10
常花ラビラント

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #マーダー・ラビット #時計ウサギ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アリスラビリンス
🔒
#猟書家の侵攻
🔒
#猟書家
🔒
#マーダー・ラビット
🔒
#時計ウサギ


0




●千紫万紅
「いや~扉が見つからなくて残念でしたね!」
 ぴこりウサギ耳を揺らして、時計ウサギはくるりと振り返る。
「けれど、安心してください。次こそ見つかります!」
 ゆったりとした足取りでウサギ穴を進むのは、一人のアリス適合者の少年と一人のオウガブラッドの青年の二人。
 此処はウサギ穴。時計ウサギの先導無くば永久に出られぬ絶対迷宮。
 ―だから、信じた。
『次の世界こそ、きっと…!』
 意気込むアリスの少年の肩を、オウガブラッドの青年が優しく叩く。
 言葉こそ語らぬけれど、次こそは、と。
 ―無条件で信じていた。
 先導していた時計ウサギの足が、ぴたりと止まる。口元には歪んだ笑みを貼り付けて。
「は~い、名残惜しいですが、そろそろお二人とお別れの時間となりました!」
『……え?』
 ―騙される事など、一切頭に無かったのだ。
 訝し気な表情を浮かべる二人に、時計ウサギは、淡く笑みを浮かべてくるりと踊る。
「ウサギ穴のど真ん中で、時計ウサギが居なくなったら、一体どうなると思います?」
 刹那、時計ウサギの姿が掻き消える。
「正解は”骸の海の藻屑と化す”でした~!」
 慌てて周囲を見回せど、時計ウサギの姿は既に見えず。呆然とする二人の許へ、尚も声は響く。
「もしも、なんて事はないだろうけど、出てこれたらその時は~、ご褒美に殺してあげるね~!」
 けたけたと嗤い声が響いて、ぷつりと途絶えた。
 瞬間、周囲の空間がぐにゃりと歪む。噎せ返るような花の香りが漂って、眼前に現れたのは―。
 天まで届きそうな高い生垣と、其れを彩るかのように四季折々の花が咲き乱れている。
 チューリップ、薔薇、パンジーに水仙―。他にも、馴染みある花や名を知らぬ花が目に映る。
 規則性なく咲く花の何と美しい事か。

 けれど、忘れてはいけない。出口を見つけられぬ、其の時は―。

●四季迷宮
「……報告。…アリスラビリンス、にて、猟書家が、事件を、起こし、ます」
 憂いを帯びた表情を浮かべて、神宮時・蒼(迷盲の花雨・f03681)は言葉を落とす。
「……どうやら、アリス適合者と、其の、仲間の方が、ウサギ穴に、置き去りに、されて、しまった、よう、です」
 ウサギ穴。
 不思議の国を繋ぐ魔法の通路。けれど、其れは時計ウサギの先導が無ければ、入る事も出る事も叶わない。
「……皆様には、アリスの方々と、一緒に、此の、迷宮に、挑んで、いただきたい、のです」
 見た目は美しき庭園。
 けれど、高い生け垣と可憐な花が咲き誇るだけの庭園は、一度辿った道を見失えば、迷宮と変じるだろう。
 幸いながら、此の庭園には敵の姿は確認出来ないので、少しならば考える時間はありそうだ。
「……一応、出口への、道標は、あるよう、ですが…」
 其れが何かまでは分からない。とは言え、此の場に在るのは無数咲き誇る花と生け垣。
 花の何かに、秘密が隠されているのかもしれないと、蒼は小さく零す。果たしてそれが正解かは分からない、とも。
「……迷宮を、抜けた先。…其処に、此度の、元凶である、マーダー・ラビットが、待ち構えて、います」
 こんな事件が起こらなければ、ゆるりと迷宮探索が出来たのかもしれない。
 迷宮攻略を焦る必要は無いけれど、のんびりもしていられない。
 アリスの少年や、その仲間の命が掛かっているのだ。
 件の少年たちは、庭園迷宮を前に、途方に暮れていると言う。
 彼らを無事に迷宮の出口まで連れて行ってほしい。さもなくば、彼らの運命は此処で終わってしまう。
「……大変な、お願い、だとは、分かって、います。…けれど、皆様なら、きっと」
 ひらりと、グリモアの蝶が周囲を舞う。
 小さく頭を下げ、蒼は転送の準備を始める。

 さあ、迷子のアリスたちを助けに行こう。


幽灯
 幽灯(ゆうひ)と申します。
 今回は、アリスラビリンスのお話をお届けします。
 マスターページの雑記部分にプレイング受付日と締め切り日を記載させていただきます。
 お手数ですが、一度マスターページをご確認くださいませ。
 尚、返却はゆっくりの予定です。

●こちらは「2章構成」の猟書家シナリオとなっています。

●1章
 四季折々の花が咲き誇る迷宮に挑んでいただきます。
 アリスの少年と、オウガブラッドの青年と合流したところから開始となります。
 迷宮を進む方法は問いません。一応、咲き誇る花の何かがヒントになっています。

●2章
 猟書家「マーダー・ラビット」との戦闘です。
 助力を請えば、アリスたちは微力ながら戦闘のサポートに回ってくれます。
 彼らは、そこそこの戦力を持つので護る必要はありません。

 複数名様でのご参加は3名まで。
 ご一緒する方は「お名前」か「ID」を記載してください。
 それでは、良き冒険になりますよう。
73




第1章 冒険 『庭園迷宮』

POW   :    花も木も無視無視!草木をかき分けながら脱出だ

SPD   :    綺麗な花や整えられた木々を観賞し、ゆっくり散歩気分で脱出

WIZ   :    花や木に脱出のヒントがあるかもしれないので詳しく調べながら探索する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●緑の迷宮
 其処は、まるでおとぎの国に迷い込んだかのような風景。
 肌に触れる空気は暖かく、何処か心地良い。
 少しの間ならば、楽しんでもいいのではないかと思ってしまう程に。
 けれど、其れこそが罠なのだろう。
 ふわりと風が靡いて、生け垣の葉を揺らす。色彩豊かな花の群生も其の花弁をゆらりと揺らした。
 ―此の場に留まれば、死が待ち受けるのみ。
『出口、何処にあるんだろう…』
『…………』
 きょろり、と周囲を見回しながらアリスの少年が傍らに立つ青年へ問う。
 幾ら歩けど、変わり映えの無い緑の壁と、法則性無く咲き誇る数々の花が映るばかり。
『イクス…』
 目印になるような物は既に置いてきたが、如何せん迷宮自体が広く、当の昔に目印は見失った。
 何より、周囲の風景に代わり映えが無さ過ぎるのだ。
 イクスと呼ばれたアリスの少年は、沈んでいた顔に笑みを貼り付ける。
『落ち込んでても仕方ない、早くここから出ないと。行こう、クローゼ』
 心配の色を滲ませながら、クローゼと呼ばれたオウガブラッドの青年は其の後に続く。
 一抹の不安を抱えながら、二人は再び色彩鮮やかな迷宮を進む。
 出口で待つのが、更なる苦難だと知りながら―。
フリル・インレアン
ふわぁ、いっぱいお花が咲いていて綺麗ですね。
ふぇ?アヒルさん、どうかしましたか?
遊びに来たんじゃないから、出口の手がかりを探せって、四季折々のお花を楽しんだっていいじゃないですか。
そうですね、手がかりですか。
仲間外れや通常ではあり得ない咲き方をしている花がないか探してみましょう。
ひとつだけ咲く季節が違うお花や生垣には咲かない花とかですね。

ふええ、のんきに探してないで真剣に探せって、これでも真剣に探しているんですよ。



●花に惑い
 ぐるりと周囲を見回せば、色彩豊かな花の姿が彼方此方に見える。
 無造作に咲いているものの、景観を損なわない其の景観に、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は思わず感嘆の息を漏らす。
「ふわぁ、いっぱいお花が咲いていて綺麗ですね」
 思わず其の場で周囲を見回す様にくるりと回れば、手に抱く白いアヒルのガジェットが抗議の声を上げるかのように一鳴きする。
 ぐるぐると鋼鉄の翼を回して尚も抗議は続く。
「ふぇ?アヒルさん、どうかしましたか?」
 腕の中で暴れるアヒルさんに対し、フリルは小首を傾げるのみ。山茶花のように赤い瞳がぱちり、と瞬いた。
 ガァ、ガァ、グワッ!と可愛らしい嘴で、フリルの手を軽く突く。
 アヒルさんが抗議するのも無理はない。幾ら景観が美しかろうと、此処は敵地ど真ん中なのである。
「えぇ、遊びに来たんじゃないから、出口の手がかりを探せって、四季折々のお花を楽しんだっていいじゃ」
 グワー!と一際大きな鳴き声が辺り一面に響きわたった。
 むぅ、と小さく唇を尖らせながら、フリルは改めて今立っている迷宮をぐるりと見回す。
 ―花を眺める為ではなく、観察する為に。
「そうですね、手がかりですか」
 聳え立つ高い生垣―、此れは特に問題ないだろう。何処も彼処も同じ。寧ろ此れは迷宮の壁の役割を果たしているのだろう。
 となれば、当然手がかりは一つに絞られる。
「うーん、やっぱりお花に何かあるんでしょうね」
 名前を知る赤や黄色のチューリップや黄色やオレンジの薔薇、ピンクのヒヤシンスやコスモスなど、他にも見た事の無い花が様々咲いている。
 季節性はまるで感じないが、眺める分には十分楽しい。
 立ち止まっていても仕方がない、とフリルは一歩迷宮の路を踏み締める。
 まるで造花なのではないかと思わせる程、何処も満開の花がフリルを迎えた。
 色彩が豊かな花々がフリルの目を楽しませているけれど、腕の中のアヒルさんは円らな瞳をフリルへと向ける。
 其の黒は、心配の彩を宿していて、小さく笑ってフリルはアヒルさんをそっと撫でる。
「大丈夫ですよ、アヒルさん。出口はきっとそのうち見つかります」
 ガァ、と鳴いたアヒルさんは―。
 ぐるぐると先程と同じように白い翼を回転させた。曰く、呑気にしている場合ではない、と言わんばかりに。
「ふえぇ、別にのんきに探してないで…」
 ぱちり。
 ぱちくり。
 思わずじっとアヒルさんを眺めて、周囲を見回す。当てもなく歩いて来たけれど、目の前に映る迷宮はやはり色彩豊かな花に溢れていて―。
「なんで、こんなに白いお花が少ないんでしょうか?」
 真実への一端に、触れる。
 此れまで目にしてきた花は、どれも豊かな色調を纏っていた。逆に、白い花は道中数えるほどしか見ていない。
 ならば―。
 きょろきょろと、フリルの視線が白い花を見つける為にせわしなく動く。

 迷宮を脱出する為の、希望の光が今小さく灯った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レモン・セノサキ
アドリブ他◎

見渡す限りの花の迷宮、おまけに規則性も無いと来た
「HMDアイバイザー」の生体反応を頼りに二人と合流
無論、マッピングも忘れない
一度通った道か否かすら分からないのでは、士気が下がるもんね

そう言えば、蒼さんが「花の何かに秘密が……」って言ってたな
マッピングの他にも後一手必要か
幽霊は居なさそうだ、強いて言えば
――枯れている小さな花※、くらいか?
銀塊から精製した銀の粉を触媒に、降霊術で花の精を具現化する
此処で生を終えたのなら、きっと古参の筈だ
眠っている所を起こして申し訳ない
道に迷ってしまったので案内をお願いしたい
……頼めるかな、可憐な花の妖精さん?

※枯れていた花はプリムラ、「運命を切り開く」



●時に導き
 くるりと周囲を見回せど、道に規則性は無く、閑散とした空気が漂うのみ。
 ちらりと視界の端に映った、レモン・セノサキ(金瞳の"偽"魔弾術士・f29870)の瞳と同じ色彩を持つ山吹の花が小さく揺れる。
 一見美しい此の迷宮の何処かをアリス一行の少年と青年は今も尚彷徨っているのだろう。
 新たに猟兵へと覚醒する可能性のある後輩を導かずして、何が猟兵か、―何が先輩か。
 軽い音を立てて、HMDアイバイザーを装着すれば、視界は大きく変わる。
 緑と明るい色彩が映っていた世界に、電子が交わる。
 ピコ、と軽い音を立てて、三つの生体反応が映し出される。―其の内の一つは、何処か彼のゴーストのようにも似ていて。
(ああ、この反応はマーダー・ラビットか)
 されど、其の反応は未だ遠く。
(まずは二人と合流しないとな)
 示された生体反応を頼りに、レモンは迷宮へ一歩踏み出す。勿論、マッピングは忘れない。
 何故なら、此の世界はいずれ消えてしまう儚き夢なのだから―。

『出口、何処にあるんだろう』
 きょろりと不安そうに瞳を揺らして、イクスがぽつりと言葉を零す。
 其の肩に、手を置こうとしたクローゼが何かに気付いたように周囲を警戒する。
『……クローゼ?』
 ぱたぱたと小さな足音が迫って―。
「あ、いた」
 此処に、銀の雨は降らないけれど―。二人の後輩と一人の能力者は、確かに、出会った。
「ああ、私は敵じゃない。しいて言うならキミたちを助けに来た先輩だよ」
 にこりと人懐こい笑みを浮かべてレモンは軽く仔細を説明する。共に、迷宮を出よう、とも。
 ぱぁ、とイクスの表情に笑顔が灯った。けれど、現状手がかりは見つからず。
(そういえば)
 此の場所へ導いた少女が、何か言っていたような、とレモンは思考の渦へと沈む。
 手がかりになるような物、花―?
 生体反応の数は変わりなし。他に増えたこの反応は、他の猟兵の物だろう。
 ゴーストの類は存在せず、此の場にそぐわぬ物と言えば、目立たぬように朽ちようとしている、枯れた花だろうか。
 何はともあれ、情報は欲しいと、朽ちた花の前にしゃがんでそっと銀の粉を添える。
 嘗ての知識を呼び起こしながら、花の精を降霊する。禁忌の魔導書に触れて得た、あの知識を。
 ふわり、と優しい風が翻って、小さな光がぽつりと生まれる。
 緩やかに動く花の精に、まずは謝罪を。そして、
「道に迷ってしまったので案内をお願いしたい。……頼めるかな、可憐な花の妖精さん?」
 其のレモンの言葉に同意するかのように、ふわふわと光は動く。
 ぽかんとする二人を見やって、レモンは立ち上がる。
「さあ、進もう。……キミたちを待ち受ける未来へ。―其の先へ」

 枯れた花の、プリムラの周りには、小さな青い若芽が大地より顔を出していた。
 ―さあ彼らの運命を切り開こうではないか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宙夢・拓未
イクスやクローゼと合流次第、【コミュ力】を発揮しながら【優しさ】を持って接しつつ、共に出口を目指そう
「俺は宙夢・拓未。助けに来たぜ、二人とも」
「疲れてるだろ? 飲むか?」(ペットボトル入りのジュースを勧める)

花の何かに秘密、か……思い当たるのとなると、やっぱ花言葉か?
で、白い花が少ない、と……

白い花でそれっぽい花言葉のやつ、何かあったかな
【世界知識】を総動員して思い出すぜ

確か……『デイジー』や『白のガーベラ』の花言葉が、『希望』だったはずだ

よし。『アンバーアイズ』を起動し【視力】を高めて、その二種の花を探すぜ
見つけたら、それらが咲いている方向に進んでみるとしようか
迷宮の出口は、きっとそこだ



●白を探し
 緑に囲まれた迷宮は、傍から見ればとても美しい。けれど、其れが延々と続くと為れば―。
『ここ、さっきも通った…?』
 変わり映えの無い緑の庭園。変化があるとすれば、其の足元に咲き誇る可憐な花々。種類も色も様々な其れを、一つ一つ覚える事は、難しい。
 故に、やがては己が進んできた道に疑念を感じる事も。おかしい事では無いのだろう。
 意気消沈するイクスに、何と声を掛けていいのか分からないクローゼは、彼に伸ばした手をそっと引き戻した。
 そんな二人に、一つの影が近付く。
「ああ、やっと会えた」
 黒のジャケットを翻し、人好きのする笑みを浮かべて宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)が手を振りながら現れる。
「俺は宙夢・拓未。助けに来たぜ、二人とも」
 にっかり笑って手を差し伸べる。突然の乱入に、警戒を露わにするクローゼだが、イクスがそれを押し留める。
『大丈夫だよ、クローゼ。この人が、僕たちを騙すメリットはないもの』
 だから、信じよう?そう言われてしまえば、クローゼは頷くしかない。そんな様子を見て、拓未が僅かに苦笑を浮かべる。
「疑いたくなる気持ちも分からなくはない、ただ、俺は純粋に二人の力になりたいだけなんだ」
 そうして、差し出したのは何の変哲も無い、ペットボトルに入ったジュース。勿論、封は切られていない。
「疲れてるだろ?飲むか?」
 ぱぁ、とイクスの顔が喜色に染まる。迷宮に迷って、ずっと歩いてきて、身体は確かに疲労を感じていたのだろう。
『…あ、イクス…!』
 止める間もなく、イクスがジュースを口へ含む。ふにゃりと浮かぶ笑顔を見て、クローゼも気が抜けたのか。大きく息を吐く。
 わちゃわちゃ騒ぐ二人を優しく見つめながら、拓未は改めて此の庭園迷宮について思考を巡らせる。
(花の何かに秘密、か……)
 関連しそうなものと言えば、花の種類に、色に―。
(……やっぱ花言葉か……。で、白い花が少ない、と……)
 花によっては、色によって更に花言葉が別れるものが存在する。
 此処まで極端に白い花が少ないのは、其れが関係しているのかもしれない。
 ならば、と、世界の根源たる知識を総動員して、白い花に関する花言葉を無数思い出す。
 道中見かけた花の名前を照らし合わせながら、拓未は少しずつ真相へと近付いていく。
(デイジーや白のガーベラの花言葉が”希望”だったはずだ…)
 花言葉には、様々な物がある。拓未が辿り着いた希望と言う一筋の光を示す物があれば、また逆も然り。
 ともあれ、今は此の希望の光を信じて進む以外ないだろう。
「さあて、二人とも、出口への手掛かりは得た。迷宮の出口に向かって進もうぜ」
 先程得た手掛かりに繋がる花を探して爛々と、拓未の琥珀色の瞳が淡く熱を持つ。
 こくり、と小さく頷いた二人を、淡く笑みを浮かべた拓未が先導する。

 希望の灯火は、淡く、されど強く。光を増して、今輝く―。

大成功 🔵​🔵​🔵​

唐草・魅華音
任務、ウサギ穴に残されたアリス達の救出。任務了解だよ。
無数の花が手がかり、ですか。四季折々の花が咲いているのなら四季の並びとか思いつきますが……どのみち、わたし自身の知識だとあまり見分けがつきませんね。
けれど、出るための特徴があるなら、そこを割り出せれば出るための可能性は見つけられるはず。

ドローンを飛ばして情報収集、得た情報の共通点と不自然な違いを分析させて迷宮の特徴を割り出します。
あとは、特徴から割り出せる脱出方法の可能性を導き出してトライ&エラーの繰り返しで突破を図ります。

アドリブ連携OK



●解へ至る
 果たして、此処は迷宮の何処なのか。出口は近いのか、其れとも進展は無いのか。
 けれど、其の答えを返してくれる者は何処にもいない。きっと、此の迷宮へ連れてきた、マーダー・ラビットでさえも。
 途方に暮れる彼らの前に、一陣の風が吹き抜ける。―否、其れは淡くも美しい紅梅を纏っていた。
「こちらにいらっしゃいましたか」
 春を思わせる色彩の髪がふわりと靡いて、重量に従ってゆっくりと落ちた。其の、可憐な容姿とは裏腹に唐草・魅華音(戦場の咲き響く華・f03360)は独り、小さく頷く。
「なるほど、これが…。ウサギ穴に残されたアリスたちの救出。任務了解です」
 其の言葉を上手く聞きとれなかったのか、イクスとクローゼが首を傾げる。突如、眼前に現れた魅華音の姿に、最早驚く事も無く。
 此処に至るまで、いろんな猟兵が道を示してくれた。ならば、もう驚く事もない。きっと、目の前の彼女は自分たちを導いてくれる、と。
 例え、其れが罠であろうとも、迷宮から抜け出さない事には何も始まらないのだ。
 そんな彼らの思惑とは別に、魅華音がきょろりと周囲を軽く見回す。
 相も変わらず、咲き誇る花は色彩豊かで美しいけれど、季節感も種類もばらけている。
 今まで通ってきた道にも花は咲いていたけれど、規則性などまるで無い。―とは言え。
(が……どのみち、わたし自身の知識だとあまり見分けがつきませんね)
 だが、ヒントは残されているはずなのだ。其れはこれまで進んできた道からも解る。
 ならばと魅華音は何処かウサギを思わせるような、白いドローンを周囲に展開する。迷宮攻略としては、些か反則感が否めないけれど、何よりも彼らには時間が無いのだ。
 ふぅわりと、ドローンが迷宮のあちこちへと散っていく。
『機械の、ウサギ?』
 其の様子をぼんやりと見つめていたクローゼに、魅華音は頷く。
「はい。ドローンでこの迷宮の情報を集めているんです。ちょっと、ズルしている感がしますけど」
 要は脱出できれば良い訳ですし、と淡く笑んで。
 ―やがて、戻ってきたドローンが得た情報にざっと目を通す。
(やっぱり、白い色の花が全体的に少ないですねー)
 とは言え、其れだけを信じるのも危険なのだろう。現に、ドローンから得た情報でも、白い花の咲く方へ向かったところ、無駄に遠回りをさせられた箇所があった。
「迷っている暇はなさそうですね」
 そうして選び取った道を三人は進んでいく。
 時に、行き止まりにぶつかり、似たような花ばかりが咲く路へ辿り着いて。
 けれど、魅華音は諦めない。一度に正解に辿り着けるとは思っていない。トライ&エラーを繰り返して、人は進んでいくのだから。

 そうして、迷宮を進んだ先。
 開けた空間へ出れば、其処にはぼんやりと空を見つめるマーダー・ラビットの姿があった。

 ―美しくも恐ろしい庭園迷宮。出口への路は、今拓かれた。

 庭園を抜けた今。狂気宿したウサギとの、楽しい邂逅が待ち受けている―。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『マーダー・ラビット』

POW   :    きす・おぶ・ざ・です
【なんとなく選んだ武器】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    ふぁんとむ・きらー
【糸や鋏、ナイフ等】による素早い一撃を放つ。また、【使わない武器を捨てる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    まさくーる・ぱーてぃ
自身の【殺戮への喜びによって瞳】が輝く間、【自身の全て】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠終夜・嵐吾です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂喜乱舞
 ぴこり、ぴこり。
 やる気なさげに身体を揺らしていたマーダー・ラビットが、出口に現れたアリスたちを見て、僅かに目を見張る。
 けれど、其れも一瞬。詰まらなさそうにしていた表情は一辺、喜色へと染まる。
「わあ、出てこれると思ってなかったですよ~」
 嬉しそうに、楽しそうに。時計ウサギはけらけら嗤う。
 手にした血塗られた鋏をカチャリと鳴らして。
 にこりと嗤って、紡がれた言葉は―。
「じゃあ、ご褒美タイムですね!」
 えへへ、と楽しそうにくるりと回って。ツギハギのウサギは、ただ嗤う。
「さあ、どっちから殺されたいですか~?」
 其れはもう、愉悦に富んだ笑顔を浮かべて。
 此の庭園を、赤に染め上げる為に―。

 各々が武器を構える。
 彷徨って出会えた、敵との邂逅である。
『僕たちも、戦います!』
 声を上げたのは、アリスの少年・イクス。その傍らでは、オウガブラッドの青年・クローゼも大きく頷いている。
 彼らも、彼らなりに思う所があるのだろう。
 二人の意見を汲むのか。
 猟兵たちの選択は果たして。

 戦いの火蓋は、今切って落とされた。
唐草・魅華音
選択肢が足りませんよ。あなたが返り討ちにあう、という選択が。
これから始まるのは、咲き誇る花を枯らすものに反逆する華たちの合唱。
標的、マーダーラビット。討伐開始するよ。

スピード勝負を仕掛けてこちらに注意を向けさせ、2人に想いを込めた一撃をぶつけてもらいます。
銃で弾幕を張りながら、2人に隙を作るのでその隙を突いて一撃を打ちこんでくださいとお願いしてから、UCを発動。
「合唱は人を指す言葉とは限りませんよ」
と言って武器を持ち替えた連携でこちらに注意を完全にひきつけ、完全に注意を引いた所で合図を送り、2人に攻撃してもらいます。
「限りません、と言いましたが別に否定したわけでもありませんよ」

アドリブ連携OK


レモン・セノサキ
へぇ……イイ事言うじゃないの、March Hare
確かに、頑張る子達にはご褒美が不可欠だ
側の二人にUCを発動
クローゼには人狼騎士
イクスには月の疾走者
戦い方は武器が教えてくれる
さぁ、今度はコッチが狩る側だ

[瞬間思考力]を駆使
偽の記憶から戦友たちの勇姿を汲み上げ二人の技として再現
敵の速度すら凌駕する[早業]のフットワークから繰出す三日月蹴り
魔氷を幻視するような[覇気]を纏い、足を竦ませ[時間稼ぎ]する強撃

自分は「ブルーコア」の[レーザー射撃]で牽制&援護
足りなければ「FORTE.50」をお見舞い

先刻の力は、君達の未来の可能性からの借り物みたいな物だよ
今は無理でも、堅実に経験を積めば届くかも……ねっ


フリル・インレアン
あ、アヒルさん出口みたいですよ。
そういえば、ここに迷い込んだアリスさん達とは出会えずじまいでしたね。
ふえ、この音は出口で待っているという猟書家さんとアリスさん達が戦っている音ですか。
急がないといけませんね。
出口へと急いでいたら、ついつい止まれなくなってしまい、しかも体勢を崩してマーダーラビットさんに激突して恋?物語が発動してしまいました。
ふええ、さっきは急な出来事でなんとなく武器を選んでいる時間がなかったとはいえ、そんな武器を選ばないでくださいよ。


宙夢・拓未
「イクス、今だ! ガラスのラビリンスを!」

奴と俺たちの間にガラスの壁ができれば
奴は30cm以内に俺たちを入れられず、攻撃できない
以上だ。【Q.E.D.】だな

あとは、イクスにラビリンスを解除してもらって
敵がユーベルコードを使えない180秒の間に、接近する

「クローゼ、俺の後に続いてくれ!」

声を掛けてから敵に向かって【ダッシュ】
『オブリビオン・キラー』で斬りつけて【部位破壊】。武器を持つ両腕を中心に攻撃していく
クローゼのオウガ・ゴーストも使ってもらうぜ

召喚したデジタル時計を確認しながら、二人がかりで連続攻撃を続け、可能な限り敵を弱らせる
残り時間が少なくなったら、クローゼを連れて一旦下がるぜ



 ふわりと、一際強い風が場を吹き抜ける。衝動に耐えきれず、幾らかの花が散っては戦場を彩った。
 場が場でなければ、其れは美しい光景として目に映っただろう。けれど、戦場と化した今、其れは何処か苛烈さを含んで。
 風に靡いた装いが優雅に翻る。魅華音が淡く、冷たく嗤う。
「選択肢が足りませんよ」
 こてんと小さく首を傾げ、表情を全て削ぎ落とし、声音高らかに、冷たく告げる。
「あなたが返り討ちにあう、という選択が」
 其の言葉に同意するように、レモンも不敵に笑う。
「へぇ……。イイ事言うじゃないの、Marth Hare」
 ご褒美が死たる概念とは、愉悦に富んでいるではないか。其れこそ、嘗ての見えぬ狂気を薄く思い出させるように。
「確かに、頑張る子達にはご褒美が不可欠だ」
 一人の闘いを知る”先輩”として、今は力無き者を護る”猟兵”として。レモンの内に宿る遠い昔に、本体であったあの人に刻まれた記憶を呼び起こす。
 今度は、何処か銀を思わせる涼やかな風が場に吹き荒れたかと思うと、イクスとクローゼの持つ武器に魔狼の来訪者の、月を駆ける来訪者の力を宿した装飾が生まれる。
『え、えっ』
『……!』
 突然の事に驚く二人に、ぱちりとウインク一つ。
「先輩からの餞別だよ。…戦い方は、武器が教えてくれる」
 二人の背後から、拓未がそっと肩を叩く。
 普段浮かぶ笑みは鳴りを潜めて。浮かぶ表情は真剣そのもの。柔らかな色を湛えていた瞳は、目の前の怨敵を貫くが如く鋭い。
「皆で一緒に、この迷宮を抜け出そうな」
 紡がれた言葉は力強く、二人の表情も自然と引締まる。
 滾る闘志に反応してか、身を走る電気が可視化してぱちりと小さく空気を弾けさせた。
 そんな猟兵を見ても、マーダー・ラビットは己が姿勢を崩さない。浮かぶ笑みは薄く、楽し気で。
「う~ん。……わかりました!これは、つまりアレですね!」
 くるり、くるりと血塗られた鋏を操って、血染めのウサギは無邪気に告げる。
「ここにいる人たちみ~んな、皆殺しですね~!」
 にこやかに嗤ったまま、手にした鋏をイクスへと投げ放つ。
 そんな不意の一撃を、魅華音が弾丸ひとつで弾き落とす。マーダー・ラビットへ向ける視線は、温度を宿さず。
「これから始まるのは、咲き誇る花を枯らすものに反逆する華たちの合唱―」
 其の言葉を合図に、それぞれが己が得意な武器を手に取り、或いは乗り込み。
「標的、マーダーラビット。……討伐開始するよ」
「あははは~、いいね、いいね~!」
 さあ、愉快なパーティの、戦いの、始まりだ。

 一方で、ぱたぱたと迷宮内を駆けるフリルは、聞こえてきた音に、思わず安堵の声を漏らした。
「あ、アヒルさん出口みたいですよ」
 迷い込んだアリスと合流を果たす事こそ叶わなかったが、其れも今だけ。きっと、あの音の先には、迷い込んだアリスたちがいるのだろう。
 ならば、と駆ける脚にも自然と力が籠る。
 迷宮を抜け出す力にこそなれなかったけれど、今度こそ力になれる。
「急がないといけませんね」
 胸元に抱いたアヒルさんも激励するかの様に、ぐわっ!と大きく声をあげた。
 そうして出口へひた走る。走って、走って―。
 時に、ご存じであろうけれど。―人は、急には止まれないのである。

 軽快な音を立て、魅華音がマーダー・ラビットの足元へと銃弾を撃ち込む。
 彼のウサギの動きを、意識を向ける為に、自身と同じ名を持つ銃器で弾幕を張る。
 軽やかなステップで舞うように銃弾を避けるマーダー・ラビット。
 けれど、弾幕とて無限ではない。手に伝わる衝撃が軽くなると、弾切れを起こしたのか弾幕は止まる。
 其の隙を見逃す相手ではない。にやりと笑って、魅華音に迫るけれど、其れは拓未の持つ小型のチェーンソー剣に阻まれる。
「ありがとうございます」
 がしゃん、と空になったマガジンを地に落とし、新しい物に交換しながら、魅華音は一歩後ろへ下がる。
 くるりと鋏を逆手に持ち、迫る拓未へと突き刺そうとする。
「おっと、鋏はそうやって使う物じゃないぜ!」
 咄嗟に武器を打ち払い、後方へと飛びのけば、僅かに聞こえる舌打ちの音。
 ふと、ひやりとした空気が足元に流れる。イクスとクローゼの脳裏に沸き上がるのは、遥か昔、戦いに明け暮れ世界を護った誰かの記憶。
 ぱきり、と銀の装飾を纏ったクローゼの刃が、マーダー・ラビットへ向けて振り下ろされる。
 寸での処で避けたけれど、足元は凍ったように動きを鈍らせた。
「ん~?」
 意味が分からず首を傾げたマーダー・ラビットに、素早い動きで近付き、イクスが三日月を思わせる軌道を描いた蹴りを浴びせる。
 思わず、両手を交差させて防御の姿勢を取るけれど、衝撃までは殺し切れず。
 ざ、と軽い土煙を立て、僅かに後ろに後退する。
 かくり、と膝を付くけれど、その際に拾った適当な大きさの石を、投げつける。
 けれど、其れはレモンが乗り込んだキャバリアのレーザーが打ち砕いた。だが、砕けた破片が、小さく雨の様に降り注ぎ、イクスの、クローゼの、拓未の身に小さな傷を作る。
「あ、あわ、あわわわわ」
 突如響いた声に、思わずマーダー・ラビットが意識を取られれば、眼前に迫る白と青の色彩。
 咄嗟に事に、身体は避けようとするけれど、意識は追い付かず。
 どん、と勢いよくぶつかったフリルが思わず尻餅を付けば、同じように勢いを殺し切れなかったマーダー・ラビットもまた、同じように尻餅をついていた。
 これが、平和な世界での出来事ならば、ひととせの恋が始まったかもしれないけれど、此処は戦場であるし、相手は猟書家。
 恋が始まるはずも無く。慌てて、フリルが立ち上がれば、アヒルさんから抗議の声が挙がった。
「わ、わざとじゃないですし、アヒルさんも怒らないでくださいよ」
 アヒルさんへ平謝りしながら、フリルが別のアヒルさんを手にする。
 その表情は何処か歴戦の戦士を思わせるかの様に鋭い。
「イクス、今だ! ガラスのラビリンスを!」
『は、はい!』
 拓未の声に、慌ててイクスが透明な迷宮を作り出す。気まぐれに、マーダー・ラビットが鋏を投擲するけれど、硬い音を立て、ガラスの壁に弾かれ落ちた。
 僅かに悔しそうな表情を浮かべたマーダー・ラビットの背後から、魅華音が銃器を手に、其の背に弾丸を放つ。
「合唱は人を指す言葉とは限りませんよ」
 ぱちり、と魅華音と拓未の視線が交差する。けれど其れも一瞬。
 銃弾が尽きた武器は、惜しむ事無く投げ捨て、魅華音は次の武器を手に、弾幕を張り続ける。
 振りかぶった刃が、害成そうものならば、キャバリアに搭乗したレモンのライフルが火を噴いた。
「それは、やらせませんよ!」
 一進一退の攻防。
 けれど、戦況が動くのもまた、一瞬だった。魅華音が頷いたのを見て、イクスが戦場に張った透明の迷宮を解除する。
 にやりとマーダー・ラビットが嗤うけれど、其の眼前には勢いを付けて迫った拓未の姿。
 オブリビオン殺しの異名を持つチェーンソー剣を振りかぶり、両の手を斬り付ければ、ぼたりと落ちる淦の雫と、錆び付いた二対の鋏。
「クローゼ!」
 もはや言葉は要らぬのか、頷き一つ返したクローゼが、踏鞴を踏むマーダー・ラビットへと肉迫する。
 内に宿るオウガの力を、己が代償と引き換えに呼び起こして。無口な彼だけれど、内心はこの状況に怒りを覚えていたのか。
 重い一撃が、マーダー・ラビットを打ち据えた。
 マーダー・ラビットに刻まれた傷は、浅くは無く。小さくむせ込み、口から赤い花を咲かせれば。
 その隙を逃さず、猟兵たちの一撃がそれぞれに放たれた。
 腹部を抉る様に、チェーンソー剣が振り下ろされ、最後のあがきと言わんばかりに手にした鋏を拓未へ振り下ろそうとすれば、レモンの放つレーザーが其の身を焼き焦がし。
 拷問具たるアヒルさんが、マーダー・ラビットの動きを封じれば、トドメ、と言わんばかりに、魅華音の放った銃弾が、其の頭を貫いて。
 悔し気な視線と共に、マーダー・ラビットは大地に淦色を落として、ぶわり、と消えた。

『…はぁああああ』
 未だ収まらぬ緊張の中、真っ先にへたり込んだのはイクス。隣では、同じように、クローゼが地面へと倒れ込んで。
 肩で大きく息をする二人を、拓未が労わる様に小さく笑って手を差し出す。
「二人とも、お疲れさん」
 捨てさった銃火器を回収しながら、魅華音も小さく頷き、淡く可憐な笑みを返す。
「お疲れ様でした。…これで、お二人ともこの迷宮から出られますね」
 其の言葉に、はっとしたようにイクスとクローゼは顔を見合わせる。
 元凶たるマーダー・ラビットが倒れた今、もう骸の海の藻屑にならなくていいのだ。
「一時はどうなるかと思いましたけれど、お二人が無事でよかったです」
 にこりと花が咲く様に笑みを浮かべてフリルが告げれば、同意するように彼女の手に抱かれたアヒルさんが鳴き声をひとつ。
 キャバリアを降りたレモンが、安堵の表情を浮かべる二人の前に立つ。
「二人が無事で、本当に良かったよ」
『あの、先程の、あれは…?』
 困惑したように、クローゼがレモンへと問いかける。
 其れは、無限に広がる未来の、可能性の一つ。此処ではない何処か、いつかの物語。
 けれど、本来の其れを知るのは、本物だった彼女であって。
 淡く笑って、尚も旅を続けるであろう二人へ。”先輩”から”後輩”へ。一つの言葉を贈る。
「あれは、君たちの未来の可能性からの借り物みたいなものだよ」
 
 此れからどうなるのかは、彼ら次第。
 きっと、これからも扉を探す二人の旅は続くのだろう。
 けれど、今は一時の安らぎを―。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年04月18日
宿敵 『マーダー・ラビット』 を撃破!


挿絵イラスト