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耶格的全席大戰暗黑美食/猟兵全席VS暗黒料理(邦題)

#封神武侠界

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#封神武侠界


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●風光明媚な桃源郷に漂う辛香(シンシャン)
 桃源郷、ここは封神武侠界のどこかにあると謂われる楽園である。季節を問わずに桃の花が咲き乱れる景勝地でありながらも、滞在した者の霊力も高めてくれる龍脈が走る土地でもある。
 龍脈による霊気の恩恵は水、空気、土質にも影響を与えて独特の風土を形成し、かの地に住む民は飢えに困るはなかった。そうなると、必然的に食文化もこの地独自のものとなる。泥臭く濁った川の水ではない澄んだ清水は飲めるのは勿論、土の付いた採れたて新鮮な野菜を洗ってすぐ食べたり料理の煮炊きにもそのまま使えるのだ。味付けも薄味で素材のうま味を生かす料理が多く、どこか日本料理に通じる部分があるだろう。
 しかし、外界から隔絶している故に困った事が起きた。

『ホーッホッホッホ! この勝負、ワタシの勝ちネ! 約束通り、この店の暖簾は頂いていくアル』
 勝ち誇ったかのように笑うのは、黒いコック帽と中華服めいた長袖のコックコートを身に纏う、ナマズヒゲが特徴的なの料理人であった。その前には悔し涙を浮かべる初老の男と父を気遣いながら寄り添う娘の姿がある。黒ずくめの料理人は彼らを歯牙にかけることなく、食堂の入り口にかけてあった店の名が書かれた暖簾を乱暴に取り払い何処かへと消えていった。

「お父さん、しっかりして! お店の暖簾が持っていかれちゃうわ!」
 この店の看板娘である娘は、むざむざと店のシンボルである暖簾を持っていかれることに我慢ならなかった。だが、彼との料理勝負に父は負けたのだ。父が勝てばあの料理人はこの桃源郷から去る約束をし、父が負ければこの店の暖簾を頂くという約束でだ。

「うう……すまん。ワシが不甲斐ないばかりに……」
「お父さんの料理はここ一番の評判じゃない。今度はこちらから勝負を挑んで暖簾を奪い返しましょう」
 だが、父はただただ頭を横に振るだけだ。

「湯匙が……湯匙が止まらんのだ。ただ辛いだけかと思いきや、複雑な旨味と痺れる未知の感覚が口に広がり……。震える手を止めようにも、無意識に身体が求めようとするのだ。ワシの知ってる料理では、この料理に勝つことが出来ん……出来んのだぁ!」
 むせび泣きながらも店の主人が手を抑えようにも、それに反して次から次へと暴力的にまで赤黒い餡が口へと運ばれていく。その度に額から滝のように汗が流れ、火照った身体が更に更にその料理を求めようと手を進めてしまう。
 ここまで中毒性が高い料理の正体とは如何なるものか。その正体は、まさしくも麻婆豆腐そのものであった。


●グリモアベースにて
「ここが様々な世界から英傑が集まるグリモアベースなんだってな。おっと、名乗り遅れたな。俺の名は黄・威龍だ。今後とも宜しく頼むぜ」
 集まった猟兵たちを前に、龍の瑞獣である黄・威龍(遊侠江湖・f32683)はパンッと軽快に両手を叩き合わせて拱手の礼を行う。鍛え上げられた両腕、ナイフのように鋭い眼光を覗かせる顔には無数の傷跡が走っており、威風堂々としながらも深々に礼を終えた彼は話を続けた。

「でだ。ついさっき、目覚めの悪い白昼夢を見てしまってな。他の奴らに聞いてみたら予知とかいう奴で妖獣、ここではオブリビオンだったか。その兆候と聞き及んだ訳だ」
 つい先日に発見された封神武侠界出身の彼としては、全てが初めて聞き及ぶものだ。しかし、彼はすぐに理解した。その予知夢が現実に起きようとする事件の前兆である事を。それを止めるべく義勇心に駆られ、こうして仲間である猟兵たちを集めたのだ。

「どうやら桃源郷の霊脈を狙いに、外界からオブリビオンがやってきたらしい。だが、奇妙な奴でな。武力によらず、文化で桃源郷に住む民の人心を屈服させていやがる。その方法とはだな、料理だ」
 神聖な霊地である桃源郷。その地に滞在する者の霊力を高める効力があるが故、オブリビオンがその場所を乗っ取ってしまったのだ。

「とは言え、料理人のオブリビオンが乗っ取った地はまだごく一部に過ぎねぇ。具体的には、料理店が立ち並ぶ場所を占拠してしまっているらしい」
 そのオブリビオンは、暗黒料理人という暗黒料理を極めた者だ。彼が作り出す料理は人心を乱し、大地を汚し、天を覆い尽くさんとする力を持っているという。現に彼が作り出す麻辣が効いた暗黒料理の前に、全ての料理店は自分の料理では勝てないと敗北を認めてしまい、店の顔であり命でもある暖簾が奪われてしまった。

「そしてふざけたことに奴は『料理は武術』を信条とする邪悪な武術家でもあって、調子に乗った野郎は店も兼ねた暗黒料理兼拳法道場をぶっ立てる始末だ。既に弟子も現地から幾人も取っていて、まずそいつらの頭を冷やしてやらねぇと主である暗黒料理人の元には辿り着かねぇだろうよ。行動を共にする俺も助太刀してぇとこだが、人間相手には力加減が難しくてな。その所は容赦してくれ」
 暗黒料理人がどのような暗黒料理を得意とするかも威龍は掻い摘んで説明をし、どうやらUDCアースにおける四川料理に似たものであるとのこと。味覚には甘味、酸味、塩味、苦味、辛味と五つあるが、四川料理には麻(マー)と呼ばれる所謂『痺れる』という辛味とは別の味覚が存在する。
 更にはその麻も六つに細分化され、花椒を使った痺れと辛みの麻辣(マーラー)。花椒と唐辛子の香りが一際強い辛さの香辣(シャンラー)。 唐辛子を炒め焦がしたような辛さの煳辣(フーラー)。糟漬け唐辛子のような辛さの糟辣(ザオラー)。酸っぱくも辛い酸辣(スアンラー)。生の青唐辛子を使ったような辛さの鮮辣(シェンラー)がある。

「奴は辛味を駆使した料理を得意としてやがる。ここの桃源郷の郷土料理は割とあっさりめだから、未知の味であるそ暗黒料理には打ち勝つことは出来ねぇ。そこでだ、様々な世界を渡り歩いた見聞を見込んで、暗黒料理人に負けを認めさせる料理を作って貰いてぇんだ。暗黒料理人はオブリビオンに成り下がっているが、腐っても誇りを持つ料理人だ。武人同様に潔く負けを認めれば、骸の海とかいうあの世にに戻っていくだろうよ」
 これで説明を終えたとぶっきらぼうに威龍は締めると、首元にかけたマフラーから小さな玉を取り出した。

「では、俺の宝貝『如意宝珠』で桃源郷へ纏めて送るぞ。ああ、そうだ言い忘れてたな。ここは茶も美味いらしい。オブリビオン退治が済んだら、手を貸してくれた礼に飲茶を奢るぜ。かく言う俺も茶には目がなくてな」
 彼が如意宝珠と呼ぶ宝貝……グリモアが宙に浮かび上がり、北極星の如き眩い光が一面に照らされる。光が収まるとそこには誰もおらず、その場に居た者らは封神武侠界の桃源郷へと転送されるのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 中華料理と言えば、病みつきになる辛さの四川料理が好きです。
 しかしながら、調子に乗って食べると後日お尻がヒリヒリしてしまうのが悩みの種ですので、その解決方法が知りたい今日この頃です。

●シナリオ概要
 封神武侠界の霊地『桃源郷』がオブリビオンに乗っ取られてしまいました。
 このまま放置しておけばオブリビオンは力を増していくばかりですので、撃破して桃源郷を奪還しましょう。

●戦場の情報
 第一章目は『冒険』フレームとなります。
 桃源郷をオブリビオンの支配下から解放すべく、暗黒料理人が経営する店舗兼暗黒料道場もとい拳法道場へ猟兵達は殴り込みます。
 暗黒料理の虜となってしまったこの桃源郷の住民である門下生たちが襲いかかってきますが、物理的に排除するなりお料理勝負を申し込むなり自由に勝負に挑みましょう。
 彼らの倒したり改心させた先には、主である暗黒料理人が待ち受けています。

 第二章目は『ボス戦』フレームとなります。
 この桃源郷を暗黒料理で支配する暗黒料理人との対決です。
 彼は手にした包丁や鍋などで物理的に猟兵を排除しようとはせず、次々と作り出す暗黒料理で猟兵を虜にしようとしてきます。
 食材はほぼ何でも取り揃っていますので、暗黒料理人を唸らせる料理を作り出し、彼に料理人として負けを認めさせれば勝利となります。

 第三章目は『日常』フレームとなります。
 暗黒料理の脅威が去った桃源郷。
 元に戻ったほんのり甘い桃の花の香りの中で、中国茶やそれ以外の様々なお茶、デザートの点心と共に食後の飲茶(ティータイム)をお楽しみください。
 プレイング内で威龍へお声がかかりましたら、リプレイ内でさらっとお邪魔します。


 それでは、暗黒料理の辛さに負けない皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『道場破り』

POW   :    向かってくる弟子達をちぎっては投げる

SPD   :    弟子達の妨害を掻い潜り、道場主のもとを目指す

WIZ   :    弟子達を説得し、道場主の支配から解放する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『功尽喰堂(くっくどう)』……桃源郷に住む住民の集落より少し離れた山裾にそれはあった。重々しい扉の上に掲げられた店名か道場名、もしくはその両方を意味するであろう看板があり、住民から聞き取った話と照らし合わせればここに間違いない。
 どこか顔色を悪くしながら『あれが世にきく…』と狼狽してしまったり、UDCアースにおいて民・明なる探索者が古代中国武術を専門に書き残したとして伝わる怪書にあるような名だが、今はそれを忘れよう。
 門戸を開いた先は広場となっており、そこでは門下生たちが鍛錬を行っていた。片や砂利をチャーハンと見立てて中華鍋を延々と振る者、熱した油が入った油壺に五指を突き入れる者、高く積み上げられた皿を両手に持ちながら落とさずにポーズを維持する者などなど。料理人の世界は皿洗いからスタートであるが、暗黒料理では違う。これらの過酷な修行を突破してからようやく皿洗いとしてスタートできるのだ。

『ぬぅうう、貴様ら! 何奴!!』
 門下生の一人がこちらに気づくと他の者も一斉に振り向き、周囲は一気に殺気立つ。聞き取った話どおりであれば、彼らは暗黒料理に魅せられた集落の者や料理勝負に負けて弟子になった元店主たちだ。そして、ここには暗黒料理人の姿は見当たらない。恐らくこの先にぽっかりと口を開けている先の店内、厨房にて料理を作っているのであろう。
 まずは迫りくる弟子たちを何とかせねば、彼らはその先にも追ってくるだろう。猟兵たちは、何処か香ばしく食欲を刺激する匂いが漂う中、彼らとの戦いに挑むのであった。
アイオライト・セプテンバー
南・七七三(f30098)と参加

正直キャバリア使った方が楽だけど、紛いなりにも彼らは料理人
なればこそ、料理で語るが人の心! そうでしょう七七三? ヨシ!

っつーわけでたのもー!!
(打ちたての麺をぎっしり積めた木箱を片手に扉をバァーン!)

本来、中華料理は医食同源!
痺れる辛さは命に活を入れるためのもの!
それを民を泣かせる手段にするなど言語同断!
私の打った〝暖か味〟を秘めた手打ち麺で目を覚ましなさい!

私の【ライトニング・マニューバ】は本来キャバリアの操縦のためのものだけど体に染みついてるから使えるわ!
鍛えられた【空中戦】殺法で道場を飛び回り
門下生の口に麺を叩き込んで黙らせながら道場主を目指すわよ!!!


南・七七三
アイぱいせん(f29954)と

……初めてだな、「異世界」ってやつ
思わず、きょろきょろ

っと、そだ、戦闘
生身は慣れてないけど足引っ張らないよう――(太腿のホルスターから小型拳銃を抜きかける)(えっ、って顔で頼れる先輩を見る)
「えっあっ……うん! わ、わかった!」(???)

えっ、えと……そう、援護射撃!
派手な動きができない分、上手いこと影に隠れて合間を縫って
裏を取ろうとする門下生を後ろから捕まえて……掠め取っといたぱいせんの麺を……口に叩き込む!

これでいいの!? アタシこれで合ってる!?
あーーーもーーー生身でも先々行くんだからぱいせんってばぁ!

(わめきながらもきっちり援護してついていく系ギャル)



「……初めてだな、『異世界』ってやつ」
 パツキンのセミロングボブに着崩した学生服という、一見すれば学生のギャルである南・七七三(“鬼灯"・f30098)。クロムキャバリア出身である彼女だったが、その世界から出て初めて訪れた世界『封神武侠界』に足を踏み入れた。元居た世界では中々見られない異文化は大いに興味を惹かれたが、同時にいざ敵の牙城を目の前にすればその重々しさに否応なくプレッシャーを感じてしまう。
 『功尽喰堂』と書かれた看板を中心に顔を上げながら不安そうにキョロキョロと視線を泳がしている横には、そんな彼女とは対象的にやる気に満ちているアイオライト・セプテンバー(〝ブルーテイル〟・f29954)が横に並んでいる。

「正直キャバリア使った方が楽だけど、紛いなりにも彼らは料理人。なればこそ、料理で語るが人の心! そうでしょう七七三?」
「えっあっ……うん! わ、わかった!」
「ヨシ! っつーわけでたのもー!!」
 若干テンパり気味に、大腿部のホルスターから可愛くデコった小型拳銃を抜きかけようとしていた七七三だったが、突然アイオライトに話しかけられた彼女は驚いた様子で頼れる先輩の顔をビクリとしながら見てしまう。何をヨシと言ったかは定かではないが、頼れる先輩ことアイぱいせんは何かがきっしり詰まった木箱を片手しながら門戸の前に歩みだす。そして、道場破りの時間だとばかりに勢いよく蹴り開けた。

『なっ…』
 突然の道場破り。周囲の飯店は主の暗黒料理人によって全て暖簾が奪われており、反抗するものなど誰も存在しないとばかりに鍛錬に明け暮れる門下生たちは驚き戸惑ってしまう。

「暗黒料理の虜になった者よ、とくと聞け! 本来、中華料理は医食同源! 痺れる辛さは命に活を入れるためのもの! それを民を泣かせる手段にするなど言語同断! 私の打った〝暖か味〟を秘めた手打ち麺で目を覚ましなさい!」
 勢いよく啖呵を切ると、アイオライトは手にしていた木箱を床に落とすと、その衝撃で蓋が開く。その中には、粗熱がまだ冷めない出来たてほやほやの味付け中華麺もとい油そばがぎっしり詰まっていた。

「はい、七七三ちゃん」
 暗黒料理の門下生らと同様にポカンとあっけにとられる七七三へ、アイオライトは食品用手袋を手渡す。衛生的にもだけど油そばで手を汚さないためだからね、と説明しながら手袋を付ける先輩の見様見真似とばかりに彼女も手袋を付ける。

『…ええいっ、道場破りには違わない。やってしまえー!』
「えっ、えと……そう、援護射撃!」
 門下生らはおたまや中華鍋、中華包丁など様々な調理器具を片手に襲いかかるが、そこへ七七三が投げた何かがドカンと炸裂した。周囲がもくもくと広がる煙幕に包まれる中、門下生らは次々とくしゃみを連発し始める。

『ふぇ…くしゅん!! これは、胡椒……へっくしゅぅんッ!!』
「……あのー、あいぱいせん? これで本当に良かったんですか?」
「ばっちしばっちし、グーだよ。この人たちは、暗黒料理人の支配下に置かれているけど元は桃源郷の住民たちだからね。オブリビオンマシンの支配下に置かれた人たちの救出と思えばいいよ」
 いつの間にか顔面も完全防護できるガスマスクを被っている七七三へ、同じくガスマスク姿のアイオライトはグッとサムズ・アップして、ナイスな支援をした後輩にと向ける。まだこれで良いのかと戸惑う七七三を他所に、アイオライトは駆けて跳んだ。そして、小分けした中華麺を門下生のくしゃみを出そうと大きく開けた口へとねじり込む。油コーティングされた麺は抵抗なく口を満たし、香ばしくも優しいごま油の風味が溶け合ったしょう油の香りと共に鼻腔をくすぐり、そしてむせた。だが、それを吐き出そうとはせず、門下生は倒れながらもその味を確かめようと、どこか懐かしい優しい味わいに浸っていた。

『うぃっくしゅん! くそ、くしゃみが止まらな……もがーっ!?』
「これでいいの!? アタシこれで合ってる!?」
 未だ晴れない胡椒の煙幕、先行するアイオライトの影に隠れながら、彼女も先輩に倣って麺を門下生の口へ叩き込む。反応はアイオライトと同様で、何か多幸感に満ちている門下生の姿に違和感を覚えながら彼女はふと思った。

――これ、何かヤバい物混じっていない?
 恐る恐ると手袋に付いた油そばのタレをガスマスクの隙間から指先を入れて舐めてみるが、とくに変わったものがない普通に美味しい油そばだ。ただ、ほんのり化学調味料独特の味が強めなだけで、至って普通の油そばである。

「この調子で門下生の口に麺を叩き込んで黙らせながら、道場主を目指すわよ!!!」
「あーーーもーーー! 生身でも先々行くんだから、ぱいせんってばぁ!」
 この勢いに乗って先へ先へと進むアイオライトの姿を、七七三は慌てながら追いかけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳶沢・成美(サポート)
『え、これが魔導書? まあどうしよう?』
『まあどうでもいいや、オブリビオンなら倒すだけですよ』

故郷UDCアースの下町の古書店でたまたま見つけた魔導書を読んで覚醒した自称なんちゃって陰陽師

昨今でいう陽キャラ? みたいな行動は正直よくわからないのでマイペースに行動
でも集団での行動も嫌いじゃないですよ
元ボランティア同好会でつい気合い入れて掃除しちゃったりしなかったり
一応木工好きでゲートボール好きキャラのはず……たぶん

戦い方は直接殴るより術をとばす方が好みです
範囲攻撃とかロマンですよね
例え好みの容姿だろうと、事情があろうと敵ならスパッと倒すだけですよ

アドリブ・絡み・可



「まさかこうも、何かの漫画で見た料理バトル物が本の中から出てきた感じだなんて」
 未だ胡椒の粉塵が収まらない中、鳶沢・成美(探索者の陰陽師・f03142)は普段はハチマキとして頭に巻いている白いフェイスタオルで口元を覆いながら進む。しかしながらこれでくしゃみをせずに済むが、目だけはどうしようも保護できない。鳶沢は薄く目を開けながら腰をかがめて、できるだけ胡椒が薄い場所に頭を落として進んでいると何かが頭を掠った。

『こ、こンの~~! 一体何処に居る!?』
 とっさに身体を伏せて視線を上に向けると、涙と鼻水を顔いっぱいに流しながら叫んでいる男が居た。まだ濃い胡椒の粉塵ではっきりと見えないが、調理器具を手にしているところを見れば暗黒料理門下生なのだろう。

「……どうやら、他にも居そうですね」
 耳を研ぎ澄ませば他にも声が聞こえてくる。いくら視界が遮られているからと言って、こうもがむしゃらに武器となるものを振り回されていれば予測不可能だ。あと、可能な限りであるが、この胡椒をなんとかしたい。目が少しヒリヒリしてきており、目を水で洗い流したい気持ちが沸々と湧き上がり始めてきていた鳶沢だったが、あることを思いついて陰陽師入門と銘された魔導書のページを開く。

「ええっと……これなんか良さそうだね」
 書に書かれている術を確認すると、彼は印を切りながら真言を唱える。すると、急に周囲の空気が冷え始めて、何処からともなく風が吹いてきた。それに門下生たちが風が起こったと、この胡椒地獄から逃れる神風が舞い吹いたと喜ぶのもつかの間で、風はどんどん渦を巻いて勢いを増していく。

「舞え、氷の竜よ。アイストルネード……なんちゃって」
 鳶沢が最後の印を切ると術は完成し、自身を軸に無数の細かい氷の粒が暴風と共に門下生に襲いかかる。轟々と唸る風の音に悲鳴のような物が聞こえるが、彼は術が収まるまでじっとていた。暫くすると、風は次第に止んでいき胡椒の粉塵も消えていた。

「よっこらせっと」
 鳶沢が立ち上がると周囲を見渡す。暗黒料理の鍛錬に使うものだろうか、様々な器具が無残にも残骸となって周囲に散らばり、壁の周りには門下生らが氷の粒に埋もれながら目を回して気絶している。一通り見回したが、門下生を残り残らず一網打尽にしたようであった。

「ふぅ~、スッキリした。貴方達はそこで少し頭を冷やしてくださいね?」
 水瓶を見つけると目の回しを丹念に洗い流し、回復した視界で氷締めさながらの状態である門下生に礼をして進む。誰も居ない広場を越えた先にある楼閣の入り口に入ると、食欲を刺激させる香ばしい匂いが奥から漂ってくる。この匂いの先に、この騒動の元凶となった暗黒料理人が居るのだろう。
 彼の作る中華料理とはどんなものか想像しながら進む度に匂いが濃くなる中、鳶沢は奥へと向かうのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『暗黒料理人』

POW   :    暗黒料理・天
【超暗黒料理人】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【ながらも食欲を掻き立てる暗黒料理】を放ち続ける。
SPD   :    暗黒料理・人
【暗黒料理によって完全に支配下に置いた者達】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    暗黒料理・地
【暗黒料理】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【から無限に食材が湧き出る環境に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 大陸独自の彩色と装飾が施された楼閣の中を、奥に奥にと進むに連れ食欲を唆られる匂いが強まっていく。狭い通路を抜けた先には再び広い空間が広がっており、所狭しにいくつもある丸い食卓を取り囲むよう椅子が並べられている。部屋の隅に大きく口を開けたかのような出入り口には暖簾がかけられているところを見ると、ここが食堂なのだろう。
 だが、猟兵たちはその異様さに気づく。壁には幾つもの暖簾がこれまでの戦勝を称えるかのような戦利品であるかのように飾られているのだ。書かれている文字を見れば暗黒料理人が料理勝負と奪い取っていった物ばかりだ。

『そこで何をしているアルか!!』
 奥から聞こえた怒声が静寂を破ると何かがビュンビュンと回転して唸りながら壁に突き刺さる。それは紛うことなき中華包丁そのもので、視線を投げられた方向へ向ければこの功尽喰堂(くっくどう)の主にして店主、暗黒料理人がズカズカと厨房から歩き出てきていた。

『まだ開店前に忍び込むとは怪しい奴ネ。ふぅぅむ…この周辺の料理屋はあらかた潰し、ワタシの店にスパイで忍び込もうとする輩でもなさそうで……むむむ!? この気配、は正しく猟兵に違いないネ!』
 どうやら暗黒料理人はこの楼閣に、ましてや門下生が修練を行っていた場での騒動には気づいていなかったようだ。

『ハッハーン…読めたアル。お前たちはワタシを倒し、この暖簾を奪い返しに来たと言う訳ネ。ワタシは売られた喧嘩は買う主義ヨ。ただし、何かを賭けないと勝負に張りが無いアル……では、こうしよう。ワタシとの料理勝負に勝ったら、この暖簾を返してワタシも骸の海に還るネ。だ・け・ど、お前たちが負けたらこの店で一生働いて貰うアル。お前たちが打ちのめした門下生どものように、暗黒料理の真髄を身体に叩き込んでヤルね。ホーッホッホッホ!!』
 勝手に話を進められているが、元よりこちらもその気で殴り込んできたのだ。幸いにも暗黒料理人に連れられて入った厨房の中には、どこから調達したのかは定かではないが封神武侠界全土の食材が所狭しとある。更にはコンキスタドールとの違法交易によって密輸されたのか、南国由来の果実やスパイスもある充実ぶりだ。
 如何にして麻の暗黒料理を極めた暗黒料理人の舌を唸らせる料理を作れるか、厨房はまさに戦場のさながらの熱気に包まれたのであった。
アイオライト・セプテンバー
南・七七三(f30098)と参加

「出たな暗黒料理人! ちぢれ麺の如く歪んだ貴様の性根、太ストレート麺の如く正してやるわ! 行くわよ七七三! 私が麺を打つ間にこのラーメンと良い感じにマリアージュするやつを宜しく!!」
(スパァン!)(スパァン!)
一枚の生地を打ち延ばすことによって造る古来の拉麵技法!
そして豚骨、鶏ガラ、煮干しの三要素の黄金比が織り成す多重層の味わいを持つ琥珀色のスープ!

見よ! 真心こめた素材と技術だけが放つ黄金の輝き!
【濃厚豚骨醤油黄金(ゴルディオン)ラーメン】いっちょあがり!

「一句できました。豚骨の 薫風めいて 最上川」

「今よ! 七七三の炒飯と合わせてさあ、おあがりよ!!」


南・七七三
ぱいせん(f29954)と

「どうするぱいせん!? やっぱなんか創作系のラー――」
(材料を見る)
(二度見)
王道勝負かぁ……
「わ、わーったよぉ! サイドメニューは……アタシに任せな!」
料理は割と得意だし、うん
かてーてきギャルなトコ見せてやるってんだ

暗黒料理に負けないインパクト……ぱいせんのラーメンを邪魔しない……よし
作るのは黒チャーハン!
横目に作業を見て使いそなもの渡したりしつつ材料を炒め
あ、火力出て楽しいな……
黒は……この持参したプラント謹製、ご飯に混ぜる海苔ですよなやつ!
コク出て美味しいんだよね
て、手抜きじゃない! 新鮮でしょ!?

えっ。えーと……
「さよなら全てのクロムキャバリア……」(下の句)



「出たな暗黒料理人! ちぢれ麺の如く歪んだ貴様の性根、太ストレート麺の如く正してやるわ!」
『ホッ! 威勢のいい娘っ子ネ。後で吠え面をかいても知らないアルヨ!』
 ついに始まったお料理バトル。ビシッと指をさすアイオライトを尻目に、暗黒料理人は自らの勝利を確信しながらも手際よく材料を中華包丁で細切りにしていく。

「うわー……さっすが、料理のプロ。鮮やかな包丁さばきですね。どうするぱいせん!? やっぱなんか創作系のラー――」
 その鮮やかな包丁さばきに思わず七七三は魅入ってしまいそうになるが、こちらも急いで料理を作らなければならない。彼女の頼れるパイセンことアイオライトは事前に仕込んだ材料を準備しており、それはまばゆい光とともに二人の元へ転送されてきた。
 それは大きな大きな寸動鍋であった。中には野菜や果物に魚や骨などが浮かんでおり、そのクタクタ具合を見る限り長い時間煮込んでいたようだ。その中身を興味深そうに覗いた七七三は思わず二度見してしまう。何せ彼女が言いかけていたラーメン。王道オブ王道による王道勝負となるのだから。

「敵ながらあっぱれ。だけど感心して見入っている暇はないわ。行くわよ七七三! 私が麺を打つ間に、このラーメンと良い感じにマリアージュするやつを宜しく!!」
「わ、わーったよぉ! サイドメニューは……アタシに任せな!」
 予め仕込んできたラーメンの命とも言えるスープを温め直そうと火に掛けると、今度は腕を捲くりながら面打ち職人さながらの気迫を見せるアイオライトに七七三は何か言いたげな顔をする。だが、今はそれどころではない。巨大なボウルで小麦粉に打ち水を加えて爪を立てたの猫の如く指の関節を曲げて混ぜ合わせる『水回し』という作業に専念し始めているパイセンの指示を受け、七七三も厨房を慌ただしく周り材料をまな板まで運んでいく。

『ホッホー、奇遇ネ。ワタシも麺料理アルよ。どんな物が出来上がるのか楽しみネ!』
 余裕綽々の暗黒料理人に対し、七七三は相手の口車に乗らないようにフンとそっぽを向く。自分は料理のプロではないが、自炊にはそれなりの自信はある。しかし、いざ作るとなると何を作って良いのかテンパってしまう。あれでもないこれでもないと身体を動かしながら導いた料理も、まさに王道の王道である。

「暗黒料理に負けないインパクト……ぱいせんのラーメンを邪魔しない……よし決めた。作るのは黒チャーハン!」
 アイオライトが既に生地を練り上げようとしている中、彼女は決断を下した。幸いにも焼き飯用の予め炊かれた米も材料にある。チャーハンはシンプルな料理故に料理人の腕を見極める料理であると何かで聞いた気もするが、逆に言えばシンプル故に可能性は無限な料理でもあり、彼女には秘策の秘策があった。果たして黒チャーハンとは如何なるチャーハンなのか。

「一枚の生地を打ち延ばすことによって造る古来の拉麵技法! そして豚骨、鶏ガラ、煮干しの三要素の黄金比が織り成す多重層の味わいを持つ琥珀色のスープ!」
 一方、アイオライトも自身の料理の完成へと一気に畳み掛けた。打ち伸ばした生地を均一に切りながら麺状にすると、仕上げに両手で一気に広げて引っ張る。麺を伸ばし終えればそれらを一食分に切り分け、湯が煮え立つ鍋にかけたテボと呼ばれる細長い麺用のザルに投じていく。
 その合間に温め直したスープを濾し取ってそれらをドンブリの上に移すと、煮え終えた麺が入ったテボを順々に取り出して湯切りする。最後にスープへ茹で上がった麺を投じてトッピングすれば完成である。

「見よ! 真心こめた素材と技術だけが放つ黄金の輝き! 濃厚豚骨醤油黄金(ゴルディオン)ラーメンいっちょあがり!」
「はやっ!? こっちも早く完成させなきゃ!」
 七七三が材料の下拵えを終えてこれから炒めようとしようと矢先に、アイオライトの方がひと足早く完成してしまう。焦る気持ちの中、火柱が立つかのような火力でチャーハンを炒めていく。

(うわー…さっすが本場中華。火力がまったく違うわー)
 家庭用のプロパンガスではとても出せない火力に彼女は驚きながらも、その新鮮さを楽しみながら米粒一つ一つを舞い踊ろさせ、炎の予熱でパラパラに仕上げていく。

「さてと……黒チャーハンのキモがこれなんだけど、アイツをギャフンと言わせれるかな……?」
 何やら黒い醤のようなものをお玉に入れて炒めたチャーハンへかき混ぜると、彼女が宣言した黒チャーハンの完成である。

『こっちも完成ネ。暗黒麻醤麺ヨ!』
 黄金スープのラーメンと黒チャーハン。それに対して、暗黒料理人が作ったのはスープはない絡め麺である。

『さぁて、これから試食タイムでアルけど……。ワタシらがお互いに不味いと言い合えばそれまでネ。なので、審査員を呼ぶアル』
 暗黒料理人がパチンと指を鳴らすと、奥からぞろぞろと人がやってくる。その顔を見て二人はハッとした顔になる。何せ道場破りで打倒してきた功尽喰堂門下生たちに他ないからだ。

『弟子たちヨ。ワタシの料理と猟兵の料理を食べ比べるネ。まぁ、勝負は見えたものネ! ホーッホッホッホ!!』
「えー、ちょっとそれ卑怯すぎない!?」
 公平さを謳いながらも、自らの息が掛かった者らによる試食を急に持ち出させて七七三が抗議しようとするが、アイオライトは腕を伸ばして後輩を制する。

「ええ、いいわ。そうでなくちゃ面白みがないものね?」
「ちょっと、パイセン!?」
 不利……圧倒的不利!
 それも先に暗黒料理人の麻醤麺から先に食べている。七七三は絶望した。コイツら、先に舌を痺らせて味覚をバカにしようとしているのだ、と。

『流石です、師範! この辛さ、病みつきになってしまいそうです!』
『そうアル、そうアル。ホーッホッホッホ!』
「……確かに、この辛さは癖になってしまいそうね。さぁ、今度はこっちの番よ。七七三の炒飯と合わせてさあ、おあがりよ!!」
 ルールに則り、アイオライトと七七三も試食を終える。確かに美味い。これならば、里の人間が暗黒料理の魅力に堕ちてしまうのも無理はない。だが、こちらにも勝算はあると二人は互いに頷き合った。

『師範の腕には到底及ばないと思いますが……では、頂きます』
 ズルズルと麺をたぐる門下生を前に、二人は固唾を呑んで見守る。暫く沈黙が続くと、門下生たちの目は見開きながらワナワナと言葉を絞り出した。

『これは……どういうことだ? 口に残った麻の痺れが嘘のように消えていって……。そう、嵐の暗雲が消え去った後の空のような清々しさが胸に広がるぅ!?』
 その言葉を言い終えると、次々と麺をスープに絡めながら手繰っていく。

『この黒いチャーハンも複雑なコクを出している。しかし、この味は何で出しているんだ? イカ墨でもない、甜麺醤のような甘味噌でもない……ッ!』
 その食べっぷりが二人の勝利を現していた。

『な、何ぃ!? そんな筈は無いアル! ワタシの料理に勝る料理など、この世に無いはずネ!!』
「じゃあ、食べてみたらいいんじゃない?」
 フフンと勝ち誇るアイオライトの言葉を受け、ぐっと堪えながら暗黒料理人も渋々箸を付ける。

「けど、この黒チャーハンは意外だったわね。一体何を使ったの?」
「へへっ。それはね、これだよ」
 自慢げな表情で七七海が置いたのは、クロムキャバリアのプラントで製造される食料の中でもありふれた調味料。ごはんの友にもってこいの混ぜる味海苔に他ならなかった。

「これ、チャーハンに使うとコク出て美味しいんだよね。……て、手抜きじゃない! 新鮮でしょ!?」
「へぇ、そうだったんだ。今度試してみましょ。あ、一句できました。豚骨の 薫風めいて 最上川」
「へ!? え、えーとぉ……。さ、さよなら全てのクロムキャバリア……?」
 突然出されたアイオライトの句になんこっちゃと戸惑いながらも、七七三も下の句を出す。そんな二人の横では、プルプルと震えがながら自分の作った麻醤麺よりも味が上であると、暗黒料理人は声に出さずに悔しがっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春・蕩華
 おまかせプレイング
『お姉さん、誰かを傷付けたり荒っぽいのは苦手なのよね〜♪』
『それより美味しい物を食べて仲良くしましょ〜♪はい、あーんして〜♪』
『ちゃあんともぐもぐ出来てすごいわ〜♪えらいえらい〜♪』
 温厚で戦いは苦手なお姉さん。相手がオブリビオン・フォーミュラだろうと攻撃せずに全てを料理で解決します。味方へ料理を作って支援。敵へは超絶品料理を振る舞い、平和的解決を望みます。

 拱手を忘れず行い【傾世飛天薄羽衣】で空中浮遊。【狐火】で料理用の火を確保。【寵姫の虜眼】で【超級食材】と【大量の調理道具】を見つめて虜にし、自分で料理してもらいます。

 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



『な、中々やるアルね! ワタシ、一本取られたヨ。けど、勝負はこれからアル。今度は饭后甜点、食後のデザートで勝負アル!!』
 ようやく重々しい口を開いた暗黒料理人だったが、先程のお料理勝負では猟兵側が出した料理の味を認めたものの、あくまでも1ポイント取っただけだと主張する。そして強引にもイニシアチブを取って提示したのが、デザート勝負である。今度は負けないネと気合を入れて厨房に戻っていく後ろ姿にどこか子供っぽい意地っ張りさがあると、春・蕩華(料理上手な妖狐の超級寵姫お姉さん【ダメ人間製造機】・f33007)が妖狐の魅惑の妖気が籠められた扇で口元を隠しながら微笑ましそうに眺めている。

「あらあらぁ、ほっぺたをプリプリさせながらカンカンになって行ってしまったわぁ♡」
 人を甘やかすのが大好きな妖狐の姫にとって、そんな様子の暗黒料理人は骨抜きにさせてダメ人間にさせたい人間そのものである。とは言え、今手を出しても暗黒料理人は彼女の甘い言葉を聞き入れないであろう。そうとなれば、こちらも料理で勝負するのみ。弱り切っている所を、こんな超料理上手で美人な巨乳狐耳お姉さんに甘やかされて落ちぬ者などいない。絶対的な自身の中、彼女は拱手をしておもむろに食材を手にすると、じっと熱い視線で見つめながら吐息を吐きながら語りかける。

「さぁて、美味しい美味しい貴方たち。これからもぉっと美味しい料理を作ろうと思うけど、お・ね・が・い、ね?」
 最後にパチリとウインクをすると、食材が一つ一つ浮き上がって独りでに調理されていく。宝貝の域にまで高められた絶世の美貌を誇る彼女、森羅万象を虜にする籠絡の魔眼に見初められた食材の意思がそうさせるのだ。同じく虜にした包丁や鍋、ましてやチロチロと燃える狐火を用いて料理用の火を確保すれば、あとは極めて薄く着用者の魅力を引き立てる力を秘めた調理用チャイナドレス宝貝『傾世飛天薄羽衣』を身に纏った蕩華はその完成を待つのみであった。

『出来たよ! 暗黒料理風三大炮、完成アル!』
 暗黒料理人は手にしていた三つの丸めた餅を突然太鼓目掛けて投げ放ち、バチ代わりにドンと打ち鳴らした餅は反動できな粉で満たされたザルに落ちる。最後にそれを皿に移して特製黒蜜を絡ませれば完成である。太鼓の音に引かれて人を集め、万人受けするパフォーマンスと黒蜜ときな粉の味で食べる餅料理。勿論、彼なりのアレンジが施されているのは審査員として食べる暗黒料理人の息がかかった門下生らが口々に褒め称えているのを見れば分かるものである。

『おお! 黒蜜ときな粉の相性もさることながら、ピリッと後から来る辛さ!』
『この辛さが黒蜜の甘さを更に際立て引き出している上に、胃がどんどん求めてくる! さすが、師範。おみそれしました!!』
『ホーッホッホッホ。そうアルそうアル』
 門下生たちからの絶賛の声に気をよくさせた暗黒料理人は、自らのナマズヒゲを弄りながら中華風なクロッシュを浮かべながら自分の番を待つ蕩華をチラ見する。この勝負に勝てば、あの絶世な美貌の妖狐をウェイトレスとして半永久的に雇用できる、そうなれば千客万来の看板娘として、この功尽喰堂は更に繁栄するだろう。そして何より、自身の目の保養にもなる。取らぬたぬきの皮算用とも言うべきビジョンであるが、それは勝利を確信した彼自身の表れでもあった。

「おまたせしましたぁ。私の料理は三色杏仁豆腐よぉ。たぁんとお召し、上・が・れ♡」
 もったいぶるよう料理を隠していクロッシュの蓋を取ると現れたのは、白い杏仁豆腐、黄色いマンゴープリン、乳白色のライチプリンである。それらの塊をスプーンですくい、小皿に取り分けながら、はぁいと門下生ひとりひとりに手渡す蕩華。
 その仕草にドギマギとさせる門下生が口にすると、暫し続く沈黙の間。だが、一同にして感嘆の声を漏らした。

『『『あまぁ~~~いぃ♪』』』
 その声に驚きの顔を見せる暗黒料理人だったが、大の大人が目尻を緩ませて蕩けさせている素振りがその味を雄弁に物語っている。

「あなたも味見しなきゃダメよぉ? はぁい、あ~~~~ん♡」
 杏仁豆腐を乗せたスプーンを手に持ちながら暗黒料理人に勧める蕩華。その圧に負けたか、暗黒料理人が口を開いて彼女は舌へ魔性の杏仁豆腐を乗せた。
 すると、暗黒料理人の脳裏に桃源郷の風景が広がった。華麗な天女が微笑みながら談笑する楽園。その中には自身が天女たちから饗され、心地よさに身を委ねて溺れている様を幻視する。

『あ、ああ……あまぁ~~~いぃ♪』
「はいはい、おかわりはまだまだありますからねぇ♡ はぁい、あ~~~~ん♡」
 男をダメ人間にする杏仁豆腐。夢心地の男たちは、まだまだ料理上手な妖狐の超級寵姫お姉さんに甘やかされ続けられるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生

正義感が強く困っている人は見過ごせない

UCは業火の一撃、灼熱の束縛に加えて
自分たちが押し切られそうになったらオーバーヒートバッシュ
🔴の数が多い場合はバーニングリベンジャーだ

攻撃には怪力、属性攻撃、2回攻撃、グラップルなどの技能をのせる

逆に敵の攻撃をからみんなをかばう、耐えるために
武器受け、挑発、おびき寄せ、時間稼ぎ、激痛耐性なども使用
敵に一撃入れられそうなら咄嗟の一撃や捨て身の一撃、カウンター
こいつがボスか…
みんな大丈夫?助けにきたよ!

そんなの許せない、ボクの炎で焼き払ってやる!

技能の勇気、覚悟、気合いは常に発動状態

アドリブ絡み歓迎

影朧などの場合は説得もしたい



『……ハッ!? イカンイカン、気をしっかり保つネ!』
 時間にして短いものの体感に何時までも続くかと思われた至福の時であったが、暗黒料理人が我に返ると先程の幻想を振り払うように頬を勢いよく叩いた。周囲を見渡せば、門下生たちは未だ夢うつつの状態でにへらにへらしている。夢の中での桃源郷でまだ良い夢を見ているのだろうと、暗黒料理人は舌を打った。

「これでボクたちは二回勝ったから、暗黒料理人さんの負けだね」
 百地・モユル(ももも・f03218)がガッツポーズを取れば、ぐぬぬと暗黒料理人はまたもしわくちゃな梅干しのようになって悔しがる表情へと変わる。あの様子では、この期に及んでもまだ負けを認めていなさそうだ。

『まだヨ! まだ、三回負けて居ないアル! この勝負、三回勝てば勝ちでアル!!』
「随分負けを認めないんだね。それなら、ボクのチャーハンで勝負だ!」
 チャーハンという言葉を聞いた暗黒料理人が眉をピクリと動かせる。

(ホーッホッホッホ、勇みおったわい。チャーハンは炒菜、炒め物の基本中の基本。それだけあって、料理人の腕がまるわかりしてしまうアル。技術が味に繋がる簡単かつ繊細な料理だけあって、一朝一夕な腕では馬脚を出すのが落ちネ)
『その勝負、受けて立つヨ!』
「よぉし、ボク特製モモモチャーハンでほっぺたが落ちても知らないからね」
 両者が厨房に入り、竈に薪をくべる。轟々と燃え盛る火柱は、中華料理ならではの火力である。中華料理の真髄は「如何に強い火を使いこなすか」だと謂われる。燃え盛る炎、それを前にしてじりじりと肌に伝わる熱、鉄鍋を通して伝わる熱せされた鉄の熱さ。米粒が一粒一粒ぱらりと付かないチャーハンはこの熱量が生み出すものであり、空中で火に晒す事でよりパラパラとなる。逆に言えば、弱火でちまちま炒めているとベシャベシャなチャーハンとなる理由はそこにある。

(ホー、子供かと思ったら中々筋が良いネ)
 小柄な体つきのモユルだったが、その姿に反して鉄鍋を片手で軽々と持ってこの道云十年の暗黒料理人と粗食なく振るっている。しかし、力はあっても技術は自身までに至っていない。その様子に暗黒料理人はほくそ笑んだ……この勝負は勝ったと。

「うーん……ちょっと火力が少ないかな? えーい」
 だが、その自信もモユルが零したこの言葉に打ち砕かれることになる。何せモユルがUCで作り出した灼熱の炎を空いている掌から竈に投じ、さらなる高熱が二人を包んだのだからだ。まるでどんな高熱にも耐える中華鍋も融けてしまうかと思われる炎を目の前に、モユルは涼し気な顔でいる。そんな光景に暗黒料理人は驚愕するが、生粋の負けず嫌いである彼は負けじと鍋を振るう。
 しかし、鍋を振るえば両者の火力の差は歴然である。暗黒料理人は自身の頭にまで届く高さに対し、モユルの方はと言うと天井に届くまでの火柱を立たせている。そして作り出されたチャーハンは、両者の差を雄弁と物語っていた。

『え、ええぇ? こんな砂のようにサラサラとしているチャーハンがあるだなんて』
『それに対して、師範のチャーハンはどこか引っかかりがある。口の中に入れてからパラパラになるのに対して、こちらは初めからパラパラだ!?』
 ようやく正気に戻った門下生たちもモモモチャーハンを絶賛し、これで暗黒料理人は三敗目となる。まだ屁理屈を並べて勝負を続けるかと誰もが思ったが、こうも実力の差を突きつけられれば流石の彼も負けを認めざるを得ない。

『わ……ワタシの負けアル』
「やったぁ! ……あれ、なんか焦げ臭くない?」
 勝利に喜ぶモユルだが、鼻をひくひくと動かすと何か燃えている臭いが厨房から漂ってくるのに気づく。臭いが流れる方向をたどって目をやれば……厨房が燃えていた。先程の天にまで届く火柱が気づかないうちに天井を燃やしていたのだ。更に調理用の油があれば尚更火の回りが早く、火の手はこちらにも迫ってきていた。

『し、師範……』
『何をしているアル。お前たちはもう弟子でもなんでもないネ。早く暖簾を持ち帰って里に帰ると良いアル。ワタシはワタシの店と運命を共にして、骸の海に還っていくヨ』
 師匠からの最後の言葉を受け門下生たちは名残惜しく拱手をすると、猟兵とともに店内に飾られた暖簾を手にして、火の手が回る功尽喰堂から外へ避難する。それを見届けて誰一人と居ない中、暗黒料理人は炎に呑み込まれた厨房へと歩みだす。
 桃源郷を騒がせた料理騒動は、楼閣の焼失とともに静かに幕をおろしたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『ティータイムinチャイナ』

POW   :    スパイシーな香りの漢方茶

SPD   :    ダイエットに効果のありそうな薬草茶

WIZ   :    心安らぐ香りの花茶

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 暗黒料理人の料理店兼道場で突如起きた火災は、調理に使う油が更に火の勢いを増して一昼夜に渡り燃え続けて灰燼へと化した。焼け跡のすす焦げた臭いが桃源郷に広がるが、それも風の流れにより里の外へ運ばれれば、元の桃の花の香が仄かに漂う静かな風光明媚の姿へと戻っていく。

「暗黒料理の虜になった衆が里に戻り、無事に暖簾も戻ってきました。何とお礼を申せばよいのやら……」
 山裾に広がる桃の木々を一望できる場所に一軒の店があった。ここも暗黒料理人との料理勝負で暖簾を奪われた、初老の人当たりの良さそうな父親と対象的に看板娘の気が強そうな娘が切り盛りする小さな料理店であった。

「私も暖簾を賭けた勝負で負けてしまった、あの麻婆豆腐とかいう料理の虜になってしまいそうでしたが、娘に励まされ何とか立ち直れました」
「もう、お父さんの料理はここ一番の評判じゃない。腕は良いけど気が弱いから、あんな辛いだけで泥みたいなモノに負けちゃうのよ」
「ははは……これも一体誰に似たのやら。ささ、大したお礼は出来ませぬが、せめてものお礼にと店自慢の飲茶をご用意しました。ささやかなもてなしですが、どうぞゆるりとしていってくだされ」
 娘に案内された場所は店の外で、傘台で固定された緋色の野点傘とその周囲には毛織物が掛けられた腰掛けの床机とテーブルが置かれている。そしてそれらの周りには、季節ごとに花を咲かせる桃の木々が植えられていた。丁度今は春の桃の花が満開になる頃だという。
 近くの桃の花を愛でて良し、遠くに広がる桃の海原を見て楽しむのも良し。

 この極楽の原風景をどう楽しむか。
 猟兵たちはそれぞれ思い思いのひとときを過ごすのだった。
アイオライト・セプテンバー
南・七七三(f30098)と参加

「ほんと。鳥が歌って、風が踊って。点心も美味しいし」

食べ終えた指先を丁寧にハンカチで拭いてから
次の月餅に手を伸ばす

「うん、猟兵仕事ってやつのついででさ。七七三はこういうの、珍しいんだっけ」

つられるように、見上げた空
投げかけられた質問には――

「――ないわよ」

迷うことなく、答える

「異世界の空が、美しいものだって。平和な景色が素敵な物だって、この目で確かめたら、尚のこと……クロムキャバリア――私たちの空も取り戻そうって、思えるから」

なんて、当然のように答えてから

「七七三は、違うの?」

問うて、答えを待って。笑顔を返して

「私こそありがと。一緒に頑張ってくれて」


南・七七三
アイぱいせん(f29954)と

「やー……綺麗だねぇ」

山積みに作ってもらった甘い点心
月餅を咥えて、上を見上げ

桃の花――越しに見える、もっと先
殲禍炎剣のない、広い空

「ぱいせんはさー。結構こーやって、異世界ってやつでバカやったりしてんの?」

ふーん、そっか、と、頷いて
「――バカらしくなることない?」

その、思った通りの返事に
「んにゃ。聞いてみただけ。……けど、来てみるまでは怖かった。だから、今日はあんがと。一緒してくれて安心した」
へら、と笑って

「帰ったら、また頑張んないとね。学園でも、綺麗な空が見られるよーに」

「あは。お互い様だって」

戦う理由は、別にあるけど
――故郷の綺麗な空は、本当に、見てみたいから。



「やー……綺麗だねぇ」
「ほんと。鳥が歌って、風が踊って。点心も美味しいし」
 山から吹きおろされる風で、眼下に広がる淡い桃色の海が波打つ。ほんのりと甘い香りを帯びた風が、腰掛けに座り合わせたアイオライトと七七三の髪を撫でた。お互いの間には出来たての香ばしい月餅が盛られた皿が置かれている。その月餅も小豆で作られた黒餡ではなく、蓮蓉餡と呼ばれる蓮の実から作られた白餡であるが、どこか優しくも懐かしい味と豊かなコクが口に広がり、それを風通しの良い場所で日干しをして乾燥させた桃の花で淹れた熱々の花茶で流し込んだ。
 桃の花を凝縮したかのような芳醇な香りが鼻腔を刺激し、またアーモンドのようなほんのりとした苦味が蓮蓉月餅の甘みと調和して、どこか癖になりそうな安心感で胸が満たされていく。先程の暗黒料理人との料理勝負でお互いに作った料理を食べあったのもあり、この量の月餅を果たして食べ切れるかと不安になった七七三でもあったが、逆に脂っこい物を食べた反動でかえってどんどんと手をつけたくなってしまう不思議さで再び手を伸ばしてしまう。それはアイオライトも同じで、食べ終えた指先を丁寧にハンカチで拭いてから次の月餅に手を伸ばそうとしているのを横目にしながら、七七三もまた月餅を咥えて不意に視線を空へと向けた。
 桃の花――越しに見える、もっと先。殲禍炎剣のない、広い空。近くの桃の木に止まった小鳥のさえずりが耳をくすぐり、空を鷹揚と飛んでるトビと思わしき点を自然と目が追ってしまう。ここがもしクロムキャバリアだとしたら、アレを鳥だとは思わずに低速飛行するドローン兵器や飛行型キャバリアとまず疑うかもしれない。あの闘争が渦巻く世界では当たり前のようなことだが、それらの脅威がないと分かっていても自然と意識してしまう。尤も、この世界にも殲禍炎剣のような災厄をもたらす存在はあるのだろうが、七七三にとっては殲禍炎剣に四六時中監視されていないという解放感を、改めて自分の世界を出て別の世界に足を踏み入れたことで実感する。

「ぱいせんはさー。結構こーやって、異世界ってやつでバカやったりしてんの?」
「うん、猟兵仕事ってやつのついででさ。七七三はこういうの、珍しいんだっけ」
 突然と質問を投げかけられたアイオライトが七七三へ顔を向けると、彼女は遠くを見るかのように空を見上げている。それにつられてアイオライトも空を見上げると、彼女は、ふーん、そっか、と頷きながら次の質問を投げかけた。

「――バカらしくなることない?」
 暫し流れる沈黙。アイオライトは空の一点を見据えながら答えた。

「――ないわよ」
 その目は迷いなく空を見上げている。

「異世界の空が、美しいものだって。平和な景色が素敵な物だって、この目で確かめたら、尚のこと……クロムキャバリア――私たちの空も取り戻そうって、思えるから」
 さも当然のように後輩の質問に答える先輩の姿を、七七三は只々じっと見つめる。

「七七三は、違うの?」
 アイオライトが彼女へと頭を向けると、その顔は自信に満ち溢れたものである。答えも佇まいも、全て七七三が思った通りのことであった。だが、そう思うと当たり前のことを聞いてしまった自分に気恥ずかしさが込み上げてくる。

「んにゃ。聞いてみただけ。……けど、来てみるまでは怖かった。だから、今日はあんがと。一緒してくれて安心した」
 どう答えようかと迷いながら照れ隠しにへらっと笑って本心を告げると、それにつられてアイオライトもくすりっと笑みを返す。思えば、自分も猟兵として初めてクロムキャバリアから出た際、七七三のような不安があったかもしれない。あの時はテンションを高くあげにあげて払拭したかもしれないが、今となってしまえばいい思い出だ。

「帰ったら、また頑張んないとね。学園でも、綺麗な空が見られるよーに」
「私こそありがと。一緒に頑張ってくれて」
「あは。お互い様だって」
 その後はとりとめない話題での談笑が続き、桃源郷の緩やかな時間が流れる。

(戦う理由は、別にあるけど――故郷の綺麗な空は、本当に、見てみたいから)
 この平和な空を、明日に怯えない平和なひと時を、故郷のみんなにもたらしたい。アイオライトと七七三は胸の内に秘めた思いを重ね合わせ、青く澄んだ空を見上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月03日


挿絵イラスト