6
Flowering fairy field

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #レプ・ス・カム #フェアリー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#レプ・ス・カム
🔒
#フェアリー


0




●フェアリー・フラワー・ランド
「御機嫌ようマザーウッド。今日も葉の日傘を頼むよ。紅のレディローズも朝露のジュエルはお気に召したかい? それは何より。ツツジの姫君はもう少し顔を覗かせてくれると僕は嬉しいな。ダンデライオンの君はお散歩に出かけてしまったようだね。ダリアの貴婦人、綺麗なお顔を此方に見せておくれよ。リリィのお嬢さんは今日も麗しい。リコリスのご令嬢は今日もつれないね。ああいつものことか。カメリアの姫はそんなところに居ないで此方へおいでよ」
 スーツを身に纏い、口髭を蓄えたフェアリーの初老の男・ファルファローネは今日も自分よりも大きな如雨露をぶら下げ、愛と云う名の水を女性と称した花々へとあちらこちらへと注いで行く。

 花を愛し、自らの妖精の園で花を育てるファルファローネはいつしか「花屋」と呼ばれるようになっていた。
 花屋の朝は早く、日が昇る前に目覚め、花のコンディションを見ながら今日も迎えてくれる誰かのために、茎を切り、花弁の衣装を整える化粧を施す。
「今日も皆美しいね」
 陽だまりの様に優しい表情は花々へと向けられた。
 朝は確かに早くて眠たいけれど。冬は冷たい水に手を、時に体を晒してしまう時もあるけれど。自分の体よりも大きい花々を包むのは大変だけれど。ラッピングも上手くいかない時もあるけれど。
 それでもこの花々の美しい時を、彼女らを出迎える誰かの喜ぶ顔を、そして彼女らを手渡した時に喜ばれる誰かの顔を、想えばそんなものはちっとも辛く無かった。
 自身の育てた花々がより良い状態で、より良い思い出のひと時として花を咲かせるのなら。それは何より美しいからとファルファローネは苦労の顔を出さない。

「おや?」
 けれどもファルファローネが愛情を注ぐ花々の中に見慣れない花が一輪。濃い青の花だった。
「君はどこの子だい? ダンデライオンの君の様に風に飛ばされてお散歩してきた子? それとも新しくやって来た子?」
 如雨露をおろして、左右に首を傾げながらその花を見回すも見覚えが無い。
「迷子なのかな」
 だとしたら自分のところで保護しなくてはいけない。そんな子を放っておいて枯れてしまったらと思うだけで胸が痛んだ気がした。
 如雨露の中に茎をぽとりと入れて、ファルファローネが再び如雨露を持ち上げてようとした途端。

 ――頭上には大きなドラゴン。
 どすんと降り立った竜は辺りの空気を大きく吸い込み、一気に彼の愛する花々を吹き飛ばしていく。
「あ、ああ……!」
 彩りのあった妖精の壺の中の園は、一気に青く、冷たい色の花で塗り潰されてしまっていった。

●フラワリング・フラワー・フューチャー
「皆はお花が好き?」
 桜の造花を持った一年・彩(エイプリルラビット・f16169)は造花を揺らしながら辺りを見回す。
「お花は良いよねえ、心が癒される気がする……。ま、これ造花なんだけどね!」
 ほわん、と顔を緩ませてからてへ、と悪戯をした子供のように舌を出しながらも彩は笑う。
「フェアリーランドにね、ドラゴンが出たんだって。なんでもフェアリーさんのお花屋さんが大ピンチ! お花屋さんが潰されちゃう勢いでドラゴンが違うお花で塗りつぶしちゃってるんだって!」
 ホワイトボードに竜らしきもの、その周囲に四つの花弁を持った花々が散らされて罰印がついている図を描くもそれはけして上手いとは言えないものだった。
「フェアリーさんはファルファローネさんって言ってね。なんかちょっと格好良い名前だね……きゅんきゅんしちゃうね……」
 どきどきと胸をときめかせて頬を紅く染めるも今はそれどころじゃないと首を左右に振って気を紛らわせ、気を取り直して拳を握りしめる。
「ファルファローネさんのフェアリーランドは大変な事になってるけど、ファルファローネさんはお花が大好きだから、きっとお花の事を考えてもらえば元気になって元のお花屋さんになるはずだよ。そこからドラゴンを退治してほしいな」
 握りしめた掌をぱっと広げて、その手の上には眼鏡を掛けた兎のグリモアがくるくると回る。
「そうだ! ファルファローネさんに自分とか誰かに贈るお花を考えて貰ったらどうかな! お花の贈り合いってのも素敵だと思う!」
 彩って名案ー! 自画自賛しながら手の上でくるりと回ってるグリモアを高く掲げると一層放つ光が強くなって猟兵たちを包み込んでいく。
「気を付けて行ってらっしゃい! 皆できるって信じてるよ!」


さけもり
 OPをご覧下さり有り難うございます。さけもりです。お花見らしいお花見をし損ねました。
 受付時間はタグ、MSページ、Twitterのいずれかでご確認下さい。

 此方のシナリオには以下のプレイングボーナスがあります。
 プレイングボーナス……フェアリーに楽しいことを考えてもらう。

 第一章:ファルファローネに花を考えてもらってください。
 誰にあげるものか。どんな時に、どんな気持ちで渡すのか。
 完全お任せでも大丈夫です。
 こういう物をあげたいんだけど……?という場合にもラッピング、アレンジメント方面で考えてもらっても大丈夫ですがお花よりはあまり幅がないかもしれません。

 第二章:息吹の竜『グラスアボラス』との戦いになります。

 NPC…ファルファローネ:60代のフェアリー。既婚者です。
 普段であれば愛しい伴侶の方もいるそうですが、本日はいないようです。
 花に喋り掛けたりするのは通常運転です。因みに名前の意味は「伊達男」です。

 此方のシナリオには【2名様まで】の参加でお願い致します。
 その際【相手方のお名前+ID】もしくは【合言葉】を先頭にお願い致します。
69




第1章 冒険 『花咲く大樹の懐で』

POW   :    資材を樹上に運ぶ。

SPD   :    器用に道具を使い修復する。

WIZ   :    折れた枝や傷付いた動物を治療する。

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 フェアリーランドの中は、様々な花々が咲き誇っていた筈だった。けれど猟兵たちを待っていたのは冷たい青い花。竜胆の花だ。
 それが咲き誇っている中でもフェアリーの男・ファルファローネは項垂れずに回転作業を続けている。
 朝露に濡れた木の葉の持ち主、マザーウッドと呼ばれる大樹の元でファルファローネは花屋の看板を掲げると猟兵たちの姿に気付いたのか頭を軽く下げた。
「いらっしゃい……と言っても、今日はあまり用意できていないのだがね」
 申し訳なさそうに確かに何時もの様に色取り豊かな花々の姿はない。あるのは彼が見よう見真似で作った白い花……の造花。
「ああ。すまない。今日はこれだけなんだ」
 一輪の白い花をファルファローネは両手で抱えてそうっと猟兵へと差し出す。
「これでも良ければ、君たちに。なあにお代はいらないさ。――君たちの戦いが、そのお代だと思っているとも」
 
 彼に対してできることは何だろうか。花が好きな彼にとって――できること。
リグ・アシュリーズ
青い竜胆を踏まないよう、
気を付けてファルファローネさんの元へ向かうわ!
たとえ竜のもたらしたものでも、花は花。
散らしたら悲しむかと思って。

差し出された造花を、綺麗!と眺めて、彼の手に返すわ。
これは、あなたが持ってて!
かわりに教えてほしいの。
ね、ここで普段咲いてるお花のこと、聞かせて!

私ね、常闇の世界生まれであまりお花を目にする事がなかったの。
村に咲いてたちいさな白い花に、いっつも励まされてたわ!
カランコエ、って名前は後から知ったけど。
耐えて咲く日を待つ姿が、とっても好きなの!

贈り物も考えてくれるの?
そうね、じゃあ……私へのプレゼントに一輪選んで!
贈る相手はいないけれど、お部屋に大事に飾りたいの!



●花言葉:「無邪気」
「よいしょ、っとわわっ」
 妖精の国――フェアリー・ランドへと送られたリグ・アシュリーズ(風舞う道行き・f10093)はドラゴンの所為であれども、竜胆の花を踏んでしまわぬ様に地面に降り立った。
 例え敵意あるモノによるものだとしても花は花。散らしてしまっては悲しむ者もいるだろうとふらつきながらもファルファローネの元へと向かう。転ばずに進めたものの、彼は血相を変えてリグへと飛び掛かる。
「お嬢さん! 大丈夫かい、何やらふらついていた様だったけれども……」
「ううん平気! 花を踏んじゃいけないと思ったから!」
 ほらこの通り! そう言ってリグは草も花も無い地面の上で背筋を伸ばしてジャンプすればファルファローネは安堵の表情を見せた。
「君は優しいんだね。折角のご来店で申し訳ないけどあげられるのはこれしかないんだ」
 彼自身が作った白い造花を両腕に抱えてリグに渡そうとするも、彼女は目を輝かせて見つめるだけ。
「綺麗! でもね。これはあなたが持ってて!」
「でも……」
「かわりに教えてほしいの」
「代わりに?」
「ね、ここで普段咲いてるお花のこと、聞かせて!」
 常夜の世界で生まれたリグにとって花を目にする機会は多く無かった。花屋なんてものはない。草木は辛うじてあるものの、彩豊かな花々などは無縁であった。故に普段咲いていた花々はどんな色? どんな形? どんな大きさ? どんな香り? 興味を持って彼を見つめる瞳は爛々と輝く。――花を好きな人に悪い人はいない。目を伏せながらファルファローネは笑みを零しながらゆっくりと頷いた。
「良いとも。お嬢さん、好きな花はあるかい?」
 好きな花。そう問われてリグの中に浮かんだのは故郷の村で揺れていた白い小さな花。辛い事があってもその花を見て励まされていた。名前は確か――。
「カランコエ、って知ってる?」
「知ってるとも。陽が当たらない方が良いだなんて恥ずかしがり屋の不思議なレディだと思ったよ」
「そうなの? 耐えて咲く日を待つ姿が、とっても好きなの!」
 花の事は詳しくはない。けれどカランコエの事となるとより一層楽しく語るリグの姿にファルファローネの表情も自然と柔らかくなっていく。
「お嬢さん、贈り物はあるかい? 花は良い事があった時に贈る物だ。良ければ考えさせてもらえないかい?」
「贈り物も考えてくれるの?」
 とは言っても簡単には思いつかない。まず贈る相手がいない。しかし良い事なら……つい先程あった。
「じゃあ……私へのプレゼントに一輪選んで!」
「君に? 良いとも。お嬢さんには……この子、だね」
 ファルファローネは白い造花を再び抱えて、リグの前へと出す。リグがいらないと拒否した筈の造花は光を放ち、白いデイジーの花へと姿を変えた。その不思議な光景を目の当たりにしてリグは口をぽかんと開けまま彼からその花を受け取った。
「ふふ、受け取ってくれるかい?」
「お部屋に大事に飾らせてもらうわ!」
 リグの表情が花咲くように笑うのと同時にファルファローネは目を伏せて微笑みながらゆっくりと頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
一面藍に染まった花々はファルファローネ氏の意図したものなら荘厳と言えるのだろうが、オブリビオンの残滓なら話は別だな。

――素敵なお花をありがとう。大丈夫。素敵なものを貰ったのだから、その分働かなきゃね。

花の特徴をよく捉えているのは長く花と触れ合っている証拠か。励ましながら氏に元の花屋の色彩を聞いたりと、花たちについての気持ちを引き出そう。UC使用【心配り】

そういえば私、お花を渡したい人がいるのだけれど――。ええ、陽だまりのような子なの。支えてるつもりだったんだけど、支えてもらっていてね。よければ、今度見繕ってくれないかしら?そうね、ちょっと照れ臭いから小さなものを――なんて、どうかしら。



●花言葉:「可憐」
 一面藍に染まった花々の集まりが、ファルファローネの育てたものであったなら大事にせねばならない。――しかしオブリビオンの残滓なら話は別だ。マホルニア・ストブルフ(構造色の青・f29723)は自分よりも淡き青が散り行くのも気にせず歩いて行く。
「やあ、いらっしゃい。素敵なお嬢さん。今日はこれしかないんだ」
「素敵なお花をありがとう。大丈夫」
 両腕に抱えた白き造花をファルファローネから受け取ったマホルニアはその花を鼻元に寄せ、薄く目を見開いた。造花であるというのに花の香りがするのはこの花屋に置かれていた花々の香りか。花の香りは微かではあるもののマホルニアの鼻腔をくすぐり、ふ、と笑みを浮かべさせた。造花だとしても花の特徴をよく捉えているのは長く花と触れ合っていた証拠。頷きながら花の輪郭を指先で愛でながらマホルニアは彼に尋ねた。
「よくできているわね。これは何かの花を模したものかしら?」
「お褒めに預かり光栄。彼女たちのモデルは存在しないんだ。在ったら良いと思った花を形作ったまでだよ」
 胸に手を当て、頭を下げながらファルファローネは困った様に笑う。
「彼女たちの美しさは腕先では表現しきれないからね。それでも、君にとっては素敵な花に見えていれば幸いだ」
 片目を伏せながら朗らかな笑みを携えたファルファローネの微笑みに誘われる様にマホルニアも微笑みを零した。店先に並ぶ花々はけして形が整っているものばかりではない。花弁の輪郭は角ばっていて機械的。茎はどこか歪で歪んでいる。それも味と言えば味である。――今マホルニアができることは。女神のように微笑むことではなく、彼を励ます事。
「何一つ同じものが無い花と同じに見えるわ。それに、微かだが花の香りもしたし……これは花と言って過言ではないわ」
 マホルニアの言葉でほう、と声を漏らす。失礼とマホルニアに一声掛けた後にファルファローネは自身の作った造花に飛び寄り、見つめる。花として売るには不格好かもしれない。色だって地味。けれど目の前にいる客人が「花」だと言ったということは。
「君が言うのであればこれは花だ。それに私も気づかされたよ。ありがとう、お嬢さん」
 ふわりマホルニアの目の前へと飛び寄れば、ゆっくりと頭を下げながらファルファローネ感謝の言葉を述べた。
「そういえば私、お花を渡したい人がいるのだけれど……」
「ほう? 詳しく話を聞かせてもらっても?」
「ええ、陽だまりのような子なの。支えてるつもりだったんだけど、支えてもらっていてね」
 ふむふむと耳を傾けながらファルファローネは頷く。その時のマホルニアの表情が緩やかなものになっているものにふふと笑みを零した。
「よければ見繕ってくれないかしら? そうね、ちょっと照れくさいから小さなものを――」
「お安い御用さ。少々お待ちを」
 一礼をしてマホルニアの元を離れると、ファルファローネは小さな白い造花を持ってきた。淡い光を発し、ぽんっと生まれ出たのは小さな青いネモフィラの花。
「陽だまりのような子ならヒマワリ……と思ったんだけど、お嬢さんにもこれがお似合いかなって」
 気に入ってくれたら幸いだ。そう呟きながらマホルニアに小さなネモフィラを渡した。――あの子が喜んでくれる光景が脳裏に浮かぶ。太陽のように眩しい、あの笑顔が過って口元に笑みが浮かんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
白い花をありがとうって受け取るよ
どうしてこの花にしたのか聞いてもいいかな?

塗り潰されてしまった世界で作りだした唯一の花
ファルファローネさんが心の支えにしている種類なのかなって
頼み事の前に彼の気持ちも知りたくなった

問いかけからのやりとりのあと改めて花を見る
綺麗だな
花への愛情が目に見えるようだよ
そんなヒトに頼みがある
二人の親友にあげる花を考えてほしいんだ

一人は太陽のようなヒト
温かくて純粋な心の持ち主
俺は彼を守りたいと思ってる
温かさと純粋さを持ったままでいられるように

もう一人は静かに支えてくれるヒト
繊細で優しくてそっと支えてくれる
俺は彼も守りたい
彼がありのままの自分を見せたときに誰かが害しないように



●花言葉「幸福」「慎ましさ」
「どうぞ、坊ちゃん」
 ファルファローネから差し出された一輪の白い造花を受け取り、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は頭を軽く下げた。
「ありがとう」
「どう致しまして。気に入ってくれたら幸いだよ」
 愁いを帯びた微笑みを携えながらもファルファローネは頷く。差し上げた花が誰かにとって笑顔を、それですらなく何かを与えられたのならそれは彼自身にとって幸いなのだ。たとえ自分の大切に想う場所でも。
「一つ、聞いてもいいかな? どうしてこの花にしたの?」
 花の種類は沢山ある。それこそファルファローネが見た事も無い知らない花がある程に。冷たい青き花に塗り潰されてしまったこの世界で作り出した唯一の花は一体どんなものなのだろうか。サンディが思うに、彼自身が心の支えにしている種類なのかもしれないと先程受け取った造花を見るもどんな花の種類かは分からなかった。
「それはね、何処にも存在しない花なんだよ」
「何処にも?」
 ああ、と頷くファルファローネの表情は穏やかで、薄らと開いた瞳は造花たちを見据えた。
「私が在ったら良いと思った花を作ったまでさ。エゴかもしれないけれどね」
 片目を瞑り、ふふりと笑ったファルファローネにサンディはその視線を手元の花へと向けた。
「綺麗だな」
「お褒めに預かり光栄だ。ああ、良かったね。坊ちゃんに褒めてもらえて」
 サンディの口から零れた言葉にファルファローネは素直に受け取り、花にも分け与える。彼は「花屋」――その日一番の花という女性を仕立て上げる職人。うん、うんと頷きながら花にも話し掛けていった。
「そんな貴方に頼みがある」
「私で良ければお伺いするとも」
「二人の親友にあげる花を考えてほしいんだ?」
「二人? ほう、詳しく伺っても?」
 懐から羊皮紙のメモと万年筆を取り出したファルファローネはサンディの目線に合わせてふわり羽を羽ばたかせた。
「一人は太陽のようなヒト」
 ――暖かくて純粋な心の持ち主。彼が暖かさと純粋さを持ったままでいられるように。彼の事を守りたい。胸の前でぎゅうと拳を握り、此処にはいない友のことを思い出す。
「もう一人は静かに支えてくれるヒト」
 ――繊細で優しくてそっと支えてくれる。彼がありのままの自分を見せた時に誰かが害しないように。彼もまた守りたいヒトの一人であるとファルファローネに力強く、真剣な眼差しで言い放った。
「ふむ、なるほど。では、これとこれかな」
 両腕いっぱいに二輪の造花を携えたファルファローネはサンディに手渡す。ぽう、と光が灯ってぱっと現れたのは小さな黄色い花の福寿草と白い芍薬だった。
「これはどちらも薬になる花でね。守りたいと思う坊ちゃんにお似合いだと思ったんだ」
「薬に?」
「ああ。私は薬学はからっきしだから詳しくはないがね。暖かな友と支えてくれる友に贈ると良い」
「ありがとう、ファルファローネさん」
 受け取った花は、きっと彼らにとって良きものになるかどうかは分からない。けれど満足そうにファルファローネは目を伏せて微笑み頷いた。――花は時に人の心を豊かにし、守ってくれるものだと、そう信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
一面の青い竜胆
綺麗だけれど、どこか寂しくて

それでも温かなこころのファルファローネ
差し出された一輪はそっと受け取って
どうもありがとう、白い造花も素敵だね
それはきっと、貴方のこころからの賜物だから

ときに、ファルファローネ
相談があるんだ
僕には、親友がふたりいてね
ひとりは陽だまりのように明るくて元気な友
ひとりは導の星のように思慮深く敬虔な友
それぞれに、感謝と
これから先も共にありたいという気持ちを込めて、花を贈りたいんだ
おすすめの花は何かな

どんな花でも、一生懸命考えてくれたその気持ちが嬉しくて
ありがとう、ファルファローネ
こころ優しいひと
この御礼に
貴方の素敵な花畑を必ず取り戻すと約束しよう

★アドリブ歓迎



●花言葉「快活」「秘めた情熱」
 一面の青い竜胆は綺麗だけれど、どこか寂しいと感じたのは青という色彩が持つ色の所為か。それとも嘗て咲き誇っていた花々を塗り替えてしまった所為か。その両方とも取れる光景にヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は足を彩豊かな花屋であった筈の白き造花を売る花屋へと向けた。
「やあいらっしゃい。といってもこれしかないのだがね」
 差し出された白い造花にヴェルは三つ指で受け取り、空へと少し掲げる。花が無ければ作ればいい。その小さな体で、手で、腕で作られ用意した造花は決して多くはない。――それとも他に客人が来て手渡して減ったのだろうか。いずれにしても客人を迎え、温かなこころでもてなしたファルファローネの作りし造花は花と謙遜の無いものであった。
「どうもありがとう、白い造花も素敵だね」
 この白き花もきっと彼、ファルファローネによるもてなしのこころの賜物。そうっと頭に簪の様に刺しては彼に見せるとお似合いですと頷きながら拍手が送られた。
「ときに、ファルファローネ。相談があるんだ」
「この私でよろしければ何なりと」
「ぼくには、親友が二人いてね」
「ほう? 続けてくれるかな?」
 ファルファローネが懐からメモ帳と万年筆を取り出したのを見てからヴェルは言葉を続けた。
「ひとりは陽だまりのように明るくて元気な友」
 明るく、太陽のような君。
「ひとりは導の星のように思慮深く敬虔な友」
 暗闇の中でも瞬く星のような君。
「――それぞれに、感謝とこれから先も共にありたいという気持ちを込めて、花を贈りたいんだ」
 おすすめはあるかなと首を傾げたヴェルにふむふむと頷きながらファルファローネは書き綴り、目を伏せて胸に手を当てて少々お待ちくださいと彼の傍を離れる。
 両腕に抱えた造花を二輪。ふらふらと飛んでいたファルファローネに心配の表情を見せるも心配は無用だと首を横に振られた。そうっと造花たちをヴェルに渡すと淡く光り出した花々は黄色の菜の花と月下美人に姿を変える。
「これは?」
「菜の花と月下美人だよ。本当だったら、贈り物には適さないかもしれないが……なあに。造りものさ。数日は持つものだよ」
 片目を伏せて口元に人差し指を携えてふふりと笑ったファルファローネにヴェルも釣られてふ、と笑みを零した。
 どんな花でも、例え僅かな時間だとしても。一生懸命考えてくれたその気持ちが嬉しかった。
「ありがとう、ファルファローネ」
 花を愛し、花に愛されたひと。こころ優しいひと。そのためにも、立ち向かわなくてはならない。
「この御礼に、貴方の素敵な花畑を必ず取り戻すと約束しよう」
「ご無理はしないでくださいね」
 その御心だけでも嬉しいのですから。そうっと小指を差し出したヴェルにファルファローネはこつりと自身の額を押しつけた。それは約束を交わすものではなく、祈りと願いを籠めたもの。けれどファルファローネの表情は、何処か優しく穏やかなもののように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

縁城・陽
これだけ竜胆の花が咲いてるってのも、すげーもんだぜ。
でも、これは正しい咲き方じゃねー。もとに戻さねーとな!

でもまずは草木や動物の怪我からだ!
背中の聖痕から【生まれながらの光】を輝かせる。
……ちょっと疲れるけど、治るなら、もんだい、ねーな。
オレも花畑の管理してるから他人ごとじゃねーんだよな、この状況。
はやく元に戻せるといーんだけど……
ちゃんと元通りにしてやるから、まっててくれよ!

花……そーだな、大事な男友達2人に渡せる花、なにがいーだろ?
色々誘ってくれて、話してて楽しい、
夕焼けみてーに綺麗でかっけー奴らなんだ。
いつも楽しく話してくれる礼に渡してーな、ってさ。
……改めて言うと照れるな、これ。



●花言葉「希望」「前進」
「う、うおお……すげー!」
 本来の妖精の国がどんなものだったかは縁城・陽(瓦礫の城塞・f03238)には分からない。けれど、一面を覆い尽くしそうな竜胆の花々にそれだけでも凄いものだと目を輝かせて感動していた。感動している一方で、これは誤って咲いたものということにはっと我に返り、首を左右に振るう。
「もとに戻さねーとな!」
 これはファルファローネが大事にしていた花々、国。服の袖を捲り、背中に所持している聖痕が淡く光り出した。辺りには竜胆の花々がゆっくりと彩豊かな花々に変わっていく。けれどもその光は無限でもないし、陽の体力が続くまでのもの。体力が無限であれば、有限でなければ。目の前の花々だけでなくてもこの国ごと塗り替えられたかもしれない。はあ、はあと息を切らし、額に汗を滲ませながらも元に戻った花々を見つめる。
「……ちょっと疲れるけど、治るなら、もんだい、ねーな」
 ――だけれど、正直体力の限界ではある。自分も花畑の管理をしているからこの状況は他人事ではないし、見過ごせない。早く戻してあげたい。
「ちゃんと元に元通りにしてやるから、まっててくれよ!」
「坊ちゃん、そこまでにしておいてくれないか」
 額にのった汗を拭い、再び背にある聖痕を灯そうとした。その瞬間、ファルファローネ体が陽の腕を掴む。
「ど、どうして」
「花に罪は無い。それに坊ちゃんにそこまでしてもらう必要はないんだ。この地に駆けつけてくれるだけで私は嬉しいし、私には素敵な花があるんだ」
 ほらと彼が手で示したのは白い花――の造花。だからそこまでしなくていい。気持ちだけで嬉しいのだとファルファローネは首を左右に振った。
「花……」
「君は、何か贈りたいひとや、ものがあるかい?」
 その為にこの花屋はあるのだと腕から手を離し、胸に手を当てて尋ねる。ふと陽の脳裏に過ったのは二人の友の姿だった。
「そーだな、大事な男友達2人に渡せる花、何がいーだろ?」
 彼らは陽を様々な世界に誘ってくれて、話していて楽しく過ごさせてくれる。迫害されていて、ひとりぼっちだった自分を。それはいつしかいないと寂しいと思う様にもなっていた。だからその二人にも何かしてあげたい。
「夕焼けみてーに綺麗でかっけー奴らなんだ」
「では、これはどうかな?」
 がさりと白い造花の中から二輪取り出し、ぽっと光を灯してぱっと赤いガーベラの姿に変えた。
「これは?」
「まるで赤い夕陽を落とし込んだみたいだろう?」
 そうっとガーベラを渡された陽はその花をまじまじと見つめる。――夕陽みたいな二人に渡したらどんな顔をするのだろう。喜んでくれるかな。そう考えただけで自然と笑みが零れた。
「君はどんな気持ちで彼らに渡すんだい?」
 聞かせてもらっても? と首を傾げたファルファローネに目を合わせて、うんと頷いた陽は口を開く。
「いつも楽しく話してくれる御礼に渡してーな、って思ってさ。……改めて言うと照れるな、これ」
 夕陽よりも顔が真っ赤に染まったのは、手にしたガーベラと花屋の店主だけが知っている内緒の秘め事。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『息吹の竜『グラスアボラス』』

POW   :    フラワリングブレス
【吐き出された息吹 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【咲き乱れるフラワーカッター】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ガーデン・オブ・ゲンティアナ
自身の装備武器を無数の【竜胆 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    フラワーフィールド
【吐き出された息吹 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花畑で埋め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●フェアリー・フラワー・フィールド
 ぽつり、ぽつりと咲きゆく花々は冷たくとも暖かなものであったり、暖かな色を灯したものが冷たい青をゆっくりと塗り替えて行く。
 冷たい青は、次第に無くなって行く。
「フロロロロロロロ」
 ――遠くで鳴り響いたのは花の咲く音か。それとも花の靡いた音か。どれでも無い、ドラゴンの鳴き声が遠くから聞こえただろう。自身の咲かせた花を塗り潰された悲しみか。只静かに過ごしたかっただけの嘆きか。
 ばさり、ばさりと翼を羽ばたかせてゆっくりと降り立った足元に花は無い。眠たげな瞼をゆっくりと瞬かせて、首をぐるりと回す。
「キュウ、キュウ」
 辺りには自身の咲かせた花は無い。寂しさの声を漏らしながら嘆く竜の声は、甲高く響いていく。

 ――ただ静かに過ごしたかっただけなのに。ただ花に囲まれていたかっただけなのに。

 その声は猟兵たちの耳に届いたとしても、妖精の国を穢した事を許してくれるだろうか。竜の嘆きを憐れんでくれるだろうか。
 ふう、と息を吐けば花が散る。竜の息吹は、春を呼ばずに悲しみだけを芽吹かせた。
----------------------------------------------------------------
<補足>

・ファルファローネは猟兵たちの後ろにいます。
 呼ばれれば応える程度の距離です

・ファルファローネの事は「F」とでも書いてくれれば分かります
(プレイングの文字数節約に役立ててください)

----------------------------------------------------------------
縁城・陽
寂しーんかな、こいつ……
この竜胆に思い出でもあるんかね?
もともとは何か優しいヤツだったんだろーか……

UC【鬼切安綱】
右腕を炎と化してフラワーカッターや竜胆の花びら、花畑を焼き切り止める
花は好きだけど自然でないものを燃やし尽くす
もともとあったものに延焼しねーようにはコントロールするぜ?

怒ってこっちにきたらがっつり受け止めて殴りつける
羅刹なんだ、竜と殴り合うくれーなんでもねーよ!

青いものが好きなのか、花が好きなのかわかんねーけど
てめぇの望むモノは与えてやれねーや
全部燃やし尽くして消してやるよ……ごめんな。

アドリブ歓迎



●寂し悲しの花

 一匹の竜が悲しげに啼く。それは散らされる花に対してか。穏やかに過ごしたかったと嘆くか。その真相は分からず。――ただ、陽にはその声は寂しげに聞こえた。
「寂しーんかな……誰かと逸れた、とか」
 己が好む花に囲まれたとしても、たった一匹。仲間はいない。ただ静かに過ごしていた筈の竜に憂いの表情を向ける。目を閉じ、ゆっくりと呼吸する姿は荒くれ竜の姿には見えない。もしかしたら逸れたのかもしれない。仲間を探していたけれど、それも見つからなくて、安息の地を探し、此処に辿り着いたのかもしれない。
 それらは全て陽の勝手な想像ではある。もしも全部そうだとしても妖精の国を荒らす者は許すわけにはいかない。
「ブウウウウ」
 唸り声にも似た息吹が陽に向かって放たれる。彩豊かな花弁や緑の葉は一見綺麗ではあるけれど、肉体を切り裂く刃でしかない。
 陽の右腕がリコリスにも似た焔へと変わって行き、酸素を取り込み花々を連鎖的に燃やしていく。その焔は天に舞う花のみならず、地に生えた花々を燃やし尽くす。ファルファローネが咲かせた花々の手前で焔は消え去り、暖かな熱気だけが花を揺らした。
「ギャウウウウ」
 どうして花を燃やすの。グラスアボラスから怒りの咆哮が放たれた。
「来いよ、がっつり受け止めてやるよ」
 頭を前に出して、陽に向かい突進するのを避けずに確と受け止め、頭を殴りつける。硬い皮に包まれた竜だろうがなんだろうが、羅刹である陽にとって竜と殴り合うなんて大したことない。少しの痛みなんて。
「へっちゃらだっつーの!」
 グラスアボラスの真横横に生えた角を掴んで投げるとその巨体は宙へと舞う。
「青いものが好きなのか、花が好きなのかわかんねーけど。てめぇの望むモノは与えてやれねーや」
 けれど寂しい、悲しいと思うその気持ちは少しでも燃やせるかもしれない。
「ヒトに放たれし鬼の体――焔となりて敵を滅せ!」
 “鬼切安綱”の名を持った刀は、強固な体を持った鬼を切ったという。その刀と同じ名を持つ業は竜の体に焔を燈す。踏み荒らしたのはそちらが先。けれども心の中で謝りながらも、せめて全部燃やし尽くせたら。
 その願いは、竜の体を灼き尽くした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サンディ・ノックス
その鳴き声に悲しみを感じる
何故だろう
これから戦いになることを憂いている?
竜の着地した場所を見て、いや、青い花が無くなったからかもしれないと思う
自分の世界を作りたかったのかな
でも誰かの世界を塗り潰して作るのはダメなんだよ
そうしてしまうのはきっとオブリビオンの性
今を生きる俺達は共存できないから骸の海に還さないといけない
…悲しいけどね

空中に暗夜の剣を振るってUC解放・従夜を発動
黒水晶を剣から出現させそれを竜に突き立てる
最初こそ痛いけれど幻覚を見せればそれさえわからなくなるだろうと願って
自分の花に囲まれる世界の夢を見てもらいたい

息吹は一度回避するけれどその結果を見て次からは避けない
大丈夫、体はまだ動く



●嘆きの花

 その鳴き声に悲しみを感じたのは何故だろう。サンディは目の前のふわり浮かんで羽を羽ばたかせている竜を見ながら顎に手を当てううんと唸る。これから戦いになる事を憂いているのか。――答えはどれでも無いのかもしれない。
「あれ」
 自分の世界を作りたかったのかもしれないと思ったのはふわり飛んでいた竜が降り立った地にある青い花。小さくとも散らされずに生命力を見せているのを此の竜は護ろうとしているのかもしれない。
「でも誰かの世界を塗り潰して作るのはダメなんだよ」
 此処は妖精の世界だから。けれどもそうしてしまうのはきっとオブリビオンの性なのだろう。今を生きている自分達とは相容れない存在であるから、骸の海に還さなければならない。
 悲しくとも、それが猟兵である自分の役目。
 鞘から引き抜いた暗夜の剣を空中に振るえば、暗き黒水晶の結晶は剣からパキ、と音を鳴らして現れる。その結晶を竜の体に深く突き刺し、離れれば低い唸り声と共に首を左右に大きく振り乱して尾を地面に叩きつけ始めた。深く突き刺された結晶の痛みは、花を散らしている事に気付かない。
「グルルル、ブウウウウ」
 唸っていたものの、その結晶を息吹で吹き飛ばそうも吹き飛ばすことはできず。吹き抜けた息吹は地面に花を芽吹かせた。
「痛い? 痛いよね、でもそのうちそれも分からなくなるはずだよ」
 痛い現実は、甘い夢の始まり。
 ――竜胆の香り。花の香りに薄らと目を開けばそこは竜の望む、青き花畑。無限に広がる青の花にぱちぱちと目を瞬かせて、羽ばたく。羽ばたいて産まれた風に花は揺れて花弁が舞う。ああこれだ。これが、自分の望んだ世界! くるりと宙を舞い、上がる。けれどちくちくと体が痛んだ。羽を動かせばずきりと痛む。大きく息を吸い込めば肺がずきりと痛む。
 痛い。痛い。こんなの夢じゃない。ぱちりと大きな雫を零しながら目を覚ます。確かにあれは夢だった。自分の望んだ夢だった。けれど痛みは――欲していなかった。
 目を覚ませば自分の望んだ青はそこになく。芽吹きの息吹を吹かす。
「うわ、っと!」
 風が通り抜ければ芽吹いた青い花を目安にサンディが避ければ、その口許を注視しながら一度は結晶を咲かせた剣を再び構えた。
「大丈夫、体はまだ動く」
 動きが鈍いグラスアボラスに比べればサンディの体は軽い。
「夢は、もうおしまいだよ」
 人の夢に入ってきたのだから。それ相応の痛みは受けるべきだと。再び芽吹きの息吹が吹かれようとも、その風を剣で切り拓き、体に刺さった結晶を剣で深く、深く突き刺した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マホルニア・ストブルフ
おやおや、どんな怪物かと思えば、うちのレヴィみたいな声だして。

――何だ、レヴィアスク。言いたいことでも?

終始後ろに隠れているうちの子の、『倒しちゃうの?』という視線は困ってしまうね。
私は猟兵だもの、やらんといけないだろうに。
F氏に一つ頼み事をするよ。――見繕ってもらった花なのだけれど。

情報収集の知覚端子を展開。武器たるレヴィも勿論共に竜に接近。警戒した竜の花の息吹をUCで対処。

――貴方ね、自分の好きなものばかり持っていれば良いわけじゃないのよ。たまには他人のものを受け入れなさいな。そうしたらほら、こうやって返ってくる。

氏への頼み事、暖かな青を冷たい青へ。竜胆の花はいかが。
武器は抜かせないでね?


リグ・アシュリーズ
白いデイジー、預かってて!
とっておきの一輪、散らせずお迎えしたいもの。
接近戦のが得意だけど、咲いたお花を踏みたくないから。
周りの猟兵さんと息を合わせて、できるだけ花園を荒らさず戦うわ!

狙撃銃を取り出し、弾を込め準備。
その間襲ってくる花の息吹には、突き立てた黒剣で風をかきわけて抵抗。
私と剣が盾になれば、後ろのファルファローネさんは守れるはず。
ふふ、大丈夫よ!
あとで倍返ししちゃうくらいには、私、気が強いから。

照準を合わせ、タンと一発弾丸をお見舞い。
あっ、もう。平気な顔して可愛くないわね!
なんて。二発目も同じと思ったかしら?

弾道をはかり、次に放つは炸裂弾。
さ、今のうちにキツいの食らわせちゃいましょ!



●花は散らさず

 冷たい青き花が散り行く中、かつりと靴を鳴らして根源である竜の目の前にマホルニアは立つ。その姿は何処か自分の相棒に似ていると感じたのは気の所為ではない。
「おやおや、どんな怪物かと思えば、うちのレヴィみたいな声だして」
 背中に隠れた相棒はじいっと細めでマホルニアを見る。自分はそんな情けない声を出さないという抗議の目は次第にゆっくりと開かれ、目の前にいる竜へと向けられた。
 肉体を持たず電子のデータであるレヴィアスク。肉体を持った息吹の竜『グラスアボラス』は同じ竜。それはきっと同胞であった。けれどグラスアボラスがオブリビオンである限り、理解はしえない。悲しげな目を相棒であるマホルニアへと向けると、彼女は片目を瞑り肩を窄める。
「猟兵だもの、やらんといけないだろうに」
 ただ妖精の国に遊びに来た竜だったら。害を成さない竜だったら。もしかしたら違ったかもしれない。けれど――それは、妖精の国を荒した竜なのだ。その瞳は夢から目覚めない様に閉ざされたまま。
「ブウ……」
 グラスアボラスの口が大きく開かれ、一帯の空気が吸われた後に吸った空気を、呑み込んだ風が竜胆の花弁に変わって吐き出される。
「預かってて!」
「お嬢さん! お気をつけて!」
 ファルファローネに白いデイジーを手渡し、リグは前へ飛び出し地面に黒剣を突き立て竜胆の花弁を風を掻きわけていく。竜胆の花と共に吐き出された息吹はリグの体を、服に傷をつけて行くけれど、自身の身よりも後ろにいる彼の方が気になって振り向く。不安気な表情をしているファルファローネに対して笑顔を見せれば、安堵の溜息が聞こえた。
「ふふ、大丈夫よ!」
 リグと黒剣がファルファローネの盾になれば、彼は飛ばされる事も怪我をすることもない。それに貰った白いデイジーも散らされる事もない。彼と花が無事だと分かれば一安心した。
「――とっておきの一輪、散らせずお迎えしたいもの」
 もっと近づければいいけれど、咲いた花を踏み散らしたくもない。現に辺りは竜胆の花嵐で拭き溢れて行く。
「この風、厄介ね」
 手を広げて、マホルニアの指先の知覚端子は活性化され風の向かう矛先が指先をすり抜けて行く。一歩、レヴィアスクと共に確実にグラスアボラスに近づけて行けばその口先から吐き出された竜胆の花嵐はマホルニアとリグを狙っていく――筈だった。花嵐は二人に届かず、ぴたりと落ちていく。
「――落ち着きなさいな」
 マホルニアの指先がレヴィアスクの顎先を撫でれば青い光がマホルニアとリグを包んだ。
「わっ、何これ! 綺麗!」
「余計なお世話だったかしら?」
「大丈夫、これで花園を荒さずに戦えるわ!」
 それに、これなら倍返しできる準備もできると取り出した狙撃銃に弾丸を装填していくリグを見やり、マホルニアは溜息をひとつ零してグラスアボラスへと向けた。
「――貴方ね、自分の隙間のばかり持っていれば良いわけじゃないのよ。たまには他人のも受け入れなさいな」
 目の前の竜に言葉が通じるとは思っていない。なぜなら今も尚、グラスアボラスは口を広げて竜胆の花嵐を二人に向かって吐き出した。
「そうしたらほら、」
 けれど青き光は二人を守り、竜胆の花弁をグラスアボラスへと還って傷つけていく。
「こうやって返ってくる」
 因果応報って言葉はそのために在った様にも感じられたそれは、グラスアボラスの体を消耗させていた。
「準備良しっ」
 片目を瞑り、照準をグラスアボラスの頭を狙う。かちりと安全装置を外し、トリガーを弾けばタンと一発の弾丸が竜に向かって放たれる。ただの弾丸は確かにグラスアボラスの頭に着弾し、火が放たれた。けれど――。
 ぱちぱちとゆっくり開かれた竜の瞳は何が起きたのかあたりをきょろりと見回す。何が起きたのか分からない様子でいた。
「――なあんて、油断したかしら?」
 にやりとリグは口端を釣り上げ、再び弾丸を装填し狙撃銃を構える。一発目はデコイ。本命は、二発目。弾道をはかり、放たれた炸裂弾はグラスアボラスへと確実に着弾した。
「ギュ、ギュウ……!?」
 困惑したグラスアボラスの体はそのままばたん、と足を広げて地面へと這いつくばる。リグのマホルニアの二つの銃口が竜の頭へと向けられても尚、竜は立ち上がろうとする。
「ファルファローネ、頼みがある」
「な、何だい……?」
 二人の怪我の具合の方が気になるのか、石のような固い表情をしながらファルファローネは二人の後ろから花を抱えて出てきた。
「冷たい青は、あるかな」
「――ああ、あるとも」
 此処に。そう呟くと同時に竜の上に竜胆の花が降ってくる。花嵐ではなく、花雨であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴェル・ラルフ
ひとりなく竜
哀しい声
きょろりきょろり
何かを探すよにさ迷う眸
どうやら竜は、ただ青い花を愛して
自分の好きな花で世界を染めたかったのかも
悪気があったわけではないのかな
けれど
ここはファルファローネの世界だから
聞き分けてくれるかな

吐き出された息吹は見切って回避しながら接近を試みる
花で埋め尽くされる周囲
哀しいから怒るんだよね
充分に近づいたら【青焔】
君の好きな青で、君を包む
せめて、幸福のなかで終わらせたい

竜が戦意を喪失したら
【明けの鈴】で急所を抉る

ファルファローネに声かけて
お願いしてもいい?
彼のために
青い花を降らせることを

★アドリブ歓迎



●導きの青

 きょろりきょろりと辺りを探り。すんすんと鼻を鳴らして青い花が散り行く匂いを感じとってはか細く弱い声で啼くグラスアボラスはゆっくりと眸を開く。その目には涙は流れずとも、潤んだ眸が悲しみを訴えているようにヴェルは感じた。
「――自分の好きな花で世界を染めたかったのかな」
 ただ青い花を愛していた。好きなものに囲まれて、静かに過ごしたかった。それだけなのに。どうして荒らすの。どうして。憂いを帯びた眸がヴェルに訴えかけてくる。
「だけど此処はファルファローネの世界だから。聞き分けてくれるかな」
「ブウウウウ」
 分からない。分かりたくないと頸を大きく振り見出し、グラスアボラスはブーイングにも似た息吹をヴェルに向かって吐き出した。
 吐き出された息吹はファルファローネの咲かせた花も、青い花も散らしてゆく。それを目安にヴェルはその息吹を躱し、グラスアボラスへと近づいた。
「哀しいから怒るんだよね」
 ふわり。竜胆の花が舞う。花を踏み散らしたりはしない。けれど、此処に居てはいけないから。せめてその哀しみを癒やす事ができたならと手にした銀のアミュレットは光を灯し、ヴェルを青い焔で包み、光り輝く。
「ご覧、君の好きな青だよ」
 ぱちぱちと眸を瞬かせた後に竜はゆっくりと眸を伏せ、羽を折り畳んだ。
 ――此れは夢。グラスアボラスの叶わなかった夢。
 妖精の国よりも遥かに広い場所。果てしない青が、竜胆が、丸くなった竜の巨体を包み込む。小さな仲間。大きな家族もいて、幸せな、幻。
 ぽろりと大きな雫がグラスアボラスの閉ざされた眸から零れ落ちる。ひと時の幸せな夢。そのまま眠りについてしまいたい。夢と同じく丸くなった巨体を見上げながらヴェルは真白の刃を両手で握り締めて、竜の喉元を突き刺し、ゆっくりと引き抜けば紅は青も侵食していく。
「――お願いしてもいい?」
 後ろに控えたファルファローネはゆっくりと頷く。
「彼のために」
「勿論だとも」
 ゆっくりと頷いた妖精は、竜のために花を降らす。此の竜が好きだという青い花は、静かに降り注いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月21日


挿絵イラスト