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Rebellion ― “最強”への反証 ―

#ダークセイヴァー #地底都市 #第五の貴族

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#地底都市
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#第五の貴族


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●第五の貴族と“最強”の紋章
「御機嫌よう、皆。よく来てくれたね」
 グリモアベース作戦会議室にて、常通り招集に応じた猟兵たちに一礼したのはカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)。今回の予知はダークセイヴァー、“第五の貴族”との戦いに関するものだと彼女は告げた。

「第五の貴族……紋章と呼ばれる寄生虫型オブリビオンを与え、地上世界を支配してきた黒幕にあたる存在。既に交戦経験のあるヒトも居るかもしれないね」
 強大な相手ではあるが、その討伐を進める事はダークセイヴァーをオブリビオンの支配から解放する為に不可欠と言える。
 今回の戦いに於いても紋章の特性に合わせた攻略方法を取る事が鍵になると、グリモア猟兵は指を一本立てた。
「まずは縄張りに放たれている手勢が障害になる。単純な頭数に加えその全員が番犬の紋章付きだ、可能な限り消耗を避けて迅速に突破するのがいいだろう」
 番犬の紋章に寄生されたオブリビオンは紋章以外への攻撃に極めて高い耐性を持ち、戦闘能力も劇的に向上した難敵だ。後に控える本命との戦いも踏まえればまともに相手をするのは現実的ではない。

 無事に第五の貴族まで辿り着ければそのまま決戦になる。敵は吸血姫エレーネ……“最強の紋章”を自らに寄生させたヴァンパイアなのだと、カタリナは二本目の指を立てた。
「勿論、この最強と言うのは名称の話に過ぎない。大雑把に言ってしまえば――ユーベルコード【アリスナイト・イマジネイション】に近い、思い込みの力さ」
 自分こそ最強であるという傲慢、その妄念を宿主の超強化として実現するのがこの紋章の絡繰。その“最強”を否定し、エレーネ自身に疑念を抱かせる事で敵を大幅に弱体化させ突破口を開けるのだと有翼の人狼は尻尾を揺らす。
「例えば必中必殺である筈の攻撃を躱され、或いは防がれる。当たらない筈の攻撃が当たる、防げた筈の攻撃に守りを貫かれる。精神攻撃や頭脳戦も手段の一つかもしれないね。キミたちそれぞれの強みを最大限に発揮すれば、紛いの“最強”のメッキを剥がすのは不可能じゃない」
 最強の自負に依る強化は強力な一方で脆いものだ。何か一つでも綻びが生じれば不完全は露呈し、怪物は張子の虎へと成り下がる。
 そこまで話したグリモア猟兵は、ただし、と三本目の指を立てた。
「エレーネを斃してもそこで決着、とはいかない。他の第五の貴族と同じように存在を変異させて襲い掛かってくると見ていいだろう」
 戦法や紋章など、変貌を遂げた敵についての情報は不明瞭だ。どうやら変異前の紋章に紐づいた性質を持つようだが……。
「厄介な相手との戦いが続くけれど、キミたちなら勝利を掴めると信じているよ。どうか今回も無事の帰還を」
 いってらっしゃい、と見送る言葉と共に豪奢な装飾の施されたゲートが開いて。


ふーみー
 当シナリオをご覧くださりありがとうございます、ふーみーです。
 第一章は集団戦。膨大な敵がぶっ飛ばしてもぶっ飛ばしても起き上がってくるので殲滅は現実的ではありません。効率重視・速度重視でスマートに突破してください。
 第二章は“最強の紋章”を持つ吸血姫エレーネとのボス戦。全ステータスが極端に強化されていますが、エレーネの“自分は最強である”という思い込みを崩す事で強化を無効化・大幅に弱体化させる事が出来ます。
 第三章は変異したボスとの決戦。詳細は章の開始時の追記となります。
 それでは皆様の健闘をお祈りしています。
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第1章 集団戦 『蜂起する銀狼軍』

POW   :    シルバーバレット
自身の【命】を代償に、【他の構成員を超強化。彼ら】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【銀の弾丸】で戦う。
SPD   :    決死の覚悟
【自ら頸動脈を切断する】事で【最終戦闘形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    抹殺の意思
【戦闘後の確実な死】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【高速連射形態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●穢された誇り
 “第五の貴族”が潜む邸宅、見掛けには荘厳でさえある邪悪の巣窟。邸宅に負けず劣らずの威容で広がる庭園には木々が生い茂り、その支配下にあるオブリビオンが統率の取れた動きで機械的に巡回を続けている。
 銀狼軍――嘗ては多くの吸血鬼を討ち取ったと伝えられるレジスタンス。今やその瞳に光は無く、代わりに首元へと植え付けられた“番犬の紋章”が妖しく輝いている。
 古の英霊たる人狼たちを番犬と貶め使役しているのもヴァンパイアの戯れか。
 彼らを解放する為にも、今はその警備を突破に力を注ぐべきだろう。
ラモート・レーパー
「別に倒しても良いんだよね?」
 UCで日本神話より伊奘冉に変身し、その逸話から初手で千人殺す。
それでも倒しきれず残党がいるのなら、連鎖召喚された8体の雷神や小鬼を向かわせ残党狩りを行う
アドリブ連携歓迎



●1st Round ― 黄泉の行進 ―
「別に倒しても良いんだよね?」
 銀狼たちの巡回する庭園へと無造作に踏み込んだのはラモート・レーパー(生きた概念・f03606)。
 そう、倒す必要が無いとは言われたが倒してはいけないという話でも無いのである。
 侵入者に気付いた銀狼は次々に咆哮。その一部が自らの命を消費し、残った者がかつては吸血鬼さえ滅ぼした銀の弾丸を一斉に放つが――

「――人より『』に与えられた権能を行使する」

 歌うように口ずさむと同時、小柄な猟兵の姿は悍ましい腐乱死体に成り果てる。
 伊奘冉、天地開闢の神にして死しては黄泉の主と化した神格。ある国、ある時代の神話に曰く、亡者と化した自身を封じた夫神に対し1日に1000人の人間を殺すと叫んだと伝えられる。
 オブリビオンが次々と集まってきたのは寧ろ好都合。
 【三相一体(トリプルフェイス)】――死を齎す存在、人によって斯く在れと与えられた権能は存在を知覚した銀狼全ての命脈を理不尽に断つ。
 ある者は突然に血を吐き、ある者は眠りに落ちるように、ある者は苦悶に身を捩り、一人の例外も無く銀狼は力尽きる。

 ……紋章が輝く。
 意味を為さぬ唸り声と共に、起き上がった番犬たちが銃を構える。
 或いは本来の伊奘冉、道敷大神とも畏れられる黄泉の主催神であれば歪められた摂理に憤りの一つでも覚えただろうか。ラモートはと言えば半ば予期し得た結果に肩を一つ竦めるのみ。
「自分から命捧げた奴まで復活してるのってどーいう事だろうね。……それじゃ、後は任せるよ?」
 きぃきぃと喚いて応じたのは色濃く死の穢れを纏った異形の群れ。伊奘冉の身に取りついた八雷神、その身に従う小鬼の群れが銀狼軍へと襲い掛かる。
 片や紋章による強化を受けた番犬の群れ、片や黄泉の亡者の軍勢。さながら地獄絵図と化した戦場の混沌に姿を紛らわせ、ラモートは本館への侵入を果たすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
“第五の貴族”ってヤツと会ったことは無ぇな。一つ、傲慢なその面でも拝みに行くとしようか。

(見上げ)豪華な邸宅だぜ。家無しや住む場所に困る奴だってこの世界には居るってのに。
戦闘は避ける。UCを用いて木々の合間を【忍び足】で足音を立てずに抜けて邸宅へと向かう。【追跡】技能を用いて足元の銀狼軍の機械的な動きを読む。機械的ってのは、逆に言えば、形式に沿った動きしか出来ないってこった。俺からすれば楽勝過ぎて欠伸が出るぜ。
邸宅の扉はオープンかい?ま、世界の支配者にして傲慢な紋章まで宿した貴族様だ。賊が入り込むなんざ考えても居ないだろうから、【鍵開け】の技術は必要なさそうだ。俺としちゃ、物足りないけど、な?



●2nd Round ― 時に吹き抜ける風の如く ―
「“第五の貴族”ってヤツと会ったことは無ぇな」
 一つ、傲慢なその面でも拝みに行くとしようか。
 常通り飄々と嘯き、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は支配者の根城を見上げる。未だ些か離れた先に佇む目的地は薄闇の中に在って絢爛に存在を主張し、建物それ自体が芸術品のような完成度を誇っていた。
「豪華な邸宅だぜ。家無しや住む場所に困る奴だってこの世界には居るってのに」
 人々を足蹴にした上に成り立つ栄華、その在り様に顔を顰めてカイムは庭園へと慎重に踏み込む。

 【盗賊の極意(シーフ・マスター)】 ―― 元盗賊だ。今は便利屋。間違えないでくれよ? ―― 誰にともなく軽口を一つ、カイムの動きが切り替わる。
 或いはユーベルコードの撃ち合いともなれば兎も角、戦闘を避ける上でこの盗賊としての技術の集大成は比類なき効果を発揮した。
 見栄え良く整えられた木々の間を音も無く進み、逆に僅かに聞こえる人狼たちの足音、垣間見える姿からパターン化された巡回経路を読み切る。
(番犬に貶められたとは聞いたが、鼻は寧ろ鈍ったか?)
 その存在すら気取られた色は無く、いっそ罠かと疑う程に銀狼軍の動きに変化は無い。
 自慢の邸宅に番犬の近寄る事を嫌ったか、門番が居ないどころか建物の至近は銀狼軍の巡回経路から外れてさえいる有様だった。

(あんな警備で十分と思われてるとはな。俺からすれば楽勝過ぎて欠伸が出るぜ)
 まずは扉に触れる事無く罠を確認。次いで用心深く調査を続け、侵入を気付かれぬよう鍵を探る――のが、盗賊としては定石だが。カイムは敢えて無造作に、精緻な彫刻の施された重厚な扉を開け放つ。
 罠など無ければ鍵も掛かっていない。ご立派な扉が侵入者を恭しく迎えたのも案の定と言うべきか。
「俺としちゃ物足りないけど、な?」
 いずれにせよ此処からが本番だ。口の端に不敵な笑みを刻み、カイムは決戦の舞台へと足を踏み入れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天宮院・雪斗(サポート)
『なせば大抵なんとかなる』
 妖狐の陰陽師×ビーストマスター、8歳の男の子です。
 普段の口調は「子供(ぼく、相手の名前+ちゃん、年上名前+お兄(姉)ちゃん、、おじ(ば)ちゃん等。だね、だよ、だよね、なのかな? )」、怒った時は「子供(ぼく、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。甘えん坊で、頭撫でられるの好き、お姉ちゃんたちに甘えるのも好き。あとはおまかせ(アドリブ・行動OK)です。おねがいします!



●EX Round ― 子狐と金獅子と銀狼と ―
「えーと、今回のおしごとは……おやしきへの突入と、他の猟兵さんも続きやすいように程々に陽動? うん、サポートだもんね」
 番犬の紋章を植え付けられた強力なオブリビオンとの交戦も含むミッションの難易度は高く、天宮院・雪斗(妖狐の陰陽師・f00482)は両の手を握って気合いを入れる。

 息を潜め庭園に侵入。足元に突き刺すは地星鎖、大地より魔力と情報を吸い上げる。
 敵は一体一体が強大、同時に相手に出来る数には限りがある。番犬の巡回経路を見切り、うぅむと唸りながら邸宅までの侵入ルートを構築していく。
「なせば大抵なんとかなる。さぁ出発だ!」
 準備は既に万全。小さな妖狐は迷いなく一歩を踏み出した。

 一本歯の天狗下駄がリズムよく足音を鳴らす。跳ねるように進む侵入者の存在を知覚した番犬は警備機械の反応さながらに誘き寄せられ、無機的な戦意に満ちた咆哮を響かせた。
 【決死の覚悟】――今やその動きに嘗ての意思は無い。無感情に切り裂かれた人狼たち自身の頸動脈から鮮血が噴出し、最終戦闘形態へと形を変えた彼らの首元で番犬の紋章が第二の心臓めいて脈動する。
「わわっ……!」
 神狐扇に白狐扇、双扇より放つ衝撃波で敵の強襲を逸らしオーラの障壁で身を守る。
 想定通り。情報を元に初動から察知できる動き、対処は十分に可能だ。
 ……その上で、番犬たちの爪牙は速く、鋭い。
 羽衣を翻し激しく舞うように扇を振るう。一手誤れば即座に崩れ落ちる死線を紙一重に切り抜けていく。
「っ……そろそろ、慣れてきたころかな?」
 オーラを貫いた爪の一閃が頬を掠める。傷は浅い。最適化されていく敵の攻撃は、自分の動きが見切られつつある事の証左に他ならない。
「せーの、どろんっ!」
「「「ッ……!?」」」
 追い詰められていく妖狐の姿が突如として同胞のそれに変化する。
 洗練された化術、一種悪戯めいたそれに銀狼軍だった番犬たちが怯む隙が一瞬。包囲をするりと抜けた雪斗は片手の扇を持ち替え獣奏器を奏でる。
 ――黄金が駆けた。
 番犬を蹴散らし馳せ参じた金色の巨躯に跨り、たてがみを親しげに撫でる雪斗に獅子は短く唸って応じる。
「もうじゅうぶん、だよね。それじゃあ行こうか!」
 見れば跳ね飛ばされた番犬は起き上がって再び武器を構え、自ら頸動脈を切断したにも関わらず敵は一人として力尽きる素振りも見せない。
 行きがけの駄賃とばかりに金獅子が腕を振るい追撃を叩き込み、しかし番犬にかかずらうのもその交錯が最後。
 一心同体の雪斗と金獅子の間に合図は不要、再び相手を此方の動きに適応させてやる理由も無い。
 そのまま悠々と番犬たちを引き離し、また新たな猟兵が邸宅へと派手な突入を果たすのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより



●EX Round ― 鬱詐偽さん潜入ミッションの巻 ―
「……世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さんただいま参上……」
 キラッ☆ と決めたポーズに反してどよーんと淀んだ背景。
 暗い溜息を一つ、音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は絢爛に輝く邸宅へと続く庭園を見やる。
 何故世界一つを牛耳るような黒幕の一人の元に殴り込まねばならないのか。
 何故スニーキングミッションなのについでに陽動もこなさねばならないのか。
 しかも本来は後衛、支援担当だというのにソロである。現状これが一番ひどい。
「……うう、これも番組の為なのね」
 理不尽をひしひしと感じながらも溜息を一つ。やるしかないのだと状況を受け入れる。

「慎重に、慎重に……あうっ」
 何も無いところで不意にすっ転ぶ鬱詐偽。
 罠があった訳でも彼女の能力に不足があった訳でもない。ただ少し不運な事に鬱詐偽はつまづき……付近を巡回していた番犬が颯爽と駆け付ける。
「だ、第五の貴族の……番犬……!」
 その瞳に意思の色は無く、首元に妖しく輝くのは番犬の紋章。
 生前の彼らは多くのヴァンパイアを討ち取ったレジスタンスだったのだという。
 銀狼軍……この世界の旧き英雄たちはオブリビオンとして蘇り、そして仇敵であったヴァンパイアに下僕として従えられている。
「……あなたたちは……」
 音駆螺鬱詐偽という存在もかつてはオブリビオンであった。猟兵として此処に立っている鬱詐偽の中にもオブリビオンであった自分の記憶は残っている。
 生前の在り方、そして現在の意思、誇り。存在そのものを冒涜されている彼らの胸中は如何ばかりか。

 ガコン、と音を立ててオブリビオンの銃剣が形を変える。
 【抹殺の意思】――今や覚悟も矜持も無く、操り人形が淡々と決死の異能を行使する。
 絶体絶命である。鬱詐偽さんアタッカーじゃねぇ。
「陽動的にはもう十二分よね……? これで戦って倒せとか言われないわよね……?」
 鬱詐偽にも当然、考えはあった。覚悟を決めて息を吸い込む。
 【サウンド・オブ・パワー】――奏でるは異能の旋律。
 バーチャルキャラクターであった自分の根底、触れ合った人々の温もり。今の音駆螺鬱詐偽を構成する全てを込めた歌声は、心に響いた者の戦闘力を増強する。
「一か八か、これで……!」
 自身を強化しての全力離脱。渾身の力で地を蹴り、一度だけオブリビオンを振り返る。

 ぎこちない動きで得物を構え、狙いを定め、撃つ。
 或いは銀狼軍のその様子が抗うように見えたのは錯覚だろうか。
 “番犬の紋章”を植え付けられ大幅な強化を受けたオブリビオン、その命を対価とするユーベルコードによる凶悪無比な弾丸の連射。
 それを必死の思いで躱し、邸宅まで駆け抜けた鬱詐偽の身には……傷の一つも無かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リスティ・フェルドール(サポート)
援護・治療・盾役として参加いたします。最優先は自分を含む仲間全員の生存と帰還。成功の立役者ではなく、命の守り人として最悪の結果を回避できれば、それ以上に望むことはありません。

真剣な雰囲気は邪魔をせず、仲間同士の険悪な雰囲気はあえて朗らかに。チームワークが生存率を上げる一番の方法として行動します。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはマスター様におまかせいたします。よろしくおねがいします!


鶴来・桐葉(サポート)
『やってやりますかね』
 人間の剣豪×サイキッカー、21歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、お前、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、戦闘中は「真剣(俺、お前、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」です。
なぜか自身が使う超能力を「手品」と呼びます。無類の酒好きです

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●EX Round ― 御役目万事ぬかり無く ―
「さぁて、ここまでは手筈通り。しくじるなよ、リスティ?」
「任せてください。負けられない戦いくらいは心得てますよ」
 軽口を交わす鶴来・桐葉(サイキック剣豪・f02011)とリスティ・フェルドール(想蒼月下の獣遣い・f00002)の周囲には無機質な敵意を隠しもしない銀狼軍。
 ダークセイヴァーを陰から牛耳る“第五の貴族”の一人、その邸宅へ侵入する猟兵たちの援護を務める二人は陽動として庭園に放たれたオブリビオンの群れを誘き出していた。
 首元に植え付けられた“番犬の紋章”、彼らを支配する首輪にして壮絶な強化を施す寄生虫型オブリビオンが怪しく輝く。
 緊張が高まり番犬たちが動き出す――初手からして乾坤一擲。二人の猟兵もほとんど同時に行動を合わせた。

「させませんよっ……“いのちだいじに”!」
「ッ――!」
 【デュエリスト・ロウ】――リスティの投じた手袋が自ら命を捧げようとしていた番犬の一体に命中、その行動に先んじてルールを宣告。
 勝算は五分も良いところの攻防は……果たしてリスティの制するところとなった。
 怯み生じた番犬の隙は一瞬にも満たず、しかしその強化を前提としていた群れの連携には綻びが生じる。

「さぁて、やってやりますかね……遠くのもんも関係無ぇ、ってな!」
 此方はリスティと背中合わせに、桐葉が放つ不可視の斬撃が狙ったのは番犬たちの足元。
 超加速を実現する銀狼軍のユーベルコードと桐葉のこの手札の直接の相性は良好とは言い難く、故に牽制へと役割を絞った彼の戦術は堅実な効果を上げた。
 地力は桐葉が僅かに上回った事も大きいだろう。機動力を削がれる事を嫌った番犬は大きく飛び退いて斬撃を躱し、番犬の一斉攻撃は此処に潰える。

「上々! さ、ルートは分かってるんだろうな?」
「ばっちりです。はぐれないでくださいよ?」
 元より紋章による大幅な強化を受けた番犬たちの撃破は現実的ではない。
 蒼聖石の龍槍と侍剣の一撃が重なって包囲を穿ち、二人の猟兵は大回りに番犬たちを引き付ける道筋で邸宅へと駆けていく。

 番犬の紋章が輝き、一度は吹き飛ばされたオブリビオンも亡者のように起き上がって追走劇に加わる。
 ――目指す絢爛なる吸血鬼の邸宅、その威容が崩れ落ちるまであと少し。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

厳・範(サポート)
長年の修行で誘惑に強いお爺です。
食べ物に制限はありません。
話し方は古風です。

亡き親友との約束(世界を守る)で、封神武侠界のみで活動していましたが、『仁獣』性質と親友の幻影の後押しで決意し、他世界でも活動し始めました。
「放っておけぬのよ」

動きとしては、主にサポートに回ります。
【使令法:~】では、麻雀牌を利用して、対象生物を呼び出します。
【豹貓】は睡魔を呼ぶ、【胡蜂】は恨みの毒(理由は秘密の設定にて)という感じです。

また、半人半獣もしくは本性の麒麟形態だと、背に人を乗せることがあります。

なお、武侠の血が騒ぐと足技が出ます。

依頼達成のためとはいえ公序良俗に反する行為はしません。
あとはお任せします。


叢雲・雨幻(サポート)
堂々と正面から、と言うよりは掠め手で相手を惑わせて
攪乱しながら一網打尽にしていくような戦い方を好むよ。

使う武器は【黒雲】【黒霧【対】】の二刀流での高速戦闘が主。
使うUC次第では連結してダブルセイバーにしたり、
そもそも剣を主武器として使わず【武器受け】用として使いつつ、影を操る攻撃で戦ったりするよ。

主に戦い方の例を挙げるならば
【目立たない】様に物影を介して【忍び足】で動き回り敵の視線から外れたり、
【闇に紛れて】居場所を攪乱したり
攻撃すると見せかけた【フェイント】を使って騙したり、
【武器(で)受け】てから【カウンター】で仕留める等だね。
洗脳等で助けられる相手を攻撃する際は、ある程度手心を加えるかな



●EX Round ― いぶし銀に濁り無く ―
「かーっ、嫌だ嫌だ。番犬の紋章、脳筋も此処に極まれりってねぇ!」
「度し難い邪法よな。故に確実に断たねばならん」
 凶悪なまでの弾丸の連射を捌きながら叢雲・雨幻(色褪せた根無し草・f29537)の双剣が番犬を斬り伏せ、或いは厳・範(老當益壮・f32809)の焦熱槍がオブリビオンを貫き焼き尽くす。
 共に並のオブリビオンであれば滅ぼして余りある一撃。だが、ぐたりと力の抜けた番犬の首元で紋章が輝けば吸血鬼の傀儡は意思を感じさせない動きで戦線に復帰する。
 猟兵を包囲するオブリビオンは未だ無数、油断なく後退した二人は背中合わせに各々の得物を構え直した。

「もともと本命はねぐらに籠った吸血鬼、こいつらもこんだけ邸宅から引き剥がしてやれば陽動には十二分だとオジサン思うんだがね。どうだい範翁?」
「うむ。振り切るには頃合いであろう」
 飄々と肩を竦めた雨幻の手にはスモークグレネード、厳めしく頷いた範が印を結べば瑞獣の仙術が雲を招く。
 二重の色彩が戦場を覆い隠したのは一瞬後の事。全く異なる技術体系に属する二人の目晦ましは紋章により強化された人狼の知覚をして鈍らせる事に成功する。

「効いてる効いてる。ようやく条件が整ったねぇ……」
 気配を揺らがせた雨幻の存在が曖昧に紛れる。
 【闇霧纏い】――番犬のユーベルコードが機能不全に陥ったごく僅かな好機、我流の剣技が滑り込むように牙を剥く。
「……もう少しの辛抱だ。直に仇は取ってやる」
 低い声は怨敵たる吸血鬼の傀儡に貶められた銀狼軍への手向けであり、同時に自らの居場所を誤認させるフェイク。
 対の黒剣が的確に番犬の脚と銃剣を破壊し、その位置さえオブリビオンに気取らせる事なく範の傍へと戻る。

「さて、これも行きがけの駄賃代わりよ」
 当然、番犬たちに生じた隙を突いたのはもう一人の猟兵も同じ事。
 【転変】――本性たる黒麒麟の姿を現した範の身は軽やかに舞い、練武の功を活かした痛打をオブリビオンへと打ち込む。
 獣の身体能力に鍛え上げられた武術の合わさった身のこなしは紋章により強化された番犬の反撃に掠る事さえ許さず、瞬き程の間に番犬たちを叩き伏せた。

 紋章の禍々しい輝きは雲煙の中でも赤く滲み、しかし甚大なダメージを受けた番犬たちが起き上がるには十数秒の停滞。どちらからともなく視線を交わし断りを一つ、雨幻は黒麒麟へと変じた範の鞍に跨る。
「少し強めに飛ばす。振り落とされるでないぞ」
「なに、たまには自分より年上の爺様とドライブも乙なもんだ。よろしく頼むよ?」
 似合わないようで不思議と噛み合ったやり取りを交わしながら、風を纏った黒麒麟が加速する。
 目指すはこのダークセイヴァーを闇に閉ざす“第五の貴族”が一角――“吸血姫エレーネ”の邸宅。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花咲・翁
「・・・はあ、倒しても起き上がってくるなんてすごいけど、何もできなかったら意味ないよね・・・」

UCで強化された敵軍の攻撃を棺桶(魔天牢の門)や鎖(大罪の縛鎖)で受け流しながら(技能としては【盾受け】や【武器受け】)、自身のUCで片っ端から身動きが一切取れないように【捕縛】し、【魂喰らいのカンテラ】で生命吸収しながら、敵軍の寿命を無駄に使わせて全滅させます。

アドリブ連携歓迎します。



●Final Round ― 魔天牢より逃れる事能わず ―
「……はぁ……」
 ダークセイヴァーを影より牛耳る“第五の貴族”が一角、その本拠を飾る庭園にて陰鬱な溜息を洩らしたのは花咲・翁(魔天牢の看守長・f33065)。
「……倒しても起き上がってくるなんてすごいけど」
 淀んだ灰色の瞳がオブリビオンの群れを捉える。
 敢えて警備ルートを避けぬままに直進した侵入者を取り囲む人狼の首元に番犬の紋章が輝き、吸血鬼の傀儡は一斉に自らの頸動脈を掻き切る。
「……何も出来なかったら意味無いよね……」

 【決死の覚悟】――もはや意思を伴わぬ捨て身の強化により加速したオブリビオンの凶刃が一糸乱れぬ連携で侵入者へと襲い掛かり。
 そして、その全てが翁を貫く事なく阻まれた。
 翁の引きずる鎖が独立した生き物のように波打ち突進の勢いを殺す。
 翁の心象風景にして監獄たる魔天牢の門が盾となって刃を弾く。
「……我が魔天牢は神をも縛る――」
 紡ぐ詠唱が呼び起こすは【神絶の束縛(グレイプニル)】、超越の証たるユーベルコードをも封じ込める三重の呪縛。
 魂ごと罪人を縛る大罪の縛鎖、罪の重さを痛みとして与える秤の楔、捕えた者を逃がす事は無い運命の黒い枷。
 その悉くが空を切るのを無感動な目で見つめ、気怠げに振るう翁の手を覆うのは“貪りし夢幻”の名を持つ手袋。
「……要するに……君たちの敗因は、番犬である事だ」
 オブリビオンを素材とする手袋が備えるは幻影を作り出す能力。
 超高速を以て逃れようとも、銀狼軍が番犬の役割を強いられる以上“翁から逃げ切る”事もまた叶わない。
 そして、翁には異能の相性差を埋めて彼らを追い詰めるだけの技量があった。

 灰の瞳は淀んだまま、表情は動かぬまま。手順をなぞっていくだけの作業が退屈以外の何物でもある筈は無く、遂に最後の番犬が黒枷に繋がれる。
「……紋章……つくづく面倒な……」
 魂喰らいのカンテラが生命を啜りながら、猶も番犬たちを縛める封印が音を立てて軋む。
 紋章による極端な強化、多勢に無勢の戦力差。ユーベルコードを封じて猶も凶悪な力を持つ番犬たちは呪縛を食い破らんと抵抗を続け、力尽きる素振りも見せない。
「……親玉の前に胃もたれしても本末転倒だし……捨てていくか」
 重い溜息を一つ、目指す邸宅は今や進み続けた翁の眼前に。
「……あまり手こずらせないでくれればいいんだけど」
 陰鬱な空気を纏い、魔天牢の看守長が咎人を裁かんと踏み込んでいく。

苦戦 🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『吸血姫エレーネ』

POW   :    夜天の鬼
【その身に備わった圧倒的な怪力】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    紅血の姫
自身の【白肌を飾る血紋】が輝く間、【優雅に舞い切り裂く四肢と翼】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    不死の王
自身の【内に溜め込んだ血と命か、下僕達のそれ】を代償に、【蝙蝠や魔犬等の眷属の群】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【不浄の力を纏った爪や牙】で戦う。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ハイドランジア・ムーンライズです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●“最強”への反証
「あら、ごきげんよう。折角お似合いの紋章まであげたのに侵入者を許すなんて、ほんとうに使えないワンちゃんね。よっわ~い♪」
 邸宅へと踏み入った猟兵を出迎え、“第五の貴族”吸血姫エレーネは全てを嘲るようにクスクスと嗤う。
「まぁ? わたしに比べればみーんなザコなのはしかたがないことだけど? あなたたちはすこしくらい、楽しませてくれるのかしら?」
 その小柄な体躯から放たれる圧はダークセイヴァーの支配者の一角を占めるに相応しい絶大なもの。幼さと残忍さの同居した言動が傲慢を振り翳すたびに上塗りされる妄執が吸血姫の“最強”をより強固に育て上げていく。
「そうだ、良いことを思いついたわ! あの犬どもよりマシなところを見せてくれたら、あなたたちを新しい下僕にしてあげる。うれしいでしょう? せいぜいがんばってね♪」
 桁外れの力の根源たる紋章――胸元の蒼い宝石を輝かせ、敗北の可能性など夢にも思わない傲慢なる吸血姫が一歩踏み出す。
 “最強”への反証を、此処に示せ。
花咲・翁
敵のUCをあえて受け、地獄で鍛えた【激痛耐性】で耐え、互いの腕に【運命の黒い枷】を嵌める。「・・・これで貴様の機動力は封じた・・・」

そして、自身のUCを零距離で発動する。

「・・・貴様の強さは”汝は最強である”という思い込みからきている・・・だがそれは、傲慢な”罪の偽証”であり、我が下す判決は有罪だ・・・証拠にさっきの技で貴様は矮小な我を滅ぼすことができなかったのだからな・・・」

・・・彼女の思い込みの”強さ”か心の底で眠っていた真実から目を背けてしまった”弱さ”か、どちらが勝つかはすべて彼女次第・・・

アドリブ連携OKです。


ラモート・レーパー
「最強だろうがなんだろうがどうでも良い。最終的に僕が勝つから」
 どれだけ力があろうと、どれだけ知恵を持っていようと、身体が万全なければ意味はない。
即座にUCを発動し、敵の心臓に通常ではあり得ないほど心房が振動する心房細動を引き起こす。
異常な心房細動によって、即座に頻脈からの心不全や脳梗塞を引き起こす。これらが起きれば戦えるどころでなくなり、更に生死に関わる状態になる。
「そもそも本当に強いと言えるのは結果論だ。それもせずに最強だなんて言えないよ」



●1st Round ― 死獄の沙汰 ―
「最強だろうがなんだろうがどうでも良い」
 迫るエレーネを気怠げに見やり、ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)はどこか無感動に言い放つ。
「最終的に僕が勝つから」
「ぷっ……あははははは! ねぇそれ本気で言ってる? 身の程を知らないって滑稽ね!」
 【紅血の姫】――威圧的に血紋を輝かせ嘲笑するヴァンパイアに対し、ラモートは緩やかな仕草で手を突き出し虚空を握る。
 立ち塞がるようにエレーネの前に出たのは花咲・翁(魔天牢の看守長・f33065)。瞬時に繰り出される吸血姫の舞うような連撃は防御の上からも翁を貫き、ラモートに向けていた嘲笑も収まらない内にトドメとばかりに拳を振り被った。
「……っ――!」
「バカね。わたしのジャマしなかったらお連れのあとに死ねたのに!」
 吸血鬼の姫たる身に備わった怪力、今はダークセイヴァーを支配する“第五の貴族”の一人として誇るそれを存分に発揮する【夜天の鬼】による破滅的な一撃。
 凡そ生身の肉体を殴ったとは思えない音が響き、翁の身体が邸宅の床を数度跳ねて……エレーネは訝るように眉を顰めた。
 それは加減など無い必殺の破壊を受けて猶も原形を留める翁に対しての疑念であり、拳を叩き込む一瞬の間に嵌められた黒枷の意図を判じかねた困惑であり、その表情は次の瞬間には子供じみた不快混じりの嗜虐的なものへと変わる。
「……これで……貴様の機動力は、封じた……」
「死に損ないのくせに、ずいぶん強がるのね。いいわ、もうちょっと遊んであげるっ!」
 黒枷ごと振り回すように翁の身体を壁に、床に叩き付け――ようとしたエレーネの身体が不意によろめく。生じた一瞬の隙、黒枷を引き距離を詰めるのは翁の方。

「……貴様の強さは”汝は最強である”という思い込みからきている……」
「おかしいわ……このわたしが、こんな……!」
 黒枷の一端に自らを繋いだ男の声が陰鬱に耳朶を叩く。
 心臓が跳ねる。
 この猟兵を最初の連撃で仕留められなかった事も、とどめの一撃を受けて原形を留めている事も、自分の身体が思うように動かない事も、何もかもが有り得ない。
「……だがそれは、傲慢な”罪の偽証”であり、我が下す判決は有罪だ……」
「ちがうっ……わたしは! わたしの最強は、嘘なんかじゃ……!」
 動悸が激しい。身体に力が入らない。胸元の宝石、その蒼い輝きがくすんでいく。

「……ねぇ、そろそろ気付いたら? もう戦いどころじゃないだろうに」
 くぁ、と後方から欠伸混じりの声を上げたのはラモート。
「心臓の異常な心房細動。それが引き起こす頻脈からの心不全や脳梗塞。ハートはとっくに掴んでるんだよね」
 【心臓音(カウントダウン)】――対象の心臓に新たな洞結節を生やし、その操作権を捥ぎ取るラモートのユーベルコード。
 それはオブリビオンの超常の肉体をして気付かぬうちに動きを鈍らせ力を削ぐ致命の呪い。既に自身が術中に囚われているという種明かしは“最強”への妄信を更に揺らがせる。
「そもそも本当に強いと言えるのは結果論だ。それもせずに最強だなんて言えないよ」
「っ……この……!」
「ま、そういう事で。さっさと引導を渡してやれば?」
 肩を竦めたラモートの視線の先、じゃらりと鎖の擦れる音。
 吸血姫の怪力に幾度も打ち据えられ、それでもデッドマンの肉体は止まらない。
「……囚われたその姿……そして……矮小な我さえ滅ぼせていない事……それが貴様の罪の証拠だ……」
「だまりなさい! わたしは……このわたしが、こんな下等生物どもに……!」
「……判決を下す……これが我の閻魔断罪撃……!」
 紛いの“最強”は剥がれ、身体を内側から突き崩されたエレーネにそれを避ける術のある筈も無い。【閻魔断罪撃・改】――鎖に絡められた楔が突き立ち、オブリビオンの魂を捉える。
 その楔が与えるのは罪の重さに比例した痛み。
 その断罪が与えるのは偽りに応じた報い。
 罪深き傲慢なる吸血姫を襲った裁きは如何程のものだったのか。血色の失せた青白い顔が苦悶に歪む。
 “最強の紋章”は罅割れ――甲高い悲鳴が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ(サポート)
使用UCはPOW/WIZの内でお任せ。

態度口調、一人称までも気分次第、嘘吐きで気紛れなお調子者。
オブリビオンは喰らうもの、猟兵業は餌場で狩場。悪食で酒好き。
楽しい事と人の笑顔が好きで戦闘中も飄々と笑みを絶やさない。
敵に対しては嫌味や挑発もよく吐く。

※妖孤だが耳と尻尾は晒さない

・以下PC口調
接近戦と術を併用した戦い方が得意だねぇ、怪我とか気にしないタイプ。
敵へ言葉掛ける時は呪詛や誘惑目的が多いンじゃないかしら。
得意なのは懐へ飛び込んで『2回攻撃/傷口をえぐる/生命力吸収』の流れ、負った傷分喰らってやるわ。
自分の価値観が一番ダケド、公では公序良俗には反しないようにしてるヨ。
敵を喰らう事以外は、ネ。


音駆螺・鬱詐偽
ちょ、ちょ、ちょっと、なんで私はこっちに逃げ込んでいるのよ。
これじゃあ、私、ヴァンパイアと戦わないといけないじゃない。
うう、やっぱり最強を名乗るヴァンパイアとの対決企画が組まれてる。
はぁ、プロデューサー仕事が早すぎよ。

最強ね、私は最凶だわ。
本当ついてないわね。
えっと、最強で不死の王ね。
でも、自身のユーベルコードで自身の命を代償にしないといけないのに不死なのかしら?
下僕たちの命を使えばいいって、その下僕たちは私達の侵入を防ぐために命を代償にしたユーベルコードを使っていたから、多分もう死んじゃっているわよ。



●2nd Round ― 鬱詐偽さん死闘の巻 ―
「ちょ、ちょ、ちょっと、なんで私はこっちに逃げ込んでいるのよ……」
 正面には悠々と迫るエレーネの姿、吸血姫が一歩進む間に音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は二歩、三歩と後ずさる。
「……これじゃあ、私、ヴァンパイアと戦わないといけないじゃない……」
 YES☆ と肯定を示したのは【グッドナイス・ブレイヴァー】の動画撮影ドローン。配信先のキマイラフューチャーでは最強を名乗るヴァンパイアとの対決企画が組まれ、ファンたちは鬱詐偽の活躍を今か今かと心待ちにしている。
「まーまー、今回は流石に助っ人も付いてるからガンバレ?」
「その助っ人さんはなんで後衛の私より後ろで見守ってるのかしら……」
 励ますように笑うコノハ・ライゼ(空々・f03130)はワインなど嗜んで観戦の構え。気付けばエレーネまでもが興味深そうにドローンを眺めていた。
「ふぅん……? このわたしを映そうなんて不敬も極まるけれど。いいでしょう、最強のわたしに逆らったおバカさんの末路を見せつけてあげる!」
 存在を知られた以上は最早隠れる意味もなく、やけに乗り気なのは強大な力を持ちながらこれまで地底世界に隠れ潜んでいた反動か。
 【不死の王】――芝居がかった仕草でエレーネが舞えば、その影から不浄を纏う膨大な魔性の群れが溢れ出し、猟兵たちへ一斉に襲い掛かった。

「最強ね……私は最凶だわ……本当、ついてないわね」
 知覚を研ぎ澄ませる事で波濤の如くに押し寄せる魔性の流れを見切り、咎人の枷を振るって叩き落とす。
 状況は劣勢。大味な攻撃で叩き潰そうとするエレーネの慢心と鬱詐偽の決死の抵抗、視聴者の声援が合わさる事で辛うじて拮抗しているような状況が続く。
「というか、余裕あるなら手伝ってよ助っ人……!」
「まーまー、もうちょっと頑張りナ? 今回の主役は鬱詐偽ちゃんでしょ?」
 頼みの綱の助っ人はと言えば一対のナイフで危なげなく不浄の眷属を捌きながら猶も静観。距離を取って相対するコノハとエレーネ、戦況は膠着するかのように見えた。……その中間では魔性の渦中に呑まれた鬱詐偽が絶賛絶体絶命ではあったが。

「えっと、最強で不死の王ね……でも……」
 苛烈な猛攻の中、耐え凌ぐ事に意識を集中させる。助っ人の事は一度忘れた。そう――耐えなければならない時間は、きっとそう長くはない。
「自身のユーベルコードで、自身の命を代償にしないといけないのに不死なのかしら?」
「……へぇ?」
 くるくると踊っていたエレーネは耳敏く鬱詐偽の声を聞きつけ、嗜虐的に口の端を釣り上げた。
「下僕たちの命を使えばいいとしても……その下僕たちは私達の侵入を防ぐために命を代償にしたユーベルコードを使っていたから、多分もう死んじゃっているわよ」
「そうねぇ。ふふ、よく考えたじゃない?」
 鬱詐偽の推察を聞いたエレーネは白々しい拍手を鳴らしてみせる。この時点で鬱詐偽的には嫌な予感がとめどないのだが、だからと今から打てる手はあまりに少ない。
「ざんねんでしたー! だってわたし、最強よ?」
「……説明に、なっていないわ」
「つまりぃ、生命力も無尽蔵。使い魔眷属出し放題ってコ・ト♪」

 僅かな勝ち筋は潰え、状況は詰みと言っていい。
 勝利を確信したエレーネと無邪気に鬱詐偽の逆転勝利を信じる視聴者ばかりが盛り上がっている。
 つまり――
(――今が最大のチャンスって訳だネ?)
 空々の妖狐が、動く。

「なぁお嬢ちゃん。勝利の美酒代わりにこんなのはどうだイ?」
「あら、なーに?」
 ユーベルコード【焔宴(ゴチソウ)】――召喚したフライパンに手慣れた動きで蒸留酒を空け、身動きさえ儘ならない程の火炎と為して魔性の眷属を焼き払う。
(お行儀が良いのは仮にもお姫様だからこその弱点ってヤツかしら?)
 猛威を振るう超常の火炎をして痛打になり得ないのは紋章の力を万全に纏う第五の貴族の強靭の証左と言えるだろう。
 だが……供物という体裁で振る舞われたそれを、容易く喰らってしまえるなら。素直にそれを味わう吸血姫の動きは止まり、無尽蔵の軍勢は補充される事無く途絶える。
「チャンス到来だ。主役らしく決めなよ鬱詐偽ちゃん?」
「わ、分かった……わ!」
 ドローンから響く一際強い歓声が満身創痍の身体に力をみなぎらせる。背を押されるままに飛び出し渾身の力で咎人の枷を一閃。スコンと小気味の良い音が響き、鋼の一撃が吸血姫の頭部を捉えた。
「いやぁ傑作! すっかり侮ってた可憐なアイドルに良いようにやられた気分はどうだい?」
「なんですって……!」
「最強だなんだと虚勢を張っても実態はその程度って事サ。だから、ほら――」
 ダメージは微弱。だが、“その程度の攻撃”が通った事に意味がある。
 偽りの最強は失墜したとすかさず煽る。その言葉がまた紋章の加護を曇らせる。
「――この通り。アンタはもう喰われる側サ」
 イタダキマスは背後から。
 振るわれた一対のナイフは、吸血姫の柔肌を深く斬り裂いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カイム・クローバー
そりゃ楽しませてやれると思うぜ。アンタの最強とやらをぶちのめすぐらいには、な?
さ、始めるか。何処からでもどうぞ、お嬢様。(胸に手を当て一礼して【挑発】)

怪力から放たれる一撃。なら距離を空ければ良い。その距離はあっさり詰められるだろうが…【見切り】で挙動を見て躱しながら、万一喰らったとしても【オーラ防御】で被害を最小限。表情は常に余裕で笑って【挑発】。ま、要するにいつもの俺だ。
そうすりゃ、焦りが出る。あの言動…恐らく中身は子供。あんな力だ。半端に強くなっちまえば精神的には未熟にもなる。

何度目かの攻撃にカウンターでUCを合わせるぜ。
――言い忘れてた。その距離は俺も得意なんだ。残念だったな、お嬢様?



●3rd Round ― Joker Game ―
「そりゃ楽しませてやれると思うぜ。アンタの最強とやらをぶちのめすぐらいには、な?」
 不敵な笑みと共に、応じるように前に出たのはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。ヴァンパイアは思いもよらない事を聞いたとばかりに目を丸くし、次いで鈴を鳴らすようにくすくすと笑う。
「度胸だけはご立派なのね。その余裕がいつまで続くか、見せてもらいましょうか!」
「それだけじゃないって事を教えてやるよ。何処からでもどうぞ、お嬢様」
 得物を手に取る事もしない。胸に手を当て慇懃に一礼するカイムの懐へ、エレーネは一足飛びに距離を詰める。

(相手の札はシンプル、だからこそ対策も分かり易い)
 吸血姫の疾駆に合わせバックステップ。更に側面へと身を躱そうとするカイムだが、紋章の強化を受けた“第五の貴族”は身体性能のみで強引に間合いを踏み潰す。
 速度一つ取っても脅威と言う他無い力業だが、その程度の不利は想定内。
「さぁ、這いつくばりなさい!」
「お生憎、俺はそんなに安かないぜ?」
 ある意味では最初にして最大の難関。
 相手の動きに合わせた後退で時間を稼ぎ、全神経を集中させて視線を凝らす。天性の戦闘勘から繰り出される最大効率の一撃、その初動を見極め軌道を読み切る。
 ――ひゅう、と軽快な口笛の音。
 隕石の衝突にも匹敵する拳を紙一重に躱し、ダンスのエスコートめいて手を添える事で追撃をも封じてみせたカイムの表情が常通りの不敵な笑みを崩す事は無い。
「このっ……なまいき!」
「大人の余裕ってヤツさ。ほら、もう終わりか?」
 力任せに振り払う動きに逆らわず受け流し、敢えて隙を作る事で攻撃を誘導。鍛えた力と磨いた技術、その粋を凝らして圧倒的な暴力を捌いていく。

(見たところ子供の癇癪。ま、地底に引き籠ってる黒幕気取りに実戦経験なんざそうそう無ぇか)
 更には紋章の齎す不条理なまでの力があれば、まず真っ当な勝負になどなり得まい。
 それは戦闘経験の差という隙であり……そのアドバンテージを活かすだけの力量がカイムにはあった。
 幾度目かの後退。あしらわれ続けたエレーネの追撃は次第に精彩を欠き、しかし彼女は未だそれに気付かない。
「あぁ、もう! ザコはザコらしく、さっさとやられればいいのよ!」
「おいおい、最強なんだろ? これくらいで泣きべそかいてちゃそこらのお子様と変わらないぜ?」
「うるさいっ! ちょこまか避けさえしなかったら、あなたなんか!」
「――言い忘れてた。その距離は俺も得意なんだ」
 命中すれば人間の身体など微塵に砕いて余りある【夜天の鬼】の一撃、躱して前に出たカイムの手中に黒銀の炎が煌めく。
「ぇ――」
「聞こえるかい? これが、死神の嘲笑だ」
 顕現せしは神殺しの魔剣。咄嗟に防ごうとする身体の反射と状況に追いつかない意識、ちぐはぐな吸血姫に対処する術のある筈も無い。
 【終末の死神(エンド・オブ・ジョーカー)】――切札はカイムも握っていたという話。
「残念だったな、お嬢様?」
 禍々しい斬撃の軌跡からは神をも殺す邪神の力が滲み出し、宣言通り“最強”は此処に正面から打ち砕かれたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『深淵に沈みし騎士』

POW   :    蝕まれし聖光の剣
【聖剣の力を解放し、極光放つ聖剣のなぎ払い】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を崩壊させながら深淵が広がり】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    闇に翳る残光
レベル×5本の【破魔の光】属性と【深淵の闇】属性の【朽ちた聖剣から剣閃】を放つ。
WIZ   :    今は歪みし聖裁
【触れたすべてを蝕む深淵の闇】が命中した対象に対し、高威力高命中の【闇に蝕まれた者を滅する聖なる光】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルトリンデ・エーデルシュタインです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●“最強”の証明
「うそ……うそよ、ありえない……こんな……っ! だってわたしは、最強で……最強じゃなきゃ……!」
 致命傷を受けたエレーネ、その胸元の蒼玉が黒く染まっていく。
 最強の紋章は失墜し、吸血姫の身体から“第五の貴族”の強大な力が喪われていく。
「っ、ぁ……だめ、出てこないで……! わたしは――ぁ、ぁあ、いやぁぁあああ!?」
 酷く怯え取り乱すヴァンパイアの姿が、不意に内側から張り裂ける。
 ある種の脱皮めいた現象と共に現れたのは深淵の闇に蝕まれた黒鎧の騎士。

「……力なド幻想……正義ハ欺瞞……意思サエ虚構に過ギぬ……」
 罅割れた声を響かせるのは鎧の主ではない。
 聖光の騎士は最早がらんどうで、抜け殻と化した存在を侵蝕し尽くした闇が破壊衝動の儘に獲物を求めている。
 ――否。
 纏わりつく闇そのものが滅びであり、ただ在るだけで世界を殺す災厄だった。
 胸元に残った暗黒の宝玉こそは“無力の紋章”。
 万象一切は無為であり、故に唯々滅び朽ち果てるのみ。
 これに抗わんとするならば――
 ――“最強”を以て、その無力を打ち払え。


―― WARNING!! ――
◆エネミー
【深淵に沈みし騎士】

◆紋章
【無力の紋章】
 それは武力、知力、意思力、ありとあらゆる“力”を否定し著しく減衰させる。

◆攻略条件
【自身の“最強”を信じる事】


※MSより
“無力の紋章”の効果により、この戦いでは猟兵の全能力が極端に弱体化します。
 エネミーに通用するのは自身の最も強く信じる要素一つ(例:鍛え上げた武術、不屈の意思力、大切な人との絆など)のみ。
ただし攻撃や防御など、その要素一つを用いた行動を成功させ“最強”を証明する事で紋章の呪縛を跳ね除け真っ向から戦えるようになる、というのが大まかな流れ。
今シナリオもいよいよ最終決戦、皆様の健闘をお祈りしています。
ラモート・レーパー
「身の丈に合わないものを使うからだ……天命は見えた。今こそ狩る時」
 真の姿を解放する。姿は散弾銃を構えた怪物。
人はそれをオブリビオンの一体【狩の女王】と呼ぶ。
我は最強である必要はない。
万物に始まりがあるように終わりもある。
我は生けるものの終わりである。
ただそれだけだ。
「いかなる災を耐えようと、いかなる害から逃れようと我に遭わぬ術はない」



●1st Round ― レゾンデートル ―
「全てハ……無意味……故、に……全テ…………滅ビヨ……!」
 遍く力の一切を否定する“無力の紋章”がもたらす呪縛、そして深淵に呑まれた聖剣の薙ぎ払い――【蝕まれし聖光の剣】を受けた小柄な羅刹の身体が消し飛ぶ。
 地形さえ崩壊させる一撃……戦場を侵蝕する深淵、その上にいつの間にか散弾銃を構えた怪物が揺蕩っていた。
「身の丈に合わないものを使うからだ……天命は見えた。今こそ狩る時」
 それは狩の女王、猟兵ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)が備えた真の姿の一つ。
対する騎士は何らかの感慨を示す事も無い。無感動に再び剣を構え追撃を放とうとする。
「……無為……何一ツ、変わラぬ……変エられヌ……」
「確かに、汝の結末は変わらんと言えような」
 未だに紋章の呪縛は衰える事無く、発揮できる戦闘力は本来のそれとはまるで比べ物にならないだろう。だが、真の姿を解放したラモートの超然とした態度が罅割れる事は無い。

「――我は最強である必要はない」
 距離を詰める騎士へと緩やかに銃口を合わせる。
「万物に始まりがあるように終わりもある。我は生けるものの終わりである」
 名を呼ばれる事無き概念、人により権能を与えられた者、課せられた役割の執行者。
 果たすべき意義がある。今も猶こうして存在する事、彼女にとってはそれ自体が即ち務めを為せる事の証明に他ならない。
「ただそれだけだ」

 無力の紋章、その呪縛は揺らがない。
 数多の超常を操る猟兵、オブリビオンを含めてさえ容易く覆せるものではない。
 だが――“そんな事”にどれ程の意味があるのか。
 引鉄は引かれた。

「ぐ、ガッ……!」
「いかなる災を耐えようと、いかなる害から逃れようと我に遭わぬ術はない」
 蝕まれし聖剣が二度振るわれる事は無く。
 零距離より放たれし【マスターゼロ】、全てを無に帰す弾丸が紋章を撃ち抜いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
(前髪を抑え笑い出す)皮肉なモンだな。“最強”をぶちのめす為に俺達が来たってのに、求められるモンが今しがたお嬢様から取り上げた“最強”だってんだからよ?けど……好きだぜ、こういうの。

良いぜ、俺の最強ってやつを証明してやるよ。
剣閃は喰らう。【オーラ防御】での軽減と…UCによる超強化。身体能力の上昇と並外れた耐久力。
俺が証明する“最強”は強化された肉体でも、猟兵トップクラスの腕でも、神をも殺す得物でもない。『信念』と『誇り』と『覚悟』。
アンタら化物共をぶちのめす為の、一人の人間としての想いさ。
――ああ、ついでに。猟兵一のイケメン顔も、俺の最強の一部に加えといてくれ。(ウインクしながら【串刺し】)



●2nd Round ― 怪物を討つ刃、その名は ―
 変貌したオブリビオンを中心に、世界そのものを枯死させるような虚無が溢れ出す。
 “無力の紋章”が齎す、ありとあらゆる力を否定する呪縛。絶望的な窮地に直面し、前髪を抑えたカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)はその肩を小さく震わせる。
 さしもの彼も臆したか――まさか。常のように不敵に、そしてどこか愉快そうに、その口元に浮かぶのは紛れもない笑みの形。
「皮肉なモンだな。“最強”をぶちのめす為に俺達が来たってのに、求められるモンが今しがたお嬢様から取り上げた“最強”だってんだからよ?」
 神殺しの魔剣を手に、正面から騎士を見据える。深淵に沈みし騎士が朽ちた聖剣を振り被る。纏わりつくような無力の重圧を感じながら、望むところだと前に出る。
「けど……好きだぜ、こういうの」
「……無為……無駄……無力……そレコソ、真理……抗う術ナド……アるもノカ……!」
「良いぜ、俺の最強ってやつを証明してやるよ。来な!」
 【闇に翳る残光】――破魔の光と深淵の闇。相反する属性を宿す膨大な剣閃は雨に例える事さえ生易しく、まさしく波濤の様相を呈してオーラの障壁ごとカイムの姿を呑み込んだ。
 鮮血が散る。ただでさえ“無力の紋章”の影響下、破壊の奔流が過ぎ去った後には肉片一つさえこの世に残る事は無いだろう。
 故に。
「――……ッ!?」
 強く地を踏みしめる足音、それを感じ取った騎士の纏う闇が驚愕するように揺れる。

「……俺が証明する“最強”は強化された肉体でも、猟兵トップクラスの腕でも、神をも殺す得物でもない」

 人であろうとする『信念』。猟兵であろうとする『誇り』。力を背負う『覚悟』こそが――【反逆の意志(リベリオン)】。

「アンタら化物共をぶちのめす為の、一人の人間としての想いさ」

 再構築されたオーラの障壁が光闇の剣閃を受け止める。魔剣一閃、黒銀の炎纏う斬撃が進む道を切り拓く。
 踏み込みは更に力強く。最早“無力”が彼を阻む事は叶わない。

「……人間ノ、心……そンナものガ……無力に打チ克ツ、最強ニ至ル……等ト……ッ!?」
「――ああ、ついでに」
 駆け抜ける姿は雷光にも似て、遂にその刃は“無力の紋章”を刺し貫く。
「猟兵一のイケメン顔も、俺の最強の一部に加えといてくれ」
 幕引きはキザなウィンクと共に。
 最強の証明――叛逆は此処に成った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

音駆螺・鬱詐偽
ちょ、ちょっと、なんかヤバそうなのが出てきたんだけど、アレとも戦わないといけないわけ?
さっきだって、私一人だったら絶対負けていたわよ。
それにこの無力の紋章だっけ?
これのせいで力まで抑えられて勝ち目なんてないじゃない。
元々弱い私をもっと弱らせて何がしたいのよねえ。
それにあんな姿をしていて聖とか光が属性って、私と相性最悪じゃない。

でも、こうして不満をぶちまけていると力が湧いてくるのよね。
私の真の姿は陰湿・根暗・不幸が売りの生粋の闇属性キャラよ。
誰にも負けない被害妄想でリアライズ・バロックを使うわ。

ふぅ、思いきりネガっちゃったけど、私、番組を続けられるのかしら?



●3rd Round ― 無力にして最強 ―
「ちょ、ちょっと、なんかヤバそうなのが出てきたんだけど、アレとも戦わないといけないわけ? さっきだって、私一人だったら絶対負けていたわよ……!」
 音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)の眼前ではつい数分前まで“最強”の吸血姫であったオブリビオンがフシュウウウウウ……と深淵の闇を蠢かせている。
 その胸元に収まった暗黒の宝玉が脈を打つたびに鬱詐偽を襲うのは全身の血液と魔力を抜き取られるような虚脱感――即ち“無力”の呪縛。
「それに、この……無力の紋章だっけ……? これのせいで、力まで抑えられて……勝ち目なんてないじゃない……」
 極め付けに今回も単騎である。死ねと仰る?
 窮地であればある程その逆転劇に期待して盛り上がる視聴者を他所に、鬱詐偽は遂に立つ事も儘ならなくなり片膝をつく。
 深淵に沈みし騎士が彼女の様子に頓着する事は無い。嘗ての意思も理性も喪失した抜け殻に、無力に囚われた相手へと手心を加えるような選択肢は存在しない。
 がしゃりと鎧が硬質な音を立て、オブリビオンが一歩踏み出す。
「元々弱い私を、もっと弱らせて……何がしたいのよ……ねえ。それに、あんな姿をしていて……聖とか光が属性って、私と相性最悪じゃない……」
 吐き出す恨み言は留まるところを知らず、そんな鬱詐偽へと騎士は無慈悲に手を翳す。
「……遍ク一切……無意味……なれバ……消エ失セよ」
 【今は歪みし聖裁】――全てを蝕む深淵の闇、そして闇に蝕まれた者を滅する聖光から成る凶悪な二段攻撃。
 避ける力は無い。受ければ如何程の痛苦を刻まれ滅ぶ事になるか。生産性の欠片も無いネガティブな憶測が走馬燈のように駆け抜け、肥大した被害妄想が恐怖心のみを煽り立てる。
 漆黒より猶昏く、迸った闇が鬱詐偽へと迫り……届く事無く阻まれた。

「……でも……こうして不満をぶちまけていると……力が湧いてくるのよね」
 数多に実体化したそれは名状し難き怪物。
 清浄でなく、高潔でなく、闇にも染まらぬ程どす黒く。間髪を入れず放たれた聖光を受けたそれは飛び散り、しかし絶える事無く増殖し続ける。
「私の真の姿は……陰湿・根暗・不幸が売りの……生粋の闇属性キャラよ。被害妄想なら……誰にも、負けないわ……」
 勝利宣言などと言うような立派なものではない。すっかり板についた自虐であり、哀しいかな客観的事実でもある。
 そう在れと定められ生み出された音駆螺鬱詐偽というバーチャルキャラクターの原点。
 故に揺らがない。
 無力に苛まれようと変わらない……否。“弱らせる程に強くなる”、言葉遊びめいた事象の逆転。
「……不明……不可解……そレは、なンダ…!?」
「これが、私の無力……私の“最強”」
 漸く脅威を認識した騎士の猛攻も最早状況を覆すには遅過ぎた。
 今にも倒れ伏しそうな身体で腕を持ち上げ、精一杯の虚勢と共に標的を指さす。
「……行きなさい……バロックレギオン……ッ!」
 その名以外に形容する言葉を持たぬ、定義されざる異形の存在。85を数える軍勢が深淵に沈みし騎士へと襲い掛かり、オブリビオンを叩きのめしていく。

「……ふぅ……思いきりネガっちゃったけど。私……番組を続けられるのかしら?」
 ふと我に返った鬱詐偽の呟き。
 その答えは戦場からの帰還後、歴代企画でも屈指のファンからの反響という形で示される事になる。

 ……そのせいでプロデューサーからの無茶振りは更に加速する事になったとか、ならなかったとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花咲・翁
「・・・僕が望むたった一つの人間らしい願いのためなら・・・たとえ正義や最強の存在であっても、例外なく罪人を刈り取る”死神”となろう・・・」

真の姿を解放する。姿は獄炎と死のオーラを纏い、大鎌を携えた悍ましき死神。

「深淵に沈みし騎士」を聖剣ごと無数の鎖によって捕縛し・・・

「・・・哀れな罪人よ・・・我が貴様の”死”だ・・・」

・・・断罪のギロチンを振り下ろすように罪人の首を魂ごと刈り取った・・・



●4th Round ― ある死神の第一命題 ―
「全テ……全テニ意味ハ無く……価値は無ク……故に……全テ……無へと還レ……!」
 溢れ出す深淵の闇と呼応するように“無力の紋章”が脈を打つ。
 一切の力、悉くを否定する呪縛。花咲・翁(魔天牢の看守長・f33065)もまた、自らを構成する全てが朽ち果てるような感覚に襲われる。
「……だが……」
 棺を杖代わりに地面へと突き立てる。揺らぎかけた身体を強引に支える。
 ――如何な正義、如何な最強、その全てを平らげる無力そのものが相手だろうと。
「……僕が望む……たった一つの、人間らしい願いのためなら……」
 己の原点を強く意識する。
 他の何を喪い、否定されようとも決して譲れない唯一つ。
 霞む目で眼前のオブリビオンを睨み、蘇った命を燃やすように言葉を吐き出す。
「……僕は……例外なく罪人を刈り取る“死神”となろう……!」

 陽炎。揺らめく獄炎が空間を歪め、死のオーラが戦場を圧する。
 その手に携えるは存在の象徴たる大鎌。
 呪縛の只中にあって朧に佇む悍ましき死神――それが翁の“真の姿”。

「聖剣ヨ……!」
 深淵に沈みし騎士が吼える。
 全ては無意味であり、無価値なのだ。己が存在意義に懸けて、その真理を否定する者を許す訳にはいかない。
 【蝕まれし聖光の剣】――朽ちた聖剣が仮初の光を取り戻す、その刹那。
「……縛れ」
 陰鬱さの増した声と共に死神が指を指す。
 虚空より生じるは大罪の縛鎖、魂さえ逃さぬそれが十重二十重に絡みつく。
 稼げた時間は一瞬。ユーベルコードを励起する余力も無く、故に文字通りの全身全霊を以て勝機を奪い取る他に選択肢は無い。
「……哀れな罪人よ……我が貴様の“死”だ……!」
 オブリビオンは力尽くに拘束を引き千切り聖剣を薙ぎ払おうとする。
 僅か数秒、その絶対的な遅延の埋められる事は無く。
 ――断罪のギロチンの如く、死神の鎌は振り下ろされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
まだ生きてやがるのか。流石は騎士様、タフじゃねぇか。
けど、そろそろパーティもお開きだ。

俺のもう一つの“最強”を見せるぜ。
ギャンブルじゃ連戦連敗。カードで財布が空になったのは一度や二度じゃない。そっぽを向かれる事も多い。――だが。いざって時には女神の方からお誘いを受ける男さ、俺は。
何の事か分からねぇって?『幸運』の話さ。

賭けだ。無力の紋章が俺の幸運を上回れば、俺はあっさりあの剣に貫かれる。力は幻想、正義は欺瞞、意思さえ虚構、なら幸運は?試してみようぜ。(幸運を呼ぶ金貨を弾いて、両手を広げる)
俺が賭けに勝てたら、二丁銃で全弾紋章に叩き込む。
言ったろ?普段は気紛れな女神さまも慣れてくれば可愛いモンさ



●Final Round ― Kiss of Fortune ―
「グ……オオオオ……ッ!」
 傷が深くなる事も厭わず強引に振り抜かれる斬撃、後方に下がれば飛翔し追随するそれに両断されていただろう。
 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は逆に前方へ身を投げ出す事で交錯するように斬撃をすり抜け、呼吸を整えてオブリビオンと相対した。
「まだ生きてやがるのか、流石は騎士様タフじゃねぇか。けど、そろそろパーティもお開きだ」
(見たところそれも虫の息。最後の悪足掻きって奴か?)
 数多の傷を負ったオブリビオンが骸の海へ再び沈む時はもはや間近。だが……否、だからこそ、と称するべきか。
 無力の紋章は激しく脈打ち、深淵の闇もまたこれまで以上に激しく猛り狂っている。

「俺のもう一つの“最強”を見せるぜ」
 リスクなど百も承知、その上でふてぶてしく笑みを作る。
 嵐の前の静けさにも似た束の間の睨み合い、空気ばかりが痛い程に張り詰める。
「ギャンブルじゃ連戦連敗。カードで財布が空になったのは一度や二度じゃない。そっぽを向かれる事も多い。――だが。いざって時には女神の方からお誘いを受ける男さ、俺は」
「…………?」
 此処に在る騎士の形は深淵の闇に蝕まれた抜け殻、意思も理性も失った傀儡には戦場から離れたエピソードを解する術を持たない。或いは生前の騎士が賭博などに目もくれぬ堅物であれば、やはり首の一つでも傾げただろうか。
 未知を前にしての僅かな停滞、困惑と称するには無機的な空白の間に用心深く間合いを測る。その隙は数秒にも満たず、騎士は再び聖剣を振り被る。

「賭けだ。無力の紋章が俺の幸運を上回れば、俺はあっさりその剣に貫かれる」
 【闇に翳る残光】――放たれるは数多の剣閃、光闇から成る破壊の奔流。対するカイムは回避はおろか、防御する素振りさえ見せない。
「力は幻想、正義は欺瞞、意思さえ虚構」
 騎士の零していた譫言を、戯れるように口ずさむ。
 いつの間にか手にしていたのは幸運を呼ぶ金貨、元は騙されて買ったそれを宙に弾く。
「――なら幸運は? 試してみようぜ」
 不敵に笑いながらも視線は鋭く、眼前に迫る幾百もの剣閃を受け入れるように両手を広げる。
 轟音。
 空間を蹂躙した剣閃は止まる事なく邸宅の壁を粉砕し、傷一つ増やす事なく余裕の笑みで切り抜けたカイムの手には魔犬オルトロスの名を冠する二丁銃。
 【狡猾なる見切り(トリック・スター)】――動体視力による見切りの極致、果たして騎士にそのタネを見破れたものか。
「フィナーレだ、遠慮なく受け取りな!」
 剣を引き戻す暇も与えないクイックドロウ。目にも止まらぬ超速の連射は、遂に暗黒の宝玉を打ち砕いた。

 糸の切れた人形のように崩れ落ちた騎士が骸の海へと還っていく……その光景を横目にキャッチした金貨の面は表。
「言ったろ? 普段は気紛れな女神さまも慣れてくれば可愛いモンさ」
 軽く金貨に口づける真似をして身を翻す。
 真上から降り注いだ瓦礫を軽く躱し、依頼を果たした便利屋は遂に崩落を始めた邸宅から帰還するのだった。


―― “第五の貴族” 吸血姫エレーネ/深淵に沈みし騎士、撃破 ――

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年05月02日


挿絵イラスト