもらうことになってる」
 一度は世界の危機を乗り越えたという経験もあってか、たかが学生などと軽んじてはいけないほど精悍になっているという。まあ、流石に直接オブリビオンと戦って勝てというのは無茶だろうが、上手に連携を取れれば頼れる戦力になってくれるだろう。
「まー、あたしも職業柄ダイエットの辛さはそこそこ味わってる方だけどさー」
 塩の付いた指を舐めつつ、朱毘は肩をすくめる。
「食ったら食っただけ動くってーのが、基本にして極意だと思うんよね。さ、カロリー補給が終わった奴から送ってやるから、言ってくれ。ハードな運動が待ってんぜ」
 言うと、口の端を好戦的に吊り上げた。


大神登良
 オープニングをご覧いただきありがとうございます。大神登良(おおかみとら)です。

 このシナリオは、アルダワ魔法学園の対猟書家幹部戦で、二章構成となっています。

 戦場はアルダワの地下ダンジョンの中、石造りの迷路が延々と続く区画です。開けた場所ではありませんが、ごく普通に戦闘を行えるだけの道幅はあります。

 第一章は集団戦です。特に強化されてはいません。
 第二章はボス戦です。猟書家幹部だけあって強敵ですが、特殊なギミック(先制攻撃など)はありません。

 なお、このシナリオには第一、第二章を通じて下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
『プレイングボーナス……学生たちと協力する(学園や迷宮の地理には詳しいです)』
 これに基づいたプレイングは有利に判定されます。
 学生らは猟兵に敬意を抱いているので、よほど無茶な要求でもない限りは喜んで指示に従います。また、ジョブについても戦士系、術士系、シーフ系など様々がメンバーが同行しており、大抵の作業は振られても誰かしらがこなせるという体制になっています。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『マジカルダイエッターズ』

POW   :    見下される気持ちを味わうといいわ!
攻撃が命中した対象に【重力魔法】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【身長が縮み続ける超重力】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    そんな出っ張りは引っ込んでしまえばいいのよ!
【魔力壁によって形を変形させる能力】を籠めた【空間魔法】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【自慢のスタイル】のみを攻撃する。
WIZ   :    リンゴ体型なんて言われてうれしいと思う!?
【魔法杖】から【風魔法】を放ち、【相手の体を膨張させること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●成れの果ての彼女たち
 いえば、それらは災魔の卵を植え付けられた書物の内容が反映されただけのものであって、ある種の幻影のようなものだ。つまり、実在した過去の人物そのものが骸の海から引っ張り出されたような存在とは、やや異なる。
 しかし、それらのようなモノは、きっと存在したのだろう。
 例えば「小さい方がかわいいじゃん」と言われても。
 例えば「希少価値なんだから誇っていい」と言われても。
 例えば「そんな感じの方が男ウケいいらしいよ」と言われても。
 決して納得できなかった少女たち。悲しさに、悔しさに、胸を潰して涙を流し続けた少女たち。
 すがる意味のない物にすがってしまった挙げ句、ついに理想の体を得ることは叶わなかった、思春期の成れの果て。
 多感なる怨嗟を永遠のものとしてしまった、マジカルダイエッターズ。
 魔法の灯明によってぼんやりと照らされた迷路の奥にいるのは、そんなようなモノたちであった。
箒星・仄々(サポート)
『(お日様の下で丸くなって微睡んでいる)』
 ケットシーのシンフォニア×マジックナイト、13歳の男です。
 普段の口調は「真面目な猫(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、寝言は「猫である(我輩、キミ、にゃ、にゃん、にゃあ、にょ?)」です。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ミュー・ティフィア(サポート)
困ってそうですね。少しお手伝いしましょうか?

口調 (私、あなた、呼び捨て、です、ます、でしょう、でしょうか?)

基本的に誰に対しても友好的です。

時々うん、と相槌をしたり、敬語はやや崩れちゃったりします。

好きなものは紅茶です。
余裕があったら飲みたいです。

なるべくなら助けられる人は助けます。
復興のお手伝いとかは積極的に頑張っちゃいます!
現地の人達との交流やケアもしていきたいです。

もちろんオブリビオンや悪人には容赦なしです!
相手次第では手加減するかもしれないですけど。

ユーベルコードやアイテムは何でも使います。

いかなる場合でも公序良俗に反する事には関わりません。

不明点や細かい部分はお任せします。



●ハイ・オア・ロー
 身長というものは、とかく価値観の錯綜がはなはだしい分野だといえるだろう。雑に端的にいえば、「無い物ねだり」が発生しやすい。
 例えば高身長の女性からすれば、小柄な女性の方がかわいらしさという点で有利だからうらやましい、と思ったりする。確かに大抵の場合、より小さい方がよりかわいいという図式は成り立つ――熊は怖いが小熊はかわいい、猫はかわいいが小猫はもっとかわいい、という具合――から、その感情の持ち方はもっともといえるだろう。
 その一方で、小柄な女性は背の高い女性を見て、いわゆる美人と呼ばれるのはああいったタイプだろうと言ってうらやましがったりする。なるほど服飾の界隈でモデルをやるような女性は高身長で手足のすらりと伸びやかなタイプと相場が決まっているのだから、その認識も的外れではないだろう。
 結局のところ、どっちがどっちと比べて得になると断言できるような要素ではなく、ひいては良くも悪くも気にしなければならないほどの重要項たりえないということになるだろう。
 しかし、何かの拍子にそこにコンプレックスを持ってしまった者は、そんな風に割り切ることはない。
 そういった者をターゲットにした詐欺商品は枚挙に暇なし。毎食一粒飲むだけで背がグングン伸びるといった売り込み文句のサプリなどは、眉につばを付けた上で接しなければならない。
 恐らくデタラメダイエット大全集にも、そんな内容の警告があったのだろう。具現化した災魔の中に、そのページを反映したとしか思えないものがある。
 いかにも魔女らしい三角帽子をかぶった、身の丈百二十センチ、あるいはもう少し下といったあたりの少女学生魔術師。
 彼女は両眼を炯々と光らせつつ、胸前に掲げた両手の間に青黒い魔力の球を作っていた。
「誰からも見下される気持ちがわかる!?」
 金切り声を上げつつ迫ってくる彼女に対し、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、困ったような視線を向ける。
「そう言われましても、私よりからすればあなたの方が大きいわけですよ」
 人格に及んだ話でない意味で、つまりは単純なる身長差で『見下される』経験でいえば、ケットシーたる彼はベテランといっていいだろう。まあ同族同士の背比べとなると事情が違ってくるものの、人間やドラゴニアンなど大多数の他種族は軒並み自分より遥かに上背のある者ばかりだ。
 そんなことでいちいち気落ちするような様では猟兵活動などできない。また、体格の大小で猟兵としての働きのそれまで決まるわけでないことは、猟兵たる者の誰もが承知するところである。
「黙りなさい黙りなさい! 同じ苦しみを味わえー!」
「いや、だから……」
 言いがかりにしても相手が違うよなぁ、などと思う仄々の眼前に、マジカルダイエッターが怒号と同時に放った青黒の魔球が迫る。
 【トリニティ・エンハンス】の赤、青、緑の魔力の輝きに尾を引かせ、身を翻す。一瞬前まで仄々のあった空間、三色の光の残滓があったところを魔球が通過し、そして標的を捉え損なったことを自覚したかのように不意にバチンと爆散する。
 弾けた水風船よろしく魔力の流動が八方に伸び、力場を作る……囚われた者を圧する超絶重力の力場を。
 しかし仄々の身のこなしは、彼の体を力場の範囲外まで容易に運ぶ。
「おの――」
 れ! とマジカルダイエッターが叫ぶより先に。
 何者の目にも留まらぬ神速を纏った弾丸が、純白の輝きを置き去りにしつつ彼女の眉間を貫く。
 ダメージの程度どころか攻撃を受けたという自覚さえ持たせてもらえないまま、マジカルダイエッターの頭は膨大な魔弾によって爆ぜ飛ばされた。そして次の一呼吸の間に、首から下の体もざらざらと灰のように崩れ、骸の海へと還って消えていく。
「よし……当たった!」
 魔弾の射手を担ったのはミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)である。
 入り組んだ迷路の奥、魔法の照明器具の光から死角になっているところに紛れ、密かに機をうかがっていた。相手に気取られなければ【不屈の射手(ヒット・ザ・ピリオド)】は必中必滅。
 とはいえ。
「ああっ!?」
「貴様!」
「あう……」
 流石に後続のマジカルダイエッターズには、その一撃で位置が割れる。こうなってしまえばなかなか必殺は望めない。
 まあ、だからといって戦えなくなったわけでも何でもないが。
「援護を!」
「はい!」
 刺突剣を抜き放って駆ける仄々に、ミューはハープ状の白弓を構えつつ答えた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

崎谷・奈緒
あの子たちは、幻影か。思春期の女の子の悩み、よーくわかるよ。あたしにも同じような悩みがあったし、しんどいよね……それでもみんな、前に進んでいくんだ。自分のキライなところを受け入れて。受け入れられるって信じて……今はできなくても、いつか自分を愛せるようにさ!

どうやらお相手は魔法を使うみたいだね。ううむ、複数を一人で相手するのは、ちょっと辛いかな。ここは学生のみんなと強力して戦おう!あたしが演奏するのは、守るべきものを思い出させる一曲。これでパワーアップだ!みんな、それぞれ得意な戦法で戦おう!力を合わせれば、きっと勝てる!あたしも楽器演奏でテンションを高めて、衝撃波で各個撃破していこう。



●いつか自分の『キライ』を飲み込む日まで
 学生のパーティに先導され、崎谷・奈緒(唇の魔術・f27714)は災魔の大量発生した区画へと至る。十字路からこっそりと半身を乗り出すと、魔女学生の集団が幽鬼のように歩み寄ってくるのが見えた。こちらに気付いてはおらず、たまたま進行方向がそうであるという風情だが。
 彼女たちの表情の暗さに、奈緒は眼鏡の奥の双眸を曇らせた。
「よーくわかるよ。あたしにも同じような悩みがあったし……」
 奈緒のつぶやきに、学生たちは露骨に怪訝そうな顔をする。奈緒のスタイルの良さを見る限り、そんな悩みとは無縁としか思えないからだ。
 しかし、奈緒とて何の努力も支払わずそのスタイルを手に入れたわけではない。では努力の源が何といって、コンプレックスなり自己嫌悪なり、明るからぬ感情の存在も大きかった。要は、思春期らしい辛酸や苦悩は、そのまずさに飽きる程度には味わっている。
「あの数を一人で相手するのは辛いね。みんなの力を借りたいんだけど、お願いできる?」
「もちろんです」
「そのために来たんですから」
 学生たちの言葉に奈緒はうなずき、マイク型サウンドウェポンを通じて歌声を紡ぐ。
 近代的な小利口さと、前時代的な頑迷さ。無関心とお節介。寛容と偏見。相反する諸々が行儀良く錯綜する【我が愛しの東京(トーキョー・ステート・オブ・マインド)】――奈緒の故郷たる東京を謳うブルース。
 アルダワの学生たちは東京という都市など知る由もないが、それでもそれは不思議と浸み渡る。守るべきもの――己の故郷、誰かの故郷。奮起は内より噴出する力となり、全身へと満ちる。
「いた!」
 歌声を聞きつけたらしいマジカルダイエッターズが声を上げた。
 それらの目は漠然とパーティを見ているというより、ことに奈緒を注視している。不倶戴天の敵たる猟兵の存在を認識しているためだ。
「許すまじナイスバディ! 死ねぇー!」
 違った。
 さておき、最前列にあったぽっちゃりめのダイエッターズ数人から猛烈な魔術の竜巻が放たれる。暴風の掘削機が徒党を組んで道幅一杯を占有し、パーティをすり潰さんと殺到する。
 対して奈緒は、フッと手元のハーモニカに息を吹き込んだ。魔力のこもった吐息はハーモニカを通り抜けた刹那に衝撃波へと変じ、シャボン玉のような弾丸の群れとなって竜巻の徒党と正面衝突した。
 凄腕ドラマーが癇癪を起こしたような連続爆音が鳴り響き、シャボン玉と竜巻が相殺する――が。
(く、やっぱり全部を壊しきるのは……)
 でたらめに飛び散った破壊力の乱舞をかいくぐり、竜巻の一つが奈緒の眼前まで迫る。と、全身鎧を装備した学生騎士が割り込み、ごしゃ! と大盾で竜巻を押しのけてみせた。
「よし、俺たちだってやれるぞ!」
「ゴリ押せー!」
 ときの声と同時、後衛の学生たちから物理矢、魔法矢の雨が放たれ、ダイエッターズの軍勢を押し返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大崎・玉恵(サポート)
『あまり、老狐に無理をさせるでないぞ』
 妖狐の戦巫女×陰陽師女です。
 普段の口調は「女性的(わし、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」、気にいったら「尊大(わらわ、おぬし、じゃ、のう、じゃろう、じゃろうか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、公序良俗に反する行動はしません。
ユーベルコードを絡めた【誘惑】による認識操作や籠絡、【呪符】に【破魔】【焼却】等の【呪詛】を込め【呪殺弾】とする、薙刀による【薙ぎ払い】【2回攻撃】が得意です。
卑劣な手段をとる敵には【威厳】【存在感】を放ち神として振る舞います。



●死黒の毒嵐
「己に自信が持てぬか。ならば、わらわのごとき絶世の美貌はさぞ目に毒であろうな」
 仕立ての良い扇で口元に触れつつ、えらく尊大な態度でふんぞり返るのは、大崎・玉恵(白面金毛・艶美空狐・f18343)――自称を鵜呑みにするなら幾歳とも知れぬほどの老妖狐、いかなる貴人をも手玉に取ってきた傾城傾国という――が。
 その様を見ていたマジカルダイエッターズは、一様に沈痛な面持ちになる。そして中の一人が玉恵の側へと歩み寄り、肩にポムと手を置いた。
「かわいそうに……ちんちくりんこじらせて妄想に取り憑かれちゃったのね。あなたをそんなにまでした心労、私たちにはわかるわ」
「誰がちんちくりんか!?」
 玉恵の右足が咆吼して蹴鞠めいた雅なキックが炸裂し、ダイエッターは石造りの通路の壁や天井をばいんばいんと弾みつつあらぬ方へと吹き飛んだ。
 それでもなお、ダイエッターズからのとんちんかんな憐憫の視線は変わらない。
「どうやら、おぬしらには礼儀というものを教えてやらねばならんようじゃな!」
 憤懣やるかたない玉恵の殺気が空間を歪め、渦巻く闇が門を穿って【殺生転生石(セッショウテンショウセキ)】を絞り出す。
 毒々しい瘴気をまき散らす石はごとりと石床に落下するや、ひび割れ、捻れ、伸びてうねって――玉恵とそっくりな姿となって固着する。
「このわしの奥の手、味わえ!」
 玉恵は怒号を張り上げ、分身と共々に薙刀を構えてダイエッターズの群れへと突入する。両者は独楽めいて錐もみ状に回転しつつ刃を振るい、その軌跡に沿って斬撃波を放った。斬撃波は妖しげな紫黒に色づき、八重牡丹の花弁よろしく幾重にもなりつつ広がっていく。
 対し、ダイエッターズはそれぞれ風の魔術を防壁のように展開させた。防壁は斬撃波の花弁をかみ砕くように削り散らす――が、散った斬撃波の破片はなお妖しげな紫黒色の霧となって舞う。
「――?」
 訝しむダイエッターズを、霧が撫でる。
 途端、霧――殺生石由来の劇毒に浸食され、ダイエッターズの肌が紫黒に変色していった。
「ひっ――!?」
 ダイエッターズが悲鳴を上げた次の刹那、紫黒色に浸食された肌が――いや肉体が、根こそぎ炭化したようにボロボロと崩れ落ちていく。
「我が奥の手、その程度で防ぎきれはせんわ!」
 玉恵が叫ぶ。
 勢いの衰えぬ劇毒の暴嵐は、ダイエッターズの数を見る見るうちに減らしていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ギャレット・ディマージオ(サポート)
●設定等
ダークセイヴァー出身の冷静沈着な黒騎士です。
かつてオブリビオンに滅ぼされた都市で自分一人だけ生き残ってしまった過去を悔いており、人々を守り、被害を防止することを重視して行動します。

●戦闘において
「露払いは私が努めよう」
(敵に)「貴様らの技で、私が倒せるのか……試してみるがいい」

・牽制攻撃
・敵の攻撃から他の猟兵や一般人を守る
・敵の攻撃を回避してカウンター
・ついでに敵の強さを解説する
など、防御的・補助的な行動を主に得意とします。

メイン武器は「黒剣」です。

他は全てお任せします。
別の猟兵との交流や連携等も自由に行ってください。
どうぞよろしくお願いします。



●世界に足を着けた者たち
「猟兵の皆さんばかりに働かせられん」
「我々も戦うんだ!」
 おおお! と学生パーティが意気軒昂なところを見せてくる。
 その様を見たギャレット・ディマージオ(人間の黒騎士・f02429)は、顔の上半分を覆う兜の奥で焦った表情を作る。
「待て。あれらは上辺こそその辺の女子学生のように見えるだろうが、オブリビオンだ。猟兵でもない君たちでは……」
「いえ、僕らだってアルダワ魔法学園の学生です。災魔の頭を押さえるのは、僕たちの役目です」
「しかし……」
「猟兵の皆さんからしたら小粒に見えるでしょうが、僕らはそんなにも頼りないですか?」
 きりりと鋭い眼差しを作って、学生マジックナイトが反駁してくる。
 ギャレットは息を呑んだ。
 かつて守るべき人を守れず一人生き残った過去から、彼は人を喪うことを何より恐れている。無論、アルダワの学生たちは戦士として修練を積んでいる者たちであるというのはギャレットも承知しているのだが、常識的生命体たる彼らのことは、つい全くの一般人――つまり、何の力もないただの守るべき人々という枠に入れてしまいがちだった。
 だが、そう。彼らは戦士で、矜持もある。猟兵が主導したとはいえ世界の滅亡の危機を乗り越え、どっしり据わった肝も得ている。
 と、逡巡したのは一呼吸にも満たぬ間。
「わかった。では私が露払いをするから、後に続いて欲しい」
「はい!」
 鮮烈な返事を背に受けつつ、ギャレットは駆けた。
 闇色の甲冑とマントが躍って金属音が鳴る。しなやかに振るわれた右腕の先には、【黒刃鞭(ブラック・ブレイド・ウィップ)】となった黒剣が握られていた。一振りの黒刃は手練の技に操られて百頭蛇のごとき怒濤となる。
「きゃ――!?」
 黒刃の襲撃を受けたマジカルダイエッターズは、触れた端から首といわず胴といわず両断されていった。
 食い破られるように集団の足並みを乱されたダイエッターズだったが、しかしすぐさまに体勢を立て直して重力魔術をギャレットに放つ。使い古しのかまどが蹴飛ばされたかのような黒い靄が猛然と噴出し、ギャレットを包み込む。
「ぐ……!」
 ぎしりと力場に囚われたギャレットの動きが鈍る。
 が、食い破られた集団の穴に学生パーティが雪崩れ込むのに、間髪も入らない。
「押し切れー!」
 マジックナイトが長剣を振り回し、竜騎士が大槍を突き出す。
 世界の次代を担う若者たちの攻勢は、既にギャレットによって大打撃を受けていたダイエッターズを駆逐していった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『書の悪魔ダンタリオン』

POW   :    あなたの技をお返しいたします。
【魔導書】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、魔導書から何度でも発動できる。
SPD   :    尻尾乱舞
【尻尾】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ   :    レインボー・ロード
【七色の竜巻】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラウラ・クラリモンドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●書痴の見る夢
 奇怪な光景ではある。
 中程から開いた分厚い書物のページから、バスタブにつかっているような仕草で悪魔が半身を乗り出している様、などというものは。ましてや、その悪魔の姿が妖艶な美女の姿を持っているとなっては。
「面白いと思ったんですけどね」
 艶やかな微笑を浮かべつつ、悪魔は小首を傾げる。
「ストレートに戦闘に関わらない本から生まれた災魔。それでも戦闘力は充分だったはすなのに、突破してくるとは……流石は猟兵というべきでしょうか」
 言いつつ、するりと書物の中から体を引き上げる。気味が悪いほど艶めかしいメリハリのあるボディラインが露わになり、それを覆うのが最低限度の面積しか持たない扇情的な布であるのが知れる。
 およそ戦闘に向いた格好とはいえまい。が、だからといってそれが弱敵であろうなどと心得違いをする者もいなかった。
 ダンタリオン。書を司る悪魔にして、猟書家幹部オブリビオン。
 無類の強者たる彼女は、学生パーティと猟兵が群れなす様を見やりつつ、余裕げに艶笑を浮かべた。
ニノン・トラゲット(サポート)
『容赦なんてしませんから!』
『アレ、試してみちゃいますね!』
未知とロマンとお祭りごとを愛してやまない、アルダワ魔法学園のいち学生です。
学生かつ魔法使いではありますが、どちらかと言えば猪突猛進でちょっと脳筋っぽいタイプ、「まとめてぶっ飛ばせばなんとかなります!」の心で広範囲への攻撃魔法を好んでぶっ放します。
一人称はひらがな表記の「わたし」、口調は誰に対しても「です、ます、ですよね?」といった感じのあまり堅苦しくない丁寧語です。
基本的にはいつも前向きで、ネガティブなことやセンチメンタルっぽいことはあまり口にしません。
その他の部分はマスターさんにお任せします!


城田・紗希(サポート)
基本的には考えるより行動するタイプ。
でもウィザードミサイルや斬撃の軌跡ぐらいは考える。…脳筋じゃナイデスヨ?
暗器は隠しすぎたので、UC発動時にどこから何が出てくるか、術者も把握していない。
逆恨みで怒ってる?…気のせいデスヨ。UCの逆恨みじゃアルマイシ。

戦闘は、範囲系ユーベルコードなら集中砲火、単体攻撃なら可能な限りの連続使用。
必要に応じて、カウンターでタイミングをずらしたり、鎧破壊で次の人を有利にしておく。

……防御?なんかこう、勘で!(第六感)
耐性……は、なんか色々!(覚えてない)



●火力イズパワー
 ダンタリオンが己の長髪を手指でくしけずり、毛先まで滑らせてぱさりと弾く。
 己の美貌を誇るかのような、フェロモンをまくかのような仕草。それがトリガーだったのかは知れないが、その瞬間にダンタリオンの周囲に色つきの暴風が巻き起こる。赤から紫までの虹色のグラデーションを作りつつ吹き荒れるそれは、威圧感以上に幻想的な美しさを感じさせる。
 とはいえ、ニノン・トラゲット(ケットシーの精霊術士・f02473)はそれに見とれて放心するなどということはない。
「そんなの、ぶっ飛ばしてあげます!」
 綿菓子のようにふわふわした白い手をビシリと向ける。途端にニノンの頭上ににわかに黒雲が生まれ、さらにつんざくような破裂音と同時にその黒雲から純白の雷光が伸びる。【ジャッジメント・クルセイド】の光は一弾指の間に虹色の竜巻に突き刺さり、轟音と爆裂をともなって巨穴を穿った。
 が、穴が見えたのはほんの刹那。間を置かず押し寄せる竜巻によってかき消えてしまう。
「――いっ!?」
「猟兵殿!」
「危ない!」
 範囲を拡大させていく竜巻にニノンが呑まれそうになり、そんな彼女をかばうように甲冑姿の学生騎士が両脇から駆け寄る。
 転瞬、三者は虹色の暴風にさらされた。
 学生らはいずれも大盾を備えていたが、それでも竜巻の猛威は減じることがない――それほどにダンタリオンの魔力が凄まじいゆえにだ。
「ぐわああぁぁっ!?」
「くっ……二人とも、抵抗しないで!」
 己も全身の体毛から皮膚からむしり取られるような激痛に苛まれつつ、ニノンは叫ぶ。
 抵抗しなかったとしてもただ自分の家なり部屋なりにワープさせられるだけで、死にはしないどころか傷も負わない。逆に、抵抗を試みればダメージを受ける。ダンタリオンの放ったユーベルコードは、そういう性質のものだ。
 オブリビオン中でも別格である猟書家幹部のユーベルコード。そのダメージは膨大で、猟兵ならば辛うじて『痛い』で済む(まあ一発ないし短時間であれば)ものの、そうでない学生であれば即座に命に関わる。
 学生騎士らはわずかの間躊躇した浮かべたが、すぐに自分たちではどうにもならない、どうにもできていないことを悟ったのだろう、口惜しげに奥歯を噛みしめつつ虹の竜巻に溶けるように消える。
 見送ったニノンは安堵する――が、自身の無事は確保できていない上では、気が早かったかもしれない。体を千々に刻まれるような激痛は継続し、身動きも容易ではない。
 このままではなぶり殺しにされるか、その前に戦場から排除されるか。だが。
「ニノンさんを解放しなさい!」
 力強い怒声が響く。
 そちらに頭を巡らせる余裕をニノンは持たなかったが、声の主は後方にあった城田・紗希(人間の探索者・f01927)である。
 紗希が身の丈ほどの杖を掲げるなり、その先端にボウッと拳大の真紅の火球が生じる。瞬き一つすると、火球の周囲を囲むように新たな火球が数個生まれる。さら瞬き一つでもう一回り取り囲むように火球が、さらに瞬き一つで――と、あっという間に紅蓮のアジサイめいた火球の集団ができあがる。
「でぁっ!」
 気勢一発、紅蓮の集合花はニノンを避けるような弓なりの軌道を描きつつ虹の竜巻に叩きつけられた。
 ぼ、ぼぼぼぼぼっ! と、小規模な爆発音が重なって轟音を成す。ニノンの穿ったそれよりはずっと小さいながら、いくつもの小さな穴が竜巻にあけられる――が、それらは呼吸半分にも満たぬ間に後から押し寄せる虹色の風に埋められる。
「無駄なことを」
 ダンタリオンが鼻で笑う。が、紗希は馬耳東風。
「十発で無理なら百発! 百発で無理なら千ぱぁーつ!」
 怒鳴りつつ、紗希はさらに火球を放つ。重機関銃じみた連発は百を超え、二百を超え、実際に千発まで至りそうなほどの勢いをもって殺到する。
 それでも、マグマに降る小雨がごとく、殺到する端からかき消される。
 途方もない徒労――と、少なくともダンタリオンは思った。
 つまり、彼女は気付かなかった。
 完全に押しのけるには至らずとも、泡沫のように竜巻に穿たれ続ける小穴の大群が、いつかニノンを押し包むようにして彼女の体の自由を取り戻させていることを。
 くわっとニノンのエメラルド色の双眸が輝く。
「もう――容赦なしです!」
 指した指の先に、荒ぶる白光が伸びる。竜巻の内から放たれた再びのジャッジメント・クルセイドは今度こそ七色の暴威を食い破り、油断していたダンタリオンの腹にまで至って炸裂した。
「がはっ!?」
 腹を押さえ、ダンタリオンがうずくまる。驚愕と怒り、それから羞恥も混ざっているような表情で、ニノンと紗希とをじろりとにらむ。
 その様を見返しながら。
「はっはっは、計算通りデス!」
 何の計算もしていなかった紗希は無闇やたらに胸を張った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

叢雲・雨幻(サポート)
真正面から、と言うよりは掠め手で相手を惑わせて
攪乱しながらのらりくらりと追い詰める戦い方を好むよ。
ただし共闘者がいて危ない時は飛び出して守りに行くかな。

使う武器は【黒雲】【黒霧【対】】の二刀流での戦闘が主。
使うUC次第では連結してダブルセイバーにしたり、
そもそも剣を【武器受け】用として使い、影を操る攻撃で戦ったりするよ。

基本的に相手の攻撃を【見切り】、【早業】で【武器受け】をしながら動きを観察し、隙を見つけて【切り込み】もしくは【カウンター】を決めて離れる飄々とした動きのヒット&アウェイスタイル。
戦闘中も仲間やボスにも冗談を交えて話しかけたりする。
ただしあまりにも非道な相手の場合は別だがね。


フルム・サーブル(サポート)
余裕があるときや敵に憐れみを感じる場合は基本通りの穏やかな口調
余裕がなかったり、敵がえげつなくて怒りを感じるような場合は
「敵には」の口調です

でもあまりキャラぶれは気にしないので
公序良俗に反しない限りは好きに扱ってください

技能は【力溜め】【怪力】【グラップル】【シールドバッシュ】【カウンター】など
セットされているもの(サバイバル等の事情でばらつきがあります)
を活用し、小さい体で戦場を飛び回りながら
優雅(自称)な戦いをします
どうみてもそのスタイルは脳筋です

武器は鍵(バトルアックス)や杖(バールのようなもの)をメインに使いますが
選択されたユーベルコードによっては拳一つでの戦いも可能です



●アグレッシブ・ダンディ
 蝶と呼ぶには巨大すぎ、偉丈夫と呼ぶには小柄すぎる。
 筋骨たくましき肉体を見事な金属鎧で覆ったフェアリーたるフルム・サーブル(森林の妖精さん・f03354)が、縹色に輝く蝶翼をはためかせてダンタリオン目がけて飛ぶ。
 妖艶に流し目を一つくれたダンタリオンは、百科事典めいた大判の魔導書を無造作に振るい、はたき落とそうとする。無造作といって猟書家オブリビオンのすること、その速度はかなりものであった――が。
「……あら?」
 空を切る。
 そよ風に吹かれる桐の葉のようなゆらりとした動きで、フルムは回避していた。微かにつんのめるような姿勢になったダンタリオンの眼前にまで迫り、フルムは彫金の細工見事な鍵――というか、戦斧――を振りかぶる。
「舞を一差し、披露しよう」
 途端、ダンタリオンの目に映るフルムの像が、ピントがぼやけたように多重になる。単純な速度のみならず、ゆらめくような複雑な飛行によって生み出された虚影である。
「――へえ」
 虎乱入。戦斧が閃き、縦横無尽の斬撃が繰り出される。
 対するダンタリオンは、感心したような吐息をもらしつつも鋭く身を捻り、己の矢印めいた形状の尻尾を巨大化させて振り回す。
 フルムの胴の倍ほども太さがあるそれは、一閃でフルムの虚像をまとめて呑み込みかねないほど広範囲をカバーしている。なおかつ迅く、重い。
「む……!」
 動きこそ幻惑的だが攻撃に特化した【妖精演舞(フェアリーダンス)】は、敵の攻撃を見てから回避というのは難しい。
 ゆえに、結果的に逃げずに真正面から尻尾に斧の連撃を叩き込むことになる。
 どどどっ! と、交錯が騒々しい乱打音を紡ぎ出す。
 速度と手数ではフルムがやや優勢ながら、一発の威力と範囲ではダンタリオンが圧倒する。一見では拮抗しているようだが、地力の差を鑑みれば時間を置けば置いただけフルムが不利になるだろう。
 だが、そこへ。
「やあ、オジサンの相手もしてくれないかな?」
「っ!?」
 ダンタリオンをフルムと共に挟撃するような位置に、いつの間にか叢雲・雨幻(色褪せた根無し草・f29537)がぬるりと歩み寄っていた。その両手に一本ずつ黒刃の刀が握られているのを見て取ったダンタリオンの顔に、微かな焦りが浮かぶ。
 刹那、雨幻の双剣が翻るや、肉食昆虫の牙のごとくダンタリオンを左右から襲う。
 同じ刹那、ダンタリオンは魔導書を中程から開きつつ屏風めいて縦に構えた。
 雨幻の刃はその表紙と裏表紙をそれぞれ叩く。いかに分厚かろうがただの紙なら苦もなく両断して然るべき鋭利さを持つ――はずが、そこはオブリビオンの得物。超常の頑丈さをもって斬撃を押し返した。
 ただしそれは、雨幻の想定通り。
「残念、本命はこっちだよ」
 からかうように言った雨幻の足は、ダンタリオンの足下にできている影を踏んでいる。密閉された石造りの迷宮の中、魔法灯によって薄ぼんやりと作られていた影が、奇妙に色濃く、黒くなっている。
 ぼっ! と、突沸のように湧き上がった【操影術:向かい飛車】の影の一撃に、ダンタリオンは反応しきれない。
「あぐっ!?」
 恐ろしい勢いで顎をかち上げられ、仰け反りつつ吹っ飛んだダンタリオンはそのまま石天井に叩きつけられた。
「よし――」
「とどめだよ」
 隙だらけになったダンタリオンに、フルムの斧と雨幻の双刀が迫る。
 ――寸前、ダンタリオンの魔導書が妖しく脈動した。
「その技、お借りします」
 ダンタリオンがささやくように言うが早いか、開かれた魔導書から漆黒のアメーバ状の何かが噴出する。べらぼうな速度で奇っ怪な軌道を描いたそれ――雨幻の操影術さながらに操られた影は横殴りに双刀を弾き飛ばし、その刃をフルムの方へと向かわしめる。
「い!?」
「あぶっ――!」
 思いがけず戦斧と双刀とがかみ合い、フルムと雨幻が怯む。その隙にダンタリオンは中空で身を翻し、両者をまとめて尻尾の一撃で打ち据える。
 半端な姿勢から強引に放ったそれは大した威力こそなかったが、彼我の間に距離を作って仕切り直しする程度の役割は果たす。
「……バラにはトゲがつきものとは言うけど、まるで鮫の牙だね、あれは」
「同感ですね。しかし、手傷は負わせました」
 苦笑する雨幻に、フルムは言った。その視線の先には、顔を押さえつつ肩で息をするダンタリオンの姿があった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミュー・ティフィア
面白い?
あの子達、皆辛くて苦しそうだったし、わざとそういう本を選んでたならとても悪趣味な気が。
どうせ戦闘に関わらない本から災魔を生み出すなら、もっと災魔達が楽しそうにしてる本から生み出したらいいのに。

敵の位置からバレにくい狙撃ポイントを教えてくれますか?

私は敵にバレなければ、必殺の矢を撃つことが出来る。
だからその瞬間まで私の位置を悟られないように時間稼ぎをお願いします。

敵の意識が目の前の生徒や他の猟兵達に集中して周りに意識を向ける事が難しくなるまで息を潜めて待機です。
見つからないように細心の注意を払って、一番のタイミングで不屈の射手でスナイプ!
狙うのは心臓です。

皆!ありがとうございます!



●ワンショット・ワンキル
 少し時間を巻き戻し、ダンタリオンと会敵する少し前。
「バレにくい狙撃ポイントがあったら教えてくれませんか?」
 ミュー・ティフィア(絆の歌姫・f07712)は学生たちに尋ねた。
 彼女の【不屈の射手(ヒット・ザ・ピリオド)】は、相手に気付かれていない状態で撃てれば必殺必中を期せる。しかし、相手は強力なオブリビオンであり、不意討ちなどそう容易に成せるものではない。
 ゆえに地の利が要る。
「……ううん」
 学生たちは口ごもる。目標の地点は他と比べてやや開けた空間で、障害物らしい障害物のないのっぺりした構造になっている。いかに小柄なミューであっても、完全に身を隠すのは――と、思われたが。
「あっ」
 地図を吟味していたビーストマスターの女学生が一人、声を上げた。

 そして今、ミューは女学生の操る金のライオンの背に二人乗りして疾走している。
 そこは、戦場のある区画から見て一つ上の階層にあたる通路である。女学生いわく、ちょうど戦場の真上にあたる区画に落とし穴のトラップがある――彼女自身が探索中にはまった経験があるので間違いないという。
 それを発動させれば、穴から見下ろす形で射線が通るはずだ。ダンタリオンが気付かないでいてくれるかどうかは、博打ではある。そこは、他の面々との激戦をもって気を取られてくれるのを祈るしかない。
「ありました!」
 女学生が指し示す先の床。なるほど、そうと言われなければ気付かないかもしれない、わずかな盛り上がりがある。それが落とし穴のスイッチなのだろう。
「穴は人一人分くらいで、そう大きなものじゃありませんから……えっと、この辺に立ってれば落ちないです」
「はい」
 ミューはうなずいてライオンから降り、奏弓・コンチェルトを構える。 
「いきます」
 女学生が蒸気銃を撃ち、スイッチにヒットさせる。
 同時、パカンと軽やかな動作で床に穴ができ、戦場への視界が開ける。
 ミューは猛禽のごとき集中力でダンタリオンを探す。そして半瞬も置かずその姿を認めた。僥倖極まり、彼女は背を向けて他のパーティメンバーと戦っている。
 待つまでもなく、機は今この刹那。
(この一撃、必ず当てます!)
 声には出さず、弓弦の音もなく。
 極限まで濃縮された魔力によって成る一矢が一条の光となる。背越しに胸の中央、心臓を貫き、獰猛な爆裂をもって大穴を穿つ。
「――!?」
 振り向くことも悲鳴を上げることもできず、唖然と己の胸に空いた穴を見つめながら、ダンタリオンは塵芥となる。オブリビオン中でも別格の強さを誇る猟書家幹部としては、あまりにあっけない散り様ではあった。
「辛さ苦しさを強いる災魔を生み出した悪趣味なあなたには、当然の報い、です」
 ダンタリオンのあったところを見据え、ミューは静かにつぶやいた。それから女学生の方を振り返り、張り詰めていた表情をふわりと融解させる。
「上手く行きましたね。助力、ありがとうございます!」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月03日


挿絵イラスト