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灯りをつけたら消えちゃった、お花をあげたら枯れちゃった

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●五人囃子も死んじゃった
 一年中幻朧桜の咲き乱れるサクラミラージュ。だが、桜以外の花が存在しないわけではない。
「桃が、咲いている……」
 その名通りの薄桃色の花びらは、桜と似ているが花びらの先端がとがり割れ目がない。その桃の花が舞い散る道を、一人の少女が歩く。
「私、も……」
 彼女が纏うのは帝都桜學府の制服。その見た目通り、彼女は桜學府の學徒兵……だったもの。
「私も、桃の花を……いや、そんな、ことをしている、場合では……」
 少女はふらふらと行く。当て所もない、ただ空の器となった『使命』だけを抱えて。

●今日は悲しいひな祭り
「みんな、羅針盤戦争お疲れ様だよー!」
 グリモア猟兵ミルケン・ピーチ(魔法少女ミルケンピーチ・f15261)の憑依した花園・ぺしぇが元気よく言う。
「でもね、やっぱり他の世界でもオブリビオンは止まらないの。今日行って欲しいのはサクラミラージュなんだけど、そこに傷ついたボロボロの影朧がいるから、その子の所に行って欲しいの」
 その影朧にとどめを刺してこいということか。そう言うと、ミルケンは首を横に振った。
「あのね、この子は元々帝都桜學府の學徒兵だったんだけど、戦いの中で死んじゃって自分が影朧になっちゃったの。それで今はとにかく『敵と戦わなきゃ』って言うことしか覚えてない状態で町をふらふらしてるんだけど、影朧としてもすごく弱い状態で、多分放っておいても消えちゃうんじゃないかな」
 ならば何をしに行けと言うのか。
「この子は學徒兵の使命として女の子らしさとかを封印してたんだけど、やっぱり憧れがあるみたいなんだ。だから、この子と一緒にひな祭りをしてきて欲しいの」
 そう言えば今日は三月三日、桃の節句のひな祭りだ。
「この子は今桃の花が咲く町の中を歩いてるんだけど、もしかしたら何かの拍子に周りの人を敵とみなして襲い掛かっちゃうかもしれないの。だから、まずはこの子の最後の力を奪うためにも一度やっつけなきゃいけないんだ」
 とはいえすでに死にかけの影朧。はっきり言って強くはない。つい先日まで七大海嘯と渡り合っていた猟兵からすれば赤子の手をひねる様なものだろう。
「そうしたら影朧としての力も吐き出しきって無害な子になるの。それでこの子は町を通り過ぎてそのはずれにあるお屋敷の廃墟にいこうとするから、今度はこの子を護衛しながらそこまで一緒に行って欲しいの」
 直前まで猟兵と戦っていた影朧だ。町の者からすれば恐怖の対象だろう。彼女が過剰に攻撃されたり、あるいは町にあらぬ騒動が起きぬよう、彼女を隠したり町の者に事情を説明するなどしながら彼女の道行きを妨げないようにしてほしいということだ。
「力を失くしたおかげで意識が大分はっきりしてるから、聞きたいことがあるならこの途中で聞くといいかもね。それでお屋敷についたら、そこにお雛様が用意してあるから、この子と一緒にひな祭りをしてあげてね。もちろん、猟兵の皆同士でお祭りしてもいいよ!」
 一応事前に先回りし、ある程度の掃除と準備はミルケン側でしてあるらしい。もちろん持ち込みも歓迎だが、依頼の性質からして馬鹿騒ぎよりは静かに楽しむ祭りになるだろう。
「お祭りが終われば、この子はそのまま消えちゃうよ。転生できるかは分からないけど、もう普通の女の子に戻って戦わなくていいってことだけは教えてあげて欲しいんだ。それがこの子の『執着』だからね」
 帝都桜學府の目的は影朧の『殲滅』ではなく『救済』である。彼女もかつては目指したその目的に沿うためにも、最後の安らぎを彼女に与えて欲しい。
「女の子のお祭りの日に悲しいまま消えちゃうのは嫌だよね。だからお願い、最後に楽しいひな祭りをしてあげてきて。よろしくねー!」
 そう言ってミルケンは、サクラミラージュの桃の町へと猟兵を送り出すのであった。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。羅針盤戦争お疲れ様でした。
 今回はサクラミラージュにて、消えかけの影朧を救済していただきます。

 第一章では『阿傍學徒兵』との戦い。彼女は『使命に従い敵を倒す』という意思の元襲い掛かってきますが、その使命が何だったのかは既に忘れています。ボス戦ではありますが、死にかけなためはっきり言って弱いです。その為心情や語り掛けにプレイングを割く余裕は十分ありますので、やりたいようにやってください。オーバーキルは非推奨です。

 第二章では力を失った彼女がどこかへ向かおうとするので、周囲を宥めつつその護衛をしてください。事情を知らない町の人間からすれば彼女は恐ろしい影朧なので、詳しい事情を説明する、彼女の姿を隠すなどして過度なパニックが起きないようにしてください。また、彼女は落ち着きや記憶を大分取り戻しているため、会話をすることで落ち着かせるとともに彼女自身の情報を聞き出すこともできます。質問があるならここがチャンス。

 第三章では辿り着いた先の廃墟となったお屋敷でひな祭りを行います。多少の準備は事前に整えられていますが、自分で何かしたい方は持ち込みもOK。雛人形はこの屋敷にあったものが飾られています。お雛様はそこはかとなく彼女に似ているような……?
 お祭りではありますが、はっちゃけ度は控えめ。明るく楽しむのは歓迎ですがハメを外しすぎないように。
 またこの章に限りお声がけいただければミルケンもご同行します。ボディのご指名も可。ぺしぇ、桃姫はともかくアカリはひな祭りがよく分かっていませんが、ミルケンが知識を補填します。

 基本的にふんわりかつ切なめな感じになります。戦いで疲れた心を休めてください。
 それでは、桃の花薫るプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『阿傍學徒兵』

POW   :    サクラ散ル
【軍刀が転生を拒む意思が具現化した桜の魔性】に変形し、自身の【使命感と転生を拒む意思以外のすべて】を代償に、自身の【攻撃範囲と射程距離、高速再生能力】を強化する。
SPD   :    サクラ咲ク
【日々の訓練で鍛え抜かれた四式軍刀の斬撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【軍刀から伸びる桜の枝々による拘束と刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    サクラ舞ウ
【帝都桜學府式光線銃乙号の銃口】を向けた対象に、【目にも止まらぬ早撃ちから放つ高出力の霊力】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は煙草・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 桃の花咲く町の中、ふらふらと彷徨う學徒兵。
「私は、戦わねば……使命を、果たさねば……」
 口から洩れるは空虚な言葉。誰と戦うのか、使命とは何か、それすら忘れ去られ、ただ目的を失くして手段だけが独り歩きしている悲しき暴走。
 その彼女の前に現れた者。それを見た途端、彼女の目に敵意が宿る。
「敵、倒さねば……私は、敵を……!」
 オブリビオンは本能的に猟兵を敵と感じ取ることができる。それに従い目の前の相手を『敵』と断じた彼女は、それを討つべく桃色に光る刀を抜き、古めかしい銃を手に取った。
「私は、使命を、果たす……それまで、桃の花は、お預けだ……!」
 猟兵よ、既になき使命に縛られる彼女を解放するため、その最後の束縛を断ち切ってやれ!
死絡・送
アドリブOK 共闘OK
ミルケンさんから依頼を受けて仲間達と参加。
「わかった、助けよう」
と言い出撃。
対象は凶悪なオブリビオンではないし、この世界では転生で救える可能性がある。
ならばこの世界の為に献身した対象を救おうと動く。
此方からは攻撃せず継戦能力とオーラ防御で、対象の攻撃を受ける。
「お前の敵はここだ、全力で来い!」
と対象に叫び誘惑で引き付けを狙う。
不覚をとらぬように機体を操って耐え、街に被害を出さないように
相手のヘイトを自分へと向けさせようとする。
自分が的になって相手の力を出し切らせる手を試す。


木霊・ウタ
心情
可哀そうに
余程心残りがあるんだろうな
ピーチの言うとおりだ
転生させてやりたいぜ

声かけ
何の為に戦う?
武器を振るうのは何の為だ?
守りたいものがあるんだろ?
それを思い出すんだ

俺達が戦う必要はないぜ

戦闘
ここは大剣よりはこっちだよな

ギターを爪弾く
雛祭りっぽい曲
しっとりと落ち着いた旋律を静かに響かせる

守りたかった人たちを思い起こさせたり
何もないありふれた日常への憧れを揺り起こしたりして
戦意を低下させたり
穏やかな気持ちを取り戻させるぜ

邪魔する桜の魔性に対しては
旋律が炎を生み
つまり音=空気の振動に獄炎を織り込んで
指向性の地獄のメロディとして
魔性を焼却し灰に

事後
引き続き曲を奏で心へ呼びかけ続ける



 なぜそうするのかの理由も忘れ、ただ目の前に立った相手に刀を向ける學徒兵であった少女。人としての命も失い、影朧としても最早消えかけているその姿は、驚異よりも痛々しさすら感じさせる。
「対象は凶悪なオブリビオンではないし、この世界では転生で救える可能性がある。
ならばこの世界の為に献身した対象を救おう」
「可哀そうに、余程心残りがあるんだろうな。ピーチの言うとおりだ、転生させてやりたいぜ」
 死絡・送(ノーブルバット・f00528)と木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、依頼を受ける際グリモア猟兵の言っていたことを改めて思い出し、彼女を『救う』ために戦いを挑む。
 だが、自分の意思さえ既に曖昧になりかけている彼女に二人の意図を察することなどできない。目の前に現れた相手をただ敵と思い、その刀を向けた。
 いきなり話して通じないのは分かっている。ならばまずは彼女の衝動を一度発散させるべきだ。そう考えた送は、『ジガンソーレ』の機体を彼女の前に曝け出し、その前に堂々と立った。
「お前の敵はここだ、全力で来い!」
 その声に、桃色に光る刀を構え切りかかる學徒兵。
「敵……倒す!」
 かつては鋭かったであろうその斬撃は、ただ闇雲に振るわれ精彩とはまるで無縁なただの振り回しと化していた。防御を固めるため機体を通しオーラを展開していたが、その必要もないほどに弱々しい切りつけを送はただ機体に受ける。ただ、そのいい加減さ故外に攻撃が漏れないよう機体を操りつつ、送は自ら攻撃することはなく一心に彼女の剣をその身に受け続けていた。
「ここは大剣よりはこっちだよな」
 その姿にウタもまた自身の剣を抜かず、ギターを構えそれを爪弾いた。
「何の為に戦う? 武器を振るうのは何の為だ? 守りたいものがあるんだろ? それを思い出すんだ」
 歌声に乗せ彼女へ送るメッセージ。それを乗せるのは、雛祭りを思わせるしっとりと落ち着いた旋律。それ静かに響かせて、狂ったように剣を振るう彼女へ届ける。
 守りたかった人がいたはず。何もない日常に憧れたはず。そして今はもう戦意を奮い立たせる必要はない。穏やかな心を取り戻し、休んでいい時なのだ。
 その歌が耳ではなく心に届いたか、彼女の剣が少しスピードを鈍らせた。だが、まるで彼女が安らぐのを拒むかのように、その剣に絡みついた桜の枝が伸び、その魔性を加速させた。
「ぬっ……!」
 送は一層切りつけが激しくなったことを感じ、彼女の意思が桜の魔性に飲まれつつあることを感じた。それでも、彼は自ら殴り返すことはしない。あくまで自分は彼女の意思を受け止め、吐き出しきらせるためにここに立つのだ。戦って倒すことは本意ではないし、彼女のためにも決してしてはならない。
 そしてそれを妨げる悪しきものを散らすのは、暴力ではなく旋律。ウタは旋律に乗せ自らの体から放たれる炎を放ち、刀を覆う桜へと差し向けた。
 常の使い方ではない故通常のオブリビオン相手には到底通じない僅かな炎しか届かないが、今に限ればそれでいい。
 炎は彼女の持つ刀、それに纏わりつく桜の魔性にのみ取り付き、その花びらを灰へと変えていった。
「う、あ……ああああああああっ!」
 空虚なる使命感と転生を拒む意思以外の全てを喰らい成長するその桜。それを焼き払うことで、彼女が本当に望むもの、本当にあるべき姿を思い出してくれれば。
 刀を覆う桜が燃え落ち、再び桃色の刃だけが振るわれる。その刃は何度もジガンソーレの機体に打ち付けられ、傷の代わりにそこに乗せられた悲しい思いを彼に刻み込んだ。送はただ、黙ってそれを受け入れ続ける。
 やがて、精魂尽きたかとでもいうように彼女は崩れ落ち、刀を杖のように地に立てながら荒く息をついた。
「はっ……あっ……はぁっ……」
 一度、息が切れるまで全部吐いた。そう言わんばかりの疲弊した姿に、送はそっと機体を下がらせる。
 そして顔を伏せ方を上下させる彼女を、ウタの奏でる穏やかな歌がいたわるように優しく包みこみのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
『そういう任務』を受けただけですし、特に感慨等は?

さて、まずは無力化ですねぇ。
了解致しましたぁ。

『FMS』によるバリアを展開、[結界術]で補強して相手の攻撃を防ぎますねぇ。
同時に『FSS』で囲う様にして『軍刀』を扱える『角度』を制限し『読み易い状態』を作りますぅ。
そして[カウンター]の【剣刃一閃】で[部位破壊]、『軍刀の刃』を狙いましょう。
『軍刀』自体が『彼女』の力を吸収している様ですから、その『破壊』と『再生』を利用すれば、直接彼女を傷つけることなくダメージを蓄積させられますぅ。
後は、必要に応じて『FRS』による牽制も合わせ、『再生』が出来なくなるまで繰返しますねぇ。



 二人の男の献身により、妄念を吐き出しつつある少女。だが、世界の破壊が行動の根底にある影朧……オブリビオンである以上、その破壊衝動は完全に消え去ることはない。故に、どうしても一度は戦って倒し、その意思を折る必要があるかもしれない。それを示すように、學徒兵は崩れた膝を強引に立たせ、再度剣を構えていた。
「『そういう任務』を受けただけですし、特に感慨等は?」
 だからこそ、『スイッチ』の入った夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の冷徹なこの対応は、それを成すに最適なものであった。
「さて、まずは無力化ですねぇ。了解致しましたぁ」
 無論、だからと言って殺すつもりはない。任務の内容が彼女の無力化と解放なのだからそうするまでと、円盤『FMS』で彼女の周りを囲み、さらに結界をその間に張って彼女を外へと出さないように完全な防壁を作る。
「また……敵か……!」
 再び軍刀が光り、その刀身を桜の魔性が覆う。それはつまり桜に彼女の全てが吸われているということであり、彼女の力はそこに集約されていると言ってもいい。その動きを制限すべく、浮遊盾『FSS』が刀を囲うように纏わりついた。
「くっ……」
 學徒兵は闇雲に刀を振るいそれに切りつけるが、少し力のこもった武器や兵器すら傷つけられないのは先の戦いで証明されている。さらに徐々に囲みを狭めていくFSSに抑え込まれ、彼女はその刀を振れる範囲すら制限されて行った。
「う……ああああああああっ!」
気合の……あるいは自棄を起こしたような声を上げ、ほとんど唯一となった縦振りで切りかかる學徒兵。それをるこるは、自らの刀『霊刀『純夢天』』を振るい迎え撃った。
 がきん、と言う音と共に、【剣刃一閃】の斬撃が桜に包まれた桃色の刃を切り落とした。地に刺さった刀身は桜の花びらと化し、風に吹き散らされて消える。
「う……まだ……立たない、と……」
 短くなった刃を握りしめる學徒兵。すると、それに呼応するように折れた部分から桜の枝が伸び、それが凝固して新たな刀身となった。それと共に、元より悪かった彼女の顔色が一層悪くなる。
「やはり……」
 軍刀は學徒兵の力を吸い、己の力に変えている。ならば刀を折り続ければ、何度でも刀は力を吸い、彼女は疲弊していくだろう。
 残酷なようだが、傷つけずに倒すのが役目とあれば疲れ果ててもらうしかない。そう考え、るこるは再生したばかりの刀に再度【剣刃一閃】を叩きつけた。
 そのまま同じように刀は折れ、再び持ち主の命を吸って再生する。
「……あぁ……あぁ……」
 牽制のため配置していた砲台も無視して彼女は切りかかるが、その都度徐々に小さくなっていく呻き声。それが聞こえなくなるまで、るこるはただ無言で何度でも桃色の刃を折り続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・スラクシナ
※エルーゼ、ミラー、華澄と行動
絡み・アドリブOK

こういう時に必要なあいつがいないのはキツイがなんとかやるしかない。
やりすぎない様に気を付けながら戦うが、念のために油断はしない様にしなければ。
獣の盟約を抜き、相手と対峙する。
あの刀を破壊できれば、なんとかなる可能性もあるならそちらを狙う。
相手の攻撃をおびき寄せの要領で誘い込み、ダッシュで回り込んで刀を狙う。
武器を無力化できればあとはなんとかなるだろう。


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄と行動
絡み・アドリブOK

彼女を止めるためにもまずは無力化をしなければ。
相手の攻撃を分散させるのと華澄さんを護るという二つの役割を行います。
武器に関してはアリスとエルーゼちゃんに任せて、私は集団戦術での指揮を。
あくまで無力化が狙いなので武器を無効化できればあとは華澄さんに任せるだけですね。


エルーゼ・フーシェン
※アリス、ミラー、華澄と行動
絡み・アドリブOK

さて、相手を倒さない様に気を付けながら対処しないと。
剣を形成してなんとか無力化させないと。
なぎ払いや二回攻撃で攻めながら相手の隙を狙う。
フェイントで相手の攻撃を誘い込むのもありかもしれないわね。
カウンターを繰り出したり、ダンスを応用した剣舞なんかも繰り出して。
無力化であって倒すことじゃないから気をつけないと。


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラーと行動
絡み・アドリブOK

あの人を縛る役割から解放するために頑張りましょう!
私も後方から援護を行いながら、皆さんをアシストします。
歌で手助けは初めてですけど、歌唱とかでなんとかなるかなと。
第六感で危険を予知したりして攻撃の回避に。
届けばきっと変わると思います。



 吐き出しても、折られても、まだふらふらと立ち上がる學徒兵。あるいはこの辛抱強さこそが彼女を執着へ縛り付けるものであり、戦いの中彼女を死へと追いやってしまったものなのかもしれない。
 だがそれも、いよいよ終わりが近いのかもしれない。彼女を縛る最後の鎖を断ち切るべく、猟兵たちはその前に立った。
「あの人を縛る役割から解放するために頑張りましょう!」
 真っ先にそう声を上げたのは藤宮・華澄(戦医師・f17614)。このサクラミラージュに舞い散る桜や、今の季節だから咲く桃の花と同じ色の髪を持った彼女が、桃色の花吹雪の中に立つ。
 もちろん熱意だけでどうにかなるほど簡単な問題ではない。その為にはどうしても一戦交え、彼女の無為に振るわれる最後の力を奪わなければならないのだ。
「彼女を止めるためにもまずは無力化をしなければ」
 ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)もそれは十分理解しており、戦闘面に置いての作戦を考案し成すべきことを̪確かに見定める。
 無論そのためにはこの場の全員が全力を尽くすことに異論はない。だが、アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)はどうしてもこの場にいない者の事を考え、その能力をどこかで当てにしてしまう。
「こういう時に必要なあいつがいないのはキツイがなんとかやるしかない」
 多数の人格を持ち、それらを実体ある形で召喚できる男。その中には危険極まる者も存在する一方、僧侶などの聖職者のように人の話を聞いたり、あるいはその頑健な身をもって相手の全てを受け止められる者など、ただ敵を倒せばいいわけではない場面にこそ本領を発揮する者も大勢いた。だが、いない者を頼っても何も始まらない。
「さて、相手を倒さない様に気を付けながら対処しないと」
 エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)も、この場にいない者を惜しむよりも自らの手で彼女を解放すべく、宝石のついた片刃の剣を構えて彼女に向かい合った。
「まだ……私……使命を……」
 切れ切れに言いながら、何度目かの桃色の刃を作りそこに桜を纏わせる學徒兵。もとより使命感だけで戦っている状態なのだろうが、その使命感こそが彼女が巣食われることを妨げる枷なのだ。それを断ち切るべく、エルーゼは彼女へと切りかかる。
 剣をなぎ払い、素早く複数回の突きを放ち、相手の隙を窺って攻め込もうとするエルーゼ。だが、そもそも既に力どころか命すら失いかけている存在。窺うまでもなく隙だらけであり、もし本気で倒しに行けば一瞬で片が着いてしまうことは明らかであった。
 無論それをしに来たわけではないし、そうならないように細心の注意を払う必要がある。故にアリスもまた、狙うべき対象を相手の体ではなく手に持ったものだと見定めていた。
「あの刀を破壊できれば、なんとかなる可能性もあるか」
 『獣の盟約』を構え、彼女の持つ軍刀に狙いをつけるアリス。持ち主の力と意思を吸い、転生を拒む意思だけを残すその刀は彼女を解き放つために何より邪魔なもの。あえて分かりやすい隙を曝しては彼女をおびき寄せ、走って回り込んでは刀を狙って破壊を狙う。
「うぅ……く……はぁ……」
 目論見通りに刀は簡単に折れるが、その都度彼女の全てを吸っては再生を繰り返す。その分彼女は披露し、戦いそのものはやりやすくなってはいくが、どうしても最後の一押しが足りない状態が続いていた。
「歌で手助けは初めてですけど、歌唱とかでなんとかなるかなと……」
 力を叩きつけるだけではだめか。ならばと華澄は銃を下ろし、大きく息を吸い込んで朗々と歌声を響かせた。
「う、うぅぅ……!」
 抒情的な歌声が学徒兵の耳をうち、その動きを鈍らせる。本来は共感した者の戦闘力を増強するための歌。だが、今彼女が本当に抗うべきなのは中身を失くした使命感と破壊を求めるオブリビオンの本能。無意味な最後の力を捨て、人として終わりを迎え、次なる生へ繋がる力を。
 その願いを聞き入れるように、學徒兵は軍刀を構えた手を下ろした。
 だがその姿勢に一瞬華澄が安堵しかけたその瞬間、彼女の直感が危険を知らせる。その勘を当てるように、少女は逆の手で古びた光線銃を抜き、華澄に向けて引き金を引いた。
「私のファイアチームをみせてあげましょう」
 その射線に、ベアトリスの呼び出した【クイーン・フォース】が割り込む。無敵の兵士たちは光線を難なく受け止め、自らの体を盾に華澄を守る陣形を取った。
「分散と護衛が私の役目ですから」
 相手は強いわけではなく倒すのが目的でもない。直接の戦いはアリスとエルーゼに任せれば十分と、ベアトリス自身は守りを固める方向で動くタイミングをずっと窺っていた。
 そうして再び響く華澄の歌声。それに合わせエルーゼは踊るように剣を振って彼女の銃を叩き落とし、アリスも二度と生えてこないようにと念入りに軍刀に纏わりつく桜を刈り取っていく。
「あとは華澄さんに任せるだけですね」
 ベアトリスの言葉を受け、華澄は最後の声を上げる。
「届けばきっと変わると思います」
 その意思を込めて響く歌声。本来攻撃のためのユーベルコードではないはずの【ホープオブアリア】の声が、學徒兵に残った最後の人としての意識に力を与えその妄念を振り払う力となっていた。
 そして、その歌が終わるとき。
「私……私、は……」
 學徒兵は軍刀を取り落とし、落ちた銃も捨て置いて歩きだした。
 その向かう先は町のはずれ。だがその道は、事情を知らぬ人々の集まる町を抜けていく道――

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『はかない影朧、町を歩く』

POW   :    何か事件があった場合は、壁になって影朧を守る

SPD   :    先回りして町の人々に協力を要請するなど、移動が円滑に行えるように工夫する

WIZ   :    影朧と楽しい会話をするなどして、影朧に生きる希望を持ち続けさせる

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 己を蝕んでいた武器を捨て、まっすぐ歩き始めた影朧の少女。その歩みはやはり弱々しいが、先刻までのような当てどもない放浪ではなく、行くべき場所を目指した意志ある歩み。
「ああ、そうか……私は、もう……済まない、迷惑をかけたな……」
 自分の状況を理解したのか、猟兵たちに謝り歩き続ける少女。だが、その彼女を町の者たちは遠巻きに見つめている。
「あれ、影朧だろ……? なんで殺さないんだ……?」
「やだ、こっち来る……!」
 力ない者にとっては、やはり影朧は恐怖の対象でしかない。転生の可能性がある儚い存在という知識はあっても、それ以上に逢魔が辻や影朧兵器のようなショッキングな情報の方が優先されてしまうのはある種仕方のない事なのかもしれない。
 しかし、最後の力さえ失った彼女にとって、人からの拒絶だけでもそれは存在を揺るがすに十分すぎる攻撃であり、絶望の内に転生の道すら閉ざされかねない。
 そんな誰も幸せにならない結末を回避し、彼女が執着を晴らして最期を迎えるための道を作れるのは誰あろう猟兵たちだけだ。
 妄念から解き放たれた彼女なら聞いたことには答えてくれるだろうし、あるいは町の者も実績ある猟兵から説明を受ければ無意味な恐怖や拒絶を収めてくれることだろう。
 さあ、最期への道行きのため、桃の花道を整えてやろう。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
外見が人間に近くても『見分けられる方』もいるでしょうし、『影朧兵器』の作り方も不明ですから「素材」として『幻朧戦線』に狙われる可能性も有る以上、『気づかれる前提』で動くのが妥当でしょう。

【遍界招】により『祭器製の運搬車両』を召喚、影朧さんは此方で運びますねぇ。
そして『FMS』で彼女の周囲を覆い、表向きは『護送中』という形を採りつつ[結界術]で外の声を防ぎますぅ。
疑問の声は「発生原因に調査の必要がある為護送中」としておけば、納得はさせられるでしょう。

後は、人のいないところで『雛祭り』について尋ねますねぇ。
地方等で差異が有る筈ですから、可能な限り合わせた方が良いでしょうし。



 ゆらゆらと歩き出した學徒兵の影朧。その歩みの先には、事情を知らない人間が多くいる町が続いている。
 その後ろ姿を見ながら、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は考える。
「外見が人間に近くても『見分けられる方』もいるでしょうし、『影朧兵器』の作り方も不明ですから「素材」として『幻朧戦線』に狙われる可能性も有る以上、『気づかれる前提』で動くのが妥当でしょう」
 サクラミラージュでは影朧は誰もが知る身近にある脅威だ、それ故一般人の中にも影朧を『見慣れて』いる者がそれなりにいる。それこそかつて彼女自身がそうだったように、帝都桜學府の學徒兵がこの場に居合わせていたっておかしくはない。
 さらに、今もって全容が見えない幻朧戦線や、彼らの用いる影朧兵器。影朧を道具として用いる彼らにとっては、消えかけの影朧など使い捨ての鉄砲玉の材料としてはちょうどいいだろう。また現在判明している幻朧戦線の構成員は、思想に感化された一般人がほとんど。つまりはその辺りの町中に紛れ込んでいても何ら不思議はないのだ。
 そう言った脅威から守るために、るこるはバリアを張る円盤『FMS』をそっと彼女の周りを守るように展開させた。
「大いなる豊饒の女神、その鴻大なる知と力を持つ『祭器』を此処にお与え下さい」
 その上で【豊乳女神の加護・遍界招】を使い、バリアの効果をより強める。これによって外部からの彼女への干渉を防ぐと同時に、『厳重に取り囲んだうえでの護送』という名目を周囲に対してアピールすることにも成功していた。
 だがそれでも、周囲からの恐怖、あるいは好奇の視線は完全には収まらない。
 そう言った視線を無遠慮に向けてくる者に対して、るこるはすっと近づいて自分から声をかけた。
「何か御用でもぉ?」
「え、あ、いや……」
 野次馬として遠巻きに見る分にはいいが、当事者にはなりたくないのだろう。その男は思わず口ごもった。
「影朧には未だ未知の部分が多いです。今回はその発生原因を調べるため彼女を護送しております。あまり詳しい事情はお話しできないのですがぁ……」
 真剣な表情と口調で、あえて相手に迫るようにしていうるこる。男はその様子に完全に押され、そのままその場を離れていった。
 丁寧に、だが反論を許さぬ真剣な調子は興味を越え関わりたくない、という感情を起こさせる。一般人にとっては影朧、そしてもしかしたら桜學府も、身近な存在ではあれど日常の中に入ってきて欲しい存在ではないのだろう。
 そうして人を遠ざけたのち、るこるは囲みの中に自らに入り歩き続ける學徒兵に話しかける。
「どうやら雛祭りに興味がおありの様ですが、どんな風になさりたいので?」
 一口に雛祭りと言っても地域ごとにやり方は異なる。豪華な人形を何体も飾るものもあれば、紙人形を流す流し雛もある。その問いに対し、彼女は寂しそうな表情をして答えた。
「どんな、と言われてもな……幼いころに少しやっただけだ。雛人形を飾って、菱餅やひなあられがあって、それから……何をしたっけな、もうほとんど覚えていない。ただ、普通のそれが、今はただ懐かしい」
 桜學府に入ると同時にそう言ったものを捨て去った彼女。恐らく厳密な作法や風習など自分でも分からないのだろう。それはただ思い出の中にだけある普通の雛祭り。あまり正しさにこだわらない、広く認知されているイメージ通りのもの。それが彼女が懐かしみ憧れる雛祭りであり、あるいはそう言った曖昧なイメージしか浮かべられないほどに、生前の彼女はそれから遠ざかっていたということの証左なのかもしれない。
 彼女が遠く置き去りにしたまま命を落とした『普通』。それに向かって歩いていく彼女の歩みを、るこるはただ祭器を広げ守るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラーと行動
アドリブOK

さて、どう説明すべきかだな。
彼女はもう危険な存在ではないという事は分かってもらうしかないのだが。
聞いてくる者もいるだろうからちゃんと返さなければ。
危険性はなくなっているのは確かで生きてた頃の思い、つまり家に帰りたいだけなのだと。
望んだ訳でもなく戦地に赴いて死んだ者に石を投げるのか?
桃の花を差し出すならいいかもしれないが。


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラーと行動
アドリブOK

この人と色々と話をしてみましょう。
色々とお話していけば希望をもてるかもしれませんし。
したい事とか分かればやる事も分かると思うので。
他にもしたい事とか聞ければいいかなと。


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄と行動
アドリブOK

説得に回りましょうか。
基本的に悪意も敵意もなくなっているわけですし、不要な悪感情を向けてもなにもないわけで。
もし敵意があれば既に襲ってきているはずです。
今の目的は最期の望みを叶えることで、その望みが雛祭りだと話しましょう。


エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラーと行動
アドリブOK

華澄と一緒に話をしてみようか。
したい事とかあるだろうけど、他にもしたい事とかあれば聞いてみるのがいいわね。
普通に話を聞くだけでも違うと思うから、そういう所にも気を配ればいいかな。



 學徒兵の少女は何処かを目指し、ゆっくりと歩き移動を続ける。それ故一つの場所でそこにいる者を説得し、あるいは遠ざけることができても、場所が変わればまた事情を知らない人間に囲まれ、奇異の視線を向けられることとなる。
 やがて差し掛かったのは、桜と桃が入り乱れて舞い散る町の大通り。本来季節のずれたこの二種の花が同時に舞うさまを見られるのは、この世界のこの時期だけの特権とも言えるだろう。
 だが、だからと言ってそれが影朧が町を歩くということの違和感を消してくれるなどということはない。新たに彼女を囲む者たちを説き伏せるべく、アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)とベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)は周囲へと話をして回っていた。
「さて、どう説明すべきかだな。彼女はもう危険な存在ではないという事は分かってもらうしかないのだが」
 アリスが少し考える横で、その先陣を切る、とばかりにベアトリスが前に出た。向かうのは指をさしいかにも陰口をたたいていた、という仕草を見せていた者のところ。
「基本的に悪意も敵意もなくなっているわけですし、不要な悪感情を向けてもなにもないわけで」
 影朧は恐ろしい存在ではあるが、同時に他世界のオブリビオンに比べ存在が弱く儚い存在である。そのことはサクラミラージュの者なら例え戦う力のない者でも常識として知っていることだ。そして影朧は悪意や無念を断たれ、希望の内に消滅すれば転生できる。これもまたサクラミラージュでは広く知られたこと。帝都桜學府の掲げる目標であるその『常識』に基づいたことを、あえて丁寧に述べることでベアトリスは周囲の説得に当たった。ここで無意味に恐れ攻撃的になれば、折角穏やかに終わる話を滅茶苦茶に壊してしまうことになるのだと、丁寧に、しかしどこかにその無責任な悪意を見抜いたような威圧感を含ませてベアトリスは周囲に語り掛けた。
 それを見て、アリスも聞きたいことがあれば答えようとばかりに堂々と姿を見せ周囲からの質問を受け付ける。
「あの影朧に既に危険はない。今はただ真っ直ぐに救済と転生への道を歩いているだけだ。生きてた頃の思い、つまり家に帰りたいだけなのだ」
 どこへ向かっているのか、との問いに堂々と答えを返すアリス。彼女がどこへ行きたいのかは既にグリモア猟兵から説明を受けている。明確に言われたわけではないが、情報の断片を繋ぎ合わせればそこがどんな場所なのかの想像はついていた。
「望んだ訳でもなく戦地に赴いて死んだ者に石を投げるのか?」
 彼女は桜學府の學徒兵。帝都の、世界の為に戦い命を落とした者。それが守るはずだったものから石を投げられれば、その絶望はいかばかりか。言葉の石を投げるというないにも等しい労力で、彼女の全てを破壊しつくすことができるのだ。それに喜びを覚える程の屑なのか。どの世界にも、特にUDCアースやヒーローズアースなどにはそのような屑が掃いて捨てる程いるのも悲しい事実だが、それでも目の前の彼らはそうではないと願いたい。そのアリスの思いが伝わったか、話を聞いた者たちは直前までとは明らかに違う、哀しみを込めた目を影朧の少女に向けていた。
「桃の花を差し出すならいいかもしれないが」
 よかった、そう言いたげに微かな笑みを浮かべながら、アリスは最後にそう付け加えた。
 そして二人が周囲の説得に当たっている間、學徒兵本人にはエルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)と藤宮・華澄(戦医師・f17614)が話を聞こうとしていた。
「色々お話ししましょう。何でもいいんですよ」
「そうね、したいことがあるみたいだけど、他にも何でも、些細なことでもいいから言ってみて」
 彼女から情報を引き出すことと、単純に興味のある話題を広げること。その二つを目的に話しかける二人に、少女は遠い目をして考える。
「そうだな……あまり、考えたこともなかった。私は……何がしたいのだろうな」
 使命の名の下、戦いに全てを捧げた彼女。それから解放された今、彼女の中には何も残っていないのかもしれない。ただ一つ、朧気に求めているだろう雛祭りだけがかすかに残った幼い日の幸せの記憶ということなのか。
「もししたいことがないのなら……まずはそれを考えてみることから始めましょう」
 華澄はそう提案する。からっぽなら何でも入れられる。全てを失いもうすぐその形さえも消え失せる彼女でも、この世界であればまだその先があるのだから。
「そうね。何でもいいわ、何か思いついたことはない? 全然関係ない事だっていいわよ」
 普通に話を聞くだけでも違うはず。エルーゼはそう思い、とにかく彼女に話を促す。もし、彼女が印象通りの人生を送ってきたのだったら、そんな雑談すら戒めていても何ら不思議はないのだ。
「例えば、好きな食べ物とか。私なんかはチョコや和菓子なんかの甘いものにラーメン、それから……」
「あなたが語ってどうするのよ。ねぇ?」
 呆れたようにエルーゼが言って、そして少女に同意を求める。少女は少し困ったような表情をしたが、すぐに笑顔になって答えた。
「そうだな……私はそんなに食べられない、多分。やったことはないが……」
「少しチャレンジしてみるといいかもしれませんよ」
「それ、あなたがしたいだけでしょ?」
 そんなとりとめもない話。だが、その時間こそが彼女の歩みを止めることなく前に進めているのだと、二人は話しながら分かっていた。
 やったことがないことをとりあえずやってみる。今生では無理でも、転生できればその先はあるのだ。仕様もないこと、くだらないこと、それをやったことがないのならばそのために転生するのだっていい。悲しみの中消えるよりは、きっとずっと幸せなはずだ。
 今はまだ空っぽの……あるいはようやく空っぽになれた少女の歩みを、アリスとベアトリスは守り、エルーゼと華澄は支え、それからも桃の町を歩みゆくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
生前は望むべくもなかったこと
それを楽しむ一時は許されるはずだぜ
助けてやろう

影朧
なあ名前は?
思い出せる⇒そっかいい名だぜ(ぐっ
出せない⇒じゃあ桃花ってコトで

雛祭りの思い出ってどんなカンジだった?

行動
歩みながらギターを弾き語り

楽しい歩みにしようぜ
リクエストがあるなら聞くけど?

無理に踊る必要はないぜ
ただ楽しんでくれればそれでいい
音楽でエスコートさせてもらうぜ

影朧が曲を楽しんでいたり
笑顔になっている様をみれば
自分たちと同じ心を持つ存在なんだって
皆の恐怖が和らぐはず

影朧が懐かしむ曲
笑顔となれる曲や歌を探りながら
影朧が主役のMVみたいなカンジで

祭りの前ってのも楽しいモンだよな



 やがて大通りを抜け、影朧の少女は町から出ていく道へと差し掛かる。ここまでの猟兵たちの活動により彼女の存在が町に知れ渡り始めたのか、その歩みを止めようとするものはもういない。とはいえやはり影朧は影朧、どちらかと言えば早く通り過ぎてくれ、という厄介払いにも似た感情が遠巻きに見る一般人たちの中に残り続けるのはどうしても仕方のない事であった。
 それでも、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は彼女の歩みと共にある。
「生前は望むべくもなかったこと、それを楽しむ一時は許されるはずだぜ。助けてやろう」
 彼女はもう十分過ぎるほどに戦い、苦しみぬいたのだ。せめて残されたわずかな時間を幸せと楽しみで満たしてやりたい。そしてその為に彼女と交流を持ちたいが、その前にまず聞いておきたいことが一つある。
「なあ名前は?」
 その問いに、少女は目を伏せた。
「……すまない」
 その答えで分かった。影朧に限らずオブリビオンは心を捻じ曲げられ、意識や記憶を世界を破壊する方向に消去、改竄されることも多い。ましてや消えかけの彼女である。自分の名前すらもう彼方に置き忘れられてしまったのだろう。
「じゃあ桃花ってコトで」
 その答えに、ウタはあえて軽い調子で言った。それは彼女が求めていると確実に分かるただ一つのもの。決して悪い感情は抱くまい。
 その名前に、少女は少し考えた後、笑って頷いた。
 桃花となった少女に、ウタは続けて問いかける。
「雛祭りの思い出ってどんなカンジだった?」
 だが、それもやはり記憶の彼方に忘れ去られたもの。別の猟兵にも答えたように、一般的な雛祭りのイメージの様なものしか思い出せないが、それが懐かしいと答える桃花。
 そんな普通の雛祭りが懐かしいなら全力でその普通を彼女に供するのみ。だが、それではない所には自分たちにしかできない特別を捧げてもいいだろう。
 そう考え、ウタはギターを構え桃花の前へと歩み出た。
「楽しい歩みにしようぜ。リクエストがあるなら聞くけど?」
「申し訳ないが、流行りの歌も知らないのだ。お任せするよ」
 桃花の答えにウタはギターをかき鳴らし、明るい曲を奏で始めた。
 それは先に広がる未来を拓く希望にあふれた歌。力強く前に進んでいくその歌は、得手な者なら合わせて踊ることもできるだろう。
「無理に踊る必要はないぜ。ただ楽しんでくれればそれでいい。音楽でエスコートさせてもらうぜ」
 不器用に足を動かそうとしていた桃花にそう言って、ウタはさらに前に進み始めた。
 その曲は桃花のみならず周囲を見る者たちに耳にも届き、その心を開かせていく。彼女が曲を楽しんでいたり笑顔になっている様をみれば、自分たちと同じ心を持つ存在なんだと分かって皆の恐怖が和らぐはず。その一心で、影朧と人々を繋ぐため、ウタは誰しもに届くよう歌を奏で続ける。
 その心が伝わったか、周囲の目は通り過ぎる彼女をただ見守り、見送る、そんな柔らかい者へと変じているようにも感じられた。
「あ、これ……」
 そしてその曲が終わりかけるところで桃花ははたと気づく。アレンジが加えられずっと分からなかったが、この曲のベースラインは『雛祭り』の歌だと。
 彼女が懐かしむ曲や笑顔となれる曲を探ろうとしていたウタも、その反応で察した。彼女は音楽に対して造詣が深いわけではない。ならば、誰もが知るような歌やそのアレンジなら理解できるのではないかと。
 そうして誰もが知る歌をこの場に合わせた楽しく優しい曲調にアレンジし奏で続ける。それに乗って歩いていく様子は、さながら彼女を主役と下ミュージックビデオ。
「祭りの前ってのも楽しいモンだよな」
 その言葉に桃花は笑顔で頷く。そしてこの道の先にもっと楽しいものがあるのだと、奏でられる歌はそう彼女に伝えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『人里離れた館にて、幽世の如き夜を』

POW   :    語り明かそう。キミと、朝まで。

SPD   :    舌へ、喉へ、その心へ。香茶と酒精を心行くまで。

WIZ   :    散るがゆえに。藍夜に舞う桜を瞳に映して。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 桃の花に彩られた道を歩いて町を抜け、やがて日も落ちるころ、桃花と名付けられた影朧の少女は一軒の屋敷へと辿り着く。
 元はそれなりに豪華な屋敷であったろうそこは、すでに住む者もなくなって久しいのか、表札は読めないほどにかすれ、門は錆び壁も崩れ落ちていた。ただ、庭に植えられた多くの桃の木だけが、往時を偲ぶように桃色の花を散らせていた。
 廃墟と呼んで差し支えないありさまとなったその家の扉に桃花は手をかけ、そしてそっと開いて中へと入った。
「……ただいま」
 その言葉に答える者は誰もいない。ただその代わりに。
「これは……!?」
 玄関広間に、豪華な七段飾りの雛人形が飾られていた。
 男雛に女雛、三人官女に五人囃子、随身や三人上戸も揃えられた立派な雛人形だ。女雛の顔はどことなく桃花に似ているようにも見える。
 よく見ればかなり古いものであることは分かるが、それでも廃墟に放置されていたとは思えないほどに磨かれている。
 さらにその前には菱餅やひなあられに甘酒。さらには伝統菓子だけでは味気ないということか、今帝都で流行りの新作菓子や料理も用意されている。
 桃花は目を潤ませ、そっとひなあられの一つを摘まみ上げ口に運んだ。
 その目からすっと涙がこぼれ落ちるが、それが決して悲しみのものではないことはこの場にいる誰もが分かっていた。
 恐らく彼女の命は今夜限り。その最後の夜に、彼女のささやかな願いをかなえてやろう。
 手が必要なら、掃除をしていたグリモア猟兵がまだ屋敷のどこかにいるはずだ。
 さあ始めよう。今日は楽しいひな祭り。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
さて、後は雛祭りですねぇ。

私はここまで『仕事』としての姿勢を通しておりましたから、ここで急にフレンドリーになっても不審でしょう。
『出来立ての温かい方が良い料理』等はまだご用意されていないでしょうし、桃花さんのお相手を桃姫さんにお願いして【豊饒現界】で[料理]を強化、調理に回りますねぇ。
『五色あられのエビフライ』等は如何でしょう?
エビフライを揚げる際、衣をつけた後でもう一度、細かくした『五色あられ』を通すだけですが、色鮮やかになりますぅ。
加えて、桃姫さんとの会話で何か『彼女の思い出の味』が浮かびましたら、材料と技術の許す限り再現してみましょうかぁ。

何とかなると良いですが。


トリガー・シックス
絡み・アドリブOK

「彼が消えて2年ですか。早いものです」
話を聞き、急遽来たらしい。
旅の僧と説明し、慈悲深い笑みを浮かべる。
「さぞお辛かったことでしょう。望まぬ戦へと駆り出され、望みも叶えられぬというのは」
蓮の花と小舟を用意する。
「あなたの魂が邪悪に晒されぬ様、ヴィシュヌがお守りいたしましょう」
安らかに休める様に、来世で幸せになれる様にと用意したもの。
「この悲劇に見舞われた魂に慈悲を」



 町を抜け歩き、生前の実家と思しき屋敷にたどり着いた學徒兵の影朧、桃花。影朧としても余命いくばくもない彼女の最期の願いを叶えるべく、猟兵たちは祭りの準備を整える。
「さて、後は雛祭りですねぇ」
 そう言う夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)がいるのは、雛人形の飾られた広間ではなく、屋敷内の調理場。インフラ関係はもちろん止まっているが、キャンプ用の携帯キットならば必要とあれば持ってくることも可能だ。それによって【豊乳女神の加護・豊饒現界】で料理技術を強化し、『出来立ての温かい方が良い料理』を提供しようというのがるこるの考えだ。
 るこるは最初の交戦時から、『仕事』としての姿勢を通してきた。ここに来て急に友好的な姿勢を見せても不自然と、ここは最後まで裏方に徹するつもりであった。そしてその間の桃花への対応は、グリモア猟兵ミルケンピーチのボディの一人である、花園・桃姫へと依頼していた。
「私、桃姫と言います」
「そうか。私は……桃花だ。似た名前だな。よろしく頼む」
 似た名を持つ者同士親近感はあるものの、なるべく情報を引き出そうとしながらもあまり出しゃばりすぎるわけにもいかず、少々ぎこちない会話になってしまう桃姫。
 せっかくの雛祭りなのにと空回りかける所に、一人の男が現れた。
「彼が消えて2年ですか。早いものです」
 そう独り言ちながら、僧衣の男が桃花の隣についた。彼の名はトリガー・シックス(ハリハラの化身・f13153)。町中で起きた一連の騒ぎを聞き、思わず駆け付けた猟兵だ。
「私は旅の僧です。町中であなたをお見掛けしましてついおせっかいに」
「あ、ああ……御坊様か。申し訳ない。お騒がせした」
 相手を聖職としてかしこまる桃花に、トリガーは慈悲深い笑みを浮かべ答える。
「さぞお辛かったことでしょう。望まぬ戦へと駆り出され、望みも叶えられぬというのは。もう何を望んでも良いのです。貴女を縛るものは何もありません」
 彼女の全てを労うその言葉は、無理に相手を立てようとし過ぎない包み込む慈悲の言葉。そしてその言葉を受け、桃姫が続ける。
「そうですよ。例えば、何か食べたいものとかありますか? 我慢とかしなくていいですし、好きなものを何でも!」
 トリガーの助け舟を受けた桃姫の言葉に、桃花は少し考えてから答える。
「えっと……そうだな……その……」
 言い辛そうにしてから、桃姫の耳に口を近づけ何事かを囁く。それを聞いた桃姫は、しばし待つよう言ってからその場を立ち、るこるの元へと向かった。
 そしてその内容をるこるに伝える桃姫。
「なるほど、かしこまりましたぁ。それでは、その間にこれを」
 次の注文ができる間にとるこるが渡したのは、『五色あられのエビフライ』。エビフライを揚げる際、衣をつけた後でもう一度、細かくした『五色あられ』を通した色鮮やかな一品だ。
 それを持って桃花の所へ戻る桃姫。
「おお、これは……!」
 その色彩に思わずため息をつく桃花。そうしてそれを口に運ぶと、思わず笑顔がこぼれる。その様子を、桃姫とトリガーは満足げに見て頷いた。
 そうしてそこに、るこるがキッチンから桃姫を呼ぶ。あくまで裏方に徹するつもりの彼女は、決して彼女の前に出ようとはしなかった。その姿勢を汲み、桃姫は彼女から料理だけを受け取る。
「はい、作っていただけましたよ。パンケーキです」
 それは丸く大きく柔らかく焼かれた大きなパンケーキ。上にはクリームが少々はしたないくらいに乗っており、切られた桃の果肉も添えられている。
「あ、ああ……その、一度見て、ずっと憧れていたのだ……だが、こんな甘いばかりで栄養にならないものなど……」
「そうでもありませんよ。材料を正せば果実に小麦、牛乳と存外バランスはいい。糖分だって決して毒ではない」
「そうですよ。女の子ならこういうのが我慢できなくて当然です!」
 トリガーが言い、桃姫も言い添える。なお目の端で視線を合わせ頷き合うるこると桃姫に、君らは少し我慢しなさいと諭せるものはこの場にはいない。
 それを取って口に運ぶ桃花。味のほどはと言うと、年齢相応の少女らしい彼女の間隙の笑顔が全てを物語っているだろう。
 その桃花に、トリガーが小さな船と蓮の花を差し出す。
「あなたの魂が邪悪に晒されぬ様、ヴィシュヌがお守りいたしましょう」
「それは確か……印度の神だったか。忝い、御坊」
 安らかに休める様に、来世で幸せになれる様にと用意したものを、旅立ちのお守りとして渡すトリガー。
「この悲劇に見舞われた魂に慈悲を」
 その祈りに、深く瞑目して答えてから再度パンケーキを食べ始める桃花。
 何とかなると良いですが。るこるの陰ながらのその祈りがきっと報われることを確信させる、今の彼女はそんな姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アリス・スラクシナ
※エルーゼ、華澄、ミラーと行動
絡み・アドリブOK

最後の願いか。あとは楽しませればいいんだな。
私達は記憶に留めるくらいしかできないが、それでも。
白酒を飲み、花を見る。散りゆく姿は儚いと言える。
「私達の知らない世界を知るものもいる。この場にいないのが残念だが」
魔女の住む世界、夢見る街と女王くらいしか知らないが。
「いつかまた、会う時が来るかもしれない」
転生というものがあればいつかまたこうして雛祭りができるかもしれない。


ベアトリス・ミラー
※アリス、エルーゼ、華澄と行動
絡み・アドリブOK

ここが生家……もういなくなってしまったというのは寂しい事ですね。
でも誰かがこの家と雛人形を引き取って引き継ぐ可能性もあるわけですので。
血縁者が来てくれればいいのですが、難しいでしょう。
私達にできるのは心残りのない様にする事でしょう。
白酒を飲み、色々と食べるのもありかと。
「楽しみましょう?あなたが主役なのですから」


藤宮・華澄
※アリス、エルーゼ、ミラーと行動
絡み・アドリブOK

色々ありますねえ。た、食べ過ぎない様にしますよ!
最期になるのなら主役に置いて、一緒に楽しむようにしないと。
終ったら消える……けど精一杯生きたという事は覚えておきます。
ほんの少しの時間でも、思い出として残せるのなら。


エルーゼ・フーシェン
※アリス、華澄、ミラーと行動
絡み・アドリブOK

思い出に残せる雛祭りにできたらいいわね。
華澄に釘は刺しとく。向こうがやりたいと言えば別だけど。
アリスもいつの間に知らない世界に言ってたのか。
甘酒より白酒がいいからそっちかな。
花が散り始めて……終わりが近いとも言えるわね。
出会いと別れ、私も経験したことあるからね。
前の恋人、植え付けられた人格だったから消えちゃった。今は本来の人格の人に戻ってる。
名前はトリガー、初めて猟兵として一緒に行動して好きになって……夢の様に消えちゃった。



 屋敷の中、雛祭りは続く。掃除と飾りつけは行われているが、それでも相当な年月放置されたのだろう、最早再度人が住むことは難しそうにも見える。
「ここが生家……もういなくなってしまったというのは寂しい事ですね」
 ベアトリス・ミラー(クリエイター・f30743)は屋敷の様相を見てそう呟いた。
 桃花は見た目はうら若き少女だが、実際に生きた年代は今よりもずっと前なのだろう。大正が700年続くこの世界なら、100年、200年前の存在でも服装や言動が今を生きるものと変わらなくても不思議はない。もしそれくらい前の存在だとしたら、彼女の縁者がここを離れていてもおかしくないし、家そのものが残っていただけでも軌跡と言っていいのかもしれない。
「でも誰かがこの家と雛人形を引き取って引き継ぐ可能性もあるわけですので」
 血縁者が来てくれればとも思うが、それはさすがに難しかろう。それでも、家そのものを建て直し、雛人形をそこに置き直す、そんな奇跡を願うのも悪くはない。
「最後の願いか。あとは楽しませればいいんだな」
 その中で、アリス・スラクシナ(邪神の仔・f21329)はしかと今なすべきことを確かめる。それは武力を伴うことではないが、それでも戦いや作戦行動と同じように、あるいはそれ以上に気を抜かず真剣に臨むべきものと、彼女は最後まで儚き影朧と向き合うつもりでいた。
「思い出に残せる雛祭りにできたらいいわね」
 エルーゼ・フーシェン(踊り子・f13445)も彼女の最期の思い出になるよう、雛祭りに臨むつもりだ。例え転生の際に記憶がなくなるとしても、その際に幸せな思いを抱いて生まれ変われれば。あるいは転生した先で、記憶になくとも魂のどこかにその幸せの欠片でも残れば。
 そんな風にそれぞれが儚き影朧と、その故郷であるこの場所に思いを馳せる中、藤宮・華澄(戦医師・f17614)が見るのは。
「色々ありますねえ」
 雛祭りの為に色々用意された各種食事。定番のものから直接は関係ない家庭料理、現代のサクラミラージュで流行のものなど様々な種類のものが数多く用意されている。おかげで伝統的な雛祭りといった趣は薄れているが、一方普通に過程でやるお祭りなら過度に格式にこだわらず、好きなもの、楽しいものを数多く用意する者だろうと思えば、こちらの方が桃花の思う雛祭りに合っているのかもしれない。
「……ほどほどにね」
 先に歩いていた時の会話を思い出し、エルーゼが華澄に釘をさす。勿論桃花が望めば別だが、そういう印象のある相手ではない。
「た、食べ過ぎない様にしますよ!」
 それに対し、華澄も慌てて否定した。その慌てようがまた怪しいが、桃花がそれを笑ってみているのだから、これはこれでいいのかもしれない。華澄自身も最期になるのなら主役に置いて、一緒に楽しむようにしないとと、あくまで桃花を主体に事を進めるのは忘れてはいない。
 こうして、女たちの雛祭りが始まった。開け放たれた窓からは春の風が吹き込み、そこには桜と桃が入り混じって散るのが見える。
 それを眺めながらアリスが白酒を飲み、その儚さを思う。
「私達の知らない世界を知るものもいる。この場にいないのが残念だが」
 この場にいない男を思うが、自身も数多くの世界を知ってはいる。魔女の住む世界、夢見る街と女王くらいしか知らないが、その言葉にも、そんなものがあるとはと桃花は驚きの表情を見せた。
「アリスもいつの間に知らない世界に行ってたのか」
 そう思い、エルーゼも白酒を傾ける。特徴からすればデビルキングワールドやアリスラビリンスとも思えるが、あるいは。だが、そのいずれにも、目の前の儚い少女を救う手立てはない。だから、今はこのサクラミラージュが良いのだと、エルーゼはそうも思う。
「私達にできるのは心残りのない様にする事でしょう」
 ベアトリスもそう思い、白酒を飲む。多くの記憶を失った彼女が最期に臨んだこれくらいは、全て叶えてやりたい。その思いを胸に。
 特別なことはする必要などないのだ。ただ出されたものを食べ、人形と花を愛で、そして他愛のないおしゃべりに興じる。ただそれだけのことだが、それを自ら戒めた少女にとっては最高の楽しみ、何よりの思い出になることだろう。
 窓の外を見れば、花が無数に散っていく。一年中咲き誇る幻朧桜はいくら散ろうと絶えることはないが、季節に合わせて咲き、散っていく桃の花はそうではない。花が散る、それはつまり終わりに近づいていくということだ。
「出会いと別れ、私も経験したことあるからね。前の恋人、植え付けられた人格だったから消えちゃった。今は本来の人格の人に戻ってる」
 ぽつりとエルーゼが呟く。桃花はそれを聞き、小さく目を伏せた。
「そうか……」
「名前はトリガー、初めて猟兵として一緒に行動して好きになって……夢の様に消えちゃった」
 その名は先に来た僧と同じだが、彼は自ら名乗ることはせず、桃花も彼の名を問うことはしなかった。そしてエルーゼたちと入れ違うように姿を消した彼とその名の関係は、誰も語らぬ故に誰にも分からない。
「終ったら消える……けど精一杯生きたという事は覚えておきます」
 その言葉に、華澄が続けた。消えてしまうのは避けられないことだが、それですべてが終わるのではない。ほんの少しの時間でも、思い出として残せるのなら。影朧と成り果てるまで悲しく、懸命に生きた少女の事は、この場にいる誰もが忘れない。例え転生し名も姿も違うものになろうとも、彼女が本当に消え失せるということは決してないのだ。
「楽しみましょう? あなたが主役なのですから」
 切ない方向に行きそうな空気を、あえてベアトリスが明るく言って断ち切る。桃花にも甘酒を進め、それに呼応するように華澄が多くの皿を彼女に差し出してはエルーゼに止められる。その他愛ない騒ぎに、桃花は楽しそうに何度も笑んだ。
「いつかまた、会う時が来るかもしれない」
 最早、アリスをはじめこの場の誰も彼女が次へ魂を繋ぐことを疑ってはいなかった。そして、転生というものがあればいつかまたこうして雛祭りができるかもしれない。その為にも彼女の存在を覚えておかなければならないし、近くか遠くかいつかわからねど、いずれは来るであろうこのサクラミラージュでの大きな戦いを制さねばならない。
 その時、一際大きく風が吹いた。桃の花吹き込む窓を見ると、既に月は姿を消し、夜闇も薄れ始めている。
 雛祭りの終わりが、近づいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
桃花の残された時間を
日常の幸せで一杯にしてやりたいぜ

事前
ミルケンに桜の精の手配を依頼
もし心当たりがあり間に合えば

行動
まずは桃花へ
お帰りって声かけ

ミルケンが用意してくれてた
ちらし寿司とハマグリのお吸い物で腹ごしらえ
皆で声を合わせて
いただきます!
ミルケンたちも沢山食べるといいぜ?

雛人形を見れば
ご家族は桃花の健やかな成長や幸せを願っていたって判るぜ

雛あられとか桜餅をつまみながら
庭の桃の花を眺めようぜ

夜空の星や月明かりで
桃の花がまた幻想的な美しさだよな

雛祭りっぽい曲を爪弾く
一緒に歌おうぜ


やがて
ひな人形に見守られながら
桃の花弁が舞い散るように闇に消えていく桃花は
きっと笑顔だ

また会おうぜ(ぐっ



 日付はとうに変わり、夜更けと呼べる時間すら過ぎつつある。儚き影朧に残された時間はあとどれほどだろう。だがどれだけ短かろうと、そこに満たせるものはあるはずだ。
「桃花の残された時間を日常の幸せで一杯にしてやりたいぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は、その僅かな時間に幸せを満たすべく最後までここにあるつもりだ。そして、家に帰ってきた彼女にまずは言ってやらなければならないことがある。
「おかえり」
 長き時を経て家に帰ってきた彼女に。そして、苦しみと妄念から僅かな間とて正気に返ってきた心に。
 それを聞いた桃花は、ウタに向かって微笑んだ。
 その後はちらし寿司とハマグリのお吸い物で腹ごしらえ。ミルケンも呼んで食卓を囲み、皆で声を揃えて。
「いただきます!」
 そうやって食べる様子は、きっとどこの家庭でもあったもの。家でやる雛祭りなら、お祭りだからと言って無礼講の無法地帯になるわけではない。それはあくまで日常の中に添えられる少しだけの特別。
「ミルケンたちも沢山食べるといいぜ?」
 とりわけ幼いボディのぺしぇにそう言って、日常の感じを多く出していくウタ。きっとこうした『普通』に近い方が桃花自身が望んだ形に近いと思い、そしてそれが正しいかは静かながら楽し気に食事をする桃花自身の姿が物語っていた。
 そして食事がすめば、デザート代わりのひなあられと桜餅。それを食べながら雛人形を見るウタ。
「ご家族は桃花の健やかな成長や幸せを願っていたって判るぜ」
 娘の顔に似た人形をわざわざ用意するほどなのだ、その愛情の深さはいかばかりか。その人形を自身もじっと見つめ、目を潤ませる桃花。
 そして、残りわずかとなった月と星の見える西側の窓から見える桃の花は幻想的で美しい。その美しさに、ウタはギターを爪弾いて雛祭りの曲を奏でる。
「一緒に歌おうぜ」
「あ、私は、歌は……」
 そう言って最初は躊躇する桃花だったが、誰もが知る歌を奏でると、それに合わせてたどたどしく歌い出す。決して上手いわけではないが、切々と、生前出来なかったことの一つを取り戻すように。
 やがてその曲が終わるとき、西の窓からも星も月も消え、東の窓から日が差して来る。その光が人形と、その前に立った桃花を照らした。
「ああ……そうか、もうそんな時間か……」
 桃花が自分の体を見ながら言う。その体は、窓からさす光とは別に自分自身から湧き出る桃色を帯びた光に包まれはじめていた。
 桃花は最後にウタの、そして猟兵たちの方を向き、深く一礼した。
「ありがとう。世話になった……本当に……」
 潤んだ目から涙を流す彼女は、それでも笑顔。その笑顔に、ウタもまた笑顔で来たる。
「また会おうぜ」
 その言葉に答えるように、桃色の光が彼女から溢れ、そして桃の花が散るように、その体は消えていった。
 最後に強い風が部屋に吹き込み、桃と桜の花を吹き込ませ、そしてまた吹き飛ばしていく。
 外にはウタの要請により、ミルケンが急ぎ桜學府より呼んだ桜の精たちの姿。きっと彼女たちの桜が、散った桃を天へと運んでくれのだと、ウタはそう信じたかった。

 雛祭りは終わり、桃の花ももうすぐ全て散ってしまうだろう。それでも、きっと花はまた咲く。季節も、命も、全ては巡るのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月21日


挿絵イラスト