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猛進するバイオモンスターエンジン!

#ヒーローズアース #猟書家の侵攻 #猟書家 #ドン・ガルシア #バイオモンスター #レッドバーニア #トルク・オーバー

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●光あるところ、闇あり
 ヒーローズアースには数多くの研究施設が存在しており、その多くが正義の使者を支援する為に活動している。
 しかし同様に、ヴィランの強化や製造を行う研究施設もまた無数に存在していた。
「ただいま……」
 ここはそんな親ヴィラン陣営の運営していた研究施設の跡地。かつては非合法な人身売買や拉致によって被験者を集め、秘密裏に改造人間(バイオモンスター)を開発していた施設である。
「……二度と帰ってきたくはなかったんだけど、ね」
 過去に起こった事故により壊滅し、今では廃墟と化した施設。そこに赤いコスチュームを纏った青年が足を踏み入れた。
 彼の名は源藤・エンジ。
 またの名をエンジンヒーロー、レッドバーニア。
 彼はこの施設で行われた人体実験の被害者。すなわち彼もまた改造人間である。
「報告の通りだ。つい最近まで誰かがここにいた形跡がある。まさか、誰かがこの施設を復元しようとしてるってのか?」
 廃棄されて数年経つ筈なのに施設にはどういうわけか電気が通っており、薄暗い蛍光灯の下には真新しい足跡まである。
「まさか、またトルクオーバーみたいな化け物を生み出そうとしてるんじゃ……」
 足跡は施設の奥へと続いている。
 息をひそめてそれを辿り始めるエンジの眼には、ふつふつと怒りの炎が灯り始めた。
 しかし突如としてエンジの心臓が『ブルルン』とうなりを上げる。まるで今の言葉を非難するような不満げな音色で。
「あっと、悪かったよ。今のは言葉の綾だ。お前は化け物なんかじゃないよ」
 胸に手を当て、相棒からの叱責に苦笑するエンジ。
 彼の力の源であり、第二の人格―トルクオーバー。数年前までは暴走を繰り返していたトルクオーバーも、猟兵たちとの共闘を経てエンジと無事和解し、今では良きパートナーとして彼を支えている。
「だけど、お前の力が複製されて、ヴィランの悪事に利用されるなんて俺は絶対に嫌だ。もしもの時は……これはっ!?」
 しかし、入り組んだ施設の最奥部にあった光景は、残酷にも彼の予感が正しかったことを告げていた。
 最奥部の部屋の中央に鎮座していたのは、数多の電気ケーブルと配管を生やした培養ポッド。その歪なオブジェの中央では一人の男が死んだように眠っていた。
「まずいっ、もう人体実験が」
 再開されていたなんて。そう続くはずだった言葉は、轟音と衝撃によって掻き消される。培養ポッドが内側から弾け飛び爆発したのだ。
 エンジが視認できたのは培養ポッドの中の男が目を見開いたところまで。
「くっ、間に合わなかったのか!」
 そう言う間にも、スパークした配線が各所で火の手を起こしている。
「このままじゃ施設ごと吹っ飛ぶ。とにかく脱出しないと!」

●悪あるところ、正義のロードあり
「皆よく集まってくれた。最近は水にもこだわっててな。ヒーローズアースの超深海海洋深層水を輸入して……って、さっさと本題を話せって顔だな」
 なみなみ入ったコーヒーサーバーが所在無げにテーブルの上に置かれる。
 ほんとにいらない? と一言呟いたのち、グリモア猟兵―枯井戸・マックス(マスターピーベリー・f03382)は集まった猟兵達を見回し口元を引き締めた。
「まもなくヒーローズアースのとある研究施設跡から巨大化したオブリビオンが出現する。恐らくは猟書家ドン・ガルシアによる改造手術を受けた個体だろう」
 ドン・ガルシア―ヒーローズアースに現れたマッドサイエンティスト。自らの改造手術を『スナーク化』と呼称し、スナーク化怪人を先導して人々を殺戮する事で、超生物スナークを恐怖の象徴に担ぎ上げるべく行動している。
「このスナーク化したオブリビオンは殺戮衝動の塊みたいな存在だ。幸いこの研究施設は既に廃棄された工場地帯にあるが、オブリビオンは覚醒して間もなくすぐ近くのまだ人がいるブロックに向かうと思われる。恐らくはドン・ガルシアも近くでその様子を伺っているだろうな」
 マックスはモニターに地図を映し出し、件の研究施設の位置にアイコンを置いた。
 民間人がいるブロックまでは約10kmほど離れているようだが、オブリビオンの脚力の前では然したる距離ではないだろう。
「しかし不幸中の幸いというべきか、奴はとにかく気性が荒い。諸君らが一人でも立ち塞がっている間は応戦してくるはずだ」
 しかし今から最速で現場に転送しても、猟兵が到着できるのは敵が施設を飛び出した直後。気を抜いたら無差別な破壊と殺戮は免れない。
「だが、ここで1つグッドなニュース!」
 次いでマックスがモニター切り替えれば、そこに映し出されたのは赤いコスチュームにエンジンのエンブレムが輝くスーパーヒーローの姿。
「現場には先んじてオブリビオンと戦っているヒーローがいる。レッドバーニアって言えば覚えている奴がいるかもしれないな。猟兵と共闘したこともあるルーキーヒーローだ。まあ今はずいぶん頼もしくなったみたいだが」
 男子三日合わざればってやつだな、とマックスは微笑む。
「レッドバーニアもドン・ガルシアの改造手術を受けた被害者らしい。能力に苦悩した経験がある彼ならば、スナーク化オブリビオンの弱点を看破できるかもしれないな。そして、こいつを倒すことが出来れば、痺れを切らしたドン・ガルシアも姿を現すだろう。ドン・ガルシアの能力は未知数だが、こいつも何らかの改造強化を自らに施しているに違いない。厳しい連戦を覚悟してくれよ……」
 そう言うと、マックスは本体である仮面を顔に当てる。眼孔に嵌められた緑の宝玉が輝くと、そこにはヒーローズアースへと繋がるワームホールが口を開けた。
「あ、急いでるとこ悪いんだけど、このコーヒー本当にいらない? 気合入れていっぱい淹れちゃったから消費してほしいんだけど……まあ、それは帰ってからでいいか。温めなおしながら待ってるから、皆無事に帰ってこいよ」


Naranji
 生まれた世界は違っても♪
 見た目や言葉が違っても♪
 願いはつなぎ合~え~る~♪(ヘイ!)
 エンジン全開イ~ェ~ガ~♪

 ……はい。モンスターなエンジンさんならミスターメタリックが好きなMSのNaranjiです。
 初めましての方は初めまして。以前も参加して頂いた方は、また覗いていただきありがとうございます。
 今シナリオはわたくしの過去シナリオ『赤熱のプライムムーバー』から、オリジナルNPCのレッドバーニアが再登場しています。
 2章冒頭などを読めば、キャラクターへの理解度が深まるかも?
 一切強制などは致しませんが、もしお時間があればどうぞ。

(以下、シナリオ解説)
 OPにもある通り、今回は2章構成の猟書家シナリオです。
 全章共通のプレイングボーナス……バイオモンスターと共に戦う、もしくは猟兵組織「秘密結社スナーク」の一員であると名乗る(敵がスナークの名の元に恐怖を集める企みを妨害します)。
 ※シナリオ開始時は周囲に民間人がいないため、後者のプレイングボーナスはオブリビオンが民間人がいるブロックに到達してしまった後のみ有効とします。

 第1章は廃棄された工場地帯でスナーク化オブリビオン(ボス)との戦闘。
 時間帯は日中で快晴。屋外戦ですが廃工場地帯は見通しは悪いです。
 スナーク化オブリビオン詳細……体長は約15m。元の電気を操る能力に加え【肉体の超強化と、全身から超高温の蒸気を放つ能力】を得ている。

 第2章は黒幕のドン・ガルシア(ボス)との戦闘。
 第1章の内容によち、戦闘場所が移動する場合があります。
 ドン・ガルシアもスナーク化改造により特殊能力が付加されています。またそれに伴った弱点も持ち合わせているので、それを探り当てることが攻略のカギとなります。
 特殊能力の詳細は2章の前の間章で解説予定です。

 最後に、今回もプレイング募集期間など諸情報はタグの方でもお知らせしていければと思っていますので、そちらの方も注目していただければ幸いです。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『オールドスパーキー』

POW   :    ハンマースパーク
【身体】から【発電された高圧電流を纏った一撃】を放ち、【感電】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ボルカニッカー
【全身から火山の噴火のような激しい空中放電】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    イートタイム
戦闘中に食べた【引きちぎった電線から取り込む電気】の量と質に応じて【全身の細胞に電力が充電され】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠レイチェル・ノースロップです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

サンディ・ノックス
エンジさん、今はレッドバーニアって呼んだほうがいいかな
手伝いに来たよ
これを止めればいいんだよね
やぁ、すごい熱とパワーを感じる
大変そうだけど頑張るね
このパワーの弱点に心当たりない?

弱点を聞いたら
物理的なものならそこを黒剣で傷つけて繰り返し攻撃
属性的なものなら俺は闇(悪)属性の術しか使えないので諦めて堅実にUCでダメージを与えていくね

俺とレッドバーニアが居る限り敵が足を止めるならば
重要なのはダメージはできるだけ抑え耐久戦に持ち込むこと
敵の物理攻撃は黒剣で受け流す、怪力があるから受け切れるはず
UC解放・夜陰では敵への攻撃と電線に取り付くことで敵の食事を妨害
戦闘力の上昇を防げは受けるダメージも減るよね


ディゼリーナ・ラグランツェカ
(レッドバーニアの資料を見て)
中々にアツい過去と性格の持ち主のようだね。
我、堕落し辛い人間超好き系邪竜だから彼は好印象だ。
無論堕とし甲斐的な意味だけどネ!

「やぁやぁ!我はディゼっちゃんだ!」という感じで【コミュ力】全開でスナークから助太刀に来た事を説明しよう。ディゼっちゃん、悪い邪竜じゃないからネ。本当だヨー?

その間も敵はこちらの都合なんてお構い無しだろうからアラモの【盾受け】で電撃を防ぎ、死角から【誘導弾】を撃ち込んで説明の時間を稼ぐ。

弱点になる属性の情報が聞けたら指定UCを発動して反撃の時間だ。レッドバーニアの情報を元に選んだ【属性攻撃】で一気に畳み掛けるとしよう!

アドリブ連携歓迎



 晴天の下に爆発を音が響き渡る。何度も。何度も。
 廃工場の壁に叩きつけられたのは、辛くも研究施設から脱出したレッドバーニア。
 しかしそれを追うように爆炎の中から飛び出した巨人が、壁ごと赤き戦士を殴り飛ばした。
「ぐああっ! 間違いない……このパワーは!」
 飛散する瓦礫の中で体制を立て直したレッドバーニア。しかし、尚も迫る怪腕。
 施設の爆発を物ともしない真っ赤な巨体。
 コンクリート壁を発泡スチロールのように砕く怪力。
 自ら殴り飛ばした物に追いつく化け物じみた馬力。
 巨大化(スナーク化)オブリビオン、オールドスパーキーの暴力の前にレッドバーニアは瞬く間に地に叩き伏せられた。
「ちっ! まだだ、俺はこんなもんじゃないぞ……」
 脳が揺さぶられたのか、立つことすらままならないレッドバーニアの元に一歩、また一歩と歩み寄るオールドスパーキー。
「ふしゅるるる……ぐるぅああああ!!」
 そして巨人は唸りと共に全身から蒸気を噴き上げて、目の前の獲物に向けて右足を振り上げる。
「エンジさん!」
「足元がお留守ですよっと!」
 とその時、二筋の閃きが巨人の左脚に絡みついた。
 一つは黒水晶の鉤爪をもつワイヤー。一つは機械腕から伸びる歪な刃。
「ふしゅるっ!?」
 バランスを崩されたオールドスパーキーは右足を振り上げた勢いのまま、盛大に後ろに倒れこんだ。
 その隙にワイヤーを放った少年が脳震盪を起こしたレッドバーニアを抱え上げて、大急ぎでその場を後にする。
「あなたは……」
「やあ、また会ったねエンジさん。今はレッドバーニアって呼んだほうがいいかな」
 エンジを抱える少年は優しく微笑み、一時の安地を求めて疾走する。
「手伝いに来たよ。さあ、ここから逆転といこう」
こうしてサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は、レッドバーニアとの三度目の邂逅を果たすのであった。
「いやー、あいつ硬いしアッツイねー。接近戦はやっぱやめた方がいいかも。困っタ困っタ!」
 一旦退避する2人の背を守るのはディゼリーナ・ラグランツェカ(堕落を司る邪竜・f31899)。
 両腕のサイバネアームから伸びる刃はオールドスパーキーの硬い皮膚に阻まれてしまったようだ。しかし口では困ったと連呼しているが、彼女の笑顔からはそんな様子など微塵も感じられない。
「熱いと言えば、レッドバーニア君も中々にアツい過去と性格の持ち主のようだね。我、堕落し辛い人間超好き系邪竜だから好印象だ!」
ヒーローズアースに来る前に目を通しておいた資料を思い出し、ディゼリーナは笑みに悪辣な影を忍ばせる。
しかし、(無論堕とし甲斐的な意味だけどネ!)という二の句は、心の内に留める事となった。
起き上がった瞬間からノータイムで繰り出されるオールドスパーキーの電撃が、目前のアスファルトを砕いたからだ。
「ははっ、どんな体幹してんの!」
 自身の周りを浮遊する竜鱗を模した盾で攻撃をいなし、ディゼリーナは走る。苦し紛れに放った弾丸を操り死角から叩きつける。が、奴の硬皮の前には擦り傷にすら至らない。
「なんでもありか!」
(猟兵として初めての敵に相手取るには、いささか化け物過ぎたかね?)
 内心で冷や汗が噴き出す。しかし知らぬ間に、彼女の口角が描く弧は鋭さを増していた。

一方そのころ、地面に降ろされたレッドバーニアは物陰に身を潜めつつ息を整える。
懐から手鏡を取り出しオールドスパーキーの様子を伺う。すると、サンディと共に現れた女猟兵が、猛攻を紙一重で捌きながらその場に釘付けにしていた。
「これだけ離れててもすごい熱とパワーを感じるよ。早くディゼさんを助けに行きたいんだけど……このパワーの弱点に心当たりない?」
 サンディは先の攻防で既にオールドスパーキーの凄まじさは理解していた。脚を切断するつもりで放った2人がかりの攻撃。それがバランスを崩して転ばせる程度にしかならなかったのだから。
 ならば元の作戦通り、奴と同じ改造手術を受けたであろうエンジに解決策を求めるほかない。
「弱点か……もしあいつが俺と同じ能力を持っているなら、能力を使うほど血液を消費している筈だよ」
 能力:ターボエンジン。
 源藤・エンジが改造手術によって移植された強化心臓と可燃性の高い血液は、身体能力を飛躍的に向上させることが可能である。
 しかし力の行使に伴い体温は急激に上昇し、使うほどに血液を消費していくというデメリットも存在していた。
「きっとあの巨人が体から放っている蒸気は、体温上昇を抑える排熱の役割も果たしてるんだと思う。俺にはなかった能力だけど、きっとあいつも長く戦うほど自分の熱で内側から内臓が焼けていくんだ。……でも、あの化け物相手に持久戦なんて」
「血を消費して弱るのを待つんだね。うん、それならいけそうだ」
 それだけ聞ければ十分だとばかりにサンディは頷く。そして次の瞬間には獲物を狙う夜狼の如く物陰から駆け出していた。
「ちょ、ちょっと! ああもう、俺だってヒーローだってのに、あの人たちの前じゃ形無しだよ。まったく……」
 残されたレッドバーニアが溜息を吐く。
しかし落ち込むのはほんの刹那。サンディを追って走り出した彼の足取りに迷いはなかった。

「あ、自己紹介が遅れたね。やぁやぁ! 我はディゼっちゃんだ! よろ!」
「あ、俺はレッド……って、そんな場合じゃないだろ!」
 援軍に駆け付けたサンディとすれ違い、気さくに手を挙げたディゼリーナ。その体にはいくつもの焦げ跡や打撲痕が刻まれており、なぜ彼女が立っていられるのか不思議なほどだ。しかも、あまつさえ笑っているのだから、彼女の胆力の底は図り知れない。
「敵の弱点は持久戦らしいよ。もうひと頑張りだね」
「わーお無慈悲! もっと他にないわけ?」
「えっと、もしくはあいつの蒸気を止めて排熱不良を起こさせるか、もっと熱を与えて心臓を熱暴走させられれば」
「あ、それならいけそう! いい事いうネ、バーニア君!」
 サンディに向けて唇を尖らせたディゼリーナだったが、一転顔を輝かせると、背部に纏った兵装を展開し、光子砲の砲塔を露にする。
「GDM起動! ここからはおフザケは一切無しだ!」
【G・D・M(グランダルメ・デストロイ・モード)】
 背面装甲の防御システムを全て攻撃に充て、圧倒的火力で敵を鎮圧する諸刃の一撃。
「邪竜の真髄、喰らってみたまえ!」
 叫びと共に打ち出された熱線は一直線にオールドスパーキーの胸に突き刺さった。
 これにはたまらず仰け反ったオールドスパーキー。しかし、素早く熱線の軌道から身を逸らすと、今度は大きく跳躍。電気を取り込んで回復しようと電線へと腕を伸ばす。
「そうくると思ったよ。悪いけど思い通りにはさせない」
 しかし、飛び上がったオールドスパーキーの体を黒水晶の雨が撃ち落とした。
【解放・夜陰(カイホウ・ヤイン)】
 サンディの内に巣食う悪意の奔流。それを結晶化した弾丸は、かつてレッドバーニアと共闘した時をはるかに凌ぐ質量と数でもってオールドスパーキーに食らいつく。
しかもサンディはオールドスパーキーの行動を見切り、あらかじめ電線に沿って夜陰を展開していた。あとは機を見て叩き落すだけ。そうと知らず無防備に飛び上がったオールドスパーキーは、最早ハゲタカの群れの前に瀕死を晒す肉食獣も同然であった。
「耐久戦は得意なんだ。さあ、悪食の群れを前にいつまで立っていられるかな?」
「ディゼちゃんも忘れちゃだめだね。追加発注だ! 全砲塔一斉射!」
 更に追い打ちとばかりに連射される熱線とミサイルポッド。ディゼリーナの狙いすました砲撃が、オールドスパーキーの肩や腕、脚の関節部を狙い撃ち、その回避を阻害する。
「す、すげえ……これが猟兵の力」
 圧倒的な数の暴力が巨人を圧倒する。その光景を前に、レッドバーニアはただただ唖然とするばかり。
 こうして猟兵とスナーク化オブリビオンの邂逅戦は、猟兵陣営の優性で幕を開けたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

支倉・新兵
UC射程圏内に陣取り狙撃体勢へ
何時ものドローン展開と…廃工場地帯なら幾つかセキュリティが生きてる所もあるだろう、カメラや端末をジャックし『目』にする

ドローンや端末を通じてレッドバーニアと連絡を
アースクライシスの時…は俺が一方的に見掛けただけだからあの事件以来になるか
とは言え雑談は後…今はお互いやる事をやろう、情報共有と連携の為の最低限遣り取りを

地形把握、弾道計算の後UC発動
入組んだ市街地でも跳弾で問題ない…蒸気や放電の射程外から一方的に撃ち抜く
障害がある限り足止め可能なのは僥倖
…なら跳弾で別角度から順次撃ち込めば注意も引ける…少なくともレッドバーニアや同業者が追い付くまでの時間は稼げるだろう


蛇塚・レモン
どんなに見通しが悪い工場地帯でも、
15mもの巨体は上空から目立つはずっ!

念動力で空中浮遊+空中戦
電撃と高熱蒸気のせいで接近戦は厳しいね……
だったら、遠距離から削りきるよっ!

UCとあたいのオーラガンで飽和火力範囲攻撃のなぎ払い!
980本霊光線の貫通攻撃と呪殺弾の弾幕+衝撃波
敵ごと周囲の電線を爆撃&敵のUCを封じて不運を付与だよっ!
電気を取り込ませないよっ!
……市街地のみんな、ごめんなさいっ!
神楽鈴の音色に衝撃波+マヒ攻撃+拘束の呪詛を乗せて音属性攻撃

黄金霊波動から発生する斥力(念動力+オーラ防御)と
盃の結界術で継戦能力+激痛耐性+ジャストガード

ここで釘付けにするよっ!
不運も味方するはずっ!

連携◎



 凄まじい弾幕が終わる頃。
 ふいに猟兵の一人が持っていた通信端末が着信を告げる。
『持ち場に着いたよ。そっちも消耗しているでしょう? ここから先は俺が引き継ぐから』
 端末越しに聞こえる声には聞き覚えがある。たしか、あの時の……。
 戦況を見守っていたレッドバーニアの脳裏に過ぎるのは、2年前、初めて猟兵と共に戦った時の記憶。
『あ、その端末はレッドバーニアに預けておいて。……久しぶり、俺の事覚えているかな?』
 渡された通信端末から聞こえてきた声、それは紛れもなくあの日自分を救ってくれた恩人(ヒーロー)の一人―支倉・新兵(狙撃猟兵・f14461)のものであった。
「お、お久しぶりです! あなたも助けに来てくれるなんて……」
『あ、ごめん。俺から振っておいてなんだけど、雑談してる暇はないんだった。直ぐにこっちから援軍が向かうけど、それまで少しの間オブリビオンを留めておいて欲しいんだ。ほら、もう立ち上がるよ』
 その言葉に端末から顔を上げれば、オールドスパーキーは怒気を振りまきながら、こちらに烈火の視線を向けている。
『どのくらいかかりそう? ……1分いらないって。君なら余裕だよね』
 そんな通信を流し聞きつつ、大きく飛び退るレッドバーニア。
 次の瞬間には、一瞬前まで立っていた場所が灼熱のスチームと電撃の渦に飲み込まれた。
「ああ任せてください! どうやら人生で一番長い1分になりそうだけど!」

「……さて、彼を信頼してるのは本当だけど、なるはやで頼むよ」
 一旦通信を終えた新兵は、傍らに立つ少女に声をかける。
 彼らがいるのは廃工場地帯の中でも比較的劣化が少ない鉄塔の最上部。そこにスナイパーライフルを設置した新兵は既に鉄骨にぴたりと身を預け、スコープをのぞき込んでいる。
「OK! どんなに見通しが悪い工場地帯でも、15mもの巨体は上空から目立つからね! あたいならひとっ飛びだよ」
 そんな新兵の横で快活そうな笑みを浮かべるのは金髪オッドアイの少女―蛇塚・レモン(蛇神憑きの金色巫女・f05152)。
 軽い身のこなしでステップを踏むと、レモンは鉄塔からフワリと浮き上がった。
「あ、ちょっと待って。ここまで運んでくれて助かったよ。お陰で予想より早く……」
「そのお礼、今じゃなきゃだめ? でも―」
 ―どういたしましてっ!
 その言葉は、気づけば遥か遠くから。
 返事をする間も惜しいと鉄塔から飛び立ったレモンは、奮戦するレッドバーニアの元へ飛び立つ。その勢いはさながらミサイルのようだ。
「忙しない子だな……。さて、俺も俺のやることをやろうか」
 サンバイザーに仕込んだ長距離射撃支援デバイスを起動させ、展開していたドローン達から現場の映像が受信する。併せて、まだ生きている監視カメラの映像もジャックすれば。
「地形把握完了。これでこの一帯は俺の狙撃領域だ」
 新兵はそれらの映像を脳内で立体的に繋ぎ合わせ、弾道計算を組み立上げた。
 そしてここから先は彼自身の眼と指先がものを言う。
「弾道、入射角……オールグリーン。さて、若者だけにいい恰好はさせないよ」
 引き金に指をかけ、一瞬の静寂。
 トリガーを引いた刹那、撃ちだされた弾丸は壁に当たって跳ね返りながら廃工場地帯の奥へ向かって突き進んでいく。
 弾丸の行く末を見送る間もなく、二度、三度と指を動かせばその度に空薬莢が宙を舞う。
 【跳弾狙撃(リコシェスナイプ)】
 空前絶後の三次元的な軌道を描く銃撃は、先に飛び立ったレモンを追い抜いて、見事オールドスパーキーの胸にめり込んだ。
「ふしゅるがああああ!!」
 突如たる強い衝撃を胸部に受けて、オールドスパーキーがよろめいた。
 赤熱した身を振るわせれば、足元に落ちたのはひしゃげた鉛の塊。それが遥か数km先から幾度となく跳弾を繰り返し飛来したライフル弾だと、オールドスパーキーは果たして理解することは出来ただろうか。
「今のは……狙撃猟兵さんの攻撃!」
 残像が見えるほどの高速移動で回避に専念していたレッドバーニア。その目に希望の光が灯る。
 しかし跳弾射撃はオールドスパーキーの身を傷つけるに至っていない。が、追って飛来した黄金の風が、今度こそその巨体を吹き飛ばした。
「お待たせ! ごめん、7秒遅れたっ!」
 金色の風が吹くたびに、シャランと不思議な音が鳴る。
 レッドバーニアが声のした方を見上げれば、そこには彼が見たこともない紅白の衣装を身に纏い、荘厳に舞う少女の姿。
 シャランという音は、彼女―レモンが持つ神楽鈴の音色であった。
「やっぱり、電撃と高熱蒸気のせいで接近戦は厳しいね……だったら、遠距離から削りきるよっ!」
 眼下で起き上がったオールドスパーキーの周囲には、近寄りがたい熱気と電気が嵐渦巻いている。
 レッドバーニアが回避に専念していたのもこれが理由。徒手空拳での戦闘スタイルを得意とする彼では、今回の敵は相性が悪いのだ。
「今までよく頑張ったね。ここからはあたいが……いや、あたい“たち”が相手をするよっ!」
 気合十分、打ち鳴らす鈴の音色にユーベルコードを纏わせて、再び宙にステップを刻むレモン。とその時、ふいにその体が“3つ”にブレた。
「蛇神様っ! ライムっ! お願い、一緒に踊ってっ!」
 【憑装・蛇塚ミツオロチ神楽】
 一つの体に二つの人格を宿しているのはレッドバーニアだけではない。
 レモンは自らに宿る蛇神の霊力を開放しながら、華やかな舞を披露する。
 そしてそこに寄り添うのは、レモンによく似た姿のもう一人の少女の影。自らの実妹―ライムの御霊が封じられた勾玉を、レモンは神楽鈴を振る手と逆の手に握りしめていた。
 中空に浮かび、黄金の光を放ちながら三位一体の舞を奉納する少女たち。その姿は神話の一説を思わせる。
 しかし当然、オールドスパーキーがそんなド派手な光景を見逃すはずもなく。
「ふしゅるるるるるっ!!」
 レモンへと火山の噴火を思わせる空中放電を放つ。
 しかし、その攻撃はレモンから放たれた光線によって相殺された。
「惜しかったねっ。あたいは撃ち合いだって得意だよっ!」
 三人の足運びが生み出す霊域。雨雲の如く広がったそれは、眼下の仇なす者へと光線のスコールを打ち付ける。
 更にレモン、ライム、オロチヒメがそれぞれ指鉄砲を形作れば、指先から撃ち出される追撃の霊弾、呪殺弾、衝撃波。
 合わせて優に1000を超える弾幕はオールドスパーキーの電撃を砕き、巨体をしとどに打ちのめした。
「的が大きいから当てやすいねっ。あ、そうだ。今のうちに……」
 指鉄砲の銃口をずらし、レモンは霊弾を発射。
 狙い逸らさず電線を打ち抜いて、オールドスパーキーの補給路を断った。
「市街地のみんな、ごめんなさいっ!」
 詫びの言葉を口にするレモン。
 しかし幸いなことに、この廃工場地帯は市街地の電線とは別経路の電源設備で賄われているため、市街地への被害はない。
 だが今の一撃で、かろうじて生き残っていた監視カメラが死に絶えた。この時、別所で一人の狙撃猟兵が大いに慌てていた事を、彼女は知る由もない。
「さあ、ここで釘付けにするよっ! あたい達と出会った不運を嘆きなっ!」
 しかしオールドスパーキーもただやられてばかりでもない。無数の光線を、大木を思わせる腕を交差して耐える。
 並のオブリビオンなら為す術もなく消し飛ぶ猛攻ですら、超強化された肉体は防いで見せた。
 そして腕を交差したまま、力任せにオールドスパーキーは前進を始めた。
 ユーベルコード発動の機会を奪われても、奴にはまだ自身の肉体という強力な武器が残っていたのだ。
「嘘でしょっ!? このっ!」
「ふしゅるがああああ!!」
 雄叫びを上げて跳躍する巨人。建造物の屋上まで軽々と飛び上がったオールドスパーキーは、新たに得た足場を踏みしめて更に跳躍。
 遂にレモンにその怪腕が届く範囲まで到達した。
「危ない!」
 そこに割り込んだのはレッドバーニア。
 心臓のターボエンジンが唸りを上げ、オールドスパーキーの拳を飛び蹴りで正面から受け止める。
「オーバーフローッ! バーニアストライク!」
 一瞬の拮抗の後、レッドバーニアとオールドスパーキーは勢いを失い自由落下。
 一度距離をとって屋上へと着地する。
「ちょっと無理しちゃだめだよっ! ここはあたい達に任せて……」
「俺だってヒーローだよ。助けてもらってばかりじゃいられないって!」
 その言葉の通り、かつてのレッドバーニアの最大の攻撃はスナーク化したオブリビオンの攻撃を相殺してみせた。
 しかし、致命の一撃は遠い。
「でも、これでいいんだ。長く戦えば戦うほど、あいつは自分のエンジンの熱で内側から壊れていく。猟兵さん、力を貸してください!」
『了解したよレッドバーニア。さっきの戦いの情報も受け取った』
 無線機から新兵の声が響いた。
 監視カメラが壊れはしたが、戦場が建物の屋上に移った今なら、ドローンと彼自身の目だけで敵の捕捉は十分のようだ。
『レモン、君はたしか結界を使えたよね。俺が狙撃で奴の動きを止める。その隙にあいつを閉じ込めるんだ』
「OK! それなら今がチャンスだよっ。あいつ、あたいの力で今運勢最悪だから!」
 その言葉通り、オールドスパーキーは着地の衝撃で片足が床を踏み抜いてしまったのか、工場の屋上で立ち往生している。偶然にも劣化している箇所に足をついてしまったらしい。
「あたいの不運を招く霊光線の御業だよっ! さあ、今の内!」
「俺も行きます!!」
 レッドバーニアがビルからビルへと飛び移り、床から足を引き抜こうと藻掻く怪人の懐に潜り込む。
 そして飛び上がりながら繰り出した膝蹴りがオールドスパーキーの顎を強かに打ち上げた。
『その位置なら直に射線が通る。跳弾抜きの狙撃、喰らってみろ』
 そして後方に控える新兵のライフルが火を噴く。
 さっきは硬い皮膚に防がれてしまったが、今度は跳弾による威力低下のない直線射撃。推進力の全てを破壊力に変えて、弾丸は今度こそオールドスパーキーの胸に深々と突き刺さった。
「ふしゅあああああっ!!」
 胸に空いた風穴から蒸気を噴き出し、のたうち回る巨人。
 その衝撃は踏み抜いた床の亀裂を広げ、オールドスパーキーは階下に真っ逆さま。
 遠くから眺めていた新兵はその光景に、かつてUDCアースのクイズ番組で見た、不正解時に人形が没収される様を思い出したとか。
 そしてオールドスパーキーが落ちた先はまたも脆い床。
 次も、また次も。砕けたコンクリートを巻き込みながらズシン……ズシン……と落ちていき、遂には一階の床に突き刺さった。
「あーあー、御気の毒様。ま、あたいのせいだけどねっ!」
 落下地点に先回りしていたレモンが神烏の杯を手に結界を構築した。
 普段は自身を守るために用いる結界だが、斥力を内側に向けることで敵を封じ込める檻ともなる。
 完全に密閉されたことでオールドスパーキーは蒸気の逃げ場を失い、自らの熱で苦しみ始めた。
「不運があたい達に味方してくれたね。さあ、あと一息だよっ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

プリシラ・マーセナス(サポート)
『記憶はなくても、物事の善し悪しはわかるよ』
『援護は任せて!君には当てないから!』
 キマイラですが、記憶を喪失した状態でダークセイヴァーで暮らしています。
ユーベルコードはどれでも使いますが、移動手段として「黒虎」を、緊急の近接手段として「ガチキマイラ」を使い、基本的にはマスケット銃での中・遠距離戦を好みます。
 依頼内容には拘らず、手当たり次第に選ぶ傾向があります。また、一人で戦うよりも前衛の隙を補う戦法を選びます。
 相手の年齢、性別を問わず少年的に振舞います(素を出すと侮られると思っている為)。但し、咄嗟に女性的になる場合があります(驚いた時の叫び声など)
後はお任せ、よろしくお願いします!


メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士の女の子です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。

その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 オールドスパーキーの拳が結界を打ち破る。
 結界内に蓄積していた蒸気が亀裂から勢いよく噴き出す様は、さながら火山の噴火を思わせた。
「ふしゅうっ! ふしゅっ……うごああああああ!!」
 残る結界の欠片を砕き割りながら転がり出たオールドスパーキー。
 見れば体は真っ赤に変色している。逃げ場を失った熱が奴の肉体を内部からむしばんだのだ。強化心臓が悲鳴のような駆動音を響き渡らせた。
「あのまま自滅してくれたらよかったんだけど、まだ持ちこたえるのか……」
 レッドバーニアが苦々し気に漏らす。
 オールドスパーキーとレッドバーニアに移植された特殊能力、ターボエンジン。自らの血液を燃やして肉体強化を行うその力は、同時に使用者の体を焼き尽くすほどの熱を生み出す。
 肉体が被るリコイルを理解するレッドバーニアだからこそ、オールドスパーキーの苦しみ様は特別痛々しく感じられた。
「それなら、早く楽にしてあげよう」
 そう声をかけたのは白猫のキマイラ―プリシラ・マーセナス(迷い子猫(21)・f21808)。彼女はマスケット銃を手に油断なくオールドスパーキーを見つめている。
「えっと……私もお手伝いします」
 ドラゴンランスを手にメイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)も戦列に加わった。
「ここからは短期決戦で行こう。オールドスパーキーの強化心臓は今、車で言うオーバーヒートの状態のはずだよ」
 新たに駆け付けた猟兵にレッドバーニアが作戦を説明する。
 強化心臓が駆動不全を起こしている今なら、オールドスパーキーはあの巨体を動かすための馬力を生み出す事が出来ない。それなら当然、排熱によるスチーム攻撃もできないはず。
「つまり、近接攻撃で一気に攻め落とすチャンスは今しかないってこと。奴が復活する前に一気にカタを付けるよ!」
「了解。援護は任せて! 君には当てないから」
「は、はい! 一緒に頑張りましょうね」
 レッドバーニアの号令に頷き、二人の猟兵はそれぞれの仕事に取り掛かる。
 まず駆け出したのはメイリン。ドラゴンランスを構え突貫する。
 夜空に最も明るく煌めく一等星の名を冠する槍『シリウス』。その鋭い切っ先は、鋼の強度を誇ったオールドスパーキーの腹に深々と突き刺さった。
「うぎゃああおおおおお!!」
「や、やっぱり、防御力も落ちてるみたいです! 今なら」
「僕の銃でも効果アリだよ……ね!」
 マスケット銃をくるくると回すプリシラ。その銃口がオールドスパーキーを向いたその刹那。
 ズドドドドン! 
 単発銃である筈のマスケットが幾度となく火を噴いた。その度に巨人の体は小さな赤い飛沫を散らす。
「瞬きしたら手遅れだよ」
 マーチングバンドのバトン隊を思わせる軽やかな手捌きでマスケットを操るプリシラ。しかしそうしている間にも、彼女の手先は恐ろしい速度で動き続けている。
 これこそが彼女のユーベルコード。排莢、装填、発射の三工程を凄まじい速度で繰り返す神業だ。
「よし、俺も行くぞ! 赤心一速!」
 先行して攻める猟兵に負けじと、レッドバーニアが駆け出した。
 ブルルゥンッ! と心臓が唸りを上げる。脚に、腕に、拳に力がみなぎる。そして勢いを乗せた拳はオールドスパーキーの顔面に突き刺さり、巨体を大きく仰け反らせた。
 が。
 ここでオールドスパーキーも攻勢に出た。
「ガルゥア!」
 巨岩のように大きな掌を広げると、そこから高圧電流が迸る。
「私に眠る竜の力を今ここに呼び覚まします! やああっ!」
 ほぼゼロ距離から浴びせられる稲妻。メイリンはそれに気づいた瞬間、叫びと共に全身に竜のオーラをみなぎらせた。
 そして腹部に突き刺していたドラゴンランスを抜くと、一足でその場を飛びのいて放電攻撃をやり過ごす。
「二速! ……三速!」
 一方のバーニアは、強化心臓のギアを上げ、電流の雨を掻い潜りながら尚も前進する。ギアが上がるごとに彼の体は加速し、地を蹴る衝撃はアスファルトを砕いた。
「さあ、終わりにしようか。合わせるよ」
「えっと……は、はい! 一緒にいきましょう!」
 力を溜めるように腰を下ろしたのち、竜のオーラを翼のように広げ、メイリンは宙を舞った。
 メイリンを追ってオールドスパーキーが視線を上に向けようとするも、プリシラの牽制射撃がそれを許さない。
「僕から目を逸らすなんて許さないよ。さあ決めるんだ!」
 オーラの翼を広げ、15mの巨体を誇る巨人の頭上を軽々と飛び越えたメイリン。次第にその紅きオーラがドラゴンランスに結集していく。
「やああああっ!」
 そして投擲されたドラゴンランスは、オールドスパーキーの心臓に深々と突き刺さった。
 この時、レッドバーニアの加速もトップスピードに達した。
 こうなれば彼の速度はもはや彼自身にも止められない。超加速の勢いの全てを破壊力に変えるべく、レッドバーニアは前方に跳躍し。
「赤心四速……バーニア・グランツァー!!」
 レッドバーニアの渾身の飛び回し蹴りはドラゴンランスの柄の部分に炸裂。凄まじい衝撃と共に押し出された槍が、オールドスパーキーの強化心臓を貫通した。
「ふしゅっ!? ……ぐ、ぎゅぐぐ……がああああああ!!」
 一瞬の硬直の後、オールドスパーキーの胸に空いた風穴が火柱を上げる。
 バイオ改造化の際に移植された可燃性血液に、破壊された心臓が散らす火花が引火したのだ。
 そしてオールドスパーキーは、断末魔の叫びと共に大爆発の中に消えていったのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ドン・ガルシア』

POW   :    巨怪君臨
【禁断の研究】に覚醒して【首のない巨人型バイオモンスター】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    捕食学習
自身の【変身したバイオモンスターの見えざる大口】が捕食した対象のユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、[変身したバイオモンスターの見えざる大口]から何度でも発動できる。
WIZ   :    可愛い子供達
【かつて量産した強化人間やバイオモンスター】の霊を召喚する。これは【銃火器】や【ユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は音取・金枝です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オールドスパーキーの大爆発が廃工場地帯を震わせる。
 その様子を一人の男が見下ろしていた。
「ふふん、やはりオールドスパーキーは著しく理性を失ったか」
 男が立っているのは研究施設の屋上。
 べったりと撫でつけられた銀髪のオールバックが、爆炎を反射して鈍く輝く。
 手にもったファイルに何やら書き込みながら、オールバックの男―猟書家『ドン・ガルシア』は淡々と眼下で繰り広げられていた戦いを記録していた。
「破壊衝動のまま暴れ回る様は愚民共に恐怖を与えるには及第点といったところだが、スナークの名を冠するには些か役不足だな」
 ガルシアはファイルを足元に落とす。するとファイルは奴の足元に広がる影の中へ、溶けるように吸い込まれていった。
 既にオールドスパーキーなどに興味はない。ガルシアの目に映っているのは次なる研究対象。
「しかし……君は中々に興味深い」
 おもむろに一歩踏み出す。
 ビルの淵を乗り越えて自由落下を始めたガルシアは、次の瞬間にはレッドバーニアの背後に立っていた。
「よくぞここまで成長してくれた、源藤エンジ君。かつては力を暴走させ、私の研究所を破壊してくれたのも今となればいい思い出だよ!」
「なっ!?」
 唐突に背後に現れた男に、レッドバーニアは素早く臨戦態勢をとった。
 が、さすがに激戦の後。
 トップギアの稼働で消耗した強化心臓が、これ以上の継続戦闘は無理だと悲鳴を上げている。
「一縷の可能性にかけて手放した甲斐があったというものだ。やはり人間の可能性とは素晴らしい! 君のように、理性を保ったままをトルクオーバーを使いこなしてくれる逸材を探し求めていたんだ」
「まさか……お前が? お前が俺を改造したのか!」
「ああ感動の再開は不要だよ。すぐ追加改造にとりかかろう。君こそが私の求める究極のモンスター。スナークとなるのだ!」
 ドン・ガルシアが嬉々として両手を広げる。
 瞬間、2人の足元から闇が噴き出した。

●ドン・ガルシアの特殊能力:影のポケット
 自身の影を異空間につなぎ、様々な物を出し入れできる。その大きさや量に制限はない。
 また、彼が触れた事のある人物の影は、常にドン・ガルシアの異空間とつながっている。
 これはドン・ガルシアのモルモットであったレッドバーニアも例外ではない。
 これまでの戦い、成長、その全て影を通して記録されていた。

●レッドバーニアのもう一つの能力:トルクオーバー
 源藤・エンジが体力の限界を迎えた状態で意識を失った際に現れるもう一つの人格。
 トルクオーバーならターボエンジンの能力を正しく行使し、身体の更なる強化を可能にする。
 しかし、トルクオーバーは破壊衝動の塊。敵と判別した者をあらゆる手段で完膚なきまで破壊する。
 それしか考えることが出来ない。故に、それしか出来ない。

 ……今までは。
サンディ・ノックス
頭が動く前に友の名を呼んで駆け出していた
動き出してから影の危険性に気付き指定UCを発動
悪意の俺から不可視の膝蹴りをくれてやる
連れて行かせるものか!

やるべきことは
敵はこのままエンジさんを連れ去れば目的達成な様子なので俺達を鬱陶しいと思わせ戦闘に持ち込む事
お喋りなUCは俺を捉えられるの?と敵を煽りつつ俺の指示通りに動き回って攻撃
俺はエンジさんに合流してまだ動けるか確認
戦ってくれる人が多いほうが助かるけれど無理させたくない

影に注意しながら敵を黒剣で敵を斬りワイヤーで手足を絡めUCに攻撃させ
特性を見極めていく

変身、待ってたよ
動きを見切りひたすら回避
こいつも長期戦で消耗するタイプと読んでいるけどどうかな


ディゼリーナ・ラグランツェカ
コラコラ、スナークの商標はこっち持ちなんだが?
無断使用を続けるようなら法廷闘争も辞さないヨ?
無論、裁判官&検察&陪審員みんな我だけどネ!

…しかし、ふーむ、こいつぁ守りの戦いに切り替えたほうが良さそうだね。
なーに、こっちにはディゼっちゃん自慢の鉄壁『アラモ』があるんだ、大船に乗ったつもりでいたまえよ!


レッドバーニアを援護。
敵がレッドバーニアに迫ったらアラモを割り込ませ、【盾受け+シールドバッシュ】で吹き飛ばす。

よろけたら我も接近してブレードによる【部位破壊】で足を狙おう。動かれると狙い撃ちし辛いしネ。

レッドバーニアの安全を確保できたらG・D・Mを発動して一気に炎の【属性攻撃】ビームで【焼却】だ!


支倉・新兵
捕食したUCのコピー、影が異空間に繋がっていて触れられると取込まれる可能性もある…注意点はこんな所か
…とは言え俺の跳弾は隠れて長距離狙撃する為の技術
仮にコピーされても姿を晒して戦うあいつじゃメリットを生かせないし…そもそも死角から一方的に撃ち抜くんだ、悪いが捕食させるつもりもない
影も俺のスタイルなら触れられる事は気にしなくていい…というか触れられた段階で既に詰んでるからね

それにしても…全て自分の掌の中みたいな言い草だけれどその実まるで分かってないな
トルクオーバーを「使いこなしている」…影から全て見た上でその台詞が出る時点でもうあんたは「彼等」を見誤ってる
…予言しようか、それがあんたの命取りだ


蛇塚・レモン
真の姿

エンジ君をスナークなんかにさせないよっ!
あたいが、あたい達が食い止めてみせるからっ!
蛇神様、あの子達の為にも一緒に踊って!

空中浮遊+空中戦を継続しUC発動
エンジ君の体力を回復させつつ
敵を衝撃波+マヒ攻撃+念動力+呪詛+捕縛で攻撃&足止め

黄金霊波動の斥力(念動力+オーラ防御+激痛耐性)を最大展開
神烏の杯の結界で攻撃をジャストガード+盾受け+継戦能力+受け流し

敵の影にヤミちゃんが闇に紛れる
影の異空間からヤミちゃんが敵を不意打ち+だまし討ち+精神攻撃!
恐怖を与えて体勢を崩したい

最後は踊りながらライムの魂魄を宿した蛇腹剣で
神罰火属性のなぎ払い+焼却+斬撃の乱れ撃ち
エンジ君と蛇神様の三重殺だ~っ!



 レッドバーニアとドン・ガルシアの足元から闇が吹き上がる。
 『影のポケット』による強制収容能力が発動しようとしていた。
 たった今まで激戦を繰り広げていたバーニアでは、回避することは不可能だ。
「エンジさん!」
 その光景を目にした刹那、サンディ・ノックスの脳裏から冷静の二文字が消え失せた。
 しかし瞬時に吹き上がる闇の危険性を感じ取ったサンディは、駆け出しそうになった足を寸での所で押さえつける。
 代わりに発動したのはユーベルコード【招集・赤夜(ショウシュウ・セキヤ)】。
 サンディは己の内に巣食う悪意を、不可視の分身として分離した。
「連れて行かせるものか!」「俺を捕らえられるかな?」
 駆け出した赤夜の分身は、恐れることなく噴きあがる影のカーテンに飛び込む。そしてドン・ガルシアの顎に膝蹴りを叩き込んだ。
「ぐふっ! くっくっく……やはり来たようだね、猟兵」
 意識外からの攻撃にドン・ガルシアがよろめき、影のカーテンが揺らぐ。その隙に、レッドバーニアは残る力を振り絞って飛びのいた。
「エンジさん、こっちに!」
「その子はスナークに進化する権利を得たのだ。私のファミリーに手を出さないでもらいたいね!」
「コラコラ、スナークの商標はこっち持ちなんだが?」
 ドン・ガルシアが伸ばした腕を、駆け付けたディゼリーナ・ラグランツェカの自立型防壁【アラモ】が払いのけた。生身の人間(見た目は)を相手に容赦のない鋼鉄のシールドバッシュ。
 グシャリと鈍い音が響いた。
「無断使用を続けるようなら法廷闘争も辞さないヨ? 無論、裁判官&検察&陪審員みんな我だけどネ! ……って、あらら?」
「んん? 何か言ったかな? ああ、そういえば猟兵はスナークの御名に畏怖を集めさせないよう、自分たちを正義の集団スナークと名乗っているんだったか」
 ガルシアの右手に握られたアラモに、亀裂が広がっていく。
 その手はつい数瞬前までより一回りも二回りも大きく、黒く、硬く変容していた。
「スナークとは定まった形なき化け物。救いなき存在」
 グシャリ、グシャリ、と全身から異様な音を立て、肥大化していくドン・ガルシア。
 その姿はオールドスパーキーにも負けず劣らずの巨体。異なる点を挙げるとすれば、顔があるはずの部位が存在せず、薄ぼんやりとした影が首の断面から濛々とにじみ出ているところだろうか。
「そう、この私のように!」
 自らに施した禁断のスナーク化手術の力を開放し巨人化したドン・ガルシアは、アラモを投げ捨て、高くいなないた。
「巨人……俺と同じ、化け物……」
 そんなおぞましい姿を目にしたレッドバーニアは逃げることも立ち向かうこともできず、茫然と立ち竦む。
 奴の手によって、自分も一度は改造手術を受けている。ならば、いずれは同じ化け物になり果ててしまうのではないか。
 そんな言い知れない恐怖がレッドバーニアの―源藤エンジの胸中に渦巻いていたのだ。
 とその時、戦場に清らかな鈴の音が響き渡った。
「エンジ君をスナークなんかにさせないよっ!」
 威勢のいい声と共に空から舞い降りた金色。
 額に開いた第三の眼を爛々(らんらん)と輝かせながら、蛇塚・レモンは二振りの剣を手に新たな神楽舞を演じた。
「あたいが、あたい達が食い止めてみせるからっ! 蛇神様、あの子達の為にも一緒に踊って!」
【戦闘召喚使役術式・踊れ、原初創世と混沌の蛇女神よ】。
 神楽舞の軌跡は邪を払う衝撃波を生み出し、エンジに迫るドン・ガルシアを弾き飛ばす。
 また同時に、傷を癒す祈りの波動が仲間たちに降り注いだ。これにより先ほどの戦いで酷使していたエンジの強化心臓(ターボエンジン)が正常な鼓動を刻み始める。
「間に合ってよかった。走れそうかな?」
 そこにサンディが駆け寄り、エンジの手を引いた。レモンのおかげでガス欠状態からは脱したようだ。
「そっちは任せたよ。……しかし、ふーむ、こいつぁ守りの戦いに切り替えたほうが良さそうだね」
 一方、ひしゃげた盾を手元に呼び戻したディゼリーナ。
 自慢の鉄壁も、猟書家を相手取るには過信は出来なさそうだ。
「でもこれで諦めないのがディゼっちゃんの良いところ! 懲りないって言わないでね!」
 再度アラモを自身の前に浮遊させ、サイバネアームから刃を展開。シールドバッシュからの斬撃を試みる。
「ちぃっ! 懲りない奴らめ」
 アラモの突撃を受け止めたドン・ガルシアが、影から飛び出してきたディゼリーナ(言わないでって言ったのに!)を腕で払いのける。
 しかしレモンが舞いに乗せて絶えず放っている呪詛により、感覚がマヒしていたのか。
 払いのけた腕には一筋の斬撃痕が刻まれていた。
『ディゼリーナさん。その盾、左斜め下に30度傾けて』
 そして、どこからともなく飛来した弾丸がアラモに跳弾し、ドン・ガルシアの真新しい傷口を抉った。
 これにはドン・ガルシアも堪らず絶叫を上げる。
「なになに!? 急に言われても我分かんないよ」
『そう言いつつやってるよね?』
 無線機から響く声音は支倉・新兵のものだ。
 先の戦いから狙撃ポイントを変えていたため、参戦に少しばかり時間がかかってしまった。しかしそのお陰で、敵を全方位から【跳弾狙撃(リコシェスナイプ)】出来る位置取りを見つけることができたようだ。
 ここからは狙撃猟兵の独壇場……と、事は簡単には進まない。
「今のはデータにある。以前レッドバーニアと共闘した狙撃手だな」
言いつつ、自らの足元の影に手を伸ばすドン・ガルシア。
 そして何かを掴み上げるようなジェスチャーをしたのち、ドン・ガルシアは手に握った不可視のそれを、真新しい傷口に突き刺した。
「ぐうっ……ふふ、不完全ながら覚えたぞ」
 傷口をこじ開けて取り出したのは、新兵が撃ったライフル弾。
 それを握りしめると、ドン・ガルシアは影の中からライフルを取り出し、おもむろに発砲する。
 その先で2、3度火花が上がり。
「ぐあっ!」
 目に見えない何者かが苦悶の声を上げた。
「最初に私の顔を蹴り上げてくれた透明人間君。もちろん忘れてはいないよ。今まで虎視眈々と隙を狙っていたようだが……」
 ドン・ガルシアは敵のユーベルコードをコピーする技を有している。それにより新兵の跳弾射撃を模倣し、サンディが残していった透明人間―赤夜を破壊したのだ。
(参ったな……あの程度の跳弾なら俺がいる位置までは届かないだろうけど、皆は十分射程圏内だ。それに、これ以上撃ち込んで完璧に跳弾射撃をコピーされでもしたら)
 まだこちらの居場所はバレていないとはいえ、引き金にかけた指は躊躇に震える。
 自身の狙撃の腕前を信じているからこそ、同じ能力を持った相手との狙撃戦がいかに危険なものか新兵は理解していた。
「そして、ダンサーも鬱陶しいね。オーディエンスをくれてやろう」
 次いでドン・ガルシアが影の中から引きあげたのは半実体の群れ。
 苦し気な顔を浮かべるそいつらは、かつての実験体たち。そのなれの果てだ。
 歪な改造実験により異形と化した亡霊達は、レモンの生命の輝きに引き寄せられるように宙に浮かび上がり、殺到する。
「死してなお利用するなんてっ……絶対に許せないよっ」
「心外だね。ファミリーは宝さ。だからこうして、いつまでも大切にしているんだよ」
 怪人に変貌したドン・ガルシアに顔は存在しないが、奴は今、きっと心底愉快そうな笑みを浮かべているのだろう。
 瞬間、レモンの怒りが頂点に達した。
「ふっ……ざけるなああっ!」
 黄金霊波動の斥力が押し寄せる亡霊達を弾き飛ばした。
 しかし数が尋常ではない。何度弾き飛ばしても、巨人の影から亡霊たちが次々と湧き出てくる。

 一方少し離れた物陰で、サンディは頬に汗を伝わせていた。
「……これはまずいね」
 赤夜による奇襲が失敗し、レモンも新兵も動きが封じられてしまった。
 今自由に動けるのはディゼリーナだけだが、彼女だけで相手取るには、あの猟書家は強すぎる。
「俺なら……いけるよ」
 と、横で立ち上がったのはエンジ。
 口元では笑みを浮かべてはいるが、足元は覚束ない。自力で走れる程度には回復したが、それだけだ。
「だめだよ、エンジさん! 俺は君に死んでほしくない」
 思わずエンジの腕を掴んでいた。
 自分の喉から出たものだと信じられない程、その声は震えていた。
「死んでほしくないんだよ。だって、君はこの世界でできた、大切な友だから」
「サンディさん……」
『それは俺だって同じさ』
 エンジの無線機から新兵の声が響いた。
『だけど、今この状況をひっくり返せる力を俺は一つしか知らない。あの男は全て自分の掌の中みたいな言い草だけれど、その実まるで分かってないんだ。この世界のヒーローの……レッドバーニアと“あいつ”の本当の力を』
 新兵の声は淡々としているようでいて、どこか期待の色をはらんでいた。
 かつて見た圧倒的な暴力。それはあの首なし巨人の異能など物の数ではないと、確信を持たせてくれるほどに凄まじい物だったから。
「まさか、またアレを……」
「俺は元からそのつもりだよ、サンディさん。だから俺が疲れきってる今しかないんだ。それに」
 エンジはニッカリと笑って見せた。
「命張る覚悟ならもうできてる。貴方たちの戦う姿を見たあの時から」
 その笑顔にサンディは一瞬だけ口元を戦慄かせ。
「本当なら無理はさせたくなかったんだけど……一緒に戦おうエンジさん。いや、レッドバーニア!」
 力強い笑みを返した。

 覚悟を決めた時、ヒーローは猟兵に勝るとも劣らない戦士になる。
 無線機越しに聞こえた決意に、新兵はかつてこの世界で繰り広げた戦いを想起していた。
「トルクオーバーを『使いこなしている』……影から全て見た上でその台詞が出る時点でもうあんたは『彼等』を見誤ってる」
 そして勇気は伝播する。
 再び力が戻った指先をトリガーに添えながら、新兵は無線機に語りかけていた。
 レッドバーニアの影を通じて、ドン・ガルシアはさっきの3人の会話を聞いていたかもしれない。それを見越してのことだ。
「……予言しようか、それがあんたの命取りだ」
 スコープ越しに覗いた戦場に、新たに2つの影が現れた。
「遅いよ2人とも! 我一人でもなんとかなったけどね!」
「そうは見えないんだけど?」
「まあまあ。でも、美味しいところは皆で分け合うのもいいでしょ?」
 傷だらけのディゼリーナに怪訝そうな目を向けるレッドバーニアと、それを諫めるサンディ。
 先ほども見たような光景だと思ったが、それ故にこれこそが自分たちの必勝パターンであると感じられた。
「じゃあ、行くか!」
「生きて帰ってきてよ?」
「当然!」
 最後まで聞きもせず、レッドバーニアは駆け出した。
 当然ここで死んでやるつもりはない。大事な相棒がもう一人できたのだから。
「オーバーフロー! バーニア・ストライク!」
「今更そんな跳び蹴りが通じるとでも?」
 飛び掛かるレッドバーニア。ドン・ガルシアは左手を持ち上げ、それを事も無げに叩き潰す。
「おおっと、殺してはまずいのだった。君も私のファミリーなのだから……あ?」
 その時、ドン・ガルシアの左手が赤く胎動した。
 否。
 真っ赤に燃え上がり、はじけ飛んだのだ。
「ウゥオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
 拳だった物の肉片を振り払いながら、レッドバーニアが空に吠える。
 その間にも体は急速に膨れ上がっていき、コスチュームが内側から弾け飛ぶ。上半身に隆々とたぎる筋肉は真っ赤に変色し、爆発寸前のダイナマイトを思わせた。
「トォォルクゥゥオォォーバァアアアー!!」
 そして彼―トルク・オーバーは、自らの名を晴天の下で、高らかに叫びあげた。
 天井知らずに上昇していく体温が陽炎を立ち昇らせる。
 その痛みと熱、そして何より驚愕に身を強張らせ、ドン・ガルシアは大きくたじろいだ。
「トルク・オーバー!? まさか……源藤・エンジに取り込まれたのではなかったのか!」
「あの暴れん坊が消えるわけないよ。むしろ、今までずっと我慢してレッドバーニアに力を貸してくれていたんだ」
『観察してたんだろ? なんで気付かないのかな?』
 動揺したガルシアの隙を見逃すサンディではない。素早くワイヤーを駆け巡らせ、その脚を縛り上げる。
 同時にその周囲でアスファルトが爆ぜ、四方から跳弾が叩き込まれた。
「エンジ! イジメた! ユルサナイ!!」
 トルク・オーバーの体長は5mほど。眼前に立つドン・ガルシアはそれを優に超える怪物。
 にも関わらず、トルク・オーバーは剛拳一撃。真正面からドン・ガルシアを吹き飛ばしてみせた。
「はぁ!? なにあれ! あれがバーニア君なの?」
 ディゼリーナが二度見ならぬ三度見をかます。
 トルク・オーバーの事は資料で知ってはいたが、現物を見るとその凄まじさは桁違いだ。
 だがこれで前衛役は揃ったのでこれ幸い。と、ディゼリーナは一歩退き、鎧からビーム砲『グランダルメ』を展開する。
 滅殺モード機動! 充填するのは熱エネルギー。
「焼却!!」
 反動度外視で撃ちだされた攻撃力重視の焼却ビームは、吹き飛んだドン・ガルシアを包みこみ、その身を焦熱地獄に叩き落した。
 そして、この攻撃は思わぬ副産物を生み出すこととなる。
「サーンキュッ! 熱光線の光が有効だったんだねっ! おかげでこっちも片付いたよっ!」
 最後の亡霊たちを薙ぎ払ったレモンが勢いよく飛来する。
 影のポケットが光によって掻き消されたことで、そこから湧き出していた亡霊の供給源が失われたのだ。
「やっとあんたに天罰を食らわせられるよ! 皆の無念を思い知れっ!!」
 絶えず戦い続けていたレモンであったが、彼女はまだ暴れたりないといった様子で剣を振り上げる。剣先に神罰の炎が灯れば、剣先は蛇の如くしなり、黒い巨人を切り刻んだ。
「ぎぃいいい!! まだだ。まだだ猟兵ども! トルク・オーバー! お前を生み出したのは私だぞ! 考え直せ、私はお前のファミリ……」
「オレ! カゾク! エンジ!」
 炎と斬撃の嵐から逃れようと藻掻き、トルク・オーバーにうそぶく。
 しかしその口を砲弾の如き両拳が塞いだ。
「ヒトリジャナイ! オレ! モットツヨイ!」
 言葉と共に拳は熱さを増しながら、何度も何度も叩き込まれる。
 気づけば、空気の摩擦によりトルク・オーバーの拳は燃え上がっていた。
「ソレニ、それに……」
「最後行くよ! いい?」
『援護は任せろ。撃ち抜いてやるよ、でくの坊』
「我もまーぜてっ! もういっちょ、ぶっ放すぞ!」
「エンジ君とあたい達の五重殺だ~っ!」
「俺達には! 大事なナカマデキタ! だから! モットモットツヨイ!!」
 黒き剣撃、跳弾射撃、熱線放射、神罰の舞、そして友を信じる2つの炎拳。
 渾身の協撃はドン・ガルシアを切り裂き、撃ち抜き、燃やし尽くし、そして遥か彼方まで吹き飛ばす。
 そしてヒーローズアースの青空に、宿怨を吹き飛ばすように、新たな絆を祝福するかのように、盛大な爆発が起こるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月18日


挿絵イラスト