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怨讐宿りし一矢の先に

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 夕日が差す山林に似つかわしくない、豪奢な衣服を纏った男。
 それは人間にあらず、人ならざる存在となったかつての戦国大名、そして今は猟書家となった今川義元が倒木に腰掛け物思いに耽っていた。
 思えば敗北は羅刹が手引きし、織田信長に討たれた桶狭間。
 そして骸の海より蘇り、羅刹を狙い里を襲うも都度、猟兵に阻まれ再び骸の海へと戻りし日々。
 羅刹、猟兵、猟兵、猟兵、猟兵、猟兵………!
 自らに敗北という二文字を刻み続けし存在を憎み恨み、怨念込めた矢を構え。
 赤き色彩に支配された集落臨み放たれるは仕留めの矢。
 木々の合間をすり抜け飛来す怨讐の矢は今川義元の怨念込めて、轟音と共に一つの家屋をいとも簡単に打ち砕く。
 平穏な日々を打ち崩す恐怖の一撃、悲鳴と共に羅刹達が飛び出して逃げ出すもそれを逃さぬとばかりに集落へと殺到するは赤き皮膚に金棒担ぎ、雄叫び上げて襲来する棍棒鬼の集団で。
 若き羅刹の青年が逃げ道を作るとばかりに槍を片手に躍り出て、棍棒鬼へと突き出すもその一撃を真正面から受け止めて。
 突き刺さった槍など大した傷ではないとばかりに槍掴み、柄ごと羅刹の青年引き寄せ子運棒の一撃にて打ち据える。
 悲鳴を上げる間も与えず青年はそのまま意識を手放せばあとはもう、一方的な蹂躙の始まりでしかない。
 圧倒的な力を得た鬼が様々な方向から集落へと殺到、手近な羅刹を見つけては襲い打ち据え、命を奪うべく突撃し。
 羅刹の悲鳴が、絶叫が上がると同時、再び放たれるは今川義元による仕留めの矢。
「猟兵、猟兵、猟兵、猟兵ィィイイイイイ!!
 来るならば来い、我が仕留めの矢にて貴様らの骸をこの地へと晒してくれよう!
 来ぬならばお主らが守ろうとする羅刹の民、それらが悉く骸と為り果て、新たな軍勢となると心せよ!
 我が盟友、武田信玄が魂宿し、鬼による羅刹狩りによってな!」
 咆哮と共に羅刹の里へと矢を放つ今川義元。
 圧倒的な武力によって蹂躙せんとする猛攻は夜闇が落ちる前にて終幕し、後には数多の骸とほんの少人数の羅刹が山へと逃げ込めたという現実だけであった。


「再び来まシタ、今川義元ガ相当アレな事になっていマス。
 羅刹の里を襲ッテいますノデ、被害が広がる前に何とかして下サイ」
 集まった猟兵を前にクラルス・フォルトゥナ(強化人間のスピリットヒーロー・f17761)が説明を開始していた。
 今回は猟書家である今川義元、その軍勢が羅刹の里に強襲を仕掛けているので速やかに羅刹の救援、そして軍勢の撃破が目的であるのだが。
「今カラ送り届けテモ、負傷者多数の状況でそこへの割り込みデス。
 羅刹の方は頑丈デスので多少の怪我は大丈夫でショウけど重傷の方は別、放置すレバ命の保障は無いデスネ。
 ただ鬼も一気呵成に攻めてきていマス、中途半端デハ此方も危険、割り切って戦う必要があるカモしれませんネ」
 普通に戦うならば支障はないであろうが、此度はすでに多数の負傷者が出ている状況、見捨てるのか助けるのか、の判断が必要とされるだろう。
 加えてこの集落を臨む場所からは今川義元が超遠距離より仕留めの矢を用い狙撃している状況、つまりは不用意に救助に動こうものならその時を狙い撃ちにされるという事でもある。
「タダ、前に比べて配下の動きガ雑デスネ。厳重に包囲シテ、徐々にすり潰すのデハなく集団デ一気に攻めかかっていマス。
 数と勢いデ叩き潰す、多少逃がしテモ構わないとイウ動きでショウ。
 力任せの戦い方、ソコを逆に利用デキレバ有利に立ち回れるのでしょうケド、そう上手くいくかドウカ……」
 単純な力任せに攻め立てる、それだけに憑依した武田信玄の力が使われていればいいのだが、百戦錬磨の戦国大名が工夫なき単純な罠にかかるとは思えない。
 憑装という形故に武将としての思考能力が落ちようとも、勘で避けてくる事は十分に考えられる、つまりはユーベルコードと道具、そして各々の技能をもって、複雑な策を用いるより他は無いという事である。
「何度も負けたせいカ、今川義元は相当キてマスネ。
 かなりキレていマスので戦う際は十分に注意シテ……ア、言い忘れていまシタ。
 羅刹の方は戦場周辺ノ地形を熟知していマス、上手く援護シテ、協力すレバ地形を利用するのは楽になりマスネ。
 デハ、そろそろ転送準備に入りマス」
 かなりキているという今川義元、その猛攻を如何にして掻い潜り鬼を討つのか。
 羅刹の協力を取り付けるにしても、既に攻め立てられている中でどういった手段で協力するのか。
 考えるべき事は多い中、クラルスは急ぎとばかりにグリモアを起動。
 数多の氷塊が浮かびつつ白き光が輝いて、猟兵たちを激戦区へと送り出すのであった。


紅葉茉莉
 こんにちは、紅葉茉莉です。
 今回は猟書家との戦闘シナリオ、今川義元再びです。

 戦場となるのは山中にひっそりと隠れて存在する羅刹の里とその周辺の山林。
 一章、二章ともに戦場となる地形を熟知した羅刹と協力することでプレイングボーナスになりますが、開幕時点で羅刹の負傷者が多数。
 また集落のいたるところから棍棒鬼の集団が力任せの襲撃を仕掛けている状況に加え、今川義元が超遠距離から狙撃を仕掛けてきています。
 協力するにしても強襲受けている状況を如何に立て直しつつ、相手に対応しながら協力するのか。
 また、最悪見捨てて自らの力で逃げてもらい、自分たちが派手に戦い耳目を集め逃がす援護をするのか、如何なる選択を行うのも自由です。

 オープニングにもあるように、敵は集落を完全包囲したわけではなく、様々な場所から一定数の集団で一気に攻め立てる形をとっています。
 完全に羅刹を殲滅できなくとも、力任せに勢いである程度の人数を殺害、オブリビオンの素材にする作戦のようです。

 シナリオは純戦闘、参加者の皆様を派手にカッコ良く、こだわり有るアイテムやユーベルコードの使い方があれば是非とも記載下さればその点を掘り下げて描写したいと思っています。
 しかし敵は強化され、またかなりキている状況。
 激戦必至の状況というシチュエーション、完全無傷は難しく被弾、負傷しながらも戦ったりすることもあると思います。
 一章、二章と続けて参加される場合は一章での被弾状況が二章にも反映されることがありますが、あくまで描写上です、判定には影響しません。
 無傷で一方的に敵を蹂躙する、といった事にはなりにくい描写を行いますので、そういった描写を望まれる方はご注意ください。
 どうしても被弾描写が嫌な方は、プレイング冒頭に『被弾なし』と記載いただければ被弾シーン無しの描写を行いますが、その際は被弾しながらも打ち合う、というシーンが無い分描写量が減少することをご了承下さい。

 では、ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。
 ご縁がありましたら、よき戦いをよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『棍棒鬼』

POW   :    鬼の金棒
単純で重い【金棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    怨念疾駆
自身の肉体を【怨念の塊】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    死武者の助太刀
【落ち武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御剣・刀也
負けが込んで大分来てるみたいだな。しかも既に侵攻されてる状況
いいね。負け戦こそ面白いってもんだ。勝ちが決まってる戦なんてつまらねぇ。負けそうな状況でこそ武勲を立てられる
さて、その為に鬼を斬って羅刹たちを助けるか

鬼の金棒を振り下ろしてきたら第六感、見切り、残像で避けるか、武器受けで力が乗る前に鍔迫り合いにして、カウンターで斬り捨てる
今川義元の攻撃にも注意し、相手の視界に長く入らないよう障害物の間をダッシュで駆けながら、羅刹を狙う鬼を斬る
矢は第六感、見切り、残像で避けるか、急所に当たらないようにする
「この程度の鬼じゃ俺は満腹にならねぇ。なぁ、今川義元、もっとヒリヒリした勝負をしようぜ?」


月舘・夜彦
【華禱】
今川は以前程の余裕はないようです
それより羅刹達を助けに向かわなければ
倫太郎、急ぎましょう

現地到着時に視力と聞き耳による周囲の確認
情報収集にて目視や戦闘音から鬼の位置を把握して戦闘
戦闘中の羅刹がいれば加勢

駆け出して接近、敵が複数居るならば抜刀術『陣風』
2回攻撃・なぎ払いも併せ周囲の敵を巻き込みながら一掃
戦闘の合間に羅刹が居れば弓が届き難い障害物のある方へ避難
負傷し動けないならば守りながら戦闘

今川の狙撃に警戒、仕掛けてきた際は同様に抜刀術の武器落とし
周囲を攻撃しながら矢も払い落す

尤も冷静を欠いた奴が狙うのは羅刹である倫太郎
彼が狙われるからこそ、私は敵を確実に倒し
羅刹達を助けなければならない


篝・倫太郎
【華禱】
……以前から私怨塗れだったと思うケドな
ま、猟兵への私怨が羅刹へのそれに勝ってンならやりようはある
往こうぜ

自力避難可能な羅刹に敵の進路を手早く確認
夜彦の情報と合わせて、避難経路を示唆

戦闘中の羅刹が居る場合はダッシュで接近
敵の間に割って入る
同時に範囲内の総ての敵を拘束術の鎖で攻撃と拘束
吹き飛ばしと衝撃波を乗せた華焔刀で羅刹から遠ざけるように攻撃
敵の攻撃はオーラ防御で防ぎ
以降の攻撃には生命力吸収も乗せてく
今川の援護射撃も同様に対処

動ける奴は負傷した奴に手貸して離れな

今川の攻撃は野生の勘を駆使して常時警戒
聞き耳も併用しながら、拘束術の鎖も使って射線をズラす

猟兵の羅刹を狙う度胸はねぇか、今川ぁ!



 轟音と共に家屋が崩れ、羅刹の悲鳴が木霊する。
 だがそれで鬼の猛攻が止まる訳もなく、無慈悲にも振り上げられた金棒が容赦なく振り下ろされたその瞬間。
 甲高き金属音が里の中へと鳴り響き、轟音と共に地表をえぐるはずだった鬼の棍棒が刀によって受け止められていたのである。
「いいね。負け戦こそ面白いってもんだ。勝ちが決まってる戦なんてつまらねぇ」
 振り下ろされた棍棒の先、鬼の一撃受け止めたのは不敵に笑う御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)
 負けが込んできた戦況、攻め込まれて守るべき場所が侵攻された苦境、その緊張感こそ堪らないとばかりに力任せに愛刀、獅子吼を振り上げて。
 押さえ込みにかかっていた鬼の金棒を跳ね上げて、倒れ動けぬ羅刹を抱え全速力で飛びのけば彼が立っていた場所へ飛来する仕留めの矢。
 間一髪で羅刹を救った刀也であったが危機的状況は相変わらず、されどその状況をも楽しむ彼にとっては眼前に立ちふさがる鬼も、また遠方より飛来する今川義元の矢も渇望満たす道具でしかない。
「あ、ありがとうござ……うわっ!?」
「物陰に隠れながら逃げな、不用意に顔は出すなよ? あと怪我人がいりゃ手を貸してやれ」
 危機的状況を回避、家屋の影に逃げ込んで。
 安堵と共にお礼を述べようとした羅刹を地面に放り投げ、逃げるように手早く言って刀也は再びその身を鬼と、そして今川義元へと晒すべく飛び出して。
 自分を追って走ってきていた鬼と鉢合わせ、此れ幸いと振り上げられた鬼の金棒が刀也向けて振り下ろされるが力任せの一撃、そして既に一度受けた身であるならば見切ることは容易い。
 複数の鬼が刀也へと殺到、次々と金棒を振り下ろしていくが。
 キィンと響いた打ち払いの音色を皮切りに、先ずは一撃、攻撃前にて軌道を逸らし。
 次なる鬼の金棒、その一撃が繰り出されるより早く刀也は鬼の脚部を蹴り飛ばし、その反動にて跳躍すれば目標見失った金棒は地面を砕き、抉り取る。
 周囲に飛び散る多量の土砂、それらが降り注ぐその瞬間。
 鬼の一撃を跳躍回避した刀也はしゃがみ目線だけを動かして、次なる攻撃を仕掛ける鬼はどれだと標的見定め全力疾走してきた鬼を視認、ならば次はその鬼だとばかりに飛び出せば、降り注ぐ土砂にて衣服が汚れることも厭わず急接近。
 鬼が金棒を振り上げた時には既に手遅れ、間合いに入った刀也が刀を真一文字に一閃すれば胴部に白き軌跡が走る。
 己が断ち切られたことを認識すらできぬ鬼がそのまま金棒を振り下ろそうと力を込めても断ち切られた体ではそれも叶わず、掴んだ金棒の重量と振りかぶった体勢、つまりは後方に重心乗せた姿勢が故に断ち切られた上半身が後方へとごろりと落ちて。
 どっと鮮血噴出して、鬼の一体はその場に倒れ、完全に息の根を止められていたのだが仲間が倒れたとて怯む事無く刀也狙い攻撃を継続。
 次々と繰り出される金棒の振り下ろし、それらを紙一重で避けながら包囲を突破せんと突き進む刀也であったが、最後に振り下ろされた鬼の金棒、それだけはかわす事は不可能で。
 咄嗟に横倒しに翳した刀と金棒が激突、強引な防御だったか完全にその勢いは止められず、刀也の左肩へと金棒の棘が突き刺さり血が滲むもそこで金棒の勢いは止められた。
「ふっ、惜しいな。もう少しで腕を砕く所まではいけたんだろうが」
 ギリギリと押し込まれる鬼の金棒、その力を受け止めながら刀也が呟いて。
 ほんの僅かに押し返し、真横に翳した刀を傾ければ鬼が押し込む力が刀身に沿って逃げる形となっていき。
 標的逃した金棒が刀身を滑り地表に叩きつけられ、前方へとつんのめった無防備な姿勢となった鬼を逃すような刀也ではなく。そのまま斜めに傾けた刀を逆袈裟に切り上げれば鬼の首が宙に舞う。
 包囲を突破、このまま反転しての攻撃と思ったがその刹那、身震いするような悪寒を感じ刀也が鬼の体に隠れれば、鬼の肉体貫いて地表へと突き刺さり、瓦礫と鬼の骨片をぶちまけるほどの衝撃を周囲に飛ばす大矢が突き刺さっていたのである。
 その一矢は今川義元が放った物、ほんの僅か反応が遅れれば貫かれたのは刀也であったものではあるも狙われた張本人にとっては自らを楽しませるスパイスで。
「この程度の鬼じゃ俺は満腹にならねぇ。なぁ、今川義元、もっとヒリヒリした勝負をしようぜ?」
 崩れた肉片となった鬼を足蹴に、そしてまた後方から迫る鬼へと背を向けて。
 傷ついた体にもかかわらず、挑発的に左手で自分を狙って見せよとばかりに仰いでいき、己が力を示すのであった。
 ならばその余裕を崩してやろうと再度、大矢が放たれたのは言うまでもない。

 轟音が鳴り響くも矢の着弾が見えぬ状況、即ち別の猟兵か、はたまた里の羅刹が狙われているのか。
 自分たち以外が狙われている内に事を進めるとばかりに里を走るは篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)
「……以前から私怨塗れだったと思うケドな」
「今川は以前程の余裕はないようです、それよりこの間に羅刹達を助けに向かわなければ」
 グリモア猟兵から聞いた今川義元の様子、それを思い出しながら倫太郎と夜彦が言葉を交わし、鬼に襲われる羅刹の元へと走っていた。
 遠目に見えるは崩落した家屋、そして闊歩する鬼の巨躯。
 犠牲者を生まぬようにと二人は目配せし合いつつ。
「倫太郎、急ぎましょう」
「だな。猟兵への私怨が羅刹へのそれに勝ってンならやりようはある、往こうぜ」
 急ぎ果たすは襲われし者の救助、鬼の駆逐と今川義元の矢をいなす3つの目的。
 急務となった負傷者の救助へと夜彦が駆ければ倫太郎は策ありとばかりに笑いつつ、先ずは羅刹の救助とばかりに二人が飛び込むは今まさに、鬼の金棒が振り下ろされんとしたその時で。
「た、たすけ……ひっ!? あ、あれ?」
「大丈夫か? 自分で動けっか?」
 鬼に追われ、転げまわって最早逃げれず。頭を抱えて体を丸めていた羅刹。
 次に来るはずの金棒による殴打、その衝撃がいつまでたっても訪れぬ事に疑問を抱き、震えながら顔を上げればそこには自身の前に立ちふさがり、腕を翳すだけで鬼の腕を、否。
 翳した腕より伸びる不可視の鎖、それによって腕だけでなく上半身を縛り上げ、その動きを封じていた倫太郎が立っていたのである。
 先ずは第一、襲われていた羅刹の命は寸でのところで守られたが状況は悪いまま、なにせ守るべき羅刹は一人ではないのである。
 続けざまに駆けつける鬼の集団、されどその襲撃は予想の範疇とばかりに新たな鎖を生み出して、迫る鬼へと伸ばす倫太郎。
「それ以上好きにはさせねぇ、縛めをくれてやる」
 グルグルと巻きつく鎖、仲間同士を繋ぎ合わせるように伸びた見えぬそれに縛られて、互いに引き合い動きが乱れた好機逃さず飛び込むは夜彦で。
 縛られた鬼達の前へと躍り出て抜刀、曇り無き刀身が夕日に煌き赤き光を宿していけばそれが攻撃の合図となる。
「全て、斬り捨てるのみ」
 カッと目を見開いて、次々と繰り出されるその斬撃。
 振るう腕の動きに合わせ、刀身の煌きが万華鏡のように変化して、それと同時に生み出された数多の斬撃が不可視の刃となって伸び。
 縛られた鬼達は回避も防御も出来ぬまま、その身へ深々と刀傷を刻まれていくのだが、それだけで倒れてなるものかとばかりに咆哮を。
 食い込んだ鎖によって、体が締め付けられる痛みも厭わず力任せに腕広げ、不可視が故に体に浮かぶ鎖の模様。
 正気かよ、と怪訝な顔を浮かべた倫太郎が見る前で鎖の拘束を強引に、耐久力以上の力を加えることにて引きちぎるようにして縛りを解くも、やはり負傷の上での解除は無理があったのだろう。
 縛りを解いたその瞬間、肩で息して金棒を杖にして、それでもなお標的とした羅刹と猟兵を倒さんと一歩踏み出す鬼達であったのだが。
「カーッ、やってくれんな。ま、ここは俺に任せてくれよ。
 あ、もし動ける奴を見たら負傷した奴に手貸して離れるように言ってやりな」
 鎖を千切られても余裕があるとばかりに倫太郎が取り出すは薙刀の華焔刀 [ 凪 ]であり。
 黒き柄に炎が如き模様を浮かべたそれを一振り、生み出された衝撃波が歩を進めようとした鬼を吹き飛ばし、夜彦と羅刹が逃げる道を作り出す。
 突然の事に理解が追いつかぬ羅刹であったが、倫太郎の言葉の真意、それを察した夜彦が羅刹持ち上げ走り出したのはその時であった。
「えっ、ちょっ、あんな場所に置いて大丈夫……」
「信じていますから、倫太郎を。それより、あちらのほうに民家は?」
「あっ、あっちは……3軒はあって、こっちはもう家が無いから誰もいない、けど鬼がそっちから来て……」
「わかりました、急ぎますよ!」
 倫太郎を置いて大丈夫かと羅刹が問うも、彼を信じていると返す夜彦。
 二人が言葉を交わしつつ、民家の場所や鬼の出現場所について情報を得ていく中で、鬼を前に立ち塞がり二人を追わせぬとばかりに得物構える倫太郎。
「どうした、猟兵の羅刹を狙う度胸はねぇか、今川ぁ!」
 恐らくこの集落での戦闘を見ている、そして猟兵を狙う今川義元に聞こえよとばかりに声高らかに叫ぶ倫太郎。
 その声は遠く、狙撃に徹する今川義元に届いたのであろう。
 耳に聞こえるは音速に迫る仕留めの矢、その飛来音であり。
 咄嗟に振るった薙刀が軌道を逸らすも倫太郎のすぐ後方に着弾、地表をえぐり飛び散る石礫が体にぶつかり、更には鬼が追撃とばかりに彼に迫る。
 だがそれこそ倫太郎の狙いであり、自身に狙いを集中させれればその分仲間が羅刹を逃がす時となる。
 次々と飛来する矢を避け、また鬼に追い立てられつつ傷つきながらも彼の顔には満足げな笑みが浮かんでいた。

 同刻、後方より聞こえる轟音にて倫太郎が鬼を、そして今川義元をひき付けている事を感じていた夜彦。
 命がけで時を稼ぐ倫太郎の思いを無駄にせぬとばかりに走る夜彦は、鬼が打ち崩す家屋を認め抱えていた羅刹を下ろし飛び上がり。
 一瞬にして間合いに入れば繰り出されるは数多の斬撃、無防備な後背よりその攻撃を受けた鬼はその身へ多数の傷が刻まれ、一瞬にして絶命を。
 突然の乱入者、それに動揺しながらも別の鬼が家屋の破壊、それによる羅刹の殺害から猟兵の排除へと方針転換。
 夜彦狙いその金棒を振り回すも身を屈めて彼は回避、そのまま懐へと飛び込んで突撃の勢いそのままになぎ払い。
 一撃加えたその後に、胴部を蹴って飛びのいて、家屋の中に居るであろう羅刹へと声をかけていたのである。
「鬼は私がひきつけます、動けるのならば急ぎ出て、矢が届かぬ丘の裏へと」
 命を狙う存在はここで食い止める、故に崩されし家屋など早く抜け出し仕留めの矢が届かぬ場所へと逃げるように促せば、負傷した羅刹を背負い、別の羅刹が飛び出して。
 先に夜彦が連れて来た羅刹がわかったとばかりに頷いて、逃げ出した羅刹に手を貸し走り出す。
 守るべき者がある戦い、故に不利ではあるもののだからといって見捨てる事はせぬ。
 そう覚悟を決めた夜彦が踏み込んで剣戟放てば、それを金棒で受け止め跳ね飛ばす鬼がいて。
 空中で一回転、体勢整え着地した夜彦狙い別の鬼が走り出し、またさらに別の鬼が逃げる羅刹を追う姿が見えればそれを止めるが先とばかりに刀を一閃。
 伸びる剣撃が羅刹を追う鬼を切り裂くも、それと同時に金棒の一撃を受けた夜彦は吹き飛ばされ。
 されど一撃で倒れるものかと受身を取って地表を転がり立ち上がり、再び刀を構える彼を倒さんと鬼が殺到。
 しかし羅刹を守るという目的は達せられ、彼は思う存分その剣技を鬼へと披露する事になるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

鹿村・トーゴ
さすが怨霊
えぐい事する
羅刹の存在すら許さねーって?
ならオレは何度でも抗ってやる

即UCで強化
代償の流血はそのまま接近戦
血の匂いで敵を釣り2,3体纏めてでも対応
右腕を黒曜石で鉤爪状に覆い強化した膂力で伸びる敵も裂き千切る【カウンター/暗殺】
間近から【念動力/追跡】で操る流血やクナイと手裏剣を敵の目に【串刺し】視界を奪い且つ常時【武器受け/激痛耐性】で被弾に備え
激昂せず冷静に怒りを攻撃へ転化

>里の羅刹
軽傷や弱者は土地勘を頼りに自力逃亡を期待
死ぬ気で抵抗する羅刹と共闘
追い詰め可能な地点確認する
+致命的な敵攻撃から【かばう】

>今川の矢
【暗視/野生の勘/情報収集/聞き耳】活用
直撃避け鬼を肉盾にも

アドリブ可



 鬼と猟兵の衝突、それは里の複数個所にて発生していた。
 ここでもまた、羅刹を探し突き進む鬼と相対する猟兵が戦闘を始めていたのである。
「さすが怨霊、えぐい事する。
 羅刹の存在すら許さねーって? ならオレは何度でも抗ってやる」
 標的である羅刹を探し、里の中央目指す鬼を認めた鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)が言葉を紡げば言うや否や、体に宿るは妖怪、悪鬼、幽鬼といった物の怪で。
 ドクンと鼓動が強まれば身体能力が瞬時に上昇、されど反動で瞳や皮膚、体中から血液滲んで痛みをトーゴに伝えるがそれも気にせず鬼の前へと躍り出る。
「オオオアアアア!」
 飛び出した存在は羅刹、猟兵という違いはあれど鬼が狙う存在に変わりなく、命知らずな羅刹が飛んで火に入る夏の虫とばかりに出てきたと鬼が金棒振り下ろす。
 されどその金棒が直撃する直前に、トーゴの翳した右腕が黒曜石に覆われた異形の形へ変貌、金棒を受け止めれば溢れんばかりの膂力で押し返し。
 ぐっと持ち上げ鬼の胴部に隙が出来ればすかさず繰り出すは左手に握ったクナイ、深々と突き刺したと思えば次の瞬間、クナイを手放し懐へと手を入れヒュッと振るえば飛び出したのは二つの手裏剣。
 風切音がほんの僅かに鳴り響けば、その手裏剣は鬼の顔面、目へと突き刺さり視力を奪い取っていたのである。
「ふぅうう、まず一体。さあ、ここに羅刹がいるぜ、狙ってくるのか!?」
 体中から来る痛みを押さえ込み、息を整え冷静さを保ちつつ。
 鬼の集団へと羅刹がいるぞと宣言し、その目を引きつつ周囲を見遣り他に抵抗している羅刹は居ないか、命の危機に瀕した者は居ないか確認すれば。
 遠方にて騒乱の気配を察知、ならば今ここで鬼を相手に時間を浪費する必要無いと走り出そうとした刹那。
 感じた悪寒、それから逃れるようにして先ほど傷つけ、視界を奪った鬼の金棒を異形の右手で握り締め、自身の近くへ引き寄せるようにすれば次の瞬間、鬼に刺さり金棒をひしゃげ、その衝撃をトーゴに伝える大矢が命中。
 右腕が痺れる中で見えたのは盾にされた鬼の体が弾け飛び、また金棒が大きく曲がる矢の力。
 だがその強烈な一撃受けても止まれぬと、トーゴは歪んだ金棒を残る鬼へと投げつけて、怯んだ隙にその場を離脱。
 自身を狙い放たれた矢ではあったが散発的に、一部は集中的に飛来している所を見るに他の猟兵が引き付けているであろう事を感じつつ目指す場所は、先ほど感じた騒乱の気配であって。
 坂道乗り越え飛び出せば、そこには鬼に槍や刀で応戦する羅刹、そして傷つき動けぬ者が居て。
「待たせた! ここはオレに任せてそっちの怪我人を逃がしてくれ!」
 跳躍、そして落下しながら手裏剣投げつけ、鬼の注意を引き付けて。
 飛来するトーゴを打ち落とさんと体を変形、怨念の塊となった鬼の腕が金棒掴んだまま伸びるも咄嗟にトーゴは体を捻り、胸部を掠める程度に留め。
 ならばと腕を振り回し、弾力性あるその腕を直接ぶつけようとした瞬間に鬼の腕を黒曜石の爪にて掴み、逆に力任せに引っ張れば己が腕に引き寄せられてふわりと浮かぶ鬼の巨躯。
 体勢崩し、自らへと迫る鬼の顔面を踏みつけて、掴んだ腕を放しつつ。
 その反動で更に跳躍、足場となった駄賃とばかりに踏みつけた鬼の首筋目がけて手裏剣投げつけ、当たるかどうかも確認せずに向き直り、鬼と相対する羅刹の前へと着地して。
 全身より血を噴出し、まるで悪鬼のような容貌になりつつも羅刹を守る盾だとその身で示し、相手が動くより早く懐飛び込みその腕を引きちぎっていたのであった。
「グゥウウ、ハァ、ハァ、間に合ったみてーだな。アンタら、やれそーか?」
「あ、ああ、助かったが、まだやれるぜ!」
 荒い呼吸を無理矢理に整えつつ、羅刹に問いかけるトーゴ。
 怪我の軽い者や戦いに自信無き者は先に逃げるように言われてか、負傷者を引き連れ離脱を始めた様子が見えて、残るは迫り来る鬼の迎撃。
 矢の射線、それを避けつつ可能ならば追い込める場所は無いかと聞きながら羅刹と共に共同戦線を構築し、鬼が圧倒的優位であった戦況は羅刹と猟兵が押し返す、そんな流れへと変わりつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

四季乃・瑠璃
UCで分身&シスターズ

瑠璃は待機させたアイゼンの中から探知術式【高速詠唱、情報収集】で羅刹達や敵の位置情報を把握し、義元の狙撃を受けず、反撃や負傷者の保護に有用な地形の確保に移動。

緋瑪と翡翠は瑠璃の探知を元に飛翔翼で襲われてる羅刹の下へ急行。
翡翠がライフルやK100による銃撃で遠距離から脳天を撃ち抜いて仕留めたり、羅刹達の救助。
緋瑪は機巧大鎌で斬り込んで首を刎ね飛ばしたり、接触式ボム【範囲攻撃、早業、爆撃、蹂躙】で吹き飛ばす等して敵を殲滅。

追撃への罠として感知式ボムをばら撒き、羅刹達を瑠璃の下へ誘導。
瑠璃のアイゼンによる援護砲撃を受けて瑠璃と合流し、負傷者は逃がして残った羅刹と敵を迎え撃つよ


エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

状況は逼迫しておるようじゃな。一気に敵を撃破したい所じゃが羅刹達の避難が先か。
【秘伝の篠笛】を吹き鳴らし狼の群れを呼び出して協力して貰うかの。
今回は連携の取れた【団体行動】が肝要じゃ。
わしは弓持ちの鬼を優先して射抜き【巨狼マニトゥ】に【騎乗】して狼達とマニトゥの攻撃で『棍棒鬼』共をけん制して羅刹達をできるだけ救出。
戦闘はお味方に任せて救助に駆け回り負傷者を【細流の調べ】で治療しそれでも動けぬ者は狼達に乗せて回収し一気に遁走するかの。
ヨシモトの狙撃は稜線で防ぐのがよいじゃろう、射線からヨシモトの位置を【見切り】羅刹達の案内で射線の通らぬ安全な稜線の陰まで羅刹達を誘導するのじゃ。


鶴岡・佳那
「戦力の逐次投入はいけない、と孫子さんは言いましたが」

警戒すべきは「逐次投入に見せかけて、気がついたら包囲されてた」ですね。ですので、全力で嫌がらせをして崩しましょう。

羅刹の方々が地形を生かせるなら、此方は少数による足止めと、残りの戦力を一点に集めることでの各個撃破を狙いたいところです。
相手も「キてる」とはいえ馬鹿じゃないようなので、戦力を一点に集中させはじめるかもしれません。それはそれで逃げ時でもあるので、そうなったら負傷者を逃しましょうか。

と、作戦は立てられますが、はたして実現できるかは?
「やるだけやってみて、ダメならゴメンナサイしながら逃げるしかない、って、よくある話ですよねー?」



 真正面から鬼と打ち合う者、戦いつつ羅刹を逃がす者が居るならば。
 積極的に羅刹を守る、そう立ち回る猟兵も居た。
 戦の中、負傷者を助けに動くはそれだけに手間を取られ敵からすれば自軍の優位性を高める行為、故に殺さず生かし、あえて助けに手を回させる戦術もある中で。
 相手の思惑を上回り、迅速に羅刹の救助に戦力を投入していたのはエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)であった。
「状況は動いておるが、逼迫しておるのはかわらぬようじゃな」
 一息に集落襲った鬼達を一掃したいと逸る気持ちを抑えつつ、羅刹の救助が第一と身を潜め、鬼が闊歩す様子を遠目に見つつ負傷した羅刹の場所に目星をつけて。
 今川義元が放つ仕留めの矢、自身を、そして救うべき羅刹を狙わず、戦続ける仲間の猟兵狙い放たれ着弾した好機逃さず集落に響き渡るはこの喧騒に似つかわしくない、澄み渡った篠笛の音色。
 何だこれはと鬼が音色の出所へと向き直ったが時既に遅し、死角より飛び出したるは数多の狼の群れであり。
「行くぞマニトゥ、一体一体に構う必要は無い、先を急ぐのじゃ!」
 巨狼マニトゥに騎乗、笛の音で数多の狼操りながら手にした短弓引き絞り、鬼へと矢を射掛けるエウトティアの姿があったのだ。
 完全なる不意打ち、更には集団という二つの要素、飛び掛る巨狼マニトゥに噛み付かれ、頭部へと矢を突き立てられてよろめいて。
 別の鬼が金棒振り上げ振り回そうとした刹那、前後左右から狼の群れがそうはさせまいと飛びつき、噛み付き、動きを止めれば体を無茶苦茶に動かし振りほどく棍棒鬼。
 だがその間に生じた綻び、それは狼たちと指揮するエウトティアが駆け抜けるには十分すぎる時間を稼ぎ、咆哮する鬼達を振り切って狼の集団が駆け抜けて。
「ひっ、鬼の次はおおか……えっ?」
「話はあとじゃ、そやつらの背に乗っておれ!」
 負傷し動けぬ羅刹と、逃げれぬ仲間を何とか運び出そうとしていた羅刹の元へと駆けつける狼たち、新手の敵かと警戒する両者へ素早く声をかけ、狼に身を委ねよとエウトティアが叫ぶや否や、手にした弓より矢を放つ。
 それは遠方、数多の落ち武者を呼び出し自らの手勢を増やした鬼ではなく、呼び出された落ち武者狙い放たれて、弓引く腕を貫けば狙い外れた矢があらぬ方向へ飛んでいく。
 遠距離攻撃を一時的に防げば後は無理に留まる必要など無いと、負傷した羅刹を狼の背にのせて、無事な羅刹が併走すれば速やかに離脱を開始。
「ほれほれ、逃げるぞ。ここに留まる必要はあるまいて。時にあの矢、飛んできておる矢じゃが……あれから身を隠せそうな稜線の影はあるかの?」
「あ、ああ……あの方角からなら……こっちだ、こっちの坂を越えれば狙えないはず!」
 飛来す大矢が狙えぬ丘の裏、今川義元の攻撃を避けれる場所を聞き出せば此れ幸いと走り出す狼の群集団。
 複数個所に集団が分散、多方向から一気呵成に攻め立てていた筈の鬼が寄り集まって数を増し、それゆえに一群が監視す範囲が狭まって出来た空白地帯を縫うように駆け回り、次々と負傷した羅刹を回収するエウトティア達。
 途中に狼が鬼の、そして落ち武者の攻撃にて傷つくも即座に響いたエウトティアの歌声が負傷した羅刹ごと傷癒し、仲間に戦闘を任せ救助に奔走する彼女らは多くの羅刹を今川義元の、そして鬼の攻撃範囲から逃すことに成功していたのだった。
 だが多方面に展開していた筈の鬼がどうして寄り集まり、一点ごとの戦力を増強したのか?
 それには別の猟兵による工作が進んでいたのである。
「戦力の逐次投入はいけない、と孫子さんは言いましたが」
 古来、数多の兵法を記す書物を残した偉人の言葉を引用し、集落駆けるは鶴岡・佳那(民俗学的いぇ〜が〜(仮)・f32756)
 各所で戦う猟兵、此れ即ち一点集中ではなく戦力の逐次投入、即ち各個撃破の上で自軍戦力を消耗する悪手に見えるが猟兵が奮起、棍棒鬼を撃破し今川義元の矢を凌いでいるならば。
 ならばその奮起す仲間の動きに呼応して、相手の思考をかき回し。個人で思い思いに最良の手を考え立ち回る、いわば散兵として動く猟兵の戦術を最大限に生かしつつ、敵の動きを阻害するのが上策と踏んだ佳那。
 相手側が怒りで「キてる」とはいえ一定以上の戦術眼持つ武田信玄を宿した鬼に、戦国武将として名を馳せた今川義元ならば不自然な動きを見ればそれに対応してくるだろうと策を練り。
「それでは、「逐次投入に見せかけて、気がついたら包囲されてた」という展開を警戒していただきましょう。
 全力での嫌がらせ、それで崩れてもらいます」
 飛来する矢、その着弾点で仲間が戦う場所は敵味方双方が把握可能。
 わかりやすく戦闘地点を今川義元が示してくれるのならば最大限に利用して、着弾点の間へと急行し。
「汝、無名の王よ。マハーバーラタの伝承を骨に、我が祈りを肉に。試練を乗り越えし力により、悪性を穿つことを冀う」
 詠唱、そして呼び出されるはマントラ浮かべ、槍持つ無名の王、その霊体で。
 猟兵同士の戦闘地点、その中間で鬼に槍を突き出し強襲、不意打ち決めれば即座に佳那は戦闘を霊に任せ離脱を開始。
 相手を滅ぼす戦いではなく、防御重視で時間を稼ぐように立ち回るその霊体は鬼の攻撃をいなしつつ後退し、多数の落ち武者が呼び出された際に遠方より飛来した大矢に射抜かれ霧散したがそれで十分。
 その間に無事な羅刹と合流、隠れながら移動に適した裏道や植え込みの裏といった場所を聞き、そこを介して大回りした佳那は別の地点で再び霊体を呼び出せば先と同じ要領で鬼の気を引く戦いをさせていたのだ。
「さてさて、どうでしょうか? 次から次へと足止めされていますが、キてる頭で此方の意図を看破できますか?」
 クスリとあざ笑う様に微笑んで、鬼の動きを遠目に見遣る佳那。
 彼女の思惑通り、鬼達は自分達を押し込む戦いをする猟兵を点にして間を塞ぐ足止め戦力、即ち佳那の呼び出す霊体による時間稼ぎを危険な一手と読んだのだろう、各所の戦力を集結させるように動いていけば。
 それによって生じた空白地帯、そこを縫う様に走る狼の集団が救助に向かう仲間、即ちエウトティアの動きを援護する事になっていたのである。
 逃げ時は来た、されど欺瞞の策は時間経過と共に見抜かれやすくなるのも事実。
 戦力を集結、包囲を突破できる戦力になっても一向に猟兵による包囲攻撃の気配無く、また集落の至る所で負傷した羅刹達が救助される様子を遠距離から見ていた今川義元はその意図に気付いたのだろう。
 カッと目を見開いて、次なる足止め戦力である霊体が召喚された一瞬を見逃さず佳那を狙い仕留めの矢を放っていたのである。
 轟音と共に砕ける家屋、飛び散る家屋の残骸と立ち上る埃が収まった時には衣服の各所が破れ、瓦礫によって傷ついた佳那が急ぎ物陰に隠れる様子が見て取れて。
「あいたた、気付きましたか。そして猟兵じゃなければ即死でしたね、これは。
 けれどまあ、やるだけやってみて、ダメならゴメンナサイしながら逃げるしかない、って、よくある話ですよねー?」
 ペロッと舌出し、挑発的な笑み浮かべ今川義元の視線から逃れる佳那、直接的な戦闘は殆ど行ってはいないものの各所に分散していた鬼達を集結させて羅刹を逃がす道を作った事、そして何より一網打尽に出来る状況を作ったのは十分な働きで。
 スタコラサッサと逃げた先、そこにはこの時間稼ぎと敵戦力の集中という状況を最大限に活かす様に準備を終えた四季乃・瑠璃("2人で1人"の殺人姫・f09675)と彼女が分身した別人格の緋瑪、更には別人間を宿した人形の翡翠が待ち受けて。
「来たよ、緋瑪。追いかけて一直線にこっちに向かってる」
 木立の中へ紛れ込む様に隠れた重戦車、デュアル・アイゼンの中で周囲の状況を探知魔術で探りつつ、敵の接近を知った瑠璃が通信を送っていけば。
「オッケー、それじゃそいつらは」
「……私たちが、殲滅する」
 機械翼で空中浮遊、緋瑪と翡翠が位置情報を把握して、迎撃および未だ援護が間に合わず、応戦している羅刹への援護という二つの役割担っての戦闘開始。
 高速飛翔、手始めに迫る敵の上空へと向かった二人はそのまま戦闘は行わず敵陣の頭上を掠めるように飛び越えて。
 次々と落ち武者の霊が射掛ける矢、そして鬼が伸ばし振るう腕が届くより早く、敵陣飛びぬけ土産とばかりに放り込まれたものは多数の感知式の爆弾達。
 狙いは適当、されど敵が多数の集団ならばばら撒けば当たるだろうと降り注いだ爆弾は鬼に触れる直前に近接信管が反応、次々と爆発して多量の爆風が敵集団を包み込み、その視界を塞いでいく。
 自分達を飛び越えていった緋瑪と翡翠、両者を追うように放たれた矢も鬼の腕も視界不良の中ならばまともに狙う事できず、誰も居らぬ虚空を飛び交うだけで無意味となれば、その間に二人は戦闘中の羅刹の下へと急行。
「もう、駄目か、な」
「諦めるなよ、まだ動けるだろ!」
 傷つき諦観した羅刹、そんな羅刹を鼓舞……否、自分自身を鼓舞する羅刹。
 そんな二人の前には金棒構え、ゆらりと歩む鬼達の姿があって絶望しかない状況ではあったのだが。
「……伏せて」
 突如上空から聞こえた少女の声、それに従い咄嗟に伏せれば何かが破裂したような、乾いた発砲音が次々と鳴り響き、歩みを進める鬼の頭部を、肩部を、腕を、足を次々と銃弾が撃ち貫いてぐにゃりと不自然に鬼が傾き。
 流血した鬼へと追撃するかのように一陣の風が……否、高速で襲来したが故に風と共に急降下した緋瑪が手にした大鎌を振りぬけば、遠心力と急降下、二つの力が合わさって勢い増した刃が複数体の、鬼の首を跳ね飛ばし。
 それと同時に懐へと手を入れて、取り出したのは時限式の爆弾。
 首を飛ばした鬼には用が無いとばかりにぐらりと傾く鬼の脇をすり抜け飛翔、咄嗟の事に反応が一瞬遅れた別の鬼へと爆弾押し付け急上昇をしていけば、数秒の後に押し付けられた爆弾が大爆発。
 周囲の鬼を吹き飛ばし、落ち武者の霊体が形を歪めるほどの爆風が広がる中で翡翠が追いつき、地表で応戦していた羅刹達を抱えて緋瑪を追う形で浮上すれば羅刹の危機は脱していた。
「た、助かった、のか?」
「話は後で、今は逃げるからね!」
 突然の出来事で今どうなっているのか事態が飲み込めず、翡翠に抱えられた状態で疑問符浮かべる羅刹であったが話は後とばかりに緋瑪が声かけ先導する様に飛翔。
 羅刹がハッとし前向けば、次々と爆弾投げつけ、また遠方からの大矢をほんの僅かに体を傾け、高速移動が故に大きく軌道を変えて矢を避ける緋瑪の姿が目に飛び込み。
 先ほど飛び越えた集団の上、それを挑発するように飛び越えて誘導すれば、その先には重戦車に登場した瑠璃が待ち受ける死地となる。
「瑠璃ー、予定通り引き連れてきたから後はヨロシク♪」
「オッケー、遠慮なく行くからね」
 自分の役割である敵の誘導、それが終わったとばかりに緋瑪が言えば操縦席の中から通信送り、笑顔でペダルを踏み込んで。
 重低音を響かせて木々を薙ぎ倒し出現する重戦車デュアル・アイゼンの砲塔が狙うは緋瑪を追って走ってきた鬼の集団、その中心点に他ならず。
 次々と放たれる砲弾が着弾と同時に炸裂、周囲に引きちぎられた鬼の残骸が飛び散れば追撃とばかりに上空から降り注ぐ数多の爆弾。
 戦力の集結が仇となり、広範囲への攻撃手段を持つ猟兵の手によって一気に鬼の数が減少する攻め手側としては最悪の展開になっていたのである。
 一瞬で戦況が傾いた状況、打破しようと今川義元が援護の矢を放っていくがそれだけでは焼け石に水であろう。
 戦車に突き刺さし表面装甲吹き飛ばし、その衝撃で主砲の狙いが大きく狂うまではもっていけたが多数の鬼を失って圧迫力の無くなった軍勢に各方面から攻め立てる猟兵を押し留める程の力は最早無く。
 ある地点では剣戟にて、またある地点では体術で。
 各々の猟兵が得意とする戦い方にて次々と残存する鬼が討ち取られ、その間に羅刹も大矢の狙えぬ稜線の後ろへ避難を完了。
 やがて動く鬼は一体も残らずに、猟兵の手によって完全に敵戦力は駆逐されていたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『今川義元』

POW   :    仕留めの矢
【大弓の一矢】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    鷹の目
【大弓】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【癖】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ   :    飛鳥墜とし
対象のユーベルコードに対し【、蹴鞠の要領で体勢を崩すほどに強烈な蹴り】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ケーレス・ネメシアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 激戦終えた集落にようやく落ち着きが戻ってきた。
 全員無事、とはいかないが、猟兵達は次なる戦いへの支障無き程度の怪我に収まり、各所から鬼を討伐、安全確保を終えて羅刹達を周囲の森へと逃がしたり。
 負傷した羅刹への治療が施される中、猟兵達は合流し次なる戦いに備える時には既に今川義元が動いていた。
 並び立つ木々の合間を風が吹き抜けるように、黒き衣をなびかせながら走りぬけ。
 怒気を孕んだ目を爛々と輝かせ、目指す先は猟兵集いし羅刹の集落。
 鬼による羅刹の殺戮は失敗、即ち此れは策の失敗という事に他ならないが。
「猟兵、猟兵、猟兵……猟兵ィィイイイイ! 来おったな、そして鬼を屠ったか!
 されど僥倖、我が意は汝らの命を絶つ事、一人残らず我が矢にて滅してくれるわ!」
 望みし敵との邂逅、それを歓喜す色を出しながら、されど根幹にあるは怒りの感情。
 そのまま集落へと乗り込んで、飛翔し弓へと矢を番え集いし猟兵達の中心地点へ射放てば。
 咄嗟に飛び退く猟兵達、一拍遅れて轟音と共に地表が抉れ、多数の石礫が撒き散らされれば今川義元の襲来を否応にも猟兵へ、そして羅刹達へと知らせていた。
 全身より黒き瘴気を立ち上らせ、まるで悪鬼がごとき形相でゆらりと一歩を踏み出して。
 その異様な様相に無事な羅刹たちが慄いて、一歩下がるがそれを庇うように前に進むは猟兵達。
 互いに無言、されど張り詰める空気は強力な殺気の応酬が成されている事の証左である。
 されどこのまま相手の殺気に飲まれ、殺される道理なし。
 復讐鬼となった今川義元へ再度引導を渡し、骸の海へと送り返すが猟兵の務めであろう。
エウトティア・ナトゥア
アドリブ・連携歓迎

彼奴はなにを激昂しておるのじゃ?カルシウム不足かのう?
まあよい、怒りは力にもなるじゃろうが視野は狭くなり動きも単調になろうというもの。しのぐだけならどうとでもなるじゃろう。
攻撃はお味方に任せて適度に癇に障るようなけん制と防御を行うか。
【巨狼マニトゥ】に【騎乗】し、目ぐるましく位置を変えながら弓矢で【援護射撃】、けん制と同時に自慢の【視力】と【聞き耳】でヨシモトの位置や行動の起りを【見切って】『大弓』による攻撃を障壁でそらすのじゃ。
執拗なけん制を行おうとも他の猟兵を無視はできまい、こちらへの注意が逸れた一瞬を狙って【手作りの縄】で作った即席のボーラで敵の動きを阻害してくれよう。


鹿村・トーゴ
…あんたの執念
羅刹としちゃ寒気がするよ
悔しかっただろーがもう仕方ない
過去は戻らねーし
オレらも根絶やしなんかゴメンだしよ

🔴真の姿は羅刹紋が増す他は普段と変わらず
敵UC、矢には常時警戒【追跡/野生の勘】で直撃を避け
【激痛耐性/武器受け】で衝撃に備え

>羅刹
足場に出来そうな木や岩を確認
後方より槍や矢で援護を貰い【念動力/投擲】で羅刹と逆方向から今川へ捻込む
自分は【忍び足/軽業】で障害者を足場に接近
クナイを背後から撃ち【だまし討ち】【スライディング】で横か前に出て
UCの威力を七振分割した妖刀七葉隠に乗せ至近でぶつけて【串刺し/暗殺】

あんたには死に物狂いで向かわねーと効かないな
恐ろしい武将様だ

アドリブ可



「猟兵、猟兵、猟兵ィイイイ……貴様らに我が矢を突き立てそっ首掻っ切ってくれるわ!」
 血走った目を爛々と輝かせ、居並ぶ猟兵を凝視して。
 大弓へと矢を番えつつ今川義元が歩を進め、常人ならば恐怖にて動きを止める程の瘴気を放ち咆哮する。
 だがその威圧感、相手の放つ空気に呑まれる猟兵ではない。
「彼奴はなにを激昂しておるのじゃ? カルシウム不足かのう?」
「そういう風に、軽く見れるのはすげーよ。あの執念、羅刹としちゃ寒気がするよ」
 今川義元の放つ殺気、それを軽く受け流すようなエウトティアと真正面から感じ、先の戦いにて流れた血を拭うトーゴ。
 対照的な二人であったが互いの目的は同じ、圧倒的な殺意を持って相対する今川義元を止めるという一点のみ。
 チラリとトーゴが目配せすれば、戦に手を貸すと残った羅刹が恐怖を抑えて頷いて、それを合図に猟兵と今川義元の戦い、その幕は開けていた。
「小癪な、脆弱な羅刹が手を出して何となる、纏めて骸にしてくれようぞ!」 
 猟兵以外、それも一矢で葬れると侮った羅刹の援軍、猟兵を射殺す上で障害にもならぬと一喝し、大弓へと矢を番えるもそれと同時に動くはエウトティア。
 傍らへと侍らせた巨狼マニトゥに飛び乗れば、弓には弓で対抗とばかりに彼女も手製の短弓へと矢を番え、まるで騎馬弓兵の如く機動力を活かした牽制を始めていたのである。
 飛び跳ねるマニトゥ、そして取り回しがしやすく引き絞る量も少なく、連射のし易い短弓と、一撃の威力を重視した大弓では手数そのものがまず違う。
 邪魔さえできれば、気を散らせれば良いと考えての速射と一矢一殺を目的とした攻撃ならば、頻度に差が出るのは当然で。
 集落を駆け回り、崩れた家屋や木々の裏側から射掛けるエウトティア、その矢を飛び跳ね、弓で打ち払う今川義元ではあったが妨害としては上々。
 その間に羅刹達も後方より矢を射掛け猟兵を援護して、多方向からその動きを抑え込む様に攻撃を続けていく。
「チィ、味な真似を……!」
「視野が狭いのう、わしだけを見たせいで羅刹の仕込みに気付かなんだか」
 飛びのき、番えた矢を威嚇の意味で羅刹側へと放ちつつ。
 転がりながら飛来した矢を避ける今川義元を挑発するようにエウトティアが言葉を紡ぎ、彼女を乗せてマニトゥが集落内部を疾走する。
 怒りによって増幅した力、されどそれ故に単調になりやすい動き、ならば凌ぎ耳目を自身に引き付け適度に癇に障る言動を繰り返せば優位に進むと踏んだエウトティアの狙い通りに今川義元の注意は彼女の方に向かっていて。
 致命傷とならずとも、羅刹の矢も無視できぬ妨害となれば他の猟兵が何かを仕込む暇を作るには十分な手ではあるが、猟書家、更に怒りによって視野が狭まったとはいえその感情を力と変えた状態ならば一転突破で戦況を覆そうと動くは必然。
 降り注ぐ矢の雨、その中を強引に突っ切って。
 衣服へ矢が突き刺さる最中、大弓へと矢を番え力一杯引き絞り、ぐるりと上半身を曲げひょうと放つその先に。
 もっとも面倒だと感じたのだろう、マニトゥに乗って駆けるエウトティアの体があったのだ。
「なっ、先読みじゃと!?」
「小娘が、弓の扱いで我に適うと思うたか!」
 回避不能、寸分違わず放たれた大矢がエウトティアへと吸い込まれる様に飛来して。
 危機を察したマニトゥが急停止、そのまま四肢が軋むのを厭わず飛び跳ねて。
 更には咄嗟にエウトティアが生み出した風の障壁、それが矢の勢いを減じていたが完全に防ぐことは出来ず、放たれた矢は頭部や胸部といった、致命的な部位には当たらぬがエウトティアの右わき腹を抉るように掠めていたのだ。
「ぐぬっ、やってくれるの」
 肉を抉られ血液滲むわき腹押さえエツトティアが苦しげに呟けば、助けとばかりに羅刹の矢が今川義元狙い放たれる。
 だがそんなものは当たらぬと軽くステップを踏み軌道から身を外したその時である。
「なっ、曲がっただと!?」
 急に起動を大きく曲げて、今川義元へ生きているかのように向かう数多の矢。
 咄嗟のことだが飛び跳ね避けて、飛来した矢をやり過ごしたがそこまでで。
 刹那背後に冷たきモノを感じた今川義元、その感覚を信じ身を屈めればその頭上を飛び越える数本のクナイ。
「そこまでだ、今川義元!」
 身を伏せた瞬間、即ち動きの止まった好機を逃さずに飛び跳ね迫るは先の射撃戦の合間に回りこんでいたトーゴ。
 放たれたクナイも、また曲がった矢も彼の仕込み。
 念力によって軌道を曲げて、回避行動を強いた直後に本命として自身の投擲武器を投げつけ急接近、数多の羅刹紋が浮かぶ腕が振上げたるは妖刀七葉隠であり、振り下ろされる最中に7振りの刀へと分裂。
 周囲の空気を圧縮し、破壊力を増したその一撃は回避も防御も間に合わぬ会心の一撃、7度轟音が鳴り響けば大きく吹き飛ぶ今川義元。
「悔しかっただろーがもう仕方ない、過去は戻らねーし。オレらも根絶やしなんかゴメンだしよ」
 砂埃を上げて転がる今川義元、その様子を見やりつつ左手で手を貸す羅刹達を示しつつ、トーゴがポツリと呟けば。
 その言葉に反応してか、右手で地面を叩き付けその反動で起き上がり接近を許さぬように大弓を鈍器のようになぎ払い牽制する今川義元。
「ぬかせ! この程度で我の恨みが、怒りが止められると思うな!」
 顔を怒りに歪ませて矢を番え、放とうとしたその瞬間。
 飛来したのは縄の先端に石を結びつけ作られた即席の投擲武器、ボーラ。
 遠心力を活かして投げられたそれは縄の部分がぶつかって、ぐるぐると巻きつきほんのわずかに手元を狂わせ、放たれた大矢は軌道がぶれて威力を減じ、結果トーゴが振るう刀と正面衝突、3振りを跳ね飛ばすに止めその威力を失って。
「傷つけたからと、いって……動けぬとは思うでないぞ?」
 肩で息しつつボーラを投げたエウトティアが言葉を発し、再び気を引こうとすればそれと同時、残る4振りの刀を念力にて眼前に浮かべ、トーゴが突撃。
「あの一撃で倒せない、あんたには死に物狂いで向かわねーと効かないな」
「真正面からか、潔し!」
 恐ろしい武将様、そう心で思いつつ踏み込み刀を振り下ろすトーゴ、それと同時に放たれた今川義元の矢が虚空で衝突。
 甲高き金属音が鳴り響き、圧縮された空気が弾けとび。
 ビリビリと空気が震え、中心点に近かった今川義元とトーゴはともに後方へと跳ね飛ばされ、両者の飛んだ軌跡には互いの血液が糸を引き。
 やがて地面に赤き筋が二つ、残される事になる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月舘・夜彦
【華禱】
真の姿は鬼の角を生やし、夜叉の如く

戦いは精神にも影響を与えましょう
時に己を強くすることもあれば、逆も然り
今の貴方はどちらか

情報収集で確認していた弓矢を防げる障害物を活用
飛んできた矢の方向で敵の位置を特定
目立たないように移動して距離を詰める
攻撃が来た際には武器受け、武器落としにて矢を払う

奴の狙いは先程の陽動もあり、倫太郎に向けられましょう
彼は役割を理解し……私も彼を利用する

距離を詰めた所で駆け出して接近
早業の抜刀術『咎花』の一撃

倫太郎と、彼と同じ者達に向けた言動と憎悪
役割の為と黙っておりましたが、何も思わぬ訳でも無く
……私も抱く感情に怒りや憎悪が強まれば鬼のようになる
彼等と、同じように


篝・倫太郎
【華禱】
私怨に塗れすぎだろ
まぁ、私怨に塗れてくれた方が
こっちに集中してくれそうだけどな
なぁんて思ってンのは夜彦には判ってそうだけど

引き続き
猟兵である事、羅刹である事、を餌に今川を挑発
夜彦の狙いを隠して攻撃が通り易くなるなら僥倖ってな

業返し使用
フェイントを交えたダッシュで接近
吹き飛ばしを乗せた華焔刀で先制攻撃

敵の攻撃は華焔刀で武器受けでいなして武器落としで対処
俺自身にはオーラ防御を展開

は!その程度で倒せると思ってンなよ
私怨塗れなてめぇに落とされてたまるか!

以降の攻撃は複製した今川の攻撃を
時間切れになるまで使ってく
保険も兼ねて生命力吸収を常時乗せとく

私怨に塗れた憎悪を抱いて
骸の海に還りな、今川!



「見事、だが! 我が怒りの炎はこの程度で消せると思うな!」
 猟兵の力を認め、骸と変えればより強大なオブリビオンになると確証を強めつつ、されど怒りの炎はより燃え上がり。
 今川義元が吼えれば怒りの業火を押し止めるように二人の猟兵が動きを見せた。
「戦いは精神にも影響を与えましょう。時に己を強くすることもあれば、逆も然り。今の貴方はどちらか」
「ぬかせ! 言葉での揺さぶりなどこれ以上通じぬと心せよ!」
 鬼の角を二本、額に生やし夜叉の如き姿となった夜彦が問えば、その問いかけを怒りに任せ一蹴する今川義元。
 されどこのやり取りにて怒りによって力を増しても判断力が落ちたと見抜けば、策を仕掛けるは容易と夜彦が一歩踏み出せば、その役割を理解している倫太郎が追い越す様に躍り出る。
「その憎悪、私怨に塗れすぎだろ」
 嘲笑するように踏み出して、黒き柄に朱色の挿し色映える薙刀の華焔刀を振上げて。
 真正面から打ち据えるとばかりに突っ込む倫太郎を認めて大弓へと矢を番える今川義元。
「来いよ、今川! 羅刹で猟兵なんて、殺したい奴が一つになっててお得だろ?
 それとも殺せる程の力量が無いってか?」
「おのれ、なぶるか! 一思いに射殺してくれる!」
 倫太郎が挑発しながら突撃すれば、激昂して矢を射掛ける今川義元。
 放たれた矢を薙刀にて受け止め、軌道を逸らし虚空へと受け流せば、その守りを見切ったとばかりに第二、第三の矢が次々と。
 最低限の引き絞り、速射の要領で威力を落とした矢が放たれて、倫太郎を射殺さんとするが自分が狙われる事が本懐、ならば盛大に、派手に引き付ける事が肝心。
 その為の被弾は覚悟の上と華焔刀を一振り、飛来した矢を打ち落とすが新たな矢が次々と放たれ、また後方へと飛びのく今川義元に追いつくは困難で。
 二本目、三本目と受け止め、打ち払うも無傷でいられたのはそこまで、四本目が迫る中で輝くオーラを滾らせた倫太郎であったが、迸るオーラで完全に勢いを止める事は不可能。
 一本の矢が勢い失いながらも腕へと刺さり、それに続けて更なる矢が襲うもそれすら笑って受け止めて。
 致命傷にならぬよう、体をほんの僅かに傾け急所を外せば挑発的に言葉を発す。
「は! その程度で倒せると思ってンなよ。私怨塗れなてめぇに落とされてたまるか!」
 ニヤリと笑い、手にした華焔刀をまるで弓のように構えれば、右手を引き絞るように動かして。
 ひょうと放てばそこにあるは不可視の弦、ユーベルコードを模倣しその薙刀から放つ彼の力であるがあえて弓持つ様に構えたのは先の戦い、弓の扱いに自負を持つ相手を挑発する目的。
 弓ではない物を弓に見立てる、弓兵の真似事をしているかのように振舞うことでよりその怒りを自身に向けさせる意図があったのだ。
「貴様、我を侮辱するか!」
「そうさね、アンタの業なんてコイツでつかえるぐらい、大した事ないって事さ!」
 必中必殺、名実共に海道一の弓取りとなった業など弓を用いずとも模倣できると言ってのけ、ならばその真髄を受けてみよとばかりに目を見開いた今川義元。
 腕の違いを見せてくれるとばかりに倫太郎が放った矢、それにぶつけるように次々と矢を放ち、空中で無力化させれば今度は此方が押し込むとばかりに数多の矢を放っていく。
 応戦する形で放たれた倫太郎の矢、それらを全て射落として、そのまま一気に押し切ろうとした瞬間。
 感じた違和感、周囲に放つ殺気の揺らぎを感じた今川義元が上半身を回し別方向へと矢を放てば、そこには気配を殺し、障害物に隠れつつ一気に距離を詰めた夜彦の姿があって。
「二度も不意打ちを受けてたまるものか! この矢にて果てるが良い!」
「気付くは流石、されど……!」
 放たれた一矢を抜刀一閃、逆袈裟に振上げられた夜彦の刀が自身を狙った狂気を払い踏み込んで。
 距離を詰めつつ納刀、再度の抜刀を仕掛ける事を視覚的に見せ付ければその手は受けぬと今川義元が手にした矢を番えずに、そのまま手投げ槍の感覚で投げつけながら後方と飛び退いた。
 放り投げられた鏃の先、それを避けては間に合わぬと夜彦が強引に踏み込めば肩口が引き裂かれ。
 だがそれでも、ほんの僅かに届かない、しかしその綻びを埋めるのが仲間、互いを刃と盾と見立て共闘する倫太郎。
「逃がすか! 私怨に塗れた憎悪を抱いて骸の海に還りな、今川!」
 模倣した今川義元の弓術、回避の癖を見抜き放たれた倫太郎の矢が脚部に刺さり、更に追加で放たれた矢をいなそうと大弓を手持ちの武器に見立て振り回し、矢を打ち払いつつ後退する今川義元。
 しかし脚部に受けた傷、それによってほんの僅かに下がった跳躍力と、自らの動きを見抜き放たれた矢を打ち払った動作によって生じた遅れが生じた綻びを縫い合わす暇となった。
「その身に、知らしめよ」
 間合いに入り踏鞴を踏んで、抜刀一閃。
 煌めく刃が夕日を浴びて輝けば、その斬撃は今川義元の胴部に走る一筋の傷が命中したことを物語り。
「ぐ、ぬおおぉおおあぁああああああ!?」
 同時に今川義元の手足に、そして大弓に棘が生え、絶え難き激痛を与え始めていたのである。
 互いに役割を理解し、利用しあう事にて成すべき事を成して届いた一撃。
 その一撃によって、口をついて出た憎悪の言葉、その報いとばかりに受ける苦痛によって膝つく今川義元を見下ろしながら冷たき目で見下ろす夜彦。
 己が役割、潜み機を見て仕掛ける都合、黙っていたが倫太郎へ、そして同胞である羅刹に向けて放たれた言葉に何も思わなかったわけではない。
「……私も抱く感情に怒りや憎悪が強まれば鬼のようになる。彼等と、同じように」
 自戒を込めて呟けば、自身の事を言われたと察した今川義元が飛び退いて。
 仕切り直しとばかりに激痛と共に手足に生えた棘を引き抜き、鮮血流しつつも目に宿る殺意は衰えず。
 ああも感情に、怒りや憎悪に堕ちてはならぬと猟兵達に示しつつ戦いは続くのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御剣・刀也
真の姿、いしはま絵師のJC参照

ようやくおでましか
待ちくたびれて寝るところだったぜ
射手が目の前に現れるってことは斬られる覚悟はできてると見なす
お前の弓と俺の剣、どちらが上かいざ勝負!

仕留めの矢を射たれそうになっても、隠れてるときと違ってつがえてるところが見えるので、放つ動作の起こりを第六感で察知し、見切り、残像で避けながら、勇気で被弾を恐れず、ダッシュで一気に間合いを詰めて、捨て身の一撃で切り捨てる
「戦場では俺は死人だ。死人は死を恐れない。お前さんもかつて戦人だったらわかるんじゃないか?もっとも、今のあんたにゃ理解できないかもな」


四季乃・瑠璃
緋瑪「懲りないね~。前回わたし達と決着つけて満足して散ったかと思ったけど」
瑠璃「そうでもなかったみたいだね。良いよ、その恨みまで殺し尽くしてあげる!」

「「さぁ、私達の殺戮を始めよう」」

UCで分身&能力・武装強化&シスターズ

翡翠が雷撃・凍結付与のK100による銃撃連射【属性攻撃、弾幕、ドロウ】で援護し、瑠璃と緋瑪が機巧大鎌の機巧を利用して高速機動【推力移動、ダッシュ】。
敵の攻撃を機動力と【見切り、第六感】で回避しつつ左右から挟み撃ちしかもそれぞれ上下を狙って横薙ぎに大鎌を振るい、同時攻撃を仕掛け、そのまま急所狙いの連続攻撃。
翡翠も合わさり、3人の大鎌で敵の首を落とし、バラバラにしてあげる!



 激戦続ける両者、追い込まれつつも引く姿勢を見せぬ今川義元。
 戦況を見守る羅刹達もまだ畏怖する状況ではあったが、それを終わらせようと猟兵による最後の攻撃が仕掛けられようとしていた。
「懲りないね~。前回わたし達と決着つけて満足して散ったかと思ったけど」
「そうでもなかったみたいだね。良いよ、その恨みまで殺し尽くしてあげる!」
 以前の戦いを思い出し、笑いながら挑発的に言葉を発する緋瑪と瑠璃。
 そんな二人の後方にて無言、されど鋭き目つきで今川義元を睨み付け拳銃を握り締める翡翠。
 三人同じ顔、されどそれぞれの性格の違いが表情に現れて、戦を楽しむかのような緋瑪が大鎌構えるのを凝視して殺意を増した眼光向ける今川義元。
「ぬかせ、小娘どもが! 我が望み果たせぬままに終われると思うてか!」
 大振りに、相手を威圧するように大矢を番えれば。
 四肢に刻まれた傷口より鮮血飛び散り、されどその異様な姿がより威圧感を与え羅刹達が恐怖する。
「ははっ、言ってくれるねぇ。鬼の相手も終わって待ちくたびれてたんだよ、あんたの事を。
 お前の弓と俺の剣、どちらが上かいざ勝負!」
 そんな恐怖す羅刹達に問題ないと示すが如く、軽口言いつつゆらりと歩むは刀也、されど彼の体はその言葉とは裏腹に内部に宿りし力を完全解放。
 四肢に、そして己が得物の日本刀、獅子吼が雷光纏い、強者との戦いを望む戦士としての姿を見せていたのであった。
 射手が前線に姿を晒すは愚行、されどそれ相応の覚悟を決めての進軍には全力で応じるという刀也の姿勢。
 先の三人も加わっての四人が飛び出し、迎撃すべく今川義元も地を蹴り飛び出していた。

「遠方と違ってそちらの動きは見えている」
「ぬかせ、見えたとて避けられなければ意味はない!」
 踏み込みながら今川義元の動きを凝視、視線や指の動きから番えた矢が放たれるタイミングと方向を計っていた刀也であったが見えるだけでは意味はないと一喝。
 今まさに放つと見えて、されど番えたままにて飛び上がり。
 いわば時間のずらし射ち、一瞬生んだ射撃時間のズレがそのまま回避動作のズレとなり、上体沈め踏み込む刀也へと放たれる仕留めの矢。
 唸りを上げて飛来する矢は回避出来ぬ一矢となり、咄嗟に盾とし翳した刀でもほんのわずかに軌道を逸らすが精一杯、激痛と共に刀也の左腕には抉られた様な傷が刻まれるもそれで止まることはなく。
「戦場では俺は死人だ。死人は死を恐れない。お前さんもかつて戦人だったらわかるんじゃないか?」
「何、だと……?」
 激痛に苛まれ、普通ならば足を止めかねない状況。されど己が心を奮い立たせるか、はたまた恐怖心が欠落したのか。
 次なる矢を番えた相手にまるで何も感じずに、ただ相手の首を取ろうと進む死人の兵が如く変化した刀也。
「もっとも、今のあんたにゃ理解できないかもな」
 戦人なら恐怖を感じぬ死兵となった者の恐ろしさがわかるだろうか、それとも一度死の恐怖を乗り越えて、されど幾度も蘇るが故に恐怖心を感じずに。
 命を賭ける事に無感動となったオブリビオンの身では、死を恐れずに突き進む兵士の本質が理解できなくなったかと呟きながら懐へと踏み込めば、全力で振り下ろされた獅子吼の一撃が繰り出される。
 直撃は受けれぬと今川義元が翳した大弓が受け止め、軋み、互いの武器をもっての押し合いに。
「やるな、だが一人の死兵が吼えたとて我を……ぐおっ!?」
「戦場じゃ兵士は何だってする、刀だけじゃなく体術、いや……無茶な動きもな」
 一矢を凌ぎ踏み込んで、さらには刀があと一歩まで迫った刀也を賞賛した今川義元であったが、その押し合いの最中に突如刀也が頭突きを見舞い後方へとよろけていって。
 追い討ちと放たれた二の太刀、それを飛びのき避けてはいくが崩れた姿勢を立て直す間は与えぬと遠方より聞こえる数多の発射音。
 それは拳銃構えた翡翠が放った銃弾、されど通常の弾頭ではなく魔力によって凍てつく冷気を付与された銃弾で。
 足を止めるとばかりに地表に命中、広がる冷気が今川義元を地面とつなぎ合わせるように伸びるもそれを飛びのき回避。
 だが下がるだけの動きは単調、援護を受けて緋瑪と瑠璃が左右に分かれ、大鎌振り上げ急接近。
「「これが、私達の殺戮だよ」」
 声を合わせて切り込む二人、首を狙い刃を繰り出す緋瑪と足首狙い地表を薙ぐ瑠璃。
 上下の刃で一気に断ち切らんとした攻撃ではあるものの猟書家としての実力か、はたまた窮鼠となったが故に平素以上の感覚が滾ったか。
 ふわりと飛んで足を狙った刃を避けて、首筋狙う大鎌をその弓にて受け止めて。
 さらには鎌の柄狙って強烈な蹴りを打ち込み跳躍、空中にて狙いを定め放つ大矢は遠方、銃撃仕掛け妨害に徹する翡翠。
「小癪な真似を、この矢にて果てるが良い!」
 空気を震わす弦の音響き、それと同時に翡翠が手にした拳銃が宙を舞う。
 反撃の一矢、これより一気に押し返さんと次なる矢を番えるがされどそのまま倒される猟兵達ではない。
「甘いよ、上に逃げただけで」
「凌げると思わないでね!」
 上空へ逃がした緋瑪と瑠璃、されど彼女らの持つ大鎌は後方より爆風吹き出し加速する機構を備え、更には二人共飛翔能力を有する猟兵。
 即ち、上方へと飛び上がっただけでは二人の追撃を振り切ることは不可能、すぐさま鎌の付け根、噴出口を地表に向けて上空への推進力を与えつつ、爆風吹き出し上空へと飛び上がる二人。
 更には遠方、先に矢を受け右腕が動かずとも攻撃は出来るとばかりに左腕に大鎌持って、切り込む二人と同じく爆風吹き出し急接近を狙う翡翠の姿。
 上空へと飛び上がった緋瑪と瑠璃、二人の刃がバツ印を刻むかのような軌跡を見せれば直後、真正面から切り込んだ翡翠の大鎌が振り抜かれ。
「…………お見事」
 ポツリと呟き落下を始めた今川義元の腕が、足が切り落とされるかのように分割消滅、更には首も当人が桶狭間にて討たれたことを髣髴させるかのようにぐらりと傾き切り離されて。
 地表へ墜ちる前に全ての部位がまるで最初から、そこに無かったかのように消えていき、この集落を襲ったオブリビオンは破壊の爪痕だけを残し全て消滅したのであった。

 戦は終わり、羅刹の集落にようやく安堵の時戻る。
 破壊された家屋は多く、傷ついた者も多くはいるが猟兵の活躍により甚大な被害は抑えられ、鬼の軍勢を退けることは出来たのだ。
 されど相手はオブリビオン、幾度も蘇り自在に空飛ぶ拠点より次々と各地を襲撃する存在、一度の平穏をすぐさま破る恐るべき集団に変わり無し。
 幕府転覆を狙うクルセイダーはいずこか、そして如何にして討ち取るか。
 その道筋は見えぬが太平の世を乱す行為を見過ごす事は出来ぬ、ならば相手の仕掛けを一つ一つ凌ぎつつ、楔を打ち込む機を待つに他は無し。
 先の見えぬ戦であれ、止まる事は出来ないと次なる戦へ猟兵達は備えるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年04月19日


挿絵イラスト