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流星龍の闇夜の夢

#アックス&ウィザーズ #猟書家の侵攻 #猟書家 #レプ・ス・カム #フェアリー #酒場アジュール

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 とある街の外れにある森の中で、フェアリーの少女がうずくまっていた。
 周囲に広がるのは、春の訪れを告げる一面の新緑。
 それは新芽と思いきや、緑色の花弁を持つ、緑の花だった。
 まず緑色の花を咲かせてから、緑色の葉を広げる……葉と同じ色の、葉のようにも見える花弁ゆえに、長く花を咲かせないと思われていた植物。
 街に住む人間の友人が『緑』と呼ぶその花を眺めながら。
 フェアリー・フュイユは困惑した、どこか苦しそうな表情を見せる。
(「どうして、フェアリーランドが解除できないの?」)
 小さな手でぎゅっと抱えた小さな壺。
 抵抗しない対象を吸い込むことができるユーベルコード『フェアリーランド』の入り口であるその壺は、フュイユがいつも使っているものだが。
 使い慣れたはずのそれをフュイユは制御できなくなっていた。
 無駄に発動し続けるユーベルコードはフュイユの生命力を削っていき。
(「何だか森が暗くなっていく……」)
 フュイユに見える景色が次第に陰鬱なものになっていく。
 それは、日が陰り、夜になっていったからというのもあるけれども。
 差し込む陽の光がなくなった以上に暗く、昏く、感じられて。
(「怖い……」)
 瑞々しい緑色のはずの花すら黒く闇に染まっていくように見えて。
 いつもと同じはずの夜の森に、いつもと違う恐怖を感じながら。
 フュイユは衰弱していく。
(「……ヴェルト……」)
 呟いたはずの友の名も、次第に暗く消えていく……。

「フェアリーを助けてやってくれ」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は、集まった猟兵達に話し出す。
 アックス&ウィザーズのある森の中で、衰弱しているフェアリーがいるのだと。
「ユーベルコード『フェアリーランド』が使える有能なフェアリーなんだがね。
 フェアリーランドを解除できず、その維持に生命力を消耗している。
 さらに、フェアリーランドの中が悪夢の如き世界に変えられてしまったことで、精神的にも影響を受けてさらに弱って……悪循環さ」
 その原因はただ1つ。
 本来はフェアリーの壺に吸い込んでもらわない限り入れないそこに、穴を開けて勝手に入り込み、悪夢化していた幹部猟書家がいた。
 猟書家『レプ・ス・カム』。
 既に倒された相手だが、その意志を継いだ……というか、その願いを叶えようとしたオブリビオン『アストラム』が、同様の手法でフェアリーを狙い続けているらしい。
 その目的は、フェアリーランドにあるという『鍵』。
「天上界へ至るのに必要らしいという情報もあるが真偽は不明だね。
 まあ、どちらにしろ、そんなもののためにフェアリーを衰弱死なんてさせられない」
 にやり、と笑った夏梅は、苦しむフェアリーの元へと転送の道を開く。
「アンタら猟兵ならフェアリーはすぐフェアリーランドに入れてくれるさ。
 そこで、まずは悪夢の世界に楽しいことを見つけてやっておくれ」
 暗い昏い夜の森となったフェアリーランドは恐怖に覆われている。
 だが、夜の森は怖いだけではない。
 それを身をもって示せば、フェアリーの気持ちも変わっていくだろう。
 そうしてフェアリーを元気づけて、悪夢化を少しでも抑えながら。
「フェアリーランドの中にいるオブリビオンを見つけて、倒すんだ」
 根本の原因を、倒す。
 流れを理解し、頷く猟兵達に、夏梅は道を示した。
「頼んだよ、猟兵。フェアリーを……フュイユを助けてやってくれ」
 最初の言葉を、繰り返しながら。

 ふわりふわりと。
 夜の森となったフェアリーランドを『アストラム』は浮かび行く。
 穏やかに眠るように、その瞳を閉じて。
 ふんわり雲を纏い、星が描かれた翼を広げて。
 叶える願いを抱いて浮かび行く。
 ……天上界へと至る『鍵』が欲しい。
 そんなレプ・ス・カムの願いを拾い上げて。
 フェアリーランドを悪夢へ変えて。
 ふわりふわりと。
 願いを叶える流れ星を操るドラゴンは、夜の森を浮かび行く。


佐和
 こんにちは。サワです。
 いい夢見てますか?

 夜の森の悪夢と化したフェアリーランドが舞台となります。
 このフェアリーランドを作ったフェアリー・フュイユは弱っているため、猟兵をフェアリーランドに入れてくれるのが精一杯な状態です。
 同じ場所には居ませんが、フェアリーランドの中をフュイユは常に見ています。
 そのため、猟兵の行動でフュイユの気持ちを上向かせ、楽しいことを考えてもらうことがプレイングボーナスとなります。

 第1章は、夜の森での探索です。
 暗くて昏くて怖い森で、どうにか楽しいことを見つけてください。
 木が開けた場所もあるので、夜空も見えます。
 この森は悪夢……夢なので、気の持ちようで、光るキノコとか夜空に瞬く星とか、いいものを見つけられたりもします。
 夜の森を楽しむことで、フュイユを元気づけ、楽しませることができます。

 第2章は『アストラム』とのボス戦です。
 アストラムを倒せば、フェアリーランドの制御をフュイユの手に戻せるので、衰弱したフュイユを助けることができます。
 オブリビオンの願いを叶える悪夢を生み出す相手ですが、寝ぼけているので、猟兵の願いも叶えてくれます。
 ただし、願いが強い程不幸なことが起こるため、悪夢にしかなりえません。
 見たい悪夢がありましたらご指定ください。

 それでは、夜の森の悪夢を、どうぞ。
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第1章 冒険 『夜空の下で探索を』

POW   :    夜目が利くので、己のポテンシャルを生かして探索

SPD   :    効率重視。思いついた策を試してみる。

WIZ   :    地形や痕跡などから、対象を探す

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 どこまでも闇だけが広がる森。
 立ち並ぶ木の幹には、怨嗟を叫ぶような模様が浮かび上がり。
 冷たく吹きゆく風は、悲鳴のような不気味な音を奏で。
 揺れる枝や木の葉は、恐ろしい何かがそこに居るかのように騒めく。
 草花は足を捕えるように絡みつき。
 蔓は手を捕えるように巻き付いてくる。
 足元の地面も、見上げた空も、全ての色を黒に染められた、夜の森。
 ……それは、フェアリー・フュイユの悪夢。
 森の中でたった1人、置いて行かれることへの恐怖。
 何の灯りもない、誰もいない、何の希望もない、暗い昏い森が。
 そのフェアリーランドに広がっていた。
木霊・ウタ
心情
可哀そうに
竜を倒してフュイユを助けるぜ

フュイユ
俺達が何とかする
すぐにヴェルトに会えるからな(ぐっ

行動
独りぼっちの夜の森はちょいと怖いよな
けど静かな時間は嫌いじゃない

焚火を焚いて
マントにくるまってスープを啜り
ぱちぱちと爆ぜる音や
梟の鳴き声を聞いて
見上げれば月や星空…はないか

もとい
こういうまったりタイムも楽しいモンだ

ひとしきり静寂を堪能したら
ギターを静かに爪弾く
巡る四季、命の円環に想いを馳せて

夜や森に染み渡るような旋律で
春の訪れ、新緑を祝す

フュイユ、もし聞こえたら合わせて歌ってくれよな
きっと勇気や力が湧いてくる


…っとあそこをぷかぷか進んでくのが例の竜か
待ってろよフュイユ
すぐにけりをつけてやる



 暗い昏い森の中。並んでいた木が数本、ぽかっとなくなってできたような、ちょっとだけ開けた場所で、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は足を止めた。
 その中央に、適当に拾ってきた枯れ木を置いて。周囲に散らばる枯れ葉や小枝を、その音や感触でそれっぽく集めて。
 そっと手を添えると、紅蓮の炎が生まれる。
 燃えやすい枯れ葉から、などと言わず、一気に太い枝の1本を燃やした炎は、そこから次の枝へと静かに燃え移っていって。
 小さな焚き火となった。
 その炎を眺めたウタは、簡易式の五徳を置き。さらにその上に、固形調味料と水を注いだカップを置くと。しばしして立ち上る、温かなスープの香り。
 その間に、マントにくるまり、焚き火の傍に腰を下ろしていたウタは。
 温まったカップと、用を終えた五徳を火から外し、そっとスープを啜った。
 森の夜に冷えた体に、じんわり染み入る温かさ。
 ぱちぱちと焚き火から小さく響いてくる音を。
 木々の間から聞こえてくる、のんびりとした梟の鳴き声を聞いて。
 もう一口、スープを口に含むと。
 そのまま空を見上げた。
 そこには月も星もなく、ただただ闇夜が広がっているだけだけれども。
「独りぼっちの夜の森はちょいと怖いよな」
 それを眺めるウタの顔には、怯えも恐れもなく。
「けど静かな時間は嫌いじゃない」
 陽の下で見るのと同じ快活な笑みが浮かんでいた。
 暗い森だからこそ、焚き火はより明るく。
 寒い夜だからこそ、スープはより温かく。
 独りだからこそ、聞こえる音が、ある。
「こういうまったりタイムも楽しいモンだ」
 誰にともなく語りかけ、ふっと笑いかけたウタは。
 くるまったマントを引き寄せ。
 スープの少なくなったカップを傾け。
 ぱちぱちと爆ぜる音に耳を向け。
 またしばし、静寂を堪能する。
 それは、1人きりだけれども。
 独りきりではない、一時。
 そして、カップが空になった頃。
 ウタは、その手にギターを持った。
 いつもは元気にかき鳴らす弦を、そっと静かに爪弾いて。
 響かせるのは、夜や森に染みわたるような、穏やかな旋律。
 春の訪れを祝い、新緑の芽吹きを祝す、そんな歓びの歌。
(「フュイユにも聞こえているだろうか」)
 合わせて歌ってくれたらいいと、ウタは願う。
 春は冬の後に訪れる。
 新緑は枯れたような枝から芽吹いてくる。
 そして、夜の森には、必ず朝が来る。
 紡ぐ歌でそれを思い出してくれたなら。
 きっと勇気や力が湧いてくるから。
(「もう少しだけ、頑張れよ。
 俺達が何とかする。すぐにヴェルトに会えるからな」)
 そんな決意も乗せて。
 ウタは穏やかで温かな歌を響かせた。
(「待ってろよ、フュイユ」)

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒城・魅夜
闇を恐れるのは見通すことができず
怖いことがあるかもしれないという想像力だけが暴走するからです
つまりそれだけ、あなたは豊かな感受性と想像力をお持ちなのですよ、妖精さん

ならばそれをポジティヴな方向に変えてみましょう
UCを加減して使うことで楽しい夢に上書きします

顔のような怖い模様が?
オーラを使い光の軌跡を描いていたずら描き
困り眉とマンガのような汗を描き足すだけで可愛くなりましたよ

風の音が?
我が鎖を舞わせ衝撃波を用いて和音としましょう
綺麗なメロディに変わります

草花や蔦?
あなたは一人ではないと支えてくれているのです
その証拠にほら、月の光りに照らされて夜にだけ咲く美しい花が
夜は素敵な驚きに満ちた舞台です



「闇が、怖いのですか?」
 そっと夜空に手を伸ばし、黒城・魅夜(悪夢の滴・f03522)は問うた。
 夜闇に覆われた森の中でその繊手の白が浮かび上がる。
「闇を恐れるのは、見通すことができず、怖いことがあるかもしれないという想像力だけが暴走するからです」
 漆黒の長髪を、黒いドレスを、暗く暗い森と同化させながらも。
 伸ばす手は、前を見つめる顔は、輝くように白い。
「つまりそれだけ、あなたは豊かな感受性と想像力をお持ちなのですよ、妖精さん」
 その白の中で、囁く唇が、艶やかに微笑んだ。
 夜の森の悪夢を見ているフュイユに向けて。
 希望を紡ぐように。
 そして、魅夜は繊手を翻し、ユーベルコードで夢を上書きしていく。
「顔のような怖い模様が?」
 立ち並ぶ木の幹に、オーラで光の軌跡を刻めば。
 怨嗟を叫んでいた顔が、どこか情けなくも憎めない愛嬌のある困り顔に変わり。
「不気味な音が?」
 冷たく吹きゆく風に、先端に鈎の付いた鎖を舞わせれば。
 衝撃波が和音を奏で、悲鳴のような音を飲み込み綺麗なメロディへと変えていく。
「捕えるような草花や蔦?」
 そして、手足に巻き付き絡みつき、恐ろしく騒めく枝葉や蔓は。
 闇しかなかった夜空に、魅夜の夢で現れた月の光に照らし出されて。
 ブレスレットのように手首を飾り。ガーラントのように木々を飾り。
 柔らかな絨毯のように足を優しく受け止め。
 輝くように美しい、艶やかな花を咲かせる。
「全てが、あなたは1人ではないと支えてくれているのです」
 それは月夜にだけ咲く花。
 陽の光の下では決して見ることができない景色。
「夜は素敵な驚きに満ちた舞台です」
 だからほら、と。
 魅夜はまた夜空へ手を伸ばす。
 怖い模様には落書きして。
 不気味な音は和音に混ぜて。
 恐れを払って闇を見通せば。
 きっとそこに美しい花が、ある。
(「妖精さんにとっての花は、どんな子でしょう?」)
 くすりと微笑んだ魅夜は、踊るようにまた鎖を揺らして。
 夢を纏い、希望を示した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
夜の森かぁ。そんなに恐れる程のものじゃないんだけどな。
この世界を作ったフェアリーだって分かってるだろうに。
それをもう一度、思い出させてあげなきゃね。

それじゃあ、プラチナちゃん。人目のないところへいこうか。大丈夫、他の猟兵から見えなくたって、フェアリーのフュイユにはちゃんと見えてるから。
むしろその方が都合がいい。

人気の無いところまで森に分け入ってから、プラチナちゃんにキス。それから衣服を脱がせて。ぼくのも脱がせてくれる、素敵なお嫁さん?
二人とも生まれたままの姿になったら、柔らかな草むらにプラチナちゃんを押し倒して、身体を重ねる。いい声で啼いてね。

夜の時間は営みの時間ってね。楽しんでくれてるかな。



「夜の森かぁ。そんなに恐れる程のものじゃないんだけどな」
 言葉の通り恐れなく、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)は森を行く。
 暗く昏い闇も、不気味な風や葉の音も、セシルは全く気にせずに。
 誰も居ない森を軽い足取りで進む。
「この世界を作ったフェアリーだって分かってるだろうに」
 ここはフェアリー・フュイユのフェアリーランド。
 今はオブリビオンに悪夢に変えられてしまっているけれども。
 夜は怖いものじゃない。
 森は恐れるものじゃない。
 風や葉の音だって、静寂をそっと彩る素敵なBGMだったはずだから。
「それをもう一度、思い出させてあげなきゃね」
「はいっ。私も頑張ります! 任せてください!」
 言って隣を見ると、セシルのユーベルコードで現れた銀髪の少女が、呼ばれたからにはと気合いに満ちた表情で、ぐっと両手を握りしめていた。
「それじゃあ、プラチナちゃん。こっちへいこうか」
「え? でも皆さんはあっちにいるみたいですよ?」
「大丈夫。他の猟兵から見えなくたって、フュイユにはちゃんと見えてるから」
「そうでしょうけど、戦術的には共闘とか連携とかあるわけですし……」
「むしろフュイユ以外には見えてない方が都合がいい」
「そう、なんですか?」
 ただでさえ人の目の届きにくい森の中で、さらに人気のない方へない方へと誘導するセシルに、疑問符を浮かべながらも少女はついて行き。
 木の影に柔らかな草が生え広がっている場所へと辿り着いたセシルは。
 くるりと少女へ振り返り、その唇を重ねた。
「夜の時間は営みの時間ってね」
「あ……」
 察した少女が真っ赤に染まり、銀色の瞳を蕩けさせていく。
 そのまま慣れた手つきで、するりと服を滑らせて、その柔肌を表に出しながら。
「ぼくのも脱がせてくれる? 素敵なお嫁さん」
 耳元で囁けば、こくんと頷いてから、繊手がおずおずとセシルへ伸ばされた。
 少し躊躇い気味に動く柔らかな手を感じながら、セシルは悪戯っぽく微笑んで。
「フュイユも楽しませてあげなきゃ」
 その言葉に、見られていることを思い出した繊手が、ぴくりと止まる。
 けれども、既に生まれたままの姿になっていた2人は、草むらへと倒れ込み。
 セシルは少女を見下ろして、にっこりと笑いかけた。
「いい声で啼いてね」

成功 🔵​🔵​🔴​

ノヴァ・フォルモント
何処までも昏く鬱蒼とした夜の森
深い闇は視界は疎か弱い心までも飲み込んでしまう
でもこれが悪夢…夢ならば
気持ちひとつで全てを変える事も出来る筈さ

月明かりのランタンを灯し
道行く先を照らして
木々の隙間から見上げる空には満天の星空
淡く光り輝く月も浮かぶ
―美しい夜空だ

月明かりが射し込む森にもう一度目を向けて
木々覆い茂る鬱蒼とした景色も
静寂で幻想的な景色にきっと見えてくる
葉のさざめきが紡ぎ出す音色
髪を撫でる冷えた夜風も心地好い

―大丈夫。この森に居るのは君ひとりじゃない



 進んでも進んでも森は続く。
 何処までも何処までも夜は続く。
 暗く昏く鬱蒼とした深い闇は、ゆるりとした足取りでそこを進むノヴァ・フォルモント(待宵月・f32296)を飲み込もうとするかのように広がっていた。
 実際に人間を飲み込む闇はない。闇はただそこにあるのみ。
 それはフェアリーであってもドラゴニアンであっても同じ。
 けれども。
 光届かぬ暗闇は、人間の、フェアリーの、ドラゴニアンの視界を飲み込み。
 その弱い心までも飲み込んでしまう。
 冷たく吹きゆく風は、さらにその心を冷やし。
 草木を揺らして不審な音を奏で上げる。
 足元の地面も、見上げた空も、全ての色を黒に染められた、夜の森。
「でもこれは悪夢……夢だから」
 ノヴァは、月の光を灯すランタンを掲げた。
 青白い光は淡く、決して強くはなかったけれども。
 夜の森の中で、消えることなく輝き。
 闇夜を導くように灯る。
 それはまるで。
「夜空に浮かぶ月のようだよ」
 呟いた言葉に応えるように、真っ暗なだけだった空に月が姿を見せた。
「ほら、星も見える」
 そして、淡く光り輝く月の周囲に、散りばめられた無数の小さな光。
 木々の隙間から見上げながら、ノヴァはその黄昏空に似た朱色の瞳を細めて。
「……美しい夜空だ」
 ほぅ、と蕩けるような感嘆の声を零す。
 その姿は、森に差し込む月明かりに照らされて。月色の髪が淡く煌めく。
 夜の森の闇の中、それはまるで夜空に浮かぶ月の様。
 空に浮かぶ夢の月よりも。
 手にした月燈の灯火よりも。
 何よりも月らしく美しい、黒角を持つ待宵月。
 でもその美しいノヴァは。
 自らの姿にではなく、周囲の森へと視線を向ける。
 木々が覆い茂り、深い闇に飲み込まれ、鬱蒼としていた景色は。
 差し込む月明かりに淡く照らされ、暗い中だからこその輝きを魅せ。
 幻想的な光景を生み出していた。
「……美しい森だ」
 ざわざわと心を蝕むような不審な音だった木々のさざめきは。
 花や葉の美しさを感じさせる穏やかな音色となり。
 心を冷やし身を蝕むような冷たい風は。
 さらりと撫でるように優しく心地よい夜風となり。
 ノヴァを包み込んでいく。
「大丈夫」
 その穏やかさを感じながら。
 その優しさを抱きながら。
「この森に居るのは君ひとりじゃない」
 月星輝く空の下、冷えた夜風の吹く場所で。
 ノヴァは、この世界を見ているはずのフュイユへと微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐々・夕辺
暗い森
誰もが恐れるそれも、私は怖くない
十年近く森で暮らしたら、こんな暗闇なんて慣れっこになっちゃうわ
何より、私の傍には管狐…精霊たちがいるから
これくらい小旅行だわ
ねえ、そうでしょう? 精霊たち

みて、月下美人が咲いてる
あれは夜にしか咲かない花なのよ
久しぶりに見たわ、とても綺麗ね……あ!
すまほで写真を撮っておきましょう!こんな時の文明の利器!

それから、水の香りを辿って泉を探す
泉に映る星空が……ってあら
星がないのね、此処
じゃあそうね さっきの月下美人をぷつりと手折って
泉に浮かべましょう
白い花が泉に漂うさまはとても綺麗

フュイユさん、ほら、見て!
貴方の妖精郷にはこんなに綺麗な花と泉がある!



 暗い、昏い森。
 先を見通せぬ闇に。枝葉を揺らす音だけで見えぬ何かに。
 誰もが恐れ、立ちすくむ、夜の森。
 そこを佐々・夕辺(凍梅・f00514)は弾むような足取りで歩いていた。
「これくらい小旅行だわ」
 紡ぐ言葉は強がりなどではなく、歌でも歌い出しそうなほどに明るく。
 藍色の瞳に浮かぶのは、怯えではなくどこか落ち着いた微笑み。
 琥珀の髪と同じ色の大きな狐耳も、大きな狐尾も、楽し気に揺れている。
 夕辺は森で暮らしていた。それも十年近くも。
 幾度となく過ごした夜の森なんて、こんな暗闇なんて慣れっこだ。
 それに何より。
「ねえ、そうでしょう? 精霊たち」
 話しかければ、隠し持った何本もの竹筒から管狐達が現れる。
 狐のような形をした精霊は、応えるように夕辺の周囲を舞い踊り。
 そのうちの1匹がふわりと行く道の先、その足元を示すように回った。
「あら。みて、月下美人が咲いてる。
 これは夜にしか咲かない花なのよ」
 夕辺が駆け寄った先にあったのは、薄い花びらを重ねた白く大きな花。
 月明かりの下で輝くように咲く大輪は、柔らかな香りで辺りを包み込むけれど。
 夕辺の言う通り、陽が昇る頃には色も香りも失ってしまう、夜だけの美しさだから。
「久しぶりに見たわ。とても綺麗ね……」
 夜だからこそ、闇の中だからこその光景に、夕辺は藍瞳を細めた。
 1年に1度しか見れないとも言われるこの花が咲いていたのは、森が夢であり、そこで夕辺が楽しいことを考えたから。
 どんな悪夢も夢だから、見ている者の気持ちで変わりゆく。
 しかし夕辺はそれを強くは意識しないまま、美しい花を愛で。
 せっかくだから、と思いついて取り出したのはスマホ。こんな時の文明の利器ね、なんて微笑みながら、慣れない手つきでパシャリと写真を撮り。すぐさま画面で確認して、満足そうに頷くと。 
「あと、夜の森といったら……」
 夕辺はきょろきょろと辺りを見回した。
 こっちかしら、と当たりをつけて歩き出せば。
 程なくして、木々が開けた場所に出る。
 そこだけぽっかり空間が空いている理由は。
 そこに揺蕩う小さな泉の存在だった。
 夜闇を映して暗く静かな水面は、まるで黒い鏡のようで。
「泉に映る星空が綺麗……ってあら、星がないのね、此処」
 覗き込んだ夕辺は、真っ黒な泉から真っ黒な空へと視線を上げて。
 んー、と少し考え込んでから。
「じゃあこうしましょう」
 先ほど見つけた月下美人をぶつりと手折ってくると、そっと泉へ浮かべた。
 黒い泉に漂う白い花。
 静かな波紋も、花の白を微かに映して煌めいて。
「ほら、とても綺麗……」
 思った通りの光景に、満足そうに夕辺は頷く。
「フュイユさん、ほら、見て!
 貴方の妖精郷にはこんなに綺麗な花と泉がある!」
 そして、両手を広げて泉を示し、声をかけながら顔を上げた夕辺は。
 黒く暗く昏い雲が晴れたかのように、空に現れた月と星の輝きに、また微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、真っ暗な森で何も見えませんよ。
ふえ!?アヒルさん、いきなりライトを付けないでください。
眩しいじゃないですか。
まだ目がチカチカしますよ。
でも、不思議ですね。
このチカチカが模様のように見えて面白いですね。
って、ふええ、アヒルさん、面白いからって何度もライトを浴びせないでください。



「ふええ、真っ暗で何も見えませんよ」
 闇だけが広がる夜空の下。暗い昏い森の中を、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は怯えながら歩いていた。
 極度の人見知りであるフリルは、いつもおどおどビクビクしているけれど。今はいつも以上に落ち着きなく、視線だけでなく顔ごと細かく動かして辺りを見て。
 大きな帽子の広いつばを片手でぎゅっと引き寄せたまま、長い銀髪が覆う背中を丸め、少しずつ森の道を進む。
 がさり、と近くの枝葉が音を立てれば、びくっと振り向いて硬直し。
 そのまま数十秒、何もないことを確認してから、おずおずと足を踏み出すけれど。
 ばさばさっ、と鳥の羽音が響けば、またびくっと蹲って硬直する。
 そんなことを繰り返しているうちに。
 不意に、強い光がフリルを照らした。
「ふえ!? アヒルさん!?」
 光源は、フリルが持っていたアヒルちゃん型のガジェット。
 いつもは両手で掬い上げるようにそっと持っているガジェットだけれども。片手が帽子に添えられたままの今は、残った片手で、ぎゅっと胸に抱きしめるように、その存在に頼り縋りつくかのように持っていたのだが。
 そのガジェットのつぶらな両瞳がいきなり発光したのだ。しかもかなり強く。
「いきなりライトを付けないでください。眩しいじゃないですか」
 ぎゅっと目を瞑ったフリルの抗議に、ガジェットは一声鳴くと、光を消した。
 戻った暗闇に、恐る恐る、そうっと赤い瞳を開けるフリル。
「まだ目がチカチカしますよ」
 強い光が消えても、目に焼き付いた輝きはしばらく残ってしまうから。
 変化した視界に戸惑いながら、フリルはぱちぱちと瞬きを繰り返す。
 いつもと違う見え方。けれどもそれは怖いばかりではなくて。
「不思議ですね。このチカチカが模様のように見えて……面白いですね」
 自分にだけ見える不思議な模様を眺めたフリルは小さく微笑む。
 それは、この森が暗く昏いからこその面白さ。
 辺りが闇に包まれているからこそ、目に焼き付いた残像がより輝いて見えるから。
 真っ暗も悪いことばかりじゃないと。
 楽しいを生み出すこともあるのだと。
 ふと思ったそれを、きっとフリルの様子を見ているだろうフュイユに伝えたいと、木々の間から夜空を見上げて。
 そこにまた、フリルを強く照らす光。
「アヒルさん!? 面白いって言ったからって何度もライトを浴びせないでください」
 ちかちかと明滅するガジェットの瞳に、ふええ、とフリルが慌てるその頭上で。
 いつの間にか。その輝きに応えるように、星が瞬いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪
暗いのは確かに怖いよね
闇は不安の象徴とか、悪魔の象徴とも言われてたんだっけ
でも大丈夫
音さえあれば、素敵な舞台に変えてみせる

風の音
木々の音
不気味なそれもシンフォニアの耳は1つのメロディとして聞き分けて
合わせるように
それでいて明るい曲調に誘導するように
巻きつこうとしてくる草花を【ダンス】の要領で回避しながら
聞いているであろうフュイユさんに届けるように希望を込めた【歌唱】を

大丈夫
怖がらないで
決して暗闇ばかりじゃない
心を強く持っていれば
星はちゃんと見ていてくれる

夜空に瞬く星々を指差して

彼らは僕らの道標
行き先はあの小さな光が教えてくれる
次は貴方の世界を
大きな光を取り戻すために

希望は無くさないで



 吹き行く風が、悲鳴のように、怨嗟のように、音を立てる。
 枝葉を伸ばす木々が、そこから獣が現れるかのように、騒めく。
「暗いのは確かに怖いよね」
 そんな音が響く、暗い昏い森の中で、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は小さく苦笑しながら、半ば独り言のように語りかけていた。
「闇は不安の象徴とか、悪魔の象徴とも言われてたんだっけ」
 けれどもそれは、見えないから、ではない。
 闇で視界を奪われた中で、音が聞こえるから、怖いのだ。
 何かが音を立てたから、その音に何かの存在を感じて、不安になる。
 何かが音を立てたから、その音に何かの存在を感じて、悪魔を見る。
 暗闇への恐怖は、音が生み出すもの。
 だからこそ、澪はふわりと笑ってみせる。
 だって澪はシンフォニアだから。
(「音さえあれば、素敵な舞台に変えてみせる」)
 不気味な音を1つのメロディとして聞き分けて。
 合わせるように歌を紡ぐ。
 もちろん、ただ合わせるだけではない。
 そのメロディに音を加え、明るい曲へと導き誘う。
『大丈夫 怖がらないで
 決して暗闇ばかりじゃない』
 音に言葉を乗せて。
 言葉に希望を込めて。
 前を、上を、見つめて踊る。
『心を強く持っていれば 星はちゃんと見ていてくれる』
 脚に絡みついてくる草花を、ふわりと舞って躱し。
 巻き付こうとしてくる蔓を、くるりと踊って躱し。
 真っ暗闇の夜空に、澪は真っ直ぐに手を伸ばす。
『彼らは僕らの道標 行き先はあの小さな光が教えてくれる』
 闇に覆われていた暗いだけだった夜空が。
 伸ばした澪の真っ白い手の先で、小さく瞬き始める。
 まるで、暗雲が晴れていくかのように。
『次は貴方の世界を 大きな光を取り戻すために』
 そして、静かに降り注ぐ月明かりの下で。
 金蓮花が咲く琥珀色の長い髪を風に揺らし。
 穏やかな琥珀色の瞳が揺れる枝葉を見つめ。
 聖者は、妙なる歌声で森を満たしていく。
 神秘の旋律で闇への恐れを退けていく。
(「聞こえている? フュイユさん」)
 この音が、この世界を作り出したフェアリーにも届くように。
 この声が、フェアリーを蝕む悪夢を退けるように。
 願い、祈りながら、澪は歌っていく。
 どうか。どうか。
 希望は無くさないでと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈍・小太刀
夜の森かぁ
空の星も綺麗だけど
折角だし光る海の仲間達も召喚
ホタルイカにオワンクラゲ
ウミホタルに夜光虫
チョウチンアンコウにヒカリキンメダイ
皆ふわふわゆらゆら楽しそう

よし、ここはひとつ音楽も
手の中には可愛いオカリナ
とあるフェアリーの勇者の故郷の森で出会った相棒よ
意気揚々と吹き始めるも
まだあんまり上手くは無かったり?
そこのチョウチンアンコウ、笑わないのー!

ワイワイガヤガヤ♪
調子っ外れの音楽に合わせて
輪になって踊る海の仲間達
拾った葉っぱや小枝を振って鳴らして…
まあこれはこれで、楽しいからいいよね!
この調子で悪夢なんて吹っ飛ばそう

フュイユ、見てるかな
楽しいの光と音楽と
フュイユにも届きます様に

※アドリブ歓迎



 暗く昏いだけだった夜の森の間から、いつしか瞬く星が見えるようになった。
 淡い月明かりの光も差し込んで、森に漂う闇が薄まった気がする。
 それはきっと、誰かの夢。
 フェアリー・フュイユの悪夢を塗り替えた、誰かの優しい想い。
 そして、その想いを受け取ったフュイユの希望。
 恐怖に絶望に負けまいと、悪夢に抗うフュイユの心。
 それを感じ取った鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)は微笑みを浮かべ。
「おいでおいでー」
 まだ暗い森の中で、かわいい海の仲間達を召喚した。
 触手の先に発光器を持つホタルイカに、リングのように縁が緑色に光るオワンクラゲ。
 夜の海を青く光らせる、無数のウミホタルに夜光虫。
 頭部の突起から出す発光液で提灯を持っているかのように光るチョウチンアンコウに、眼がピカピカ光っているように見えるヒカリキンメダイ
 愉快でかわいい仲間達から、光る者達ばかりを呼び寄せた小太刀は。
 ふわふわゆらゆら楽しそうな様子に微笑んで。
「よし、ここはひとつ音楽も」
 その手に可愛いオカリナを取り出す。
 それは、とあるフェアリーの勇者の故郷の森で出会った、相棒。
 もっともっと楽しくなるようにと、意気揚々吹き始めるけれども。
 音色を聞いたヒカリキンメダイが眼をぱちくりするように光らせる。
「まだあんまり上手くないのは分かってるわよ……
 こらそこ、笑わないのー!」
 近くを泳ぎ行くチョウチンアンコウの大きな顎は、にやにや笑っているようで。ホタルイカが動かす触手も、オワンクラゲが漂う様も、どこか肩を竦めているかのよう。
 それでも、頬を赤らめて微妙な表情を見せる小太刀の周りを、ウミホタルと夜光虫が、波を幻視させるようにゆらゆらと泳ぎ出せば。
 他の仲間達も、小太刀を囲むように輪になって踊り出した。
 調子っ外れの音楽に。
 海ではなく空を泳ぐ、光る海の仲間たち。
 拾った小枝を振って鳴らして。
 風が奏でる枝葉の音も巻き込んで。
 弾む心のままに旋律とも言い難い陽気な音を紡いでいく、不可思議な光る音楽隊。
(「まあこれはこれで、楽しいからいいよね!」)
 整った曲ではないけれども。
 美しい歌ではないけれども。
 元気で、明るく、そして何よりとても楽しく。
 闇も悪夢も吹っ飛ばす勢いで。
 小太刀は笑い、森の中から夜空を見上げる。
(「フュイユ、見てるかな」)
 闇の向こうに届けばいい。
 悪夢の先まで響けばいい。
 そう思いながら、小太刀はオカリナにまた息を吹き込んで。
 笑いをこらえるように顎を閉じたチョウチンアンコウが、目の前を泳いでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『アストラム』

POW   :    ヴォーテクス・サテライト
【オブリビオンの願いを叶えたい】という願いを【自身を利用するオブリビオン】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD   :    星辰集中
【睡眠】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ   :    ダスク・ティアーズ
【流れ星の群れ】を降らせる事で、戦場全体が【夢か悪夢】と同じ環境に変化する。[夢か悪夢]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はピウ・アーヌストイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 真っ暗だった夜空に星が瞬いて。
 真っ暗だった森に淡い月の光が差し込む。
 花が咲き、光が灯り、歌が満ち。
 夜の森の独りぼっちの悪夢が退けられていく。
 そこに、ふわりとドラゴンが現れた。
 穏やかに眠っているかのように瞳を閉じて。
 布団のようにふんわり雲を纏い、星が描かれた翼を広げて。
 寝ぼけているかのようにふらふらと空を漂う、オブリビオン『アストラム』。
 ……1人でも冒険者としてやっていけるように自立したい。
 そんなフュイユの願いから生み出した悪夢を打ち消されたアストラムは。
 次の願いを探して、夜空を漂う。
 ふわりふわりと。
 ……さあ、君の願いはなに?
 操る流れ星で、その願いを叶えてあげる。
 眠ったままのアストラムは、今度は猟兵達へその力を向け、また夢を紡いでいく。
 願いが強ければ強い程、不幸な悪夢となる夢を。
 かつて、吉兆の存在として、人々の願いを叶えていた時と同じように。
 オブリビオンとなり、災厄の予兆となったことに気付かぬまま。
 アストラムは流れ星を操り、願いを叶える夢を紡いでいく。
 フェアリーランドが再び、悪夢に満たされていく。
佐々・夕辺
★アドリブ、負傷OK

眠っていないで起きなさい
貴方は既に骸の海のなかへ消えたのよ
吉兆だったというのなら、気付いて
貴方の行いが、何の罪もないフェアリーに害をなしているという事に!

私の願いはいま、ただ一つ
フュイユさんが救われる事よ
夜の森じゃなくて
日の光にこの妖精郷が包まれる事よ!
だから――!

管狐!氷の力を抱いて飛べ!
勝手気ままに広がる呪詛を抱いた冬氷
流れ星の群れは無視して
敵を斃す事だけ考えて飛びなさい

私は暗闇に一人佇む
これは悪夢だ 一人取り残される悪夢だ
けれど抜け出す術は知っている
私の手を取る手を想像する事
…夫はそういう人だから
「驚いたがか?」って、笑ってくれるはずだから



 星が瞬いていたはずの空が、また暗く覆われる。
 月が輝いていたはずの空が、また昏く闇に沈む。
 再び暗闇の中に1人佇んでいた佐々・夕辺(f00514)は、気付いた。
(「これは悪夢だ」)
 一度は晴らしたはずの悪夢。
 フェアリーのフュイユを蝕んでいたそれが。
 今度は夕辺に向けられている。
(「1人取り残される悪夢だ」)
 それを理解しながらも、夕辺は恐怖に身体を震わせた。
 誰も居ない。何もない。
 ただ自分だけがある、悪夢。
 冷たくて。暗くて。寂しくて。
 闇に押しつぶされそうになる。
 でも。
(「私は、知っている」)
 夕辺はそっと、繊手を前に差し出した。
 冷たくて。暗くて。寂しい闇の中へと。
 白くか細い手を伸ばして。
(「私の手を取る手があることを」)
 その温かく優しい感触を。
 明るく笑って傍に居てくれる存在を。
 どんな闇の中でも負けない支えを。
『驚いたがか?』
 今にも聞こえてきそうな声と共に、夕辺を見つめてくれる琥珀色の瞳を想像して。
(「……夫は、そういう人だから」)
 まるで誰かと手を繋ぐかのように、伸ばした手をそっと握りしめ。
 ふっと穏やかに微笑んだ夕辺の周囲の闇が、晴れた。
 悪夢の恐怖に支配されることなく。夕辺はしっかりと大地を踏みしめると。
 流れ星が輝く夜空を、キッと睨むように見上げる。
「眠っていないで起きなさい。貴方は既に骸の海のなかへ消えたのよ」
 そこに漂うのは、眠るように目を閉じたドラゴン。
 その身に雲を纏い、その翼に星を描いた『アストラム』は。
 だが夕辺の声に何の反応も示さず、ただ空に浮く。
 寝ぼけたようにゆらゆら動くその手で、悪夢を紡ぎ出し続けながら。
「吉兆だったというのなら、気付いて。
 貴方の行いが、何の罪もないフェアリーに害をなしているという事に!」
 そんなアストラムに夕辺は声をかけ続け。
「私の願いはいま、ただ一つ。フュイユさんが救われる事よ
 夜の森じゃなくて、日の光にこの妖精郷が包まれる事よ!
 だから……!」
 思いを紡ぎ続けて。
「管狐! 氷の力を抱いて飛べ!」
 その願いを届けるかのように、小さな狐型の精霊を放った。
 勝手気ままに広がる呪詛を、管狐の冬氷は抱き止めて。
 悪夢の流れ星に構わず、アストラムへと向かって行く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
願い:世界中のオトコノコやオンナノコにいつまでも愛し愛されたい
悪夢:ずっと変わらないアンデッドの少年少女が襲ってくる

いや、素敵な曲解具合だね。願いをまともに叶える気は無いとは聞いてたけど、予想以上だ。
可哀想だけど、アンデッドになった以上、討滅してあげるのが唯一の救いだから。
「範囲攻撃」の空間裁断で、アンデッドの群を切り刻もう。
プラチナちゃんは、『プラチナファング』で上手く切り抜けてね。

あれが災いの元となるドラゴンか。眠っていられるのも今のうち。
空間断裂を放って首を刎ねよう。
プラチナちゃんは帝竜になれたらドラゴン決戦ができたのに、森の中じゃ無機物が少ないからね。

悪夢は終わり。それじゃ、いい夢を。



「わー! いきなりアンデッドがたくさん出てきました!」
「いや、素敵な曲解具合だね」
 柔らかな草の上で身を起こし、座ったまま慌てる銀髪の少女の隣で、セシル・バーナード(f01207)は苦笑を零した。
「願いをまともに叶える気は無いとは聞いてたけど、予想以上だ」
 セシルが抱く願いは、世界中のオトコノコやオンナノコにいつまでも愛し愛されたい、という愛欲にまみれたものだったけれども。
 セシルに迫ってきたのは、死して尚動き続けるオトコノコやオンナノコ。
 確かに、限りある生を持つ者では『いつまでも』という永遠の願いは叶えられないけれども。それにしたってこの叶え方はないんじゃないかなぁ、とセシルは肩を竦め。
「可哀想だけど、討滅してあげるのが唯一の救いかな」
 にっこりと微笑むと、座ったそのままで無数の空間断裂を放った。
 不可視無音の攻撃は、広くアンデッド達に襲い掛かり。
 セシル達を囲み、押し寄せてきていた人垣を、切り裂き薙ぎ払う。
「あっ、私も! 私もがんばります!」
 その様子を見ていた銀髪の少女が、はっと気づいて立ち上がるけれども。
「うん。頑張るのはいいけど、まずは服を着た方がいいかな?」
「きゃー!? ちょっとストップストップー!?」
 すぐにその場にしゃがみ込む。
「アンデッドとはいえ、プラチナちゃんの可愛さを見せてあげたくはないからね」
 その耳元で囁いて、真っ赤になる少女を楽しみながら。
 セシルはやはり座り込んだまま、アンデッドを蹴散らした。
 そして、ちらりと上へ視線を向ければ、夜空を背に漂う『アストラム』。
「あれが災いの元となるドラゴンか」
 雲を纏い、翼に星を映し。妖しい光を抱きながら。眠るように閉じた瞳の代わりに、額に大きな赤い石を輝かせる、流星龍。
「プラチナちゃんが帝竜になれたら、ドラゴン決戦ができたのにね」
 森の中じゃ無機物が少ないから無理だけど、と傍らの少女を見れば。
 少女はそれどころではない様子で、慌てて服を着ているところ。慌て過ぎて何故か酷く手間取って、逆にセクシーなことになったりもしていますが。
 その様子にくすりと微笑んでから。
 セシルはまた、アストラムを見上げて。
「眠っていられるのも今のうち」
 やっぱり座ったまま、空へと空間裁断を放った。
「悪夢は終わり。それじゃ、いい夢を」

成功 🔵​🔵​🔴​

黒城・魅夜
己が邪悪に堕ちたことに気づかぬもっとも惨めな邪悪よ
かつてはどうあれ、あなたは既に夢を穢すものに成り果て
今や存在を許されぬものと化したのです
「悪夢の滴」たる私が撃ち砕くべき相手にね

アイテム「王女の涙」で眠りに抗い
同じく「血浴みの女王」で呪いを無効化し、さらに呪詛耐性・狂気耐性て
夢を断ち切りましょう
私の願い?
それは己の力でかなえるべきもの
たとえ夢の中であってもね
安易に夢で他者の望みを満たそうとした最初から
もうあなたは間違っていたのです
それは優しさではなくただの傲慢だったのですよ

この牙で因果も時空も撃ち砕きすべてを終わらせましょう
消え失せなさい、夜明けの夢のように儚くね



 美しい花を隠すように、再び闇が広がっていく。
 空に輝く月を覆うように、黒い雲が広がっていく。
 鎖の音を飲み込んで。落書きをした木々を遮って。
 暗く昏い悪夢がまた、世界を侵食していく。
 それは黒城・魅夜(f03522)の過去のように、真の姿となった時に背に広がる翼のように、暗黒と漆黒に塗りつぶされた世界。
「私の願い?」
 そんな黒の世界で、魅夜はふっと笑みを浮かべた。
 漆黒の瞳に希望を映し。
 恐れの欠片もなく、真っ直ぐに前を見て。
「それは己の力でかなえるべきもの。たとえ夢の中であってもね」
 だからどんな夢もいらないと。
 どんな悪夢も打ち払ってみせると。
 魅夜はそっと、短剣を握りしめた。
 それは、古の女王が美と若さを得るため生贄を斬り裂いた、という謂れのある『血浴みの女王』の銘を持つもの。その恨みの血で、呪いのような悪夢を断ち切って。さらに、眠りを誘うものに強力な抵抗を示す古代の美術品『闇に眠れる王女の涙』も手にし、夢の根源に抗っていく。
 そして見上げた夜空に、眠っているかのようなドラゴンが、いた。
 その翼に星を描き、雲に覆われながら、悪夢を紡ぐ『アストラム』。
 紡いでいた吉兆を、災厄の予兆に変えて蘇ったオブリビオン。
「己が邪悪に堕ちたことに気づかぬもっとも惨めな邪悪よ」
 その姿に、魅夜は語りかける。
「かつてはどうあれ、あなたは既に夢を穢すものに成り果て、今や存在を許されぬものと化したのです。
 ……『悪夢の滴』たる私が撃ち砕くべき相手に、ね」
 瞳を閉じたままのアストラムに、言葉が届いているのかは分からない。
 魅夜の声にも、ただふわりふわりと浮かぶだけで。
 額の赤い宝石も、翼に描かれた星も、淡々と輝き続け。
 ゆらりと広げられた手の中で、ただただ悪夢が紡がれ続ける。
 それは、自身が生み出す悪夢が正しいと強く思っての行為には見えず。
 まるで、寝ぼけたそのままで願いを聞き、深く考えずに反射的に、ぼんやりとした思考のまま願いを叶える夢を紡いでいるかのよう。
 本来のアストラムであれば、吉兆を紡ぐ存在であれば、それで問題なかったのだろう。
 だが今は。今のアストラムは。
 悪夢を生み出す、過去の残滓。
 そして、その在り様が変貌してしまったからこそ分かる。
 元来のアストラムも、歪んでいたことが。
「安易に夢で他者の望みを満たそうとした最初から、もうあなたは間違っていたのです。
 それは優しさではなくただの傲慢だったのですよ」
 穏やかに魅夜は指摘するけれども。
 眠るアストラムに聞き入れる様子は、ない。
 ただただ悪夢を紡ぐのみ。
 だからこそ。
 せめてと。
 魅夜は、夜空に浮かぶその姿へ手を伸ばした。
「この牙で因果も時空も撃ち砕きすべてを終わらせましょう」
 生み出されるのは、絶の牙。
 因果と時空ごと消滅させる、影の自分の能力。
 それを引き出した魅夜は、悪夢を纏いし希望の魔性は、美しく微笑んで。
「消え失せなさい。夜明けの夢のように儚くね」
 悪夢を、終わらせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木霊・ウタ
心情
悪夢にとらわれているフュイユは勿論
知らず悪夢を生み出してしまっている龍も
どちらも救ってやりたいぜ

悪夢
ささやかな演奏会
聴衆が無感動
こいつは堪えるぜ
けど…
炎渦が広がり悪夢を灰に

やっぱ未来は自分自身で
作り上げていくものだぜ


歪んじまったことに気づかず
良かれと思って力を振るうとは
可哀そうに
寝たままでいい
そのまま海へ還してやる

戦闘
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払い
龍ごと悪夢の世界を焼却

紅蓮に抱かれて眠れ

事後
鎮魂曲
海で今度は自分の夢を、な

フュイユ
猟兵もそうだけど
冒険者なら仲間と協力をしてこそ、だぜ?
ヴェルトと仲良く、な(ぐっ



 静かに爪弾かれるギターの音色と共に、木霊・ウタ(f03893)の穏やかな歌声が響く。
 夜闇に森に、そして寂しい心に染みわたるような温かな旋律。
 春の訪れを祝い、新緑の芽吹きを祝す、そんな歓びの歌を奏で。
 ウタは自身を囲む聴衆を見渡した。
 願ったように、沢山の人々がウタの曲を聞いてくれている。
 多くの目が、耳が、ウタへと向けられている。
 けれども。
 誰の心にも、ウタの曲は響かない。
 誰一人として何の感情も見せないまま、ただウタの声を聞き、姿を見続ける。
 無感動の聴衆。
(「こいつは堪えるぜ」)
 紡がれた悪夢にウタは苦々しく笑った。
 フュイユもこんな風に悪夢に蝕まれ、囚われていたのだろう。
 それはとても辛く、苦しいものだと実感して。
 でもウタは、呑まれることなく、抗うようにギターをかき鳴らした。
 力強い旋律とともに炎渦を広げ、悪夢に立ち向かい、偽りの聴衆を灰に帰す。
「やっぱ未来は自分自身で作り上げていくものだぜ」
 俯かずに、真っ直ぐに前を見据えて。
 荒々しい風で力強く背中を押すかのように。
 ウタは、悪夢を焼き払い、望む未来を描いていく。
「フュイユ」
 そして共に悪夢に抗っているであろうフェアリーへ呼びかけて。
 その悪夢から願いを感じ取り、微笑みを向けた。
「猟兵もそうだけど、冒険者なら仲間と協力をしてこそ、だぜ?」
 自立した一人前の冒険者になりたい。
 仲間がいなければ何もできない存在に甘んじていたくない。
 それはきっと、喜ばしい向上心で。
 けれども、何もかもを1人で背負い込み、潰れてしまいかねない強すぎる義務感。
 そんな空回りをしてはいけないと思いながら。
 ウタは穏やかに、でも力強く告げる。
「ヴェルトと仲良く、な」
 1人にならないと強くなれない、なんてことはないのだと。
 1人ぼっちになってしまってはいないのだと。
 ぐっと拳を握って、フュイユに、このフェアリーランドそのものに、声をかけた。
 そして、ウタの悪夢を焼いていた炎が消える。
 ふと視線を夜空へ上げれば、そこにはオブリビオン『アストラム』が漂っていて。
 翼に星を抱き、雲を纏い、瞳を閉じて夢を紡ぎ続ける姿を、ウタは見据えた。
「可哀そうに」
 歪んでしまったことに気付かず、悪夢を生み出す存在。
 多分、彼のドラゴンは、良かれと思って力を振るっているのだろうと思う。
 それならば、ただ夢を紡ぐ、元の吉兆たる存在に戻してやりたいけれども。
 オブリビオンとなってしまっては、願いは叶わず。
 ただ穏やかに、流れる星と共に夜空を漂わせていてやりたいけれども。
 災厄を振りまいてしまっていては、見過ごすことはできない。
 だから。
「寝たままでいい。そのまま海へ還してやる」
 ウタはギターを巨大剣『焔摩天』に持ち替えて、構える。
 悪夢を焼いた獄炎を、今度は焔摩天の梵字が刻まれた刀身に纏わせて。
「紅蓮に抱かれて眠れ」
 骸の海へ導くように、アストラムへと振り抜く。
「海で今度は自分の夢を、な」

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええアヒルさん、眩しい眩しいですからやめてください。
あれ?突然眩しくなくなりました。まだ目がチカチカしてよく見えませんが、アヒルさんどうしたのですか?
ふええ!?願いは叶えたって、私はアヒルさんにライトを私に向けるのはやめてくださいって言っただけで、アヒルさんを消してくださいと頼んだ訳ではありませんよ。
ふえぇ、どうしましょう。
って、アヒルさんが飛んできました。
アヒルさん、無事だったんですね、よかったです。
私の願いが弱いものだったから、アヒルさんを消すまでに至れずどこかに飛ばすまでで済んだんですね。
こうなったら、サイコキネシスでおかえしです。



「ふええ。アヒルさん眩しい眩しいですから」
 ライトを点け続けるアヒルちゃん型のガジェットを、フリル・インレアン(f19557)は必死に止めようとしていた。
 ガジェットがフリルの意思に従わないのはいつものことだし。
 暗闇に覆われた夜の森を、ライトで照らそうとするのは正しい行為だろう。
 でもそれにしても。
 スポットライトを顔に直接当てられているような強い光は、目を閉じていても視界を明るく照らし出してしまっているから。
「はうう。ライトを私に向けるのはやめてください……」
 せめて光を反らして欲しいとフリルは懇願する。
 すると。
 唐突に眩しさが、消えた。
「あれ?」
 暗くなった視界に、フリルは恐る恐る赤い瞳を開く。
 強すぎた光の影響で、まだ目がチカチカしてしまい、よく見えないけれども。
 そのチカチカの原因であるライトは確かに消えているようで。
 周囲の森はまた暗闇に覆われているのが分かった。
「アヒルさん、どうしたのですか?」
 まさか言うことを聞いてくれるなんて、とフリルは心底驚いて手元を見下ろす。
 少しずつチカチカが晴れていく視界に、呆れたようにこちらを見上げてくるガジェットの姿が映……
「アヒルさ……ふええ!?」
 映らなかった。
 気付けばフリルの手の中には何もなく。
 握りしめて、辺りに手を伸ばして、いつものガジェットの感触を探すけれども。
 その存在は唐突に消え去っていた。
「一体、何が……?」
 フリルは戸惑いながら、周囲を見回し。
 ふと、夜空を見上げる。
 そこに浮かぶのは、眠ったまま漂うオブリビオン『アストラム』の姿。
 それは、人の願いを叶えることで悪夢を紡ぐ、災厄の予兆。
「もしかして、私の願いが叶えられた、ということでしょうか?
 で、でも、私はアヒルさんを消してくださいと頼んだ訳ではありませんよ」
 察したフリルはあわあわと説明するように夜空へ向かって話しかけるけれども。
 漂うアストラムはピクリとも反応せず。
 雲に覆われ、星を映した翼をゆるりと広げ、額の赤い石を輝かせながら、どこかぼんやりと悪夢を紡ぐ光を抱き続ける。
「ふえぇ、どうしましょう……」
 困り果てたフリルは、大きな帽子の広いつばを両手でぎゅっと引き寄せて、頭を抱えるような格好でその場に蹲った。
 ……それは、フリルがアリスラビリンスで目を覚ました時に、側に転がっていた。
 何故側にあったのか。
 何処から来たのか。
 何故フリルにしかその声は理解できないのか。
 分からない事だらけだけれども、それはずっとフリルの側にいてくれた。
 いつも怒られてばかりで。
 いつも言うことを聞いてくれなくて。
 いつも勝手なことをして。
 でも、いつも側にいてくれた。
 そんなガジェットの不在に、フリルは途方に暮れて。
 その頭に、すこんっ、と何かがぶち当たる。
「ふえぇ……あっ、アヒルさん!?」
 それは消えたはずのガジェットだった。
「アヒルさん、無事だったんですね。よかったです」
 半ば涙目で喜ぶフリルに、ガジェットは文句を言うようにガァガァ鳴く。
 どうやら結構遠い場所から戻ってきてくれたらしいと、愚痴やら説教やらに近い言葉からフリルは理解して。
(「私の願いが弱いものだったから、アヒルさんを消すまでに至れず、どこかに飛ばすまでで済んだんですね」)
 強い願い程酷い悪夢になる、そんなアストラムの能力を思い出して。
 くちばしでツンツン突いてくるガジェットに、痛いです、とどこか嬉しそうに応えながら、フリルはほっとした表情を見せた。
 そして、いつものようにガジェットを両手で持つと。
 もう一度、夜空を見上げる。
 そこに漂うドラゴンを。悪夢を紡いだアストラムを、頑張って睨んで。
「アヒルさんを飛ばしてくれたおかえしです」
 フリルはサイコキネシスを放った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
アドリブ歓迎

やろうとしてる事は、元は善意なんだろうけど
なんだろう…気づかないのもまた罪、なのかな
可哀そうだけど

僕の願いは、全ての生き物を救う事
人も、そして…オブリビオンも
であれば悪夢はなんだろう
皆が消える夢?
僕のせいで酷い目に合う夢?
僕が皆に、恨まれる夢?

なんだって構わない
そんな風景は…とうの昔に見慣れてしまった
だからこそ
同じ悪夢を繰り返さないように
僕は今、ここにいる

形見の★お守りの【破魔】で悪夢は祓って
【オーラ防御】で身を護り
今度こそ救うために
フェイユさんにもアストラムさんにも
光を届けられるように
【優しい歌唱】で操る破魔を乗せた【指定UC】で
極力痛みは与えずに
【浄化】による攻撃を



 助けて。助けて。助けて。
 暗い夜の森の中で、栗花落・澪(f03165)に向けられた声が響く。
 じっと琥珀色の瞳を向けた先で。
 倒れた大木に挟まれて苦し気な少年と、成す術なくそれを見て狼狽える女性がいた。
 ……救いたい。
 そう澪が願うと。
 木が少しだけ持ち上がり。動けるようになった少年に安堵と歓喜の表情が広がって。
 唐突にその姿がかき消える。
 倒れた大木だけが残ったのを見た女性の悲鳴が響き渡る。
 別の方向には、大きな鳥籠のような牢に捕らわれた少女が、無表情に座っていた。
 ……救いたい。
 そう澪が願うと。
 鳥籠が消え去って。解放された少女に驚愕と共に歓喜の表情が広がって。
 唐突にその姿に無数の傷が刻まれる。
 閉じ込められ守られていた檻を無くした少女の苦痛の嘆きが響き渡る。
 また別のには、オブリビオンが何かを求め、悲し気に彷徨っていた。
 ……救いたい。
 そう澪が願うと。
 男の姿が現れ。再会を得たオブリビオンに切望と歓喜の表情が広がって。
 唐突に、抱いた男は死体となり、また周囲に無数の死体が生まれる。
 死者が、それに縋る生者が、恨みの念を紡ぎ上げる。
(「これが僕の悪夢……?」)
 そんな光景に、澪は思う。
 澪の願いは、全ての生き物を救う事だから。
 人も、そして……オブリビオンも。
 だからこんな光景が生み出されたのだろうかと、思う。
 でも。
(「なんだって構わない」)
 そんな風景は……とうの昔に見慣れてしまった。
 悲しみも苦しみも恨みも。
 何度も何度も、救えずに、見てきた。
 だからこそ。
「同じ悪夢を繰り返さないように、僕は今、ここにいる」
 桃色兎の魔除け守りを握りしめて、そこに宿る温かな破魔の力で悪夢を祓う。
「今度こそ、救うために」
 悲しみも苦しみも恨みも乗り越えて。
 澪は闇の晴れた夜空を見上げた。
 そこに浮かぶのは眠れる流星龍。
 雲に覆われ、翼に星を映し、願いを叶える夢を紡ぐ『アストラム』。
「やろうとしてる事は、元は善意なんだろうけど……
 なんだろう……気づかないのもまた罪、なのかな」
 でもその夢は、オブリビオンとなってしまった今は、悪夢でしかないから。災厄の予兆とも呼ばれるようになったその存在を、可哀そうに思いながらも、このまま見過ごすことはできないから。
「フュイユさんにもアストラムさんにも、光を届けるよ」
 澪は、すうっと大きく息を吸い込んだ。
 そして紡ぎ出される優しい歌声。
 妙なる旋律は、澪の足元を花畑に変え、無数の花弁を舞い踊らせる。
 暗い森に差し込む光のように、漆黒の光景を色とりどりに変えて。
 美しい光景の中で、澪は歌を歌い続けた。
 フェアリーランドを見ているであろうフュイユにも届くように。
 夜空で眠るアストラムが幸せのままに眠れるように。
 優しい浄化と破魔の力を乗せた花弁が、舞い上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ノヴァ・フォルモント
…そうか、この悪夢を作り出している原因はお前なのだな
星が瞬く夜を顕現したようなその見目
少し惹かれるものがあるけれど

純粋な願いを糧に、悪夢を視せる
その所業を見過ごすわけには行かないな
夢現ならば丁度いい、
そのまま自分の夢へおかえり

三日月の竪琴を手に
月夜の旋律を奏でる
聴手によりその音色を変える
さあ、お前にはどう聴こえるだろうか

俺の願いね…生憎様
誰かに叶えてもらう様な願いは持ち合わせていないな
でも今この限りの願いなら
この暗い森の悪夢を終わらせる事だ

瞬く流星が降る
そしてまた闇に包まれたとしても
同じ様に導きの月灯りで照らそう
小さなフェアリーの純粋な願いを打ち砕かない為にね



 月の光を灯すランタン『月燈』をそっと傍らに置いて。
 ノヴァ・フォルモント(f32296)は『朧月夜』の名を持つ竪琴を手にする。
 三日月を模した金色の小さなそれは、何本もの細く煌めく弦でノヴァの指を迎えて。
 柔らかな音色を奏で出した。
「俺の願いね……」
 淡く照らす月の光のような、朧に霞む旋律の中で。
 ぽつり、とノヴァが言葉を零す。
「生憎様。誰かに叶えてもらう様な願いは持ち合わせていないな」
 だからだろうか。ノヴァの周囲の景色は変わっていない。
 自由気ままな旅の吟遊詩人。
 当て所無く彷徨う旅路。
 目的は無い、といつもノヴァは云う。
(「いつか終わりを迎える、その意味を見つけるまでは」)
 それが願いといえば願いなのかもしれない。
 けれどもそれは、誰かに叶えられる願いではないから。
 夜闇の広がる森の中で、ノヴァは竪琴を爪弾いていく。
「でも、今この限りの願いならある。
 この暗い森の悪夢を終わらせる事だ」
 だからもし願うならと、フュイユを思い、曲を紡ぐ。
 暗い昏い夜闇を照らす月のように。
 森の中で独りではないと教えるように。
 寄り添うような優しい音を奏でていく。
 見上げた夜空に、月と星の輝きが戻り。
「……そうか、この悪夢を作り出している原因はお前なのだな」
 そこに瞬く星が本物だけでないことに気付いて、ノヴァはオレンジ色の瞳を細めた。
 それはオブリビオン『アストラム』の広げた翼。
 身に纏う雲も、そこで輝く光も、星空を描いたかのようで。
 ノヴァは、その姿に少しだけ心惹かれる。
 けれども。
(「純粋な願いを糧に、悪夢を視せる。
 その所業を見過ごすわけには行かないな」)
「夢現ならば丁度いい、そのまま自分の夢へおかえり」
 眠り続けるように瞳を閉じたアストラムへと、奏でる曲を変えた。
 それは、月夜の旋律。
 聴手によりその音色を変えるユーベルコード『宵月夜』。
(「さあ、お前にはどう聴こえるだろうか」)
 治癒をもたらす月の旋律か。
 痛手をもたらす宵の旋律か。
 どちらであったとしても、ノヴァはアストラムへ向けて演奏を続ける。
「何度でも、瞬く流星を降らせるといい。
 そしてまた闇に包まれたとしても、同じ様に導きの月灯りで照らそう」
 例え流れ星がまた悪夢を紡いでも。癒してみせると。消してみせると。
 決意を乗せて爪弾く、宵月の奏。
 そしてその旋律は、フェアリーランドを見ているフュイユにも届いていると信じて。
「小さなフェアリーの純粋な願いを打ち砕かない為にね」
 穏やかに、ノヴァは微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈍・小太刀
フュイユ
ここで戦えるのは君のお陰
頼りにしてるよ
もう少しだけ頑張ってね

寝ぼけ眼のドラゴンを見上げ
その心の奥を見る
悪意のない穏やかな顔
でもオブリビオンという事だけが
どうしようもない事実

君はどんな夢を見ているの?
いつかの様に誰かの願いを叶える夢?
でも叶えようとすればするほどに
願いは歪み叶わない
この悪夢は
君にとっても悪夢なのかもしれないね

眠いなら眠るといいよ
無理しなくて大丈夫
自分の願いは自分で叶えるから
私も、フュイユもね
だから君も悪夢は終わり
ゆっくりと眠るといいよ

破魔の力と祈りを込めて白雨の矢を放つ
君の悪夢が終わりますように
心地よい眠りの中でいい夢を見られますように
骸の海へ
おやすみなさい

※アドリブ歓迎



 悪夢を散らして鈍・小太刀(f12224)は夜空を見上げた。
 そこに漂うのは、オブリビオン『アストラム』……災厄の予兆と呼ばれた流星龍。
 額に煌めく赤い石とは逆に閉じられた瞳は、悪意の欠片も感じられない穏やかな顔で。
「君はどんな夢を見ているの?」
 小太刀は、雲を纏い、星を翼に描いたドラゴンへ、語りかける。
 その心の奥を見たいと願うかのように。
「いつかの様に誰かの願いを叶える夢?」
 小太刀は、問いかける。
 でも、アストラムが叶えようとすればするほどに、願いは歪み、叶わない。
 オブリビオンであるというどうしようもない事実が導く、災厄の結末。
「この悪夢は、君にとっても悪夢なのかもしれないね」
 闇に覆われた1人ぼっちの夜の森も。
 周囲の全てが死者になるのも。
 誰にも関心を持たれないのも。
 大切な存在と引き離されるのも。
 救いたいと願い助けた者に恨まれるのも。
 誰かの願いから生まれた悪夢であると同時に。
 アストラムにとっても悪夢なのではないかと。
 小太刀は、思って。
 ぐっと握りしめた手に力を込め、夜空を漂う流星龍を見据えると。
 ふとその視線を、アストラムから少し反らした。
「フュイユ」
 呼びかけるのは、このフェアリーランドの主であるフェアリーへ。
 ユーベルコードの制御を奪われ、弱っていた小さな少女へ。
「ここで戦えるのは君のお陰。
 頼りにしてるよ。もう少しだけ頑張ってね」
 姿は見えないけれども、きっと自分達を見ているだろうから。
 共には居ないけれども、きっと自分達のために頑張ってくれているだろうから。
 真っ暗な闇だけだった空に光る月と星に小太刀は目を細め、微笑む。
 この輝きはきっとフュイユの心。
 もう雲にも闇にも覆わせたりはしないから。
 もう暗く昏い世界にはしないから。
(「もう誰にも悪夢は見せない」)
 小太刀は誓うように思って、アストラムへと視線を戻す。
「眠いなら眠るといいよ」
 そしてまた、優しく語りかける。
「無理しなくて大丈夫。自分の願いは自分で叶えるから。私も、フュイユもね」
 ふわふわ、ふわふわと。
 不規則に揺れながら夜空を漂う姿は、まるで寝ぼけているかのようで。
 眠いけれども願いを叶えなければと、必死に起きようとしているかのようで。
 眠ってまた悪夢を見てしまうのは嫌だと、抗っているかのようでもあったから。
「だから君も悪夢は終わり。ゆっくりと眠るといいよ」
 安心させるように告げた小太刀は、そっと黒漆塗の和弓を構えた。
 飾り気は少ないけれども、その弓として完成された機能美が何よりも美しく。
 番えられた真白の矢をさらに白く輝かせるように引き立てる。
 闇を貫く、その意志を込めて『白雨』を引き絞れば。
 琴が爪弾く美しき月夜の旋律と共に、鮮やかな花びらが舞い上がった。
 それを合図にしたかのように、森のあちらこちらから攻撃が放たれる。
 氷の力を抱いた小さな狐型の精霊が。不可視の空間裁断が。因果と時空ごと消滅させる絶の牙が。獄炎を纏った巨大剣が。サイコキネシスが。
 一斉にアストラムへと向かって行く。
 それをじっと見据えた小太刀は。
(「君の悪夢が終わりますように」)
 白雨の矢に、破魔の力と祈りも込めて。
(「心地よい眠りの中でいい夢を見られますように」)
 穏やかに骸の海へと誘うように。
 弦を引き絞っていた手を、離した。
「おやすみなさい」
 真っ白な矢は真っ直ぐに夜空を駆け上り。
 他の皆と攻撃と共に、アストラムを貫いて。
 少しだけ開かれた瞳が微笑んだように見えたところで。
 その姿が夜空に溶け消えた。
 優しく淡い月が輝き。
 無数の小さな星が瞬く。
 月光に照らされた木の葉も煌めき。
 暗いけれども美しい、漆黒の闇ではない、夜の森。
 その光景に小太刀はそっと目を伏せて。
 はっと気づいて顔を上げた。
 そこに落ちてきた小さな何かをふわりと受け止める。
 流れ星のように夜空から降ってきたそれは。
 1本の輝く鍵、だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 夢から覚めたように、フュイユはぱちっと瞳を開けた。
 疲労感が残る身体をゆっくり起こし、座り込んだまましばしぼうっとする。
 ……長い長い夢を見ていた気がする。
 暗く昏い、独りぼっちの悪夢を。
 そこに差し込む眩い光。
 夜闇を塗り替えるように、朝日が顔を出していた。
 暗く昏く黒かった森に、鮮やかな色が戻ってくる。
 眩し気に目を細めたフュイユは、そういえば、とようやく気付く。
 制御できなかったフェアリーランドが、もう解除されていることに。
 朝日に照らされる小さな壺を、フュイユはまじまじと見つめて。
(「そうだ。猟兵達が、助けてくれたんだ……」)
 もうその姿は近くにない。
 直接お礼を言いたかったな、と思いながら。
 フュイユは別の人物を思い浮かべていた。
「ヴェルト……」
 誰かの傍に居たい、なんて半人前な気がしてた。
 1人前の冒険者になりたいのに。
 会いたい、なんて甘えだろう、と。
 でも、大切な友達だから。頼れる仲間だから。
「会いに行こう」
 そう決めると、すとんと心が落ち着いた。
 それでいいんだよ、と優しい声が幾重にも聞こえた気がして。
 フュイユは真っ直ぐに顔を上げる。
 朝日はもうすっかり昇り、森の闇は消え去っていた。

最終結果:成功

完成日:2021年03月21日


挿絵イラスト