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カクリヨ雪花二重唱

#カクリヨファンタズム

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#カクリヨファンタズム


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●また遊ぼうね、ユキちゃん!
 この幽世にまた桜の季節が訪れ、雪の季節の終わりを告げる。
 あの日のような雪の日は、また暫く先のことになってしまう。
 辟易する大人達とは対称的に、特別な玩具に恵まれた子供達。
 その玩具を転がして固めた雪だるまの中から飛び出したわたしは、あの子にユキという名前をもらった。
 あの子の名前はサクラ。
 サクラちゃんはとても歌が上手くて、雪が桜に変わるまで、二人で歌って遊んでいた。
 次の雪の季節もサクラちゃんは雪だるまを作って、また二人で歌って遊んだ。
 サクラちゃんは毎年歌が上手く、そして大きくなっていく。
 来年のサクラちゃんに会えるのが楽しみだから、別れは悲しくなかった。

 ――サクラちゃんはもう、雪だるまを作らないのかな。

 桜の季節の幽世に雪が降る。
 この雪の降り方をわたしは覚えている。
 あそこで雪だるまを作り始めた子をわたしは知っている。
 降りしきる雪の中に桜の花びらをはらんだ風が舞う度、あの子は姿を変えるけど、その全てをわたしは覚えている。
 また遊べるんだ。また歌えるんだ。だから――。

『そちらに、連れて行ってくれ』

●カクリヨは桜トコロニヨリ雪
「皆さぁん、お集まりいただき、ありがとうございますぅ。それではぁ、わたしが視たオブリビオン事件の予知をお話ししますねぇ」
 春の陽気を感じさせる――いつも通りの――間延び口調で、グリモア猟兵の少女・ミント・キャラメル(眠兎キャラメル・f25338)はグリモアベースに集った猟兵達に語り始める。
「カクリヨファンタズムで、UDCアースにいた頃に友達だった子とどうしてももう一度会いたくて、強く強く願い続けた雪女の女の子が、自分の過去の思い出をカクリヨに引き寄せちゃって、大雪でカタストロフ状態ですぅ。なので、骸魂に飲み込まれてオブリビオンになっちゃった雪女の女の子を止めて下さぁい」
 ミントがグリモアに映し出したのは、辺り一面真っ白な雪景色。満開の桜でトンネル状の並木道は、その桜が綺麗に凍り付いており、ところどころ雪の重みに耐えられずひび割れた桜の隙間から入り込む雪は、トンネルの中をも雪に埋めんと舞い降りる。桜並木の外に至っては、それこそ何年に一度の災害級の豪雪を取り揃えたような、到底遊びきれないほどの雪の下に埋まってしまっていた。
「雪女の女の子……ユキちゃんのオブリビオンは、歌の力で大雪を降らせ続けていますぅ。この桜並木くらいしかテレポートできる場所がないので、ここから何とかしてユキちゃんの歌声の方に進んで下さぁい」
 進む道の確保、降り続ける雪への対処、雪の中に捕らわれた妖怪達の救出……カタストロフ下で何をすべきか、猟兵達は思案する。
「ユキちゃんのオブリビオンさえ倒せれば、雪景色は過去の思い出の子……サクラちゃんと雪遊びができるものになるはずですぅ☆ ユキちゃんが思い残しなく別れられるように、ユキちゃんやサクラちゃんと思い切り雪遊びしちゃいましょ~☆」
 グリモアに映し出されたのは、年端もいかぬ雪女の少女。骸魂に飲み込まれる前、あるいは救い出した後の姿。図らずもカタストロフの元凶と化した、助け出すべき妖怪の姿。
「それじゃあ行きますよぉ。グリモア・イリュージョン☆ ワぁン・ツぅー・スリぃー!」
 ミントが声を弾ませると、凍り付いた桜の並木道を映したグリモアは大きくなり、猟兵達より一回り大きい映像になる。
 大雪のカタストロフを雪ぐため、猟兵達は雪の花びらが舞い踊る桜並木に進んでいった。


鷹橋高希
 一体いつから雪は遊び道具から厄介者になったのでしょうか。

 昨年度は大変お世話になりました。

 本シナリオはオープニング公開次第プレイングを受け付けます。リプレイ執筆に割ける時間は金(木曜日32時30分以降)~日曜日に多くなります。
 また、必要に応じてプレイングを採用せずリプレイ文章を提出する可能性(断章等)があります。
 リプレイの進捗(特に、完成させられずの不受理)はマスターページで随時更新します。

 シナリオフレームの難易度は「普通」、冒険→ボス戦→日常の構成となります。

 第1章:冒険 『見上げれば、なにかが』
 見上げれば雪が降っています。
 骸魂に飲み込まれたユキの歌声が無限に降らせ続けています。
 カタストロフ級の大雪の降り積もったカクリヨファンタズムを、どうにかしてユキの歌声の方へ進んで下さい。

 第2章:ボス戦 Vs. (ある骸魂が雪女を飲み込んで変身したもの)
 詳細は断章での説明を予定しております。

 第3章:日常 『もう一度、あの頃へ』
 記憶の光景は、まるで「その人間が本当にそこにいるかのように」残り続けます。
 ひたすら遊び倒して下さい。

 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 冒険 『見上げれば、なにかが』

POW   :    気にせず無理矢理先へ

SPD   :    回避しながら先へ

WIZ   :    片付けながら先へ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御園・桜花
「このカクリヨで夢が残り続けるというならば。貴女の願いは世界と幸せに共存出来るかもしれませんもの。尽力させていただきます」

「地中ではなく雪の中を。安全に通り抜けられるよう、雪のトンネルを作って欲しいのです」
UC「ノームの召喚」使用
地中にトンネルではなく、豪雪の中を雪でトンネル作り
ノーム達と協力して豪雪に崩れないようしっかり固めながら作っていく
他者もこの中を通行したり避難してこれたりする場所にする
トンネルを伸ばしていく方向は聞き耳で決定
雪の寒さは氷結耐性や環境耐性、地形耐性で耐える

歌声の方角眺め
「貴女の、貴女達の寂しさが。それだけで世界を埋め尽くしてしまわないように。必ず辿り着いて見せますから」



●寂しい貴女の願いが
 凍り付いた桜のトンネルの一歩先は、見上げる限りの雪の壁。次に歌える時を願い続けた少女の夢が、歪みを伴って叶った雪景色。見上げていたのは御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。頭部の桜の枝を包む桜色のウェーブヘアに、雪の壁からはらりと新雪が降りる。
「このカクリヨで夢が残り続けるというならば。貴女の願いは世界と幸せに共存出来るかもしれませんもの。尽力させていただきます」
 オブリビオンを「影朧」と呼ぶ世界・サクラミラージュにおいて、桜花は影朧を癒やし転生という救いを施す桜の精。このカクリヨファンタズムでのオブリビオンは、骸魂に飲み込まれた妖怪であり、妖怪――雪女の少女の願いの時点では純粋に、また歌って遊びたいという「願い」だったはずだ。その願いを真に叶えてあげたいと、桜花は童唄のような調子で歌い出す。
「おいでおいで、土小人。私の手助けをしておくれ。代わりに石をあげましょう。ざらざら渡す石ビーズ、その分手助けをしておくれ」
 その歌に導かれるように、桜花の足元に広がる桜混じりの雪絨毯を割って土小人――ノームが顔を出す。
「呼んだかい?」
「こんにちは。今回は、地中ではなく雪の中を。安全に通り抜けられるよう、雪のトンネルを作って欲しいのです」
 ノームは今掘り開けた穴の中に戻り、他のノーム達に呼び掛ける。少しの後、最初に顔を出したノームを筆頭に、95体のノームがシャベルや手押しのダンプなど除雪に適した道具を携え、しゃがみ込んでいる桜花の前に並んだ。
「ご協力、よろしくお願いしますね」
 ハイホー! と陽気な声を上げ、ノーム達は雪の中に向かっていく。桜花のユーベルコード「ノームの召喚」による彼らは、人間の身にも耐えられぬほどに降り積もる豪雪を、人間より丈が低くともものともせず、雪を掻いてはトンネル状に固めていく。桜花自身も雪の中から掘り出された人間サイズの除雪器具を用いて、雪のトンネルを掘り進めていく。ハンドルを握る桜色の手袋はビームシールドを発生させ、防寒と適度な融雪能力でノーム達をサポートする。
「もう少し大きさを広げましょうか。妖怪の皆さんの避難にも使えるように」
 ハイホーハイホーと、ノームのうちの十数体はトンネルの側壁と天井に向かって掘り広げ、やがてトンネルは直径十数メートル――大型の妖怪や異世界で大きな体躯を誇る巨人やキャバリアなども往来できるだろう大きさ――に拡がった。上に掘り広げたからか、雪と化して降り積もる歌声がより鮮明に聞こえるようになり、その歌声の聞こえる方へ方向を調整しながらトンネルが掘り進められていく。
「貴女の、貴女達の寂しさが。それだけで世界を埋め尽くしてしまわないように。必ず辿り着いて見せますから」
 季節外れの白い吐息は歌声の向こう、季節外れの雪の壁に溶け、雪のトンネルは進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

箒星・仄々
別れ別れとなった友達と
また会いたい
一緒に遊びたいと願う気持ち
当然です

けれど
雪女の子さんも憑いた骸魂さんも
カタストロフを起こすことなんて
本当は望んでいないはず

お止めして差し上げましょう

ユキさんの歌に合わせるよう
竪琴を爪弾き曲を奏で
雪を魔力へ変換
雪なき道を悠々と歌の方向へ

満開の桜に降る雪は
見惚れるくらい美しい景色ですけれど
皆さん苦労されておいででしょう

魔力で更に周囲の雪を
炎で溶かしたり(被害が出ないように注意します
風で吹き飛ばしたり
水で溶かしたり

私の移動と共に元の雪へ戻ってしまう前に
出来るだけ人がいない
通行の邪魔にならない場所へ移動させます

ユキさんの歌
喜びとそれに悲しみも交じっているでしょうか



●喜びと悲しみのトリルが
「別れ別れとなった友達とまた会いたい、一緒に遊びたいと願う気持ち。当然です」
 けれど、と呟いて周囲を見渡すのは箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)。その大きな瞳に映る景色は、雪遊びもままならないほどの豪雪による雪景色。何もかもを埋め尽くし、今いるトンネル状の桜並木をも押し潰して余りある降雪は、雪女の少女の歌声が降らせるカタストロフ。
「雪女の子さんも憑いた骸魂さんも、カタストロフを起こすことなんて本当は望んでいないはずです。お止めして差し上げましょう」
 仄々は歌声に耳を澄ませ、その猫耳を細かく動かしながら凍り付いた桜並木を進む。
「満開の桜に降る雪は、見惚れるくらい美しい景色ですけれど――」
 桜に雪が降る美しさは、訪れた春に稀な彩りを楽しめるものだが、今降り積もる雪はカタストロフの名の通り、春の訪れた世界を塗り潰して滅ぼすほどに降り積もり続けている。その雪を降らせる雪女の少女のアカペラに合わせ、仄々は懐中時計――カッツェンリートを展開して竪琴にして爪弾き始める。竪琴から漂う蒸気――ユーベルコード「トリニティ・シンフォニー」は渦を巻くように広がっていき、降り積もる雪や氷、さらには桜並木の外で雪に埋もれた建物や看板など、仄々の半径101メートルにある無機物を三色の魔力に変換していく。
 雪や氷が魔力と化して消える様は雪解けのタイムラプスのようでありながら、建造物などの無機物までもが魔力と変わるため、雪に埋もれた家屋が木の柱や障子・襖・畳など有機物の建材を残して露わになり、人間の主無き家に住まう――家ごと雪に埋められた――妖怪達が目を丸くする。その妖怪達が目にするのは、竪琴を奏でる小さな二足歩行の黒猫。
「私達猟兵がこの事態を食い止めます。皆さんはどうか避難を」
「おおーっ、猟兵だ、すっげー!」
「雪がどんどん溶けていってるー!」
 猟兵である仄々自身や、炎・風・水と化した三色の魔力が雪を溶かし吹き飛ばしていくユーベルコードの威力に妖怪達は大盛り上がりだが、今のうちに避難を、と改めて仄々が呼び掛けることで妖怪達は桜並木――他の猟兵が避難場所を用意しているらしい――に向かっていく。
 仄々の半径101メートルは春を取り戻し、降ろうとする雪は風の魔力に吹き飛んで積もりもしない。しかしそれは仄々が伴奏を務めている間だけだ。風の魔力が吹き飛ばそうと降雪に触れて、仄々は雪に込められた感情を感じ取る。
(この歌には、喜びとそれに悲しみも交じっているでしょうか)
 進むほどクレッシェンドを帯びる歌声だが、仄々の竪琴もより蒸気を上げて主旋律に寄り添うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

グァンデ・アォ(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》

「おや? あれは何だろう……ねーねー、そこのオネーさん、これは何なの?」

通常はだいたいイラストの通りのキャラクターです。
好奇心の向くまま、あちこちウロチョロ飛び回っては、なんやかんやで状況を動かします。
念動力でその場にあるものをなんやかんやしたり、ウロチョロ飛び回ってなんやかんやしたり、危険な行為に勇気を出してなんやかんやします。

「サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします」

マシンヘルムに変形して誰かに装着してもらう(攻性ユニット化)場合に限り、口調と人格が大人のそれになり、装着者の行動をアシストします。



●RC/UC
 現代地球――UDCアースで失われた「過去の遺物」で組み上げられた世界・カクリヨファンタズムは、かつて遊んだ人間の少女を想う雪女の少女の願いに応じ、豪雪のカタストロフを迎えていた。この事態を予知したグリモア猟兵の依頼に応じ、猟兵達は雪女の歌声に乗せて降り積もる雪への対処や雪に埋められた妖怪の救出を行なっている。
「おや? あれは何だろう……ねーねー、そこのオネーさん、これは何なの?」
 声を発したのは、シューティングゲームの自機を思わせるような近未来的意匠のラジコン――正確にはドローン。「彼」もグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)という猟兵である。
「それは除雪車ね。人間が雪を片付けるために使ってた車」
 オネーさんと呼ばれた妖怪は、グァンデの傍らで操縦席までもが雪に埋もれた黄色の大型車を見て言った。雪の中からは大きなタイヤと除雪板が僅かに覗いており、今日のUDCアースでも通用する除雪車両――厳密には建機の転用――だが、これを使用するには、まずこれ自体を雪の中から掻き出す必要がある。さらには動力も、これを運転する必要もある。
「なるほど……こんな感じかな? って、わーっ!」
 グァンデが小首を傾げるようにロールすると、突然除雪車が浮かび上がった。除雪車に積もった雪が雪崩を起こし、グァンデは呑まれないように慌ただしく飛び退く。除雪車にあるまじき動きをさせたのは彼のユーベルコード「サイコキネシス」。サイキックエナジーで除雪車を動かせば動力源も運転手も必要なく、除雪車自体が雪に埋もれたりスタックする心配もない。
「少なくとも空は飛ばなかったと思う。道路が除雪できないし」
 妖怪は除雪車を見上げているが、今回の事態では道路だけを除雪すればいいというわけではないため、グァンデがラジコンのように縦横無尽に飛ばせるユーベルコードコントロール除雪車は、雪に埋もれた建物の上階などをも除雪していくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

回々・九流々々(サポート)
『僕だってやれば出来ます。はい』
 愉快な仲間のオブリビオンマシン × 四天王、7歳の女です。
 普段の口調は「コーヒーカップ(僕、~様、です、ます、でしょう、ですか?)」、酔った時は「くるくる(僕、~様、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●季節は廻る(廻りすぎる)
 カクリヨファンタズムに訪れた豪雪のカタストロフは猟兵達の尽力により、発生源に迫りつつあり、巻き込まれた妖怪達を助け出しつつあった。それでもまだ、積雪の絶対量は途轍もないものだった。
「積もった雪の量を減らしましょう。僕だってやれば出来ます。はい」
 雪の上で両腕を広げてくるくると回っているカラフルなツインテールの少女――回々・九流々々(くるくる・f21693)が言う。瞬く間に雪に埋もれてしまいそうなほどの小柄な少女だが、やれば出来ると豪語するのは、彼女が猟兵だからに他ならない。
「世界を滅ぼすほどに降り積もる雪、怪異ですよね。『怪異が起こる時間、僕等はきっと溌溂なのです』」
 くるくる回りながら九流々々が呟くと、ツインテールや袖の軌跡からカラフルな虹――ユーベルコード「トワイライトゾーン」が渦を巻いて同心円状に拡がり、その虹に触れた雪や無機物はティーカップに変わっていく。その大きさは、内部のベンチに人間が座ることの出来るもの。つまり遊園地などで見られる遊具のティーカップだ――回転ハンドルが虹色の触手に代わっていることを除けば。
「ぎゃああああああ!?」
「何これええええ!?」
 無機物でない妖怪達は、突如として回転ティーカップとお化け屋敷を足して2で割るどころか3を掛けても到底足りないSANチェック不可避の光景に居合わせるわけで――意外と楽しんでいた。春と冬のせめぎ合いが一気に夏の思い出の一コマめいたのだから開放的になるのも仕方ないのかもしれない。
「それでは、雪を排していきましょう」
 九流々々の半径78メートルに広がったティーカップに生えた触手は、遠心力に任せて――あるいは無視して――伸びては積もった雪を浚い、ティーカップの中の超次元に排出していく。
 豪雪下では排雪もままならないのがUDCアースでは必然だが、UDCアースの全ての黄昏が降り積もった豪雪は排され、カクリヨファンタズムの季節は再び春へと廻ろうとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『凍れるローレライ』

POW   :    凍れる吐息
【対象を凍結させる吐息】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    纏う氷
自身に【凍結の吐息により発生した氷】をまとい、高速移動と【氷塊でできた矢】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    誘う歌声
【自身の口】から【心惹かれる美しい歌声】を放ち、【歌声の持つ催眠効果】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠レティシャ・プリエールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●また遊ぼうね、サクラちゃん!
 豪雪の中を進んだ猟兵達は、凍り付いた桜の木に囲まれた雪原に辿り着く。その中央では、女性の人魚が歌っていた。人魚は猟兵達を見ると、微笑んで声を掛ける。

「待ってたよ、サクラちゃん。私はサクラちゃんとずっと歌って遊んでいたいの。だからもう、春なんて来なくていいの。ずっと、ずっと、雪の中で二人で、二人だけで歌うの」

 人魚の言葉と面差しに猟兵達は理解する――この人魚は「ユキ」だ、と。

 グリモア猟兵が予知で見せた姿よりも遙かに大きく、美しく成長した雪女を人魚に変えたような姿。
 募る想いが歪み果てて猟兵さえも想い人にしか見えず、想い人を否応なしに振り向かせ魅入らせる歌声。
 ユキを飲み込んだ骸魂が、セイレーンやローレライと呼ばれる類のものと察した猟兵もいるだろう。

「私も上手く歌えるようになったよ。だから聴いて、サクラちゃん」

 ユキがサクラに抱いた純粋な想いを取り戻すため、桜を飲み込む雪のカタストロフを止めるため、猟兵達は「春」の過去――「冬」に立ち向かう。
響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです


氷咲・雪菜(サポート)
 人間のサイキッカー×文豪、13歳の女です。
 普段の口調は「何となく丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、
 独り言は「何となく元気ない(私、あなた、~さん、ね、よ、なの、かしら?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

氷や雪が好きな女の子で、好きな季節は冬。
性格は明るく、フレンドリーで良く人に話しかける。
困っている人は放ってはおけない。
戦闘は主にサイコキャノンを使って戦う。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●吹雪の後に花風吹いて
「冬は好きです。だけど、桜や色々な花が咲くのを待ち侘びた春は、迎え入れないと」
 氷咲・雪菜(晴天の吹雪・f23461)は舞い降りた雪の結晶を掌に乗せ、解けていく様子に来たる春を見つめ、カクリヨファンタズムにカタストロフを招いた雪女の少女、ユキ――が人魚の骸魂に飲み込まれたオブリビオンを諭す。

「ごきげんよう、ユキ様。大変お美しいのですが……その姿は、貴女の望まれたものではありませんよね」
 響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)は予知で見た花開く前の可愛らしい少女が、苦悩の果てに妖艶とも言えるほどに成長してしまった姿に胸を痛める。

「嫌だよ、サクラちゃん。そんなこと言わないで……!」
 ユキには、猟兵達がサクラ――もう一度会いたいと願った人間の少女にしか見えていない。その少女から自身の想いを拒絶する言葉を告げられているのだから、ユキは頭を横に振る。それは交わした友情を待ち続けた痛みが、不実な恋人を憂う痛みと混じり合うのを堪えるようでもあった。
「ねぇ、サクラちゃん、今は私の歌を聴いてよ。一緒に歌うために、上手くなった歌だよ」
 だから、会えた想い人が二度と離れないようにと、催眠の込められた歌声がユキの口から紡がれ始める。

「助けるには、一旦相手するしかないね……。『往きなさい、氷の騎士たち』」
 雪菜が突き出した両腕には魔力増幅器「ブリザード・キャノン」がはめられており、氷の魔力の強化を示すように青白く輝く。その輝きは雪菜の腕を伝って掌から一発ずつ、氷の弾丸と化して放たれる。一発はユキに避けられるも、そのためにユキは歌を止め、猟兵達に催眠が及ぶことはなくなる。もう一発は弾丸と呼ぶにはあまりにも遅い速度で飛ぶが、飛びながら周囲の冷気を取り込んで氷の剣騎士と化し、ユキに斬り掛かる。
「危ないよ、やめてよサクラちゃ……っ!?」
 氷の剣騎士の一閃をユキは降雪の中を泳ぐように避けた。しかしユキの人魚と化した下半身は、雪女をして凍えを覚える痛みに見舞われる。視線を落としたユキの目には、自らを貫く氷の矢が映っていた。薄氷の矢羽の先には、弓を構えた氷の騎士。最初に避けたはずの弾丸は、形を変えてユキを射貫いたのだ。雪菜のユーベルコード「絶氷双騎」による二体の騎士は、氷剣と氷矢の猛吹雪となってユキに歌うことを許さない。

 雪菜がユキの自由を奪う間、リズは魔導杖「ルナティック・クリスタ」に魔力を込めていた。
「ユキ様を蝕む骸魂……その悪意だけを、『この薔薇のように綺麗に滅して差し上げますわ』」
 魔導杖の青いクリスタルが眩い光を放つと、クリスタルを抱く月の意匠が、そしてクリスタル自体も含めた魔導杖の全てが無数の白薔薇の花びらに変わり、魔力の花風に乗ってリズの半径77メートルを吹き回る。ちらちらと舞う雪の結晶を巻き込まずユキにだけ吹き付ける花びらは、リズのユーベルコードの名の通り「白薔薇の嵐」と呼ぶに相応しい。その白薔薇の嵐がユキを吹き抜ける度に、妖艶に成長してしまった人魚は、無邪気な年相応の少女の姿へと戻っていく――また遊ぼうね、と約束を交し合ったあの頃の姿へと。
 ユキの姿の変化に連れて、人を魅入らせる声色も、恋を知る前の純潔無垢な若々しい声色へと変わっていく。

「また歌って遊ぶのなら、そんな悲しい大人の姿から戻りましょう」
「ユキ様の本当の歌声は、サクラ様も好きな可愛らしい歌声なのでしょう?」
 ユキの姿を取り戻しゆく花嵐が、彼女と猟兵達を囲む凍り付いた桜の木々を吹き抜けると、桜の木を閉じ込める氷は少しずつ解け始め、未だ降る雪に桜の花びらが戯れ始める。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

サーシャ・ペンローズ(サポート)
 バーチャルキャラクターの電脳魔術士×バトルゲーマー、18歳の女です。
 普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●猫は雪原駆け回る
「サーシャです。今日はカクリヨファンタズムのカタストロフを止めに来ました」
 猫の肉球を模した飛行物体――動画撮影ドローンのレンズに向かって語り掛けるのはサーシャ・ペンローズ(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f26054)。ハートマークと猫をモチーフとしたであろう衣装のサーシャを捉えるドローンは、彼女から離れながらズームアウトし、彼女の周りに広がるカタストロフの光景――一面の雪景色と、凍り付いた満開の桜の木々にレンズを向ける。
『サーシャちゃんの配信だ』
『きれー』
『これはエモいわ』
 動画撮影ドローンと対になる肉球型リアクションドローンが、サーシャを中心とした球状に視聴者の反応をポップアップする。
「綺麗ですが、これは世界滅亡の危機です。あの子を止めないといけません」
 ドローンは雪女を人魚にしたような少女――ユキを映す。
「サクラちゃん、ラジコン持ってたんだ?」
『この子も綺麗だなぁ』
『寒そう』
『寒そうはサーシャちゃんもじゃね?w』
『思った笑』
『サクラちゃんて誰?』
 ユキはドローンを男子の玩具程度にあしらって、
「ラジコンより一緒に歌おうよ、サクラちゃん」
 ユキが歌い始めると、その催眠に心を奪われるサーシャは雪原に膝を付いた。
『上手い歌だけど画面のノイズががが』
『ここで寝たらサーシャちゃんヤバくね?』
『起きてーーーー!』
 次々とポップアップするコメント――ユーベルコード「グッドナイス・ブレイヴァー」は、サーシャの衣装のハートマークや猫パーツに吸い込まれていき、輝きを放って催眠を打ち破り、サーシャを再び立ち上がらせた。
「皆さん、応援ありがとうございます。助かりました」
 更に届くサーシャを応援するコメントは、額にピンク色のハートマークの描かれた黄色い猫に変化し、ユキに飛び掛かる。
「っ!?」
 猫とはいえ肉食の獣に――電脳魔術によるホログラムの類いだとしても――飛び掛かられてはユキも歌うどころではなく、雪の結晶舞う中を泳いで避ける。その隙にサーシャはもう一匹をけしかけ、ユキは二匹の猫から逃げるので精一杯となる。
 ピンク色のハートマークが額に付いた猫は、桜の花びらと戯れるようでもあった。猫が炬燵で丸くなる季節は、次の季節へ向かおうとしているのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

箒星・仄々
ユキさんも
骸魂さんも
世界の破滅を望まれてはいないはず
お止めして差し上げましょう

協奏を仕りましょう

人魚さんの歌声に合わせるように
歌い奏で
素敵な歌を盛り上げつつ
それが秘める催眠効果を打ち消します

既に催眠にかかった人を癒し
そして凍り付いて傷んだ?桜の木も回復
(共感して下さるならば

共に歌うことで
ユキさんと骸魂さんとが心満ち足りて下されば
骸魂さんは自ずと海へ還られるのではないでしょうか

誰かを大切に思う気持ちをお持ちの骸魂さんが
ユキさんやこの世界に生きる方々の犠牲を
決して望まれないはずですから

桜に雪と
幻想的な景色を楽しみながら
終幕のその時まで
お付き合いいたします

終幕
そのまま演奏と歌を続けて鎮魂とします


御園・桜花
「それは無理です、ユキさん。永遠の冬が続けば、人は死んでしまうから」
「直接的な寒さは体温を奪い人を死に至らしめます。太陽差さぬ曇天が長く長く続けば、人はくる病を患います。長く永く一緒に居ることだけが、貴女達の幸せだったとは思えません」
「貴女はサクラさんを殺して、その屍蝋を愛でたいのですか」
怒らせ嘆かせての浄化が目的のため、酷いことを言う

「貴女がサクラさんと会うのが好きだったのは。また明日、の約束があったからではないですか?また明日、また来年と、会う日を時間を指折り数えたからではないですか。会えぬ時間すら、貴女の想いを育んだはずです」
「世界を雪だけにはさせられません。サクラさんの桜を、貴女にも」



●また、と交わした約束が
「せっかく会えたのに! どうして!」
 雪女人魚のオブリビオン――ユキは追い詰められていた。会いたいと願った人間の少女・サクラ――猟兵達は幾度となく時を春へと進めようとする。
「ずっと冬なら! ずっと歌って遊べるのに!」

「――それは無理です、ユキさん」
 ユキに掛けられた声は、サクラのものではなかった。振り向いた先には、桜色のウェーブヘアの女性――御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)。
「永遠の冬が続けば、人は死んでしまうから」
「そんなことない! 私とサクラちゃんは毎年会えたもの!」

「――四季が巡り、冬への蓄えを育めたから、お二人は毎年お会い出来たのではないでしょうか」
 さらにサクラではない声が掛かる。小さな二足歩行の黒猫――箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)のものだ。

「その通りです。直接的な寒さは体温を奪い人を死に至らしめます。太陽差さぬ曇天が長く長く続けば、人はくる病を患います。貴女達が過ごした日々の中にも、このような豪雪により命を落とした人は少なくなかったはずです」
「そのような日々も、季節が巡ると……未来があると解っていたから人々は耐えられ、楽しめたのでしょう」
「長く永く一緒に居ることだけが、貴女達の幸せだったとは思えません」

「そんなことっ……!」
「それとも」
 桜花は声色を落とし、静かに言い放つ。

「貴女はサクラさんを殺して、その屍蝋を愛でたかったのですか」

「っ……!」
 ユキの背筋が凍り付く。泳いだ視線が雪原の微かな凹凸に、横たわるサクラの姿を幻視する。

 冷たくて。
 ズットイッショデ。

 歌わなくて。
 ズットカワイイワタシノトモダチ。

 もう二度と遊べない。
 モウニドトハナサナイ。

「――ユキさん、そして骸魂さんも、そのようなことは望まれていないですよね」
 仄々の声に息を呑んで顔を上げるユキ。
 仄々は骸魂――地球に居場所を失い幽世にも辿り着けず死んだ妖怪の霊魂、届かぬ想いに耐えられず入水し呪縛と化した「もうひとりのユキ」をも救おうとしているのだ。この言葉には桜花も頷き、仄々とアイコンタクトを交わす。
「その素敵な歌声、もう一度お聞かせ下さい。私が協奏を仕りましょう」
 仄々のカッツェンリートが展開され、竪琴から漂う蒸気が雪の結晶を受け止める。
「『コノオモイノナニガワカルカ! ハルナドイラヌ!』」
 ユキの口から漏れた声は奇怪な重なりを帯びていた。人魚は瞳を見開き、花冷えと呼ぶには苛烈過ぎる寒気の不協和音を歌う。桜の花びらと戯れる雪は再び桜を、世界を凍らせて――しまうことはなかった。仄々の協奏――ユーベルコード「シンフォニック・キュア」は不協和音を解きほぐし、冬が春を待ち望み、春が冬を名残惜しむような美しいハーモニーを作り上げる。

「貴女がサクラさんと会うのが好きだったのは。また明日、の約束があったからではないですか?」
 仄々とユキの歌の中、語り掛けるのは桜花。
「また明日、また来年と、会う日を時間を指折り数えたからではないですか。会えぬ時間すら、貴女の想いを育んだはずです」
 桜花の言葉にユキの瞳は徐々に潤み、ついに雪解け水が溢れ出す。桜の木々も氷を割って再び花開き、桜の花びらが雪原に春の足音を奏でる。

 不協和音だったユキ「達」の歌声が調和していくのに合わせ、仄々も竪琴の音を変えながら、桜と雪が奏でる幻想的な景色に猫瞳を細める。
(確かに受け取りました。歌声に込められた誰かを大切に思う気持ち。終幕までお付き合い致しましょう)

「貴女の願いを真に叶えるため、世界を雪だけにはさせられません。サクラさんの桜を、貴女にも。ですから――」

 桜花の言葉と共に、頭部に生えた桜の枝から一片の花びらがはらりと落ちて、雪の結晶を一つ乗せたままユキ――浮遊する人魚の周りを一周舞って雪原に落ちる。すると、花びらの下から小さな新緑が芽吹き、急速な成長を遂げて木が枝一杯に花を咲かせる。その木は誰もが一目見て桜と判り、その花は淡く輝く神秘の桜――幻朧桜、その霊体。
 影朧――オブリビオンに癒やしと救済を施す桜の精である桜花のユーベルコード「幻朧桜の召喚」により、異世界の大正の世を染める桜が幽世に咲き誇る。

「貴方の怒りも嘆きも……此の地で得た全ての痛みと想いを、此処に置いて逝かれませ」

 幻朧桜からはらはらと舞う花びらは、泣きながら歌い続けるユキを抱きしめるように桜吹雪となって吹き付ける。淡い桜色に照らされるユキの歌声はほとんど一つに重なって、その歌へのスタンディング・オベーションのように渦を巻いて立ち上った桜吹雪に乗って人魚の影が空へと消え、雪空の雲を割って陽が射す。
 桜吹雪が吹き抜けた幻朧桜の下では、泣き疲れて眠る雪女の少女が桜の絨毯に横たわっていた。その涙の跡を拭うように、桜の花びらが頬へと舞い降りる。

『また遊ぼうね、ユキちゃん!』
『うん! また遊ぼうね、サクラちゃん!』

 カタストロフの冬を終えた春のカクリヨファンタズムは、もう一度だけ、あの頃の「冬」を迎えようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『もう一度、あの頃へ』

POW   :    全力で遊びを極め尽くす

SPD   :    あれこれ欲張りに楽しんでみる

WIZ   :    のんびりとマイペースに遊ぶ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●冬来りなば
 猟兵達は、骸魂から解放された雪女の少女――ユキの願った過去の雪が舞い降りるのを見上げていた。満開の桜の上に、カタストロフのように凍り付かせることのない、今ひとたびの雪化粧。猟兵達の足元にも、柔らかく雪が積もる。

「ユーキーちゃーん!」

 少女の声に猟兵達が視線を向けると、ユキと同い年に見える防寒着を着込んだ「人間」の少女の姿。カクリヨファンタズムには存在しない「人間」がそこにいる理由はただ一つ。UDCアースで人間と過ごした「過去」を強く想った妖怪がいるからだ。

「サークーラーちゃーん!」

 その妖怪――ユキは、さっきまで猟兵達に見せていた窄まった感謝と謝罪の姿から一瞬で、友達と会った無邪気な少女に早変わりしてサクラの方へ駆け出した。

 雪遊びに最適な「過去」の雪が降り積もる春のカクリヨファンタズムで、猟兵達もまた、最終楽章を迎えた冬と春の二重唱を楽しむ。
御園・桜花
「遊んだ後は、おやつですね」
雪達磨と雪兎を何個も作って並べた後でUC「花見御膳」
元気が出るよう色付き花あられを浮かべた甘酒を準備する
サクラや他の猟兵用は温かく、ユキの分は冷たい甘酒にする
サクラはもしかしたら飲めも持てもしないかな、とは思っているので、置けるよう小盆に準備する

「叶わない願いは確かにあります。それでも。願い続ければ叶う願いはあるのです。例えその形が変わっても…貴女達の願いは、叶ったでしょう?」

「大事なのは願うこと、願い続けることですから。貴女の望みも、いつか必ず叶うことでしょう。骸の海に還っても、大事な方と逢いたいと願い続ければ。またお会いしましょう…善き転生を」
骸魂を鎮魂歌で送る


箒星・仄々
大好きなお友達同士の遊びはさぞ楽しく
そしてほんの一時のことになるでしょう

終わりのその時まで
お二人には沢山遊んで
素敵な時を過ごしてもらいたいです

お邪魔でなければ
私も混ぜていただき
雪合戦に雪だるま、そしお歌と
ご一緒させていただきましょう


桜と雪と幻想的な情景での楽しい時間は
やがてサクラさんが消えていく時に終わるでしょう

サクラさんと過ごした思い出は
もうユキさんの一部になっておられます

ユキさんの心の中にもう
サクラさんがおられるのです

だからいつでも会える

ユキさんは
そのことをもう分かっておいです

だから涙もあるでしょうが
きっと笑顔の見送りとなるでしょう

満開の桜がとっても美しいですね



●春遠からじ
「この時間も、今までの楽しかった時間と同じく、あっという間に過ぎるのでしょう」
 御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は二人の少女を眺めて呟いた。過ぎ去りし雪の季節、そして発達した文明が妖怪達の住まう隙間をも埋め尽くしたUDCアースでは二度と叶わない友人同士の邂逅。それが「過去」との再会という形ではあるものの、いや、あるからこそ叶ったのだった。
「お二人には沢山遊んで、素敵な時を過ごしてもらいたいですね」
 箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)もまた少女達を眺めている。UDCアースの「過去」が骸の海に流れ着く手前のこの世界――カクリヨファンタズムは世界と呼ぶには不安定で、この笑顔が叶うまでにも一つのカタストロフを迎えていたのだ。次に願いが望む「過去」を呼び寄せ、それがカタストロフに至らない、あるいは猟兵が食い止められる――そのような偶然は、この邂逅と同等かそれ以上の確率だろう。
「お邪魔でなさそうでしたら、私達も混ざらせてもらいましょうか」
 だからこそ、友人同士の最高の――最後の思い出を彩るために、二人は少女達に声を掛ける。
『いーいーよー!』
 サクラは二人を迎え入れる。過去にユキにもそうしたように。

『――それーっ!』
「わぷっ!? サクラさん、歌だけでなく雪玉投げるのも素晴らしいですねっ」
『あはは! 猫さん雪だらけ~!』
「二人で反撃だよ! せーのっ!」

『――わぁーっ! おっきな雪うさぎさんだ! お姉さん上手~!』
「うふふ、ありがとうございます」
『わたし、雪うさぎさんの子供を作る! ユキちゃんみたいにかわいいの!』
「じゃあわたしはサクラちゃんの雪うさぎ作ろ!」

 桜の花びらが混ざった雪で遊んで笑い合う時間は、いつまでも続きそうなほど、あっという間に過ぎていく。
『いっぱい遊んだねー』
 仄々と少女達は、桜花が一足先に休憩に入っているかまくらに入り込む。
「遊んだ後の休憩には、おやつですね」
 すると、桜花は四つの杯を用意しており、かまくらの中はほんのりとした甘酒の香りに満ちていた。桜花がユーベルコード「花見御膳」で用意した甘酒は花あられを浮かべ、香りを乗せた湯気を――雪女のための一杯を除いて――漂わせる。
『おいしそー!』
 いただきまーす、と杯を手に取るサクラとユキ。こくこくと喉を鳴らし、口を離して、美味しいねと微笑み合う少女達を見て仄々と桜花も微笑み、いただきますと仄々も口を付け、桜花自身も続く。
『お姉さん、ありがとう! すっごく美味しかった! お礼のお歌、歌ってあげるね! 猫さんも一緒に!』
 行くよ、と頷き合った二人が歌い始めると、四人を包むかまくらが桜の花びらと雪の結晶へと変わりながら歌声に乗って舞い始める。互いに年端もいかぬ少女だが、ユーベルコードに勝るとも劣らぬ表現力で歌い上げ、そのハーモニーは彼女達が出会うべくして出会ったと思わせる親和性で世界を満たしていく。その幻想的な世界に更なる輝きを添えるのは、仄々の歌声――ユーベルコード「シンフォニック・キュア」。

 この場の誰もが聴き惚れる歌声は、舞う雪が消えていくように終わろうとしていた。

 やがてその時が来て、桜花と仄々の拍手が響く。

 歌も季節も、終わるから思い出になれるのだ。

『――今日はそろそろ帰るね』
 サクラは別れを告げる。「過去」にユキにそうしていたように。
「……うんっ。またね」
 ユキは頷く。今度こそ「また」の機会は無いと解っていても。
『また遊ぼうね、ユキちゃん!』
 手を振るサクラの姿は、桜吹雪に乗るかのように遠ざかっていく。
「また遊ぼうね、サクラ、ちゃ、っ……!」
 声を詰まらせるユキは顔を上げ、サクラの姿を最後まで笑顔で見送った。

「叶わない願いは確かにあります。それでも。願い続ければ叶う願いはあるのです。例えその形が変わっても……貴女達の願いは、叶ったでしょう?」
 肩を震わせ俯くユキに、桜花はそっと手を添える。
「サクラさんと過ごした思い出は、もうユキさんの一部になっておられます。ユキさんの心の中にもう、サクラさんがおられるのです。だからこのように、またいつでも会えるのです。ユキさんは、そのことをもう分かっておいで、でしょう?」
 仄々が震えるユキの手を優しく握ると、桜花は、一面に咲き誇る桜の向こうを見上げる。
「大事なのは願うこと、願い続けることですから。貴女の望みも、いつか必ず叶うことでしょう。骸の海に還っても、大事な方と逢いたいと願い続ければ。またお会いしましょう……善き転生を」
 桜花がユキを美しい女性へと成長させていた人魚の骸魂へ向けた鎮魂歌を歌い始めると、仄々はカッツェンリートで伴奏する。ユキもまた歌い始めると、待ち侘びたかのように桜の木々が桜吹雪を舞わせる。桜吹雪はユキを抱きしめるように舞い、花びらの中に一瞬だけ、春を重ね美しく咲き誇ったサクラの姿が浮かんだ。

「またね、サクラちゃん」
『うん! またね、ユキちゃん!』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月22日


挿絵イラスト