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乗り越えるべきもの

#ダークセイヴァー #殺戮者の紋章 #闇の救済者

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#闇の救済者


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●訣別の灯
 煌々と燃え上がる炎は、こと常闇の世界においてはよく目立つ。
 何十、何百もの人々が群れを成し、火を掲げ声をあげる。
 ――嗚呼、なんとも勇ましい。
 バルコニーからその様を眺めていたその男は、眩しそうに目を細めた。
「どうされますか、卿」
 背後に控えた兵が問い、男は考えるように豊かな白髭を撫ぜた。
 とは言っても、形だけだ。答えなどとうに出ている。
「チャリオット隊を。迎え撃って差し上げたまえ」
「御意」
 兵にとっても、予想通りの言であったのだろう。
 驚きも聞き返すもなく、淀みない動きで踵を返し、その場を後にする。
 男もまた、それに続こうとし……その前に、もう一度だけ、その『火』を見た。
 力強い光だ。
 今を懸命に生き、未来をつかみ取ろうとする者たちの、命の輝きだ。
 それは男にとって、本当に眩しく、尊いものであった。
 故にこそ。
「彼らを絶たねばならぬことは心苦しいが」
 故にこそ。
 死により苦しみから解き放たれた彼らの魂は、オブリビオンとなり、ともに未来を生きることができよう。

 ジョナサン・ランバート・オルソレグ卿。
 それがその男の名であり、この地を治める者の名であり……眼下の火が今まさに飲み込まんと望む者の名であった。

●たとえ険しい道でも
 一つの大きな戦いが終わったとはいえ、猟兵の関わる全ての世界にまで目を向けると、やるべきことは山積している。
「激戦の後ですし、今はゆっくりお休みください……と言えたら良かったんですがね」
 そうも言っていられないのが猟兵のつらい所と、シャルロット・クリスティア(弾痕・f00330)は苦笑する。
 が、その笑みはすぐに引っ込んで。
「もちろん任務に喜撰はありませんが……それでも、この一戦は非常に大きな意味を孕むものとなります」
 シャルの後ろ、グリモアが映し出すのは、ダークセイヴァーの辺境の景色。
 小高い丘の上に立つ領主館を見上げるように、多くの人々が武器や松明を手に集っているのが見て取れる。
「皆さんもご存じの通り、ダークセイヴァーでは『闇の救済者』の反抗作戦が今までになく活発化しています」
 一つ一つの小さな集団が少しずつ力を蓄え、互いに手を取り合い、今や一つが千人に迫る大軍勢となった。
 人間だけではない、ダンピールや人狼といった異種族たちとの混成軍。一人一人の力こそオブリビオンには遠く及ばないにしても、その数と結束力は、最早ただ蹂躙される側ではない。
 被害を無視すれば――もちろん、この時点で介入する理由としては十分であろうが――この戦で勝ちを拾うことも夢幻ではないというほどに。
 しかし。
「『第五の貴族』……彼らがこの状況を見逃すはずがありません。すでに何度も確認されている通り、この戦いにもおそらく刺客を放ってくるでしょう」
 残念ながら、詳細までは予知しきれなかったというが、少なくともこの戦いの間に接触することはないらしい。
 いずれにせよ、領主との闘いを乗り越えられたとしても、その刺客の攻撃を許せば、その勝利はいとも簡単にひっくり返ってしまう。
「ですので、皆さんにはそちらの対処を。……ですが」
 ですが?
 問えば、シャルの声に力が籠る。
「まずは、この領主を討ち取り、かの地を人の手に取り戻す。それが成されねば何も始まりません。
 共に戦えないのが残念な限りですが……願わくば私の分まで、彼らの力になっていただけたらと」
 どうか、お願いします。
 シャルの言葉とともに、今まさに戦端が開かれようとしているダークセイヴァーへの道が開く。


ふねこ
 おひさまぱっぱか……とは無縁の世界。
 どうも、お久しぶりのふねこです。
 皆様戦争お疲れさまでした。
 ひと段落?ついたところでダークセイヴァーのご案内となります。
 例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
 以下、補足情報になります。

 闇の救済者の軍勢と共闘し、領主の館に攻め入ってもらいます。
 第一章では、館に至る丘でチャリオット部隊と正面から打ち合う形になります。
 闇の救済者軍は騎兵こそいませんが、黒騎士を中心とした重装歩兵、人狼などの身軽なものを中心とした軽装部隊、弓兵部隊と一通りの戦力はそろっています。
 猟兵の力は知れ渡っており、希望するならば彼らは喜んで指揮下に入るでしょう。
 もちろん単騎無双しても全然かまいません。

 第二章では館の中に突入し領主とのボス戦、三章では勝利に沸く闇の救済者から離れ、第五の貴族の刺客との戦闘……という流れとなるでしょう。

 各章とも、初めに断章を入れたのちに募集開始となります。
 また、私事ですが少々久しぶりのシナリオとなりますので、無理のないペースでの執筆で行く予定です。
 何度も再送をお願いすることは極力無いようにいたしますが、いくらか不採用が出てしまう可能性は十分あり得ますので予めご了承くださいませ。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『死地を駆け抜けるチャリオット』

POW   :    駆け抜け、弾き、轢き倒す戦車
単純で重い【チャリオットによる突撃】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    馭者による巧みな鞭
【絡めとる鞭】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    全力による特攻
自身が操縦する【ゾンビホース2頭】の【身体を鞭で強く打ちスピード】と【突撃による破壊力】を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 領主の館より出陣する、おびただしい数の黒い影。
 地響きがここまで聞こえてくる。
 ただ声もなく、高揚もなく、ただ無機質に蹂躙するための『力』が、堰を切って溢れ出す。
 今までであったならば、ただその力に屈し、ひき潰されるだけであったのだろう。
 だが、今は違う。
 押し寄せる死を撥ね退ける為の力は、ここに在るのだから。

 さぁ征こうと、誰かが言った。
 応と続く声は、まるで波のように広がっていき、やがて一つの和音となる。
 それは、迫る地響きをかき消さんばかりの波となって、戦場を包み込んだ。
荒谷・ひかる
すごい数の敵ですね……
こちらの数も相応に揃ってはいますが、まともに正面から激突したら消耗は免れません。
ここはまず、敵陣を打ち崩すところから始めましょうか。

部隊一つの先鋒として先頭に立ち【宇宙の精霊さん】発動
分厚い雲の向こう側、空の彼方より宇宙の精霊さん(巨大宇宙怪獣)を召喚
105秒間の制限時間いっぱい、突撃してくるチャリオット軍団を蹂躙してもらいます
SSWの宇宙船すら一飲みにする巨体で暴れ回り、時にはチャリオット諸共敵を喰らう
そうして滅茶苦茶になった敵陣を、味方に叩いてもらいます(掃討戦ともいう)

――さあ、ご飯の時間ですよ。宇宙の精霊さん。
あ、皆さん今は巻き込まれないよう下がってくださいね。


リーヴァルディ・カーライル
…まさか彼らの力がここまで大きな物になるなんて予想外だったわ

…闇の救済者、彼らこそ闇に覆われた世界を照らす希望なのかもしれない

…だからこそ、こんな初戦で誰一人として失う訳にはいかない

…必ず、成し遂げてみせる。彼らと共に、この世界の救済を…

UCを発動し"流砂の精霊結晶"に吸血鬼化した血の魔力を溜め、
装甲5倍、移動力を半減した流砂の巨人を召喚して武器改造を施す

…敵の突進は私が受け止める。貴方達は合図をしたら攻撃に回って

…来たれ大地の化身、流砂の精霊よ。我が敵を阻む城壁となれ

巨人を長大な砂の障壁に変化させて敵の突撃を流砂のオーラで防御し、
敵軍を砂で固めて捕縛して救済者達に合図を送り集団戦術で敵を倒す


グレートスカル・キングヘッド
ギャハハハハ!騎兵がいない?じゃあグレートな騎兵(キャバリア)は如何?
傭兵としてお代は安くしておくぜ!て、ことでこの地を取り戻すため悪魔との契約してみるかい?

共闘?近くのやつは巻き込まねえ自信がねえからよぉ!後方からの援護なら好きにしな!このグレートなボディ…矢や鉄砲で傷つくほど軟じゃねえからよ


ネビロ・サーベラスと合体、そいじゃあ暴れさせてもらおうか!
サーベラスブレイドで近くの敵は『薙ぎ払い』、『吹き飛ばし』
遠くのは俺様の目から放つ『レーザー射撃』で

ちっ、雑魚の癖にうじゃうじゃ邪魔だな…
それならサーベラスブラスター、ギャハハハ!死にぞこない共を地獄の業火の中にご招待ってな!【範囲攻撃】



 ――まさか、彼らの力がこれほどまでに大きくなるとは。
 空気を揺るがす雄たけびを背に受けながら、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は内心で独り言ちる。
 長らく吸血鬼を狩ってきた彼女にとって、その光景は夢にまで見たものか、あるいは夢にも思わなかったことか。
 いずれにせよ、彼らの意思、生きようとする力こそが、この常闇の世界を照らす光となりえるのだろうと、彼女は思う。
 そう、今まさにそれに足る光となったのだ。だからこれは、始まりに過ぎない。
 だからこそ。
「こんな初戦で、誰一人として失う訳にはいかない……!」
 掌中に納まった、トパーズを思わせるシェリー色の結晶体。
 強く強く、血が滲むほどに握り締めれば、それはすぐに魔力として溶け合って。

 ――限定開放。血の契約に従い、始原の姿を此処に顕現せよ。

 地響き。
 戦車の進軍とはまた違う、大地を揺るがす振動の中心に結晶を放れば、割れ隆起した土砂が巨人の姿を成す。
 戦車の突撃を阻む、巨大な砂の防壁だ。
 ……戦車の真髄は、その重装甲と速力、そして数に物を言わせた突撃戦術にある。
 それが最大に発揮されるのは初手、軍勢と軍勢の最初のぶつかり合いだ。
 それさえ凌げば十分に勝機がある……言い換えれば、最も被害を被る危険性が高いのがそれだということでもある。
 故に、凌ぐ。全力で以て。
「……っ……!」
 当然、向こうも出せる限りの戦力を投入していることは間違いあるまい。
 それの最大の突撃を正面から受け止めることは、いくら尋常の生命の埒外と言っても猟兵一人の力には荷が重い。
 ミシリ、砂岩に亀裂が入り、形が崩れ、まとわりつく砂を押しのけてさらに先へ進まんと軍馬が嘶く。
 抜かれるのは時間の問題だった。
 即ち、その時間までに次の手が打てれば問題ないわけで、事実それは解決が容易であった。
「……来て、宇宙の精霊さん!」
 幼さを残した、それでいて凛とした声が響く。
 戦陣に立った、おおよそ最前線には似つかわしくない体格の、銀髪の有角種の少女……荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)が声を張り上げ、見上げた夜空の先。
 昏い夜空に、蛍光色の毒腺を映し出したそれ。
 船すら一飲みにせんと大口を開けた巨大なワームが戦場のど真ん中に落着する。
 哀れ、数騎は潰されたか。
 ゆらり、首をもたげるワームの顔には表情というものは窺えない。
 それも、無視するという選択肢が取れれば、戦車にとっては一番良かったのであろう。
 突撃の速度に任せて、後ろに置き去りにすることができたならば。
 だが、それも砂の壁に阻まれ叶わぬ話。
 外宇宙の産物たるこの怪物がこの地に適応しうる105秒間。彼らに逃れる術はない。
 名状しがたい雄叫びをあげ、大口を叩きつける大蛇竜。ある者は胃の中へ、またある者はその身の錆へ。
 これが真の蹂躙だと言わんばかりに荒れ狂う。
 ……その様を、遠目に眺める巨体があった。
「……カカッ、悪魔だけじゃなく化け物とも契約すっかい」
 巨体の髑髏頭がカチカチと歯を鳴らして嗤う。
 悪魔、化け物、大いに結構。
 悪魔の契約、あくまでも契約である。
 対価を払えば働きで返す。正当な取引だ。
 上から目線で一方的に施しや試練を放り込んでくる神やら天使やらなどより、よっぽど信頼できるというものではないか。
 そうだろう?上位者気取りの貴族ども。
 巨体の――グレートスカル・キングヘッド(地獄の告死骨烏・f33125)の笑みが深さを増す。
 その虚ろな双眸と口内の奥に、煌々と燃え盛る地獄の火を湛えて。
 騎兵がいない?ならばこちらに。
 この最高にイカした、文字通りのグレートな騎兵(Cavalier)を提供して差し上げましょう。
「そいじゃあ……暴れさせてもらおうか!」
 キャバリア、ネビロ・サーベラス出陣。
 髑髏面の黒き魔人が、身の丈相応の巨大剣を手に突入する。
 化け物と入れ替わりの悪魔のエントリー、すでに崩れかけていた敵の最前衛が、さらに横合いからの一撃で薙ぎ払われる。
 敵も敵で、そうそう何度も好きにさせるつもりはなし。
 相手は単騎突出。まずは包囲からの各個撃破とでも思うたか。
 だが、この単騎突出こそが、このグレートな騎兵の真骨頂。
 後方からの火力投射でもそうそう崩れない重装甲に、味方をも巻き込みかねないような豪快な暴れぶり。
 そう、ただの突出ではない。これは『単騎無双』、彼が最も得手とする戦い方なのである。
 嗚呼、だが蹴散らすにも少々数は多いか。
 それならば。
 悪魔の胸部パネルが熱を持つ。赤熱化したそれは遠目からもよく見え、奥に覗く砲口が危険な輝きを湛える。
 ――さぁ、死にぞこないの尖兵共。地獄の火中へご招待だ。
「サーベラス……ッ!ブラスタァァァァァァァッ!」
 轟。
 吐き出されるは、死人を焼き払う地獄の業火。
 それは瞬く間に一帯を火の海へと変え、次々と死者の軍勢を飲み込んでいく。
「ギャハハハハ!」
 過去の遺物(オブリビオン)を飲み込む獄炎の中心で、悪魔が嗤う。
 領主よ、貴様も見ているのだろう。
 この火は今に、貴様の身をも飲み込むぞ、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春乃・結希
戦車の移動速度と、それを利用した突撃力
それに何より、数の多さ…
救済者の人達が、以前より格段に強くなったのは間違いないけれど
まともにぶつかれば、被害も大きくなってしまうかもしれない
…なら、先手を取って戦力を削る

後衛、弓を使う人達へ合流
前衛の頭上を超える、矢の雨を降らせて貰う
自身も自傷により傷を作り【激痛耐性】、UC発動
移動力の高い相手だから、正確に狙うよりも
数を撃ち、面で攻撃する
遠距離なら敵の攻撃も届かず、弓に集中出来るはず

無理に前に出る必要は無いです
もう、ギリギリで闇に抗ってた時とは違う
周りには共に戦うヒト達がこんなに沢山居るから
だから、自分の役割を果たせば良いんです
…勝てるよ。絶対。


オリヴィア・ローゼンタール
ぅおおおおおおおおおッ!!

黄金の獅子を駆り(騎乗)、雄叫び(大声)を上げ、
闇の救済者を轢き潰しにかかるチャリオットへ横合いから【騎乗突撃】
獅子の爪牙を以って馬のはらわたを引き裂き喉を食い破り、
【怪力】を以って聖槍を【なぎ払い】、御者の首を刎ねる

我ら猟兵! 邪悪な圧制者を狩る者!
闇の救済者たちよ! 我に続け!!(鼓舞)

弓兵隊の一斉射
闇の救済者たちと共に吶喊し、槍を振るい【衝撃波】を起こして戦車ごと【吹き飛ばす】

特攻で無理矢理突破してくるなら……
目の前だけに気を取られ過ぎたな、雑兵どもが

上空に待機させていた【神聖竜王】
破壊のブレス(全力魔法)で圧殺する


セルマ・エンフィールド
この世界全てを解放する日はまだ遠いですが、これは紛れもなく吸血鬼より解放され、自由になるための戦い。
私も彼らも、この程度では止まりません。

私が足を止めますので、止まった後の対処をお願いします。言うまでもないかもしれませんが敵は不死者、首を落としてもまだ油断はされないように。

闇の救済者たちの先頭に立ち、チャリオット隊に対して【ヘイルバレッジ】を。
ゾンビホースの足を潰すか凍結させるかすれば物理的に走ることはできないでしょう、そして足を止めてしまえば勢いの付いたチャリオットにゾンビホースは巻き込まれる。
チャリオットが止まったところを闇の救済者たちに攻撃してもらい、自分はその『援護射撃』を。



 猟兵の先制攻撃により大きくその数を削り落とされた敵軍は、しかし後手の対応は早かった。
 各個撃破を回避すべく、散り散りになった戦車たちが、瞬く間に小隊規模で再編されていく。
 そこに個々の意思は窺えない。
 まるで、大きな何らかの意思に統率された駒のようにも見え、事実そうであるのかもしれなかった。
 これが、吸血鬼……あるいはそれに与するオブリビオンの力というものなのだろう。
 その様は、かつて受け入れるしかなかった人類の未来の姿のようにも見え……この戦いは、そのような未来から人類が解放されるためのものに違いない。
(この世界全てを解放する日はまだ遠いですが……)
 それでも紛れもなく、それに続く大切な一歩。
 決して立ち止まるわけにはいかない。ここに集った皆、そして、その先頭に立つセルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)もまた、同じ想いを胸に、短銃を抜く。
 削ったとはいえ、敵戦力はいまだ健在。
 相手は不死者。首を落としてもその気になれば動く輩もいるかもしれぬ。
「私が足を止めます」
 さすがに総ては無理だろうが、最前列だけであれば。
 次の瞬間には、両の手に携えた愛銃から、途切れることなき銃声が鳴り響く。
 撃ち放たれたのは、絶対零度の氷の弾丸。
 幾重にも仕込んだ短銃を次から次へと切り替えて撃ち放たれ続けるそれは、さながら吹雪のようで、しかしそれでいて正確に、戦車を曳くゾンビホースの足を抜く。
 出血はなく、代わりに着弾点から凍り付く弾痕が死馬の進撃を止め、感性で進み続ける戦車が哀れな馬を轢き潰す。
「今です!」
 大軍勢では当然のこと、数を減じていたとしてもその突進力はまともにぶつかり合っては脅威となる。
 敵の攻め手が鈍ったこの瞬間、闇の救済者が先手を取るなら今をおいてほかにない。
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
 雄叫びが上がる。
 セルマの後ろ、闇の救済者の軍勢の最前列にいた重装歩兵部隊が、槍や剣、斧、それぞれの得物を手に、進軍を開始する。
 そしてさらにその後方には。
「皆さん、構えて!」
 弓兵隊が一斉に矢を番え、その照準を夜空へと向ける。
 その中心で、春乃・結希(withと歩む旅人・f24164)もまた、おのれの血より生じた炎の杭を同様に、射出体勢に入っていた。
 狙うは敵陣、味方前衛の頭上を越えた、その先へ。
 火矢の雨の制圧射撃。
 無理に狙う必要はない。ただ、奥へと射ればいい。
 敵の侵攻を恐れる必要はない。共に戦う仲間が守ってくれる。
 だから今は、射ればいい。
 ただそれだけの事。ただ、己の役割を果たすだけ。
 今はもう、それだけでは足りなかった、あのギリギリの頃とは違う。
 共に戦う者たちがこんなにもいる。
 おのれの役割を果たすことができれば、勝てる。
 その域まで来ているのだと。
 だから……。
「……勝てるよ。絶対」
 結希の決して大きくはない、それでも確かな勝利宣言と共に、一斉に火矢が放たれる。
 重装兵たちの頭上を越えた火が、足を止めた最前線を強引に踏み越えようとしていたチャリオットに雨となって降り注ぐ。
 ……いや、火矢どころの話ではない。
 それに加えて、夜天に翼を広げた竜。
 戦場を見下ろすようにそこにいた竜が、咆哮と共に破壊の吐息を吹き落とす。
「我ら猟兵!邪悪な圧制者を狩る者!」
 その竜を使役する断罪の聖女――オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、黄金の獅子に跨り、高らかに宣言する。
 不浄共、心せよ。
 断罪の火は今ここに放たれた。
 火矢に慄く御者の首を横合いから刎ね、闇の救済者に向き直る。
「闇の救済者たちよ!我等に続け!!」
 その声に応えぬものなど、この場にいる筈もなかった。
 勝利は我らに有り。誰もが確信していた。
 圧政からの解放を。
 人に自由を。
 一つ一つは小さな灯、されどここに集った千の灯が今、一つの大きなうねりとなって、過去を打ち払わんと進撃する――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

詩乃守・セツア
そりゃ可能な限り早期に潰しにかかるのは目に見えてるわけだけど
蹂躙の仕方が甘いね

――目録開帳。そちらから突っ込んできてくれるならこれ以上楽なこともなし
我が暴食暴飲の刃、数にしておおよそ730振り
その刃の群れをゾンビホースの胴体から下を全て持っていくつもりで足を刈るように叩き込む
突進で速度がついてるせいでいきなり足下から崩されたら、どうなるか
転倒しようもんならろくに整備もされてない地面でヤスリ掛けってところだろうね
ひたすら食い足りないと暴れる刃を敵に打ち込み、僕自身は巻き込み事故に遭わないように注意して立ち回るだけだよ

では、皇帝すら恐れる卑小な蟲が引き起こす大災害。その身で味わうといい


肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

ダークセイヴァーの人々……
僕はまだ、この人たちの前で、当たり前みたいに振る舞うことは出来ない
だから一人で行くよ
……あ、いや、猟兵仲間がいれば、もちろん協力するよ
私は弱いから、ね

敵に対しては、黒剣の形態変化で槍か斧に得物を変えて
光熱線を放つ焼却と合わせて範囲攻撃で攻める
あいにくと向かってくる相手を上手に回避したりするほど器用じゃないから、UCで両爪を突き刺して全力で止めるしかないな


カイム・クローバー
熱烈な歓迎だ。声も発さないボロキレを纏った骸骨と、イカれた車輪の音――今日もこのクソッタレな世界は絶好調なようだ。(肩竦め)

少し派手に暴れるつもりだから、部隊は必要ない。俺から言えるのは一つだけ。お前ら、一人も死ぬなよ?生きてまた会おうぜ。
二丁銃を構えて【クイックドロウ】。狙いは荷台の骸骨。つまり操縦者。撃ち落としてチャリオットを【盗む】。
ハッ!コイツはご機嫌だ!暴れ馬ってのもたまには悪くねぇな!
【運転】で操作しながら敵陣を駆け回って、混乱を作る。UCで弾幕を撒き散らしながら、最後は適当なチャリオットに激突させて、脱出するか。

あー…乗り心地はそんな良いモンじゃねぇな。デートには向かなさそうだ。



 闇の救済者の本隊がぶつかり合う主戦場から、少し離れて。
 猟兵の力を加えた闇の救済者たちが敵の主力を押し込みつつあった、その奥では、残った数少ないチャリオットが部隊の再編を急いでいる真っ最中であった。
「可能な限り早期に潰しにかかるのは、目に見えていたわけだけど」
 だが甘い。
 その様を見て、詩乃守・セツア(魔剣蒐集家・f27142)は呟く。
 なまじ知恵が働く分、変わりゆく戦況に対応しようと動きが変わる。
 その結果が、この後手後手だ。最初から全戦力で押し潰しにかかれば、勝てはせずとも被害を強いることは出来ただろうに。
「それじゃあ、そろそろこっちも動くか」
「……でもいいのかい?向こうで一緒にいなくて」
 その後ろで、男女の声が一つずつ。
 女――肆陸・ミサキ(独りの・f00415)の問いに、男――カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は「いいんだ」と軽く肩を竦めてみせて。
「少し派手に暴れるつもりだからな」
「そう」
 それならそれでいい、と、ミサキもそれ以上追及することはなく。
 ――死ぬなよ。生きてまた会おう。
 部隊から離れる時に、闇の救済者へと告げたカイムの言葉を、改めて交し合えば、あとは仕掛けるだけ。
 さぁ、部隊の再編に忙しかったチャリオット達も、横合いからの侵入者に気づけば、即座に転回し迎撃態勢にと移り始める。
「熱烈な歓迎だ。今日もこのクソッタレな世界は絶好調ってか!」
「では、皇帝すら恐れる卑小な蟲が引き起こす大災害。その身で味わうといい」
 既に大勢をズタズタにされ、その上主力の後方に控えていた連中とは言え、それでも『部隊』として成立する程度の規模は残っている。
 それに応じるは、『収納庫』たるセツアの権能。
 ――目録、開帳。
 疑似再現開始。出でよ、暴食の魔剣たち。
 記された『記録』から生み出された魔剣、言ってしまえばその複製、故に量産すら可能なそれは、その数にして七百を超える。
「“喰い尽くせ”」
 号令一声。
 待ってましたと言わんばかりに飛び掛かる無数の刃。
 剣というものに表情はないが、それでもなお嬉々とした感情が透けて見えるかのような蹂躙は、稲を荒らす飛蝗にも似る。
 そして食らうならば、やはり肉。
 戦車を曳く死馬に狙いを定めた刃が、次々と胴に突き刺さり、あるいはその脚を断っていく。
 馬がいなければ戦車は曳けぬ。
 一度速度の乗った重戦車は、慣性はそのままにコントロールを失い、不整地の上で暴れ回る。
 そうすれば、上に乗る馭者とて無事では済むまい。
 振り落とされ、不運なものはそのまま後続の戦車に轢かれる者すらいる始末だ。
 ある種の滑稽さすら感じるその様に、カイムはひゅうと口笛一つ。
「おっと、少しばかり残しておいてくれよ」
 その混乱の中を軽い身のこなしで跳び回りながら、カイムが狙い定めたのは、運よく刃の狙いから逃れた無事の戦車。
 ちょっと借りるぜ、とお代がわりに銃弾を一発、馭者の眉間にくれてやる。
「ハッ!コイツはご機嫌だ!暴れ馬ってのもたまには悪くねぇな!」
 よろけた馭者を蹴り落して手綱を握れば、馬も上の者が見知らぬ誰かに挿げ変わったのに気づいたのだろう。
 途端に平静を崩し、右へ左へと不規則に暴れ始める。
 統率が求められる集団戦、それも劣勢の真っ最中に自陣の中心で暴れ馬。
 それがどれほど致命的かは、わざわざ言うまでもないだろう。
 片手に手綱、もう片手に愛銃を握りしめ、弾と戦車でかき回す。
 コントロールはする必要もない。落ちないようにさえすれば、あとは勝手に馬の方が暴れてくれる。
 デートに不向きな乗り心地も、この回限りなら我慢も利こう。
 あとは暴れて、ぶつけて、乗り捨てればそれで終わりというところだ。
 猟兵二人のド派手な蹂躙劇に、遠くに聞こえる闇の救済者の雄叫びが重なる。
 眩しそうに、ミサキの目が幾分細まった。
「(……強いな、皆)」
 それは、体か、心か、あるいは両方か。
 自分なんかが隣に立つには不相応なほどに、強いと思う。
 己は弱い。
 彼らと共に、当たり前のように足並みをそろえるには、まだ足りない。少なくとも、自分はそう思っている。
 ……暴れるから、暴れられる力があるから離れているわけではない。
 離れているから、暴れるしかない。
 とはいえ、やることは一緒か。
 馬を失い、慣性のままに突っ込んでくる戦車を、異形と化した両腕で強引に受け止める。
 ぐ、と力を込めて、投げ出されたらしい手近な馭者に叩きつければ、ぐしゃりと肉の潰れる感触が腕に伝わってくる。
 今はただ、戦い続けるだけ。この世界の未来のために、己の身がいくら傷つこうとも。

 領主への道が、今開かれようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『善人ジョナサン・ランバート・オルソレグ』

POW   :    これでも昔はやんちゃをしていてね。
【拳闘を主とした総合格闘技】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    前途ある君達を断ちたくはないのだよ。
【杖に仕込まれた剣】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    君もまた、救われるべき未来なのだ。
自身が【哀れみ】を感じると、レベル×1体の【自身に殺害された者達】が召喚される。自身に殺害された者達は哀れみを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠バオ・バーンソリッドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 闇の救済者の軍勢が、領主館の門をくぐり、敷地内へと雪崩れ込む。
 主力の戦車隊を失い――よしんば残っていたとしても、この狭い敷地内では実力を半分も発揮できないであろうが――中に残った護衛の兵だけとなった領主の軍勢は、最早猟兵が手を下すまでもなく、士気も兵力も万全の闇の救済者によって打ち払われることになるだろう。
 あちこちから剣戟の音が響く領主館を、猟兵が進む。
 横槍を心配する必要はない。
 今となれば、それほどまでに頼れる仲間となった闇の救済者に後を任せ、主の許へと突き進む。
 そして、上階。
 領主との謁見に使われるであろう大部屋の最奥に、その男は立っていた。
「ようこそ、お客人。歓迎しよう」
 年齢を感じさせる、顔に深く刻まれた皴と豊かな白髭。
 それに反し、しゃっきりと伸びた背筋と身にまとう覇気は、加齢による衰えなど微塵も感じさせず、手にした杖などなくとも動くには容易であろう。
 一斉に武器を構える猟兵に動じることもなく、男は落ち着いた所作で言葉を紡ぐ。
「見事なものだ。君達の助けがあったとはいえ、こうまで容易にこの館を攻め落とすとは。私の思った以上に、彼等は力強く育っていたんだね」
 男は瞑目する。
 階下の戦闘音は、この場にも届いている。今を生きようとする者が奏でるその音に、耳を傾けているというのだろうか。
「不思議なものだ……彼等と共に生きることはもはや叶わぬのはまことに残念だが、それに劣らぬほどに、私の予想をはるかに超える力強さが喜ばしく感じられる」
 彼――ジョナサン・ランバート・オルソレグという男は、かつて長い闘病の末に命を落としたという。
 強き者は、死後オブリビオンとしてよみがえり苦しみから解放される。
 そう信じて疑わぬ彼は、あくまで彼なりの善意として、『生きる希望を持つことができる程度の』善政を敷き、その裏で素質ある命を葬ってきた。
 だからこそ、その言葉に嘘はない。
「良いだろう、君達があくまで人の生の苦しみに負けぬと、この選択を後悔せぬと言うならば、このオルソレグの首を餞別に持っていきたまえ。ただし――」
 閉じられていたオルソレグ卿の目が、カッと見開かれた。
「我に力ありと証明することだ。力ずくで私の首を獲れぬようでは、後に来たる災厄に抗うことなどできはせぬよ」
 ――さぁ、見せてくれたまえ、君たちの力を。
 鋭い眼光と共に、杖先が猟兵へと突き付けられた。
グレートスカル・キングヘッド
ごちゃごちゃとやかましいんだよ、これだから年寄りはいけねぇ
人の生の苦しみだ後悔だ、挙句の果てに育ての親面か?何様のつもりだ?

選択したのは階下のあいつらだ、俺様に問うんじゃねえ
俺様は傭兵、ただ思うがままに暴れるのみよ!


ネビロ・サーベラスによるサーベラスブレイドの格闘戦【重量攻撃】に俺様自身の目から放つ『レーザー射撃』で
ちっ、室内でこいつはやりにくいぜ…

やんちゃだなんだ、年寄りの自慢話は嫌われるぜ?
時間稼ぎに盾役、基本は援護的な立ち回りを

このステージは俺様の様な化物じゃなく人が主役だ…そうだろ?
人の持つ力って奴を見せてやりな


カイム・クローバー
歓迎、ね。階下の戦闘音をBGMに茶でも飲もうってのか?生憎と長居出来ない急ぎの用事さ。

UCを発動させ、歩いて拳の届く距離に。出された拳を【見切り】、左の掌で受け止める。
やんちゃしてたんだって?血の気の多そうな爺さんだと思ってたが…どうやら当たりのようだな。
【怪力】を含めてこちらも魔剣で返しの斬撃。本当の狙いは爺さんの持ってる煙管の【盗み】。魔剣で拳を受け止めて吹き飛ばされても左手に煙管がありゃ、狙いは成功だ。
悪くねぇ拳だぜ爺さん。けど、煙の吸い過ぎは身体に良くねぇな。もう少し労わったらどうだい?
左手で煙管を回転。放り投げ、剣で砕く。
さて、続きと行こうか。今度は少しばかり――俺も熱くなりそうだ。



「ごちゃごちゃとやかましいんだよ、これだから年寄りはいけねぇ」
 それらしいことを言ったところで、しょせんは上からの目線で物を言っている。
 人の生の苦しみだ後悔だ、育ての親でも気取るつもりか。
 オルソレグ卿の言が終わると同時、吐き捨てる声と共に部屋に影が差す。
 豪奢なシャンデリアの灯を遮って余りある漆黒の巨体。グレートスカルのキャバリアが、手にした刃を横なぎに振るう。
「選択したのは階下のあいつらだ、俺様に問うんじゃねえ。俺様は傭兵、ただ思うがままに暴れるのみよ!」
「成程、道理だね」
 床を削りながら薙がれた刃は空を切る。
 その跡、傷ついた床の上に、乾いた靴音を立ててオルソレグ卿が降り立った。
「しかし、君も随分と律儀なようだ。その巨体で、このような場所まで付き合うとはね」
「抜かせ!」
 グレートスカルの眼光、地獄の熱線に等しきそれがオルソレグ卿を狙うが、既に彼の姿はそこにはいない。
 事実、広々とした屋敷とは言え人間を基準とした屋内である。
 事実上の本体は頭部だけとはいえ、キャバリアそのものとでもいうべきグレートスカルの体躯には狭すぎる。
 壊すほどの勢いで暴れるにしても、そうすれば猟兵はともかくとして階下で戦う闇の救済者を生き埋めにしかねない。
 正直、やりづらい戦場だ。まともに刃を切り返すことすらできず、グレートスカルは舌打ちする。
 いとも簡単に死角を衝かれ、満足に追うこともままならない。
 だが、今回に関しては受け入れよう。
 動けば注意を惹くくらいのことは出来るし、この巨体はそれだけで遮蔽になる。
 満足に暴れられないのは癪だが、今回のステージの主役は己のような化物ではない。
 主役はあくまで、雇い主――『人』のための戦いだ。
「――そうだろ?」
 グレートスカルの足元、オルソレグ卿の背に、飛び掛かる影一つ。
 突き出されたカイムの刃を、オルソレグ卿が裏拳で叩き落す。
「ほぉ?血の気の多そうな爺さんだと思ってたが……どうやら当たりのようだな」
「これでも、昔はやんちゃをしていてね」
 ただ一撃の打ち合いで響いた音が、拳檄の重さをうかがわせる。
 ……が、当然ながら、それでビビるようなタマではない。
「やんちゃだなんだ、年寄りの自慢話は嫌われるぜ?」
 ――その余裕ぶった爺さんに、人の持つ力って奴を見せてやりな。
「あぁ、生憎と長居も出来ないんでね」
 頭上から落とされたグレートスカルの声を受け、剣を握るカイムの手に力が籠る。
 バチリ、身にまとった紫雷は、明りを遮られた薄暗い部屋の影でひときわ明るく見えた。
「ならば、致し方ないね」
 カイムとオルソレグ卿、二人が同時に床を蹴った。
 肉薄、その前にグレートスカルから再度放たれた熱線が、オルソレグ卿の身を翻させる。
 飛び込むカイムに、カウンター気味のオルソレグ卿の拳が飛び、カイムの左掌がそれを受ける。
 重い。外側に流すように払い、右手の剣を振る……おうとして、卿の杖が刃を打ち上げた。
「ちィ……!」
 反撃に突き出された杖を半身引いて凌ぎ、体勢を立て直す……が、次の動きはオルソレグ卿の方が早かった。
 斬り返すよりも先に、踏み込んだ卿の拳が打ち込まれる。
 即座、剣を防御に回すが、態勢は整い切らない。
 衝撃を殺しきれず、カイムの身体が大きく弾き飛ばされた。
「……っは、悪くねぇ拳だぜ爺さん。けど……」
 大きく距離を離され、たたらを踏みながら堪えるカイム。
 だが、その顔には確かに笑みが浮かんでいて。
「……煙の吸い過ぎは身体に良くねぇな。もう少し労わったらどうだい?」
 その左手には、今の今までオルソレグ卿が咥えていた煙管が握られていた。
 くるくると弄ばれた煙管はやがて宙を舞って……。
「さて、続きと行こうか爺さん」
 ぱきんと音を立てて、カイムの剣がそれを割り砕いた。
「……良かろう」
 ――少しばかり、熱くなりそうだ。
 そう零したのは果たしてどちらの口だったか。
 ニヤリ、同時に口の端が吊り上がった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
人は……この世界に生きる命は、あなた達のペットではありませんっ!
生の苦しみとか選択の後悔とか、飼い主気取りで色々余計なお世話ですっ!

数を出してくるのなら、まずは纏めて対処します
敵コードに対し【風と氷の葬送曲】発動
精霊さん達の力で二丁の精霊銃から猛吹雪を放ち攻撃
この際両側面に向けながら回転して部屋全体へ攻撃、効率よくダメージを与えていく
攻撃範囲も大部屋とはいえ半径106mあれば部屋全体を捉えられるでしょう
一撃で撃破し切れなかったとしても凍結の状態異常を与えられるので、味方とも連携しながら各個撃破を狙い
粗方撃破、或いは凍結で動きを封じたなら射線を揃え収束させてボスを叩きます


肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK

自分を正と信じて疑わない奴って、嫌だね
それが年寄りだとなおのこと手に追えない
さぞ大変な生前だったんだろうけど、それを今に押し付けるなよ


SPDで
仕込み杖ってやつか
黒剣を剣のまま、発動させたUCの光線と同時攻撃していく
勿論仲間は攻撃しない
相手に反撃の隙を与えないのが目的で手数勝負かな
とはいえ相手の方が戦闘は巧いだろうから、斬られるのは覚悟しておこう
捨て身の攻撃なら多少は自信がある、ただでやられる気はない



「生の苦しみとか選択の後悔とか……!」
 怒りに震える少女の声がした。オルソレグ卿の鋭い瞳が、その声の側を向く。
「飼い主気取りで色々余計なお世話ですっ!人は……この世界に生きる命は、あなた達のペットではありませんっ!」
 声の主――ひかるはその眼光に怯むことなく続きを言い切る。
 オルソレグ卿は、怒ることも、表情を変えることすらなくそれを聞いていた。
「聡明なお嬢さんだ。その見方は、一側面からすれば正しいと言えるだろう。……しかし」
 カツン。
 オルソレグ卿の杖先が、床を叩く。
「それが政治というものだ。人は皆が皆、君のように賢く、強くはなれんよ」
 ぞわり、空気が不吉に蠢いた。
 ひかるを含め、感覚の鋭いものならすぐに気づけたことだろう。
 死霊が湧き出てくる。それは、かつて彼の手にかかり『オブリビオン化』という未来を与えられた者たち。
「だから、導いたというだけに過ぎん。私が考えうる未来をね」
「それでも、与えられるだけの未来なんて、まっぴらですっ!」
 襲い掛かる死霊たち。
 ひかるはすかさず、二挺の精霊銃を構える。
 死霊も精霊も、霊的なものというカテゴリでは同質のもの。
 単純に物理的な手段で相手をするには難しくとも、これであれば。
 二つの銃口から撃ち放たれるのは、身も心も凍えるかのような猛吹雪。
 いくら数が来ようとも、部屋全体を暴れ回る冷気と氷雪は、死霊たちのひかるへの接近を許さない。
「若いな」
「……!」
 だが、卿に関しては話が違う。
 仮にも一城の主に足る実力を持つ、強力なオブリビオン。狙いをつけぬ乱れ撃ちでそう易々と捉えられるものではない。
 吹き荒れる吹雪をかいくぐり、ひかるへと肉薄し――。
「――嫌だね、そういうのは」
 突き出された杖が、横合いから叩き込まれた黒剣に弾かれた。
「……ほう」
「自分を正と信じて疑わない……それが年寄りだとなおのこと手に追えない」
 弾かれた勢いに任せ、ひかるから距離を取ったオルソレグ卿が見たのは、ギラついた瞳を輝かせたミサキの姿だった。
「さぞ大変な生前だったんだろうけど、それを今に押し付けるなよ」
「撥ね退けられる力があるのなら、そうすればいい。……逆に言えば、それすら出来ぬのなら、その先に未来はないよ」
「じゃあ、そうさせてもらおうか」
 荒ぶ吹雪の中、ミサキは迷うことなく突っ込んでいく。
 ぐにゃりと空間が歪み、手のひらから昏い黒玉を生み出せば、浮遊したそれからは熱線がオルソレグ卿へと飛び、それを援護射撃にして肉薄する。
 ――少しでも気を抜けば無差別攻撃をし始める黒玉を制御し、お互い注意はしていても後半以降劇が飛び交う中で迫撃するのは繊細な注意を要する。
 本来ならミサキの身で御しきれるものではないそれを、強引に抑え込んで肉薄する。
 捨て身の特攻に近い、超攻撃的な戦い。
 手数と気迫で、強引に攻める。
「随分と、己を顧みぬ戦い方をする」
 杖と黒剣が、幾たびもぶつかり合う。
 何度も何度も打ち込まれるミサキの黒剣を、オルソレグ卿の杖が受ける。
「何を恐れているのかは知らぬが。己からいつまでも目をそらし続けられるとは思わないことだ、若者よ」
「……言っただろう、そういうの嫌いだって」
 そして、幾度かの打ち合いののち。
 光線を避け、身を捩ったオルソレグ卿の脇腹をミサキの黒剣が切り裂く。
 彼の仕込み刃にえぐられた肩口の痛みは、知らぬふりを貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セルマ・エンフィールド
選択を後悔することはあります。もっといいやり方があったのではないか、今なら違う選択をしたのに、と。
ですが、後悔ができるのも生きているから。生きるための選択に悔いなどはありません。

召喚された人たちは当然この世界で生きていた人。武器も近接武器が中心になるでしょうね。
「フィンブルヴェト」からの『威嚇射撃』とスローイングナイフの『投擲』、『敵を盾にする』立ち回りで一度に複数人を相手しないようにしつつ、銃剣での『武器受け』と『串刺し』『零距離射撃』で近接戦を。

召喚された人たちをある程度倒してジョナサン・ランバート・オルソレグへの射線が通るようになったら召喚された人たちの隙間を縫い【凍星】を撃ち込みます。


オリヴィア・ローゼンタール
オブリビオン化を救いなどと……!

縦横無尽に聖槍を振るって渡り合う
傷つき血を流す姿は、この吸血鬼の価値観に照らし合わせれば、「生の苦しみ」に苛まれる哀れな者

その憐憫の視線を感じ取れば――
真っ直ぐに歩を進める
死者が群がり、服が裂け肉が抉られようと意に介さない
私を、憐れむ、だと?

吸血鬼からの憐れみ
【限界を超えた】怒りにより【天魔変生・魔性狂乱】
溢れる鮮血の闘気と殺戮の波動、死者の群れは触れた端から枯死
殺してやるぞ、吸血鬼

【怪力】で拳を叩き付ける
剣で斬られ、拳で砕かれようと、【継戦能力】に支障なし
死者、そして吸血鬼から【生命力を吸収】し、まるで時を巻き戻したかのように復元
技巧なき【蹂躙】の拳が荒れ狂う



 生きていくうえで、後悔のないよう選択していくことは難しい。
 あの時、もっといいやり方があったのではないか、とか、今なら違う選択をしたのに、とか。
 その場で正しい判断を毎度毎度下せるかと言われると、それはNOであろう。
「ですが、後悔ができるのも生きているから」
 絶えることなく湧いて出る亡霊たちを見据えながら、セルマは呟く。
 この先、いくらでも間違えることはあるだろう。
 幾度となく、後悔することもあるだろう。
 それでも、死んでしまっては悔いることすらできなくなるから。
「――生きるための選択に悔いなどはありません」
「良かろう、ならば抗いたまえ」
 銃口に冷たい輝きが宿る。
 閃光が走るとともに、氷の弾丸が亡霊を貫いていく。
 ……かつて、オルソレグ卿の手にかかり命を落とした犠牲者たち。
 当然、彼らはダークセイヴァーの住人だ。それも、今のように『闇の救済者』が軍勢として形になってくる前のもの。
 仮に生前、抵抗したものがいたとしても、碌な装備もなかったに違いない。
 セルマの銃撃でアウトレンジを取るのは、残酷なほどに容易だ。
 容赦はしない。今を生きる人々が、歩き続けていくために。
 ほとんどは彼女に近づくことすら許されず、それでもなお銃撃をかいくぐり近づくものは、投げつけられた短刀に倒れるか、あるいは。
 ――ぞ、ン!
 亡霊の胴が、真っ二つに断ち切られる。
 聖槍を携えたオリヴィアが、己の身をも顧みず、敵陣へと肉薄する。
 一切の小細工なしに、真正面からひたすら愚直なまでに突き進む。それはセルマの援護射撃を受けてもなお、傷が積み重なっていくのを避けられないほどに。
「(――オブリビオン化を救いなどと)」
 選択に後悔し、苦悩するのも、命あってこそ。
 なるほど、確かに亡霊と化した彼らは生の苦しみより解き放たれたのかもしれない。
 だが、それは『後悔』することすらできなくなった、ただそれだけに過ぎないのではないか。
 果たしてそれが『救い』と言えるのだろうか。
 ――それは、否だろう。少なくとも彼女にとっては、否でなくてはならないのだ。
「苦難に立ち向かう姿は、気高く美しいものだ。……だが」
 亡霊が次々と打ち滅ぼされていく様に、オルソレグ卿は目を細める。
 その鋭い瞳がセルマを見、そしてオリヴィアを見た。
「……君を突き動かすものは、どうも違うものに見えるね」
 聖女と老爺の視線が交錯した。
 互いの瞳の奥の感情を垣間見た。
「……吸血鬼が、私を憐れむのか」
「……成程、憎悪かね」
 轟、と力が爆ぜる。
 ただ怒りと殺意に任せた、純然たる暴力が亡霊たちを弾き飛ばす。
 オリヴィアが己の内に封じていた、あまりにも苛烈な衝動。
「今、それが必要ならばそれもよかろう。君のその先に、安息があることを祈るよ」
 ――たとえそれが、今の君には憎悪を煽るだけであろうとね。
 荒れ狂う力を一身に受け、傷ついてもなお、オルソレグ卿の瞳に映った情が消えることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春乃・結希
今も下で戦ってる、私の大好きな希望の光
強くなったって言ってくれたのが嬉しいです
こんなに強いあなたが認めてくれたなら
この先もきっと、闇を照らしていけるはずだから

あなた程極められては無いけど
それでも『with』と一緒なら
UC発動
拳闘の速さに備え、自身も拳闘で対抗
withを2人目の戦力に、挟み撃ちにする、私の攻撃の隙を埋める、死角から不意を突く
想いで繋がる恋人を信じ、間合いに飛び込む

仕込み杖の斬撃に
見切りが間に合えば『with』か『wanderer』で受ける【武器受け】
例え間に合わなくても、炎で補い拳を振るう【激痛耐性】

苦しい事だってあるけど
楽しい事の方が多いと思うんです
今だって、すごく楽しいですよ


詩乃守・セツア
後悔なんてあとで山ほどするさ
後悔する機会すら与えぬ世界を滅ぼす、それが今だ

――目録、開帳
慈悲を以て炎で清め、憤怒を以て刃を振るえ、炎影の異界王

わざわざ達人相手にご丁寧に戦う必要も無し
一撃目で周辺の構造物を建物倒壊させない程度に巻き上げて瓦礫を飛ばし、二撃目で全力の薙ぎ払い
巨人の足下に潜り込もうとするならバックステップで距離を取らせつつ下段薙ぎ
剣に慣れて搔い潜ってきたところには全力の蹴りと拳で対応

剣はそこそこでも、正直斬り合いはしたくないので僕自身は引き気味で
とはいうけど、僕を狙ってきたなら「僕ごと」敵を殴りつけるように操作

後悔はするさ、痛いだろうね
でも、ムカツク奴を殴るのはスカッとするだろ?



 オブリビオンという存在は、外見と強さは比例するものではない。
 それは、このジョナサン・ランバート・オルソレグという人物にも当然当てはまる。
 すでに老齢と言って差し支えない外見に反し、その身体能力は高く、そして知識と技術ばかりは外見相応に積み上げられた、武術の達人と言ってよいだろう。
 その力量は、たとえ猟兵でもまともに打ち合っては苦戦を免れなかったに違いない。
 だが、彼と猟兵とは、一つ、明快で決定的な違いがあった。
『一人ではない』という、あまりにも単純なただ一点である。
 オルソレグ卿とて、数多の亡霊を従えてはいる。
 だがそれは、亡霊はオブリビオンとして猟兵を攻撃するだけで、あくまでそれ以上のことはない。
 亡霊が、炎の刃にて薙ぎ払われる。
 燃ゆる巨大な刃を振るうのは、セツアの喚び出した炎の巨人。
 ――『救世灯籠・刃滅燎原』。炎影の異界王。
 セツアの蒐集する魔剣とは、刃のみに非ず。それに足る担い手もまた、魔剣の一部であればこそ。
 そして火の粉が舞い、開かれた空間に、結希が突っ込んでいく。
 徒手。相手の間合いでもある格闘戦。
 繰り返すが、相手は達人。
 取り巻きを掃ったとは言え、結希との技量には決定的な差がある。
 それを補うものこそが、『想い』で繋がれた――。
「……!」
 結希の拳戟を払い除けたオルソレグ卿のカウンターの抜き打ちが、飛ばない。
 その決定的な死角を補う形で、あらぬ方向から漆黒の大剣が落ちる。
 とっさに間合いを取ったオルソレグ卿に、セツアの魔剣が削り取った床の飛礫が降り注ぎ、そこへさらに結希が攻め手を再開する。
「……やはり強い、な。故にこそ、君たち猟兵を見てきた彼らも、また強くなったのかもしれぬ」
「嬉しいです」
 弾き飛ばされ、土煙の中で態勢を整えるオルソレグ卿。
 結希はその称賛を素直に受け止める。
 卿が言う『彼ら』は、他ならぬ、階下で今も戦い続ける闇の救済者たちのことだ。
「今も下で戦ってる、私の大好きな希望の光……」
 それが、このような強者が素直に認めるほどの強さを持ちえたということ。
 であれば、この先もきっと、未来を照らしていくことだってできるだろう、ということ。
 それが、ただ嬉しい。
 ……だから。
「後悔する機会すら与えぬ世界は、滅ぼさなきゃならないだろう?」
 炎が揺らめく。
 天井に届かんばかりにそびえるセツアの『魔剣』が、大上段に振り下ろされる。
 濛々と上がる土煙の中、身を翻したオルソレグ卿が、駆けた。
 結希の拳に空を切らせ、追いすがる大剣の一撃も置き去りに、セツアの懐へと迫る。
 ――あぁ、後悔はするさ。
 生きている以上、それはどうしても避けられない。
 今だって、もっとスマートな方法はなかったのかと思わなくもない。
 だが、それでも。
「ムカツク奴を殴るのはスカッとするだろ?」
 オルソレグの拳を受け止める。
 一瞬の静止。そこへ、救世灯籠の拳がセツア諸共巻き込むように振り抜かれた。
 勿論、痛い。だがリターンは取った。
 ぐるりと回る視界の端に、同じく吹き飛ばされるオルソレグ卿の姿を認め、セツアの口角が上がる。
「それに、苦しい事だってあるけど……楽しい事の方が多いと思うんです」
 今だってそう。そして、この先だって、きっとそう。
 だから、倒す。
 愛する刃を携えた結希の一撃が、老爺の杖を真っ二つに叩き折った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…無論。お前を討ち果たし、この領地を解放する
それが私の誓い、そして猟兵としての使命よ

今まで積み上げてきた戦闘知識から敵の行動を暗視して見切り、
攻撃を円の動きで受け流し勢いを殺さず早業のカウンターで迎撃を試みる

…確かに強い。だけど紋章を持っておらず、第五の貴族でもないお前に負ける道理は無い

…望み通り、その身に刻んであげるわ
さあ、吸血鬼狩りの業を知るがいい

第六感が好機を捉えたら大鎌に虚属性の魔力を溜めて切り込みUCを発動
大鎌をなぎ払い切断面から虚無空間が亀裂のように広がり、
虚無のオーラが防御ごと敵を捕縛して呑み込む虚属性攻撃を放つ

…この世界に生まれた光を絶やさせはしない。消えなさい、オブリビオン



「……これが君たちの力か」
 戦闘の余波であちこちが崩れた広間。
 その奥で、埃と瓦礫にまみれながら、オルソレグ卿がよろめきつつ立ち上がる。
 彼の瞳には喜びの色が浮かびつつも、未だ戦意は失われていない。
「……まだ戦う気?」
「当然だとも。この命が尽きるまで、君達の力を見せておくれ」
「…無論」
 あくまで戦うというのなら、容赦の必要はなし。
 歩みを進めるリーヴァルディの大鎌の先端が、床を擦る。
「お前を討ち果たし、この領地を解放する……それが私の誓い、そして猟兵としての使命よ」
 態々言われるまでもない。これが吸血鬼狩りの生きざまであるが故に。
 交錯。
 多勢に無勢、多くの猟兵の攻撃に晒され、傷つき死の淵にあると言えど、オルソレグ卿の力は決して侮れるものではない。
 巧みにリーヴァルディの大鎌の内側を狙い、素早い拳撃の手数に物を言わせて反撃の隙を与えようとしない。
「……確かに強い。だけど……!」
 それでも、体力は無限ではない。消耗は間違いなく強いている。
 オルソレグ卿の拳を受け流したその時、彼の上体がぐらりと僅かに傾ぐのを、リーヴァルディは見逃さなかった。
 ――好機。
 ようやく見せた、決定的な隙。
 半身を引き、振り返りざまに振り抜いた大鎌の一撃が、オルソレグ卿の胴を深々と抉る。
「ごふ――ッ!!」
「……紋章を持っておらず、第五の貴族でもないお前に負ける道理は無い」
「くく……そうかね……」
 膝をつき、苦しげに咳き込むオルソレグ卿。
 切断面から広がる虚無は、その身を食い尽くすのももはや時間の問題だろう。
 勝敗は決した。
「……ならば、君たちに伝えておかねばなるまい……。北へ、向かいなさい……」
「……北?」
「そうだ……。第五の貴族……真に、乗り越えるべき厄災が、来たる……」
 ――……その誓いが偽りでないというのなら、退けてみせたまえ……。
 オルソレグ卿が倒れ伏す。
 もはや、虚無の浸食に任せるばかりで、指一本すら動かす気配もない。
「……えぇ、わかっているわ」
 示された北の方角。開け放たれた窓の向こうをリーヴァルディは見やる。
 夜風に混ざる、未だ遠い不吉な気配。
 ――だが、何が絶望を振りまきに来ようとも。
「……この世界に生まれた光を、絶やさせはしない」
 階下の戦闘音は、着実に収まりつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『人喰らいのボギー』

POW   :    いただきます
自身の【外見の擬態】を代償に、【流動的に形を変化させる本体】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鎌あるいは牙のように鋭利になった身体】で戦う。
SPD   :    おいかけっこしましょ
自身が【嗜虐心】を感じると、レベル×1体の【増幅した自身の神格の一部】が召喚される。増幅した自身の神格の一部は嗜虐心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    わるいこだれだ
【対象に興味を持つ】事で【対象そっくり】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠シャルロット・クリスティアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オルソレグ卿、討ち取ったり。
 その報は瞬く間に広がり、館中を歓喜に満たす。
 ここに解放は成った。
 人類の勝利、我らの生活圏を取り戻したと。
 興奮冷めやらぬ中、猟兵たちはそっとその場を後にする。
 オルソレグ卿が最後に遺した言葉を頼りに、館を出て、北へ。

 ――悪い子だれだ 悪い子どこだ
 いうこと聞かない 悪い子は
 いたずらするよな 悪い子は
 人喰いボギーが 食べちゃうぞ

 領地のはずれの森の入り口。
 聞こえてくるのは、少女の歌声。
 ダークセイヴァーに広く伝わる、わらべ歌の一説だった。

 人喰らいのボギー。
 それが実在するものだと知っているのは、果たしてどれほどいるものか。
 絶望と後悔を好んで喰らう、幼い信仰から生まれた異端の神。それが、子供たちの躾にでてくる人食い妖怪の真実である。

 配下に落ちたが故に、そうなってしまったのか。
 それとも、ただ喰らいたいがために望んで配下となったのか。
 今となっては、その経緯を知る由はない。
 はっきりしていることは、今のそれは第五の貴族の配下であり。
 それにとって人類とは、第五の貴族に反旗を翻す『悪い子』であり。
 もはや引き返せぬ反抗が潰えたときの絶望と後悔は、それにとって極上の美味となりうるであろう事だ。
「だから、みんなも、おいしくたべてあげるね」
 少女の皮を被ったバケモノが、ニタリと嗤う。
 ぎらり、瞳の奥に刻まれた『鏖』の紋章が、月光に照らし出され不吉に輝いた。
荒谷・ひかる
(敵の外見を三度見くらいする)
シャル……姉、さん?
どうして……って、今はそんなこと考えてる場合じゃないですっ!

【覚醒・一耀の魂】発動
真の姿に変じつつ、肉体の主導権をいつもの「わたし」からオブリビオンとして暴れていた「私」に
かつて刀一つで故郷の里を半壊に追い込んだ戦闘能力で以て敵の速度に対応しつつ、攻撃を受ければその威力に応じ自己強化を重ねる
基本戦術は待ちから速度を見切ってカウンターで居合を叩き込む
近づいてこないなら牽制も兼ねて剣圧の刃を飛ばし攻撃
多少のダメージは生命力吸収で補填しつつ、攻める時は強引に攻めていく

姿を真似た所で、我が技まで真似ることは叶わぬ。
聊か不快だ、この場で斬り捨ててくれる。


オリヴィア・ローゼンタール
ここにいるとも
吸血鬼の支配を破壊する、叛逆の徒が

自分自身にそっくり、ということは手足と武器のリーチについて誰よりもよく知るところ
聖槍を振るって斬り結び、ある程度は苦戦するのは承知の上
強化された【視力】でよく観察(情報収集)し、スピードと反応速度を測る(学習力)

形が同じでも思考が、そして嗜好が異なる
撃滅を狙う私と、食欲に支配された奴との違い
喰らうために噛み付いてくれば、その口の中に拳を叩き付ける
異端の「神」であるならば、「先天的な神殺し」であるダンピールの血肉は猛毒となる筈
ダメ押しにもう片方の腕で猛毒の呪詛を纏った聖槍(呪穿魔槍)を突き立てる
悪食も過ぎると腹を壊すぞ……特に私のはなッ!



 どうして、と。
 ひかるの目が、信じられないものを見たように見開かれた。
 だって、目の前の『刺客』の姿は、どう見ても……。
「シャル……姉、さん……?」
『ふぅん?』
 こてん、と首をかしげる幼子。
 ひかるの知っている『彼女』は、そんな動作はまずしない。
 そも、彼女は小柄でこそあれどこんな幼くもない。だから、本人であることはあり得ない。
 頭ではわかっていても、そう割り切れぬほどに似すぎていた。
「ひかるさんっ!」
「っ!!」
 己を呼ぶ声に、はっと我に帰る。
 現実に引き戻されたひかるが見たものは、自分を今まさに貫こうとしていた毒々しい不定形の刃と、それをはじき落とす銀槍の穂先。
 月光を照り返す銀の髪の中に赤い眼鏡のフレームがちらりと映った。オリヴィアだ。
『この子のこと、しってるんだ』
 戦闘態勢を整え直す二人に、ボギーは興味深げに視線を投げる。
 鮮やかな蒼い瞳。だがその中に理性の色は薄い。
『だったら、きみたちも、この子みたいに、おいしいのかな?』
「ちっ……!」
 ぞわり、少女の背を割り、本性が姿を露にする。
 赤とも青ともつかない、強いて言うなら昼夜の狭間の色をした、夥しい不定形の刃。
 正面から槍で受け、弾き飛ばされるオリヴィア。ほんの一瞬、視界からそれが外れる。
 次の瞬間、再び視界に入ってきたのは、異形でもあの金髪の幼子でもなく、自身と等しく鏡写しの銀髪の聖女だった。
 ただ一点、違うところと言えば、その顔が狂気の笑みに染まっていることくらいか。
「姿を真似るか……ッ!」
 一度、二度と槍を打ち合う。
 条件は五分、否、神(オブリビオン)としての、そして『刻印』による力を思えば単純な打ち合いではあちらに分があるのは否めないか。
 三撃目、オリヴィアの守りを抜けたボギーの槍の一撃が、肩口を抉る。
 痛みを堪え、追撃に備えるも、続く攻めはない。
 当のボギーはというと、穂先についた血をなめとっては、不快そうに顔をしかめていた。
 絶望と後悔を糧とする、異端の神。
 それが喰らうのは、なにも物理的な血肉というわけではない。
 奴が実際に喰らうもの。それは……。
「『信仰心』――心、感情、魂の類か」
 幼さを残しつつも、低い声がその解答を告げた。
 瞬間、振り落とされる刀の一閃。
 オリヴィアの姿を模したボギーが、弾かれたように距離を取った。
「ひかるさん?いえ……」
「案ずるな、終わったら返す」
「……それなら、構いません」
 深くは問うまい。
 蒼が差した髪色に、数段鋭さを増した瞳。
 ひかるの内に宿ったオブリビオン。それでも、彼女がそう言い、何よりも『彼女ら』が承知の上であれば、それはとやかく語るところではないだろう。
 それよりも、今は。
「……こうして真似られるのは、聊か不快だな」
 ひかる……いや、アラヤが苦々しげに呟く。
 同時、打ち合った刃が甲高い音を立てた。
「ですが、形が同じでも、決定的に違うものがあります」
 間髪入れずに突き込まれる聖槍。
 アラヤの姿のボギーが、空中で身を捩る。
 いくら姿かたちをそっくりに真似たとしても、決定的に違うもの。それは。
『……おいしくない』
「だろうな」
 人喰いボギーは魂を喰らう。
 それも、絶望と後悔の念を好んで喰らう、食欲に支配された悪食のバケモノ。
 先ほど啜ったオリヴィアの血。それは確かに生まれながらの悪魔狩りであるダンピールのものであれど、重要なのはそこではない。
 内に渦巻く感情の色。
 不屈と憤怒に満ちた魂は、正しくバケモノにとって『毒』なのだ。
 そしてそれは、戯れとただの欲望で塗り替えられるほど、儚いものではないのである。
 靄がかり、どっちつかずに移ろう姿のボギーを、二つの刃が攻め立てる。
 喰えるものなら喰ってみろ。
 だが、悪食も過ぎれば腹を壊す。それでもなお喰らいたいという欲があるならば。
『ふんだ。いいもん、あとにしよっと』
「待て……ッ!」
「無駄だ」
 ついには解け、無数の魔力の帯びとなって木々を縫って逃げるボギー。
 なお追おうとするオリヴィアを、アラヤが制す。
 腐っても強力なオブリビオン。ああして逃げられれば追うのは難しい。
 それに、逃げたところで、抗うものは二人だけではない。
 ――この手で斬れるのは癪だが、あとは任すとしよう。
 遠くに聞こえる新たな足音が、ボギーに迫りつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

カイム・クローバー
確かに俺は『悪い子』だが――止めときな。俺なんか喰ったら腹壊すぜ?

少女の外見を脱ぎ捨てた、流動的な姿の化物の方がやり易い。
そっちの方がよっぽど、らしい姿だ。化物とはいえ、あの姿を保ったままじゃ虐めてるみたいで気が引ける。
鋭利になった身体は【見切り】で躱し、魔剣で払い、【挑発】交じりに軽口を叩き。鋭利になった牙による噛みつきを狙う。

…アンタに限らず、喰らい付いてくる化物ってのは多くてね。長く猟兵やってりゃ、あしらい方も覚えるモンさ。
広げた牙のある『口』に【串刺し】のUC。
皮肉なモンさ。距離はご丁寧に喰らい付こうと向こうから詰めてくれる。
――ハハッ、だから、言ったろ?俺なんか喰うと腹、壊すってよ?


グレートスカル・キングヘッド
ギャハハ!俺様を喰らうってか?
そいつはグレートなガキだ!俺様を食らうとカルシウムのとり過ぎで病院で痛い痛いってな!
まぁ見た目通りの骨じゃねえからカルシウムは摂れねえんだが!ギャハハ!

対象そっくりねぇ…果たして俺様か?サーベラスか?
はは!どっちにしろどっちか欠けた時点でグレートな俺様達に劣ってるには違いねえ!
サーベラスなら正面から取っ組み合いをして【怪力】
俺様なら上をせずそのまま
広範囲【範囲攻撃】にホーンサンダー!でビリビリ動きを止めてくれるぜ!
動きが早くても周辺一帯丸ごとやっちまえば問題ねえ!

正体を見たり枯れ尾花
得体のしれねえ化物が誰かの下につくなんざ…大した化物じゃないと示すようなもんだぜ



 大質量のものがぶつかり合う激しい音と、凶暴な高笑いが響き渡る。
 ミシリミシリと、枝が折れ、木々が軋む音がする。
 そこでは、二つの巨人が、がっぷり四つに取っ組み合っていた。
「ギャハハ!俺様を喰らうってか?そいつはグレートなガキだ!」
 その片割れ、髑髏面が吠える。
 もう片方に顔はない。その代わり、体内で反響するかのような幼い笑い声が返ってくる。
 たいした膂力だ。ただ真似ただけにもかかわらず、その力は決して本物にも引けを取らない。
 これがオブリビオンの……いや、それ以上に第五の貴族の刺客としての力だと、否応にも実感させられる。
 だが、グレートスカル・キングヘッドには矜持がある。
 いや、正確には傲慢と言うべきか。
 ともかくも、オブリビオンだろうが第五の貴族だろうが、ただの真似事に後れを取るわけにはいかぬのである。
 踏みしめた足裏が地面にめり込む。押し込まれている。
 まぁ、単純な力比べではグレートスカルとサーベラスの力を以てしても、オブリビオンの純粋な能力相手では、こういうことも有り得るのはわかる。
 ――だが、それだけだ。
「サーベラスの力と俺様の頭脳……どっちか欠けた時点でグレートな俺様達に劣ってるには違いねえのさ!」
 バチリバチリと、サーベラスの角に電流が走る。
 あぁ、そうだ。所詮真似たのは外面だけだ。
 その真の力を引き出せるのは、結局のところ本来の主以外にあり得ないのである。
「ホーン……サンダァァァァァァァァ!!!」
 気合一閃。
 ほんの一瞬、深い夜の森が昼間と間違うほどの閃光に包まれた。
 至近距離からの超強力な電流の直撃を喰らい、偽の巨人の動きが止まる。
「正体を見たり枯れ尾花……得体のしれねえ化物が誰かの下につくなんざ、大した化物じゃないと示すようなもんだぜ」
「違いねぇ。そんな奴が俺達なんか喰っても、腹壊すだけだな」
 ――ま、『悪い子』ではあるが。
 そんな相槌は木々の上から。
 頭上からガワだけの巨人を串刺しにせんと、カイムが魔剣を手に飛び掛かる。
 手応えは、地面を貫く固い感触だけ。
 外した。
 視線をあげれば、流動する無数のエネルギー体が、様子をうかがうように飛び回っているのが見えた。
 とっさに擬態を解き、ばらける様に剣の軌道から身を逃れさせたと見える。
 その様を見て、カイムはニヤリと笑みを浮かべる。
「いいね。やっぱりそっちの方がよっぽど、らしい姿だ」
 いくら人外のそれとは言え、最初に見せた少女の姿とやりあうのは、少しばかり気がひける。
「ま、そういう意味じゃ今のでかい姿でも良かったんだが」
「あぁ?俺様の姿なら問題ないってのか?」
 頭上からの抗議の声は一旦聞こえぬふりをしまして。
 いずれにせよ、相手は得体のしれぬバケモノなどではなく、バケモノではあっても、所詮は上には上がいる程度のモノである。
 だとするならば、やりようはいくらでも。
『わるいこ、わるいこ わるいこたくさん』
「アンタに限らず、喰らい付いてくる化物ってのは多くてね。長く猟兵やってりゃ、あしらい方も覚えるモンさ」
 うわ言のように繰り返されるボギーの言葉。
 その声に、理性の色はあまり感じされない。ただ、喰らいたいという欲望に支配されたそれに、カイムの言葉は届いてもいないだろう。
 不定形のバケモノが、大口を開いてカイムへと飛び掛かる。
 退くほどの間は許されない。
 が、許されたとしても退くことはなかっただろう。
 やるべきことはただ一つ。手にした魔剣を突き出すことだけ。
「……だから、言ったろ?俺なんか喰うと腹、壊すってよ?」
 ただそれだけで、ご丁寧にも向こうから刺さりに来てくれる。
 小さく漏れた死神の嘲笑は、耳をつんざくような絶叫にかき消された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春乃・結希
食べるなら、頭から一息にお願いしますね
端の方からじっくりとか、苦しいのは嫌ですし

wandererの蒸気魔導力を使い全力【ダッシュ】
うへへ、私走るの得意なんです、負けませんよーだ
捕まらないように森の木の間をサイドステップで抜けて撹乱したりしつつ
そのままぐるーっと回りこんでボギーの方へ向かう
あはは、あなたの分身、連れて来ちゃった
ちゃんとおかえりなさいしてあげてね
分身達に気を取られてくれたらラッキーです
そのまま横をすり抜けた瞬間、翼を展開
空気を捉え急制動ののち反転
地面からの反発力も利用して蹴り上げる

はいタッチー!あなたの負けー!
罰ゲームとして今日のご飯は…
ううん、この先もずっとご飯無しねっ


リーヴァルディ・カーライル
…この世界で広く唄われる異端の神が、いまや吸血鬼達の走狗に成り果てるとはね

…真に乗り越えるべき厄災。ここから先には行かせない
お前を討ち、後顧の憂いを断たせてもらうわ

過去の戦闘知識から興味を持つ対象の姿が見えなければUCを使えないと予測し、
闇に紛れて"光の精霊結晶"を投擲して閃光で敵の視界を閉ざしてUCを発動
召喚した545騎の黒騎士霊を大鎌に降霊して黒炎の魔力を溜め武器改造

…来たれ、異端の血を啜る黒剣よ、神々を喰らう黒炎の鎧よ
神殺したる我が手に宿りて、悪なる神を切り裂く刃となれ…!

極限まで対神属性攻撃を強化した騎士剣を錬成してなぎ払い、
限界突破した剣閃のオーラで防御ごと敵を切断する斬擊波を放つ


セルマ・エンフィールド
悪い子は人喰いボギーにさらわれて食べられる……なんて、実物を見たのは初めてですね。

元よりオブリビオンと共存などできないと思っていますが、特に吸血鬼を始めとする「人喰い」の類は生かしておくつもりはありません。

召喚されるものは先程の戦いよりも厄介ですが、今回はこちらも次を考える必要がない。全力でいきましょう。

【氷炎殺界】を使用、炎と氷を纏う真の姿に変身し、「フィンブルヴェト」からの氷の弾丸で足を止め、「ラグナロク」からの炎の弾丸の『乱れ撃ち』による『弾幕』で召喚された神格の一部を撃ち抜き、焼き尽くしていきます。

射線が開いたなら『スナイパー』の技術でボギー本体を狙い、氷と炎の弾丸で撃ち抜きます。



『わるいこ、ワルい子、悪イコ、ワルイコ、わルいこ、ワるいコ』
 幾つもの声が重なる。
 右から、左から、上から、後ろから。
 歌うような、転がすような、それでいて狂気に侵された声色で、幼い声が輪唱する。
 そんな声を背に、結希は森の中を駆けていた。
 ぱしゅん、地面を踏みしめると同時に、魔導ブーツから蒸気が噴き出、うっすらとした靄を後に残して跳躍する。
 一拍遅れ、草木を薙ぐ轟音と共に、靄が弾けた。
 幾つもに分裂し、増幅し、群れを成した不定形のバケモノが、追い立ててくる。
「食べるなら、頭から一息にお願いしますね。端の方からじっくりとか、苦しいのは嫌ですし」
 もっとも、そう簡単に捕まってやるつもりもないけれど。
 追いかけっこはこちらも得意。
 神だなんだと言っても、戦略も作戦もなく、ただ愚直で幼い追走に捕まってやるほど甘くはない。
 走るのは得意なので。と。
 ひょいひょいと、軽い動作で木々を縫えば、後方でメキリと木々が薙ぎ倒される音がした。

 一方そのころ。
「悪い子は人喰いボギーにさらわれて食べられる……なんて、実物を見たのは初めてですね」
「この世界で広く唄われる異端の神が、いまや吸血鬼達の走狗に成り果てるとはね」
 やれやれと、物陰から追いかけっこを見守るセルマとリーヴァルディ。
 ダークセイヴァー出身ということもあり、耳にしたこともあるであろうおとぎ話の化生が、今やあの有様と思うと、溜息の一つも出るところか。
 とはいえ、結局のところ。
 その実態がどんなものであったにせよ、悪辣な『人喰い』を放置するという選択肢はない。
 いずれ雌雄を決さねばならぬ、第五の貴族、その先触れ。
 乗り越えねばならぬ厄災であれば、なおのこと。
 ……息を潜め、タイミングをうかがう。
 人喰いボギーは、悪い子を喰らう。
 狂気に侵された今でこそ、その判定は極めて雑なものになっているとはいえ、言ってしまえば『偏食』なのだ。
 そしてその性質は、『認識した相手以外にはほとんど興味を示さない』という形で顕在化していた。
 今、ボギーの注意は結希一人に注がれている。
 故に、二人とも標的から外されているどころか、ボギーからすれば位置すらも認識していないに違いない。
 木々を薙ぎ倒す轟音が、少しずつ近づいてくる。
 度重なる攻撃で傷ついてはいれど……いや、だからこそ、元々緩んでいた箍が完全に外れたか。
 溢れ出した狂気と食欲は、今や濁流のように森の中を駆け抜けていた。
 止めると一口に言っても、簡単なことではないが。
「今回はこちらも次を考える必要がない。全力でいきましょう」
「無論。後顧の憂いを断たせてもらうわ」
 全力で叩くだけ。
 力を溜め、その時を待つ。
 右へ左へ、巧みに木々を避けながら、結希が走る。
 森の中の広間、射線の通るその場所に、ひらりと彼女の黒髪が舞った。
 そして彼女の姿を認めたということは。
 ――ひとつ、ふたつ、みっつよっついつつむっつ。
 夥しい数に膨れ上がった、人喰いボギーの大軍勢。
 人一人、いや一個小隊は有に飲み込んで余りあるバケモノの群れが、逃げる『悪い子』を食い尽くさんと飛び出してくる。
 そして……。
「あなたは、ここで殺す」
 吹雪が、降り注いだ。
 真の姿を露にしたセルマが放つ、氷の弾丸。
 身も得物も正しく埒外と化した銃撃は、マスケットの見目に反する密度の弾幕で、バケモノの群れを縫い付ける。
「これで狙えますか」
「十分よ」
 こちらに気づいたところで、もう遅い。
 位置を捉える前に、既に攻撃準備は整っている。
 リーヴァルディの剣は、既に轟々と燃え滾る黒炎が宿り、振り下ろされるのを今か今かと待っていた。
「……来たれ、異端の血を啜る黒剣よ、神々を喰らう黒炎の鎧よ」
 昏き炎を纏う黒騎士の魂たち。今この時は、神殺しの刃へと変じて。
「神殺したる我が手に宿りて、悪なる神を切り裂く刃となれ……!」
 一閃する。
 解放された炎が、邪神の群れを両断する刃となって駆け抜ける。
『ア゛ァァァァ゛アァァ゛ァア゛!!』
「はい、タッチ。あなたの負けー!」
 といっても、タッチしたのは私じゃなかったけれど、そこはそれ。
 耳をつんざく悲鳴を上げるボギーへと、振り返った結希がにっこりと笑う。
 辛うじてリーヴァルディの斬撃から逃れた残りのボギーが、そんな彼女へ尚も飛び掛かる。
 が。
「言ったでしょう、ここで殺すと」
 再びの銃声。
 先とは真逆の炎の弾丸が、ボギーの大顎を抜いた。
 慣性のままに、なおも落ちるボギーの大顎。
 結希の顔に影が落ちて、そして……。
「あ、じゃあこれで私もタッチ」
 蹴り上げた結希の爪先が、遂にボギーを叩き割った。
 これでもう、文句は言わせないぞ……などと、茶目っ気な視線をくれてやれば、ちょうどボギーの身体が骸の海へと還っていくところで。
「罰ゲームとして今日のご飯は……ううん、この先もずっとご飯無しねっ」
 未練がましく残っていた貴族の紋章の残滓も、結局は炎翼の熱風に揉まれ、散っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年07月11日


挿絵イラスト