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高難易度シュミレーション『熾盛』

#スペースシップワールド #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドクトル・アメジスト #電脳魔術士 #ACE戦記 #ACE戦記外典 #熾盛

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●キャバリエ『熾盛』
『呪いのオンラインゲーム』を知っているだろうか。
 いや、その存在を知っているのならば、君は此処に居ないだろう。
 なぜなら、その『呪いのオンラインゲーム』はログインしたが最後、『魂を奪われ電脳空間から戻れなく』なってしまうからだ。
「ああ、何故こんな話をしているかと言えば、簡単なことさ。今から君達の宇宙船の電脳空間をハッキングするからだ」
 君はその声を知らないだろう。
 いや、知っているわけがない。けれど、電脳空間にけたたましく鳴り響くアラートが、君に異常事態を告げていることだけはわかる。

 その原因が今目の前の電脳空間に佇む『ドクトル・アメジスト』であることを知るだろう。けれど、それで何ができるわけでもない。
 次々と君の乗る宇宙船の電脳空間はハッキングされ、制御権を握られていく。
 それはどうしようもないほどに迅速で尚且一手の取りこぼしもない挙動であった。
 ムダなど何処にもない。
 電脳魔術師としての格が違うのだ。
「そうそう、私としてはね。君の実力も高く評価しているんだよ。今は私に及ばないかもしれないが、時間と経験さえ注げば、私の三歩後位にはたどり着くことができるんじゃないかって思っているくらいなんだ」

 けれど、と『ドクトル・アメジスト』は笑った。
 だからこそ、君が邪魔なんだと。猟書家である『ドクトル・アメジスト』に恭順の意を示すのならば、それでいい。
 反抗の意があるのならば、それは許してはおけない。
「私も暇ではないんでね。けれど、時に息抜きってやつは必要なんだよ。君の宇宙船にはどこからか紛れ込んできたのかわからないけれど、どこかの機動兵器のデータが残っているね? それをちょっと拝借して、と」
 ちょいちょい、と『ドクトル・アメジスト』は宇宙船の電脳空間から、件のデータを抜き出し、彼女が開発した『呪いのオンラインゲーム』に付け加えてインストールしていく。

「さあ、これでいいよ。ああ、これがキャバリエ『熾盛』か。なるほど。本当に人間業かと疑うような操縦技術だね。しかし、これでいいのさ。絶対に攻略不能と言われたシュミレーション。無理ゲーこそクソゲーへの褒め言葉さ」
『ドクトル・アメジスト』は微笑んだ。
 ときにはこんな暇つぶしもいい。天才もときには頭の柔軟体操が必要なのだ。
 電脳魔術師は戦慄した。
 目の前の『ドクトル・アメジスト』は、これを暇つぶしと言ったのだ。人の生命を弄ぶことを。
 その悪辣さは言うまでもない。
 けれど、そこに天才性が加わった時、どうしようもないデスゲームが始まることを知る。逃れられようのない運命。
 即ち、ゲームオーバー。イコールで結ばれるのは『死』である。

「それじゃあ、アクセスと行こうか。君に拒否権はないよ。がんばってね。まあ、長続きはしないだろうけれど。鋼鉄の巨人同士の熱いバトル、期待しているよ」
 電脳魔術師は叫んだ。
 電脳空間に見えたオンラインゲーム、そしてこの宇宙船に何故か紛れ込んでいたデータの数値。それは異常なパラメータであった。
 正気の沙汰ではない。こんなの――。
「チートコードでも使わない限りクリアなんて出来るわけがない――!!」

●呪いのオンラインゲーム
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はスペースシップワールドに現れた猟書家『ドクトル・アメジスト』による事件……皆さんは『呪いのオンラインゲーム』というものをご存知でしょうか?」
 ナイアルテの言葉に幾人かの猟兵は心当たりがあるようであったし、知らぬ者たちも当然いた。
 そう、アクセスしたが最後、『魂を奪われ電脳空間から帰れなく』なってしまう『呪いのオンラインゲーム』が存在しているのだ。

 魂がゲーム世界に転送され、ゲーム世界で死亡すると現実世界でも本当に死亡してしまうのだという。
「はい、ある宇宙船の電脳空間を制御する電脳魔術師の方が『ドクトル・アメジスト』によってゲーム世界に転送されてしまったのです。彼は今、電脳空間でチートコードを使ってゲーム世界での戦闘を遅らせている最中ですが、時間の問題なのです」
 なるほど、と猟兵たちは得心が行った顔をする。
 これより自分たちが行うのは、電脳魔術師と同じように『呪いオンラインゲーム』に飛び込み、彼を守りながらゲームをクリアして救い出せばいいのだ。

 けれど、ナイアルテの瞳は曇ったままだった。
「しかし、そのゲーム世界ではユーベルコードが使えないのです」
 それはあまりにも重大な問題であった。
 猟兵の強さとは即ちユーベルコードを持つことである。強力なユーベルコードを使いこなすことは、猟兵の強さとイコールなのだ。それが封じられているというのは、手足をもがれているようなものだ。
「ですが、電脳魔術師の方のチートコードならば回数制限が付きますが、ユーベルコードを使用可能になるのです」
 その言葉に益々以て、電脳魔術師をしっかり守らねばならぬと理解する。ならば、とインストールされた『呪いのオンラインゲーム』とは如何なるものなのかと概要を求める。
 情報は一つでも多いほうがいいのだ。

「ゲーム世界は鋼鉄の巨人が闊歩する戦場、そこで繰り広げられるバトルロイヤル方式の対人戦闘のゲームになります。ちょうどクロムキャバリアの機動兵器、キャバリアと同じサイズ感ですね」
 偶然にしてはあまりにもできすぎている。
 けれど、迷っている暇はない。すぐにゲーム世界に飛び込んで、電脳魔術師を守りながらゲームを進行させなければならない。

 そこにナイアルテは難しい顔をしながら、心配そうな表情を浮かべる。
「……少し、気がかりなことと言えば……そう、『ドクトル・アメジスト』がインストールしたゲームの中に加えられたデータ。恐らくエネミーデータであると思うのですが、それが……」
 あまりにも手強いエネミーであるとナイアルテは言う。
 そう、言うなれば『エース』。
 それほどのパラメータを持つエネミーが猟兵達の前に立ち塞がるだろう。けれど、ナイアルテは瞳を伏せて頭を下げる。

「それでも恐らく只の『データ』に過ぎないのでしょう。そんなものに皆さんが負けるとは私は思えません。ですからどうか」
 どうか、ご無事の帰還をと彼女は猟兵たちを見送るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はスペースシップワールドにおける猟書家との戦いになります。舞台はゲーム世界。『呪いのオンラインゲーム』で、鋼鉄の巨人を駆り、『エース』クラスのエネミー襲い来るミッションをかいくぐり、囚われの電脳魔術師を救い出すシナリオになります。

 ※このシナリオは二章構成のシナリオです。

●第一章
 冒険です。
 ゲームの種類としては戦闘メカアクションです。
 もしも、皆さんがキャバリアのアイテムを持っているのならば、それが自機になります。持っていなくても、自由にゲーム空間の中に用意されているデータやプリセットから選ぶことができます。

 元は何処かで行われているパイロット育成用シュミレーションであるようです。
 ただ、難易度が高く迫る敵エネミーデータ『熾盛』の動きは人間業ではないと言われるほどです。単純に強いです。
 この襲いくるエネミーから、ゲーム世界に囚われた電脳魔術師を守りながらミッションをクリアして行かなければなりません。

●第二章
 ボス戦です。
 このゲームは『魂を奪う』『ユーベルコードを封じる』という凄まじい能力の代わりに、作成者自身『ドクトル・アメジスト』もまたゲーム世界に魂をインストールしなければなりません。
 つまり、この『オンラインゲーム内のボス戦』に勝利すれば、現実の猟書家『ドクトル・アメジスト』もまた倒すことできるのです。
 しかし、『ドクトル・アメジスト』もまた油断ならぬ強敵です。
 天才電脳魔術士であることには違いなく、また博士でもあります。並々ならぬ電脳魔術を回数制限付きのユーベルコードを持って打ち破らねばなりません。

 ※プレイングボーナス(全章共通)…………チートコードを打ち込み続ける電脳魔術士を守る。

 それでは、ゲーム世界に転送されてしまった電脳魔術師を救出するために、強力なエネミーデータ『熾盛』が襲いくるミッションを遂行し、猟書家の企みを打破する皆さんの戦いの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『呪いのオンラインゲームをクリアせよ』

POW   :    困難な状況に対して正面から挑戦し、その困難を打ち砕きゲームをクリアに導く

SPD   :    裏技や抜け道を駆使する事で、ゲームの最速クリアを目指す

WIZ   :    多くのデータを検証して、ゲーム攻略の必勝法を編み出す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 エネミーデータ『熾盛』。
 その機体の第一印象は如何なるものであったことだろうか。
 機体の色は青。
 騎士兜のようなフェイスガード。限りなく人型に近いシルエット。背面と腰部に備えられたブースターは、殺人的な速度を生みだすことだろう。
 果たしてパイロットは重力加速度に耐えられるのであろうか。
 さらにバスターランチャーと外套のような外見をしたシールド装甲。遠近ともに優れた装備であり、マルチレンジで対応してくることが見て取れた。
「ヤバイヤバイヤバイヤバイ……! なんだよ、あのパラメータ! 巫山戯てんのかッ!」
 ゲーム世界に転送されてしまった電脳魔術士は毒づいていた。
 彼の電脳魔術によるパラメータのスキャニングは正常に働いていた。働いているからこそ、そのパラメーターの数値はバグでないのかと訝しむほどであった。
 全てのパラメータがクラスで分けるのであれば、最低でも評価練度『S+』。

「けど、なんだこれ……機体が全手動……? あんなじゃじゃ馬みたいな機体を、パイロットの手動操作で動かしてるっていうのか……! でも、これなら!」
 電脳魔術士の打ち込むコードがゲーム世界に反映されていく。
 チートコード。
 それは電脳魔術士にとって、褒められた手段ではなかった。
 そう、エネミーのデータがバグっているのならば、ミッション達成条件をいじればいいのだ。

「ミッション達成条件を……! 『撃破』じゃあなく、『撃破または時間制限内撃墜されない』に書き換えれば……ワンチャンあるか! いや、でもこれでもまだ厳しいのか……!」
 電脳魔術士は呻いた。
 尋常ならざるエネミーデータ。それが襲いかかってくるまでの時間は稼げている。
 この世界に助けが来るかどうかはわからない。けれど、彼は目一杯の時間稼ぎを行う。

「こんな所で死んでたまるかってんだよ! 俺はまだまだ読んでない電子書籍が積んであんだ! 死ねるかよ、こんな巫山戯たゲームデータのせいで!」
 そう叫んだ瞬間、ゲーム世界に舞い降りる鋼鉄の巨人が見える。そう、猟兵達がゲーム世界にアクセスしてきたのだ。
 その鋼鉄の巨人を見やるエネミーデータ『熾盛』のツインアイが輝く。
 
 青き騎士がバトルロイヤルに疾走る。そのターゲットは言うまでもなく、君だ――。
月夜・玲
ネトゲかー
昔はやってたなー…
こういうのは手探りの黎明期くらいが楽しくて、成熟してくると今の研究の方が楽しくなっちゃったんだよね
でもたまにはプレイするのも楽しいか
しかも相手がエースとくれば…ね


え、ロボ乗らないといけないのか…
仕方ないプリセットから軽量速度重視の片手剣の二刀流型を選ぼう
ま、ゲームだしいっか

さてと、エースと対峙
悪いね、ちょっと相手してもらうよ
そこの君!援護にきたよ!
機体性能差はダンチ…
でも勝利条件が撃破じゃないならなんとかなる

バスターランチャーは撃たせない!
煙幕をまず張って『忍び足』でステルス軌道を取りながら接近
後は近接で斬りあうだけ
倒そうとは思わないよ
『武器受け』して時間を稼ぐ!



 サブカルマニアである月夜・玲(頂の探究者・f01605)にとって、オンラインゲームとは馴染み深いものであったことだろう。
 昔とった杵柄というやつである。
「ネトゲかー昔はやってたなー……」
 とは言え、離れてから年月が経っている。どれだけ今の自分が現在のオンラインゲームのスピードに着いていけるか。
 そんなことを考える位には、感慨深いものがあったのだろう。

 なにせこういうオンラインゲームというものは、皆が皆手探り状態の黎明期くらいが一番楽しいものであるのだ。
 成熟してくれば、それは段々と今彼女が取り組んでいる研究の方が楽しくなってきてしまったことも離れた要因の一つであろう。
「でもたまにはプレイするのも楽しいか」
 そして、彼女が相対するのが『エース』となれば尚更のことである。

 だが、一つだけ彼女にも誤算があった。
 そう、アクセスしたオンラインゲームはロボットに乗らないといけないのだ。
「え、なんで……えぇ……生身の方がいいんだけどー」
 そんなことが言えるのは、彼女が超常なる存在、猟兵であるからだ。 
 普通は5m級機動兵器に生身で相対しようとは思わないだろう。けれど、猟兵である彼女だから出来る芸当なのだ。

 しかし、ここは現実ではないゲーム世界。
 ある程度ルールに則らねばならない。目の前のステータスウィンドウから、プリセットを呼び出し、機体を選択する。
「仕方ない。えっと、軽量速度重視の片手剣の二刀流型をっと。ま、ゲームだしいっか」
 細かいところは追々である。
 今はスピード勝負なのだ。今まさにゲーム世界にとらわれてしまった電脳魔術士はエネミーデータである『熾盛』に襲われているかもしれないのだ。
 まあ、チートコードを打ち込めるくらいであるから、バトルロイヤル開始時間を遅らせることくらいはできているだろう。

「よしっと、アクセスと同時に参加登録っと……お、なうろーでぃんぐ」
 なつかしー、と玲は笑いながら目の前の画面が切り替わる。
 自分が速度重視の機体に乗っているというリアルな感覚。こんなところまで再現するとは、猟書家『ドクトル・アメジスト』もまた天才なのだろう。
「そこの君! 援護に来たよ!」
 機体のカメラを下に向ければ、そこには電脳魔術士の青年がこちらを見上げている。
 けれど、何やら前を見ろと、とジェスチャーをしているではないか。

「なんのこっちゃ……って、わっ!?」
 玲が視界を移した瞬間、目の前には青いキャバリエ『熾盛』の突進が在った。
 凄まじい加速で迫る青き騎士の突撃を玲は既の所で躱す。彼女が軽量速度重視型を選んでいなければ、今の時点で勝負は決していたことだろう。
 そうはならなかったのは、玲の類まれなる操縦技術と相性の問題であった。
「いきなりか……けど悪いね、ちょっと相手をしてもらうよ!」
 性能差は段違いである。
 いや、違う。メカニックでもある玲の瞳には、その事実は一目瞭然であった。そう、あの『熾盛』は型落ち機だ。

 よくまとめ上げられた傑作機と言ってもいい。けれど、あの機体をバグったデータと評価せしめるのは、パイロット技量だ。
 距離のとり方、戦術の即時選択、判断力の早さ。
 あらゆる点に置いて『エース』という枠組みを越えている。
「……なる。でも勝利条件が撃破じゃないんなら、なんとかなる」
 構えたバスターランチャーの砲口が輝いている。あれを撃たれてしまえば、玲の駆る軽量速度重視型の機体は一瞬で蒸発するだろう。

「バスターランチャーは撃たせない!」
 片手剣でバトルロイヤルの闘技場の地面をえぐって土埃を立て、さらにスモークディスチャージャーを放ち、煙幕を張り巡らせる。
 ステルス機能もまた全開にし、戦場を駆け抜ける。
 そこまでして漸く、あちらのエイミングが鈍るのだ。
「まったく、本当にチートじゃん、そんなのさ! ゲームバランスとか考えてるのかな、この作成者はさ!」
 玲は呟きながら、青き騎士『熾盛』と切り結ぶ。

 片手剣であったことが幸いしていた。
 これが取り回しの悪い両手剣や重たい武装であれば、即座に対応されて武装を切り飛ばされていた。
「倒そうとは思わないよ。私の狙いは時間稼ぎ……! タイムオーバーまでの粘り勝ち、判定勝ちってやつさ!」

 玲は己の駆る軽量速度重視型のロボと共に『エース』の駆る『熾盛』を相手に、修羅すらも凌駕するような機動でもって撃破されることなくしのぎ続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
電脳世界なら何度も行ってるし、
むしろそっちのほうが馴染みがあるくらいだけど、これはさすがに、ねー。
電脳魔術師としては、電脳世界が危険なものって思われるのは嬉しくないな。

キャバリアは自分のを使わせてもらおうかな。
電脳世界でなら、裏技使えるしね。

電脳魔術師さんを守ることをメインに動きつつ、
チートにはチートで対抗しちゃうよ。

操縦技量の足りなさは【Oracle】【ジャンク】【Napper】をフル稼働させて強制ブースト。

魔術師さんにお願いして【E.C.M】を発動させてもらったら、相手の行動をフルジャミング。
プログラムにダメージを与える勢いでノイズを送り込んで、
魔術師さんのいる位置を隠してしまいたいな。



 電脳魔術による電脳空間は、インストールさえすればこのような使い方も出来るのだと知らしめるような『呪いのオンラインゲーム』の仕様は、同じ電脳魔術士である菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)にとっては、歓迎するべきものではなかった。
『魂を奪う』ことでユーベルコードを封じるのみならず、ログアウトも許さぬ仕様。さらにはゲームオーバーすること現実の『死』がイコールになっていることは、電脳空間に対するイメージの下落を示していたことだろう。

 それは電脳空間の世界が好きだと公言できるほどの理緒にとって見れば、あまりにも穏やかではないことだった。
「現実の世界より、こっちのほうがむしろ馴染みがあるくらいだけど、これは流石に、ねー」
 辟易したように極悪な仕様の『呪いのオンラインゲーム』の世界にアクセスした理緒は、己のキャバリアをデータ化してバトルロイヤルの会場空間へと降り立つ。
 すでにエネミーデータである青い騎士のロボット『熾盛』は先行した猟兵と戦いを繰り広げていた。

 けれど、未だ制限時間は過ぎていない。
 囚われの電脳魔術士もまだ無事だ。
「また、ログインしてくるのがいる……!? 助かるのか、俺は!」
 ひゃっほう! と現れた援軍である理緒のキャバリアの姿を見て小躍りする電脳魔術士の青年。
 そんな彼の姿に理緒はひとまず胸をなでおろす。
 電脳魔術士として電脳世界が危険なものって思われるのは嬉しくないことであったが、同じく電脳魔術士である彼が無事であったことを喜ぶものであった。

「早速で悪いんだけれど、チートコードお願い。ユーベルコードを使いたいの」
「おうさ! 任せておきな! 無制限とはいかないけど、頼んだぜ!」
 理緒の言葉に頷き、電脳魔術士の青年がチートコードを打ち込んでいく。凄まじい速度で打ち込まれるチートコードによって、理緒は己のユーベルコードが発動するのを感じた。
 ユーベルコードの輝きに寄って、発動したE.C.M(イー・シー・エム)はキャバリアに装備された電波妨害装置からノイズジャミングとディセプションを放ち、青き騎士である『熾盛』の電子機器を使用不能に陥らせる。

「これで、その物騒なバスターランチャーは使えないでしょう!」
 あれだけの巨大な出力を持つランチャーの照準を合わせるには、機体の照準器が凄まじい性能であるからだ。
 けれど、その照準器もまた電子機器であるのならば、狙いは付けられない。
「――えっ……!?」

 理緒の瞳が驚愕に見開かれる。
『熾盛』が構えたのだ。バスターランチャーを。その砲口は違えず理緒の駆るクロムキャバリアへと向けられている。
 まさか、と思う。
 それは『熾盛』がその操作の殆どを電子機器に頼らず、手動操作によって賄われているという事実。

 ジャミングは『熾盛』の動きを僅かに鈍らせただけにすぎなかったのだ。
 だが、それでいい。
 その僅かな時間であっても、電脳世界に慣れ親しんだ理緒にとって、躱すには十分な隙であったのだ。
 手にしたスティックタイプデバイスとセカンドプロセッサユニットがせわしなく動き、機体を脳波でコントロールするゴーグルの中で目まぐるしく機体を制御する。
 放たれたビームの光条が真っ直ぐに自身の機体に伸びてくるのを理緒はどこかスローモーションのように見ていただろう。
「――ッ、躱してみせるッ!!」
 例え、キャバリアの操作技術が追いつかなくても。

 ここが電脳空間である異常、理緒に一日の長がある。
 彼女がどれだけの長い時間を電脳空間で過ごしてきたと思っているのだ。まさに此処は理緒の庭である。
「チートにはチートで対抗しちゃうよ! 潰させてもらっちゃうね!」
 再び放たれるジャミングノイズ。
 それはプログラムにダメージを与える勢いでノイズを発生させ、バトルロイヤルの会場空間すらも歪めるほどであった。

 それができるのは優れた電脳魔術士である理緒だけだ。
 彼女のユーベルコードは、『熾盛』のカメラアイから電脳魔術士の青年を隠し、標的にすることはできなくなってしまう。
「これで、後は時間を稼げば……!」
 ノイズによって揺らいでいる機体である『熾盛』がそれでも理緒を打倒せんと迫る。

 それをいなし、躱し続けながら理緒は電脳空間そのものを掌握するように自身の作成したキャバリアと共に己の庭を駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕凪・悠那
呪いのクソゲ、潰しに来たよ
ほんとバリエーションだけは無駄に多いよね
普通のゲームとして出せばそこそこいい線いけるだろうにさ

『エルドリッジ』使用
シミュで動かすことになるとは思わなかったけど、ある意味丁度いいかもね
実戦投入前の最終試験ってことで

じゃじゃ馬高速強襲機に乗った際の操縦技法を応用(ハッキング×瞬間思考力×操縦)
『Metis』『黄金瞳』を各種センサーとリンク
電脳魔術で機体周囲の情報を改竄して機体と搭乗者にかかる負荷を無効化
慣性を制御して、熾盛に迫る殺人的な速度とそれを超える埒外の機動を実現する

【万象既知】が思考加速及び未来位置を先読み
敵攻撃の回避や固有武装のレールガンでの狙撃に用いる

アド歓迎



『呪いのオンラインゲーム』のインストールされた宇宙船の電脳空間は、すでに猟書家『ドクトル・アメジスト』によって掌握されている。
 通常であれば、その電脳空間へと猟兵が入り込む余地はない。
 けれど、例外がある。
 そう、それは『呪いのオンラインゲーム』へとアクセスし、ログインすることだ。しかし、代償に猟兵は『ユーベルコードを使用できなく』なってしまう。
「呪いのクソゲー潰しか……ほんとバリエーションだけは無駄に多いよね」
 普通のゲームとして出せばそこそこいい線行けるだろうにさ、と夕凪・悠那(電脳魔・f08384)は嘆息しながら呟いた。

 彼女の目の前には電脳空間へと繋がるログイン画面。
 同じく電脳魔術士である彼女にとっては馴染みの深いものであったことだろう。鋼鉄の巨人を駆り、バトルロイヤル方式でゲームが進む戦闘メカアクションのゲームは彼女にとって都合の良いものであった。
「まさかシミュで動かすことになるとは思わなかったけど、ある意味丁度いいかもね」
 彼女が選択したデータはサイキックキャバリア『エルドリッジ』であった。
 未だ実践に投入したことがない調整中の機体であり、これを持って最終試験へと当てるつもりなのだ。

「『エルドリッジ』――雷電を司る魔導機としての力、見せてもらうよ」
 悠那は戦場と成ったバトルロイヤル会場へと降り立つ。
 すでにそこではエネミーデータ『熾盛』との戦いが繰り広げられていた。先行した猟兵が駆るロボットとの交戦しているというのに、未だ『熾盛』の脅威は振り払えていなかった。
 彼女の瞳が黄金に輝く。
 脳内に常駐する電脳術式と情報を観測収集する瞳が即座に結論を出す。

 凄まじい速度でバトルロイヤル会場を駆け抜ける『熾盛』の動き。
 確かにバグだと思われても仕方ないほどのステータスである。けれど、機体性能事態は今のクロムキャバリアで言うところの三世代程前の機体であると言わざるを得ない。
「なるほど。データのステータスはパイロット込みってわけだ。なら!」
 雷電を司る魔導機が、その力を発露させる。
 その力が見せるは埒外の速度と機動。けれど、それは『熾盛』もそうであるように殺人的な重力加速度を持ってパイロットに負荷を掛けるものであった。

 だが、悠那はそれを電脳魔術によって解決する。
 機体周囲の情報を改ざんし、機体と搭乗者にかかる負荷を無効化する。
 さらに各種センサーとリンクした黄金の瞳と脳内の電脳術式が彼女に周囲の情報を即座に知らせるのだ。
「バスターランチャー! そこ!」
 火線が疾走る。
 けれど、それを躱す超絶なる機動。
 それは電脳空間だからこそ出来る絶技であったことだろう。完成を制御し、『熾盛』の動きに追従し、それすらも追い越す圧倒的な速度。

『熾盛』の動きが疾風であるのならば、『エルドリッジ』の動きは閃光であった。
 二つの機体が戦場を凄まじい勢いで走り抜ける。
 衝撃波が戦場となった会場に土煙を上げ、けれど、互いに距離を離さず攻撃の応酬を繰り広げるのだ。
「『エース』の機体ってところだね……けどさ、それも全部"視えてる"よ」
 悠那の瞳がユーベルコードに輝く。
 
 黄金の瞳が見せるは、万象既知(ラプラス)の輝き。
 あらゆる情報を観測、解析し、近未来予測によって、『熾盛』の一手先を読み解くユーベルコード。
 それを手繰る悠那にとって、如何に疾く機動することができたとしても、なんの問題にもならないのだ。
「そこに機動するってこともね」
 放たれたレールガンの一撃が、完全に『熾盛』の外套のようなシールド装甲の一枚を引き剥がす。

 ぐらつく『熾盛』に追い打ちをかけるように悠那は『エルドリッジ』の固有武装であるレールガンの弾丸を浴びせかける。
 すでに電脳術式によって高速化された思考と情報処理に寄って得られた未来は実現されようとしていた。
「まずは、そのシールド装甲を全て引き剥がす!」
 疾走る閃光のように『エルドリッジ』が『熾盛』の周囲を飛び、雨あられと打ち込む弾丸に寄って、『熾盛』のシールド装甲を完全に破壊しつくすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
この世界のオンラインゲームは電脳空間でのプレイが実現してるのね。UDCアースもそうならないかな。ねぇ、アヤメ?
おっと、あの子も来られないんだった。羅睺も『迦利』もバツと。
機械に乗り込むのは好きじゃないんだけどなー。仕方ない。

今まで戦った機体で言えば、『ブラック・クロウ』に近いのを選ぶ。
空中格闘戦と高速飛行に特化した機体。これくらいでないと、『熾盛』とは戦えない。
「オーラ防御」に身を包み「衝撃波」を纏って、『熾盛』の側を掠める。
殱禍焔剣のない世界で、そう簡単に空戦タイプを落とせるとは思わないことね。
装甲パージで更に加速。特大の対地攻撃(不動明王火界咒)を喰らいなさい!

後は、気を引きつつ時間稼ぎ。



 東洋呪術を得意とする猟兵、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)にとって機械に乗り込むという感覚はあまり好意的なものではなかった。
 それが何故かと問われれば応えることもあったのだろうが、今は問いかける者が傍にいない。
 なぜなら此度のオブリビオン、猟書家が潜むのは電脳空間内にインストールされた『呪いのオンラインゲーム』だからだ。
 そこには彼女の式神は入り込むことができない。
 ユーベルコードに紐付けられている以上、『呪いのオンラインゲーム』内部では、猟兵のユーベルコードは封じられてしまう。

 囚われた電脳魔術士によって、回数制限付きとは言え、ユーベルコードが使用可能になるが、今はその時ではないと判断したのだろう。
 敵が強大であればあるほどに回数制限はひどく手数を制限されることになるからだ。
「この世界のオンラインゲームは電脳空間でのプレイが実現しているのよね……UDCアースもそうならないかな」
 ねぇ、といつものように式神のアヤメに声をかけそうになって、ゆかりは言葉を飲み込んだ。
 こればかりは仕方のないことである。
 他の式神も無論である。

 故にゆかりは単身で『呪いのオンラインゲーム』へとアクセスし、ログインする。
 彼女が選んだ機体のプリセットは空中格闘戦と高速飛行に特化した機体であった。
 装甲が薄いのが難点であるが、『熾盛』の攻撃能力を考えれば当てられた瞬間に勝負は決してしまう。
「なら、被弾したときの心配をする前に、全力で躱すべきだわ。そうしないと『熾盛』とは戦えない」
 ゆかりは電脳空間で機体データと共にログインする。

 視界を埋め尽くすのは、バトルロイヤルの会場で戦う猟兵達のロボットと『熾盛』の姿であった。
 あれが『熾盛』。
 電脳魔術士をしてバグではないのかと言われるほどのステータスを持つエネミーデータである。
 すでに先行した猟兵達が消耗させているはずであるが、未だ強さは衰えない。
 外套のようなシールド装甲は全てが引き剥がされているが、余計なウェイトを排除しただけに過ぎないのか、その速度はさらに上がっている。
「あれでなんで空中分解しないのよ……!」

 オーラを纏い、衝撃波を伴ってゆかりは機体と共に戦場を疾走る。
 圧倒的な速度を持つ二体の機体が互いに交錯するように至近距離をかすめる。
 だが、二体の間には決定的な違いがあった。
「殲禍炎剣のない世界で、そう簡単に空戦タイプを落とせるとは思わないことね!」
 次の瞬間、機体がアラートを吐き出す。
 何を、とゆかりが思ったのも無理なからぬことであった。

 ゆかりの機体は『熾盛』の頭上を取って交錯した。
 けれど、『熾盛』は地面を這うように滑空するばかりであったのだ。セオリーとして頭を抑えた方が有利である。
「まさか、あの一瞬で攻撃してきたっていうの……!」
 ゆかりは戦慄したかもしれない。相対的に速度は目で追えないはずだ。けれど、それでも『熾盛』は手にしたビームブレイドでゆかりの駆る機体を攻撃してきたのだ。
 ぐらつく機体の装甲をゆかりは即座にパージし、さらに機体を軽量化し、速度をあげる。

「なら、もっと加速するまでよ!」
 ゆかりの機体が空を駆け抜ける。その速度は『熾盛』を上回り、戦場を滑空した『熾盛』が砲撃の体勢を取った瞬間を狙って、対地攻撃である火炎放射によって薙ぎ払うのだ。
 装甲が溶け、機体の内部温度が上昇する。
「これでも墜ちない……! 既の所で躱されてる……!」
 歯がゆいほどのチート。
 そう思わざるを得ないほどの『熾盛』のステータス振りにゆかりは、方針を変える。
 気を引きつつ、時間を稼ぐ。

「勝利条件が撃破じゃないのなら、時間いっぱい躱し続けましょ!」
 ゆかりは空知らぬ『熾盛』を翻弄するように、電脳空間を疾風と共に駆け抜けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メイスン・ドットハック
【SPD】
散々報告書が上がって、やってくれているようじゃのー
同じ電脳魔術士としても、アメジストのクリスタリアンとしてもこれ以上見過ごせんからのー

キャバリアKIYOMORIに搭乗して参戦
レーザー砲ユニットをAIドクトル・アメジストちゃんの操作に任せて防衛し、電脳魔術士のチートコード作成を支援
自身はミサイル榴弾をばら撒いて足止めしつつ、LPL砲で足を射抜いて時間を稼ぐ
UC解禁したら、KIYOMORIを巨大化、電脳アウルム・アンティーカとのミサイルと破壊光線の集中砲火で手数で熾盛を抑え込む

やはり弾幕と圧倒的火力で押し込むに限るのー

ドクトル・アメジストについて思う
……やっぱり、他人という気がせんのー



 因縁とは即ち、果てに在りて紡がれるものであろう。
 ならば、猟書家『ドクトル・アメジスト』とメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)との間には如何なる因果があったことだろうか。
 同じアメジストのクリスタリアンであるという事実。
 同じく電脳魔術士であるという事。
 それらの因果が撚り合わさって、宿命となる。
「散々報告書が上がって、やってくれているようじゃのー」
 メイスンにとって、『ドクトル・アメジスト』とは他人という気がしないのだ。

 種族特徴が同じであるという以上のなにか、シンパシーめいたものがあるのかもしれない。
 信じがたいことであるし、そこには電脳魔術士としての矜持があっただろう。
「だが、同じ電脳魔術士であるからこそ、アメジストのクリスタリアンとしても……これ以上見過ごせんからのー」
 メイスンは『呪いのオンラインゲーム』へと躊躇いなくアクセスした。
 ログインすれば『魂を奪われ』、『電脳空間』に囚われてしまうことがわかっている。それは論理的に考えて、選ぶべき選択ではなかったかもしれない。

 けれど、メイスンは選んだのだ。
 この因果の果てに何が訪れるのかはわからない。けれど、他人という気がしないという一点においてのみ、メイスンは戦うと決めたのだ。
「これが『ドクトル・アメジスト』の作り出した電脳空間……細部までよく出来ている。ゲームとしての出来栄えものー」
 けれど、あのエネミーデータだけは頂けない。
 エネミーデータ『熾盛』。
 その尋常ならざるステータスはバグというほか無い程の異常な強さを持っている。すでに幾人もの猟兵が戦いの場であるバトルロイヤルの海上空間で『熾盛』と戦って尚、仕留めることができないのだ。

「『KIYOMORI』と力比べというこうかのー! ドクトル・アメジストちゃん、レーザー砲ユニットの操作は任せるけーのー!」
 AIであるドクトル・アメジストに砲台を任せ、メイスンは隠された電脳魔術士の防衛に専念するのだ。
「……! 味方、それも電脳魔術士!」
「時間は稼ぐけーのー。チートコードを頼むけー」
 メイスンはミサイル榴弾をばら撒き、長距離プラズマレーザー砲で『熾盛』の足を狙う。
 けれど、ミサイルの雨をかいくぐる『熾盛』の動きは凄まじかった。
 躱し、時にビームブレイドで切り払う。
 爆風の中に在って尚、こちらの射撃を見切っているのだろう。まるで第六感だ。AIであるドクトル・アメジストの操作するレーザー砲ユニットの火線すらも躱してくる。

「ほんと、バグみたいなエネミーデータじゃけー……だが、こちとらチートコードでユーベルコード解禁じゃけー! 巨大二足歩行戦車と大魔王との共演、とくと味わうとよいのー!」
 電脳魔術士によって打ち込まれたチートコードが、メイスンのユーベルコードを回数制限付きであるが解禁される。
 封じられていたユーベルコードが戦場に祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり(キヨモリ・デストラクション・アンティーク)と響き渡る。

 巨大化された『KIYOMORI』と電脳アウルム・アンティーカがミサイルと破壊光線の集中砲火で『熾盛』の動きを制限する。
 これだけの圧倒的な火力でもってしても『熾盛』の動きは止まらない。
 ミサイルを切り払い、破壊光線を減退させるように土埃を巻き起こらせ、戦場を縦横無尽に走り抜ける。
「やはり弾幕と圧倒的火力で押し込むに限るのー」
 点で打ち貫くことができないのであれば、面で制圧する。
 それがメイスンのやり方だ。

『熾盛』が質で押すのならば、メイスンは圧倒的な物量で押し切るのだ。
 例え、撃墜できないのだとしても、これだけの面での火力を前にしては此方に迂闊に踏み込むこともできないだろう。
「それがこちらの狙いよ。勝利条件は『撃破または制限時間を過ぎる』のならば、いくらでもやりようはあるけーのー!」
 メイスンの言葉通りであり、目論見通りであった。
 チートのような存在であっても勝利することはできる。それが猟書家『ドクトル・アメジスト』の掌の内であったとしても、メイスンは理解している。

 いつだってそうだ。
 人の掌の広さを知った時、それはもう世界ではない。
 飛び出した先にある光景をメイスンはもう知っている。だからこそ、宿縁と宿命を恐れない。
 他人と思えなくても。
 それでも猟書家『ドクトル・アメジスト』を討つと決めたと決めたからこそ、此処に在るのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
戦闘メカアクションの『呪いのオンラインゲーム』ねぇ。
アクションゲームは割りと得意分野だぜッ!
「・・・油断は大敵だよ。」

自機はプリセットの『赤い鎧武者型スーパーロボット(武器は超合金太刀のみ)』を選ぶぜ。
「ピーキー過ぎない?」
いや、遠距離武器こそないが戦闘スタイルが俺達に近い方が戦い易い筈だ。

ゲーム世界にヒーロー着地で到着ッ!電脳魔術師のアンタ、助けに来たぜッ!
あれが『熾盛』か。ちぃ、流石に強ぇッ!攻撃がくる場所を見切って避けてるが反撃できねぇ。
なら電脳魔術士に頼んで雷神霊装を使えるようにしてもらうぜ。
超スピードと反応速度で攻めまくって電脳魔術士を相手にする暇もなくしてやるッ!


【アドリブ歓迎】



 電脳空間にインストールされた『呪いのオンラインゲーム』は、猟書家『ドクトル・アメジスト』によって『魂を奪う』『ユーベルコードが使用できない』という大きな足枷となって猟兵の足を取る。
 それは電脳空間に囚われた電脳魔術士の青年を助けるにあたって、大きな障害となったことだろう。
 けれど、それを物ともせずに進むのが猟兵である。
『戦闘メカアクションの呪いのオンラインゲームねぇ。アクションゲームは割と得意分野だぜッ!』
 少女の傍らにある鬼面の口がカタカタと揺れる。
 快活に笑うのは神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)であった。
 時折、相棒である桜と遊ぶのだろう。ゲームの腕前はいかほどであったことだろうか。けれど、桜は頭を振る。

 これよりログインするのはいつも遊んでいるようなゲームとわけが違うのだ。ゲームオーバー即ち、現実での『死』である。
 ゲームはゲームでもデスゲームなのだ。
「……油断は大敵だよ」
 そういって桜と凶津は機体のプリセットを選ぶ。
 いくつかの候補が上がったが、彼らが選んだのは『赤い鎧武者型のスーパーロボット』であった。
 装備はまさかの超合金太刀のみである。
「ピーキー過ぎない?」
 桜は思わず聞いてしまっていた。
 男らしいと言えば男らしい装備である。むしろ、それしかできないのではなく、それだけを極めたかのような潔ささえあったのだ。

『いや、遠距離武器こそないが戦闘スタイルが俺たちに近いほうが戦い易い筈だ』
 凶津は凶津でしっかりと考えているようであった。
 こういうのは生兵法で行くよりも、普段己達が戦うやり方に落とし込んだ方がうまくいくのである。
 セレクトしたプリセットのまま二人は電脳世界へとログインする。
 すでにバトルロイヤルの会場では多くの猟兵とエネミーデータである『熾盛』が戦いを繰り広げている。
 弾幕のミサイルや火線を躱す『熾盛』の外套のようなシールド装甲は全て脱落しているが、それでもなお躱す姿は尋常ならざる相手であることを認めるには十分であった。

「……まだ墜とされていない」
 しかし、それでいいのだ。
 この戦いの勝利条件は撃破もしくは制限時間の超過である。ならば、バグのようなステータスを持つエネミーを無理に打倒する必要はないのだ。
『電脳魔術士のアンタ、助けに来たぜッ!』
 赤い鎧武者型のスーパーロボットがヒーロー着地でバトルロイヤルの会場に降り立つ。
 関節が嫌な音がした気がしたが気にしない。
「援軍か! チートコードを打ち込んでいるんだ。頼む、護ってくれ!」
 言われるまでもない、と凶津は笑って戦場へと駆け込んでいく。

 しかし、突如として現れた機体を前にしても『熾盛』の判断は速かった。
「接近を許さない……そういうみたいに……!」
 放たれるバスターランチャーの火線が凶津たちの機体を近づけさせないように砲撃を繰り出してくる。
 一撃でも当たれば、あのバスターランチャーの威力だ。
 容易く撃破されてしまうだろう。そうなってしまっては、凶津たちもまた現実での『死』を迎えてしまう。
『あれが熾盛か。ちぃ、流石に強ぇッ!』
 確かに攻撃が来る場所を見切って躱すことはできるが、反撃の糸口が見えないのだ。

 ユーベルコードなしで戦える相手ではない。
 そう判断させるには十分な戦力だった。猟書家が出てくるまで使用回数が制限されるユーベルコードを使うのは温存していたかったが、ここでやられては元も子もない。
『ぶちかますぜ、相棒ッ!!』
「転身ッ!!」
 機体がユーベルコードに輝き、雷神霊装・二ノ型(スパークフォーム・ツー)へと機体の姿を変える。
 顕現する雷撃を纏う霊装を反映した機体装甲が放電し、その力の凄まじさを知らしめるように、バトルロイヤルの会場の大地を蹴った。

 瞬間、その速度は手にした大太刀を振るい、『熾盛』のバスターランチャーの砲身を切り捨ていていた。
『この超スピードにも対応してくるかよッ! だが、注意はひきつけた!』
 確かに斬撃で仕留めるつもりだったのだ。
 けれど、『熾盛』は武器を犠牲に致命傷を避けた。なんという反応速度。けれど、それならばこちらも負けてはいない。
「電脳魔術士に意識を向けられる暇を無くす……!」
 凶津と桜は一心同体である。
 二人の力を一つにするユーベルコードによって際限なく速度をあげる赤い鎧武者型のスーパーロボットは『熾盛』にぴったりと張り付き、しつこく追撃を続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……む、流石にエンバールはないか…
…特殊な武装は対応されそうだな…純粋に各種性能の高いキャバリアを選択…
…なるほど、これがゲームの中か…そしてあれが『熾盛』…
…少し戦うだけでも判るけど人間業じゃない…その上でデータの利点も活かしてるな…反応から操作までのラグがあまりにもなさ過ぎる…

…対抗するにはこの武装だけじゃ足らないな…主体は時間稼ぎとなれば…電脳魔術士に援護をして貰って…
【何時か辿る絡繰の夢】を発動…思考制御式防御型ガジェット12機顕現…
…これで自分の機体と電脳魔術士の機体を守りながら牽制射撃をして時間を稼ぐとしようか…
…12機も同時に扱うと思考の負荷がすごいな…改良の余地ありか…



『呪いのオンラインゲーム』に羅列されたデータ、そのプリセットを眺めていたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は小さくため息をついた。
「……む、流石にエンバールはないか……」
 彼女が愛用する改造走行車両である『エンバール』のデータがあるのならば、彼女にとってより良いものであったが、このゲームは戦闘メカアクションである。
 それに則らねばならないというのは、些か面倒であったが、エネミーデータ『熾盛』の名を知る者にとって、それはいつもの慣れた戦法が取れぬというデメリットのほうが遥かに大きいのだ。

「特殊な武装は対応されそうだな……純粋に各種性能の高いキャバリエを選択……」
 プリセットの中から、比較的性能の高いデータを選ぶ。
 あの『熾盛』を撃破しなくても良いという条件の元に戦うのであれば、生存確率をあげるためには、少しでもロボの性能差でもって詰めるしかないだろう。
 機体を選んだ瞬間視界が変わっていく。
 電脳空間へとアクセスし、『呪いのオンラインゲーム』へとログインしたのだ。

「……なるほど、これがゲームの中か……」
 そして、とメンカルの瞳が動く。
 そこには数多の猟兵たちの操る機体と戦うエネミーデータ『熾盛』の姿があった。
 一騎当千の猟兵達を相手どって未だ撃墜されていないことも驚異的であるが、恐るべきは、その被弾率の低さであろう。
 有効打を与えているところもあるが、未だ外套のようなシールド装甲が脱落しただけであり、長物であるバスターランチャーを損失した程度に抑えられているのは、バグと言わしめたステータスのせいだろう。

「……少し見ただけでわかる。人間業じゃない……その上でデータの利点も活かしてるな……」
 見れば見るほどわかってしまう。
 機体性能事態は型落ち機。
 言ってしまえば二世代も三世代も前の機体であろう。けれど、それでもなお、猟兵たちと互角に戦えているのは、反応から操作までのラグがあまりにも『無い』からである。

「見てから対応出来ているのか……この武装だけじゃ足りないな……」
 メンカルは機体と共にバトルロイヤルの会場へと駆け出す。
 機体の制御は上々。反応も悪くない。後は、そう勝利条件を満たすだけだ。時間制限を超過する。
 それだけで勝利と為るのだが、それまでが長い。
 下手に動いてやられてしまっては元も子もないし、護るべき電脳魔術士がやられてしまっても意味がない。

「……わかってるよね?」
「ああ、わかってるって! チートコード打ち込みまくってるんだ、アンタ達のユーベルコードが使えるように……はい、今だ!」
 電脳空間でのコード入力は彼頼みである。
 メンカルは彼の機体に『熾盛』の注意が向かぬように立ち回りながら、ユーベルコードを回数制限在りとは言え、使用可能にしてもらい、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

「未だ生まれぬ躰よ、紡げ、起きよ。汝は現霊、汝は投影。魔女が望むは紙より出でし彼方の絵」
 何時か辿る絡繰の夢(ブループリント・プロジェクション)、未だ世界に現れたことのないガジェットの設計図を元にメンカルの機体の周囲に飛ぶのは、思考制御型防御ガジェットであった。
 まるでビットのようにメンカルの機体と電脳魔術士の機体を護るように飛ぶガジェットが迫る『熾盛』へと牽制射撃を繰り出す。

「――……ッ!」
 頭に凄絶なる負荷がかかる。
 一度に十二機のガジェットをコントロールするのは、思考への負荷が膨大なものになる。
 けれど、これくらいやらなければ、あの『熾盛』には牽制にもなりえないのだ。
 現に牽制射撃を行っても、弾丸を大きく躱すのではなく、弾丸の『隙間』を縫うように滑空して此方へと迫ってくるのだ。

「動きが、おかしすぎる……!」
 これが『エース』の技量。
 それさえも生ぬるいような動きにメンカルは呻く。けれど、迫る『熾盛』のビームブレイドをガジェットが受け止め、火花を散らせる。
 それも時間が経てば経つほどに対応され、対処されていく。メンカルは徐々に数を減らしていくガジェットを見やりながら、それでも負荷が軽減された思考で考える。

 瞬時にガジェットの特性を見切ってくるのならば。
「――意表を突く……」
 防御に回していた意識を攻勢へと切り替える。
 自壊覚悟のガジェットの特攻は、『熾盛』の動きを鈍らせる。今まで防御に回していたリソースを突如として攻勢へと転じたガジェットに僅かに戸惑った『熾盛』はこれまでと違って大きく距離を取るのだ。
「……判断と思い切りもいい……」
 メンカルは、距離を突き放せたことに安堵しつつ、未だ遠き勝利条件への道筋に光明を見出すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
電脳空間でキャバリアを操るのは前にもあったな
なら今回も同じようにやるだけさ

[SPD]
CSに搭乗、電脳魔術師に軽い挨拶を済ませて
Esに護衛と【情報収集、ハッキング】によるサポートを頼んだら

CBRで挨拶代わりの【先制攻撃】を仕掛けて
【ダッシュ、推力移動】を駆使した【空中戦】を挑むぜ

最初はただ単純に目標に向かって撃ち続けるが
ある程度したらDHBを相手の進行方向先にある建物や地面に向かって撃ち
【爆撃、衝撃波】で【体勢を崩す】してCBRで【2回・貫通攻撃】

相手の攻撃は【視力、見切り】で避けて対処な

UCが使用可能になったら動きが鈍った所で接近して【零距離射撃】を
撃ち込んで一気に決めるぜ

アドリブ歓迎



 電脳空間とは言え、ゲームオーバー即ち現実での『死』である『呪いのオンラインゲーム』は、以前にも似たものがあったのだろう。
 猟書家との戦いは多岐にわたり、幾度となく繰り広げられてきた積み重ねが猟兵達にある。
 それは何度も骸の海より出るオブリビオンたちに対する猟兵が積み重ねてきた経験と言う名のアドバンテージであることは疑いようがない。
「なら、今回も同じようにやるだけさ」
 星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は『呪いのオンラインゲーム』へのアクセスと同時にデータ化されたキャバリア『クロムスティール』と共に電脳空間へと飛び込んでいく。

 サポートAIである『Es』による情報収集とハッキングによるサポートを願っているが、ハッキングに関しては猟書家『ドクトル・アメジスト』の領分であろう。
 遅々として進まない。けれど、確実に言えることは一つである。
 今も尚バトルロイヤル会場で戦いを繰り広げるエネミーデータ『熾盛』と戦い、勝利条件を満たさねば、猟書家『ドクトル・アメジスト』にすら手を伸ばすことができないのだ。
「まずは挨拶代わりっと!」
 放たれるキャバリアビームライフルの光条。
 それが『熾盛』へと伸びるが、躱されてしまう。完全に不意をうったはずだが、反応されてしまう。

 これがバグとまで言われたステータスかと息を呑む。
 けれど、それで退くのは猟兵ではなく、祐一でもない。あの『熾盛』がクロムキャバリアにおける機動兵器としてのデータなのならば、『殲禍炎剣』のある空を飛ぶはずがない。
 現に『熾盛』は飛ぶと言っても滑空するように飛翔するだけだ。
「なら、そこを突く!」
 スラスターを噴かせ、推力移動を駆使した空中戦で『熾盛』を圧倒する。
 放たれる弾丸が『熾盛』の挙動を制し、無反動砲の弾丸が地面をえぐって爆風を撒き散らす。

 それこそが祐一の狙いであった。
 これだけの衝撃波だ。嫌でも体勢を崩さなければ、機体を制御できないだろう。そこへキャバリアビームライフルのトリガーを引き、ビームの火線を放つ。
「……――ッ、これでもまだ躱すのかよ!」
 爆風の中から、それこそビーム火線の合間を縫うように真っ直ぐに突き進んでくる『熾盛』。
 その青い閃光のような機体挙動を前に祐一は虎の子のユーベルコードを解き放つ。

 閃光のように疾走る『熾盛』へと向けて冬雷(トウライ)の輝き放つ。
 交錯する一瞬が勝負であった。
 相対する『熾盛』の武装は近接装備のビームブレイドのみ。ここに賭けるしかない。
「ゼロ距離ならッ!」
 だが、この距離であっても弾丸を躱す――のではない。『熾盛』は自分の片腕を犠牲にしてクロムスティールの向けた銃口を逸らす。
 だが、躱す時間はない。放たれたビームが『熾盛』の右腕を焼き、吹き飛ばす。
 続けざまに打ち込もうとした銃口を『熾盛』の脚部が蹴り上げ、ライフルを上空へと放り投げるのだ。

「――この距離で格闘戦をするかよ!」
 けれど、祐一だってまだ武装が残っている。振りかぶられるビームブレイドの軌跡を見やりながら、肩に付けられた無反動砲の砲口を向ける。
 反動がないということは、祐一のレスポンスに即座に応えることができるということだ。
 一切のラグのない無反動砲の弾丸がビームブレイドと激突し爆風を吹き荒れさせる。

 祐一は機体を立て直し、バトルロイヤルの会場を疾走る。
 対する『熾盛』もまた片腕を失いながらも忙しなく動き続けるのだ。これが『エース』のデータ。
 そこに生身の感情はないのだとしても、ステータスだけみれば尋常ならざるものであることを知ることが出来るだろう。
 けれど、それでも祐一は追いすがるのではなく、追い越すように『熾盛』をジリジリと追い詰めていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

虹川・朝霞
そういえば俺、電脳魔術士でした!
今までの戦闘では、竜神としての権能UC使ってたので、半ば忘れてました。

さて、電脳魔術士の本場で、猟書家案件ですか…。
今は権能UC使えないんですね。
ふふ、工夫を考える良い機会ですね。

ゲームは同居人から聞いてて教えられましたから、どんとこいです!プリセットから速度重視型を選択。
持ってる武器は…あ、偶然にも俺の武器と同じ【紫雲刀】という名を持ってるのですね、これ。ふむふむ。

撃破の必要ないなら、ひたすらに時間稼ぎ!
ジャミング&ハッキングの結界術も併用して、攻撃をいなし続けます!
これも対戦では立派な戦術だと聞きましたので。今回は半ば相手の土俵なので、なおさらですね。



「そういえば俺、電脳魔術士でした!」
 と事件のあらましを聞いた時、虹川・朝霞(梅のくゆり・f30992)は己の力の名を思出して叫んでしまっていた。
 そうなのだ。
 これまでの戦いでは、竜神としての権能をユーベルコードとして使っていたので半ば忘れていたような状態であった。

 うっかりというか、長く生きていれば、そのようなことだってあるのだろう。
 お嫁さんラブである彼にとって、それ以外はわりとアバウトでも良かったのだろう。しかして、根は真面目である彼は戦いに際して、使えるものは全て使うべきであると考えただろう。
「さて、電脳魔術士の本場で、猟書家案件ですか……」
 しかし、『呪いのオンラインゲーム』の中ではユーベルコードが使えない。
 それはそれでなんとでもなるとして、問題はゲームの内容である。
 戦闘メカアクション。

 一括に言っても多種多様なものがあるのは同居人から聞いて教えられていた。
 むしろ、この日のためにあの日はあったのだと言えるくらいには朝霞は知識をエていたのだ。どんとこい! というやつである。
 プリセットの中から速度重視の機体を選択し、早速ログインする。
 目の前が機体のコクピットに座っているような光景に早変わりし、実にリアルである。同居人が知ったら喜びそうだなと思いつつ、やはり自分の権能が働かぬことを確認して嘆息する。
「しかし、回数制限がついてしまうとは言え、これは厄介」

 自分の機体のステータスをざっと斜めに見ても、よくわかる。
 自分と同じ武器のタイプであることは偶然であったが、ありがたいことであった。『紫雲刀』と呼ばれる蛇腹刀と鉄下駄を模した脚部。
 これらを操って戦うとなれば、本来の自分の戦いと似たことができるだろう。アクセスした『呪いのオンラインゲーム』のバトルロイヤル会場ではすでにエネミーデータである『熾盛』が多くの猟兵に寄って消耗させられている。

「あともう一手、二手、といったところでしょうか……しかし、しぶとい……」
 これだけの猟兵に囲まれて、一機。孤軍奮闘であるというに、『熾盛』の動きは鈍らない。それどころか、冴え渡るように動きが良くなっているようにさえ思えてしまうのだ。
「撃破の必要ないなら、ひたすらに時間稼ぎをしましょう!」
 電脳魔術士としての本懐を遂げるように朝霞はジャミングとハッキングの結界術を併用して、鉄雲(テツウン)の如く機体を戦場に走らせる。
『熾盛』はそれでもなお、朝霞の機体を己の土俵に引きずり出すように、片腕を失い、シールド装甲を消失させ、バスターランチャーさえも失った機体で迫るのだ。

 それはあまりにも美しい機動であったことだろう。
「これはどこか、鬼神めいたというよりも……」
 人の生命がかがやく様を見せられているようでも在った。あくまでデータでしかない電脳空間の敵。
 けれど、そこにあったのは、生命の儚さを識るからこそ、煌めく輝きであった。
 それを知って朝霞は『熾盛』と相対する。
 振るわれるビームブレイドを躱し、此方が繰り出す蛇腹刀の斬撃を躱す様は、宛ら輪舞曲のようであった。

 機動の俊敏さも互角。
 けれど、切り結ぶ刀は互いに一撃も届くことはなかった。
 剣戟の音が響き渡り、それはまるで音色のようでも在ったし、二機の間だけで通じるなにかであったのかもしれない。
「鉄も雲も、俺の思うままに」
 ユーベルコードの輝きによって伸びた蛇腹刀の斬撃の射程は三倍。
 その射程をかいくぐる『熾盛』の動きは、さらに磨き上げられていく。

「死地にあってなお、輝く技量と見ました。故に、いなし続けましょう。これも対戦では立派な戦術」
 そう、撃破する必要はない。
 じりじりと自分たちが生存し続ければいいのだ。時間超過という判定勝ち。そこに引きずり込むことこそが、今の猟兵達の戦いである。

 朝霞は、それでもその攻防が心地よいと思える。
 それほどまでに気持ちの良い武者振りであったのだ。朝霞は、弛むことなく剣戟の音を奏で続け、『熾盛』をこの場に止め続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※ロシナンテⅣ搭乗

ドクトル・アメジストも多趣味と申しましょうか…(皮肉)

電脳魔術師の方ですね
これより貴方を護衛いたします
どうか解析に専念を

センサーでの情報収集を瞬間思考力で分析
挙動見切り剣や盾で攻撃防御、バスターランチャーはサブアームでのライフルでのスナイパー射撃による武器落とし狙いの攻撃で牽制

確かに強力に過ぎる機体…いえ、これは搭乗者の力量
ですが防戦は此方の得手、騎士として望む所です

それに所詮はデータ…『生身の揺らぎ』は再現しきれていないようですね

この技は本来、攻防の刹那でのみ効力を発揮するもの
私の機体挙動を学習しきるまでいいように操らせて頂きましょう

電脳魔術士かばいつつ『敵』を操り長期戦



 青き騎士『熾盛』と白き騎士『ロシナンテⅣ』がバトルロイヤルの会場に置いて相まみえる。
 万全の状態である『ロシナンテⅣ』に対し、『熾盛』の機体状況は良いとは言えないものであった。
 片腕は損壊し、外套のように覆われていたシールド装甲は全てが消失していた。
 バスターランチャーもまた破壊され、長距離からの狙撃もできなくなっていた。けれど、それでも尚『熾盛』は戦うことを止めなかった。
 いや、『諦めていなかった』と言うべきかとトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は思ったことだろう。

 生きることへの渇望がデータの海を越えてトリテレイアの電脳に伝わるようだった。
 相対する機体同士は動かない。けれど、ジリジリとした圧迫感と焦燥が電脳に負荷をかけるようであった。
 猟兵達の勝利条件は『撃破か制限時間の超過』である。
 このまま猟兵達が生存し続ければ、猟兵たちの勝利なのだ。けれど、此処まで追い詰めても尚、『熾盛』を捨て置けば即座に全滅させられるのではと思うほどのプレッシャーを感じるのだ。

「……電脳魔術士の方ですね。これより貴方の護衛を致します。どうか解析に専念を」
 トリテレイアは漸くそれだけを絞り出した。
 センサーが目まぐるしく状況を伝える。情報を読み取り、瞬間的に選択する。そうでなければ、一瞬で形勢は逆転されると理解できてしまった。
 互いに動かず、けれど、電脳の中では幾度となく攻防が繰り広げられていた。
 そう思うほどの技量であると言わざるを得ない。

 バスターランチャーがすでに他の猟兵によって破壊されていたのは大きかった。さらには右腕も脱落しているのは、手数において、そして対応力を下げる面に置いてもかなりのアドバンテージであった。
「ですが、それでも尚……確かに強力過ぎる機体……いえ、これは搭乗者の力量」
 だが、とトリテレイアは否定する。
 勝利条件が『制限時間の超過』であるのならば、防戦である。ならば、それこそが己の得手。騎士として望むところである。

 ユーベルコードによって、機械騎士の舞踏先導(リード・オブ・マシンナイツ)が働いているからこそ、今の膠着状態が生まれているのだ。
 互いに動かない。
 されど攻防は続く。もしも自分が生身であれば冷や汗が流れ落ちるのも気がつくことはなかっただろう。
「……所詮はデータ……『生身のゆらぎ』は再現しきれていないようですね……」
 ならば、と白き騎士が駆ける。

 その踏み込みは速かった。
 機体状況が万全でない『熾盛』であれば、それに対応しなければならない。それはわかっていることだった。
『熾盛』もまた動く。
 互いのツインアイが輝き、ビームブレイドの閃光が疾走る。
 それを盾で弾き、けれど神速の勢いで返す刃を剣で受け止める。ユーベルコードは問題なく発動している。
 挙動、戦闘行動、微細な視線や挙動制御の誘導を互いに行っているのだ。

 誘導していると見せて、誘導されている。
 それに乗っていると見せかけて、乗らない。一瞬の内に幾千もの攻防があった。それは気が遠くなるような戦いであったし、同時にトリテレイアだからこそできた芸当であったことだろう。
「この技は本来、攻防の刹那のみ効力を発揮するもの……しかし!」
 長期戦をやってみせようと言うのだ。

 互いの剣が交錯し、永遠にも思えた時間が終わりを告げる。
 盾が弾き飛ばされ、剣もまた宙に舞った。あまりにも早い、こちらの動きを学習しきった『熾盛』の反応。
 けれど、トリテレイアもまた一騎当千の騎士である。
 例え、剣と盾を失っても、己の機体という武器があるのだ。放たれた拳は『熾盛』のフェイスガードを弾き飛ばし、その頭部をさらけ出す。

 そこにあったのは、過去に『それ』と戦ったことのある猟兵であれば、誰もが知っている機体と同一のものであった。

「これは……」
『セラフィムリッパー』。
 その名が思い浮かんだ瞬間、トリテレイアの前に青き騎士はバトルロイヤルの大地に沈む。
 機体のオーバーロードと、数多の猟兵によって刻まれた傷によって、制限時間を超過する前に、漸くにして止まったのだ。

 ここに絶対的な『エース』が墜ちる。
 そして、ステージは進む。猟書家『ドクトル・アメジスト』が駆る、ロボ……『熾煌』がバトルロイヤルの上空に現れるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ドクトル・アメジスト』

POW   :    アメジストバインド
【アメジストの結晶】から【電脳魔術】を放ち、【精神干渉】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    サイキックアームズ
召喚したレベル×1体の【機械兵器】に【サイキックエナジーを籠めたアメジスト結晶】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
WIZ   :    ラボラトリービルダー
【電脳魔術】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を自身の「工房」と定義し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:片吟ペン太

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メイスン・ドットハックです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「へぇ、やるじゃないか。てっきり制限時間超過で粘り勝ちになるかと思っていたんだけれど」
 思ったほどではなかったのかな、と猟書家『ドクトル・アメジスト』は笑っていた。
 工房に籠もり切りであった彼女にとって、この『呪いのオンラインゲーム』は謂わば、息抜きのようなものであった。決して本気にはならず、けれど程々に熱中できるようなもの。
 だから、彼女はバグとも言われるほどのエネミーデータである『熾盛』を猟兵たちが『制限時間超過』で勝つのではなく、撃破によってクリアしたことを素直に称賛していた。
「言うほどバランスが崩れたクソゲーってほどでもなかったんだね。まあ、猟兵を相手にするのなら、これくらいのバランスがいいって事が分かっただけでも儲けものだよ。なあに、次はもっとうまくやるよ」
 なにせ、私は天才だからね、と『ドクトル・アメジスト』は言う。

 彼女が駆る機体は、『熾煌』。
 エネミーデータである『熾盛』の後続機に当たるデータである。けれど、彼女は訝しむように首を傾げいていた。
「機体性能はこっちが上かと思ったんだけれど、なんだい、デチューンされているね。ああ、なるほど。後続機と言っても、あれか。正式採用という名の量産機ってことなんだね」
 道理で扱いやすい纏まった性能に成っているわけだ、と彼女はつぶやき電脳魔術によって、周囲に無数のエネミーデータを呼び出す。
 それは『熾裂』。
 さらにこれを一般兵でも扱いやすくした本物の量産機であった。

「やはり最終決戦、ラスボス戦とはこうでなくてはね。さあ、楽しもう。鋼鉄の巨人同士のバトル。ああ、楽しみだよ。君達がどんな輝きを見せてくれるのか。それによって私はまた閃きを得るだろう。時に天才とて、他者の刺激が必要なものなのだよ。だから」
 だから、徹底的に楽しもう。
 抗ってもらおう。
 例え、これが『死』へと至る戦いであったとしても、刹那の閃きに寄ってのみ己の天才性を証明するのだから――。
神代・凶津
ラスボスのご登場って訳か。腕が鳴るってもんだぜッ!
電脳魔術師のアンタ、チートコードを頼むぜッ!
チェンジッ!ゴーッ!
(『赤い鎧武者型スーパーロボット』が上空高く跳躍し、ガッシャンガッシャンと『赤い鎧武者型スーパーロボット(炎神霊装モード)』に変形し、超合金太刀を構えたキメポーズをとる)
「・・・え?何これ?」
スーパーロボットだからなッ!当然の演出よッ!

戦場を縦横無尽に飛翔して、炎翼を羽撃かせて周りの雑魚に炎刃を放って撃墜しながら敵に接近していくぜ。
敵の攻撃を見切って避けたり太刀で受け流したりしながら接近して超合金太刀(炎刀モード)で叩き斬ってやる。
くらいやがれッ!飛翔火炎斬りッ!


【アドリブ歓迎】



 猟書家『ドクトル・アメジスト』のユーベルコードが輝く。
 この『呪いのオンラインゲーム』においてユーベルコードの回数制限がつくのは猟兵だけである。
 このゲームのラスボス……『ドクトル・アメジスト』には適用されないのだ。
「楽しくラスボス戦と行こうじゃないか。行きなよ、『熾裂』」
 彼女のユーベルコードが輝き、量産型である『熾裂』の機体にサイキックエナジーが籠められたアメジストの結晶が生えていく。
 それは本来なら持ち得ない飛翔能力を得て、猟兵へと襲いかかるのだ。

 本体である『ドクトル・アメジスト』の駆る『熾煌』と、彼女を護るように展開する無数の『熾裂』は猟兵たちにとって脅威以外の何者でもなかった。
「数が多すぎんだろ! またでたらめなことしやがって……!」
 青年の電脳魔術士が呻くのも無理なからぬことであった。
 けれど、猟兵達がこの程度で立ち止まるわけがない。
 赤い鎧武者型スーパーロボットを駆る神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)が叫ぶ。
『ラスボスのご登場って訳か。腕が鳴るってもんだぜッ! 電脳魔術士のアンタ、チートコードを頼むぜッ!』
 凶津の鬼面がカタカタと音を立てて、電脳魔術士へとチートコードを打ち込むように願い出た瞬間、彼らが駆る赤い鎧武者型スーパーロボットが飛翔する。

『心を燃やすぜ、相棒ッ!!』
 炎神霊装(ブレイズフォーム)へとガッシャンがシャンと追加装甲が合体してき、赤い鎧武者型のスーパーロボットはさらなる強化を得て、電脳空間の空に炎の翼を広げるのだ。
 その姿はまさにスーパーロボットと呼ぶに相応しい威容であり、二人の力が一つにして顕現する超絶なる力であった。
「……え? 何これ?」
 だが、桜は唖然としていた。
 自分たちのユーベルコードは理解している。

 けれど、それが電脳空間において自分たちが操作するスーパーロボットに反映される姿を見るのは初めてなのだろう。
 女性である彼女にとって見れば、寝耳に水である。
 むしろ、何がどうなって追加装甲が合体したのかさえ理解できていないかのようだった。
『スーパーロボットだからなッ! 当然の演出よッ!』
 凶津の言葉に応えるように赤い鎧武者型のスーパーロボットから炎が噴出し、翼をはためかせるように炎の力によって凄まじい速度で戦場の空を飛ぶ。

 それは数で勝る機動兵器である『熾裂』を尽く超合金太刀に纏った炎で蹴散らすのだ。
「……えぇ……」
 桜は困惑するばかりである。
 確かにユーベルコードによって自分たちの機体は強化されているのだが、理屈がわからない。
 いやユーベルコードだからという一言では片付けられないなにかによって赤い鎧武者型スーパーロボットが飛翔する度に『熾裂』が爆発していくのだ。
「へぇ、やるねぇ! そういうのも有りだね!」
『ドクトル・アメジスト』が笑っていた。
 凡庸なる者には思いつかない演出。それをいたく喜んでいたようであるが、凶津には関係ない。

『喜んでいるようだが、関係ねぇッ!』
 超合金の太刀と『熾煌』の持つ無敵斬艦刀が激突し、火花を散らす。
 パワーは互角。
 けれど、『熾盛』のような技量はない。押し切れる。
『くらいやがれッ! 飛翔――!』
 鍔迫り合いを制し、凶津と桜は赤い鎧武者型のスーパーロボットを天空へと飛翔させる。

 煌めく太陽をバックに赤い鎧武者型スーパーロボットが影になる。
 瞬間、上段に振り上げた大太刀が炎を纏い、太陽の輝きをも上回る輝きでもって斬撃の一撃を繰り出すのだ。
「―――火炎斬りッ!」
 凶津と桜の叫びが重なり、木霊する。
 その一撃は『ドクトル・アメジスト』の駆る機体を袈裟懸けに切り結び、大地をひび割らせながら、着地した赤い鎧武者型スーパーロボットの背後で盛大に爆発を巻き起こすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
ここからが本番ってわけね。いいでしょ、猟書家ドクトル・アメシスト。あなたの魂を一つ狩る。

機体選択は引き続き『ブラック・クロウ』型。ステージ移行でデータは初期化されてるのよね?

遠隔誘導ユニットからの「レーザー射撃」「制圧攻撃」「一斉射撃」「弾幕」で、量産機は黙らせる。

雑魚を突破して『熾煌』が見えたら、問答無用で「全力魔法」「範囲攻撃」酸の「属性攻撃」「結界術」の紅水陣を地上に展開。バッドステータス漬けにしてやるわ。
ゲーム的にいえば、経時的ダメージ付与効果かな?
展開したのは地上だから、こっちは上空から仕掛け放題。
効果範囲内から脱出しようとしたら、「レーザー射撃」で牽制を入れる。
相手が悪かったわね。



 爆発が巻き起こり、猟書家『ドクトル・アメジスト』が駆る『熾煌』の機体に一文字の裂傷を刻み込む。
 それは通常であれば、そこで勝負が決するものであったことだろう。
 けれど、『ドクトル・アメジスト』は天才である。
 言うまでもなく電脳魔術士として秀でた者であり、同時に博士の名を持つ者。
 故に彼女の電脳魔術は、そこに自身の工房を構成する。瞬間的に機体をオーバーロードさせ、破損箇所から溢れたサイキックエナジーを持ってアメジストの結晶へと置換する。
 それによって機体の損傷箇所を塞ぎきって『ドクトル・アメジスト』は、またも笑ったのだ。

「ああ、これだよ。こういう刺激がほしかったんだ。なるほど、追加装甲。合体かぁ……いやあ、馬鹿にしていたよ。今まで論理的でもないなと思っていたが、存外馬鹿にできないものだ」
 そんな彼女を前に、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は『ブラック・クロウ』型の機体を駆り、一気に距離を詰めるのだ。
「ここからが本番ってわけね。いいでしょ、猟書家『ドクトル・アメジスト』。あなたの魂を一つ狩る」
 遠隔誘導ユニットからのレーザー射撃でもって、周囲に飛ぶ量産型の機体を黙らせたゆかりは、一直線に『熾煌』へと迫る。

 先行した猟兵が刻み込んだ斬撃の箇所からサイキックエナジーが漏れ出しているのがわかる。
 アメジストの結晶。
 それは力の源でも有り、同時に傷を塞ぐための処置でもあるのだろう。
 電脳魔術によって工房化したステージの中では、『ドクトル・アメジスト』の優位な状況をいくらでも作り出すことができるというわけだ。
「なら、問答無用!」
 ゆかりは青年の電脳魔術士のチートコードを受け取って、ユーベルコードを発現させる。

 その輝きは機体から放たれた紅い靄であった。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 真っ赤な血のような強酸性の雨が靄と共にフィールドを溶かしていく。
 それは工房化したフィールドをも侵していくのだ。

「へえ、これはバッドステータス漬けってわけだ」
 機体の装甲が溶けていくのも構わず、アメジストの結晶が砕けていく様を『ドクトル・アメジスト』は興味深げに眺めていた。
「けれど、効果範囲は広いわけではないね。空を飛んでいるのも自分が影響を受けないためか……ならッ!」
『熾煌』が空へと舞い上がる。
 此処は『殲禍炎剣』のないフィールドだ。空を飛ばない理由などないのだ。

 しかし、それこそがゆかりの狙いであった。
 地上が全てを腐食させる紅い靄に包まれるのならば、必ずそれを脱しようと空へと飛ぶだろう。
 その時こそがチャンスなのだ。
「そうくるわよねッ! 相手が悪かったと思うといいわ!」
 飛翔する『熾煌』の上昇角度を見切ったゆかりの機体が強襲するように上空より一直線に飛びかかる。

 それはまるで猛禽がするように己の後を追う小鳥を振り払うように、機体を脚部でしたたかに打ち据え、その機体を赤い靄の煙る大地へと叩き返すのだ。
「ゲーム的にいえば、経時的ダメージ付与効果かな? どちらにせよ、あなたの魂は此処で終わる。そう何度も機会があるとは思わないことね――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

虹川・朝霞
ボス戦ですね!
そして、あれがドクトル・アメジスト…ええ、負けられませんね!
そう、無事に、このゲームからログアウトするためにもね。

機体はそのままですから、UC使え次第、【鉄雲】を使いましょう。
それまでは、紫雲刀にハッキング結界を展開して、召喚された 機械数体をこちら側として扱いましょう。
出来そうにない場合は、ジャミング用結界纏わせた紫雲刀でなぎ払いますけれど。
あ、鉄下駄もそのままなら、なぎ払いに見せかけて、かかと落としもしますね!

そう、俺だって負けられないんですよ。電脳魔術士ですから、そちらの意地もあります。



 赤い靄の中に叩き落された『熾煌』は猟書家『ドクトル・アメジスト』と共に範囲の外に漸く逃れた。
 機体の状況は良いとは言えない。
 すでに序盤とも言える段階で此処までダメージを追うことは想定外であったのだろう。けれど、『ドクトル・アメジスト』は楽しげであった。
 それは狂気を帯びたような、それでいてどこか未だ理知的な雰囲気さえ隠し持っているような悍ましき表情であった。
「なるほどなぁ。一撃で勝負を決めるのでなく、バッドステータス漬けにして絡め取るってわけか。まあ、それでもこっちの数の優位は覆らないのだけれどね」

『ドクトル・アメジスト』の放つサイキックエナジーが周囲に彼女を護るようにして展開していた量産機『熾裂』の機体にアメジストの結晶を生やし、飛翔能力を与えて猟兵たちへと差し向けるのだ。
「とは言え、こっちも修理強化はしないといけない……少しでも時間を稼ごうか」
 そう、この電脳空間は彼女の庭である。
 彼女にとってステージを書き換えるなど造作もないことなのだ。

「ボス戦ですね! そして、あれが『ドクトル・アメジスト』……ええ、負けられませんね!」
 そんな彼女を追うのが虹川・朝霞(梅のくゆり・f30992)であった。
 鉄下駄を装備したような機体を走らせ、一気に距離を詰める。ユーベルコードは青年の電脳魔術士が打ち込んだチートコードによって使用可能に成っていた。
 連続使用は不可能であったが、使えるのならば問題など何処にもないのだ。
 なにせ、この『呪いのオンラインゲーム』から無事にログアウトするためには、ラスボスである『ドクトル・アメジスト』を打倒しなければならない。

「鉄も雲も、俺の思うままに」
 鉄下駄が踏み込んだ瞬間、ユーベルコードの輝きに圧されるようにして朝霞の機体が戦場を走り抜ける。
 一瞬で交錯する『熾裂』を紫雲刀と呼ばれる蛇腹刀の刀身にハッキング結界を展開し、その機体制御を奪い去るのだ。
「――! 私の機体制御を奪う……なるほど、電脳魔術士があっちにもいるってわけだ。賢しいね」
 機体が次々と離反していく様を『ドクトル・アメジスト』は笑って見ていた。

 そこに苦々しい思いがないわけではないのだろうが、いちいち、奪われたものに執着するわけでもないのだ。
 天才とは常に最善を突き破っていくものである。
 それが『ドクトル・アメジスト』という猟書家であり、天才たる所以でも在った。
「なら、パラメータをいじったのを逆手に取ろう」
 彼女は自身のユーベルコードに寄って強化された『熾裂』を解除し、その機体からアメジストの結晶を消去し、飛翔能力を消し去る。

 次々と堕ちていく『熾裂』の機体を横目に朝霞は好都合だと思っただろう。
 コントロールを奪ってけしかけるつもりであったが、これだけの数を同士討ちさせるのは骨が折れる。
 けれど、あちらが、その強化を手放すというのならば是非もない。
「そう、俺だって負けられないんですよ」
 鉄下駄が再びユーベルコードに輝く。
 手にした紫雲刀の蛇腹が凄まじい勢いでうねるようにして戦場の空を疾走る。

 その斬撃はまるで鞭のようでもあり、どうじに生物のようでもあった。
 空を割く竜のように、その斬撃は『ドクトル・アメジスト』の駆る『熾煌』の機体に生えたアメジストの結晶を砕きながら、装甲を削っていくのだ。
「電脳魔術士ですから、そちらの意地もあります」
「ああ、けど、距離を詰めたのは間違いだったね!」
 近接装備はこちらにもある、と無敵斬艦刀を振りかぶり、朝霞の機体へと振り下ろす。
 その斬撃は斬艦刀の名を、そして無敵の名を冠する刃である。

 鋭き一撃を受ければ、機体が持たない。
 けれど、朝霞は一つも諦めていなかった。くるりと身を翻すように、軽業のように機体を一回転させ、縦に回った脚部が、鉄下駄の硬く重い一撃が『熾煌』の機体へと振り下ろされるのだ。
「――ッ、踵落とし……!」
 それは朝霞の機転とこれまで培ってきた技術の結晶。

 その一撃を持って、朝霞は『ドクトル・アメジスト』の天才性を上回る機体の動きでもって、彼女を大地へと失墜させるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
操縦は不安だったけど、なんとかなったね。
ゲームでよかった!

ん? ゲーム? そうだ、ゲームだ!

【LVTP-X3rd-van】でゲームのシステムに【ハッキング】、強制的にUIを開くよ。

あったあった。
「これとこれとこれ、あと、これとこれも、かな」

システムは生きてるみたいだし、ブーストアイテムを引っ張り出して、
自分の期待とみんなの機体に、最強バフをてんこもりでかけるよ。
「ボス戦といったら、これだよね!」

それでもまだ当たるかどうかの不安はあるから、
ロックオンとクリティカル率アップも乗っけておこう。
「収斂率最大。【Nimrud lens】をいっけー!」

ゲームにはゲームの戦い方!
「電脳世界なら負けないよ!」



 天才である猟書家『ドクトル・アメジスト』が生み出した『呪いのオンラインゲーム』は、電脳空間にあって尚現実に影響を及ぼす恐るべき電脳術式である。
 ゲームオーバー=『死』。
 それは現実の『死』であり、電脳空間におけるログアウトを示さない。
 囚われた電脳魔術士を救うために猟兵たちは危険を顧みず、『呪いのオンラインゲーム』へと次々とログインしていった。

 その結果、ラスボスとも言える『ドクトル・アメジスト』までたどり着いたのだ。
「操縦は不安だったけど、なんとかなったね」
 よかったと、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は胸をなでおろした。
 ゲームでよかったと安堵したが、そこで気がつくのだ。
 そう、これはゲームだ。
 けれど、ゲームオーバーが現実の『死』に繋がる恐るべき特性を備えている。

「ん? ゲーム?」
 理緒はなにかに気がついた。
 それは決定的なことだった。素早く機体の中でコンバーチブル型のパソコンをタブレットモードで起動し、『呪いのオンラインゲーム』のシステムへとハッキングを仕掛ける。
 その挙動に気が付かぬ『ドクトル・アメジスト』ではない。
「気がついたようだね。そう、これはゲームだ。現実じゃあない。現実に影響を及ぼすけれど、本質は変わっていない」
『ドクトル・アメジスト』は言うまでもなく天才である。 
 理緒が何に気がついたのか理解したのだ。

 これがゲームであるのならば。
「――……邪魔を!」
 放たれる電脳術式が理緒の精神へと干渉してくる。
 けれど、理緒はそれらを振り切ってゲームシステムのユーザーインターフェースを開く。
「あったあった!」
 ゲームシステムから見つけてきたのは、ブーストアイテムであった。
 ゲーム特有のシステム。
 救済措置とも言えるだろう。それはこの場に存在する猟兵達の機体に最強バフをてんこもりにする、ある意味でのチート行為であった。

「ゲームバランスが崩れてしまうじゃあないか、そんなことをしたら。ブーストアイテムなんて邪道だとは思わないのかね」
 と言いつつ、しっかり用意しているところを見ると、程々に熱中させるための方策として用意していたのだろう。
『ドクトル・アメジスト』は電脳術式をたぐり、理緒の駆る機体へと攻撃を放つ。

 けれど、ブーストアイテムによって強化された理緒の機体には聞かないのだ。
「防御装甲強化、ダメージ軽減、攻撃反射! やっぱりボス戦っていったら、これだよね!」
 ラスボスである『ドクトル・アメジスト』を打倒するためのブースト。
 それはお決まりの展開であったかもしれない。
 けれど、ゲームの終盤を盛り上げるためには必須イベントであったかもしれない。それを勝手に引っ張り出してきてしまうところが猟兵である理緒らしいと言えばらしかったのかもしれない。
「だが、当たらなければどうということは……!」
「ロックオンとクリティカル率アップも乗っけておこう。収斂率最大……! いっけー!」

 理緒のユーベルコードがチートコードを受けて輝く。
 未だ回数制限がつきまとうユーベルコードであるからこそ、一撃で決めなければならない。
 躱されてしまう可能性だってある。
 だからこそのブーストアイテムである。ゲームにはゲームの戦い方がある。
 それに理緒は思うのだ。
 彼女は現実世界よりも電脳世界で過ごした時間のほうが長い。この戦いだって、自分が大好きな電脳世界に悪いイメージがついてしまうことを恐れたからだ。

 いつだって誰かのために戦う事ができるものにこそ、ユーベルコードの輝きは宿るのだ。
「Nimrud lens(ニムルド・レンズ)!」
 電脳魔術士は、電脳世界を手繰る。電脳空間の大気を屈折させレンズを生成し、収束させた光が熱戦となって『ドクトル・アメジスト』の機体、『熾煌』へと放たれる。
 それはブーストアイテムを受けての絶対命中の一撃。
 貫く熱戦が機体の装甲を溶かし、?部フレームまで到達して一撃のもとにアメジストの結晶を砕いて失墜させるのだ。

 理緒は命中したことを確認し、言い放つ。
 彼女にとって、この世界は己の庭であり、己が好ましく思う世界なのだ。だからこそ、彼女が勝つ。
 いいや、こう言い放つのだ。
「電脳世界なら負けないよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
慣れない事はするもんじゃないね
でもゲームならなんとでもなる…か
ネトゲなららしく対応させて貰おうじゃない


さっきの機体で引き続き
じゃ、チートコードよろしくー
【光剣解放】起動
そのうちの530本を周囲の熾裂に対して解き放つ
行動設定、行ってきな狩りBOT達
残り500本はボス狩りといこう

熾煌に対して『斬撃波』を飛ばして牽制、そして『なぎ払い』からの『串刺し』コンボでアタック
仕掛けた後は機体の機動性を活かして距離を取る
さて、後は今の動きのマクロを光剣に組み込むだけ
光剣を2本1組で運用
最初に私が仕掛けた攻撃パターンをタイミングをずらしながら250人相応の連続攻撃を放とうか

ボスはPTで狩る、ゲームの基本だね



「いやー、慣れないことはするもんじゃないね」
 目まぐるしく変わる戦場、バトルロイヤルの中で機体のモニターが示すのは無数の敵機のシグナルだった。
 いくらボス戦であるからといって、これは大盤振る舞いしすぎではないだろうかと思うほどの数のエネミー。
 量産型と言われる『熾裂』。そして、それらを壁のようにして猟書家『ドクトル・アメジスト』が駆る『熾煌』。
 どことなく『セラフィムリッパー』を彷彿させるのは、あの機体が連なる系譜だからであろう。

 元になった『熾盛』、そしてデチューンされた『熾煌』。さらにそれを簡略化、最適化した『熾裂』。
 そこから今に至る技術と開発の枝葉にあるのが『セラフィムリッパー』であるというのならば、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は完全に理解ができたことだろう。
「でも、ゲームならなんとでもなる……か。ネトゲなら、らしく対応させて貰おうじゃない」
 玲は機体を走らせる。
 すでに電脳魔術士からのチートコードを受け取り、さらには他の猟兵が得てきたブーストアイテムで機体のステータスは一段も二段も上がっている。

「これならやれる――機能解放、光剣よ舞い踊れ!」
 機体の周囲に展開されるのは、無数の光剣。千を超える光剣が、光剣解放(セイバー・リリース)のユーベルコードを受けて飛ぶ。
 半数は『熾裂』へと飛ぶ。
 複雑に飛翔する光剣は、まるでそれだけが自律行動するような整然とした動きで、次々と『熾裂』を貫いていく。
「一度言っておきたかったんだよね。行ってきな、狩りBOT達!」

 玲の指示にしたがって『ドクトル・アメジスト』の『熾煌』を護っていた『熾裂』達を切り裂く光剣。
 拓かれた道を一気に飛ぶ玲の機体。
「来るかい、猟兵。だが!」
 電脳魔術によって地形を工房へと変えていた『ドクトル・アメジスト』が飛び出すように玲へと迫る。
 機体の状況はすでに多くの猟兵の攻撃に寄って損壊している部分が目立つ。
 けれど、それらをサイキックエナジーが籠められたアメジストの結晶で多い、補っているのだ。

「幾ら取り繕ったところでね……!」
「やらせはしないよ! さあ、見せてくれ。君の天才性を、閃きを、輝きを!」
 それは爛々と輝くような貪欲さであったことだろう。
 識りたいと願い、それらを持って己の天才性を開花させる。これは蠱毒めいた戦いではないかと思うほどに、激突する互いのユーベルコード。
 光剣が乱舞し、その中心で玲の機体と『ドクトル・アメジスト』の機体がぶつかる。

 斬撃の波が牽制で放たれ、そこへ薙ぎ払う片手剣がガードをこじ開ける。
「コマンド入力なら、先行入力で」
 スムーズな動き。
 これが現実の機体であれば不可能な動きであったことだろう。
 けれど、これはゲームである。電脳世界であればこそ可能な動きができるのだ。こじあけたガードを貫くように剣の一撃が『熾煌』へと打ち込まれる。
「……ッ! アハハハ! そうか、そうだよねぇ。これはゲームだから!」
 笑う『ドクトル・アメジスト』。
 けれど、その笑いが凍りつくだろう。砕けたアメジストの結晶の破片が飛び散る最中、乱舞する光剣の動きがまさに今魅せられたガード不能技を再現するのだ。

 二本一組で形成された光剣がタイミングをずらしながら、怒涛の連続組み手のように放たれるのだ。
 まだ乱取りのほうがよかったと思うほどの正確無比なる連続攻撃。
 読めど読めども、それを実行する時間を与えない時間差攻撃である。これこそが物量であり、どれだけの天才性を持つ者が相手であっても、一度のミスが命取りになる連続した行動選択は、容易に敗れるものではない。
「一瞬のミスが即敗北。君が望んだゲームってやつだよ。気を抜いたら一撃死……まあ、有り体に言って……」

 クソゲーだよね、と玲は笑った。
 けれど、それを愛する者だっているのだ。それがサブカルチャーというものだろう。
 それに、と付け加えるのだ。
「ボスはパーティで狩る、ゲームの基本だね」
 一狩り行こうぜ、と何処かの誰かも言っている。そう、ゲームに『死』のやりとりなんていらない。
 息抜きと言ったのならば、そこには達成感だけがあればいいのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リジューム・レコーズ
らあァッ!(壁をブレイクドライバーで破壊して登場)
間に合った?
見付けた…ドクトルアメジスト!

敵にチート補正があっても、ディナが再現されているなら負ける理由なんて無い!
ましてや殲禍炎剣が存在しませんから機体の機動性を全て出し切れる
電脳魔術師に手出しする隙なんて与えない
敵機を斜め上空から見下ろすポジションを維持し急反転や左右の瞬間加速で翻弄
イグゼクターとマンティコアのプラズマキャノン、そしてスレイプニルを連射し続けます
敵機が工房を作るなら集中攻撃で無理矢理破壊し尽くしてやります
…この位でいいでしょう
今までの戦闘は全てマスターラインのチャージを終わらせるための時間稼ぎ…気が付いてももう遅い!



 それは唐突なる光景であったことだろう。
 猟書家『ドクトル・アメジスト』は、猟兵の攻勢に圧されて傷ついた機体を修復するために地形データを電脳魔術に寄って工房と化し、猟兵達の攻撃から身を護るために利用していた。
 けれど、その工房の防壁を突如として突き破ったのは、対物掘削衝角剣槍であった。
 単純故に強靭かつ重厚なる質量武器。
 それがRXブレイクドライバーである。衝角の切っ先が工房を破壊し、壁面を無きものとするように現れたのはオブリビオンマシンのデータである『アークレイズ・ディナ』であった。
「らあァッ! 間に合った?」
 リジューム・レコーズ(RS02・f23631)は己の心を蝕む憎悪の征くままに電脳空間を駆ける。

 工房の壁をぶち破り、その最奥にあるであろう猟書家『ドクトル・アメジスト』を目指すのだ。
「的にチート補正があっても、ディナが再現されているなら負ける理由なんてない!」
 全てを破壊する憎悪が心のなかに流れ込んでくる。
 これがオブリビオンマシン。
 その身を滅ぼさんばかりの憎悪が力と成って『アークレイズ・ディナ』は電脳空間においても、その力を発揮するのだ。
 ここは『殲禍炎剣』の存在しない戦場。
 ならば、この機体のポテンシャルの全てを引き出すことができる。
「けれど、ユーベルコードが制限されていることを思い出すべきだったね」
『ドクトル・アメジスト』の声が聞こえる。

 機体データである『熾煌』は、多くの猟兵が叩き込んだ攻撃に寄って破損しているが、電脳魔術によってアメジストの結晶によって補強されている。
 その体を覆うアメジストの結晶が傷の深さを物語っているだろう。
 けれど、関係なんてない。
「そちらが『殲禍炎剣』を気にしなくていいように、あたしだって同じなんだよ」
 互いの機体が凄まじい勢いで己の機動性の優位を示すように飛翔する。
 機体のフレームが軋む音さえ聞こえてくるような電脳空間の中、そのゲームのリアリティを肌で感じながらリジュームは戦いの中にこそ、『アークレイズ・ディナ』の持つ憎悪のポテンシャルを識る。

 渦を撒くように二機の機体が飛び、急制動、急反転といった技工を凝らす。
 デュアルアサルトライフルの火線が飛び、テールアンカーからブレードが生み出され、『熾煌』を追い詰めるのだ。
「よくもまあ、それだけの武装を同時に展開できるものだね」
 呆れるほどの飽和攻撃。
 さらに逃げ場を塞ぐように展開した工房の尽くを破壊して飛ぶ『アークレイズ・ディナ』はまさにオブリビオンマシンとしてのデータそのものであった。
「ああ、なるほど」
『ドクトル・アメジスト』は漸くにして気がついた。

 何故、あれほどの機動性を持ちながら勝負を決めに来ないのかを。
 これが戦闘者と学者の違いであったことだろう。戦いを突き詰め、最適化したリジュームにとって、これまでの全てが布石である。
 掲げた対物掘削衝角剣槍の切っ先から雷撃が迸る。
 そう、それこそが、マスターライン。
 全てを根こそぎに破壊し尽くす、極大荷電粒子砲である。

 ユーベルコードの詠唱時間を稼ぐための変幻機動。
 その最中にチートコードを受け取り、ユーベルコードの詠唱を行っていたのだ。
「今更気がついても、もう襲い!」
 チャージしきったエネルギーが対物掘削衝角剣槍であるブレイクドライバーをこじ開けるようにして展開する。
 放たれる極大の荷電粒子の光条が一直線に展開された工房毎『熾煌』を穿つようにバトルロイヤルの会場に大穴を開ける。 

 それは凄まじい威力であり、己こそが破壊の化身であると知らしめるように『アークレイズ・ディナ』は憎悪の咆哮を轟かせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…ふむ…確かに他人とのやりとりは良い刺激になるよね…
…電脳魔術師に頼んで【何時か辿る絡繰の夢】…を発動…と同時にもう一つ頼み事を…
…まず、数には数…12機のキャバリア(をガジェッド技術により再現したもの)を召喚…
…今度は自律稼働させて連携を取らせて戦わせよう…ほぼ互角か…
…勝負の鍵はアメジストとハッキング勝負…こちら側の機体への侵入を防ぎつつ如何に相手機体にハッキングを仕掛けるか…
…まあ、派手に勝負してるのは囮で本命は各機隊に仕込んだ浸透破壊術式【ベルゼブブ】によるハッキング…
…でもなく…『もう一つ』…の頼み事…こちらに集中してる隙に電脳魔術士にチートにより敵機体性能を落として貰うよ…



 電脳空間である『呪いのオンラインゲーム』のバトルロイヤルの空間には、未だ多くの『熾裂』が存在していた。
 いや、猟兵達に蹴散らされても、すぐさまに猟書家『ドクトル・アメジスト』の電脳魔術によって召喚されるのだ。
 アメジストの結晶にはサイキックエナジーが籠められており、生半可な傷を追っても、それを塞いで行動するのだ。

 一撃で仕留めなければならない。
 そう感じたのはメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)であった。
 確かに『ドクトル・アメジスト』の言葉に理解できるものはある。
 時として人は外からの刺激を受けなければ、新たなものを生み出せぬものである。それが例え、天才性を発露させるものであっても、外界からの刺激を欲することもあるだろう。
「……ふむ……確かに他人とのやり取りは良い刺激になるよね……」
 メンカルは正しくそれを理解していた。

 どれだけ自身に才能があろうとも、それを磨く他者という摩擦がなければ原石もまた輝かぬものである。
 故にメンカルはうなずいたのだ。
「そうだろう? けれど、別に負けたいわけじゃあないんだよ」
『ドクトル・アメジスト』は笑っていた。
 これだけ多くの猟兵に追い詰められながらも、彼女は『熾煌』の傷ついた機体をサイキックエナジーが籠められたアメジストの結晶で覆い復元しはじめていたのだ。

 それは天才と言わざるを得ないほどの術式であったことだろう。
「けど、負けるんだよ。たった一人の天才が全てを変えられるなんて、それほど世界は簡単じゃあない……」
 メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
 機体の中にあっても、青年の電脳魔術士から受けとたチートコードによってユーベルコードが発現するのだ。
 何時か辿る絡繰の夢(ブループリント・プロジェクション)が見せるのは、メンカルが生み出したガジェットの設計図。

 それは彼女が数多の世界を巡って得た知見。
 数には数を。
 キャバリアにはキャバリアを。生み出された再現されし、キャバリアは12機。
 自律稼働によって連携を取る姿は一糸乱れぬ行軍そのものであったことだろう。量産機とは言え、数で勝る『熾裂』を食い止めるにはこれしかないのだ。
「ほぼ互角か……」
「即座に12機も生みだすとは、やるものだねぇ……けどさ!」
 戦いは数である。
 物量で押すことができるというのであれば、この電脳空間の支配者である『ドクトル・アメジスト』こそが、このバトルロイヤルの中での強者。

 だからこそ、メンカルは勝負の鍵を手にする。
「……へえ……数で勝てないと見れば、こちらの機体の制御権を奪う、か……面白い事を考えるね」
 でもそれは、と『ドクトル・アメジスト』は笑う。
「相手があたしじゃなかったらの話さ!」
 そう、ハッキング。
 それも電脳魔術において、彼女の天才性は唯一のものだ。それにハッキング技術で競り合おうなど、自殺行為も甚だしい。

 けれど、それは囮であった。
 メンカルにとってハッキング勝負など最初からどうでもよかったのだ。
 押し問答をするような一進一退のハッキング勝負。派手にやっているのは、陽動にしか過ぎない。
「……本命は、こちらの各機体に仕込んだ浸透破壊術式……」
 メンカルは策を打っていたのだ。
 ハッキング勝負と成れば、必ず『ドクトル・アメジスト』は勝負に乗る。負けるわけがないからだ。
 乗らないわけがない。
 だからこそ、裏をかくのだ。

「だから、それは分かっているってば!『ベルゼブブ』っていうんでしょ、その術式はさぁ!」
 しかし、それすらも『ドクトル・アメジスト』の天才性は看破する。
 打ち破られていく術式。
 メンカルの表情は苦渋の……いや、そんなものは一つも浮かんでいなかった。
 ただ、いつもと変わらぬ冷静な表情がそこにあった。

「――……!?」
『ドクトル・アメジスト』は此処で初めて動揺しただろう。
 勝負は決した。けれど、あの猟兵は動揺一つしていない。何故、と思った瞬間彼女の機体が重くなる。
 それはメンカルが青年の電脳魔術士に頼んだチートコード以外の頼み事。
「そう、それが本当の本命……私に集中している隙にチートでお前の機体性能を落してもらったよ」
 おのれすらも囮にする。

 それは裏の裏をかいた作戦であった。
 見事に嵌った策略は、只一つの天才性を、多でもって打ち破った瞬間なのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
※Ⅳ搭乗

貴女の天才性の贄として、命を費やされる訳にはいきません
遊戯の時間は終わりにして頂きます

サブアームのライフルでの乱れ撃ちスナイパー射撃で量産機を排除
推力移動で切り込み、時に敵機を●踏みつけ跳躍
熾煌に肉薄、接近戦

操縦技量で反映した武器受け盾受けの技量で切り結び
敵近接武装を手首回転操作活かした●武器落としで弾き飛ばし

このまま押し切らせて…!

UCを自己ハッキング電子セキュリティ盾受け防御と同時UCで迎撃
敵思考中枢を焼き切り

己が才覚の一部、焼き潰された気分は如何ですか?
電子の海は貴女だけの物ではありません

他者の自由意志の侵害は罪…天才だから許されるとは思わぬことです

動きが鈍った敵機を盾殴打



 猟兵達の電脳空間、『呪いのオンラインゲーム』上での活躍は凄まじいものであった。
 猟書家『ドクトル・アメジスト』の機体性能を逆に下げるチート。
 そして、ユーザーインターフェースから呼び出されたブーストアイテムに寄って猟兵達の機体はさらなる性能の底上げを見せる。
 それらの援護を受けて『ロシナンテⅣ』は『ドクトル・アメジスト』の機体へと迫るのだ。

「貴女の天才性の贄として、生命を費やされる訳にはいきません。遊戯の時間は終わりにして頂きます」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、『ロシナンテⅣ』のサブアームに備えられたライフルでの乱れ打ちで、周囲に存在する『熾裂』を尽く打倒していく。
 アメジストの結晶によるサイキックエナジーの強化によって、あの量産機はデータ以上の力を持っているのだろう。
 撃ち落としても、即座に電脳魔術によって補充されるのは厄介と言う他なかった。
「いやいや、まだまだ終わらないよ。あたしの天才たる所以はここからさ」
『ドクトル・アメジスト』は笑っていた。

 完全に窮地であろうに、それでもその窮地を楽しむだけの狂気が彼女には宿っていたのだろう。
 恐るべきは、その過去に歪んだオブリビオンらしさといった所である。
「いいえ、ここで打ち止めにさせて頂きます!」
 量産機を踏みつけ、一気に跳躍する。
『ドクトル・アメジスト』が駆る機体『熾煌』へと距離を詰めるのだ。叩きつけられる無敵斬艦刀の一撃を盾で受け止め、マニュピレーターを回転させた剣の一撃で叩き落とす。

「このまま押し切らせて……!」
『ロシナンテⅣ』のツインアイが輝く。
 それは、しかして『ドクトル・アメジスト』の放った電脳魔術に寄って防がれる。
 そう、彼女の電脳魔術は他者の精神に干渉する。それが一時の硬直に過ぎないのだとしても、このゲームの中では命取りだ。

 だが、次の瞬間『ドクトル・アメジスト』は見ただろう。
 それは己の放った電脳魔術が逆探知され、己の頭脳に迫る炎の姿を。
「銀河帝国護衛用ウォーマシン・上級攻性防壁(ファイヤウォール)……易々と電脳へ干渉させる訳にもいきませんので。報復措置を取らせて頂きました」
 トリテレイアのユーベルコードが輝く。
 それは彼の思考領域内に発生する炎に寄って、己の電脳を護る力である。

 炎は、逆に『ドクトル・アメジスト』の脳を焼き切るほどに苛烈に燃え盛る。
「――ッ!!! これは……! あたしの脳に対するカウンター……!」
 凄まじい傷みが彼女の頭に響いていることだろう。
 それは言うまでもなく、彼女の頭脳そのもに傷を与えた事にほかならない。自分の天才性だけを信じるのであればこそ、その頭脳に与えた影響は計り知れないだろう。
「己が才覚の一部、焼き潰された気分はいかがですか? 電子の海は貴女だけのものではありません」
 トリテレイアは駆けた。

 一瞬の隙。
 こちらの張り巡らせた罠によって、相手のユーベルコードを裏返す。その瞬間こそが、『ドクトル・アメジスト』を討つ絶好の機会だったのだ。
「アハハハッ! これだよ、この刺激がほしかったんだ! あたしの頭脳を焼き切るほどに強い刺激! これが! これこそが閃きってものなんだよ!」
 哄笑が響き渡る。
 それは怖気を走らせるほどの狂気。
 しかし、トリテレイアは怯まなかった。例え、それが恐怖を呼び起こすほどの狂気であったのだとしても、己が騎士であると願う心がそれをねじ伏せるのだ。

「ああ、嬉しいな。こんなにも閃きがあたしのなかに生まれているなんて! これこそが天才性ってものだよ!」
「他者の自由意志の侵害は罪……天才だから許されるとは思わぬことです」
 その言葉を遮るようにトリテレイアは距離を詰める。
 構えた盾の一撃が『熾煌』の頭部をしたたかに打ち据える。

「人の業をとやかく言える身ではありませんが――!」
 それでもトリテレイアは容赦はしない。
 誰かを護ると願う炉心と、人の業。
 それらを天秤に掛けるべくもない。己が己であるために。その存在意義を持って、トリテレイアは『ドクトル・アメジスト』を打ちのめすのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕凪・悠那
出てきたな、元凶
ゲームではラスボスは倒されるものって相場が決まってるんだよ

一章で行った電脳魔術と[操縦]技能、【万象既知】を併せた"裏技"は継続
その上で相手に合わせて対処法を変える
どうやらこの機体、対軍殲滅は苦手じゃないんだ
エルドリッジの出力[リミッター解除]
召喚された熾裂を巻き込んで、熾煌諸共にマルチロックオンした雷電投射で撃ち払う
(範囲攻撃×属性攻撃:雷)

まあ、結晶で強化した熾裂を盾にされれば墜としきれないかも
――織り込み済みだけどね
エルドリッジの特殊機能の一つ、"[迷彩]"と"短距離転移"で回り込んでの奇襲
プラズマブレイドでの[切断]狙い



 猟書家『ドクトル・アメジスト』の駆る機体『熾煌』は、多くの猟兵の攻撃に寄って傷ついていた。
 けれど、その傷を覆うようにアメジストの結晶が生えていく。
 それはサイキックエナジーが籠められた結晶であり、傷を補い、欠損を補填するのだ。
「だから、まだ墜ちない。けれど、元凶。ゲームではラスボスは倒されるものって相場が決まってるんだよ」
 夕凪・悠那(電脳魔・f08384)は『エルドリッジ』の中で呟いた。
 猟書家が強大なオブリビオンであることはわかっている。けれど、彼女は一人ではない。
 この『呪いのオンラインゲーム』の中ではユーベルコードが封じられている。
 けれど、それさえも電脳魔術士との打ち込み続けるチートコードによって回数制限が在るとは言え、ユーベルコードを使うことができる。

 それは強力な個としてではない、他を識り、他を信じるからこそ生まれる力でもあったのだ。
「けれど、昨今はそうじゃあないだろう? 真の黒幕が倒れた所で戦いは終わらない。何故終わらないのかと問いかけるものであってあるわけだし?」
『ドクトル・アメジスト』は追い詰められながらも笑っていた。
 このゲームの果てに倒されてしまえば、現実での『死』を迎えるというのに、それでも笑っているのだ。

 それは何故か。
 そう、彼女がオブリビオンであるからだ。骸の海より出る存在だからだ
「そうさ、まだ終わらないのさ。あたしの研究は、探求はまだまだ終わらない!」
 サイキックエナジーが満ち溢れ、周囲に飛ぶ『熾裂』がアメジストの結晶を生やして飛翔する。
『エルドリッジ』を取り囲む無数の機体を前にしても、悠那は怯むことはなかった。

「それも全部"視えてる"よ」
 あらゆる情報を観測、解析する近未来予知。それが万象既知(ラプラス)。全てを見通す黄金の瞳と既に知った未来が合わさるのであれば、彼女に回避できぬものはない。
 そして、彼女が駆るのは雷電を司る魔導機である。
「それに、どうやらこの機体、対軍殲滅は苦手じゃないんだ」
 迸る電流が電脳空間すらも焼き尽くさんばかりの勢いで『エルドリッジ』から疾走る。
 それは周囲を取り囲んでいた『熾裂』たちを巻き込んで、投射され次々と火球を生み出していく。

 一瞬の出来事であった。
 リミッターを解除した『エルドリッジ』の速度は言うまでもなく神速。
 踏み込んだという事実すら残影として残さぬ速度。
「消え――」
 消えた、と『ドクトル・アメジスト』は思ったことだろう。
 雷電がきらめけば、次々と盾にしていた『熾裂』たちが撃ち落とされていく。それはまるで非現実的な光景であったことだろう。
 まるでわからない。
 何が、と思うことすら遅い。

「だけどね、盾ならまだ在るんだよ!」
 水晶化した『熾裂』を盾に投射され続ける雷撃を防ぐ。例え、どれだけ疾く動くのだとしても、盾が在る限り、一手遅れる。
 そこを突けばと思ったのだろう。

 けれど、それは悪手である。
 速度で勝る相手を前に、己の手を一手遅らせることがどれだけ致命的であるのかを彼女は思い知らされる。
「そういうのは織り込み済みだけどね!」
 その機動は雷鳴の如く。
 稲妻疾走る機動は、一瞬の内に『熾煌』の背後を取っていた。
「嘘だろう?! なんでそんなに疾く――!」

 その疑問は最もだ。
 けれど、最初に彼女が言ったのだ。これはデータ。これはゲーム。
 ならば、魔導機である『エルドリッジ』の固有能力。その一つである『迷彩』のちからもまた完全再現されているのだ。
 これまで彼女が見ていた軌跡は『エルドリッジ』の見せた幻影にすぎない。
 故に、眼で追おうとすること事態が愚策であるのだ。
「これで――!」
 プラズマブレイドが『熾煌』の胴を一刀のもとに両断せしめる。

 それは閃光の如き一撃であり、『エルドリッジ』の炉心が咆哮のように電脳世界に轟いた瞬間でもあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
出やがったなラスボスさんよ
あんたを倒してこのふざけた遊戯を終わらせてやるぜ覚悟しな

[SPD]
Es、引き続き電脳魔術士の護衛と
【ハッキング】で術士の支援を頼むわ

熾裂の集団を照射モードのCBRで【エネルギー充填、範囲攻撃、なぎ払い】
DHBを【乱れ撃ち】して【爆撃、衝撃波、吹き飛ばし】て蹴散らす

熾煌と対峙したら機体【リミッター解除】
俺も【瞬間思考力、限界突破】して接近戦を挑む

【ダッシュ、推力移動、空中戦】で動き周りながら
敵の攻撃を【第六感、読唇術、見切り】で避けつつ【カウンター】で返していく

最後は【体勢を崩す】瞬間を狙ってCBRとCBBの【2回攻撃】で仕留める(冬雷
これでゲームクリアだ!

アドリブ歓迎



 斬撃の一撃が『熾煌』の胴を一閃した。
 その一撃は機体の上半身と下半身を分断させる一撃であり、これで決まったと誰もが思ったことだろう。
 けれど、失った下半身に電脳魔術によるアメジストの結晶が生えるように補填される。
「ふぅ、これはまた危ないな。でも、まあ、いい刺激になっているよ。楽しいねぇ。やっぱりゲームは息抜きだよ。本気でやるもんじゃあないけれど」
 猟書家『ドクトル・アメジスト』は笑っていた。
 本気でやるものではないと。このゲームの終着点が『死』であることを理解しても尚、彼女は笑っていた。

 これが過去に歪んだオブリビオンという存在である。
 骸の海にある限り、彼女は何度でも蘇るだろう。何度でも争いの中に人々を引きずり込むだろう。
 今回のように電脳魔術士を捕らえ、殺すだろう。
「出やがったなラスボスさんよ。あんたを倒してこの巫山戯た遊戯を終わらせてやるぜ」
 星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は『クロムスティール』と共に電脳空間を疾走る。
『ドクトル・アメジスト』の機体である『熾煌』を護るように展開した無数の量産機『熾裂』が壁と成って、彼を阻む。

 けれど、彼は構わなかった。
「覚悟しな――!」
 サポートAIである『Es』と電脳魔術士のチートコードによるサポートを得て、祐一は戦場を『クロムスティール』と共に駆ける。
 襲いくる『熾裂』をキャバリアビームライフルから放たれる火線で薙ぎ払いながら、無反動砲から放たれる弾頭による爆風で吹き飛ばす。
 邪魔な量産機は今のうちに数を減らして置きたかったのだ。

「覚悟するのは君の方さ。いくら機体性能を落とされていようともね――あたしの電脳魔術と術式があれば!」
 ゆらめく『熾裂』の機体。
 あれだけの猟兵の攻撃を受けて尚、消滅しないステータス。それは彼女の電脳魔術によって為し得る奇跡のようなものであったことだろう。
 天才とは奇跡の連続を手繰り寄せるものである。
 確定していない未来を己の描く未来で連続して確定していくからこそ、人は彼らの行いを天才による所業と呼ぶのだ。

「だからってな!」
 互いの機体が激突する。
 他の亮平の働きによってブーストアイテムやバフが機体のステータスを底上げしてくれているのだ。
 疾走る機体が軋む音が聞こえても構わない。
 放たれる攻撃を交わし、カウンターを畳み込む。アメジストの結晶の破片が飛び散る。
 有効打を与えているのに、未だ墜ちないのは『ドクトル・アメジスト』が本当の意味での天才だからだろう。

「けどな、この一撃雷で終わりにしてやるよ!」
 放つユーベルコードの輝き。
 それは力をためられたキャバリエビームライフルの放つ火線の一撃であった。それを『熾煌』は躱す。
「単調な攻撃なんてね! 当たらないんだよ!」
 迫る無敵斬艦刀の一撃。
 それは『クロムスティール』の頭部へと迫り、唐竹割りのように機体を引き裂こうとする一撃であった。

 けれど祐一は躱すつもりはなかった。
 武器はまだ手のうちにある。距離は近い。ならば、ためらう理由などなかったのだ。無敵斬艦刀の刀身が頭部を捉える。
 めり込む斬艦刀の刃が、クロムスティールの頭部装甲を引き裂き――その瞬間、機体が横に回転し、機体をひねるようにして躱すのだ。

 けれど、斬撃の一撃はライフルを持った腕部を両断し、爆風を吹き荒れさせる。
「体勢を崩したな……! これで、ゲームクリアだ!」
 放たれるのはビームブレイドの斬撃であった。
 片腕を犠牲にし、生み出した隙。
 その一瞬を得るための機動。ビームブレイドの光刃が『熾煌』の頭部を斬首するように切り飛ばし、その一撃は致命的なものとなって、『ドクトル・アメジスト』に王手を掛けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メイスン・ドットハック
【WIZ】
現代の電脳魔術士、そして猟兵を舐め過ぎたようじゃのー
銀河帝国時代の遺物にはここで退場して貰うのー

血の騒ぎから、おそらく血縁、ご先祖様の予感はする
だがそれでも立ち向かうのみと、KIYOMORIをオブリビオンマシン形態「清盛」に変形
機動戦で熾煌を翻弄し、電脳魔術には電脳魔術と、電脳ミサイルと榴弾で応戦
ドクトルの工房が広がった所でUCを発動し、オブリビオンの過去を透明化し滅する紫水晶の迷宮で塗り潰す
さらに紫水晶に仕込んだ電脳ウイルスを散布し、敵データを破損させ、清盛の爪でその身体を引き裂く

もう逃がさんけーのー!

ドクトルをアメジストにデータドレインして、骸の海に帰さないと魂リソースを封印する



『呪いのオンラインゲーム』の電脳空間が工房へと変わっていく。
 その光景を見ていたメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)は、初めて見る工房の内部に言いようのない感想を抱いていた。
 言葉に無理やりするのならば、懐かしいという言葉が残当であっただろうか。
 けれど、それが何故なのかは知らない。
 如何なる因果によって己のと同じアメジストの体を持つのか。けれど、ただ一つだけはっきりとしていることがある。

 猟書家『ドクトル・アメジスト』はオブリビオンであり、メイスン・ドットハックは猟兵である。
 在るのは互いに滅ぼし合わなければならないという宿命のみ。
 故にメイスンは言うのだ。
「現代の電脳魔術士、そして猟兵を舐めすぎたようじゃのー」
 それは哀れみではなかった。
 事実であった。現に『ドクトル・アメジスト』の天才性は些かも欠けることはなかった。
 その驚異的な電脳魔術によって、幾度も奇跡の如き伝わたりでもって猟兵たちからの攻撃を凌いでいたのだ。

 今も尚、『熾煌』の機体はすでにアメジストの結晶に覆われ、あらゆる箇所に損壊を受けていた。
「いやいや舐めてなんかいないよ。あたしはね、ただ識りたかったんだよ。この電脳魔術の行き先を。自分の目で見たいと思っていたんだ。だから」
 だから、己の天才性を疑わない。
 これでいいのだと言い続ける。奇跡を連続して起こし続ける。それを肯定する自分こそが天才なのだと言うのだ。

 サイキックエナジーが籠められたアメジストの結晶が弾け、そこから現れたのは、出現したときと同じ『熾煌』の機体そのものであった。
 これまで受けてきた傷を一瞬で回復し、メイスンの駆る『清盛』と対峙する。
「銀河帝国時代の遺物には、ここで退場して貰うのー」
 オブリビオンマシンとしてのデータが流れ込んでくる。
 目の前に相対する機体と、己の駆る機体が搭乗者の立ち位置を入れ替えたように宙に浮かぶ。
 メイスンは懐かしいと感じていた。

 その理由が今はっきりとわかった。
 血の縁だ。
 予感でしかなかったものであったけれど、『ドクトル・アメジスト』は己の血脈の源に居る……いや、居た者なのだ。
「まだ遺物のつもりはないよ……!」
 互いの機体が飛ぶ。
 互いに持てる技巧の全てをぶつけ合うのだ。
 電脳魔術には電脳魔術を。機体の装備であれば、互いの距離で打ち合う。その戦いの軌跡は凄まじいものであったことだろう。

 余人の入る余地など何処にもなかった。
 この戦いはメイスンにしか為し得ないものであった。
「ならば、全て塗りつぶして越えていくのー!」
 それは、美しき原初の紫水晶空間(アメジスト・オリジン)であった。
 ユーベルコードの輝きはチートコードに寄ってバックアップされ、その力を十全に発揮する。
 そのユーベルコードが見せたのは、オブリビオンにとって、己の過去を透明化し、滅する紫水晶で出来た迷宮を生みだす。

「へぇ、こういうこともできるのか……名前を知らぬ同じアメジストのクリスタリアんの君」
『ドクトル・アメジスト』は笑っていた。
 これほどの窮地に追い込まれても、尚楽しんでいた。
 刺激を求めていたと彼女は言った。どれだけ天才性があろうとも、他者という刺激がなければならないと彼女は言っていた。
 それはた出しいのだろう。
 けれど、悲しいかな。どれだけ透明化した過去であったとしても、それはメイスンにとって世界を滅ぼす一因でしかないのだ。

「これは『ドクトル・アメジスト』と戦った猟兵達からの報告書を全て閲覧したが故に生み出された術式じゃけーの!」
 美しき紫水晶が煌めく空間にあって、散布されていたのは電脳ウィルス。
 自身が連なる者ならば、己の身体こそが良い材料であった。
 類似し、似通った性質を持つからこそ、散布された電脳ウィルスは『ドクトル・アメジスト』にこそ有効であった。

「これは、あたしを狙い撃ちにした術式……? こんな非効率なことをして」
「けれど、これで――!」
 捕まえる事ができる。
『清盛』が『熾煌』の機体を両手の爪で引き裂き、掴み上げる。
 互いの頭部が激突し、紫水晶の破片が飛び散る。どれだけもがこうとも逃げられるわけがない。
 流し込んだ電脳ウィルスを解析しようとしてもできるものではない。『ドクトル・アメジスト』専用に作り上げた術式は、彼女を逃さない。

 ここがもし現実の空間であれば、『ドクトル・アメジスト』は逃げおおせる事ができただろう。
 けれど、皮肉なことに電脳空間を戦場に選んだことが、彼女の滅びへの決定的な要因となった。
「もう逃さんけーのー!」
 ここは迷宮。
 魂の牢獄とも言うべき、電脳ウィルスに満たされた『ドクトル・アメジスト』だけを捕らえ、『ドクトル・アメジスト』のみを砕くユーベルコードである。

 彼女ほどの天才性を持つ者であれば、出口を見つけ逃げることもできただろう。
 けれど、此処にはメイスン・ドットハックがいる。
 彼女と同じ天才性を持ち、過去ではなく現在のために戦う者がいる。
 故に、これより先に『ドクトル・アメジスト』が征くことはできない。紫水晶が煌めき、『ドクトル・アメジスト』をデータとして吸収した紫水晶空間から、彼女は骸の海へと変えることを阻止するのだ。
「あたしが滅びる……? 馬鹿な、そんなわけ……!」
「それがあるんじゃけーの。僕らクリスタリアンの結界みたいなものじゃけーの……だからこ、此処でお終いじゃのー」
 折りたたまれていく紫水晶空間。

 それは『清盛』の爪の間に収まるほどに縮小される。
「……魂リソースを封印するツールを作り出すのは骨が折れたけーの。けど、これで」
 そう、終いである。
 骸の海へと還さない。
 過去は過去に。それが例え、今の己に繋がる過去であったのだとしても、現在を侵していい理由にはなりはしない。

「けれど、ご先祖。これだけは言っておくけーの。引きこもって楽をしたいという僕が此処までしたのは」
 引きこもりを肯定するダメ人間だけれど、とメイスンは誇らしげに笑った。
 多分、引きこもりはきっと遺伝かもしれない。
 だから、此処まで出来たのだ。
「これ以上、間違いを侵させないためじゃけーの」
 もう二度と過去の化身として滲み出ることはない。

 その想いを込めた一撃は、『ドクトル・アメジスト』を封印した紫水晶を粉々に砕き、霧散して消え去らせる。
 ここに一つの因果が執着し、一つの宿縁が断ち切られる。
 そして、いつしか宿命は彼女の足を一歩また前に進めさせる。それを彼女が、メイスン・ドットハックが望んでいないのだとしても、否応なしに時は過去に排出されて、進んでいくのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月11日
宿敵 『ドクトル・アメジスト』 を撃破!


挿絵イラスト