大乱闘スマッシュチャンピオン~メイドッキングの謎~
●無限番勝負ロードオブグローリー
それは――あまりにも唐突な出来事であった。
『力持ち』の愉快な仲間たちが護る平和なレスリングの国に空より飛来したのは真っ黒な格闘技用のリングであった。
ロープがたわみ、地響きが鳴り渡るレスリングの国。
愉快な仲間たちは、彼ら全員が平和を愛するレスラーたちばかりであった。
「今宵、最強のベルトホルダーが決まる! お前の力を見せてみろ! 文句があるのならば、俺を倒して見せるのだ。それこそが『無限番勝負ロードオブグローリー』! 力ある者が正義! 弱者はひれ伏し従うのだ!」
その開幕宣言はレスリングの国中に響き渡った。
本来であれば、愉快な仲間たちが一眼となってオウガたちを追い払うだろう。
けれど、何故か今回に限っては戦力の中枢であった『力持ち』たちがフラフラとまるで吸い寄せられるように謎の格闘技用のリングへと歩いていくではないか。
「お前達だな! 挑戦者! 俺の名は『チャンピオン・スマッシャー』! 俺より強い奴ら出てこいや!」
話が微妙に噛み合わない。
どこか頭のネジが一本か二本抜けているような筋骨隆々たる覆面レスラーが咆哮する。
その姿は恐らくリングネームであろう『チャンピオン・スマッシャー』の名に恥じぬ威容であったことだろう。
盛り上がった上腕二頭筋に僧帽筋。分厚い胸板に割れた腹筋は板チョコのようであり、大腿筋はまるで丸太のようであった。
いよっ! キレてるよ! 仕上がってるよ! と囃し立てるのは『うさうさトランプ兵』であった。
本来であれば『ウサウサ』と号令とともに集団で襲ってくるオブリビオンであるが、今回ばかりは違った。
コンバットアーミーのような衣服の下には『チャンピオン・スマッシャー』のように鍛え上げられた筋肉がうごめいていた。
有り体に言えば、みちみちと強化繊維で編まれているであろう戦闘服が悲鳴を上げている。
正直言って、やばい。
「マッスル! マッスル!」
あ、これはあれだな。
さては筋肉おばけだな? もはやレスリングの国はボディビル大会の様相を呈していた。
けれど、問題はそこではない。
「勝者こそが支配者! 弱者こそが奴隷! 俺はお前達に勝負を挑む! 拒否権はない! なぜなら、俺たちこそが絶対強者だからだ! 俺たちはすごいぞ! まずはバトルロワイヤルだ! 者共、マッスルの力を見せつけるのだ!」
『チャンピオン・スマッシャー』の号令と共に『うさうさトランプ兵』たちと『力持ち』たちは勢いよくリングに駆け上がる。
そう、『ロードオブグローリー』。
それこそが猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の持つユーベルコードであり、敗北したものを支配し、配下に加えることのできる絶対支配権である。
それをもって彼らはレスリングの国の『力持ち』たちを配下に加え、来たるべき『超弩級の闘争』に参加させるつもりなのだ。
「ナイスバルクッ! いいよぉ! いいよぉ! 肩にちっちゃい重機乗っかってるよ!!」
いや、違うなこれ。
プロレス勝負というより、己が肉体美を誇る大会になっているような無秩序。いわゆるカオスである。
けれど、このままでは愉快な仲間たちは『ロードオブグローリー』の力によって隷属されてしまう――!
●目指せ、メイドッキング!
「そういうわけなのです」
珍しく、ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)はグリモアベースに集まってきた猟兵達に開口一番そう告げた。
どういうわけだ。
さっぱりわからぬ。そう思う猟兵達の目の前に居たのは、謎のメイド服に身を包んだナイアルテが何故かシャドーボクシングをしている光景であった。
「『無限番勝負ロードオブグローリー』開催なのです!」
お、いつもよりなんかテンション高いな、と思った者たちは正解である。
でも何故メイド服なのだろうか。よくわからん。
ナイアルテも何故メイド服を着ているのか説明してくれないものだから、誰も話についていけない。
そもそも『無限番勝負ロードオブグローリー』とはなんぞや。
「アリスラビリンスに現れた猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の持つユーベルコードの力により、『力持ち』の愉快な仲間たちが彼らの配下に加えられようとしているのです。勝負に負けた者は勝者に絶対服従。それを強いるユーベルコードなのです」
アリスラビリンスは猟書家の侵略を受けている。
彼らの首魁である『鉤爪の男』が目指す『超弩級の闘争』のために『力持ち』の愉快な仲間たちが必要なのであろう。
そのために配下を増やす手段として、『ロードオブグローリー』というユーベルコードが使われているのだ。
「はい。ですので、皆さんは『力持ち』の愉快な仲間たちの皆さんを守りながら、猟書家に勝たねばなりません。彼らとタッグを組んでもよろしいですし、自分たちで試合を勝手に進めてしまうことも良いでしょう。友情のツープラトン攻撃。マッスルドッキング。ええ、とても素晴らしいことだと思います」
ナイアルテの瞳がぐるぐるしている。あれこれなんか洗脳とかそういうあれではないよね? と誰もが思ったかも知れないが、残念素面である。
「私から言えることは、手段を問わず『チャンピオン・スマッシャー』と配下のオブリビオンたちを打倒することです。まずは配下のオブリビオンがリング状で戦いを挑んできます。けれど、どのみちと言ってはなんですが『チャンピオン・スマッシャー』は我慢できずに乱入してくるでしょう」
そうなってしまえば、乱入上等の大乱闘スマッシャーである。
よくあるでしょ、なんかこう、場外にぶっ飛ばしたら勝ち的なアレである。
「皆さんならば、私はやれると信じております。どれだけ筋骨隆々になろうとも、そこに魂、信念が宿っていなければ、それは偽物筋肉です。偽筋です。そんなものに皆さんが負けるなんてありえないのです!」
しゅば! しゅばば!
空を切るナイアルテの拳。ひらひらメイド服の裾が翻っているが、なんていうかテンション高い。大丈夫か。いやマジで。
「大丈夫です。血湧き肉躍る真剣勝負。私も僭越ながら応援させて頂きます!」
いや、転移の維持をがんばって欲しい。
で、なんでメイド服?
「地獄黙示録冥土。それが私のリングネームだからです!」
嘘だろ。クソダセェ。
自信満々なナイアルテ。絶対誰かに騙されてる。メイド服着て欲しいだけだぞ。
そんな彼女に見送られ、猟兵たちは、突っ込むべきか、それとも突っ込まざるべきかに頭を悩ませながら、『無限番勝負ロードオブグローリー』へと飛び込んでいくのであった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はアリスラビリンスにおける猟書家との戦いになります。『無限番勝負ロードオブグローリー』開幕であります。
もはや、言葉は不要! 肉体言語でこそ語り合わねばなりません!
テンションがおかしいのは、そういう猟書家『チャンピオン・スマッシャー』のせいです。
ともあれ、『力持ち』の愉快な仲間たちを救うため、リングに飛び込み猟書家たちを打倒するシナリオになっております。
※このシナリオは二章構成のシナリオです。
●第一章
集団戦です。
猟書家『チャンピオン・スマッシャー』が引き連れてきた『うさうさトランプ兵』たちとの戦いになります。
ムキムキマッチョマンになっており、筋肉こそが正義、筋肉こそが至高と頭まで筋肉になった凄まじい突進力を持ってリング状では『力持ち』の愉快な仲間たちを打倒さんとしてします。
彼らを守り、またはタッグを組み、もしくは勝手に先にぶっ飛ばしてしまうなどして、彼らに塁が及ばぬようにしなければなりません。
●第二章
ボス戦です。
そうこう試合を続けていると『チャンピオン・スマッシャー』は我慢しきれずにリングに乱入してきます。
もうこうなってしまえば、乱入上等の大乱闘です。
一対多数とか、もうそんなことはお構いなしです。とりあず、敵をぶっ飛ばした方が勝ちという脳筋極まりない思考に染まり上がった『チャンピオン・スマッシャー』を『力持ち』の愉快な仲間たちと倒してしまいましょう。
プレイングボーナス(共通)……力持ちと一緒に試合に参加する。
それはで、リングに稲妻走って君と僕とでマッスルドッキング! 猟書家をリングの外までぶっ飛ばす大乱闘な皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『うさうさトランプ兵』
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POW : 落雷II
無敵の【空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : そう、我々はやればできる!
自身の【ゴーグル】が輝く間、【軽量自動小銃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : バーガータイム
【ハンバーガーとフライドチキン】を給仕している間、戦場にいるハンバーガーとフライドチキンを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
イラスト:しちがつ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「マッスル! マッスル!」
リングに木霊する『うさうさトランプ兵』の号令。
それはまるで出囃子のようであり、リングに飛び込む圧倒的な跳躍と共に彼らの身体が飛ぶ。ロープを活用して空中殺法を繰り出すなどお手の物である。
此度のリングにおいて彼らはいつもの『うさうさトランプ兵』とは少し趣きが違っていた。
言う成れば、マッチョ。
一にも二にもなくともマッチョ。
はちきれんばかりの大胸筋が自己主張している。
この筋肉こそが強者の証。
ノー筋肉ノープロテイン。
何いってんだこいつらと思われるかもしれない。みんな思っている。けれど、謎のリングの効果か、それとも『ロードオブグローリー』の効果か。
何の疑問もなく『力持ち』の愉快な仲間たちがリングに上がる。
あちこちにリングが生まれ、プロレス勝負のゴングが今鳴り響かんとしている。
このままではマッチョなオブリビオンたちによって『力持ち』の愉快な仲間たちは過剰なトレーニングとプロテイン、そして鳥のささみ肉とオクラと水だけで強制マッチョトレーニング漬けにされてしまう。
だが、そんなことなどさせてはやれない。
なぜなら、筋肉とは裏切らないものであるが、同時に期待に応えるものである。
他者にトレーニングを共用する筋肉のどこに正義があるのか!
そう、無理なく!
それでいてきっちりと効果的にトレーニングを積むことこそが、真なるマッチョである!
誰の強要でもない! 克己の戦いこそがトレーニングである!
ならば、猟兵よ。
本当の強さとはなんぞやと問うように、今リングインするのだ――!
遥・瞬雷
ここが異世界か。想像以上に奇妙な有り様だねぇ。
宙返りして軽やかにリングに飛び込むよ。力持ちさんに拱手し共闘を申し入れる。
肉体は一つ纏めの器械。筋肉は部品の一様。どれだけ硬い鋼で剣を作ろうと、それだけじゃナマクラだよ。
力だけでは勝てなくても、【功夫】で鍛えた技がある。ロープの反動を活かし【軽業】じみた動きで飛び回り翻弄。心を乱させる。
力持ちさんに目で合図。隙を作るから仕止めて。
敵の突進を真正面から受け止める。強くマットを踏みしめた力を螺旋状にたわめ、全身の力と連動させ瞬間的に【怪力】を発する。発剄と呼ばれる技だよ。
動きを止めた一瞬を突き、相方とのツープラトンで投げ技。コーナーに叩きつけるよ。
アリスラビリンスは小さな世界、即ち不思議の国が集まって出来上がった複合世界である。
数多ある世界の中でも有数の国が点在する世界であり、この世界を知らなかった猟兵にとって、その光景は如何なるものとして映ったことだろうか。
「ここが異世界か。想像以上に奇妙な有様だねぇ」
その老齢なる言葉遣いとは裏腹な妙齢の婦人とも言うべき姿をした猟兵、仙人にして宿星武侠たる遥・瞬雷(瞬雷女仙・f32937)は、アリスラビリンスの世界を見渡し、その奇妙な光景に小首をかしげた。
これまで彼女が識る世界とは封神武侠界だけであった。
けれど、新たなる知見を、見聞を広めるために選んだアリスラビリンスは最初の異世界としては、あまりにも奇妙な世界に映ったのだろう。
それもそのはずである。
『レスリングの国』には今、謎の格闘技用リングが設置され、オブリビオンであるムキムキマッチョな『うさうさトランプ兵』が二組で『力持ち』の愉快な仲間を屈服させんとしているのだ。
「ほう、これが……なら」
瞬雷は駆けた。
彼女の名を示す通り、その足さばきは電光石火の如く。リングへと軽やかに宙返りして飛び込む姿は、まさに落雷のようであった。
「肉体は一つ纏めの器械。筋肉は部品の一部」
右拳を左掌で包み込む『拱手』を持って礼を失することのない瞬雷の姿は、まさに流麗なる貴婦人の所作であった。
例え、彼女の姿形が妙齢の女性であったとて、その身に秘められた熟練為る術は些かも陰ることはない。
「マッスル! マッスル! 猟兵うさ!」
『うさうさトランプ兵』たちがどよめく。
その立ち振舞、只者ではないと知るからこそであろう。
「どれだけ硬い鋼で剣を作ろうと、それだけじゃナマクラだよ」
彼女の瞳が『力持ち』の愉快な仲間たちへと向けられる。それは合図であった。今此処にリングインした闖入者に対して『うさうさトランプ兵』たちは迫る。
問答無用であった。
相手が貴婦人であろうと関係ねぇ! あ、そんなの関係ねぇ! とばかりに『うさうさトランプ兵』たちは小銃を構える。
プロレス精神どこ行った。
けれど、瞬雷は戸惑うことなどなかった。相手が如何なる存在であったとしても、彼女には『功夫』がある。鍛えられた技があるのだ。
その華奢な身体のどこにそんな力があるのだろうかと思うほどに俊敏なる動きでロープをバネにして軽業染みた動きで『うさうさトランプ兵』たちを翻弄するのだ。
「マッスル! マッスル! こいつ、早いうさ!」
もうマッスルなのかうさなのか、語尾というか口癖を統一して欲しい。
ちょっとわけわかんなくなってくる。
「功夫が足りないねぇ……そんなので一々心を見出していたら――!」
正面から突進してくる『うさうさトランプ兵』の身体を受け止める。
凄まじ肉と肉とがぶつかる音が響く。けれど、瞬雷は、そのか細い手足で二体の『うさうさトランプ兵』を受け止めていたのだ。
なんたる功夫!
力強くマットを踏みしめた力を螺旋状にたわませ、全身の力と体重移動を連動させ、ゼロ距離の体勢から放たれるは摩訶不思議なる力。
彼らは何が起こったのかさえ理解できなかったことだろう。
こちらの突進の力を大地に流し、その大地の力を得て、瞬雷は増幅された弛まない連続動作のロスを限りなく零に近づけて拳に載せたのだ。
「そう、これを人呼んで『発勁』。我等女仙にとって、基礎中の基礎。されど、基礎を忘れることなかれって、ねぇ」
吹き飛ばされた『うさうさトランプ兵』たちがマットに沈む。
けれど、彼らはまだ立ち上がろうとしている。
その瞬間、瞬雷の合図と共に『力持ち』の愉快な仲間たちが走る。
そう、すでに視線で打ち合わせていたのだ。心優しき『力持ち』と瞬雷の即席ツープラトンが炸裂する。
漸く立ち上がった『うさうさトランプ兵』は見ただろう。
瞬雷と『力持ち』が凄絶なる投げ技を決めようとしている瞬間を。
「乱戦遊戯、此処に極めり!」
二人の投げ技が決まり、リングのコーナーへと叩きつけられる『うさうさトランプ兵』たちが霧散し消えていく。
瞬雷は『力持ち』の愉快な仲間と拳を突き合わせる。
あまりにも凄まじい膂力は、彼女の見目に似つかわしいものであったが、しかして、そのギャップこそがリングの外の観客たちを大いにわかせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
プロレスかー。
肉体系は得意ではないけど、メイドおっけーなら話は別だね。
ナイアルテさん、電脳冥土の魂はわたしが持っていくよ!
と、いうことで、コスチュームはもちろんメイド服。
華麗にリンクサイドでつまづきますが、それも(たぶん)計算。
みんなが呆然とした隙に『力持ち』の愉快な仲間たち
の前にでるよ。
そ・し・て【偽装錬金】で作った噴射機で、
『うさうさトランプ兵』にいきなりの緑の毒霧攻撃!
「メイドがベビーフェイスと誰が決めたー!
あいあむ なんばーわん ひーる(どやぁ)
さぁ、愉快な仲間のみんな、いまだよ!
と、こちらも偽装錬金で作り出した凶器、
(椅子、鎖、フォーク、アイアン●ィンガーフ○ムヘルなど)を渡すね!
アリスラビリンスの『レスリングの国』には今無数の格闘技用リングが敷設されていた。
それは猟書家『チャンピオン・スマッシャー』のユーベルコード、『ロードオブグローリー』の力の賜物であった。
敗れたものを屈服させ従わせる力。
それを十二分に発揮させるのがプロレスであった。
「うさうさ! じゃなかった、マッスル! マッスル! 俺達より強いヤツ、出てこいやー! うさ! マッスル!」
もう語尾をどっちかにしてほしい。
それほどまでに会場のボルテージは上がりっぱなしであった。
彼らはオブリビオン『うさうさトランプ兵』。しかし、様子がおかしいのは『チャンピオン・スマッシャー』の配下となっているからである。
そう、マッチョなのである。
はちきれんばかりの大胸筋がアーミージャケットの下から主張しまくりであった。
そんな彼らの様子を見ていたのは、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)であった。
彼女はメイド服に身を包んでいた。
正直言って、可憐である。
一番プロレスから程遠い場所にいるメイドさんであった。けれど、彼女の瞳は闘志に、いや、託された思いに燃えていた。
「プロレスかー。肉体系は得意ではないけど、メイドおっけーなら話は別だね。電脳冥土の魂はわたしが持っていくよ!」
ロングスカートの楚々とした佇まいのまま、理緒はリングイン。
けれど、お約束かな。
リングサイドで盛大に躓いてしまう。
ふ、ドジっ子メイド。やるな、あいつ……とか後方でプロデューサー面している愉快な仲間たちも居た。
そう、これは計算なのである。
『うさうさトランプ兵』たちも、愉快な仲間たちも、呆然としている。
だってそうだろう。いきなりリングインしてきたのがメイドさんなのだ。それもとびっきりの美少女やぞ! 驚かないヤツのほうがおかしい。いるなら出てこい、直談判したるわ!
「……」
えへ、と理緒が立ち上がって微笑めば、会場が湧き上がる。
別の盛り上がりしていることは気にするな。美少女メイドの前では些細な問題である。
「だ、だいじょうぶうさ……?」
敵ながら、若干心配になった『うさうさトランプ兵』にいきなり緑色の毒霧攻撃が浴びせられる。
それは理緒がユーベルコード、偽装錬金(ギソウレンキン)にて事前に用意していた噴射機による悪役もびっくりの卑劣なる攻撃であった。
「メイドがベビーフェイスだと誰が決めたー!」
えぇ……。
まさかのヒール。ヒールメイドである。あっ、もしかしてピンヒール履いておられる? 踏んでください! と謎の『うさうさトランプ兵』たちが殺到したのは別の話である。
「あいあむ、なんばーわん、ひーる」
まさかのドヤ顔である。
なんだよ、その属性てんこ盛り。ずるいぞ! まさかの先制攻撃に緑色まみれになった『うさうさトランプ兵』たちが呻く。
もしかしなくても今である。
「さぁ、愉快な仲間のみんな、いまだよ!」
その言葉を待ってましたとばかりにリングインしてくるのは、多数の愉快な仲間たちであった。
みんなメイドさん大好きなのである。
もうこうなってしまったらしっちゃかめっちゃかである。何がなんであるかさっぱりわからない。
怒涛の乱闘に『うさうさトランプ兵』たちは為す術もない。
さらにいつのまにか理緒はユーベルコードで作り上げた椅子やら鎖やらフォークやら、アイアン……おっと拙いぞ。
などなどを愉快な仲間たちに手渡し、自分はリングコーナーに立ち、高みの見物である。
まじでヒールメイドである。やべぇ。女王様ヒールメイドだ。
リングネームは決まったも同然であるが、だせぇ!
「ふふ! これでこのリングはわたしたちの勝ちだね!」
優雅にロングスカートをはためかせ、理緒はメイドさんらしく恭しい一礼をして、勝利宣言をリングに轟かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
マグダレナ・クールー
こんにちは、愉快な仲間たち。貴方ベビーですね? ベビーでしょう!!
わたくしは貴方に花を持たせます。いいですね? では行きますよベルトを取りに!!!
わたくし、知っています。グーパンは反則技ですが一瞬のことなのでカウントが取れない事を。5カウントまでは反則は許容される事を
居ますか? 審判。見てますか? 審判!!
タップされても締め続けますよ!!? 貴方も何ですかその筋肉は見せ筋ですか!?
一方的な展開はプロレスにあってはなりません反撃してきなさい。集団でかかってきなさい!
あー困ります! あー愉快な仲間たちの中に団子状態に飛び技でわたくし諸共フィニッシュを決めたい方はいらっしゃいませんか!!? わー!?
『レスリングの国』にゴングが鳴り響く。
突如として出現した格闘技用のリングの上にはムキムキマッチョな『うさうさトランプ兵』たちが座し、挑戦者を待つ。
しかし、これは罠である。
猟書家『チャンピオン・スマッシャー』のユーベルコード『ロードオブグローリー』による力によって『力持ち』の愉快な仲間たちはふらふらと呼び寄せられているのだ。
この戦いに敗北した者は勝者の支配下に入る。
即ち、『超弩級の闘争』を目指す猟書家たちにとって、『力持ち』の愉快な仲間たちを手駒として手に入れようとした悪辣なる企みなのだ。
「うさうさ、マッスルマッスル! これで我等の配下に加えてやるマッスル!」
もうホントどっちかにしてくんないかな語尾。
『うさうさトランプ兵』たちは、リングに上がってきた『力持ち』たちをコテンパンにしてやろうと待ち構えているのだ。
けれど、案ずることなかれ。
ヒーローは遅れてやってくるし、ヒールがいるのならばベビーフェイスだっているのである。
勢いよく空より飛び込みリングインしたのは美しい金色の髪がたなびく女性であった。
そう、彼女の名は。
「こんにちは、愉快な仲間たち。貴方ベビーですね? ベビーでしょう!!」
凄まじい勢いである。
ノリとかそんな次元ではない。もうキレッキレである。そう、彼女の名はマグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)。
そう、暴力! 暴力こそが全てを解決する。
マグダレナ、そのリングネームは撲殺聖女。
今考えただけであるが、リングネームの決定とは時としてそんなものである。ともあれ、撲殺聖女ならぬマグダレナはリングインと同時に相方になるだろう『力持ち』の愉快な仲間にそう言い放ったのだ。
「わたくしは貴方に花をもたせます。いいですね? では行きますよベルトを取りに!!」
もう問答無用であった。
なにおう! と『うさうさトランプ兵』の顔面がいきなりひしゃげる。
え、と誰もが思っただろう。
鮮血がほとばしり、『うさうさトランプ兵』の一人がリングに沈む。一体全体何が、と思った瞬間にマグダレナが美少女の顔のまま言うのだ。
「わたくし、知っています。グーパンは反則技ですが一瞬のことなのでカウントが取れないことを。5カウントまでは反則は許容されることを」
まさかの反則技宣言。
いや、自己申告。え、ちょっとまって、今グーパンしたの? されたの俺? と『うさうさトランプ兵』たちは鼻血だらだら流しながらキョトンとしている。
そらそうなるでしょ。
だっていきなりである。
「え、え、ちょっとま――」
ぱかぁん! とすごい音がした。次の瞬間、マグダレナの前に詰め寄った『うさうさトランプ兵』の鼻血が迸る。
えぇ……問答無用じゃん……。
「はんそく……」
「居ますか? 審判。見てますか? 審判!!」
怒涛の連続技であった。いつのまにかキめられているではないか。『うさうさトランプ兵』たちがタップしているが関係など無い。
そう、締め続けるのだ。いやマジで撲殺聖女じゃん。やべぇじゃん! と誰もが思っていた。
「貴方もなんですかその筋肉は見せ筋ですか!?」
凄まじい力技であった。もう誰もマグダレナを止められない。相方になった『力持ち』の愉快な仲間たちですら、若干引いてるではないか。
けれど、いきなりスン。となったマグダレナが5カウントの前にいきなり彼らを開放して立ち上がる。
え、なんで?
カウントがオーバーしたら、この一方的な試合も終わると安心していた『うさうさトランプ兵』たちは、えぇなんでぇという顔でマグダレナを見上げる。
「一方的な展開はプロレスにあってはなりません反撃してきなさい。集団でかかってきなさい!」
まさかの挑発である。
リング外にいる『うさうさトランプ兵』たちを挑発したのである。
ベビーフェイスどころではない。
此処にあるのは撲殺聖女、マグダレナ・クールーである。
「やったらー! 何が見せ筋じゃい! おんどりゃー!」
もう、うさとかマッスルとかの語尾すら忘れた『うさうさトランプ兵』達がリングに殺到する。
あーもーめちゃくちゃだよー!
団子状態のすし詰め状態になったリングにマグダレナの呼びかけが迸る。
「あー困ります! あー愉快な仲間たちの中に団子状態の彼らに飛び技でわたくし諸共フィニッシュを決めたい方はいらっしゃいませんか!!?」
まさかの諸共フィニッシュ。
えぇ……と困惑しているのは『うさうさトランプ兵』たちばかりである。
此処まで来ると様式美もブックも関係ない。
やけくそのように相方であった愉快な仲間がリングコーナーに飛び乗り、華麗なりジャンプ技で団子状態の『うさうさトランプ兵』たちを吹き飛ばすのだ。
けれど、団子状態である。
当然というか、もれなく……。
「わー!?」
マグダレナもリングアウトである。あ、頭から劇画タッチに落下した!?
けれど、むっくりマグダレナは立ち上がり、にこやかに愉快な仲間たちとハイタッチを決める。
それはまるで怪物じみた戦いであったが、大いにリングを沸かせたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと
「無限番勝負ロードオブグローリー!
勝負に負けた者は勝者に絶対服従!
うむ、最強たる我にふさわしいルールよな!
気に入った!」
重力のある幸せを噛み締めながらリングに向かって呪文を詠唱しよう。
会場ごと魔法で吹き飛ばして我の実力を見せるとしようか!
「む、美での勝負とな?
くくく、美しさで、この究極美少女の我と競おうなど100年早いわ!」(ない胸を張る
って、誰だ、我が100歳過ぎのババアなどと言ったのは!?
ともかく、ここは我の美しさで……って、え?
筋肉?マッスル?肉体美?
「くっ、我、成長が止まってるから筋肉も付かんのだ……
ま、負けた……」(がくっ
呆然と弟子(魔法で成長した)を見やる我であった。
ルクス・アルブス
フィア師匠と
師匠、最近やたらと大地を踏みしめてますね?
なにがあったんでしょう?
と、考えていたら、いきなり詠唱を始めたので、
「師匠、会場ごと吹き飛ばしたらまた逃亡生活ですよ!?
こんどこそごはん食べられないですよ!」
「それも違います!?
だいたい師匠、可愛いですけど『100年ぺったん』じゃないですか!」
筋肉、つかないんですね。
不老不死も苦労が多いのかも……。
って、敗者は好きにされちゃうんじゃ!?
「それはわたしの役です! 師匠は渡しません!」
リングサイドでいきなり変身して、乱入。
師匠はわたしのものだー!
と、【カンパネラ】でリングごとウサギを粉砕です。
あ、師匠、今夜はウサギのシチューにしましょうか♪
「『無限勝負ロードオブグローリー! 勝負に負けた者は勝者に絶対服従!」
それが『ロードオブグローリー』と呼ばれるユーベルコードの力であり、絶対たるルールである。
このルールを悪用して猟書家『チャンピオン・スマッシャー』はアリスラビリンスに住まう『力持ち』の愉快な仲間たちを『超弩級の闘争』のための手駒に加えようとしているのだ。
許されることではない。
何故、『力持ち』の愉快な仲間たちが強いのか。それを理解しているのならば、そのような『超弩級の闘争』などに参加させられるわけがない。
彼らはアリスのためにオウガから守るために力を身につけた。
『レスリングの国』とはそういう困難に立ち向かう者のためにある国なのだ。それを猟書家に脅かさせてはならぬと立ち上がった猟兵が――。
「うむ、最強たる我にふさわしいルールよな! 気に入った!」
あれ? と思ったかも知れないが、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の言葉にあえて突っ込むまい。
フィアは何故か地面のある事実に非常に幸せを感じていた。
何故、と思われた方はスペースシップワールドの事件を参考にしようね。ひどい目にあったのである。まあ、なんていうか、こう、若干自業自得な所がないわけでもないのだけれど、まあ、因果応報ってやつである。
しかし、そんな師匠に何があったのかをわかっていない弟子、ルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)は師匠がやたらと大地を踏みしめている姿に小首をかしげるばかりである。
「なにがあったんでしょう?」
答えはでないし、師匠であるフィアは絶対に口をわらんだろう。
師匠の威厳というやつがあるのである!
「漆黒の魔女の名に於いて――」
おっといきなりの開幕竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)である。
ははーん、これはこりてないな、と誰もが思ったことだろう。しかもフィング毎ぶっとばすつもりである。
ぶっぱするのは気持ちいい。わかる。
とてもよくわかる。日々のストレスが吹き飛ぶ思いがするのもわかる。けれど、今はそれをやってはならないのだ。
前々回も、前回もそうであったのだ。ぶっぱした結果の逃亡生活である。
「師匠、会場ごと吹き飛ばしたらまた逃亡生活ですよ!? 今度こそごはん食べられないですよ!」
ルクスが慌てて詠唱を始めたフィアを止める。
正直言って、ルクスもぶっぱの被害者である。毎回師匠の尻拭いならぬ、賠償補填に忙しいのである。
そのせいで師匠から色々教わることができないるのだ。
「む……たしかに」
「うさうさ! そんななまっちょろい魔法なぞに頼っているから、そうなるうさ! 我等のように、見よ! この肉体を! 魔法は裏切るかもしれないが、筋肉は裏切らないマッスル!」
いいから語尾。
統一して。あくしろよ。そういいたく為るのをこらえる。フィアは魔法に関してそう言われては黙っていられない。
「故に! 我等の肉体美で競ってもらおうか!」
話が見えてこないぞ。大丈夫か。これ、一応プロレス競技的な戦いのはずなんだけど、『うさうさトランプ兵』たちも目的を若干見失っている。
自分の肉体美を誇りたいだけだなこれ! 鬱陶しいマッチョだ!
「美での勝負とな」? くくく、美しさでこの究極美少女の我と競おうなど100年早いわ!」
無い胸を張るフィア。100年どころか1000年早いと思うが、乗っかってしまったものはしかたない。
「それも違います?! だいたい師匠かわいいですけど『100年ぺったん』じゃないですか!」
おっと、ルクスそれ以上いけない。
まさかの背後から味方に打たれるというやつである。ルクスの言葉はフィアを背後から串刺しにした。
あまりにも痛烈なる言葉は、フィアの心をべっきり折ったであろう。
おう、誰だよ、100歳過ぎのBBAとか言ったヤツ。最高じゃろうが!
「ともかく、ここは我の美しさで……」
しかし、フィアも負けてはいない。彼女とて悪魔である。それはもう超弩級美少女なのである。
だからこそ、負けられない。
けれど、これは筋肉の勝負である。故に、変わらぬ身体を持つフィアは一切筋肉らしい筋肉がつかないのだ。
「くっ、我、成長が止まってるから筋肉もつかんのだ……ま、負けた……」
えぇ……。
ルクスは困惑していた。だって、まさかの戦う前からの敗北。しかも、勝手に負けているのだ。しかし、これは『無限番勝負ロードオブグローリー』である。
敗者は勝者に絶対服従なのである。即ち、この勝負の敗者であるフィアは『うさうさトランプ兵』たちの好きにされてしまうのだ。
「うさうさ! ならば、貴様も我々の筋肉体操第一の伴奏者になってもらうマッスル!」
お、結構健全。むしろ、いいのではないだろうか。
けれど、ルクスは違う。師匠を好き勝手にしていいのも、伴奏するのも全部全部ルクスの役割なのだ。
「それはわたしの役割です! 師匠は渡しません!」
リングインすらしていなかったフィアをよそにルクスはいきなり返信しての乱入である。
「師匠はわたしのものだー!」
グランドピアノという凶器を振りかぶるルクス。それはユーベルコードであったけれど、単純にもう鈍器で撲殺する類のあれである。
叩きつけられる魔力のこもったピアノの一撃は『うさうさトランプ兵』たちを圧潰させる。
ひぇ。
聞いちゃいけない類の音が聞こえたような気がしたが、良い子には届かない音であるからご配慮大丈夫です。いやほんとまじで。
「ふぅ……あ、師匠、今夜はウサギのシチューにしましょうか♪」
それを呆然と見やるフィア。
これが弟子の成長か……なんて感慨に浸ることができるのもまたフィアの器の大きさであろう。
正直言って、アレを見た後でシチューという発想が出てくるところが我が弟子ながらちょっと怖いなと思ったり思わなかったりするフィアなのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏑木・桜子
謎の覆面美少女レスラー、マスクドブシドーとしてリングに乱入します。
覆面なのに何故美少女とわかるかは企業秘密です!
こちらは空中殺法が得意そうな構えで距離を取ってタックルを誘います。
突進力があがろうとくるとわかる攻撃をかわすことは難しくありません。
相手がタックルをしてきたらさらに距離を取って動きが直線的になったのを見計らって横にかわしそのまま組みつきます。
距離を取ったのはスピードで翻弄するためではありません。
ぶつかり合うとウェイトで劣るわたしが不利ですから…こうして純粋にパワー勝負に持ち込む為です!
びったんびったんを使用してそのまま相手の体を掴んでマットや相手のタッグパートナーに叩きつけます!
レスリングとは即ち組み合うことである。
同時に『困難と戦う』という意味も持つ強く、気高い精神性を有する競技であることは言うまでもない。
アリスラビリンスの『レスリングの国』はそうした『力持ち』の愉快な仲間たちが多く住まう国であり、彼らの力によってオウガから守られていたのだ。
けれど、猟書家『チャンピオン・スマッシャー』のユーベルコード、『ロードオブグローリー』の力は、そんな気高い精神すらも『超弩級の闘争』の駒としてしか彼らを見れないのだ。
それはあまりにも悪逆無道なる行いである。
であるからこそ、人は正義の味方を求めるのだ。
「うさうさ! マッスルマッスル!」
もう語尾なんだか掛け声なんだか判らない大胸筋をピクピクさせてアッピールしているオブリビオン『うさうさトランプ兵』たちがリングの上でマッスルポーズを取っている。
遠からずんば近くに寄ってみよ。
これが筋肉の力だと言わんばかりに見せ筋を誇示する。
本来であれば、『力持ち』たちはこんな挑発に乗らない。けれど、ユーベルコード『ロードオブグローリー』の力によって格闘技用のリングに吸い寄せられていくのだ。
「そうはさせません!」
その声はリングサイドのコーナーの上から響いた。
小さな少女の体躯。けれど、その身に秘めたる強靭な意志はされど、幼子にあらず。
謎の覆面美少女レスラーの姿があった。
一体、何鏑木・桜子(キマイラの力持ち・f33029)なんだ。
「違います違います。わたしは、『マスクドブシドー』! 覆面なのに何故美少女とわかるかは企業秘密です!」
そんなふうに桜子の宣言と共に彼女はリングに舞い降りる。
その優れた膂力を恐れた両親によって物心つく前にとある剣豪に預けられた彼女は猟兵として優れているだけでなく、その怪力と身に秘めたブシドー精神を体現しているのである。
正直に言っていいだろうか。
マスク程度で彼女の清廉なる美少女オーラが隠せるわけがないのである!
「ぬかせうさ! 幼女だろうと美少女だろうと容赦はしないマッスル! それがこのリングの掟うさ!」
あーもー語尾がとっちらかりすぎだよ。
そんな掛け声と共に『うさうさトランプ兵』たちが桜子へと突進する。
だが、桜子は慌てる素振りなど見えなかった。
「突進力が上がろうとも、くるとわかる攻撃を躱すことなど難しくありません!」
桜子は、いやさマスクドブシドーはタックルから距離を取るように背後に飛ぶ。
『うさうさトランプ兵』たちが一直線になった所で、彼女は横に回り込み組み付くのだ。
まさに『レスリング』。
組み合うことこそがレスリングの醍醐味である。
「なにぃ! こいつ、スピードを殺すために飛んだのではなく、組み付くために……うさー!?」
「そのとおりです。スピードで翻弄するためではありません。ぶつかりあうとウェイトで劣るわたしが振りですから……」
桜子の瞳がユーベルコードに輝く。
それは彼女の有り余る天性の怪力がユーベルコードにまで昇華された力である。
『うさうさトランプ兵』たちの体を掴んで、軽々と持ち上げるのだ。
「俺のマッスルボディが軽々とぉ、うさぁ!?」
「これくらい簡単です! さあ、ブシドーらしくお仕置きの時間です!」
びったんびったんと『うさうさトランプ兵』の身体をマットにしたたかに打ち付ける。
それはもうなにか軽いものを叩きつけるように桜子の膂力で持ってマッチョメンが左右に打ちのめされるのだ。
「こうして単純にパワー勝負ならば、わたしが負ける理由などないのです! マスクドブシドーの必殺技……えーと、えーと、とにかく!」
力いっぱいびったんびったん!
えぇ……そのネーミングでいいのかなぁ、と見ていた愉快な仲間たちは思った。
もうちょっとなにかあったのではないだろうかと思ったが、文字通り桜子の怪力は、『うさうさトランプ兵』をマットに叩きつけ、おまけにタッグパートナーへと叩き返すのだ。
「軽いものです。信念無き筋肉には、何物も宿らない。本来の信念宿りし筋肉であれば、わたしにも軽々とは無理だったはず。けれど、あなたたちの筋肉は軽いのです!」
マスクドブシドーは宣言する。
健全なる精神は健全なる身体に宿る。ならばこそ、本物の筋肉には、何物にも揺るがされることのない、重厚なる魂が宿るのだと――!
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
ナイアルテはマジかよ。大丈夫か?
無限番勝負ロードオブグローリーより地獄黙示録冥土の方が気になるわ。
まあ、いい。まずは筋肉ウサギを蹴散らそうか。
おーい、そこの力持ち、そうおめーだ。腕をラリアットの形に出しな。
よし、そのまま、思いっきり踏ん張りな。いくぜ。
(と『戦闘モードⅠ』を発動。うさうさトランプ兵の首に腕をかけ、そのまま飛ぶようにというか飛んで力持ちが腕を構えているところへ)
おーら、クロスボンバーだ。
(うさうさの首がどうなったかはお見せできません)
といった感じに適当に楽しんで暴れまわります。
敵POWUCの攻撃機はもし出たら、阿呆、プロレスしろ、と稲妻走らせて撃墜します。
プロレスには余人に知り得ないなにか、不可思議な魅力が詰まっているのかも知れない。
普段はおとなしいグリモア猟兵もなにかテンションがおかしかった。
きっと何かがあったに違いないと思わせるには十分なテンションであった。アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)は、マジかよと思ったし、大丈夫か? とすら思ったのだ。
まあ、大丈夫でしょう。
特に問題ない平常運行です。
「『無限番勝負ロードオブグローリー』より、そっちの方が気になるわ」
割とごもっともな感想をアレクサンドルはいだきながら、アリスラビリンスの『レスリングの国』へと降り立つ。
格闘技用のリングにはすでに『力持ち』の愉快な仲間たちと、ムキムキマッチョになった『うさうさトランプ兵』の姿があった。
もう試合は始まっているようであるが、勝者が敗者を強制的に従えるユーベルコード『ロードオブグローリー』の力であろうか、大胸筋をアッピールしながら『うさうさトランプ兵』たちが『力持ち』の愉快な仲間を痛めつけているではないか。
「口ほどにもないうさ! 我等が大胸筋の前に触れ伏すマッスル!」
もう語尾がどうにも統一されていないせいか、正直アレクサンドルには意味がわからなかった。
「まあ、いい。まずは筋肉ウサギを蹴散らそうか」
アレクサンドルは深く考えることをやめた。
正直、なんでメイド服なのか、何故地獄黙示録なのか。気にならないでもない。けれど、その謎は未だ解明されていないのだから、目の前で繰り広げられている残虐非道為るデスマッチを止めるほうが先決であった。
「おーい、そこの『力持ち』、そうおめーだ」
その声に顔をあげるマットに沈みそうになっていた『力持ち』の愉快な仲間。
アレクサンドルは声をかけると同時に黄金の魔力に身体を包み込み、リングインする。
「ぬぅ! 猟兵うさ! 今更来た所でもう遅い! 我等の完璧なるコンビネーションの前に敗れ去るがいいマッスル!」
ユーベルコードに寄って飛び出したのは、空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機であった。
おいまてこら、とアレクサンドルの稲妻が落ちる。
えぇ……。
どう考えてもプロレスとはかけ離れた光景である。正直に言って、なんでそんなことになったのかわからない。
「阿呆、プロレスしろ」
アレクサンドルはやれやれと頭を振る。いくらなんでも、そういう空気の読めないアドリブは頂けないと戦闘モード Ⅰ(ディアボルス・ウーヌム)へと移行した彼が飛翔する。
一気にリングを駆けるアレクサンドルが一人の『うさうさトランプ兵』の首へと腕を描けるように飛ぶように……というか、飛んだ!
え、それはプロレスでいいですか! と誰かが突っ込んだ気がしたが、アレクサンドルはいーんだよ、と軽く笑っていた。
「腕をラリアットの形に出しな! よし、そのまま思いっきり踏ん張りな……――いくぜ」
アレクサンドルが告げる。
それはまさに死刑宣告であった。『力持ち』の愉快な仲間がうなずく。
まさか、と『うさうさトランプ兵』が青ざめる。
そう、そのまさかである。
ラリアット。いや、これは!
「おーら、クロスボンバーだ」
おらぁ! とアレクサンドルと『力持ち』のラリアットが『うさうさトランプ兵』を挟み込むように交錯する。
それはまるでギロチンカッターのように『うさうさトランプ兵』を首チョンパする。
映像ではちょっとお見せできないが、まあ、ちょと残虐ファイトらしい、えーと、まあ、そのぉ、ショッキングな映像になりますのでぇ。
「これがツープラトン攻撃ってやつだ。どんどん行くぜ!」
アレクサンドルはもう笑っている。
正直に言って『ロードオブグローリー』とかどうでも良くなってきている感はあった。
思いっきり楽しんでいる。
戦いを楽しむことをこそ、彼が行ったのはきっとリング外に座す猟書家『チャンピオン・スマッシャー』を挑発する意味合いもあったのだろう。
……そうだよね――?
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
鍛えることは良いことですが、
歪んだ心を宿す筋肉など敵ではないですよ!
力持ちさんとタッグでプロレスに臨みます
まずは受け。【挑発】して攻撃を誘い、
相手攻撃を【見切り】、その上で回避せず
堂々と【オーラ防御】で受け止め耐えてから反撃のスタイル
分かりますか?これが野生と猟兵生活が培った……筋肉ですッ
【力溜め】た【怪力】の投げ技はきっと
【鎧無視攻撃】になるでしょう
力持ちさんのピンチには【かばう】ことでカットイン、
お返しにツープラトンの【カウンター】と、
もし観客がいれば盛り上がるような動きを意識
フィニッシュは投げ落としたに追撃のヒップドロップ
《トランスクラッシュ》で決め
ダイビングピーチボンバー……ですよッ!
身体を鍛えることは困難に立ち向かうことである。
故に人々は己の身体を鋼鉄に変えようと鍛え上げる。今己が面している困難よりも、さらなる困難を乗り越えるために心身を鍛えるのだ。
けれど、時として人は目的と手段が逆転する生き物である。
鍛えるために生きる。生きるために鍛える。
それらを履き違えた時、その肉体に宿る魂は果たして健全と言えるであろうか。
「うさうさ! 小難しいことは取っ払えばいいうさ! 兎にも角にもかかってこいやー!」
『うさうさトランプ兵』たちは『レスリングの国』において、横暴極まりない行いを続けていた。
敷設されたリングには今や多くの『力持ち』の愉快な仲間たちがユーベルコード『ロードオブグローリー』によって引き寄せられ、その強者に従わなければならないというルールの虜にされようとしていた。
しかし、いつの時代も悪は栄えないものである。
リングインしたのは褐色の肌と健康的な肉体を持つ猟兵、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)であった。
「鍛えることは良いことですが、歪んだ心を宿す筋肉など敵ではないですよ!」
倒れ伏していた『力持ち』の愉快な仲間の手を取り、立ち上がらせる。
この場において、彼らを守ることができるのは己だけであるという自負がユーフィを奮い立たせる。
プロレスとは即ち相手の技を受け止めることにある。
「しゃらくさいうさ! 遠慮はいらないマッスル!」
素早く跳躍し、召喚されたイボイノシシ型の戦闘機に乗って『うさうさトランプ兵』が飛び込んでくる。
しかし、ユーフィは逃げなかった。避けなかった。
真正面から戦闘機を受け止め、堂々とした威容でもってリングアウトすることなく突進を止めたのだ。
「なにぃ!? 戦闘機を止めるッ……なんというマッシヴ!」
もう語尾も定かではない。
だが、これで終わりではないのだ。
「わかりますか? これが野生と猟兵生活が培った……」
ユーフィのオーラが一変する。
それは清廉なる風を思わせるようなオーラであったが、その体に秘めた力は図り知れるものではない。
彼女がこれまで練磨してきた力は、今こそ発揮されるべきなのだ。
何かを守る時、何かを救う時にこそ、彼女のユーベルコードは輝くのだ。
「――筋肉ですッ」
戦闘機を分投げ飛ばし、『力持ち』の愉快な仲間たちを襲わんとしていた『うさうさトランプ兵』へと激突し、盛大に爆発を起こす。
だが、まだ油断はならぬ。
彼らは確かに『うさうさトランプ兵』であるがマッチョである。
爆発くらいでマッチョは死なぬ。うん、何言ってるのか意味わからん。けれど、事実、爆発の中から現れた『うさうさトランプ兵』は上裸になりながらも、その筋肉を誇るようにマッシヴポーズを決めるのだ。
「うさ! この程度の爆発で筋肉が滅びるものか! かかってこいやー!」
その意気や良し!
ユーフィがリングロープを蹴って空へと舞い上がる。
それは空に輝く太陽のように輝くユーベルコードを身にまとう瞬間であった。
闘気を纏う肉体。
それは彼女の清廉なる魂が籠もった輝きであったことだろう。
「ダイビングピーチボンバー……ですよッ!」
正確には、トランスクラッシュ(クラッシュ)である。
しかし、その単純で重いヒップアタックの一撃は空中でぎゅるぎゅると回転した遠心力を加えられ、空前絶後の威力となって『うさうさトランプ兵』を纏めて吹き飛ばす。
それに耐えられる歪んだ心を宿す偽筋などあろうはずもない。
ユーフィは彼女の一撃でもって爆散した背景をバックに高らかに勝利宣言を掲げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アニカ・エドフェルト
何事も、強制は、よくない、ですよね。その分、効果も、減っちゃいそう、ですし。
と、いうわけで、こっそりと、リングに、入り込み、今にも、力持ちさんに、襲い掛かろうとしている、相手の後ろから、体を、ちょんちょん、と、突きます。
それで、こっちを見た直後に、にっこりとほほ笑んで…
そのまま、UC〈怪力〉〈グラップル〉で、投げ飛ばし、ちゃいます。
ふふ、バトルロワイヤルですから、乱入だって、あり、ですよね?
力持ちさんに、拒否権がないなら、あなたにだって、ないんです、よ?
後は、別のトランプ兵さんを、〈怪力〉で捕まえて…
力持ちさんに、トドメ、さしてもらったり、します。
今のうちに、返り討ちに、しちゃって、くださいっ
鍛えられ肉体は如何なる困難をも踏破するために必要なものであったことだろう。
心身を鍛えることは即ち、生きるという困難を乗り越えるためにある。
しかして、人は鍛え上げられた鋼鉄の肉体を求めるが、そこに至る道程を知らぬ。並々ならぬ努力と困難。
それを経てこそ得ることのできる肉体。
容易には手に入らぬからこそ、それは美しいのだ。
とは言え、やっぱり簡単に手に入るのならば、手に入れたいと願うのもまた人である。
「マッスルマッスル! 我等が軍門に下ってもらううさ! これこそが『無限番勝負ロードオブグローリー』!」
『うさうさトランプ兵』たちはリングで勝利を叫ぶ。
彼らのはちきれんばかりの大胸筋が勝利を誇示するようにピクピク動く姿は、ちょっと気持ち悪いなって思う者もいただろう。
けれど、このままでは『力持ち』の愉快な仲間たちは、猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の配下として『超弩級の闘争』へと駆り出されてしまう。
そうなってしまっては、彼らが傷つくことは避けられない。
「フハハ、うさ! 全ては筋肉の前にひれ伏すうさ……ん?」
そんな『うさうさトランプ兵』をちょんちょんと突く者がいた。なんだ? と『うさうさトランプ兵』は背後に振り返った瞬間、そこにあったのは天使のごとき笑顔であった。
「なにも――の」
と『うさうさトランプ兵』が呟いた瞬間、彼はマットに沈む。いや、比喩無しで。頭からリングマットに突き刺さるように投げつけられ、『うさうさトランプ兵』の一人がびーんと揺れる。
えぇ……と誰もが困惑しただろう。一体全体なにが起こったのか、わけもわからなかったことだろう。
しかし、そこにあったのは、幼い少女の姿だけである。
天使の翼を持ち、にこやかに微笑む姿は、まさに聖女。
けれど、確かに彼女が恐るべき怪力で持って『うさうさトランプ兵』の一人を投げ飛ばし、リングマットに汚ねぇマッチョの身体を生やしたのだ。
「何事も、強制は、よくない、ですよね。その分、効果も減っちゃいそう、ですし」
アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)は微笑みながら、リングインしていたのだ。
『うさうさトランプ兵』は驚きに満ちた顔をしていた。
けれど、次の瞬間、一瞬の内にまた生えるマッチョの身体。
頭からリングマットに突き刺さった『うさうさトランプ兵』の姿が虚しい。
一瞬の出来事であった。
語り部でなければ見逃しちゃうほどの超スピード。
「ふふ、バトルロワイヤルですから、乱入だって、あり、ですよね?」
にこやかに微笑む姿は天使。
けれど、繰り出される投げ技は、まるで悪魔のようでもあった。
「『力持ち』さんに、拒否権がないなら、あなたにだって、ないんです、よ?」
再び、一瞬の内に背後に回り込んだアニカが『うさうさトランプ兵』の一人を掴む。
ひっ。
と短い悲鳴が聞こえたような気がした。
鈍い音を立てて、『うさうさトランプ兵』がまたもやリングマットに沈む。
今のうちに返り討ちにしちゃってくださいっ、とアニカは微笑むが、そんなことする必要がななさそうである。
それほどまでにアニカの投げ技は精錬されており、また同時に凄まじき怪力でもって彼女の投げ技から逃れられる『うさうさトランプ兵』へいなかったのである。
有無を言わさぬバキューム投げ技。
吸い込まれるように次々と『うさうさトランプ兵』たちはマットに生えていくしかないのだ。
まさに転投天使(スロゥイングエンジェル)の降臨であり、彼女が微笑む度にマッチョマンたちの悲鳴が『レスリングの国』に響き渡るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『チャンピオン・スマッシャー』
|
POW : グローリーチャンピオンベルト
自身の【チャンピオンベルト】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : キス・マイ・グローリー
【プロレス技】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ : アイ・アム・チャンピオン
自身の【攻撃を回避しないチャンピオンとしての信念】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
イラスト:草間たかと
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ビードット・ワイワイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「なんというマッスル! アグレッシヴ! これはもう我慢ならぬ! 俺が、俺こそが絶対強者! ならば、征かねばならぬ! 猟兵であろうとなかろうと関係あるか! 俺の最強を示すために!」
とぅ! と勢い良く猟書家『チャンピオン・スマッシャー』がリングに飛び込む。
だいぶ段取りとは違ってしまっているが、そんなことは彼にとって些細なことであった。
目の前で強者が闘っている。
ならば、それを打ち破らねばならぬ。
それこそがプロレスラーたる己の矜持であり、『チャンピオン・スマッシャー』のリングネームを冠する者の務めであるからである。
「故に! 俺はお前達を迎え入れよう! 見た感じお前達に足りぬのは筋肉だ! 細い奴らばかりではないか! そんなんじゃ、激しいトレーニングには耐えられまい! だからこそ、お前達を軍門に下し、毎日プロテインとささみ肉しか食べられないマッチョマンコース漬けにしてやるのだ!」
びしぃ! と指差し、リングに乱入する『チャンピオン・スマッシャー』。
彼がリングインしただけで、リングの中の気温が5度ばかし上がったような気さえした。
無論、それは気のせいである。
けれど、そう思わざるを得ないほどの尋常ならざる熱量と気合と、根性と後なんかいろんな汗とか涙とか、暑苦しいものふんだんに取り込んでいるのが『チャンピオン・スマッシャー』である。
だが、それは果たして健全なる魂による発露であったことだろうか。
答えは否である。
己の主義主張こそが至上のものであると他者に押し付ける傲慢さしかない。故に猟兵たちは彼を打倒しなければならないのだ。
「ええい! 四の五の言わずにプロテインを飲め――!」
遥・瞬雷
また暑苦しいのが出てきたねぇ。
肉体は一つの完結した世界。肉だけ鍛えても調和が崩れるだけだよ。
まぁいいさ。舞台の上で説教もないだろう。
【功夫】の構えで対峙。
九倍化の妖力か。ならば私も【仙術】で対抗しよう。頭と腕を三倍に増やす。
増えた目と耳による見切りと三つの頭脳による【瞬間思考力】。攻撃を増やした腕で捌き防御。
無数の掌打で舞う様に連撃を放つ。
九倍に三倍では勝てないとでも思ったかい?仙道の奥義が一つ、三面六臂術。その強化は三倍ではなく三乗!
常の力が百ならば今の私の力は百万!分かるかい、この算術が!
そんな感じでマイクアピール。
三対の腕で敵の全身の間接を封じ、持ち上げて【怪力】でマットに叩きつけるよ。
その肉体が放つ熱気は凄まじいものであった。
体感温度が上昇したのではないかと思うほどの暑苦しさを前にしても、遥・瞬雷(瞬雷女仙・f32937)の練り上げられた功夫は、彼女を揺るがすことはなかった。
「また暑苦しいのが出てきたねぇ」
彼女は涼しい顔をして、リングインした巨漢である『チャンピオン・スマッシャー』の前に立つ。
妙齢の貴婦人が相手をしていい存在ではない。
だが、瞬雷もまた猟兵であり、女仙の一人である。
彼女の身に纏う闘気は並々ならぬものであるように『チャンピオン・スマッシャー』もまた感じていたことだろう。
「ほう……俺の筋肉を前にして見惚れぬか、女! だが、女だとはいえ、容赦せん! それが俺のやり方だからだ!」
チャンピオンベルトが輝く。
その筋骨隆々たる肉体が躍動する。練磨された肉体であることは言うまでもない。これまで闘ってきた『うさうさトランプ兵』のように見せかけだけの筋肉ではない。
「肉体は一つの完結した世界。肉だけ鍛えても調和が崩れるだけだよ。まあ、いいさ。舞台の上で説教もないだろう」
来るがいいと瞬雷が構える。
瞬間、『チャンピオン・スマッシャー』から放たれる打撃は一瞬の内に九連撃。凄まじい速度である殺人的な拳が瞬雷に迫る。
しかし、瞬雷は見えていた。
その拳の軌跡。
その拳の早さ。
あらゆるものが彼女にとっては、見切るに値する拳であったことだろう。
「ぬぅ! 俺の拳を! 躱すか!」
「九倍化の妖力か。ならば私も――変じ幻ぜよ三面六臂!」
その瞳がユーベルコードに輝く。仙道の真髄。そこに至る者は、三つの顔と三対の腕を持つ神仙へと変ずる。
三面六臂術(サンメンロッピノジュツ)と呼ばれるユーベルコードによって、瞬雷は三つの頭脳によって瞬間的な思考を実現する。
それは凡そ人間業ではなかった。
増えた手足は『チャンピオン・スマッシャー』の九倍にも高められた打撃ラッシュを捌き切るのだ。
「手足が二本づつでは裁ききれるものではなかっただろうが、それでも……」
無数の掌打と共に瞬雷が舞うように飛ぶ。
リングの中に嵐のような猛烈な攻防が繰り広げられる。まるで舞踏のようであった。
『チャンピオン・スマッシャー』の洪水のような攻めも、まるで風が舞うように濁流を躱す瞬雷。
彼女の動きは、まさに合理の極地。
一切のムダのない動きによって、瞬雷は今此処に九倍を越えた三倍でもって相対するのだ。
「何故だ! 俺の攻撃のほうが早いはず! なのに、何故俺の攻撃が尽く届かない……!」
「九倍に三倍では勝てないとでも思ったかい? 仙道が奥義が一つ。三面六臂術。その強化は三倍ではなく――」
瞬雷の拳が『チャンピオン・スマッシャー』を捕らえ、無数の拳が彼の顔面に叩き込まれる。
それはまるで稲妻のような速度で打ち込まれ、爆ぜる雷のように『チャンピオン・スマッシャー』を吹き飛ばす。
「三乗! 常の力が百ならば今の私は百万! 判るかい、この算術が!」
わかるわけもないだろう。
ただ、鍛えることだけを目的とした、心伴わぬ鍛錬しかしてこなかったものに、彼女の言葉は理解できないだろう。
立ち上がった『チャンピオン・スマッシャー』がふらりと体勢を崩した瞬間、瞬雷が駆ける。
三対の腕が『チャンピオン・スマッシャー』の全身の関節を封じ、妙齢の女性とは思えぬ膂力でもって、その巨躯を持ち上げるのだ。
「な、なにを――!?」
「こうするのさ――!」
身体で教えてやろうと瞬雷がそのまま飛び、空中から関節を固定させた『チャンピオン・スマッシャー』をマットへと勢いよく叩きつける。
轟音が鳴り響き、『チャンピオン・スマッシャー』はリングにその巨体を沈め、瞬雷はリング外からの愉快な仲間たちによるコールに応えるように拱手でもって応えたのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
でてきたね。
「女王様奈落冥土がお相手仕ります」
華麗にコーナーポストに立って、いきなりの空中殺法。
そこからアームホイップや蹴り技なども織り交ぜ、
スピードとテクニックで戦うよ。
え?運動音痴はどうしたって?
メイド服には秘密が多いんだよ
(補助機能装着済み、もちろん反則)
って、効いてない!?
筋肉の鎧は伊達じゃないね……!
なーんて。
あのマッスルに、わたしの軽い攻撃なんて効かないよね!
いままでのは「見せ」だからね。ここからが本番だよ!
愉快な仲間たにに、リング外から足を引っ張ってもらって
『チャンピオン・スマッシャー』を転がしたら
熱々おでんを背中に乗っけていこう
ギブアップしないと、もっと乗せちゃうよ-?
猟書家『チャンピオン・スマッシャー』はリングマットに沈む。
けれど、それで彼が消滅するということはない。何故なら、彼のリングネームにはチャンピオンが頂かれているからである。
どれだけ猟兵が打倒しようとも、最後の一瞬まで戦い続けるだろう。
立ち上がった『チャンピオン・スマッシャー』からあふれる重圧は、まさしく強大なるオブリビオンそのものであった。
「ぐふぅ……! 俺を此処まで追い詰めるとは……! だが、俺とて負けてはおれん!」
その姿からわかるようにプロレスラーである。
どんなときでも不撓不屈の闘志を燃やす存在なのだ。
「出てきましたね。その闘志、女王様奈落冥土がお相手仕ります」
『チャンピオン・スマッシャー』の頭上より降り注ぐ声があった。
玲瓏なる声。
いつもより若干澄ましたような、凛とした声だった。
見上げた先、リングポストの上に立つのは、メイド服のスカートをたなびかせる菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)であった。
そう、『女王様奈落冥土』こそが彼女のリングネーム。
どこかのグリモア猟兵がくしゃみをしたかもしれない同じセンスであった。
だが、その力は侮ることなかれ。
彼女は本来運動音痴である。けれど、先程の戦いを見てもわかるとおり、そんなことはおくびにも出ない。
「なにぃ!『女王様奈落冥土』……! 何奴!」
「それは託され想いの名!」
どいうことなんじゃ、と誰もが思ったことだろう。けれど、理緒は託されたのだ。託されたかな? まあ、そんないい感じに『地獄黙示録冥土』から思いを彼女は受け止めて戦うのだ。
普段の運動音痴は偽装錬金(ギソウレンキン)によって複製された補助機能装着で解消されている。
メイド服には秘密が多いのである。
いや、誰もが見たいと思っても見てはならぬスカートの中身のことなど詮索してはいけない。
例えそれが反則であったとしてもだ!
それは万死に値する行為であるからだ! 秘密は秘密のままであることが一番いいんだ! 見えないからこそ尊いものだってあるのだ!
「よくわからんが! 俺のプロレス殺法が敗れるはずがない!」
リングの上を縦横無尽に駆け抜ける理緒を捕らえんと『チャンピオン・スマッシャー』が迫る。
しかし、それで捕らえられるほど理緒は甘くはない。
突進してくる『チャンピオン・スマッシャー』の腕を取って、ひねり上げ、彼をリングマットへと背中から叩きつける。
そこに畳み掛ける蹴撃は、一部の方には垂涎の的であったことだろう。あんよが上手! という謎のコールまで起こる始末である。どうした、この国やばい奴らしかいないのか。
「って、効いてない!? 筋肉の鎧は伊達じゃないね……!」
「その通り! 俺の肉体は鋼! これを打ち破ることなどできはしないのだ! 覚悟しろ、『女王様奈落冥土』!!」
迫る『チャンピオン・スマッシャー』。振りかぶられた丸太のような腕が理緒めがけて振り下ろされた。
あわや大惨事である。
誰もが目を覆った。けれど、それは次の瞬間にひっくり返るのだ。
「なーんて。あのマッスルにわたしの軽い攻撃なんて効かないよね!」
そう、今までの展開は『見せ』である。
ここからが理緒の本領発揮である。理緒の合図と共にリングサイドから『チャンピオン・スマッシャー』の足を掴む『力持ち』の愉快な仲間たちの腕。
彼らは待っていたのだ。
理緒の、いやさ『女王様奈落冥土』の号令がかかるのを。
「なぬー!? それは流石にずる……えぇー!?」
足を取られ転倒した『チャンピオン・スマッシャー』が見たのは、すごく良い笑顔で鍋つかみを装着してぐつぐついいう鍋を持つ理緒であった。
え、まさか、その中身は。
「そう、熱々おでんだよ! じゃあ、リアクション芸行ってみようかな? ああ、振りじゃないよ。じゃ、まずはこんにゃくから……」
鬼である。
『チャンピオン・スマッシャー』の背に熱々のこんにゃくが乗せられる。
同時に悲鳴が上がる。次ははんぺん。次はちくわぶ。次はしらたきかなーと理緒の楽しげな声と共に『チャンピオン・スマッシャー』の法悦なる新たなる扉が拓きかけたかのような声が『レスリングの国』に響き渡るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドル・バジル
ハハハ、バカめ。筋肉が足りない? 誰に向かってモノを言ってるんだ?
『魔・神・降・臨』
そこには身長4メートル弱のムキムキの魔神の姿が!
チャンピオン・スマッシャーに対して真正面からのパワープレイ。
敵POWUCをあえて受けきって。
おめーに足りねーものが分かるかい? それは……パワーだ!
(ええ……)
ジャイアントスイングで上空に投げ飛ばし、自身も後を追って空中に。
顔面を鷲掴みにしてそのまま地面(リング)に叩きつけます。
おんぎゃー! と猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の悲鳴が鳴り響いた。
熱々おでんによる猛攻になんか別の意味での扉が開きかけた『チャンピオン・スマッシャー』であったが、彼の鋼の筋肉は耐えきったのだ。
いや、耐えきったというか、こう、そのぉ、なんかあれな、その……趣味に目覚めた感じであったのは、言わぬが花であろう。
「ぬぅぅぅッ! これしきの、ことでぇ!!」
だが、彼とてチャンピオンの名を冠するオブリビオンである。プロレスラーである。
なればこそ、彼は諦めない。
不撓不屈こそが、プロレスラーの本懐。チャンピオンベルトが燦然と輝く限り、彼の力は膨れ上がるのだ。
「筋肉! やはり筋肉は全てを解決する! 貴様らのような細っちょろい筋肉に何ができる! 分厚い筋肉こそが大正義なのだ!」
咆哮する『チャンピオン・スマッシャー』の力のほとばしりがリングを震わせる。
しかし、その前にたつ男の名を知るがいい。
「ハハハ、バカめ。筋肉が足りない? 誰に向かってモノを言ってるんだ?」
その男の名は、アレクサンドル・バジル(黒炎・f28861)。
一歩踏み出す度に『チャンピオン・スマッシャー』が震わせるリングを、さらなる重圧で震わせるのだ。
ここに至って彼はユーベルコードに輝く。
「俺は変身をあと2回残している……ハハハ、嘘だよ。即死させねー限り何回でもパワーマシマシの完全回復で蘇るぜ?」
その姿は上位魔神形態へと変貌する。翼と身体の全長が膨れ上がり、アレクサンドルの魔神としての本能が開放される。
「な、なに……貴様もまた俺に劣らずのマッシヴを持っているだと……!?」
目の前に現れた魔神、アレクサンドルの肉体は遥かに4mを越えていた。
その肉体美は人のものではない。人知を超えたものであった。
重圧の凄まじさは言うまでもない。
それ以上に、筋肉量が違うのだ。
そう、デカさこそが筋肉における絶対である。ならば、自身よりも強大なる筋肉を持つ者を前にした時、『チャンピオン・スマッシャー』はひれ伏すだろうか。
答えは否である。
「問答無用である! 俺は俺の力を信じるまで! 押し通らせてもらう!」
放たれる拳は一瞬の内に九つ。
その重さはまさに一瞬で人の頭など吹き飛ばす一撃であったことだろう。それら全てをアレクサンドルは受け止めて立つのだ。
「おめーに足りねーものが分かるかい?」
アレクサンドルは涼しい顔のまま、『チャンピオン・スマッシャー』の攻撃を受け止めきって言うのだ。
何を、と問う『チャンピオン・スマッシャー』を前にアレクサンドルは不敵に笑う。
「それは……パワーだ!」
えぇ……。
それを言ってしまうのかと誰もが思っただろう。なんかもう、こう、あれである。そこまで行き着くと魔神形態ずるくないです?
だって、巨大な体躯の分だけ筋肉量が違うのである。
増大した筋肉は『チャンピオン・スマッシャー』すらも上回るだろう。アレクサンドルはジャイアントスウィングで組み合った『チャンピオン・スマッシャー』を上空へと投げ放つのだ。
「ぬぉぉぉ――!? この俺を、投げ飛ばす、だと!?」
「まだ終わらねーよ!」
アレクサンドルが、それを追って上空へと羽を羽ばたかせて飛ぶ。一瞬で投げはなった『チャンピオン・スマッシャー』へと追いつき、その頭部を鷲掴みにする。
「ああ、そうさ。お前に足りないのはパワー、気品、情熱、あとなんかこう早口で言ってもおっつかねーほどに諸々だ!」
アレクサンドルのアイアンクラッシャーの一撃は『チャンピオン・スマッシャー』の顔面をリングへと盛大に叩きつけ、マットへと沈めさせる。
その魔神としての威容は、まさに『レスリングの国』に恐怖と共に轟く。
けれど、同時にその鮮烈なるリングデビューもまた轟くのだ。圧倒的なパワーと共に巨漢すらも砕くアイアンハンドとして――!
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
一見して私が細いと見えますか?
であれば、あなたも先ほどの兵と同じです
存分にプロレスをしましょうか
《戦士の手》と――共に!
掴みかかっての打撃や、投げ技を軸に、
力持ちさんと連携して攻めます
スマッシャーの攻撃も【見切り】致命的な
ダメージにならないようにしたうえであえて受けます
【オーラ防御】でめいっぱい我慢
それでも相手のプロレス技には流石に苦悶するでしょうか
です、が!ピンチもまた【気合い】を燃やす力として
ラスト5秒の逆転なんとかというものですからね
【限界突破】して立ち、【鎧無視攻撃】の
オーラ打撃技っ!そして投げです!
拳で、蹴りで、頭で、尻で
それから締め投げで圧倒してみますっ
これが私の、培った体ですよッ
リングに叩きつけられた猟書家『チャンピオン・スマッシャー』がめり込んだ頭を引っこ抜いて立ち上がる。
フラフラと流血する額のままにマスクに覆われた表情は、苦々しいものであった。
彼にとって此処まで負傷することは、珍しいことではなかった。
何故なら、プロレスラーとは相手の技を全て受け止めることこそが至高である。その上で勝つからこそ、彼らは憧れの的なのである。
「だからこそ、俺は負けられぬ! このチャンピオンベルトが在る限りな! お前達の細さを、矯正までは! 負けられぬのだ!」
咆哮する彼の心にあるのは、細マッチョに対する恨み節だけであったのかもしれない。
なんだ細マッチョって!
マッチョは太いものである! 筋肉とは太いからこそカッコいいのだ。だというのに女子ウケする肉体だと? ふざけるな! というやつである。
正直言って、逆恨みじゃない? って言おうものなら、あの筋肉だるまが飛んでくるので言わないが、きっとみんなそう思っていたかもしれない。
けれど、それを真っ向から否定するのが猟兵である。
「一見して私が細いと見えますか?」
「そのとおりだろうが! 貴様のような女子ですら、そうなのだからな!」
筋肉こそ大正義と叫ぶ『チャンピオン・スマッシャー』に対峙するのは、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は決意と共に叫ぶ。
「であれば、あなたも先程の兵たちと同じです。存分にプロレスをしましょうか。戦士の手(センシノテ)と――共に!」
互いに何が合図になったのかはわからない。
けれど、互いにリングを走った。目の前の敵を、目の前の存在を許してはならぬと、互いの矜持がぶつかる。
ユーフィのユーベルコードは、彼女の力を増幅させる。
如何に『チャンピオン・スマッシャー』が彼女に掴みかかろうとも、ユーフィの方が早い。
素早く掴みかかって打撃を加え、投げ技を決めるのだ。
「ぐぬぅ! やるな! だが、その小さな体一つで――なにぃ!?」
『チャンピオン・スマッシャー』が呻く。
何故ならこれは『力持ち』の愉快な仲間たちとのタッグバトルである。
たった一人で戦う者である『チャンピオン・スマッシャー』にはない力である。
「力持ちさんがいるから、できることもありますッ!」
互いのプロレス技が炸裂。
その度に激痛が体に走る。けれど、ユーフィは苦悶の表情を浮かべない。どれだけ傷を追うのだとしても、彼女は決して諦めない。
ピンチこそチャンスである。
逆境こそが栄光への道筋であると彼女は知っている。だからこそ、諦めない。折れないのだ。
「何故だ! 何故倒れない! これだけの技を受けながら!」
その答えを『チャンピオン・スマッシャー』はすでに知っているはずである。そう、ユーフィもまた立派なプロレスラーであるからだ。
不撓不屈。
その言葉をユーフィは抱いて気合を燃やすのだ。
「ラスト5秒の逆転なんとかというものですからね!」
傷みは気合で吹き飛ばす。
限界は己の心で打ち打ち破る。それがユーフィの猟兵としての在り方だ。
組み合った瞬間にユーフィはわかっただろう。これこそが投げ技の真髄。受けて、相手の体勢を崩す。
その一瞬を見切ること事こそが、投げ技であると知る。
「これが――!」
投げ飛ばした『チャンピオン・スマッシャー』へと繰り出される拳、蹴り、頭、尻。全身が彼女の武器だである。
その全てを絞り出して叩き込む。締め上げる『チャンピオン・スマッシャー』の太い首。
圧倒する彼女の力はユーフィの叫びと共に『チャンピオン・スマッシャー』へと叩き込まれていくのだ。
「これが私の、培った体ですよッ」
最期の大技であるジャーマンスープレックスが決まり、リングに轟雷の如き地響きを響かせ、ユーフィは拳を天に突き上げるのであった――!
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと
「なに……!?
プロテインとささみ肉食べ放題とな……!?」
なんか知らぬが、行く先々で賠償金を払わされている我。
実は日々の食事にも困る状態なのだ。
このままだと、今日の夕飯は、あの「ウサギ肉」のシチューになりそうだし……
「ええい、離せ、ルクス!
我は、あっちのささみ肉食い放題の方がいい!」
あれ?
なんかルクスの瞳がヤバげな感じじゃないか?
「まあ落ち着けルクスよ。
なにもユーベルコードの域にまで達したお前の料理の腕を疑っているわけではないぞ!?
ただ……その材料はどうかと思ってな……?」
いかーん、ルクス、完全に目がイッておる!
かくなる上は、マッスルなプロレス技で吹き飛ばされつつ撤退だ!
ルクス・アルブス
フィア師匠と
うふふ。
ウサギ肉は手に入りましたし、今日はウサギのボルシチです。
※材料は【師匠の専属料理人】で出したものです。
おっきな寸胴にはいった、真っ赤な真っ赤なボルシチを、
光の消えた瞳で、ぐつぐつぐるぐるぐつぐつぐるぐる。
「きょうもししょうにおいしいごはんをつくりますよ(えへ)」
※自分で潰したウサギで、盛大にSAN値判定に失敗しています。
「さ、師匠、戦いの前にボルシチをどうぞ♪」
「え? ししょう……とばされ?」
吹き飛ばされていく師匠に、意識が覚醒。
「師匠-!? わたしまた、罰奉仕なんですかー!?」
って、あれ?
師匠飛ばされたけど、師匠の棲家ってどこだろう。
と、引きずられつつ思うわたしでした。
ジャーマンスープレックスの一撃が猟書家『チャンピオン・スマッシャー』に炸裂し、その体はリングマットに沈む。
しかし、不撓不屈をモットーとするプロレスラーであるのならば、立ち上がってこそであろう。
「ぐぬぅ! 強烈な技である! だが、これしきのことで俺は折れぬ! 俺がチャンピオンであるかぎり!」
立ち上がり咆哮する『チャンピオン・スマッシャー』は未だ闘気が漲っていた。強烈なる意志。
強靭な肉体に宿った意志こそが猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の脅威であったことだろう。
勝者が敗者に隷属を強いるユーベルコード『ロードオブグローリー』よりも、猟兵たちにとっては、それこそが驚異的であった。
「貴様らの細っちょろい肉体を改造し、プロテインとささみ肉漬けにしてやるためにも、俺は負けられんのだ!!」
その言葉を聞いてぴくりと反応したのは、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)であった。
「なに……!? プロテインとささみ肉食べ放題とな……!?」
よりにもよってそこに反応する。
え、なんで? と疑問に思うのも無理なからぬことであった。正直に言えばプロテインとささみ肉だけで生活するなんて嫌に決まっている。
一部の趣味嗜好の方には理想的な生活やもしれぬが、そこまで極まっていない方にとっては、ちょっとやめてほしい強制であったはずだ。
だが、フィアは違う。彼女自身は行く世界で常に大暴走というなの大珍事を起こしては賠償金を払わされている身である。
ぶっちゃけるとお金がないのである。すっからかんのすかんぴん状態なのだ。
日々の食事にも困るレベルの生活。何よりも……。
「うふふ。ウサギ肉は手に入りましたし、今日はウサギのボルシチです」
何故が決まった瞳で鍋をぐつぐつぐるぐるしているルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)の姿がった。
大きな寸胴に入った赤いボルシチ。瞳に宿る光が消えているのは、ちょっとハイライトが家出しましたでは済まされないレベルである。
師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)という自負のあるルクスにとって料理とは自分の存在意義でもある。
あ、材料はユーベルコード由来である。
マジであの圧潰したウサギ兵たちのものではないのであしからず。あしからずじゃねーよと思われたかも知れないが、言っておかないとまずいかなっておもったので。
盛大にSAN値判定に大失敗したルクスは、ハイライトの消えた瞳で真っ赤なボルシチを更に盛り付けフィアへと差し出す。
「さ、師匠。戦いの前にボルシチをどうぞ♪」
こいつはやべぇ。
料理自体は美味しそうなのに、ルクスのハイライトの消えたキマった瞳を見た後だとフィアも躊躇う。というか、逃げた。逃げようとしてあっさりルクスにとっ捕まるのだ。
「ええい、離せ、ルクス! 我はあっちのささみ肉食い放題がいい!」
食い気である。正直、ルクスの瞳がやばいなって思っていたのは言葉に出してはいけないことである。
後でどんな目にあうかフィアはわかっているのだ。だからこそ、もっともらしいことを言って逃げようとしているのだ。
「まあ落ち着けルクスよ。なにもユーベルコードの域にまで達したお前の料理の腕を疑っているわけではないぞ!?」
ただそのぉ、その食材は今どうなのかなって。
あんなスプラッタな現場を見た後に堂々とウサギ肉出してくるのはちょっとぉ、そのぉ、とフィアは歯切れの悪い言葉で濁しながら言う。
「きょうもししょうにおいしいごはんをつくりましたよ。えへ」
笑顔がやべぇ!
フィアはこれまでの人生で感じたことのない恐怖を感じただろう。やばいどころの話ではない。これは確実に身に危険が及ぶ類の正気を失ったルクスである。
もはや猟書家との戦いとかそういう次元ではなかった。
そうだぞ、置いてけぼりにされている『チャンピオン・スマッシャー』さんの気持ちを考えろ! 律儀に待ってくれてるじゃないか!
「……かくなる上は!」
フィアはルクスをふりきって『チャンピオン・スマッシャー』へと走る。
おりゃー! とやけっぱちで『チャンピオン・スマッシャー』と組み合う。けれど、悲しいかな。体格差は歴然である。小指でつまむようにフィアを持ち上げた『チャンピオン・スマッシャー』がフルスイングして彼女の体を吹き飛ばす。
完全に目がイッているルクスから逃げるにはこれしかない。
あえて『チャンピオン・スマッシャー』のユーベルコードを受け止め、己の棲家へと転移される……いや、してもらうのだ!
ふっ飛ばされたフィアが虚空に消えるのを見て、ようやくルクスは我に返る。
「え? ししょう……とばされ?」
あれれ!? とフィアは正気に戻る。よかったハイライトさんの家出が終わった。
彼女は虚空に飛ばされるフィアの姿を追って、走り出す。
その執念は凄まじいものであった。
「「師匠ー!? わたしまた、罰奉仕なんですかー?!」
まさか、この『レスリングの国』でも、とルクスは飛ばされていくフィアの姿を見つめ、けれど妨げとなる『チャンピオン・スマッシャー』を雑にグランドピアノでぶっ飛ばしつつ、途方にくれるのだ。
「師匠の棲家ってどこだろう」
また、師匠を追っての生活が幕を開ける。
けれど、大丈夫じゃないかな。トラブルあるところにフィア在り。絶対騒ぎを起こすって確信がルクスにはある。
だから、何も心配ないのだ。きっとすぐまた罰奉仕をする羽目になる――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アニカ・エドフェルト
さて、場外に、吹っ飛ばしたら、勝ち、ですか…。
なんか、壁とかに、電流でも、流れてるん、でしょうか。
落ちないように、注意しないと、ですね。
さて、もう不意打ちも、出来ないですから、真正面から、ですね。
今回も、UCで、投げ飛ばして、マットに、生やして…
と、単純には、いきません、よねっ(反撃をぎりぎりで受けて)
以降、暫くは、一進一退で、戦います、が、強い一撃を、まともに、喰らって、吹き飛ばされて…
上手く、ロープを掴んで、反動で、相手の顔に、蹴りを、叩き込めるか…
それとも、場外の、壁なり木なりに、叩きつけられるか…
勝負、ですっ
(電流有無は問わず、勝敗問わずぎりぎりの戦い、全体成功なら個人敗北可)
雑にふっ飛ばされた猟書家『チャンピオン・スマッシャー』は怒りに震えていた。
いや、雑にぶっ飛ばされたことではない。
不甲斐ない己に対してである。不撓不屈をこそ彼のモットーである。倒れても倒れても立ち上がる。相手が立ち上がらなくなるまで立ち続けていれば、それこそが勝利であるのだから。
だからこそ、彼は鋼鉄の肉体を持ちながら猟兵達にいいようにされている己の不甲斐なさに怒りを募らせるのだ。
「俺こそがチャンピオンだ! 俺こそが最強にして頂点! 故に! 貴様たちの攻撃の一切を俺は受け止めみせる……!」
その漲る決意はユーベルコードの領域にまで達し、彼の鋼の肉体を極地にまで引き上げるのだ。
そんな猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の前に立ち塞がるのは、幼き猟兵であるアニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)であった。
しかし、その小さな体躯を侮ることはできないだろう。
己よりも筋力で劣る者であったとしても、譲らぬ闘志があるのならば、そこに手加減という概念は発生しないのだ。
「さて、場外に、ふっとばしたら、勝ち、ですか……」
なんか壁とかに電流とか流れているのだろうかとアニカはリングインしながら考える。
通常のプロレスならばカウントを取るか取られるかであろうが、この『無限番勝負ロードオブグローリー』においては、勝敗の定義が違うかもしれない。
どんな罠があるやもしれない。
「どこからでもかかってこいやー!」
「真正面から、ですね……躱さないというチャンピオンの、矜持、なら」
アニカはリングを駆ける。
体躯で劣る彼女にとって、不意打ちは基本的な動作であった。
けれど、今はこうして向かいあっている以上それもできない。ならばこそ、その体格差を活かすときである。
放たれる『チャンピオン・スマッシャー』の打撃をかいくぐりアニカは間合いの中に滑り込む。
それこそが彼女のユーベルコードである。
転投天使(スロゥイングエンジェル)である彼女にとって、そここそが間合い。
「素早い……! だが!」
掴みかかろうとする『チャンピオン・スマッシャー』の腕を躱し、アニカの手が伸びる。
けれど、互いにつかみ合っては振り切るという攻防が続く。
「単純には、いきません、よねっ」
ギリギリの攻防であった。
一進一退。薄氷の上を踏むような戦い方であったが、体格、膂力で劣るアニカには、これしかできない。
かいくぐり、掴んで投げる。
相手を転倒せてからの攻撃こそが彼女のスタイルだ。
「つかみ主体ならば!」
放たれる『チャンピオン・スマッシャー』の打撃はアニカをまともに捕らえ、彼女の小さな体をリングロープに叩きつける。
息が詰まる。
けれど、アニカの瞳にはユーベルコードの輝きが未だ燃えていた。
負ける気など毛頭ない。
例え相手がどれだけ強大な相手であったとしても、彼女は不屈の闘志を燃やす。その一点に置いてのみ、『チャンピオン・スマッシャー』と彼女は互角以上であったのだ。
うまくロープの反動を掴んでアニカの飛び蹴りが『チャンピオン・スマッシャー』にクリーンヒットする。
「勝負、ですっ!」
放たれる蹴撃に海老反りになる『チャンピオン・スマッシャー』の体。
けれど、まだ決めきれない。
だからこそ、アニカのユーベルコードが輝くのだ。
一瞬の攻防。けれど、その攻防は高度なやり取りであり、無数のフェイントと共にアニカの腕が『チャンピオン・スマッシャー』伸び、マスクドレスラーである彼の魂、そのマスクを掴んだ。
「そこで、寝ていて、くださいっ」
放たれる投げ技。
それは彼女が弛みない練磨の果てに至った業である。
放たれた投げ技の一撃は、『チャンピオン・スマッシャー』をリングへと頭から叩きつけ、その一撃と共にアニカは綱渡りのような戦いを制するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
マグダレナ・クールー
いいえ、いいえ。貴方には足りてません。プロテインとささみでは筋肉は喜びません
お魚です。筋肉には賢さも必要なのです。筋肉は喜びます。最高ですね!!!! 最高ー!!!
貴方、ベルト持ちですね? 試合形式はデスマッチですか?
わたくしは貴方をトップロープから蹴落とし、両足を地へ付けたく思います。ええ、肉体だけならず凶器を用いて!! リング下に椅子はありますか!? 竹刀は!? あれえないですね!!??
仕方がないのでリィーを直接ぶつけます。その上からボディプレスを行えば重量は増すでしょう!!
《ドンダイニ!!! ドンダイニ!!!!》
大丈夫です。勝てばいいのです。勝てば痛みは治ります!!
《ボウクンカ……???》
叩きつけられた猟書家『チャンピオン・スマッシャー』の肉体がリングマットに沈む。
脳天から叩きつけられた投げ技の一撃は凄まじく、その肉体与えたダメージは甚大なものであったことだろう。
けれど、未だ『チャンピオン・スマッシャー』をチャンピオンと足らしめていたのは、その腰に巻かれたチャンピオンベルトであった。
絶対に攻撃をかわさず受け止め続けるという己の信念と鍛え上げられた鋼の肉体こそが、彼の心を支えるのだ。
「ぬぅぅ! 俺は倒れない! 貴様たちよりも多くのプロテインと! ささみ肉を食らってきたからこそ、俺の鋼の肉体は喜ぶのだ! 見よ! この数多の攻撃を受けても尚喜ぶ肉の鎧を!」
己の肉体を誇るようにマッスルポーズを決める『チャンピオン・スマッシャー』。
だが、それを否と言う者がいる。
「いいえ、いいえ。貴方には足りてません」
そうきっぱり言い放ち、リングに舞い降りたのはマグダレナ・クールー(マジカルメンタルルサンチマン・f21320)。
金色の髪がなびき、彼女の美しさと言いようのない感情がリングに放たれたようでもあった。
「何が足りないと――!」
「プロテインとささみでは筋肉は喜びません」
すぅ、とマグダレナが息を吸い込む。
それは一拍の後に放たれる宣言でもあった。
「お魚です」
ん?
リングの近くにあった者たちは皆そんな顔をしていた。おさかな。うん? あれ、これ精神論とかそういうたぐいの論破ではなく? 肉ではなくお魚食べなはれという話だったっけと首を傾げていた。
『チャンピオン・スマッシャー』だってそうだ。
え、今その話でしたっけ、という顔をしている。
「筋肉には賢さも必要なのです。筋肉は喜びます。最高ですね!!!! 最高ー!!!」
お、これは思った以上にやばいぞ、と誰もが思っただろう。
『チャンピオン・スマッシャー』の掲げるプロテイン漬け生活も中々であったが、マグダレナの主張もまた動揺であった。
賢さ。DHA的な?
そんな会場の空気など気にかけた様子もなく、マグダレナが指差す。その指の先にあったのは、『チャンピオン・スマッシャー』をチャンピオンたらしめるベルトがあった。
「貴方、ベルト持ちですね? 試合形式はデスマッチですか? わたくしは貴方をトップロープから蹴落とし、両足を地へと付けたく思います」
とう! とマグダレナがリングコーナーを蹴って、華麗なる空中殺法でもって『チャンピオン・スマッシャー』へと蹴撃を叩きつける。
「やれるものならばやってみせろ! 俺はチャンピオンだぞ!」
躱すことなくマグダレナの蹴撃を受け止め、『チャンピオン・スマッシャー』は叫ぶ。此処で負けるわけにはいかない。
必ずやプロテイン飲み放題とささみ肉食べ放題を実現しなければならないのだ。もう『超弩級の闘争』という大目的を忘れてるんじゃないかな。
「ええ、肉体だけならず凶器を用いて!! リング下には椅子はありますか!? 竹刀は!? あれえないですね!!??」
あれ、あるはずなのにとマグダレナがいそいそリング下を覗き込んでいる。
あーもーめちゃくちゃだよー!
となるぐだぐだなる試合運びであったが、マグダレナはコホンと咳払いしてリングに戻ってきた。
手ぶらだけどいいのかな。
「仕方ないです」
きっぱりとマグダレナは諦めた。
そして唐突に彼女の瞳がユーベルコードに輝く。え、もうちょっと貯めない? あ、そう……という間もなく出現するのは彼女の視界を支配するオウガ『リィー・アル』であった。
それは自身と五感を共有している存在である。
「ニニニ…カ、カ!ハヲシメシ、リヲサス。ニ!」
冥冥デカダンス(シーミンフゥーディエ)と呼ばれるユーベルコードは本来は索敵や観測に用いられるものである。
けれど、マグダレナは違う使い方をする。え、なに、どうするつもりなのこわい。
『ドンダイニ!!! ドンダイニ!!!!!』
『リィー・アル』がなにか喚いているが気にした様子もなくマグダレナは『リィー・アル』を掴んで、そのまま『チャンピオン・スマッシャー』へと叩きつける。
それは大ぶりも良いところの攻撃であったが、『チャンピオン・スマッシャー』が己の矜持である相手の技を躱すことなく受け止めるのならばこそ、それは必殺となり得るのだ。
「大丈夫です。勝てばいいのです。勝てば傷みは治ります!!」
五感を共有しているからこそ、その叩きつけられた傷みはマグダレナにも当然反映される。けれど、マグダレナは構わなかった。
空中へと飛び上がり、『リィー・アル』ごと『チャンピオン・スマッシャー』へとボディプレスを敢行するのだ。
「貴様、仲間毎ッ! 馬鹿なっ、こんな巫山戯た技がフィニッシュだと――!」
『ボウクンカ……???』
「リィー・アル、そのまま押さえつけておきなさい! 今とっておきを差し上げますから!」
放たれるマグダレナのボディプレス。
痛みなど後回しにすればいい。圧倒的な重量で持ってリング毎『チャンピオン・スマッシャー』を押しつぶすマグダレナと『リィー・アル』の質量。
それは『レスリングの国』に地響きを響かせ、『チャンピオン・スマッシャー』よりチャンピオンベルトを簒奪せしめたことを示すように。
「これがチャンピオンベルトです!!」
マグダレナの勝利の宣言と共に『レスリングの国』に、喝采が巻き起こるのであった――。
大成功
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