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廃墟神殿に眠る王の遺産

#グリードオーシャン #戦後 #メガリス

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「着いたぜ! ここが『終の王笏島』か!」

 渚の音だけが聞こえる静かな海岸にて、静寂を台無しにする大きな銅鑼声が響き渡る。
 大口を開けてガハハと笑うその男は、手に持ったサーベルでとんとんと肩を叩きながら上陸した島の景色を見渡す。コンキスタドールにとっては伝説と言ってもいいその島を。

「我らの偉大なるボス、『王笏』カルロス・グリードの本拠地……まあその王笏サマもおっ死んぢまって、今は無人島ってワケだがな」

 王に対する敬意などは、その口ぶりからは微塵も感じられない。戦争に負けて死んだのだから、ソイツが弱かっただけのこと。仇討ちなんてものには金貨一枚の価値すらない。

「重要なのは、だ。この島には王様がかき集めたメガリスがまだ残ってるってことだ!」

 世界の垣根さえも超えて、カルロス王が略奪した秘宝の数々。それらは特別な力を持ち、既にメガリスに触れてコンキスタドールになった者にも新たな力を与えるという。
 王が死んだ今、終の王笏島に保管された宝は誰の手にも触れられず、どこかに隠されたままとなっている。誰の物でもないのなら、それはつまり見つけた奴の物ということだ。

「猟兵にも、他のコンキスタドールにも先は越させねえ。お前ら、気合い入れて探せ!」
「「はーい♪ あーしら、超頑張っちゃう☆」」

 ワニのコンキスタドール「クロックダイル」が銅鑼声で号令すると、水着姿の美女達が軽薄な調子で答える。彼ら海賊団の目的はただ一つ、カルロス王が残した遺産の略奪だ。
 チックタックという腹の中からの音と、ガハハハという喧しい笑い声が、終の王笏島に響き渡った――。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「先日、無事に完全勝利を収めた『羅針盤戦争』ですが、グリードオーシャンにいるコンキスタドールが一掃されたわけではありません。その残党の一部が、『終の王笏島』にあるメガリスを狙っているという情報を予知しました」
 先月末に討ち果たされたオブリビオン・フォーミュラ、『王笏』カルロス・グリード。
 その本拠地であった『終の王笏島』には、彼が保有していたメガリスの多くが保管されているらしい。超常の力を宿したその呪われし宝をコンキスタドール残党は求めている。
 無論、猟兵としては見過ごすことはできない。終の王笏島を探索し、敵の残党を撃破、そしてメガリスを発見、回収するのが今回の依頼になる。

「予知によると、終の王笏島の沿岸部にある廃墟となった神殿に、カルロスの所有していたメガリスの一つが隠されているようです」
 いずこの世界から"落ちてきた"とも知れぬこの神殿には、朽ちてなお禍々しい雰囲気が漂っており、内部には異形の怪物や亡霊が徘徊している。誰も迂闊に近付けない場所という意味では、宝の隠し場所としてうってつけだろう。
「すでにコンキスタドールもこの神殿内でメガリスの捜索にあたっているようです。遅れを取らないよう、皆様も急いで探索をお願いします」
 神殿内の障害として現れるのは、深海人めいた怪物やセイレーンのような亡霊、そして宝の欲に取り憑かれた亡者の群れ。侵入者とみれば見境なしに襲い掛かってくるが、知性は低く戦力も大した事はない。どちらかと言えば苦戦より時間を食わされる方が心配か。

「神殿の奥に進めば、先行していたコンキスタドール残党とも遭遇するでしょう。目的が同じである以上は戦闘は避けられません」
 廃墟神殿でメガリスを探している残党グループの首領は『クロックダイル』。時計型のメガリスを飲み込んだことで知能が向上し、二足歩行も可能になったワニのコンキスタドールだ。その性格は豪快で強欲で傲慢、いかにも海賊らしいタイプである。
「彼は猟兵と遭遇すれば配下の『渚のパイレーツ』に足止めを命じ、自身はメガリスの確保を優先します」
 渚のパイレーツは水着姿の女性コンキスタドールばかりで構成された海賊グループで、鉄甲船すら穿つ超高圧ウォーターガンと仲間との集団戦術を武器とする。華やかな見た目に騙されて油断すれば、手痛い被害を受けるだろう。

「配下もそう簡単に猟兵を通らせてはくれないはず。残念ながら先にメガリスを手にするのはクロックダイルになるでしょう。ですがそのまま持ち逃げさせる訳にはいきません」
 渚のパイレーツを突破した先で、猟兵達は神殿の宝を手に入れたクロックダイルと対峙することになる。どうやら今回のメガリスはオブリビオンが使用することで、特定のユーベルコードと同じ効果を発揮するらしい。
「廃墟神殿に隠されていたメガリスは『水神クタアト』という題名の魔導書です。海や水にまつわる邪悪な神々や魔物に関する知識とその召喚、撃退法等について記されており、クロックダイルはこれを使用して【シャーク・トルネード】を発動できます」
 鮫魔術士のユーベルコードである【シャーク・トルネード】は、回転ノコギリを生やして強化されたサメの群れを召喚する術だ。確かにこれも「海の魔物」と言えなくはない。
「さらに敵は元から持っている時計型メガリスの力も使えます。つまり『水神クタアト』と合わせて2つのユーベルコードで同時に攻撃を仕掛けてくるのです」
 このメガリスはクロックダイルの体内に飲み込まれたままなので、奪い取るのは困難。
 その効果は形状通り「時を操る」ことに関連しており、自身の時を加速させて高速移動したり、敵の時間を遅くしたり巻き戻したりすることもできるようだ。

「2つのメガリスを同時に操るクロックダイルは強敵です。しかし『王笏』を含めた七大海嘯を全滅させた皆様なら、決して勝てない相手ではありません」
 残党が勢力を盛り返さないよう、クロックダイルはここで撃破し、『水神クタアト』も回収する。羅針盤戦争にも勝利した猟兵達なら、必ずベストの結果を掴み取れるだろう。
 リミティアは信頼のこもった眼差しで猟兵達を見回すと、手のひらにグリモアを浮かべ『終の王笏島』への道を開く。その先で一同を待つのは、呪われし秘宝が眠る廃墟神殿。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 羅針盤戦争お疲れ様でした。今回の依頼は戦後処理のひとつとして、『終の王笏島』に隠されたメガリスの回収と、それを狙うコンキスタドール残党の撃破が目的となります。

 1章ではメガリスの隠された廃墟神殿を探索します。
 朽ちた神殿の中には多くの怪物や亡霊が潜んでおり、宝を求めてやって来た生者に襲いかかります。猟兵が遅れを取るような相手ではありませんが、手間を取らされて探索に支障が出ては本末転倒でしょう。
 なるべく迅速に妨害をくぐり抜け、先行するコンキスタドールの残党に追いつきましょう。

 2章ではメガリスを探す『渚のパイレーツ』との集団戦です。
 ノリの軽いギャルっぽい性格の敵ですが、親分に命令されているので戦闘はまじめにやります。1人1人の実力は大したことはありませんが、集団戦術が得意なので群れるとそこそこ強いです。

 3章は神殿の最奥で『クロックダイル』とのボス戦です。
 今回のボスは通常通りPOW、SPD、WIZに指定されているユーベルコードと同時に、神殿に隠されていたメガリス『水神クタアト』の力で以下のユーベルコードを使用します。

 【シャーク・トルネード】召喚したレベル✕1体のサメに回転ノコギリを生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。(鮫魔術士のデフォルトUCと同じです)

 つまり通常のユーベルコードと【シャーク・トルネード】で2回攻撃してきます。戦争幹部のように先制攻撃まではしてきませんが、メガリス2つぶんの攻撃には注意が必要でしょう。

 無事にクロックダイルを撃破すれば『水神クタアト』を回収できます。もし持ち帰りを希望される方が複数おられました場合は、実際のシナリオの展開を考慮して、そのうちの1人(あるいは1組)が持ち帰ることになります。ご了承ください。
 またこの依頼の後日、クロックダイルが支配していた島が解放されるので、通常通りグリードオーシャンの地図に新しい島も登録されます。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『廃墟神殿に隠されたお宝を探せ!』

POW   :    深海人めいた怪物を力づくで追い払って、お宝の下へ進め!

SPD   :    欲に取り付かれた亡者を駆け足で振り切って、お宝の待つ先へ!

WIZ   :    セイレーンの様な亡霊を知略で潜り抜けて、お宝に辿り着け!

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

おったからおったから!
ふんふん、なるほどなるほど
つまりハオブビリオンくんたちと競争だね!

じゃあ探検かいしーっ!
[餓鬼球]くん!キミに決めた!
通路一杯くらいの大きさの餓鬼球を出してローラー作戦でいこう!
邪魔なのは食べちゃっていいよ!
移動針路はボクの勘【第六感】で!

そーれどいたどいたー!
別にどかなくてもいいけどどかないと大変なことになっちゃうぞー!
餓鬼球くんにパクパク食べてもらいながら進んでいって
それで足りなかったり進路上に邪魔な瓦礫や壁があったら
UCでドーーンッ!!



「おったからおったから!」
 廃墟神殿に『終の王笏』が隠した宝があると聞いて、意気揚々とやって来たのはロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)。予知によるとこの廃墟の奥にメガリスがあるそうだが、それを狙って既にコンキスタドールの残党も動いているらしい。
「ふんふん、なるほどなるほど。つまりはオブビリオンくんたちと競争だね!」
 相手がいるほうがむしろ面白いと言わんばかりのノリノリさで、彼は神殿に足を踏み入れる。内部に漂う陰鬱な空気も、背筋が寒くなるような不気味な雰囲気も、この少年神を怖気づかせるには足りないようだ。

「じゃあ探検かいしーっ! 餓鬼球くん! キミに決めた!」
 ロニが高らかに宣言しつつ手をかざすと、虚空から牙の生えた巨大な球体が出現する。
 それは手のひら大から数百km大まで様々なサイズがあるが、今回の「餓鬼球」は丁度道幅一杯のサイズで通路に収まっていた。
「ローラー作戦でいこう! 邪魔なのは食べちゃっていいよ!」
 彼はその球体をゴロゴロと後ろから押して進む。餓鬼珠はそれに答えるようにガチガチと牙を鳴らし、地面から数センチほど浮遊しつつ廃墟神殿の奥に転がっていくのだった。

『ウウゥゥゥゥゥゥ……』
 廃墟神殿の内部で脅威となるのは、先行するコンキスタドールだけではない。神殿の先住者である異形の怪物や亡霊共は、宝を求めてやって来た生者を決して見逃しはしない。
 磯のような匂いを漂わせ、深海人をグロテスクにしたような怪物が前に立ちはだかる。が、ロニの視界からは餓鬼球が邪魔でよく見えないし、そもそもちゃんと見る気もない。
「そーれどいたどいたー!」
『グオオォォッ!!?』
 減速をかけようともせずに、そのまま餓鬼球で邪魔者を轢く。その名に違わず飢えた球体は怪物に齧りつき、パクパクムシャムシャと一瞬で食い尽くす。驚愕する怪物の悲鳴が廃墟内に反響し、後には肉片と血痕だけが残された。

「別にどかなくてもいいけどどかないと大変なことになっちゃうぞー!」
『ギィィィィィ!?』
『ヒィィィィッ!?』
 生物に限らず無形のもの、光や心さえも食らう餓鬼球の前では、怪物はもちろん亡霊でも無力。邪魔するものを全部食べてもらいながら、ロニは勘に任せて廃墟を進んでいく。
 半ば行き当たりばったりのようなもので、時には壁や瓦礫に塞がれた道もあるだろう。だがそんな時には彼の【神撃】が唸りを上げる。
「ドーーンッ!!」
 神力を込めたパンチが瓦礫を粉砕し、道をこじ開ける。彼を止められる物は何もない。
 第六感が指し示すお宝の方角に、少年神はゴロゴロ球を転がしながら突き進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「死んだ後も厄介な事が残っているか。
しかし、物が物だけに放って置けないし
早く回収しないとね。」

亡霊の気配を探り静かに移動。
迷わない様に注意し奥を目指すが
敵を避けられないなら
アンノウンブレスを発動。
亡霊や怪物を念動力で足止めしつつ
その超感覚と数を活かして周辺の偵察も行わせ。
幽霊が得た情報はテレパシーで自分に送り
敵が少ない所を通りメガリスを目指すが
それが極端に遠回りになる時は敵中を強行突破。
念動力で敵の動きを止める隙に呪装銃「カオスエンペラー」で
敵を撃ち抜き残る敵は通り抜け様にフレイムテイルの炎で焼く
【2回攻撃】で仕留め【ダッシュ】で走る。
「こっちも急いでるんだ。余り手間はかけさせないでくれよ。」



「死んだ後も厄介な事が残っているか。しかし、物が物だけに放って置けないし、早く回収しないとね」
 そう呟きながら廃墟神殿を歩くのはフォルク・リア(黄泉への導・f05375)。オブリビオン・フォーミュラが残したメガリスの遺産、もちこれがコンキスタドールの手に渡れば、彼の言う通り厄介なことになるだろう。
「うん。こっちかな」
 死霊術士である彼は廃墟内にはびこる亡霊の気配を探り、見つからないよう静かに移動する。苔むした壁やひび割れた床の模様を目印にして、迷わないよう注意しながら奥へ。

『ウアァアァァァ……』
 しかし入り組んだ神殿の中では、運悪く敵と鉢合わせになることもある。そんな時でもフォルクは慌てず、禁書「エンドオブソウル」を手に【アンノウンブレス】を発動する。
「地の底に眠る不明なる霊。呪われたる棺の蓋を開きて、その異能を存分に振るい。我に仇なすものを退け、我と共に歩む者を助ける力となれ」
 ゴゴゴと音を立てて地底より棺が現れ、その中から呪詛と共に幽霊の群れが放たれる。
 彼らが一体何者なのか、その実体は一切掴めず正体不明。確かなのは"今の"彼らは敵ではなく、召喚者の意志に応じて働く頼もしい味方だということだ。

『うオオォォォぉぉ……??』
 正体不明の幽霊が放つ念動力によって、神殿に潜む亡霊や怪物達の足が止まる。何もない場所で見えない壁をどんどんと叩きながら呻くさまは、まるでパントマイムのようだ。
 その間にフォルクは幽霊群の一部を散開させ、周辺の偵察に向かわせる。500体近い数に加えて特殊な超感覚も備えた彼らは、こうした探索活動にもうってつけだった。
「なるほど、向こうは行き止まり。あっちには先に続く通路がある……か」
 幽霊達の得た情報はテレパシーを介してフォルクに送られ、それを元に彼はメガリスの在り処を目指す。その道中はなるべく敵の少ないルートを策定するが――もしそれが極端に遠回りになる場合は、強行突破も辞さない構えだ。

「あまり時間をかけすぎると、コンキスタドールに先を越されてしまうからね」
 フォルクは幽霊達に命じて道を塞ぐ敵の動きを止めさせ、呪装銃「カオスエンペラー」のトリガーを引く。幾多の死霊を顕現させて放つこの銃なら、実体なき亡霊にもダメージを与えることができる。
「こっちも急いでるんだ。余り手間はかけさせないでくれよ」
『グギイイイィィィィィィィ……!!!』
 撃ち抜かれた亡霊の悲鳴が木霊するなか、彼は残された敵を黒手袋「フレイムテイル」から放つ炎で仕留め、道をこじ開けるとダッシュで駆け抜ける。全滅させるのもそう難しくは無かっただろうが、今回の目的はあくまでメガリスの確保だ。

『オオォォォぉ……オノレぇ……』
 恨めしげな亡霊達の声を背に、フォルクは陰鬱な廃墟神殿の中をひた走る。幽霊の案内に導かれ、最小限の敵のみを最高効率で倒し、隠されし王の秘宝の元へ向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「カルロスは消費したくないメガリスを王宮外に置いてたんすね…おいら時計型メガリスのが欲しいっす」

「気持ち悪い連中…こいつらは後回しっす」
ゴーグルの【視力】や【暗視】と持ち前の【第六感】で【索敵】しつつ、忍者綿ブーツで足音立てぬ【忍び足】【ダッシュ】
ゴーグルと情報連動したスマホで地図の【情報収集】しメガリス探索

邪魔な敵は『綿ストール・本気モード』で倒し進むが、敵が多い時は妖怪煙を放出し紛れるように【迷彩】
煙に【化術】で【残像】を映し出し【おびき寄せ】る【罠使い】、部屋か行き止まり通路に【結界術】で閉じ込めついでの置き土産に幻影と【催眠術】で同士討ちさせ先を急ぐ

「メガリス確保後に掃除が必要っすね」



「カルロスは消費したくないメガリスを王宮外に置いてたんすね……おいら時計型メガリスのが欲しいっす」
 魔物(サメ)を呼び出す書物よりそっちの方が便利そうだと思いながら、家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)は廃墟神殿を進む。カルロス王が王宮に大量のメガリスを所蔵していたのは羅針盤戦争で確認済みだが、まだこんな所にもお宝を隠していたとは驚きだ。
「欲しくはないやつでも、敵に持っていかれるのは困るっすね」
 彼は暗視機能も付いた「忍者ゴーグル」をかけ、妖怪として持ち前の第六感も活かして索敵を行う。薄暗い闇の中に、禍々しい異形や亡霊の群れがぼんやりと浮かび上がった。

『ウゥぅぅぅ……あぁぁアアぁぁ……』
 意味のない呻き声を上げながら廃墟を徘徊するそれらに、知性らしきものは感じない。この地に何らかの執着があるのか、死して尚現し世に囚われたままの亡霊は、宝を求めてやって来た者に無差別に襲いかかるだけだ。
「気持ち悪い連中……こいつらは後回しっす」
 衣更着は顔をしかめつつ、敵の注意を引かぬよう隠密行動に徹することにした。打綿狸の綿で作った「忍者綿ブーツ」で足音を消して、亡霊の死角をさっと駆け抜ける。敵の目を盗んで忍び込むのも忍者の得意分野だ。

「メガリスのありそうな場所は……あっちっすかね」
 密やかに廃墟を進みながら、衣更着はゴーグルの視界とスマートフォンを連動させ神殿のマッピングを行う。これまでに歩いたルートと索敵の結果を地図に起こせば、どの辺に怪しいスペースがあるかは大体分かってくる。
「そこが近道っす。通らせて貰うっすよ」
 進路を塞ぐ敵は【綿ストール・本気モード】で強化した愛用のストール――打綿狸の体の一部でもある変幻自在の武器で打ち倒す。亡霊とはいえオブリビオンと比べれば遥かに弱い、数体ずつなら特に苦もなく蹴散らせそうだ。

「けどこいつら、やたら数が多いっすね……」
 この神殿中にいったい何十体――いや何百体いるのだろう。倒してもすぐに別の所から次の敵が姿を見せる。いちいち相手をしていられないと判断した衣更着はドロンと変化用の妖怪煙を放出し、文字通り相手を"煙に巻く"。
『ウウウゥゥゥ……?』
 突如上がった煙幕に連中が困惑している隙に、化術で自分の残像を映し出す。真贋など分からぬ連中はまんまとそれにおびき寄せられ、本物の衣更着とは別の方向に殺到した。

「これで一丁上がりっす」
 敵の群れを通路の行き止まりまで誘導したら、結界術で道を塞いで閉じ込める。ついでの置き土産に幻影と催眠術をかけてやれば、あわれな亡霊達は勝手に同士討ちを始めた。これで当分の間は追ってくる敵もいなくなるだろう。
「メガリス確保後に掃除が必要っすね」
 亡霊同士が相争う地獄めいた光景から目を逸らしながら、衣更着はひとまず先を急ぐ。
 無人島とはいえこの惨状、あまり放置しておいて良いものではなさそうだ――或いはこれも隠されたメガリスの悪影響なのだとしたら、早急な確保が必要だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
~廃墟神殿内部~

「そこの新人、いつまで準備に時間をかけているの」
「は、はいっ!もう少しで終わりますっ!」
カビパンは怪物・亡霊のボスとして君臨していた。
「ほら、動きが鈍くなってるわよ」
ハリセンを素振りしながら怪物や亡霊たちにギロリと視線を向ける。
もう死んでいて悪霊。圧倒的な悪のカリスマを誇るカビパンを前にして怪物・亡霊らはトラップ(ギャグ的な)準備とビックリカメラ的に襲い掛かる用意をしていた。

「猟兵さん達やコンキスタドールさん達が沢山来るのよ、それまでに面白いネタとギャグを披露できなかったら…」
「わかっておりマッスル!がんばりマッスル!」
ビシッと敬礼して答える怪物&亡霊ズは既にギャグ化していた。



 ――猟兵達が順調にメガリスの探索を進める廃墟神殿、その内部のとある一区画にて。
「そこの新人、いつまで準備に時間をかけているの」
「は、はいっ! もう少しで終わりますっ!」
 探索に来たはずの猟兵の1人、【ハリセンで叩かずにはいられない女】ことカビパン・カピパン(女教皇 ただし貧乏性・f24111)は怪物・亡霊のボスとして君臨していた。
「ほら、動きが鈍くなってるわよ」
 ハリセンを素振りしながら怪物や亡霊たちにギロリと視線を向ける。それだけで連中はビクリと肩を震わせて竦み上がり、言われるままに手と足を動かす。もう死んでいる悪霊のカビパンは、その圧倒的な悪のカリスマで格下の怪物・亡霊らを完全に従えていた。

「早くしなさい、もう時間ないわよ」
 現場監督のごとくハリセンを振るうカビパンが一体何を準備させているのかと言えば、それは侵入者を驚かせるための(ギャグ的な)トラップとビックリカメラ的に襲い掛かる用意だった。
「タライの準備は?」
「できてます!」
「バナナの皮は?」
「もう少しお待ちを!」
 殺傷目的ではなくコント向けな仕掛けの数々が、亡霊や怪物達の手で準備されていく。はっきり言って陰鬱な雰囲気のある神殿では明らかに「浮いた」トラップであり、すぐに見破られそうなものだが、納期に追われる彼らはとにかく必死である。

「猟兵さん達やコンキスタドールさん達が沢山来るのよ、それまでに面白いネタとギャグを披露できなかったら……」
「わかっておりマッスル! がんばりマッスル!」
 ビシッと敬礼して答える怪物&亡霊ズ。カビパンの振るう「女神のハリセン」の洗礼を受けた彼らは既にギャグ化していた。あーとかうーとか言えなかったのが流暢に話せるようになったのは、ある意味進化かもしれないが。
「とにかく驚かせればいいんですよね? 任せてください!」
「腐っても亡霊の端くれとして、カビパン様に恥じないところをお見せします!」
「腐る肉、もう無いけどなお前!」
 キツい上司にしごかれ倒す仕事中でも、彼らの雰囲気は和気あいあいとしていた。逆にギャグ化したことで抱えていた怨念とかそういうのが一緒に浄化されたのかもしれない。神殿内の他の区画とはまるで別次元のように、ここの空気は澄みきっていた。

「あなたたち、口じゃなくて手を動かしなさい」
「「サーセンッ!!」」
 まあそれも、カビパンにシバかれる恐怖と引き換えと考えれば良かったのかは分からないが。ギャグの世界と化した神殿の一角で、彼女らは通りすがる侵入者共を待ち受ける。
 果たしてドッキリは上手くいくのか、そもそも準備は間に合うのか――続きは次章で。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリージア・プロトタイプ
【魔雪】
…アナタにまた会うとは、私も思わなかった
一度話したきりだったが…アナタは、私を人間と言ってくれた
だから、また話したいと思っていた
人手が必要なら、同行させてほしい
…ああ、わかってる
まずはこの依頼を遂行する

囮役でも構わない
私はアナタの言ったように、人間で在る為に
証明する方法を考え続ける
だから―
アナタの為に、と
力を貸したいと思った私の心を優先したい

彼の作戦に従い遺跡内を駆け抜ける
道中の敵は刀と格闘で排除
討ち漏らしは彼が…そうか、名前も知らないんだったな
…だが、彼との語らいは全て真実の言葉だった
だから…私は彼を信じる
時間のかかる群れに遭遇すればUCで薙ぎ払う


トキワ・ホワード
【魔雪】
王笏…奴の遺した財宝、か
魔導書と聞いては捨て置けん
既に探索に入った敵もいると聞くが
それに、事前に知らされた敵の情報
2つのUC相手は一人では手に余る、と思い同行者を探しはしたが…
まさか、お前とまた会うとはな
話すのは構わんが、まずは依頼を終えるぞ
俺に手を貸すというのなら、十二分に期待はさせてもらう

とはいえ本命は最奥だ
道中で余計な消耗をするわけにはいかんな

UCを発動
自身へメダルを貼り付け周囲からの五感や気配による俺の存在認識を阻害

お前の方がアジリティは上だ
駆け抜けるお前を後方から魔銃で援護する
一気に抜けるぞ

囮役を課すことになる
俺とお前は一度話したきり…嫌になればいつ去っても構わんからな



「王笏……奴の遺した財宝、か。魔導書と聞いては捨て置けん」
 穏やかながらも真剣な口調で呟きつつ、トキワ・ホワード(旅する魔術師・f30747)が廃墟神殿を行く。魔術書の蒐集を家から命じられている彼にとって、今回の依頼は見過ごせない。そうでなくともメガリスの魔導書など、放置するにはあまりに危険なものだ。
 事前に知らされた情報によれば、既に探索に入った敵の首領は、2つのユーベルコードを同時に使用するという。一人では手に余る、と思った彼は同行者を探したのだが――。
「まさか、お前とまた会うとはな」
 視線を向けた先にいたのは、機械化された両腕と左足が特徴的な、目つきの鋭い女性。昨年のクリスマスにダークセイヴァーの廃教会にて出会った、フリージア・プロトタイプ(冷たい両手・f30326)だった。

「……アナタにまた会うとは、私も思わなかった」
 トキワの視線に答えるフリージアの表情は硬いが、その声色に嫌気は含まれていない。
 昨年末の偶然の出会いから数ヶ月。その時の事を彼女がまだ覚えていたのは、それだけ印象的なやり取りがあったという事だろう。
「一度話したきりだったが……アナタは、私を人間と言ってくれた。だから、また話したいと思っていた」
 人手が必要なら、同行させてほしい。落ち着いた真摯な態度で、彼女は気持ちを語る。
 彼女には過去の記憶がない。生体と機械の入り混じった自分の身体への歪な違和感と、人や生物、自然な生命への強い憧れだけが心に残るのみ。自己の存在定義に悩む彼女を、ロニは「人間臭い」と言った。悩み、苦しみ、神に祈る彼女を見て、そう言ったのだ。

「話すのは構わんが、まずは依頼を終えるぞ。俺に手を貸すというのなら、十二分に期待はさせてもらう」
 一方のトキワはその当時と変わらぬドライな調子で答える。出会った時の事を忘れている訳ではないだろうが、積もる話は優先すべき事柄を済ませてからという意見のようだ。
「……ああ、わかってる。まずはこの依頼を遂行する」
 フリージアもその意見に異存はない。今だ異物感のぬぐえない機械の手足も、こうした時には役に立つ。秘めた決意の強さを示すように、彼女の腕からバチリと紫電が走った。

「とはいえ本命は最奥だ。道中で余計な消耗をするわけにはいかんな」
 同行者と目的を共通させたところで、トキワは【認識阻害術式『蜃気楼』】のメダルを自分に貼り付ける。この術式には周囲から対象への五感や気配による認識を誤認させる効果がある。メダルを剥がすか術者が認めない限り、彼の存在は誰にも気付かれない。
「お前の方がアジリティは上だ。駆け抜けるお前を後方から魔銃で援護する。一気に抜けるぞ」
 フリージアのみを認識阻害の対象外になるよう設定したうえで、彼は作戦を伝達する。
 時間をかければそれだけコンキスタドールとのメガリス争奪戦に遅れを取る事になる。シンプルながらも合理的な作戦だが、敢えて問題を挙げるなら先行する側の負担か。

「囮役を課すことになる。俺とお前は一度話したきり……嫌になればいつ去っても構わんからな」
 魔導書型のガンケースから銃を取り出し、無理に付き合う必要はないと告げるトキワ。だがフリージアの心はすでに決まっていた。鞘に収められた黒鋼の刀にそっと手を添え、走り出す構えを取る。
「囮役でも構わない。私はアナタの言ったように、人間で在る為に、証明する方法を考え続ける」
 トキワがいう一度きりの会話が、悩める彼女にひとつの道を示した。神にも示せない答えを見つけるために、どこまでも苦悩し考え抜くという、過酷で「人間らしい」選択を。

「だから――アナタの為に、と。力を貸したいと思った私の心を優先したい」
 そう言ってフリージアは彼の作戦に従い、廃墟内を走り出した。メガリスの元に辿り着くまで、道中の敵は全て排除する。冷たい鋼の両腕が、燃え上がるような紫電を帯びる。
『ウウウぅぅぅアァァアァァ……!!?』
 立ちはだかる深海人めいた怪物を、右腕に備わった【襲爪】が引き裂く。オブリビオンに比べれば、ここに棲み着いた敵は鈍く、脆く、弱い。鉤爪のひと振り、あるいは鞘に納めたままの刀のひと振りで、あっけなく動かなくなる。

(討ち漏らしは彼が……そうか、名前も知らないんだったな)
 後方から響いた銃声と共に、フリージアの脇にいた敵がばたりと倒れた。援護射撃の主に礼を言おうとしたところで、彼女はその相手の名前を聞いていなかったのに気付いた。ただ一度きりの偶然の出会い、さして長くもない会話だったのだからそれも普通だろう。
(……だが、彼との語らいは全て真実の言葉だった。だから……私は彼を信じる)
 彼の術式なら囮を置き去りにして1人で先に進むこともできるだろう。だが彼はそんな事はしないだろう。そのような人の弄する言葉なら、自分の心は震えなかった筈だから。

「紫電の閃きにて潰えろ」
 腕から迸る雷を黒刀の鞘に帯電させ、【code:Decapitate-紫電一閃】を発動。電磁力によって加速された超高速の居合が、行く手を阻む亡者と怪物の群れを纏めてなぎ払う。
 これで突破口は開けた。一気に駆け出すフリージアに合わせて、『蜃気楼』を発動中のトキワも援護射撃を続けながら前進する。
「俺一人ではこうも簡単には抜けられなかったかもな」
 前線で戦う彼女の背を感嘆を込めて見つめながら、精霊宿りの魔銃のトリガーを引く。
 高圧電流を纏わせた銃身より放たれる弾丸は、稲妻の軌跡を描いて瞬速で敵を射抜く。
 奇しくもこの二人の振るう力は、科学と魔術という異極にありながら、共に雷電の力を操るものであった。

『ギギャァーーーッ?!』
 二色の雷光が閃くなか、廃墟神殿に木霊する怪物の断末魔。散っていく敵の屍には目もくれずに、二人の猟兵はメガリス『水神クタアト』の隠された場所を目指して先に進む。
 けして付き合いの長いとは言えないコンビではあるが、その連携に淀みはなく。明確に分担された役割には、相互の信頼が感じられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
火事場泥棒とはこの事ね…海賊から泥棒に転職したらどうかしら。まぁ、良いわ。カルロスの遺したメガリスにはわたしも興味があるし、他にも秘宝やメガリスが残ってそうだしね♪

雑魚で時間を稼がれるのであれば、こちらも人手を用意するわ。
さぁ、わたしの可愛い聖職者達、お願いね♪

【虜の軍勢】で「神龍教派のクレリック」「光の断罪者」を召喚。
それぞれ、【神罰の吐息】【光の断罪者】で亡霊の浄化や怪物達の殲滅を指示。

自身も【念動力】の探知網【情報収集】を広げて敵や隠された財宝等を見つけつつ、念による拘束や聖属性の魔弾【属性攻撃、高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾、早業】による高速多重攻撃で敵を一気に殲滅し、突破するわ。



「火事場泥棒とはこの事ね……海賊から泥棒に転職したらどうかしら」
 王の死した後に遺産を漁るコンキスタドールがいると聞いて、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は呆れたようにため息を吐く。敵から略奪するのはまだ海賊的と言えなくもないが、味方の墓所を荒らすのは浅ましいとしか言えない。
「まぁ、良いわ。カルロスの遺したメガリスにはわたしも興味があるし、他にも秘宝やメガリスが残ってそうだしね♪」
 気を取り直して笑みを浮かべ、廃墟神殿の探索を開始する吸血姫。情報によるとこの中には宝だけでなく怪物や亡霊もはびこっているそうだが――雑魚で時間を稼がれるのであれば、こちらも人手を用意するまでだ。

「さぁ、わたしの可愛い聖職者達、お願いね♪」
「「お任せ下さいませ、フレミア様」」
 【虜の軍勢】を発動したフレミアの元に召喚されたのは、「神龍教派のクレリック」と「光の断罪者」。元はそれぞれ異なる神を崇拝する聖職者だったが、フレミアに敗れ魅了された今では、彼女に仕える忠実な眷属の一員である。
「私達にかかれば不浄な怪物や亡霊など」
「すぐに蹴散らしてご覧に入れます」
 光の断罪者は癒やしの力の反転した破壊の光を放ち、神龍教派のクレリックは神龍より授かった聖なる突風を吹かす。じめじめと薄暗い廃墟にはびこる怪物共にその力は効果覿面で、彼女らの道を阻まんとした敵はたちまち悲鳴を上げて逃げ去る羽目になった。

「いいわね、その調子よ♪」
 眷属達が期待通りに敵を殲滅しているのを見て、フレミアは微笑みながら自らの探知網を広げる。見えない念動力の力場をソナーのように利用し、潜んでいる敵や隠された財宝などを見つけ出す作戦だ。
「この向こうに気になる空間があるわね。それに動いている反応が幾つも……」
 彼女は一見してただの壁にしか見えない場所に手を当てると、念動力の強度を上げる。するとゴゴゴゴと音を立てて石壁がスライドし、その向こうから新しい通路が――同時に向こう側に潜んでいた亡者の群れが姿を現した。

『ウウウゥゥゥゥアアァァァ……!』
 待ち伏せしていたのか、あるいは自分達もそこに閉じ込められていたのか。何れにせよ亡者達は遭遇した侵入者に牙を剥く。が、それを予期していなかったフレミアではない。彼女がふっと手を動かすだけで、念動力は見えない拘束具となって敵の動きを封殺する。
「邪魔よ」
『ウオアァァァァ……?!』
 拘束された亡者の群れが直後に見たものは、星々のように煌めく無数の光。聖なる力を込めた魔力弾の高速多重攻撃が降り注ぎ、不浄なる敵に抵抗すら許さず一気に殲滅する。

「「お見事です、フレミア様!」」
 配下の手を借りることなく、一瞬で多数の敵を一掃してみせた吸血姫の力に、眷属達は惜しみない称賛を贈る。フレミアは微笑みで応じると、消えた亡者の後に残されたものを拾い上げる。それは大粒の宝石をいくつもあしらった、煌びやかなネックレスだった。
「この亡者達も、元は宝を漁りに来た連中の成れの果てだったのかしらね」
 何にせよ宝に罪はないだろう。彼女はそれを懐にしまうと、開かれた通路を先に進む。
 聖職者の眷属を率いる吸血姫は、聖なる力をもって順調に廃墟神殿探索を進めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
できれば、危険なメガリスは確保しておきたいところだね…。
敵に狙われる様なのなら尚更かな…。

「神殿!」
「ボロボロ!」
「お手入れ必要!」

もう使って無いんだし、お手入れはいらないんじゃないかな…。

ラン達連れて参加…。
亡霊達を【ソウル・リベリオン】で浄化し、亡霊達の妄念や怨念を吸収して呪いを強化した【unlimited】による一斉斉射で怪物達を殲滅…。
ラン達にも暗殺による【暗器】での攻撃で怪物のお掃除を手伝って貰いつつ進軍…。
他、カルロスが集めたメガリスや他世界の秘宝等、見つけ次第確保しながら進んで行くよ…。

無限にスイーツが出てくるメガリスとか無いかな…。



「できれば、危険なメガリスは確保しておきたいところだね……」
 『王笏』カルロス・グリードの死後に残された数多の秘宝に、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は危機感を抱いていた。特に今回所在を予知された『水神クタアト』などは、悪用すれば邪悪な神々や魔物を喚び寄せることもできる危険な魔導書である。
「敵に狙われる様なのなら尚更かな……」
 そんなことを考えながら、真剣に廃墟神殿の探索を行う――が、彼女に同行するメイド人形のラン、リン、レンは、メガリスよりも気になることがある様子で、きょろきょろと辺りを見回している。

「神殿!」
「ボロボロ!」
「お手入れ必要!」

 ――家事を生業とするメイドとしては、荒れ放題なまま放ったらかしにされた家に我慢ならないのか。箒を取り出して掃除を始めようとする彼女達を見て、璃奈は首を傾げる。
「もう使って無いんだし、お手入れはいらないんじゃないかな……」
 この神殿が今の状態になったのは、昨日今日のことではないだろう。恐らくは何十年も放置されてきたような荒れ具合、生活感らしき痕跡も残っていない――ただ、棲み着いた住人はいた。死してなおこの地に囚われた亡者や亡霊をそれに含めていいのなら、だが。

『アアアァうぅぅゥゥゥゥ……』
 意味をなさない呻き声を上げながら、亡霊の群れがゆらゆらと璃奈達に近付いてくる。外見上はセイレーンに似ているが、あれがそんな友好的な存在でないのは明らかだろう。
 ここで死者の仲間入りをするつもりはない。璃奈は【ソウル・リベリオン】を発動し、召喚された魔剣を手に斬り掛かった。
「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……。彼の魂に救済を……!」
 かの魔剣は呪詛や怨念に縛られた者を、呪いを喰らうことで救済する力を持つ。妄念を斬り祓われた亡霊はふと安らいだ顔を見せ、そのまま大気に溶けるように消えていった。

「他の怪物も集まってきたね……」
『グウウウゥゥゥゥアアァァ……!』
 続いて現れたのは深海人めいた怪物の群れ。騒ぎを聞きつけてやって来たのだろうが、それならもう少し早く来るべきだった。亡霊達を浄化し終えた璃奈の魔剣には、喰らった呪詛がたっぷりと集まっている。
「呪われし剣達……わたしに、力を……『unlimited curse blades』……!!」
 その大量の呪力により強化して生み出された、無数の魔剣・妖刀の現身による一斉斉射が敵を殲滅する。怪物と言ってもその力はオブリビオンと比べれば遥かに弱く、油断なく備えていた魔剣の巫女にとってはさしたる脅威にもならなかった。

「ラン達も手伝って貰えるかな……」
「「りょうかい!」」
 主人の活躍にメイド人形達も奮起し、メイド服の中から暗器を取り出しては投げつけ、怪物を"お掃除"する。敵に一矢報いる隙も与えずに、璃奈達は廃墟神殿の進軍を続ける。
 その道中でちらほらと見つかるのは、埃を被った宝飾品や古い書物など。メガリスのような力は感じられないが、恐らくこれもカルロスが集めた宝の一部だろう。

「無限にスイーツが出てくるメガリスとか無いかな……」
 見つけた宝を確保しながら、ぽつりと自分の願望を呟く璃奈。多種多様な他世界の秘宝の中にはそんなメガリスがあってもおかしくはないが――果たしてこんな場所にそんな物を隠しておくかは疑問である。
「「ご主人、帰るまで我慢して!」」
「わかってるよ……」
 メイド達にたしなめられつつ、甘いもの好きな魔剣の巫女は神殿の奥に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

…こう言った手合いが存在する以上は、この世界の戦いは終わったとは言えんな
ならば、それを処理するのも猟兵の仕事だろう

シガールQ1210を構えながらダッシュで目的地を目指す
途中で邪魔をする怪物や亡霊達には乱れ撃ちで対処
敵を倒す事よりも、道を切り開いていく事を念頭に置いて行動する

フン…こうまで群れられると流石に息苦しいな
少し、風通しを良くしてやろう

敵が群れでやってきたらUCを発動
分裂したオーヴァル・レイのビーム砲を前方の敵に一斉発射で切り込んでいき、群れに風穴を開けて突破口を開く

誠に残念だが、お前達と遊んでいる暇はないんだ
グズグズしていたら、此処の「お宝」を盗んだまま逃げられるからな



「……こう言った手合いが存在する以上は、この世界の戦いは終わったとは言えんな」
 カルロス・グリードが倒れた後も活動を続けるコンキスタドールの残党の存在を知り、キリカ・リクサール(人間の戦場傭兵・f03333)は静かに息を吐く。蹂躙と殺戮と略奪を生業とする彼らは、今後も少なからずグリードオーシャンで事件を起こすだろう。
「ならば、それを処理するのも猟兵の仕事だろう」
 携行する強化型魔導機関拳銃"シガールQ1210"を構えながら、彼女は廃墟神殿を走る。
 目指すのはこの建物の深部、カルロス王が残した『水神クタアト』の隠された場所だ。

『グウウゥゥぅぅぅ……』
 進路上に立ちはだかるのは、悍ましい姿の怪物や亡霊や亡者の群れ。知性もなく闇雲に襲いかかってくる連中に、キリカは邪魔だと言わんばかりに銃弾の乱れ撃ちを叩き込む。
 秘術で強化された弾丸のフルオート射撃は、ドラゴンの皮膚すら貫通する威力を誇る。オブリビオンでもない半魚人モドキや幽霊を相手にするには過剰火力なくらいだ。
「大した事はない……だが、ここで時間をかけるのは不味いな」
 もたもたしていると先行するコンキスタドール残党がメガリスを奪って逃げてしまう。
 敵を倒す事よりも、道を切り開いていく事を念頭に置いて、彼女は弾幕で突破口を開きながら先を急いだ。

『アアァァぁアァァ……!』
『オオオォオォぉぉぉ……』
 しかし廃墟神殿の奥に進むにつれて、遭遇する敵の群れも増えてくる。まるでこの先に何かがありますよと言わんばかりの布陣は、着実にメガリスの元に近付いている実感を与えてもくれるが、道を塞ぐ肉と霊の壁は単純に鬱陶しい。
「フン……こうまで群れられると流石に息苦しいな。少し、風通しを良くしてやろう」
 キリカは浮遊砲台「オーヴァル・レイ」を傍らに浮かべ、【オーヴァル・ミストラル】を発動。青い卵型の砲台を100機近くにまで分裂させ、前方の敵に一斉攻撃を仕掛けた。

「行け、逃がすな」
 所持者の念力によってコントロールされた多数のオーヴァル・レイは、発光する中心部から強力な粒子ビームを一斉に放つ。それは蒼い閃光の暴風雨となって怪物の群れを吹き飛ばし、群れのド真ん中に大きな風穴を開けた。
『グオアアァァァァァァ―――ッ!!?』
 蹂躙された怪物達の断末魔が廃墟神殿に響き渡る。キリカはそれに耳を貸すことなく、突破口を塞がれる前に全力疾走で群れの中を駆け抜けた。突破を援護するようにオーヴァル・レイも射撃を続行し、敵に追撃する隙を与えない。

「誠に残念だが、お前達と遊んでいる暇はないんだ。グズグズしていたら、此処の『お宝』を盗んだまま逃げられるからな」
 今回の依頼目標はあくまでコンキスタドールの撃破とメガリスの回収。道中の障害に必要以上の手間をかける事なく、キリカはオーヴァル・レイを引き連れて颯爽と前進する。
 まっすぐに前だけを向いた迷いのないその疾走を、止められる者はもう何もなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
【冒涜】
助手(虻須・志郎)との戯れも久々か。兎角。回収するにも『道を拓かねば』成らぬ。我々は人間なのだよ
UC『導々召繰理』で無機物(ことごとく)を糸に変換、神(おのれ)の意図として手繰り亡霊どもを縛り上げる
その際『恐怖を与える』。たとえば『別の神格』の幻影を見せるのは如何だ。最も俺が『それ』だが
助手の糸も重ねての二倍、取り残した奴はTru'nembraで撹乱してやろう。落ち着いたところで情報収集だ
神殿の中には何が『存在』する。偶像か。碑か。魔導書に関する『絵画・文字』なども探してみよう。時間がないならば急いで向かうがな
正気固定機の起動も忘れない。何が視えるのかは解せない故

愉しい探索に成りそうだ


虻須・志郎
【冒涜】
先生(ロバート・ブレイズ)と共に向かう
行こうぜ……ってお誂え向きのが出てきやがったな

内蔵無限紡績兵装展開
王者の石を煌かせ投網を形成
深海人も人魚も纏めて捕縛し
アムネジアの催眠波動で大人しくさせる
ビチビチバタバタ五月蠅えんだよ
先生の恐怖と合わされば二度と立ち上がれねえだろ
ああ、道は拓いてなんぼだ
宇宙でも地上でも海ってのはそういう所さ

落ち着いたらインセインとマッドネスで神殿の情報収集
ここが『水神クタアト』が祀られた場所なら
何らかの封印に関する印がある筈
それをちょいと地形破壊して奴の力を弱められねえかな、先生?
奴さん、この神殿に自分が飲み込まれてる事に気付いて無えだろ、多分

ああ、愉しい探索だな



「助手との戯れも久々か」
「そういやそうだったか。行こうぜ先生……ってお誂え向きのが出てきやがったな」
 じめじめと陰鬱な雰囲気に包まれた廃墟神殿の通路を、二人の男が並んで歩いている。
 先生と呼ばれたのはロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)。対して助手と呼ばれたのは虻須・志郎(第四の蜘蛛・f00103)。メガリス回収のためにやって来たコンビだ。
「兎角。回収するにも『道を拓かねば』成らぬ。我々は人間なのだよ」
「ああ、道は拓いてなんぼだ。宇宙でも地上でも海ってのはそういう所さ」
 彼らの視線の先で待ち受けていたのは、この地に棲み着いた怪物と亡霊の群れ。秘宝の番人という訳ではないのだろうが、この妨害を突破しなければ宝を探すどころではない。

『ううウウぅぅぅアアアァァァあァぁ……』
 正気を削るような不気味な声を上げ、ひたひたと近付いてくる怪物と亡霊。その外見は深海人やセイレーンといったこの世界の種族を、よりグロテスクにしたようにも見える。
 だがこんな連中に足止めを食らうつもりはない。ロバートと志郎は合図を交わすこともなく、阿吽の呼吸で同時にユーベルコードを発動した。
「我等、神意に在らず――嘲りの手繰りよ。七たる禁忌」
「編む織るも 吊るも締めるも 自在故 生かす殺すは 我の儘也……往くぞ、終いを舞わせてやる」
 ロバートは【導々召繰理】で周囲の無機物を糸に変換し、志郎は内臓無限紡績兵装から投網を形成。神の意図と異形科学が紡ぎあげた大網が、怪物も幽霊も纏めて縛り上げた。

『ウウウゥゥゥウゥ……!?』
 捕らわれた怪物共は呻きながらじたばたと藻掻くが、先生と助手の手による二重拘束は簡単に破れるものではない。無為に暴れ続ける敵を押さえ込むように、志郎がぐっと糸を引いて網を窄める。
「ビチビチバタバタ五月蠅えんだよ」
「ふむ。では『別の神格』の幻影を見せるのは如何だ。最も俺が『それ』だが」
 サイボーグ化された志郎のボディに煌めくのは、変異性コアマシン「王者の石」。これにより稼働する紡績兵装の【死紡誘伎】は状況に応じたあらゆる素材と道具で敵を討つ。
 そしてロバートの紡いだ「かみのいと」は、捕らえた者に名状しがたき恐怖を与える。彼の本質である冒涜・否定するもの、混沌(ナイアルラトホテップ)を冠するものの神威の一端に触れてしまい、一時的狂気に陥るのだ。

『ヒィ……!』
 冒涜的で名状しがたい「ひとでなし」の存在感を発するロバートに、怯えたように網の中で縮こまる怪物達。ダメ押しに志郎が精神干渉器「アムネジアフラッシュ」を起動し、捕縛した敵を催眠状態にする。
「先生の恐怖と合わされば二度と立ち上がれねえだろ」
 しんと静まり返った神殿内で、もう周囲に襲ってくるような敵がいない事を確認する。もし網から取り残しがあった場合はロバートの異形機械「Tru'nembra」で撹乱し殲滅する予定だったが、どうやらそこまでするまでもなく掃討できたようだ。

「これで本題に取り掛かれるな」
「ああ、情報収集といこうか」
 落ち着いたところで、二人は改めてメガリスの所在を求めて調査を開始する。この手のフィールドワークはUDCアース等でたびたびこなしたもの。未知を探るのは得意分野だ。
 まずは志郎が演算端末「インセイン」と分析端末「マッドネス」で気になるものを捜索し、邪神や怪異にまつわる豊富な知識を持つロバートがそれを解読する。悍ましくも身になじんだ気配が、ここに"何か"があると彼らに告げていた。
「神殿の中には何が『存在』する。偶像か。碑か。魔導書に関する『絵画・文字』なども探してみよう」
「ここが『水神クタアト』が祀られた場所なら、何らかの封印に関する印もある筈だろ」
 あまり時間をかけ過ぎるとコンキスタドールに先を越されてしまう。調査は迅速、かつ慎重に。冒涜翁を称する老人とその助手は、ほどなくして奇妙な「しるし」を見つけた。

「あったぜ。これをちょいと地形破壊して奴の力を弱められねえかな、先生?」
 壁に刻まれた異界の碑文に、魔力の籠もった刻印を見つけた志郎。恐らくこれが封印に関する印だと考えた彼はロバートに確認を取る。もしこの見立てが間違いなければ、これを破壊すると少々"愉快な"ことになりそうだ。
「奴さん、この神殿に自分が飲み込まれてる事に気付いて無えだろ、多分」
「ふむ。試してみて損は無いだろうな」
 何が視えてしまっも大丈夫なように、正気固定機を起動して碑文の解読を行った結果、ロバートの意見も概ね同意だった。印には何らかの保護が施されていたようだが、猟兵の力であれば破壊するのは難しくない。

「これでよし、と……」
 壁ごと穿つように印を破壊した直後、神殿内に漂う陰鬱な空気が「ぞわり」と一瞬増したような気がした。それが何を意味するのかはまだはっきりとはしないが、この廃墟神殿で何らかの変化が起こったのは確かだ。
「愉しい探索に成りそうだ」
「ああ、愉しい探索だな」
 先生と助手は互いに頷きあいながら探索を再開する。廃墟に遺された痕跡や記録をひとつひとつ集め、隠されしメガリスの元へ。深淵へと向かう彼らの歩みに迷いはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
バルタン(f30809)と!
アドリブ歓迎

魔導書…『水神クタアト』…!!
まさかそんな魔導書が有るとは…!!
これは是が非でも手に入れないと…!
バルタンも手伝ってくれてありがと!
新技の方も何かあったらしっかり止めっから安心してくれ!

廃墟神殿とかめっちゃらしい場所に在んなぁ…
妨害が来るってんなら…
よし!(バルタンにおんぶしつつぎゅっとしてからのUC!)
これで二人とも透明だ!

バルタンになんかあっても
これだけ近くに居りゃどうにかできるさ!

…なんか戦争で見たピサロっぽくなってんな…?

でもまだ大丈夫そう、なら…
バルタンに水と光の魔力を付与《エンチャント》(オーラ防御)しつつ

あぁ、このままつっきろう、バルタン!


バルタン・ノーヴェ
零時殿(f00283)と!
アドリブ歓迎!

羅針盤戦争の事後処理デスネー。OK、協力しマース!
ワタシも新しい機能を試す機会を伺っていたのデース!
(実践で試す前に、電脳に詳しい人に相談するようアドバイスされてマシタガ)

有象無象を一蹴するには、高速機動がもってこいであります。
万が一おかしくなった場合には、零時殿に止めてもらいマショー!
透明化をしてもらってから、新システム・インストール!

「骸式兵装展開、剣の番!」

うっ……!
この先に、財宝がある……ならば、略奪するチャンスだ、デスネ!
行くぞ、零時殿、と。なるほど、ちょっと性格が引っ張られそうになる、マスガ。
まっすぐ突っ切る分には支障はない! 行き、マース!



「魔導書……『水神クタアト』……!! まさかそんな魔導書が有るとは……!!」
 グリモアにより予知された耳寄りな情報に、兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)は目をキラキラ輝かせていた。全世界最強最高の魔術師を夢見る彼としては、メガリスの魔導書など絶対に見逃せないアイテムだろう。
「これは是が非でも手に入れないと……! バルタンも手伝ってくれてありがと!」
「羅針盤戦争の事後処理デスネー。OK、協力しマース!」
 やる気全開の彼に同行するのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。家事代行サービスから戦場のお掃除まで、依頼とあらば完遂のために全力を尽くすプロフェッショナルである。

「ワタシも新しい機能を試す機会を伺っていたのデース!」
 零時に劣らず気合十分なバルタンは、率先してテクテクと廃墟神殿の中に入っていく。
 その後に続いた少年魔術師は、いかにもな雰囲気のある建物をきょろきょろと見回す。
「廃墟神殿とかめっちゃらしい場所に在んなぁ……」
 不気味で陰鬱な空気に紛れて、いつ暗がりから敵が襲ってきてもおかしくない。相手は猟兵ならさほど苦戦はしないレベルの怪物や亡霊らしいが、いちいち妨害を食らっていては肝心の魔導書をコンキスタドールに盗られるかもしれない。それは大問題だ。

「妨害が来るってんなら……よし!」
「おっと、零時殿?」
 零時は何かを思いついた様子でふいにバルタンの背中におぶさると、ぎゅっとしてから【改良型クリスタライズ】を発動する。自分と抱きしめている相手を透明化させるクリスタリアン特有の術だが、改良版と銘打つだけあって、これには使用中の疲労がない。
「これで二人とも透明だ!」
「なるほど、助かりマス!」
 敵の妨害を突破するにせよ倒すにせよ、透明化はシンプルでも効果の高いサポートだ。
 折良くか、それとも悪くか、通路の奥からひたひたと足音を立てて怪物の群れがやって来る。術を維持する零時をおぶったまま、バルタンは戦闘態勢を取った。

「新技の方も何かあったらしっかり止めっから安心してくれ! バルタンになんかあっても、これだけ近くに居りゃどうにかできるさ!」
「はい。万が一おかしくなった場合には、零時殿に止めてもらいマショー!」
 背負う重さを頼もしさに感じつつ、バルタンは過去の交戦記録を基に骸の海にアクセスする。無限の『過去』が満ちる領域を広大なデータベースとして捉え、その中からかつて戦った強敵のデータを抽出する――それが彼女がインストールした新システム。

「骸式兵装展開、剣の番!」

 次の瞬間、彼女が身につけていたメイド服は、紫を基調とした機能的な衣装に変わる。
 それは七大海嘯『邪剣』ピサロ将軍が着ていたのと同じ格好。ただ姿を真似ただけではない、この状態のバルタンはかつてピサロが見せた戦闘技術をも擬似的に再現できる。
「うっ……!」
 脳裏に走るノイズを堪えながら地面を蹴ると、その身はたった一歩で疾風のように加速する。人ひとり背負っているとは思えない機動力――これぞ【模倣様式・八艘飛び】也。

「この先に、財宝がある……ならば、略奪するチャンスだ、デスネ!」
 普段とは違うギラついた眼差しで、バルタンは廃墟の先を見る。その進路を邪魔する者へと、無骨なサムライソードを振るえば、一瞬の内に怪物の身体がなます斬りになった。
 透明化していた事もあって、敵側はいったい何が起こったのか理解できなかったろう。『邪剣』の残滓を纏うことで得た白兵戦闘能力の強化は、射撃攻撃の使用不可という代償を差し引いても凄まじいものだった。
「……なんか戦争で見たピサロっぽくなってんな……?」
 だが、おぶさりながらその戦いぶりを見ていた零時は、彼女の異変に気が付いていた。
 擬似的にでも他者の力を宿した影響は、外見や戦闘能力だけではなく精神面にまで現れつつあった。

「行くぞ、零時殿、と。なるほど、ちょっと性格が引っ張られそうになる、マスガ」
 零時の指摘を受けて、バルタンも自分の変調を自覚する。今はまだ性格が『邪剣』寄りになる程度で済んでいるが、このまま力を濫用すればどうなるかは分からない。実践で試す前に、電脳に詳しい人に相談するようアドバイスを受けていたのを思い出す。
「でもまだ大丈夫そう、なら……」
 彼女がまだ自分の知る「バルタン」であることを確認して、零時は彼女に水と光の魔力を付与する。万が一攻撃を食らってもこれで防げるだろうし、心を蝕む『邪剣』の残滓の影響も少し和らぐかもしれない。

「ありがとうございマス、零時殿」
 仲間の清浄な魔力を肌で感じて、バルタンの心に少し余裕が戻る。これしきの事で我を忘れていては兵士失格。人生を戦場に費やした歴戦兵の意志が『邪剣』の残滓を抑える。
「まっすぐ突っ切る分には支障はない! 行き、マース!」
「あぁ、このままつっきろう、バルタン!」
 ぎゅっとしがみつく零時を連れて、バルタンは最短最速で敵の群れの中を駆け抜ける。
 壁や天井まで足場にした縦横無尽の機動。相手はただ一陣の風が吹き抜けていったようにしか感じなかっただろう――妨害を抜けた二人は、そのまま神殿の奥に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
今回は猟兵の何方かが預かる以上杞憂ですが、不用意に常人が触れればコンキスタドール化の恐れあるメガリス
かの王の遺産であれば危険度はどれ程か…残党に渡らずとも回収しておきたいものです

さて、後援企業に依頼された装備の実地試験がてら探索と参りましょう

UCの外套表面の擬態機能で周囲と同化
触手の吸盤で天井に張り付き移動
墨を発射し着弾時の音で陽動も行いつつ亡者達の目を掻い潜り密やかに廃墟神殿を探索

(頭を下にぶら下がり亡者見送り)
生身の種族の方に調整する場合、この姿勢での血流等の生理機能対策が必要と…
先方に送る運用データも揃ってきましたね

後は…『次は御伽の騎士が使う魔法の隠れ蓑のような物を希望します』と…



「今回は猟兵の何方かが預かる以上杞憂ですが、不用意に常人が触れればコンキスタドール化の恐れあるメガリス。かの王の遺産であれば危険度はどれ程か……」
 メガリスという呪われし秘宝の危険性を改めて感じながら、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は廃墟神殿に足を踏み入れる。フォーミュラが死してなおオブリビオン化の因子が現世に残っていると考えれば、これは憂慮すべき事態である。
「残党に渡らずとも回収しておきたいものです」
 その価値を知らぬ一般人や、あるいは恐れ知らずの無法者の手に渡るだけでも、呪いの秘宝は混乱をもたらすだろう。折角平和になったのだ、騒乱の種は減らしておくに限る。

「さて、後援企業に依頼された装備の実地試験がてら探索と参りましょう」
 トリテレイアが装備するのは【特殊潜入工作用試作型隠蔽外套】。通常時は躯体全体を覆う黒い外套のように見えるが、起動すると表面に施された擬態機能が働き、周囲の風景と同化する仕組みだ。
「ウォーマシン用最新鋭特殊装備との触れ込みでしたが……」
 3m近い大柄な巨体が、傍からはよほど近付くか目を凝らさねば分からないほど完璧に風景に溶け込んでいる。さらに外套の下に格納された複数本の触手状ワイヤーによって、吸盤によって壁や天井に張り付き、静粛かつ地形を選ばぬ移動能力を与える優れものだ。

「確かにこれは高性能ですね」
 天井にぴたりと張り付き、風景と同化したまま静かに廃墟内を移動するトリテレイア。
 その道中で出くわしたのは、ひたひたと徘徊する亡者の群れ。仮に戦闘になっても瞬殺できる程度の脅威だが、ここは新装備のもうひとつの機能の使い所だろうと彼は考えた。
(照準よし……発射)
 ホースのように向けられた触手の先端から、黒い墨が発射される。狙いどおりの場所に着弾したそれはびちゃりと音を立て、それを聞きつけた亡者達はトリテレイアの潜んでいる場所から遠ざかっていく。

(上手く陽動できましたね)
 頭を下にして天井からぶら下がり、亡者を見送るトリテレイア。新装備の性能をフルに活用して亡者達の目を掻い潜りつつ、密やかに廃墟神殿を探索する様子はさながら――。
「……騎士らしくないのは兎も角、どうにも生物の印象が拭えませんね……」
 その機能からくる印象を一言で現すなら「イカ」だろう。設計担当者がモチーフにしたのかもしれない。性能的には申し分ないが、なぜこのデザインだったのかは不明である。

「生身の種族の方に調整する場合、この姿勢での血流等の生理機能対策が必要と……先方に送る運用データも揃ってきましたね」
 ピタピタと触手で天井を這いながら先に進むうちに、求められていた試験結果もだいぶ纏まってきた。後援企業に送られるこれらのデータはさらなる装備開発の参考となって、トリテレイアの性能をますます高めてくれることだろう。
「後は……『次は御伽の騎士が使う魔法の隠れ蓑のような物を希望します』と……」
 やはり騎士的にイカはどうしても微妙なのか。次に送られてくる試作装備に期待半分、不安半分といった心持ちで、機械仕掛けの騎士は廃墟神殿の奥に向かうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『渚のパイレーツ』

POW   :    ウォータージェット・シュート
【ウォーターガンから放たれた超高圧高速水】が命中した対象を切断する。
SPD   :    フォーメーション・ウルフパック
【狙った獲物を発見した連絡を聞きつけた仲間】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[狙った獲物を発見した連絡を聞きつけた仲間]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
WIZ   :    ワンフォーオール、オールフォーワン
自身と仲間達の【ウォーターガン】が合体する。[ウォーターガン]の大きさは合体数×1倍となり、全員の合計レベルに応じた強化を得る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 怪物や亡者の妨害をかいくぐり、メガリスの眠る廃墟神殿の奥までやって来た猟兵達。
 辺りが暗くなっていくにつれて、空気には磯のような匂いが混じりだす。不気味さを感じながらも慎重に進んでいくと、怪物共とは異なる足音と声が聞こえてきた。

「ゲッ。お前ら、猟兵かよ! なんでこんな所にいやがる!」

 向こうも此方の接近に気付いたようだ。振り返るなりだみ声を上げたのは、気取った赤い服を着た二足歩行のワニ。予知にて確認されていたコンキスタドール残党のリーダー、「クロックダイル」に間違いない。

「いや、こんな所に来る理由なんて一つしかねえか。てめぇらの狙いもメガリスだな!」

 クロックダイルの目的はこの神殿に眠る『水神クタアト』の確保。カルロス・グリードの遺産であるメガリスを狙う連中が自分達の他にもいることは、当然彼も予想していた。争奪戦になっても遅れを取らぬよう、十分な配下を引き連れてきたうえで。

「そうはさせねぇ! メガリスを他に入れるのは俺様だ! お前らここは任せたぜ!」
「はーい♪ あーしら、頑張っちゃう☆」

 カチコチとクロックダイルの腹の中で音がしたかと思うと、彼の姿は物凄いスピードで廃墟の奥に遠ざかっていく。その後に残されたのは、水鉄砲を持った水着姿の美女たち。
 まるで海水浴にでも来たような格好だが、彼女らも立派なコンキスタドールの一員だ。

「あーしら『渚のパイレーツ』にかかれば、足止めくらいチョロいって!」
「さっさと終わらせてクロックダイル様追いかけよ! あーしもメガリス見たいし♪」

 キャピキャピと緊張感のない態度ながら、しっかりと連携の取れた動きで通路を塞ぎ、ウォーターガンを構える女海賊たち。見た目に反してかなりの手練であることが伺える。
 だがここで悠長に足止めを食らっている暇もない。一刻も早くクロックダイルを追いかけなければと、猟兵達は戦闘態勢に入った。
キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

やれやれ、何とも緊張感のない奴らだな…
とはいえ、油断は禁物か

エギーユ・アメティストを装備
戦場をダッシュで駆け回り、敵が群れる前に鞭を叩きつけてその数を減らしていく
自分は銃口を見切りながら行動を行い、回避だけでなくウォーターガンでの同士討ちも狙う
乱戦になればさらに狙いやすくなるな

今は時間が無いのでな、お前達に構っている暇もない
なので…纏めて吹き飛べ

敵が集団で攻撃をしだしたらUCを発動
地面や壁を蹴って縦横無尽に進み、ウォーターガンを回避しながら敵集団に急接近し、そのまま蹴撃を放って吹き飛ばして倒していく

お前達の行き着く先は、メガリスではなく骸の海だ
その格好にお誂え向きの場所だろう



「やれやれ、何とも緊張感のない奴らだな……とはいえ、油断は禁物か」
 場違いなほどに能天気な『渚のパイレーツ』達の言動に、思わず肩をすくめるキリカ。
 だがそれでも相手はコンキスタドール。敵を見据える彼女の眼光は鋭く、それを受けて敵も狼のように瞳をギラつかせる。
「ここは通行止めだし!」
「ならば押し通るまでだ」
 キリカが駆け出すのと同時に、渚のパイレーツはウォーターガンの銃口を一斉に突きつける。獲物を狙い定めた狩人の如き【フォーメーション・ウルフパック】の構え――個の練度では劣っても、集団戦に長けた彼女らの陣形を崩すのは容易なことではない。

「ブチ抜いちゃう☆」
 オモチャのようなウォーターガンから発射される、尋常でない出力の高圧水流。当たれば人体に穴くらい開けられそうな放水を、キリカは銃口の動きを注視して見切り、躱す。
 そしてこれ以上群れられる前にと、純白の革鞭「エギーユ・アメティスト」を一振り。鞭の先端に取り付けられた紫水晶の針が、唸りを上げて敵をなぎ倒す。
「きゃっ?! いったぁーーいっ!」
「フン。やかましい奴らだ」
 キリカは鼻で笑いながら、相手が怯んだ隙に敵陣に飛び込み、追撃の鞭を振るって敵の数を減らしていく。渚のパイレーツも反撃しようとするが、ひとたび乱戦状態に持ち込まれてしまうとウォーターガンの威力が仇となり、同士討ちを恐れて迂闊に撃てなくなる。

「こいつ、ちょこまか鬱陶しいし!」
 得意の陣形を1人の猟兵にかき乱され、苛立ちを見せる女海賊達。対するキリカは余裕の態度で敵を翻弄しながら、脚に履いた「アンファントリア・ブーツ」の靴音を鳴らす。
「今は時間が無いのでな、お前達に構っている暇もない。なので……纏めて吹き飛べ」
 ブーツによる身体・運動能力の強化機能を極限まで向上させ、ユーベルコードを発動。
 冷たい宣告と共に放たれた【サバット】の一蹴りが、まるで大砲でも直撃したかのような轟音を廃墟神殿に轟かせた。

「きゃーーーっ?!!!」
 破壊された廃墟の瓦礫と共に、甲高い悲鳴を上げて吹き飛ばされる渚のパイレーツ達。
 敵の陣容が崩れたこの機を逃さず、キリカは追撃を仕掛ける。人間離れした運動能力で地面や壁を蹴って縦横無尽に進み、放水を避けながら敵集団を文字通り「蹴散らして」いくその戦いぶりは、もはや圧倒的だった。
「お前達の行き着く先は、メガリスではなく骸の海だ。その格好にお誂え向きの場所だろう」
 もはや彼女の道行きを止められる者はいない。消滅していく渚のパイレーツの骸を踏み越えて、キリカはクロックダイルの逃げていった神殿の奥に向けて駆けていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
「此処で遊んでいる暇はない。
とっとと片付けさせて貰うよ。」
と言いつつも急いで倒せる相手ではない事を認識し
策を練り。

真羅天掌を発動、凍結属性の霧を発生させ
霧に隠れ敵の動きを警戒。
【残像】を発生させ、ウォーターガンを合体させて
ウォーターガンを失った敵を盾にしながら敵の攻撃を回避。
そうしている内に敵の動きを【見切り】
魔力を集中して合体されたウォーターガンを真羅天掌で凍結。
攻撃不能にすると同時に今までに発射された水を凍結させて
敵の動きを封じる。
「さあ、これで君達に出来る事は何もない。
砕けて散る他はね。」
とスカイロッドを実体化させて
風弾を【範囲攻撃】で乱れ撃ちして攻撃。
敵を砕きクロックダイルの後を追う。



「此処で遊んでいる暇はない。とっとと片付けさせて貰うよ」
 フォルクはそう言いつつも急いで倒せる相手ではない事を認識し、頭の中で策を練る。
 海賊らしい集団戦に長けた渚のパイレーツ。彼女らのウォーターガンと正面から撃ち合うのは避けたい。ならここは撹乱と目くらましを仕掛けるのが得策か。
「大海の渦。天空の槌。琥珀の轟き。平原の騒響。宵闇の灯。人の世に在りし万象尽く、十指に集いて道行きを拓く一杖となれ」
 彼は【真羅天掌】を発動して属性と自然現象の力を操り、戦場に氷の霧を発生させる。
 春先から真冬に逆戻りしたような冷たい霧氷に包まれ、水着姿のパイレーツ達は揃ってぶるりと肩を震わせた。

「ちょっと、メッチャ寒いんですけどー?!」
 敵の抗議に取り合わず、フォルクは霧に姿を隠す。標的を見失った渚のパイレーツは、とにかくこの寒さを何とかするのが先決だと、【ワンフォーオール、オールフォーワン】を発動する。
「こんなの、あーしらのフルパワーでふっ飛ばしちゃうし!」
 彼女らの武器は合体させることで性能が向上する。1人のパイレーツが代表して巨大化したウォーターガンを構え、邪魔な霧ごと相手を吹き飛ばそうとトリガーに指をかける。
 だがパイレーツ達の対抗手段よりも、フォルクの策は一枚上手だった。霧の中に浮かび上がる残像は彼の所在を掴ませず、さらに本人は敵を盾にして巧みに射線を切っている。

(そこそこでも数の多い敵よりも、強くても単独のほうが対処はしやすい)
 ウォーターガンを合体させている間、代表者以外のパイレーツ達は武器を失っている。
 丸腰の相手など恐るるに足らず、勝ちを焦るあまり数の利を手放した敵を、フォルクは霧と冷静な判断力によって翻弄し、その動きを見切っていく。
「ぐぬぬぬぬ。あたれ、あたれーっ!!」
 渚のパイレーツは闇雲に巨大ウォーターガンを連射するが、そのことごとくは的外れな方角を射抜く。せっかくの強力な武器もこれではタダの放水機だ――そして"水撒き"が済んだところで、魔術士の青年は反撃を仕掛けた。

「この霧が、ただの嫌がらせか目くらましだと思ったかな?」
「なっ?! あーしの銃が……凍って?!」
 フォルクが魔力を集中すると、霧の冷気により巨大ウォーターガンが凍り付いていく。
 彼が【真羅天掌】に込めた属性は性格には氷ではなく「凍結」――合体した敵の武器を使用不能にするのが彼の狙いだったのだ。
「な、なんだか寒さが増してない……?」
「なんかヤバいかも……って、あーしの足が?!」
 同時に霧は今までにウォーターガンで発射された水を凍結させて、敵の動きを封じる。床の凍結に巻き込まれた彼女達の足は、ぴったりと張り付いたままもう一歩も動けない。

「さあ、これで君達に出来る事は何もない。砕けて散る他はね」
 完全に敵を封殺したところで、フォルクは風の杖「スカイロッド」を実体化させながら霧隠れをやめる。青ざめる渚のパイレーツ達が「ちょッ、やめ」と言い終わるより早く、圧縮された風弾の乱れ撃ちが彼女らを襲った。
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」」
 甲高い悲鳴と共に凍結した身体を撃ち砕かれ、骸の海に還っていく渚のパイレーツ達。
 彼女らが遺した氷の破片を踏み砕き、フォルクはクロックダイルの後を追うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
~前回までのあらすじ~

ドッキリは上手くいくのか、準備は間に合うのか!?
廃墟神殿の主となったカビパン!
自称猟書家TOPを目指す彼女の真意とは!? 
悩み聞くカレー屋閉店の危機!
そしてトリッピーはいつ動くのか!?  
更に謎の戌MSさんが残した【続きは次章で】に隠された真実!?

謎が謎を呼び、嵐が嵐を呼ぶ廃墟神殿に眠る王の遺産!
遂にクライマックス!!


「悩み聞かないよ、カレーもないよ」
出会い頭の開口一発。
「ようこそいらっしゃいました、遅くまでオツカレーカツカレーヒレカツ華麗なる一族、なっちゃって~」
凍り付いた渚のパイレーツ達に呆れたカビパンは、ガン無視決めて責任者(クロックダイル)へ問い詰めに向かった。



「悩み聞かないよ、カレーもないよ」
 出会い頭の開口一発。渚のパイレーツと出会ったカビパンが訳の分からない事を言う。
 彼女の運営する【悩み聞くカレー屋】の標語は「悩み聞くよ、カレーあるよ」ではないのか。突然自分の店を否定しはじめた彼女に、敵も困惑する。
「悩みもカレーもないんなら、じゃあ何があるっていうのよ?」
「それについて語るには、これまでのあらすじを説明する必要があります」
 そう言ってカビパンは語り始めた。はるか昔――と言うほどでもない、シナリオ的には前章での出来事を。コンキスタドール残党と遭遇するまでに、自分に何があったのかを。

 ~前回までのあらすじ~

 ドッキリは上手くいくのか、準備は間に合うのか!?
 廃墟神殿の主となったカビパン!
 自称猟書家TOPを目指す彼女の真意とは!? 
 悩み聞くカレー屋閉店の危機!
 そしてトリッピーはいつ動くのか!?  
 更に残された【続きは次章で】に隠された真実!?

「謎が謎を呼び、嵐が嵐を呼ぶ廃墟神殿に眠る王の遺産! 遂にクライマックス!!」
「わーなんかおもしろそー」
 TVアニメならオープニング前のアバンで流れそうな内容を一気に語ったカビパンに、渚のパイレーツはぱちぱちとやる気なさげな拍手をする。正直ここはまだクライマックスには早いと思うのだが、彼女がその気マンマンなのでそういう事にしておこうという顔だ。
「んで? その準備ってヤツはどーなったの?」
「ああ、それはやめました」
「はい?」
 ここに来てのカビパン、まさかのちゃぶ台返し。廃墟神殿の怪物・亡霊をあれだけこき使って準備したドッキリや仕掛けを、まさかの一切使わない宣言。その代わりという訳ではないだろうが、彼女は【ギャグセンス皆無な雪女】に変身し、身一つで敵と対峙する。

「ようこそいらっしゃいました、遅くまでオツカレーカツカレーヒレカツ華麗なる一族、なっちゃって~」
 これまでのあらすじや脈絡を一切無視して、有無を言わせぬ強引なギャグが放たれる。
 能力名の通りに皆無なギャグセンス、勢いで乗り切ろうとする感がうかがえるカレーネタの連呼は、その場の空気を瞬間冷却させた。
「「………………サッム!!!!」」
 それが渚のパイレーツ達の最期の言葉だった。あまりにも寒すぎるギャグは物理的にも敵を凍り付かせ、その活動を完全に停止させる。ピクリとも動かなくなった連中を見て、張本人のカビパンは呆れ顔。
「このあたくしのナウなヤングにバカウケなギャグが理解できないなんて」
 そう言ったきりあとはガン無視を決めて、クロックダイルが逃げていった方に向かう。
 部下の不始末は責任者の不始末。この落とし前はどうつけるのかと問い詰めるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「錬度は高いみたいっすが…フォーミュラ討伐直後で猟兵達を倒せる気なのは状況理解が弱いと見たっす」

まず妖怪煙を放出して【迷彩】
敵発見報告を逆手に利用し【化術】の【残像】を囮に【おびき寄せ】
『綿ストール・本気モード』を床に広げて滑らせ【化術】の亡霊で【おどろかす】【罠使い】で混乱を作り出し、【化術】で敵に猟兵の幻影をかぶせたり【催眠術】で味方を敵と誤認させ同士討ちを誘発
自身も【化術】で渚のパイレーツの一人に変化して【演技】
ひっそりと死角から攻撃して疑心暗鬼を煽ることで意思統一を阻害しつつ、ストールで【串刺し】にし各個撃破

「すぐワニを追わないと…でもこの先に待つメガリスはろくでもない予感がするっす」



「錬度は高いみたいっすが……フォーミュラ討伐直後で猟兵達を倒せる気なのは状況理解が弱いと見たっす」
 立ちはだかる渚のパイレーツ達の気質を、衣更着は冷静に分析する。羅針盤戦争の集結からまだ1月もたたぬ内から猟兵相手に自信満々なこの言動、よほどの自信家かあるいは馬鹿なのかは間違いないだろう。
「ふんっ! 数だって多いんだし、あーしらがあんた達に負けるわけが……わぷっ?!」
 ムキになったパイレーツ達の反論は、突如として戦場に立ち込める白い煙に遮られる。
 衣更着はその妖怪煙に紛れて姿を隠しつつ、得意の化術で己の残像を出して囮にする。煙の中からちらつくシルエットに敵が引っかかれば、彼の思うツボだ。

「あっ、いた! みんな、追っかけるよ!」
 案の定、あっさりと騙された渚のパイレーツは【フォーメーション・ウルフパック】で仲間を呼び集めて、囮を追いかけはじめる。自分達が誘き寄せられているとも知らずに。
「はい、いらっしゃいっす」
「ひゃうっ?!」
 その先には【綿ストール・本気モード】で摩擦を減らした衣更着のストールが、まるで絨毯のように床に広げられている。その上に乗ったパイレーツは、つるっと足を滑らせてすってんころり。後からやってきた仲間も巻き込んで将棋倒しになる。

「いったた、なによもう……」
『ばぁッ!!』
「「キャーーーッ?!!」」
 立ち上がる間もなくドロンと出てきたのは、東洋の亡霊に化けた衣更着。見慣れぬものほど恐怖をかき立てられるのか、驚いたパイレーツ達は悲鳴を上げてばたばた逃げ惑う。
 ウォーターガンで反撃しようにも、滑るストールの足場の上では照準もままならない。混乱に拍車をかけるように、衣更着は続けて敵と同じ姿に化けて紛れ込む。
「今、あっちに敵がいた!」
「えっ、どこどこ……きゃうっ?!」
 味方のフリをしてあらぬ方角を指差して、注意を逸らしたところに死角からの一刺し。仲間の姿をした相手に背中を狙われれば、向こうも敵が紛れ込んでいると気付くだろう。そうして疑心暗鬼に陥ってくれれば好都合だ。

「あ、あんた今怪しい動きしてなかった?」
「し、してない! そういうあんたこそ!」
 何重もの衣更着の罠で冷静さを失い、お互いを疑いだす渚のパイレーツ達。こうなればもはや意思統一や連携どころの話ではない。衣更着はそこに猟兵の幻影を敵に被せたり、催眠術で敵味方を誤認させるなどして、影から彼女達の混乱をひたすら煽りたてる。
「こうなればもう烏合の衆ってやつっすよね」
 味方同士で疑いあい、もはや敵と戦うどころではなくなった連中を、彼はストールの槍で各個撃破していく。別に全滅させる必要はないしその手間も惜しい。道を開ける分だけ数を減らしたら、そのまま混乱に乗じて先に進む。

「すぐワニを追わないと……でもこの先に待つメガリスはろくでもない予感がするっす」
 ろくでもないメガリスをろくでもないコンキスタドールが手に入れたらどうなるのか。せっかく戦争を終えたばかりの世界に、また厄介事が増えるのは勘弁してほしいものだ。
 面倒を未然に阻止する為、衣更着はまだ騒いでいる敵の声を背に、先を急ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
【冒涜】
さて――随分と『人らしい』面が現れたが、今度は水遊びをお望みか。成程、奈落(アバドン)の騒がしさは蜘蛛が理解していた。降り掛かる火(みず)粉は鉄塊剣(立ち去れ)と糸(しおり)で退けよう。その間に『脳髄の蛆』で情報整理だ

人の皮で作られたものが時に触れるとは思えぬ。しかしUDCアース、彼方には超次元が在り、底へと落ちたとも解せよう。ええい。鬱陶しい娘どもだ――鰐に仕えるならば堂々と心臓を喰われ給えよ
奴等の胸に碑(てつのかたまり)を叩き付けよう。あまりは七番目とやらに与える

クタアト。濡れ方を確かめねば真偽が判らぬ。汗ばんだ表紙が楽しみだと想わないか、クカカッ!
狂気蒐集の為に頭の中を晒すのだよ


虻須・志郎
【冒涜】
数を揃えりゃどうにかなると思ったか?
挑発しUCで騙し討ちを狙うぜ
覚悟はいいか餓鬼ども――行けよ『七番目』ッ!
青白い刀剣を手にした無数の邪神の分霊を召喚し
仲間を呼ぼうがこちらが数で圧倒し恐怖を与える

で、先生。何か分かるか?
最初の一撃でこの神殿の均衡は崩した
後はメガリスの場所を探すだけだが
インセインとマッドネスで情報収集しつつ
道が無けりゃ内臓無限紡績兵装のロープワークで作ればいい
地形を利用し最短ルートをハッキングして一気に進む

そもそも『水神クタアト』ってUDCアースの祭具じゃねえのか?
どうしてそれがこっちで発現するんだ?
メガリスは意思無き猟兵だとでも言うのかね
だとしたら、必ず回収しないとな



「さて――随分と『人らしい』面が現れたが、今度は水遊びをお望みか」
「数を揃えりゃどうにかなると思ったか?」
 メガリスへの道を塞ぐ渚のパイレーツに、挑発的な言葉を投げかけるロバートと志郎。
 魔導書の探索を優先目的とする彼らにとって、こんな連中はただの邪魔者でしかない。歯牙にもかけないような雰囲気を感じ取って、パイレーツ達も鼻白んだ。
「あーしらのこと、ナメてんじゃねーしっ!」
 【フォーメーション・ウルフパック】の陣形を組み、ウォーターガンを一斉に構える。玩具のようなそれから放たれる超高圧の水流は、水遊びとは侮れない威力を持っていた。

「覚悟はいいか餓鬼ども――行けよ『七番目』ッ!」
 だが、その反応を予期していたのか、機先を制したのは志郎の方。その身に取り込んだ邪神『第七の飛蝗』の分霊を【蝗邪攻神】で喚び出し、敵の集団に騙し討ちを仕掛けた。
 青白い刀剣を手にした無数の分霊は、その名に違わぬ蝗害の具現化のように敵群に殺到する。渚のパイレーツ達は慌ててその迎撃に追われる羽目になった。
「ちょっ、なによこいつらキモっ?!」
 きいきいと喧しい悲鳴を上げながら、ウォーターガンを乱射する女海賊達。だが彼女らが仲間を呼び集めても、邪神の分霊はそれを遥かに上回る数がいる。倒しても倒しても後から湧いてくる飛蝗の群れは、彼女らの心に恐怖を植え付けるのに十分なものだった。

「成程、奈落(アバドン)の騒がしさは蜘蛛が理解していた」
 黙示録の一節になぞらえたが如き『第七の飛蝗』の猛威を眺めつつ、ロバートは鉄塊剣と銀糸の栞を降りかかる火の粉、もとい水飛沫を退ける。攻め手はあくまで蜘蛛――志郎に任せ、自分はそれと並行して【脳髄の蛆】での情報整理を優先する構えだ。
「で、先生。何か分かるか?」
 最初の一撃で戦いの均衡を崩した志郎は、「インセイン」と「マッドネス」で先の道を調べながら尋ねる。ロバートがそれに答えようとしたところに、飛蝗の難を逃れてきた敵が襲いかかってくる。

「あーしらのこと、無視してんじゃないしっ!」
 あの数の大群に追われながらもまだ戦意を保っているのは、流石にコンキスタドールの端くれか。どちらかと言うと、自分らをロクに見てもいない連中にムキになっている、と言ったほうが正しいかもしれないが。
「ええい。鬱陶しい娘どもだ――鰐に仕えるならば堂々と心臓を喰われ給えよ」
 ロバートは心底面倒だと言わんばかりの態度で、寄ってくる敵に鉄の塊を叩き付ける。「立ち去れ」と、全てを否定する暴力は、渚のパイレーツの肉体を只のミンチに変えた。
 あとは原型を止めているあまりは『七番目』とやらに与える。満たされることを知らぬ黙示録の厄災は、彼女らの血も肉も骨も、余すことなく腹に収めるまで攻撃を止めない。

「ひ……いやあぁぁぁぁぁっ!!!」
 それはまさに恐怖との遭遇だった。冒涜翁と助手と飛蝗の脅威により、敵は敗走する。悲鳴の残響が暗闇に吸い込まれていった後に、残されていたのは僅かな血痕だけだった。
 まだ生き残りがいたとして、これ以上ちょっかいを出す度胸と勇気のある者はいまい。邪魔者の排除を確認したところで、ロバートと志郎は廃墟神殿の探索を再開する。

「そもそも『水神クタアト』ってUDCアースの祭具じゃねえのか? どうしてそれがこっちで発現するんだ?」
 分霊共を退去させた後、端末が集めてきた情報を元に道を先導するのは志郎。内臓無限紡績兵装で移動補助用のロープや各種アイテムを作りながら、ふと気になっていた疑問を投げかければ、後に付いていくロバートがふむと唸りながら応える。
「人の皮で作られたものが時に触れるとは思えぬ。しかしUDCアース、彼方には超次元が在り、底へと落ちたとも解せよう」
 UDCアースの品がこの世界にあることも邪神を始めとする超常存在の陰謀なのか。或いは亡きカルロス・グリードが、かの世界で略奪した宝物のひとつという可能性もあるか。幾つかの仮説は立てられるものの、現状で確証に到れるだけの根拠はどれもない。

「クタアト。濡れ方を確かめねば真偽が判らぬ。汗ばんだ表紙が楽しみだと想わないか、クカカッ!」
 判らぬことが何より愉快だと言わんばかりに、ロバートは不気味に笑った。狂気蒐集の為に頭の中を晒すのだよ、と語る彼の表情は冷然としていても、瞳には隠しきれない程の混沌が爛々と輝いている。
「メガリスは意思無き猟兵だとでも言うのかね。だとしたら、必ず回収しないとな」
 一方の志郎は「先生」のそうした振る舞いにも慣れているのか、自身もまた仮説を立てつつも先を急ぐことにする。道が途切れていれば縄を渡し、埋もれていれば掘り起こす。あらゆる道具を紡ぎあげる彼の紡績兵装があれば、道なき道を切り開くのも造作もない。
 進むのは目標への最短ルート。鰐のコンキスタドールも逃げていった『水神クタアト』の在り処を求め、二人の探索者は一気に廃墟神殿の深淵に向かっていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

あー!待ってってばー!
んもー
逃げられちゃったじゃない

しょうがないから彼女らを先に倒そう
うおーーー!なんかいい感じで球体くんを彼女らの中心あたりに先制ドーンッ!で連携できないよう攪乱
するのと同時にダッシュ!して接近してからの
ウォーターガンの攻撃は勘【第六感】で避けての
UCでドーーンッ!!

それじゃーボクは急ぐから!また今度遊ぼうねー!
とボクの分担をこなしたら[餓鬼球]くん[ドリルボール]くんたちに後を任せて突っ切ろう

おったからおったから!
ヤツに渡すなお宝手に入れろ~!
あ、そういえば今回のお宝ってどんな形してるんだっけ?
……ちゃんと聞いてなかった!!まあ行けば分かるよね!



「あー! 待ってってばー!」
 メガリスの元へとクロックダイルが逃げていくのを見て、ロニは追いかけようとした。
 だが敵の逃げ足は速く、さらに配下の『渚のパイレーツ』がずらりと並んで道を塞ぐ。敵の姿はすぐに闇の向こうに見えなくなってしまった。
「んもー。逃げられちゃったじゃない」
 少年神は不満げに唇を尖らせながら、しょうがないから彼女らを先に倒すことにする。
 その手元でふわりと浮かび上がるのは、重くて大きな「超重浮遊鉄球」。シンプルに当たると痛そうなそれを、なんとなくいい感じで投げつける。

「ここは通さな……きゃーーーっ?!」
 ドーンッ! と敵陣のド真ん中に着弾した超重浮遊鉄球は、連携して事に当たるつもりだった渚のパイレーツの機先を制した。運良く下敷きになるのは避けても、デカくて重い鉄球は彼女達の連携を撹乱するオブジェクトとなる。
「うおーーー!」
 それと同時にダッシュで敵に接近するロニ。敵も近寄らせまいと【ウォータージェット・シュート】を放つが、連携の取れていない散発的な攻撃など恐るるに足らず。カッターのような超高圧高速水をひょいひょいと勘で避けながら、彼はぐっと拳を握りしめ。

「ドーーンッ!!」
「いったぁーーーッ?!!」
 単純だが何故か神々しさを感じさせる【神撃】の拳が、渚のパイレーツを吹っ飛ばす。
 超重浮遊鉄球の直撃か、それ以上の威力を秘めた一撃は、個としては弱い敵をノックアウトするのに十分すぎる威力だった。
「ボクを崇めてもいいんだよ! 神様だからね!」
「し、しないし! やだし!」
 ついでに入信もとい裏切りを誘ってみたりもするが、意外に義理堅い連中からは拒否される。まあそれはそれで構わない。ロニとしては敵陣に風穴を開けられただけで十分だ。

「それじゃーボクは急ぐから! また今度遊ぼうねー!」
「あっ、ちょっ、待ちなさ……ってぇ?!」
 自分の分担をこなしたところで、ロニはひらひら手を振りつつ敵陣を突っ切っていく。
 慌てて止めようとする渚のパイレーツだったが、邪魔はさせないとばかりに彼の置き土産の球体――牙の生えた「餓鬼魂」と掘削刃を生やした「ドリルボール」が襲いかかる。
「な、なによこいつらっ!?」
 餓鬼魂はその牙で敵に食らいつき、ドリルボールは堀削刃を高速回転させて敵を抉る。生物かどうかも定かではない未知の存在からの攻撃に、パイレーツ達がてんやわんやしている間に、まんまとロニは離脱を果たすのであった。

「おったからおったから! ヤツに渡すなお宝手に入れろ~!」
 お宝までもう少しだとウキウキしつつ、クロックダイルが逃げていった後を追うロニ。
 全力ダッシュで廃墟神殿の奥へと向かいながら、その道中でふと彼はある疑問を抱く。
「あ、そういえば今回のお宝ってどんな形してるんだっけ? ……ちゃんと聞いてなかった!! まあ行けば分かるよね!」
 たぶんお宝と言うからにはきっとスゴいものなのだろうと、勝手に期待を膨らませる。
 メガリスの魔導書『水神クタアト』は、果たして彼にとってどれほどの価値があるのだろうか――それはまだ誰にも分からぬことであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
私達もこの先のメガリス回収の任を受けておりまして
誠に恐縮ですが…押し通らせて頂きます

●瞬間思考力で銃口から着弾地点と到達順番を●見切り
集団から乱射される超高圧水をUCの力場纏わせた剣の●武器受けで防御
撃った相手に反射
楔状に跳ね返した超高圧水で即死狙いで敵の身体を切断

水場での活動を重視した装備が仇に……とは言えませんね
この威力ではどのみち生半な防御は無意味でしたでしょうから

死角と思われている場所から狙う為に密かに移動している敵の動向を微かな足音からマルチセンサーでの●情報収集で把握
●騙し討ちをアイセンサーの視線も向けずに剣で反射し迎撃

さあ、どうぞ撃って頂けますか
徒に苦しませはいたしませんので



「私達もこの先のメガリス回収の任を受けておりまして」
 ボスの命令で猟兵の足止めをする渚のパイレーツと、その先に用があるトリテレイア。
 海賊と騎士。オブリビオンと猟兵。相容れない者達が向かい合い、悠長に話し合う猶予もない場合、解決策はひとつしかない。
「誠に恐縮ですが……押し通らせて頂きます」
「させないし! あーしらけっこー強いから!」
 ずんと重い足音を響かせ前進する騎士に、ウォーターガンの銃口を向けるパイレーツ。
 その銃口から一斉に高圧水流が放たれるのと、騎士が剣を抜いたのはほぼ同時だった。

「なかなかの練度に武器の性能も高いようです。ですが」
 金属さえ切断する【ウォータージェット・シュート】の一斉攻撃。しかしトリテレイアの思考・演算力は向けられた銃口から水流の着弾地点と到達順番を瞬時に見切り、適切な対処を導き出した。儀礼用に誂えられた長剣が、不可視の力場を纏う。
「ぎゃぁっ!!?」
 発砲音の直後、悲鳴を上げたのは渚のパイレーツの方だった。【個人携帯用偏向反射力場発生装置】による力場を帯びた儀礼剣が、受け止めた水を撃った相手に反射したのだ。
 対デブリ・フレア用大型宇宙船装備を転用したその装備は、反射物に楔状の変化を加え貫通力を増す作用もある。相手の身体を切断するには十分過ぎる威力だった。

「水場での活動を重視した装備が仇に……とは言えませんね。この威力ではどのみち生半な防御は無意味でしたでしょうから」
 上下で泣き別れとなった敵が消滅するのを、機械仕掛けの騎士は静かに観察していた。
 その反応に残されたパイレーツ達は怒りを、あるいは恐怖を覚えながらウォーターガンを乱射するが、騎士はそのことごとくを力場を纏った剣で跳ね返していく。
「け、剣一本であーしらの攻撃を……?!」
「宇宙で騎士を名乗るなら当然の芸当です」
 飛び道具を持った多勢の攻撃を剣一本で凌ぎ切る。それはまさにお伽噺のような所業。
 だが彼の造られた宇宙の戦場では熱線やミサイルが飛び交うのだ。それに比べればこれしきの攻撃、まさに"水遊び"のようなものである。

「ぐぬぬぬ……舐めんじゃねーしっ」
 闇雲に撃っても打ち返されるだけだと悟った渚のパイレーツ達は、相手が防御できない死角から攻撃する作戦に切り替える。誰かが正面から気を引いて、その隙に別の者が騙し討ちを仕掛けるのだ。
(ドタマに風穴開けてやるしっ)
 黒い殺意を漲らせながら、こそこそと移動する女海賊。だが彼女らにとっては残念な事に、機体全体にマルチセンサーを積んだトリテレイアに「死角」というものは存在せず、頭部のアイセンサーからは見えない角度も、他のセンサーで常に把握済みだった。

「くらえー……ッ?!」
 背後から放たれた超高圧水流を、トリテレイアは視線も向けずに剣で反射し迎撃する。
 どれだけ密かに動いたつもりでも、微かな足音さえも捉える彼のセンサーを欺くことはできなかった。勝利を確信していたはずの女海賊は、失敗を悟る間もなく両断される。
「さあ、どうぞ撃って頂けますか。徒に苦しませはいたしませんので」
 圧倒的な実力の差を見せつけながら、機械仕掛けの騎士は威圧的に一歩前に踏み出す。
 撃てば死ぬと分かったうえで、引き金を引ける者がどれだけ居よう。恐れをなした敵を切り払いながら、彼は廃墟神殿の奥に進むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
あら?あのワニには勿体ないくらい可愛らしい子達ね♪
確か集団戦が得意という話だったかしら。正面から取り押さえても良いけど…それに付き合ってあげる必要も無いわね♪

【創造支配の紅い霧】を展開。

数m先も見えない様な濃霧で敵の視界を潰し方向感覚を狂わせ、更に霧の中に敵影の幻を【創造】する事でそれぞれの位置を遠ざけ、味方との連携を分断。
こちらは霧内に自身の実体のある分身を【創造】し、霧の中で一人ずつ各個撃破してあげるわ♪
凍結の魔力弾【高速・多重詠唱、全力魔法、誘導弾、属性攻撃】と凍結の魔力を纏った魔槍で敵のウォーターガンの水を凍結させて攻撃を封じ、後は【魅了の魔眼・快】でわたしの虜にしてあげる♪



「あら? あのワニには勿体ないくらい可愛らしい子達ね♪」
 美女と野獣というフレーズがふと思い浮かぶような、ボスの異形さに比してあまりにも可憐な容姿のコンキスタドール達。それを見たフレミアはふと艶やかな笑みを浮かべる。
「確か集団戦が得意という話だったかしら。正面から取り押さえても良いけど……それに付き合ってあげる必要も無いわね♪」
 蠱惑的で嗜虐的な雰囲気とともに彼女が展開するのは【創造支配の紅い霧】。廃墟神殿の戦場を包み込んだこの霧は、瞬く間に渚のパイレーツ達から視界と方向感覚を奪った。

「な、なにこの霧? フツーの霧じゃない……?」
 数メートル先も見えないような濃霧の中、敵はおろか味方の姿さえ見失った女海賊は、ウォーターガンを構えながらうろうろと辺りを彷徨う。紅い霧にぼんやりと浮かび上がる敵らしき姿のシルエットだけが、彼女らの道標だった。
「ふふ♪ さあ、いらっしゃい……一人ずつ各個撃破してあげるわ♪」
 しかしそれはフレミアが敵を誘導するために創造した幻。彼女はこの霧の中では魔力からあらゆるモノ・事象を具現化し法則さえも支配する、神の如き力を奮うことができる。
 幻で渚のパイレーツをそれぞれ別の位置に遠ざけ、連携を分断。しかる後にフィールドの優位を活かして敵を制圧するのが彼女の作戦だった。

「夢も現実も、全てはわたしの思うまま。ようこそ、わたしの世界へ」
「ッ?! いつの間にっ!」
 背後からかけられた声に慌てて渚のパイレーツが振り向くと、そこには紅い槍を持ったフレミアがいた。これもまた霧から創造された分身だが、幻とは違い実体を持っている。
 分断された敵の前にそれぞれ現れた分身達は、氷のように冷たい魔力を纏いながら一斉に攻撃を開始した。
「くっ!!」
 咄嗟にウォーターガンのトリガーを引く渚のパイレーツ。だが発射された超高圧水流はフレミアの放った魔力弾と接触した瞬間に凍りついた。敵の武器が"水"なら、凍結させてしまえばいい――そのまま吸血姫は敵に肉迫し、凍結の魔力を纏った魔槍を振るう。

「ひぇっ……?!」
 渚のパイレーツは思わずぎゅっと目をつぶるが、フレミアが狙ったのは敵自身ではなくウォーターガンのほうだった。タンクに貯められた水を魔槍のひと突きで凍結させれば、もうそれは武器として機能しなくなる。
「これでもう戦えないわね」
「あ、ぁ……」
 攻撃を封じられた美女達に、フレミアは至近距離から【魅了の魔眼・快】を発動する。
 真紅に輝く瞳から放たれる魅了の魔力と強烈な快感。それは彼女らの心を甘く蕩かし、抵抗の意志を奪い去っていく。

「わたしの僕になりなさい……あなたはもう、わたしのトリコ♪」
「はぁい……♪」
 生意気だった渚のパイレーツが、まるで恋する乙女のように頬を赤らめて服従を誓う。
 紅い霧に包まれた戦場のあちこちで、分身を通じて同じような応酬が交わされていた。
 探索の妨害を排除すると共に、新たに多くの眷属を手に入れたフレミアは、満足そうに微笑みながら先に進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
時計の音とあの速度…時間を操るメガリスでも持ってるのかな…?
それはともかく、邪魔するなら容赦はしないよ…。
まぁ、それ程悪い子達にも思えないし、素直に降参してもう悪い事しないなら(【共に歩む奇跡】使用の上で)許してあげる…。

「水着!」
「季節外れ!」
「寒くない?」

【狐九屠雛】を展開…。
呪力の縛鎖【呪詛、高速詠唱】で敵のウォーターガンを絡め取る様に地面から一気に捕縛し、狙いを付けられないでいる間に一気に敵の水鉄砲のタンクを【狐九屠雛】で凍結…。

敵の武器を奪いつつ、凶太刀の加速で一気に敵集団に接近し、少し可哀想だけどその水着の紐をスパッとみんな斬らせて貰うよ…。
後は降参するなら受け入れるよ…。



「時計の音とあの速度…時間を操るメガリスでも持ってるのかな……?」
 クロックダイルが逃げていった方向を見やりながら、璃奈はぽつりと呟く。追う暇もなかったあの逃げ足の速さは素とは考えにくい、何らかのユーベルコードやメガリスの力を使っていると考えるのが妥当だろう。とすれば、なかなかに厄介そうな相手だ。
「それはともかく、邪魔するなら容赦はしないよ……」
「コッチのセリフだし! あーしらの宝探しを邪魔すんな!」
 すいっと視線を動かした先には、水鉄砲を構えた水着姿の美女達。メガリスという無二の至宝の確保を狙う者同士、単なる話し合いで引き下がってくれる事はまず無いだろう。

「まぁ、それ程悪い子達にも思えないし、素直に降参してもう悪い事しないなら許してあげる……」
 璃奈はそれでも【共に歩む奇跡】の力を込めた符をちらつかせて降伏を呼びかけるが、相手はウォーターガンを構えてやる気満々。それを見たメイド人形のラン、リン、レンはかくんと首をかしげながら口々に言う。
「水着!」
「季節外れ!」
「寒くない?」
「「うっさいし! オシャレに寒さなんて関係ないの!」」
 その格好はおしゃれのつもりだったらしい。怒ったパイレーツの指がトリガーにかかる――その刹那に璃奈が呪文を唱えると、地面から呪力で編まれた無数の縛鎖が飛び出し、敵のウォーターガンを絡め取った。

「んなッ?! なにこれ、外れないしっ!」
 武器を捕縛された渚のパイレーツ達は、鎖を振りほどこうとぶんぶん腕を振り回すが、がっちりと絡まった鎖はすぐには外れない。この状態で狙いを付けるのは難しいだろう。
 その間に璃奈は九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】を展開すると、一気に追撃を仕掛けた。
「魂をも凍てつかせる地獄の霊火……」
 熱ではなく凍気を発するその炎が狙うのは、ウォーターガンの貯水タンク。放水用の水を内部で凍らせてしまえば、もうそれは使い物にならなくなる。単に放水できなくなるだけではなく、体積の膨張した氷が内部構造を破損させるのだ。

「ちょっ、なんてことしてくれてんのよぉっ?!」
 武器を奪われた渚のパイレーツ達が慌てふためくなか、璃奈は妖刀「九尾乃凶太刀」を構えて走り出す。妖刀が持つ呪力によって彼女のスピードは音速を超え、残像だけを残して敵の視界から消える。
「少し可哀想だけど……」
「―――へ?」
 チン、と遅れて鍔鳴りの音が響いた直後、何が起こったかの理解が追いつくより早く、渚のパイレーツ達の水着がはらりと地面に落ちる。一瞬のうちに敵集団に接近した璃奈は彼女らの水着の紐だけをスパッと斬って、そのまま駆け抜けていったのだ。

「………きゃあぁぁぁぁぁっ?!」
 数拍遅れて何をされたのか把握したパイレーツ達は、顔を真っ赤にしてその場に蹲る。武器に加えて水着まで奪われては、流石にもう戦いを続ける意志は残っていないようだ。
「もう一度聞くけど……降参する気はある……?」
「「するっ、するから! もう悪いことしないからやめてっ!」」
 すらりと刀と符を見せびらかしながら璃奈が問いかけると、素っ裸になるのだけは避けたい渚のパイレーツは一も二もなく降伏を決める。絵面としてはなかなか酷い構図だが、結果的に一滴の血も流すことなく、彼女はこの場を収めて先に進めたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリージア・プロトタイプ
【魔雪】
複数の敵…だが今度は対人
あちらにも戦略があるのは厄介だな…
ああ、わかってる
どんな相手だろうと、アナタの目的を遂げさせてみせる
…?地形破壊…であれば可能だ

さっきの質問、何か考えがあるのだろう
…なるほど、敵は眼前
戦略を口にするのは避けたい…か

UCは発動せず、彼からの何らかの指示を待つ
打撃と刀で前方の敵を排除
彼より前を行き、彼の銃での援護を受けつつ敵が合流するよりも速く撃破を目指す

とはいえ…全てを斃しているわけではない
このままでは目標に辿り着くまでに…
…ッ!彼からの合図

UCを発動
走り助走をつけての左足での踏み切り
跳躍の勢いもつけながら、天井を殴り破壊する
崩落での足止め…なるほど、これなら…!


トキワ・ホワード
【魔雪】
連中が部下共か
確かに厄介、だがここで拘うわけにもいかん
やることは変わらない
ここを突破し目標を目指すぞ
それと、1つ確認だ
地形を壊すような力は、お前にあるか?

UCを発動
お前達は彼のメガリス…魔導書を何の為に欲する?
…悪いな、なんと答えようと興味はないんだ
書は俺が手にしてみせる

狼達に後方及び周囲の敵を迎撃させ正面の敵は魔銃で対処
幸い、同行者もいる
二人がかりで正面の突破に集中

それと―地形を観察
道中『狭い通路』『崩しても建物全体の倒壊に繋がらない場所』の条件を満たす場所を探す
通った道からの仮定で全体像を仮想
移動しながらの瞬間思考で地点を割り出す

合図をしたら天井を崩せ
壁を作り敵の追撃を振り切るぞ



「複数の敵……だが今度は対人。あちらにも戦略があるのは厄介だな……」
 道を塞ぐコンキスタドールの残党と対峙しながら、フリージアはすうっと目を細める。これまで蹴散らしてきた亡霊や怪物とは違い、今度の相手は実力も知恵もある。そう簡単にここを通らせてはくれないだろう。
「連中が部下共か。確かに厄介、だがここで拘うわけにもいかん」
 トキワも同じく敵と対峙しながら、視線はさらにその先を見据えていた。既に敵の親玉に先行されている以上、配下に時間を使わされるのは悪手。メガリスを持ち逃げされる前に追いつかなければならない。

「やることは変わらない。ここを突破し目標を目指すぞ」
「ああ、わかってる。どんな相手だろうと、アナタの目的を遂げさせてみせる」
 トキワの言葉にこくりと頷き返すフリージア。魔導書の回収という彼の目的の為なら、いかなる危険も厭うつもりはない。それは紛れもなく彼女の心に宿った"意志"だった。
「それと、1つ確認だ。地形を壊すような力は、お前にあるか?」
「……? 地形破壊……であれば可能だ」
 静かに意気込みを示す彼女に、トキワは戦闘態勢を取りながらひとつ問う。その意図を把握しかねながらもフリージアはもう一度頷くが、だが何故、と問い返す暇はなかった。

「そっちから来ないならこっちから行くし!」
 【フォーメーション・ウルフパック】を発動した渚のパイレーツが、ウォーターガンを一斉に放つ。水遊びとは馬鹿にできない威力の高圧水流が、二人の猟兵に襲いかかった。
 二人はとっさに散開して放水を躱すと、各々の武器で迎撃に移る。黒刀と鉄拳を構えたフリージアは、ちらとトキワの横顔を見つつ、先ほどの問いかけの意図を察した。
(……なるほど、敵は眼前。戦略を口にするのは避けたい……か)
 具体的な指示は然るべきタイミングであるだろう。ならばと彼女はユーベルコードを発動する余力を残したまま、打撃と刀で前方の敵の排除にあたる。増援と合流されるよりも速く撃破する、それが今の自分にできる最善だと判断したのだ。

「お前達は彼のメガリス……魔導書を何の為に欲する?」
 トキワはフリージアの後方で魔銃を構えながら、おもむろに敵に向かって問いを放つ。
 コンキスタドールである渚のパイレーツにとっては、問われるまでもない質問だろう。
「そこにお宝があるのなら、あーしらのモノにして当然っしょ!」
 もちろん手に入れれば強くなれるというのも理由の一つだろうが、略奪と蹂躙はコンキスタドールの基本原理。宝があればただ奪う、それ以上の理由を彼女らは必要としない。
 ある意味では潔いとも言えるシンプルな返答に、トキワはなるほど、とひとつ頷いて。

「……悪いな、なんと答えようと興味はないんだ。書は俺が手にしてみせる」
 彼が質問を放った時点で【答えよ我望むままに】は発動している。トキワの足元で影がゆらりと揺らめいたかと思うと、その中から漆黒と白銀の毛を持つ二匹の人間大の狼が現れ、渚のパイレーツに襲いかかった。
「ちょっ、なにこいつら! デカい犬っころ?!」
 突然現れた増援に、敵は目を丸くする。その動揺の隙をこじ開けるように、二匹の狼は無慈悲に強靭な爪や牙を剥き出しにして、トキワ達の後方及び周囲にいる敵を迎撃する。
 側面や背後からの攻撃にはこれで対処できる。トキワ自身は前線のフリージアを援護するために正面の敵に狙いをつけ、精霊宿りの魔銃【セレマ】のトリガーを引いた。
「あぎゃッ!!」
 電磁加速された弾丸が渚のパイレーツを射抜き、敵前線の連携に乱れが生じる。そこを突いてフリージアが刀を振るい血風を巻き起こす。この戦いは既に二人のペースだった。

(とはいえ……全てを斃しているわけではない。このままでは目標に辿り着くまでに……)
 表面的には寡黙に敵を斬り伏せながらも、フリージアの内心には微かな焦りがあった。
 今は二人がかりで正面の突破に集中しているが、敵の増援が来て態勢を立て直されれば危険だろう。それまでにここを抜けられればいいのだが、果たして上手くいくか――。
「合図をしたら天井を崩せ。壁を作り敵の追撃を振り切るぞ」
「……!」
 その時、戦いの喧騒に紛れてトキワの声が聞こえた。彼は戦闘中も周りの地形を観て、道中で「狭い通路」かつ「崩しても建物全体の倒壊に繋がらない」という条件を満たす場所を探していた。これまでに通った道からの仮定で建物の全体像を仮想し、目的の地点を割り出す――類まれなる彼の頭脳が可能とする、瞬間思考による分析が導き出したのは。

「ここだ」
「……ッ!」
 彼からの合図が聞こえた瞬間、フリージアは【code:Demolish-紫電之剛拳】を発動。右腕に紫電を纏わせながら助走をつけ、機械化された左足で踏み切ると、脚部に組み込まれたブースターが作動し、その身は天井に向かって高く跳躍する。
「殲滅対象を認識、固定。紫電を放出、右腕へ収束……完了」
 そのまま跳躍の勢いを乗せて、渾身の力で天井を殴りつける。廃墟化に伴い脆くなっていた天井はその衝撃に耐えられず、大小無数の瓦礫となりガラガラと戦場に降り注いだ。
「うわわわわわッ?!」
 驚いたのは渚のパイレーツ達。瓦礫の雨に潰されないよう慌てて退避し、危ないところで難を逃れる。だがその後で彼女達が見たのは、瓦礫により完全に塞がれた通路だった。

「崩落での足止め……なるほど、これなら……!」
 敵の追撃が止まったのを確認して、フリージアはトキワの立てた作戦に感心する。或いはまだどこかに崩落を避けて進める迂回路があるかもしれないが、連中がそれを見つけ出す頃にはもう、こちらはメガリスの元にたどり着いているだろう。
「今のうちだ。急ぐぞ」
 仕掛け人であるトキワは魔銃をケースに収めると、早足に廃墟神殿の奥へ駆けていく。
 フリージアも遅れず彼と並走する。回収対象たる魔導書の在り処は、もう目前の筈だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
バルタン(f30809)と!
アドリブ歓迎

くぅ…!
ワニめ!
先に奥に行くだなんてあの野郎!
魔導書を手に入れるのは俺様達だ!

くっ、ならこれは手数増やしていくっきゃねぇ…
よぉし分かった!
なら俺様もちょっと出し惜しみ無しの速度重視!
魔術(UC)使用!
    グリッター
物体変質〖輝光〗!
(装甲半分、攻撃回数五倍)
…所でなんかバルタンの声、二重になってね!?

光になった俺様が水に切られてもノーダメどころか魔力に変えれる!(生命力吸収
そんまま光の速さ(残像)で敵に狙い定め光の光線を連打連打!

輝光雨《グリッター・レイン》ッ!(範囲攻撃×全力魔法×一斉発射

バルタンが上手い事避けてくれるようしっかり注意してんぜ!


バルタン・ノーヴェ
零時殿(f00283)と継続、アドリブOK!
UC《模倣様式・八艘飛び》を継続使用!

渚のパイレーツ。集団のベテランコンキスタドールデスネー!
武装チェンジする隙が惜しいので、このまま押し切るぞ、デース!

勢いよく、斬り込むであります!
「HAHAHA! 参りマース!」
「ハハッ! 行くぞ貴様らぁ!」
ん? なんか妙な気が。ともかく今は戦闘に集中デース!

ウォーターガンを避け、敵を斬り捨てて行きマース!
当たった? いいえ、それは残像デース!

連携は見事だが、直線通路では本領が発揮できてないぞ?
十字砲火もなしにワタシの機動を止められるものか!

零時殿の後方支援に当たらぬよう気をつけつつ、前衛で掃討するであります!



「くぅ……! ワニめ! 先に奥に行くだなんてあの野郎!」
 まんまと敵に先行されてしまい、零時は今にも地団駄を踏みそうな程悔しがっていた。
 このままではワニに魔導書を盗られてしまう。メガリスが敵の手に渡るのがヤバいのもそうだが、彼としてはそれ以上にあんなヤツに取られてたまるかという負けん気が強い。
「魔導書を手に入れるのは俺様達だ!」
「へへーん、そうはいかないしー☆」
 意気込みを強くする彼らの進路に立ちはだかるのは、水鉄砲を構えた水着姿の美女達。
 ボスであるワニに足止めしろと言われた以上は、そう簡単に通すつもりはないようだ。

「渚のパイレーツ。集団のベテランコンキスタドールデスネー!」
 一方のバルタンは【模倣様式・八艘飛び】を継続使用したまま、敵の集団と対峙する。
 情報通り彼女達は集団でこちらを迎え撃つ態勢を取り、ウォーターガンを構えている。あれから放たれる【ウォータージェット・シュート】はなかなか侮れない威力がある。
「くっ、ならこれは手数増やしていくっきゃねぇ……」
 相手の数の多さに零時が対策を考えるなか、バルタンの行動は極めてシンプルだった。
 すなわちピサロ将軍譲りの『八艘飛び』のスピードを活かして、勢いよく、斬り込む。
「武装チェンジする隙が惜しいので、このまま押し切るぞ、デース!」
 引き絞られた弓矢のように、彼女は床や壁や天井を蹴って敵陣に一目散。あまりの速さに敵はウォーターガンの照準を合わせる暇もないほどで、慌てふためきながら身構えた。

「よぉし分かった! なら俺様もちょっと出し惜しみ無しの速度重視!」
 遅れてはいられないと零時も魔導書を片手にユーベルコードを発動。自身の存在を光の魔力属性に変換し、肉体そのものを実体を持たない光輝のエネルギー体へと変革させる。
「魔術使用! 物体変質〖輝光(グリッター)〗!」
 装甲と引き換えに驚異的スピードを手に入れた彼は、バルタンの後を追うように敵陣に飛び込む。その動きはまさに光そのもの――障害を打ち破り、道を切り拓くための姿だ。
「こ、こいつらちょっと速すぎない?!」
 超高速で機動する二人の猟兵を前にして、渚のパイレーツ達は動揺を隠せない。だが、ここで命令を放棄するわけにもいかず、【ウォータージェット・シュート】の一斉射撃を仕掛けた。点ではなく面の攻撃ならば、どれかには当たるかもしれないという考えだ。

「HAHAHA! 参りマース!」
「ハハッ! 行くぞ貴様らぁ!」
 バルタンは浴びせられる放水の弾幕をひらりひらりと躱しながら、サムライソードで敵を斬り捨てていく。道中で亡霊や怪物を相手にしていた時よりもその機動力には磨きがかかっているようにさえ感じられる。継続使用により能力のコツを掴んてきたのだろうか。
「ん? なんか妙な気が」
「……なんかバルタンの声、二重になってね!?」
 しかしふと脳裏によぎる違和感。一緒に戦っている零時は、彼女の口から彼女ではない口調の声が出てくるのを聞いた。これもまた継続使用による弊害なのかと困惑する二人。だが、その一瞬の隙を渚のパイレーツ達は見逃さなかった。

「「今だーっ!!」」
 ここぞとばかりに一斉放射される超高圧高速水流。人体はおろか鉄板だろうと容易に切断する威力を秘めたその放水は、狙い通り零時とバルタンを射抜いた――ように見えた。
「当たった!」
「いいえ、それは残像デース!」
 被弾する間際に『八艘飛び』で身を躱したバルタンは、陽気に嗤いながら敵に肉迫し、雑草でも刈るような太刀さばきでなぎ払う。そして同じく被弾したはずの零時のほうは、放水で傷つくどころか逆に輝きを増していた。
「残念だったな。光になった俺様が水に切られてもノーダメどころか魔力に変えれる!」
 物体変質中のボディの特性を活かして攻撃を吸収した彼は、増大したエネルギーを光線に変えて連打しまくる。先の一斉射撃の意趣返しのような、光の雨が敵陣に降り注いだ。

「輝光雨《グリッター・レイン》ッ!」
「「きゃあぁぁぁぁっ!!?」」
 そのまま光の速さで放たれる光線に射抜かれ、悲鳴を上げて倒れ伏す渚のパイレーツ。
 もちろん前線にいる味方には当たらないよう、零時はしっかりと敵だけに狙いを定めていた。彼の後方支援のおかげで、バルタンもより速く的確に敵を掃討することができる。
「連携は見事だが、直線通路では本領が発揮できてないぞ? 十字砲火もなしにワタシの機動を止められるものか!」
 口調がちょくちょくピサロぽくなっているのはご愛嬌。宣言通りの華麗な『八艘飛び』で放水を躱し、弾幕をものともせずに敵を斬り伏せる、その実力はまさに圧倒的だった。
 こうなればもはや敵に対抗する術などない。自慢の連携も乱れ、増援も来ず、武装を合体させて一矢報いる余裕もなく――ただただ殲滅されるのみ。

「も、もう無理ぃーっ!!!」
 遂に道を塞いでいた最後のパイレーツが倒れ、二人の邪魔をする者は誰もいなくなる。
 この先にはお宝のメガリスとクロックダイルがいるはず。文字通り飛ぶように駆けていく二人の目は、まっすぐ前だけを向いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『クロックダイル』

POW   :    100日後も生きてるぜ、たぶんな!
自身の【100日分の寿命】を代償に、【平行世界の未来から召喚した100人の自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【強靭な肉体、鋭い牙、手にしたサーベル】で戦う。
SPD   :    ガハハハ! ここから先は、ずっと俺様の時間だぜ!
【体内の時計型メガリスを起動させる】事で【通常の1000倍の速さで動ける姿】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    産まれる前に戻って消えちまいな!
【物体の時を巻き戻し虚無へと還す波動】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を、自分以外の時間を遅くする力場に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠パトリシア・パープルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 渚のパイレーツの妨害を突破して、猟兵達はとうとう廃墟神殿の最奥までやって来る。
 建物の中でも特に荒廃が進んだその場所は、祭祀場のようにも見えた。"何"を祀っていたのか定かではないそこに今いるのは、古びた本を持った二足歩行のワニだけだった。

「チッ、もう追いついて来やがったのか。だが一歩遅かったな」

 そのワニ――クロックダイルが持っている本こそ、メガリス『水神クタアト』だろう。
 やはり先を越されてしまったが、ギリギリのタイミングで持ち逃げされるのは防げた。
 ここは神殿の最奥であり、つまりは出入り口も一箇所しかない。敵がここから出るには猟兵を倒さなければならないという訳だ。

「丁度いい、さっそくコイツの力を試すことが出きるぜ! そら、見やがれ!」

 クロックダイルが魔導書の頁を開くと、磯の匂いをきつくしたような悪臭が溢れ出す。
 それと共に何処からともなく姿を現したのは、回転ノコギリを生やした飛行するワニの群れ。メガリスの力がコンキスタドールに新たなユーベルコードを与えたのだ。

「こいつの力を使って、俺様は海の魔物を従えて新しい海賊団を作る! そしてこの海を支配するのさ! てめえらはその最初の犠牲者ってわけだ、ガハハハ!」

 完全に調子に乗っている様子で馬鹿笑いするクロックダイル。だがそれがただの傲慢とも言い切れないだけの力を彼が手に入れたのは、猟兵の目から見ても確かな事実だった。
 彼は既に『水神クタアト』とは別に、もうひとつのメガリスを体内に飲み込んでいる。時を操るメガリスと水魔を率いるメガリス、この二つの力の組み合わせは非常に危険だ。

 何としてでもここで奴を倒し、メガリス『水神クタアト』を回収しなければならない。
 長かった廃墟探索の終着点で、猟兵達の冒険はいよいよクライマックスの時を迎えた。
卜二一・クロノ
【WIZ】産まれる前に戻って消えちまいな!対応

「捉えたぞ、我が機織りを阻む者よ」

 時空の守護神の一柱、あるいは祟り神として参加します
 時の糸を紡ぎ、歴史の布を織る者にとって、好き勝手に時間を遡る行為は織り直しを強要するので害悪です
 そのような、猟兵やオブリビオンの事情とは無関係な動機で祟ります

 神の摂理に反する者には【神罰】を

 自分以外の時間を遅くする力場の中、その影響を受けて遅くなった回転ノコギリ鮫ともども、UCの猟犬を嗾けます

※クロックダイルに滅びの宿命が明らかになれば満足して帰ります
※時間操作を行う猟兵は見て見ぬふりをします。できれば同時には採用しないでください



「さァ始めようぜ、俺様の虐殺ショーを……って、なんだァ?」
 猟兵達とクロックダイルが廃墟神殿の最奥で対峙したその時。ゆらりと空間が不自然に揺らめいたかと思うと、その中から長い黒髪をなびかせて、ひとりの女性が姿を現した。
 その女性――卜二一・クロノ(時の守り手・f27842)は冷たい視線でクロックダイルを睨めつけると、どこか超然とした威厳のある言葉遣いで告げた。
「捉えたぞ、我が機織りを阻む者よ」
 彼女がここに来た事情は、他の猟兵とは動機が異なる。海の魔導書などに興味はなく、彼女はクロックダイルを祟るために来たのだ。時空を司る守護神の一柱、或いは時を乱す者に破滅をもたらす祟り神として。

「徒に時の調和を乱す輩を、我は赦さぬ」
 時の干渉を受けない極寒の地にて、混沌を喰らい、時の糸を紡ぎ、歴史の布を織る者。それが時の開闢以来、クロノが果たしてきた使命である。好き勝手に時間を遡る行為は、彼女にその織り直しを強要する害悪であった。
「なンだぁ、てめぇ。急に出てきてワケわかんねぇこと言いやがって」
 即ちクロックダイルが目を付けられたのは、彼が元から所持していたメガリスにある。
 任意の時間を操作する埒外の力。それを私利私欲のために乱用する輩など見過ごせるはずがない。あまり表情には出ないものの、クロノは相当に憤っていた。

「神の摂理に反する者には神罰を」
「うるせぇッ! 産まれる前に戻って消えちまいな!」
 突如現れた時の神に、クロックダイルは腹の中のメガリスから巻き戻しの波動を放つ。
 同時に『水神クタアト』から喚び出された【シャーク・トルネード】が、回転ノコギリを唸らせながら襲いかかる。時と鮫、二つのメガリスによる同時攻撃だ。
「愚かな」
 しかしクロノはそのどちらにも怯んだ様子を見せず、巻き戻しの波動をひらりと躱す。
 時空の守護神が時の歪みを見切れない道理はないだろう。当たらなかった波動は周囲の空間を侵し、メガリスの使用者以外の時間を遅くする力場に変化した。

「ゲッ、しまった!」
 が、それによって不都合を被ったのはクロックダイルの方だった。クロノにけしかけた回転ノコギリ鮫が力場の範囲に飛び込んでしまい時間遅延の影響を受けてしまったのだ。
 新しいメガリスをぶっつけ本番で同時使用などすれば、こんな凡ミスも起こるだろう。動きの鈍るサメの群れに、クロノは【神罰・時空や因果を超越する猟犬】をけしかけた。
「我が猟犬の餌食となるがいい」
 特異点より喚び出された"猟犬"と称される時空神の眷属は、不気味な牙を剥き出しにして敵に襲いかかる。一度標的にされたが最後、彼らの追跡から逃れることは不可能だ。例え時を停めようが過去に遡ろうが、主人と共に時を越えてどこまでも追い詰める。

「ゲッ、なんだコイツラは……っ痛え?! やめろ、離しやがれッ?!」
 猟犬の群れは力場をものともせずにサメを食い散らし、クロックダイルに齧りついた。
 敵はジタバタと暴れながら何度も波動を放つが、それで猟犬の時が巻き戻る事はない。
 クロノはぎゃあぎゃあと痛そうに喚き散らすワニを暫く眺めていたが、やがて満足したようにくるりと踵を返した。
「これで汝の滅びの宿命は明らかになった」
「なにワケわかんねぇこと言ってやがる、待ちやがれこのアマ……ッ痛え!!」
 怒りのままにその背を追おうとしたクロックダイルだが、なおも追撃を止めぬ猟犬と、他の猟兵に阻まれる。聞くに堪えない罵声を背に浴びながら、時の守護神は去っていく。
 ――彼女の遺した言葉の意味を敵が理解するのは、それからもう少し後のことになる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カビパン・カピパン
クロックダイル様最高!

ほら、私って売れないアイドルのブロマイドを見た衝撃で死んじゃった訳なのよ。けどそんなの昔の事よね!だって、私の未来はワニのおかげで変わったんだから。

私を悪霊から解き放ってくれたワニ!

まぁ始めはワニさんったらガハハハ、とか下品に笑いながら襲ってくるんだから正直、私も引いてたりしちゃったんだ。
でもその時よ。ワニの変な波動が私に命中して…な、なんと!私を生き返らせてくれたのでした!

クロックダイルのUCはカビパンに命中した。しかし既に死んでいるカビパンが【悪霊】として産まれる前までに戻ったことで、逆に生き返ってしまったのであった。この神殿で一番恐ろしい存在が復活した瞬間であった。



「うわ、なにあの下品なワニ」
 いつものようにマイペースに事件をかき回していたら、廃墟神殿の奥で待っていたのは変なワニ。いかにも品性下劣そうな態度や傲慢な言動に、カビパンは完全に引いていた。
「ガハハハ! 俺様はクロックダイル! いずれこの海を支配する大海賊様だ!」
「うわぁ……」
 メガリスを手に入れて余程調子に乗っているのか、増上慢を絵に描いたような振る舞いで威張り散らすワニ。それで痛い目にあったばかりだと言うのに、このコンキスタドールはまだ懲りていないようだ。

「さっきは少し油断しただけだ! まずはテメェから消えちまいな!」
 ドン引き気味の女に目をつけたクロックダイルは、腹に入れたメガリスの力を発動し、時間の波動を放つ。特に対策をしていたわけでもないカビパンは、モロにそれを浴びた。
 この波動は命中した物体の時を巻き戻し、産まれる前の虚無へと還す。通常の生物には抵抗すらできない恐るべき攻撃だが――その時、誰もが予想だにしない事が起こった。

『クロックダイル様最高!』

 後にカビパンは当時の事をこう語る。いつになく"生き生きとした"とてもイイ顔で。
 なぜあれだけワニに引いていた彼女がこうも華麗に掌を返したのか。それにはちょっと説明の難しい複雑な事情がある。
『ほら、私って売れないアイドルのブロマイドを見た衝撃で死んじゃった訳なのよ。けどそんなの昔の事よね! だって、私の未来はワニのおかげで変わったんだから』
 およそ人類史上、他にないであろう前代未聞の死因だが、それについては置いておく。
 重要なのは彼女が死後に強い執着で現世に留まり続けていた死者、悪霊だということ。既に死んでいる彼女が、時のメガリスの波動を浴びたら一体どうなるのか――。

『ワニの変な波動が私に命中して……な、なんと!私を生き返らせてくれたのでした!』

 ――悪霊として産まれる前に戻ったことで、カビパンは逆に生き返ってしまったのだ。
 この神殿にいる全ての存在の中で、ある意味一番恐ろしい存在が復活した瞬間だった。
「な、なんだとぉ?!」
 当然ながらクロックダイルはビビッた。虚無に消えるはずの相手がピンピンしているどころか、攻撃を受ける前よりも元気になっているのだから。当のカビパンもすぐには何が起こったのか分からなかったようだが、生身に戻った自分の身体を見ると笑みを浮かべ。

「私を悪霊から解き放ってくれたワニ! 最高ね!」
 かくして完全復活した【ハリセンで叩かずにはいられない女】は、いつにもまして元気よくハリセンを振る。バシバシと快音が響き渡り、戦場の空気がギャグに包まれていく。
「クソッ、なんで効かねえんだ?!」
 クロックダイルは混乱しながら【シャーク・トルネード】を放つが、ちょっとノコギリを生やした程度のサメが、今のノリにノッているカビパンに太刀打ちできるはずがない。
 あらゆる奇跡を霧散霧消させる「女神のハリセン」にシバき倒されて、虚無に還るのは彼らの方だった。

「な、なにがどうなっていやがる……ブヘッ!!」
 戦場は完全にカビパンのペース。ギャグに合わせられない哀れなワニは、感謝を込めたハリセンにシバかれふっ飛ばされる。後生大事に抱えた魔導書『水神クタアト』と共に。
 その後、復活したカビパンが第二の人生を歩んだのか、あるいはまた何やかんやあって悪霊に戻ったのか――それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キリカ・リクサール
アドリブ連携歓迎

フン…奴自身の能力にメガリスの力も付随したか
何とも厄介な事だな

装備銃器による乱れ撃ちと、デゼス・ポアの刃で周囲を切り刻む事で鮫の数を減らす
接近してきた鮫に対してはナガクニで切り裂く
その合間を縫うようにクロックダイルにも銃弾を撃ち込んで攻撃する

やれやれ、随分と舐められたものだ
あと100日も自分が生きられると思っているとはな

UCを発動
鮫を片付けつつ、デゼス・ポアを動き回らせながら密かに張り巡らせていた操り糸を操作
並行世界のクロックダイルと残りの鮫を糸で縛り上げて切断し、本体にも斬撃を与えて攻撃する

お前の寿命は今日限りだ
なに、先に送ってやった奴らもお前と一緒だから淋しくはないだろう?



「フン……奴自身の能力にメガリスの力も付随したか。何とも厄介な事だな」
 どうやら油断はできないようだと、キリカは鋭い目つきでクロックダイルを見据える。
 メガリスによってコンキスタドール化し、そして今また新たなメガリスの力を得たワニは、驕り高ぶるさまを隠そうともせずその力を奮う。
「面倒くせぇな……おい、力を貸せ、未来の俺様よ!」
 カチコチと腹の中で時計の音がしたかと思うと、空間を越えて100体のワニが現れる。
 100日分の寿命を代償に、平行世界の未来から召喚されたクロックダイルの分身達は、鋭い牙を剥き出しにして、サーベルを振りかざしながら襲いかかってきた。

「100日後も生きてるぜ、たぶんな!」
 ガハハと笑いながら押し寄せるクロックダイル軍団。そこに『水神クタアト』から召喚された【シャーク・トルネード】も加わり、戦場が手狭になるほどの軍勢が出来上がる。
 キリカはサメとワニに呑まれないよう、バックステップで離れながら銃器を乱れ撃つ。聖句を刻んだ自動小銃"シルコン・シジョン"の弾丸がワニを射抜き、秘術で強化された魔導機関拳銃"シガールQ1210"のフルオート掃射がサメの群れを蜂の巣にする。
「キヒヒヒヒヒヒヒッ」
 そこに飛び出すのは呪いの人形「デゼス・ポア」。踊るように空中を飛び回りながら、躯体に生やした錆びた刃で周囲を切り刻み、敵の数を減らしていく。幾度もの死線をくぐり抜けてきた傭兵と人形の戦いは洗練されていて、大群相手にも遅れを取らなかった。

「やれやれ、随分と舐められたものだ。あと100日も自分が生きられると思っているとはな」
 キリカは武器を短刀「ナガクニ」に持ち替えて近付いてきた敵を片付けながら、人形を動き回らせて密かに操り糸を張り巡らせていく。それは目を凝らさなければ見えないほど細いが、車を吊るしても切れないほど頑強で、刃のような鋭さも併せ持った暗器である。
「狂え、デゼス・ポア。死を与える歓喜と共に」
 そして操り手が【マリオン・マキャブル】を発動すれば、仕掛けられた糸は一網打尽に敵を捕らえる。キリカを漁師とするのなら、敵は自分が釣られていることすら気付いていない、愚かな獲物でしかなかった。

「「ぐおっ! なんだこりゃあ?!」」
 まるで蜘蛛の巣にかかった虫のように、クロックダイルとサメ達はじたばたともがく。
 だが操り糸は捕らえた獲物を決して逃さず、そのまま括り上げて切断する。バラバラになったサメとワニの死骸は、現れた時と同じように、虚空に溶けて消えていった。
「お前の寿命は今日限りだ。なに、先に送ってやった奴らもお前と一緒だから淋しくはないだろう?」
「ふ、フザけんな……ぐぎゃッ?!」
 冷たい笑みを浮かべながら、糸を操るキリカと人形。1人取り残されたクロックダイルの本体が言い返そうとするものの、その時にはもう死の糸は彼の首にまでかかっていた。
 極細の斬撃が血飛沫に染まり、醜い悲鳴が廃墟に木霊する。どうにか首を刎ねられる事は避けたものの――刻まれた傷は明らかな深手であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
随分と数を揃えられたようで……
ですが退く訳にも参りません
お相手いたしましょう

センサーでの情報収集と瞬間思考力で敵位置と行動把握し見切り
ノコギリワニは全格納銃器を旋回砲塔代わりに乱れ撃ちスナイパー射撃で迎撃
サーベルや牙を剣と盾で受け止め怪力で崩し、反撃の一刀で速やかに仕留め危なくなれば敵の身体踏みつけ推力移動で跳躍
場所移しつつ敵を潰し仕切り直し

数があろうと一人に対しての包囲は四方八方が限界
指揮官無き単純な物量で押し込めると思わぬことです

戦機の継戦能力を最大発揮
剣盾が破損しようと倒した敵からサーベル奪い戦闘続行

98、99…これで100体目

さて、貴方で最後ですね

超重フレームの鉄爪展開
貫手で体躯を貫き



「このクソ共が! テメェらは大人しく俺様に蹂躙されてりゃいいんだよ!」
 思わぬ反撃を受けて怒り狂うクロックダイルは、平行世界から新たな自分を召喚する。
 自分の寿命を惜しみなく使えるのは流石コンキスタドールと言うべきか。あるいは自分は死なないという謎の自信の現れかもしれない。
「随分と数を揃えられたようで……ですが退く訳にも参りません」
 目前にずらりと並んだ100体のワニを見やり、トリテレイアは儀礼剣と大盾を構える。
 敵の数は多いが、全てが同一個体なら行動パターンも同じなはず。彼は各種センサーと電子頭脳をフル回転させて、敵の位置と動きの把握に努める。

「「オラオラ! ブッ壊れろ!」」
 魔導書から召喚された【シャーク・トルネード】と共に襲いかかるクロックダイル達。
 計何百匹にもなるワニとサメの群れを、トリテレイアは機体内の格納銃器で迎撃する。
「お相手いたしましょう」
 頭部や肩部、両腕の装甲から飛び出した銃口が火を噴き、弾丸の雨を戦場にばらまく。
 旋回砲塔のように乱れ撃つ銃撃は、飛び回るサメを撃ち落すのに十分な威力があった。
 だが敵もやられるばかりではない。サメの群れを盾にして、平行世界のクロックダイルが牙を剥き出しにしながら斬り掛かってきた。

「オラァ!」
 技と言うよりは乱暴に振り下ろさいただけの斬撃を、機械騎士は剣と盾で受け止める。
 そして機体出力にものを言わせて押し返し、敵の体勢が崩れれば反撃の一刀を。洗練された斬撃が、海賊ワニに致命傷をもたらす。
「一体一体はそれほどの脅威ではありませんね」
「舐めんなァ!」
 仕留めた一匹の後から、次のクロックダイルが続々と押し寄せてくる。この場に留まるのは危ういと判断したトリテレイアは、その内の一体を鋼の足で思いっきり踏みつけた。
「グエッ?!」
 敵を踏み台にしての跳躍。脚部スラスターも使用して一気に距離を稼ぐと、騎士はまた剣と盾と銃器で敵を迎え撃つ。その動作は無駄なく最適化されており、戦闘と言うよりもまるで"作業"のようにすら見えた。

「数があろうと一人に対しての包囲は四方八方が限界。指揮官無き単純な物量で押し込めると思わぬことです」
 敵勢の数的優位を無に帰す【機械騎士の戦場輪舞曲】。それは戦法としては当たり前の一挙一動の連続に過ぎない。ただその練度と精度が飛び抜けて優れていることを除けば。
 さながら熟練の棋士が飛車角落ちで素人を詰めるように、トリテレイアは一太刀も浴びることなく敵を仕留めていく。疲労を知らぬウォーマシンの継戦能力の本領発揮である。
「く、クソッタレが! なんでロボ1体ブッ壊せねえ……ぐぎゃッ?!」
 返り血で剣の切れ味が落ちてくれば、倒した敵からサーベルを奪って戦闘を続行する。
 積み重なったワニの死骸は溶けるように骸の海へと還ってゆき、後には彼らを召喚した大本だけが残される。

「98、99……これで100体目。さて、貴方で最後ですね」
「ち、畜生……舐めんじゃねえッ!」
 100体の自分を残らず撃破されたクロックダイルが、破れかぶれで斬り掛かってくる。
 トリテレイアはその動作を落ち着いて見切り、潜るようにサーベルを躱すと――腕部のフレームから鉄爪を展開し、槍のような貫手を放った。
「ごハァッ?! ば、バカな……!」
 強靭な鉄爪に体躯を貫かれ、吐血するクロックダイル。苦悶の叫びが戦場に反響する。
 奢り高ぶっていた当初の様子とは一転して、彼の表情は今や驚愕と苦痛に歪んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロバート・ブレイズ
【冒涜】
騒々しい『生き物』連中だ。得物が『鋸』の時点で人類の想像(のうない)を脱せず、嗚呼、貴様は『使い方』が雑なのだな
鮫は助手(やつ)に任せて過去(わに)自身の所有物(メガリス)へ対抗。塵で塗るものを使用し、巻き戻しに早送りを衝突させる
早送りすれば『奴の寿命』はゴリゴリと削られる筈だ。貴様、幾※年の【貴様】を代償に成した?
助手の地形破壊と同時に銀糸の栞を手繰る。食事の時間だ、料理が皿の上で『動くな』と告げている。クカカッ――!

Tru'nembra起動――水神クタアトを奪取出来たならば『その力を狂(ただ)しく扱おう』鮫? 鮫の父を招いて魅せようか……嗚呼、【扱いを間違えたオマエ】には罰が似合う


虻須・志郎
【冒涜】
へえ、鰐が海で騒いでら
アンタ塩水大丈夫なのかい?
下らない挑発を混ぜつつ内臓無限紡績兵装を稼働させ
罠を仕掛けて騙し討ちしてやんよ

地形を利用しロープワークで蜘蛛の巣を張り
UCで『水神クタアト』の制御をハッキングし奪う
不可視の超常の糸だ、僅かでも触れれば仕舞いよ

鮫が止まれば先生が鰐を『塵』にして
場を支配したらメガリスを捕縛して略奪
ここで確実に回収したい所だ

奴も速度を上げて反撃に来るだろうが
忘れるなよ、この場は既に俺達のモノ
テメエの足場は俺の巣だ――その地形を部位破壊
体勢を崩したら捨て身で殴って魂ごと生命を吸収する

回収成功したら
折角だ先生、コイツの使い方を見せたらどうだい
……本当の邪神の力をさ



「へえ、鰐が海で騒いでら。アンタ塩水大丈夫なのかい?」
 クロックダイルに下らない挑発を混ぜつつ、内臓した無限紡績兵装を稼働させる志郎。
 長かった探索行の果て、求めたメガリスはもう目の前。しかし相手もそうすんなりとは宝を渡してはくれないだろう。
「バカにすんじゃねぇ! 俺様は海賊だぞ!」
 デカい口から唾を吐き散らしながら、クロックダイルは『水神クタアト』を使用する。
 再び召喚される回転ノコギリ付きのサメの群れ。さらに腹の中でカチコチと音がしたかと思うと、時計型メガリスの力によってワニの動きが1000倍にまで加速された。

「ガハハハ! ここから先は、ずっと俺様の時間だぜ!」
 ビュンビュンと戦場を走り回りながら、回転ノコギリ鮫をけしかけるクロックダイル。戦場に木霊する喧しいがなり声とノコギリの音に、ロバートが煩わしげに顔をしかめる。
「騒々しい『生き物』連中だ。得物が『鋸』の時点で人類の想像(のうない)を脱せず、嗚呼、貴様は『使い方』が雑なのだな」
「ンだとぉ!?」
 短気なワニの怒声には取り合わず、彼は【塵で塗るもの】を発動する。時を操作する力は何もメガリスだけの専売特許ではない――彼の『脚』は時を貪り、悉くを加速させる。

「鮫は任せるぞ、助手よ」
「了解だ先生」
 ロバートが時計のメガリスに対抗を測る一方で、志郎は『水神クタアト』に対処する。
 捕まるまいと調子よく駆け回っている敵の進路上に、紡績兵装から紡いだ糸で蜘蛛の巣を張る。どんなに動きが速かろうが、パターンが変わっていないのなら先読みは容易だ。
「ガハハハハハ……うん? なんか引っかかったか?」
 僅かでも敵が糸に触れれば、その瞬間に【盗巣奔納】が発動する。不可視なる超常の糸は電脳戦におけるハッキング回線のような役割を果たし――クロックダイルが持つ魔導書の制御を一瞬にして奪い取った。

「ここは俺の蜘蛛の巣の中、お前のモンは俺のモンだぜ?」
 志郎の「王者の石」がメガリスの制御をハッキングした事で、その使役下にあったサメは全て動きを止める。急に思い通りにならなくなった魔導書に、敵は困惑するばかりだ。
「何だァ?! テメェ一体何をしやがった!」
 クロックダイルは怒りのままに時の波動を放つが、すかさずロバートが割って入った。
 時を巻き戻す波動と、時を早送りする『脚』が衝突し、互いの力を相殺しあう。足元を塵と化しながら冒涜翁はさらに出力を強め、クロックダイル本体の時も加速させ始めた。

「貴様、幾※年の【貴様】を代償に成した?」
 メガリスによる加速に『脚』の効果が重なることで、クロックダイルの寿命がゴリゴリと削られていく。いかにオブリビオンと言えども、その存在に与えられた時間は永遠ではない。通常の数百倍、いや数千倍の速度でワニの時間が失われていく。
「な、なんだコイツやべぇ……!!」
 場を支配するロバートの不気味な存在感に、敵が虚勢を張るのも忘れて戦慄した直後。
 志郎が隙を突いて『水神クタアト』を超常の糸で捕縛し、蜘蛛の巣への略奪を試みる。

「ここで確実に回収したい所だが……」
「あッ、テメェ?!」
 糸に絡め取られそうになる魔導書を、がしっと離すまいと握りしめるクロックダイル。
 結果――ビリッと紙が破れる音がして、蜘蛛の巣に回収できたのは数ページに留まる。
 だがたとえ紙片でもメガリスの一部。蚯蚓がのたうつような文字で何らかの呪文が記されたそのページからは、強い魔力が感じられた。
「全部とはいかなかったが、まあいいか」
「俺様のメガリスをッ?! 返しやがれッ!」
 激昂したクロックダイルはなりふり構うのも忘れ、最大加速での反撃を仕掛けてくる。
 そのスピードはもはや目で追うことさえもできない領域だが――怒りの矛先を向けられた志郎とロバートに焦った様子はなかった。

「忘れるなよ、この場は既に俺達のモノ。テメエの足場は俺の巣だ――」
 志郎がパチンと指を鳴らすと、蜘蛛の巣を張った床面がガラガラと音を立てて崩れる。
 どれだけ動きが速かろうが、翼も持たないワニは地べたを走るしかなく、足場を失えば体勢は崩れる。その機を逃さずロバートが銀糸の栞を手繰り、敵を拘束する。
「食事の時間だ、料理が皿の上で『動くな』と告げている。クカカッ――!」
「ぐぅッ?! は、放しやがれッ!!」
 まんまと絡め取られたクロックダイルが、もつれる糸の中でじたばたと藻掻く。無様なその姿を余裕をもって眺めながら、ふたりの猟兵はにやりとワルそうな笑みを浮かべた。

「折角だ先生、コイツの使い方を見せたらどうだい……本当の邪神の力をさ」
 回収した『水神クタアト』のページを志郎が差し出す。それを受け取ったロバートは、異形機械「Tru'nembra」を起動させ、魔導書の力の狂(ただ)しい扱い方を披露する。
「鮫? 鮫の父を招いて魅せようか……嗚呼、【扱いを間違えたオマエ】には罰が似合う」
「ヒッ……な、なんだぁこりゃあ……!!」
 冒涜翁の手で招来されたその怪物は、クロックダイルが操っていたサメとは大きさも、そして異形さも桁違いだった。まさに海魔と呼ぶにふさわしい怪物が、捕らわれの獲物に牙を剥く――それと同時に志郎も敵に肉迫し、ありったけの力で拳を振るった。

「や、やめろ、来るな、来るんじゃねえ……ぐ、グギャアアアアアアアアアッ!!!?」
 海魔の牙が精神ごとワニの肉体を噛みちぎり、志郎の殴打が魂ごと生命力を吸収する。
 げに恐るべきは【冒涜】の者達。メガリスそのものよりも遥かに強く、そして恐ろしいモノの片鱗を、クロックダイルは味わったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

兎乃・零時
バルタン(f30809)と!
アドリブ歓迎

死ぬもんか!
俺様は何れ全世界最強最高の魔術師になる男!
こんな所で終わらねぇし魔導書もいただくぜ!

その前にバルタンのこの状態を維持させ続けるわけにもいかねぇし
UCもとい宝石共鳴!
疑似成長しつつバルタンのピサロの力を吸い取る
これで安心!

そんでワニに突撃しつつ奴の力も吸い取る…!

すい取った敵と味方の災魔の力を重ね纏う!
時×邪剣×水神
この場所との相性も抜群だろうよ
(深海適応×限界突破×地形の利用×生命力吸収)
敵の攻撃を防ぎ
相手の『時』を逆に奪い
速度を低下させつつ

各方向から一斉に水のレーザーを射出!
縫い留める様に一斉発射!
動きさえ止めりゃ、後はバルタンにお任せだな


バルタン・ノーヴェ
零時殿(f00283)と継続、アドリブOK!

HAHAHA! 愚かだな、クロックダイル!
コンキスタドールの一角の分際で、余の財宝を横取りしようなどとは!
よかろう、水神クタアト共々、貴様の時計型メガリスも

※零時殿のUCを食らって正気に戻りマース

ぐふっ。……ソーリー、零時殿。
長時間起動しっぱなしだと、かなり引っ張られマスネー。記憶は無事デスガ、頭痛が痛いデース。
しかし、零時殿にその姿を使わせた手前、弱音は吐けマセーン!
クロックダイル! アナタを秒で倒して魔導書を回収しマース!

百一匹のワニ、そこにサメも合わさって膨大な数デスガ。
ワタシの弾幕の前には誤差デース!
UC展開! これがワタシの本領発揮デース!



「畜生が……テメエら絶対にブッ殺してやるからな……!」
「死ぬもんか! 俺様は何れ全世界最強最高の魔術師になる男!」
 怒りに震えるクロックダイルの暴言に、堂々と言い返したのは零時。『水神クタアト』ゲットの為にやって来た彼の瞳は、未来の希望を体現するようにキラキラと輝いている。
「こんな所で終わらねぇし魔導書もいただくぜ!」
「ほざきやがれガキがッ!」
 敵は口汚く罵りながら【シャーク・トルネード】を発動、回転ノコギリを装備したサメの群れを召喚する。さらに己の寿命を代価にして、平行世界から未来の自分を召喚し――百一体のワニと数百のサメで、猟兵達を蹂躙する構えだ。

「HAHAHA! 愚かだな、クロックダイル! コンキスタドールの一角の分際で、余の財宝を横取りしようなどとは!」
 そんな怒れるコンキスタドール相手に、呵々と大笑いしながら言い放つのはバルタン。
 【模倣様式・八艘飛び】の悪影響がいよいよ強まってきたのか、その振る舞いは本来の彼女ではなく、まるで『邪剣』ピサロ将軍の魂が彼女に乗り移ったようにも見える。
「よかろう、水神クタアト共々、貴様の時計型メガリスも……ぐふっ」
「落ち着けって、バルタン」
 流石にこれ以上彼女にこの状態を維持させ続けるわけにもいかないと、零時が【真・夢《幻/現》未来】を発動。一時的に大人の姿に疑似成長しつつ、バルタンに宿るピサロの力を吸い取る。

「これで安心!」
「……ソーリー、零時殿。長時間起動しっぱなしだと、かなり引っ張られマスネー」
 大人の背丈で胸を張る零時に、正気に戻ったバルタンが礼を言う。少々強引な解除方法だったものの、体の方に後遺症はない。どちらかと言えば心配なのはメンタルのほうか。
「記憶は無事デスガ、頭痛が痛いデース。しかし、零時殿にその姿を使わせた手前、弱音は吐けマセーン!」
 いつもの調子を取り戻した彼女はサムライソードの切っ先をビシッと敵群に突きつけ、堂々と宣言する。邪剣の力は失われても、ワニやサメ相手に遅れを取ってたまるものか。

「クロックダイル! アナタを秒で倒して魔導書を回収しマース!」
「生意気言うじゃねえか。速攻で返り討ちにしてやるぜ!」
 百一体のクロックダイルはガハハと笑いながら、サメの群れを引き連れて襲ってくる。
 ただ数が多いだけではなく、体内の時計型メガリスの力で加速した彼らの相手をするのは骨が折れるだろう――が、そこで大人になった零時が敵陣に突撃する。
「奴の力も吸い取る……!」
「うぉッ、なんだァ!?」
 【真・夢《幻/現》未来】による吸収の対象は味方だけに限らない。クロックダイルが持つメガリスの『時』と『水神』の力を取り込み、バルタンから得た『邪剣』の力と重ね纏うことで、彼は敵の弱体化と自身の強化を同時に行う。

「時×邪剣×水神。この場所との相性も抜群だろうよ」
 膨大なメガリスと災魔の力を纏った零時は、にやりと笑いながら敵の攻撃を防御する。
 サメのノコギリも、ワニの牙も、サーベルも、重なり合う力場のヴェールに阻まれて、彼を傷つけることはできない。逆に『時』を奪われたクロックダイル達の速度は低下し、通常時に戻ってしまう。
「クソが……俺様のメガリスの力を……!」
「言っただろ。そいつは俺様がいただくって!」
 敵の動きを鈍らせたところで、零時は『水神』の力を束ねた水のレーザーを一斉射出。
 先刻戦った渚のパイレーツのウォーターガンに似た――だが、それよりも遥かに強力な放水が、各方向から敵群を縫い止めた。

「動きさえ止めりゃ、後はバルタンにお任せだな」
「ッ……テメェ!」
 自分の役割は果たしたとばかりに、後退する零時。怒りに狂うサメには取り合わない。
 彼が後ろに退いた事で、後方に居たバルタンからクロックダイルまでの射線が開いた。
「百一匹のワニ、そこにサメも合わさって膨大な数デスガ。ワタシの弾幕の前には誤差デース!」
 身体に内蔵したウェポンラック、火炎放射器、グレネードランチャーをフルオープン。
 【模倣様式・八艘飛び】の制約上、これまでは使用することのできなかった射撃武装。サイボーグのボディに秘められた全火力を最大にして、彼女は敵群をロックオンする。

「フルバースト・マキシマム展開! これがワタシの本領発揮デース!」
 高らかな宣言と共に解き放たれる、全武装の一斉発射。銃弾が、火炎が、敵弾の嵐が、動けないワニとサメの群れに浴びせられる。反響する砲声は耳をつんざかんばかりだ。
「「ギャーーーーーッ!!!!?」」
 百体のワニとそれ以上のサメの断末魔の絶叫が響き渡り、後に残るのは黒焦げの死骸。
 たった一体残された本物のクロックダイルも、ボロボロの状態で地に倒れ伏している。
 それを見た零時とバルタンは「やったな!」「やりマシタ!」と、笑顔でハイタッチを交わすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

なるほど!
あれはサメ魔術ブックだね!
いやちゃんと覚えてたけど!
ゲットしたらサメ好きの子が喜んでくれるかな?
あ、サイコロでも振って決める?

[白昼の霊球]くんたちに手伝ってもらうよ!
なんでもすり抜ける透明な彼らの今日の干渉対象は『ボク』『サメ』『本体以外のワニ』そして『時計型のメガリス』!
うおーーっ!と無防備にサメとワニの群れに突っ込む!
と見せかけて不意打ちに霊球くんたちにドッカンとぶつかってもらって道を切り拓く!
そして霊球くんの一つを彼のお腹、その中のメガリスに"直に"押し当て…霊球くんごとUCでぶっ叩く!
大丈夫!ただのワニになったらバナナワニ園に連れて行ってあげるよ!



「なるほど! あれはサメ魔術ブックだね! いやちゃんと覚えてたけど!」
 クロックダイルがメガリスを使う様子を見て、ようやく今回探していたお宝が何なのか思い出したらしいロニ。秘宝と呼ぶにはみすぼらしい見た目のアイテムだが、強い魔力を感じるし、それを求める者も結構いるようだ。
「ゲットしたらサメ好きの子が喜んでくれるかな? あ、サイコロでも振って決める?」
「もう勝った気でいるんじゃねぇぞオラァ!!」
 分け前の決め方を考えはじめた彼に、当然ながらキレた敵は怒りながらメガリスの力を発動する。クロックダイルの回りに大量のサメとワニが出現するのを見て、ロニも自らの周囲に「白昼の霊球」の群れを浮かべた。

「ようし、いっくぞー!」
 うおーーっ! と爽やかな笑顔で意気揚々と走り出すロニ。傍目には無防備に敵の群れに突っ込んだようにしか見えないだろう。彼の周りに浮かぶ霊球は、指定した対象以外のあらゆる物を――光や空気さえも透過してしまうため、肉眼では視認できないのだ。
「バカめ、1人でノコノコと……げぶッ?!」
 そうとは知らず油断した平行世界のクロックダイルは、透明な球の不意打ちを食らって吹っ飛んだ。ロニはそのまま密集した敵集団の中に飛び込み、ドッカンドッカンと霊球をぶつけて道を切り拓いていく。

「なんだァ? 見えないケド何かあるぞ、オイ!」
「クソッ! 邪魔だ!」
 敵も透明な何かがロニの周りを転がっているのは分かったものの、対処に悩んでいた。
 今回、白昼の霊球の干渉対象に指定されたのは「ロニ」「サメ」「本体以外のワニ」、それともう一つ。それ以外の物はすり抜けてしまうため、例えばサーベルや回転ノコギリで斬り掛かっても手応えがない。ロニ本体を攻撃しようにも球体が邪魔で近付けない。
「悪いけどキミ達には興味ないんだ!」
 ロニは沢山の白昼の霊球と共に、メガリスで召喚されたサメやワニを押しのけていく。
 狙うものはただひとつ。一直線にクロックダイル本体の元までたどり着いた彼は、そのお腹目掛けて霊球の一つを勢いよく押し当てた。

「ぐはッ?! ……って、痛く、ねえ?」
 霊球は確かにクロックダイルの腹にめり込んだ。にも関わらず痛みやダメージは無い。
 正確には当たったのではなく"すり抜けた"のだ。ロニが狙ったのは霊球の非透過対象に指定した最後のひとつ――クロックダイルの腹の中にある「時計型メガリス」だった。
「どーんっ!」
 クロックダイルをコンキスタドール化させ、知性と異能を与えた大本であるメガリス。
 本体を透過し"直に"それと接触した霊球ごと、ロニは渾身の【神撃】を叩き込んだ。

「ごっぐはああぁっ?!!!」
 神のパワーを込めた拳で、時計型メガリスをぶっ叩かれたクロックダイル。お腹の中でバキッと何かが壊れるような音がして、喉から絞り出すような悲鳴が戦場に響き渡った。
「て、テメェ……なんて事してくれやがるんだ……!」
「大丈夫! ただのワニになったらバナナワニ園に連れて行ってあげるよ!」
 四つん這いになってのたうち回りながら呻く敵に、ロニはニコニコと笑いながら言う。
 どうやら一撃で完全破壊とまではいかなかったようだが――メガリスに与えたダメージはそのまま本体の弱体化として、戦いの展開にも影響を及ぼすだろう事は明らかだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フォルク・リア
真羅天掌を発動、毒属性の竜巻を発生させる。
毒は遅効性で時間がたってから効果が表れるが
激しい呼吸困難、眩暈を発生させる。
毒の効果を悟られない様に真羅天掌は
ただの竜巻と思わせ
呪装銃「カオスエンペラー」で召喚されたワニを攻撃。
【催眠術】で自分は絶好調で負ける筈がないとの暗示をかける。

敵の波動にはファントムレギオンの死霊を放ち
軌道を逸らし回避。
「時の枷に囚われない死霊それは通用しないさ。」
敵から距離を取り、敵が力場に立ったら
カオスエンペラーの【誘導弾】で包囲する様に攻撃。
弾丸も遅くなり回避されてもその場に留まらせ
毒を多く吸い込ませる。
毒の効果が表れたらカオスエンペラーと竜巻の
【2回攻撃】で仕留める。



「ぐぎぎ……まだだ、まだ俺様にはこいつがある……!」
 手負いのクロックダイルは『水神クタアト』を手に、再び【シャーク・トルネード】を発動する。召喚されたのは回転ノコギリを生やしたワニの群れ――そういえば、ある世界の古語では鮫のことを「わに」と呼び表すこともあるそうだ。
「いや、今はそんな事はどうでもいいな」
 雑学を脇に置いてフォルクは呪装銃「カオスエンペラー」を手に取り、【真羅天掌】を発動する。前回は凍結属性の霧を発生させたのと同じユーベルコードだが、この術は属性の組み合わせで様々な現象を発生させられる――今回、彼が起こしたのは竜巻だった。

「何だオイ? これで俺様達を吹き飛ばそうってか?」
 クロックダイルがガハハと笑うと、周りにいるワニ達も笑う。海の上ならいざ知らず、屋内でちょっと風を起こされた程度で【シャーク・トルネード】は止められないだろう。
 調子に乗りまくっている敵に、フォルクは竜巻に続けて呪装銃による銃撃を浴びせる。それは風の中を飛び回るワニに当たったものの、撃ち落とされる気配はない。
「おお? なんだ、鉄砲使ってもその程度か?」
 余計に調子付いたクロックダイルは、ワニ共をけしかけながら体内のメガリスを起動。
 唸りを上げる回転ノコギリと同時に、時間を巻き戻す波動がフォルクに襲いかかった。

「時の枷に囚われない死霊にそれは通用しないさ」
 フォルクはすかさず「ファントムレギオン」を実体化させ、時の波動の軌道を逸らす。
 それは幾百幾千の死霊の集合体。巻き戻されたところで虚無に還ることもなく、同時に押し寄せる敵群に対する防壁にもなる。
「はっ、その程度どうした! こっちは何だか絶好調だぜ! 負ける筈がねえ!」
 対するクロックダイルはハイになった調子で群れをけしかけ、強引に死霊を突破しようとする。防壁が食い破られる前にフォルクは距離を取り、再び呪装銃のトリガーを引く。
「では、これならどうだ」
 放たれた複数の弾丸は奇妙な放物線を描き、群れの周りを包囲するように襲いかかる。
 その包囲の中心は、ちょうど逸らした波動が当たった位置だ。巻き戻しの影響によってその辺りには時間の流れを遅くする力場が発生しており、弾丸とワニの動きを制限する。

「チッ、またうっかり踏ませちまったか」
 クロックダイル本人は平気でも、召喚された配下はそうもいかない。スローモーションで飛んでくる弾丸を、同じくゆっくりとした動作で避けようとするワニの群れ。その光景はどこか奇妙だったが――彼らがフォルクの本当の目的を知るのはその直後だった。
「うん……? なんだ、どうしたお前ら?」
 それまで平気で弾丸を避けていたワニ達が、急にパクパクと口を開閉して苦しみだす。
 まるで酸素の足りない水槽に入れられた金魚のようだ。空中で"溺れる"ようにもがきのたうつ大群は、やがて腹を上向きにしてピクリとも動かなくなった。

「ようやく効いてきたな」
 ワニ達の変調の原因は、フォルクが【真羅天掌】で発生させた竜巻にあった。この竜巻には激しい呼吸困難と眩暈を発生させる遅効性の毒が含まれており、それを知らなかった敵は遅延の力場の上で時間をかけて、大量の毒を吸引してしまった。
「ぐっ……目が眩む……テメェ、毒を盛りやがったな……?!」
 ようやく気が付いた頃には、毒の竜巻はクロックダイル本体にも影響を及ぼしていた。
 だが発覚が遅れたのも無理はないだろう。毒の効果が表れるまでの時間を稼ぐために、フォルクは呪弾を使って暗示までかけていたのだから。敵群が絶好調だとハイになって、攻撃がまるで効いていなかったのも、全て竜巻から意識を逸らすための布石だ。

「上手くこちらの狙い通りに踊ってくれて助かったよ」
 見事作戦を完遂してみせたフォルクは、銃口をクロックダイルに向けトリガーを引く。
 今度は暗示用ではない呪殺の弾丸が、猛毒の竜巻に乗って加速し、標的を撃ち抜いた。
「ち、くしょ……がはぁッ!!?」
 どてっ腹に弾を叩き込まれ、悲鳴を上げながら竜巻に吹き飛ばされるクロックダイル。
 無様に地面を舐めたその面は、手玉に取られたことへの怒りと屈辱で醜く歪んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
良いじゃない、時のメガリス♪
そのお腹を捌いてわたしのモノにしたいわ♪
それに、わたしにはそんなワニに負けないは可愛い眷属達がいるのよ

1章で召喚した「神龍教派のクレリック」に【神龍降臨の儀】で神龍を召喚させてワニ達の相手をさせ、「光の断罪者」と二章で眷属にした「渚のパイレーツ」にはそのサポートを指示。

わたし自身は【ブラッディ・フォール】で「時計の国の少年アリス」の「狂える時計ウサギ」のうさ耳とドレス姿へ変化。

【フェイタル・ショータイム】で時間停止して【サディスティック・メルヘン】で時を停止している間に拷問器具に嵌めて動きを拘束。
逃げられない様にして魔槍で腹を捌いて時計を奪い取ってあげるわ♪。



「良いじゃない、時のメガリス♪ そのお腹を捌いてわたしのモノにしたいわ♪」
 本来の目的である『水神クタアト』よりも時計の方に興味を持った様子で、フレミアは笑顔でなかなか物騒なことを言う。オブリビオンに取り込まれたメガリスが、死後も残るかは分からないが――何にせよその為にやらなくてはいけない事は同じだ。
「それに、わたしにはそんなワニに負けないは可愛い眷属達がいるのよ」
「「はーい! あーしら、頑張っちゃう♪」」
 廃墟神殿の探索中に召喚した、神龍教派のクレリックと光の断罪者。そして先程の戦闘で仲間にしたばかりの渚のパイレーツ達が、ノリノリの様子でウォーターガンを構えた。

「って、テメエら何をシレッと裏切ってやがるんだ!」
「ごっめーん♪ でも今のご主人のほうがワニより1億倍カワイイし♪」
 いっさい悪びれる様子もなく、かつての親分に銃を向ける渚のパイレーツ。当然のことながらブチキレたクロックダイルは、メガリスの力で【シャーク・トルネード】を発動。何百匹という回転ノコギリ付きのワニの群れをけしかける。
「行け! 八つ裂きにしろ!」
 怒り心頭を体現するように、ガチガチ歯を鳴らし怒涛の勢いで押し寄せるワニ。だが、フレミアは涼しい表情でそれを眺めながら、かわいい眷属達にてきぱきと指示を飛ばす。

「貴女達、あの群れの相手は任せるわよ」
「はい、フレミア様。神龍よ、御力を!」
 【虜の軍勢】の中から、神龍教派のクレリックが【神龍降臨の儀】を発動し、想像上の神龍を召喚する。光の断罪者と渚のパイレーツ達はそのサポートにまわり、一丸となって【シャーク・トルネード】を迎え撃った。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 その間にフレミア自身は【ブラッディ・フォール】を発動。過去にアリスラビリンスで倒した「狂える時計ウサギ」の力を宿して、うさ耳を生やした白いドレス姿に変身する。
 この姿の元となったオウガの能力は、クロックダイルの腹のメガリスと同じ時間操作。パチンと指を鳴らすと戦場の時が停まり、敵も味方も彫像のように動かなくなった。

「時を加速させたり巻き戻すことはできても、停める事はできないようね」
 【フェイタル・ショータイム】による時間停止中、フレミアは悠々とクロックダイルの死角に回り込み、再び時間が動き出す前に【サディスティック・メルヘン】を発動する。
「――――ッ?!! なんじゃこりゃ?!」
 気が付いた時には、クロックダイルの身体はメルヘンチックな装飾の拷問具に嵌められ完全に拘束されていた。一体何が起こったのか理解が追いつく前に、激痛が全身を襲う。

「これでもう逃げられないわね♪」
 フレミアはにっこりと愉しげで残酷な笑みを見せ、動けない敵の腹に魔槍を突き刺す。
 そのまま腹を掻っ捌き、肉を抉り、骨を削り、臓腑を裂く。その体内にあるメガリスを奪い取るために。
「い、いぎぎぎぎぎっ!? やめッ、やめろぉッ!!?」
 生きたまま腑分けされるのに近い激痛に、クロックダイルが恥も外聞もなく絶叫する。
 もし、このままメガリスを奪われたら、自分はどうなってしまうのか――最悪の想像が脳裏をよぎった彼は必死にもがき、手足の関節が外れるのも構わず拘束を引き剥がした。

「あら、残念」
 あと少しだったのにと、拷問具から逃げられたフレミアは魔槍を片手に肩をすくめる。
 が、その代償に敵が支払ったものは重かった。内臓の飛び出しそうな腹の傷を押さえながら折れた手足をかばい、苦しげな息を吐くクロックダイルを見れば、それは明らかだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雛菊・璃奈
その魔導書は放っておけない…わたし達が回収させて貰う…。

「お魚召喚?」
「お魚食べ放題?」
「料理が捗る!」

…平和に利用すればできるかも…?
ラン達はワニの相手の手伝いをお願い…。

「空飛ぶワニ!」
「ワニ料理!」

今日の夕飯はワニかな…。

敵の加速に併せてこちらも【九尾化・天照】封印解放…!
ベースが生物の速度である以上、1000倍だろうと光の速さには敵わない…。
時を戻したりもできるみたいだけど、相手を捕捉できなければ意味ないよね…。
光を集束したレーザーで飛行ワニや敵本体を攻撃しつつ、光速化で敵を上回る速度で攻撃…。
【呪詛】を込めたバルムンクで防御や固い鱗もまとめて叩き斬ってその首、落とさせて貰うよ…



「その魔導書は放っておけない……わたし達が回収させて貰う……」
「ハッ……誰がテメェらなんざに渡すかよ……!」
 水にまつわる邪神や魔物についての危険な知識が記されたメガリス『水神クタアト』。その悪用を防ぐために魔剣を抜き放つ璃奈に、深手を負ったクロックダイルは毒づいた。
 カルロス王亡きあとの大海で覇を唱える為に、このメガリスは絶対に手放せない秘宝。どうにか劣勢を覆そうと、彼は破れかぶれで【シャーク・トルネード】を再発動する。

「お魚召喚?」
「お魚食べ放題?」
「料理が捗る!」
「……平和に利用すればできるかも……?」

 ちょっぴり期待しながら様子を見ているのはメイド人形達。璃奈はその発想には疑問符が付くようだが、道具の善悪は使い手次第とも言うし、不可能では無いのかもしれない。
 果たしてメガリスの力で召喚されたのは回転ノコギリを生やしたサメ、ではなくワニの群れだった。魔導書に誤字でもあったのだろうか――まあ、どちらでもやる事は同じだ。
「ラン達はワニの相手の手伝いをお願い……」
「空飛ぶワニ!」
「ワニ料理!」
 メイド達は魚でなくてもやる気全開で、箒の仕込んだ刀でワニの群れを捌きにかかる。
 流石に猟兵には劣るとはいえ、元はオブリビオンである彼女らの戦闘力は相応に高い。まな板の上の鯉をさばくように、飛び交うワニを切り刻んでいく。

「今日の夕飯はワニかな……」
 どんな献立になるんだろうかと気になりつつ、璃奈は【シャーク・トルネード】の対応をメイド達に任せ、自分は敵の親玉に専念する。あまり役に立っていないワニの群れに、クロックダイルは舌打ちしながら体内の時計型メガリスを起動させた。
「ちっ、役立たず共が……だが、ここから先は、ずっと俺様の時間だぜ!」
 時間を操るメガリスの力で、ワニの動作は一気に通常の1000倍まで爆発的に加速する。この速さに追いついて来れる者はいないだろうという絶対的な自信が、その発言からは感じられた。――もっともそれは、ただの井の中の蛙だったとすぐに知ることになる。

「我らに仇成す全ての敵に太陽の裁きを……封印解放……!」
 クロックダイルの加速に併せて、璃奈は【九尾化・天照】の封印を解き放つ。銀色の髪と尾を金色に染めて九尾の妖狐に変身した彼女は、日輪の輝きを纏いながら駆け出した。
「なッ―――?!」
 その動きを見たクロックダイルの表情が変わる。加速中の彼のスピードを以てしても、璃奈は目で追えないほど速かった。それも当然だろう、今の彼女はまさしく太陽の化身、光と同等のスピードでの行動を可能とした超特化形態なのだから。

「ベースが生物の速度である以上、1000倍だろうと光の速さには敵わない……」
 敵を上回る光の速さで駆け回りながら、璃奈は光を集束したレーザーで飛び交うワニや敵本体を攻撃する。時を歪めて加速するクロックダイルは確かに素早いが、それでも今の彼女の反応速度で追いきれない程のものではなかった。
「時を戻したりもできるみたいだけど、相手を捕捉できなければ意味ないよね……」
「く、クソがぁッ?!」
 逆にクロックダイルの攻撃はまったく彼女の動きを捉えられていない。闇雲にサーベルを振り回しても光の残像を捉えるのがせいぜいで、虚しく空を切るばかり。反撃の光線に射抜かれ、悪態を吐きながら体勢を崩すと、すかさず璃奈自身が斬り掛かってきた。

「その首、落とさせて貰うよ……」
 光速の剣技をもって振るうのは、呪詛を込めた竜殺し魔剣「バルムンク」。竜の鱗さえも断つその切れ味をもってすれば、ワニの鱗や防御もまとめて叩き斬るのは容易いこと。
「ぐ、があ……ッ!!!!」
 生存本能がそうさせたのか、反射的にクロックダイルは光速の斬撃から首をよじった。
 そのお陰で、彼の生命は文字通り「首の皮一枚」繋がることになる。だが光速の魔剣が与えた傷は深く――だくだくと止めどなく首から流れる血が、真っ赤な池を作っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

家綿・衣更着
「どうも衣更着と申しまっす!配下と違って大言ではなく強いっすが倒させて貰うっす!」

妖怪煙をどろんと放出して煙幕にして【迷彩】

時計型メガリス対策に、猟兵を倒さねば脱出できない【地形の利用】して通路に綿ストールを変化させた【化術】製マキビシばらまいておき足を怪我させる【罠使い】。本当に逃げられないよう通路の先に【結界術】

さらに【化術】で煙に映した猟兵の【残像】と血の臭いで召喚されたサメを【おびき寄せ】クロックダイルにぶつける
「手に入れた直後の力など強ければ強いほど使いこなせぬもの。自分で召喚したサメと遊ぶがいいっす」

迷彩状態から【忍び足】で近づいて『妖力放出・空亡の波動』でサメもろとも逃がさず倒す



「どうも衣更着と申しまっす! 配下と違って大言ではなく強いっすが倒させて貰うっす!」
 とうとう追い詰めたコンキスタドールの親玉に、衣更着は堂々とした名乗りを上げる。
 それは忍びとしての、あるいは妖怪としての作法なのだろうか。どちらにせよ、現在のクロックダイルに堂々とそれに応じ返すほどの余裕は残されていなかった。
「ゲフッ、ゴフッ……フ、ザケんじゃねえ……テメェらごときに倒されてたまるか!」
 特に深い腹と首の傷を押さえながら、持てるメガリスを使って全力で抵抗せんとする。
 だがその時、衣更着からどろんと放出された妖怪煙が辺りを包みこみ、クロックダイルの視界は真っ白になった。

「なんだこりゃ?! いや、だがこの煙なら……」
 猟兵の姿が見えなくなるとクロックダイルは慌てたが、視界が煙に閉ざされたこの状況は、敵を皆殺しにする事しか考えていなかった彼に「撤退」という思考を芽生えさせた。
 今ならば向こうからも此方の姿は捉えられないのではないか? 一度そう考えた後は、畜生らしい生存本能が彼を即断させた。体内のメガリスを発動し、全速力で逃走を図る。
「へへっ、よく考えりゃあメガリスさえ持ち帰ればいいんだ。あばよ――……ッ!?」
 ほくそ笑みかけたワニの表情は、しかしすぐに苦痛に歪むこととなる。この戦場から外に逃れるための唯一の出口、そこまでの通路上には尖ったマキビシがばら撒かれていた。

「逃がすわけ無いっすよ」
 ワニの悲鳴を聞きつけて、今度は衣更着が笑う。自慢の綿ストールを変化させた化術製マキビシの効果は覿面だったようだ。さらに万が一にも逃げられないよう、通路の先には結界術で出口を塞いである。
「く、クソがぁ……!」
 猟兵を倒さねばここから脱出できないという事実を認識させられたクロックダイルは、怒り狂いながら『水神クタアト』のページをめくる。喚び出されたサメの群れはノコギリをギュンギュン回転させながら、獲物を探して煙幕の海の中を泳ぎ始めた。

「こっちっすよ、サメさん達」
 衣更着は見つからないよう身を隠したまま、煙をスクリーンにして猟兵の残像を映し、さらに化術で血の匂いを偽装する。飛び交うサメの群れはそれに誘き寄せられてうようよと集まってくるが――飛び掛かった先にいたのは猟兵ではなく、クロックダイルだった。
「んなッ?! お、おいお前ら、こっちじゃね……ギャーーーッ?!」
 煙幕で敵味方を誤認したサメの牙とノコギリが、クロックダイルの全身に突き刺さる。
 戦場に響き渡る絶叫。これではどんなに視界が悪くても、どこにいるのか丸わかりだ。

「手に入れた直後の力など強ければ強いほど使いこなせぬもの。自分で召喚したサメと遊ぶがいいっす」
 飼い犬ならぬ飼い鮫に噛まれ、悶絶するクロックダイル。衣更着はその背後から音もなく忍び寄ると試作魔剣『空亡・蒼』を抜き放ち、【妖力放出・空亡の波動】を発動する。
 悪友より贈られた剣から妖力の嵐が吹き荒れる。時空を操り、超常を滅するその力は、群れなすサメもろともワニを討つのに十分な威力を秘めていた。
「ぐ、グギャアアァァァァァァッッ!!!?!」
 クロックダイルは為す術もなく、無様な悲鳴を上げながら妖力の嵐に吹き飛ばされる。
 妖怪煙の煙幕が吹き消されたあとに露わとなったのは、廃墟神殿の壁に叩きつけられ、大の字でぐったりとしたワニの姿であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリージア・プロトタイプ
【魔雪】
召喚した鰐と…あれは分身?
物量が圧倒的だな…

作戦の指示なくUCを発動した彼に驚く

彼が総力戦を挑んだのなら私も遊撃を…
…?作戦…?
私が最初に彼に伝えられたこと…
囮役…?いや、この状況で私が囮になったところで…
それに
彼の動きはまるで自分が全ての敵を引き受けようとしているような…

…そうか、そうだったな

敵の注意が彼に完全に向くまで遊撃に徹する
そして、敵に一瞬でも隙が出来れば…ッ!

地面に着弾した彼の氷弾を足場に敵へと駆け出す
可能であれば空中の氷弾も蹴って進み
地面に立つと遅くなるのなら踏まずに奴まで…!
十分な距離でUC発動による一閃

アナタが私に最初に伝えてくれた通り
これが私の考え抜いた策だ…!


トキワ・ホワード
【魔雪】
書は既に敵の手中
情報通り力も使えているようだ
厄介この上ないな

手始めに奴の召喚した鰐と分身それぞれ一匹へ射撃
個々の耐久度を測っておく

奴の放つ波動…避けても影響を及ぼすか…?
当たれば長くはもたんのも当然…
此方は遅く、敵は大群…さてどうする
…奴の外見を信用してみようか

UCを発動
限界数まで氷弾を生成
お前が正しく鰐であることを祈るよ
本体及び周囲、鰐の群れも巻き込んでの斉射
お前が外見通りの変温動物なら…活動限界まで冷やす
銃撃も加えて敵の注意を此方へ釘付けにする

此度の作戦は、お前に最初に伝えた通りだ
…やれ、フリージア!


お前の名前を知っていた理由?
何を今更
そのドッグタグは意味のない装飾ではないだろう



「ぐ、グギギギギ……まだだ……こんな所で死ねるかよ……!」
 秘宝を奪わせまいとする猟兵達の猛攻を受け、完全に追い詰められたクロックダイル。
 満身創痍となった彼は最後の悪あがきに、二つのメガリスから大量の配下を召喚する。
「100日後の事なんてどうでもいい! 今を生きるのが最優先だぜ!」
 自身の寿命を代償に呼び寄せた、平行世界の自分自身。『水神クタアト』の魔力により召喚された回転ノコギリ付きのワニの群れ。総勢数百体に及ぶ大群をもって、彼は活路を切り拓かんとする。

「召喚した鰐と……あれは分身? 物量が圧倒的だな……」
「書は既に敵の手中、情報通り力も使えているようだ。厄介この上ないな」
 対峙するのはフリージアとトキワ。魔導書回収まであと一歩というところで立ち塞がる人の壁ならぬ鰐の壁を前にして、彼らはどうやって突破口を作るか思考を巡らせている。
「まずは手始めに、と」
 トキワはおもむろに魔銃【セレマ】を構え、召喚されたワニと分身それぞれに向けて、耐久度を測るために一発ずつ射撃を仕掛ける。これだけ一箇所に大群が密集していれば、狙わなくても当てる事は容易い。

「ぐあッ?! やりやがったな!」
 結果、回転ノコギリ付きのサメは一射で撃ち落とせたが、強靭な肉体を持つ平行世界のクロックダイルは倒れなかった。怒りの形相も露わにしてサーベルで斬り掛かってくる。
「産まれる前に戻って消えちまいな!」
 同時にそれらを呼び出したクロックダイルの本体も、時を巻き戻す波動を放ってくる。
 大群の攻勢も脅威だが、より危険なのはあの波動だろう。トキワとフリージアは互いに距離を取って散開し、時の波動とワニの群れから逃れる。
「奴の放つ波動……避けても影響を及ぼすか……? 当たれば長くはもたんのも当然……」
「どうずる、策は?」
 避けられた波動が力場のフィールドを形成するのを見て、さらに思考を続けるトキワ。
 フリージアは彼に問いかけながら、黒鋼ノ刃で寄りつく敵を斬り伏せる。1対1の実力ではこちらが上だが、この物量が相手では無策のまま戦っても勝機は薄いだろう。

「此方は遅く、敵は大群……さてどうする……奴の外見を信用してみようか」
 減速の力場の中でも唯一速度の落ちないものは思考。得た情報と自らの知識から一計を案じたトキワは【エレメント・バレット】を発動、氷属性の弾丸を限界数まで生成する。
「なにを……?」
 作戦の指示なくユーベルコードを発動した事に、フリージアが驚く。しかし彼はそれに応えず敵を見て、クロックダイル本体及び周囲、敵の群れも巻き込むよう斉射を始めた。
「お前が正しく鰐であることを祈るよ」
「ぐお……ッ、冷てえぇッ!?」
 極低温まで冷え切った氷弾の弾幕を浴びせられ、分身ともどもワニ達が悲鳴を上げる。
 メガリスに触れて超常の力を手に入れたとはいえ、生物的な基本構造までもが変化するとは限らない。ただのワニであった頃と変わらず、彼らは急激な温度変化に弱いようだ。

「お前が外見通りの変温動物なら……活動限界まで冷やす」
 有効を確認したトキワは、持てる残弾と魔力を全て撃ち尽くす勢いで銃撃を続行する。
 彼が総力戦を挑んだのを見て、それならばとフリージアは遊撃を行おうとするが――。
「此度の作戦は、お前に最初に伝えた通りだ」
「……? 作戦……?」
 銃声の中でトキワが発した一言が、飛び出しかけた彼女を止める。作戦の指示は無かったのではない、当初と変更が無いので言わなかっただけのこと。それを察したフリージアは彼とのこれまでの会話を振り返る。

(私が最初に彼に伝えられたこと……囮役……? いや、この状況で私が囮になったところで……)
 この数を相手に自分が単独で暴れまわったところで、引きつけられる数は知れている。
 それに、矢継ぎ早に氷弾と銃撃を連射するトキワの動きは、まるで自分が全ての敵を引き受けようとしているような――。
「……そうか、そうだったな」
 全ての意図を理解したフリージアは、敵の注意が完全に彼に向くまでは遊撃に徹する。
 敵の数を削りつつ、包囲されないよう引き気味の戦闘スタイルで。二人の戦法の違いを対峙するクロックダイル達から見れば、どちらがより脅威と映るかは一目瞭然だろう。

(そして、敵に一瞬でも隙が出来れば……ッ!)
 群れの中に見えた一筋の活路。敵の本体まで続く攻撃の導線を彼女は見逃さなかった。
 地面に着弾したトキワの氷弾を足場にして駆け出す。半機の俊敏性は空中を飛ぶ弾丸すら蹴って進むことを可能とし、まるで黒い稲妻のように戦場を駆け抜けていく。
「地面に立つと遅くなるのなら、踏まずに奴まで……!」
「なにぃッ?!」
 完全にノーマークとなっていた相手からの強襲。慌てて対応しようとしてももう遅い。
 敵を間合いに捉えた瞬間、フリージアは【code:Decapitate-紫電一閃】を発動した。

「……やれ、フリージア!」
 周囲のワニの群れを凍てつかせながらトキワが叫ぶ。その声に背中を押されるように、フリージアが紫電纏う刃を鞘走らせる。持てる全力を注いだ、本日最速の【紫電一閃】。
「アナタが私に最初に伝えてくれた通り。これが私の考え抜いた策だ……!」
 乾坤一擲の一太刀は、過つことなくクロックダイルを捉え――その首級を刎ね飛ばす。
 高々と宙を舞ったワニの頭は「信じられねえ」と言わんばかりにあんぐりと口を開け。

「ば……バカな……この俺様が……こんなところで……」

 傲慢なるコンキスタドールの残党は、大きすぎる野望を抱えたまま、骸の海に還った。
 その骸は、彼が召喚した分身やワニやサメとともに、大気に溶けるように消えていく。
 後に残されたのは、戦闘の中で破損した一冊の魔導書――メガリス『水神クタアト』。
「回収完了、だな」
 魔銃を収めたトキワがそれを拾い上げ、今回の戦いの終わりと作戦の成功を宣言した。

「ところで……何故私の名前を?」
 フリージアは黒い刀を鞘に収めると、トキワの元に戻ってふと気になった事を聞いた。
 まだ名乗った覚えはないのに、彼は最後に自分の名前を呼んだ。その理由を尋ねると、トキワは何を今更、と少し呆れたように彼女の首を指差した。
「そのドッグタグは意味のない装飾ではないだろう」
 それはフリージアが記憶を失う前から身に着けている首飾り。取り付けられたプレートに、確かに彼女の名前が掘られている。何があっても必ず確認できるようにはっきりと。
「……そうか。そうだったな」
 記憶のカケラをぎゅっと握りしめ、彼女はこくりと頷く。その表情は変化に乏しかったものの――彼に名前を呼ばれたことに感慨を抱いているふうにも、見えなくはなかった。



 かくして『王笏』の遺産を巡る、コンキスタドールとの戦いは猟兵の勝利に終わった。
 回収された『水神クタアト』については、魔導書本体をトキワ達が。戦闘中に破けたページ(こちらにも、多くの魔力と知識が詰まっている)は希望者が持ち帰る事になった。
 危険な秘宝をコンキスタドールの手から守り、猟兵達は碧い海の平和を護ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月24日


挿絵イラスト