●外典
邪教とはある者にとっては真理そのものである。
即ち、信じるものが求めた答えを模索するのではなく、教え啓されることによって己の中にある真理への疑念を晴らすものであるからだ。
「これが色彩。これが『外なる邪神』。おお……! なんということだ。これが真理。これが摂理。これこそが!」
摩天楼の果てに彼は目を見開き、己が今まさに世界の真理に至ったことを識る。
瞳に爛々と輝く色彩は極彩。
されど、その胸に去来するのは、たった一つの真理である。
「私は得た! 真理を! これこそが我等が神の思し召し! 皆も触れるがいい。これこそが神よりも齎された真理への鍵」
極彩に輝く瞳の男が手を夜空に掲げる。
そうすると夜天より降り注ぐ『不可思議な色彩』が、その場に集まっていた邪神信者たちに降り注ぎ、色彩を放つ怪物へと姿を変えていく。
肌は黒く染まり、けれど鮮やかに輝く色彩が見るものの視界を狂わせる。
あまりにも鮮やかで、あまりにも強烈な色彩が視界そのものを壊滅的なまでの悍ましき光景へと変えていくのだ。
「おおおっ! これが! これが真理の光景! 我等が求めて、我等が与えられた真理!」
怪物へと変貌していった信者たちの顔面が弾けるように吹き飛び、臓物の如き赤き滴り落ちる体液を撒き散らす。
背中が割れては、黒き影のような触手が蠢き、その避けた皮膚の下に明滅する赤き体液を脈動させた。
「我等は『傍観者達』。我等は見定めるのではなく、ただ見つめよう。真理を知った今、我等が在ることこそが、『外なる邪神』の求めるモノであるのならば」
彼らはすでにUDC怪物へと変貌を遂げる。
一歩踏み出す度に摩天楼――超高層ビルを侵食するように『色彩』でもってあらゆるものをUDCへと変えていく。
それはまるで発狂するようであり、蠢くようでもあり、けれど一個の生物として超高層ビルは変わり果ててていく。
外面から見れば、壮麗なる超高層ビルであったかえれど、その中身はすでに怪物の体内そのものであった。
あちらこちらから『色彩』が溢れ、あらゆるものを飲み込んでは怪物へと変えていく。
もはや、この摩天楼には生命は居ない。
あるのは、『外なる邪神』の増殖していく肉片。
宇宙より降臨せんとする邪神の器としての肉体へと増殖していく、かつての摩天楼だけだった。
「ええ、わかっておりますとも。万事我等におまかせください。真理を与えてくださった貴方様のために、我等はこの生命を、肉の一片まで捧げましょう」
『色彩』に輝く邪神の信奉者たちのリーダーが陶酔したように、夜天に手を掲げる。
その手に掴んだ真理のため。
そして、何よりも『外なる邪神』の肉の一片となれる栄誉に打ち震える。彼らの願いは叶えられるだろう。
『外なる邪神』を呼び込む儀式は超高層ビルの屋上で行われ、至るには邪神の肉体の器となる内部を征かねばならい。
誰も阻ませはしない。
極彩色の『色彩』が闇夜を切り裂き、狂おしいほどに明滅しては狂気を振りまくのだった――。
●外なる邪神降臨
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まりいただきありがとうございます。UDCアースに在るUDC組織より『最優先対処事項(レッド・アラート)』が発せられました」
その瞳は緊張に染まっている。
物々しい言葉は、言うまでもなく今回の事件の危険度を示しているのであろう。つまり、UDC組織が『邪神』関連の何かを掴んだということだ。
「はい……UDC組織が所有する古文書に、宇宙より降り注ぐ色彩についての記載が発見されたのです」
それこそが『外なる邪神』と総称されるUDCの肉片である。
『色彩』と呼ばれている肉片が齎す侵略とも言うべき力は凄まじいものである。
「人間、動植物、自然環境……その全てを『発狂』させ、自らの肉体に作り変えてゆくというのです」
それは即ち、UDCアースに邪神が降臨するということである。
ならばこそ、UDC組織が『最優先対処事項』と銘打つのも頷ける。だが、今ならばまだ間に合うというのだろう。
そのために猟兵たちは呼びかけられたのだから。
「そのとおりです。幸いにして私の予知にかかったのは、摩天楼……超高層ビルに邪神教団を構える信奉者たちが儀式を行う光景でした」
ナイアルテの瞳が薄紅色に輝く。
彼女は見たのだろう。夜天より降り注ぐ『外なる邪神』の肉片、その『色彩』を。
「すでに超高層ビルはUDCへと作り変えられています。『発狂』するように不可思議な色彩を放ちながら、内部は絶えず蠢き膨れ上がっています。触手のようであったり、皆さんの恐れるものへと姿を変えながら、襲ってくるでしょう」
つまり、猟兵達が恐れる何かに形や姿を変えるUDCが闊歩する超高層ビルを屋上まで駆け上がり、UDC怪物へと姿を変えた邪神信奉者たちを打倒し、宇宙より降臨しようとする『外なる邪神』の目論見を阻止しなければならないのだ。
「UDC怪物へと堕ちた彼らは『色彩を帯びた物品』を発狂させ、自分と同じUDCにする能力を持っています。これは生物、非生物であることを問わないのです」
幸いにして変化させるには時間がかかるようである。けれど、下手を打てば猟兵にも影響を与えかねないのだ。
これらを阻止するか、素早く打倒して屋上へと至らなければならない。
「そして、『外なる邪神』が降臨しようとする超高層ビルの屋上には、邪神教団のリーダーが控えています。彼の力は言うまでもなく強力です。自分と同じUDCにする能力こそ持っていませんが……」
ナイアルテの瞳がふせられる。
それより先の言葉を猟兵たちは聞くまでもなかった。
そう、言うまでもなく凄まじい力を持っているのだろう。
「……危険極まりないことは承知の上で申し上げます。どうか、勝ってください。私が信じる皆さんならば、必ずそれを成し遂げてくださると信じております」
再び頭を下げ、ナイアルテは猟兵たちを見送る。
死地に向かわせる事に変わりはない。
けれど、それでもと信じることでしか彼女は猟兵達に手向けるものをもっていない。
だからこそ、彼女は己が信じる猟兵達の力を信じるのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
UDCアースにおいて降臨しようとしている『外なる邪神』の目論見を打ち砕く『最優先対処事項(レッド・アラート)』の戦いを描くシナリオになります。
●第一章
冒険です。
皆さんが踏破しなければならない邪神教団の本拠地である超高層ビルの内部を駆け上がらなければなりません。
しかし、『外なる邪神』によって超高層ビルの内部構造はそのままに、絶えず『不可思議な色彩』を放ちながら皆さんの深層心理を読み解き、皆さんが恐れるものを『色彩を放つ』UDCとして差し向けてくるでしょう。
これらに対抗策を持って当たることが、『外なる邪神』の肉体へと変貌した超高層ビルを素早く駆け上がるために必要なことになるでしょう。
●第二章
集団戦です。
全身から色彩を放つUDC怪物の群れと超高層ビル内部で戦います。
彼らはおそらく元、邪神教団の信奉者であった人間ですが、完全に怪物へと成り下がっています。
彼らは通常の能力とは別に『色彩を浴びた物品、生物非生物問わずに発狂させ、自分と同じUDCにする能力』を持っています。
影響を与え、変貌させる時間はかかりますが、皆さんも長く浴び続けると影響を受けかねません。
素早く打倒するか、もしくは何か阻止する方法がないといけないでしょう。
●第三章
ボス戦です。
超高層ビルの屋上へ飛び出すと、そこには信奉者のリーダーだった人物が皆さんを待ち受けるでしょう。
色彩を放つ不気味な怪物へと変貌したリーダーを打倒し、宇宙より降り立つUDC……『外なる邪神』の肉片を処分しなければなりません。
それでは『外なる邪神』、その凄まじき力の一端を垣間見る皆さんの戦いの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『摩天楼を駆けろ!』
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POW : 妨害を恐れず最短距離を駆け上がる。
SPD : 身を隠し、見つからないように屋上を目指す。
WIZ : 警備や罠を回避する方法を考えてみる。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
超高層ビルは外側から見れば、群生するようにそびえ立つ他の超高層ビルと変わらないように思えた。
けれど、猟兵たちは転移してすぐに理解する。
すでに目の前の超高層ビルはUDCそのものであると。
外壁は変わらず。けれど、内部は妖しく輝き、蠢く得体のしれぬ物になっている。
一歩踏み込めば、そこにはもう生命はない。
あるのは、狂気に呑まれた光景だけであり、『色彩』だけがあらゆるものを狂わせていく。
そして見ただろう。
猟兵達の瞳に映るのは、彼の心に、その深層心理に刻まれた『恐怖』そのものである。
『色彩』によって発狂させられた超高層ビルの内部は、踏み込んだ猟兵達の心を抉るものへと姿を変える。
効率的に。
けれど、弄ぶように。
UDCへと変わったあらゆるものが、猟兵たちを苛み、狂気の中に取り込まんとする。
けれど、それでも征かねばならない。
ここで猟兵達の心が折れてしまえば、『外なる邪神』は降臨し、UDCアースそのものが『発狂』させられてしまう。
『恐怖』こそ乗り越えていかねばならぬものだと知るのならば、躊躇いなく一歩を踏み出せ、猟兵――!
月夜・玲
いえー、邪神いえーい
今日の邪神はどんなかなー?
とりあえずさ、塔を登っていくのは雰囲気合って良いよね…
ビルだけどさ…見た目も邪神っぽく変化してくれれば、もっと雰囲気出たのに…
まあその辺は仕方ないか
『外なる邪神』…旧神達とは無関係かな?
色々と、楽しい研究が出来そうな事件だね
●
色彩か…うおっまぶしっ!
持ってて良かったサングラス…あんまり意味ねえややっぱ
さてと深層心理の恐怖か…
あれは…紙?
なんだろうこ…ひっ!請求書!!
大量の私宛の請求書!
マズいマズいマズい、今こんなに手持ちない!!
こんなに使ったっけ?身に覚えない!!
こうなったら…全力で逃げる
サングラスで視界を暗くして目を逸らして一気に駆け上がろう!!
人の心を縛るのはいつだって恐怖である。
けれど、それを生みだすのは己の心の内側から溢れたものであって、外的な要因によって引き起こされるものではない。
ゆえに人は恐れるのだ。
己の心のなかに在る得体の知れないものに。
猟兵達が見上げる摩天楼――超高層ビルの内部は既に『色彩』で溢れている。
あらゆるものを発狂させる『色彩』は、人の瞳を通して内側から怪物へと変貌させていくのだ。
それは猟兵であっても変わることはない。
「いえー、邪神いえーい。今日の邪神はどんなかなー?」
あまりにも緊張感のない声が響き渡る。
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は摩天楼を見上げ、あの屋上こそが邪神降臨の儀式の場であることを看破していた。
ゆえに、塔を登るということへの雰囲気の良さをサブカルマニアならではの感性でもって受け止める。
「もうちょっと言うなら、ビル……見た目も邪神っぽく変化してくれれば、おっと雰囲気出たのに……」
なんだぁ? 変な所で工賃ケチりやがってみたいなことを玲は思ったかも知れない。まあそのへんは仕方ないかと割り切ることも時には重要だ。
今回降臨しようとしている『外なる邪神』。それが旧神といかなる関係があるのかは未だ定かではない。
けれど、玲は浮足立っていた。
そう、邪神の肉体としての器へと変貌を遂げている超高層ビルの内部なんて、楽しい研究が出来るという予感しかしないのだから。
玲は躊躇なく邪神の内部へと変貌を遂げた超高層ビルの内部へと足を踏み入れる。
瞬間、彼女の視界を多いのは極彩色の『色彩』である。
瞳が明滅する光景に、ぐらりと脳が揺れる。
あまりにも強烈な光は、いつのまに懸けていたサングラスの遮光レンズなど無意味なほどに玲の瞳に突き刺さる。
「うおっまぶしっ! 持っててよかったサングラス……あんまり意味ねえややっぱ」
ぺいっとサングラスを放り投げ、玲は目指す屋上を見定める。
ただ進むのならば、これほどイージーなことはない。
まあ、そのうち怪物とエンカウントするんでしょ私は詳しいんだ。などと言いながら駆け上がっていく。
しかし、グリモア猟兵の話では、自身の深層心理から恐怖を読み取り、自分たちの前に障害として現れる問はなしであったが玲の目の前に現れたのは一枚の紙切れであった。
「……あれは、紙?」
別に神と紙を掛けた洒落でもあるまいし、と拾い上げて玲の表情が凍りつく。
これまで多くの戦いを経験してきた玲がこんな表情を浮かべたことはなかったのではないかというくらい、驚愕に、そして恐怖に染まる。
「なんだろうこ……ひっ!」
悲鳴を上げた。
その紙面に記された数字の羅列。
それはびっしりと刻み込まれた数字の桁であった。見に覚えのない数字。けれど、玲はそれに恐怖した。
なんていうことだろう。知らない。知るはずがない。だって、こんなに、こんなに――。
「請求書!! 大量の私宛の請求書!?」
しかも、どさどさと凄まじい音を立てて玲の周囲に請求書が落ちてくるのだ。
どれもこれも自分の名義である。
口座番号だって見知った番号である。
「マズいマズいマズい、今こんなに手持ちない!!」
頭が混乱する。
えっ!? 今月分だけでこれ!? 嘘でしょ!? となるほどの金額が記されている。
「こんなに使ったっけ? 身に覚えない!!」
それほどまでに法外な金額が記されているのだ。コレはもう確実に消費者金融的な、こう、頬に斜め傷が入っている方々にお世話にならないと返済できない金額である。
しかし、それはできない。
どれだけ見に覚えのない請求書があろうが、玲は無い袖は振れないのだ。
「……こうなったら……」
ぺいっと投げ捨てたサングラスを拾い上げ、玲はとても良い顔でうなずく。
まるで少年漫画の見開きで主人公が決意を新たにするような表情であった。
「――全力で逃げる」
まさかの夜逃げであった。
玲は彼女へと降りしきる請求書の紙片から目をそらして、一気に塔の如き摩天楼を駆け上がっていく。
どんなに逃げても追いかけてくる月末請求書の数字。
けれど、玲は否定する。
私そんなに使ってない! ほんとほんと、本当にちょっとだけ使っただけだから!
そんな悲痛な叫びが摩天楼に響き渡るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミアステラ・ティレスタム
邪神と相対するのは初めて、といいますか
猟兵として動くのが久方振りなので、出来ることから為し遂げていくことにしましょう
それにしても、嫌でも視界に入ってくる『色彩』という名の情報が多過ぎますね
自分の恐怖、ですか
わたしは凡そ百年の間ずっと過去に囚われてきました
今はその過去と決別し、自分の足で世界をめぐっています
ああ、なんて清々しい気分
だから、あれは置いてきたわたしの過去の残骸
水の檻に閉じ込めて、沈めてしまいましょう
鎮める、の方が正しいでしょうか
わたしの祈りと浄化によって亡きものへ
わたしの過去、ですか?
ふふ、女の過去は安易に暴いてはいけないものですよ?
(恐怖の形状はあやふやなものにしておいてください)
過去とは即ち己の足元に続く轍のようなものである。
過去無き未来はなく。
けれど、今を生きる者にとって過去とは背を向けたものである。振り返ることがあれど、そこには確かに存在する。
己の足を捕らえて離さぬものあったのだとしても、今の己があるのは過去在りきであることを知るからこそ、人は前を向いて歩くことができる。
しかし、心はいつだって自由であるべきである。
立ち止まることも、振り返ることもできる。
「……ああ、なんて清々しい気分」
そう極彩色の『色彩』が溢れる摩天楼、超高層ビルの内部でミアステラ・ティレスタム(Miaplacidus・f15616)は呟いた。
さららと流れる藍白色の髪は極彩色の『色彩』の中にあっても染まることなく流れ落ちる。
瞳は水の青のまま。
けれど、ときが過ぎすぎることがあれば、その色さえも塗りつぶし発狂させる力が、ここには充満していることを知る。
「それは置いてきたわたしの過去の残骸」
彼女の目の前には猟兵の深層心理を読み取り、具現化した恐怖という名の何者かが存在していた。
つぶやき、微笑むでもなければ苦悶の表情を浮かべることもない。
ただ、見つめているだけでいい。
彼女は凡そ百年の間ずっと過去に囚われてきた。
今はその過去と決別し、自分の足で世界を巡っている。UDCアース。邪神跋扈する世界に降り立ち、自分の足で歩き、自分の瞳で世界を見る。
極彩色の『色彩』がどれだけ自身の視界を埋め尽くそうとしたとしても、ミアステラの水の青色をした瞳は染まることはない。
「水の檻に閉じ込めて、沈めてしまいましょう」
鎮める、という表現のほうが正しい。
その瞳が輝くはユーベルコード。
Divertimento(ディヴェルティメント)――祈りを以て、泡沫の時をもたらすユーベルコード。
恐怖を具現化したあやふやな形に水の球体が触れた瞬間、その恐怖を水の檻が取り囲み、締め付ける。
それは彼女の祈り。
過去という名の恐怖を浄化によって亡きものへと変える力である。
「誰の瞳にも触れることなく、けれど確実にある過去。その残骸は、わたしだけが知ればいい。決別したからこそ、迷いでたのでしょうから」
ミアステラがそっと小さく呟いた瞬間、水の檻は恐怖の具現化したものを亡きものへと変える。
霧散し、『色彩』へと姿を変えてミアステラの道行きを遮ることもできずに、恐怖は彼女の元から去っていく。
それを見て、彼女は何を思っただろうか。
過去に対する寂寥たる思いか。
それとも今目の前に広がる広大な未来に対する希望か。
どちらにせよ、彼女の足は止まらない。止まるわけがない。自分で決めたことなのだ。囚われていた過去から、一歩を踏み出した時、目の前に広がるのはいつだって白紙の未来である。
そこに何を記すのか。
そして、何を思うのか。それを知ることができるのはミアステラだけだ。
「ああ、それでも」
それでもしつこくミアステラの前に立ち塞がる恐怖。
しかして、彼女は微笑んで言うのだ。
「わたしの過去。ふふ、女の過去は容易に暴いてはいけないものですよ?」
これが『外なる邪神』の力。
けれど、恐れるに足りない。
いつだってそうだけれど、一歩を踏み出す勇気を持つ者は、絡め取られることのない者である。
たとえどれだけ、過去が滲み出て彼女の足を掴んだのだとしても。
ミアステラは微笑んでユーベルコードの力をふるい、悠々と摩天楼を上へ、上へと粛々と歩み、進んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
銃を構え、曲がり角や遮蔽物の死角に注意し、奇襲に警戒しながら建物内を進んで行く。
恐怖する対象。出てくるのは過去に相対したオブリビオンだろう。
世界を侵食する存在。立ち向かおうにも人類の能力では基本的に抗えない。逃げ出し放置すれば己の大切な者達が食い荒らされる。
これが恐怖だ。存在を知ってしまったらもう安らかには眠れない。
故に殺す。ただひたすらに殺す。恐怖を上書き出来るのは怒りと憎しみだけだ。
現れる恐怖に銃弾を叩き込み滅ぼす。オブリビオンを殺す為だけに造られた銃だ。自身の心が生む幻影には効かないのならば怨念武器を蛮刀として具現化させる。【精神攻撃】。自身の心の恐怖を復讐心で切り裂き消滅させて行く。
恐怖とは常に人の身体を縛る生存本能である。
生命の危険に対しての警告であり、処理しきれぬ情報故に身体は立ち止まってしまう
。けれど、死の先にある存在、デッドマンであれば如何なるものが恐怖足り得るだろうか。
摩天楼、超高層ビルの内部はすでに『外なる邪神』の影響に寄って狂った『色彩』にあふれている。
その光景自体に、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)なんの感想もなければ、感慨もなかった。
在ったのは殺意だけである。
如何なる名で呼ばれていようともオブリビオンである以上、了介にとってそれは殺す以外の選択肢などない。
「世界を侵食する存在」
銃を構え、超高層ビルの内部を駆け上がっていく。
曲がり角や遮蔽物などの死角に注意し、奇襲に警戒する姿は嘗て彼が軍人であったことを知らしめるには十分な挙動であったことだろう。
それが戦場攻殺術(センジョウコウサイジュツ)。
彼が生前に体に叩き込んだ生きる術である。しかし、それほどの技術を身につけても尚、オブリビオンには敵わない。
嘗てそうであったように、人類の力では基本的にオブリビオンに勝つことはできない。
「だが、逃げ出せば」
どうなるかを彼は知っている。
大切な者たちが食い荒らされる。ただそれだけなのだ。だからこそ、了介は恐怖する。
『外なる邪神』の『色彩』が読み取った恐怖はまさに『それ』であった。
過去に相対したオブリビオン。
その全てが猟兵単一の力を上回る存在ばかりである。
「これが恐怖だ。存在を知ってしまったらもう安らかには眠れない」
悪霊のデッドマン。
了介という存在を示すに尤も端的な言葉であった。故に。そう、故に。
「故に殺す」
どれだけ恐怖に足が竦もうとも。
目の前に己が恐れるオブリビオンが現れようとも引き金を引くことに変わりなど無い。躊躇いもなければ、意味も必要ない。
「ただひたすらに殺す」
彼の瞳に宿っていたのは怒りと憎しみだけであった。
もしも、恐怖というものを塗りつぶすことが出来る感情があったのだとすれば、まさしく怒りと憎しみだけである。
打ち込んだ弾丸が『色彩』によって狂ったUDCを討ち貫く。
銃声が響き渡り、硝煙の匂いが辺りを満たす。けれど、それさえも了介の心を慰めることはない。
目の前に広がっているのだ。
UDC、オブリビオンが無数にうごめいている。
「己の心が生む幻影であるというのならば――」
関係ない。
殺す。殺すしかない。ただ、それだけのために己の存在があるというのならば、了介は躊躇わなかった。
怨念武器が蛮刀へと姿を変え、己の中にある心の恐怖を復讐心で切り捨てる。
「誰も俺の、この憎悪を塗りつぶすことなど出来るものか」
どれだけ恐怖と言う名の感情が強大であったのだとしても、魂の衝動を電流に変換するヴォルテックスエンジンが唸り声を上げる限り、衰えることのない憎しみを知れ。
了介の唸り声が響き渡り、恐怖を齎すUDCを切り裂き、討ち貫きながら憎悪の赤き残光が摩天楼の頂点を目指して稲妻のように駆け抜けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
最優先対処事項とは穏やかじゃねえなッ!
「・・・宇宙より降臨する『外なる邪神』、今まで以上に一筋縄ではいかない相手ですね。」
式神【捜し鼠】で屋上までの最短ルートを捜すぜ。
相棒の巫女服には狂気耐性が備わってるが長居はしたくねえしなッ!
(巫女の深層心理の恐怖は『今まで解決した事件で助けられなかった犠牲者の怨嗟』)
「・・・あ・・ああ・・・。」
ちぃッ!趣味が悪いッ!
身体の主導権を奪って色彩を放つUDCを妖刀で叩き斬り動けなくなった相棒を叱咤するぜ。
シャキッとしろ、相棒ッ!こんなのは所詮まやかし、俺達の仕事はこんな奴らを少しでも減らす事だろッ!
ならこんな所で立ち止まってる暇はねえ筈だぜッ!
【アドリブ歓迎】
人の心は脆いものである。
どれだけ強固な肉体に鎧われようとも、その内側にある心は柔らかく傷つきやすいものだ。
だからこそ、人は人との距離を図り、互いに傷付けないようにと細心の注意を払う。
例えば、言葉であったり。
例えば、表情であったり。
そうした手段を持って人は己の心を守るのである。恐怖を克服するのが心であるのならば、むき出しの心には常に悪意が襲い来る。
摩天楼、超高層ビルの内部を征く神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)と、その相棒である桜は極彩色の『色彩』を放つ有機物、無機物問わずにUDCへと変貌した光景を前にしていた。
『最優先対処事項とは穏やかじゃねえなッ!』
「……宇宙より降臨する『外なる邪神』、今まで以上に一筋縄ではいかない相手ですね……式、召喚【捜し鼠】」
桜の瞳がユーベルコードに輝く。
式神【捜し鼠】(シキガミ・サガシネズミ)によって無数の式神の鼠たちがUDCへと変貌した超高層ビルの内部へと掛けていく。
邪神降臨の儀式が行われている屋上までの最短ルートを探し出そうというのだ。
最短ルートを探し出そうという理由は、主に相棒である桜のためである。
彼女の身につけた巫女服には狂気に対する耐性が備わっているが、長居をしたいものではない。
『こんな場所には一時たりとて長居したいわけじゃあないしなッ! 行くぜ、相棒ッ!』
凶津は鬼面をカタカタ揺らしながら呼びかける。
だが、桜の返答がない。
何を、と思った瞬間には遅かった。
「……あ……ああ……」
桜の瞳が揺れている。
彼女の目の前にはUDCが変貌した桜の深層心理に在る『恐怖』である。それはUDCの悍ましき力であり、彼女のの心が抱える真実でも在るのだ。
故に、彼女は恐怖した。
目の前で姿を変え、形作っていく恐怖の姿。
それは『今まで解決した事件で助けられなかった犠牲者の怨嗟』であった。
何故自分を助けてはくれなかったのか。
救ってはくれなかったのか。
痛い、痛い。死にたくない。
その怨嗟は桜にとっては何ら負い目に感じるところのものではなかったかもしれない。傍から見れば、そういう類のものである。
桜は己の勤めをしっかりと果たしていた。それを誰よりも一番近くで凶津は見ていたのだ。
『ちぃッ! 趣味が悪いッ!』
これが邪神のやり方なのだ。
どこまでいっても人の心を弄ぶことしかしない。
桜の震える体のまま凶津は肉体の主導権を奪い、手にした妖刀で『恐怖』が形作ったUDCを切り捨てる。
「ああ……」
まだ身体が震えている。
そうだろう。わからないでもない。その恐怖、己の力への自負。あらゆる感情がないまぜになって現れる深層心理は、まさしく自罰的なものであったことだろう。
だからこそ、凶津は叱咤する。
『シャキッとしろ、相棒! こんなのは所詮まやかし、俺達のしごとはこんな奴らを少しでも減らす事だろッ!』
鬼面の下で浮かべる桜の表情は如何なるものであったことだろうか。
人の心は弱い。
言うまでもない。傷つきやすく、変形しやすく、直ぐに汚れてしまうものだ。
けれど、その心の弱さを受け入れ、肯定し、強さではないなにか別のものへと昇華することができる。
例えば、それは正義の心であったりする。
だからこそ、凶津は桜を相棒に選んだのだ。
「私は――ッ!」
その瞳に力がこもる。
そう、そうれでこそだと凶津は鬼面を揺らして笑ったような気がした。
『なら、こんな所で立ち止まってる暇はねえ筈だぜッ!』
一人では乗り越えられぬ恐怖も、二人ならば乗り越えられる。
それがヒーローマスクとその依代たる相棒との間に結ばれた、『恐怖』にも負けぬ絆である。
「わかってる……行こう!」
二人は駆け上がっていく。
妖刀の斬撃はUDCを切り捨て、上へ上へと。未だ知らぬ恐怖があっても、二人ならば乗り越えられると絆が強まるのを感じながら――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
私が恐れるものの具現化…きっと私の大切な人々(神職・猟兵仲間・地元住民)を弑する邪神なのでしょう。
ならば全力で打ち克って皆さんを護ります!
と凛々しくUC発動。
しかしUDCの悪意は詩乃の想像を超える。
目の前に現れた猟兵仲間の幻影が告げる。
「大町(or詩乃さん)って本当は■歳(ヒーローズアースの神々の時代から生きてる)なんだ!」
「それでセーラー服着て学校潜入とかよくできますね?」
「サクラミラージュなら通報されますね。」
等の容赦無い言葉が降り注ぐ。
恐るべき精神攻撃に詩乃は耐えきれず「今日の所は引き分けにしておいてあげます<汗>」と捨て台詞を残し、UCによる高速移動で一気に摩天楼を駆け上がるのでした。
人ならざる神とて恐怖という感情は存在する。
それは人にとっては理解し難いものであるのかもしれないけれど、確かに在るのであれば神とて恐怖するものである。
『外なる邪神』が放つ『色彩』はあらゆるものを発狂させる。
力の凄まじさは言うまでもなく。
けれど、その悍ましき力の最たるものが『恐怖』を読み取るという力だ。
深層心理に沈む『恐怖』を具現化し、目の前に形作る力。
超高層ビルの内部にて猟兵たちを襲う。
大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)の目の前に具現化した『恐怖』を生みだすのは、彼女自身が大切にする人々を弑する邪神の力。
「ならば全力で打ち克って皆さんを護ります!」
そのり凛々しくも清廉なる神としての身は、されど清廉であるが故に汚されやすいものである。
それこそが『外なる邪神』の力にして悪意。
神性解放(シンセイカイホウ)を開放し、己に対する危害あるもの全てを浄化消滅させる若草色のオーラは、しかして『色彩』によって塗りつぶされる。
目の前に現れたのはよく知る猟兵の仲間であった。
「大町さんって本当は――」
詩乃の耳に届くのは、人ならざる身への嘲笑であった。
同じ時を生きていたとしても、その速度は異なるものである。誰も彼もが詩乃よりも先に年老いて行く。
それは止められるものではない。
まるで自分だけが置きざりにあってしまったかのような感覚を覚えてしまうだろう。
それが悲しいと思うことは己の心の奥底にしまったものであったはずなのに。それでも、『外なる邪神』の放つ『色彩』は掘り起こすように心をえぐるのだ。
「それでセーラー服着て学校潜入とかよく出来ますね?」
「サクラミラージュなら通報されますね」
そんな言うはずもない容赦のない言葉が降り注ぐ。
セーラー服は別にいいだろ! とその場に誰かいたのならば言ってくれたかもしれないが、ここには詩乃一人である。
彼女を慰める者もいなければ、庇う者だっていないのだ。
いや、ホントマジな話セーラー服はいいでしょ。似合っているんだし、と思わないでもないが、詩乃自身が抱える恐怖には、己の重ねてきた年齢と周囲から見た己の容姿の間に横たわる溝を埋めきれぬという事実があるからだ。
「違うんです! 本当にこれは――!」
悲鳴のような、それでいて若干セーラー服を着て心がはしゃいでいたような自分だっていることに恥じ入りながら、詩乃は超高層ビルの中を駆け上がっていく。
ユーベルコードの力によって『恐怖』を形作るUDCを振り払い、彼女は荒い息を吐き出す。
あまりにも恐ろしい精神攻撃。
これはあまりにもひどい。
「今日のところは引き分けにしておいてあげます!」
そんな捨て台詞を吐くなんて、詩乃の普段からは考えられないことであったけれど、それでも彼女は背を向け屋上を目指す。
親しい人たちからの誹謗中傷がこんなにも心をえぐるとは思いもしなかった。
詩乃は背後を振り返る。
同時にやはりピタリと張り付くように『恐怖』は具現化し、彼女の耳元で言うのだ。
「セーラー服はきっついでしょ。流石に。犯罪ですよ、犯罪!」
「あああっ!?」
まさに詩乃想像を超える罵詈雑言。
ごめんなさいごめんなさい! と詩乃は謝りながら、一気に加速する。その速度は光も斯くやと言わんばかりの最高速度に到達し、『色彩』が見せる恐怖すらも振り切って、詩乃は摩天楼を駆け上がっていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
【結界術】で【呪詛耐性】【狂気耐性】を付与した結界を展開し先へ進む
グリモアの話の通りなら恐れるものが立ち塞がる可能性が高い、って話だったな…
ふと幼少期を思い出す
無意識に使った癒しの力をきっかけに悪魔の子と蔑まれた
その時の村の人達の姿が見える気がする
でも、そんな蔑まれる日々に終止符を打ってくれたのは村に偶然訪れた今は亡き義父
助けてっ義父さんっ!村の人達に蔑まれる内に義父さんに助けを呼んだけど…
なんでっ!お前なんか引き取るんじゃなかったなんていうのっ!
苦しむ内に手が何かに触れる
これはドロップの入った箱か
そうだ、今の俺は猟兵
支え合う仲間がいる!
疑似精霊の加護を受け恐怖を乗り越える!
人は己の恐れるものを正しく理解していない。
理解しようとしても、輪郭はぼやけていくばかりである。たとえ、その恐怖の形を目の前にしたとしても、それを取り除く術を持たないのかも知れない。
恐怖とはそういうものである。
だが、知ることはできる。
己が何を恐れ、何を遠ざけたいのか。
それは他者であったり、過去の記憶であったりもするのかもしれない。
「グリモアの話の通りなら恐れるものが立ち塞がる可能性が高いって話だったな……」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は、事前に得た情報を元に結界術による呪詛や狂気に対する耐性を付与しながら摩天楼、超高層ビルの内部へと足をすすめる。
恐怖。
その単語を見つめ直す。
一口に恐怖と言っても、己の中にあるものをすぐさま取り出すことは難しいだろう。だからこそ、ひりょは己の中にある記憶を手繰る。
意識したわけではない。
けれど、深層心理を読み取る『色彩』は悪意を持って彼の記憶を再現する。
「こいつ、悪魔の子だ……!」
「なんでそんなことができるんだ! 化け物!」
罵る声が己の耳を打つ。
それは過去の出来事であっただけだ。何も恐れる必要なんて無い。
けれど、ひりょの額には冷たい汗が流れていた。
ぐらりと視界が歪む。
いや、『色彩』が放つ極彩色が視界を埋め尽くしていくのだ。何もわからない。けれど、理解できる。
これは『あの時』だと。
理解できるが、それを排除できない。これが『恐怖』を具現化するUDCの悪意であるとわかっていながら、振り払えないのだ。
「助けてっ義父さんっ!」
思わず叫んでいた。
蔑まれる日々に終止符を打ったのは偶然訪れた今は亡き義父であった。義父を呼ぶ。
けれど、それすらも逆手にとって『恐怖』はひりょを追い詰めるのだ。
『お前なんか引き取るんじゃなかっった』
その言葉は蔑みの言葉よりも何よりも、ひりょの心をえぐった。
嘗て救われたはずの心が再び叩きおとされたような気さえした。それが悪意。人の心を弄ぶ邪神の悪意であった。
結界術でどれだけ心を覆ったのだとしても、それでも人の心は弱いものであると知らしめるような行い。
それに屈するわけには行かないと頭で理解できていても、心が叫ぶ。
あの日流した涙が、ひりょの瞳から溢れそうに成る。
けれど、その手に触れたのは箱であった。からからと音のなるドロップの箱。
記憶が『恐怖』を形作るのであれば、それを乗り越えるための形もまた心から出るものである。
「そうだ、今の俺は猟兵――」
贈られた心が在る。それがひりょの心を燃やす。
どれだけの恐怖が己を襲おうとも、決して屈することのない心がある。
支え合う仲間がいるのだ。
決して一人ではないと知った時、人の心は暖かなものを生みだす。
その暖かさに後押しされるように、ひりょは立ち上がる。
「精霊たちよ力を貸して!」
叫ぶ心がユーベルコードを発現させる。疑似精霊の加護(ギジセイレイノカゴ)によって、ひりょは恐怖を乗り込める。
嘗てあった過去も、これから続く未来へ至るための轍に過ぎないのだと知る。
なかったことにはできない。
けれど、それを積み重ねていくのが人の人生であるというのならば、ひりょは亡き義父に誓って一歩を踏み出すのだ。
「俺は負けないよ、義父さん。あの日義父が俺にそうしてくれたように」
間違いなんかじゃないと胸を張るために、ひりょは恐怖齎す悪意を真っ向から見据え、摩天楼を登るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW
HAHAHA! 大物狩りでありますな!
いろいろ不気味な様子デスガ、大丈夫そうデース!
触手でも肉壁でも切り捨てて、勢いよく駆け抜けるでありますよー!
【深層心理】
彼女は物理的に恐れているモノはない。
精神的な評価を恐れている。
バルタンは、不必要とされることを恐れている。
用済みだ、もう仕事はない。役目は終わったと見切られ、捨てられることを恐れている。
猟兵になり活動することで充足して満喫しているが、無自覚な恐怖は消えることはない。
そのことを突き付けられた時、バルタンは立ち竦むのか。それとも目を背け走り逃げるのか。
共に戦う仲間がいるならば、あるいは……乗り越えられるのか。
アドリブ、アレンジ、連携歓迎
摩天楼に高らかな笑い声が響き渡る。
「HAHAHA! 大物狩りでありますな!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、メイド服を翻し、摩天楼を駆け上がる。
手にするのは肉切り包丁の如き無骨な刀。
それを振り回して、『外なる邪神』が放つ『色彩』によって変化したUDCを片っ端から切り捨てて進むのだ。
戦場にありてメイドである彼女のやるべきことは一つである。
「色々不気味な様子デスガ、大丈夫そうデース!」
触手や肉壁など彼女にとって障害にすらならない。勢いよく駆け上がっていく姿はまさに一陣の風のようでもあった。
そう、バルタンに物理的に恐れるモノなどない。
どれだけ悍ましき怪物が目の前に現れようとも、彼女に動揺は走らない。嫌悪もないだろう。
ただ、目の前にいるという理由だけで彼女は己の敵を切り捨てるだろう。
それこそがサイボーグであり歴戦兵である彼女の存在意義だ。
人生を戦場に費やしたからこそ、生まれた資質でもあったのだろう。人は彼女を求めるだろう。
必要するだろう。
戦場がこの世からなくならぬ限り、彼女の力は必要とされ、必ず彼女はそれに答える。
それこそがバルタンという猟兵の生き方であった。
「……――」
そんな彼女の足が止まる。
目の前には己の深層心理を読み取った『恐怖』の具現化。
それは具体的な人の形をしていない不定形なものであったが、バルタンは足を止めた。
なぜなら、彼女が恐れるのは精神的な評価である。
そう、必要とされることを最上とするのならば、尤もあってはならぬのは『要らぬ』という評価である。
「そんなことはありまセン」
自分は必要とされている。
用済みだ、もう仕事はない。役目は終わった。
その言葉が、バルタンの中で響き渡る。嘘だ、と小さくつぶやく声が自分のものではないといい切ることができなかった。
「違う」
その言葉はかき消される。
猟兵として活動することで充足して満喫しているはずだ。けれど。
そう、けれど――。
無自覚な恐怖は消えることはない。
目の前の『色彩』はそれを読み取って、突きつけるのだ。
これが現実であると。
どれだけ虚勢を張ろうとも、そこにある真実から目を背けることは出来ないのだと。
バルタンは懊悩するかもしれない。
けれど彼女は一人ではない。
「この場には、いろんなひとたちが来ていマス。だから、ワタシの助けを必要としている人がいるノデス」
だから、それは嘘だ。
たとえ、自分が抱える根本的な恐怖は変わらないのだとしても。
自分を必要とする人がいないことは嘘だ。
その瞳が輝くのは誰かのため。それが歪な感情から来るものであったのだとしても、バルタンは止まらない。
振り上げた肉切り包丁が勢いよく不定形の『恐怖』の脳天をかち割り、唐竹割りのように両断する。
「――だから、ワタシは行くのデス!」
必要とされるために。
自分の力が、助けが必要だと叫ぶものがいるかぎり、バルタンは止まらない。乗り越えられず喘いだとしても、それでも立ち止まることを己自身が許さないのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
この世界を滅茶苦茶にさせる訳にはいかないからね
絶対に阻止するよ
目が眩まないよう
ゴーグルで光を遮りつつ進もう
何かたくさんの人影が見えるね
これは僕?
それも女の子っぽい服装だったり
ドレスだったりメイド服だったり
元に戻る事を諦めてこの姿を受け入れた僕か
その手に持っている可愛い服は何だ
まさかそれに着替えろとでも言うのか
嫌だ、絶対に僕は諦めないぞ
受け入れてしまえば楽になりますのに
分霊を通さず本体が語りかけてくるなんて
相当ご機嫌なんだろうけど
内側から勝手な事をいう邪神の言葉は無視
この状況で力を借りるのは本当に本当に癪だけど
外なる邪神の企みを何とかする方が優先だから
神気で周りごと石化し灰色に塗りつぶして進むよ
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はゴーグルの遮光レンズ越しに『外なる邪神』の肉体の内部へと変貌した超高層ビルを征く。
目が眩まぬようにと遮って居ても尚、突き抜けてくる極彩色の『色彩』は晶の視界を塗りつぶすには十分すぎる強烈さであった。
「この世界を滅茶苦茶にさせる訳にはいかないからね」
絶対に阻止しなければならないと晶は力を込める。
足を進める度に、己の視界に人影がちらつく。
それは最初は如何なるものか理解もできなかった。
けれど、超高層ビルを登っていく度に影は実像を帯びて、はっきりと晶の視界を埋めていくのだ。
「これは……」
晶は人影に見覚えがあった。
いや、認めたくないだけであったのかも知れない。
これが晶の抱える深層心理に在る『恐怖』そのものであった。
「僕……?」
晶は邪神と融合することに寄って性別を反転させられた存在である。
だからこそ、目の前の影が結ぶ像を信じることが出来なかった。そこにあったのは、己だ。
それも女性の服装に身を包んでいたり、ドレスであったりメイド服であったりと様々な服装を彩る女性の己。
それは見るに堪えないものであったかもしれない。
けれど、わかってしまったのだ。
その『恐怖』の意味を。
何故、これが己の深層心理から組み上げられたのかを理解してしまったのだ。
「元に戻ることを諦めてこの姿を受け入れた僕か……」
己の恐怖の根源。
戻ることを諦め、何もかも投げ捨てた自分。それを己は恐れているのだと、はっきりと突きつけられてしまった。
近づいていくる影。
それが己だとわかっているからこそ、晶は頭を振る。
「いやだ。絶対に僕は諦めないぞ」
叫ぶ。
けれど、その叫びすらも無視するように人影は可愛らしい服装を手に近づいてくる。
「受け入れてしまえば楽になりますのに」
晶の内側にある邪神本体が呼びかけてくる。
その声色はご機嫌そのものであった。分霊を通さずに直接語りかけてくるほどにご機嫌なのは、あまりにも勝手な言葉であった。
だから晶は無視を決め込む。
けれど、この状況を切り抜けるためには邪神の力を駆りなければならない。それは本当に癪に障ることであったけれど、『外なる邪神』の企みを何とかするほうが優先である。
「邪神の領域(スタグナント・フィールド)――!」
ユーベルコードに輝く瞳が言う。
自分は決して諦めないし、屈することはないと。
なんとしてでも、元の姿に戻るのだと決意する晶の言葉が力強く放たれ、周囲の存在を停滞・固定させる神気で覆っていく。
自分の体が石化していくのも気にせずに、一気に摩天楼の内部を飛ぶ。
凄まじい速度で飛翔し、駆け抜けながら、邪神の肉体の一部である『色彩』を石化の灰色で塗りつぶしながら、上へと突き進んでいく。
止まらない。
立ち止まるわけにはいかないのだ。
たとえ、邪神の力が元の姿を取り戻そうとする己の足を取るのだとしても、諦めることだけはしない。
晶はそう決めているのだ。
どれだけ時間がかかってもいい。受け入れることだけはしてはならない。
もしも、受け入れるのならば、その時は自身が猟兵として、そして男として死んだ時であろう。
「だから、諦めないって言うんだよ――!」
内側の邪神が笑う気がした。
けれど、それさえも振り払って晶は摩天楼を飛ぶのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『傍観者達』
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POW : 静観
【自身から溢れ出続ける赤い液体】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
SPD : 観戦
【自身の身体の一部】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【自身は弱体化。対象の装備武器を殺戮捕食態】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ : 観賞
【対象の精神に「生きる力」を削ぎ落とす衝動】【を放ち、耐えきった、或いは回避した者に】【強制的に自身の力の一部】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
イラスト:猫背
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちは狂った『色彩』が溢れる摩天楼の内部を征く。
どれだけ恐怖が彼らに立ちふさがったとしても、彼らの歩みは止まらない。
なぜならば、彼らは今を生きる者たちである。過去から滲み出たオブリビオンと違い、己の意志で未来を切り開くことを是とする者であるからだ。
故に、『傍観者達』は見つめる。
その割れた顔面から滴り落ちる赤い液体が極彩色の『色彩』に呑まれていったとしても、見つめ続ける。
「愚かな。真理を得ることができるというのに。恐怖の先にこそ狂気があり、狂気の先にこそ真理が見つめるというのに」
だというのに、それを拒むとは愚昧極まりないと『傍観者達』は猟兵たちを見つめる。
嘗ては邪神信奉者たちであっただろうUDC怪物の群れが摩天楼の先、屋上から猟兵たちを阻もうと迫るのだ。
「故に我等は見つめ続けよう。お前達が『色彩』に彩ろられ、真理を得るために。絶えず見つめよう。絶えず照らし続けよう」
彼らが放つ『色彩』はあらゆる周囲をUDCへと徐々に変えていく。
それは猟兵も例外ではない。
長く時間をかければ掛けるほどに猟兵とて、如何なる影響が出るか知れない。
故に、猟兵たちは彼らを突破し、『色彩』降り注ぐ屋上へと至らねばならないのだ――。
久瀬・了介
真理など知った事か。世界がどんな色彩に染まっていようと関係ない。突入時からずっと目は閉じていた。肉眼に頼らない「怨霊の目」の超感覚的【視力】で敵の存在のみを感知する。建物が全て敵の体ならば地形全てを把握出来る。
敵を撃ち倒しつつモノクロの世界を突き進む。
「生きる力」を削ぐ衝動。誰が生きていると?
それでも、死に抗う意思を生きる力と呼ぶなら、死という安寧を求める衝動に削がれる事もあるだろう。
怒りと憎しみで【狂気耐性】。死んでいる暇などない。
胸のエンジンは本来あらゆる衝動を力に換える。死の衝動を吸収しろ。【エネルギー充填】【リミッター解除】。
敵の力を上乗せし【雷獄】による【属性攻撃】。全てを焼き払う。
『傍観者達』は言う。
真理こそが求めるべきものであり、齎される唯一のものであると。
人は生きながらにして、真理を求めることこそが正しき生き方である。故に人は己が信じるところのものを依り代にする。
けれど、その胸にたった一つのことだけを秘めた者がいるのだとして、そこに真理の一端は届くのだろうか。
答えは否である。
「何故進む。何故立ち止まらない。ここに真理は在る。何も進む必要など無いのだ」
UDC怪物『傍観者達』が言う。
彼らにとって此処が終着点である。だからこそ、彼らは彼らが見つめる者の内側にある『生きる』という力を削ぎ落としていく。
だが、彼らは知らない。
彼らが相対する者が如何なる者であるのかを。
「真理など知ったことか。世界がどんな色彩に染まっていようと関係ない」
久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)にとって、真理など足を止める理由にもならなければ、今此処に在るという理由にすらなっていない。
彼の胸の中にあるのはたった一つのことだけである。
それは即ち殺意。
オブリビオンに対する殺意だけが、了介の歩みを止めさせぬたった一つのものである。『生きる』という力が在るのだとして、今の彼にはそれはない。
何故ならば、すでに一度死んだ存在であるからだ。
彼を突き動かすのは『生きる』力ではなく――。
「殺す」
魂の衝動がヴォルテックエンジンから変換され、ほとばしる電流となってユーベルコードの輝きを放つ。
了介は己が生きているとはいい難いと信じている。
死の先へと向かう存在であるデッドマンにとって、それは到底意味があるものではなかった。たとえ、仮に存在したとして、今の了介はそれとは別のもので身体を動かしていく。
「誰が生きていると?」
「何故生きていないのに、その体は動く。なんのために。真理を求めるために死の向こう側へと至った存在ではないのか」
『傍観者達』達が言う。
彼らにとって相対するもの全てが『生きる』力を持つ者である。
だからこそ、目の前の敵に有利に成るデメリットを抱えても尚、『生きる』力を削ぐことができる。
けれど、それでも了介は止まらない。
「発雷」
短く告げた言葉が、雷獄(ライゴク)の如き雷撃を『傍観者達』たちへと打ち込む。
彼の衝動は削がれることはない。
仮に死に抗う意志を生きる力と呼ぶのならば、死という終着点、安寧を求める心が削がれたかもしれない。
だが、今それをする時ではない。
了介の瞳には何が映っている?
そう、オブリビオンだ。
己が殺すべき対象が今も現界し続けている。ならば、殺すしかない。
リミッターを外したヴォルテックエンジンが唸り声を上げる。それは怨嗟のうなりであり、彼の魂の衝動全てを雷撃へと変え、『傍観者達』たちを打ち砕いていく。
全てを薙ぎ払う雷撃の一撃が、了介に迫った『傍観者達』たちを尽く焼き払っていく。
「真理に至った。至ったはずなのに、それを受け入れない者がいる。愚かな、蒙昧な、何故、何故、我等のちからが」
色彩の力すらもはねのける了介の憎しみと怒りが、彼らを恐怖させる。
恐怖を克服するために欲した真理すらも破壊する了介のオブリビオンに向ける憎悪が、彼らの抱く真理すらも破壊していく。
「死んでいる暇などない。貴様達が存在している。ただそれだけが、己胸のヴォルテックエンジンが止まらぬ理由だ」
そして、知るがいい。
今相対する存在が何であるかを。
オブリビオンを滅ぼし、あらゆる過去の化身を討ち滅ぼす憎悪の権化であることを知れ。
黒き稲妻が極彩色の『色彩』すらも塗りつぶし、摩天楼に轟音を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
ぐぬぬ。精神攻撃とは恐るべし……デスガ! 屈しはマセーン!
この世界をみょうちきりんな存在で染め上げるなど、見過ごせマセーン!
階段を駆け抜けて、レッツゴー!
オー。怪物にされてしまったとは、かわいそうに。
デスガ、被害を拡大させる訳にはいきマセーン……。
今、介錯してあげマース!
真理とやらを話し合うつもりはありマセーン!
「六式武装展開、煙の番!」
認知がトリガーとなるならば、煙幕で目晦ましマース!
そのままだといずれ煙も汚染されるのデショーガ、少しの時間を稼げば問題はありマセン!
回復する余地を与えず、パイルバンカーの一撃で成仏させてあげマース!
おやすみなさいエブリワン、アナタたちの仇は必ず討ち取りマース!
人の心に直接働きかける『色彩』。その恐ろしさを身を持って、猟兵たちは思い知ったことだろう。
彼らにとって物理的な脅威はいくらでも振り払うことができる。
そのためのユーベルコードと言って差し支えない。それほどの力を抱えても尚、心の弱さまでは覆うことは出来ないのだ。
『外なる邪神』は嗤っているだろう。
心というものを持つからこそ、人は堕落するのだと。
誰かに頼り、すがり、そして引きずるように巻き込んでいく。
それが人だと嗤うのだ。
けれど、それでもと叫ぶ者がいる。
己のを頼りにする者がいるのであれば、どこまででも戦う事のできる存在が猟兵であるというのならば、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は人々に求められることによって力を発揮する者であったことだろう。
「ぐぬぬ。精神攻撃とは恐るべし……デスガ!」
滴る赤い液体を撒き散らしながら『傍観者達』が迫る。
彼らは互いを赤い液体で癒やしながら、猟兵達の攻撃を凌ぐだろう。自身が疲弊したとしても、互いに支え合うことで邪神降臨の儀式を阻もうとする者たちを阻む壁となるのだ。
それは皮肉にもバルタンとは真逆の考え方であったことだろう。
自分を犠牲にして誰かを助ける。
けれど、バルタンは己を頼るものの為に力を増す。同じことであるように見えて、バルタンは己を支える骨子を他者の中に見出すのだ。
「我等が真理に導こうというのに。何故、お前達は阻むのだ。この『色彩』に染まりさえすれば、人はだれでも真理に到れるというのに」
極彩色の『色彩』がバルタンを打つ。
その輝きは凄まじいものであり、時間が経てば猟兵と言えど影響を受けざるを得ないだろう。
「屈しはしマセーン! この世界をみょうちきりんな存在で染め上げるなど、見過ごせマセーン!」
目の前に相対する『傍観者達』たちは嘗ての邪神信奉者たちであろう。
UDC怪物へと姿を変えられたことを憐れに思うことはあれど、これ以上同じような目に合う者を増やしてはならぬとバルタンは駆け上がっていく。
「今、介錯してあげマース!」
真理を謳う者と問答などするつもりはない。
その瞳が拒絶に輝く。
決して解り合えない存在を前にしてバルタンは躊躇わない。
「六式武装展開、煙の番!」
バルタンの手にあるパイルバンカーが煙を噴出し、周囲をけむらせる。
それは『色彩』による影響を絶つために視界を遮り、バルタンの動きを予測させぬためであった。
煙の中から凄まじい勢いでバルタンが駆ける。
その姿はまるで矢のようであった。
刹那。
バルタンの手にしたパイルバンカーがユーベルコードに輝く。
たとえ、煙であっても『色彩』の力はUDCへと変えてしまうだろう。けれど、案ずることは何もない。
なぜなら、バルタンのユーベルコードは目にも止まらぬ俊足の一撃。
「おやすみなさいエブリワン、アナタたちの仇は必ず討ち取りマース!」
望んだのか。
それとも望まなかったのか。真理を求めたのか、そうでないのかもわからない。
けれど、人として生まれた以上、人として死んだほうがよかったはずだ。
だからこそ、バルタンは渾身の一撃を見舞う。
「――粉塵纏・破城槌(ヴァニッシング・バトリングラム)!」
回復させる余裕すらない超高速かつ大威力の一撃が『傍観者達』の身体を一撃のもとに突き破って霧散させていく。
煙が晴れた時、そこに存在していたのは、コンバットメイド服に身を包んだ誰かのために戦うことを是とするバトルサイボーグメイドの姿だけであった――!
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
人生は人それぞれ違う
そして自分の人生をどんな色に染めていくかは自分で選択していくもの
決して誰かから強要されるものじゃない
真理とやらも決して誰かから強制的に与えられるものじゃない
だから、俺はその真理を否定する
この色彩を破壊して明日を手に入れる!
ドロップを媒体に固有結界・黄昏の間を発動
風の疑似精霊を召喚し【高速詠唱】で自身の周囲に風の防御壁を形成
さらに【オーラ防御】【呪詛耐性】を纏わせて敵の衝動をその身に受けないように守りを固める
敵の力の一部が宿りそうになったら【結界術】で強制排出
否定するといった!強要される力など不要だ!
【破魔】を付与した光陣の呪札の【乱れ撃ち】で敵を消し飛ばす
UDC怪物へと変貌した邪神信奉者たちは『傍観者達』へと変貌を遂げた。
赤く滴る謎の液体を撒き散らしながら摩天楼の屋上から津波のように猟兵達に迫る。
彼らにとって既に『真理』とは『色彩』によって得られたものである。
「故に我等が猟兵達に教えてやろうというのだよ。『真理』とは如何なるものかを。この輝きの前に人の生きる意味など大したものではないのだから」
彼らが放つのは発狂するような『色彩』である。
その光は猟兵であっても、長く受け続ければ何らかの影響を受けざるをえないだろう。
それが『外なる邪神』の凄まじき力であったけれど、真っ向から否定する言葉がった。
「人生は人それぞれ違う」
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は摩天楼を真っ直ぐに駆け上がっていく。
目指すは屋上の邪神降臨の儀式場。そこへ至らなければ、狂った『色彩』がUDCアースを飲み込み、この世界は邪神のものとなってしまうだろう。
だからこそ、ひりょは駆け抜ける。
「そして自分の人生をどんな色に染めていくかは自分で選択していくもの。決して誰かから強要されるものじゃない」
「だが、それでも誰もが己の色を決められるわけではない。誰もが決めてもらいたがっているのだ。自分の意志があると思いこむのはやめろ。誰もが自身で何もかも決められるわけではないのだ。見よ、この『色彩』を! これこそが真理だ」
『傍観者達』の言葉が溢れる。
それは『生きる』という力を奪う衝動であった。
誰もが強く在り続けることはできない。誰もが自分の意志で決定するだけの力を持っているわけではない。
水が上流から下流に流れていくように、人の心もまた易きに流されるものである。
だからこそ、流れに逆らって自分の意志で決めることを億劫に思う。誰かのせいにして、誰かに決めてもらったほうが容易い。
だが、とひりょは叫ぶ。
「真理とやらも決して誰かから強制的に与えられるものじゃない。だから、俺はその心理を否定する。この『色彩』を破壊して明日を手に入れる」
伸ばした手にあったのはドロップ。
それが何かを意味することを知るのは、彼自身だけであったことだろう。
けれど、その確固たる己があるからこそ、ユーベルコードは輝く。
「場よ変われ!」
輝きは四大元素の疑似精霊によって変換される固有結界・黄昏の間(コユウケッカイ・タソガレノマ)へと変わる。
極彩色の『色彩』がどれだけ世界を侵食しようとも、ひりょのユーベルコードはそれを上書きしていく。
風の疑似精霊がひりょの周りに防御壁を形成し、呪詛への耐性を高めたオーラの力が『生きる』力を削る衝動を寄せ付けない。
「何故受け入れない。力を受け入れれば、貴様はさらなる高みに登れるというのに」
『傍観者達』は訝しんだ。
衝動に耐えきれば、猟兵は力を増す。それがこのユーベルコードだ。
強大な力へのデメリットとも言えるが猟兵であればこそ、力を求めるはずだ。けれど、ひりょはその齎される力を結界によって排出する。
「否定すると言った! 強要される力など不要だ!」
否定する。
真理を否定する。それは無知蒙昧なる輩のやることだと『傍観者達』は嘆いた。いや、憤怒した。
得た真理をもたらそうとする己達の行いを、己達が歩んできた道のりを全てを否定するひりょに対する憤怒が滴り落ちる赤い液体を撒き散らしながら、洪水のように溢れた。
「全てを飲み込もう。貴様が否定しようが、『真理』は変わらぬ――!」
『傍観者達』たちが迫る。
けれど、ひりょは瞳をユーベルコードに輝かせる。
その手にあるのは破魔の力宿る光陣の呪札。
それは光の束となって乱れ撃たれ、迫る『傍観者達』を討ち貫いていく。
「俺は力を求めているわけじゃない。みんなで迎える明日が欲しい。だから――!」
『真理』など無くとも朝日は登る。
人は心に確固たるなにものかがあれば、それだけで生きていける。
その強さを知るからこそ、ひりょは己の力を持って『傍観者達』たちを打ち払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
例え(ゴニョゴニョ)歳であっても、似合うならセーラー服を着ても良いじゃないですか!可愛いは正義かつ真理です!
そして身も心も醜悪な貴方達は悪です。可愛そうですが貴方達の歪んだ真理ごと成敗します!
しつこく歳の事で攻められ続けた結果、ついに開き直って激おこぷんぷん丸状態となり、ある意味無敵化した詩乃は、狂気耐性・呪詛耐性・浄化・結界術で邪神の力(色彩等)を弱める結界を展開。
更にUCにより詩乃が神として本来持っている邪神討伐能力を強化して煌月に宿す。
神罰・破魔・光の属性攻撃を煌月に追加付与してのなぎ払い・貫通攻撃・範囲攻撃による眩い光で周囲全てを塗りつぶし、色彩も赤い液体も傍観者達も全てを消滅する!
人の身と神の身に流れる時間の早さは一定ではない。
だからこそ、神なる者から人を見た時、その儚さに涙するのかもしれない。逆に人なる者が神を仰ぎ見た時、その普遍にも近い姿を見て畏れ敬うのかもしれない。
どちらにせよ、神は変わらずそこに在る。
大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)は植物を司る女神である。
自然のサイクルを見守り、慈しむ女神であるからこそ、怒り猛ることは滅多になかったことだろう。
全てを慈しみ、優しく見つめる瞳こそが詩乃の神たる本質であったのかもしれないからだ。
けれど、今の詩乃は違う。
端的に言えば、激おこぷんぷん丸であった。ちょっと何言ってるのか、わからんかもしれないが、大変にご立腹なのである。
「たとえごにょごにょ歳であっても、似合うならセーラー服を着ても良いじゃないですか! かわいいは正義かつ真理です!」
なら、ごにょごにょのところをはっきり言ってみようかというツッコミをする者はいなかった。
そんなことをすればどうなるかなんて判りきっている。
神の怒りが降り注ぐ事間違いなしであり、『傍観者達』をしても、むしろ諦観して傍観することに徹する方が良いと判断したのだろう。
「そんな真理など何処にもない。我等が『外なる邪神』が齎す真理こそが、『色彩』こそが全てを救うのだ。それがわからぬ神など神ではない」
『傍観者達』の姿は身体は黒ずみ、顔面が割れ溢れる赤き液体はとめどなく溢れ続けている。
発狂そのものであったけれど、彼らにとって『真理』とは即ち己達の身体である。
彼らの身体から発せられる『色彩』こそが世界の全てを遍く照らす輝きなのだ。
「身も心も醜悪な貴方達は悪です。可愛そうですが、貴方達の歪んだ真理ごと成敗します!」
詩乃はしつこくUDCから齢のことをねちっこく攻められ続けた結果、開き直っていた。
いいじゃないか、ごにょごにょ歳であったって。
別に問題など無いのである。だって可愛いし。似合ってるし? まだまだいけるし?
そんなふうに開きなおった詩乃の力は狂気、呪詛をはねのける浄化の結界の力で『色彩』を放つ邪神のちからすらも弱める。
それは尋常ならざる力であったことだろう。
「これより神としての務めを果たします」
その瞳がユーベルコードと、齢のことを言われた怒りに輝く。
彼女の神力と大地にやどりし力、そして人々のセーラー服かわいい! という想いが詩乃の力を強化していく。
それこそが、神事起工(シンジキコウ)。
此処は邪神の体内としての器であれど、此処に至っては詩乃の女神としての領域そのものである。
「この輝き……我等が真理を塗りつぶしていく……! おおおっ、許されることではない!」
『傍観者達』たちが迫る。
その身に宿した『色彩』の力を持って詩乃の放つユーベルコードの輝きを汚そうと迫るのだ。
けれど、詩乃の怒りは燃え上がるばかりである。
激おこであり、むかちゃっかふぁいやーというやつである。ちょっとわかんないなって思った者もいるかもしれないが、とにかく怒っているのである。
女の人に年齢を聞くもんじゃない。
それが今回の真理である。
「これが神罰です――!」
ものすごくポジティヴに言い直した詩乃の手にした薙刀が破魔の力を受けて光り輝き、『傍観者達』を一気に薙ぎ払い、まばゆい光でもって全てを塗りつぶしていく。
それは色彩も赤い液体も、それこそ『傍観者達』をも全て消滅させる極大なる一撃であった。
今此処に在りて、詩乃に敵う者などいないだろう。
故に敵なし。
普段怒らない穏やかな人が怒ったときは怖いというが、それを地で行く詩乃の放つ神罰の輝きは『外なる邪神』の『色彩』すらも真白に塗りつぶすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
狂気の先にこそ真理だあッ!?
んなのは真理に触れたんじゃなくて気が触れただけだろッ!
てめえらと話してると、こっちまでおかしくなりそうだぜッ!
さっさと斬り捨てて先に進むとするぜッ!
いけるな、相棒ッ!
「・・・もう大丈夫。何時でもいけますッ!」
上等ッ!雷神霊装でぶちかますぜッ!
「・・・転身ッ!」
先手必勝だ。破魔の雷撃を纏わせた妖刀の斬撃放射をありったけ浴びせてやる。
斬撃放射に耐えた奴には高速移動で敵の視界に入らないように縦横無尽に動きながら近付いて直接その気色悪い顔面に雷撃を纏った妖刀の斬撃を叩き込んでやる。
【技能・先制攻撃、破魔】
【アドリブ歓迎】
人と人との間に横たわるのは、いつだって誤解である。
だからこそ人は対話によって互いの誤解を解きほぐして理解していく。
ならば『傍観者達』たちの言葉は、その誤解を解こうとすることであっただろうか。
答えは否である。
彼らにとって、己達が放つ『色彩』こそが『真理』であり、それ以外を認めることをしない。
結局の所、彼らは彼らのエゴを突き通したいだけなのである。
「我等が『真理』を受け入れぬか、猟兵。こんなにも素晴らしい、清々しい気分になれるというのに。ただ一言受け入れるだけでいいのだ。我等と同じに、我等と『真理』を得ようとは思わないのか」
『傍観者達』の言葉に神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)は吐き捨てた。
『狂気の先にこそ真理だあッ!? んなのは真理に触れたんじゃなくて気が触れただけだろッ!』
凶津が叫ぶ。
その鬼面がガタガタと揺れ、口角泡を飛ばす勢いでまくしたてる。
その真理が全てを救うというのであれば、己の相棒である桜がどうしてこんなにも苦しまなければならないのだと叫んだ。
彼女の深層心理を読み取り、彼女の抱える恐怖をほじくり返したことが『真理』であるというのならば、それは『正義の心』を宿すヒーローマスクにとっては論外であった。
『てめえらと話してると、こっちまでおかしくなりそうだぜッ!』
さっさと切り捨てて進まなければならない。
猟兵に『色彩』は即座に影響を及ぼすものではない。けれど、時間がかかれば凶津も、そして桜も影響を受けてしまうかもしれない。
それはどうしても避けなければならないものである。
「愚かな。全ては『外なる邪神』の『色彩』によって染まっていくというのに……」
『傍観者達』たちは聞き分けのない子供らを諭すように、一歩前に踏み出す。
けれど、凶津たちは違う。
『いけるな、相棒ッ!』
「……もう大丈夫。何時でもいけますッ!」
二人の瞳がユーベルコードの輝く。
互いに信頼しているからこそ、絆が結ばれているからこそ、その輝きは真なるものであり、『色彩』にも染まらぬ輝きであった。
『上等ッ! 雷神霊装(スパークフォーム)でぶちかますぜッ!」
「……転身ッ!」
それは雷鳴の如き轟音であった。
『傍観者達』たちは気づかなかった。気づくことはできなかった。
二人の力が合わさることによって顕現する霊装。
その力は目にも留まらぬ高速移動。
一瞬で凶津たちは『傍観者達』の背後に走り抜けていた。
見えなかった。
何が起こったのかさえ、彼らは理解できなかったことだろう。そして、自分たちの身に滅びが訪れたことさえ理解できなかった。
『先手必勝ってやつだッ!』
凶津の鬼面が笑う。
どれだけ『傍観者達』たちのユーベルコードが力を増そうとも、見えぬ相手に振るうことはできない。
『傍観者達』たちは一様に、その顔面の避けた赤い滴り落ちる液体を蒸発させられ、一文字に切り捨てられていた。
まさに絶技。
二人の力が合わさったことに寄る俊足の雷撃の一撃。
それは妖刀に集約された雷の力を持った斬撃であった。
「なに、が――」
『お前達に知る必要なんてない。相棒の心を弄んだお前達にはなッ!』
振り抜かれた斬撃の残心を終えた頃、彼らの背後にはすでに『傍観者達』の姿はなかった。
あったのは、滅び霧散していくオブリビオンとしてのUDC怪物のみ。
あまりにも凄まじい斬撃の速度は誰も目で追うことなどできない。
これが二人の見せる絆の力であるというように、摩天楼の先、屋上へと一瞬で駆け上がっていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
傍観者なら人に迷惑かけない所で静かにしててくれ
もう話し合いの通じる相手でも無さそうだし
ガトリングガンで薙ぎ払うよ
鑑賞による衝動は予めUDC組織から借りておいた護符で耐えよう
よくわからない力も気合いで跳ね除けるつもりだよ
あら、そんな事せずとも大丈夫ですの
私がいるのですから従者ごときの力など物の数ではありませんわ
女神降臨を使用して傍観者の力を消し去りますの
内側で好き勝手言ってるけど
さっきの後でこのヒラヒラは嫌がらせか
最近「私」の扱いがぞんざいですの
ですから神らしいところを見せませんと
邪神らしいの間違いだろ
怒っても喜ぶだけだろうから
無視して傍観者達を撃ち倒したり
使い魔に石化させたりして駆除していこう
「傍観者なら人に迷惑を懸けない所で静かにしててくれ」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は嘆息するように黒き身体と頭部から溢れる赤き液体を撒き散らす『傍観者達』を見やり、呟いた。
彼らは『外なる邪神』の『色彩』を受けてUDC怪物へと成り果てた者たちである。
最早彼らを救うことは出来ず、倒すしか無い。
それにもう話し合いの通じる相手でもないと晶は判断していた。
「それはならぬ。我等が『真理』をあまねく全てに知らしめるまで終わることはない。我等の『真理』こそが世界に必要なのだ。『色彩』にして、極彩。これをもって人々を『真理』に導き『外なる邪神』をこの地球に呼び込むことこそが、『真理』なのだ」
『傍観者達』たちは言う。
彼らにとっての『真理』とは即ち、邪神降臨である。
だからこそ、猟兵と『傍観者達』たちは相対している。その言葉を聞いて、晶は改めて相互理解が不可能であると男児、ガトリングガンの弾丸で黒き身体蠢くUDC怪物たちを薙ぎ払う。
しかし、屋上から湧いて出るように襲い来る『傍観者達』は未だ数が多い。
しかも、彼らが放つ『色彩』は猟兵である晶をも時間さえ許せばUDCへとかえるほどの力を持っている。
UDC組織から借りておいた護符がなければ、晶とて影響を受けていただろう。
「よくわからない力も気合ではねのけてみせるさ!」
晶は気合を入れ直す。
邪神降臨の儀式を阻むには、これからが本番だからだ。
「あら、そんな事せずとも大丈夫ですの。私がいるのですから従者ごときの力など物の数では有りませんわ」
身に秘めた邪神が言う。
そのユーベルコードの力が晶の身体をふりふりとした宵闇の衣に包み込み、女神降臨(ドレスアップ・ガッデス)の力を持って魔力の翼を広げさせるのだ。
内側で何か好き勝手に言っているな、と晶は半ば諦めたように、ひらひらしたスカートの裾を翻しガトリングガンを放ち続ける。
まるで嫌がらせではないかと晶は思ったけれど、邪神はそのつもりはないようであった。
「最近『私』の扱いがぞんざいですの。ですから神らしいところを見せませんと」
それは悪意ではない。
わかっているからこそ、質が悪いのだ。
価値基準が違いすぎる。その溝を埋める努力をすることこそが無駄ななのかもしれない。けれど、それでも力が溢れることは言うまでもない。
「邪神らしいの間違いだろ……」
あからさまに怒って見せても、邪神は喜ぶだけである。
これまでの経験から晶はもうわかっているのだ。だから、無視を決め込んで、使い魔達を飛ばして『傍観者達』を石化させてガトリングガンで砕いていく。
内側でなんやかんやと喚くように言う邪神の言葉を聞き流す。
「付き合ってらんないよ。今は戦っているんだからさ」
自身がやられては邪神も元も子もないはずなのだが、何かしら言うことだけは止めないのだろう。
外と内。
二重に邪神の力を受けながら戦えるのは晶くらいなものであっただろう。
『色彩』と『停滞』。
2つの権能がせめぎ合う摩天楼でガトリングガンの銃声と『傍観者達』が砕け散っていく音だけが響き渡る。
「あともう少し……!」
摩天楼の屋上へと至る道筋が見え始める。
この茶番のような戦いもあと僅かで終わる。それを思えば、晶は未だ身の内側で邪神らしさとは何かを訥々と語りかけてくる邪神の言葉など、些細なものであると諦めの境地に至るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
真理…真理か
研究者としては魅力的な言葉ではあるね
でも残念、『外なる邪神』が記す真理なんて参考にはなっても興味は無いんだ…
あとその格好になるのグロくて勘弁
いやもうちょっとさあ…可愛くなんない??
なんというかゆるふわ系とかさ?
●
「生きる力」…か、むしろこの状況こそそれが湧いてくる!
だってこんなに楽しい事が目の前にあるんだよ?それで萎えてちゃ研究者の名折れだよ
教えてあげる、私の真理
私こそ、厚顔無恥な創造主…デミウルゴスに至る事!
どう?今からでも乗り換えない?
今なら洗剤も付いてくる!ティッシュもあるぞ!
さあ、君の力の一部その身で味わいな
【光剣解放】起動
ランダム軌道設定、とにかく全ての敵を喰らい尽くせ!
何かを識りたいと願う心は人の心に常にあるものである。
大小があれど、そこにあるのは変わりない探求の心。常に頂きを見続けることは難しいことであったけれど、人はそうやって進化の歴史を紡いできた。
「真理……真理か。研究者としては魅力的な言葉ではあるね」
そう呟いたのは月夜・玲(頂の探究者・f01605)だった。
彼女もまた頂きに至る道を選んだ者である。
「ならば理解できよう。猟兵であっても我等が『真理』の輝き『色彩』を受ければ、貴様も『真理』にふれることができよう。抵抗は無意味だ。受け入れろ。さすれば力は与えられる。それを持って我等と共に――」
『傍観者達』たちが割れた顔面から滴り堕ちる赤き液体を地面に染みを作り、池を生みだすように一歩を踏み出す。
それを玲は遮った。
「でも残念、『外なる邪神』が記す真理なんて参考になっても興味はないんだ……」
玲の瞳は拒絶ではなかった。
そこにあったのは冷淡な無関心であった。
「あとその格好になるのグロくて勘弁。いやもうちょっとさあ……可愛くなんない?」
なんというか、ゆるふわ系とかさ?
言っても無駄だろうけど、と玲は笑った。どれだけ真理に到達できるのだとしても、あんな姿になるのであれば願い下げである。
どれだけ『外なる邪神』の『色彩』放つ力が凄まじいものであろうとも、玲は屈することはない。
『生きる』という力を削ぐ衝動を放ち続ける『傍観者達』を前にして玲は言い放つ。
「むしろさ、この状況こそ『生きる』って感じがするよね。湧いてくるよね。だってさ――」
玲は終始笑っていた。
笑いが止まらない。彼女は研究者である。言うまでもなくあらゆる知識を得て、己の望むものを具現化させるために動くものである。
その原動力はたった一つである。
「なにを」
今この状況に至って尚、笑う彼女の意図を『傍観者達』は理解できなかった。できるわけがない。
誰かに齎された者と、自身の手を伸ばして得ようとする者。
そこに同じものなどあるわけがない。
「こんなに楽しいことが目の前にあるんだよ? それで萎えてちゃ研究者の名折れだよ。教えてあげる、私の真理」
その瞳がユーベルコードに輝く。
複雑な幾何学模様が玲の背後に無数に展開される。それは光の剣であった。
一本や二本どころの話ではない。
摩天楼の内部、邪神の器となりかわった『色彩』の放つ極彩を埋め尽くすほどの光剣が飛翔する。
「私こそ、厚顔無恥な創造主……『デミウルゴス』に至る事!」
あらゆる物質を創造する。そこにこそ彼女の求める真理があるのだとすれば、全てを塗りつぶす『色彩』に彼女が求める者はない。
0から1を生みだすために。
元あるモノに上書きする『真理』など元から玲には必要ないのだ。
「どう? 今からでも乗り換えない? 今なら洗剤もついてくる! ティッシュもあるぞ!」
映画のチケットは高いから、ちょっとね。
玲の湧き上がる『生きる』衝動は、『傍観者達』をして想像を絶するものであったことだろう。
底なし。
そう言うほかないほどの探究心が刃となって今まさに自分たちに向けられている。
その事実を知った時、もはや全てが手遅れであったことだろう。
「光剣解放(セイバー・リリース)……機能解放、光剣よ舞い踊れ!」
指先が示すは『傍観者達』。
彼らを喰らい尽くす光剣の群れは、『色彩』全てを飲み込んでいく。
貪欲に。あらゆるものを吸収した先に何が在るのか。そんなことに興味はないのかもしれない。
在ったのは無から有を生みだすことへの執着のみ。
玲は光剣の乱舞が描く模様を見据え、摩天楼の先を見定める。
その先に『外なる邪神』を降臨させようとする儀式場がある。
「――ま、乗り換えるって言われても滅ぼすしかないんだけどさ」
互いにオブリビオンと猟兵。
滅ぼし合うしかない存在であればこそ、互いに相容れぬと知る。
故に、玲は征くのだ。未だ見ぬ頂へと――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『怨嗟の怪物』
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POW : 不滅の炎
【激痛と灼熱を伴い自身を回復する紫苑色の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【身体中の傷から噴出した生へ渇望する怨嗟の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 「死なせるものか」「生きてくれ」「負けないで…」
【意識を失った時、炎に宿る怨嗟達の操り人形】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ : 不滅の影
自身が戦闘で瀕死になると【意識を犠牲に教団《不滅の焔》の狂信者】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ゲンジロウ・ヨハンソン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『外なる邪神』は夜天より降り注ぐ『色彩』の先にある。
謂わば、この摩天楼の屋上はマーカーだった。夜天の先、宇宙より来訪する『外なる邪神』の肉片。それを迎え入れるためだけに、邪神信奉者のリーダーは極彩色の輝きを放つ瞳で空を見上げていた。
あまりにも禍々しい輝き。
『色彩』は彼の瞳を通して一体何を見ていたのだろうか。
「これこそが『真理』。満ちる生命が在るのならば、それは即ち極大。無より無限。無限から無限光へ。我等が得るのは『真理』の『色彩』」
最早、邪神信奉者のリーダーには人間らしい知性は残っていなかった。
在ったのは、UDC怪物へと成り果てた者の理解不能なる『真理』だけであった。
その人の形が崩れていく。
嫌な音を立てて骨が砕け、肉がひしゃげ、人の形など意味をなさぬのだと棄て去る。
「邪魔はさせぬ。『真理』の邪魔はさせぬ。我等が齎すのだ。『外なる邪神』を迎え入れ、栄華を誇る。ここにこそ極点に至る道筋があるのだから」
人の形を捨て、人の意志すらも捨て、在るのは怪物の姿。
『色彩』放つUDC――『怨嗟の怪物』が今、その力をふるい、夜天より至らんとする『外なる邪神』の肉片の降臨を成就せんと、猟兵を迎え撃つのであった――。
バルタン・ノーヴェ
アドリブOK!
元信奉者のリーダー殿
アナタにも個人として、人間として大事なものがあったデショーに
……それはそれとして。人々の日常を脅かす存在を降ろす訳にはいきマセーン!
お覚悟を!
肉塊から放たれる炎、触れるのはもちろん近づくのも避けた方が良さそうデース
神の見えざる手ならぬ、風の見えない手で遠ざけマース!
「六式武装展開、風の番!」
周囲や地上に落ちないよう、その炎を絡めとり上空に向けて飛ばしマース!
流石に宇宙にある肉片までは届かないデショーガ
そのまま炎の行先をコントロールしつつ、内蔵式グレネードランチャーを展開!
怪物に擲弾を浴びせかけてあげマース!
フィニッシュブローは、後続のエブリワンに頼りマスネー!
オブリビオン『怨嗟の怪物』は、『外なる邪神』の力を得て『色彩』を放つ不気味な姿であった。
その姿から嘗ては人であったと誰が理解できるだろうか。
辛うじてその姿が人型であるからこそ、『怨嗟の怪物」が邪神信奉者のリーダーであったとわかったことだろう。
「この『真理』を持って、全てにあまねく『色彩』を。『外なる邪神』の齎す『真理』こそが絶対なのだ」
噴出する炎は、その体を突き破っていた。
傷みが絶えず『怨嗟の怪物』の体に走っているのだろう。けれど、絶えず再生を繰り返す体はどれだけの痛みを受けても死ぬことはない。
仮に死せる時があるのだとして、それは『外なる邪神』の戯れか、もしくは猟兵のユーベルコードが貫いた時であろう。
「元信奉者のリーダー殿」
摩天楼、超高層ビルの屋上は邪神降臨の儀式場へと姿を変えていたが、そこに至る猟兵、バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は告げる。
「アナタにも個人として、人間として大事なものがあってデショーに……それはそれとして。人々の日常を脅かす存在を降ろす訳にはいきマセーン! お覚悟を!」
「我等は『真理』に到達したのだ。『真理』の前に、それ以上に大事なものなどあるわけがない」
『怨嗟の怪物』が放つ炎がバルタンを襲う。
あらゆるものを燃やす炎は、バルタンたち猟兵にとっても脅威であろう。
「六式武装展開、風の番!」
告風楼(コンプレスド・エアー・アームド)と名付けられたユーベルコードが輝き、圧縮された空気で作られた手が炎を遠ざける。
それは神の見えざる手ならぬ、風の見えない手。
炎は圧縮された空気を燃やすが、それ以上進めない。
バルタンはあらゆる火の粉を振り払うように、ユーベルコードによって生み出された圧縮された空気を上空へと押し上げる。
この炎が地上に落ちて燃え盛るようなことがあってはならない。
例え、火の粉の一片であっても彼女は地上へと落とすことはなかった。
「流石に宇宙にある肉片までは届かないデショーガ!」
バルタンは疾走る。
彼女の力を必要としている者たちがいる。それだけで彼女は足を踏み出すことが出来る。
吹き荒れる炎が渦を巻いて彼女を襲おうとも、恐怖はない。
彼女が恐れるものはすでに乗り越えてきたのだ。
「何故、恐れない。我等の炎はお前を――!」
燃やし尽くし筈なのに。
けれど、炎はバルタンにふれることはできない。ユーベルコードの相性が悪いだとか、そういう問題ですらなかった。
バルタンの瞳に合ったのは、ただ己の為すべきことを為すという気概だけであった。
異形の炎であれど、それを燃やし尽くすことはできない。
バルタンだけが、そうであるわけではない。
けれど、誰からも必要とされない恐怖を乗り越えることは誰でも出来るわけではない。
『外なる邪神』の生み出した力による『恐怖』は確かにバルタンの心を阻んだことだろう。
それでもバルタンは前に進んだのだ。
共に戦う者たちがいる。
自分が倒しきれなくても、後に続く者たちがいるということを知っている。
「だから、ワタシは戦うのデース!」
サイボーグバトルメイドは内蔵されたグレネードランチャーを展開し、榴弾を『怨嗟の怪物』へと放つ。
爆煙が上がり、ユーベルコードの炎すらもかき消して『怨嗟の怪物』の体を焼く。
何故だと叫ぶ声が聞こえた気がした。
『真理』を求める心はないのかと。
この『真理』こそが誰かのためになるはずなのだと。その声を聞いて、バルタンはかぶりを振った。
「違うのデース。自分の欲求と他者の願いを混同しているだけなのデス。だから、それは、その願いは」
間違いなのだとバルタンは次々と放つ榴弾を持って、『怨嗟の怪物』を炎の渦の中に押し込み、見えぬ風の手によって、摩天楼の屋上へと押し込み続ける。
「フィニッシュブローは、後続のエブリワンに頼りマスネー!」
バルタンは信じていた。
あとに続く猟兵達が必ず『怨嗟の怪物』を打倒し、この邪神降臨の儀式を止めてくれると。
それが彼女の力となって、夜天より降り注ぐ『色彩』にも負けぬ炎を巻き上げるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
久瀬・了介
人である事を捨てたか。
被害者なら助ける。だが貴様は自ら選んだ。
リミッター解除し限界を越えたエンジンが悲鳴を上げる。発電が弱い。
構うものか。雷だけに頼ってきた訳じゃない。
もう一つの心臓、ネクロオーブ「呪珠」で【呪詛】を力場に換え【オーラ防御】、炎を防ぐ。怨嗟の炎?怨霊相手に片腹痛い。
ハンドキャノンを構える。人として培った戦闘技術。
火力が心許ない。【武装異形化】。拳銃を巨大な兵器に変形。
移動力半減、威力強化。人類が生み出した最強の個人兵器の一つ、重機関砲。
銃弾…いや、砲弾に【呪詛】を込め怨敵を貪る【呪殺弾】と化す。
回避不能の【範囲攻撃】。点ではなく面での掃射。回復するならしろ。何度でも殺してやる。
不滅の炎が燃え盛る。
夜天より降り注ぐ『色彩』を放ちながら、炎は『怨嗟の怪物』の身を焼き、それでもなお決して死することのない再生を持って痛みと共に叫ぶのだ。
その姿は醜悪という他ない。
「これこそが『真理』。痛みすらも甘美なる快楽として我が身を焼く! おお、おおっ! これこそがっ!!」
嘗て邪神信奉者のリーダーであった者は、すでにUDC怪物へと成り果てていた。
その瞳が煌々と極彩色に輝き、狂気をはらんでいた。
しかし、その瞳を前にしても臆することのない存在がある。猟兵、久瀬・了介(デッドマンの悪霊・f29396)であった。
リミッターを解除し、限界を超えたヴォルテックエンジンが悲鳴を上げる。
すでに限界は越えている。
それ故に魂の衝動を電流へと変換するエンジンは発電を弱めていた。
「人であることを捨てたか」
その呟きに『怨嗟の怪物』は壮絶なる笑み浮かべた――ような、気がした。
最早その表情は人のそれではない。
ただわかるのは、『色彩』を放つ瞳が歪んでいることだけだ。
「わかる。わかるぞ、貴様の魂の衝動が弱まっているのを。わかっているのだろう。同じ人を捨てた身だ。私には分かる」
『怨嗟の怪物』は笑っていた。
なぜなら、了介が猟兵であったとしても、力が弱まっているのならば不滅を体現する己の炎は彼を焼くだろう。
「構うものか。被害者なら助ける」
了介の瞳に映るのはオブリビオンであった。
決して邪神に唆され、意に反してUDC怪物にされたものではない。
「だが、貴様は自ら選んだ」
怪物に成ることを、人でなく成ることを喜んで捨てたのだ。オブリビオンへと変貌し、世界を破滅へと導こうとした。
それは了介にとって万死に値する。
もう一つの心臓、呪珠が蠢く。
呪詛を力場に変える力が蠢く。
脈動する度にめまいがするようであった。けれど、それで良いのだ。オブリビオンを恨む心が吐き出す呪詛こそが第二の心臓を脈動させるのだ。
「何故だ、何故炎が届かない!」
「無駄だ。雷だけに頼ってきた訳じゃない。怨嗟の炎? 怨霊相手に片腹痛い」
了介が呪詛をオーラに変えて炎を防ぎながら、大型拳銃の銃口を『怨嗟の怪物』へと向ける。
轟音と共に放たれた弾丸が『怨嗟の怪物』を貫くが、即座に炎が再生していく。
火力が心もとない。
だが、それでもよかった。人として培った戦闘技術がまだ了介にはあるのだ。大型拳銃が異形へと変わっていく。
巨大な大砲のごとき姿へと代わり、その咆哮を向ける。
動けなくなっても構わない。けれど、確実に殺す。大砲のような姿は、徐々に巨大な機関砲へと姿を変える。
そう、人類が生み出した最強の個人兵器。重機関砲へと姿を変えた大型拳銃を了介は向けた。
「慄けとは言わない。それは意味がないことだ。俺の呪詛を」
受け止めればいい。
その瞳がユーベルコードに輝く。武装異形化(ブソウイギョウカ)、それこそが了介のユーベルコードである。
凄まじい重さが摩天楼の屋上に負荷を掛け、地面を罅割らせる。見た目以上の重さを伴った武装の異形化は、了介の思う以上の取り回しの悪さであったことだろう。
それは『怨嗟の怪物』にも理解できることであった。
「それだけ重たい武装で、当たるものか――!」
けれど、それでいいのだ。
了介の武装に籠められたのは呪殺弾。怨敵を貪る点ではなく面での掃射。
放たれた弾丸は散弾のように『怨嗟の怪物』を吹き飛ばす。
「な――ッ!?」
それはうめき声のようでもあり、驚愕の声でもあった。
けれど、それ以上『怨嗟の怪物』は言葉を紡げなかった。
「回復するならしろ」
続け様に放たれる弾丸が、再生していく体を端から吹き飛ばしていくのだ。それは耐え難い痛みであったことだろう。
再生はできても痛みは在るのだ。
そこに休み無く打ち込まれる弾丸は不滅と言われた『怨嗟の怪物』をも追い込んでいく。
「――何度でも殺してやる」
了介はユーベルコードに輝く赤い瞳を見据える。
そこにあったのはオブリビオンを如何にしてでも殺し尽くすという絶対の意志。その前に立ってしまったことが、『怨嗟の怪物』の不運。
そう云うほかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
真の姿で。
(ビル内の人間は教団員だけだったとしても、ビル内にあった植物やペット等の)命を奪った罪。
世界に狂気を振り撒き滅ぼそうとする罪。
(さり気なく)神の怒りに触れた罪。
貴方のこれら罪深き行いに罰を与えます。
天候操作で雨を降らせ、条件達成した上でUC発動。
怨嗟の怪物に「止まりなさい」と命じ、更に念動力で拘束。
相手の攻撃はオーラ防御を纏う天耀鏡の盾受けで防ぐ。
雷の属性攻撃・全力魔法・神罰・浄化・破魔・高速詠唱・貫通攻撃・範囲攻撃による、全てを浄化消滅する特大の落雷を召喚。
怨嗟の怪物を撃ち抜きます!
怨嗟の怪物がUCで狂信者を召喚すれば、怨嗟の怪物同様に言葉と念動力で拘束し、纏めて落雷で滅ぼします!
摩天楼、超高層ビルの中にあったのは、邪神信奉者たちだけではなかっただろう。
いや、このビル自体が邪神教団のものであったのならば、人間は須らく邪神教団の者であったはずだ。
全てが夜天より降り注ぐ『色彩』――『外なる邪神』によってUDC怪物に変化してしまったことは、自業自得であり、同時に彼らが望んだことであっただろう。
けれど、ビルの中にあったのは動植物など大町・詩乃(春風駘蕩・f17458)が司り、慈しむ存在もまたあったのだ。
生物、無機物問わずに『色彩』はUDCへと変えていく。
それは詩乃にとって生命を奪う行いと同義であった。
故に彼女の瞳は神としての怒りに燃えていたことだろう。
「生命を奪った罪。世界に狂気を振りまき滅ぼそうとする罪。神の怒りに触れた罪」
それは罪状を読み上げるものであった。
詩乃の顕現する神としての力は、猟兵達の攻撃に寄って不滅ながらも消耗させられた『怨嗟の怪物』へと向けられていた。
「貴方のこれらの罪深き行いに罰を与えます」
その言葉に『怨嗟の怪物』は咆哮した。
凄まじい攻撃にさらされ、その不滅と言われた力を振るう。『怨嗟の海物』の周囲に現れたのは己と同じ邪神教団の信奉者の姿であり、即座に『怨嗟の海物』と同じ姿となって詩乃を、異教の神を弑さんと迫るのだ。
けれど、詩乃指先が夜天を雨雲で覆う。
指先が天を指差し、神としての権能を発揮する。雨が降りしきり、摩天楼の屋上を慈雨で満たしていく。
それはまさに神の御業に他ならない。
「干天の慈雨を以って私はこの地を治めましょう。従う者には恵みを、抗う者には滅びを、それがこの地の定めとなる。止まりなさい」
粗言葉とともに『怨嗟の怪物』たちは念動力によってがんじがらめにされたように動きを止める。
「真理を得た我等を止めるっ……! 許されぬ! 我等を縛ることができるのは『外なる邪神』のみのはず! それを……!」
彼らは訝しんだ。
どれだけ強力な力を持つ猟兵であろうと、彼らを縛ることはできない。
けれど、現に彼らは今動きを止められている。
それは何故か。
「神域創造(シンイキソウゾウ)――これより此処は私の領域。アシカビヒメの神域……」
静かに詩乃の言葉が紡がれる。
あらゆる攻撃を放たれようとも天耀鏡が経て盾となって受け止め防いでいく。
「馬鹿な……! そんな馬鹿な……!」
『怨嗟の怪物』が呻く。
彼らにとって想定外だったのは、詩乃という神が、このUDCアースに訪れていたこと。
そして、彼女の力が絶対支配権を領域に齎すユーベルコードを有していたことだ。
それらの条件が重なった時、詩乃の力は未だ十全とは言えぬ力を齎すしかできぬ『外なる邪神』の力を上回るのだ。
「他の生命を慮ることのできぬ者の何処に『真理』があるのでしょう。生命はたった一つでは存在できない孤独のもの。誰もがなにかの犠牲に。命の恩恵を受けて生きているというのに」
悲しげにつぶやく詩乃指先に集まるのは雷の力であった。
まさに神罰。
古より神手繰るのは雷の力である。
詩乃の神としての力は、全天を覆し、浄化と破魔そして神罰の一撃となって天より振り下ろされる鉄槌の如き一撃であった。
「それを知らぬ者が『真理』など――!」
振り下ろされた雷撃の一撃は『怨嗟の怪物』たちを吹き飛ばし、尽くを滅ぼす。
『怨嗟の怪物』本体は焼け焦げ、それでもまだ形を保っているかもしれない。
けれど、詩乃の優しき怒りに触れた者が無事ではいられないだろう。
彼女は慈しみを持つ女神であればこそ、他者をいたずらに傷つける者を決して許しはしない。
「知るべきでした。貴方はもっと目を遠くへ、広くへ向けるべきだったのです。そうであれば、決して――」
誰かを傷つける『真理』など求めはしかなっただろうにと、彼女は神罰の一撃が齎す圧倒的な力の奔流を前に涙を流すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳳凰院・ひりょ
アドリブ歓迎
WIZ
先程の傍観者達との戦いで確信した
決して相容れる存在じゃない、もう言葉は不要だろう
俺は今を生きる猟兵として害悪なるものを排除するのみ
自身の周りに【結界術】による結界を張る
【破魔】の力を付与した結界に触れた敵の攻撃を浄化しつつ、そのエネルギーを生命力に変換して【生命力吸収】
【全力魔法】力を注ぎ込んだ【レーザー射撃】【貫通攻撃】で畳みかける
接近戦になったら【破魔】付与の退魔刀で迎撃
狂信者が召喚されても変わらない
俺はここで倒れ伏すつもりはない
不屈の意志で戦い抜いてやる!
回復が間に合わないなら黄昏の翼を発動し負傷を自身の力に変えて反撃
何度だって立ち上がってやる!最後に勝つのは俺達だ
決して交わらぬ者がいる。
それはどうしようもないことだと嘆くことは、ある意味必然であったのかも知れない。
誤解という溝ですらない、決定的に交わらぬ線と線。
そこに悲哀を見出したとしても救われるものなど何一つない。
あるのは勝者と敗者だけであり、正しさと過ちは入り込む余地などないのだ。
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は決定的に気がついてしまった。
邪神信奉者たちと戦い、決して相容れぬ存在であると気がついてしまった。
「もう言葉は不要だろう。俺は今を生きる猟兵として害悪なるものを排除するのみ」
彼が求めたものと、邪神信奉者たちが求めたものは対極そのもの。
だからこそ、言葉での対話は不可能であった。
誤解という摩擦すらも解きほぐせぬ。ならば、最後に物を言うのは互いの意志を貫く力であったことだろう。
雷撃の一撃に燃えカスのように散り散りになった『怨嗟の怪物』のちからがより合わさるように再び不定形の体へと戻っていく。
「言葉はいらぬと。『真理』は『色彩』によって齎される。どれだけ貴様達猟兵が私を、『真理』に至った私を打倒しようとも、変わらぬのだよ!」
『不滅の炎』、そう呼ばれた邪神教団の信者たちが『怨嗟の怪物』と同じ姿となってひりょに迫る。
群れなすように摩天楼の屋上にあふれかえる彼らの姿を認めて、ひりょは己の周りに結界を張り巡らせる。
破魔の力によって触れた者たちの力を浄化し、そのエネルギーを生命力に変換して吸収していくのだ。
黄昏の翼(タソガレノツバサ)とでも言うべきユーベルコードによって生み出された翼を象るオーラ。
黒と白一対の翼は、ひりょにとって最大限の譲歩であったのかもしれない。
「翼よ、今こそ顕現せよ!」
広げられた翼から放たれる光線が次々と『怨嗟の怪物』たちの体を貫いていく。
黒と白の翼がはためき、ひりょは破魔の力みなぎる退魔刀を振るう。
一瞬の交錯。
言葉は必要なく。ただあるのは決意のみ。
己がここで倒れ伏すつもりはなく、燃える不屈の闘志で戦い抜くと決めた炎が彼の瞳にユーベルコードとして耀くのだ。
炎がひりょの体を焼く。
どれだけ早くても、どれだけ力が強くても、数で圧する『怨嗟の怪物』たちの炎はひりょの体を傷つける。
「何度だって立ち上がってやる!」
その言葉は、『怨嗟の怪物』たちにとって不可解なものであった。
何故立ち上がれるのか。
何故立ち上がるのか。
その理由を知らぬ彼らにとって、ひりょの力の原動力は理解しかねるものであったことだろう。
けれど、彼らは知らねばならぬ。
「最後に勝つのは俺達だ」
諦めぬ者がいる。
けれど、『真理』を求めるのではなく、与えられることを選んだ者たちには理解できぬことである。
明日に手を伸ばし、傷つき、つかめずとも再び前に歩き出すことのできる者。
それが本当の意味での今を生きる者である。
ならば、ひりょの退魔刀は輝くだろう。
剣閃の煌めきが、不屈の闘志を受けて夜天より降り注ぐ『色彩』すらも切り裂き、その魂の輝きを摩天楼の頂きで発露するのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
あーうん、興味深いと思って来たけどさー
いやね、なんて言うか…つまんね
真理を語るならさ、心狂わずに語りなよ
ちょっとでも期待したのがバカみたいじゃない
君の真理に価値はない、人の身を持って真理に至る事こそ至高なんだからさ
じゃ、さよならだ
●
I.S.Tリミッター解除
【Overdrive I.S.T】起動
召喚した雷の剣と蒼炎の剣をそれぞれ組ませて体の無い二刀流の剣士として運用
つーまーり、此処には私が100人居る訳だよ
さてと、それじゃあ全力で切り刻みな
狂信者も含めて『なぎ払い』『串刺し』にして殲滅してあげる
その間に私は『オーラ防御』と『武器受け』で攻撃を受けないように立ち回ろう
ま、データ収集には役に立ったよ
滅びる。
滅びてしまうと『怨嗟の怪物』は悟ってしまった。
『真理』に至る『色彩』を身に受けながら、『怨嗟の怪物』となった嘗ての邪神信奉者のリーダーは呻いた。
何故滅びるのか。
不滅と言われた身体が、何故こうもたやすく猟兵達の攻撃に寄って砕かれていくのか解せなかった。
「何故だ。何故、滅びる。私達は、得たはずだ。『真理』を! 絶対普遍たるものを!」
だというのに滅びると己の身体が言っている。
何故、と問うことすら必要ないと思っていたのだ。
揺らがぬ『真理』さえあれば、他に何も要らないと思っていたのに、己の身体は何故崩れるのか。
溢れる『怨嗟の怪物』たち。
「あーうん、興味深いと思ってきたけどさーいやね、なんていうか……つまんね」
邪神信奉者たちの成れ果てを見つめ、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は斬って捨てた。
玲は興味深いと言った。
けれど、それは過ちであることを認めたも同然であった。
彼女が至らんとしているもの。その道程に在るものではないのかという期待さえあったのだ。
けれど、それは裏切られたと言っても過言ではない。
「真理を語るならさ、心狂わずに語りなよ。ちょっとでも期待したのがバカみたいじゃない」
「何を言う」
「我等は『真理』を確かに授けられたのだ。この色彩こそが」
『真理』であると『怨嗟の怪物』達が言う。
しかし、そこに『真理』はあれど『狂気』しかない。狂気に歪んだものに価値はない。どれだけ尊いものであったとしても『狂気』はその価値を失墜させる。
人が単一の存在ではないのならば、多数でもって人類と呼ばれるのであれば、たった一つの『真理』など、人の数だけ存在するものである。
故に、心狂わせた者の『真理』にただ一片の価値もない。
あまねく全てに共有される『真理』こそが『真理』であり、ただ一つであるという前提の前に、その価値は瓦解する。
「君の真理に価値はない。人の身を持って真理に至る事こそが至高なんだからさ」
玲は溜息をつくように模造神器のリミッターを外す。
不滅の『怨嗟の怪物』が群れをなすというのならば、己もまた群れを為そう。
Overdrive I.S.T(オーバードライブ・アイエスティー)――それはシステムの多重起動に寄る自身と同じ雷を纏った百振りの剣と蒼炎を纏った百振りの剣を召喚するユーベルコードである。
負荷は完全に無視され、玲の周囲に百対の刀剣が舞う。
つまり、摩天楼の屋上には百人の玲が存在すると同義。どれだけ『怨嗟の怪物』があふれかえるのだとしても、一騎当千の猟兵である玲が百人いるのと同じなのだ。
「じゃ、さよならだ」
全力で切り刻みな。
その言葉とともに互いはぶつかり合う。
いや、ぶつかり合うという言葉は合致しないだろう。
そこにあったのは、斬撃の嵐だけであった。雷と蒼炎が輪舞曲を奏でるように剣閃をきらめかせる。
圧倒的な物量同士が激突する時、数の多いほうが勝るであろう。
けれど、此処においては違う。数だけではなく質も勝る玲のユーベルコードは、ぎりぎりと彼女の肉体に負荷を掛ける。
身体が熱いとさえ思えるのは、そのユーベルコードの凄まじさ故であろう。
「与えられるものばかりに期待しているから、そうなる」
「馬鹿な、上位存在を知れば、こうもなる。まずは同じ土俵に立たねば――」
「それが間違いだっていうんだよ」
玲は告げる。
『怨嗟の怪物』は与えられるばかりで、己から発したものを昇華させない。
故に負けるのだ。
「月並みだけどさ。ねだるな勝ち取れってやつだよ。ま、データ収集には役に立ったよ」
それ以上でも以下でもないけど。
その言葉を最後に雷と蒼炎の剣閃が『怨嗟の怪物』たちを尽く霧散させていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
これは手の施しようがないね
悪いけど骸の海に還って貰うよ
ガトリングガンを掃射し
怨嗟の怪物を攻撃しよう
望んであんな姿になるなんて
僕にはとても理解できないよ
ええ、私の姿で良かったでしょう?
揺れる胸元、翻るフリル
少しも慣れてないといえば
嘘になるかもしれないけれど
なって良かったとだけは絶対に思わないね
さあ、そろそろ準備できたかな
屋上なら問題なくこのUCを運用できるね
邪神の力は強大かもしれないけれど
人間も無力って事はないんだよ
ゴーグルの機能を用いて
オブビリオンをロックオン
ミサイルで飽和攻撃を仕掛けるよ
UDCはどうにもならない存在ではないんだ
時間はかかるかもしれないけれど
絶対に元に戻る手段を見つけてみせるさ
『怨嗟の怪物』は無数に分かれるように召喚された邪神信奉者であった集団を呼び寄せる。
それらの一つ一つが『怨嗟の海物』と同じであった。
夜天より降り注ぐ『外なる邪神』の『色彩』によって力を与えられたUDC怪物そのものが摩天楼の屋上に疾走る。
彼らは圧倒的な猟兵たちのユーベルコードの前に尽く霧散させられていた。
けれど、窮地にさらされれれば晒されるほどに彼らは次々と『怨嗟の怪物』を生み出していく。
「滅びぬ。我等は滅びぬ。『真理』に到達したのだ。手にしたのだ。この『真理』を手にしたのに、我等は滅びを選ばない」
与えられることばかりであった彼らが此処にきて選ぶことに思い至ったのは皮肉でしかない。
「これは手の施しようがないね。悪いけど骸の海に還って貰うよ」
佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は手にした携行型ガトリングガンでもって『怨嗟の怪物』たちを掃射する。
その圧倒的な物量は、あまりにも奇怪であった。
人型とも言えぬ不定形の身体。
同じ『邪神』というカテゴリーに属する者の力を受けた者同士であったとしても、晶には理解はできなかった。
「望んであんな姿になるなんて。僕にはとても理解できないよ」
内なる邪神が言う。
「ええ、私の姿で良かったでしょう?」
そんな甘言意味がないとは言い切れない。
揺れる胸元、翻るフリル。少しも慣れてないと言えば嘘になるかも知れないけれど、なってよかったとだけは絶対に思わない。
晶は諦めていない。
元の体の戻ることを。その怒りすらも邪神は喜ぶ。たちが悪い。邪神というカテゴリーに対する価値観が揺らぐことはこれからもない。
「さあ、そろそろ準備できたかな」
邪神の言葉を流して、晶は摩天楼の屋上にて空を見上げる。
そこにあったのは、人間の力だ。試製火力支援無人航空機(ファイアサポート・ドローン)が夜天を切り裂いて飛翔する。
それは晶が要請していた人間の力だ。
晶のユーベルコードと人の作り出した兵器が合わさったもの。無数の小型ミサイルが『怨嗟の怪物』たちめがけて放たれる。
「邪神の力は強大かも知れないけれど、人間も無力ってことはないんだよ」
ゴーグルをかぶり、オブリビオンとなったUDC怪物たちをロックオンする。
それは科学の力であり、UDCがどうにもならない存在ではないことを知らしめる。
「オオオオ―――ッ!!!」
『怨嗟の怪物』たちがミサイルの爆煙に消えていく。
飽和攻撃の前に、如何に数を増やそうとも耐えきれるものではないのだ。
彼らは知らなかった。
自分たちが『真理』に至ったという事実だけで満足していたのだ。けれど、晶は違う。例え、今の姿のまま戻る兆しが少しも見られなくても。それでも諦めることはだけはしない。
そうすることこそが、晶を猟兵たらしめるのだ。
「時間はかかるかもしれないけれど……」
晶は決意を新たにする。
どれだけ時間がかかってもいい。どれだけの困難が山積していたとしてもいい。
決して諦めることはしない。
内なる邪神が笑った気がしたけれど、それでも晶はかまわなかった。
「絶対に元に戻る手段を見つけてみせるさ――」
その言葉と共に晶は爆炎上がる摩天楼の屋上に轟く怨嗟を聞くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーフィ・バウム
アドリブ歓迎
人の形を捨てたのですか
災いを振り撒くモノは、打ち砕きます
【勇気】と【気合い】そして
――《戦士の手》と共に
無差別に攻撃する相手に対し、
天性の【野生の勘】、培った【戦闘知識】で
相手に動きをしっかり見ていき
相手の攻撃には【属性攻撃】を纏う拳で
【見切り】からの【カウンター】を入れていく
粗野ながら、【怪力】を生かした【功夫】の打撃は
堪えるでしょう!
攻撃を避けられなくても、【オーラ防御】を
押し出すようにぶつけ、体勢を崩しては
【力溜め】た【鎧砕き】の攻撃を入れていく
攻撃を凌げば、【グラップル】で組み付いての、
オーラを【衝撃波】として至近距離から叩き込む
猟兵として。
災いを撒くモノは打ち砕きますッ!
摩天楼、超高層ビルの屋上こそが邪神信奉者たちの儀式の場であった。
すでに夜天より降り注ぐ『色彩』によってビルの内部はUDCそのものへと変貌し、邪神の肉の器へと変わり果てていた。
その道程を駆け抜け、屋上へと躍り出たのはユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)であり、彼女が見たのは『怨嗟の怪物』へと成り果てた邪神信奉者のリーダーであった。
彼はすでに猟兵達によって消耗させられていた。
不滅を体現する『真理』を得ながら、『怨嗟の怪物』は追い込まれていた。
「追い込まれている? 『真理』に到達した私が、追い込まれている……そんなことはあってはならない。我等こそが『色彩』を得た――」
『真理』そのもなのだと、叫ぶ声をユーフィは哀れみの目でもって迎える。
「ヒトの形を捨てたのですか。災いを振りまくモノは――」
打ち砕く。
その意志がユーフィの瞳に宿る。
そこにあったのは勇気と気合。
そして、戦士の手(センシノテ)の放つ輝きと共に彼女は駆け出す。
人型の不定形の形へと成り果てた『怨嗟の怪物』が凄まじい速度でユーフィを付け狙う。
その動きは人の動きではない。
まるで液体のようなものを相手取っているような感覚をユーフィに与えたことだろう。
「ヒトの形を捨てたのであれば!」
放たれる触手のような鋭い一撃をユーフィは躱し、疾走る。
それは天性とも言うべき勘の冴えどころであった。これまで戦ってきたオブリビオンの数は知れず。
けれど、その身に宿った戦いの知識はユーフィの格闘技術に宿るのだ。
拳に宿る力が振り抜かれる度に、見切った『怨嗟の怪物』の攻撃とクロスカンター気味に打ち込まれていく。
「ゴッ――ッ!?」
『怨嗟の怪物』は得体の知れぬものを相手取っているようにさえ思っただろう。
粗野ながらも有り余る膂力でもって放たれる功夫の打撃は異形の身にも堪えるものであったことだろう。
「どれだけ人を捨てようとも、その意識は人のモノ。ならば、その痛みは人のものであると識りなさい!」
どれだけ人を捨て、怪物になったのだとしても。
元が人であるのならば、痛みも感覚もそのまま。故にユーフィの高められた格闘術は『怨嗟の怪物』を追い詰めていく。
ぐにゃりと拳を打ち込んだ『怨嗟の海物』の身体が歪む。
衝撃を殺そうとしているのだろう。
けれど、遅い。
「無駄ですッ!」
力を込めた重厚な鎧すらも貫く衝撃で持って『怨嗟の怪物』の核とも言うべき魂を打ち貫く拳がある。
吹き飛んだ『怨嗟の怪物』へと一瞬でユーフィは距離を詰める。
裂帛の気合と共に組み付いての至近距離での拳が触れる。それは何百、何千、何万という鍛錬の果に得られる境地。
「猟兵として」
その瞳に輝くのはユーベルコードの輝き。
触れる手は『戦士の手』。
そこにあったのは、練磨の境地に至ったが故の至高の一撃であった。
「災いを撒くモノは打ち砕きますッ!」
打ち込まれた拳は凄まじい威力で持って『怨嗟の海物』の不定形の体に大穴を空け、夜天の空に人の練り上げた拳の力を示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
神代・凶津
てめえらの傍迷惑な乱痴気騒ぎはここで終いだ。
「・・・『外なる邪神』の降臨も、貴方の放つ怨嗟もここで止めます。」
てめえが『真理』ってヤツを貫き通すなら、俺達は俺達で自分達の『正義』ってヤツを貫き通してやるぜッ!
いくぜ、相棒ッ!心を燃やせッ!
「転身ッ!!」
炎神霊装を纏って戦闘開始だ。
高速で飛翔しながら炎翼をはためかせて破魔の炎刃を浴びせてやる。。
敵が意識を失って怨嗟達の操り人形になり攻撃してきたら、攻撃を見切り炎刀を生成して渾身のカウンターを叩き込んでやる。
超耐久力を持ってるってんならこっちも限界突破するくらいの霊力を炎刀に注ぎ込むぜッ!
「・・・破魔の炎でその怨嗟を浄化しますッ!」
【アドリブ歓迎】
雷を纏った身体が摩天楼の屋上へと飛び出す。
『怨嗟の怪物』は体に大穴を空けられながらも、その姿を見上げることしかできなかった。
夜天から降り注ぐ『色彩』。それが見せる極彩色の中で稲妻の如き飛翔を見せる神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)とその相棒である桜の姿は、ユーベルコードに輝いていた。
『てめえらのはた迷惑な乱痴気騒ぎは此処で終いだッ!』
鬼面の凶津が叫ぶ。
その心は燃えていた。それこそがヒーローマスクである証。
心を通わせた相棒である桜が言う。
「……『外なる邪神』の降臨も、貴方の放つ怨嗟も此処で止めます」
「それをさせぬと言った! 我等は『真理』に至ったのだぞ! 全てが無駄になってしまう。それだけはさせぬ! 断じて!」
『怨嗟の怪物』が叫ぶ。
それは後戻りが出来ぬ道に足を踏み入れたからではない。
己のエゴでもって世界を破滅へと導こうとする歪んだ欲望でしかなかった。
確かに、そのエゴで世界であっても滅ぼすことはできるであろう。
けれど、凶津と桜は言うのだ。
『てめえが『真理』ってヤツを貫き通すなら、俺達は俺達で自分たちの『正義』ってヤツを貫き通してやるぜッ!』
宙に飛ぶ二人の霊装がユーベルコードに輝く。
それは雷から炎へ。
『いくぜ、相棒ッ! 心を燃やせッ!!』
そう、その心に正義のという心が燃えるのであれば、決して揺るがぬ絆となって発露する。
それこそがユーベルコードの輝きであり、炎神霊装(ブレイズフォーム)。
正義の心を燃やし、力へと変えるユーベルコード。
「転身ッ!!」
吹き荒れる二人の力を一つにし顕現した炎の翼を纏う霊装が夜天の空に煌々と輝きを放つ。
翼が羽撃いた瞬間、『怨嗟の怪物』は見ただろう。
その煌めきを。
たった一人の意志では成せぬ絆の見せる炎の輝きを。
それこそがヒーローマスクとその依代である少女の心に灯った不条理を許さぬという正義の心。
故に『真理』を与えられただけの者には到底たどり着くことの出来ぬ力の発露を見せつけられ、怨嗟の咆哮を轟かせるのだ。
「馬鹿なッ! そんなことがあってたまるものか! 正義などに『真理』が屈するわけが――ッ!」
あってはならないのだと叫ぶ心がある。
それだけで『怨嗟の怪物』は『真理』を得ることなどできないと知らなければならなかった。
怒りという感情。
己が持ち得ず、他者が持ちうるものを妬む心。それが怒りのトリガーであるというのならば、到底それは『真理』と呼ぶに能わず。
『超耐久力を持ってるってんなら、こっちもなッ!!』
二人の力に限界はない。
霊力が炎となって刀へ炎刃を形成する。それは『色彩』を切り裂く極大の刃であった。
「……破魔の炎でその怨嗟を浄化しますッ!」
桜が振り上げた炎刃は、正義の炎となって『怨嗟の怪物』へと叩き込まれる。
それは不滅と呼ばれた怪物すらも灰燼へと帰す一撃。
極大の霊力は『怨嗟の怪物』の肉の一片すらも切り裂き、振り下ろし切り上げるようにして放たれた返しの刃でもって夜天より降臨しようとしていた『外なる邪神』の肉片をも燃やし尽くし、『色彩』を砕く。
『これがッ、俺達の正義だッ!』
「……これにて退魔完了」
浄化された怨嗟の残滓と共にUDCへと変貌していた超高層ビルを次々と元の姿へと戻していく。
狂気孕む『色彩』は、ここに消滅した。
夜天より飛来する『外なる邪神』。その力の一端は今、猟兵達の活躍に寄って未然に防がれ、ここにUDC組織は『最優先対処事項』即ち、レッド・アラートを解除するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵