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ブリンガー/イークウェス

#アポカリプスヘル

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#アポカリプスヘル


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●略奪と闘争は甘美
 シック・モルモット(人狼のバーバリアン・f13567)は珍しく現場に出ていた。
 アポカリプスヘル――荒野の世界。そこはアックス&ウィザーズのような世界に比べれば遥か未来であり、同時に終末を迎えかけた世界でもある。
 そんな世界を彼女が訪れている理由は幾つかある。ひとつは彼女が獣人めいた容姿であること、もうひとつは向かった先が『オブリビオン』のひしめく酒場であるという事。
(……この気配。どいつもこいつもオブリビオンか? 来なければ良かったかな……)
 今更ながら後悔するシックは仲間の手引きに従い、とにかく先を急ぐことにした。
 彼女以外は奪還者だ。機械化した四肢や頭部の見た目をした、荒野世界の現地住人である。生気の薄い彼等はこの酒場に潜入することを目的に選ばれ、募った者達だった。
 酒場の奥。淫らな行為や生半な劇物よりも危険な薬品の臭気が漂う、ホールのような場所に彼等が目指す場所はあった。

「連絡は聞いてる。ヴォ―テックスの依頼を受けに来た連中だな?」
「そうだ」
 短く答える奪還者。それを一瞥した黒いローブで顔を覆い隠した大男は、それ以上無駄な口を叩かずに一本の電子画面を映した携帯端末を渡して来た。
 画面上には様々な言語で『作戦内容』と記されていた。
「ブラッドルビー様が発令した任務の中でお前達に任せるのはこれだ。
 近々、複数の配下を首領にした軍団で『ロンメル・ヴォ―テックス』の各アジトを叩くらしい。戦争……とは言うまい、あの御方々にすればこれでただの小競り合いだと言うのだからな。
 お前達が向かうのはつまり、ロンメル支配領にあたるわけだが……今回は軍事拠点ではなく中継地点、連中の兵力を削ぐ事を目標に動いて貰う」
 男は軽く指を振ると、シック達に持たされた端末の画面が切り替わる。通信機能を体内に移植したものか能力か知らないが、奪還者側に緊張が走った。
「作戦は第一に、ロンメル側が有する人狩り運搬列車兵器の破壊。それが完了されれば自動的にその端末へ次の目標地点までのルートが示されるようになる。
 まどろっこしいとは思わない事だ。ヴォ―テックスの情報を流しそれを受理する事は危険が付き纏う、ブラッドルビー様の御眼鏡に適う機会に恵まれるだけでも感謝しろ」
 大男はローブの中で溜息を吐いた。
 そもそも、今回シックたちがこうして集まったのは水面下でヴォ―テックスシティにおける内部抗争の気を探り当てたからだ。
 現在はこうした依頼の窓口はシティの内外に溢れており、他組織と複雑に絡み合っている。依頼を受けに来た者が敵対組織の人間だったということも少なくないのだろう。
(そう考えると、コイツは一人で複数人の刺客を相手取る自信のある奴なんだよな……)
 シックは急に目の前のローブの男が恐ろしくなってしまった。あまり実戦経験のない彼女にとって、こうした現場に出て強力なオブリビオンを前にするというのは相当な勇気が必要だった。
 話は終わった。
 『ブラッドルビー・ヴォ―テックス』の配下の男に背を向け、オブリビオンのひしめく酒場を出るまでシックは最後まで生きた心地がしなかった。


やさしいせかい
 初めましてやさしいせかいです、よろしくお願いします。

「シナリオ詳細」

『第一章:ボス戦』
 とある荒野に広がる廃墟ステーション。
 皆様はそこで依頼人に示されたルートを辿り、ステーションで整備されていた巨大オブリビオン『死神列車』を破壊する事が第一目標となります。
 この列車は人狩りにも重宝されており、猟兵からすればこれを撃破する事で多くの人々を救う事にも通じています。
 シンプルに硬く大きく強く、強力なエネミーとなっています。どうかご健闘を。

『第二章:冒険』
 ボス戦後に送られて来たルート情報に依れば、廃墟ステーションから東に向かった先にロンメル陣営の中継地点があるようです。
 道中にはかなり広大な『ジャンク山』があり危険な薬物や暴走した機械兵器が跋扈しています。このジャンク山を越えない限り中継地点には辿り着けず、上空から向かうにしても同様に危険物に群がる飛行型エネミー(鳥類や暴走機械のドローンのような物)が襲ってくるため、
 皆様は此処に上手く現地を目指し、この山を突破して下さい。

『第三章:集団戦』
 ロンメル陣営の中継地点。
 ここには大量の補給物資などが保管されており、それに比例して配備された大量の機械兵が皆様の破壊工作を阻止しに殺到してきます。
 いずれも強力な機械兵がたくさんですが。物資が格納されたコンテナには傷をつけないように命令されており、上手く立ち回る事で捌けるでしょう。
 また、この中継地点にも機械兵の『燃料』として扱われている囚われた人々がいるようです。どのみち制圧しますが何らかの行動基準になる方はこれを意識してください。
 前章参加済みの方など、希望があればダメージや疲労が蓄積している状態を描写します。(【疲労有】【ダメージ有】などの表記のあるプレイングに対応します)

●当シナリオにおける描写について
 三章全てにおいて描写(リプレイ)中、同行者または連携などのアクションが必要な場合はプレイング中にそういった『同行者:◯◯』や『他者との連携OK』などの一文を添えて頂けると良いかと思います。

 以上。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『魂運びの死神『黄泉行』』

POW   :    《列車突撃》生きとし者を轢き潰す力
【霊気を纏った】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【定命の者の(生きた)魂】を喰らった【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    《黄泉急行》暴走する恨みの念
【暴走する恨みの念】が暴走し【急行モード】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    《線路作成》骨で道を作り、下級の死神が組み立てる
レベル分の1秒で【進行方向】に、高速で自動生成する【線路】を発射できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はイヴ・クロノサージュです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魂繋ぐ鎖
 立ち込める蒸気に混ざる冷気。
 悪寒さえ生温いと思わせるその空気は、夥しい数の血潮を浴びて間もない鉄塊から漂って来るものだ。
 『死神列車』とは比喩ではない。それはかつての旧世界に在った鉄屑がオブリビオンストームを経て巨大な怪物となって生まれた、人を死に誘う文字通りのモンスターなのだ。
 それらの整備に人の手は必要ない。
 兵器としての機能が維持できるようにとドローンや下っ端のレイダー達が生贄となる奴隷を積んだり、人狩りから戻って来た列車の中から囚われた人間達を引き摺り下ろすために『廃墟ステーション』は存在していた。

 何処かから悲鳴が聞こえて来る最中、猟兵はその場所に辿り着く。
 かつては地下鉄だったというが……今となっては地表に露出してしまったステーションだ。盆地となった地形に並ぶ車両整備の為の機械や施設は点々と明りを見せている。
 大気を揺さぶる振動。
 とっさに身を隠した一人の猟兵は、頭上を駆ける巨大装甲列車を目の当たりにして絶句した。
 思えば立地からして疑問は多々あったのだ。レールとなる線路や相応の中継設備も無しに、どうやって『死神列車』を運用しているのか……と。
 その答えは列車が通過するのと同時にバラバラに砕け散って行った『骨』のレールだった。
 目に視えない――或いはその手のスキルを持った者なら視えるのだろうか――霊的存在が列車の移動に合わせ組み立てる。それらがこの整備舗装など叶わない荒野に大型列車の走れる線路を成していたのだ。
 それはつまり、巨大な鉄塊がどこまでも追いかけて来るということでもあった。
「……時間だ」
 戦慄していたその時、誰かが言った。
 ステーションに近付いてくる複数の振動は『死神列車』が帰還してきた事を意味している。そう――事前に渡されていた情報では、この廃墟ステーションは定時になると各地から列車が腹を空かせ戻って来るというのだ。
 "生贄"とは、その時のために用意された者達だった。
 猟兵は、あなたは――依頼を遂行するのと同時にこれを破壊し、彼等を救う為にここへ来た側面もある。

 動力不明の不可思議な『死神列車』は巨大な鉄塊を駆動させ、あなたに気付いたその時、襲い掛かるだろう。
ジュリア・ホワイト
フム、フム
これは奮起せざるを得ないだろう――堕ちたる同族が相手となれば、ね
「正義のヒーロー・オーヴァードライヴ参上!この路線は本日をもって廃線だよ!」

「悪事に加担する同族を見るは忍びない。容赦なく破壊するから覚悟しておくんだね」
さて、死神列車が走っているということは……レールがあるということ
レールの上をたどっていけば必ず死神列車に行き会うということ
「だからボクも疾走しよう!勝利と平和へ続くこの線路をね!」
【そして、果てなき疾走の果てに】を起動
本来の器物の姿に変身し、死神列車に正面対決……というか正面衝突を挑むよ
「さあ、キミの突進とボクの前進!どちらが強いか力比べと行こうじゃないか!」




 廃墟ステーションに【死神列車】が集う最中、そこには期を同じくして猟兵もまた集結しつつあった。
「正義のヒーロー・オーヴァードライヴ参上! この路線は本日をもって廃線だよ!」
 高らかに名乗りを上げ、廃墟ステーションのホームを覆う屋根に立ったジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)もまた、集結せし者の一人だ。
 しかしパワードスーツ【プラチナハート】を纏う彼女は力強い眼差しの一方、瞳の奥では霊気纏う列車の姿に憂いを抱いていた。
 【死神列車】。その本来の役割はかつての彼女と同じ、地を駆け人々を乗せ、希望を運ぶ事だった筈だ。断じて人狩りに利用されていいものではない。
「悪事に加担する同族を見るは忍びない。容赦なく破壊するから覚悟しておくんだね」
 奮起せざるを得ないだろう――堕ちたる同族が相手となれば。
 既に周囲では戦闘が始まりつつある。廃墟ステーションに警報が鳴り響く中、ジュリアの眼前まで来ていた死神列車が急速で線路の進行方向を変えて旋回している。
 あるいは別の猟兵を狙いに行こうとしているのかもしれない。
(さて、死神列車が走っているということは……レールがあるということ。レールの上をたどっていけば必ず死神列車に行き会うということ!)
 疾駆するパワードスーツの駆動音に次いで。ジュリアは場を俯瞰して視ていた、その中で見つけたのは、相手は列車ゆえに明確なルートを辿っているという事だった。
 これが野良なら分からなかったが、レイダー達の所有する死神列車はその『線路作製』技能を活かして縦横無尽に線路を広げ、繋げ、駆けている。
 ――まだ、"彼等"には交差する分岐があるのなら。
「だからボクも疾走しよう! 勝利と平和へ続くこの線路をね!」
 人骨で形成された線路の上に着地したジュリアが、自身の胸元から眩い光を放って叫んだ。

 曇天に響き渡る死神列車たちの妖しい走行音。
 それら喧噪を掻き消す汽笛の音が、白馬の嘶きが如くその場に轟き渡った。
『……!?』
 死神列車に会話する意思は無い。ただそこには敵意があり、生者を脅かすオブリビオンとしての本能だけがあった。
 だがそんな列車達に電流が走る、何故か。それは彼等のレールを使い駆け抜ける蒸気機関車の存在が原因だった。
「――さあ、キミの突進とボクの前進! どちらが強いか力比べと行こうじゃないか!」
 不可視の結界が器物化したジュリア……【D110ブラックタイガー号】を中心に、幾本もの死神列車を巻き込んで法則に取り込んでいく。
 盆地となっていたクレーター地帯は消え、空白の中に浮かぶ踏切結界が死神列車たちとジュリアを向き合わせて疾走させる。
 再度のけたたましい汽笛が鳴り響く一方、死神列車が車体を強烈な霊気・妖気を覆い纏って走行速度を高めていく。
 そこには受けて立つ、という意思を感じられた気がして。機関車となったジュリアが更に踏み込んだのと同時、彼女は胸の中で微笑を浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
他者との連携OK

心情
シックも無茶するよな
無事でよかったけど

内輪もめの一方を利するかも
ってのがちょいと気になるけど
こんな列車を走らせておいたらダメだ
海へ還すぜ

戦闘
迦楼羅を炎翼として顕現し飛行

重力&爆炎の加速での急降下攻撃

爆炎纏う焔摩天で砕く

破魔や浄化を込めた炎は
薙ぎ払いのまま延焼し
悪しき霊気を焼却し祓う

これを繰り返す

線路が空中まで敷かれる可能性はあるけど
その場合は回り込んで
線路の下から線路ごと薙ぎ払い砕く

列車の動きや勢いが弱ってきたら
正面から突撃し
すれ違いざま
大焔摩天の紅蓮の光刃で薙ぎ、切断
其のまま炎で包み灰に帰す

紅蓮に抱かれて眠れ

事後
鎮魂曲を奏でる

列車と是までの犠牲者の安らぎを願う




 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が現地に着いたその時。
 地を揺らす轟音と共に廃墟ステーションの一画で大爆発が起きた後から大量の鉄屑が降り注ぐ最中、駆け抜ける黒鉄の機関車が汽笛を鳴らしていた。
 猟兵の誰かが機関車となって【死神列車】を自らの結界に引き摺り込み、正面から衝突を挑んでは打ち勝っていたのだ。
「やるなぁ……おっと!」
 強大な霊気を感じたウタが頭上を仰ぎ見た瞬間、その場に爆炎が放出される。
 突如ウタの頭上から、数珠繋ぎに車両を引き急速降下してきた死神列車が霊気を纏って襲い掛かって来たのだ。曇天の下、金色の光を携えた【迦楼羅】の炎翼が伸びて羽ばたいて行く。
 地を駆け抜ける死神列車。
 有象無象の下級霊が線路を高速で組み上げ、その上を走るそれは鉄塊の怪物だ。魂魄をも捕え縛る列車のオブリビオンは今、奴隷の人々を下ろしに廃墟ステーションへと集まって来ている所だったのだ。
「内輪もめの一方を利するかもってのが気になるけど、こんな列車を走らせておいたらダメだ――海へ還すぜ」

 飛翔したウタが高速で駆ける【死神列車】の上空を制する。
 背中から噴き出す炎の燐光に混じり、腕の中を伝い流れた炎が一本の大剣を形作り顕現させる最中。急上昇から一転、一筋の尾を引いた直後に獄炎を纏って眼下の死神列車へと急降下した。
 曇天に開いた金色の花弁。
 炎翼の下から更に噴出した爆炎による推進力で加速したウタがその手に巨大剣【焔摩天】を握り、炎の柱を描いて死神の一車両を貫いて見せたのだ。
 鉄塊を打ち抜いたウタの体躯が急制動による強烈な重圧に襲われるが、それを無視して更に背の爆炎を噴き出して飛翔する。
「眠れ!」
 列車の下部を一時並走していたウタの眼前に現れる下級の死神たち。それらを相手にウタは焔摩天へ破魔の気を帯びた炎を纏わせ、薙ぎ払いの下に浄化して死神たちを一蹴して見せた。
 一瞬。線路が途切れた所為か死神列車が大きく揺さぶられる。
 死神列車に意思があるかは定かではないが――少なくともウタの攻撃には反応を見せた……否、死神列車に乗っていたレイダーの搭乗員が反応した。
「野郎ッざけんなコラァッ!」
 死神列車の監視を任されていたであろう下っ端レイダーだろう。
 突如攻撃してきたウタに銃口を向けながら怒りを露わにしているが、ウタはそれを無視して炎翼の嘶きと共に列車の上空を再び取ろうとする。
 後部車両の窓から半身を乗り出して機関銃を撃ち鳴らし始めるレイダー。
 弾丸が炎の渦を掻き消す。しかし弾頭が青年の身を捉える事は無く、代わりにウタではなくレイダーの側でけたたましい汽笛めいた音が鳴り響いた。
「……こ、ひゅッ!?」
 男の呻き声が曇天に残る。
 一瞬で干からびた男の体から伸びる白煙。それは死神列車の咆哮によって奪われた魂だった。
 中空に火線を伸ばすウタの下、死神列車が加速する。
 あらゆる障害物を越え傾斜を無視して突き進む列車は、下級の死神たちが作製した線路を駆け抜ける事で超常の業を成しているのだ。
 車両は徐々に傾く――ウタは直感的に身を捻り、背の炎翼を波打たせて爆炎を噴出させた。
 猛烈な暴風を纏った死神列車の突進がウタの傍を通過する。
「連れて……行かせるか!」
 焔摩天が一閃される。
 破魔の力を籠め、迦楼羅の持つ炎をありったけ乗せた斬撃が、粉塵舞い上がる曇天に一頭の炎龍を昇らせた。
 中空にさえ線路を作り上げる死神列車の姿はまるでムカデの様にも見える。だが、紙一重の回避から放たれたウタの焔は全車両の側面を抉り取ったのだ。
 死神列車は、破魔の力によって囚われたレイダーの霊魂が解放された事で失速――再び金色の焔にその背面を奪われる事となった。
 その熱に浮かされたかのように。蒼白い霊気が列車から燃え上がるのをウタは見た。
「奪わせないぞ」
 これ以上、何者も魂を冒させはしない。その決意を刃に籠め、そしてウタの頬に一筋の亀裂が走った直後、彼の内から獄炎が噴き出して己の身を、【焔摩天】を覆い隠す。
 彼等が焼き焦げる事は無く――彼の意思に呼応して劫火は顕現した。
 密度、質量、これまでと全く異なる形態を取った【大焔摩天】は巨大な光刃となって紅蓮に輝いて見せる。
 ウタの体が空中で跳ねる。爆風による加速を用いて一挙に死神列車へと距離を詰めた彼は、紅蓮の一矢となって列車を巨大剣で斬りつけながら車両の正面へと回り込む。

「――――紅蓮に抱かれて眠れ」
 身を捻り、反転から大きく光刃を振り被った彼が謳う。
 刹那。正面から刃を振り下ろしたウタの左右に巨大な鉄塊が昏い色の霊魂を霧散させながら斬り別たれ、ついに両断された死神が獄炎に焼かれて消滅したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士の女の子です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。

その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


エヴィレダ・ハーミ(サポート)
 人間の闇医者×サバイバルガンナー、36歳の女です。
口調 粗野で乱暴(アタシ、お前、呼び捨て、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )
尊敬する人には 洗練された優しさ(私、あなた、呼び捨て、です、ます、でしょう、でしょうか?)です。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


ロバート・ブレイズ(サポート)
『否定せよ』
人間の文豪 × 魔王
年齢 80歳 男
外見 184.6cm 黒い瞳 白い髪 色白の肌
特徴 立派な髭 投獄されていた 過去を夢に見る 実は凶暴 とんでもない甘党
口調 冒涜翁(私、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)
気にいったら 冒涜王(俺、貴様、~である、だ、~であろう、~であるか?)

恐怖・発狂・誘惑などの精神的な攻撃に対しての異常な耐性を有しています。
否定する事で恐怖を与え、冒涜する事が多いです。実は凶暴なので近接戦闘が好み。
宜しくお願い致します。


ライザー・ヴェロシティ(サポート)
・出身世界「アックス&ウィザーズ」の猟兵だ
元の世界でも傭兵として活動していた
依頼の傾向は純戦闘
重視するのは報酬だ(金銭、食事等)

仕事は仕事として割り切るスタンスだな
あとは強敵と戦う依頼を好む


・性格は荒っぽいほうだろう
デジタルとか近未来の文化にゃ馴染みがない

・風属性の魔法を主体とするマジックナイトだ
剣に風属性を付与して行う近接戦闘を主とするぞ
使用するユーベルコードは主に近接の強化
または攻撃のレンジや範囲を補うモノだ


・耳がいい
乱戦時とかにゃ僅かな音を頼りに見えない敵の位置を把握するぜ

ただ耳がよすぎるんでな、歌や高音は聞きすぎると頭が痛くなる
特に歌は嫌いだ
味方なら兎も角、敵が歌ってんなら全力で止める


水心子・静柄(サポート)
本差の姉に劣等感を持っていてい、表面上は邪険にしているが姉妹仲は良い方、所謂ツンデレ。考え方は知的、でも面倒になってくると脳筋的な解決法に傾く。勘が鋭いが如何にも知的に導いたように振舞う。知的にユーベルコードを使いこなす。脳筋ぽいけど実は知的。武器は鞘に入ったままの脇差(本体)。高圧的、威圧的な話し方だが、本人は至って普通に話しているつもり。

基本は本差を召喚して無双したがるが欠点があるが、相手によっては居合の構えをとって後の先で対応する。面倒な時は知的に考えつつグラウンドクラッシャーでデストロイ。




 破壊音が連続する。
 いよいよ猟兵達の作戦行動に気がつき始めたロンメル陣営のレイダー達だったが、彼等はその手持ちの銃火器ではまるで手が出せない状況に震えて退散する事しか出来なかった。
 廃墟ステーションに続々と集まり行く【死神列車】。
 対するは大勢の猟兵達だ。この期を逃すつもりは無いとばかりに集結した猛者だ。
「こんなの……付き合ってられっかよォッ!?」
 死神列車が増えるに比例して激しさを増す戦闘。巨大な鉄塊が地を滑るだけで、それに巻き込まれれば無能力のレイダー達など大地の染みになる他ない。
 ゆえに。この戦場に残されたのは幾つもの車両と、それと相対する猟兵達だけとなった。

「最初はそんなに気にしてなかったんだけどねぇ……さすがにやかましいったらないよ!」
 曇天を駆け抜ける金色の焔。エヴィレダ・ハーミ(隠者の幸運・f32150)はそれを見上げたのと同時に鼓膜を叩く、幾重にも連なる死神列車の警笛に苛立ちを露わにしていた。
 不意に。ハーミは横っ飛びに身を退かせて頭上から降り注いで来た鉄骨を回避した。それらは今も尚交戦を続けている死神列車が作製したレールだ、空中だろうが瓦礫の上だろうがお構いなしに線路を組み上げては猟兵達との戦闘の最中に破壊されるを繰り返していたのだ。
「こりゃ、怪我人を探すよりどっかに混ざった方が早そうじゃねぇの」
 ハーミは辺りを見回すと共に、医者兼戦闘員として立ち回る方が楽そうだと判断する。
 そうとなれば話は早い。
 数秒後、彼女はヒールの爪先で地を蹴って軽やかに傍を駆け抜けた死神列車へと滑り込んだ。
「……っと」
「よぉ、先客ならここにいるぜ」
 乗り込んでみたはいいものの、これからどうしてやろうかと思いながらハーミが治療具や武装に触れていたところで声が掛かる。
 振り向いた先でしかめっ面を浮かべつつも手をヒラリと振っていた銀髪の騎士と目が合う。その武装、出で立ちから、彼がアポカリプスヘルの人間ではないと察したハーミが肩を竦めた。
「早々に降りたいんだけど、路線図とか知ってるかしら」
「列車を停めりゃ降りれそうだと考えていた所だ」
「じゃあ車掌を呼ぶしかないか」
 互いに適当な事を言い返しながら、少なくとも同意見のもとで乗り込んだらしいことは両者共に分かったようだった。
 猟兵。ライザー・ヴェロシティ(Sturm Jaeger・f00188)は手にしたルーンソードに風を纏いながら車両側面の壁を蹴り破る。
「線路を破壊する」
「じゃあアタシはかるーくスピード落とすかねぇ」
 風が吹き荒れる車両の中を互いに背を向け、駆ける。片や剣を振り上げ、片や医療ノコギリを取り出して。
 そうして、次の瞬間。
 二つの火花が大きく散った直後。死神列車の車体が一瞬で前後に揺れてから先頭より後ろの車両が跳ね飛んだ。

 ライザーの放った風の魔法刃が線路を破壊し、ハーミが先頭車両と後続車両の間にあった連結を破壊した事でバランスを崩したのだ。
 破壊された連結は再度、レールを組んでいた下級の死神たちが繋ぎ直した。だが、それでも殺しきれない反動によって車両全体が跳ねたのだった。
 大地を転がり滑る間際にハーミを連れ脱するライザー。
 彼等と入れ替わり、迫り来る死神列車を正面に捉えて黒衣の紳士が立ち塞がる。
「――下らん」
 濁り、または澱み。或いは見た者にそう錯覚させているだけか、黒き瞳を爛々と瞬かせた老紳士はずるりと――その身の内からか、何処からともなく黒い粘液を纏いし海綿体を引きずり出した。
 全ては瞬きの間に終わる。
 老紳士の手元から黒い海綿体が消えた。同時に彼は、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)は、其の身を巨躯へと変貌させて瓦礫ごと大地を踏み砕いて突き進んだ。
「下らん。所詮、死体漁りの"蠅"となんら変わらぬ。
 私の視界をただ穢し侵すだけの、有象無象が……群れるでないわ」
 荒々しくも猛々しく、真正面から列車を掴み上げにかかったロバートは尚も言葉を紡ぎ続ける。神を、死の領域を支配している気になって自称する者どもを嘲笑うかのように。
 鉄塊を掴み上げ、僅かに浮いたその隙間へ壮絶な威力を秘めた飛び蹴りを差し込んで打ち上げる。
 およそ人の身が出す音ではない衝撃音に次いで吹き飛ぶ鉄屑を浴びながら、ロバートは虫酸が走るといった風にそのまま地を割って車体の下に潜り込み拳で更に打ち上げた。
 ひしゃげた鉄塊が続々と空中へ打ち上げられ、絨毯を捲り返したかのように死神列車がロバートの前で連なり落ちて行く。
「いま、ですね……!」
 鉄屑が飛び交う最中に風を切ってその場へと姿を見せる真紅。メイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)が身の丈に迫る騎槍を携え、ぐんと身を低くしてから地面を強く蹴りつけた。
 一条の光輝。
 天を舞いながら光り輝くその姿は竜の力を解放していた。煌めく騎槍の先端は音速を遥かに越え、彼女のユーベルコードとなって上空の死神列車を穿つ。
 メイリンは死神列車の車両を端から端まで貫き、ミサイルとなって地上へと突き立った。
 地を揺らす轟音。粉塵に次いで舞い落ちる鉄塊の残骸は彼女達に霊魂の残滓を降らせた。

「追加、来てるぜ? どうするよ」
「無論」
 降り注ぐ残骸が夥しい金属音を奏でる中、ライザーは粉塵の向こうからこちらへ突撃してくる死神列車がいる事に気付いた。
 並ぶ、ロバートがつまらなさそうに言って拳を握り固める。
「撃破、します!」
 仲間の数は多い。メイリンもまたドラゴンランスを一度振り回してから構え直すと、未だバフの残った様子で正面衝突に応じようとしていた。
「ねえ――どうするつもりか知らないけど、向こうから来てくれてるみたいよ?」
「……!」
 三者三様に身構えた瞬間、彼等より数歩前に出た少女が足元から弾き出した幻影を掴み取る。
「相手はたかが鉄の棺桶でしょう?」
 俄かに翡翠の彩を帯びた髪を揺らし、凛と佇むその構えは『居合』のそれである。
 猛然と突き進み鉄塊の壁が迫る。しかし彼女は、水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)は虚空に手を伸ばした中で自らが思い描いた最強の一刀を掴み取っていた。
「人の魂を連れ去るだけの妖はいくらでもいるけどね、この程度のデカブツに後れを取るような【真峰】じゃないのよ!」
 眩い閃光が彼女の一閃となって視界の景色を両断する。
 流れる空白。
 数秒にも感じる長い時間を越えた瞬間、静柄の放った一刀は巨大な鉄塊をその霊気ごと切り裂いて打ち上げていた。
 吹き荒れる衝撃波の中でメイリンがドラゴンランスを腰溜めに構えて踏み込む。猟兵が集まり死神列車を破壊しているからか、彼等の持つ存在力とでもいうべき何かに引かれてか、他の列車も彼等のもとへ一直線に突っ込んで来ていたのだ。
 間髪入れずに跳ぶロバート。打ち上げられた死神列車の残骸を掴み取った彼が縦横無尽に振り回して横薙ぎに奮ったのに合わせ、メイリンとライザーが同時に駆ける。
 鉄塊同士がぶつかり合う轟音、そして一条の矢となって繰り出されたチャージランスが列車を貫き、内側から暴風の魔法刃が爆発してライザーが飛び出した。
 連続する大爆発。
 そこで、瓦礫の中から囚われていた奴隷やレイダーらしき者達を見つけたハーミが彼等を引き摺っていると、不意に頭上から警笛が鳴り響く。
「そっちは任せたよ、いまのアタシは医者として忙しいんだ」
 そして一瞥だけしてハーミは視線を戻した。
 直後、何の示し合わせもなく縮地が如き素早い移動をして来た静柄が無敵の【本差】を抜き放ち、横合いから飛来した魔法刃や騎槍が死神列車を宙に縫い止めてみせた。
 ドン、という地響き。
 地を震わせて飛翔して来たロバートが振り抜いた拳が、巨躯となって岩石をも越えた質量と破壊力を得たそれが、数両からなる死神列車を一撃のもとに吹き飛ばしていた。
 
 猛烈な粉塵と金属片の雨が降る中、猟兵達は忙しないといった様子で視線を巡らせる。
 ――彼方から聴こえて来る駆動音や迫り来る霊気は、未だ彼等の仕事は残っている事を報せていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

レイ・オブライト
内部抗争か。最終的にゃあ全部潰すんだ、布石を打つに丁度良い話だな
グリモア猟兵の度胸に内心感心しつつ、同じくらいは働かねえとならんだろうと

で、また随分と燃費の悪そうなペットだ
見たところこいつは電気では動いてなさそうだが。なに、機械の壊し方なら雷よかもっと手軽なのがある

接触まで飛び回る霊魂は『覇気』で払いつつ
敵のUCによる突進に際し、震脚の要領で『衝撃波』を起こし一瞬レールの『地形破壊』を狙う。脱線とまではいわねえが多少でも体勢を崩せば儲けもんだ
いずれにせよ、そのまま真っ向からぶつかる『覚悟』で『怪力』を以て【一撃必殺】
美味そうな魂に見えたか? であればいよいよ廃車の頃合いだな

※諸々歓迎


ヴァシリッサ・フロレスク
なんでも歓迎、NG無し

Hm?ワザワザ手前ェで路を拵えるたァ精が出るねェ?
ヒトの敷いたレールは走らねェってか?

っても、行先はDead-end lineってェのは、もう決まっちまってンだがな。

ディヤーヴォルの弾幕で牽制し、こちら誘き寄せる。
牽制っても.50Calの鉛玉だ。掠りゃタダじゃ済まないよ。

突っ込んで来るのを見切り、直前で早業のジャンプで躱し、敵上へ着地。
振り落とされぬよう、アンカー替わりにスヴァロークを足元へ打ち込み、怪力で踏ん張る。

おっと、オーバーランは赦さないよ?

チャージが完了次第、UCで零距離射撃。

“VADE RETRO SATANA. 《退け、悪魔》”

終点だよ。




 戦闘が激化するにつれて濃くなっていく黒煙。
 破壊された死神列車が十数台にもなろうかという所で、猟兵側にも僅かながらの疲労が見えていた。この、アポカリプスヘルで数少ないレイダー達の楽園を統べるヴォ―テックス一族の有する一部戦力である。それ相応に数が揃っていたのだろう。
 しかしヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は融解して崩れた列車の残骸を足蹴に、戦いが終わりを告げようとしているのを感じ取っていた。
「幾ら連中でもこんなちっせェ廃墟に大所帯並べてるっつー事は無ェだろ。
 あとは遠方まで一狩り行ってた連中か、それかこの乱戦の中でも静観決め込ンでたようなヤツが来るかだな」
 いよいよ大詰めだと、ヴァシリッサは首を鳴らす。
 今回の作戦に集まった者達にも疲労の気が見え始めていた頃だ。ここで一気に片付けてしまおうと彼女は思案していた。
「しかし、まァ……この戦力を相手に内乱か。依頼主の方も同程度の戦力抱えてそうだな」
 肩越しに担ぎ上げていた身の丈ほどの射突杭を振り回し、ヴァシリッサは舌打ちする。
 曇天の下に響き渡る汽笛にも似た呼び声。それはまさしく彼女が予見していた通り遠方からの帰還に着いていた死神列車のものだったのだ。
 ヴァシリッサは両腕にそれぞれ身丈を越える重機関銃と射突杭を携え、僅かに足場を検めた後に片腕の延長が如く重機関銃を構えた。
「――獲って喰えもしねェ、腹を空かせた餓鬼が」

 .50口径が生み出す衝撃はポップコーンが出来上がるのとはわけが違う。人間が片手撃ちする様な代物ではないと直ぐに分かる程の激しい銃撃がヴァシリッサから連続していた。
「……向こうで同じことを言ってる奴がいたが、列車どもの出す騒音よりよっぽど耳障りが良いぜ」
 重々しい打撃音が空気を打ち震わせていた時、ヴァシリッサから数メートル離れた位置を駆ける男が一人。
「で、また随分と燃費の悪そうなペットだ――人狩りして連れてきた連中をつまみ食いしてるんだからな」
 瓦礫を飛び越え、鉄の様に密度を高めた骨の残骸を踏み潰しながらレイ・オブライト(steel・f25854)はヴァシリッサとの適切な距離を保つ。視線を素早く巡らせ、肌で感じた振動から彼女とは別方向へ意識を集中させた。
 瞬間。けたたましい銃撃音が途切れたのと同時に衝撃が奔る、廃墟ステーションに元々あった古びた鉄骨が宙を舞い、霊気を纏って猛烈な速度で死神列車が上空へと駆け抜けて行った。
 その場に舞った鉄骨が破壊の波を立てる景色を見下ろすヴァシリッサが「笑えるな」と口角を上げた。
「Hm? ワザワザ手前ェで路を拵えるたァ精が出るねェ? ヒトの敷いたレールは走らねェってか?」
 事実、死神列車は人間の敷いた線路を使っていなかった。
 おもちゃみてェな奴だ――そう彼女が愉しげに呟いた背後で車両背面に杭が打ち込まれて火花が散った。
 彼女の有する射突杭【スヴァローグ】は深々と列車に突き立てられ、同時にヴァシリッサの両脚はギシリと鉄板を踏み抜く程の怪力で、自身を縫い付けていた。
 バサバサと赤い髪が冷たい風に揺れる。
 数回の嘶きの後。これまでと変わり紫紺の霊気を纏い始めた死神列車は、更なる加速と共にヴァシリッサを落とそうと上空を縦横無尽に走行し始めているのだ。
 それで足掻いているつもりなのだろうか。
「ザァーンネン、行先はDead-end lineってェのは、もう決まっちまってンだよ!」
 片手間に列車の装甲へと押し当てられる銃口。ヴァシリッサの意思に呼応して【ディヤーヴォル】が淡く輝き始めた。
 僅か数秒。
 一呼吸の間にヴァシリッサが地上から姿を消していたその時、レイもまた同じくして死神列車の上を駆けていた。
「お前達に仲間意識があるとは思わなかったが」
 紫電と共に鉄板を一歩一歩踏み抜いて、ヴァシリッサの後方から迫っていた"他の死神列車"を前にレイは全身から覇気を奔らせる。
 手こずる死神を前にして手助けでもしようというのか、後方から急速接近してきた死神列車は走行する車輪の下――線路を組み上げている下級死神をもけしかけながら鋭利な骨の線路をバラつかせ、射出しようとしていたのだ。
 凄まじい速度から繰り出される霊的存在が実体化した骨のレール。
 レイはそれらをことごとく殴り弾き、時に銀鎖を一閃して打ち落としながら踏ん張っていた。
 吹き荒れる暴風。
 足下の死神列車がついにヴァシリッサを落とそうと上空を垂直に駆け上がり始めたのだ。レイが相手をしていた列車が数瞬だけ遠退き、しかし振り向けば急速降下して再度上昇しようとしている姿が見えていた。
「……見たところこいつは電気では動いてなさそうだが。なに、機械の壊し方なら雷よかもっと手軽なのがある」
 この数秒で決める。
 死神列車たちは互いに高速ですれ違う間際にレイとヴァシリッサを挽肉に変えてやろうとしている。ならばこの次の一瞬で沈めればいい。
「おっと、オーバーランは赦さないよ?」
 レイと同じく死神列車が何をしようといているのか勘付いたヴァシリッサは、自身の愛銃を握る手に力を籠める。
 数回の瞬きをすれば彼女の眼前に超高速・質量の鉄塊が叩きつけられるだろう。その刹那、彼女は大きく鋭利な牙を見せて笑った。
「“VADE RETRO SATANA. 《退け、悪魔》”」
 銃口が閃光を放つ。

『兇を喰らいし光焔の顎門よ。其は断罪の烽火にして、兇禍を燼滅する劫火の鋭鋒なり。
 汝、死命を暁悟せよ。其の身魂を以て贖え――』
 それは一切の容赦なく、手向けとするには慈悲無き劫火の一矢。

 ――――【マーナガルムの咢】。
 ヴァシリッサのユーベルコードが零距離で死神列車の車体を貫いた。
 
 竜の咆哮とも言うべき砲撃音がレイの耳に届くよりも先に、足下の死神列車が大きく揺さぶられた後に浮力を失ったのを彼は感じていた。
 僅かに生じる浮遊感。減速と同時に眼下から迫っていた死神列車が加速したかのよう。だが、レイは幸いとばかりに両足を鉄板から引き抜いて蹴りつけ、空中に躍り出てみせた。
 警笛。あるいは死神の嘶き。
 既に車両最後尾にまで迫っていた車両は今や、破壊された仲間の亡骸ともいうべきそれの上に直接レールを敷いてヴァシリッサとレイを中空で轢殺しようと加速しているのが分かる。
 一瞬で射撃後のヴァシリッサを飛び越し、レイは紫電に瞬く覇気を滾らせて拳を握ったまま駆け上がってきた死神列車と対峙する。
「美味そうな魂に見えたか? であればいよいよ廃車の頃合いだな」
 犬の様に飛びついて来たそれに、最後の挑発をひとつ残して。
 空中で前転したレイはそこから鎖を揮い、浮力を失った車両に巻き付け一気に自身を縫い付けると。正面から殺到して来た下級死神と『骨』の線路を覇気で蹴散らし、震脚の衝撃で粉砕しながら拳を振り被った。
 その刹那――レイの腕が残像を残して消える。
 スヴァローグを抜いて飛ぼうとしていたヴァシリッサの体が、突然の急制動に足を持って行かれそうになる。
「おっとォ」
 急制動による衝撃は特に気にしないが、彼女は眼下から舞い上がって来た無数の鉄屑や破片を躱して首を振った。
 俄かに聞こえた衝突音。
 レイの一撃は、超重量にして大質量の列車を正面から粉砕していた。
「これで落着か」
「……ハッ」
 ニヤリと笑みを浮かべ、銀の鎖を仕舞い込みながら言ったレイの言葉にヴァシリッサは肩を竦めて見せた。
 
 数秒後、確かに彼等は死神列車の残骸と共に落下していくのだった。




 ロンメル・ヴォ―テックスの有する人狩り兵器【死神列車】は大きく数を減らした。
 猟兵が襲撃した廃墟ステーションに在った車両はレイとヴァシリッサが破壊した物で全てだ。
 多くの奴隷や人狩りに遭い囚われていた人々が救出されていく中、どこからともなく鎮魂曲が流れる。
 犠牲者や列車たち。かつてここに在った命を弔うがための奏曲だった。

「……そういや、この後にも仕事が控えていたな」
 瓦礫の上。レイは手渡されていた端末に新たなメッセージが入ったのに気付く。
 彼等の仕事はまだ、終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『満ちる未知の危険物』

POW   :    耐えながらつまみ上げ処分

SPD   :    速攻で退かす

WIZ   :    魔法で汚物は焼却だ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●伽藍朽汰ーガラクター
 猟兵達が廃墟ステーションを陥落した事の報せが入った依頼主は、たった一言「よくやった」のメッセージを添えてマッピングデータを奪還者サイドに送信する。
 猟兵達に奪還者から回された情報にはロンメル陣営の持つ戦略的中継地点である倉庫街までのルートが示されていた。
 その座標は廃墟ステーションから近い。恐らく、死神列車は『運搬用』としても兼任されていた事から無関係ではないだろう。
 そういった背景を察した奪還者は瓦礫の上に腰掛けて悪態をついた。
「なるほど……そもそもロンメルに手を出していて、この位置だ。途中で逃げ出したりなんかしても直ぐに追手が倉庫街から来る。
 ヴォ―テックス一族らしい。あくまでも逃げ道は用意してないんだな、クソッ」
 しかしそんな彼の背後では戦闘を終えて多少の休憩を挟んだ者達がもう立ち上がっていた。
 どちらにせよ潰すのだ。
 猟兵達が移動を始める最中、奪還者の男はその淡々と動く姿にそういった意思を感じた。

 ルート上にはある一点。難所がある。
 それはこの荒野世界では度々見かけられる光景だ。見渡す限りのゴミ山、あるいは旧時代の廃墟都市など、とにかくもう人々に使われる事のないガラクタの山が広がっているのである。
 ここは死神列車や強化を施された戦車など、相当な腕のあるクルマ乗りでなければ越えられない悪路だ。人が徒歩で渡るにせよ。総面積は町二つや三つを超える距離を往くのだから、並みの人間では不可能に近い。
 何より、上空含め暴走機械やモンスターの類が跋扈し、触れたり吸えば大変に危険な薬物がこのジャンク山には投棄されていた。
 ヴォ―テックスが棄てたものが殆どだとすれば、その危険度は察して余りあるだろう。

 廃墟ステーションを後にして暫く経った頃。
 猟兵達はこのジャンク山をどうして越えようかと思案を巡らせるのだった。
シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)と

…全く、物騒なデートコースもあったものだ
一戦交えた後だろうに呆れるほど元気だな

宇宙バイクに乗って進む
UCでバイクを高速戦闘形態へ
道は悪いがバイクの『悪路走破』性に任せ突破したい

速度と進路はヴァシリッサに任せる
障害物は乗り越えるかグレネードで破壊
俺は物陰や頭上からの不意打ちに備え周囲を警戒
敵の位置はヴァシリッサにも伝達し、戦闘はバイクを走らせたままで援護射撃により支援する
丈夫な相手はグレネードの爆風で怯ませ、ヴァシリッサへ追撃を頼む

薬品の類は真っ直ぐ進むヴァシリッサに倣おう
『運転』技術をもって、速度を上げて吸引する前に通り過ぎる
強行軍も正面突破も、たまには悪くないか


ヴァシリッサ・フロレスク
何でも歓迎

シキのダンナ(f09107)とツーリング。

ヘェ?絶景じゃないか?オマケに空気もサイコーときたモンだ、デートにゃ持ってこいだねェ♪

ん、そりゃダンナと遊べるンだ。愉しみで仕方無いサ♪

お、コースは任せてくれるのかい?バッチリさ、いいプランがあるよ――キョーコーグン、ッてゆーんだケドね?

愛車ハティを駆り最短ルートで強行突破。
悪路走破は慣れたもの。野生の感と第六感でブッチギリつつ、確りと最短路や危険物の情報収集も忘れない。

こーゆーのはビビったら負けだろ?

相手の妨害は見切り、蹂躙しつつ、ノインテーターやスコルによる早業のカウンターや、シキの援護で怯んだ所にUCで追撃。

フフッ、最高の『風』だねェ♪




 廃墟ステーションから暫しの間を往くと見えて来るジャンク山。
 元より天候が芳しくないからか、彼のヴォ―テックスが一種の防壁として利用している瓦礫山の周辺には暗雲にも見える靄がかっていた。
 充満する薬物の霧の中でキシキシと蠢く暴走機械たち。
 ただでさえ越すのに勇気の要る場所なうえに、ここには兵器実験に使われたと見るモンスターなどの姿もあった。これのせいで瓦礫山の上空を飛行物が通過しようものなら瞬く間に群がられ、落とされてしまうのだ。
 並みの奪還者では引き返す事も視野に入れるべきだが、それは既に退路を塞がれるという形で論外である。
 ならばどうするかというと。
「――ヘェ? 絶景じゃないか? オマケに空気もサイコーときたモンだ、デートにゃ持ってこいだねェ♪」
 唸りを上げるエンジン音。鉄骨や壊れた機械の積み上がった山を一気に駆け上がり、アクセルを全開にしたバイクが回転する間に小型の歩行型兵器を撃ち抜く。
 飛び散る火花と破片を背にして。ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)はリボルバーショットガンを片手に愛車【XR17G/S HATI】を愉しげに操っていた。
 そのすぐ隣。悪路をものともせず宇宙バイクが続く。
「……全く、物騒なデートコースもあったものだ。一戦交えた後だろうに呆れるほど元気だな」
 高速戦闘形態に可変した宇宙バイクに跨るシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は"デート相手"の上機嫌さに小さく口角を上げ。次いで再び瓦礫を駆け上がりジャンプした相方の動きに合わせ片手間にグレネードを進行方向に投擲する。
 瓦礫の向こう側に屯していた暴走機械が吹っ飛び、紅蓮を上げる最中をヴァシリッサが走り抜ける。
「ん、そりゃダンナと遊べるンだ。愉しみで仕方無いサ♪」
 グレネードの爆風を浴びてもケロッとした顔でいるヴァシリッサ、並走するシキはその疲れ知らずな様子に感心も交えて肩を竦めていた。

 速度は殆ど最高速度で。進路はやはり殆ど一直線。
 これが最短ルートだというヴァシリッサの根拠は野生の勘と第六感らしい。運転技術もさることながら、シキが目を見張る点は何といっても実際突破できていることだろう。
『お、コースは任せてくれるのかい?
 バッチリさ、いいプランがあるよ――キョーコーグン、ッてゆーんだケドね?』
 廃墟ステーションの戦いの後で合流した際にデートプランについて話した時は、中々アグレッシブだとは思ったが。しかし彼女の言う強行軍も、息が合ったこのペースでなら悪くはないとシキは思い直す。
「……女の勘、というものだろうか」
「ん~? 何だってェ?」
 瓦礫に満ちた大地を二台のバイクが駆け抜ける。
 殆どスリップ同然のスピンから横倒しになった巨大アームクレーン車の下を通り抜けるヴァシリッサと、割れた巨大ウィンドウの隙間を飛行するシキ達。
 ビュウと風を切る音が耳から離れないような速度で突き進む彼等の行く手には、未だジャンクの山が並び立っている。
「こりゃァ、随分と彩のあるコースだねェ♪」
「燃えてるようだ。可燃性か」
 暴走機械の群れをグレネードで吹っ飛ばし、同時にヴァシリッサが抜いたリボルバーショットガン【Sköll】で瞬く間に蹴散らしていると。不意に彼等の視界に赤や緑や紫といった『いかにも』な濃霧が見えた。
 よく見れば、色彩豊かな煙の傍で暴走機械が火花を散らす毎に燃え上がっている。可燃性のガスだと察したシキ達だが、ヴァシリッサが速度を落とす気配はない。
「こーゆーのはビビったら負けだろ?」
「――たまには悪くない」
 アクセルを回し、ターボの駆動音に加えて車体に括り付けていたであろう射突杭を取り出したヴァシリッサの様子にシキは口角を上げた。
 シキの駆るカスタムバイク・レラはその戦闘形態をフルに活かしてヴァシリッサに追走する。ともすれば、追い抜かしてしまいそうな勢いで。
 ガスの充満した一帯に突っ込んだヴァシリッサは車体を傾け、射突杭を地面に突き立てる。ほんの数瞬息を止めた彼女はその怪力で車体ごと大きく振り回すと、そのまま再度射出させた杭による反動で跳躍する。
 進路変更なし――ヴァシリッサの大胆な跳躍に小さく笑みを浮かべたシキは瞬時に車体をエナジーブレードで覆い、カスタムエンジンをフル稼働させてガスの中を直進する。小型のモンスターが手や牙を伸ばすが、それらを切り裂き弾きながらバイクが前転して熱線銃を乱射した。
 暴走機械やモンスターに着弾した熱線は空気中を満たしていたガスに引火。淡く明暗色に瞬いた直後に一帯ごとモンスター達を吹き飛ばす。

 ジャンク山の一画で巻き起こる大爆発。
 花火めいた閃光とジリジリと首筋を炙る様な熱を背に、口笛が鳴った。
「フフッ、最高の『風』だねェ♪」
 爆風による加速で半ば吹っ飛ぶ様に進む【ハティ】を力業で抑えつけ、車輪が悪路をギャリリと削る振動を手に感じる。
 ガス爆発による音や振動を感知してか。行く手には数多の獣と暴走機械が瓦礫の陰から覗いていた。
 隣に並ぶように飛翔して来たシキのカスタムバイク。隠れ潜む敵の位置を知らせるかのようにハンドガンの射線が標を示し、次いでヴァシリッサが脇から飛び出してきたモンスターを【Neuntöte】の抜き撃ちで吹っ飛ばしたのに合わせて彼女の進路上の敵が小型グレネードの爆風で蹴散らされて行く。
「Nの3Eに6体だ」
「りょーかい」
 一度上空に飛翔してグレネードを周囲に放り投げたシキが再び並ぶと、ヴァシリッサはそちらにチラと視線を向け心底楽しそうに笑う。
「愉しいねェ、ダンナ♪」
 一瞬ハンドルを手放し、スコルとノインテーターで射撃。瓦礫の山から不意を衝いて現れたモンスターの頭を吹っ飛ばした後方で小気味の良い音を連続させ、跳弾がシキの発見した敵のことごとくを射貫いた。
「――そうだな。これも、悪くない」
 有り余っているようだ。
 そんな感想を懐きながらシキは彼女と同様、アクセルを全開にしたまま引き金の指を絞るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュリア・ホワイト
フゥム
スクラップで埋め尽くされた大地とはね
これを強引に押し通るのはスマートではない、か

「けどね。死神列車が通れてボクが通れないというのは、些か沽券に関わると思わないかい?」
意地でも通らせて貰うよ!

【線路開通、発車準備よし!】を発動
道がないなら作ってしまおう
このUCは地形の上書き効果があるんだ
召喚されたレールを伸ばして、廃墟ステーションと倉庫街を繋いでみせるさ

「第一、大まかなルートはすでに出来上がっているしね。――死神列車の通っていたルート。それこそが比較的通りやすい経路で間違いない」
超常の力を得ても基本的な特質は変わらない
列車は割と繊細な乗り物なんだ
それが定期的に通るルートが難所のはずがないさ




 蔓延る暴走機械やモンスター、散乱する薬物や死肉に集るそれらはいずれも悪性が強い。
 中身のない伽藍洞のくせに。彼等はこのジャンク山でアポカリプスヘルの大地を徐々に、しかし確実に穢して蝕んでいた。
 ――それを、缶を踏み潰すように蹴りつけて。
 ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は廃墟ステーションから近い位置にあるジャンク山の麓に来ていた。
「フゥム……スクラップで埋め尽くされた大地とはね。これを強引に押し通るのはスマートではない、か」
 彼女が他の猟兵たちに比べ目的地から離れたこの場所を訪れたのには理由があった。
 傍らで崩れかけ、朽ちた白い『線路』。そのレールは乱雑に見えて実に複雑怪奇な構造と建築によって空中に固定されており、それを成したのは無数の死神だった。
 それは、死神列車が走行した後に残った物だった。加えるなら、先の戦いで最も速く廃墟ステーションに到着した列車の跡らしい。ジュリアはその中でもレイダー達の倉庫街に続いているであろう路線を辿った結果、やはりジャンク山に差し掛かった所まで突き止めたのだった。
 しかし、しかし。
 路線を突き止めたのは良かったものの。死神亡き後ではレールも既に失われ、ジュリアが本来の姿で走行するにはスクラップの"癖"が強すぎて進めないのだ。
 あるいは他の猟兵達と共に行くという手も無くはなかったが。
「けどね。死神列車が通れてボクが通れないというのは、些か沽券に関わると思わないかい?」
 それは彼女にとって、意地でも通らねばならない理由だった。かたや人々の笑顔を奪う為に生まれたオブリビオンなのだ、ジュリア・ホワイトが走れない訳にはいかなかった。
 誰とも知れぬ問い掛けに次いで言葉を切ったジュリアは指を鳴らす。

 どこか遠くで警報機めいた音が鳴り響く。
 ジュリアが視線を巡らせ、死神列車が残した骨の線路の軌道を何度か確認して計算を終えると。直後に彼女の背後の虚空から無数の"レール"が姿を現し、射出された。
 ――道を作ってしまおう。
 自らの沽券に関わると思い幾度かの思案の末、ジュリアが辿り着いた結論だった。
「第一、大まかなルートはすでに出来上がっているしね。
 ――死神列車の通っていたルート。それこそが比較的通りやすい経路で間違いない」
 それがレイダー達による試行錯誤の末なのか、個体の差異によるものなのか。そんなことはどうでもよく、ジュリアのユーベルコードから生み出された無数のレールは次々に虚空から射出され、先の戦闘で多くの猟兵が目にした死神列車の【線路作成】にも似た線路の組み立てを成していった。
(アレにできるなら、ボクにだって出来るさ)
 どこかモヤモヤした感情を懐きつつ、組み上がっていく線路を見上げる。
 ジャンクの山間を潜り抜けるように伸びて行く線路の行先は例のヴォ―テックスが抱える倉庫街だ。
 鉄骨や木材がぶつかり合う音が連続で鳴り響く様はちょっとした波のように拡がり、次いでその根本に在る基盤が固定する際のプレスされた音が轟いた。
「さぁ、出発だ!」
 組み上がった線路の強度は即席にしては上々、短期的に『利用』するならば何も問題は無い出来だった。
 後続の猟兵でこの手の障害を取り除き目的地へ向かうのに不安な仲間もいるだろう、ジュリアはそんな彼等に良い架け橋になればいいなと思った。
 出発、進行の合図は汽笛で報せる。眩い閃光に包まれた後に組み上がったばかりの鋼の線路にその"足"を着けた彼女、ジュリアが本来の姿で走り始めた。
「"超常の力を得ても基本的な特質は変わらない――列車は割と繊細な乗り物なんだ、それが定期的に通るルートが難所のはずがないさ"」
 蒸気機関車【D110ブラックタイガー号】となった機体から噴き出す蒸気が狼煙となり、地を揺るがす走行時の震動がジャンク山に彼女の存在を知らしめる。
 駆け上がる機関車の周囲を渦巻く悪意は、そのまま流れ行く列車の景色の如く。ジュリアに追いつけずにその走行と共に吹き荒れた風や衝撃に掻き消されていった。
 彼女の思った通りだったのだ。
 死神列車の走るルート上には可燃性のガスの充満地帯が薄く、そして列車の速度に追いつける程の速度を持ったモンスター等が少なかった。ジャンクの物量や悪路を踏み越え、合間を縫うことが出来れば比較的安全だったのである。

 駆け抜ける蒸気機関車の汽笛が鳴り響くジャンク山。
 その音は、密かに周囲の人々に懐かしさや高揚感を与えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
他者との連携OK

心情
哀しい風景だよな
破壊され歪んだ世界の象徴ってカンジだ

だからこそ俺達は押し通るぜ
この世界が少しでもマシな未来へ近づく手助けの為に

行動
空から行かしてもらう

炎の矢と化して高速飛行

悪性ガスの類は炎が焼き
炎が呼ぶ風が吹き飛ばす

モンスターや暴走機械を
炎の体当たりや焔摩天の一撃、或いは爆炎を放って
できる限り海へ還してやるぜ
こいつらもストームの犠牲者だからな

けど全部倒すのには時間がかかりすぎるから
倉庫街へ向かうのを優先する

攻撃の余波でジャンク山が燃えるのは気にしない
誰も近づかない場所だし
焼却した方がいいだろ

けど仲間や人らしき姿がいるなら
逆に山が燃えないように注意するぜ




 踏み締める地面が次第に砂利以外の物を踏むようになって、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は気づいた。
 ジャンク山。一言で語られるその場所は、彼の視界には別の物がよく映った。
 他の猟兵達が瓦礫を避け、あるいは掻き分けて行く中。ウタの背後で壊れた時計塔らしき残骸が今も内部から歯車の音を響かせている。
 聞けばこのジャンク山はちょっとした町の広さがあるらしい。
 もしかするとここには――そう思いかけて、青年は今更だろうと小さく首を振った。
「哀しい風景だよな……破壊され歪んだ世界の象徴ってカンジだ」
 荒野世界に降り立つのは初めてではない、何度もこうして訪れては仕事や事件のために奔走して来たのだ。想像もつかない程の破壊が襲った後の世界にウタは何度も触れて来た。
 その中でも、こうした廃墟や廃材に囲まれた空間を歩く度に思うのだ。
 もう二度と"それ"が人々の営みを支える事は無く。ただ無残に屍を晒すかのようにただ在るだけ、その情景は楽曲を通して文化に触れて来たウタにとっても悲哀を感じずにはいられなかった。
 ――キシキシと、音が鳴る。
 暴走した小型の機械兵器や饐えた臭気漂う四足の獣が彼の存在に気付き、集まって来る。ウタの視線はそれらに向き、それから再度曇天を見上げて瞼を閉じた。
「だからこそ俺達は押し通るぜ。この世界が少しでもマシな未来へ近づく手助けの為に」
 立ちはだかる壁はどんな世界でも等しく。易しくなどない。
 アポカリプスヘルで生きる者達の多くはそれを自然と受け入れていた。ならば、ウタもまたそれに倣うまでだった。

 歪む空間。
 その場に白煙が満ちた直後。ウタに群がっていた暴走機械や獣がその歩みを狂わせ、あるいは後退させた。
 対して渦巻く熱風は止まらず青年を中心に拡がり続ける。
「焔摩天――転生!」
 青年の内から溢れ出した猛火は獄炎と化し、瞬く間に彼の身を覆い隠した後に顕現した大剣を包んで巨大化する。
 【大焔摩天】を手に、爆炎を噴出させてウタは飛翔する。
 初速にして音の壁を破った彼の身は、さながら砲弾よりも破壊力を秘め。焔摩天をブースターにして一条の火矢と成ったウタの周辺でモンスター達が炎に包まれて吹き飛んだ。
 オブリビオンの因子があろうと、所詮は打ち棄てられた有象無象だ。
 一瞬にして『海』へと怪異達を還した金色の焔は尾を引き、高速で飛行するウタの眼前に現れた飛行型のドローンや怪鳥などのモンスターをも引き裂いて行く。
 眼下に垣間見えた他の猟兵達を囲んでいた獣に向けて炎を落とし、数秒でジャンク山を半ば越えたウタは上空にまで昇る凶悪な悪性の毒ガス帯を見つける。
(誰も居ないなら……!)
 放出されていた爆炎を一瞬だけ鎮めたウタの身が空中で反転。強烈な慣性によって宙を滑る彼は紅蓮の光刃と化した大焔摩天を縦割りに一閃し――廃棄物の山に獄炎が衝突して爆発する。
 悪性の毒ガスには可燃性の物も混ざっていたか。直後に連鎖的に小さな爆炎が瞬いて弾けていった。
「あー……気をつけないといけないな」
 味方へ配慮して正解だった。ジャンク山の一画で積み上がっていた廃棄物は一瞬にして炎上して崩れ落ちていくのが見えたからだ。
 だがいずれにせよ、これで目的地までの道程が楽になったのは確かである。
(さっきの場所を誰か通るなら……ここも空けておくか)
 空中でふわりと自由落下めいた浮遊感に包まれた後、ウタは眼下に広がる瓦礫の一部目掛けて焔摩天をさらに薙ぎ払い、焔を放って爆散させていく。

 曇天を切り裂く金色の炎。
 上空を直進するウタは数多のモンスター達を退け、海へと還しながら遂にジャンク山を越える。
「……あれか」
 焔摩天による推進力を一時的に消失させ。再度慣性を利用して角度を調整しながら、彼は荒野の先に並ぶ崖下の倉庫街の前に着地した。

 ――蠢く濃厚な闇の気配に、青年は最後の仕事に挑んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・オブライト
よその世界じゃあやれ環境がどうの資源がどうの云われてる中のコレだろう
過ごしやすくて助かるって話だ、我が故郷様は

故郷かは知らんが。どう扱おうと誰も迷惑しねえならザックリ『地形破壊』通り道作りつつ
乗り捨てられた手頃な廃車でもあれば借りていこう。【Relic】と必要に応じ『属性攻撃(電気)』で強引に動かす。出番分持ちゃあ十分だ、ゾンビってのは大概そんなもんだからな ※移動↑装甲↓
この地で長く生き死にする身としてガス類は『環境耐性』気付くかも怪しい
障害は引き続き壊し目的地へ『悪路走破』
しかし『運転』か。最後にした憶えがあまりねえな、飛び降りた後に奴さんのコンテナに刺さろうが責任を取る気はない

※諸々歓迎




 何処かでバイクを噴かせている。
 そんな事を気にも留めずに、のんびりとした歩調でジャンク山に辿り着いたレイ・オブライト(steel・f25854)は久々に足裏に感じる悪路のそれを感慨深そうに思い見つめていた。
「よその世界じゃあやれ環境がどうの資源がどうの云われてる中のコレだろう。過ごしやすくて助かるって話だ、我が故郷様は」
 散らかせるのはモノがあるからだ。とは、何処のレイダーが嘯いていた言葉だったか。
 思い出そうとして、どうせ自分が殴り倒した相手だろうとすぐに思考を棄て。それから人目が無いのをいいことに怪力任せに瓦礫を蹴り上げて進み始める。
 慣れ親しみたくなくとも慣れているガラクタの山。
 この荒野世界を歩いて来たレイにしてみれば今さら足場の良し悪しで文句を言うほどでもなかったのだ。
「しかしまあ、これが連中の言う『障害』とやらか。そこらに死体の一つも転がってねぇのはどういうわけだろうな」
 どうでもいいが、等と思考を切りつつ。
 だがこのレイの疑問は核心を突いたものである。アポカリプスヘルにおいて、こうしたジャンクの山でも『資源』は『資源』だ。限られた資源から明日に繋ぐことに長けているといってもおかしくない、この世界でこれがヴォ―テックスの手が着いたものだからと誰も手を出さないなど有り得るのだろうか。
 繰り返し。どうでもいいとレイは思う。
 そもそもこの作戦は敵対するヴォ―テックス一族同士の内乱に加担するものだ。どういった背景があろうが、関係なく。レイという男が為す事は蹂躙すべき相手をただ荒野世界の流儀に則って完膚なきまでに粉砕するのみだった。
「随分とまあ、ケミカルなこった」
 ポイポイと冗談のように大きな瓦礫や鉄骨が硬い衝撃音に次いで吹き飛んで行く。
 不意に、蹴り上げた鉄扉の下から緑や赤の煙が濛々と噴き出した。ぱたぱたとそれらを仰いで除けるレイはカラフルなガスを見て「わざわざ色を着けたのか」などと感想を述べながら、投棄された冷蔵庫ごと蹴り飛ばして辺りに散らかして行くのだった。

 暫しそんな事を繰り返しながらジャンク山を進んで行くと、今度は上空を戦闘機のようなソニックブームを散らす飛翔体が通る。
 汽車の汽笛めいた音も鳴り響く空の下、レイは仲間達の移動音に釣られて姿を現したモンスター達に囲まれている事に気付いた。
「俺がそんなに騒がしくしたか?」
 軋む音に囲まれながらも歩みを止めず、暇潰しのようにレイは拳を自らの顔側面に向けて振るい薙ぐ。
 鳥類型のモンスターが蛍光色の体液を撒き散らして粉砕される。それを皮切りに他の獣や暴走機械が彼に向って殺到するが、しかし手を伸ばした先にあったコンクリート壁の一部を掴んだレイが一蹴する。
 暴風が吹き荒れたかと思えばその直後に何かの体液や部品が散らばり降って来る。猛然と、しかし悠然と進むレイの歩みをモンスター達では止められなかった。
 どうも思いの外 "温い" とレイが感じ始めた頃。
 瓦礫の山からある物体を引き抜いたことで彼は眉を上げた。
「……丁度退屈してたところだ」
 ただのピクニックじゃ締まらない。散歩にしても目障りだ。
 そこでレイは手に掴んだ一台の廃車を瓦礫の中から引きずり出し、同時に遺物としての力を増幅させるべく自らのユーベルコードを起動させた。
 眩い閃光。だがそれでも反応は芳しくない、既に朽ちて数十年分の時が経ったに等しい状態だったのだ。
 バッテリーの残量はおろか内部の配線すら限界を越えている。
「なに――出番分持ちゃあ十分だ、ゾンビってのは大概そんなもんだからな」
 足りなくても動くからゾンビなのだ。
 まるでそう語るかのように、レイが車体を掴む手を通して強烈な電流を流す。【Relic】と併用して増幅されたその"奇跡"は、聞き慣れたクルマの駆動音と共に果たされた。
 不格好なクラシックカーの『ガワ』だけで中身は先時代のバッテリー式であろうそのクルマに、レイは車体天井部を剥ぎ取ってから乗り込んだ。
 どうせならドライブの方がいい――そんな感覚でレイは瓦礫山の悪路を走行し始める。
 動力、馬力はレイの身を通して加算された電力に基づいている。ゆえに彼の怪力も含め、激しい駆動音と走行時の振動も相まって正しく悪路を走破していった。
「……しかし『運転』か。最後にした憶えがあまりねえな」
 片道だけの道連れとなるクルマのハンドルを片手に。レイは紫電を散らす車体が跳ねる感覚に肩を竦めた。

 彼が目的地に到着する時、現地の敵は驚愕する事になるだろう。
 ブレーキすら踏まずに一気にジャンク山から躍り出てきた光り輝くクルマが突っ込んで来るのだ。そのインパクトさながら、跳ねられたレイダーの男達は白目を剥くに違いなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『機餓獣兵』

POW   :    Carnivore Machine
戦闘中に食べた【生者の血肉】の量と質に応じて【餓獣機関の作用が活性化。機動性向上により】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    Code of Lykaia
【捕食と破壊を求める餓狼の如き様態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    Bestial Analyzer
【命を舐め取る獣舌と、獣牙による噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【習性と味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Round Over!
 ヴォ―テックス・シティの真の支配者階級たる者、ヴォ―テックス一族。
 『軍人宰相』とはその中でも強力な戦車軍団を有する【ロンメル・ヴォ―テックス】の事だ。
 ロンメル陣営の主戦力はまさしくその戦車部隊であり、その様は動く拠点ともされている。
 そう――今回の作戦で猟兵達が潰す事になった倉庫街とは。その戦車部隊が中継点としても利用する補給場なのだ。

 数多のレイダー達が並ぶコンテナ群を前に奴隷の『在庫』や物資の計算に追われている中、彼等を監視するように倉庫街の天井に張り付いているモノが蠢く。

『A-12……異常無し』 『D-2……クラスC戦闘員の作業放棄を確認』
     『A-9……物資に小型エネミーを確認』
     「A-9、エネミーを排除せよ」
     『A-9……了解』
             『G-6……異常無し』
         『E-10……エリア外部よりナンバーの未確認物体の接近を感知』

 機械的。事実、彼等は機械だ。
 機械兵……ロンメル陣営が倉庫街に配置した、量産型のオブリビオンであり強力な生体機構を有した狼型の獣兵器である。
「未確認ナンバーだと……? 侵入者か」
 倉庫街のあちこちに散った機械兵の一部から怪しい報告を受けたレイダー達は慣れた様子で排除命令を出す。
 レイダーによる襲撃は勿論、既に他のヴォ―テックスからの刺客を送り込まれている情報は出回っているのだ。今回、倉庫街に配置された機械兵たちもそうした襲撃に備えての増員でもあった。
「未確認ナンバーの周辺に待機している機体を回すか」
「念の為、警報を……」
「馬鹿言えそんなにビビッてどうする」
 警報装置を鳴らせば、機械兵たちはすぐにでも倉庫街に記録されているレイダー達以外の侵入者を排除するだろう。
 しかしそれをすれば『本部』に報告が入る。交戦記録や指揮系統、前日までの作業進捗データ等々、事細かに情報が行き渡ってしまうのだ。
 レイダーの男達は互いに顔を見合わせ、ヴォ―テックスの名を思い出す。迂闊な事を出来る立場ではなかった。
『E-9……交戦開始』
「始まったか……ッ!?」
 男達が次なる指示に考えあぐねていると、不意にモニター端で戦闘が始まっていた。
 だがそこで、レイダーの男は目を見開いた。
 パネル操作をしていたレイダーが画面内にその一部始終を映そうとした瞬間、画面内に機械兵の爆散する様子が他のモニターに映し出されていたのだ。
 男の決断は早かった。
「俺達も出るぞ! 奴隷の入ったコンテナを開けろ……! 最悪、機械兵どもに喰わせるエネルギーが必要だからなッ」
 叩きつけるように押された警報装置のレバーに次いで、倉庫街をサイレンと銃撃の嵐が広がっていった。

 ――侵入者……猟兵達は、騒乱のコンテナ群を前に進んで行く。
ジュリア・ホワイト
ふふふ
ここまで近づければ警戒されようが関係ないね
「強襲ヒーローの戦いを見せてあげよう!オーヴァードライブ、正義を執行する!」

【圧力上げろ!機関出力、最大開放!】を発動して
一気に敵に突っ込んでいくよ
精霊銃に放水銃、ロケットランチャーに内蔵機関砲
全火力大盤振る舞いで機械兵たちを片付けていこう
「ボクを止められるなら止めてみるが良い!何体かかってこようと無駄だけどね!」
ある程度強引に行かないと
機械兵達が捕虜になった人たちを喰らう余裕を与えてしまう
ボクとしてはそれは許容できないのでね
のんびり補給なんて考えられないぐらい攻めて攻めて攻め続けよう
「接近戦がお望みかな?良いとも、ボクはそっちも得意だからね!」




 ロンメル・ヴォ―テックスの名の下に管理される倉庫街は、かつての港湾に在ったシェルターだった物を再利用していた。
 だが旧時代ながらにオブリビオンストームを耐え抜いた機構を持っていたのも過去の話。今となっては度重なる襲撃に加え老朽化により、改修を繰り返した楕円形のドームが放射能混じりの雨から守っているだけだ。
 そのドーム状の天井が、警報の音と共に開放されていく。
 現れたのは対空砲だ。ヴォ―テックスの中継地ともなれば、それを落とさんとする敵の多くが航空戦力だと想定されていたからだろう。複数のセントリーガンとも連動したそれらは操縦者一人で幾百もの弾幕を張れる兵器と化すのだ。
「ふふふ」
 だが、ぞろぞろと出て来ては対空砲の座席へと向かうレイダー達は誤っていた。
 間に合う筈が無かったのだ。彼等が撃ち落とすべき敵は既に空に無く。懐に潜り込み、背後に回って鉄槌を振り上げていたのだから。
「ここまで近づければ警戒されようが関係ないね」
 鳥の嘶きのように轟く射出音。
 開放されたドームの四方に現れた対空砲はその台座ごと。周囲のセントリーガンに感知されるよりも速く、そして一方的に、ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)が放った超高水圧のカッターによって両断――破壊されていた。
 爆散したセントリーガンの炎を頭上にして現れた、白きパワードスーツを前にしたレイダー達の悲鳴が響き渡る。
「な……んだ、ありゃぁ!?」
「強襲ヒーローの戦いを見せてあげよう! オーヴァードライブ、正義を執行する!」
 高温の蒸気を吹かせ駆け抜ける。
 通常戦闘でならまず見せない蒸気。その正体はジュリアの纏う【プラチナハート】の内部で最大出力にまで引き上げられたボイラーから漏れ出た余剰エネルギーのようなものだった。
 其の身に宿した力を余す事なく解放されたスーツは装着者の熱き魂を胸に、背部接続部から伸びた携行式四連ランチャーを構えて突き進んで行く。
「ボクを止められるなら止めてみるが良い! 何体かかってこようと無駄だけどね!」
 爆炎が渦巻く倉庫街の上空へ跳躍して、眼下に広がるコンテナ群へ向け念力誘導によって縦横無尽に軌道を変える弾頭を放つ。また一方の背部から回された携行式放水銃を振り上げるように撃つ。
 コンテナ群の影と陰を縫うように蠢いていた獣達が爆散し、超高圧の水流に弾かれて切り裂かれる。
 裏取りに動いた味方機のシグナルロストを受けて更に動きを変え、倉庫街の地下格納庫からリフトに乗って続々と姿を現す機械兵達。そんな増援の気配を察知したジュリアは視界の外から獣牙を剥いて襲い来るオブリビオンを後ろ手に振り回した機関砲で蜂の巣にしながら、放水銃で切り裂いて残骸を蹴り飛ばした。

 砲弾の如く吹き飛んで行った残骸が直撃して数体の機械兵が転がるのを横目に、他の機体がそれぞれ陣を組んでジュリアに波状攻撃を仕掛けようとする。
 それが多勢であることを活かした戦術だと大雑把に見たジュリアは、コンテナの陰から跳び掛かって来る機械兵を次々に放水銃で薙ぎ払い、四連ランチャーで吹っ飛ばしながら自ら敵の密集地へと飛び込んで行った。
 スーツの出力に物言わせ踏み締める彼女は真っ直ぐに。戦場の片隅で逃げ惑う奴隷として囚われていた人々を見据えている。
(……ある程度強引に行かないと、機械兵達が捕虜になった人たちを喰らう余裕を与えてしまう)
 俄かに頭を過ぎるのは最悪の展開だ。とにかく派手に、そして完膚なきまでにこの場にある兵器を破壊する事を迫られていた。
 一瞬でも理性を取り戻す隙を与えてはならない。
 引き金に掛かる圧は軽くない。しかしジュリアの脚は躊躇せず、コンクリート壁を蹴り破って壁向こうの敵をも砕いた。
『……』
 警報装置が作動して数分。味方である【死神列車】の到着が遅い事に気付いた機械兵の一部が、外付けのデータベースを通して同行レイダーのシグナルがロストしていた事を知る。
 僅かな時間の間に管理者への行動申請。しかし再三に渡る要求はいずれも管理者不在によるエラーで送り返され、やがて機械兵達の眼光が赤々とギラつき始めた。
『……【Code of Lykaia】起動』
『殲滅……』
『…………抹殺……』
 半分は生体だからだろう、機械兵達のモデルとなったオブリビオン【機餓獣兵】としての本質が殺意となって表面化していた。
 幾度となくオブリビオンと対面して来たジュリアも邪悪な気配に気付く。恐らくはこの機を逃せば悲劇が起きるだろうとも。
「おい? オイオイ……よせ! やめろー!!」
 銃器を構えてジュリアに威嚇射撃を行っていたレイダー達のもとへ駆ける獣。その荒い吐息が、裂けんばかりに開かれた鋭利でグロテスクな牙の並ぶ口が、レイダー達に恐怖心を呼び起こさせる。
 ジュリアが止める間もなく一人、二人とその場に居たレイダー達が踊り喰いされる。
 直後、赤い噴霧を散らして覚醒した機械兵たちがジュリアへと狙いを絞った。

 願ってもない――そう口の中で呟いたジュリアは視界を埋め尽くす牙と爪を前に一歩強く踏み込む。
 超加速からの全武装を用いた強襲、対するは完全な暴走状態となって迫り来る獣たちだ。
 そこにはもう組織立った動きは無く。ただ動く物体を切り裂き、噛み砕かんとする獰猛さだけが敵を占めていた。
「接近戦がお望みかな? 良いとも、ボクはそっちも得意だからね!」
 ステップで爪撃を縫い躱し、迷わず至近距離で精霊銃を抜き放つ。猛然と喉笛を噛み切ろうと跳んで来た機餓獣兵の頭を飛膝蹴りで割りながら、爪先立ちのまま身を大きく捻って鎌のように振り下ろした蹴り脚で更にもう一体潰して踏み台にする。
 鈍い破砕音。コンクリートを硬いパワードスーツの装甲が滑り、叩きつけられた踏み込みが地を揺るがす。
 ヒーローズアースでその名を轟かせた白き強襲者。ジュリアの猛攻は止まらない。
 獰猛に迫り来る機餓獣兵と同等の獰猛さで武装を振り回し、踵を返す事無く縦横無尽に駆け回る彼女は破壊した機械兵のオイルを一身に浴びながら次々に屍を足元に積み上げて行った。
「行くよ!!」
 それら残骸を蹴り上げ、機餓獣兵達の出鱈目な速度から繰り出された不意の一撃を難なく回避したジュリアが叫ぶ。
 ――直後、コンテナや機械兵達を巻き込み爆風が倉庫街の一画を吹き飛ばした。

 彼女の名はジュリア――ヒーロー・オーヴァードライブ。
 またの名を……『オーバーキル』。決してその足を停めぬ不屈のヒーローである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
命を食わせやしない

機械兵もOストームの犠牲者だ
海へ還してやろう

虜囚を守る

必ず助ける
ちょいと熱くなるけど少しの辛抱だ

虜囚ら周囲に炎の壁
敵攻撃から庇い迎撃

戦闘
爆炎で瞬時に間合いを詰め
又は回避運動をとりながら懐に入り
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

肉なんて喰わせやしない
鋼と獄炎を喰らいやがれ

俺に噛みついた奴には
内部へ獄炎をプレゼントだ

剣を振るうごとに戦場に炎が吹き荒れる
過熱し力を削ぎ
動きが鈍くなったところで
剣風で焔の竜巻を巻き起こし
纏めて砕き焼却

レイダーらはできるだけ
気絶や火傷で戦意喪失に留める
最低の奴らだけどオブリビオンじゃないし

事後
もう大丈夫だ>虜囚

これまでの犠牲者とオブリビオンへ鎮魂曲
安らかに




 一直線に白煙が駆ける。
 足下の接地面から溢れ出た熱は発火寸前で。半ば蒸気を纏い走るその様は蜃気楼が如く、青年の軌跡を朧気に揺らいだ像として残していた。
 騒乱の中を迷いなく進む木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は周囲の様子に意識を向けながら、しかし臨戦の態勢で手の中で焔を握り締めている。
 そんな彼の耳に女性の声が届く。それが言葉を紡ぐより先に、ウタはその声音が震えているとまず認識する。同時に踵を返しながら彼の手はタクトを揮うかのように薙ぎ、獄炎を纏い形作られた【焔摩天】を顕現させ姿勢を低くした。
「誰か……!!」
 年老いた女の助けを呼ぶ声。
 軋んだ金属が花開くかの様に口腔を広げていた、機械兵――【機餓獣兵】の中から無数の鋭利な刃と注射器めいた触手管が蠢き這い出して見せている。老女はそんな機餓獣兵の足元に組み付いている。鷲掴みにされ、口腔に引き摺り込まれようとしているのは老女の娘だった。
 恐ろしい怪物を前に為す術もない。だが、その場に熱風が渦巻いた。
「喰わせは――」
 大柄な体躯の機餓獣兵を側面から突き出した掌で打つ青年。
 刹那に見開かれた機餓獣兵の機械的で濁った眼が、ウタを見る。
「――――しない!!」
 肌を焦がしかねない程の熱波が場を満たす最中、機餓獣兵
 ウタの掌底から噴き出した爆炎が機餓獣兵の頭部を吹き飛ばし、逆手に掴んだ焔摩天で切り上げて中空に打ち上げていた。
 熱波と衝撃波に弾かれ、背中から転がり吹き飛んでいた老女と少女が互いに手を伸ばし掴み抱き合う。
 鼓膜が震え、碌に音も聴こえない最中で彼女達は頭上で爆散する機餓獣兵を垣間見た。それほど歳の変わらぬウタの、その姿に少女は息を飲んでいた。
 バキリと機餓獣兵の残骸が降り注ぐ。
 中空で機械兵を仕留めたウタは着地と共に、周辺のオブリビオンの気配が濃くなったことに気付く。すでに猟兵との戦闘が始まって暫く経とうとしている事から、敵もそれだけ増え、倉庫街のあちこちに散らばり殺意と飢えを満たすために人の気配を求めて散らばっているのだとウタは察した。
 ちょうど移動し始めた時、再び悲鳴が物資コンテナの並ぶ奥から鳴り響いて来た。
 ウタは老女達を一瞥した後に焔摩天を軽く振り下ろす。
「待ってろ、必ず助ける……! ちょいと熱くなるけど少しの辛抱だ」
 その真っ直ぐな瞳は既に別の方向に向いている。振り返らず告げたその言葉に老女達が首を傾げた直後、ウタが高く跳躍したのと同時に奴隷収容コンテナのある一帯を金色の炎による円陣で覆い隠していた。
 半ば屋外に近く、そしてウタもこのアポカリプスヘルにおける人類の根強さを理解した上で、酸欠にならぬ程度に調整された火炎で虜囚を一時守る事にしたのだ。
 ロンメル・ヴォ―テックスの軍団が所有するコンテナはいずれも有事の際を考慮して戦闘時の被弾をある程度耐えられる強度になっていた。当然そこには耐熱性も含まれており、ウタの調整した炎ならば彼自身が想定しているよりも中の虜囚は耐えられるのだ。老女達は不安ながらも炎の壁を見つめ、離れていく機餓獣兵の足音を聞きながらその場に座り込み安堵するのだった。

 ウタの頭上で鳴り響く轟音。
 それは倉庫街のドーム状の天井が閉じられていく音だ。半ば自動化された施設管理AIが戦闘開始時に破壊されたセントリーガンの修復を行おうとして一時天井板のシステムを再起動した為だった。
 一瞬だけ倉庫街を薄暗い闇が覆う。しかし、それを切り裂くかの様に金色の焔を背から噴出させてウタが一直線に飛翔――物資コンテナの積み上がった場所に急降下して行った。
「な、なんだぁあ!?」
 爆発的な熱波がコンテナの隙間から流れ込んで来たのにたじろいだレイダー達が顔を見合わせる。
 そのぼけっとした表情に白煙噴き出すブーツの靴底が突き刺さった。
 ボン、という鈍い音に次いで吹き飛んだ勢いそのままに着弾したレイダー達は互いに揉みくちゃになりながらコンクリート面に打ち付けられて転がっていく。
 レイダー達を速やかに無力化した事を見届けたウタが焔摩天を肩に担ぎ、足裏から獄炎を放出して滑るようにコンテナ群を一挙に駆け抜ける。
(最低の奴らだけどオブリビオンじゃないし)
 致命傷にはなるまいと思いつつ、ウタは「大丈夫だろう」とぽつり呟いて剣を振り上げた。
 コンテナを抜けた先で鉢合わせた機餓獣兵達が、まるで毛を逆立たせるように背部の棘状パーツを直立させる。赤い眼光が幾重にも連なり、ようやく見つけたウタという獲物を全力で仕留めんと狂獣と化した機餓獣兵が加速していた。
 振り抜かれた焔摩天が鉤爪を両断して飛ばす。
 火花が散り、切り裂かれた物資コンテナが熱されたバターの如く融解する様を見せ、その狭間でウタと機餓獣兵達が切り結ぶ。スピードは機餓獣兵達がウタを上回るが、彼の動きは瞬間的に爆発させる己の獄炎によって上乗せされており、剣風に乗って撒き上がる獄炎が環境的にも彼の後押しとなっていた。
 ステップで躱すと見せかけ瞬時に焔摩天を【大焔摩天】へと変貌させたウタが、紅の光刃をコンテナに突き立てて、融解させた金属液の飛沫で懐に入り込んだ機餓獣兵を牽制する。熱された飛沫を避けるように一歩後退した機餓獣兵が獣らしい唸り声を返す。
 機械兵、機餓獣兵の体を構成しているのは半分機械、半分生物ともいえるチグハグさだ。機械系のオブリビオンならばウタの炎に恐れもせず肉薄していたであろうその場面を、ウタは見逃さなかった。
『Gahhhhhッッ!!!』
 俄かに思考を紡いだウタが大焔摩天の刀身を細く、しかし背丈を僅かに越えるほどの長身へと変えたその瞬間を狙われる。
 頭上から降って来た獣の裁ち鋏めいた顎をウタが半身だけ逸らして受ける。剣を握っていた腕を噛まれたウタが大焔摩天の姿を消し、次いで自由な方の腕を通して顕現させた光刃で対面していた機餓獣兵の首を一閃のもとに刎ねた。
 微かに鮮血らしいものが散ったその最中、ウタが自身を噛んでいる機餓獣兵に目を向ける。
「肉なんて喰わせやしない、鋼と獄炎を喰らいやがれ」
 それがお似合いだとばかりに告げたのと同時に、ウタの腕から流れ込んだ獄炎が機餓獣兵の凶悪な機構施された内部を焼き焦がし、融解させ爆散させた。
 爆発時の閃光に紛れて身を低くしたまま飛翔したウタが大焔摩天を横薙ぎに払う。物資コンテナごと機餓獣兵を斬り払い、次々に爆散させる中で彼の体躯が一瞬の滑空の後で噴き出した焔によって軌道を変えて上昇した。
 数体の機餓獣兵たちが不規則に動きを変え、俊敏に、機敏に、鋭敏な動きを繰り返しながらウタの姿を追って距離を詰めていく。
 ぐるんと反転しながら紅の刃が一閃される。機餓獣兵が一機、また爆散されながらもウタに肉薄した機体たちがそれぞれ爪と牙を繰り出し、空中で火花と鈍色の一閃が交互に瞬いた。
 ウタとの交戦が長引き、そしてその熱量と炎の閃光が連続する度に機餓獣兵達の注目も集まって来る。
 降り注ぐ獄炎は物資コンテナの上だけでなく通路上にも点々と落ち、火種同士が繋がり焔の波が辺りを満たして行く。明確に強敵である猟兵を前にして一切の容赦もしなくなった機餓獣兵達はいずれも戦闘域を渦巻く熱に気がつかない。ウタの振るう光刃が纏う莫大な熱量ばかりに気を取られ、多少の熱に耐えられるそのチグハグさが仇となって気付けずにいたのだ。
 ウタの振るう獄炎が紅い軌跡を宙に描き、全身から噴き出す焔が空間に歪みを生んで機餓獣兵の視界をブレさせる。コンクリート面を砕き、物資コンテナの装甲面を凹ませて繰り出される超高速の格闘がウタを取り囲み、嵐のような破壊の風と獄炎とが入り交ざり辺り一帯を赤く染め上げていく。
 そして、ウタを包囲する機餓獣兵の数が20に届こうとした時。ついに限界が訪れた。
『……! ……!?』
 不意に機体動作が停止された事で動きを止めてしまった機餓獣兵の一体がウタの薙ぎ払った大焔摩天によって斬り飛ばされる。
 ウタから独楽の様に次いで放たれた回し蹴りが斬り飛ばされた機械兵の背後に立っていた機体を打ち貫く。貫き、引き抜きから爪先を掛けて跳んだウタのサマーソルトキックが更に他の敵を砕いて割る。
 それまで拮抗していた攻防が、速度が、次第にウタに偏る。
 物資コンテナさえ溶ける高温に達した戦場。耐熱の活動限界になった機餓獣兵達は知らず知らずのうちに無防備な隙を生み、斬りつける筈だった鉤爪は案山子のように振り上げたままの姿で粉砕された。
「……纏めて還してやる」
 荒々しい焔の中でウタが静かに告げる。
 大焔摩天が刀身の内側から膨張して、爆ぜるように紅の光刃が巨大剣と化した。
 ともすれば焼け尽くかのような熱波が押し寄せ、機餓獣兵達が軋む機体を震わせる。

「紅蓮に抱かれて眠れ――――【ブレイズ ブラスト】!!」

 強烈にして強力な地獄の炎が渦巻き殺到する。
 ウタが奮った剣風が如く放たれた獄炎は機餓獣兵達を吹き飛ばし、薙ぎ払い、渦巻く紅き竜巻に飲まれて焼却された。
 巻き上がった物資コンテナがあちこちに落ちて行く。
 僅かに静けさが戻った倉庫街の一画で、ウタは少し離れた虜囚の入った収容コンテナの元へ向かう。
 近付けば、機餓獣兵が襲おうとしていたのか爪痕残るコンテナの壁が見える。ここまでの壮絶な戦闘を遠巻きに聞いていた奴隷達は震えながら覗き窓からウタを見ていた。

「もう大丈夫だ」
 そう言ったウタの隣で機餓獣兵の残骸が灰に帰したのを見て、奴隷達の歓声が上がるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
ヴァシリッサ(f09894)と

ディナーパーティになどさせてたまるか、制圧ついでに彼らを保護する
…分かっているな、ヴァシリッサ?

囚われた人間へ襲い掛かる敵を最優先で射撃で攻撃、捕食の妨害を試みる
近ければ割って入り敵の進路を塞いで攻撃
絶対に手出しはさせない

ヴァシリッサからの情報で物資コンテナに注目
これを遮蔽物として身を隠し敵へ接近
あえて前進し多くの敵を範囲内に収めてユーベルコードを発動、敵だけを狙って範囲攻撃で一掃したい

自分の守りは二の次で構わない、囚われた人間の守りと敵への攻撃に注力する
いざとなればヴァシリッサが防いでくれると信用して
そうだな、鉛玉なら存分に喰らわせてやる

※アドリブ、他者連携OK


ヴァシリッサ・フロレスク
シキのダンナ(f09107)と

ディナーパーティにゃ間に合ったみたいだねェ?
なンだい、ゲストを放って『料理』に手ェだそうってか?ッたくマナーがなってないねェ?

ん、大丈夫サ。例えだよ例え♪ヤるこた殺るよ

抜かりなくね

迎撃に専念。スヴァローグで怪力・激痛耐性を以て武器受け、ノインテーターでカウンターを主に、人質のコンテナに敵を寄せ付けない様に立回りつつ、行動特性を情報収集

Hm?奴サン、物資コンテナにゃ手が出せない感じだよ、ダンナ

一通り見切りゃコッチのもンだ。ダンナや人質に手ェ出す奴は片端からUCで潰す

Stay stay♪
んなガッつかなくても喰らわせてやンよ?

鉛玉のフルコースをな、ダンナ?

※他者連携OK




 猛然と駆け行く一陣の白風を筆頭に紅蓮が倉庫街の一画で爆ぜる。
 ブラッドルビー・ヴォ―テックスの手引きによって猟兵の奇襲が成功し、それまで静寂に包まれていた倉庫街は騒乱の渦と化していた。
 作業員やロンメル陣営のレイダー達は機械兵が動き出したのを見て対応に追われ、物資や奴隷の移動を急がせている。だがここは荒野世界、秩序ある動きを見せていたのも、それには裏付けされた自らの組織の力が背景にあったからだ。
 その前提が崩されるような事が起きる、或いは命の危機に直面した時。彼等がどのような決断をするのかは火を見るよりも明らかだった。
「や、やめろ! 待て……まってくれぇ!!」
「嫌ぁぁ……っ!」
 錆び欠けた鉄の檻の中で数人の男女が口々に助けを求めている。
 彼等が足を止めるように懇願している相手、レイダー達は『奴隷』である彼等に目もくれない。既に彼等の価値は無に等しく、例え女だろうとそれを連れ出す素振りを見せない。
 当然だ。戦域となってしまった倉庫街はいまや機械兵がエネルギーの枯渇に飢えている危険地帯なのである。そうでなくても強力な襲撃者の登場によって怯んだレイダー達に足手まといを連れ行く考えはない。
 既に奴隷の収容コンテナに掛かっていた電子ロックは遠隔で開錠されている。そこから奴隷達が逃げ出そうが機械兵の手に掛かろうが、レイダー達の知った事ではなかった。
 ゆえに、奴隷たちには戦闘の余波や飢えた獣の牙が向かうのだった。
『機関活性……促進……』
 機械兵達の獣じみた口が裂け、両手の鉤爪が薙いだ後に鉄格子がバラバラと細切れにされて落とされる。
 逃げ場も失い希望も無くなった奴隷達は自らに突き立てられるだろう凶牙を見つめ、その場に崩れ落ちた。
 ――どこかで銃声が鳴り響く。
 小気味の良い銃撃音だ。レイダー達とは異なる装備だと、かつてそういった火器に触れた事のあった奴隷の男は遠退く意識の中でぽつりと考える。
「……!?」
 そこで、奴隷の男は自らの眼前で立ち塞がっていた機械兵が突如火花を散らして倒れ伏したことに気付いた。
 人間よりも些か大柄なその体躯には背後から幾つもの銃撃を浴びた痕跡があった。

「――なンだい、ゲストを放って『料理』に手ェだそうってか? ッたくマナーがなってないねェ?」
 数百メートル離れた倉庫街の一画。崩れたコンテナの山の上で硝煙を揺らす女が一人、呆れたように肩を竦めて言った。
 戦闘が始まって間もないものの、混沌として来た状況の戦場を見回す彼女……ヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)は「Um-hum」と小さく頷いて口角を上げた。
「どうやら、ディナーパーティにゃ間に合ったみたいだねェ?」
「ディナーパーティになどさせてたまるか、制圧ついでに彼らを保護する……分かっているな、ヴァシリッサ?」
 機械兵の残骸を踏み越えて現れたシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の姿に、ヴァシリッサは視線を向ける代わりにクルクルと手の中で愛銃【ノインテーター】を回している。
 上機嫌な彼女はチラと牙を覗かせながら銃を弄ぶ手とは別に、後ろに回していた腕を振り上げる。
「ん、大丈夫サ。例えだよ例え♪ ヤるこた殺るよ――抜かりなくね」
 一歩前に出たヴァシリッサの足下で鈍い音が鳴り、黒々としたオイルが飛び散る。
 特殊な機構を持つ彼女の射突杭、【スヴァローグ】に貫かれていた機械兵、オブリビオン【機餓獣兵】の骸が転がったのだ。ヴァシリッサは一度そちらへ目だけを向け、それから隣に並んだシキに小首を傾げて見せた。
 シキにはその仕草の意図が伝わったのだろう。ヴァシリッサが身を低くさせたのと同時に前へ躍り出て行く。
 先陣を切る銀の風。
 シキがヴァシリッサの前を行く最中に慣れた手つきでハンドガンを振り抜き撃ち、対に薙いだ手の先から弾かれた小型のグレネードが物資コンテナの陰に投擲される。
 僅かに軌道を曲げ、放たれた複数の弾丸が倉庫街を走り回っていた機餓獣兵の関節部を射抜く。派手に転倒する音。次いで数瞬、シキに続いていたヴァシリッサの両脇で爆風が奔り、彼女の背を押した。
「Phew! さっすが――」
 軽い口笛と共にシキを追い越したヴァシリッサがコンテナの縁に指を掛け、駆ける勢いそのままに身を宙へ躍らせる。
 視線を走らせる。
 奴隷コンテナの見分けは一見つかない。しかしヴァシリッサはそれを自らの勘と敵の動きで察し、不躾な畜生が食指を伸ばした先へ目を向ければ僅かながらに物資の入ったコンテナと造りや積まれ方が異なると考察する。
 前転から跳ねるように側転する。瞬きの間に銀銃から放たれた数発の特殊弾が他の猟兵と交戦している機餓獣兵の頭部から紅蓮の花を咲かせて吹き飛ばす。
 再度コンテナ縁に片手を掛け、スヴァローグを振り回す勢いでヴァシリッサは跳躍する。
 ここまで一連の動作を二度の瞬きの間に終えた彼女は、コンテナ群を抜けて来たシキの隣に滑るように着地した。
「Hm? ――奴サン、物資コンテナにゃ手が出せない感じだよ、ダンナ」
「つまり……手を出しているのが "そうか" 」
「そゆコト♪」
 短く切り、互いに頷き合いながら拳銃を抜き撃つ。
 交差する弾丸が火花を散らし、次いで彼等から放たれたそれは二方向で黒い飛沫を上げた。
 倉庫街は広く、シキとヴァシリッサでは手を広げるのに限界がある。ゆえに彼等は自然と他の猟兵の手が薄い区画へと来ていたが、そこに至るまでの僅かな時間でヴァシリッサは機餓獣兵たちの特性、或いはそれらに課された命令の意図を読み取っていた。
 ヴァシリッサの観察眼と勘の精度を知るシキは疑うことなく動く。
 シキが積み上がった物資コンテナの間を駆け抜けて双眸を走らせれば、風を切って薙いだハンドガン【シロガネ】から狙い澄まされた魔弾が放たれる。
『Gahhh……ッ!?』
 時に跳弾も介して撃ち抜かれ、或いは転倒させられた機餓獣兵たちは一様に殺気を膨らませる。
 視界の隅を駆け抜けるシキを捉えた機餓獣兵が追走しながら牙を鳴らし、鋭利な鉤爪を交差させた。しかし一度コンテナの陰に姿を消したシキを追いかけても既にその姿は無く、眼前に飛び込んで来るのは同様に追走し回り込んで来た他の機餓獣兵達だった。
 仲間が敵を捉えていない事を通信による同期で瞬時に把握していた彼等は、見失ったシキの姿を探そうと視界を巡らせた。
 ――連続する銃声。だが音よりも先に、機餓獣兵達の頭部を粉砕して脊髄に抜けた弾丸が足元のコンクリート面を穿つ。
『…………!!』
 死の間際、時間と空間を歪めてもたらされた連続射撃を浴びた機餓獣兵の一体が頭上を跳び越えるシキの姿を捉えていた。
「眼が良いな」
 それは獣ゆえか。射貫いたオブリビオンが一匹、反射的に見上げたのを確かにシキは認めていた。時間にしてそれが気配を感知される程の間があったとは思えない事から、彼はこの場に蠢く機餓獣兵がそれだけスピードにも秀でた怪物なのだと認識した上で身を物資のコンテナ上から目立つように躍らせた。
 今の一瞬で他の機械兵にシキの情報が行き渡った可能性はある。
 集中砲火されることもあるだろう。だが、彼は自身の背中を気にすることなく眼中に入った敵へ銃口を向けて行った。

 収容コンテナを抜け出した男達はレイダー達の死体から剥ぎ取った銃器を手に、倉庫街の外を目指して走り出していた。
 道中、彼等を呼び止める声が上がる。
 レイダー達は戦闘開始時に収容コンテナのロックを解除していたが、それも全てではない。整備不良や旧時代の南京錠といった、安価な鍵を用いて閉じ込めているコンテナもあったのだ。
 同じ奴隷の扱いを受けていた者として、銃を手にした男達はコンテナに向かう。だが助けを求める声の元へ着いた彼等は思わず呼気を抑えて身を隠してしまった。
 そこには飢えた機械兵の姿が在った。
 機餓獣兵の牙が、コンテナを切り裂いた爪が、だらりと垂らされた唾液の水音が、逃げ場を失った奴隷たちとその様子を見守る事しか出来ない男達の体を芯から震え上がらせる。飢餓状態ゆえにか。旧世界を破壊したストームからの帰還者が放つ異質な気配、オブリビオンの重圧を感じ取ったからだ。
『Shahhh……』
 鉄の臭い。
 それが血の香りから来ているのか、あるいは機餓獣兵の機械体から漂うものなのかは奴隷達は知る由も無い。今にも自分達を喰い散らかさんとして顎を開けている獣を前に、彼等にはただ怯えに屈する事しか出来なかった。
 一方……獣は『餌』以外の存在に気付く。
「Knock Knock♪」
 軽快な女の声が聴こえた直後、その場で震動が走る。
 金属が引き裂かれる音。奴隷達の眼前で機餓獣兵の姿がブレたかと思えば、次の瞬間には赤髪の女が背丈ほどの杭を横薙ぎに叩きつけていた。
 白狼にも見えるエンブレムが震える。
 炸裂した瞬間の軽い音と対照的に、火花とオイルを撒き散らしながら機餓獣兵が砲弾の様に飛ばされてバラバラに粉砕する。射ち込まれた杭が伸びたそれは剣のように、しかし暴力的なまでに重い音を立てて振り回されながら、それを奮う者の手に従い矢を番えるのと同じく引き戻される。
 呆然とそれを見ていた奴隷達に巡らされる視線。
 彼女――ヴァシリッサは、人差し指を唇の前に立ててからその場を去ってしまった。

 シキと共に物資コンテナの陰を駆けていたヴァシリッサは、シキを狙う敵や奴隷に食指を伸ばそうとする敵を排除していた。
 倉庫街の上空を紫電と業火がクロスする。
 猟兵達の戦闘も秒読みで激しさを増しており、比例して機餓獣兵達も襲撃者に対する認識を最高クラスの危険度として改めていた。
 そして何より、本能的に彼等オブリビオンは猟兵の存在に少なからず影響を受けているのだろう。殺意と憎悪が滾る機餓獣兵達は制御装置を破壊して、猟兵達に対抗する為に己のスペックをフルに使おうと完全な飢餓状態になりつつあったのだ。
 ――物資コンテナの陰を縫って這い回る獣達。
 それは遮蔽物として利用するヴァシリッサ達とは異なる"狩り"の動きだ。
(完全に包囲せず、意図的に穴を作っているか)
 逃げ出す隙を与えないスピードでの陣形構築。しかしシキとヴァシリッサは共にその包囲に一定の周期で穴が空いている事を看破していた。
 誘われている。
 理解と行動は早かった。ヴァシリッサが物資コンテナを蹴り破り、装甲板を貫いて機餓獣兵を潰している所にシキが駆けて来る。それを見たヴァシリッサは一瞬だけ身を屈めて片手を振り上げた。
 刹那に飛び込んだシキが片足を振り上げられた手に掛け、軽々と中空に放り投げられる。
 瞬く閃光――狙い澄まされた銃弾が倉庫街の一画を渦巻くように群がっていた機餓獣兵達に降り注ぎ、その足を縫い止める。
 コンテナの上に着地したシキを見上げて楽しげに口角を上げたヴァシリッサがスヴァローグを握り締め、脱力したように背中から地面に落ちる。身を捻り、横薙ぎに振り下ろした踵で機餓獣兵の頭を砕いた。
 彼女の周囲で軋んだ金属音が連打する。獲物が『網』にかかったと、嘲笑うかのように。
 コンテナの装甲板とコンクリート面が交互に削り取られる。左右の壁を蹴って後退するヴァシリッサを追う、機餓獣兵の鉤爪が閃く毎に風切り音が鳴っていた。
 ともすれば鉄塊すら切り裂ける、恐るべき刃をヴァシリッサが見切り。徒手によるカウンターの打撃で粉砕した彼女が懐に入り込み、鋭い突き上げによるスヴァローグを叩き込んで射貫く。
 衝撃と共に打ち出された杭はヴァシリッサに肉薄していた機体の背後の別機体をも貫いて吹き飛ばした。
 轟音。銃声。
 ヴァシリッサの背にしていた物資コンテナが倉庫街の天井に迫る勢いで吹き飛ぶ。
 頭上から飛び込んで来た機餓獣兵の胸元へ特殊弾をカウンターに撃ち込んだ後。ヴァシリッサはスヴァローグごと腕をコンテナに突き刺して、空中に縫いつけられた機餓獣兵に勢いよく投げつけたのだ。
 散らばる残骸。コンテナを投げたことで僅かに開かれたその空間を囲むように、周囲からギャリリと凄惨な音を奏で殺到する機餓獣兵達。
 機を待っていたのだろう殊勝な機械仕掛けの獣たちを前に、ヴァシリッサは愉し気に広げた両手を掲げる。
「Stay stay♪」
 灰の瞳を幾度か瞬かせたヴァシリッサがスヴァローグの杭を射出せずに足下へ突き立てる。それを軸に半身を回転させ、物資コンテナを引き裂いて現れた機餓獣兵たちへ鞭の如くしなる回し蹴りをお見舞いする。
 己が怪力で文字通り蹴散らしたヴァシリッサは、隙を衝いて足下を這いながら飛び込んで来た機餓獣兵の顎をノインテーターによる銃撃でアッパー気味に閉じさせ、同時に突き出した射突杭によるフックで頭部を粉砕して地に落とした。
 狙撃して来るシキを、逃げ回り隠れている奴隷達を喰おうとしていた敵は今やヴァシリッサの虜同然だ。上々の立ち回りと"集客"の結果に、赤髪の下で炯眼が笑みによって隠される。
「んなガッつかなくても喰らわせてやンよ――鉛玉のフルコースをな、ダンナ?」
 ヴァシリッサを狙う獣達に頭上から連続射撃が降り注ぐ。
 洗練された無駄のない一射。それを圧縮された時の狭間に重ね続けるのにどれだけの集中力が必要か。
「――そうだな、鉛玉なら存分に喰らわせてやる」
 瞬間。ヴァシリッサの頭上から降り注いだ弾丸が機餓獣兵を再起不能なまでに打ちのめした。
 それは機餓獣兵達にも見せていた狙撃とは根本的に異なる。シキという男が持つ技の一つでもあった。研ぎ澄まされた意識の中、彼の手が握る愛銃の弾道がそのまま視線と同一化され寸分の狂いなく目標に鉛玉を届けて行く。見る者が見ればその魔弾にも近しい弾道と射撃速度へ称賛が上がるに違いなかった。
 何より突如見せたシキの姿に機餓獣兵達は最期の思考の中で驚愕していた。
 彼が立っていたのは、直前の戦闘の中でヴァシリッサが上空へ投げつけたコンテナの上だったからだ。

 動けなくなっていた機餓獣兵の上に勢いよくコンテナが落下する。
 落雷めいた音に次いで機餓獣兵の爆散が連続し、辺り一帯に火の粉と残骸が粉塵と共に雪崩れ込んだ。
「お客様は一足早く御帰りみたいだねェ」
「見送りにはまだ早い。やれるな?」
「勿論、ダンナとのダンスもまだ楽しみたいからねェ♪」
 ひしゃげたコンテナの中から歩いて来たシキに並び、ヴァシリッサが笑う。
 倉庫街にはまだ銃声が鳴り響いている、少なくとも――彼女達のパーティーは暫く続く様だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月31日


挿絵イラスト