猟書家の侵略~契情跋扈之秋
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きのたけ藩の藩主、日下部少輔次郎野比就(くさかべしょうのじろうのびなり)は、優れた政策できのこ国とたけのこ国の二国を治める名君であったが、とても美しい側室を迎えてから、その眼鏡が曇ってきた。
「これより我が藩は、幕府転覆を唱えるくるせいだあ殿に味方するで御座んス!」
「ええーっ!!」
本丸御殿、表の間に集められた重臣達がどよめく。
徳川家に恭順の意を示して数年、江戸より遠ざけられた外様大名とはいえ、叛意などあろう筈も無かったが、こんなとんでもない発言を聞くのは既に二度目だ。
一度目は――そう、あの時も藩主の傍らにピッタリとくっついた側室が「我が藩に相応しい城を建てましょう」と言って、本当に建ててしまった時。
民に重い税を課して建造した豪華絢爛な城で、二度目の重大宣言を聞いた重臣達は、次々と驚きの声を上げるが、側室はニッコリと頬笑んで、
「御実城さまは新しくすぎのこ城を建てられたものの、まだまだこの城では足りませぬ。名君には名君に相応しい、天下の中心に据わって頂きませんと。それこそ江戸の……」
言って、甘い桜色の風を吹かせる。
その芳しい匂いを嗅いだ重臣達は、藩主のようにデレッとなって、
「うんうん、そうだそうだ! 小少将様の仰る通りだ!」
「城内の部下に命令し、次いで城下町の民にもお触れを出そう!」
これより我が藩は、くるせいだあ様に従って江戸幕府に対抗する、と――!!
次々に幕府打倒を是とする声が上がると、襖の奥で花魁姿の猫又達が密かに動き出し、城内の武士達の魅了に掛かるのだった。
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「猟書家の幹部の一人である『小少将』の動きが見えたの」
クルセイダーの目論む「江戸幕府の転覆」を実現すべく、また一人、不穏な動きを見せる者が現れた、と――眉根を寄せるはニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)。
予知を告げた花屋は、更に言を足して、
「小少将は優れた人心掌握術……洗脳ユーベルコードで藩主や重臣達を次々に取り込み、いずれは藩を丸ごと乗っ取ってしまおうと企んでいるわ」
更に困った事に、小少将は妖怪の猫又を手下として組み込み、かの「超・魔軍転生」によって「日野富子」の霊魂を憑装させると、富子が持つカネの力で――具体的には豪奢な花魁姿に飾り立てる事で、猫又達を超強化すると同時、すぎのこ城内の武士達を虜にしてしまった。
「すぎのこ城に侵入する猟兵は敵と見なされて、城内に入ると武士達が襲い掛かってくるから、皆は彼等を何とか説得して、猫又花魁だけをやっつけて欲しいの」
彼等の説得に成功すると、門番なら門を開けてくれたり、衛兵はら天守への道を教えてくれたりするので、戦いが有利になる事は間違いない。
「そして、何とか天守に辿り着けたなら、執政を行う本丸御殿の表に首魁の小少将が……藩主や重臣らと一緒に居る筈だから、ここで彼女の正体を暴いてやっつけて頂戴!」
小少将を倒せば藩主達も正気に返るので、藩の混乱は収められる。
騒乱を手早く収めたなら、徳川家に倒幕云々を咎められる事も無いだろうと説明を終えたニコリネは、転送の為のグリモアを喚び、
「サムライエンパイアにテレポートします。敵の大将は超美人で、部下の猫又花魁たちも魅力に溢れているけど、デレッと誘惑されないように頑張ってね!」
と、ウインクして送り出すのだった。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ユーカリ)こあらと申します。
こちらは、猟書家の幹部の一人『小少将』の侵攻を食い止める「傾城妖姫譚」シナリオです。
●戦場の情報
サムライエンパイアの九州地方のどこかにある「きのたけ藩」。
きのこ国とたけのこ国を領国とした外様大名・日下部家を藩主に平和な日々が続いていましたが、小少将が強引に建造したスギノコ城(平山城)に藩庁が移って以来、よくない噂が流れっ放しです。
戦場は第一章で城内に侵入し、第二章で本丸御殿の「表」に移動します。
●シナリオ情報(二章構成です)
第一章『猫又花魁』(集団戦)
年経た猫が変化した淫蕩な性格の妖怪。己の欲望に忠実で、より強力な存在に利用されてしまうことも多く、今回は「お城で楽して暮らせそう」な小少将の手下となり、美しい花魁姿で城内の者を誘惑しています。
その内には「日野富子」の霊魂を憑装し、金の力で大幅にパワーアップしています。
第二章『小少将』(ボス戦)
わたくしの思うがままにならぬ男などおりませぬ――。
洗脳能力で権力者を誑かし、その地で悪政を敷こうとする猟書家で、今回は日下部家が統治するきのたけ藩を丸ごと乗っ取ってしまおうと企んでいるようです。
※小少将は憑装していません。
●プレイングボーナス『藩の武士達を説得する』
このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
きのたけ藩の武士達や、城主を説得し、猟兵の味方につけることができれば、有利に戦えるでしょう。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。
また、このシナリオに導入の文章はございません。オープニング公開後、すぐにプレイングを募集致します。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 集団戦
『猫又花魁』
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POW : ウチらとイイコトするニャ♪
対象の攻撃を軽減する【お色気モード】に変身しつつ、【欲望のままに相手を襲うこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : さあ、いい夢見せてあげるニャ♪
【キセル】から【催眠効果を持つ桃色の煙】を放ち、【昏睡させて意識を失わせること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 秘儀、「ねこまたぎ」だニャ♪
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【頭に乗るか跨ぐかすることで、自分の下僕】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
イラスト:煤すずみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グァンデ・アォ(サポート)
《アドリブ、連携、苦戦描写、ユーベルコード詠唱変更、その他何でも歓迎です》
「おや? あれは何だろう……ねーねー、そこのオネーさん、これは何なの?」
通常はだいたいイラストの通りのキャラクターです。
好奇心の向くまま、あちこちウロチョロ飛び回っては、なんやかんやで状況を動かします。
念動力でその場にあるものをなんやかんやしたり、ウロチョロ飛び回ってなんやかんやしたり、危険な行為に勇気を出してなんやかんやします。
「サポートAI、『大人の』グァンデです。よろしくお願いします」
マシンヘルムに変形して誰かに装着してもらう(攻性ユニット化)場合に限り、口調と人格が大人のそれになり、装着者の行動をアシストします。
夜城・さくら(サポート)
キャバリアでの戦闘をメインに。
『オーバーフレーム換装』では、装甲を犠牲に攻撃力か射程を上げて仲間を援護するように攻撃します。【スナイパー】技能使用。
手数が必要な時は『無限射撃地獄』です。敵がビット攻撃してきた際には相殺するように展開することも。
キャバリア以外では、『ギタギタ血まみれの外科手術』で仲間の治癒と戦闘力増強に励みます。
「ちょっと痛いですよ? でも大丈夫。すぐに元気すぎるくらいになりますからね」
笑顔でノコギリを振るいます。大丈夫怖くない怖くない。
日留部・由穏(サポート)
「日留部由穏と申します。
これでも太陽神の生まれです。
いかなる世界であれ、オブリビオンの影に未来を曇らされる人々がいるのならば私が手を出さない道理はありませんね。
人の未来を照らし続けることが私の存在意義なのですから。」
好き:芸術全般、各世界の人間の生活の観察と学習
使命:人々の明るい未来を守る
【発言】隠居の太陽神、敬語、優しい、いつも笑顔、怒りや恨みや後悔の感情が乏しく時に人を理解しきれないこともある、神なので負傷を恐れない
【戦闘パターン】視力+暗視+マヒ攻撃+光線銃で銃撃戦、アート+式神使い+アイテム折り紙で撹乱、催眠術も併用し折り紙式神を猟兵やターゲットに思わせ誘導など
その他何でもさせてどうぞ
御倉・ウカノ(サポート)
基本的にはUC『狐薊』を使用します。
大太刀を振り回して豪快に吹っ飛ばす戦い方を好みますが、共闘する時は連携を強く意識して戦います。
戦いを始める際は囮もかねて見得をきってから切り込むことがあります。
遠距離で戦うのは苦手なので、とにかく距離を詰めることを意識します。多少無茶をしてでも相手を自分の得意な距離で戦わせようします。
スピネル・クローバルド(サポート)
『お姉ちゃんに任せておいてね♪』
妖狐のクレリック×アーチャーの女の子です。
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、兄弟姉妹には「優しい(私、~君、ね、よ、なの、なの?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格は温厚で人に対して友好的な態度をとります。
滅多に怒る事はなく、穏やかです。
怖そうな敵にも、勇気を持って果敢に挑む一面もあります。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
きのたけ藩の新しい城「すぎのこ城」は築城されたばかりにて情報が無い。
いくら驍勇無双の猟兵でも、闇雲に侵入しては危険だろうと、晴朗なる蒼穹に飛翔したグァンデ・アォ(敖 広徳・f10200)は、上空から城内の偵察に掛かった。
「……やっぱり。空戰の経験がないからか空を仰ぐ事がないよね」
ドローンフォームを追う武士は無し、彼は自在に飛び回れよう。
次いで中の人の要請によって起動した超テクノロジーが、眼下に敷く「すぎのこ城」がUDCアースに現存する彦根城に似ている事を発見する。
「あれが本丸、二の丸、三の丸、と……」
標高50mの連郭式平山城をぐるり巡ったグァンデは、東西に一つずつ、そして南に一つある門橋から侵入出来ようと、先ずは本丸に最も近い黒門橋に接近した。
「閂型なら……――動かせる!」
双翼より『輝き煌めくフォース』を放出しながら、アンテナ部よりみゅみゅみゅ……と出力するは【サイコキネシス】――不可視のサイキックエナジーが触れるは門の閂。
強力な念波は極めて靜かに、こっそり閂を押し出した。
次いでグァンデが南の表門橋に向かう中、遠い遠い西の叢林に緑色の量産型キャバリアを隠した夜城・さくら(不思議ちゃんの量産型キャバリア・f30006)は、RSロングレンジキャノンライフルの照準器を『鐘の丸』に向けていた。
銃爪を引く爲か。
否、その瞬間を視る爲だ。
コックピットで佳聲は靜かに懸念を零そう。
「この鐘を鳴らされては、城中に私達の侵入が知られてしまう――」
湖水の如く澄める翠瞳がモニタに映される鐘を烱々と瞶めると同時、【無限射程地獄】(オールレンジヘル)――増幅された脳波は迷彩型戰闘ドローン『BS-Fダズルビット』を制禦しており、限界距離6,400m内に標的を捉えたさくらは、鐘の根本めがけてレーザーを撃ッた!
「垂直に落下させれば、音はそこまで響かない筈――!」
音が伝わる速さは、媒質の彈性率を密度で除算したものの平方根だったか。
そして今の場合、鐘は中の空気を震わせなければ、城中に警戒を報せる事は出来ない。
而して精確精緻な射角で射られた一条の光芒は慥かに釣鐘を眞下に落とし、急を伝える手段を失わせたのだった。
「――まだ誰も動いてはいない樣です」
上空で穩やかなテノール・バリトンを零すは日留部・由穏(暁天緋転・f16866)。
グァンデが城内の地形を探るなら、己は人員配置を確認しようと爪先を蹴った麗人は、【飛輪】(ヒノデ)――赫緋の麗瞳に玲瓏の彩を帯びて煌々と、全身に目映い光を纏って飛翔した。
「見つかっても大丈夫。威力を調節した上で撃たせて貰いましょう」
まさか空から偵察されているとは思わぬ武士達は、彼の影を捉える事も無いが、万一の時あれば、手に握る『記憶消去銃』で有耶無耶にしてしまおう。
蓋し城内の人々に注がれる緋瞳は、慈悲と優しさに満ちており、
「これも人々の明るい未来を守る爲です」
いかなる世界であれ、オブリビオンの影に未来を曇らされる人々がいるのならば、手を出さない道理は無い――。
由穏はブーツの爪先を囲む光の輪に風を裂きながら、最大で400km/hに至る飛行速度を自在に操り、門番や衛士の数と配置、そして彼等を巧みに誘惑する『猫又花魁』の動きを具に調べると、間もなく突入する仲間の猟兵に情報として託すのだった。
斯くして仲間より齎される情報を略地図に描き起こした御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)は、筆を置くなり佳脣を開く。
「天守がある本丸表口を固める櫓門……先ず此處を押えておこうか」
繊指が示す櫓門には、城内に合圖を送る太鼓が置かれており、鐘と同様に機能を奪っておきたいところ。
「あたし達の侵入が早々に天守に伝えられては、首魁の小少将に逃走される可能性も無くは無い……」
云うや、ウカノは直ぐ動いた。
美し戰巫女は踵を蹴るや巫女装束を輕やかに翻して、改変御倉流巫女神楽【狐静】――すぎのこ城に巡らされた内堀をひとっ飛び、武士の瞳に映るより速疾く梅林を飛び渡って太鼓門櫓に至る。
「……へぇ、高欄付きの廊下とは稀有(めずら)しい」
櫓につき眺望も良く、こんな時でもなければ徳利を傾けようかと皮肉を零しつつ、監視の目を潜って内部へ――間もなく金の麗瞳が大太鼓を見つけた。
若しか繊手に携える大太刀『伊吹』なら、刃長四尺の刃に全ての破壊が叶ったろうが、今は靜かに皮を裂くのみ。
鋭利な鋩がスッと突き立てられると、太鼓は聲を失った。
而してこれだけの移動を果したウカノに追手が集まったろうか。
答えは――「否」。
何故なら彼女には頼もしい味方がついていて、
「後は私にお任せください」
爽涼の木立に澄み渡る、金絲雀の如きソプラノ。
聲の主はスピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)。
ふわり金糸の髪を揺らしウカノに追從した少女は、『精霊樹の一枝』を一振りすると、太鼓門の衛士が気付くより先に催眠術を掛け、その場に眠らせる。
争いを好まぬ彼女は武士とて殺めまいが、彼等の平和を脅かす者には毅然と立ち向かおう。
「本丸から小少将が手下を派遣しているのでしたね」
烱々と光を湛えた緋の瞳が、門櫓にもやって来た妖怪『猫又花魁』を捉えるや、繊手は素早く木弓『フォレストスナイパー』を構えて、
「――気付く間もなく、仕留めてあげますよ!」
暗中必中、【ステルス・ハンティング】――!
全き須臾、周囲と同系色の見え難い姿で放たれた矢は、聢と死の中心点に鋭鏃を沈め、靜默の裡に太鼓櫓門を制圧した。
「さぁ、次の櫓門へ向かいましょう」
城内に危急を喊ぶものは無し。
支援に立った猟兵達は、間もなく突入する本隊を迎えるのだった。
成功
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白斑・物九郎
【エル(f04770)と】
周到な城攻めってモンを見せてやりまさァ
●作戦
・武士達をこっちの手勢で逆に篭絡しよう
・エルが諜報を一通り済ませて来るまで城周辺で待機
・エルが戻り次第【白斑王国】発動、キャストの化猫を召喚
・町娘風とか団子屋の娘系とかカワイイネコチャン(まんま)とかを送り込み、武士達と自然に接点を持たせ、花魁属性にドハマリしてる所を新たな沼にハメる
・どの武士がどんな属性で刺せるかは、エルからの情報と己の【野生の勘】とを合わせて適宜判断しキャスティングする
・オトせた武士は逐次こっちへ連れて来させて「あの側室がワルなんやぞ」とエルと一緒に説明、協力を取り付ける
●VS花魁
乗り込みぶん殴る(暴力)
エル・クーゴー
【物九郎(f04631)と】
躯体番号L-95
当機は諜報活動に高い適性を発揮します(今回はくノ一ルック)
●作戦
・【マネギ・カーペンターズ】発動、城周辺に待機/潜伏用のミニ拠点を【迷彩】マシで建造
・物九郎をミニ拠点に押し込んだら諜報開始
・これまた【迷彩】マシの己とマネギ達とで忍び、城の生活サイクルや敵性の布陣等を調査(偵察+撮影+情報収集)
・諜報中はニンジャ跳躍で静かに素早く移動(空中機動)
・物九郎へ情報を持ち帰り、篭絡作戦スタート
・オトせた武士を適宜誘い「早いトコ目ェ覚まして側室シメればワンチャン幕府に怒られへんで」と一緒に説明、協力を取り付ける
●VS花魁
手裏剣型の【誘導弾】をブッぱなしまくる
先發隊より、すぎのこ城周辺の地形と構造、及び人員配置の情報を得る。
その全てを我が超高度電算機に入力したエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は、本丸より南、公儀御用米の米蔵周辺に生えた梅林が丁度見頃を迎えたという情報を元に、此處に小規模な拠点を構築した。
「僚機『マネギ』は高度な迷彩を有し、拠点建造に高い適性を発揮します」
「まるで花見じゃニャーですかよ」
本丸を窺える好条件の場所だが、聊か実益を兼ね過ぎてはいないか、と――。
陸自並みに梅の枝を背負ったポチャ猫達に胡亂な目を注ぎつつ、彼等がせっせと組み上げる梅鉢紋柄のパップテント前に立つは白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)。
間もなくその躯は、何處ぞの浮かれた花見勢かという軍幕にグイグイ押し込まれ、
「侍の國に伝わる御伽噺に曰く_“わたくしが来るまでここを開けてはなりません”」
「おい」
問答無用でジッパーを閉められる。ジャッ。
而して物九郎を隠したエルは、レンジャー隊長姿からクルッと一回り、くノ一ルックに變身すると、【マネギ・カーペンターズ】に施した光学迷彩も忍猫仕様に、ピョンと内堀をニンジャ跳躍ッ! 直ぐに城壁に飛び渡り、素早く移動を始めた。
「当機と僚機はこれより諜報活動に移行します」
城壁をしゅたたっと疾って敵の布陣を調べる。
次いで当番表をぺらぺらと捲って城内の生活サイクルを把握する。
移動中は物見や衛士の会話を拾い、まだ新しい城の警備に慣れていないという情報をも得たエルら忍者隊は、物九郎がお昼寝に没入するより早く戻ってきた。
「……なんか摑めましたかよ」
「城内では、色に現を抜かしつつも、許可なき築城で幕府を怖れる者を散見しました」
エルに渡された報告書(巻物)を読み、「ほーん」と顎を擦る物九郎。
彼は小少将の篭絡術が下層部には未だ完全に浸透しきっていない所に攻略を見出すと、己が周囲にまつろう色彩と輪郭をモザイク状に狂わせ、新たな「影」を創り上げた。
「目には目を、齒には齒を。篭絡には篭絡を」
タリオ(同害報復)は原初の法だと、王は幾許か嗤笑ったろうか。
モザイクの空間【白斑王国】(モノクロキングダム)から喚ばれるは、化猫の“契情”――町娘やら看板娘やらを引き連れて大手門の橋を渡った物九郎は、すぎのこ城の男衆に「刺さる」娘御を次々に宛がった。
「扨て、大手門の門番はと……」
「トビミケ型マネギの情報を参照_出会い頭の恋に憧れているという調査報告です」
言えば、物九郎の腕に腕を絡めていた団子屋の娘が、エルに引っぺがされて派兵され、
「ヤダ~遅刻ちこく~っ! ご注文のお団子を早く届けないと……きゃぁっ!」
「うむっ!? 何でこんな所に美人の娘がイヤ轉んだなら助けよう直ぐに!!」
門番、猫又花魁をほっぽり出して団子屋の娘を助ける。
そして戀に落ちる。
「心拍の上昇を確認しました。此方に引き込み説得を開始します」
「ちゃっちゃと行きますでよ。鐘の丸の衛士は……俺めの勘では清純派と見ましたわ」
エルが団子屋の娘ごと門番の回収に掛かる間、物九郎は悪魔の領域まで達した野生の勘を研ぎ澄まし、猫又花魁にどハマりしたばかりの衛士に初心な町娘を仕向ける。
「あのう、私なんか先輩を好きになったら、先輩だって困りますよね……?」
「ぬぬっ、なんと楚々として控え目な! 断じて困らないとも来なさい!!」
衛士、どストライクの娘を前に新たな沼を知る。
そして戀に落ちる。
而して適材適所に可愛いネコチャンを送り込んだ後は、武士らを引き込んで吹聽し、
「此度の謀叛を唆したのは側室らしいッスよ」
「可及的速やかに側室を廃せば、徳川よりお咎め無しとの沙汰が予測されます」
早いトコ悪玉をシメればワンチャン幕府に怒られないかも……と、言えば忠臣は奮って濁世に立ち向かおう。
「……ふむぅ、どうも小少将を迎えて以来、御主君が可怪しくなられたと思ったが」
「成る程、そのような理由があるなら、我々が本丸までの道を案内しよう」
カワイイネコチャンも居る手前、立派になろうとする武士たち。
然し女の勝負に負けた猫又花魁は許すまいか、妖猫たちがお色気モード全開で物九郎に襲い掛かるが、果して彼は陥落(おと)せようか。
『ウチらとイイコトするニャーッ!!』
「――生憎、そっちにゃ困ってニャーもんで」
否。
如何な別嬪猫でも王は飼い馴らせまい。
物九郎は爪を立てた花魁が迫るなり鏨ッと踏み込んで拳閃ッ! 豪奢な俎板帯めがけて左拳をブチ込むや、日野富子のカネの力を――詰まり着物を爆ぜさせた!!
然るとどうだろう。
『……なぁお』
己が霊力もトばされた猫又は人型を解き、借りて来た猫のように大人しくなる。
『こっ……こうなったら……他の男を「ねこまたぎ」に行くニャーッ!!』
一方、己が下僕を増やさんと別なる武士の篭絡に掛かる花魁には、エルがシュシュッと放った手裏剣が背中を追い、命中と同時に爆炎に包む。
「躯体番号L-95_当機はくノ一ムーヴにも極めて高い適性を発揮します」
『ミギャー!』
轟と吹く爆風にマフラーを揺らしつつポーズ!
諜報から妖怪の撃滅まで終始完璧に扱した女忍者は、「どや」とばかり物九郎の視界に入るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
くさかべ……のび……?
あれ、もしかしていつだかのお侍さんや僧兵さんや忍者さんってもしかして……
とりあえずわたしは真っ直ぐ正面から城内へ
襲ってくるお侍さん達には【満面笑顔の向日葵少女】発動
誘惑力や色香では劣るでしょうけれど、それなら愛らしさや可憐さ、清らかさで勝負ですっ
恐らくわたしくらいの年頃の兄妹やお子様が居る方も多いでしょうし、家族を引き合いに出して説得してみましょう
(そんな色香に溺れた姿を、お子様や弟妹達に見せられますか?等)
猫又花魁は精霊銃とお手製爆弾で対処
爆弾といっても詰まってるのは火薬ではなく、猟団長さんも愛用のマタタビです
これでべろんべろんになってるうちに冷凍弾でカチコチにします!
すぎのこ城に入るに先立ち、事前に城下町で聞き込みを行った荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は、側室を迎えてから骨抜きになったと囁かれる藩主、日下部少輔次郎野比就の名前に、ぱちぱちと音が出るほど睫を瞬(しばた)いた。
「くさかべ……のび……? あれ、いつぞやにお会いしたお侍さんや僧兵さんや忍者さんって、もしかしてだけど……もしかしてだけど……」
「おや、そちらの方々はここいらを源流とするかもしれないねぇ」
「げんりゅう」
遂に日下部一族の起源を辿ってしまったと驚きつつ、城下町を抜けて城へ、外堀と内堀に架かる橋をテクテク渡り、真正面から堂々と表門へ向かうひかる。
見れば門櫓には物見の武士と、彼にピッタリくっついた猫又花魁が「あれは敵ニャ」と此方を指差しており、妖し美貌に惑わされた矢が、間もなく少女に狙いを定める。
然しひかるは鋭鏃を向けられても怯まず、寧ろ純粋無垢な笑顔を差し出した。
「きのたけ藩の侍は揺ぎ無い意志を持っていると、城下の人々が言っていました」
「むむっ!! なんと澄み切った瞳……!!」
にぱっ♥️と零れる満面の笑みが胸にドスドス刺さる。
ひかると同じくらいの子を持つ男が、何となく後ろめたくなるのも無理は無かろう、
「貴方はお家の代表として御奉公を預り、奥様やご兄弟、お子様を支える大黒柱です」
「んんんそうだがんんん君の言う通りだんんんん!!」
「そんな色香に溺れた姿を、お子様に見せられますか?」
「いやいやいや決してこれは別にこの事は妻や子供には内密にいやいやいやいや!!」
慥かに幼いひかるでは、花魁の色香には勝てない。
然し可愛らしさや可憐さでは負ける筈が無かろう。
特に淸らかなる金絲雀の聲や、曇り無き瞳の美しさに汚れた心を暴かれた武士は、更に家族を引き合いに出され、猫又の誘惑に戸惑いを見せる。
武士が僅かに猫又から離れた瞬間、素早く精霊銃『Nine Number』を構えたひかるは、何かを抱えて飛び込む風の精霊を射出ッ! 精確な射撃で猫又だけを撃った!!
「さぁ、存分に焚きしめてください!」
『にゃふっ!!』
「猟団長さんも愛用のマタタビです!」
『!! ……にゃにゃっ…………ふにゃ~ん♪』
如何な猫をもベロンベロンに酩酊させる、特級品のマタタビ。
其は猫キマイラも猫又も例外でなく、とろんと恍惚に堕ちた花魁を確認したひかるは、風の精霊がマタタビの香氣を漂流わせる最中に二發目を撃ち、氷の精霊を乗せた冷凍彈でカチンコチンにした!
「うわきはだめです」
「はいっ!! すぐに本丸に御案内させて頂きます!!!」
武士は高速で跪座すると、ひかるを御殿まで丁寧にエスコートするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
のび……何度か耳にする名前ですが今回も一大事ですね
クルセイダーの見方をする藩主とは
……いえ、考えても仕方がありません
まずは妖怪達や武士達を対処しなくては
敵は武士と接触していない状態であれば抜刀術『神風』
倫太郎の術で動きが止まっている敵にも同様
武士との戦闘は避けるものの襲い掛かってくるのなら
刀は抜かず鞘で武器受けにて防御、または武器落としで得物を弾く
刀を抜くまでもありません
城が建造されて以来、悪い話が流れ始めているのは御存知ですか
藩主は誑かされ、民の富を吸い上げて城を建て
重臣も何処の者かも分からぬ者に色仕掛けで骨抜きに
堕落した国の口から幕府打倒とは是如何に
それでも貴方達は武士なのですか
篝・倫太郎
【華禱】
……日下部何某な時点で藩主もノビさんだよなぁ、多分
にしても、遭遇した武士達を説得、ね……
悩んでも仕方ない、いつも通りに往こうぜ
遭遇した武士の説得は可能な限り、武器を向けずに対応
催眠術と浄化を乗せた言葉を用いて説得
殿様が色香に惑わされてるなら
あんたらがちゃんと諫めなきゃだめだろ
名君だと誇れてたんだろう?
それを地に落としていいのかよ、良い訳ねぇだろ!
殿様の為にも、藩の為にも、力を貸してくれ
猫又に出会ったら拘束術使用
射程内の総ての対象に鎖による先制攻撃と同時に拘束
夜彦の行動に俺がタイミングを合わせる
衝撃波と吹き飛ばしを乗せたなぎ払いで範囲攻撃
刃先返して2回攻撃
敵の攻撃はオーラ防御で防いで凌ぐ
築城も藩庁の移設も性急に行われた爲、まだこの土地に慣れぬ、と――。
城下町で暮らす人々に話を聽きつつ、佐和口より城へ向かった篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、突貫にしては立派な天守を仰いだ。
本丸の御殿には、第十二代当主の日下部少輔次郎野比就が居るらしいが――、
「日下部何某な時点で、藩主も……ノビさんだよなぁ」
「のび……何度か耳にする名前ですが、今回は國の一大事ですね」
苦を強いられる外様大名とはいえ、クルセイダーに与するなど妄言も甚だしい。
たしかに常人がユーベルコードに抗う術は無し、嘗ては豊臣方に属した西軍だったか、或いは小少将に付け入られるお家事情があったかと同情も過るが――、
「……いえ、考えても仕方がありません」
「ああ、悩んでたって進まない。いつも通りに往こうぜ」
今は藩の者を説得し、翻意を促すのが先だろう。
此度も骨身を惜しまず働いて遣ろうと、こつり拳を突き合わせた二人は、多聞櫓に至るなり複数の武士に弓を向けられた。
「待て待てェい! 貴様等こそ“いえいがあ”なる悪者と聞いたぞ!」
『間違いないデスにゃ♪ 悪い奴はとっちめて欲しいマスにゃ♪』
見れば、矢を番える男達にピッタリと寄り添う妖怪――猫又。
花魁姿の美女らが「恐いニャ♪」と擦り寄れば、誘惑の香氣に唆された武士らが一斉に矢を射放つが、須臾の裡に愛刀『夜禱』を抜いた夜彦が、その曇り無き刃を振り払えば、鋭鏃は間もなく音を断って、二人の足元に可爛ッと轉がった。
武士らが目を剝く間に、夜彦は靜かに囁(つつや)いて、
「倫太郎、妖異だけを捕えられますか」
「――知ってるだろ」
無論、と流瞥(ながしめ)を注いだのも一瞬、不可視の縛鎖が投げられる。
災いを縛る【拘束術】は、武士に密着した猫又花魁だけを結わえると、その魅惑の仕草と甘い馨香を留めた。
『あーん! 痛いにゃ、嫌にゃ!! 助けて欲しいにゃ~!』
「!! なんと可哀想な! 今すぐ助けてあげるからね!!」
猫又花魁らがクネクネ身を捻って悶え、未だ色香に囚われた武士が助けようとする中、倫太郎と夜彦は凛乎嚴然と、鋭利いテノール・バリトンに諌言を乗せた。
刃を振るうまでも無かろう。夜彦は愛刀を納めながら佳脣を開いて、
「――すぎのこ城が建造されて以来、悪い話が流れ始めているのは御存知ですか」
「ぬっ……それは……城下町で噂を聞き拾ったか」
眉を吊り上げた武士の反應を見ながら、痛い所を敢えて衝いていく。
夜彦は彼等も自覚しているであろう藩の不穏を顕らかにして、
「藩主は誑かされ、民の富を吸い上げて城を建て、重臣達も何處の者かも分からぬ女将に色仕掛けで骨抜きに……斯くも堕落した藩から倒幕が口をつくとは是如何に」
「くっ……くく……! 圖星すぎて返す口が無い……!!」
口が出ねば、矢で射殺して仕舞おうか。
否、否、其は侍の矜持が許さぬ。
水の如く透徹(すみわた)る佳聲に漸う心が浄われ、己に根差す信念と忠心が弦打ちを拒絶むのだ。
「それでも貴方達は武士なのですか」
「~~~~ッッ!!」
目下、矢を番えた腕が恥に震える。
而して倫太郎は其の動揺を――誘惑術の揺らぎを見逃さない。
彼は今しがた拘束した“契情”が、藩主の傍にもあるのだと教え諭し、
「殿様が色香に惑わされてるなら、あんたらがちゃんと諫めなきゃだめだろ」
「むむむ……御主君の叛意は……真のものでないと……!!」
側室こそクルセイダー側より差向けられた陥穽(ワナ)――。
埒外の誘惑術に嵌められたのだと真実を伝える事で、義憤と奮起を促す。
「名君だと誇れてたんだろう? それを地に落としていいのかよ、良い訳ねぇだろ!」
「全き、全き然り……! きのたけ藩の誉れが色に喰われてなるものか!!」
決然と聲を上げた時だった。
武士らの發起を認めた夜彦は、抜刀術【神風】――納刀状態から瞬息で刃鳴一閃ッ! 淸冽なる風刃を疾らせるや、倫太郎の鎖に縛められる花魁の俎板帯を斬ると、豪奢な着物に宿れる日野富子のカネの力を解き放ち、更に幾星霜を経た猫又の霊力も断ッた!
『…………ふみゃーん』
「むむっ……美人の正体は猫であったか……!」
妖氣を失い人型を解いた猫又をむんずと捕まえた二人は、未だ誘惑術に囚われる本丸を仰いで、
「御実城がおわす御殿の表まで、我々を御案内頂けますか」
「――頼む。殿様の爲にも、藩の爲にも、力を貸してくれ」
言えば、武士らは元の雄々しい表情で「是」を頷く。
斯くして多聞櫓の通行を許された夜彦と倫太郎は、武士らの案内で北の黒門橋を渡り、峻嶮な石段を駆け上がって本丸へと辿り着くのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタ(f22361)さんと。
すぎのこ藩と親交がある藩の使いということで説得。
藩主に届け物があるといい入城したいと思います。
『国綱』で【地擦り一閃『伏雷』】を使用。
リミッターの解除だけしてから多重詠唱を開始します。
…速度だけの限定限界突破…とかできます?
速度維持のために継戦能力を使用して戦います。
うーん。この猫さん達を斬るのは少々気が引けますね。
刀は返しておいて猫さんに峰撃ちをして城内を進みます。
技(伏雷)の速度で…その…誘惑は多少回避できると。
もし操られてしまってもロベルタさんが居るので安心です。
彼女なら何とかしてくれると……思います。多分…恐らく。
ロベルタさんと連携と協力は必須です。
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
説得とかは墨ねーに任せよーと思っているじぇ♪
でも説得が難しくて失敗する時もあるよねぃ?
面倒だから【雷神の大槌】で門をぶち抜いちゃえ♥
あ。失敗したときだけ門の破壊行為をするよ。
パフォーマンスで身体機能をあげてから封印を解くよ。
それから多重詠唱と限界突破で技の能力と速度を上昇。
さらに蹴りを放つ直後に重量攻撃と鎧砕きを加えるよ。
速度の維持に継戦能力で墨ねーと一気に駆けるよ。
おー!なんだか艶っぽい猫さんが多いねぃ。
武士達の攻撃は腕とか足払いでなんとかするじぇ。
脚で刀は受けられないから腕や手首を狙うじょ。
(武器受け、武器落とし、見切り使用)
あ。猫さん達は思いっきり蹴り飛ばすよ!
緩やかに孤を描く大手門橋、美し木造の橋桁にかろりと跫が響く。
「――ふむ? あの旗印は……隣國きりかぶ藩のものだな」
小少将より慰労に遣わされた美女の虜となっていた門番は、女の腰に手を回したまま、きのたけ藩と親交を結ぶきりかぶ藩の使者を迎えた。
「お届け物を持って参りました」
凛乎と澄み渡る佳聲の主は美童か。
帯刀せず、一匹の馬に荷車を曳かせてやってきた使者と馬借を労った門番は、直ぐにも開門の號令を發さんとして、傍らの美女に止められた。
美女は――花魁に扮した猫又は科を作って指差し、
『この二人は猟兵デスにゃ! ウチらを捕まえに来たにゃー!』
「ええっ!? 然し旗印は慥かにきりかぶ藩の紋所で、使者を追い返すのは……」
『嫌にゃ! やっつけてくれたら、ウチがイイコトしてあげるニャン♪』
「むむっ! それなら使者だけど今すぐやっつけて進ぜよう!!」
目下、開門を叫ぶ筈の聲は攻撃を指示し、門兵らに矢を番えさせる。
三度笠の下より烱眼を巡らせば、其々の門兵に花魁姿の猫又がピッタリくっついているのが判然ろう。
ここに使者と馬借は小さく囁(つつや)いて、
「猫さん達だけって狙える?」
「……いけると……思います」
一瞥も交さず、片や疾風の如く、片や流水の如く、動く。
蒼天に三度笠を翻した使者は、いや、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は、届け物に扮した荷より『真柄斬兼元』を取り出すと、踵を蹴って地擦り一閃【伏雷】(フスイカヅチ)――ッ! 紫電を帯びて疾走る!!
『にゃにゃっ!?』
喫驚く間も無ければ、武士を盾とする猶予も無し。
妖怪『猫又花魁』は眼路いっぱいに迫る二尺三寸三分の大刀……の峰打ちを喰らうと、グルグルと目を回してその場に倒れた。
『――……にゃふん』
「ああっ!! 花魁ちゃんが……!!」
美女の気絶にショックを受ける武士も、誘惑の香氣が収まれば正気に戻ろう。
彼等は栗毛の馬を撫でていた馬借が、此方も同じく三度笠を放り投げて銀髪を暴く――ロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)の影を捉えて間もなく、閃爍たる雷光が迸るのを唖然と見るしかない。
「おー! なんだか艶っぽい猫さんが多いねぃ」
「うーん……私は……この猫さん達を……斬るのは……気が、引けて……」
「う! 僕は思いっきり蹴り飛ばすじょー!」
――だって、猫は踏んだら飛ぶって聽いた気する(歌で)!!
莞爾と頬笑みつつ秘呪を詠唱していたロベルタは、超光速で猫又の懐へと踏み込むと、【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)――雷槌と閃く蹴撃を叩き込んだッ!!
『に゛ゃふっ!!!』
限界など無いと放たれた熾烈なキックは、猫耳も猫ッ毛も総毛立つ程の雷撃を注ぐと、日野富子の金の力に満たされた豪奢な着物を灼き、更には幾星霜を経て得た猫又としての妖力をも吹き飛ばして、猫又花魁を唯の猫又に變えた。
『…………なぁお』
「あ。ほんとの猫さんになっちゃった」
「人型を……保つほどの……力も……失って……しまったんですね……」
これなら台所の魚を竊むくらいの悪さしか出来まい。
墨とロベルタは橋桁でゴロゴロする猫又らを視界の端に送りつつ、稲妻の翔ける如く、大手門を抜けて鐘の丸へ、本丸を目指して更に天秤櫓へと向かった。
『あっ猟兵ニャ! 侵入者ニャ!』
『ウチらの下僕なら、あいつらをやっつけるニャー!』
既に誘惑の色香によって骨抜きにされた武士達が次々と襲い掛かるが、彼等の刀も槍も二人のスピードには追いつけまい。
墨は射られる矢を刀に振り払い、ロベルタは迫り来る武士を足払いして先へと進むが、折に馨れる甘美な匂い――花魁が漂流わせる桃色の煙には危うさを感じよう。
惑わされてはいけない、疾走を緩めてはいけないと、墨は鼻を袖に隠しつつ坂を駆け、
「もし……操られて、しまっても……ロベルタさんが……居るので……安心です……」
「うー? 僕?」
「ロベルタさんなら……切り抜けて、くれると……思います」
「う! 操られちゃう墨ねーも見てみたいなー♪」
「……多分…………恐らく……」
たぶん、きっと、大丈夫……と思うが、十分に警戒しておこうそうしよう。
墨は続々と襲い掛かる猫又の爪を躱し、ロベルタは誘惑の馨が届くより速疾く走ると、天秤櫓を抜けて石段を駆け上がり、太鼓門櫓を抜けた奥にある本丸を目指す。
「!! なんと……矢が掠りもせぬとは……!!」
正気を取り戻した武士曰く、瞬きの裡に走り抜けるその姿は、宛如(まるで)天翔ける稲妻の樣であったという――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
杜鬼・クロウ
【義煉】アドリブ◎
猫又共が武士達を骨抜きにしたンだと
鉄の心を持つ源次にも魅了が利くンか興味が…何でもねェ
健全なら流されてもおかしくなくね?
日野富子、今は霊魂だけで姿は違えど懐かしいだろ
城内へ正面から殴り込みてェ所だが、まず武士の説得からするぞ
国の血を腐らせた大悪災
金に眩んだ哀れな女の末路は見た
武士達へ喝入れる
本当は誰の下につき、誰を護るべきか思い出せ
武士を味方につけ城への侵入を容易に
敵と遭遇後は戦う
生憎、俺は未だ失恋引き摺り真っ最中なモンで、
他の女に目ェいく余裕もねェンだわ悪ィな
隣の格好イイ親友なんかオススメだ
敵の胸はガン見するが襲撃は回避
敵の目を狙い二連撃
軽口叩いて黒焔を出力させ容赦なく一閃
叢雲・源次
【義煉】
俺とて健全な男子ではあるが、この状況において流されるという事は恥と考える。故に【覚悟】を以て魅了に抗うとしよう。
懐かしいと言える程に時が経ったか。早いものだが…こうして残滓として障害になるのは厄介この上無い
俺は言葉を多く持たん。武士達にかける言葉はそう持ち合わせてはいない。故にこう告げよう
「武士ならば意地を見せてみろ。」
色香に惑わされて何がもののふか
悪いが、障害となるならば老若男女美醜問わず斬って捨てる。
命を賭しているのはお互い様なのでな…。
クロウ、視線が一点を凝視しすぎだ。吸い込まれる気持ちは分からんでもないが、今は堪えろ(一意専心、敵は斬るのみ。電荷を帯びた必殺の抜刀が振るわれる)
すぎのこ城の城門は先發隊が閂を開けてくれている。
ならば城内の衛士達を預ろうと、爽籟の風の吹き渡るが如く表門を抜けた義煉の士は、石畳の坂道に差し掛かるなり、その烱々たる碧光の睛に警邏の長槍兵を捉えた。
叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は眼前の異樣を直截と口にしよう。
「――女連れか」
「綺麗な着物(おべべ)を着た猫又共が、此處の男達を骨抜きにしたンだと」
これに泰然と言を添えるは杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
彼は武士にピッタリと寄り添う妖氣を見詰めた儘の源次を瞥見して、
「俺は連中の魅了の術が、鐵の心にも利くンか興味がある訳だが――……何でもねェ」
言って間もなく、晃然(ギロリ)と寄越される緋瞳に科白を被せる。
茶利は寄せと訴える鋭眼を、ヒラリ手を翻して逃れたクロウは、次いで麗瞳を前に――妖怪『猫又花魁』に唆される儘に踏み出る男達の槍鋩を躱して、
「まぁ、健全な男子なら流されてもおかしくなくね?」
「俺とて健全な男子ではあるが、この状況において流されるという事は恥と考える」
受けて返す源次もまた、複数の槍撃を最低限の身の科(こなし)で回避しつつ、健全な男子を陥落させた根源――花魁姿の猫又に烱眼を結んだ。
『当たってないニャ! ようく狙って格好良いトコロを見せて欲しいニャン!』
「うぉぉおおお花魁チャンに絶対いいところ見せるぅぉぉおおお!」
『わるい猟兵をやっつけたら、ウチがイイコトしてアゲルにゃん♪』
「あぁぁあああ絶対やっつける直ぐやっつけるいいことしたい!!」
「…………これが日野富子のカネの力か」
強靭な精神を有す侍を根底から揺るがすは、嘗ての強敵の霊魂。
我が肌膚にも絡み付く甘い馨香に大戰の記憶を甦らせた源次は、対神打刀『灰ノ災厄』の刀背を返し、向かい来る武士らの篭手を峰打ちする。
一方、クロウは漆黒の大魔劔の柄で武士の手首を打って長槍を落とさせ、
「日野富子、今は霊魂だけで姿は違えど懐かしいだろ」
「懐かしいと言える程に時が経ったか。早いものだが……こうして残滓として障害になるのは厄介この上無い」
國の血を腐らせた『大悪災』。
金に眩んだ哀れな女の末路を見た時分も、この二人だったとは奇遇か奇縁か。
蓋しあの女は郷愁を感じる位が佳いのだと、科白も交さずに意を通じ合わせた男達は、武士が反撃の術を失った瞬間に説得に掛かった。
言葉は多からず、然し大いに含みを持たせて。
同じ香氣にあって其を撥ね退ける男の聲が、侍の矜持に迫ろう。
「士人(さむらい)だろ。本当は誰の下につき、誰を護るべきか思い出せ」
「苟も武士を名乗るならば、其の意地を見せてみろ」
色香に惑わされて何がもののふか――!
水鏡の如き瞳と、凄味ある聲に喝を入れられた武士は、恥じ入ったかガクリと跪座し、花魁姿の猫又が助け起こそうとしても終ぞ立ち上がらぬ。
これには猫又達が女のプライドを傷付けられたと腹を立て、
『にゃにゃっ、折角取り入った下僕が使いモノにならなくなったニャン!』
『責任取れニャ! 代わりにウチらとイイコトするニャン!!』
怒り心頭、お色気モード全開で飛び掛かるが、果して二人の健全男子は陥落するか。
否。
断じて否。
「生憎、俺は未だ失恋引き摺り真っ最中なモンで、他の女に目ェいく余裕もねェンだわ」
悪ィな、と断りつつ――豊満な胸が作る谷間はじっくりと深さを視て。
而して目尻に迫る鋭利い爪を間際で躱したクロウは、【蜜約の血桜】(クロース・トゥ・ユー)――己が紡ぐ黒焔に櫻の花嵐を混ぜると、花魁の豪奢な着物を斬り裂くと同時、幾星霜を経て得た猫又の妖力を吸い取ッた!
常夜櫻の残香を鼻梁に掠めた彼は、更に輕口を叩いて、
「隣の格好イイ親友なんかオススメだ」
「俺は薦めない。……悪いが、障害は老若男女美醜問わず斬って捨てる性質だ」
ああ、然うだったと瞳を細めた男の前で、源次の鞘が蒼雷を帯びる。
閃くは、【電磁抜刀】――電磁誘導により高速射出された刀身は、蒼白い霹靂を迸るや神速の居合斬り――ッ! 花魁の絢爛なる俎板帯を断ち切ッた!!
然れば如何だろう。
日野富子のカネの力と、幾星霜を経て得た妖力を断たれた猫又は、はらりと豪奢な着物を解くや「唯の猫又」となり、
『…………なぁお』
と、借りてきた猫の樣に大人しくなる。
猫又が香氣を失い、武士らが正気を取り戻す安穏の中、クロウは眉間を手で押えて、
「なァ、いま一瞬……」
「クロウ、先刻は視線が一点を凝視しすぎで、今度は夢現か」
「一瞬の裸が残像になって瞳に焼き付いてンだよ」
「気持ちは分からんでもないが、今は忘れろ」
と、ぴしゃり言つ源次に引っ張られながら、武士らが案内する本丸へ向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
【緋冬】
飽きる飽きないではなく、勝てると思ってるからやるんじゃないですか?
現実を教えて差し上げるのも我々の務めですよね。
オーライ、チューマ。全員やっちまいましょう。
男であればあの色香には抗えぬ…などと戯言を抜かします?
でしたら武士の皆様方はこちらで引き受けますね。
ようは金とは違う魅力で引きつければいいんでしょう?
気付けの光を差し上げます──【猩猩緋宴】。
あら、お侍様方いかがしまして?
城が燃えでもしましたか?
それとも己が身が焼け落ちでも?
あらあら、ひどい夢を見ていたようですね。
現実はこちらですので、どうぞ各々方御助力くださいな。
お体を清めるのは藩主を蝕む毒虫を退治してからでも遅くありませんよ?
ヴィクティム・ウィンターミュート
【緋冬】
よーやく山場が終わったと思ったら、こいつらは空気も読まずやる気を出しやがってよぉ……。
馬鹿の一つの覚えみてーに侵略侵略…飽きないのか?
ムカつくんで、全員処刑だ…いいよな、チューマ
おい馬鹿武士ども…それでも誇り高き戦士かよ
武士は食わねど高楊枝──だったか?清貧で強き戦士だと思ったんだが
どうやら思い違いだったらしい
とりあえず、猫又は殺しておこうぜ──『Obsession』
俺が前に出ようか 急所を狙って接近戦を仕掛けてやる
流れる血を武士にでもぶっかければ、100年の恋でも冷めるだろ
はえーとこ眼ェ覚まして手伝え…じゃないと、ここにいる令嬢が何もかも燃やして、オールリセットかけちまうぞ?
本丸を目指すにあたって“搦め手”を用いる者も居る。
水を巡らせた内堀を一躍(ひとっと)び、狭隘な山道を通って城の裏手へと回り込んだヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は、颯と駆ける己が跫に盛大な溜息を混ぜた。
「……よーやく山場が終わったと思ったら、こいつらときたら空気も読まずやる気を出しやがってよぉ……」
聽けばまた新顔が増えたとか。
遣り口を變えては来ているが、次々と顔を出すモグラ達を叩くにもハンマーはひとつ、そろそろ筋肉痛になっちまうと苦言が零れる。
「馬鹿の一つの覚えみてーに侵略侵略……飽きないのか?」
「飽きる飽きないではなく、勝てると思ってるからやるんじゃないですか?」
風に運ばれるテノールを拾うは、穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)。
モグラも顔を出す瞬間には成功を信じていたに違いなく、土の中では巧妙に動いていた自信があったのだろうと皮肉は忘れず。
背に返る科白に眉を上げたヴィクティムは、肩越しに聲色を落として、
「ムカつくんで、全員処刑だ……いいよな、チューマ」
「オーライ、チューマ。全員やっちまいましょう」
現実を教えて差し上げるのも我々の務めです、とは佳い言を添えて呉れる。
京都の花の御所で日野富子を排撃した時も組んだ二人なれば、以心傳心、此度も似合いの末路を呉れて遣ろうと、先ずは西の丸三重櫓を目指すのだった。
†
無論、すぎのこ城も西方からの敵襲に備えて多重櫓と、更に西に張り出した出曲輪との間に深い堀切も設けて万全を期しているが、此處を守る衛士らは既に猫又達によって篭絡されている。
櫓の高欄を見れば、弓を構える武士にピッタリと寄り添う花魁の姿が窺えよう。
『にゃにゃっ、あれはウチらがキライな猟兵ニャン! やっつけて欲しいにゃん♪』
「むむっ! 花魁ちゃんが嫌いって言うならやっつけようそうしよう!!」
契情が言う儘に弓を構え、繊指が示す儘に鏃を向ける衛士たち。
既に秘儀「ねこまたぎ」を喰らってしまったか、妖異の傀儡となってしまった武士達に大きく頭(かぶり)を振ったヴィクティムは、左腕よりワイヤーアンカーを射出するや、櫓に打ち付けて駆け上がった。
「おい馬鹿武士ども……それでも誇り高き戰士かよ」
「な、ッ――!!」
「武士は食わねど高楊枝──だったか? 品性は清貧で強き戰士だと思っていたんだが、どうやら俺の思い違いだったらしい」
須臾に迫った男に息を呑んだ武士らは、直後、その鼓膜に女の悲鳴を震わせる。
『あーれー!! にゃにゃにゃーんッ!!』
日野富子の金の力を秘めたる俎板帯を斬り裂くは、刀身を猫の爪の如く變形・延伸した『エクス・マキナ・ヴォイド』――Extend Code『Obsession』(オマエニオレハコエラレナイ)によって命中率を飛躍させた刃撃が、豪奢な着物をはらりと斬って落とすと同時、猫又の幾星霜を経て得た妖力をも霧散させた!!
然れば猫又花魁は人型を保てず「唯の猫又」となり、日向の欄干でゴロゴロとすれば、百年の戀とて冷めるというもの。
『…………にゃふん』
「嗚呼!! かわいい花魁ちゃんが唯の猫に……!!」
がっくり肩を落とす武士も、香氣が断たれれば漸う正気を戻そう。
ヴィクティムは弓の代わり猫を抱いた衛士に言を足して、
「はえーとこ眼ェ覚まして手伝え……じゃないと、ここにいる令嬢が何もかも燃やして、オールリセットかけちまうぞ?」
「? それは如何云う……――」
疑問符を浮かべた武士が、彼の親指が示す方向につと視線を注げば、三重櫓の真下――神楽耶を囲繞した長槍兵達が、軈て苦悶の聲を絞り出した。
「男であればあの色香には抗えぬ……などと戯言を抜かします?」
「仕方無いんだ! 綺麗な着物で肩をはだけていたら、男はもう流されるしかない!!」
「――成る程」
無数の槍鋩を向けられた神楽耶は一縷と怯まず、武士らの曇れる睛を見遣って幾許――繊指を『結ノ太刀』に掛けるや、その花顔雪膚を赫く緋く燿わせた。
「ならば、気付けの光を差し上げます」
要はカネとは違う魅力で引きつければ佳いのだと、抜刀して顕現る刀光は【猩猩緋宴】――眩い赫燿が目を掩う鱗の如きを灼き、更なる燦爛が目の奥を突き刺す!
反射的に目を閉じた武士らは、瞼の裏で凄まじい赫炎と破滅の幻影を見たろう。
「嗚呼、止め……止めろ……っ……!! まだ本丸には御主君が……!!」
「あら、お侍様方いかがしまして?」
槍を落とし、がくりと膝を付く武士らに金絲雀の聲が振り落つ。
その美しい囀りも魔笛と聽こえてしまうのは恐怖の所爲か。
「城が燃えでもしましたか? それとも己が身が焼け落ちでも?」
その何方もであるとは苦悶が示そう、絞られる悲鳴にも忠の心を聽き拾った神楽耶は、スッと納刀して幻惑を収めると、恐々と睫を揺らす男達に視界を差し出した。
漸う色彩と輪郭が正常に戻れば、彼等は柔らかな慰みに迎えられ、
「――あらあら、ひどい夢を見ていたようですね。現実はこちらですので、どうぞ各々方御助力くださいな」
地に蹲っていた身に差し伸べられる手の向こう、神楽耶の麗顔を仰ぐ。
見れば佳人の艶笑は美しくも、繊躯より迸る氣は刃の如く研ぎ澄まされており――、
「お体を清めるのは、藩主を蝕む毒虫を退治してからでも遅くありませんよ?」
毒虫。
その一言に気付きを得た武士達は、すっくと立ち上がるや二人を本丸へ案内した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
●POW
武士達の中に子や妻、恋人が作ったような手製の装飾品を身に着けた者を探す
お守りなどの装飾品あたりか
見つけたら声を掛けるよ
美しいものを美しいと愛でる行為は何ら責められるものではない
が、今の自分を大事な存在に胸を張って見せられるか
――冥府にもな、色に落ちた者達を苛む専用の地獄がある。過酷な場所だ
〈獄卒の金砕棒〉を手に[恐怖を与え]、目を醒まさせよう
それに連鎖して我に返る者がいる筈
彼らに猫又花魁が集まる場所を聞き出したい
その場所へ踏み込んだら問答無用で[先制攻撃]しUCを発動、纏めて[範囲攻撃で焼却]
倒し損ねた猫又花魁がお色気モードになっても[落ち着い]て真実を頭に浮かべ自我を保つ
俺は犬派だ
城の門番や衛士は、其々の家より日下部家の奉公を預った年長者か長子である。
得てして彼等は家族から渡されたお守りや、一見では判然らぬものの、許嫁との約束を證した組紐などをしている者が多い。
「……彼等の言を代わろう」
遠くに在り心配する者に代わり、もの云わぬ装飾品に代わり、武士らの道を正す――。
先發隊によって閂を開けられた表門を堂々と潜った鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は、甘く匂える馨香がより籠もれる所へ、險しい山道を登り詰めた先にある天秤櫓の高欄に、複数の美女を寄り添わせた物見部隊を捉えた。
『敵にゃっ! ウチらの嫌いな猟兵をやっつけてくれたらイイコトしてあげるニャン♪』
「ようし直ぐにやっつけよういいことしたいすぐしたいすごくしたい!!」
お色気モード全開の猫又花魁の言う儘に弓を構える男たち。
目下、相馬の鼻梁にも魅惑の馨が掠めるが、彼は天獄の白金炎から『獄卒の金砕棒』を顕現させるや、ブンと振り回して香氣を払った。
凄まじい風圧に黒髪を巻き上げた彼は、儼然と告げて、
「美しいものを美しいと愛でる行為は、何ら責められるものではない」
「おっおおぉぉお……君も理解るクチか」
「……が、今の自分を大事な存在に胸を張って見せられるか」
「えっ」
ズゥゥンンッと大地を揺るがす超重量と、凶悪な形状に蒼褪める。
月白と熾ゆる獄炎に目が醒めて来る。
善悪の疆界を知る相馬は、彼等の曇れる瞳が漸う戸惑いの色を差すのに畳み掛けて、
「――冥府にもな、色に落ちた者達を苛む専用の地獄がある。過酷な場所だ」
「……ッ、じごく……」
不意に御守や組紐に手を遣る。不覚えず花魁から距離を取る。
其が正気を取り戻した瞬間とは、誘惑術の途切れた感触を得た猫又自身が気付こう。
女のプライドを傷付けられた猫又達は、眼下の相馬へと一斉に飛び掛かり、
『下僕が使い物にならなくなったニャン! 責任取れニャン!!』
『ウチらとイイコトしつくして、デレデレになっちゃえニャン!』
極上の甘美が懸瀑と迫るが――いや、一角鬼は陥落(おち)ない。
相馬は心を平靜に、真実を頭に浮かべて自我を保つと、【獄卒裁定】――天獄の白炎、裁きの獄炎を迸發(ほとばし)る鬼トゲバットを妖異の胴に叩き付けたッ!!
『ふみゃん!!』
すると如何だろう。
日野富子のカネの力を秘めた俎板帯を中心に、パァンッと一瞬で着物を爆散させられた猫又は、更に幾星霜を経て得た妖力をも吹ッ飛ばされる――!!
而して人型も成せず人語も操れぬ「駆け出し妖怪」となった猫又は、柔かい首根っこをむんずと摑まれ、
「俺は犬派だ」
『……なぁご』
天秤櫓を通り抜ける相馬を止める事は、もう出来なかった。
大成功
🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
今度は守銭奴を引き戻したのか
愚行続きは呆れるを通り越し、嗤えもせんと解らん様だ
常人に異能への抵抗を望むのは酷と云うものではあるが……
微かに懐かしい感覚が過る。まさか再びこんな真似をする事に為ろうとはな
此の馬鹿者共が
為政者の本分とは何だ。要らぬ贅を尽くして国を傾ける事か
民無き国なぞ立ち行かぬ
守るべきが何か、其の胸に問い答えてみろ
……如何に着飾ろうが其の下卑た臭いは誤魔化せはせん
強化された処で本能任せの動きなぞ見切るに易い
視線に身ごなし脚捌き、気の流れの悉くが其の動きを此方に知らせよう
――遮斥隕征
囲い飛ばす衝撃波の誘導にて動きを崩し、開けた隙へと斬撃を叩き込む
容赦も慈悲も、お前達には必要あるまい
本丸へ近付く毎に、甘い馨香が強くなる――。
先發隊が閂木を開け、仲間の猟兵達が次々に門番や衛士らの正気を取り戻していく中、太鼓門から本丸へと至った鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、漸う異變に気付いた重臣達が抜刀して立ち塞がる脇に、ぴったりと寄り添う「契情」を捉えた。
『お城を騒がせたのはウチらが嫌いな猟兵ニャン♪ やっつけて欲しいニャン♪』
「うむり。花魁ちゃんがそう言うなら、問答無用で斬り捨てようそうしよう!!」
開けた肩より雪膚を見せて惑わすは、妖怪『猫又花魁』。
彼女達が纏う豪奢な着物には、大厄災・日野富子のカネの力が宿っていると聽いたが、嘗て京都は花の御所で彼女を排撃した嵯泉なら、その禍々しい氣を否應にも感じよう。
「……今度は守銭奴を引き戻したのか。猟書家共の愚行に継ぐ愚行は呆れるを通り越し、嗤えもせんとは解らん樣だ」
遣り口を變えようが愚は愚だとは、嵯泉が常に同じ結末を導く故に。
而して此度も愚に帰して遣ろうと、敵意を露わにする猫又を睨め据えた隻眼は、つと、契情に腕を絡められた儘の重臣達に喝を入れた。
常人に異能への抵抗を望むは酷と云うもの……だが云わねばなるまい。
「――此の馬鹿者共が」
「なにっ!! 城に押し入った狼藉者が、何を言うッッ」
「抑も爲政者の本分とは何だ。要らぬ贅を尽くして國を傾ける事か」
「むっ、くっ……!!」
言葉もなく閉口する男達を見つつ、微かに懐かしい感覚が過る嵯泉。
豈夫(まさか)再びこんな真似をする事に為ろうとは、と一抹の思いを過らせながら、向けられる刀鋩に儼然と言い放った隻眼の男は、遂に言のみで刀を降ろさせた。
「民無き國なぞ立ち行かぬ。守るべきが何か――其の胸に問い答えてみろ」
「……ッ、ッッ……」
恥じ入って膝を付かんとする重臣達。
然しそうはさせないと、お色気モード全開で彼等の体を揺すった花魁達は、次の瞬間、ざんばらと俎板帯を斬られた。
『ふみゃ!!』
「……如何に着飾ろうが其の下卑た臭いは誤魔化せはせん」
妖氣の根源を断つは、【遮斥隕征】――狭隘極まる城の内部、敵味方入り乱れる中にも颯然と駆け疾った衝撃波は、禍き氣の流れだけを聢と断ち切る。
『にゃにゃーん!!』
俎板帯を切り裂かれた猫又は、はらりと豪奢な着物を床に落とすと同時、幾星霜を経て得た妖力をも断たれ、振り出しに……人型を保てぬ程の「唯の猫又」となる。
「容赦も慈悲も、お前達には必要あるまい」
『……にゃあご』
むんず、と首根っこを摑んで隅に追い遣った嵯泉は、重臣らが案内する御殿の表へ――藩主と側室が居るという御広間へと向かった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『小少将』』
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POW : 墨に溺れて、武を忘れよ
【墨色の扇から呼び出される黒い津波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を水場に変え、召喚した小型船に乗って】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 死生知らずの野武士のあなた
【扇から溢れる墨で創られた黒い具足を与える】事で【誑かした対象が天下無双の武者】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 傾城の烈女
【魅了】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【かつて『小少将』の夫だった亡者達】から、高命中力の【妻に言い寄る者を排除するための怨念】を飛ばす。
イラスト:木庭
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠火霧・塔子」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
きのたけ藩十二代目藩主・日下部少輔次郎野比就は、合理的で近代的な藩政改革を以てきのこ國とたけのこ國を治める名君であったが、美人には頓と弱かった。
特に華奢な肩を開けて艶氣たっぷり、純白の着物が似合う雪膚の美女には一目惚れで、彼女が言えば幕府に内密で城を立てたし、重税を課す事にも心を痛めなかった。
猟書家の幹部の一人『小少将』にとっては、餘程好餌であったに違いない。
「むむむ、城内が騒がしい……何事に御座んスか!?」
『――お下がりを。御実城さまの御命を狙った狼藉者が参ります』
クルセイダーの倒幕が未だ半ばにある今、野比就に命を落とされては困る。
小少将が奥へ下がるよう手を取れば、不穏を感じる野比就も合点(こっくり)と頷き、襖一枚を隔てた向こうに身を隠した。
蓋し小少将が案内したのはそこまで。
「んんっ? ……其方は隠れないんで御座んスか……?」
『――ええ、かの者達を誅せるのはわたくしのみ』
未だ疑問符を浮かべ続ける藩主を奥に押し込み、襖を閉める。
野比就からは見えまいが、襖に背を向けた小少将は只ならぬ邪氣を全身より迸發ると、スッと漆黒の扇を広げ、甘く妖しい香氣を充満させていく。
『……猫又も武士も止められぬとは情けなや……侵入者達を惨殺して晒し首にした後は、きのたけ藩の者達全てを、わたくしが操らねばなりますまい』
目尻の際に映る重臣達だけでなく、城中の武士達を、軈ては藩の全てを――。
内なる野望を暴いたか、小少将は野比就が美しいと愛でた瞳を真ッ黒に塗り込めると、間もなく本丸御殿に至った猟兵を喫ッと睨め据え、
『殿中ぞ! 御実城さまに刃を向ける大罪人め、わたくしが罰して差し上げます!』
と、墨色の扇を振り被った――!
白斑・物九郎
【エル(f04770)と】
『御実城さまに刃を向ける大罪人』だァ?
どの口が言ってるんスか
おたくのコトじゃニャーですか
・小少将の前に立ちはだかり挑発、気を惹く構え
・エルを隠密活動に送り出す機を稼ぐ
・敵の先手を誘う
・【野生の勘】を研ぎ澄まし回避専心、黒津波による水場が敢えて広がるように立ち回る(ダッシュ・ジャンプ・軽業)
・波が場を占めた所で己も【砂嵐の王・死霊大隊Ⅱ】発動、船へ搭乗
・己も荒波を利し(地形の利用)、小型船相手に狩猟船をブッ込ませながら、艦載武装と乗組員とで畳み掛ける(暴力+蹂躙)
・応酬ざま、小少将を口先でガンガン煽る
・その模様を『茶斑の三毛』にこっそり動画撮影させてエルの方にデータ送付
エル・クーゴー
【物九郎(f04631)と】
・物九郎に矢面を任せ、くの一ルックで隠密活動にシュッと場を離れる(迷彩)
・黒具足の武者から逃れつつ、目指すは襖向こう――野比就の所
躯体番号L-95
当機はすっぱ抜きに高い適性を発揮します
・物九郎からの送付データを『ウイングキャット・マネギ』に受領
・野比就に小少将の怖い所を動画で見せつつ、あの女こんなヤバかったんですよって説得
・小少将をブッ叩くのになんか使えそうなネタが無いか質問
・野比就が口開くの渋るようなら?→微笑み掛けてオトす
・得られたネタを汲み上げる形で【L95式4Dプリンター】を発動し【援護射撃】を展開
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します
本丸の内部構造は既にスキャン済み。
更に説得に成功した武士達から極秘ルートを教わったエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は直ぐに天井裏へ、電脳ゴーグルに昏闇を暗視しつつ御殿の奥へ向かう。
板間より僅かに零れる光から下の様子が窺えよう。
目下、御殿ではいの一番に辿り着いた白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が、猟書家『小少将』が振り降ろす黒扇に魔鍵を嚙ませて留め、
『殿中ぞ! 御殿に禍を持ち込む大罪人め、不敬成敗してくれる!』
「どの口が言ってるんスか。まんま、おたくのコトじゃニャーですかよ」
鏡が要るかとばかり瞳は煌々、金の精彩に映す小少将の敵意を引き付けている。
適材適所と云った處か、煽り上手な物九郎に矢面を任せたエルは、優れた隠密ムーヴで藩主・野比就の真上に至ると、紐を垂らしてスルスル、スルスル――。
「むむむっ、そなたは曲者に御座んスか!?」
「躯体番号L-95_当機はすっぱ抜きに高い適性を発揮します」
しゅたっと着地してくノ一ターン! なんとなく「味方やで」な雰囲気が傳わる。
そしてエルに続いてフヨフヨと降りてきた僚機『マネギ』が腹に抱える小判をくるり、裏返してタブレットを差し出すと、アラ不思議、画面には襖の向こうが映っていた。
「ややや、何と奇怪な……!! これは……小少将? に御座んスか!?」
「――YES.」
丸眼鏡をゴシゴシして見た野比就が息を呑み、瞠目する。
愛し側室の麗瞳は今や眞ッ黒に塗り潰され、墨色の扇から迸發(ほとばし)る黒津波が何度も画面に飛沫を叩き付ける――其に映るは宛如(まるで)禍々しき妖異だ。
ポチャ猫と通信を繋ぐドローン『茶斑の三毛』は右眼をチカチカと、表御殿で物九郎と戰う小少将の烈女たる姿を克明に記録しており、
『わたくしの思うが儘にならぬ男などおりませぬ! さぁ跪き、首を出しなさい!』
「ァ? ユーベルコードで操ってただけじゃニャーですかよ」
扇を一振り、黒々と逶(うね)る津波を繰り出す合間の会話も聢と拾おう。
小少将は表御殿を濁流に呑みながら、輕妙に立ち回る物九郎に強い敵意を浴びせ、
『香氣を吸って猶もちょこまかと……キーッ! いい加減わたくしに溺れなさい!』
「ははぁん、性根が出てきましたわな。おたくを焦らした男は居ませんでしたかよ」
『~~~~! その口からクルセイダー樣への恭順を云わせなくては気が済まぬ!』
異能の力で野比就を誑惑(たぶらか)したこと。
倒幕の爲にきのたけ藩を懐柔したこと。
物九郎の煽りに対して返る口は、言外に下心が零れるものだ。
「……小少将は、惚れていた訳ではなく……利用する爲に……」
全て謀略であったと気付いたか、小判型タブレットを持つ男の手が小刻みに震えれば、彼の心拍の變化を捉えたエルは、今が攻め時とグイと近付く。
「小少将の野心が明らかになった今、側室を廃する事が推奨されます」
「うむ……うむ……然うで御座んスが……」
「弱点となり得る情報の提供を希望します」
「うむり……國を想うなら……そうせねば……で御座んスが……」
まろやかな表情のプニ猫を間に、野比就の逡巡とエルの無表情が超接近すると、次いで佳人は電脳ゴーグルを額に持ち上げて金瞳を晒し、ふうわと頬笑んで見せた。
凛々し青薔薇の花馨を広げるが如き微咲(えみ)は、忽ち野比就を陥落させ、
「此處で決断できるのが名君かと」
「ハイ喜んで!!!!!」
デレッと鼻の下を伸ばした藩主は、とっておきの話を耳打ちした。
†
「はー、水墨画を描くにも使い過ぎですわな」
黒扇が幾度と翻って津波を起こし、表御殿がどっぷり浸水した處で物九郎が動く。
轟然と迫る波濤を、魔鍵を一振りして彈き散らした彼は、我が身に降り懸かる水飛沫をモザイクと變じて疆界を混ぜ、【砂嵐の王・死霊大隊Ⅱ】(ワイルドハント・ネクロトライブ)――黒波を裂いて走る狩猟船を召喚したッ!
「時を渡り黄泉より來れ、猟師共。ワイルドハントの始まりっスよ」
「これより、敵性の完全沈默まで――ワイルドハントを開始します」
佳聲が重なったのは、場を同じくしたからだ。
今や敵を中心に対角を結んで布陣した二人は、片や船上から艦載武装で、片や宙空から援護射撃を展開し、火砲銃彈の嵐に包囲する。
翩翻と飜った墨色の扇が、防禦に回るのも無理は無い。
『!! なんと、いう……わたくしに悪夢を見せるとは……!!』
不覚えず眼路を隠してしまうのは、骸の海を潜る前の記憶の所爲か――我が子と愛でて己の爲に害された「愛王丸」の姿が墨色の邪氣を止める。
予想以上の精神的ダメージだとは、像を結んだエル自身が語ろう。
「――藩主曰く、側室は一度だけ“あいおうまる”と呼んで涙したと」
その音から侍の國の歴史を検索し、【L95式4Dプリンター】(ミズ・スミス)で超高速成型された童の像は、同じ歴史を繰り返そうとする母の心を追い詰めた。
『愛王丸……わたくしは貴方を守ろうと……!』
不意に伸び出る手を血斑に染めるは、物九郎の船に乗った戰闘員。
此度、王に呼び召されたのは朝倉景鏡の兵士達で、嘗て彼等に刃を向けられた記憶が、子と共に捕えられた記憶が小少将を怯ませる。
時に、茶斑の三毛経由でこれらの情報を受け取っていた物九郎は、忽ち劣勢に追い遣られた傾城を眼路の端に置いて、
「――思い通りにならない男が結構いたモンですわな」
と、面舵いっぱいに船を寄せた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
わ……絵に描いたような悪女さんですね。
ですが魅了の力は自信がある様子ですし……同性とはいえ、油断はしないで行きましょうか。
敵の待ち構えているお部屋さえわかっていれば、対処は簡単です
【風と大地と草木の精霊兵団】発動、総勢101体のゴーレム軍団をお部屋にけしかけます
彼らにお任せすれば、そもそもわたしが彼女と対面する必要ありません
そして生命体の範疇の外にある精霊さん達を魅了できる存在はそうは居ません
数を頼りに囲んでぼっこぼこです!
その隙にわたしはお殿様の所へ
城下の噂でも、夜空に輝く白き星のような奥方様(正室)との仲睦まじさは聞き及んでおります、等
ご家族を引き合いに出して考えを改めるよう説得します
「……小少将は表御殿に、お殿様は奥へ押し込められたと」
床下に潜り込んだ闇の精霊から敵の位置を、更に風の精霊が運んでくれる一連の会話を聽き拾った荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は、襖の隙間より覗き見る小少将の姿に、まるで絵に描いたような悪女だと溜息する。
自信の程も窺えるが、其が實力を伴うとは、隙間より漏れる香氣の強さが示そう。
「まともに向き合っては同性でも危ういかもしれません……油断せず行きましょう」
なるべく視線を合わせぬよう。
なるべく甘い馨香を吸わぬよう。
敵と戰う以上、そのような事は不可能にも思われたが、ひかるは精霊達と何やらゴニョゴニョ相談すると、【風と大地と草木の精霊兵団】(エレメンタル・ソルジャーズ)――全高2mのゴーレムを合計101体召喚し、表御殿にけしかけた!
「わたしが対面する必要はありません。大地の精霊さん、お任せします!」
合点(こっくり)と頷いたゴーレムが、ドスドスドスドス、大広間に押しかける。
大きな背には青々とした草木と、更に肩には春らしくタンポポも咲かせた土の巨人は、怪腕を振るうなり轟ッと風を紡いで小少将を牽制した。
『泥人形め、土足で御前に上がるとは……っきゃあー!!』
先ずは強風が純白の着物を捲り、瑞々しい脚を晒す。
その艶姿にも周囲に充満する香氣にもビクともしないのは、彼等が生命体の範疇の外にあるからで、精霊をも魅了できる存在はそう居まい。
ひかるは廊下側に隠れた儘、ゴーレム部隊に更なる“お願い”をして、
「数を頼りに囲んでぼっこぼこです!」
ぼこぼこ、ぼこぼこ(やさしいひょうげん)。
ぼこぼこ、ぼこぼこ(ごそうぞうください)。
『ンギャーッッッ!!!』
斯くして小少将が壮絶なタコ殴りに遭う中、ひかるはトタタタッと廊下を走って奥へ、藩主が控える広間へ辿り着くと、長局(大奥)を指差して云った。
「むむ、そなたは奥女中では無いな?」
「はい、わたしは城下の噂を聞いて参った者です。城下町の人々は、お殿様と夜空に輝く白き星のような奥方様との仲睦まじさを、夫婦の鏡と尊敬しているようでした」
「そんけい……」
心優しき正室、そして愛すべき民々を引き合いに出して、翻意を促す。
然う、小少将に嵌るまでは、超絶美人の正室に褒められようと政務を励んでいたのだと思い出した野比就は、ひかるを話し相手に、奥方を如何に愛しているかを語り出した。
「それはもうめちゃくちゃ美人で御座んスよー!! 馴れ初めは……」
その表情を見るに、洗脳ユーベルコードも解けてきたと――ニッコリと頬笑むひかるの耳には、鈍く重い打撃音が入ってくるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
奴が小少将
私達と接触しても尚、その言葉を放つとは
芝居下手もいいところですね
重臣達がまだ此方に向かってくるのなら、倫太郎に任せて小少将へ
駆け出して接近し、抜刀術『風斬』
攻撃力重視の2回攻撃で攻める
敵が攻撃を躱すのであれば命中率重視へ変更
物理攻撃には武器受けにて防御
黒い津波は跳んで回避
周囲が水場に変わった際には足場になる物に跳び乗って敵へ接近
日下部太郎左衛門延乃進!
日下部次郎三郎野火郎!
日下部野毘蔵!
彼等の名に一人でも覚えがあるのならば、よくお聞きなさい
彼等はこの世界の侵略を目論む猟書家と接触し、私達と共に戦った者達
異変に気付き、立ち向かう強者達
狼藉者がどちらか、今の貴方ならば判るはず
篝・倫太郎
【華禱】
は!よくよく言うぜ
魔将軍の身内でもあるクルセイダーの……
その走狗がどのツラ下げて、宣うよ
重臣達が未だ小少将の配下にあるなら
破魔と浄化を声に乗せて
敵に対して疑念を抱けば上等
戦いの邪魔はしてくれるなよ、お偉いさん方!
防御力強化に篝火使用
水の神力で津波の相殺を狙う
無理でも津波の威力軽減くらいは出来るだろ
夜彦への攻撃は基本庇うことで対処
あんたの一撃なら津波さえも割るだろうけど
そいつは敵に使ってくれよ、俺の分も込めて
相殺が成功した場合も引き続き水場の支配を試み
風の神力も使って敵の足場を不安定にさせる
俺自身は衝撃波と鎧砕きを乗せた華焔刀でなぎ払い
刃先返して2回攻撃
敵の攻撃はオーラ防御で防いで凌ぐ
言葉こそ水鏡の如しとは、猟兵の侵入に聲を荒げた烈女が知らしめよう。
『殿中ぞ! 御殿に刃を持ち込む大罪人め、不敬成敗してくれる!』
「は! 魔将軍の身内でもあるクルセイダーの、唯の走狗がどのツラ下げて宣うよ」
よく言うぜ、と薙刀の鋩を差し向けるは篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)。
冱月と燿う刃紋に不敵な艶笑(えみ)を映した彼は、同じく帯刀して表御殿に上がった月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)のテノール・バリトンに耳を澄ます。
佳脣を滑る科白は凛冽として、
「――私達と接触して猶も斯樣な言葉を放つとは、芝居下手もいいところですね」
と、全てを知っていると言わんばかりの氣迫が、麗瞳に烱光を宿す。
我が野心を知る相手には、小少将も激語を躊躇わず、
『わたくしが走狗なら、おまえ達は徳川の犬。主の不始末を預るだけの陣笠連ぞ!』
言えば彼女の術中にある重臣達も、次々と刀に手を掛けて立ち上がる。
「御実城さまの御命を狙う曲者め!」
「憎むべき悪漢に膺懲の刀を下す!」
然し彼等の高揚は、破魔の氣を帯びた聲に楔打たれ、
「戰いの邪魔はしてくれるなよ、お偉いさん方! 大人しく其處で見てなって」
「、っ」
主に代わって見届けよと、碧光の睛に射られた足はその場に縫い留められ、刀の柄頭に触れた手はその儘、超常の者同士の戰いを見守る事となる。
而して重臣達が倫太郎の指示に從えば、小少将は苛立ちを露わに、
『誘惑に掛かった心を浄うとは……ッ、これ以上の邪魔立ては許しませぬ!!』
云うや翩翻(ヒラリ)と扇を飜し、墨色の津波を躍らせた――!
目下、黒き巨蛇とうねる激流が畳を疾って迫れば、倫太郎は自ずと拇指球を踏み込める夜彦を留めて前に――我が刃が刀光を暴くより速く踏み出る。
「あんたの一撃なら津波さえも割れるだろうけど、そいつは敵に使ってくれよ」
「倫太郎」
俺の分も込めて、と口元には柔かく微咲(えみ)を湛えて。
言い終わらぬ裡に白皙を神々しい光に燿わせた倫太郎は、【篝火】――篝の焔、西賀の水、斎雁の風なる三つの神力を我が身に降ろし、向かい来る波濤に盾を成した。
「災魔を喰らう水の神力で相殺する。無理でも威力を削ぐくらいは出来るだろ」
『ッ、莫迦な――!!』
淸冽の水流が墨色の濁流を呑み込む樣は、宛如(まるで)生き物のよう。
小舟が浮かべられる程の水場に變えられては厄介だと、陽炎の如く神氣を立ち昇らせた倫太郎は、同時にカミカゼを紡いで扇の動きそのものの牽制に掛かった。
斯くして援護を得た夜彦は、小少将の黒扇に対して左周りに――黒い津波を跳びながら接近し、間近で振り下ろされる扇には鞘を差し出して攻撃を止める。
この時、手を痺れを受け取った小少将は彼を痛罵して、
『ッッ、此處を何処と心得る! 狼藉者が座敷の上段に上がるなどッ!』
「果して何方が無礼か」
『、ッ――』
差し出た黒鞘の翳影より覗く烱瞳に、一瞬、時を止められる。
竜胆の士は角逐した儘、この場に居る全ての者に届くよう大きな聲で言い放った。
「日下部太郎左衛門延乃進! 日下部次郎三郎野火郎! 日下部野毘蔵! これらの名に一人でも覚えがあるのならば、よくお聞きなさい」
一縷と澱みなき科白が、大広間に澄み渡る。
日下部なる語にビクッと肩を震わせた重臣達が耳を澄ませば、夜彦は緊迫した沈默にも迷わず言を継いで、
「彼等はこの世界の侵略を目論む猟書家と接触し、私達と共に戰った者達。逸早く異變に気付き、勇敢に立ち向かった強者達です」
名を告げば彼等の奮起が思い浮かぼう。
彼等は超常の異能を持たずとも、侍の國を想う心は熱かったと――皆々に聴こえる樣に言えば、戰いを見守る裡に正気を取り戻した重臣たちも「悪とは何か」「誰が黒幕か」が自ずと判然ってくる。
この靜寂に反駁する者は一人しか居らず、
『いいえ、惑わされてはなりませぬ! この者達は、重い負担を課せられる外樣の苦境を知らず、この先も徳川の下で惨めに生きろと屈辱を強いているのですよ!』
手首を返し、再び津波を繰り出さんとする小少将。
然し夜彦は、扇と鞘の抗衡が解かれた瞬間こそ狙い目と、抜刀術【風斬】――!
遂に『夜禱』の刀光を暴くと、神速の斬撃に小少将の手首を切りつけ、激痛に離れる黒扇を宙に泳がせた!
「狼藉者がどちらか、今の貴方ならば判るはず」
『くッ、――ッッ!!』
濤と繁吹いた血斑がほたほたと畳に染み、次いで扇が足元に落ちてくる。
小少将が夜彦を吃ッと睨んだ、正にこの時、背後の襖がサッと開いて野比就が現われ、曇り無き双眸が二人の勇姿を見つめた。
「日下部の血を預る一人として、お味方するで御座んス!!」
其は善に目覚めると同時、悪と訣別した瞬間であったろう。
表御殿のみならず、襖を隔てた奥にも響いた佳聲に奮い立った野比就は、きのたけ藩は猟兵に味方すると、重臣達と元に拳を突き上げ、倫太郎と夜彦を応援するのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
叢雲・源次
【義煉】
文字通り鼻につくな、この匂いは(色香、香気とも評せるその匂いを冷淡に評して眉をひそめる)
健全たる男子である以前に、俺達は猟兵だ…故に、二度目だが「障害は排除する。」…三度目を聞けると思うな。
(クロウの頼みに小さく頷く。であれば、今回はお膳立てと露払いを本懐とするか)
クロウ、前座はこなしてやる…譲ったからには、しくじる事は許さんぞ。
(黒い津波を回避する為に三十式特殊戦靴にて大跳躍。御殿の屋根瓦の上に着地し小少将を見下ろす)
悪く思うな。俺達が『上』。
貴様が『下』だ。
(両手をポケットに入れたままの姿勢。右目から蒼き煉獄の炎が溢れ、水上を覆う様に広がり小型船を燃やし尽くさんと荒れ狂う)
杜鬼・クロウ
【義煉】アドリブ◎
先程の余韻が微妙に尾を引くが気を取り直す
甘い香りに酔いそうで口覆う
更に別嬪サンのご登場か?
見目麗しさに反して、腹のドス黒さは隠せてねェぜ
おぉ怖ェ
懐柔は勘弁願うわ(冗談めかすも目は笑わず
顔だけは外してヤる
…源次、悪ィがトドメは俺に譲ってくれ(俺の出身地故に
ハ、上等
応えてこその俺だ(逆に火がつく
源次の後に追撃
一気に敵へ攻め込む
水場を物ともせず覚悟と意志を力に
玄夜叉に風属性を出力
風を研ぎ済まし鎌鼬の要領で切り刻む
酷ェコトしやがるぜ
亡き夫共が報われねェなァ
テメェにとってはただの駒なのか(少し苛々
【聖獣の呼応】使用
怨念を破魔の羽根で浄化
敵の足止めも含む
扇の攻撃を押し返し白服に紅華咲かす
先ほど瞳に捉えた“佳景”は刹那であったのに、長く餘韵が続いて去らぬ。
其は杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が健全な男子たる故か――勿論そうでもあるが、表御殿に近付くだに強く濃くなる馨香の所爲もあろう。
「……甘いな。酔いそうだ」
口元を手の甲に覆うクロウの隣、叢雲・源次(DEAD SET・f14403)は辟易を隠さず、
「文字通り鼻につくな、この匂いは」
色香、香氣とも評せる甘い匂いに、冷淡と柳葉の眉を顰める。
畢竟、これだけの芳香を放てる強者を見過ごす事は出来ないと、猟兵たる本能に從って表御殿に至った義煉の士は、遂に馨香の源たる『小少将』に相對した。
常人なら一瞬で陥落する美貌を前に、冷靜を保てるのは流石だろう。
クロウは純白の着物を着た女将の花顔雪膚をまじまじと見て、
「更なる別嬪サンのご登場に期待していた訳だが、見目の麗しさに反して、腹のドス黒さは隠せてねェな……――おぉ怖ェ、そんな睨むなよ」
『御実城樣を狙う下郎め、わたくしに溺れ、わたくしが命ずる儘に首を出しなさい!』
墨色の扇に煽られた香氣が忽ち甘美を広げるが、彼は黒魔劔『玄夜叉・伍輝』を一振りして逆風を紡ぐと、美女の懐柔を拒んだ。
「勘弁願うわ。抱かれるのは性に合わなくてよ」
佳脣を滑る科白は冗談めくも、夕赤と青浅葱の麗瞳は笑わず。
而して彼と同じく色香に煽られた源次も、最高の切れ味を誇る対神打刀『灰ノ災厄』の刀身を惜しみなく晒すや、その鋩を突き付けて、
「健全たる男子である以前に、俺達は猟兵だ……故に、二度目だが『障害は排除する。』……三度目を聞けると思うな」
と、視線を交える程に増す敵意を置く。
彼も契情にドス黒い妖氣を見ようか、赫緋の麗瞳は烱々煌々と玲瓏の彩を研ぎ澄ませ、その鋭利さを打刀の刃紋に映していく。
今にも紫電と駆け往く源次の闘氣に触れたクロウは、低音にその爪先を留めて、
「……源次、悪ィがトドメは俺に譲ってくれ」
「俺がそこまで器用な男と思うか」
精悍なる顔を前を向けた儘、目尻の際に鋭眼を寄越す相棒に同じ光を返す。
その炎の如く燿う瞳が「頼む」と言を足せば、成る程、此處はクロウの出身地であったと交睫ひとつ置いた源次は、彼に小さく頷いた。
「――呑もう、前座はこなして遣る」
今回はお膳立てと露払いを本懐とする。
不器用ながら立ち回って見せようと刀の柄を握り込めた源次は、更に赫瞳を鋭くして、
「だが譲ったからには、仕損(しくじ)る事は許さんぞ」
「――ハ、上等」
應えてこその俺だと、澎湃と殺気を迸發(ほとばし)らせるクロウの艶笑を視た彼は、小気味佳く嗤笑うものだと嘆声を置きつつ、踵を蹴った。
『ッッ、上――!!』
黒扇を振り降ろし、漆黒の波濤を叩き付けんとした小少将が上を向く。
見れば源次は宙空へ大跳躍ッ、『三十式特殊戦靴』の斥力を使って御殿の屋根瓦の上に着地すると、追っては来られぬ小少将を眼下に敷く。
「悪く思うな。俺達が『上』。貴様が『下』だ」
両手をポケットに入れたままの姿勢を見て、漸ッと刀を足場に使ったのだと判明る程。
凄まじいスピードとジャンプ力で高みを制した彼は、小少将を睨め据える右眼より蒼き煉獄の炎を横溢させると、【蒼炎結界】(ブレイズ・ブルー)――向かい来る津波を炎の嵐に薙ぎ払い、更に津波による増水を牽制した!
『波濤(なみ)にも消えぬ燄とは……ッ!!』
「下手な舟遊びは火傷では済まんぞ」
まるで生き物のように広がる炎に機動を削がれる小少将。
ならばと、己が代わりに亡夫の霊魂を召喚した彼女は、どろどろと呪いに満ちた怨念を充満させるが、其も彼等を排除する切札とは成り得ない。
『嘗てわたくしを愛した者よ、わたしに近付く禍を阻みなさい!』
「酷ェコトしやがるぜ。亡き夫共が報われねェなァ」
テメェにとってはただの駒かと、幾許か苛立ちを表したのも一瞬。
クロウは溢流する怨念に向き合うや、玄夜叉に淸浄なる風を纏って一閃ッ! 刃と研ぎ済ませた風を鎌鼬を叩き付け、靄がかった悪霊を切り刻んだ!!
呼吸はその儘、昏闇たる怨念を断ち裂いたクロウは、次いで【聖獣の呼応】(アケノトリ・コタエタリ)――霊力で作られた朱の鳥を召喚すると、破魔の風を羽搏かせ、更には刃の如く鋭い朱色の羽根を射掛けさせる。
『ッッ、きゃぁぁ嗚呼!』
無数の羽に押し込まれた小少将は、反撃の術も無い。
亡夫の霊魂の壁もなく、扇を飜すにも風に煽られた契情は、その懐にクロウを許し、
「顔だけは外してヤるよ」
『ッ、ッッ――!!』
息を呑んで間もなく、純白の着物に紅蓮の華を咲かせる。
その美しき色には、源次も遂に見初めて、
「――似合いの赫だ」
と、怖ろしく冷たいバリトンを添えるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
大罪人呼ばわりとは聞いて呆れる
其れを否定する気は無いが、お前なんぞに云われる覚えは無い
――世界を脅かす外道めが
全く……何の為に政を行うのか
そんな初歩すら忘れて何が城主、何が為政者
其の目は何を視、何を聴いている
民を――国を護らぬ主なぞ、田畑の案山子よりも役立たずというもの
違うと云うなら、真に為すべきを行って見せろ
先ずは傀儡を解放して貰うぞ
――弩炮峩芥、悉くを砕け
如何に速度を増そうが此方へ攻撃を向ければ起点が必ず生じる
其処を捉え、カウンターでの斬撃にて具足のみを斬り払う
傀儡の嘯く天下無双如きに後れを取るものか
此の身に修めた武が如何なるものか、お前自身が知れ
全速で以って残滓の首を刎ね飛ばしてくれる
上質な白の着物に血斑を落した美女が、痛撃に煽られて唾罵する。
数々の冱撃に押し込まれた猟書家『小少将』は、今や激語を躊躇わず、
『ッッ……クルセイダー樣に楯突く逆賊共め! お前達こそ徳川の犬ぞ!』
「大罪人やら逆賊やら……兇漢呼ばわりとは聞いて呆れる」
女将が昂ぶるほど冷ややかに告ぐは鷲生・嵯泉(烈志・f05845)。
帯刀した儘、土足で御殿に上がった猟兵は、居並ぶ重臣達にとっては慥かに脅威以外の何者でも無かったろうが、女色を以て藩を恣にした者が咎めるとは白々しかろう。
血雫が花片と染む畳を踏み締めた彼は、花顔雪膚の美女を睨め据え、
「……其れを否定する気は無いが、お前なんぞに云われる覚えは無い」
『、ッ』
「世界を脅かす外道めが」
正体見たりと告ぐ代わり、冱刀『秋水』を抜く。
閃爍めく鋩が小少将に結ばれるや、左右に控える重臣達も咄嗟に刀へと手を掛けるが、一瞬の緊張を溜息に制した嵯泉は、目下、冷儼のバリトンを御殿中に澄み渡らせた。
「全く……何の爲に政を行うのか。そんな初歩すら忘れて何が城主、何が爲政者」
「なっなにおう――!」
「其の目は何を視、何を聽いている」
緋の隻眼が鋭利く大広間を巡り、集まる視線ひとつひとつに問うていく。
低く冷たい聲は襖を隔てた野比就にも届き、言は楔の如く胸に刺さろう、
「民を――國を護らぬ主なぞ、田畑の案山子よりも役立たずというもの」
「ななっ、御実城樣を、我が藩を愚弄するか……!」
「違うと云うなら、真に爲すべきを行って見せろ」
女に言われるでなく、己が手で――と辰砂の烱眼が小少将の背の向こうを見据えれば、奥の襖がサッと開いて野比就が現れる。
この場で最も嵯泉の言を重く受け止めた藩主が、双眸に光を取り戻して姿を見せるが、小少将は彼を遮る樣に前に立ち塞がると、墨色の扇に邪氣を溢れさせた。
『御実城樣を誑かすなど不敬千万! 重臣達よ、彼奴を斬りなさい!!』
「この場に居るは傀儡で無し、真の侍は操れまい」
漆黒の具足に臣下達を覆えば操れようが、其は嵯泉が拒絶もう。
「――弩炮峩芥、悉くを砕け」
眞赭の瞳は扇が飜る瞬間を見切ると、墨色の邪氣が輪郭を成すより速く刃撃を疾らせ、誑惑の術式も魅了の香氣も瞬く間に断ち斬る――!
『……ッ、なんという……!!』
烈志の身に修める武の極みを目の当たりにした小少将は、次撃を躊躇う裡に『秋水』の鋩を喉元に突き付けられ、
「次はその首、刎ね飛ばしてくれる」
ゴクリと喉を鳴らす猶予も許されなかった。
大成功
🔵🔵🔵
浅間・墨
ロベルタさん(f22361)。
今回も『兼元』と【地擦り一閃『伏雷』】を使用します。
リミッター解除と限界突破を使用後に多重詠唱を開始します。
速度と威力は継戦能力で維持を。野生の勘と第六感で回避を。
ロベルタさんと技を発動したままで連携と協力をしますね。
今の彼女とならそのままの速度でも可能なはずですから。
御殿の壁や梁天井など場所を利用して連携で攻めてみます。
刃には破魔の力と鎧砕きに鎧無視攻撃と貫通攻撃を加えます。
フェイントで私の攻撃する呼吸を遅らせたりしてみます。
私の姿を囮にしてロベルタさんが攻撃をなど工夫します。
着地などで加わる負荷で畳や壁が破損しないか不安ですね。
修理費はこちら持ち…でしょうか?
ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)。
技を維持したままでおばさんの懐へ行くじぇ!ごー♪
…え?小少将ってゆーんだっけ?このおばさんって。
「う? でんちゅう…ってなんだろ? ねー。墨ねー?」
なるほど!僕達がアポイント取らずにお城に入ったからか~。
まあ緊急事態だしいいよね。うん。後で何とかなるじぇ!
墨ねーが部屋を利用するなら僕も同じように利用するよ。
背後狙うとか足払いでバランス崩すだけでもいいよねぃ~♪
もしおば…小少将が吹っ飛んだ先に殿様が居ても気にしない。
「…あ。へへ、やりすぎちった♥」
晴朗なる蒼穹の下、二条の稲妻が翔る。
「今の速度を維持したまま、猟書家の所へ行くじぇ! ごー♪」
「……はい……連携するに……合わせやすい、速度で……まいりましょう……」
春雷の如くすぎのこ城を駆け走ったロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)と浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)が、遂に本丸に至る。
甘き誑惑の馨香を辿って表御殿に辿り着いた二人は、その根源たる女将に邂逅すると、勢いはその儘、一氣に懐へと侵襲した――!!
『なっ――!!』
直ぐさま仲間の猟兵から次撃を預る二人に喫驚く間も無い。
ロベルタは【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)――此處に来るまでにも詠唱を続けて威力を増したイナズマキックを振り被る最中、今更ながら墨に問うて、
「ねね、墨ねー。……小少将ってゆーんだっけ? このおばさんって」
「……あ、あの……ロベルタさん……そういうのは……こっそりと……」
その傍ら、紫電を帯びる蹴撃に地擦り一閃【伏雷】を合わせる墨は、『真柄斬兼元』を振り抜きつつ、ロベルタの天真爛漫すぎる言をそっと嗜める。
然しこの距離では丸聽こえだろう。
『おっ、おっおっ……おば……!!』
許さん! と怒髪天を衝いた『小少将』が、閉じた扇でロベルタの雷槌を叩き落とし、同時に迫った刀光を半身を引いて躱す。
傾城の烈女は、年若き娘らを激しく唾罵して、
『殿中ぞ! 御殿に禍を持ち込む大罪人め、不敬成敗してくれる!』
土足で踏み入り、抜身の刀で現れた墨を!
スカートの裾を翻して脚を見せ、「おばさん」などと言ったロベルタを!!
そして「おばさん」がいけないなら、「オバチャン」の方が親しみがあって良かったかと話し始める二人を!! 絶対に絶対に絶対に許さないと柳眉を吊り上げる!!!
然もその怒りさえ十分に伝わらないのが焦れったかろう。
「う? でんちゅう……ってなんだろ? ねー。墨ねー?」
「……ロベルタさん……もしかして、道路に立っているのを……想像しています……?」
ことりと小首を傾げた儘の少女は、目下元気流出事故中。
これには固唾を呑んで見守っていた重臣達も、小少将に喚び召された亡夫の霊魂達も、「ちょっと様子を見てみようかな」と思うほど。
而して墨の丁寧で優しい解説によって小少将の瞋恚の所以を知った少女は、そっかぁと頬笑むと、再び爪先をトントン、再び我が身に雷神の力を集め始めた。
「なるほど! 僕達がアポイント取らずにお城に入ったからか~。まあ緊急事態だし……いいよね。うん。後で何とかなるじぇ!」
何とかなる。何とでもなる。
「……そう、ですね……。そうやって……私達は……切り抜けて、きましたから……」
にぱっと咲むロベルタの屈託の無さを長所と愛でる墨は、合点(こっくり)と首肯くや八雷の力を降ろし、再び攻撃の機を摑みに掛かる。
『来なさい、小娘共! 二度とわたくしを「おばさん」などと……――!!』
閉じた扇の先端を突き付け、迎撃に構える小少将。
須臾に亡夫の怨霊らが昏闇の呪いを放つが、二人は踵を蹴るや大躍進ッ! 黒々とした魔霧を霹靂に切り裂きながら、大広間を輕やかに靭やかに駆けた!
「……御殿の壁や……梁天井、など……角度を……變えて……攻めましょう……」
「う! 部屋の構造を利用するって事だね! あったまいいー!!」
墨が右を走れば、ロベルタは左を。
墨が壁を蹴って高く梁を飛び渡れば、ロベルタは身を低く足元を狙って。
『えぇい……っ、えぇい、ちょこまかと――!!』
続々と襲い掛かる怨霊を閃雷に灼きながら、小少将の懐めがけて疾った二人は、着地点だけを揃えて挟撃――! 的を絞り切れず瞳が泳いだ瞬間を狙う。
「殿中に……禍を……持ち込んだのは……小少将……あなたの方です……!」
『ッッ、小娘が知った口を――!!』
眼路に侵入した墨が大刀を振り被り、蒼白い稲妻が斬撃と共に翔るが、其は囮――。
バッと扇を開いて閃撃を禦いだ邪は、其處から四方へと閃爍を散らした白の世界から、笑顔を輝かせて侵襲するロベルタには應じきれまい。
「ふっとべー!!」
『ぐ――ッッ!!』
鞭の如く撓った脚が、扇を振り上げた瞬間の脇に嚙み付き、凄まじい衝撃を押し込む。
艶姿を歪に折り曲げ、勢い良く後方へと吹き飛んだ小少将は、奥の襖にぶつかり、其處に隠れていた野比就を大いに驚愕させた。
「うおっ! この瞳が真っ黒な妖異が小少将に御座んスか……!?」
我が妻の正体を知り、一氣に正気を取り戻していく野比就。
一方、小少将をあられもない姿でブッ飛ばしたロベルタは、豪奢な襖がメチャクチャに毀れてしまった――その無惨な姿に瞳をぱくちりとして、
「……あ。へへ、やりすぎちった♥」
「……修理費は……こちら、持ち……でしょうか……?」
築城して間もない城の、御殿の装飾品となれば額面は大きかろう。
墨は果たして今回の報酬で賄いきれるかと戰慄きつつ、あんぐりと口を開けて襖の残骸を見詰める重臣達に、ぺこぺことお辞儀をして謝るのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
【緋冬】
『結火』。
まずこの香気から燃やしなさい。
小細工頼りの魅了など通さないように。
オーライチューマ、背中任せます。
本体を引き抜き、まずが一礼をば。
ご機嫌麗しゅう、『小少将』様?
あら、まあ!
彼らの感情を塗り潰した…なんて人聞きの悪い。
たとえヴィクティムさんが扇動しているとしても、
あなたの素の魅力がわたくしに敵わなかっただけの話では?
己の至らなさを他人のせいにするのは地金を晒すだけですよ?
ええ、畏まりました。
既に大勢はこちらの側にあります。
城主を誑かした間者は打ち首が通例ですが…
特別ですよ? あなたにはとびきりの破滅を差し上げます。
──【朱殷再燃】。
この焔で以て灰と帰し、骸の海に沈みなさい──!
ヴィクティム・ウィンターミュート
【緋冬】
はーぁ…こんな下品な女に誑かされたのか?
1ミリたりとも興奮しねえし、美しいとも思わねぇ
テメェの事考えるよりも、路傍の石のことでも考えてる方が面白そうだ
おうチューマ、前任せるぜ
感情には、感情による塗り潰しで勝負する
聞きやがれ馬鹿ども!!テメェらが求めてるのなんだ?
武士として、主として、掲げるものは何だ!
誇りか?安寧か?清く正しく生きることか?
なんだっていい!今のテメェらはそこから遠いのか、近いのか
よく考えろ!!遠いと思ってんなら───勝て
場は俺が整えてやる!麗しく焔の麗人を援護しなァ!
悪いが…『魅了』させなきゃ、お前は何も出来ねえ
なぁチューマ、俺はアバズレの灰が見てぇ
叶えてくれるかい?
本丸へ近付くだに強く濃くなる香氣。
甘き誑惑の馨を辿って表御殿に至ったヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は、その根源たる着物の女を頭の天辺から足の爪先まで無遠慮に見ると、盛大な溜息を吐いた。
「はーぁ……こんな下品な女に誑かされたのか?」
大胆に肩まで開けた雪膚には微塵も興奮しないし、裾より覗く瑞々しい脚も竟ぞ美しいとは思えない。
「テメェの事考えるよりも、路傍の石のことでも考えてる方が面白そうだ」
『路傍の……石……!! わたくしが石ころに劣ると言うのですか……!』
ヴィクティムの科白には小少将のみならず、左右に控えた重臣達も「無礼が過ぎる」と刀に手を掛けるが、篭絡された儘では話になるまい。
慥かに抗えぬ色香だと、すっかり骨抜きにされた男達を緋瞳に見渡した穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は、そっと、黒焔の蝶に羽搏くよう命じた。
「――『結火』。まずこの香氣から燃やしなさい」
小細工頼りの魅了など通しはしないと、黒く赫い炎焔の燿いを白皙に映した神楽耶は、感情を感情で塗り潰さんとするヴィクティムに蝶を追從させる。
目下、精悍なるテノール・バリトンは大広間に澄み渡り、
「聞きやがれ馬鹿ども!! テメェらが求めてるのはなんだ? 武士として、主として、掲げるものは何だ!」
「なッ、なにおう!」
「誇りか? 安寧か? 清く正しく生きることか? なんだっていい! 今のテメェらはそこから遠いのか、近いのか……よく考えろ!!」
侍の心に突き刺さるは【Perfect Control Operate】(バンジョウノスベテヲシハイスル)――神楽耶の『結火』が人心掌握ユーベルコードを灼いて「外」から働きかけるならば、彼は「内」からの抵抗を、反駁を、克己を促し、誘惑を撥ね退ける力を與える。
端整の脣を滑る佳聲は實に雄渾としていよう。
力強い科白は、襖の向こうに隠された藩主・野比就にも聢と伝わり――、
「求めるものに届かねぇなら、遠いと思ってんなら――――勝て。場は俺が整えてやる! 真に麗しき焔の麗人を援護しなァ!」
「應ッ!!」
「應に御座んス!!」
重臣達が聲を上げると同時、主もまた襖を開けて姿を現す。
曇れる眼に光を――正気を取り戻した男達は、口々に「神楽耶さま!」「助太刀を!」「麗しい!」「お嫁に来て!」と応援に回り、小少将の周りはがらんと閑散になる。
この展開を完璧に“仕立てた”ヴィクティムの言が痛烈に刺さろう。
『豈夫(まさか)……わたくしの篭絡術が破られるなど……ッ!!』
「悪いが……『魅了』させなきゃ、お前は何も出来ねえ」
余裕の表情で肩を竦めて見せたヴィクティムは、愈々広くなった広間の上座へ行くよう神楽耶を促す。
「おうチューマ。前、任せるぜ」
「オーライチューマ、それでは背中を任せます」
大勢の男達を味方にして前に進む女が憎々しいか、小少将は己が本体たる『結ノ太刀』を抜きつつ、恭しく一礼をする「焔の麗人」に青筋を立てた。
「ご機嫌麗しゅう、『小少将』様?」
『~~ッッ!! この泥棒猫が、何を生洒々(いけしゃあしゃあ)と!!』
蓋し神楽耶は、烈女がキリキリ怒る程に柔かく答えて、
「あら、まあ! 泥棒猫なんて人聞きの悪い。仮にヴィクティムさんが扇動したとして、あなたの素の魅力がわたくしに敵わなかっただけの話では?」
『ムキャー!!! もういっぺん言ってみなさい!!』
「お望みなら何度でも。己の至らなさを他人のせいにするのは地金を晒すだけですよ?」
『んっがっ……ぐっぐ……ッ!!』
これには神楽耶よりヴィクティムが笑い轉げよう。
有能なる“指し手”は竊笑を嚙み殺しながら次なる局面を請うて、
「なぁチューマ、俺はアバズレの灰が見てぇ。叶えてくれるかい?」
「ええ、畏まりました」
無論、焔の麗人は快く應える。
あえかに頬笑んだ神楽耶は、今や小少将を「逆賊」と睨め据える男達の想いを背負って刀を振り被り、騒亂を齎した者へ処断を下す。
「城主を誑かした間者は、打ち首が通例ですが……特別ですよ? あなたにはとびきりの“破滅”を差し上げます」
『待……待っ……ッッ……!』
最早、焔を纏う無名の焔神と化した神楽耶に誘惑は効くまい。
ひとの居場所を護るかみさまは、此度は猟書家の侵略よりきのたけ藩の秩序を護る爲、【朱殷再燃】――昏い暗い朱色の炎焔を刀に宿して一閃する。
煌々と迸發(ほとばし)った破滅の炎は邪を呑み込み、
「この焔で以て灰と帰し、骸の海に沈みなさい――!」
『――ッッきゃぁぁああ嗚呼嗚呼!!!』
而して後。
女の悲鳴が城中に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鬼桐・相馬
●POW
〈ヘキサドラゴン〉のモモを鞄から放ち、野比就の隠れている場所へ向かわせる
勿論気配は探らせるがモモの[幸運]を発揮すれば辿り着けそうだ
窓もしくは襖を引っ掻くなりして野比就に外を見て貰いたい
俺は敢えて周囲の建造物等の近くで小少将の攻撃を〈冥府の槍〉で[武器受け]或いは喰らい炎で補うことでこの城を気遣う体を演出
津波は全身を[結界術]の障壁で覆い軽減しつつ受け切る
周囲が水場になる方が厄介だ
この女の貌や一連の言動を見れば、野比就も目が醒めるんじゃないか
小少将の見せた一瞬の隙を捉え[カウンター]、続いてUC発動
お前の中が悪辣であればあるだけ棘も鋭いものとなる
正しく欲望に忠実な姿を見せてくれた礼だよ
『――ッッきゃぁぁああ嗚呼嗚呼!!!』
誑惑の馨香を灼かれ、雪膚に裂傷を、真白の着物に血斑を疾らせる『小少将』。
鮮血を伝わせる脣を手の甲に拭った女将は、吃ッと猟兵を睨め据え、
『この國の真の主を知らぬ徳川の犬め! 大逆成敗してくれる!!』
激痛と損耗が焦りを募らせるか、今や激語も唾罵も躊躇わなくなった女は、墨色の扇をひらり飜すと、漆黒の濁流を叩き付けて追撃を拒んだ。
「――止せ。建てたばかりの御殿が崩れる」
『構うものか! お前達ごと押し流し、新たな倒幕の拠点を立てれば宜しい!』
まるで狂乱じみた波濤に受け止めるは、鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)。
紺青の炎を迸る『冥府の槍』の鋩に素早く疆界を引き、燃え盛る結界を敷いた相馬は、我が背に隠した長局(大奥)を狂濤に護ると同時、水場が広がるのを禦ぐ。
彼がこの城を気遣っているとは、科白にも挙措にも顕れよう。
「この城に住まう者も居れば、仕える者も居る。或いは税を治めて藩を支える者も居る。これらの人々を疎かにして、幕府の打倒は果して叶うか」
『わたくしが全て傀儡人形にしますのに、余所者が知った口を!』
余所者。
而して何方が藩を顧みぬ余所者かは、最早、誰が見ても瞭然(あきらか)に違いない。
目下、襖の隙間より外の様子を覗き見た藩主・野比就は脣を嚙んで、
「……くぅよ、あれが慥かに小少将と申すか」
「くぅ」
こっくりと頷くは、咽喉に六芒星の痣を持つ『ヘキサドラゴン』のモモ。
主たる相馬の命によって、鞄からよちよちと出て奥座敷へと向かった黒竜(幼生)は、持ち前の強運で野比就の元へ辿り着くと、襖に爪を入れて隙間を作っていたのだ。
野比就は女の黒く塗り込められた魔瞳や、冷酷な言動を窺う裡に正気を取り戻し、
「……余は愛する相手を間違っていたで御座んス」
「くーくー」
「うむり、藩主は國こそ愛すもの。民を慈しむものぞ」
モモの透徹と澄める瞳に決意を示した野比就は、自ら政務を執る表御殿へと進み出て、大きな聲で宣言した。
「きのたけ藩はこれより猟兵殿にお味方するで御座んス!」
『なっ……御実城さまッ! 野比就さま!!』
藩主の登場に、ギョッと振り向いたのが最大の隙であったろう。
時に相馬は精悍の躯から發せる冥府の炎を烈々と熾やすと、【供犠燎】(クギリョウ)――小少将の躯に焦熱を流し込み、熱く、灼く、罪を知らしめる棘を生え出でさせる。
『ッッ……こ、れは……!!』
「お前の中が悪辣であればあるだけ棘も鋭いものとなる」
餘りの痛みに輾轉(のたう)った小少将は、見上げる相馬にぞくりと戰慄が疾る。
儼格なる鬼の獄吏は、彼女が我が主・閻魔王の御前に立つに先立って罪を洗い出し、
「正しく欲望に忠実な姿を見せてくれた礼だ」
『ああ、止め……止めて……――ッッ!!』
「手ずから送るよ」
故に迷いはしないだろう、と――。
而して地獄の獄卒に嚮導(みちび)かれる儘、傾城の烈女は棘に貫かれながら冥府へと下るのだった。
大成功
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