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技術者は限界を超えさせてこそ

#アルダワ魔法学園 #猟書家の侵攻 #猟書家 #造船者オーレリアン #ビーストマスター #災魔の卵 #マイ宿敵

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●アルダワ・群島海域
 アルダワ世界の各所の大陸や島が海を取り囲む群島海域。
 大型蒸気船が絶えず行き来し、大陸と大陸の間で人と物資を運ぶ中、そのうちの一隻「輝きの海号」もいつも通り、諸王国連合から猫の国へと向かって航行を行っていた。
 船内の定期点検を行っていた人間の青年が、機関室の扉へと手をかける。
「さて、あとは……ん?」
 機関室の中に入った彼は、すぐに違和感を覚えた。中に誰かがいる。
 竜派ドラゴニアンの男性だ。その腰に備えた工具類の数々は、彼が技術者であることを物語っている。
 だが、この船の乗組員に竜派ドラゴニアンの人員がいただろうか?
 険しい顔をする青年の前で、男性がポツリと呟く。
「……足りねぇなぁ」
「えっ?」
 嘆くように、悲しむように呟かれたその言葉。ある種脈絡のないその言葉に青年が声を漏らすと、ドラゴニアンの男性はこちらを振り返った。額に上げられたゴーグルのレンズが光る。
「ああ、居たのか。どうだお前、この船の乗組員なら、物足りねぇと思わねぇか」
「何を……その前に、どうやってここに立ち入った」
 親しげに声をかけてくる男性に、青年が眉間のしわを一層深めて返す。そもそもこの男性は不審者だ。そんな人物が機関室なんて、重要な場所にいていいはずはない。
 だが、青年の問いかけに男性は答えない。それどころか機関室の心臓たる蒸気エンジンに、手を触れながら大声を発した。
「どうやって? そんなこたぁどうでもいいんだ。俺はこの状況がどうにも我慢ならねぇ!」
 男性の――猟書家幹部「造船者オーレリアン」の声に、青年がたじろいだ。オーレリアンの手が腰のポケットに突っ込まれる。
「人の決めた窮屈な取り決めの中に縛られて、全力を出せないエンジンのどこに価値がある? 限界を超えてこそのエンジンだ! 俺にはこいつを、もっと本気にさせる使命がある!」
「あんた、何を勝手な――!?」
 手前勝手な御託を並べ立てるオーレリアンに、青年が抗弁するも。その言葉は途中で途切れることとなった。
 オーレリアンがポケットから取り出した、どどめ色をした卵。それが蒸気エンジンに押し込まれるや、エンジンがとぷんと表面を波打たせて飲み込んだのだ。
 刹那、蒸気エンジンが悲鳴にも似た甲高い音を立てる。
「さあ、咆哮を上げろ! 今こそこの海を、お前の吐き出す蒸気で埋め尽くしてやれ!」
 青年は見ることが無かっただろう。船の外で、「輝きの海号」の煙突から次々にプロペラを備えたドローンが吐き出されているのを。
 群島海域の真ん中で、船は混乱の坩堝に飲み込まれようとしていた。

●グリモアベース
「オーレリアン……竜派ドラゴニアンの技術者……そうか、遂に動き出したか」
 自身のガジェットから映し出された映像を睨みながら、イミ・ラーティカイネン(夢知らせのユーモレスク・f20847)はブツブツとそう呟いていた。
 猟兵たちが首を傾げつつ声をかけると、彼はようやく我を取り戻したらしい。居並ぶ猟兵へと視線を向けつつ口を開いた。
「ああ、先輩たち。猟書家に新たな動きが見えたことは知っているか? 一つ、それ絡みで対応を頼みたい事案がある。まずはこいつを見てくれ」
 そう言いながら彼が見せてきたのは、一人の竜派ドラゴニアンの全身図だった。緑色の鱗をして、大きな翼を背に備え、腰に工具ベルトを巻いた男性。彼の顔を拡大して見せながら、イミは説明を始める。
「魔法学園のガジェッティア学科に通っていた者なら、この顔に見覚えがあるだろうな。オーレリアン・バジュー。かつて、アルダワの造船技術の発展に大いに貢献したとされる技術者だ。教科書にも載るくらいには名が知られている」
 彼の説明に猟兵たちは目を見張った。かつて。確かに今、彼はそう言った。
 何かを察した猟兵たちに、イミは大きく頷いてみせる。
「そうだ。彼がこの度、猟書家としてアルダワ世界に蘇った。厄介な事件のおまけ付きでな。オーレリアンは群島海域を航行する大型蒸気船に侵入し、『災魔の卵』で船の蒸気エンジンを暴走させ、海域各地に災魔をばら撒こうとしている」
 その言葉に猟兵たちがざわつく。大陸や島が群島海域を取り囲むように位置するアルダワでは、海域を航行する蒸気船は物流を支える生命線だ。それにトラブルが起きたとなれば、広範囲に悪影響が出るだろう。
「先輩たちの仕事は二つだ。蒸気船が吐き出す水上戦型災魔を倒すこと。蒸気船に乗り込んでオーレリアンを撃破すること」
 指を二本出しながら話すイミに、猟兵たちは頷いた。このまま事態を放置しておくわけにはいかない。
 それを確認したイミが、いつも以上に真剣な表情で話を再開した。
「暴走した蒸気エンジンが吐き出す災魔はスチームドローン……空中をプロペラで自律移動するドローンだ。これに水上飛行用のエンジンが取り付けられ、水上での推進力を持っている」
 元々空を飛ぶドローンだが、これにさらにエンジンが付いているらしい。船の周囲に広く展開し、水上を難なく移動するドローンを片付けることが、まずは先決だ。
 それらをどうにかしてから、オーレリアンとの直接戦闘となる。
「『輝きの海』号に接近できるようになれば、オーレリアンは異常を察して甲板に出てくるはずだ。そこを急襲するのが都合がいいだろう」
 オーレリアンの武器はその手に握る愛用のスパナと、彼の召喚する魔導蒸気機械。さらには召喚した蒸気機械を降らせることで、戦場を高温多湿のボイラー室のような状況にすることも出来るらしい。
「ああ、そうそう。今回の事件にあたって、群島海域の島に住むビーストマスターが、海に棲むシャチを駆って現場に向かっているらしい。彼とも協力して事に当たってくれ」
 曰く、そのビーストマスターはアルダワ魔法学園の卒業生で、海域の島を拠点にしているのだとか。きっと周辺の海の地形や、潮の流れにも詳しいだろう。力になってくれるはずだ。
 粗方の説明を終えたイミが、ガジェットから映す映像を消した。ポータルを開けば、その向こうから潮風が吹き込んでくる。
「説明は以上だ。いいか先輩たち、群島海域を行き来する蒸気船が止まれば、アルダワ世界全体の輸送が止まる。くれぐれも、討ち漏らしの無いようにしろよ」


屋守保英
 こんにちは、屋守保英です。
 やもりさんちの宿敵がとうとう猟書家幹部になりました。
 どのくらいの付き合いになるか分かりませんが、オーレリアンさんをよろしくお願いします。

●目標
 ・造船者オーレリアン×1体の撃破。

●特記事項
 このシナリオは「2章構成」です。第2章がクリアになった時点で、シナリオが完成となります。
 アルダワ魔法学園の「骸の月」の侵食度合いに、成功数が影響します。

●戦場・場面
(第1章)
 群島海域の海上です。猟兵は近隣の島に転移してから現場に向かう形になります。
 海域に点在する近隣の島や、海上に展開しているスチームドローンを撃破します。一体一体は弱いですが、数はたくさんいます。
 また、ビーストマスターは近隣の海域を回りながら、スチームドローンを何とかしようと動いています。彼とも協力することで戦闘を有利に進められます。

(第2章)
 大型蒸気船「輝きの海号」の甲板です。
 オーレリアンが甲板に出て来て、災魔の異常を確認しようとしています。ビーストマスターと協力することで、戦闘を有利に進められます。

●ビーストマスター
 ジョシュア・モルツ(男性・38歳)
 アルダワ魔法学園、ビーストマスター学科の卒業生。人間。群島海域に浮かぶ島の一つを拠点にしており、海の生物と心を通わせるのが得意。今回の事件で海域に災魔が現れたことを察知し、現場に向かっている。
 性格は誠実で真面目。

 それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『スチームドローン』

POW   :    機関暴走
【過熱状態での突進】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自爆】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    スチームブラスター
【機体下部に搭載された蒸気熱線銃】を向けた対象に、【精確な射撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    戦闘データ送信
戦闘力のない【観測用スチームドローン】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【次章のボスへとそれらの情報が送信される事】によって武器や防具がパワーアップする。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●海域に浮かぶ島・オーガスタ島近隣
 海上を、蒸気を吹き出す音とプロペラが回る音がいくつも駆けていく。
 突如として群島海域中部に出現した災魔の群れは、瞬く間に海上へと広がり、近隣の島々へとその魔手を伸ばそうとしていた。
 そんな海上をシャチの背に乗って駆けながら、蒸気銃を手にした一人の中年男性が歯噛みする。
「くそっ、嫌な予感がして海に出てみれば、なんですかこの数は!? ただ事じゃありませんね!」
 ビーストマスター、ジョシュア・モルツ。この海域に浮かぶ島、オーガスタ島を拠点として海上保安に勤しむ彼は、愛用の銃と相棒のシャチと共に、唐突に戦場と化した海に飛び出していた。
 しかし多勢に無勢、いくら敵のドローンが銃弾一発で落ちると言えども、数が多すぎて対応が間に合わない。
 そんな折、ジョシュアの目と猟兵たちの目が合った。
「救援ですか!? 助かります、私一人ではどうにも対応しきれなくて……ご助力お願いします!」

●特記事項
 ・ジョシュアの武器は蒸気銃と、共に行動しているシャチです。遠距離からの射撃とシャチの突進によるヒットアンドアウェイを得意とします。
 ・スチームドローンは銃弾一発で落とせるくらいに弱いですが、数が多いです。
バロン・ゴウト
いくらアルダワの偉人でも、猟書家として災魔をばらまくなら放っておくわけにはいかないのにゃ。
それにしてもイミさん、いつもとなんだか様子が違ったような……。

ジョシュアさんやシャチさん達と協力して戦うのにゃ。
シャチさんの鼻先に乗り、【オーラ防御】を張った状態でシャチさんがジャンプするのに合わせ、さらに自分も【ジャンプ】して高く跳ぶのにゃ。
高所から【全力魔法】で【アイリスの嵐】を発動し、空中のドローンを一網打尽にゃ!

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。



●波飛沫
 オーガスタ島の海岸で、バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)はいつも以上に難しい表情をしていた。
「なんだかイミさん、いつもとなんだか様子が違ったような……」
 考えるのは事件の予知をしてくれた、猟兵をこちらに転移させて島の内陸部にいるだろうグリモア猟兵のことだ。随分と深く考え込むような、いつも見せない表情をしていたように思う。
 しかし、今は戦闘中だ。こうしている間にも次々とスチームドローンが吐き出され、群島海域を侵略していく。オーガスタ島からも何体ものドローンが、こちらに飛んでくるのが見えていた。
「ううん、気にしている場合じゃないのにゃ! いくらアルダワの偉人でも、猟書家として災魔をばらまくなら放っておくわけにはいかないのにゃ!」
 アルダワ魔法学園の生徒として、この世界に生きる者として。決して放置しては居られない案件だ。
 ちょうど海の上を、一頭のシャチが海面を滑るようにこちらに向かってくるのが見える。その背の上には銃を持った一人の男性。彼がジョシュアで間違いないだろう。
 バロンの姿を見て、ジョシュアが目を見開く。彼が助けに来てくれた援軍であることは、彼の腰に佩いたレイピアが雄弁に物語っていた。
「お手伝いするのにゃ!」
「助かります! 乗ってください!」
 スピードを落としたシャチの鼻先にバロンが飛び乗ると、ジョシュアはすぐさまシャチを旋回させた。再び海上を走り出すシャチの上で、バロンが黄金のレイピアを抜きながら声を発する。
「あそこの辺りにドローンが集まっているにゃ、あそこに向かってジャンプさせてくださいにゃ!」
「突っ込んで大丈夫ですか? 分かりました、しっかり掴まって……」
 若干ジョシュアが戸惑いの色を見せるが、自分とシャチに守りのオーラが展開されたのを見て意を決した。ドローンが多数浮かぶところに突っ込むようにしながら、タイミングを見てシャチの身体を叩く。
「いち、に、さんっ!」
「にゃーっ!」
 大きく海面からジャンプしたシャチの鼻先から、バロンが跳び上がる。二段ジャンプだ。一気に上に跳び上がったバロンが、スチームドローンの上を取る。
「よし、アイリスの花びらよ! 敵を討つにゃ!」
 そして落下するより早く、バロンの黄金のレイピアが解けた。紫色のアイリスの花びらが嵐となって、スチームドローンを次々に爆散させていく。
 十体ほどのドローンを消し飛ばしたバロンが、華麗にシャチの上へと降り立った。
「よっ、と!」
「す、すごい……!」
 一撃で一気にドローンを破壊したバロンの姿に、ジョシュアは大きく目を見開いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゲニウス・サガレン
懐かしい、アルダワの学園
遺跡や海底探索に必要な自律行動式のガジェットを作りに留学したなぁ
(手元のC式ガジェットをなでる)
教科書に乗るような人物と戦うのは恐縮だが……

ジョシュア氏は学園の先輩か
シャチ等あの船に追いつける動物をお借りしたい

アイテム「潜水作業服」濡れても大丈夫!
同「スティングレイ短針銃」ドローンに毒は効かないからただの牽制だ

「フライングシュリンプ」&「沈滞の投網」

ドローンの形状からして上への警戒が甘そうだ
ジョシュア氏に協力を願い、ドローンを誘導、一カ所に集め、上空から有翅エビに広げさせた投網を投下して、一網打尽を狙う

UC「眠れる力を呼び起こせ!」
エビやシャチの行動を応援する



●波食台
「懐かしい、アルダワの学園。遺跡や海底探索に必要な自律行動式のガジェットを作りに留学したなぁ」
 ゲニウス・サガレン(探検家を気取る駆け出し学者・f30902)は波打ち際でそう言いながら、遠くに見える大型蒸気船を眺めていた。
 自分の所有する海洋生物型のガジェット、それを作るためにアルダワ魔法学園の先生方にはお世話になったものだ。件の猟書家は技術者とのこと。講義を受けた際に名前を耳にしたことはある。
「教科書に乗るような人物と戦うのは恐縮だが……猟書家とあれば、容赦はいらないな」
 そんなことを言いながら、ゲニウスは視線を海面へと向けた。ちょうどジョシュアがシャチを駆って、こちらに戻ってくるところだ。
 彼に手を振りながら、ゲニウスが声を張り上げる。
「ジョシュア氏、シャチ等あの船に追いつける動物をお借りしたい」
「なるほど、了解しました! 比較的素直な子をお貸ししますので、怪我をさせないようよろしくお願いします!」
 ジョシュアがぴゅぅっと口笛を吹くと、一頭のシャチが海中から現れた。そのシャチの背に乗りながら、ゲニウスは自分の装備を確かめる。
「潜水作業服、よし。フライングシュリンプも、準備はいいな?」
 作業服は問題なく身につけている。行動をともにする有翅エビも、働きには問題なさそうだ。そのまま海上を滑るように走りながら、ゲニウスはジョシュアに声をかける。
「ドローンの形状からして上への警戒が甘そうだ。ジョシュア氏! あの岩礁がある辺りにドローンの誘導を頼む!」
「了解しました! さあ、行け!」
 彼の言葉を受けて頷いたジョシュアが、すぐさまシャチを駆って横方向に大きく膨らむように動き始めた。その動きに反応したドローンが、ジョシュアに向かって機銃を向けつつ追いかける。
 その隙にゲニウスは有翅エビに指示を出し、ドローンの上空へと沈滞の投網を持ち上げていった。
「よし、いいぞ! そのまま進めば行ける!」
 有翅エビやシャチにゲニウスが応援の言葉を投げかけると、彼らの動きはどんどん良くなっていく。そしてスムーズに、十数体ほどのドローンが岩礁の近くに固まった。
 その瞬間をゲニウスは見逃さない。
「今だ!」
「よし、退け!」
 鋭く指示を出すと同時に、ジョシュアがシャチを一気に後退させる。結果、投網に押し付けられるようにして十数体のドローンが海面に叩きつけられた。
「よしっ、攻めるぞ!」
 これを好機と、ゲニウスが短針銃を構える。その針は次々と、身動きの取れないドローンを撃ち抜いていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニクロム・チタノ
うーん、広域にドローンか。
ジョシュアさん、ボクにもシャチを貸してくれます?
これだけ広いとボクだけだと倒し切れない。
ここはチタノの加護を借りよう!
重力波で遠距離から撃ち落として近づいて来たドローンは妖刀で切り裂き進む!
これ以上はやらせない!



●波羅蜜
 海上に広く展開していくスチームドローン。それを島の海岸から見ながら、ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)は難しい表情をした。
「うーん、広域にドローンか……これだけ広いとボクだけだと倒し切れないな」
 数は膨大だ。一撃で落とせるとは言え、これだけの数の敵を一人で対応するのは現実的ではない。他の猟兵と協力しながらことに当たるのは勿論のこと、対応を考えなければならないだろう。
 ちょうど島の方に戻ってきたジョシュアに、ニクロムは声をかける。
「ジョシュアさん、ボクにもシャチを貸してくれます?」
「もちろんですとも。どうぞ!」
 彼女の声かけに、ジョシュアはすぐさま頷いた。一つ指笛を吹けば、彼の呼びかけに応じてシャチが一頭海面に現れる。
 そのシャチを借りて背中に乗りながら、ニクロムは腰に佩いた妖刀を抜き放って言った。
「よし、ここはチタノの加護を借りよう! チタノ!」
 自信を選んだ反抗の竜チタノ。その力をここに顕現する。ニクロムのそばにチタノが姿を現し、その鋭い眼で視界に映るドローンを見据えた。
 それと視線を交わしながら、ニクロムが腕を前に伸ばして言う。
「あそこのドローンを、重力波で全部海に落としちゃって!」
 彼女の言葉を聞き届けるや、チタノがその力をいかんなく発揮した。発せられる超重力がドローンを海上に叩きつけ、飛行しようにも水上を滑るより他にない状況に追い込む。
 さすればあとは、ニクロムが刀で切り捨てるだけだ。
「よし、これなら刃が届く! せぇいっ!」
 シャチに乗りながらニクロムが妖刀を一閃、その刃が何体ものドローンを爆散させた。
「これ以上はやらせないぞ!」
 力強くそう言いながら、ニクロムはシャチに乗って蒸気船を目指す。その道中に立ちはだかるドローンは、彼女は全て切り捨てるつもりでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
こんにちわ。猟兵です。お手伝いに来ました。
ほんと、たくさんスチームドローンが飛んでますね。

マジカルボード『アキレウス』に乗ってきます。
まずはこちらもドローン『マリオネット』を飛ばします。そして、上空から【ジャミング】してデータ送信を阻止します。
ついで、【サーフィン】でドローン群に向かいます。
敵の攻撃を【念動力】で軌道を逸らして回避します。
敵の中心に来てから、UC【万散鏡花】で刃を上空のドローンに向けて飛ばして撃墜していきます。



●波濤万里
 他方。黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)も海岸で額にひさしを作りながら、海の上を飛ぶスチームドローンを見ていた。
 本当に、たくさん飛んでいる。ここから数えるだけでも数十どころか百は超える。
「……しかし、ほんと、たくさんスチームドローンが飛んでますね」
 その数のあまりの多さに、摩那は嘆息した。これだけの数を一度に相手取るのは、相手がいくら弱いとは言え骨が折れる。
 ともあれ、だ。仕事をしに来たことには変わりない。
「こんにちわ。猟兵です。お手伝いに来ました」
 ジョシュアに声をかけると、彼はすぐさま反応した。海岸までシャチを移動させて摩那に頭を下げる。
「猟兵の方ですね!? 助かります、今シャチを――」
「ああ、結構です」
 だが、ジョシュアの申し出に摩那は首を振った。そう、彼女は別段、シャチを呼び出してもらわなくてもどうにか出来る。
 そうして取り出したのはマジカルボード『アキレウス』だ。
「私にはこれがありますので」
「おお……!」
 すぐに『アキレウス』に乗って空中に浮かび上がり、海上に滑り出していく摩那を見て、ジョシュアが感嘆の声を上げる。ここまでスムーズに海上移動をされると、ジョシュアとしても手の貸しようがないだろう。
「よし、海上でも問題なく飛行できますね。『マリオネット』、展開」
 そして摩那は自身のドローンを展開、上空に飛ばしていった。これらの『マリオネット』はデータ送信防止だ。オーレリアンが技術者なら、何らかの形でドローンからデータを受信していてもおかしくない。
 そこまで念には念を入れて、摩那はジョシュアに視線を投げる。
「ジョシュアさんは通常通り、ドローンの各個撃破をお願いします」
「わ、分かりました!」
 言われるがままに、ジョシュアは海上に滑り出した。そのままドローン群を追いかけながら、蒸気銃で撃ち落としていく。
「……さて」
 その様子に視線を向けつつ、摩那は『アキレウス』を駆った。ジョシュアのおかげでドローンは一箇所に集まりつつある。集まっているなら好都合だ。
 こちらに飛んでくる銃弾は念動力でかわし、そうして摩那はドローン群の真下に位置どる。
「分散。構え、目標を設定……散開!」
 展開するのは無数の光る刃。それを上空に向かって飛ばせば、刃が複雑な紋様を描きながら飛び回り、ドローンを次々に爆散させていった。
「この程度、私にかかればこんなものですよ」
 これで、この周辺は安全になっただろう。摩那は笑顔を見せつつ息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

天王寺・七海
災魔とか言う魔物が魔法学園に閉じ込められていた世界という平和な部類に入る世界なんだけど、猟書家が余計なことをしてから、見れるようになったって感じなのね。
まぁ、海で悪さするのは許さないのねってことで、七海ちゃんがお出ましなのね。
なんていうか、ここのビーストマスターさん、シャチ連れてるってことは、連携してもいいなって思ったのね。
だったら、ここはみんな纏めて、一気に行くのね。オルカライヴするのね。

シャチの群れを召喚して、【集団戦術】しながら、各自ジャンプしての突撃や、超音波ソナーによる敵攻撃予測からのシャチホコファンネルによる攻撃による攻撃をする。「ここは狙い時のカウンターなのね」

アドリブ歓迎



●波打際
 群島海域の海を、天王寺・七海(大海の覇者・f26687)が一直線に駆ける。
「まぁ、海で悪さするのは許さないのねってことで、七海ちゃんがお出ましなのね」
 ここは海、世界が違えど自分のフィールドだ。ここでの狼藉は、自分の家の庭で暴れるのと同じ。ならば容赦するわけにはいかなかった。
 海上を滑るように移動する、背中に人間を乗せたシャチを見つけると、七海は警戒させないように近づいて声をかけた。
「ビーストマスターさん、シャチ連れてるってことはお仲間のお友達なのよねー?」
「わっ、シャチが喋った!?」
 見た目は完全に一般的なシャチである七海が、全くなんでも無いことのように人間の言葉を発したことに、ジョシュアが驚く。彼の一般常識では海の生き物は喋らない。当然の反応ではあった。
 そんな彼を落ち着かせるように、七海は自分の立場を明らかにした。
「私も猟兵なのね。ここはみんな纏めて、一気に行くのね。オルカライヴするのねー」
「な、なるほど。それでは、ご協力に感謝します!」
 ようやく状況を飲み込んだジョシュアが頷くと。七海は正面、多数飛行するスチームドローンに狙いを定めながら声を張った。
「よーし皆、全力での狩りをお願いするのねー」
 と、彼女の言葉に呼ばれるように、海中から何頭ものシャチが現れた。一つの群れが二つの群れに膨らみ、その規模を増していく。再びジョシュアが驚きの声を上げた。
「わわわっ、シャチが集まってきた!?」
「ジャンプして、追い込むのねー!」
 そうこうする間にもドローンとの距離は近づいてくる。七海はタイミングよく声を上げ、シャチに合図を送った。
 すると何頭かのシャチが一斉に空中へと躍り上がる。大きな口を開いてばくんと噛み付けば、スチームドローンが噛み砕かれて海面に散らばった。
 次々に、多方向からジャンプを仕掛けるシャチたちに、ドローンはどんどん小魚が追い詰められるように一箇所へと集まっていった。その華麗な連携プレーに見とれていたジョシュアだったが、はっと我に返る。
「こ、こうしちゃいられない。私も参戦します!」
 蒸気銃を手にとって、集まっているドローン目掛けて弾丸を放つ。その弾丸で一機が貫かれると、お返しとばかりに弾丸を返してくるドローンだ。
「いい調子なのね。ここは狙い時のカウンターなのね!」
 そのドローンの弾丸をギリギリで避けながら、七海がシャチホコファンネル二機を同時に作動させた。
 放たれるバスター砲とランチャー。攻撃範囲を最大まで広げた二撃が、多数のスチームドローンを飲み込んで塵に返した。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜柄守・白袖
……水は苦手だ、泳げる事と苦手な事はまた別問題だ。
任務だから仕方がないが。

シャチを貸してもらおう。泳ぐより安定しそうだ。
ジョシュア・モルツだったか。貸してもらえるか?
こちらこそありがたい。
……本当に。

指示は単純明快に。
突っ込め。
露払いは任されよう。

ダガーと退魔刀の二刀一刀使い分け、地形の利用応用で、シャチとドローンとを跳んで渡り、道を開く。

踏んで悪い。
いや、これだけの図体だ。特に気にしないか。

しかし、足を滑らせれば水浸しか。
気を付けなければ……いや、むしろ気にしない方が良いのか?
考えるのはよそう。

――やはり落ち着かない。



●波布茶
 一方、オーガスタ島の海岸。そこでは夜柄守・白袖(怪奇人間の學徒兵・f32220)が打ち寄せる波にぎりぎり濡れない位置で立っていた。
「任務だから仕方がないが……水は苦手だ」
 任務だから仕方がない、と自分に言い聞かせるが、苦手なものは苦手なのだ。泳げるが、苦手だ。それとこれとは別問題だと、白袖は言う。
 なるべく濡れずに済むならその方がいい、と、彼はジョシュアが海岸まで戻ってくるのを待った。そしてこちらを見て目を見開いた彼に声をかける。
「ジョシュア・モルツだったか。シャチを一頭貸してもらえるか? 泳ぐより安定しそうだ」
「あ、勿論です! 私のシャチはしっかり手懐けてありますので、荒波でも安定して泳いでくれますよ!」
 そう言うとジョシュアは、海の方に向かって指笛を一吹き。すると海の底からシャチが一頭上がってきた。オスなのだろう、白袖が乗っても問題のないサイズだ。
「こちらこそありがたい……本当に」
 心から礼を言いながら、白袖はシャチの上に立った。ジョシュアの話の通り、波を割って進んでもほとんど揺れる気配がない。さすがの安定感である。
 そのことに安堵しながら、白袖がシャチに声をかけた。
「よし、指示は単純明快に行こう。突っ込め」
 その言葉を受け取ったシャチがスピードを上げる。視界には何機ものスチームドローン。この位置からなら行けるだろう。
 ある程度距離を詰めたところで。
「はっ!」
 白袖はシャチの背を蹴って飛び出した。思い切り跳び上がった身体がスチームドローンの上を取る。そして振るわれるダガーが、ドローンの機体を真っ二つに切り裂いた。
 そのままドローンの残骸を蹴って次のドローンに飛び移る。そして斬ってまた次へ。合計して五機をその調子で切り裂いた白袖は、ずっと直進していたシャチの背中に再び跳び降りた。
「踏んで悪い……いや、これだけの図体だ。特に気にしないか」
 シャチを撫でながら言うが、当のシャチは気にした様子はない。と、今の戦い方を見ていたジョシュアが近くから声を張った。
「シャチは、おでこのところにメロン体という柔らかい組織があるんです、そこを踏んだりしなければ大丈夫です!」
「なるほど、気をつけよう」
 彼の指摘に頷きながら、白袖は再び立ち上がる。まだまだドローンは飛んでいるのだ。これらも切り落とさなくては、船に近づけない。
「しかし、足を滑らせれば水浸しか……」
 ふと、高速で海上を走るシャチの傍、白波を立てる海面に目が行く。着地する時に少しでもタイミングがずれたら……もしくは着地する時に足を滑らせたら。
 一瞬、嫌な考えが頭をよぎったが。
「うん、考えるのはよそう」
 そう割り切って、落ち着かない心を置いていくように、白袖の足が再びシャチの背を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔴​

文月・統哉
オーレリアン・バジュー
彼の名を最初に見たのはいつだったろう
教科書?いやもっと前
ガジェッティアの俺にとっても
その功績は尊敬するもので
まさか猟書家だなんて…
信じたくないけどこれは事実
イミの表情は真剣だった
なら俺も俺に出来る事をしよう
止めなければならないと思うから
猟兵の…いや、ガジェッティアの一人として

ジョシュアさん宜しくお願いします!
シャチさんにも礼を言って背に乗って
ジョシュアさんが撃ち落としたドローンを一基回収する

UCで複製体を一気に大量制作、空に放つ
本物に紛れ周囲を密集形態へと誘導した上で
自爆する仕掛け罠付き

複製体を作ったからこそ分かるのは
成程見事な動力機構
被害が広がる前に
いざ、輝きの海号へ!



●波波迦
 文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)がオーレリアン・バジューの名を初めて目にしたのは、果たしていつだっただろうか。
 アルダワ魔法学園に入学し、歴史の講義を受けた時に教科書で見た時がそうだったのだろう、と学園の生徒なら答えるだろうが、彼の答えは否だ。
 もっと、ずっと前。幼い頃からガジェッティアを志し、今も魔法学園で学び続ける彼にとっては、間違いなく尊敬に値する人物だ。
「まさか、彼が猟書家だなんて……」
 信じられない。だが、目の前には厳然たる事実がある。それに島の中で猟兵の帰還を待っている、グリモア猟兵の目は真剣そのものだった。ならば。
「俺も俺に出来る事をしよう。止めなければならないと思うから。猟兵の……いや、ガジェッティアの一人として」
 そう、止めるのだ。止めなくてはならないのだ。
 後進としても、猟兵としても。
 だから統哉は待った。学園を卒業した先輩が海岸に戻ってくるのを。
「ジョシュアさん!」
「その装い、もしかして魔法学園の生徒か!?」
 ジョシュアは統哉のブレザー姿を見て目を見開いた。アルダワ魔法学園に決まった制服はなく、全員がオーダーメイドの服を来ているが、学生服としての決まったディテールはやはりある。見る者が見れば一目瞭然だ。
 学園の先輩が相手となれば、いつもの砕けた口調ではいられない。背筋を伸ばして頭を下げた。
「はい、宜しくお願いします! シャチを一頭貸してください!」
「勿論だとも、大事な後輩のためだ!」
 統哉の言葉に頷いたジョシュアが指笛を吹く。呼び寄せられた一頭のシャチに、統哉は優しく手を添えながら背に乗った。
「ありがとう、宜しくな」
 そのまま二人は並走するように海上を走る。視界に映るスチームドローンの数は少なくなってきているが、それでもまだまだ危険な状況に変わりはない。
「この海域のドローンの数は減ってきたが、どうする!?」
 ジョシュアが蒸気銃を抜きながら声をかけると、統哉は空中を指差しながら返した。
「考えがあります、とりあえず一機、確保してください!」
「よし!」
 彼の言葉に頷いたジョシュアが、手近な距離にいたスチームドローンの蒸気エンジンを撃ち抜いた。飛行するドローンのエンジン部分を、泳ぐシャチの背中に乗って正確に撃ち抜くその技術、さすがは魔法学園の卒業生と言ったところか。
 飛行手段を失って落下してくるドローンを、統哉がクロネコワイヤーで掴む。一気に手元まで引き寄せると、彼はその構造を手早く観察した。
「よしっ、これを……!」
 頷いて、そのドローンの像を脳内で結ぶ。と、多数の同じ形をしたドローンが、統哉の手の中から一気に現れた。それは統哉の手を離れて宙へ舞い上がり、他のドローンの方に向かって飛んでいく。
「あれは……!?」
「偽物です、時間経過で自爆する仕掛け罠を搭載しました」
 驚いた表情で空を見上げたジョシュアに、統哉が笑う。しばらくして、遠くの方で大きな爆発音が響いた。あれで結構な数のドローンを巻き込めたことだろう。
 これで海域上に邪魔するものは殆どない。あとは突っ切れるはずだ。
「よし、これで進める!」
「ああ、行こう!」
 統哉とジョシュアは視線を交わして頷いた。視界にはもうもうと煙を吐き出す大型蒸気船の姿がある。
 あの船にはオーレリアンがいるはずだ。あれだけ精巧で、見事な動力機構を持つドローンを大量に作り出す、それだけの力を持った猟書家が。
「いざ、輝きの海号へ!」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『造船者オーレリアン』

POW   :    レンチは技術者の武器
【レンチ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    あらゆる機械は技術者の相棒
【召喚した魔導蒸気機械】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    ボイラー室は技術者の戦場
【破損した蒸気機械】を降らせる事で、戦場全体が【高温多湿のボイラー室】と同じ環境に変化する。[高温多湿のボイラー室]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠イミ・ラーティカイネンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●波動説
 猟兵たちがジョシュアと共に「輝きの海」号に接近するにつれ、船の細かな様子がだんだん見えるようになってきた。
 スチームドローンを吐き出す勢いは大きく弱まっているが、まだエンジンの暴走は続いているようだ。尋常でない蒸気を煙突から吐き出している。
 そして甲板の上。船べりに取り付きながら、海上を凝視する竜派ドラゴニアンの姿がはっきりと見えた。
「おいおい、こりゃあどういう事だ……?」
 猟書家、オーレリアン・バジューは驚きに目を見張った。海上の空を覆い尽くさんばかりに放出したはずのドローンが、ほとんど姿を見せない。
 そして船に並走するように、何頭ものシャチが泳いでいた。その背には、人間。
「信号が途絶えたから外に出て見てみりゃあ、俺の自慢のドローンは影も形もありゃしねえ。代わりにいるのは何頭ものシャチと、若造共と来たもんだ」
 その、「若造」と宣ったオーレリアンの目がこちらを見るや。彼の金の瞳が目いっぱいに見開かれる。
 次の瞬間。
「はっははははは!! 面白え、実に面白え!!」
 オーレリアンは呵呵と笑った。その怪しさを覗かせた笑みには、飽くなき関心と喜びが溢れている。
「お前たちには限界を超えられるだけのポテンシャルがある!! 上がってくるなら待ってやる、海の上から攻めるってんならそれもいい、俺にお前たちの限界の、その先を見せてみろ!!」
 そう言い放ちながら、オーレリアンはパチンと指を鳴らした。エンジンは彼の意のままになっているのであろう。煙突から吐き出される蒸気と、ドローンが消えた。
 エンジンが停止したのだ。船の動きがゆっくりと止まる。
 その船の上にいて、オーレリアンをぽかんと見ていた船員たちも、これはおかしいと慌て始めた。急いで船内に駆けていく。
「さあ『輝きの海』号、この甲板はこれから戦場と化すぜ!! 命が惜しい連中は、船室に篭もって静かに震えているんだなぁ!!」
 そんな船員たちの背中に乱暴に声をかけたオーレリアンの瞳が、改めて猟兵たちに向けられる。
 この戦いに勝利すれば蒸気船のエンジンは元に戻り、災魔を吐き出すことも止めて安全な航行を再開するだろう。絶対に負けられない戦いが、今始まった。

●特記事項
 ・オーレリアンは基本的に「輝きの海」号の甲板に陣取って戦います。短時間なら飛行も可能です。
 ・ジョシュアは海上から相棒のシャチと共に参戦します。基本的な攻撃方法はシャチにジャンプさせて高さを取ってからの射撃です。
 ・「輝きの海」号の船員は船室に篭もっているので、戦闘に巻き込まれる心配はありません。
ゲニウス・サガレン
(からみ歓迎)

あの高温の水蒸気をものともせず、船で活動していたのか
さすがはドラゴンの血筋、我々の呼吸器官ならそうはいかないだろう

アイテム「潜水作業服」
水中に行くためではなく、高温の水蒸気からのどや肺を守るために着用する
引き続き、借りたシャチに騎乗して行動する
UC「水魔アプサラー召喚」
さあ、我が友よ、偉大なる技術者は皮肉にも熱がこもり過ぎた
排熱させねばなるまい

アプサラーは水流を操る
うまいこと波を発生させて、船の甲板上のオーレリアを狙う
水蒸気や機械がいれば押し流せ
オーレリアンがバランスを崩していたら、そこを先輩に狙ってもらう

「よろしく頼みますね、ジョシュア先輩」


天王寺・七海
あー、こいつが黒幕なのね。
だったら、色々と状況を考えないとね。
こうなれば、海を荒らすものは容赦しないのね!
ここで、バイオミック・オーバーロード使うのね。
なんか、接近戦で当たれば只じゃ済まなそうな攻撃してくるから、まずは、シャチホコファンネルで牽制しつつ、接近を試みるのね。
そして、空中戦闘で相手を噛み付くのね。
仲間たちや猟兵や他のシャチたちと連携取りながら攻撃していくのね。

アドリブ歓迎



●波状熱
 海上で停止した「輝きの海」号。その周囲を囲むようにシャチを展開しながら、七海は甲板に立つオーレリアンを見上げた。
「あー、こいつが黒幕なのね。海を荒らすものは容赦しないのね!」
 あれはこの海に騒乱を巻き起こした悪人だ。七海の胸に怒りが去来する。
 その怒りを爆発させた七海の身体が、一気に大きくなった。「輝きの海」号の甲板の高さも超え、オーレリアンを上からにらみつける。
「うぉぉっ!?」
「シャチホコファンネル、展開なのね!」
 そして展開される二機のシャチホコファンネル。バスター砲とランチャーがオーレリアンに向けられる。
 狙いをつけられじり、と後退りしながら、オーレリアンの口角が持ち上がった。
「ははははは、こいつはいい! 生物の限界ってやつを軽々超えてきやがって!」
 そうして始まるバスター砲とランチャーからの遠距離攻撃。それをオーレリアンが武器のスパナでいなしながら、距離を詰めにかかる。
 前進するかと思いきや、オーレリアンが一気に上へと跳び上がった。そのまま翼で飛行しながら七海へと迫るも、シャチホコファンネルが迎え撃つ。
 再び甲板へと舞い戻るオーレリアンを見上げながら、ゲニウスは「輝きの海」号の船体に隠れるようにしながらシャチの上に立っていた。
「あの高温の水蒸気をものともせず、船で活動していたのか。さすがはドラゴンの血筋」
「あのドラゴニアンが今回の首謀者ですか? しかし、どうすれば……」
 隣りにいるジョシュアが心配そうにゲニウスを見ると、彼は小さく笑いながら小さな壺を取り出した。その蓋を開けると、もわもわと煙が立ち上る。そして姿を表すのは、海竜の姿をした悪魔だ。
「目覚めよアプサラー。偉大なる技術者は皮肉にも熱がこもり過ぎた、排熱させねばなるまい」
 ゲニウスの言葉を聞いたアプサラーが、海上へと飛んでいく。それを見送りながら、ジョシュアへと彼は声をかけた。
「ジョシュア先輩は船の反対側に回り込んでください。相手がバランスを崩したら、よろしく頼みますね」
「わ、分かりました!」
 ゲニウスの言葉に頷いたジョシュアが、相棒のシャチを駆って船の反対側に回り込む。そうこうする間にも海は荒れ始め、波が高くなってきた。
 船が大きく揺れ、オーレリアンの足元が覚束なくなるが、巨大化している七海には特に影響はない。
「くっ、波が高くなってきやがったな!?」
「そこなのねー!」
 と、バランスを崩したオーレリアンの足元を狙ってランチャーから銃弾を発射した。それを避けようとしたオーレリアンの身体が、ぐらりと傾ぐ。
 その瞬間だ。アプサラーが船の甲板の高さに姿を表した。
「今だ、押し流せ!」
 悪魔の口から放たれる水流が、オーレリアンの足を取った。そのまま彼の身体は流され、水流に乗って足が浮く。
「うぉっ!?」
「そこだっ!」
 そこにジョシュアが蒸気銃で一撃を加えた。足元が浮いた状態で狙撃されたオーレリアンの身体は余計にバランスを失う。遂には水流に流されて空中に放り出された。
「おわ……っ」
「チャンス! うりゃーっ!」
 その、身体が宙に浮いた瞬間だ。七海が大きく跳び上がってオーレリアンに噛み付く。ハッとした彼が翼をはためかせて緊急離脱するも、七海の鋭い牙が彼の足をかすめた。
「ち……っ、味なマネしやがるな、若造共が!」
「後進はしっかり育ってるんだ、君の時代とは違う!」
 舌を打つオーレリアンへとゲニウスが言葉をかける。同じガジェッティアとして、今の時代を生きる者として、負けるわけにはいかなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

バロン・ゴウト
暴走させたエンジンを止めたり、ドローンを消したり……オーレリアンは一体どういうつもりなのにゃ?
とはいえ船員さんが巻き込まれる心配もないし、止まってる船の上なら振り落とされる心配もないのにゃ。だったら全力をもってオーレリアンを倒すのにゃ!

引き続きジョシュアさんとシャチさん達に【オーラ防御】をかけ、ジョシュアさんの攻撃に合わせてシャチさんにはなるべく甲板に水が飛ぶようにジャンプしてもらうのにゃ。
オーレリアンを濡れた甲板の方に【おびき寄せ】、隙をついて【トリニティ・エンハンス】の水の魔力で甲板の水分を凍らせ、オーレリアンの動きを封じてから一気に畳みかけるのにゃ!

絡み、アドリブ大歓迎にゃ。



●波形鋼板
 船の甲板に飛び乗ったバロンは、訝しむような目をして甲板に降り立つオーレリアンを見つめた。
「暴走させたエンジンを止めたり、ドローンを消したり……一体どういうつもりなのにゃ?」
 いくら直接猟兵が乗り込んできたからって、災魔を吐き出すことを止めさせる理由は、彼にはないはずだ。しかしオーレリアンには明確な理由があるらしい。バロンに指を突きつけながら口を開く。
「そんなこたぁ決まってるさ。エンジンが動きっぱなしでドローンが吐き出され続けたら、お前たちはドローンを落としに向かうだろう? 折角相手取ってるってのにつまらねえじゃねぇか」
 そう話す彼だったが、不意に口角を怪しく持ち上げた。そのまま親指を自身の後方、機関室がある方へと向けて言う。
「尤も、エンジンは止まっているだけで災魔の卵は働いている。早く俺を倒さないと、エンジンがドローンでいっぱいになって吹き飛んじまうかもなぁ!」
「そんなことはさせないのにゃ!」
 エンジンが止まっているとは言え、災魔は生産され続けているのだ。ドローンが煙突から溢れ出るならまだしも、ドローンで満たされたエンジンが物理的に吹き飛んでしまってはよろしくない。
 バロンは黄金のレイピアを抜き放ちながら声を張り上げた。
「船員さんが巻き込まれる心配もないし、止まってる船の上なら振り落とされる心配もないのにゃ。行くのにゃ!」
 そうして始まるバロンとオーレリアンの鍔迫り合い。レイピアとスパナがぶつかり合い、火花を散らす。そしてその所々でジョシュアが海面から飛び上がり、蒸気銃による射撃でバロンを援護した。
 三度目の射撃を行ったジョシュアへと、バロンが声を飛ばす。
「ジョシュアさん、甲板に近づくようにシャチさんをジャンプさせてくださいにゃ!」
「分かりました!」
 短く言葉をかわす中で、ジョシュアがこくりと頷く。船の傍で思い切り水飛沫を上げさせて着水したジョシュアが、甲板を海水で濡らした。
「ちっ、すばしっこく動き回りやがる!」
「そのスパナでボクを捉えられるものならやってみるにゃ!」
 ちょこまかと動き回るバロンを追いかけ回しながら、忌々しそうに舌を打つオーレリアンへと、バロンが挑発するように声をかける。
 小さく口角を持ち上げたオーレリアンがもう一度スパナを振り上げながら接近する、かと思いきや。
「言ってくれる! そう言うなら――」
「うわっ!?」
 先に出たのは、彼のブーツを履いた足の方だった。予期しない方向から蹴りが飛んできて、それをもろにくらったバロンの小さな身体が吹き飛ばされる。そして彼は先程水飛沫が飛んだ辺り、甲板の縁にぶつかって止まった。
「く……」
「くく。これなら心置きなくぶん殴れる。そうだろ?」
 立ち上がれないバロンに向かって、オーレリアンが駆け寄ってくる。そして彼の足が甲板の上の水を跳ねかした瞬間だ。
「今だにゃ! トリニティ・エンハンス、水の魔力!」
「なっ!?」
 バロンのレイピアが水に触れる。とたんに魔力によって水が凍りついた。その水に足をつけていたオーレリアンの足も、氷に捕らわれ動けない。
「くそ、足が貼り付いて……!」
「たぁーっ!」
 そしてその隙きにバロンは身を起こす。氷の上を滑るようにして彼がレイピアを突き出すと、オーレリアンの足に突き刺さって彼を傷つけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニクロム・チタノ
こんな大事起こしといて手前勝手ことを、望み通り限界を超えてあげようじゃない!
厄介なのは魔導蒸気機械
ジョシュアさん、もちょっと手を貸してくれます?
ボクもこの思い貫くから
援護お願いします、ボクは重力を掛けて機械の動きを抑えます!
反抗の剣は今までにない超重力を生み出す!
狙うは猟書家、機械を止めてる間に奴を討つ!
ジョシュアさんの援護もある、反抗の加護も!
さあ、これより反抗を開始する!
どうかチタノの加護と導きで限界を超えさせて


黒木・摩那
技術者だというから、もっとクールな印象でしたが、意外と熱血漢ですね。
その心意気は嫌いじゃないです。
ですが、空にドローンをばら撒いたり、船を勝手に改造してしまうのはいただけません。あなたのいたずらもここまでです。

引き続き、マジカルボード『アキレウス』に乗ってきます。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
オーレリアンの武器をヨーヨーで弾いた【武器落とし】後に、彼をヨーヨーで絡め取ります。そこからUC【獅子剛力】を発動。
船から引っ張り出すと、そのまま洋上で大回転。
海に叩きつけます。

海の水で頭を冷やしてください。

あとはジョシュアさんとシャチにお任せします。



●波状雲
 「アキレウス」に乗って空中を駆けながら、摩那はオーレリアンの姿を見やり言った。
「技術者だというから、もっとクールな印象でしたが、意外と熱血漢ですね。その心意気は嫌いじゃないです」
 彼と対峙するように、ニクロムは甲板の上で妖刀を握り締めている。その表情は随分と険しかった。
「こんな大事起こしといて手前勝手なことを、望み通り限界を超えてあげようじゃない!」
 そう声を発しながら妖刀を構えるニクロム。彼女の後方に姿を見せながら、摩那もオーレリアンを見つめて言った。
「そうですね、空にドローンをばら撒いたり、船を勝手に改造してしまうのはいただけません。あなたのいたずらもここまでです」
 びしりと指を突きつける彼女へと、オーレリアンはニヤリと笑う。いたずらとは、随分な過小評価だ。こんな規模の騒動、他の猟書家でもなかなかしていない。
「いたずらとは小さく見てくれやがる。尤も、いたずらの規模ですまないことはお前たちも重々承知の上だと思うがな?」
 そう嘯きながら、彼はスパナを握り直して言う。再び空中に舞い上がりながら摩那もヨーヨー「エクリプス」を手に握った。
「当然です。そうでなくてはここまでお仕置きに来たりしません」
「ジョシュアさん、もちょっと手を貸してくれます? ボクもこの思い貫くから!」
「勿論です、お願いします!」
 ニクロムも側方に視線を向けながら声を張る。そこではちょうど跳び上がってきたジョシュアがいた。牽制のために蒸気銃を一発撃って、再び海面に戻っていく。
 その弾丸が着弾するのと同時にニクロムが駆け出した。まっすぐオーレリアンに向かって妖刀を振るも、その一撃は後方に大きく飛び退いた彼にかわされる。
「は、その小さな体と一本の刀で何が出来る!」
 魔導蒸気機械を取り出しながらニクロムに言うオーレリアン。と、彼女が唐突に妖刀を大上段に構えた。
「反抗の妖刀よ、その力をここに示せ!」
 そう声を張るや、彼女の妖刀が光を放った。その形が変わると同時に、オーレリアンの身体をとてつもない重圧が襲う。
「なっ、く……!?」
「おっと、重力ですか。効果範囲を絞ってくれているのは有り難いですね」
 重力操作だ。反抗の剣に姿を変えた彼女の妖刀が、オーレリアンの周囲に重力を生み出しているのだ。効果範囲は狭い。宙を飛ぶ摩那には何の影響もなかった。
 摩那の「エクリプス」がオーレリアンの手を打った。魔導蒸気機械とスパナが一気に叩き落される。
「あっ!?」
「よし、ここです」
 その瞬間、「エクリプス」の糸がオーレリアンの身体を縛った。重力に加えて糸による束縛。オーレリアンは一つも身動きが取れないでいる。
 その合間に摩那は視線を下に落とした。こちらを見上げるジョシュアと目が合う。
「ジョシュアさん、今からオーレリアンさんを海面に落としますので、銃で蜂の巣にしてください」
「は……っ!?」
 そして摩那が発した「とんでもない言葉」に、ジョシュアは目を見開いた。
 そうこうする内にオーレリアンはニクロムに詰め寄られていた。身動きが取れない彼に、ニクロムが反抗の剣を振り上げる。
「なっ、おい、やめろっ!?」
「さあ、これより反抗を開始する! どうかチタノの加護と導きで限界を超えさせて」
 そうして限界を超えた彼女が行う高速剣戟。オーレリアンの身体に行く本もの傷がつけられる。そして間髪入れずに摩那が獅子剛力を発動、オーレリアンの身体を思いっきり振り回し始めた。
「ぐぉぉぉぉぉっ!?」
「この辺でいいでしょう。せーのっ!」
 散々オーレリアンをぶん回した摩那が、一気に「アキレウス」の高度を下げた。それはもう、自由落下するような勢いで。海面が一気に近づく。
「う――」
「うわぁぁぁぁっ!?」
 そして、オーレリアンは頭から海に叩きつけられた。ぐったりした彼が縛られたまま海上にぷかりと浮かぶ。
「ぶふぉっ」
「そのまま海の水で頭を冷やしてください。さぁジョシュアさん、今です、今」
「あっ、は、はいっ!」
 その様子をぽかんと見ていたジョシュアだが、摩那に促されて蒸気銃を構えた。発射された銃弾は、どこか遠慮がちだったと言う。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

文月・統哉
既存技術の限界を超える
それは技術者の夢であり使命であり
でも大切なのはその使い方

この世界を未来を護る為に
俺もまた超えてみせるよ
ガジェットショータイム!

大きな着ぐるみ型ガジェット召喚
その名もクロネコレッドMarkⅢ

魔導蒸気エンジンを核に
基本骨格として実践的機動力持つキャバリアを応用
制御系にスペースシップワールドの電脳魔術を用い命中率UP
エネルギー源に群竜大陸産の魔力結晶体を使い軽量化
外装をサイキックエナジーで覆い防御力と共にもふっと感もUP
勿論蒸気魔術式推進機で飛行も可能だ

猟兵として渡り歩いた幾つもの世界
そこで触れた沢山の技術が限界突破の鍵となる

オーレリアンを抑えジョシュアさんに合図
協力して倒すよ



●波瀾曲折
 ジョシュアから借りたシャチの上からクロネコワイヤーを伸ばし、統哉は「輝きの海」号の甲板に乗り移る。そして自身の翼を羽ばたかせて船上に戻ってきたオーレリアンを見つめながら、彼は口を開いた。
「既存技術の限界を超える……それは技術者の夢であり使命である」
 偉大なる先達を前に、統哉は手を握り締めた。オーレリアンの行動理念は、技術者としては何も間違っていない。間違っていないが、その行動が世界に害をもたらしてしまうのだ。
「でも大切なのはその使い方だ! 間違った使い方をしたら、折角の技術も無駄になってしまう。そうだろ!?」
 故に統哉は声を張り上げた。技術が世界を破壊することに使われてはならない、それは技術者としての本意ではないはずだ。だが、オーレリアンは小さく頭を振る。
「は、教科書どおりのお題目だな! それは何も間違いじゃねぇ、技術は正しく万人に使われてこそ、その意義を持つ」
 自身の愛用するスパナを握りしめ、その先端を統哉に向けながら、彼もまた声を張った。技術を高める使命を持つ人間として、かつて高めた人間として。
「だが技術に革新を起こすためには、特に間違った使い方もしねぇとならねぇ! 型にはまった使い方ばかりしてちゃ、先の世界には進めねぇ。違うか!?」
 オーレリアンの力の篭もった言葉に、統哉は歯噛みした。
 言わんとすることは分かる。分かってしまう。自分も技術者の端くれだ。
「違わない……だから、この世界を未来を護る為に、俺もまた超えてみせるよ。ガジェットショータイム!」
 だから。統哉はまっすぐにオーレリアンを見返した。自分は自分のやり方で、正しいやり方で限界を越えるのだ。手の中で組み上がっていくガジェットが、みるみるうちに大きく、大きくなっていく。
 まるで巨人のようなサイズにまで膨れ上がり、両の足で甲板を揺らすそれを見て、オーレリアンが目を見開いた。
「こ、これは……!?」
 そのガジェットの前に立ちながら、統哉は大きく口角を持ち上げた。
「どうだ! これが俺の最高傑作、着ぐるみ型ガジェット。その名も、クロネコレッドMarkⅢ!」
 クロネコレッドMarkⅢ。それはネコ型の着ぐるみ、を模した自律行動する超大型のガジェットだ。
 核となる魔導蒸気エンジンの周囲に、基本骨格としてキャバリアの技術を用い、行動制御にはスペースシップワールドの電脳魔術を用いて精度を高めている。魔導蒸気エンジンのエネルギー源には群竜大陸で採取した魔力結晶体を用いて軽量化も測り、外装をサイキックエナジーで覆って防御力ともふ感をアップ。蒸気魔術式の推進機を搭載しているため、飛行も可能だ。
 これまで猟兵として周ってきた、あらゆる世界。その数々の技術が、統哉の中には息づいている。その事実に胸を張りながら、統哉は告げた。
「猟兵として渡り歩いた幾つもの世界、そこで触れた沢山の技術が限界突破の鍵となる。この限界は、貴方にはけして超えられない!」
「なっ……!!」
 その言葉に、オーレリアンは愕然としながら声を漏らした。
 この世界の、外側の世界。そこの技術を以て成されたガジェット。それは当然、アルダワ単体での技術を大いに凌駕するだろう。この限界は、このブレイクスルーは、猟書家たるオーレリアンにはなし得ないことだ。
 クロネコレッドMarkⅢの手がオーレリアンを押さえつけると、ちょうどジョシュアの乗ったシャチが海面から跳び上がってきた。彼に視線を投げつつ声をかける。
「ジョシュアさん、今だ!」
「はい!」
 合図を受けたジョシュアがシャチの背から跳び上がり、甲板に降り立つ。右手に蒸気銃を握りながら近づいてくるジョシュアが、巨人の手の下でもがくオーレリアンを悲しげに見つめる。
「オーレリアン・バジュー。アルダワの歴史に名を残した貴方に銃を向けるのは、大変に心苦しいですが。これもこの海を守るためです」
「くっ、この……!」
 オーレリアンが何を言うよりも早く、ジョシュアの銃が火を噴いた。オーレリアンの両手両足が撃ち抜かれる。
 だらりと垂れ下がった彼の四肢。それをつまみ上げるようにクロネコレッドMarkⅢが鱗に覆われた身体を掴み上げる。もう片方の手がオーレリアンの胴体を強く掴んで。
「これで終わりだよ、猟書家オーレリアン」
「ぐ、あ……」
 統哉の悲しげな言葉を、もふもふした手に包まれるオーレリアンの耳は聞いただろうか。
 クロネコレッドMarkⅢの手がその身体を握りつぶし、彼の手から離れた一本のスパナが、音を立てて「輝きの海」号の甲板で音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2021年03月15日
宿敵 『造船者オーレリアン』 を撃破!


挿絵イラスト