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メガリス探索~メガリスロボ大地に立つ~

#グリードオーシャン #戦後 #メガリス

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 そこは周囲を崖に囲まれていた。翼持つ者が空から見下ろせば山の中腹を丸く斬り抜いた穴のように見えるだろう。北側は1/3程が水に没し泉となっている。そして南端には陸地の上に岩を積み上げて作られた祭壇と宝箱が一つ。
 静寂に包まれたこの場所に変化が訪れる。泉に気泡が浮き始めたのだ。気泡はどんどん多く激しくなり、やがて水面を断ち割って人影が飛び出す。
「見つけたわ、あれね!」
 ばしゃばしゃと水音を立ててその人影は歓声をあげる。
 否。”人”影と称するのは適切ではない。その下半身は魚の尾びれの様であるのだ。
「やりましたね、ボス!」「あれがそうなんですか? ボス」「おなかすきましたボス」「とにもかくにも」
「「「「お~め~で~と~♪」」」」
「やかましいわっ!」
 最初の人(?)影に続いて現れた者達。それもまた下半身が魚の物で、器用に泳ぐと取り囲み歌いだす。取り囲まれた人物は一喝すると手を振りかざす。するとその手の先から巨大な鮫が現れ歌う集団を薙ぎ払う。
「「「「きゃー!? ボスひどーい!」」」」
「ふん、安心して峰タックルよ、死にはしないわ」
 峰タックルとは? そんな疑問を頭に浮かべつつ、吹き飛ばされた下半身が魚の人影達、つまり人魚たちはボスと呼んだ者の元に再集結する。うずうずしている。歌いたいのだろうが流石にさっきの今で我慢しているようだ。
「ともかく、本当におめでとうございますボス。オセアナ様。あれが探していたメガリスなんですよね?」
 人魚たちのボス、オセアナと呼ばれたやはり人魚のような、それでいてどこか違うような少女は重々しく首肯する。
「ええ、あれこそ持ち主に巨人の身体を与えるメガリスよ。以前カルロスが使っている所を見た事があるの。彼は特に有用な物だと思わなかったみたいだけれど、私にとっては使い道があるわ……そう」
 オセアナは少女のような白く小さい拳をきつくきつく握りしめ、深海の青を思わせる瞳に復讐の薄暗い炎を灯す。
「落ちてきて私の住処を潰したあの憎い島を、のうのうとその上で暮らしている地上の奴らを全部ぜーんぶ、二本の足で踏みくだいてやるわ!」
「「「「きゃあー! ボスかわいい! か~わ~い~い~ね~♪」」」」
 人魚たちは再びオセアナを取り囲み、むしろ惜しくらまんじゅうのように密集し歌いだす。余談だがオセアナが従える人魚達はみな大人の美しい女性の姿をしている。そして当のオセアナは愛らしい少女の様な姿をしている。
「なんか知らんけど腹立つー!!」
「きゃー!? りふじーん!」
 再び巨大な鮫が暴れた。


「メガリスの確保をお願いしたいのですが、手が空いている猟兵の方はおられますか?」
 グリモアベースの一角で真月・真白(真っ白な頁・f10636)が声を上げる。興味をそそられた猟兵達が集まった所で、真白は本体である本を開き説明を始める。
「先日の戦争で猟兵が見事に討ち取った七大海嘯『王笏』カルロス・グリード。彼は保有するメガリスの多くを終の王笏島に隠し保管していました」
 メガリス、それはコンキスタドールによりいずこかより簒奪された秘法の総称。一つ一つが常識を超えた力を持つアーティファクトだ。コンキスタドール残党の手に渡るのは喜ばしい事では無い。
「予知で隠されたメガリスの一つがコンキスタドールに奪われようとしている事がわかりました。皆さんには終の王笏島へ向かい、その隠し場所へ突入してコンキスタドールを倒し、対象のメガリスを回収してきてほしいのです」
 コンキスタドールの手に渡らなければ問題は無いので、希望する猟兵が居るのならその人物の所属旅団に持ち帰っても構わない。真白はそう述べると侵入方法について説明を続ける。
「メガリスの隠し場所へは、島の北側の海中洞窟からしか侵入できません。空気のある場所までは相当の距離がありますので気を付けてください」
 更にその道中では分かれ道で迷わせて来る場所や、非常に狭くなっている場所などもある。呼吸と共にそうした難所に関する対策も用意しておくといいだろうと真白は助言する。
「空気がある場所には人魚の海賊集団が待ち構えています。彼女達の歌には様々な力があるようなので気を付けてください」
 人魚たちを撃破して先に進めば地上へと出る。そこにはメガリスが保管されていた宝箱があり、メガリスを手に入れたコンキスタドールが待ち構えているようだ。
「コンキスタドールは自身のユーベルコードに加え、同時にメガリスの能力によるユーベルコードを使用してきます」
 であればここに隠されたメガリスの詳細を知らねばならない、一体どんな能力が。猟兵があげた疑問に真白は重々しく口を開く。
「そのメガリスの名は、『グレート・アルティメット・ミラクル・ボンバー・ハイパーロボ』です」
 ……なんて?
「そのメガリスの名は、『グレート・アルティメット・ミラクル・ボンバー・ハイパーロボ』です」
 もう一度同じ言葉を繰り返し真白は一枚の写真を猟兵達に見せる。そこに写っていたのは紙製の箱。蓋の表面にはイラストが印刷されている。赤やら白やら青やらと原色でカラーリングされた人型ロボットのイラストが雄々しいポーズで屹立している。これは、プラモデルの箱だ。
「このメガリスは、どうやらキマイラフューチャーに存在したプラモデルのロボット人形のようなのです」
 一見するとプラスチックでできた只のプラモデルに見えるが、使用すれば無機物と合体し、二倍の身長を持つロボットになるという。使用者はコクピットの位置に据えられて意のままに操ることが出来るようだ。
「コンキスタドールはこのメガリスを発動させながら、自身のユーベルコードも使ってきます。ロボットによる攻撃とユーベルコードの二回攻撃を凌ぐ必要があるでしょう」
 ロボット事コンキスタドールを倒せば、メガリスの能力は解除され只のプラモデルに戻る。後はそれを回収すれば終了だ。
「猟兵が所有していれば良いので、希望があればご自身の所属旅団に持ち帰っても構いません。カルロスの遺した災いの芽を、どうか摘み取ってください。よろしくお願いします」
 本を閉じると真白は深く頭を下げ、転送準備に取り掛かった。


えむむーん
 閲覧頂きありがとうございます。えむむーんと申します。
 戦争シナリオなので早い完結を優先し、全てのプレイングが採用出来ない可能性がある事をご留意ください。

●シナリオの概要
 冒険・集団戦・ボス戦の三章構成です。
 一章では海を潜り島内に続く海底トンネルを泳ぎ渡ってもらいます。酸素の確保が必要になり、道中には複雑な分かれ道や非常に狭くなっている障害の多い場所等があります。
 二章では『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』の集団と戦闘になります。ここは空気がある場所ですが足元は水面になっているので、人魚達は高い機動力を誇ります。逆に無策だと足を取られる危険もあるので工夫があるとよいでしょう。
 三章ではメガリスを手に入れた『『大洋の奪還者』オセアナ・ディブロン』との戦闘です。メガリスの力でロボに乗り込んだ敵はロボのパンチや武装と自身のユーベルコードで二回攻撃をしてきますので気を付けてください。

●メガリス
『グレート・アルティメット・ミラクル・ボンバー・ハイパーロボ』
『発動能力:ビルドロボット』
 無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自動車】と合体した時に最大の効果を発揮する。 POW  No. 26。

 プレイングでこのメガリスに関して記述する際には『ロボ』や『メガリス』等で問題ありません。
 希望者がおられましたらご自身の旅団にメガリスを持ち帰る事が出来ます。アイテムの作成、発行はありません。複数希望者が居た場合抽選となりますのでご了承ください。

●合わせ描写に関して
 示し合わせてプレイングを書かれる場合は、それぞれ【お相手のお名前とID】か【同じチーム名】を明記し、なるべく近いタイミングで送って頂けると助かります。文字数に余裕があったら合わせられる方々の関係性などもあると嬉しいです。
 それ以外の場合でも私の独断でシーン内で絡ませるかもしれません。お嫌な方はお手数ですがプレイングの中に【絡みNG】と明記していただけるとありがたいです。

 それでは皆さまのプレイングをおまちしております、よろしくお願いします!
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第1章 冒険 『潜入、海中洞窟』

POW   :    けっこう素潜りでもなんとかなるよ

SPD   :    道具を使えば楽勝さ

WIZ   :    魔法を使えばどうにかなるさ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オーガスト・メルト
さて、あまり気は乗らないが潜って行くとするか
『うーきゅー!』『うにゃー!』
デイズ、ナイツ、文句を言うな。俺だって嫌なんだ
空気のある所までは懐に入って我慢していろ

【WIZ】連携・アドリブ歓迎
とりあえず…ナイツ、UCでお前の宝物庫から空気を取り出しつつ進むぞ
あと、水中では召喚した【竜鱗飛甲】を推進機代わりに掴んで移動する
これなら普通に泳ぐよりも速いはずだ

それとグローム、光属性の鋼糸を生成して照明に使うのと…俺たちの軌跡を残していってくれ
これは後続の猟兵や俺たちが帰る時にも役立つからな
『チチッ!』
お前は水に潜っても文句は言わないんだな
…まぁ、水もお前の司る属性のひとつだから当然か



●光のラインを足跡に
 オーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)は崖下を見下ろす。金色の鋭い双眸が捉えるのは崖に叩きつけられ水飛沫を上げる波。吹き上げる潮風はその深紅の長い髪と、それと同じく深紅で統一された彼のジャケットの裾とネクタイを激しく踊らせる。
「全くもって面倒な事だな」
 溜息が漏れる。上空から観察する限り情報の通り海上から入れるような様子は無い。であれば取るべき手段はやはり一つしかない。
「さて、あまり気は乗らないが潜って行くとするか」
『うーきゅー!』『うにゃー!』
 諦めたようなオーガストの宣言に、彼の両傍らからステレオ音声のごとく二つの鳴き声が同時に抗議をあげる。鳴き声の主は一目見たその印象を語るならば、丸い。ふっくら丸々としたその体に小さな一対の翼。カラーリングこそ白と黒と対象的ではあるが、その外見は角等の多少の差異を除いてはとてもよく似ていた。
「デイズ、ナイツ、文句を言うな。俺だって嫌なんだ」
 オーガストは宥めるような声色で両肩の小動物達に囁きながら軽く撫でてやり、その手を返して掌を見せる。
「空気のある所までは懐に入って我慢していろ」
 主の意を得たりとばかりに二匹はオーガストの手に乗る。それを確認して彼はジャケットの内ポケットにそれぞれ優しく彼らをいれた。
 二匹の分少し膨らんだジャケットを軽く撫でるとオーガストは大地を蹴り崖へと身を投げる。足場という邪魔者が消えた事で、オーガストを掴む重力の腕は彼を荒波渦巻く海上へ叩きつけんと引き寄せようとする。だが、オーガストの身体が加速して落下する様子は無い。彼の手工からフック付きのワイヤーロープが伸びていた。それは崖にしっかりと食い込み彼の重さに耐えている。
 そのままゆっくりとロープを伸ばして降りていくオーガスト。遂に靴先に波がかかる程まで降りると開いている手で印を結び召喚術を発動させる。
「水中では竜鱗飛甲(こいつら)を推進機代わりにするか」
 所有者の求めに応じ出現した白と黒、陰と陽の夫婦盾を、フック付きロープを外して自由になった左右の手でそれぞれ掴む。盾からは強大な竜気が迸り、オーガストはそれを海面に向ける事で体を浮かばせた。
「とりあえず…ナイツ、お前の宝物庫から空気を取り出しつつ進むぞ」
『きゅぅ……』
 その鳴き声はどことなく渋々と言った風に聞こえたが、それでも主の意向を無視することなどあり得ない。ナイツは己が宝物庫の見えざる扉を開帳する。しゅうう、と音を立てながら竜気によって隔絶された内側に空気が送り込まれる。
 竜とは宝を集める存在(もの)である。故に竜は宝を納める宝物庫を持つ。陸に生きるオーガスト、空に生きるデイズとナイツ。これから水の世界へと挑む彼らにとっては空気は唯一無二の宝に相違ない。既に膨大な量の空気をその宝物庫は収納済みなのだ。
「それとグローム、光属性の鋼糸を生成して照明に使うのと……俺たちの軌跡を残していってくれ」
『チチッ!』
 後続の猟兵や俺たちが帰る時にも役立つからな。と続けたオーガストに元気に鳴いて返事をしたのは、ジャケットの胸ポケットから現れた手の平サイズの蜘蛛だった。否、蜘蛛型のロボだった。
 蜘蛛ロボのグロームはオーダーされた通りの光る鋼糸を生成し始める。太く、柔軟な鋼糸。霧さく武器として使うならば不適切だが、今回の用途にはこの設定が最適だろう。
「お前は水に潜っても文句は言わないんだな……まぁ、水もお前の司る属性のひとつだから当然か」
 元気に鋼糸を出すグロームの姿を見て得心がいったという風に独り言つオーガストは全ての準備を整えたのを確認すると潜行を開始する。竜気の膜を通してみる海中は透き通っていて視界も良好だ。問題の海底洞窟は直ぐに見つけられた。
 洞窟の入り口に鋼糸の先端を取り付け、オーガストは洞窟の中へと挑んでいく。誰よりも先んじて進むオーガストだが、頼もしき相棒達と共に在る以上いささかの不安も無い。幾つかの障害も彼の道行きを阻むことなど不可能だろう。
 さらに彼が先行して目印になる輝く太い鋼糸を伸ばしておいてくれた事が、後続の猟兵達の海底洞窟踏破を大いに助けた事は言うまでも無い事だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幻武・極
へぇ、ここにメガリスがあるのか。
ここ最近動いてなかったから、いい準備運動になりそうだね。

さて、海底洞窟か。
ゲームとかでもよくある、アレをやってみるかな。
トリニティ・エンハンスで防御力を強化し、風のオーラ防御で空気を周囲に留めておくよ。
防具改造の要領で風のオーラの形状を変えながら狭い場所をやり過ごしながら突き進むかな。



●風舞海征
「へぇ、ここにメガリスがあるのか」
 幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は体を軽く柔軟させながら、その深紅の瞳で海原を見つめている。
「ここ最近動いてなかったから、いい準備運動になりそうだね」
 軽口を叩く口元に浮かべるは不敵な笑み。眼下の荒波を前にしても臆した様子は欠片も見えなかった。
「さて、海底洞窟か」
 準備を終えた極は思案する。流石に無策で素潜りした所でどうにかなる話ではない。
「あ……」
 極の脳内に浮かんだのは別の世界、かつて見かけたとある記憶。
「ゲームとかでもよくある、アレをやってみるかな」
 極は指先に魔力を籠めると高らかに鳴らす。弾けた魔力は彼女の身体を包み風が立ち始める。
「これをこうして、こう……」
 武術の型を作るように、舞踊の動きのように、極は体を動かしていく。すると周囲を巡る風が引き延ばされるように形無き形を変えていく。最終的に守りを強める動きで循環する風の結界が出来上がっていた。
「これで準備はOK、それっ!」
 極は気楽に身を投げ出す。後ろで縛っていた彼女の髪が揺れ、蒼空に溶け込む僅かな時間。だが直ぐに重力の腕が彼女を海に叩きつけんと彼女を絡み取り引き寄せ加速する。
「ふんっ!」
 極は冷静さを保ったまま、足を真っすぐ伸ばし踏みつけるように海面に激突する。大きな水柱があがるが、海水が彼女を濡らす事は無い。身を守るように固めた風が一切の侵入を許さないのだ。そして伸ばした足に合わせて戦端を長く鋭く、まるで槍のように形状を変えた風が海を切り裂き穿孔する。激突によって極が負ったダメージは完全に0だった。
「呼吸も問題無し、狭い場所は形状を変えながらやり過ごせばいいよね」
 独り言ちながら極は、別の猟兵が残した光る太い鋼糸に沿って泳ぎだすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】

小太刀チョイスのアルダワ特製着ぐるみ型潜水服(ペンギン)を着て
ふふ、魔法で呼吸が確保されてる仕様
今からわたしは、ペンギン・杏
カメラにV(キメっ☆)
ん、これで泳げなくても無問題…
ま、まつりん、ロープで引っ張って

潜水中は身振り手振りで会話する
小太刀、そっちの道が正解ね?
…ん、違う?
わかったまつりん、右手行ってUターンね?
大体受け取り違いしつつも、きっと何とか進んでいける
何故ならわたしの第六感がそう告げている!

…それだけなのもアレなので、分かれ道には進む道の方に岩を置いて目印をつけていく
ペンギン着ぐるみでは岩、持ち上げにくいけど…頑張る

ふ、これでまたここに戻ってきてしまっても大丈夫


木元・祭莉
【かんさつにっき】だよー。

今回はメガロボ出るんだってね! 楽しみだね!

えーと、海中を通っていくのかな?
アンちゃんはペンギンだから泳いで……行けないよね、わかった。
おいらがイルカジェット(?)で引っ張ってあげよう!

疾走発動!(ぶいーんと白炎で結界を張る)
だいじょぶ、素潜りと息止めはちょっと練習したコトあるから!
水中機動はそこそこ得意ー♪

綾帯を着ぐるみ用に垂らしておいて、海中をずんどこ進むよー♪
ん? 行き止まり?
だいじょぶ、ココはまっすぐだって、おいらの野生の勘が叫んでる!
(正拳いっぱつどっかーん☆)

なんか岩がいっぱいあるなあー♪(ばごん)(ばごん)
え、なに? めじるし??
……まいっかー♪(てへ)


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

ふふふふふ、杏のご注文の品はこれね
ペンギンさんの着ぐるみ型潜水服!
見なさいこの、ゆるっと可愛いパーフェクトなフォルムを
これぞ正に杏の為の逸品!
……あ、写真撮るね、ハイちーず♪

私もスナメリさんの着ぐるみ型潜水服着用
杏用の潜水服探してたはずが、私も衝動買いしちゃったや
深海適応で普通に泳いでも何とかなる気はするけど
まあ、それはそれって事で

かわいい海の仲間達も召喚
先行しての道案内を宜しくだよ

ふむふむ
杏、この先の角を左だってさ
わー、反対反対!

祭莉んは水中でも元気だなぁ
……って、そっちには行き止まりが!?
……いや、何でもないや(石壁に空いた大穴を見て思わず笑う
全く、洞窟壊さない程度にね?



●着ぐるみ潜水員爆誕
 カシャカシャ、船上でカメラのシャッター音が響く。そこには三人の人影。
「あぁ、いい、いいわ、もう一枚!」
 陽光を受け普段の灰色よりやや白味を増したツインテールを振り回しながら、カメラを構えて写真を撮り続ける少女。その被写体は大きなペンギンだった。否。ペンギンの着ぐるみを着てポーズを決める太陽の下にあってもなお漆黒を保つ黒髪の少女だった。事の起こりは少々遡る。
 メガリスを確保する為にやってきた三人は、船上で各々準備を始めていた。
「ふふふふふ、杏のご注文の品はこれね。ペンギンさんの着ぐるみ型潜水服!」
 灰髪の鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は、鞄からとっておきの着ぐるみを取り出すと、漆黒の少女木元・杏(メイド大戦・f16565)へと手渡す。
「ん、ありがとう小太刀」
 向日葵の如き黄金の瞳が喜びに細められ、杏は早速いそいそと着ぐるみを着込み始める。
「今回はメガロボ出るんだってね! 楽しみだね!」
 双子の妹が準備をしている傍らで兄である木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)は、今回の物区的であるメガリスに重いを馳せていた。なんといってもロボなのだ。多くの男の子にとってロボはやはり浪漫である。そうこうしている間に杏が準備を終える。
「おー! アンちゃんペンギンだー!」
 双子の妹たる杏と対比して、鮮やかな赤茶の頭髪から覗く獣の耳をヒクヒクと動かして祭莉は歓声を上げる。
「見なさいこの、ゆるっと可愛いパーフェクトなフォルムをこれぞ正に杏の為の逸品!」
 きぐるみに並々ならぬこだわりを見せる小太刀は、ペンギン姿になった杏の丸々としたフォルムに歓喜。
「……あ、写真撮るね、ハイちーず♪」
「今からわたしは、ペンギン・杏」
 ふふ、と笑いながら杏は、もといペンギン・杏はVサインを、カメラを向ける小太刀へと向ける。ペンギンの着ぐるみは腕の部分が翼になっている。だからVサインをしても見えない……筈が、翼の表面にVサインをするマークの様な物が発光して描き出される。
 それもそのはず、この着ぐるみは只の着ぐるみではなくアルダワ特製着ぐるみ型潜水服(ペンギン)なのだ。魔法による呼吸確保機能等を始め、潜水する為の仕掛けが色々仕込まれている。例えばこれも、水中でハンドサインをする代わりに、その手の形に合わせたマークが浮かび上がるようになっている。
 かくしてひとしきりペンギン・杏の撮影会が行われる事となったのが冒頭の光景だ。小太刀もとりあえず落ち着き、自身の準備を始める。当然着ぐるみだ。
「杏用の潜水服探してたはずが、私も衝動買いしちゃったや」
 そう言ってくるりとその場で回転してみせる小太刀。その姿はスナメリになっていた。スナメリとはイルカの一種である。
「普通に泳いでも何とかなる気はするけど」
 深海に適応する技術を身に着けている小太刀であれば、恐らく必要最低限の準備で潜る事も出来るのだろう、が、まぁ、それはそれって事で、と流す。
「コダちゃんも似合ってる!」
「ありがと……って祭莉んそれだけ?」
 褒める祭莉に少し照れながら応えた小太刀は、祭莉が水着などの最低限の準備だけで済ませている事に少々驚く。
「だいじょぶ、素潜りと息止めはちょっと練習したコトあるから!」
 いや、息止めだけじゃ無理だろ。思わず突っ込もうとした小太刀だったが、幼馴染として長年見てきた祭莉のフィジカルを考えると、なんだか出来そうな気がしてしまう。結局、苦しくなったら直ぐに伝えるようにとだけ言い含めて納得する。生まれる前から共にいるペンギン・杏にとっては心配すらしている様子はない。むしろ祭莉の方が妹に心配そうな顔を向けている。
「アンちゃんはペンギンだから泳いで……」
「ん、これで泳げなくても無問題……」
「「……」」
「ま、まつりん、ロープで引っ張って」
「……行けないよね、わかった」
 かくして三名は海底洞窟へ向けて海の中へ潜っていくのだった。

●進む先に待つのはお菓子の家ではない
「(おいでおいでー)」
 水中でスナノメの着ぐるみを来た小太刀が手招きをする。すると何処からともなく海の仲間達が集まってくる。lこの辺りの海域が暖かいのか、今回呼ばれたのは熱帯魚などどことなく温かい海に死んでいそうな仲間達ばかりだった。
 海の仲間達に先行してもらい道案内を頼み一行は進み始める。小太刀は自身で泳いで、ペンギン・杏は祭莉が垂らした綾帯をしっかりと掴み……これもまた指が隠されているので翼部分の吸着機能で吸い付ける。
 当の祭莉は。
「(おいらがイルカジェット(?)で引っ張ってあげよう! 疾走発動!)」
 全身が白炎の結界に包まれた祭莉。空を自由に跳びまわる恩恵を得て、それを水中を進む推進力とし、ペンギン・杏を牽引しながら進みだす。
「(ふむふむ。杏、この先の角を左だってさ)」
「(小太刀、そっちの道が正解ね?)」
 ハンドサインで情報共有し、ペンギン・杏は祭莉へ進むべき方向を伝える。
「(わー、反対反対!)」
「(……ん、違う?)」
 少々行き違い等も発生するが、別の猟兵が残してくれた光る鋼糸とい痕跡と、海の仲間達の先行案内。そしてペンギン・杏の第六感がさく裂し何とか進んでいく。
「(……それだけなのもアレなので)」
 連れて行ってもらってる感が高いのか、ペンギン・杏は目印として分かれ道の進む方に岩を置いて目印をつけていく。
「(ふ、これでまたここに戻ってきてしまっても大丈夫)」
 着ぐるみの上から持ち上げにくい岩を頑張って置いた成果に満足しながら、ペンギン・杏は引っ張られていく。
「(祭莉んは水中でも元気だなぁ……って、そっちには行き止まりが!?)」
 祭莉の様子をみて笑顔だった小太刀だったが、海の仲間達からの連絡に急いで止めようとする。だが。
「(ん? 行き止まり? だいじょぶ、ココはまっすぐだって、おいらの野生の勘が叫んでる!)」
 祭莉は止まる所から逆に加速して岩壁へと向かっていき、そのまま拳で岩壁を吹き飛ばすと、その先にも道が現れていた。
「(……いや、何でもないや。全く、洞窟壊さない程度にね?)」
 幼馴染のはちゃめちゃっぷりには小太刀も苦笑いするしかない。
「(なんか岩がいっぱいあるなあー♪)」
 一行はいつの間にか、張られた光の鋼糸を見失い、ぐるりと回って元の通路に戻ってきていた。ペンギン・杏が残していた目印の岩を見つけ、自身の策が見事に嵌った事に満足していると、なんと祭莉が目の前でその岩を砕いてしまった。
「(まつりん、それ目印だから壊しちゃ駄目)」
「(え、なに? めじるし??……まいっかー♪)」
 ペンギン・杏の必至な訴え(ハンドサイン)も祭莉にはいまいち通じず笑顔を返されるだけで。パン屑ではないから食べられる事こそなかったが、それでも目印は失われてしまう。
 古来より、兄妹が迷子にならぬようにと置いた物は失われる宿命なのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アリス・フォーサイス
海底トンネルの探索って、聞こえは楽しそうだけど、初心者には無理すぎない?猟兵をなんだと思ってるの?

泣き言を言っててもしょうがないね。メガリスやコンキスタドールがいるところに一般人を連れていくわけにもいかないし。

事前にその手のプロに必要な装備とレクチャーを十全に受けるよ。

さあ、お宝探しに出発だ。これで美味しいお話がなかったら許さないからね。



●お宝(物語)を求めて
「海底トンネルの探索って、聞こえは楽しそうだけど、初心者には無理すぎない? 猟兵をなんだと思ってるの?」
 アリス・フォーサイス(好奇心豊かな情報妖精・f01022)は波に揺れる船の上で吠えた。ミレナリィドールを模した姿のバーチャルキャラクターであるアリスの、整っていて柔らかそうな頬は、不満と共に口内に吸い込んだ空気でぽっこりと膨らんでいる。
 確かに海で暮らすような種族でなければ長期間の潜水活動は素人で出来る事では無い。超人的な身体能力を有する猟兵や、水中をものともしないユーベルコードを有する者もいるがアリスはそうでは無い。
 そこで彼女が行ったのは至極全うな方法だった。事前にプロにレクチャーを十全に受け、必要な装備を揃えたのだ。
「えーとまずはこれを装備してー」
 事前にスーツを身に着けていたアリスは道具を広げる。ゴーグルやライト、手足を傷つけないように手袋とブーツ、その上から足ひれと専用のジャケットを見に纏う。その他にも様々な装備を見に纏い、背中にも立派な酸素ボンベを背負い準備は完了した。
「さあ、お宝探しに出発だ。これで美味しいお話がなかったら許さないからね」
 何かに言い含めるかのように、首を何度も首肯させながら宣言するアリス。首の動きに合わせて頭の大きなリボンンがひらひらと揺れた。
 そうしてアリスは初めて潜水の為に海に飛び込む。そう初めてだ。事前にレクチャーを受け、プールなどで練習はしていたが本当の海にたった一人で潜るのはこれが初めてだった。
「(よし、順調順調)」
 無謀に思えるアリスの行動だったが、いざ潜ってみれば泳ぐその足は力強く海水を蹴り進み、酸素の消費も冷静な呼吸で極力抑え、でこぼこした岩肌をしっかりと警戒して進んでいく。物語を摂取する為に敢えて不利な行動をとる縛りをすることで彼女は身体能力を増大させる力を持っている。だからあえて本番まで本当の海で練習をしていないのだ。
 光る鋼糸の横を進みながら、アリスはまだ見ぬ物語の味わいを想像して、舌なめずりを……現実の口は塞がれているので心の中で存分に行うのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミヤコ・グリードマン
海底トンネルねぇ、ちょっと面倒くさいけど…
わたしなら余裕よね

UCを使って【限界突破】した【念動力】で自分の周囲に球状に【サイコシールド】を展開
これで水流も水圧も関係ないし、移動も念動力を使えば泳ぐ必要もないのね
酸素は宇宙服を装備していけばいいし、明かりは【ガンビット】のカメラ用が使える…かな?

んー、なんか狭くなってきてるけど……狭いなら拡げればいいのよね
展開していた【サイコシールド】をドリル状に変形させて、そのまま掘り進んでいくわ、ていうかこのまま真っ直ぐ掘っていけば迷ったりしなくていいんじゃないの



●水底の宇宙海賊
 幾人かの猟兵が立った崖にまたもう一つ、人影があった。
「海底トンネルねぇ、ちょっと面倒くさいけど……わたしなら余裕よね」
 小柄な人影は少女だ。日焼けとは明らかに異なる生来からの色黒の肌を惜しげも無く晒し仁王立ちしている。透き通った紫の瞳に宿るのは、己が強者であるという絶対的な自身。その佇まいと被る髑髏マークのビコーンを見れば、この世界の民ならば十人が十人共に彼女を海賊であると思うだろう。そう、確かに彼女は海賊である、だが、彼女が渡り歩くのは青き海ではない。宇宙(ソラ)の海なのだ。
 ミヤコ・グリードマン(海賊王女・f06677)、星の海を翔ける彼女が此度挑むのは重力の底、星々の輝きの及ばぬ蒼黒の海中である。
「宇宙の根源、絶対なる無限力……その力を、見せてやる!」
 ミヤコは瞳を閉じる。瞼の裏、体の内、そこにはもう一つの宇宙が在った。内の宇宙の根源へ意識の手を伸ばす。その先には外の宇宙が在った。内と外は繋がり意思は現実に干渉を始める。、
 ミヤコの足が宙に浮く。否。彼女は浮いたわけではない。彼女の靴底と大地の間に不可視の壁が生まれたのだ。
 念動力。人が宇宙へ進出した事で覚醒した可能性(ちから)。ミヤコの内より生じた意思の力は、今物理的に彼女を包む力場となって現出した。 
「これで水流も水圧も関係ないし、移動も念動力を使えば泳ぐ必要もないのね」
 結果に満足して笑顔を浮かべるミヤコ。
「酸素は宇宙服を装備していけばいいし」
 そう言って腰のポーチから何か小さな機械を取り出すと自身の肌に貼りつける。次の瞬間機械から噴き出したナノマシンがミヤコの肌を覆う。
「明かりはガンビットのカメラ用が使える……かな?」
 ミヤコの念動力は存在しない腕を伸ばし、小型の機械に触れる。ガンビットと呼ばれるその機械に内蔵された装置が念動力を感知し、ミヤコの意思のままに跳びまわり始める。
 全ての準備を終えた宇宙海賊は海へと向かう。他の猟兵が残してくれた目印等を辿りつつ海底洞窟を進むミヤコ。しかし途中でつい最近崩れたような場所もあり、段々と周囲が狭くなってくるのが、念動力で生み出したサイコシールド越しに感じられた。
「んー、なんか狭くなってきてるけど……狭いなら拡げればいいのよね」
 イメージするのは掘削する構造、すなわちドリル。サイコシールドは物理干渉が可能になったミヤコの意思だ。イメージを送る事で自由自在にその形は変わる。
 目論見通り狭くなってきた部分を掘り広げそのまま進むミヤコ。ふと気づく。
「ていうかこのまま真っ直ぐ掘っていけば迷ったりしなくていいんじゃないの」
 そこに気づいてからは早かった。一応待機させていたバイクのAIに演算させ、掘り進んでも崩落などの危険が無い事を確認するとミヤコは猛然と進んで行くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』』

POW   :    楽曲番号一番「黒海のネレウス」
【ご機嫌な仲間たちと共に魂へと響き渡る歌】を披露した指定の全対象に【この歌を聴きながらお祭り騒ぎしたいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
SPD   :    楽曲番号八番「紅海のアプスー」
戦闘力のない【愉快に歌う海の音楽隊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【魂へと響き渡る歌を共に楽しく奏でること】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ   :    楽曲番号二四番「死海のエーギル」
【活気ある仲間と魂へと響き渡る歌を奏でた】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 魔法で、あるいは念動力で。はたまたプロから習得した技術で、あるいは着ぐるみやただ単に息を止めて。猟兵達は様々な手段を駆使して、海底洞窟という試練を突破する。
 やがて洞窟内部の高度は上がり、海水は膝上程度となり久方ぶりの空気が猟兵達を出迎える。空気が伝えるのは美しい歌声。見れば前方に美しい人魚の集団がいた。彼女らは重い思いに陣取り歌っている。
 一目見ただけでわかる。彼女らはオブリビオンだ。だのに、それなのに。彼女達の歌が耳から離れない。鼓膜を震わせ脳を刺激し、得も言われぬ高揚感を呼び起こす。今すぐにでも武器など放り棄てて彼女達と一緒に歌い踊り騒ぎ出したい。そんな気持ちが湧き上がってくる。
 それこそが歌う海賊団として名の知れたオケアニス・シレーネスだ。歌を何よりも愛する彼女達は、立ち寄る島々でそれらを披露する。彼女達の歌には力が宿る、それは聴く者の心を揺さぶり、歌い楽しみだす。それ以外の全てを忘れその命潰えるまで。
「あ、お客さんだ!」
「猟兵だー!」
「それじゃあ最初から歌いなおそ?」
「うんうん、ね、猟兵さんも一緒に歌おー♪」
 無邪気に笑い誘いかけるオケアニス達。そこに悪意はないのかもしれない、だが脅威はある。ここで野放しにすれば彼女達は斧が衝動のままに多くの島を滅ぼすだろう。そして、目的のメガリスが安置されているのはこの先だ、彼女達を排除しなければ進む事は出来ない。
 空気は戻ったとはいえ足元は水に没している。また洞窟内部という閉鎖空間は音を反響させる。人魚であり、歌に異能を宿す彼女達はこの場において機動力と歌の力を増していると言える。猟兵達は瞬時に戦況を判断し各々戦闘に移行していくのだった。
アリス・フォーサイス
一緒に歌ったら楽しそうだな。

ちびアリスたちも召喚してみんなで歌うよ。楽しんでばかりもいられないし、歌に破滅魔法をのせていくよ。

むこうも歌で強化されてるだろうけど、どちらの歌の力が上か、勝負だね。



●歌には歌で
「へいへーい、じゃあ次の曲いっくよー!」
 オケアニス達の宣言と共に彼女達の周囲に様々な影が生まれる。色とりどりの魚たち、イカやタコ、エビやカニ、バリエーション豊富な海の仲間達は皆楽器を奏で始める。
「ららら~♪」
 愉快な音楽に合わせて歌いだすオケアニス。敵であっても聞き惚れてしまいそうな歌声が、輝きとなって彼女達の武具を輝かせる。
「一緒に歌ったら楽しそうだな」
 アリスも心の内側から湧き上がる衝動を抑えつつ、気楽そうに言ってのける。
「よーし、いでよ! ぼくの分身!」
 頭上に振り上げられたアリスの細い腕、その指先から世界を書き替えるプログラムが走り出す。彼女の周囲の空間はこれでもうアリス(ぼく)の世界だ。
「およばれしましたー」「いぇいいぇーい」
 喚びだされるのはアリスの分身たち。アリスをそのままデフォルメしたような分身たちが何体も現れワイワイガヤガヤと賑やかにしている。尚、足元が海水に漬かっているのを考慮したのか、彼女達は皆思い思いの小舟に乗っていたり浮輪をつけてプカプカ浮かんでいたりだ。
「それじゃあ皆いっくよー!」
「まっかされたー」
「いぇいいぇい、しぇけなべいべー」
「ららら~♪」
 本体のアリスが海水を跳ね刺せながらポーズを決めると、分身たちは波に流されてきゃーきゃー騒ぎながら本体と共に歌い出した。
「あはっ、こっちも負けてられないね、るるる~♪」
 アリス達と人魚達の自由即興による攻防が続く。時に相手の歌を打ち消し、時に混ざり合って新たなハーモニーを生み出していく。
「っと、楽しんでばかりもいられない」
 アリスは更に世界に侵入(アクセス)していく。声帯から発せられる己の歌声、それを響かせる空気の振動そのものに魔法を乗せていく。
「(むこうも歌で強化されてるだろうけど、どちらの歌の力が上か、勝負だね)」
「きゃっ! 楽器が!」
「あっ、お魚さんが!」
 アリスの鈴の様な歌声に込められた、破滅もたらす魔法は人魚達に力を与える歌と音楽に真っ向からぶつかり、その力を打ち消していく。その余波を受けて人魚に召喚された海の音楽隊の一部は吹き飛んでしまうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

幻武・極
へぇ、歌う海賊団にこの洞窟は厄介だね。
さらにユーベルコードで数も増やしてくるとはね。
でも、ボクはちょっとこの水深は有利かな。
これだけ浅いとキミ達は泳げないでしょ。
そして、ボクはこの一本下駄で完全に水に浸かっているわけじゃないからね。

すぐさま接近して磁場形成を使うよ。
数を増やしたのも悪かったみたいだね。
キミ達同士でくっつきあっている状態で歌うことはできるかな?
無理な体勢で肺?エラ?を潰して呼吸が難しいんじゃないかな。



●NとS
「へぇ、歌う海賊団にこの洞窟は厄介だね。さらにユーベルコードで数も増やしてくるとはね」
 他の猟兵と人魚との音楽合戦を見物しながら、極は不敵に笑う。
「でも、ボクはちょっとこの水深は有利かな。これだけ浅いとキミ達は泳げないでしょ」
 ここは天然の洞窟だ、人の手によって整地されているわけでないので、地面は凹凸がある。殆どが人魚の泳ぎに支障の出ない水深だが、一部には浅い場所もある。
「そして……」
「それなら遠くから攻撃しちゃうもーん」
 極の言葉をさえぎって、人魚の一部が海の音楽隊によって強化された弓矢を放つ。彼女達の認識では、陸の者達は水に足を取られればその動きは遅くなり、強化された自分達の矢を避けることなど不可能だったのだ。ところが。
「ええー!? なんでそんなに早くぴょんぴょんできるのー?」
「ボクはこの一本下駄で完全に水に浸かっているわけじゃないからね」
 見せつけるようにその場でステップする極。彼女の履いているのは歯の長い一本下駄。バランスを取るのが難しいその下駄でしかし極の足さばきに不安になる要素は一切無い。
「そ、それでもこっちに来たらちゃんと走れないよ」
 人魚が尻尾で水面を叩いて飛沫を飛ばす。確かに人魚達がいる周囲はそこそこの水位があり、二本の足で走っていくのは足を取られてしまう。
「じゃあ試してみようか」
 言うや否や人魚達の元へすぐさま接近する極。足元の水深が下がりそのまま足を取られるかと思われた次の瞬間。その姿は何十歩もの距離を一瞬で飛び越えて人魚達の目の前にいた。
「え!? なんでー1?」
 慌てて散開しようとした人魚達、なのに何故か隣にいる仲間がこちらに肩をぐいぐいと押し付けてきて動けない……違う、自分が相手から離れられない!?
「数を増やしたのも悪かったみたいだね」
 不敵な笑みを浮かべる眼前の極。
「一体何をしたのー!」
「幻武流『磁場形成(マグネティックフィールド)』……私が触れた所に磁力を与えたんだ」
 矢を避けた後で見せたステップ。その時下駄に既に磁力を与えていた。そして両足に同極を発生させ、反発する力をカタパルトにしたのだ。
「キミ達同士でくっつきあっている状態で歌うことはできるかな?」
 人魚達がロケットのように飛んできた極に驚いたその隙を付いて既に彼女達には磁力を与え終えている。お互いが強力に引き合う力で離れる事も出来ずもがく人魚達。
「無理な体勢で肺? エラ? を潰して呼吸が難しいんじゃないかな」
 目論見通り歌も止まった。拳を構えて極は宣言する。
「この技は無差別攻撃だから、上手く対応してね。さて、ボクはNとSどっちかな?」
「いーやー!?」
 その後、磁力の引き寄せと反発を活用した極の、あらゆる角度から襲い来る縦横無尽の無差別攻撃に、人魚達は蹴散らされるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミヤコ・グリードマン
ふぅん、わたしの事を歌で出迎えなんて、気が利いてるじゃない
下が魚だけど、胸は可愛がり甲斐がありそうよね
いつもならお持ち帰りコースなのに、オブリビオンなのが残念ね

念動力で水面に浮いたまま、歌に合わせて踊るように真の姿に変身
そのままUCを発動、アバタールを呼び出す

基本的にその場を動かず、悠然と立ったまま
サイコシールドで防御を硬めて、周囲にガンビットを展開
アバタールと互いに死角をカバー、サイコバレット掃射

あーっはっはっは、ひれ伏しなさいっ!
これが、海賊王女の戦い方よっ!



●領域外の女王達
「ふぅん、わたしの事を歌で出迎えなんて、気が利いてるじゃない」
 腕を組み背筋を真っすぐに屹立するミヤコのその様は、尊大でありながらもどこか絵になっている。まさに海賊女王と呼ばれる彼女に相応しい威厳を感じさせていた。
「下が魚だけど、胸は可愛がり甲斐がありそうよね。いつもならお持ち帰りコースなのに、オブリビオンなのが残念ね」
「うちのボスみたいに小っちゃくてかわいーけど、こっちだっておことわりー!」
 先ほど蹴散らされ数を減らしながらも、再び海の音楽隊を呼び出して戦闘準備に入る人魚達。
「残念ね、水の上だってわたしには関係ないのよ」
 ここまで潜水に用いていた自身の心の力、即ち念動力を再び噴出させるミヤコ。原子にすら干渉を始めるそれは人類が見出した第五の力。ミヤコの足元から海水が退いていく。まるで女王の御身を濡らすのを恐れるかのように。
 サイコシールド、見えざる隔壁は今は足元を中心に展開される。それが発する斥力でミヤコの小さな体は水面の僅か上を漂う。そして彼女は滑るように踊りだした。
 知識ある者が見れば、氷の上を滑って踊る競技のそれを思い起こさせるかもしれない。ミヤコは水上を翔け、回り、飛び、舞う。人魚達の強化された矢の鋭い一撃も、体をひねって紙一重で避ける。あくまで優雅に、舞の所作を取り入れたままで。
「もー、あたんないよー」
「ダンスにはパートナーがいるわね……血脈の始祖、原初の魂。我が命脈の内より、仮初の肉体を以て現われよ」
 抑揚をつけた喚び声。ミヤコの身体に流れる血を通り道に、その魂を目印に、『何か』がやってくる。
 形而上から形而下へと、周囲に大量にある海水を材料に、『何か』の肉体が形成されていく。今のミヤコよりもずっと背が高い。人間でいう所の脇の辺りにもう一つの肩があり第三と第四の腕が生えている。足元まである長い髪が揺れているのは風のせいではない、一本一本を己が意思で動かす事が出来るからだ。
 大きな体を支えるように発達した筋肉と、その上に女性らしさを思わせる丸みを帯びた豊かなラインを伴っている。強さと柔らかさ、異なる二つのコンセプトからの究極の肉体美が共存しうる人知を超えた『美』が、そこには在った。
「ふふふ、それじゃあいくわ」
 見れば、ミヤコもまた大きくその姿を変えていた。呼び出された存在と同じ、異質でありながらも美しさを持つ姿になっていた。『何か』を喚びよせた代償か、はたまたそれは褒章なのか、『何か』の血脈の末であるミヤコに眠る真なる姿と力が励起されたのだ。
 『何か』とミヤコは向かい合って手をふれあい、再び踊りだす。二人の周囲には無数のガンビットが起動して展開を始める。
 人魚達がまわりこみ死角から矢を放とうとしても無駄だ。踊る二人がお互いの死角をカバーし合い、共鳴する事で更に強固になったサイコシールドで全てをはじいてしまう。お返しとばかりに一矢に三倍のガンビットが砲火する。
「きゃー!?」
「あーっはっはっは、ひれ伏しなさいっ! これが、海賊王女の戦い方よっ!」
 あちこちで吹き飛ばされていく人魚達。光線の煌きを照明に、爆音をBGMにしながら二人は踊り続ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

オーガスト・メルト
閉鎖空間で歌は厄介だな!
【狂気耐性】で耐えられる間にケリをつける。

【POW】連携・アドリブ歓迎
デイズ、UC【万炎陣】を発動!
敵そのものに当てなくてもいい。眼前の空間の音を喰らってかき消せ!『うきゅー!』
ナイツはバイクへ変形だ。一気に【ダッシュ】で距離を詰めるぞ。『うにゃー!』
【焔迅刀】で【なぎ払い】、【吹き飛ばし】攻撃を放って敵同士をぶつけて歌を妨害しながら戦う。
グローム、可能なら毒・雷属性の鋼糸の【気絶攻撃】で倒れた敵を刺して拘束しろ。『チチッ』
声が出せないように痺れさせたい。

生憎だが俺の好みはもっと静かな曲でな。
続きは骸の海でやってくれ。



●アンコールは求めない
「閉鎖空間で歌は厄介だな!」
 猟兵達の活躍により人魚達も半数ほどは既に骸の海へと帰した。それでも彼女達の士気は下がる気配は無く、楽し気な音楽と歌は止む気配を見せない。
「ららら~♪ あなたもいっしょに騒ぎましょ~♪」
「ちっ!」
 鼓膜を震わせ脳をかき乱す歌。意思に反して踊りだしそうになる体をオーガストは抑え込む。数多の世界を股にかけて戦う彼が見に付けた心の防壁。正気を蝕む狂気への耐性が、人魚の魔の歌に抗っていた。
「(耐えられる間にケリをつける)」
 とはいえそれは永遠に耐え続けられるものではないと本人が一番よく理解している。そしてまた、このような斬るべき実体の無い脅威への対処も、よくわかっているのだ。
「デイズ!」
「うきゅっ!」
 主の声に応えて白き塊が飛び出す。可愛らしい姿のままだか、真剣なまなざしで前を睨みつけている。
「敵そのものに当てなくてもいい。眼前の空間の音を喰らってかき消せ!」
「うきゅー!」
 高らかに鳴くと、デイズは自身の何倍もの巨大な炎を吐き出す。炎は人魚に届かず、その眼前の何も無い空間を炙るのみに見えた。だが。
「らら……あ、あれ? 歌がなんか変」
 気持ちよく歌っていた人魚達の顔に困惑の色が浮かび始める。歌の響き方が変わった、なんだかきちんと相手まで届いていないような気がする。
「どういうことなのー!?」
「竜王の炎に燃やせぬものはない! 例えそれが天変地異であろうともだ!」
 歌とはつまるところ音だ。音とは気体液体固体を問わず、物質を振動させることで伝達される。つまり音とは振動、波である。対してデイズの放った火炎はただ物質を燃焼させるだけにとどまらない。形の有る無しを問わず、事象そのものを焼却が可能なのだ。つまり、歌の正体である振動という事象そのもを『焼き尽くした』
「ナイツはバイクへ変形だ。一気にダッシュで距離を詰めるぞ」
「うにゃー!」
 勿論態々人魚にそういうった説明をするつもりなど、オーガストには欠片もない。想定外の状況に困惑する人魚の隙を見逃さず、一転攻勢に討って出る。
 黒き竜は漆黒のバイクへと変じ、その背に主を乗せる。水飛沫をあげながら疾走するその上でオーガストは抜刀した。燃え盛る炎をそのまま鋼にしたかのような紅の刀身が煌めく。
「きゃーっ!?」
 バイクの突進力を乗せた大ぶりの一撃は、最も近い位置にいた人魚を捉えると吹き飛ばす。他の人魚にぶつかっても止まらないその勢いで彼女達は将棋倒しになっていく。
「グローム、毒・雷属性の鋼糸で倒れた敵を刺して拘束しろ」
「チチッ」
 声が出ないように痺れさせたいという主の意を組み、蜘蛛ロボは的確に鋼糸を飛ばして人魚達を感電させていく。
「し、しびびびれてうたたたえないー」
「生憎だが俺の好みはもっと静かな曲でな」
 倒れ痙攣する人魚の一体に近づくオーガストは、利き手に握った焔の太刀を構える。
「じじじじゃあ、つつつぎは……」
 紅閃一輝。苦しみを与えぬ最速の、最小の一撃でオーガストは人魚の命を奪い取る。
「続きは骸の海でやってくれ」

成功 🔵​🔵​🔴​

木元・杏
【かんさつにっき】
ふう、久々の空気
ずっと息止めてたから、はい、皆で一緒に深呼吸(すぅ~)

ん?小太刀は急に歌うよ?
歌声に気付き顔を上げれば、小太刀スナメリが沢山…違う、これはオブリビオン。脅威の存在
……でも、合唱は楽しいので、その申し出受けて立つ

さ、うさみん☆【Shall we Dance?】
わたしも今日はダンサー杏
短い手足と丸いフォルムのペンギンだけど、動きはキレッキレ!…あ(コケた)

気を取り直し
オカリナと歌の音色に合わせてくるくる踊る
さ、人魚さん達も一緒に
ダンスしつつ近付き手をつなぎ
怪力でぐんぐん思い切り回転で振り回し、活躍も苦戦もする隙は与えない

ラストはペンギン・ぱんち!


木元・祭莉
【かんさつにっき】で。

到着!(深呼吸)

わー、人魚さんだ。
うんうん、一緒に歌おー♪

最初は、人魚さんたちの歌に合わせて。
アンちゃんのペンギンダンスにも合わせて。
コダちゃんのぺっぽこぴーメロディにも合わせて。
ハモりやオブリガート(対旋律)、ボイパ(口打楽器)に手拍子足拍子ダンスと、即興で合わせていくねー。
へへ、母ちゃんにも誉められたんだー♪

じゃあそろそろ本気出していくよー?
ゆべこ発動!

絶妙にピッチの狂った破響音。
耳のいい音楽家だけが嫌がる音階を、人魚さんたちにぶつけていくよー。
アンちゃんコダちゃんには気付かれないくらいの、びみょーな手心で。

歌はね、少しくらい……な方が楽しいって♪
母ちゃん言ってた!


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

ぷはぁ、やっぱ新鮮な空気は美味しいね

歌?うた…歌は祭莉んに任せるとして(歌は超苦手
スナメリの手にはシンプルだけど可愛いオカリナ
意を決してふうっと吹けば
澄んだ音色で奏でられるへっぽこなリズム
そこ、笑うなー!

それでも合わせられる祭莉んとうさみん☆って凄い
…むむむ、悔しくなんかないんだからね?(超悔しい

杏のダンスも様になって…あ、コケた
しまった、折角のシャッターチャンスが!?(重要なのはそこ

急ぎ召喚する元気な海の仲間達
ウミガメさんにカメラを渡し
あとは頼んだわよ!

磯と潮風の香りに満ちたこの空間は
彼らにとっても居心地いいみたい
文字通り水を得た魚の様に大はしゃぎして
遠慮なく追撃しまくるよ



●歌唱合戦
「到着!」
「ぷはぁ、やっぱ新鮮な空気は美味しいね」
「ふう、久々の空気」
 ばしゃばしゃと水音を立てて現れたのは祭莉、小太刀、杏の三名。
 ブルブルと頭と尻尾を振って水気を飛ばす祭莉。隣ではペンギン着ぐるみの杏が安堵の溜息を吐き、小太刀も久しぶりの解放感に浸る。
「ずっと息止めてたから、はい、皆で一緒に深呼吸」
 すーはー。杏の提案に乗って三人で仲良く深呼吸。すると杏の耳に美しく楽し気な歌声が飛び込んでくる。
「ん? 小太刀は急に歌うよ?」
 顔を上げた杏は最初小太刀が歌っているのかと思った。何故なら歌っている人影は二本足ではないからだ。スナメリ着ぐるみを纏った小太刀スナメリ以外に誰が居よう……いやまて、小太刀スナメリが一人、小太刀スナメリが二人、小太刀スナメリが三人……小太刀が沢山。
「へ? わたしはここだけど?」
「わー、人魚さんだ」
 杏の傍らで小太刀はきょとんとし、祭莉は手をフリフリ。人魚達も応えるように手を振り返して歌う。
「ららら~♪ 一緒に歌いましょ~♪」
「……違う、これはオブリビオン。脅威の存在」
 杏も気づく。目の前の美しい人魚達は世界を破滅に誘う存在であると。猟兵として滅さなければならぬと。
「……でも、合唱は楽しいので、その申し出受けて立つ」
「うんうん、一緒に歌おー♪」
 むん、と拳を握って(着ぐるみの中なので見えない)立ち向かう意思を見せる杏。遊びたい意思ではない、筈だ。
 対して祭莉は全力で楽しそうに拳を振り上げ飛びあがる。遊びたい意思ではない。多分。
「歌? うた……」
 一方顔色を悪くしたのはスナメリ、ではない小太刀だ。はっきりいって超苦手。その事を知る付き合いの長い木元兄妹は、ここは任せてとばかりに前に出る。
「ららら~♪」
「いえーい♪」
「ふふふーん♪」
 あえて抗わずに人魚達の歌声に合わせて踊りだす二人。
「さ、うさみん☆ Shall we Dance?」
 うさみみメイドさんのうさみん☆を喚び出すと共に踊りだす杏。祭莉もその隣で体をクルクル回しながらノリノリで踊っている。
「……歌は祭莉んに任せるとして」
 一人踊りの輪から外れた所にいる小太刀は、スナメリ着ぐるみ越しの手にオカリナを持っている。シンプルだが小さくて可愛いオカリナをずっと見つめる小太刀。しばし迷っていた彼女だが、意を決し、その唇を噴き口に沿える。ふうっ。
 人魚達の音楽を遮るように、オカリナの澄んだ音色が響く。心洗われるようなその音色で奏でられたリズムは。
「うわーい、コダちゃんぺっぽこぴーメロディ♪」
「そこ、笑うなー!」
 小太刀の怒声に合わせてオカリナがポピー♪と珍妙な音を立てる。祭莉は大笑いしながらも小太刀の奏でるメロディにしっかり乗って踊り続ける。うさみん☆もそれに合わせ祭莉の頭に飛び乗ってポーズを決める。
「それでも合わせられる祭莉んとうさみん☆って凄い……むむむ、悔しくなんかないんだからね?」
「ん、小太刀待って。わたしも今日はダンサー杏」
 感心しつつもツンデレる(動詞)小太刀に向かって杏は、否、ダンサー杏は意義を申し立てる。自分もやってやるのだ、と。
 ペンギン着ぐるみの短い手足と丸いフォルムもなんのその。キレッキレの動きを披露するダンサー杏。
「……あ」
「杏のダンスも様になって…あ、コケた」
 ばしゃんと水飛沫を跳ねさせてスッ転ぶダンサー杏を見て小太刀は愕然とする。
「しまった、折角のシャッターチャンスが!?」
 大慌てで海の仲間達を召喚する小太刀。ウミガメにカメラを渡すと、あとは頼んだわよ、と演奏を再開する。
 再び始まる人魚の音楽と小太刀のぺっぽこぴーメロディの合奏。その中で祭莉は華麗に踊り歌っている。人魚達の歌声にハモり、小太刀の変化が急な音楽の合間合間に助奏を差し込んでフォロー。更にボイスパーカッションと手拍子足拍子をダンスを行いながら組み込んで即興で二つのメロディに合わせていく。非常に高い音楽センスと運動神経がなせる技だ。
「へへ、母ちゃんにも誉められたんだー♪」
 両親の下に居た頃を思い出して自慢げな祭莉。ここまででも十分な技量だが、まだまだその底は見せていない。
「じゃあそろそろ本気出していくよー?」
「ららら~♪……ん?」
「るるる~♪……あれぇ?」
 一見して祭莉の様子に変化はない。だが、人魚達は顔をしかめたり首を傾げたりり、如実に変化が顔に、そして鈍くなった動きに出ていた。
「(歌はね、少しくらい……な方が楽しいって♪ 母ちゃん言ってた!)」
 もはや異能の粋にまで達したそれは父親の歌なのだという。祭莉から発せられる歌声が人魚達の歌に乗せられた魔力を雲散霧消させ、彼女達の身体能力の強化が解除されていく。
「今よ、いっけーっ!」
 歌の変化には気づけずとも人魚達の変化ならば、日々剣を磨く小太刀も見抜く。今が好機と海の仲間達をけしかけていく。
 磯と潮風の香りに満ちたこの空間は海の仲間達にとっても居心地がよいようで、文字通り水を得た魚の様に大はしゃぎをして人魚達へと突撃していく。
「きゃっ! 危ない!」
「ひゃー!?」
「ん、大丈夫?」
「ありがとうー……って、あれ?」
 吹き飛ばされた人魚に手が差し伸べられ、彼女はそれを掴んで立ち上がる……いや、これは手ではない、これは、ペンギンの翼だ。
 大騒ぎに紛れて踊りながらすぐそばまでダンサー杏が近づいていたのだ。
「一緒に踊ろ?」
「ひゃああああー!?」
 逃げようとした人魚を掴んで離さない杏。そのままぐんぐんと踊り周り振り回していく。
「ちょっとちょっとこっちこないでえええええ!?」
 ひとしきり回って遠心力を高めた所で、他の人魚達の所へ放り投げる杏。憐れ人魚達はひとまとめになって倒れこむ。急いで体勢を立て直そうとする人魚達の芽に移るのは、此方へカッとんでくる一匹のペンギン(着ぐるみ)だ。
「ラストはペンギン・ぱんち!」
「「「「きゃー!? ボスごめーん!」」」」
 かくして歌う海賊団『オケアニス・シレーネス』は猟兵達の活躍で壊滅。今回が解散コンサートと相成ったのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『大洋の奪還者』オセアナ・ディブロン』

POW   :    鮫牙呪具魔術『アクセリオス・デ・コルミリオス』
命中した【鮫】の【牙でできたアクセサリー】が【自身からすぐに外れ、対象に食い込む形】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    鮫肌装甲魔術『ピエル・デ・ディブロン』
全身を【触れたものを削り取る鮫肌】で覆い、自身の【鮫魔術の魔力】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    鮫影具現魔術『ソンブラ・デ・ディスカード』
【あらゆる環境で活動できる元の姿の自分】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 歌う人魚達を撃破し、海底洞窟内には静寂が訪れていた。猟兵達は各々戦いの余韻を心に宿しながら先へと進む。やがて光が差し込む、洞窟の終わりがやってきた。
 抜けた先は広々とした空間。山をくりぬいたようにぽっかりと広がるここは、まるで巨人が作った箱庭のようだ。足を濡らす水もようやく終わり、久しぶりの大地へと上陸する。
「む、人間、っていうか猟兵!……そう、あの子達は負けちゃったのね」
 前方、小さな台座の上から声がする。そこには一人の少女がいた。先ほど倒した人魚達のように下半身は魚の如き姿をしている……が、人魚達とは種類の異なる形。ふわふわと風に遊ぶ豊かな髪、整った顔立ちは一見すれば愛らしい少女のそれだが、猟兵達に向けられた表情は敵意を隠していない。
「勝手に人の事ボス呼ばわりして付きまとって、そのくせボスって呼ぶのに子供扱いして舐め腐って、そんでもっていつもやかましく歌ったり演奏したりして……えぇ、うっとおしい奴らだったわ、邪魔だった。折角かわいいんだからオシャレしましょうだのお手入れしましょうだの、本当しつこかったのよ、ホントよ」
 人魚達の事を吐き捨てる少女。だが、その声色にはどこか……
「だから、メーワクばっかりかけられたんだし、恩なんて欠片もないけど……ホントよ? ホントに無いから敵討ちとかじゃないけど、でも、貴方達を殺すわ。私の住処(だいじなもの)を奪った人間達を殺す前に、貴方達(どうるい)を殺してあげる。このメガリスの力でね!」
 一気にまくし立てた少女は、手にしていたメガリスを掲げる。グリモア猟兵が語っていたように、それは一見するとある程度科学の発達した世界で玩具として販売されているような、プラモデルのロボットでしかない。だが所有者の意思を受けてその体は輝きだす。すると少女が立つ足元の台座が、そして周囲の岩や瓦礫の様な物がどんどん少女を覆うように集まってくる。やがてそれは巨大な人型へと変貌し、光が途絶えた。屹立するのはプラモデルのロボットとまったく同じ巨体。さらにはその巨体に合わせたサイズにまで巨大化した鮫が具現化される。
 『大洋の奪還者』オセアナ・ディブロン。彼女は本来只の鮫でしかなかった。しかしある時別の世界より『島』が現れ、彼女の住処を押しつぶしてしまった。
 『島』の出現はその上に暮らす人々が意図したものではなく、これは不幸な事故だったのだが、そんな事彼女には納得できるものではなかった。住処を、仲間を、人間に奪われた。その憎しみだけで彼女は鮫魔術を習得し、上半身だけだが人間の姿すら獲得するに至った。
 そしてコンキスタドールとなった彼女は今、遂にメガリスロボという、憎き『島』と人間を蹂躙する為の二本の足を得て大地に立った。今ここで彼女を食い止めなければ、この世界の島と言う島、人と言う人は、彼女の憎しみにに踏みつぶされるだろう。それを食い止められるのは、猟兵達だけだ。
オーガスト・メルト
お前は力を得てしまった事が最大の不幸だったタイプかな?
たまにいるんだ。無力であったままなら、次へ進めたのにってのがな。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズ、ナイツをランスとバイクの形態にして戦闘開始。
敵の動きを【見切り】つつ【空中戦】モードのナイツでヒット&アウェイに徹する。
強い攻撃は合体させた【竜鱗飛甲】での【盾受け】で回避。
敵の合体過程は見せてもらったからな、本体の場所は分かる。
そこへ集中的に【ランスチャージ】で攻撃して装甲を削っていこう。
ある程度削ったらUC【奥の手】でフックを射出して【鎧無視攻撃】を貫通させる。

理不尽には同情する…が、自分が同じ理不尽となっても復讐にはならないぞ?



●深紅舞う
「いくわよ、『ピエル・デ・ディブロン』!」
 鋼の巨人の中から拡声されたオセアナ・ディブロンの声が響く。メガリス『グレート・アルティメット・ミラクル・ボンバー・ハイパーロボ』によって生み出された金属ボディの表面を鮫肌が覆う。大人の腰ほどもあろう腕を振り回せば周囲の岩をガリガリと削り取ってしまうほどの鋭さを見せる。
「お前は力を得てしまった事が最大の不幸だったタイプかな?」
 鮫肌装甲を纏った巨腕の恐るべき破壊力を目にして、オーガストの顔には動揺の色は欠片も見えない。だがその金色の瞳は僅かに憐憫の色を帯びていた。
「たまにいるんだ。無力であったままなら、次へ進めたのにってのがな」
 生物は生き延びる事が本能だ。只の鮫であったなら、住処と同族を失ったとしても生き残れた奇跡に感謝し、広大な海で新しい住処と同族を探して生き続ける。だが彼女は、大切な存在を奪った相手を憎んでしまった。自身の生存よりも復讐の完遂を選んでしまった。そしてその為の手段を得られるだけの力を持ってしまっていた。
「何をわかった様な口をっ!」
 鮫魔術によって鋼の巨人は信じられない速さを得る。風を切り音を後ろにオーガストに迫る巨体。だがその拳が振り下ろされた時、そこに朱き竜騎士はもういない。手甲に仕込んだフック付きロープで後方の空中へとその身を放り出している。
「デイズ! ナイツ!」
『うーきゅー!』『うにゃー!』
 主の呼びかけに勇ましく応える二匹。その姿は瞬時に大きく変化する。漆黒の二輪バイクと白銀のランス。
「戦闘開始」
 空中で身をひねりバイクにまたがるオーガスト。その利き手にはランスが握られもう片方の腕がハンドルを握る。空中に逃げた彼を追った鋭い鮫肌装甲に包まれた巨拳が眼下から迫る。
「甘いっ!」
 オーガストは迅速にハンドルを切り、自身の身体も大きく傾ける。重心移動を加えた急速旋回。突き上げられる巨腕の周りを螺旋の動きで駆け降り回避。大振りのアッパーでがら空きになった胴体へ錐もみ回転しながらのランスチャージを仕掛ける。激しく火花を散らす突撃は、確かな傷をつけるも分厚い装甲の半ばで食い止められる。
「そんな爪楊枝で私の鮫肌装甲魔術を貫けると思っているの!」
 オセアナの怒号と共に左の巨手がオーガストに迫る。
「七華! 七晶!」
 オーガストの声に応えて、陰陽の夫婦盾が眼前に躍り出る。盾より放たれる竜気の壁は巨手よりも大きくしっかりと受け止める。
「はあっ!」
 竜鱗飛甲が張り手を防いでいる間に漆黒のバイクは大きく宙返りをして再加速、再び巨人の胴体へとランスの一撃を放つ。最初の一撃と寸分たがわぬ位置へそのまま叩き込まれた槍先は先ほど食い止めた内部装甲を突き破り小さな穴を開ける。
「飛びまわってうっとおしいのよ!」
 業を煮やすオセアナ。巨人を操作し防がれている左手の代わりに右手をオーガストに迫らせ、両手で潰そうとするが、オーガストは即座に上方に逃げて行きがけの駄賃に巨人の顎を突き上げる。
「きゃっ! ど、どこに行ったの!?」
 鋼鉄の巨人は目の部分がカメラにでもなっているのか、強制的に上を向けさせられてオセアナはオーガストを見失ったようだ。
「(合体過程は見せてもらったからな、本体の場所は分かる)」
 オーガストの姿は巨人の背後にあった。メガリスが安置されていた台座の裏に隠れているのだ。彼はメガリスが発動し、巨体が形成されていくまでの過程を完璧に記憶している。そして狙うべき場所に既に二度、必要なだけ傷をつけた。これで仕込みは整った。
「どこを見ている、こっちだ!」
「な、後ろ!?」
 飛び出し存在をアピールするオーガスト。オセアナは急いで巨体を振り向かせる。その動きにぴったり合わせてオーガストは拳を付きだした。瞬間、勢いよくフック付きロープが飛び出す。フックは狙いたがわず彼が二度にわたって付けた胴体の傷へと飛び込み、そのまま僅かに開いた穴を通って内部へと侵入を果たす。
「きゃああっ!!」
 甲高い悲鳴。オーガストは引き戻されたフックに付着した赤黒い血から、オセアナに確実にダメージを与えた事を確信する。
「理不尽には同情する……が、自分が同じ理不尽となっても復讐にはならないぞ?」
「くうぅ……う、うるさいうるさいうるさい!」
 オセアナが呻いたのは肉体の痛みか、はたまた図星を突かれた心の痛みか。何かから目を背ける様に叫び散らして、巨体はオーガストへと突撃してくる。対するオーガストは先ほどとは打って変わって静かに正対していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリス・フォーサイス
召喚!ブライダルベール!

あれ?意外と小さいんだね。でも、手加減はしないよ。

速いな。でも、やりようはある。
ビットでけん制して、進路を誘導し、大鎌の餌食にしてあげるよ。

さらに、高速詠唱で魔力をすいとっちゃうよ。
魔力の扱いはこっちの方が上ってこと見せてあげるからね。


ミヤコ・グリードマン
あんたに不幸なことがあったっていうのはわかったけど
こっちだって殺されるわけにはいかないのよね
さっさと骸の海に帰るといいわ

位相空間に待機させていたグレート・グリード・ワンを召喚
喚んだ直後は光も吸い込むような、のっぺりとした影法師のような人型
わたしが乗り込むと黄金の輝きを放つ真の姿を模した四腕の巨人へと変化

どう、コレであんたと互角、ううん、それ以上ってわけよ

銃口に変化させた指先を束ねて高速回転
ガトリング砲化した四腕でUCを発動
大量のサイキックエナジーの弾丸をオセアナのメガリスに叩きつける

これでさようならね、悲しい人魚さん



●白欺き金圧倒す
 突撃を仕掛けた鋼の巨人の眼前に、白き光が降り注ぐ。
「召喚! ブライダルベール!」
 光の中にもう一体の巨人が現れる。白い装甲は丸みを帯びて、どこか女性らしさを思わせるフォルム。突撃してきた鋼の巨人を受け止める白き巨人。
「あれ? 意外と小さいんだね。でも、手加減はしないよ」
 白き巨人の中から聞こえるのはアリスの声だ。
「ちっ、まさか同じようなメガリスを持ってただなんて!」
「メガリスとはちょっと違うんだけど……まいっか。ここからはぼくとブライダルベールがお相手するよ!」
 警戒するように後方に下がる鋼の巨人。白き巨人ブライダルベールは背に持つ光輝く翼をはためかせ追いすがる。が、鋼の巨人は鮫肌装甲魔術の効果で凄まじい速度で離れていく。
「速いな。でも、やりようはある」
 ブライダルベールはその場に立ち止まると鎌を携えていない方の手を前に突き出す。すると真っ白な花びらが舞う。
「一体何を……きゃあっ!?」
 いぶかしむオセアナは急な衝撃に悲鳴をあげる。何事かと確認すれ、ばブライダルベールの周囲を舞う花びらから光弾が放たれている。否、花びらではない、これはブライダルベールの兵装、遠隔操作されるビット兵器群だ。
「こ、小癪な……きゃあっ!」
 ビット達が周囲を取り囲むように飛び回って、息つく暇なく光弾を浴びせてくる。たまらずオセアナは弾幕の少ない方、少ない方へと逃げていく。
「大鎌の餌食にしてあげる」
 だが、その先にはブライダルベールが待ち構えている。その手にした大鎌がアリスの魔力を受けて光り輝く。光の残像を残して振り下ろされる大鎌。その先端が鋼の巨人の左肩に深々と突き刺さる。
「魔力の扱いはこっちの方が上ってこと見せてあげるからね」
 アリスは好機と見て接触面を通じてオセアナの魔力を奪い始める。
「くううぅ……そ、『ソンブラ・デ・ディスカード』!」
 全ての魔力を奪われてしまう前に、急いで次の鮫魔術を行使するオセアナ。アリスは急に背後に殺気を感じて横に飛びのく。次の瞬間その場所に巨大な鮫が突撃してくる。
「ふーん、具現化の魔術だね」
「もうさっきの様にはいかないわよ」
 巨大鮫は周囲のビットに突撃し、散らしていく。ビット包囲網を脱した鋼の巨人は高速で走り回りながらブライダルベールへ襲い掛かる。
 迎え討とうとするブライダルベールだが、そこに背後から巨大鮫が突っ込んできて邪魔をする。アリスの的確な操作で巨人と巨大鮫の同時攻撃を回避するブライダルベールだったが、それでも二者は執拗に追いすがってくる。
「二体一になったってことはわたしも加わっていいわよね?」
 そこに乱入したのはミヤコだ。彼女が指を鳴らせば、地面に黒い影が生まれる。そこからあられるのは影。一切の光を吸収し逃がさない影法師の触手が巨大鮫を絡めとる。
 その触手が繋がっているのは影法師の頭だ。そして立ち上がる影法師の腕は四つある。うち一つがミヤコの元へと降りてくると、彼女は悠然とその手に乗った。
「くっ!」
 分身を救出し新たな脅威を排除しようと、鋼の巨人は高速で突撃し、その拳をミヤコに叩きつけようとする。しかし影の巨人が残る三つの腕で抑え込む。
「あんたに不幸なことがあったっていうのはわかったけど、こっちだって殺されるわけにはいかないのよね」
 眼前まで迫る鋼の拳に一切ひるむことなく言い放つミヤコ。
「さっさと骸の海に帰るといいわ」
 そう吐き捨てると影法師の胸元に飛び込む。すると影法師の表面に無数の亀裂が走りだす。亀裂の間からは黄金の輝きが漏れ出し周囲を染め上げる。
 そして亀裂が限界点に達した時、影ははじけ飛ぶ。吹き荒れるサイキックエナジーの嵐に鋼の巨人はその巨体を大きく吹き飛ばされる。
「どう、コレであんたと互角、ううん、それ以上ってわけよ」
 羽化を果たせしその姿は、先刻ミヤコが見せた真の姿と同じ物だ。
「さぁ、奪ってあげましょう? グレート・グリード・ワン」
 グレート・グリード・ワンは主の意思に従い、四つの腕全てと触手の全てを鋼の巨人へと向ける。その先端は銃口へと変形し高速で回転を始める。
 コックピットの中でミヤコの精神は極限まで集中されていた。内なる宇宙の深奥、根源から引き出せる限りの力を引き出す。額より出でた汗が整った顔を伝い落ちる。自分の精神を、自己が失われないギリギリの範囲まで根源に繋ぎ、膨大なサイキックエナジーのパイプラインとする。
「サイコバレル、フルオープン! サイキックエナジー、フルチャージ!ファイヤー!」
 ミヤコを通じてグレート・グリード・ワンに送られるサイキックエナジーを撃ちだす。可視化され光の弾丸と化すほどの高純度サイキックエナジーは、その全てに破壊の指向性が与えられ、恐るべき破壊エネルギーとなって鋼の巨人へと降り注ぐ。四門のガトリングと無数の触手砲は光の弾丸の雨を降らせ、鋼の巨人を蜂の巣へと変えていく。
「きゃあああっ!!」
 助けに入ろうとした巨大鮫はアリスのブライダルベールに妨害され、大鎌で切り裂かれる。
 やがて銃撃の嵐は止む。無限量のサイキックエナジーを用いたサイコ兵器に弾切れの概念は無い。砲門の方が耐えられる限界点を向かえてしまったのだ。
「これでさようならね、悲しい人魚さん」
 オーバーヒートを避けるために冷却モードへと移行するグレート・グリード・ワンのシステムメッセージを横目に、モニターに映し出される鋼の巨人を見てミヤコは独り言つ。巨人も巨大鮫もまだ無力化はされていない、が、自身や他の猟兵達によって受けたダメージは計り知れなく。結末は既に見えている、と考えたのだ。
 機械音に包まれながら、海賊王女は止まる事の出来なかった憐れな鮫に黙祷する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木元・杏
【かんさつにっき】
ロボに乗った人魚、しかもツンデレ
…(小太刀見て
あ、ううん、小太刀がロボに乗ってるみたいとかそんな事思ってない、うん
大丈夫、小太刀はロボに乗らなくても負けてない、ナンバーワン・オブ・ツンデレ(こくこく)

【うさみみメイドさんΩ】
相手は大きい、だからこそ小さなメイドさん達の出番
メイドさんズ、ロボの巨体を足場にジャンプでコクピットまで駆け上がって?
飛翔して確り巨体にしがみつき、攻撃はギリギリで飛び避け、ロボに自滅を狙わせる
蟻集まり樹を揺るがす
メイドさんズの作る隙を狙い、わたしもコクピットへ突進

コクピットのツンデレさん
皆が、また一緒に歌おうって

ロボ、引き取り手が無ければ持って帰りたい


木元・祭莉
【かんさつにっき】でレッツゴー!

おおー、ロボ来たー!!
あ、メガリスなんだね?
じゃあ倒さないといけないね。

んーと?
そっか、歌ってた人魚さんたち、ロボさんちの仲間だったんだね。
それはご愁傷さまでした。(ぺこり)
だいじょぶ、骸の海に戻ったら、また会えるよ!(にぱ)

よっし、おいらも仲間呼ぼう!
ぴよことひなことまっきーを呼んで、アンちゃんとコダちゃんのトコまで飛ぶよー♪

鳥型のぴよこは羽搏きからの衝撃波攻撃。
花型のひなこは太陽ビームの乱射。
獣型のまっきーはダッシュジャンプからの牙攻撃。

ピンチのところへ転移、しもべと一緒に戦うよー。

お疲れさま。
キミたちのコトは、ずっと覚えてるからね!(メガリス片付けつつ)


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

そうね
私達は彼女達の仇
貴女には戦う理由がある
でも私達も退く訳にはいかないの
島を、島に生きる人達を護る為に戦うよ
……
だからそこ、ツンデレ言うなー!(ツッコミも最早お約束?

シリアスモードはあっけなく終了
スナメリ着ぐるみにウサミミ装着すれば
海の仲間達にもウサミミ生えてパワーUP!

ふふふふふ、空を飛べるのはロボだけじゃないんだからね!
不敵に笑み
ウサミミ☆ホワイトランス(超巨大イカ)の背に乗り
海の仲間達と共に空へ
杏や祭莉ん達が動き易い様
ロボと鮫の注意引き戦うよ

…巨大怪獣vsロボ、浪漫よね(ぐっ!←漏れた本音

武器受けとオーラ防御で
想いを正面から受け止めた上で
骸の海へ彼女達の所へ
送り出すよ



●小さき者達の戦い方
「私は……人間達を潰して、島も潰して、取り戻すのよ! こんな所で止まってられないわ!」
 あちこちの装甲が剥げ、無惨に内部機構を晒す鋼鉄の巨人。一部露出した胴体部からは、額から流血しているオセアナの顔が覗いている。苦痛に顔を歪めながらも、その闘志が萎える様子は見せない。
「そうね。私達は彼女達の仇。貴女には戦う理由がある」
 オセアナの復讐心を肯定したのは小太刀だ。筋違いの復讐だとしても、もはや呪わねば生きられなかった彼女の気持ちを、小太刀は逆恨みと切り捨てる心持になれなかったのだ。
 小太刀の表情は硬い。奥歯はかみしめられ唇はきつく閉じられている。言葉を交わす事も、その手を握る事も、オセアナの救いにはなり得ない。それが小太刀には溜まらなく悲しい。それでもその紫水晶の瞳から涙があふれる事はもう今は無い。
「でも私達も退く訳にはいかないの。島を、島に生きる人達を護る為に戦うよ」
 刀を、構える。今の小太刀が彼女にしてあげられる事、それは彼女の消す事の出来ぬ憎しみを、真っすぐに受け止めてあげる事だけなのだ。
「……」
 小太刀の隣で、杏もまた静かにオセアナを見つめていた。その金色の瞳に宿るのは真剣な色で。
「ロボに乗った人魚、しかもツンデレ……」
 真剣なまま小太刀を見る。
「あ、ううん、小太刀がロボに乗ってるみたいとかそんな事思ってない、うん大丈夫、小太刀はロボに乗らなくても負けてない、ナンバーワン・オブ・ツンデレ」
「だからそこ、ツンデレ言うなー!」
 杏。ぐっと両手の拳を握りこんでこくこく。小太刀。全力で突っ込む。シリアスモード終了のお知らせである。
「おおー、ロボ来たー!!」
 そんな二人のやり取りの傍らでは祭莉がハイテンションで飛び跳ねている。
「ん。そう、あれがメガリス」
「あ、メガリスなんだね?」
 じゃあ倒さないといけないね。妹の言葉に祭莉は楽しそうな表情を崩さないまましっかりと戦いの構えを取る。
「ふん! あいつらみたいに行くと思ってもらっちゃ困るわ!」
「んーと?」
 オセアナが自分に向ける怒りの視線に最初はきょとんとした顔をした祭莉だったが、直ぐに発言の意図を理解すると頭を下げだす。
「そっか、歌ってた人魚さんたち、ロボさんちの仲間だったんだね。それはご愁傷さまでした」
「……は?」
 祭莉の突然の悼む言葉に間の抜けた声を出してしまう。
「だいじょぶ、骸の海に戻ったら、また会えるよ!」
「……逝くのはお前達が先よ!」
 怒号と共に叩き込まれる巨拳。祭莉はひゃっほーい、と歓声をあげて落下地点から逃げ出す。杏と小太刀も飛びのいて散開。即座に行動に移る。
「相手は大きい、だからこそ小さなメイドさん達の出番」
 承りました、とでもいうかのように杏の周りに侍るうさみみメイドさん達はお辞儀、そして祭莉めがけて振り下ろされた拳へと駆け出していく。杏より放たれ士不可知なる念の糸に繰られ巨人の足元に駆け寄ると、その勢いを活かしたままジャンプ。足の甲に、膝の上に、腿の上に……大きく武骨なその体は小さな彼女達にとって足場が沢山ある崖の様なものだ。
 もちろん巨人もただ黙って自身の身体を跳んで昇ってくる人形達を見ていたわけではない。振り払おうと身を捩り、手で払い落そうと大きな手を振り抜く。うさみみメイドさん達はそれらの不規則な動きをしっかりと観察し、ギリギリのタイミングで飛びのけて進んで行く。
「この、ちょこまかと!」
 苛立つオセアナ。巨人の腕を操作して払い落そうとするのだが、しっかり貼りついている上にかえって自身で自身の装甲を傷つける結果になってしまう。
「蟻集まり樹を揺るがす」
 繰り手の杏もまた駆け出していた。目指す先はコクピット。うさめみみメイドさん達に手こずる今なら、ダイレクトアタックの隙がある。
 杏の突進に何の合図も無く祭莉と小太刀も動く。

「ふふふふふ、空を飛べるのはロボと鮫だけじゃないんだからね! 行くよみんな!」
 小太刀の喚び声に応えたのはやはり海の仲間達。だが、海底洞窟侵入時と大きく違うのは、彼らが皆ウサミミを付けている事だ。そして彼らは海だけでなく、空中を泳いで跳びまわる。何故ウサミミが着いただけで彼らは空を飛べるのか、それは古来よりウサギは一羽二羽と鳥と同様に数えられているから……いや、正直よくわからない。とりあえず、飛ぶ。
「行くわよ、ウササミミ☆ホワイトランス!」
 小太刀自身も超巨大イカ(ウサミミ)の背に乗りロボへと突撃。そこにそれはさせんと巨大鮫が割って入る。お互いに有利な立ち位置を得ようとぐるぐる回るイカと鮫。巨大鮫がウサミミ☆ホワイトランスに抑えられている隙に他の海の仲間達(ウサミミ)は巨人へと到達。体に貼りついているうさ耳メイド達と強力し、周囲を飛びまわって巨人を執拗に妨害する。
 杏や祭莉が動きやすいよう注意を引きつける、それが小太刀の狙いだ。
「……巨大怪獣vsロボ、浪漫よね」
 という本音も実はある。

「よっし、おいらも仲間呼ぼう!」
 祭莉も二人をアシストせんと三体の戦闘ロボを喚び出す。
「ぴよこ、おいらを乗せて飛んで!」
 鳥型ロボは背に祭莉を乗せると空へと羽ばたく。花型ロボのひなこはその場から太陽ビームを乱射し、鋼の巨人の破損部分を拡大させてく。
 空を行く主を追うように大地を駆ける獣型ロボのまっきーは、その勢いのままジャンプし、空中でウサミミ☆ホワイトランスと睨みあう巨大鮫の腹へと噛み付く。
 たまらず暴れる巨大鮫。まっきーを振り払いウサミミ☆ホワイトランスへ突撃してくる。
 小太刀はウサミミ☆ホワイトランスの先端へと移動し、此方へ向かってくる巨大鮫を真っすぐに見据える。腰を低く落とし、利き手は納刀されている片時雨(あいぼう)に軽く触れて。 激突。巨大質量の一撃は、小太刀の鼻先僅か数ミリの所で彼女のオーラが生み出す不可視の壁によって阻まれる。
「くっ……」
 噛み合わさった歯と歯の間から僅かに漏れる呻き。小太刀は巨大鮫の、憎しみの炎を絶えず灯し続ける瞳を見つめている。
 この巨大鮫はオセアナの元の姿を鮫魔術で再現したもの、それがメガリスの効果で巨大化した版だ。つまりその意思もまたオセアナと同質であり、ある意味でもう一人の彼女と言える。
 そんな巨大鮫(もう一人のオセアナ)の憎しみを、小太刀は真っ向から受け止めている。受け止めると、決めたのだ。受け止めた上で送り出すと。
「おやすみなさいっ」
 抜刀。雨が降る。彼方を濡らすことなく、此方(小太刀)だけ降る、方時雨。オーラの壁が消える、激突。巨大鮫の突撃(憎しみ)を受けながら刀が走る。まさに縦横無尽。巨大鮫は存在を固定させている核を断たれて幻となって空に溶けた。
「後は巨大ロボね」

 多数の妨害を受けながらも、鋼の巨人は昇ってくる杏めがけて拳を振り下ろさんとしていた。が、そこに巨大鮫を片付けたウサミミ☆ホワイトランスの巨大な触手が絡みついて縛り上げる。
「アンちゃーん!」
 このタイミング、転移で突如出現したのはぴよことその背に乗る祭莉。ぴとこの羽搏きから生み出される衝撃波が鋼鉄の腕にヒビを走らせる。
「ていやー!」
 ぴよこの背を足場に、空に躍り出る祭莉。彼の拳が繰り出す渾身の一撃が、鋼の右腕を砕く。猟兵達の攻撃のダメージを蓄積し、ついにこの一撃が決め手となったのだ。
 同時に左腕は祭莉によって切り落とされる。鋼の巨人は振るうべき両腕を失った。
「二人とも、ありがとう」
 兄と幼馴染に短い謝辞を伝えた杏は一気に駆け上がる。そして白銀に輝くオーラの剣で半壊していたコクピットの扉を切り裂いた。
「コクピットのツンデレさん。皆が、また一緒に歌おうって」
「っ! お前達がっ!」
 魔術と言う形すら成さない感情のまま発露させた魔力の衝撃波。咄嗟に伸ばした白銀の刃はオセアナの体に確かな傷を負わせたが、杏も外にはじき出される。
「きゃーっちっ!」
「ん、まつりんありがと」
 再び転移した祭莉が杏を抱き留め、そしてその二人を小太刀が乗るウサミミ☆ホワイトランスが回収した。
 三人が見つめる中、無惨な姿になった鋼の巨人は何処かへ向かって歩き出す。追撃は、必要ない。その先に最後の猟兵が待ち構えているからだ。
「お疲れさま。キミたちのコトは、ずっと覚えてるからね!」
 そう言う祭莉と、そして杏と小太刀は最後まで見送りながら、その光景を心に刻み込むのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

幻武・極
やれやれ、逆恨みもいいところだよね。
キミ達の住処を奪ったのは落ちてきた島なのに、そこに住んでいるからって島の人たちに逆襲するなんてね。
島そのものをどうにかできないから、住民に矛先を変えているだけだよね。
とりあえず、キミは仲間の所に送ってあげるよ。

それだけ大きくなったら攻撃は当てやすいよね。
そして、鮫牙のアクセサリもそのロボット同様に大きくなっているから、その位置に注意しながら攻撃を躱し、羅刹旋風で強化した一撃を打ち込むよ。

もし機会があったら敵討ちはしておいてあげるよ。
キミが本来恨まなければならない相手、この世界に他の世界の島を呼び出している存在にね。



●貫く旋風
「やれやれ、逆恨みもいいところだよね」
 右の拳と左腕、そしてパーツの多くを失った鋼の巨人。それでもなお歩みをやめないその前に立ちふさがったのは極だ。
「キミ達の住処を奪ったのは落ちてきた島なのに、そこに住んでいるからって島の人たちに逆襲するなんてね」
 極の夕日の様な赤い瞳は嘲りの色を纏っている。その視線の先にはオセアナ。コクピットの扉を破壊され露わになったその姿は、あちこちから出血をし、荒く息を吐いて大きく肩を震わせる、手負いの姿だった。
「島そのものをどうにかできないから、住民に矛先を変えているだけだよね」
「違う! あたしは、このメガリスの力で、島も何もかも壊してやるのよ! こうやってね! 『アクセリオス・デ・コルミリオス』」
 オセアナが呪文を唱えると、鮫の牙で出来た装身具が独りでに飛び出してくる。そしてそれはメガリスの影響で何倍もの大きさになるのだった。
「とりあえず、キミは仲間の所に送ってあげるよ」
 自身に向かって飛んでくるいくつもの巨大牙を前にして、極めは不敵に笑い跳躍。一本目の突撃を回避しその上に乗る。二本目に対しても跳躍するが、そこは相手も同じ手は食わぬとばかりに角度を変えて、先端を滞空中で身動きの取れない極に向け直して再突撃。けれどこれは体を丸めた後で放たれた一本下駄キックで先端がそらされ、直ぐ脇を突き抜ける二本目の側面を利用して更に跳ぶ。
「見え見えだよ」
 三本目と反転して背後から飛んでくる一本目。肉体に魔力を巡らせながら風のオーラで自身の軌道をそらして牙同士をぶつけ合わせる。
 四方八方から迫る巨大牙達そ前にして、極はまるで背中にも目があるかのようにその位置を完全に把握し、巧みに肉体を動かしてそれらを回避、あるいは受け流し、上へ上へと上がっていく。クルクルと跳びまわるその様はまさに旋風。
「それだけ大きくなったら攻撃は当てやすいよね」
 巨大牙の中を旋風となって駆け抜ける極。その回避行動そのものが、武器である己が肉体を振り回す準備行動にもなっている。斯くして羅刹の旋風は鋼の巨人へと向かう。最後の抵抗に間に割って入った巨大牙を。
「せええいっ!」
 裂帛の気合と共にぶち抜き。その勢いのままコクピットの中へ。、渾身の一撃はオセアナの心臓を貫いだ。
「……っ、かはっ」
「もし機会があったら敵討ちはしておいてあげるよ」
 突き刺した腕に、オセアナの吐血がかかる。命の温もりが失われて行くのを感じながら、極は口を開く。
「キミが本来恨まなければならない相手、この世界に他の世界の島を呼び出している存在にね」
「……そ、期待しないで、おくわ……」
 目の焦点が合わないオセアナはそれだけ言うと、ひゅう、と笛の根の様に息を吐く。己の全てを捧げ尽した復讐を果たせぬまま終わらされて、しかし彼女の顔には憎しみの色は無く。どこかほっとしたような、静けさだけが在った。
 鋼の巨人が震えだす。その結合は崩壊し、瓦礫となっていく。オセアナから腕を引き抜いた極は、その遺体とメガリスを手に飛びだす。その瞬間コクピットの床も抜け落ちた。
 極が大地に着地した後、ふと気づけばオセアナの遺体は一匹の鮫になっていた。せめてもの情け、陸ではなく海の中へ葬ってやろうとそれを抱えたまま来た道を戻り始める極。もう片方の手に収まっているメガリスは、自旅団へと持ち帰る事を希望していた木元・杏へと託し帰還の徒に付くのだった。




●たいせつな……
 ゆらりゆらり、私は海中に身を委ねている。だらりとその体を脱力させ、潮の流れに身を任せる。そんな事、何時ぶりだろうと、私は緩やかな思考の中で考えた。
 ずっとずっと、私は泳ぎ続けていた。あの日、海の上から差し込む暖かい光が突如遮られ、想像を絶する衝撃と共に海に落ちてきた暗くて冷たい岩の大質量。それから必死に泳いで泳いで逃げたあの時から、ずっと。
 最初は恐怖と混乱から逃げるために泳いだ。
 落ち着いたら仲間を探して泳いだ。
 皆岩の下だと認める恐怖から逃げるために泳いだ(探した)。
 そして悲しみ(絶望)から逃げたくて泳いだ。
 暖かさを求めていたのだろうか、気が付けば私は海の上に顔を出していた。そしてみてしまった。私たちの住処の上に、私の仲間達の上に落ちてきた信じられないほど大きかった岩の上部を、後に人間が「島」と呼ぶと知ったその大地を。酷いありさまだった。沢山死んでいて、沢山壊れていた。それでも一人では無かった。
 ずるい。そう思ってしまった。私は一人になったのに、お前達は一人じゃないなんてずるい。と。
 そして私は怒りの為に泳いだ。ずっと泳いだ。泳ぎ続けてきた。止まる事は出来なかった、勿論止まろうとしたこともあったけれど、でも、止まれなかった。寒かったのだ、暗かったのだ。立ち止まった『其処(底)』は暗くて寒くて、『住処』足りえなかった。だから泳いだ、泳ぐしか、無かったのだ。『泳ぎ(復讐)』続けた先にきっと、あの時の、安宅かくて静かで仲間がいる、一人じゃない安息の住処が待っているんだと、そんな妄信に縋って。
 あぁでも、今は、明るい……そして温かい……やっぱり一人きりだけれど、それでももう、これで……。
 私が微睡んでいると、どこからか歌が聞こえてきた、うるさくて(たのしくて)煩わしい(うきうきする)、立ち止まっちゃいけない私を立ち止まらせてしまうような、そんな軽快な歌ではなく、優しく、どこまでも優しい。
 ……いいわよ、もうやかましいとかやめろとか、言わないから、いつもみたいな貴女達の好きな歌を歌って、いいのよ。
 ―――今はこの歌を歌いたいんですよ、ボス。
 ―――お疲れさま、ボス。
 ―――頑張ったね、ボス。
 ―――子守歌歌ってあげるから、ゆっくりおやすみ、ボス。
 ……うん、おやすみなさい。
 もうひとりじゃない。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年05月03日
宿敵 『『大洋の奪還者』オセアナ・ディブロン』 を撃破!


挿絵イラスト