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桜に誘われて~箱庭の楽園

#UDCアース #呪詛型UDC #お花見

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●グリモアベースにて
「みんな、集まってくれてありがとう」
 グリモアベースに集合した猟兵たちに笑顔を向けると、、エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)はどこかわくわくした様子で口を開いた。
「もうすっかり春よね。新しく見つかった世界――封神武侠界では、美しい桃の花が見れるんですって」
 季節はお花見にぴったり。サクラミラージュ以外でも、美しい花々が咲き誇り、様々な形の花見を楽しめる季節だ。
「というわけで、みんなにはUDCアースで思いっきりお花見を楽しんできてほしいの!」
 そこまで言ってから、エリシャは悪戯っぽい表情でこう付け足す。
「もちろんお花見だけじゃなくて、猟兵としてのお仕事も一緒にお願いしたいんだけどね」
 エリシャが今回の花見の場所として紹介したのは、少し前に閉園した遊園地の跡地。山奥にあるその場所は、桜を見る穴場スポットとして花見ツアーが計画されたのだが、そこで花見を楽しむ人々がUDCの怪異に巻き込まれてしまうという予知が見えたのだ。
「だからみんなには代わりにお花見を楽しんでもらって、UDCに連なる怪異を引き寄せて、その奥に潜むUDCを倒してきてほしいの」
 怪異に誘われるのは、その場で花見を満喫している者たち。UDC組織が協力してくれているので、一般人がその場に紛れることはない。猟兵たちだけで思う存分花見を楽しみ、怪異を引き寄せる必要がある。
「遊園地の乗り物は動かないけど、見て楽しむことはできるわ。園内の至る所に桜は咲いているし、歩いて楽しめる桜並木や、広場にもたくさんの桜の木が植わっているわ。時期もばっちり見頃だから、思いっきり楽しんできてね」
 しっかり楽しんでいれば、UDCの怪異が猟兵たちを誘ってくる。それは遊園地にふさわしいパレードという形で。
「おそらく、人によって見るものは違うと思うんだけど……そのパレードの後を追えば元凶であるUDCの元へ辿り着けるはずよ。見つけたら、あとはしっかり倒してきてほしいの」
 猟兵としてオブリビオンを倒す必要はあるけれど、それでもせっかくだからこの季節だけの満開の桜をめいっぱい楽しんでほしい。そんな気持ちを込めて、エリシャはにっこりと微笑むと、星型のグリモアを輝かせ、猟兵たちを送り出した。


湊ゆうき
 こんにちは。湊ゆうきです。
 やっぱりこの時期はお花見がしたい! というわけでぜひ楽しんでください。

●第一章【日常】
 怪異を引き寄せるためです。思いっきりお花見を楽しんでください。時刻は昼。
 場所は少し前に閉園になった山奥にある遊園地。その日は入口が開放されていますが、乗り物は動きません。お店等は近くにありませんので、お弁当なり買って来たものなりを持ち込んでください。歩きながら桜を眺めるだけでもいいです。P/S/Wは参考までに、できそうなことでしたらご自由にどうぞ。

●第二章【冒険】
 しっかりお花見を楽しむと、不意にどこからともなく謎のパレード集団が現れます。それはあなたが知っているものかもしれませんし、知らないものかもしれません。それがこちらに危害を加えることはありませんが、あなたは何かしらの記憶を思い出したり、感情を呼び覚まされるかもしれません。パレードの後をついていけば元凶のUDCの元へとたどり着きます。

●第三章【集団戦】
 元凶となるUDCとの戦いです。

 ご参加は途中からでも一章のみでも大歓迎です。
 同行の方がいらっしゃる場合はその旨お書き添えください。
 プレイングは4/1(木)8時半以降から受付いたします。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております!
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第1章 日常 『隠れスポットでお花見』

POW   :    花より団子! 個人商店を巡って買い集めたお総菜でお腹いっぱい!

SPD   :    下調べは万全! 見晴らしの良い場所からの花見は格別

WIZ   :    のんびり気ままに好きな場所で心ゆくまで花を楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友。

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

歩きながら。
いいですよねー、花見って。…私、生前にはあまりしませんでしたけど(理由が『暗殺』な話になる)

別世界(A&Wの依頼『色は匂えど桜散る』)で花見しましたけれど、今住んでいるここでも花見はねー、楽しみませんと、ねぇ?(内部の三人に話しかけるように)
遊園地というのも、この世界ならではなんですしー。

影の中にいる陰海月も出て来て、ちろちろと風に舞う花びら掴もうとしてますねー。
…何ででしょう。こう、猫がじゃれているのを思い起こすような?

※残りの三人は武士
陰海月の動作が猫っぽいのに同意している。



●この世界での花見を
 少し前に閉園になったという遊園地は、まだ廃墟感もなく、乗り物も動き出しそうな気さえする。
 開園時にはたくさんの人々で賑わったであろうその場所には、花見と称した依頼で訪れた猟兵の人影がまばらにあるばかり。
 それでも桜は今が見頃の満開を迎えており、美しく咲き誇っていた。
「いいですよねー、花見って」
 桜並木をゆっくりと歩きながら、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はおっとりとした口調で告げる。
「……私、生前にはあまりしませんでしたけど」
 穏やかでおっとりとした物腰からそうは感じさせないが、義透はこう見えても四人の人間からなる複合型の悪霊なのだ。今は『疾き者』が表に出ているのだが、彼の生前は忍者。極秘任務や暗殺なども行う日陰者の身ゆえ、日の当たる場所で花見をするということがあまりなかったのだろう。
「けれど、この前、別世界で花見をしましたね」
 あれはアックス&ウィザーズで、フェアリーランドの中での花見だったけれど。自然のままの桜が美しく咲いていたのを思い出す。悪夢と呼ぶにはあまりにも美しすぎるその光景。あの時も『自分』が表に出てはいたけれど、他の三人にもあの美しさは伝わっているだろう。
「あれはあれで良かったですが、今住んでいるここでも花見はねー、楽しみませんと、ねぇ?」
 『自分』の中にいる三人に問いかけては、義透が現在住んでいるUDCアースでの桜を楽しむ。生前の四人の故郷は、既にオブリビオンによって滅ぼされてしまったけれど、今はこの世界が自分たちの故郷と呼べるのかもしれない。
「遊園地というのも、この世界ならではなんですしー」
 見上げれば遠くに観覧車が見える。動きを止めたそれは今はただのオブジェでしかなく、やがて取り壊されてしまうのかもしれないが、満開の桜とともに佇む姿はなかなか風情がある気がする。
 しばし足を止めてはそれを眺めていると、そっと春風が吹き抜け、薄桃色の花びらを優雅に舞わせる。いつもは影の中に潜んでいる大きなミズクラゲ【陰海月】が透明な触手を伸ばしては、ちろちろと風に舞う花びらを掴もうとしているのが目に入った。
「おやおや、陰海月も花見に興味ありですか?」
 微笑ましく思いながら見ているのは、きっと中の三人も同じだろう。空中でも泳ぐように動ける陰海月は、次々と舞う花びらを何とか掴もうとその触手を上下に動かしている。
「……何ででしょう。こう、猫がじゃれているのを思い起こすような?」
 首をかしげながらそう呟いた義透の言葉に、他の三人も大いに同意したのを感じ、ふっと口元を緩める。
「ですよねー。さあ、今度はあちらにも行ってみましょうか。桜と言っても種類がたくさんあるようですし」
 陰海月がようやくひとつ花びらを掴んだのを確認すると、義透はまたゆっくりと歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
【WIZ】
この世界に住む者として、エージェントとして、事態を放ってはおけません。
UDCの「ツキ」を伴って、現地へ。

「あれが面白いのか?ニンゲンの考えることは分からんな」
闇色の狼姿のUDCツキが跡地のコースターや観覧車を見上げます。
僕は苦笑し、本当に幼かった頃の、父母が健在で平和だった時代に思いを馳せ···

手元が軽くなったことに気付く頃にはお弁当は全てツキの腹の中ー
「サンドイッチとやらの味は良いが、腹は膨らまないな」と。
早くオブリビオンを喰わせろ、と続けるツキを従えて桜並木をゆっくり散歩しましょう。

まったく、花より団子とはツキの為にあるような言葉ですね。



●花より団子の同行者
 閉園になった遊園地でのお花見ツアー。もしUDCの怪異が花見を楽しむ人々を巻き込むようなことがなければ、今頃はこの場所は花見を楽しむたくさんの人々で賑わっていたことだろう。
(「この世界に住む者として、エージェントとして、事態を放ってはおけません」)
 今年は人々の安全のため、代わりに猟兵たちが花見を楽しむことになったが、怪異を見つけ出し倒しさえすれば、また来年はより多くの人がこの桜を楽しむことができるだろう。そう願いながら、シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は、遊園地だった場所へと足を踏み入れる。
 UDCアース出身のシンにとって、遊園地は珍しいものではない。けれど、シンの『同行者』の目には不思議に映ったようだ。
「あれが面白いのか? ニンゲンの考えることは分からんな」
 シンの隣で不思議そうな声を上げたのは、シンが魔術で従えている闇色狼の姿のUDC――ツキだ。彼方に見える観覧車や、ジェットコースターのレールを見て、何が面白いのかわからないという様子だ。
「今は動いていませんからね。あのレールを列車のような乗り物が走って、高所からの高速での落下や旋回を、スリルと共に楽しむんです」
「わざわざ怖いことをして楽しむのか? ますます分らんな……」
 ツキの言葉に微苦笑を浮かべて、シンはそう言われるとそうかもしれないと思う。動物はそんなことをしないだろうから、きっと人間だけなのだろう。けれど、UDCはそうした人間の嗜好を知っているのか、こうして怪異を引き起こす。
 シンもまたその身をUDCに憑かれたUDCエージェントの一人。知識欲の強さからか、ある時手にした魔導書。それを理解してしまったことで憑かれてしまったのだが、ツキ曰く魔術の素養があるからか、そのUDCであるツキを魔術で従えることができた。魔導書に記載されていた送還方法を示すページは失われてしまっていたが、元に戻る術を探して、こうして世界を巡っているのだ。
 桜を見るのに良さそうな場所を見つけては、ベンチに座り、持参したお弁当を広げる。けれどすぐには手を付けず、シンは遊園地を背景に美しく咲く桜を、舞い散る花びらを見つめる。
 ツキと出会う前には、シンもまたこのUDCアースで平穏な日常を送っていた。それこそ本当に幼い頃、こんな風に遊園地に健在だった父と母と一緒に来て、楽しい時間を過ごして……。
 過去に思いを馳せていれば、いつの間にか手元が軽くなっていることに気付く。広げたお弁当がすっかり空になっていた。
「サンドイッチとやらの味は良いが、腹は膨らまないな」
 ぺろりと舌で口元を舐めると、まだまだ食べ足りないと言うようにツキが呟く。せっかくの満開の桜を見ずにぺろりとサンドイッチを平らげたツキは、まだ怪異は現れないのか? と聞いてくる。
「花を見ても腹は膨れないんだ。早くオブリビオンを喰わせろ」
 そう続けるツキを、お花見を楽しんでからですよとなだめながら、シンはベンチから立ち上がる。
「さあ、次は桜並木をゆっくり散歩しましょう」
「いや、もう花はいいから、早く、早く喰わせろ」
 サンドイッチをひとりで食べたというのに、闇色の狼はまだまだ空腹らしい。
「……まったく、花より団子とはツキの為にあるような言葉ですね」
 そう苦笑をもらしながら、空腹を訴える闇色狼を隣に伴って、シンはゆっくりと桜並木を散策するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎

1人暮らしが長いだけあって家事は一通り出来る
料理も得意って程じゃないけれど出来るから、お弁当でも作っていくか
…まぁ、1人なんだけどさ

先日梅の花が見頃な頃に皆と花見はしたのだけど、その頃はまだ桜は五分咲きだったんだよねぇ…
今回は一人でゆっくりもアリ、かな?

桜並木を歩いて観賞した後に、どこかでレジャーシートを広げるかベンチかでお弁当を食べよう
元々から遊園地とか行った事がある方じゃないけれど、こういった場所で乗り物とかが全く動いていない状況を眺めるのもなんだか不思議な気分だな
貴重な体験と思っておこう

お弁当を食べたらまた散策再開、遊園地内をブラブラしてみよう



●今しかできない体験
「うわあ、確かにここは桜が満開だね」
 山奥にある閉園した遊園地。そんな場所にあるのがもったいないと思ってしまうくらいの満開の桜が鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)を出迎えてくれた。
「遊園地が閉園したとしても、確かにこの桜が見られなくなるのはもったいないよね。ツアーを企画した人の気持ちもわかるな」
 先日ひりょも仲間たちとUDCアースで花見をした。といっても、少し前のことなので、その時分はちょうど梅の花が見頃だった。花も綺麗で香りも格別だったけれど、桜はまだ五分咲きで、桜の花見としては物足りないと思っていたのだ。
 花見をしたいと思ったひりょは、その後新世界での花見を計画したら、ついでに宴会会場を占拠するオブリビオンの予知をしてしまったりしたのだが……とにかく今日はゆっくりと花見を楽しみたい。
(「たくさんで花見も楽しいけど……今回は一人でゆっくりもアリ、かな?」)
 孤児だったこともあり、一人暮らしが長いひりょは家事は一通りできる。料理も得意というほどではないけれど、ある程度はできるから、今日もお弁当を作ってきた。自分のために作るお弁当、一人で食べるのは、ぼっちの寂しさを感じるかと思ったけれど。
 メリーゴーランドの木馬に桜の花びらが舞う様子はどこか幻想的で。そんな様子を飽きるまで眺めることができるのもきっと一人だからこそで。それに広い敷地の中、一人で桜を楽しんでいる猟兵は他にもいる。
 そうしてゆっくりと桜並木を歩いてしっかり桜を楽しんだところで、桜を眺められるベンチに腰掛ける。
「へえ、遊園地にはこんな乗り物もあるのか」
 中央にどう見てもタコにしか見えないものが鎮座していて、その周りに二人で乗り込めるライドがある。きっとタコの手足とともにそのライドが上下に動いて楽しむ乗り物なのだろう。孤児ということもあり、育ての親も病で他界したひりょにとっては、小さい頃たくさん遊園地で遊んだ思い出があるわけではない。けれど、こんな風に乗り物が全く動いていない状況を眺めるというのも不思議な気分だ。
「うん、貴重な体験と思っておこう」
 遊園地ならこれからいくらだって行ける。けれど閉園した遊園地に入れることはそうそうないだろうし、さらにそこで満開の桜を見ることなんてなかなか経験できることじゃない。たとえ過去に遊園地の思い出が少なくても、今のひりょはそんなことを気にしない前向きさを持ち合わせている。
 お弁当を食べ終えれば、また散策再開だ。まだ見たことのない乗り物があるかもしれない。動かないのはわかっているが、それがどんな風に動いていたか考えるのも楽しそうだ。他にもさらに穴場の絶景スポットがあるかもしれないし。
 そんなことを考えながら、ひりょはまた満開の桜が咲き誇る遊園地内を歩き始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】
一緒に見晴らしの良い
桜を眺めつつ、事前に『料理』して持ち込んだお弁当を食べられる場所を探そう

お弁当の中身は

変わり種に薄い輪切りにして、塩で揉んで水分を抜いた大根に片栗粉をまぶして皮代わりにした

大根餃子かな?
割とニュルっとした食感だけど

しっかり大根に種の旨味が染みて
餃子してて中々イケるよ

後、唐揚げ以外の惣菜各種と
スイーツ春巻き&餃子かな

ビスマスちゃんと互いにお弁当食べ合いつつ、桜を見るけど……ここにUDCの怪異が現れなかったら花見会場としては、うってつけだったかも

と言うか、またビスマスちゃんと花見が出来……どさくさに紛れてボクの尻尾を枕に、仕方ないなぁ

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】
わたしも事前に『料理』してきた
お弁当を用意して、中身はお惣菜が入った桜餅(道明寺蒸し)を色々と、鯛が入ったのや、肉団子が入ったのとか

勿論、なめろう入りもありますよ
甘味として出るより、お惣菜としての
桜餅が先らしいのは意外に思ったり

と、エミリさんと場所探ししてから
一緒に交換し食べ合いながら、桜を眺め

確かに、この綺麗さは色々な物を引き付けそうとは思います、元凶は何を企んでいるのか知りませんが

元凶を叩いて、人の手に取り戻さなくてはなりませんね

こうして、桜を見ながら楽しむ文化の享受をする権利は……皆の物ですし

と、思いながらもエミリさんの
尻尾を枕がわりにゴロンと

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●贅沢な時間
「ビスマスちゃん、見てみて! 桜が綺麗だよ!」
 山奥にある閉鎖された遊園地に辿り着けば、確かにいたる所に桜の花が満開で。
 エミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)はその金色の瞳を輝かせながら、一緒に来たビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の手を引く。
「エミリさん、慌てなくても桜は逃げませんよ。でも本当に……綺麗ですね」
 春風に乗って薄紅色の花びらが舞う様も美しく。ちょうど満開の中、花見ができるというのは本当に贅沢だと思わされる。
「綺麗な桜を眺めながら食べるお弁当は格別だよね。さあ、どこで食べようか?」
 二人がそれぞれ作ってきたお弁当を手に、静かな遊園地の中を歩いて見て回る。乗り物に乗って食べるというのも楽しそうではあるけれど、せっかくだからとびきり桜が綺麗に見える場所を探そうと二人は敷地内をぐるりと一周した。
 少し高い場所に観覧車があって、もちろんそれは動かないのだけれど、その高台からは遊園地内の桜が見渡せた。もちろん近くにも桜の木はたくさんある。
「ここにしましょうか」
「うん、遊園地の桜が一望できるしね」
 二人は観覧車をバックにレジャーシートを敷いて座りこむと、それぞれのお弁当を広げていく。
「やっぱりエミリさんは餃子ですね。でもいつもと違うような……?」
「ビスマスちゃんよくわかったね。そう、これは大根餃子だよ」
 餃子の皮の代わりに薄い輪切りにした大根を使用しているのだ。大根は塩で揉んでしっかり水分を抜き、柔らかくなったところで片栗粉をまぶして餃子の餡を包んで焼いて仕上げてある。
「割とニュルっとした食感だけど、しっかり大根に種の旨味が染みて、餃子してて中々イケるよ」
 はい、と差し出された大根餃子をビスマスが口に運ぶと、うんうんと頷く。
「確かにパリッと感はありませんが、独特の食感で美味しいです」
「気に入ってもらってよかったよ。他にも惣菜いろいろと、スイーツ春巻きやスイーツ餃子もあるからね」
 餃子の大地の力を操る餃心拳継承者のエミリロットらしいお弁当に顔をほころばせたビスマスは、自分のお弁当も広げる。
「では、わたしのもどうぞ。お惣菜が入った桜餅いろいろです」
「え、桜餅?」
「道明寺蒸しとも言うんです。鯛が入ったのや、肉団子が入ったのとか」
 確かに見た目は甘味としての桜餅に見えるが、中身はいろいろと聞いてエミリロットは思わず訊ねた。
「なめろうもあるの?」
「勿論、なめろう入りもありますよ」
 はい、と差し出したなめろう入り桜餅をエミリロットが美味しそうに食べるのを満足そうに見るとビスマスは続ける。
「甘味として出るより、お惣菜としての餅が先らしいのは意外に思ったりします」
「確かにそうだね」
 そうしてお弁当を交換して食べあいながら、満開の桜を眺める。なんだかこの美しい桜を楽しんでいるのが猟兵たちだけだというのがとてももったいない気がした。
「ここにUDCの怪異が現れなかったら花見会場としては、うってつけだったかも」
 エミリロットの言葉に、ビスマスも大きく頷いて。
「確かに、この綺麗さは色々な物を引き付けそうとは思います……元凶は何を企んでいるのか知りませんが」
 美しい桜を愛でにやってきた人々を呪いのように引き付けるという恐ろしい怪異。
「元凶を叩いて、人の手に取り戻さなくてはなりませんね」
 真剣なビスマスの声にエミリロットも大きく頷く。
「こうして、桜を見ながら楽しむ文化の享受をする権利は……皆の物ですし」
「そうだよね。お花見はみんな大好きだもん。と言うか、またビスマスちゃんと花見が出来……」
 エミリロットがそう応えた時には、ビスマスはエミリロットの尻尾を枕代わりにゴロンと横になっていた。
「え、真面目な話してたのに……どさくさに紛れてボクの尻尾を枕に、仕方ないなぁ……」
 ファードラゴンタイプのエミリロットの尻尾はそれはそれはふかふかで。もふもふ好きのビスマスは幸せそうにその柔らかい尻尾の感触を確かめる。
「お花見でもふもふ……最高の贅沢ですね」
 幸せそうなビスマスが花見を思いっきり楽しんでいるのは自明で。
 エミリロットもまたこの平和な瞬間に顔をほころばせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
わぁ...太陽の光でキラキラ輝く桜の花びらが綺麗ですね!せんせー!
(「えぇとっても綺麗ね。仕事が無ければこのままお花見しながらのんびりお散歩でもしたい気分だわ」と頭の中の教導虫が話しかける)
UDCをおびき寄せるのに花見を楽しむ必要がありますし
それまでお散歩しましょう!
(「そうね、そうしましょう...そうだ、黒影、いいもの見せてあげる」)
(教導虫が『念動力』で桜の花びらを操作すると花びらのウェーブを作り上げる)
うわー!すごいすごい!さすがです!せんせー!
(「どんなもんだい!」)
他にもいろいろできますか!?
(「えぇもちろん!さぁせんせーにお願いしてごらん!」)
ありがとうございます!せんせー!



●桜の下の教室
 山奥にある今は閉園された遊園地。けれどそこはまだ廃墟となったわけではなく、乗り物は動かないまでも遊園地特有の明るい雰囲気を宿したままだった。
 今日は天気も良く絶好の花見日和だ。遊園地のゲートをくぐった黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、あちこちに咲き誇る満開の桜を見て、頬を紅潮させ、目を輝かせた。
「わぁ……太陽の光でキラキラ輝く桜の花びらが綺麗ですね! せんせー!」
 兵庫の中に存在し、その潜在能力を引き出す兵庫が「せんせー」と呼ぶ教導虫もこの美しい光景に満足そうな様子で、兵庫に語り掛ける。
『えぇとっても綺麗ね。仕事が無ければこのままお花見しながらのんびりお散歩でもしたい気分だわ』
 そう、これはただの花見ではなく、れっきとした猟兵としてのお仕事でもあるのだ。
「はい、せんせー!」
『なあに、黒影?』
「えっと、UDCをおびき寄せるのに、花見を楽しむ必要があると思います!」
『そうね、それで?』
「それまでお散歩しましょう!」
 兵庫の頭の中の教導虫がふふふと笑う声がした。
『そうね、そうしましょう……そうだ、黒影、いいもの見せてあげる』
 その言葉と共に、兵庫の目の前で散ったはずの桜の花びらが浮き上がり、くるくると回りながらウェーブを描き出した。教導虫が念動力で操作しているのだ。
「うわー! すごいすごい! さすがです! せんせー!」
 心からの称賛に、教導虫も機嫌をよくしたようだった。
『どんなもんだい!』
 頭の中にいるから決して見えはしないのだが、えっへんと胸をそらして得意げな様子がなんだか目に浮かぶようだった。
「他にもいろいろできますか!?」
『えぇもちろん! さぁせんせーにお願いしてごらん!』
「ありがとうございます! せんせー!」
 桜の木に見守られながら、先生と生徒の楽しい露天授業が始まる。
「じゃあ、じゃあ、竜巻みたいにくるくるって!」
『こうかしら?』
「わーこんなことも! せんせー、さすがです!」
 散った桜を蘇らせるように自由に操る教導虫の念動力教室。それはそれで美しい桜をもう一度楽しむ楽しい時間なのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

彩瑠・翼
桜、すっごくキレイだぁ
こんなに綺麗だったら、姉ちゃん達誘ってもよかったかもだ
んー、今日は下見ってことで、後日お誘いしてみようっと

遊園地の跡地ってのが結構面白いよね
動かないけど、危なくないとこならちょっとよじ登ったりでいるかな?
観覧車とかジェットコースターの線路…は流石に厳しそう
頑張ってもメリーゴーランドの屋根くらい?

(あっちこっち回って、見上げて足場を探しつつ
問題なさそうならヨイショとよじ登り)

わ、ちょっと目線が高くなっただけでも景色が違って面白いや
ここで一休みして持ってきた飲み物飲んじゃおう
飲み物はこないだ先生に教えてもらった桜ラテ!

こうやって見てると桜独り占めしてるみたい
すごく贅沢な感じっ


蒼・霓虹
[チーム:蛟]
吉備ちゃんや彩虹さんと花見に
その内行こうかと思っていましたが
ある意味思わぬ好機だったのやも

ある意味、擬似的な親子水入らず……
と言った感じでしょうか?わたしは
吉備ちゃんの親代わりですからね

何処か見晴らしの良い所に
先客がいるなら一緒に

事前に【料理】した
赤飯のおにぎりに
だし巻き玉子
鯛のたたっこ揚げ
後、デザートに三色団子
三色団子も春の縁起物

吉備ちゃんとシェアしあって
桜を楽しみつつ鋭気養いましょうか

え?たたっこ揚げを作る時
とても気合い入っていたと?

まぁ……これも思い出の品では
ありますからね、あっ……もしかして
眠くなってきてません?良かったら
膝枕してあげますけど

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


小雉子・吉備
[チーム:蛟]
お花見お花見っと……
記憶のある内だと
現世でお花見は
今日が始めてになっちゃうね

擬似的な親子水入らずかぁ
じゃあ、霓虹ちゃんにいつも
以上に甘えちゃおうかな

キビはデザートに吉備団子各種
お弁当に、きびなごの唐揚げに
もちきびのおむすび
もちきびのナゲットを
事前に【料理】して用意

これを皆で食べながら
お花見楽しんじゃおう

そう言えば、出掛ける前に
二人でお弁当作る時
たたっこ揚げを作る時

気合い入っていたけど
鯛は縁起物だから解るけど

思い出の品かぁ、そう言えば
似た料理を心情にした娘がいるって
聞くなぁ……それはさておき
これだけ喉かだと、少し眠いかも

え?良いの?じゃあお言葉に甘えて

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]



●とっておきの観覧席
「桜、すっごくキレイだぁ」
 遊園地のゲートをくぐるとそこはかつての夢の国。遠くに見える観覧車や遊園地の花形アトラクション・ジェットコースターをはじめ、コーヒーカップやバイキングなど楽しそうな乗り物もたくさん目に入ってくるけれど。
 彩瑠・翼(希望の翼・f22017)の心を一番に掴んだのは、満開の桜の花。いたる所に桜の木が植えられた遊園地は、かつてこの時期が一番の書き入れ時だったのではと思わせる。
「こんなに綺麗だったら、姉ちゃん達誘ってもよかったかもだ」
 二人の姉のことを思い出しながら、翼はちょっと残念に思う。名前に桜の字が入った上の姉もきっと喜んだろうし、クリスマスは下の姉と楽しく過ごしたが、なかなか姉弟三人で出掛ける機会がなかった。
「んー、今日は下見ってことで、後日お誘いしてみようっと」
 桜の季節は短いけれど、花見はきっといろんな世界で楽しめるだろうし、ここのこともお土産話として聞かせたい。そう思いなおして、翼はいいお花見スポットを探すべく遊園地内の探索を開始した。
 UDCアース出身の翼なので、お花見の経験はもちろんあるけれど、遊園地でお花見をするというのは初めてかもしれない。
「動かないけど、危なくないとこならちょっとよじ登ったりできるかな?」
 少年らしい好奇心で、面白そうとジェットコースターの乗り場にやってきた。よいしょと柵を越え、整備の人たちが歩いていくであろう足場をつたって乗り物に乗らずにジェットコースターのコースを体験してみる。
「高いところから見ると、また絶景だよね。あそこに桜並木の遊歩道。あそこの桜はちょっと種類が違うのかな?」
 高い場所から観察して、次はどこへ行こうかと思案する。
 次に目を付けたのは遊園地でおなじみのメリーゴーランド。このそばにはひときわ大きな桜の木が植わっていて、花びらが幻想的に舞う様は、躍動感のある木馬とも相まって美しい。
 二階建てのメリーゴーランドの二階部分では物足りなくて、屋根を支える柱に手をかけ器用によじ登っていく。
「わ、ちょっと目線が高くなっただけでも景色が違って面白いや」
 二階から見る景色ともまた違っていて、ジェットコースターのコースから見るよりも低い視線の先にも、また違う景色が広がっている。
「せっかくだし、ここで一休みして持ってきた飲み物飲んじゃおう」
 荷物から水筒を取り出して、コップに移して一口含む。この景色にぴったりな、桜ラテだ。翼が師匠と慕うカフェの先生から先日教えてもらったばかりだ。父親の幼馴染のその人から、翼はたくさんのレシピを伝授している。
「うん、ばっちり。今度姉ちゃんたちにも作ってあげよう。それにしても、こうやって見てると桜独り占めしてるみたいすごく贅沢な感じっ」
 メリーゴーランドの屋根の上で足をぶらぶらさせながら、翼はしばらくその景色を楽しんでいた。

「吉備ちゃん見てください。桜が満開ですよ」
 閉園された遊園地の敷地内に入れば、そこは薄紅色の愛らしい花が満開の美しい景色。
 その光景に目を細めた蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)が、教え子でもある小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)へとその素晴らしさを待ちきれないように伝える。
「霓虹ちゃんほんとだね。お花見かあ……記憶のある内だと現世でお花見は今日が初めてになっちゃうね」
 雉鶏精である吉備は幽世に辿り着く前の記憶がない。自分を守ってくれた大切な家族や仲間の温かさを覚えているが、自分の本当の名前すら思い出せないのだ。自分探しの旅を続け彷徨う吉備を幽世で導いてくれたのが、霓虹なのだ。
「吉備ちゃんや彩虹さんと花見にその内行こうかと思っていましたが、ある意味思わぬ好機だったのやも」
 これは猟兵としてのお仕事でもあるのだが、花見を楽しむことが依頼の成功に繋がるのだとしたら、一石二鳥というものだ。しかもお花見と言えば混雑がつきものだが、この場には猟兵しかいないし、好きな場所で花見を楽しむことができる。
「ある意味、擬似的な親子水入らず……と言った感じでしょうか? わたしは吉備ちゃんの親代わりですからね」
 にっこりと優しく微笑む霓虹に、思い出すことはできないけれど確かに感じる家族の温かさを感じて、吉備もえへへと照れたように笑う。
「擬似的な親子水入らずかぁ……じゃあ、霓虹ちゃんにいつも以上に甘えちゃおうかな」
 霓虹の服の袖をきゅっと掴んで、じゃあどこでお花見しようか? と囁く。
「これだけ桜があるとお花見する場所も迷いますね。どこか見晴らしのいい場所はないか探してみましょう」
「うん、それからお弁当にしようね」
 そうしてしばらく二人が遊園地の中を歩いていると、メリーゴーランドの屋根で桜を楽しんでいる少年を見つけた。
「そこからの眺めはいいですか?」
 霓虹の声に気付いた翼はぱっと人好きのする笑顔を見せて二人に手を振った。
「うん、すっごくいいよ!」
「確かに屋根の上からの景色は見晴らしがいいよね。でもそこでお弁当を食べるのは難しいかな?」
 吉備が小首をかしげていると、翼が屋根からするすると降りてきて二人にメリーゴーランドの二階部分を指さした。
「二階からの景色もいいと思うよ。ほら、馬車もあるし、そこならお弁当も食べられると思う」
「なるほど、良さそうですね。行ってみましょうか吉備ちゃん」
「うん、翼ちゃんも一緒にどう?」
 二人とも以前に一緒の依頼で顔を合わせた仲だ。翼もぱっと顔を輝かせて、「いいの?」と訊ねる。
「はい、お弁当もたくさん作ってきましたし。良かったら一緒に食べてくださいね」
 そうして三人は白馬が引く馬車に乗り込んで、桜を満喫しながらお弁当を楽しむ。
「わたしは赤飯のおにぎりにだし巻き玉子、それに鯛のたたっこ揚げです。デザートもありますよ」
「キビはね、きびなごの唐揚げに、もちきびのおむすびに、もちきびのナゲット。もちろん吉備団子もあるよ!」
「わあすごい本格的! 吉備さんはきびづくしなんだね」
 どれから食べようと翼が迷ってしまうほどたくさんの美味しい料理たち。三人はそれぞれ好きなものから食べ始めると、少し高い場所からの花見を楽しむ。
「そう言えば、出掛ける前に二人でお弁当作る時、霓虹ちゃんってばたたっこ揚げを作る時は特に気合入ってたよね」
 たたっこ揚げは魚を薬味や調味料を加えて包丁で叩いたものを揚げたもの。包丁さばきにもいつになく気合が入っていた気がする。
「え? そうでしたか?」
「鯛は縁起物だから解るけど」
「何か特別な思い入れがある、とか?」
 翼もそう問いかけながら、ぱくりとたたっこ揚げを口に運ぶ。見た目は肉団子にも見えるがふわっと軽い食感でとても美味しい。
「まぁ……これも思い出の品ではありますからね」
「思い出の品かぁ、そう言えば似た料理を心情にした娘がいるって聞くなぁ……」
「それぞれに思い出の料理はあるもんね……あ、そうだ。デザートと一緒に、オレが先生から教えてもらった桜ラテをどうぞ」
 翼が水筒から二人用のコップに桜ラテを注ぐ。
「ありがとうございます。翼くんにも先生が?」
「うん! 美味しい珈琲の淹れ方とか、飲み物のレシピとか教えてくれる先生だよ」
「キビと霓虹ちゃんみたいな関係かな?」
 ふふふ、と笑いながら楽しい時間は過ぎていく。
「じゃあオレ、もうちょっと遊園地の中散策してくるね。お弁当ごちそうさまでした!」
 丁寧にぺこりと頭を下げてお辞儀してから、翼は二人に手を振って去っていった。
「こちらこそ、美味しい桜ラテをありがとうございました」
 二人は春の縁起ものである三色団子や吉備団子をつまみながら、ゆったりとお花見を続ける。
「うーん、それにしても、これだけのどかだと、少し眠いかも」
 お腹も膨れて、春のうららかな気候に瞼が重みを増してくる。
「ふふ、吉備ちゃん眠くなってきたんですね。良かったら膝枕してあげますけど」
 今日は親子水入らずでしょう? と微笑む霓虹に、吉備も目をこすりながら嬉しそうに頷いて。
「え? 良いの? じゃあお言葉に甘えて……」
 頭を霓虹の膝に預けると、吉備はまどろみのままに目を閉じる。
 優しくその髪を撫でる霓虹の手にふわりと薄紅色の花びらが舞い降りた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

灰神楽・綾
【不死蝶】
見事な桜に見惚れ
全盛期は「桜が楽しめる遊園地!」って
売りにしていたのかもしれないね

あっ、パンダの乗り物だー
今時の遊園地ではなかなかお目にかかれないそれに
テンション上がって思わず跨ってみたり

桜がよく見える場所にレジャーシートを広げてお弁当の準備
お箸にコップに飲み物に…そして梓の手作りお花見弁当
さぁ、今回はどんなお弁当かなー?
わくわくしながらお弁当箱がオープンされれば…
うわぁ、今回もめちゃくちゃすごい(拍手
料理男子梓のこだわりが感じられる逸品
食べる前にまずは写真に収めまくり
崩すの勿体無いなぁと思いながらも一口パクッ
見た目だけでなくお味ももちろん絶品
いやぁ本当にいいお母さんになれそうだね…


乱獅子・梓
【不死蝶】
廃遊園地って少しおっかないイメージがあるが…
満開の桜のおかげで全くそんな雰囲気は感じられないな

おい!あんまり揺らして壊すんじゃないぞ!
老朽化して脆くなっているかもしれないし
親が子供に言うように注意
あいつ、一応成人男性のはずなんだけどな…

一通り遊園地内を見て回ったあとはお楽しみのランチタイム
ふふふ、今回は花見ということで
春らしさを意識した弁当にしてみたぞ
ドヤ顔で弁当箱の蓋を開ければ
全体的に桃色、黄緑色、黄色といった
春なカラーリングで彩られたメニューたち
鮭、炒り卵、枝豆を使った三色おにぎりに
菜の花やハムが入った厚焼き玉子
ちらし寿司には桜でんぶや
桜の形にくり抜いた人参を飾り付けて



●春色の玉手箱
 閉園された山奥にある遊園地。その言葉だけを聞けば、うら寂しいような、少しおどろおどろしいようなイメージを抱いてしまうが。
 寒い冬を乗り越え、ようやく蕾を開かせ咲き誇る薄紅色の儚くも美しい花々。色褪せた遊園地の看板をつけたゲートをくぐれば、そこは満開の桜たちが来場者を歓迎するように咲き誇っていた。
「廃遊園地って少しおっかないイメージがあるが……」
 想像以上に美しい光景に乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)は思わずそう呟き、そしてその考えをすぐに改めることとなった。
「満開の桜のおかげで全くそんな雰囲気は感じられないな」
 なあ、と隣の灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)へと言葉をかければ、綾はその絶景にすっかり見惚れているようで梓の言葉も耳に入っていないようだった。
 夜と闇に覆われたダークセイヴァー出身の二人にとって、生き生きと咲き誇る花や植物はいつだって眩しく感じるが、サクラミラージュで見る幻朧桜ともまた違う、やがて散ってしまうが故の儚さが、ことさらに桜を美しく見せているように感じる。
「全盛期は『桜が楽しめる遊園地!』って売りにしていたのかもしれないね」
 しっかりとその美しい光景を目に焼き付けた綾が、梓にそう語り掛ける。
「ああ、これだけの桜なら売りにする価値があるだろうしな。まあ、それだけではやっていけなかったのかもしれないが」
 すでに閉園してしまった遊園地。今はかつての賑わいはないが、それでも桜だけは変わらず美しく咲き誇っているのだろう。
「ちょっと見て回ろうよ。面白い乗り物があるかもしれないし」
「ああ、それはいいが、見つけたところで乗れないぞ」
 はしゃぐ綾を見ていると、付き添いで来た親のような気持ちになる。遊園地にはクリスマスの時も一緒に行ったけれど、そういえばこんな風にはしゃぐ綾を見るのにすっかり慣れてしまったが、初めはそうではなかったのだと思い出す。
「あっ、パンダの乗り物だー」
 嬉しそうな綾の声に梓が意識を戻すと、今時の最新の遊園地ではなかなかお目にかかれそうにない、ノスタルジーあふれるパンダの乗り物が敷地内にぽつんと佇んでいた。それは綾も感じたのだろう、思わず上がってしまったテンションのまま、長身の成人男子がえいとファンシーなパンダに跨る。
「おい! あんまり揺らして壊すんじゃないぞ!」
 乗るな、と言ってももう遅い。いくら閉園した遊園地だとしても壊してしまうのは忍びない。
「老朽化して脆くなっているかもしれないし」
 まるで親が子供に注意するように梓が口を尖らせると、綾は大丈夫だよーと言いながら、楽しそうに身体を揺らす。
 だがなぜだろう。なんだかとても似合っているような気さえする。
「あいつ、一応成人男性のはずなんだけどな……」
 まあそれも、綾の変化のひとつとしてプラスに受け取っておこうと無理やり思うことにして。綾が飽きるまでその場で見守る梓だった。
「わー楽しかったよねー。梓、お弁当は?」
「……本当に綾は自由だな……よし、弁当広げるのにいい場所見つけるか」
 ひとまず遊園地をぐるりと回って、桜が良く見える広場にレジャーシートを広げる。お箸やコップに飲み物を準備するのは綾の役目。あとは梓が作った力作の花見弁当が登場するのを待つばかり。
「さぁ、今回はどんなお弁当かなー?」
 わくわくとした気持ちのまま、綾がその時を待つ。
「ふふふ、今回は花見ということで、春らしさを意識した弁当にしてみたぞ」
 綾の期待を一身に受け、それを心地よく感じながら、梓はドヤ顔で弁当箱の蓋を開けた。
「うわぁ、今回もめちゃくちゃすごい」
 開けた瞬間に春を感じる、優しくも明るいパステルカラーが目に飛び込んでくる。それぞれ彩りの違う、鮭に炒り卵、枝豆を使った三色おにぎりに、菜の花やハムが入った厚焼き玉子。そしてひときわ鮮やかなのが、ちらし寿司。こちらもエビに錦糸卵、絹さやと言った明るい彩りに、花見にぴったりの桜でんぶ。そこに桜の形にくりぬいた人参が飾り付けられ、弁当の中でも美しい春の景色が広がっていた。
 思わず拍手喝采の綾の様子に、梓も満足そうに頷く。自分でもなかなかの力作だと思うのだ。
 綾はいつものように、食べる前にしっかり写真に収め、弁当を目でも楽しむ。
「さすが料理男子梓のこだわりが感じられる逸品……料理男子なのにこの女子力の高さはなんだろうね」
 しっかり目で楽しんだ後はもちろんいただくのだが、崩すのが勿体ないと思いながらまずは一口。
「どうだ、春を感じるか?」
「見た目も味も絶品だね」
「ふふん、そうだろう」
 おにぎりに齧りつきながら梓は満足そうに頷いた。
「いやぁ本当にいいお母さんになれそうだね……」
「そうだな、遊園地ではしゃぐ子供を持つ親の気持ちは理解したぞ」
 言い合って二人同時に笑うと、桜もまるで笑っているかのように、はらはらと美しい薄紅色の花びらを二人の元へと舞い散らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
私の希望か?桜鑑賞はどこでも問題はないが…そうだな。
この公共施設を死角なしに極力一望できる場所がいい。
これから現れるパレード集団を…聞いてないな。露は。

桜の舞う中で私は露に手を引かれて適当な場所を探そう。
暫く歩いたが丁度いい場所をみつけたな。露。
…日陰が少しある場所を選んだのは配慮だろうか…。

店がないようだから軽く食べるものを作ってきた。
トランク型のバスケット二つにしっかり分けてある。
一つはティーセット。もう一つはサンドイッチだ。
サンドイッチはとりあえず四種類作ってきた。
ハムとレタス。チーズとレタス。イチゴ。マンゴーだ。
茶葉に大き目の水筒とカップを二人分用意してある。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
「ねえねえ。レーちゃんは、どこから桜みたい?みたい?」
バスケットを二つ持ってるレーちゃんに聞いてみるわ。
「一望できる場所ね? わかったわ、いこ~♪」
バスケット持ってない手を握って一緒に探すわ。えへへ♪
どこがいいかしら~。…あ、あっちもよさそうね。こっちも。
暫くして適度に日陰がある場所発見したわ!褒めて褒めて~♪
で。一緒に桜を見る準備を始めるわね。

「ちゃんとお弁当の用意もしてくれてたんだ! レーちゃん」
誘っちゃったの前日で乗り気じゃなかったのに…えへへへ♪
あ。これは…。あの時言ってたことちゃんと実行したのね♪
可愛くって抱き着いて撫でたらむずっとされたわ。あれ?



●たまにはこんなティータイム
「わ~、桜が満開だわ~」
 山奥にある閉園した遊園地。乗り物は既に動きを止めているけれど、敷地内に咲く桜の花は今が見頃とばかりに満開だった。
 きらきらと瞳を輝かせながらその光景を眺める神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、一緒にやってきたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)を振り返る。
「ねえねえ。レーちゃんは、どこから桜みたい? みたい?」
 トランク型のバスケットを二つ持ったシビラは露とは対照的にいつもと同じクールな表情を崩さないままゆっくりと辺りを見渡した。
「私の希望か? 桜鑑賞はどこでも問題はないが……そうだな」
 ふむ、と一度頷くと入口近くにあった園内マップの看板に近づき眺める。
「この公共施設を死角なしに極力一望できる場所がいい。これから現れるパレード集団を……」
「一望できる場所ね? わかったわ、いこ~♪」
 言い終わる前に露はシビラの空いている方の手を握ってさっさと歩き出す。
(「……聞いてないな。露は」)
 確かに依頼を遂行するためには花見を楽しむ必要があるが、その後UDCの怪異と対峙するにあたって、それ相応の準備をしておけば対処もしやすくなると思ったのだが。
 露の心からの笑顔は楽しんでいる証拠。シビラだって薬草の栽培と管理が趣味なのだ。植物に囲まれるのが嫌いなわけはない。それに花見と言えば賑やかなイメージだが、この場には猟兵しかおらず比較的静かだといえるだろう。露が賑やかなのはいつものことなのでその点は目を瞑ろう。
「レーちゃん、あれブランコに乗ってぐるぐる回る乗り物よ~。あっちは急流すべりってやつね」
 手を繋いで遊園地の中を歩いていく。乗り物は動かないけれどなんだか露はわくわくして。
「観覧車が高い場所にあるのね。あそこなら園内を一望できるかも」
 なだらかな丘を上がっていく途中に休憩できるような東屋を見つけた。そこからは園内も見渡せるし桜もよく見える。何より屋根があって日陰がある。
「観覧車の近くは日陰がなさそうだったから、こっちにしましょ」
「ん、丁度いい場所をみつけたな。露」
 あえて日陰がある場所を選んでくれたのは配慮だろうかと、東屋の屋根を見つめていると、露がシビラのバスケットのひとつをテーブルの上に置いて、期待に満ちた目でこちらを見つめてくる。
「そーよ、そーよ。あたしも気遣いできるのよ~。褒めて褒めて~♪」
 なんだか素直に褒めるのは癪だったので、シビラは準備してきたトランク型のバスケットを開いて、花見の準備を始める。シビラが開いたバスケットの中には、家から持ってきたティーセット。しっかりと緩衝材で保護してあるので、ティーカップもソーサーも無事に運んでこられた。露への礼は美味しいお茶で充分だろう。
「わ、本格的ね。こっちのトランクには何が入っているの?」
「店がないと聞いていたからな。軽く食べるものを作ってきた」
 もう一つのトランクを開けば、色とりどりのサンドイッチが現れた。
「ちゃんとお弁当の用意もしてくれてたんだ! レーちゃん」
 露が誘ったのは前日で、その時はあまり乗り気じゃないように見えたのだけれど。
「サンドイッチはとりあえず四種類作ってきた」
 ハムとレタスに、チーズとレタス。それにフルーツサンドのイチゴとマンゴーだ。
 水筒に準備してきたお湯と用意してきた茶葉をティーポットに入れると、砂時計で蒸らす時間を計る。お湯の温度はあまり調整できないが、それでもこれで美味しい紅茶を外でも楽しめるはずだ。
「レーちゃんの紅茶が桜を見ながら飲めるなんて幸せ。あ、これは……」
 サンドイッチの中に、フルーツサンドを見つけた露は思わずにまっと笑う。
「あの時言ってたことちゃんと実行したのね♪」
 あんまり乗り気じゃなさそうに見えたのに、こうしてちゃんとおすすめされたフルーツサンドを作ってくれたシビラを可愛く思いながら露は思わずぎゅっとシビラに抱きつく。褒めるつもりで撫でたのに、シビラはなぜかむすっとしている。
「あれ? どーしてそんな顔なの? 可愛いって言われたから笑ったらいいのに」
 それはひょっとしたらシビラなりの照れ隠しだったのかもしれないけれど。
 突然に吹いた春風が二人の前に美しい桜吹雪をプレゼントしたので、二人は思わずそれに見入る。
「さあ、茶が用意できたぞ」
「わーい、いただきまーす」
 シビラの手作りサンドイッチはやっぱり美味しくて。露は幸せそうにティーカップで紅茶を飲む。
「家で紅茶を飲みながら読書をするのが好きだが……たまにはこういうのも悪くない」
 ほんの少し表情がゆるんだシビラを見て、露はまた可愛さのあまりぎゅっと抱きつくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】
ジーンズワンピに薄桃のシャツを合わせて春の服装

春になればきょうだい3人でお花見行こうという約束
ふふ、ちゃんと覚えてた
だってわたしは刀のお姉さんだもの(自慢気に胸を張り

止まった遊園地
あ、メリーゴーランド
小さな頃、おとうさんに乗せてもらった記憶
杏にもいつか白馬の王子様が迎えに来る、と、おとうさん涙目だっ、た…
…何故ゆえ?刀、知ってる?
刀に乗せてもらって、ふふ、と上機嫌

ん、まつりん待って
楽しそうなまつりん(祭莉)追いかけてると、周囲の桜が色濃く染まり
ふふ、桜のトンネルみたい

お昼はリュクから大きなおにぎりを取り出し
はい、まつりん、刀
ん、わたしの具は梅干し。2人は?
飲み物はスープ頂くね


木元・祭莉
【かんさつにっき】だよ!

アンちゃんとはいつも一緒にいるケド。
カナタはいつもはサクミラにいるからね。

やほー、久々!
元気にしてたー?(ジャンプして頭撫でる)

アンちゃんもカナタも、オシャレしてきたんだー?
おいらも、エプロン(金太郎の腹掛け!)してくればよかったなー。

わあー、白が山盛りだ!
あっちも! こっちも!(くるくると駆け回り)

ほらほら、アンちゃんもカナタも早く早くー!
ジェットコースター乗るなら、おいらが引っ張ってもいいよー?

あ、ココでお弁当にするのはどう?
おいらは飲み物担当!
お茶とお吸い物とスープ、どれ?(袋がさがさ)

あ、シャケおにぎり!
へへー、ウチの妹弟は料理上手だなー!(えっへん♪)


木元・刀
【かんさつにっき】で兄さん姉さんと一緒に。

いつもはボーイ姿ですが、今日は書生さん(SD参照)です。

ああ。桜、満開ですね。
良いお天気でよかったです、とにっこり。

三人でお花見する約束、覚えててくれたんですね。
それだけでも十分、嬉しいですよ。

きょろきょろ周囲を見ている姉さん。
何かありましたか? え、白馬?

そうですね、姉さんが王女様に見えたから、でしょうか?
乗ってみますか? と、ひょいとお姫様抱っこ。

あれ、兄さんどうしました?
コーヒーカップ?
ああ確かに、ここなら三人で座れますね。

風呂敷包みから、若竹煮と卵焼きを取り出し膝に広げ。
おにぎりは、海苔の佃煮でした。兄さんは?

ふふ、締めには手作り桜餅。どうぞ。



●木元家のお花見
「わーいわーい、お花見! 桜も満開だー!」
 かつて遊園地として多くの人が訪れ楽しんだその場所に、今は同じ賑わいはないけれど、満開の桜はこうして来客を迎えてくれる。
 いたる所に植わっている桜の木はどれも今が満開の見頃。木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)は思わず駆け出しその美しい光景を眺める。そうして一緒にやってきた弟妹達を振り返った。
「今日は三人で思いっきり楽しもうね」
 兄らしく二人ににっこりと微笑みかける。
「ああ。桜、満開ですね。良いお天気でよかったです」
 兄の言葉にこちらもにっこりと微笑み返した木元・刀(端の多い障害・f24104)。普段はサクラミラージュで暮らす刀にとっては、桜は見慣れたものでもあるが、こうしてきょうだい三人で見る桜はもちろん特別で。
「春になればきょうだい3人でお花見行こうという約束……ふふ、ちゃんと覚えてた」
 デニム生地のワンピースに薄桃色のシャツを合わせた春の装いの木元・杏(メイド大戦・f16565)がスカートを揺らしながら桜舞う風景を眺めて笑顔を浮かべる。
「三人でお花見する約束、覚えててくれたんですね。それだけでも十分、嬉しいですよ」
「だってわたしは刀のお姉さんだもの」
 ふふ、と自慢げに胸を張る様はちゃんと弟のことを想うお姉さん。
「アンちゃんとはいつも一緒にいるケド。カナタはいつもはサクミラにいるからね」
 木元家は朗らかで温かい家庭だが、三人の両親はおおらか――はっきりと言うならば大雑把な性格かつ獅子の子を崖から突き落とす教育方針だったため、祭莉と杏は両親の元を離れ猟兵として異世界で暮らすことになった。
 刀は木元家の末っ子――なのだが、見た目も身長も祭莉や杏よりもずっと成長している。一家の秘蔵っ子だった刀があるとき謎の覚醒を遂げ、兄や姉よりも成長すると、母は驚くどころか、にこやかにこう告げた。
 ――それじゃせっかくだし、修業してきたら~?
 そうして刀はサクラミラージュに飛ばされたのだった。
 大雑把すぎる両親、何も考えていない兄姉には複雑な気持ちを抱くこともあるが……。
「カナタ久々だけど、元気にしてたー?」
 自分より背の高い刀の頭を身軽な動きでぴょんとジャンプして撫でる祭莉。こうして弟である自分を可愛がってくれる兄姉はやっぱり好きだ。
「アンちゃんもカナタも、オシャレしてきたんだー?」
 春らしい装いをした杏。そして刀は普段はサクラミラージュのカフェーにいるボーイ姿でいることが多いのだが、花見ということで青を基調にした書生風のいでたちだ。
「おいらも、エプロンしてくればよかったなー」
 祭莉の言うエプロンとは、金太郎の腹掛けのこと。これが祭莉にとっての一張羅なのだ。
「ふふ、どんな格好でも、3人一緒、これが大事」
 にっこりと笑った杏は改めて遊園地を見渡す。動きを止めた乗り物たち。賑やかなはずの遊園地の静かな姿はなんだか珍しくて。
「あ、メリーゴーランド」
 遠くに見えた二階建てのメリーゴーランド。懐かしさを感じて杏が近づく。たくさんの馬がいるが、そのうちの一頭の白馬に目を止めると懐かしい記憶が蘇った。
「何かありましたか?」
 きょろきょろとしながら歩いて行った姉についてきた刀は、追いついて不思議そうに訊ねる。
「小さな頃、おとうさんに乗せてもらった記憶」
「うん、昔みんなで来たよねー」
 祭莉も辺りを見渡しながら懐かしそうに笑う。
「杏にもいつか白馬の王子様が迎えに来る、と、おとうさん涙目だっ、た……」
 王子様が迎えに来たら嬉しいはずなのに、どうして父はなんだか悲しみをこらえるみたいな顔をしていたのだろうか。
「……何故ゆえ? 刀、知ってる?」
「そうですね、姉さんが王女様に見えたから、でしょうか?」
 父にとって可愛い娘はきっと誰にも渡したくないお姫様に違いないから。そうしてその木元家のプリンセスに刀は「乗ってみますか?」と聞くなり、ひょいとお姫様抱っこする。
「ふふ、ありがと、カナタ」
 白馬の背に乗って見る桜の景色もとても綺麗で。両親や家族との懐かしい思い出が胸に満ちて温かい気持ちになる。
 その間にも祭莉はじっとしていられず、あちこち見渡しては大はしゃぎ。
「わあー、白が山盛りだ! あっちも! こっちも!」
 くるくると駆けまわっては弟妹たちを手招く。
「ほらほら、アンちゃんもカナタも早く早くー!」
「ん、まつりん待って」
 刀に降りるのを手伝ってもらって、杏も祭莉の後を追って走り出す。
 ここは桜並木の遊歩道だろうか。咲いている桜が先ほどより色濃く染まっていて、ピンク色の花びらがひらひらと辺りを舞う。桜に囲まれたそれはまるで桜のトンネルのようで。
「兄さんは今日も元気ですね」
 後を追いかけてくる二人に、祭莉はジェットコースターの乗り場を指差した。
「ジェットコースター乗るなら、おいらが引っ張ってもいいよー?」
 そんな風に乗り物を見るたびに思い出話が盛り上がり、そうしてとある乗り物の前で祭莉がぴたりと動きを止める。
「あれ、兄さんどうしました?」
「あ、ココでお弁当にするのはどう?」
「コーヒーカップ? ……ああ確かに、ここなら三人で座れますね」
 それはファンシーでカラフルなコーヒーカップの乗り物。三人が座るのにちょうどいい。
「わ、いいね。桜もよく見えるし」
 杏もこくこくと頷くと、白地に赤のラインの入ったカップに乗り込む。色合いが飼っているにわとりを彷彿とさせるからだ。
「はい、まつりん、刀」
 リュックから大きなおにぎりを取り出して二人に差し出す。
「ありがとうございます、姉さん。おかずにはこれをどうぞ」
 刀が大切そうにおにぎりを受け取ると、持参した風呂敷包みから若竹煮と卵焼きを取り出し膝に広げる。
「おいらは飲み物担当! お茶とお吸い物とスープ、どれ?」
 袋をがさがさし、持ってきた水筒を持って二人に問いかける。
「飲み物はスープ頂くね」
 そうして桜を眺めながらの楽しいランチタイム。
「おにぎり、わたしの具は梅干し。2人は?」
 どれが当たるかは食べてからのお楽しみで。
「海苔の佃煮でした。兄さんは?」
「あ、シャケおにぎり!」
 もぐもぐと大きなおにぎりと卵焼きを頬張って、祭莉は幸せそうに呟く。
「へへー、ウチの妹弟は料理上手だなー!」
 どこか誇らしげに胸を張る姿に、弟妹達も微笑んで。
「ん、まつりんが美味しそうに食べてくれるから、上達したのかも?」
 温かいスープを飲んでほっこりとした杏は、刀の作った若竹煮も口に運んで美味しいとにっこり。
「二人に喜んでもらえて嬉しいです。ふふ、締めには手作り桜餅もありますよ。はい、どうぞ」
「わーい、桜餅ー!」
 きょうだい三人でのお花見。いつも一緒でも一緒じゃなくても、こうして再会すればお互いの成長に嬉しくなって。
(「ん、おかあさんにも楽しい報告ができそう」)
 毎日欠かさず付けている母への報告日記。その内容を考えるだけで、杏は嬉しくなってふふふと笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九十九・白斗
なつかしいな

(桜舞い散る遊園地 大きな桜の木に背を預け、感慨深げに桜を見上げて白斗は呟く)

昔来たことがあってな
その時はここもにぎやかなもんだった
俺が背を預けてる桜の木もまだ苗木だったんだぜ

ん?おい、聞いてるかパラス?

(ぼうっとした様子のパラスの肩をゆする)

終わっちまったことは、どうしようもないぜ
思い出話するなら楽しい思い出にしときな

エリシャも言ってただろ、楽しんでるやつを怪異に誘うオブリビオン退治が目的だ
せいぜい楽しくやろうぜ
(缶ビールを開けてグイっと飲む。)
ほらパラスも飲みな
酒を飲めば少しは気分が晴れるってもんだ
そうだろバーテンダー?


パラス・アテナ
酒と肴で花見と洒落込もうか
廃墟の中に咲き誇る桜は退廃的な美しさで
吹抜ける風が散らす狂ったような花弁に目を細めると
脳裏が白く飛んで記憶が戻る

壊れた機械
白く輝く核
響く警告音
舞散る花弁
界渡りの光
伸ばした手
名を呼ぶ声

白斗の声で意識を戻して問いかけ
アンタは会いたい人はいるかい?

こんな光景を昔にも見たなと思ってね
アタシの実家は代々軍人の家系でね
兄も学生として迷宮探索してた
幼いアタシは羨ましくてね
大規模な討伐戦の時に
勝手についていって
勝手な行動をして
罠を発動させて
隊は全滅した

時空転移に巻き込まれて
アタシはあの世界に飛ばされた
兄はどうしているのやら

そうだね
たまには呑むのも良いもんだ
缶ビールを白斗のそれに重ねて



●花びらが見せる追憶
「なつかしいな」
 大きな桜の木に背を預けた九十九・白斗(傭兵・f02173)は、感慨深げに桜を見上げると思わず小さく呟いた。
「おや、初めてじゃないのかい?」
 春風が運ぶ桜の花びらに目を細めていたパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)が白斗の様子にそう問いかけた。
「ああ、昔来たことがあってな。その時はここもにぎやかなもんだった」
 白斗が遠い昔を思い出すように彼方を見つめると、そこにはもう動かなくなって久しい乗り物たち。まだ取り壊されてはいないが、この場所の再建が決まれば思い出の乗り物たちもここから消えてしまうのだろう。
「アンタが遊園地ねえ」
「長く生きていればな。俺だって遊園地ぐらい行くぜ。俺が背を預けてる桜の木もまだ苗木だったんだぜ」
 白斗がジェットコースターに乗っている姿を想像して少しおかしくなったが、UDCアース出身の白斗には馴染みの場所がいくつかあるのだろう。
 そう、故郷。パラスの生まれた世界にはこんな美しい花が咲いていただろうか。
 動きを止め、壊されるのを待つだけの遊園地で咲き誇る桜はどこか退廃的な美しさで。
 ふいに強く吹き抜けた風が花びらを散らし、狂ったように風に舞う花弁はそれでも美しいと目を細めると――。
 瞬間、脳裏が白く飛んで、かつての記憶が蘇る。

 フラッシュバックする光景に現れたのは、壊れた機械、白く輝く核。
 あの時のパラスはまだ幼かったのだ。
 響く警告音。それが全てを滅ぼす合図のように。その時のパラスはまだわかっていなかった。
 最後に見たのは、舞い散る花弁。そしてあれは界渡りの光。
 伸ばした手は、誰にも届かなくて。名を呼ぶ声もただ虚しく響くだけ――。

「……ラス、聞いてるのか? おい、パラス」
 何度か呼び掛けても心ここにあらずと言ったパラスが心配になり、白斗は肩をゆすって呼び掛ける。
 自分を呼ぶ声に我に返ったパラスは、ようやく現実に意識を戻した。
 そうしてそっと白斗に問いかける。
「アンタは会いたい人はいるかい?」
 その言葉は自分に問いかけてもいるようで。白斗がパラスの言葉の続きを待っていると、パラスはゆっくりと口を開いた。
「こんな光景を昔にも見たなと思ってね」
 舞い散る花弁があの時の記憶を思い起こさせたのか。
「アタシの実家は代々軍人の家系でね。兄も学生として迷宮探索してた」
 淡々と語るパラスの言葉に、白斗は黙って耳を傾ける。
「幼いアタシは羨ましくてね。大規模な討伐戦の時に勝手についていって、勝手な行動をして、罠を発動させて……隊は全滅した」
 自分は死神なのだと、パラスは言っていた。過ちは誰にだってある。歴戦の傭兵である白斗にとってはそれは珍しくもないことだ。
「時空転移に巻き込まれてアタシはあの世界に飛ばされた。……兄はどうしているのやら」
 それがパラスの会いたい人なのだろうか。
「終わっちまったことは、どうしようもないぜ。思い出話するなら楽しい思い出にしときな」
 聞きたいことがないわけではない。けれど過去は過去だ。パラスが胸を痛めるような昔話を好んで聞きたいわけではない。
「エリシャも言ってただろ、楽しんでるやつを怪異に誘うオブリビオン退治が目的だ……せいぜい楽しくやろうぜ」
 ぷしゅっと音を立てて、缶ビールを開けてそれをぐいっと喉に流し込む。花見は飲んで食べて楽しくやればいいのだ。
 花見を楽しんでいないと思われたのなら、怪異は自分たちを引き寄せないのだろうか。それは猟兵として仕事をしに来たパラスにとっては致命的なミスだ。
「ほらパラスも飲みな。酒を飲めば少しは気分が晴れるってもんだ」
「そうだね。たまには呑むのも良いもんだ」
 こんな風に外でね、と呟いて。渡された缶ビールを白斗のそれに重ねて乾杯する。
「ああ、そうこなくっちゃ。そうだろバーテンダー?」
 おどけたように言う白斗がおかしくて、パラスもふっと口元を緩める。
「あいにく、ここではアンタに色々な酒を出すことはできないが……せいぜい楽しくやろうか」
 動きを止めた白斗の思い出の遊園地で桜を見ながらこうして酒を酌み交わす。それがきっと白斗の言う楽しい思い出になっていくのだろうと思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『狂気のパレヱド』

POW   :    狂気に耐え、パレードと行動を共にする。

SPD   :    パレードから距離を取りつつ、追跡する。

WIZ   :    魔法、機械等を使用した遠距離追跡を行う。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●非日常の入口
 思い思いに花見を楽しんだ猟兵たち。美しい桜の余韻をそのままに園内で過ごしていたら、先ほどまで何もなかった場所に、それは突然現れた。
 一体どこから現れたのか、気が付いた時にはそれが目の前にいた。
 遊園地にはつきもののパレード。仮装し行列をなしたそれらは何かを訴えるようにあなたの前で楽器を奏でたり、踊りを踊ったりするだろう。知らない道化だと思っていたそれの仮面の下に懐かしい顔が現れるかもしれない。
 それは狂気のパレード。あなただけのショー。どうしてだろうか、どうしても目をそらすことができない。
 しっかり正気を保ってそれらを追いかけていけば、やがて元凶であるUDCの元へ辿り着けるだろう――。

●マスターより補足
 謎のパレード集団が現れます。それはあなたが知っているものかもしれませんし、知らないものかもしれません。ただの行列でも、フロートなどに乗っていても構いません。現れた数も自由です。それがこちらに危害を加えることはありませんが、あなたは何かしらの記憶を思い出したり、感情を呼び覚まされるかもしれません。幻影のようなものなので、攻撃しても構いませんが(霧散します)、全滅させると後をついていけませんのでご注意ください。
 ご自身で自由に設定して向き合ってください。相手は猟兵の関心をひくものとして現れます。特に希望のものがなければおまかせで書かせていただきます。
※グループの方は同じものを見てもいいですし、違うものを見ても構いません。
馬県・義透
引き続き『疾き者』

陰海月は、嬉しそうですねー。あとで押し花にでもしますか、それ。

おやまあ、パレード。遊園地によってはあると言われるものですねー。

道化の仮面の下。それは忘れもしない。『私』が生前、色と技を駆使して暗殺してきた者たち。
顔を確認できるのは、おそらく私だけ。
だって、知っているのは『私』だけですから。
…彼らがここにいるはずがない、と知っているのに。

着いていきましょう。大丈夫ですよ、私は一人ではないですから。

陰海月は、桜の花びらを何枚か取れてホクホク。パレードには静かについて行く。
陰海月「ぷきゅ~」
※前回は真剣集中だったので鳴かなかった。



●鬼が知る者
 桜並木をゆっくりと歩いて、しっかりと花見を楽しんだ馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、猫のように花びらにじゃれついているようにしか見えなかったミズクラゲ【陰海月】がなんとか花びらを掴んだのを見て、穏やかな笑みを浮かべる。
「陰海月は、嬉しそうですねー。あとで押し花にでもしますか、それ」
 大きなミズクラゲが触手を伸ばして花びらを掴む姿はなんとも和んだものだが、それを嬉しそうに大切そうに持っている姿もなんだか癒される。押し花にすれば記念品として大切に長く楽しめるだろう。陰海月は義透の言葉を聞くと、嬉しそうに透明な身体を空中でくるくると回している。
 そんなやりとりをしながら歩いていると、桜並木の陰から突然に謎のパレード集団が現れた。一人、二人……舞うような仕草で現れた者たちは皆、顔を覆う仮面をつけていた。
「おやまあ、パレード。遊園地によってはあると言われるものですねー」
 お祭りらしく派手な衣装を身にまとい、音楽に合わせて踊るダンサーに、楽器を手に明るい音楽を奏でるミュージシャン。こちらにおいでとでも言うように、彼らは義透を手招きするような動作をしては踊り続けている。
「この世界に住む者としてパレードを楽しむのもいいですが……」
 ダンサーの中からピエロのような姿をした一人が電飾付きのフロートに乗って、曲芸を見せ始める。コミカルな動きに沿道で見ている観客はきっと笑いを誘われたのだろう。しかしここにいるのは義透だけ。そして滑稽な動きの道化がそっと外した仮面の下の顔は、義透――いや、『疾き者』である『自分』が知っているものだ。
(「ええ、忘れはしません……『私』が生前、色と技を駆使して暗殺してきた者たちのことを」)
 道化と共に次々と仮面を外すダンサーにミュージシャン。そのどれもが『自分』が知っている顔だ。生前忍者であった『自分』が命を絶った者たち。生きていれば『風絶鬼』と呼ばれる鬼に至っていたであろう自分は、彼らにとっては自分の死を前に鬼に見えていたかもしれない。
「ええ、わかっています。あなた方の顔を確認できるのは、おそらく私だけ」
 他の三人でさえも知らない『自分』だけの記憶。だからこそわかるのだ。これが現実などではないと。
「……彼らがここにいるはずがない、と知っているのに」
 一際強い風が吹いて、桜の花びらを舞い散らせる。しかし陰海月は桜の花びらを追わずに、少し心配そうに義透の方を窺っている。
「着いていきましょう。……大丈夫ですよ、私は一人ではないですから」
 安心させるように陰海月に告げ、自分の中にいる三人へと信頼を込めた言葉を紡ぐ。
 その言葉に安心したのか陰海月は何枚か集めた桜の花びらを大切そうに抱えて義透の後をついていく。
 ぷきゅ~、と独特の愛らしい声で鳴いた陰海月の様子に義透は笑みを浮かべる。先ほどはよっぽど真剣に集中していたのだろう。ようやく出た鳴き声はリラックスの証。
 目の前の怪異が何を意味するのかわからないが、このあとを辿れば元凶の元へと辿り着けるだろう。
 誘うように踊り続ける怪しいパレード集団のあとを義透は陰海月と共に静かに追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
(「UDCのお出ましね。後をつけるわよ」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!せんせー!
(『狂気耐性』を付与した『オーラ防御』で護りながら後をつける)
あの手を振ってるパレードの参加者...故郷の島の友達に似ている気が...いや本人か?
もしかして事件に巻き込まれた!?
(「落ち着きなさい。黒影。今回の事件の黒幕を倒せばパレードは消えるはず。偽物なら一緒に消えるし本物なら解放される。今は事件を解決することだけ考えなさい」)
す、すみません...友達、UDC職員だったし
ありえるかも、と思って...
(「なんにせよ悪趣味だわ。今回の黒幕、絶対にとっちめてやらないとね」)
もちろんです!
(UC【脳内教室】発動)



●懐かしき友
 散歩をしながら桜を鑑賞し、時に桜吹雪を楽しんで花見を満喫していた黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の目の前に、突然に謎のパレード集団が現れる。
 これが普通の遊園地であるならば、楽しいショーの始まりだと思っただろう。けれど、そうではないことは猟兵である兵庫も、彼の頭の中にいる教導虫もわかっている。
『いよいよUDCのお出ましね。後をつけるわよ』
「はい! せんせー!」
 元気よく頷いた兵庫の目の前で、パレード集団がこちらを誘うように楽し気な音楽や踊りを繰り広げている。
 これはあくまでUDCの怪異のひとつ。正気を保つため、狂気耐性を付与したオーラ防御を自らに施して、身を護りながらパレードのあとをつけていく。
 しかし怪異が見せるものとは思えないほど、行列をなす人々はどこか楽しそうで。音楽に合わせて踊り、明るい笑顔を浮かべている。その中に、こちらに手を振る人を見つけ、兵庫は思わず大きく目を見開いた。
「あの手を振ってるパレードの参加者……故郷の島の友達に似ている気が……」
『黒影、どうかしたの?』
 兵庫がその人物を見つめていると、相手もさらに懐かしそうに目を細めてこちらを見て笑っている。
 ――相手も自分を知っている?
「……いや本人か? もしかして事件に巻き込まれた!?」
 いてもたってもいられなくなり、兵庫はその相手へと駆けだした。
『落ち着きなさい。黒影』
 しかし、頭の中に響く努めて冷静な教導虫の声にはっと我を取り戻す。
『今回の事件の黒幕を倒せばパレードは消えるはず。偽物なら一緒に消えるし本物なら解放される』
 だから今慌てることはないわ、と教導虫の落ち着いた声。するすると兵庫に冷静さが戻ってくる。
『今は事件を解決することだけ考えなさい』
 そうだ。まずはこのパレードのあとをつけて、黒幕であるUDCの居場所を見つけなくてはいけない。
「す、すみません……友達、UDC職員だったしありえるかも、と思って……」
 その可能性が強かったからこそ、不安に駆られた。事件に巻き込まれたのならば助けなければと思ったのだ。
『友達想いなのは立派よ。でも敵はそういう弱さに付け込んでくるのでしょうね』
 兵庫を導く役目の教導虫は優しい母親のような顔を覗かせる。けれどすぐにそれは敵への怒りへと変わった。
『なんにせよ悪趣味だわ。今回の黒幕、絶対にとっちめてやらないとね』
「もちろんです!」
 花見に訪れ、楽しんだ人間にその者の興味をひくような姿を見せつけどこかへと誘う。誰にだってどうしても心惹かれてしまうものというのはあるものだ。それを利用するなど許せることではない。
『もう大丈夫? それじゃあしっかり正気を保って後を追うわよ』
「もう大丈夫です! わかりました、せんせー!」
 元気に返事をすると、兵庫は怪しい行進を続けるパレードの後を追っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
【SPD】
たまにはこんな時間を過ごすのも有意義ですね。
「お前ときたらワーカホリックというか···」と呆れ声のツキ
「(気配を嗅ぎ取り)何か来るぞ」

パレードが舞い踊り翻る鮮やかな色の衣装に重なるは、黒き衣の影ー
冷たい床に広がる血。血塗れで転がる何か。取り囲む黒ローブの集団。中央に立ち見下ろす痩身のシルエット―
悪意。恐怖。焦燥。

「おい、どうした。らしくねえツラしてるぞ」
ツキの声と【狂気耐性】で早々に我に返りましたが、今日はつくづく昔のことを思い出す日ですね。
苦笑しつつツキの追及を躱して。

一定の距離を保ってパレードを【追跡】しましょう。ツキは魔力を嗅ぎ取って追っているので見失うことはまず無いでしょう。



●黒き影の呪縛
 閉ざされた遊園地の中の桜並木をゆっくりと散策する。持参したお花見弁当はどこかの食いしん坊に食べられてしまったけれど。それでもゆったりとした時間の流れるこの穏やかな時はとても心地よくて。
「たまにはこんな時間を過ごすのも有意義ですね」
 もちろんこの先にUDCの怪異が潜んでいることを忘れてはいないが、シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は久方ぶりとも思えるこの穏やかな時間に柔らかい微笑を浮かべる。
「お前ときたらワーカホリックというか……」
 シンの言葉に呆れ声を漏らす闇色狼のツキはやれやれといった様子で言葉を返す。依頼抜きでもお花見をしてもいいと思うのに、シンは依頼や元に戻る方法とやらを探すためにずっと動き続けている気がする。知識欲も旺盛なので本を読み始めたら止まらないことも近くにいてシンを見てきたツキは知っている。
「心配してくれるんですか?」
「呆れてるんだよ。ま、お前の『仕事』の先で腹が膨れるなら、いいんだけどな……おい、何か来るぞ」
 言葉の途中で何か異質な気配を感じ取ったツキが真剣な声音でシンに警告すると、シンもすぐさま冷静に辺りを見渡す。
 一体どこに隠れていたのかと思うくらい唐突に現れた謎のパレード集団。色とりどりの衣装を身にまとった仮装した人々が楽し気に踊るパレードが目の前で繰り広げられていた。
「なんだこいつら、食べていいのか?」
「これは元凶のUDCが引き起こす怪異の類……おそらくツキのお腹は膨らみません」
 シンの言葉になんだとつまらなそうにするツキに苦笑をもらし、シンは目の前のパレードを注意深く観察する。
 まるでシン一人のためにこのパレードを行っているように、色鮮やかな衣装をまとった踊り子がこちらへと視線を投げかけステップを踏む。そうして一箇所に固まっていた踊り子たちが一人、二人と脇に散っていくと、最後には黒い衣をまとった影が現れた――。
 ひやり、とシンの背中に冷たいものが走る。心臓が早く脈打ちだし、本能的な恐怖を覚える。けれど決して目をそらすことができない。
 現れた黒い影の足元に、広がる赤い血の海。それはきっと冷たい床で、そこに転がる血塗れの『何か』。鮮やかな服をまとっていたはずの踊り子もいつのまにか全員黒いローブを身にまとい、謎の黒ローブの集団がそれらを取り囲み、厳かにその様子を見守る。
 シンの視線はそれらの中央に立っている黒い影に注がれていた。黒ローブ集団を従えるように中央に立ち、辺りを睥睨している痩身のシルエット――。
 そこからは悪意しか感じない。むせ返るような血の匂い。絶望にも似た恐怖。逃れなくてはいけないという焦燥感……。
「おい、どうした? らしくねえツラしてるぞ」
 つん、と鼻先てシンを小突いて訝しみながら声をかけるツキの言葉で、シンはようやく我に返る。UDCエージェントとして鍛えた狂気耐性がなければ危なかったかもしれない。
「……今日はつくづく昔のことを思い出す日ですね」
 知らず汗ばんだ手のひらを隠すようにそっと握りこみ、先ほどの光景を振り切るように頭を振る。
「なんだ? へんてこな奴らがくるくる踊ってただけだろ?」
 おそらくツキにも同じものが見えていたのだろうが、それはツキにとってはただのショーにしか見えなかったのだろう。
「ええ、そうですね……さあ、後を追いましょう」
 気が付けば黒い影は消え、また色鮮やかな踊り子たちが踊るパレードはシンたちを置いてどこかを目指して進んでいく。
「ふん、任せろ」
 魔力を嗅ぎ取って追うツキがそれらを見失うことはない。
 シンは一定の距離を保ちながら、賑やかに踊り続けるパレードを追っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
パレードの具体的な内容はお任せ

俺は育ての親が神父とかだったからパレードとか見に行く事は無かったんだよなぁ…
なので俺自身パレードというものがどういうものなのかも、よくわからないんだ(汗

逆に、よく知らないからこそ興味津々で魅入ってしまいそうになるかもしれないな…
い、いかん…完全に魅入られてしまうわけにはいかないんだ
【結界術】で結界を張り、パレードによる【精神攻撃】へ抵抗を行う
結界に【呪詛耐性】や【狂気耐性】も付与しておけば対抗出来るだろうか?

もし、完全に囚われてしまいそうになっている方が周りにいたら、俺の結界の中へ引き入れて救出するのも一手だが…

凌ぎきって元凶まで辿り着かないとな



●孤独な男の子
 遊園地内で満開の桜を楽しんでいた鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が、見上げていた視線をふと地面にやると、桜並木の下に唐突にパレード集団が現れた。それはこの遊園地のマスコットキャラクターなのだろうか。クマやウサギの着ぐるみのようなものがこちらに手を振りながらやってきた。
「これがパレード……?」
 孤児であったひりょは神父だった育ての親に引き取られた。安息日には礼拝に行っていたせいもあって、こういったパレードを見に行く機会がなかったのだ。だから目の前で繰り広げられる何かが実際パレードなのかはひりょにはよくわからない。写真などで見たり話を聞く限りはこういった行列が行進していくものらしいので、きっとそうなのだろうが。
 クマやウサギたちはひりょの目の前を過ぎていったが、パレードは長々と続いていた。色とりどりの衣装を身にまとったダンサーがくるくると踊りながら手にしたタンバリンを奏でている。ふと、行進が止まった。
 ひりょの目の前には、いつの間にか黒髪の小さな男の子がいた。彼は傷つき飛べなくなった小鳥を大切そうに抱えると、小鳥は温かな聖なる光に包まれた。傷が癒えた小鳥は空へと羽ばたいていったが、その直後にその男の子と同じ年頃の子供が彼を取り囲む。
 パレード集団が奏でる音楽はどこか悲愴的なものに変わったが、子供たちが何を言っているのかはわからない。
 けれどひりょにはあの少年が何と言ってなじられているのかわかったのだ。
 ――この悪魔憑き!
 どくん、とひりょの心臓が鼓動を早める。他人とは思えない男の子から、どうしても目が離せなくて。
 悲しそうな男の子へと、そっと大人の男性が手を差し伸べる。コートのように丈の長い黒服を着ているその人は神父なのだろう。
 あの子供は自分なのだろうか? 思わず魅入ってしまったひりょは、これは現実でないと大きく頭を振る。
「い、いかん……完全に魅入られてしまうわけにはいかないんだ」
 どこか引き込まれてしまうパレードに対し、ひりょは結界術を使って、呪詛耐性や狂気耐性を付与した結界を張る。怪異が知らずにそちらへ引き込もうとするのを結界を張ることによって客観的に見つめられるようになった。
 気が付けば少年も神父も消えていた。ダンサーたちが楽し気にカスタネットを叩きながら、踊りながら目の前を過ぎていく。
 油断していればまた何かを見てしまいそうで、ひりょは気を引き締めてパレードを観察する。
 パレードの終わりが見えたので、そっとそのあとを追跡する。他の猟兵たちには何が見えているのだろうか。もし、そのひとときのショーに囚われている仲間がいるのなら、この結界の中に引き入れて助け出そうと、辺りを注意深く観察する。
(「これはあくまでUDCが引き起こした怪異……凌ぎきって元凶まで辿り着かないとな」)
 心を落ち着けるため一度深呼吸すると、ひりょは表情を引き締め、パレードのあとを追った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼・霓虹
[チーム名:蛟]
この怪異が事件の元凶が招いている事象と……わたしは【狂気耐性&呪詛耐性】そして自前の〈蒼き虹の白き竜装衣〉があるので余裕ですが

吉備ちゃんも大丈夫な様ですね、わたしからは……あの行列は……鬼の行列が鎧装着込んでいて

そんな感じなのが

A&Wの件でもアームドフォート装備の蛮族のオブリビオン(七転十五起MS:蛮族王、エルフの森を焼き討ちせんとす参照)を相手にしましたが、此方の件と言い異種混合は流行っているん……吉備ちゃんが見た桃太郎の追憶の中でも、そんなのを見たと言うんですか?

まぁ、桃太郎も色々な作品があるでしょうし、興味は無くも

兎も角……後を追いましょうか

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


小雉子・吉備
[チーム名:蛟]
キビも【狂気耐性&呪詛耐性】があるから、へっちゃらだけど

キビも霓虹ちゃんが見えてるのと
おんなじのが見えるよ

何かすごーく懐かしいと言うか
幽世の追憶で見た桃太郎関連の作品の
中に、メカニカルな鎧を来た鬼と桃太郎のお話もあったからねっ!

と言うか霓虹ちゃんも、そー言う事が

なんでもありって猟兵だけの特権じゃなくなってるのかなぁ

それはそうと、現世にも同じのあったと思うし、現世の拠点に帰ったら霓虹ちゃんにも見せてあげるよ

九頭雉鶏精テクターも
それに影響されてヒーローズアースで
発注したのも……あったりするけど

とりあえず、そうだね……あの行列追って鬼退治と行っちゃおうか

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]



●異界の鬼
 うららかな春の昼下がりに、親代わりの優しい先生の膝でほんの少しうたたねをしていた小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)は、目覚めるとうーんと伸びをした。
「お目覚めですか吉備ちゃん」
「うん、とっても気持ちよかったよ。ありがとう霓虹ちゃん」
 すっきりした様子の吉備を見て蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)は微笑むと、それではもう少し散策しましょうかと立ち上がった。
 しばらく遊園地の中を歩いて桜を鑑賞していると、グリモアベースで聞いた通り、突然に謎のパレード集団が現れた。
「この怪異が事件の元凶が招いている事象と……」
 見るものの心を動かすらしいそのパレード集団は次々とその数を増やしていく。
「吉備ちゃん大丈夫ですか?」
 隣の吉備の手を繋ぎ、霓虹は正気を保てているか確認する。霓虹は虹と幸運を司る竜神の虹龍だ。その神威を浴びて『意思持つ幸運の強い下級神』と化した神化衣【蒼き虹の白き竜装衣】を身にまとっているので、こういった呪詛や狂気をもたらすものには充分な耐性がある。
「うん、大丈夫だよ。でもあの行列……」
「吉備ちゃんも大丈夫な様ですね。わたしからは……あの行列は……鬼の行列が鎧装着込んでいるように見えます……」
 その光景を見た霓虹の脳裏に浮かんだのは、先日訪れたアックス&ウィザーズで相対した敵。幹部猟書家チーフメイド・アレキサンドライトは討たれたというのに、その意志を継ぐ異世界のアームドフォート装備のオブリビオンが焼き討ちせんとエルフの森は狙われ続けている。
 目の前の行列は、そんな風にただの和風の鬼ではなく、鎧装を着込んだものに見えるのだ。
「キビも霓虹ちゃんが見えてるのとおんなじのが見えるよ」
 鬼は吉備にとっても縁遠からぬ存在。その存在に我を失うほど驚くことはない。
 鬼たちは辺りを睨みつけながらどしどしと行進し、時に棍棒を振り回したりしている。
「何かすごーく懐かしいと言うか……」
 繋いでくれた霓虹の手をきゅっと握り返しながら、吉備はそっと目を閉じていつか見た記憶を思い出す。
「幽世の追憶で見た桃太郎関連の作品の中に、メカニカルな鎧を来た鬼と桃太郎のお話もあったからねっ!」
 幽世に辿り着いた吉備は、自分探しを続ける途中に、現世から流れてきたあらゆるヒーローを扱った作品の追憶に触れた。その中でも桃太郎は特別な存在で。調べていくうちに桃太郎にもたくさんの派生の物語があると知ったのだ。
「わたしが行った依頼といい、異種混合は流行っているん……吉備ちゃんが見た桃太郎の追憶の中でも、そんなのを見たと言うんですか?」
 目の前の鎧を着こんだ鬼たちを観察していた霓虹だが、その言葉に驚いたように吉備を見つめた。
「うん、そうだよ。と言うか霓虹ちゃんも、そー言う事が? ……なんでもありって猟兵だけの特権じゃなくなってるのかなぁ」
 二人が同じものを見たのは偶然ではないのだろうか。ぱちぱちと二人同時に目を瞬かせて、鬼というものの存在について考えさせられる。鬼は悪しきもの、恐ろしいものの代名詞でもある。けれど場所によっては鬼を神として祀っている例もあるそうだ。
「まぁ、桃太郎も色々な作品があるでしょうし、興味は無くもないですね」
「うん、現世にも同じのあったと思うし、現世の拠点に帰ったら霓虹ちゃんにも見せてあげるよ」
 実は吉備も少なからずその影響を受けていたりする。真の姿として変身するときにまとう九頭雉鶏精テクターは、ヒーローズアースで発注したのだ。
「ええ、では帰ったらまた見せてくださいね」
 約束を交わしたところで、鬼の行列はどこかへ向かっているようで二人を置いてどんどんと進んでいく。
「あちらも危害は加えてこないようですね。兎も角……後を追いましょうか」
「うん、そうだね……あの行列追って鬼退治と行っちゃおうか」
 怪異が引き寄せるその先に、吉備と霓虹にとって鬼に等しい敵がいる。
 二人は頷きあうと、手を繋いだままパレードのあとを追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
本当に桜ってとても綺麗よね。なんでこんなに綺麗なのかしら。
綺麗な薄いピンクが心に響くのかしら?それとも小さな花びら?
それともそれとも咲いて数週間で散っちゃうところなのかしら?
あたしはよくわからないわ。

しゃん…って澄んだ無数の鈴の音が大きく鳴ったと思ったら。
急にパレードの行列が現れたわ。これが…例のなのかしら?
狐とか犬を真似したのかしら。全員不思議なお面被ってて。

!…あ。あの人は…最後にあたしを手にしていた……人?
どうしても。どうしても気になって駆けだしちゃうわ。
あたしが石の時のことだから気のせいだとは思うけど。
あの人にとても似ていた気がして。あたしは思わず駆ける。


シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
しゃらん…と大きく澄んだ無数の鈴の音が一つ聞こえた。
魔を払う時に使用する鈴のような音色だったな。来たか?

左右に視線を走らせてから前に戻すと仮装行列が現れていた。
身構えつつ周囲の警戒。そしてオーラ防御と呪詛耐性を付与。
周囲の手頃な石を取り破魔を籠めてから行列に投げ込んでみる。
…ふむ。幻なのか。こちらを襲ってくる様子はないようだ。

「? おい、露?」
急に露が行列へ近づいて列に混ざろうとし始めたから声をかける。
反応はないから術にでもかかったな。…やれやれ。この子は…。
【三体の従者】の一体に露を追跡するよう指示。残りは行列を追跡。
私は距離をとって警戒しながら行列について行く。



●月長石の記憶
「本当に桜ってとても綺麗よね。なんでこんなに綺麗なのかしら」
 東屋でゆっくりとサンドイッチと紅茶を楽しんで。その間にもひらひらと薄紅色の花びらは儚く舞って、神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)の目を楽しませた。
「……珍しいな。露が哲学か?」
 ティーカップで優雅に紅茶を楽しんでいたシビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)が、恋する少女のように、ほうっと悩まし気なため息をつく露にそう問いかけた。
「えーだって、レーちゃんも気にならない? 綺麗な薄いピンクが心に響くのかしら? それとも小さな花びら?」
「同じ色の花なら他にもあるだろう。もっと小さな花びらの花もある」
 シビラの冷静な返答に露はますます難しい顔をしてうーんと考え込んだ。
「それともそれとも、咲いて数週間で散っちゃうところなのかしら?」
 きっと桜を見たことのない人にその美しさを言葉で伝えようとしても伝えられる気がしない。薄紅色の可憐な小さな花を咲かせる蕾が、寒い冬を耐え忍んで春が来ると満開に咲き誇る。舞い散る花びらも美しく、短い期間ではあるが咲き誇っている間にこれほどまでに見るものの心を打つのだ。
「……あたしにはよくわからないわ」
「わからなくても、露は桜が好きなのだろう? 好きなものならいろいろ調べるのも楽しいと言われていたじゃないか」
「あ、そうだった! ふふ、レーちゃんみたいに読書に励んじゃおうかな?」
 露が楽しそうに笑った時だった。二人の耳に、澄んだ無数の鈴の音が聞こえる。
「え、今何か……?」
 露の呟きに応えるようにシビラが頷く。しゃらん、というまるで魔を払う時に使用する鈴のような音色だと思った。
「……来たか?」
 かねてよりUDCの怪異に備えていたシビラの動きは早かった。冷静に左右に視線を走らせてから、目の前に視線を戻すと、忽然と謎のパレード集団が現れたのを確認する。しかしすぐさま身構え、警戒しながら素早くオーラ防御と呪詛耐性を付与する。
「これが……例のなのかしら?」
 露は困惑したように首をかしげる。楽し気なパレードの行列に参加している者たちはみな動物の仮面を被っていた。狐や犬、猫に烏など愛らしいというよりはどこか不思議な印象を抱かせる仮面だ。
「露、気をつけるんだ」
 シビラが足元に落ちていた手頃な石を拾い上げ、破魔を籠めてパレード行列に投げ込むと、石がぶつかった犬のお面を被った者の姿が霧散した。
「……ふむ。幻なのか。こちらを襲ってくる様子はないようだ」
 けれどシビラの忠告は露の耳に入っていなかった。露は見つけてしまったのだ。パレードの中によく見知った人物を。狐の仮面を取ったその人は露には忘れることのできない存在で。
「! ……あ。あの人は……最後にあたしを手にしていた……人?」
 露は数千年もの長い間、月光だけ浴び続けたブルームーンストーンが本体のヤドリガミ。その長い年月の間に数多の人間の手を渡り――そして最終的に遊牧民達の所有物となったのだ。
 肉体を得る前の出来事ではあるから、はっきりとはわからない。それでもどうしても気になった。
(「それでも、あの人にとても似ていた気がして……」)
 気が付けば露は夢中でパレードの方へと走り出していた。
「? おい、露?」
 忠告を聞かず、突然にパレードの行列の方へと走り出した露をシビラが呼び止める。だが、何も聞こえていないのか露はパレードに混じろうとでもするように駆けていった。
「……やれやれ。この子は……」
 この怪異が見せる幻覚術にでもかかったのだろうと、シビラはすぐさま対処を行う。
「Urmăriți-vă……」
 シビラの呼びかけに三体の小さい影が召喚される。一体は露を追跡するように指示し様子を見守る。残りはパレードの行列を追跡し、見失わないようにする。
 直接こちらに危害を加えてくることはなさそうだが、シビラまで怪しげな術にかかるわけにはいかない。念のため距離を取ると、賑やかに行進を続ける怪しいパレードの行列を追いかけるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】
『狂気耐性』で自分を持ちこたえながら
行列をビスマスちゃんと一緒に追うけど

ボクには騎士団の行列に見えて、その先頭に居るファードラの人派ドラゴニアンの男の人に見覚えが、そしてその人の担いでる槍の先には……少し幼いけど、アレはボクっ!?

アルタワ?……A&W……それとも違う様な……解らないけど、ボクは血の暴走で理性を失って……止める為に兄に殺され……でも何でボクは……ボクの本当の名前

あぁっ!エカルドドライバーが煙を上げて……思い出しちゃ行けない筈なのに

『オーラ防御』で抑えて『属性攻撃(冷却)』で冷やして……そうしてる内に変なフードの男が……ビスマスちゃんっ!

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】
同じく『狂気耐性』で理性を保ちながらエミリさんと一緒に行列を追いますが、わたしには、宇宙服の集団が列を成して、エミリさんを幼くした子を刺し貫いて連れていく光景が

エミリさん、どうしたんですかっ!?しっかりしてくださいっ!兄とか、暴走とか……いったい何がエミリさんに

もしやヒーローズアースに
神隠しに合う前の記憶が

『第六感』でエミリさんのエカルドライバーが壊れたら不味いと直感で解り『オーラ防御』で抑え『属性攻撃(冷却)』で抑え

そうしてる内に、エミリさんの所に変な宇宙服姿の得たいのしれないのが通過しようと……【なめろうフォースセイバー】でそれを『なぎ払い』ます

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●封印された過去
 二人でお弁当を分け合い、花見を楽しんでいたところに、ふと異質なものを感じ取ってエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)は振り返った。
「ビスマスちゃん……!」
 それがこの遊園地に現れる怪異なのだろう。遊園地らしいパレードの行列が二人の前を通り過ぎていく。
「これが例の怪異ですね」
 花見を満喫する人々を呪いのように引き付けるという存在。ビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)は真剣な表情で頷くと、その行列を追っていく。
「エミリさん大丈夫ですか?」
「うん、今のところ大丈夫だよ」
 狂気耐性で意志を保ちながら、エミリロットもビスマスと同じようにパレードの後を追う。
「ねえ、ビスマスちゃん……ボクにはあれが騎士団の行列に見えるんだけど……」
「そうなんですね。わたしには、宇宙服の集団が列を成して……あれ、あの先頭の……」
 ビスマスは怪訝そうに目を細める。先頭にいる人物が槍で刺し貫いた誰かを連れているように見える。
「先頭にいるのは、ファードラゴンタイプの人派ドラゴニアンの男の人……どこかで見覚えが……」
 エミリロットは幼い頃神隠しに遭い、名前以外の記憶を全て失ってヒーローズアースへと転移した。見覚えがあるとしたらそれは失われた記憶なのか。考えれば頭がずきずきと痛み出す。けれど、どうしても思い出さなくてはいけない気もした。先頭に近づき、さらによく観察する。
「それに、その人が担いでいる槍に貫かれている小さな同じくファードラゴンは……幼いボクっ!?」
「わたしにもその子はエミリさんを幼くした子のように見えます……」
 けれどそれは槍に貫かれた姿。決して楽し気な様子ではない。
「アルダワ? ……アックス&ウィザーズ……それとも違う様な……」
 自分がどこからやってきたのかわからない。その手がかりがここにありそうな気がするけれど、何も思い出せない。激しく首を振り、頭を掻きむしるエミリロット。
「エミリさん、どうしたんですかっ!? しっかりしてくださいっ!」
 どう見ても尋常な様子でないエミリロットを心配し、ビスマスが声をかけるが、それすらも耳に届いていないようで。
「解らない……解らないけど、ボクは血の暴走で理性を失って……止める為に兄に殺され……でも何でボクは……ボクの本当の名前……」
 この名前だけは確かに憶えていたはずだ。けれど、それ以外に本当の名前があって――。
「兄とか、暴走とか……いったい何がエミリさんに……!」
 ビスマスにはわからない。けれどこのパレードが見せる風景がエミリロットの失われた記憶を刺激したのだろう。
「もしやヒーローズアースに神隠しに合う前の記憶が……」
 ビスマスがそう推測した時だった。エミリロットの持つエカルドライバーから煙が上がる。主の混乱にこちらも暴走したのか、熱を持ち今にも爆発してしまいそうだ。
「あぁっ! エカルドライバーが……! 思い出しちゃ行けない筈なのに……」
「エミリさん、落ち着いてください」
 ビスマスは悟る。このままエカルドライバーが壊れてしまったらエミリロットもただではすまないと。それは第六感が告げているが、おそらく間違いはない。咄嗟にオーラ防御で抑え込み、熱を持つエカルドライバーに冷却の属性攻撃を力を加減して与えていく。
「大丈夫です。こうして冷やせば……さあエミリさんも!」
「わ、わかったよ、ビスマスちゃん!」
 同じようにオーラ防御と冷却を与えていくと、煙は止まり、エカルドライバーから熱は失われた。
「ふう、良かっ……」
 エミリロットがそう呟いた時、行列を抜け出したフードの男が近づいてきた。
「ビスマスちゃんっ!」
「エミリさんっ!」
 それはビスマスには変わった宇宙服姿の得体の知れない存在に見えた。これ以上エミリロットの過去を刺激するものは危険だ。ビスマスは早業で【なめろうフォースセイバー】を具現化させると、その人影を思い切り薙ぎ払った。
 謎の男は幻のように霧散していく。エミリロットに危害を加える気だったかわからないが、これで良かったのだとビスマスは思う。
「ありがとうビスマスちゃん」
「エミリさん、ずいぶん顔色が悪いですが……」
「大丈夫だよ。さあ、追わないと。元凶を叩いて、みんながお花見を楽しめるようにしなくちゃね!」
 エミリロットへ気遣いの視線を向けたビスマスだが、わかりましたと呟くと、エミリロットを護るようにしながら、二人は怪しいパレードの行列を追いかけていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩瑠・翼
パレードの中には
オレとそっくりな男の子

直感する
あの子は、オレの父さんだ
でも
どうしてあんなに暗い目をしてるんだろう?

「ねぇーー、」

声をかけようとして
ふいに脳裏に浮かんだ光景

「お母さん」を事故で亡くして
「お父さん」に連れられて「神戸」から「東京」へ引っ越してきて
何もかもが変わった世界に居場所を見つけられなくて
元いた世界に帰りたくて
でも子供だからそれができなくて

ーー寂しい、戻りたい、帰りたい

これはきっと
父さんが、絶対話すことのない「父さんの記憶」

見える景色と感情はリアルで
まるで自分の身に起きたかのようで
ぎゅっと胸が苦しくなる

でも、その記憶は
きっとオレにとって必要なんだと思う
だから逃げずに追いかけるよ



●知られざる記憶
 遊園地内の桜をしっかり楽しんだ彩瑠・翼(希望の翼・f22017)の目の前に唐突にパレードの行列が現れる。
 パレードと言えば遊園地でも人気の催しだ。目の前で見るために、時間が来るまで場所をとって待つことだって少なくない。けれどこのパレードは翼だけのためにやってきたもののようで。
「怪異って言うから、もっと怖い感じかと思ったけど……」
 見た目もファンシ―な着ぐるみの動物たちや鮮やかな衣装を身にまとった踊り子たちが手を振りながら賑やかに行進している。
 一定の距離をもってそれらを眺めていた翼だが、行列の中に自分とそっくりの男の子を見つけて、思わず視線が釘付けになる。
 癖のある黒髪に大きな瞳。それは自分が父から受け継いだ特徴でもある。
 そしてなぜかはわからないが翼は直感でわかったのだ。
(「あの子は、オレの父さんだ……!」)
 もちろん、小さかった頃の父だ。翼から見た父は、目に入れても痛くないとばかりに、特に姉二人を溺愛するちょっと親馬鹿すぎるところも目に付くけれど、家族を大切にして、守ってくれる尊敬すべき存在で。
(「でも……どうしてあんなに暗い目をしてるんだろう?」)
 その瞳は暗く、何も見えていないように空虚で。
 いてもたってもいられなくなった翼は、思わず声をかけようと近づいたけれど。
「ねぇ――、」
 その時、目の前のパレードとは違う映像が翼の脳裏に浮かびあがる。
 父は……目の前の暗い目をした男の子は。「お母さん」を事故で亡くして、「お父さん」に連れられて「神戸」から「東京」へ引っ越してきて。
 神戸は翼たち家族にとっても思い出の地だ。父の大好きな街だと聞いている。
 引っ越した先の、何もかもが変わった世界に居場所を見つけられなくて。
 大好きな思い出の地に、元いた世界に帰りたくて。
 でもまだほんの小さな子供だから、それができなくて。
 翼の心にもその疎外感と閉塞感と郷愁が一気に押し寄せてきて。
 ――寂しい、戻りたい、帰りたい。
 それがその時の父の想いだと知る。
(「これはきっと父さんが、絶対話すことのない『父さんの記憶』なんだ」)
 父が見たであろう景色が現実のように翼の目の前に広がり、そのあまりのリアルさにまるで自分の身にそれが起きたようで、胸が締め付けられるように苦しくなる。
 翼から見た父は大人で。弱いところなんてなさそうに強く見えて。和装着付けと髪結い専門の美容師としてお客さんからも慕われていて。
 でも昔からそうだったわけじゃないんだ。
 当たり前かもしれないけれど、改めてそう思う。翼もまた家族や大切な人を守れるような強くてカッコいい大人になるために日々邁進中なのだ。
 どうしてここで父の記憶を辿ることになったのか。それはわからない。
 けれどきっと今の翼に必要なことだと思うから。
 強い気持ちで顔を上げると、男の子と共にパレードは進んでいく。
 辛いことからは逃げたいと幾度も思って来たけれど。もう目をそらさない。
 きちんと向き合って逃げずに追いかけるのだ。
 父親譲りの大きな瞳が強い意志の力で輝き、また少し成長した少年はパレードの後を追いかけていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

九十九・白斗
【BP】
これが怪異か
ひでえもん見せやがるな…

(戦場で一緒に戦った仲間が歩いている
スナイパーに頭を撃ち抜かれたジョンが、眉間の銃痕から血を垂れ流している
地雷を踏んだマイケルは下半身がないので匍匐前進している

死んでいった戦友がみんなそんな感じでのたのた進んでいる

大きく息を吸って吐く

心を落ち着かせる
大丈夫だ
もう克服している
パニックにはならない

気がつけばパラスの肩をつかみ引き寄せていた。手にけっこう力が入ってしまっていた)

悪い、大丈夫か

(自分と同じように彼女も辛い過去の光景を見ていたかもしれないが、彼女は平静を装ってる、自分もしっかりしなくてはならない)

とっとと敵を倒して終わらせちまおう


パラス・アテナ
【BP】



行進が続く
パレードが行く
過ぎゆく列は皆無口で
落とした視線は地面を見て

先頭征くのは孫娘のセレネ
林間学校に向かわせた部下
セレネの友達気の良い教師
粛々と続く死者たちの群れ

胸をよぎる血と硝煙と殺戮と破壊
悲鳴を上げた心は死者の群れの中
青白い顔のアタシが粛々と並んで

触れる白斗の手に我を取り戻して
いつもと変わらぬ笑みに頬が緩む
見渡す列は続くけれど
不思議と心は穏やかで

行進についていけばいいのかい
なかなかいい趣味だね悪くない
どうせ遅かれ早かれ逝く道だよ
アンタと同道するのも悪くない

列の最後は災魔討伐隊の連中の姿
大きく見えた兄はまだほんの子供
続く幼いドラゴニアンの後について
粛々と列に並び闇に向けて歩こうか



●闇の葬列
 先ほどまで缶ビールを片手に桜を眺め、楽しく花見と洒落こんでいたというのに。
「これが怪異か……ひでえもん見せやがるな……」
 突然に現れたパレード集団。それが九十九・白斗(傭兵・f02173)に見せたものは、かつての仲間たちの姿。
 五十年以上戦場を渡り歩いた歴戦の傭兵である白斗のかつての仲間。一時は共に死地を潜り抜け、そして最期は戦場で散った勇敢な戦友たち。
 あれはどこの戦場だったか。この戦いが終わればまた酒を飲もうと約束したジョンが、凄腕のスナイパーに頭を撃ち抜かれ絶命した。そのジョンが、あの行列の中、眉間の銃痕から血を垂れ流して歩いているのだ。
 その後ろにはマイケルが匍匐前進をしながら行列についていっていた。彼は戦場で容赦なく仕掛けられた地雷を踏んで下半身を吹き飛ばされたのだ。上半身だけの姿で血まみれになりながら進んでいる。
 ある者は腕を失い、また別の戦友は顔を半分失いながら、各地の戦場で散った傭兵たちが、のたのたと行進している。
「おいおい、ハロウィンのパレードでももう少し可愛げがあるってもんだろ。こんなのはガキには見せられねえな」
 悪夢のようなおぞましい光景を目に思わずそんな悪態が口をつく。そうでもしなければどうにかなってしまいそうだ。
 大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出す。心を平静に保つために何度もやってきたことだ。
(「大丈夫だ。もう克服している。パニックにはならない」)
 自分に言い聞かせ、ようやく心が凪のように静まるのを感じた。
 思い出す過去は地獄のような戦場だとしても、今は隣に大切な人がいる。お互い思い出すのも憚られる酷い過去を過ごしてきたが、もう少しマシな未来を二人で紡げるはずだとそう信じて。
 悪夢のようなパレードを見送りながら、白斗は力強く手を伸ばした。

 行進が続く。パレードとは名ばかりの葬列のような行列がパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)の前を通り過ぎていく。
 列に並ぶ人はみな無口で、視線は前ではなく地面に落とされていた。
(「死者たちの行列……アタシに関わったから死んでいった者たち……」)
 行列の先頭を征くのはパラスの孫娘のセレネ。本当に可愛いいい子だった。
 その後ろに林間学校に向かわせた部下たちの姿。
(「……アンタたちを巻き込むつもりなんてなかったんだよ」)
 セレネの友達に、気の良い教師たち。たくさんの懐かしい顔。
 あの時のまま時を止めた死者たちの群れが粛々と歩みを続けている。
 死者たちの顔を眺めていれば、胸によぎるのは血と硝煙と殺戮と破壊の記憶。
 自分が死神なのだとまざまざと思い知らされるようで。
 悲鳴を上げ血を流した心は目の前に並ぶ死者の群れの中。まるで心が身体から剥離したように、他人のように自分を見ている。
 青白い顔をしたパラスが粛々と並んで――。
 ふいに、強い力で肩を掴まれる。痛いくらいのそれはけれどパラスの意識を現実へと戻していく。
「……悪い、大丈夫か」
 力を入れすぎたと謝る白斗の言葉にパラスはゆっくりと首を振る。青白い顔。お互い、最悪なものを見せつけられたらしい。
「ああ、ようやく死者じゃない顔が見れた」
「何度か死にかけてきたが……ああ確かに死んではいない」
 その言葉に、いつもと変わらぬ白斗の笑みに知らずパラスの頬は緩む。掴まれた肩の痛みすらどこか愛おしくて。
 目の前の行列が消えたわけではない。けれどもう心は先ほどと違って穏やかさすら取り戻していた。
「お互い、ひでえもん見せられたようだな」
「ああ、そのようだね。行進についていけばいいのかい……なかなかいい趣味だね悪くない」
 おそらく自分と同じくらいひどいものを見せられたのに、平静を装うパラスを見て、白斗もしっかりしなくてはならないと気持ちを強く持つと、パラスの手を引き歩き出す。
「どうせ遅かれ早かれ逝く道だよ……アンタと同道するのも悪くない」
「違いない」
 パラスが目をそらさずに見つめた行列の最後尾には、災魔討伐隊の姿。
 あの時大きく見えた兄は、こうして見ればまだほんの子供で。
 続く幼いドラゴニアンの後について歩いていく。
 無言の行列はただ粛々と歩みを進める。まるで更なる闇に向かっているかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】

ごちそうさま、と手を合わせて
んむ、これからはお仕事の時…
んん?
どこからか楽しげな音楽、そして、…仮装行列?

あ、ゴリマッチョな人が白い馬に乗ってる
あれが白馬の王子様…、ふふ、素敵(瞳きらきら)

次は、アニマルパレード
ぽんぽこたぬきに、歌うように囀る小鳥さん
!うさぎの集団、皆メイド服着てるね
その中に…猫さんもいる

その後ろからは、まつりん!たまこ!
飼い鶏の姿に思わず興奮
どうしたのかな、飛んで来たのかな…
?まつりん、どうしたの?

刀の視線を辿る先には、あ、おかあさんの屋台
ふふ、あんな感じで、いつも手作りお菓子を売り歩いてた
懐かしいな…、まつりん、刀、この後について行こう


木元・祭莉
【かんさつにっき】で!

ん、おやつタイム終了!
ココからは、お仕事タイムだね!

何か来たね。
あれ、馬がキラキラしてる?
乗ってるのもキラキラした人だねー。へー。

ん、騒がしいのが来たね。
おおー、動物がいっぱい! 兎、猫、犬……あれ、メカたまこもいる。
ちゃんと並んで、お行儀よく行列してる。うんうん。

あれ、ひとつ白いのが……ギャー!
(紛れ込んでいた飼い鶏のたまこが飛び掛かってきた!)
(思わず頭を抱えて蹲る)

え、幻?
消えちゃった……そっか。
じゃあ、あの屋台も幻だね! 母ちゃんそっくりだケド!
あそこで物陰から見てるおじさんも、父ちゃんじゃないよね!

あ、蹴られてる。父ちゃんだ!?
相変わらずだなぁー。


木元・刀
【かんさつにっき】で引き続き。

後片付け中に、音楽が聞こえてきて。
さあ、本番です。頑張りましょう。

あれは、メリーゴーランドの白馬?
それにしては……え、素敵? キラキラ?
なら、いいんです。よかったですね。

その後ろからは、動物たちのパレードでしょうか。
遊園地らしく……小動物が愛らしい。
あれ、兄さんのメカニワトリがいますよ?

姉さんは鳥が好きですが、兄さんは……危ない!
ああ、大丈夫です、幻ですから。
ほら、消えました。ね?

最後尾から屋台がやってきて、なんとなく悟ります。
これは、僕たちが呼んだ幻影なんですね。

やっぱり母さんと父さんだ。
幻でも、会えると嬉しいですね。

さあ、追いましょう。(兄姉の手を取って)



●愉快なパレード
「ごちそうさま」
 三人で持ち寄ったお弁当を綺麗に食べ終え、木元・杏(メイド大戦・f16565)はお行儀よく手を合わせた。
「桜も綺麗だし、お弁当も美味しかったー!」
 満足満足と、お腹を撫でながら幸せそうな木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)の様子を見て、嬉しそうに片づけを始める木元・刀(端の多い障害・f24104)の耳にどこからか明るく楽し気な音楽が聞こえてきた。
「んん?」
 杏が聞こえてきた音に耳を澄ませ、そちらへと顔を向ける。
 遊園地につきもののパレードがこちらに近づいてくるのが見えた。
「ん、おやつタイム終了! ココからは、お仕事タイムだね!」
「ええ、ここからが本番です。頑張りましょう」
 パレードの観賞ならば楽しいお遊びタイムと行きたいが、このパレードはUDCの怪異のひとつ。元凶となるUDCに辿り着くためにもきっちりと猟兵としての仕事をしなくてはいけない。
 手早く片づけを済ませた刀はパレードの方へと顔を向ける。これが怪異であると言われなければ、普通に楽しそうなパレードの行列に見える。仮装した人々が楽しそうに踊り、また楽器を奏でながら行進し、電飾のついた大掛かりなフロートの上にも目を引くキャラクターやオブジェが存在する。
「あれは、メリーゴーランドの白馬?」
 先ほど杏が乗っていたメリーゴーランドの白馬とそっくりだ。フロートの上に一頭だけの白馬のメリーゴーランドが回っていて、そして……。
「あ、ゴリマッチョな人が白い馬に乗ってる」
 ふふ、と杏が指差したように、白馬にはかなりごつい体格の筋肉ムキムキなマッチョマンが白い歯を見せつけながら謎のポーズを決めて乗っていた。
「あれ、馬がキラキラしてる? 乗ってるのもキラキラした人だねー。へー」
 祭莉が近づくと白馬にもつけられた電飾が音楽に合わせて何色もの光を放つ。マッチョマンの頭には派手な王冠が輝き、そちらも無駄にキラキラと光っていた。
「あれが白馬の王子様……ふふ、素敵」
「……え、素敵? キラキラ?」
 杏が瞳を輝かせながらうっとりと見つめている姿を、刀は父が見たらどう思うのだろうと複雑な気持ちを抱きながらも、幸せそうな姉に声をかける。
「……なら、いいんです。よかったですね」
 しばらくは乗り物のフロートが続き、その後ろに続くパレードからは賑やかな動物たちの鳴き声が聞こえてくる。
「ん、騒がしいのが来たね」
「あれは……動物たちのパレードでしょうか」
 たぬきがぽんぽことお腹を太鼓のように叩きながら二本足で歩く後ろに、メイド服を着たうさぎの集団。その中に犬や猫も交じり、彼らの頭上で歌うように小鳥たちが囀っている。
「アニマルパレード!」
 杏がさらに瞳をきらきらと輝かせる。杏の愛用するうさみみメイドさん人形――通称・うさみん☆にも似たうさぎたちに杏は嬉しそうに手を振った。
「おおー、動物がいっぱい! 兎、猫、犬……あれ、メカたまこもいる」
「遊園地らしく……小動物が愛らしいですね。あれ、確かに兄さんのメカニワトリがいますね」
「ちゃんと並んで、お行儀よく行列してる」
 誇らしげにメカたまこの行進を見守っていた祭莉に、杏が興奮した声を上げる。
「まつりん! たまこもいる!」
「え? あ、ほんとだ、ひとつ白いのが……」
 飼っている鶏の姿を見つけた杏が、どうやってきたのかな、飛んできたのかな、と思いめぐらせていると、突然に白い塊が祭莉に向けて飛びかかってきた。
「姉さんは鳥が好きですが、兄さんは……危ない!」
「? まつりん、どうしたの?」
「ギャー!」
 たまこは毎朝たまごをくれるナイスな鶏だが、時にこうして鋭いくちばしが唸りを上げるのだ。
 思わず頭を抱えてその場にうずくまる祭莉。しかし予想した鋭いくちばしもキックも襲ってこなかった。
「ああ、大丈夫です、幻ですから」
「え、幻?」
 あまりにもリアルなたまこだったが、これは怪異が見せる幻。痛みはなく、そしてたまこはしばらくすると消えていった。
「ほら、消えました……ね?」
「ほんとだ、消えちゃった……そっか」
 それはそれで少し寂しい気もするが、祭莉がパレードへと視線を戻すとそこにまた懐かしいものを見つける。
「じゃあ、あの屋台も幻だね! 母ちゃんそっくりだケド!」
「え、おかあさん?」
 杏が視線を辿ると、その先には懐かしい母と屋台の乗ったフロートが動物たちのあとについていく。
「ふふ、あんな感じで、いつも手作りお菓子を売り歩いてた」
 母はいつも明るい笑顔でみんなを幸せな気持ちにしてくれて、時折覗く八重歯がチャームポイントの自慢のお母さんだ。
 思い出のメリーゴーランドに飼い鶏、そして現れた屋台。刀はそれを見てなんとなく悟る。好きなものや懐かしいものがパレードとして現れる。
「これは、僕たちが呼んだ幻影なんですね」
「本物じゃないなら……あそこで物陰から見てるおじさんも、父ちゃんじゃないよね!」
「え、どれどれ?」
「ほら、あの屋台の陰の……あ、蹴られてる……ってことは、父ちゃんだ!?」
 相変わらずの様子に、それだけで確信を持った祭莉。これが幻だとしても父と母にそっくりなのは間違いない。
「ええ、やっぱり母さんと父さんだ。幻でも、会えると嬉しいですね」
 UDCの怪異が興味を持たせるためにそれを見せているのだとしても。こうしてきょうだい三人がそろって、幻でも元気そうな両親の姿を見れて。
「うん、懐かしいな……まつりん、刀、この後について行こう」
「ええ、そうですね。追いましょう」
 賑やかなパレードは両親の姿を最後尾に遠ざかっていく。
 刀は兄と姉の手を取ると、はぐれないようにとそのあとを追いかけていく。
 三人とも、懐かしく温かい気持ちを胸に抱きながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『楽園の鳥』

POW   :    楽園においでよ、一緒に歌おう♪
自身の身体部位ひとつを【食べた人間】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD   :    楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ
【夢と希望に満ちた『楽園の歌』を歌う】事で【高速で空を飛ぶ戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    楽園にいこう、体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ
【おぞましい叫び声】【楽園を賛美する演説】【食べた対象の知性を真似た声でのお願い】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●偽りのエデン
 それぞれが目にしたパレードの後を追いかけていくと、屋外にある大きな広場に辿り着いた。謎のパレードは目的を果たすと消えていった。
 そこは劇やイベントが行えるような舞台にもなる広場があり、その周りにあるすり鉢状にせりあがったなだらかな傾斜がおそらく観客席なのだろう。
『キタネキタネ!』
『イラッシャイ! カンゲイスルヨ!』
 甲高い声でそう囀るのは、鳥のような頭をした白い服をまとった存在。くるり、と回ると今度は人間の顔が現れる。
「過去に後悔や絶望を見た? それとも未来に希望や夢を見た?」
「あなたの欲しいものがここで手に入るよ……さあ、楽園においでよ!」
 くすくすと笑うのは、かつて未来に夢を見た少女だったのか。くるり、とまた鳥の頭が現れる。
『ラクエンハステキナトコロダヨ!』
『ラクエンニツレテッテアゲルヨ!』
 鳥と人間が交互に現れ、猟兵たちを望む場所に……楽園へと連れて行こうと誘いかける。
「……そう、夢見た場所に連れて行ってあげる……だから……」
「……体寄越せ寄越せ寄越せ!!」
 それは『楽園』に心捕らわれたUDC。自分たちが望む楽園へ引き込もうと、こうして人間を引き寄せている。彼らの姿は全て今まで食べてきた人間のもの。食べた存在に変化できるため、だからこそ、人を襲い食べることに執着しているのだ。
 彼らは望む世界をひととき見せてくれるかもしれない。
 けれど猟兵たちは知っている。
 その偽りの楽園に本当に望むものは何もないということを。

●マスターより補足
 怪異を引き起こしていた元凶のUDCとの戦闘です。
 彼らは『楽園』に誘おうと、あなたが望む楽園の風景をひととき見せてきます。それはありえなかったもうひとつの過去でも、これから訪れる望んだ未来でも、それ以外に見たかった光景などでも構いません。
 その幻に何かしらの決着をつけていただき、敵を攻撃してもらう流れです。心情に振っていただいてもいいですし、戦闘重視でもいいです。幻を見なかった、とかでも構いませんので、お好きなようにプレイングをかけてください。
 グループの方は2章同様同じものを見ても違うものを見ても構いません。
 プレイングはすぐに受付開始いたします。
馬県・義透
武器:漆黒風

楽園。楽園ねぇ?何でしょう?
…あー、見たことのない屋敷で独り暮らし。たぶん、今の私は、他人には若い鬼の姿(20/12/19納品イラスト参照)に見えてるんじゃ?
まあ、あり得た未来ですよね。『鬼化症候群』という呪(術者は一人でなくても可)を若い頃から受けてて、還暦迎えてたらこうなってたんですから。
ここから三人に『鬼退治(終わるまで気づかない)』で殺される未来でも、ある人(『静かなる者』)が鬼になってまで追いかけてくる未来でも。
私は、幸せなんですよ。

でも、それは訪れない。その前に死にましたからね、私たち。
ですから、ええ。あなた方は鬼の怒りに触れたんですよ。


陰海月、影の中に潜った。



●あり得た未来
 パレードを追っていった先には鳥とも人ともつかないUDCが歌うように囀るように甲高い声を上げていた。
『イラッシャイ! カンゲイスルヨ!』
「あなたの欲しいものがここで手に入るよ……さあ、楽園においでよ!」
 ただならぬ様子に、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)のあとをついていたミズクラゲ【陰海月】がぴゅっと義透の影の中へと潜った。
「ええ、大切な花びらをなくさないように陰海月はそこで待っていてくださいねー」
 そうして義透はふむ、と顎に手を当て考える。
「楽園。楽園ねぇ? 私にとっての楽園とは何でしょう?」
「わからないの? それじゃあ、見せてあげるよ!」
 人の顔をした楽園の鳥がそう告げると、義透の脳裏にひとつの光景が浮かび上がる。
 これはどこの世界だろうか。生前の義透が暮らしていた場所なのか。見たことのない屋敷で独り暮らしをしている『疾き者』である自分が見えた。その姿は今の義透と違って若く、二十代ぐらいの青年だ。銀灰色の髪と瞳を持つ青年の額からは二本の立派な角が生えていた。
(「あー、なるほど……まあ、あり得た未来ですよね」)
 今よりも若い姿ではあるが、これは未来の自分の姿。
 鬼化症候群という呪を若い頃から受け続け、還暦を迎える頃にはこうして本物の鬼になっていたはずなのだから。生前は忍者であった『疾き者』は潜入暗殺任務についた時、さながら鬼のように冷徹無慈悲に命を奪った。まるで鬼のようだと、いや本当に鬼なのだと他から言い続けられれば、それはその人を本物の『鬼』に変えてしまう。言霊のように。
 鬼に至ってしまった孤独に暮らす自分。生前の戦友である三人に、自分だと気づかれずに鬼退治されるように追われ殺される未来が待っているのかもしれない。あるいは『静かなる者』自身が鬼になってまで追いかけてくる未来があるのかもしれない。
 もし、そんな未来が待ち受けているのだとしても。
(「私は、幸せなんですよ」)
 それは確かに自分が生きた証。友と共に、オブリビオンに滅ぼされることなく故郷で生き抜いた証でもあるのだから。
「……でも、それは訪れない。その前に死にましたからね、私たち」
 けれど現実はこうして四人の人間が集まった複合型の悪霊となった。生者としての人生はとうに潰えているのだ。
「ですから、ええ。あなた方は鬼の怒りに触れたんですよ」
 ぱっと幻の風景が掻き消え、楽園の鳥たちが苛立たし気に翼を羽ばたかせている。
『ラクエンニツレテッテアゲルノニ!』
「どうしても行かないって言うなら……体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ!」
 楽園の鳥たちは、金切り声を上げながら、義透に迫る。
「それはできませんね。この身体は私一人のものではないので」
 棒手裏剣【漆黒風】を構えると、迫りくる楽園の鳥へとそれを投げつける。それはただの攻撃ではない。呪いを込めたその一撃は、先頭の鳥に命中すると、決して癒えない傷跡を残し、傷を受けた鳥はふらふらとおかしな軌道を描くと、仲間の鳥たちに次々とぶつかっていく。
「鬼の攻撃にしては優しいものだと思ってほしいですね」
 過去に『自分』に殺された者の恐怖はこんなものではなかったはずだから。呪いを受けた自分が呪いで敵を攻撃するのは皮肉だと思うが、悪霊である今は相応しいのかもしれない。
 それでも口々に楽園を賛美する声とおぞましい叫び声を上げ続ける楽園の鳥たちを、義透は次々と漆黒風で撃ち落としていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス
【WIZ】

「あんな細っこい鳥を喰ったところで腹が膨れるかよ。まあ、鳥の魔力次第か」
とツキは不満げ。

幼い頃の遊園地での穏やかな一日。
あれから幾日もしないうちに、僕を庇って両親は―
あんな事など無かったように平穏な日々が続く『幻』。

「敵をよく見ろ!戦いは冷静さが肝要だ。いつもお前自身が言ってる事だろう」
とツキが一喝。

「あの頃のような平穏な日常はもう戻りません。生命体の埒外に置かれようと、今は此処が僕の居場所です」

UC【殲滅の槍の召喚】で攻撃。
ツキは幾何学模様を描く槍の軌道が分かっているかのように華麗に避けて、鳥達を「喰って」います。

―困った事に、今の騒がしい生活も存外気に入っているんですよ。



●穏やかな未来 騒がしい日常
 パレードを追った先に現れたのは、甲高い声で楽園へ連れていくと囁くUDCの群れだった。
「どうやらあれが元凶のようですね。ここで確実に倒してしまいましょう」
 UDCエージェントとして、シン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)は事件の解決を誓い、油断なく辺りを見渡す。もし一般人が巻き込まれていたら身体を乗っ取られていただろう。いや、既にここでないどこかで犠牲になった者たちがその身体を利用されているのだが。
「あんな細っこい鳥を喰ったところで腹が膨れるかよ……まあ、鳥の魔力次第か」
 闇色狼のツキは現れた相手に不満げではあったが、その瞳は油断なく楽園の鳥を見据えていた。
『ラクエンハステキナトコロダヨ!』
「なんだ、勧誘か? しゃべれないようにその嘴から喰ってやろうか」
 ツキは牙を見せ唸るが、鳥の頭から人間へとくるりと変わった楽園の鳥は、食らった人間の顔で優しく囁く。
「大丈夫、夢見た場所に連れて行ってあげるから……」
 その瞬間、シンの意識は現実を離れた。気がつけば、幼い頃の自分が当たり前のような日常を過ごしていて。
 あの日、両親と過ごした遊園地での時間。好きな乗り物に乗せてくれて、家族で一緒にお弁当を食べて。両脇に両親がいて、手を繋いでくれて。穏やかで楽しい時間が過ぎていく。
 そうだ。こうして平和で穏やかな日々が続く。両親は元気でいつだって自分に笑いかけてくれて。ずっとそばにいてくれて――。
 ……違う。
 幸せな日々は続き、シンは成長していくのに、思い出の中の両親はあの時から少しも年をとっていない。それはそうだ。
(「だって、両親はあの遊園地で一緒に過ごした数日後に、僕を庇って……」)
「敵をよく見ろ! 戦いは冷静さが肝要だ。いつもお前自身が言ってる事だろう」
 楽園の鳥が見せる幻に一瞬囚われかけたシンを、鋭い声でツキが一喝する。
「いいんだよ、ずっと見たい夢を見ていれば……そうすれば誰も傷つかないの。誰もいなくならないの」
 くすくすと笑う少女が優しくそうシンに語り掛ける。その少女もまたUDCに夢を見せられ囚われてしまったのか。
「……ツキ、ありがとうございます。ええ、その通りです」
 冷静さを失っていたわけではない。けれど敵が見せる幻は確かにシンが望んだひとつの光景だったのかもしれないと思う。
 けれど、今は。
「あの頃のような平穏な日常はもう戻りません。生命体の埒外に置かれようと、今は此処が僕の居場所です」
 それをはっきりと自覚して、シンは目の前のUDCに向かい合う。
 UDCエージェントは捕獲したUDCを正気を削って体に宿し、戦力とする存在。そしてこの世界ではまだUDC怪物もUDC組織も一般には知られていない。それでもシンはその道を選んだのだ。もう二度と平穏な当たり前の日常を過ごすことはできなくても。
「お、いつもの顔に戻ったな……お前はそうでなくっちゃな」
 UDCであるはずのツキとも、こうして一緒に戦うことが出来るのだから。
「混沌から産まれし槍よ、我が命に従い、立ち塞がるモノを封じ殲滅せよ!」
 力ある声に応えるように、シンの前に九百を超える黒い槍が召喚される。その槍は一本一本が幾何学模様を描きながら複雑に飛翔するが、ツキはその軌道が分かっているかのように、槍を華麗に避けながら槍の包囲攻撃をかわした楽園の鳥たちを次々に喰らっていく。
「楽園は素敵、楽園には苦しみも悲しみもないよ……!」
 人の顔が楽園を讃え、鳥の顔がおぞましい悲鳴を上げ、シンのユーベルコードを封じようとするが、その言葉を最後まで言わせず、黒い槍が、ツキの牙が、鳥たちの身体を貫いては引き裂き黙らせる。
「楽園も悪くないのかもしれませんね。そういう穏やかな場所もきっと必要なのでしょう。けれど……」
 シンは軽やかに舞う食いしん坊の闇色狼を頼もし気に見つめると、柔らかく微笑んだ。
「――困った事に、今の騒がしい生活も存外気に入っているんですよ」
 その言葉に応えるように、ツキが残っている鳥たちを喰らおうと、牙をむきながら駆けだした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
(故郷の島の海岸で無精ひげを生やした無骨な風体の男が笑顔でこちらに手を振っている)
あの人は確か...せんせーの昔の大切な人、でしたっけ?
(「...そうね。次はアタシを狙ったか」と頭の中の教導虫が返事する)
へっ!精神攻撃なんて
俺とせんせー両方を同時に攻めないと意味なしです!
大丈夫ですか?
(「うん、寂しさとか懐かしさとか色んな思いがごちゃ混ぜになってるけど平気よ...あまり戦闘の手伝いはできないかな。ごめんね」)
人の思い出を踏みにじるような真似しやがって!許せねぇ!
(UC【轢殺虫】を発動)
重騎兵さん!俺と一緒にあのふざけたUDCを一緒に踏みつぶしてしまいましょう!



●師の寂寞 教え子の奮起
 追いかけていった先で怪しいパレードは姿を消した。
「幻……? 消えたってことは故郷の島の友達じゃなかったってことか……」
 パレードの参加者の中に友と似た姿を見つけて心配していた黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、ほっと一つ息を吐いた。
『元凶を倒す前に消えた……アタシたちをここにおびき寄せるためだけの幻ってことね』
 兵庫の頭の中の教導虫が冷静に分析する。けれどその卑劣なやり口に怒りを抑えられていないようだ。
「ふふ、よく来たね。あなたにも楽園を見せてあげる……会いたかった人に会わせてあげる……」
 現れた楽園の鳥が兵庫を見て優し気に語り掛ける。
 次の瞬間には、目の前の景色が変わっていた。
(「あれは、俺の故郷の島……あの人は……」)
 懐かしい故郷の島。UDCアースにある絶海の孤島の海岸で、無精ひげを生やした無骨な風体の男性が、笑顔でこちらに手を振っている。
 それは兵庫にも覚えがあった。しかし楽園の鳥が言った会いたかった人というのは少し違う。
「あの人は確か……せんせーの昔の大切な人、でしたっけ?」
『……そうね。次はアタシを狙ったか』
 少し間をおいてから、頭の中の教導虫は浮かない声で言葉を返す。
「へっ! 精神攻撃なんて……俺とせんせー両方を同時に攻めないと意味なしです!」
 今の兵庫は冷静だ。先ほどパレードを見た時に教導虫がたしなめてくれたように、落ち着いて物事を分析できる。けれど、同意してくれる声は頭から聞こえてこなくて。心配になって声をかける。
「せんせー、大丈夫ですか?」
『うん、寂しさとか懐かしさとか色んな思いがごちゃ混ぜになってるけど平気よ……あまり戦闘の手伝いはできないかな。ごめんね……』
 きっと兵庫が知らないだけで、大切な人の一言では表せないくらいの思い出があるのだろう。いつも優しく導いてくれる教導虫のその様子に、兵庫は腹の奥から純然たる怒りが沸き起こる。
「人の思い出を踏みにじるような真似しやがって! 許せねぇ!」
 その瞬間にぱっと幻は消えた。そこにいるのは、鳥の顔をしてけたたましく鳴き叫ぶUDCの姿。
「重騎兵さん!」
 兵庫はユーベルコードで3メートルを超える大きさの団子虫を召喚すると、その背に騎乗する。生命力を共有した団子虫と互いに戦闘力を強化しあった兵庫は、人間の顔で希望に満ちた楽園の歌を歌う鳥へと迫る。
「楽園には苦しみも悲しみもないよ。一緒においでよ」
 歌と共に飛行速度を上げた楽園の鳥たちはくすくす笑いながら兵庫の周りを飛び回る。
「重騎兵さんで踏みつぶすにしてもああも飛ばれると……そうだ」
 兵庫は【誘導灯型合金破砕警棒】を取り出すと、こちらへと高速で飛びかかってくる鳥たちに向けて衝撃波を放つ。衝撃に撃ち落とされた鳥たちへと、すかさず進撃する。
「今です、重騎兵さん! あのふざけたUDCを一緒に踏みつぶしてしまいましょう!」
 地に墜ちた鳥たちをオーラのバリアを張り巡らせた硬い身体で踏みつぶしていく。
『黒影、アタシなしでもやれるわね』
 心強そうにそう褒めてくれる教導虫の声が先ほどより元気を取り戻したのを確認すると、兵庫は嬉しそうに鼻の頭をかいてから、残りの鳥へと衝撃波を放つ。
「任せてください、せんせー!」
 衝撃波で地に墜ちた鳥たちを踏みつぶしながら、兵庫は元気よく返事をした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼・霓虹
[チーム名:蛟]
わたしには、わたしが虹龍になる前に居た組織の人間達に見えますね(ionMS様:すてきな絶望、くださいな参照)

あの時は加えてだから粛清されると
……多分居るであろう黒幕は、見付けて決着付けますが

余裕がなく、言いませんでしたが
自分こそ貴方達の様なのは願い下げです

[POW]
わたしの片手に【激痛耐性&オーラ防御】を込め【属性攻撃(ボクシンググローブ)】を拳に覆い

UCを【高速詠唱】し攻撃力重視発動
〈彩虹(戦車龍形態)〉に【騎乗&操縦】し【悪路走破&推力移動】で駆け【第六感】で攻撃を避け本体の位置を察知し

これが自分の























幻ごと敵を殴り飛ばします

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


小雉子・吉備
[チーム名:蛟]
キビには、さっきのメカニカルな鎧装来た鬼が沢山居る様に見えるけど……霓虹ちゃんには、昔のトラウマの元凶の人達に見えてると

何かその鬼達が、霓虹ちゃんに次々と殴り飛ばされて、天井に頭を埋もれたまま
動かなくなっちゃってるし

まぁ……キビも、桃太郎らしくそのまま幻ごと斬っちゃっても問題な

あーっ!キビ達がヤベー奴だと思って幻解いちゃったよーっ!ちぇーっ!

つまんないの……もう仕方無い

[POW]
頭に血が昇ってる霓虹ちゃんに
下がって貰い
【高速詠唱】でUCを【範囲攻撃】の【属性攻撃(光)&斬撃波】で纏めて斬り伏せ、敵集団に〈なまり&ひいろ〉ちゃんを【動物使い】で一掃を

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]



●あの日の夢
 鬼の行列のあとを追っていた蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)だが、その終着点には、楽園を讃える鳥たちがいた。
「あれが元凶のUDCですね……」
「鬼退治に来たんだけど……鬼はいなくなっちゃったね」
 小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)は消えてしまった鬼の行列がまだどこかにいないかときょろきょろと辺りを見渡した。
「気を付けてください、吉備ちゃん。あの鳥もきっと何かをしてきます」
「うん、わかったよ、霓虹ちゃん」
 吉備が気を引き締めた時、目の前で鳥の頭が甲高い声を上げる。
『ラクエンニツレテッテアゲルヨ!』
 あっと思う間もなく、次の瞬間、霓虹はかつて見たことのある光景を目にしていた。
 それは霓虹が虹龍となる前のこと。ある平和を維持する組織に所属していた彼女は、最年少ながらエージェントとして活躍していた。だがある時、霓虹が抱いた夢を組織は否定した。ついには友人達を人質に取られ粛清を受けたが、それでも命がらがら逃げ出して――。
 その時にいた組織の人間達がこちらを見ている。
 皆朗らかな笑顔を浮かべてこちらに手を振っている。ああ、今ならば誰も自分の夢を否定しない。将来有望のエージェントとしてあの組織で活躍でき、夢を実現できるんだ――。
 ――違う。
 霓虹は首を振る。ここが楽園であるはずがない。これが自分の望んだ未来ではない。
 忘れることはない。その思想が、組織の品格に関わる恥その物と言われたこと。
 自分の存在が回りの人間の品格すら貶めると罵られたこと。大切な夢を下らないと吐き捨てられたこと。
 けれど、昔からこんな組織だったとは思わない。そこに確かに感じる悪意。
 おそらく存在するであろう黒幕は、いつか見つけて決着をつけると心に決めたのだ。
「あの時は余裕がなく、言いませんでしたが」
 にこやかに笑っていた元同僚があの時見たような見下した目で霓虹を見つめてくる。
「自分こそ貴方達の様なのは願い下げです」
 言葉と共に、霓虹はユーベルコードで真の姿に変身する。マジックカードを用いて戦車龍形態となった彩虹に騎乗し、自身を強化すると、ボクシンググローブの如き属性を拳に覆い、激痛耐性とオーラ防御を込めたそれの狙いを定める。
 彩虹が全力で駆け、幻の中に敵の姿を察知すると、霓虹は全力で拳を叩きつける。
「これが自分の……辞・表・が・わ・り・だぁーっ!!」
 浄化の弾幕と、加護を貫く雷が全てを吹き飛ばしていく。
「霓虹ちゃんには、昔のトラウマの元凶の人達に見えてるんだね……って」
 吉備には先ほどの行列と同じように幻の中にメカニカルな鎧装を着た鬼がたくさんいるように見えた。霓虹が幻ごと吹き飛ばしたものだから、その鬼たちが殴り飛ばされ、天井に頭を埋もれさせたまま動かなくなっているように見えた。
「まぁ……キビも、桃太郎らしくそのまま幻ごと斬っちゃっても問題な……」
 そう言いかけた吉備だが、辺りは幻の風景から元いた遊園地の広場へと戻ってしまったことに気がつく。
 幻ごと殴り飛ばし、攻撃してくると悟った楽園の鳥はさっさと幻を消してしまったらしい。
「あーっ! キビ達がヤベー奴だと思って幻解いちゃったよーっ! ちぇーっ!」
 どうせなら吉備も鬼たちを全力で殴り飛ばしたかった。せっかく鬼退治ができると思ったのに。
「つまんないの……もう仕方無いなあ」
 若干引いているように見える楽園の鳥たちに狙いを定め、吉備は動く。
「霓虹ちゃん、次はキビの番だよ。ちょっと後ろに下がっててね」
「吉備ちゃん……ええ少しカッカしすぎてしまったようですね。少し頭を冷やしましょう」
 頭に血が上った霓虹が後ろに下がるのを確認し、吉備は素早くユーベルコードを詠唱すると、九頭雉鶏精テクターを纏った真の姿に変身する。若草色に変化した髪と雉鶏精の特徴が色濃く表れた姿に、【偽御神刀・吉備男】を構えて喧しく鳴き叫ぶ鳥たちへと斬り込んでいく。
「なまりちゃんにひいろちゃんも!」
 吉備の呼びかけに応えた青い狛犬と赤い猿が、鳥たちの攻撃から吉備と霓虹を守る。
「楽園を壊す存在を許さない……!」
 楽園の鳥は自身の翼を今まで食べてきた人間の頭部に変形させると、その鬼気迫る顔が噛みつこうと歯をむいて迫る。
「光よりも速く、刻の刃は加速する……吠えろ吉備男っ!」
 吉備が猟兵として戦った日数と、霓虹が受けた心の傷をも力に変えて、吉備は迫る楽園の鳥たちへと吉備男を閃かせる。それは空間ごと時間を加速させた斬撃の雨。敵の原子すら崩壊させる雉鶏精の力。
「わたしにも護りたかった夢と理想があります。けれど、都合のいい楽園に逃げるつもりはありません」
 彩虹を駆る霓虹が吉備の傍に近づくとそう厳かに告げた。
「吉備も過去を思い出せないけど……もう戻れないから」
 二人は決意を込めた眼差しで頷きあうと、残った敵を蹴散らしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
【なめろう餃子】
事件の元凶が姿を現したら、何か幻が出る前に敵見必殺ですが

……エミリさん、わたしは貴女がどんな過去があろうと、貴女は貴女です
『優しさ』と『情熱』を持って『手を繋ぐ』感じで、最後までエミリさんの心を『庇う』つもりですよ

差し詰め餃子の皮みたいに

●POW
『先制攻撃&早業』で、なめろう入り桜餅の大地の力で[なめろうスプラッシュ・サイクロン]を『範囲攻撃&属性攻撃(桜吹雪)』で一撃を入れたら

先陣を『切り込み』『オーラ防御』で備えつつエミリさんを気に掛けつつも『第六感』で攻撃を『見切り&なぎ払い』【なめろうフォースセイバー】で『斬撃波&2回攻撃』で敵を斬り伏せます

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


エミリロット・エカルネージュ
【なめろう餃子】
ビスマスちゃん漢前すぎるんだけど、それ、異性同士なら告白になりかねないよ?……ビスマスちゃんが餃子の皮って

でも、有り難う。

……ボクの中に得たいの知れないのがあったとするなら、餃子の皮の様に包む様に制する為に、もしかしたら運命がボクを導いたのかな?

餃心拳……ビスマスちゃん……猟兵……それを取り巻く絆の全てに

●POW
UCを真の姿になりつつ『範囲攻撃』で周囲の敵を『なぎ払い』ビスマスちゃんの背中を守る様に【餃子の皮手拭い】を【シャオロン(麺棒モード)】に潜り付け

『第六感』で『見切り』『カウンター』で『2回攻撃』で武器の濡れ手拭いの要領で『グラップル』し迎撃

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



●運命が導く絆
 怪しいパレード集団を追いかけていった先には、怪異を引き起こした元凶となるUDCが歌うように囀るように楽園を賛美していた。
『ラクエンハステキナトコロダヨ!』
「楽園においでよ、一緒に歌おう♪」
 鳥と人の頭が交互に現れ、猟兵たちを楽園へと誘おうとする。
「……あなたたちが元凶ですか……よくもまああんなものを見せてくれましたね」
 普段は温厚なビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)の怒りに満ちた低い声に、一緒にいたエミリロット・エカルネージュ(この竜派少女、餃心拳継承者にしてギョウザライダー・f21989)が驚くほどだった。
「ビスマスちゃん……?」
 このUDCも楽園だなんだと幻を見せてくるのだろう。ならばそれを見る前に見敵必殺だとビスマスは決意する。先ほどのパレードを見て心を乱されたエミリロットを庇うように敵の前に立ち、そして語り掛ける。
「……エミリさん、わたしは思うんです。貴女にどんな過去があろうと貴女は貴女です」
 そっとエミリロットの手を取って優しく握ると、ビスマスは優しくそれでいて力強さを感じる言葉と微笑みを贈る。
「貴女が見てきた幻で傷つくなら、最後までエミリさんの心を庇うつもりです……差し詰め餃子の皮みたいに」
「ビスマスちゃん……」
 心のこもった言葉と真っ直ぐな視線に、エミリロットはこそばゆくなり、照れたように頬を掻いた。
「もう、漢前すぎるんだけど……それ、異性同士なら告白になりかねないよ?」
 それでも自分のことを心から大切に思ってくれていることがわかって嬉しくて。
「それにしてもビスマスちゃんが餃子の皮って……」
 餃子は中身だけでは成り立たない。中に詰まった餡とそれを包み込む皮があってこそ餃子と呼べるのだ。なくてはならない者同士。そして餡を包み込むしなやかな包容力。餃子の大地の力を操る餃心拳継承者のエミリロットにとってこれほど嬉しく心強いことは他にない。
「でも、有り難う」
 過去の記憶はない。けれど、ヒーローズアースに転移し、餃心拳を受け継いだことは偶然ではなかったのかもしれない。
(「……ボクの中に得体の知れないのがあったとするなら、餃子の皮の様に包む様に制する為に、もしかしたら運命がボクを導いたのかな?」)
 餃心拳、ビスマス、猟兵――それを取り巻く絆の全てに感謝の気持ちを抱きながら、エミリロットは顔を上げる。先ほどよりずっと顔色はよくなり、気持ちも落ち着いてきた。
「楽園に行かないの? とっても楽しいよ……行かないなら……体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ!」
 鳥たちがビスマスたちの様子を見て、その身体を奪おうと歌いながら襲い掛かってくる。
 ビスマスはエミリロットを守るようにしながら、早業で【なめろうフォースセイバー】をなめろう入り桜餅の大地の力で薄桃色の桜餅型に変化させると、エミリロットが受けた心の傷とビスマスの料理技能を力に変えて、光の旋風刃を楽園の鳥たちへと叩き込む。広範囲への攻撃に加え、風と共に桜吹雪が舞い散り、それが彼らの目を眩ませる。
「ビスマスちゃん、ボクも援護するよ!」
「無理はしないでくださいね」
「うん、大丈夫!」
 先ほど暴走したエカルドライバーだが、もう大丈夫。エミリロットはユーベルコードで真の姿・エカルドに変身すると、ビスマスの背中を守るように立ち動く。
 目の前のUDCがかつて食べた相手なのだろう、翼をその人間の頭部へと変形させると、噛みつこうとビスマスに迫っていた。
「させないよ!」
 麺棒モードになった【シャオロン】に【餃子の皮手拭い】をくくりつけ、それを器用に操り、飛びかかってくる楽園の鳥たちを薙ぎ払っていく。
 二人は背中合わせになって残りの敵に向かい合う。先ほど食べたお弁当が大地の力を二人に与えてくれたようで、力が漲ってくる。
「元凶を叩いて、人の手にお花見を取り戻しましょう」
「うん、この景色はみんなのために」
 甲高い声で叫びながら飛びかかってくる鳥の攻撃をオーラ防御で防ぎ、エミリロットを守るように動きながら、ビスマスは大地の力漲るなめろうフォースセイバーで次々と敵を切り伏せていく。
 エミリロットもまた真の姿となったその鎧装の胸部から、大地の力を受けた縮光弾を放っていく。
 二人の大地の力を借りた攻撃は次々と楽園の鳥たちを黙らせていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ

楽園…俺にとっての楽園とはなんだろう

天涯孤独の身だった俺は義父を喪った事で再びその身となった
一人ででも生きていかねばならない、と気を張ってきた部分があると思う

俺が安心して背を預けられる、時に甘えられるようなパートナーがいる日々、とかだろうか

誰かは顔が見えない、その誰かに膝枕してもらって安心しきった気持ちになって…

その向こうに信頼出来る人達と義父の姿が

っ!冷静になれ、これはまやかしだ
手元の飴を取りだしそれを媒体に固有結界・黄昏の間を発動
風の疑似精霊を召喚し風の防御壁を形成
相手が発する音声を遮断

理想は俺自身で掴み取るんだ!
【破魔】付与した【全力魔法】力を込めた【レーザー射撃】攻撃



●掴み取る未来
 パレードを追跡して辿り着いたのは、遊園地にある広場のような場所。そこで鳥たちが楽園を讃える歌を歌い、一緒に行こうと囁きかける。
(「楽園……俺にとっての楽園とはなんだろう」)
 元凶となったUDCへと油断なく対峙しながらも、鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は鳥たちが口にする楽園という言葉の意味を考えていた。
 孤児だったひりょはもとより孤独だった。けれど育ての親に引き取られたことで、再び家族を得ることとなる。だがその日々も長くは続かなかった。神父であった養父は病で他界し、これでひりょはまた名実ともに天涯孤独の身となったのだ。
 まだ成人にもなっていない子供だったひりょが、それでも一人で生きていかねばならない、とずっと気を張って生きてきた。だから一通り身の回りのことはできる。自分のことは自分でするのが当たり前だと思っていたからだ。誰かに頼ったり甘えたりするのは苦手だった。
 考えを巡らせていたひりょの視界がふいに知らない場所へと切り替わる。
 どこだろう。緑がたくさんある温かな場所だ。木漏れ日が差し込む木の下で、ひりょは温かく柔らかな膝に頭を預けていた。
 ああ、とても穏やかな気持ちになれる。独りだと気を張る必要はなくて、ひりょを支えてくれる、ひりょが信頼できる、時には甘えることもできるパートナー。その存在に安堵感が満ちていく。優しい手が自分の黒髪を撫でてくれて。
 逆光で顔はよく見えない。けれどきっと優しい表情でひりょを見つめているのだろう。
 遠くから自分を呼ぶ声がする。視線をやればそこには信頼できる仲間たち、それに義父の姿も。
 胸が温かいもので満たされていく。孤独感に苛まれた日々ははるか遠くに――。
(「……っ! 冷静になれ、これはまやかしだ」)
 義父はもういない。いくら望んだって、そんな理想だけの未来は訪れるはずがない。
「どうしたの? ほら、一緒に楽園に行こうよ!」
 思考と共に視界もクリアになり、ひりょは人の顔をして甘い声で囁く楽園の鳥を油断なく見据えると、手元の飴を取り出し、すぐさまそれを媒体にユーベルコードを発動させた。
 飴は風の疑似精霊へと変化し、それらは風の防御壁を形成する。
『ラクエンニイコウヨ!』
「一緒に行こう? あなたと一緒に行きたいの!」
 鳥の嘴がけたたましく囀り、かつて食べた人間の顔をした誰かが、甘えるように囁きかける。その言葉を風の防御壁で遮断し、敵の攻撃を無効化する。
「楽園……ユートピア……桃源郷……理想の場所は誰にだってある。でもそれを押し付けられるわけにはいかない」
 漆黒の瞳は幻ではなく、未来を見据えている。破魔刀を手にしたひりょは全力魔法の力を込めて刀身を振るう。込められた破魔の力がまるでレーザー射撃のように正確に楽園の鳥たちを撃ち落としていく。 
「理想は俺自身で掴み取るんだ!」
 怯んだ鳥たちへとさらに攻撃を畳みかけ、ひりょは次々とその数を減らしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シビラ・レーヴェンス
露(f19223)と。
楽園か。そんなモノなどこの世のどこにも存在はしないだろう。
もし本当に在るとすれば動物や植物にとっての楽園だろうな。
そして君達の力に頼らなくとも望んだモノは自分の手で掴み取る。
他人から与えられるような楽園は希望していない。願い下げだ。
例え良い場所だとしても私には不要だ。いらない。

【凍てつく波動】で周囲の原子や分子ごと君を停止させよう。
パフォーマンスで身体機能を向上させ封印を解き限界突破で威力上昇。
その後で属性攻撃と範囲攻撃を付与させた全力魔法を高速詠唱で行使。

「露はどこにいる? …私と似たような背と髪の少女なんだが」
術を行使しつつ怪異に問う。知っているかもしれないからな。


神坂・露
レーちゃん(f14377)と。
「あれ? ここは遊園地じゃないわ」
お陽様が照らす暖かい場所に立っていたわ。
きょろきょろ周囲を見渡すとあの人と遊牧民族さん達がいる。
逆光で顔を見ることはできないけどあの人は笑ってたわ。
あの人は手を差し出してあたしに言うの。『こっちへ』って。
一歩二歩とあたしは向うけど途中でふと気づいたの。
あたしの今大好きな人がいないって。レーちゃんがいないわ。
だから足を停めて聞いたの。黒い服の女の子は?って。
そしたら『その子は先に言って待ってるよ』って答えたの。
嘘。それは嘘よ。だってレーちゃんは一人でいかないわ。
そういうと目の前が真っ白になって…目の前に…。
レーちゃんと一緒に戦うわ。



●楽園の在処
 パレードを追跡し、辿り着いた先には、楽園に行こうと囀る鳥のようなUDCの群れ。
「楽園か。そんなモノなどこの世のどこにも存在はしないだろう」
 シビラ・レーヴェンス(ちんちくりんダンピール・f14377)の耳には、鳥たちが囀る楽園という言葉は胸に迫らない。それは極寒の地出身だからなのか、呪われたダンピールだからなのか、孤独な過去を過ごしてきたからか。
 ただ一つ言えるのは、楽園は誰かに与えられるものではないということだ。
「もし本当に在るとすれば動物や植物にとっての楽園だろうな」
 太陽や水が溢れ、成長するのに危険のない場所があるのなら、そこは確かに動植物の楽園と呼べるのかもしれない。
 けれど生きていくうえで、何も障害がないということはあり得ない。そのことをシビラは知っているから。
「そして君達の力に頼らなくとも望んだモノは自分の手で掴み取る」
 何度もシビラに楽園に行こうと囁きかけてくる鳥たちに向かい、強い口調で宣言する。
「他人から与えられるような楽園は希望していない。願い下げだ」
 それがたとえどんなに素晴らしい場所だとしても。シビラには必要ない。望まない。
「かわいそうに。楽園の素晴らしさを知らないのね」
「タニンヲシンジラレナインダネ!」
 かつて食べた人間の顔で憐れむ楽園の鳥は、それならと舌なめずりをしてシビラを見てくる。鳥の頭が嘴を激しく打ち鳴らし、シビラに狙いを定める。
「一緒になれば行けるよ、楽園に。だから……体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ!」
 人間の顔が楽園を賛美する言葉を発しながら、鳥の頭が奇怪でおぞましい叫び声をあげ、シビラの身体を奪おうと迫る。
「やれやれ、願い下げだというのに……」
 しつこい勧誘にため息をこぼしながらも、シビラは自身の限界を超えるべく封印を解き、身体機能を向上させると、高速で呪文を詠唱。手にした魔導書から楽園の鳥たちへと全力魔法を乗せた凍てつく波動を解き放つ。
 分子や原子の運動さえ停止させる波長を受け、鳥たちはその身体機能を徐々に鈍らされていく。羽ばたいていた翼の動きがやがて止まり、なす術なく地面に転がる鳥たち。先ほどまで熱心に歌っていた楽園への賛歌を囀ることもままならない。
「言っただろう。そんな楽園は願い下げだと」
 放たれた冷気のように冷たい視線と声が鳥たちに注がれる。元凶を叩いたが、パレードに魅入られた友の姿は近くには見えなくて。
「露はどこにいる? ……私と似たような背と髪の少女なんだが、知らないか」
 攻撃の手を緩めずにそう問いかけるが、鳥たちは口や嘴をパクパクさせてしゃべることができない。
「遠くにはいっていないはずだ」
 鳥たちへの問いかけを諦め、シビラは月の光を辿るように友を探し始めた。

「あれ? ここは遊園地じゃないわ」
 パレードの中に懐かしい顔を見つけ、夢中で追っていた神坂・露(親友まっしぐら仔犬娘・f19223)は、ふと我に返ると、辺りを見回した。確かに桜が舞い散る遊園地にいたはずなのに。
 そこは露にとってどこか懐かしい場所のようだった。太陽がさんさんと陽光を照らす広くて温かい場所。
 きょろきょろと辺りを見渡すと露が追いかけていたあの人――露が人の身を得る前、ブルームーンストーンだった頃、最後に自分を手にしていた忘れられない人――と独特の衣装を身にまとった遊牧民族の人たちがいた。
 逆光で表情まではよく見えない。けれどあの人は確かにこちらを見て温かい笑顔を浮かべていた。そうしてその人は露へと手を差し出した。こっちにおいでと言うように。
「そっちへ行くのね」
 露は頷き、一歩二歩と歩みを進める。けれどふと、唐突に違和感を覚えた。
 石だった頃はひとりだった。でも人の身を得た今は、いつも隣に大切な大好きな存在がいて。
(「そうよ、レーちゃんがいないわ」)
 置いていくわけにはいかない。だからそっちに行くにしてもまずは親友を見つけてからだ。露の足はぴたりと止まった。
「ねえ、黒い服の女の子は? あたしと同じような銀の髪の女の子」
 するとその人は大丈夫だよ、と言った。その子は先に待っているよって。そうしてまた露に手を差し伸べてくる。
 そこでもまた強い違和感を覚え、露はぶんぶんと首を横に振る。
「ううん、嘘よ。それは嘘」
 作戦でもない限り、シビラが自分を置いて先に行ったりしない。先に行くときはちゃんと教えてくれる。
「だってレーちゃんは一人でいかないわ」
 だから、その言葉は嘘。
 はっきりとそう告げると、急に当たりの景色が揺らぎだし、目の前が真っ白になる。
 瞑った目を開いてみれば、そこは先ほどいた遊園地の敷地内で。いつの間にか広場の裏にある小さな小屋の前にいた。
「あれ、ここは……」
「露、探したぞ」
「レーちゃん?」
 ほんのわずかぶりだというのに、親友の顔が懐かしく感じられ、思わずひしっと抱きしめる。
「……正気に戻っているようだな」
「え、あたしはずっと正気よ」
 ただ、懐かしい人の姿が見えたから追いかけただけで。
「……まあ、いい。とりあえず残りをやっつけてしまうぞ」
 シビラの魔術により動きを鈍らせてあるが、まだ騒がしく鳴き叫ぶ鳥の姿もある。
「ちゃんとお仕事もするわ。任せて!」
 露はダガーを手に疾走しながら鳥たちにとどめの一撃を与えていく。それはさながら銀色の風のように。
 懐かしい人はもう見えない。けれど今は何よりも大切な親友のそばにいる。
 楽園が望む場所なのだとすれば、シビラがいるこの世界がきっと露にとっての楽園なのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

彩瑠・翼
見えたのは
追いかけた父さん…「あの子」が、
敵の見せる夢に囚われている姿

「あの子」の「お母さん」が生きてて
大切な人達とずっと神戸で幸せに暮らす世界

それは、「あの子」にとって
きっと一番幸せな世界だ

でも、父さんはいつもこう言うんだ
「色々あったけど、今が一番幸せだ」って
母さんと会えて、姉ちゃん達やオレが居る今が幸せだって
本当に嬉しそうに笑うんだ

だから、オレは「あの子」の手を取って言うんだ
囚われないでって

君の見る「幸せ」とは違うけど
君は幸せになれる
未来に居る君の息子であるオレが保証する

だから、振り返らずに前を見て
未来に進もう?

UC発動
敵の攻撃から「あの子」を守って
アリスランスで攻撃して敵をやっつけるんだ



●未来からの伝言
 パレードに紛れる幼い頃の姿の父を追いかけて、彩瑠・翼(希望の翼・f22017)が辿り着いた先には鳥と人間の顔を両方持つ、楽園を賛美するUDCの群れがいた。
『ラクエンハステキナトコロダヨ!』
「あなたが望んだ楽園に連れて行ってあげる」
 楽園の素晴らしさを囀る鳥たちの声を聞きながらも、翼はパレードと一緒にその先に消えた父の背中を追いかけた。
 辺りの景色が変わる。遊園地は消え、深い深い闇のような空間が広がっていた。
(「ここは、父さんの心の世界……?」)
 父が……幼い少年の姿の「あの子」が、暗闇の中、膝を抱えてうずくまっていた。だが辛い過去に囚われていた少年のもとに光が差し込む。
 事故で他界したはずの「おかあさん」が「あの子」に微笑みかける。今までと変わらない日常が、大切な人達と一緒にずっと大好きな神戸の街で幸せに暮らす世界。
 知らない場所に引っ越すこともなく、居場所を失うこともなく、ずっと望んでいた「あの子」が望む世界がそこにあった。
(「『あの子』にとってもそれが一番幸せな世界なんだ」)
 幸せそうな笑顔を浮かべる「あの子」を見れば翼もそう思わずにはいられない。
 ――本当にそれでいいの?
 その先の未来も素晴らしいものかもしれない。けれど翼は父がいつも言っていたことを思い出していた。
『色々あったけど、今が一番幸せだ』
 辛いことがあったのは事実。でもそれを乗り越えて得られた絆があって。
(「母さんと会えて、姉ちゃん達やオレが居る今が幸せだって……本当に嬉しそうに笑うんだ」)
 繋がる縁と結ばれる絆。闇に囚われた日々も、過去に向き合うために必要だったもの。大切な人たちがくれた光を、その居場所を守っていこうと誓ったのだ。
 翼は幸せな世界にまどろむ「あの子」へと駆け寄り、そっとその手を取る。
「これは夢なんだ。囚われないで」
 突然に現れた自分によく似た翼の姿に、「あの子」は不思議そうな顔をする。
「君の見る『幸せ』とは違うけど、君は幸せになれる」
 力強く確信を持った言葉とともにとびきりの笑顔を浮かべて。
「未来に居る君の息子であるオレが保証する」
 その言葉を「あの子」が信じたのかはわからない。けれど、何か感じるものがあったのだろう。小さく頷くのを見て、翼は手を取り歩き出す。
「だから、振り返らずに前を見て未来に進もう?」
 その先にはまだ大きな闇が待っているかもしれない。けれど必ず光が照らしてくれるから。
 心地よい楽園から不確かな未来へと進んでいけば、楽園の鳥たちが「あの子」を取り返そうと金切り声を上げて追いかけてくる。
「大丈夫だよ。オレに任せて!」
 安心させるようににこりと笑うと、翼は無敵の戦闘鎧を想像から創造する。楽園の鳥たちが自身の羽をかつて食べた人間の頭部に変え、生命力を奪おうと噛みついてくるが、翼の頑強な鎧はその攻撃を通さない。
「大切な人を守りたいのはオレも同じだから」
 白銀のアリスランスは使い手の想像力に応じて無限に進化する。この闇からも鳥たちからも「あの子」を守るのだという強い意志が槍を強固なものにする。
 勇気と覚悟をもった翼の一撃が楽園を讃える鳥たちを悪夢ごと引き裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんさつにっき】だよ!

たまこ、ドコまで行くのかな?

父ちゃんに見せたかったんだよね。
毎日卵かけご飯、食べてるんだよって!
きっと、羨ましがると思うんだー♪

母ちゃんも、喜んでくれるかな?
喜んで、おいらのご飯、横取りするかな?
横取りの歌と躍りも教えてくれたりするかな!

あれ?
なんかちがう?

え、カナタの想像なの?
仕方ないなあー、カナタは父ちゃん母ちゃんのコト、よく知らないもんね!

じゃあ、せっかくだからカッコよく倒そっか!
カナタの花吹雪の中、おいらが突っ込んでパンチ!
背中からアンちゃん飛び出て、どーん!!

おうちは大好きな場所だケド、楽園じゃないからなあ……
母ちゃん横取りするし、擽るし。
まあ、そのうち帰ろ!


木元・刀
【かんさつにっき】で。

パレードの後を追って、導かれた先は。

楽園?
確かに、今日は楽しかったですが。
兄さん姉さんとのお花見、懐かしい人たち。
……まあ、将来の義兄さんはあんな人!?って衝撃もありました。

母さんが笑ってお帰りなさいと言い。
父さんがよく戻ったと頭を撫でてくれる。
今回もまた、記憶にある二人のとおり。

……そうですよね。
二人がそんな風に迎えてくれるわけがない。
覚えてる限り、僕の予想どおりだったことなんて、一度もなかった!

これは、幻影。
意外性がないのは、僕の想像力の限界ですね……

まずは僕が露払いを。
豪華絢爛な染井吉野もよいですが、愛らしい糸括嵐は如何ですか?

兄さん姉さんには良く似合いますね。


木元・杏
【かんさつにっき】
パレードの終着地…ここは?
お花見と遊園地の記憶
懐かしさがよぎるパレードの誘い
楽しい時間が終わったら、帰る場所は、「家」
まつりんと刀がいて、おとうさんとおかあさんがいる、あの暖かい空間
ああ、帰ってきた…
おかあさんが優しく頭を撫でて、おとうさんも優しく見守っ…てる

違う
おかあさんは、もっと明るく元気
おとうさんは、もっとヘタレ!

ん、まつりん、刀(頷き)
【どれすあっぷ・CBA】

ん。いつもの和風ミニスカ姿に変身
これが「わたし」
刀の花吹雪の中、まつりんと突進
まつりん!
まつりんの背を踏み台にジャンプ
わたしは上からうさみん☆を投げて
うさみん☆、目潰し

倒した?
なら、帰ろう。今のわたし達の家へ



●いつか帰る家
 メリーゴーランドにアニマルパレード、最後は懐かしい両親を乗せたフロートがパレードの行列をなして向かった先。
「パレードの終着地……ここは?」
 懐かしさを胸に抱きながら後を追っていた木元・杏(メイド大戦・f16565)は、聞こえてくる声に耳を澄ませた。
 鳥たちの囀りが聞こえる。楽園を讃えるその歌が遊園地中にずっと響いていた。
「楽園?」
 その歌を耳にした木元・刀(端の多い障害・f24104)は訝し気に眉を寄せる。
「確かに、今日は楽しかったですが」
 久しぶりのきょうだい三人でのお花見。それに母や父といった懐かしい人たちの姿も見れた。
(「……まあ、将来の義兄さんはあんな人!? って衝撃もありましたけど」)
 杏の夢見る王子様がゴリマッチョだったことはかなり衝撃的であったけれど。父はゴリマッチョだろうが、もやしっ子だろうが、杏をお嫁にやるなどと考えただけで、相手が誰であれ涙ぐんでしまいそうだと思って刀は苦笑する。
「たまこ、ドコまで行くのかな?」
 飼い鶏のたまこのあとをついて歩く木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)は、二人を振り返って無邪気に訊ねた。
 パレードは続いていた。先ほど消えたはずのたまこが最後尾を歩いていて、けれどそれを不思議とは思わない。楽園の鳥たちの歌声がずっと響いていた。
「父ちゃんに見せたかったんだよね」
 たまこは家の守り鶏。毎朝たまごを与えてくれる祭莉と杏にとって大切な鶏なのだ。
「毎日卵かけご飯、食べてるんだよって! きっと、羨ましがると思うんだー♪」
「ん、きっといいなって言ってくれる」
 杏がふふふ、と笑うとそこには懐かしい両親と暮らした家が見えてきた。
(「そうだよね、楽しい時間が終わったら、帰る場所は……きっと家」)
『祭莉、杏、刀、お帰りなさい!』
 明るく優しい笑顔の母が三人を出迎える。きょうだい三人の頭を順番に優しく撫でてくれて。
『よく戻ったな』
 刀の頭を優しく撫でる父は記憶の通りで。
「母ちゃん、見てよこれがたまこ! たまこのたまごはとっても美味しいんだよー!」
 祭莉の言葉に母は優しい笑みを浮かべている。けれどきっと喜んで、祭莉のご飯を横取りしたりするのだ。なんなら横取りの歌と踊りを教えてくれたりもするのだ。
 けれど目の前の母はただただ優しく微笑み、祭莉の頭を撫でてくれるだけ。父もそれを優しく見守っていて――。
「あれ? なんかちがう?」
 祭莉が目をぱちくりさせると、杏もうん、と大きく頷いた。
「おかあさんは、もっと明るく元気! おとうさんは、もっとヘタレ!」
 びしっと指を差しながら、その違和感を指摘する。
「……そうですよね。二人がこんな風に迎えてくれるわけがない」
 兄と姉の指摘に、刀もゆっくりと頷く。そうであってほしいと願った両親の姿。兄や姉に比べると父と母との記憶は少ないけれど。
「覚えてる限り、僕の予想どおりだったことなんて、一度もなかった!」
 何もかもが予想外。そもそも一番末っ子の守られるべき存在の自分が、いろいろあって大きく成長したとはいえ、修行のために異世界に放り込んだりされるなんてことは想像できなかった。
「これは、幻影。意外性がないのは、僕の想像力の限界ですね……」
「え、カナタの想像なの?」
 なるほど、と祭莉は納得する。両親でありながら両親らしくないのは刀の想像する両親像だからなのだと。
「仕方ないなあー、カナタは父ちゃん母ちゃんのコト、よく知らないもんね!」
 すっかり両親の破天荒さに慣れている……というか、受け継いでいる祭莉はぽんぽんと弟の肩をジャンプしながら叩くと、にぱっと明るい笑顔を見せた。
「じゃあ、せっかくだからみんなでカッコよく倒そっか!」
「ん、まつりん、刀」
 こくりと杏が頷き、ユーベルコードを発動させると、デニムのワンピースのお出かけ服から、いつもの和風ミニスカ姿へと変身する。その瞬間、幻の両親の後ろから楽園の鳥が姿を現す。
『ズットココニイタラヨカッタノニ!』
「楽園にいましょうよ? ここがあなたたちの望む世界」
 人と鳥の顔をした鳥たちが翼を広げて通せんぼする。
「ええ、兄さん、姉さん。……まずは僕が露払いを」
 刀の言葉と共に、無数の鈴蘭の花びらが楽園を賛美する鳥たちへと嵐のように襲い掛かる。
「豪華絢爛な染井吉野もよいですが、愛らしい糸括嵐は如何ですか?」
「偽物のおうちには帰れないからね!」
 花びらの嵐が起こす花吹雪の中、祭莉の覇気をこめた拳が超高速で叩き込まれる。
「まつりん!」
 何も言わずとも息ぴったりに、クールビューティーとなった杏は突進すると攻撃を叩き込んだ祭莉の背中を踏み台に大きくジャンプした。舞い散る桜の花びらが高速で飛翔する力を与えてくれる。
 空中でその威力を増強されたうさ耳付きメイドさん人形【うさみみメイド・うさみん☆】を投げれば、糸で操られたそれはひらりと舞って、相手の目潰しとなる。そこへすかさず祭莉が拳を叩き込めば、叫び声を上げながら、鳥たちは次々と地に墜ちていく。
 刀の花びらが逃れようとする鳥たちを囲い込んで閉じ込める。杏と祭莉が舞う花びらの中、次々と敵を黙らせていく。
「兄さん姉さんには良く似合いますね」
 花びらが舞い散る光景に刀はふっと柔らかく微笑む。
「おうちは大好きな場所だケド、楽園じゃないからなあ……」
 愉快な両親。母は平気で横取りするし、くすぐってきたりする。それが楽園なのかと問われたら、やっぱり違う気がする。
「それでも懐かしかったですね」
「うん、父ちゃんや母ちゃんのいる家には……まあ、そのうち帰ろ!」
 急がなくてもきっとのんびり待っていると祭莉は思うのだ。
 楽園の歌を囀るのをやめた鳥たち。辺りは、もといた遊園地の風景に戻っていた。
「倒した? なら、帰ろう。今のわたし達の家へ」
 そこは楽園ではないのかもしれないけれど。温かくて大切な場所に違いないのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九十九・白斗
【BP】
戦場の記憶は克服した
未来ならパラスがいる
何も恐れるものは無い

だが、相手の姿を見て衝撃が走る

順子…

若いころ、この戦争が終わったら結婚するんだと言ってた相手
戦場から帰ったらいなくなっており連絡もつかなかった
愛想をつかされたんだと思っていた

UDCに食われていたのか

彼女が逃げたと思った自分が、彼女の心を裏切っていた
守ってもやれなかった

自己嫌悪にめまいを感じる

このUDCは許せない

そう思って銃を向けるが、彼女に引き金が引けない

彼女が近づいてきても動けず噛みつかれる

とっさに合気で投げ飛ばす

だがそれ以上攻撃ができない

その敵をパラスが撃つ

敵を倒した後にカメラを拾った
現像すると満開の桜の遊園地が映っていた


パラス・アテナ
【BP】
楽園が見えるとか嘯いていたが
虚しい廃墟が広がるばかり
楽園なんざ分不相応さね

鳥の頭は死者のもの
失った楽園の連中に似てるとは洒落が効いてるね
アタシを呼ぶ楽園の住人の囀りに照準を合わせれば
珍しく動揺した白斗の背中とぶつかって

状況察して前に出る
そいつはアタシが受け持つ
アンタはあっちを頼んだよ

居場所を入れ替えて白斗の楽園と向かい合う
白斗が惚れた女は笑顔で手を差し伸べてくる
あれが順子
白斗の楽園
女の趣味は悪くないようだね
けど悪いが今の白斗はアタシのなんだ
アンタにはやらないよ
骸の海へお還り

先制攻撃で先手を打つ
鎧無視攻撃制圧射撃で足止め指定UC

さあ帰るよ
旨い酒でも手向けてやろうじゃないか
楽園ってやつにさ



●失われた楽園
 死者の行列を追っていけば、そこには招き寄せた人を喰らったという楽園を賛美する鳥の群れ。
『ラクエンハステキナトコロダヨ!』
『ラクエンニツレテッテアゲルヨ!』
 鳥の頭が甲高い声を上げて楽園を讃える。鳥がくるり、と半回転すれば人間の顔が現れる。
「あなたの欲しいものがここで手に入るよ……さあ、楽園においでよ!」
「なんだ……今度は鳥か?」
 人の顔と鳥の顔ふたつを持つUDCを訝し気に見やりながら、九十九・白斗(傭兵・f02173)はそう呟く。
 敵に死角を作らないように、白斗と背中合わせになりながら楽園の鳥たちの身勝手な言葉を耳にしていたパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は辺りを見渡した。
 パラスの目には、楽園どころか虚しい廃墟が広がっている光景が映る。これが自分の望む世界なのかと皮肉に思う。
(「楽園なんざ分不相応さね」)
 長い間、戦いの中に身を置いてきた。多くの生き死にをこの目で見て、多くの命を奪ってきた。そんな自分が日の当たる明るい場所で安らかに過ごす未来は考えられない。
(「ああ、それにしても……」)
 鳥たちの頭は死者のものだというが、その中に見知った顔を見つけて苦笑いをこぼす。
(「失った楽園の連中に似てるとは洒落が効いてるね」)
 死んだ者の顔と声で自分を呼ぶ楽園の鳥へと、パラスは共に何度も死線を抜けた相棒【EK-I357N6『ニケ』】を構え、照準を合わせる。
 迷いはない。こんな悪趣味な幻影は何度も見てきたのだから。
 無表情で楽園の住人を撃ち抜いていると、背中合わせでお互い敵と対峙していた白斗とぶつかる。辺りが見えないぐらい動揺している様子の白斗を窺うと、彼はパラスの知らない女の名前を口にしていた。
「順子……」
 心底驚いた表情で白斗が見ている先には、UDCアース育ちに見える女性の顔。白斗を見て懐かしそうに微笑む顔は愛嬌があって美しかった。
「その鳥は喰らった人間の姿になれるんだったか」
 ここは白斗が昔来たことのある思い出の遊園地。ならばそこで白斗の知り合いが犠牲になっていても不思議はない。
「まさか、UDCに食われて……」
 先ほど見たおぞましい死者たちの行列。戦場では大人も子供も男も女もなく命は失われていく。撃ちたくもない敵を撃ったことも、恨みをかって罵倒されたことも数えきれない。けれどそんな戦場の記憶も長い時をかけ克服することができた。この先の未来ならば一緒に歩むパラスがいる。何も恐れるものはないはずだった。
 それなのに。昔愛した女の姿を前にした白斗はかつてないほどの衝撃を受け、立ちすくんでいた。
 まだ白斗が若い頃、この戦争が終わったら結婚するんだと約束していた相手。今思えば、それは物語によくある叶わない約束というものだったのだと思ってしまうが。その当時はそんなことが自分の身に起こるなどと思ってもみなかった。
 なんとかその戦争も生き延びて、ようやく帰ってきた白斗を彼女は待っていてはくれなかった。姿を消して連絡もつかなくなったのだ。
 きっと愛想をつかされたのだと思っていた。他にいい男でも見つけたのだとそう勝手に思い込んで。
『ずっと待っていたのよ。ああ、ようやく帰ってきてくれた』
 順子が……いや、順子の顔をしたUDCが白斗に微笑みかける。そこにあるのは純粋な愛情と信頼で。彼女が逃げたと思っていた白斗は自分こそが彼女の心を裏切っていたのだとようやく気づく。何も知らず、UDCから守ってやることもできなかったのだと。
 自己嫌悪にめまいを感じ、それとともに目の前のUDCに強い怒りを感じる。絶対に許せない。そう思うのに、彼女の顔をしたそれに銃を向けても撃つことができなくて。
『ねえ、どうしたの? どうして怖い顔をしているの? わたしを迎えに来てくれたんでしょう?』
 悲しそうな顔をする順子は目を伏せるが、ねえと白斗へと近づいてくる。これは彼女じゃない、UDCだ。頭ではわかっているのに、引き金が引けない。そんな白斗へと近づいてきた順子はにっこりと笑うと、突然に白斗の腕へと噛みついた。戦場で鍛え抜かれた護身本能が、咄嗟に彼女を投げ飛ばす。
『きゃあ! ひどい、どうして……』
 噛みついてきたということは、彼女であるはずがないのに、それでも白斗はそれ以上の攻撃ができなかった。と、その順子の腕が銃弾に貫かれる。――パラスだ。
「そいつはアタシが受け持つ。アンタはあっちを頼んだよ」
 何も言わずとも状況を察したパラスが白斗の前に躍り出た。
「……パラス……悪い」
 白斗はそれ以上何も言わず、パラスが相手をしていた鳥の群れへと向き合う。
「アタシの方は幻影みたいだが、アンタのは本物かもしれないね」
 白斗の『楽園』と向かい合ったパラスは目の前の女を観察した。ただの美人ではなく、芯の強そうなそれでいて愛情深そうな、この世界でいうところの大和撫子なのだろう。
『ねえ、あの人を返して。わたしの大切な人なのよ』
(「あれが順子」)
 白斗が惚れた女。白斗の楽園。
 笑顔でこちらに手を差し伸べてくる順子へとパラスも笑みを返す。
「女の趣味は悪くないようだね……けど悪いが今の白斗はアタシのなんだ。アンタにはやらないよ」
 どれほど順子が白斗を想っていても、死者はもう帰ってこない。その上白斗まで引きずり込まれるわけにはいかない。オブリビオンに食われたのなら、できることはひとつだけ。
「骸の海へお還り」
 言い終わる前に動き出したパラスが放った弾丸は、順子の足元を狙ったもの。こちらへと来れないように絶え間なく撃ち込んだ弾丸で足止めしているうちに、もう片方の手で集中力と共に威力と命中率を極限まで高めた弾丸を込めた銃口を順子へと向ける。
 狙いすまされた一発の弾丸は、足元に気をとられていた順子のこめかみを撃ち抜いた。
 金切り声を上げたのは順子から鳥の姿に戻ったUDCだ。身体を震わせるとやがて動かなくなった。
 白斗もまたしつこく楽園を賛美する鳥の身体を持ち上げ、振り回して投げ飛ばしたり叩きつけたりとその数を減らしていく。
 死者たちの声も鳥の囀りも、ついには聞こえなくなった。
「さあ仕事は済んだんだ、帰るよ。旨い酒でも手向けてやろうじゃないか、楽園ってやつにさ」
 パラスは何も聞かず、白斗を労うようにそう声をかけた。せめて死者たちが彼らの願う楽園に辿り着けるように。
 UDCを全滅させると、そこは元の遊園地の姿を取り戻す。順子が最後に倒れたその場所で、白斗はカメラを拾った。彼女が持っていたものに似ている気がする。古いもので、フィルムを現像しないといけないようだが、白斗はそれを持って帰ることにした。
 あの桜がまだ苗木だった頃に彼女もここを訪れていたのだろうか。戦場に赴いた白斗が花見には行けないなとこぼした言葉を覚えていてくれたのだろうか。
「……ああ、今日は飲むか。美味いのを頼むぜ、バーテンダー」

 後日、白斗が拾ったカメラのフィルムを現像すると、そこには満開の桜の時期の遊園地が映っていた。いろいろな角度から撮られた写真は、桜を中心に撮影されたものばかりだった。
 まるで、花見ができないと言っていた誰かへとその美しさを伝えようとしているかのように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月24日


挿絵イラスト