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暴走～Lose control～

作者：JUNK.O

●狂ったキャバリア
「ブレイジング・バジリスク、動作に問題ありません」
　クロムキャバリア。全高5メートルほどの人型機動兵器を用いた長きに渡る戦争が今も続く世界。
　この度、とある小国が最新鋭のキャバリアを実戦配備することとなった。近日には公開を兼ねた軍事パレードも計画されている。
　事件は試験運用中に起きた。最新鋭機、ブレイジング・バジリスクの機動性を検証するための基地内の模擬戦フィールドにて、据え付けの大型バーニアを用いた三次元機動を行っていた最中。
「パイロット、バイタル低下！」
「ブレイジング・バジリスク、状況の報告を願う」
　テストパイロットからの応答はない。それどころか、同じくフィールド上で検証に参加していたキャバリアを射撃しはじめる。
「友軍機に攻撃――だと！？応答しろ！」
　オペレーターや上官の通信に答えないテストパイロット。一体なにが起きたのか。

●演習中の事故
「ゴホッ。みんなご苦労。招集に応じてくれて感謝する。」
　虚弱体質のグリモア猟兵、ニナ・サルメライネン（ちいさな鼓動・f19426）が集まった猟兵に右手を上げて挨拶する。
「猟兵諸君に集まってもらった、ということは当然だがオブリビオンだ。場所はクロムキャバリア。新型キャバリアのテスト運用中にキャバリアが暴走するという事が起きるようだ」
　予知の結果を淡々と述べるニナ。曰く、キャバリアはオブリビオン化して自軍の基地を破壊しはじめるという。
　キャバリアの中にはテストパイロットが乗っている。しかし、テストパイロットは昏睡状態にあるとのことだ。
「パイロットの情報だ。名はニコラス・ダグラス。やり手のパイロットで、今回のキャバリアの披露を兼ねた軍事パレードでも操縦を務める予定だったらしい。オブリビオンマシンのパイロットは思想が歪む性質があるが、昏睡したままのため中に閉じ込められているだけに留まっている」
　ダグラスはテストパイロットだけではなく実戦でもエースとしての輝かしい武勲を残してきた。
「昏睡した彼に届くかはわからないが、こちらからの呼びかけで目覚めるかもしれない。なるべくなら大破ではなくパイロットの救助も兼ねるのが望ましいな」
　続いて敵機の情報が開示される。バーニアによる高速三次元機動が得意な機体であり、機械兵器を無力化する漆黒のオーラを放つ。武器は実弾のライフルだ。
「ゴホッ。提供された情報からすると、オーラによる機械停止はどうやらオブリビオン化する以前から積まれていた機構のようだ。この機体の開発には何か裏がありそうだな」
　ニナは何度か咳き込み、雪の結晶を思わせるグリモアを浮かべた。
「今回は猟兵に対しキャバリアの提供がある。ユーベルコードはキャバリアからそのまま放つ事が出来るようだ。目標はオブリビオンマシン撃破、それだけだ。では、皆の無事を祈る」
　そしてニナは転移をはじめた。行き先は軍の敷地、広大なコンクリートの地面からなる演習場だ。

第1章 ボス戦 『ブレイジング・バジリスク』

POW   :    ブレイジング・シュート 【ライフルの集中射撃】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。 SPD   :    バジリスク・ランページ 【右腕のライフル】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。 WIZ   :    エンジンキラー 自身の【オブリビオンマシン】から【漆黒のオーラ】を放出し、戦場内全ての【エンジン】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●黄金に輝く死の機神
　クロムキャバリアを放浪している青年、槐・白羅（白雷・f30750）は乗機の冥導神機『モルス』に語りかける。
「おお、モルスよ。お前と同じ機体の気配を感じるか。ならば止めねばならんな」
　放浪の果て、回収した謎のキャバリア。神機からはオブリビオンマシンと思われる禍々しい力を感じさせる。
「ニコラスよ、大丈夫か？是より救出に掛かるので頑張って生きていて貰おう」
　ブレイジング・バジリスクからパイロットの声は聞こえてこない。おそらくいまだに昏睡状態にあるのだろう。モルスが鳴動し、重い低音が響く。
「不服かモルスよ。何……生があるから死があるのだ。それにあの機体に死を与えるとしよう」
　死の眠りを司るモルスは救出には不満があったようだ。しかし、敵機に『死』を与えられるならば良しとするか渋々と承諾して白羅に身を委ねた。
　白羅からの呼びかけに気付き、振り向いたブレイジング・バジリスクはライフルから一点に集中した射撃を放つ。白羅はプラズマライフル『黄金の矢R』を連射し、熱線で実弾を溶解させ受け流す。
　ユーベルコード【四門開門】により黄金のオーラを纏ったモルスは接近、キャバリアの魔剣『死の運命』を召喚してブレイジング・バジリスクを切り裂く。
　連続の斬撃が敵機へと大きな傷を負わせた。しかし、ブレイジング・バジリスクは止まる気配を見せない。
「きついなモルスよ。だがこの程度でやられる俺達ではないだろう？」
　一撃離脱、飛翔からの滑空で距離を取った白羅は姿勢を立て直して戦況を再考した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●翔べ！いなり寿司1号
　木常野・都月（妖狐の精霊術士・f21384）は狐として生きていた妖狐だ。現在、自分の在り方を模索中。
　暴走したブレイジング・バジリスクを止め、ニコラス・ダグラスを助けるべく精霊を召喚した。
「アエラ、頼む！」
　ユーベルコード【精霊遠隔接続】は古代精霊アエラと精神、魔力を接続することでサイキックキャバリアの『いなり寿司1号』を遠隔操作することが出来る。いなり寿司1号はキャバリアの名前だぞ。
　いなり寿司1号は両腕でブレイジング・バジリスクと組み合う。パイロットに声を届けるならいましかない。
「風の精霊様！」
　精霊術士たる都月は、風の精霊を頼ってブレイジング・バジリスクのコクピットまで声が届くよう願った。
「ダグラスさん、起きて！」
　続けざまに雷の精霊を使役して電撃でオブリビオンマシンを停止させようと狙う都月。停止すればコクピットをこじ開けることも叶うのではないか。
　しかし、いなり寿司1号と組み合ったブレイジング・バジリスクは右腕のライフルを巨大化させた。敵のライフルは範囲攻撃、いなり寿司1号のみならず都月にも銃口が向く。
「っ！」
　雷の精霊を攻撃に集中させるのは難しかった。ライフルからの実弾は雷の精霊を纏った電磁障壁で空中に静止させ被害から免れる。
　いなり寿司1号は射撃から自分を庇いつつも拳でブレイジング・バジリスクの顔面部を殴りつける。致命打とはならずも有効な一撃。三度目の射撃は防ぐことが出来た。
「ダグラスさん、無事でいてくれ……」
　救助対象の無事を祈る都月。声は届いただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●遮蔽からの声
　サイキックキャバリアに搭乗するために生み出されたアンサーヒューマン、ティオ・ブリューネ（舞い射す光条・f31200）。
　彼女は古代魔法帝国の遺跡から出土したサイキックキャバリア、フェラスティアを駆りブレイジング・バジリスクに立ち向かう。
「えーっと今回の任務内容からすると……駆動系を何とかすればいい感じっすかね？」
　遮蔽物に身を潜め、敵の射角から身を守り、タクティカルビット・戦術飛晶を全て展開。ユーベルコード【サテライト・ヴィジョン】も用いて出し惜しみなく装備を投入する。
「うぅ、後で頭痛確定っす……」
　索敵用S型、攻撃用O型のタクティカルビットを2機一組、遮蔽物の間を縫うよう移動させて敵機を捉える。サテライト・ヴィジョンで高めた索敵能力はブレイジング・バジリスクの位置を正確に特定。
　死角に陣取ったタクティカルビットのうち八面体状のO型が開口して射撃、ブレイジング・バジリスクの駆動系を狙い撃つ。
　敵とて反撃を行わない事はない。ブレイジング・バジリスクは高い機動力を活かして浮遊すると、巨大化させた右腕のライフルから実弾を連射。遮蔽物を破壊してティオやタクティカルビットをさらけ出す。
「見つかった、牽制牽制……」
　防御用D型タクティカルビットがフェラスティアの周囲に障壁を張り、弾丸を防ぐ。その間に次の遮蔽物へ移動。通信回線越しにニコラス・ダグラスへと呼びかける。
「そろそろ起きて！しっかりするっすよ！そこから降りて逃げるっす！」
　いまだ気を失っているのか、ニコラスからの応答はない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●パイロットの誇り
　妖精型のキャバリアが戦場を飛翔する。ヘスティア・イクテュス（SkyFish団船長・f04572）は海賊SkyFish団の船長。
「暴走……中々厄介な状況みたいね……それじゃあ、つい先日完成した飛躯姿のお披露目ついでに頑張らせてもらおうかしら？」
　AIにより自動操縦されるヘスティアのキャバリア・飛躯姿はバリアを展開し、大型化したライフルを振り回すブレイジング・バジリスクを誘導していく。
　ヘスティア自身は光学迷彩を張って身を隠した上で遮蔽を取り、敵機からのターゲットを免れる。
「いくわよ、ヴォルパーティンガー」
　玉兎姫重工の一人娘、玉兎姫・カグヤ（ソラに手を伸ばす赫奕姫・f31102）は自社で開発されたキャバリア、ヴォルパーティンガーのテストパイロット。
　敵機の武装は射撃武器のみ。そのライフルを大型化するとすれば、取り回しが悪くなるのは必然。ならば――
　カグヤはユーベルコード【オーバーブースト・マキシマイザー】でヴォルパーティンガーから搭載武装の一斉射を向ける。
　飛躯姿は掃射に合わせて離脱。ブレイジング・バジリスクは幾ばくかの誘導武器は撃ち落とす。それでも、手数が足りず被弾。ライフルによる攻撃を向けようにも撃ち落とすのが限界だ。
「本命は――こっちよ！」
　ブレイジング・バジリスクの懐に潜り込んだヴォルパーティンガーはレーザーブレードを発振して切り込んだ。ブレイジング・バジリスクは防御にライフルを用いるが、レーザーブレードの一振りで斬り落とされる。得物を破壊された敵機は一旦距離を取る。
　身を隠していたヘスティアはユーベルコード【サポートAI端末　ティンク・アベル】を起動してブレイジング・バジリスクの通信回線をハッキング、音量を最大にして声をかける。
「演習中の居眠り運転とは流石エースパイロットといったところかしら？眠気覚ましに強い衝撃は如何？」
　――敵機コクピット内、ニコラス・ダグラスは昏睡状態から目覚めつつあった。
　カグヤもヴォルパーティンガーから通信回線をハッキングし、ダグラスに呼びかける。
「テストパイロットなら最後まで試運転に責任を持つのが誇りでしょう！目を覚ましなさい！」
　カグヤ自身もテストパイロットとして自機を操縦している。その言葉に、ついにダグラスからの応答が返ってきた。
「……う、こちらダグラス。機体のコントロールが完全に効かなくなっている」
「止められないのね、それなら――」
　光学迷彩で姿を消したヘスティアが可変式ビームライフル、ミスティルテインを撃ってブレイジング・バジリスクを足止めする。
「いまのうちに脱出は出来るかしら」
「試してみる」
　緊急脱出を試みるダグラス。彼はブレイジング・バジリスクの背から座席ごと射出された。
「これで敵機を撃破出来るわね！」
　高速起動でオブリビオンマシンに迫るカグヤ。だが、ブレイジング・バジリスクはジャマー混じりの煙幕を噴出すると機動力を活かして演習場から撤退してしまった。
「取り逃がした！」
　ダグラスに肩を貸すヘスティアがカグヤへと連絡を送る。
「テストパイロットの無事を確認したわ、ひとまず彼は救護に回しましょう」
　果たして、オブリビオンマシンが去った先は――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 冒険 『軍事パレード』

POW   :    ●『行進中の兵士を調べる』：装備や所作など、他の兵士と比べて何か違和感は無いだろうか SPD   :    ●『近くの建物を調べる』：数は多い。急いで回らなければ。 WIZ   :    ●『見物している群衆を調べる』：思考を読む、危険物を透視する。 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●たくさんの市民
　兵士が行進、市民の歓声。
　ここは市街地、軍事パレードの真っ最中。本来であればブレイジング・バジリスクのお披露目も兼ねた催しだ。
　政府高官が新型機の遅れに気を揉んでいる。オブリビオンマシンが逃げ込んだのはこの方角。
　パイロット不在で動き回る化け物、軍事パレードに身を潜めれば時間を稼げると踏んだのだろうか。






●軍靴の中で輝いて
「なに、暴走した新型機がパレードに？」
　政府高官は軍事パレードを眺めつつ、演習場からの電話を受け取った。
「では、操縦しているのはテストパイロットではないというのか！」
　パレードの中断を進言する部下。高官も提案に頷くが、混雑模様から短時間での避難誘導は難しい。対テロ用のマニュアルはあっても友軍機が暴走しているというシチュエーションは想定していない。
「ああ、中断だ。間に合わせろ、必ずだ。……む？今日の催しに飛行型キャバリアは居たか？」
　パレードの進路を低空飛行するオブリビオンマシン。敵機ではない。槐・白羅の操縦するオブリビオンマシン、モルスだ。
　ユーベルコード【四門開門】で飛翔能力を得たモルスは高速で飛行。衝撃波や風が民衆や行軍を阻害しないよう配慮は心がけている。
「さて、モルスよ。お前は感じ取れないか？」
　白羅はパレードに参加するキャバリアの動きを観察しながら、モルスの感じる“オブリビオンとしての”キャバリアの所作を見極める。
「新型であるなら他の機体と違って見慣れない機体……目立つでしょうに」
　ヘスティア・イクテュスはユーベルコード【サポートAI端末 ティンク・アベル】を起動。アベルにSNSから寄せられる情報の収集、真偽の解析を求める。
　解析時間は長ければ長いほど特定が容易になる。ヘスティアは味方へ通信を送った。
「早期解決したいところだけど、少し時間を稼いでもらえる？」
「承知した」
「わかった。俺たち、全員整列！点狐！」
　同じ猟兵が複数人、小さな姿で人並みをかきわけて走り回る。ユーベルコード【小さな俺分身】で増えた木常野・都月。
　この分身能力は遺失物探しなどに高いパフォーマンスを発揮する。小さな都月は全員が都月の分身、故に交戦済みの敵の特徴は覚えている。
「さぁ、散開！見つけた俺にはいなり寿司3個だ」
「では俺たちも時間稼ぎついでに避難経路を考えておこうか、モルス。国を作るのであれば戦いの中でも英知を養っていかなければならないからな」
　地に降りた白羅はパレードに参列し、市民の誘導や防衛する際の動きを検討する。未確認機がパレードに参加したのもあって兵士から銃が向けられるが――
「銃を向けるな、彼は味方だ」
　演習場からの連絡を受けた責任者より兵隊に命令が下る。
「市民への説明が面倒だ、我が軍のテスト機ということにしておけ」
「了解」
「おお、モルスよ。こうして注目を浴びるのもなかなか悪くない気分だな」
　モルスは嬉しくも忌々しくもないというふう。そこにヘスティアからの連絡が一報。
「見つけた！敵機はパレードの北端！」
「了解、こちらは避難誘導の協力にあたる」
　ヘスティアの指示通り進路を北端へ取る都月の分身。すぐにコャーンと発見の合図が返ってくる。風の精霊が都月へと声を伝えた。
「わかった。止めにいく」
　都月は古代精霊アエラと交感し、キャバリアであるいなり寿司1号にブレイジング・バジリスクを追わせる。
　発見した敵機に掴みかかるいなり寿司1号。反撃の術を持たない敵はいなり寿司1号のパンチを受けて頭部にヒビを負った。
　ヒビの下から覗かせるオブリビオンマシンのもうひとつの顔――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『Type-XXフルングニル』

POW   :    Regeneration 全身を【高度な自動修復機能を有する特殊強化装甲】で覆い、自身が敵から受けた【ダメージを修復し、捕食したキャバリアの数】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。 SPD   :    Evolution 【敵性体から受けたダメージへの高い耐性】【敵性体に有効なキャバリア用内臓兵器】【敵性体の活動限界を上回るエネルギー】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。 WIZ   :    Proliferation 自身の【口で捕食してきたキャバリア】を代償に、【敵性体の数×10体のベルグリサル】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【体内で生成した敵性体に有効な武装】で戦う。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

●獣の姿
　ブレイジング・バジリスクの顔面が剥がれ落ちる。
　中から現れたのは狼を彷彿とさせる頭部。一回り小型になるが、オブリビオンマシンはその真の姿を顕にした。
　Type-XXフルングニル。どうしてこの機体が軍の手に渡ったのかは定かではないが、ブレイジング・バジリスクの素体として扱われていたようだ。
　軍隊や猟兵の避難誘導もあり、市街地から猟兵以外は退却している。
　ただし、演習の過程で残されたキャバリアは複数機。フルングニルは強靭な顎で放棄されたキャバリアを捕食し、これまでの戦いで負った傷を癒やした。


●止まらない怪物
「さてと、登場が遅れちまったが仕事はしねえとな！」
　ネルガロッテ・ノイン（超一流のヤブ医者・f31309）が搭乗するは、かつて酒場のポーカーでチンピラから巻き上げたキャバリア・ヴェンデッタ。
「まずは足止めだぁ！」
　全方位誘導レーザー砲による飽和攻撃、機体背部から無数の誘導レーザーを放って周囲の建造物を破壊。避難は完了しているから問題はない。
　そう、避難は完了している。だから、あとは政治家が頑張ればいいのだ。今ごろ、住民も政治家も青い顔になっていると思われるが、多少の犠牲はやむを得ない。
「グゥ……？」
　周囲が瓦礫と化してフルングニルの行動が制限された。反撃に転じるフルングニル、直線移動でまっすぐにネルガロッテを狙う。敵が直線移動を取るのなら、攻撃を外すのは難しくない。
「動くな！暴れんな！！」
　ネルガロッテはユーベルコード【咎力封じ】で手枷、猿轡、拘束ロープを同時に前方に放つ。咎力封じは順番に命中してフルングニルのユーベルコードを封じることに成功。
「っしゃあ！このまま首を切り落とす！」
　ビームの刃が構成するキャバリア用の大鎌、BXグリムリーパーを大ぶりにフルングニルの首に向け振るう。だが、フルングニルは高い反射性を活かしてしゃがみ回避。
　行動を封じられているために雑な回避しか取れないが、前進の勢いが乗っている事もありもつれて体当たりとなる。ネルガロッテは背中から倒れ込み、フルングニルにのしかかられてしまう。
「グルルルル！！」
「うおっ、どけ！邪魔だこのっ！」
　全方位誘導レーザーを馬乗りになるフルングニルに向けて放つネルガロッテ。誘導レーザーはフルングニルに命中し、敵に傷を与える。
　マウントを取っていたフルングニルは危険を感じ、急ぎ飛び退く。咎力封じにより科せられた拘束を強引に引きちぎるフルングニルを見てネルガロッテは呟いた。
「クッソ、バケモンかこいつ……！」

成功 🔵​🔵​🔴​

●屠る者共
　フルングニルの口から唾液のような潤滑油がしたたり落ちる。足元に転がるキャバリアは軍事パレードに参加していた量産機。
　軽々と片腕で持ち上げると、まるで揚げ物かなにかのように顎で噛み砕いて捕食していく。
　木常野・都月は脅威を感じながらも、いなり寿司1号を距離を取るように制御した。いなり寿司1号と都月とは、古代精霊アエラを介して精神と魔力を接続している。
　捕食されるということはすなわち、自身に噛み砕かれるダメージがフィードバックされてくるに違いない。だが、自分は術士。相手の有利な間合いを避ければ噛まれる事はないだろう。
「うちの飛躯姿は食べさせないわよ！高かったんだから！本当！！！」
　叫んだのはヘスティア・イクテュス。こちらにはもっと切実な理由があったようだ。
「お互い食べられるのは嫌でしょ、距離を保って連携！」
「わかった」
　都月、ヘスティア。互いのキャバリアに共通する特徴がある。それは、操縦に搭乗を必須としない。妖精の羽を象ったジェットパックで飛び回るヘスティアが敵の注意を引く。
　フルングニルが跳躍してヘスティアに喰らいつこうとするも、器用に飛び回って回避。可変型ビームライフル“ミスティルテイン”が顎関節を撃ち抜いた。
「グァーッ！」
　敵を観察する都月。捕食することが攻撃手段なら、顎を駄目にしてしまえば機能を一時的でも封じることが出来るのではないか。
　ヘスティアのキャバリア、飛躯姿は後方から砲撃を絶やさない。アイレーザーに胸部熱線砲。フルングニルが防御姿勢を取った。全身を特殊な装甲で覆う。
「いまだ！」
　動きが緩慢になったのを見計らって、都月がユーベルコード【狐火】を最大火力でフルングニルの口内に出現させる。口腔内まで装甲で覆われていない。判断の勝利だ。
「グガァーーーーッ！！」
　転げ回るフルングニルは再生に再生を重ねるが、続く攻撃に再生が間に合わない。
「鎧を脱ぎ捨て、共に翔けよ！我が騎士！」
　飛躯姿が装甲をパージ、高機動のS型へと変形する。ユーベルコード【チェンジリング】で切り替えて攻撃力を5倍、装甲を半分にした姿だ。
「突貫！」
　バリアを展開した飛躯姿はフルングニルに突撃。向かい合うヘスティアがマイクロミサイル、ミスティルテイン、無線誘導端末兵器の一斉射で迎え撃つ。
「ガルルルァーーーーッ！！」
　爆発の中から離脱してくる飛躯姿。フルングニルは……惨憺たる有り様ではあるが健在！
　むしろ、増えた？　20体にも及ぶ分身・ベルグリサルを生成して二人に差し向けるフルングニル。いなり寿司1号が現れたベルグリサルを殴る蹴るで蹴散らして退路を拓く。
「風の精霊様！お願いします！」
　都月も状況を判断し、風の精霊に助力を請うとベルグリサルを広範囲に吹き飛ばした。ヘスティアが撤収しながら呟く。
「S型の今は囲まれると危険……惜しいけれど退き時かしら！」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●奪う力
　這う這うの体で放棄されたキャバリアを見つけたフルングニル。再生が追いつかずに右半身を失っている。
　残っていた左腕を使い、量産型のキャバリアにしがみつくと牙を突き立てる。やっと得た“栄養”によって、なんとか四肢を構成して立ち上がるだけの力を振り絞る。
「おお、モルスよ。また厄介な姿になったようだな。あれはまさに暴食」
　槐・白羅はフルングニルの前に降り立ち、乗機モルスに語りかける。
「だが、モルスよ。お前もまた、負けぬ力を持っているだろう？」
　モルスは重々しい唸りを上げてこたえた。唸りに呼び合うようにフルングニルが吠える。
「クォーーーーン！」
　フルングニルの両腕部が鉤爪に変化、ビルを蹴りモルスに肉薄する。切り裂く一撃を剣で受ける白羅。周囲のベルグリサルはプラズマライフルからの熱線が殲滅する。
　片腕の剣“死の運命”でフルングニルの攻撃をいなしていた白羅。もう片腕がフルングニルの頭部を掴む。
「モルスよ……今こそその権能を示せ……死の眠りを与えよ！」
　ユーベルコード【対生物戦殲滅機構『死の眠りの神』】は、冥導神機『モルス』から生命力やエネルギーを奪う死の閃光を放つ。
　フルングニルは――掴みかかった片腕に喰らいついた。生じるはエネルギーの奪い合い。否、死という運命の押し付け合い。
「奪う事になれて奪われる事にはなれんか」
　両オブリビオンマシンから気迫が薄れていく。どちらが先に折れるかは未だわからない。
「同感だ――俺も……そうだよ……」
「共倒れにはさせない！」
　双方の信号が途絶えかけたその時、急速に凍結していくフルングニル。モルスはフルングニルから全てのエネルギーを奪った事を悟ると、魔剣を叩きつけて敵オブリビオンマシンを粉砕した。
「間に合ってよかった、玉兎姫重工製超低温レーザー砲……」
　地上からフルングニルに向け、凍結光線を放ったのはヴォルパーティンガーを操縦する玉兎姫・カグヤだった。
　ユーベルコード【あしながうさぎの手助け】は玉兎姫重工製の兵器を呼び出す。今回選んだのはたまたま低温レーザー砲だった。
「需要がなかった、でも……いまは“これ”がいちばん良かったのかもしれないわ。ありがとう、お父様」
　低温とは、物体の固有振動をゼロにする――つまり、これもまた奪う力である。二機の奪う力が合わさり、フルングニルから奪われるだけの力を上回った。
「助かったか……感謝しよう、テストパイロット」
　済んでのところで一命を取り留めた白羅は、口元にのみ微笑みを浮かべてカグヤへと礼を送った。

●テスト・アンド・テスト
　フルングニルによる一連の騒動が片付いてしばらく経つ。ニコラス・ダグラスは無事に回復するとテストパイロットに復帰。
　出自不明のサイキックキャバリアをブレイジングバジリスクに偽装していた件については開発チームが刑に処される事に。
「お、テストパイロットの嬢ちゃん」
「どうも、テストパイロットのおじさん」
　ダグラスは納入に赴いたカグヤに向けて軽薄そうに笑いながら手を振る。
　どうやら、この国は次の契約先として玉兎姫重工を選んだようだ。先の事件から安全性と信頼に重きを置くこととし、事態の収束に一役買った企業であれば間違いないと判断したのだろう。
　演習場を一筋の雲が流れた。これからまた、納入された武装の試験運用だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2021年04月08日