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はかなく砕けよ、美しき希望(モノ)

#ダークセイヴァー #殺戮者の紋章 #闇の救済者

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#闇の救済者


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「コイヌール卿。人間どもの軍勢が、もうすぐそこまで迫ってきております」
「『闇の救済者(ダークセイヴァー)』ね……大層な名前だと思っていたけど」

 瀟洒なゴシック調に飾り立てられた館で、鈴の転がるような美しい声が囁く。
 明けない夜に覆われた地で、月明かりに照らされて窓の外を眺める声の主は、まるで人形のように可憐で、しかし人間のぬくもりをまるで感じさせない、冷たい眼をしていた。

「その名に恥じない力をつけてきたようね。まさかここまで来るなんて……」

 娘が見つめる先にあるのは数え切れない程の篝火と、千を数える武装した人間の群れ。
 その規模はもはや軍勢だ。闇の世界を支配するヴァンパイアを倒し、希望と未来を取り戻すために結成されたレジスタンス――彼らは自らを『闇の救済者』と名乗る。

「いいわ……とても素敵。私達に弄ばれるだけだった彼らが、希望を抱き団結している。なんて美しいのかしら」

 言葉とは裏腹に、娘の声からは一切の"熱"を感じられず。だがその目線は向かってくる者達の動きをじっと追っている。あの篝火の下に集った人の群れは、他ならぬ自分を討つために来たのだと理解していても――その透きとおるように白い肌が色づくことはない。

「ああ……壊したい。あの美しい希望を、跡形もなく砕き潰してしまいたい」

 闇の世界の領主がひとり、フェイル・コイヌールははかなげな素振りのままそう語る。
 彼女は後ろに控えていた黒い鎧の女騎士に命ずる。熱を感じさせない冷たい声のまま。

「行きなさい。あなた達に死に場所を与えてあげる。彼らと戦い、彼らを壊して、そして美しく散りなさい」
「御意のままに」

 女騎士は反論することなく命に応じ、その場を後にする。主に仇なす敵を討つために。
 女領主はその背を見送ったのち、また窓辺から外を眺める。黒き騎士団と闇の救済者、そのふたつがぶつかり合い、砕け散るさまを観賞するために――。


「ダークセイヴァーにて事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「この世界では昨今『闇の救済者(ダークセイヴァー)』と呼ばれる複数のレジスタンス組織が一丸となって、ヴァンパイアの領主に対する大々的な反攻作戦を展開しています」
 発足当初は活動の規模も小さい地下組織でしかなかった彼らは、猟兵の力を借りて同志を集め、『人類砦』と呼ばれる独自の拠点も各地に確保。徐々に勢力を増してきた結果、今なら地方の小領主程度なら十分に太刀打ちできる戦力を保有していた。

「吸血鬼にも対抗できる立派な戦闘集団となった『闇の救済者』は、各地の領主と戦い、少しずつですが領土を拡大しています。猟兵もこの作戦に協力しない理由はありません」
 地方領主が率いるオブリビオンの軍勢と正面から戦うとなれば、それはもはや戦争だ。腕利きの黒騎士や咎人殺しなどの戦闘職、ダンピールなどの異種族も仲間に加えて戦力を確保してきた『闇の救済者』だが、それでも大なり小なりの犠牲は出てしまうだろう。
「そこで猟兵が最前線で戦い活路を開けば、味方の被害を大きく減らすことができます。『闇の救済者』達とうまく連携すれば、敵軍を圧倒することも不可能ではありません」
 戦端は既に開かれた。人類とヴァンパイアの戦いはこれからますます激しさを増していくだろう。今ある勢いを落とさないためにも、是非ともこの戦いは「完全勝利」したい。

「今回『闇の救済者』が攻め込む地を治めている領主の名は『フェイル-コイヌール』。彼女の行動原理はただひとつ、"美しいもの"を壊すことです」
 ここで言う"美しいもの"とは人か物かを問わず、外見的な美しさだけでなく友情のような人の間の情が対象に入ることもある。希望を抱き、想いをひとつにして絶望に立ち向かう『闇の救済者』達の姿にも、彼女は美しさを見いだしているようだ。
「なぜ"美しいもの"に執着するのかは分かりませんが……彼女と『闇の救済者』を戦わせるのは危険です。戦闘面においても石や毒にまつわる魔法に長けており、ユーベルコードを使えない人間が太刀打ちするのは厳しいでしょう」
 領主であるフェイルを撃破するのは、本作戦における猟兵の最大の役目になるだろう。決して弱い敵ではないが、これまでにも幾多の領主を倒してきた猟兵なら勝てるはずだ。

「また、フェイルの配下である『黒百合騎士団』も、大規模戦闘では侮れない集団です」
 その団名が示すように黒い鎧を纏う、女性のみで結成されたこの騎士団のメンバーは、主となったオブリビオンに対する鉄の忠誠心で知られている。主の為とあらば自分の命も顧みず、どんな命令であろうと忠実に従うという。
「特に変わった力は持っていませんが、玉砕覚悟で向かってくる敵は油断すると痛い目を見ます。主が生きている限り、彼女達は最後の1人になっても戦いを止めないでしょう」
 勝ちはしたものの味方も被害甚大――そんな結末にしないためにも気を引き締めておくべきだ。油断してかかりさえしなければ、戦力差的には遅れを取るほどの相手ではない。

「そして最後に……ここ最近の『闇の救済者』の活動は、地底都市の『第五の貴族』にも把握されています」
 この世界の影の支配者である彼らが、ヴァンパイアによる地上支配を脅かす事案を放置はしないだろう。もし領主が敗れるような事があれば『闇の救済者』達を始末するよう、直属の配下を地上に派遣している。
「『殺戮者の紋章』という寄生虫型オブリビオンで強化されたこの配下は、地上の吸血鬼とは一線を画する実力者です。猟兵でなければ勝負にすらならないでしょう」
 せっかく領主との戦いに勝利しても、地底からの刺客に皆殺しにされては意味が無い。
 人族皆殺しの命を受けた『第五の貴族』の配下を返り討ちにし、皆を守り抜くことで、今回の依頼は無事完了となる。

「最後まで気の抜けない戦いになるでしょう。ですが皆様なら成し遂げられるはずです」
 依頼の説明を終えたリミティアは、信頼のこもった眼差しで猟兵達を見回す。そして、手のひらにグリモアを浮かべると、間もなく戦闘が始まるダークセイヴァーに道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて、『闇の救済者』の軍団と共にオブリビオンの領地に攻め込み、敵軍と領主を撃破するのが目的です。

 一章は領主の配下である『黒百合騎士団員』との戦いです。
 忠誠心が強い彼女達は、主の命令とあらば己の命も顧みずに戦い、どれだけ劣勢になっても降伏せず抵抗を続けます。
 戦力上は猟兵と『闇の救済者』の連合軍のほうが優位ですが、油断すれば勝ったとしても大きな被害が出ます。ご注意下さい。

 二章は領主の屋敷で『フェイル-コイヌール』とのボス戦です。
 "美しいもの"を壊したいという行動原理を持つ彼女は、『闇の救済者』に強い興味を示しています。隙を見せると味方に被害が出るかもしれません。
 彼女さえ倒せれば敵軍は崩壊します。人類はまたひとつオブリビオンから支配領域を奪還し、光ある未来に前進するでしょう。

 しかしこの世界の支配者階級である『第五の貴族』は、それを望みません。
 三章は彼らが送り込んできた刺客との戦い、真のクライマックスとなります。
 戦闘力を強化する『殺戮者の紋章』と共に人族皆殺しの指令を与えられた刺客は、この地にいる全てのヒトを殺し尽くすつもりです。全力をもって阻止してください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『黒百合騎士団員』

POW   :    斬撃
【装備している剣による斬撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    闇斬撃波
【闇を纏う事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【斬撃の衝撃波】で攻撃する。
WIZ   :    闇剣強化
【自身の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【闇のオーラを纏った剣】に変化させ、殺傷力を増す。

イラスト:純志

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カビパン・カピパン
「遊撃隊、上がれ。第1歩兵師団は正面だ!」
各部隊に指示を出すと女は軍配とハリセンを頭上にかざす。
「いくぞ、我等の一撃を見せてやる!」

黒百合騎士団は慌てて迎撃しようとするが、カビパンを先頭にして疾風で駆けて来る騎馬隊に、なすすべも無く蹴散らされ正面から両断されていた。先頭で敵の陣を突き破ったカビパンが馬を反転させて軍配を掲げる。
「足並みを止めるな。陣形を組みなおせっ!」

陣を組んだ事を確認すると、掲げた軍配を振り下ろす。敵軍のド真ん中でめまぐるしく動く騎馬隊。
「貴様らに、我が首がとれると思っているのか!」

彼女ら先駆けの騎兵隊が戦場を駆け抜けていく様は、神が戦場に剣を振り下ろしたようであったという。



「遊撃隊、上がれ。第1歩兵師団は正面だ!」
 開かれた戦端。黒百合騎士団と戦う『闇の救世主』達を、前線で指揮する猟兵がいた。
 その者の名はカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)。彼女は各部隊に指示を出すと軍配とハリセンを頭上にかざし、高らかに叫ぶ。
「いくぞ、我等の一撃を見せてやる!」
「怯むな、死守せよ!」
 対する敵の女騎士達も、主君の下へは行かせまいと迎撃の構えを取る。己の命すら顧みない覚悟、忠誠心に支えられた騎士達の布陣は、容易には突破できない――はずだった。

「征けっ!」
「「おおおーーーッ!!!」」
 馬蹄の音と鬨の声を響かせ、カビパンを先頭にして疾風で駆けて来る『闇の救済者』の騎馬隊。ハリセン女教皇の【洗脳】により女神の加護と鉄の規律を得た彼らは、戦闘力を大幅に強化されていた。
「なッ……!?」
 予想を越えた突撃の勢いに、黒百合の騎士は為す術もなく蹴散らされ、正面から陣形を両断される。さながら槍の矛先のごとく、先頭で敵の陣を突き破ったカビパンは、即座に馬を反転させて軍配を掲げる。

「足並みを止めるな。陣形を組みなおせっ!」
「「ははっ!」」
 名将の下では汎兵も精鋭に化けるのか。騎馬隊はきびきびとした動きで隊列を整える。
 陣を組んだ事を確認すると、カビパンは掲げた軍配を振り下ろし再度突撃を仕掛ける。敵陣のド真ん中でめまぐるしく動く騎馬隊、その立ち回りはまさに獅子奮迅。
「お、おのれッ!」
 陣内で好き勝手させてはいられないと、黒百合騎士は【斬撃】を放つが、騎馬隊は巧みな機動でそれを躱す。長い雌伏の時間を実践を経て、鍛え上げられた『闇の救済者』達の騎乗術は、【洗脳】による強化を差し引いても優れたものだった。

「貴様らに、我が首がとれると思っているのか!」
 先頭に立つカビパンは、挑発するようにハリセンを振るい、スパーンと敵を張り倒す。
 手綱も持たぬ見事な騎乗。ノリにノッた時の彼女を止められる者は、世界広しといえどそうはいない。威風堂々としたカリスマあふれる振る舞いが、味方の士気をもり立てる。
「遅れをとるな!」
「我らも行くぞ!」
 彼女ら先駆けの騎兵隊が戦場を駆け抜けていく様は、神が戦場に剣を振り下ろしたようであったという。悪しきオブリビオンに仕える騎士は、その剣の前でただ屍を晒すのみ。
 その勇戦に報いるべく、『闇の救済者』に属する他の部隊も攻め上がり、領主との戦いはいよいよ本格化を迎えようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
闇の救済者の軍勢を見て
「良く此処まで強くなってくれた。
こうして闇に立ち向かう姿は確かに美しい。
だからこそ、この戦いは必ず勝たなければならない。」

闇の救済者と合流し共に敵に立ち向かう。
その際、表の呪い裏の呪詛の能力を伝えて
出来る限りその効果範囲内で戦って貰い
死亡しない限りは癒しの力で回復すると告げ
重傷者が出た場合も周りの者が救助して範囲内に入れる様に
立ち回ってもらう。
自身は戦況の把握と呪詛の制御に専念し、
闇の救済者と連携し適宜移動して戦線を維持。
回復、攻撃に有利な位置取りを行う。

敵の状況から攻勢に出るべきと判断したら
闇の救済者と連携して敵中に進み。
多くの敵を巻き込み呪詛と冥府へと繋がる闇で攻撃。



「良く此処まで強くなってくれた」
 闇の救済者の軍勢を見て、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は言葉をかけた。当初は領主の配下にさえ苦戦を強いられていた人間達は、今こうしてオブリビオンの軍団と真っ向から戦えるまでになっている。初期を識る者からすれば目覚ましい成長ぶりだ。
「こうして闇に立ち向かう姿は確かに美しい。だからこそ、この戦いは必ず勝たなければならない」
 ここで勝って、次の未来に繋げる。穏やかだが力強い青年の言葉に、一同は「はい!」と威勢よく応えた。かくして合流を果たした猟兵と救済者達は、共に敵に立ち向かう。

「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ」
 戦端が開かれると、フォルクは【表の呪い裏の呪詛】を発動。己の魔力を代償にして、冥府へと繋がる闇を纏い、オブリビオンと人間が入り乱れる戦場に冥府の呪詛を放った。
 この呪詛には二つの効果がある。ひとつは敵対する対象の精神と肉体を蝕む死の呪詛。もうひとつは任意の対象にダメージを肩代わりさせる事で、負傷を治癒する呪詛。そしてこの効果は味方の闇の救済者達には伝えてある。

『死亡しない限りは癒しの力で回復する。出来る限りその効果範囲内で戦って貰いたい』
 と事前に告げられた通り、彼らは呪詛の範囲内に留まり、敵を引きつけるように戦う。
 このフィールドの中にいる限り、こちらは敵に圧倒的な優位を取れる。忌まわしき冥府の呪詛を味方につけて、救済者達は黒百合騎士団に立ち向かう。
「闇よ、我が剣に宿れ……!」
 黒百合騎士は自身の寿命を代償に【闇剣強化】を行い、闇のオーラを纏った剣で救済者達に斬りかかる。だが、それで斬られた者達は一度は倒れるものの、すぐに冥府の呪詛により立ち上がり、目に闘志を漲らせながら反撃する。

「こいつらは不死身か……?!」
「バカな、ただの人間だぞ!」
 何度傷を負っても立ち上がってくる救済者達の様子に、黒百合騎士は動揺を隠せない。
 さらに冥府の呪詛は彼女らの心身を蝕み、見えないダメージを内から蓄積させていく。戦闘時間が経過するにつれて、その太刀筋は鈍る一方だ。
「いいぞ、その調子だ」
 その戦場の中心に立つフォルクは、戦況の把握と呪詛の制御に専念し、闇の救済者達と連携し、回復や攻撃に有利な位置取りをキープするように適宜移動して戦線を維持する。
 呪詛の範囲外で重傷者が出た場合も、周りの者が救助して範囲内に入れるように伝えてある。今この時に限ってではあるが、彼らは冥府の加護を受けた不死身の兵団であった。

「ッ……こんなもの、どうやって倒せば……!」
 対する黒百合騎士団は、回復を続ける救済者に打つ手を見出だせぬまま衰弱していく。
 戦局は完全にこちらの有利。攻勢に出るべきと判断したフォルクは、ユーベルコードを発動したまま闇の救済者と連携して敵中に進み、より多くの敵を呪詛に巻き込んでいく。
「さて、行こうか」
「「おおっ!」」
 冥府へと繋がる闇と呪いが、悪しき領主に仕える騎士を蝕んでいく。敵はもう満足に剣を振るうこともできず、士気練度ともに勝る戦士達の攻勢に成すすべなく倒されていく。
 闇と共に往く猛者達の快進撃。その光景は『闇の救済者』の名に相応しいものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

世界を包む絶望に抗う人々の祈りが、ようやく実を結びつつあるか…
であれば、我々のやる事は変わらず一つ…その実を守る事だ

エギーユ・アメティストを装備
広範囲に鞭を振るい、周囲の黒百合騎士を打ち倒していく
鞭の水晶に内包している毒はオブリビオンを蝕む
一撃でも喰らえば動けずに果てていくだろう

心行くまで堪能すると良い
お前達を送る、手向けの香りをな

UCを発動
わざと複数の敵から剣による斬撃を受け、オブリビオンに対する強い毒性をもつ霧へと変化させた身体を切断させる
切断されれば毒霧も周囲に拡散され
広範囲の敵を倒したり弱体化させる事ができるだろう

鉄の忠誠心か…
見上げたものだが、仕えるべき主を間違えたな



「世界を包む絶望に抗う人々の祈りが、ようやく実を結びつつあるか……」
 打倒領主のために立ち上がった人々の勇姿を、感慨深そうに眺めるキリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。この世界の惨状をより多く見てきた者ほど、それを打破せんとこの世界の住人自身が立ち向かう姿には、心揺さぶられるものがあるだろう。
「であれば、我々のやる事は変わらず一つ……その実を守る事だ」
 彼女は白い革鞭「エギーユ・アメティスト」を構え前線に立つ。立ちはだかる敵を打倒し、味方の道を切り拓くために。結実した人々の思いと力、ここで壊させてなるものか。

「ここは通してもらうぞ」
 キリカが華麗に鞭をひと振りすると、先端に取り付けられた紫水晶が鋭い軌跡を描く。
 紫水晶の針を意味するその武器には、蠍の尾という別名もある。その名の通り鋭い刃と化した紫水晶は敵をズタズタにするだけでなく、オブリビオンを蝕む毒を内包している。
「ぐぁッ?!!」
 一撃でも喰らえば黒百合騎士の体は毒に侵され、身動きもできずに苦悶の中で果てる。
 美しさに見合わぬ残酷な毒蠍の尾――その猛打でキリカは周囲の敵を打ち倒していく。

「怯むな! 我らが命はとうに主君に捧げたもの!」
 だが、鉄の忠誠心に支えられた騎士団の戦意は、猛毒程度で萎えるものではなかった。
 力尽きた同志の屍を踏み越えて、多くの犠牲を払いながらも近付いて【斬撃】を放つ。単純な技ではあるが、主君の為に捨て身の覚悟を秘めた剣には恐るべき力が籠もる。
「「斬るッ!!」」
 烈帛の気合とともに振り下ろされた斬撃を、キリカはわざと避けなかった。騎士の剣が女傭兵の身体を切断し、真っ赤な鮮血が噴き出す――それを見れば誰もが致命傷を受けたと思うだろう。だが違う、噴き出したのは血ではなく、鉄錆ではなく甘い香りを伴った。

「心行くまで堪能すると良い。お前達を送る、手向けの香りをな」
 斬撃を受ける寸前、キリカは【プワゾン】を発動し、自身の身体を毒の霧に変異させていた。身体を切断されれば毒も周囲に拡散され、広範囲の敵を纏めて汚染できる寸法だ。
「なんだこれは……ッ、苦し……!!」
 そうとも知らず霧に巻かれた騎士達は、剣を取り落とすと喉を押さえて苦しみだした。
 オブリビオンのみに強い毒性を発揮するように調合された毒は、普通の人間にはなんら効果を及ぼさない。むしろ敵が毒で弱体化することは、味方にとって大きな好機となる。

「敵の動きが鈍った……今だ!」
 チャンスを逃さず攻勢に出る闇の救済者達。雌伏の時を経て研鑽した猛者達の力量は、黒百合騎士団員にも劣りはしない。敵も忠義を果たすために必死の抗戦を続けるものの、毒に侵された身では荷が重く、次々に討ち取られていく。
「鉄の忠誠心か……見上げたものだが、仕えるべき主を間違えたな」
 どれほど劣勢になっても降伏しない、その忠義には敬意を払いながらも、あくまで敵対する者にキリカも容赦はしない。蠍の鞭が唸りを上げ、毒霧の甘い香りが戦場を満たす。
 倒れゆく騎士達で文字通りの血路を作り上げながら、彼女らは進撃を続けるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
紡いだ希望、刈り取らせはしない!

【黄金の獅子】を駆り(騎乗)、【騎乗突撃】
【威厳】に満ちた雄々しき獅子の姿は、闇の救済者たちを【鼓舞】する
私たちが道を切り拓きます!

【怪力】を以って聖槍を【なぎ払い】、獅子の爪牙を以って騎士団を【蹂躙】する
殺傷力を増した闇剣を聖槍で【受け流し】、【体勢を崩した】ところを獅子が引き裂く
人騎一体のコンビネーションで敵を打ち倒していく(ランスチャージ)

【恐怖を与える】ことはできずとも、脅威であるとの認識を与えることはできる筈
袋叩きにするため集まってきたところへ――聖槍に風を纏い(属性攻撃)、【全力魔法】【衝撃波】【壊嵐旋迅槍】
突き出した聖槍から破壊の嵐を巻き起こす



「天来せよ、我が守護霊獣」
 黒百合の騎士と闇の救済者が激突する戦場にて、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は黄金の獅子を駆る。銀の髪をなびかせながら金色の眼光鋭く、破邪の聖槍を掲げ敵陣に突撃する姿は、凛々しくも美しい。
「紡いだ希望、刈り取らせはしない!」
 百年の圧政に耐えた、多くの人々の遺志により繋がれてきた救済への道。それを悪しき領主の思惑如きに砕かせるわけにはいかない。炎のように揺れる獅子の鬣と同じように、彼女の裡なる魂の火は燃え盛っていた。

「私たちが道を切り拓きます!」
 オリヴィアの宣言と、威厳に満ちた雄々しき金獅子の姿が、闇の救済者達を鼓舞する。
 ユーベルコードを用いぬ簡易召喚でも、守護霊獣の俊敏性は高い。並みの軍馬を超える力強い走りで敵陣に飛び込み、鋭き爪牙を以て敵を蹂躙する。
「きゃぁっ!?」
 黒鎧を木板のように引き裂かれ、血飛沫を上げて倒れ伏す黒百合の騎士。獅子の攻撃に合わせてオリヴィアも聖槍を怪力任せに振るい、立ちはだかる騎士団をなぎ払っていく。

「強い……! だが、我らの命にかえても、ここは通さない!」
 力の差を目の当たりにしながらも、黒百合騎士は主命を果たさんと果敢に立ち向かう。
 【闇剣強化】によって殺傷力を増した闇の斬撃を、オリヴィアは聖槍の柄で受け流す。捨て身の一撃をいなされ、敵が体勢を崩したところを、獅子の爪が引き裂いた。
「この程度で私達を止められると思うな!」
「くっ……行かせるな! 忠義を示せ!」
 人騎一体のコンビネーションで敵を打ち倒していく彼女らの戦いは、まさに文字通りの獅子奮迅。このままでは戦線を食い破られると判断した敵は、たった一人と一騎を止めるために部隊単位で押し寄せ、身を挺してでも主君の敵を討ち取らんとする。

(恐怖を与えることはできずとも、脅威であるとの認識を与えることはできる筈)
 対するオリヴィアは自身に殺到する騎士団を見て、目論見通りだと目つきを鋭くした。
 敵がこちらを袋叩きにするために集まってくれば、逆に一網打尽にする最大のチャンス――疾走する金獅子に跨ったまま、彼女は聖槍に猛り狂う風を纏わせる。

「吹き荒べ破壊の嵐。震天動地の神威を以って、打ち砕け――!」

 渾身の気迫を込めて突き出した破邪の聖槍から、放たれるのは【壊嵐旋迅槍】。異境の魔槍ロンゴミニアドの力を再現したその一撃は、万物を圧壊する暴風となり敵陣を薙ぐ。この暴威に対しては、凡百の騎士など嵐の前の木の葉も同然だった。
「「きゃああぁぁぁぁぁぁっ!!!?!」」
 騎士達の甲高い悲鳴は嵐の音にかき消され、潰れた肉片と血飛沫が大気を赤く染める。
 黒百合騎士団が吹き飛ばされた後には、雑草すら薙ぎ払われた無人の荒野が広がった。
 もはや獅子の疾走を止める者はいない。後続する闇の救済者達を率いて、オリヴィアは領主の館へと駆け上がっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
見てください!せんせー!こんなにもたくさんの人が希望をつかみ取ろうと立ち上がっています!
(「見えているわよ黒影。さぁこの火を絶やさないためにも私たちの全力を出し切りましょう」と頭の中の教導虫が話しかける)
もちろんです!
(「さぁまずは敵の軍勢だけどどうする?」)
UC【蠢動する大地】を発動して味方を強化します!
味方が多ければ多いほど強くなるこのUCがあれば
味方の被害は抑えられます!
さらに『オーラ防御』で作ったオーラのバリアで敵軍を抑え
『衝撃波』で味方と共に攻撃に参加します!
せんせーは『念動力』で{錨虫}を操作して遠隔攻撃してください!
(「了解!さぁ大暴れしましょうか!」)
おーっ!



「見てください! せんせー! こんなにもたくさんの人が希望をつかみ取ろうと立ち上がっています!」
 闇天を焦がさんばかりに燃え盛る篝火と、それに照らされた多くの人々を見て、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は興奮を隠しきれない様子で叫ぶ。その相手は彼の脳に寄生する"せんせー"こと、教導虫「スクイリア」である。
(見えているわよ黒影)
 母親のような優しい声で、頭の中から話しかける教導虫。闇の中で燻ってきた希望に、今ようやく火が点き始めたのだ。猟兵の一員としてこれを支援しない理由はないだろう。

(さぁこの火を絶やさないためにも私たちの全力を出し切りましょう)
「もちろんです!」
 緑色の誘導灯型合金破砕警棒を構え、勇ましく返事をする兵庫。闇の救済者達に負けず劣らずその士気は旺盛で、今にも飛び出さんばかりの気迫が身体に満ちている。そんな彼を教え導くように、スクイリアが脳内から問いかける。
(さぁまずは敵の軍勢だけどどうする?)
「まずは味方を強化します! どうか俺に皆さんの力をお貸しください!」
 敵の騎士団に立ち向かう闇の救済者に、兵庫は【蠢動する大地】を発動し声をかける。
 このユーベルコードは術者の説得に同意した者の戦闘力を増加させる。さらにその効果は同意者の数に比例して増強されるため、今回のような味方が多い戦闘では効果抜群だ。

「おお、力が湧いてくる……!」
「いける、これならいけるぞ!」
 兵庫の呼びかけに応えた人々はバトルオーラを付与され、意気揚々と敵陣に攻め込む。
 その雄叫びはまさに大地を蠢動させ、鉄の忠誠心を誇る黒百合の騎士達さえ怯むほど。百人以上の人間を纏めて強化したのだ、その戦力は下位のオブリビオンならば凌駕する。
「これで味方の被害は抑えられます!」
 さらに兵庫は味方と自分のオーラを合わせて大きなバリアを作り、敵軍の動きを抑えながら攻撃に参加する。ぶおんと力いっぱい警棒を振るうたびに、強烈な衝撃波が発生し、黒百合の騎士達を吹き飛ばしていく。

「せんせーは念動力で錨虫を操作して遠隔攻撃してください!」
(了解! さぁ大暴れしましょうか!)
「おーっ!」
 教え子の要請に応じて、スクイリアは錨虫を敵にけしかける。彼女の細胞を注入されて進化したこの寄生虫は、本物のアンカーのように硬く、鋭く、敵に突き刺さり刳り穿つ。
 一心同体な彼らの戦いぶりは敵をまったく寄せ付けず、斬り掛かろうとした黒百合騎士はオーラバリアに【斬撃】を阻まれ、逆に衝撃波にふっ飛ばされるか錨虫の餌食となる。

「凄いな、あの若者は……」
「俺たちも負けていられないぞ!」
 傍目には単騎無双の活躍をしているように見える兵庫の姿に、闇の救済者も奮起する。
 付与されたオーラの光はさらに輝きを増し、戦場をまるで夜明けのように照らしつつ、闇に仕える騎士達を打ち倒していくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
残念だけど、わたしの眷属に、と誘ったところで受け入れそうにはないわね…。

【虜の軍勢】で雪花、エビルウィッチ、黒い薔薇の娘たち、ハーベスター、異国の少女剣士、レッサーヴァンパイアを召喚

軍勢には救済者達の援護をしつつ、各UC(【とにかくふぶいてみる、ファイアー・ボール、クイーンの嘆き、瞬時の首狩り、縮地法、血統暴走)を用いて敵の相手を指示。

残った騎士団員達はわたしがまとてて相手するわ!

【ブラッディ・フォール】で「誇り高き狂気」の「ヴラド・レイブラッド」の力を使用(マントに魔剣を携えた姿)。
敵集団を【平伏す大地の重圧】の超重力で押し潰して動きを止め、他の敵を【鮮血魔剣・ブラッドオーガ】で殲滅するわ。



「強い……あの御方が"美しきもの"とお認めになったのも悔しいが頷ける」
「だが我らにも意地がある。主君の悦びのため、貴様らを道連れに美しく散ろうぞ!」
 猟兵と連携した闇の救済者達に、領主に仕える黒百合騎士団は劣勢を強いられていた。
 だが既に多くの犠牲者を出しながらも、彼女らの忠誠心には一点の曇りもない。主君にとって自分達が捨て駒に過ぎないのだと理解していても、なお主命を果たさんとする。
「残念だけど、わたしの眷属に、と誘ったところで受け入れそうにはないわね……」
 その様子を見たフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は、彼女らを自身の配下に加えることを諦める。魅了の力などで無理やり虜にしても、それは彼女らの忠義を汚すことになるだろう。堂々と戦い、打ち倒す事こそがせめてもの礼儀だ。

「わたしの可愛い僕達……さぁ、いらっしゃい♪」
 フレミアは【虜の軍勢】から雪女見習いの雪花、エビルウィッチ、黒い薔薇の娘たち、ハーベスター、異国の少女剣士、レッサーヴァンパイアといった、過去に虜にした眷属達を召喚する。数の上では少ないが、いずれも強い個性と戦闘能力を持った者達だ。
「貴女達は救済者達の援護をしつつ、各自ユーベルコードを用いて敵の相手をしなさい」
「わかったの~」「了解です」「畏まりました」「御意の侭に」
 フレミアが指示を出せば、眷属達は即座に行動を開始する。主君への忠誠心においては彼女らも黒百合騎士団に劣らない。吸血姫の寵愛と血で結ばれた契約が、彼女らの力だ。

「とにかくふぶいてみるの~」
「なら私は焼き払うわ」
 雪花がふうふうと息を吐いて吹雪を起こし、エビルウィッチの【ファイアー・ボール】が爆発する。寒冷と高熱の同時攻撃を食らった騎士達が、悲鳴を上げて吹き飛ばされた。
「きゃぁぁっ!!?」
「くっ、おのれ――」
 仲間をやられて怒る騎士の懐に、すっと飛び込むのはハーベスターと異国の少女剣士。【瞬時の首狩り】と【縮地法】による瞬速の斬撃が、二の句を継がせず敵を斬り捨てる。
「元は同類ではありますが」
「今は情けはかけないわ」
 そして元はダークセイヴァー出身だった黒い薔薇の娘たちとレッサーヴァンパイアは、【クイーンの嘆き】と【血統暴走】を発動して黒百合の騎士を攻める。フレミアの眷属となった今、たとえ同類相手だろうと、人類の側に立って戦うことに迷いは微塵もない。

「残った騎士団員達はわたしがまとてて相手するわ!」
 眷属達の奮闘を見ながら、フレミアは【ブラッディ・フォール】を発動。過去に戦ったオブリビオンから、実の父である『吸血大公』ヴラド・レイブラッドの力を身に宿した。
 普段着でもある真紅のドレスの上から、威厳に満ちた黒いマントを羽織り。その手には父が用いた魔剣・ブラッドオーガを携え、眼光鋭く敵を睥睨する様はまさに王侯の風格。
「平伏しなさい」
「「……ッ!!?」」
 彼女が一言発しただけで、その威圧感が実体を持ったような重圧が敵軍にのしかかる。
 魔力を込めた視線で超重力を発生させる【平伏す大地の重圧】。ひとたび押し潰された敵は剣を取り立ち上がることさえできず、地に這いつくばったまま藻掻くばかり。

「貴女達の忠誠心に免じて、痛みを感じる間もなく終わらせてあげる」
 平伏する敵を視界に捉えたまま、フレミアは【鮮血魔剣・ブラッドオーガ】を構える。
 魔力を超圧縮した上で放たれるその一撃は、大地をも砕く広範囲かつ超威力となって、身動き取れぬ敵軍を一掃する。
「「きゃああぁぁぁぁぁぁッ!!!!?!」」
 断末魔の絶叫だけを残して、跡形もなく消滅する黒百合の騎士達。嵐が過ぎ去った後のような破壊痕のあとを、吸血大公フレミアは悠々と進み、眷属と闇の救済者が後に続く。
 その進撃を止められる戦力はもはや無い。彼女らが次に狙うは、この地の領主の首だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
みんなへの手出しはさせないよ…
貴女達の相手はわたし…!

【unlimitedΩ】を展開…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、薙ぎ払い、早業】と【unlimitedΩ】を一気に放って敵集団を蹴散らし、敵陣に一気に突入…。

凶太刀の高速化で加速し、神太刀との二刀で敵を斬り裂きつつ、逐次【unlimitedΩ】で魔剣を再召喚して周囲に一斉斉射する事で殲滅…。
状況により、バルムンクで敵を闇剣の防御の上から叩き斬ったり、アンサラーで反射【呪詛、オーラ防御、武器受け、カウンター】する等、魔剣を随時持ち替えて戦況に対応…。
敵騎士団を蹴散らすよ…

「援護!」
「手当!」
「支援!」

ラン達は毎度同じく救済者達の援護をお願い…



「みんなへの手出しはさせないよ……貴女達の相手はわたし……!」
 進撃を続ける『闇の救済者』達をかばうように、前線に立つのは雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)。彼女の使命はこの地に集った人々の命と希望を絶やさぬよう守る事だ。
 対するは領主コイヌールに忠誠を誓った黒百合騎士団。彼女らの使命は主君に仇なす者を排除すること。決して相容れぬ信条の激突は、どちらかが砕ける以外の決着を見ない。
「ならばまずは貴様からだ。総員、死力を尽くせ!」
 隊長格と思しき者の号令と共に、騎士達は剣に闇のオーラを纏う。自身の寿命を代償にした【闇剣強化】――彼女らはこの戦いに、自分の生命を全て捧げる覚悟で挑んでいた。

「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
 鬼気迫るほどの気迫を見せる騎士団に、璃奈は魔剣・妖刀の現身を召喚して対抗する。
 "終焉"の属性を宿した数百本の剣達は、空中に浮かんだまま切っ先を騎士達に向け、魔剣の巫女の号令によって一斉に解き放たれる。
「『unlimited curse blades』……!!」
 呪力により極限まで強化された剣群の一斉斉射。同時に璃奈は手にしていた呪槍・黒桜からも呪力を解放し、黒い呪いの桜吹雪を戦場に巻き起こす。剣と花弁で視界が真っ黒に染まるほどの、圧倒的規模による制圧攻撃が黒百合騎士団に襲いかかった。

「「――……ッ!!!」」
 騎士達は闇纏う剣で魔剣と呪力を切り払おうとするが、到底凌ぎきれるものではない。
 初撃で受けた被害は甚大。態勢を立て直す暇もなく、二刀の妖刀を構えた璃奈が陣中に駆け込んでくる。
「みんなを傷つけるつもりなら容赦はしない……!」
 妖刀・九尾乃凶太刀の呪力により加速した彼女のスピードは音速を超え、もう一振りの妖刀・九尾乃神太刀との連撃は恐るべき速さで敵を斬り裂いていく。技巧と刀の力で敵陣をかき乱しつつ、彼女は再び呪文を唱え【Unlimited curse blades Ω】を再召喚した。

「ッ……させるか!」
 またあの一斉攻撃が来ると悟った騎士達は、阻止せんと血相を変えて斬り込んでくる。
 すると璃奈はすかさず神太刀を鞘に納め、空いた手で魔剣「アンサラー」を抜き放つ。この剣に籠められた魔力には、受けた攻撃を敵に跳ね返す特性があった。
「報復を……」
「ぎゃッ?!」
 闇剣の切れ味を自ら体感し、血飛沫を上げて倒れる女騎士。それを見た敵が動揺する隙に、璃奈はもう一方の手に持つ得物を魔剣「バルムンク」に持ち替え、反撃を仕掛ける。
 敵は咄嗟に受け太刀の構えを取るが――魔竜の鱗すら断ち斬った刃の切れ味の前では、その程度の防御など無意味。剣ごと真っ二つに叩き斬られた骸が出来上がるだけだった。

「ラン達は毎度同じく救済者達の援護をお願い……」
 敵軍の中で一騎当千の活躍を見せながら、璃奈は連れてきたメイド人形に指示を出す。
 常に忠実なラン・リン・レンの三人は、こくりと頷くと闇の救済者達の元へと向かう。
「援護!」
「手当!」
「支援!」
 メイドとしての一通りの器量に加え、彼女達は戦う力もそれなりにある。援護を受けた救済者達は「ありがたい!」と感謝を述べ、メイド達と一緒に敵軍を押し込みはじめた。

「いい調子だね……」
 戦局はこちらの優位のまま進んでいる。璃奈は戦況に応じて随時魔剣を持ち替えつつ、騎士団を蹴散らしていく。一度弾みのついた救済者達の進撃は、もう止まる気配がない。
 領主コイヌールの屋敷を目指し、魔剣の巫女とその仲間達は突き進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
美しき物を壊したいとは強欲な者であるな。
美しき者に退治されてこそ化物冥利であろうに。
文化の違いであろうがな。

吸血鬼であることは隠さない。
敵味方問わず【恐怖を与える】

【WIZ】
己が身を捨て敵を滅ぼす者には賞賛を送ろうぞ。
容赦はせぬがな。

超常の力持つ異界の騎士団よ。
異能無き只の人間に負け尽くした最弱の生き物がお相手しよう。

正面から集団に堂々と挑む。
防御はほぼしない
自身へ【攻撃が命中した対象】にUC発動
闇では余は滅ぼせぬぞ。
優雅に堂々と騎士団を病、【吸血】で汚染し怖がらせる。
感染した騎士による同士討ちも狙う。

偶然でもUDCアース的吸血鬼退治方法に即した場合、
本気で慌てる。

日光が当たると焦げる。



「美しき物を壊したいとは強欲な者であるな」
 予知により伝えられた敵領主の目的に、ブラミエ・トゥカーズ(”妖怪”ヴァンパイア・f27968)はすうと目を細めた。希望や勇気、前進する人の遺志に美しさを見いだすのはまだ分かるが、それを"壊したい"というのは共感しかねる。
「美しき者に退治されてこそ化物冥利であろうに。文化の違いであろうがな」
 カクリヨファンタズム出身の吸血鬼である彼女と、この世界のヴァンパイアは異質だ。
 人に退治された者と人を支配する者――環境による違いと、何よりオブリビオンであるかの差異は、生態の違い以上に顕著であった。

「あの人は……もしや……」
 だがブラミエも吸血鬼である事には違いなく、また出身等の細かな違いを初見で察する者はおらず。本人もまた自らの種族を隠さないために、敵味方問わず畏怖の対象となる。
 ダンピールのような異種族も仲間に加えてきた闇の救済者も、生粋のヴァンパイアには恐れと不安を拭えず。領主に仕える黒百合騎士団にとっても敵対を忌避する相手だろう。
「良いな。心地よい」
 それらの感情は全て妖怪たるブラミエの糧となる。地球を追われて久しく味わう機会も減った芳醇な恐怖の味。それを存分に味わいながら、彼女は正面から集団に堂々と挑む。

「己が身を捨て敵を滅ぼす者には賞賛を送ろうぞ。容赦はせぬがな」
「く、来るかっ……我らが主に仇なす者は、何者であれ倒すのみっ」
 吸血鬼への恐怖か主君への忠誠か。後者を選んだ黒百合の騎士は【闇剣強化】を施した剣をブラミエに向ける。己の命を含めた全てを捧げて忠義を果たさんとするその姿勢は、なかなかに好ましい――なればこそ"敵"として対峙する甲斐がある。
「超常の力持つ異界の騎士団よ。異能無き只の人間に負け尽くした最弱の生き物がお相手しよう」
「ほざけッ!」
 冗談かと思うようなその名乗りに、激昂した騎士が斬り掛かる。闇のオーラで殺傷力を増した斬撃を、人間に敗れた吸血鬼は避けようともせず、あえて剣にその身を貫かれた。

「闇では余は滅ぼせぬぞ」
「なッ……!?」
 剣は確かにブラミエを捉えた。なのに闇に貫かれてなお彼女は優雅に堂々としている。
 その直後に発動するのは【災厄流行・赤死病】。伝承の怪物である彼女の本質――旧き致死性の伝染病が牙を剥く。
「余は歌おう。嘗ての敗残者として。余は告げよう。未だ健在であることを。余は再び示そう。この赤き死の狂乱を」
 ウィルスにより媒介されるこの病は血液への悪性腫瘍を与え、死に至る貧血、飢餓感、幻覚、喘息等の症状を引き起こす。かつてUDCアースで猛威を振るった病であり、現在はワクチンが存在するが――医療技術の遅れたこの世界では対抗策は皆無に等しい。

「ぐ……苦し……」
 攻撃時の接触を通じて移された病は、またたく間に騎士団に蔓延していく。敵が続々ともだえ苦しみ膝を屈する様を眺めながら、ブラミエは恐怖で汚染するように吸血を行う。
「やはりこの世界は日が当たらぬのが良いな」
 伝承に縛られたゆえの強さと脆さと併せ持つ彼女にとって、日光は身を焦がす天敵だ。その他にもUDCアースに伝わるのと同じ吸血鬼の退治方法に即した場合、偶然であっても本気で慌てるところだったが、幸いにして彼女の威厳は保たれた。
「ひ、ひぃッ……!」
 異界の吸血鬼の力と恐ろしさを骨の髄まで味わいながら、血を侵され息絶える騎士達。
 その惨状はさらなる恐怖を人々にかき立てさせ、ブラミエの喉を潤すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
人の強い意志の力というのは、時に予想を上回るほどの大きな力になりますから美しいという意味では、とても輝いて見えますよね。
それを見るのはとても楽しいのですが、壊してしまうのはいただけませんねぇ。輝く姿を多く見るためにも完全勝利できるよう力を尽くしましょう。
指定UC発動、敵は死兵が多いということなので水晶纏で防御力を上げ、オーラ防御も合わせます。
武器を瑞玻璃杵に、範囲攻撃 切断 斬撃波 神罰 二回攻撃で数を減らします。
結界術で周辺の敵共々自分を隔離し数を減らしていきます。
アドリブや絡みなどは自由にしていただいて大丈夫です。



「人の強い意志の力というのは、時に予想を上回るほどの大きな力になりますから美しいという意味では、とても輝いて見えますよね」
 敵である領主コイヌールの見解に、豊水・晶(流れ揺蕩う水晶・f31057)は部分的に理解を示す。圧政に苦しめられながらも紡がれ続けてきた想いが、こうして反抗の篝火となり燃え上がらんとする様は、確かに美しかろう。
「それを見るのはとても楽しいのですが、壊してしまうのはいただけませんねぇ」
 古き世から人を守り続けてきた竜神の一柱として、この美しき輝きを壊させはしない。
 彼らはこれからも、この先も、より多くの想いを束ねながら強く輝くはずなのだから。

「輝く姿を多く見るためにも、完全勝利できるよう力を尽くしましょう」
 そう言って前線に立った晶は【纏】を発動、水晶を纏うことで自身の防御力を高める。
 敵軍は玉砕覚悟の死兵が多いということなので、その対策だ。鎧や盾のようにその身を覆った水晶は、竜神のオーラを帯びることで更に強度を増す。
「コイヌール様に仇なす者は斬り捨てるッ!」
 捨て身の構えで【斬撃】を放つ黒百合騎士。だがその剣は美しき水晶に防ぎ止められ、傷一つ付けることもできない。バカなと驚愕する敵に対し、晶は柔和な微笑みを浮かべたまま、二振りの「瑞玻璃剣」を構えた。

「今度こそはちゃんと守らなきゃいけないの」
 晶が己が角を削って作り上げたその剣は、水纏う水晶のような刀身を持ち、武具と言うより芸術品のようにも見える。その柄頭を接合することで双剣は「瑞玻璃杵」に変形し、敵の剣を上回る長柄のリーチを得る。
「ぐあぁッ!!」
 彼女が反撃とばかりに得物を振るえば、強烈な斬撃波が敵陣をなぎ払う。信仰の薄れにより衰えたとはいえ、かつては邪神とも互角に渡り合った竜神の力は伊達ではない。其はまさに邪悪なる者に下される神罰であり、美しくも畏るべき天災の嵐であった。

「あの方達の元へは行かせません」
 力強く、かつ巧みに瑞玻璃杵を振るいながら、晶は術で自身を中心とした結界を張る。自分もろとも周辺の敵を隔離し、闇の救済者達の被害と負担を減らす構えだ。引き換えに敵の攻撃が自身に殺到することになっても構いはしない。
「小賢しい真似をっ」
 他部隊との連携を分断された騎士達は、結界を解除させる為にも攻撃を集中させるが、何人がかりで来ようとも晶の防御は崩せない。纏った水晶で防ぎ、瑞玻璃杵で切り返す、その手並みは舞を踊るように鮮やかであった。

「纏うは自然、纏うは理、対する我は統べるものなり」
 朗々たる宣言と共に振るわれる晶撃。なぎ倒される騎士達の血が剣を赤く染め上げる。
 だがその血も流水によってすぐに洗い流され、切れ味を損なわぬ刃は敵を屠り続ける。
 流麗に、かつ順調に。晶の周囲にいた敵は、もはや数えるほどしかいなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
この世界を取り戻す為の戦い。
俺も力を貸そう。

闇の救済者達に大規模戦闘の経験を積ませたいが、玉砕覚悟の相手とまともに戦えば犠牲が出る。

闇の救済者達と事前に打合せ、敵の突撃は闇の救済者達の遠距離武器とシンのUCでダメージを与えて弱めた上で、包囲殲滅する方針で意思統一。

集団戦術で一隊を指揮。

先ずは敵に対して闇の救済者の遠距離攻撃実施。
敵は突撃して闇の救済者を倒せると考えるだろう。
近くまで迫ってきたらシンのUCで500個近い光輪を生み出して放つ。
半分は足を狙って放ち、残りは腕や胴体を狙って放つ。

再度の遠距離攻撃で追撃後、全員で包囲殲滅開始。
シンも最前線で指揮しつつ、灼星剣と村正の2回攻撃で敵を倒す。



「この世界を取り戻す為の戦い。俺も力を貸そう」
 立ち上がった闇の救済者達と共に、シン・コーエン(灼閃・f13886)は前線に立つ。
 敵は大軍であり、敵将はこの世界を支配する領主の一人。なかなかに危険な状況だが、だからこそ燃えるというもの。しかし彼の心は滾りつつも、頭脳は冷静さを保っていた。
(闇の救済者達に大規模戦闘の経験を積ませたいが、玉砕覚悟の相手とまともに戦えば犠牲が出る)
 いかに被害を抑えながら戦いに勝利するか。それを考えた青年は闇の救済者達と事前に打ち合わせ、作戦をすり合わせたうえで意思を統一していた。彼が指揮する救済者の一隊は弓矢やマスケット銃などの遠距離武器を持って、黒百合騎士団を迎え撃つ構えを取る。

「行くぞ、攻撃開始だ」
 静かだがよく響く声でシンが号令すると、救済者達は一斉に銃弾と矢の雨を降らせる。
 この日のために鍛えてきただけの事はあり、射撃の練度もなかなかに高い。それでも、端から死を覚悟した騎士団の進軍を止めるには威力が不足していた。
「怯むな! 突撃ぃッ!」
 【闇剣強化】を施した剣を構え、矢弾を浴びた同志の屍を踏み越えて突撃する騎士達。
 ひとたび白兵戦の間合いまで詰め寄られれば、闇の救済者側の不利は否めない。だが、事前にシンの作戦を聞いていた兵士達は、迫りくる騎士の一団を見ても動揺はなかった。

「その突撃で俺たちを倒せると考えただろう。予想通りの動きだ」
 敵軍を近くまで引きつけたところで、シンは【渦旋光輪】を発動。風と光の二重属性を束ね、500個近い数の光輪を生み出して放つ。高速回転しながら騎士団目掛けて飛んでいくそれは、全てを切り裂き滅殺する死の戦輪であった。
「まとめて切断して見せよう!」
「「――……ッ!!?!」」
 放った光輪のうち、半数は敵の足を狙って動きを止め、残りは腕や胴体を狙って武器を落とすか、さもなくば仕留める。闇の救済者の射撃には構わず突っ込んできた騎士団も、それと比較にならない威力の攻撃には驚愕した。

「今だ、追撃を!」
「「はいっ!!」」
 渦旋光輪の放射により敵軍が大打撃を受けたところに、闇の救済者が再度射撃を行う。
 態勢を立て直す暇は与えない。最前線で指揮を執るシンの下、彼らは陣形を変えて敵を包囲する構えに移る。いかな精強な騎士とて四方八方から攻め掛かられれば脆いものだ。
「一気に殲滅するぞ!」
 包囲完了後、シンはサイキックエナジーで創造した「灼星剣」と銘刀「村正」の二刀を振るい、狼狽する敵を斬り伏せる。武器を遠距離用から剣や槍に持ち替えた闇の救済者達もその後に続き、囲いの内側に敵を押し潰すように包囲網を狭めていく。

「くっ……お許しください、コイヌール様……」
 主君に無念の懺悔を残して倒れる黒百合の騎士達。ほどなくして包囲下にあった敵軍は残らず殲滅され、その屍は闇剣や黒鎧と共に跡形もなく消滅する。骸の海に還ったのだ。
 だが、戦いはまだ終わってはいない。この地を支配する領主の館まで戦線を押し上げるために、シンと闇の救済者達は休む間もなく戦場を駆けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレニカ・ネセサリ
【リミット】
……騎士団を倒さなければ、彼女に――コイヌールに会えませんのね
よくってよ。では、そのように進むのみです

ええ。こちらを片付けるほうが先決ですわ

救済者の方々はわたくしの武器についてご存じありませんから、事前にご説明いたしましょう
わたくしのガントレットは、わたくし以外のものに接触すると爆発を起こします
わたくし自身は蒸気シールドで無傷ですが、あまり近づかれない方がよろしいかと

UCを使って自身を強化いたします
あなた方の忠誠が鉄であろうと、わたくし達はそれを全て打ち砕いて進むだけのこと
シンプルに、騎士の方々を片端から殴ります
同時に爆発の【衝撃波】で周囲を巻き込んだり、吹き飛ばしたりいたしますわ


鏑木・良馬
【リミット】
残念ながら今は話している余裕はあるまい
それほど軽い相手ではなさそうであるし、状況に集中していくべきであるな!

爆発を伴う以上ミレニカの立ち回りが最も派手になろう
故にミレニカが先行し注意を引きつけ、俺たちがフォローに回る
ミレニカに最も負担がかかるのは否めん
可能であれば救済者諸君には援護をお願いしたい

速度と射程を高めるため【貴公に花を捧げよう】を起動
灯夜が動きを止めた者や、ミレニカの死角に入りそうな者から狙っていく
今の俺の刀は広くに届くぞ?
もっとも、自ら散りに来た者に手向ける花は持ち合わせておらんのだがな!


久賀・灯夜
【リミット】の皆と参加

……なあ、ミレニカちゃん
余計なお世話ですまねえけど、もし吐き出して気が晴れる事があるなら遠慮なく言ってくれよ?
無理にとは言わないけど、俺も良馬さんもいつでも聞くからさ

って言っても、まずは目の前の敵を倒してからだな!
闇の救済者の人達に被害が出ないように気張っていくぜ!

サイキックブラストの光で敵の発する闇を弱め、
相手を感電させて動きを止め、味方の被害を出さないように動く
特に何か固い決意みたいなのを感じるミレニカちゃんには気を配って

あんた達の忠誠心がいくら強くても、こっちにも負けられないもんがあるんだ……!
良馬さん、ミレニカちゃん、後詰め頼んだ!



「……騎士団を倒さなければ、彼女に――コイヌールに会えませんのね」
 闇の救済者と黒百合騎士団が激戦を繰り広げる中、ミレニカ・ネセサリ(ひび割れレディドール・f02116)の視線は戦場の先にある屋敷に向けられている。あそこに住まう此の地の領主『フェイル-コイヌール』は、彼女にとって因縁のある存在だった。
「よくってよ。では、そのように進むのみです」
 宿縁の相手と相見えるのに障害が立ちはだかるのであれば、全て乗り越えてみせよう。
 左のこめかみから頬にかけて走るひび割れをそっとなぞりながら、人形の乙女は静かに闘志を滾らせる。

「……なあ、ミレニカちゃん。余計なお世話ですまねえけど、もし吐き出して気が晴れる事があるなら遠慮なく言ってくれよ?」
 並々ならぬミレニカの様子を気にかけて、久賀・灯夜(チキンハートリトルブレイバー・f05271)が声をかける。今回の依頼の敵と彼女との間にどういった因縁があるのかは知らないが――聞いて力になれる事があれば、そうしたいと願うのは当然の事だろう。
「無理にとは言わないけど、俺も良馬さんもいつでも聞くからさ……って言っても、まずは目の前の敵を倒してからだな!」
「そうだな。残念ながら今は話している余裕はあるまい」
 努めてそうしているのか、テンションを上げた灯夜の言葉に同意するのは鏑木・良馬(マリオネットブレイド・f12123)。友人として力になりたいのは山々だが、そのためには先ず闇の救済者達と共に敵軍を撃破するのが急務である。

「それほど軽い相手ではなさそうであるし、状況に集中していくべきであるな!」
「ええ。こちらを片付けるほうが先決ですわ」
 二人の言葉に頷いて、ミレニカは両腕に「Diamond Damsel」を装着する。無骨な機械仕掛けのガントレットの形状をしたそれは、対UDC用の超常機械を応用して製造された彼女の相棒である。
「わたくしのガントレットは、わたくし以外のものに接触すると爆発を起こします。わたくし自身は蒸気シールドで無傷ですが、あまり近づかれない方がよろしいかと」
 事故を避けるために、装備の性能については事前に説明しておく。その物騒なスペックに闇の救済者達が思わず後ずさったのは言うまでもない。が、味方として振るわれる分には頼もしいと、期待もしている様子だった。

「では、参りましょう」
「闇の救済者の人達に被害が出ないように気張っていくぜ!」
 長いスカートを翻し、先陣を切ったのはミレニカ。後に続く灯夜は彼女を援護すべく、敵集団に向けて【サイキックブラスト】を放つ。威力よりも拘束を目的とした攻撃だが、その両掌より放たれる高圧電流の光には敵の発する闇を弱める作用もある。
「くっ……!?」
 剣に付与された【闇剣強化】のオーラが薄れ、感電が騎士達の動きを一時的に封じる。その隙を突いてミレニカが飛び込み、挨拶代わりの一発を目についた相手に叩き込んだ。

「お覚悟を」
「ぐはぁッ?!」
 インパクトの瞬間に発生する爆発。轟音と共に吹き飛ばされた騎士は、地を這ったきり二度と起き上がらない。対人用としてはかなり度を越した威力に敵集団が動揺するなか、ミレニカは手近な相手を片っ端から殴りまくる。
「お転婆でごめんなさいね。先を急いでおりますので」
 爆発に伴う衝撃波が地面を砕き、破片と爆風が周囲を巻き込む。これだけ派手に被害を撒き散らしていれば、彼女が敵意を買うのは必然の流れだろう。このまま突破させてなるものかと殺到してくる大勢の騎士を見て、ミレニカは「作戦通りですわね」と微笑んだ。

「良い陽動だミレニカ。そこなら――俺の射程内だ」
 あわや騎士団に取り囲まれそうになった人形乙女を救うのは、花の如き闘気の斬撃波。【貴公に花を捧げよう】を起動した良馬が、ミレニカに注意を引きつけられた敵を纏めて薙ぎ払ったのだ。
「今の俺の刀は広くに届くぞ? もっとも、自ら散りに来た者に手向ける花は持ち合わせておらんのだがな!」
 緋と紫の刀身を持つ双霊刀「緋メ桜」を振るうたび、刃から舞い散る闘気が敵を討つ。それは鮮やかで美しく、しかして無慈悲に"死にたがり"共を切り裂く葬送の花吹雪だ。
 ミレニカが先陣を切り、彼と灯夜がフォローに回る。それが三人の立てた作戦だった。前衛にばかり注意が向いていたこともあって、この遠隔攻撃に騎士団は大打撃を受けた。

「やってくれる……だが、ここを通すわけにはいかない」
「主君の命を果たすため、ここで我らと散ってもらうぞ!」
 それでも黒百合の騎士達の士気は下がらず、深手を負おうと動ける限り立ちはだかる。
 彼女らは主君に「美しく散れ」と命じられた。ならば無様に生き延びるよりも、ここを死に場所として息絶えてこそ本望。全身に纏った深き闇が、彼女らの覚悟を示していた。

「あなた方の忠誠が鉄であろうと、わたくし達はそれを全て打ち砕いて進むだけのこと」
 燃える闇の如き騎士達の覚悟に対して、ミレニカの表情は平然としたまま、だが心の中では金剛石のように堅い決意が輝いている。自身がこれまでに磨き積み上げてきたものの強さは、何者にも負けはしない――そう信じる心こそが彼女に力を与える。
「ッ……させるかっ!」
 決して揺らがぬ気魄が、黒百合の騎士達を一歩たじろがせる。たった一歩であっても、それは内に秘めた信念の差の現れ。怯懦した心から目を背けるように、敵は【闇斬撃波】をミレニカに放つが――。

「させねえのはこっちだ!」
 再び放たれるサイキックブラスト。雷光が闇の斬撃の威力を弱め、敵の動きを止める。
 ミレニカが何か固い決意のようなものを抱いているのは灯夜も感じていた。だからこそ無茶しないよう気を配る。彼女を含む味方の被害を出さないようにするのが彼の戦いだ。
「あんた達の忠誠心がいくら強くても、こっちにも負けられないもんがあるんだ……!」
 譲れないものがあるのは皆同じ。差が生まれるとするなら、覚悟を通す意思の強さと、それを支えるものの力。忠義に依って立つ騎士団を超えるほどに、猟兵達の結束は堅い。
 生来臆病な癖のある彼も、今この時は勇気を奮い立たせ、皆を守るために力を尽くす。自分に出来る事を、ちゃんとやれる人間でいたいから。

「良馬さん、ミレニカちゃん、後詰め頼んだ!」
「ああ。諸君、今だ!」
「「はいっ!」」
 灯夜のブラストが敵陣に炸裂した直後、闇の救済者が一斉に弓や銃で攻撃を仕掛ける。
 その号令を発したのは良馬。彼は事前に救済者達と打ち合わせを行い、ミレニカを陽動とした作戦にもう一段深みを持たせていたのだ。
『ミレニカに最も負担がかかるのは否めん。可能であれば諸君には援護をお願いしたい』
 気負い気味な仲間の身を案じていたのは彼も同じ。万が一の事もあってほしくはない。
 そして救済者にも異を唱える理由は無かった。猟兵達に頼りきりではなく、これからは自分達も戦うのだという決意と気迫は、敵に僅かな、しかし致命的な隙を生じさせた。

「わたくし達は先に進みます。それでは、ごきげんよう」
 堅き決意を拳に乗せて、叩きつけられるミレニカの剛拳。【Vit_Cameo】の効力により飛躍的に強化されたその一撃は、これまでと比較にならない規模の大爆発を起こした。
「「きゃああぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!!」」
 断末魔の絶叫を残し、吹き飛ばされる黒百合騎士団。拳の着弾点には巨大なクレーターが抉られ、地形が変わってしまっている。そこにはもう、進撃を妨げるものは何もない。
 前哨戦を制した猟兵と闇の救済者は、領主コイヌールの居る屋敷に向けて走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…いくら闇の救済者達が鍛えてきたとはいえ、
連携の面では騎士団の方に一日の長がある…か

…ならば、まずはその連携を崩す事が肝要ね
あまり力を消耗するのは得策では無いし…この術を試してみましょうか

"闇の精霊結晶"に吸血鬼化した自身の生命力を吸収してUCを発動
攻撃回数を5倍、装甲を半減した闇の精霊獣を召喚

…来たれ、暗黒の獅子よ。その爪牙で我が敵を切り裂け

残像のように存在感を消して闇に紛れて敵陣に切り込み、
闇属性攻撃の爪牙を乱れ撃ちして敵の闇を吸収、
限界突破して魔力を溜め強化しながら敵陣をなぎ払い、
敵が乱れた隙を突き救済者達と突撃する集団戦術を行う

…今よ。敵は混乱している。一気に切り崩すわ、私の後に続いて



「……いくら闇の救済者達が鍛えてきたとはいえ、連携の面では騎士団の方に一日の長がある……か」
 開戦した双方の戦いぶりを眺めて、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は独り言つ。闇の救済者達は勢いに乗っているが、敵軍は高い士気と一糸乱れぬ統率で対抗している。此の辺りは個々の能力以上に、軍団としての練度の差だろう。
「……ならば、まずはその連携を崩す事が肝要ね」
 一丸となった軍団は脅威でも、個々に分断して各個撃破すれば恐れる程ではなくなる。
 問題はどうやってそれを実現するかだが――研鑽を重ねた吸血鬼殺しの術は、此の様な大規模戦闘においても抜かりはない。

「あまり力を消耗するのは得策では無いし……この術を試してみましょうか」
 そう言ってリーヴァルディが取り出したのは、黒く輝く"闇の精霊結晶"。これに吸血鬼化した自身の生命力と魔力を吸収させることで、【限定解放・血の喚起】を発動する。
「……来たれ、暗黒の獅子よ。その爪牙で我が敵を切り裂け」
 血の契約に従い、結晶の中から姿を現したのは闇の精霊獣。それは凝縮された自然現象の力の具現であり、"闇"という概念が持つ始原の姿。召喚主に狩るべき獲物を指し示された獅子は、無言のまま残像のように気配を消し、闇に紛れて敵陣に切り込んでいった。

「怯むな! 奴らをこれ以上進ませ……きゃぁっ!?」
 闇の救済者達との戦いに集中していた黒百合騎士団は、音もなく忍び寄る暗黒の獅子の奇襲に気付けなかった。すうっと獲物の足元まで近付いた獅子は、目にも留まらぬ速さで爪牙を振るい――騎士達が悲鳴を聞いた時には、バラバラにされた骸が散らばっていた。
「新手か……? だが、なんだこの怪物は!」
 人間との戦いは手慣れた騎士でも、未知なる獣との戦いはやり辛かろう。しかもそれはただの獣に非ず。闇そのもので構成された暗黒の爪牙には、敵から闇を奪う力があった。

「こいつ……ッ、私達から力を吸収しているのか?!」
 倒した敵が纏っていた闇を取り込むことで、暗黒の獅子は魔力を蓄え強化されていく。
 その形態は装甲こそ脆いが、その分攻撃回数に特化している。風のように戦場を駆け、嵐のように敵陣をなぎ払い、黒百合の騎士を屠り喰らう。これこそ比喩なき獅子奮迅。
「くっ、たかが獣一匹に、我々が……!」
 騎士達も反撃しようとするが、存在感が希薄なものを相手にするのは想像以上に難しいものだ。闇に紛れる獅子の動きを捉えきれず、翻弄され、みるみるうちに陣形が崩れる。

「……今よ。敵は混乱している」
 敵軍が乱れた隙を、リーヴァルディは見逃さない。暗黒の獅子が作り出したチャンスに乗じるべく、黒の大鎌"過去を刻むもの"を掲げ、付近にいた闇の救済者に呼びかける。
「……一気に切り崩すわ、私の後に続いて」
「「はいッ! 遅れは取りません!」」
 突撃するリーヴァルディに続き、闇の救済者達が駆ける。今ならば迎撃の不安はない。
 一振りの槍のように乱れぬ動きで敵陣に飛び込んだ彼女らは、動揺する敵を片っ端からなぎ倒していく。
「ッ……おの、れ……!!」
 黒の大鎌に斬り捨てられた騎士の無念の言葉は、人々が上げる鬨の声にかき消された。
 もはや、この勢いを止めるだけの連携を保つことはできず。麻のごとく乱れた敵陣を、リーヴァルディは先に先にと駆け上がっていくーー。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
相手は格上、敵の騎士一人に対し三人以上で掛かるように!

闇の救済者の一団率い前線で戦闘
怪力で振るう剣盾で眼前の騎士を薙ぎ倒し味方を庇いつつ、センサーでの●情報収集と瞬間思考力で周囲の状況を●見切って把握
混戦の中を旋回砲塔代わりの頭部や肩部格納銃器での●乱れ撃ちスナイパー射撃で隙間を撃ち抜き援護射撃や敵の妨害に努め

(盾裏に仕込んでいたUCチャージがひと段落し)

…総員、一時退避!

煙幕手榴弾を投擲し目潰しで味方の退避を援護
追撃する敵に立ちはだかり

騎士としてのその覚悟と忠誠心、敬意を表します
味方の出血を抑える為とはいえ、それに騎士として応える事出来なかった事

……ご容赦を!

巨大光剣一閃
領主館への道切り拓き



「相手は格上、敵の騎士一人に対し三人以上で掛かるように!」
 敵味方入り乱れる戦場で、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は闇の救済者の一団を率い、檄を飛ばしながら最前線での戦闘を繰り広げていた。儀礼用の長剣と巨大な盾を振るい、押し寄せる黒百合の騎士をなぎ倒す姿は歩く城塞の如し。
「我らの生命にかえて、敵を殲滅せよ!」
「コイヌール様のために、美しく散るのだ!」
 対する敵の騎士達は、主君の命を果たすために全てを捨てる覚悟で立ち向かってくる。
 死を決意した者にしか引き出せない力、燃え尽きる前の蝋燭のような刹那の煌めきは、油断すれば闇の救済者や猟兵達をも食いかねないものである。

「突出するのは危険です。仲間と足並みを揃えて戦闘を!」
 トリテレイアは気を緩めないようにと味方に警告を発しながら、自身の巨体と防御力を活かしてカバーにも回る。彼の機体に搭載された全環境適応型マルチセンサーは、混戦の最中においても周囲の状況を正確に把握し、最適な立ち回りを可能にしていた。
「我らが剣は闇の忠義と共に!」
 捨て身の覚悟で放たれる【斬撃】を盾で受け止め、頭部や肩部に格納した銃器を展開。
 旋回砲塔代わりに銃身を動かしながら乱れ撃ち、弾丸の雨を敵陣に浴びせる。彼の射撃は一見して闇雲に撃っているように見えても、的確に鎧や防御の隙間を撃ち抜いていた。

「凄いな……!」
「ああ、俺達も守られているだけじゃいられないぞ……!」
 味方に指示を飛ばしながら攻撃に防御に八面六臂の活躍。トリテレイアの奮戦に味方は勇気付けられ、言われた通りに複数人で当たり、黒百合騎士団を徐々に押し返していく。
 トリテレイアは援護射撃や敵の妨害に努めて彼らのサポートに徹していたが、盾の裏に仕込んでいた武装のチャージが一段落すると、収納スペースから煙幕手榴弾を取り出す。
「……総員、一時退避!」
 号令と共に敵陣に投げ込まれた手榴弾がもうもうと煙を上げ、味方の退避を援護する。
 これまでの活躍からの信頼によるものか、闇の救済者達は何故かと聞く前に煙に紛れて迅速に退いていく。敵は当然追撃を仕掛けようとするが――。

「騎士としてのその覚悟と忠誠心、敬意を表します」
 心からの言葉を声にして、黒百合騎士団の前に立ちはだかるトリテレイア。相容れる事はない存在だとしても、己が生命を賭して主君に仕える姿には、感じ入るものがあった。
 故にこそ無念ではある。同じ騎士としての正々堂々の果し合いができなかったことは。
「……充填中断」
 盾の裏側から柄のみの剣を取り出す。その柄頭に接続されたケーブルは彼の胴体と接続されており、コアユニットからエネルギーを供給されている。柄から漏れる白い粒子は、既に充分な量のチャージが完了している事を示していた。

「味方の出血を抑える為とはいえ、それに騎士として応える事出来なかった事」
 柄から解放されたエネルギーが、白熱に輝く巨大な刃を形作る。これぞ【コアユニット直結式極大出力擬似フォースセイバー】――フォースナイトの素養のないトリテレイアが手にした憧れの模倣。ただ純粋に莫大な熱量によって全てを溶断する破壊の光。
「……ご容赦を!」
「――……!!!」
 一閃。黒百合の騎士達が持つ闇の剣と対になるように、巨大なる光剣が敵陣を薙いだ。
 まるで太陽が墜ちてきたような眩い光に呑まれて、敵は声を上げる暇もなく蒸発する。

「すごい……」
 闇の救済者達が見たのは、閃光の後で文字通りに「切り拓かれた」領主の屋敷への道。
 感服の言葉と視線を背中に受けながら、トリテレイアは光の消えた剣の柄を収納して、先に進む。此の地を支配する領主コイヌールを討ち、この戦いに決着をつけるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『フェイル-コイヌール』

POW   :    堅牢よ、砕き潰せ
【鉱石で製造したゴーレムによる攻撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    眩惑よ、惹き奪え
【宙に舞う、精神を蝕む強力な魔力を込めた石】を披露した指定の全対象に【コイヌールに従いたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ   :    鏡石よ、叶うなら
【自分の顔を映す石】から、対象の【あらゆる美しいものを壊したい】という願いを叶える【標的を追い続ける猛毒属性の矢】を創造する。[標的を追い続ける猛毒属性の矢]をうまく使わないと願いは叶わない。

イラスト:棘ナツ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はミレニカ・ネセサリです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「来たのね」

 領主の館に突入した猟兵達を出迎えたのは、戦の熱を冷ますような涼やかな声だった。
 内装のひとつひとつに至るまで、瀟洒に丁寧に設えられた建物の奥。ひときわ綺麗に、かつ無機質に整えられた部屋で待っていたのは、人形のように美しい娘だった。

「自己紹介は必要かしら。私の名はフェイル-コイヌール……あなた達が言うところの『悪い領主様』でもあるわ」

 雪のように白い肌と髪、ルビーのように紅い瞳、そして髪に咲いた赤い花。スカートをつまんで一礼する、所作のひとつひとつに至るまでが可憐で。その周りを鉱石がキラキラと輝きながら舞い、彼女の美しさを飾り立てる――はかなく、冷たく、無機質に。

「やはり、止められなかったわね。あの騎士達の散り様も良かった。最期まで私に忠義を尽くし、疑いもせずに全てを捧げて……ほんとうに、美しかったわ」

 その唇から紡がれる言葉は、忠臣達の死を悼むものではない。熱のこもらぬ声ではあるが、どこか喜んでいるようにさえ感じられ、悲劇を楽しんだ後の観客のように客観的だ。
 そして死んだ騎士達の存在は、すぐに彼女の中から忘れ去られ。冷然とした視線は新たな興味の対象に――すなわち猟兵と闇の救済者達に向けられる。

「なら、次はあなた達の番ね。私の騎士達を倒すほど強く、気高く、美しいあなた達は、いったいどんな音を立てて砕けるのかしら。どんな輝きを放って壊れるのかしら」

 人か物かを問わず、実体の有無に関わらず、この世のあらゆる"美しいもの"を壊す。
 それがフェイル-コイヌールの行動原理。相容れない価値観の断絶がそこにはあった。

「楽しみだわ。さあ、始めましょう」

 すっと踊るように手を伸ばし、かつんと靴音を鳴らすと、呼応するように鉱石が輝く。
 常人である闇の救済者と戦わせるには、このオブリビオンは余りにも危険だ。それに、まだ黒百合騎士団の残兵もいる。彼らにはその抑えにも回ってもらわなければならない。
 つまり今この場で領主を討てる実力を備えた者は、猟兵達をおいて他にはいなかった。

 "美しいもの"を壊すもの、冷たき石と毒の魔法使い、フェイル-コイヌール。
 此の地を闇の支配から解き放つ為の、決戦の火蓋はここに切って落とされた。
リーヴァルディ・カーライル
…同情する気は無いけど、あの騎士達も報われないわね

命を賭して護ろうとした主が、自分達の散り際を愉しんでいたなんて…

UCを発動し自身が魅了される未来を予測して見切り、
両眼を閉じて"精霊石の耳飾り"で得た第六感を頼りに、
敵が空中機動を行う石に魔力を溜めた瞬間に銃撃を乱れ撃ち、
早業のカウンターで石を砕き敵UCを受け流す

…私の心を操ろうとした者に容赦する気は無い
お前も騎士達と同じ場所に逝きなさい、フェイル-コイヌール

敵が何かする前に"黄金の楔"を弾丸のように投擲し武器改造
短剣が拘束のオーラで防御ごと敵を捕縛する怪力拷問具に変形し、
無数の呪詛針が体内に切り込み限界突破して生命力を吸収する闇属性攻撃を行う



「……同情する気は無いけど、あの騎士達も報われないわね」
 悪しき領主と対峙したリーヴァルディの脳裏に、ここまで斬り伏せてきた黒百合騎士の顔が思い浮かぶ。彼女らは主君の為に死すらも顧みず、猟兵や救済者と戦っていたのに。
「命を賭して護ろうとした主が、自分達の散り際を愉しんでいたなんて……」
「愚かで健気よね。でも、だからこそ美しい。そうは思わない?」
 問い詰めるような語調の言葉に、フェイル-コイヌールは顔色も変えず淡々と応える。
 報われぬ忠義に殉じた騎士達を、それが当然だとでも言うように。"美しい"と感じたものを壊すこと以外、その娘は何の興味も持っていなかった。

「さあ、あの子達に負けずに、貴方達の散り様も魅せて頂戴」
 等身大の人形のように優雅に佇むコイヌール。その周囲をキラキラと光る宝石が舞う。
 この石はコイヌールの手により強力な魔力が込められた物。その輝きを披露された者は精神を蝕まれ、彼女の命令に従うようになってしまう。
「眩惑よ、惹き奪え」
 美しさの中に秘められた邪悪な力。だがリーヴァルディは【吸血鬼狩りの業・正伝】で事前にその未来を予測し、自身が魅了される前に両眼を閉じて精神の侵蝕を防いでいた。

「……お前達が何をするかなんてお見通しよ」
 この世の吸血鬼を狩り尽くすために、リーヴァルディの業は磨かれた。目を伏せたまま"吸血鬼狩りの銃・改"を構え、引き金に指をかける――たとえ直視できなくとも、標的の位置は"精霊石の耳飾り"を通じて、周囲の精霊達が教えてくれる。
「まあ……」
 乱れ撃たれた銃弾が魔力の溜まった宝石を撃ち砕き、コイヌールが微かに声を上げた。
 敵に動かれる前に行動を予測した上でカウンターを仕掛ける、リーヴァルディの対応は完璧だった。失敗する姿が思い浮かばないほどに。

「……私の心を操ろうとした者に容赦する気は無い。お前も騎士達と同じ場所に逝きなさい、フェイル-コイヌール」
 初動を阻まれた敵がまた何かする前に、リーヴァルディは"黄金の楔"を弾丸のように投擲する。魔法の黄金で造られたこの短剣は、対象の血液を啜り最適な形状に変形する、吸血鬼殺しの拷問具だった。
「……吸血鬼を狩る吸血鬼。その真髄を知るがいい」
 【正伝】はただ敵の攻撃を回避するだけの御業に非ず。吸血鬼の血統を覚醒した自身の失敗を予測することで、反転してあらゆる行動を成功に導くことができる。その困難さに応じて寿命を削ることになるが――投擲の精度を必中に高める程度は造作もない。

「……これ、は」
 黄金の楔は吸い込まれるようにコイヌールの胸に突き刺さると、拷問具に形を変える。
 拘束用のオーラにより万力で挟むように捕縛し、身動きできなくなった敵の体内に無数の呪詛針が撃ち込まれる。
「……っ!」
 全身に走る激痛と、針から生命力を吸われる脱力感に、白い娘が微かな悲鳴を上げる。
 人の心を操り弄ぶ者には報いを。宣言通り一切容赦のないリーヴァルディの責め苦に、コイヌールは苛まれるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
はかなく砕けよショッピング
お届けするのはカビパンとフェイル

最初のUCは
【堅牢よ、砕き潰せ】
これすごいわ、私絶対買っちゃう!
今回はもう1個プレゼント

続いてのUCは
【眩惑よ、惹き奪え】
そんな価格は絶対に無理です
で、ではフェイルに相談してみます
実は値段を下げてほしいと希望が…そこをどうしてもと
特別に本人のOKが出ましたので0円!今回だけですよ

最後のUCは
【鏡石よ、叶うなら】
唐突なドキュメンタリー風な出だし
湧き上がるウワァ エェェ 鳴り止まぬ拍手

繋がりにくくなって申し訳ありません
30000分以内にご注文頂いた方に限りカレーうどん大量に送りつけます!

"美しいもの"を壊すどころか、雰囲気が台無しになった。



「……いいわ。もっと魅せて。闇に抗うあなた達の美しさを――……」
「はかなく砕けよショッピング。お届けするのはカビパンとフェイル」
 シリアスに決めようとするコイヌールの言動に、ふいに割り込んできたのはカビパン。
 騎士団との戦いで救済者達を率いていた時の、勇ましい名将ぶりはどこにいったのか。普段のノリであるギャグ要因に戻った彼女はハリセン片手にヘラヘラと笑う。
「今晩も素晴らしい商品をご用意しております」
 テレビショッピング風に語る彼女の周りで、【寒風にも負けぬモノ】により召喚された観客ロボット達から(ワァァァァァァ……!)と拍手が沸き起こる。たとえ相手がノッてこなくても準備は万全、カビパン劇場はノンストップで進行する。

「……堅牢よ、砕き潰せ」
 基本的にボケに"美しさ"を感じないらしいコイヌールは、鉱石から製造したゴーレムを呼びよせ、無慈悲にその拳を振るわせる。その堅固かつ巨大な一撃が直撃すれば、人体などたやすく壊れよう。
「これすごいわ、私絶対買っちゃう!」
 が。カビパンは奇跡を霧散霧消する「女神のハリセン」でゴーレムの拳をシバき返す。
 さも相手のユーベルコードを商品のように語っているが、当然のように無許可である。
「今回はもう1個プレゼント」
(ワァワァァァァァァ……!)
 そしてまたタイミングよく拍手と歓声が起こり、場の雰囲気をノリノリで盛り上げる。観客達はカビパンの言葉を一言一句漏らさぬように聞き入り、最善のタイミングで最適なりアクションが取れるよう、常にスタンバイしていた。

「……眩惑よ、惹き奪え」
「そんな価格は絶対に無理です。で、ではフェイルに相談してみます」
 続いてコイヌールが魔石による洗脳支配を試みても、思考回路が違いすぎるカビパンを従えるのは上手くいかなかった。ふわふわと宙に浮かぶそれをタダの宝石だとでも思っているのか、厚かましくも値引き交渉まで仕掛けてくる。
「実は値段を下げてほしいと希望が……そこをどうしてもと」
「嫌よ」
 にべのない返答。だが、ここで値引きできなければ番組(?)が盛り下がってしまう。こういう都合の悪い部分は無かったことにして、カビパンは満面の笑顔を観客に向けて。
「特別に本人のOKが出ましたので0円! 今回だけですよ」
「言ってない――……」
(ワァァァァァァスゴォォォォォイ……!)
 コイヌールの抗議の呟きは、割れんばかりの喝采でかき消された。もう付き合ってられないと見切りをつけた彼女は、3つ目のユーベルコードで今度こそ引導を渡そうと――。

「鏡石よ、叶うなら――……」
(ウワァァァァ……エェェェェ……!)
 だがそれさえも、湧き上がる観客達の声と鳴り止まぬ拍手に妨げられる。コイヌールが取り出した鏡石は「あらゆる美しいものを壊したい」という彼女の願いを叶えるための物――だが、今目の前にいるこの連中は、果たして"美しいもの"と言えるのか。
「――……雰囲気が台無しだわ」
 すっかり気分が萎えた様子で、鏡石をしまうコイヌール。そんな事はお構いなしに盛り上がるカビパンと観客達。どこからともなくルルルルルと、たぶん仕込みであろう電話の音も聞こえてくる。

「繋がりにくくなって申し訳ありません。30000分以内にご注文頂いた方に限りカレーうどん大量に送りつけます!」
 ただいま注文殺到中! みたいなセールストークをノリノリでぶち上げるカビパンに、もう彼女が何言っても湧くし拍手する観客ロボ。ノンストップなカオスが極まっていく。
 この女に関わっていると"美しいもの"を壊すどころではないと悟ったコイヌールは、踵を返して謎のショッピング空間から退避する。無表情な顔に心なしか疲労感を見せて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
初めまして。異界の領主殿。貴公の騎士達は良き馳走であった。

余は打倒されるべき醜い妖であるからな、貴公では楽しめぬかもしれぬ。
まぁ、異界の者に退治される所以はないがな。
余は人に滅ぼされる義務を持つ。
さて、貴公は余を滅ぼす権利を持っておるかな?

【SPD】
蝙蝠、狼では本能的な意思があるため敵UCの効果範囲。
己の原初の形、意思も何もない最弱の生命体に近しい霧となる。

吸血鬼の殻の下から旧き病が警告を告げる。
嬢ちゃん。わしは精神なんて上等なモンは生憎持ってないもんでな。

殻が告げる。
余は人が望み恐れた吸血鬼である。
既に余の精神など、数多の人に蝕まれ尽くしておる。

吸血鬼は孤高である。
吸血鬼は忠愛する者に従う。



「初めまして。異界の領主殿。貴公の騎士達は良き馳走であった」
 吸血鬼らしい高貴な振る舞いを以て、領主コイヌールの前で律儀に一礼するブラミエ。
 晩餐会の料理として出したつもりはなかろうが、挨拶を受けたコイヌールも涼しい顔。だが双方の間には一触即発の空気が漂っている。
「余は打倒されるべき醜い妖であるからな、貴公では楽しめぬかもしれぬ。まぁ、異界の者に退治される所以はないがな」
「美しさとは姿形だけを表すものではないのよ。目を背けたくなるほど醜いものの中に、目を離せないほど美しいものが潜んでいるかもしれない。私が砕いて確かめてあげる」
 言葉を交わすことはできても、決して相容れることのできぬ者同士。妖怪ヴァンパイアがすっと一歩前に出ると。美しき領主は輝ける魔石を宙に舞わせ、戦いの構えを取った。

「余は人に滅ぼされる義務を持つ。さて、貴公は余を滅ぼす権利を持っておるかな?」
「ないわね。なら、あなた自身に滅びてもらいましょう――眩惑よ、惹き奪え」
 コイヌールが披露した魔石の輝きは、それに心震わせた者に従属の感情を植え付ける。
 術中に嵌まれば先の騎士達のように、自殺行為に等しい命令でも受けてしまうだろう。恐ろしい眩惑に対し、ブラミエは【伝承解放・悪しき風と共に来たるモノ】を発動する。
(蝙蝠、狼では本能的な意思があるため敵ユーベルコードの効果範囲)
 変身能力は吸血鬼の十八番だ。定番とも言える幾つかの形態の中でも、己の原初の形、意思も何もない最弱の生命体に近しい霧に姿を変える。単純で、それ故に純粋なこの形態ならば、眩惑されるような能も持ち合わせない。

『嬢ちゃん。わしは精神なんて上等なモンは生憎持ってないもんでな』
 吸血鬼の殻の下から、旧き病が警告を告げる。老人のようにしわがれた、荒原に吹く風のような声。赤死病、転移性血球腫瘍ウィルス、かつて様々な名で呼ばれた致死性病原体が、霧に乗って病を伝染させる。
「余は人が望み恐れた吸血鬼である。既に余の精神など、数多の人に蝕まれ尽くしておる」
 殻が告げる。凛々しく高貴で美しい、この殻こそ"かくあるべし"と人が恐れ願った幻想の鋳型。人の感情なくして妖怪は存在できず、ゆえに妖怪は人の感情に常に影響される。伝承に縛られた存在は、しかしてそれら以外の何物にも囚われはしない。

「吸血鬼は孤高である。吸血鬼は忠愛する者に従う」
 霧が語る。殻が語る。死の源が蔓延した屋敷の中で、麗しき領主は赤き病に蝕まれる。
 四方から聞こえるこの声は幻覚だろうか。白い肌はますます血の気が引いて蝋のようになり、肺に何かが詰まったように息苦しく、呼吸が辛い。あの黒百合の騎士達のように、コイヌールもその異界由来の病に対する有効な処方箋を知らない。知る由もないだろう。
「……ただ、ヒトを蝕み、侵すモノ……それがあなたの、魔性……!」
 善悪の定義にも収まらぬ純粋なる其れに、彼女が"美しさ"を感じたかは分からない。
 だが、かの吸血鬼の病という牙が、領主の余命を著しく奪い去ったのは確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「俺はそう簡単に砕けるつもりはない。
だから覚悟しておけ。
壊そうとしたその手が、命ごと砕けない様に。」

闇討ちの法陣を詠唱、威力を上昇させつつ
毒矢の軌道を【見切り】回避。
時間を稼いで詠唱を続け
敵が闇討ちの法陣の詠唱時間に応じ威力が上昇する
特性に気が付いたところを見計らい
威力が足りなくとも闇討ちの法陣を発動。
更に【2回攻撃】【高速詠唱】で連続攻撃。
攻撃中は回避より攻撃に集中し
【毒耐性】や月光のローブによる【オーラ防御】
で威力を減少させる最小限の防御に留める。
攻撃の撃ち合いになったら悟られない様に
敵の【自分の顔を映す石】を狙い銀の弾丸で破壊。
その隙に武器群により連続攻撃をし
白銀の剣を手に斬撃を加える。



「俺はそう簡単に砕けるつもりはない」
 "美しいもの"の破壊を目的とする領主コイヌールに、フォルクは正面からそう告げた。
 騎士団との戦いを乗り越えてここまで来たのは、わざわざ敵の遊興に付き合って死ぬ為ではない。仲間達と共に、未来を切り拓くために来たのだ。
「だから覚悟しておけ。壊そうとしたその手が、命ごと砕けない様に」
「なら、その覚悟は当然、あなたもできているのよね?」
 決然とした宣戦布告に、純白の領主は冷たい眼差しで答え、鏡のように磨き上げられた石に自分の顔を映しながら呪文を唱える。あらゆる美しいものをこの手で破壊する為に。

「鏡石よ、叶うなら」
 願いに応えて石から創造されたのは猛毒の矢。それは意思を持つかのようにひとりでに放たれ、コイヌールが"壊したい"と思ったものを襲う。狙われたフォルクは毒矢の軌道を読んで身を翻しながら、【闇討ちの法陣】の詠唱を行う。
「撃ち抜け、破魔の銀礫。その手管を包み封じよ静謐なる織布……」
 一度避けてもコイヌールの矢はどこまでも、蛇のようなしつこさで標的を追い続ける。
 追い詰められないよう退路に気をつけて、回避と詠唱に専念するフォルク。この魔術は詠唱時間に応じて天井知らずに威力が上がる――できれば時間を稼ぎたいところだが。

「……その魔法、どうやら時間を与えてあげる訳にはいかないようね」
 分野は異なるとはいえ、コイヌールも優れた魔法使いである。長い詠唱を聞いて、その特性と意図に気付かれると、フォルクはまだ不完全ながらもユーベルコードを発動する。
「……邪なる赤き流れを食い荒らせ、呪いの鉄針」
 宙空に描き出された魔法陣より放たれる、蒼い炎を帯びた弾丸、骸布、釘、そして剣。これらは全て長き研究の末に編み出された吸血鬼特効の魔具。時間は充分では無かったとはいえ、闇に連なる者に対しては高い効果を発揮するはずだ。

「まるで、私達を殺すためだけにあるような魔法ね」
 自身にとって天敵となるはずの銀の弾丸、封魔の骸布、血喰い釘、白銀の剣を見ても、コイヌールの冷ややかな表情は変わらなかった。宙に浮かぶ石を盾にしてそれらを防ぎ、ダメージを軽減する。その間も毒矢の追尾性は消えておらず、自動的にフォルクを追う。
「そう一筋縄ではいかないのは分かっているさ」
 一度攻撃に転じたならば、ここでまた守勢に戻るのは悪手。フォルクは持ち前の毒耐性と身に着けた「月光のローブ」の防御性能を頼りにして【闇討ちの法陣】を放ち続ける。
 蒼炎の武器群と猛毒の矢。互いに一歩も譲らない撃ち合いは、フォルクとコイヌールの双方にダメージを蓄積させていく。だが連射となれば充分な詠唱時間を確保できない分、フォルクの方が長期的には不利か。

「……撃ち合いに乗ってきてくれて助かった」
 その不利はフォルク自身も端から承知している。彼の狙いは猛毒の矢を創造する鏡石。
 激しい弾幕の中に紛れ込ませるように、一発の銀の弾丸を手元で狙い定め――射抜く。
「――……!」
 パリン、と硝子の割れるような音を立てて、コイヌールの手元で鏡石が砕けた。同時にその石から生成された毒矢も消える。敵も予備の石くらいは持ち合わせているだろうが、持ち替えとユーベルコードの再発動にかかる隙を見逃す彼ではない。

「暁の剣よ終わりなき夜に終止符を」
 フォルクは無数の武器群による連続攻撃を仕掛けつつ、白銀の剣を手に自ら斬り込む。
 吸血鬼の血肉を灼く蒼い炎を纏った斬撃が、領主コイヌールを袈裟懸けに斬り伏せた。
「あぁ……綺麗な炎ね……」
 刃と炎の痛みを感じながら、彼女の言葉と視線はただ"美しいもの"に向けられていた。
 だが一見痛痒のない振る舞いをしていても、その身に刻まれたダメージは事実だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
な、なんだこいつ...
(「気圧されちゃだめよ、黒影。冷静に敵を分析しなさい」と頭の中の教導虫が話しかける)
すみません!せんせー!
(「さて、どうする?」)
『毒耐性』を付与したオーラのバリアで『オーラ防御』しつつ
『衝撃波』を使った『ダッシュ』で敵の攻撃を回避&防御します!
せんせーは『念動力』で{錨虫}を操作して敵を攻撃してください!
そうやって敵を惹きつけている間にUC【蠢く霊】で召喚した
強襲兵の皆さんに不意打ちを仕掛けてもらいます!
(「自分を囮にするの?危険じゃない?」)
闇の救済者は命懸けです!
なら俺も応えなくてはいけません!
(「熱いわねぇ...いいわ、やりましょう」)
ありがとうございます!



「な、なんだこいつ……」
 領主コイヌールの理解しがたい言動と目的に触れて、兵庫は思わずひるんでしまった。
 これまでにも話の通じそうにないオブリビオンとは何度も戦ってきたが、この女領主もとびきりおかしい。動揺を隠せずにいる彼の頭の中で、教導虫スクイリアが話しかける。
(気圧されちゃだめよ、黒影。冷静に敵を分析しなさい)
 戦闘の最中に気持ちで負けてしまっては、勝てる戦いも勝てなくなる。教師のように、或いは母親のように宿主を導くスクイリアの声を聞いて、兵庫は落ち着きを取り戻した。

「すみません! せんせー!」
 兵庫が誘導灯型の警棒をぐっと握り直した時には、敵はもう攻撃の動作に移っていた。
 【鏡石よ、叶うなら】とコイヌールが囁くと、自分を映す石から猛毒の矢が放たれる。致死性の毒を滴らせた鏃は、まっすぐ兵庫に狙いを定めていた。
(さて、どうする?)
「こうします!」
 教導虫の問いかけに応えて兵庫は毒耐性を付与したオーラのバリアを展開。さらに足元に衝撃波を発生させて爆ぜるように駆け出し、猛毒の矢の射線上から一気に飛び退いた。

(せんせーは錨虫を操作して敵を攻撃してください! そうやって敵を惹きつけている間に強襲兵の皆さんに不意打ちを仕掛けてもらいます!)
 なおも追尾してくる毒矢から逃げ回り、回避と防御に専念しながら作戦を伝える兵庫。
 強敵に勝つならこのくらいの意表を突く策は必要だろう。だが教導虫は懸念を唱える。
(自分を囮にするの? 危険じゃない?)
 スクイリアの行動原理において最優先される事項は兵庫の命を守ることだ。彼女は兵庫が死ぬことを極端に恐れている。進んで自らの命を危険にさらすような行為には、あまり賛同したくはない――だが、そんな彼女の思いを知ってか知らずか、兵庫は言う。

(闇の救済者は命懸けです! なら俺も応えなくてはいけません!)
 熱意の込もった力強い言葉。保身などまったく考えていない、まっすぐで純粋な意志。
 猟兵が領主との戦いに専念できるように、闇の救済者達は今も敵軍と戦い続けている。その決意に応えるには、自分も命を賭けなくては――それは彼にとって当然の事だった。
(熱いわねぇ……いいわ、やりましょう)
「ありがとうございます!」
 作戦は決まった。脳内の作戦会議を終えた二人は、敵の注意を引きつけるために動く。
 兵庫は猛毒の矢に追われながら戦場を駆け回り、スクイリアは騎士団との戦いでやったように念動力で錨虫を操り、コイヌールにけしかける。

「虫使い……虫はあまり好きではないわね」
 コイヌールは飛んでくる錨虫を浮かべた魔石で弾きつつ、鏡石から毒矢を放ち続ける。
 毒と石の魔法を操る彼女は、氷のように冷静なまま戦場の中心に立つ。だが、その余裕とも油断ともつかない佇まいの背後から、忍び寄る影があった。
「今です、強襲兵の皆さん!」
 それは【蠢く霊】により兵庫が召喚した、五百体以上の強襲兵の亡霊。死してなお生前の習性のままに兵庫の命に従う彼らは、不可視なる霊体の牙をコイヌールに突き立てた。

「――……っ!」
 他の目標に集中している最中に目視不可の不意打ちを食らっては、対応の仕様がない。
 人形のように表情の無かったコイヌールの顔が微かに歪み、切り裂かれた肌から真っ赤な血が流れ、ドレスを汚していく。傷の程度は窺えないが、浅くはないのは確かだ。
「作戦成功です!」
(やったわね!)
 毒矢の追尾も消えたのを確認し、ぐっと拳を握って満面の笑みで喜ぶ兵庫に、脳内から称えるスクイリア。闇の救済者の信頼に応え、彼らは着実に領主を追い詰めつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…ではお前が砕け散る前に目に焼き付けておけ
いずれこの世界の闇を払う輝きをな

敵の攻撃から距離を保ち、ゴーレムとコイヌールを装備銃器で攻撃する
軽業を使い敵を翻弄しながら攻撃すれば、敵も私に集中せざるを得ないだろう
さらに乱れ撃ちで弾幕を貼って敵の動きを封じる

真に美しく、光り輝くものは決して砕けん
その曇り濁った眼で、よく確かめてみるがいい

敵に足場を破壊させたらUCを発動
軽業を駆使してゴーレムの腕を足場にしたら、至近距離でデゼス・ポアの刃を放つ
攻撃回数を重視してコイヌールごと斬り付けたら装備銃器で追撃をする

此処で砕けるのは腐り澱んだその魂だけだ
お前が焦がれ続けた輝きの前で果てるがいい



「ああ、素敵ね……とても強くて、美しい。なんとしてでも壊したいわ」
「フン……ではお前が砕け散る前に目に焼き付けておけ。いずれこの世界の闇を払う輝きをな」
 猟兵の力をその身で実感し、"美しいもの"への破壊衝動をさらに募らせるコイヌール。
 そんな彼女を冷たく一瞥して、キリカは"シルコン・シジョン"の銃口を向ける。ここで壊されてやる気など毛頭ない、この世界の未来を閉ざす輩を打ち砕く為に来たのだから。

「ええ、ぜひ魅せてほしいわね……堅牢よ、砕き潰せ」
 猟兵達のさらなる輝きを引き出すために、コイヌールは鉱石製のゴーレムを製造する。
 さながら姫君に仕える番兵のように、命なき巨人は拳を振り上げ。直撃を受ければ無事では済まないと判断したキリカは、後退しながら小銃のトリガーを引く。
「力には自信があるようだが、その図体で私について来られるか?」
 ゴーレムとコイヌールを同時に射界に入れるように計算された乱れ撃ち。鉱石の巨人はその身を盾にして主を庇いながら前進するが、軽業めいた身のこなしを見せるキリカにはとても追いつけない。

「やはりゴーレムの動きは鈍重なようだな」
 キリカは弾幕を張って敵の動きを封じながら、敵の攻撃が届かない距離を保ち続ける。どんなに一撃の威力が重くとも、射程と機動力でアドバンテージを取れる優位は大きい。
「素早いのね。でも、いつまで逃げ回っていられるかしら」
 生半可な攻撃では意味がないと悟ったのだろう、コイヌールもキリカを追い詰めるために魔力を集中する。輝きを増したゴーレムが振るう拳は、建物の足場を砕き壊していく。
 動き回られるのが厄介なら、足場を崩して機動力を殺せばいい。単純だが有効な解決策ではある――だが単純ゆえに、その行動はキリカの予測の範疇でもあった。

「真に美しく、光り輝くものは決して砕けん。その曇り濁った眼で、よく確かめてみるがいい」
 キリカは足場を粉砕するゴーレムの腕を新たな足場とし、軽やかな身のこなしで鉱石の上を駆け上がりながら【バール・マネージュ】を発動。オペラマスクを被った呪いの人形が踊るように宙を舞い、至近距離から錆びた刃を放った。
「踊れ、デゼス・ポア。貴様を呪う者達の怨嗟の声で」
 攻撃回数を重視した無数の刃は、ゴーレムの巨体を切り刻むだけでなく、コイヌールの元にも襲い掛かる。血の味を覚えたかのように執拗に、執念と怨嗟の込もった切れ味で。

「あら……」
 コイヌールは周囲に浮かべた魔石を盾にして身を守ろうとするが、怨嗟の刃を防ぎ切るには数が足りない。さらにキリカもゴーレムの上から銃を構え直し、追撃を撃ち込んだ。
「此処で砕けるのは腐り澱んだその魂だけだ。お前が焦がれ続けた輝きの前で果てるがいい」
 闇に屈する事なき気高き信念を見せつけるかのように、その姿は凛々しくも勇ましく。
 怨念の錆刃に斬り付けられ、聖句の銃弾に撃ち抜かれたコイヌールの瞳は、見惚れるようにじぃっと彼女を見つめ続けていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
桜は散り際が美しいとはよく言ったものですが。散り際の美しさというやつなのでしょうか?
形あるもの、意志あるものが壊れるとき、その存在の魅力というものが、もう見ることの出来ない美しさとして刻まれるからこそ余計に美しいと思うのか。
だからといって、壊すだけというのは幼稚に過ぎると思いますが。

そう簡単には壊れませんよ?私は。
水晶は硬く、水は常に形を変え、捉えることなど出来ない。
さあ、その身を水晶へと変え、貴女が望む美しい散り様へと導きましょう。
指定UC発動。神罰、範囲攻撃をのせて攻撃します。
アドリブや絡みなどは自由にしていただいて大丈夫です。



「桜は散り際が美しいとはよく言ったものですが。散り際の美しさというやつなのでしょうか?」
 美しいものを壊したいと願うコイヌールの歪んだ価値観に、晶はかくりと首を傾げる。
 形あるもの、意志あるものが壊れるとき、その存在の魅力というものが、もう見ることの出来ない美しさとして刻まれるからこそ余計に美しいと思うのだろうか。
「だからといって、壊すだけというのは幼稚に過ぎると思いますが」
「あら。せめて贅沢な趣味だと言ってくれないかしら」
 その指摘にコイヌールは気分を害した様子もなく、ただ品定めするような冷たい視線を向けて。周囲に浮かべた石の中から、鏡のように磨かれた一枚の石をそっと手に取った。

「そう簡単には壊れませんよ? 私は」
「だからこそ、砕ける瞬間はより美しくなるわ。鏡石よ、叶うなら」
 コイヌールは石に自らの顔を映し、猛毒の矢を放つ。あらゆる美しいものを壊したいという願いを叶えるために創造されたその矢は、晶の心臓目掛けてまっすぐに飛んでいく。
 いかに人智を超えた精強さを持つ竜神とて、弱体化した今では毒で致命傷を負うこともありうる。しかし晶は落ち着き払った態度で「天竜護法八大宝珠」をその手に掲げた。

「水晶は硬く、水は常に形を変え、捉えることなど出来ない」
 発動するのは【瑞玻璃の息吹】。元は八大竜王が持っていたとされる伝説の宝珠より、放たれるのは高圧圧縮された水の奔流。それは世界各地の神話に伝えられる神罰の津波を思わせ、猛毒の矢を呑み込み押し流すのに充分すぎる勢いがあった。
「さあ、その身を水晶へと変え、貴女が望む美しい散り様へと導きましょう」
 さらに晶が顕現させたこれはただの水に非ず、触れた者に結晶化の異常を引き起こす。
 毒も、石も、全てを無害な結晶に変え、さらには敵をも無力化する神罰の水流である。

「綺麗ね……けれど、私の求めるものとは少し違うかしら」
 水流により結晶化していく屋敷を眺めながら、コイヌールは石の魔法で防波堤を築く。
 だが【瑞玻璃の息吹】は彼女の想定を超える規模と水圧で、急拵えの防御を突破する。ひび割れたダムの隙間から漏れ出した水が、真っ白な肌とドレスにかかった。
「神の水に射たれ、その者の犯した罪を浄めたまえ。さすればその者七宝となりて、天に誘わん」
 詠うように朗々と宣告する晶の前で、コイヌールの結晶化が進んでいく。石の魔法使いならば、或いはこの異常を解くすべも心得ているかもしれないが――ノーコストで即座にとはいかないだろう。これで行動に大きく制限をかけられたはずだ。

「因果応報という言葉もあります。その身を砕く裁きの鉄槌が、じき下されるでしょう」
 荒れ狂う水飛沫の中、厳かに語る晶の振る舞いには、いにしえの竜神の風格があった。
 宝珠の輝きに照らされ、半身を結晶化されたコイヌールは小さく唇を噛んだのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
これは……世界との関わり方が、演劇と観客のそれだ
その上、演目をご破算にしようとする悪質な

強化された【視力】で放たれる矢の軌道を【見切って】躱す
躱しても追尾してくる矢を聖槍を振るって叩き折る
狙いの甘さなど関係なく、軌道修正して追ってくる……!

聖槍に猛毒の呪詛(属性攻撃)を纏わせ、先とはさらに異なる槍を再現する
槍を振るい、矢を撃ち出す鏡石を破壊する
本来なら、術者が健在な限り端末たる鏡石も再生するだろうが――それは【呪穿魔槍】が赦さない
この槍に付けられた傷は決して癒えず、猛毒により息絶えるのみ

矢の弾幕が薄くなった隙に、猛毒の刺突(串刺し)を繰り出す



「これは……世界との関わり方が、演劇と観客のそれだ」
 同じ戦場に立っている自覚があるとは思えない、不自然なほどに落ち着いた敵の態度。さらに散っていった配下の死を愉しむような物言いに、オリヴィアは不快を露わにした。
「その上、演目をご破算にしようとする悪質な」
 この世を観劇の如く見下ろしている輩には、自分も同じ舞台に立っているという自覚を突きつけてくれよう。破邪の聖槍を握りしめながら、決意とともに瞳を爛々と輝かせる。

「その瞳……とても美しいわ。くり抜いて宝石として飾りたいくらい」
 コイヌールは笑いもせずにじっと黄金の瞳を見つめ、【鏡石よ、叶うなら】と囁いた。
すると手鏡のように磨かれた石板から猛毒の矢が放たれ、オリヴィアを射抜かんとする。
「来る……!」
 オリヴィアは強化された視力によって矢の軌道を見切って躱すが、的を外した矢は軌道を変えてなおも彼女を追いかけてくる。あらゆる美しいものを壊したい、という創造者の願いを宿した矢は、標的を射抜くまで決して止まることはない。

「狙いの甘さなど関係なく、軌道修正して追ってくる……!」
 オリヴィアは顔をしかめながら聖槍を振るい、躱しても追尾してくる毒矢を叩き折る。
 真っ二つになってようやく矢は飛翔を止めるが、コイヌールはすぐにまた新しい毒矢を作り出して次々と射掛けてくる。このまま矢の追尾性能にものを言わせて乱射されれば、じきに回避も防御も追いつかなくなる。
「ならば、矢を撃ち出す鏡石を破壊する」
 オリヴィアは【呪穿魔槍】を発動し、聖槍に猛毒の呪詛を纏わせながら反撃に転じる。
 黒百合騎士団との戦いで見せたロンゴミニアドとはさらに異なる、異境の魔槍の再現。猛犬と呼ばれし英雄の手で振るわれた、その武器の名は【呪穿魔槍(ゲイボルグ)】。

「我が槍に穿たれしもの、決して癒えることなし――!」
 矢の雨の隙間を縫うように突き放たれた一撃は、過たずにコイヌールの鏡石を穿った。
 本来なら、術者が健在な限り端末たる鏡石も再生するだろうが――それは【呪穿魔槍】に宿った呪いが赦さない。
「これは……?」
 鏡としての用をなさないほど深く刻まれた裂傷は、コイヌールがどれだけ魔力を注いでも修復されない。声に驚きを滲ませる彼女の手の中で、鏡石は腐蝕しボロボロと崩れた。

「この槍に付けられた傷は決して癒えず、猛毒により息絶えるのみ」
 不治の傷と弱体化の呪詛による、生命力流出と猛毒の継続ダメージが、ゲイボルグの力である。オリヴィアは冷徹な調子で語りつつ、魔槍の矛先を今度はコイヌールに向けた。
 脅威となる矢の弾幕が薄くなった今こそ、敵に攻撃を通す最大のチャンス。その一突きはこれまで以上に鋭さをを増して、稲妻のように閃く。
「――……っ、あ……!」
 咄嗟に身を翻そうとしたコイヌールの右肩を、猛毒の刺突が穿つ。これまで表情ひとつ変えなかった彼女の口から微かな悲鳴が上がり、抉られた右腕がだらりと垂れ下がった。
 不治の傷と猛毒に侵されたその片腕は、もはや使い物にならないだろう。塞がらない傷から止めどなく流れ出す血が、屋敷の床を赤く染め上げていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
闇の救済者達の奮闘も、あの騎士達の忠義も、貴女の無聊を慰める道具だったと

怪力とロープワークで操るUC振り回し召喚ゴーレム達を粉砕

血と苦痛に塗れたあの光景の…何処に美しさがあるというのです!
紙片の上で十分なそれを消耗品の如く…

本命のゴーレムの攻撃を鉄球を盾と扱い防御
弾かれた鉄球を推力移動で再度操作し直撃させ起爆
残骸を鉤爪でロックし振り回しフェイルに叩き付け床に挟み拘束
這い出る隙逃さず●踏みつけ剣突き刺し

こんなものの、何処に美しさが…!

(領主を罵る程、忠を捧げた騎士達を道化と扱ってしまうことに思い至り、騎士として戦い続ける自己矛盾への思考負荷も合わさり)

────!

全格納銃器展開、至近距離で乱れ撃ち



「闇の救済者達の奮闘も、あの騎士達の忠義も、貴女の無聊を慰める道具だったと」
 領主コイヌールと対峙したトリテレイアの声は、いつもよりも低く、感情を押し殺したように無機質だった。命懸けの闘争を、忠義と信念の激突を、観劇の如く見下される――それは戦場にいた全ての者の尊厳の愚弄である。
「ええ。あなた達の戦いは美しかった。私の騎士達も素晴らしい最期を迎えられたわね」
 可憐な女領主は淡々と、血に染まった我が身を壁により掛からせながら応える。嫌味や挑発の類ではない、彼女は本心からそう感じている。美しいものが壊れる瞬間を除いて、彼女の心を震わせるものなど無いのだ。

「だから、次はあなた達が壊れるところが見たいの……堅牢よ、砕き潰せ」
 血塗られた指先でコイヌールが壁をなぞると、鉱石で製造したゴーレムが召喚される。物言わぬそれらは姫君を守る番兵のように、ずしんと床を踏み鳴らしながらトリテレイアに襲い掛かった。
「……対装甲破砕鉄球、起動」
 機械仕掛けの騎士はワイヤーに繋がれた棘付き鉄球を操り、鉱石ゴーレムを迎撃する。
 ウォーマシンの怪力で振り回された鉄球はバーニアから炎を噴き出してさらに加速し、その強度と質量を以て標的を粉砕した。

「血と苦痛に塗れたあの光景の……何処に美しさがあるというのです!」
 押し寄せるゴーレムの群れを残骸の山に変えつつ、トリテレイアは堪えきれなくなった激情を叫んだ。戦いの為に創られた彼は、しかし闘争そのものを美化する事を好まない。まして戦いの中で散っていった者達の死に様を"好し"とするなど受け入れ難いことだ。
「紙片の上で十分なそれを消耗品の如く……」
「ペンとインクで綴られた虚構に価値はないわ。大地の上でもがき足掻く者達の、血と屍で描かれた人生という名の物語以上に、輝かしい創作物があるかしら?」
 その美しさを観られるのなら、たかが数千人の犠牲などささやかな消費に過ぎないと。
 コイヌールは決して相容れることのない価値観を語り、鉱石のゴーレム達を踊らせる。

「誰よりも近くでそれを見てきたあなた達が、その美しさに気付けないのは不幸な事ね。せめて綺麗に壊してあげる」
 数十体分の鉱石の残骸を積み上げて、ついに一体のゴーレムが騎士を間合いに捉える。
 この一体こそコイヌールの本命だろう。ひときわ大きく強靭に創られた鉱石の巨人は、その腕を大きく振りかぶり、必壊の一撃を叩きつける。
「こんなものの……」
 対するトリテレイアは鉄球を盾にして防御。鉱石の拳に打ち付けられた鉄球はガンッと鈍い音を立てて弾かれるが、推力操作により軌道を変えて勢いよくゴーレムに衝突する。
 さらに直撃の瞬間に内蔵された炸薬が作動、大爆発が起こり、直撃を受けたゴーレムは粉々に砕け散る。無数の残骸が飛散するなか、騎士はそのうちの大きな塊に目をつけた。

「こんな、ものの…………」
 爆発を起こした鉄球の中から鉤爪が飛び出し、残骸をロックする。これによって総質量を増した【拘束鉄爪内蔵式対装甲破砕鉄球】を、トリテレイアは力の限りに振り回した。
 騎士らしい美麗さの欠片もない豪快な一撃がコイヌールに叩きつけられ、床に倒れ込んだ華奢な身体を、そのまま鉄球で挟み込み拘束する。
「こんなものの、何処に美しさが……!」
 鉄球の下から這い出ようとする隙を逃さず、地を這う手を踏みつけ剣で串刺しにする。
 女領主の口から微かに悲鳴が零れ、冷たい視線がトリテレイアを見上げる。紅玉のような瞳の中に、憤激するウォーマシンの姿が映り込み――それを見た彼はふと我に返った。

「────!」
 ここで領主を罵れば罵る程、忠を捧げた騎士達を暗君に弄ばれた道化と扱ってしまう。
 冷静さを取り戻したことでその事実に思い至ったトリテレイアは、騎士として戦い続ける自己矛盾も合わさって、思考負荷が限界に達してしまう。
「私は……――!!」
 感情演算がエラーを起こし、錯乱した彼は全ての格納銃器を展開、拘束したままの敵に至近距離から銃撃を浴びせた。けたたましい銃声と共に、薬莢が落涙のように降り注ぐ。
 騎士としての道義も何もない、暴力の雨に打たれたコイヌールは、泣き喚くでも命乞いをするでもなく、傷付きながらただ一言呟いた――美しい、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
(真の姿たる修羅の表情で)どこまでも自分の都合しか考えない吸血鬼だな。いいだろう、お望み通り砕け散らしてやるよ。
お前の事だ、自分は醜いと思ってはいないだろうから。

ゴーレムの打撃と吸血鬼の魔法のコンビネーションが来ると予想。
ゴーレムの攻撃は第六感と見切りによる最小の動きで躱し、吸血鬼の魔法は魔力消失属性を付与した灼星剣と村正の武器受けで防ぐ。
最終防御でオーラ防御を身に纏う。

残像を残してダッシュし、UC発動。
2回攻撃の1回目で、左手の村正によるUC&鎧無視攻撃・衝撃波でゴーレムを粉砕。
そのまま吸血鬼に接敵し、2回攻撃の2回目で、右手の灼星剣によるUC&光の属性攻撃・精神攻撃で心身ともに斬り捨てる!



「どこまでも自分の都合しか考えない吸血鬼だな」
 己の願望と目的の為に、全てを玩弄し破壊せんとする領主コイヌールの所業に、シンは憤りも露わに修羅の表情を見せる。この形相こそが彼の真の姿であり、烈火の如き闘争心の発露であった。
「いいだろう、お望み通り砕け散らしてやるよ。お前の事だ、自分は醜いと思ってはいないだろうから」
 修羅の戦人はそう言って、灼星剣と村正の二刀を構える。これまで散々に美しいものを壊してきたのだろう、彼女の最期は己自身が砕け散る様によって彩られるのが相応しい。

「あなた達も一緒に砕けてくれるなら、それも悪くないかもしれないわね」
 顔をしかめるでも微笑むでもなく、コイヌールは冷たい表情のままシンの闘志に応え、【堅牢よ、砕き潰せ】と唱える。すると残骸の中から新たな鉱石のゴーレムが召喚され、煌びやかな拳を振りかざして猟兵に襲い掛かってきた。
(おそらくゴーレムの打撃と吸血鬼の魔法のコンビネーションが来る)
 事前に予想を立てていたシンは、研ぎ澄まされた第六感と見切りのセンスを活かして、最小限の動きでゴーレムの攻撃を躱す。凄まじい破壊力を宿した拳を紙一重で避けきった直後、今度はコイヌールが毒の矢を放つのが見えた。

「潰れて死ぬか、毒で死ぬか、好きなほうを選ぶといいわ」
「生憎だが、どっちも御免だな」
 致死の毒性を有した魔法の矢を、シンは魔力消失の属性を付与した二刀で受け止める。
 それでも受けきれないものは全身に纏ったオーラで弾き、ゴーレムの的にならないようダッシュする。本気になった彼の走力は残像を生み、敵も一瞬姿を見失うほどの早業だ。
「灼光の刃よ全てを両断せよ!」
 その速度を活かして敵の懐に潜り込んだ彼は、左手の村正による【万物両断】を発動。対象の強度を無視する真紅の斬撃と衝撃波にて、鉱石ゴーレムを一刀のもとに粉砕した。

「あら……」
 まさかゴーレムが一太刀で破壊されるとは思ってもみなかったのだろう。感心したようにコイヌールが声を上げる暇もなく、シンはそのまま間合いを詰めてくる。二刀流による連続攻撃、本命となるのは右手の灼星剣による【万物両断】だ。
「お前の歪んだその魂、心身ともに斬り捨てる!」
 サイキックエナジーにて形作られた剣は、使い手の精神の昂りに呼応して真紅に輝く。
 それはまるで恒星の光を宿したかのように眩く――紅の軌跡が閃いた直後、コイヌールの片腕が宙を舞った。

「……美しい剣だったわ」
 隻腕となった女領主は、自らの腕を落としたシンの一太刀の美しさのみをただ讃える。
 その顔は相変わらず人形めいた無表情で、だが度重なる負傷と失血から顔色は明らかに青ざめており。憔悴したように身体をふらつかせるのを、彼の目は見逃さなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
ご丁寧な紹介、痛み入るわ。わたしはフレミア・レイブラッド。悪いけど、貴方に壊されるわけにはいかないの。ここで倒させて貰うわ。

【吸血姫の覚醒】を発動。
ゴーレムの攻撃を【見切り】、高速移動で回避しながら爆裂や凍結の魔力弾【属性攻撃、多重・高速詠唱、全力魔法、誘導弾】でゴーレムを牽制・破壊しながら本体へ近接戦を実施。
相手の能力から近接戦が弱くはないだろうが得意ではないと踏んで全速力からの膂力【怪力】による殴打(拳、槍の柄)や槍撃を叩き込み、身動きを取れなくし、全魔力を魔槍に集束【力溜め、限界突破】。
【神槍グングニル】で終わらせるわ!

最後に見せてあげる…神槍の輝きを!神槍の光の中に消えなさい!



「ご丁寧な紹介、痛み入るわ。わたしはフレミア・レイブラッド」
 高貴なる者の礼儀として、フェイル-コイヌールの名乗りに返礼するフレミア。口元に優雅な微笑みを浮かべながらも、その眼光は鋭く、揺らぎない意志の輝きを宿している。
「悪いけど、貴方に壊されるわけにはいかないの。ここで倒させて貰うわ」
「ええ、好きなだけ抗うといいわ。その執念が散り様の美しさを際立たせるのだから」
 コイヌールもまた傷ついてなお優雅な佇まいで、鉱石で製造したゴーレムを召喚する。
 【堅牢よ、砕き潰せ】と囁くように命令すれば、魂なき人形は意のままに拳を振るう。

「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
 対するフレミアは【吸血姫の覚醒】を発動し、真の力を解放。真祖より受け継いだ魔力が爆発的な勢いで放出され、背中には4対の真紅の翼が生える。身長も伸びて17~8歳程の外見に変化した彼女は、まさに見るものを畏れさせる吸血姫の風格を纏っていた。
「ダンピール……としても、異常なほどの力ね。猟兵とは不思議な存在だわ」
 宙に浮かぶ彼女を感心したように見上げつつ、鉱石ゴーレムをけしかけるコイヌール。だが覚醒を遂げた吸血姫は瞬間移動と見紛う程の速さで攻撃を躱し、解放した魔力を弾丸に変えて発射する。爆裂や凍結などの属性を付与された魔力弾は、豪雨のようにゴーレムを打ちのめし、だたの鉱石の破片になるまで粉々に打ち砕いた。

「綺麗ね。これは壊すのにも手間がかかりそう」
 吸血姫の力を認めながら、コイヌールはすぐに新たなゴーレムを喚ぶ。攻撃力の高く、盾としても有用な駒を続々召喚できる所に、魔法使いとしての彼女の実力が現れている。
 だが、その能力からして近接戦については弱くはないだろうが得意ではないと踏んで、フレミアは魔力弾でゴーレムを牽制しながら本体への接近を試みる。
「一緒に踊ってもらえるかしら」
「……ダンスはあまり得意ではないわね」
 先程も披露した超高速移動に加えて、ドラゴンすら上回る膂力から繰り出す拳と槍の柄による殴打。コイヌールは踊るようなステップで身を躱し、腕で打撃の軌道を反らすが、やはり近接戦は得手ではないのか徐々に追い込まれていく。

「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
 フレミアは殴打や槍撃の連続で相手の身動きを取れなくしつつ、ドラグ・グングニルに全魔力を集束させていく。限界を超える圧縮度まで達した魔力は、魔槍を軸として長大な【神槍グングニル】を形成し、闇夜を焦がすほどの紅き輝きを発する。
「最後に見せてあげる……神槍の輝きを! 神槍の光の中に消えなさい!」
 この距離からなら絶対に逃しはしない。神々しささえ感じさせる威厳と気迫とともに、フレミアは渾身の力で神槍を叩き込む。目前にいるコイヌールの心臓を突き穿つために。

「――……!!」
 その燦然たる輝きに魅入るように目を見開きつつ、コイヌールは僅かに半身を躱した。
 結果、直撃こそ免れたものの神槍は彼女の脇腹を深々と抉り――直後、注がれた莫大な魔力が凄まじい光爆を起こし、その場にある全てを吹き飛ばしてクレーターを作り出す。
 爆心地の上空、ただひとり傷一つないフレミアが、倒れ伏した領主を見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
人々が紡いだ希望、壊させるワケにはいかないよ…。
希望は決して壊れない…わたし達が壊させない…!

【九尾化・魔剣の巫女媛】封印解放…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】で攻撃と同時に目晦まし・周囲の侵食を行い、その隙に幻影術式【呪詛、高速詠唱、残像】を発動…。

黒い桜吹雪の中から展開した無限の魔剣を斉射して更に奇襲を仕掛け、敵が「猛毒の矢」を放って来たら、アンサラーの反射【呪詛、カウンター、武器受け、オーラ防御】で逆に猛毒の矢を跳ね返して侵食…。
最後は【呪詛】を込めたバルムンクによる一太刀で石ごと両断するよ…。

その猛毒の矢が壊すのは美しい貴女自身…その願いを叶え、滅びると良いよ…。



「ああ……こんなにも強く、美しいものがこの世にあったなんて……」
 猟兵達の強さと気高さを一身に感じて、コイヌールは満身創痍となった身体を起こす。
 その顔に相変わらず表情はなく、しかし何故か感激に打ち震えているようにも見える。
「壊したい……闇夜の中でも燦然と輝いている、あなた達の希望を……」
「人々が紡いだ希望、壊させるワケにはいかないよ……」
 もはや妄執に等しい願いを口にするコイヌールの前に、毅然と立ちはだかるのは璃奈。
 猟兵だけでなく、この世界に生きる多くの人々の力で、自分達は今ここに立てている。この希望を打ち砕こうとする歪んだ願望は、ここで斬り捨てるのみだ。

「希望は決して壊れない……わたし達が壊させない……!」
 決意の言葉を口にして、璃奈は【九尾化・魔剣の巫女媛】の封印を解放。妖狐の証たる尾が九本に増え、莫大な呪力を身に纏う。その姿には禍々しくも美しい玄妙さがあった。
 そして彼女は手にした呪槍・黒桜をひと振りし、呪いの黒花弁の桜吹雪を巻き起こす。先の戦闘で黒百合騎士団を打ち払った時よりも、その規模は遥かに大きくなっている。
「呪いの桜……美しいわね」
 無数の花弁はあっという間にコイヌールの視界を覆い尽くし、周囲の物品や空間を呪力で侵食する。その隙に璃奈は幻影術式を発動させて、敵の前から完全に所在を眩ませた。

「どこへ行ったのかしら、可愛い狐さん」
 コイヌールがきょろきょろと辺りを見回しても、視界に入るのは黒い桜吹雪だけ。璃奈はその中で息をひそめたまま、呪力から魔剣を顕現させ、展開と同時に奇襲を仕掛ける。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……」
「――……っ!」
 桜吹雪の奥から放たれた魔剣の一斉射に、コイヌールの回避は間に合わなかった。呪力を纏った刃が少女の柔肌を切り裂き、鮮血がぽたりと床を濡らす。呪いと斬撃による二重のダメージに彼女はよろめきながらも、鏡のように磨かれた石を片手に浮かべる。

「鏡石よ、叶うなら」
 あらゆる美しいものを壊したいという願いを石に込め、少女が創造するのは猛毒の矢。たとえ目標を視認することができずとも、この矢は美しいものを射抜くまで追い続ける。
 これまで幻影と桜吹雪を隠れ蓑にしてきた璃奈にとっては、厄介な反撃のはずだが――彼女は毒矢が花弁を切り裂く音を聞くと、槍を置いて魔剣「アンサラー」を抜き放った。
「その猛毒の矢が壊すのは美しい貴女自身……その願いを叶え、滅びると良いよ……」
 研ぎ澄まされた刀身が矢を受け止め、魔剣に込められた報復の魔力がそれを跳ね返す。
 追尾の特性もそのままに、猛毒の矢は飛んできた軌道を逆回しに進み、可憐なる女領主の胸を射抜いた。

「ぁ………?」
 コイヌールは何が起こったか分からない様子で、自分の胸に刺さった毒矢を見ていた。
 だが本人の理解とは関係なく、毒は彼女の身体を侵食していく。さらに周囲を舞う呪力の影響も現れはじめ、脱力感に立っていられなくなった娘はふらりと壁に身体を預ける。
 その直後、桜吹雪を切り裂いて、魔剣「バルムンク」を掲げた璃奈が飛び込んできた。
「さようなら……」
 魔竜を屠った伝承の魔剣の一太刀が、毒矢を生み出す石ごとコイヌールを斬り伏せる。
 黒い桜吹雪に紛れて、真っ赤な血飛沫が薔薇の花弁のように舞い――可憐なる女領主はばたりと崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久賀・灯夜
【リミット】

ヒビを負わせた、って……ミレニカちゃん、まさかこいつが!?

いや、だから今はそれを話してる暇はないな
でもミレニカちゃんの様子がおかしい理由はなんとなく分かった
だったら俺がするべき事は彼女を全力でサポートする事だ

まずはその厄介な石を何とかさせてもらう――ガジェットショータイム!
召喚するのは大型ドリル。こいつで宙に舞う石を砕く!

サンキュー良馬さん!
俺達でミレニカちゃんの道を拓くぜ……!


生憎だけど砕けるのは俺達じゃない。お前のそのどす黒い欲望だ!
相手の攻撃には、お前には絶対に従わないという【覚悟】で耐える
俺は……お前なんかよりもずっと美しい、"ひび割れ"の彼女を護る。その自分の心に従う!


ミレニカ・ネセサリ
【リミット】
ご機嫌よう、ブラン。いえ――コイヌール

……当然ですが
やはり、わたくしの憧れたあなたとは違いますのね
かつてのあなたは高潔で、燃える炎のような目をしていた
生前のこと、あまり覚えていないのではなくて?
わたくしにヒビを負わせた理由を、訊きたかったけれど

だからといって、見逃すことなどできません
たえず彼女の前に周り【存在感】で此方に注意を引きつけます
わたくしを見なさい。コイヌール
ゴーレムも何も、真っ向から砕いていきますわ
これ以上、あなたの好きにはさせなくてよ
UCはここぞという時に叩き込む

彼女の手首に結ばれた、見覚えのある緑のリボンに気づいても、迷わない
【覚悟】なんて、私はとっくに決めているのよ


鏑木・良馬
【リミット】
詳細は知らんが、友に手傷を負わせた者である事は承知した
だがそれだけが分かれば充分、ならばやる事は一つであろうよッ!

美しき者が壊れる様がお好みか
ならば俺にも興味深い事が一つあるぞ
コイヌールよ、貴様はどんな音で壊れるのだろうな?

悪い領主がどうとか興味は無いが…個人的に言わせて貰えば命を弄ぶ輩は、俺が気に食わん
従うだと?冗談にしては笑えぬな
しかして貴様を砕くのは俺の役割ではない

俺が狙うのは周囲を漂う厄介な石だ
射程の増した刃で周囲の石のみを狙い活路を拓く
続く道はミレニカと灯夜が行けばいい

細かい事は何も言わん
これより先の道は灯夜が拓くだろう
ミレニカよ、その拳の覚悟のままに打ち砕いて行けッ!



「ああ……壊れる……私が、壊れる……?」
 猟兵達との激しい戦いを経て、ボロボロになったコイヌールは呟く。全身に傷を負い、ドレスは血に塗れ、片腕まで失っていても、その姿は儚くも可憐で、そして美しかった。
「まだ……壊していないのに」
 美しいものを壊したい。窮地に瀕してもなお願う彼女の前に、ひとりの少女が現れる。
 黒いロングヘアに、翠玉のような緑の瞳。どこかコイヌールと対照的な印象の容姿の、"ひび割れ"を刻まれた少女――ミレニカ・ネセサリが。

「ご機嫌よう、ブラン。いえ――コイヌール」
 ようやく相見えることのできた宿縁の相手を見つめながら、静かに挨拶するミレニカ。
 それを聞いたコイヌールは冷たい眼をしたまま、かくりと首を傾げて彼女を見つめる。
「ブラン……?」
「……当然ですが。やはり、わたくしの憧れたあなたとは違いますのね」
 名を呼んでもぴんときていない様子に、微かな落胆を抱く。オブリビオンとして現世に蘇った者は、大なり小なり生前とは変化しているケースが多い。目の前にいる白い娘は、外見こそミレニカの覚えのある姿だったが、雰囲気はまるで異なっていた。

「かつてのあなたは高潔で、燃える炎のような目をしていた。生前のこと、あまり覚えていないのではなくて?」
「生前……かつての、私……?」
 自身がオブリビオンだという自覚はコイヌールにもある。だが、生前の自分のことなど考えたことすら無かったようだ。美しいものを壊したいという衝動が、一体どこから来るものなのか、理由さえ分からぬまま壊し続け、それを疑問に抱くことさえなく。
「わからないわ。あなたが何を言っているのか、私には」
 ようやく出会えた宿縁だというのに、相手から返ってきたのは冷たい視線だけだった。
 落胆はまた少し深くなり。変わってしまった者に哀しみも。だが、ここまで来た以上、ミレニカはもう迷わない。

「わたくしにヒビを負わせた理由を、訊きたかったけれど」
 だからといって、見逃すことなどできません――気丈な顔で拳を握りしめるミレニカ。
 その発言に驚いたのは、ここまで同行してきた灯夜と良馬である。特に灯夜は目を丸くして、ミレニカの顔とコイヌールを交互に見やる。
「ヒビを負わせた、って……ミレニカちゃん、まさかこいつが!?」
 彼女にひび割れを与えた元凶がオブリビオンとなり、領主として民を苦しめている――聞きたいことや問いただしたいことが山のように頭に浮かぶ。思わず口をついて出そうになった言葉を、しかし少年はぐっと喉の奥に押し込めた。

「いや、だから今はそれを話してる暇はないな。でもミレニカちゃんの様子がおかしい理由はなんとなく分かった」
 だったら自分がするべき事は、彼女を全力でサポートする事だ。迷いを捨てて一歩前に出た灯夜に続き、良馬も双霊刀を抜き放つと毅然とした眼差しでコイヌールを見据える。
「詳細は知らんが、友に手傷を負わせた者である事は承知した。だがそれだけが分かれば充分、ならばやる事は一つであろうよッ!」
 美しき希望を破壊する悪しき領主を、そして友の因縁の相手をここで倒す。そのために助力を惜しむつもりはない。二人の力強い言葉を聞いたミレニカは、微かに笑みを浮かべ「ありがとう」と答えた。

「友情、親愛、絆……かけがえのない、美しいものね」
 三人の心の輝きを感じ取ったコイヌールは、残された魔力を周囲に浮かぶ石に注いだ。
 その魔石の輝きはヒトの精神を蝕み、コイヌールに従いたいという感情を植え付ける。もし三人のうち誰か一人でも術中に嵌まってしまえば、美しい絆はそれで壊れるだろう。
「眩惑よ、惹き奪え」
 夜空にまたたく星々のように、コイヌールを中心として輝く魔石。心惑わす強力な魔力が三人に襲いかかる――だが、これしきで直ちに心奪われてしまうような、軟弱な意志でここまで来た者はひとりもいない。

「従うだと? 冗談にしては笑えぬな」
 再び【貴公に花を捧げよう】を起動した灯夜が、兄弟一対の双刀「緋メ桜」を振るう。
 黒百合の騎士を斬り伏せた時のように、刃から舞い散る花の如き闘気が衝撃波となり、コイヌールの周囲に漂う輝石を斬り砕いた。
「美しき者が壊れる様がお好みか。ならば俺にも興味深い事が一つあるぞ。コイヌールよ、貴様はどんな音で壊れるのだろうな?」
 傷付き罅割れてもなお美しさを損なわぬ可憐な娘。その姿は皮肉にも彼にとってある友を思い浮かばせる――無論、どちらがより美しいかなど問うまでもないが。美しいものを壊すことに執着してきたこの娘には、因果応報の最期を迎えるのが相応しかろう。

「悪い領主がどうとか興味は無いが……個人的に言わせて貰えば命を弄ぶ輩は、俺が気に食わん」
 しかして貴様を砕くのは俺の役割ではない――と、活路を拓く事のみに専心する灯夜。
 彼が双刀を振るうたびに、衝撃波がコイヌールの周りの輝石を吹き飛ばす。本体にまで刃を届かせる必要はない、続く道はミレニカと灯夜が行けばいい。
「細かい事は何も言わん、これより先の道は灯夜が拓くだろう。ミレニカよ、その拳の覚悟のままに打ち砕いて行けッ!」
「ええ。言われずともそのつもりでしてよ……!」
「サンキュー良馬さん! 俺達でミレニカちゃんの道を拓くぜ……!」
 双刀の剣豪からの激励に、ミレニカは力強い首肯で応えて走り出す。彼女を援護するために、灯夜もダッシュで後に続いた。コイヌールに拳を叩き込める距離まで、あと少し。

「その厄介な石を何とかさせてもらう――ガジェットショータイム!」
 相手に近づくにつれて、まだ残っている魔石の輝きは否応なく目に入ってくる。眩惑を防ぐために今度は灯夜がユーベルコードを発動し、大型ドリルのガジェットを召喚する。
「生憎だけど砕けるのは俺達じゃない。お前のそのどす黒い欲望だ!」
 お前には絶対に従わないという覚悟で侵蝕に耐えながら、宙に舞う石をドリルで砕く。
 硬質な音を立てて砕け散った宝石は、輝きを失えばそこら辺にある石ころと同じように床に転がる。彼はそれを踏みしめながら、ミレニカのための突破口を作らんと前進する。

「俺は……お前なんかよりもずっと美しい、"ひび割れ"の彼女を護る。その自分の心に従う!」
 そう宣言した灯夜の魂はきっと、どんな宝石よりも輝いていて。その気迫に圧されるようにコイヌールは後ろに一歩下がる。彼女の周りに浮かんでいた石は、もはや一つ残らず砕かれていた。
「それほどまでに、彼女を想っているのね……ならば堅牢よ、砕き潰せ」
 コイヌールの手に最後に残ったカードは、鉱石で製造したゴーレムの召喚。満身創痍の身に残ったありったけの魔力をかき集め、創り上げたそれは荘厳にして絢爛で――だが、そんなものに臆するものかと、真っ向から迫る者がいた。

「わたくしを見なさい。コイヌール」
 此方に注意を引きつけるよう正面に周って、ミレニカは邪魔なゴーレムに拳を振るう。
 インパクトの瞬間に爆発を起こす「Diamond Damsel」。一撃で鉱石に罅が入り、二撃で亀裂が走り、三撃で破片が零れ、四撃で完全に砕け散る。
「これ以上、あなたの好きにはさせなくてよ」
 もう何も壊させない。もう何も罪を犯させない。彼女との因縁をここで終わりにする。
 倒壊するゴーレムの破片を身に浴びながら、全てを失ったコイヌールの懐に踏み込む。常に冷たい表情だった彼女が、その時微かに驚いたような顔を見せた気がした。

「行け、ミレニカ」
「頑張れ、ミレニカちゃん!」
 良馬と灯夜からの声援が背中を押す。手を出してこないのは決着を彼女に委ねたから。
 ひとりでも、ひとりじゃない。だからこそ強く前に踏み出せる――己の間合いに完璧に相手を捉えたその時、ミレニカは彼女の手首に緑のリボンが結ばれているのに気付いた。
「――……!」
 そのリボンには見覚えがあった。かつて、憧れの人と分かち合った絆の証。その刹那、様々な感情や思い出が胸の内を駆け抜けていき――それでも、ミレニカは迷わなかった。

「覚悟なんて、私はとっくに決めているのよ」
 発動、【Atk_Admire】――ミレニカの体が、暗色のドレスを纏った真の姿に変わる。
 同時に、髪に結わえた緑のリボンに付けられた、罅割れたダイヤが音を立てて砕けた。
 それは彼女が同類と呼ぶ、憧れの人物から譲り受けたもの。この世にふたつとない大切なもの。だからこそ、それを失う代償によって得られる力は何よりも大きい。
「これで最後よ――」
 もしも使うならば彼女を止める時にと決めていた、たった一度きりのユーベルコード。
 全力を籠めた一撃が宿敵を捉えるその瞬間、ミレニカとコイヌールの視線が交錯する。

「――……いいわ。美しいあなたに、壊されるのなら」

 夜明けを告げる日差しが雪を溶かすように、フェイル-コイヌールは静かに微笑んだ。
 それはどんな宝石よりも美しく。そして赤い瞳はまっすぐに、目の前にいる少女だけを見つめていた。

「――さようなら」

 別離の一撃は、ミレニカの拳に鈍い感触を残した。きっと、一生忘れられない手応えになるだろう。
 フェイル-コイヌールがいた場所には、一輪の赤い花と、緑のリボンだけが残されていた。


 ――かくして、"美しいもの"を求め続けた領主は討たれた。
 闇の救済者と猟兵達、そして彼女との宿縁を結んだ者の手によって。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『影絵の画家ヴィエルジュ』

POW   :    じっとしていてね?骸は拾ってあげるよ
【対象の影絵を描き出し真心 】を籠めた【あらゆる防御、耐性を無視した万年筆】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【魂、内臓組織、精神】のみを攻撃する。
SPD   :    観察眼には自信があるんだよ?
【瞬時に影絵として描いた敵対 】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    今描いているところなんだ、邪魔しないでくれる?
自身が【影絵を描いている 】いる間、レベルm半径内の対象全てに【影絵を通した攻撃】によるダメージか【自身を描いた影絵】による治癒を与え続ける。

イラスト:えな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の活躍により、此度の『闇の救済者』達による反攻作戦は大勝利に終わった。
 領主フェイル-コイヌールは討たれ、主を失った騎士団は戦意を喪失。潰走する最中に殆どが追撃を受けて倒された。闇の救済者も多少の負傷者は出たものの、被害は軽微だ。
 コイヌールが治めていた地域は人類のものとなり、今後は領民も安心して暮らせるだろう。まさに大団円――だが、戦いはまだ終わっていないのだと猟兵達だけが知っている。

「やあ。なかなかいい絵が描けたよ。ボクの主もお喜びになりそうだ」

 領主の屋敷を見下ろせる位置にある、戦場となった領域からは離れた小高い丘にて。
 異様な気配を感じ取った猟兵達が駆けつけると、そこにはモノクロの衣服を纏った少女がいた。身の丈よりも大きな万年筆を持って、黒いインクで虚空に何かを描いている。

「ボクは『影絵の画家』ヴィエルジュ。第五の貴族直属の暗殺者にして、お抱え画家さ」

 彼女が描いていたのは"影"だった。猟兵と闇の救済者とオブリビオンによるこれまでの戦いの様子を彼女は影絵にしていたのだ。つまり彼女は最初からずっとここにいて、領主が討たれるまでの一部始終を何もせず見ていたということになる。

「べつに一地方の小領主が死んでも、代わりくらいまた用意できる。でも人間がボクらに勝ってしまうなんて、なかなか見られないだろう? お陰でボクの創作意欲も捗ってね」

 救済者と騎士団の戦いも、猟兵と領主の決戦も、彼女は全て絵の題材として見ていた。
 その胸元にブローチのように飾られたのは、黒い宝石型の『殺戮者の紋章』。これほどの傲慢が許されるのも、彼女が第五の貴族から直々に力を与えられた配下だからだ。

「君達には感謝してるよ。だけどまだ主に満足してもらえる出来とは言えないかな。この絵にはまだ大事なモチーフが……君達の死が欠けているからね」

 影絵画家ヴィエルジュは対象の影を描き出し、その影を殺すことで対象を殺害できる。
 彼女が描いた影に与えられたダメージ等は、本体にも影響を及ぼすのだ。ただの画家ではなく、暗殺者として彼女が『第五の貴族』より差し向けられた理由はこの能力にある。
 その気になれば、彼女はここで闇の救済者達の影絵を描いて、気付かれぬまま抹殺する事もできる。いや、猟兵達が来なければ彼女は間違いなくそうしていただろう。

「せめてものお礼だ。そこでじっとしていたら、奇麗な絵にして楽に殺してあげるよ」

 ヴィエルジュはそう言うものの、はいわかりましたと答える理由は何ひとつ無かった。
 ここで彼女を止めなければ、闇の救済者は皆殺しにされ、ここまでの戦いが全て無意味となる。強大な『紋章』持ちのオブリビオンと言えども、絶対に勝たなければならない。

 領主の手から守り抜いた美しき希望を、こんな輩に後から奪わせるわけにはいかない。
 猟兵達は残された気力と体力を振り絞って、『影絵の画家』ヴィエルジュと対峙する。
ブラミエ・トゥカーズ
余は鏡に映らぬ身なのでな、己の姿を描かれる事は歓迎するぞ。
心配せずとも邪魔はせぬよ。

とはいえ、影絵は趣味ではないな。
折角、この様な姿に紡がれておるのに。

性根として貴族趣味

【WIZ】
妖怪:影女
キャンパスにこっそり張り付かせる。

絵とはキャンバスに描かれる物であれば、
キャンバスに張り付いた妖怪の上に絵具を塗るのは絵画であろうか。
影女には画家の描画に忠実に象らせる。

敵UCに対して影絵ではなく、妖怪へのボディペイントのであるため、
ジャンル違いを発生させる。
自身の絵を描いた報酬代わりに彼女の攻撃とした描きに合わせた自身の体の損壊を演出する。

意外に影絵もアリなのかもしれない。



「余は鏡に映らぬ身なのでな、己の姿を描かれる事は歓迎するぞ」
 死を描かんとする影絵絵師ヴィエルジュに「心配せずとも邪魔はせぬよ」と答えたのはブラミエ。それが何を意味するか知った上での閉栓とした振る舞いに、闇夜の下で優雅に佇む妖怪ヴァンパイアの姿は、実に"絵になる"光景であった。
「それは良かった。描いている邪魔をされるのがボクは嫌いでね」
 お礼にとでも言うつもりか、ヴィエルジュはまず始めにブラミエの影絵を描き始める。
 巨大な万年筆を自在に操りさらさらと。その手さばきは素人目にも画家としての腕前を物語るものだ。だが彼女の描く影絵はただの芸術ではなく、描かれた者を死にいざなう。

「♪~」
 鼻歌交じりにブラミエの影絵をキャンバスに描き、それを通じてダメージを与えようとするヴィエルジュ。ブラミエはモデルとして微動だにせずそれを見守っている――あくまで"ブラミエは"だが。
(とはいえ、影絵は趣味ではないな。折角、この様な姿に紡がれておるのに)
 性根からして貴族趣味なこの吸血鬼は、【伝承解放・名告げる事を禁じられたモノ】を密かに発動し、召喚した従者妖怪「影女」をこっそりとキャンバスに張り付かせていた。

(絵とはキャンバスに描かれる物であれば、キャンバスに張り付いた妖怪の上に絵具を塗るのは絵画であろうか)
 自身はモデルになった振りをしつつ、従者に敵の妨害をさせるのがブラミエの作戦だ。
 キャンバスと同化するようにぴったりと張り付いた影女は、自分の上をなぞる画家の筆さばきに合わせて形を変え、その描画を忠実に象らせる。
「ふむ。なんだか今日は筆の乗りがいい気がするよ!」
 ヴィエルジュ自身はノリノリだが、彼女がブラミエの絵にどんな陰惨な描写を描き加えても、本物にダメージはない。これは影絵ではなく妖怪へのボディペイントであるため、ジャンル違いが発生しており、ユーベルコードが効果を発揮していなかったのだ。

(こんな具合か)
 もちろんモデルに何の変化もなければ敵もすぐに攻撃の不発に気付く。ブラミエは彼女の攻撃とした描きに合わせて自身の体を変化して損壊を演出する。自身の絵を描いた報酬代わりのつもりだ。
「ふふ、どうかな、素晴らしいよね?」
 口元に邪な笑みを浮かべて自画自賛するヴィエルジュ。事実に気付かぬまま妖怪の上に筆を走らせ続けるその様は、ひどく滑稽でさえあった。合わせてやっているブラミエからすれば、笑いを堪えるのが苦しいほどに。

(意外に影絵もアリなのかもしれない)
 完成していく絵画を見つつ、そんな風なことを考えながら、損壊を演出するブラミエ。
 彼女がヴィエルジュに浪費させた時間は、他の猟兵が準備を整えるための貴重な猶予となり、さらに味方の被害を抑えるという形でも貢献することになったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
「奇麗な絵にして楽に殺してあげるよ」
怖い声をしていたので断れなかった。
それに対して「はいわかりました、まぁ前にブロマイドに殺されたけど」とか答えてつい「ププッ」

「まだ殺せないの?貴女の絵って売れないアイドルのブロマイド以下なのね」
うっかり本音を言ったのが不味かったのだろうか。画家は顔をタコのように真っ赤にして、ノリについてこれずついには苦しみ出した。

彼女が描いていた世界は"ギャグ"だった。これまでの戦いの全てを彼女はギャグ化していたのだ。
つまり彼女は最初だけシリアスなフリをして、戌MSさんを騙し領主との戦いからはただの漫才をしていただけということになる。

世界ごと塗り潰されて絵は台無しになった。



「奇麗な絵にして楽に殺してあげるよ」
「え、あ、はいわかりました」
 淡く微笑みながらも凄みをきかせて、万年筆を動かし続ける影絵の画家ヴィエルジュ。
 それがあんまり怖い声をしていたので断れなかったカビパンは、ハリセン片手にモデルになりつつ、ぽつりとこんな事を言う。
「まぁ前にブロマイドに殺されたけど」
「は?」
 絵画を通じて人を殺める力を持つヴィエルジュにも、彼女が何を言っているか理解不能だろう。小首を傾げる影絵画家の前で、カビパンは「ププッ」と思い出し笑いを見せた。

「まだ殺せないの? 貴女の絵って売れないアイドルのブロマイド以下なのね」
 このカビパン、かつて自分が営業するカレー屋でとあるアイドルのブロマイドを見せられ、ショック死して悪霊化した経験がある。そこから紆余曲折を経て復活し、仙人となるまでには様々な出来事があったのだが、それらについて今は重要ではないので割愛する。
「なんだって? このボクの絵が誰かに劣ると言いたいの?」
 重要なのは放言にヴィエルジュがカチンときたことだ。本音を言ったのが不味かっただろうかと今さら口をつぐんでももう遅い。画家というのは自分の絵に対するプライドだけは人一倍あるもの。●●以下なんて言われちゃ黙っておれないのである。

「いいだろう。それならボクはもっと芸術的な死を君に与えてあげるよ!」
 これまでとは違って、激しく打ち付けるような筆致で影絵を描き始めるヴィエルジュ。
 万年筆に描き出されるカビパンの影絵は、惨たらしい怪我を負い、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わいながら死んでいく姿を描いたものだ。だが、彼女が影絵に与えたダメージはすぐさま本物に反映されるはずなのに、当のカビパンはけろりとしている。
「ねえ、まだなの?」
「バカな……!?」
 自分の絵が通用しない。どんなに真心を籠めて真剣に描いても、出来上がる絵はなぜか真に迫るものを感じない、どこか滑稽画のような印象になる。何度描き直してもそうだ。

 ――カビパンは画家ではない。だが彼女には己の行動を通じて描きだす世界があった。
 彼女が描いていた世界は"ギャグ"だった。これまでの戦いの全てを彼女はギャグ化していたのだ。つまり彼女は最初だけシリアスなフリをして、傍観者であったヴィエルジュを騙し、領主との戦いからはただの漫才をしていただけということになる。
「どうして? なぜうまく描けない?」
 良い絵を描く条件というのは様々だが、その1つに「モチーフに対する理解」がある。戦場が【ハリセンで叩かずにはいられない女】のせいでギャグ化している事に気付かず、あくまで大真面目にシリアスに絵を描くヴィエルジュに、名作を描けるはずがなかった。

「なんでッ!!??」
 ヴィエルジュが必死になればなるほど、描いた影絵はモデルの実態とかけ離れていく。
 世界ごと塗り潰されて台無しになった影絵を前にして、いたくプライドを傷つけられた画家は頭をかきむしり悶絶する。いかな『紋章』持ちでも精神ダメージは有効なようだ。
「はあ、もう飽きちゃった」
 そんな彼女の心に追い打ちをかける、退屈そうなカビパンの一言。たとえ煽っているつもりが無くとも、影絵の画家はひどい理不尽と屈辱に塗れて地団駄を踏むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

なに、礼には及ばんさ…
人間がオブリビオンに打ち勝つのは、これから幾らでも見れる光景になるからな

オーヴァル・レイとシルコン・シジョンを装備
軽業を駆使した変則的な機動で動き回り、相手が予測しづらい弾道を描くように攻撃を行う

フン…あの女領主は輝きを求めていたが
お前は暗く昏い影法師を好むようだな

UCを発動
百以上にも及ぶオーヴァル・レイが放つビーム線を、四方から光のシャワーのように浴びせて影法師を消し飛ばし、そのままヴィエルジュも攻撃する
光ある所に影はあり…だが、そこに光しかなければ、影は生成できまい

お前の主も、いずれ同じ場所に送ってやろう
それまで、骸の海で主の喜ぶ絵を描き続けるといい



「なに、礼には及ばんさ……人間がオブリビオンに打ち勝つのは、これから幾らでも見れる光景になるからな」
 完全に此方を舐めきったオブリビオンの言葉に、キリカは笑いもせず冷ややかに言う。
 第五の貴族が送り込んできた刺客は、今も熱心に影絵の完成を目指している。その大作が出来上がれば、猟兵を含むこの地の闇の救済者は殺し尽くされるだろう。
「どうだろうね。まあボクには関係のないことさ。ボクはただ仕事通りに絵を描くだけ」
 冷たい笑みを浮かべながら万年筆を走らせる『影絵の画家』ヴィエルジュ。地上の物事全般を下に見た傲慢な輩に、キリカはVDz-C24神聖式自動小銃"シルコン・シジョン"の銃口を突きつけた。

「ならば見物料くらいは貰っておこうか」
 キリカがトリガーを引くと、銃に施された洗礼を介して聖書の箴言が込められた弾丸が放たれる。同時に彼女の傍らに浮かぶ卵型の浮遊放題「オーヴァル・レイ」も、高出力の粒子ビームを敵に放った。
「おっと、危ないな。邪魔しないでよ」
 しかしヴィエルジュは筆を動かしながら、ひらりと踊るように弾丸とビームを避ける。その手元では攻撃を行うキリカの影絵が瞬時に描かれており、どういったタイミングで、どんな攻撃を仕掛けるのか、全て予想できていたような避け方だった。

「観察眼には自信があるんだよ?」
 からかうように笑いながらひょいと攻撃を躱し、死の影絵を描き続けるヴィエルジュ。
 対するキリカもまた軽業を駆使した変則的な機動で戦場を動き回りつつ、なるべく相手が予測しづらい弾道を描くように攻撃を行う。
「フン……あの女領主は輝きを求めていたが、お前は暗く昏い影法師を好むようだな」
 先程戦った相手とは、奇しくも求めているものが真逆。そして領主に負けず劣らず厄介な相手には違いない――だがこんな輩にみすみす自分の死に姿を描かせるつもりはない。避け続ける敵を追い詰めるために、キリカは【オーヴァル・ミストラル】を発動する。

「行け、逃がすな」
 そう言うや否や、キリカに随伴する卵型の浮遊砲台が、百を超える大群に複製される。
 一機で追い詰めきれないなら数で勝負だ。一斉に放たれるビームは蒼い閃光の暴風雨となり、四方からシャワーのようにヴィエルジュに浴びせられた。
「光ある所に影はあり……だが、そこに光しかなければ、影は生成できまい」
「ああっ……?!」
 取り澄ましていたヴィエルジュの表情が変わった。光り輝くビームの檻は影法師を消し飛ばし、以降の予測を不可能にする。どんなに彼女が万年筆を振るおうとも、全方位より降りかかる閃光の中心では、どんなに小さな影も存在を許されはしなかった。

「お前の主も、いずれ同じ場所に送ってやろう。それまで、骸の海で主の喜ぶ絵を描き続けるといい」
 冷徹な声音に確かな決意を籠め、オーヴァル・ミストラルの包囲網を引き絞るキリカ。
 逃げ場を失ったヴィエルジュは、集束していくビームの光の中で慌てたように叫んだ。
「こ、こんなことって……!!」
 猟兵の策に嵌められたのもさることながら、絵を描けない状況に陥らされたのは、画家にとってどれほどの苦痛か。蒼の閃光に射抜かれた女画家の表情は痛々しく歪んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
さっきの奴とはまた違ったヤバい雰囲気の敵だな...
しかし、ようやく掴んだ勝利を台無しにさせるわけにはいきません!
(「まずはアイツが絵が描けないようにしないと!」と頭の中の教導虫が話しかける)
もちろん!運転兵さん!敵を拘束してください!
(UC【影蝕虫】を発動し敵の影を操って拘束しようとする)
俺はこのまま『衝撃波』を使った『ダッシュ』で一気に近寄って攻撃します!
せんせーは『念動力』で{皇糸虫}を操作して敵を『捕縛』してください!
(「わかったわ!さっきの奴より強敵よ!気を付けて接近して!」)
はい!せんせー!
さぁ絵はそこで終いにしときな!これ以上は蛇足だぜ!



「さっきの奴とはまた違ったヤバい雰囲気の敵だな……」
 武器を持って襲い掛かってくるわけでも魔法を使うわけでもない。だが、これまでの敵にも勝るほどの危機感を兵庫は抱いていた。第五の貴族が送り込んできた地底都市よりの刺客――その実力は地上のオブリビオンとは一線を画している。
「しかし、ようやく掴んだ勝利を台無しにさせるわけにはいきません!」
「五月蝿いモデルだね。描くのに集中させてほしいよ」
 もう一度気合いを入れ直す少年に対して、ヴィエルジュは煩わしげに眉をひそめながら万年筆を動かす。さらさらと流れるような筆致で描き出される影絵は、題材となった者を忠実に写し取り、描き加えた傷や痛みを本人にも反映させる呪いの儀式であった。

(まずはアイツが絵が描けないようにしないと!)
「もちろん! 運転兵さん! 敵を拘束してください!」
 みすみす影絵の完成を待つ理由はない。頭の中から話しかける教導虫に従って、兵庫は【影蝕虫】を発動。描画に集中しているヴィエルジュの影に、昆虫に似た触覚を生やす。
「うん? なんだいこれは?」
「運転兵さんの神業の影乗りテクニックとくと見やがれ!」
 影使いには影で対抗ということか。虫に取り憑かれたヴィエルジュの影は物質化されてむくりと立ち上がり、本体を拘束しようとする。自分の描いた影絵のことなら何でも予測できる観察眼を持つ彼女も、まさか自分の影に反逆されるのは予想外だろう。

「むむ。邪魔だね」
 やむなく万年筆を動かす手を止め、自分の影を避けるヴィエルジュ。そう安々と捕まりはすまいが、影絵を描く暇を奪うだけでも充分。その隙に兵庫は警棒を地面に叩きつけ、発生する衝撃波の反動を使って猛ダッシュする。
「せんせーは皇糸虫を操作して敵を捕縛してください!
(わかったわ! さっきの奴より強敵よ! 気を付けて接近して!)
「はい!せんせー!」
 兵庫が敵に近寄るのに合わせ、スクイリアが「皇糸虫」を放つ。軽量だが頑強で耐荷重にも優れたこの生きた糸は、うねりながら宙を伸びてヴィエルジュを捕まえようとする。

「しまった……っ」
 影だけでも面倒だったところに追撃の奇襲。するりと伸びてきた皇糸虫に片足を取られると、隙ありとばかりに物質化した影が飛びかかり、ヴィエルジュの動きを封じ込める。
 彼女が止まっているのは一瞬。だがその一瞬が戦場では明暗を分ける。今だとばかりに飛び込んだ兵庫が、緑色の合金破砕警棒を大きく振りかぶる。
「さぁ絵はそこで終いにしときな! これ以上は蛇足だぜ!」
 完全勝利で決まったはずの戦いに、余計なものを付け加える必要はない。ぶおんと風を切って打ち付けられた警棒は、インパクトの瞬間に衝撃波を起こして敵を吹き飛ばした。

「ぐあ……ッ、これだから芸術ってのを理解しないヤツは!」
 辛うじて万年筆でガードしたが、兵庫のフルスイングの威力は防ぎきれないほど強く、ヴィエルジュの片腕は大きく腫れ上がっていた。これでは絵を描くのにも支障が出よう。
 大事な創作を邪魔された怒りから、影絵の画家は眉を釣り上げて吐き捨てるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「芸術には疎くてね。
その絵が完成しようがしまいが興味ない。
それに身に覚えのない礼は受けない主義だ。」

「影は光の前に消え去るもの。
その影、希望の光の前に消えて貰う。」

フレイムテイルに炎を蓄え
シャイントリガー発動。
光線を【範囲攻撃】で周囲に拡散
影絵を照らして攻撃を妨害。
周囲の状況や敵の行動を【見切り】
影を作る隙を与えない様に
周りを移動しながら光線に【誘導弾】の特性を持たせ、
目晦まししながら全方位から光の雨を降らす。

敵が光に気を取られる間に紋章の位置を確認し
多方向に放った光線で隠蔽した熱線で紋章を攻撃。
「これまでを見ていた割には分っていないな。
それもまだ自分が見下ろしている立場と思っているからか?」



「芸術には疎くてね。その絵が完成しようがしまいが興味ない。それに身に覚えのない礼は受けない主義だ」
 死をもたらす影絵の画家からの提案を、フォルクは淡々とした口調ですげなく断った。
 拒否される事は予想済みだったろうが、こうも取り付く島もないとカチンとくるのか、ヴィエルジュが鼻白むのが傍目にも分かった。それを意に介さず彼は虚空に手をかざす。
「影は光の前に消え去るもの。その影、希望の光の前に消えて貰う」
 その手に嵌めた黒手袋は、炎のラミアを封じた魔書「フレイムテイル」。蓄えられた炎の魔力を一気に解き放てば、太陽光にも比肩する熱と光が明けぬ夜の戦場を照らし出す。

「この掌に在りしは天の日輪放つ撃鉄。降り注ぐは浄戎の炎。我に仇為す汝らに、等しく光あれ」
 拡散する【シャイントリガー】の輝きは敵が描いている影絵を照らし、完成を妨げる。強すぎる光の前では闇や影はかき消されるもの、ヴィエルジュにとってはとんだ邪魔だ。
「やれやれ、眩しいなあ。まったく不粋な光だね」
 彼女は遮蔽を使って新しい影を作ろうとするが、そうはさせじとフォルクも光を操作。相手に隙を与えないよう、周りを移動しながら光線に誘導弾の特性を持たせ、全方位から光の雨を降らせて影を片っ端から消し去っていく。

「影がなければ絵を描けないとは、不便だな」
「だから、邪魔しないでって言っているのに……!」
 四方八方から飛んでくる光線に目を眩まされながら、万年筆を振り回すヴィエルジュ。それでも大した傷を負っておらず、筆1つで攻撃を捌ききっているのは流石と言えよう。
 彼女の力の源となっているのは、第五の貴族から与えられた『殺戮者の紋章』である。フォルクは拡散する光線に敵が気を取られている間に、紋章の寄生位置を確認していた。
 そう――ここまでの攻撃と行動の全ては、決定的な一撃をもたらすための布石である。

(胸元のブローチ……そこか)
 狙うべきポイントを特定すると、フォルクはフレイムテイルから熱線を発射。その射線は多方向に放った光線で隠蔽され、敵からは視認することのできない不意打ちとなった。
「――……ッ!?」
 太陽の熱を束ねたかのような灼熱の矢が、ヴィエルジュの『殺戮者の紋章』を射抜く。
 それは力の源であると同時に弱点でもある。それまで済ましていた表情を引きつらせ、影絵の画家はがくりと膝を突いた。

「これまでを見ていた割には分っていないな。それもまだ自分が見下ろしている立場と思っているからか?」
 その傲慢と油断が死を招くのは君自身だ――と冷ややかな眼差しでフォルクは告げる。
 対するヴィエルジュは膝を突いたまま憎々しげな顔。ただの絵のモデルとしか思っていなかった輩に不覚を取った屈辱は、彼女の体だけでなく心にも深い傷を残したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

豊水・晶
絵の題材にされるなど、何年ぶりでしょうか?まあ、今回はお断りさせていただくということで。
無理矢理にでもというのであれば此方も相応の方法で対応することになりますね。
絵かきってたまに、すごくしつこいというか執念深い方いますよねぇ。
いったい何枚描いてどれだけ動かずにいれば良いのかと、あの時は本当に後悔しました。
今回は影絵ということですし、眩いばかりの閃光で影ごとドカーンです。
くふふ、私情が多く挟まれますが貴方が悪いので、問題なし!です。
指定UC発動 神罰も一緒にどうぞ。
アドリブや絡みなどは自由にしていただいて大丈夫です。



「絵の題材にされるなど、何年ぶりでしょうか?」
 穏やかな微笑みを浮かべながら、晶は敵が万年筆を振るうさまを見ていた。影絵の画家が描く影絵はモデルから影を切り取ってきたかのように精緻で美しく、だがそれは対象の命を奪う恐るべき暗殺技でもある。
「まあ、今回はお断りさせていただくということで」
「つれないね。遠慮しなくたっていいんだよ?」
 拒絶の言葉を気に留めず、影絵の完成をめざして筆を走らせるヴィエルジュ。芸術家は頑固でワガママな者も珍しくないが、どうやら彼女もそのタイプらしい。第五の貴族から与えられた任務だからではなく、画家としてのプライドが途中放棄を認めない。

「無理矢理にでもというのであれば此方も相応の方法で対応することになりますね」
 淀みなく影絵を描き続けるヴィエルジュに向けて、晶は天竜護法八大宝珠をかざした。
 発動するのは【護法 天竜の神罰】。天におられる竜王に願い奉り、我らが敵を滅する雷を招来する。
「今回は影絵ということですし、眩いばかりの閃光で影ごとドカーンです」
 夜闇を切り裂く稲妻が、敵目掛けて矢のように落ちる。ヴィエルジュは咄嗟に身を躱すものの、描いていた途中の影絵は雷光によりかき消され、また最初から描き直しになる。

「ああ、また! 今描いているところなんだ、邪魔しないでくれる?」
 影絵を通して敵を攻撃するヴィエルジュにとって、一番困るのは影を消されることだ。大きな万年筆を振るってもう一度影を描こうとするが、そうはさせじと晶が雷を降らす。
「絵かきってたまに、すごくしつこいというか執念深い方いますよねぇ。いったい何枚描いてどれだけ動かずにいれば良いのかと、あの時は本当に後悔しました」
 そう語る彼女の表情は笑顔のままだが、微笑みの裏に底知れない気迫を感じる。よほど大変な目にあった過去があるのだろうか? 雷光から逃げまどう絵描きを追う視線には、八つ当たりめいた執念が籠もっていた。

「くふふ、私情が多く挟まれますが貴方が悪いので、問題なし! です」
「なにそれ、理不尽だよっ」
 敵が何を言おうが気にせずに、裁きの雷を雨あられと降らせる晶。神罰の乱用のような気もするが、休む暇もない猛攻にヴィエルジュは影絵を描いている余裕をなくしていた。
 描いても描いても雷光で消されてしまうのもあるが、落ちてくる雷の命中精度が非常に高いのも理由のひとつ。直接的な攻撃手段に乏しい彼女は、回避で手一杯になっている内に次第に追い込まれていき――。

「どうぞお引取りを」
「うぎゃッ!!?」
 ついに一条の雷光がヴィエルジュを捉え、尾を踏まれた猫のような甲高い悲鳴が響く。
 晶の逆鱗――とまではいかずとも癪の種に触れてしまった影絵画家には、手痛い神罰が下されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あら。可愛らしい画家ね。
悪いけど、物語はハッピーエンドで終わるものよ。不要な蛇足はお断りさせて貰うわ。

【ブラッディ・フォール】で「吸血妃譚・最終夜~終演の刻」の「吸血妃アルカーディア」のドレス姿へ変化。

【吸血妃の力】による「あらゆる干渉を防ぐ結界」で影絵による攻撃を無効化。
「万物を断ち切る鉤爪」で書きかけの絵や筆を破壊して斬り裂き、滅ぼさせて貰うわ。
POWのUCによる影絵で仮に結界を通過して攻撃が通っても【不滅の血統】で自己強化により、一層強化してその殺戮の紋章を断ち斬らせて貰うわ!

影絵による攻撃…一度描かれたら速度で回避は難しいし、防御も回避も困難。厄介な能力ね。



「あら。可愛らしい画家ね」
 まるで絵に描いたように可憐な敵の容姿を認めつつも、おとなしく言う通りにする気はフレミアには無かった。勝利を飾った戦いの後に出てきて、結末をひっくり返そうとするなんて、空気が読めていないにも程がある。
「悪いけど、物語はハッピーエンドで終わるものよ。不要な蛇足はお断りさせて貰うわ」
「そう言うと思ったけどね。今日は邪魔ばっかりだ」
 きっぱりとした拒否にヴィエルジュは、やれやれと肩をすくめながら万年筆を動かす。
 描いた絵を通じて攻撃を行い、モデルとなった本体にダメージを与えるのが彼女の力。ならば描ききらせる時間は与えまいと、吸血姫は【ブラッディ・フォール】を発動する。

「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 高らかに叫んだフレミアの服装が、露出の高い真紅のドレスになる。黒百合騎士団との戦いで宿したものとは異なるヴァンパイア――吸血妃アルカーディアの衣装を身に纏った彼女は、その強大なる【吸血妃の力】で自身を強化する。
「影絵による攻撃……一度描かれたら速度で回避は難しいし、防御も回避も困難。厄介な能力ね」
 第五の貴族の刺客の力を強く危険視するからこそ、此方も能力を出し惜しみはしない。
 真紅のドレスの上から彼女が張った結界は、物理的なものか魔術的なものかを問わず、あらゆる干渉を防ぐ。影絵を介した間接的な攻撃であっても例外はなかった。

「おや……? なぜ君は平気なの?」
 フレミアの影絵に攻撃しても、本物のフレミアには傷一つ付かない。小首を傾げながらさらに傷を描き加えようとするヴィエルジュを、ごうと唸りを上げて鋭い一撃が襲った。
「悪いけど、続きは描かせないわよ」
 吸血妃の鉤爪は万物を断ち切る。描きかけの影絵を破壊してユーベルコードを阻止し、さらに大きな万年筆を狙って連撃を仕掛けるフレミア。能力のほぼ全てを影絵に依存している以上、筆さえ折れればヴィエルジュの戦闘力は激減するはずだ。

「こまったね。じっとしていてくれたら骸は拾ってあげるのに」
 しかし敵もさるもの。機敏な身のこなしで必殺の鉤爪を回避しつつ、驚くほどの早業で新たな影絵を描きあげる。今度はより精緻に本物に似せて、真心を籠めて筆を走らせ――あらゆる防御や耐性を無視した一撃を放った。
「っ……!」
 結界に異常はないにも関わらず、内臓を鷲掴みにされたような痛みがフレミアを襲う。
 外見上は傷一つつけずに「内側」だけを壊す。画家らしい見栄えを重視した攻撃だが、威力は折り紙付きだった。

「どうだい、これで大人しくしてくれる気に……っ!?」
 だが一撃入れていい気になる間もなく、強大な威圧感がヴィエルジュから言葉を奪う。
 この程度の傷で【不滅の血統】に連なるヴァンパイアが滅びる事はない。逆に傷つけば傷つくほど吸血鬼としてより格の高い存在に進化し、その戦闘力は一層強化されるのだ。
「やってくれたわね。お返しよ」
 再び振るわれた鉤爪の切れ味は先程までの比ではなく。大地を抉り、大気を切り裂き、影を滅ぼす。血相を変えたヴィエルジュは慌てて退避しようとするが、フレミアの視線は彼女の胸元に輝く『殺戮者の紋章』に向けられていた。

「その殺戮の紋章を断ち斬らせて貰うわ!」
 剛爪一閃。空間ごと引き裂くかのようなフレミアの爪撃が、過たず『紋章』を捉える。
 急所である寄生体にダメージを受ければ、本体もただでは済まない。ヴィエルジュの胸は紋章ごと深々と抉られ、噴水のように血飛沫を上げながらその場に倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミレニカ・ネセサリ
【リミット】(赤い花とリボンは拾って丁重に仕舞っている)

(静かに静かに笑う)
ああ、ちょうどよかった
わたくし、少し暴れたい気分なのです

相手の攻撃を受け、それによって身体能力を強化
ガントレットで攻撃いたしますわ
狙いが甘いふりをして相手を攻撃しながら、
周囲の地形ごと巻き込むように立ち回り、辺り一帯破壊していきます(【怪力・鎧砕き】)
爆発の光で影絵を散らし、
崩れた地形や【衝撃波】で影絵を描くどころではなくしてしまいましょう
あとはお二人にお任せします

あなた、ここでの戦いをずっとご覧になっていたのではなくて?
それでもご存知でいらっしゃらないのね
ここまで来たわたくしが、わたくし達が、ここで折れると思って?


久賀・灯夜
【リミット】

ミレニカちゃんの様子を見守ってから、きっとヴィエルジュを睨み付ける
お前達の傲慢さ、今日はマジで腹が立つぜ……その筆ごと斬らせてもらう!
Start Getting Ready! Flame Signで攻撃力を強化し、Daybreakerを構える

1人じゃ敵わなくても、こっちには仲間がいるんでね……!
ミレニカちゃんの地形破壊の陰に隠れて、良馬さんのサポートで最高の一撃を叩きこむ

防御出来ない攻撃は気合で我慢!
【勇気】で臆する事なく前に踏み込む

お前達っつー闇は、俺達が晴らす……行くぞDaybreaker!


鏑木・良馬
【リミット】
傍観者気取りか
熱くなるのは灯夜に任せるつもりだったがネ
ああ――気に入らんな

身体に負担のかかるユーベルコードだ
連続使用のツケは来ているが今俺が散るわけにもいくまいよ
幸い身のこなしには自信がある方でな
加速効果を持つユーベルコードのオン・オフで緩急をつけつつ
ミレニカの破壊する地形を縫って飛び回り刀を振る

避けるか
観察眼に自信があるか
いいぞ、調子に乗ってくれ――俺は回避【させてやろう】。
俺が狙うのはその先
回避に踊らせ誘導し、灯夜の全力の一撃への導線を作る

…そうだ、一ついいことを教えてやろうか?
貴様の絵に花を添える、最も美しき花の名を

【影絵画家ヴィエルジュ】

貴様に葬送の花くらいは、くれてやるさ



「ああ、ちょうどよかった。わたくし、少し暴れたい気分なのです」
 激闘の熱も冷めやらぬうちから現れた影絵の画家に、ミレニカは静かに静かに笑う。
 宿縁の相手が遺した赤い花とリボンは、懐の内に丁重に仕舞って。まだ治まらない感情の揺れを晴らすには丁度いいサンドバッグが現れたと、ガントレットを嵌めた拳を握る。
「お前達の傲慢さ、今日はマジで腹が立つぜ……その筆ごと斬らせてもらう!」
 灯夜はそんな彼女の様子を見守ってから、きっとヴィエルジュを睨みつけて宣言する。
 高速居合刀『Daybreaker』を構え、戦闘態勢は万全。連戦で消耗していようと負ける気は毛頭ない。自分達の戦いを、拳と刃にかけた想いを絵の題材としか思わない輩には。
「傍観者気取りか。熱くなるのは灯夜に任せるつもりだったがネ」
 一方の良馬は飄々とした笑みを浮かべていたものの、ふと目つきを鋭くして低く呟く。ああ――気に入らんな、と。命懸けの死闘を見世物のように扱うその態度自体が、戦いに関わった全ての者を愚弄している。許しておけるはずが無かった。

「腹が立つのはこっちの台詞だよ。少し大人しくしてくれないかな」
 気迫漲る三人を前にして、影絵の画家ヴィエルジュはやれやれと肩をすくめながら筆を走らせる。瞬時に描き出されたのはミレニカ、灯夜、良馬、それぞれによく似た影絵――その胸をトンと万年筆の先で突くと、身体の内側から激痛が三人を襲う。
「じっとしていてね? 骸は拾ってあげるよ」
 絵を通じて対象の魂や精神、内臓に直接ダメージを与える影絵画家のユーベルコード。
 これを防ぐ手立てを持つ者は、猟兵の中にも少ないだろう。苦痛に歪んだ三人の表情を見つつ、画家はさらなる傷を影絵に描き加えようと――。

「あなた、ここでの戦いをずっとご覧になっていたのではなくて? それでもご存知でいらっしゃらないのね」
「……なに?」
 その一言でヴィエルジュの筆が止まる。声をかけたミレニカの表情はひどく穏やかで。だが、絶対に相手をブチのめすという金剛の決意が凄まじい闘志として発散されていた。
「ここまで来たわたくしが、わたくし達が、ここで折れると思って?」
 無骨なガントレットの拳を振りかぶり、全速力でダッシュ。【Vit_Smiling】で強化された身体能力は、連戦の疲れなどまるで感じさせない。慌てて身を翻したヴィエルジュの足元に、強烈なパンチが突き刺さった。

「のこのことこんな所まで顔を見せにきた愚行を恥じなさい。絶対にブチのめします」
 防御不可能な攻撃ならそもそも防がない、攻めて攻めて攻めまくる。清楚な容姿に反して阿修羅の如き猛攻が、影絵の画家を攻め立てる。狙いが甘いのか一発も敵に当たってはいないが、叩きつけるたびに爆発を起こす鉄拳は、辺り一帯の地形を崩壊させていく。
「ムチャクチャだ……!!」
 これでは絵を描くどころではない。爆発の光で影絵をかき消され、崩壊に巻き込まれたヴィエルジュは、冷や汗をかきながら逃げ惑う。直接的な攻撃手段に乏しい彼女は、この状況では回避に徹するしかないだろう。だが直撃こそ免れていてもこれではジリ貧だ。

「あとはお二人にお任せします」
「ああ、任された」
 ミレニカが派手に盤面を荒らしたところで、【貴公に花を捧げよう】を発動した良馬が斬り込む。緋メ桜の闘気を纏った彼の速度は、三人の中でも群を抜いている――しかし、連戦の負荷がある意味で最も響いてきているのも彼だった。
(身体に負担のかかるユーベルコードだ。連続使用のツケは来ているが今俺が散るわけにもいくまいよ)
 弱音は笑顔の裏に押し込んで、寿命を削るのも厭わずに。ケチの付けようがない大団円のために、青年は戦場をひた走る。狙い定めるのはただ1つ、傲慢なる画家の首級のみ。

「幸い身のこなしには自信がある方でな」
 加速効果を持つユーベルコードのオン・オフを適時切り替えて動きに緩急をつけつつ、ミレニカの破壊する地形を縫って飛び回る良馬。爆ぜる地面や爆風に紛れて刀を振ると、闘気の衝撃波が敵を襲い――だが、ヴィエルジュは紙一重でそれを躱してみせる。
「避けるか。観察眼に自信があるか」
「ふん。このボクを舐めないでよね」
 ただ画力に優れるだけで第五の貴族の直属にはなれまい。ヴィエルジュの眼は影絵として描いた敵対対象がどう動くのかを予想し、的確な回避パターンを導き出す。良馬が何度双刀を振るっても、切り裂くのは彼女のいた残像だけだ。

「どうした、この程度なの?」
 ミレニカの拳も、良馬の斬撃も、敵に有効打を当てるには至らない。だんだんペースを取り戻してきたのか、ヴィエルジュは余裕の笑みを見せる。どんなに連携が巧みでも攻撃が苛烈でも、当たらなくては意味がないと。
(いいぞ、調子に乗ってくれ――俺は回避させてやろう)
 その傲りを引き出すことが良馬の狙い。彼が狙うのはその先だ。回避に踊らせ誘導し、全力の一撃までの導線を作る。最後に仕掛けるのは彼でもミレニカでもなく、灯夜だ。

「1人じゃ敵わなくても、こっちには仲間がいるんでね……!」
 灯夜はミレニカの地形破壊の陰に隠れ、良馬のサポートを受けて最高の一撃を叩き込むタイミングを待っていた。先程の影絵攻撃のダメージは残っているが気合で我慢できる。どんな強敵が相手だろうと、勇気を持って臆する事なく前に踏み込む。
「……そうだ、一ついいことを教えてやろうか? 貴様の絵に花を添える、最も美しき花の名を」
「なに?」
 灯夜が動いたのを見て、良馬はにやりと笑いながら話しかける。無論、攻撃の手は緩めぬまま。ヴィエルジュはその態度に違和感を覚えつつも飛来する斬撃波を避けるが――。
「【影絵画家ヴィエルジュ】。貴様に葬送の花くらいは、くれてやるさ」
 緋色に舞い散る花の如き闘気が誘い込むのは地獄の一丁目。気付いた時にはもう遅い。

「お前達っつー闇は、俺達が晴らす……行くぞDaybreaker!」
『《Start Getting Ready...》』
 灯夜のベルトに装着されていた「Spine Spica」から音声が流れ、煌く火の粉が少年の身体を覆う。闇夜を照らす炎の輝きで、文字通りに爆発的に攻撃力を強化した彼は一気に前線に出る。そこは丁度、誘導されたヴィエルジュの立ち位置に重なるポイントだった。
「なっ……君達、最初からこのためにボクを……!?」
「ブチのめすとは言いましたが、"わたくしが"とは言いませんでしたので。お生憎様」
 慌てて避けようとする影絵画家の足場を、ミレニカの「Diamond Damsel」がブチ砕く。
 ひときわ派手な爆発が地面を粉砕し、その崩壊と衝撃に巻き込まれて敵が体勢を崩した刹那――【Flame Sign】を発動した灯夜の全力が叩き込まれる。

「これが、俺達の最高の一撃だ!」
 圧縮蒸気の排出による高速抜刀。白い蒸気と赤い火の粉を撒き散らしながら振るわれる灯夜の一閃は、標的の予測と反応を超える。はっとヴィエルジュが気付いた時にはもう、刃は彼女の身体を通り抜けた後だった。
「がは……ッ!! 嘘、だ……」
 一拍遅れて血飛沫が舞い、モノクロな衣装を赤く染めていく。大きな万年筆を支えにして何とか立つものの、彼女が受けたダメージが深いのは誰の目から見ても明らかだった。
 単なる絵のモデルに過ぎないと思っていた奴らに、自分が追い詰められている。信じがたい事実に直面したヴィエルジュの表情に、これまでの余裕はもう残っていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
観客の次は絵描き気取りか、吸血鬼どもはつくづく趣味が悪い

神速で踏み込み(ダッシュ)、【怪力】を以って聖槍を振るい【衝撃波】を起こすことで絵を描く暇を与えない
紋章の力は所有物にまで及ぶのか、万年筆で槍と渡り合う異常な光景に眩暈がしそう

掲げた聖槍に激しい雷霆を纏わせ(属性攻撃)、煌めく神槍を再現する
その隙に影絵を貫かれようが【気合い】と根性(限界突破・激痛耐性)で魂を奮起させ耐える
少しばかり上等な首輪を貰ったからと……図に乗るなよ、木っ端の使いっ走り風情が

聖槍の穂先を突き出し、【全力魔法】で【灼烈轟雷槍】
見たいというなら、その目と魂に焼き付けろ――我らの勝利を!
煌めき轟く閃光が紋章を焼き穿つ



「観客の次は絵描き気取りか、吸血鬼どもはつくづく趣味が悪い」
 吐き捨てるような口調で言い切って、第五の貴族からの刺客を睨みつけるオリヴィア。
 影絵を描くことで間接的に遠距離から対象を暗殺できる、恐るべき能力の使い手だが、それ以上にこれまでの戦いを絵の題材として見下すその態度が、彼女の癇に障った。
「それを言うなら君達猟兵はつくづく落ち着きがない。少しはじっと……うわっ?!」
 対するヴィエルジュは苛立ちと焦りを露わにして、大きな万年筆を走らせようとするが――それよりも速く、神速の踏み込みで距離を詰めたオリヴィアの聖槍が襲いかかった。

「絵を描く暇など与えるものか」
「しつこいなあ、じっとしていてよ!」
 持ち前の怪力をもって聖槍を振るうオリヴィアに、ヴィエルジュは万年筆を武器にして応じざるを得なくなる。しかし流石に『紋章』を与えられたオブリビオンなだけはあり、体捌きは画家とは思えないほど優秀。突き出される矛先を巧みに筆で逸らし、受け流す。
(紋章の力は所有物にまで及ぶのか、万年筆で槍と渡り合う異常な光景に眩暈がしそう)
 趣味の悪いうえに巫山戯た輩ではあるが、実力があることは認めざるを得ない。リスクを厭って勝てる相手ではないだろう。そう判断したオリヴィアは隙が生じるのを承知で、掲げた聖槍に激しい雷霆を纏わせていく。

「やはり君達は骸になっているのがお似合いだよ」
 時間にすればごく僅かなもの。だがヴィエルジュの腕前なら絵を描くのに十分な時間。
 影絵画家は一瞬の早業でオリヴィアの影絵を描くと、万年筆による一撃を突き立てる。彼女が絵に与えた影響はあらゆる防御を無視し、対象の魂や精神や内臓を直接攻撃する。
「っ……!」
 身体の内側を槍で抉られ、心をナイフで切り刻まれるような苦痛がオリヴィアを襲う。
 しかし彼女は気合いと根性で魂を奮起させ、常人ならば耐え難いはずの激痛に耐えた。稲光に照らされた横顔には、影絵画家に対する激しい怒りと敵意の表情が浮かんでいる。

「少しばかり上等な首輪を貰ったからと……図に乗るなよ、木っ端の使いっ走り風情が」
「なっ……!!」
 容赦のない痛罵に鼻白むヴィエルジュだったが、返す言葉を見つける前に息を呑んだ。
 今、オリヴィアの手元で再現されようとしているのは異境の神槍ブリューナク。凄絶な白き稲妻で煌めいたその穂先は、使い手に勝利を、敵対者には死をもたらす神威の具現。
 脅威でありながらも美しいその輝きこそが、影絵の画家が言葉を失った理由であった。

「見たいというなら、その目と魂に焼き付けろ――我らの勝利を!」
 オリヴィアは渾身の膂力を以て聖槍の穂先を突き出し、全力の【灼烈轟雷槍】を放つ。
 煌めき轟く閃光が、ヴィエルジュの胸元に宿った『殺戮者の紋章』を焼き穿つ。稲妻に打たれた衝撃は一瞬で全身を走り抜け、紫電と鮮血がほとばしる。
「かは――……!!」
 痺れから舌が回らず、悲鳴を上げることすらままならぬまま、地に倒れ伏す影絵画家。
 その胸の紋章は大きくひび割れ、深刻なダメージを受けたのは明らか。他者を絵の題材として見下す彼女の傲慢は、神罰の雷により裁かれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・コーエン
右手に灼星剣、左手に村正を持って臨戦態勢。
「暗殺者が姿を見せて良いのかな?」

相手の返事は聞き流しつつUCと念動力で相手の身体を拘束。
特に両手と万年筆は動かせないよう重点的に。

早業で灼星剣を消し、極炎銃フォーマルハウトを抜いて、炎の魔弾(炎の属性攻撃+衝撃波)を連続射撃(2回攻撃)して胸元の『殺戮者の紋章』を撃ち抜く。

次の瞬間、残像をその場に残し、両足裏から衝撃波を放って限界突破した加速でダッシュ。
早業で再び右手に灼星剣を持ち、2回攻撃の1回目で村正によって万年筆を武器落としし、2回攻撃の2回目で光の属性攻撃・破魔を籠めた灼星剣で『殺戮者の紋章』を貫通攻撃。

「やはり姿を見せるべきではなかったな」



「暗殺者が姿を見せて良いのかな?」
 本来なら陰に潜むべき者が捕捉される所にいたのは、自信の現れか、それとも傲慢か。
 シンは右手に灼星剣、左手に村正を持って臨戦態勢のままヴィエルジュに問いかける。
「君達の相手なんて、絵を描く片手間で十分だと思ったんだけどね……」
 見通しが甘かったようだと、ヴィエルジュも認めざるを得ない状況に陥らされていた。
 予想を超える猟兵の反撃によって彼女は深手を負い、余裕の笑みはもはや崩れ去った。

「少しじっとしていてくれれば、楽に殺してあげると言っているのに……っ!?」
 ヴィエルジュは言葉を紡ぎながらも万年筆を振るい、敵の影絵を描き上げようとする。
 だがその瞬間、見えない何者かに腕を掴まれたように、筆を走らす手が動かなくなる。
「やらせると思ったか?」
 相手がなんと返事をしようがシンに興味はなかった。聞き流しつつ【サイコキネシス】と念動力による拘束を仕掛け、特に両手と万年筆は動かせないよう重点的に封じ込める。
 絵を描かせさえしなければ敵の能力は怖くない。無論『紋章』を宿したオブリビオンを拘束する、それ自体が容易ではないのだが――数秒でも時間を稼げればそれで十分だ。

「目立つ所に弱点を晒しているのも油断だな」
 そう言うや否や、シンはふっと灼星剣を消すと、空いた右手で極炎銃フォーマルハウトを抜く。一瞬の早業にヴィエルジュが驚嘆する暇もなく、二発の発砲音が戦場に轟いた。
 撃ち出された炎の魔弾が撃ち抜くのは、敵の胸元に寄生した『殺戮者の紋章』。宿主に絶大な力を与えるその寄生虫型オブリビオンは、同時に宿主にとっての弱点でもある。
「ぎゃぁッ?!」
 胸に灼熱を受けたヴィエルジュの口から、獣のような悲鳴が上がる。相当に効いている様子だが、これだけではまだ致命傷には至らない――だが次の瞬間、シンは両足の裏から衝撃波を放ち、脚力の限界を超えた加速で走り出した。

「よくも――ッ?!」
 怒りの形相でヴィエルジュが顔を上げた時にはもう、直前までシンがいた場所には残像しか残っていない。彼の実体は再び右手の装備を灼星剣に持ち替え、距離を詰めていた。
「やはり姿を見せるべきではなかったな」
 淡々とした調子で呟きながら振るうは妖刀。村正の刃が閃き、影絵画家の手から万年筆を落とす。慌てた相手がそれを拾い上げる暇もなく、灼星剣による追撃が襲い掛かった。

「がはぁ……ッ!!!」
 破魔の力を籠めた灼星剣が深紅に輝き、炎の魔弾が射抜いた『殺戮者の紋章』の傷跡を抉る。紋章もろとも切り裂かれたヴィエルジュの胸から、炎よりも赤い血飛沫が迸った。
 与えられた能力に傲り、のこのこと表舞台に出てくる暗殺者の末路などこんなものだ。血溜まりの上に膝を突いた影絵画家を、シンは冷ややかな眼で見下ろしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
危険な能力だね…。下手をすれば全滅してたかも…。

ラン達を救済者達のところに残して対峙…。

【九尾化・天照】封印解放…!
天照の力で光を集束し、敵の描く影を消し去って敵の能力を封じ、呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】で万年筆を絡め取ったり、光速化による斬撃で新たに影を描く隙を与えない様に連続で攻撃を仕掛けていくよ…。

わたし達には家族達もいる…。帰る場所がある…綺麗な絵になって死ぬなんて御免だよ…。

敵が足掻きを見せたら、殺戮者の紋章を狙って神太刀、凶太刀による光速連続攻撃…。
影絵による攻撃は光速でも回避困難と見て、被弾覚悟のアンサラーで反射・カウンター…。
全呪力を込めたバルムンクで紋章を砕き仕留めるよ…。



「危険な能力だね……。下手をすれば全滅してたかも……」
 ここまで協力してくれたラン達を救済者達のところに残して、璃奈は地底からの刺客と対峙する。ターゲットに直接触れることなく、描いた影絵を通じて攻撃を仕掛ける暗殺者――領主との戦いが終わってすぐに遭遇できていなければ、大惨事になっていただろう。
「ああ、まったくだよ……最初からそうするべきだったんだ……」
 芸術家という生き物の性だろうか、己の存在を顕示してしまったが故にヴィエルジュは追い詰められていた。それでも彼女は戦いの最中に新たな影絵を瞬時に描き上げ、猟兵達に避けられぬ死をもたらさんとするが――。

「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 影絵を通じた攻撃が来る前に、璃奈は【九尾化・天照】の封印を解く。目も眩むほどのまばゆく暖かな光が全身を包み、白銀の髪と尾は黄金に染まり、尾の数は九尾に増える。
 領主との戦いで使用した【九尾化・魔剣の巫女媛】とは異なり、この姿の彼女は自在に光を操る能力を得る。集束された光は太陽のように戦場から闇を追いやり、ヴィエルジュの描く影絵を消し去った。
「な……っ!!」
 常に夜闇が支配するこの世界では、ましてや地底都市では見ることのない太陽の光に、ヴィエルジュは堪らず目をかばう。この状況では再び影絵を描くどころでは無いだろう。璃奈はその間に素早く呪文を唱える。

「呪いの縛鎖よ……」
 燦然たる天照の光に隠れて、蛇のように呪力の鎖が這い寄り、敵の万年筆を絡め取る。
 同時に璃奈は神太刀、凶太刀を構え、一気呵成に敵の懐に斬り込んだ。天照化によって彼女が得た力は光の操作に加えてもうひとつ――光の速さで行動するスピードがある。
「――……なッ!?」
 言葉通り「目にも留まらぬ」光速の斬撃がヴィエルジュを襲う。それも一度ならず二度三度と連続して。息も吐かせぬ連撃で、徹底して新たに絵を描く隙を与えないつもりだ。

「この……調子に乗るなぁッ!」
 この状況で影絵を描くことは断念したか。ヴィエルジュは万年筆をぶおんと振り回して呪いの縛鎖を引きちぎる。やはり紋章を与えられたオブリビオンの実力は尋常ではない。
 だが紋章は第五の貴族に授けられた力にして弱点でもある。敵が足掻きを見せた瞬間、璃奈は『殺戮者の紋章』に狙いを切り替えて光速連続攻撃を仕掛けた。

「紋章持ちとはもう何度も戦ってる……」
「ッがあ!? こ、このぉッ!」
 弱点に何度も斬りつけられ、血飛沫と悲鳴を上げるヴィエルジュ。苦痛に歪んだ彼女の表情はすぐに怒りに変わり、無理くりに新たな影絵を描ききると、その心臓目掛けて筆を突き立てるが――影が攻撃されたのと同じ場所に、璃奈は魔剣アンサラーを重ねる。
「ぎゃぅッ?! な、なんで……?!」
 報復の魔剣の力で影絵による攻撃ははね返され、描き手の胸から夥しい出血が起こる。
 驚愕と困惑により敵の思考が極限まで鈍った瞬間。魔剣の巫女は屠竜の魔剣バルムンクを抜き放ち、持てる全ての呪力を注ぎ込んだ。

「わたし達には家族達もいる……。帰る場所がある……綺麗な絵になって死ぬなんて御免だよ……」
 きっぱりとした拒絶の意志を乗せて、渾身の力で叩きつけられる大上段からの一太刀。
 自慢の観察眼を活かせないまま、斬り伏せられたヴィエルジュの胸元で、殺戮者の紋章がピシリと音を立てて砕ける。
「がはぁ……ッ、も、紋章が……!」
 紋章の破損はそのまま彼女自身の弱体化を意味する。深手を負い、さらに力まで失った影絵画家に当初の余裕は欠片もなく。追い詰められているのは誰の目にも明らかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
(領主との遣り取りの影響で相当に虫の居所が悪い
静止の願い無視し追撃)

私の装甲の防御など無意味と…思考でも攻撃するのですか?

影絵通じた干渉にUCを辿って敵頭脳を瞬間思考力で情報収集ハッキング破壊工作
致命を受ける前に視覚野、四肢の制御系を過剰電気信号で焼き潰し

私繝思考は電子演算
貴女は知らぬ繧ちに電脳魔術▲領域に踏み入って薙たのです
『呪詛返し』縺は似て非なる物でし■うか

盾を杖に蘇生前の動けぬ画家に近づき

貴女や領主が目を輝かせた…あの戦いも…
やがて歌や絵、物語となるやもしれません

ならば血に塗れているとしても、せめて、せめて…
次代に希望を、正しきを伝える物としなければならないのです!

紋章に剣突き立て



「ッ……こいつら、いい加減にして。この私がまさかお前達なんかに……うわッ?!」
 当初は猟兵達の実力を侮っていながら、劣勢に追いやられた影絵の画家ヴィエルジュ。苦し紛れになにかを言おうとした彼女を黙らせるように、トリテレイアが斬り掛かった。
「――……」
 騎士道精神と礼儀を重んじる彼が問答無用で敵に攻撃を仕掛けるのは難しい。領主とのやり取りの影響で相当に虫の居所が悪いのか、「ちょ、ちょっと待って!」という制止の願いなど無視して追撃を重ねる。その荒々しい太刀筋からも苛立ちが垣間見えた。

「この、待てって言っているのに……!」
 ヴィエルジュは傷ついた身体に鞭打って攻撃を躱しながら、虚空に万年筆を走らせる。
 手負いといえど彼女の画才に衰えはなく、またたく間に描き上がる騎士の影絵。それを見たトリテレイアは普段よりも低く、静かな声色で問いかけた。
「私の装甲の防御など無意味と……思考でも攻撃するのですか?」
「ああ、そうさ! ただの木偶人形になってしまえ!」
 影絵を通じた攻撃なら、機械の頑丈さも分厚い装甲も意味はない。真心を籠めた一撃が騎士の影絵に突き立てられ――その本体がびくりと痙攣するように身体をわななかせた。

「どうだ――……ッ!?」
 勝ち誇ったのもつかの間、すぐにヴィエルジュは違和感に気付く。魂と精神を抉る一撃を受けてなお、相手の機体から意志は消えていない。ぼんやりと揺らめくカメラアイが、逆に此方の心を覗き込んでいるような、不可解な感覚がある。
「私繝思考は電子演算。貴女は知らぬ繧ちに電脳魔術▲領域に踏み入って薙たのです」
 疑念に応えるように、ノイズ混じりの声でトリテレイアが語る。電子の精神に干渉してきたなら、電子的手段による逆干渉もあり得るということ。彼のシステムはそのアクセスルートを瞬時に辿って、【銀河帝国護衛用ウォーマシン・上級攻性防壁】を起動させた。

「『呪詛返し』縺は似て非なる物でし■うか」
 ばつん、と。家のブレーカーを落としたように、ヴィエルジュの視界が闇に包まれる。
 この世界のオブリビオンなら、夜を見通す程度の暗視能力は持っている。トリテレイアの電子頭脳から逆流してきた過剰な電気信号が、彼女の視覚野の制御を焼き潰したのだ。
「なぁ……っ、なにが?!」
 魔術やサイキックを含むあらゆる干渉を解析して辿り、術者(ハッカー)の頭脳を焼き切るファイヤウォール。電子戦の発達したスペースシップワールド特有の技術であろう。
 干渉者の思考領域内で爆ぜる電子の炎は、立て続けにヴィエルジュの四肢の自由までも奪い取る。糸が切れた操り人形のように、少女画家の身体はその場に崩れ落ちた。

「なんで、動けないっ」
 指先ひとつピクリとも動かせず、芋虫のように地を這いつくばらされるヴィエルジュ。
 一方で致命傷を受ける前に影絵からの干渉を止めたトリテレイアは、盾を杖にして身体を支え、ふらつきながら影絵画家に近付いていく。
「貴女や領主が目を輝かせた……あの戦いも……やがて歌や絵、物語となるやもしれません」
 事実はいずれ過去となり、歴史はやがて物語となる。当事者達の思惑や葛藤をよそに、脚色や誇張を書き加えながら。此度の猟兵と闇の救済者の記録も、いずれ来たる未来には世界を救った英雄譚の一幕として語られるやもしれない。

「ならば血に塗れているとしても、せめて、せめて……次代に希望を、正しきを伝える物としなければならないのです!」
 葛藤と懊悩を抱えながらも断固たる決意を以てそれを乗り越え、機械騎士は前進する。
 あの領主であればこの姿を「美しい」と呼ぶだろう。負荷を受けた心身を引きずるようにして敵の前まで歩ききった彼は、敵の胸元に宿る『紋章』目掛けて剣を振り下ろした。
「やめ……ッ、ぎゃあぁぁっ!!!?」
 今だ四肢の感覚も視力も戻らぬヴィエルジュに、それを防ぐ手立てはなく。儀礼用長剣の切っ先が紋章に突き立てられた瞬間、絹を裂くような悲鳴が闇夜の戦場に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…尻尾を巻いて逃げるべきだったのよ、お前は…

暗殺者が居場所を特定された時点で、敗北は決まっているのだから…
それを今から証明してあげるわ、影絵の画家

"影精霊装"に限界突破した魔力を溜め戦場を闇のオーラで防御して覆い、
敵の影絵を闇に紛れ溶け込ませる事で敵UCの妨害を試みUCを発動

…その影絵は確かに厄介だけど、同じ術を何度も見せ過ぎたわね
猟兵なら一度見れば対策の一つや二つ、すぐに思い付くもの

自身の肉体を"闇の重力"化し戦場の闇と同化して武器改造
闇の中にいる敵の存在感を暗視し超重力を付与して捕縛した後、
敵の全周囲から重力弾を乱れ撃ち圧壊させる闇属性攻撃を行う

…さあ、儚く砕けよ。この無明の闇の中で…!



「ぐ、ぅ……どうしてボクが、こんな、こんな目にッ」
「……尻尾を巻いて逃げるべきだったのよ、お前は……」
 満身創痍の身体を引きずるように起き上がり、焦りと苛立ちをもはや隠そうともせずに叫ぶヴィエルジュ。自らの能力を過信した愚かな刺客に、リーヴァルディが語りかける。
「暗殺者が居場所を特定された時点で、敗北は決まっているのだから……」
 影絵を通じた攻撃で、標的を遠隔から間接的に殺害できるのは確かに厄介な力だろう。
 だが、こうして対峙できれば対処する手段は幾らでもある。芸術家としての自己顕示欲ゆえか、みすみす「暗殺」ではなく「戦闘」の舞台に上がった時点で結末は見えていた。

「……それを今から証明してあげるわ、影絵の画家」
「やれるものなら、やってみせなよ……ッ!」
 静かな宣告とは対照的に、もはや後のないヴィエルジュは激情を露わに筆を走らせる。瞬時に描き出されるのは、本物を写し取ったように丁寧に似せたリーヴァルディの影絵。それを通じた攻撃は、どんな防御や耐性でも防ぐことはできない。
「……闇の精霊よ、我が衣より離れ、此の地を覆え」
 対するリーヴァルディは首に巻いた「影精霊装」に魔力を込め、静かに呪文を唱える。
 その布は物質化した闇で編まれた精霊衣。そこから溢れ出した闇のオーラはまたたく間に戦場を覆い尽くしていく。描かれたばかりの影絵を、その領域内に溶け込ませながら。

「なっ、ボクの絵が……!」
 光は影をかき消すが影を作りもする。一方で無明の闇の中では影の生じる余地はない。星の光すら届かぬ完全なる暗黒は、ヴィエルジュのキャンバスには不都合な環境だった。
「……その影絵は確かに厄介だけど、同じ術を何度も見せ過ぎたわね。猟兵なら一度見れば対策の一つや二つ、すぐに思い付くもの」
 これまでにも危険な特殊能力を持つ吸血鬼や怪物とは何度も戦ってきたが故の自信が、リーヴァルディにはあった。タネの割れた手品を暴くように、画家の能力は封殺される。こと影絵描きの一芸に特化したヴィエルジュにとっては、四肢をもがれたようなものだ。

「……限定解放。テンカウント……ッ。魔力錬成……」
 明らかに狼狽える敵の前で、リーヴァルディは【限定解放・血の魔装】を発動。自身の肉体を"闇の重力"と化し、戦場の闇と同化する事で強大な力を得る。制御が非常に難しく暴走のリスクをはらんだ危険な技だが――今なら決着を付けるのに10秒もいらない。
「ぐぁ、ッ?! か、身体が重い……!!」
 突如としてヴィエルジュを襲ったのは、巨人に踏みつけられたような超重力。押さえ付けられた彼女は歩くどころか立ち上がることもできず、無様に地べたを這いつくばった。

「……さあ、儚く砕けよ。この無明の闇の中で……!」
 闇を見通すリーヴァルディの目には、芋虫のようにもがく敵の姿がはっきりと見える。
 意志の籠もった宣告と同時に、敵の全周囲から無数の重力弾が生じ、一斉に放たれた。
「ば、バカな、このボクが……ぎ、が、ぎゃあぁぁぁぁ―――……ッ!!!!」
 高重力の乱打に全身をすり潰され、圧潰させられ。ヴィエルジュの断末魔が響き渡る。
 だが、その絶叫もすぐに闇の中へと溶けて消え――やがてリーヴァルディが血の魔装を解除した時にはもう、影絵画家の姿は跡形もなくなっていた。


 ――かくして、ひとつの領地を巡った闇の救済者達の戦いは、完全なる決着を迎える。
 猟兵達の奮戦によって、彼らの掲げた美しき希望は守り抜かれ。その輝きは闇を照らす篝火となって、さらなる希望を継いでいくだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月23日
宿敵 『フェイル-コイヌール』 『影絵の画家ヴィエルジュ』 を撃破!


挿絵イラスト