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天王山! 腹のパン祭り

#UDCアース #断章投下後よりプレイング受付

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●この季節がやって来てしまいました
 スッ……と、集まった猟兵たちに何物かを差し出しつつ、お礼を述べるジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)。元より自然体でアンニュイな気質の彼女が今更何をしでかしたところで驚きこそすれ、呆然とまではしない面々である。元より覚悟の上で集ったのか、いつにも増して表情は強張っている。
「あんパンです。お納めくださいませ」
 差し出されたのはどうやら軽食だったらしい。
 今からおよそ百年以上も前に生み出された和の叡智は、なるほど、その歴史の重さから考えるとずっしりと圧を感じる。ぎっしり黒黒と詰まった小豆は粒が目立ち、程よく甘く、噛めば食感が心地よい。美味である。
「UDCアース世界のとある僻地において、一つの奇妙な祭りが開かれるのです。ただのお祭りならよいのですが……困った事に、それは『UDC』を崇める儀式の一体系。打倒、妥当。ジズは皆さまにその祭りを止めることを依頼したいのですよ」
 ――ごくりッ。パン片を飲み込んだ猟兵たちは、続くジズルズィークの言葉を待った。
 悍ましくもうつくしき祝祭、一体どんな儀式が待ち受けるのか。
「腹のパン祭りなのです」
 ……は?
 今、なんて?
「腹のパン祭りなのです」

 周囲から隔絶された僻地一帯。あらゆる通信や文明から途絶したその村では、「祝祭」が執り行われているという。
 その名も――腹のパン祭り。パンはパンでも食べられないパンは腹パンだ。
「腹パンとは、いわゆるボディーブローのことです。祝祭の準備期間中は、あらゆる場面において他人に腹パンすることが許可されるのですよ」
 例えば食事中、例えば睡眠中、用を足してようが入浴してようが、寝ても覚めても突然オラァッもとい他人から腹パンされる。いかに相手がごく普通の一般人であるとはいえ、不意を突かれれば猟兵でも手傷を負いかねない。とはいえ一般人同士が傷つけ合うよりかは遥かにマシなのもまた事実。
 猟兵はこの仮称腹パン村に潜入し、祝祭が催される期間はその儀式に参加することになる。
 例えば衝撃吸収材を腹に仕込む等、防御を固めることは有効だろう。しかし大々的に反撃したり村人を制圧してしまうと祭りが休止され、ひいては「UDC」を取り逃してしまう。この祭りの期間しか「UDC」が尻尾を出さない以上、あくまで村の流儀に則りつつ、やり過ごさなければならない。

 「祝祭」が本格的に始まると、寄生型オブリビオンに『意思を封じられし者達』が現れ始める。
 本体であるオブリビオンに寄生された彼らは、普段掛けている人体のリミッターを外し、鈍器や殴打で襲いかかってくる。本能的に「外部の人」を狙うようになっているので一般人の被害は心配しなくてよいのだが、祭りの準備期間と違ってきちんとオブリビオンなので、根性任せの耐え方をしようとすると痛い目を見るだろう。
「ちなみにどの敵も狙うのは皆さんの腹部にあたる部分、攻撃方法は武器攻撃等の物理攻撃だけです。狙われる箇所や方法がわかっている分対策も容易でしょう。……ただし、あくまで彼らもまた取り憑かれている存在。『つみびと』とはいえ、いたずらに殺めるのはお勧めしないのですよ」
 耳などにくっつく寄生型オブリビオン……それらをうまく取り除くことが肝要だ。対処に手間取れば四方八方取り囲まれて腹パンされてしまう、そんな惨状が待ち受けることだろう。

「ちなみに『UDC』は『あんぱんはつぶ餡だろぉと叫ぶ邪神』です」
 パンじゃねーか!
 もろ食べる方のパンじゃねーか! そんな叫ぶような猟兵たちの視線をクールにスルーすると、ジズルズィークはふうと嘆息する。
「宗教の主神ですし、とても強力です。お気をつけて」
 ああ……宗教ってそういう……この際好みはさておいて、そういうものだと割り切るしかない。
 ちなみに、激昂しているからか粒あん派でもこしあん派でも、うぐいす豆でも白餡でも殴られます。問答無用ってレベルじゃない腹パンを見舞ってくる。彼は強力な邪神なので(?)あんパンを齧りながら元気百倍の腹パンをしたり、電撃で対象を弛緩させてから百パーセント中の百パーセントの腹パンを繰り出してくることもあるかもしれない。

「好奇、好機。邪神が降臨するこの時こそ天王山。いざ皆さま、祭りをつぶしに参りましょう。……御武運をお祈りするのです」
 神に祈るようなポージングで猟兵たちを見送るジズルズィーク。猟兵たちは鳩尾に手を当てながら、覚悟を決めて前に進む。……祭りはともかく、各所からこう、怒られないかが心配であるが!


地属性
 こちらまでお目通しくださりありがとうございます。
 改めましてMSの地属性と申します。
 以下はこの依頼のざっくりとした補足をして参ります。
 今回は閉塞的な山村で腹パンされたり、時々パンを齧っていただきます。あまり深く考えずに、感じてください。

 この依頼はギャグ&バイオレンスとなっております。
 あえてクールに切り抜けるもよし、ピンチプレイングを演出するもよし。仮に演出上ひどい目に合ったとしても、🔵は得られますしストーリーもつつがなく進行します。思いついた方はプレイングにどうぞ。
 基本的に集まったプレイング次第でどうとでも転がる仕様になっています。

 続いて、舞台設定の補足をば。
 仮称腹パン村の一族は、こう見えて外来者を何人も殺してきた凶悪な存在です。誰かしらが生き残った場合はUDC職員たちが法による裁きを加えてくれるでしょう。私刑を下すには及びません。もちろん、そのようなプレイングを敢えてする場合は問題ありません。

 では皆様の熱を帯びた(?)プレイングをお待ちしています。
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第1章 日常 『「祝祭」への参加』

POW   :    奇妙な食事を食べたり、奇怪な祈りのポーズを鍛錬する等、積極的に順応する

SPD   :    周囲の参加者の言動を注意して観察し、それを模倣する事で怪しまれずに過ごす

WIZ   :    注意深く会話を重ねる事で、他の参加者と親交を深めると共に、情報収集をする

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「オラァ!」

 ――……ボゴォ……!!

「ぐへぇえッ……!?」

 もんどりうって転げ回る外来の徒。道を尋ねに駐在所に立ち寄った折、腹部をしたたかに殴りつけられたためである。目を白黒させ、のたうつ彼に、村人は歓迎の意を表していた。これすなわち洗礼! これすなわち祝福! 歓待こそ、誠心誠意の腹パンである。
 一般人なら呼吸器不全、内臓破裂など、重症を負いかねないこの祭り、下準備の真っ只中とはいえやり取りはすこぶるハードである。

 猟兵たちもまた三々五々、怪しまれないように村に潜入し、何食わぬ顔で腹パンを待つのであった……!
アサル・レイハーネフ
粒餡でもこし餡でもない。鶯豆でも白餡でもない。商人は『芋餡』パンを布教しにやってきたのさ…あひゃひゃ!
そういう訳で、祭りで浮き足立つ村で、村人の攻撃を全力で躱しつつ、芋あんぱんを売り捌くよ。
うわっ、急に殴りかかってこないでよ。営業妨害だよォ!
【呪詛】で気絶させたり、クリーピングコインの【制圧射撃】で対処。ついでに、芋あんぱんを相手の顔面に【投擲】してやろう。これが芋餡の力だ!
それでも諦めないなら奥の手、UC【暴利蔓延る運命市場】!相手の攻撃を回避し、腹パンをお返しするよ!そして相応の金貨を消費…待てよ、金貨?これじゃあ稼ぎがないじゃないか!トホホ…。まあ、芋餡を布教できたから良しとするよォ。


マヒロ・ゾスティック
アドリブ、連携、切断グロ以外のドMリアクションお任せOK

腹パンだなんてうわあ
すっごく愉しそう♥
うひひ、そんなに凄いならたっぷり味わわなくちゃね♥

さてUCを発動するけど……このベルトだけ着用姿だと完全に変質者だよねえ
猟兵の認識阻害でいけるかもだけど
念の為『誘いの鳴音』で◆催眠術をかけて普通の服に見えるようにしとこ

さてこれで遠慮なく腹パンが来げほぉっ
ああ、この鋭い痛み、いいっ❤
防御上げてるからそう簡単には倒れもしないし
がんがんと腹パンを受けてくよぉ♥
ああ、しかも太陽光も浴びるからそのダメージまで全身にくるぅ♥
二重の痛みやっばぁい♥
もっとやって♥もっと腹パンやってえ♥
ああ、惨めなボク、恥ずかしい♥


菫宮・奏莉
パンの香りに釣られてきてみましたら、
腹パン……なのです?
えっと、ハラミのサンドイッチとかでは……ないですよね。

なにはともあれ!
あんパンをいただいた以上は努めを果たすのです!
わたしだって勇者ですし、身体は丈夫ですから、
そう簡単にパンチにやられちゃったりはしないのですよ。

隙あらば腹パンされるとのことでしたけど、
ちまっこくて包帯だらけでも
ストライクゾーンに入るのでしょうか?

ま、まぁ、念のため、お腹にメディカルトレーを入れて、
包帯をグルグル巻きにして、防御はしておきましょう。

村ではいきなり、どむっ、と腹パン。

痛さはあまりないですけど、衝撃はすごいのです。
思わず涙目になって、見上げちゃいますですね。



 奇祭、腹のパン祭り。
 もう既に企画倒れ感のあるこの祭りは、意外にも盛況であり、多くの外部の人を交えて混沌とした様相を呈している。裏を返せば、それは猟兵たちの介入もまた容易いことを意味していて、先行していた三人もまた、各々の思惑を秘めながら、祭り奥深くに潜伏していた。

「この祭りの『の』に価値はあると思うかい? あたしとしてはこの一文字のせいでかなり危ない橋を渡ってると思うけどねぇ」
「えっと……この際ネーミングはおいといて、ですよね。くんくん……パンの匂いがする。腹パン……じゃないのです?」
「あひゃひゃ! お目が高い! 何を隠そう、布教をしに来たからさ。もっともこの生地に何が隠されてるかは、食べてみないとわからないけど」
「ん……ハラミのサンドイッチとかでは……ないですよね」
「腹パンから離れられないのかな!?」

 アサル・レイハーネフ(黄色い狂人、旅する商人・f31750)が取り出した「商材」に、目を輝かせる菫宮・奏莉(血まみれ勇者・f32133)。商人としての意気込みに、勇者のガッツが合わさって、この先の冒険がよりカオスになることを想起させる。

「腹パンから離れるだなんて、もったいない。ボクをはやくキモチよくしてくれよぉ……この際キミでもいいからさ」
「ひんっ」
「ね? ご主人様ぁ」
「ひいっ……とても同い年とは思えないのですよぉ……」

 体をくねらせて、今か今かと待ち遠しさに呼気を荒くするのはマヒロ・ゾスティック(堕ちし快楽の淫魔忍・f31759)。真の敵は、もしかしたら味方かもしれないと、奏莉の恐々とした様子に、早くもアサルはツッコミを放棄した様子だ。なかなかの珍道中が予期されるが、それもまた、後の祭り。

「いくよぉ♪ 《淫魔忍法・羞恥忍術/受の型》!」
「……あれ? キミ、使った端から焦げてるというか灰になってない? 火加減間違えてるよね」
「ハイになってることは否定しないよ! ボクの忍法は使うと太陽光でダメージを受けるんだ、だってアハァん、その方が刺激的だからね♪」

 あひゃひゃ何だそれ意味わかんねー! と、両手を叩いてアサルは大笑い。パンも最後の焼き加減で出来栄えが変わってくるが、いきなりの強火攻勢に早くも波乱が予想される。今日の天気は雲ひとつない快晴、何故か日陰に寄らない広場ど真ん中での出来事である。注目を集めた三人は瞬く間に、村人たちに囲まれ、歓待を受けることになる。

「ようこそ腹パン村へ!」
「仮称じゃなかったのかい!?」
「歓迎するよ。ウェルカムドリンクの牛乳をどうぞ」
「あっ……いただきますよ……(ドキドキ)」
「いきなりオラァ!!」

 ――どむっ!

「んボクぅ?! ひぎぃ!!?」

 どうでもいいけど牛乳とパンって合うよねって話をします。朝食やら給食で馴染み深い組み合わせですけど、やはり基本に忠実にというか、オーソドックスなコンビネーションこそ王道というか。小麦生地にカルシウム、ベルト悪魔に腹パン。自然な流れですよね。マヒロくん早速一ポイントゲッツです。

「ちなみに二十八ポイント集めると――」
「集めると……はぁはぁ……どうなるのぉ♪」
「白い大きなメディカルトレーを進呈します」
「今更かよ、はぁ、おっそい♥ もらった頃には満身創痍じゃないか……はぁ、そうこうしてるうちに二重の痛みやっばぁい♥ 患部がジンジンして……も……うゲェッ!?」

 ――どむっ、ドゴっ!

 奇襲めいた一撃(二撃でもワンパン)に、悶絶のたうち回るマヒロ。その傍でドコドコと殴られている奏莉さんですが、彼女はしっかりとメディカルトレーを持ってきているので衝撃だけで済んでいます。かわいいね。でも口に含んでいた牛乳は全部吐き出してしまいました。お前のせいです、あーあ。
 涙目になって見上げるその可愛らしい姿に心奪われた村人Aは、他の村人にタコ殴りにされて早速白い大きなメディカルトレーを一枚ゲット!

「ではここで今から出張販売を始めよう!」
「えっ今からでも入れる保険があるんですか?!」
「オラァ!」
「ねぇから。あとうわっ、急に殴りかかってこないでよ。営業妨害だよォ!」
「いくらですか?!」
「あひゃひゃ! 売り手市場!」

 ひょいひょいと、慣れた手つきで腹パンを交わしていくアサル。言葉とは裏腹に動きに余裕が感じられます。さすが商人は常在戦場、職場に立ったその瞬間から購買層との戦いは始まっている。

「開場っ《暴利蔓延る運命市場》!」
「それって確か金貨使うやつじゃ……?」
「ここにキミ(マヒロ)の財布がある!」
「やめろぉ♪」

 まぁでも、この場を切り抜けられるなら、財布を投げ捨てるのも悪くはないか、と、なんとか理性的に、涎を垂らしながらもあくまで理性的に振る舞うマヒロ・ゾスティック。お腹はもう痕でボコボコだけど、あくまで理性的です。

「粒餡でもこし餡でもない。鶯豆でも白餡でもない。この商人は! そう! 『芋餡』パンを布教しにやってきたのさ…あひゃひゃ!」
「いや商売根性!?」
「あの……おひとついただけますか……?」
「いや食い根性!?」

 ご覧ください。瞬く間に行列が出来あがりました。朝の八時前には開店してもう売り切れです。飛ぶように販売される芋パンが飛ぶようにお客様の口に飛び込み、飛ぶように売れていきます。フライングスパゲティモンスターならぬフライング芋パンモンスター。そう、食の前には人は平等。ただ静かに列をなして、食す機会を待つのみです。
 あとショックする時も人は平等です。ご覧ください。目を爛々と輝かせて、明らかにイってしまってる快楽に悶える悪魔さんの姿を。……人ではないようですね。失礼しました。ちなみに材料費や仕入れ費用をアサルがもって、購買意欲をマヒロのサイフで掻き立ててるせいでギリギリ赤字になる程度です。もの売るってレベルじゃねーぞ。
 ようやくそのことに気づいたのか、両手で芋パンを持って齧り付く奏莉に癒されたのも束の間、アサルはショックに崩れ落ちる。アサルさんようやく一ポイントです。ちなみにこのポイント、章を跨いで持ち越しされません。春は、短いんです。

「ひいふうみい、これじゃあ稼ぎがないじゃないか! トホホ……。まあ、芋餡を布教できたから良しとするよォ」
「あ、あの……芋パン、おかわりいただけますか」
「オラァ!」
「腹パンじゃないし、ボクじゃないいんん?! アヒィン?!」

 かわいいね(二度目)。うん。

 うん。どうやって収拾つけよう……! とりあえずパンを食べてから考えようか……?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
な、何とも不思議な風習ですねぇ。
とは言え、何とか頑張ってみましょうかぁ。

まず、少々『大き目の服』を着用し、服の下に物を隠せる状態にしますねぇ。
そして、お腹にあたる位置に『衝撃吸収ゲル』のマットを巻き、ダメージを軽減出来る様にしておきましょう。
更に『当たり所』や『殴り方』次第で妙な入り方をした場合に備え、【豊饒宿霊】で[結界術]を指定、『ゲル』の周囲に纏わせることでダメージを打ち消しますねぇ。
とは言え、一応「痛がる素振り」はしておいた方が良いでしょうかぁ?

後は、この状態で色々と防ぎつつ、お店であんパンを買いつつ情報収集しますねぇ。
何とかなると良いのですが。


ルネ・プロスト
そう、こういうのでいいんだよ。こういうので
いや犠牲者が出てる時点で全く良くはないのだけど
でもどうせ参加するなら頭おかしい奇祭の方が面白いもの
まぁルネは見る専で参加する気なんて更々ないのだけど
気安く触れられる程、ましてや暴力を振るえる程ルネの身体は安くないのでね

ルネはナイトに騎乗
村人の腹パンはUCで未来を観測し見切る
見切って間にルークを割り込ませる
其の歓待、盛大に受け入れよう。ルークがね
ルークの重厚な大鎧も打ち抜けないぬるい歓待ならルネはいらないよ
千年早い、拳を洗って出直してくるのだね

ルークを無視する不埒者の腹パンはナイトのダッシュ&ジャンプで回避
不徳の輩の拳など以ての外。心を洗って出直しなさい



「ぐげへへへへ」
「新鮮な腹はどこじゃあああ!」

 とても善良な人の言動には思えないですが、むしろナイフの刃を舐めてそうなアウトローな弾けっぷりなんですが、これでも一般村人です。なんだろうぐげへへって。
 さかさかと這うような勢いで村の中を彷徨い歩く彼が見つけたのは、彼の眼鏡にかなうような新鮮なお腹。さぞ素晴らしい悲鳴を奏でてくれることでしょう。そうに違いありません。怪奇腹パン男、お前がやらなきゃ誰がやる。

「オラァッ!!」

 ――ガキぃイィ……ン!!

「ふう……一仕事したぜ。あばよ俺の右手……」
「お前……その手……っ!」
「へへっ」

 いや、へへっじゃないだろうが。
 氷の眼差しどころか、絶対零度の眼差しで冷ややかに、見下すのは輝く金の瞳。混沌の泥濘の中にまるで輝く星のように降り立ったルネ・プロスト(人形王国・f21741)は、己の操り、干渉した未来にいささか驚きの感情を覚えていた。
 死霊を憑依させた「十糸操縦・駒盤遊戯」のうち、ルークの次に重厚で、ルークよりも見た目の圧が強いナイトを配置。かれに受け止めさせることで回避行動としようとしたのですが。
 あてが外れた。彼らお構いなしに殴りつけてくる。重厚な大鎧を一般人の村人の拳で貫けるわけもなく、むしろ拳の方がイカれてしまうようで。

「まぁルネは見る専で参加する気なんて更々ないのだけど」
「そんな! おひとついかがですか?!」
「元気だな君も」

 どうした? 君の誇る腹パンはその程度か? という異様に安い挑発でもバンバン買ってくれるせいで大繁盛、返り討ちにあった村人が列をなして拳を痛めていく有様。もしルークに表情があったのなら、可哀想なものを見る眼差しで彼らを見ていたに相違ない。というかそうそういないと思ってた、ケンタウルス型の騎士を殴りに行く一般人が想定より遥かに多いんですが。
 ……飽きてきた。

「ワンパターンに過ぎる」
「そんなぁ……」
「僕らこれだけでやってきた一族なのに……」

 生まれる星の下を間違えたという他ない。

「千年早い、拳を洗って出直してくるのだね」

 カッコいいキメのセリフなんだけどいまいち締まらない。
 ここで特別ゲストの登場です。拍手と腹パンでお迎えください。

 ――ぷるん……ぽよよん!

 ぷるん?
 ぽよよん?
 もう明らかにお腹を殴った時の音じゃありません。よしんば殴ってたとしても横綱デラックスを殴ったような、明らかに弾かれた感じがします。

「おおぉ……」
「なにこれ……くせになりそう……!」
「くふぅん、とても痛かったですよぉ」

 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は迫真の演技で痛がってみせました。拳の痛めた村人にも腹パンを味わっていただける特別仕様でお届けしております。るこるさんのお腹は「豊乳女神の加護」+自前で用意した衝撃吸収ゲルで結界術レベルがえらいことに。るこるの1+1は2じゃねーぞ、200だ、10倍だぞ10倍!(でもなく本当は1040以上です)
 そのぷるぷるの結界が作る極上の感触は、数多の腹パンマイスターたちを唸らせる至高の逸品です。今回は星四とさせていただきます!

「いやはや、な、何とも不思議な風習ですねぇ」
「君もこの頭おかしい奇祭に惹かれた口だろう」
「えぇまあ……やれるだけのことはやりましょうかぁ」

 ルネとるこるは合流を果たす、並み居る腹パン強豪たち、腹パン四天王や腹パン大魔神たちを蹴散らし(全員一般人につき行間にてさくっと撃破)、ついに目的地にたどり着いた……!
 ――パン屋である。

「え、なぜ?」
「腹ごしらえも必要かと思いましてぇ」

 そういえばあんぱんがどうとか、言ってたっけ。今回のあってないようなグリモア猟兵の説明によれば、パンにまつわる邪神だとかなんだとか。

「ルネは正直参加する気もなかったけどね」
「ではお土産にいかがですかぁ」

 会話の最中にも腹パンを喰らうがゴインぽよんとサウンドエフェクトがやかましいばかりで実害はない。
 るこるが買い食いしたのはふわふわ焼きたてのコッペパンにぎっしりと重厚な粒あんとバターが詰まった特製あんパン。芳しい香りに暴力的なカロリー、何より口に放り込んだ時のとろける口当たりは菓子パンの醍醐味であるといえる。
 ミレナリィドールのルネには代わりに店のマスコットのぬいぐるみ「腹パンマン」が進呈された。腹から飛び出る、餡を模した黒いわた糸がシュールキュートな一品。思わず捨てたくなっても、逆にお持ち帰り頂いても一向に構いません。

「そう、こういうのでいいんだよ。こういうので」
「そういうものですかぁ」

 かろうじて村の体裁を整えているものだとばかり思っていたここも、しっかりとB級グルメやら観光物産で成り立たせているらしい。どうしてその熱意を他に活かせなかったんだろう? 全部邪神のせいです。許せねえ! 邪神倒すべし!
 取り急ぎランチ分にディナー分にお土産分、ついでになぜか売ってた芋パンまでしっかり買い込んだるこるさんと、そそくさと懐にぬいぐるみを仕舞い込むルネさんでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高千穂・ましろ
和さんと

「和ちゃん、ここが腹のパン祭りをしている村ですね」
『ましろ、何を言ってるのかわけがわからないにゃ』

ノワールにツッコミを入れられますが、自分でも何を言っているのかよくわかりません。

けど、魔法少女に変身しているから腹パンも怖くありません。
一般人の攻撃程度で、この魔法少女服の結界は破れませんからね!(フラグ

「ところで、ちょっとお手洗いに……」

サポート役の和ちゃんに見張りをお願いして村のお手洗いに。
ドアを閉めたところで……
村の男の人たちが入ってきて!?

「あっ、やっ、今はだめぇっ!」

魔法少女服の結界越しに男性たちの腹パン連打の刺激を受けて……
足元に恥ずかしい水たまりを作ってしまうのでした。


多都美・和
ましろさまと

「ノワール、春と言えばパン祭り。常識にゅ」

とはいえ、村ごとテンションがおかしいにゅ。
ましろさまは和ちゃんが守るけど、
いちおう気をつけるにゅ。

ましろさまどこへ……あ、いえ、ごめんなさいにゅ。

おトイレの扉の前で見張りをしていたら、人の気配……、
「ふぎゃっ!?」

気付いたときには腹パンされていて、
それは【おしおきデバイス】が防いでくれたけど、
「いまので暴走してるにゅ!?」

おしおき波が流し込まれると、動くのもままならず、
あらためて腹パンをいれられます。

「ふみゃっっ!!!」
おしおきモードの身体は、腹パンの痛みを全て変換してしまって、
快感で動けなくなってしまいます。

「ましろさま、ごめんにゅ……」



「和ちゃん、ここが腹のパン祭りをしている村ですね」
『ましろ、何を言ってるのかわけがわからないにゃ』
「ノワール、春と言えばパン祭り。常識にゅ」

 もう既にこの三言を引き出せただけで概ね大成功ものなのだが、それでは諸氏に怒られてしまうため描写を続けよう。ここからがこの村の本当の恐ろしさ、そして、本題でもある。

「ごめんね、ちょっとお花を摘みに……」
「ましろさま? この辺に花畑なんてないにゅ」
『こらこら和、デリカシーのない話をしてはいけないにゃ。この場合の言葉の意味はね――」
「もうっノワールが一番気にしてないじゃないですかっ」

 ぷんすかと、そしてそそくさと衛生設備に駆け込むましろ。緊張からか水分補給が多く、村での探索を続けてるうちに催してしまったというわけである。幸いにもこれまでの依頼は順風満帆、魔法少女服は損耗なく十全に機能し、一般人程度の腹パンであれば防ぎ切っている。しかし、この服が守ってくれるのはあくまで外的刺激のみ。生理的な問題については対象外である。

「ふう。何事も問題なしにょ」

 ぴこんと耳を立て、毛があるなら逆立てる勢いで周囲を威嚇する和。トイレの前で仁王立ちし、何人も近づけさせないと強く心をもって、赤い瞳が後ろの扉が開くタイミングを待ち望む。古い村だからか設備は整っておらず、和式の便器から漂う匂いは和の嗅覚を狂わせる。

 ――ずんっ……!

「ふ……ぎっ?!」
「へへへ……」

 油断していたという他ない。
 意識を後ろに向けていたこと、ここは公衆衛生設備できちんと男女分けられた区画となっていること、見張りとして立ってはいるものの今まで防ぎ切っていたから問題外だとしていたこと。
 逃げ場のない狭い空間に、男たちが詰め寄って、決して恵まれた体躯だとはいえない和を瞬く間に取り囲んだではないか。

「嬢ちゃん油断しちゃったねえ」
「ぐ……(いまので暴走してるにゅ……?)」
「よそ見はいけないよ、よそ見は」

 拳の堅さを確かめるかのように、第二関節あたりをしっかりと和の鳩尾に擦り付けている。後ずさろうとすれば回り込んだ別の男が、和を羽交締めにするようにして抱え上げた。荒い息遣いが首筋に当たって生理的な嫌悪感が募っていく。

「なぁあ?! やめ、るにゅっ?!」
「何言ってんだ、あんたも興奮してんだろ?」
「そ、それはおしおきデバイスのせいで……」
「何意味のわかんないことを……よっと!」

 ――ずんっ……!

「ふぎゃっ!?」

 尖った拳が柔らかい腹にめり込んで、しかも感触を確かめるようにぐりぐりと押し込む。痛みと、それに伴って変換された快楽エネルギーが、全身を走って和の肉体を痙攣させた。

「ぐぶぶ……少しタイムにょお……」
「おっと、動くなよ」
「あぎッ……!?」

 腹パン男がよろめく和の前髪を掴む。そのままぐいと力を後ろにこめられれば、体は必然バランスを取ろうと腹を突き出すような形で。握りしめた拳に爪が食い込んで、その痛みでなんとか和は気絶せずに済んでいる。しかし脳内に響く警鐘は、彼女の生存本能が揺るがされていると如実に伝えていた。
 口の端から涎を垂らすレプリカントを、優越感たっぷりに見下ろしている。睨み返す和の視線には覇気がない。例え一般人だったとしても、大の男に取り囲まれてる上、自身のバッドコンディション。最悪の事態を想起して恐怖に打ち震える。

 ――ずんっ……!

「ふぎゃっはぁアッ……!!?」
「変な声が出ちゃったね? 弱点かな?」
「この、好き勝手ぇ……」
「でもキミがそこに立ってれば、扉の奥にはいけないかもなあ」
「う……」

 そう言われると弱い和ちゃんである。逡巡した瞳の色が光を失って項垂れた。

「す、すきにするにゅ……にょおっ……! ぐっ、ふッあっ……!」
「まだまだ行くぞ」
「がはっ、げっ……おアっ、あぁあっ……!?」

 青痣が浮かんだ痛ましい腹に、深々と拳が突き立つ。今度はリアクションもないほど立て続けに打ち込まれた鉄拳。和の限界は、着々と抵抗の堤防を破壊しつつあった。
 異変を感じたましろにも、男たちの毒牙が襲いかかる。

「ましろさま、ごめんにゅ……」
「和ちゃん……そんな、なんで……いやっ?!」
「へへへ、ご開帳だぜ」
「あっ、やっ、今はだめぇっ!」

 半脱ぎの、中途半端な状態で引き摺り出されたましろもまた、男たちに羽交締めにされると、腹パンの猛襲に晒される。全体重を乗せた渾身の一撃に、結界越しの振動でましろもまた窮地。

「やめて……今、あぁあ……!」
「やめないよ、だって腹のパン祭りだからな!」
「意味がわから……ぎッ?!」

 ――ちょろろろろ……!

「いやあぁ……見ないで、見ないでえぇ……!」

 普段は清楚に感じる魔法少女服も、はだけてしまえば卑猥さを加速させる舞台装置だ。やがて内股を伝って湧き出る黄色い泉。啜り泣く声を便所に響かせたところで、男たちの嗜虐は止まらない。ノワールが助けを呼ぶまで、二人は気絶し、そして気絶してもなお傍若無人な腹パンに晒され続け、喘ぎ、のたうち回る醜態を晒し続けたのであった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーニス・ウィザー
わー、あんぱん、大好き!(もぐもぐ)
お仕事は…あんぱん、かえ…せないよぉ食べちゃった!
しょうがない!

この村かぁ、おかしな祭りをやってるのは
女の子があんまり腹筋強いと怪しまれるからほどほどに
侮ってたわけじゃないけどけ、結構効く、ぐふ

ちょっと頭に来ちゃったからえいって反撃
怪しまれないように女の子な力で
なのにあっちは遠慮なし!
女の子相手に!

だんだん体が重くなってくるのがわかる
気持ち悪い、おなか痛い
こんな状態じゃ何も食べられないよ

でもこれって歓迎なんだよね
ならちゃんとうけてあげなきゃ(素直)

脂汗だらだら、んぐぐ…

無邪気な子供たちに囲まれて反撃もできない
慕われるのはうれしいけど、けど!

意識がなくなるまで



 ――ばすっ……!

「へへへ、そんなんじゃ腹に響かないなあ」
「強がっても女の子なんだねぇ」

 ――……ズンっ!! ドゴ……めりめりッ!

「ふ……ウ(侮ってたわけじゃないけどけ、結構効く、ぐふ)」

 ユーニス・ウィザー(ロイヤルガード・f30744)は、白いアリスクロスの裾を口で咥え、両手を頭に当てる無防備な体勢で拳の殴打を受け入れていた。先ほどまであんなに美味しく食べてたあんパンが今は恨めしい。口の中で甘ったるい味と、込み上げてくる酸っぱい匂いが混ざり合って、肌に脂汗が浮かぶのを余儀なくされる。ああ……キツい。
 ペロンと露出していた柔肌は、今は見る影もなく鬱血し、青あざ塗れになってしまっている。怪しまれないように旅人を装い一人潜入したのまではよかったものの、こうして取り囲まれて「歓待」されるのは想定にはなかった。

「あたしは盾……慣れてる、こういう扱いにも……でも……」
「お姉ちゃん!」
「ねえねえ、もっとお腹突き出してっ、もー動かないでよー!」
「こんな子どもまで……!?」

 想定外といえばこの子どもたちだ。ユーニスも決して、少女の枠をでない子どもではあるけれど、まだ年端もいかない歳下の子たちにまでこの信仰が行き届き、おかしな祭りに関わっているだなんて!
 ぐっ、ぐ、と足を動かそうにもまとわりつかれ、抵抗してはうっかり怪我させかねない上に逃げられもしない。こうなっては自分から隙を晒して殴打を受けもち、逃げ出す好機を待つしかない。
 赤いリボンにも白い生地にも、吐き出した涎と滲む血と汗がべっとりこびりつき、もはや満身創痍のこの状態で。

「むヴッ……」

 どれだけ果たして保たせられるだろうか。だんだん体が重くなってくるのがわかる。気持ち悪い、おなか痛い。嫌悪感と不快感がごちゃ混ぜになった感覚がぐるぐると頭の中を堂々巡りし、洗濯機の中に放り込まれたかのように感覚を乱される。
 立っている感覚までなくなってきた。ふらついて、ついに地面と接吻する。
 男が首元をつかみ上げ、引き寄せた。ユーニスは顔を背け、両足を突っ張り、必死に抵抗を試みるが、男の手から離れることは叶わない。
 どころか、抵抗したために男はもっと力を込め、とうとう鼻先が触れ合うまでの距離まで、引き寄せられてしまう。ゼロ距離からの迫撃。衝撃はひとしおだろう。せめてくっと裾を噛んで衝撃に備え。

 ――ドゴオ……っ!! めきめき……ゴリッ!!

「ぐぶええ……げぇえ……ッ!?」

 備えて、耐えられなかった。ついに舌を出して、うめき声、普段は決して聞かせないような苦悶を漏らしてしまう。なんて屈辱。ぼたぼたと垂れた涎が子どもに降りかかって、嫌そうに見上げる視線が突き立つ。立っていられない。

「ぅうっ、お゛ぇっ」
「おい、何勝手に吐こうとしてんだよ」

 一度は腕を伸ばして床にうずくまらせたが、すぐに前髪を引っ張り上げ、痛みに低く呻くユーニスの顔を上げさせた。

「ぅうう、ううぅう……い……だい゛」
「そりゃあ歓迎だからな、痛いに決まってるだろ?」
「うう……それなら」

 それなら、受けてあげなきゃ、と、手を振り払って再び立ち上がる。今度はアリスクロスの上着を脱ぎ捨てて、手を組んで、凛と立つ姿はまさしく「ロイヤルガード」を名乗るにふさわしい。醜く腫れ上がった腹にさえ目を瞑れば、だが……。
 元より耐久力や体力は並外れていても、痛覚までもを遮断しているわけではない。せいぜい我慢強い程度で、一般人とはいえ殴打に晒され続けて正気を保ってられるわけでもないのだ。ズムン、メキッと腹に衝撃を喰らうたびに、ユーニスの何かが音を立てて崩れていくのを感じた。何より、それが一番恐ろしいことであった。

「ぐぅう、ぅうう゛う゛う゛ヴ、あ、あぁ……!」
「大袈裟だなあ」
「まだまだ、嬢ちゃんに腹パンしたい人は山ほどいるからさ。元気出してくれよ」
「お……げ……ゥえ……っ?!」

 恐怖、気持ち悪さ、吐き気、そして痛み。彼女は半ばパニックに陥っていた。涎や胃液混じりの涎を撒き散らそうとも、彼女の眼差しは村人たちを捉えて離さない。その気丈さが一層村人たちの興味を買って、より痛ましい腹パンの応酬に晒すのだ。
 鳩尾など、鍛えようはずもない。苦しい。痛い。なぜこれが歓迎なのかがわからない。銀の髪を振り乱して、姿勢が崩れるたびに掴まれ無理やり固定され、ぶちぶちと抜け落ちてその痛みで少し覚醒して、また殴られる。
 噛んだ唇からは滲んだ血が、錆びた味を舌にこびりつかせて、不快な味がさらに広がった。
 どろりとろけた黒くて甘い泥濘は、もう全て吐き出してしまった。

「あ……れ? きのう、なにたべたっけ……?」

 こんな状態じゃ何も食べられないよと、胸を撫で下ろすことさえも許されない。
 少女は目を閉じる。それでも終わりはない。反応がなくなるまで、意識を喪失してなお殴打は続けられてしまうのであった。祭りが続く限り、地獄もまた、まだ続く……。

成功 🔵​🔵​🔴​

子犬丸・陽菜
あたまおかしいよ!
なんで歓迎でおなかにパンチされるの!?
世界は広いという意味なのかな、お仕事なら仕方ないけど!

宝珠のおかげで内臓ぐちゃぐちゃにされるのは慣れてるからね
パンチくらいじゃなんともないんだから

とりあえず何も食べないで行くよ、戻したらやばいし

内臓とか鍛えられるところじゃないから
き、きっつ…ぐぶっ

でも怪しまれないようにしないと…
でも女の子相手に容赦ない!
しかも狙いが正確だし

こ、この仕事きっつ!
うえ、ぐぷっ!

はぁ、はぁ、吐いちゃった…
胃液でのどが焼ける

一般の人に行かないように誘ってるからだけど…
内臓が潰されていくのがわかる…

うう!?
い、今嫌な音が…それに口の中にいきなり血の味が
内臓が破裂?



 どちゅ、という水風船が潰れたような音を立てて、臍へと拳が深々めり込む。ただのパンチといえど、身動きが取れずにそのまま内臓へと衝撃が走る。鍛えようもない臓器への衝撃は即座に浸透したのち、やがて全身を巡って脂汗を噴き出させた。
 水っぽい音を奏でたのは、ひとえに彼女が、すでに内出血でぼろぼろになった腹部にしたたかに拳を打ち付けられたダメだ。黒髪を振り乱して喘ぐことしかできなくても、苦悶に顔を歪ませていても子犬丸・陽菜(倒錯の聖女・f24580)は美しい。
 その理由の一つは、依代の宝珠による痛覚刺激に慣れているため、というものがある。彼女が実力を発揮するにあたって痛みは切っても切り離せない。彼女にとって依頼や戦いとは、苦い勝利しかないのである。

「でも……きついなあ……っ!」

 あたまおかしいよ、と毒づく余裕こそあれ、その目からはみるみるうちに光が失われ、弱音を漏らしてしまう。

 ――ドズン……!

「あぎッ……ぐ、ぶ……ぇえ……」

 肋骨の間を抉られる。唾液が垂れ、痛みに涙が滲む。細い体では受け止めきれず、後ろの壁にぶつかってしまう。これでは衝撃を外にいなすことも許されない。息が詰まった。

「ちょ……待、っで……やめ、やべで」
「やめるかよ。これは歓迎なんだぜ!」

 ――ドスッ……!

 臍。その奥に存在する胃腸が潰れる。堪えきれず胃液がせりあがり喉を焼き、そのまま口から溢れていった。込み上げてきた酸っぱい匂いが口の中で充満して、その不快感がなんとか意識を保たせる。いっそ気絶できた方がどれほど楽だったろうか。喉は焼け、うまく言葉を出すことはできない。
 びくん! と背筋が強張る。餅を捏ねるように、腹をすり潰され、揉まれていった。鬱血した肉が捩れ、悲鳴をあげている。

「も……むなぁ……いギぃ……!?」

 ――ドスッ……ドスッ! ボゴォ!! ドスッ! めきっ……ぼきんッ!

「ぎぃやあああ?!」

 ボキョという音の後、刺されたような痛みに、何かが折れたことを察した。体内に留まった衝撃が、柔らかな臓腑をズタズタに痛めつけ、想像を絶する痛痒となって降りかかる。骨片が臓器に突き立つだけでなく、臓器そのものが破裂してしまえば、もはや殴られていようといまいと募る痛みは鳴り止まない。終わることのない苛苦に足を踏み入れたのだ。
 踏ん張る力も残されてはいない。無様にも内腿をだくだくと濡らし、焼けた咽喉から呻吟が迸るように漏れる。
 これも一般人に攻撃がいかないため、そう自らを奮起させるべく言い聞かせるも、当の一般人から向けられる視線は冷ややかなものだ。言うなれば、歓待中に突然粗相をしたのだから、彼らの常識からしてみれば変態は己。ゾクゾクと凍りつく背筋に、生温い感触が内から止めどなく溢れて、背徳的な実感がさらに排出を催される。

「ぐぎィ……なにがたのしいの……こんなことぉ、あたしに……づゥ」
「楽しいと言うか、これが我々流の歓迎なのでね」
「ご覧くださいこの長蛇の列を、まだあなたに祝意を表したい方は山のようにいるんでね」
「くるってる、くるってるう……!」
「ははは! 外のやつにはちと荒っぽいかもな」

 他人を痛めつけることに悦楽を感じるのではなく、ただ純粋に楽しんでもらいたい一心なのだから、罪悪感など感じてるはずもない。これは歓待の儀式なのだ。陽菜に喜んでもらえると思って、陽菜のために行なっている慈善行為。神がいるなら優れた行いとして褒めてくださることだろう。

 ――ズグッ!!

 腹の打突越しに陽菜の子宮を襲う背徳の魔悦。稲妻が迸る。鈍い衝撃は彼女の脳をパチパチとスパークさせ、ゆっくりと全身を駆け廻った。目の裏から指先、一本一本に至るまで痺れさせ、突如として、がくんと首を垂れる。溢れ出た血がどくどくと、口腔を満たして鼻と口端から漏れ出させた。いよいよ臓器破裂のダメージがキャパシティオーバーして逆流し始めたのだろう。
 額から噴き出た汗が冷たくなってきた。しなやかな肢体も、びくりびくりと痙攣し続けている。その意識レベルを回復させようと男たちは思い思いに彼女へ刺激を与えて、揺り動かす。胸のすぐ下あたりから股座近くまで、爪を立てて突き立てたり、握り込んで捻るように打ち込んだり。同じ箇所を何度も何度も執拗に、肌を突き破り骨まで達しそうな衝撃に、痛みに耐えかねて再び光をその目に取り戻し――!

「がひュッ?! ううぷッ……!? う゛っ、うごぇええぇぇ!!」
「起きたね! じゃあ続けようか」

 もはや吐き出すものもありはしない。冷静に自分の状態を顧みる余裕さえなかった。
 自分はどんな表情をしているのだろうか。男たちの瞳に映る陽菜の顔は。
 笑っているのだろうか、泣いているのだろうか?

 ……どちらにしても同じことだ。やるべきことは変わらないし、受ける仕打ちも変わらない。奇祭の準備はまだ続く。絶望するには早すぎるし、本番はこれからなのだ。陽菜が狂わずに帰れるか否かは、神さえも及び知らない。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『意思を封じられし者達』

POW   :    人海戦術
【身体能力以上の力を無理矢理】【引き出させることにより】【超人的な力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD   :    人海戦術
【対象に対して人海戦術】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    心無い声
【呻き声やつぶやき】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 祭りは佳境に突入し、いよいよ邪神の眷属たちが出現し始める。非常に小さな「それ」は人間の頭部に取り憑き、肥大化。一度付着すれば包装についたシールのように容易には剥がせない。

 鎚やブラックジャック、鈍器の類いを持って彷徨い歩く彼ら、それらを「神の加護」を得たと羨ましげに見つめる人々。彼らは「祝福」を与えるべく猟兵への――腹部へと! 襲いかかる……!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
いえあの。
『鈍器』を使用したら、『腹パン』とは言わないのでは?

まだ『本体』の出現前ですし、派手すぎる動きは避けた方が良いでしょうかぁ。
先程の対策の通り『お腹を隠せる服』を着用しておりますので、【万華】を使用、『腹部』及び『周辺のズレたら当たりそうな場所』一帯を『ダイヤモンド』に変換しますねぇ。
これで、普通の方法で殴っただけではまず効きませんし、通りそうな何かを持出して来たら[結界術]を重ねて防ぎますぅ。

後は一応[カウンター]の『腹パン』で気絶動きを止めてから[部位破壊]で寄生体だけを破壊しましょう。
状況次第では『攻撃に使う部位』も一時的に『ダイヤモンド』に変えますねぇ。



「ああぁああ……!」
「んんんんん……!」

 頭部を異形に侵食された悍ましき怪物たち。
 それらはめいめいに鈍器を持ち、るこるさんへ襲い掛かろうと――!

「いえあの」

 なんですか!? 今いいところなんですけど。

「『鈍器』を使用したら、『腹パン』とは言わないのでは?」
「「……」」
「あのぉ……」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!!」
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛……!!」

 膝から崩れ落ちてしまった。
 泣いてしまった。

「ああ゛あ゛ーッ!」

 ――ブゥン!

「その手は食いませんよぉ」

 ボキィ! と、クリーンヒットした鈍器が、根本から真っ二つに折れて地面に転がって行く。どんな勢いで殴ったら逆に道具が破損してしまうのか。もはや邪神の遣いたちに一切の躊躇はないように思える! ちなみに殴りかかってきたのは泣き崩れたやつとは別の個体で、言葉の暴力という正論を食らった子たちはそのままオイオイと崩れ落ちたままです。
 しかし、鈍器が折れてしまいましたね。これはおかしい。
 うんとこしょどっこいしょ、それでもるこるは倒れません。どころかパイプはへし折れ、木片は割れ、取り回しやすいバールのようなものでさえ弾かれてしまいます。柔らかなお腹に当たったガィンとかゴィンという音が、痛ましく響き渡るにも関わらず。

「本当にお腹しか狙ってきませんねぇ。頭を狙えばもう少し痛手を与えられそうなものですけど……もしかして……」
「ああんん……!」
「ダメージを与えることが目的ではないのでしょうかぁ」

 著しく理性や知性を損なっているせいで、会話らしい会話は望めません! もはやこの祭りの参加者たちが何を求めて腹パン三昧に興じているのか、……いや知りたいですかね、そんなこと?
 ついには金属バットやら何やら、ゾクゾクと持ち出してくる始末。容赦がないというか、節操がないというか……。

「お返しですよぉ」

 ぷるぷると体を揺らしながら、振りかぶって、うん、待って。

 ――ズンっ……!

「腹パンですよぉ」

 にこにこと笑顔を浮かべ、紅潮した頬でおずおずと、パンの差し入れですぅみたいな美少女ちっくな声音と仕草で、鬼のようなパンチを繰り出した。るこるさんは美少女ですから「ちっく」ではないんですが。と、ここは声を大にしておきます。
 当然反撃など予期していなかった『意思を封じられし者達』は、なんの防御なかったためのたうち回る。とはいえ本体は頭部に取り憑いた一部のみ。取り憑かれた方は強度はただの人間レベルなので、手加減攻撃である。

「ああんん……?!」
「えいっ」

 シッと音を置き去りにして、屈んだ姿勢から力を込めた右手での腹への打突、からの真っ直ぐに伸ばした左手で崩れた姿勢を逃さず、頭部の本体のみを狙った一撃! ぱぁんと弾かれた本体はさらさらと小麦粉のように白い粉末のようになって消えていきます。
 表情はにこやかなままです。えっコワイ。

「どなたから来ても構いませんよぉ?」

 取り憑かれた者どもは顔を見合わせます。えっ行かなきゃダメかな。ダメです。

「「「「あぁあーッ!!」」」」

 南無三。観念したように、といっても意思も何もないので戦略的には全く変わりはないのだけど、ともあれ大挙して物量作戦で押し切らんと肉薄します。やけっぱちになって数を用意した時の末路ってなんだか想像がつくというか、わざわざお伝えする必要もないかとは思いますが、うん。モノの数ではありません。
 爪だけを硬質化させて、ぺりんぱりんと、すれ違いざまに次々に本体を剥ぎ取っていきます。さすがの腕前、仮に十全に知識を備えていたとしてもその動きを捉えるのは至難の技だと言えるでしょう。
 それでも懲りずに向かってくるのは、主神である邪神がそれだけ恐ろしいのか。はたまた戦力差を理解できない程度にまで知性が落ち込んでいるのか?

「全く……食えない方々ですねぇ」

 ちらりと覗かせるのは、ダイヤモンドで硬質化した腹部。しかし価値を見出すのはそこだけではなく、ぷるぷると揺らす体に金剛石の価値を備えて、煌めく眼差しは澱みない。真っ直ぐに、黒幕である邪神の存在を虚空に捉えて――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーニス・ウィザー
はぁ、はぁ、お、おなかが。
こんな歓迎だなんて、もう意味がわからない…よ。
女の子のお腹にあんなことして、赤ちゃん産めなくなったらどうするのよぉ。

お腹に力を入れると激痛が、腹筋があちこち断裂してる。
こんな状態じゃ…。

頭のあれをどうにかすればいいのかな。
でも、足に来て、くっ。

なんとか剣を振るう、でもそのたびにズキッとお腹が痛む。
なんて力、剣が押し戻される!

それに何人も対処は難しい。
傷ついた腹筋でこれを受けたらただではすまなくて…。

直に内臓を嬲られる苦痛に剣を落としてしまう。
そうなればもはや『歓迎』されるまま。

想定以上の力で殴られてあたしの臓器は無事なのかな。
肉体的には勝てないし。

潰れて壊される…。


嗚吼姫・ナエカ
◆【SPD】
あたしのお臍の下にある霊紋、大切な力の要で……弱点でもあるんだ。
直撃を受けるのは避けないと……。

でも、予めお腹を狙うことがわかっているなら回避は難しくない。
足を止めずに速さで翻弄しながら、頭の寄生体だけを狙って切り裂いていくよ!

確実に無力化している筈なのに一向に減る気配がない。
それどころか、あたしを狙う数が増えて……!?

そうして数で押され、組み付かれた隙にお腹へ致命的な一撃を受けてしまったあたしは。
まるでサンドバッグのように吊されて、抵抗も気絶も許されないまま
徹底的に蹂躙されてしまって……
(NGなし・アレンジなど歓迎)



「ハァ……ハァ……!」

 足元に堆く灰が積もる。『意思を封じられし者達』を操る本体だったものが霧散したその残骸だ。嗚吼姫・ナエカ(雪狼牙忍・f26098)は玉のような汗を浮かべながら、次なる標的に視線を定め――!

 ――ガッ!!

「あ゛あ゛あ゛ッ゛!!」
「がッ……この、はなせ……!」
「あ゛あ゛!!!」
「(信じられない力……でもそれだけじゃない! あたしを狙う数が増えて……!?)」

 膂力が増している、というわけではない。正しく表現するなら、ナエカ自身の体力が底を尽きかけているということだ。万全を機して村中深くに潜伏していた狼忍であったが、すでに脱出の機会を失ったまま長時間が経過し、体力を消耗していた。自分たちは頭部を、相手は腹部を狙うという分かりやすいルールではあったが、同じように神経をすり減らす都合上、数を揃えている『意思を封じられし者達』の方が圧倒的に優位であった。忍刀が鉛の塊のように重く感じる。足も棒になったようだ。白い尾はだらんと垂れ下がり、耳も折れて見るからにスタミナが尽きている。
 そして、それは昼夜問わず腹パンに晒され続け、限界を迎えた戦巫女も同様であった。サムライブレイドを取り落とした、乾いた金属音が無情にも響く。ユーニスの顔には、絶望感が色濃く映し出されていた。

「剣……があ……はぁ、はぁ、お、おなかが。こんな歓迎だなんて、もう意味がわからない…よ」

 剣で鈍器を受け止めるも手が痺れ、その隙に受けた殴打で取り落としてしまったのだ。屈むなりしゃがむなりで拾い上げるうちに、それこそ取り返しがつかなくなってしまう。今は耐えて、反撃の時を窺うしかない。

「おいアンタ、もう限界だろう。あたしの後ろに隠れて……」
「私は盾です。最後まで、戦います……それに」

 それにもう、遅いみたいです。と、もはや切れ目がわからない程に、村の人という人が、祝福を与えんと押し寄せている有り様。『意思を封じられし者達』が輪のような隊形で二人を取り囲むと、その退路を封じていた。やむなく背中合わせにナエカとユーニスは周囲を警戒する。雑踏の中に剣は埋もれてしまった。探して拾いあげるのも骨だ。
 ドラゴンランスは取り回しが悪い。そして爪撃は取り囲まれた複数相手を、しかも頭部をピンポイントに狙うほどの精密性は担保されていない。スタミナが万全ならともかく、二人は疲弊しきっている。顔には拭えない疲労感が滲んでおり、精細を欠いた動きはいつ均衡が崩れてもおかしくはなかった。

 そして、一刻が過ぎた頃――。

 ――ドボォッ!!

「んぶっげぇえ゛え!? ガ……ッ?!」

 白目を剥かされ、悶絶するユーニスの姿があった。可憐な白百合が圧倒的な暴力により毟られる。激しい抵抗の末の結果であった。両側から組みつかれ、手足の動きを封じられ、振りかぶるのではなく縦に構えた金属バットのヘッドが叩きつけられたのだ。
 すでに鬱血し、めちゃくちゃにされた内臓に、直に浸透するようなダメージ。撞木で釣られた釣鐘を殴りつけるかの如く、人体の正面からどこにも衝撃が逃げないように丁寧に腹部だけを狙い詰める。

 ――ズドォッ!!

「ほっごぉお゛お゛……ッ!」
「おい! お……い、アンタしっかり」

 ――ドガァアァッ!! メキメキメキ……!

「んお゛っ?! あたしの……嗚吼姫の霊紋をぉぉあ……!」

 背中合わせにして隙をなくしたとは、すなわち逃げ場を互いに失ったということ。ぴったりとつけた背中から、互いが受けた苦しみの振動が、悲鳴と苦悶共に直に伝わってくる。まるで殴られた痛みが二倍になったかのようで、その絶望感は一人責められるひではない。
 すでにユーニスという盾は打ち砕かれ、殴られるたびに頓狂な悲鳴をあげる邪神の玩具へと堕ちた。そして、魔手はついにナエカの「弱点」へと伸びたのだ……!

「あ゛あ゛あ゛ッ゛!!」

 ――ドスッドスッドスッドスゥッ!!

「やめっ……そご、ぐふッ! あがッ……い、痛ッ……あ゛あ゛ぁッ!?」
「ア゛あ゛あ゛ッ゛!!」
「いだいいだいいだいッいだいいいいいッ!?」

 痛みに耐えることは慣れているはずの、狼忍のナエカの弱点。それが下腹部に浮かぶ嗚吼姫に伝わる破邪の霊紋である。霊力を練り上げる際の起点となる急所であり、特に刺激に敏感な箇所だ。人体の構造上内臓が鍛え上げられないように、いかに優れた身体能力を持つ狼忍・ナエカであろうと、この場所だけは死守すべき一点であった。
 ゆえに、そこを蹂躙される彼女は今、生娘同然。慣れているはずの痛みを口に出して訴えて、涙を浮かべて苦悶を吐き出すのみである。

「ナエカざんッ?!」
「うぎィ……ま、だ、だよ……まだ」
「く……振り解けな……っ」

 ぞくっ。

 ――恐怖。

 人々のために幼いながらに剣に道を捧げ、覚悟をして戦ってきた。
 そのユーニスが、暴力に対して、ハッキリとした恐怖を覚えている。ゾクゾクと背筋が凍り、目の前に振りかざされる圧倒的な「力」に、単純な「怖い」という感情を持ってしまっている。覚悟は、ぎゅっと目をつぶり、痛みに耐えようと体を縮こませ、内股になる足を無理やり押さえつけられて。そんなちっぽけでひ弱なモノに宿る代物ではないのだ。
 それも振りかざされるのは、スラッパー。二十センチもない、警棒に似た使い方をする鈍器である。刃物や銃とは違う、直接的な恐怖を感じるタイプの見た目ではない。
 堪らなく怖いのだ。それが!

「や……やめ」
「ン゛ン゛ン゛ン゛ッ゛!!」

 ――ドゴォっ……!!

「がはっ……! かっ、はあアっ……あッ!?」

 ――ドゴッ! ボゴォ!! ガスッガスッ!! ズドォオオ!!

「お゛ほっ?! ……ぶお゛っへぇえ゛え゛エェーッ!!」

 ビクッとびくつく体。吐き出す胃液もない。酸味づいた息を吐き、だらりと脱力し、股座からブシュッブシュッと液体をだらしなく噴き出しながら、痙攣するのみとなった。

 かすかに腰が浮き、脂汗に濡れたユーニスの背中がナエカに押し付けられ、塗りたくるように恐怖心を伝播させる。ぞわぞわ鳥肌が立って、ナエカの豊かな体格が、小娘のように小さく見える。元より、その肢体からは想像つかないが二人はほとんど同い年に近い。
 必然感じる恐怖心もまた、同程度のものであった。

 ――ドガガガッ、ボゴォァアアッ!! ゴスッゴスッゴスッ!!

 彼女がぶち喰らうのはスラッパーやブラックジャックではない。金槌やトンカチのような小さく取り回しの効く代物だ。
 交互に、などと生易しいものではない。鈍く光る目印に向けて滅多撃ち。

「んほごぉお゛っ!? お゛っお゛っ!? お゛ぼっほぉお゛ぉ……」

 文字通り、ケダモノの雄叫びをあげて、弱点への集中砲火を甘んじて受ける。美しい青い瞳は濁り立ち、舌を突き出して蛙のつぶれた醜悪な声を絞り出すのみだ。それでも、それでも負けを認めるわけにはいかない。幼くても討魔の忍び。使命を帯びている以上、立ち続けなければならない。

「あっ、あたしは嗚吼姫の忍ぃ……こっここの程度……うぐ、げ……。ど、どぉ゛ってことない゛効゛がな゛いっ゛」
「ぱ?」
「…………え?」

 ――ドゴォオオッ!!!

「いぎぃいいいぃ!!?」

 覚悟を嘲笑うかのような一撃。
 甲高い悲鳴をあげて、のたうち回るような痛みがナエカを打ち据えた。たまらず失禁し、装束と尾を黄色く濡らしていく。
 次なる暴力は制裁棒。ストゥと呼ばれる、紛うことない「処刑道具」である。先端に鉄片を植わっており、殺傷能力は金砕棒に匹敵する。棍棒状の鈍器の中での人体破壊力は群を抜いており、ギザギザの形状は人体を効率的に削り穿つ。それが人体のリミッターを外れた状態から目一杯加減なしで繰り出されるのだ。
 腰骨が軋み、内臓が破裂し、筋肉がぶちぶち悲鳴をあげる。力を込めて耐えるとか、そういう類いのものではない。なにせ処刑用の道具なのだ。

「む、ムリっ! そっそんなのありえなっ」

 風を切る音。低く汚らしい叫び声。

「んげぇえ゛え゛っ?!」

 断末魔の叫びをあげるとしたら、おそらくこういったものになるのだろう。そこに愉悦も嗜好もありはしない。神の命じるがまま、項垂れる狼忍に刑を執行する。
 そして、鍛え上げられた精神力は、抵抗も気絶も許されないまま、惨状を加速させていく。
 あらゆる鈍器で腹部を破壊する。

 ――めりめりめり……ぶちっ!

「オ゛ブぶぇえ゛っ……?!」

 筋肉の、腹筋の断裂音が響き渡る。ユーニスの体にもはや力は入らない。
 踏ん張ることができない以上、もはや垂れ流したようにぼたぼたと血と、その他を混じらせた液を垂れ流し、口端からもぼたぼたと鉄錆じみた体液を漏出させる。
 服の残骸が痛ましく残り、血で汚れていない箇所はない。剣を捧げた誇りは踏み躙られ、完膚なきまでに叩きのめされた腹部と、ぐちゃぐちゃの顔が傷ましさを通り越して、半ば触れがたい神聖さをかもしていた。

「んお゛っ……へぇええ゛っ……」
「あ゛あ゛あ゛!!」

 ――ムギュゥウウッ!!

 贅肉のまるでないその腹を掴み上げ、引き寄せ、拳と密着させ。

 ――ズッズンッ!

 殴りつける。金属片を握り込んで重さを増した腹パンだ。嬲るにはちょうどいい平坦さ、内側がゴツゴツと、軋んだ骨がぐちゃぐちゃと、触感が心地よい。

「……んむ゛ッッ!!? ふーっ……ぶ、フーッフーッ!! あたしは、砕けません……!!」

 震える眼差しで睨み返す。
 どれほど恐ろしくても、耐えても希望がなかったとしても、それでも助けを乞うたり無様な姿だけは見せてなんかやらない。

「お゛おぉおンッ……!!? ふふゥ……嗚吼姫の、忍を……舐めるなァッ!!」

 めりめりと拳がナエカの腹部にめり込む。ここまで痛めつけられては弱点であろうとなかろうと変わりない。しかし、ナエカもまた、命乞いなどはしない。痺れを切らした邪神が現れるまで、忍耐すればいいだけの話。何も変わらない。
 すなわち――。

 ――地獄。

 悍ましく、そして美しい祝祭は、闇に溶け込み混じり合い、邪神を降ろす呼び水となる。その時まで少女たちが原形を保っていられるかは、神のみぞ知るところであろう……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

菫宮・奏莉
それは『神の加護』ではないのです! 普通に『鈍器』なのです!?
それに『鈍器』は腹パンに含まれないと思いますのです!

メディカルトレーをお腹に入れて、包帯を巻いてはいますですけど、
大丈夫かどうかは、あまりチャレンジしたくないのです。

なるべく避けていきたいと思いますですが、
どうしても腹パン(腹鈍?)を受けないといけないときは、お腹で受けますですね。
正面のトレーでしっかり受けるようにしますのですよ。

最初はそんな感じで、お腹のトレーと松葉杖で戦いますが、
ほんとに危なくなったら【医療安全管理チーム】のみなさんを呼んで、
戦ってもらいつつ、眷属剥がしもお願いしちゃいますのです!
「手術しちゃってくださいです!」



「ぱあ゛あ゛あ゛あ゛!」

 ――……どむっ!

「くっ」

 この体格差でわざわざ狙い、それもズレてないというのはかえってターゲットが正確なのか、それとも知性を失ったゆえにそこしか狙うことができないのか。メディカルトレーをお腹にぴたり密着させ、追い回されつつも振りかぶって攻撃のモーションに入った相手には、しっかりとお腹を見せて。

「あ゛あ゛あ゛ーッ!!」

 ――……どむっ!

「きゃ」

 よろめいて尻餅をつく。
 ダメージがなくとも衝撃が消えることはない。だいの大人の、筋肉のリミッターの外れた一撃だ。体格差は覆せない。正面に備えたメディカルトレーで防御をしなければ、ぼこぼこにされてしまうことは目に見えていた。解けかけた包帯をぐるぐると巻き直しながら、奏莉は必死に考えを巡らせる。
 全員が顔面蒼白、まるでホラー映画に出てくるゾンビのように足取りも覚束なく、手には何かしらの鈍器を携えている。動きはけして緩慢ではなく、膂力から考えると掴まれたら逃れられないだろう。もしも捕まって腹部のトレーがずれたらと思うと、背筋が凍りつくような心地だ。あの頭部に取り憑いた本体は、前述の体格差も相まって狙いにくく、杖で突き上げるように攻撃しなければならない。

 ――ぶぅん!!

「あ、あぶないのですよ!」

 腹に打撃を与える、それに特化しているため、攻撃速度自体はなかなかに素早い。しかし、対処できないスピードでもない。
 ただ……!

 ――どむっ!!

「ぐ……ふっ?!」

 数が多い。一体に対処している間に四方八方から鈍器を構えて向かってくる。腹パンできて楽しいとか、操られている対象に感情による統制がなされていないため、ただただターゲットに定めたものを追い回すだけなのだ。苦しんでのたうち回ってみせても、懇願しても、きっと何の効果もあるまい。
 倒れた味方を足蹴にし、どころか視界にすら入れず猛進する。もはや、見えているのは自分の腹部だけ。

「ゾッとするのです……こうなったら……!」

 数には数を。患者が多いのならば、こちらも頭数を揃えるべきだ。

「お願いします」
「任されました。なるほど、これは重症ですね。わたしたちで、すぐに緊急切除に取り掛かります」

 メスを! 近くの看護師に呼びかけながら、《医療安全管理チーム》が召集された。多数の敵を相手取る時には心強い、メスの得意なお医者さん、そして注射の得意な看護師さんのチームだ。これで形成は五分五分!

「麻酔は不要ですね?」
「ぱッ?!」

 一太刀で瞬く間に頭部を、もとい頭部に張り付いた本体を切開していく。
 額に汗して緊急手術を行っていく主治医。近くの助手がその汗を拭うのも忘れない。

「これは長丁場になりそうですね……」
「そちらの患者さんは物陰に」
「お、お任せしますです」

 仮に狙われて奏莉が負傷でもしたら、ドクターたちはそちらの治療にかかりきりになってしまうため、活動を停止してしまう。一見薄情だが、これも立派な作戦。奏莉は身を隠し、戦況を見守ることにした。
 頭数が揃い複数人対複数人の戦いになったことで拮抗していた戦況は奏莉に傾きつつある。剥がされた本体は空中でジタバタもがくと、灰のように粉々になって消えていく。人間に寄生して操るのはあくまで付随効果で、そもそも人間に取り憑かなければまともに現界もできないのだろう。
 頭だけを狙ってくださいです、と主治医に伝えると合点承知とばかりに鋭いメス捌きで次々に高難易度オペを成功させていく。大挙して押し寄せていた『意思を封じられし者達』も随分と数を減らし、ようやく身動きが取れるようになってきた。

「こうなってくると食べるパンはもはや関係なさそうです……」
「甘味の強いものは病態に響くので、まずはトースト等消化にいいものを口にするよう心がけてください」

 なるほど。包帯越しに胃の辺りを摩ってみる。ジャムパンや……あんパン等は病体に悪影響ということか。こんなところで診療を受けてしまってなんだか悪い気がしてしまうけれど、終わらぬ戦いの最中でも覚えておくべきことは頭にしまっておきたいものだ。
 とはいえ、戦うことはできない以上、じっと息を潜めて好機を窺うのが最善手。
 ふと、物陰を狙ういくつかの視線。まずい……! 奏莉は一か八か、拳を握って言葉をぶつける。

「目を覚ますのです! それは『神の加護』ではないのです! 普通に『鈍器』なのです!?」

 繰り返しになるが、眷属の狙いは完璧だ。
 しかし、徹底的にズレている。

「それに『鈍器』は腹パンに含まれないと思いますのです!」
「あ゛!?」
「ん゛!?」

 おっしゃるとおりと言わんばかりに動きを止め、その場で二、三体が崩れ落ちる。なんとか言葉が通じたようだ。無抵抗の本体をべりべりと毟りながら、奏莉の戦いは続く。猟兵の敗北は常識の敗北。狂った祭りを終わらせるべく、緊急オペが繰り広げられるのであった――!

成功 🔵​🔵​🔴​

マヒロ・ゾスティック
アドリブ、連携、お任せ
切断グロ以外のドMリアクションOK

うわぁ、もっと力強い腹パンが来そう♥
きひひ、もっともっとボクを虐めてぇ♥

引き続きUCで防御力10倍にして
腹パンを受けてくよ♥
ああ、大分盛り上がってるしもうボクのこのベルトだけの恰好、晒してもいいかなあ?
あー恥ずかしい、すっごく恥ずかしい、こんな腹パンで悶えてる姿見られるの恥ずかしい、でもキモチいい♥
もっと、もっとやって♥
って◆誘惑し◆悪目立ちもして敵を僕にターゲット集中させてくよ♥
防御上げてるからどんどん攻撃受けれるもんね♥
あとは敵がボクに集中してる間に他の皆が頭のを取ったりしてくれるよね
いないみたいならボクが自由自在ベルトで死角から攻撃


子犬丸・陽菜
はぁ…はぁ…うっく、ぐ、ぷっ
うぇ…胃液が…それに血の味が混ざってる
それに心臓が脈打つたびにお腹の中がズキンズキン痛むよ

内臓が傷ついてるのは確実かな…
歩くのもつらいけど

休ませてくれそうもないね、さっきよりやばい感じがする
頭のあれが原因だね

何とか取れないかな…枷は使いにくいから拷問剣で何とかするよ

宝珠を起動…ぐちゃぐちゃと音を立てて内臓がかき回され…
き、傷ついてるから、きつい…っ

でも苦痛の分剣は威力を増す
問題は結構数がいる、一人相手にしてる間に複数が

この体でいつまでかわせるか

ダメージが前回と段違い
内臓があからさまに潰されてる…

武器突っ込んだままぐりぐりするな、ぁ…
腸が…

太ももを伝う血はどこから…?



 喉奥から溢れ出た鮮血が、口端から泡となって漏れ出す。

「はぁ…はぁ…うっく、ぐ、ぷっ」

 無秩序な味、鉄臭さ、酸っぱいような刺激に涙が滲む。歪んだ視界をゴシゴシ擦ると、手には数々の、鈍器を持った者たちが迫ってくるのが見える。戦わなければ、しかし、どうやって……?

 ――……ブン!! ガキッ……!

「くっ」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「このっ……ど、いて……よっ!」

 正確に、醜く腫れ上がり鬱血した腹を狙ってきた。剣の腹でなんとか受け止めたものの、振り抜く膂力は凄まじい。頭部に付けられた本体により、本来人体がセーブしてる肉体の出力を全開にしているのだろう。であれば、繰り出されている攻撃は人間の理論上最大威力の攻撃ということになる。
 振る舞いからは知性が感じられない。どう立ち回れば……。

 ――ずきっ……ずきっ……!!

「い……ぎ。……い、痛みで考えがまとまらない……」

 霞む視界。ふと瞬きした、その刹那。
 陽菜は信じられないものを目撃する。否、その身に受けることになる。

 ――ボゴォ!!

「あぐウッ!?」
「な、なに、うっ、えぇ?!」

 全身にベルトを巻いた……ベルト以外を身につけていない少年。雄々しい両角をそそり立たせて、全身に汗をかいた小柄な少年が、一団から殴打を受けて吹き飛ばされ、陽菜にぶつかったのだ。慌てて両手を使って少年……マヒロを抱き止めたはいいものの、それはすなわち剣を取り落としたということ。無情にも乾いた音が周囲に響く。
 体勢を崩した二人への対処は、『意思を封じられし者達』は素早かった。瞬く間に四肢に組みつくようにして動きを封じると、万力のような力で締め上げる。子供の体躯に大人4人がかり、それも全て肉体のリミッターを外した組みつきだ。無理やり引き剥がすこともできるだろうが、どんなダメージがフィードバックされるか想像もつかない。マヒロと陽菜の抵抗は、もはや封じられたも同然であった。

「あぁあ……汚いオジサンたちがボクの四肢に……ベルトだけのボクの姿を見て、舐めるように組みついて……恥ずかしいぃ……♥」

 例え意思が封じらていたとしても記憶には残るだろう。でなければ風習としてこの祭りが残っていることの説明がつかない。
 つまり、マヒロのこのベルトだけを身につけた姿が、あられもない姿が! 彼らにはその記憶が残るということだ。羞恥心で顔から火が出るが、その昂る気持ちが彼を強くする。いつでも反撃できるよう、ざわめく気持ちを一層励起させる。
 陽菜は、一点、ただ一点、そんなマヒロの興奮で熱り勃つ両角から視線を外せないでいた。戦闘中に起動している「依代の宝珠」の痛みで、ようやく正気に戻った有り様だ。

 ――ボゴォッ!! めきめきめき……!

「ぐげっ、えっ、おええぇっ!」

 正気に戻ったタイミングがいけなかった。
 振りかぶった金属バットがフルスイングされ、陽菜の腹部を強かに打ちつけたのだ。見ていれば、覚悟してまだ耐えられたかもしれない。しかし、まるで不意を突かれたかのような一撃。これでは耐えられるものだって耐えられない。

 ――ぐちゅぐちょ……ぶぢゅ!

「ぎゃっ! ぐがっ! ひっぎっ!」

 振動と衝撃に刺激された宝珠が鳴動する。
 二重苦どころか三重苦四重苦くらいの痛みだ。げほげほと呼吸を乱しながら、虚ろな瞳がぐりぐりと揺れ動く。肉体のかき混ぜられる音が外にまで響いて聞こえそうだ。そして、その音は理性なき者どもに狙いを定めさせる絶好の目印となる。

「ん゛ん゛ん゛!!」
「ま、まって、そこは」

 ――ズドォオッ!! めりりっ……!

「ぐっぶううぅっ!?」

 うそ……ほんとに宝珠を狙って……?

「んぶ!? ……げっええぇっ、げほっ、おっげえええっ……!」

 ぷくりと頬を膨らませたのち、飲み込むこともできず盛大に血と吐瀉物を撒き散らした。陽菜を拘束するものたちはその様子を見ても顔色一つ変えはしない。

「げっほげほ……うギッ?!」

 ――ぐりぐりぐりぐりィッ……!

 金属バットのトップで、陽菜の腹部をぐりぐりと押し込む。その陽菜の悲鳴と反応を見ながら、宝珠の位置を探っているのだ。どうやら人体外に排出されてはいないらしい。醜悪な探知機でしばらく陽菜を虐め抜きながら、更なる鈍器を取り出して彼女を徹底的に破壊せんとにじり寄る。

 ――ボコォ! ズゴ!! めしゃ……ズン! ゴシャアッ!!

「あ゛っへぇ゛え゛え゛え! っぁお゛っ♥ お゛っ♥ 」

 手に手に警棒やバールのようなもの、金槌で息つく間もなく滅多撃ちにされるマヒロ。陽菜への責め苦が緩急ならば、彼への仕打ちは怒涛の一言。神の祝福の形が多様なように、腹部への鈍器殴打はいくつも方法があるのだ。
 叩き込まれた快感が解放されて、時々痙攣したかのように果ててしまう。びゅうびゅうと無様に溢れ出る体液を垂らしながら、さらにそれを「見られる」という自覚が彼をより強くさせる。無限にも思われる羞恥の連鎖地獄が、無様な彼を更なる深淵へと引き込んでいく。
 舌も突き出し、涎が止め処なく流れる。目が虚空を向いた、ただひたすらに酷く、淫惨なアヘ顔だ。

 ――ゴッ!!

「んっおおお♥ おっへぇええ……?!」

 星球武器。
 いわゆるメイスの一種である。無論拷問用に改造されたものではあるが、間違いなく殺戮用の武器にカウントされるものだ。それが人体を破壊せん勢いで繰り出されているのだから――。

「あっははぁああぁあ……あひぃい……」

 体がくの字にへし折れる。衝撃で胃液が逆流し、驚いたショックでプシャアアッと漏れた。守るものの一切ない肉体へのダメージが、細かに痙攣する肌上に表れていた。非道。そして、彼への腹部に対する祝福は息つく暇もなく繰り返される。

 ――ドゴグウ! ボゴ!! ゴッ!! ドゴグゥ!!

「はっっっぎいいいぃぃぃ?! んぐぅぅぅ♥ まっで、あ゛あ゛っ!?」

 びっくんびくんと、陸でのたうつ魚のように、面白いように跳ね回る。衝撃を外に逃しきれず、体を駆け巡った鮮烈な痛みが視界にいくつもの電光を走らせ、マヒロを狂わせた。視線を集めていることなどもはや認知すらできない。ただただ痛い。痛気持ちイイ……!

「く……っ!」

 なんとか助けなければ、ぐ、ぐ、ぐ、と手を伸ばそうと陽菜は前屈むような姿勢になり。

 ――……メゴッ!

「……っ、か、はっ、あ、あっ、ッ」

 そこにめり込むモーニングスター。全く苦痛を逸らすことのできない姿勢へのクリーンヒット。カタカタと体を震わせたのち、膝から崩れ落ちそうになる。がっしりと腕を掴まれているため倒れ込むことは避けたものの、脱力した体にさらに衝撃を受けるのはまずい。

「(なんとか……ぁ、体勢だけでも……っ)」

 丸まりきれないダンゴ虫みたいな姿勢のまま、不規則な呼気を繰り返している。
 来るとわかっていれば……! 霞む視線でなんとか、その鉄球を見据えて……。

 ――メシャアッ!! ……ぐちゃ!

「……ぉげ?、」

 この血は、何処から……なんで……?

 ――びぐびぐ、びぐびぐ、びぐびぐびぐっ♥

 ……果てる様子を、彼は見ていた。

 壊される様を、傍で。

「……アハぁっ」

 マヒロは笑う。けして悟られないよう、いつでも死角から、拘束する者の「本体」を抉れるよう、必殺のベルトの一撃を放てるように。

「(でも、もうちょっとだけ。だってもったいないじゃないか♪ こんなにも恥ずかしくて屈辱感に塗れた思い……)

 禁忌の味こそ、脳髄を蕩かすように甘いもの。今はまだ舌の上で転がして味わっていたい。
 珠と革帯、神に愛された二人の為の被虐の狂宴は続く。数多の衝撃を腹部に受ける二人を、文字通りズタズタにしながら、滞りなく、粛々と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルネ・プロスト
腹パン祭に鈍器とは是如何に
拳より先に頭を洗う必要があったか
これは名ばかりの誹りも止む無しでは?

そういうわけでUCで腹パン愛好家、腹パニストの先生方をお呼びしました
腹パンを称するにも拘らず鈍器を用いる愚物共に真の腹パンとは何か、ご教示願います
どうぞ此方はお気になさらず。見てるだけで十分ですので。腹パンサービスとか不要ですので

腹パン合戦が繰り広げられてる間、ルネは戦線から離れて後方待機
先生方の授業をサボって此方に来る不良達はビショップの張った雷の結界(属性攻撃&マヒ攻撃&結界術)でバチンだよ
道化師団は気絶した子達を医術で応急処置しといて
皆が皆して気絶したらその隙にビショップの破魔の力で寄生体を浄化


咎大蛇・さつき
痛みは、生きていることを教えて下さいます…
痛みもまた、愛なのですね。
【アドリブOK】
私の髪の毛ならある程度の精密な攻撃ができるでしょう。
可能な限り寄生体を取り除いて攻撃をします。

…あらあら、数が多いのですね。
あなた方の思いを感じるのも悪くありませんね…

(ある程度の敵が集まれば、敵の数に押しつぶされて
 壁などに拘束される。)
フフッ…アハハハっ…!
痛み…苦しみ…生の喜び…!!
あなた方の…その宴も一つの…愛の形なのですね!

(彼女は痛みに悲鳴を上げ、苦しさに嘔吐してもなお
 それに喜びを抱き、負の感情などなにも持っていない。)



 腹パンとは、そう、腹にパンチを与えること!
 語義的に不変であり、すでに何名かの猟兵により指摘されている通り、鈍器に頼ることはルール違反。取り憑いた「本体」による悪影響か、ロンダリングが拳より先に頭に必要なのは歴然。奇祭なら奇祭らしく、守るべき矜持というか、ルールのようなものはしっかりと遵守してほしかったものだ。

「ルネは宣言しよう。すでにこの祭りの価値は、地に堕ちたと」

「あ゛あ゛?!」
「ん゛ー!!」
「ぱ!」
「ん゛ん゛!!」

 『意思を封じられし者達』は次々に何かを取り出して装着する。拳鍔……所謂メリケンサックである。他にも腕輪やらグローブや、挙句手に石やら金属片を握り込んで重量を引き上げるものもいる。今更指摘を受けて変え始めるほどの理性があるとは思えない。たまたまこの場に残った者たちのうち、腹パンに適した存在が多かっただけのこと。
 しかし、嘆息するには十分な状況だろう。

「そう来たかあ……」

 お膳立ては整ったともいう。ここは、祭りの本来の形に則り、一方的な蹂躙ではなく、互いに趣向を凝らした腹パンを繰り出し合う状況を現出させるとしよう。

「頭が痛くなってきた。“彼岸より此岸へ、冥き途辿りて甦れ” と、いうことで……先生方、あとはお願いします」

 心得た、とばかりに現れたのは総勢百体に迫る数の死霊たち。いずれも生前は無類の腹パン愛好家、すなわち腹パニストとして名を馳せた猛者ばかりである。
 中には腹パンで一国を成したとされる古代の帝王、一度の腹パンで海を割った伝説のある不世出の拳聖、かつて中世の都を恐怖のどん底に突き落としたシリアル腹パニスト、腹パンで四次元の壁を突き破った智勇供えし猛者、異界で命を落とした「腹パンの悪魔」に「腹パン魔拳伝承者」、腹パンを主文化とする星から来た異星人の霊までも集結する。
 これだけの数を呼べば粒揃いである。ちなみに全員がもれなく朝はコメよりパン派だ。

「腹パンを称するにも拘らず鈍器を用いる愚物共に真の腹パンとは何か、ご教示願います。ああ、どうぞ此方はお気になさらず。見てるだけで十分ですので。腹パンサービスとか不要ですので。見てるだけでお腹いっぱいと言いますか、あの不届きものに制裁を」

 お腹を摩るルネ。
 少なくとも一昨年は白と青を基調とした、その齢には刺激の強すぎる大人らしい水着姿で海辺の異性の視線を釘付けにし、話題を席巻したものだが、今回その腹部が公開とならなかったことは残念である。
 閑話休題。

「フフッ…アハハハっ…! ……選り取り見取りとはまさにこのことですね。地に堕ちたなんて、とんでもないです」
「あっ、君。今は近づかない方が」
「ご心配には及びません」

 そんなルネのそばをすり抜けるようにして、颯爽と参戦する赤い影。
 満を持して登場、咎大蛇・さつき(愛を貪る鮫・f26218)さんです。拍手でお出迎えください。

「まずは有象無象を間引きましょう」

 彼女が両手を地面につけ前屈むと、四方八方へと「伸びた」赤い髪がしなる鞭のように音を切って「本体」に命中。ぶちぶちと剥ぎ取っていく。当然、集団からのヘイトも買うため、攻撃を掻い潜って反撃を試みる者もいるのだが。
 そこで立ちはだかるのは腹パン愛好家の悪霊たち。
 生かさず殺さず、絶妙な威力に調整した腹パンをもって、次々に無力化していく。彼らの頭部の付着物をひっぺがし、応急手当をするのはルネと人形の役目だ。腫れ物に触るかのように嫌悪感を剥き出しながら、それでも手早く処理を施していく。

「なるほど。一人残らず始末しなければ、というのは骨ですね」
「本当に大丈夫? 少し距離を置いて……」
「私にも確かめることがありますから」

 低い姿勢から起こす勢いでハイキックを繰り出したさつき。不敵な笑みと共に繰り出されたそれは一人の頭部をクリティカルに打ち抜き、昏倒させる。しかし、敵は多勢。その隙を待っていたかのように三人がかりで振り上げた脚に組み付き、その体勢をがっちりと固定した。さらに崩れた体勢を固定するかのように、首で抱え上げられるようにしてアームロックされる。
 顔を真っ青にして外そうともがくさつき。膂力は通常のそれとは比較にならない拘束。抵抗すればするほど厳しく食い込むだけだ。

「か、はっ……?! 一度、味わうべきと思っていました……げほっこの痛み…苦しみ…生の喜び…!! あなた方の…この宴も一つの…愛の形なのですね!」
「ああ……死霊が言っているよ。舌を噛まないように、とね」
「心得ました……あグ、くるっ」

 ――……ドスッ!!

「お……ぇッ。ゲホッごほッ」

 余すことなく晒された肉体美に、祝福の拳が突き立つ。赤く痕を残した拳が引き抜かれると、ややあってさつきは嘔吐くように咳き込んだ。
 
 自分の足で体重を支えられず、サンドバッグはながらの不安定で全く衝撃をいなせない状態。そこに人間の脳が普段かけてるリミッターを外した拳の一撃が加えられたのだ。普通なら悶絶ものである。
 さつきはたしかに泣いていた。しかし苦悶からではない。この感情は喜悦。
 理由は一つだ。人間の出力限界の拳、それすなわち人間が与える埒外の、膨大な愛の形!

「どうしました? まさか一撃で終わりですか?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 ――ドスッ!! ドスッドスッドスッ!! めしゃッ……メリィメキメキ!!

「ぁっ……くっ……ふぅ……ぅっ……んぐブ!? お、えぇえ……」

 鬱血し青痣になるまで寸分違わぬ狙いで柔らかな腹部を撃ち続ける。歪な姿勢で受け止め続けられるはずもなく、ゆらゆらと不規則に体を揺らしていたさつきだったが、その不規則さが不幸だった。当たりどころが悪かったのか、みしみしと音を立てて骨肉が軋み、耐えきれない吐き気となってさつきに脂汗をかかせる。それでも笑っているのだから、その信念はもはや一途であり狂気的だ。
 これには歴戦の腹パニスト悪霊たちも感嘆する。腹パンへのリスペクト、打たれるものの大いなる愛を感じたからだ。

「げェ……ひギっ?!」
「あ゛あ゛……」
「あああああっ!! あああうううっ!!」

 ――ぐりぐりぐり……ミシミシッ……!

 ぜえぜえと荒く息を吐くその腹部に、握りしめるようにぐりぐり刺激を与えて喘がせることも忘れない。強がりか、はたまた別の何かか、このせせら笑う表情を変えてやりたい。そんなことは露も考えてないかもしれないが、大挙してその体に密集し、ぼこぼこと腹を叩き続ける様は、そんな意気を感じさせる。
 閉じられた片目越しに、眼前の存在を感じとる。なるほど、嗜虐や抵抗感のような雑念は感じられない。むしろもっと大いなるものの強烈な「意識」に飲み込まれ、混濁しているかのような……。

「ふッひ……も、もし、この上位の存在が同じことを繰り出すのだと、すれば……んぎっんっはぁあ゛?!」

 ――ドッゴォオオオボキィ゛ッッッ!!

「あ゛ぁあああ……なんてぇ゛……おもい゛、愛……!」

 胃液鼻水を垂らして、エビのようにビタンビタンと跳ねるように激しく痙攣する。無意識のうちの体の動作である。いわば肉体が示す危険信号に近い。
 同時に、吐き出した液体が酸っぱさから鉄臭さを帯びてくる。どうやら折れた骨が内臓を傷つけたか、あるいは破裂させたか。人前なら耐えるべき行いを耐えられないくらいに、大きく開かれた脚からは湯気と刺激臭が漂う。古代それを人前ですることを憚らなかった原初の頃で有ればそれも祝福で通せただろう。しかし、ここは奇習のあるだけの現代で、人並みに羞恥心を持ち合わせていたら自死を選びかねないほどの屈辱。もはや耐えられまい。
 やがて彼らの腕に抱かれながら、彼女は静かに意識を落とす。口からは涎を、太股には生暖かい液体を滴らせて、無様に……。

 ……さて、お嬢さん、腹パンおひとついかがですか?

「こちらは結構。そろそろ本題に入りたい」

 腹パン悪霊たちを従えて、一斉検挙と洒落込む。攻勢は止めようがない。
 呆然とする村人たちに、ルネは言い放つ。この混沌とした状況に終止符を打つために。

「制裁と言えば、君たちには然るべき罰が下るだろう。追ってUDCの沙汰を待つといい」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『あんぱんはつぶ餡だろぉと叫ぶ邪神』

POW   :    ぶっ潰れろ!
【リミッターが外れた身体 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    疲れた時には甘いもの!
戦闘中に食べた【あんぱん 】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    雷光の牢獄
【掌 】から【高圧電流を纏った極細の糸】を放ち、【感電と圧迫】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は佐之上・権左衛門です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あんぱんはつぶ餡だろぉ!?」

 甘い匂い漂わせ、奇祭の主役である邪神が降臨する。
 体から漂わせる白い湯気にはイーストの香りが残っており、なんともお腹の鳴るオーラのように纏っている。ちなみに、誰もこし餡との比較はしていない。

「なあオイあんぱんはつぶ餡だろぉ!? あんぱんは、つぶ餡だろぉぉおぉ!!」

 徐に村人に掴みかかると、腹部が消し飛びかねない勢いで怒涛のパンチを繰り出した。こいつ、見境なしだ! 猟兵は戦慄する。

「ハア?! るぅぁんぱんはッ! つぶ餡だろうぉがああアアア!!?」

 怒涛の勢いで猛進してくる邪神。ここがまさしく天王山! 抑えるべき勝利を手中に収めるべく、最後の戦いが始まった……!
アルタ・ユーザック
「痛そうなのもそうだけど…戦えなくなるからパンチは受けないようにしないと……」

【途中合流でまだ喰らってないが、他の猟兵の姿を視て一度食らうとやばそうと判断。UC『その瞳はここではない何かを視て』を発動し、回避に徹することに。しかし、回避に専念するあまりあんぱん摂取を止められず強化を許していきついには…】

「え……何で喰らって?」

【自身のお腹に拳がめり込んでいる未来を視て思わず足を止めてしまい、そのまま……。未来を視ても回避すらできないような速度・威力の腹パンを何度も喰らってしまい…。元の形が分からないくらい何度も…何度も…】



 青い瞳が深淵を見つめる。黒黒と、闇黒混沌とした中身を見遣りながら、魔法刀「氷桜丸」を構え油断なく距離を取る。近から中距離戦こそアルタ・ユーザック(クール系隠密魔刀士・f26092)の本領。それに、邪神が降臨したことを確認し満を持して参戦した、体力的な余裕もある。完全に近い邪神は手強い、しかし殺れる……その確信が彼女にはあった。

 ――ザンッ!! ……ぶば……っ!!

 すれ違い様、刹那一閃。邪神の拳に十字の傷が刻まれ、黒く甘い香りを漂わせる鮮血を散らせた。

「浅い…?」

 斬撃の威力が相殺されている、というのもある。踏み込んでくるものを斬るとなると、その分斬り合いは骨だ。
 しかし、それ以上に、攻勢に出られない理由があった。
 《その瞳はここではない何かを視て(フューチャー・ヴィジョン)》――端的には未来視の能力。ひとところに立ち止まっていた場合、肉体が消し飛びかねない大威力を繰り出している。立ち止まって刀で受けようものなら刀はへし折られ、こちらにまで被害が及ぶことは目に見えている。神経をすり減らしながらカウンターで削り、隙を見せたところで首を斬り落とす。絶対に肉薄されてはダメだ。まずは回避。致命傷を受けなければ、勝機は来る!

「あんぱんは……つぶ餡だろぉッ」
「痛そうなのもそうだけど…」

 ――ぼ……ヒュッ!!

 拳が空を切る。外れたにもかかわらず、ヒュンと切り裂くような音に、びくりと体を震わせた。黒髪の一房が、持っていかれたかのようだ。違う。これは未来。避けた未来。実際に当たっていなくても、幻視した光景は肉体の動きにフィードバックされる。この蓄積を戦闘中の己と重ね合わせ、避ける。避ける、避ける、避ける!! 高速だが、単調な動きだ。狙いも読める。やるべきことは変わらず!

「……この邪神」

 段々と、動きが……?
 未来視と、現状が、段々と近づいてきている。見た未来が、即座にやってきている!? 戦いの最中、攻撃のスピードが上がってきている。間違いなく、脅威がにじり寄ってくる。

「違う…。わたしが疲れてきているだけ……?」

 そのはずだ。未来視で、高速の邪神の動きを捉えるため視界から外さないでいる集中力。それでスタミナを使っているだけだ。邪神の動きは変わっていない。落ち着いて、中距離で呼吸を整え、回避に徹する。ここで焦れては神の思う壺。隠密に長けた己の長所、それは忍耐だ。この優位は手放さない。

 ――ヴン……ッ!

「…な」

 そのはずだった。

「え……何で喰らって?」

 未来を見た。深々と突き立つ拳を見た。
 なぜ? わからない。
 回避はできる、できている。できていた。しかし。光の速さで思考が駆け巡り、静止した世界の中で動揺が無限に膨張していく。刀は手にある。刀が手にある限り、戦える。手は一つ。身を捩って刀を振り抜く。しかし、見た未来は変えられない。変わらない。突如として全身の毛孔から汗が噴き出る。焦り、怖気。足が止まる。邪神を前にして懸命に耐えていた、集中力の糸が千切れ飛んだ。瞼の裏に映る光景が、重なって……来る! せめて、防御を……?!

「あんぱんはつぶ餡だろぉ?」

 甘い、匂い。

「そうか…。そう…か…」

 戦闘中の栄養補給、普遍的な食物による自己強化。……そんな邪神が、いるのだろうか? 抜かった……!

 ――ズッドゴォオゥウウウッ!!

「ンぎっんっはぁあ゛あああ゛ッ゛?!」

 アルタの体が空中でくの字に折れ曲がる。
 それは殴りやすい体勢だ。めり込んだ拳を引き抜いて、もう一度殴りつけるには十分すぎる。

 ――ズッドォオオオ!!!

「お゛おおお゛っェ゛?!」

 邪神には本体と合わせて四本の腕がある。男は宙を舞ったアルタを逃さぬよう、前髪と左肩を掴んでいた。そこに追撃の腹への殴打。決定打として申し分ない、勝敗を決する一撃だった。
 メキメキと骨が軋む音、ぶぢゅぢゅと肉体が内から破壊される音、ぱきぃッと余波で刀が折られた音、ミチミチと筋肉が引きちぎられる音。人体破壊のハーモニーが戦場に奏でられる。それはアルタへの葬送曲に他ならない。ぐるんと、視界が裏返り口端に泡して白目を剥いて地面に倒れ――。

 なかった。

「あんぱんはつぶ餡だろぉ?」
「ぅ…ぐげ……」

 麺麭をくちゃくちゃと咀嚼しながら、さらなる追撃を加えんと振りかぶり身構える邪神。今の攻撃で身体組織はズタズタ、ぼろぼろだ。予知するまでもない……致命傷を受けてしまう。懐から短刀を取り出し突きつけようとして、しかし、その鉄拳の薄皮一つ傷つけることも叶わない。
 拳が体を持ち上げれる感触。重力が振り切れてそのまま宙を舞い、仰向けに地面へと叩きつけられた。

 ――ビキビキビシッ!! ……ズガガッ! メゴォ!!

「お゛ごッ……やめ゛ッ」

 ――ドゴッ!! ボゴォ!! ガゴボ、メギョ!! ボキィボギボギィ゛ッ゛!!

「お゛ッ゛、あ、ぐぅぅ…あ゛ぁぁぁッ…!!」

 口からくぐもった悲鳴が漏れる。目は限界まで見開かれ、端正な顔は見る影もなく吹き出た鮮血と汗と唾液で穢れていた。鳩尾を何度も殴られた果ての、吐血。地には衝撃の余波でクレーターが刻まれる。円に、さらに大きく、広がって、ひび割れる。魔刀士である強靭な体とて、原型を留めているのが不思議なくらいの連撃だ。地面に縫い付けられたようにぐったりとして動けない。飛び散った肉片、血痕は、生きたまま腹を割り裂かれたかのようだ。折れた骨が肉内から一本突き出ている。仮に戦車に轢かれたとしてもこんな無残な姿にはならないだろう。
 しかし、生きている。

「あんぱんは……」
「……も。や……め……ぁ」

 ――ジョボッ! ジョボボボボボボッ……!

 尿が内腿を伝い黒いスーツに滲みをにわかに作っていく。それを恥じらう余裕も、そもそも漏らした自覚すらないだろう。アルタの顔色は、真っ青を通り越して真っ白だ。すでに身体から力が抜け、四肢がだらんと地面に横たえられている。
 それでも追撃は止まない。生きている痕跡が少しでもある限り、猛撃を止めはしない。

「つぶ餡だろぉッつぶ餡だろぉッつぶ餡だろぉッ!!」

 ―― ず ど ん ……っっ! ボキッ……ゴキキキイィィッ!!

「ヴッ?! げ……う……あ゛……!!」

 それでも、緩くなった股座のすぐ上辺りを弱点と思ったのだろうか、下腹部ギリギリの辺りに鉄球を思い切り落としたような一撃を叩き込む。二度で骨までが完全に粉砕されたようだ。それ以上の打撃を加えても、ぱきべきと骨身の音は響かない。
 ――代わりに獣の慟哭を思わせる悲痛な叫びが木霊するのみである。

「お゛っっぎゃッ!? あぐ、ぅ……ぶ……!」
「……あー、んー?」

 ――めぎんッ……!

 ベキンゴキンとへしゃげたような音。

「げ、えっ……!? ぐえええ……」

 ――ぼぎョ゛ッ……! ベキミキみヂいいぃっ……!

 ぷちぷちッともぎ取られていく音。

「あ、お……」

 ―― ず ど ぢゅ っ …… !! 

「……ぅ゛ッ゛!!」

 小刻みに痙攣した体に、時折電流が走ったかのように振動が走る。砕けるものも千切れるものもなくなって、粘っこい水音が打擲に混じって聞こえるようになって、ようやく邪神は攻めの手を緩めた。
 下腹部はかろうじて人体だったことがわかる程度に内外から打ち砕かれ、顔には涙と涎がこびり付いて穢れ果て……クレーターに横たわる、尊厳の砕かれた、ひとりの猟兵を前にして……神は何を思うのだろう。

「あんぱんはつぶ餡だろぉ?」

「……っ゛」

 嗚呼。
 神が思うことを、理解できるはずもない。

 彼は鉄槌を下し続ける。アルタの反応があろうとなかろうと、理解の埒外の暴力を振るい続けるのみだ――猟兵が真に、絶望に堕ちるまで……。

成功 🔵​🔵​🔴​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かにつぶ餡は美味しいですが、こし餡も良いですよぉ?

等と言いましたら、おそらく此方を狙って来そうですぅ。
『FRS』『FSS』を上方に、『FBS』『FMS』を下方に展開し【燦華】を発動、全身を『光』に変換しますねぇ。
相手は『腹パン』を狙う関係上、『間合いに入らなければ良い』のですから、私自身は『光速での移動&飛行』で間合いから外れることを優先して動きつつ『FRS』『FSS』による上からの[砲撃]と、『FBS』による足元からの斬撃で叩いて参りましょう。
邪神さんの意識が他に向きそうなら、『FMS』のバリアを棒状に展開して足を払い転ばせるか、こし餡を褒めて再度気を引きますねぇ。


菫宮・奏莉
……あんパン?
大好物の登場に、テンションは2回転半捻り。
「『つぶ』でも『こし』でも『つぶし』でも『小豆』でもいいのです!
大事なのは『あんパン』ということなのですよ!」

いつもは穏やかな瞳に、ぎらりと妖しい光を宿らせて、
「そこの村人A! 牛乳を用意するのです!」
と、縮地法を使ったような勢いで、腹パン一撃。

「そこのあんパン! 今牛乳がきますですから、もう少し待っているのです!」
と、邪神にもびしっと松葉杖の先端を突きつけます。

邪神が動こうとしたら、【禁足結界】で動きを止めて、牛乳を待ち。

牛乳を持ってきてもらったら、もちろんかじりつくのです!
あんパンと牛乳のエンドレス……どこまでも食べられるのですよー♪



 さて、パン祭りである。腹のパン祭りである。
 賢明な読者諸氏はお気づきであろう。冒頭より語られていた邪神、黒幕の登場である。例によって例の如く言語機能は失われているも同然のため、適宜脳内にて補完していただきたい。
 るこると奏莉は向き合って頷いた。そして確信する。こいつ、知恵は回らないな、と。

「では狙うべきは邪神、ですねえ」
「はい! 狙うのはあんパンなのですよ」

 しばし沈黙。

「「えっ」」
「あんぱんはつぶ餡だろぉ?」
「うわっきたのです」
「確かにつぶ餡は美味しいですが、こし餡も良いですよぉ?」

 プッツン、我を忘れ、猛進してくる邪神。足元に配置された輪圏やチャクラムを無視して突っ込んでくる。飛んだり跳ねたり回避したり等動きがないため派手にすっ転ぶが、そのままぐるぐる回転しながら突っ込んでくる!

「そのまま空中で足止めなのです!」

 血の霧を辺りに散布する。すると超重力に絡められた邪神はきりもみ回転しながら地面に衝突した。頭からめり込む様はなかなかに痛々しい。

「あん?!」
「まさか食することもないと思いますけどぉ、もし口にするなら一口サイズにした方がよいですよねぇ」

 チャクラムを高速回転させて邪神の体勢を直立させると、そこに光速での連撃を叩き込む。無論、自身は距離をとりつつ、攻撃はレーザーと砲撃による飽和射撃だ。切り刻まれて一口サイズどころか、こんがり上手に焼けそうではあるが、しかしてその耐久性は並ではない。歯応えのある敵である彼は、超重力下であるにもかかわらず、ぐぐ、ぐ、と体を押し上げて向かってこようとする。握りしめた拳。狙いはわかっているだけに、仮に拳が届かない距離であろうとも、腹筋が擽られる気持ちである。
 切り刻まれても焼かれても一向にこたえる気配がない。ともすれば打てる手は自ずと限られてくるというものだ。

「そこの村人A! 牛乳を用意するのです!」
「あぱぁ?!」

 奏莉の動きは素早かった。
 何よりお預けを食らっているような状態であったのだ。曲がりなりにも神と崇められるほどの至高のパンチ力とパン力(?)を兼ね備えた存在。当然、漂わせる甘味あふれる香りは極上、今はこんがりと焼き目が入りふわふわ食感を取り戻し、香ばしさに眩むようなほどの魅力を放っている。
 むしろ食わねば。食わねば失礼というもの!

「夢ヶ枝さん、パンはお好きなのです?」
「流石に体型体調に影響が出ないか心配ですが」
「それはオーケーということと受け取ったのです」

 瓶詰めの牛乳を村人から奪い取ると、慣れたような手つきで投げ渡した。ぷるんと体を揺らしながらキャッチしたるこる、すでに蓋に手をつけ準備万端の奏莉。世は広い。オブリビオンを食する専門の猟兵もいるという。しかし今回は専門的な知識は必要とはしないだろう。見ての通り完成した料理、存在。それを食らうのみだ。

「では、いただきますぅ」
「いただきます♪」

 頭から、かぶりついた。
 多少行儀が悪いことは目をつぶってほしい。しかし焼きたて同然の香ばしいパンを、小分けにして両手で持ってだなんて、味わいを損ねてしまうではないか。当たらぬ腹パンが空を切る、それを尻目にるこると奏莉は頬張っては牛乳を流し込む。

「なんて、甘いのでしょうかぁ。カロリーもまさしく邪神級、それがこのサイズとなると、消化するには骨ですねぇ」
「ですけど、んもぐっもぐ、あんパンと牛乳のエンドレス……どこまでも食べられるのですよー♪」
「それには同意しますぅ。確かにつぶ餡は美味しいですが、牛乳と合わせることで咀嚼も容易に、効率よく食べることができそうですねぇ」

 少しでも不穏な動きを見せれば光線の光の檻、さらには松葉杖の斬撃で腱を斬り、頭部を突き出させる。どこから聞いた話だったが、頭部を差し出すヒーローがいるとかなんとか。ならば神とて首を垂れ、猟兵に食されることは決して不思議ではない。
 信者たちもその衝撃的な光景に呆然としている。信ずべき信仰の対象が、全く歯が立たないどころか歯を立てられてしまっている。

「それにしても大変甘く、罪な味。少し持ち帰ってもよろしいものでしょうか……?」
「そんなことは見過ごせないのです。持ち帰るくらいならここで全部いただきます!」

 噛めば噛むほどに食感がつぶつぶ口に当たって心地よいだけでなく、甘味が口腔内に広がって優しく、かつ牛乳のまろやかさを一層強く感じさせる。ここが戦場でなければ、至福のひとときに誰もが心を躍らせることだろう。事実二人も、今だけは戦闘の緊迫感から解き放たれ、舌鼓を打っている。これほどまでの絶頂の味わいを持つ神が、なぜ邪神として崇められ腹パンの道へと進んでしまったのか。

「どうしてこんなに美味しいんでしょうかぁ?」
「この美味しさ、病みつきになるのです」

 そんな高尚な疑問が全く出ないほどに、なるほど、繰り返しにはなるが、罪の味だ。ここは彼女たちの食卓と化したことは、もはや疑いようもなかった。

 彼女たちの視界の外、パン片からみるみるうちに邪神が再生していく。終わらぬ恐怖に、近い未来真っ向ぶつかり合う猟兵の本能! そう。終わってはいない。むしろ、激戦は、加速していく――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーニス・ウィザー
はぁ、はぁ、うっぷ。
も、お腹が限界…嫌な音がしてるよ。
常に痛いし、中身がおかしくなってるよ。

な、なにあれ?
頭がおかしいのがいる、つぶあんって何?
あんぱんにはこしあん一択でしょ!
相容れないみたいだね。

おかしいのに強い!
体調が万全なら負けないのに、動くだけで激痛が。

ならカウンターを狙う。
どうせお腹狙うのは分かりきってるし。

きた、ひきつけて、ひきつけて…打つ!

どう!?

これを耐えられたら一気に不利になるけど。
離れられないなら、お腹は守れず…。

もう内臓も限界だし…。
利かない腹筋では内臓も守られない。

外からぐちゃぐちゃにかき乱されて胃液が上がる。
胃どころか小腸からも口まで…?

ひどい痛みは容赦なく襲って…。


子犬丸・陽菜
(腹を押さえてうずくまっている、地面にはと胃液のまざったものが…)

うぇ…足がガクガクする
確実に内臓潰れてるのが分かる…
心臓が脈打つたびにずきずき…っぐう!?

でもこの状態でもう枷はかなりの威力があるはず

またおかしいのが出てきた
あれ話が通じそうにない、何がつぶあんだよー!
それ以前にこんな邪神聞いたことないよ!

枷で痛みを共有すよ、お腹の痛みを喰らえー!

で、でも、っぐぶ
痛みが強すぎて…!

ズタズタになった内臓を更にやられればもう
う、ごけない…

守れないお腹は的に等しい…
ぐちゃぐちゃと音を立て潰されるはらわたが限界

はぁ、はぁで、も
なんで、痛み以外の何かが、これはなんなの…

んあ…っ、あっ

そ、そんなことないのに



「く……うっ……うぇえ゛ッ……」
「はぁ、はぁ、うっぷ……ぉ゛えッ……」

 陽菜は継続する痛みが限界を迎え吐瀉。ユーニスも万全とは程遠い満身創痍。腹には見るも痛ましい鬱血した痕、横隔膜か何か知らないが呼吸器の異常で酸欠気味に呼吸は荒く、浅い呼吸に混じる酸っぱい吐き気が喉をヒリヒリと痛める。

「子犬丸さん……大丈夫……?」
「大丈夫ですよ……あたしは……うぅ」
「肩を……う……おプッ」

 どちゅ、とあり得ない音がしてユーニスは慌てて片手で己の口元を押さえる。みるみるうちに袖口が赤く染まった。少し身じろぎしただけでフィードバックされるダメージが尋常ではない。臓器を痛めているだけでなく、その傷をほとんど治癒できていないのだ。
 先ほどまで身を寄せ合い、なんとか動ける程度に体力を回復しただけ。動けば傷口は際限なく広がり、彼女たちは苦悶の波間に揺れるほかない。
 一方の陽菜は心臓の脈動のたびに訪れる苦痛に、額に脂汗を浮かべ、視界が白むのをなんとか堪えていた。立ち上がって動こうとするも足が震えまともに進むことさえ難しい。

 その中で、最悪の邂逅――!

「あんぱんはつぶ餡だろぉ……?」

 甘ったるい匂いを漂わせ、降臨、邪神……! のしのしとゆっくり歩を進めてくる、筋骨隆々の怪物だ。

「またおかしいの出てきた……?」
「うん……頭がおかしいのがいる……」

 没交渉なのはもう見ての通りである。
 何がつぶあんだよ、相容れない、それ以前にこんな邪神聞いたことない、つぶあんって何、と口々に心情を吐露する。苦痛を塗り潰す勢いで、こんな訳の分からない存在に負けたくないという純粋な思いが、なけなしの体力を振り絞って闘志を燃やした。ドラゴンランスを構えたユーニスは、陽菜に目配せする。作戦立ててた通り、一撃で決める。《知られざる枷》で動きを止め、急所を突く。短期決戦。というより、もう立っているだけで辛い二人が取れる、ほとんど唯一といえる勝算ある作戦だった。

「きた……!」

 ――ズンっ……ズンっズンっズンっ……!

 足音立てて訪れる恐怖。
 しかし、震えている時間はない。直立するだけで痛みが腹から全身に走るのだ。半ば突き飛ばす勢いで陽菜を無理やり邪神から引き離すと、ユーニスは槍を持って身構えた。
 体調が万全なら絶対に負けない。こちらが負傷してても、あんなふざけた見た目だ。十分戦える。不安なのは時間だけ。

「ひきつけて……」

 ――ズンズンズン!!

「ひきつけて……!」

 ――ズンズオッ!!!

 風を切る。
 音が鳴る。
 拳が、腹前に構えていた切先に当たって火花が散り――!

 竜騎士の槍が、へし折れた。

「え」
「あんぱんはァ゛ッ! つぶ餡だろぉぉおぉッ゛!!」

 理解できないのは当然。どれほど頓狂な振る舞いであろうとも神格を持つ存在。人ならざる膂力を振り翳し、拳は「神罰」に匹敵する。自慢の一振りとはいえ無策に槍先を突き出しても、拮抗するはずもなかった。ユーニスは本質が見えていなかったのだ。苦痛ゆえに歪んだ視界が、理解を拒んだ。「神」を、脳が理解できなかった。
 ゆえに、当然の帰結。

 ――ボッ……グッズドォオオッ!!!

「ふぐうぅおぉぉ゛ォ゛ッ゛!?」

 メキメキミシミシと軋む音のすぐ後、ぐちゃッぷちっと耐えきれなかった繊維が断裂した音が陽菜の耳に届いた。ではユーニスは、というと。

「おッぼおぉぉっ……げうぅぅ、あげえぇア゛ァ゛……!」

 口をパクパクと開閉する様、苦痛に満ちた表情、耐えられず意識が飛ぶ無様な瞬間、痛覚以外の全ての感覚が遮断されてしまったかのようだ。放たれる獣の咆哮、それも断末魔の濁った咆哮が口から漏れ、邪神の前に最大級の隙を晒してしまう。
 ……今の一撃で死ぬことができていたら、どれほど幸せだったろうか。
 しかし、殺めない。神は慈悲深く、その教えを肉体に刻み込む。

「あんぱんはつぶ餡だろぉ!? お?! だろぉおお?! だろおおおッ!!?」

 ――ボゴ!! グシャ!! メッギョ……ガゴ!! ボギっ……ズドォオオ!!!

 飛び散る肉片。血痕。

「ヴェ!? おげぉ!? がッ……おぼ。まォッ……げぇあっほごお゛ッ゛」

 饐えた刺激。鼻と目に錆びた血合いが滲み沁みこんで、そこに涙が混じり合い、混濁される。
 陽菜の攻撃は確かに作用していた。邪神の動きを苛み、鈍らせ、水銀の如く粘り纏わりついていた。ユーニスが辛うじて生きながらえていたのは《知られざる枷》のおかげでもある。

 ――とぼぼ……! ぷしッ……!

 胃から、小腸から。口から股から苦悶の洪水を垂れ流しながら、尊厳も何も投げ打った血みどろの様相にて、それでも槍だけは手放さない。
 それが邪神の興を買った。

「あんぱんはつぶ餡だろぉ……?」

 ギリギリと伸ばした糸で持ち上げ、ユーニスの華奢な、すでに原型をギリギリとどめた肉体を拘束持ち上げ宙に括り付ける。その糸はまさに電極の役割を果たし、実験の非験体の悲壮さを晒しながら更なる苦悶の時を待つ。ばちばちと放たれる電光。このままでは命を摘まれてしまう。陽菜は地を這いながらなんとか、ユーニスに向け手を伸ばした。

「やめて……!」
「あんぱんはつぶ餡だろぉ!」

 ――バリッ……! バチチジジチイヂヂヂィィッ!!

「ま゛ぎゃッあ゛あ゛あ゛ーッ゛!!?」

 届かない。
 拳から放たれた高圧電流が、纏わりついた肉体を焼き焦がし、体から、口から黒煙を発させながら無理やりユーニスを覚醒させる。濁った白目、焦点の合わない視線が湛える感情は恐怖。打ち砕かれた堅盾に、生き残った安堵もない。ただ、繰り出される暴力への恐怖。ぱくぱく口を開けては、垂れる涎を拭うこともなく滂沱と涙を流す、無様。

「かはッ……げおッ…はぉはぁ……ッ。か、ゆ、ゆるして……ゆるし」
「あんぱんはつぶ餡だろぉ!」
「ひッ」

 ――ドゴォォォッ!!!

「あがッ、ぎっ゛……あ゛あ゛あ゛ーッ゛!!?」

 死。死、死。
 少なくとも、揺り動かして鼓動を確認しなければ、陽菜にはその生を確認することはできない。
 同時に、股座にぽわり宿る熱はなんなのだろうか。強いて言えば、興奮。ねばこい蜜が溢れ、潤んだ涙目が握られた拳を目敏く捉え、激しく掻きむしるような痛みが更なる刺激を求めて――!

「ちが、違う。違う……はぁ、はぁで、も痛くて痛い痛いのになんで、痛み以外の何かが、これはなんなの…?」
「あん……っ?!」
「ひッ」

 及び腰。引けたその姿勢に。
 鉄拳がめり込む。無防備な腹へ。

 ――メリメリメリ……ィ!!

「が……げぶ」
「だろぉ?! だろ! だろう? だろだろだろぉが!! だろがアアッ!!」
「がはっ、アは……っげほ、えぼっ……ぐひゅっ……ぉげ!!」

 痛い。実感。熱い。
 インプットされる情報にただただ喜悦の涙、嗚咽しながら、体をくの字逆くの字に折り折られて、べこばこと軋みながら、舌を突き出しながら。
 ああ、気持ちいいと。

「(そ、そんなことないのに……ィ❤️)」

 誰に釈明しているのだろう。身悶えし、股からぷしぃと淫蜜を漏らして、死の絶頂という間際の快感を感じながら、その痛みに笑顔を浮かべる。
 誰がどう否定しようとも陽菜が被虐体質であることは疑いようもないだろう。それを見ているものは神しかいないということを除けば致命的であった。
 神は祝福するだろう。その好奇心を、痛みの先にある幸福を。死に限りなく近い痛みに邪神は膝を折る。陽菜が、ユーニスが、生還したかは二の次だ。少なくともこれだけは言える。気絶していても拳を受けることはできる。繰り出された鉄拳を、無防備な腹で受け止め続ける拷問、地獄絵図。

 彼女たちが解放されたのは、ひとしきり打ち据えられ、ボロ雑巾のようになった後であった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルネ・プロスト
粒餡推しなのにあの頭の中が漉し餡だったら面白いんだけどなぁ
いや、寧ろ自身が漉し餡だからこそあの域の粒餡推しに……?
なんて、戯れた思考は此処まで

ルネ達は人形の身故感電などしようもないが
単純に糸で縛られるのは鬱陶しい
人形遣いが他人の糸で括られるなど笑えもしない

なのであの糸は此処の村人達に受けて頂きましょう
いるでしょう? 操られるに相応しい気絶した馬鹿共が

興が乗ったのであなたの流儀で相手して差し上げます
腹パンには腹パンを。駒盤遊戯一の護りと怪力を具えるルークに邪神の相手を一任

邪神の意識がルークに向いたらナイトを全速疾走
背後に回し速度を乗せたランスでその背を貫く
えぇ、勿論嘘です
此れが此方の流儀ですので


新川・由紀
「正義のヒロイン、ジャスティス・ユキ見参!
これ以上あなたたちの好きにはさせませんわ!」

【経験の少ない新人ヒロインですので、正々堂々と敵の正面に立ってパンチやキックを打つのは基本的な戦い方です。
動きやすいハイレグスーツはほとんど防御力がないので、敵の攻撃に当たらないように戦うつもりだったが、お腹を狙ってくるパンチのスピードは想像以上に速かった……】

「絶対に……負けませんわ……!」

【柔らかい腹の中心と女性の弱点である下腹部に何度もめり込む邪神の拳。それでもまた立ち上がろうとする由紀だったが、背後から邪神のもう二本の腕によって羽交い締めにされて防御不可能な状態になってしまった……】



 神に感情はない。意思はない。思考もなければ、何かを導くようなことも、示すようなことさえしない。にもかかわらず、さっきまでの威勢はどうした? という邪神の態度、そして眼差しに感じるのは、正義のヒロインを自認する新川・由紀(ジャスティス・ユキ・f30061)が、それほどまでに追い詰められていることの証左であった。

「くっ……やああぁッ!」

 裂帛の気合いを込めて正拳突きを放つ。
 赤黒く変色した肉体、その鋼のような強靭さを持つ腹筋で受け止めると、殴った方の由紀の体に強張るような衝撃が走った。ぷるんっと拳から伝播した衝撃で胸が揺れ、びりびりと痺れさせる。このままでは押し負けてしまう。自分の拳が痛むのを構わず、右手左手右手とコンビネーションを放った。

「えいっ……はあ! てぇい!!」
「……あんぱんはつぶ餡だろぉ?」
「な……ッ、効いてませんの……!?」

 笑った、ように見えた。
 どれほど撃ち込んでも効いている様子がない。豆腐に鎹、繰り出した拳がすり抜けているかのような、ともすれば空気でも殴っているかの如き手応えの無さ。額に汗し、豊満な体を揺らしながら、それでも由紀は拳を繰り出し続ける。ルーキーである彼女はそれしか知らない。ゆえに、己の拳はきっと神にまで届くと信じ、愚直に殴っている。

 ――ズドォ……ッ!!

「あ゛ぐっ!?」
「あんぱんはつぶ餡だろぉッ!!」

 ――ドボッ!! めきめき……めリィッ!!

「おぇ……はああ゛っ……!?」

 その思い違いを、邪神は正すだろう。
 否、違えているのではない。思い上がっていたのだ。ルーキーごときがそんなジャイアントキリングを果たせるものか。たしかに彼は邪神としては著しく知性が低く言語も支離滅裂だ。しかし、その肉体は数多の信者を持つカリスマとオーラに裏打ちされた強靭さを持つ。そのスピード! パワー!! それは由紀の想像を遥かに超えて、彼女の柔らかい腹部を破壊せんとついにめり込ませたのだ。
 見た目通りの防御力であったとするならば、ほとんど薄布一枚。鍛え上げた肉体を武器とし、軽量化を重視したコスチュームに、その鉄拳はあまりにも心許ない。めり込んだ拳が由紀の肉体に突き刺さった頃には、骨が軋み肉が穿たれ、意識を削り取るには十分なダメージを彼女に負わせていた。

 ――……ガッ……!

「絶対に……負けませんわ……!」

 なんとか、その手を振り解こうと、腹にめり込んだ拳に、右手を這わせる。
 ズレ落ちかけた真紅のヒーローマスク。しかし奥の青い瞳から、闘志は消えていない。

「わたしは……ヒーローなのですから……!」

 ――ドゴオォッ……!!

「おっがあああ……ッ!?」

 ごぷりと胃液を吐き出す由紀のお腹めがけて、今度は連続で拳の雨が降り注ぐ。

 ――ずんっ! ずんっ! ずどんっ……!!

「うっぶっ、げっっ……!? ごァッ?! が……ぐぶェ!?」

 何度も、何度も何度も執拗に。やがて、ぐったりと折れかけた体を羽交締めにして、決して逃さず。繰り返し――腹だけを狙った拳が、あまりにも重すぎる鉄拳が、彼女の肉体を貫通した衝撃が、音が、惨たらしい実力差を示している。一人では勝てない。ぴちゃっ、ぱた、と血痕が飛び散る。くの字に折れ吐き出された息を呑み込む間もなく、振りかざされる力、それを暴力と言わずして何というだろうか。

 ――ドボっ……!!

「……え……?」

「その薫陶、受けるにふさわしいものがいるでしょう?」

 神に、最大限の敬意と侮蔑を込めて、甘ったるい血の香りをかき消す珈琲のように空気を一片させる、きりりと引き締まる一言。
 人形遣い、ルネ。
 この祭りを眺め、そしてその行く末を見守っては嘆息していたもの。この馬鹿げた奇祭を終わらせるのにふさわしい真打ちである。
 彼女は怪力自慢のドールズナイト・ルークに由紀を助け起こさせると、痺れたように痙攣する体を見遣る。単純な腹部への打撃を繰り返してらように見えて、電撃を放つ糸で対象を縛り動きを封じている。狡猾な神だ。ゆえに逆利用させてもらった。その糸を手繰り、先程倒した彼の信者たちの一人に結びつけたのだ。当然引き寄せられ腹パンを喰らうのも信者。その間に悠々とルネは、由紀を救出したというわけである。

「人形遊びは楽しかったかい。もっとも、このルネの前で見せるには少し、拙かったかな」
「あんぱんは……つぶ餡だろぉッ!!」
「粒餡推しなのにあの頭の中が漉し餡だったら面白いんだけどなぁ。……いや? いや、寧ろ自身が漉し餡だからこそあの域の粒餡推しに……? その中身は……」

 ――がッ……ごォウン!!

 今度は直撃。手応えあり、と思いきや、受けたのはルークの腹。
 大盾に重装、まさしく城。仮に破られたところで修復しているうちに対の一体を出せばよし。もっとも破られることもないだろうが、と盤上を支配するべく、邪神に抗戦を仕掛けるルネ。
 拳が鉄壁に打ち付けられる鈍い音が戦場に響き渡る。
 感電させようにも糸で操ろうにも、人形であるルネたちに通用しない。本来、この手のチープトリックはタネがわれた時点で戦法を変えるべきなのだ。しかし、この邪神には膂力がある。堅固な守りを固めた人形であろうとも、打ち崩せる膂力が。真っ向力のぶつけ合いならば、決着は近い。

「ふ、興が乗ったのであなたの流儀で相手して差し上げます」

 たん、と、肩を蹴って。

「と、言うと思いましたか? えぇ、勿論嘘です。此れが此方の流儀ですので」

 乗り移るは、遊撃騎兵。ナイトの名を冠する機動性の持ち主。背後にあらかじめ回らせていた一体の槍で、差し貫いたのだ。ごぼり、と肉体から黒い血潮のようなものが噴き出す。元より奇妙な風習をこの地に植え付けていた邪神。その流儀を尊重し、則る理由などルネには微塵もない。恨めしげに響く苦悶さえ、心地よく聞こえるくらいだ。

「あ、あああ……ぁ……」

 貫通させた槍を持ち替えて、そのまま上へと割り裂いて。

「なるほど。中身のない、空っぽだったんですね」

 まるでそうだと最初からわかってたように、笑って彼女は言い放つ。
 漂わせる甘い匂いも、誇示するような頭部も、言動も。何もかもが見せかけ、あんパンの餡のカケラも持ち得てないではないか。中身のない風習の残るこの地を統べる神にふさわしい。
 己の顔を掻きむしるようにして、ぼろぼろと屑をこぼしながら、割れる体を押さえつける邪神。そこにタックル気味に飛び込んだ由紀がトドメの肉弾攻撃を浴びせる。たしかに中身はない。やがてあれほど強靭な肉体を誇っていた邪神は、その体全てが小麦粉でできていたかのようにバラバラ粉微塵になって飛び散ってしまった。
 げほげほ咳き込みながら、埃っぽい体を叩く由紀の目線が、ルネとぶつかる。

「な……カラ……。なんて奇妙な姿ですわ……」
「愉快な祭りではあったけどね。そうだね。ヒーローの奮戦のおかげで、正体がつかめた、かな?」
「ヒーロー……え、ええ! こちらこそ、おかげで助かりましたわ」

 ……でも、こういうのはたまに、忘れた頃くらいでいいかな、と深々と嘆息する。飽き性の彼女にはこれくらいのインパクトも続けばマンネリに思えてしまう。それでも、来年くらいにはまた恋しくなってしまう……かもしれない。年一とか。
 イースト菌のおかげか香ばしい風舞う春、猟兵たちは立ち去った。――奇祭の行く末は、誰も知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月07日


挿絵イラスト