●いざ、水晶の悪夢へ
「逆巻く旋風、凍ての銀閃と舞い穿て! タンペット・ドゥ・ネージュ!」
光と闇が融和した銀杖に翡翠の風が集まり、突き抜ける流星となって洞窟内を駆け抜けていった。道中にあった水晶は軒並み砕け散って一筋の道が出来上がる。
「これでまた奥に行けますね。ふぅ~、大変大変。ですが、労力に見合ったお宝だという話ですし……頑張りましょう!」
うんしょ、うんしょと水晶が削れた勾配を上っていくのは一人の兎魔導士。一つ上っていく度にぴょんと跳ねた耳が揺れ、ふぁさっと広がった髪が揺れ、ぷるんと大きな胸が揺れる。
ここは水晶がひしめく洞窟だが、洞窟そのものが一つのフェアリーランドであった。それを出鱈目に弄繰り回して強引に固定し、目的のお宝を探し出そうとしているのだ。
そのお宝は、ともすればフェアリーの命と引き換えに。命懸けだが決して自分の命は危険に晒さない、安心安全な旅路だった。
●アックス&ウィザーズ・11thラウンド
「フェアリーさんはどうやらたくさん襲われているようで! 今回もまた事件です!」
ロザリア・ムーンドロップ(薔薇十字と月夜の雫・f00270)は新調した衣装に身を包んでグリモアベースを訪れていた。フェアリーの件については、猟書家の起こす事件は数あれどその中でも数が多いのがフェアリーランドの事件、ということらしい。
「フェアリーランドがオブリビオンの手によって悪夢に変えられてしまいました! このままではフェアリーさんの命が危ないので、フェアリーランドに向かってオブリビオンを倒してください、というのが事件の概要です!」
猟書家の手口はその気になれば真似できるらしく、意志を継ぐ者が後を絶たない。起きてしまうものはどうしようもなく、猟兵達は一つ一つ対処していくしかないのだ。
「今回の悪夢化は『水晶の洞窟』になります! なんか洞窟に水晶がわあぁーっと生えてて、先へ進むには壊すとか通れるところを探すとかしないといけないみたいですね! そして洞窟の奥に行くと『氷風の兎魔導士』フロワールという魔導士が待ち受けているようなので、さっと倒しちゃってください!」
水晶煌めく洞窟は光景としては綺麗なものだ。しかし心奪われては事件解決に支障をきたす恐れがあるのでほどほどに。
「今月は山場な気がするので、精一杯頑張っていきましょう! 宜しくお願いします!」
沙雪海都
沙雪海都(さゆきかいと)です。
新年度始まりましたね。コートはそろそろ終わりかなー?
●フラグメント詳細
第1章:冒険『水晶の洞窟』
水晶がわあぁーな洞窟です。かなり足場が悪いのでどうにか突破しましょう。
困ったら壊せばええねん。
第2章:ボス戦『『氷風の兎魔導士』フロワール』
こいつぁ悪い兎さんだ!
戦闘場所はフロワールが一通り水晶を破壊した後なので足場的にはそんなに悪くなさそうです。
●MSのキャパシティ
のんびりやります。以上!
第1章 冒険
『水晶の洞窟』
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POW : 水晶を砕く、持ち上げて動かす等、力で開拓
SPD : ジャンプして乗り越える、取っ手にしてよじ登る等、身体能力を生かす
WIZ : 水晶の並び方や洞窟内の環境等から進めそうな場所を探し当てる
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。
第三『侵す者』武の天才、最近は破壊神
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎と陰海月
…いやな、陰海月がな。分類『武器』であるから、わしの破壊特化UCの影響受けまくりでな。
そのことをわしがうっかり忘れておって。ついこの間、発動させてたら陰海月がびっくりしててな。
慣れさせるためにも、破壊していい所を探しておってな。
うん、水晶は美しいと思うぞ?砕けるときもそうであるが。
それが悪夢というならば、破壊するのも一興よ。
破壊された方が、歩きやすいのも事実であるしの。
※
陰海月「ぷきゅっ!」
水晶をどっかんばっこん。このUC状態に慣れる気満々である。
なお、破壊は必要最低限にする模様。
●水晶は散るも美しき
ミズクラゲ漂うそこはマリンブルーよりも深みのある深海のような世界だった。細々とした苔の蓄光が水晶で反射、拡散されて洞窟内部を薄ぼんやりと照らし出す。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が足を踏み入れたそこは生え揃った水晶の間で、一人分の足場はどうにか確保されているものの、先を見れば水晶が密に詰まっていた。
長い年月をかけて成長したかに見えて、それらは全てオブリビオンが作り出した悪夢。美しくはあるが、破壊することに躊躇いはない。
義透はミズクラゲを送り出して、無邪気に触手を伸ばす姿を父のように見守っていた。ぷきゅ、ぷきゅと可愛らしく鳴きながらも、触手は鋭く突き出され、水晶の鏡面に激突、貫き破壊していく。
ミズクラゲは義透の友であったが、その本質は武器に等しく、『今』の義透が持つ破壊能を存分に引き継ぐ。故に、身に余る力を得たミズクラゲはひどく驚いたのだという。
此度の冒険はミズクラゲに力を慣れさせる、訓練のようなものだった。バキ、バキャとターゲットを撃破していくミズクラゲの後をゆっくり追いながら、義透は満足そうに頷いていた。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
洞窟に水晶、なかなか幻想的だね?
でもこのままじゃフェアリーが危ないからね、壊すとしようか
揺るぎなき反抗を
通れる位になるまで
水晶をぶった切りながら進むよ!
これより反抗を開始する
この悪夢にチタノの加護と導きを
●水晶原は遥か空まで
水晶の造形美とは、水晶単体では成立し得ない。
例えば水晶の一欠片が道端に転がっていたとしたら、それはただちょっと綺麗な石ころと何ら変わりはないのだ。
洞窟という閉塞的、排他的な環境こそが水晶を一際煌めかせる。
そんな幻想の一端に触れたニクロム・チタノ(反抗者・f32208)。すべすべの水晶面は氷のようにひんやりしていた。
「幻想的な光景だけど……フェアリーが危ないからね、壊すとしようか」
立体構造の大きな洞窟。その中で水晶は足場にもなるが、壁にもなった。視線を斜め上方に送った先にある深部への道は、大小様々な水晶が下手くそなパズルみたいに組み上がって塞いでいた。
ニクロムは反抗の妖刀を手に握り込み、ニクロム自身の身長の何倍もある水晶の壁を叩き壊す姿をイメージする。頭の中で何度も思い描き、虚像を少しずつ現実の動きに焼き付ける。
「行くよ……これより反抗を開始する。この悪夢にチタノの加護と導きを――揺るぎなき反抗を!」
細かく砕けた水晶の欠片を踏み鳴らしてニクロムは駆け出した。ニクロムが立っていた場所から指数関数的に背の高くなる水晶群へ向かっていく。
厄介なのは錐形だ。斜度の極めて高い水晶上部は最早一種の凶器に等しい。
ニクロムは水晶が目前まで迫ったところでほとんど垂直に跳び上がった。そして上昇の中で水晶が細く窄まる根元を狙って妖刀を水平に振り抜いた。
斬首された水晶は平べったい足の踏み場になる。ニクロムはその上に着地すると、続けてさらに背の高い水晶へと挑んだ。妖刀を薙いで水晶を砕き段を作れば、それは水晶の階段だ。
駆け上がり目指すのは天空回廊。遥か下では斬り飛ばされた水晶が落下し砕け散る。反響音を聞きながら、ニクロムは水晶の壁を見上げていた。
近くに迫ると水晶の壁は思いの外分厚く、一太刀では刀身の長さが足りない。そこでニクロムは足場から届く高さを狙い、妖刀を振り回して滅多打ちにしていった。
ごりごりと削れていく水晶の傷は次第に深く広がり、水晶はゆっくりと自重で傾いていく。ニクロムの斬りつけによって与えられる振動に、傾きによる構造の歪みが水晶へ大きな負荷となってのしかかっていた。
「やあぁっ!」
水晶自身に押し潰されながらもわずかに開いた傷口へ、ニクロムはさらに一太刀、刃を滑り込ませていた。奥を砕きながら真横に引き抜いていくと、ついに水晶はバキンと折れた。
結晶結合の一切を失った水晶はコマ送りの如く傾き落下する。ニクロムは一旦その場から飛び退いて転がり落ちる水晶を見送ると、大部分が失われ滑らかな足場となった水晶の根元へ上り、残りの水晶をぶった切りながら先へと進んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
サカマキ・ダブルナイン
【WIZ】
洞窟を進み、奥の敵をとっちめる!シンプルで良いのー!
フェアリーの命もかかっとる、モタモタできぬぞれっつらごー!!
……それで、これが水晶の洞窟と。うわーマジで一面水晶じゃな……。
壊しつつ進んでも良いんじゃが、そこはわらわロボじゃし?
きっちりルートを調べてスマートに進んでやるのじゃ!!
わらわのスーパーおめめ、「99式カメラアイ」で洞窟を見つめ、電脳世界を局地展開。
ズームをかけて、見えるギリギリのところまで視覚からデータを収集。
可能な限り内部構造を把握し、進行可能なルートを演算……。
よし、後は進みつつデータを集め、ルート構築を続けるかの。
坂巻99式の「学習力」と対応力を見せてやるのじゃ!
●絶壁を越えて征け
最近のグリモア猟兵の案内はきゅっと引き締まっていて簡潔だ。一直線の作戦内容、案内慣れというのもあるのかもしれない。
「洞窟を進み、奥の敵をとっちめる! シンプルで良いのー! フェアリーの命もかかっとる、モタモタできぬぞれっつらごー!!」
と、息巻き転送されてきたサカマキ・ダブルナイン(ロボ巫女きつねのお通りじゃ!!!・f31088)は、見渡す限り水晶がひしめく洞窟に息を呑む。
「うわーマジで一面水晶じゃな……」
サカマキはざっくばらんな感想を漏らしていた。地面はどこまでも続く水晶畑で、壁や天井にもフジツボのようにびっしりと付着している。
進路を得るにはこの水晶の群生地を突破しなければならなかった。水晶はそれなりの強度を持つが、猟兵の力であれば破壊するのも容易い。サカマキもその手段を考えはしたが、ロボとしての矜持がそれは最後にとっておけと告げていた。
「ルートの一つや二つ、どこかにあるじゃろ……きっちり調べてスマートに進んでやるのじゃ!!」
意気込み、サカマキは洞窟を見渡す。キュイキュイとサカマキの瞳の光彩部が拡大、縮小を繰り返し洞窟内の構造を細部まで感知していた。
これがサカマキの持つ99式カメラアイ。洞窟内部に電脳世界を局地展開し、水晶が入り組み奥まった部分まで鮮明に映し出す。電脳世界ではその輪郭のみが浮かび上がり、隠された空間を暴いていく。
「おーおー……ギリギリ通れるかどうかじゃが……まあ何とかなるのじゃ」
サカマキの瞳が見出したルートは深い渓谷を乗り越えていくようなものだったが、サカマキは果敢に攻めていった。水晶の間をよじ登り、傾いた水晶の側面を足場にしながら滑らないよう気を付けて、適宜ルートを演算、更新しながら進む。
そしてやってきた最大の難所。今の足場からは手が掛かる水晶の裂け目部分までが高く、またその上部の隙間も細い。
サカマキは改めて水晶を見上げながら一つため息をつく。ここは気合を入れ直す休憩ポイントでもあった。
ひとまず手を目一杯伸ばしてみる。それでもわずかに届かず、跳び上がるしかなさそうだった。サカマキは助走の為の距離を取ると、一呼吸置いて水晶へ向かって走り出した。
「ほっ……たあっ!」
水晶の手前で踏み切り、さらに水晶を駆け上がるように真上へと跳んだ。そこから頭上に伸ばした右手で水晶の裂け目をキャッチし、ぶらんと垂れ下がる。
「ぬぐぐ……」
左手も伸ばし、両手でこじ開けるように水晶を持った。そこからはロボ的なパワーで体を引き上げていく。パンパンに張りつめた腕を曲げ、視線がようやく水晶を越えるところまでくると、左手、右手と交互に持ち替え、水晶の上を目指した。
「ふぉぉ……」
水晶の先にはまだ狭まった小道が続く。未だ敵は見えないが、最大の高低差であるこの水晶さえ乗り越えてしまえば後は気楽だ。
少しずつ高くなる視界がサカマキの気持ちを支え、足が引っかかりそうなところまで上ってきた。サカマキは腹筋に力を入れて足を持ち上げようとしたが、一回、二回と惜しいところで空を切る。そして三回目、ようやく足が届くとそのまま一気に上りきり、無理矢理体を隙間に捻じ込んで水晶の向こう側へ転がった。
「はぁっ……はぁ……な、なんとか行けたのじゃ……」
両腕は変に力が入った感触が残っており、ぴくぴくと痙攣している。大の字に寝転がると、天井から切っ先を突きつけてくる水晶は盗賊除けのトラップのようだった。
「……こうしては居れんな……行くと、するかのぅ」
難所を越えた感動も束の間。サカマキは水晶の小道を辿り、悪夢の主の元へと向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『氷風の兎魔導士』フロワール』
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POW : グラセ・トゥールビヨン
命中した【つむじ風 】の【拘束】が【氷の枷】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD : ラファール・グラソン
【戦場に散りばめた氷柱の先端 】を向けた対象に、【無数の氷の刃が含まれた突風】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : タンペット・ドゥ・ネージュ
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【氷・風 】属性の【氷漬けにし後方へ吹き飛ばす魔術砲】を、レベル×5mの直線上に放つ。
イラスト:伊藤知実
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●兎魔導士は耳が良い
水晶洞窟の開拓者は今もせっせと水晶を破壊して回る。手づかみできる程度の細かい破片にまで粉砕したら、その中を杖で引っ掻き回して目的のお宝がないか探すのだ。
「うーん……ありませんねえ。いよいよこの辺ではなくなってきた感じでしょうか……」
たまたま突き当たった小部屋一つ分、地面と壁は綺麗に均した。あとは天井にある分だけだが、破壊した先からバラバラと水晶が落ちてきてしまうので注意が必要だ。
フロワールは目標とする水晶から距離を取り、落下の被害を予め回避する。そうしてまた呪文を唱えようとした――その時。
「……むっ? 良くない気配……まさか、敵……?」
捧げた杖の先端を入り口に向けて警戒するフロワール。そこへ現れたのは、水晶洞窟を突破した猟兵達だった。
火土金水・明
「このまま、あなたに好き勝手なことをされるとフェアリーさんが危ないので、邪魔をさせてもらいます。」
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】を絡め【限界突破】した【銀の流れ星】で、『『氷風の兎魔導士』フロワール』を【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】【見切り】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「少しでもダメージを与えて次の方に。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。
●黒き辻斬り
「このままあなたに好き勝手なことをされるとフェアリーさんが危ないので、邪魔をさせてもらいます」
一陣の辻風が吹いた。黒色のマントを羽織り飛び込んできた火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)の手には銀の剣が光る。
「――っ! やっぱり! ラファール・グラソン!」
煌めくは銀の輝きのみに非ず。フロワールは中空へ氷柱を散りばめる。数多の星の輝きが明の頭上を狙っていた。
流星走る。細長く尖った氷柱が明へと迫ってきた。その体は針山となるか――否、氷柱が撃ち込まれたのはどれも明の残像だった。
場は俄かに冷え込んでいく。だが明の足は衰えを見せずフロワールへとまっしぐら。
「もう一度! ラファール――」
「間に合いませんよ」
力を溜めた足が爆発的な突進を生み出し、明は一瞬にしてフロワールの懐へと踏み込むと稲妻の如き突きを繰り出していった。フェイントで軌道を変え、一瞬の防御すら掻い潜る。
「きゃあ!?」
杖を持つ腕を刃が貫き、肩の羽織が千切れ飛んでいた。明は間髪入れず剣を引き、続けざまにもう一方の腕へと突き出していく。
今度は魔導書を支える腕が刃に裂かれた。フロワールは風を足元に向けて放ち、逆噴射の推進力で明を強引に引き離す。
「咄嗟のこととは言え、この負傷はきついですね……」
両腕をだらりと下げたフロワールは、じくじくと広がっていく痛みを必死に堪えていた。
大成功
🔵🔵🔵
サカマキ・ダブルナイン
やーっと追いついたのじゃぁ……疲れたぁ!!
とはいえやる気は衰えぬ、我が名はサカマキ・ダブルナインッ!!フロワールとやら、勝負といくぞよ!
まずは「炎熱狐」を起動じゃ……感情プログラムの停止を確認。これより敵対存在"フロワール"の殲滅を開始します。
……フロワールの音声を分析、魔術的詠唱と判断。
当機の【学習力】により、分析した詠唱を記録します。
詠唱の終了を確認し次第、『ミレナリオ・リフレクション』を発動。
記録済のデータを基に当機体の発声機構を用いて【高速詠唱】を実行。魔術砲の再現・相殺を試みます。
相殺後はフロワールへの接近を開始。損傷を厭わず距離を縮め、「狐雷球」による近接【属性攻撃】を実行します。
●幻狐御手
長く厳しい道のりだった。水晶を何山も乗り越えてサカマキはようやくフロワールの元へ辿り着く。
マラソンで言えばそこはゴールだ。力を絞り出しきったランナーよろしく倒れ込むのも乙なものだが、サカマキにはまだやらねばならぬことがある。
疲れはしたが、やる気は未だ衰えない。
「こんな時に……新手ですか!」
「そうじゃ! 我が名はサカマキ・ダブルナインッ!! フロワールとやら、勝負といくぞよ!」
叫ぶと同時にサカマキはクロックアッパー「炎熱狐」を点火した。体を巡る灼熱と引き換えに、感情は氷河のように冷えていく。
「……感情プログラムの停止を確認。これより敵対存在"フロワール"の殲滅を開始します」
サカマキの視線は一寸の狂いなく水平に飛ぶ。羽虫を容赦なく握りつぶしてしまいそうな圧を感じながら、フロワールは歯を食いしばり長杖を掲げた。
「我、創世より千の碧嵐を統べる者也。我、創世より万の白氷を統べる者也――」
フロワールの詠唱が風を呼び、氷雨を降らせる。風と氷は入り混じって杖の宝珠に収束し、魔弾として装填された。
響き渡る声を、サカマキはじっと聞き入っている。
「フロワールの音声を分析、魔術的詠唱と判断。当機の学習力により、分析した詠唱を記録します」
サカマキの耳はぴんと立ち上がり、パラボラのように音声を拾い集めていく。詠唱を一字一句逃すことなく記録し、復唱の準備を始めていた。
「――此処に解き放て氷牢の絶風! タンペット・ドゥ・ネージュ!」
魔術砲、発動。風と氷の魔弾が恒星の如く輝き飛んでくる。サカマキの視界からは、それは宇宙誕生の光のように感じられたことだろう。
「詠唱の終了を確認――双極性反射『ミレナリオ・リフレクション』を実行します」
正確性とはサカマキの十八番だった。フロワールの魔術詠唱を頭から、高速詠唱で一気に駆け下りる。
「――タンペット・ドゥ・ネージュ」
サカマキの目の前に生み出されていたのは、フロワールが放ったものと全く同じ魔術砲。正しく真逆に打ち出されたそれは、一つのレール上にあるもう一つの魔術砲と正面衝突、閃光を周囲に撒き散らして消滅する。
「うわぁ!?」
フロワールは堪らず視界を腕で覆う。対しサカマキは忠実に次の作業を実行していた。
光に閉ざされた一瞬を逃さずフロワールへと接近。両手の肉球からはパチリと電撃が弾ける。
しゃりしゃりと水晶を擦るような足音が聞こえてフロワールが視界を開くと、そこにはもふっとしたサカマキの両手が伸びていた。
ぺたん、と両頬を挟み込まれた瞬間、顔に強烈な穿痛が襲い掛かった。
「ひぎゃああぁぁぁ!?」
痺れる体はタコ踊りのようにフロワールの意思とは関係なくうねうね動く。手にした杖からは余った電撃が空へ逃げていた。
「属性攻撃、実行完了。敵対存在、感電。甚大な損害、確認」
ふしゅる、とフロワールが吐く息は煤混じりで、雪の肌には大小様々な黒斑が出来上がっていた。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
引き続き『侵す者』
ふむ、追い付いたかの。ようやった、陰海月。
さて、陰海月よ。実戦である。
わしも戦うからの。
天井部分は気を付けんとな。氷柱と一緒じゃな。
しかして、結界術をわしと影のに施さぬと。つむじ風は避けるに難しいからの。
陰海月とわしの黒燭炎であるから、二回攻撃よな。ついでにそこに、炎属性攻撃もつけておこう。
ああ、陰海月にも炎属性つくから、そこも慣れるとよいぞ。
※
陰海月「ぷきゅ!」ヤル気満々
指定UC状態に慣れた。どっかんばっこん。
独自に鈍化呪詛でぺちぺちしたりもする。
●ステップアップ
訓練の後は実戦に移る。お手本のような指導であった。義透は先行させていたミズクラゲに並ぶと、長柄の槍を地へ向け一振り、今日の具合を確かめる。
見上げれば逆さ吊りの水晶だ。振動でも走ればぽっきり折れて降るやもしれぬ、と警戒しながら、眼前の敵へは結界術を施し守りを固めた。
「風よ、捕まえて! グラセ・トゥールビヨン!」
フロワールはつむじ風を飛ばす。当たれば一瞬で凍てつく拘束具だった。目には見えぬが、空気の動きは肌で追える。
空間を満たす流体を避けるのは容易ではない。だからこその結界だった。義透は正面からつむじ風を受け止めると、それが拘束具へと変化する一瞬で結界ごと捨て去った。身を覆う薄皮一枚で敵の狙いを外せるなら安いものだ。
槍には炎が走り出す。同時にミズクラゲの触手にも炎が灯った。ミズクラゲは不思議そうにゆらと持ち上げると、何かを悟ったか真上に大きく振り上げていた。
戸惑うフロワールの腹へ、義透の放つ突きが刺さる。同時にミズクラゲがぼこぺちんと触手でフロワールの頭を殴りつけ、義透が槍を引き抜くのに合わせて吹き飛ばした。
「あっ……ぐぅ、げほっ……」
傷口に塗り込められた熱気を吐き出すように咳込むフロワール。頭は触手の呪詛が回ってズキズキ痛んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
キミだね、勝手にフェアリーの夢で悪いことしてるのは、許さないよ!
悪いウサギさんには超重力でお仕置きだよ!
キミが水晶を壊してくれたお陰で走りやすくなったよ!
下手なことされる前に先手必勝動けないとこ悪いけどオブリビオンに容赦しないよ?
反抗の妖刀の錆になってよ!
●悪夢断つまで
「キミだね、勝手にフェアリーの夢で悪いことしてるのは。許さないよ!」
威勢よくニクロムが飛び込んでくる。キンキンと頭に響いてくるニクロムの声はフロワールにとって鬱陶しいことこの上ない。
ただでさえ魔力も体力も垂れ流し状態になっている体だ。神経を逆撫でする代物を受け入れるだけのリソースなど存在していなかった。
「……っく、風よ……お願い!」
動きを封じ、場を制する。つむじ風が杖から飛んでいくが、それより先にニクロムが水晶を蹴散らし爆走していた。
「キミが水晶を壊してくれたお陰で走りやすくなったよ! 悪いウサギさんには超重力でお仕置きだよ!」
水晶の荒波を立ててニクロムが飛び込む。超重力を引き起こしてつむじ風さえも地に落とすと、反抗の妖刀を正眼に振り上げて、
「悪いけどオブリビオンには容赦しないよ? 大人しく……反抗の妖刀の錆になってよ!」
ニクロムの気迫がフロワールの精神を断つ。膝を崩してぺたんと座り込んだフロワールが見上げたのは、仄赤き薄刃。
天地開闢の太刀がフロワールの眉間から一直線に落とされた。途端に広がる闇に、フロワールの意識は深く、沈む――。
水晶の悪夢もまた、フロワールの消滅と共に醒めてゆくのだった。
大成功
🔵🔵🔵