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猟書家の侵略~白兎勇躍之秋

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #望月鈿女 #メガリス #戦巫女 #弥助アレキサンダー #魔軍転生 #夕狩こあら #水晶宮からの使者

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「嘗て私達は、エンパイアウォーで大帝剣『弥助アレキサンダー』と海上戦を繰り広げたけれど、関門海峡の渦潮に消えた彼の魂を掬い上げようとする者が現れたわ」
 名を望月鈿女。
 嘗ては戦巫女の祖の一人とも言われた古き巫女だと、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)が静かに告ぐ。
 倒幕を目論むクルセイダーに与する猟書家の幹部の存在が、またも明らかになったと、漸う集まる猟兵達と視線を結んだ彼女は、凛乎とした表情で説明を始めた。
「鈿女の目的は、弥助が『渡来人の至宝』と呼び、先の大戦でも使っていた『メガリス』を探すこと……サムライエンパイアにもかの秘宝があると読んでいるみたいね」
 猟兵は羅針盤戦争を制したばかりにて、その呪われた力は記憶に新しかろう。
 メガリスがこの世界に実在するかは今のところ定かでは無いが、自然現象に干渉する程の力が敵の手に渡れば、平穏を得て間もない幕府の脅威となるのは間違いない。
 ここでニコリネは地図を広げて、
「メガリスがあると狙われたのは、山陰は因幡国の日本海に面した白兎神社……皆には、海から進攻するオブリビオン軍勢を浜辺で迎撃して欲しいの」
 白兎(はくと)神社――。
 其は群雄割拠の時代より前に建てられていたとされる古い神社で、神々の縁結びをした白兎伝説の場所という事もあり、多くの参拝者を集める人気の神社である。
「この神社に本当にメガリスがあるかどうかは分からないけど、江戸幕府を霊的に守護する寺や神社が破壊されては大変よね。彼等にはそれだけの力が十分に備わっているもの」
 そう、敵は唯の魑魅魍魎では無い。
 鈿女が率いる軍勢も、クルセイダーの秘術「超・魔軍転生」により、此度は魔軍将「弥助アレキサンダー」を憑装して大幅にパワーアップしているのだ。
 連中は海月型の怪火となって続々と海から現れるので、猟兵は浜辺で軍勢を迎え撃ち、白兎神社へ向かうのを阻んで欲しい。
「現地には、逸早く異変を察知した戦巫女が居るから、周辺の地形や風土に詳しい彼女に知恵を借りるのも良いと思うわ」
 戦力としては期待できないが、彼女の知恵や力が勝利に結んでくれようとは、ニコリネもこの神社の縁結びのご利益を……いや、それ以上に猟兵の力を信じているからだ。
 全ての説明を終えた花屋はニッコリと頬笑み、
「サムライエンパイアにテレポートします。皆にも白兎神のご加護がありますように!」
 と、ウインクして送り出すのだった。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、猟書家の幹部の一人『望月鈿女』の侵攻を食い止める「捜宝戦線」シナリオです。

●戦場の情報
 サムライエンパイア、山陰は因幡国の白兎神社。
 白兎神が大国主神と八上比売との婚姻を取り持った事から、恋愛物語の発祥の地、恋結びや縁結びのご利益があると多くの参拝者を集める神社です。
 戦闘は、参拝客が減り始める黄昏時から、白砂の海岸で始まります。

●シナリオ情報(二章構成です)
 第一章『水晶宮からの使者』(集団戦)
 別名、妖怪・クラゲの火の玉。
 何処にでも現れるフワフワとした怪火で、触れた者は「出よう」と思うまで夢に囚われ、死ぬまで彷徨い続けます。死ねば中から吐露され、「竜宮から迎えが来た」という噂だけが残るとか。
 今回は魔軍将「弥助アレキサンダー」を憑装し、大幅にパワーアップしています。

 第二章『望月鈿女』(ボス戦)
 メガリスの力があれば、全ての巫女も救われましょう――。
 戦巫女の祖の一人ともされる、人柱として海神に捧げられた古き巫女で、現在は幕府転覆を目論むクルセイダーに与しているようです。
 ※望月鈿女は憑装していません。

●プレイングボーナス『戦巫女と協力して戦う』
 このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
 戦巫女は猟兵ほど強くありませんが、神楽舞で沢山の白ウサギを召喚し、恋が叶う「縁結びダンス」を踊る事ができます。また、神社仏閣について熟知している為、地形を利用した戦術を考えてくれそうです。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や【グループ名】をお書き下さい。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 集団戦 『水晶宮からの使者』

POW   :    サヨナラ。
自身に【望みを吸い増殖した怪火】をまとい、高速移動と【檻を出た者のトラウマ投影と夢の欠片】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    夢占い
小さな【浮遊する幻影の怪火】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【鍵の無い檻。望みを何でも投影する幻影空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ   :    海火垂る
【細波の記憶を染めた青の怪火】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 日の入りの明るみが月の光りに代わる頃、何もかもが煙の如く輪郭を波打たせる黄昏は水平線もざわめき立つ。
 この時分を誰そ彼とは言うたものだ。
 白兎神社の巫女、まき乃は、最後の参拝者を見送った後に白兎海岸に向かい、淤岐之島(おきのしま)の鳥居を見るのを常の奉公としていたが、時に魔物のような波濤(なみ)の音に胸を騒がせると、急ぎ足で砂浜へ向かう。
 而して胸騒ぎは真であった。
「これは……怪火……!」
 朦朧(ぼんやり)と滲む空と海の彊界より、ほつほつと浮かび上がる炎。怪火。
 其が漁舟の篝火でないとは直ぐに判然ろう。
 決して色の定まる事の無い七彩の炎は、ふわふわと海面を泳いで波に照り返り、消えては浮かびを繰り返しながら、一際の邪氣を漂流わせて浜辺に迫って来る――!!
「ッッ、皆に報せないと……!!」
 参拝者が居なくなった今、神社の境内では腕白な白兎達が遊び出す。
 宮司に報せなくては、白兎たちを護らなくてはと、早鐘を打つ胸に強く手を押し当てた巫女は、突如として差し入る玲瓏の光――グリモアの耀きに瞳を丸くした。
加賀・三槌(サポート)
 人間のバロックメイカー×戦場傭兵、21歳の男です。
 普段の口調は「エセ紳士(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、余裕を無くした時は「荒い(私、お前、呼び捨て、だ、だな、だろう、なのか?)」です。
 思考はやや悪党寄りですが、猟兵として外面を繕っているため行動は善性寄りでも問題ありません。また、他の猟兵に迷惑をかけたり公序良俗に反する行動は避けます。
 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


メイリン・コスモロード(サポート)
『一緒に頑張りましょうね。』
人間の竜騎士×黒騎士の女の子です。
普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、時々「対人恐怖症(ワタシ、アナタ、デス、マス、デショウ、デスカ?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
人と話すのに慣れていなくて
「えっと……」とか「あの……」とか多様します。
戦闘ではドラゴンランスを使う事が多い。

その他、キャラの台詞はアドリブ等も歓迎です。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


サーシャ・ペンローズ(サポート)
 バーチャルキャラクターの電脳魔術士×バトルゲーマー、18歳の女です。
 普段の口調は「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」、敵には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
エッチな描写もNGです。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


バスティオン・ヴェクターライン(サポート)
戦闘スタイルは盾群付右義腕による【盾受け】や剣による【武器受け】で敵の攻撃の受け止め+気迫と鬼気迫る眼力で【恐怖を与える】事による敵の注意の引きつけ
護りに徹し味方に攻撃が向かないように立ち回る
集団戦の場合出来るだけ多くの敵を自分に引きつけるようにする、または自分を越えなければ先に進めない状況を作る。
UC【テリトリー・オブ・テラー】で広範囲を一気に威嚇したり、UC【フォーティテュード・フォートレス】で作った壁で通れる場所を制限したり、護りに徹するならUC【バリアブル・バリアー】で作った盾ドームで安全地帯を作ったりする

その他お任せ・他猟兵との絡みやアレンジ歓迎


叢雲・凪(サポート)
人間のミュータントヒーロー×ゴッドハンド、
ヒーロー名【ジンライ・フォックス】

まずはその世界の住人・猟兵仲間に挨拶をしよう…。
礼儀は大事。年上の人や先輩にはちゃんとしないとね。
『どうも ジンライ・フォックスです』(お辞儀しつつ)

基本的な戦い方は【リミッター解除】を使ってからの【ダッシュ】+【残像】+【疾雷】を使った電光石火の接近で敵との距離を詰めよう。ボクは広範囲への攻撃ができないから【黒雷槌】や【一撃必殺】を使った各個撃破に努めよう。【気絶攻撃】や【マヒ攻撃】で無力化するのも効果的だと思う。

『天誅・・・』



 時に神社へと戻らんとする巫女の足が止まり、躊躇して砂を踏む。
「ああ、でも海岸にはまだ多くの人が……!」
 然う、参拝者は白兎神社を出たばかりだ。
 神社から海岸は目と鼻の先で、参拝を終えた者の多くが海岸沿いの街道を通って宿場町に向かう為、先ずは一般人を怪異より守らなくてはならないが、クラゲ型の怪火が浜辺に至るより先、グリモアの光を解いた幾人かの猟兵が動いた。

「……黄昏は逢魔ヶ時、大禍時とも言いましたか」
 實に其の様だと、怪しく照る海を眺めたのは加賀・三槌(飢え渇く者・f32336)。
 やけに波が喧噪(さざ)めくと、轟々と唸る海音に静かなテノール・バリトンを添えた彼は、薄暮れに姿影を朧とさせた儘――白砂に泡沫を轉がす渚に手を翳した。
「來たる魔が禍を齎すなら、逢わず、触れずが宜しいかと」
 元より海月は触れぬ方が良いと、佳脣は皮肉を零したか。
 とまれ三槌が淡然と囁(つつや)くや、その影は幾重に増えて広がりゆく。
 其が玻璃と煌めく「鏡」によって創り出された虚像と気付いても遅かろう。彼を中心に展開した【思考の迷宮】は、浜辺に近付く海月を迷宮に迎えると同時、その怪火を幾つも映り込ませて虚像を模り、謎を語り掛けて出口を迷わせた。
 而して波打ち際に不可侵の彊界を引いた麗人は、ふよ、ふよと迷宮を游ぎ続ける邪氣に涼しげな流眄を注いで、
「――そこでしばらく遊んでいなさい」
 と、切れ長の目尻に影を送った。

 人と話すのが慣れないメイリン・コスモロード(飛竜の鉾・f13235)は、海岸を歩く人々に危険や避難を呼び掛ける事は叶わずとも、彼等を護る為に十分な力を発揮しよう。
 黄昏にあっても一縷と輝きを失わぬ佳瞳は煌々と、天に竜槍『シリウス』を掲げるや、美しソプラノを澄み渡らせた。
「――竜の力よ、その呪いの力を貸し与えなさい!」
 佳聲が喚び召すは数体の飛竜――少女と心を通わせた小型のドラゴン。
 光闇の狭間より舞い降りた逞しき翼を迎えたメイリンは、竜槍の鋭鋩を向けた海へと、【飛竜の呪い】(ドラゴニック・カース)――闇属性のブレスを一斉に吹かせた!
 近接戰を得意とする彼女が、其を避けたのは全き至当。
 幻影を操る邪に触れてはならぬと渚に立ったメイリンは、ここに凛然を萌し、
「竜よ、あの子達が陸へ上がる前に……海へ還してあげなさい!」
 而して翼竜は少女の聲を聞き入れよう。
 黄昏色に染まる海を疾走った闇黒の息吹は、七彩を揺らす怪火を包むや炎を掻き消し、妖艶な光を照り返していた波を元の瀲灩に戻した。

「夕暮れ時からはもう海に近付いてはいけませんよー」
 透明なソプラノボイスを海岸に澄み渡らせ、街道の人々に迅速な避難を呼びかけるは、サーシャ・ペンローズ(バーチャルキャラクターの電脳魔術士・f26054)。
 必要以上に不安を煽る事なく、輕やかに手を振って宿場町へと送り出したサーシャは、くるり踵を返して海に向き合うと、赫緋の麗瞳に敵を映した。
「……見た處、害の無いようなところが危ういですね」
 誰そ彼の時分に煌々と揺らめく青き燈火(あかり)は、よくよく人を惑わす。
 まして魔軍将「弥助アレキサンダー」の霊魂を憑装した其は、メガリスが見つかるまで白兎と巫女、或いは神社そのものを幻想に呑み込むだろうと戒心を鋭くしたサーシャは、【エレクトロレギオン】――合計380体の肉球型戰闘機を召喚し、怪火を迎撃した!
「こういうのは相殺が一番です!」
 情動のない兵器は幻想に囚われまい。
 触れれば感情を揺り動かす手合いには、消費型兵器が最良と口角を持ち上げた佳人は、敵と衝突した肉球戰闘機が水平線に炎を広げると、次々と後続機を送り込んだ。

「へ? 俺が戰うの? ……いやいや、ここは若い者に任せた方が良いって」
 バスティオン・ヴェクターライン(戦場の錆色城塞・f06298)は渋々と召集に應じた者だが、ひとたび其の眼路に怪火を捉えるや、その夥しい数と明るさに銀の精彩を烱々と、冱月の如く鋭利さを増して汀に立つ。
「見ればまだ人も居る、と……それなら盾兵の働き時だねぇ」
 脱力系おじさんは、護るものあってこそ不撓の城塞と立ち塞(はだ)かろう。
 バスティオンは超大型右義腕『フォーティファイド・ライト』を大地に叩き付けると、朱殷の潤滑油を血を吐く如く噴きながら【フオーティテュード・フォートレス】――ッ! 眞白の砂浜から汀に添って城壁を迫り出し、怪火の陸上への侵入を拒絶んだ!!
「線引きしようじゃないか。ここから先は、駄目。分かる?」
 頂部歩廊からヒョイと身を乗り出したバスティオンが、飄然と語尾を持ち上げる。
 相手は人語を解せぬ海月、更に中身は渡来人にて、万物に理解るよう明確な線を引いた彼は、高度を得て一気に有利を増した若い猟兵達の活躍を支えるのだった。

 而して城壁に降り立った叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)――いや、雷の狐面に覆われたヒーローは、高所の利を呉れたバスティオンや仲間の猟兵に先ずはペコリと挨拶をする。とても丁寧なお辞儀だ。
「どうも……。ジンライ・フォックスです」
 蓋し狐面を持ち上げた瞬間、肌膚に触れる邪氣に満ちた汐風と、城壁を挟んだ向こうに見える参拝帰りの人々に、闘志が赤黯い稲妻となって迸發(ほとばし)ろう。
 世界を問わず、非戰闘員に対して常に注意を払うジンライ・フォックスは、己が役儀を見たりと、右手首に備えた黒雷外装『雷切』を海側に構えて苦無を射出した。
 狐面に隠れた佳脣は素早く詠唱し、
「……インドラヤ・ソワカ!」
 告ぐや汐風を斬った苦無は、“黒雷”の花瓣と變じて【雷音】(ライオン)――ッ!
 閃爍して海面を疾走した瓣は半径89m圏内に浮遊する怪火の悉くを火粉と蹴散らし、その線香花火のような最期も見せる事なく、無辜の人々を宿場町へと誘導した。

 然うして支援に出た猟兵の奮闘により、参拝を終えた人々は一縷の創痍も負うこと無く海岸沿いの街道から宿場町へ――被害の及ばぬ地域へと避難した。
 彼等の活躍を見た巫女・まき乃は、超常の異能に驚嘆すると同時、己も神社を護る為に動かねばと、眞白の砂を蹴るのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加

羅針盤戦争で、メガリスの厄介さは嫌という程思い知らされたからねえ。メガリスの事もあるが、駆け落ちで結婚した身として縁結びの神社を襲う奴は許さない。未来ある恋人達の為に、阻止させて貰うよ。

事前にまき乃に隠れるのに良さそうな場所を聞いとく。敵は群れをなしてふよふよ飛んでるから【忍び足】【目立たない】を駆使して敵の群れの背後を付き、【気合い】【怪力】を併せた全力の【範囲攻撃】化した竜牙で敵の群れを薙ぎ払う。敵の攻撃は【オーラ防御】【残像】【見切り】で凌ぐ。敵猟書家は事情有り気だか今を生きている者にとっては知ったこっちゃない。さあ、前座は退場して貰おうか!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

メガリスの問題もありますが、因幡の白兎由来となれば、古来より続く由緒正しき神社じゃないですか。長きに渡り恋する人達を見守って来た聖地を荒らさせはしませんっ!!絶対護って見せますよ。

まき乃さんは神社の方に行って貰って、神社に近い道を教えて貰いましょう。そこにトリニティエンハンスで防御力を上げ、【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防衛線を敷きます。後は近づいてくる敵を【衝撃波】【範囲攻撃】で倒して行きます。猟書家の境遇はお気の毒ですが、貴女の常識が今の巫女の皆さんに通じるとは限りませんから。待っててください、今、貴女を止めに行きますよ!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

巫女を救う為といいながら、巫女の皆さんがお仕えする神社を襲うなど許せませんね。因幡の白兎由来となれば、長きに渡り多くの人達の縁を取り持った聖なる場所。不届き者は退去して貰いましょう。

まき乃さんに戦場の砂浜を広く見渡せる場所を聞きます。その場所に立って【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を仕込んだ【結界術】を【範囲攻撃】化して展開。【高速詠唱】【全力魔法】を併せた氷晶の矢で追撃。敵から飛んでくる攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎます。過去の存在が今の世界を脅かすのは許せません。相手にどんな事情があろうとこの世界は今を生きる人達のものです!!



 嘗てない危機を前に、心臓が早鐘を打つ巫女まき乃。
 眞白の砂を踏む足が躊躇する中、凛乎たるソプラノが彼女を振り向かせた。
「まき乃さん、こちらへ!」
「!! ……はいっ!」
 神社の方へと手招きするは、真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
 敵の侵攻方向に対し垂直に正対した可憐は、小走りに駆け寄るまき乃を我が背に隠すや抜劔した『アクア・セイバー』を一振り! まき乃を追ってきた怪火を水属性の衝撃波に蹴散らした!
「あ、あなた様は……」
「説明は後です。今はどうぞ神社へ、兎達と隠れていて下さい」
 巫女を救うと言いながら、神社ごと破滅に堕としかねぬ者が現れた、と――。
 全てを言わずとも、スッと通った鼻梁を邪に向けた奏の表情で察せよう。
 まき乃は合点(こっくり)と首肯くや、佳人の背から離れて神社へ、未だ危機を知らず駆け回る白兎達の下へ向かう。
 その跫を拾いつつ、奏は【トリニティ・エンハンス】――炎、水、風と、三属性の精霊に呼び掛けて己を強化し、我が身を置いた境内の最前に東西の防衛線を敷いた。
 超常の力を知る奏なれば、背より漂流う神氣を否應にも感じるか、
「因幡の白兎に由来するとなれば、古来より続く由緒正しき神社じゃないですか」
 其は長きに渡って戀する人達を見守って来た聖地。
 己もまた兄として慕う瞬に密かな想いも抱く身にて、人々が如何な思いでこの白兎神社を訪れるか心を寄せれば、メガリスの有る無しに関わらず護りたいと思う。
 己が紡ぎし光の防御壁に花顔を照らした乙女は、繊麗の躯を包む鎧を白銀と輝かせ、
「人々の信仰を踏み躙らせは……心の拠り所を荒らさせはしませんっ!!」
 更に一閃――ッ!
 澎湃と漲る魔力に惹かれ押し寄せる炎の群れを、爍爍たる劔閃に薙ぎ払ッた!
 このとき炎の残滓が頬を掠めるが、白銀の戰乙女は熱を受け取って猶も凛然を崩さず、
「此度の猟書家の境遇はお気の毒と思いますが、貴女の常識が今の巫女の皆さんに通じるとは限りませんから。――待っててください、今、貴女を止めに行きますよ!!」
 その想いが、平穏を得たばかりの侍の國を亂してはならないのだと、紫水晶と燿う瞳を烱々とさせた奏は、神域には一歩たりとも踏み入らせぬと劔を振り被るのだった。

 而して奏の想いに気付いてはいるものの、彼女を与るにはより強い力をつけなくてはと想いを隠す神城・瞬(清光の月・f06558)はと言うと――彼女より前、白兎海岸で怪火の迎撃に当たっていた。
「巫女を救う為と言いつつ、巫女の皆さんがお仕えする神社を襲うなど許せませんね」
 広く海を見渡せる浜辺を選んだ瞬には、それだけに多くの敵が襲い掛かろうが、朦朧と浮遊する炎の群れを映した瞬は冷靜沈着、素早く手印を結ぶや海岸線上に結界を敷く。
 彼は淸冽のテノール・バリトンを黄昏の海へと投げて、
「クラゲは触れると痺れると言いますが、痺れ返して差し上げます」
 心を亂す彼等に触れずに倒す――。
 前方に結界を広げて接近を阻んだ瞬は、次いで玻璃と輝く『六花の杖』を振り翳すと、【氷晶の矢】――合計500本の氷の矢を斉射し、怪炎を一氣に掻き消した!!
 一瞬、水と結ばれた怪火が轟ッと炎を大きくして海を白ませるが、終末の燈火に白皙を照らした瞬は嚴然を崩さず、
「戰巫女の祖も、今はオブリビオン……過去の存在が今の世界を脅かすのは許せません。相手にどんな事情があろうと、この世界は今を生きる人達のものです!!」
 追撃の第二射――ッ!!
 氣を緩める事なく放たれた氷矢は、水平線より続々と漂着する怪火を的確に射抜き、瀲灩を散らす波間へと溶かしていく。
「此處は長きに渡り多くの人達の“縁”を取り持った聖なる場所……不届き者は速やかに退去して貰いましょう」
 氷の結晶の如く透徹った杖を掲げる瞬の麗顔は凛冽(つめた)く、怜悧(つめた)く、波間に搖れる光に玲瓏と輝くのだった。

 ――扨て、奏が境内の最前に、瞬が白兎海岸の汀に沿って二重の防衛ラインを引く中、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は「淤岐之島」の巖陰に潜んでいた。
「島と言うだけあるね。これだけの大きさなら壁として利用できるよ」
 日の入りに加え、光源を持つ相手には翳影こそ重要な利点となる。
 凹凸の激しい岩肌に隠れた響は、厖大な魔力を迸發(ほとばし)る瞬に引き付けられた敵群を強襲――ッ! 膂力いっぱい竜槍『ブレイズランス』を振り払い、赫々と赤熱する衝撃波を背後から叩き付けた!!
「今回の猟書家幹部は少々事情が有り気だが、今を生きている者にとっては知ったこっちゃない。――さあ、前座は退場して貰おうか!!」
 刃閃疾走、【竜牙】――!!
 全き死角から喰らい付いた波動に、怪火は七彩の炎を掻き消されると、無防備になった胴と頭をふつりと切り離される。
 一縷の悲鳴も挙げず、フワフワと昏き波間へと揉まれゆく海月には、美しくも勇ましいコントラルトが降り落ちて、
「羅針盤戰争で、メガリスの厄介さは嫌という程思い知らされたからねえ。呪いの秘宝の懸念も勿論あるが、何より縁結びの神社を襲う奴は許さないよ!」
 響自身も良縁に結ばれ、駆け落ちして戀を実らせた女性だ。
 愛する夫は亡くしたが、共に戰う奏と瞬を見れば、その縁に間違いは無かったと信じる身にて、己こそ未来ある戀人達の爲に戰わなくてはと闘志が横溢(あふ)れる。
「――さぁ、お前達はさっさと骸の海に還りな!!」
 響は海月が訪れて良い場所ではないと叱りつけるように、激しく、嚴しく、獅子奮迅と竜槍を振り回すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
グリードオーシャンの秘宝が存在するかどうか
あの世界に異世界の島が存在するように、異世界に秘宝もあるのかもしれません
いずれにせよ、猟書家となれば戦わねばなりません
秘宝がなくとも、奴等は人々の脅威なのですから

倫太郎、ましゅまろ、戦いましょう

戦巫女には戦いに適した場所を聞き、あるのなら敵を誘導
情報を貰いましたら彼女達には兎達の避難を

早業の抜刀術『神風』の2回攻撃、狙う対象は倫太郎と同じ
耐久性が低い場合は2回攻撃は別々の敵を狙います
怪火に警戒、抵抗すれば吸い込まれることはないですが
必要であれば本来の姿に戻ったましゅまろに騎乗
倫太郎が陽動している間に空中戦にて上空からユーベルコード発動


篝・倫太郎
【華禱】
ホイホイとあんなものがあってたまるかってンだ
……さっさとお還り願おうぜ、これまで通りに

戦巫女には地形の確認
こっちが戦闘してる間に忍び込まれちゃ厄介だからな
その辺の情報を確認したら……
そだな、一先ず、境内の兎達が怪我しないようにしといて?

往こうぜ、夜彦、しょこら

災禍を狩るもの使用
代償は呪詛・激痛・毒の耐性で対処
暗視も使って敵との距離や数を掌握し
本来の姿に戻ったしょこらに騎乗して空中戦
夜彦が動きやすいよう、出来るだけ派手に立ち回って陽動

衝撃波と吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払いからの範囲攻撃
刃先返して2回攻撃

『抵抗しないもの』が対象なら吸い込まれることもないだろ
敵の攻撃はオーラ防御で凌ぐ



 突如、砂浜に咲いた睡蓮が、玲瓏の光を解く。
 輝ける花片の中から顕現(あらわ)れたのは、随分と大きな――兎だった。
「逢魔が時……光闇の狭間より出ずる魔を祓いに参りました」
 鼻をひくひく、口元をふくふくと動かす兎は雪の様な白毛。
 隣する艶帯びた黒毛の兎は、耳をぴくぴく、尻尾をふりふり、
「海岸は俺達に任せろ」
 と、勇敢なるテノール・バリトンを……いや、兎が喋った訳では無い。
 兎達がぱたぱたと双翼を動かす傍らには、ふたつの精悍なる影があって、
「巫女殿は兎達の避難をお願いします。兎にとって慣れた貴女の方が良いでしょう」
 と、純白のラビットグリフォン『ましゅまろ』のフワフワな毛を撫でるは月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)。
 一方の篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、元気いっぱいに躯を摺り寄せて来る黒毛のラビットグリフォン『しょこら』を全身で受け止めながら、翼越しに佳聲を届けた。
「此處は俺達が預るから、境内の兎達が怪我しないようにしといて?」
「……はっ、はい! 分かりました!」
 合点(こっくり)と頷くまき乃に、同じく首肯を返す二人の意見は一致している。
 境内を戰場にすべきでは無いと、夜彦に流瞥を注いだ時にこそ犀利な光を湛えた彼は、秀でた鼻梁を水平線に向けた我が刃に水を向けた。
「――扨て、相手はメガリスを探しに来たって言ってたな」
「はい。然し、この世界にグリードオーシャンの秘宝が存在するかどうか……彼の世界に異世界の島が存在したように、もしか他の世界にも秘宝があるのかもしれません」
 貪欲の海と侍の國とは、大きな渦潮で繋がっていた。
 渡来人の弥助も、行方知れずのレディ・オーシャンも、慥か猟書家幹部にも海を渡って来たと思しき者が居たか――。夜彦が長い睫の間から鋭眼を寄越せば、倫太郎はゆるく頭を振って答えた。
「ホイホイとあんなものがあってたまるかってンだ。随分腰を入れて捜索に来た様だが、さっさとお還り願おうぜ、これまで通りに」
 トン、と華焔刀 [ 凪 ]の石突で砂地を打つ。
 これまで何体もの猟書家の幹部を撃退してきたとは、夜彦も首肯いて、
「……ええ、いずれにせよ、相手が猟書家の幹部となれば、我々は戰わねばなりません。秘宝がなくとも、奴等は人々の脅威なのですから」
 と、硬質の指が触れるは、遍く邪を斬って猶も曇らぬ愛刀『夜禱』。
 波打ち際で凛然の瞳を結んだ二人は、漸う汐風に羽翼を馴染ませるラビットグリフォンに跨り、こつん、と拳を打ち合わせた。
「倫太郎、ましゅまろ、共に戰いましょう」
「あぁ往こうぜ、夜彦、しょこら」
 言えば二人を乗せた二匹は高く蒼穹へ――ほつほつと海面に浮かぶ怪火を眼下に敷き、鈿女が從えるオブリビオン軍勢の掃討に掛かった。

  †

 元々、夜目が利く上に高高度を得た倫太郎が、広い視野を活かして軍勢の規模を見る。
 巫女より聽いた話では、淤岐之島にも白兎神が居るとの事で、島より以北に防衛ラインを引いた彼は、刻下、【災禍を狩るもの】(ワザワイヲカエスモノ)の姿を暴いた。
「――狩り、還すは災い」
 凛乎と詠唱し、限界無き超常の力を――カミの力を宿す。
 災魔を祓う焔の神力、災魔を喰らう水の神力、災魔を砕く風の神力を我が身体に宿した倫太郎は、水平線に向かって力強く一薙ぎ――ッ、陣風の如き衝撃波を滑らせた!!
 波を蹴立てて疾る波動に炎を揺らした怪火は、頭と胴を別って猶もフヨフヨと游ぐが、返す刀にもう一閃ッ! 鞭と撓る斬撃には燄を解いて波間に消える。
「……悪いが、夢占いに付き合ってる暇はねぇ」
 この瞬間、火粉の如き炎の残滓が倫太郎の頬を掠めるが、幻影の怪火に触れたところで彼が「檻」に囚われる事は無い。
 倫太郎は今際の熱を手の甲に拭いながら嗤笑って、
「コイツらが“抵抗しないもの”を吸い込むっていうなら、抵抗していれば吸い込まれる事もないだろ」
「ええ、抗い続けていれば――戰い続ける限り、幻影空間に捕われる事はないかと」
 と、ましゅまろの大翼に帆翔しながら次撃を与るは夜彦。
 不断に、然も派手な立ち回りで怪火を引き付けていた倫太郎の背から身を暴いた彼は、神速の手捌きで抜刀術【神風】――寸毫も許さぬ速迅さで冱刃を暴き、空に舞う小さな瓣すら斬り裂く一太刀に怪火を断ッた!!
「是は空さえも斬り裂く刃也。況や炎焔をや」
 不可視の斬撃は、一瞬で輪郭を解く火塵のみに威を示そう。
 紫掛かる波間に煌々と漂流っていた怪火が、線香花火の如く儚く散れば、また一閃――ひやうと吹いた神風が海の昏きを取り戻していく。
 その淸冽の風に艶髪を梳った倫太郎と夜彦は呼吸を揃えて、
「兎以外の島渡りはご勘弁だ」
「ええ、猟兵は和邇(わに)より酷薄にて」
 と、間隙なき斬撃の嵐に邪を歓待するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
この世界にも恋に悩める男女やご利益を授かろうとする連中は多いだろ。参拝客はもう居ないのか?
…オーケー。それなら派手にやれそうだ。

二丁銃を引き抜き、UC。邪な火を撃ち抜いて。けど、それだけじゃつまらねぇ。夢占い、だっけ?俺も占って貰うか。
抵抗せずにクラゲのUCを受け入れるぜ。望みを何でも投影する幻影空間。
友が居て、家族が居て、吸血鬼の支配から解放された故郷。酷く居心地の良い、それでいて後味の悪い夢。
友も家族も居ない。故郷は未だ支配を強く受けている。――こんなモンか。
二丁銃で【クイックドロウ】。内部の夢を叩き壊して現実世界に戻るぜ。
夢占いの評価は最低だ。次からはタロットカードにでもしとくんだな。



 いつの時代も、どの世界だって、戀に悩める男女やご利益を願う者は居るものだ。
 神々すら戀を煩うのだから、と大國主命の石像に竊笑を結んだカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、参拝者の避難を預った仲間より完了の報を受けた。
「参拝客はもう居ないのか?」
「ああ、皆々が宿場町に向かい、海岸付近の一般人は掃けたよ」
「……オーケー。それなら派手にやれそうだ」
 戰線を預るように渚へ、白砂を踏みつつホルスターから二挺の黒銃を引き抜く。
 銃身に疾る金色のラインを斜陽に輝かせたカイムは、朧朧たる水平線に砲口を向けるや【銃撃の狂詩曲】(ガンズ・ラプソディ)――! 半径100m圏内に双頭の魔犬オルトロスの鋭利い咆哮を響き渡らせた!!
「特注の彈だ、代金を貰おうか。――若しか夢占い、だっけ? 俺を占って見せろよ」
 浮遊する七彩の邪を銃彈の嵐に掣肘し、撃ち抜く――だけじゃ些末(つまら)ない。
 カイムは胴と頭の泣き別れた一方が、ほわ、ほわと漂流う儘に触れさせ、自ら幻想の檻へ招かれる事にした。
「望みを何でも投影できるんだろ? いいぜ、俺の望みを見せてみな」
 而して己も海月になった様な、拠り處の無い浮遊感に包まれる。
 決して色の定まらぬ茫漠を暫し漾(ただよ)った彼は、軈て色が像を結び、見知った顔を映す光景に辺りを見渡した。
(「アイツは――」)
 親交を深めた友の笑顔に不覚えず手を伸ばした瞬間、後ろから抱き着くように肩に腕を回した者も嘗ての友。而して眼前に立つは、ふうわりと咲みを湛えた優しい家族――。
 然も周辺の景色は既に「吸血鬼の支配から解放された故郷」の温かな色になっていて、懷しい青葉の馨りが肺腑いっぱいに広がる――何と美しく居心地の良い事か。
「――……    」
 果して佳脣は誰の名前を囁いたろう。
 彼等の笑顔に己もまた笑顔を映し、巻き付いた腕に触れようとすれば、指は虚を掠めて我が胸座を摑むだけ。形も色も解かれた其處には、友も無く、家族も無く、常闇に覆われた絶望が残るのみ――。
「――……こんなモンか。やけに後味の悪い夢を見せてくれるぜ」
 交睫をひとつ、我が眼路に双魔銃の銃身を差し入れたカイムは、一際の銃聲に闇の帳を裂くと、様々な幻想を混ぜる牢檻を悉く叩き壊して現実世界に――元の砂浜へと戻る。
 然うして儚く燻る炎の残滓すら撃ち抜いた彼は、靉靆く硝煙に溜息を混ぜて、
「随分と陳腐な夢占いだぜ。次からはタロットカードにでもしとくんだな」
 と、黄昏に溶ける火塵と別れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタさん(f22361)と共闘。
クラゲに触れるのは危険なようなので触れずに倒します。
「…舞、喰…て…いけ…」
【幻魔葬刻『黒死蝶』】を発動させて食べて貰います。
蝶の数を増加させる為リミッター解除し限界突破します。

円滑にクラゲの元へ行かせるために風下から蝶を放ちます。
放つ前に戦巫女さんに周囲の地形などを聞いてみましょう。
より迅速に蝶をクラゲに届かせることができるかもしれません。
戦巫女さんから教えて戴いた知識を踏まえた上で…。
風の動きは私の髪で大体の風向きを判断してみようと思います。
上陸はさせたくないので極力海上ですべてを倒したいです。
クラゲとの近接戦闘はしません。回避しつつ蝶を放ちます。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と連携。
要はクラゲに触れて取り込まれなければいいんだねぃ?

封印解いて限界突破で僕自身のパフォーマンスを上げて。
多重詠唱をしつつ海へダッシュして【雷神の大槌】発動!
クラゲに切断加えた重量攻撃の蹴りを放つじぇ!
障害物とかクラゲの攻撃は見切りや第六感なんかで回避。
あ。継戦能力で速度維持しないと海に落ちちゃうねぃ。
海から突き出た岩なんかで方向転換しながら倒していくよ。
障害物が無かったら蹴りを放った反動で方向転換する。



 白兎神社の巫女・まき乃曰く、風の變化を具に知るには、海岸より淤岐之島に出た方が良かろうと、かの地に向かわんとする浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)の身を神楽鈴の音に淸める。
「見れば貴女様も戰巫女。白兎神が風の聲を聽かせて下さるでしょう」
「………………」
 こく、こく、と赤ベコのように頷き、神社の境内へと向かうまき乃を見送る墨。
 傍らのロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は、悪いクラゲの始末は任せて欲しいと胸を張り、彼女の背中を押してやる。
「う! ウサギさん達も慣れた人に護ってもらったほうが安心するじょ!」
「はい……貴女様もお気を付けて。お怪我なさいませんよう」
 ご武運を、と言って海岸を離れる巫女に手を振り、而して後、水際に正対する。
 見れば光闇の彊界を朧々とさせる水平線より、決して色の定まらぬ七彩の邪が浮波々々(フワフワ)と浮き來り、紫闇を帯びゆく波間に怪火を返照して迫る――その尋常ならぬ数は宛如(まるで)黄昏を昼に戻すかのよう。
 妖し陽炎に花顔を照らした二人は、秀でた鼻梁へ邪氣に向けた儘、佳聲を交して、
「……私は……淤岐之島……から……攻撃、を……」
「うんっ、僕は海岸から遊撃するねっ!」
 と、言うや行き先を分けた。

  †

 嘗て白兎は和邇(わに)の背を借りて島渡りをしたが、佳人は誰の手も借りぬ。
 ぴょんぴょんと輕やかに淤岐之島へ跳び渡った墨は、ぽつんと佇む鳥居の傍に立つと、射干玉の髪を梳る風に方向を尋ねた。
 あわく開いた櫻脣は幾許の希いを滑らせたろうか、
「……どうか……そのままで……」
 時に逆流し、渦巻く風の気紛れを宥めるよう、淸澄の聲は穩やかに。
 而して小袖よりスッと繊指を差し伸べた墨は、朧なる空に向かって幻魔葬刻【黒死蝶】――合計910羽の黒い蝶を放ち、閃々(ヒラヒラ)と海上に羽搏かせた。
「……舞、喰……て……いけ……」
 怪火が海岸に辿り着くより、速く、迅く。
 悪戯な風に逆らわぬよう、宛轉と、円滑に。
 そして全てが悉く届くよう、舞え、喰らえ――!
 術者・墨の狙いと願いを乗せて繊翅を張り広げた黒蝶は、汐風の層に躯を滑り込ませて海月の怪火へと接近する。
 翩々と影を踊らせながら、群れ全体で幾何学模様を描いて舞う黒翅は美しくも妖しく、何處かしら死の匂いを漂流わせた其が青き炎に結ばれるや、蝶は身を灼きながらも海月の輪郭や熱や魔力を喰らい、我が身と共に掻き消えた――。
 その幾許にも儚き仕儀を遠目に視た墨は、改めて告げ、
「……クラゲ、に……触れる……のは……危険な……よう……でした、ので……」
 一瞬、昏きに沈んだ黄昏に蚊細い聲を置く。
 蓋し彼女の選択は全き至当で、かの海月魚の青く燿う炎に触れれば癒しを得るものの、幻想は人を檻に鎖し、願望を吸って増える――實に厄介な相手なのだ。
 故に近接戰闘を避け、定点から黒死蝶を放った墨は、半魔の血に由来する厖大な魔力を絞り出してもう一回、蝶の数を倍に増やして怪火を喰らわせた。
「……上陸は……させたくないので……極力……海上で……すべてを倒さないと……」
 かの地を穢してはならないという想いは人一倍強い墨である。
 湿気帯びた風が翡翠の髪状(かんざし)を梳く儘、幾度と漆黒の蝶を舞わせた佳人は、淤岐之島を防衛ラインに半径91m圏内を元の紫闇に鎮めるのだった。

「そうそう、こういうのは一匹ゆるすと一気に群がるっていうもんね!」
 墨ねーは正しい。墨ねーは賢い。
 海向こうの朱鳥居に立つ墨にそんけいのまなざしを注いでいたロベルタは、自分も奮起するのだと勇氣凛々、「う!」と発氣して砂浜を駆け出す。
 澄み切った海色の佳瞳に怪火の明滅を見た少女は、ニッと目尻を緩め、
「要はクラゲに触れて取り込まれなければいいんだねぃ?」
 何せ、オウガとの鬼ごっこで鍛えられた身だ。
 捕まらないし、触れさせもしないと、白砂を踏む脚を強く、更に加速したロベルタは、波打ち際の水飛沫を散らして海上を駆け走り、水平線より來たる敵群に向かった!
 夥多しい数の邪を前に、紅脣は輕妙にソプラノを囀ろう、
「いっくじょー!」
 咆哮せよ、【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)――ッ!!
 波間を渡る間に雷神の力を高めた佳人は、宛ら稲妻の疾る如く怪火の塊に肉薄すると、超光速の蹴撃を放ち、圧倒的電熱に海月を灼いて掻き消したッ!
 射程距離は直線上で450m、更に海面より突出した石巖を足掛かりに方向轉換すれば、ロベルタは如意自在に蹴撃を放って遊撃できよう。
 雷光に花顔を白ませた可憐は、莞爾(ニッコリ)と頬笑んで、
「ウサギさんみたいに、飛んで、跳ねて、やっつけるじょー!」
 と、美し銀を彈くポニーテールを輕やかに躍らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
(現場に降り立って、まき乃を二度見)
……あ、いえ。失礼しましたっ。
以前お会いした京の陰陽師さんに、なんとなく似ていらしたもので、つい。
(無意識に手元も合わさりかけていた)

海が近くて、炎の力を使う妖……でしたら【水の精霊さん】の出番ですね
海面から沢山の鉄砲水を射かけてもらい、火をかき消しながら撃ち抜いてもらいましょう
ついでに飛沫を霧と化して、怪火の発生自体も抑制してもらいますね
まき乃さんは周辺の地形地物、特に井戸や水路等水場の配置について教えて頂きたいです
海上から逃れて陸へと上がってきた個体も、水場さえあれば同じように迎撃できますので
あと、射撃で敵を狙いやすい場所も御存知でしたらお願いします!



 突如、浜辺に睡蓮が咲き、一片ひとひら葩弁を解く花の美しさに惹き付けられた巫女・まき乃が凝乎と見れば、光の波濤に影を暴いた荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)が――己が姿に手を合わせて拝みかけていた。
「――……はっ」
 光の精霊に肩をチョンチョンされ、ぱちくりと瞳を瞬くひかる。
 同じく瞳をぱちくりとさせた巫女を見た可憐は、ぺこりとお辞儀して事情を話した。
「……あ、いえ。失礼しましたっ。以前お会いした京の陰陽師さんに、なんとなく似ていらしたもので、つい懐かしく感じまして」
「京の陰陽師……では天の御使いを撃退したのはひかる様、貴女ですね?」
「な ぜ わ た し を」
 親戚かな? 文通かな? と手をわたわた動かせば、まき乃は「そのどちらもです」と頬笑んで――なれば己が猟兵たる事も、今の怪異が猟書家絡みとも説明は不要だろう。
 ひかるは交睫ひとつ置くや真劔な表情で彼女に協力を請い、
「周辺の地形地物、特に井戸や水路等、水場の配置について教えて下さいますか」
「はい、白兎神社には身洗池(みたらしいけ)という水門があり、旱天や豪雨にも水位の變わらぬ“不増不減の池”は、常に祝詞によって浄められております」
「成る程……それなら万一にも敵が陸に上がってきた場合、社を護れますね」
「ええ、悪しきものには一層の事、効果があるでしょう」
 ――果して二人は本当に初対面であったろうか。
 尋常ならぬ親しさで情報を得たひかるは、更に射撃で敵を狙いやすい場所を教わると、「送ってあげる」という白兎神の背に乗り、淤岐之島へと至った。

 †

 出番を失ったと、風の精霊だけがちょっぴり頬を膨らませていたが、まき乃の處へ戻るという白兎神に手を振って別れたひかるは、島の朱鳥居から黄昏の海を見渡す。
 成る程、此處なら360度の視野を得られる上に、海水が幾らでもあると頬笑んだ可憐は、【水の精霊さん】(アクア・エレメンタル)を発動! 我が友たる水の精霊に、海面から次々と鉄砲水を射かけてもらい、フヨフヨと浮かぶ妖し蒼炎を掻き消させた!!
「ばしゃーん! と、思いっきりお願いっ!」
 然う、尽きぬ彈なれば遠慮する事も無い。
 水の精霊は海水のみならず、海岸から身洗池を辿って神社全体を取り囲み、敵がどれ程の侵入を果したとしても、諸有る水脈から消火できるようになっている。
 而して白兎海岸全体の水を掌握した精霊は頗る精強となり、
「更に水飛沫を霧状にして、怪火の発生自体も抑制してもらいますね」
 と、海上一帯に霧を発生させ、敵を大いに弱らせた。
 愈々頼りなく浮遊する海月は、今度は精霊銃『Nine Number』に装填された水の精霊に撃ち抜かれ、
「火の用心、ですっ!」
 という少女の佳聲を聽いて、冷たい波に消えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・エルフェルト
神楽耶さん/f15297と
先日の極夜の事件といい、黄昏は凶事がよく奔る

戦場を共にするのは二度目
背を預けるのは初めて
手練れの神楽耶さんと共闘出来るのは凄く嬉しい

牽制で得た時間で印を手早く結び
急々如律令奉願上候
"己以外のクラゲ全てが敵に見える"
催眠術を乗せた結界を神域の力を借り展開
同士討ちを誘発、UCを放ち
弥助の積重ねた経験を覚える

蝶から伝わる、昏い波動
終の涯まで燃やし尽くす、そんな想いを掬い取る
私達は、少し似てるのかも知れない。ね

切先に留った炎を借り([魔力溜め])、
憑紅摸に纏わせた[焼却]の焔を共鳴させる
片鱗といえど、本能寺の焔
大殿に代わり異形の弥助を介錯せんと
炎の蝶舞い飛ぶ中で劫火の刃を振う


穂結・神楽耶
クロム様/f09031と

逢魔時とは申しますが。
わざわざ禍津をのさばらせる理由にはなりますまい。
それが過去たるモノならば尚更です。
いえ、こちらこそ。
音に聞こえし仙狐式抜刀術、拝見させて頂きます。

こちらの役割は牽制と心得ます。
クロム様はどうぞ迷わずお駆けください。
まき乃様、少しばかり小高い…この辺りを見下ろせる場所はございますか?
視界を広く取りつつまき乃様をカバー。
クロム様の背中を狙う不届き者から焼き払いましょう。
おいで、【焦羽挵蝶】。
怪火に蝶の焔を重ね、諸とも涯に燃え尽きなさい。

クロム様の刀の切っ先にひとひら。
留まった蝶が力となります。
―…こんなモノに似ていない方がよかったのですけれど、ね。



 嘗て神々を戀に結んだ白兎は、此度はいかなる縁を結ぼう。
 気多之前に怪火來れりと聽き及び、行き先を同じくした二輪の花は、彊界を曖昧にする水平線に炎の群れを見ると、ほつりと科白を零した。
「――先日の極夜の事件といい、黄昏は凶事がよく奔る」
 スッと通った鼻梁を光闇の狭間に向けた儘、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)が感情の色を映さぬクリアボイスを滑らせる。
 まるで玻璃の様だと耳を澄ました穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)は、流麗な顧眄(ながしめ)に聲の主を辿って、
「……逢魔時とは申しますが、わざわざ禍津をのさばらせる理由にはなりますまい」
 其が過去たるモノならば尚更、と紅き虹彩に烱々たる光を湛える。
 共闘も二度目となれば、闘志の萌しはお互いに知れようか、クロムは肌膚に触れる凛冽の氣に狐尾をふうわと揺すり、
「手練れの神楽耶さんと再び戰場を同じく出来るのは、凄く嬉しい。な」
「いえ、こちらこそ。音に聞こえし仙狐式抜刀術、拝見させて頂きます」
 と應えた神楽耶も、漸う研ぎ澄まされる碧光の睛が頼もしいと目尻を緩める。
 次いで目線は浜辺で行き先を迷う足へ――白兎神社の巫女へと注がれると、幾許か音吐を柔かくして、
「まき乃様、少しばかり小高い……この辺りを見下ろせる場所はございますか?」
「小高い……気多岬ならば、この海岸も淤岐之島も眺められましょう」
「…………ん。あの高さなら、怪火も組み敷ける。ね」
 と、視線を揃えた時点で二人の作戰は決まった。

  †

「嘗て白兎神は負傷してこの岬に辿り着かれたそうですが、海月の島渡りは叶いませぬ」
 抑も海月は陸に上がるもので無し、と――櫻脣を擦り抜けるソプラノは鈴を振るように美しくも、科白は鋭利く嚴めしい。
 断崖の如き気多岬に屹立し、黄昏を昼に戻さんばかり照る怪火を見下ろした神楽耶は、汐風に搖れる袖より繊手を覗かせるや、その指先に【焦羽挵蝶】(コガレバセセリ)――焦色の炎で出来た蝶を集め、紫掛かる空に飜々、翩々と彩を踊らせた。
 暗く渋い赤色に白皙を照らした凄艶は、優しくも残酷を語って、
「――お往き。諸とも涯に燃え尽きなさい」
 と、繊指に海を差し示し、而して方向を得た454羽の蝶が怪火めがけて舞う。
 海面を浮波々々(フワフワ)と漂流っていた海月は、竟ぞ色の定まらぬ身に蝶の焦色を映すと、焔を重ね炎を混ぜ、軈て靜かに灼かれて――消える。
 其の儚きを長い睫を落して見届けた神楽耶は、赫緋の麗瞳を僅かに動かして砂浜へ――元の昏きを取り戻した海へ駆け出す「影」を見守った。

 斯くして神楽耶が怪火を掣肘する間に仕掛けたのはクロム。
 ひらり矢絣の袖を揺らして手印を結んだ佳人は、渚から海に向かって結界を張り、
「急々如律令奉願上候――神域の力を借り奉る」
 と、海岸を越えんとする七彩の邪に“己以外の海月全てが敵に見える”催眠術を掛け、同士討ちを誘發する。
 怪火が疑心暗鬼に炎の色を移ろわせた隙には、更に劔技で揺さ振って、
「神速剣閃、参ノ太刀――微塵に断つ」
 披瀝さるは【仙狐式抜刀術・彼岸花】――!!
 須臾に疾走した一筋がクラゲの頭と胴を別ち、同時に重ねられた太刀筋が十字を結んで躯を寸断し、更に閃いた最後の劔筋が炎を掻き消したッ!
 海上で加速した三条の斬撃が火焔を帯びたのは、神楽耶が添えた力の由縁。
 刻祇刀・憑紅摸の鋩に燈火(あかり)差す、ひとひらの蝶――その羽搏きに昏い波動を察したクロムは、終の涯まで燃やし尽くす、術者の想いを掬い取る。
「私達は、少し似てるのかも知れない。ね」
「――……こんなモノに似ていない方がよかったのですけれど、ね」
 片や白兎海岸に佳聲を零し、片や気多岬にて皮肉を零す。
 座標を違えつつも科白が重なったのは奇遇か奇縁か――とまれ、透徹の瞳に炎の繊翅を愛でたクロムは、此度は蝶が湛える炎に憑紅摸が纏いし「伽藍呑む刧火」を共鳴させて、もう一閃――ッ! 海面に横薙ぎの斬撃を疾走らせた!!
「片鱗といえど、本能寺の焔。大殿に代わり異形の弥助を介錯せん」
 其は神楽耶に背中を預けたからこそ、一縷の曇りも無く繰り出た冱撃。
 クロム様はどうぞ迷わずお駆けください、と――佳人の言葉を今一度反芻した彼女は、焦色の蝶が舞い飛ぶ中に劫火の刃を振い、弥助の霊を斬り祓ッた!
(「この熱、この炎……やっぱり、私達は……」)
 二人の炎を併せた斬撃が、赫灼と水面を明るませながら駆け走る光景は、気多岬からも十分に見えたろう。
 炎を散り散りとさせた邪が波間に解ければ、二人は再び汐風に袖を翻し、
「……弥助アレキサンダー。主君の天下布武の夢は疾うに潰えたというのに」
「仕える者を見誤った不忠者。元の主が沈む骸の海に還りなさい」
 魂を分けたなら、その全てに知らしめん、と――。
 赤き炎は畢ぞ消えず、水平線から続々と來たる漂流者を嚮導(みちび)くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

幅広の大剣にした灯る陽光のオーラに守護の祈りを込めて放ち、まき乃とうさぎにオーラ防御

まき乃に簡潔に挨拶して。
大丈夫、わたし達は怪異を倒しに来た
後方から支援お願い
あと、戦いに向く地形の浜辺を教えて?

まつりんと一緒にダッシュしクラゲに挑む
【鎌鼬】でふよふよしたクラゲをさくっと切り刻み、うさみん☆で思い切り蹴り飛ばす
怪火は第六感で感じ取りできる限り回避

当たった時に見る夢は
桜の木の下の、家族皆でのお花見
ん…もうすぐ、春
楽しくおいしい時間は、幸せ

でも、それはまだもう少し後
今はうさぎ達のダンスを楽しまなきゃ

まつりんの声が聞こえる
…お肉!

檻から出、灯る陽光でクラゲを斬り倒す


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!

因幡の国……久しぶりだね。
セイメイ、骸の海で大人しくしてるかなあ。

巫女のお姉さん、足元がしっかりしてて、陰になってる場所ありそう?
相手は怪火だから、こっちが暗闇で迎え撃てば有利かなって。
あ、これ付けててね。魔除けだよ!(ウサ耳を渡し)

よし。準備おっけ。
行こう、アンちゃん!

アンちゃんが望みに囚われたら、呼び掛け。
お肉焼いたげるから、出ておいでー!

海月がキラキラした想いを撃ってくる。
呼び出した幻影の扇で打ち払い、投射して海月を爆破する。
白兎の神様の援護も受け、弥助との絆を結び、動きを阻害するよ。

キミらとの絆は、忘れないで覚えてるから。
安心して、骸の海へ戻ってね!



 突如として浜辺に咲いた光の睡蓮が、一片ひとひらと葩弁を解く――。
 その玲瓏に瞳を奪われた巫女まき乃は、花の中から顕現(あらわ)れた更なる閃爍に、時を止められたように息を呑んだ。
 目下、彼女の眸には目映き白銀の輝きが大劔となって盾を成して、
「――大丈夫。わたし達が来たからには、この怪異を神社には行かせない」
 神楽鈴を振るような淸澄の聲。
 佳聲の主、木元・杏(メイド大戦・f16565)はスッと通った鼻梁を水平線に向けた儘、美し金瞳を流眄に、更に言を継いだ。
「あなたとウサギは後方から支援を……あと、迎撃に適した場所を教えて?」
「足元がしっかりしてて、陰になりそうな場所ってある?」
 傍らにひょっこりと現れたのは木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)。
 日向ぼっこをしてきたようなフワフワの耳と尻尾を見せた少年は、「それなら」と巫女が指差す淤岐之島を見るや、莞爾(ニッコリ)と咲んでウサ耳を取り出した。
「あ、これ付けててね」
「……これは……?」
「魔除けだよ!」
 白兎の神様の加護がありますようにと、願いを籠めて頭に添える。
 然れば祭莉は杏の手を取って白砂を駆け出し、
「――よし。準備おっけ。行こう、アンちゃん!」
「うん、クラゲが海岸に辿り着く前に止めないと」
 と、海岸から島に至るまでに見え隠れする岩礁をぴょんぴょん跳んでいく。
 和邇(わに)の背にも譬えられる石嚴を渡る様は、それこそ白兎神の島を渡る如く――まき乃は小さくも逞しい二人の背に武運長久を祈念して見送るのだった。

  †

 先の大戰で因幡の國は、山陰道の制圧に掛かった陰陽師・安倍晴明と因縁を持ったが、此處で散った彼然り、関門海峡で散った弥助然り、猟書家の幹部らは魔軍将の霊を掬っては憑装させ、徳川幕府を脅かし続けている。
「エンパイアウォーが終わった時は、この世界にも平和が訪れると思ったけど」
「京が襲われて、各地の神社が狙われて……まだまだ落ち着いたとは言えないねぇ」
 ね、と昏がりで首肯を交す双子たち。
 金銀の佳瞳は淤岐之島の岩陰から怪火を捉えると、浮波々々(フワフワ)と渚へ向かう炎の群れを側面から強襲した。
「うさみん、悪いクラゲをやっつけて」
 杏のソプラノボイスに背を押されて猛ダッシュ、凄まじい勢いで海面を疾り、殴る蹴るの超肉彈戰を繰り広げたのは『うさみみメイド・うさみん☆』。
 うさみん☆が愛らしくも凄惨な攻撃に海月の頭と胴を切り離せば、泣き別れた躯は杏の【鎌鼬】がサクサクと切り刻み、幻影の炎を火塵と散らした。
「おいらも負けてられない!」
 輕やかに嫋やかに糸を操る杏に雄渾を得た祭莉は、昏闇に幽玄の光を浮き立たせるや、【遮那王の刻印】(ウシワカ・ジルシ)――召喚した幻影の舞扇をひらりと投射すると、その射線上に位置したクラゲを一斉に爆破した!
「白兎神のご縁と弥助とを絆に結んで、動きを阻害するよ」
 爆風に炎を搖らす海月を留めるは、オトナには見えない夢色の絆。
 これなら杏も狙い易かろうと、つと眼路の際の影を見た、正に刻下――炎の残滓を頬に掠めた可憐が、怪火が編んだ幻影の檻に吸い込まれていく。
「……おとうさん……? ……おかあさん……?」
 花脣が囁(つつや)き、金瞳に搖れる玲瓏の彩は果して何を映したろうか。
 晴朗の空の下、ふわふわと櫻が咲き誇る樹幹に集まるは家族の笑顔――。敷物を広げた上には、大きな御重に詰められた美味が勢揃いし、行樂の樂しさが満ちてくる。
「ん……もうすぐ、春……楽しくて、美味しくて、幸せな……」
 噫、「アンちゃーん!」と大きく呼びかける聲が聽こえる――。
 然う、お花見はもう少し後の事。
 今は白兎神社名物、巫女と白兎の縁結びダンスを樂しまなくちゃ――。
「……真っ白な丸い尻尾が仲良く並んで……フリフリフリフリ……」
「お肉焼いたげるから、出ておいでー!」
「…………お肉!」
 ぱちくりと佳瞳を瞬(しばた)き、光を取り戻す。
 甘い幻想に捕われてはならぬ、と抵抗を示した繊手が檻を払い、掌に握る『灯る陽光』に再び白銀の燿いが戻った。
 而して刃鳴一閃ッ! 膂力いっぱい大劔を振り抜けば、衝撃波が水飛沫を蹴立てながら海面を疾走し、馥郁たる彩を花弁の如く舞い散らせながら怪火を断つ――!!
「よーしっ、アンちゃーんが戻ってきた!」
 と、見事な頭脳戰(?)で杏を幻想から呼び戻した祭莉は、またも舞扇を踊らせると、幾度と爆発を起こしては海月を絆に繋ぎ、杏へと次撃を預けた。
「キミらとの絆は、忘れないで覚えてるから。安心して、骸の海へ戻ってね!」
 約束は決して忘れず、心に繋ぎ止めて――。
 斯くして海岸と島の間で立ち回った二人は、七彩の邪を悉く海へと還すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
次から次へと性懲りの無い事だ
だが何が、何度現れようとも同じ結末を呉れてやろう

さて……協力願いたい事は2つ
可能な限り近付かせぬまま討ってしまえる様に
出来るだけ外海に張り出した場所を知りたい
それと其処に引き付けられるよう、篝火を用意して貰えるか
――後は此方で始末する

数を揃えれば勝てるとでも思ったならば余りにも愚か
嘗ての魔将軍も宿った身体に引き摺られたと見える
沖に在り、見える動きならば見切るは易い
此方への攻撃なぞ届かせはせん
――蹂刀鏖末、檻と化せ
捉えられる数は最大限に最大効率を図って範囲へと収め
1匹たりとも逃さず悉くを刻んでくれる

他を救うが目的であろうとも
今を生きるものを害するならば見逃す事は出来ん



 疆界を朧々とする水平線より來たる邪の、畢ぞ色の定まらぬ炎を見る。
 宛如(まるで)七彩の絨毯を敷くが如しと、その夥多しい数を気多之前から見下ろした鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、やけに湿気た汐風に溜息を混ぜた。
「……次から次へと性懲りの無い事だ」
 幹部を變え、憑装する霊を變え、よほど徳川幕府を嫌っていると見える。
 然し幾度この國を脅かそうと、その都度に違う結末を見せてやる程、器用でも無く――此度も徒労を味わわせるのみと睨め敷いた男は、不圖、背後に言を投げた。
「――後は此方で始末する」
 下がられよ、とその精悍に翳するは、巫女まき乃と白兎神。
 可能な限り近付かせぬうちに、厳密に言えば半径101m圏内に入った瞬間に討てるよう、外海に張り出した場所を教えて欲しい、と願い出た嵯泉は、「それなら」とこの気多岬を指に示した巫女と、「送ろう」と背に乗せてくれた白兎神に礼を言う。
 成程、淤岐之島や白兎海岸を広く見渡せる気多岬は、嘴の様に外海に迫り出しており、目下、烱々と光を湛える緋の隻眼には、渚に近付く邪の悉くが捉えられた。
「御仁は宮司に事の次第を」
「はい、お武家さまもどうかご無事で。この篝火を目印に再びお迎えに上がります」
 武運長久を祈念し、白兎神と共に神社へと戻るまき乃。
 その気配が遠ざかるまで背に配慮を置いた嵯泉は、篝火に気付いて集まり始める怪火を睥睨すると、冷然と冷厳と囁(つつや)いた。
「――数を揃えれば勝てるとでも思ったならば餘りにも愚か」
 嘗ての魔将軍も「器」に引き摺られたかと、佳聲は悪手を嘆いて。
 而して篝火に影を揺らした男は、ぶわり鏖殺の氣を發するや、胸を衝き上げる様な波動を疾らせて周囲の空気を打ち叩いた。
「――蹂刀鏖末、檻と化せ」
 時にして須臾、海面に漂流っていた怪火がふつりと消える。
 海月の頭と胴を切り離し、纏う炎を火塵と化したのは“不可視の刃”――幾何学模様を描いて飛翔した1,010本の刃が、蒼白く照る幻想を斬ったのだ。
 一瞬、其處だけ刳り抜かれた様に昏闇を取り戻した海面を見た嵯泉は、言を添えて、
「全ての巫女を救うと云ったか」
 搖れる波間に見るは、古の巫女――。
 望月鈿女は救済の為に動いているらしいが、骸の海を潜った身では叶わぬ事にて、
「……他を救うが目的であろうとも、今を生きるものを害すならば、見逃す事は出来ん」
 これまで然うで在った様に、過去の前に立ち塞(はだ)かるのみ――。
 己が役儀は此度も變わらぬ、と篝火に艶を映す佳脣が引き結ばれるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
事前にまき乃へ海岸沿いで身を隠せる場所を聞いておく
〈軍制コート〉〈アシモフゲアスの刻印〉へ俺の力を送り込み〈冥府の槍〉を唯の黒槍化
己の外見も活かし[闇に紛れ]潜伏しておこう

神楽舞で白ウサギを呼んだら海からよく見える場所で縁結びダンスを披露して貰う
篝火も共に灯し目を引くよう頼むよ
其れは所謂「囮」

誰そ彼時、己が光を発する場合周囲の闇はより深くなる
遠くには踊る白ウサギの群れと巫女
必然的に敵の意識はそちらへ向くだろう
そこへ[ダッシュ]で接近
装備に吸わせていた力を一気に解放しUCを発動し回復される前に[焼却]、殲滅を図る

不知火のようでいて全くの紛い物である海月達
ならば俺の炎で簡単に燃やし尽くせる



 紺藍の波に瀲灔と燈火を映し、やけに湿氣た汐風に流されるまま海岸に近付く怪火。
 畢ぞ色を定めぬ炎を浮波々々(フワフワ)と游がせ乍ら波打ち際に迫った七彩の邪は、熾々と然える篝火に浮き立つ浜辺に、ぴょんぴょんピョコピョコと踊る巫女と白兎の群れを視た。

 ♪ 神とてあけむ戀のみちなら 人ぞただ入りねかし
 ♪ うさぎ踊りて それ縁むすび 戀むすび

 巫女まき乃の神樂鈴に喚び召された白兎神が、裸足で白砂を踏む彼女に続いて輕やかに飛び跳ねる――これぞ白兎神社名物「101匹うさちゃんの縁結びダンス」。
 今宵の舞が何を結ぼうとは知るまいか、篝火の明るさに引き寄せられた幻想の邪火は、己こそ光源であるが故に翳影を濃く昏くさせるとは、淤岐之島の岩陰に潜んでいた黒槍が鋩を向けるまで気付く事は無かったろう。
「――誰そ彼時、己が光を発する場合、周囲の闇はより深くなる」
 而して肉薄するは影より聲。
 今こそ唯の黒槍は紺青の炎を抱く『冥府の槍』と成り、飜々と『軍制コート』を翻した鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)が、水飛沫を蹴立てて側面を強襲した――ッ!
「何處へ征く魔軍将。海月の躯では陸に上がれまい」
 佳聲は鋭利く、槍撃は猛々しく。
 己を制動していた『アシモフゲアスの刻印』の呪縛を解放し、紺青と熾ゆる炎に怪火を串刺しにした相馬は、妖しの炎を一瞬で火塵と散らせ、寄せては返す波に溶かした。
 彼は己の作戰が奏功したとは言うまいが、囮を演じた巫女と白兎神は労って、
「いい踊りだ。怪火が続々と集まってくる」
「――佳かった。これで被害が多方面に広がる事は無さそうです」
 見れば101匹の白兎神も、ふんすふんすと鼻を鳴らして誇らし気な様子。
 然し気を緩めるには早熟いと、明々と照る水平線に烱眼を注いだ相馬は、着地と同時に爪先を濡らした汀に淡然と言ちて、
「黄昏も海岸も、疆界が曖昧だ。ここは瞭然(はっきり)と“境”を示して仕舞おう」
 云うや水際に疾るは【劫火境】――黒槍を突き刺した地点から浜辺が一気に砂を噴き、同時に迫り出た青黒い火柱が峰の如く聳え立つと、陸へ上がらんとする海月の群れを悉く灼き尽した――!!
 この時の、冥府の炎に白皙を照らす男の美しきこと怖ろしきこと、
「不知火のようでいて、全くの紛い物である海月の怪火達。ならば俺の炎で簡単に燃やし尽くせる」
 漂流うだけの幻炎とは格が違う。
 怪火が纏う炎を喰い、熱を焼き、内に抱く弥助アレキサンダーの霊を浄化した相馬は、約180mの海岸線を煌々と照らし、首魁「望月鈿女」に堂々と宣戰布告するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
御同業、加勢に来た。御安心めされよ。
では、この戦……『神』に捧げん。

■令
まき乃殿、白ウサギを召喚してほしい。
此度の戦いで重要な役割を果たすことになる故。

■闘
敢えてその場からあまり動かず、真正面から行くぞ。
『心切』を片手にいざ舞わん、【八江】乃舞。
戦場のど真ん中で【ダンス】を行うぞ。

先ずは【破魔】の力を込めた見えない刃で【範囲攻撃】を
仕掛ける。その間にウサギ達に止めを刺して貰おう。
もしウサギ達の体力が減ってきたと感じられたら、効果を
回復に切り替え、癒し終わったらまた切り替える。

踊りの最中に攻撃を仕掛ける無粋者には、刀を力強く振るって
【衝撃波】を放ち、吹き飛ばす。

※アドリブ歓迎・不採用可



 劔呑の間際、浜辺に咲いた光の睡蓮が、一片ひとひらと葩弁を解く――。
 目映き花中に秘めるも閃爍か、横溢(あふ)れる玲瓏に双瞳を細めた巫女・まき乃は、己と同じ氣を帯びる男に息を呑んだ。
「御同業、加勢に来た。御安心めされよ」
 白兎神社の危急に助太刀致すと、佳脣を滑る透徹のバリトン。
 聲の主は愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)――この侍の國のとある社に仕える巫覡が、純白の袖に光を解いて現れると、間もなく視線は邪が來たる水平線へと結ばれる。
 目下、朧々たる空と海の疆界は、幻想の怪火で妖しく照っており、
「……まき乃殿、白ウサギを召喚して頂きたい」
「あっ、あの。私と兎様で敵いますでしょうか」
「それは無論。此度の戰いで重要な役割を果たすことになる故」
 不安気に震える聲を聽いたなら、スッと通った鼻梁は邪氣を離れて巫女へと向かう。
 清綱の一縷と曇らぬ黒瞳に雄渾を得たまき乃は、急ぎ篝火を焚いて素足になり、しゃんと神樂鈴を振り鳴らすや、白兎神社からぴょんぴょんピョコピョコと白兎神を喚んだ。

 ♪ 神の戀路に幸あれかし 人の戀路に福あれかし
 ♪ うさぎ踊りて それ縁むすび 戀むすび

 浜辺に白兎至り、淸々しい氣が満つのが判然るのは巫覡ならでは。
 清綱は快い空気を肺腑いっぱい吸い込むと、己もまた素足となって白砂を踏んだ。
「――夫れ『心切』を伴に舞わん、八江乃舞」
 愛刀を連れ立って踊るは劔舞【八江】――。
 其は彼が身を置く山奥で密やかに伝承されていた、邪なるモノを祓う為に行われる剣舞で、今は汐風を浴びて凛乎淸冽と、敵群を前に堂々と神氣を広げる。
 邪氣に押される儘に怪火が汀を侵したなら、清綱は彼等の無作法を罰そう。
「踊りの最中に攻撃を仕掛けるとは無粋な」
 颯然と白袖を翻し、力強く拇指球を踏み込み、ひやうと刀を打ち払う。
 然れば破魔の氣に満ちた霊力の刃が、水飛沫を蹴立てて海面を滑り、斬ッと怪火の群れを薙ぎ払った!
「――……止めをお願いする」
 而して頭と胴を別った七彩の邪が、炎の残滓となって風に泳げば、ピョコピョコと踊っていた白兎神が火塵に飛び掛かってはむはむ、渡来人・弥助の魂を美味しく頂く。
 彼等が満腹か疲労すれば、邪を斬る霊刃を癒しの霊風にする事も叶う劔舞だ。
 清綱は白兎海岸のど真ん中で舞いながら、その広い眼路に敵群と白兎の様子を捉え、
「この戰……『神』に捧げん」
 と、神々しい舞に海を浄めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『望月鈿女』

POW   :    巫覡載神の舞
対象の攻撃を軽減する【寵愛と加護を齎す海神を降した神霊体】に変身しつつ、【万象を裂く花弁を操る神楽舞、強烈な水流】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    貴方様の罪が赦されるとお思いですか?
対象への質問と共に、【対象の人生が全て書かれた巻物】から【罪状を読み上げ、罪に適した変幻自在な神霊】を召喚する。満足な答えを得るまで、罪状を読み上げ、罪に適した変幻自在な神霊は対象を【精神的に追い詰めるのに最も効果的な手段】で攻撃する。
WIZ   :    貴方様は犯した罪の数を覚えておいでですか?
【抗えない、魂を絡め取るような玲瓏たる声】が命中した対象の【喉の内部、咽頭や食道】から棘を生やし、対象がこれまで話した【嘘、食事を含む奪ってきた生命】に応じた追加ダメージを与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠雅楽代・真珠です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 嘗て第六天魔王に仕えた魔軍将、大帝剣・弥助アレキサンダーは、呪いの秘宝メガリスを手に猟兵と戰い、敢無く関門海峡に散った。今年も夏を迎えれば、先の大戰はもう二年も昔の事となる。
 「望月鈿女」が昏く冷たい海の底で事の始末を知ったのは、何時かは判然とせずとも、弥助と共に海に沈んだメガリスの、波濤(なみ)が伝える強大な力に触れた古の巫女は、かねての本懐を果すべく動き出した。
「――巫女よ、救済の刻が來ました」

 曰く、かの渡来人は破滅を齎す爲に秘宝を使った訳では無いと。
 曰く、彼は慥かに我が主君の天下布武を援く爲に使ったろうと。

 正に大禍時、空と海の疆界を混ぜる水平線に朦朧と顕現れた古の巫女は、先刻の海月と同じく海面に浮かびながら、音も無く汀に近付いてくる。
 汐風に面紗が搖れるが顔は視えず、然し囁く佳聲は鼓膜に迫ろう。
「かの渡来人が求めしは、泯滅(ほろび)では無く、救済(すくい)であったと――」

 曰く、メガリスが齎すは破滅で無し。
 曰く、呪いの秘宝は救済をも叶える。

 なれば神に捧げられる巫女らも救う事が出来ようと、舞扇に強烈な水流を連れて來たる望月鈿女は、極光を燿わせる袴から魚骨と化した半身を翻す。
 其は全き狂氣であったろう。
「今こそメガリスを手に、カミに鎖がれた乙女を解き放ちましょう」
 怪火で呪詛が辿れぬなら、水を巡らせて探ろうか。
 烏帽子を被れる女の背には、天を衝かんばかり海嘯がそそり立ち、巫女を鎖げる神社も白兎神も押し流してしまわんと、浜辺に昏く翳を落とすのだった。
篝・倫太郎
【華禱】
しょこ、ましゅと一緒に神社の兎の避難手伝って?
普通サイズでヨロシクな?

あんたにどう見えてンのかは分かった
でもそれは一方的過ぎて、救済とは縁遠い

災禍を狩るもの使用
代償は該当耐性で対処

海嘯に向かって吹き飛ばしを乗せた華焔刀でなぎ払い
水の神力で相殺を狙ってく
敵には鎧砕きと生命力吸収も乗せた一撃

攻撃には見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いで凌ぐ
敵に近接する夜彦の往く道筋は確実に確保

思わねぇさ……
俺の不在が一族の滅びの要因なのは足掻いたところで変わらない
それから目を背けるつもりはないし
嘆きも恨みも……全部背負ってく

無様晒して盾を名乗るつもりはねぇし
救済を施して貰うつもりもない
覚えときな


月舘・夜彦
【華禱】
乗っていた兎達は避難の手伝いをお願いしましょう
次の相手は猟書家、一筋縄ではいきませんからね

貴女の言う救済が死と言うならば止めねばなりません
……多くの命を奪ってきた私に言う資格はないのかもしれませんが

善人であれ悪人であれ命一つ奪えば罪となりましょう
罪を犯しても裁かれぬ者、逃れ、奪い続ける者
国が、世が裁かぬのならばと己が手で裁いてきた
彼等にも家族がいて、如何なる事情があろうとも
……軈て己が心さえ蝕んでしまおうとも

私に奪われた者が刃を向け、責めようとも
戦いを止め、後悔をすることこそ真の罪
私は、それに目を背けるつもりはない

早業の抜刀術『神風』
一撃目は神霊へ、二撃目は敵本体へ
払えば敵の懐へ向かう



「空を劈くような大時化だ! しょこの翼がもってかれちまう」
「矢張り猟書家の幹部が一角、手勢を失って引き下がる心算(つもり)は無いと」
 どろどろと暗色を混ぜる荒海を離れ、強風に砂を彈く浜辺に降り立つ。
 風の影響を諸に受けようと、ラビットグリフォン『ましゅまろ』と『しょこら』が翼を畳むのを手伝った月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は、そのつぶらな瞳に語り掛け、
「あなた達は皆さんの避難をお手伝い願います」
 白兎神社を囲む樹叢が、大津波から護ってくれようと南を指差す。
 こっくり頷いた二匹がまんまる尻尾をふりふり、ピョコピョコ駆け出せば、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は彼等のプリティーなヒップに佳聲を添えて、
「しょこ、ましゅも、普通のサイズに戻ってな? その方が風の影響を受けない」
 一瞬、振り返って耳を澄ます。
 而して「應」を頷く代わり、ススス……ッと兎のサイズに戻った二匹は、獣ならではの速さで砂浜を走り、石段を跳び上り、叢林豊かな神社へと掛けていった。

 小さな影を見送る間、二人は暴風の中に古き巫女の聲を聽いたろう。
 特に戰巫女を多く輩出した一族の血統を預る倫太郎は、全ての巫女を救わんとする想いに触れる一方、破滅を匂わせる狂氣も感じており、
「あんたにどう見えてンのかは分かった。でもそれは一方的過ぎて、救済とは縁遠い」
 猟兵として、戰巫女として、抵抗わなくてはならぬ――と華焔刀 [ 凪 ]を構える。
 時に、夜彦が「我が盾」と信を寄せる倫太郎より自ずと前に踏み出たのは、戰巫女たる彼が殊更狙われると思ったからか。碧光の睛が海面を歩き來たる暗影を射た。
「貴女の言う救済が死と言うならば、止めねばなりません」
 島を渡る事は許さぬと、右手が愛刀『夜禱』に向かう一方、喉が閊えたとは云うまい。
(「……多くの命を奪ってきた私に、斯く言う資格はないのかもしれませんが」)
 自責の念ごと踏み締め、間もなく迫り上がる海嘯を見た夜彦は、一氣に闘志を漲らせた倫太郎と共に、天を搏つ波濤に正対するのだった。

 古の巫女「望月鈿女」の御前に居られるのは、穢れなき𡢳嬬(おとめ)のみ。
 面紗越しに倫太郎と夜彦を捉えた妖巫は、血色失せた細指に二巻の巻物を取り出すと、自ずと浮き上がる文字を――彼等の生に刻まれる“罪”を読み上げた。
『あなた様方の罪を御見せしましょう』

 一、己の不在により故郷が滅び、唯ひとり生き長らえた者に、一族の恨みを。
 一、世が裁かぬならと己が手に裁いた者に、遺された家族の恨みを。

『夫れ神霊よ波濤と結ばれ罪穢(つみ)を象り奉れ』
 飄ッと面紗が汐風に揺れた瞬間、壁とそそり立つ津波が人の形を成す。
 哀惜、怨嗟、憤懣、瞋恚……諸有る表情を模った人形が大海嘯となって押し寄せるが、二人は怖氣もせず、躊躇いもせず、濡れた白砂を蹴って立ち向かった――ッ!
「これまで向き合ってきた事だ。今更、目を背けるつもりはねぇよ」
 たばしる水飛沫に頬を打ちながら突き進む倫太郎は、【災禍を狩るもの】(ワザワイヲカエスモノ)――焔、水、風の三種の神力に我が身を強化し、華焔刀を振り被る。
 限界を僅かに超えた先にある“カミの力”を降ろすは、戰巫女ならではの、正に神業。
 膂力いっぱい薙ぎ払い、「災魔を喰らう水の神力」を乗せた斬撃を水の壁に叩き付けた彼は、我が身を掴み掛る巨腕を斬り捨て、どろりと人型を崩した!!
 次の瞬間、波濤の切れ間で顔を突き合わせた望月鈿女は大いに喫驚して、
『ッッ……これで貴方様の罪が赦されるとお思いですか』
「思わねぇさ……俺の不在が一族の滅びの要因なのは、足掻いたところで変わらない」
 嘆きも、恨みも。
 もしか在り得たかもしれぬ命も。
 この身に流れる血に預り、全て背負っていく。
「無様晒して盾を名乗るつもりはねぇし、救済を施して貰うつもりもない」
 覚えときな、と切れ長の麗眸に妖巫を睨め据える倫太郎。
 罪を見せられた彼が幾許にも冷靜だったとは今に判明ろう。
 倫太郎が迫り来る海嘯に盾を成しつつ、夜彦の往く道筋を確実に確保しておいたとは、妖巫も翡翠と輝ける双眸と視線を結んだ刹那に気付くが――遅刻い。
「無論、善人であれ悪人であれ命一つ奪えば罪となりましょう」
『――ッ!』
 罪を犯しても裁かれぬ者、逃れ、奪い続ける者。
 國が、世が裁かぬのならばと己が手で裁いてきた。
 彼等にも家族がいて、如何なる事情があろうとも。
「……軈て己が心さえ蝕んでしまおうとも」
 どろ、と崩れる水の塊を駆け上がった夜彦は、第二波とせり上がる津波が道を塞ぐより早く、抜刀術【神風】――ッ! 全き納刀状態から神速の斬撃を疾らせ、望月鈿女が持つ二巻の巻物をはらりと切り裂いた!!
 妖巫の手を離れた“罪状”が荒き渦動に呑まれゆく中、彼は須臾に二の撃を払い、
「私に奪われた者が刃を向け、責めようとも、戰いを止め、後悔をする事こそ真の罪」
『くっ、――ッッ!!』
「私は、それに目を背けるつもりはない」
 眞直ぐに注がれた星眸(まなざし)は、玲瓏の彩を湛えて烱々煌々。
 その眼路では、空さえ斬り裂く刃が水壁を突破し、海骨竜を印した袖を断った!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・ひかる
あー、案外いますよね。
こういう「私の解釈はこうです」って押し付けてくる人。
話の通じる相手でも無いようですし、迷惑な救済の押し売りにはお帰り願いましょうか。

声を媒介にして攻撃してくるのであれば、対策は容易です
【本気の風の精霊さん】発動
まず半径100m以内に嵐を起こしてもらい、轟音で声を遮断
その上で敵を範囲内に捉えたなら、その周囲の空気を遮断して真空の檻に閉じ込めてもらいましょう
空気さえ遮断してしまえば、声を届けることもできないはず
あとは精霊銃の冷凍弾をありったけ撃ち込んで攻撃です

生きるための殺生すら罪とし、救済を押し付ける……なんて傲慢
大自然の循環の前では、滅びも救いも些事でしかないというのに



 嘗てない大時化だと、危險を感じた白兎神が淤岐之島に迎えに來る。
 その背に乗ってぴょーんと一躍(ひとっとび)、本島の海岸へと向かった荒谷・ひかる(精霊寵姫・f07833)は、轟々と呻る渦動の中に望月鈿女の聲を掠めた。
 玻璃と震える玲瓏の聲が宣べ伝うは救済――。
 蓋し鼓舞を極限まで窮めた少女には、随分と差勁(ちゃち)に聽こえよう、
「あー、案外いますよね。こういう『私の解釈はこうです』って押し付けてくる人」
 うんうん、と精霊達と首肯を合わせて浜辺の白砂に着地する。
 話の通じる相手でも無かろうと、荒波の上を歩き來たる妖巫の面紗を眺めたひかるは、白兎神に出番を取られてむくれていた風の精霊に、今こそお願いをした。
「風の精霊さん、迷惑な救済の押し売りにはお帰り頂きましょうか」
 毅然とお断りしましょう、と凛然を萌す少女を隣に煥發するは【本気の風の精霊さん】(ウインド・エレメンタル・オーバードライブ)――!!
 任せろと胸を叩いた風の精霊は、半径100mの円周上をグルグル駆け回って嵐を起こし、風の厚みと轟音で外部の音を遮断する。
「声を媒介にして攻撃してくるのであれば、対策は容易です」
 音とは波形なのだから、と言を足すひかるの聲こそよく聽こえよう。
 少女ながら頼もしい言を聽いた白兎神は傍らで丸くなると、次いで彼女の「お願い」が現象として結ばれる光景をのんびりと眺めた。
「そして、空気を遮断すれば、どんな声も届けることはできない筈です!」
 風の精霊が本氣(マジ)になれば、空氣を操るも自在。
 半径100m円上の猛風の壁に、望月鈿女の接近を捉えた風の精霊は、ひかるが望む通りに周囲の空氣を遮断して、古き巫女を真空の檻に閉じ込めた!!
「これ以上は進ませませんっ!」
 間隙を許さず精霊銃『Nine Number』の銃爪を引く!
 面倒見の良い氷の精霊は既に内部で待機しており、やっとの出番だと彈き出された其は強烈な冷凍彈となって望月鈿女へと飛び込んだ――!!
『ッッ、海神の加護を……――!!』
 舞扇に海流を操って壁を作らんとするも、波が暴れて叶わぬ。
 案の定、真空状態で水が脱氣を始めたのだろうと、次いで其は凍りゆくだろうと、妖巫に從わず自然變化する海を見詰めた儘、少女は靜かに言ちて、
「生きるための殺生すら罪とし、救済を押し付ける……なんて傲慢な。大自然の循環の前では、滅びも救いも些事でしかないというのに」
 佳脣を滑る科白は淸澄にして嚴然と。
 末尾に溜息を置く代わり、鋭利い銃聲が言を結んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

ああ、アタシは確かに多くの罪を犯してきた。大事に育った家も捨てたし、今まで倒した敵にも縁ある者もいただろう。・・・それが何だっていうんだい?罪を背負って生きて行く覚悟はある。縁無きアンタに断罪される謂れはない。

敵の攻撃は【オーラ防御】【見切り】【残像】で耐える。そして強い意志で【気合い】を込めて同士たる真紅の騎士団と共に【串刺し】【怪力】で渾身の槍の【2回攻撃】の連撃を決める。アタシ達は家族支え合って未来に向かって進まねばならないんだ。過去に歩みを止められる訳にはいかないよ!!


真宮・奏
【真宮家】で参加

初対面の人を裁くのは筋違いです。幾ら罪を知る能力があるとしても他人の人生に干渉するのは救いではありません。

確かに私は護るといっておきながら、お父さんを護れませんでした。今まで戦って来た戦場も救えなかった命もあります。でもその失われた命と痛みを背負って私は生きるんです。これ以上失われる命を減らす為にも!!

【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で防御を固め、神霊体の攻撃に耐えながら、【2回攻撃】を併せた彗星の剣で神霊体と本体を纏めて攻撃します。貴女の言う救いは押し付けに過ぎない。人は、自分で歩む道を決めるんです!!


神城・瞬
【真宮家】で参加

貴女の目から見れば、私達は罪に穢れているから救済すべきと映っているんでしょうね。でもそれは貴女の理屈であってその一方的な救済は受けいられるとは限りません。貴女は過去。ここにいる人達は未来ある人達なのですから。

母さんと奏が神霊体に足止めされてますので前の抑えは僕がやりましょう。高速で動くので【結界術】の展開は無理ですね。【マヒ攻撃】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を併せた【誘導弾】で狙います。敵の攻撃は【オーラ防御】【第六感】で凌ぎ、【武器落とし】【吹き飛ばし】を併せた疾風閃で攻撃。人を惑わせて救済とは傲慢な。さあ、退場してください!!



 ごうごうと、遠雷の如き海鳴が聽こえる――。
 吹き荒ぶ汐風に只ならぬ妖氣を感じると、烱々と冱ゆるオッドアイを昏闇の海に注いだ神城・瞬(清光の月・f06558)は、時を同じくして不穩な氣配を感じた真宮・奏(絢爛の星・f03210)が、神社の境内から走り来るのを迎えた。
「大時化になりましたね。この砂浜も今に呑まれるでしょう」
「矢張りというか……手勢を撃滅しただけでは諦めてくれないようで」
 戰線を下げなくては、と視線を結んだ頃合いに聲が飛んでくる。
 淤岐之島の岩陰で戰っていた真宮・響(赫灼の炎・f00434)が、狂濤に呑まれゆく岩礁を伝いながら戻ってきたのだ。
「この距離から津波を叩き付けられちゃ敵わない! 白兎神社の樹叢が多少は食い止めてくれるだろうけど、そう何回も持たないよ!」
 張り上げて漸ッと聲が届く程の暴風と海鳴り。
 蓋し轟然と呻る潮騒には、玻璃の震えるような玲瓏の聲も聽こえたろう。

 ――カミに鎖がれし𡢳嬬(おとめ)に救済を。

 巫女よ解き放たれよと宣べ伝うは、戰巫女の祖・望月鈿女。
 嘗て人柱として海神に捧げられたという古の巫女と、その背に壁と迫り上がる大海嘯を仰いだ三人は、たばしる水飛沫に頬を叩きながら汀に立ち、
「……あの波濤(なみ)は此處で止めるよ。一度たりとも海水に浸らせるもんか」
「ええ、抑えは僕が預ります。二人は牽制を敷く間に本体へ攻撃を」
「はいっ、海神と共にお帰り頂きます!」
 と、其々に赤熱する竜槍を、信念に燿う劔を、透徹の杖を構えて開かるのだった。

  †

 此度の猟書家は、唯だ津波で押し叩く事は爲ない。
 面紗越しに刃を構える二人の女性を俯瞰した妖巫は、蒼白い指に二巻の巻物を開くや、其處に浮かび上がる文字を――“罪状”を読み上げた。
『……貴方様は、貴方様の罪が赦されるとお思いですか?』

 一、愛する者を選んだが故に、他を放り、斬り捨てた罪を。
 一、護ると誓いながら、その手に命を零してきた罪を。

『貴方様の罪穢(つみ)が生んだ“業”を御見せしましょう』
 云うや、背に聳え立つ波濤が人の形を成す。
 其は響を大事に育てながら手放す事となった家族の嗟嘆を映し、或いは響の亡夫であり奏の亡父である男の苦悶を映し、更には幾つかの戰場で護りきれなかった者達の絶望が、峰と連なって押し寄せた――!
『夫れ神霊よ波濤と結ばれ罪穢(つみ)を浄い奉れ』
 變幻自在の神霊は、圧倒的水量を以て視覚的にも精神的にも母娘を追い詰めるが、ドロドロと巨腕を伸ばす人型の海嘯は、結界術で我が身を護った瞬が抑え込もう。
「――貴女の目には、罪に穢れた私達を救済すべきと映っているんでしょう」
 次々と伸び出る巨腕を断つは【疾風閃】。
 雪白の繊指に持てる『六花の杖』を一振り、黄昏時にも閃爍(きら)めく雪華を連れ立って疾った衝撃波は、流体である筈の水を見事に切り裂く――!
 人型の海嘯がどろりと崩れて水の塊に戻れば、瞬は凛乎と聲を張り、
「然し其は貴女の理屈。人が如何な罪を抱えていようとも、一方的な救済を受け容れるとは限りません」
 貴女という過去が、未来に向かって今を生きる人達を惑わせてはならない――と。
 罪が視える故の傲慢を示した瞬は、更に凍てつく衝撃波を一閃ッ、
「さあ、退場してください!!」
 此度は水の塊を無数に切り裂き、細かな霧状にして吹き払うのだった。

 而して瞬が抑えてくれたお陰で、響も雄渾を得たろう。
 美し紫瞳は、嘗ての家族の失望の表情を映して猶も光を失わず、
「……ああ、アタシは確かに多くの罪を犯してきた。視えてなかった訳じゃない」
 箱入り娘として大事に育ててくれた家を捨てた。
 戰に明け暮れる中、倒した敵に縁ある者も居ただろう。
「――それが何だっていうんだい?」
 信念を籠めて答える。力強く語尾を持ち上げる。
 罪を背負って生きる覚悟を決め、自身の選択が齎したものも聢と受け取ってきた響は、縁無き者に断罪される謂れはないと、『ブレイズランス』を振り被った!
『ッ!!』
 影が二重に視えたのは錯覚では無い。
 響の背より続々と顕現れたのは【真紅の騎士団】――目下、槍や劔を構えた真紅の鎧の騎士が101騎、気合いに満ちた鯨波に神霊を揺るがし、轟然と襲い掛かる人型の波を赤熱の刃に斬ッた!
 何より彼等を指揮した響こそ懸瀑万丈の闘氣を迸發(ほとばし)らせており、
「アタシ達は家族支え合って“未来”に向かって進まねばならないんだ!」
『……ッッ、神霊を斬るなど……!!』
「何の縁もない“過去”に歩みを止められる訳にはいかないよ!!」
 と、張り上げた佳聲が暗雲を祓う如く澄み渡る。

「……ひとつ言えるのは、初対面の人を裁くのは筋違いという事です」
 瞬が海嘯を吹き払い、響が神霊を断ち裂く中、奏も凛乎と反駁を示す。
 母譲りの紫瞳は煌々と、面紗に覆われた妖巫を真直ぐに見詰め、
「幾ら罪を知る能力があるとしても、他人の人生に干渉するのは救いではありません」
 慥かに己は父を護れなかった。
 今まで戰って来た戰場でも、救いきなかった命がある。
 護りたかった命が熱い血を流して冷めていく感触は、今でもこの手にあるのだと、白磁の繊手を握り込めた奏は、『ブレイズセイバー』に渾身の魔力を籠めた。
「失われた命と痛みを背負って私は生きるんです! ――これ以上、失われる命を減らす為にも!!」
 力強く語る裡に、繊麗の躯の周囲に浮かぶは101本の銀刃。
 奏の意志を注がれた聖劔は、一縷の曇りもなく身を輝かせると、少女に握られる本体が示す方向に鋩を揃え、一斉に放たれる!
『ッッ、ッ――!!』
 押し寄せる水の壁を貫穿して推進した【彗星の剣】は、二巻の巻物を切り裂くと同時、血色の失せた掌を突刺して血潮を迸らせた――!!
「貴女の言う救いは押し付けに過ぎません! 人は、自分で歩む道を決めるんです!!」
 諸有る色を混濁させる黄昏に、決して色を移ろわせぬ奏の佳聲が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
滅びだ、救いだと知るか、んなモン。
弥助アレキサンダー、覚えてるぜ。主君である信長の為に戦った戦士。
手強い相手だ。忘れるかよ。

俺の罪?コソ泥として飯やちょっとした品を盗んだ事?それとも言葉巧みに騙して、細工した石ころを高値で売りつけた事か?
美人相手に唆して一晩の宿を手にした事?…それとも、自分の命惜しさに親友を殺しちまった事か?
ああ、俺もハッキリ覚えがあるぜ。今更、読み上げられる必要もねぇぐらいだが。
罪が赦されると思うか、だっけ?ハッ、なら俺の答えはこうだ。
『知るかよ、クソッタレ』(中指立てて)
二丁銃で神霊に銃撃。【クイックドロウ】とUCで吹き飛ばすぜ。
俺の罪の処遇を決めるのはアンタじゃねぇよ。



 どうどうと怒り猛る濤聲が耳を掩い、暴風が飛沫を叩き付ける――大時化。
 常人なら目も開けていられぬ巻波に正対したカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、砂濱を打つ嵐に混じる玲瓏の聲に鋭く耳を澄ませた。
『――嘗て貪欲の海を渡りしもののふは、この國に秘寶の力を知らしめました』
「噫、弥助アレキサンダーだろ。覚えてるぜ」
 主君である信長の爲に戰った戰士だ、と口が衝く。
 それもその筈、カイムは先の大戰で弥助を馬関で下しており、彼が携えた秘寶の力と、決して揺るがなかった忠誠心は未だ記憶に新しい。
「……手強い相手だった」
 先刻に撃ち抜いた怪火には彼の霊が憑装されていた樣だが、今の比では無かったと――小気味良く艶笑を湛えた紫瞳に猟書家「望月鈿女」を映した麗人は、面紗に顔貌を覆った妖巫が一巻の巻物を取り出す儘に任せる。
『かの秘寶が齎すは泯滅(ほろび)で無し、救済(すくい)の手と成り得たでしょうに、貴方様はかの渡来人と共に海の波濤に隠してしまわれたのです』
 広げた巻物に文字と浮かぶは、カイムの人生にして刻まれた罪穢(つみ)。
 玲瓏の聲が“罪状”を読み上げれば、妖巫の背を優に越える津波が巨壁と迫り上がり、神霊に結ばれるや彼と因縁ある者の輪郭を成した。
 瞋恚、欺瞞、怨恨……諸有る相を浮かべた人が峰と連なる水魔の壁を仰いだカイムは、怖氣るよりその再現性に驚いて、
「――ああ、俺もハッキリ覚えがあるぜ。今更、読み上げられる必要もねぇ」
 と、罪状の読み上げる聲に艶やかなテノール・バリトンを重ねた。

 一、コソ泥として飯やちょっとした品を盗んだ事。
 一、言葉巧みに騙して、細工した石ころを高値で売りつけた事。
 一、美人相手に唆して一晩の宿を手にした事。

「――それから、自分の命惜しさに親友を殺しちまった事か?」
 一体一体の虚像に記憶を結ぶ中で、妖巫の真後ろに聳え立った者の表情を見詰める。
 噫、あの時の儘の顔貌をしている――と、その精巧な造りに感嘆さえ覚えたカイムは、「Bravo!」と両手を麗顔の前に、差し出した須臾に中指を立てた。

「罪が赦されるかって? ――ハッ、知るかよ“クソッタレ”」

 罪が赦されるか、浄われるか。
 滅びだとか、救いだとか。
「――知るか、んなモン」
 答えとして決然と中指を立てて見せた両手は、いつの間にか『双魔銃 オルトロス』を握り込めており、1/101秒なる神速で一斉射撃――ッ! 怪火と化した弥助にも手向けた【銃撃の協奏曲】(ガンズ・コンチェルト)を奏で、人型を成す海嘯を吹き飛ばした!
 疾ッとたばしる水飛沫に頬を叩いたカイムは、どうろりと崩れた虚像が海水に戻る迄を見届け、
「少なくとも、俺の罪の処遇を決めるのはアンタじゃねぇよ」
 と、濡れそぼつ前髪の奥、一縷と光を失わぬ紫瞳に妖巫の喫驚を映した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
クロム様/f09031と

それがあなたの罪……
いいえ、恐れている未来ですか。

だとしても、そこを突かせるわけには行きませんね。
神威同調、憑焔開始──
速度に特化した刀神状態なら介入は容易です。
召喚された神霊からクロム様を庇います。
焔を放てば少しの時間は稼げるでしょう。

ね、クロム様。
故郷のすべてを失くしたわたくしにあなたの痛みを分かるとは言えません。
けれど。
見えてなかったものが見えたなら、選択は変えられます。
あなたが今からどうしたいのか。
それはクロム様にしか分からないでしょう?
それとも、そこで泣いて蹲っているのがあなたの「したい事」ですか?

…泣くほど嫌なら目を背けたっていいのに。
不器用なんですね。


クロム・エルフェルト
神楽耶さん/f15297と

上泉武蔵守信綱を斬る
彼は最早生ける者に害為すモノ、斬るべきもの

お師様を斬る
だって、剣聖の名を穢させたくない、これは恩に報いる為

じいじを
……やめて
揺らいでしまう
あの日から走り続けた足が止まってしまう
育ての親を斬りたい子が何処に居ると言うの

お師様を嫌いになれないと
泣きじゃくる幼子の心を見つける

神楽耶さんの言葉に弾かれる様に顔を上げる
彼の魂を、武士の名誉を守れ
痛みも悔いも絶望も
咎は黄泉比良坂の先まで背負っていく
覚悟は決まった

迷いの波濤は凪いだ
涙はその儘にUCを発動させ
流水に逆らわず
勢いを刀身に巻き込むよう利用し
水面を駆け巫女を斬る

いつか世の涯てで
裁きの劫火に灰と散っても



 遠雷の如き海鳴が轟き、怒り猛る暴風が砂濱を叩く白兎海岸。
 たばしる飛沫を浴びつつ、猶もその汀に立ち開かったクロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は、荒き濤聲と共に迫り上がる海嘯に見覚えのある“影”を視た。
「――――じいじ」
 凡そ色を揺らさぬ冱藍の佳瞳が光を波打ち、震える櫻脣が懷しい音を零す。
 ぎゅうと襟の合わせを摑んだクロムに暗翳を差したのは、嘗て幼狐を拾い、劔を授け、道を説いた「大胡秀綱」を名乗る老剣豪――悪しき神霊が波濤と結んで模った虚像だ。
『其こそ貴女様の人生、貴女様の罪穢(つみ)を受くに相應しい者の姿』
「――……やめて」
 古き巫女・望月鈿女が一巻の巻物をするり紐解いて読み上げるが、嚴しくも丁寧な稽古や日々の食事、そして折に匂わせた血の馨さえ鼻を掠めては、「あの日」から走り続けた足が止まってしまう、揺らいでしまう、と佳聲は孱細(かぼそ)く滲む。
 クロムは眼前の像に抗うように『刻祇刀・憑紅摸』の鋩を白砂へ突き刺し、幾度と己が胸に刻んだ誓いを音にして確かめるが、果して震えは止まろうか。
「お師様を斬る。上泉武蔵守信綱を斬る」

 彼は最早生ける者に害為すモノ、斬るべきもの。
 彼が得た「剣聖」の名を穢させぬには、其を穢した彼を斬らねばならぬ。

「……これは、受けた恩に報いる爲……ッッ」

 而して同時に、齢八で道を得た幼狐が必死に袖を引っ張っている。
 噫、嗚呼、お師様を嫌いになれないと。
 あなたもそうでしょうと、胸が張り裂けそうな程、大きな聲で泣きじゃくっている。

「育ての親を斬りたい子が何處に居ると言うの」
 師を、恩人を、育親(しとねおや)を、じぃじを。
 老剣豪の刀の構えまで写し取った水魔を前に項垂れた狐尾の劔士は、翳差す顔に幾許の色を湛えていたろう。「剣客斯くあるべし」の教えが巻波に叩き付けられて濡れる。

「それがあなたの罪……いいえ、恐れている未来ですか」
 時に、気多岬より海岸を俯瞰した穂結・神楽耶(あやつなぎ・f15297)には、クロムの花車な躯がより小さく、秘められし心の襞が濡れゆくまでも視えたか判然らない。
 蓋し何方も狂濤に呑ませはしないと、昏闇の空に紫かかった暗赤色を過らせた佳人は、“結びの片割れ”を繊指に誘い、その羽搏きを掌に包んで胸元へ寄せた。
「神威同調、憑焔開始――咲き誇れ、我が渇望」
 黒焔蝶『結火』を己が内に宿した神楽耶は、あたらしき戰守神へ――諸有る焔を從える無名の刀神と成り、迅く速く、瞬間(たまゆら)の先へと飛び疾ッた!
「仇波と結ばれし神霊よ、輕々しくクロム様に触れさせはしない」
 芙蓉の顔(かんばせ)にゆうらと燄を差すは、【深緋華裂】(コキヒバナサキ)――。
 老剣豪の影を得た神霊が、海嘯で模った刀を振り下ろした瞬間、赫々と照る白銀の刃を一閃した刀神は、斬ッとその巨腕を断って水の塊に還す。
 斬撃と共に広がった破滅の焔が水魔を灼く間、佳聲は優しく囁いて、
「ね、クロム様。故郷のすべてを失くしたわたくしに、あなたの痛みを分かるとは言えません。――けれど、見えてなかったものが見えたなら、選択は変えられます」
「……見えてなかった、ものが……見え、た……」
 丁寧に綴られる一語一音が、一片ひらひら、焔の華と舞う。
 そのひとつひとつを耳に拾い、鼓膜を震わせたクロムは、砂濱に突き立てた冱刀の柄を強く強く、悴む程に握り込めた。
「あなたが今からどうしたいのか。それはクロム様にしか分からないでしょう?」
「……ッッ、ッ……」
 然うだと肩に力が籠もる。
「それとも、そこで泣いて蹲っているのがあなたの『したい事』ですか?」
「……ッッ……」
 違うと頭(かぶり)を振る。
 刀神が語れる科白を己が内に幾度と反芻し、而して彈かれる様に顔を上げたクロムは、濡れて束となった前髪の奥、湖水の如く澄み渡る藍瞳に決然と光を湛えた。

「秀綱の娘よ。彼の魂を、武士の名誉を守れ」
 痛みも悔いも絶望も。
 咎を黄泉比良坂の先まで背負って征け。

「――迷いの波濤は凪いだ」
 覚悟は決まったと、頬を叩く繁吹も涙もその儘に『刻祇刀・憑紅摸』を抜いた佳人は、【覚醒・壬妖神剣狐】(シキ・ソク・ゼ・スイ)――我が情動を無に還し、濡れた爪先に白砂を蹴るや、再び壁と迫り上がる海嘯に向かって疾った。
 一陣の風に射干玉の髪を踊らせた神楽耶は、水面を駆け征く狐尾に麗瞳を結んで送り出したろう。
「……泣くほど嫌なら目を背けたっていいのに。不器用なんですね」
 何と眞直ぐ見る事かと、丹花の脣はあえかに端を持ち上げたか。
 刀神が見守る背中は、怒涛と押し寄せる流水に逆らわず、轟然と降り懸る波濤(なみ)の勢いを刀身に巻き込みながら、「無煩天」へと至った斬撃を叩き付ける――ッ!
「明鏡止水。――識即ち既に遂ぐ」
 而して極致を開いた瞳には、唯だその“結果”が映るのみ。
 神霊が模りし老剣豪を両断した斬撃は、更に龍尾の如く衝撃を疾らせて海嘯を分かち、畢に望月鈿女へと至ると同時、妖巫が持つ巻物を斬って捨てた!!
『ッッ……豈夫(まさか)……このような事が……ッ!!』
 はらりと巻物を落す古の巫女。
 その面紗に、濤と繁吹く血が斑を染ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
ロベルタ(f22361)さん。
家訓や仕来りや掟などは一種の呪いなのだと今は考えます。
周囲に小さい頃から心に刻まれて一生逃れられない呪詛だと。

食事とは生を受けた者達がその生を維持する為の必須なもの。
嘘はその大半は人を傷つけるものですが全てがそうではない。
…かつでは貴女もわかっていたことでしょう?

浜辺から祖の方まで刃が届くか心配ですね。
しかし【黄泉送り『彼岸花』】を『兼元』で波ごと斬ってみます。
身体のリミッターを解除して限界突破で威力を底上げを。
斬撃に破魔の力と鎧防御無視と貫通攻撃の力を籠めます。

目を瞑り深呼吸。改めてあらゆる雑念を排して柄を握ります。
ただ一点。この世界から…呪いから解き放つため。


ロベルタ・ヴェルディアナ
墨ねー(f19200)と。
身体のパフォーマンスを上げてから封印を解除して。
限界突破後に多重詠唱しつつ助走つけて海に飛び出す♪
波でも神霊でも戦巫女さんでも…僕は全力で蹴りこむよ。

罪とか言われても僕には今一よくわからないよね。
だって食事は人だけじゃなくて獣も水中生物もしてるねぃ。
あのオブリビオンだって負の感情を糧にしているんだよ?
祖のねーちゃんは食事しなくても平気なんだじょ?

罪を赦すかどうかはその後で決まるんじゃないかな?
誰だって大小はあるだろーけど罪はするものだと思うよ。
大事なのはその後でどう反省して生きたか…じゃないのかな?
って友人のダンピールのちっこいねーちゃんがいってたんだけど。



「墨ねー、早くはやく! 大波に押し流されちゃう!」
「……遂、に……来ましたね……。……古の巫女……」
 荒ぶる巻波に見え隠れする岩礁をピョンピョンと飛び伝い、淤岐之島から海岸に渡った浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は宛ら因幡の白兎のよう。
 彼女の花車が狂濤に攫われぬよう、着地と同時に抱き留めたロベルタ・ヴェルディアナ(ちまっ娘アリス・f22361)は、悪魔と化した海の向こうに妖巫の影を捉えた。
 可憐は墨にピッタリとくっついた儘、スッと通った鼻梁を影に向けて囁き、
「墨ねーも聽こえる? さっきから聲がするんだじょ」
「……はい……島を……渡る……間……、ずっと……」
 墨もその音吐を辿るように視線を同じくする。
 目下、大時化に怒り猛る濤聲に紛れ、耳を掩うは玲瓏の聲――。
 戰巫女の祖にして、今は猟書家の幹部を預る「望月鈿女」は斯く宣べ伝えよう。

 曰く、貴方様は貴方様の罪穢(つみ)を識りましょうか。
 曰く、犯した罪穢の数を覚えておいでですか。
 曰く、その罪穢が赦されるとお思いですか。

「うー? 罪とか言われても、僕にはイマイチよくわからないよね」
 ことりと小首を傾げるはロベルタ。
 其は十歳(ととせ)の祝いを終えたばかりの幼さや、元の世界の記憶を失っているからではなく、投げ出された理不尽の世界で、虚飾ない現実と真実を視たからだろう。
 幾多の残酷を見て猶も曇らぬ青瞳は、昏い影を見詰めて、
「たとえば食事は、人だけじゃなくて獣も水中生物もしてるし、あのオブリビオンだって負の感情を糧にしているんだよねぃ?」
 骸の海より滲出する過去は、存在するだけで現在(いま)を喰い破る。
 喰わずして生きる者など居ないと、己も「食べて」きた事を思い返しながら古の巫女を見たロベルタは、何色も混ぜぬ玻璃の如きクリアヴォイスで言った。
「祖のねーちゃんは、食事しなくても平気なんだじょ?」
『――……わたくしの……食事……』
 嗚呼、嘗て人であった頃、己も食事で命を頂いたろう。
 特に人柱として海神に捧げられる前夜は、特別の馳走を得たと記憶を蘇らせた巫女は、あれは己を捧げた者達の罪のあらわれであったかと、不覚えず玲瓏の聲を止める。

「……食事とは……生を受けた者達が……その生を維持する為に……必須なもの……」
 妖巫に代わって言の葉を紡ぐは墨。
 波濤に打ち消されそうな程に孱細(かぼそ)い佳聲は、然し妙に透徹(すみわた)り、海神を降した神霊体を、舞扇が操る怒涛を揺るがしていく。
「嘘も……そうです。嘘は……その大半は……人を傷つける、ものですが……全てが……そうではない……。嘗ては……貴女も……わかっていた……こと、でしょう……?」
『――ッ』
 墨は口より出るもの、口より取り込むものに極めて敏感だ。
 穢れの烙印を押され勘当された墨は、重苦しい仕来りから解放された今こそ、家訓や掟などを「一種の呪い」と考えるようになった。
 それらは幼少から周囲によって心に深く刻まれ、一生逃れられない「呪詛」となると、鎖された世界より解き放たれたからこその言が、途切れ途切れながら妖巫に迫る。
 望月鈿女はこれを否定して、
『現世の巫女よ、貴方様はわたしくこそ目盲(めし)いたと言うのですか』
 時に漸ッと激しい水流が砂濱を叩くが、美し二輪の花は押し流されぬ。
 たばしる波飛沫に叩かれて猶も屹立した墨とロベルタは、ぎゅっと繊手を握り合うと、手を離した瞬間に――出た。
「……道を……作ります……。……征ってくれますか……?」
「う! もっちろん! 波でも神霊でも戦巫女さんでも、僕は全力で蹴りこむじょ♪」
 先ず、心快い返答を得た墨が踏み込む。
 濱辺から戰巫女の祖までの距離を確認した佳人は、必ず刃を届けんという信念に疑念を払うと、黒石目塗りの鞘より『真柄斬兼元』の互の目刃を顕現す。
 神氣が暴かれるなり、目を瞑って深呼吸。
 諸有る雑念を排して柄を握れば、『兼元』は森羅万象の物質を断つ切れ味を得よう。
 全身に漲る破魔の力を籠め、刀文を輝かせた墨は、黄泉送り【彼岸花】――!!

「……波濤(なみ)ごと……、散れ……」
 唯だ一点。
 この世界から、咒詛(のろい)から、解き放つ爲に――。

『ッッ、豈夫(まさか)……輪郭無き水流を断つことなど……!!』
 面紗の下で妖巫は幾許にも喫驚したろう。
 波打ち際より放たれた斬撃は荒ぶる巻波を組み敷いて疾り、迫り上がった瞬間の海嘯を斬ッと断ち切るや、我が懐に迫って舞扇を真っ二つに別ッた!

 而して波間に消える舞扇を惜しむ間も無い。
「やったね、道が見えたじょー!」
『ッ!!』
 次いで爪先を彈いたのはロベルタ。
 爪先が濡れるも構わず海面を駆けた少女は、墨の斬撃によって別れた波濤(なみ)の間に直走って跳躍ッ! 舞扇を落した直後の望月鈿女を眼下に敷く。
 丹花の脣は諫めるでなく諭すでなく、柔かく告げて、
「罪を赦すかどうかは、その後で決まるんじゃないかな?」

 誰だって大小はあるだろーけど罪は犯してしまう。
 間違うことも、見失うことだって、ある。
 これまでも、これからだって!

「大事なのはその後でどう反省して生きたか……じゃないのかな?」
 而して語る最中にも振り上がる脚は、はつはつと音が出る程の凄まじい紫電を帯びて、【雷神の大槌】(ミョルニル・ハンマァー)――ッ! 断頭台の如く墜下した!!
『ッ、ッッ――!!』
 海竜の寵愛と加護を得ていても閃雷は免れまい。
 翔る間にも増幅していた雷電は空を切り裂かんばかりの稲妻を連れて降り注ぎ、刻下、痛烈な電撃を受けた妖巫が背中を逸らして麻痺する。
 ロベルタは聲を失った望月鈿女に幾許の言を添えて、
「――って、友人のダンピールのちっこいねーちゃんがいってたじょ♪」
 これっくらいの! と親指と人差し指を広げただけで示してしまうテキトーさを見せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
メガリスには如何な働きがあるか未だ不明
其のメガリスを使うお前の行いが唯救済だけで済むと見做すはし難い
何より――過去に過去を救う事なぞ、させる訳には行かん

……陽煌、巫女と白兎神に未だ此方には来ぬ事、
出来るだけ浜より離れる様に他と共に避難するよう言伝を
其方で我等と勝利が結ばれる様に待ってくれれば良い

五感にて得た情報を戦闘知識で測り、攻撃は見切り躱す
己が罪が赦されるかだと…?
そんなもの、赦される時が来るなぞと一時たりとも思った事は無い
此の身、魂の底にまで刻まれた罪科と共に生きると決めている
そもそもお前如きが糺そうなぞ、不遜に過ぎるぞ残滓
材となる水氣には事欠かん――至攻白極
氷刃の雨に穿たれ、凍り果てろ



 轟々と呻る濤聲が耳を掩い、暴風が飛沫を吹きつけて寄越す大時化の中、言伝る。
「……陽煌、遣いを頼む」

 一、巫女と白兎神は未だ此方には来ぬよう。
 一、出来るだけ濱辺より離れ、他と共に高所へ避難するよう。
 一、其處で我等と勝利が結ばれる樣に待ってくれれば良いと。

「皆々の命は、社を囲む神霊の樹叢が護ってくれよう、と――……独りで行けるか」
 見れば仔竜は、一字一句も聴き漏らすまいと頭をコクコク、更には言伝を受け取る毎に佳瞳を宝石の樣に輝かせ、必ずや役目を務めて見せると「きゅ!」と鳴く。
 そして陽煌の聲なら巫女も白兎達も聴き入れて呉れようと、猛風を切って翔けた金鱗の尾を見届けた鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、海鳴に混じる「望月鈿女」の佳聲を辿り、冷然と言を突き返した。
『破滅を齎すかの秘寶は、同等の力で救済を齎しましょう』
「メガリスは解明の途に在るもの」
 呪いに満ちた秘寶に如何な働きがあるか未だ明らかにされておらず、そして其を使わんとする妖巫の行いが、唯だ救済だけで済むとは見做し難い――。
 狂濤が岬の断崖に幾度と巻波を叩き付ける中、斬禍乃刀『晶龍』を抜いた隻眼の男は、たばしる波飛沫を一瞬で氷の礫と化すと、周囲に雪晶繚乱を輝かせて云った。
「――己が罪穢(つみ)が赦されるかと謂ったか」
 烱眼が射るは、玲瓏なる祝詞に召喚される一巻の巻物。
 望月鈿女が血色の失せた手に其を広げようとした、刹那、罪状を読み上げる聲は鋭利い悲鳴に變わった。
「そんなもの、赦される時が来るなぞと一時たりとも思った事は無い。此の身、魂の底にまで刻まれた罪科と共に生きると決めている」
 これほどの大時化に在って冷嚴のバリトンが澄み渡るのは、大氣が急激に冷やされたからだろう。
 大氣だけでは無い。
 気多岬に迫る海嘯をも凍てさせた嵯泉は、更に10,404m圏内にある全ての水分を氷結させて統禦を奪うと、其等を無数の刃と變じて望月鈿女へと射掛けた――!!
 其は【至攻白極】――罪穢の所以を識らずして糺さんとする不遜を罰する氷刃にて、
「氷刃の雨に穿たれ、凍り果てろ」
『――ッッ、キャァァァアアア嗚呼!!!』
 幸いにして材となる水氣には事欠くまい。
 嵯泉は全身を朱に染めて巻物を零す過去の残滓を睥睨すると、白袖の巫女も白兎神も、そして金鱗の仔龍にもその色は似合わぬと、昏闇の海に混ざる血に睫を落とすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼桐・相馬
●POW
此処は縁を結ぶ地
命を切り縁を切る者が足を踏み入れる処ではない

白兎神達には礼を言い退いて貰い、まき乃には潮溜まりの位置を聞いておく

〈冥府の槍〉を使い戦闘開始
敵の攻撃は自前の[戦闘知識]で把握、[武器受け]するが時折敢えて喰らう
加えて槍のリーチを生かした反撃を多用し苦戦しているように見せる
押されている振りをしつつ潮溜まりへ誘導

潮溜まりに接近後は神楽の舞い始めを[野性の勘]で感知
[ダッシュ]で敵へ接近、[串刺して怪力]で持ち上げそのまま敵諸共潮溜まりへ突っ込みUC発動
俺から滲む炎もある、潮溜まり程度すぐ沸騰するだろう
海や自前の水を喚ばれる前に熱と炎で[焼却]を

その寿命、削る手伝いをさせてくれ



「愈々大時化になってきたが、まだ荒れるだろう」
 今こそ神社に戻る時だと、巫女らに避難を勧告した鬼桐・相馬(一角鬼・f23529)は、ふるふると耳を振る白兎神達に、つと柳葉の眉を持ち上げた。
 彼等の言は、巫女まき乃が人語に變えよう。
「あの、まだ一節しか踊っていないと……折角だからもっと見て欲しいと仰せです」
「……。……謹んで御礼を申し上げ、謹んでお帰り頼みたいのだが」
 言えばふんふん、ぷくぷくと鼻を動かす101匹の白兎神。
 彼等は相馬の足元に集まってむぎゅむぎゅと訴え、
「えっ、48の型を全て見て欲しいだなんて……すみません、神様なので我が強くて」
「…………どうか聴いて欲しい事がある」
 どうどう、と両掌を下に、純白の塊となるモフモフを宥めた時だった。
 戰巫女の祖たる望月鈿女が、万象を裂く花弁を操りながら汀に迫る――!
『其處に御坐すは白兎神。秘寶の行方を教えて頂きましょう』
「、っ」
 僅かな花馨に反應した相馬が、咄嗟に黒槍『冥府の槍』を構えて舞扇を受け止めるが、暴風に飜めいた葩弁が目尻の際を掠め、肌膚を切り、赫き血滴を疾らせる。
 然し痛撃に怯む男で無し、相馬は柄の長さを活かして妖巫を押し返すと、取り次ぎなくカミに触れんとした不遜の前に紺青の炎を煓々熾々と、ヤヌスの如く立ち塞がった。
「此處は縁を結ぶ地。命を切り、縁を切る者が、足を踏み入れる処ではない」
『わたくしは最も古き巫女。門神に払われよう罪穢はございませぬ』
 矜持を煽られた望月鈿女が、止められた神樂舞を再び舞わんと扇を翻す。
 然し敵の挙措から攻撃の兆しを読んでいた彼は、扇の切替しに舞いの端緒を捉えると、一気に踏み込んで刺突――ッ! 右手を振り上げた瞬間の脇腹を串刺しにした!
『ずっ……ウ――ッッ!』
「無法者の言い分を聽いて通す門番は居まい」
『あぁあああ嗚呼ッッ!』
 烈々と炎を滾らせる槍鋩を、妖巫ごと膂力いっぱい持ち上げる。
 力を振り絞る程に創痍より冥府の炎が噴くが、相馬は妖巫の邪氣さえ薪と焚べながら、【鬼火継ぎ】(オニヒツギ)――敵諸共に潮溜まりへ突っ込んで灼いた!!
「海や自前の水を喚ばれる前に燃やし尽くす」
 白兎神がわらわら群がった時、潮溜まりの位置を巫女より聽いていたのは秘密。
 紺青の一角鬼は、己より滲出する炎に海水を沸騰させながら、焦熱の淵に戰巫女の祖を焼き付け、
「その寿命、削る手伝いをさせてくれ」
『――ァァァ嗚呼嗚呼ッッッ――!!』
 と、天を劈く悲鳴に冷艶のテノール・バリトンを混ぜるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

弥助、救済を求めた…?そうだったっけ、まつりん
わたしにはよくわからない
生贄になった人達は、自分が救われる為の犠牲を…生贄を良しとするの?
貴女の想いは呪いに変わったけど、呪いは救いにはなり得ない
…元の貴女に還ろう?

幅広の大剣にした灯る陽光を持ち
【花鎮魂め】で望月鈿女を海面ごと叩き斬る衝撃波を放つ
衝撃波を受ける海は波の壁を作れば、それはまつりんの攻撃を細女に悟られない為の目くらまし

わたしの罪は…何だろう
知らない事が罪なのかもしれない
罪は償わねばならない
でも罪を知りどう償うかは、わたしが自分で決める

罪、…強いて言えば、まつりんの夕飯のお肉をこっそり食べた事かな(ぽそり


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)、行こう!

あれがボスの姉ちゃんかな。

のろいがすくい?
それ、面白いね。力は力だもん。やっぱ使い方だよね!

おいらもね、メガリスだからダメ、っていうのは、どうかなーって思ってる。
でもね、ウサギさんいじめるのは、ダメだよ?

姉ちゃんはそう思わない?
そっかー。それじゃ仕方ないね。海にお還りクダサイ!

空中浮遊して、足場を確保。
水流を薙ぎ払いつつ、周囲を鼓舞して、舞扇の投射。
直接攻撃よりは、絆で縛って、舞の動きを妨害していく狙い!

弥助とも鈿女とも、絆は結ばれてる。
おいらは忘れない。次の世界へ、連れてってあげるね!

お肉?
なぁんだ、チョーダイって言ってくれたら、あげたのにー♪(にぱり)



 どうどうと猛り呻る濤聲が耳を掩う中、木元・杏(メイド大戦・f16565)の聡い耳は、海鳴りに混じる玲瓏の聲――戰巫女の祖の言を聢と聽き拾っていたろう。
「……魔軍将の弥助が、救済を求めた……? そうだったっけ、まつりん」
 冱月の如き金瞳を傍らへ、大きな狼の耳を持つ木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)に視線を移せば、双子の兄は全き同じタイミングで小首を傾げた。
「のろいがすくい? ――それ、面白いね!」
 メガリスは慥かに猟兵を苦しめたが、信長にはかの力が光明にも見えたろう。
 貪欲の海より渡来せし秘寶の呪力は、未だ解明の途にあるものにて、祭莉は「メガリスだからダメ」と考えるのはどうかなぁとも思っている。
「力は力だもん。やっぱ使い方だよね!」
 若しか狂濤の向こうに見える影――猟書家・望月鈿女が求める通りの神秘を有しているかもしれぬと、冒険心豊かな少年は白銀の瞳を煌々とさせる。

 蓋し兄の陽だまりの樣な笑顔を見た杏は、微咲(えみ)は返せず、
「…………わたしにはよくわからない」
 スッと花顔を持ち上げた可憐は、たばしる波飛沫が肌膚を叩くのも構わず、五百重波の向こうに聲を投げた。
「生贄になった人達は、自分達が救われる為の犠牲を……生贄を良しとするの?」
 貴女の想いは呪いに変わったけど、呪いは救いにはなり得ない。
 貴女の行いが人々を苦しめ、貴女の存在が現在(いま)を蝕む。
 だから――、
「……元の貴女に還ろう?」
 その爲の手段が猟兵しか持ち合せていないなら、杏は躊躇わず光劔『灯る陽光』の光を爍々と、幅広の大劔にして立ち向かおう。
『――――』
 玻璃の如く透き通ったソプラノを聽いた妖巫は、答える代わり一巻の巻物を取り出し、文字として浮かぶ杏の人生と罪穢(つみ)を読み上げんとした。

 然し其は祭莉が認めまい。
「姉ちゃん、ウサギさんいじめるのは、ダメだよ?」
『ッ、!』
 杏の罪を暴くより先、望月鈿女には明確な咎がある。
 空を游いで海を渡った少年は、高く蹴上がって【遮那王の刻印】(ウシワカ・ジルシ)――水流の狭間に舞扇を投げ入れ、広げられた巻物を爆破するや妖巫の手を絆した!
 ピンと張り詰めた夢色の絆が、望月鈿女の想いを感知しようか。妖巫は不可視の拘束にギチギチと抗衡しながら言を足して、
『……白兎神もまた、巫女を鎖ぐカミの一柱でしょうに……ッ!』
「そっかー。だから巫女を救うにはジャマだって……それじゃ仕方ないね。このまま海にお還りクダサイ!」
『――ッッ!!』
 今の高度を維持しつつ、広い眼路を確保したまま第二の舞扇を投げる。
 望月鈿女も狂濤を喚ぶ神樂舞に幻想の舞扇を押し流さんとするが、激流を薙ぎ払いつつ投射を重ねた祭莉は、指先や手首、臂や肩を次々と絆して舞の動きを妨害した。
『これでは……指先ひとつ動かなくては、神樂舞が……ッッ』
 斯くして多くの絆を得たなら、扇も翻せぬ妖巫は祭莉の聲を聽くしかなかろう。
「弥助とも鈿女とも、絆は結ばれてる。次の世界へ、連れてってあげるね!」
 おいらは忘れない。覚えている。
 決して約束は違えぬと、オトナには視えぬ夢色の絆が、波飛沫を受けて煌めいたような――気がした。

(「わたしの罪は……何だろう……?」)
 杏の人生を記した巻物は、奇しくも爆破の衝撃に散ってしまったが、果して己が犯した罪穢は何であったろうと、少女は昏闇の波濤に疾る舞扇を見ながら思う。
「――わたしは」
 幾つの罪を犯しているか。
 若しか知らぬ事が罪なのか。
 白銀と輝うオーラを花弁の如く漂流わせた杏は、巻波の繁吹く浜より【花魂鎮め】――閃爍の刃を振り払うと、龍尾と疾る衝撃に海嘯を両断する。
 斬り裂かれた狂濤が水の壁となって祭莉の影と攻撃の射線を眩ませる中、繊手は返す刀に更に一閃ッ、妖巫自身に凛冽の波動を放ッた――!
「罪は償わねばならない。でも罪を知りどう償うかは、わたしが自分で決める」
 人狼病の双子の兄の寿命に近付く爲に、我が命を削る。
 未知の病を治す方法を必ず見つけると、誓いを籠める。
 而して繰り出た衝撃波は、幾重の波を蹴散らして驀進し、竟に望月鈿女の繊躯を叩いて強く烈しく吹き飛ばした――!!

『……ッッ、ッキャァァアア嗚呼!!』
 妖巫が海面に躰を叩き付けた瞬間、全ての術が解けて時化が止む。
 海が穏やかな凪となれば、丹花の脣より零れる科白は双子の兄にも届いたろう。
「罪、……強いて言えば、まつりんの夕飯のお肉をこっそり食べた事かな……?」
 ぽそりと呟かれた言に結ばれた祭莉が、ここに彈かれたように鼻梁を浜辺に向ける。
 眞直ぐに注がれる星眸(まなざし)を受け取った祭莉は、にぱりと微笑って、
「お肉? なぁんだ、チョーダイって言ってくれたら、あげたのにー♪」
 ――なんて、罪を罪とも思わぬ樣子だから、「そっか」と零した杏は、これからは堂々とお肉を食べようと、あえかに咲みを湛えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

愛久山・清綱
罪は色々あるな。ヒーローズアースで保険会社を数社潰したり、
アックス&ウィザーズで手に入れた財宝を無断で寄付等。
俺の戦いは「別の犠牲」が多い……
■闘
【神宿】で神霊を宿し、戦闘に入る。
代償を【毒耐性】【呪詛耐性】【激痛耐性】で我慢しつつ、
望月殿のいるところまで足を進める。

犯した罪が赦されるか?応えて進ぜよう、望月殿。
「あい・どんと・けあ」だ。
下らぬ『概念』に縛られては、命を救う事はできぬよ。
『心切』に【破魔】の力を宿し、神霊も、罪という概念も
一刀両断にして進ぜよう!

例え罪を犯そうとも、俺は『救える魂を救う』ことを諦めぬ。
それが拙者の『兵』の道だ!
……勿論、少しは反省しよう。

※アドリブ歓迎・不採用可



『……ッ、嗚呼ッッ……!!』
 面紗を血斑に穢し、舞扇を彈き落された望月鈿女が、今度は痩躯を吹き飛ばされて海面に叩き付けられる。
 固唾を呑んで戰局を見守る巫女と白兎神から大きく隔てられた妖巫は、水流に抱かれて起き上がるなり、猟兵の罪穢(つみ)を糾すべく巻物を取り出した。
 広げれば、自ずと白紙に文字を――罪状を浮かべる巻物は、その冒頭に愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)の名を呼んだが、彼は読み上げられるより先に罪を挙げよう。
「俺の罪か……色々あるな」

 一、ヒーローズアースで保険会社を数社潰した事。
 一、アックス&ウィザーズで手に入れた財宝を、無断で寄付した事。
 一、…………

 俺の戰いは「別の犠牲」が多い……と、往時の記憶を辿る聲は一縷と曇らず。
 柳眉ひとつ動かさず我が行いを反芻した彼は、巻波を繁噴く汀に漸う足を進めた。
『ッッ、莫迦な……罪穢を識るだけで赦されるとお思いですか』
「犯した罪が赦されるか? ――では應えて進ぜよう、望月殿」
 泰然と海へ進む爪先に波濤が押し寄せるが、彼は濡れぬ。
 それどころか足が海を歩く超常の光景は、【神宿】の成せる業か――清綱は己が仕える『山霊社』に祀られる「天空舞う剣神」「鬼の如き鍛冶神」「雷を司る蛇神」なる三柱の神の御霊を身に宿し、望月鈿女を寵愛する海神を組み敷いて海を渡りゆく。
 カミを降した妖巫と同じく神霊を宿した彼は、妖巫が寿命を削るのと同樣に大きな代償を払わなくてはならないが、諸有る激痛を踏み締めた足は、妖巫を目指して止まらず。
 而して音吐は變わらず言を続けよう。
「罪が赦されるかと問われれば、『あい・どんと・けあ』だ」
『!! あい、どん……――ッッ』
「然う、下らぬ『概念』に縛られては、命を救う事はできぬよ」
 踏み進める間に硬質の手は、腰の『心切』へ――澎湃と破魔の氣を漲らせる刀を抜いた清綱は、迷いなく一閃ッ! 不可視の斬撃を疾らせた!!
「神霊も、罪という概念も。一刀両断にして進ぜよう!」
『――ッッ、ッ!!』
 目下、妖巫は袖を振って激流を喚ぶが、三神を前に波濤は抗えまい。
 水流の壁をぞんッと断った斬撃はその儘、望月鈿女の懐に到達して、
「仮令(たとえ)罪を犯そうとも、俺は『救える魂を救う』ことを諦めぬ。それが拙者の『兵』の道だ!」
『――ッッ、ぁぁぁああ嗚呼嗚呼!!!』
 はらり、面紗が左右に裂かれ。
 而して烏帽子が、繊麗の躯が、魚骨と化した半身が別たれる。
 泣き別れた躯を受け止めた波濤は漸う渦動を収め、靜かに光闇を混ぜる黄昏の海の底へ――救いの爲に呪いの秘寶を求めた巫女を、冷たい潮流に迎えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月16日


挿絵イラスト