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月光の下、凛と咲く

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 常夜の世界に広がる平野を見下ろす丘の上一人の少女が佇んでいた。白磁器のように白い肌。腰まで伸びた髪も絹の様になめらかで白く波を打ち、少女が動くたびにふわり、と優雅に揺れる。天使と見まがうほど美しい少女だった。ただ一点、少女の背中に黒い蝙蝠に似た翼が生えていなければ。
 少女は微笑んだ。眼下平原には自身の力によって屈服させ、あるいは命を奪ってでも配下にした。少女の兵たち。
「闇夜に香るその花は、一体どんな色に咲いているのかしら…」
 少女誰に言うでもなく、一人つぶやく。まるでこれから始まる飛び切りの楽しみが待ちきれないと言った、喜色の溢れる声色だ。
「退屈しのぎはもう飽きたわ。強者だけが生き残ればいい。さぁ、淘汰の時間よ!」
 コウモリの翼を広げヴァンパイア、リーシャ・ヴァーミリオンが紅の槍を掲げた。

 グリモアベース。その中を駆け回るキケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)は彼の緑の頭髪を跳ねさせ、焦った様子で猟兵たちを招集する。
「ダークセイヴァーの世界でヴァンパイア、リーシャ・ヴァーミリオンが出現したよ。このヴァンパイアはダークセイヴァーを渡り歩いて力のある者を、時には同族のヴァンパイアすら殺して自分の配下の軍団を作り上げ、平原にその軍を率いて現れた。リーシャ・ヴァーミリオンの率いる軍は死者のなれの果てのスケルトンの軍団。リーシャ・ヴァーミリオンがダークセイヴァー中からかき集めた兵士たちだ」
 平原に軍を集めたリーシャ・ヴァーミリオン。その配下は死者の群れ、しかも、その死者はリーシャ・ヴァーミリオン自身が集め、時に同族のヴァンパイア殺して作り替えたほどのの精鋭たち。
「軍は平原に陣を張っていてその中心にある、丘の上にリーシャ・ヴァーミリオンがいる。リーシャ・ヴァーミリオンの下にたどり着くには必ず、配下のスケルトンたちの戦闘になる。そうしたらリーシャ・ヴァーミリオンはこちらに気が付くだろう。隠れて接近して奇襲することはできない、廃真正面から戦うことになる。だけど、放置すればリーシャ・ヴァーミリオンは止めるまで暴れ続ける。周辺の町はこのことに気が付いていないみたい。備えもない町の力だけじゃ被害を防ぐことはできないだろう。そうなる前に止めるには、リーシャ・ヴァーミリオンが暴れだす前、つまり今、彼女を仕留めるしかないよ」
 戦場は猟兵に有利とはいいがたい。だからといって被害が出るのをただ見ているだけなんてできない。正面切って戦い、リーシャ・ヴァーミリオンに勝利し打ち滅ぼす。それしか道はないのだろう。
「もしかすると、オブリビオンとして蘇った他のリーシャ・ヴァーミリオンと戦ったことのある人もいるかもしれない。だけど、油断はしないで。今回の相手は他のリーシャ・ヴァーミリオンとは違う。厳しいダークセイヴァーの世界を巡って軍を組織するほど強力な相手だ。気を引き締めて挑んで…みんな、ここで必ず仕留めよう。」
 キケの言葉に猟兵たちは頷き、準備へと散っていった。


Yggd
(このシナリオは『闇夜に香るその花は』の続編にあたるシナリオですが、前回ご参加してない、ご覧になってない猟兵の皆様でも問題なく楽しめます。知ってたらすこし楽しさが増すかな?程度です)

 こんにちはYggdです。トマトジュースは苦手なので少なくとも私はヴァンパイアではないはず…。
 ヴァンパイア、リーシャ・ヴァーミリオンが軍隊を率いて猟兵たちに戦いを仕掛けてきました。皆さんはこいつらを純粋な強さで叩きつぶしてください。小細工が通用する相手ではないでしょう。また、猟兵一人の力ではとてもではありませんがリーシャ・ヴァーミリオンには敵いません。猟兵同士の協力が勝利の鍵です。
 1章はリーシャ・ヴァーミリオンの率いるスケルトン軍隊との戦闘になります。対集団戦で圧倒できるUCを持っている猟兵の皆様でも油断はしないでくださいませ。このスケルトンはリーシャ・ヴァーミリオンが直接選び、葬った腕利き。ヴァンパイアや、腕の立つ猟兵ではない人間、ダンピール、オラトリオなど、ダークセイヴァーの世界の強者達のなれの果てです。一体一体が高い戦闘力を有していると考えてください。
 2章はリーシャ・ヴァーミリオン本人との戦闘です。1章の結果次第で配下のスケルトンが援護に入るかどうかが決まります。
 3章は日常回、もしリーシャ・ヴァーミリオンを無事に打ち倒すことができれば近隣の町で疲労を癒し戦闘を振り返ることができます。しかし、住人はリーシャ・ヴァーミリオンが軍隊を作っていたことは知らないので特に歓待はないと考えてください。
 シナリオ全体を通して難易度は高め、判定も厳しく行います。正直私もどう転ぶかわかりません。皆様がダークセイヴァーの世界の希望の光となれることを祈っています。
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第1章 集団戦 『スケルトン』

POW   :    錆びた剣閃
【手に持った武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    バラバラ分解攻撃
自身が装備する【自分自身のパーツ(骨)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    骸骨の群れ
自身が戦闘で瀕死になると【新たに複数体のスケルトン】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フランチェスカ・ヴァレンタイン
軍勢を率いて戦争遊び、ですか。酔狂と剣呑の極みですわねー…

上空からの砲撃を広範囲に浴びせて敵集団の攻勢を挫きつつ、他の方への援護射撃なども
数体程度の集団には強襲降下、戦槌で振り下ろしの鎧砕きからのなぎ払いをお見舞い致しましょう
スケルトンの類は鈍器で丁寧に砕いて差し上げるのがせめてもの葬送かと思いますので

戦況の頃合いを見て前線から一線引いた位置へ降下、4つ全ての砲門を構えて仮想砲身を展開
他の方々に後方への退避要請を行なった後、UCの発動で重力砲を扇状の射線で一斉発射します
地表ですから出力は相応に絞っていますが、スケルトンの群れを圧砕して崩壊させるには十分なはず――!

※詠唱改変・アドリブ・絡み歓迎


リーヴァルディ・カーライル
…ん。随分と大仰な事ね。
前は不覚をとったけど、次は無い。
…今度こそ終わらせてあげる。

事前に防具を改造して第六感を強化。
攻撃の気配や存在感を感知する呪詛を付与しておく。
他の猟兵と連携して行動し、前に出て敵の攻撃を引き付ける。

暗視を頼りに敵の攻撃を見切り、最小限の動作で回避。
怪力任せに大鎌をなぎ払ってカウンターを行い、
傷口を抉る2回攻撃で生命力を吸収する。

避けきれない攻撃は大鎌を盾に武器で受け、
第六感が可能と判断した場合のみ敵のUCを
【限定解放・血の再誕】で吸収し力を溜めておく
(可能なら吸血鬼戦までその状態を維持する)

…またぞろ、奇妙な芸が仕込まれているかもしれない。
最後の最後まで油断はしない…。



 予知の内容をまとめた資料に今一度目を通し、嘗て逃した敵であるリーシャ・ヴァーミリオンを回想するリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)。身にまとった黒いローブから覗く顔を顰め、うねった美しい銀の髪を指に絡ませる。
「…ん。随分と大仰な事ね。」
「軍勢を率いて戦争遊び、ですか。酔狂と剣呑の極みですわねー…」
 リーヴァルディの隣で肩を竦めてを返事する猟兵、白い大きな翼を背中に持つ女性、フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)は己の武器である『ヴァルフレイア・ハルバード』を肩に掛ける。
「…今度こそ終わらせてあげる」
 リーヴァルディの静かな決意の言葉にフランチャスカは無言で頷き、正面を向く。二人の眼前には幾多の死者慣れの果てのスケルトンの軍団。二人の猟兵は同時に地面を蹴り、敵陣に正面から挑む。
 大鎌を振りスケルトンたちに切り込むリーヴァルディ。横薙ぎに放った攻撃をスケルトンたちは武器で受け、あるいは後方に飛びのく事で回避する。
(・・・ん。確かに戦いの心得のある相手のようね)
 初撃を躱されたリーヴァルディだが、それだけで相手の力量を推し量る。武器の扱い、回避の判断の速さ。それらを総合して有効な攻撃を探る。大鎌の長いリーチは時に短所にもなりうる。一撃目を回避したスケルトンの一体が、転がり込むようにしてリーヴァルディに接近し、錆びた鉄剣を切り上げる。ふっ、と笑みをこぼしリーヴァルディは笑う。なんと、ふっと身体から力を抜き、その一閃を無抵抗に身体に受ける。無防備なリーヴァルディを襲ったスケルトンの攻撃だが、それはリーヴァルディを傷つけなかった。錆びた刃の一閃はリーヴァルディに触れた時、その威力をそのままリーヴァルディ自身の力へと変換され吸収される。リーヴァルディが自身に流れる吸血鬼の血を利用した受け身の技が成した現象だ。攻撃を無効化され、隙を曝すスケルトンに対し、脱力した状態から自然に振り回した大鎌に加速を加えて首を刈り取る。
(可能なら、吸収した力はヴァンパイア相手に取っておきたいわね)
 スケルトンたちの後に控える強敵を見据えて、力の使いどころを探るリーヴァルディの周囲をスケルトンが取り囲む。目視だけではない、第六感すら駆使して周囲の状況を確認するリーヴァルディ。と、空中から砲弾がスケルトンたちに飛来する。
「リーヴァルディさん!」
 上空を白い翼と、身に着けた戦乙女を象った強化機甲で舞うフランチャスカが、スケルトンの群れと対峙するリーヴァルディを砲撃で援護する。砲撃の着弾の衝撃に土煙が舞い上がる。砲撃を避けようと回避行動に移るスケルトンを、土煙に紛れ斬りつけてゆくリーヴァルディ。上空の砲撃と地上の斬撃によってスケルトンたちがその数を減らしていけば、フランチャスカもまた、広範囲を標的とする砲撃から、一体ずつ確実に仕留められる接近戦に切り替え、上空からハルバードで襲い掛かる。フランチャスカのハルバード、『ヴァルフレイア・ハルバード』の槌の部分には衝撃に応じて爆ぜる仕組みが組み込まれている。それを活かした急降下の勢いを乗せたフランチャスカの攻撃の生み出す爆破に、例えハルバード自体を受けたとしても、スケルトンたちは吹き飛ばされる。二人は善戦を繰り広げるが敵は数が多く。また、致命傷となる攻撃を寸前で回避する技量もある敵が混ざっている。
「これはキリがありません!グラビトンブラスターを使います!スケルトンの群れを圧砕して崩壊させるには十分なはず――!」
 フランチェスカの提案にリーヴァルディは素早く反応し、スケルトンたちに突貫し注意を引き付ける。リーヴァルディが生み出した短いが決定的な好機にフランチェスカは背後に装着したブラスターを展開し、その出力を高める。
「グラビティバレル仮想展開――砲身、固定…!」
 四門のブラスターに仮装の砲身を展開させて稼働、重力子がブラスター内部に溜まり異常なエネルギー力場を形成する。リーヴァルディはフランチェスカのブラスターの強力な気配を感じ取り、踵を返してスケルトンたちを振り切ってフランチェスカの背後へ飛び込む。
「さあ、少々派手に参りますわよ?」
 リーヴァルディが飛びのいたその瞬間にフランチェスカはトリガーを引く。溜め込まれた重力子が、押し込まれていた状態から一斉に放出され極大への発散の力で眼前のスケルトンたちを圧砕して突き抜ける。対鑑砲撃級の砲撃であるそのグラビトンブラスターの威力の前では、いくら手練れのスケルトンたちと言えども為す術がなどあるはずがない。重力子砲が突き抜けた後には大きく扇状に抉れた地面が残る。
「…またぞろ、奇妙な芸が仕込まれているかもしれない。最後の最後まで油断はしない…」
 圧倒的な威力の砲撃の後も、二人の猟兵は油断なく身構える。勝利を確信した時、思わぬ一手に足を掬われる苦渋を味わった二人だからこそ、気を緩めることはしないのだ。強力なグラビトンブラスターの砲撃も平原をすべて薙ぎ払うには至らず、スケルトンたちはまだ残っている。二人の猟兵は今一度、己の得物を握りしめて戦場を睨みつけ、戦闘に舞い戻って行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

緋翠・華乃音
……暴虐による圧制を敷くだけが能ではないヴァンパイアか。
統率者として集団を指揮し、更に本人の戦闘力にも目を瞠るものがあるとは……中々面白い相手だな。
同一個体でもその知性や性能にはそれなりの差が生じるという事か。


他の猟兵と連携を取らないと俺個人では手に余る敵だ。
俺は狙撃手だから前衛が居ないとどうにもならない。

ユーベルコードの範囲内で戦場を視界に収められる場所(可能な限り遠距離且つ高所が望ましい)に潜伏。
優れた視力・聴力・直感を使用して行動の先読みや見切り、予測で狙撃による援護射撃に徹する。
予め狙撃地点を複数見繕っておき、射線が割れた場合には即座に移動。
必要と判断すれば暗殺者として近接戦も行う。


フォルク・リア
「軍を率いるとは、悪質なものが現れたな。
しかし、それがどんな奴だとしても
オブリビオンである以上、倒す事には変わりはない。」
以前戦ったものとの確信は持てず。

地形や敵味方の配置
行動に注意してある程度(出来れば敵の武器攻撃が届かない程度)
敵と距離を取る。

離れた敵にはデモニックロッドの魔弾、
近接した敵には影刃で攻撃。
被攻撃時は【残像】で避けたり【オーラ防御】で防御。
攻撃時は【残像】で幻惑したり
【2回攻撃】や、効果があるなら【破魔】を使用。

敵の損傷具合をよく見て
瀕死になり「骸骨の群れ」を使用するもの
が居れば暴虐の黒竜王で相殺を狙う。
相殺できなくても使用の様子をよく見て
次回使用時は相殺できる様に備える。



 リーシャ・ヴァーミリオンがスケルトンの軍団の陣を敷いた平原を視界に収めることができる場所、そこに二人の男が座りこみ戦いの始まった平原を見下ろしていた。
「軍を率いるとは、悪質なものが現れたな」
 フードを目深にかぶった男、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)が手に持った黒杖を手で弄びながら平原を見つめる。隣の男は狙撃銃を構えると銃口を平原に向けた。と、数発分の発砲音。その数分だけきっちりと平原にいるスケルトンに向けて撃ち込んだ男が、その紫の目を狙撃銃から外す。
「……暴虐による圧制を敷くだけが能ではないヴァンパイアか。統率者として集団を指揮し、更に本人の戦闘力にも目を瞠るものがあるとは……中々面白い相手だな」
 狙撃を行った男、緋翠・華乃音(prelude finale.・f03169)は狙撃銃から顔を離し銀の髪をかき上げる。
「しかし、それがどんな奴だとしてもオブリビオンである以上、倒す事には変わりはない」
 フォルクが黒杖を平原に向け、ニヒルに笑って見せた。
 狙撃において、狙撃手が最も注意を払うこと。それは敵に潜伏している位置を特定されないこと。狙撃手の位置を特定できれば、射線も予測しやすく回避も可能となってしまう。その上、接近を許してしまえば大きく不利に傾く。そのため、狙撃手である華乃音は、その位置を転々としてスケルトンの軍団に位置を悟られないようにする。フォルクは華乃音の護衛を買って出た。
 だが、数度目の場所移動の際、スケルトンの一団がついに移動中の二人を発見してしまう。
「ようやく、俺の出番と言うわけだ。さて、実験を始めよう」
 フォルクは手に携えた黒杖を掲げる。その黒杖、名をデモニックロッドと言う呪われた杖は、持ち主であるフォルクの魔力を吸い上げて喰らう。喰らった魔力は杖の上部へと集中し、杖の呪いによって変質、闇の魔弾としてスケルトンたちに降り注ぐ。攻撃の気配を感じ取ったスケルトンたちは得物で相殺したり、後ろに飛び退き魔弾を回避する。大きな打撃を与えることは叶わなかったフォルクの技だったが狙いは別にある。標的を外した魔弾は地面に衝突し土煙を濛々と立ち上げ、移動する華乃音とフォルクの姿を覆い隠す。
「ここで別行動に移ろう。敵の減ってきたし、面倒なことが分かった」
 フォルクが土煙に紛れ一時的にだがスケルトンの視界から逃れ、華乃音に提案する。
「分かった、お互い気を付けて」
 短い別れを告げ、華乃音は土煙を遮蔽物としてスケルトンの一団を撒き新たなスナイピングポジションに到達する。愛銃を再び構え、頬当てに顔を乗せ紫の瞳で標的を探す。
「――それが神であろうと、俺の眼からは逃れられない」
 平原に再び響く銃声。その音の数だけの弾丸が平原で戦闘するスケルトンの頭蓋を打ち抜いた。
「華乃音も、上手くやっているな」
 銃声を聞いたフォルクが笑みを浮かべる。スケルトンたちと一定の距離を保つように、黒杖から魔弾の弾幕を放ち膠着状態を保っていたフォルク。だが、銃声を合図にするようにその魔弾の撃ち方を変える。一直線に弾幕を集め、次々と打ち込んでいく。スケルトンたちは魔弾を回避しようと、射線から逃れる。と、そこが道のように敵がいなくなる。フォルクはその道に身体を滑りこませ駆け抜ける。思い通りにはさせまいと、フォルクを追おうとするスケルトンは、華乃音の援護射撃によって頭蓋を撃ち抜かれ地に倒れる。
(さっき平原を見ているときに気が付いたが、スケルトンたちの残骸から新たなスケルトンが生まれ出ているように見えた・・・)
 華乃音の護衛として平原全体を見渡せたフォルクは、その戦場を俯瞰し、スケルトンの厄介な特性を発見した。それは、スケルトンが行動不能に陥るほどのダメージを負うと、その周囲から新たなスケルトンを生み出す力があることだ。完全に粉砕したスケルトンはその限りではないが、半端に体の原型が残ったスケルトンはその残骸から、新たなスケルトンを生み出している。
(厄介な力だ…封殺させてもらおう!)
「其れは、何時でも傍にある。其れは、闇の中から覗く者」
 フォルクは過去を観察し敵のユーベルコードを視認できる霊を呼び出すべく言葉を紡ぐ。その詠唱に応じた霊がフォルクの周囲から湧き出し、スケルトンの残骸へと向かってゆく。と、霊が確かに、スケルトンの周囲に新たなスケルトンが生まれ出る力の流れを感知する。
「纏う風は黒。羽撃く翼は烈風。その身に宿すは狂乱。上げる咆哮は冥府の陣鐘。抗う全てを喰らい、その宿せし力の無慈悲なる真価を示せ」
 フォルクの続けざまの詠唱によって霊はスケルトンが生まれ出ようとする力に妨害を加え、その力を奪いフォルクの詠唱の通りに変化を遂げる。黒い翼を羽ばたかせ、霊は黒龍として産声を上げ、別のスケルトンへ襲い掛かり始める。
「さて、これで敵はこれ以上湧いて出てこない…残りを全て倒す。それだけだ」
 フォルクは黒杖をスケルトンへ向ける。銃声が平原に響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

山理・多貫
【旅団:吸血猟兵として参加/アレンジアドリブ歓迎/同旅団メンバーとの絡み希望】

(並々ならぬ決意を胸に――。)

やっと……見つけ、ました(遠くの丘を見据えて)
(いつぞやの敗戦を思い浮かべ、ごくりと恐れからか食欲からかわからない唾を飲み込み)

お仕事開始、です。


【戦闘】

………雑魚……じゃない、ですね。このひとたち。
出し惜しみしてる場合では……なさそう。

愛銃のヤタガラスと3本のポイズンダガーを使い分け、
吸血猟兵のメンバーと連携して1体ずつ確実に仕留めていきます。

状況によってはユーベルコード「理性の限界」を使用し戦闘力を増強。
その場合はそれまでのクレバーな戦い方とは変わり、本能のまま襲い掛かります。


宮代・夜々
【吸血猟兵】

■心情
…なるほど。良い兵を用意しているな。
念のために…俺は多貫とロイドのサポートに徹するとしよう。

■戦闘
『存在感』で敵の気を惹きつつ、『武器受け』と『見切り』で回避や防御をしてロイドが罠を設置するまで持ちこたえるとしよう。
その間に『カウンター』が出来そうなら大鎌で反撃も入れつつ、多貫が攻撃するチャンスも作れるといいんだが。
ロイドの罠が完成したらその罠への誘導役を引き受けよう。
その際は『激痛耐性』を駆使してでも誘導してみせる。

UCは戦闘中に吸血猟兵の仲間の負傷が大きければ即座に使えるようにしておく。
戦闘中に使う機会がなくともこの後が本番だ。戦闘後に傷を治しておくのに役には立つだろう。


ロイド・テスタメント
【吸血猟兵】

・心情
多貫さんのサポートメインにしましょう。

・戦闘
「多貫、全力で戦え背中は守ってやるから、後ろは任せろ」
UC完全なる闇の蜃気楼を使用、完全に止めずに動きを鈍らせるか、一瞬でも止まれば良い。
『戦闘知識』『罠使い』『呪詛』で『骸骨の群れ』対策に鋼糸のトラップ作成。
発動したら、誘導させる様に指示を出す。
「全てを無へ……」 
『第六感』で仲間や自身の攻撃を察知して『敵を盾にする』か『暗殺』を鋼糸で倒し、咎人の双剣で『2回攻撃』をして『生命力吸収』する。
『錆びた剣閃』は鋼糸で腕を絡めて、一瞬動きを止めて隙を作り仲間の攻撃を全力でサポートする。

※戦闘中は戦闘狂となり、口調が荒々しくなります



 スケルトンの軍団に対する猟兵たちは持ちうる技を駆使し、戦闘を繰り広げる。リーシャ・ヴァーミリオンが陣を敷いた平原は既に乱戦の様相を呈していた。錆びた剣と猟兵の武器がぶつかる鈍い金属音が響き渡る。
「………雑魚……じゃない、ですね。このひとたち」
 手にしたダガーでスケルトンの攻撃を受け止めた女性が今日の何度目かわからない舌打ちをする。女性は戦いに並々ならぬ決意を胸にして身を投じていた。ぼろぼろのマントを身にまとった血のように赤い目を持つ女性、山理・多貫(吸血猟兵・f02329)はスケルトンの攻撃を受けた体勢からするりと腕を伸ばし、スケルトンの骨だけの腕を絡める取る。
「出し惜しみしてる場合では……なさそう」
 至近距離に絡め取ったスケルトンに空いた腕で首に向けてダガーを差し入れ、延髄に突き立てる。鈍い音を発しながらダガーを関節にねじ込んで、力任せにスケルトンの首と胴体を切り離す多貫。頭蓋骨を失ったスケルトンは乾いた音を奏でて脱力して地面に崩れ落ちる。一体のスケルトンに止めを刺す多貫の、ぼろぼろのマントに覆われた背に他のスケルトンが錆だらけの鉄剣で斬りかかる。
「…なるほど。良い兵を用意しているな」
 スケルトンと多貫の間に割り込んで、手にした大鎌で鉄剣を受けた金髪の青年が苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる。金髪の青年、宮代・夜々(舞い踊る大鎌・f14043)はスケルトンの鉄剣をその大鎌に添わせるようにして受け流し、鎌を反転させ反撃を試みる。しかし、スケルトンは受け流される勢いをそのままに前転で距離を取り、回避する。
「・・・そこ」
 スケルトンが回避した先を、多貫がダガーから素早く持ち替えた銃で撃つ。『ヤタガラスの妖銃』の名を持つ多貫の拳銃が放つのは、怨念の籠った破壊の弾丸。回避の隙を突いたその一弾は、狙いを過たずにスケルトンの頭蓋を打ち抜く。見事な連携でスケルトンを葬る多貫と夜々の後方、十字架を掲げる猟兵が一人。赤い髪を目にかかる程度に伸ばしたロイド・テスタメント(全てを無に帰す暗殺者・f01586)だ。
「惑え、この領域に踏み込めばこそは、深淵に隠された蜃気楼という名の……トラップ、だ」
 ロイドが十字架をかざせば、その周囲がキラリと微かに光を反射して煌めく。
「二人とも、こっちだ」
 普段は丁寧な口調のロイドが、先頭に高揚しているのか、やや荒れた言葉づかいで戦っていた多貫と夜々を呼び戻す。呼ばれた二人はこくり、と頷き、素早く後退する。引き下がった二人に追撃するべく、スケルトンたちは前進するが。数歩歩いたスケルトンたちの動きが止まる。
「動けやしないだろう?」
 ピタリと動きを止めたスケルトンに、意地が悪そうに笑みをこぼすロイド。先ほどの十字架が放った煌めきの正体。それは目視では確認が困難なほど細い鋼糸。十字架から放たれた鋼の糸がロイドの周囲に張り巡らされて、ロイドの意のままに操られている。スケルトンたちも、ロイドの糸に絡め取られて動きを封じられたのだ。動きが止まったスケルトンに対し、多貫と夜々が確実に止めを刺して回り、一体ずつ仕留めていく。だが、倒したそばからスケルトンたちは新たに現れ出て来る。これではいつまでたっても、スケルトンの軍団の向こうに控えるリーシャ・ヴァーミリオンに近づくことができない。
「多貫、全力で戦え背中は守ってやるから、後ろは任せろ」
 ロイドがもう一度、鋼糸の罠を張り直すと同時に、冷静に一体のスケルトンを葬った多貫へ言葉をかける。飛び掛かってきたスケルトンの攻撃を夜々が受け止めて、賛同するように頷く。
「・・・」
 多貫は僅かに迷いを覚える。理性を失う程の強い吸血衝動を抱える多貫は、ダンピールとして吸血衝動に覚醒したその日から、その衝動を抑え込んできた。それを爆発させれば、ダンピールの高い身体能力を如何なく発揮し、リーシャ・ヴァーミリオンへの道を切り開ける可能性は上がる。だが、それを上塗りする不安が、彼女にはあった。けれど・・・。夜々とロイドは多貫に力強い視線を送る。同じ旅団、お世辞にも清潔とはいえない環境にある宿で、共に時間を過ごした信頼を寄せる仲間が、自分を信じてくれている。多貫は信頼する仲間たちに背を押され、理性を手放す。忌み避けていた自身の吸血衝動だが、信じられる仲間がいてくれる。ならば恐れることはない。多貫は自らの意志で衝動に身をゆだねる。

 その決断が、自身を傷つける事になるとは知らずに・・・

 衝動に身を委ねた多貫は、まさに狂戦士と言うにふさわしい戦いを見せる。両手に携えたダガーを振り、敵が僅かな隙を見せれば喉元に喰らいついてでも仕留める。本能のままに敵を屠る姿は獰猛な獣を彷彿とさせる。夜々とロイドもそんな多貫を助け、多貫を抑え込もうと迫るスケルトンの攻撃を阻害し、多貫の攻め緩ませないように支える。
 前進に合わせロイドが新たに鋼糸の罠を張り、夜々がスケルトンの攻撃を受けつつ、罠へと誘導する。そうして平原を戦いながら前進して行く。ついに、先頭で戦っていた多貫が、平原にある小高くなった丘の上にその姿を認める。赤いドレスを身にまとい白磁器のような肌の吸血鬼、リーシャ・ヴァーミリオンがダークセイヴァーの月光を受け堂々と佇み、争いの只中の平原を見下ろす。本能のままに闘争していた多貫とリーシャ・ヴァーミリオンの視線が、一瞬だが、確かに合った。合ってしまった。
(やっと……見つけ、ました)
 その時、多貫が感じたのは恐怖か、あるいは高揚感か、それは彼女にもわからないのかもしれない。いつぞやの敗戦を思い浮かべ、ごくりと恐れからか食欲からかわからない唾を飲み込む多貫。その唾が喉を通り過ぎた時、脳を焼き焦がす程の衝動が多貫を揺さぶった。それをきっかけに多貫は最後に持っていた理性の一握りの理性すら手放してしまった。信じる仲間の存在すら、忘れてしまう・・・。
「っーーー!!」
 多貫が声にならない咆哮を上げ、リーシャ・ヴァーミリオン以外目に入らなくなる。多貫は一切の防御も攻撃もなく突撃する。後ろに付いて来て支えてくれた仲間すら置き去りにして、衝動に任せただ走る。だが、その行いによって多貫はスケルトンたちの中、孤立した唯の的と成り下がる。
「多貫!」
 いち早く異常に気が付いたロイドが、普段の落ち着いた口調を忘れ声を荒げる。何とか鋼糸を伸ばし、多貫に接近したスケルトンを絡め取る。だが、多貫の突然の行動は二人の距離を離しすぎた。攻撃を止めたのは一瞬。敵に囲まれた多貫を守りに行くにはあまりに短い時間だ。無情に時は流れ、スケルトンの狂刃が多貫の身体を切り裂き、血の弧を描きだす。
「ッ!多貫大丈夫か!」
 夜々が大鎌を振り回し、身体をスケルトンの群れにねじ込むようにして強引に多貫に駆け寄る。多貫に追撃を加えようとする敵を体当たりで突き飛ばし、多貫を抱き起こす。多貫はわき腹を斬りつけられ、抉るような傷ができている。苦しそうに呻いているが、ロイドの妨害が功を奏したのか致命傷にはなっていない様子だ。
「あまり…心配させないでくれ。傷を削ぐ菖蒲」
 祈りを込め、夜々が多貫の傷口に当てた手から聖なる光を放つ。癒しの力を施すその光を以って苦しむ多貫を治療しながら、夜々は唇を血がにじむほど噛み締める。誰かが傷つくくらいなら、自分がその身代わりとなって傷を負えばいい。そう考えるほど仲間を思う夜々は、そのやさしさ故に、目の前で多貫が苦しむのを防げなかった不甲斐なさに心が沈む。
「・・・」
 多貫を治療する夜々を守るために鋼糸を高速に手繰り、スケルトンたちを近づけさせないように懸命に戦うロイドも押し黙り、多貫の回復を待つ。
「あら、あらあら…ふふふっ、久しぶり、ね・・・ダンピールのお嬢さん?今日はナイトたちも一緒なのかしら?また、楽しませてね?」
 クスリ、とリーシャ・ヴァーミリオンがそんな三人を見て笑う。傷を癒してもらい、理性を取り戻した多貫が、癒しを施し代償として襲ってくる疲労に耐える夜々が、二人を守るべく鋼糸を操るロイドが・・・スケルトンの軍を突破し、駆け付けた猟兵たちが・・・ヴァンパイア、リーシャ・ヴァーミリオンと対峙した。

苦戦 🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『リーシャ・ヴァーミリオン』

POW   :    魔槍剛撃
単純で重い【鮮血槍】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ブラッディ・カーニバル
自身に【忌まわしき血液】をまとい、高速移動と【血の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    魔槍連撃
【鮮血槍による連続突き】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠天御鏡・百々です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ダークセイヴァーの常夜を照らし出す月光を浴び、ヴァンパイア、リーシャ・ヴァーミリオンはふわりとその美しい髪を揺らす。赤いドレスの裾を翻し、リーシャ・ヴァーミリオンは猟兵たちに対峙する。
「私は学んだの。・・・楽しみとは、種から撒き、時間をかけ育てるほど甘美なものになる、とね。だから私は育てたわ。まずは私の力を。そしてこれから育てようと思った、私を飽きさせないほどに強力な相手を、弱者を淘汰することで、ね」
 平原に視線を移したリーシャ・ヴァーミリオンは、まるで恍惚するように頬を染める。それは自身が組織したスケルトンの軍団にだろうか?いや、それは違う。
「でも…すごいわ…まさか、この軍団を突破してくる者がもう現れるなんて…」
 リーシャ・ヴァーミリオンが恍惚としたのはスケルトンの軍団を打倒した猟兵たちにだ。自身の軍が半壊させられた、その景色を生み出した程の強者。それらにリーシャ・ヴァーミリオンはうっとりとする。
「ああ、楽しみ…これほどの強者と一緒に遊べるなんて・・・お前たちは手出しをしないでね!」
 リーシャ・ヴァーミリオンは彼女の武器である槍『鮮血槍』を振り、スケルトンたちに命ずる。常に血を滴らせるその槍の軌道に沿って血液が飛び、スケルトンたちはすごすごと引き下がる。膝を付いて首を垂れたスケルトンたちは、それから動きだす気配がない。どうやら猟兵たちとリーシャ・ヴァーミリオンの争いにスケルトンたちは干渉してこないようだ。
「さぁ、私を楽しませて頂戴…その命を賭けて!」
 リーシャ・ヴァーミリオンが彼女の槍、『鮮血槍』を振るう。宙を舞った血液が、彼女の凶悪な笑顔を、朱く紅く、反射していた。
リーヴァルディ・カーライル
他の猟兵と連携し、常に挟み撃ちになるよう行動
事前に改造した防具の呪詛を維持し第六感を強化

【吸血鬼狩りの業】を駆使して攻撃を見切り、
あえて隙を作り誘惑し攻撃を誘導した所を受け流す
殺意の存在感を感じた方へ大鎌を振るい武器で受ける

敵が隙を晒せば【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して魔力を溜め、
“闇”属性の“時間”と【血の再誕】で吸収したUCを融合し“闇の結晶”剣を創造

反動で逆流する時の呪いを呪詛耐性で耐えながら、
怪力を瞬発力に変え剣をなぎ払い、命中した瞬間に結晶を解放
敵の時間を切断し、傷口を抉るように消滅させる

…ん。もはや口舌は不要。
吸血鬼狩りの業を知るがいい


緋翠・華乃音
……なんだ、つまり強者と戦いたかったという訳か。
まあ、俺には理解出来ない思想だが……大概そういう強者はいずれ淘汰される運命にあるよな。

――そう、運命の車輪は回り続ける。如何なる強者とてそれは例外ではない。
――いつ自分が、その運命に轢殺されるのかも分からないまま。今日は君が、明日は我が身かも知れない。


基本的な狙撃スタイルはスケルトン戦と同様。
視力や直感を生かしつつ相手の挙動から予測を立て、時にポジションを変えて狙撃で援護する。
とはいえ強者相手にそれだけでは芸が無いというもの。
久々に暗殺者として接近戦でも演じよう。
彼女もまさか狙撃手が前衛に来るなんて思わない筈。
――そう、一瞬の油断が命取りになる。


フォルク・リア
「やはり、お前だったか。
学んだと言いえ。
自分の楽しみの為に他人を踏みつける
その様は何も変わっていないな。
だから俺もやる事は変わらない。」
ここで、討ち果たす。

真の姿(見た目の変化は確認できないが
血煙の様なオーラを纏う)
を開放し
ナイトクロウを使用。
烏が空中から狙い。
狼は接近しての噛み付き。
自身は遠近織り交ぜて動く。

大烏、黒狼と共に3方から囲み。
目線、穂先の向きや構えから
どこを狙うのかや攻撃のタイミングを判別。
攻撃しようとすれば
障壁を発生させると共に【オーラ防御】
を使用して防御しつつ他方の者が攻撃。

自身は【残像】を伴い攪乱し
黒い霊気を武器化して【2回攻撃】。
攻撃時も隙が出来ない様に互いにフォロー。


宮代・夜々
【吸血猟兵】

■心情
ロイドとクラトを囮にするのは気が引けるが…。
今は目の前の吸血鬼を倒す事が優先だ。その為にも俺の私情は抑えるとしよう。

多貫、リベンジのチャンスは作ってみせる。
だから…今は少し我慢してくれ。

■戦闘
『戦闘知識』を駆使してここぞという場面で「呪縛する西洋木蔦」によるユーベルコード封印と拘束を狙いたいところだが。
まずは狙いを悟られないようロイドとクラトの支援を全力で行っているように見せるとしよう。
時には二人と共に前線に立ち大鎌を振るい、時には一歩下がって後方支援するかのよう動く。
その中でチャンスが訪れたら二人を囮にしてでも「呪縛する西洋木蔦」を必中させて見せる。
多貫。仕上げは任せたぞ。


ロイド・テスタメント
【吸血猟兵】
真の姿:金の髪、深紅の瞳、より吸血鬼らしく

「良い、実に……楽しい戦いだ」
相手が強い程に、苦戦する程に暗殺者の血と戦闘的な本能が目覚めます。
「昔、強敵だった幼い子を相手にした時の様に、最高に楽しいッ!」
戦闘知識、第六感で相手を観察しながら鉄の処女で殴りに行く。
避けても暗殺で鋼糸を、四肢のどれかを貫く為に放ちます。
UC血統覚醒を使い、更に猛攻を仕掛けます。
「殺すのは楽しいか?奪うのに快楽を感じるか?――貴様も同類だから、な」
貯めてた血を使い刻印を活性させ、双剣に力を与えて2回攻撃、傷口をえぐると、生命力吸収する。
「笑う声帯は不要だろう?」
魔槍剛撃を受けながら鋼糸で首を絞める。


クラト・ディールア
【吸血猟兵】
※同じグモリア猟兵として手助け(名前+さん付け)
「嫌いです。貴女の笑い声が」
囮であっても、全力で倒す心算で戦います。
黎明・龍牙刀を手にして攻撃するフリのフェイントをしてから、翼竜の槍を槍投げして呪詛を込めて串刺しにします。
「あぁ、クサイ……血の匂いは、いい加減――飽きているのです」
攻撃は第六感と見切りで回避するか、武器で受け流し、2回攻撃で呪詛を込めて反撃します。
「不味い、とても不味いですよ。貴女の生命力は」
生命力吸収して、あまりの不味さに顔をしかめる。
ロイドさんが魔槍剛撃を受けた瞬間、UCドラゴニアン・チェインで手首を狙い爆発させます。
「どうせ、この後では不用でしょうから――」


山理・多貫
【吸血猟兵/アレンジアドリブ歓迎】

好きな人ほど食べたくなる山理はあの日以来、恋心にも似た感情をリーシャに抱き――
すぐに襲いかかりたい衝動を仲間に制されぐっと我慢


●作戦

ロイドを囮とし
その間に隙を見出し「魅惑の下ごしらえ」を使用
ユーベルコード封印又は弱体化と
技能「毒使い」による様々な毒付与を狙い
同時に山理自身は真の姿を開放


目的はリーシャの能力を封印or弱体化させ
一方で自身を著しく強化することにより本来の能力差を埋めた上での"吸血"
今度こそいただき、ます

●真の姿設定

ヴァンパイア6:メドゥーサ4 の割合の姿
瞳が金色、髪の毛は紫色に変化し伸び、毛先からは蛇

表情豊かでおしゃべり
嗜虐的で口調はギャルっぽい 


フランチェスカ・ヴァレンタイン
また取り逃がしたら次は国でも興しかねませんわね、これ
ここで確実に滅して禍根を断ちます…!

「オーバーソウル、限定展開…!」
噴射跳躍でリーシャへ迫りながら【真の姿】を解放(翼と外殻機甲が光焔を噴き、纏い、一体化して光焔の揺らぐ翼と外殻に)
砲撃は避けられそうな気が致しますし、斧槍と槍の間合いで打ち合いましょう

推力偏向を駆使した交差機動で打ち合い、機動と斧槍での攻撃に注意を引き付けながら、一方でUCで不可視のワイヤーを放ち爆導索による包囲網を敷き詰めます
剛撃を放つ間際の一瞬の隙に、槍とリーシャ本体を爆導索で簀巻きにしつつ、緊急離脱と共に包囲網を縮めて起爆致しましょうか、と

※詠唱改変・アドリブ・絡み歓迎



 平原を見下ろす丘、その上に立つリーシャ・ヴァーミリオン。ふわりとなびく髪は白く、身に着けたドレスは血のように赤い。対峙するのはスケルトンの軍団を打破してきた猟兵たち。その様子を、離れた場所で見つめる男がいた。
「……なんだ、つまり強者と戦いたかったという訳か」
 会話は聞こえてこないが、スケルトンたちが動かなくなったり、何もない所で槍を振り回したり。男には理解出来ない思想だが、おおよそオブリビオンの考えそうなことだ。男、華乃音は狙撃銃から目を外し、やや思案した後。再び狙撃銃を覗き込む。吸血鬼、リーシャ・ヴァーミリオンは手にした槍を突き立てて笑っているようだ。
「やはり、お前だったか」
 フードを目深にかぶったフォルクが丘の上に立つリーシャ・ヴァーミリオンを見上げる。
「ああ、その目。懐かしいわ。あの時とは上下が逆ね?」
 苦い記憶を呼び起こすリーシャ・ヴァーミリオンの言葉だが、フォルクは苛立ちを顔に出さずに続ける。
「学んだと言いえ。自分の楽しみの為に他人を踏みつける。その様は何も変わっていないな。だから俺もやる事は変わらない」
 見上げた瞳に決意の炎を宿してフォルクは語る。それはここに集った猟兵たち共通の思い。
『ここで、討ち果たす』
 その決意に呼応したように、フォルクの周囲には赤い煙が立ち上り始める。臨戦態勢の構えをとるフォルクに感化されたのか、多貫がダガーを引き抜き、リーシャ・ヴァーミリオンに駆けようと前傾になる。
「待て」
 夜々が多貫の肩を掴む。
「多貫、リベンジのチャンスは作ってみせる。だから…今は少し我慢してくれ」
 夜々が懇願するように多貫を止める。夜々は多貫がリーシャ・ヴァーミリオンに対し並々ならぬ思いを抱いているのを知っていた。その血を喰らいたいと、抑えきれない吸血衝動に悩む多貫を知っていた。だからこそ、今の多貫を暴走させるわけにはいかないのだ。リーシャ・ヴァーミリオンを倒す確実な勝機、それを見出すまでは…。夜々の真剣な眼差しに、多貫も納得してぐっ、とリーシャ・ヴァーミリオンに襲い掛かるのをこらえる。
「ふふっ、いい関係なのね?」
 多貫の様子を笑うリーシャ・ヴァーミリオン。いたずらっぽく笑う様はどこか妖しく見えるのは、彼女が真っ赤に染まる槍を抱いているからだろうか。
「安心していいわよ。摘み取るときは二人とも一緒にしてあげるから」
「嫌いです。貴女の笑い声が」
 笑うリーシャ・ヴァーミリオンを誹謗するのは、ドラゴニアン、クラト・ディールア(黎明の黒龍・f00868)。漆黒の黒髪を揺らし金の瞳に怒りを湛えている。
「・・・言いたいことは、それで全部かしら?」
 クラトの言葉に眉をひそめたリーシャ・ヴァーミリオンが槍を構える。
「それじゃぁ、始めましょうか…いいえ、」
 リーシャ・ヴァーミリオンに向け、白い翼が羽ばたき飛翔する!
「オーバーソウル、限定展開…!」
 翼を広げ、光焔を纏ったフランチェスカのヴァルフレイア・ハルバードとリーシャ・ヴァーミリオンの鮮血槍が火花を散らす。
「踊りましょうか。あの日の続きを・・・!」
 リーシャ・ヴァーミリオンが笑う。フランチェスカとの一合目を鮮血槍を払うようにしていなした後、リーシャ・ヴァーミリオンはすぐさま振り返り、その勢いのままに回し蹴りを放つ。
「折角の再会なのに、ずいぶんな挨拶じゃないかしら?」
 回し蹴りは背後に回り込んでいたリーヴァルディの腕に当てられ、リーヴァルディは大鎌の動きを止められる。リーヴァルディの気配に感づいたリーシャ・ヴァーミリオンの一撃によって、リーヴァルディの奇襲は失敗する。
「…ん。もはや口舌は不要」
 攻撃を読まれたことに顔を曇らせながら、リーヴァルディはそれだけ答えると飛び退く。
「寂しいわ。なんてね」
「冗談を言う余裕があるのか?」
 続いてリーシャ・ヴァーミリオンに飛び掛かるのは夜々、手にした大鎌で斬りかかれば、リーシャ・ヴァーミリオンは鮮血槍を突き立てて防ぐ。
「あなたは、私の余裕を奪ってくれるのかしら?それなら満足よ!」
 槍を弾き、横なぎに振るうリーシャ・ヴァーミリオン。鎌を引き戻して、勢いを利用した夜々が僅かに後方に仰け反り槍を紙一重で躱す。はらり、と夜々の金髪が舞う。最小限の動きで一撃をやり過ごした夜々はリーシャ・ヴァーミリオンが槍を引く動作に合わせて間合いを詰めて、鎌を水平に振る。槍で受けることは間に合わない。しかし、リーシャはそれにも対応する。鎌を振る夜々に踏み込んで頭突きを喰らわせふらつかせる。
「あなたも強いわね!私の兵にして上げてもいいわよ!」
「そんなこと、させるものですか!」
 上空から強襲するフランチェスカがリーシャ・ヴァーミリオンに斧槍で斬りかかる。速度を乗せ、威力を増した一撃をリーシャ・ヴァーミリオンは槍で受けて後方に飛ぶことで衝撃を殺す。だが、夜々とリーシャ・ヴァーミリオンの距離は開く。頭突きで隙が生まれた夜々とリーシャ・ヴァーミリオンを引きはがせた。猟兵たちは間髪に入れずに次の攻撃をリーシャ・ヴァーミリオンに浴びせる。剣を閃かせ、リーシャ・ヴァーミリオンの着地を狙うのはクラト。愛刀を袈裟懸けに振りぬくクロトだが、リーシャ・ヴァーミリオンは地面を転がり、辛うじてその一撃を逃れる。
「甘いです!」
 だが、刀の一撃は本命ではなかった。素早く刀を持ち替え、背負った翼竜の槍を投じるクロト。流石のリーシャ・ヴァーミリオンも夜々から始まった怒涛の連撃についに交わしきれずその一撃を腕に掠め傷を負う。
「あぁ、クサイ……血の匂いは、いい加減――飽きているのです」
 ヴァンパイアの濃厚な血の匂いに不機嫌にしわを寄せるクロト。だが、一方でその血液の香りに魅惑される者もいる。
「……そろそろお腹がすいたので……。ね?」
 ダガーを振るい、傷を負ったリーシャ・ヴァーミリオンに接近する多貫。好きな人ほど血を吸いたくなるという特異な性格の多貫が、恋心にも似た感情をリーシャに抱いてしまう程、待ち焦がれたリーシャ・ヴァーミリオンの血液。その香り理性が吹き飛んでしまうのを辛うじて踏みとどまって、ダガーを振るう。
「・・・ふふっ、また私と血を飲みあう?」
「…魅力的だけど、今日はちゃんと味わいたいから、まだだめよ!」
 チラリと、多貫の瞳が金に煌めいた。感情を表に出さない多貫が声を荒げて、笑った。
「それが本当のあなたなのね!」
 リーシャ・ヴァーミリオンが歓喜したように声を弾ませる。多貫の髪が伸び、紫に色を変える。毛先はうねりまとまって、やがて小さな双眸をのぞかせる。二人のヴァンパイアが刹那の攻防に見つめ合うが、多貫は地面を蹴って後ろに飛びのく。
「良い、実に……楽しい戦いだ。猟兵たちの攻撃をここまで耐えるとは」
 ロイドが凶悪な笑みを浮かべてリーシャ・ヴァーミリオンに拷問具を叩きつける。鮮血槍で受けるリーシャ・ヴァーミリオンも張り合うように笑みを深める。
「楽しんでくれてうれしいわ!ええ、私も楽しいもの!」
 声を弾ませるとリーシャ・ヴァーミリオンは槍を振り上げる。競っていたロイドの拷問具も跳ね上げられ、ロイドは一瞬防衛の手段を失う。と、そのすきを狙いリーシャ・ヴァーミリオンは蹴りを入れ、ロイドは呻く。にもかかわらず、ロイドは笑みを崩さない。
「昔、強敵だった幼い子を相手にした時の様に、最高に楽しいッ!」
 狂ったように叫び、顔を上げて突撃するロイド。拷問具を手にし、身体の血管を浮き上がらせるほどに興奮したロイドは、もはやダンピールのそれを凌駕していた。血統覚醒と、呼ばれる自身に流れる吸血鬼の血筋の能力を覚醒させる力。肉体がヴァンパイアではないダンピールはその命を削る技であるが、それは今のロイドには些細なことだった。
「殺すのは楽しいか?奪うのに快楽を感じるか?――貴様も同類だから、な」
 拷問具を振るいリーシャ・ヴァーミリオンに殴りかかったロイドはそう問う。破壊に暗殺一家に生まれ、命を奪うことを生きる糧としたロイドは、化けの皮をはがし本性を曝してリーシャ・ヴァーミリオンと相対していた。自分とこの吸血鬼は対等だ、同類だ。と、ロイドは感じていた。だが、その感情はロイドの一方的なものだった。
「まるであなたは、私の過去ね」
 冷たい笑みを、リーシャ・ヴァーミリオンはロイドに投げかける。
「殺すことも、奪うことも、ええ、確かに楽しかったわ。けれど、私はもう気が付いたの。それらは、本質じゃない。つまらない。私がもっと欲しかったのは別の物だった。身を焦がすほどの、熱狂。それが私の欲しいものよ」
 リーシャ・ヴァーミリオンはロイドを否定した。ぎりっ、と歯を食いしばる音がする。ロイドは拷問具から手を放し、無言の殺意を放ちながら、腰に佩いた双剣を繰り出す。ロイドの斬撃は嵐の如くリーシャ・ヴァーミリオンに襲いかかる。捌ききるのは長い槍では困難だ。一旦距離を取ろうとするリーシャ・ヴァーミリオンに、後方から二匹の獣が殺到する。上空から迫る大烏、地を駆けるのは黒狼。フォルクが放った冥界の獣たちだ。
「まだよ!」
 リーシャ・ヴァーミリオンはコウモリの翼を広げ、宙に浮きあがる。空を飛ぶ大烏の方翼を鮮血槍で傷つけ、機動力を削ぎ、入れ替わるようにして空へ舞い上がるリーシャ・ヴァーミリオン。と、銃声が戦場に響いた。飛来した弾丸がリーシャ・ヴァーミリオンの腿を貫く。
「くぅ…!」
 痛みに顔を歪めるリーシャ・ヴァーミリオンだが、判断は早い。向きを反転し、地上に降り立ち、銃弾が飛来した方向と逆側の丘に降り立つ。それを追ってフランチェスカが三度目、リーシャ・ヴァーミリオンに斧槍で襲い掛かる。
「また取り逃がしたら次は国でも興しかねませんわね、あなた」
「それもいいわね…次があるなら考えてみるわ」
 軽口を躱しながら得物をぶつけ合わせる両者。
「次はありませんわ。ここで確実に滅して禍根を断ちます…!」
 と、フランチェスカが再び上空へと舞い上がる。上空から爆導索へ換装可能な念動式ワイヤーアンカーを打ち込み、密かに作り出していたフランチェスカの包囲網は着実に完成しつつあった。あとは追い込んで起爆するのみ。空を飛翔し待機するフランチェスカ、を視線で追うリーシャ・ヴァーミリオン。その背後からリーヴァルディが斬りかかる。
「後ろからなんて卑怯じゃない?」
 屈んで大鎌を躱すリーシャ・ヴァーミリオン。その言葉に耳を貸さずリーヴァルディがは次の一撃を振り、それをリーシャ・ヴァーミリオンは槍で受ける。
「……限定解放。禊祓え、血の再誕…!」
 ぼそりと、リーヴァルディが呟く。それはスケルトンたちの攻撃を受け蓄積した力を開放する合図となる。自身に流れる吸血鬼の血に流れる魔力と精霊の魔力を掛け合わせ、闇の剣を想像したリーヴァルディが、居合の要領でリーシャ・ヴァーミリオンに斬りかかる。それはかつて手練れであったスケルトンたちの剣技を吸収し、増幅させた達人の域に至る程の一撃。リーシャ・ヴァーミリオンは受ける間もなく、腕に傷を負う。
「吸血鬼狩りの業を知るがいい」
 続けてリーヴァルディは二太刀目を放つ。
「素晴らしいわっ!」
 二撃目で肩を割かれ、血がにじむリーシャ・ヴァーミリオンは、それでも笑うのをやめない。
「素晴らしい強者だらけで、私はうれしいのよ!」
 歓喜に打ち震えるリーシャ・ヴァーミリオンは諸手を上げ全身で喜びを表現するが、直後に胸から刃が生える。
「…大概そういう強者はいずれ淘汰される運命にあるよな」
 華乃音が気配を殺し、リーシャ・ヴァーミリオンの背後から黒剣を突き立てていた。
「そう、運命の車輪は回り続ける。如何なる強者とてそれは例外ではない。一瞬の油断が命取りになる」
 水音をたて、華乃音がリーシャ・ヴァーミリオンの胸から黒剣を引き抜く。
「・・・見事なものね、まったく気が付かなかったわ…さっきの銃声もあなたね?」
 リーシャ・ヴァーミリオンの問いを無視し、華乃音は黒剣を再び構えリーシャ・ヴァーミリオンの首を狙うが。
「けれど、私はまだ、満足していないのよ!」
 リーシャ・ヴァーミリオンは鮮血槍を全力で振り、華乃音の黒剣をはじく。
「こいつ、胸を突かれて!?」
 虚を突かれた華乃音が驚きに目をむく間にも槍が迫る。それは華乃音に到達する前に何者かに阻まれる。受けたのは上空から降りてきたフランチェスカ。
「皆さん退避を!」
 槍を止めながら叫ぶフランチェスカ。その言葉に弾かれたようにして猟兵たちは散開する。それを見届けたフランチェスカも斧槍を振るい、リーシャ・ヴァーミリオンを振り払うと起爆のスイッチを入れる。直後、丘を吹き飛ばすほどの爆破が起きる。フランチェスカの仕掛けた包囲網が完成し、作動したのだ。爆破の中心はリーシャ・ヴァーミリオン。だが、それでもこの吸血鬼は倒れない。
「私は…まだ…!」
 爆破にの影響でドレスの端が焦げていてもなお、リーシャ・ヴァーミリオンは鮮血槍を振り、猟兵たちに挑む。
「私の全力を、受けてみなさい!」
 ロイドがそれを双剣を重ね合わせ、正面から受け止める。リーシャ・ヴァーミリオンの渾身の一撃はロイドの想像よりも重く、吸血鬼の力を解き放った身体でも受けるだけで体が沈み、膝を付きそうになる。だが、
「笑う声帯は不要だろう?」
 槍を受けた姿勢のまま、鋼糸を放出するロイド。その糸はリーシャ・ヴァーミリオンの首に巻き付いて締め上げる。
「どうせ、この後では不用でしょうから――」
 と、ドラゴニアン特有のオーラを放ち、リーシャ・ヴァーミリオンを攻撃するクラト。気に当てられたリーシャ・ヴァーミリオンはその手首を爆ぜさせられて槍を取り落とすが。
「ーーーっ!」
 喉を鋼の糸につぶされたまま、無言の咆哮を放ちながらリーシャ・ヴァーミリオンは全身の傷から血の刃をはなす。至近距離で放たれた攻撃にロイドとクラトが傷つき、その拍子にリーシャ・ヴァーミリオンの拘束が解ける。
「逃れられると思うな。呪縛する西洋木蔦」
 夜々が魔方陣を展開して拘束の魔法弾を放つ。
「捕まえられるかしら!」
「いや、捕まえるさ」
 回避しようとしたリーシャ・ヴァーミリオンの背後に衝撃。その先ではフォルクが黒杖を掲げている。闇の魔力弾でリーシャ・ヴァーミリオンを突き飛ばしたのだ。回避も妨害され、リーシャ・ヴァーミリオンは再び拘束される。
「多貫。仕上げは任せたぞ」
 夜々はリーシャ・ヴァーミリオンを拘束した後、多貫に振り返る。多貫はぼろぼろのマントを翻し、身動きのできないリーシャ・ヴァーミリオンに近づく。よく見れば、リーシャ・ヴァーミリオンはもうぼろぼろだ。胸には穴が開き、手はもう使い物にならない。だが、それでも、リーシャ・ヴァーミリオンの目の光は消えていなかった。
「・・・今度こそいただき、ます」
 多貫はリーシャ・ヴァーミリオンの首筋に噛み付き、吸血を始める。多貫は眼を見開く。
(吸血、し返してこないの?)
 リーシャ・ヴァーミリオンは多貫の血を吸い返してこない。訝しみながらも多貫はリーシャ・ヴァーミリオンの血を吸い続ける。
「いつ自分が、運命の車輪に轢殺されるのかも分からないまま。今日は君が、明日は我が身かも知れない」
 ぼそりと、華乃音がリーシャ・ヴァーミリオンに向けた言葉の続きを紡ぐ。強者を求めたリーシャ・ヴァーミリオンは、望み通り猟兵という強者の手によって今。その身を滅ぼされている。
 多貫によるリーシャ・ヴァーミリオンの吸血は数分に及んだ。その間、リーシャ・ヴァーミリオンは徐々に力を失っていき、最終的にリーシャ・ヴァーミリオンは多貫に抱きかかえられるようにして息を引き取った。
「・・・ありがとう、って。言われた」
 リーシャ・ヴァーミリオンの死に顔は、遊び疲れて眠る子供のように穏やかで満ち足りたものだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『暖かな日』

POW   :    村人や周囲の手伝いをする。冒険談を話す

SPD   :    料理や芸などを見せ、振る舞い、周りを楽しませる

WIZ   :    人との交流を楽しむ

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 リーシャ・ヴァーミリオンが死んだことによって、その眷属であったスケルトンたちも活動を停止し、元のただの死者に戻った。リーシャ・ヴァーミリオンの起こした事件はこれで解決した。
 猟兵たちは戦闘の疲れをとるため、ダークセイヴァーにある近くの町に休息を取りに向かった。ここの住人達はリーシャ・ヴァーミリオンが付近で軍を組織していたなどとは知らない。猟兵たちは思い思いの方法で、ダークセイヴァーの日常を過ごすことになった。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。折角だから私は軍勢の弔いを。
死者の尊厳は守られるべき。平原に置き去りは、あまりに無体…。
でも【常夜の鍵】で回収するには、数が多すぎるから…致し方ない

普段より時間をかけ【限定解放・血の教義】を二重発動(2回攻撃)。
吸血鬼化した両目に魔力を溜めて精霊の存在感を見切り、
彼らに自身の生命力を吸収させて誘惑して力を借りる

…光の精霊、大地の精。
その大いなる腕に、彼らの亡骸を包んで慰めてあげて…。

光を扱う反動で傷口が抉るような痛みに気合いで耐え、
平原全体を呪詛を浄化する“光”属性の“大地”に変えた後、
“土属性の渦”を生み骨を集め地中に呑み込む

…これでもう二度と迷い出る事は無い。眠りなさい、安らかに…。


フォルク・リア
死体に戻ったスケルトンを弔う。
(可能であれば火葬)
「生きている時に善人だったか
悪人だったかは知らないが。
死んでしまえば皆同じだ。
だから、せめて墓ぐらいは作ってやるよ。」

その後は
村を訪れて、自分や仲間の傷の手当てをする。
村人がリーシャ・ヴァーミリオンの事を
知らないのならば、戦いの事を悟られて
余計な気を使わせない様に注意。

今迄の戦いを思い起こし。

最期にありがとう。か。
吸血鬼がそんな事を言うとは思わなかったが。
俺もあいつらの全てを知っている訳じゃない。
そういう奴もいるのかもな。

ふと野に咲く花が目に入り。
「俺も猟兵や魔術に飽きたら
花でも育てたくなるものなのかね。
ま、あるとしてもそれは相当先の事か。」


フランチェスカ・ヴァレンタイン
ようやくながら胸のつかえが下りた気分ですわねー、などと参戦した方々と細やかに祝杯を上げながら振り返りや歓談などを

戦闘装束から普段着に着替えているので男性陣や周囲の一般住人には割と目の毒かもしれません?
見た目に誘惑された住人に言い寄られてうまくあしらったり、おっちゃんらにお酒を奢られて遠慮しつつも結局頂戴したりとか
酒精が入ると割と頻繁に艶かしい仕草を見せますが、本人は概ね無自覚です(

それ以外はお迎えがあるまで他の方々の用事にお付き合いすると致しましょうか、と

※アレンジ・アドリブ・絡み歓迎


ロイド・テスタメント
【吸血猟兵】【WIZ】

(この世界にしかない食材でも買って、お菓子でも作りますか)
やれやれ、やはりアレは病気みたいなモノでしょうね。
「多貫さん、アレは過去です。彼女は過去の人で、いつの間にかオブリビオンになってしまった存在……過去から解放されたからなのか、オブリビオンで無くなるからかはわかりませんが、彼女を助けた事は間違いありません」
グモリア猟兵として、可能な限りの事は伝えますがどう思うかは多貫さん次第。
下手な同情や慰めの言葉は嫌いなので。
「夜々さん、多貫さん、今食べたいモノはありませんか?作ってあげますよ。ゲテモノ以外なら何でも」
手を差し出し、前を向いたらそっと離す。
ここは甘くない世界だから


山理・多貫
WIZ/吸血猟兵/アレンジ大歓迎

町外れの人気の無い場所
元の姿へと戻り、赤い染みをつけたまま浮かぬ顔で物思いにふけり

どこか失恋にも似た寂しさの意味を考えて。
「ありがとう」という言葉の意味を考えて。

ロイドと夜々 に
独り言のようにぽつりぽつりと力なく答えます

凄く美味しかったのに……変なの…
好きだったのかしら、彼女のこと…
もう……会えない、のね
等(台詞回しお任せです)


二人に元気付けられ次第に元の調子を取り戻し――


食べたいもの……?
二人の血、かな(表情は変えないが、どこか冗談っぽい口調で)

大好きです、よ二人とも。


(どこかで一瞬、二人を見る瞳が金色になる描写あると嬉しいです/食べたくなると金色になります)


宮代・夜々
【吸血猟兵】【WIZ】

町外れの人気のない場所で物思いに耽る多貫の様子が心配で様子を見ていたが…。
もう会えないと言った多貫の背中があまりにも寂しそうに見えたから声を掛けてみるとしよう。
「リーシャの事を考えていたのか?」
会話下手な話を聞く事しか出来ないだろうが…。それで多貫の気持ちが少しでも晴れるなら話を聞かせてほしい。

冗談が言えるようになった多貫の姿に安堵し、ロイドなりの気遣いにも共感と感謝を示しつつ。
「食べたいものか…。俺はビスケットを久々に食べたい気分だな」
ロイドの作る美味い菓子で英気を養い、共に未来へとまた歩き出そう。
過去を壊し、未来を創る猟兵として。



戦場となった平野を猟兵たちは振り返る。幾体のスケルトンの亡骸が平野の中心、体内の血が失われ、からからになったリーシャ・ヴァーミリオンを向いて倒れている。それは、亡き主君を悼み臣下たちが首を垂れているようにすら見えた。
「…ん。死者の尊厳は守られるべき。平原に置き去りは、あまりに無体…」
 リーヴァルディは平野の横たわる亡骸の数々を振り返り、死者を悼み瞳を閉じる。
「生きている時に善人だったか悪人だったかは知らないが。死んでしまえば皆同じだ。だから、せめて墓ぐらいは作ってやるよ」
 同様に振り返ったフォルクは右手を掲げて魔力を集めて炎とする。それを送り出すように死者の群れに放ち、解放した。暖かな炎が平野に倒れた物言わぬ者たちを包み込み、煙を上げる。
「…光の精霊、大地の精」
 リーヴァルディが閉じた目を開き、その場に漂ってきた精霊と言葉を交わす。精霊に自らの生命力を与え、その力を借りたリーヴァルディは天を仰ぎ、弔いの言葉を紡ぐ。
「…その大いなる腕に、彼らの亡骸を包んで慰めてあげて…」
 リーヴァルディの祈りに精霊たちは応え、大地が大きく揺れ死者を飲み込み始める。フォルクの炎に包まれた死者たちは、精霊の導きに従うように、大地の波間に飲まれ、消えてゆく。
「リーシャ…」
 多貫が大地に飲まれてゆくリーシャ・ヴァーミリオンを見つめる。リーシャに最期を与え、自身の腕の中で息絶えた彼女の満ち足りた笑顔を目に焼き付けるように、多貫はその光景を金の瞳で見つめていた。

「ようやくながら胸のつかえが下りた気分ですわねー」
 フランチェスカが戦闘装備を外し、ラフな格好でほっとしたように溜息をこぼす。平野から近い町の酒場で猟兵たちは戦闘の疲れをいやしていた。豊かではないがそれなりの品を備えた店で、穀物の入ったスープ、羊の乳のチーズや燻した肉などの簡単な料理を口にし、英気を養う。
「ロイド、傷は大丈夫なのか?」
 フォルクはチーズのひとかけらを目深にかぶったフードの中に運び込みながら、ロイドの怪我の具合を尋ねる。リーシャ・ヴァーミリオンとの戦闘で皆、大小は異なれど傷を負ったが、フォルクは比較的軽傷で済んでいたからこそ、仲間の怪我の手当てに回る。
「大丈夫ですよ。フォルクさん。お気遣いありがとうございます」
 人の好さそうな笑顔を変えるロイド。戦闘時の狂戦士のような振る舞いが嘘のように礼儀正しい。
「それならよかったわ。みんな無事みたいだし…これで一件落着ね?」
 両肘をテーブルにつき、掌を重ねた上に形の良い顎を乗せ、ほほ笑むフランチェスカ。戦闘用の装備を解き、押さえつけられていた肢体が幾分自由になって、艶めかしい魅力が惜しみなく発揮される。手に持ったエール酒で多少酔いが回っているのか頬はほんのりと赤く染まり、豊満な胸がフランチェスカが身じろぐ度に存在感を主張している。
「ほう、おねぇさん。色っぽいなぁ。いっぱい付き合ってくれないか?おごるよ」
 酒場で飲んでいた男がフランチェスカに魅了され、声をかけて来る。フランチェスカもそういった手合いの対処は慣れているのだろう。適当な言葉のやり取りでのらりくらりと躱しながら、ちゃっかり飲み物を受け取っている。
「…ん。少し外に出て来るわ」
 フランチェスカと男の会話を横目に、リーヴァルディが席を離れ、店の外にへと出てゆく。
「…私も、ちょっと失礼する、ね」
 リーヴァルディに続いて多貫も席を離れる。赤い瞳を彷徨わせて、ふらふらと夜の世界に消えてゆく。その頼りない、消えてしまいそうな後姿を夜々とロイドが心配そうに見つめる。
「多貫?」
「追いかけたら?迎えが来たら、呼びに行ってあげるわよ?」
 多貫の後姿を見送っていた夜々にフランチェスカが頬杖をついた姿勢で囁いた。片目をつむって見せ、夜々の背中を押す。
「…ああ、わかった。世話をかけるな」
「いいのよ、心配なんでしょ?あの人のこと」
 夜々は頷いて、立ち上がり多貫を追う。あらあら、とフランチェスカは夜々の背を見送る。
(やれやれ、やはりアレは病気みたいなモノでしょうね)
 肩を竦めて見せ、ロイドも二人の後を追って店を出て、夜の世界へと戻っていった。

 夜に包まれた世界の町には街灯も少なく、一歩踏み出してしまえば月明かりが照らすだけの暗闇に閉ざされる。そんな薄闇の中、細い路地裏に逃げ込むように入り込んだ多貫は、壁に背を預けて座り込む。
「もう……会えない、のね」
 ポツリ、膝を抱えてこぼす言葉はかすれていた。敵であるはずのあのリーシャ・ヴァーミリオンをどうしようもなく想ってしまう。多貫は自分の感情を整理できないでいた。不快感がこみあげてきて、咳をしたら、血を吐いた。その血も自分のものなのか、それともあの時吸ったリーシャ・ヴァーミリオンのものなのか、などと考えてしまう。
「リーシャの事を考えていたのか?」
 かけられた馴染み深い声に多貫は顔を上げる。額にうすら汗を浮かべ、夜々が月光を背に路地裏に立っていた。心配をかけさせたのだろうか。汗を拭う夜々をみて、多貫は途端に申し訳なくなり、顔を伏せてしまうが、
「少し、話を聞いてくれる…?」
 赤い目を伏せたまま、ぼそぼそと多貫は縋るような声で聞いた。心中に抱えた感情の渦は、一人で抑え込むには重すぎた。
「多貫の気持ちが少しでも晴れるなら話を聞かせてほしい。会話下手な話を聞く事しか出来ないだろうが…」
 夜々は多貫の吐いた血を拭ってやる。優しい手だった。そのまま、夜々は多貫の反対側に座り込んで、多貫の言葉を待つ。
「ありがとう…凄く美味しかったのに……変なの…」
 多貫は夜々に心の内を吐露する。自分でも理解しきってなどいない、不定形の感情だが、多貫は絞り出すように一言づつ、言葉を零してゆく。
「好きだったのかしら、彼女のこと…」
 膝を抱きなおし、顔をうずめる多貫。悩みで瞼が重くのしかかり、霞む視界で自分の腕の中で動かなくなってゆくリーシャ・ヴァーミリオンを思い出す。彼女が最期に残した言葉の意味を考えながら。
「多貫さん、アレは過去です」
 いつから話を聞いていたのだろう。ロイドが路地裏に座り込む多貫と夜々の歩み寄る。
「立ち聞きしてしまったことは謝ります。が、多貫さんが気に病むことはありません」
 ロイドは片膝をついて多貫に目線を合わせ微笑みかける。
「彼女は過去の人で、いつの間にかオブリビオンになってしまった存在……過去から解放されたからなのか、オブリビオンで無くなるからかはわかりませんが、彼女を助けた事は間違いありません」
 リーシャ・ヴァーミリオンが最期に残した言葉のことを言っているのだろう。ロイドの言葉に多貫は赤い目を閉じ、再びリーシャ・ヴァーミリオンの死に顔を思い出す。腕の中で眠るように息絶えた彼女の満たされた笑顔。その真意をもはや知ることはできないが、少なくともリーシャ・ヴァーミリオンにとって望ましい最後になったのではないか。そう考えると多貫は少しだけ、救われたような気がした。
「夜々さん、多貫さん、今食べたいモノはありませんか?作ってあげますよ。ゲテモノ以外なら何でも」
「食べたいものか…。俺はビスケットを久々に食べたい気分だな」
 多貫が顔を上げると夜々とロイドの二人が多貫に笑いかけてくれていた。
「多貫は、何が食べたい?」
「…二人の血、かな」
 くすり、と笑い返し多貫は腰を上げる。冗談なのに一瞬固まったロイドと夜々の様子が可笑しくって目を細める。
「冗談を言えるくらいなら、大丈夫だな」
 夜々は笑う多貫に視線を向け肩を竦める。普段、無表情な彼女が笑っているのは珍しいが悪い傾向ではないだろう。過去を壊し、未来を歩む猟兵として再び共に歩んで行ける。夜々は多貫の表情にその確信を得て安堵し、ロイドの視線を向け、無言の感謝を送る。
(口下手な俺じゃ、うまく言葉をかけたやれなかった。ありがとうな)
 人間の感情の機微に敏いロイドは夜々の感謝を受け取り、口元で指を立てて見せた。礼には及ばない、と言ことだろうか。
「さ、店に戻りましょう。キッチンを借りて腕を振るわせてもらいますから、多貫さんも何が食べたいか考えておいてくださいね?」
 ロイドは半身になり道をあける。立ち上がった多貫に迷いはないだろう。立ち直ったなら、自分の手助けは不要だ。ここは厳しい世界だから、多貫は自分の足で歩いていかなければならない。その意味も含めて多貫に自分を追い越させる。
「…うん。考える」
 二人を追い抜き、多貫は歩みだす。本当は二人の血を飲みたいのは、半分以上が冗談ではないのだけれど、と多貫らしい不満を心中に抱えつつ、彼女は夜の世界に一歩踏み出す。
(大好きです、よ。二人とも)
 きらり、と多貫の真紅の瞳が一瞬、リーシャ・ヴァーミリオンを見つめていた時の様に金に煌めいた。

 同じころ町から数分ほど歩いたところ、戦場となった平野を見下ろせる場所にリーヴァルディは一人佇んでいた。
(…もう二度と迷い出る事は無い。眠りなさい、安らかに…)
 自らの力で地中深くに誘った死者たちに、目を閉じ追悼の念を送るリーヴァルディ。リーシャ・ヴァーミリオンの我儘によってその命を奪われ、配下としてスケルトンとして骸の海から呼び戻された彼らもまた、今回の事件の被害者なのかもしれない。だからどうという言うことではないが、リーヴァルディは平野を見下ろし戦士たちを悼む。
「ここに来ていたか。迎えが来るぞ?」
 黒衣に身を包み、静かに死者を想うリーヴァルディに、迎えに来たフォルクが声をかける。
「…ん。わかったわ」
 目を開け、黒衣を靡かせてリーヴァルディは平野に背を向け歩み始める、次のヴァンパイアを狩る。そのために。
「最期にありがとう。か」
 町への道を歩きながらフォルクがそんなことをこぼす。突然何を言い出すんだろうと、リーヴァルディも横目に隣を歩くフォルクの様子を伺うが、目深にかぶったフードのせいでその表情は読めない。
「吸血鬼がそんな事を言うとは思わなかったが。俺もあいつらの全てを知っている訳じゃない。そういう奴もいるのかもな」
 かろうじて見えるフォルク口元が少しだけほころんでいるように見えた。それは自分が知らなかった吸血鬼たちの未知への探求心か、それとも別の何かか。
「…。私はヴァンパイアを狩る。ただそれだけ」
 誰に言うでもなく、リーヴァルディはその言葉を口にする。それはいつからか彼女が心に刻んだ決意。吸血鬼狩りとして、生きる彼女はその決意の言葉を更に深く刻み直し、歩を早める。
「お、おい…」
 突然早足になったリーヴァルディに置いて行かれそうになったフォルクは苦笑しながら、足を動かそうとしてふと、道端に咲いた花に目を留める。
「俺も猟兵や魔術に飽きたら花でも育てたくなるものなのかね」
 リーシャ・ヴァーミリオンの言葉を思い出し、その花をしばらく観察するフォルク。リーシャ・ヴァーミリオンの欲望は他人を傷つけ、到底許容できるものではなかった。けれど、その熱意のあり方は純粋でそれは自分の研究に対する思いと共通する部分がないわけではない。もし、この熱意を向ける先がなくなってしまったら?フォルクの脳裏にふと、問いかけが生じる。
「ま、あるとしてもそれは相当先の事か」
 問いに答えは出ない。けれど、それを考える時間はまだたっぷりとある。自分の歩むこの道の果てに、自分が何を目にするのか。それがわかってからでも遅くはないと、フォルクは花から目を離して帰路を歩む。道の先で皆を集めたフランチェスカが手を振っていた。

 夜に閉ざされた世界、いつ異端の神が人間を蹂躙しても可笑しくはない、気を抜くことは許されない死が日常を支配する。人間たちは一縷の希望を求め、一滴の癒しを求める。だが、そんな非情な世界であっても戦い、道を歩む者がいる。それは皮肉にも、『彼女』が求めた強者の姿。闇夜に香るその花は、陽を見ることは叶わずとも、命の灯を胸に輝かせ、月光の下、凛と咲く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月09日


挿絵イラスト