6
現代怪異譚 山男

#UDCアース

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


0




●「山男が出た」
 山林と田畑に囲まれた、長閑な町に根も葉もない噂が流れ出した。最初は好奇心旺盛な子供達の間で広まり、大人達はその様子を見て自身の幼少期を懐かしんだりした。妖怪だ幽霊だと騒ぐ、子供時代に良くある光景だと。実際に見たと言う子供の訴えには「きっと猿だよ。ここは山に近いからね」と答え、笑って聞き流していた。
 しかし、事件は起きた。最初は山菜採りに山に入った老夫婦が無残な姿で発見された。獣の仕業と断定され、害獣退治に向かった猟友会の会員が、その次の犠牲者。遺体に残された明らかに獣によるものではない、鋭利な刃物類による傷。――これは殺人事件ではないか? 町に戦慄が走り、人々が騒ぎ出す。警察の本格的な捜査が始まるも、それを嘲笑うかのように次々と老若男女が失踪し、惨たらしい遺体で発見される。長閑だった町から平穏が失われた。

●グリモアベースにて
 幾人かの猟兵達が集ったのを確認すると、稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は胸の前で組んでいた腕を解き、もふもふな尻尾を一振りし声を張り上げた。
「UDCアースにて禍事の気配を察知したのじゃ! 何者かが贄を以って邪神復活を目論んでおる! 皆には急ぎ現地に向かい、現在進行中と思われる邪神復活の儀式を阻止してもらいたいのじゃ!」
 と、ここで言葉の勢いが弱まり、桐葉は苦虫を噛み潰したような表情になる。
「……が、肝心の儀式場の場所までは見通せなんだ。こうしておる間にも新たな犠牲者が出ておるかもしれぬというのに!」
 だが、すぐに思い直したように顔を上げると話を続ける。
「すまぬ、焦ったところで解決などあり得ぬというのにの。――先ずは現地へ向かい情報収集じゃな。近隣の町では山男を見たと言う噂が流れ出してから、立て続けに異変が起きておるようじゃ。少なからず何らかの関係があるのじゃろう。じゃが、一つに固執せず様々な視点から調査をするのも良かろう。どこに情報が転がっておるか分からぬし、意外なところから儀式場の場所が判明するやもしれぬからのう」
 桐葉は自分が持つ情報の全てを開示したことを確認し、集った猟兵達を見渡すと一つ頷く。
「それでは今より転送の儀を行う!」
 桐葉は目を閉じ意識を集中し転送の準備に取り掛かる。猟兵達の中には、立ち眩みのような楽しくない浮遊感に耐えきれず目を閉じてしまう者も現れる。不意に足が地に着く感覚がして目を開けば、青々とした山と田畑に囲まれた目的の町の近郊に立っていた。時刻は正午を過ぎた頃だろうか。
「皆、よろしく頼んだぞ!」
 猟兵達を送り出した後、桐葉は一人首を捻る。
「しかし、サムライエンパイアの……わらわの知る山男と言えば、むさ苦しくて無骨じゃが、人助けが好きな優しい妖怪の筈なのじゃがなぁ。ふむぅ……」


たまゆら
 初めまして、『たまゆら』と申します。この度はオープニングに目を通していただき、ありがとうございます。
 このシナリオがマスターとしての第一作目となります。新人のため至らぬことが多々あると思いますが、皆様をエンディングまで導けるように力を尽くしますので、よろしくお願いいたします。

●各章補足
 【第1章】冒険『噂の深層』は、儀式場の場所を特定し、現場に踏み込み儀式の阻止を目指していただきます。状況が状況なだけに、警察などの現地組織も動いているようです。
 【第2章】は、集団戦です。邪神復活の場を荒らされ怒る邪神の信徒を殲滅してください。彼らはオブリビオンですので手加減は無用です。
 【第3章】は、ボス戦です。残念ながら儀式を妨害、阻止しても復活してしまいます。しかし、儀式が中途半端に打ち切られたことにより、本来の力を取り戻すまでには至っていません。
13




第1章 冒険 『噂の深層』

POW   :    現場を虱潰しに調査し、情報収集を行います。

SPD   :    目撃情報の提供者などから詳しい話を聞き、情報の収集を行います。

WIZ   :    新聞・書籍・ネットなどの情報媒体から、情報の収集を行います。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アイ・リスパー
理緒さんと

「平和な村に現れた山男ですか……
妖怪とか幽霊なんていう非科学的な存在がいるわけがありません」(カクリヨファンタズムなどの存在から全力で目を背けつつ)

ここは探偵として事件解決に乗り出しましょう。
さあ、一緒に調査です、理緒さん!

「まずは事件現場を直接見に行きましょう。
警察が見落とした手がかりがあるかもしれません」

電脳魔術【ラプラスの悪魔】を発動。
事件現場を詳細にシミュレーションし、犯人像を絞り込んでいきましょう。

「被害者が倒れていたという角度と傷から逆算すると……
分かりました!
犯人は……理緒さん、あなたです!」(びしぃっ

え、アリバイがある?
そんなぁ、私の完璧な計算と推理がっ!


菫宮・理緒
アイさんと

故郷の世界へ里帰りだね。
引きこもりからの家出娘としては怖いんだけど。
知り合いにバレないようメイドでいこう。

探偵アイさんのメイド助手とはわたしのことだっ♪

「そうですねアイさま。オカルト的なものじゃなくて、
ただのヤバイ人って可能性もありますね」

オカルト的なものなら、
アイさんぎゅーできるからそれでもいいけど。
(だだ漏れる心の声)

わたしはネットでこの事件のことを調べよう。
もちろん警察へのハッキングとか上等だよ。

手に入れた資料はアイさんに渡して、
シミュレーションの参考に。

「どうやって手に入れたか、ですか?メイドの嗜みです」

って、え? 犯人わたし?
「アイさま、犯行時間にいっしょにいましたよね?」



●メイドとメイ探偵
 UDCアースのありふれた田舎の景色から浮いたメイド姿の少女――菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)――は、そっと溜息をついた。いつぶりかの故郷の世界なのだが、手放しで喜べない理由があった。(引きこもりからの家出娘としては怖いんだよね。知り合いにバレたくないし)そして知り合いの目を欺く変装として選んだのが、メイドだったのだ。逆に目立つ気もするのだが「探偵アイさんのメイド助手とはわたしのことだっ♪」と、本人も本来の目的を見失っているし、あまりに意外過ぎて逆に気付かれない可能性もあるかもしれない。
 その隣にもう一人の少女が物憂げな表情で佇んでいる。理緒が言う『探偵アイさん』こと、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)だ。
「平和な村に現れた山男ですか……妖怪とか幽霊なんていう非科学的な存在がいるわけがありません」
 自分に言い聞かせるように言うアイに理緒が同意する。
「そうですねアイさま。オカルト的なものじゃなくて、ただのヤバイ人って可能性もありますね」
 理緒の言葉に物憂げだったアイの表情が晴れてくる。(そう、いるわけがないんです。カクリヨファンタズムなんて無かった。妖怪や幽霊なんて気のせい。犯人は、ただのヤバイ人です、うん)理緒の言葉に同調し、全力で非科学的な存在から目を背ける。そんなアイの苦悩を見透かして「オカルト的なものなら、アイさんぎゅーできるからそれでもいいけど」と、心の声がだだ漏れの理緒だったが、そんな理緒の言葉に密かに勇気づけられるアイだった。

「さあ、一緒に調査です、理緒さん! 探偵として事件解決に乗り出しましょう!」
「了解です、アイさま」
 ビシッと指差しポーズをキメるアイに、かしずくように寄り添う理緒。言葉遣いもメイドらしく言いまわす徹底ぶりだ。
「まずは事件現場を直接見に行きましょう。警察が見落とした手がかりがあるかもしれません」
早速、警察の公式会見で判明している現場に向かおうとするアイを、理緒が引き留める。
「お待ちください。ネットでより正確な事件現場の位置を調べます。――電脳潜行(デンノウセンコウ)起動――認証クリア……ログ、イン。事件現場は――」
 ユーベルコード【電脳潜行】を発動させ、電脳世界に意識を潜らせる理緒。視覚化された情報の奔流の中から必要な情報を集めてゆくが……。(やっぱり、一般に流れている情報だけでは詳細な位置はわからないよね。……警察のデータベースにハッキングして……と。――ビンゴ♪)
「アイさま、こちらです」
 集めた情報をお互いに電脳魔術師である理緒とアイは、電脳空間を通じ共有することが可能だ。理緒から伝わってくる情報を閲覧し必要な情報を得たアイは、頼もしい親友に感謝を伝える。
「ありがとう、理緒さん」
「どういたしまして、アイさま。それと犯行現場の詳細な資料もお渡ししますね。犯行のシミュレーションにお役立てください」
 続けて警察へのハッキングで得た、更に詳細な機密情報を共有する。これには普段は冷静沈着なアイも慌ててしまう。
「……え? ちょっと待って理緒さん。この様な情報どうやって……わぁっ!?」
 慌てた拍子に、なぜか転びそうになるアイを慣れた動作で支える理緒。
「どうやって手に入れたか、ですか? メイドの嗜みです」
 さも当然とばかりに答えると、理緒は必要以上に体を密着させアイを立たせる。(アイさん、ぎゅー♪)
「そ……、そういうものなのですね」
 ともあれ、求める情報は全て揃った。二人は獣道をたどり、藪を掻き分け目的地を目指す。やがて、立入禁止のテープで囲まれた場所に出くわした。隠そうとされてはいるものの、隠しきれていない赤黒い血糊の後など凄惨さがうかがえる。
「アイさま、事件現場はここですね」
「ここですか」
 アイは現場を見渡すと、ユーベルコードを発動するべく態勢を整えた。
「では始めます。『ラプラスの悪魔(ラプラス・デモン)起動』――『初期パラメータ入力。シミュレーション実行。事件当時の周辺状況、環境を再現。……加害者および被害者の行動……被害の状況……』」
 【ラプラスの悪魔】の起動と共に、事件当時の状況がアイの電脳空間内で再現されていく。情報を選別、加味しながら何度もシミュレートを繰り返していると、ノイズ混じりだった映像が徐々に鮮明になっていく。(もう少しで分かりそう……!)
 一方、目を閉じ集中しているアイの傍らで理緒は答えが導き出されるのを待っていたのだが……(ちょっと退屈……覗いてみよう)電脳空間に潜入しアイの【ラプラスの悪魔】のシミュレートを覗き見ることにした。
「完了です!」
 アイの声に慌ててリアルに戻る理緒。何事もなかったかのように声をかける。
「アイさま、何かわかりましたか?」
「ええ、もちろん。被害者が倒れていたという角度と傷から逆算すると……分かりました」
 ざざーっ……にわかに吹いた強い風が木々を揺らし、枝葉が擦れ合い騒めかせる。一呼吸おいて、アイは静かに理緒を振り返る。
「犯人は……理緒さん、あなたです!」(びしぃっ)
「は?」思わずメイドにあるまじき、間の抜けた声を上げてしまった理緒。(って、え? 犯人わたし?)なぜ――と考えを巡らせ、先ほどの覗きを思い出す。(干渉しちゃった?)そもそも、それ以前に……。
「アイさま、ここで犯行が行われた時間って、いっしょにいましたよね?」
 導き出した推理を否定され、アイは愕然とする。(え、アリバイがある? そう言えば、そうですよね)
「そんなぁ、私の完璧な計算と推理がっ!」
「時にはこういう事もあります、アイさま。気を落とさないでください」
 落ち込むアイを慰めながら、さり気なく2回目の(ぎゅー♪)をゲットする理緒だった。

 そんな二人のやり取りを、鬱蒼と茂る藪の中から窺う人影があった。気配を完全に絶っており、常人には決して見つからないだろう。「……猟兵か。儀式を急がねば」人影は呟くと、木々の間を音もなく駆け抜け山奥に消えていった。

「……?」
 何か聞こえたような気がして山奥を見る理緒。つられてアイも同じ方向を見る。
「理緒さん、どうしたのですか?」
「いえ……何でもありません」
 アイを怖がらせまいと咄嗟に嘘をついたが、第六感が告げていた。(何かいたよね)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

塩崎・曲人
邪神の儀式か
まだ流行ってたのな、アレ
「いや、流行り廃りじゃねぇんだけどさこういうの。とりあえず地道に山探ししますかね」

探偵の真似事とかは得意じゃねぇが……
こういう泥臭い仕事は慣れたもんさ
山男とか言ってるし、問題の場所は山の中で間違いないんだろ?
なら後は現地で直接歩いて探すとしよう
「いっそ犯人が襲いかかってきてくれたほうが話が早いんだがな」

さて、こちとらプロのスカウトじゃねぇが、アルダワのダンジョンで化け物の痕跡探すのには慣れてんだ
そしてそれ以上に……
「血の匂いと、死の香り。慣れ親しんだモンさ、なぁ?」
そういう気配を目指して進めば、ほら、な?



●依頼請負人登場
「ウッス、パン買って来るッス……って違ぇ!」
「ほえ?」素っ頓狂な顔をしたグリモア猟兵の前をそそくさと立ち去り、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は付近を一望できる高台に立っていた。事件の影響が大きいのだろう。曲人の目に映る町は陰鬱な気配を放ち漂わせている。
(邪神の儀式か……まだ流行ってたのな、アレ)
 胸中で呟き、やれやれといった風に、おどけて肩をすくめる。が、今なお怯えながら暮らしている人々を想うと自然と気が引き締まる。
「いや、流行り廃りじゃねぇんだけどさこういうの。とりあえず地道に山探ししますかね」
 パンッと拳と手を打ち鳴らし、町の奥に見える山へ迷うことなく足を向ける。噂の『山男』の呼称もあるが、事件現場に山が多いこともある。調査の空振りは絶対にないだろう。
 山裾の方は山菜採りの人の出入りがあったこともあり歩きやすい。木の葉の隙間から降りそそぐ日差しもあり、殺害事件があった山とは思えない。しかし相手は人に見つかる場所であるかないかにかかわらず遺体を放置する存在なのだ。知恵が回るのか回らないのか、はたまた何か別の意図があってのことなのだろうか。考えてみるが『山男』の正体は皆目見当もつかない。
「いっそ犯人が襲いかかってきてくれたほうが話が早いんだがな」
 ぼやいてみるが、当然ながら「はいそうですか」と犯人が現れる様子もない。
(探偵の真似事とかは得意じゃねぇが……こういう泥臭い仕事は慣れたもんさ)
 曲人はおもむろに歩きやすい道を外れると、鬱蒼とした森へ踏み込んだ。(さて、こちとらプロのスカウトじゃねぇが、アルダワのダンジョンで化け物の痕跡探すのには慣れてんだ)それに依頼を受けた時から高レベルに引き上げられていた曲人の『鼻』は感じ取っていた。
「血の匂いと、死の香り。慣れ親しんだモンさ、なぁ?」
 歩を進める度に強くなる『匂い』と『香り』。それを追って道のない場所をギャングスタ・ナイフで行く手を阻む枝葉を薙ぎながら進む。もちろん危険への警戒は怠らない。
「…っと、あぶねぇ。この先は崖じゃん。けど匂うぜ……この先からな」
 恐らく儀式の場所に近づいているはず……曲人は足元を確かめながら慎重に崖を降り始めた。脆く崩れやすいこの辺りは地元民でも避けているのであろう、人の立ち入った形跡が見られない。それにしても……(なんか獣くせぇな……)増々濃くなる『匂い』と『香り』に混じって、耐え難い獣臭が鼻をつく。不快感に顔をしかめていると不意に『うごぉおぉぉぉ!!』と獣の咆哮らしきものが響き渡る。
「おいおい……どんぴしゃか?」
 曲人は直観的に耳を研ぎ澄まし視線を走らせ音の出所を探る。そして大木と大岩に隠された地の裂け目を発見した。だが同時に無数の殺気に囲まれていることに気づく。
「多勢に無勢ってな。さて……どうすっか……なっ!」
 負けじと殺気を放ち牽制しつつ、曲人は次の手を考え始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
どうやら既に結構な被害が出ちまってるようだぜ、相棒。
「・・・これ以上の被害を食い止めますよ。」
キーワードは『山男』とやらだが何の事かさっぱりだ。

先ずは情報を集めない事には始まらねえな。
どうやら現地の警察も動いているようだし警察の持っている情報を頂くとしようぜ。
とはいえ、喋る仮面と巫女さんにバカ正直に教えてくれるとは思えねぇから頼んだぜ、相棒。
「・・・式、召喚【追い雀】」
コイツは五感を共有できる式神、コイツを警察に引っ付けて情報収集するぜ。

さてさて、鬼が出るか蛇が出るかってな。


【技能・式神使い、情報収集】
【アドリブ歓迎】



●鬼面と巫女
 問題の土地に降り立った神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は、(一から調べていたら日が暮れちまうぜ。警察の持ってる情報を頂くとしようぜ)という事で、先ずは情報収集をすべく、相棒の巫女、神代・桜と共に地元の警察署を訪れていた。
 喋る鬼の仮面と巫女服姿の女性という奇妙な来訪者を相手にしても、警察官たちは猟兵の不思議な力のおかげで混乱を起こさなかった。だがマスコミに公表している以上の情報は与えてはくれなかった。しかし既に被害は相当数に上っていることは確認できた。警察官たちも犯人の目星がつかず遺体が増える一方の状況に苛立っている様子だった。
(どうやら既に結構な被害が出ちまってるようだぜ、相棒)
「……これ以上の被害を食い止めますよ」
 凶津の声に静かな口調で桜が答える。
(ここに居ても進展は見込めないな。現場へ行ってみようぜ)
「……そうですね、今も現場での捜索は行われているようですから、ここよりは何か得られるかもしれません」
 ロビーに据え付けられたテレビの、今回の事件を扱うニュース番組を見ながら答える桜。足早に警察署を立ち去ると、山裾に警察が設置した捜索拠点を目指す。
 数台の警察車両が駐車され、設置された天幕付近では忙しなく警察官たちが動いていた。
(まあ、ここでも俺たちにバカ正直に教えてくれるとは思えねぇから頼んだぜ、相棒)
 凶津の声に、こくりと頷くと以心伝心でユーベルコードを発動させる。
「……式、召喚【追い雀】」
 ちちち……と、可愛らしい鳴き声と共に雀の姿をした式神が姿を現す。
「……目標、どうしましょう?」
(適当な警官に……てのは無いな。冴えてそうな奴とかいないか?)
 凶津の提案に、桜は辺りを見渡す。そして一人の警察官に違和感を覚えた。意図的に他の警察官から距離を取っているような……。
「……あの警察官、怪しい気がしますよ」
(ほう? よぉし、そいつに決めた。任せるぜ、相棒。さてさて、鬼が出るか蛇が出るかってな)
「……わかりました。お願いします【追い雀】、あの人を追って」
 桜の手から放たれた【追い雀】は目標の警察官に近づくにつれ輪郭を薄れさせ、密かに追跡を開始した。【追い雀】と五感を共有し追跡を続ける桜を見守りながら、今回の事件のあらましを振り返る凶津は今更のように思った。(キーワードは『山男』とやらだが何の事かさっぱりだ)

 桜に追跡されている警察官は【追い雀】の存在に気づくことなく、他の警察官を撒きながら山奥へ入ってゆく。やがて事件現場の一つと思われる場所に辿り着くと調査らしきことを始めた。一通り調べ終わると、手に持った地図に印をつけ、また次の現場へ向かう。黙々と調査をする警察官の動きを追うのは、桜にとってもなかなかの苦行であったが、数十か所目で何らかの進展があったらしい。初めて警察官が声を出した。
「やはりか。現場はある一点を中心に点在していると確信してよさそうだ。つまりこの一点こそが。行方不明の者達も恐らくそこか……」
 そして警察官は警察の無線を使わず、ポケットから別の端末を取り出すと印をつけた地図を撮影し通話を始める。
「こちら調査員ウエシダ。推測は的中と見て問題ない。調査結果を送信する」

(相棒、いい知らせのようだな)
 集中を解いた桜は、ふぅと深呼吸した後、【追い雀】を通して得た情報を凶津に伝える。
「……あの警察官は事件現場の起きた場所を再確認して、事件現場が取り囲む中心を探っていました」
(つまり、その中心が目指すべき場所ってことだな)
「……はい。地図もしっかり覚えていますよ。……でも、あの警察官は何者だったのでしょう?」
 小首をかしげ考え込む桜。
(さあな。少なくとも敵ではないだろうよ。それより急ぐぜ)
「……はい。被害を食い止めて、生存者がいたら必ず助け出しますよ」
(その意気だぜ、相棒)
 警察官に干渉されては余計な犠牲者を増やしかねない。鬼の仮面と巫女は警察官の目を盗み、判明した『中心地』を目指すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

華舟・波瑠
【華舟藩】
姫に送り出されたからにゃ、やるしかないやんなぁ!
…っと、気合が空回ってはかんね、件の山男の正体、しっかり暴いて民草を護らんとな!

さて、警察やら地元の衆が歩いとるのはちと危険やね。
【指定UC】を発動。忍犬衆よ、地元の衆をそのもふもふにて籠絡し、可能な限り下山する様仕向け護衛せよ。
残る忍犬衆はミニョン殿の兵と組み、血のにおいを辿れ。
但し単独行動と深追いはしたらかん。
主らの仕事は情報を持ち帰り、伝達する事や。それを努努忘れるな。
それでは…征け!

さて、山狩言ぅても範囲も広いでなぁ。ミニョン殿のまっぴんぐを手伝いながら、
忍犬衆の運んでくる情報を整理して儀式場のある範囲を絞ってくわ。


ミニョン・エルシェ
【華舟藩】
ふむ、良い山、良い地勢です。波瑠さんのお知り合いとあらば、私も微力ながら助力したくなろうというもの。

【指定UC】にて我が将兵を召喚。波瑠さんの忍犬と連携を取り、密かに地元の方たちの護衛を行いましょう。可能性の一つとして、彼らの死に儀式上の意味が有っては困りますから。

遺体が発見されているなら儀式に体は不要、若しくは殺害そのものに意味がある可能性も出てきます。私が聞き込みを行うとすれば…行方不明者と死者の数の擦り合わせですね。連れ去られている可能性も残っていますので。

情報を精査し、山をマッピングしながら儀式場への包囲を狭めていきましょう。…しかし、犬の鼻とは大層便利なのです。



●山狩り部隊
「波瑠殿、ミニョン殿、かたじけないのじゃ。よろしく頼むぞ」
 任務の依頼主である桐葉は、浅からぬ縁のある華舟・波瑠(華の嵐・f16124)と、その知人であるミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)に改めて頭を下げる。
「姫に送り出されたからにゃ、やるしかないやんなぁ!」
 舞い上がる波瑠とは対照的に、ミニョンは淡々と言葉を紡ぐ。
「ふむ、良い山、良い地勢です。波瑠さんのお知り合いとあらば、私も微力ながら助力したくなろうというもの」
「…っと、気合が空回ってはかんね、件の山男の正体、しっかり暴いて民草を護らんとな!」
 淡々としたミニョンの声色に我に返った波瑠。慌てて崩れていた相好を引き締めると決意を改めた。
「さて、警察やら地元の衆が歩いとるのはちと危険やね」
 人々の安全を第一と考える波瑠は、ユーベルコード【東奔西走忍犬衆(アッチモコッチモモッフモフ)】を発動させ、忍犬たちを召喚する。何処からともなく現れた忍犬たちは波瑠のもとに集結すると行儀よく並んで待機する。その数総勢86匹。群れを率いるのはモップのような毛並みが目を引くプーリーの『毛糸』(ケイト)だ。波瑠は群れを二手に分けると、それぞれに指示を与える。
「毛糸率いる忍犬衆は、地元の衆をそのもふもふにて籠絡し、可能な限り下山する様仕向け護衛せよ」
 毛糸は「わう!」と吠えるとすぐさま行動を開始する。
「残る忍犬衆はミニョン殿の兵と組み、血のにおいを辿れ。但し単独行動と深追いはしたらかん。主らの仕事は情報を持ち帰り、伝達する事や。それを努努忘れるな」
「ばうっ!」と、リーダー格の忍犬が波瑠の指示に吠えて返す。
「では、わが兵を召喚します」
 続けてミニョンがユーベルコード【我勢招来・天下布武(キズキシラシメヨ・ワレラガシロヲ)】を発動させると、ミニョンを中心に光り輝く魔法円が地面に浮かび上がり次々と見事な鎧兜で身を固めた死霊精鋭武将たちが召集される。総勢91名、壮観である。ミニョンも兵を二手に分けると、指示を与える。
「波瑠さんの忍犬と連携を取り、密かに地元の方たちの護衛を行いましょう。可能性の一つとして、彼らの死に儀式上の意味が有っては困りますから」
 承知――とばかりに武将たちは甲冑を鳴らす。
「それでは…征け!」
 波瑠の指示で忍犬たちと武将たちは一斉に行動を開始した。
「波瑠さん、気になることがあるので私も町に出ます」
「了解や、ミニョン殿。気を付けてや。忍犬と兵の指示は任せとき」
 ミニョンには一つ気がかりなことがあった。(遺体が発見されているなら儀式に体は不要、若しくは殺害そのものに意味がある可能性も出てきます)遺体と儀式の関連性である。「急ぎますよ」ミニョンは呟くと、足を速めた。

 作戦行動開始後、定期的に伝令役の忍犬が波瑠のもとに状況をもたらす。町の人々は危険な状況であることを自覚していて、それほど出歩く者はいない様子だった。山に向かった武将と忍犬たちからも次々と情報が送られてくる。波瑠はそれらを整理して地図上に記してゆく。
「既に何人も亡くなっておられるしな。それでも自粛に耐えれん者もおるやろし油断は禁物や。引き続き頼むな」
 忍犬に言葉をかけ再び放つ。そこへミニョンが戻ってきた。
「ただいまです、波瑠さん。自分の目でも確認しましたが、町の住民の方はとりあえずは問題なさそうです」
「おお、お帰りや。して気になる事はどうやった?」
「連れ去られている可能性も残っていますので、行方不明者と死者の数の擦り合わせをしたかったのです。結論を言うと死者数の方が多少、少ないです」
「まだ無事な者もおるかもしれんと?」
「遺体が見つかっていないとか、件の儀式場で亡くなっている可能性も捨てきれませんが」
「でも無事な者がおるかもしれんことには変わらんやに。俺らも押し出すかや!」
 そこへ伝令役の忍犬が駆け寄ってきて状況を伝える。隣で波瑠と忍犬のやり取りを見ていたミニョンは山を見上げる。報告を受け終えた波瑠も地図に情報を書き足すとミニョンの視線を追い、山を見上げた。
「調査は粗方終わったやよ。忍犬がいくつかの場所で怪しい人影も見とるなや」
「見せてください」
 ミニョンは地図を受け取ると記された情報を精査し、調べるべき場所を絞ってゆく。(……しかし、犬の鼻とは便利なのです)怪しい人影との遭遇は死霊精鋭武将では最悪戦闘に発展し、要らぬ被害を生んだだろう。忍犬の嗅覚は相手に気づかれない距離からその情報を得てくれたのだ。
「……マッピング完了です。儀式場の場所は――ここ、です」
 作業を終えたミニョンは波瑠に地図を見せながら、赤ペンで印をつけた一点をビシッと指した。こくりと頷く波瑠。
「それじゃ行こかや。急ぐで!」
「ええ、行きましょう。迅速に」
 敵陣を捉えた二人の行動は迅速果断。忍犬の籠絡術で人払いをした今、人々を巻き込むこともない。儀式場を目指し最短ルートを駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

箒星・仄々
命を蔑ろにする所業を許しません
儀式を阻止しましょう

竪琴奏で
目撃者のお子さんと一緒に歌ったりしてお友達に

肉球ハンドの握手で更に仲良くなりましょう(ぷに

何方で
どんな状況で目撃されたのか伺い
何故そのお子さんは無事なのか
考えてみます

偶然?
それとも何かの状況や持ち物に救われたのか…

念の為
そのお子さんに不信な点はないかも

考えすぎでしょうけど


次に被害現場を訪ねながら付近を探索
鳥さんや野生動物さんとお話

動物さんなら猶更
異変を感じておられるはず


被害者への鎮魂の調べを奏で
癒しと破魔込めた音色を周囲へ響かせます

その響きや反響音の違いから(毛皮とお髭で探知
破魔と対なる禍々しい魔が満ちる場所の見当をつけ
儀式場へ



●竪琴を持った猫
 二足歩行の黒猫が町の通りを歩いている。いかなる姿の猟兵も普通の人々の目には違和感なく映る――とは言え、童話の絵本から飛び出したような愛らしい姿は相手の警戒を解きほぐしてくれる。陰惨な事件に巻き込まれた町では、彼、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)の姿は癒しとなり、その噂はSNSなどを通じ直ぐに町中の子供たちの間に広まり、休校中で暇を持て余していた子供たちは、こぞって彼のもとへ集まっていた。
 仄々は子供たちを公園へ導くと竪琴を奏でだす。
「みんな、私と歌いましょう」
 子供たちは今の状況に気分が沈みストレスを感じているだろう。仄々はそんな鬱々としたものを子供達から吹き飛ばしてしまおうと、明るい歌、楽しい歌など、前向きな歌を選び披露する。始めは遠慮がちだった子供達も次第に声を出して歌いだし、暗かった表情に笑顔が戻ってきた。
 歌い疲れ、すっかり子供たちと打ち解けた仄々は、肉球ハンドの握手で更に仲を深めつつ、さり気なく抱えていた疑問を子供たちに問いかけていく。
「実は私、みんなを苦しめる山男をやっつけに来たんです。でも、隠れている場所がわからないんです。そこで、みんなからお話を聞きたいのだけれど……みんなの中に、山男を見た子はいますか?」
 山男の名が出たとたん、子供たちの間に重苦しい空気が戻ってしまう。(ごめんね……)心で詫びつつ、子供たちの様子を窺っていると、一人の少年が手を小さく上げ、仄々の側へ歩み出てきた。
「……僕、見たんだ。みんな、サルの見間違いだって言って、誰も信じてくれないけど、ホントなんだ。妖怪辞典で見た山男だったよ! 怖い顔で僕を睨んだんだ!」
(彼が目撃者……)仄々は安心させるように、ぷにぷにの肉球ハンドで少年の手を握り、優しく声をかける。少年の手から伝わる緊張や体温などの感覚から、嘘は言ってないと確信し、話を進める。
「見た時、あなたはどうしてたのかな? 何か持っていたものはある?」
「友達と野球をした帰りで、みんなと別れて一人になった時だったよ。……持ってたものは……グローブと、ボールかな」
「ふむ……」大きな瞳で少年の顔を見つめたまま考えを巡らせる。(特に変わった状況でも、持ち物でもありませんね。偶然、なのでしょうか)
「猫さん?」
 少年の訝し気な声で仄々は思考の海から引き戻される。
「ごめんね、少し考え事をしていたんだ。それとお話ししてくれてありがとう」
「ううん、構わないよ。……猫さんは本当に山男をやっつけてくれるの?」
 すがるような表情で仄々を見る少年。他の子どもたちも、じっと仄々を見つめている。
「もちろんだよ。そのために来たんだから。……怖いことを思い出させてしまったね。お詫びにとびっきり楽しい歌を歌おう。さぁ!」
 仄々は竪琴をかき鳴らすと、穏やかな音色にのせて癒しの歌を歌い、その場の空気を明るいものへと変えてゆく。少年は幸運だったのだろう。だが、失われた命は多い。(命を蔑ろにする所業を許しません。儀式を阻止しましょう)仄々は静かに心に誓うのだった。

 町で子供達からの情報収集を終えた仄々は一路、山を目指す。実際に被害現場を巡り、近くに生息する鳥などの野生動物から情報を得るためだ。動物と会話する能力を備えた彼ならではの調査方法だ。
「意外と動物たちが少ないですね……」
「この山はおっかなくなったからね」
 ぽつりとこぼした呟きに頭上から答えが返り、仄々は天を仰ぐ。木々の枝に覆われ空は見えなかったが、枝にとまり仄々を見下ろす小鳥と目が合った。
「それはどうしてですか?」
 問いかける仄々に、小鳥が答える。
「あんたの耳はよく聞こえそうだ。ほら耳を澄ましてごらんよ。聞こえてこないかい?」
「え……?」
 小鳥に言われるまま耳を澄ませると……おおぉぉぉ……と奇妙な音が聞こえる。山鳴り? 風の音? 
「人の姿をしてるけど、獣より身軽な変な奴らが、この山に出入りするようになってから聞こえだしたんだ。おまけにあいつら人間の死骸を山のあちこちに捨てるし、のんびり住んでられないってね」
「なるほど……。それで、その変な奴らは何処から?」
「どこから来たのかは知らないけど、ここに来てからは山のずっと奥の窪んだ所に住んでるみたい」
「その場所は?」
「う~ん……あっちの方? おっかなくて、あっちには行かないから、詳しいことはわからないよ」
 小鳥は翼で山奥を示す。
「そうですか……。小鳥さん、大変貴重なお話ありがとうございます。近いうちに安心して住める山に戻しますから、そうなったらお友達を呼び戻してあげてください」
「そう? 楽しみにしてるよ。じゃあね」
 小さな羽音を響かせ小鳥は人里の方へ飛び去った。仄々は、おもむろに竪琴を構えると曲を奏でだす。曲は被害者への鎮魂の調べから始まり、やがて癒しと破魔の音色に音を変え山中に響き渡り、その響きと反響音を全身の毛皮と髭で受け止める。それは仄々の脳裏に目の届かぬ場所の光景を映し出す。破魔の音色を乱して返す場所はどこ?
「――見つけました。破魔と対なる禍々しき魔の満ちる場所――。それに幾人かの猟兵達……」
 日が傾き始め闇を増した山の中を、仄々は猫のような華麗な身のこなしで駆け抜ける。この地に災いをもたらす儀式場を目指して。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『風魔衆・下忍』

POW   :    クナイスコール
【ホーミングクナイ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【クナイ手裏剣の連射】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    サイバーアイ演算術
【バイザーで読み取った行動予測演算によって】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    居合抜き
【忍者刀】が命中した対象を切断する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●儀式場にて
 蝋燭の炎が揺らめく薄暗い洞窟の中に、不気味な読経のようなものが響き渡る。禍々しいそれは、洞窟内の床に刻まれた魔法円を囲んで座る人の形をした、人ではない者どもが発するものだ。血や肉片で穢れた魔法円の中心には肉の繭とでも言えばよいのだろうか、狂気を誘う巨大な肉塊が脈打っている。壁際の鉄格子の中には希望を失った虚ろな表情の者数名が蹲っている。
『うごぉぉおおお!!!』
 中央の肉塊から、くぐもった雄たけびが発せられた。『それ』は我が身に害をなさんとする者共が迫っていることを感じ取り、己が信者共に危機を伝えたのだ。
「おのれ、あと数刻だというのに!」
「我らの方が数は上だ。全力で迎え撃ち儀式を再開するまでだ」
「我らが神よ、愚か者どもを討ち果たすまで今しばらくお待ちください」
「我ら風魔衆、直ぐに新鮮な贄を持ち帰り捧げましょうぞ」
 風魔衆と名乗る彼らは各々武装を確認すると、儀式の場を離れ洞窟の外へと散っていった。

●集結の地
 調査を通じて儀式場の場所を割り出した猟兵達は、多少の時差はあれど、各々のルートを辿り現地に集結した。だが、敵は迎撃の準備を整えているようだ。感覚の鋭い猟兵ならば、あちらこちらの岩陰や木陰から殺気を感じ取っているだろう。
 気が付けば、少し前まで洞窟から聞こえていた不気味な読経は途絶えている。敵は儀式と迎撃を並行することは選ばず、猟兵達を殲滅してから儀式を再開することに決めたらしい。厳しい戦いになるかもしれないが、完全復活した邪神とその信徒をまとめて相手取るよりはマシというものだ。
 かくして、戦いの火蓋は切られた。
アイ・リスパー
理緒さんと

「この先が儀式場ですが……
どうやら、そう簡単にはたどり着かせてくれないようですね」

【ラプラスの悪魔】による予測演算が、周囲に敵が潜んでいることを教えてくれます。
ですが、犯人が妖怪じゃないことさえわかれば、怖くありません!

「理緒さん、私が敵の動きを予測してサポートしますので、その隙に!」

電脳空間に接続し、敵の行動をシミュレーション。
その結果を理緒さんに共有します。

「岩陰に敵3、木陰に4。
3秒後に姿を現しますので、そこを攻撃してください!
……って、予測が外れました!?」

どうやら、敵もこちらの動きを予測演算しているようですね。

「ならば……
どちらの演算能力が上か、見せてあげましょう!」


菫宮・理緒
アイさんと

「通してくれると嬉しいんだけど、そうはいかないみたいだね」

お? アイさんが演算モードなら、わたしは攻撃役だね!

接近戦はちょーっと不安だから、アイさんの予測に従って
【E.C.O.M.S】で攻撃していこう。

ユニットは10機編成の52部隊で動かすね。

送られてきた予測ポイントに5部隊ずつ送り込んで、
残り10部隊はイレギュラー対応で遊撃モード。
最後の7部隊は、アイさんとわたしの護衛にしよう。

「『ラプラス』の予測が外れた……?」

そうか敵も予測してるのか。
でもアイさんに演算勝負を挑むなんて、知らないって怖いね。

二度はない。

アイさんの横顔に確信を深めたら、
予測地点にユニットを突っ込ませよう。



「この先が儀式場ですが……」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)が、調査の折に感じ取った何者かの存在の行動を、再び発動させた【ラプラスの悪魔(ラプラス・デモン)】でシミュレートし、追跡を行っていた。アイの視界には本来の景色に重なって、赤い半透明のゴーストとして追跡対象が表示されていたのだが……。
「どうやら、そう簡単にはたどり着かせてくれないようですね」
 ゴーストは一度地面に消えた後、複数に増え、周囲の地形に身を潜める動きを見せた。日没が近づき闇に溶け込みかけているが、複数の敵性存在が現れた辺りの地面に裂け目があり、それが儀式場に繋がっているのだろう。
 電脳空間を通じアイと情報を共有していた理緒にも状況は伝わっている。その洞窟に至るまでに、数多くの敵を相手どらねばならない事実も。
「通してくれると嬉しいんだけど、そうはいかないみたいだね」
 理緒が次の行動を相談しようとアイを見ると、にこにこと笑みを浮かべていた。
「犯人が妖怪じゃないことさえわかれば、怖くありません!」
 アイは電脳空間で平行して行っていた追跡対象のデータ照合の結果、この場に潜む敵性存在が『風魔衆』という邪神復活を目指す集団の下級構成員『下忍』であり、オブリビオンであることを突き止めていたのだ。妖怪などという非科学的な存在ではないと判明したことで恐怖心が拭い去られたアイは、的確に指示を出し始める。
「理緒さん、私が敵の動きを予測してサポートしますので、その隙に!」
 アイは【ラプラスの悪魔】を再発動すると、電脳空間に接続、直ちに敵の行動のシミュレーションを行い、その結果を理緒に共有する。
(お? アイさんが演算モードなら、わたしは攻撃役だね!)
「承知しました、アイさま」(――とは言ったものの、多勢に無勢だよね。接近戦はちょーっと不安だから、アイさんの予測に従って【E.C.O.M.S】で攻撃していこう)
 即決した理緒がユーベルコード【E.C.O.M.S(イーシーオーエムエス)】を素早く発動させる。途端に周囲の空間が揺らめき、無数の八角形型の小型戦闘ユニット【E.C.O.M.S】が姿を現した。その数は520機に及ぶ。
「岩陰に敵3、木陰に4。3秒後に姿を現しますので、そこを攻撃してください!」
「承知です、アイさま。――作戦行動、開始」
 理緒は【E.C.O.M.S】を10機編成の52部隊に分け、更にアイの指示に合わせ、敵が身を隠す予測ポイントに5部隊ずつ、7編隊に分け送り込む。残り10部隊は遊撃隊として、想定外の事態に備えさせ、最後の7部隊は、アイと理緒の護衛隊として身近に待機させる。
「……って、予測が外れました!?」
 隠れる敵が姿を現す瞬間を狙い先制攻撃を仕掛けたはずが、いずれの敵も僅かにタイミングをずらし姿を現し、逆に不意を打たれる形になった【E.C.O.M.S】が風魔衆の忍者刀による斬撃を受け、数機撃墜される。【E.C.O.M.S】は、それなりの戦闘力を持ち、群れることにより強烈な攻撃を期待できる反面、耐久性は低く簡単に破壊されてしまう。
「『ラプラス』の予測が外れた……?」
 想定外の状況に【E.C.O.M.S】の指揮が滞り、更に数機が切り捨てられる。
「ヤバっ!」
 メイド言葉を使う余裕もなく、慌てて【E.C.O.M.S】を敵の攻撃範囲外へ離脱させた。(そうか敵も予測してるのか)(どうやら、敵もこちらの動きを予測演算しているようですね)二人は同時に同じ結論を導き出した。事実、風魔衆たちが身に着けているバイザーは、アイのユーベルコード【ラプラスの悪魔】と酷似した機能を備えていた。風魔衆は理緒の攻撃を予測し、アイの予測に影響を与えない誤差の隙を突いて行動を起こす。そのような繊細な動きを見せていた。
(でもアイさんに演算勝負を挑むなんて、知らないって怖いね)理緒は心の中で風魔衆を憐れんだ。
「ならば……どちらの演算能力が上か、見せてあげましょう!」
 敵も演算を用いる……その事実は、アイの心を挫くどころか、その闘志を燃え上がらせていた。
(二度はない)
 アイの横顔に確信を深める理緒。アイは真剣な面持ちで演算能力を極限まで高めてゆく。それは予測の範疇を超え、敵にアイの望む通りの行動を取らせるにまで至る。もはやそれは神算鬼謀。
(わたしはアイさんの指示を忠実に、寸分の狂いも無く実行するだけ――)
「行け――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミニョン・エルシェ
【華舟藩】
ふむ、UDCの風魔衆。北条流築城術も学んだ身としては実に興味深い。
…では、早速ですが地の利を奪います。

此処は私の城、私の陣地。【指定UC】を発動し、熊本、人吉、高知…凡ゆる隠遁を許さぬ忍び返しの城を今、此処に普請します。
波瑠さんも存分に私の城、利用して欲しいのですよ。

忍び返しにも種類がありまして…まあ、蘊蓄は抜きにしましても、抜かせないのです。
【地形利用】、【拠点防御】の【集団戦術】なら私に一日の長があります。
忍び返しに手こずって動きを鈍らせた敵は私の死霊足軽衆に狙撃させ、其れでも頑張って登ってきた方には、一槍、馳走しましょう。

忍びが忍ばず打って出た時点で、勝敗は決していたのです。


華舟・波瑠
【華舟藩】
そうぽんぽん城普請するとか貧乏陣屋大名への当て付けかやぁ!
ん、忍の首なぞ然程の価値もあらせんが、ミニョン殿の城、存分に使わせて貰うわ。

ほんじゃ、城壁から【スナイパー】役や、どんどん【指定UC】で石投げてこかー。
印字打ち、弾は幾らでもあるでな、たんと味わったらええわ。
反撃のクナイはミニョン殿の城壁に身を隠したったら躱せるなぁ?

接近戦になったら…刀佩いてない?どたぁけ、武士の魂とか言ぅらしいが、魂は見せモンやないわ。
それに、別に無手でもないんやよ。【咄嗟の一撃】として【先制攻撃】の【クイックドロー】で矢を投げたる。
更にもう一本、苦無代わりに矢を使い、刺し、組み討ちで首獲るかぁ。



 戦いの音が木霊となって山中に響く。既に幾人かの猟兵が風魔衆との戦端を開いたのか。(ふむ、UDCの風魔衆。北条流築城術も学んだ身としては実に興味深い)だが、思索に耽るのは後だ。ミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)は、敵の注意がそれている今こそ行動を起こす絶好の機会であると踏む。
「……では、早速ですが、地の利を奪います。――此処は私の城、私の陣地。【我城普請・天守顕現(テンカニシメセ・ワレラガシロヲ)】。熊本、人吉、高知…凡ゆる隠遁を許さぬ忍び返しの城を今、此処に普請します」
 ユーベルコード【我城普請・天守顕現】は、様々な城を巡り歩き得てきた、城造りの知恵の集大成である。今回相対するのは忍者。ゆえに、様々な忍び返しの設備を備えた城郭を想像する。ミニョンの周囲を取り囲むように、細い光の線が縦横無尽に虚空を走り、次第に密度を増し城の姿を実体化させていく。ミニョンの足元に床が構成されるとそのまま持ち上がり、そこは天守となる。数分もかからぬうちに、ミニョンの立っていた場所には、巨大な城郭がそびえたっていた。城壁に開いた狭間の前には、城の構築と同時に召喚された、弓矢や火縄銃を亡霊足軽衆が待機している。それまで呆気にとられ見上げていた華舟・波瑠(華の嵐・f16124)は、思わず地団太を踏んだ。
「そうぽんぽん城普請するとか、貧乏陣屋大名への当て付けかやぁ!」
「忍び返しにも種類がありまして……まあ、蘊蓄は抜きにしましても、抜かせないのです」
 悔しがる波瑠をそっちのけにして、忍び返しの解説を始めるミニョンだったが、戦時下にあることを思い出す。
「地形利用、拠点防御の集団戦術なら私に一日の長があります。忍び返しに手こずって動きを鈍らせた敵は、私の死霊足軽衆に狙撃させ、其れでも頑張って登ってきた方には、一槍、馳走しましょう」
 ミニョンの命令で亡霊足軽が開けた城門を潜り、波瑠も死霊足軽衆に混ざり配置につく。
「ん、忍の首なぞ然程の価値もあらせんが、ミニョン殿の城、存分に使わせて貰うわ」
 波瑠は持っていた荷を解き、いくつもの小袋を自分の周りに並べる。その一つを手に取ると、中の物を掌に取り出した。中から出てきたのは、印字打ちに用いる親指大の石礫だ。
「それでは、総員、射撃、はじめてください」
 ミニョンの号令の下、城から戦場に向かって、矢玉の雨が降りそそぎ始める。油断しきっていた数人の風魔衆が逃れられず、あるものは針鼠のように全身に矢を浴びて絶命し、あるものは狙いすまされた火縄銃の一撃で頭部を撃ち抜かれ絶命した。
「ほんじゃ、城壁から狙撃手役や。どんどん【御梁流打根術(ミヤナリュウウチネ)】で石投げてこかー。弾は幾らでもあるでな、たんと味わったらええわ」
 波瑠がユーベルコード【御梁流打根術】を発動させ投擲する石礫は、火縄銃を凌駕する勢いで飛び、風魔衆の急所を撃ち抜き仕留めてゆく。
 完全に不意を突かれた風魔衆だったが、状況を把握し徐々に統制が戻り始めた。【サイバーアイ演算術】を用い攻撃を予測できる風魔衆は、徐々に死霊足軽衆が放つ矢玉に当たらなくなってゆく。かと言って、絶えず降りそそぐ矢玉を避けながら、他の猟兵と切り結ぶには、演算術でも追いつかなくなってくる。
「ええい、邪魔な城だ! お前たち、城に取り付くのだ」
 リーダー格と思われる風魔衆の一人が指示を下し、少なくない人数がクナイの投擲で反撃しながら城に攻めかかってくる。
「おわっと、あぶないとこや」
 自分目掛けて飛んでくるクナイを、すんでのところで城壁の陰に身を隠し躱す波瑠。
「狭間を狙い撃ちとは、敵さんもやりよるわ」
 そこへ城壁を越えてきた風魔衆が忍者刀を閃かせ飛び掛かってくる。
「接近戦になったら…刀佩いてない? どたぁけ、武士の魂とか言ぅらしいが、魂は見せモンやないわ」
 素早く地面を転がり振り下ろされた刃を躱す。
「それに、別に無手でもないんやよ」
 ニッと笑うと、刀を振り下ろし体勢の崩れた風魔衆に対し、素早く体勢を整えた波瑠は、偶然手に触れた矢を【御梁流打根術】で投げつける。素手で投げたとは思えない勢いで矢は飛び、風魔衆の太ももに突き刺さる。「ぐぅっ」と呻いて膝をついたところに波瑠は追い打ちをかける。
「更に、もう一本、いくで!」
 視界の端に捉えた矢を引っ掴むと、勢いよく敵に飛び掛かり組み伏せる。
「矢にはこういう使い方もあるんやよ!」
 クナイ代わりに矢を使い、喉元に突き立てる。急所を突かれ、声も上げられず風魔衆は絶命した。
 一方、天守にて城を維持するミニョン。その背後に満身創痍の風魔衆が忍び寄る。ここに至るまで死霊足軽衆の手荒い歓迎を受けたらしく、バイザーは破損し、狂気に満ちた目が直に無防備なミニョンの背中を見据える。だが腐っても忍びを名乗る者。刀を腰だめに構えると、音を立てず滑るように迫る。
「忍びが忍ばず打って出た時点で、勝敗は決していたのです」
 切っ先が触れる寸前で身を翻したミニョンは返す手で槍を突き出す。勢い余った風魔衆は自ら胸に槍を受け息絶えた。
「とは言いましても、我が方も随分と被害が出てしまいました。忍び返しも破られましたし……」
 ぐらり……と城が揺らぐ。(疑念が生じぬよう、さらなる探求が必要ですね)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エミリロット・エカルネージュ
状況把握の為に『情報収集』で
山男と邪神の繋がり等を集めつつ
現場に急行するけど

山男の正体は、その気持ち悪い物体かな?どのみち信者達諸とも討ち果たさなきゃねっ!

●POW
『オーラ防御&激痛耐性』で備えて

『早業』でUC発動『空中戦&ダッシュ』で駆けながら『第六感』で『瞬間思考力&見切り』つつ『残像』で回避し

『範囲攻撃』で【島唐辛子餃子のオーラの乱気流】で『属性攻撃(炎)&衝撃波』を乗せ纏めて強襲攻撃

敵陣に切り込み【緋色の龍の炎】を武装の【尻尾、健脚、発勁】に纏い『功夫&グラップル』で『早業』で一人一人片付けていくよ

その時に『怪力』を込め他の信者にぶつける様に吹き飛ばす感じで

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 先行する猟兵達の得た情報を、桐葉を介し把握したエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は、迷うことなく戦場へと向かい駆ける。
「山男の正体は、何なんだろう?」
 山男を討たんと逸る、エミリロットだが、その前に体格の良い風魔衆が立ち塞がる。
「どのみち信者達諸とも討ち果たさなきゃねっ!」
 猟兵の姿を認めるや否や、風魔衆は咄嗟にクナイを投げるが、エミリロットは駆ける勢いのまま突進する。しかし無策ではない。オーラにより身の護りを高め、如何なる痛みにも耐える気概を示す。そして地を蹴り宙に舞い上がると同時にユーベルコード【餃牙練空拳・緋龍咆(ギョウガレンクウケン・ヒリュウホウ)】を発動する。
 向かってくるエミリロットに向けて、風魔衆は3本ずつ両手にクナイを持つと手を振り抜いた。更に6本のクナイがエミリロットに向けて放たれる。初撃は躱せず、防御の為に顔の前で構えた腕にクナイが突き刺さる。が、護りのオーラに阻まれ傷は浅い。
「この程度なんともないよっ!」
 次に襲い来る6本のクナイは、直感で軌道を読み、瞬間的に見切り、鮮やかな体捌きで回避する。この間わずか数秒のこと。風魔衆は高速で次々とクナイを投げるが、一度見切ったものに、そうは当たりはしない。今度は超高速で残像を残し上空へと回避する。気付かず残像に攻撃し大きな隙が生まれた風魔衆を、エミリロットは全身に島唐辛子餃子のオーラの乱気流を纏い天空から強襲する。
「餃子を焼く熱と蒸気をイメージした気の練り方、呼吸や挙動は餃子を皿に返すが如く一挙一動を……これで行ける筈っ! 餃心拳が奥義っ!」
 身に纏うオーラは唐辛子の如き真紅の炎となる。エミリロットはその全てを拳に凝縮すると、容赦なく風魔衆に叩き込み同時に解き放つ。圧縮されたオーラは大爆発を起こし、近くにいた敵も巻き込み吹き飛ばしてしまう。難を逃れた者も動揺を隠せず、動きに隙が生まれる。その隙をエミリロットは見逃さない。空を蹴り、敵陣に切り込むと、練り上げた気を緋色の竜の炎と化し、身に纏う武具に宿すと、見事な体術で敵に叩き込んでゆく。
「えいっ!」
 止めとばかりに、エミリロットが力を乗せた発勁で吹き飛ばした風魔衆は、同胞を巻き込み地面を転がると動かなくなる。
「さあ、次の僕の相手は誰かな?」
 エミリロットは乱れた呼吸を整え、次の戦いに備え体を構えると周囲の風魔衆を見据えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

東雲・深耶
私が言うことは唯一つ。
絶望しながら骸の海へと帰れ、下衆ども
そう言って未来に干渉する白騎士ディアボロの力を有した純白の日本刀、『白先』を抜き放ちユーベルコードを起動させる

見えるだろう。貴様らの終焉は絶望のみだということが

敵のユーベルコードであるバイザーで読み取った行動予測演算
それが私のユーベルコードの力によって『自身が勝利する未来その物が刻一刻と消失していく』ことに

私のユーベルコードは敵の未来や可能性その物に干渉し、それらの内敵が勝利する未来その物を略奪し自身が勝利する未来に還元するユーベルコード
未来予測の能力者にはピタリと言った力だろう?
そう言って白先を振るい、敵の未来ごと首を刎ねる



 当初の読みを遥かに上回る猟兵たちの奮闘に、数で優っているにもかかわらず風魔衆たちは押され、数の優位も失いつつあった。
「怯むな! 相手は数人、我らは数倍の人数なのだぞ。それに我らはバイザーで敵の動きを読むことができるのだ! 負けなどありはしない!」
 伍長クラスの風魔衆の一人が声を張り上げ同胞を鼓舞する。
「そうだ、負けなどしない! 我らが神のため、負けるわけにはいかない!」
「奴らを屠り、神の贄とするのだ!」
『おおおおおっ!!』
 励まし合い、気勢を上げる風魔衆の一団の前に、美しい黒髪をなびかせる少女が立ちはだかる。
「新手の猟兵か。のこのこ我らの前に現れたことを後悔させてやろう!」
 黒髪の少女――東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)は、虚勢を張る風魔衆の伍長を一瞥すると凛とした声を発した。
「私が言うことは唯一つ……」
 華奢な風貌とは不釣り合いな強い気迫に風魔衆たちは気を呑まれ、知らぬうちに半歩後ずさる。深耶はゆっくりと左手に携えていた純白の拵『白先』――未来に干渉する白騎士ディアボロの力を有する日本刀型次元干渉兵装――の鯉口を切り、一瞬の静寂の後、吐き捨てるように言い放つ。
「絶望しながら骸の海へと帰れ、下衆ども」
 同時に『白先』を抜き放ち、ユーベルコードを起動させると、その秘められた能力を解放し己が力を増幅させる。
「見えるだろう。貴様らの終焉は絶望のみだということが」
『白先』の切っ先を風魔衆に向けて突きつける。
「笑わせるな! その様なハッタリで我らが怯むとでも思ったか」
「ならば見ればいい……君たちのバイザーで読み取った行動予測演算。それが私のユーベルコードの力によって『自身が勝利する未来その物が刻一刻と消失していく』ことに」
 風魔衆の中から悲鳴が上がる。幾度、行動予測演算を繰り返しても、導き出される演算結果は自分の死、死、死。
「落ち着くのだ! バイザーが故障しただけだ。バイザーを捨てよ!」
 伍長は同胞に聞こえるよう声を張り上げると、己の死を告げるバイザーを顔から毟り取り地面に叩きつける。バイザーを毟る際に垣間見た、バイザーを捨てた先の死を思考の外へ無理やり追い出すと、深耶に向かい襲い掛かる。闇雲に投げたクナイはあらぬ方向へ飛び同胞の命を奪い、振り下ろした忍者刀は僅かに軌道を逸れ、挟み撃ちを仕掛けようとした同胞を一刀両断する。一方、深耶が『白先』を振るえば、面白いように、敵が自ら斬られに来る。そう表現するしかできない一方的な戦いが展開される。
「私のユーベルコードは敵の未来や可能性その物に干渉し、それらの内、敵が勝利する未来その物を略奪し自身が勝利する未来に還元するユーベルコード」
「く……くそがっ! ありえん、ありえん!」
 伍長は喚きながら忍者刀を構えると、突進を仕掛ける。深耶に迫りながら、隠し持っていたクナイを投げつけるが、『白先』を軽く振り弾き飛ばす。そして僅かに立つ位置をずらすと突進をいなし、すれ違いざまに『白先』を閃かせる。その一閃は伍長の未来ごと首を刎ねた。
「未来予測の能力者にはピタリと言った力だろう?」
 残心し問いかける深耶。だが周囲にその問いに答えられる者の姿はなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
あの怪しい警察官の地図に書いてあった『中心地』に着く頃だが、どうやらビンゴらしいな。
此処彼処から殺気を感じやがる。おいッ!てめえらが『山男』とやらの正体かッ!
・・・まあ、どうでもいいか。
どの道ぶっ倒して先に行くんだからなッ!

敵の攻撃を見切りながら距離を詰めて妖刀で攻撃だ。
って、ちぃッ!こっちの攻撃を予測して回避しやがるッ!あのバイザーが原因かッ!?

なら雷神霊装でいくぜ、相棒ッ!
「・・・転身ッ!」
敵の視界から外れるように高速移動で戦場をフェイントを交えつつ縦横無尽に駆けながら、破魔の雷を纏わせた妖刀の斬撃放射を叩き込んでやるよッ!


【技能・殺気、見切り、フェイント、破魔】
【アドリブ歓迎】


塩崎・曲人
忍者の皆様が雁首並べてご苦労なこって
要件は聞かなくてもわかるんで、余計な問答はなしと行こうか
「シンプルにいうとあれだ。こんにちは!死ね!」

さて、敵は分析と速度に優れた忍者の集団
下忍とはいえ単純なステゴロだけでどうにかする相手じゃねぇわ
「なんでまぁ、こういう手で行こう。避けられるもんなら避けてみろよ」
【最後の手札】で自身の魔法系スキルを大幅ブースト
最速で広範囲の雷属性精霊魔法を叩き込んでやるぜ
これなら回避も防御もよっぽどの備えがない限りやらせねぇ

虚をつくのはテメーらの得意技だろうが……
鉄パイプもったチンピラがいきなり大魔法ぶっ放してくると予想できるかねね?



 姿は見えないが、四方八方からひしひしと伝わってくる殺気に、塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は思わず拗ねる。
(忍者の皆様が雁首並べてご苦労なこって……まあ、要件は聞かなくてもわかるんで、余計な問答はなしと行こうか)
 曲人は自分に喝を入れると、敵の伏せる真っ只中へ鉄パイプ1本を手に躍り出る。たとえ敵であれ、挨拶は大切だ。
「シンプルに言うとあれだ。こんにちは! 死ね!」
 潔い宣戦布告だった。

 そこからさほど遠くない場所を、鬼の仮面を着けた巫女装束姿の少女が、先の調査で得た情報を頼りに目的地を目指していた。
(あの怪しい警察官の地図に書いてあった『中心地』に着く頃だが、どうやらビンゴらしいな)
 鬼の仮面、神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)の声に、凶津の相棒の巫女、神代・桜が相槌を打つ。
(此処彼処から殺気を感じやがる。おいッ! てめえらが『山男』とやらの正体かッ!)
「……あなた達が『山男』の正体ですか?」
「『山男』? ああ、我らが神のことを言っているのか。我らは風魔衆、神の復活を目指すものだ。貴様たちに邪魔はさせぬ!」
「……だ、そうよ」
(……まあ、どうでもいいか。どの道ぶっ倒して先に行くんだからなッ! いくぜ、相棒!)
「……先手必勝です」
 桜は破魔弓を構えると、声の聞こえた場所目掛けて立て続けに矢を放つ。だが躱されたのか手ごたえはない。
(すばしっこい奴らだな! って、気を付けろ、来るぞ!)
 凶津が注意を促したのと同時に、クナイが飛来する。桜は寸前で身を捩り躱すが、立て続けに放たれるクナイを前に、防戦一方に追い込まれる。
(此処は物陰が多すぎてこっちが不利だぜ。相棒、『中心地』まで突っ走れ。あっちの方がひらけてそうだ)
「……わかりました」
 桜は攻撃が止んだ隙を狙い、一目散に駆け出した。が、先回りしたのか、待ち伏せていたのか、木陰から飛び出した風魔衆が斬りかかってくる。(甘いぜ)凶津が言い、桜が斬撃を見切り躱す。(相棒、距離を詰めて妖刀で反撃だ!)こくり、と頷いた桜は、風魔衆との間合いを詰めると妖刀を抜き放ち薙ぐ。その軌道は確実に敵を捉え……(って、ちぃッ! こっちの攻撃を予測して回避しやがるッ! あのバイザーが原因かッ!?)余りに的確過ぎる回避行動に、凶津は驚きつつも瞬時に原因を突き止める。(俺は対策を考えるぜ。相棒は兎に角『中心地』へ向かえ)凶津は桜にそう言うと対策を練り始めた。

 一方、敵の真っ只中へ、鉄パイプ一本で躍り出た曲人の行動は、風魔衆の虚を突く形になっていた。風魔衆は、ユーベルコード【サイバーアイ演算術】によって攻撃を予測回避する事ができるが、ゆえに具体的な作戦が思いつかないでいた曲人の攻撃を読めずにいたのだ。(へ? こねぇのかよ。ステゴロだけでどうにかする相手じゃねぇわ……って思ってたが……。いや、待てよ。つまり……)ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべる曲人。
「なんでまぁ、こういう手で行こう。避けれるもんなら避けてみろよ」
 ガサガサガサ……。
 「……ん?」ユーベルコードの発動準備に入っていた曲人だったが、近くの藪が揺れたかと思うと、いきなり巫女姿に鬼の仮面を付けた女性が勢いよく飛び出してきて呆気にとられる。
「何が起きてやがる……」
 状況整理に追われる曲人を余所に、続けて巫女を追ってなだれ込んでくる風魔衆。曲人が相手取っていた未だ姿を見せぬ風魔衆からも、戸惑いの気配が感じられる。
「あの鬼の面の巫女は猟兵だよな……って、惚けてる場合じゃねぇ! 忍者共も、たまげていやがる、今がねらい目ってな!【最後の手札】(マジックユーザー)行くぜっ!」
 気を取り直し、ユーベルコードを発動させる曲人。【最後の手札】により、曲人の魔法系スキルが大幅にブーストされ、全身に魔力が漲ってくる。
 一方、凶津も発動すべきユーベルコードを閃いていた。
(なら【雷神霊装(スパークフォーム)】でいくぜ、相棒ッ!)
 阿吽の呼吸で、凶津の示したユーベルコードの準備に入る桜。
「……転身ッ!」
 凶津と桜、二人の力が一つになり、桜の巫女装束が雷光を纏う雷神を想起させる霊装へと変貌を遂げる。(あちらさんも雷属性とはね。偶然ってのはあるもんだねぇ)曲人も凶津と桜を横目に見ながら【最後の手札】により放つ魔法の術式を組み立ててゆく。
「最速で広範囲の雷属性精霊魔法を叩き込んでやるぜ! これなら回避も防御もよっぽどの備えがない限りやらせねぇ……!」
 曲人は風魔衆が潜んでいると思われる場所を倍以上範囲に捉えて、自身が放てる限界まで魔力を振り絞った。周囲一帯に雷の嵐が吹き荒れる。木陰に隠れようが岩陰に隠れようが逃れることは困難であろう。全速力で逃れようにも広大な魔法の効果範囲から無傷で出ることは不可能だ。さらに、凶津と桜の【雷神霊装】が掛け合わされる。【雷神霊装】を纏った凶津と桜は、曲人が演出する雷の嵐が吹き荒れる戦場を高速で駆け巡り、奇跡的に雷の嵐を免れた風魔衆に破魔の雷を纏わせた妖刀の斬撃放射
を叩き込んでゆく。かくして、凶津と桜、曲人、3名の相手取った風魔衆は全滅することとなる。
「虚をつくのはテメーら忍者の得意技だろうが……。鉄パイプもったチンピラがいきなり大魔法ぶっ放してくると予想できるかね?」
 ことを成し遂げた曲人はその場にへたり込む。消耗した魔力を補い次に進むには、しばし休息が必要だろう。
(あんた、なかなかやるねぇ!)
「……あなた、なかなかやりますね」
「あんた……いや、あんた達もな。見事だったぜ」
 お互いに労いつつ、次に待ち受ける決戦に備えるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

箒星・仄々
邪神復活なんてさせません!

破魔の音色への反応からすると
囚われの方々がお出でのようです
一刻も早くお助けしたいです

UCで摩擦抵抗操作&風の魔力の疾風
高速滑走で洞窟へ

私の阻止を優先せざるを得ないでしょう
動揺と焦りを誘い
連携に齟齬を

敵攻撃を華麗なドリフトで回避
もし当たってもつるっとするので無傷です

そしてこのタイミング!
風魔さんの攻撃に応じる機ならば
予測や予測回避は難しいはず

摩擦0の鋭く速い刺突で仕留めたり
ぺろして武具やバイザーを落としたり
立ち上がれず将棋倒しになっていただきます

もし避けられても
私は洞窟の奥へ向かうだけです

終幕
囚われの方々を開放

風魔さんへ鎮魂の調べ奏で
邪神さんとの戦いの前奏ともしましょう



 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は、奏でる竪琴の音色に導かれ、儀式場を目指す。
(邪神復活なんてさせません! それに、破魔の音色への反応からすると、儀式場には囚われの方々がお出でのようです。一刻も早くお助けしたいです)
 仄々は、ユーベルコード【猫の毛づくろい】で自らの摩擦抵抗を最小まで減らすと、風属性魔法の追い風を背に受け洞窟へ向かって、文字通り風となって木々の間を滑り抜ける。 
 既に複数の猟兵と風魔衆は乱戦状態になっており、敵味方共に風のように走り抜ける仄々に気づくものはなかった。しかし、風魔衆も愚かではない。洞窟の前に最小限の護りの兵は残していた。
「この先へは行かせぬ!」
 数名の風魔衆が仄々を取り囲むが、摩擦抵抗を極限まで減らした仄々は、つるつると滑る、滑る。巧みなドリフトで風魔衆たちの忍者刀やクナイの攻撃を躱し、躱し損ねた攻撃も『つるり』と受け流し、致命傷には遥か及ばない。
 ひたすら回避に徹する仄々は、粘り強く反撃の機会を狙っていた。風魔衆が厄介な存在たり得るのは、ユーベルコード【サイバーアイ演算術】による、攻撃の予想回避によるものが大きいだろう。だが、風魔衆が攻撃し、仄々で『つるっ』としたタイミングならばどうか――この絶妙なタイミングならば、予測回避は難しいだろう。
 そしてその機会は訪れた。仄々に忍者刀を当てたものの、するっと滑り体勢崩した風魔衆を、仄々は見逃さない。摩擦ゼロの素早い『カッツェンナーゲル』による刺突攻撃は、風魔衆の眉間を貫き即死させる。
 戦場全体の戦況は、猟兵優勢に傾きだし、決着も間近だろう。援軍の当てもなく、儀式場の入り口を護る風魔衆は、また一人また一人と仄々により屠られてゆき、遂に最後の一人に止めを刺すに至った。
「風魔さん……オブリビオンではありますが、命を奪ったことには変わりなく……。鎮魂の調べを捧げます」
 暫し竪琴で鎮魂の曲を奏でた仄々は、囚われの人々を救い出すべく地面の裂け目から洞窟内に潜入するが……。
『ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!』
 風魔衆が復活を目指していた邪神であろう肉塊から発せられたのであろう咆哮が轟き渡る。
「復活が近いという事でしょうか。急ぎましょう」
 グネグネと曲がった洞窟を猫のように軽やかに駆け抜け儀式の間へ到達すると、速やかに人々が囚われた牢を目指す。錠前は『カッツェンナーゲル』で、こじて壊し、項垂れ疲れ果てた人々を洞窟の外へと導く。
 仄々は去り際に蠢く肉塊を見た。脈動が激しくなった肉塊越しに、仄々を睨みつける、怒りと狂気に満ちた目を見た気がした。
「あなたをこの地より解き放ったりしませんよ。邪神の復活など許しません」

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『骸の海のギガントピテクス』

POW   :    震える巨体
【全身の筋肉】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    無骨な塊
【手に持った棍棒】を向けた対象に、【その後に振り被った棍棒】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    影化
【輪郭のぼやけた影】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠秋冬・春子です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●邪神復活
 猟兵たちの奮戦の前に、風魔衆は数で圧倒していたにもかかわらず、劣勢に追い込まれていた。敗色が濃厚となり、多くの同胞を失った今、邪神復活の儀式を正式な手順をもって完遂することは不可能となった。敗北を悟った風魔衆の僅かな生き残りたちは、戦場からの逃走を図るが、これを見逃してはまた新たな邪神復活の火種となりかねない。追撃すべきなのだろうが、この場所にはより差し迫った危険が残されている。
『うぉおおおおおおおっ!!!』
 地の底から響いてくる野獣の如き咆哮。この地に封じられ、風魔衆が復活を目指していた邪神が、自らの手で肉の揺り籠を引き裂きあげた産声だった。
 邪神の巨体は、立ち上がると天井につかえてしまう程だ。不快を感じた邪神は、力任せに何度も拳を叩きつけ、遂には天井を崩落させ大穴を穿つ。邪神は地面を蹴ると、大穴を潜り抜け儀式場の外へその巨体を躍らせた。新鮮な外の空気を吸った邪神は再び吠える。
『ぐぉおおおおおおおおっ!!!』
 満足げな咆哮は周囲に猟兵達の存在を認識すると『グルルル……』と唸り声に変わってゆく。邪神は手近に生える大木を引き抜き棍棒代わりに携えると、猟兵達を睨め付けた。
「我ガ、復活ヲ、妨ゲシ、者ドモヨ。ソノ、血ト、肉ト、魂ヲ、以ッテ、我ニ、償エ!」
 

●邪神『骸の海のギガントピテクス』
 復活した邪神の名を『骸の海のギガントピテクス』という。かつて地球に存在し絶滅したとされる大型類人猿『ギガントピテクス』と同じ名を持ち、奇しくも仮説の一つに『山男』の正体とするものも存在する。
「ふむ……古来からの伝承を改めて探ってみたが、地域によっては邪悪と言わざるを得ない、性質(たち)の悪いモノもおったようじゃな」
 猟兵達の後方支援に努める桐葉は、携帯情報端末の画面から目を上げる。
「いずれにせよ、オブリビオンである以上、人類の敵じゃ。討滅するのみよ。皆、頼むのじゃ!」
●決戦の時
 邪神『骸の海のギガントピテクス』は、複数の猟兵たちに取り囲まれても、全く怯む様子はない。気怠そうに首を回し骨を鳴らす。
「有象無象ガ、相手トハ、言エ、コノ身一ツ、デハ、全テノ、蠅ヲ、叩キ潰スニ、手間ガ、カカル。分身(ワケミ)ニテ、始末、シテヤロウ。ソシテ、オ前タチハ、我ノ、完全ナル、復活ノ、贄ニ、成ルノダ!」
 そして邪神は大きく息を吸い込むと、天に向かって吠えた。その凄まじい音量に空気がびりびりと震え、猟兵たちは、その圧に思わず顔を庇う。
『フハハハハ!』
 重なり合って聞こえる邪神の嘲笑に、慌て状況を確認する猟兵たち。そこには、『分身(わけみ)』の言葉通り、数体に増えた邪神の姿があった。曲がりなりにも神といったところか。
『サア! 我ガ、完全ナル復活ノ、前夜祭ト、イコウカ、贄タチヨ!』
アイ・リスパー
理緒さんと

「これが蘇った邪神ですね!
風魔衆が気になりますが、まずは邪神を倒してからです!
行きましょう、理緒さん!」

山男、正体見たり、類人猿、です!(山男という妖怪でなくてほっとしながら)
ここは電脳魔術【マックスウェルの悪魔】で炎の矢と氷の弾丸を生成し、遠距離から射撃!
理緒さんのサポートをおこないましょう。

「なるべく敵の棍棒の射程に入らないように……
って、きゃあっ」

木の根っこに足を引っ掛けて転んでしまい。
そこに敵の棍棒が迫ってきますが……

「大丈夫。
私は、相棒を……理緒さんを信じています!」

駆けつけてくれた理緒さんに助けられ、体勢を立て直し。

「村人に危害を加える類人猿はここで倒します!」


菫宮・理緒
アイさまと

(山男って山ボーイ的なのかと思ってたんだけどな-)
などと思っていますが、そこはぐっと隠して、

「承知いたしました、アイさま」
と、まずはアイさまを守るように前にでます。

【電脳メイド服】の身体強化機能を全開にして、邪神に接近したら、
アイさまが狙いやすいように囮になりましょう。

……っ、アイさま!

躓いたアイさまをみて、メイド服をオーバーロード。
煙があがったりしてますが、気にせず棍棒を蹴り飛ばします。

「主人からの信頼に応えるのがメイドの本懐。
アイさまに信じていただけたのなら、全てはアイさまの意のままに」
と、にっこり笑いかけましょう。

「アイさまを殴ろうとしたゴリラは、ここで仕留めます」(冷黒笑)



「これが蘇った邪神ですね!」
 アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)は、ギガントピテクスを見上げる。その隣に並ぶ、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は想像していたものとかけ離れた邪神の姿に落胆とも安堵ともつかない、微妙な気持ちになっていた。
(山男って山ボーイ的なのかと思ってたんだけどな-)
 だが理緒は、そのような思いは、おくびにも出さない。
「風魔衆が気になりますが、まずは邪神を倒してからです! 行きましょう、理緒さん!」
「承知いたしました、アイさま」
 理緒は答えると、アイを守るように前に進みでる。
「山男、正体見たり、類人猿、です!」
 びしっと邪神に向けて指差しポーズを決めたアイはどこか、ほっとした表情を浮かべている。(……分身には驚きましたが、山男などという妖怪ではないとハッキリしました)
「ここは電脳魔術【マックスウェルの悪魔】(マックスウェル・デモン)で距離を取りながら射撃です。『エントロピー・コントロール・プログラム、起動します』」
「それでしたら、私はアイさまが狙いやすいように囮になりましょう」
 理緒は身に纏う【電脳メイド服】の身体強化機能を全開にすると、邪神に接近し攻撃を仕掛ける。理緒が受け持つのは敵を引きつけ、アイが安全に攻撃できる状況を作り出すこと。アイはその状況を最大限生かし、ユーベルコード【マックスウェルの悪魔】で次々に炎の矢と氷の弾丸を生成して邪神に放つ。しかし、ただ無暗に撃つわけではない。理緒に危険が迫れば、敵の動きを妨害するように矢玉を放つ。
「小賢シイ、真似ヲ!」
 息の合った二人の攻撃に、想定外の苦戦を強いられ苛立った邪神は、理緒のフェイントを物ともせず、アイに向かって棍棒代わりの大木を振り下ろす。
「なるべく敵の棍棒の射程に入らないように……って、きゃあっ」
 慎重に距離を保ちながら攻撃を行っていたアイだが、突如自分に向かってきた棍棒に動転し、地面からせり出した木の根っこに足を引っ掛けて転んでしまう。
「……っ、アイさま!」
 転んだアイの悲鳴に敏感に反応した理緒は、振り返り瞬時に判断する。(させるもんか!)躊躇いなく【電脳メイド服】をオーバーロードさせた。負荷に耐えきれず、メイド服のあちこちから火花が散り煙が吹き上がるが、そんなものどうでもいい。アイに向かって振り下ろされる棍棒を止めるべく跳躍する。
「大丈夫。私は、相棒を……理緒さんを信じています!」
 アイは眼前に迫る棍棒を、そしてその向こうの邪神を見つめ穏やかに微笑む。その笑みに邪神が怯んだように見えたのは気のせいか。
「はぁぁぁーーーーっ!」
 ガガッ! 気合の声と硬い物がぶつかる音。振り下ろす棍棒に横から力を加えられた邪神は、大きくバランスを崩し跪く。その隙に理緒はアイを助け起こす。
「理緒さん、ありがとう。 信じていました!」
 信頼に満ちた瞳で理緒を見つめるアイ。
「主人からの信頼に応えるのがメイドの本懐。アイさまに信じていただけたのなら、全てはアイさまの意のままに」
 にっこり笑いかける理緒。
 二人はよろめきながら立ち上がる邪神に振り向く。
「村人に危害を加える類人猿はここで倒します!」
「アイさまを殴ろうとしたゴリラは、ここで仕留めます」
 アイは毅然と、理緒は冷ややかな冷笑を浮かべ邪神に向かい宣言する。それは邪神に対する死の宣告でもあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

華舟・波瑠
【華舟藩】
民草の命、使う価値があったかやぁ?…その御首、手向けに落とすわ。落とさねばならん。

猿には犬と相場が決まっとる。忍犬衆を【鼓舞】し、【勇気】を与えたるよ。
名の挙げ時や!早太郎の如く、彼の大猿を仕留めてみせよ!
小さな体で素早く動き回り連携を取らせ、一撃離脱のもふもふ攻撃を加え、30cm以上の距離を保って的を絞らせん。
俺はそれに紛れて遠距離攻撃主体で組み立てよか。『諷詠』を【スナイパー】と【クイックドロー】で早撃ち、目を狙ったるわ。

トドメは【属性攻撃】で強化し、【破魔】の【祈り】を込めたウォータージェットで【薙ぎ払い】、叩き斬ったる!
『南無八大龍王、凶つ神を屠るこの一斬…篤と御照覧あれ!』


ミニョン・エルシェ
【華舟藩】
さて、先程は私の策の甘さを晒しましたが…それは今後の検討課題。
では、神殺しを始めましょうか。

ふむ、波瑠さんの忍犬のヒットアンドアウェイに合わせ、此方も【援護射撃】として『城対龍高速誘導弾システム』を【一斉発射】します。接近されては大打撃を受けかねませんので、【地形利用】しながら距離を保ち、【誘導弾】を撃って牽制しましょう。

これだけ逃げ回っていれば、接近戦を避けていると印象付けられたでしょうか。
…残念ながら私のUCは接近戦用、そして…丸見えです。【騙し討ち】で【指定UC】を起動、動きを止めて槍で一刺し、そして本命の二の太刀、『簪宗信』による【破魔】の【捨て身の一撃】、馳走します!



 邪神『骸の海のギガントピテクス』。その巨大な猿じみた姿を前に、華舟・波瑠(華の嵐・f16124)は啖呵を切る。
「民草の命、使う価値があったかやぁ?……その御首、他向けに落とすわ。落とさねばならん」
 そしてその隣には、静かに闘志を燃やす少女、ミニョン・エルシェ(木菟の城普請・f03471)の姿がある。(……先程は私の策の甘さを晒しましたが……それは今後の検討課題)先の戦いで彼女の築き上げた城は、風魔衆・下忍たちの集団に打撃を与えたものの、最終的に破られてしまったのだ。しかし、それをいつ迄も引きずっている時間はない。
「では、神殺しを始めましょうか」
 ミニョンはそう言うと、多弾頭ミサイルランチャー『城対龍高速誘導弾システム』を
肩に担ぐ。一方、波瑠はユーベルコード【東奔西走忍犬衆(アッチモコッチモモッフモフ)】を発動し、忍犬軍団を召喚する。
「猿には犬と相場が決まっとる。名の挙げ時や! 早太郎(はやたろう)の如く、彼の大猿を仕留めてみせよ!」
 波瑠は、人々を苦しめた老ヒヒを討ち取った、伝説の霊犬・早太郎の名を出し、忍犬たちを鼓舞した。
『あおぉ~~ん!!』
 忍犬たちは一声吠えると、主の期待に応えんと一斉に邪神に向かい包囲する。そして距離を保ちながら、次々に一撃離脱のもふもふ攻撃を加える。
「ナ……何ノ、ツモリダ……!?」
 自分にもふもふの体当たりを繰り返す忍犬たちにその意図を図りかねながら邪神は反撃を試みるが、小さな体で素早く動き回る忍犬には掠りもしない。ならばと、肉薄した忍犬に的を絞るが、それこそ波瑠が狙っていた千載一遇の好機だった。邪神が忍犬たちに気を取られた隙を狙い、素早く愛用の弓『諷詠』を引くと目を狙って矢を放った。が、波瑠の殺気に気づいた邪神は咄嗟に手で矢を払いのける。
「小賢シイ、真似ヲ!」
 激昂した邪神は、忍犬にモフモフされるがまま、棍棒を振り上げ波瑠に近づこうとするが、そこに忍犬の隙間を掻い潜り、ミニョンの『城対龍高速誘導弾システム』から発射されたミサイルが降り注ぐ。
「ぐぉぉぉぉーーっ!!」
 ミニョンはミサイルを発射すると、地形を利用し邪神の視界から身を隠し移動する。そして再び発射する。
(これだけ逃げ回っていれば、接近戦を避けていると印象付けられたでしょうか)
「オノレ……オノレ、オノレ!!」
 狂乱した邪神の輪郭がぼやけ出し影へと変わり始める。
(何かのユーベルコード?……残念ながら私のユーベルコードは接近戦用、そして……丸見えです)
 ミニョンは潜んでいた場所から不意に飛び出すと、ユーベルコード【邪視起動・木菟ノ凶爪(ツクノマガツツメ)】を発動し、邪視により邪神の動きを封じ込めた。
「ナニィ!?」
 ほんの僅かな時間であったが、ミニョンが槍による一撃を加えるには十分だった。
「動きを止めて槍で一刺し……そして本命の二の太刀『簪宗信』、馳走します!」
 ミニョンの振るう『簪宗信』による破魔の一撃は邪神をユーベルコードごと切り捨て、その発動を妨害した。
「ぐぁあああああっ!!!」
 肉を断たれる痛みに絶叫する邪神。だが、まだ終わりではなかった。
「南無八大龍王、凶つ神を屠るこの一斬……篤と御照覧あれ!」
 波瑠は、仏法の守護者たる八大龍王に祈りを捧げ、絶大な破魔の加護を得ると、その加護を『波瑠式多目的放水機構』によるウォータージェットに込め邪神の首めがけて薙ぎ払った。二人の猟兵による攻撃で弱り果てていた邪神の分身(わけみ)の一体は、こうして討ち取られたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

箒星・仄々
命を守ることは未来を守ること
過去の化身に負けはしません!

竪琴奏で魔力を練り上げ
矢と為します

当たれば幸い
防御されたり耐えられるかも

防がれ破壊された矢は各々が元の属性へほどけます
即ち強い閃光放つ炎となり
水飛沫となり
突風となり
視界を焼き聴覚を削ぎます
更に閃光はぼやけた影を払います

いつの間にか旋律は止まっています

はい
矢を囮として間合いを詰め
既に抜刀しています

絶滅した類人猿さんの化身なのでしょうか

元々はきっと私たちと同じように
家族や仲間、友との絆を大切に
生を謳歌されていてはず

歪んでしまわれた姿がお労しいです
海へお還しいたします

影が欠けた部位へ一閃
柄頭の鈴が鳴るのは納刀後です

終幕
鎮魂の調べ
海で静かな眠りを



 邪神『骸の海のギガントピテクス』の巨体を前にしながら、悠々と竪琴を奏でるのは箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)。
「命を守ることは未来を守ること。過去の化身に負けはしません!」
 ポロロン……と絃を爪弾くたびに、仄々の魔力は練り上げられ高まってゆく。
「我ヲ、前ニ、シテ、琴ノ、演奏ニ、興ジル、トハ、舐メラレタ、モノダ。捻リ、潰シテヤロウ!」
 邪神は仄々めがけて棍棒を振り下ろすが、仄々は竪琴の演奏を途切れさせることなく、その攻撃を身軽に回避してみせた。続けて繰り出される邪神の、拳打、蹴りなど巧みな足さばきで避け続ける。
「機は熟しました」
 仄々は、自身の魔力が十分に練り上げられたのを感じ取ると、ユーベルコード【トリニティ・ブラスト】を発動させた。
 ユーベルコードの発動と共に、仄々の頭上に510本もの魔力の矢が生成される。
「さぁ、ちょっと派手にいきますよ!」
 仄々の竪琴の演奏に合わせ、魔力の矢が次々と邪神めがけて飛び始めた。だが、迫りくる矢を見ても邪神は慌てることもなく鼻で笑う。
「笑止! タカガ、矢ゴトキデ、我ニ、傷ヲ、負ワセル、ツモリカ」
 邪神は腕を掲げ、分厚い皮膚で矢を受け止める。が、次の瞬間、矢は閃光を放ち爆ぜ、邪神の腕が炎に包まれる。
「グゥ……! コレハ……!」
 予想外の出来事に怯んだ邪神に、魔力の矢は途切れることなく向かってゆく。そして、当たった矢は爆ぜ、水飛沫となり、或いは突風となり、燃え盛る炎となり邪神を翻弄する。一つ一つは致命傷を与えることは無くても、ダメージは確実に蓄積されてゆく。
「小癪ナ! 我ガ怒リ、受ケヨ!」
 起死回生を狙い、邪神がユーベルコード【影化】を発動させようとするが、魔力が爆ぜ放つ閃光は、邪神の身を覆う影を払う。
「グゥゥ……」
 がくりと膝をつき、仄々を憎々し気に睨みつける邪神。その横面に魔力の矢が当たり、閃光と共に燃え上がる。
「ぐがぁあああああっ!」
 閃光と炎に視力を奪われ悶え喚く邪神を前に、仄々は竪琴を収めると、すらりと剣を抜く。無様に悶え苦しむ邪神の姿に、仄々の胸中に様々な思いが去来する。(絶滅した類人猿さんの化身なのでしょうか……。元々はきっと私たちと同じように、家族や仲間、友との絆を大切に、生を謳歌されていてはず。歪んでしまわれた姿がお労しいです……)だが、どの様な思いを抱いても、既に相手はオブリビオンと化し、幾人かの町の人々を犠牲にしているのだ。一抹の虚しさを感じながら、仄々は剣を構える。 
「……海へお還しいたします」
 呟き、剣を一閃する。僅かに間を置き、邪神の巨体は重い音を響かせながら地に伏した。仄々は、静かに剣を鞘に納める。
 ちりん、と剣の柄頭に付けられた鈴が悲し気に鳴り響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

塩崎・曲人
あー、うん、スーパー原始人。
確かに古きものだがね、どうしたもんかなこれは
「生憎ご老人を無条件で敬うような殊勝な心は持ち合わせがねーのよ。しばき倒して骸の海に蹴り返すが、恨んでくれるなよ?」

さてあのお猿さん、なんかバッターのホームラン予告みてぇに棍棒こっち向けて来てるんだが
あ?アレと同じ意味?あっそう
事前に話聞いてたから知ってるけどな
「させるわきゃねーだろ間抜け。予告してる暇があったら殴れや」
相手の予備動作に合わせて【咎力封じ】の拘束具をシュゥゥゥー!
3つ当たりゃユーベルコードそのものが封じられる
後は好きに料理できるってことだ、わかったか?
(鉄の棍棒こと鉄パイプを振りかぶりつつ)



「あー、うん、スーパー原始人」
 塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)は、自分の身長の2倍以上はありそうな邪神『骸の海のギガントピテクス』を見上げ、そう感想を述べた。
(確かに古きものだがね、どうしたもんかなこれは)古代に存在したという、巨体を持つ類人猿ギガントピテクス。それがどこかで拗らせてこんな存在になり果てたのか。
 曲人は肩を竦めると、邪神を見上げ啖呵を切る。
「生憎ご老人を無条件で敬うような殊勝な心は持ち合わせがねーのよ。しばき倒して骸の海に蹴り返すが、恨んでくれるなよ?」
「クハハハッ! ソレハ、気ガ合ウ! 我モ、小童、相手ニ、慈悲ナド持タヌ! 嬲リ殺シ、我ノ胃袋ニ、送リ込ンデ、クレヨウ!」
 邪神は威勢の良い曲人を相手に軽口を返すと、棍棒代わりに手近な大木を引き抜く。そして使い勝手を確かめるように数度振り回すと、ゆっくりと曲人に先端を向けた。
(さてあのお猿さん、なんかバッターのホームラン予告みてぇに、棍棒こっち向けて来てるんだが……)
「あ? アレと同じ意味? あっそう」
 にちゃり……と邪悪な笑みを浮かべる邪神の顔を見て察した曲人。
「させるわきゃねーだろ間抜け。予告してる暇があったら殴れや」
 言うが早いか、曲人はユーベルコード【咎力封じ】を発動させた。そしてユーベルコードにより具現化された手枷、猿轡、拘束ロープ、それらを悠長に棍棒を振りかぶるっている邪神に向かって次々に放つ。
「隙だらけだなぁ、おい!」
 放った拘束具は吸い込まれるように邪神の体を捉え、拘束してゆく。
「うううぐっ!? うぐぅ!!」
 手枷と拘束ロープで手足を封じられた挙句、猿轡で口まで封じられた邪神は、ユーベルコードまで封じられ無様に地面に転り、目を白黒させながら呻き声をあげている。
「こうなりゃ後は好きに料理できるってことだ、わかったか?」
 曲人はドスの利いた声で言い、鉄パイプを持つと足元に横たわる邪神を見下ろすと、邪神が棍棒でしたように、鉄パイプの先を邪神に突きつけた後、ゆっくりと振りかぶる。
「てめぇーが手に掛けた連中の苦しみ、どんなもんだったんだろうなぁ」
 静かな怒りを秘めた曲人の声色に、邪神は己の最期を悟ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
どうやらあのデカブツが『山男』の正体らしいなッ!いくぜ、相棒ッ!
「・・・邪神祓い、始めますッ!」

デカブツにはデカブツだ。頼んだぜ、相棒ッ!
「・・・式、召喚【戦駆け劔武者】」
劔武者を邪神と戦わせるぜ。高速移動させながら敵の攻撃を見切って避けたり太刀で受け流したりしながら、特殊金属の太刀の斬撃をお見舞いしてやるよ。

劔武者が戦って邪神の気を引いている隙に邪神が出てきた場所を調べるぞ。行方不明者がいるかもしれねえからな。
「生きている人はいますかッ!」
行方不明者を見付けられたら、鉄格子を妖刀でぶった斬って救出して『結界霊符』で結界を張って保護するぜ。


【技能・式神使い、見切り、結界術】
【アドリブ歓迎】



 咆哮する巨体を認識した神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が、相棒の巫女、神代・桜に話しかける。 
(どうやらあのデカブツが『山男』の正体らしいなッ! って、増えやがった!)
 と、二人の目の前で『山男』こと、邪神『骸の海のギガントピテクス』は、その場に居合わせた猟兵たちに応戦すべくその身を分身(わけみ)させた。しかし、凶津は驚きはしたものの、まったく意に介す様子がない。
(まぁいいか、増えてもやることは同じだ。いくぜ、相棒ッ!)
「……邪神祓い、始めますッ!」
 凶津の声に桜も気合が入る。薙刀を構え今にも飛び出しそうになるが、凶津はそれを引き留める。
(おいおい待てって、相棒。デカブツにはデカブツってのが相場なんだ。頼んだぜ、相棒ッ!)
 桜は首を傾げ、デカブツ同士が戦う場面を想像してみる。(確かに邪神より小さい私が相対するより理に適っている気がします)納得して頷いた桜は、凶津の指示に該当するユーベルコード【式神【戦駆け劔武者】(シキガミ・イクサガケツルギムシャ)】を発動させた。
「……式、召喚【戦駆け劔武者】」
 桜の呼びかけに応じた式は、桜の背後、背負う様に出現した魔法円を通じ顕現する。全身に霊力の炎を纏った体高5メートルの鎧武者……それが【戦駆け劔武者】の姿だ。
『主の命により馳せ参じ候』
 劔武者はそう言うと、長大な太刀を抜き放ち邪神の前に進み出る。
(さあ、やっちまえ!)
「……劔武者、邪神を討ってください!」
『御意』
 凶津と桜の命を受けた劔武者が動き出す。正面から間合いを詰め上段の構えから太刀を振り下ろすが、邪神はひらりと躱すと劔武者の背後へ回る。
「鈍ラ刀、ナド、我ニ、掠リモ、セヌワ」
 言いながら邪神は棍棒で打ちかかるが、重厚な外見からは想像できないほどの身軽な体捌きで振り返ると、太刀で棍棒を受ける。
「ヤリオルナ。ダガ、コノ程度ハ、小手調ベ、ダ」
 2体の巨体が目まぐるしく動き回る。武器で打ち合ったかと思えば距離を取り、間合いを詰めてはせめぎ合う。一進一退の激戦を繰り広げる。劔武者はしっかりと邪神の注意を引いてくれている。その隙を狙って凶津と桜は行方不明者の捜索を試みる。
(今が好機だ。劔武者が邪神の気を引いている隙に邪神が出てきた場所を調べるぞ、相棒。まだ無事な奴がいるかもしれねえからな)
 邪神が穿った穴から儀式場へ侵入する。壁際に鉄格子の牢があったが中はもぬけの殻だ。
「生きている人はいますかッ!」
 念のため、桜が声を張り上げるが返ってくる声はない。
(他の猟兵が助けた後か? 無駄足かよ)
「……待って、奥の方にまだ気配があります」
(風魔衆じゃないだろうな……無駄足の上に藪蛇か?)
「……弱ってます。それに邪悪な気配はありません。こっちです」
 桜は生存者の気配を追って儀式場の片隅から更に奥へと通じる小道をたどる。程なくして、丈夫な鉄格子のはまった牢に行き当たった。中にはやつれた数人の男女の姿が確認できる。鬼の仮面の巫女の登場に戸惑いを見せる者もいたが、助けだとわかると安堵の表情をみせた。
「下がってください」
 桜は囚われの人々を鉄格子から離れさせると気合一閃、妖刀で見事に断ち切る。
「上の騒動が収まったら、ここから出てきて下さい。それまでは待っていてください」
 そう言うと桜は『結界霊符』でこの場所に堅牢な守りの結界を張り巡らせる。
(それじゃ、劔武者の助太刀と行くか、相棒! 3対1になれば俺たちの勝利は揺るがねぇだろ!)
「劔武者なら一人でも勝ってしまいそうです」
 桜の言葉通り、凶津と桜の二人が地上に戻るころには、劔武者は勝利を収めていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エミリロット・エカルネージュ
類人猿の名前を持つ邪神かぁ……実際のとの繋がりがあったら闇堕ちした昔の歴史その物が相手になるのかな?

餃子とボクの流派の歴史が
遠くは及ばない

けど……こんな事をする程歪んだ存在は絶対に止めるっ!

●SPD
真の姿『ギョウザライダー・エカルド』に変身し『早業』でUC発動、ボクの分身体(島唐辛子餃子怪人)を召喚

分身体と『集団戦術』による連携を取り『オーラ防御&激痛耐性』で備え『第六感』で『瞬間思考力&見切り』『怪力』で『武器受け&受け流し』と撹乱

ボクは【シャオロン(麺棒モード)】
分身体は【健脚&尻尾&発勁】で

『怪力&属性攻撃(炎)&マヒ攻撃』込め『グラップル&功夫』を御見舞いを

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



 邪神『骸の海のギガントピテクス』と対峙しながら、エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は思う。(類人猿の名前を持つ邪神かぁ……実際のとの繋がりがあったら闇堕ちした昔の歴史その物が相手になるのかな? だとしたら……。餃子とボクの流派の歴史は遠く及ばない)
「ドウシタ、怖気ヅイタカ?」
 動きを見せないエミリロットを邪神が嘲笑う。
「大人シク、贄ニ、成ルナラバ、手間ガ省ケル」
「贄……」
 邪神の放った一言が、エミリロットの脳裏に一連の事件の犠牲者たちを思い出させた。(そうだ、止めないといけないんだ。たとえボクの力が及ばなくても……)
「けど……こんな事をする程歪んだ存在は絶対に止めるっ!」
 俯き加減だった顔を上げると、軽くステップを踏み『シャオロン』を麺棒モードで棍状態に変化させ演武をこなす。
「オ前、如キニ、出来ルカ? 我ガ、チカラノ、前ニ、ヒレ伏スガ、イイ!」
 邪神はそう言うと、エミリロットめがけ突進してくる。だが、エミリロットは冷静に動く。
「……変身っ!」
 声高に叫び変身ポーズを決めたエミリロットは瞬時に金色の武装に身を固めた『ギョウザライダー・エカルド』に姿を変える。そして素早くユーベルコード【餃功餃陽の陣神(ギョウコウギョウヨウノジンシン)】を発動させた。
「餃功餃神、二手陽拳……ヒーローと怪人、ボク達は二人で一人の餃子の拳を継ぐ者だっ!」
 エミリロットから分身体……島唐辛子餃子怪人が滲み出るように姿を現す。
「いくよ!」
 邪神を迎え撃つように自ら間合いを詰め、麺棒による鋭い突きを放つ。エミリロットの動きに合わせ島唐辛子餃子怪人も動く。エミリロットと邪神が正面からぶつかり合い、守りが手薄になった邪神の側面に回り込むと足技と尻尾を主体にした連撃を打ち込む。
「ヌゥゥ……」
 邪神は力任せにエミリロットに拳を叩きつけ弾き飛ばすが、間合いが浅く、またエミリロットは攻撃に備えていたため、ダメージは軽い。邪神はそのまま身を捩ると、遠心力を乗せた棍棒の一撃を島唐辛子餃子怪人に叩き込む。その衝撃で島唐辛子餃子怪人は派手に吹っ飛び錐揉み状態で巨木の幹へ叩きつけられる。
「隙だらけだよ!」
 邪神が態勢を整え向き合うより早く肉薄したエミリロットは、構えた両拳に闘気を集中する。闘気は燃え上がる炎に姿を変えて……。
「……ボクの功夫、お見舞いするよ!」
 猛烈な拳の連打が邪神に襲い掛かる。放たれる拳は的確に邪神の急所を撃ち抜き、動きを奪ってゆく。
「これで止めっ!」
 暴風のように暴れ回っていたエミリロットは、邪神の正面で一度その動きを止めると利き手の拳に全ての闘気を凝縮する。そして全身のバネを使い邪神に強烈なアッパーカットを見舞った。
「ウグゥ……バカ……ナ……」
 白目を剥き地面に崩れ落ちると、邪神は活動を停止した。

成功 🔵​🔵​🔴​

東雲・深耶
フム、邪神のPOWUCは射程が短いか…残念だが、貴様の能力は私の能力と相性が最悪のようだぞ?
UCを発動。時空間を切断する剣術の斬撃が邪神の筋肉を空間ごと切断していく。
相手が近づいて殴りかかろうとしてきたら【閃空の波紋】を用いて空間知覚を行い、それから予測して【残像】を残す速度で回避して【カウンター】を叩き込む。

餓えろ、猿の邪神(ギガントピテクス)ーー貴様の復活(満足)を斬滅してやる
そう言って首や頭部などに斬撃を飛ばしていき、命を断っていく。



「フム……」
 東雲・深耶(時空間切断剣術・空閃人奉流流祖・f23717)は、邪神『骸の海のギガントピテクス』の頭の先から足の先まで、値踏みするように視線を走らせる。
「……残念だが、貴様の能力は私の能力と相性が最悪のようだぞ?」
「何ヲ、言ウカト、思エバ、戯言ヲ。其処ナ、不遜ナル、人間ヨ、我ヘノ冒涜、万死ニ、値スルト、知レ!」
 深耶の言動に激昂した邪神は、手近な大木を引き抜くと、振り回しながら迫る。一方、深耶は悠然と構え、振り回される大木を、軽やかなステップで容易く避ける。
「神などと大層な肩書を与えられている割に、器が小さいと見える」
 大振りの一撃を鮮やかな身のこなしで避けた深耶は、ここにきて初めて刀の柄に手をかけた。そしてユーベルコードを発動する。
「第一魔剣・それは世界に実体ある存在ならば全てを絶つ」
 ユーベルコード【第一魔剣・幻も現も割する一振りの鋼にして空(ザイスルモノスベテノザンメツ)】――それは、深耶の振るう刃に、距離や相手の性質を無視して時空間ごと切り裂く能力を付与する。鞘から抜き放ち振るった一閃が空を裂くと同時に、邪神の隆々たる腕の筋肉が切断され、だらりと力なく垂れさがり手にしていた大木を落とす。
「ぐぉぉおおおっ!! 怪シゲナ、術ヲ……!」
「だから言っただろう? 貴様の能力は私の能力と最悪の相性だと」
「グググッ!」
 怒り狂った邪神は、無事な手で深耶を叩きのめそうと執拗に距離を詰める。
「無駄だ」
 深耶は呼吸を乱すことなく邪神の攻撃をいなし、閃空人奉流を開眼した際得た呼吸法である【閃空の波紋】へと繋げる。呼吸が整うにつれ空間知覚が研ぎ澄まされてゆく。
「……見えた」
 邪神が放とうとしたユーベルコードによる神速強烈な拳の一撃【震える巨体】の動きを読み取った深耶はその場に残像を残す程の超高速でその一撃を回避すると、渾身の斬撃を放つ。
「餓えろ、猿の邪神(ギガントピテクス)――貴様の復活(満足)を斬滅してやる」
 深耶の剣閃は速度を増し、放たれる斬撃は確実に急所を捉え、邪神の命を絶っていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年04月22日


挿絵イラスト