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塵散りと聚合しては影成りて

#サクラミラージュ #倫敦 #結社『サスナー』

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#サクラミラージュ
#倫敦
#結社『サスナー』


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●サクラミラージュ異国譚
 一年中を通して幻朧桜が舞い散る世界。
 それがサクラミラージュである。不死の帝が納める『帝都』以外にも『影朧』は存在する。
 何も『帝都』だけが影朧救済機関『帝都桜學府』の守る範囲ではない。時として世界へと向かい影朧に立ち向かい、これを救済するのである。
 今まさに『帝都』を飛び立とうとする飛行船があった。
 霧の都、倫敦(ロンドン)に急ぎ向かわねばならぬのは、かの地において影朧を利用した悪事を働く者たちの存在が判明したからであった。

 その結社の名は未だ知られざるものであったが、しかしこれを座して待つ事など意味はない。
 人々の安寧もそうであるが、比較的弱いオブリビオンである『影朧』には未だ救済の余地があるのだ。これを利用して遠き地で悪意を振りまく者こそを打倒せねばならない。
「しかし、今回の遠征……やはり『超弩級戦力』の力は必要不可欠……彼らが快諾してくれたことを感謝せねばならないな……」
 飛行船の艦長は客室に案内した『超弩級戦力』――即ち猟兵たちを見やる。
 彼らの力がなければ、今回の事件は解決できないだろう。『帝都桜學府』のユーベルコヲド使いの実力を遥かに凌ぐ彼らの力を借りなければならない不甲斐なさはあれど、これもまた世界を統一した不死の帝の治世を保つためである。

 平穏そのもののサクラミラージュ。
 その平穏は世界にあまねく全ての人々に甘受されなければならないのだから――。

●異国のスタァ
 何故自分が狙われるのかと問われるのならば、それは自分が『国民的スタァ』であるからとしか言いようがない。
 己の美貌、所作、品格。
 それら全てを持ってして彼女は――『アーニャ・ブラッドレー』は『国民的スタァ』としての地位を手にしていた。
「しかし、それが何になるというのです。わたくしを狙うだけであるのならば、それも良いでしょう。けれど、わたくし以外のものを巻き込む必要なんて無いはずです」

 彼女は倫敦の郊外にある『春秋庭園』の宿泊施設で、彼女を取り囲む新聞記者たちに言い放った。
『アーニャ・ブラッドレー』が『影朧を使う犯罪結社』から生命を奪うという予告を受けたという噂は一気に広まり、こうして彼女はお忍びで『春秋庭園』へと密やかに周囲の者達を巻き込まぬようにとやってきていたのだ。
 けれど、ゴシップを求める者たちにとって、それは執念のようなものであった。
 彼女は『国民的スタァ』である。
 そんな彼女が犯罪結社に付け狙われる理由など、いくらでもあるだろう。何か後ろ暗いことがあるのではないか。なくてもあるように記事を書くことができるのではないだろうか。

 そんなふうに彼女を取り囲む記者たちの言葉に『アーニャ・ブラッドレー』は憔悴していても、それを感じさせぬ毅然とした態度で言い放つ。
「直にわかることです。わたくしは、そののような者達と関係などありません。『帝都桜學府』より、ユーベルコヲド使いが派遣される予定です。ですから、事態の鎮静まで……」
「しかし、説明はしていただきませんと。貴方はスタァだ。この霧煙る倫敦を照らす星でもある。皆心配しているのですよ。貴方の生命が危ないと」
 そんなふうに詰め寄る記者たちの瞳は、己達の食い扶持のための欲望に塗れていた。
 探るような視線。ハイエナのような嗅覚。それら全てを使って、己が望む答えを引き出そうと躍起になっているのだ。

「なにか原因があるのではないですか。貴方がスタァになるまでの道程で蹴落としてきた同じような夢を抱く者たちだって居たはずだ。その恨みを買うことなんて、一度や二度ではなかったはずだ」
 そんなことはない。
 と、『アーニャ・ブラッドレー』は言い切れなかったことだろう。
 自覚なき輝きに寄って、己の夢を諦めた者だっていないとは言い切れない。それが彼女の責任ではないにせよ、逆恨みであったのだとしても、持つ者と持たざる者が在る限りはつきまとう光と影であった。

 故に、彼女は言葉をつまらせ逃げるように金木犀と幻朧桜が咲き乱れる庭園へと振り切るようにかけていくのであった――。

●星の輝が落とす影
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はサクラミラージュ……『帝都』ではなく、統一された世界における『倫敦』の『国民的スタァ』を狙う結社の目論見を打破しなければなりません」
 当たり前であるが『帝都』以外にも『影朧』は出現する。
 本来であれば『帝都桜學府』のユーベルコヲド使いが派遣されて事件の解決に当たるのだが、今回は『超弩級戦力』、即ち猟兵に依頼が齎されたのだ。

 現地である『倫敦』までは飛行船で移動し、倫敦郊外にある『帝都』を模した『春秋庭園』へと向かう。
 そこに今回『影朧を使役する結社』が標的としている『国民的スタァ』、『アーニャ・ブラッドレー』が滞在しているのだ。
「彼女は殺害予告を出されており、またその噂を聞きつけた記者たちに追い回されて心身ともに疲弊しているのです」
 いつの時代も変わらぬ悪意と自覚できぬ悪意を向ける者はいるのである。
 猟兵たちは彼女の護衛がてら、『アーニャ・ブラッドレー』の身の上話を聞き出すのもいいだろう。
 そうすることで何故彼女が結社に生命を狙われるのか、その理由もわかってくるだろう。

「きっと彼女は記者たちにも、周囲の人にも隠していることがあるのでしょう。それは、彼女自身のためではなくて、きっと自分以外の誰かを巻き込まぬための隠し事なのかもしれません」
 そして、その隠し事は、彼女の口から『結社』の所在地を聞き出すことにも繋がる。
 どういうことだと、猟兵たちは首を傾げた。
「私の予知でわかった範囲ではありますが、『アーニャ・ブラッドレー』さんは、確かに『影朧の餌にふさわしい、美しく輝いている者』です。けれど、それ以上に『結社からの脱退者』でもあるのです」
 それ故に狙われている。
 けれど、それを口に出してしまえば、彼女以外の者に累が及ぶ。それを恐れて彼女は誰にも打ち明ける事ができないのだろう。

「はい……一人で抱えるにはあまりにも荷が勝ちすぎることでしょう。故に、皆さんが彼女の身の上話を聞き出すことに寄って信頼を勝ち取ればあるいは……」
 そうすることで彼女の口から『結社』の所在を知ることができれば、後は『超弩級戦力』としての役割を果たすだけである。

 ナイアルテは再び頭を下げて猟兵たちを送り出す。
 いつだって、『スタァ』は光り輝くもの。けれど、その強い輝きは影を生みだす。けれど、それを因果応報ということなかれと願うのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 サクラミラージュの異国へと飛行船で飛び立ち、遠き地における影朧事件を解決するシナリオになります。

●第一章
 日常です。
 倫敦郊外にある帝都を模した『春秋庭園』に滞在する『アーニャ・ブラッドレー』が今回の事件、影朧のターゲットになっている自分つです。
 異国の地にありながら、金木犀と幻朧桜が咲き乱れる庭園で彼女と接触し、彼女の身の上話を聞き出しましょう。

 彼女は『結社からの脱退者』であり、『影朧の餌に相応しい、美しく輝いている者』でもあります。
 これらの理由から彼女は生命を狙われています。
 身の上話を話すことができるほどの信頼をかちとれば、自ずと彼女から『結社』の所在地を聞き出すことができるでしょう。

●第二章
 集団戦です。
 第一章の結果を受けて得た『結社』の所在地へと乗り込みます。
 この『結社』の所在地には多数の結社員がおり、それぞれが『影朧を召喚』してけしかけてきます。
 これらを全て打倒し、結社員達を逮捕しましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 所在地にいた結社のボスが虎の子の影朧を解き放ち、皆さんに戦いを挑んできます。
 これを倒し、結社のボスを捕らえることが今回の事件の解決となります。

 それでは、霧煙る都、サクラミラージュの『倫敦』で『国民的スタァ』と『影朧を使役する結社』との因果を断ち切り、スタァとしての輝きでもって霧を払う皆さんの戦いの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『春秋庭園譚』

POW   :    金木犀を楽しむ

SPD   :    庭園を散策してまわる

WIZ   :    桜を楽しむ

イラスト:みささぎ かなめ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『アーニャ・ブラッドレー』は逃げるように金木犀と幻朧桜の花弁が舞い散る庭園へと駆け込んでいた。
 何もかもが嫌になったわけではない。
 うんざりしたわけでもない。
 なぜなら、これは己が精算しなければならない過去であるからだ。
 嘗ての自分は愚かであった。自分が輝きを持つ者であるという自覚などなかった。在ったのは生きるために必死であったということだけだ。その日暮らしのような生活が嫌だった。
 食べるもの、眠る場所、そんなことを気にしなければならない毎日がたまらなく嫌だった。
 安寧を求めたかった。
 それは誰しもが持つ願望であったことだろう。けれど、過去は消えない。
 己が『影朧を使役する結社』に属し、それに加担していた過去は消えない。『国民的スタァ』になった今でもこそ考えられないことだ。
 愚かなことだと知っている。

 だからこそ、彼女は決別したいのだ。
 けれど、誰にも離せない。誰が信じるだろうか。今をときめくスタァが嘗ては溝鼠のように路地裏で息を潜めて生きていただなんて。
 それを語れば、ゴシップ記者たちは面白おかしく書き立てるだろう。
 自分の地位は脅かされる。
「けれど、そんなものはどうだっていい」
 そう、今自分が地位を失えば、かつての自分と同じように親もなく路地裏で泥をさらうようにしか生きられない子供らを養うこともできなくなってしまう。
 彼女は自分の名前で設立した孤児院のために『スタァ』として精力的に働いている。全てはあの子らのためなのだ。
 だって、自分のような惨めな思いをあの子らにはさせられない。

 故に失うことなんてできない。
 語ることなんてできない。
 今までもそうであったように、自分だけでなんとかしなければならない。
「例え、わたくしの生命が喪われるのだとしても、あの子らだけは」
 もう二度と、あんな思いを誰かにさせてはならないのだと、『アーニャ・ブラッドレー』は己の生命を担保にしてでも、孤児院の子供らの未来を閉ざさせはしないと、その瞳にスタァの輝きを宿すのだった――。
月夜・玲
まずは当の本人に接触しなきゃなんだけど…庭園だったかな?
えーとアーニャさんだっけー?
ちょっとサイン頂戴よー?
出て来て出て来てー!

今をときめく国民的スタァ!
いや芸能関係あんま興味ないから、知らないし
私はタダで倫敦旅行が出来るって聞いたから来たんだけどさ

んー…んんー…小難しい話は無しにしよう
君、今大事な物は何?
地位?名誉?自分の命?それとも他の何か?
私これでも経験豊富な方だからさ、敵さえ分かれば…ほらこの剣で全部ぶった斬ってあげる事は出来るよ?

貴女が命を掛ける必要なんてないんだよ
人には人の戦い方がある
貴女の戦場は舞台の上でしょ?
だから…知ってること話して?
じゃないとこっちも出来ることも出来ないから



 今をときめく『国民的スタァ』。
 それは『帝都』であっても、『倫敦』であっても変わることはないのだろう。
 飛行船が照らし出すサーチライトが霧煙る『倫敦』を照らす。時計台や街並みは霧の中に沈んでいるが、確かにそこに人の営みがあると知ることは出来るだろう。
 そんな飛行船から見下ろしていたのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)である。
 彼女は今回タダで倫敦旅行が出来ると聞いたから、『超弩級戦力』として『帝都桜學府』からの依頼を受けていた。

 それはある意味で建前のようなものであったけれど、それを正すのは野暮というものであろう。
 玲は倫敦の郊外へと向かう。
 まずは『影朧を使役する結社』の所在を知らねばならず、その所在地を知るのは狙われている『アーニャ・ブラッドレー』だけである。
 金木犀と幻朧桜の花弁が舞い散る日本庭園は倫敦の地にあっても、霧と相まって幻想的な光景であった。
 それを楽しむのもまた一興であったかもしれない。
「えーとアーニャさんだっけー? ちょっとサイン頂戴よー? 出てきて出てきてーー!」

 そんなふうに声を掛けるのだが、そういってはい此処にいまーす! と元気朗らかに出てくるようならば何の心配もないのだ。
「まあ、そうだよね。と言っても芸能関係あんま興味ないから、知らないし……」
 サイン頂戴っていうのはなかったかもしれないと思っていたが、玲は猟兵特有のサブカル嗅覚で庭園のベンチに座り瞳を伏せる女性を見つける。
 わお絵になる、とか思ってはない。多分。
 あの輝くオーラのようなものは、『スタァ』特有のものだろう。一見しただけでわかる資質は、玲にとっては見つけるに容易いものであった。
「アーニャさんだよね。小難しい話は無しにしよう」
 玲の姿にアーニャは驚いたようであったが、自然と覚悟の備わった顔をしていた。

 それが演技でもなければスタァとしての特性でもない顔であることは一目瞭然であった。
「……何を」
「君、今大事なモノは何? 地位? 名誉? 自分の生命? それとも他のなにか?」
 畳み掛けるような言葉。
 時間がもったいないと感じていた。目の前の女性は、きっと自分だけで何もかも成し遂げてきた者なのだろう。
 そういった者特有の抱え込み方をしている。

 自信があるからこそ、他者を頼ることを覚えない。
 それが悪いとは言わないけれど。それでも、どうしようもないことに直面した時、人は動けなくなってしまう。
 自信という重りによって足を取られてしまうのだ。
「わたくしが、大切なものは……あの子らの未来。わたくしが保証しなければならないのです。それ以外に何もいらないのです。けれど、地位と名誉がなければ、それも為すことができない」
 彼女の瞳は、誰かのためにという志だけで輝いていた。
 だからこそ玲は手を差し伸べるのだ。

「貴女が生命を掛ける必要なんてないんだよ。人には人の戦い方がある。貴女の戦場は舞台の上でしょ?」
 そう、できることとできないことがある。
 そして、玲は『超弩級戦力』である。彼女にできないことは自分がやる。その自信満々に満ち溢れた瞳の輝きは、スタァと通じるものがあったことだろう。
「だから……知ってること話して? 今すぐに決心しなくたっていい。けれど」
 決心してくれたのならば。
 話してくれないと出来ることも出来ない。
 後は決めるだけだと玲は微笑んだ。

 戦う人が目の前にいる。
 己のできることをしようと決意したものがいる。誰かのせいにするわけでもなく、自身の生命を掛けようとしている者がいる。
 それを助けようと思えることは尊いことなのかもしれない。
「私これでも経験豊富な方だからさ、敵さえわかれば……ほら、この剣で全部ぶった斬ってあげることは出来るよ?」
 振り払う模造神器の刀身が蒼く輝く。

 それは絶望しか待ち受けていない者の人生を切り開く輝き。
 例え、それが困難であっても、玲自身が出来ることをやると決めたときにこそ輝く、希望の光と成ってスタァの瞳を照らすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
初めまして、アーニャ・ブラッドレイさん。村崎ゆかり、陰陽師。推参。
帝都桜學府からのものよ。安心してちょうだい。
無作法なブン屋連中だの刺客だのが入ってこられないよう、「結界術」で陣を敷いておいたから安心して。

国民的スタァって大変ね。何をしても、無遠慮な視線を向けられる。
でも、この庭園でなら、そんな耳目は存在しない。伺ったことは絶対の秘密として、胸に仕舞う。
だから、あなたが狙われる理由を教えてほしいの。
あたしたちはベイカー街の名探偵じゃないから、はっきり教えてもらわないと事態が分からない。

でも、その後は任せておいて。荒事こそあたしたちの領分。手がかりさえあれば、そんな秘密結社は叩き潰してくるから。



 不死の帝の名の元に世界が統一された世界、サクラミラージュ。
 その世界において『帝都桜學府』の名は影朧救済機関として知れ渡っていることだろう。
 それは『アーニャ・ブラッドレー』が『影朧を使役する結社』に属していたのだとすれば、なおのことである。
 その名を知らぬことはなく、同時にその名を名乗ることが何を意味するのかを彼女は知るだろう。
「はじめまして、アーニャ・ブラッドレーさん。村崎ゆかり、陰陽師。推参」
 まるで舞台女優の台詞のようだと思われたかも知れないと、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は思った。
 彼女の目の前には倫敦郊外にある『春秋庭園』のベンチに座る『国民的スタァ』、『アーニャ・ブラッドレー』の姿があった。

 猟兵と接触した彼女から『影朧を使役する結社』の所在を聞き出すことが猟兵達にとっての最初の関門である。
「帝都桜學府からのものよ。安心してちょうだい」
 そんなふうに言われて、『アーニャ・ブラッドレー』はうなずく。
 今まで彼女を追い回していたゴシップ記者たちとは違うことを認識してもらえたことは大きかった。
 すでにゆかりは彼らが入ってこれないように庭園の一角に結界術で陣を敷いて、一般人たちが入ってこられないようにしている。

 彼らが騒ぎ立てれば、『アーニャ・ブラッドレー』の心は波を立てるように揺れるだろう。
 けれど、それは好ましい風ではない。
「国民的スタァって大変ね。何をしても、無遠慮な視線を向けられる」
「けれど、それは当然のことです。見られることを生業にして生活の糧を得ているのですから」
 別に気にはしていないのだと彼女は言った。
 けれど、そこに悲壮なる決意があることを猟兵達、ゆかりは知っている。だからこそ、彼女の心を拓かせなければならない。
 彼女は自分自身で自分の過去をどうにかしようとしている。

 それは影朧を使役する結社にとって都合の悪いことであると同時に、己たちを知る者、裏切り者である彼女を始末する絶好の機会でもあったのだ。
「でも、この庭園なら、そんな耳目は存在しない。伺ったことは絶対の秘密として、胸にしまう」
 だから、とゆかりは続ける。
 猟兵達がこれから為すことは、『アーニャ・ブラッドレー』を、ひいては彼女が大事に思うものを護るために必要なことなのだ。
 彼女はそれを知っている。

「だから、わたくしが狙われる理由を教えてほしいと」
「ええ、そして狙う者たちの所在を知っているでしょ? あたしたちはベイカー街の名探偵じゃないから、はっきり教えてもらわないと事態がわからない」
 全てを見通す目を持つ者はいない。
 自分たちが『超弩級戦力』と呼ばれるユーベルコヲド使いであったとしても、わからない者はわからない。
 救わなければならない者がいたとしても、その者が手を伸ばさなければ掴み取ることさえできないのだ。

 それは歯がゆいことであったかもしれないけれど、人は救われたがっている。誰かを、自分自身を救いたいと願っているのだと信じたい。
「その後は任せておいて」
 ゆかりは胸に手を置く。
 自分たちの領分はそこからであると。手がかりさえあればいい。
 例えどれだけ恐ろしい結社であろうとも、自分たちがそれを取り除くと。
「あなた方は……本当に」
 できるのだろうか。
 信じたいと願う心がある。

 都合の良い夢ではないだろうかと疑う心もある。
 けれど、それでも、恵まれなかったあの子らの未来を保証するためには、例えこれが悪辣なる人生の罠であったとしても飛び込まなければならない。
『アーニャ・ブラッドレー』は決断するだろう。
 己の過去と、己の過ち。
 それを精算する時が今まさに訪れたのだと。

 それを見やり、ゆかりは満足げにうなずくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
桜をこの倫敦でも見られるなんて思わなかったな
どこかサクラミラージュの世界は落ち着くというか…この桜のせいかもしれない

アーニャさんはグリモアの話によれば結社からの脱退者、という事
でもそれは無理やり聞き出す事じゃない
まずは俺達がその話をしてもいいと思ってもらえる存在であるかどうか、見極めてもらってから、だろう

整った顔立ちの中に憔悴の色が見て取れる気がする
どれほどの心労が溜まっている事だろう
彼女の中に秘められた思い、そして今の状況…色々な要因が重なっての事なのは間違いない
桜を見ながら紅茶をお淹れしよう
少しでも気持ちが安らいでくれればいいが
俺はアーニャさんに少しでも寄り添う事が出来れば、と思う



「桜をこの倫敦でも見られるなんて思わなかったな」
 そう呟いたのは、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)であった。
 彼の瞳に映るのは倫敦郊外の庭園、『春秋庭園』の景色であった。
 そこには幻朧桜と金木犀が咲き誇る他の世界では見られぬ光景であったことだろう。
 けれど、その光景を目の前にしてもひりょはどこか落ち着くと感じていた。
 サクラミラージュはどうしてか、安心感を覚えてしまうのだ。それはこの世界が統一され、平穏を甘受しているからかもしれない。
 雰囲気がひりょにそう感じさせているのかも知れなかった。

 しかし、この景色に見とれている時間はない。
 なぜなら、この統一された世界にあってもオブリビオン、『影朧』を使って悪事を為そうとする者がいるからだ。
『影朧を使役する結社』。その名も全容も未だ知られては居ないが、これを放置しておけば『帝都』より離れた地である倫敦に望まぬ争いの火種を残すことになってしまう。
「『アーニャ・ブラッドレー』さんか」
 目的の人物はすぐに見つかった。

 ひと目見ればわかる。
 只者ではない。オーラのようなものさえ感じる美しい容姿。『国民的スタァ』と呼ばれるのも頷けるほどの美しさ。
 佇まい、所作、容姿、そして溢れる気品のようなものさえ、ひりょは感じたかもしれない。
 彼女が嘗ては『影朧を使役する結社』に属していたとは到底信じられなかったが、グリモアからの情報を信じるならば、それが真実なのだ。
 故にひりょは一歩近づく。

 見上げた『アーニャ・ブラッドレー』の顔には憔悴の色が見て取れたような気がした。
「あなたは……『超弩級戦力』の方?」
 彼女の言葉にひりょはうなずく。
 すでに他の猟兵たちと接触していたのだろう。話が早い。けれど、ひりょは彼女の顔色を見て、放ってはおけなかった。
 どれほどの心労が溜まっているのだろう。
 想像するしかない。けれど、それを癒やすことが出来る。なぜなら、自分にはユーベルコヲドがある。
「少しお茶でもしませんか。何も急いで全てを話してもらわなければならないってあけでもない。そう、少しは自分を労ることだって」
 必要だと、ひりょのユーベルコヲドが輝く。

 生まれながらの光が『アーニャ・ブラッドレー』の身体を癒やしていく。
 温かい光は善意そのものであったことだろう。
 それは彼女の心の奥底に秘められた思いと決意、そして今取り巻く状況や様々な要因が重なっている。
 差し出す紅茶と共に彼女の心の中にある澱が溶けていけばいいと思った。
「ありがとうございます。お優しい方。でも……」
「少しでも気持ちが安らいでくれればいい。俺は少しでもアーニャさんに寄り添う事が出来たらと思っているから」

 だから、急がなくたっていい。
 自分だけで抱え込まなくたっていいのだと、ひりょは紅茶の香りと共に『アーニャ・ブラッドレー』へと告げる。
 いつだってそうだけれど、戦う者は多くを抱える。
 抱えることができる。それだけの力があるからだ。
 けれど、いつまでもそれを維持できるわけではない。戦うということは傷つくということだ。
 傷ついた者は、足を引きずり、手を動かす。這いつくばってでも、なさねばならぬと心をすり減らす。

 それを。
「少しでも気が楽になってくれたらいい。そのために俺達は来たんだから」
 人の憂いに寄り添うから優しさというのならば、今こそ猟兵が武器にしなければならないのは、きっとそれであろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと

「ほう、ここが倫敦。桜と霧とフィッシュアンドチップスの街か」(じゅる

さて、ルクスよ。
今回の事件の敵は「影朧の餌にふさわしい、美しく輝いている者」を狙う結社だったな。
ならば、事件は解決したも同然よ!

「なぜなら、誰よりも美しく輝いている、永遠の美少女たる我がここにいるのだからな!
その結社も我の存在を放っておくことはなかろう!」

さあ、狙われているという国民的スタァの元に行き、我の方が美しく輝いていることを示すとしようか!
さすれば敵の狙いも我に集まることだろう!

「ついでに記者たちの視線も独り占め!
明日の新聞の一面は我が独占だな!
フハハハハ!」

ん、ルクスよ、何故、我の胸を見つめておるのだ?


ルクス・アルブス
【フィア師匠と】

倫敦ってことですと、
やっぱりフィッシュアンドチップスでしょうか?
フルブレックファストも楽しみですね。

今回のターゲットは『国民的スタァ』さんですから、
ごはんもきっと美味しいですよね!

「年齢をそぉいして『美少女』と言い張れるそのメンタル。
いろんな意味で師匠の圧勝ですね」

……胸以外(ぼそっ)

ナンデモナイデスヨ?

とはいえ、
アーニャさんも師匠とタイプは違うとはいえ、美人さんです。

こんな美人さんが、愁いを帯びた表情とかしていたら、
いくら師匠でも勝ち目が薄いですね。

ここはごはんを食べて、元気になってもらわなくては!

え? 食べたいだけだろう、って? 
ち、ちがいますよー!? 師匠の応援ですから!



 様々な世界があるように、その世界にもまた様々な世俗と文化がある。
 似通っていたのだとしても、それは同一のものではなく辿る未来も、辿ってきた過去もまた違うものである。
 だからこそ数多の世界を渡り歩く猟兵たちにとって楽しみなものの一つである食文化は興味深いものであったことだろう。
「ほう、ここが倫敦。桜と霧とフィッシュアンドチップスの街か」
 じゅる、とよだれが零れそうな締まらない音を立てたのは、フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)であった。
 元人間の悪魔であり、契約に寄って不老不死を得た少女でもある。
 年齢のことは言ってはならない。

 そして、その隣に立つのは、彼女へと半ば押しかけるようにして弟子となったルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)であった。
「ああ、やっぱり倫敦ってことですとフィッシュアンドチップスなんですね。フルブレックファストも楽しみですね」
 倫敦郊外の庭園、『春秋庭園』には幻朧桜と金木犀の花が散っている。
 他の世界では見られぬ光景に二人は心を奪われ……てはないない。
 どちらかというと花より団子である。色気より食い気である。
 それを咎める者はいないし、どちらかといえば、今回の事件に関して言えばどちらも関係ないので、ともルクスは思っていたけれど、それを先回りするようにフィアが言う。

「さて、ルクスよ。今回の事件の敵は『影朧の餌にふさわしい、美しく輝いている者』を狙う結社だったな」
 ことのあらましはすでにグリモア猟兵から伝え聞いたとおりである。
 故に二人はこうして『帝都』から飛行船で倫敦までやってきていたのだ。そして、ルクスはなんで師匠がこんなに得意満面であるのかを薄々感じ取っていた。
 きっと『国民的スタァ』がターゲットになっているから、ごはんもきっと美味しいだろうなと思っていたけれど、案外がっかりだったとかなったら事であるとか思っていたが、それは口にしない。

「ならば、事件を解決したも同然よ!」
 高らかな声が響き渡る。ルクスはなんとなーく、理解していた。次にフィアが言う言葉を。
「なぜなら、誰よりも美しく輝いている、永遠の美少女たる我がここにいるのだからな! その結社も我の存在を放っておくことはなかろう!」
 高笑いが庭園に響き渡る。
 笑っているのはフィアだけだ。ルクスは下手なことを言えばこれは面倒なことになること請け合いだなと思いつつ、よいしょっとフィアを持ち上げる。
「年齢をそぉいして『美少女』と言い張れるメンタル。いろんな意味で師匠の圧勝ですね」

 ほんとによいしょした?
 それくらいに今、辛辣なこと言った気がするのだが、フィアは気にしていない。
「さあ、狙われている国民的スタァの元に赴き、我の方が美しく輝いていることを示すとしようか! さすれば敵の狙いも我に集まることだろう!」
 ついでにゴシップ記者たちの視線も独り占めであり、明日の新聞の一面は自分が独占であるとフィアの高笑いが止まらない。
 けれど、残念である。
 ルクスが思う理由とは別な理由で、ゴシップ記者はフィアを注目することはできない。

 他の猟兵がそうしたように、『国民的スタァ』である『アーニャ・ブラッドレー』に記者たちを近づけさせぬようにと人払の結界を施したのだ。
 これではフィアが如何に美少女であろうとも記者たちは近づけないのだ。
 けれど、ルクスは別の理由でそれはないと思っていた。
 なぜなら。
「……胸以外」
 ぼそっと本当に小さく呟いた。
 そう、完璧なる美少女にも一つくらいは残念だなぁと思うところがあるのかもしれない。
 それは見事なまでの断崖絶壁。
 いや、それはいいすぎかも、と思ったが、客観的に見てみればそうかもしれない。あ、いや、個人的な意見ではなくてですね。こう、世論というかぁ。

「ん? ルクスよ、何故我の胸を見つめていおるのだ?」
 やべ。
「ナンデモナイデスヨ?」
 何故片言になったとフィアは突っ込もうとするが、それより先にルクスが『アーニャ・ブラッドレー』を見つけるのだ。
 ベンチに座り、美しい容姿と所作、そして溢れる気品を前に二人は押し黙る。
 圧倒的な『国民的スタァ』の風格。オーラとでも言うべきか。それが彼女から溢れ出しており、そして愁いを帯びた表情をしているのだ。
 フィアとは別のタイプの美人とは言え、これは勝ち目が薄いとさえルクスは感じただろう。

 フィアも若干黙ってる。
 空気読んだのか? と思うほど出逢ったが、ルクスは気を取り直して『アーニャ・ブラッドレー』へと駆け寄る。
 彼女にご飯を食べてもらおうと思ったのだ。バスケットの中にはちゃんと栄養を考えた食事を庭園を管理してる宿泊施設のスタッフに用意してもらっているのだ。
「やっぱり食事も喉を通りませんか……」
「あなた方は……」
 ルクスはにっこり微笑んでベンチに隣掛ける。広げたバスケットの中身は、軽食とは言え美味しそうだ。

 思わずフィアではないがじゅるりと音がなる。
「ルクスよ。もしや食べたいだけではないのか、自分が」
「ち、ちがいますよー!?」
 これは師匠のお仕事の応援のためであってと、慌てふためく様子に『アーニャ・ブラッドレー』はなぜだか微笑みが止まらなかった。
 ここに来て漸く笑顔が見えた。
 ふさぎ込み、自分で抱え込んでいた彼女にとって『超弩級戦力』である猟兵たちの到来は、きっと明るい未来を指し示すものであったことだろう。

 自分一人でなくてもいい。
 誰かに頼ってもいいと言われ、そして孤児院の子供らを思い出させるようなフィアとルクスのやりとりに彼女の心の澱は徐々に溶かされていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
庭園に着いたらアーニャを探して接触するぜ
移動先に先回りして木に寄り掛かってカッコつけて

ちょいとそこのお前さん…そう君だよ君
そんな急いで困った事でもあったのか?
え?俺は庭園の景色を見に来ただけの異邦人だよホントだよ

誤魔化しながら自己紹介もして散策に誘う(コミュ力
ここの景色は本当綺麗だから憂鬱な気分も紛れるぜ、多分な

…何か抱え込んでるみたいだがよければ力になるぜ
迷惑掛けたくない気持ちは分かるけど自分が倒れたら元も子もないぞ
君を失った後のあの子達の事を考えてみろ

心配すんなこう見えて荒事は得意なのさ
餅は餅屋に任せときな、パパッと撃って終わらせてやるぜ
だからどうか…俺を信じてみてくれないか?

アドリブ歓迎



『国民的スタァ』とは、即ち星である。
 夜空に輝く星が人の航路を示したように、暗闇が続くような人生においての指針担えるような輝きを放つ存在のことを言う。
『アーニャ・ブラッドレー』は『帝都』より遠き倫敦の地に置いても、まさにそれそのものであった。

 星に例えられる彼女の容姿、気品、風格は倫敦に住まう人々にとっての希望であった。清廉であれ、彼女のようであれと思う者たちは多い。
 スタァとして大成しても、彼女は貧しき者たちを見捨てない。
 親なき子らを引き取って孤児院を運営し、一人でも多くの少年少女たちに生きる路を示すのだ。
 そんな彼女にも人に言えぬ過去がある。
 それが嘗て『影朧を使役する結社』に属し、人に言えぬ業を背負っていたことである。
「わたくしは……」
 彼女は思い悩む。
 自身の地位や財産に興味はない。けれど、孤児院の子供らのことを思えば、それを失うわけにはいかないのだ。
 だからこそ、彼女は自身が狙われている本当の理由を告げることができない。そして、『結社』の所在すらも告げることができない。
 それを教えるということは、己が清廉潔白ではないと自白するようなものであったから。

「ちょいとそこのお前さん……そう君だよ君」
『春秋庭園』のベンチから離れ、猟兵達に少し考えさせてほしいと一人になった彼女に声を掛けるものがあった。
 そう、星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)であった。木に寄りかかって、気取ってみたところ、割合似合っているような気さえしてくるのは、『春秋庭園』の金木犀と幻朧桜の花弁のおかげであったことだろうか?
 どちらにせよ、祐一は『アーニャ・ブラッドレー』の言葉を引き出さなければならない。
 猟兵たちは確かに『超弩級戦力』と言われる程の力を持っている。
 けれど、結社の所在地まではわからないのだ。だからこそ、『アーニャ・ブラッドレー』の強力が必要なのだ。

「そんな急いで困ったことでもあったのか?」
「あなたは……」
「俺は庭園の景色を見に来ただけの異邦人だよホントだよ」
 女優を前に、そんな建前を言ってのける度胸は大したものである。看破されてしまっていることは当然として、祐一は今更にきざったらしいことに背中がむず痒い気持ちになる。
 けれど、ここはごまかさなければならない。
 だって、すでに幕は上がっているのだ。

「なにか抱え込んでいるみたいだが、よければ力になるぜ。迷惑かけたくない気持ちはわかるけれど、自分が倒れたら元も子もないぞ」
 その言葉は核心を突いていた。
 そう、それが『アーニャ・ブラッドレー』が言えぬ事実の核心。けれど、その板挟みで彼女の心はどちらにも傾くことができないのだ。
「君を失った後のあの子達の事を考えてみろ」
 その言葉は、『アーニャ・ブラッドレー』の心を激しく揺さぶった。

 考えなかったわけではない。
 理解していないわけでもない。けれど。けれども、自分の問題は自分で解決しなければならないのだ。
 だから。
「だから、わたくしは……わたくしが、やらねばと」
『此処』に来たのだから。
 全てを精算するために。自分の生命を擲ってでもと。それを祐一はわかっている。
 だからこそ、笑うのだ。

「心配すんな。こう見えて荒事は得意なのさ。餅は餅屋に任せときな、パパッと撃って終わらせてやるぜ」
 なんて、と指鉄砲を構えて祐一はおどけてみせる。
 その朗らかな雰囲気は凍てついた彼女の心をそっと融かすことだろう。
「だからどうか……俺を信じてみてくれないか?」

 信じるだけでいいのだ。
 誰かを信じる。『国民的スタァ』は自分を信じる。力を、能力を、運命を。
 けれど、いいのだ。
 誰かを信じることもまた人にしかできないことである。だから、人の心の光は星のようにきらめくのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…さて、アーニャと言う人物は中々に地に足の付いた方法を採れる人物のようだね…
…記者達が邪魔だな…超弩級戦力として庭園で起る事件の解決のため、とか適当に言い訳つけて人払いをしてしまおう…

…やあ…アーニャだね…私はメンカル・プルモーサ…まあ魔女みたいなものだよ…
記者達は一時的にここから追いだしているからゆっくりすると良い…

軽く自己紹介をして花を見ながら軽く世間話をしようか…

…話しに聞く限り…貴方はとても現実的な人間だ…
…だからこそ…巻き込みたくないのは判るけど…一人では限界がある事も判っているはず…
餅は餅屋…問題の解決のためにも我々に任せて貰えはしないだろうか…
ゴシップ屋達への対処も含めて、ね…



『アーニャ・ブラッドレー』という人物のことを知れば知るほどに彼女が『国民的スタァ』と呼ばれる所以をメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は理解していった。
 品行方正であり、別け隔てなく相対する者に微笑みを向けることのできる女性。
 貧しき者には暖を。
 富める者には責務を。
 そう知らしめる彼女の行いは気品となって、風格をさらなる輝きで持って増していく。
 故に彼女は、『帝都』より遠き地である『倫敦』似合っても尚、世界に知れ渡るスタァとして燦然と輝くのだ。

「……さて、アーニャというジウン物は中々に地に足の付いた方法を採れるようだね……」
 メンカルにとって、それは好意的な存在であったことだろう。
 けれど、彼女を取り巻くゴシップ記者たちが邪魔である。他の猟兵画僧したようにメンカルもまた彼らを排除するように動いた。
「『超弩級戦力』として言っておく」
 メンカルは記者たちが何故か『春秋庭園』に入れないと騒ぎ立てる囲いを割るようにして歩く。
 彼女の言葉は凛として響き渡るものであった。
 金木犀と幻朧桜の花弁が舞い散る光景にあって、彼女の言葉はゴシップ記者たちの耳に良く響いたことだろう。
「この庭園で起こる事件の解決のため、これより此処を封鎖する。だから巻き込まれたくなければ、離れることだね」

 どよめく記者たち。
 彼らもまた『超弩級戦力』の意味を知るだろう。ユーベルコヲド使い以上の力を持つユーベルコヲド使い。
 その『超弩級戦力』が出張る事態。
 それは即ち己達の生命すら脅かす影朧事件が起こるということである。それを聞いてかれらは一目散に駆け出していく。
「他愛ない……やあ……」
 メンカルはゴシップ記者達の背中を見送って、佇む『アーニャ・ブラッドレー』と相対する。

 目の前にすればわかる。
 彼女の気品は後から得られたものだ。けれど、彼女が放つ風格は生まれ持ってのものだ。
 ただ傷つくことを知らぬままに育ったものではない。傷つき、汚れ、それでも磨いたからこそ輝くオーラのようなものであった。
「アーニャだね。私はメンカル・プルモーサ……まあ魔女みたいなものだよ」
「魔女……舞台の役でも演じたことはありますが……」
 本物は初めてです、と『アーニャ・ブラッドレー』は微笑んだ。
 ああ、とメンカルはため息をつく。記者たちを一時的とは言え追い出してよかった。ゆっくりと彼女の心が安らぐ時間を作れたことに安堵する。

 一緒に歩きませんかと『アーニャ・ブラッドレー』が言ったのは、これまで他の猟兵達が言葉を紡いできたからだろう。
 猟兵、『超弩級戦力』への信頼は徐々に彼女の心の澱を溶かしていた。
「……話に聞く限り……貴方はとても現実的な人間だ……だからこそ……巻き込みたくないのは判るけど……」
「ええ、一人では限界が在る」
 わかっております、と『アーニャ・ブラッドレー』は微笑んだ。
 苦しいときこそ微笑みを。
 まるで舞台でも見ているようでも在った。それを美しいと呼ぶかは人それぞれであったことだろう。

 けれど、わかっているのならば何を迷っているのだろう。
「わたくしには後ろ暗い過去があります。それを開示することが恐ろしいわけではないですけれど、それによってあの子らが……」
 孤児院の子供らに累が及ぶことが恐ろしい。
 一度救われた人間が、再び奈落に落とされた時、どうなるのかを彼女は知っている。
 何度も這い上がることができる人間ばかりではないことを知っている。幼い子供らであれば尚更だ。
 這い上がることができないのならばいい。
 まだ生きてさえ居てくれればいいのだ。けれど、生命すらなくしてしまったのならば。それはとても悲しいことである。
 それが彼女には耐えられない。

「……餅は餅屋。問題解決のためにも我々にまかせて貰えはしないだろうか……」
 ゴシップ屋達への対処も含めて、とメンカルは彼女の手を取った。
 冷たい手だった。
 それは誰かの未来を憂う者の冷え切った心そのものだった。
 けれど、メンカルは、この冷たさをどうにかしたいと思ったのだ。彼女が『国民的スタァ』だからではない。

『アーニャ・ブラッドレー』という一人の心の暖かさを守りたいと願ったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレスベルク・メリアグレース
児童養護施設の子供たちの為ですか。
わたくしも親が児童養護施設の院長であった故に身寄りの無い子供達の為に愛を惜しみなく注いでいました。
そして、宗教家として少し大きく活動出来るようになった身。どうかこの空の使徒の一人を頼ってはくれませんか。

そう言って語りかけるフレスベルクのオーラは『国民的スタァ』であるアーニャにとって極めて位階の高い宗教家である事を察知するには十分であった。

ええ、わたくしも新参ですが『超弩級戦力』の一人。
祀ろわぬ者を討つ力はあります。

そう言って【祈り】を込めて我が異能『帰天』の力で『伝心』の加護を設け、わたくしの想いをテレパシーの如くアーニャさんに伝えていく



 人の運命とは、これほどまでに数奇なものであっただろうかと己の人生を傍から見た者は言うかも知れない。
 けれど、その人生を歩む自身が思うことはないのかもしれない。
 例え過酷な運命が待ち受けているのだとしても、自身が此処に在ると思うことで運命は自分で選び取ったものであると言えるだろう。
 フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)もまた数奇なる運命を歩んできた猟兵である。

 彼女もまた親が児童養護施設の院長であった故に身寄りのない子どもたちの為にと愛を惜しみなく注いできた。
 それは無償の愛であったのかもしれない。
 見返りを求めない心はいつだって美しいものだろう。
 けれど、人の心はいつだって一人きりではいられないのだ。何かが心の支えになるように。

 自分の愛を紡ぐためには、誰かの心がなければ立ち行かなくなる。
『アーニャ・ブラッドレー』に今必要なのは、その誰かの心であった。
『春秋庭園』に佇む『国民的スタァ』、『アーニャ・ブラッドレー』の姿は美しいものであった。
 容姿も、気品も、風格も。
 全てが星の輝と呼ぶに相応しい者であった。フレスベルクはうなずいた。
「宗教家として少し大きく活動できるようになった身。どうかこの空の使徒の一人を頼ってはくれませんか」
 彼女の言葉は、『アーニャ・ブラッドレー』に届いたことだろう。

 彼女一人の言葉では、きっと届かなかったことだろう。
 けれど、彼女もまた一人ではない。
 他の猟兵達が紡いで、その心の澱を溶かしたからこそ届き、響くこともある。
「あなたもまた……」
「ええ、わたくしも新参ですが『超弩級戦力』の一人。祀ろわぬ者を討つ力はあります」
 フレスベルクの心は、きっと『アーニャ・ブラッドレー』に届いたことだろう。
 それはサイキックキャバリアが持つ異能。

 その姿を持って、フレスベルクは『アーニャ・ブラッドレー』の瞳にも明らかに位階の高き宗教家であることを知らしめる。
 それだけのオーラが彼女にも備わっていたのだ。
 人の光を照らし、より良きものへと願うのが宗教であるのならば、人の心の拠り所となるのもまたスタァとしての輝き。
 なればこそ、通ずるところがあるはずであった。
「……これは……」
『アーニャ・ブラッドレー』は僅かに戸惑っていたようだった。
 フレスベルクの異能と共に伝わる彼女の想い。

 それは偽りなき真心であったことだろう。
 誰かを助けたいと願う心が同じであれば、彼女の想いもまた同様であると伝える。サイキックキャバリアによって増幅されたテレパシーのごとき思いは、『アーニャ・ブラッドレー』の心の澱を完全に溶かしていくだろう。
「……願うことは何時だって祈りと同じ。かくあれかしと貴女は願うでしょう。ならば、その想いに応えるのが『超弩級戦力』としての務め」
 フレスベルクは告げる。

 自分に何故力が宿っているのか。
 何故自分が選ばれたのか。
 その運命を掴み取ったのは、彼女の愛であるのならばこそ、想いは同じである。
「だから、共に征きましょう」
 自分のためではなく、誰かのためにと願うことのできる清らかさがあれば、人は変わっていく。
 例え、人の心が善だけではなく悪との同居であったのだとしても、眩い心の輝きでもって、示すことができると証明するようにフレスベルクの異能は、夜空を彩る星と同じように煌めくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薙殻字・壽綯
…………ゴシップ記者は、嫌いです。真実以上の何かを無理くり見出しては……勝手な予測を立てて、でも。私の感情は同族嫌悪。だから、……同じムジナの穴なのでしょうね

質問を。一つ。貴方の背に在るもの等は、堂々と陽の光を浴びてはならないものですか?
……私には、貴方が悪人には見えません。そう、思わせられているだけかもしれません。単に、私が。貴方が噂を求めるハイエナどもに食い荒らされる事が嫌で、嫌だから、その未来を避けたいのです

……あの子等を守る。その為に生命を擲つ。ですが美しい話に獣は群がるもの
だが貴方は輝けど餌ではない。仮に食い物だとしても、与える対象は雛であり、ハイエナではなく。私でもないでしょう



 人の営みを知ることは、その光と影を知ることでもある。
 輝きは眩く美しいものである。それに憧れ、手をのばすこともあるだろう。手が届かぬからこそ美しいと知ることが在れば、その憧憬はいつしか妬み嫉みへと変わっていくのかも知れない。
 それは星の輝きが眩いのと同じように、落ちる影が暗闇よりも暗きものであるように。

 人の負の側面に惹かれるのまた同様である。
 故に薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)は呟いた。
「……ゴシップ記者は、嫌いです」
 それは嫌悪であったし、同族嫌悪でもあった。
 己もまた過去に文字を綴る者であり、旋律を紡ぐ者であったからこその感情であったことだろう。
 真実以上の何かを無理くり見出しては勝手に憶測を立てる。
 それがゴシップ記者であるというのならば、それは人の悪意が喜ばれるということでもあったのだ。

 醜悪なる悪意であったとしても、その味は蜜の味である。
 甘やかな文字の羅列は、人々の感覚を麻痺させる。もしも、自分がという位置をすり替えて想像するという配慮さえも欠落させてしまう。
 それが後ろ暗いことであればあるほどに、人は喜ぶものである。それを否定したいと願う自分がいたとしても、それを全ての人間ができるとは限らないのである。
「だから……同じムジナの穴なのでしょうね」
 そんな自分に何が出来るのだろうかと、壽綯は自嘲するように呟いた。
 その言葉の意味を知ることができるのまた自分一人である。

『秋春庭園』に金木犀と幻朧桜の花弁が舞い散る。
 そこに一人佇む『アーニャ・ブラッドレー』の姿は美しかった。
 気品があった。風格があった。けれど、真芯に強さもあれど、一度は折れかかっていた。
 しかし、そこに人の憂いに寄り添う優しさが、猟兵の言葉が合わさっている。
 今一人で佇む彼女は何を考えているだろうか。
「質問を」
 思わずそう声に出していた。見惚れるような美しさを持ちながら、けれど強さを持つ彼女の輝きを前に壽綯は言葉を発した。

「一つ。貴方の背に在るもの等は、堂々と陽の光を浴びてはならないものですか?」
「いいえ。わたくしの背にあるものは、人から後ろ指を指されるものもあれど、わたくしが背負ってきた過去です。示せというのならば、示しましょう」
 その瞳は正しく星の輝。
 スタァの輝きであった。自分以外の何者かを大切に思うからこそ発せられる言葉。その強さを裏付けるものが、全て正しいものばかりであるとは限らないことを思い知らされる。

「……私には貴方が悪人には見えません。そう、思わせられているだけかもしれません。単に、私が。貴方が噂を求めるハイエナどもに食い荒らされる事が嫌で、嫌だから」
 こうしてやってきたのかもしれない。
 個人的な感情。独善であるのかもしれないと壽綯は呟いた。
 けれど、その言葉に『アーニャ・ブラッドレー』は微笑んだ。それでいいのだと。それが人であるということなのだと。
 自分の真芯にあることを言葉にする。それを善か悪かと思い悩むことこそが生きることであり、同時に人の憂いに寄り添う優しさであるのだと彼女は言ったのだ。

「わたくしの未来はきっと、これまで。そう云う覚悟はできいるのです」
「その未来を避けたいのです……あの子らを護る。そのために生命を擲つ」
 その覚悟を知っているからこそ、その後に見える悲劇すらわかってしまう。
 美談に人は憧れる。
 そうであれという願望と共に群がる。そして、それを作り出した者たちは嗤うのだ。人の愚かさを、人の善なる思いを、くだらないものだと嗤うのだ。
 それがどうしても許せない。

 そんなことがあっていいわけがない。
 事実がどうであれ、そんなことがあっていいわけがない。
「だが貴方は輝けど餌ではない。仮に食い物だとしても、与える対象は雛であり、はイエナではなく」
 そして、壽綯自身でもない。
 理由を欲していたのは自分であったのかも知れない。どうかそうであってくれと願ったのは自分だ。

 けれど、それでも。
 人の善意の結末が悪夢であってはならない。絶望が塗れていてはならない。
「ええ、そのとおりです。あなた方が、『超弩級戦力』が求める情報は」
『アーニャ・ブラッドレー』の瞳に星が輝く。

『国民的スタァ』としてではなく。
 ましてや『アーニャ・ブラッドレー』でもなく。
 唯一人の女として。彼女が護ると決めた子らのために彼女の瞳は星に輝くのだ。
「『結社』は――」
 その所在は、と彼女の指先が告げる。

 そう、彼女は何のために『此処』に来たのか。
 逃げるためではない。
 戦うために『此処』に。『春秋庭園』にやってきたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『夢散り・夢見草の娘』

POW   :    私達ハ幸せモ夢モ破れサッタ…!
【レベル×1の失意や無念の中、死した娘】の霊を召喚する。これは【己の運命を嘆き悲しむ叫び声】や【生前の覚えた呪詛属性の踊りや歌や特技等】で攻撃する能力を持つ。
SPD   :    私ハ憐れナンカジャナイ…!
【自身への哀れみ】を向けた対象に、【変色し散り尽くした呪詛を纏った桜の花びら】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ミテ…私ノ踊りヲ…ミテ…!
【黒く尖った呪詛の足で繰り出す踊り】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:前田国破

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『国民的スタァ』、『アーニャ・ブラッドレー』が指差したのは、紛れもなく『春秋庭園』であった。
 そう、『影朧を使役する結社』とは即ち『春秋庭園』を管理する団体である。結社の隠れ蓑としては最適であったのだろう。倫敦郊外であり、同時に広大な敷地を持ち、人は金木犀と幻朧桜の美しさに惹かれて集まってくる。
 美しい花々を見ることは人の心の癒やしになるであろう。
 けれど、癒やしを求める心は負の感情に塗れているものだ。
 それを『結社』は影朧の餌として利用していたのだ。

『アーニャ・ブラッドレー』は知っていたのだ。
『結社』が『此処』であることを。自分自身で全てを終わらせるために、過去の自分と決別するために、逃げるためではなく戦うために『此処』に来ていたのだ。
 猟兵たちはそれを知っただろう。
 彼女の決意を無しないために疾走った。
 この庭園の敷地にある建物は宿泊施設だけ。そこが『結社』そのもの。

「『超弩級戦力』……気が付かれたか……! あの『国民的スタァ』が来たときは極上の餌になると期待していたのに、あの女狐め……!」
 結社の構成員たちが感づかれたことに気が付き、猟兵達を近づけさせぬと使役する影朧たちを解き放つ。
 それはまるで『一番星』を願う少女のような影朧であった。
 瞳は塞がれ、けれどやせ細った身体は、世界の悪意に飲み込まれたような姿であった。

 輝きを前に何故自分がそうではないのかと嘆くような、傷ついた魂。それが影朧『夢散り・夢見草の娘』であった。
「ア、アァ――ウ、ァ……光、光ヲ、私達ニも、私達の夢も輝クヨウニ、と……!」
 呻くような声は、彼女たちの魂がひどく傷ついているから。それを利用し、人の悪意を反映させようとする者たちがいる。
 それが『結社』である。
 彼女たちには何の罪もないだろう。
 
 いつだって利用されるだけ利用される人生であったのかもしれない。その結果であったのかもしれない。
『アーニャ・ブラッドレー』もまたそうなっていたのかもしれない。
「わたくしは、そうではなかった。それが偶然であったのだとしても。わたくしは、わたくしの後に続く子らが、そうならぬようにと務めなければならないのです」
 彼女は叫ぶ。
 それは女優でもなければ『国民的スタァ』でもない。
 彼女の本心であり、願いであり、祈りでもあった。

「アア――、ナンデ、なんで、私達は、アアではないのか」
 嘆く声が輪唱のように成って『春秋庭園』の宿泊施設の中に木霊する。
 けれど、彼女たちを、その傷ついた魂を救うためには打倒しなければならない。
 癒やしを求める彼女たちにできることは、それだけだ。
 使役され、死した後も使い潰されるだけの運命を、それを砕くために猟兵は疾走るのだから――。
月夜・玲
さてと、お仕事お仕事
これが終わったら楽しい観光がまってるんだからね
サクッと終わらせちゃおう
アーニャさんもありがとね
こっからは、私の仕事だよ


《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
さあ、仕事だ
それ以上でも、それ以下でもない
目の前に立ち塞がるなら斬り捨てるだけ
感傷も、憐れみも無い
両剣で立ち塞がる敵を『2回攻撃 』して斬り伏せていくよ
その間に剣に『エネルギー充填』
『オーラ防御』で敵の攻撃を防ぎながら、出来るだけ私に敵が群がるように立ち回ろう
十分に引き付けたら【エナジー開放】を起動

最期に君達が目に焼き付けるのは、この雷光だ
さよならだね

…まあ、剣の銘において良き再誕を
…かっこつけすぎか



 蒼き鳥は再誕の詩を奏でるか。
 その輝きは雷光の如く。
 金木犀と幻朧桜の花弁が舞い散る庭園にユーベルコヲドの光が輝く。蒼き光、それは影朧にとっての救いとなるか。
 けれど確実に言えることは、この光を見て消滅を免れたオブリビオンは居ないということだ。
「さてと、お仕事お仕事」
 軽やかに呟きながら、リズムを取るように月夜・玲(頂の探究者・f01605)は花弁が渦を巻くような『春秋庭園』を駆け抜ける。

 彼女の瞳に映るのは、影朧の娘たち。
 彼女たちは夢散った魂の成れの果てである。傷つき、利用され、また利用される。
 その死すらも、その夢の残骸すらも利用されるのだ。
「あぁ、哀レミを、私達は、憐れナンカじゃない――ッ!」
『影朧を使役する結社』の構成員たちが放つ影朧は皆、一様に少女の姿を取っていた。
 彼女たちの過去が如何なるものであったとしても、玲は哀れみを抱かない。
 仕事なのだ、これは。
 それ以上でも以下でもない。
 目の前に立ち塞がるなら切り捨てるだけである。そこに感傷も哀れみもない。

 その感情を向けることことそが、彼女たちの糧となるのは皮肉でしかないのだから。
「これが終わったら楽しい観光が待ってるんだからね。サクッと終わらせちゃおう。アーニャさんもありがとね」
 こっからは自分たちの仕事だ。
 玲の言葉に『アーニャ・ブラッドレー』はうなずく。
 それは信頼の証でもあり、これより塵散りになる嘗ての救われる魂が再び霧散させられることから目を逸らさぬ決意の現れであった。

 二振りの模造神器の刀身が蒼く輝く。
「憐れムなァ――!」
 迫る影朧。 
 しかし、玲の方が数段早い。一瞬にして放たれた二連撃が影朧の身体を両断する。
 刀身にユーベルコヲドの輝いが充填されていく。

 それはまるで蒼き星の輝きであった。
 星を夢見て、努力と研鑽を怠らなかったが故に夢破れた者たちの残滓にとって、それほどに眩く憎たらしい輝きもなかったことだろう。
「だろうね。努力しても結果が伴うとは限らない。人生に成功が必ず待っているわけじゃない。わかっているよ」
 けれど、それが現実だ。
 理想を、夢を、それらばかりを見ていられない。妥協の連続かも知れない。

「それを利用していいだなんて、理由は何一つ無い。人は強くなければ生きていけないけれど、優しくなければ生きている理由なんてない」
 だから、玲の瞳はユーベルコヲドに輝く。
 何のための模造神器か。
 その刀身に刻まれた銘を見よ。

「最期に君達が目に焼き付けるのは、この雷光だ――エネルギー解放、広域放射!」
 エナジー開放(エナジーバースト)された刀身から放たれるエネルギーの奔流が影朧たちを払いのける。
 それは『超弩級戦力』と呼ぶに相応しい一撃であった。
 結社の構成員たちの瞳が恐怖に染まる。
 雷光の輝きは正しく神の怒り。

 己達が不条理を課した娘たちの怒りを、悲しみを、憐憫すらも塗りつぶす雷光が己たちを討つのだと悟ってしまったのだ。
「さよならだね。いつかのプリマステラ……まあ、剣の銘において良き再誕を」
 なんて、かっこつけすぎかと玲はひとりごちる。
 けれど、その剣の銘はきっと彼女たちの救いになったことだろう。

 桜の精が癒やしを持って転生を促すように、祓われた影朧は、いつかきっとまた、あの星の輝を求めるだろう。
 その時に思い出すのだ。
 あの雷光の如き輝き、蒼き光を。
 その時、彼女たちは微笑むだろう。それはきっといつの日にかと願わずには居られない癒やし。
「……しんみりしている暇なんてないってね。てなわけで、お縄をちょうだい!」
 玲は影朧をけしかけた『結社』の構成員たちを尽く捉えていく。
 もう二度と彼女たちが利用されないように。
 その礎を己が築くのだというように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
まさかこの庭園こそが秘密結社の隠れ蓑だったなんてね。
いいでしょ、構成員は一人残らず捕縛する。

人間に使役される影朧――オブリビオンね。アヤメはどう思う?
アヤメはアーニャの護衛をお願いね。そっちへ影朧を向かわせるつもりはないけど。

「全力魔法」「呪詛耐性」で摩利支天九字護身法を使用する。
哀れんだりはしない。弱者が強者の前にかき消させるのも、世の道理。でも、その結果が出るまでに、精一杯頑張ったんでしょ。なら胸を張りなさい!

影朧の攻撃はされるがままに、「衝撃波」纏った薙刀で「なぎ払い」「串刺し」に。

使い手達は逃がさない。不動金縛り法で全身を絡め取ってあげる。
しばらく装しているといいわ。すぐに官憲が来る。



 人の業が、魂を傷つけるのならば影朧が生まれるのは必然であったことだろう。
 只生きるだけでも摩擦が起こり、他者が存在するからこそ互いに傷つくのである。
 けれど、それは摩擦であって意図して傷つけるものではなく。
 ときにそれは練磨と呼ぶものであったのかもしれない。
 けれど、深く傷ついた魂を使役し、使い捨て、己の欲望のままに振る舞わんとする者がいるのもまた人である。
「まさかこの庭園こそが秘密結社の隠れ蓑だったなんてね」
 知らされた事実に、村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は駆け出す。

 この庭園こそが『影朧を使役する結社』の所在地。
 たたゴシップ記者から逃れるために倫敦郊外へと『アーニャ・ブラッドレー』はやってきたわけではなかったのだ。
「いいでしょ、構成員はひとり残らず捕縛する」
 ゆかりは共に疾走る式神のアヤメに尋ねる。
 人間に使役されるというのであれば、影朧も式神も変わらないだろう。
 そこに生命としての魂があるのであれば、それこそアヤメと変わらないからだ。思わず聞いてしまっていた。
 どう思うのかと。

 それは聞いてはならないことであったかもしれないし、聞かなければならないことであったかもしれない。
 どちらの答えにせよ、こうしていま隣にいることだけでが事実であろう。
「私達は、憐レなんかジャない――!」
 迸る叫びは影朧の少女たちの魂の傷跡の深さを物語っていることだろう。
 夢を見た。
 願った。
 祈った。
 その尽くが裏切られてきたのだ。結果が伴わない努力など、意味など無いと切り捨てられてきた星屑の残滓。
 それが彼女たちだ。

 けれど、そこに憐れみを持ってはいけない。
 例え、傷だらけの魂であっても、懸命に生きた魂なのだから。
「哀れんだりはしない。弱者が強者の前にかき消されるのも、世の道理」
 けれどと叫ぶ何かがあるのかもしれない。それでも、その結果が出るまでに精一杯頑張ったという道程がある。
 それを誇ってほしい。

 他の誰もが意味がないと一蹴したのだとしても。
「あなたたち自身が胸を張りなさい。意味がないと言われながらも、決して無駄なんかんじゃなかったといい続けなさい」
 それが生きたという証だ。
 結果は自分ではない誰かが決めるものだ。そこに意味はあるのかもしれないが、けれど間違えようのない事実が一つだけある。

「自分で決めて、自分で選んで、そして夢破れたのだとしても」
 一生懸命に生きたことは変わらない。
 傷が深くても、悲しくても、人生は続くのだ。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
 ユーベルコヲドが輝く。
 摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)によて放たれたオーラのちからが呪詛を弾き飛ばしていく。
 放たれた呪詛を尽く防ぎ、ゆかりは疾走る。

 傷ついた魂があった。
 涙した過去があった。
 どうしようもない結果ばかりが彼女たちに降り注いで、夢やぶれてしまったのだとしても、彼女たちのその悲しみが利用されていい理由なんてない。
「だから、あたしがそれを祓う!」
 放つ薙刀の一撃が影朧の少女たちを貫き、霧散させていく。
 決して消えぬ傷跡を癒やすその時まで、何度でも祓うだろう。きっと癒やしを得て、新しい生命へと変わる時が在るはずなのだ。

 それを信じ、ゆかりは影朧を使役し、こちらへとけしかけた構成員たちを捕らえる。
「しばらくそうしているといいわ。すぐに官憲が来る」
 同じ人であったろうに。
 傷ついた誰かを利用しなければならない理由など何処にもないのに。
 その悪意をゆかりは許せぬと、構成員たちを次々と捕らえていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレスベルク・メリアグレース
見てほしかったのですね、貴方の踊りを。
ならば、その無念。わたくしが空に誘いましょう。

顕現した74体の熾天使が『観測』の加護を用いて踊りを見る。
そこに『解析』の加護を用いて分析。
そこに『浄化』の加護を用いて踊り自体の腕技量を評価して褒める言葉を介して浄化していきます。
確か、サクラミラージュではオブリビオンを転生させて救済するのでしたか。
ならば『転生』と『導者』の加護を。
そう言って浄化によって骸の海へと帰ろうとしている彼女たちに転生の加護を用いて転生の準備を済ませ、導者の加護でより良い来世を描けるよう導きの加護を与えましょう。



 影朧とは弱いオブリビオンである。
 それは世界を数多知る猟兵が知る事実である。故に猟兵はサクラミラージュにおいて『超弩級戦力』とまで呼ばれるユーベルコヲド使いなのだ。
 深く傷ついた魂を持つ影朧にとって、転生の道標があることは幸いであっただろうか。
 それとも、再び輪廻をめぐるように時を越えて再び現世へと生まれる艱難辛苦と捉えるか。

 そのどちらにせよ、影朧には癒やしが必要である。
 癒やしを得た影朧は桜の精によって転生される。それはきっと幸福と共になければならないものであるはずだ。
「あぁ、私達ノ踊りをミて。こんなにも軽ヤかニ踊レるの――」
『影朧を使役する結社』の構成員たちがけしかけた影朧たちは一斉に猟兵へと駆ける。
 凄まじい速度で迫る影朧の姿に、フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)はため息を漏らすように言葉を紡いだ。

 それは憐憫の感情から漏れ出たものであったのかもしれない。
「見てほしかったのですね、貴方たちの踊りを」
 無念が彼女たちの魂をひどく傷付けたのだろう。
 評価されぬ自分たちと、評価される他者との違いがわからず、もがき苦しんで死しても尚、利用される存在となってしまった。
 それが彼女たちの正体である。

 だからこそ、フレスベルクは祈る。
 その瞳がユーベルコヲドに輝いた。次の瞬間、蒼穹に舞うは、金色の主に愛されし熾天使達(ダンス・イン・ザ・セラフィック)。
 彼女のユーベルコヲドが召喚する金色の神話武装を纏う熾天使たちがフレスベルクの加護を持って、影朧たちへと殺到するのだ。
「翼持ちて天を舞う御使いは、慈悲深き主の寵愛を受ける。これを以って彷徨える者達を舞踏する者達は救い給う」
 彼女の殉じる教えは祝詞のように世界に響く。
 ユーベルコヲドの輝きと共に溢れる熾天使たちは、影朧の放つ黒い呪詛に塗れた蹴撃を躱し、彼女たちを霧散させていくのだ。

 どれだけ熾天使達が強力であったとしても、此処まであっさりやられるわけがない。
「なんだ……! あのユーベルコヲドは! どうなっている!」
『影朧を使役する結社』の構成員たちが目を剥くようだった。
 彼らは知らない。
『帝都桜學府』のユーベルコヲド使いであれば問題ない数だった。けれど、今目にするのは『超弩級戦力』即ち猟兵である。
 フレスベルクの瞳に映るは『解析』の加護。
『浄化』の力を用いてフレスベルクは、そっと囁くように影朧が披露するように繰り出す踊りから連なる蹴撃のステップに微笑みながら、褒め称える。

「それがあなたたちの研鑽。努力の結実。例え今、その切っ先が呪詛に塗れていたのだとしても」
 それでもフレスベルクは称賛する。
 彼女たちにとって、それが求めるものであるのだ。望んだものであるのだ。だから、彼女は望まれるままに言葉を紡ぐ。

 言ってほしかった言葉があれば、人は生きられる。
 それが救いとなるのならば、フレスベルクはいくらだって言葉を紡ぐだろう。彼女たちが満足するまで彼女たちの踊りを見続けるだろう。
 サクラミラージュにおけるオブリビオンとはできることならば、転生させようとするものである。
 そのための『帝都桜學府』――影朧救済機関の役目だ。
「骸の海へと還るのではなく、再び生命としてこの世界に戻るのも良いでしょう。より良い来世が描けるように……」
 フレスベルクは信じる教えが違えど、慈愛の心でもって影朧を導く。

 それが『神子代理』としての役目であり、猟兵としての責務でもある。
 己が神騎に選ばれたあの日からずっと。
 そして、これからも変わることなく続けなければならない救い。
「さあ、再び生まれ出るときには……きっと安らかなる人生を。そのためにわたくしは祈りましょう。あなたたちの踊りを再び、この目でみるために――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
なるほどね、灯台下暗しとはこの事かぁ…
とにかく危ないから下がってな…Es、彼女の事を頼むわ

[SPD]
いいぜ、哀れに思われるのが嫌いってんなら全力で相手してやる
さあダンスパーティの始まりだ!(気合

啖呵を切ると同時に流星を抜いて【乱れ撃ち、先制攻撃】
弾幕で相手の動きを牽制しつつUCを付与した雷鳴で【貫通・2回攻撃】

相手の攻撃は【オーラ防御、激痛耐性】で受けるか
周囲の木々を足場にして跳ぶように【ジャンプ】して避けて対処な(地形の利用
アーニャが危ない場合は優先して【盾受け、かばう】

短い間だったが悪くない輝きだったぜ
最期はせめて安らかに眠りな

…あ、結社員は流星で全員無力化してお縄ね(マヒ攻撃

アドリブ歓迎



 猟兵たちにとって『春秋庭園』こそが『影朧を使役する結社』の所在地であったことは意外なことであった。
 そして、『国民的スタァ』である『アーニャ・ブラッドレー』が自身の手で過去に決着をつけようとしていたのならば、それは頷けるものでもあった。
 彼女は自分の過去から目をそらさない。
 その星の輝きを持つからこそ、彼女はスタァなのだ。
 故に星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)は彼女にサポートAIドローンの『Es』を護衛として付け、結社の所在地である『春秋庭園』の宿泊施設へと走るのだ。

「なるほどね、灯台下暗しとはこの事かぁ……」
 祐一は嘆息する。
 まさかという思いはあれど、こんなにも近くに『影朧を使役する結社』が存在していて、彼らの術中に人々が取り込まれているとは思いもしなかった。
 けれど、『アーニャ・ブラッドレー』の言葉によって、それは打ち砕かれる運命にあるのだ。
 走る祐一の前に現れたのは結社の構成員たちから召喚され、けしかけられた影朧の少女たちである。

 彼女たちは一様に夢破れ、心を傷付けたまま死した魂の成れ果てである。
「アァ、もっト、モっと、私達の踊りヲ」
 見てほしい。
 ただそれだけの願いすらも叶わなかった者たち。
 プリマステラに届かなかった星屑たちの願いが、悪意ある者たちに利用されている。その姿を見るのは忍びない。
 けれど、深く傷ついた魂が影朧へと変わるのであれば、それを癒やすことこそが彼女たちの救済に繋がる。

「癒やしを得た影朧は転生する……なら!」
 祐一は影朧の少女たちの放つ呪詛の花弁を躱しながら、言い放つ。
 彼女たちがもっと見てほしい、もっと踊りたいというのならば、その本懐を遂げさせるのもまた猟兵である己の役目である。
「いいぜ、哀れに思われるのが嫌いってなんなら全力で相手してやる」
 漲る気合。
 そこにあったのは、悪意によって彼女たちの傷ついた魂を利用する者たちへの怒りであったかもしれない。
 どんな者たちであったとしても、彼女たちの願いを、けれど叶わなかった願いを傷として利用する者達を許してはおけないのだ。

「さあダンスパーティの始まりだ!」
 抜き払った熱線銃の銃口が星屑の少女たちを穿つ弾丸を放つ。
 乱れ撃たれる弾丸は彼女たちの動きを牽制し、その瞳をユーベルコヲドに輝かせる。
 冬雷(トウライ)の如き轟音を響かせて、二丁の熱線銃から弾丸が放たれ、次々と影朧の少女たちを打ち貫いていく。
 踊る少女たちの舞が祐一へと迫る。
 呪詛のこもった一撃はオーラの防壁を切り裂く。けれど、それでも祐一は上へ上へと逃げるように木々の枝を蹴って飛ぶ。

 それはまるでダンスホールで軽快に飛び跳ねるトリックスターのようでもあったことだろう。
「アァ――私タチ、もっと、踊りタイ、もっと、輝イテいたい……!」
 スタァに憧れ、道半ばで朽ちた魂。
 スタァになれるはずであっても、めぐり合わせが悪かった魂。
 スタァへの憧憬だけで力が伴わなかった魂。

 あらゆる傷を持つ魂たちが影朧になりはてたというのならば、祐一はその無念を受け止める。
 彼女たちがもっとと願うのならば、その願いにこそ祐一は応えねばならなかった。
 それだけが祐一にできるたった一つの癒やしなのだ。
「短い間だったが悪くない輝きだったぜ」
 祐一はたった一言、その言葉を告げる。

 ああ、と涙する者たちがあった。
 その言葉こそが欲しかった言葉であったのかもしれない。輝きを放つ者に憧れ、自らもと願って叶わなかった者たち。
 輝きを放たなかったもの等誰一人としていないはず。
 けれど、その輝きに気が付かれることなく死んでいった者たちにとって、その言葉こそが救いであったことだろう。
「最期はせめて安らかに眠りな」
 放つ弾丸の轟音すらも遠く聞こえていてほしいと祐一は願ったことだろう。

 彼女たちの魂がきっと転生を果たすのならば、今度こそ祝福の中で生まれたことを思い出してほしい。
 いつだって新たなる生命は祝福と共に生まれる。
 世界の全てが彼女たちを祝福しているのだ。祝福なき者などいない。そうであってほしいと願う己の幻想であったのかもしれないけれど。

「どうか、そうであってほしい」
 その願いは『アーニャ・ブラッドレー』と重なるものであった。
 祐一は結社の構成員たちを捕縛し、霧散して消えていく影朧を、そうやって見送るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
まさか…この場所が結社の…
という事は、俺が先程感じていた感情ももしかしたら影朧の餌になっていたかもしれないんだな…
アーニャさんが過去と決別する為にこの場へやって来たというなら…、俺もそれに応えねば、ね
俺は猟兵だから

この結社内にはどのくらいの構成員がいるのだろうか?
連戦になる可能性も高いだろうからしっかり対策を立てていかないとな
アーニャさんが近くにいるなら守りつつ影朧を迎撃しよう

絶対死守の誓いを発動
また影朧の攻撃対策として周囲に【結界術】にて【呪詛耐性】の結界を張っておく
アーニャさんが戦闘に巻き込まれそうな状況ならば最優先で【かばう】

影朧の攻撃を結界とUCで凌ぎきり弱った所を【破魔】退魔刀で一撃



『春秋庭園』こそが『影朧を使役する結社』の所在地であったことに鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は驚きを隠せなかった。
 金木犀と幻朧桜の花弁が優美に舞い散る光景。
 その光景にひりょは心癒されていた。
 けれど、心が癒やされるということは、同時に彼の心の何処かに荒んだものがあったからだろう。
 それを影朧の餌として気が付かれぬように、けれど確実に力に変えられていたのだとひりょはわかってしまった。
「まさか……この場所が結社の……」

 そんなことがあっていいのだろうか。
 人の悪意とは此処まで狡猾に、闇に潜むように日向の領域を侵していくのか。
 けれど、ひりょは頭を振る。ここで自分が折れては誰も救われない。誰も救えない。
「あの人は、『アーニャ・ブラッドレー』さんは過去と決別するためにこの場にやってきた。だというのなら!」
 目の前には『結社』の構成員が召喚し、けしかけてくる影朧の姿があった。
 少女の姿をした、夢やぶれて散っていった影朧。
 彼女たちの人生に意味があったのかと問われたのならば、構成員たちは己達に利用されるためにあった人生であったと応えただろう。

 それは悪意でしかない。
 誰かを害することも、誰かの人生を踏みにじることも厭わぬ邪悪がそこにあった。
「俺は猟兵だから――光と闇の疑似精霊、力を貸してくれ!」
 瞳がユーベルコヲドに輝く。
 絶対死守の誓い(ヒカリトヤミノシエン)を打ち立て、ひりょを中心に闇の疑似精霊の闇の波動が放たれる。
 一瞬で影朧の少女たちが闇に飲まれ、その身体を蝕んでいく。

「あぁ、どうしテ私達の踊りヲ見てクレナいの」
 こんなにもステップを踏むことができるようになったのにと嘆く声が響く。
 誰からも求められない。
 誰からも称賛されない。
 誰からも。誰からも。誰からも。そんな呪詛が彼女たちの足を黒く染め上げ、尖らせていく。
 それはいたずらに人を傷つける鋭さを持っていた。
「そんなことなんてなかったはずです。貴方達は、自分たちを見てくれる者たちに気がつけなかっただけ。誰も貴方達を見ていなかったことなんてなかったのです。わたくしが見ています。他の誰が見なくても!」

『アーニャ・ブラッドレー』は叫んでいた。
 影朧の少女たちの慟哭の如き嘆きに応えていた。ああ、それが『国民的スタァ』の放つ星の輝きであるというのならば、皮肉にも、その星の輝きこそが影朧の少女たちの心をへし折ったのだ。
 どうあがいても彼女にはなれない。
 彼女に届かない。その諦観が彼女たちの足を止め、絶望へと引きずり込んでいったのだ。後は悪意に利用されるだけだった。

 それを憐れということなかれ。
「君達が悪いわけじゃない。深く傷ついたのなら! 光の疑似精霊!」
 ひりょのユーベルコヲドが再び輝く。
 光の疑似精霊の光の波動が影朧の少女たちの心を癒やしていく。『アーニャ・ブラッドレー』よりも自分に意識を向けさせる。
 同時に彼女たちの心に負った深い傷を癒やさなければとも思っていた。

 彼女たちはいつだって本気だったのだ。
 けれど、どれだけ本気であっても努力をしたのだとしても届かぬものがある。それが人生だというのならば、いつだって妥協と挫折だけが人生の友であったのかもしれない。
「それでも! 君達の人生だったんだ。誰にもそれをくだらないとは言わせない。利用されて当然だなんて言わせない」
 ひりょが疾走る。
 闇と光の疑似精霊の力を借りて、一気に破魔の力を宿した退魔刀で両断する。
 影朧の少女たちの声が悲しげに響く。

 けれど、悲しさだけでは行かせない。
 ひりょと『アーニャ・ブラッドレー』の言葉は彼女たちの癒やしになっただろう。きっと転生できる。
 それを信じてひりょは、『春秋庭園』を駆け抜ける。
 影朧を使役し悪意に満ちた者達を捕らえる。ただ、それだけが、ひりょと『アーニャ・ブラッドレー』の心を慰める唯一の方法であるからだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと

「ええい、ルクスよ、そこの国民的スタァと我の胸を見比べるのをやめんかっ!
あと、そこの影朧どもも我の胸に哀れみの視線を向けるでない!」

……というのが我の策よ!(注:思いつきです

敵が操るのは、哀れみを向けた対象に呪詛を放つというもの。
人を呪わば穴二つ。
我に哀れみの視線を向けた瞬間、その呪詛は反転する!

「くくく、さあ、我が弟子よ、我が敵の呪詛を封じている間にお前の力を見せてみよ!」

魔法少女に変身した弟子が、背負った大量の楽器の中からバイオリンを取り出して演奏を始め……

「おい、このバカ弟子!
楽器を使った奏魔法なら得意とか言ってたのに、なんだこの不協和音は!?」(杖の先端でグリグリ


ルクス・アルブス
【フィア師匠と】

さすが師匠!
自らの身体的特徴をいかんなく発揮した作戦。お見事です!
とても今思いついたとは思えません!

ふふふ、わかりました師匠!
わたしの真の実力を、お二人にお見せちゃいましょう!

って、師匠。
毎回胸を見て渋ーい顔しないでくださいよぅ。
……後で呪わないでくださいね?

気を取り直してバイオリンを構えたら、
【カノン】を【演奏】して、綺麗に送ってあげましょう!

意気込んで弾きはじめますが、
乱れたリズムと不協和音(本人は上手いと思っている)が、
周囲まで巻き込んで……。

痛い、痛いです師匠!
杖の尖ったところはやめてください!?

魔法ですから!
これは敵を撃退するための魔法ですから-!?(言い訳)



 人の感情を餌にして成長する影朧が憐憫の視線を受けて大きく成長する。
 それは『影朧を使役する結社』にとって好都合なものであった。影朧を使った悪事を為そうとする時、いつだって障害となるのはユーベルコヲド使いである。
 しかし、影朧は深く傷ついた魂の成れの果てであれば、彼らとて無下に扱うことはできない。
 憐憫の感情を抱かずにはいられないような哀れなる魂を前にすれば、影朧の少女たちは、その深く傷ついた魂に塩を塗り込められるかのような絶叫をあげるのだ。
「アァ――……そんナ、ソンな、哀れみの目デ私達ヲ見る……! 私達ハ哀れナンかじゃ、ナイ――!」

 その呪詛は桜の花弁となって溢れるように『春秋庭園』に吹き荒れる。
 その一つ一つが呪詛を帯び、触れたものを侵すだろう。それは『結社』の構成員たちの思うつぼであった。
 そうやって自分たちが逃げるだけの時間を稼いでくれればいい。
 使い捨てられただけの存在を、再び有効利用しただけに過ぎないのだ。彼らにとって影朧とはそういう存在だったのだ。

 しかし、その目論見を打ち砕くように場違いのような声をあげる者がいる。
「ええい、ルクスよ、そこの『国民的スタァ』と我の胸を見比べるのをやめんかっ!」
 フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)は己のコンプレックスを指摘されて、己の弟子へと声をあげる。
 別に国民的スタァである『アーニャ・ブラッドレー』と張り合ってなどいないし。土俵が違うし?
 それにスラっとスレンダーのほうが今は需要あるし?
 などと、若干第三者からしたら、その話後にしない? となる掛け合いのようなことをフィアとその弟子、ルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)はしながら、襲い来る呪詛のこもった花弁を躱す。

「あと、そこの影朧どもも我の胸に哀れみの視線を向けるでない!」
 其処に憐憫の感情は一切なかった。
 というより、フィアの壁、じゃない。えっと、慎まやかな……えー……と。
 表現が思いつかなかったことを此処に陳謝しつつ、しかして影朧たちは戸惑っていた。それもそうだ。
 すっかり呪詛の勢いは落ちてしまっている。
 そう、それこそがフィアの策である。

「さすが師匠! 自らの身体的特徴をいかんなく発揮した作戦。お見事です! とても今思いついたとは思えません!」
 褒めてるんだか貶してるんだかよくわからないことを言いながら、ルクスはフィアの背後に隠れて呪詛をやり過ごしていた。
 人を呪わば穴二つというやつである。
 即ち、フィアの身体的特徴に憐れみの視線を向けた瞬間、その呪詛は効果を失うのだ。

 お、なるほどなーと感心している場合ではない。鏡のような平らな身体を張ってフィアはルクスを護ったのだ。なんという師弟愛。
「くくく、さあ、我が弟子よ。我が敵の呪詛を封じてる間にお前の力を見せてみよ!」
「ふふふ、わかりました師匠! わたしの真の実力を、お二人にお見せしちゃいましょう!」
 光り輝く変身バンクシーンと共にルクスの姿が魔法少女の姿へと変わっていく。
 毎度のことであるが、フィアの視線が在る一部分に突き刺さって痛い。
 そんなにきになるかなぁ、と思いつつも、後で呪ったりしませんよね? と念押しをしておく。
 正直、師匠ならやりかねないというのがルクスの師匠像であった。

「気を取り直して!」
 構えたバイオリンからCanon(カノン)が旋律を奏でる。
 その優美なる旋律はユーベルコヲドとなって影朧の少女たちの傷を癒やして……はくれない。
 優美とは程遠い不協和音が響き渡る。
 それはあまりにも酷い、あんまりにも酷い音色であった。旋律と呼ぶにもおこがましい。
 正直、耳が引き裂けそうである。
「おい、このバカ弟子! 楽器を使った奏魔法なら得意とか言ってたのに、なんだこの不協和音は!?」

 耳を劈かんばかりの不協和音にフィアは思わず杖の先端でルクスの、自分にはない膨らみをぐりぐりやるのだ。
 妬ましさがあったかと問われれば、言い逃れできないやつである。
「痛い、痛いです師匠! 杖の尖ったところはやめてください!?」
 杖の尖ったところは本当に痛いのだ。ルクスは涙目になりながら、バイオリンの演奏を続ける。
 奏魔法じゃなくて破壊音波魔法である。

 だから、これでいいのだ。正しいのだ。
「魔法ですから! これは敵を撃退するための魔法ですからー!?」
 そんなルクスの言葉を無視して、ぐりぐりし続ける師匠。
 ある意味微笑ましいやりとりであるが、『結社』の構成員たちに取っては不運そのものであった。
 ルクスが視認した全てに炸裂する破壊音波魔法は、彼らの頭が割れるかと思える程の酷い演奏で揺らし、その場に昏倒させたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薙殻字・壽綯
……何故、私は貴方を敵と認識し、貴方に銃口を向けながらも。貴方が嫌うであろう同情を、私はしてしまうのでしょうね
共感は……得意では、ありません。私の感情は、私だけに向けられる、実に低俗極まるもの

失意に無念。そして、……死した、娘
…………あの子も、そうだろう。素敵な景色を見たくて、夢へと走った。憐れみなんて向けてみろ、鋭い悪口で殺しにくる
ならば此方も殺しに行くのが望ましい。故に貴方方に向ける情は殺意だけ
それ以外の、敵意なぞは後方に居る輩へと八つ当たればよいのです。……身勝手でしょう、お互い様ですよ



「僕が愛を歌うとして、君を笑ってしまえたら」
 その美しい一節は、どこから流れてきた言葉であったことだろうか。
 星の輝きの代わりに輝くのはユーベルコヲドの輝き。
 omoiNai.(カラ)――残留を貪り、軌跡を漁り、緒を荒らす。
 その言葉の意味を知る者は独りしか折らず、けれどその孤独を情愛を代償にして世界に解き放つ。

 薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)は、そのユーベルコヲドの輝きを持って銃口を影朧の少女たちに向けた。
 哀れみもない。
 けれど、そこに情愛はない。
「……何故、私は貴方を敵と認識し、貴方に銃口を向けながらも。貴方が嫌うであろう同情を、私はしてしまうのでしょうね」
 つぶやきは輝きの最中に溶けて消えていく。
 それを悲しいと思うのは、勝手な都合でしかない。けれど、同情の念は。憐憫の念は胸から溢れてしまう。

 道半ばにして夢やぶれて散った生命があった。
 それが深く傷ついた魂であり、影朧となった少女たちの情念であるのならば、無数に召喚された失意と悲嘆にくれる少女たちの霊はまさに影朧の叫びであったことだろう。
 輝きに惹かれ、輝きそのものになりたいと願い、けれどそうはならなかった者たちの残滓。
 それを悪意を持って操る者たちがいる。
 利用する者たちがいる。それが『影朧を使役する結社』である。彼らにとって影朧とは利用できる存在でしかない。
 そこに同情はなく。
「共感は……得意では、ありません。私の感情は、私だけに向けられる、実に低俗極まるもの」
 壽綯はぽつり、ぽつりと呟いた。

 ユーベルコヲドの弾丸が放たれる度に群がる少女たちの霊を貫き、貪るようなハイエナの顎が砕いていく。
 失意に、無念。
 そして、死した娘の魂。
 どの娘の霊もそうであった。誰も彼もが悪意でもって彼女たちを利用しようとする。
「アァ、私タチは……」
 そう、ただ星の輝きのように。
 あのスタァのようにと、『アーニャ・ブラッドレー』の姿を認め叫ぶ。ああなりたかった。あのような存在でいたかった。

 その視線に壽綯は憐憫の視線を向けることはなかった。
 そんなことをすれば、徒に傷付けてしまうだけだと知っているからだ。だから、彼はその瞳に憐憫を宿さない。
「……」
 その瞳の中にある澱は如何なるものであったことだろうか。
 されど、その瞳の中にあるものは彼自身だけのものだ。他の誰も理解できないし、させるつもりもない。
 決して踏み込んではならぬ奈落がある。
 故に、壽綯は殺意でもって相対するのだ。

 影朧の転生には癒やしが必要である。
 けれど、自分がそれを与えられるとは考えられない。それは傍から見れば、不器用な生き方であったのかもしれないけれど。それでも、この生き方を。
「……ええ、身勝手でしょう」
 放つ弾丸が尽く影朧の少女たちを打ち貫いていく。

 どうしようもないことだ。
 利用する者、される者。そして、それを引き裂く銃声。
 誰も彼もが自分のために戦うのだ。
 憐憫の視線に怒り狂うのは、それが己を思ってだからではない。視線を向ける者そのものの為の感情であるからこそ、手前勝手であると叫ぶのだ。

 けれど、それを異なるということなかれ。
 人の相互理解は言葉でもって行われる。なれば、言葉をはっしない以上、それは拒絶でしかない。故に、壽綯はそうするしかないのだ。
 言葉を発すれば、彼女たちの魂に塩を塗り込むようなものだ。
 だから。
「お互い様ですよ」
 短くつぶやく。
 その敵意は、悪意は、全てが彼女たちを操る『結社の構成員』たちに向ければいい。

 それを自分勝手だと。
 悪意だと呼ぶことはあれど、それは因果応報である。
 巡り巡っただけの話だ。壽綯の瞳はきっと殺意……だけであったのかもしれない。

 ああ、けれど。
「あの子も、そうだろう。素敵な景色を見たくて、夢へと疾走った」
 その先に待つものが暗闇であったとしても。
 その暗闇の中でしか、光は輝かないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…人払いのために適当言ったけど本当にここが秘密結社のアジトだったか…まあそう言うこともあるよね…
…さて…なんとも気に入らない話だね…嘆くなとは言わない…壁にぶつかって…越えられずに果てたのかも知れない…
だが、それでも…その不幸は、その結果は彼女達だけのものだ…それを利用する事は許せない…

…【神話終わる幕引きの舞台】を発動…まずはその呪詛を減衰させる…
…そして…重奏強化術式【エコー】により多重強化した復元浄化術式【ハラエド】を用いて少女達を祓うとしよう…次こそは幸ある生を…
…さて…彼女たちを利用した結社にはこの彼女たちの分まできっちりと『礼』をしてあげる必要があるね…



 それは最初ただの方便であったのだ。
『超弩級戦力』が必要な影朧事件。その解決に赴いた猟兵達と狙われた『国民的スタァ』、『アーニャ・ブラッドレー』に這い寄るゴシップ記者たちを遠ざけるための言葉。
 けれど、結果として嘘から出た真となってしまったのが、今回の事件である。
『春秋庭園』の宿泊施設こそが『影朧を使役する結社』の所在地。
 考えてみれば、合理的な立地である。倫敦郊外であり、人の目はそう多くない。けれど、人々は金木犀と幻朧桜が織りなす光景を見ようとやってきて、その感情を餌とする影朧は成長していく。
 時間こそかかるが、発見される要素は少なく、確実に影朧は強化されていく。
「……人払のために適当言ったけど、本当に此処が秘密結社のアジトだったか……」
 まあ、そういうことも在るよね、とメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は納得していた。

 けれど、納得できないものもある。
 そういうこともあると、言い切れないことだってあるのだ。
「……さて……なんとも気に入らない話だね……」
 彼女の瞳が見つめるのは、結社の構成員たちが召喚し、けしかけてきた影朧の少女たちである。
 彼女たちは道半ばにして果てた、スタァになりきれなかった者たちの成れの果てである。
 輝きたいと願いながらも、輝くことができずに潰えた星屑たち。
 誰にも見向きされず、誰にも認識されることなく。

 そして、自分たちが夢見たことにさえ裏切られた者たち。
 それが深く傷ついた魂である。影朧に成り果ててもなお、彼女たちは利用され続けるのだ。
「ア、ァ、私たち、の踊リ……もっト、モット」
 踊るように呪詛を振りまく影朧の少女たち。それを利用する悪意が見える。
「嘆くなとは言わない……壁にぶつかって……乗り越えられずに果てたのかも知れない」

 けれど、とメンカル・プルモーサは言う。
 紡がれる言葉はユーベルコヲド。
「人知及ばぬ演目よ、締まれ、閉じよ。汝は静謐、汝は静寂。魔女が望むは神魔の去りし只人の地」
 世界法則を改変する数多の鍵剣が空に整然と並び立つ。
 その光景はあまりにも非現実的であった。神話終わる幕引きの舞台(ゼロ・キャスト)は今此処に整った。
 影朧の少女たちの呪詛撒き散らす舞踏も、この場においては減衰されてしまう。
 結界と同じなのだ。
 それを重奏強化術式『エコー』が強化し、復元浄化術式『ハラエド』が影朧の少女たちの魂を取り巻く呪詛を浄化していく。

「だが、それでも……その不幸は、その結果は彼女たちだけのものだ」
 メンカルはつぶやく。
 確かに悲しいことであるのかもしれない。けれど、それさえも抱えて人は生きていく。
 人生という旅路に必要なのは幸福な思い出だけではない。
 谷と山が存在するように、人の道程は平坦ではない。決してないのだ。だからこそ、人は幸福を求めて悲しい思い出を力に変えることができる。

 決して思い通りになることばかりではない。
 いつだって大切なのは、転ばぬことではない。
 転んだ後、どうやって立ち上がるかだ。それを知らなかった者もいれば、それさえも間に合わなった結果に追い込まれた者だっている。
 けれど、そう。
 けれど、とメンカルはユーベルコヲドの輝きを瞳に宿して言うのだ。

「それを利用することは許せない」
 大切な幸福も、悲しみにくれる不幸も。
 そのどれもが彼女たちだけのものだ。誰かのものではない。ましてや、それを悪意でもって利用されることなど在ってはならないのだ。
 故に、此処に『超弩級戦力』が在る。
 己が存在しているのだとメンカルは言うのだ。

 増幅した『ハラエド』の術式が影朧の少女たちを祓っていく。
 今生では苦しみに塗れた生命であったのかもしれない。苦悩の連続であったのかもしれない。
 けれど、願わずには居られないのだ。
「……次こそは幸ある生を……」
 それが自分勝手な願いであると、祈りであると言われても。それでも、願わずにはいられない。

 さて、とメンカルは彼女たちを見送り振り返る。
 その表情を知ることができたのは、『結社の構成員』達だけであった。
 放たれた術式組紐が彼らの身体を縛り上げる。静かに、静かに。メンカルははつぶやく。
「彼女たちのぶんまで、きっちりと『礼』をしてあげる必要があるね……」
 その言葉は氷よりも冷たいものであったことだろう。

 此れより先は、影朧の少女たちは知らなくていいことだ。
 因果応報と呼ぶがいい。
 それが、自分たちが彼女たちにした仕打ちだと自覚できるまで、メンカルは『礼』をきっと欠かさないだろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『影竜』

POW   :    伏竜黒槍撃
【影竜の視線】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対象の足元の影から伸びる黒い槍】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    影竜分身
【もう1体の新たな影竜】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    影界侵食
自身からレベルm半径内の無機物を【生命を侵食する影】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:芋園缶

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「『帝都桜學府』……馬鹿な、それを差し向けられぬようにと、秘密裏に動いていたというのに……!」
『影朧のを使役する結社』の拠点の一つである『春秋庭園』の宿泊施設から逃走していたのは、この拠点を任されていた代表者であった。

 彼は狡猾だった。
 ここまで勢力を秘密裏に拡大させ、ゆっくりと、けれど確実に『倫敦』を落とせるだけの影朧を用意できるはずだったのだ。
 けれど、その計画は水泡に帰した。
 たった一人の意志ある星に寄って。そう、『国民的スタァ』である『アーニャ・ブラッドレー』である。

 ゴシップ記者を差し向けたのもそのためだった。
 追い込み、彼女の心身ともに打ちのめしてから影朧の餌にするつもりだったのだ。
 けれど、それさえも『帝都桜學府』から派遣されたユーベルコヲド使いによって阻まれてしまった。
「……クソッ! こんなことなら、最初から『アーニャ・ブラッドレー』を食わせてしまえばよかったというのに……!」
『結社』の頭目が言ったのだ。
 極上の餌を与えるのならば、同じく極上の舞台という名の器を整えるべきだと。

 それが裏目に出たのだ。
『結社』の拠点、『春秋庭園』の代表者は虎の子の影朧を召喚する。
 使いたくはなかったが、捕まっては元も子もない。
「あの影朧たちが打倒されたとしてもな! 私達にはまだこいつがいる!」
 呼び出された影朧は巨大であった。
 5mを有に超える巨体。影で出来た竜そのもの。数多の影朧の残滓が集まって出来上がった巨竜。
『影竜』が咆哮する。

「グルゥァァァァァ――!!!!」

 それは全てを憎む怨嗟の咆哮であった。
 数多の影朧の残滓が寄り合って出来上がった混沌の意志。
 あるのは全てを破壊し、世界すらも滅ぼさんとする悪意だけであった。これこそが、虎の子であり奥の手。
 どれだけユーベルコヲド使いが集まろうとも、これに敵うわけがない。

 けれど、知るがいい。

 此処に在るのは、その例外である。
 何故、猟兵達がそう呼ばれているのかを知るべきだったのだ。そう、彼らのことを人はこう呼ぶ。

 ――『超弩級戦力』と。
月夜・玲
お、良いじゃん良いじゃん
影の竜、カッコいいじゃん
捕まる前の奥の手としてこういうの持ってるのロマンあるー
これが大正浪漫ってやつ?
違うか、違うな…
まあいいや、やる事は一緒
ぶっ飛ばして、ふん捕まえる!
そしてその後観光!
さあ、覚悟は良いかい?


相手に視線を合わさせないよう右手剣で影竜の目辺りに『斬撃波』を飛ばして視線を反らし、左手の剣は地面に『斬撃波』を飛ばして土埃を立てる
その隙に『忍び足』で移動しつつ【決戦兵装:建御雷神】を起動
4本の剣で陣を描き、装備を召喚
ブースト全開、渾身の一撃を影竜に喰らわせてあげよう
更に追撃で『2回攻撃』

さあ、そっちが竜ならこっちは神だ
雷神の銘を冠した装備の威力思い知れ!



『影竜』――それが『影朧を使役する結社』の拠点が存在した『春秋庭園』の代表者の持つ切り札であった。
 奥の手は隠して置かなければ意味がない。その手札を切らないことこそが、『影竜』の本来の強みであったが、ここで切らなければ、そもそも『結社』の拠点の存続すら危うい。
 そうなれば、始末されるのは自分だ。
『結社』――『サスナー』の頭目はそういう人間だ。どこに居ても、属している限り彼の目から逃れられない。
 故に代表者である彼は『影竜』という本来『倫敦』を落とすために備えていた影朧を解き放った。
「こうなれば、『帝都桜學府』のユーベルコヲド使いを倒して、そのままに――」

 しかし、彼の目論見は通らない。なぜなら、すでに此処には猟兵の姿があったからだ。
「お、良いじゃん良いじゃん。影の竜、カッコいいじゃん」
 ひゅーと口笛を吹くように月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、影朧『影竜』の威容を見上げた。
 5mを超える巨体を前にして彼女は怯むことはなかった。
 並のユーベルコヲド使いであれば、問題ないほどの力を持つ『影竜』を前にして、そんな態度を取れる者がいるとは思っていない代表者はたじろいだことだろう。

 けれど、そんな彼を意に介することなく玲は笑った。
「捕まる前の奥の手としてこういうの持ってるのロマンあるーこれが大正浪漫ってやつ? 違うか、違うな……」
 冷静に考えると益々違う気がする。
『倫敦』にやってきたことでテンションがいつも以上に高いのかも知れない。些細なことで笑ってしまいそうだった。
 玲は抜き払った模造神器の斬撃を飛ばし、『影竜』の視線を逸らす。
「ガァァァ――!!!」
 咆哮する『影竜』の視線が逸れた瞬間、もう一振りの刀身を地面に突き立て土埃を立てる。

 周囲は土埃で視界が遮られ、如何に『影竜』が強大な存在であったとしても、その視線が攻撃のトリガーになっている以上玲の姿を捕らえなければ、攻撃を繰り出せない。
「今日は大盤振る舞い!模造神器4振り全部持ってけ!」

 その声が響き渡ると同時にユーベルコヲドの輝きが土埃を割いて『影竜』の身体を打つ。
 しかし、それは何の威力も持たぬ輝きでしかなかった。
「なんだ、この輝き……! ユーベルコヲドの輝きか、これが!?」
 逃げる逃走者の背中を見つめる者があった。彼の逃亡を助けるように『影竜』が身体を広げる。

「やることは一緒だしね。ぶっ飛ばして、ふん捕まえる! そして、その後観光!」
 しかして見よ。
 その雷光の輝きを。
 ここに顕現するは、決戦兵装:建御雷神(ケッセンヘイソウ・タケミカヅチ)玲の振るう四振りの模造神器の力を持ってほどかれる封印より現れし、決戦兵装。

「さあ、覚悟は良いかい?」
 彼女の声がサクラミラージュの『倫敦』に響き渡る。
 声は雷光。
 走るは蒼き光。一瞬の明滅の後に玲の身体は『影竜』に迫り、渾身の一撃を打ち込む。
 それは『影竜』の巨体をも傾がせる程であった。ぐらつく巨体。けれど、一撃では揺らぐだけであった。
「そんでもって、もいっちょ!」
 放たれる合成神剣・天が鈍器のように振り下ろされる。

 まさにそれは神の鉄槌。

「さあ、そっちが竜ならこっちは神だ。雷神の名を関した装備の威力思い知れ!」
 最上段から振り下ろされる一撃は『影竜』の頭部を叩き潰さん勢いで放たれ、その巨大なる頭部をひしゃげさせながら一刀のもとに影の身体を分断せしめる。
「ば、ばかな……! 数多の、数千の、数万の影朧の残滓を集めた『影竜』だぞ!? 一人のユーベルコヲド使いに……! ありえない!」
 叫ぶ声が聞こえる。
 その言葉に玲は応えるように笑った。

「言ったでしょ。雷神の名を冠するって! おっと逃げるな逃げるなよー。ふん捕まえて、しっかり『結社』のこと教えてもらうからねー!」
 玲の言葉に代表者は這々の体で逃げ出す。
 けれど、彼の運命はもう決まっている。逃げられるわけがない。分断するように叩き潰した『影竜』が再び形を為していく。
 
 それでも揺らぐことのない運命なのだ。
 必ず捕まえる。人の悪意を持って世界に仇為す時、必ずや『超弩級戦力』が現れるように、それは決して変わらないのだ――。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
これが切り札か。帝竜には敵うべくもないわね。
よし、アヤメは下がって。「式神使い」で式神十二天将召喚儀。
手数を増やして影竜の体力を削りきる。
「集団戦闘」を基本に一旦下命すれば、後は自分の判断で戦闘してくれるから、あたしも影竜の討滅戦に参戦する。
アヤメは逃亡中のここの首魁を確保してきてちょうだい。

影竜のおかわりか。
天将の半分をそちらに回しても、まだ十分な手数はある。新しく出た方は足止め程度で、まずは本体を叩く。
あたしは「オーラ防御」を纏って、「衝撃波」を帯びた薙刀で「なぎ払い」、「貫通攻撃」で「串刺し」に。

言葉は分かるかしら、あなた?
己が望みですらなくただ使役される。その境遇から解き放ちましょう。



 猟兵の一撃が『影竜』の身体を分断するように両断せしめた。
 その一撃の威力の凄まじさは言うまでもない。『超弩級戦力』と呼ばれるに相応しいユーベルコヲドの輝き。
 けれど、『影竜』の力は此処からであった。
 分断され、再び結合した身体が分かたれていく。それは影で出来ているがゆえに可能な芸当であったことだろう。
 もう一体の『影竜』が生み出され、猟兵達の前に悪意で塗り固められた咆哮を轟かせる。

「これが切り札か。帝竜には敵うべくもないわね」
 同じ竜であっても、これよりも巨大な存在と戦ってきた経験のある猟兵にとって『影竜』は侮ることはせずとも、恐れるに値する存在ではなかった。
「急急如律令! 六壬式盤の導きによりお招き申す! 天の十二方位を支配する十二天将よ、我が言葉に応え顕現せよ!」
 村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》/黒鴉遣い・f01658)は己の手の内にあった呪符が燃えていくのを感じた。

 それはユーベルコヲドであり、同時に式神十二天将召喚儀(シキガミジュウニテンショウショウカンギ)によって召喚された唐風の戦装束で武装した式神十二天将の放つ輝きであった。
 例え、二体に『影竜』が分裂しようとも、ゆかりの式神使いとしての才覚は手数でもって、それを圧倒することが可能なのだ。
「アヤメ、逃亡するここの首魁を抑えて」
『影朧を使役する結社』の拠点を任された代表者は今も逃亡を続けている。
 彼を抑えなければ、再び拠点を構えられて、同じように影朧を使役し、増やす算段を立てられてしまうかもしれない。

 頭目の姿を見つけることができなくても、ここでそれに繋がる者を捕らえることは大きい。
「グルゥァァァァァ――!!!」 
 しかし、それをさせぬと『影竜』が咆哮する。
 二体の『影竜』はそれぞれ影から溢れ出す実態を伴った刃で式神十二天将と激しい攻防を繰り広げる。
「しっかり二体……けど、半分に分けるだけの手数はこっちにある!」
 ゆかりの力を持って召喚された十二天将が戦場を駆ける。
 
『影竜』に組み付き、その挙動を足止めする。片方を足止めできれば落ち着いて一体ずつ処理することができる。
「言葉はわかるかしら、あなた?」
 ゆかりは十二天将と共に大地を駆ける。金木犀と幻朧桜の花弁が舞い散る庭園にありて、ゆかりは『影竜』を見やる。
 けれど、答えはない。
 あるのは怨嗟の咆哮だけだ。

 憎しみの理由すらもわからなくなってしまった影朧にとって、目の前にある存在こそが滅ぼさなければならないものだ。
 ぶつける憎しみが、如何なる理由から生るものであったのかさえわからずとも、叩きつける相手がいるのならば力を振るう。
 そういうふうに撚り合わされた影朧なのだ。
「そう、その理由だってわからなくなってしまってのね。己が望みですらなくただ使役される」
 哀れだとさえ思ったことだろう。

 だからこそ、ゆかりは薙刀を構える。
 十二天将の半分が次々と『影竜』へと刃を立てる。痛みか、それとも儘ならぬ己の境遇を嘆いてか。『影竜』の咆哮が倫敦に響き渡る。
「その境遇から解き放ちましょう」
 悲しいとはもう言うまい。
 あるのは、その憎しみの残滓こそ、救われねばならぬという理由だけだ。手にした薙刀が衝撃波を伴って『影竜』の身体を薙ぎ払う。
 揺らめくように『影竜』の身体に傷口が開くようにして消滅し、そこに突き放たれる串刺しの一撃はまごうことなく『影竜』を貫く。

「いつかは知るのでしょうね。己が何のために憎しみを抱いていたのかを。けれど、それは今じゃない。だから疾く」
 少しでも早く、この現世から次なる生命に祝福とともに転生出来ますようにと、ゆかりは薙刀の刀身が放つ紫の輝きで持って、影を切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレスベルク・メリアグレース
貴方ですね、アーニャさんを貶めようとしたのは。
傾聴し、気が付きなさい。
幾ら曇天が続こうと、大地を闘争に満たし、災禍の粉塵を以て空を汚そうとも、未だに空は碧く、蒼いという事に。

そう言って時間を稼ぐと同時に上空に熾天使を顕現させ、そこに『陽光』の加護と『祓魔』の加護、『竜殺し』の加護を以て上空から『魔弓』の加護を持った熾天使達が放つ矢の嵐、それを『影竜』に放ちます。

わたくしを狙ったとしても無意味ですよ。
熾天使達に与えた加護はわたくしが分譲したもの。
引いては全ての加護はわたくしが源泉であり、わたくしは全ての加護を統べることが出来ます。
そう言って守護結界に特化した加護を使って防御していく。



 猟兵たちは『超弩級戦力』と呼ばれるに値する凄まじい力でもって影朧『影竜』を引き裂いていく。
 けれど、これまで密やかに、狡猾に紡がれてきた影朧の残滓の結晶である『影竜』は消滅しない。
 分かたれても尚、その力は人々の中にある負の感情を持って強大なる存在としての威容を保つように咆哮をほとばしらせるのだ。
「グルゥァァァァァ――!!!!」
 本当に消耗しているのかと見紛うほどの力強い咆哮は、郊外にありても『倫敦』の街にまで届くほどであった。

「くそ……なんだ、まさか本当に『帝都桜學府』は『超弩級戦力』を持って私達を壊滅させるつもりなのか……!」
 結社『サスナー』の拠点を任されていた『春秋庭園』の代表者が呻きながらも、『影竜』を囮にして逃亡を続ける。
 けれど、その前に降り立つ姿があった。
 フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)は佇み、けれど意志強き瞳でもって、逃亡しようとしていた代表者の前に立つのだ。

「貴方ですね、アーニャさんを貶めようとしたのは」
 彼女の静かな言葉が紡がれる。
 それは逃亡する代表者にとって聞くに値しない言葉であった。ゆえに虎の子であった『影竜』に命ずるのだ。
「何をしている、『影竜』! この女を――」
 しかし、その言葉を遮るのはフレスベルクの声であった。
「傾聴し、気が付きなさい」
 静かな声であった。
 けれど、よく通る声であり、誰もが彼女の言葉に耳を傾けようとする不思議な説得力が在った。

「幾ら曇天が続こうと、大地を闘争に満たし、災禍の粉塵を以て空を汚そうとも、未だに空は碧く、蒼いという事に」
 そこに降り注ぐのは『影竜』の生命を侵食する影であった。
 それは無機物より変じたユーベルコヲドの力。あらゆる生命を侵す力であり、それに触れてしまえば、如何にユーベルコヲド使いと言えど、生命を侵食されてしまうだろう。

 けれど、それを遮る者があった。
 蒼穹に舞うは、金色の主に愛されし熾天使達(ダンス・イン・ザ・セラフィック)である。
 召喚された熾天使達の放った矢の嵐が、生命を侵す影を貫いて霧散させていくのだ。
「わたくしを狙ったとしても無意味ですよ」
 フレスベルクのユーベルコヲドの力によって神話武装を纏った熾天使たちはあらゆる環境での飛翔能力と戦闘力を以て、『影竜』の放つ影を尽く霧散させるのだ。
「全ての加護はわたくしが源泉であり、わたくしは全ての加護を統べることができます」
 守護結界によってフレスベルクの身体が包み込まれ、どれだけ影が彼女を覆うことがあったとしても、生命を侵す力は彼女まで届くことはない。

 どれだけ巨大な竜であろうとも、神話の力と加護を持つ熾天使達にとって恐れる存在ではない。
 ただ打倒するだけの存在である。
 その巨躯を形成する負の残滓がどれほどのものであろうとも、加護の輝きを持って、それを照らすのが彼女の信じ、奉ずる神の力である。
「その憎しみの理由すらも忘れた躯体、今こそ転生の時。癒やしを以て影朧が転生を為すというのであれば、無数の生命となって、誰かのためにと願う心に宿るように」
 フレスベルクは願うだろう。
 転生するのならば、次は優しき生命として生まれ変わることを。

 それは理由すら忘れたからこそ願われたことであろう。
 憎しみだけが、その影を形成するのは、あまりにも悲しいことだ。憎み、嫉み、妬む。ただそれだけのために存在するなんてことがあっていいわけがない。
 彼女の祈りと願いはいつだって誰かのために。
「今こそ還る時なのです」
 熾天使達の放つ矢が『影竜』に降り注ぎ、その身体を貫き、次々と影を祓うように霧散さていく。

 どれだけ悪意が影朧を操ろうとも、人の心に闇があるのと同じように燦然と輝く善意の光が、それを打ち砕くのだと知らしめるようにフレスベルクはユーベルコヲドの輝きを解き放つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
フィア師匠と

あれは魔法ですからね?
わたし本来の実力はあんなものではないですよ!

おおっ。
久しぶりに師匠の魔法が見られます!
これはレア。全力魔法はレアですよアーニャさん!

え?、りゅうめつじん?
師匠! 庭園ごとなくす気なんですか-!
っていうか、師匠以外なくなっちゃいますから!?

と、ツッコんでみても時すでに遅くて……。

ピ、ピアノのおかげでなんとか生き残りましたけど、
……逃げ足早っ!?

ああああっ、師匠、置いていかないでください!
もう罰奉仕はいやですー!

慌てて後を追いかけつつ(いっしょ逃げるともいう)
そんなことばっかりしてるから、
旅人という名の逃亡者になっちゃうんですよ-!

とツッコんでおきましょう。


フィア・シュヴァルツ
弟子のルクスと

「まったく、ルクスめ。
お前は一から鍛え直してやらんといかんな」(耳を抑えながら

だが、ここはまず魔物退治をせんとな。
我が絶大なる魔力をルクスに見せつけてやろう。

「ククク、ドラゴンか。
こんなこともあろうかと、さっきから【竜滅陣】の呪文詠唱をしていたのだよ!
ルクスよ、見ておれ。
これこそ、悪魔と恐れられし不死身の魔女の究極魔法!」

わざわざドラゴンが出てきてくれるとは好都合!
このドラゴンすら消し飛ばす我が魔法で消え去るがよい!

……え?
周囲の被害?
いや、我、手加減とかできないし?

「ルクスよ、覚えておくがよい。
全力で魔法を撃ったあとは知らん顔して逃げるのみ、と!」(ルクスを置いていく勢いで逃走



 師匠と弟子というのはいつだって阿吽の呼吸で繋がりがある――ものではないのかもしれない。
 それは他者が他者と交わるからこそ生まれる呼吸であって、誰しもに生まれるものではないからだ。
 少なくとも、ルクス・アルブス(魔女に憧れる魔法少女・f32689)とフィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)の関係はそういうものであったように傍から見ていた『国民的スタァ』である『アーニャ・ブラッドレー』はそんなふうに思ったのだ。
 善し悪しの問題ではなく、羨ましいと思えるような微笑ましさがあったのだ。
「あれは魔法ですからね? わたし本来の実力はあんなものではないですよ!」
 ひどい演奏だったとフィアは未だ耳がキンキンするのをさすりながら、ジト目で言い訳するようにのたまうルクスを見やる。

 そんな視線が痛いのかルクスは顔をそらしながら、言い訳をしている。あまりにも説得力がない。
「まったく。お前は一から鍛え直してやらんといかんな」
 それが一体何を意味するのかルクスにはわかっていたことだろう。
 けれど、今はそれどころではないのだ。
 怨嗟の咆哮をあげるのは『影朧を使役する結社』が放った切り札であり、虎の子である『影竜』である。

 すでに先行した猟兵達の攻撃を受けて消耗してはいるが、未だに存在しているところを見るに、膨大な量の影朧の残滓をより集めて作られた存在なのだろう。
 言うまでもなく、これを解き放ってしまっては『倫敦』の街に多大な被害が出ることは間違いなかった。
「いやいや師匠こそちゃんと教えてくれれば、わたしだってちゃんとやれますって!」
 この期に及んでまだルクスは言い訳していたが、フィアはそういうの後で、と言うように『影竜』に向き直る。
「だが、ここはまず魔物退治をせんんとな。我が絶大なる魔力をとくと見ているがいい」

 フィアは不敵に笑っていた。
 あ、これ師匠が久しぶりに魔法を使うやつだとルクスは気がついて、目を輝かせる。そもそも彼女がフィアに弟子入りしたのは、彼女の魔法を見たからだ。
 まあ、それ以来めったなことでは魔法を見せてくれないので、不満たらたらであるのだが。
「おおっ。久しぶりに師匠の魔法が見られます! これはレア。全力魔法はレアですよアーニャさん!」
『アーニャ・ブラッドレー』の肩を揺さぶって興奮しきりに目をキラキラさせるルクス。『アーニャ・ブラッドレー』は何が起こるのかよくわかっていないのか、そうなの? とルクスに守られながら『影竜』に対峙するフィアを見やる。

 彼女の瞳がユーベルコヲドに輝く。
 それは言うまでもなく強大な力の集積である。彼女の身体から溢れる魔力が言葉にこもって、詠唱と成っていく。
「漆黒の魔女の名に於いて、我が前に立ち塞がりし全てを消し去ろう」
 その詠唱の名は竜滅陣(ドラゴン・スレイヤー)。
「ククク、ドラゴンか。こんなこともあろうかと、さっきから『竜滅陣』の呪文詠唱をしていたのだよ! ルクスよ、見ておれ。これこそ、悪魔と恐れられし不死身の魔女の究極魔法!!」

 フィアは声高らかに宣言する。
 なまじドラゴンなどを呼び出すからこういうことになるのだ。竜とは力の象徴であろうが、けれど必ず討たれる存在でもある。
「え? りゅうめつじん?」
 ルクスの気の抜けたような声が響く。
 なんで? なんか問題あるのか? とフィアもそうであるし『アーニャ・ブラッドレー』も思っただろう。
『アーニャ・ブラッドレー』は知らないから無理もない。
 けれど、フィアは違うわかっているはずだ。自分の放つユーベルコヲドの威力と、それが『大規模破壊魔法』であることを。

「師匠! 庭園ごとなくす気なんですかー! ていうか、師匠以外なくなっちゃいますから!?」
 ルクスが懸命に叫ぶ。
 しかし、発動したユーベルコヲドは止まらない。
「……え?」
 あ、このカは周囲の被害とかそういうのを全然考えていない顔である。むしろ、我、手加減とかできないし? と開き直っているような節さえある。
 そして、にっこりと微笑んだ。

「ルクスよ、覚えておくがよい」
 とても良い師匠の顔をしていた。これはあれである。師匠が弟子に後を託す感じのやつである。いや、別に今そういうシーンじゃないですけど。
「全力で魔法を撃った後は知らん顔して逃げるのみ、と!!」
 そういうもんだかなー!?
 ルクスが叫んだ瞬間、フィアの魔法が炸裂する。
 その一撃は『影竜』を飲み込み、周囲の地形すらも変えうる盛大なる一撃。
 吹き荒れる風、大地が砕けた噴石の如き岩や土塊が飛び交う中、ルクスは背負っていたグランドピアノで『アーニャ・ブラッドレー』をかばいながら、破壊の後をやり過ごすのだ。

「ぴ、ピアノのおかげでなんとか生き残りましたけど……逃げ足はやっ!?」
 すでにフィアの姿は遥か彼方である。
 破壊するだけして逃げるつもりなのだ。しかも、全ての責任を自分に押し付けて。いつものことだ。いや、今回はそれで許されるとは思わない。
「ああああっ、師匠、置いていかないでください! もう罰奉仕はいやですー!」
 ルクスは逃げた。
 それはもう師匠譲りの俊足であった。
 師匠を追いかけるという名目のもと、ルクスは疾走る。こんなことをばっかりしているから旅人という名の逃亡者になってしまうのだ。

 そんなツッコミが『倫敦』郊外に虚しく響き渡るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薙殻字・壽綯
何故、結社は世界を滅ぼそうと思い至ったのですか?
それ相応の覚悟があるはずです。決意があったはずです。逃げますか? 逃げるのですか……
……貴方を悪人だと決めつけ、言葉を欲する私は、かのスタァに差し向けた俗と違わないものです

怨嗟の集合体の一つ一つが、かつては誰かの感情だったもの。貴方を形作るのは人の情。……波に呑まれぬ貴方は、竜骨は。誰のものでもない、貴方だけのものであればいいのに

私は貴方を滅ぼします。だから、その憎しみをどうか、私にください
憎悪を向ける先があれば、幾分ばかしは。身の重さは軽減されるはずです。だから、私を憎んでください
……手向けの花で傷をつけようとする私には、罰を当てるべきです



 薙殻字・壽綯(物書きだった・f23709)は理解に苦しんでいた。
『影朧を使役する結社』が何故影朧を持って、事を為そうとしていたのか。その力は弱いオブリビオンと言えど、世界の破滅を齎すものである。
 その力を使うということは世界を滅ぼすことと同義である。
 支配したいのであれば、影朧の力を使わなくてもいいだろう。もっと他のやり方があるはずだ。

 だというのに、何故。
「何故、結社は世界を滅ぼそうと思い立ったのですか?」
 その言葉は逃亡する『春秋庭園』の代表者の背中に投げかけられる。
 こちらへとけしかけた『影竜』の咆哮が轟く。
 溢れるのは触れた者の生命を侵す影。それに触れてしまえば、如何に猟兵であろうとも危ないことはわかっている。
 けれど、壽綯は言葉を投げかけることが止められないでいた。
「それ相応の覚悟があるはずです。決意があったはずです。逃げますか? 逃げるのですか……」

 その瞳にあったのは失望でもなんでもなかった。
 ただの平坦な、起伏のない輝きであった。ユーベルコヲドの輝きは昏く。けれど、銃口を向ける。
 彼の手にしたMP7が色あせた南天の花弁に変わる。
 Overflow Inside(オーバーフローインサイド)。それが彼のユーベルコヲドの名だ。
 降り止むことなくこぼれ続ける花弁は、立ち塞がる『影竜』を放たれる。

 彼には分かっていたのだ。
『影竜』は怨嗟の集合体である。
 けれど、その身体を形作っている一つ一つが、かつては誰かの感情だったもの。そうであるのならば、『影竜』は『竜』ではなく人の情が組み上がったものだ。
「……波に呑まれぬ貴方は、竜骨は。誰のものでもない、貴方だけのものであればいいのに」
 滅ぼさなければならない。
 自分が猟兵として、オブリビオンを、影朧を滅ぼさなければならない。

 それは自分に対して憎しみを向けるには十分すぎる理由であろう。
 そして、同時にそれは逃げる『代表者』を悪人と決めつけ、言葉を欲する壽綯にとっての自罰であった。
 憎しみの言葉を欲する彼は、自分自身がかの『国民的スタァ』に差し向けられたゴシップ記者たちと変わらない、違わないものであると自らを定義している。
「だから、その憎しみをどうか、私にください」
 自分が憎まれれば、その感情の集積体である『影竜』の身の重さもまた軽減されるはずである。 
 だから、自分を憎んでほしい。

 怨嗟の咆哮が轟く。

 その咆哮さえも心地よいと思ってしまえるのは、己を罰することによって心が軽くなるからだ。
「……手向けの花で傷つけようとする私には、罰を当てるべきです」
 当然の報いであるというように壽綯の放つユーベルコヲドの輝きは、『影竜』を打つ。
 代わりに彼自身は内罰的な心をもって、憎しみを受け止める。
 例え、『影竜』の中に確固たる意志がなく、使役されるだけの存在でしかないのだとしても。

 それでも憎しみの方向が己に向いているのであれば、それは彼にとって身が軽くなるような思いであった。
 他者は己の鏡。であるのならば、己は他者の鏡だ。
 今まさに『影竜』と壽綯は鏡合わせである。吹き荒れる南天の花弁が、生命を侵す影を塗りつぶすように切り裂き、世界を滅びへと向けるオブリビオンの、影朧の憎しみを霧散させていくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
…これが切り札、ね……影朧を集めて作った…生命を侵食する影の竜…か。
ひとまずアーニャと(官憲に引き渡すために)捕まえた結社員達の周囲に術式組紐【アリアドネ】を展開して結界を生成…安全を確保…
…強大なモノのイメージとして竜の姿を選んだのだろうけど…それが間違いだったね…
…【竜屠る英雄の詩】を発動…装備品…即ち結界を形成する【アリアドネ】にも竜殺しの力を付与…
更に黎明剣【アウローラ】には復元浄化術式【ハラエド】を付与して浄化の力を持った竜殺しの刃を形成…で侵食する影と影竜を切って殺すよ…
…こちらはその怨念と悪意、そして災厄の象徴たる竜を討つ竜殺し…
…言ったはずだよ、礼をさせて貰う…とね…



「……これが切り札、ね……影朧を集めて作った……生命を侵食する影の竜……か」
 数多の猟兵達が立ち向かい、これを撃破せんと戦う姿をメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は見つめていた。
 彼女の瞳には、『影竜』の姿は如何なるものに映ったことだろうか。
『倫敦』を危険に晒す脅威か。
 それとも力の象徴としての『竜』か。

 どちらにせよ、メンカルにとって、それは些細な問題であったことだろう。
 彼女は今『国民的スタァ』である『アーニャ・ブラッドレー』と捕まえた結社員達に累が及ぶことのないようにと術式組紐『アリアドネ』を展開し、結界を生成して安全を確保している真っ最中である。
「……強大なモノのイメージとして竜の姿を選んだのだろうけど……」
 こと、メンカルという猟兵の前には、それは悪手であった。
 彼女の持つユーベルコヲドは『竜にまつわるものを殺す竜殺しの概念術式』である。

 それは即ち、彼女が『竜』という存在に対して凄まじいアドバンテージを持つことにほかならない。
「……グゥゥァァァ――!!!!」
 しかし、『影竜』は知らない。
 例え、知っていたとしても、その怨嗟の咆哮は『竜殺し』に畏怖しないだろう。
 なぜなら、その身を形成するのは影朧の世界に対する深い悲しみと怒り、そして何よりも憎しみである。

 だからこそ、咆哮するのだ。
 世界を滅ぼすのがオブリビオンであるというのならば、それこそが『影竜』の存在意義である。
 意志もなく、使役されるだけの存在であれど、その本能は世界の全てを滅ぼさんとするのだ。
「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
 ならば、それを討つのが猟兵としての責務である。

 紡がれるは、竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)。
 此処に輝くは黎明の輝き。
 メンカルが手にする剣の名を、その輝きでもって知る。
『黎明剣』アウローラ。
 ユーベルコヲドの輝きを秘めた剣の刀身と共にメンカルは疾走る。彼女の持つ術式の力は、結界として生成された『アリアドネ』にも付与されている。
 これで万が一もない。

「……生命を侵食する力。けれど、それは怨嗟と憎しみによって紡がれた力だというのなら」
 復元浄化術式『ハラエド』を付与された黎明剣が閃く。
 降りしきる影を振り払って、メンカルは走った。
 彼女の目にあるのは、『影竜』だけである。此処で断ち切らねばならない。怨嗟と憎しみが世界を滅ぼすというのであれば、それは連鎖と同じである。
 誰かが断ち切らねばならないのだ。

 だから、メンカルは剣を振るう。
 空けぬ夜がないように。黎明の時はすぐ其処にあるのだ。
「……此方はその怨念と悪意、そして災厄の象徴たる竜を討つ竜殺し……」
 その輝きを『春秋庭園』の代表者は見ただろう。
 彼が虎の子と、切り札として放った『影竜』の身体を引き裂く刀身の輝きは、一閃でもって『影竜』の巨大な身体を切り裂く。

 それは彼にとって絶望でしかなかったことだろう。
 もっとうまく事が運ぶはずだったのだ。もう少しで『倫敦』は己の手中に収まるはずだったのだ。
 なのに、何故、と。
 そう、全ては『アーニャ・ブラッドレー』に手を出してしまったからだ。
 あの『国民的スタァ』が折れなかったから。
 屈しなかったから。その事実が悪意を切り裂く黎明を連れてきたのだ。

「……言ったはずだよ、『礼』をさせて貰う……とね……」
 メンカルの黎明剣の一撃が『影竜』を大きく傾がせる。
 その一撃を持って、暗闇に包まれていた『倫敦』の、そして集積した怨嗟と悪意の塊への幕引きへの道筋を照らすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
『超弩級戦力』らしい力を見せましょうか
――《戦士の手》と共に!

肉弾戦では分身し2体になった影竜には
不利ですか?
そんなことはありませんともッ【勇気】全開!

相手の攻撃は【見切り】カウンターで
ダメージを与えていく
避けきれなければ【オーラ防御】で防御と共に体勢を崩し

風の【属性攻撃】を宿す拳で【衝撃波】を見舞い、
分身を吹き飛ばすと本体に【ダッシュ】で迫り、
【力溜め】た【功夫】の打撃を見舞う!

動きの止まったところに組み付いての【鎧砕き】の
重い打撃をねじ込んでいきます
一度個の間合いに入ったなら、
そうそう出られると思わないことですッ

【怪力】で抑えつけ、【暴力】でなぎ倒して
オーラの籠る膝で、尻で【踏みつけ】っ!



『倫敦』郊外の『春秋庭園』に怨嗟の咆哮が吹き荒れる。
 それは解き放たれた影朧『影竜』のあげる憎しみの咆哮であった。猟兵達によって消耗されてもなお、その世界に対する憎悪は消えない。
 例え、それが小さな怨嗟の集合体であったとしても、人の心に負の感情が在る限り完全に消えてなくなることはない。

 まさに虎の子であったのだ。
 けれど、人の心に負があるようにまた正しさもあるのだ。
 それを示したのが『国民的スタァ』、『アーニャ・ブラッドレー』であった。彼女の星の輝きの如き正しさを愛する心が、猟兵たちを次々とサクラミラージュの『倫敦』へと舞い降りさせていた。
「グルゥァァァァァ――!!!」
『影竜』が咆哮し、その身体が分裂する。
 2体の『影竜』は迫る猟兵に向かって、その影で出来た巨躯でもって圧殺せんと迫るのだ。
「『超弩級戦力』らしい力を見せましょうか――『戦士の手(センンシノテ)』と共に!」

 不意に『影竜』の一体が吹き飛ばされる。
 その巨躯が傾ぐのを見ただろう。一体何がと思った者もあっただろう。何がどうぶつかればそうなるのだと思うほどの光景であった。
 そう、今まさに『影竜』の巨躯を吹き飛ばしたのは、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)の拳の一撃であった。
「な、なんだ、あのユーベルコヲド使いは……!?」
 この事件の首謀者である『影朧を使役する結社』の拠点である『春秋庭園』の代表者は逃げながら呻いた。

 人影が『影竜』へと飛びかかったと思った瞬間、あの巨躯が只の拳の一撃で吹き飛ばされたのだ。
 まるで非現実的であった。
 悪夢を見ているようだった。
「不利なんてことはありません。殴りっこなら負けませんからっ!」
 ユーフィは気合十分に拳を握りしめる。
 固めた拳は巨岩をも穿つ一撃。
 一意専心によって磨かれた彼女の拳は、例え己よりも巨大な存在が相手でも引けを取ることはない。

 2体に増えたから何だというのだというようにユーフィは踊るように『影竜』から振り下ろされる腕を躱し、その腕を駆け上がって拳の一撃で『影竜』を打倒していくのだ。
「馬鹿な……! 無数の怨嗟が集まった影朧だぞ……! あれを生みだすのにどれだけの時間がかかったと思っているんだ。何をしている! 早くアイツを!」
 吹き飛ばしてしまえと檄を飛ばす代表者。
 けれど、ユーフィは裂帛の気合と共にその言葉を否定する。

「そんなことはありませんともッ! 怨嗟がなんですか。そんなもの! 勇気全開でどうにかしてみせます!」
 ユーフィの拳が炸裂する。
 それは風をまとった衝撃波を伴った一撃であった。
 力を込め、『功夫』によって磨かれた彼女の拳は、それだけで圧倒的な武器となり得るのだ。
 動きを止めた『影竜』たちの上に跳躍するユーフィの小さな身体。
 けれど、その身体が放つ重圧は凄まじいものであったことだろう。『影竜』は見た。
 その瞳に輝くユーベルコヲドの輝きを。
 それこそが、自分たちの怨嗟を断ち切る拳であると知るのだ。

「一度個の間合いに入ったなら、そうそう出られるとは思わないことですッ!」
 その有り余る膂力でもってユーフィは『影竜』の喉元に凄まじき蹴撃を見舞い、さらに飛び上がってヒップアタックの一撃でもって頭部を叩き潰すのだ。
 鍛え上げられた肉体は剣よりも固く。
 そして、編み上げられた怨嗟よりも強固なものなのだ。

 それを知らしめるようにユーフィは『超弩級戦力』としての矜持を見せつけるように、『影竜』を散々に砕く拳で持って、『倫敦』に迫った影朧の脅威を取り除くのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

星野・祐一
ほぉーそいつがあんた等の切り札って訳か
ならそいつを倒してあんた等の企みも叩き潰してやるぜ

[SPD]
まずは挨拶代わりの【先制攻撃】を仕掛けたら
周囲の木々等の【地形の利用】して【ジャンプ】しながら
流星の【誘導弾、属性・マヒ攻撃】でダメージを与えていく

敵の攻撃は対面する相手は【視力、見切り】
死角からの攻撃に対しては【第六感、読唇術、瞬間思考力】
それぞれ避けて対処な

マヒが蓄積して相手が【体勢を崩す】のを確認したら
雷鳴に持ち替えて【ダッシュ】で一気に接近
【UC、零距離射撃、貫通・2回攻撃】で仕留めるぜ

あとは結社の連中を流星で捕縛して一件落着!
アーニャのコンサートとか予定があるなら見に行くかね

アドリブ歓迎



 分裂した影朧――『影竜』が再び身体を分かつ。
 どれだけ分かたれても『影竜』の力が衰えることはない。なぜなら、その身体は怨嗟と憎しみで出来ていた。
 世界を憎む心がより上げられた『影竜』の身体は、それだけで生命を侵食する。
『倫敦』を攻め落とし、さらなる恐怖で持って『影竜』を強化し、手のつけられない暴竜へと進化させることが『影朧を使役する結社』の目的であったのだ。

 けれど、それでも『超弩級戦力』によって『影竜』は消耗されていた。
「私達の切り札が……! これが『超弩級戦力』……! 侮っていたわけではないが……!」
 逃げていた結社の拠点、『春秋庭園』の代表者が呻く。
 しかし、その背後から迫る者の影がった。
「ほぉーそいつがあんた等の切り札って訳か。ならそいつを倒してあんた等の企みも叩き潰してやるぜ」
 鈍い音がして、代表者が失神して大地に倒れ伏す。
 その背後に在ったのは、星野・祐一(シルバーアイズ・f17856)であった。彼の一撃によって代表者は意識を刈り取られ、逃亡を阻止された。

 祐一は見上げる。
 2体の『影竜』の威容は言うまでもない。あの怨嗟の咆哮が『倫敦』に向いた時、さらなる悲劇が生まれる。
 それを阻止することは結社の企みを砕くことと同義である。
「ならやってやるぜ……!」
 挨拶代わりと熱線銃の弾丸を『影竜』に放ち、意識を此方に向けさせる。幸いに此処は庭園だ。
 周囲には木々が覆い、祐一が地形を利用するのは容易い。
 木々の枝々を跳ねるようにして飛び、熱線銃の弾丸でもって『影竜』の動きを富めるのだ。

「2体に分裂しても力が変わらないってことは、それだけより合わせられた影朧の残滓が多いってことだよな……!」
 吹き荒れる生命を侵食する影。
 それが爪となって祐一をとらえようと振り下ろされ続ける。けれど、それは彼を捕らえることはできなかった。
 単調すぎるのだ。

 どれだけ強大な力を持っていたとしても、世界を憎む心でしか構成されていない破壊の徒となった『影竜』は動くものを追いかけ続ける。
 そこには戦いの駆け引きや戦術と言ったものがない。
 あるのは破壊への意志だけだ。
 そんなものに祐一の動きが捉えられることはない。
「一気に決めてやる……世界を憎む心、か……影朧が深く傷ついた魂の成れ果てっていうんならよ!」

 祐一が疾走る。
 疾く、疾く。一刻も早く、あの影朧に集積した憎悪の残滓を解き放たなければならない。
 あれが世界に仇為すのは、自分が傷ついているからだ。
 どうしようもないことに涙した過去があったからだ。ならば、それを切り裂き、新たな門出とする光がいる。

 そう、祐一のユーベルコヲドが輝いた。
「この一撃雷で終わりにしようぜ……!」
 放つ熱線銃の銃口が冬雷(トウライ)の輝きに染まる。銃口が『影竜』に押し付けられ、一瞬の内に『影竜』の身体を貫き蒸発させる。
 凄まじい威力は雷の奔流となって、『影竜』の身体を霧散させ、2体に分裂していた1体を完全に消滅させるのだ。

「悪いな……その憎しみを理解はしてやれない。けど」
 次は良い人生を迎えてほしい。
 輝きに憧れる魂があったのならば、『一番星』のごとく輝くスタァを夢見るのもいいだろう。
 この世界には、それを受け入れるだけの度量がある。
『倫敦』に輝くスタァ。

 そう、『アーニャ・ブラッドレー』の星の輝きが在るのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

っ!
今までの影朧とは格が違う奴が出て来たか…どうやらこいつが『結社』の切り札と見える
だが、負けるつもりはない!

相手の攻撃が影を使った攻撃だというのなら、地上にいるよりは空中の方が自由が効きやすそうだ
黄昏の翼を発動し、空中へ
相手はかなり巨大なようだが、可能ならさらにその上から攻撃出来れば…

敵の攻撃は【見切り】回避試み
【全力魔法】力を【破魔】の力に変換し付与した光陣の呪札の【乱れ撃ち】【貫通攻撃】で空中から畳みかける!
影ある所に光あり、この札の光で影を消し去ってやる!

万一ダメージを受けたとしてもこちらの遠距離攻撃が貫いた敵の患部より【生命力吸収】しこちらの回復を行う



 分裂していた『影竜』の1体が完全に葬りさられ、霧散し消えていく。
 この事件の首謀者である『影朧を使役する結社』の拠点である『春秋庭園』の代表者は猟兵によって捕縛されている。
 けれど、戦いはまだ終わっていない。
「っ! 今までの影朧とは格が違うヤツが出てきたか……」
 これが『結社』の切り札。
 影朧『影竜』。
 その強大な力は言うまでもなく、けれど猟兵達の活躍に寄って此処まで追い込んだのだ。

 鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は見上げる。
『影竜』の身体を構成する憎しみ、怨嗟。
 それはともすれば誰の心にも在るものだ。光と闇があるように、眩い星の輝きの後には必ず影がある。
『アーニャ・ブラッドレー』というスタァの輝きを前に、昏い影が落ちるように、それは必然であったのかも知れない。
 けれど、ひりょはその瞳にユーベルコヲドの輝きを灯す。
「だが、負けるつもりはない!」
 影が彼へと降り注ぐ。
 生命を侵食する影。それに触れてしまえば、如何に猟兵と言えど只ではすまない。

 ならばと、彼の輝くユーベルコヲドがその背に翼を象る黒白のオーラが顕現する。
「翼よ、今こそ顕現せよ!」
 黄昏の翼(タソガレノツバサ)を広げ、ひりょが空へと舞い上がる。
『影竜』の巨躯を見下ろすほどの高度へと飛び上がり、見下ろす。
 ああ、とため息が溢れるようであった。憎しみの怨嗟が此処まで届いている。世界が、光が、憎くてたまらないのだろう。

 自分がそうでなはいという事実を『影竜』は見せつけられているのだ。
 輝きを求め、光を求め、そうでありたいという願いの成れの果て。それが『影竜』を形作る要素だ。
 影朧とは弱いオブリビオンであり、深く傷ついた魂でもある。
 傷ついた魂は、いつだって悲しいくらいに負を抱えている。それを悪意でもって操ろうとしたのが結社なのならば、それは人の心の中にある悪が見せた幻影なのだろう。
「それが世界にとっても、人にとっても悲しいことだってわかれよ――!」

 ひりょは手にした光陣の呪札を乱れ打ち、上空より『影竜』へと畳み掛ける。
 咆哮は痛みか、それとも憎しみか。
 それさえもわからなくなってしまった理由なき憎悪めがけてひりょは飛ぶ。
「影ある所に光あり、この札の光で影を消し去ってやる!」
 影の一撃がひりょの身体を貫く。

 生命を侵食していく傷みが、彼の身体を貫くだろう。
 けれど、構わなかった。
「理由さえわからなくなってしまったのなら、此処で終わらせる! そして、次へ行け。そうやって生命は流転するんだって、示してくれ」
 ひりょは呪札が輝く光と共に穿たれた『影竜』へと突っ込む。
 叩きつけるように呪札を放ち、顕現する光の束が『影竜』の身体から膨れ上がって、内側から焼くように世界へと、無数の憎しみを光へと変えて放出するのだ。

 きらきらと光る粒子は過去の残滓。
 オブリビオンである影朧が骸の海へと還っていった証であろう。
 全ての魂に癒やしをもたらせたわけではない。けれど、それでもと願わずにはいられないのだ。
 傷ついた魂があるのならば、癒えてほしい。
 転生があるのならば、次は良き生を送ってほしい。
 誰かのためにそう願えることこそが、人の心に住まう善であると信じたい。
「……誰も彼もが路を歩んでいる。いつだって前を向いて歩くのなら、新たな気持ちのほうがいい」

 そう、どれだけ暗闇に包まれた過去があったのだとしても、前を向く限り光は自分を照らしている。
 そんなふうに思えるようになってほしい。
 誰も彼もが、そうであってほしい。そんなふうに願いながら、ひりょは消えていく『影竜』の残滓へと祈るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月09日


挿絵イラスト