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KNOCK YOU DOWN!

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #チャンピオン・スマッシャー #力持ち #猟書家

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●あるところに百獣の国がありました
 ここはアリスラビリンスのどこかにあるという百獣の国、ビーストキングダムとも呼ばれる不思議の国である。住民の全ては獣頭人身の獣人とも言える愉快な仲間であるが、血に飢えたオウガと違い気の良い者ばかりな平和な国だ。
 ライオンの王様が治めるこの国には軍隊というものは無いが、力自慢の青年団による自警団『ビーストフォース』が組織されている。例えオウガの襲撃があったとしても彼らの手によりこの国の平穏は保たれてきたが、オウガ・オリジンの消失以降は猟書家という新たな脅威が出現したものの平和そのものであった。

「はぁ~……暇だなぁ」
 そんな彼らも普段は農作業に従事しており、青年団員であるチーター頭の獣人がため息交じりに鍬を立てさせると、重ねた掌の上に頭を乗せて気だるそうに呟いた。

「暇なのは平和な証拠だろう。ほら、サボらないで精を出せ」
 同じく青年団員であり、そのリーダー格でもあるゴリラ頭の獣人が彼を窘めた。確かに平和な事は良いことだ。しかし、力持ちの彼らにとっては有り余る力の矛先が消えてしまったのも事実だ。小鳥が囀りながら飛び交う空を眺め、チーター頭の獣人は今までのオウガとの戦いをぼんやりと思い出す。
 普段はのんびりと気の良い彼らだが、戦いとなれば別の顔を醸し出す。だが、その衝動のはけ口は今こうして畑を耕す農作業に向けられている。たまに大岩を持ち上げながら競争したりと力自慢をし合っているが、それもどこか物足りない。
 やはり闘いが一番なのだが、王の厳命により仲間同士の喧嘩は一切禁じられている。許されるのはせいぜい腕相撲程度で、やはりこれも物足りない。

「あーあ、オウガが襲撃して来ねぇかな……ん? おい、ありゃ何だ?」
 男が指を指した先には、覆面姿のレスラーが佇んでいた。控えめに言っても、筋肉モリモリマッチョマンの変態と言い切ってもいい、はち切れんばかりのマッスルである。

『ふしゅるるるる……その願い、叶えてやろう』
 バチィン!!
 謎の覆面レスラー、チャンピオン・スマッシャーが指を鳴らして破裂を立てさせると、突如地震が起きる。

「ななな、なんじゃ、ありゃぁーーーッ!?」
 驚くのも無理はない。耕した畑に亀裂が走ったかと思えば、そこからリングが迫り上がってきたのだ。

「これは……さては、貴様はオウガだな!?」
『ぐっふっふっふ……違うな。超弩級の闘争を鉤爪の男と同じく志す同志、猟書家チャンピオン・スマッシャー様とはこの俺様よ!』
「似たようなものだ! 敵襲だ、オウガが攻めてきたぞー!!」
 ゴリラ頭の獣人がドラミングをし、周囲に散らばる仲間たちにオウガの襲撃を告げる。

『……まぁいい。まずは俺様の弟子であるオウガと一線を交えて貰うからな。お前達ぃ! 奴らが立ち上がろうとできなくなるまで遊んでやれぃ!!』
『サー・イエッサー! チャンピオンの手を煩わせることなく、あーしら十八番の異次元殺法。必殺パンチで一撃必殺のK.O.勝ちしてやるピョン♪』
 地面に幾つかのウサギ穴が開くと、そこから次々とボクシンググローブをはめたバニースーツ姿の時計ウサギによく似たオウガが姿を現す。それは楽しみだとばかりにチャンピオン・スマッシャーは口元を釣り上げると『無限番勝負ロードオブグローリー』の開催を宣言するのであった。


●グリモアベースにて
「新たな猟書家、筋肉モリモリマッチョマンの変態もといチャンピオン・スマッシャーが力持ちを狙い始めたようだ」
 リコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)から告げられた言葉に、猟兵らは一瞬耳を疑ってしまう。そんな姿を見てリコは、事実は事実であると言わんばかりにそのまま説明を続ける。

「奴の目的は、未だ消息が掴めない鉤爪の男がアリスラビリンス内でしでかそうとしている『超弩級の闘争』の準備だ。奴のと試合に負かした力持ちを自らの傘下とし、来たるべき闘争への尖兵にすべく行動に出た。そして、面倒なことに力持ちへ一種の暗示をかけている。それは、リングの上に立たせることだ」
 リコが言うには、チャンピオン・スマッシャーが常時発動させているUCで顕現したリングが力持ちを惹き付けるとのこと。そのリングの上で膝を折ってしまえば最後、力持ちは猟書家の配下となりさがってしまうのだ。

「だが、奴はすぐに戦おうとはしない。何故ならば、決勝トーナメント式と謳って力持ち共をその気にさせてるのだ。予選で戦うのは、奴の配下でありラウンドガールでもあるオウガ、ボクサーバニーというオブリビオン。普通のオウガならば百獣の国の力持ちでも相手になるだろうが、こいつらはチャンピオン・スマッシャーによって鍛えられた、ひと味もふた味も違う奴らだ。空間内に異空間と繋がるウサギ穴を作り出して繰り出される異次元殺法、その前には屈強な百獣の国の獣人とは言えリンチにされるのが関の山だ」
 そこでだ、とリコが提案する。今から転送すれば、リーダー格であるゴリラ頭の獣人の招集を受けた力持ちの青年団が揃ったところだという。彼らに混じってタッグバトルを持ち出したり、逆に彼らの代わりに試合に出場してみてはどうだろうか、と。

「奴らも単なる力自慢でなくオウガとの闘いを心得ている戦士だ。ボクサーバニーにはスピードでは負けていようが、パワーは折り紙付きでこちらの方が上だ。奴らとうまく連携すれば、オウガや猟書家との戦いを有利にできるかもしれない。その判断はお前たちに任せよう」
 今は引退したと冗談ながら語っているが、テレビウムの作業用マシンを用いた娯楽『バトリング』の選手として腕を鳴らしてきたリコの脳裏に嘗ての試合が思い浮かんでくる。普段落ち着いている彼も、自然と言葉に熱を持ち始めているのは胸に秘める闘争心がまだ消え去っていないからか。

「うまく試合を持ち上げれば、お前たちの戦いっぷりに痺れを切らしたチャンピオン・スマッシャーがリングに乱入するやもしれん。そうなれば、リングのルールは相手からこっちに移ったも同然だ。一対一に拘らず、乱戦に持ち込んで返り討ちにしてやれ」
 そう激を飛ばすとリコはゲートを展開し、猟兵たちを試合会場へと転送させるのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 よもやよもや、アリラビにマッスルな猟書家が襲来して驚きが隠せません。そんな訳で、アリスラビリンスの幹部猟書家『チャンピオン・スマッシャー』をお送りします。

●戦場の情報
 第一章目は『集団戦』フレームとなります。
 突如現れたリングに上がり、猟書家配下のボクサーバニーとの試合となります。
 ルールは異種格闘技戦で、彼女は異空間に繋がるウサギ穴を自由自在に地面や宙に開ける異次元殺法によるボクシングで戦いを挑んできます。
 一見するとセクシーなバニーガールですが、伸ばした鼻の下ごと打ち砕く素早く強烈なパンチを繰り出してきますのでご注意を。

 第二章目は『ボス戦』フレームとなります。
 順調に試合に勝ち抜いていくと、戦いを我慢できなくなった幹部猟書家『チャンピオン・スマッシャー』が乱入して来ます。
 こうなったら乱入上等で会場はメチャクチャになるので、力持ちたちと一緒に戦って倒してしまいましょう。

 プレイングボーナスは、全章共通で『力持ちと一緒に試合に参加する』です。

 それでは、試合会場の熱気に負けない皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ボクサーバニー』

POW   :    サンドバッグコンボ
攻撃が命中した対象に【ウサギ型の痣】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【次々と現れる仲間達のパンチ】による追加攻撃を与え続ける。
SPD   :    ダーティサプライズブロー
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【異空間からの奇襲によるパンチ】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
WIZ   :    ハニートラップカウンター
【挑発】を披露した指定の全対象に【無防備にこちらへ近づきたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グランディア・エストリア
ぐるあぁああああっ!!
久しぶりに参加させてもらうのじゃあっ!!

異種格闘技戦、受けて立ってやるぜぇっ!!
しかし、こいつ、ワープしたりと厄介な戦い方してくるんかよっ!!
攻撃食らった段階で妙な感じを得る。
「兎の痣??」
『気合』『激痛耐性』でフルガード!!(周りから攻撃を防御しまくる)

力持ちの存在に気づいてない奴の背後から力持ちの方が掴んでくるであろう。
そしたら、攻撃したやつに向けて『カウンター』。そして、灰燼拳で『グラップル』『力溜め』『2回攻撃』で奴を地面に叩きつける。

アドリブ歓迎



「うぅむ……これは困ったことになったのぅ」
 そうしかめっ面で悩ませているのは、この百獣の国を治める王のライオン獣人だった。たてがみには幾ばくか白髪が目立っており、やんちゃ盛りだった若い頃はいざ知らず今となっては体力的な衰えが否応なく自覚してしまう。
 青年団のリーダーによる危機を知らせるドラミングを聞きつけて何事かと思い来てみれば、これから種を撒くはずだった畑の中心に巨大なリングが出来ているではないか。その上では、この国の獣人とは趣が異なる半獣のバニーガールがこちらを挑発するように足を鳴らしながらシャドーボクシングをするというウォーミングアップをしている。また同じく集まり始めた力自慢の若い衆どもが、我こそはと鼻息を荒げて血眼になりながら何かに惹かれるかのように普段とは様子が異なっていた。

『ぐっふっふ……この俺様が創り出したリングが力持ちをファイトに駆り立てるのだ』
 反対側では彼女らは後続の選手だが、傍から見ればバニーガールの美女を侍らせているようにも見える猟書家『チャンピオン・スマッシャー』が、何処からか持ってきたのか分からないがパイプ椅子に座っている。これから始まる凄惨なる試合が始まるのを、今か今かと待っていた。

『シュシュッ! あーしの対戦相手はまだかピョン? いい加減待ちくたびれてきたでピョン。何人でも相手になってやるでピョンよ』
 リングの上でも、ウォーミングアップを終わらせたボクサーバニーが力持ちの獣人がロープを乗り越えてくるのを待ちわびている。だが、血の気が多い彼らは一向に誰が上がるかで揉めているようで、ボクサーバニーも一対一に拘らず束になってかかって来いと言うのも止むなしであった。

「ぐるあぁああああっ!! 異種格闘技戦、受けて立ってやるぜぇっ!!」
 その均衡を破るかのように、咆哮を上げながらリングに上がりこんだのはアムールトラのキマイラであるグランディア・エストリア(猛虎蹂躙・f06203)だった。獣人たちの視線は彼に注目するが、それも無理はない。グランディアの姿は彼ら獣頭人身の獣人となんら変わりなく、あんな奴居たっけとばかりに互いの顔を見合わせていた。

『ふぅむ……この気配。さては貴様、イェーガーだな?』
 オブリビオンならではの猟兵を認知できる能力。チャンピオン・スマッシャーは直様、グランディアを猟兵と認知した。オブリビオン、ましてや猟書家としては猟兵は不倶戴天の敵。本来であれば力持ちを無理やりスカウトする試合に介入したとして、この場で自らが打って出ても可笑しくないはずだったが違った。チャンピオン・スマッシャーとしては猟兵がリングに上がること自体想定外であったが、逆にこの場を利用して猟兵を負かせるようと機転を働かせたのだ。ましてや猟兵の中に力持ちがいれば、それらもリングに沈める事でこちらの配下にもできよう。

『よし、貴様らの参戦も認めよう。さぁ、開幕のゴングを鳴らすのだ!』
『了解だピョ~ン♪』
 主催者たるチャンピオン・スマッシャーの命のもと、ゴングが高らかに鳴らされた。

「ぶるあぁあああああ!!」
 ゴングが鳴らされると同時に、グランディアが牙を剥かせながら跳んだ。丸太のような豪腕が振るわれ、鋭い爪先は獲物であるウサギを狩る……筈であった。

『ピョンピョピョンっと』
 突如としてリングに開けられたウサギ穴。その中に吸い込まれるよう、ボクサーバニーの姿が消えて、虎の爪は虚のみを切り裂いた。

「こいつ、ワープしたりと厄介な戦い方してくるんかよっ!!」
 本来であれば当たっていたはずであった攻撃が、相手のオブリビオンが有する思いがけない能力にグランディアは愕然としてしまう。その隙を逃さまいと、彼の懐に潜り込むようにボクサーバニーが姿を現すと牽制のジャブを一発当てる。

『これぞ、あーしの十八番。異次元殺法だピョン!』
 次の瞬間、グランディアの横腹に幾多の衝撃が矢継ぎ早に続く。巧みなフットワークで消えては現れ、また消えては現れるボクサーバニーのボディブローだが、流石におかしいと彼は違和感を覚えた。

「ぐっぅ! まるで、何人もの相手しているようなブローだぜ……まさか!?」
 彼は予測不可能な攻撃に耐えながらも先程受けたジャブを当てられた場所に触れると体毛に隠れて分からなかったが、指先で確認すれば毛が抜けていてうさぎ型の傷が出来ていた。先程の一撃は確かにボクシンググローブによるジャブの打撃であった。とてもだが、あの一撃で出来たとは考えられないが、それがもしUCの効果であったとすればどうだろうか?

『ふっふっふ……。そのまさか、ピョン。それはあーしが与えたウサギの痣。これがある限り、お前はあーしのサンドバッグも同然だピョン!』
 そう告げると、グランディアのみぞおちに重い一撃が打ち付けられる。だが、目を見開きながらも彼は倒れることなく、呼吸を整う暇も与えないボディブローに耐えながらも虎視眈々と反撃のチャンスを見出そうとガードを続けていた。

『そろそろトドメだピョン。これで、あーしのK.O.勝ちだピョーン!』
 十分に体力と気力を削ったと判断したボクサーバニーは、最後の詰めに入る。今まで入ったり出たりとしていたウサギ穴から完全に姿を現し、グランディアの顎下に狙いをすまして踏み込んだ。

「そうはさせねぇぜ!」
 しかし、彼女のチェックメイトは不発と終わってしまう。何故ならば、リングに力持ちの狼獣人が乱入したからだ。振るわれた彼女の腕は彼に掴まれ、そのまま背後からのチョークスリーパーを与える。だが、彼は牙を剥かせながらグランディアに警告する。

「もう一匹、居るぞ!」
 グランディアは助けに入った狼獣人の言葉の意味をすぐ知る事となる。何故ならば、彼の手によりボクサーバニーの行動を封じられているのにも関わらず、異次元に繋がるウサギ穴からボクシンググローブがグランディアを襲ったのだ。

「ちぃっ! やっぱり『そういう事』かよ!!」
 グランディアがすべてを理解し、その細腕を掴むと一気に引き抜く。すると、もう一人のボクサーバニーがウサギ穴より引きずり出されたのだ。つまりは、彼は一対一で戦っていたのではなく、一対二で戦っていたことになる。

「今までの礼だ。倍返しにして、返してやらぁああああッ!」
 グランディアが吠えた。そのままグラップリングしたまま、ボクサーバニーを力任せに床に叩きつけると、その勢いを止めることなく肘鉄で彼女のみぞおちを狙ったボディアタックを与える。オブリビオンとは言え乙女の身体であるそれは、屈強な体躯であるグランディアの重量に耐えきれず、意識はそのままリングへと深く沈んだ。

『ぎ、ぎぶ……ギブアップ、だぴょ…ん』
 チョークスリーパーを掛けら続けて耐えかねたボクサーバニーは、これで負けを認めたこととなった。
 勝利を確信していたチャンピオン・スマッシャーだったが、苦々しい顔付きのまま配下のボクサーバニーに指示を送り、猟兵サイドの予選通過ゴングが鳴らされたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティファーナ・テイル
SPDで判定
*アドリブ歓迎

「さぁ!ボクシングでもプロレスでも勝負だ!」
『スカイステッパー』で縦横無尽に動き回りながら『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で格闘攻撃を仕掛けて『神代世界の天空神』で敵の攻撃を空間飛翔して避けて敵のUCを『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化させます!
敵が1体で無ければ『ゴッド・クリエイション』で“拳を極めし者”を創造して対処して貰います。
『ジェットストリーム・ラヴハート』でSPDを強化して『ガディスプリンセス・アクティブ』を仕掛けて『超必殺究極奥義』で苛烈な猛攻を仕掛けます!

攻撃されたら『エデンズ・アップル』で“神様の林檎”を食べて疲労と負傷を回復します!



「さぁ! ボクシングでもプロレスでも勝負だ!」
 一戦目は猟兵と力持ち側の勝利となったが、次からはそうはいかまいと二戦目の試合が始まろうとしている。意気揚々とリングに上ったのは人身蛇脚の蛇神、ティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)。何処からともなく流れてくる、出だしが高らかな笑い声が特徴的な勇壮な曲を入場歌として入場だ。

『今度はさっきのようには行かないよーだ、ピョーン』
 リングサイドでヘビとウサギ、食うか逃げるかの両者が睨み合い、カーンとゴングが鳴らされた。同じ手は通じない。相手は搦め手を得意としそうな大蛇脚の持ち主だ。下手に立ち回っていはその餌食となると踏んだボクサーバニーは一気に距離を詰めて勝負に出ようとするが、ティファーナとはそうさせまいと空中へ翔んだ。

「へへーん。ボクの空中殺法をご覧あれ!」
 広げた金色翼羽根、下半身の金鱗が陽の光に反射するさまは、宛ら太陽そのものであった。直視しては目をくらませると拳でひさしを作り出すボクサーバニーであったが、その時ふとひらめいた。

(翼を付けていようが、空中の立ち回りは急には出来ないピョン。それならウサギ穴で背後を取って、そのままリングの上に叩き落としてやるピョン)
 基本的にリングでは頭上を取ったものが有利となるが、それはコーナーに昇るしかそれが出来ないことに限る。そして相手は飛行可能な翼を持ったヘビの猟兵である。正面から戦い続ければ、大蛇脚の餌食になるのは時間の問題だろう。それならばと、ボクサーバニーは勝負に出た。

『こうなれば、ダーティサプライズブローだピョン!』
 次の瞬間、ボクサーバニーはティファーナの視界から消えた。彼女の視界は、今やティファーナの全面ではなく背後である。あとは拳を振り降ろすだけ。彼女はボクシンググローブの中でボックスを作り出し、皮製のグローブから突起をせり出すようにグローブを絞るとティファーナの背後へ打ち込もうとした。

「やっぱり、背中を取りに来たんだね♪」
 だが、信じがたいことにティファーナはボクサーバニーを認知していた。ヘビにはピット器官という、周囲の微弱な赤外線放射。つまり、身体の熱を感知する器官を有している種類がいる。神とは言え誕生からまだ幼いティファーナだが、その巨体はニシキヘビが混じっているのであろう。彼女もピット器官に似たものを持っている。そしてよく間違われるが、ピット器官とは熱探知はサーモグラフィーのように温度差を視界で捉えるのではなく、感触によって認知するものとされている。つまりは、肌で周囲の気温差を確かめれるのだ。ティファーナが背後を取られた瞬間、背後に感じた熱量が先程まで目の前居て突如消えたボクサーバニーと同等のものであれば辻褄が合うという訳だ。

『やはり、ヘビだピョン! だけど、あーしの拳を避ける手段はあんたには無いのは変わらないピョン。その翼の根本ごと骨を砕いてやるんだピョン!』
「へぇ? それはどうかな……とぅ!」
 その時、信じがたいことがボクサーバニーの目の前で起きた。ティファーナが掛け声とともに、翼を羽ばたかずとも空中で移動したのだ。それはまるで、視えない壁を足場にして跳んだかのようにだ。
 拳は狙っていた背中を逸らされ、大蛇脚の金色に輝く鱗を掠めて摩擦熱で焦がした。それを物ともせず、ティファーナは空中を蹴ってジャンプするUC『スカイダンサー』で、逆にウサギ穴に逃れなければ重力に任せて落下する運命であるボクサーバニーの背後に回り込もうとする。彼女は危機感を覚えてウサギ穴に逃げ込もうとするが、蛇神の尻尾は彼女の身体に巻き付き、逃さまいと穴から引きずり出す。

「つぅかまえた♪ じゃあ、必殺技いっくっよぉ~……エル・ドラドライバー!」
 尻尾でボクサーバニーを捕らえたティファーナは、更に空中を蹴り続けて落下の加速力を増させていく。そして、リングにぶつかりそうになったとき、ボクサーバニーの頭を下向きにさえながら彼女を中心にとぐろを巻いた。

『ぴょ、ピョ~~~ンッ!?』
 哀れボクサーバニー。蛇神式パイルドライバーが炸裂し、その叫び声を最後に衝突した衝撃で意識が骸の海へと旅立ってしまう。

「あれ、レフリーが居ないや。じゃあ、ボクがカウントするね。ワン・ツー・スリー! カンカンカーン、ボクの勝ち~♪」
 無邪気ながらも予選突破に喜ぶティファーナの横で、ボクサーバニーは静かに塵となって骸の海へと還っていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メルフローレ・カノン
格闘技の試合を開催するオブリビオンですか?
正々堂々というか、変な趣味というか……
ともあれ、ルールには乗っ取りながら、敵を殲滅しましょう。

せっかくなら、力持ちの誰かとタッグを組んで
一緒に戦いましょう。
リング上のボクサーバニーをKOすればいいのですね。
それでは……全力で行きますよ!

敵は速さと異次元殺法を得意とするので、
[第六感]と[見切り]で敵の動きを読んで
足を狙い[体勢を崩す]で転ばしたり
[マヒ攻撃]で動きを止めます。
私の得物はメイスで、プロレス関係なく[怪力]で
思い切り引っ叩きますが、
至近距離では長物は無力ですので、
[悔い改める一撃]でKOを狙います。
「神よ、彼の者の罪をお許しください……」



「格闘技の試合を開催するオブリビオンですか? 正々堂々というか、変な趣味というか……」
 どこか納得しきれていない表情を浮かべながら、メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)はそびえ立つリングを仰ぎ見る。彼女自身は、わざわざリングを作り出して力持ちを何とかホイホイのように集めるという手の込んだ事をせずとも良いのではと思案する。最初から猟書家が力持ちをちぎっては投げてちぎっては投げて倒していく、何時ぞやUDCアースで見たゲームCMで問答無用に背負い投げや締め技で容赦なく制裁をかける柔道家まがいな事をしても良いかもしれないが、そこは彼の美学なのだろうと結論づけた。

「ともあれ、ルールには乗っ取りながら、敵を殲滅しましょう」
 とは言え、良家の令嬢として生まれ、幼少より修道院に預けられてきた彼女は、実としてプロレスにはそう明るくない。イメージは今まで世界を渡り歩いてきたことで掴んでいるが、あくまでもイメージだ。具体的には、そう。額に肉と書かれたレスラーが、友情パワーで悪役レスラーを倒していく、そんな漠然としたイメージである。

「せっかくなら、力持ちの誰かとタッグを組んで一緒に戦いましょうか。もし、そこのあなた。よろしければタッグを組んでリングに上がりませんか?」
「んんん? オイラかい? いいぞ、任された」
 メルフローレはちょうど手近に居たイノシシ頭の獣人に声をかけ、程なくしてタッグは形成された。ただし、お互いにプロレスには明るくない同士ではあったが、純粋なプロレスではなく異種格闘技戦だ。何とかなるだろうと思いつつ、彼女と相棒は次の挑戦者を待つリングへと上がった。

『むほっ。隠すことなく凶器とは、可愛い顔をしてエゲツないピョン』
 同じくリングに上った二人のボクサーバニーは、メルフローレが両手で握りしめた彼女と同じ大きさである巨大なメイスに目をやった。だが、猟書家チャンピオン・スマッシャーは何も異議を出さず、じっとリングを見据えている。ともなれば、『無限番勝負ロードオブグローリー』において凶器攻撃は問題ないのだろう。実際、デスマッチやハードコアマッチ等の試合形式によっては凶器の使用がルール上認められたり、レフリーに見つからなければや見つかっても5カウント以内に放棄すれば問題ないとするプロレス団体もあるという。

「全力で行きますよ!」
 メルフローレがメイスを振り上げると同時にゴングが鳴らされた。ボクサーバニーは互いにアイコンタクトをし、行動に移る。メルフローレが目で彼女らを追うが、ウサギ穴を利用した神出鬼没のフットワークに翻弄される。リーチでは勝るメイスだが、それを嘲笑うかのようにボクサーバニーが現れては消えて現れては消えての繰り返しであった。

『お遊びはここまでだピョン。一気に畳み掛けるピョン!』
 グローブでクイクイと挑発するボクサーバニーに、メルフローレが力を込めたメイスで引っ叩こうとするが、いまいま当たりそうなところで虚となって先端がリングへと叩きつけられる。直様メイスを引き上げて彼女たちの攻撃に備えようと態勢を整えたが、獲物はメルフローレではなく力持ちのイノシシ獣人だった。

『むほほほー。どうしたピョン? 今がその棒きれで、あーしらを纏めて薙ぎ払えるチャンスだピョン』
『だけど、そんな事をしたら相棒も纏めてノックアウトだピョン。せーの、ワンツー、ワンツー』
 狡猾なボクサーバーニーは、長物のメイスの特性を見抜いていた。薙ぎ払える武器は振り回せば懐に入るのは容易ではない。だが、そのリーチが今となっては仇となっている。彼女たちは手始めに力持ちを始末してから、じっくりとメルフローレをかわいがる段取りであった。

「ぐ、がぁぁぁっ! オイラを、舐めるんじゃねぇええっ!!」
 だが、その目論見は狂い始めてきた。防戦一方だったイノシシ獣人が、ウサギ穴から繰り出される拳を捕まえ、ボクサーバニーの一人を引きずり出したのだ。

「今がチャンスだ! オイラごと、こいつを引っ叩け!!」
 彼の言うことは最もだろう。だが、メルフローレとしては出来なかった。この勝負だけに組んだイノシシ獣人であったが、犠牲にしてまで勝とうとは彼女にはできない。それならば、とメルフローレは握りしめていたメイスを投げ捨てて走る。近距離では長物は無用となる、あとは『いつもどおり』に事を進めるだけだ。

『血に迷ったかピョン。そんな細腕であーしは……』
 パァァァァンッ!!
 乾いた音がリングの上に反響する。イノシシ獣人が動きを封じたボクサーバニーの頬には、赤々とした紅葉……掌の赤い跡がくっきりと浮かんでいる。見る者も思わず頬が痺れてしまいそうになる痛々しい跡を作り出したのは、彼女のビンタである。だが、ただのビンタではなくUCによる悔い改める一撃だ。超高速かつ大威力の一撃を覚悟を決める前に打たれたボクサーバニーは、静かに膝を折らせて意識が消失したようだ。

「もうひとかた……居ましたよね?」
 にっこりと満面の笑顔を見せるメルフローレに、思わずボクサーバニーの片割れがヒッと悲鳴を上げてしまう。彼女はウサギ穴に逃げようとするが、そうはさせまいとイノシシ獣人に捕らえれて羽交い締めされる。

『ピョ、ピョーン!? ごめんなさい、ごめんなさい! あーしが悪かったから、それだけは勘弁してピョン!』
 ジタバタと暴れながらも悔い改めようとするボクサーバニーであったが、それを聞き入れようとせずにメルフローレは掌にはぁ~っと吐息を吐きかる。

「神よ、彼の者の罪をお許しください……」
 彼女が十字を切りながらつぶやくと、再び乾いた音と叫び声がリングに響いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
さぁ、蛮人らしく荒々しく臨みましょう!

ボクサーに対しては、プロレスで真向勝負ですよ!

【挑発】して攻撃を誘い、
相手のブローを【見切り】、その上で回避せず
堂々と【オーラ防御】で受け止め耐えてから反撃のスタイル
その程度の拳ですかッ!
野生で鍛え上げたこの体とオーラは貫けません!

【怪力】で掴み上げたところ、仲間の力持ちに
攻撃を入れてもらうなどコンビネーション、連携を意識
試合を盛り上げるのを意識します
プロレスですものね!

フィニッシュは力持ちさんにびったんびったんでマットに
投げ落としてもらったところに、
ありったけのオーラを込めたヒップアタック……
《トランスクラッシュ》で決め

これが、ピーチボンバー……ですッ!



「さぁ、蛮人らしく荒々しく臨みましょう!」
 どこか未開の地に住まう原住民めいたエキゾチックな民族衣装姿のユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)がリングに上る。相方となる力持ちは、ゴリラ頭の力持ちたちのリーダー格である。ジャングル・コンビと言うべき二人組は、悠然とプロレス独自のファイティングポーズを取り、ボクサーバニーのボクサーに対しプロレスで真っ向勝負すると意思表明すると同時にゴングが鳴った。

『その心意気は殊勝だピョン。だけど、あーしのパンチは強烈だピョン!』
 ボクサーバニーが踏み込んで最初の一撃をユーフィに見舞う。しかし、彼女は避けようともガードしようともせずに、ブローをその幼き身体一身に受け止める。

「ぐッ…! その程度の拳ですかッ!」
 だが、彼女は深々と入ったボクサーバニーの拳を屁ともしていないとアピールしながら挑発する。そのスタイルそのものはプロレスそのものであり、観客たちを魅せるパフォーマンスそのものだ。これには二人の試合を見届けている力持ちらも歓声を上げ、猟兵サイドへのコールが上がり始めてくる。

『やせ我慢も程々にするピョン。その自信ごと叩き折ってリングにキスしてやるピョン』
 ボクサーバニーのラッシュがユーフィに襲いかかる。それでも彼女は攻撃を受け止め続け、その度にリングの外から応援のエールが送られてくる。それらが一層強まった頃合いを見計らい、ユーフィはボクサーバニーの腕を両腕を使い捕らえる。ボクサーバニーが舌打ちをすると、残った片腕で怪力を振り絞り離そうとしないユーフィに殴りかかろうとしたその時、彼女はバディの力持ちにアイコンコンタクトを送る。

「こっちも忘れちゃ困るぜぇ!」
 身を屈めてボクサーバニーの腕を掴んでいるユーフィの頭を何かが掠めた。ゴリラ獣人の腕によるラリアットがボクサーバニーの喉を直撃すると同時に、ユーフィが捕らえていた腕を離す。その華麗なコンビネーションが決まってボクサーバニーがリングに叩きつけられると、更に歓声が沸き立った。

『こンのぉ! 調子に乗るなピョン!』
 ボクサーバニーの相方が仲間の敵を討つべく、ゴリラ獣人めがけて踏み込んでくる。

「そうはさせませんよ!」
 だが、ユーフィーが身を屈めたままの体勢でタックルをかまして、ボクサーバニーの動きを制した。動きが阻害されたのをチャンスに、ゴリラ獣人が牙をむき出しながら吠えるとボクサーバニーの腕を掴み取り、豪腕の怪力に任せて彼女を倒れたボクサーバニーの上に叩き落とす。

「今だ、フィニッシュだ!」
「了解です!」
 ゴリラ獣人の合図と共に、彼の肩を借りてユーフィが高く飛び上がる。おおっ、と会場がざわめく中、くるりと空中回転した彼女は叫んだ。

「これが、ピーチボンバー……ですッ!」
 身体をくの字に曲げての闘気纏うヒップアタックが折り重なったボクサーバニーの上に落とされる。その衝撃は二人の身体を通り越しリング全体を揺らした。この一撃でボクサーバニーが同時に倒されるという華麗なダブルK.O.判定が下されると、より強い歓声が二人へと向けられた。その声を一身に浴びながら、リングに上っていたユーフィーにゴリラ獣人は腕を上げながらお互いの健闘を称え合ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません

「ぼ、僕も戦うなんて聞いてないよ!?
力持ちな方々のセコンドとして参加するはずが、何故か自分も戦うことに
弱そうなので優先的に狙われることでしょう

「こうなったらヤケクソ……あぁっ、ごめんなさい!
バニーのスタイルに赤面し、拳を繰り出せば胸に当ててしまい動揺し、まともな試合にならず
反対に、バニーの仲間達による集団リンチでフルボッコ

戦闘不能になることでUCが自動で発動
頭から翼を生やした人魚の悪魔が登場し、蒼の身体を豪快に敵へブン投げます
『うふふ……この子の本当の使い方を教えてあげるわ♪

バニーに大ダメージを与えたところで、止めは力持ちさんに任せます



 先程の試合により、力持ちたちは大いに勇気づけられた。もしや、自分たちだけでも十分に戦えると思えてきた獣人でもあったが、流れるような試合でボクサーバニーを倒してきた猟兵までとは行かない。試合はもつれ込んで第三ラウンド、流石の力自慢とは言えボクサーバニーからの執拗な攻撃に体力を奪われて息が上がり始めている。

「ちくしょう……目が、よく見えねぇ」
 既に力持ちの顔はボコボコに腫れ上がり、特に大きく腫れ上がった瞼を見た彼らのセコンドを務めている日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)は痛々しく思った。猟兵である彼であったが、性格的に弱気でとてもリングに上がりたいとも思わずセコンドとしてサポートに徹してきた。だが、その甲斐もなく、今や力持ちが負けようとしている。このままでは、次のラウンドでが彼がボクサーバニーの拳を受けてK.O.してしまうのは目に見えて明らかだ。そうなってしまえば、この力持ちはチャンピオン・スマッシャーの軍門に下ってしまう。どうにかならないかと考えを巡らせていると、彼から思いも寄らない言葉が送られる。

「このまま戦えば、オレっちは負けちまうんだろうな…。なぁ、相棒。オレっちの代わりにリングに立ってくれねぇか? そんなヤワな身体をしてるお前も、猟兵なんだろ?」
「へ? い、いえ、僕はとてもそんな事は……ッ!?」
 必死にとても異種格闘技をやるだなんて到底できないと説明しようとした時、インターバルの終わりを告げる鐘が鳴らされた。

「オレっちが呼吸を整えるまででいい。頼んだぜ、相棒」
 そんな彼の言葉は虚しくも力持ちに届かず、弱々しくもまだ力強さが残っている彼に押される形で蒼はリングへと出された。目の前ではほぼ無傷なバニースーツ姿のボクサーバニーがシューズを鳴らしながら、突然選手交代された蒼に警戒をしている。齢十三という性を意識し始める年頃の彼としては、絞られた身体に反して豊満な胸がリズムを刻んで揺れているのを見れば、否応にもそれを意識してしまう。

『ぬっふっふ…可愛い坊やだけど、イェーガーはイェーガーだピョン。まずは、様子を伺うピョンよ』
(視線、視線を顔に集中しないと…)
 ボクサーバニーの見様見真似で、蒼は拳を構えながら距離を保とうとする。だが、ボクサーバニーは彼の心の内など他所ともせず、じりじりとにじりとってくる。蒼もなるべく彼女の顔に意識を集中させようとするが、ちらちらと無意識に視線が頭の下へと移ってしまう。そんな隙だらけの蒼を逆に警戒しているボクサーバニーであったが、まずは出方を探ろうと軽くパンチを見舞った。

「こうなったらヤケクソ……うわっ!?」
 突然のフックに蒼は驚いて拳を突き出す。同時に何か柔らかい感触がした。きょんとした様子で動きが止まったボクサーバニーであったが、その訳は言うとパンチしようとしたはずだがテンパって押し止めようと手が開き、それがふくかなボクサーバニーの胸を押し止めて形を歪ませていたのだ。

「……あぁっ、ごめんなさい! ごめんなさい!」
 顔をより一層赤らめながら必死になって謝り詫びる蒼の姿に、ボクサーバニーは確信した。こいつヘタレだ、と。

『ん~、初々しい反応だピョン。これはウサギ穴にお持ち帰りして、お姉さんの手ほどきを受けさせたくなるピョンね~。だ・け・ど、だピョン♪』
 そんな彼とは正反対に余裕綽々のボクサーバニーが、再び拳を構えた。慌てふためいている蒼は、とてもではないが戦える状態ではない。せめての幸いは、そんな状況を呼吸が整え始めようとしている力持ちの目には見えないということか。

『抵抗されると厄介だし、ちょっと痛いけど眠って貰うピョン♪』
 その言葉と同時に、蒼の腹部に衝撃が走った。鈍い痛みに冷静になった彼が視線を落とすと、ボクサーバニーのグローブが深々と彼の下腹部にめり込んでいる。そして、胃からすっぱいものが喉にこみ上げてくる不快感が彼に襲いかかった。

「かっ…は……っ!?」
『ガンバレ、ガンバレ♪ まだまだ行くピョ~ン』
 よろよろと立ちすくむ蒼の様子に嗜虐心が刺激されたボクサーバニーが、次々と無抵抗な身体に拳を打ち込んでいく。その様子に仲間のボクサーバニーも乗ったようで、リングの上に開いたウサギ穴から加勢されていく。更には羽交い締めされての集団リンチで文字通りにサンドバッグ状態となった彼の意識はぷつりと消え意識が消えると、ボクサーバニーの仲間らはあとは順番待ちと言わんばかりにウサギ穴に帰って行った。

『さてさて、どう遊んでやろうかピョンね~…あれ?』
 チロッと赤い舌を出しながらボクシンググローブを外し、倒れている蒼を自分のウサギ穴にお持ち帰りしようとしたボクサーバニーだったが何やら違和感を覚える。蒼の頭の上になにかぼんやりとしたものが浮かび上がっていたのだ。

「うふふ……お持ち帰りする前に、この子の本当の使い方を教えてあげるわ♪」
 蒼が戦闘不能となったことで自衛的に発動したUCで召喚された翼を生やした人魚の悪魔が顕現する。だが、彼女はボクサーバニーに向かおうとはせず、弱々しく息をする蒼の髪をむんずりと掴み上げた。そしてこともあろうことか、主である彼を魚雷と満たせさせてボクサーバニーのブン投げ放った。

『ぴょ、ピョーン!?』
 まさか、こう予想できようものか。悪魔召喚士として使役している悪魔による人間魚雷さながらの蒼の頭突きにより、ボクサーバニーはリングサイドまで吹き飛ばされた。ロープの反動で身体が軋むが、蒼をお持ち帰りするにはあの水の悪魔をどうにかしなかればならない。その一心で拳を構えようとしたボクサーバニーだったが、何者かにより首を腕で締め上げられた。

「信じていたぜ…相棒よぉ。あとは、オレっちに任せな!!」
 未だ腫れ上がった目で視界がままならない力自慢は、動きもままならない自身に向けてボクサーバニーを追いやったと信じ切っている。血管を浮かび上がらせながらの豪腕がボクサーバニーを締め上げ、彼女は泡を吹きながら意識が骸の海へと旅立つ。
 UCによる衝撃で意識を取り戻した蒼が顔を見上げると、まだまどろむ意識の中でゴングが鳴っているのを聞き入れる。そして、本来セコンドを務めていた力持ちの獣人が彼に肩を貸してリングから降り立つ。身体に染みるような鈍い痛みでまだ意識がはっきりと戻らないが、掌にまだ残る柔らかい感触がはっきり残っていたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『チャンピオン・スマッシャー』

POW   :    グローリーチャンピオンベルト
自身の【チャンピオンベルト】が輝く間、【自身】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    キス・マイ・グローリー
【プロレス技】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。
WIZ   :    アイ・アム・チャンピオン
自身の【攻撃を回避しないチャンピオンとしての信念】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はビードット・ワイワイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 予選試合が当初の予定の中頃に差し掛かったが、連戦に次ぐ連勝のゴングはオブリビオンではなく猟兵を祝福するように鳴り続く。既に手勢であるボクサーバニーの大半は骸の海へと還っており、残す試合数に出れる数は満たされずせいぜいラウンドガール程度まで減ってしまった。チームメイトが大敗する中でボクサーバニーは互いに顔を見合わせて不安の色を隠せなかったが、その逆に猟書家チャンピオン・スマッシャーのマスクで隠れた顔には不敵な笑みを隠せずにはいられなかった。

『ぬっははははは! よもやこうも番狂わせが起こるとはなッ!!』
 今まで両腕を組みながら試合を観戦していたチャンピオン・スマッシャーが笑い声と共に立ち上がると、そのままズシンズシンと歩を進めてリングへと近づく。登板しようとしていたボクサーバニーを押しのけながら、彼はロープに手をかける。筋肉ダルマとも形容すべきチャンピオン・スマッシャーの自重でギシッとロープが軋む音が聞こえ、その反動を利用してその巨体に反して軽やかに飛び上がると、リング全体を軋ませながら華麗に中央へと着地した。

『イェーガー! 貴様らの戦いぶりは見せてもらったぞ。実に良い戦いだ。それを見せつけられれば、俺様の身体に燃える闘志に火が着いてしまうのも無理はない。只今より、無限番勝負ロードオブグローリーのルールを変更する。このチャンピオン・スマッシャー様と闘う権利は試合に勝ち上がった者に限っていたが、この場に居るものすべての挑戦を受けて立つ。かかって来いやぁ、小童どもぉ!!』
 チャンピオン・スマッシャーの怒声が大気を震わせながら伝播する。それに引き寄せられるように力持ちの獣人が一人、また一人とリングに上がろうとしている。
 ともあれ、予選試合をすべて消化せずに済んで良しとしよう。あとはこの試合主である猟書家をリングに沈めるだけだ。無限番勝負ロードオブグローリー最後の戦いを告げるゴングが打ち鳴らされ、闘いの火蓋が切って落とされた。
メルフローレ・カノン
連携アドリブ歓迎

誰でもいいからリング上のあのチャンピオンを倒せば勝利、
というルールですね。了承しました。
では、私もリングにお邪魔しましょうか。
「全力で行きますよ!」

プロレスのルールに乗っ取る必要はなさそうなので、
私はメイスで引っ叩くなりどつくなりします。
確か、序盤は内腿や鳩尾をコツコツ叩いていくのが
格闘技のセオリーでしたか([部位破壊]と[マヒ攻])。
スタミナが切れて動きが止まったら
[怪力][力溜め]の上でフィニッシュブローを狙います。

敵の攻撃は[武器受け][盾受け][オーラ防御]
それに【無敵城塞】で受け、耐えます。
敵の攻撃は無闇にかわさないのもプロレスと聞きました。
「ここは堪えてみせます!」


日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません

先の戦いで既に満身創痍
とても戦える状態ではありません
と、いうわけで、戦闘は力持ちに任せ、蒼を儀式の依代に悪魔が呪いを発動!
『それじゃ、今度は戦わないで済むようにしてあげるわね

蒼を縛り上げ、水攻め、蠟燭攻め、鞭攻撃、靴下臭い攻めなど、ありとあらゆる拷問で水の悪魔が虐めます
その苦痛を100倍にしたものが、チャンピオン・スマッシャーに襲い掛かる!
力持ちがダメージを受け過ぎた場合は、蒼の服を破るなどして恥ずかしい目に遭わせることで、回復効果を発動します
『身体能力なんて上げたところで、内から蝕む呪いには抗えないわよ
「その前に、僕が死んじゃうよぉ!



「誰でもいいからリング上のあのチャンピオンを倒せば勝利、というルールですね。了承しました」
 この試合の主催者たるチャンピオン・スマッシャーの乱入により混乱に渦巻くリングサイドで、本来であれば第二の予選戦を控えいたメルフローレは頷きながらこの状況を把握する。そもそも『無限番勝負ロードオブグローリー』のルール自体は、猟書家であるチャンピオン・スマッシャーが設けたものだ。現に力持ちたちが誘蛾灯に引き寄せられる虫のようにリングに上がろうとしているのも、ルールではなくチャンピオン・スマッシャーの力において間違いない。

「全力で行きますよ!」
 そうであれば、こちらもそれに乗るだけだ。猟兵の介入で配下の手駒を喪って、このような狼藉に走ったチャンピオン・スマッシャーは焦っている。一重に言えばこれはチャンスだ。無駄に試合を続けさせて体力を消耗させる彼の計画は頓挫し、ここでフルパワーを発揮して彼をリングに沈めれる。
 そんなメルフローレが力持ちよりも我先にリングへ上がる様を、蒼はへたり込んで呼吸を整えながら見送っていた。彼も結果的に予選を勝ち上がったが、先の戦いで既に満身創痍の身である。ボクサーバニーのボディを集中的に狙ったブローのダメージがまだ蒼の体に残っており、少し動こうとすれば体が悲鳴を上げて激痛が走る。

「悔しいけど、こんな状態の僕が上がったところで足手まといですし…」
 地面に俯いていた頭をあげると、リングの上でそびえ立つチャンピオン・スマッシャーの鍛え上げられた身体が見える。とてもではないが、ひ弱な自分にはあのような相手とは真っ向勝負できるほどの力なんてない。まったく簡単だと言わんばかりに三コマ並のスピードでムキムキマッチョになれる身体強化系UCがあればさもありなんだが、生憎ながら怪奇人間の悪魔召喚士である自分にはそのような力などない。せめて応援だけでもと声をあげようとしたが、衣服の下で痣となって腫れ上がった筋肉がそうはさせまいと彼に痛みを走らせる。

『そう……そんなに悔しいの。それじゃ、今度は戦わないで済むようにしてあげるわね』
 突如耳元に囁かれた声に、蒼の表情はみるみると血の気が引いてくる。彼をリングの上で勝利に導かせた水影の悪魔はまだ還っていなかったのだ。

『どうしたどうしたぁ! さっきまでの威勢の良さは何処へ行ったぁ!!』
「くっ…。流石チャンピオンを名乗ることだけはありますか……ッ」
 一方、リングではチャンピオン・スマッシャーの怒声に近い罵りが響いていた。ハンデと言わんばかりに重々しいチャンピオンベルトを巻いたままにも関わらず、チャンピオン・スマッシャーの動きはその巨体に反して俊敏だった。メイスで引っ叩くなりどつくなりしようにも、一向に隙を見せずに怒涛の一撃を繰り広げられれば、メルフローレは防戦に徹するしかなかった。

「ですが、敵の攻撃は無闇にかわさないのもプロレスと聞きました。ここは堪えてみせます!」
 とは言え、このままではいたずらに体力を消耗してしまうだろう。そんな中、チャンピオン・スマッシャーの背後へ力持ちがにじりよりながら近づいてく。反撃の糸口が見えたと思ったが、それをあざ笑うかのように力持ちの奇襲をチャンピオンはカウンターでねじ伏せる。

『ぐっふっふっふ……惜しかったな。その程度では、この俺様の背後を取ることなんぞ出来ん。そろそろ遊びを終いにするかぁ!!』
 応酬を受けて悶絶する力持ちをよそに、チャンピオン・グローリーはメルフローレが手に持つメイスに手をかけた。

「そうは…させません!」
 純粋な力勝負では負けてしまう。メルフローレは咄嗟にUC『無敵城塞』を発動させ耐え忍ぶ。これにより、彼女は動けない代わりにあらゆる攻撃に対しほぼ無敵となるが、体力的な消耗は別だ。無理やり引き剥がそうとするチャンピオン・スマッシャーの豪腕が、彼女の気力を徐々に削り取っていく。悔しいところだが、力も持久力も相手の方が格上である。ギリっと歯を食いしばりながら耐えるメルフローレを嘲笑かのようにチャンピオン・スマッシャーは不敵に笑う。だが、突如として彼の顔が崩れて、何か耐え難き臭いを嗅いだかのような変顔になるとその力は緩まった。

「本当は使いたくないけど……もう、僕自身を生贄にするしか方法が……」
 その細々しとした声はリングの外、良い枝ぶりの大樹から聞こえた。そこにはロープで逆さ吊り状態となった蒼と、何故こんな事をするのか困惑気味の顔で逆さ吊りの状態を維持している力持ちの獣人が居た。それらを他所に、水の悪魔ウェパルが力持ちから拝借した履きつぶした靴下を蒼の眼前に垂らしている。その臭いは履き主の汗や体臭などが折り混ざった強烈なもので、それを嗅がされている蒼自身も胸の奥からこみ上げて来そうな程だ。だが、そんなアブノーマルな責めも彼自身の性癖というものではなく、れっきとしたUCに他ならない。所謂自身に受けた苦痛を増幅させ、相手に倍化させた苦痛を与える呪術めいたものだ。
 しかし、その効果は確かなもので、チャンピオン・グローリーの強靭な精神力と言えども不意に嗅がされたスメル臭の効果はてきめんであった。その機を逃さまいと、メルフローレはUCを解除して反撃に転じる。

「これまでの倍返しです!」
 振りほどいて一旦距離を取った彼女が振るったメイスの先端が、チャンピオン・グローリーの鳩尾に深々と食い込む。

『ぬおおおおッ!!?』
 走った衝撃に思わず前のめりになる猟書家だったが、チャンピオンの信念で常人では耐え難き痛みを堪え、尚も瞳に宿る闘志の炎は色褪せていない。次の一撃を繰り出そうとするメルフローレのメイスを掴み取ろうと腕を伸ばすが、再び彼の身体に激痛が走ってマスク越しの顔が苦痛に歪んだ。

『身体能力なんて上げたところで、内から蝕む呪いには抗えないわよ』
「その前に、僕が死んじゃうよぉ!」
 チャンピオン・グローリーが自身に呪術を送る二人に視線を送ると、今度は水で作り上げた鞭で逆さ吊りの蒼をウェパルが折檻している。パァンパァンと音を響かせ、サンドバッグさながら休みなしに連打で叩かれる蒼の身体は左右へと揺れ動いている。
 その度に彼の衣服は切り裂かれ、蒼が羞恥心を覚える度に一人で彼を吊り下げる力持ちに力が宿り始める。尤も、力持ち自身は何故こんな事をするのかと終始困惑気味であるのだが、彼が蒼の身体を吊り下げ続けてくれるので結果オーライとも言えるだろう。

『ぐぅ…なんとデタラメな』
 幻視痛な筈の痛みなはずであるが、まるで本物の鞭に打たれた痛みがチャンピオン・グローリーの動きを妨げる。視線がこちらを逸れ、動きに隙が生じたのをメルフローレは好機と捉えた。漲る怪力を溜めた渾身のフルスイングで振るったメイスが、チャンピオン・グローリーの脇腹に深くめり込む。

「試合の最中によそ見は厳禁です!」
 そんな忠告を猟書家に言い放ったメルフローレがメイスをそのまま振り上げてバランスを崩させると、声無き呻き声を上げながらチャンピオン・グローリーは初めてマットに片膝を突かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

グランディア・エストリア
ここからが本番ってことか!
まぁ、ウサギ共は予行だったしよ。
ってことで、この、オレ様自らぶち壊しに行けるってことだぜ!
即ち、正義を見せつけるときだぜっ!!
では、いくぜっ!

奴が仕掛けてきたら、【グラップル】【野生の勘】で掴み攻撃を注意して弾き、通常の攻撃なら【激痛耐性】でガードする。
そして、奴がへばり次第、【グラップル】【カウンター】【気合】【2回攻撃】で攻撃を行って、ヤツをリングに叩きつけたら、そこで追い打ち的に【灰燼拳】で爪で引き裂く。

「たしか、テメェはどう見ても悪役だよな!」
アドリブ歓迎



『ぐぅううううッ……。さっきの一撃、効いたぞ。だが、この俺様がそれで沈むと思うなぁ!!』
 両脇を抱えながらも、チャンピオン・スマッシャーが吠えて立ち上がった。彼の闘志は未だ消えていない……否、更に燃えている。痛みが油となり、彼の闘魂に注がれて脳内麻薬となって燃え盛っているのだ。

「ここからが本番ってことか! まぁ、ウサギ共は予行だったしよ」
 猛り立つ猟書家の新たな挑戦者は、同じ獣人の力持ちに紛れて前へ出た虎のキマイラであるグランディアだ。彼にとってはボクサーバニーとの闘いはウォーミングアップの前哨戦に他ならない。そう、今この時の闘いのための準備運動に過ぎなかったのだ。

「ってことで、この、オレ様自らぶち壊しに行けるってことだぜ! 即ち、正義を見せつけるときだぜっ!!」
『ほざけぇ! 貴様の正義なんぞ、マットの上に沈めてくれるわッ!!』
 小細工などいらないとばかりに、両者はお互いにグラップリングで両腕を肩に回しながらの力勝負に出た。

「オレ様に力勝負を持ち込むってか。では、いくぜっ!」
 顔のトラ模様を怒れる虎に歪めながら、グランディアは気合を入れる。体重をかけた力の重みは両者に伸し掛かり、少しずつにじりながら相手の態勢を崩そうとする静かなる腹の探り合い。その様子に力持ちらは手を出すこともなく、リングの上で固唾を飲みながら勝負の行く末を見守るしか他なかった。

「っちぃ! なんて馬鹿力だ!」
『ぐあっはっはっは! さっきの威勢はどうしたぁ!? それでは、このチャンピオンベルトを奪うことは出来んぞぉ!!』
 ダメージを追っていてなお、体力的に有利なグランディアを圧倒するのは流石はチャンピオンを名乗るだけあることか。グランディアが牙を向かせながら威嚇するが、それに対抗するかのようにチャンピオン・スマッシャーも歯を向かせながら笑みを浮かべる。

「このままでは同胞が負けてしまう! 今助け…」
「手助けはいらねぇ! オレ様と奴の勝負に水を差すな!!」
 この状況に思わず力持ちの獣人が手助けを申し出ようとしたが、グランディアはそれを拒否した。バーバリアンとして、北方の森の王としてのプライドがそれを許さなかった。

『ほぉう、いいのかぁ? そんなやせ我慢をしてなぁ!!』
「……良いことを教えてやるぜ。オレ様は獣王。獣であることをなぁ!!」
 グランディアが吠えると、今まで勝ち誇っていたチャンピオン・スマッシャーの顔が苦痛にゆがむ。そして、彼の身体から赤い血筋が静かに流れ、マットの上に垂れ落ちる。

『貴様ァ!!』
「忘れていたようだな。オレ様は虎であるってことをよぉ!!」
 グランディアは肉球の隙間から爪を立て、チャンピオン・スマッシャーの身体に食い込ませたのだ。通常のプロレスではひっかき攻撃はルール違反としてご法度だが、この何でもありの異種格闘技戦では意味をなさない。深々と爪先を更に食い込ませると、形勢は逆転してグランディアの漲る野生の力がチャンピオン・スマッシャーを圧倒し始めようとする。

「へばり始めてきたようだな! 勝負はここからだぜ!!」
 長い力勝負に終止符を打つべく、グランディアは勝負に出た。体制を崩すと見せかけて、同時に繰り出す必殺の灰燼拳。超高速かつ大威力の一撃をまともに喰らえば、この巨漢とてただでは済まないはず。渾身の力を振り絞り、猟書家をリングに叩きつけると拳を振り下ろした。

「ちっ、しぶてぇ野郎だ。たしか、テメェはどう見ても悪役だよな! 悪役ならしぶてぇ筈だ」
 リングの上に叩きつけるまでは上手く行った。だが、チャンピオン・スマッシャーは咄嗟に受け身を取り、グランディアの追撃を免れようとした……が、力勝負でイタズラに消耗させた体力が原因か一歩遅かった。

『ふしゅるるるるる……』
 チャンピオン・スマッシャーは呼吸を整えようと、顔面のマスクに手を当てながら立ち上がる。その隙間から血が滲み、再びマットの上を鮮血の雫がぽたりと落ちる。彼がマスクから手を離すと、グランディアの鋭い爪先により引き裂かれたマスクの隙間から流れる血が覆面のチャンピオンの素顔を依然と隠していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーフィ・バウム
真の姿:蒼き鷹の姿にて
レスラーとしてお相手いたしますわ

【グラップル】を軸に、組み付いての
打撃や関節技で攻める
力持ちのパートナーと連携し
タッグ技を綺麗に決めていく

相手からの攻撃は【見切り】、そのうえで避けず、
【覚悟】をもってあえて受けます
レスラーですからっ
【オーラ防御】【激痛耐性】で耐えますわ!

パートナーさんがピンチなら、
スマッシャーからの攻撃を【かばう】ことで窮地を凌ぐ
くぅぅ……!
悲鳴をあげても、心は折れず、【気合い】十分ッ
反撃の【鎧砕き】の一撃を入れます

フィニッシュは、スマッシャーを抱え上げ
【ジャンプ】【空中浮遊】で十分高度をつけてからの、
落下して《蒼翼天翔》!
豪快にマットに叩き込みましょう



『まぁだァだ…まだ倒れんぞぉ!!』
 鮮血でマットを染めながら、チャンピオン・スマッシャーは鬼気迫ったオーラを放ちながら立ち上がる。こんな状態となりながらも闘いの意思を示すのは、チャンピオンとしての意地か。それとも猟書家としてのプライドか。
 
「いい加減お諦めなさい。チェックメイトのお時間でございますわ」
 その様子に誰もが臆している中、その声は天上から聞こえた。誰もが視線を送った先はコーナーポストで、逆光を背にしながら声の主はその上に立っていた。

『貴様…何奴だ!』
「わたくしの名は『蒼き鷹』。貴方をリングに沈める天空よりの使者ですわ。とぉ!」
 青髪のショートヘアのショートヘアーをなびかせながら、蒼き鷹と名乗ったレスラーが翔んだ。だが、彼女の目を見た者の中で感の良い者は彼女の正体に気づいたであろう。蒼き鷹、その正体は予選試合を勝ち上がった銀髪少女、ユーフィ・バウムという名の猟兵であることを。

「お上がりなさい。その出血では持って数分。それまでに、貴方をK.O.してさしあげますわ!」
『ぐふ、ぐふふふ…。そうだな。ならば、その言葉をこちらも返させて貰うぞ!』
 両者にはそれ以上の言葉など不要。いや、肉体言語に変わったと言うべきか。ユーフィはレスラーとしての矜持として、真っ向勝負でチャンピオン・スマッシャーの必殺技『キス・マイ・グローリー』を躱すこと無く受けて立つ。

「くぅぅ……! 痺れますわね…ッ!」
 キス・マイ・グローリー。それは相手の突進するスピードを利用したカウンター技である。相手の体勢を崩した上で上半身をホールドし、勢いを止めないまま地面に顔面を叩きつける荒業だ。さらにチャンピオン・スマッシャーの重みが加わり、じりじりと相手を締め上げれば、並のレスラーであればあまりの苦痛にギブアップをしてしまう。だが、ユーフィは激痛で折れそうな心を、歯で噛み締めながら気合いで耐えている。彼女は信じていた。このリングでの試合は一人だけではないことを。

「ぐおぉおおおおおッ!」
 強制的にうつ伏せ状態となって満足に呼吸もままならず、次第に遠き始めた意識の中で野獣の叫び声が聞こえた。ついにチャンスは到来したのだ。彼女と予選を戦い抜いたゴリラ獣人が、チャンピオン・スマッシャーにチョークスリーパーを仕掛けたのだ。

(今ですわ!)
 思いもよらない乱入者の攻撃に、ユーフィをホールドするチャンピオン・スマッシャーの拘束が緩む。生まれた隙間から脱出すると同時に、チャンピオンはゴリラ獣人を振りほどく。

「今こそ仕掛けるタイミングですってよ!」
「応ッ!!」
 よろめくチャンピオン・スマッシャーに対し、蒼き鷹とゴリラ獣人は跳んだ。二人は片腕を伸ばしあって猟書家を挟んでクロスさせあう技、クロス・ボンバーが炸裂した。如何に強靭に鍛え上げられた首としても、前後から襲う衝撃が頭を挟み込まれればたまった物ではない。

「まだまだツープラントンは続きますわよ! お見せいたしますわ、私たちのフェイバリット・ホールドを!」
「任せろ、蒼き鷹!」
 ゴリラ獣人は彼女の正体に気づいていたが、敢えてユーフィの名は出さない。謎のレスラーは謎のままでいいのだ。ゴリラ獣人は風前の灯となったチャンピオン・スマッシャーが態勢を崩したタイミングを見計らい、前屈みになった相手の頭を自身の両足で正面から挟み、胴体を両腕で抱えて持ち上げながら力を振り絞り高く飛んだ。巨漢の男を一人抱えたままジャンプするという通常ではありえないものだが、これも力持ちの為せる力技だろう。
 コーナーポストの頂点まで差し掛かる頃合いを見計らい、ユーフィも高く飛んだ。そして丁度ゴリラ獣人に肩車して貰う形でドッキングすると、彼女はチャンピオン・スマッシャーの両脚を掴み上げ、又裂きするように左右へと広げながらホールドする。それに苦痛をあげる猟書家だったが、地獄の急降下はここから始まるのだ。

「これがわたくしたちの蒼翼天翔、ダブル・ブルーバード・ドライバーですわ!」
『ぬぉわぁぁぁッッ!?』
 今度はチャンピオン・スマッシャーが大地とキスをする番となり、凄まじい衝撃音とともに巨漢の猟書家が暴れてもびくともしなかったリングが大きく揺れた。自重の重量に加えて二人分の体重が加わった脳天杭打ちが炸裂したのだ。両陣営とも固唾を呑んで見守る中、チャンピオン・スマッシャーの身体が音もなく崩れた。

「「「ワーン! ツー! スリー!!」」」
 誰もが申し合わせること無く叫んだ、はち切れんばかりのカウンティングコールが会場に響き渡る。スリーコールまで微動だもしなかったチャンピオン・スマッシャーはノックダウンしたのだ。
 それを苦々しくも敗北した事実を突きつけられた配下のボクサーバニーらは、塵となって消え去り骸の海へと還っていく。チャンピオン・スマッシャーも同様に消え去ると、彼がUCで作り出したリングも消え失せて元の田園風景へと戻っていく。無限番勝負ロードオブグローリー、嵐のように過ぎ去っていった闘争は夢か現か幻だったのかと誰もが思った。
 しかし、確かにそれは現実であった。チャンピオン・スマッシャーが身につけていたチャンピオンベルトが骸の海に還らず残っていたのだ。中央のエンブレムが陽の光を反射しながら、無限番勝負ロードオブグローリーを勝ち抜いた勝者たちの栄光を静かに称えていたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月24日


挿絵イラスト