#封神武侠界
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桃源郷に降り注ぐ日差しは春麗らか。
柔らかく、暖かくとその陽の下にあるモノを等しく包み込む。
その中でクンと鼻腔を鳴らせば、香しきが満ち、抜けることだろう。
それは花の香であり、濃い酒精。
誰ぞ、この春の麗しきに花見の一つでも開いたか。
――いいや、違う。
そうであるのならば賑わいの一つも聞こえてこよう。
だが、幾ら耳を澄ませども喧騒はない。騒然たるもない。
あるのはさらさらと流れる水の音に、さやさやと風に擦れる梢の音。
――そして、微睡だけがそこにはあった。
ぐうぐう、くぅくぅ、すやすや。
春眠暁を覚えずとは言うけれど、その光景は奇妙そのもの。ヒトも、犬も、豚も、鳥でさえも、誰もが微睡の中に落ちた光景は。
「眠れ、眠れ、眠りの果てに我が糧となれ」
現実に落ちた言葉は静寂を破るそれ。
眠りへと落ちた桃源郷の中をぞろりと長き影が差し、はらりと一片、花弁が散った。
「随分と春めいた日も増えてきましたねぇ」
ひょこりと揺れた兎耳。ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)が変わらぬ間延び声を猟兵達の前で響かせる。
季節は春――とは言え、まだまだ肌寒い日もあれば、ともすれば初夏もかくやという日もあろう。それも季節の変わり目であればこそだ。
だが。
「皆さんはぁ、封神武侠界にもう足を運ばれましたぁ?」
ハーバニーが口にした世界――封神武武侠界。それは人界と仙界とで成り立つ世界。そして、その内の仙界は桃源郷とも呼ばれ、常春の如く桃の花咲き誇る異界であれば話も変わるというもの。
「今回の依頼はですねぇ、そちらでのものとなりますよぅ」
揺れる兎耳の下で言葉が続くに、猟兵達に赴いてもらう地は件の桃源郷が一つである。
本来であれば平和なそこではあったけれど、今は何が原因か、その地全体をとてつもない酒精が覆っているのだと言う。甘く、重く、心惑わせるそれは、たちまちにヒトビトを酔わせ、眠りに誘い、目覚めぬ微睡の中に落としているそうだ。
「その原因を探ってもらうのが一つとぉ、可能であればぁ、その原因を取り除いてもらうことがもう一つですねぇ」
それがハーバニーの語る、この依頼の目的。
「酒精の発生源は幾つかありましてぇ、その中でも怪しいと思われる場所はぁ、湖、桃林、集落。この3つですねぇ」
それらの場所を重点的に探していけば、原因ないしは黒幕なりに辿り着ける可能性は高い。
だがしかし、漂う酒精の影響を受けるは猟兵も変わらぬ。勿論、すぐすぐに酔い潰れるということはないにしても、対策もなしに長時間滞在するのは些か拙いことになるだろう。
「原因を取り除くことが出来ればぁ、黒幕も姿を現さずにはいられないかと思いますぅ」
そうなれば、あとは酔いつぶれる前にそれを討伐するのみ。
「酒精への対策、原因の特定と排除、黒幕の討伐。成すべきこと、考えることは様々とありますが、皆さんならきっと」
信じています。と、青の目は静かに、しかし、雄弁にそれを語っていた。
だが、その真剣な光も瞬き一つで、ゆるりと変わる。
「あ、そうそう。全部が終わればぁ、そうですねぇ、帰還までには時間もありますのでぇ、桃源郷で羽を伸ばすも宜しいかと思いますよぅ」
パンと小さく手を合わせ、戦いの後の息抜きもどうか、と語るから。
今は異変に晒されている桃源郷であるが、それさえなければ平和な場所なのだ。ならば、その平和を取り戻した後には果物を楽しむもよし、花見に一杯と洒落込むもよし、のんびりと釣りでもして過ごすもよし、だ。
「それではぁ、皆さんの無事の帰還を祈っていますねぇ」
ここまでのご案内は。と語りながら、翳されたは銀の鍵。
異世界へと続く扉はここに開かれて、猟兵達の踏み出す一歩を今か今かと待つばかり。
ゆうそう
オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
ゆうそうと申します。
今回の依頼は封神武武侠界。その世界にあるとある桃源郷が舞台です。
オープニングでも触れましたが、皆さんには酒精漂う桃源郷へと赴き、異変を解決してもらえたらと思います。
以下、補足。
●第1章
湖、桃林、集落。
この三か所から探したい場所を選んでください。
探す場所、方法によっては、黒幕の影を踏むなり、酒精の発生源なりを発見できることでしょう。また、場所によっては漂う酒精の濃い薄いがあるかもしれません。
住人(家畜含む)は皆、酔いつぶれて寝ています。無視していても問題はありませんし、やり方次第では起こすことも出来るかもしれません。どう扱うかは皆さんにお任せします。
なお、酒精は常に漂っていますが、対策があれば影響をより抑え込めます。
●第二章
第一章が成功すれば、黒幕との戦闘となります。
基本的に酒精は変わらず漂っていますが、第一章の結果で濃度や影響の有無は変動します。
●第三章
討伐終了後、平和になった桃源郷で帰還までのひと時を過ごせます。
能力別に指定された行動指針以外の行動でも構いませんので、ご自由にどうぞ。
また、ハーバニーも居ますので、1人での参加はちょっと……という方はお気軽にご利用ください。
それでは、皆さんの活躍、プレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『心惑わす甘美なる香』
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POW : 匂いの影響を気合で抑え込み突破を図る
SPD : 匂いの影響が出る前に素早く突破を図る
WIZ : 匂いの影響を抑える手段を整え突破を図る
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オリヴィア・ローゼンタール
常春の園は世界を越えても楽園の象徴なのですね
白き中華服の姿で顕現
暖かな日差しと良い香りは確かに眠く……と、いけません
厳しさや苦しさは耐えられますが、心地よさは耐えようという意志を挫きますね
【トリニティ・エンハンス】で風の魔力を身に纏い、吸い込む空気から酒精を飛ばす
桃林を探索
仙桃、という力ある果実があるそうなので、これを悪用しているのでは?
極端に果実の減っている樹がないか、匂いが強い方向がないか、調査の基本は脚で稼ぐ(情報収集)
……それにしても綺麗な園ですね、酔いがなくとも少し浮かれてしまいます……ええ、酔っていませんとも
匂いを探っているうちに酔ったりなんて
さやりさやりと風の囁き。
咲いて、散って、舞い踊り、それでも枯れぬは桃の花。
「常春の園は世界を越えても楽園の象徴なのですね」
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が赤縁のレンズ越しに視界をぐるり。
白と見紛う桃色から赤と見紛う桃色まで濃淡様々。天然の彩で描かれる桃林の光景は、まさしく幻想――天上、楽園のそれであろう。
金色の瞳がゆるりと赤縁の奥で細められる。
宵闇が希望を塗りつぶす世界を故郷とすればこそ、オリヴィアにとってはその光景が眩しく映ったのかもしれない。
「暖かな日差し、花満ちる匂い、穏やかなる自然の声」
何もかもが違う。
「これは確かに、眠くもなりますか」
このまま心溶かされ、うつらと船の一つも漕げれば、それはどれだけ心地よい事だろうか。現実を忘れられれば、どれだけ心地よい事だろうか。
甘美なる誘惑に、思わずと心も揺れる。
「……と、いけません。綺麗な園に、少し浮かれてしまいましたか」
だが、オリヴィアは知っている。
その誘いこそが悪魔の誘惑であるのだと。天国も薄皮を剥けば地獄へと変じるのだと。
――囁きが消えた。
濃密なる桃の香り――熟れきり、腐り落ちるような甘ったるさは彼方へ。同時、オリヴィアの思考が清明を取り戻す。
「美しさに見惚れれば、ですか」
本来であれば、そのような機能はこの桃源郷にはなかったのであろうけれど。
オリヴィアと桃林へ満ちる空気を隔てるように、風が巻いていた。それはオリヴィアが展開した風の魔力であり、自然のそれとは異なる流れがオリヴィアの纏う衣をはためかせる。
「さて、何かしらが見つかると良いのですが」
言いつつ、オリヴィアとて当てずっぽうで桃林に足を運んだ訳ではない。
ここが仙界であるのならば、摩訶不思議なる果実もあるのではないか。それを悪用しているのではないか、と。
さくりと下生えの草を踏み鳴らし、さくりと積もった桃の花びらを踏み鳴らし、桃林の中でその歩を進める。
――ふわり、はらり、ひらり。
舞い散れども不思議と一定以上は積もらぬ桃の花吹雪をかき分けて。
――ふわり、はらり、ひらり。
纏う風に白華の衣を花吹雪へ負けじと躍らせて。
桃の樹々に異変はないか。香りの濃さに変わりはないか。その脚を使って西東。思考廻して北南。
「……嗚呼、存外に私の勘も捨てたものではありませんね」
恐らく、風の薄皮一枚隔てた先は濃密なる酒精が漂っていることだろう。
そこには積み重ねられた桃の山。そして――。
「これも宝貝というものなのでしょうか?」
桃の山をぐずりぐずりと端から取り込み、その内で溶かし、熟成させる不可思議なる瓢箪。
ひとしきりと桃を呑み込めば、ちゃぷりと中で水気が揺れる。恐らく、その内には多量の桃酒が出来上がっているのであろう。
――けっぷ。
まるで胃の内に溜まった空気を吐き出すかのように、瓢箪は酒精をもわりと空気の中に吐き出して。
「っ……これは、なかなかに」
風の膜で身を守っている筈のオリヴィアにすら届いた酒精の香りに、くらりと視界が小さく揺れた。
――留まるは危ういか。
原因らしきモノは発見した。ならば、一旦態勢を立て直すか。
そう考えも過りはしたが、それが行動に移されることは無かった。
行動するより先にオリヴィアが酔いつぶれたのか。いいや、違う。吐き出された酒精がナニカへかき集められるかのようにして、彼方へと去っていったから。
残されたのはオリヴィアと瓢箪。そして、より濃度を増す前と同じ、酒精漂う桃林の空気。
「……あれを追う、いえ、先にこちらを壊しおきましょう」
酒精の向かった彼方へ足を向けかけ、オリヴィアの視界に映ったは再びと桃を呑み込み始める瓢箪の姿。
これが果たしてどのような役割を持つかは不明であるが、少なくとも、この状況において良いものではないとは分かる。いや、身をもって理解した。大勢に影響はないが、それでも僅かと身の内に残る気怠さは酒精の名残そのものであるから。
ならば、と足を向けなおせば、その破壊はアッサリと。抵抗らしい抵抗がなかったのは、その道具に酒を造る以上の役割が課されていなかったからだろう。砕けて、散って、バラバラとその身を桃林が大地の一部へと還すのみ。
「では、改めて」
酒精の飛び去った方角へと。
その先に何が待ち受けているかはまだ分からないけれど、それでも、この異変の現認に一歩ずつ近づいているという確信めいた勘がオリヴィアにはあった。
成功
🔵🔵🔴
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
この酒精漂う中での行動はかなり大変そうだな…
なら、ここは疑似精霊の力を借りる事にしよう
手持ちドロップを媒体に固有結界・黄昏の間を発動
【多重詠唱】で風と水の疑似精霊を同時召喚
風の疑似精霊の力で自身周囲に風の結界を生成、酒精が漂わない空間を作り出す
疑似精霊達も酒精の影響を受ける可能性も考慮し風の結界内に待機させる
さて、情報を入手するにはどうしよう
集落を確認してみるか
皆寝てしまっているようだが…、寝ている人達を風の結界内へ入れた後、水の疑似精霊の力で『酔い覚まし【属性攻撃】』の水を生成し彼らに飲ませる
酔いが醒めてそれ以上酒精の影響を受けなければ、話も聞けるんじゃないかな?
香る、薫る、濃密な。
「この酒精漂う中での行動はかなり大変そうだな……」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が足を踏み入れたは桃源郷が人里の一角。
咲き誇り、舞い踊る桃の花に彩られたそこは、見た目だけならまさしくの楽園ではあった。だが、それがそうでないことは鼻腔を擽る香りからも明らか。
齢にして二十を超えた彼であればこそ、もしかすれば酒の味の一つや二つを堪能したことがあるかもしれない。しかし、今、この地に満ちる酒精は一般のそれとは明らかに隔絶したものであることは酒の味を知っても、知らずとも、理解できるものであったのだ。
呼吸をすれば否が応でも入り込んでくるそれに、脳を少しずつ、確実に蕩かす空気に、ひりょは小さく眉を顰める。
このままでは木乃伊取りが木乃伊になりかねない、と。
集落の全てをまだ回った訳ではないけれど、それでも里のあちらこちらで壁に寄りかかり、道に倒れ伏し、様々な形で動きを止める住人らしきを見て取れば、どこもかしこもこうなっていることは想像に難くない。そして、遠くない未来に己もその一部となりかねないことも。
だからこそ――。
「場よ変われ!」
その予想図へと辿り着くを少しでも遅くするために、もしくはそんな未来を覆すために、ひりょはその力を行使するのだ。
手の内で遊ばせていた飴玉幾つを放り投げ、唱える呪文のアブラカタブラ。
宙を泳ぐ飴玉がほろりと身を崩せば、生まれ落ちるは水と風。舞う桃色に混じり、ふわりピシャリと跳ね踊る。
それは飴玉を媒介にして呼び出した疑似精霊達。この酒精揺蕩う桃源郷において、安全地帯を構築するための。
――ちょっと勿体なかったかな。
なんて思考が挟まったのは、その飴玉がクリスマス限定のものであったからか。それとも、僅かの間だけでも吸い込んだ酒精に思考が少し蕩かされていたからか。
だが、それもそこまで。
吹き抜ける風が酒精を祓えば、滴る清水が思考に清明を取り戻させる。
「……確かに意識は多少はっきりしたけれど、もう少し手優しくしてくれると良かったかな」
風が吹き抜けたまでは良かったが、よもや、顔面に水の一杯を浴びることになろうとは。
ポタポタと黒髪から滴り落ちる雫に苦笑いの一つも零せば、水の疑似精霊は楽し気にその身をくねらせ、風のは逆巻いてくすくすと風音を鳴らすばかり。
――まさか、酔っているのでは。
なんて、そんな心配も僅かばかり。だけれど、周囲を浄化するという仕事はきっちりとこなしてくれている辺り、そこまで大きな問題ではない。
だが、時間が長引けばもしもということは考えられるがために、ひりょはその思考を切り替えるのだ。
「それじゃあ一つ、寝ている人達を起こすとしようか」
酔いつぶれて寝ているのなら、酔いを醒まして起こせばいいだけ。
単純明快な答えを胸に、ひとまずとひりょは目に見える範囲から手を伸ばすのであった。
「……う、うぅ」
「これを飲むといいよ。少し違うと思うから」
ひりょが展開した風の結界内に連れ込まれ、酒精の影響を脱した男の目が薄っすらと開く。
しかし、その顔色は土気色。明らかなる衰弱の気配。
二日酔い――であろうか。それにしては余りにも弱っているような。
だが、その思考が進むより早く、こくりとひりょの差し出す水をひと飲みした男の顔に僅かばかりの朱が戻る。意識が、そちらへと流れた。
「……話せるかな?」
「すまねぇ。誰だか知らねえが、助かったぜ」
「いや、それはいいんだ。気にしないでよ。だけれど、ここでは何かあったのかい? 皆、あちらこちらで倒れているけれど」
こくり、こくり。
二口、三口と飲む程に朱を取り戻した男へ、これならば話も聞けるかとひりょは問いかける。
その問いにまだ痛む頭に顔顰めながら、男は必死と記憶の糸を手繰るのだ。自分自身が潰れる前の瞬間を思い出すために。そして、不意にひりょの生成する水を見て、何かを思い出したかのようにと。
「そうだ、水だ」
「水?」
「ああ。ここの水源は湖のを使ってるんだが、それがある時、急に果実酒みたいな味がし出してよ」
「飲んだの?」
「水源がそれしかねえからな。俺らにはまだ飲まず食わずは無理ってもんだ。それに一応と調べてはみたが、味が変わったってぐらいでその時はなんともなかったんだよ」
「他には何か心当たりとかは」
「それぐらいなもんさ。そんで、急に一人、二人と酔ったみたいに倒れれば、気付けば一気に誰も彼もだ」
「そうなんだ。ありがとう」
「……いいや、こっちこそすまねえな。折角助けてもらったってのに」
男の言葉に嘘はないだろう。そも、嘘を吐く意味もない。であるならば、怪しきは湖となることは間違いない。
助けた男のためにと風の結界を残し、ひりょは一路、湖へと足を向けるを決める。そこにはきっと、住民では見出せなかった何がしかの原因がある筈と確信を抱いて。
成功
🔵🔵🔴
九泉・伽
※アドリブ歓迎
アルコールの分解には甘い物、飴と水入り水筒持てるだけ
飴を常に口に入れてハンカチ宛がい防御
残念だけど煙草はお預け
>集落
大人で「どこかに行こう」から寝落ちした人を起こすよ
水を飲ませて濡らしたハンカチを目に当ててゆする
猟兵を名乗り飴を渡す
「酔い覚ましに舐めて」
無造作につまんだの舐めて安全アピール
UCの分身は肩を叩いたり揺すって起こす係
「一番手前で憶えてること教えてよ」
ひとつ聞けたら遡りなるべく沢山聞いて状況をハッキリさせてくよ
・どこかに行ってから眠い
・誰かと話した
・特定のものを飲み食いした
・なんかヤバいの見た
…は押さえたい
また寝ちゃったら別の人にあたる
あーそろそろ吸いたいなぁ、てか吸う
カロンコロンと口の中、踊る音色は飴の音。
それ以外に聞こえ来る音はない。いや、あるにはあるけれど、それは自然の奏でる音だけ。
世界そのものが寝静まってしまったのような景色に、思わずと九泉・伽(Pray to my God・f11786)も思考を放り投げてしまいそうになる。
「いやいや、そういう訳にはいかないよねぇ」
だからこそ、こうして一生懸命に飴玉を口の中で転がしているのだ。
寝てしまわないように。酔いつぶれてしまわないように。
桃源郷の空気に混じった酒精の香り。油断せずとも酔/睡へと引きずり込まんとするそれを払いながら、伽の口元はハンカチ越しに苦笑いの弧を描く。
「っと、残念だけどお預けだ」
カランコロン以外の音。カサリと音立てたは、我知らず伸びていた己の手が胸ポケットで奏でたそれ。
その正体がなんであるかなど、『伽』自身はダレよりもよく知っている。
――胸ポケットの中で草臥れた、愛用のシガレット。
愛煙家と語るが相応しいか。それとも、ニコチン中毒と言うが相応しいか。
今や手放せなくなったそれを求める手は、こんな時でも――こんな時だからこそ――伽の代弁をするかのように動いていたのだ。
だが、まだ一服をする訳にはいかない。口寂しさは飴玉で我慢しなければ。
「それじゃあ、寝落ちした人を起こしていこうか」
さあ、イキゾコナイを増やそう。
「う、ぐ、あぁ……?」
「目、覚めたかな? これ、口に入れるといいよ」
「あ?」
「大丈夫、大丈夫。ただの水だからさ、ほら」
「ん、む」
伽が生み出した分身――と言うにはあまりにも、その姿が異なるダレカ――によって起こされた女性。まだ前後不覚があるのだろう。その視線はふらふらと宙を泳ぐ。
その瞳に濡らしたハンカチで蓋をして、乾いた口元には水筒の口を当てる。
――こくり。
触れた唇からそれが水であると理解したのだろう。それとも、酔った身体の無意識か。水分を欲する女性の身体が、それを一口、二口と飲み下す。
咽はない。これならば問題はなさそうか。と、伽は女性の落ち着くを静かに待つ。
カロン、コロン。
「……ふぅ」
「落ち着いた?」
「まだ、ぐらぐらとしている気もしますが」
「ああ、ああ。まだ無理に身体を動かさない方がいい。それより、これも口に入れておくといいよ。少しは酔いも楽になる」
「……すいません」
コロンと女性の口に転がる、同じ音。
僅かの間、飴玉の音だけが響いて、二人が眠りに落ちていないを示すのみ。
――何か喋んなさいよ。
そんな視線を分身から感じた気がするのは、きっと気のせい。どうせ、今から喋らなければならないことは変わらないのだから。
「で、何が起こったか覚えてるかい? 一番手前で憶えてること教えてよ」
それがきっと、この事態の原因究明に繋がる筈だから。
「憶えていること?」
「そ。君が、誰もが、倒れるまでの」
「……」
「どこかに行ってから眠い、誰かと話してから眠い、特定のものを飲み食いしてから眠い、何かを見てから眠い、色々あるとは思うけれど、何かひとつでも心当たりがあるかな?」
出来れば一つ聞けたなら、そこから遡りまた一つをと確認したかったところであるが、賢明に思い出そうとする女性に助け舟。どれか一つ、何か一つでも心当たりはないものかと。
「そう、ですね。倒れたのは本当に気が付けばということなのですけれど……変わったことがあったとすれば、水、そう、水の味が」
「水?」
「はい。いつからかだったかは定かではないのですが、水の味がなんだか変わって」
「他には何かないかな」
「ここの水源は湖なんですが、そこで何かを見たという人も居たり、でも、調べても何も見つからなくて」
「うんうん」
「だから、そのまま、私達は水を利用するしか、なくて……」
うつらうつら。
覚醒していた女性の声が、再びと力強さを失っていく。
再びと酒精に充てられ始めたのか。それとも、別の要因があるのか。
だが、幾度と肩を揺すろうとも女性が再びと覚醒に至ることはなく、眠りへと落ちていくばかり。
「……やれやれ、収穫が間に合ったのは幸いだったかなぁ」
それ以上の情報収集は困難であると判断すれば、そろりと女性を横たえて、伽は天を仰ぎ見る。
状況に反して、憎らしい程に穏やかな空模様は、変わらずと春の日差しを降り注がせ続けていた。
「あーそろそろ吸いたいなぁ」
とりあえず、湖が怪しいということは分かったのだ。ならば、ひとまずはそちらを調べてみるのも良いだろう。
吸いたいなぁ。と言いながらも、既に胸ポケットへ伸びていた手慣れた動きを伽は阻むこともなく、もくりと我慢できずの紫炎が青空に向けて立ち昇っていた。
我慢できなかったのは愛煙家の性か、はたまた、多少でも酔って気持ちに自制が効かなかったのか。それを知るは伽ばかり。ただ、その足が気怠げにでも湖に向けて動き出したことだけは間違いない。
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
人々を眠らせて、一体何をするつもりなのでしょう…
ともあれ、人々の平穏を脅かそうというのなら黙っているわけにはいきません
どんな世界であろうと、立派に御勤めを果たしてみせますよ
と、意気込んで集落へやって来ましたが…
さすがにちょっと頭がぼんやりしてきますね
ここは青竜を呼んで、僕自身に宿り木を植え付けて酔いを吸い出してもらいます
集落の方達にも同じように宿り木を植え付けてもらって、酔いを吸い出して起こしてみて
気持ち良く寝ているところ申し訳ないですが、何が起こったか聞かせてもらいましょう
集めた情報を元にして酒精の発生源を探して、見つけ次第壊すなり【結界術】で封印するなり対処していきます
眠りとは本来平穏な物である筈。だと言うのに。
「人々を眠らせて、一体何をするつもりなのでしょう」
幾つもの経験を積み重ねてきた雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)だ。そこから考えられることがないではないが、それでも確信でない以上は推測の余地を出ない。
故にこそ、彼は酒精漂う桃源郷が集落へと足を運ぶのである。幼きを脱しつつある身とは言え、まだ酒精を浴びるには僅かに足らぬ。だが、その危険の承知の上で。
「人々の平穏を脅かそうというのなら、黙っている訳にはいきません」」
どのような世界であろうとも、その勤め――怪異を打ち倒し、ヒトビトの平穏を守らんとする矜持を果たさんとして。
矜持を抱いた一歩が境界を越えて、いつきの視界に映るは桃源郷。桃に彩られた楽園。
「と、僅か一歩目にしてこれですか」
――だが、今は見目麗しきに反して、訪れる者を引き摺り込む魔境。
意気込むいつきの足取りに迷いはなかったが、桃源郷に漂う酒精は思いの外強く、たった一歩にしていつきの視界と思考にくらりと眩暈を引き起こす。
齢十四。まだ酒の酔いを味わったことはないだろうけれど、これがそうなのか、と。
そのまま酩酊感に身を任せれば、春の日差しと共に心地よい眠りがその身を包むことだろう。
だが、それを受け入れられる程に、いつきの自制心は弱くなどない。
「東方を司りし高雅なる獣よ。その溢るる生命力を以って遍く地平を包み給え」
ぐずりと思考を溶かさんとする誘惑へ抗うように、その言の葉は朗々と。
招くは東方の護り。春の芽吹きを司るであればこそ、今、この時において相応しきに違いはない。
――思考は清明に、視界は良好に。
青竜の力を介し、いつきが己に植え付けたは酔いを吸い出す宿り木。それは役割に違わずと瞬く間にいつきの身体から酒精の名残を駆逐するのだ。
「……ふぅ。まだ、僕には少し早い感覚でしたね」
ふわふわとして、くらくらとして、まるで地に足の付かない感覚は既に遠い。それに身を任せる時が来るとすれば、それはまだ暫く先のお話であろう。
だからこそ、今はしっかりと地に足を付けて、為すべきを為さんとその青の瞳は揺れることなく現在を見据えるのだ。
「一つずつ、一人ずつ、当たっていくとしましょうか」
千里の道も一歩から。
そのための第一歩を改めて。
「あれ、なんでこんなところで寝て……」
「気持ちよく寝ているところ申し訳なかったのですが、目は醒められましたか?」
「あぁ? あんたが起こしてくれたのかい?」
「そうなりますね」
「だろうな」
いつきが酔いから起こした男は取り乱すでもなく、現状を認識している。
ただの酔い冷ましであれば、こうも明瞭に会話するは出来なかっただろう。だが、いつきが自身に施したと同じものであれば、話は別。
「状況は理解できますか?」
「ああ。なんでかは分からない……いや、多少の原因は察しも付くが、誰も彼もが酔いつぶれたみたいになるなんて思ってもなかったな」
「察し……ということは、皆さんがこうなっていることに心当たりが?」
「ある」
「お聞きしても?」
「湖が原因だったんだろうな」
「湖?」
「そうだ。いつからかだったか、ここの生活水が全部桃酒みたいな味になっちまってな」
「それを使わないということは」
「此処の水源は湖ぐらいだ。一度調べはしたんだが、そん時は何もわからなくて仕方なく使ってたんだが、こうなるなんて分かってればな」
これは村の井戸に毒を撒くようなものだ。
悔む男の姿を見守りながら、避けようがなかったのだろう。と、いつきは理解をする。
霞だけで生きていける仙人でもなければ、水は必要なもの。すぐすぐに死へと至る毒でなかったのは、黒幕の目的によるものなのだろうけれど、最終的に至る結果は同じ。
何故眠らせるに留めたかは分からない。しかし、その悪辣さにいつきが我知らずと噛みしめた歯がギシリと鳴っていた。
「……湖、ですね?」
「どうするつもりだ」
「怪異を討つは、僕の勤めですから」
そのためにこそ、いつきは此処にある。皆の笑顔を、心を護るために。
目の前で悔いている男の顔を晴らさずして、何のための力か。何のための矜持か。
地を踏む足に迷いはない。
向けた背中に弱さはない。
今のいつきであれば、宿り木の力なくとも酒精の誘いを跳ねのけられたことだろう。
その足は淀みなく、一歩ずつ、一歩ずつと確かに黒幕へと近づいていく。
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
此処が仙界。サクラミラージュの幻朧桜にも圧倒されたが、此処も随分と色鮮やかだ。――最も。こうまで酒の匂いがキツけりゃ、風情も台無しだが。
調査する場所は桃林だ。【オーラ防御】で酒精の量を軽減。対策なんざ呼べるほど上等じゃねぇが、少しはマシだろう。
じゃねぇと…(欠伸して身体、伸ばし)この陽気にこの匂い。俺も眠くなっちまう。
【追跡】で黒幕の情報、もしくは酒精の原因、この辺りで何が起きたか調べるぜ。UDCの連中が言うには桃の果実は仙人の食い物…らしい。桃を食って酔うヤツも居るとか何とか。
んな訳ねぇだろと思いつつも、桃の果実を一個捥いでみる。匂いを確認し、大丈夫そうなら食ってみる。さて、どんなモンかね?
咲き誇る色の赤白桃。
桃源郷がその名の如く、この地の色は鮮やかに。ましてや、桃林の只中とあれば彩りが視界を埋め尽くしてなおのこと。
「仙界か。ここも随分と色鮮やかだ」
そう零すはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018。銀糸に黒濃く、桃源郷とは違う色で感嘆を示す。
花の気配が強いと言えばサクラミラージュもであったが、桜と桃とではまた少し趣も異なるというもの。だが、どちらも青空によく映えるは同じで、景色だけを見れば決して悪いものではなかった。だがしかし――。
「とは言え、こうも酒の匂いがキツけりゃ風情も台無しだが」
今はその風情そのものを台無しにするが如く、濃密なる酒精の香り。
「花見に一杯も悪くはないが、浴びるほどとくれば花の意味もねえ」
嗜む程度であれば風情もより香り立とうが、悪酔いする程ともなればカイムの言う通り。
この地へ足を踏み入れるより先にと展開していたオーラの膜。それがあればこそ、顔を顰める程度で済んでいるが、なければカイムとて、否、どの猟兵をしても長くは持つまい。
「自ら酔うならまだしも、酔わされるってのはよろしくねえ」
そいつは自由とはちょいと違うからな。なんて嘯きつつ、猫のように欠伸を一つ。
「――っと、いけねぇ。この匂いにこの陽気ともなれば、俺も眠くなっちまう」
ぽかりぽかりと春の日差し。ついでに伸びを一つとすれば――次の瞬間には眠気は鋭く咬み殺された。
「それじゃあ、これ以上眠くなっちまう前にこの辺りを探ってみるかね」
パチリと瞬いた紫紺の瞳には、もう先程までののんびりとした気配など微塵もない。あるのは盗賊が如き抜け目ない──いや、今は便利屋として生きる仕事人の鋭き光があるばかり。
何故、カイムが集落でもなく、湖でもなく、この桃林を探索するを選んだか。それは、その類稀なる勘――探索の技能がそこを探るべきだと囁いたからだろう。
「鬼が出るか、蛇が出るか。まあ、何が出ようとやることは一緒だがな」
己の進む道において障害となるのであれば、カイムの武勇譚に新しい物語が一つ加わるだけだ。
それは凡百の者であれば驕りでしかないだろうが、数多の修羅場を潜り抜けてきたカイムであればこそ、経験に裏打ちされた事実であると言えた。
そんな自信の表れであろう、桃林を進むカイムの足取りに迷いというものはない。
さくり、さくり、さくり。
淀みなく下草を、降り積もる桃の花弁を踏み越えて。
――濃赤の下を潜り、薄桃の隣を過ぎ、降りしきる白を雨と浴びて。
「本当に、この匂いさえなけりゃあな」
情緒を楽しむもへったくれもありゃしない。
濃い、濃い、酒精の香り。ともすれば、甘く、腐り落ちる寸前かのような。
くんと鼻を鳴らせば、まるで延々と続くかのような桃林の中にも道筋が見えてくる。
「――こっちの方が『濃い』な」
酒精の香りの濃い薄い。道なき道に道を見出して。だからこその迷いなき。
――はたして、それはそこにあった。
桃林の奥深く、山と積まれた桃の果実。熟したそれは食べ頃を主張するかのように色付いて。
「UDCの連中が言ってたっけか。桃を食って酔う奴もいるとかなんとかって」
ふと、此処とは異なる世界で聴いた話がカイムの脳裏に蘇る。
かの世界に伝わる神話体系の一つ、そこではこの世界にも似た話が幾つも。その中では桃はある種、特別な食べ物であったりもするのだ。カイムが口にした通りにと。
「んで、あれがこの酒精の原因……ってか、その一つって感じかね」
そして、その視線の先、熟れた桃の山を呑み込む瓢箪一つ。呑み込み、呑み込み、甘く蕩かし酒精を吐き出して。
瓢箪から吐き出された酒精はそのまま空気に溶け込むことはなく、まるで誘われるように尾を引いて飛び去っていく。
恐らく、あの先にこそ何か――黒幕なりがあるのだろう。その酒精を追いかけ、とその前に、やること一つ。
「よっと。置き土産代わりだ」
ガシャンと瓢箪壊すも忘れずに。明らかに酒精広がる原因の一つでもあろうそれを放っておく意味などない。
散らばる破片に散らばる中身。
むわりと広がる甘きは、熟成した酒精を吐き出した直後だったからか程よき香り。花見に一杯とするには程よいぐらいの。
「……ちょいとだけ拝借させてもらおうか。さて、どんなモンかね」
勿論、地に散らばった酒を飲むなどという訳ではない。熟れた桃の実、その一つを。
そこにはUDCで耳に挟んだ伝承への興味が半分、歩き回って咽喉が程よく乾いていたからという欲求が半分。
――しゃくり。
「へえ」
皮ごと噛みしめれば、じゅわりと甘く蕩けて口の中。熟したそれは酒精を帯びてはいたものの、瓢箪から放たれたもの程に濃くはない。いや、むしろ、四肢に力が充足するかのようですらある。
「何事も過ぎたるは及ばざるが如し、か」
酒は百薬の長とも言うが、これはまさにそれに類するもの。適量であればその身の強張りを解し、力の十全を発揮させる助けとも。だが、度を越せば漂う酒精の如くと毒にもなるのだ。無論、そうなるように黒幕とも言える存在が仕向けたのであろうけれど。
――しゃくり、しゃくり、しゃくり。
瞬く間にと桃の一つを平らげて、カイムはぺろりと指のひと舐め。
さて、この空気による気怠さも桃のお蔭か嘘のように消え失せて、代わりに宿るは力の漲り。
「そいじゃ、黒幕さんのとこに挨拶へでもいこうかね」
酒精の飛び去った方角は覚えている。あれを辿れば、きっと何かとも会えるであろう。
その確信と共に、カイムは再びとその足をまた一歩と踏み出していくのであった。
成功
🔵🔵🔴
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
酒は憂いの玉箒…とはよく言うが
目覚める事すら忘れるほど酔わせるとは捨て置けん話だ
集落へと情報収集に赴く
現地に到着したらUCを発動
取り出したメダルを腹部に貼り付ける
メダルで肝臓を常に癒し続けていれば、泥酔状態もすぐに回復するだろう
脂肪肝も怖くはないな
おはよう、起き抜けに悪いが…
ここに漂う酒の匂いに、何か心当たりはあるか?
集落を調べて、昏睡状態の人々にメダルを張り付け、酔い覚ましをした者達から話を聞いて情報収集を行う
情報が取れずとも、彼らを正常な状態に戻せれば被害も抑えられるだろう
さて、この先にあるのは酒池肉林の楽園か
それとも、深く暗い虎の口か…
フン、どちらにしても楽しみな話だな
ライカ・ネーベルラーベ
お酒かぁ
多分飲んだこと無いんだよね
ほら、ダメでしょ?飲酒運転とか
頭ぐらぐらするのは慣れてるけど、これは嫌だなぁ……
付け焼き刃かもしれないけど、抵抗しようか
【帯雷体質】【竜種の魔力核】をフル稼働して
体内と周囲の酒精を強制的に電気分解しながら進むよ
すごく疲れるから、へばる前に探索を終えないと
調べに行くのは……バイクで走りやすそうだから集落にしよ
林は木が多いとまっすぐ走れないから却下
湖は水中に原因があるかもだし論外
細かい調査は苦手だけど、まぁ猟兵以外で動いてるやつとかいればなんか関係あると見ていいでしょ
変な煙とか出してる怪しいオブジェとか、そういうわかりやすいのは期待できないかなぁ
恐らくはヒトの往来賑やかであったであろう集落の道。されど、今は春の日差しが降り注ぎ、はらりはらりと桃の花の舞うばかり。
「不思議な光景だこと」
「降れども降れども人の埋もれる程に積もりはせずに舞うばかり。まるで、夢でも見てるかのようだ」
「実際、もう既にわたし達も寝てしまってるのかもね」
「なら、こうして話しているどちらが夢の主なのだろうな」
「それは勿論、アナタでしょ」
「自分だとは言わないのか」
「わたしは常に夢見心地。悪夢だけど」
「人の夢にまで出張とは恐れ入る」
「冗談よ」
「知っている」
「でしょうね」
キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)とライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)の二人、交わし合う言の葉軽くは酒精の影響か。否。
「便利そうね、それ」
「使うか?」
「んー、まあ、今はいい。自前でなんとか出来てる」
「の、ようだな」
他の猟兵達がそうであったように、彼女らも彼女らで酒精に対しての策を講じているのだから。
キリカは己に大蝦蟇の描かれたメダルを貼りつけて身に入り込むを片っ端から癒し、ライカは――。
「まあ、疲れたら言うといい」
「覚えてればね」
「覚えていればでいいさ」
「ん」
――バチリ、バチリ。
身体迸る雷の軌跡。酒精と桃の匂い溢れる桃源郷に、イオンの臭いが入り混じる。
その身の体質――竜種の核を埋めてよりの帯電体質を総動員して、酒精が身に触れる端から電気分解をしていくことで抗しているのだ。
「さて、酒は憂いの玉帚……とはよく言うが。目覚める事すら忘れるほど酔わせるとは捨て置けん話だ」
「そうだねぇ。多分、わたしは飲んだこと無いんだろうけど、やっぱダメだよね。そういうの」
「ほう」
「意外そうな顔」
「同意を得られるとは思わずでな」
「心外ね。ほら、ダメでしょ? 飲酒運転とか」
「そういう話だったか? ……いや、そうだな。それもそうだ」
「地に足付けてかないと」
「常に夢見心地だったのではないのか」
「揚げ足を取られるとは、悪夢みたいな返しね」
「悪夢だからな」
「それもそうね。なら、夢から醒めるとしましょ」
酒精漂う桃源郷。傍目は優雅であれども、二人の視界の内――集落の内ではそこかしこに倒れ伏すヒトビトの姿。はらはらと降り積もる桃の花に埋もれ行く姿は、ある種の幻想的光景でもあり、悪夢的でもあり。ならば、この地を眠りから覚めさせることこそ、猟兵の役割でもあろう。
「私は住人を起こしていくつもりだ」
「わたしは……バイクで走り回ってくる」
「そうか。なら、そっちは頼む」
「何か見つければ、その時はその時で」
「臨機応変に」
「便利な言葉ね」
「だろう?」
そんな蛇足にも似た前置きのやり取り。
「ん、ここ、は……?」
「おはよう。目が覚めたようだな」
「あれ? 僕は水を取りに行こうとして、それで……あ」
「ふむ。起き抜けにしては事態をある程度理解してくれているようでなにより」
「ありがとう。キミが起こしてくれたんだね?」
「その通りだ。それで、単刀直入で悪いがこの状況に陥ったことへ何か心当たりはあるか?」
キリカが己の身を護ると同じ方法で起こしたのは純朴そうな青年。昏睡からの目覚めだというのに、その思考がスルリと回っているのはキリカの力がためか。
問われ、思考する青年の姿にキリカはひと時の沈黙にて待つ。
「多分、それこそ水なんだ」
「水か」
「うん。ここ最近、湖の水……ああ、ここの水源なんだけどね。そこの水に酒精が混じっているみたいになっていて」
だが、青年に曰く、調べても原因は分からず、その時は特に身体へ何かしらの変化もなかったために仕方なくと使っていたのだと言う。そして、その結果こそが今なのではないか、と。
「そうか。湖が怪しい、か」
「だと思う。僕達じゃあ何も見つけられなかったけれど、この状況でも動ける君達なら何か見えるものがあるかもしれない」
「礼を言う。目星が付きそうだ」
「礼を言うなら、こちらの方だよ。出来れば案内もしてあげたいのだけれど……」
「無理はしなくていい」
「重ね重ね、ありがとう。実はまだ少し気怠くてね。酔いが残っているのかな」
見れば、顔色に朱こそ戻ってきてはいるものの、まだ青年の顔は青白い。それは元々のものもあるのだろうけれど、改めてと見れば、どこか衰弱をしているような。
「……まだ治癒の力が至っていないのか?」
キリカはそうも思う。
だが、大蝦蟇の力は欠損した部位すらをも癒す力だ。それがまだ機能を十全に発揮していないとは一体。
その思考がぐるりとキリカの脳内を回り出した時、その音は確かに響いた。
爆音の、エンジン音の轟きが。
――時間は僅かに遡る。
集落を駆けまわるはライカのDonner。であれば、その操縦者は誰あろう。
エンジン音にバチリバチリと相変わらずの音を混じらせて、ライカは器用にと集落のあちらこちら。
しかし、桃林は樹々が多いだろうと敢えて避け、湖は水中に没するのもと敢えて避け、だからと集落を選んでは見たものの、やはりUDCアースなどの文明レベル程には道は舗装されておらず、でこぼこり。
「オフロードとまではいかないけれど、仕方がないか」
とは言え、姿勢制御AIも搭載する愛機であればこそ、そんな道でもものもとしない。
「でも、本当に皆寝てしまっているのね」
走り回る最中、倒れ伏す住人を見つける事幾人。外ですらそれなら、家屋の中を数えればまだ増えよう。
それを起こさなかったのか。と言えば、起こさなかった。いや、起こせなかった。
今は胸に埋め込まれた核をフル稼働している最中なのだ。それでヒトに触れれば、痺れさせるだけでは済まない可能性とてある。そういうのは同行者の仕事と割り切り、ライカは不自然を探すに務めていた。そして、そんな彼女だからこそ、それに気付けたのだ。
「もう少し分かり易いオブジェクトにでもしてくれてればいいのに」
変な煙を吐き出すオブジェであったり、ひとりでに動き出す物であったりとか。だが、現実はそんな分かり易い筈もないと、ライカは脳内で自身の思考を自分で否定する。
「まあ、でも、これもそこそこに分かり易い? いや、分かりにくい? どっちでもいいか。見つけたんだし」
その手の内で弄ばれるは爬虫類を思わせる鱗の破片。
それがまるで楔のように集落の要所要所――全てを見た訳ではないけれど――まるで弧を描くように突き刺さっていたのだ。
その鱗から感じるはライカ自身の胸元から全身に流れ出す力に似た。
「竜……いや、龍かな?」
恐らくは、そう。
そして、そんなものが意味深に要所要所へ突き刺さっているとくれば、そこから連想されるものもある。
「儀式とか、そんな感じか」
住人を生贄にする類の。だからこそ、動けぬように眠らせたのだろう、と。
ならば、これを全て除去出来れば、その思惑を外すも出来よう。
「……一人で探すのも時間が足りないかもね」
ライカの脳内で思い浮かぶは、先程まで同道していたキリカの姿。まだ、混濁とした記憶の中に消えてはいなかったようだ。
ふむ。と言の葉一つ。エンジンの爆音と加速が返答を返した。
――時間は再びと同じ場所へ。
「さっきぶりね」
「何かあったか?」
「村のあちこちに」
ライカ取り出すは龍の鱗。
見せれば、それだけでキリカも意味を理解する。
「鱗が落とされるほどの戦闘があったとも思えないし、この青年が初めて見るような素振りを見れば、敢えて残したものだろうな」
「そうだね。こんなものは、この村にあった記憶はないよ」
「だそうだ」
「なら、意味のある物で確定そうね。此処を全部見て回った訳じゃないけど、他にもありそう」
「フン、なら、一つ黒幕の鼻でも明かしてやろうじゃないか」
湖へ向かうにしても、その前に一つやることが増えそうだ。
しかし、それが黒幕によってこの集落に仕掛けられた術式――生気を吸い取る類のそれを御破算とさせるに至るのである。今はそれがそうだと知らぬまま、二人は手分けして集落を駆け巡り、楔を破壊していくのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リウ・シンフォリカ
【六華】
マリアドールに同行
桃源郷は理想郷を示すと聞いた事がありますが、この有様はどうしたものでしょうか
黒幕が何を目的に人々を昏睡させ、何を為そうとしているのか
其れを突き止めねば
協力体勢の申し出、リウは感謝します(こくりと頷き礼)
華水晶の君…マリア殿、とお呼びしても?
奇襲に注意しながら、桃林を探索
マリア殿の索敵に反応があった付近を重点的に調査
酒精対応に濡らしたタオルを口元に巻いておく
行動時はなるだけ同行者の傍を離れず
黒幕は人々を昏睡状態にして力を蓄えているのではと推測
桃は霊力の源との逸話を本で見た事があります
異変のある桃の樹がないか確認
黒幕が敵対的な行動を取ろうとするなら、咎力封じを試みる
マリアドール・シュシュ
【六華】アドリブ歓迎
リウとは初対面
マリアはこの世界に初めて訪れたわ
素敵なところね
一人より他の猟兵と協力した方が良さそうなの
そこのあなた、良かったらマリアと共に心惑わす原因が何かをまず突き止めて欲しいのよ
ええ、勿論よ!
辺り見渡し偶然見かけたリウへ笑顔で声掛け
自己紹介済ます
一緒に黒幕退治をしようと話持ち掛け
まぁ!リウはとても物知りなのね
桃林の中を注意深く進む
不審点や怪しげな物が見つかったら確認
【泡沫の花水晶】使用し何体か出現
隠れてる黒幕を追跡
痕跡等逃さず
リウ、大丈夫?
マリアの傍に来て頂戴
少しは体が楽になると思うわ
酒精対策はハンカチで口覆う
祈焔の石の守護で周囲の妖しい花の香を祓う(オーラ防御・浄化
桃の花咲き誇るは桃源郷。
赤白薄桃、色とりどり。どれもが春の日差しの下、青空に向けて己の咲き誇るを見せつけている。
さあと梢鳴らして風が吹き抜ければ、春の日差しに包まれて揺れる花々の美しき。そして、舞い散る花弁は幻想の風景を描き出す。
嗚呼。であるならば、この場所はまさしく現実から乖離した異境――ともすれば、理想郷のようにも見えよう。
「……だと言うのに、この有り様はどうしたものでしょうか」
風景だけを見ればそうであるけれど、実際にその地に立つリウ・シンフォリカ(No.6・f03404)にとってはまた別の側面が感じられていた。
「何のためにこの景色を、場所を壊そうというのか」
それは今、この桃源郷に蔓延する酒精の香り。水湿らせたタオル越しにでも感じる酒精の香り。
僅かであれば心地よくもあろうけれど、心蝕む程にともなれば最早毒と変わらない。
恐らく、この地の住人は酒精に充てられ、既に昏睡へと陥っていることだろう。知らぬ間に、命と故郷を奪われつつあることだろう。
それはリウにとっても看過しがたきことでもある。
「必ずや突き止めねば」
表情には乏しく、されど、その言葉に込められた意味は万感を表していた。
だが、さて、黒幕の存在を突き止めねばとは思い、桃林のただ中へと踏み込んだまでは良かったが、この地を彩る桃林は美しくもあると同時、それ自体がまるで天然の迷路のようにも。
見渡せど、見渡せど、幻想の迷路がリウの周囲を取り囲んでいた。
――そこに一輪の華を見付けるまでは。
いつから居たのか。それとも、最初からそこに居たのか。桃花の景色に揺れるは華水晶。
景色に溶け込むでもなく、埋もれるでもなく、リウの視界にその姿を焼き付けたはマリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)、そのヒトであったのだ。
ゆるりゆるりと銀糸が揺れて、金色の輝きが周囲を見渡す。
「あら、あらあらあら。奇遇だわ。これも縁というものなのかしら」
ほろりほろりと花も綻ぶ旋律。
マリアドールもまたぐるりと桃林を見渡した先にリウを見付けたのだろう。口元に巻いたハンカチの下でにこやかに、トコトコと近付き来る。
一歩、二歩、三歩と動くたびに空気が揺れて、そこに含まれる酒精も――。
「匂いが、薄まって?」
「ふう。気付いていらしたのなら、あなたからも近づいて下さったら良かったのに。マリアばかり駆けてしまったわ」
「これは申し訳ありません。暫し、思考のただ中に意識を割いていましたもので」
「ふふ、冗談よ。マリアの方から御声を掛けたのだもの。なんてことはないわ!」
ふくれっ面を見せたかと思えば、一転、コロコロと鈴の音響かせ、マリアドールは笑う。そこに敵意などというものは微塵もない。それは猟兵同士というのもあるが、それ以上にマリアの気質によるものであろう。
――胸元で紅がキラリ、キラリ。
「……また、匂いが」
「あ、周囲のお酒の匂いのことね。折角の情緒が台無しだったからちょっとばかり」
「なるほど、そうでしたか」
「あなたの方もしているんじゃないの?」
「いえ、リウはこのタオルだけで……」
「まあまあ、それは大変だわ。この辺りの匂いは特に強いようだし、それだけでは心許ないかもしれないわね」
「……そうでしょうか」
「そうよ! ……あ、そうだ。マリアにいい考えがあるわ! あなたもマリアと一緒にこの心惑わす原因が何かを突き止めましょうよ。そうすれば、わたしは警戒の負担が減るし、あなたもこの匂い対しての負担も減らせられると思うの」
そうすればWin-Winで良いのではないかしら。なんて胸元の前、両手をパチンと合わせて満面の笑み。
一人より二人はこの状況において悪いものである筈もない。だから――。
「協力体制の申し出、リウは感謝します」
リウもこくりと頷いて、その提案に応を返す。
「良かった! 改めて、マリアはマリアドール・シュシュ。よろしくね」
「リウ・シンフォリカと申します。華水晶の君……マリア殿、とお呼びしても?」
「ええ、勿論よ! わたしもリウで良いかしら?」
「はい、問題はありません」
互いに一人称は自分の名前や愛称で、会話の中で恐らくはと名前を把握しあってはいた。だけれど、名を交換するというのは一種の儀式というものだ。これからを同道するに当たっての。
「さ、これで準備は万端ね!」
「奇襲があるかもしれません。注意しながら参りましょう」
「その可能性もあり得るわね! ふふ。リウ、あなたに会えて、マリアは良かったと思うわ」
一人では気付けぬことも、二人であればまた違った視点から気付けるから。
さくりと幻想の世界を踏んで、二人は揚々と桃林の中を歩きだす。黒幕を探しに、異変を探しに。
「でも、皆を酔わせてどうしようというのかしらね」
歩き、歩き、歩き、桃の彩りを幾つも後ろに流して暫く、不意にマリアドールは問いかける。いや、それはもしかしたら独り言に近い物であったのかもしれないけれど。
「推測ではありますが……黒幕は人々を昏睡状態にして力を蓄えているのではないでしょうか。眠っている時は身も心も無防備なものとリウは考えます。その隙を突いて、生命力などを奪いやすくしているのではないでしょうか」
「まぁ! リウはとても物知りなのね」
「いえ、あくまでも推測です」
「ううん、推測でもよ。そういう風に考えられるというのは、そこに確かな知識の蓄えがあるという証拠だもの」
「……ありがとうございます」
返答に要した僅かな間が、雄弁にリウの感情を物語る。だが、その余韻を消すようにしてリウは続けるのだ。
「――他には、桃は霊力の源との逸話を本で見た事があります。この桃林にも、何かしら仕掛けがあるのかもと」
「なるほど。なら、マリアはそれを見付けだしてみせるわ」
「重ね重ねですが、推測ですので――」
「ううん、きっとある。任せておいて?」
言って、マリアドールの呼び出す泡沫の似姿。
朝露から生まれたかのように向こう側がほんのりと透けて見えるマリアドール達――妖精達は、主の意向を汲んで桃林へと飛び去っていく。リウの語った桃林の異変を探る為に。
そして、暫く――。
「これ、多分そうじゃないかしら」
「何か見つかりましたか?」
「ええと……桃の山積みと瓢箪というのかしら?」
「……え?」
思わずと聞き返すリウではあったが、マリアドールは至極真面目そのもので。
「でも、実際そうなのよ。こっち!」
「分かりました。警戒は引き続きこちらで、誘導の方はお願いします」
嘘ではないと理解出来たが故に、問答は無用とマリアドールの導きに従ってリウもまた桃林を駆けていく。件の場所を目指して。
――果たして、それは確かにそこにあった。
「本当に桃の山積みと瓢箪ですね」
「ね、ね? 言った通りでしょう? さっき、あの瓢箪から酒精がぶわっと放たれて、それがどこかに飛び去って行ったの。これって、もうそういうことよね!」
「黒幕が用意した、酒精の発生装置といったところですか」
「うふふ、リウが言った通り、本当にあったわ」
「見つけて下さったのはマリア殿です」
「じゃあ、互いのお手柄ってことね!」
桃林に異変があると推察したはリウであり、それを見付け出したはマリアドール。どちらかが欠けていれば、ここまで円滑に異変の発見へと至れなかったかもしれない。だが、少なくとも、この時、このように発見できたのは二人の協力があればこそ。
喜びを表すようにリウの手を取り、マリアドールはぴょこりと跳ねる。リウはなされるがままではあったけれど、それを決して拒みはしなかった。
「じゃあ、あとはあの吐き出された酒精を追いかければ――」
「いえ、瓢箪も壊しておきましょう。この空気に、少しは影響があるかもしれませんから」
「ん、それもそうね!」
狙うは酒精を再び吐き出さんとするために桃を呑み込む瓢箪。
道具はあくまでも道具。酒精を生み出す機能しか持たぬそれは、自身が標的とされていることを理解出来ぬままにパリンと砕けた。リウに、その手に握られたロングボウに射抜かれて。
「これが最後ではないかもしれませんが、多少は影響のあることでしょう」
「お疲れ様。それじゃあ、改めて」
「ええ、参りましょう」
目指すは黒幕。その身を隠すであろう場所へ。
桃咲き誇る下を駆け抜け、二人は一路と目指すのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エドガー・ブライトマン
うららかな日差しを浴びながら桃源郷デビューさ
とても穏やかそうな世界じゃないか
花もキレイだし、なんだか不思議な香りも…
あっ、これ吸っちゃダメなんだ
オスカーはマントの中へ避難させて
私も鼻と口に布を当てておく
いざという時はレディの棘で起こしてもらう。嫌だけど…
湖に行こう
見晴らしが良さそうだし、何か見つかるかも
私は私の特技を活かす。というコトで、眠っている動物を起こす
鼻の利くかれらしか解らないコトもあるだろう
寝てるところを悪いけれど、これも平和のためだからさ
揺すったり、鼻の近くに用意した食べ物を近づけたり
《動物と話す》
この辺りで、不思議な香りの濃い場所を知らないかい?
教えてくれたらこの食べ物をあげるよ
フローラ・ソイレント
WIZ判定
・目的
湖の水質を調べる
酒精が含まれているか、いるなら影響の濃い場所はどこかを探る
・方法
救急医療セットから試薬と試験管を取り出したら
湖の水のサンプルを採りUCで能力を伸ばしてから分析を開始する
・セリフ
養老の滝の故事もありますし
湖が丸ごと酒の池に変わっているかもしれません
先ずはサンプルを採取して濃度の分布を調べてみましょうか
・UC演出
鍼治療の針を取り出して自身のこめかみのツボに突き立て
そのまま指先から紫電を発すると目がぼんやりと光って覚醒モードになる
トリテレイア・ゼロナイン
ここが仙界…風光明媚と呼ぶに相応しき地ですね
立ち入る事が躊躇われる程の光景です
特に今の私の様な者には…
(脚部にフロート(浮き)とスクリューモーターを●防具改造で装備。●推力移動も合わせ湖面を疾駆)
湖面を調べる為に飛ばずに酒精の調査
アルコールを取り込む器官無きとはいえ、原因も尋常の物で無し
躯体の気密性高める処理施し、臭覚センサーもカット(●環境耐性)
酒精との接触軽減
自身から8方向に放ち配置した妖精ロボを通じた間接的●情報収集で酒精の濃度分布を●見切り移動し追跡
ちらと見た集落も含め、やはり静寂に過ぎます
眠り齎す魔物の御伽は数あれど…騎士として解決せねばならぬのは変わりなし
尻尾を掴めると良いのですが
アルカ・ルカルト
のじゃじゃ~ん!自称音楽神、アルカ・ルカルト登場なのじゃ~!
世のため子らのため、頑張るぞい!
ふぅむ、怪しい場所は三か所か。ではわしは湖にでも調査に行くとするのじゃ。
辺りに酒精が漂っているのならば【音楽の力】で『空中浮遊』し、酒精の届かぬであろう高度の上空から怪しい場所を探してみるのじゃ。
怪しい場所を見つけたらば、対策を行って調査している猟兵がいればそれを伝えて調べてもらうか、ちょっとくらいの酒精気合いでなんとかして自力で乗り込むのじゃ。
もし怪しい場所が見当たらなければわし自慢の音楽を大音量で聞かせて住人に起きてもらい情報収集するかの~。
アドリブ、連携歓迎なのじゃ。
春の日差しを弾いて輝くは湖の煌き。
空の青さを、畔に咲き誇る桃花を、映り込む全てを鏡写しと取り込んで、水はそこに満ち満ちていた。そして、その満ちたる水鏡に姿映す人影は三つ。
「うららかな日差しを浴びながらの桃源郷デビュー……と思ったのだけれど、とても穏やかそうな世界じゃないか」
「ここが仙界という訳ですか……風光明媚と呼ぶに相応しき地ですね」
「風光明媚! なるほど、まさしくその言いようが当てはまるね」
「ええ、立ち入る事が躊躇われる程の光景です。特に、今の私の様な者には……」
「そうかい? 美しいものを美しいと思う心に、誰彼もないと思うのだけれど。ほら、花もこんなにキレイだし、なんだか不思議な香りも……」
「あ、いけません! ここの空気をあまり吸い込んでは……!」
「おっとっと。そうだ、これ吸っちゃダメなんだったね。ありがとう、フローラ君」
「いえ、間に合ったようでなによりでした」
「はは、うっかりだったね。とにかく、トリテレイア君がこの光景に感じたものがあるのなら、それはそれで良いのだと私は思うよ」
「……お気遣い、痛み入ります」
「どういたしまして」
その三つの影こそ、湖を調査するべくと訪れた猟兵――エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)にして、フローラ・ソイレント(デッドマンズナース・f24473)にして、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)のもの。
調査するポイントとしてピックアップされていたのは桃林に集落。そして、この湖なのである。故に、三人はこの場所こそを調べんとして、こうして集っていたのだ。
「しかし、これは随分と広そうな湖ですね。調べるにも骨が折れそうです」
「そうですね。三人でそれぞれに調べるとしても、情報共有を密としていきたいところです」
「時間を決めて集まるにしても、私達もいつこの空気にやられるかは分からないところだしね」
「私が中継の役割を果たしても良いのですが、そうなると……」
「察するに、その浮きやスクリュー装備は私達では届かない湖の奥をも探索することが出来る筈。それを無くすのは少々……」
「うーん。オスカーに連絡役をお願いするにしても、この空気じゃあね」
互いが視界に収まる距離で、という形も採れないではないが、それでは広範に調べるが難しくなることだろう。せめて、ベースとなるような場所を設定するか。と、三人が結論を出しかけた時である。
「のじゃじゃ~ん!」
響いた声は、眠りに落ちた桃源郷の静けさを破る賑やかさでもって。
誰もがその声の主は何処と視線を彷徨わせ――。
「ここじゃ! おぬしらの上じゃよ!」
――声へ導かれるようにして、その視線を宙へと集める。
「自称音楽神、アルカ・ルカルト登場なのじゃ~!」
そこにあったは金色の揺らめき。その長髪を風に遊ばせたアルカ・ルカルト(音楽系ショタジジイ・f16458)がむんと胸張り、浮かんでいた。
――そう、浮かんでいたのだ。
三人が顔を見合わせる。
「渡りに船なのでは?」
「可能な到達高度次第では、全員を見渡してもらうことも」
「是非とも聞いてみたいところだね」
「なんじゃなんじゃ。折角と姿を見せたのに驚きもせずに内緒話とは、わしも混ぜんかい! 寂しいじゃろ!」
するりするりと宙よりアルカは降り立って、顔を見合わせる三人の下へと。
ぐるりと三者三様の視線が振り向いて、アルカを捉えた。
「お? お? どうしたんじゃ?」
「つかぬことをお伺いしますが、アルカさんはどの程度まで高く飛べますか?」
「そうじゃなぁ、そこそこ高く飛べるじゃろうな!」
「それはアルカ様が湖を見渡すぐらいに飛ぶことが可能ということでしょうか?」
「様とか照れるのぅ。じゃが、ああ、それぐらいは出来るぞ!」
「もし良ければだけれど、キミはどういう風に調査するつもりだったのかとか、聞いてもいいかい?」
「ん、ん~? そうさなぁ、酒精の届かぬぐらい高度の上空から怪しい場所を探してみるつもりだったんじゃが」
これはもう、任せるにピッタリなのではあるまいか。
アルカを除いた三人の心が一つとなった瞬間であった。
「お願いがあるのですけれど、宜しいでしょうか」
「程度にもよるがのぅ」
「上空から怪しい場所を探すついでで構いません。宜しければ、私達のことも視界の隅に置いておいてもらえれば有難いのですが」
「勿論、キミにはキミの考えもあるだろう。だから、可能ならでいいんだ。どうかな?」
「……ふむ」
弾幕のように喋り、賑やいでいたアルカが初めて沈黙をする。
その様子に、ゴクリと唾を飲んだは一体だれか。
「――ああ、構わんよ。子らを見守るは、親の務めじゃからのう!」
容姿にして童のようなアルカではあるが、恐らく、その身の過ごした時の長さはこの場の誰よりも長い。
ならば、年長者として、神として、それを見守ることに何の抵抗があろうというのか。それが例え、同じ猟兵、己の世界と起源を異なるとする者達であったとしても。
「お主らに何かあれば、わしがちょちょいと助けてやろう!」
登場の時と同じく、むんと胸張りアルカは応えるのだ。
これで三人の抱いていた懸念は消え失せた。あとは、各々での調査を進めるのみ。異変の原因を、黒幕を、必ずや見つけ出すのだ、と。
「うん、これはダメと分かっていてもゆっくりと堪能したくな……イタタッ、嘘、嘘だから、冗談だから!?」
見渡す限りの桃の花。春の日差しと湖の照り返しを受け、風に揺れる姿は幻想のそれ。
エドガーが思わずと見惚れ、足止めてしまうもある種致し方ないのかもしれないが、それはそれとして嫉妬深い『彼女』が許すだろうか。いや、問うよりも既にその結果が示されていた。
「もう、いざという時にはと思っていたけれど、これじゃその心配も必要なさそうだ」
酒精に酔って眠ってしまった時は淑女の一刺しをお願いしようかと思っていたけれど、それは口にするまでもないようで。
お願いする事の嫌々をしなくてよかったと喜ぶべきか、そうでなくても刺されることに顔を顰めるべきか。なんとも言えない顔でエドガーは、ははと笑うのである。
――閑話休題。
「さて、彼らはどこで眠っていることだろう」
彼らとはヒトのことだろうか。否、ヒトの倒れるは集落が主であり、探すのであれば湖でよりはそちらの方がよっぽど効率も良い。
では、エドガーがいったい誰を探しているのかと言えば――。
「……こんなところに。よかった、怪我とかはしていないみたいだね」
それは草むらにひっそりと倒れ伏す動物。
猪であり、鹿であり、鳥であり、桃源郷に住まう数多のヒトならざる者達。
彼らもまた酒精の影響を受け、この桃源郷に静寂を齎す一因となっていたことをエドガーは理解していたのだ。
ゆさり、ゆさり、ゆさり。
そんな彼が見つけたは一匹の鹿。頭部より伸びる角の逞しきは牡鹿の証明。
それを揺さぶり、起こすことで僅かの間でも対話をしようというのである。
「……うーん、起きないなあ。これはキスの一つも必要なのかな?」
なんて、冗談交じりに揺さぶりを続ければ、薄っすらと開いていく牡鹿の瞳。
「やあやあ、目が覚めたばかりですまないね。ちょっと聞きたいことがあるんだけれど……って、待って、警戒しないで」
ふらふらしながらも跳び起きた牡鹿。その角が敵意と共に、エドガーへ向く。それに突き刺されれば、痛みはなくても今後に支障が出ることは明確で、だからエドガーはそれを止めんとそろり懐のとっておきを取り出すのだ。
「これ。これをあげるから、ね?」
エドガーのとっておき――つまるところ、餌付けであった。
だが、少なくともそれで多少の効果はあったのだろう。牡鹿はひとまずと角を下げ、くんとその鼻をエドガーの手――そこに握られた食べ物へと顔を近づける。
「良かった。それじゃあ、聞きたいのだけれど――」
「エドガーよりの言伝じゃよ」
ふわり、ふわり、金色の伝令。
「やあ、私の方で分かったことを先に伝えておくね。どうやら、この湖に以前、大きな水飛沫が立ったことがあるらしい。その時は何もなかったけれど、いつしか湖の水がおかしくなったんだとか。彼らが言うには……あ、彼らって言うのは動物君達のことでね。って、話が逸れた。ええと、どこまで言ったかな。ああ、そうだ。思い出した。駄目だね、忘れっぽくてさ。これじゃまたうっかりをしちゃいそうだよって、うわっ、オスカー、なんで胸を突っつくんだい。え? 先を話した方がいい? あ、そうだね。それで、人間……多分、集落の人達だろうけれど、何かを湖で調べていたみたいだ。でも、何もせずに引き上げていったらしい。きっと、何も見つからなかったんだろうね。でも、集落の人達が来なくなってからは湖に大きな影を見ることがあるようになったらしくて、ある日、急に意識が途切れたんだってさ。今のところ、彼らから聞けたのはこんな感じだね。また何か分かり次第、伝えるよ」
「――ということじゃな」
「……ありがとうございます」
恐らくは一言一句をそのまま伝えてくれたのだろう。
そのことにフローラは感謝を示すと同時、軽い頭痛を覚えたようにこめかみへ手を当てていた。
――バチリと紫電が弾け、フローラの瞳が輝きを帯びる。
思考をクリアとし、伝え聞いた話を自身の中で整理すれば、少なくともこの湖で何かが起こったことは間違いないと理解する。
フローラの手の中、幾本かの試験管がちゃぷりと揺れた。
「ほお、何をするつもりなんじゃ?」
「状況を整理するためにも、客観的情報というのは大事ですから」
UDCアースには養老の滝というものがある。仔細は省くが、そこに語られる伝説では酒の泉が登場するのだ。ならば、此度のこの異変においては、この湖こそが酒そのものに変わっているのではないか。というのがフローラの考えであった。
それを証明するための分析こそが、そこに。
「推測は正しかったようですね」
水の示すはいずれもアルコールの反応。湖に至る程にその反応は強く、この湖こそが酒精の大本であるのだと示す事実。
「となれば、あとはその大きな影というものが気になりますね。恐らくは、それこそが……であるならば、トリテレイアさんにも言伝願えますか?」
「なるほど。此処が酒精の大本である、と」
「そのように言っておったのう」
トリテレイアが浮かぶは湖の湖面。最も酒精の濃き場所。
機械の身体が故にその機能を拡張、縮小出来るというアドバンテージを持つトリテレイアであればこそ、影響を最小限に到達出来た場所。
では、そこに伝令へ来たアルカといえば――。
「なぁに、気合じゃよ。気合」
そうは言うが、若干の赤ら顔。影響を受けていることは確かなようで、少しばかり宙に浮いた身体がふらついている。完全に酔いつぶれぬはヘッドフォンより流れ出る音楽への高揚にすり替えているからこそ。
しかし、それも高濃度の酒精の中では、そう長く持つものではあるまい。
「情報、確かに受け取りました。アルカ様はお早く退避を」
「そうじゃな、ちと、高度をあげさせてもらおうか」
濃き場所から薄き場所へ。影響から逃れるためにとアルカの浮かび上がるを見送って、トリテレイアは改めてと湖へと向き直る。
「ありがとうございます。アルカ様の尽力に、心からの感謝を」
トリテレイアを囲んだ八方向、浮かび遊ぶは機械式の妖精八基。
自身のセンサー――臭覚はカットしているが――は勿論、それらから受け取る情報は湖面だけのものではない。水中の情報もまた、拾い上げていたのだ。
トリテレイアのモニターに映し出されるは、集められた情報から作り出した湖の全体像。
立体化されたそれには湖底に浮かび上がる長大なる影が描きだされており、当初、トリテレイアはその影を隆起した地形がその形を成しているのだと判じていた。だが、齎された情報をデータと加えれば、とある可能性が見えてくる。
「……数基、犠牲としてしまいますが」
背に腹は代えられない。
妖精達へ命じるは湖への突入。それが妖精達に多大なる負荷をかけると理解してもなお、する必要があったから。
一基、二基、三基――湖底への深度を進めるにつれ、次々と酒精の影響を受けて沈黙をしていく。
四基、五基、六基――だけれど、それをトリテレイアは確かに視た。
「皆様の情報のお蔭で、確信に至れました」
七基、八基――最後のデータを受信して、トリテレイアはワイヤーアンカーの先をそこへと向けて射出する。
――確かな手応え。
そして、振るわれるは岩盤であろうとも引き摺り上げる万力の腕、その力。
スラスターが湖面に大きく波を蹴立て、そして――。
「おぉ、くるぞ。でかいのが来るぞ、わしには聞こえるのじゃ!」
「少し気を失っていたようですが……どうやら、推測は正しかったようですね」
「刺され、突っつかれながらも頑張った甲斐があったようだね。でも、これからだ」
「その尻尾、確かに掴ませてもらいました。これよりは、眠り齎す魔物を騎士として打ち倒すのみ」
――ざばりと、湖面を割って巨なる影が宙へと舞ったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『古龍髄厳』
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POW : 古龍炎
【龍の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【音もなく燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 髄厳の裁き
対象への質問と共に、【虚空】から【黒雲】を召喚する。満足な答えを得るまで、黒雲は対象を【落雷】で攻撃する。
WIZ : 古龍天舞
自身の【龍気が全身を覆う状態】になり、【鱗が攻撃を弾く】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
イラスト:蒼夜冬騎
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
きらりきらりと水飛沫。
春の日差しを反射して飛び散るそれは、宙に打ち上げられたモノからの滴。
「よもや、見抜かれてしまうとはなぁ」
ソレがぶるりと身を震わせれば、飛沫は雨の如くにざあざあと量を増して湖面に落ちる。
豊かなる金より伸びるは雄々しき赤角。緑の鱗纏う体躯は蛇の如くと長く、されど、蛇にはなき手足。
猟兵達の視線集めるそこにあったは龍――古龍髄厳なる存在であった。
「酒精を集め、溶かし、夢見心地のままに生気を喰らってやろうという腹積もりであったが……ふん、上手くはいかぬものだな」
湖の底、地脈に身を沈めて桃源郷の生気を喰らっていた髄厳であったが、宙へと打ち上げられる直前にそれが途絶えたを知っていた。
桃林に設置していた酒精の源を生み出す機構が沈黙し、集落に仕掛けていた生気を吸い取る機構は破綻し、更には自身すらもがまさかこうして引き摺りだされてしまうとは、だ。
それを為したこそ猟兵――湖にてかの者を探しだした者達だけではない、桃林より辿り着いた者、集落より来る者、今、この決戦の地に集った者達の成果があった。
「見事、見事である。だが、我にとて面子はある。我が謀りを妨げたお前達をここで喰らうことで、この泥を雪ごうではないか!」
髄厳が牙の隙間よりチロリと垣間見えるは焔。
鋭き爪が掴み、踏みしめるは暗雲。
その身に纏うは喰らい、集めし生気の輝き。
敵意が猟兵達を捉え、この麗らかなる春の日を戦火飛び交う戦場へと変えんとするのである。
●第一章からの影響●
・酒精に対する皆さんの対策が十分であったため、影響はあっても気分の高揚程度です。
・桃林の酒精醸造が停止したため、現在以上に空気中の酒精濃度は上昇しません。むしろ、時間経過で薄くなることも。対策は各自、現状のものを続けていれば十分と言えるでしょう。
・集落の生気吸収術式を破壊。かつ、地脈からも髄厳を引き離したため、髄厳が戦闘中に現在以上の強さを得ることや自己回復することはありません。猟兵達が力を尽くせば、勝機は十分にあることでしょう。
アルカ・ルカルト
黒幕のお出ましじゃな。
むむ…こやつ、神のわしより神っぽいんじゃなかろうか…?い、威厳負けしておる!?
しかし喰らうはこちらのセリフ、おぬしの目論見ごと喰らうはわしら猟兵よ!
大人しく骸の海に還るのじゃな!
◆WIZ◆
向こうが空を飛び有利を取ろうとするならば、こちらも『空中戦』に応じるのじゃ。
龍気には神エナジーをぶつけるぞい!ゴッドリングスラッシャーを操り飛ばし攻撃じゃ!
回避率を上げてくるならばサウンドウェポンを二胡(中国楽器)型にして『楽器演奏』、【神音撃】で攻撃じゃ!音の攻撃はかわすことができるかの?
アドリブ、連携歓迎なのじゃ~
ライカ・ネーベルラーベ
あはははははは!鱗見つけた時に感じたとおりだ!!
龍が居るなら、わたしも――『わたし達』も!本気で行かなきゃいけないよねぇぇええ!
【舞え、勝利を誓うは鋼と雷の翼竜】を発動
髄厳に空中戦を挑んでいくよ
「龍が舞う空なら、そこはわたし達の戦場だぁぁぁあ!」
鱗と龍気で機関銃は弾かれる……なら!
近づいて直接ぶった切るのが一番だよねぇぇ!
ヒットアンドアウェイみたいな感じで髄厳に突っ込んではすれ違いざまに斬って離脱、って戦い方を繰り返すよ
こっちは四刀流、どんな体勢からでもぶった切ってやる
「わたし達は二人でひとつ。揃っていれば空の果てだって行けるんだ!」
オリヴィア・ローゼンタール
これが、龍……ドラゴンとは少し趣きが異なるのですね
白き稲妻を纏い、水上を疾駆(水上歩行・ダッシュ)
揮発した酒精は稲妻で焼き飛ばす
地の利は奪いました、ここは一気呵成に攻め立てましょう
湖面から勢い良く跳び上がり、激しく水飛沫を撒き散らすことで炎を遮る
龍にしろドラゴンにしろ、その城塞の如く堅牢な鱗が立ちはだかる
突破するには――破城槌が如き、激烈な蹴撃を
全霊の力(怪力・全力魔法)を以って【天霆雷砕蹴】
鱗を蹴り砕き(鎧砕き・貫通攻撃)、迸る稲妻で内側から焼き焦がす(属性攻撃・焼却)
閃光が暗雲を裂き、世界を白く染め上げる
影が地に落ちる。
春の日差しを遮る髄厳の巨体か、それとも、その足の踏む暗雲がためか。はたまた、その両方か。
ぽたり、ぽたり。ぽつ、ぽつ。
酒精交じりの湖の欠片が、なごりの雨のようにかの身体より滴っていた。
その長き身体が、ぴくりと動く。
「……来るか」
誰が、などと今更に言うまい。
ここにあるはオブリビオンたる髄厳と――。
「あはははははは! 鱗見つけた時に感じたとおりだ!! 龍が居る! 龍が居るじゃない!!」
「これが、龍……ドラゴンとは少し趣きが異なるのですね」
――世界の脅威たるを狩る猟兵しか動く者は居ないのだから。
轟雷二閃。
髄厳が動くよりも迅く、空に、湖上に、軌跡を描き出すは金と白。
愛機に飛竜の翼を得、空の青を切り裂くはライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)。
白雷を華の花弁と散らし、湖上を切り裂くはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
共にと稲妻を纏い、空気に残る酒精を蒸発させながらに『敵』へと向かい往く。
「地の利は奪いました。ここは一気呵成に攻め立てましょう!」
「付いてくるなら好きしたらいい! わたしに――『わたし達』に付いて来れるのなら!!」
「では、精一杯と付いていかせてもらいますよ!」
両者、気迫十二分。
髄厳がこの桃源郷に撒いた布石は、二人を含めた猟兵達の手によって打ち砕かれていた。ならば、打倒の機会は今を置いて他にあるまい。
裂帛がその身を押し進め、裂帛がその身を押し上げる。
「此処が龍の舞う空なら、それはわたし達の戦場だぁぁぁあ!」
「その頸、獲らせてもらいます!」
空に覇者は二人と要らぬ。そう言わんばかりの掃射がライカの鋸剣に合成された機関銃より轟音を奏でる。オリヴィアもまた、その気迫に負けぬと地面であれば地を抉る程の踏み込み――代わりに水柱を立てて、その身を一条の矢と変えて空へ。
穿ち、貫き、宙浮かぶ髄厳を地に墜とさん。
「侮るなッ! 地脈より剥がされようとも、謀りを妨げられようとも、この髄厳を!」
――ゆらり。
その身の巨体からは想像も出来ぬ柔らかさで、早さで、髄厳の身が宙を舞った。
巧みに身を逸らし、傾け、受ける。天然の鎧たる鱗――今は集めていた生気で強化されたそれが、頑健さと身の傾斜で弾丸を弾けば、矢の一条はそも受けるを良しとせずに避けて。
「まずは貴様らからだ」
古龍の舞は守勢から攻勢へ、流れるように。
くねる身の先で頭がもたげ、チロリと劫火の迸りが欠片。
空を往けるライカであればまだ避けようもあるけれど、真なる姿でなき今のオリヴィアには空で態勢立て直すための足場が――。
「おぬし! それを踏むと良いのじゃ!」
――いや、あった。
いつの間にかとオリヴィアの周囲に展開されていたは光の輪。
誰が。と思考するよりも早く、オリヴィアはそれを雷撃纏った足で蹴り、その身を予測される射線より逃すのだ。
――それに一拍遅れて、劫火が空に直線の軌跡を描いた。
チリチリと空気を焦がし、酒精を蒸発させ、名残の熱が撒き散らされる。
「水飛沫もなければ、危ういところでしたか」
跳びあがる刹那、蹴立てた湖面を柱と変えていて正解であった。それがなければ、余波の熱で少なくない傷を負う事であっただろう。だが、それに加えて――。
「ありがとうございます。お陰様で事なきを得ました」
「おうおう、無事でなによりというものじゃ!」
飛び回るライカを追って宙を焼く炎が春の日差しを駆逐する。その赤々と照らされる空にアルカ・ルカルト(音楽系ショタジジイ・f16458)が姿はあった。
そう。彼こそが先の光輪が主にして、オリヴィアにそれを踏めと声届けた本人。
「無事も確かめたところで、めでたきめでたきと歌って――」
と、言いかけたアルカの視線の先で、オリヴィアの目がパチクリと瞬くを捉える。言葉にこそまだ出てはいなかったが、そこには言の葉の意味を捉えかねる。という、不可思議が宿っていた。目は口程に物を言うのである。
アルカも冗談のつもりではあったけれど、その視線がちょっとだけ痛かったりも。
「――いや、わかっとる、わかっとる。冗談じゃよ」
「そうですか。では、戦線に戻らせてもらいます」
「声交わすために足を止める時間もおしいじゃろ。じゃから、駆ける背中で聞くが良いのじゃ」
戦線に戻らんとするオリヴィアに、そして、髄厳と相対し続けているライカにも、その声は届く。
「――おぬしらはおぬしらの為したいようにするが良いじゃろう。背中は任せるが良いのじゃ」
戦いの最中に身を置く二人からの応える声はない。
だが、足場代わり、盾代わりと置いておいた数多の光輪をオリヴィアとライカが利用するを見れば、確かに声は届いたことは分かる。
その光輪、実はアルカの神エナジーなるものであるため、実際は踏みつけたりなんだりは不敬の謗りも受けかねないものであるのだが、そんなことをアルカは気にしない。むしろ、使うなら使えと言うぐらいだ。
最近のお気に入りの音楽とはまた違うが、懸命に抗う者達が奏でる音もまた良きモノ。ならば、その己が力でその手伝いを――セッションと出来るのなら、それもまたきっと良きことだろうから。
「しっかし、あれじゃのう――」
見上げた先には変わらぬ巨体のうねりがある。
「――黒幕のお出ましかと思ったら……むむ、あやつ、神のわしより神っぽいんじゃなかろうか……?」
威厳負けしてはなかろうか。いやいや、親しみやすさなら上じゃな、きっと。なんて、彼我を比べたアルカの呟きがぽつり、戦場の空気に溶け、そして、消えていった。
「付いてくるんじゃなかったの?」
「はい。ですので、追いつきました」
劫火が湖面を薙ぎ、じゅわりと立ち上げるは水煙。
それを壁とし、隠れ蓑とし、僅かな間隙の時を並走するはライカとオリヴィア。
「機関銃は通らない」
「そのようですね。それに関しては、敢えてと受け流しているようにも見えました」
「でも、すれ違い様に斬りつけようとすれば逃げられるわ」
「私の初撃も受けるでなく躱すとしたようですし、鱗の守りも絶対ではありません」
なら、それ以上を出し惜しみなくと用意してやれば。
「あとは、あの動きを抑制できれば……」
「そこはまっかせるのじゃ!」
二人の会話に割って入ったアルカの声。
先の呟きが風に消えるだけであったのが寂しかった訳ではない。決して、寂しかった訳ではないのだ。たぶん。
だが、この間隙の時間の直前――開戦からの間に、アルカの光輪がなした戦果は確かなもの。その「任せろ」という言葉に、疑義を挟む者は居ない。
「切り札があるのね?」
「切り札という程に御大層な物ではないのじゃが」
「なら、任せるわ」
「私の方からも、お願いします」
「応とも」
信用に足るのであれば任せるに否のあろう筈も、である。
――水煙の幕を払うように、再びの劫火。
それに呑まれるより早く、水煙より飛び出すは三者三様。
行動のタイミングを打ち合わせるような時間はなかった。でも、それでも――。
「相棒、そこに居るよね? ……うん、行くよ!」
「雄々しき天の雷霆よ!」
――攻め立てるにおいて、その両者の意志がズレる筈もない。
湖上より飛び立つ翼は天高く、雄々しく羽ばたいてライカの身を空へと運ぶ。
湖面を蹴り上げる白雷の音は気高く、輝き、弾けてはオリヴィアの身を加速させる。
「『わたし達』は二人でひとつ。揃っていれば空の果てだって行けるんだ!」
「城砦が如く堅牢なる鱗。ならば、その護りをすら突破する破城槌が如きを……」
一度は天に昇った星が、流星の如くと墜ちてくる。
湖面にて弾けた雷霆が、空に還らんとするかのように昇っていく。
――空にて威容を示す髄厳を挟み込むように。
如何な堅牢、如何な防御であろうとも、両断するようにと迫りくるそれを受け止めれば守りを突破されることは必至。
故にこそ――。
「幾度と来ようとも、無駄と知るがいい!」
その身を宙にて躍らせ、かつてのようにその脅威を避けんとするは当然。
「――わしでさえ痺れる程のナンバーじゃ! とくと堪能するがよいじゃろう!」
当然だからこそ、それを妨げる最後の欠片。
数多の姿を持つ己が楽器を今は二胡へと姿変え、水煙の名残の奥よりアルカが響き渡らせるは神鳴る音色。
「聞け、聴け、きけ! 魂にまで染み渡らせてやるからのう!」
「な、なんだ、なんだこの音は!?」
奏でる音色は二胡の澄んだ音である筈が、髄厳に届くは轟雷もかくや。
身を竦ませ、魂をすら竦ませるような大音量を突如として浴びせられれば、敵意受け流し柔らかさも失われて然るべきこと。
「おぬしは言うておったな。わしらを喰らう、と」
「ぐっ、小賢しい、その音を今すぐに止めよ!」
「しかし、喰らうはこちらのセリフ。おぬしの目論見ごと喰らうは、わしら猟兵よ!」
そら、骸の海への引導が迫っているぞ。
アルカの奏でる音に気を取られた一瞬。しかし、致命的な一瞬。髄厳がはっと意識を迫り来ていた脅威――ライカとオリヴィアに向けるが、既に時遅し。
「ようやくぶった切ってやれる! 『わたし達』の本気、骨の髄まで堪能してよねぇぇ!!」
「閃光よ! 暗雲を裂き、遍く世界を照らしだせ!」
竜騎兵の刃が鱗を、その奥にある肉を、骨を断つ。
邪悪を焼き焦がす白雷が鱗を砕き、その纏う生気をすら内側から焼き焦がす。
苦悶の咆哮が桃源郷に風と吹きわたり、ざあざあと桃の花を揺らしていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
「私達を喰らう」か…
フン、頭まで酒に浸かった酔客の戯言は聞くに堪えんな
シルコン・シジョンを装備して早業で次々と弾倉を交換しながら攻撃
更にオーヴァル・レイを瞬間思考力を使って同時に操作
敵の弱点を探りつつ、一斉射撃による弾幕を敵に浴びせる
酒臭い息をこちらに吹きかけるんじゃない、まったく…
マナーも知らん奴に酒を飲む資格はないな
龍の炎がこちらに来たらUCを発動
放たれた炎を斬撃で切り刻んだら、宙に浮かべたオーヴァル・レイを軽業で足場にして敵に急接近
そのまま炎と古龍髄厳を諸共に切り裂き、追撃で銃弾の乱れ撃ちを叩き込む
酔い覚ましだ、存分に受け取れ
もっとも、次に目覚めるのは骸の海の底だろうがな
カイム・クローバー
俺を喰うだって?酒精塗れの宴会の肴にでもするつもりか?
面白ぇじゃねぇか。やれるモンならやってみな。
放たれる炎を躱し、二丁銃での【クイックドロウ】を【挑発】代わりとし、言葉でも煽っていくぜ。
ハッ、アンタの炎は動かない的、専用なのか?今度は厨房の近くに住むのを勧めるぜ。コックにゃ喜ばれるだろうさ!
UCを発動し、何度目かの炎に飛翔(跳躍)。竜の頭上に移動し、両方の角を【怪力】で握り、トカゲのロデオ気分で【運転】だ。
肴如きに頭上を取られる気分はどうよ?
充分に満喫したら魔剣を頭部に【串刺し】で突き刺して、そのまま地に叩き付けるぜ。地面ギリギリで頭上から飛び退く。
酔うにはまだ早いぜ。お楽しみは此処からさ。
猟兵によって齎された痛みは髄厳に断末魔の咆哮を上げさせた。
しかし、それはただでさえ面子潰されたと怒り覚えていた古き龍の誇りを、更にと傷つけるに余りある。
故に、断末魔の咆哮を掻き消すように次いで響いたそれは、怒りの咆哮に他ならぬ。
桃源郷へ響いたそれに、萎縮するように桃の花が揺らいで散った。
「おいおい、どうした。俺を、俺達を喰うんじゃなかったのか?」
「フン、言ってやるな。頭まで酒に浸かった酔客の聞くに耐えん戯言だったんだろう」
「なんだなんだ、そうだったのかよ。面白ぇから、やれるモンならやってみろと思ってたんがよ」
だが、そんな怒りをどこ吹く風と受け流す。いや、むしろ更にと煽るかのように。
それこそはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)にして、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)。
じろりと金色の視線が二人の身体を突き抜けた。
「随分と胡乱な視線だ」
「ははは、自分の酒で酔ってりゃ世話はねえ」
「しかも、それが絡み酒ともなればな。酒場でなくとも、早々にお帰り願う類だ。マナーを知らん奴に酒を飲む資格はない」
「じゃあ、仕方がねえ。俺達が代わりに骸の海に叩き返してやるしかねぇな」
その敵意を理解した上で、なおとカイムもキリカも言葉を止めない。むしろ、これ見よがしにと肩竦めたり、溜息ほろり零したり。
チロリ、チロリ。
髄厳の口内にて燻る炎は、燃え上がる前のそれに他ならぬ。それは何も物理的な話だけではない。髄厳の心で燃える焔を表すようでもあった。
――言葉もなく、音もなく、燃ゆるがその口より吐き出された。
パチリパチリの音はなく、しかし、揺らめく空気とそれに踊る桃の花がその熱量を示す。
しかし、だ。
「おっと、煽り過ぎちまったかな?」
「いいや、奴が短気なだけだろう」
劫火の前兆を見て、棒立ちのまま呑み込まれるを傍受する二人であろうか。いや、違う。
返礼は銃弾の雨霰。
音立てぬ炎の代わりと自動小銃と浮遊砲台が、二丁銃が、その主の代弁とばかりに声をあげ、髄厳の鱗を叩くのだ。
――甲高い音は、衝撃伝えた後に鱗の硬度へ潰れる弾丸の響き。
「その程度、我が守りの前に意味はない!」
「だから、抵抗を止めて喰われろと? それこそ、酔っ払いの台詞だな」
「ハッ、狙いが定まってない炎で焼かれてやれるかよ。……ああ、そうか。アンタの炎は動かない的しか焼けないのか」
「賢しらに飛ぶ小蠅が!」
「おいおい、どこ狙ってんだ。そうだ、今度があれば厨房の仕事を紹介してやるよ。コックにゃ喜ばれるだろうさ!」
「やめて置け。こんな酒臭い息が吹きかけられれば、折角の料理が台無しになってしまうだろう」
「それもそうか。残念だったな、いい職場が見つかりそうだったってのに」
「この髄厳に対して、言わせておけばッ!」
再び、三度、四度――炎と銃弾との交差が奔る。
だが、互いに与える有効打へはまだ及ばず、両者共にと健在を戦場へ示す。
しかし、髄厳は気付いているだろうか。
怒りのままに劫火を吐き出し続ける髄厳と、交差の中で経験を知恵を積み重ね続ける猟兵との違いがあることに。
――相互いに紫の瞳。視線絡みあえば、仕込みは充分と知る。
五度目か、はたまた六度目か。それとも、もう幾度目かも知れぬ炎が弾けた。
変わらず、返礼の銃弾が――響かぬ。
「嗤え、デゼス・ポア」
「少しばかり手荒くいくぜ?」
代わって響いたは、跳躍の音。軽やかに、重々しく、その二種を奏でて。
軽やかたるは絶望宿すからくり人形の足音。
重々しきは紫電纏いしカイムの足音。
炎を、撒き散らされる熱をも吹き散らし、刻み散らしながら、龍の顎を目掛けて一直線にと。
「わざわざと牙の前にその身を晒すか!」
炎の名残は消え失せども、髄厳の口中にぞろりと生え揃う牙は名刀の鋭きに勝るとも劣らない。例え、炎がなくとも、それに噛みつかれればただでは済むまい。済むまいからこそ――。
「ンな訳ねぇだろ!」
カイムの口元描かれる弧は変わらぬ余裕を示すモノ。ケタケタケタと響くデゼス・ポアの哄笑もまた変わらぬ。
ガチリと顎が閉じ、火花が散った。
だが、そこに肉食い破る感触もなければ、血の味もない。
足場なき宙。カイムとデゼス・ポアはどこに。
「――絶景かな、絶景かな。で、肴如きに頭上を取られる気分はどうよ?」
聞こえてきた声は直上。いや、最早髄厳の頭のすぐ上と言って差し支えなき。
足場がない? いいや、足場ならばあった。あちらこちらに。
「……全く、修理費用はどこに請求すればいいのやら」
「悪ぃ、悪ぃ。だが、そういうつもりだったんだろ?」
「デゼス・ポアが足場にすることだけをな」
「はは、請求はコイツにでも頼むぜ」
「支払い能力があるとも思えんがなあ」
それはキリカのオーヴァル・レイ――浮遊砲台。開戦時より数多と浮かべていたそれを足場代わりとし、カイムもデゼス・ポアもその軌道を宙にて変えることが出来たのだ。
代償として――特に、紫電纏ったカイムの踏み込みにより――一基、二基と沈黙をしたけれど、致し方ないと言えば致し方なし。
「我が頭上を踏むとは不遜な! 落ちよ、墜ちよ!」
「おおっと、こいつは荒々しいロデオだ」
身をくねらせ、頭上のカイム達を振り落とさんとするけれど、その怪力でもって龍の角を掴むカイムを振り落とすには至らない。
「――そんじゃ、一発酔い覚ましといこうか!」
「デゼス・ポア、一緒にやってやれ」
振りかざされる刃は黒銀と錆鉄。
それは易々と髄厳の鱗を切り裂いて、その顔に亀裂の二条を刻み込む。
齎される痛みに髄厳の脳は蹂躙され、飛ぶを忘れて湖面へと墜ちるはカイムではなく彼の方。
「だが、まだまだお楽しみは此処からさ。なあ、そうだろう?」
「勿論だ。私からのも存分に受け取れ」
見据える。墜ち行く髄厳の鱗の隙間――カイムが、他の猟兵達が傷つけた鱗の奥を。
鱗の硬度は銃弾を弾くと交差の中で理解した。だけれど、そうでない場所であればとも。
「――請求書代わりの弾丸だ。酔いも覚めることだろうよ」
カチリと引き金が鳴り、吐き出される弾丸の軌跡。それは違うことなくと髄厳の負った傷痕に吸い込まれた。
しかし、苦悶の声は桃源郷に響かない。それは高く高くとあがった水柱の中で、泡となって消えて行ったのである。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
雨宮・いつき
なるほど、眠らせるに留めていたのは生気を喰らうためでしたか
けれどその企みもここまで
過去の亡霊が今更現世の人々の生を貪ろうなど許しません
水良し、土壌良し
この土地であれば良い植物が育つでしょう
もうひと頑張りして頂きますよ、青竜
縄のような蔦の群れを急速に成長させ、古龍を捕縛するように操ります
鱗の特性もあって実際に捕らえるのは難しいでしょうが…真の狙いは別
金毛に赤角、そして爪
蔦の所々に生やした花から、鱗に覆われていない箇所へ宿り木の種を撃ち出し植え付けます
さあ、吸われる側の立場というものを味わって頂きましょうか
龍気を吸い出し、飛行能力や弾く能力を阻害して他の猟兵の方達が戦いやすくなるよう補助致します
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
酒精対策継続の為、引き続き固有結界・黄昏の間を発動中
風の結界による酒精が漂わない空間形成を維持したまま戦闘へ突入
戦闘中に徐々に酒精の濃度が低下していく可能性はあるが、解除した事で自身が行動不能になる事を懸念すると結界維持が妥当だろう
回避率が上がられると厄介だな
攻撃に関しては【貫通攻撃】を意識して行動しよう
【全力魔法】力を注いだ【レーザー射撃】で攻撃
また風の疑似精霊の力で敵の体の一部でいいから風で覆い、束縛出来ないか試みる
回避率向上し空を飛び回られると非常に戦いにくいからね
味方と連携する場合は敵の周囲に龍気を消失を拡散させる結界を張れないか【結界術】で試みてみよう
いたい、イタイ、痛い。
傷つけられた肉体が悲鳴を上げて、ごぼりごぼりと髄厳の口から水中に声の代わりと泡を零す。
――水中?
そこで、はたと気付く。
再びと湖底の奥底へと至れば、生気はもう集められないにしても、残り滓でも己の治癒に充てられるのではないか、と。そうすれば、猟兵共へ目に物見せることが出来るのではないか、と。
ゆらりと水中で長き身体がくねり、泳いで――。
「なるほど、眠らせるために留めていたのは生気を喰らうためでしたか。けれど、その企みもここまでです」
湖底を目指す身体が強制的に動きを止められた。
髄厳が己を見れば、その身を縛るは蔦の群れ。それが身体に巻き付き、絡みつき、その潜るを止めていたのだ。
ざぷり、ざぷり。
湖底に伸びる泡の柱が二つ。いや、その泡の奥――大きな大きな水泡が二つと言うべきか。
「酒精に対する結界の維持はこちらで」
「助かります。その分、あれをこれ以上潜らせはしません」
何者と問わずとも、その正体は言わずもがな。それが猟兵の追撃なのだと髄厳は理解する。
そして、その髄厳の想像は正しかった。
蔦の群れを繰るこそは雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)であり、互いの身を護る結界の主こそ鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)。
ゆらゆらと揺れる水泡の結界のその向こう、毅然とした眼差しを持って髄厳を見据えている。
「過去の亡霊が今更現世の人々の生を貪ろうなど許しません」
「一度失った命が、こうして再び息吹を取り戻したのだぞ? どうしてそれが生きながらえるを謗るか」
「生きながらえるだけであるのなら、生気を集める必要はないだろう」
「そうです。他者の生気を貪り、己のために利用せんと言うのは違う筈です」
「お前達は自らの終わるを知らぬからこそ言えるのだ!」
紡ぐ言の葉は平行線。
埋めきれぬ、分かり合えぬ隔たりがそこにはあった。
分かり合えぬ、譲れぬがあるのであれば、あとはどちらの意志を優先するかを力を以って。
先に動いたは髄厳。
その身の全霊をもって湖底目指さんと身体を押す。
本来であれば絡みついたを離さぬ蔦が、今は悲鳴をあげてぶちりぶちりと一つ、また一つと切れていく。それはまるで、古龍の、髄厳の意地を見せつけるかのように。
「我はまだ、我はまだぁ!」
「その意思の強さは見事。ですが、僕達とて譲れないものがあります!」
髄厳の為すことに賛同はしない。だけれど、その示す意思の強さには二人もまた覚悟をもって向かい合うのだ。
「もうひと頑張りして頂きますよ、青竜」
水良し、土壌良し。この地の『気』とも言えるものを分けて貰い、引き千切られた蔦を再びと繋ぎ留める。
――気を分けて貰う。
それは髄厳の行った強制的な抽出とは違う。彼ら――この桃源郷の意志とも言えるものが、外敵を排さんとしてくれるいつきに自らと力を貸したからこそ。
だが、高まる力は相応にいつきの身に負荷として圧し掛かり、成熟にはまだ遠いその身体が苦痛の訴えをあげるのは致し方のない事。
でも、それでも――。
「僕は皆の笑顔を、心を、護りたいんです!」
胸に秘めし矜持があればこそ、その全てを呑み込んで、いつきは髄厳の身を戒めるのだ。
そして、そんな自らより年若いいつきの尽力を見て何も思わぬひりょではない。
――皆の笑顔を守りたい。
その想いはひりょもまた同じであればこそ。
「苦しくはなるだろうけれど、行動不能になるほどでなければ」
自らの身を護る力――結界のそれを僅かと緩める。
「風の疑似精霊達。あの身の束縛を手伝って」
それは守りに回していた力を減らし、援護へと回すために。
僅かと萎んだ泡の中、空気の減少に伴う息苦しさを僅かとも出さずにひりょは冷静さをもって指示を出す。
蔦だけではない、水の中に在り得ざる空気の鎖が生まれ、髄厳の身へと絡まっていく。
本来であればその身の龍気でもって脅威から身を遠ざける髄厳であるけれど、先んじての猟兵との戦いで傷ついた身体、消耗した龍気ではそれも十全とは叶わなかったのだ。出来たのは、最初のように蔦を幾本か引き千切るのみ。だが、それとて即座に繋がれればいかんともしがたい。
古龍と猟兵。その綱引きのどちらに軍配があがるのか。
「すぐそこに地脈があると言うのに! もう少しで届くと言うのに!」
「させません!」
「一気に引き上げよう!」
それは火を見るよりも明らかであったことだろう。
仄暗い湖底からじわりじわりと輝く湖面のその先へ。
そして――。
――ざばり。
――隆起した湖面は一瞬。次の瞬間には弾け、水飛沫を散らしてそれを春の日差しの下へと。
だが、まだだ。また湖に墜としては同じことの繰り返しになりかねない。
「さあ、吸われる側の立場というものを味わって頂きましょうか」
「それも因果応報だな」
だからこそ、この追撃は必然。
絡みついた蔦より咲くは花の色とりどり。それは髄厳の力を吸って、見事に咲いた宿り木の花。
飛行するための力も、その身の舞う力も消耗させられて、髄厳に抵抗の術はない。
――目標は既に捕捉済み。
ただ力なくと落下するだけの軌跡を計算するなど容易く、それを撃ち抜くこともまた同じ。
「――このまま貫かせてもらう」
ひりょより放たれたは光の槍。
そう形容するに相応しい程の輝きが髄厳の身を貫き、その身を強制的に地上へと運び出すのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
九泉・伽
※アドリブ歓迎、負傷描写OK
あー煙草美味し(清々
火をつけつつ片手間の棍で攻撃をいなす、やりきれず喰らうのもあり
ちょい酒に当てられても気にしなぁい
酒はそこそこいける口だし、ま、呑んでも呑まれるなだけどー
敵の攻撃は受け流し耐性を崩した所を蹴っ飛ばす
勿論その度にしこたま紫煙を吹っかけるよ
至近距離で甘言囁き
「証拠隠滅お手伝いしましょうか?猟兵は仲間想いなんで、俺の事をズタボロにした助けるために捨て身になりますよ。報酬は…そうね、俺だけ見逃して?」
のってきたら集中攻撃くるかなぁ、そんな難しい質問わかんないよ、勘弁してー(棒
引き寄せ出来たら思いっきり棍で突き上げる
UC発動、はいはい鬱陶しい質問はナイナイ
エドガー・ブライトマン
わあ、スゴい。ご覧、竜だよオスカー
まだ不思議な香りが残っているから、マントの中に隠れていて
成すべきことを終えたらまた呼ぶからさ
立派なヒゲのキミ、ごきげんよう
実は竜退治も王子様の仕事のひとつなんだ
この湖から出ていってもらうよ
キミの居場所はここじゃなく、骸の海だ
“Hの叡智” 防御力の重視しよう
《早業》で炎を避け、間合いを詰めるつもりだけれど
当たってしまった時のためだ
オスカーが焼き鳥にならないよう、耐えなくちゃいけないもの
火傷も《激痛耐性》で凌ぐさ
炎も気に留めず、接近して《捨て身の一撃》
キミにも面子はあるだろうけれど、私にもあるんだよね
例え体が燃えようと
王子様が悪しき竜に敗れるようなことは許されない
土を抉り、煙を上げ、幾本かの桃の木がなぎ倒される。
それだけの衝撃を撒き散らして、ようやくと猟兵によって吹き飛ばされた髄厳の身体は止まる。
彼にとって幸いと言うべきは、それによって身の戒めも解かれたことか。だが、身体に刻まれてきた傷は癒えることなく、ジクジクと痛みを訴え続ける。
「ぐ、ぬぅ……」
古き龍として生きた幾星霜。一度は手放したその生が、何の因果か再びとこの世に舞い戻れたのだ。再びとそれを失う経験に己は耐えられるであろうか。
「否、否だ! 我はまたこの命を手放すつもりなどない!」
だから、かつては知識あれども終ぞと実践しなかった外道の術――他者の生気を呑み込んででも、生きながらえる術を此度はと用いたのだ。
だと言うのに、だと言うのに。
「何故、上手くいかぬ! 何故、我はこうして伏している!」
――これでは、一度命を失った時と同じではないか。
そのままでは確実に己の命は終わりを迎えるのみ。それを本能で、理性で、己の全てで理解する。
ならばこそ、伏してなどいられない。身体に鞭打ち、引き摺り上げるは己の身体。迫りくる脅威――猟兵達をその眼へと収める為に。
「わあ、スゴい。ご覧、竜だよオスカー」
「ボス格ならしぶとさも相応ってことだねぇ。そういうのは、現実にならないで欲しいもんだけれど」
その視界に映り込むは新たな二人。金糸を揺らすエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)にして、紫煙を揺らす九泉・伽(Pray to my God・f11786)。
片や瞳に輝きを、片や瞳に気怠さを。
「キミ達が言うところの童話が息づくような世界もあるんだ。なら、そういうことだってあるさ」
「そうだねぇ。目の前にはそれこそ絵に描いたような王子様だって居るんだもんねぇ」
「はは、そういうキミは『どう』なんだい?」
「……どうなんだろうねぇ、実際のとこ」
「むむ、それはまた深淵な問題だね」
「俺の言う事なんて、本気にしちゃ駄目だよ」
「なんてことだ、オスカー。どうやら、私達は煙に巻かれてしまったようだよ」
「あー、煙草美味し」
ぷかりと、伽が吸い込んだ紫が空気に放たれ、髄厳の鱗に当たって儚く散った。
――それが契機。
「やあやあ、挨拶が遅れてしまったね。立派なヒゲのキミ、ごきげんよ……って、そんなに怒らなくてもいいじゃあないか」
「いやぁ、ははは、無駄話が過ぎたかねぇ」
鋭い牙が二人の直近で、ガチン! 火花が散って、空気が揺れて、かき混ぜられた空気が火の匂いと酒の匂いを運び込む。
咄嗟、エドガーの細剣と伽の棍がすぐそこの髄厳が頭部を殴打するも、頭部はするりと引き、頑健な鱗が有効打を阻んで届かせない。
「ん、まだ不思議な香りが残ってる……これじゃあ、オスカーの出番はマントの中でだけになりそうだね。成すべきことを終えたら、また呼ばせてもらうよ」
「酒は匂いだけじゃなくて、しっかり味わいたいもんだよ。ま、呑んでも呑まれるなだけど」
咽るような匂いは口の覆い越しでも変化はない。いや、多少は薄まっているのだろうけれど、そこまで大きな変化ではないと言うべきか。
――酒の匂いを押し退けて、香りくるは空気を焦がす。
「これは流石に棍でいなすにしても限界があるねぇ」
「丸焼けは流石にオスカーが可哀想だね」
君がじゃないんだ。なんて、言葉を伽は口にしない。それよりもと、今は紅蓮の躱すに集中して。
「あーあー、これじゃあ折角の風景も台無しだ。猟兵の手から逃れるにしたって、こういうのは逆に怒りを煽るだけだよ」
そろり。エドガーからも距離を取り、言の葉掛けるは髄厳へ。
「――ねえ、猟兵から逃げる手助けをしましょうか?」
だって、これからの言葉を聞かれてしまったら、刃を向け合うことになってしまうかもしれないから。
「なに?」
「ほら、猟兵ってば仲間想いなんで、俺の事をズタボロにすれば、助けるために一層の捨て身になりますよ」
「何故、そのようなことを言い出す」
「“過去”だからって踏みにじるの、俺はやだなぁ。だって俺もまた“過去”なんだから」
自分が二つ目の人格であることを、伽は憶えている。ダレカの身体に宿った過去であると識っている。
だから、ほら――。
「同類で戦う必要なんてないない。ね、もうやめましょ?」
甘い甘い言葉を贈りましょう。
「……お前はなんなんだ」
とは言え、その甘言を容易くと呑み込める程に髄厳の重ねた歳月は短くない。むしろ、その歳月を以ってしても見通せぬ伽という存在にこそ警戒を向けるのである。
――だけれど、一瞬の間はその甘言に僅かでも心揺さぶられた証拠。なら、十分だ。
「残念。流石にノッてはくれないかあ」
「まだ我の問いに答えてはおらぬぞ」
春の日差しを遮る暗雲。雷鳴を宿すそれは髄厳の問い掛けに応じぬ者を撃つための。
「はは、そういう鬱陶しい質問はナイナイね」
でも、それを使うと判じたこと自体がもう遅い。
欠片は――煙草のけむり。甘言。棍での突き。そのいずれも、既に揃っているのだから。
暗雲は来らず、雷鳴は鳴り響かず。ただ、煙草の煙の如くと散りゆく様を見せるのみ。
「貴様ッ、貴様ッ! なにを……!」
「してはいないよ。これから、キミがされるだけ」
ぷかりと紫煙を燻らせた煙草。それを挟み込んだ伽の指が示す先は先黄金色。
頼まれてもなかったけれど、時間は稼いだ。なら、何かしらのことをしてくれるだろう、と理解して。
戦いの余波は桃源郷の地に傷痕を刻む。
それは桃木の幾つかがなぎ倒されていることでもあり、今はそれに加えて髄厳の炎が桃の木を薪の如くと燃え広がりつつありことでも。
さて、燃ゆる光景はどこかで見た景色であっただろうか。それとも見知らぬ光景であっただろうか。だが、どうにしても――。
「この光景はよろしくない」
美しいとか美しくないとかではない。エドガーにとって、よろしくはないのだ。だから、改めてと心に決めた。
「知っているかい? 実は、竜退治も王子様の仕事のひとつなんだ」
心落ち着かせるように深呼吸を一つ。青の瞳を二つ、三つと瞬けば、心の内には祖国の名。
「キミにも面子があるんだろうけれど、私にもあるんだよね」
勧善懲悪の物語。そこで王子様が悪しき竜に敗れるでは、いったい誰が大団円へと導くというのか。
「この湖から出ていってもらうよ。キミの居場所はここじゃなくて、骸の海だ」
エドガーが身に宿した数多の祝福。その一つたる叡智が燃え広がる劫火の中に道筋を見出す。例え、更にと髄厳が劫火を吐き出したとしても、だ。
しかし、その道筋において自分自身の無事というものは計算の外。ただ、マントの内側に潜むオスカーと刃振るうだけの力を残すだけを考えて。
折角の一張羅に火が灯る。皮膚が焼ける。でも、痛くはない。だって、その身に宿した祝福/呪いがあるのだから。
「ば、かな!? 己の命を失うかもしれないのだぞ!?」
「キミにはきっと、分からないだろうね」
燃え広がり、降り注ぐ劫火の内を潜れば、髄厳の顔はもう目前。
今はもう酒精の香りよりも炎の、己の焼ける臭いの方がエドガーの鼻をつく中、髄厳の眉間に幾度目かの傷痕が深々と穿たれた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎、共闘希望
WIZ判定
・行動
戦闘が開始したら湖底に潜ってUCで刻印をしておき
その場を有利地形に変更しながら待ち伏せる
皆との戦闘で水面に古龍が叩きつけられたら
電磁覇気による磁力操作で地磁気をいじって
地脈から生気を吸収していた陣を逆流させ
相手の龍気を散らして弱体化させる
守りが弱くなったところで一気に皆と弱点の逆鱗を攻撃する
(功夫、見切り、部位破壊、鎧無視攻撃、破魔)
・セリフ
天知る、地知る、人が知るってな
オレたち宿命によって導かれた猟兵が来たからには
アンタの下らねぇ企みもここまでだぜ!
封神台が無くっても骸の海までぶっとばしてやらぁ!
トリテレイア・ゼロナイン
(遠隔●操縦で呼び寄せた機械飛竜ロシナンテⅢに騎乗し空中戦)
不躾なお呼び立ては失礼をば
ですが悪事とは露見する物
それが世を乱すどころか滅ぼさんとする企てならば猶の事です
竜と龍…差異はあれど騎士として討たせて頂きます
飛竜口部機関砲や格納銃器での乱れ撃ちで龍鱗強度測りつつ、瞬間思考力で体躯や頭部の挙動を見切り火炎を回避
UCを片手に充填開始しつつすれ違い様に怪力で振るう槍で鱗を削り取り
…やはり硬いものですね
それに『刃』にお気づきの様で
炎から逃走しつつ湖面に急降下
龍炎で蒸発した湖の水蒸気に紛れ目潰し騙し討ち
飛竜を●ハッキングし推力移動限界突破
センサーでの情報収集で敵位置を把握
開いた口部に光刃一閃
「では、手筈通りに」
「ええ、了解いたしました」
とぷりと水面に小さな波紋が立って、そして、また湖面は水鏡の如くと。
それを見届けたかのように、重き足音が湖面を背にして遠のいていく。激動の、今なお止まぬ戦いの地へと向けて。
猟兵により眉間穿たれ、大きく仰け反った髄厳の体躯。
そのまま意識諸共に命も手放せれば、どれだけ楽であったことだろうか。
だが、そうはいかない、そうはいかないのだ。
まだ、また、死にたくはないから。骸の海に墜ちたくはないから。
「事が露見さえしなければ、こんなことには……! こんな、ことにはぁぁぁ!!」
仰け反る身体を意思の一つで抑え込み、それ以上の追撃を許すまじとばかりに気を吐き、髄厳はその態勢を戻す。
「いいえ、悪事とは露見する物。それが世を乱すどころか、滅ぼさんとする企てならば猶の事です」
「――っ!!」
「先程は不躾なお呼び立てにて失礼をば」
傷つき、追い立てられた獣の如くと跳ねた髄厳。その視線の先には白銀なる騎士。それこそはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)にして、髄厳が湖底より引きずり出される一因となった者。
「先程? ……! そうか、お前が!」
「ええ、仰られる通りです」
髄厳の敵意がトリテレイアへと収束する。その目で射殺さんばかりにと。
「……名でも名乗りましょうか?」
「戯言を!」
「そうですか。では、騎士としてアナタを討たせて頂きます」
竜と龍の差異はあれども、それがヒトに害なすであるのならば騎士として等しくと。
突き刺さる敵意、殺意、害意。その全てを受け止めた上で、トリテレイアは騎士物語の一節を紡ぐが如く髄厳へと足を踏み出すのだ。
「近寄るなッ!」
向けられる敵意をものともしないその泰然とした一歩に、髄厳は確かに気圧されていた。だからこそ、それを否定するように、存在を消去せんとするように、その口より漏れ出たは紅蓮の劫火。
抵抗も、断末魔も、なにもなく、トリテレイアを包んで炎が揺らり揺らり。
「……は、はは。なんだ、大言を吐いたにしては、他の者共に比べて呆気の――」
「腐っても鯛ならぬ、消耗していようとも龍は龍ということなのですね」
「――何だと?」
炎を吹き散らして、紅蓮の内より出でしは鋼の竜。
それこそは髄厳の炎がトリテレイアへと到達するより早く、その身を包み込んで守り抜いたトリテレイアの愛機――ロシナンテ。その名を冠する三番目の。
「では、少々空の旅にお付き合いいただきましょうか」
「何を言っぐおぁああ!?」
突撃/チャージ。
主を乗せたロシナンテⅢ――機械飛竜が、その身を矢の如くと。
身体ごとぶつかるそれにより、髄厳ごとにと空へと駆け上ったのだ。
――ぐんぐんと遠ざかる地上の景色。
「ええい、放せ!」
「勿論です。流石に、いつまでもと炎を浴びてはこちらも少々拙いですから」
髄厳とてただ連れ去られるだけではない。空へと駆け上る間に至近距離からロシナンテの装甲へと向け、紅蓮を吐き出し続けていたのだ。
赤熱した装甲の上層が、ドロリと耐熱の限界を示していた。
だからこそ、十分な高度を取った時点でトリテレイアは髄厳を自らと解放したのである。
ただし――。
「っづああぁ!?」
「……ふむ。やはり硬いものですね。それに、それだけ消耗しようとも槍は避けましたか」
餞別は忘れずに。
髄厳を解放すると同時、ロシナンテの口部より撃ち出すはお返しの弾丸。溶かされた装甲の仇とでも言わんばかりに吐き出されたそれは、髄厳の鱗を乱打する。
今迄であれば弾けたそれであったけれど、他の猟兵との戦いで消耗した今、弾きはしても衝撃を打ち消すには至らず、鱗の下の肉体に確かな痛打を与えていたのだ。
だが、もう一つ――トリテレイアが振るった槍は、弾丸の衝撃を利用することでその身を逃し、削られるを避けていた。それは本能か。はたまた、地脈に喰らい付いていた己を引き上げたトリテレイアの怪力を予想してか。それとも――。
「ふ、ん。そんなこれ見よがしに本命を見せていれば、気付かぬ訳もなかろう」
「ええ、ええ、お気づきの通り。この『刃』は少々特別です。十分に注意して下さい」
「……チッ」
――此度は振るわれこそしなかったが、莫大なるエネルギーを充填しつつある柄を警戒してか。
度重なる戦闘による消耗に加え、己の鱗を易々と断ち切るであろう刃の存在。その二つが髄厳から戦いへの積極性を奪う。
そして、それはトリテレイアにとっては好都合――ならぬ、計算通りの。
睨み合い、散発的な炎と弾丸の撃ち合い。時間だけが消耗されていく。
「準備の程は如何でしょうか」
『今少し、時を稼いでもらえると助かります』
「了解致しました」
そして、視点は空からもう一つの――湖の中へと移り変わる。
こぽり、こぽり。
水をかき分け、湖面へと向けて昇っていく泡の音。
「この辺りで、いい筈」
水面から差し込む光はあれど、深く潜れば潜る程にその輝きの恩恵は消えていく。
フローラ・ソイレント(デッドマンズナース・f24473)が目的の場所――髄厳が潜んでいた湖底の地脈へと辿り着いた時には、周囲は随分と薄暗くなっていた。
――だが、視界の明暗など問題ではない。
バチリ。
周囲を照らす、電磁光。
磁極流の達人たるフローラであれば、自らに纏った覇気をもって周囲を照らすなど容易き事。
「陣の取っ掛かりは……」
髄厳と対峙するではなく、湖へと潜った理由は一つ。
髄厳が桃源郷へと布いていたという陣。生気を吸収するというそれを見付ける為に。
「ああ、見つけました……が、少々大がかりですね。それに、少しばかり修復する必要性もありそうです」
そして、それはフローラの技術あればこそ、そう苦労することもなく見つけ出す事が出来ていた。
だが、見付けはしたものの、その陣は破損――恐らくは、他の猟兵の手によって――していたのだ。
ならば、どうするか。
「内なる小宇宙を外界に投影す、これ成るは我が世界なり」
決まっている。壊れた機構は殴れば直る。
――と、までは言わないが、しようとする方向性は同じ。クールに見えてその実、中身は豪快なのがフローラなのだ。
握り込んだ拳は受け継いだ業の証。
――磁極流、法界曼荼羅。
己が精神をこの世に投影し、世界そのものを書き換える程の。
髄厳の陣。その核に叩きつけられた拳が術式を奔り、その内容をフローラの望むがままにと作り替えていく。
直し、書き換え、転換。
――さあ、これにて準備は万端。後は仕上げを御覧じろ。
「こちら、フローラ。場は整った。……一気にやっちまおうぜ!」
戦の高揚に冷静の皮は脱ぎ捨てられ、内に秘めし獰猛なるが今、牙を剥く。
『こちら、フローラ。場は整いました。……一気にやっちまおうぜ!』
「了解致しました」
空からの返す言葉は同じ。されど、そこから先の行動は異なる。
炎と弾丸の撃ち合いなどという消極的な行動はもう終わり。これから先は、一気にチェックメイトへと運ぶための。
轟の響きはロシナンテ。髄厳の劫火にはなき音の響き――大推力の源を滾らせて、その身を瞬く間にと加速させる。
それは髄厳からすれば唐突なる加速であったことだろう。
「な、あああぁぁ!?」
「さて、空の旅から引続いてお付き合いください」
もつれあうように、ともすれば最初の突撃のように、ロシナンテが髄厳の身に喰らい付いて。
どこへ向かうというのか。そんなもの、決まっている。
「おう、歓待の準備は出来てんだ! たっぷりたらふく堪能していけよ!」
直下降の行先は眼下に悠然と広がる湖。フローラによって地脈から生気を吸収していた陣が書き換えられ、今は龍気を吸収して桃源郷全体に還すための陣が布かれた場所。
「なんだそれは……そんなものを我は知らぬ……いや、駄目だ! それは駄目だ! 放せッ! そこだけは……!」
「いいえ。嫌と申されましても、一緒に来て頂きます」
湖の正体に気付いた髄厳の口から吹き上がる抵抗の劫火が、幾度も幾度もとロシナンテの装甲を灼く。だが、今回はもう放さない。己の力の続く限りと、絶対に。
――水の柱は高々と。
「天知る、地知る、人が知るってな! オレたち宿命によって導かれた猟兵が来たからには、アンタの下らねぇ企みもここまでだぜ!」
大質量二つの着水。そして、暴れる者とそれを取り押さえる者によって揺れる水面。しかし、鍛えられたフローラの身体であれば、その水流に負けはしない。
振り上げるは拳。
水面へ向けて振り下ろせば、拳より放たれ、水面を伝うは磁界のそれ。
正しくと術式は作動して、髄厳の身より龍気を、この桃源郷より絞り出した生気をあるべき場所へと還していく。
「我が、我が力が……!!」
「アンタの力ってのは違うだろうが! 封神台の代わりに、オレらが骸の海までぶっとばしてやらぁ!」
「……充填中断、刀身解放!」
溜めは十分。外さぬための策も充分。
そして、身を護る術を剥がされた髄厳の身を、光刃の一閃が貫き、通り抜けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リウ・シンフォリカ
【六華】
他者を蹂躙し己の欲望を満たそうとする行いの目的には碌なものはないと心得ておりますが
…龍種と言えど例外ではありませんか
ともあれ、敵の威勢の削がれた今が好機ですね
心得ております、マリア殿
今こそ猟兵の本領を
湖に向かい、戦闘態勢を整える
鼻腔口腔を布で覆い、酒精対策は継続
髄厳からは距離を取り、マリアの傍でロングボウの遠距離攻撃にて牽制、狙撃
顎の下や眼、腹などを主に狙い
龍の挙動を観察し、高威力攻撃が放たれる前や、マリアの攻撃タイミングに合わせるように咎力封じを使用
機先を制する、或いは必殺のタイミングをずらす程度にでも作用すれば僥倖
人々から掠め取ったその力、在るべき場所に返していただきます…!
マリアドール・シュシュ
【六華】アドリブ歓迎
他の猟兵さんの力も相まって、
大分マリア達が戦いやすくなったのだわ
リウ、準備はいいかしら
姑息なやり方を好む古き龍だこと
あなたの思い描く結末にはさせないのよ
此処に住む人々とこの地を護る為に
マリア達はいるのだから
桃林から湖へ移動
竪琴を適度な大きさに変え
敵を見据え
酒精はオーラ防御で中和
リウ、マリアから離れないで頂戴
古き龍とは距離を置いて畳み掛けましょう
中衛
リウと連携
敵と一定距離保つ
麻痺の糸で編んだ銀河の旋律を奏で範囲攻撃
敵の動き鈍らせ、上昇する敵を追跡し音の誘導弾で連弾
敵の攻撃は創造の言ノ葉を謳い相殺(カウンター
耳飾りを変化させ【茉莉花の雨】使用
広範囲で鱗ごと花弁を突き刺し洗い流す
騒乱の気配は遠のいて、静けさが桃源郷へと舞い戻る。
波立つ水面はなく、剣戟の音はなく、花吹き散らす風はない。
――それも一瞬のこと。
次の瞬間には凪いだ湖面を割って、髄厳の姿。だが、その姿は最早当初の威容には程遠い。
傷だらけの鱗。欠けた爪と牙。纏う龍気も今は朧。水滴に混じって零れ落ちるは、髄厳の命そのもの。
しかし、爛々と光る金色だけは変わらずとあり、かの古龍が未だにと諦めを得ていないことを示す。
「リウ、準備はいいかしら」
「心得ております、マリア殿。今こそ猟兵の本領を」
まだ髄厳が舞台から降りるつもりもないのであれば、代わって幕を引く者が必要であろう。
その役割を自らと負って、マリアドール・シュシュ(華と冥・f03102)とリウ・シンフォリカ(No.6・f03404)が水滴る地へと。
「我は、我はまだ、また、骸の海になど……!」
「あなたの思い描く結末にはさせないのよ」
「因果応報。他者を蹂躙し、己の欲望を満たそうとすれば、それは自身へと還ってくる。その結果がその姿です」
「……黙れ!」
「いいえ、黙らないわ。マリア達はそんな脅しぐらいで口を噤んだりなんて、しないんだから!」
「ええ。大声程度ではリウ達の意思は挫けません」
この地に住まうヒトビトと桃源郷という土地そのものを護る。二人の固き意志は強い輝きとなりて瞳に宿る。
――この者達もまた、これまでに立ちはだかった者達と同様に退かぬのであろう。
考えるまでもなく、髄厳はそれを見て理解する。故に、為すべきは一つ。
「ならば、我がその意志を手折ってくれよう!」
為せるか為せないかではない。成せねば、髄厳という存在が終わってしまうから。
「姑息なやり方をする古き龍になんて、負けてあげないんだから!」
「傷付けども龍は龍ですか。マリア殿、後ろに」
「ええ! でも、リウもマリアから離れ過ぎないで頂戴ね」
「善処いたします」
だが、それを抱くは髄厳のみではない。リウも、マリアドールも、退けぬ想いがあるは同じ。
自らの存在と矜持を賭けた最後の戦いが、此処に始まったのだ。
髄厳が吐き出せる炎は既になく、かき集めたる暗雲は誰かに吹き散らされた。
「……はっ、よもや積み重ねてきた知恵も技術も無駄になろうとはな」
残されているのは僅かな龍気と巨体が故の質量。だが、その質量こそが単純にして最も覆しにくい武器となったのは、なんたる皮肉か。
折れた爪でも、牙でも、その体躯で薙ぎ払えば大木ですらへし折れる。ならば、それをリウが、マリアドールが直接と受ければどうなるかなど想像に難くない。
「きゃっ!?」
「大丈夫ですか?」
「ええ、リウが支えてくれたから。でも、暴れ回るだけで凄い風! マリア達を花びらみたいに吹き散らそうとでもいうのかしら!」
「手負いの獣はなんとやらと聞きますが、それは龍種も例外ではないようですね」
進退窮まった髄厳であればこそ、その身に残された生気を燃やし尽くすかのように。
だが、だからといってリウもマリアドールも手をこまねいてなどいられない。
矢を番えよ。撃ち放て。射るべきは数多の傷痕。
リウがその手に握る得物――長弓の弦が幾度も旋律を奏で、空気を裂いて矢を髄厳へ届けていく。
突き刺さり、突き刺さり、数多の傷口を抉る。距離を取りながら、確実に、その身の消耗を誘うように。
だけれど、今の髄厳はそれだけでは止まらない。
「お、オォォォアアアァァァ!」
痛みを叫びと変えて、力と変えて、彼我の距離を埋めんと。
「その必死さを、どうして共存するために使えなかったのかしら!」
「できるものか! 一度でも死を経験すれば、骸の海へと墜ちれば!」
「分からず屋!」
リウの奏でだけで足りぬとあれば、マリアドールもまた即興のアンサンブル。
白魚の指先が黄昏に踊れば、心に凪を齎す星銀の調べ。それは戦いへの意思を奪い、ともすれば身体の自由すらをも。
一歩、二歩、三歩……大地を削って突き進む足の動きが鈍る。
だが――。
「この、音程度でぇ!」
「自分から、耳を!?」
「生き汚いと嗤わば嗤え!」
髄厳の足は止まらない。巨体の一歩一歩で確実に彼我の距離を埋め続けるのだ。
「もう! そうまでして――」
「いえ、心配はありません、マリア殿。お蔭で問題は簡単になりました」
「――え? リウ?」
地響きを立てて巨体が迫る。その最中にあって、リウが弦を引く音は止まっていた。
髄厳の決死とも言える行為に思わずと手を止めてしまったのか。
「髄厳殿。それしかなかったと理解をしますが、聴覚を捨てたのはやはり悪手であったとリウは思考します」
――否。
マリアドールが不思議そうな眼差しを向ける前で、リウは静かのその手を掲げる。
「人々から掠め取ったその力、在るべき場所に返していただきます……!」
その手が解き放つは弓矢に非ず。龍の、髄厳の体躯に合わせた拘束具の数々を。
リウによって召喚されたそれは地を滑り、宙を滑り、髄厳の身へと絡みついていく。
髄厳がまだ十全であれば、思考に余裕があれば、せめて五感の欠けがなければ、その接近に気付けていたことだろう。しかし、もしもはないのだ。その結果――拘束され、勢いのまま無様に地へと転がり、伏せさせられた姿こそが全て。
「オォォォ!? ガァァァ!?」
「マリア殿、最後はお任せします」
荒れ狂う暴威を抑えつける反動か。リウの表情が僅かに苦痛に歪んでいる。そう長くは持つものではないのだろう。
ならば――。
「ハルモニアの華と共に咲き匂いましょう舞い踊りましょう」
――その願いに応えずして、何がマリアドールか。
ジャスミンの耳飾を片方、ほろりと外し、握ったそれに口づけ一つ。
「――さぁ、マリアに見せて頂戴?神が与えし万物を」
願うように、祈るように、謳うように掲げれば、耳飾ははらりはらりと茉莉花の雨。咎を洗い流し、酒精を洗い流し、全てを取り戻す慈雨。
「この髄厳が、力に任せるだけの獣の真似事までしたのだぞ!? このようなところで、このようなところで……!」
拘束の一つ――猿轡を嚙みちぎったのだろう。血を吐くような叫びが木霊する。
「もう、いいのよ? 心静かにお眠りなさい」
ひらりはらりと幕が下りるように水晶の花びらが舞い積もり、髄厳の叫びをすらその向こうに呑み込んでいく。
そして、水晶の花びらが散り終われば、残ったのは静けさと春の日の長閑な日差しだけ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 日常
『天上の甘味』
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POW : 沢山の果物を食べ、大いなる力を授かる
SPD : 受けたい効果を持つ果物を探し、もぎ取る
WIZ : 果物から作られたお酒や飲み物を楽しむ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
降り注ぐ陽の暖かさに包まれて、桃源郷は息を吹き返す。
倒れ、焼けた桃林の一部は再びと彩を取り戻し、集落ではヒトビトが眠りから目覚めた賑わいが戻り、湖は酒精宿さぬ元来の姿へと戻っていた。
それは髄厳がかき集めていた生気が、猟兵の手によって地脈を通し、あるべき場所へと還されたから。
非日常から日常へ。
猟兵も、ヒトビトも、誰もが姿取り戻した桃源郷のように戻っていく。
しかし、今日という春の日の暖かきであれば、その合間に僅かばかりと休息を挟み込んだとて悪くもない。
桃林にでも足を運べば、桃の実はたたわと実り、食されるを待っていることだろう。
集落にでも足を運べば、酒に酔い潰されたというのに性懲りもなくと花見に一杯。宴会を開かんとする者もあるだろう。
湖にでも足を運べば、静謐に釣り糸垂らし、思索にふける時間を持つこともできるだろう。
勿論、そのどれでもなくても。
異変が解決され、平穏を取り戻した桃源郷であれば、猟兵の選択を阻むモノはないのだから。
鳳凰院・ひりょ
集落の方々は無事に回復されたのだろうか?
酒精が消えたから大丈夫だとは思うけれど様子を見に行ってみよう
皆さんの安否を確認したら、その後は桃源郷を散策してみるか
美味しそうな果物を見かけたら食べてみたいな
ここでしか食べれないものも沢山あるだろうし
散策途中で人と顔を合わせたらお喋りなんかもいいかも
こういうブラブラ散策している時は、ちょっとした何気ないお喋りも楽しいのだよね
なんにしてもこの地の異常をなんとか解決できて本当に良かった
帰還する時間までゆっくりと堪能させてもらおう
「これが本来の香りなんだろうね」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)が胸一杯に吸い込んだ空気。それは桃の香に色づけられ、どこか甘さを含んだもの。しかし、当初の脳髄を溶かすようなそれはではなく、心の澱を洗い流すかのような。
酒精の香り――いや、その元凶たるは猟兵達の活躍によって倒され、今、この地に漂うそれこそが本来のこの桃源郷の空気なのであろう。
「……集落の方々は、無事に回復されただろうか?」
平穏を取り戻した桃源郷において、ひりょが気がかりとするのはそれであろう。
思い返されるのは、この桃源郷で初めてヒトと接触を持った時の記憶。酔いと眠りに包まれ、衰弱していたヒトのこと。
「多分、大丈夫だと思うけれど」
そう言いつつ、しかし、その足が歩を刻むはかつて来た道。集落から湖へ、湖から集落への道。
大丈夫だろう。そう、思いつつも、生来の人の良さがそうさせていた。
――ざく、ざく、ざく。
足早な音の響き。
――ざく、ざく、ざく、ざくり、ざくり、ざくり。
しかし、その足音も次第に音の感覚を緩やかとして。
それは何故か。
「ああ、やっぱり」
答えは安堵の息と共に。
桃の花咲く向こう側、家々の合間に動く影。それは、この集落のヒトビトの。
それを確認出来ただけでも、ここまで戻ってきた甲斐があるというものだろう。
だけれど――。
「どうしようか。時間が余ってしまったね」
こうも簡単に安否の確認が出来たしまった――それ自体は決して悪い事ではないけれど――となれば、残りの滞在時間をどう過ごしたものか。
「……そうだね。少し、散策でもしてみるか」
ここには桃林もあると聞いていた。花盛りの中を歩くというのも乙なものであろう。そして、そうと決めたのなら有言実行こそがひりょなのである。
――赤、白、桃。濃淡の天蓋の下を往く。
降り注ぐは雨の代わり、桃の花弁がはらり、はらり。
だが、降り積もれども、降り積もれども、さりとて、足元以上には降り積もらぬ、なんとも魔訶不思議なる光景。
「不思議な光景だね」
「へえ、そういう風に感じるもんなのかい?」
「ああ、俺にとっては、かな」
「あー、オレはここの外には出たことがねぇからなぁ」
さくりさくりの桃林道中。最初は一人、気付けば二人。いつの間にやらお供が増えて、さくりさくりにしゃくりしゃくりの物音増やして。
有言実行の通り、桃林の散策に洒落込んでいたひりょ。そこでひょんなことと出会ったのは、何の因果か集落でひりょが助け出した男性であったのだ。
英気を養うために桃の実を取って帰る最中であったという男。
ひりょが当て所もない散策の旅路にあると聞いて、桃の一つを感謝の証と贈り物。そんでもっての、ついでにどうだい? と、桃源郷の道案内と申し出てくれたのである。
「……いや、お供って言うのなら、俺の方なのかもしれないな」
「?」
「はは、こっちのこと」
貰ったモノが黍団子であったなら、さて、ひりょの役割は犬猿雉のいずれであったことだろう。なんて、思考が遊ぶのは桃の花が目に付くから。だけれど、もう退治すべき鬼はいない。龍もいないのだ。
「なんだかよく解らんが、まあ、あんたが楽しそうならそれでいいさ」
「すまないね。ありがとう」
「ありがとうならこっちの台詞だぜ?」
「なら、お相子でと」
「ははっ、悪いことでもないのにお相子ってのも可笑しな話だけれどな」
それもそうか。それもそうだ。
桃の花の咲く下で、朗らかな笑い声が二つ。それはきっと、この桃源郷が平和になった何よりの証なのであろう。
「なんにしても、この地の異常を解決できて本当に良かった」
――本当に、本当に。
噛みしめるようにと、ぽつり呟きは花吹雪の中に溶け消えて。
「なんでぇ。そんなに味わって桃を食べなくても、まだまだたくさんあるぜ?」
「ん、そういうことじゃ……いや、なら、もう少し貰おうかな」
「おう! いっぱい食ってきな!」
受け取り、しゃくりと齧った一口で、ひりょの口の中一杯に柔らかな甘さが広がっていく。
幸いとまだまだ時間はある。なら、散策と何気ないお喋り、そして、平和の味を堪能させてもらおうか。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
ハーバニーさんと
大きな被害が出る前に解決できて何よりです
白き中華服の出で立ちのまま
探索していた桃林で見かけた、よく実った桃を採取
幹を軽くコンと叩けば、振動でぽとんと落ちてくる
味見に一口齧ると、極上の甘味と香りが広がる
両手にたくさん抱えて、ハーバニーさんのところへ
お疲れさまです、ご一緒にいかがです? 美味しいですよ
穏やかな日差し、芳しい風、美味しい果実
どれをとっても素晴らしい、まさしく楽園のようですね
そういえば、里の方ではお酒も……と、ハーバニーさんも未成年でしたか、大人っぽいので……
私もまだ飲めませんので、ここはフルーツ食べ放題コースとしましょう
桃の花が風に揺れる。
さやさやと。
白き華が風に揺れる。
はたはたと。
それはこの桃源郷に咲き誇る花々。
それは一輪でありながら華々しさで劣らぬ、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
「大きな被害が出る前に解決できて何よりです」
語るその周囲に風の防壁はない。もう、この桃源郷に酒精の満ちるは自らと他の猟兵達の手によって解決されたから。
足を運んだ桃林で、直にと吸い込んだ空気は花の香に色づけられたそれのみ。
ふぅ。と、オリヴィアの吐息が桃林の空気に混じって溶け込んだ。
「あの時は少しふわふわした気分でしたけれど、こうしてみるとまた違った感慨が浮かびますね」
ここに足を運んだ時にはまだ酒精が漂っていたからか。はたまた、桃林が描く幻想の光景に僅かでも目を奪われたからか。美しくはあったけれど、憶えている景色はどこかあやふやだ。まるで、花霞の景色でも見ていたかのように。
――でも、今は違う。
この桃林の光景をオリヴィアは自身の認識の下、しっかりと視ていた。
「今ならこの心地よさに負けてしまってもいいのかもしれませんね。なんて」
春の日差しは変わらず。でも、もう薄皮を剥いた先には地獄がないと知っているから。
足を止め、伸びをしながら天を仰ぎ、桃の花の向こうに晴天を見る。
「……あら」
そこに見付けた。見付けて、しまった。
「お疲れ様です、ハーバニーさん」
「あらぁ、オリヴィアさぁん。お疲れ様で――」
声を掛けたのは集落で駆けまわる兎耳――ではなく、ハーバニー。振り向いた勢いに、ぴょこりと兎耳が揺れていた。
「――あらあらぁ、また随分と大量ですねぇ」
「ふふふっ、でしょう?」
揺れた兎耳の下、青の目がオリヴィアの抱えるモノを見て、まん丸驚きを示す。それもある種当然であろう。そこには、両手一杯に桃を抱えたオリヴィアが居たのだから。
そう。桃林で天を仰ぎ見たオリヴィアが見つけたのは、まさしくそれであったのだ。
ハーバニーの驚く様子に、オリヴィアは目を細めて少しの満足感。そして、改めてと問いかける。
「甘くて美味しいですよ。御一緒に如何です?」
「うふふ~、此処でいっぱい動いてぇ、喉が渇いてたところですよぅ。是非に是非にぃ」
「はい。では、落とさないように」
「両手一杯に抱えたオリヴィアさんがそれを仰られるぅ?」
「私は落としませんよ」
「でしょうねぇ」
オリヴィアが両手に抱えた桃の実から器用に一つと放り投げ、宙に弧を描いたそれは見事にハーバニーの手の内に。
「お見事、お見事ぉ」
「ありがとうございます」
しゃくり。
二人揃って手の内のそれを齧れば、感じる味は同じもの。
「ん、美味しいですね」
「あっまぁ~い!」
果肉を噛めば噛むほどに、じゅわり広がる果汁の甘さ。口の中から香しきが鼻腔を抜けて。
「甘露とはこのことでしょうか」
「身体が癒されているのを感じますよぅ」
「まだまだ沢山ありますし、少し休みながら食べましょう」
「はぁ~い!」
「元気で宜しい」
うら若きが立ち話の立ち食いを続けるは流石に――という訳でもないけれど、ひと心地の場を木陰に移してゆるり、ゆるり。
「穏やかな日差し、香しい風、美味しい果実……どれをとっても素晴らしい。まさしく楽園のようです」
「今回のようなことがなければ、その通りなのでしょうねぇ」
「頑張った甲斐もあったということですね。そういえば、里の方ではハーバニーさんは何を?」
「んーとですねぇ、何やら宴会を開いてらっしゃるとかでぇ、大道芸やらぁ、配膳やらを少々ですよぅ」
「まあ! 道理で里のあちらこちらが賑やかと思えば。ハーバニーさんもそこでご相伴を……と、そういえば未成年でしたね」
「うふふ~、来年のお楽しみですぅ。オリヴィアさんは……」
「私も来年のお話です」
「御一緒ですねぇ」
「ええ、御一緒です」
「ならならぁ、その楽しみはまたいつかにとっておいてぇ」
「自分達から酔っぱらう悪~い大人たちを肴に、フルーツ食べ放題コースとしましょうか」
「賛成ですぅ!」
春の風にのって運ばれてくる賑わいの声。
それはきっと猟兵達が、オリヴィアが、オブリビオンという脅威からかけがえのないモノを守り通した何よりの証拠であったことだろう。
まだ成年に僅かと届かぬ二人は、それに耳傾けながら穏やかな時間に身を預けるのであった。
「そういえばぁ、こんなにもの桃をどうやってぇ?」
「ええとですね。こう、コツンと一つ桃の木さんにお願いすれば、自らと分けて下さったのです。これも主の恵みというものですね」
そんな僅かな、冗談交じりの蛇足のお話。
大成功
🔵🔵🔵
カイム・クローバー
キーテセラに声を掛けて集落に行くぜ。悪ぃが、ちょっと付き合ってくれ。……因みにアンタ、未成年か?
酒に酔い潰れたばかりだってのに、性懲りもなく酒盛り。ハッ、良いね、気に入ったぜ。
男だらけの所を【見切り】で選んで、よぉ、楽しそうじゃねぇか、俺も混ぜてくれ、と交渉。
宴会費なんざケチくせぇ事言うなよ?折角、むさ苦しい男共に美人と話が出来る機会を作ってやろうってのに。(親指でキーテセラを指して)
席に付けたら、間髪入れずに彼女は未成年だって伝えるぜ。ついでに野郎共はお触り厳禁だ。…出せよ。あるんだろ?旨い桃のジュースがよ?(男と肩組んで)
俺は酒を楽しみながら桃の花びらを眺める。…良い報酬だ。悪くねぇな。
桃の花々は旺盛に、春の日差しの下でその花弁を綻ばせる。
だけれど、この春の日差しの恩恵を受けるは桃の花だけではない。
どんちゃんどんちゃん、賑わいの。
飲めや飲めや、食えや食えや、踊れや唄え。
静謐に包まれていた集落も、その原因が猟兵達によって取り除かれた今、賑わいを取り戻していた。いや、むしろ、眠っていた分を取り戻すかのように一層と。
「酒に酔いつぶれたばかりだってのに、性懲りもなく酒盛りか」
その音に耳を傾けながら呟くはカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。だけれど、その顔にあるのは呆れよりも――。
「――ハッ。良いね、気に入ったぜ」
にやりと浮かんだ不敵の笑み。
その身の危機を乗り越え、桃の花に負けぬ程の笑みを綻ばせている彼ら彼女らへ、カイムがどうして悪感情を抱けようか。
「っと、キーテセラは付き合ってもらって悪ぃな」
「いいえいいえ~。お呼びとあらばでどこへでも~ですよぅ」
「そいつはありがたい話だ」
「ところでぇ、目的地はどちらまでぇ?」
「ん? ああ、そんな遠くじゃねぇ。すぐそこさ」
てくり、てくり、てくり。
急ぐでもない歩調で、のんびりと。
なに。もう火急の時ではないのだから、急ぐ必要もない。
「っと、そういやよ」
「はい~?」
「アンタ、未成年か?」
「そうですよぅ。大人を名乗るにはぁ、あと1年ばかり足りませぇん」
「あー、そうか。なら、そっちはまだ楽しめねぇか」
「?」
「アレの話さ。アレの」
カイムの指差すその先は、どんちゃん騒ぎの真っ只中。
遠慮無用と騒ぐ姿は、男性同士しかいない気安さか。
「よぉ、楽しそうじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」
そんな中へと何の気負いもなく、スルリ入り込むは熟練の間合い取り。
「あぁ? 誰だぁ?」
「ハッ、随分とデキあがってんな。そんだけ酔えるってことは、美味い酒があんだろ?」
「応とも! よくぞ聞いてくれた! この俺の秘蔵の一品が……」
「やめとけやめとけ! そいつの自慢話は長ぇんだ」
「混ざんのはいいけどよぉ、何か持ってきて――」
「ケチくせぇ事言うなよ? むさ苦しい男共に美人と話が出来る機会を作ってやろうってのに」
「いやぁ、照れますよぅ」
親指クイっと背後を示して、そこに佇むバニーガール。確かに、それはある意味で酒盛りには丁度良い。
ざわりと色めき立つは酔いが原因か。はたまた、カイムの策通りの結果か。
「……コホン。さ、どうぞ、お嬢さん」
「おい馬鹿! こっちに詰めてくんな! そっちに寄れよ!」
「文句はないようだな。なら、邪魔するぜ……って、聞いちゃいねぇか?」
だがどうにせよ、カイムがその輪の内へ容易くと踏み込めたことは間違いない。
「キーテセラは未成年だからな。ついでに、野郎共は御触り厳禁だぜ」
聞こえたか、聞こえてないか。たぶん、聞こえてるだろう。それにハーバニーもあれで猟兵だ。一般人に何かされるようなこともあるまい。
「ったく、若ぇモンはよぉ。酒を愛でるなら女もいいが、花だろ、花」
色めき立つ男衆の中、ちびりちびりと酒を煽り続ける男が一人。それは最初に自慢話を流された男で――。
「よぉ。あんたの秘蔵の一品とやら、話を聞かせてくれや」
「おっとと、酒が零れるだろうが」
「悪ぃ、悪ぃ。だが、さっきから気になってよ」
「……話が長ぇぜ?」
「いいンだよ。酒の席で自慢話の花の一つも咲かせねぇで、何が宴会だ」
「は、仕方がねぇな」
がつりとややもすれば乱暴に肩組めば、男同士の会話をひそり。
そして、そこから始まる男の――酒屋営む男による酒へと賭ける情熱のお話。
桃の厳選。水の厳選。温度、湿度、ありとあらゆるを厳選して磨き上げた一品のお話を。
「――そして、そいつがコレだ」
ドンと置かれた桃酒の瓶。カイムが出して欲しいと願うまでもなく。
「そんだけ語ったんだ。当然のように美味いんだろうな」
「当ったり前だろ! 疑うなら、飲め!」
「いいのか?」
「良いも悪いもあるか。酒は飲まれるためにあんだよ! そのために俺ぁ作ったんだ」
「良い啖呵じゃねぇか」
ならば、それを頂くに何の呵責があろうか。
手渡された御猪口にトロリと注がれた酒の色は清水が如く。だが、そこから香り立つ匂いは確かに酒精のそれ。この桃源郷に蔓延していた、脳髄に絡みつくような酒精の匂いとは違う。甘く、春風のようにふわりと広がる優しき。
――コクリ。
たった一口。されど、一口。
口当たりは匂いの通りに、甘く、優しく。しかし、喉を通り、胃の腑に落ちれば全身を駆け巡る熱。
「……うめぇ」
「だろ?」
「顔に似合わねぇ、綺麗な酒を造るじゃねぇか」
「誰が雑な顔だってんだ」
「はは。だが、こいつは確かにうめぇ」
「ああ、ありがとよ」
酌を交わし合って、飲みあって。
手元には口と鼻を楽しませる良い酒に、見上げれば目を楽しませる桃と青空。
嗚呼、なんだ――。
「――良い報酬だ。悪くねぇな」
はらりと散った桃の花弁が風に乗り、御猪口の水面を彩り揺らした。
まだまだ酒盛りの時は終わりそうにない。
大成功
🔵🔵🔵
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎
脅威は消えたか
では、勝利の美酒を味わうとしよう
冒頭に赴いた集落にいた人々の様子を見に行こう
オブリビオンを倒したから無事に目覚めているから大丈夫だろうが、一応な
あれだけ酔い潰れていたと言うのに懲りずにまた酒を飲むか…
だがまぁ、脅威が過ぎ去ったのだ、野暮は言うまい
集落に咲く桃の花と、その周りで賑やかに楽しむ人々を眺めつつ
私も少しだけ酒を飲もうか
ふわりと甘い桃の香りが何とも馨しい
普段は辛党ではあるが…そんな私でも楽しめる良い酒だな、これは
集落から眺める美しい景色を楽しみつつ、酒も楽しもう
眺望絶佳に佇み、美酒佳肴を楽しむ…
フッ、新しい世界と聞いていたが、此処もまた素晴らしい場所だったな
ちゃぷり、ちゃぷりと瓢箪が唄う。
キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)が一歩、また一歩と桃の木が立ち並ぶ坂道で足を進める度、その中の液体を躍らせて。
「無事、脅威は消えたようだな」
周囲の空気からは既に酒精の気配は駆逐されている。それは、その元凶たる髄厳をキリカが、猟兵達が倒したからこそ。
ちゃぷり、ちゃぷり。
昏睡していた集落のヒトビトがその活動を再開しているのは、既に確認済み。
「……しかし、あれだけ酔い潰れていたと言うのに、懲りずにまた酒を飲んでいるとはな」
集落を後にした今も、思い出しては呆れ半分の感心半分。
この春の日差しの下、桃の花の下、やんややんやと賑わう彼ら彼女らは、確かに今を生きていたに違いない。
だから――。
「だがまぁ、脅威が過ぎ去ったのだ。野暮は言うまい」
それでいいのだろう。と、彼女は言う。
あれこそは今を生きる者の特権であると知っていればこそ。
ちゃぷり、ちゃぷり。
「……これも貰ってしまったしな」
腰に吊るされた瓢箪に触れ、歩行のリズムとはまた違う形でちゃぷりと揺らす。
それこそは集落に入らず、その場を後にしようとした時、とある―見覚えのある純朴そうな――青年から贈られた物。
最初こそ要らぬと言ったのだけれど、感謝に。と言われてしまえば無碍にも出来まい。
――ちゃぷりの音が止まる。
そこは坂道の終着点。小高い丘にして、集落を一望できる場所。
木立が拓け、春の日差しがキリカを出迎えていた。
「良い景色だ」
飄々と風が耳元で鳴く。だけれど、その風に冷たさはなく、春の風特有の柔らかさ。まるで遊ぶようにしてキリカの紫を揺らし、通り抜けていく。
見下ろす景色は桃色で、その合間に集落の様子が垣間見えた。
忙しなく動く者、花を愛でる者、他愛のない話に花咲かせる者、花より団子――いや、酒か――を楽しむ者、様々と。
その中に見知った顔も見えて、キリカの口元には柔らかな弧が描かれていた。
「では、勝利の美酒を味わうとしよう」
その光景こそがキリカの勝ち取ったモノなのである。
ならば、この光景を肴にと折角の酒を楽しむのも一興というものであろう。
――キュポンと栓の抜ける音。
開かれた口から漂うのは、甘い桃と酒精の香り。だけれど、桃源郷に蔓延していた酒精とは違う、不快のない香り。
「何とも馨しい……随分と良いものをくれたのだな」
この桃源郷での価値が幾らかは分からぬけれど、それでも、奮発したものなのだろうとは分かった。
一本杉の如くと丘の上で立つ桃の木に背を預け、腰を落ち着け、改めてと。
「……ん、良い酒だな。これは」
瓢箪に口付け、こくりと飲み下した桃酒の味わい。
普段は辛党を自認するキリカではあるけれど、青年から贈られた桃酒は不思議と口にあった。
それが桃源郷の桃から醸造されたものだからなのか。はたまた、単純に良い酒だからなのか――いや、ここでそれを考えることこそが野暮なのであろう。
――良い酒は良いものである。
小難しい理屈は今は必要ない。それで良いのだ、きっと。
「眺望絶佳に佇み、美酒佳肴を楽しむ……フッ、新しい世界と聞いていたが、此処もまた素晴らしい場所だったな」
だが、まだ瓢箪の中で液体が揺れている。まだ今暫し、この時を楽しむのも悪くはない。
また一口。もう一口。キリカの喉がコクリコクリと鳴っていた。
大成功
🔵🔵🔵
エドガー・ブライトマン
出てきて大丈夫だよ。おいで、オスカー
マントを少し広げ、隠していたツバメを外へ
フフ、キミが焼き鳥になってなくて良かったよ
多少怪我はしたけれど、これくらいなら大丈夫だろう
ちょっと燃えた衣装の方が気になるよ
後で修繕してもらわなくっちゃ
ヤッホー、ハーバニー君。今暇?釣りをしようよ
水面を見てごらん。大きな魚の影がある
あれを見ていたらね。魚を食べたい気分になってきたんだ…
勿論、釣れたらキミも一緒に食べよう
釣りをしながらお喋りをしよう
そういえばキミと話したことってあんまりないかもね
旅へ送り出してくれるハーバニー君のこと、
私はいつも信頼しているんだ
これからもよろしく、頼れる案内人君
……あっ今キミの竿が動いた!
そよぐ春風に酒精の気配はなく、薫る甘きは桃の香。
「かくして脅威は過ぎ去った、なんてね」
小春日和に柔らかと輝く湖の傍、釣り糸を垂らして佇む彼はエドガー・ブライトマン(“運命“・f21503)。
多少の怪我もしたけれど、大切な一張羅が燃えてしまったけれど、それでも、得ることの出来たかけがえのなきに笑み浮かべて。
「もう出てきて大丈夫だよ。おいで、オスカー」
ボロリ解れたマントの下、そこに避難させていたツバメの彼は果たして無事だろうか。
――勿論、無事だ。
そんな言葉をオスカーが返した訳ではないけれど、それでも、エドガーへ応えるように飛び出た影の速度はまさしく飛燕。そして、飛べなかった時間を取り戻すかのように、晴天の空へと吸い込まれ、空に大きな円を描く。
「フフ、キミが焼き鳥になってなくて良かったよ」
空に描かれる軌跡が、その先にある陽光が、少しばかり眩しくて、エドガーは目を細めるのである。
「――おや、もう満足したのかい?」
怪我はともかくとして、燃えた衣装をどう修繕してもらおうか。
一向に沈まぬ浮きを眺めながら、エドガーが思案巡らせるは彼にとっての大切な。しかし、その思考が纏まるよりも早く、ふとその肩へと掛かった燕一羽分程度の重さ。
ひとしきりと飛んで満足したのだろうと視線を移してみれば、そこには予想通りのオスカーの姿。
「いや、違うか。教えてくれたんだね」
肩にとまるだけでなく、トントンと跳びはねる様子はまるで何かに気付けと肩叩くかのよう。
その意図を汲み、エドガーがその周囲を見渡してみれば、桃の花の向こうにどこか見覚えのある兎耳。
どうやら、空高くと飛んでいる最中、それに気付いて教えてくれようとしたのであろう。
「ありがとう、オスカー。なら、折角だし声を掛けてみようか」
よく見知った気もするけれど、改めてと声を掛けるならどうしようか。
エドガーが竿を置いて立ち上がれば、オスカーもまたまだ飛び足らぬとばかりに飛び去っていく。
誰も居なくなった湖の畔で、浮きが大きく沈んでいた。
「ヤッホー、ハーバニー君。今暇?」
「あらぁ~、太公望さんから先に声を掛けられてしまいましたよぅ」
「ハハ、私の釣り針は魚用だからね。人を釣るつもりなら、きちんと声を掛けないと」
「まぁまぁ。それならぁ、私はきっちりとその釣り針に引っ掛かってしまったようですねぇ」
エドガーが声を掛けた人物こそはハーバニー。桃源郷のあちらこちらを散策していたのだろう。その髪に桃の花を幾つかと搦めて。
「どうだい? 釣り上げられたついでに、キミも釣りなんて」
「道具とか持ってませんけれどもぉ」
「大丈夫大丈夫。あっちの方に用意してるから……」
「あっち。というとぉ、あのしなってる竿ですぅ?」
「そうそう。あれともう一本……って、掛かってる!」
浮き沈みの竿の先、慌てて戻れども僅かに遅い。餌は見事に掠め取られ、逃げた魚は大きいのが常である。
「あんな感じでね。大きな魚の影があったからさ、魚を食べたい気分にもなってたんだ」
「あ~」
「今のは惜しかったけれどね。うん」
「じゃあ、折角のお誘いですしぃ、お隣に失礼させてもらいましょ~」
「ありがとう。今度こそ釣れたら、キミも是非一緒に食べよう」
「うふふ~、そうですねぇ。一人でなくぅ、二人ならもっと釣れる可能性もあがりますからねぇ」
「目指せ、大漁という訳だよ」
「湖の魚を釣り尽くしますよぅ!」
失敗も一つの話の種であり、関係の潤滑剤。
くすりくすりと笑い合いながら、改めてと湖に二本の釣り糸が垂れた。
「――そう言えば、キミと話したことってあんまりないかもね」
「そうですねぇ。基本的にはぁ、送り出させてもらった後に皆さんとご一緒する機会というのは少ないですからねぇ」
「なら、今回は貴重な機会と言う訳だ」
「貴重……かはさておきぃ、あんまりない機会かもですねぇ」
浮きは再びの沈黙を保ち、代わりに雑談の花が雄弁を語る。
互いの生い立ちだなんて深い話ではない。ただ、これまでの旅路であったり、そこで見聞きした話、他愛のないを延々と。
「そうそう。それでハーバニー君に伝えておきたいことがあってね」
「おや、改まってなんでしょ~?」
「旅へ送り出してくれるキミのこと、私はいつも信頼しているんだ。これからもよろしく、頼れる案内人君」
飾りのない率直な言葉。それを受けたハーバニーは目をぱちくりと瞬かせて。
「……ふふっ、少しでも貴方の旅路の役と立っているなら、嬉しいことです」
少しだけ、地金がチラリと。
そこで雑談の花は散り、僅かな沈黙が二人の間を――。
「……あっ、今、キミの竿が動いた!」
「え、え、ホントですかぁ!? って、重っ、引っ張り込まれますよぅ!?」
「竿を立てて! 糸を巻くんだ!」
「や、やってみますよぅ!」
――流れることはなし。
突如のアタリに雑談の花が可愛らしく見える程の騒々しさ。きゃあきゃあわあわあと賑やかに。
そして、ばしゃん。と、大きな大きな水飛沫があがって、水飛沫に負けぬ程の歓声が春の空の下に響くのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ライカ・ネーベルラーベ
うーん、ちょっと休憩してくのもいいかなと思って残ったけど
お酒は、うん、あんまし心惹かれないんだよね
まぁ、それなら花でも見ながら昼寝しよっと
木の上に登って枝で寝てれば邪魔もされないでしょ
「視界一面桃色だ。何だっけ、桃源郷?その名前つけた人もこんな景色見て思いついたのかな」
知らないけど
程々に体力回復したら、乾いた喉をそこらの果物で潤しつつ
軽く相棒のDonnerの様子見ておこう
「さっきも扱いが荒かったからね。帰ったらフルメンテしないとダメか」
まぁ、それを言ったらわたしの体もだけど
ここは仙人の――生者の為の土地だ
長居して、自分が生きてると錯覚しないうちに退散しよう
積み重ねてきた年月は、さて、幾つほどであろうか。
ライカ・ネーベルラーベ(りゅうせいのねがい・f27508)は、その身を預けてもなおと揺るがぬ太い枝の感触に思考を飛ばす。
「寝床には丁度いいね。寝相が悪くなければだけれど」
春の暖かさか。はたまた、この地の気候か。それに温められた枝は仄かな温もりを宿し、ぽかりぽかりとライカを背中からも温める。
激しい戦闘の後だ。午睡に身を任せるのも一興――。
「お酒は心惹かれないし、昼寝でもね」
――という訳でもなく。消去法からの時間潰しの一環として。
ちらちら、ちかちか。
アルコールを摂取している訳でもないのに不安定な視界はいつも通り。でも、少しだけ違うところもあった。
「……視界一面桃色だ」
揺れる視界に桃の花。
大樹のただ中に身を任せているのだ。それが視界を埋め尽くすことは当然と言えば当然だろう。だけれど、ただ無機質に揺れる視界よりも桃の花が春風に揺らめく視界の方が、その隙間から漏れ出る陽光の瞬きの方が、まだ幾分かは気分もマシになろうというもの。
「なんだっけ、桃源郷? その名前つけた人もこんな景色でも見て思いついたのかな」
残された二割の生命が感傷を引き起こしているのだろうか。夢見心地の光景に、思わずとライカの口からぽつりと。
そして、ライカはハッとする。
よもや、己が揺れる景色に想いを馳せるなど、と。
だから――。
「知らないけど」
思考を切り捨てるかのように、己の台詞をその言葉で切って捨てる。
――嗚呼、やはりここも危険だ。思わず勘違いをしそうになるではないか。
ガバリと身を起こし、桃花の世界から逃げるように大地へ。
桃源郷の空気が癒した身体は皮肉にも十全にライカの意思へ従って、悪夢から醒めるように大地/現実へと還るのだ。
視界の桃花は数を減らし、大樹の傍に止めた愛機が目に留まった。
「……さっきも扱いが荒かったからね。帰ったらフルメンテしないとダメか」
愛機のボディに触れた指先から伝わる凹凸の大小。傷だらけのボディ。外側でそうなのだ。なら、中身はもっと消耗していることだろう。
でも、それはきっと愛機だけなく――。
「わたしの体もかな」
酒精の香りには対策も立てられたけれど、桃源郷の――生者の為の土地が元来持つ空気もまた自らの毒にもなり得ようとは。
じわりじわりと身に沁み込むような心地よさ。
それは残った二割を賦活するかのようで、ライカという存在のアイデンティティを侵食するかのようで。
「駄目だね。これ以上勘違いする前に退散しよう」
愛機を含めたメンテナンスをするにしても、まずはこの地を後にしてからだ。
足を振り上げ、愛機へと跨る体躯。
ガオンとエンジンを高鳴らせ、探すは一刻も早くと元の世界へと戻る為の鍵。
桃源郷の空気を振り払うように、ライカの身が愛機と共に加速していく。
大成功
🔵🔵🔵
雨宮・いつき
これでようやく一件落着…ですね
念のため、本当に元通りになっているか様子を見てきましょう
…なんて、集落へ足を運んでみれば
あんなことがあったというのに、すっかり宴の賑わいですね
逞しいというか、なんというか
思わず苦笑が漏れちゃいますけど…ええ、嫌いじゃありませんよ、こういう雰囲気
…お酒は飲めませんけど、それ以外の飲み物でなら
僕も少しだけ、お付き合いしちゃいましょう
春を感じさせる穏やかな陽気を感じていると、本当にひと段落したんだなと実感できますね
それに、周りで浮かれる人々…なんだかこちらもそわそわしてきちゃいます
よーし、せっかくですから僕も宴に華を添えちゃいましょう
月の蝶達と一緒に一曲、ご披露致します
さらりと肌を撫でる風の柔らかさ。そこには絡みつくような酒精の香りは宿らず、景色歪める酩酊への誘いもない。
「これでようやく一件落着……ですね」
まさしく、雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)が肌で感じた事件の決着。
しかし、事件が決着したとしても、それだけで万事良い訳ではない。
「本当に元通りになっているか、様子を見て来ましょう」
この桃源郷には桃源郷のあるべき姿がある。それは空気だけなく、自然だけでなく、そこに住まうヒトビトの存在もまた含まれる。
だから、いつきはゆるりとした歩調で、しかし、一歩ずつを確かと刻んで湖へと来た道を戻るのである。
春の風は暖かく、それに踊る桃の花々の囁きは耳に心地よい。
平穏そのものの空気に思わずと欠伸もしそうになるけれど、今はそれを噛み殺す。気の緩みを許すには、まだ少しばかり早いから。
「……なんて心配もしてたのですけれどね」
顔に描かれる苦笑の弧。浮かぶ感情は呆れも半分、安堵も半分を表す。
それもその筈、いつきがわざわざと足を運んだ集落の光景は――花見に一杯、宴会の真っ只中。
悪いお酒にあれだけ酔い潰されていたというのに、そんなことも忘れたと言わんばかりの様子にはそういった感情も浮かぼうというもの。
だが、それでも安堵を半分は感じる辺り、いつきの生来からの人の良さが滲んでいた。
それに、だ。
「……ええ、嫌いじゃありませんよ、こういう雰囲気」
窮地を乗り越え、なおと笑い合うヒトビトの強さ。そして、それを護れたのだという感慨がそこにはあった。
浮かべていた苦笑を微笑みへと移り変わらせて、いつきは変わらぬゆるりとした歩のままに。
「お酒は飲めませんけれど、僕も少しだけお付き合いしちゃいましょう」
戦士には休息も必要だ。
ここまで気を張り続けてきたのだ。なら、ほんの少し、ここで緊張の糸を緩めたとして、誰が責められようか。
過去のいつきであれば、ともすればそこで自らそれを許すとまではいかなかったのかもしれない。しかし、数々の出会いとそれによって結んだ縁の導いた成長が、いつき自身が自らのそれを許すという、今を紡いだことは間違いないだろう。
さくりと桃の花の絨毯を踏みしめて、ゆるりとした歩が飛び込む先は宴会の輪の中。
「お、あんちゃんも参加したいのかい?」
「手が空いてんならこっちに座んな。折角のいい花見日和なんだ、楽しんできなよ!」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
出来上がった者達の手招きがあちらこちら。
それに微笑み浮かべて相槌打って、手渡された桃酒――は断って、桃の果汁をこくりこくり。
甘さが疲れを程よくと溶かしていく。
「……本当に一段落したんですね」
ぽかぽかとした暖かさ。ヒトビトの賑わい。桃の花の咲き盛り。
平穏としか語れぬひと時を、いつきは自らの身でようやくと実感できたのである。
「踊れ、踊れー!」
「仕方がねえな。俺が一肌脱いでやるよ」
「ばっか、お前の汚ねぇ肌なんざ誰が見るか! 酒でも飲んでろ!」
「酔っ払いはお前だっつーの! そっちの意味な訳があるか!」
やんや、やんや。
浮かれ騒いで楽しんで、罵詈雑言を浴びせ合いながらも誰もが笑顔を浮かべている。
――嗚呼、そんな光景を見ているとこちらも。
「よーし、折角ですから僕も一つばかり」
「あんちゃん踊れんのかい? こいつはいいや。おーい! そこの馬鹿共の代打が出るぞー!」
高揚のままに立ち上がれば、集まる視線の熱、熱、熱。
酔いに期待に好奇心。
様々な感情がいつきを視る。
「これより捧げまするは慈しみの調べ。月読の夢見鳥よ、果てぬ希望を与え給え」
相対するは流し目の、妖艶にしてあどけなく、視線絡ませたものの心を撃ち抜く誘惑のそれ。
ひらりはらりと桃の花。混じりて飛ぶは月花の蝶。
雅やかなる踊りに喝采、手拍子は本来であれば似合わぬであろうけれど、今ばかりはそれ以外に合うを考えられぬ。
気付けば、てんでばらばらの手拍子も一つ揃えの見事な拍子。いつまでも、いつまでもと乞うようにして響き続け、舞の終わりには惜しみのない拍手へと変わる。
それはカーテンコールへと贈られる拍手のようでもあり、確かにこの異変が解決したのだとより強くいつきへと感じさせてくれるものでもあった。
大成功
🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【宿神】アドリブ歓迎
清史郎を誘い初の桃源郷へ
お前との約束がこんな早く実現出来るたァな
既に楽しい
清史郎はこの地へ降り立ったコトは?
互いに初めて同士か(微笑
春麗か、気持ちイイなァ(腕伸ばして風景を鏡(め)に焼き付け
釣り道具を持ち湖へ
酒や桃を清史郎へ渡し
桃はお前が食ってくれ
俺は酒で乾杯っと
桃はどうだ?
桃の形の肉まんも美味ェ!ほら(半分こし残りを彼へ
ゆったり釣りを楽しむ
何が釣れるかお任せ
お前は最近印象に残った出来事などあるか?
うお、そいつァ凄ェ
服の話か!(がた
語るってなると半日じゃァ足りねェな(生地やデザインの拘りは異常
清史郎には是非将校服を着てもらいてェ
似合う似合う
ン、また行こうや
次の旅路に心躍らせ
筧・清史郎
【宿神】
俺もクロウと出掛けられて嬉しい
この世界は初めてだ
未知の地や物事は心躍る
楽しい連れがいると余計にな
俺は桜に縁深いが、麗らかな春に桃の花も乙だな
ふふ、釣りも楽しみだ
まずは酒だな(乾杯、とにこにこ
おお、これは甘そうな桃だ、有難う
…ん、とても美味だ(嬉し気にほわり
ではクロウには甘くない桃を、と
桃形手作り肉まんを
魚といえば、先日訪れた寿司屋で皿が回っていて驚いたな
パフェなどの甘味まで回っていた(瞳きらきら語る超甘党
クロウはいつも洒落ているが、服に拘りなどやはりあるのか?
俺は和装以外疎くてな
将校服か、似合うと良いが
ふふ、ではクロウに見立てて貰おうか
…ん?クロウ、引いているぞ
またこうやって出掛けよう
出迎えの色は春模様。
花輪の首飾りはないけれど、代わりに桃の花吹雪がひらりはらりと歓迎に踊る。
「お前との約束がこんな早く実現出来るたァな」
「俺もクロウと出かけられて嬉しい」
「それは嬉しい言葉じゃねェか。ゴマすりってモンじゃなければな」
「ふふ、俺が磨るのは墨ぐらいなものだ」
「磨られるンじゃなくってか」
「話が変わっているな」
「楽しくてついな」
「分からないでもない」
「そいつァどうもだ」
ともすれば挑発的なやりとりであるが、杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)と筧・清史郎(ヤドリガミの剣豪・f00502)の顔に浮かぶ感情は同じ。
――心躍る。
会話を転がすだけでもそう感じるは、相手が肩並べるに認めるからこそか。
「なァ、清史郎はこの地へ降り立ったコトは?」
「いや、この世界は初めてだ」
「互いに初めて同士か」
「そのようだ。だが、だからこそ未知の地や物事は心躍る」
「どんな甘味があるだろうかってか?」
「勿論、それもある。だが、それ以上に――」
「それ以上に?」
「――楽しい連れがいると余計にな」
「――」
「照れたか?」
「……ハ、言ってろ」
「ああ、言っておこう」
春の日差しの下、抑えきれずにどちらともなくくつりくつりと。
「……俺は桜に縁深いが、麗らかな春に桃の花も乙だな」
「春麗らか、気持ちイイなァ」
この春の日を、共にと眺める桃源郷の風景を、それぞれの目と記憶に忘れじと焼き付ける。
このひと時、輝く黄金と赤瞳は和やかな輝きを湛えていた。
釣り糸が凪いだ湖面に垂れ落ちて、水面に浮きがぷかり、ぷかり。
桃源郷の入り口より場所を移し、今は湖の畔。二人連れ立っての釣りの時。
「まずは一献」
「んじゃァ、桃の方はお前が食ってくれ」
「おお、これは甘そうな桃だ。有難う」
「応。それじゃあ、酒と桃とで乾杯っと」
「乾杯……ん、とても美味だ」
「はぁ~、美味ェ!」
――なんて、釣りより先に酒盛りの時。
魚釣りは腰を据えて長い目でするもの。なら、その長い目の間に酒の一杯二杯、甘味の一つや二つ、楽しんだところで問題はない。ああ、ないのだ。
その証拠に釣り糸の先はピクリともせずに獲物のかからぬを示し続けている。
「桃の方の味はどうだ?」
「悪い訳がないな」
「重畳、重畳」
「貰ってばかりも悪いな。では、クロウには甘くない桃を進呈しようか」
「お? ……へぇ、桃の形の肉まんたァ、器用だなァ」
「冷めないうちにな」
「ありがとうよ」
飲み、食いとくれば、語りもせねば勿体もない。
酒の力で舌は滑らかとなり、腹に入れた食物がゆるりと気を解す。
そうすれば、どちらにともなく、そう言えば。と、切り出しの声。
相も変わらず釣り糸に反応はない。
「お前は最近印象に残った出来事とかあるか?」
「そうだな……先日、とある世界で寿司屋に行ってみたんだが」
「ほう」
「なんと、皿が回っていたんだ」
「皿が?」
「ああ。寿司を乗せた皿が、こう、ぐるぐると客席の周りをな」
「なんだそりゃ」
「不思議な光景だったな。だが、それ以上に驚いたのはだ」
「なんだなんだ。勿体ぶるなよ」
「……パフェなどの甘味まで回っていたんだ」
「うお、そいつァ凄ェ」
「だろう? 寿司と甘味の取り合わせとは、俺もまだまだ知らないことが多い」
「魚にパフェか……合うもんなのかねェ?」
思い出して目を輝かせる清史郎。彼にとってそこもある種の桃源郷であったことだろう。
そして、クロウはクロウで、また聞きの情報に、なるほどなァ。と。想像の翼を広げるのである。
「取り合わせと言えば」
「ん?」
「クロウはいつも洒落ているが、服に拘りなどやはりあるのか?」
――質問は何気なく。しかして、反応は劇的。
「服の話か!」
「おぉ?」
「いい目の付け所をしてるぜ。拘りってんなら当然の如くあるもンでなァ。俺の場合は生地一つをしても選び抜いて……あ~」
「どうした?」
「いや、悪ィな。置いてけぼりにするとこだった」
「構わないさ。俺とて、甘いモノの話を聞いてもらったんだ。それぐらいはな」
「だが、語るってなると半日じゃァ足りねェぜ」
「そうか。なら、俺は和装以外に疎くてな。他に何か似合いそうな服を見立てて貰えると嬉しいな」
「ああ。そういうのなら任せとけ」
清史郎の頭の天辺から足のつま先まで、クロウの視線が行ったり来たり。
ふむ。と考え、うむ。と頷き、んん? と、思考思案を繰り返す。
「そうだなァ。清史郎には是非将校服を着てもらいてェ」
「将校服か、似合うと良いが」
「似合う似合う。俺が言うんだ、間違いねェ」
「ふふ、では探す時にはクロウにお願いさせて貰おうか」
「構わねェぜ」
酒盛りに咲いた雑談の花が散り始めた頃、その影に隠れ、忘れ去られていた釣り糸の先がようやくとピクリ、ピクリ。
「……ん? クロウ、引いているぞ」
「あ、マジか」
しかし、気付いた時には、僅かばかりに遅かった。
釣り糸あげてみれば、そこには針先だけの餌はなし。
「残念だったようだな」
「ま、仕方がねェな」
悔しさは思ったよりも少ない。
釣りも楽しみの一つではあったけれど、それ以上にクロウと清史郎、その二人で過ごした時間こそが大切であったから。
「見てろ。次の時にこそは釣ってやるからよ」
「ああ、またこうやって出掛けよう」
酒も尽き、食い物も尽き、お開きの時間。
そこで交わす約束に指切りは要らぬ。旅路へ心躍らせる気持ちを共有出来ているのであれば、また機会は巡ってこようから。
桃の花と水面が、遠のきゆく二人の背中を静かに見送っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フローラ・ソイレント
※アドリブ歓迎
WIZ判定
・行動
ふだん見たことのない景色を堪能してから
村人の様子を見るために宴を回る
せっかくなので本来の桃源郷の酒というものを味合わせてもらう
・セリフ
不毛の大地を見慣れたこの身からすると
此処の景色はいささかならず目に眩しいですね……
あの辺獄(アポカリプスヘル)にもこのような
花々が咲き誇る未来は来るのでしょうか
さて、せっかくですから
寝込んでいた人々の様子を確認しがてら
私も宴に混ぜていただきましょうか
味覚の鈍ったこの体でも桃源郷の仙桃酒ぐらいは
味わっておきたいものですからね
目に映る景色に見慣れた砂埃はない。
あるのはフローラ・ソイレント(デッドマンズナース・f24473)が、猟兵達が取り戻した桃の花に彩られた景色。
「不毛の大地を見慣れたこの身からすると、此処の景色はいささかならず目に眩しいですね」
だけれど、不快という訳ではない。
照る太陽は灼熱のそれとは程遠く、まるで薄布のように柔らかくと降り注ぐ。そして、それに照らされた桃の花達は、それぞれの生命を謳歌して輝き放つかのように身を綻ばせるのだ。
それはアポカリプスヘルでは見ることの出来ない景色。少なくとも、フローラの知るあの世界では。
「あの辺獄にも、このような花々が咲き誇る未来は来るのでしょうか」
アポカリプスヘルにも拠点の外に大規模な農場を築く者も居るとは聞くが、その成果がどこまで結実しているやら。
それでも、もしも目の前の光景を己の世界でも見ることが出来たのならば、それはきっと――。
「――いえ、取らぬ狸の皮算用。今はその光景を夢想するのではなく、そこへと至る為に動かねばですね」
そのためにこそ、フローラは死の縁より舞い戻ってきたのだ。師より授かった磁極流活殺拳を身に着けて。
だが、今はひとまずとして。
「寝込んでいた人々の様子も見ておきましょうか」
この世界が自身の世界ではなかったとしても、アフターケアをしっかりと。
折角とオブリビオンというこの世界の腫瘍を排除したというのに、住まうヒトビトが無事でなくては意味もない。
不快ではない眩しさに目を細めながら、フローラは一路、集落への道を行くのである。
「……まあ、無事であることは良い事です」
辿り着いた集落。そこではフローラの心配するような事態はなかった。だけれど、広がる光景は少しばかりの予想外。
桃の花の下、広がる茣蓙には酒、食い物。飲んで喰らうは住人達。
悪い酔いもすっかりと醒めたのかと思いきや、よもや元気溌剌と今度は自ら宴会を開いていようとは、だ。
そのバイタリティには呆れて良いやら、感心するやら。しかし、フローラの肩から程よくと力が抜けたことは確か。
なら、いっそ――。
「私も混ぜてもらいましょうか」
住人達が暢気にそんな風であるのなら、フローラが彼ら彼女らを心配して心労を重ねるのも勿体ないというものであろう。
「なんだなんだ、青白い顔して! こっちで飲んで、血色の一つも良くしな!」
「あ、いえ、私のこれは元から……」
「これ、他所の人にまで絡むんじゃないよ!」
「いってぇよ、かあちゃん!」
「大丈夫ですか?」
「ああ、ごめんね、急に絡んでさ。このお馬鹿はなんでもいいから自分ももっと飲む理由を探してるだけなんだよ」
「いいじゃねえかよ。この姉ちゃんが……」
「でも、どうだい? こっちに来て、ちょっと摘まんでかないかい?」
「良いのですか?」
「構いやしないよ。賑やかなら、皆で楽しまないとだもの」
「では、折角のお招き。ありがたく」
「たんと食ってくといいよ」
「……俺ァ、無視かよぅ」
「いえ、こちらの席に入れて貰えたのも、貴方が声を掛けてくれたからです。ありがとうございます」
「! ま、まぁな!」
「気を使わせてんじゃないよ」
どうやら、どうやって輪に加わろうかと考えるまでもなかったようだ。
桃の花吹雪の最中、立ち尽くすフローラを目に止めて、向こう側からお誘いの声。
それに有難くと便乗すれば、たちまちフローラの居場所も茣蓙の上。
目の前には山の幸が並び、湖の魚らしきが並び、桃と酒が並ぶ。
「これが桃源郷の……」
「そうさ。んじゃ、まずは一献」
「ありがたく」
手渡された猪口にトクリと酒が注がれて、小さな水面が日差しをきらりと輝く。
くいと傾け、喉の奥へと滑り落とせば、広がる味の甘露甘露。
「濃いですね」
「とっておきだぜ?」
「なるほど。味覚の鈍ったこの体でも感じられる程とは」
腹の奥が燃えるように熱い。
それはまるでもう一つの心臓がそこに生まれたかのように、ドクリドクリと熱を全身へと運ぶ。
これが酔いなのか。いいや、違う。これはまるで――。
「なるほど、生き返った気分です」
まるで、一度死する前へと戻ったかのような。
「うん、ちょっとだけど顔に赤みが出たね」
「すごいものですね、このお酒は。百薬の長ということも理解できます」
「こっちの駄目亭主みたいに飲み過ぎると毒だけれどね」
「ひでぇや」
くすり、くすり。
心擽られるような心のさざめき。
カラカラと笑う住人達の様子に、フローラの口角も我知らずと僅かにその角度をあげていた。
だけれど、今ばかりは心鎮める必要もない。
コクリともう一献、フローラは注がれた酒を喉の奥に流し込む。
猟兵達の取り戻した桃源郷の空気は、どこまでも穏やかであった。
大成功
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