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帝竜の消えた世界で~守れ、『真紅の宝石』!

#アックス&ウィザーズ #戦後

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#戦後


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 剣と竜と魔法の世界。『アックス&ウィザーズ』と猟兵達が呼ぶ、その世界。
 世界を滅びに導かんとした『帝竜』は猟兵達の活躍の前に討たれ、その野望は露と消えた。
 世界は平和へと向かいつつあるが……今、この世界には猟書家と言う新たな脅威が忍び寄っていた。
 とは言え、そんな新たな脅威は猟兵達の活躍により最小限に食い止められているのだが。

 だが、しかしだ。この世界から新たな脅威以外の危険が消えたのかと言えばそうではない。
 確かに『帝竜』は討たれた。猟書家の侵略も、抑え込みつつある。
 だが『帝竜』が滅びれば自動的に元からこの世界で生きるモンスターが消え去る訳でも、オブリビオンの残党が消え失せる訳でも無いのだ。
 ……世界各地には、今もまだ危険な存在達が多くいる。この世界で活動する冒険者達ですら手に負えない程の。

 ──故に、猟兵達の力も。まだこの世界は、必要としているのだ。



 ここは、『アックス&ウィザーズ』世界のとある農村。
 都市間を結ぶ大街道の脇にあり、とある作物の名産地として知られている村でもある。
 厳しい冬を越え、花の蕾が綻ぶこの季節。旬を迎えて収穫時期に入るその作物を求め、近隣都市から買付に訪れる商人が列を成すのが、この村での風物詩でもあった。

「もう、そんな時期だなぁ。どうだい、そっちの出来は?」
「あぁ。今年も上々って所だなぁ」

 そんな季節の訪れに、村人達の表情も明るい。
 一年間、手塩にかけて育ててきた作物だ。我が子も同然のその作物が高い評価を受けて多くの人に求められるのは、まさに冥利に尽きると言った所。
 今年は街道にどれだけの列が出来るだろうか。その事を想像すれば、村人達の表情が綻ぶのも当然の事だろう。

(……そう言えば、アレからそろそろ一年か)

 そんな中でふと、一人の青年農民が思い出す。
 今からちょうど一年前の事。この村は、作物を狙う少女と毛むくじゃらの亜人の襲撃を受けた事がある。
 幸い、駆けつけた腕利きの冒険者(確か、『猟兵』と名乗っていたか)の活躍により襲撃者達は退けられ、村の被害は軽微で済んだ。農作物にも被害は無く、無事に多くを出荷出来る事も出来ていた。
 あの事件から、もう一年。その事を思い出し、農民の頭に過るのは……礼として供された作物を口に含み、幸せそうに笑う『猟兵』達の姿であった。
 ……彼らは、元気にしているだろうか? 味を懐かしみ、今年も訪れたりはしないだろうか? もし訪れたのなら、その時はまた彼らに振る舞うのも悪くは無いのだが──。

「──たっ、大変だぁーっ!」

 そんな青年の夢想は、別の青年の必死の叫びに打ち消された。
 遠くから駆け込んでくる彼は、村で唯一の猟師である。
 今日は街道沿いの平原に出ると聞いていたのだが……一体何が、あったのだろうか?



「お集まり頂きまして、ありがとうございます」

 銀の艶髪を揺らし、ヴィクトリア・アイニッヒ(陽光の信徒・f00408)が猟兵達を迎え入れる。
 微笑みを絶やさぬその表情に、険の色は薄い。
 どうやら今回は、それ程差し迫った危機……という案件でも無いらしい。

「今回皆さんに赴いて頂きますのは、『アックス&ウィザーズ』世界のとある農村です」

 その農村は、これからの時期に旬を迎えるとある作物の名産地として知られる地なのだとか。
 程よい酸味と確かな甘みが特徴で、収穫期となる頃になると周辺都市から買付に訪れた商人の列が街道に並ぶ程の名物であるらしい。
 ……ヴィクトリアの語るその説明を聞いて、思い当たりのある者もいるかもしれない。
 『フレイムベリー』の村? と口にした誰かの声を聞いて、ヴィクトリアも頷きを返す。

「えぇ。今回赴いて頂くのは、『フレイムベリー』の村となります」

 『フレイムベリー』。件の農村で収穫される、ストロベリーの一種である。
 その特徴は、目に鮮やかな紅と非常に大粒な事。味の方はどうかと言えば、先に触れた通り。程よい酸味と確かな甘みの、絶品である。
 その村が、どうかしたのだろうか。

「実は、その村がゴブリンの襲撃を受ける未来を予知しまして」

 皆さんには、その襲撃を阻止して頂きたいのです、と。ヴィクトリアが、言葉を紡ぐ。
 猟兵達が転送されて現地に到着するのは、村の猟師が大慌てで村に駆け戻ってきた頃になる。
 村人達はその報を聞いて、慌てて防衛戦の準備を始めるが……まずはそれに便乗して、戦支度を手伝うと良いだろう。

「とは言え、時間や地理条件を考えるとそれ程大した準備は出来ないでしょうから……」

 猟師がゴブリンの群れを発見したのは、街道沿いの平地。村の目と鼻の先であり、時間の猶予はほぼ無いと言っていいはずだ。
 なので、準備の方は村人達の精神安定を図る程度と割り切って。実際の戦闘の際には、準備した物に頼らず打って出るべきだろう。
 ……敵となるゴブリンには、上位種の様な存在は認められていない。言わば有象無象であるからして、猟兵が力を振るえば鎧袖一触薙ぎ払えるのは間違いない。
 突然の事態に動揺著しいだろう村人達を落ち着かせる為にも。生命の埒外とも呼ばれるその力を見せつけてやると良いだろう。

「巨悪を挫く事も大切ですが、小さな平和を守る事も私達の務めです」

 皆さんの御力を、お貸し下さい、と。
 丁寧に頭を下げかけたヴィクトリアが、思い出した様に顔を上げた。

「……そう言えば。件の村の『フレイムベリー』は、ちょうど収穫期に入る時期ですね」

 全てが無事に終われば、旬のその味を楽しんでみるのも一興かもしれませんね、と微笑むヴィクトリア。必要な手配等は彼女が担当してくれるので、その時が来れば気軽に参加すれば良いだろう。
 ともあれ、まずは村人の動揺を抑える為の防備の準備。そしてその後の戦いを、無事に乗り越えねばならない。
 難しい依頼では無いとは言え。引き締める所は引き締めて、臨むと良いだろう。

「それでは、改めまして……」

 皆さんの御力を、お貸し下さい。
 丁寧な礼をして、ヴィクトリアは猟兵達を現地に送り出すのだった。


月城祐一
 こんにちは新年度。
 どうも、月城祐一です。今年こそはホント、落ち着いた年になって……なれよホント(震え声)

 今回はアックス&ウィザーズ世界。難易度は緩めの予定。
 とある農村の襲い掛かるゴブリンを撃退して頂く依頼となります。
 参考までに、この『農村』に関わる過去の事件は ↓ こちら ↓ になります。
( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22626 )
 読まずにご参加頂いても問題はありませんが、宜しければ是非ご一読下さい。
 それでは、以下は捕捉となります。

 第一章は冒険。
 村人達を手伝って、防衛戦の準備を進めて頂きます。

 村周辺の地形は、村の裏手側に小高い丘がある以外は大部分が平野。
 都市部を繋ぐ大街道に面しており、障害となりそうな物はありません。
 そんな場所の目と鼻の先に、ゴブリンの集団が現れたのだからさぁ大変……と言った状態からスタートします。
 村人達は著しく動揺しており、また準備時間も多く取れません。資材の方も農村ですから高が知れています。
 ですので準備の方は村人達の精神安定の為程度と割り切って、まずは彼らの動揺を抑えると良いかもしれません。

 第二章は集団戦。
 皆様御存知の有象無象、ゴブリンが相手です。

 OPの通り、敵集団は統率する上位種も無く有象無象。
 猟兵がどーんとぶつかれば蹴散らす事だけなら難しくありません。
 村人達の心の安定の為にも、さっくりと薙ぎ倒すと良いでしょう。

 第三章は日常。
 お楽しみの時間ですが、詳細は不明です。
 名産物は旬の苺ですが、詳細は不明ったら不明です。
 章が進展した際に細かい状況は開示しますので、ご了承下さい。

 平和な農村に突如現れた小鬼の軍勢。
 猟兵達は敵を討ち、村を救う事が出来るだろうか?
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 冒険 『防衛戦の準備』

POW   :    力仕事で防衛の壁作りや兵器の設置をする。

SPD   :    速さで偵察や罠を仕掛ける。

WIZ   :    防衛の作戦や地形利用した案をだす。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




「──たっ、大変だぁーっ!」

 必死の叫びと共に、駆け込む男。
 村唯一の猟師の青年のその慌てた様子に、その場に居合わせた村人達が顔を見合わせる。

「お、おい。どうしたんだそんなに慌てて……」

 そんな猟師に声を掛けながら、何があったか尋ねる声。
 その声に、息を整えながら……猟師が答える。

「ご、ゴブリンが! ゴブリンの群れが、すぐそこまで来てる!」

 その答えに、村人達は再び顔を見合わせて……次の瞬間、強い動揺に襲われた。
 ……村の周囲は、見通しの良い平原だ。大街道も通っており、地も良く均されている。
 そんな立地条件で、『すぐそこまで』の距離にゴブリンの群れが迫っているという事は……襲撃までの猶予は、もう幾ばくも無いという事なのだから。

「ま、まずは女子供を家に匿うんじゃ! それと、誰か村の周りの柵の確認と……!」

 慌てふためきながら、動き出す村人達。だがその動きは動揺のせいか、遅々として進まない。
 彼らの動揺を鎮めるには、『村の守りは盤石だ』と思わせる事が必要だろう。だが時間も、人手も、資材すらも。この村には、何もかもが足りない。
 一体どうすればこの危機を乗り越える事が出来るのか……猟兵達が村へ辿り着いたのは、まさにそんな時であった。
 果たして猟兵達は、慌てふためく村人達を落ち着かせ、迫る小鬼の群れを殲滅する事が出来るだろうか?
松雪・門奈
アドリブ大歓迎!

POWを選択

あらあら… これは大変ね。
死の恐怖がすぐそこまで来ている… それはとても恐ろしいでしょう…
でも… わたしと祈りし者達が居るわ。
だから大丈夫よ、安心なさいな。

行動
わたしは《祈りし者達》で召喚した奉仕者達と共に砦を築く手伝いを致しましょう。
奉仕者達は砦建築に回して、わたしは木材を取りに向かうわ。
伐採して良い木があるのなら、わたしの魔導書から〈斬撃波〉を投射して切り倒すわね。

わたしは僵尸の中では脆く、木なんて運んだら腕が曲げてしまうわ…
だから、力自慢の村人に運ぶのを手伝ってもらえないか、お願いしてみましょう。





「あらあら……これは大変ね」

 慌てふためく村人達に掛かる、落ち着いた声。
 その声に村人達が振り返れば、そこに居たのは一人の少女。
 金の髪を嫋やかに揺らす、大人びた佇まいの少女だ。

「死の恐怖がそこまで来ている。それはとても恐ろしい事でしょう……」

 そんな少女から放たれる声。その声を聞けば、ざわつく村人達の心に染み入るかのように届き渡り……その動揺を落ち着けていくだろう。
 少しずつ静まる村人達。そんな彼らに畳み掛けるかのように。

「でも、私と【祈りし者達(プレアーズ)】がいるわ。だから、大丈夫よ。安心なさいな」

 少女──松雪・門奈(内に秘めたる狂気・f32788)が告げれば。その言葉を聞いた村人達は、完璧とは言えないが平静を取り戻す事だろう。
 そんな村人達の様子に、満足げに頷く門奈に。

「し、しかし安心しろったって。ゴブリンどもは、実際にすぐそこまで……」

 実際にその姿を見た猟師の男が問う。
 彼は実際に、門奈の言う所の『死の恐怖』をその目で見ているのだ。他の者よりも一際強く、その心を揺るがしているのは当然の事だろう。
 そんな彼にすら、安心感を与えるには。

「そうね。では、実際に大丈夫だって所を証明する為にも──」

 実際に、動いて見せつけるのが一番だ。
 瞳を閉じて心の内で呟いたのは、忠実なる傀儡を喚び出す言葉。その言葉に応じる様に、門奈の足元の影から湧き出てくるのは……別の世界でUDC(アンディファインドクリーチャー)と呼ばれる異界の存在。門奈が傀儡とするのはそんな存在の中でも低位の者であるが……。

「──この奉仕者達を使って、砦の建築をさせるわね」

 それでも事、城や街と言った建築に関しては一級品だ。
 喚び出した奉仕者の総数は、実に65体。その権能を全力で活かし、守りが備わっていく様子を見せつければ……村人達の心を落ち着かせる事にも繋がるはずだ。

(とは言え、時間もあまり無いようだし。砦と言えるほど立派な物を作るのは難しいかしら……)

 そんな目論見で居並ぶ奉仕者達に指示を下しつつ、門奈は穏やかな表情のまま考える。
 例のゴブリンの群れが村に押し寄せるのには、それ程時間の余裕は無いのだという。いくら奉仕者達が建築を得手としているとは言え、時間が無ければその真価を発揮できないのは明白だ。
 まぁその辺りは。ある程度の防壁を並べてお茶を濁す事も出来なくは無い。その為にも……。

「資材を集めないと。伐採して良い木は、無いかしら?」

 不足しがちな建築資材を、掻き集めねばならない。
 ……今から伐採しても、生木になるから建材としては不敵だが。間に合わせの防備の為だ、問題は無いだろう。
 とは言え、問題は……。

「……力自慢の方、木を運ぶのを手伝って貰えないかしら?」

 その魂を護符に封じる事で、死してもなお身体を腐らせず、またオブリビオンにも堕ちない僵尸(キョンシー)という種族。
 そんな種族にルーツを持つ門奈であるが、彼女はその身体に弱点を抱えている。並の僵尸より身体が脆く、近接戦闘を不得手としているのだ。
 そんな弱点を抱える門奈であるからして。重い材木を運ぶ事など、出来るはずが無い。仮に、門奈が材木を運ぼうとしたら……その腕は容易くもげ落ちてしまうだろう。

「お、おぉ。そうだな、お嬢ちゃんみたいな娘に、そんな重い物を持たせるのはな……」

 ……そんな場面を、折角動揺が落ち着きかけている村人に見せるのは宜しくないと。配慮も込めた門奈のそのお願いを聞けば、その場に居並ぶ村人の中から数人が動き出す。
 日頃から農作業に従事する村人達だ。力自慢は、一人や二人では無いだろう。
 そんな彼らの協力を得つつ、門奈は村に植えられた幾つかの木々を伐採して……建築作業に勤しむ奉仕者の下へと、建材を運び出すのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニクロム・チタノ
あそこの村だね?
おーい村の皆さん大丈夫ですか?
まずはみんなの動揺をなんとかしないと!
チタノ私に反抗の祝印を
大丈夫、みんなには反抗の竜チタノの加護がついてますから
それより先代反抗者達とまず木で柵を作りましょう、無いよりある方が心強いです
チタノがその間見張ってますから
それに動いてた方が気も紛れます、敵が攻めて来てもボク達猟兵がいますから!
チタノこの村と人々に反抗の加護と導きを





 猟兵が操る傀儡による築城(と呼ぶには、些か規模が小さいが……)が始まった、その一方。
 村の別の場所でも、柵を補強する作業に勤しむ者達がいた。
 ……とは言え、作業に勤しむ村人達はどこか気もそぞろと言った様子である。

「ゆっくりでいいですから、まずは柵をしっかり補強しましょうね?」

 そんな村人達を落ち着かせるように声を掛けたのは、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)だった。
 ニクロムは、反抗の竜『チタノ』なる存在によって選ばれた者にして、その加護を持つ少女である。
 その性質は、素直であり直情的。そんな彼女はグリモアベースで今回の案件を聞いてから、『困っている村人達を助けたい』と強く願っていた。

(……うぅん。村の皆さんの集中力が、続かない……)

 だが、そんなニクロムの想いとは裏腹に。村人達の集中は、一向に戻る様子が無い。
 やはり、村に迫りつつあるというゴブリンの群れという明確な脅威が気になるのか。意識は村の外の平原へと傾いているようだ。

(まずは、みんなの動揺をなんとかしないと……!)

 そのために必要なのは、『この場が安全だ』としっかりと認識させる事だろうか。
 そう考えたニクロムは、その手を胸元で組み上げ希う。

「──チタノ、私に反抗の祝印を!」

 村人達を救いたい。その為の、加護を与え給えと。
 清廉なその願いを力に変えて、胸に刻まれた刻印が一際強い光を放って応えれば……顕れ出たのは、ニクロムに力を与えた反抗の竜と、竜に認められし先達の数々。
 威風堂々足る力と存在感に満ちたその存在が顕れれば、必然村人達の意識は彼らに引き寄せられて。

「大丈夫、みんなには、チタノの加護がついています。それにもし敵が攻めて来ても……ボク達『猟兵』がいますから!」

 そんな力強い存在が。そして以前も村を守った『猟兵』が、今度も皆を守ってくれるのだと。
 ニクロムが声を掛けて回れば、少しずつ……本当に、少しずつだが。村人達の意識は作業へ向いて、効率も上がっていくだろう。
 ……こうなれば、後は作業に集中させれば良い。一つの事に集中すれば、不安に圧し潰されそうな心も紛れてくれる事だろう。

(──チタノ。この村と人々に、反抗の加護と導きを……)

 村の外への警戒をチタノに任せ、作業に勤しむ村人達を見守るニクロム。
 その赤い瞳には、優しげな光が輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒にゴブリン退治だよ!

ボクは前に来た事あるからミフェットのことを紹介するね♪
ゴブリンをやっつけて今年もイチゴをいただくぞー☆

ミフェットが村の周りに罠を準備してくれるみたいだからボクは偵察にいってくるぞー☆
背中の翅を羽ばたいて上空からゴブリン達のことを観察するね♪
ヴィクトリアが言ってた通り、普通のゴブリンばっかりだね!これならボク達だけで大丈夫そうだ♪

でも、ミフェット達が仕掛けた罠の方向からちょっとズレちゃってるかも?
村に近寄って来たらちょっと誘導しなきゃかもだね!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒にお手伝い!
この先も村でがんばれるように、いっしょに村を守らなきゃ、ね
それじゃいっしょに作戦会議!

WIZで判定
はじめての村だから〈コミュ力・情報収集〉でしんちょーにお願いして情報収集
村のまわりの地形を教えてもらって、ゴブリンたちのルートに罠を仕掛けよう!

作るのは〈罠使い・トンネル掘り〉で考えた簡単な落とし穴
これでゴブリン達が近寄ってきても大丈夫!
ティエルにはゴブリンたちを偵察してもらって、近づいてきたら教えてもらうね
村人さんは村に下がってもらうよ

あとはミフェットたちがやっつけに行くから、みんなは落とし穴がバレないように隠れてて?
ゴブリンが穴に落ちたらやっつけてね!


リコ・エンブラエル
●POW

帝竜戦役の終結から一年経とうするが、平和が訪れてもオブリビオンの脅威は去らず、か
だが、猟書家の襲撃でないのが不幸中の幸いであろう

…なるほど
資材がなければ、時間もないという訳か
木々を切り出すなど悠長な事はできんな

それならば、資材を使わない防衛線を築こうではないないか
木材がなければ土を掘れば良い
掘り出した後は空堀とし、残土は土塁として活用する
これであれば、何も備えをしないよりはマシだ
だが、流石に人力では時間的に厳しいものだ
であれば、機械による掘削だ
『ヘビーアームド・ウェポナイズ』によりギアの出力を上げよう
気休め程度であるが、人力ではなし得ない作業の様子で村民の不安が払拭されればいいのだが





 村の外に並び始めた、防壁の数々。
 建築を権能とする異形の奉仕者のその力のせいか、短い時間で準備がされたにしてはその見てくれは中々に立派であった。
 そんな防壁の、すぐ外側で……。

 ──ゴゴゴゴゴゴ!

 猛烈な駆動音を響かせながら、掘削作業に勤しむ人型重機が一機。
 キャバリア、では無い。一般的な人間大サイズの機体……『パワードギア』である。

(帝竜戦役から一年。平和が訪れてもオブリビオンの脅威は去らず、か)

 そんな愛機を操りながら、リコ・エンブラエル(鉄騎乗りの水先案内人・f23815)は考える。
 資材に乏しく、襲撃を間近に控えて時間の猶予も無い状況だ。悠長に木々を切り出す余裕も無いだろう。
 だが、それならそれで……やりようは、幾らでもある。

(木材が無ければ、土を掘れば良い)

 今回リコが選んだのは、空堀の構築であった。
 古来より、外敵の侵入を防ぐ目的で集落や城塞の周囲に堀や濠を構築するのは東西に多々の例がある。
 その例に則って、リコは設置され始めた防壁の外周を掘り進めていたのだ。
 ……幸い、リコの駆る愛機は本来は作業用機械であった物を改修した機体である。この手の作業は、お手の物。
 掘り出した土も積み上げて土塁として活用し防衛線を構築するその手並みは、本職も斯くやという手並みであった。
 とは言え、だ。

(……これも気休め程度ではあるが)

 ギアの出力を引き上げながら、胸中で呟く。
 時間に猶予が無い状況であるからして、空堀の深さも長さも大した事は無い。土塁もしっかり成形する余裕も無いし、まさに気休め程度の防備である。
 不幸中の幸いは、今回村を襲撃してくる相手がゴブリンだという点か。より厄介なオブリビオンや、この世界を狙う猟書家の襲撃でないのであれば……この程度の防備でも、十分に効果は発揮してくれるはず。

(これで村民の不安が払拭されればいいのだが)

 愛機を操り、黙々と作業を続けるリコ。
 多くを語らぬ寡黙な仕事ぶりであるが……人力では成し得ぬ力強さは、村人達に安心感を与えてくれるはずだ。
 ……そんな簡易的ではあるが野戦築城作業が進む風景の、更に外側では。

「よいしょっ、よいしょっ!」

 掛け声と共に、うにょーんと触手の髪を操って。
 友人と共にやってきたミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)が、一生懸命に穴を掘っていた。

「……えーっと。村がこっちで、街道があそこで……」

 時折、後方で進む防衛線の構築作業風景や、村と街道の位置を確かめながら作業を進めるミフェット。
 同じ穴を掘る作業でも、防衛線を構築するリコの作業とミフェットの作業は、少々趣が異なっていた。
 ミフェットは今、ゴブリン達の足を止める為の罠……落とし穴の準備に勤しんでいたのだ。

(この先も、村でがんばれるように。いっしょに村を守らなきゃっ!)

 過去にこの村を訪れた事のある友人とは違い、ミフェットにとってはこの村は初めて訪れた村である。
 当然、周囲の地形は判らない。これではどこに落とし穴を掘れば良いのか、判らない。
 なのでミフェットは、友人と共に元気な挨拶をした後で、慎重にお願いをして……村の周囲の地形を、教えて貰っていた。
 その甲斐もあって、今のミフェットの頭の中には村の周囲の地図がほぼ完璧な形で描かれている。
 その地図と、後ろの作業の状況なども加味しながら進めた作業は……今の所、順調だ。

「……うんっ! これでゴブリン達が近寄ってきても、大丈夫!」

 出来た落とし穴は、それ程深くも無いし広くも無いが……ゴブリン相手なら、問題ないだろう。
 その出来栄えの程に、満足げな笑みを浮かべて頷いて。ミフェットの顔が、空を見上げる。
 見上げた春の空は青く澄み渡っているが……そんな中に陽光を反射してキラキラと輝く何かが見える。
 ……目を凝らさずとも、ミフェットはその正体を知っている。キラキラと輝く物の先にいるのは、ミフェットのとびっきりの親友なのだから。

(ティエルはまだ戻ってこないから……もうちょっとだけ、頑張ろう!)

 高く空を舞う小さな妖精姫の事を想いながら、ミフェットが次の穴掘りへと取り掛かる。
 そんなミフェットの頑張る姿を、空から見下ろしていたのは……件の妖精姫。ミフェットの親友、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)であった。

「ゴブリンをやっつけて、今年もイチゴをいただくぞー☆」

 今から、一年前。ティエルはこの村を襲ったオブリビオンを撃退し、特産品の『フレイムベリー』に舌鼓を打った事がある。
 小さな身体で抱きつくかのように、がぶりと齧った甘酸っぱさ。あの味を、今年は親友であるミフェットと一緒に堪能しようと。今日のティエルは、やる気満々だ。

「……むっ? むむむ~?」

 そんなティエルが担当していたのは、敵の監視。その背の翅を羽撃かせ、小さな身体で空高く舞い上がり……上空から、迫りくるゴブリンの群れを観察していたのだ。
 迫りつつある小鬼の群れは少しずつ……本当に少しずつだが、確かに村の方へと近づいてきている。このまま行けば、四半刻も経たない内に辿り着くだろうか?

「群れの様子は……うん! 普通のゴブリンばっかりだね!」

 肝心の群れの構成はと言うとグリモア猟兵からの情報通り、良く見る十把一絡げな小鬼達ばかりである。
 上位種っぽい者は居らず、統制もイマイチ取れていない様な感じだ。

「これならボク達だけでも大丈夫そうだね♪」

 そんな敵の様子に、ティエルはニンマリ笑って余裕の表情だ。
 事実、ティエルもミフェットもその年齢は幼いが、猟兵としての経験は豊富である。
 そんな二人からすれば、上位種も居ない小鬼の群れなどまさに鎧袖一触と言った具合で片付けられる手合であるだろうが……。

「……んっ? あれっ?」

 とは言え、相手も生き物で。こちらの都合の通りに動くとは限らない。
 ゴブリンの群れの足並みが乱れ……まるでミフェットのし掛けた罠の位置を迂回するように、進路を変えていく様子がミフェットの目に飛び込んでくる。

「うーん……村に近寄ってきたら、ちょっと誘導しなきゃかもだね!」

 そんな相手の様子に、ティエルはほんの僅かに考えを巡らせて……作業を進める友人の下へと戻っていく。
 羽撃くティエルの翅。舞い散る鱗粉が陽光を浴びて、キラキラと幻想的に光り輝く。
 その輝きはきっと、迫りつつある戦いにおける猟兵の勝利を約束する物であるはずだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携OK!

フレイムベリーなる名産品があると聞いて!
甘くておいしい特徴的なストロベリーだという話。楽しみデース!
襲撃を阻止して、手に入れマース!

さてさて。まずは迎撃のスタンバイデスガ。
まずは腹ごしらえデスネー!
「ハーイ、ごはんデスヨー」
別ワールドから持ち込んだお米を炊飯器(in格納型メイド用キッチン)で炊き上げて、おにぎりをいっぱい作りマース!
おかずも色々セッティングできマスヨー!
猟兵の皆様も、村のエブリワンも、おなかを満たして充足してくだサーイ!

これで十分英気を養えれば、ゴブリンであっても殲滅可能デース!
ワタシももちろん、やる気十分デース!


セフィリカ・ランブレイ
前にもここのお世話になったし、見過ごせないね
皆で食べたフレイムベリー、美味しかったし!

村の今後に役立って、今すぐにできそうな対策……
手っ取り早い所は武器かな

【ガジェットショータイム】で、工具を取り出す
手近な木材や自分の工房から持ってきた金属の端材等を使って簡単な弓や槍を作成
使い方が不安な人にはレクチャー込みで
使う機会がないよう私達が頑張るのが一番だけど、いざという時自分でも何かできる、という心構えは万が一の時に確実な差になる

…実際はもっとヤバい武器やゴーレムを渡す事もできるけど
それが本当に良いことなのかは、私には判別できないかな

身の丈に合わない力を拾った事で変わった国で生まれた身としては


ベリオノーラ・アンフォール
いつかのフレイムベリーの村が危ないとお聞きしたので、微力ながらお手伝いさせていただきます。

とは言ったものの防衛に関する知識もありませんし、何をしましょうか・・・。

おそらく、他の猟兵の皆さんは思い思いの策を講じて防衛の準備をして下さっているでしょうから、私は村の方々の所を回ってお話しをすることで不安を少しでも和らげられればと思います。

着実に出来つつある防衛準備を見ても、それでも安心しきれない方もいらっしゃると思うので、その方たちには鉱石の欠片を握ってもらい、その欠片を光鳥に変える所を見てもらって、危ない時は欠片が鳥に変わって守ってくれるとお伝えすることで少しでも安心してもらえると嬉しい限りです。





「フレイムベリーなる名産品があると聞いて!!」

 猟兵達の尽力により、村の周囲に構築された防衛線が形になり始めた頃。
 村の広場でテンション高く叫ぶ、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の姿があった。
 バルタンは、歴戦の兵士である。だがそれと共に、料理を好み家事代行サービスを趣味とするメイドでもある。
 そんな彼女が、名産品である特徴的なストロベリーの話を聞いて、テンションが上がらないはずが無い。

「襲撃を阻止して、手に入れマース!」

 とは言え、まずは村に迫りつつある危機を排除する事が先決だ。仮に阻止に失敗してしまえば、名産品を味わう事など出来ないのだから。
 その為にさて、まずは何をするべきか。防衛線構築の手伝いか、偵察か、それとも資材の調達か。
 ──バルタンの中では、その答えは決まっていた。

「まずは、腹ごしらえデスネー!」

 ハーイ、ごはんデスヨー、と。取り出したのは、別世界から持ち込んできたお米。
 その米を手際よく研ぎ、炊飯器(装備品である格納型メイド用キッチンの備品の一つであるらしい)でふっくらと炊き上げる。
 米の炊きあがる芳しい香りが広場に広がる。その香りを嗅ぎつければ、作業の手が空いた男が、家に匿われた女子供が。バルタンの周囲に、興味深げに列を作る。
 そんな村人達の前で、炊きあがった米を手際よくその手で握り成形し……日本の携行食のド定番、『おにぎり』を作っていく。

「いっぱい作りマスからネー! おかずも色々セッティングできマスヨー!」

 村を守る為の防衛戦。その為の防備を固めるのは、確かに大切だ。
 だが、その為に動けば腹が減るのは自然の摂理。そして空きっ腹になってしまえば、いざという時にその力を発揮する事が出来なくなってしまうのだ。
 だからこその、【まずは腹ごしらえ(ミール・タイム)】である。お腹を満たし、十分英気を養えば、本番でも確りと力を発揮する事が出来るのだから。
 ……食うべき時に、確りと食う。歴戦の兵士であるバルタンだからこそ出来る、的確な判断であると言えるだろう。

「猟兵の皆様も、村のエブリワンも、おなかを満たして充足してくだサーイ!」

 手早く調理作業を進めつつ、周囲に声を掛けるバルタン。
 その表情は、やる気に満ち溢れた輝かしい物だった。

「ふんふふーん♪」

 そんな賑やかな調理風景を横目で見つつ、セフィリカ・ランブレイ(蒼剣姫・f00633)がガジェット型工具を振るう。
 鼻歌交じりのリラックスしたその仕草だが、その手捌きは一切の迷いも無い。工具は中々に変な形だが、使い方を十分理解しているのか。正確無比な工具捌きで、木材や金属の端材を加工していく。

(前にもここのお世話になったし、見過ごせないね)

 セフィリカも、一年前にこの村を訪れてフレイムベリーを堪能した一人である。
 あの時の、大空の下で大口を開けて、一口で食べた大粒の味も。居合わせた女性猟兵達との女子会も。
 今でも鮮明に思い出せる、どちらもいい思い出だ。
 そんな村の、今すぐ出来て、出来れば今後も役立ちそうな対策とは何だろうか、と。セフィリカは考えて……。

「……はい。一丁上がり、っと!」

 出した答えは。自衛の為の弓や槍と言った、簡単な武器作りであった。
 ……勿論、こんな武器は使わないに越したことは無いし、セフィリカを始めとした猟兵が矢面に立てば使う機会は無いだろう。
 けれど、いざという時。今日を乗り越えたその先で、猟兵達が力添えを出来ないような時に。自分たちでも何かが出来るという心構えがあれば。その心構えは、万が一の時の確実な差となって表れるのだ。
 故に、セフィリカはその手を振るって武器を作るのだが……。

(……まぁ、実際はもっとヤバい武器やゴーレムを渡す事も出来るんだけどね?)

 作り上げられた簡素な武具を受け取る村人からの、感謝の言葉。その言葉に笑顔で手を振って応えつつ、セフィリカは思う。
 セフィリカが本気を出せば、この村を無敵の城塞と変える事も不可能ではない。
 だがそれが、良い事なのか。本当に村の為になる事なのかは、セフィリカには、判断が出来なかった。
 ヒトという生き物は賢く、そして同じくらいに愚かである。温厚であった者が身の丈に合わない力を持った瞬間に豹変する事も、多々あるのだ。
 事実、セフィリカは知っている。本来の身の丈に合わない大きな力を拾い得た事で、覇業に突き進んだ国を……自らの生国の醜悪な闇を。セフィリカは、良く知っているのだ。

(ホント、どうしたモンかなぁ……)

 ……セフィリカの目が、遠くの空を見る。
 無意識ではあるが、その視線の方角の先は……『鉄エルフの国』と呼ばれる、彼女の故国へと繋がっていた。

(他の猟兵の皆さんの準備は、順調なようですね……)

 村の外での防衛線の構築や、食事や装備の手配など。それぞれの能力を活かし、準備を進めていく猟兵達。
 そんな同輩達の姿に、小さくため息を溢したのはベリオノーラ・アンフォール(キマイラの精霊術士・f08746)だ。
 ベリオノーラも、以前この村でフレイムベリーを味わった一人である。
 そんな縁が紡がれた村の危機を聞きつけて、微力ながらもお手伝いをと。飛び込んできたのは、良いものの……。

(とは言え、防衛に関する知識もありませんし。何をしましょうか……)

 一体何をすれば良いのやら、と。ベリオノーラの口から、また小さな溜息が零れ出る。
 ……直接的な戦闘力は、然程高くないベリオノーラである。防衛戦に関する知識も明るくは無い自覚も有ってか、そちらの方に口を出そうとは思わなかった。
 しかし、着々と進む準備を手伝える程の力は無い。ではどうすれば……と、ベリオノーラの思考が堂々巡りに陥ろうとしていた、その時だった。

「……あら?」

 ベリオノーラの視線に飛び込んできたのは、進む諸々の作業を不安げに見守る小さな姿だった。
 ベリオノーラよりも、一回りは年下の少女だ。周囲にいる同じ年頃の子供たちは食事を貰い非日常の風景にどこか興奮気味な様子なのに対して、その少女だけは今も落ち着かない表情を浮かべている。
 そんな少女の姿を見た、その瞬間。

(……あぁ)

 ベリオノーラは、一つの得心を得ていた。
 着実に進む防衛準備。その様子を見る人々は、安心を得る事だろう。
 だがそれでも。不安に苛まれ、安心しきれない人というのはいる。身体に個人差があるように、精神にだって個人差はあるのだから。
 ──そんな、普通の人よりちょっとだけ心の弱い人々に寄り添えるのは……。

「……大丈夫、ですよ」

 普通の猟兵より、ちょっとだけ戦う事が苦手な。そんなベリオノーラだけだろう。
 少女に歩み寄り、しゃがみ込み。眼と眼を合わせて、優しく微笑む。
 そうしてそのまま、柔らかなその手で少女の手を握り。小さな鉱石の欠片を手渡して……。

(どうか、誰も傷つくことのない安らぎある世界を……)

 心の内で念じれば、ベリオノーラの力を受けた鉱石が眩く輝いて……光り輝く一羽の鳥へと、姿を変える。
 掌の中で起きた、不可思議なその出来事に驚き目を見開く少女。

「危ない事があれば、その石の欠片が鳥に変わって守ってくるから……」

 だから、安心してね、と。少女に掛けたベリオノーラの声とその表情は、慈しむかのような柔らかな物であった。
 危機迫る村に、活気が戻る。少しだけ弱気な者達も、猟兵の献身に救われその心に安堵を得るだろう。
 動揺著しかった村人達は、こうして平静を取り戻して……その直後、『その時』は訪れたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアタック
【粗雑な武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    粗雑な武器
【ダッシュ】による素早い一撃を放つ。また、【盾を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    足払い
【低い位置】から【不意打ちの蹴り】を放ち、【体勢を崩すこと】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 防衛線を組み上げ、村人達の動揺を鎮めた猟兵達。
 短い時間であったが、何とかやるべき事は出来たと言っていいはずだ。
 そうして準備を整えた、その直後。『その時』は、訪れた。

『──ギャッ! ギャギャッ!!』

 耳障りな甲高い喚き声。綺麗な陣形とはお世辞にも言えぬ程に乱れた隊列。
 だがその数だけは随分と多い、ゴブリンの群れが。遂に村の外周部へと到達したのだ。
 ……事前の情報や偵察の通り、上位種のような存在は見受けられない。どいつもこいつも、粗末な身形と矮小な体付きの、有象無象と言える小鬼である。

『ニンゲン! コロス! クウ! オカス!』

 しかし、そんな小鬼であっても。一般人には、大きな脅威だ。
 もし一匹でも見逃せば……あからさまなまでに露わにしているその欲望の程を、この村に暮らす村人達へとぶつける事は想像に難くないだろう。
 そんな事を、許しては良いはずが無い。

 それぞれの武器を構え、猟兵達が小鬼の群れと対峙する。
 『真紅の宝石』と謳われる名産品を生み出す村の防衛戦。その本番が、始まろうとしていた。

 ====================

●第二章、補足

 第二章は集団戦。
 村に押し寄せる『ゴブリン』の群れが相手となります。

 能力的には何の変哲も無い、極々一般的なゴブリンです。
 猟兵からすれば、まさに有象無象。鎧袖一触で蹴散らせる相手ではあります。
 とは言え、平和な農村に生きる普通の人々にとっては大きな脅威。
 本文中にある通り、一匹でも見逃してしまえば、村に被害が及ぶのは避けられません。
 その辺りの事情を踏まえつつ、皆さんの実力をお示し下さい。
(とは言え基本的に判定は甘めとなりますので、普段出来ない事など色々とお試し下さい)

 戦場は村の外に広がる平野。天気は晴れ。基本的に障害となる要素はありません。
 なお、第一章で猟兵が構築した防壁、空堀や土塁、落とし穴と言ったギミックも活用できます。
 それらを利用するも、独力での撃破を目指すも皆様次第となります。

 押し寄せる小鬼の軍勢。
 見守る村人達の前で、猟兵達はその力を示せるか。
 皆様の熱いプレイング、お待ちしております!

 ==================== 
ニクロム・チタノ
ゴブリンめこの平和な村を恐怖に陥れて、許さないよ!
まずボクが戦端を開こう
敵の先鋒を潰すよ
まず敵陣に斬り込でわざと囲まれる、ここまでは想定どうり
沈め超重力の海底に
超重力で先鋒部隊を殲滅するよ、敵を圧倒して村人達を安心させられればこれからの戦いでも安心できるはず、油断せず行くよ!
チタノ反抗の加護と導きを


松雪・門奈
アドリブ大歓迎!

あら…
もう来てしまったのね…
さぁ、傀儡達!
その命を!魂を!わたしと… わたしの主様に捧げなさいな!
うふふ… わたし達がゴブリン達にとっての死の恐怖となりましょうね

行動
わたしは《祈りし者達》と共に村の防衛を行いましょう。

傀儡達はそこそこの数が居るけれど、それでも数が足りない… 恐らく彼らを突破する敵もいるでしょうね。
わたしは傀儡達の指揮をしつつ、突破して来た敵を歪なる邪神の先触れと魔導書の〈斬撃波〉でもてなしてあげるわ。

うふふ… 確かにわたしの体は脆く、近接戦闘は苦手…
けれど、出来ない訳じゃ無いのよ。


バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎

ふーむ。やはり数が多いデスネー。
重火器を展開すれば防衛は出来そうデスガ。
取りこぼしを逃がしてしまうと、後顧の憂いとなりマスネ。
村の防衛戦力は士気も数も十分と……ならば、遊撃に出るであります!

堀を通って身を隠しながら迂回して、ゴブリンの群れの背後に回り込みマース。
すなわち、挟み撃ちデスネ!
目には目を、数には数を。参りマショー!
「カモン、バルタンズ!」『バルバルー!』
1体につき五百円のお駄賃を支払って、戦闘デース!

前衛は剣、後衛は銃器で武装して、ゴブリンたちを磨り潰していきマース!
逃げ出すゴブリンは内蔵式の武器を使って、撃って焼いて吹き飛ばしマショー!
年貢の納め時デスネー!





 耳障りな喚き声を響かせながら、迫りくる小鬼の群れ。
 粗末な身形と矮小な体付きは、この場に集う猟兵からすれば鎧袖一触の勢いで蹴散らせる程度の相手であった。何ならこの世界で生きる並の冒険者であっても、多少手こずる程度で掃討出来る相手でもある。
 だがそんな相手であっても、普通の一般人からすれば脅威である。そんな存在が隊伍(と呼ぶには、秩序に欠けているが……)を組んで押し寄せるその様子は、まさに『死の恐怖』そのものであるだろう。

「ゴブリンめ! この平和な村を恐怖に陥れて、許さないよ!」

 そんな存在に向けて、闘志を燃やし真っ先に飛び出したのはニクロムだった。
 平和な日々を過ごす人々を、今まさに暴虐の徒が襲おうとしている。
 そんな事は、断じて許せぬと。闘志を熱く滾らせれば、胸に宿る反抗の印が強く輝く。

「あら。もう来てしまったのね……?」
「ふーむ? やはり数が多いデスネー」

 己の胸の闘志の命ずるまま、我先にと敵の先陣に挑みかかったニクロム。
 そんな彼女の姿を視界の端に収めつつ。門奈とバルタンが言葉を交わす。
 二人は冷静に状況を確認していた。敵の数と味方の戦力を計算し、どう動くのが最適かと考えていた。
 押し寄せる小鬼の数は中々の物だが、こちらも使役する傀儡者や重火器がある。猟兵は勿論、村人の士気と装備だって充足している。
 村の防衛戦力は、十二分のレベルで整っている。それらの戦力を的確に展開すれば、村の防衛は難しく無いだろう。
 けれど万一討ち漏らして僅かな小鬼でも逃してしまえば、後顧の憂いとなりかねないし……そうでなくとも、数を頼りに強攻されれば突破される可能性は否定できない。
 ……ならば、一方的に敵の数を討ち減らす方向性よりは。ある程度引き寄せてから後方を遮断し包囲殲滅、という戦い方が最適だろうか?

「では、わたしが支えている間に……」
「ワタシが連中の背後に回り込んで、挟み撃ちデスネ!」

 そうして方向性を纏めれば、後は動くのみ。
 ここはお願いするでありマース! と、熟練の兵士らしい表情を垣間見せ駆け出すバルタン。
 その背を見送って、門奈は攻め寄せつつある小鬼の群れへと向き直る。

「──さて、ゴブリン達? 突破する事が出来たら、饗してあげるわ」

 大人びた門奈の表情。美しく整ったその口元は、怪しく歪んでいた。



(さてさて、目には目を。数には数を……)

 張り巡らされた堀に身を隠しながら、戦場を征くバルタンが目的の地へと辿り着く。
 辿り着いたその場所は、先程の打ち合わせの通り戦場の後方。視界には村へと意識を傾けるゴブリン達の背が見える。
 どうやら、上手く敵の背後に回り込めたらしい。こちらに注意を向ける敵はいない。ならば後は包囲し、敵を逃さず潰すのみだ。
 だが、一人では流石に多勢に無勢。包囲網を作ろうにも、手数が圧倒的に足りないが……。

「カモン、バルタンズ!」

 バルタンには、そんな足りない手数を埋める手があった。
 声も高く喚び出せば。『バルバルバルバル♪』と応えて飛び出る104体の助っ人軍団。
 バルタンをそのまま全長15cm程まで小さくしたかのような彼女らの名は、その名もずばり『ミニ・バルタン』。1体に付き100円支払えば奉仕活動をしてくれて、500円払えば戦闘に参加してくれるというニクい奴らである。
(ちなみに、1000円払うとパニックを起こし、10円しか出さないとキレるのだとか。給料を支給するときは気をつけないといけないのだ)

「さーて、参りマショー!」
『バルバルー!!』

 そんな【秘密のバルタンズ(シークレット・サービス)】にお駄賃(52,000円)を支払って、動き出すバルタン軍団。剣を装備した者を前衛に、銃を装備した者を後衛に。横に長く隊列を組み上げて。

「──撃てぇッ!」

 響き渡る号令。凛々しいその号令を掻き消すかのように発砲音が戦場に轟けば、背後を突かれた小鬼が数体、血霞となって消えていく。
 背面からの突然の攻撃に、ゴブリン達の対応は後手に回り……第二射を受けて、更に数体がこの世界から存在を消す。
 そんな光景を目の当たりにし、小心な小鬼が戦線を維持できるはずも無い。逃げ出そうと我先に駆け出すが……バルタンが見逃すはずも無い。

「年貢の納め時、デスネー!」

 その身体の内側に組み込まれた武器で以て、撃って焼いて吹き飛ばしてと。文字通りに、蹂躙していく。
 敵後方に回り込んでの、退路の遮断。包囲殲滅し、後顧の憂いを絶つ。その目論見は、どうやら上手く行きそうだ。
 ……そんな後方遮断が決まるより前に、既に前線の戦いは始まっていた。

「ハァッ──!!」

 呼気も鋭く、振るわれるニクロムの刃。反抗の竜の加護が宿りし妖刀が、眼前の小鬼を横一文字に両断する。
 剣閃煌めく度に吹き上がる小鬼の鮮血。その返り血を浴びながらも、二つ結いにされたニクロムの銀髪が鮮やかに輝く様子は……小鬼達の注意を、強く引き寄せたか。
 敵の先鋒へと挑みかかったニクロムは、順調に撃破数を増やしていたが……今やその周囲を、十重二十重に取り囲まれつつあった。

(そうだ、それで良い!)

 だが、その状況はニクロムにとって想定通り。
 むしろ、敵がしっかり自分の周囲に集まってくれた方が……都合が良いと言うものだ!

「沈め、超重力の海底へ──ッ!」

 盾を捨て飛び掛かってきた小鬼を軽やかに躱し、その手に握る剣を地へと突き立てれば。その剣先から周囲に向けて、不可視の波が放たれる。
 その波の名は、重力波。ニクロムに与えられた加護の一つを攻撃に転用した物である。
 その波に……【重力の海(グラビティエリア)】に囚われれば。十把一絡げの小鬼程度に、抗う術などありはしない。
 グンッ、と強く増す自らの重みに耐えられず、一体、また一体と地に崩れ落ち潰れるばかりだ。

(チタノ、反抗の加護と導きを……!)

 自らに力を授けたその存在へと祈りを捧げながら、ニクロムは己の力の制御に専心し……敵の先鋒を、地に縫い付ける。
 そんな無様を晒す先鋒達を嘲笑いながら、小鬼の群れは迂回して。村の側へと、歩みを進めるが……。

「深宇宙より出し奉仕者共、私の忠実な傀儡……」

 その行手を遮ったのは、門奈と彼女が使役する傀儡、【祈りし者達(プレアーズ)】。
 既に喚び出した65体は防衛線の方へ回している為、この場にいるのは新たに喚び出した12体のみ。
 数の面では少々不安が無いでも無いが……だがそれでも、小鬼を相手にするには十分な数だ。

「さぁ、共に狂気を蔓延させましょうね」

 朗らかな笑みを浮かべ傀儡に命を下す門奈のその目は、蒼く冷たい。
 狂気を湛えて満ちる、その目の輝きに射竦められれば……小鬼達はまるで正気を喪ったかのように、門奈へ向けて躍りかかるだろう。
 一体、二体と……傀儡に喰い止められる小鬼が、その命を次々に散らしていく。
 数に不安はあったが、やはり小鬼程度ならこの程度の傀儡でも問題は無かったか。
 ……門奈がそう感じた、その瞬間だった。

『ギャギャッ!!』

 同胞の躯を足蹴にして、一体のゴブリンが宙に跳ね上がり……傀儡の戦列を、飛び越えたのは。
 壁を突破した小鬼が、その醜悪な顔を門奈に向ける。
 整った顔立ちと陽の光で鮮やかに輝く金の髪のその女。大人びた振る舞いの中に垣間見える狂気が恐ろしいが、身体つき自体は華奢で小柄。筋力はそれ程でも無いのだろう。

 ──ならば組み付いて、押し倒せば!

 ……押し倒した時、どんな顔を見せるだろうか。どんな声で鳴き、どんな味がするだろうか。
 ただでさえ醜悪な表情を欲望に歪ませる小鬼。その頭に、バラ色の未来図が描かれるが──。

「うふふ。確かにわたしの身体は脆く、近接戦闘は苦手なのは事実だけれど……」

 ──そんな未来が訪れる事は、断じて無い。
 クスクスと微笑んだ門奈の指が自身の魂を封じた符を巻きつけた鍵に触れる。瞬間彼女の足元が蠢けば、飛び出す『何か』が小鬼の四肢を拘束する。
 飛び出したのは、門奈が召喚した邪神の触手。纏わり付けば離さない、強い力を持つ蛸の足の如き触手であった。
 そんな触手に拘束された小鬼に向けて。

「……けれど、出来ない訳じゃないのよ?」

 一言告げて、魔導書の力を解き放つ。
 放たれた波動は斬撃と化して、小鬼のその首を一撃で両断した。
 吹き出す鮮血。天高く舞い上がり、血へと降り注ぐ血の雨を浴びながら、門奈が笑う。

「さぁ、傀儡達! ゴブリン達の命を! 魂を! わたしと……わたしの主様に、捧げなさいな!」

 湧き出る狂気を蠢かせて、嗤う門奈。
 その姿はまさに、ゴブリンにとっての死の恐怖が具現化したかのような姿であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
ゴブリンは戦える人には怖い相手じゃない、が
数が多くてずる賢い
仲間を囮にこっそり侵入を考える個体もあり得そう

『私には斬り甲斐のない相手だけれどね。どうするわけ?』
相棒の魔剣、シェル姉は少々やる気がない様子だ
格下相手に手を抜きがちなの、良くないなあ
私の裁量でどうにでもなるって信頼だと思おう
既に敵の一団は仲間が迎え撃ってくれてる

私は【黄槍の飛竜】を呼び出して飛龍形態に。乗って上空から戦場を確認
うち漏らしや別行動しようとする個体を各個撃破
急降下や剣の遠当てとか、攻撃手段はそれなりにあるからね、手早く行こう


ゴブリンの知能は人間の子供ほど、っていうけど……
人間の子供って、悪知恵働くんだよね、油断は禁物!





 遂に始まった、平和な農村を巡る猟兵とゴブリンの群れとの戦い。
 その始まりを、セフィリカは村の上空から見下ろしていた。

『……で? 私には斬り甲斐の無い相手だけれど、どうするわけ?』
「シェル姉? 格下相手に手を抜きがちなの、良くないなぁ」

 やる気無さげな、腰に佩く相棒こと魔剣シェルファの声に答えるセフィリカ。
 ……ゴブリンは、ちょっと戦える者であれば然程怖い相手では無い。知能の方も人間の子供程度が殆どで、冷静に立ち回れば脅威とは成り得ない手合である。
 そんな相手であれば、自分が口を出さずとも、と。姉とも慕う魔剣のやる気無さげなその態度は、自分への信頼の証なのだと。普段とは逆のやり取りに、セフィリカのその表情は笑みに変わる。
 とは言え、だ。

「子供って、意外と悪知恵が働くんだよね。油断は禁物!」

 セフィリカの言う通り、子供というのは意外と悪知恵があるもので。時には大人が裏をかかれる事は、多々ある物である。
 特に今回は、数が多い。真正面から突っ込んでいく連中を囮にし、自分だけはこっそり侵入を……と考える個体がいないとも限らない。
 そんな個体を警戒し……。

「頼んだよ、【黄槍の飛竜(フェインナルド)】!」

 セフィリカは自作の魔導ゴーレムの内の一体に乗り、上空からの監視に注力していた。
 【黄槍の飛竜(フェインナルド)】。セフィリカの操る『七虹』の名を持つ魔導ゴーレムの内の一つである。
 二槍を携えた飛行ゴーレムであり、その機動力は七虹最速。飛竜を模した突撃形態ともなれば、その機動力は更に増す。
 そんな魔導ゴーレムの背に、セフィリカは跨っていた。
 この状態なら、敵がどこから村に入り込もうとしても直ぐに駆けつける事が出来る。
 攻撃手段だって、急降下やゴーレムの槍撃、セフィリカ自身の剣技もある。
 油断無く、手早く。その力を尽くす為の準備は、万端だ。
 もしここで抜けがあるようだったら、姉のお小言が飛んでくる所だが……今の所は、特に小言を言われる事も無いようで。
 つまり、姉の目から見てもセフィリカの備えは完璧なのだという事だろう。
 後は敵を見逃さず、しっかり仕留めるだけだが……。

「──むっ。見つけたっ!」

 目を皿にして村の外周を見張るセフィリカの目が、柵に迫りつつある小鬼を見つける。
 その数、1体。セフィリカの予想通り、自分だけが良い目を見ようと考えた個体なのだろう。

 ──黄槍の飛竜(フェインナルド)!

 とは言え、猟兵を相手に回してはその考えは浅はかに過ぎる。
 セフィリカの号令の下、ゴーレムがその身体を地へと向けて急降下。
 一気に地へと舞い降りて……今まさに柵に手を掛けた小鬼の頭を、その槍で粉砕する。

「さてさて、他にも似たようなのがいるかもしれないからね……!」

 一瞬で敵を討ち取って、また空へ舞い上がるセフィリカとゴーレム。
 空から地を監視するセフィリカの活躍で、散発的に単身踏み込もうとする小鬼は適時駆逐されるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と協力してゴブリンたちをやっつけるよ!

せっかく作った落とし穴を、使わなきゃもったいないよね?
〈ロープワーク・クライミング〉で樹の上に隠れてゴブリンたちをやり過ごして、落とし穴にゴブリンたちが近づいたところで背後からUCを発動!

UC【楽器のオバケの演奏隊】
後ろから大音量を響かせたら、びっくりして落とし穴に落ちちゃうよね
オバケたちにお願いしていっぱいの音でゴブリンたちを混乱させたら、追っかけられる前にミフェットは村の方に逃げちゃうね

あとはティエルにお任せ!落とし穴におちたゴブリンたちに、村の人が立ち向かうみたいだったら、思わぬ反撃を受けないように〈盾受け・かばう〉で守るよ!


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒にゴブリン退治だよ!

ようし、まずはミフェットが掘った落とし穴まで誘導しちゃうぞ☆
おしりぺーんぺーん、こっちだよーと挑発していくね♪

ミフェットが隠れてる木の近くまで来たらくるくる空中を飛び回ってミフェットに合図だ♪
ラッパで驚いたゴブリンが落とし穴に落ちたら這い上がってこないように【妖精姫のタライ罠】でがつーんとやっちゃうよ♪
ふふーん、タライの材料はゴブリン達の粗雑な武器や周りの岩を使っちゃうぞ☆
武器がなくなれば村人さんも安心だよね!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です





「へへーん! おーにさーんこっちらー♪」

 血で血を洗う戦場に似付かわしくない、甲高い少女の声が響く。
 楽しげに声を上げながら飛び回っていたのは、ティエルであった。

「そんな動きじゃ、ボクは捕まえられないよっ★」

 幾重にも重ねられた花びらのスカートを翻し、時に小さなお尻をぺーんぺーんと叩くティエル。その小生意気な態度に、ティエルを追っかけるゴブリン達は怒り心頭と言ったご様子だ。
 ……保護者が見れば「はしたないですよ?」とお小言を溢しそうなティエルの仕草だが、これはあくまでも小鬼を挑発する為の物。つまりはお仕事の為に必要な行為なのだから、きっと許してくれるだろう。

「ほーらほらっ♪ あんよは上手っ♪」

 囃し立てるようなティエルの挑発は、まさに舌好調。多くの小鬼を引き連れながら、とある一点を目指して動き続ける。
 ……そこは、戦場にポツンと立つ一本の樹。青々とした葉が茂るその広葉樹のその周囲は、先程ミフェットが一生懸命落とし穴を用意した一帯だ。

(せっかく作った落とし穴。使わなきゃもったいないよね?)

 そんな濃い枝葉を持つ樹に隠れ潜む様に、ミフェットはその時を待っていた。
 上手く作れた落とし穴。その罠を、上手く活用できるだろうか。ティエルを始めとした猟兵の皆や、村の人達……みんなの役に、立てるだろうか?
 期待半分心配半分の複雑な心境に、ミフェットの胸は普通のヒトの様にドキドキと高鳴り……。

(あと、ちょっと……!)

 その時が、近づいてきた。
 ティエルの挑発でいきり立った小鬼達が、小生意気な妖精を捕まえようと必死に手を伸ばし飛び跳ねている。そんな伸びた手をするりと抜けつつのティエルの誘導は、順調だ。
 あと、10メートル。5メートル。3メートル……今だっ!

「出番だよっ、みんなっ!」

 声を上げるミフェット。その喚び声に応えるかのように顕れたのは、数多の壊れた管楽器達。【楽器のオバケの演奏隊】だ。
 喚び出された彼らが奏でるその音は、どれもこれも調子外れ。壊れているから、綺麗な音など出やしない。
 けれども、響き渡るその音は。『音を楽しむ』というその言葉の通りに。楽しげに、華やかに、戦場と化した野に響き渡って。
 ……やがて衝撃波と化して、背後からゴブリン達に襲い掛かる!

『『『ギャッ──ッッッ!?』』』

 背から襲い掛かってきた体に響くその轟音に、ゴブリン達は驚愕したかの様にバランスを崩す。
 そうしてたたらを踏んでしまえば……地に開いた奈落を避ける事など、出来やしない。
 次から次へと穴へ落ちてく小鬼達。その様子に、ミフェットが嬉しそうにぐっと拳を握る。

「よーしっ! がつーんとやっちゃうよー♪」

 そんなミフェットに続くように動いたのは、ティエルだった。
 奈落に落ち、抜け出そうと藻掻く小鬼達に愛用の細剣の切っ先を向けると……。

「みんな、ずっこけちゃえー♪」

 力を籠めて命じれば、ゴブリン達の持つ粗末な武器がひとりでに浮かび上がって……金属製の平たい桶、俗に言う『金タライ』へと変わっていくではないか!
 この不可思議な現象は、ティエルのユーベルコードによる物だ。【妖精姫のタライ罠】と名付けられたその力で、周囲の無機物(今回の場合、ゴブリン達の武器だ)をタライに変えてしまったのだ。
 ……当然、この業はタライを作るだけの業ではない。そのままふよふよと操って……。

「どーんっ★」

 ゴブリン達に、叩きつける!
 ゴン! ガン! ゴゴン!! と響き渡るタライの音は、鳴り響く管楽器達に負けない程に騒々しい。
 けれどその音が響くという事は、ゴブリン達の手から粗雑な武器が消えているという事の証左でもある。
 そうと思えば、その騒々しく賑やかな音の洪水も……村人の心を安心へと導く物となるはずだ。

「やったねっ、ティエルっ!」
「うんっ♪ ボクたちの勝利だー!」

 響き渡る音の洪水の中、手と手を打ち鳴らし互いの健闘を称えるティエルとミフェット。
 仲良しの二人は見事に小鬼を無力化し、悠々と村へと引き上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベリオノーラ・アンフォール
前線をお任せしている分、敵さんが村の方に抜けないか注視していましたがその様子もありませんし、何よりも治療の必要な状況にならないので、やはり猟兵の皆さんはとても頼りになる方ばかりですね。

落とし穴は・・・まだ使われるかもしれませんから、進路から外れた土塁の辺りを使わせてもらいましょう。

普段の一人一羽のような形ではなく、戦場全体に治癒の光を届けられるように大きな力を注いで一羽の巨大な光の梟に変化させ、皆さんの体力の回復に努めます。
村の中でこのユーベルコードは一度見せていたので、もしこの光景が見ることで何かを感じ取ってもらえれば幸いですが。

・・・我ながら変な事をしているとは思っています。





 村の防衛戦は、大方の予想通り猟兵の側に圧倒的に有利に進んでいた。
 前線を支え、敵を受け止める者達も。後方を遮断した者も。上空から監視の目をやる者も。足止めと無力化に努めた者も。皆が皆、持てる力を尽くして挑んだ故の結果であった。

「……やはり、猟兵の皆さんはとても頼りになる方ばかりですね」

 そんな同輩達の活躍に、ベリオノーラは眩しいものを見るかのように目を細める。
 頼もしい同輩達のその力があれば、小鬼程度に遅れをとる事など無いだろう。それでも念の為にと、小鬼の動きを警戒しつつ治療の準備を整えていたのだが……どうやらそれらの準備も無駄に終わりそうな程の、一方的な戦況である。
 まぁ、それは良い。怪我人無しでの完全勝利など、喜ばしい事以外の何者でも無いのだから。
 とは言え、だ。

「こういう時こそ、油断は禁物ですからね」

 物事が上手く進んでいる時というのは、得てして己の消耗に気が付かない物である。そうして積み重なった消耗は、ここぞという場面で牙を剥くものなのだ。
 ……好事魔多し、という格言もあることだし。備えるに越したことは無いはずだ。

(そうですね……あぁ、あの土塁を使わせてもらいましょう)

 村を出て、きょろきょろと周囲を見渡して。ベリオノーラが目をつけたのは、防衛線を構築する際に設置された土塁であった。
 小鬼の群れの進路からズレたのか、土塁は手つかずの綺麗な状態だ。戦況を考えれば敵がこちらにやってくる事は無いだろうし……ならば、有効利用させていただこう。

 ──どうか、誰も傷つくことのない安らぎある世界を……。

 瞳を閉じて念じれば。清らかなその想いに応じるかのように、土塁を作る土塊……無機物の塊が輝いて。一羽の光の梟の姿を形作っていく。
 ベリオノーラのその異能の業は、先程村の少女の心を暖かく癒やした物と同種の業である。
 だが今回は、その規模が違う。普段ベリオノーラが作り出す光鳥は、先程村で見せたようなささやかな大きさだが……今回ベリオノーラがその身の力を注ぎ込んで具現化させたのは、戦場全体を光で包むかのような巨大なモノであった。
 光り輝く梟が、悪意持ち村へ迫る小鬼達を威嚇するかのようにその翼を広げる。
 闘争心を露わとするその姿から戦場全体に放たれる光を浴びれば、最前線で戦う猟兵達が知らずその身に溜め込んでいた疲労は癒やされて。僅かに生まれつつあった敗北の可能性は消えるだろう。

(……我ながら、変なことをしているとは思っていますけどね)

 当然、それだけの力ある存在を生み出せば。ベリオノーラの消耗は、常の比ではない。
 一秒ごとに身体を蝕む倦怠感に息を吐く。そうして身体が疲労すれば、次第次第に『この行動は皆の役に立てているのか』と、心も不安に苛まれるだろう。
 ……確かに、ベリオノーラの行動は戦場を劇的に変えるものでは無いかもしれない。けれど彼女のように縁の下で仲間を支える者がいるからこそ、皆は後を気にせず全力を尽くす事が出来るのも、また事実。
 ベリオノーラの感じた不安は、杞憂でしかない。彼女のその力は仲間を癒やし、しっかりと支える一助となったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコ・エンブラエル
●SPD

来たな
盤石な守りとは言えないが、何もしないよりはマシだ
ゴブリンの群れに信号拳銃の信号弾を撃ち込む【挑発】をし、いくつかの個体をこちらに向けてスロープを設けていた空堀の中へ誘導だ

無論奴らはこちらの後ろを付けずにお構いなしに、どこからでも空堀の中へ飛び込んでくるだろう
それを『刹那の見抜き』でギアを【操縦】し、鉄拳による【カウンター】を叩き込む
ある程度の数が空堀の中へ入ったのを確認出来れば、チェックメイトの最終段階と行かせて貰おう
ギアの予備燃料タンクをパージし、それを操縦席の上から再び信号拳銃を【クイックドロウ】…燃料に引火させ【焼却】だ
その間にこちらは【悪路走破】の【ダッシュ】で脱出しよう





「──来たな」

 攻め寄せつつある小鬼の群れを前にして、リコがポツリと呟く。
 既に大勢は決しつつあった。猟兵達の活躍により多くの小鬼は討ち取られ、躯を地に晒していた。
 だがそんな戦況であるというのに、目の前のゴブリン達に逃げ出す様子は見られない。
 退路を断たれて自棄っぱちになっているのかと思ったが……よくよく観察してみれば、その目の光は明らかに欲望に濁っている。
 ……どうやら連中、『自分なら、他の連中の様にドジは踏まない』と無根拠な確信を前提に行動をしている手合であるらしい。

(……まぁ、所詮はゴブリンと言った所か)

 実際、リコがいる防衛線まで辿り着けた連中は他の小鬼より遥かに運に恵まれているのは事実である。
 それに、この防衛線の備えは控えめに言っても盤石とは言い難い。与し易いと見て、無根拠な確信を更に強めるのも無理はないだろう。

 ──とは言え、些か考えが足りない行動である事は事実だが。

 内心で呟きつつ、リコが構えたのは大口径の拳銃。照明弾や煙幕弾と言った特殊な弾頭を発射する事に特化した、いわゆる『信号拳銃』と呼ばれる拳銃だ。
 その拳銃を押し寄せる小鬼に指向して、放つ。存外軽い音と共に放たれたその弾丸が煙を撒き散らしながら一匹の小鬼に命中する。
 リロードしてもう一発、更にリロードしてもう一発と、攻撃を繰り返すリコ。何度か繰り返された銃撃だが、その威力はそれ程でも無く、他の猟兵と比べれば大きな脅威とは成り得ない。
 ……手薄な防備と、力の足りない守り手。小鬼達の意識がリコへと惹き付けられたのは、当然の事であった。

(釣れたか)

 そんな小鬼達の動きを見ても、リコの心は動じない。そうなるように仕向けたのだから、当然のことだ。
 愛機であるパワードギアを駆り、空堀へと駆け下りる。追い縋る様に飛び込んできた小鬼にカウンターの一打を加えながら、リコは冷静に飛び込んできた小鬼の数を確認する。どうやら防衛線に辿り着いた連中は、軒並み飛び込んできたようだ。

(……全く、単純な連中だ。まぁ想定よりは多いが、問題は無かろう)

 余りにも短慮な小鬼達のその行動に、僅かに呆れを覚えつつ。
 ギアの装備品の一つ、予備の燃料タンクをパージすれば。切り離されたタンクから、気化性と引火性の高い特殊燃料が空堀へと撒き散らされる。
 突如撒き散らされたその液体が何なのか理解らず、困惑する小鬼達だが……そんな連中に、遠慮をする必要などは無い。

「チェック・メイトだ」

 再び構えた信号拳銃を、放つ。
 放った弾丸は、照明弾。強い光を放つその弾丸は、相応に高い熱を放つ弾丸でもある。
 そんな弾丸が、『気化性と引火性の高い特殊燃料』がぶち撒けられた空間で炸裂すれば、どうなるだろうか?

 ──カッ!!!

 答えは、簡単だろう。
 引火し巻き起こる業火。空堀を一瞬で包むその炎に巻かれ、飛び込んできた小鬼達が灼かれていく。
 苦悶の声は、上がらない。強力な熱に晒された事で、一瞬でその息の根が止まったのだ。

「……これで大方は退けたか。残敵掃討に移るとしよう」

 そんな空堀の内で起きた惨劇には目もくれず、ギアを操り空堀を抜け出していたリコが呟く。
 彼の言葉通り、ゴブリンの大部分は既に討ち取られた。後は幾らかの小粒が残る程度である。
 この調子で行けば、小鬼どもの掃討完了までに長くは掛からないだろう。

 ……後顧の憂いを断ち、今後の村の安全を維持する為に。猟兵達が、僅かに残る小鬼を仕留めていく。
 こうして『真紅の宝石』と謳われる特産品の産地は、守られたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『甘くて美味しい苺狩り』

POW   :    苺狩りで夢のような食べ放題に参加する

SPD   :    苺をたっぷりを使ったスイーツやドリンクを楽しむ

WIZ   :    苺をモチーフにしたお菓子や小物等のお土産を購入

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 長閑な農村に押し寄せようとしていた、小鬼の群れ。
 その悪意と暴虐は、猟兵達の活躍の前に砕かれた。
 村の平和は、守られたのだ。

「──いやぁ、見事なモンだ!」

 そうして戦いを終えた猟兵達に掛かる声。
 視線を向ければそこに居たのは、気の良さそうな印象を受ける佇まいの青年農夫。
 その顔を見れば、思い出す者もいるだろう。
 そうだ。彼は去年の事件の折に、猟兵達にイチゴを供してくれたあの農夫である。

「それにしても。また助けられてしまったなぁ……」

 去年の事を思い出しているのだろう。どこか感慨深げな農夫の様子に、猟兵達も笑みを浮かべる。
 一度ならず二度までも、オブリビオンの襲撃を受け、また猟兵に守られるとは。
 なんともまぁ、随分と数奇な経験である。

「それで、その……村を助けて頂いた礼なんだがね」

 ちら、と農夫が指し示した村の一角。そこに広がるのは、青々と茂る葉とその中に輝く紅色。
 『真紅の宝石』とも謳われる、『フレイムベリー』の畑が広がっていた。

「あの一角を自由にして貰って構わんので、今年もイチゴ狩りなど如何だろうかね?」

 そう言い笑う農夫の誘いに、猟兵達も笑顔で応じる。
 ……確かに、農夫と村は数奇な経験を重ねはした。だがその経験は、決して悪い側面ばかりではない。
 事実、こうして村は無事に守られて。その結果、新たな縁が紡がれようとしているのだから。

「今年の出来も上々でね。きっと満足して貰えると思うよ」

 語り、猟兵達を畑へと案内する農夫の後を付いていく。
 長閑な農村が生んだ、春の味。今年の出来栄えは、どんな物だろうか?
 猟兵達の胸は、期待に膨らんでいた。

 ====================

●第三章、補足

 第三章は日常章。
 いちご畑の一角を貸し切りにした、いちご狩りを楽しんで頂きます。

 何度か触れておりますが、この村のイチゴは『フレイムベリー』と呼ばれる逸品です。
 燃える炎の様な赤が目に映え、瑞々しさと甘酸っぱさのバランスが絶妙。粒も大粒で食べ応えのある品種となります。
 もぎたてを味わうも良し。スイーツやドリンクなどのご当地レシピを味わったり、土産物を物色するも良し。
 皆さんの思うまま、お楽しみ下さい。

 ……とは言え、現地はファンタジー世界の長閑な農村。調理器具や調味料などは、それ程充実はしていません。
 ですがそこは猟兵。物品を持ち込むのは、自由自在です。
 なにか持ち込み品がある方は、プレイングにどうぞ。
(なお、ゴミが出る場合は各自でお持ち帰りとなりますのでご注意を)

 また、三章はヴィクトリアも事後処理などを行う為に現地入りしております。
 何か声を掛けたい事がある方、交流してみても良いかなとお考えの方はお気軽にお声掛け下さい。
 特に何も無ければお仕事をしつつ、皆様の様子をいつもの微笑みで見守っているはずです。

 瑞々しい春の宝石。その味は、いったいどんな物だろうか。
 皆さんの楽しいプレイング、お待ちしております!

 ==================== 
松雪・門奈
アドリブ大歓迎!

POWを選択

これがフレイムベリーなのかしら?
とても綺麗なイチゴね…
うふふ、いちご狩りなんてした事無いから… とても楽しみね!

そうだわ!
形が良くて、美味しそうなイチゴは主様へのお土産として持って帰りましょう!
喜んでくれるかしら?


ティエル・ティエリエル
ミフェット(f09867)と一緒にイチゴ狩りだー♪

やったー!イチゴ狩りの時間だーとぴょーんとイチゴ畑に飛んでいくね♪
今年も大きくて甘そうなフレイムベリーを見つけたら両手で抱えてかぶりつく……前にミフェットのところにも持っていくよ!
ふふーん、友達と一緒に食べた方が美味しいもんね☆

ミフェットにお願いされたら一緒にイチゴのお菓子探しだ!
村の中を案内しながら名物のフレイムベリーのお菓子がないか探して回るよ♪
お菓子を買ってレシピも教えてもらったら、今年もいっぱいお土産を持って帰ってみんなで食べるよ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ミフェット・マザーグース
ティエル(f01244)と一緒にいちご狩り!……いちごがり?
イチゴ畑にそーっと足を踏み入れて
もしかして、逃げるいちごと追いかけっこしてるのかな

ティエルが戻ってきたら、村の案内をお願いしよう!
はじめてきた村だから、お店や食堂、広場がどこかも分からないんだもん
料理に、お菓子、歌に物語、村にあるもの、知りたいことはたくさんあるよ

WIZで判定
でも一番気になるのは、いちごのお菓子!
ティエルが飛んでいっちゃうくらい美味しいイチゴの、美味しいお菓子ってどんなのだろう? ミフェットも作れるかな?

ぐるりと村を回ってから、やっぱりお土産が欲しくなって
ミフェットのいちご狩りに付き合ってって、ティエルにお願いするね





 緑に茂る葉の中に、真っ赤に輝く粒が並ぶ。

「これが、フレイムベリーなのかしら? とても綺麗なイチゴね……」

 そんな粒を、しゃがみ込みつつしげしげと眺めつつ。ほう、と息を吐きながら門奈が呟く。
 普段は明るさの中にも大人びた表情を浮かべ、戦いの際には内に蠢く狂気を前面に押し出す門奈である。
 だが、今の門奈の表情は……。

「うふふ。イチゴ狩りなんてした事無いから、とても楽しみね!」

 目にも鮮やかに輝く宝石を前に、高揚したかのように輝く笑顔。
 初めての体験であるらしいイチゴ狩りという催しも相まってか。その笑顔は年相応の少女の様に無邪気な物であった。

「やったー! イチゴ狩りの時間だぁーっ♪」

 そんな門奈と同じ様に……いや更に楽しさを前面に押し出し、無邪気にはしゃぐ幼い声。同時に緑の葉が作る海へと飛び込んできたのは橙色の彗星……小さな妖精姫、ティエルであった。

「わー★ 今年もおっきくて甘そうだー!」

 今年も上々の出来だと、そう語った農夫の言葉通り。実ったフレイムベリーは今年も非常に大粒だ。
 どれくらいの大きさかと言えば、小柄なティエルが体ごとしがみついてなお余る程と言えば判るだろうか?
 そんな真紅の宝石に喜び勇んで。去年もそうしたように、ティエルは抱きつくように抱え込んでかぶりつこうとお口を広げて……。

「──エルー? ティエルー、どこー?」
「はっ!?」

 聞こえてきた声に、ハッとティエルは我に帰る。

(いちご狩り! ……いちご狩り? もしかして、逃げるいちごと追いかけっこするのかな?)

 ティエルを呼ばう声の主は、ティエルの大親友であるミフェットだった。
 逃げるイチゴを追い掛ける親友。そんなファンシーな映像を頭に思い描きながら、ミフェットがイチゴ畑にそーっと足を踏み入れる。
 どこか不安げなその足取りであるが、実際ミフェットは不安半分な心境であった。
 何せ、この村は初めて訪れた村である。だからいろいろな物をいっぱい知りたいとミフェットは思うのだが……しかし、村のどこに何があるのか。ミフェットには検討もつかないのだ。
 ……それなのに、一度訪れた経験のあるティエルは、視界に入ったキラキラ輝くイチゴ畑に感情の針が振り切れて大暴走して飛んでいってしまう始末である。
 これではミフェットが不安がるのも、無理は無かろうと言うものだ。

「うー、いけないいけない★」

 そんな不安げな友人の声を耳にして、ティエルがぺろりと舌を出し。
 そうしてそのまま、もう一粒イチゴをもぎ取って。背に輝く翅を羽撃かせ……。

「ごめんねー、ミフェット! 一緒に食べよー!」
「わっ、おっきい……!」

 ミフェットの下へと飛んでいき、お詫びにと抱えたイチゴを献上する。
 このイチゴが、ティエルが飛んでいってしまう程に美味しいというイチゴなのかと。献上されたイチゴを手にとって、しげしげと眺めるミフェット。
 さてさて、その味の方はどうなのか?

「それじゃ、せーので食べよっ!」
「う、うんっ。せ、せーのっ」

 ぱくり、と口に含んだその瞬間。

 ──じゅわっ。

 と、ミフェットの口中にイチゴの果汁が満ちる。
 目を見開くミフェット。口に広がるのは、酸っぱく、甘く、そして爽やかで。全てのバランスが、まさに絶妙。その上、大粒であるから食べ応えも相応で。
 ……こんなに美味しいイチゴであるならば。

「……このイチゴを使ったお菓子って、どんなのだろう?」
「──お菓子っ!」

 ポツリと呟いたミフェットの声に、無我夢中でイチゴに齧りついていたティエルも食いつく。
 ミフェットが気になるのは、そこだ。
 これだけ美味しく、ティエルを夢中にさせてしまうイチゴだ。そんな名物を、この村ではスイーツ……お菓子にして供してもいるのだという。
 そのお味たるや、一体どれ程の物だろうか? レシピがあれば、ミフェットでも作れるのだろうか?
 ……そう言えば、この村には一軒だけだが土産物屋もあるのだという。
 色々尋ねるとしたら、まずはそこだろうか?

「ティエルっ、お土産屋さんに行ってみよう!」
「うんっ! お土産屋さんは、あっちだよ!」

 きゃいきゃいと仲良し二人が去っていく。
 そんな二人の賑やかな背を見送る門奈だが……そこでふと、彼女の頭に天啓が閃いた。
 あの二人は、なんと言っていた? そう、土産がどうだか──。

「お土産──そうだわ!」

 これだけ美味しそうなイチゴだ。お土産として持ち帰れば、門奈が尊愛を捧げる主もきっと喜んでくれるはず。
 その為にも……!

(形が良くて、色艶も輝いていて、美味しそうな物を選別しなくては──!)

 強い使命感を燃やしながら、門奈の瞳がイチゴを選別し……その手で丹念に、もぎ取っていく。
 主は、喜んでくれるだろうか? 愛しき存在の顔を頭に思い描く門奈の表情に、先の戦いで見せた狂気の色は微塵も無い。
 その表情はただ、穏やかに綻ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニクロム・チタノ
ゴブリンもいなくなって平和になったし、ボクも体を動かしてイチゴ狩りといこうかな?
イチゴ、ボク大好物なんだ~
ヴィクトリア先輩も一緒に食べながら少しお話しませんか?
とてもみんながイキイキしていてとてもいい村ですね、守れてよかった
今回は少し冷静じゃなかったかもしれません
他の猟兵の方々にも迷惑をかけてしまって
ボクもまだまだです
もっとがんばらなくちゃ
チタノこれからもどうか加護と導きを
イチゴとても美味しいです


バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携OK!
絡み大歓迎デース!

『真紅の宝石』フレイムベリー! 購入契約はあとで済ませるとして。
まずは戦勝祝いデスネー!

楽しいイチゴハンティング!
まずはそのまま生の味見をして……美味しい感想を述べマース!
ご当地レシピのメニューも見せていただき、食べつつ作り方を覚えさせていただきマース!

あとはアレンジ。格納型メイド用キッチンを展開してクッキングスタート!
牛乳による新鮮クリームや他世界産の餡子を合わせて、スポンジケーキやいちご大福を作ってみマショー!
ヴィクトリア殿を含めて、どうぞデース、エブリワン!

食べて、学んで、作って、買って行きマース!





「『真紅の宝石』、フレイムベリー! まずは戦勝祝い! 楽しいイチゴハンティングデスネー!」
「村も平和になったし、ボクもイチゴ狩りといこうかな?」

 楽しげな声を響かせていた者は、他にもいた。
 茂る緑の海の中に浮かぶ赤い実をもぎ取って歓声を上げるバルタンと、無表情ながらもどこか心が浮き立った様子のニクロムだ。
 それぞれにしゃがみ込み、成った立派な粒をその指に摘む。その粒は大きく、真紅に輝く色艶は目に鮮やかだ。
 さてさて、肝心のお味の方はと。それぞれが口に含めば……。

「──ン、ンン~……! 美味しいデスネー!」

 噛み潰した実から溢れる果汁。酸味と甘味の絶妙なバランスと鼻に抜けるような爽やかな香気に、感じ入った様な吐息がバルタンの口から零れ出る。

「スゴい。このイチゴ、とても美味しいです……!」

 ニクロムも、その目を見開いて驚きを露わとする。
 イチゴが大好物だというニクロム。そんな彼女であるから、これまでにも様々な品種のイチゴを食している事だろう。
 だがこのフレイムベリーは、そのどれとも違う。科学的な手法で様々な品種改良を施された物に比べれば洗練されていないはずの品種であるはずなのに……コレほどまでに美味であるとは。
 これだけの出来の、絶品だ。『真紅の宝石』と人々から謳われているのも理解できるという物だ。

(も、もう一つ……)

 素材の味をその舌で確かめるバルタン。そうして味を頭に刻んだ彼女が、頭の隅で購入契約を結ぶ為に必要な予算を計上しながら、農夫に村のご当地レシピを尋ねるその様子を横目に見つつ。ニクロムは次のイチゴを口へと運ぶ。
 広がるその味は、どれだけ食べても飽きが来ない。本当にいくらでも食べられそうだと、また次のイチゴをニクロムは摘む。

「ふふ。楽しそうですね?」

 そんな最中に掛けられた声に、ニクロムが視線を向ければ。

「あ、ヴィクトリア先輩」

 そこに立つのは、嫋やかな微笑みを浮かべた銀髪の女。皆をこの地に送り届けたグリモア猟兵、ヴィクトリアがいた。
 どうやら事後処理の方は大方済んだのか。楽しげにはしゃぐ皆の様子を、見て回っているらしい。

「一緒に食べながら、少しお話しませんか?」
「えぇ、構いませんよ。それでは、ちょっと失礼して……」

 ニクロムの誘いに、穏やかな笑みで答えるヴィクトリア。
 そのままニクロムの横にしゃがみ込み、指でイチゴを摘み取り口へ運べば。ヴィクトリアにとっても一年ぶりのその味に、穏やかな笑みは更に柔らかく綻ぶだろう。
 そんなグリモア猟兵の警戒心が薄れた仕草を見れば。この村は確かに守られたのだ、と……。

「……村を守れて、良かったです」

 ニクロムの心を満たすのは、温かな安堵だ。
 視線を上げて見渡せば、イチゴに舌鼓を打つ猟兵達も、脅威が退けられた事を喜ぶ村人達も。皆が皆、とてもイキイキとしている様子がニクロムの目に映る。
 今日の脅威を切り抜けた事で、きっと明日も、明後日も。村は明るい活気に包まれる事だろう。その結果を掴み取れたのは、実に喜ばしい事である。
 とは言え、だ。

「でも、ボク自身は少し冷静じゃなかったかもしれません」

 ニクロム自身には、今回の戦いに思う所がある。
 押し寄せるゴブリンをその目にしたあの時。ニクロムの心は強い正義の心に燃えていた。
 だが、その燃えた心が仇となったか。仲間と歩調を合わせることは出来ず、単身で敵と相争う事になってしまっていた。
 結果として、上手く行ったは良い物の。もし敵が只の小鬼のなどで無く、もっと手強い手合であったのならば……今日の様な成果は、上げられなかった事だろう。

「ボクも、まだまだです……」

 そう思うからこそ、ニクロムは自省して。
 そして、その上で。これからも、もっと頑張らなくてはと心を引き締めるのだ。

「では、私はそんなニクロムさんの頑張りを応援致しますね」

 これからも、猟兵達を激しい戦いの数々が待ち受けているだろう。当然、ニクロムもそんな戦いに身を投じるはずだ。
 しかし、今日の覚悟と決意を胸に秘めたニクロムならば。きっとそんな戦いも、乗り越えていけるはずだ。
 決心を新たにするニクロムを、ヴィクトリアは柔らかな笑みを浮かべて見守っていた。

「はいはーい! ニクロム殿も、ヴィクトリア殿も! 他のみなさんも、どうぞデース! エブリワーン!」

 そんな、どこかしっとりとした雰囲気のままでは終わらせないぞと言わんばかりに。響き渡るはバルタンの声。
 気付けばイチゴ畑の一角に、バルタンが展開したキッチンが設置されている。そこで腕を振るうバルタンが作るのは、この地のご当地スイーツのみならず。新鮮な生クリームや持ち込んだ他世界産の餡子を合わせて作り上げた絶品スイーツの数々だ。
 家事代行サービスを趣味とするメイドでもあるバルタンの手際は、家事に一家言を持つヴィクトリアも目を瞠る程の腕前だ。その腕前で作り出された品々の味は……特筆せずとも、判るだろう。

「……ふふ。折角のお誘いですから。ニクロムさん、一緒にご相伴に与りましょうか?」

 微笑みを崩さぬヴィクトリアが立ち上がれば、その後にニクロムも続いて歩き出す。
 食べて、学んで、作って、買っていきマース! と、賑やかなバルタンのその様子を見れば……歩むニクロムの口の端は、知らず小さな笑みの形を作り出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セフィリカ・ランブレイ
フレイムベリーは二回目だけど、やはり美味しい!
砂糖とその他で作られる麗しのスイーツ達は勿論美味しいんけど
食べなれた頃摂取するこの素朴な甘味も最高だね

シェル姉、たまにはどう?
美味しいよ、ホントに

相棒の魔剣は人の姿こそ取れるけど食物を取り込む際、魔力に分解するのが面倒と一緒に食事はとらない、が
味はわかるんだし、これは味わってほしい

『ま、たまにはアリか』
機嫌がよかったのか、それともイチゴに惹かれたのかシェル姉も食べることにした様子

『悪くないものね』
おお、シェル姉が微笑んでいるところを久しぶりに見た。強いな、イチゴ

『微笑ませるような行動をセリカが取りなさいな』
うわーん、お小言は要らないよう!





「あー、んっ! ……んんー! やっぱり美味しいなぁ、フレイムベリー!」

 自身の瞳の様な真紅の宝石を、蔕(へた)の側からがぶりと齧る。
 瞬間、口の中に満ちる春の風味。一年ぶりに味わうその味を、セフィリカは堪能していた。
 砂糖を始めとした食材をふんだんに使った麗しのスイーツ達を、望めば幾らでも味わう事が出来るセフィリカである。
 勿論、そんなスイーツ達も美味ではあるけれど……この素材の味そのものという素朴な甘味だって、負けてはいない。

「ほーら、シェル姉。たまにはどう? 美味しいよ、ホントに」

 腰に佩く相棒にして姉代わりである魔剣を指で小突く。
 ……シェルファと銘打たれたその剣は、真の姿を解放する事でヒトの姿を取る事が出来る。
 ヒトの姿を取れるという事は、当然食事なども摂ることが出来るのだが……。

(魔力に分解するのが面倒、ってさぁ……)

 取り込んだ食物を魔力に分解するのが面倒だ、と。味は判るのに、普段は共に食事を取る事を良しとはしないのだ。
 そんな理由でこの春の味を食べ逃がすだなんて、実に勿体無い事であるし……何より親しいヒトとは、同じ体験を共有したいじゃないか。
 セフィリカのそんな気持ちを汲み取ったのか、はたまた単純に機嫌が良かったのか。それともただ、イチゴに惹かれたのか。
 真実の程は、定かではないが。

『……ま、たまにはアリか』

 魔剣がポツリと呟けば、目も眩むような光が瞬いて──。

「──少しだけよ、セリカ?」

 顕れ出たのは、長い蒼髪の女。黒い長衣が落ち着いた印象を与える、エルフの美女だ。
 彼女こそ、セフィリカが姉と慕う存在。魔剣シェルファの、真の姿だ。

「それじゃ早速一つ。ほらシェル姉、あーん……」
「自分でやるわよ」

 はしゃぐように絡むセフィリカをぞんざいに扱いつつ。苗を覗き込む様にしゃがみこんだシェルファの指が大粒の実を摘み取り、口にする。
 一口、二口……。

「……悪くないものね」

 味を確かめる様に口を動かし、呟くシェルファ。

「お、おおー……。シェル姉が微笑んでいるところ、久しぶりに見た」

 そんなシェルファの顔を見て、セフィリカが驚きに目を開く。
 物言いが直截的で、時に辛辣ですらあるシェルファ。ヒトの姿を取れば表情は仏頂面で、笑みを浮かべる事などそうは無い。まるで氷のような美女である。
 そんな彼女が、口元をふわりと緩めて微笑みを浮かべているのだ。

「シェル姉の鉄面皮を緩ませるとは。強いな、イチゴ……!」

 普段見れない、姉の微笑み。そんなレアな表情を作り出したイチゴに、セフィリカの口から感嘆の声が漏れ出るが……。

「日常的に微笑ませるような行動を、セリカが取りなさいな」
「うげっ、お小言はいらないよう!」

 そんなセフィリカに向けて突き刺さる、姉のお小言。
 容赦のないそのセリフに覚えがあったのか、セフィリカの頬に冷たい汗が流れて落ちる。
 ……遠慮のない二人のやり取り。それは二人の間に強い信頼があるからこそ。
 春の味を堪能しながら、セフィリカとシェルファの他愛のないやり取りは続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベリオノーラ・アンフォール
苦戦はしないとおっしゃられていましたが、それでも被害を出さずに終えられたことは喜ばしい限りです。
皆さん、本当にありがとうございました。

去年はフォンデュにしていただきましたが今年はどうしましょう・・・?
そうえば、防衛のための準備の際に村の方々にもたくさんお手伝いしていただいていましたし、これが良いかもしれませんね。

持ってきたミキサーでフレイムベリー・ヨーグルト・牛乳・砂糖・氷をよく混ぜて、コップに注げばお手製ドリンクの完成です。
あとはこれをみなさんにお配りしていきましょう。
飲み物であれば疲れた身体でも取りやすいかと。


フードは被っておきます。





 春の風物詩とも言える特産品。その味を楽しむ猟兵達が、楽しげに笑う。
 いや、笑っているのは猟兵達だけではない。滅びの危機から救われた村人達の表情にも、安堵の笑みが浮かんでいた。

(村の方たちに被害を出さずに終えられたことは、喜ばしい限りですね)

 猟兵達の力であれば苦戦はしないだろうと、グリモア猟兵が事前に語っていた通り。今回の務めはそう難しい物では無く、事実猟兵達は完璧な形で結果を示していた。
 だが、そうであっても。実際に、こうして救われた人々の笑顔を見る事が出来れば……胸に満ちる達成感にベリオノーラの胸は満ち、その表情には嬉しそうな微笑みが浮かぶ。

(……ですが、村の方々は少しお疲れのようですね……)

 とは言え、村人達が疲労を感じているのもまた、事実であるらしい。
 冷静に考えれば、慣れぬ戦支度による労働や、命の危機に瀕した事で感じたストレスなど。村人達が心身共に疲弊する要素は十分だ。
 出来るならば、彼らの労苦もねぎらいたい所であるが……。

(さて、どうしましょうか?)

 ふむ、と。唇に指を当てて考えるベリオノーラ。
 疲れた時には、甘い物が鉄板と言えば鉄板だ。フレイムベリーの甘さと酸味は、疲れた身体に染み入るだろうから、去年のようにチョコフォンデュとして供すれば、村人達も喜んでくれるはずだが……疲れた身体を癒やすなら、出来る限り素早く栄養を摂取出来る形にした方が望ましいかもしれない。

「……と、すると。『これ』が良いかもしれませんね」

 小さく頷き、携えた愛用のトランクケースから取り出したのは、携帯型の調理器具。果物や野菜などと言った食材を細かく砕き、また撹拌する為の装置……いわゆる、『ミキサー』と呼ばれる物である。
 蔕を取り水洗いしたフレイムベリーと、持ち込んだヨーグルトや牛乳、砂糖に氷を一緒に入れてスイッチオン。良く混ぜ合わされたそれを、コップに注げば……。

「特製ドリンクの完成です」

 甘酸っぱさが疲れた身体に優しく染みる、ベリオノーラ特製ドリンクの出来上がりだ。
 こうした飲み物であれば、疲れた身体でも摂りやすいだろう。それにヨーグルトや牛乳などは、疲労した身体の回復にも最適だ。
 ……これなら、村の人々も喜んでくれるはず。

「さぁ、早速皆さんにお配りしていきましょう。と、その前に……」

 村の人々が喜ぶ顔を思い浮かべつつ、歩き出そうとしたベリオノーラが何かに気付き……纏うローブの、フードを被り直す。
 ローブには、着用者の表情を認識させないという加護がある。その加護の発動の鍵は、フードの着用の有無だ。
 フードを被り直した事で、ベリオノーラのその表情は村人達には認識出来なくなるが……。

 ──今日は本当に、お疲れ様でした。そして、ご協力頂きありがとうございました。

 きっとベリオノーラの温かな心遣いは、表情を読めずとも伝わるはずだ。

 春の風物詩である、『真紅の宝石』。その味は、これからも多くの人々を楽しませてくれるはず。
 ……そんな未来を、猟兵達は見事に守り抜いてみせたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月21日


挿絵イラスト