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転がる白黒、危機を知らず

#封神武侠界

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#封神武侠界


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●それでも彼らは転がり続ける
 白と黒のもこもこが草むらの上をころころと転がっている。
 サッカーボールにしては柔らかそうだし、大きさも様々だ。絶対に違う。蹴るべきものではない。
「あ、ちょっと……どこ行くの……!」
 ひとりでに転がる白黒のもこもこを青年が追い掛ける。それを捕まえれば、白黒のもこもこは形を変える。
 その正体は――大熊猫! もこもこのパンダ! それがいっぱい!
 この施設は大熊猫を飼育する場所であるようだ。大熊猫達は草むらの上で自由気ままに過ごしており、村人達は日々彼らのお世話に励んで暮らしていた。
 一生懸命面倒を見る者から、仕事をするふりをしてひたすら愛でる者まで、その姿は様々だ。
「よいしょっと……あぁまた勝手に!」
「ダメーそっちは溝だってー! 落ちるー!」
 無防備に坂から転がり落ちていく大熊猫。その様子は大変微笑ましく非常に平和。そんな日常が今日も続いていく……はずであった。

「……待って」
 大熊猫を追っていた一人の女性がぴたりと動きを止める。彼女は遠くを見つめ、その顔は真っ青であった。
「どうしたの?」
「いや、あれって……」
 震える女性の視線を追うと、遠くからうっすらと見えたのは、黄色の獣。それも数は複数。
「……まさか虎!? 都の中に!? 一体どこから!?」
「それよりもまずいわ、こっちに来てる! みんな避難させなきゃ! 早く!!」
 叫ぶ女性。村人達は大慌てで大熊猫達を抱えて逃げ出す。しかし大熊猫達は変わらずのんきにころころ転がり続ける。

「ふふ……たくさん、育ったわね……」
 虎の大群は鋭い牙を剥き出しながら、静かに大熊猫の施設へと近付いていく。――その背後に古竜を使役する女性が佇んでいたのだが、その影に誰も気付く事はなかった。
「お腹、空いてるでしょう……? ……さぁ、食べなさい」

●怜の情報
「新しい世界がまた見つかったようであるな」
 新たな世界、『封神武侠界』。ざわざわと賑わうグリモアベースに柳屋・怜(千年狐・f05785)も訪れていた。集まった猟兵達に向け、早速説明を始める。
「では我も早々と予知を見たのでな、皆に向かって貰おう。これから向かって貰う場所は、自然に囲まれた都である」
 怜の背後に映し出されたものは、竹林に覆われた山中にある都。平和であった都だが、その中である事件が発生する。
「この平和な都にオブリビオンが潜んでいたようだ。オブリビオンは過去から蘇った獣達を操り、『ある施設』を襲おうとしている。それを阻止するのだ」
 標的となった施設は、都にとっては大きな役割を持つ大事な場所だという。
「……奴等の目的は大熊猫だ。おおくまねこ、ではない。パンダだ」
 パンダ。それは白黒の体を持つ、もこもこした動物。封神武侠界でも多く見られる(かもしれない)動物だ。この都の施設では、多くのパンダ改め大熊猫を飼育している。友好の証として他の都へ送る事もさながら、癒しのペットとしても可愛がっているようだ。
「オブリビオンが大熊猫の飼育施設を襲う理由は分からぬが、獰猛な獣達を引き連れているからには恐らく……喰う為なのであろうな」
 数の多い時期を見計らって襲ってきたのだろうか。ともかく、都の人々が大事にする大熊猫を見捨てる訳にはいかない。
「勿論、大熊猫だけではなく、都の人々も危険だ。彼らも大熊猫を救う事に必死であろう。皆で助けてやっておくれ」
 何せ大熊猫は命令を聞かぬだろうからな、さぞかし彼らも大変だろう。そう怜は呟いた。

 大熊猫と都の人々を助けつつオブリビオンを倒す。シンプルながらも行う事は多い。
「ま、新しい世界で肩慣らしも悪くはないであろう? 彼らに良い姿を見せてやって、猟兵の事を教えてやると良いだろう。精々頑張るのだぞ、こんこん」
 説明を終えた怜が笑顔を見せると、自らのグリモアを輝かせた。


ののん
 お世話になります、ののんです。

 ●状況
 封神武侠界が舞台となります。
 全章オール戦闘でお送りいたします。

 ●戦闘について
 ぱんだがいっぱい。そんな施設が襲われています。
 大熊猫や彼らを庇う人々を助けながら戦いましょう。
 シンプルなシナリオとなってますので、新世界の体験にどうぞです。

 ●プレイングについて
 受付は『#プレイング受付中』のタグ記載でお知らせしております。

 キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
 お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
 同時に投稿して頂けると大変助かります。

 申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『虎』

POW   :    虎視眈眈
予め【敵を睨みつけて唸る】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    猛虎幻翼
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    三回攻撃
【爪・爪・牙の連続攻撃】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 いくら周囲の人々が騒ごうとも大熊猫は露知らず。普段通り自由に過ごすだけ。
 彼らを建物へ避難させる為に抱えるのだが、中にはまだ帰りたくないと抵抗する大熊猫もいる。
「だ、駄目駄目っ! 本当に駄目!」
 血相を変えて大熊猫を引っ張る男女。いくら可愛いもこもこであろうと今回ばかりは許さない。

 そんな彼らを待つ事なく虎の大群はじりじりと接近し、とうとう施設の敷地内へと侵入する。
 轟く咆哮。その恐ろしい声によって、大熊猫達は初めて自らの危機を察知し始めた。
ヴェル・ラルフ
サンディ(f03274)と

大熊猫のころころした愛らしさ
ふふ、これは守ってあげたくなるね

虎も生き物としては好きなんだけれど
オブリビオンはダメだよ
だからこれはお仕置き

ありがとサンディ!
親友が作ってくれた隙を利用して
回転つけて前へ躍り出し燦爛連続撃
止まっている敵ならうまく当たるだろうか

第一陣を蹴散らせたなら
サンディの「食事」の隙に
如意棒【残紅】を構えて
職員の人が大熊猫を抱えて確実に退避するのを援護したい

その後は戻ってまた親友のサポートに
如意棒で強かに残ったオブリビオンを打ちながら
「食事」の時のキミは、半分知らないヒトに見えるかもしれない
けれど苦笑する君はいつも通りで
僕もいつも通り、笑んで迎える


サンディ・ノックス
ヴェル(f05027)と

これが大熊猫
こんなときでもマイペースで可愛いなあ
なんて和んでる場合じゃないね

虎を見つめUC解放・小夜発動
お前達には何もさせない
ヴェル、今がチャンスだよ!

ヴェルの怒涛の攻撃に合わせてUCの発動や
【暗夜の剣】を抜き怪力を活かした重い斬撃を食らわせ確実に数を減らしていく

そうだ
食べようとする者は食べられたって文句は言えないんだよ
魂を食べてあげる
最近あまり“食事”してないからさぁ

虎を捕らえ魂を喰らうと内に秘めた悪意がどろりと渦巻く
食事は数体で止め、ヴェルと再合流したら先程と同様に戦う
戦闘が終わり、食事は暴走を防ぐため必要なんだと苦笑いしつつ親友に説明していると昏い感覚は消えていく



 一人の女性が小さな大熊猫の首元をむんずと掴む。二匹の大熊猫を必死に両脇で抱えながら走るが、それでも尚静かに抵抗してくる。やんちゃ盛りなのは良い事だが、今はそれがうっとおしい。
「お願い、言う事聞いて……っ!!」
 しかし心の何処かでは分かっていた。ここで一生懸命走ったって虎の速さには負ける。例え大熊猫を捨てて一人で逃げても手遅れだ。自分も大熊猫も襲われる。
「ガアァァッ!!」
 虎の吠える声が近い。背筋が凍った。女性は二匹の大熊猫を覆い隠すように庇い、その場で身を屈めた。

「ダメだよ」
 誰かの声が耳に入った。直後、大きな打撃音が響くのを背中から感じた。すぐ傍まで来ていたはずの虎は未だ襲って来ない。
「ありがとサンディ!」
「いや、まだこれからだよ」
 その掛け合いに、女性はそっと後ろを振り向く。見知らぬ者達が武器を構えて虎を退けていたのだ。
「ああ駄目、じっとしていて」
 横たわる虎を跨いで飛び込んで来た虎の大群を睨み付けるサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)。すると虎達は動きをぴたりと止めた。まるで時でも止まったかのようだ。
「……逼る黒緋、空に散れ」
 そこへ緋色の如意棒を構えたヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)が姿を消せば、動きを止めていた虎達が悲鳴を上げて吹き飛ばされていく。
 女性には何が起こっているのか分からなかったが、『彼らが敵ではない』事は瞬時に理解できた。す、と姿を現したヴェルが女性と二匹の大熊猫へ視線を向ければ、やんわりと笑みを見せ。
「ふふ、これは守ってあげたくなるね。ここは僕達に任せてよ」
 奇跡だ。女性は安心した表情で猟兵達に礼を言うと、脱走を試みる大熊猫達を捕まえて再び走り出した。
「こんな時でもマイペースで可愛い……けど、和んでる場合じゃないね」
 大熊猫と共に逃げるのも容易じゃなさそうだとサンディが悟れば、まだ息のある虎に近付き彼らを睨む。酷く冷たい瞳だ。
「そうだ、食べようとする者は食べられたって文句は言えないんだよ」
 振りかざされた暗夜の剣。しかしその刃の動きは命を絶つと呼ぶよりも、まるで調理を始めるかのようで。

 虎に襲われそうになった大熊猫を庇い、残紅を振るうヴェル。虎の腹部に打撃と蹴りを入れて吹き飛ばせば、大熊猫はのそのそと施設へ逃げていく。
「良い子だ、すぐ終わらせるからね」
 愛らしい大熊猫と等しく、凛々しい虎も好きだ。しかし彼らは野生の虎ではない。過去から蘇ったオブリビオンである。であれば再び眠らせなければならない。だからこれは、彼らへのお仕置きだ。
「さて、サンディ……」
 友人の名を呼び掛けようとした。しかしぴたりと喉が詰まった。思わず驚いてしまったのだ。……あれは誰だ、と。
 親友の姿をした黒いものが、横たわる虎の群れの中で何かを『捕食』しているように見える。
 これは幻想か、それとも。などと考えていると、サンディはヴェルの方を向き、くしゃりと苦笑いを見せた。
「……食事は暴走を防ぐ為に必要なんだ」
 見覚えのある顔と聞き覚えのある声色。感じていたはずの黒いものは既にない。
「そうか」
 なんだ、いつもの彼じゃないか。ヴェルはふと笑顔を返した。
 ――一瞬だけ知らないヒトに感じてしまったけれど、彼は間違いなくサンディだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨宮・いつき
いいですよね、大熊猫。愛嬌があって可愛らしくって…
自然の摂理ならいざ知らず、過去の亡霊がそれを取って喰おうなど言語道断です
ましてや人々にも危害を加えようというのなら尚更

血に飢え殺戮するだけの虎と、気高き霊獣の違いというものをお見せしましょう
白虎を呼び出して騎乗し、全速力で大熊猫や都の人々の前へ立ち、
雷撃符で雷の【範囲攻撃】を虎の集団に浴びせてこちらへ【おびき寄せ】ます
さあ、今のうちに逃げて下さい!

しつこく大熊猫を狙おうとする者は流体金属を操って【捕縛】し、
こちらへ向かってくる者は白虎と共に迎え撃ちます
雷での牽制を継続し、隙を見せた者から流体金属の爪と牙で斬り裂き仕留めていきましょう



 虎に気付いた大熊猫が転がりながら逃げる。本人にとっては必死の逃走なのであろうが、やはり虎の俊足には敵わない。
 あっという間に追い付かれる大熊猫。空中を飛ぶかの如く飛び上がった虎がその太い腕を振り上げた。
「させません!」
 突如、白い影が虎の体へ横から体当たりをぶちかます。思わぬ奇襲に吹き飛ぶ虎。彼を吹き飛ばしたその正体は、虎。
「さあ、今のうちに逃げて下さい!」
 霊獣白虎の背に乗る雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)が大熊猫に顔を向ける。何処からかやって来た青年が礼を言いながら大熊猫を抱き上げ逃げていく姿が目に入れば、ほっとした表情を浮かべた。
「いいですよね、大熊猫。愛嬌があって可愛らしくって……それを過去の亡霊が取って喰おうなど、言語道断です」
 それが自然の摂理であるなら仕方のない事。しかし虎の大群も、人の手で飼育されている大熊猫も、それではないのだ。
「ましてや人々にも危害を加えようというのなら尚更。行きますよ、僕の白虎」
 吠える気高き霊獣。同じ姿を持つ猛獣へ向けて力強く駆け出した。

 虎達の重圧的な爪攻撃とは裏腹に、白虎の爪は空を斬り裂くかのように軽やかに流れる。いつきも雷撃符で応戦し、虎達を自分達へ注目させる。
「オブリビオンとはいえ所詮ベースは野生の虎ですね。……であれば、簡単な事です」
 襲い掛かる虎へ雷撃を放つ。しかしパターンを学習したのか、一部の虎達は空を蹴るように動き雷撃を避けていく。それでもいつきは雷撃の嵐を止めない。
 とうとう虎達はいつきの元へ急接近し、巨大な牙を見せ付ける。しかしいつきの表情は曇っていなかった。
「血に飢え殺戮するだけの虎と一緒だと思ったら、それは大間違いです!」
 眼鏡が光る。白虎の足元から突然、流体金属が噴き出したかと思えば、それは襲い掛かった虎達を飲み込んだ。いつきの雷撃は虎達の動きを誘導させるものであったらしい。
 巨大な爪や牙に変形した流体金属が誘い込まれた虎達を次々と圧倒し、地面へと叩き付ける。横たわる虎達へ向けていつきの雷撃もすかさずとどめを刺す。
 彼と白虎の戦う姿に人々は驚きつつも、今はのんきな大熊猫を守る事が最優先だと慌てて避難するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノヴァエラ・エルグ
ころころとしていて可愛いのね、パンダさんって
でも足は遅いみたいだし、気付くのも遅いの
だから、まずは足止めね
パンダさん達はその間に頑張って逃げるのよ?

近付く必要はないの、いいえ、近寄りたくないの
さぁ、あなた達はここまでよ。【ウィザード・ミサイル】!
炎を怖がってくれればいいのだけど、目に突き刺されば同じことよね
頭も近いし、うまく壊せればいいのだけど

私は痛い思いはしたくないし、走るのも苦手なの
だから、全力で戦うのよ
あなた達は痛いでしょうけど仕方ないの
あなた達に私があげられる優しさは「早く倒してあげること」だけ
逃げたり動いたりしないで、大人しく死ぬのよ



 大きな大熊猫、小さな大熊猫。大きさは違えどその動きはどれも変わり映えはしない。虎の脅威に気付いた者はのそのそと飼育員に近寄りしがみ付くのだが、やはり素直でない者も中にはいる訳で。
(「ころころとしていて可愛いのね、パンダさんって」)
 逃げる姿も愛らしい大熊猫を見てノヴァエラ・エルグ(supernova・f31833)の心は和むのだが、猟兵として今はゆっくりと眺めている訳にもいかない。
(「その為にも、今は足止めね」)
 大熊猫と共に避難する事は見た目よりも難儀なのだろう。大熊猫を運ぶ飼育員の様子を見れば、それは分かる。だからこそ、彼らに協力せねば。
 ノヴァエラは杖の先を虎へと向ける。魔力を籠めれば、目の前に現れた火球は徐々に巨大化していく。
「私達に……近寄らないで!」
 彼女の叫びと共に火球が爆発し分散した。炎の矢は迫り来る虎へ目掛けて素早く飛んでいく。虎が振るった爪が炎の矢を消し去っていくが、矢は一本や二本だけではない。全てを薙ぎ払う事などできるはずがなく、矢は虎の体を貫き燃やしていくのだった。
「ガアアァァァ……ッッ!!」
 目が、脚が、胴体が焼ける。悲鳴を上げ転がり狂う虎の姿は哀れとも感じられたが、今まで平和に過ごしてきた大熊猫が同じ目に遭う姿を見てしまうよりはましだと思えた。
「……あなた達は痛いでしょうけど仕方ないの」
 都の人達やパンダと同じで、私も痛い思いはしたくないし、走るのも苦手なの。
「あなた達は過去から蘇った命。……逃げたり動いたりしないで、大人しく死ぬのよ」
 新たに現れた虎に向かってすかさず炎の矢を召喚するノヴァエラ。『早く倒してあげる事』が自分からの何よりの優しさであると信じて。だから彼女は、全力で戦わなければならなかった。

「あ、ありがとうございます……!」
 ノヴァエラに向かって礼を言う声が聞こえた。大熊猫を抱えながら逃げる女性が放った言葉であった。
 ――ええそうよ、私は今を生きる人達を守る為に戦うの。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリ・リーボウィッツ
大熊猫さんも可愛いですが、虎さんも可愛いですねー。
とはいえ、どんなに可愛くともオブリビオン。心を鬼にして退治しましょー。

まずはマタタビ汁の素(アイテム欄参照)を撒いたり、バールを猫じゃらしのごとく揺らしたりして注意を引きつけます。
そして、こちらを睨んで唸ってる間にUCで第二の尻尾を生やしましょー。
その尻尾を掴んで振り回し、びったんびったんと床に叩きつつけたり、ハンマー代わりにして他の虎さんを弾き飛ばしたりしまーす。もちろん、弾き飛ばす際には一般人や大熊猫さんがいない方向を狙いますね。

それにしても掴み心地の良いしなやかな尻尾ですねー。ボリュームの点では怜さんの超モフモフ尻尾に遠く及びませんけど。



 険しい顔付き、禍々しい刃と爪を持つ虎を前にしてもリリ・リーボウィッツ(CROWBAR CAT・f24245)は笑顔で彼らを迎える。
「大熊猫さんも可愛いですが、虎さんも可愛いですねー」
 しかし残念ながらここは戦場。どんなに可愛くとも彼らは大熊猫を襲うオブリビオンだ。
「悪い虎さんなら仕方がないですよね、心を鬼にして退治しましょー」
 さて、早速と言わんばかり、のそのそ転がる大熊猫を今にも引き裂こうとする虎が視界に入った。リリはドレスの中から隠し持っていたナイフ……ではなく、肉球マークの描かれた何かを取り出す。
「虎さーん、こちらの方がお好みだと思いますよー」
 声を掛けながら水と粉末を混ぜていると、ハッと虎の表情が変わり動きを止めた。それも一匹だけではなく、何体も。距離があるというのに嗅覚が察知したのだろうか。明らかにリリの手元を凝視している。
 リリが混ぜた液体を豪快にばら撒いてみる。するとどうだろうか、虎達はこちらへ一直線に向かって走ってきたのだ。虎から逃れた大熊猫は相変わらずのそのそと転がり、最終的には飼育員に無事回収された。
「おぉ、やはりネコ科ですねー。対して大熊猫さんは……『猫』ってあるけど猫じゃないみたいですね」
 効果抜群マタタビ汁を撒いた場所に集まる虎達。その近くに立つリリに向かって唸っているようにも見えるが、中には「ゴロゴロ……」なんて不思議な声も混ざっているようにも聞こえた。
「私とじゃれ合いたいのですか? いいですよ」
 それでは、と指先をくるくる回すと、
「よいしょ!」
 その指先を一匹の虎へと向けた。お尻がむずむずした気がする。そう感じた虎が後ろへ振り向くと、なんと第二の尻尾が生えていたではないか! しかも本来ある尻尾よりも触り心地が良さそうだ。モフモフしている。
 突然の出来事に虎は驚き、猫じゃらしを追うかのようにぐるりと半回転した。こちらへ背中を向けた瞬間をリリは逃さない。第二の尻尾をぐい、と掴む。
「うーん、掴み心地の良いしなやかな尻尾ですねー。超モフモフ尻尾、とまでは行きませんが」
 彼女の評価をが終わると、その華奢な体からは想像もつかない強烈な力が虎を襲った。ぐるん、と世界が回ったのだ。
 大きな虎の体がいとも簡単に振り回されていた。力の限り地面へ叩き付けられる虎。周囲の虎は驚きたじろぐ暇すら与えられる事なく、リリの大回転薙ぎ払いによって次々と弾き飛ばされていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天王寺・吾郎
アイヤー、虎が集団で襲ってくるって厄介過ぎるでアルヨ。
それも、同類襲うのは看護出来ないでアル。
これは、さすがに、躯の海にお帰りいただくアルよ。
なんせ、お客様じゃないしね。
ぶっちゃげ、危険な相手だし、ここは、思いっきり強力なのを呼ぶことにするでアルよ。
虎じゃないアル。
呼び出すのは…十二支その5…龍アルよ。3頭呼び出すし、代償は、持ってきた食材でどうにかするアルよ。
さぁ、虎を蹴散らすアルヨ。
ウチは、その合間に同族を避難させるアルヨ…あ、こら、ウチは施設のパンダじゃないあるよ。



 猛獣から逃げる大熊猫もいれば、猛獣へ立ち向かう大熊猫もいる。しかし彼は施設の大熊猫ではない。立派な猟兵の一人だ。
「アイヤー、虎が集団で襲ってくるって厄介過ぎるでアルよ」
 瑞獣である天王寺・吾郎(白黒料理人・f32789)が逃げ行く同胞を眺めては心を痛めた。
「パンダも人間も黙って食材になる気はないでアルよ。そもそも、行儀の悪い奴等に出す料理なんてないアル」
 招かれざる客人へ快く接待する気などない。いや、もはや彼らは客人でもない。速やかにお帰り願おう。

 服を着た大きな大熊猫へ牙を剥き出す虎達。のそのそと逃げ行く他の大熊猫と違い、彼はどっしりと身構えて立ち塞がっていた。
「何でアルか、大きくて美味そうに見えるアルか? 匂いも違うでアルか? まぁ、味見も含めて美味しいものたくさん食べているから当たり前アルね。それならそれで好都合でアル!」
 料理人かつフードファイターの呼び名は伊達じゃない。虎達からの注目を集めた吾郎は召喚術の構えを見せ付ける。
「……十二支その五、龍よ。さぁ、虎を蹴散らすアルよ」
 吾郎の背後から現れたのは、光を帯びた三頭の龍。突然現れた巨大な存在とその大きな咆哮に、虎達は思わず怯んだ。恐ろしいはずの虎の声が何とも可愛らしく聞こえてしまう。
 龍が体をうねらせながら虎達を薙ぎ払っていく。虎の牙や爪など、龍の鱗には到底及ばない。
「今夜の食材が減ったアルが……そこは料理人の腕の見せ所アルね」
 持ってきていたはずの食材は大分減っていた。しかし同胞を守る為なら惜しまない。それを代償に召喚した龍は外見に相応しい強さを誇っていたのだから。
 龍と虎の戦いに驚きながらも飼育員が大熊猫と共に避難をする。吾郎も共に、転がる大熊猫に避難を手助けしていたのだが。
「おぉ、子供でアルか? 元気なのは良い事でアルが、大人の言う事も聞くアルよ。我が儘は駄目アルよ」
「あ、ありがとうございます! さぁ貴方も逃げて!」
「ウチは施設のパンダじゃないアルよ」
「え、え? あっ、申し訳ございません! つい! 瑞獣さんでしたか……!」
 慌てすぎて混乱した飼育員が動物と瑞獣を何度か間違えたのは言うまでもない。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『古龍髄厳』

POW   :    古龍炎
【龍の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【音もなく燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    髄厳の裁き
対象への質問と共に、【虚空】から【黒雲】を召喚する。満足な答えを得るまで、黒雲は対象を【落雷】で攻撃する。
WIZ   :    古龍天舞
自身の【龍気が全身を覆う状態】になり、【鱗が攻撃を弾く】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の攻防により、虎の群れが姿を消した。戦場へ残っていたのは、猟兵達と、一人の女性と、巨大な古龍。
 女は残念そうな表情を浮かべながら猟兵達に声を発した。
「まぁ……見掛けない方達ね。食事の邪魔を、しないでくださる?」
 ゆったりとした上品な口調。しかし美しい彼女を守るように睨むのは恐ろしい古龍。既に察する事はできただろう、彼らはこの世界のオブリビオンだ。
「大熊猫も、人も、私達の餌として育てていたのに……いつの間に、他の都へ送るようになったのでしょうか。えぇ、お陰で繁栄したので良しとしていましたけれど」
 そう語り終えると、女性は手をひらりと動かし、古龍へ命令した。
「邪魔をするあの方達を、追い払って下さい。殺しても構いませんよ」
 残酷な命令だ。それに応えるように古龍は空を舞い、高らかに吠える。
 全ての空気という空気が震えたその響きに、猟兵達の耳や脳は痺れそうになった。

 古龍は全てを破壊すべく、容赦なく襲い掛かる。
ヴェル・ラルフ
サンディ(f03274)と

大熊猫の愛らしさも人々の繁栄も
おまえのお陰じゃないけどね
それにしても美事な古龍
使役されるなんて勿体ない

壮観なまでの炎は見切って回避
多少は【夕紅】の火炎耐性で耐える
敵が近づいたタイミングを狙い、長いからだを駆け上がって近接を試みる
操作可能な炎でも、自分の近くでうろちょろされたら面倒でしょ?
なるべくダメージになりそうなところを
狙って【陽炎空転脚】

聞こえてくるもうひとりのサンディの声
彼のものだけれど、違う
──おまえは、
信用はならなくて暫くは行動に注意を払うけれど
どうやら大人しくするつもりらしい
ひとまず共闘、だね

それにしても
自分は安全な場所で高みの見物っていうの
気に入らないな


サンディ・ノックス
邪魔はするよ
龍と虎、強いと言われる二つを従えまぁ偉そうに
その澄ました顔を殴ってやりたいけどまずは龍を倒さないとダメそうだね

ヴェルが接近戦を挑むなら俺は後ろから支援しよう
UC招集・赤夜発動、もうひとりの俺をヴェルと共に龍に向かわせる
分身自身と同じく魔力でできた剣でヴェルが攻撃したところを追撃、傷を抉る
お喋りな分身は「俺は熱さを感じないよ?」なんて煽ってるな
ふーん、なら声だけ聞こえる鬱陶しい存在をうろうろさせて龍の注意を分身に向けさせよう
「今の俺は聖者に使われる存在、警戒しなくていいよ」と分身がヴェルに囁いているのまでは聞こえない

俺が炎に焼かれたとしてもじっと耐える
女に苦しむ姿なんて見せてやらない



 過去、その龍は人の味方だったのか、災いをもたらす者だったのか。今それを知る術はない。
「使役されるなんて勿体ない」
 どちらにせよ対立する関係であった。それでもそう思えてしまう。古龍の姿をヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)はそう表してみせた。猛々しくも美しい龍が怪しげな女に仕えている事が残念であると。
「あの澄ました顔、殴ってやりたいね」
 サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は古龍へ指示する女に苛立ちを見せる。
「龍と虎、強いと言われる二つを従えまぁ偉そうに。よく考えてみればどっちも美しい猛獣……って事になるのかな」
「へぇ、つまり、美しいものをけしかけて自分は安全な場所で高みの見物をしているって事?」
 それ以上口が動かなくとも、ヴェルの表情を一目見れば心情が分かるだろう。――そういうの、気に入らないな、と。

 古龍が大きく息を吸えば、大きく開いた口から炎のブレスを地上に浴びせた。一瞬にして広がる炎が二人を襲う。
「サンディ……!」
 炎の海から脱出を図るヴェルがそう声を掛けるが、サンディは動かない。ただただじっと古龍を睨み付けていた。
「女や龍に苦しむ姿なんて見せてやらない。ヴェル、龍をお願いしてもいいかな」
 代わりにお喋りが過ぎる奴だけど、とサンディが魔力を集結させ召喚したものは、自身と同じ姿を模した『何か』。
「分かったよ」
 ヴェルは短く答えると、全身をうねらせながら襲い掛かって来た古龍の攻撃を避け、背部にしがみ付いた。
 古龍は大きく吠えながら空中で暴れた。流石に自身の体に向けて炎を撒く事はできないのだろう。炎の海へ振り落とされないようヴェルが頭部を狙って駆けようとしたその時。
『熱いかい?』
 聞き覚えのある声、だけど悪意が含まれた言い方。
『俺は熱さを感じないよ?』
 古龍がどれだけ舞っても微動だにしない、魔力の塊。汗を拭うヴェルを見下ろし、サンディの分身は涼しい表情で微笑みかけた。
「――おまえは、」
 いや、名前は呼ばない。目の前にいる彼は、僕の知ってる人物ではない。
『今の俺は聖者に使われる存在、警戒しなくていいよ』
 本当の事なのだろうが、不思議と素直に信じる事ができない。ヴェルは言葉を返す事なく、黙って古龍の背を駆け抜け始めた。心に妙なもやもやを感じつつも、古龍の角が見えると、頭部へ飛び込むようにぐるりと一回転を繰り出す。
「……僕の炎も、熱いよ」
 紅い軌道を残した高速の踵落としが古龍の脳天へ襲い掛かる。宙を舞っていた古龍が地面へ落ちて行く。
『お見事』
 追い打ちを掛けるように分身が古龍の頭部を剣で突き刺す。楽しそうに抉るその姿はやはり『彼』ではないと確信する。
(「姿は同じでも、炎の中で立っていた彼とは大違いだね」)
 ひとまず共闘はできそうだ。……今は。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨宮・いつき
あの女性がこの騒動の黒幕…けれど、まずはこの古龍をなんとかする必要がありそうですね
もう少しだけ頑張って頂きますよ、白虎

どうやら超常の力で雷雲を呼び寄せるようですね
問答に応えなければこの雷は止まないようですが、雷そのものに特別な力が無いのなら…!
流体金属で傘を作って雷を受け止め、それを地面へ受け流すことで攻撃を防ぎます
白虎に防御の専念をして貰えば、充分に対処は可能なはず
そうすれば僕は攻撃に専念できるというものです
陰陽宝珠を古龍の周囲へ飛ばし、【捕縛】の【結界術】で包囲してその場に留めさせましょう
その隙に【全力魔法】で火力を増す術式を込めた起爆符を古龍に大量に放ち、一気に押し切ります!



 黒幕らしき人物が現れた。あの女性を倒せば今回の騒動は治まるのだろう。まずはあの巨大な古龍を撃破しなければ。
「もう少しだけ頑張って頂きますよ、白虎」
 白虎に向かって雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)が優しく撫でれば、まだ気合十分だと白虎が吠える。
 古龍も低く唸ると、周囲に怪しげな黒雲が渦巻き始める。黒雲はばちばちと電撃を帯びており、今にも降り注いできそうだ。
『汝は何故戦うのだ』
 ふと、いつきの脳内に誰かの声が響いた。性別や年齢の分からないその声が古龍からのテレパシーである事はすぐに気付いた。
 目を細めじっと相手を眺めると、古龍は暗雲の中を舞い、雷を呼び出す。答えを述べるまで近寄らせないつもりだろうか。
「気を付けて下さいね」
 雷撃を避けつつ前進する白虎。しかし嵐の如く降り注ぐ雷を全て避け切るのは流石に難しそうだ。
(「見た所、一撃は非常に強力ですが、雷そのものに特別な力はなさそうですね。それなら……!」)
 姿勢を低くするよう白虎に指示を出せば、その足元からゆらりと流体金属が姿を現す。傘のような形を模った流体金属は雷撃を受け止めると、そのまま地面へと受け流してみせた。
(「いけた!」)
 いつきの確信が白虎へ伝わった。流体金属を展開させながら、白虎が猛進を始める。古龍の周囲を回ろうとする白虎と共に、いつきも術式を唱えながら陰陽宝珠を古龍へと飛ばしていく。
『汝は何故戦うのだ』
 またあの声だ。しかし彼は答えない。
「……言葉として返すだけなら簡単です。ですが、簡単に言い表せるような言葉でもないのです」
 だから僕は、行動で示すのだと。己の両手に力を籠めれば、いつの間にか古龍を包囲していた陰陽宝珠が輝き、結界術が発生する。動きを封じられた古龍が苦しそうに悲鳴をあげる。
 すかさずいつきは護符の束を投げ付けた。次々と古龍の体に貼り付いていく様子を見届けた後、素早く手印を結ぶ。
「えぇ、これが僕の答えです!」
 貼り付いた護符が爆発を起こす。誘爆していく護符の爆風の中に古龍の姿が消えていく。
 周囲を襲う突風。古龍をけしかけた女性も巻き込まれたのか、遠くで短い悲鳴が聞こえた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天王寺・吾郎
こいつが、黒幕で更に龍が出てきたアルヨ。
こうなれば、抑えないといけないね。
何か、身勝手すぎること言ってるアルよ。
ともかく、まず、コイツをどうにかしないといけないね。

だったら、既に出来ている弁当食べてウチを強化するアルヨ。
これで、コイツを撃退して行くだけあるよ。

龍が接近してきたら横飛びして頭部に攻撃を加えるよ。
こうなれば、コイツは飯の材料にするだけアルよ。
アドリブ歓迎



 黒幕らしき人物が現れたが、まずはあの龍を倒さなければいけないようだ。
「にしても、随分と身勝手すぎる事を言ってるアルよ」
 やれやれと思いながら天王寺・吾郎(白黒料理人・f32789)が何かを探し出す。
「さて、あの龍に向かう前に……」
 しかし古龍は待ってくれない。大きく息を吸い込み、吾郎に向かって炎を吐き出した。
「アイヤー!! 酷いアルね!」
 施設の大熊猫と違って彼は機敏だ。何とか避けてみせ直撃を逃れた吾郎だったが、一つ忘れてしまったものが。
「おおっと、ウチの特製弁当が!」
 地面に広がる炎の海。その中にうっかり落としてしまったのは料理人吾郎が作った弁当。包んだ風呂敷が燃えて弁当箱が露わになっていく。
 運動してお腹が減った所でお弁当が消えてしまってはまずい。この後空腹で倒れてしまう。死活問題だ。そうとも思えた事態であったのだが。
「……ん?」
 鉄製の弁当箱が古龍の炎に耐えきっている。そして炎の中から微かに美味しそうな匂いが漂っていた事を吾郎は見逃さなかった。
「こ、これはっ……! 今アル!」
 これ以上焦がしてはならないと匂いで察知した吾郎が慌てて弁当箱の救出に向かう。炎の弱い道を選び熱された弁当箱をキッチンミトンで拾い上げる。走りながら弁当箱を開ければ、そこから姿を見せたのは丁度良い感じに焼けた肉だ。
「なんて事アルか! 龍の炎で焼いた肉が食べられるなんて……贅沢アル!」
 早速食べてみれば、偶然か否か、肉との相性が抜群に良かったようだ。中までしっかり焼けた肉は柔らかく、想像以上に美味であった。
「う、美味いアル! 流石龍は火の扱い方が上手いアルね! 悪い奴じゃなければ仲間にしたかったアル……」
 美味しく食べながらも残念そうにする吾郎。絶品となった弁当を食べ終えれば、もりもりと力が湧き上がる。
 古龍が吾郎に向かって体当たりを仕掛けてくるが、腹が満たされた今の吾郎に敵はいない。
「ただでさえ材料が減ってるアル、お前を飯の材料にしてやるアルよ!」
 大熊猫にあるまじき俊敏な動きを古龍に見せ付ければ、その頬を目掛けて力強く蹴り上げる。
 パァン、と弾ける音が大きく響くと同時に、古龍の大きな体が横へと吹き飛び地面へと転がり落ちるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリ・リーボウィッツ
龍さんも可愛いですねー。(大抵の生き物は可愛く見えるらしい)
とはいえ、どんなに可愛くともオブリビオン。心を鬼に(略)。

龍さんが炎を放ってきたら、命中する前に超音速チョップの風圧でしゅぱっと消し飛ばします。
そしてダッシュで間合いを詰め、今度は至近距離からチョップ!
ざっくり斬り裂いてやりましょー!

(女に向かって)そこのあなた! 「餌として育てていた」とか仰ってましたけど、自分で育てたわけじゃないですよね?
大熊猫さんを育てたのは飼育員さんたちですよ。人任せにして収穫だけしようなんて虫が良すぎます。(怒るポイントがズレているという自覚なし)
丹精を込めて野菜や家畜を育てる農家の皆さんを見習ってください!



 凶悪な古龍でさえリリ・リーボウィッツ(CROWBAR CAT・f24245)にとっては可愛く見えるもの。それでも先の虎と同じくオブリビオンは倒さなければならない存在。
 愛情の代わりに全力で迎え撃とう。そう考えリリが腕をぶんぶんと振っていると、傷だらけで地を這う古龍は彼女に向かって炎を吹き出した。
 灼熱の炎が彼女を包み込む、と思いきや。
「よいしょ!」
 襲い掛かる炎に向かって右腕を動かした。振り下ろしたと思われるその動きは誰の目にも見える事はなかった。超音速(のように見える手刀)から生じた風圧が炎を二股に分けリリを避けるように地表を燃やす。
「うんうん、調子良さそうです。では失礼して」
 (物理的に)切り開いた道を駆け抜け古龍の目の前に到着すると、傷を狙ってもう一度腕を振り上げる。
「撫でてあげる代わりにチョップしますね。ざっくりばっさりと! せいっ!」
 その言葉と行動はあまりにも無慈悲。ただのチョップだと侮るなかれ。先の炎をも斬り裂いたエルエル・スペシャルムーブなのである。
 ずどん、と大きな音が響く。それはチョップの音ではない。チョップによって切断された古龍の角が落ちた音だ。古龍も思わずたじろぐが、リリからの攻撃は止まらない。
「もう一度、一刀両断!」
 首元の傷口を狙ってしゅぱっと一刀。本当はこの手でなでなでしたかった。だけど仕方がない、オブリビオンだもの。

 古龍がずどんと横たわる。動かない事を確認すれば、手を叩きながらリリは叫ぶ。
「そこのあなた!」
 視線の先は虎と古龍を従えていた黒幕らしき女性。古龍が打ち負かされた事に驚きながらリリの方へびくりと向く。
「さっき『餌として育てていた』とか仰ってましたけど……自分で育てたわけじゃないですよね?」
 あなたは間違っています。そうリリが強く主張する。
「大熊猫さんを育てたのは飼育員さんたちですよ。人任せにして収穫だけしようなんて虫が良すぎます。丹精を込めて野菜や家畜を育てる農家の皆さんを見習ってください!」
 間違ってはいない。間違ってはいないが何かが違う気がする。そんな不思議な主張でも女性には響いたようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『屍仙女』

POW   :    白骨仙女
自身の【美しい上半身の肉】を捨て【絡み合う白骨の身体を持つ怪物】に変身する。防御力10倍と欠損部位再生力を得るが、太陽光でダメージを受ける。
SPD   :    雲身变化
自身の身体部位ひとつを【雲】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    宝貝「芭蕉暴嵐撃」
自身が装備する【芭蕉扇】から【暴風】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【窒息】の状態異常を与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 古龍も虎もいなくなった。残るは首謀者である女性のみ。
 美しい女性は、はぁ、と溜め息を吐く。
「私の可愛い獣達……仕方がないですね。私も戦いましょう」
 ゆっくりと歩き出す女性。しかしよく見ればその下半身は人間のものではない。獣の四肢がそこにあったのだが、剥き出した骨が見えている事により、過去の存在である事がより窺えただろう。
「白と黒の毛皮、人の肉……全ては私の美の素材。でも、貴方達は駄目」
 芭蕉扇をはためかせ、女性――屍仙女は微笑む。
「苦しみなさい、泣きなさい。私の邪魔をした事を、後悔するのです」
 数えきれない程の歳月に渡り膨張していった狂気と憎悪が、屍仙女の身体からゆらりと溢れ出した。
天王寺・吾郎
黒幕がようやく表に出てきたアルネ。
こうなれば、コテンパンにのしてやるよ。
現状維持でフードファイト・ワイルドモードを機動状態にして戦うアルヨ。
こいつ、カニバリズムあるよ。
それは禁断の世界あるから、とっとと止めるアルヨ。
相手が飛んできたら、そこで【カウンター】しかけて、ぶった切るアルヨ。
「それは、外道の案件アルヨ!」
「猟兵が新たにオブリビオンに対抗するアルよ。」



 屍仙女の様子に、料理人である天王寺・吾郎(白黒料理人・f32789)はすぐさま察知した。
「こいつ、カニバリズムアルよ。外道の案件アルよ!」
 それは決して足を踏み入れてはいけない禁断の世界。だからこそ彼女は過去の存在と成り果てたのだろう。
「そんな奴が復活して良い事なんかがある訳ないアル。オブリビオンっていうのはそういう奴だったアルね」
 理解したアル、と吾郎は身構えた。まだ腹いっぱいに肉は残っている。美味だったあの感動を忘れないうちに倒してしまいたい所だ。
「猟兵になったからには遠慮なくコテンパンにしてやるアルよ」
「元気な大熊猫……でも、貴方も許さないわ」
 屍仙女は片腕を伸ばす。その腕はめきめきと人とは思えぬ動きを見せたかと思えば、その皮膚は破け、中から白い骨が姿を現した。
 あれが彼女の正体なのだろう。交わるいくつもの骨の腕が吾郎を引き裂こうと襲い掛かる。吾郎も身軽な動きを見せ付けながら攻撃をひらりと避けていく。
「ソイヤッ!」
 宙返りをしながら大包丁を振るい、屍仙女の腕を裂こうとする。しかしいくつもの重なるその骨は非常に硬く、大包丁は完全に切断する事はできなかった。
 屍仙女は嗤う。傷付いた腕もすぐさま再生していった。
「硬いアルね、このままだと刃こぼれするアルよ」
 流石に一筋縄ではいかない相手だと吾郎も汗を拭う。その時、きらりと眩しいものが見えた。そう、それは雲に隠れていた太陽の光だ。
 うっすら光を浴びた屍仙女の腕からしゅうしゅうと煙が浮かび上がった。それを見逃さなかった吾郎はすかさず行動へ移す。
「分かったアルよ、こいつの捌き方が!」
 再び襲い掛かる骨の腕。吾郎は陽の差す場所へと誘い込み、伸びる腕を蹴り上げ避けてみせると、
「ここアル! アチョーッ!」
 ぐるりと体を回転させながら大包丁で腕を叩き斬る。先より手ごたえは大いにあった。屍仙女の腕は見事に切断され、ばらりと地面へ散っていく。
「お前に出す料理なんて、ここには一つもないアルね。何より同胞を狙った罪は重いアル。さっさと帰って貰うアルよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

雨宮・いつき
さあ、残るは首謀者只一人
その傲慢さを看過するわけにはいきません
人々の安寧の為、ここで討ち果たさせて頂きます

陰陽宝珠を自分の周囲へ展開、それらを起点に自分自身を包むように【結界術】で障壁を展開し暴風をしのぎます
とはいえ、そう長くは持たないはず…破られる前に攻撃に転じましょう

精霊硬筆を取り出して、空中に素早く『爆』の文字を書きます
狙うは暴風を操るあの扇
直接爆破して手元から【吹き飛ばし】、暴風を止ませましょう
風がおさまったところで結界術に回していた霊力を攻撃に回し、【全力魔法】で続けて『雷』の文字を書き、
【多重詠唱】で連続して発生させた雷の【属性攻撃】を一気に叩きつけます!



「姿を現してからなんと酷い事を……その傲慢さを看過するわけにはいきません」
 例え彼女がオブリビオンではなかったとしても許す事はできない行為。必ずここで討つのだと雨宮・いつき(憶の守り人・f04568)は強く誓った。
「貴方に、私の美を理解する事なんて、できないでしょうね……」
「そうですね、できる訳がありません。そのような事をして美しくなるとは到底思えませんから」
 屍仙女に対し冷たく返すいつき。はっきりと伝えられた言葉に、そう、と屍仙女は残念そうに呟いた。
「子供には、まだ早すぎる概念だったのかも……しれませんね」
 大きな芭蕉扇でぐるりと扇げば、空を雲が覆い始める。
(「天候を操った? いや違う……」)
 彼女は雲を呼んだのではない。そう咄嗟にいつきは感じた。風が変わったと。
 雲は渦を巻いていた。それはやがて大きくなり、次第に風も強く激しくなっていく。暴風だ。
 いつきは陰陽宝珠を周囲へ展開させ、温かな光で自身を包み込んだ。乱暴な風がいつきを振り回そうと襲い掛かる。結界によって何とか耐えているものの、浮かぶ宝珠はがたがたと小刻みに揺れている為、そう長くは持たなさそうだ。
(「恐らく、あの扇さえ吹き飛ばせば……!」)
 精霊硬筆を手に取ったいつきは考える。今、この筆で書くべき文字は――。
「……『爆』!」
 空中にすらりと筆を滑らせ描いた漢字一文字。それが輝き出せば、突如暴風の中で爆発が発生した。
 いつきの爆風が屍仙女の呼び出した暴風と混ざり合い、風はさらに激化した。崩れる地。砂埃が立ち込め視界が遮られていく。
「あ……ッ!」
 激化した暴風に巻き込まれた屍仙女が、砂埃と瓦礫に芭蕉扇を奪われてしまった。宙高く吹き飛んでいく扇。それがいつきの視界にちらりと見えれば、彼はすかさず次の文字を描き出した。
「貴方の為に、丹精込めて書かせて頂きましょう」
 風が弱くなったその瞬間は見逃さない。故に彼が書き上げた漢字は『雷』。
 屍仙女へ向け、迷うことなく真っ直ぐと伸び行く雷撃。それは弓矢の如く降り注ぎ、槍の如く彼女の体を貫く。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリ・リーボウィッツ
ころころ転がってる大熊猫さんたちを見てると、グリードオーシャンで退治したパンダ型オブリビオンのことを思い出しちゃいますねー……と、感慨に耽ってる場合じゃありませんね。

まっくろにゃんこ(憑依しているオウガ)を召喚しましょー。代償は特大シュークリーム(アイテム欄参照)とここに来るついでに買ってきた月餅です。
にゃんこが代償をはぐはぐ食べ終わったら、お尻を軽く叩いて敵に突撃させます。白骨化したオブリビオンと黒いオウガの白黒対決。

私は沢山のナイフを念動力で飛ばして援護しましょう。敵が太陽光を避けるために暗がりやなにかの陰に陣取った時はナイフの刃で太陽光を反射させてレーザーさながらに浴びせてやります。



 虎も龍も可愛らしかった。そういえば他の世界では大熊猫のオブリビオンもいたなぁ、と、ふと思い出した。あれも可愛かった。
 だからと言って人が嫌いという訳ではないけれど……あの屍仙女はどうも違和感を感じる。何か皮をかぶっている気がする。
「美の材料とは言いつつ、下半身は骨なんですよねー。栄養が偏っているんですよ、きっと」
 食生活を改善しなかったのが敗因ですよ、などとリリ・リーボウィッツ(CROWBAR CAT・f24245)が呑気に呟けば、屍仙女は小刻みに震え出した。
 それは決して『図星だったから泣きそうになっている』だとか『悪口を言われて憤った』という訳ではない。様子がおかしいと思った矢先、突如屍仙女の皮膚は膨れ上がり、そして張り裂けた。
「わ……本当に皮をかぶってたんですね」
 ばりばりと破けた皮膚の中から、複数もの骨が混ざり合った白骨集合体が姿を現した。その悍ましい彼女を見た所でリリの反応は相変わらずではあったのだが。
「ではでは、私もまっくろにゃんこを呼んじゃいましょうか」
 マイペースな様子を崩さないリリは鼻歌を歌いながらおやつをごそごそ。
「まっくろにゃんこ、にゃんにゃんにゃ~ん♪ 今日のおやつはシュークリームと月餅ですよー」
 背後に現る巨大な影。それこそがまっくろにゃんこの正体、黒猫のオウガであった。オウガはリリの持っていた特大シュークリームと月餅をぺろりと食べると、にっこりと満足そうな笑みを浮かばせた。
「どうです? 新しい世界のスイーツも美味しかったですか? 気に入ったなら良かったです!」
 そう声を掛けながら、ぽん、とオウガのお尻を軽く叩いてみせた。彼女なりには軽く叩いたつもりであった。しかしリリの腕力を侮るなかれ。オウガは勢いよく吹っ飛んでいったのだ。
 吹っ飛んだオウガが屍仙女に突っ込んでいく。ばらりとちらばる骨。しかし再生能力の高い屍仙女の骨はカタカタとひとりでに集合していく。
「うにゃぁ~」
 骨が姿形を模らないうちにと、オウガが爪で引き裂いていく。巨大な姿とは裏腹に可愛らしい声が漏れている所へ、リリも複数のナイフを飛ばして援護を行う。
 よく磨かれた刃がきらりと輝く。と、同時に屍仙女の動きも鈍くなっていく。
 飛び交うナイフの数が増える度に再生能力を失っていくその体を、黒いオウガは容赦なく爪を立てた。朽ち果てるその時まで。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴェル・ラルフ
サンディ(f03274)と

大熊猫、虎、古龍
そのどれもがうつくしいけれど
毛皮も爪も牙も、うつくしいのは彼らのものであるから
お前が身につけても醜怪なだけ
なんて
言っても無駄なことは言わないけれど

サンディの攻撃に合わせて
如意棒【残紅】でなぎ払いながら突き、打ち、連続攻撃

サンディが敵の弱点は太陽光と気づいたならば、追い立てて日向の方へ
ふふ、よく見てるなぁ
太陽光の輝く場所へ押し込むために
右手に炎を顕現させて【潰爛空舞落】
骨を砕くほどの衝撃を

徹底的に潰すのは
己の美のために他の生き物を利用したおまえが許せないから
苦しみも、泣きもしないさ
おまえを砕いてもおまえとは分かり合えない
それがただ
空しいだけ


サンディ・ノックス
ヴェル(f05027)と

この場所を作ったのがお前とか裏事情があると思っていたけど
もしかして全ての生き物は自分の美しさのためにあるという傲慢な考えなだけ?
ならば怒りではなく身勝手さに呆れるね

真の姿開放
金眼の赤い竜人に変身

UC青風装甲発動、高速飛行で女の懐に入り一発殴る
最大速度には程遠いけれど加速して怪力を込めたパンチはどう?

ヴェルと息を合わせ交互に攻撃を仕掛ける
俺は剣で斬りつけその傷を抉っていくよ

女が怪物に変身した姿を見て
美に拘る奴がこの姿を晒すなんて敵も命がけかと思うけど当然攻撃はやめない
相手の性質を見切るため観察しながら交戦していれば太陽光が弱点と気付く
後は光が当たる場所に誘導して叩くだけだ



 人間の皮が破ける。腕、腹、顔。引き裂かれたその中から絡み合う白骨の集合体が姿を現す。
 美しい姿は既にない。人の姿を捨てた過去の怪物が目の前にいるだけだ。
「これが本当の姿か」
 相手も命がけって事なのかもね、とサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)が呟けば、ヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)も頷く。
「いつから美を貪っていたのかは知らないけど、結局こうなんだ」
 ヴェルのその言い方は、実につまらなさそうなものだった。大熊猫、虎、古龍。彼らが美しいのは『彼らのもの』であるからだ。他人を含め、それを自分のものだとでも思っていたのだろうか。
(「その滑稽な体が全てを物語っているじゃないか」)
 これ以上、何かを言った所で無駄だろう。哀れな屍仙女と自分達が分かり合う事など一生ないのだから。
「呆れた」
 それ以上でも以下でもない。同じ思いを抱いていたサンディはその言葉を吐き捨てた。真の姿である赤き竜人に変身し、金色に輝く瞳で獲物を睨む。
「……随分と硬そうではあるけど、二人で叩き続けていれば行けるよね?」
「うん、そうだね」
 サンディの姿はいつもと違う。だけどあの『分身』よりも安心できる。だからすぐに返答ができる。
「――すぐに砕いてみせるよ」
 爪を立てながら伸ばしてきた屍仙女の腕を如意棒で薙ぎ払う。ばらりと砕け散った骨を踏み付け、ヴェルは前進する。
 サンディも瑠璃色の風を纏い空中を舞う。後を追う複数の骨の腕を振り払い、掻い潜り、屍仙女の懐を狙って加速に身を任せたパンチを放つ。よろりとよろけた所へすかさずヴェルの如意棒が三段突きを繰り出す。
 屍仙女の身体は確かに硬く、砕けた骨がすぐに再生を始めていくが、防ぐ術を持っていなかった。サンディとヴェルによる止まない連続攻撃が徐々に分厚い骨の集合体を砕くと共に、しゅうしゅうと煙が上がっていく。
(「光……そうだ」)
 剣を振るっていたサンディが空を仰ぐ。
「ヴェル、太陽の光に当てよう。俺が雲を振り払ってくる。それまで一瞬だけ任せてもいいかな?」
 そうサンディが問い掛ければ、
「余裕だよ、サンディ」
 ヴェルは笑ってみせた。それは、絶対の信頼の証。
 サンディも笑顔で返せば、地面を蹴り上げ空へと駆けるように飛翔した。すぐさま彼を追う骨の腕。しかしヴェルがそれを許さない。
「砕くって、言ったでしょ」
 冷たく吐いた言葉、冷たい視線。屍仙女に向ける笑顔などない。そんな表情とは裏腹に、ヴェルの右腕は轟々と燃える炎を纏っていた。
 熱く重々しい一撃が屍仙女を襲う。その衝撃は屍仙女だけでなく周囲の地形をも砕いてみせた。
 砕ける身体と燃え盛る炎の輝きに屍仙女の悲鳴が響く。そこへ追い打ちを掛けるように、空高く飛んだサンディが剣を大きく一振りした。
 風を纏う衝撃波に裂ける雲。瞬時に広がる青空。そして地表を照らす太陽光。
「ああ……あぁ……ッ!!!」
 顔を覆う屍仙女。動きを止め、まるで溶けるかのように骨から煙を吹き出していく。
「終わりだよ」
 サンディの頭が下を向く。剣を構え、青空を蹴り、屍仙女の元へ一直線に落ち行く。
 ヴェルの炎の拳が振り下ろされると共に、サンディの黒き剣が屍仙女を貫く。その体は何と脆かった事か。散りゆく骨は身体を再構成する事なく、泡のように溶けて消えていくのだった。

 戦いの音は消え、静寂が戻った。この都にオブリビオンの脅威が消え去ったようだ。
 猟兵達が退けた事を伝えれば、避難をした人々は泣きながら感謝を伝えたという。
 そんな人々の気持ちなど知る由もなく、大熊猫達はころころと転がり、戦いに疲れた猟兵達に遊んでくれと要求をしてきた。足元を離れる気はなさそうだ。
 ……やれやれ、まだ戦いは終わらないらしい。猟兵達がもう少しだけこの都に居座る事にした事は、また別のお話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月20日


挿絵イラスト