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花一匁

#アリスラビリンス #猟書家の侵攻 #猟書家 #エンデリカ #プリンセス

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●春は嵐
 赤に白、黄色に橙色。あたたかな空気を包んで膨らんだチューリップの花が、そっと撫でるような穏やかな風に揺れている。鮮やかなピンク色のガーベラもまた春を迎えるかの如く花弁を大きく開いて、寄せ植えられたアリッサムと共に彩りを添えているのだろう。
 そこはまるで華やかな春を掻き集めた花園のようで、一季咲きの蔓薔薇が覆うパーゴラアーチを潜れば色とりどりの花たちが咲き誇っていた。けれど、その中で──ただひとつ、黒色の花だけが咲くことはなく。
「......私ハ、見クビッテイマシタ」
 ぐしゃり、と。
 可憐なる花を見遣ることもなく踏み潰した少女は、一心に空を見上げている。
「コレガ、プリンセスノチカラ......!」
 すべての色を覆わんと侵攻していた黒薔薇がまたひとつ、消えていく。この国で唯一黒薔薇に侵されることなく逃げ果せたプリンセスのその力は、驚異的なものだった。
 しかし、目の当たりとなった事実にも黒薔薇の勢いは変わらずに、それどころか瞳を星の如く輝かせた少女──猟書家・エンデリカは恍惚とした表情で手を伸ばす。
 伸ばされた手から逃れるように青空を飛び周り、懸命に色とりどりの花を降り注ぐプリンセスのなんと美しいことか。
 壊し、散らし、終わらせるための黒薔薇。それが他ならぬプリンセスの『優シイココロノ証』によって散らされていく。壊されていく。噫、それはなんて──、
「素敵、本当二素敵! 私モ、アナタミタイニナリタイ!」
 くるり、くるり。踊るように花畑を踏み締めては、蕾がほころぶように咲う。そうしてエンデリカは、次々と幼いこどもの姿を形作っていくオウガたちに告げた。

「──プリンセスヲ、捕マエナサイ。サア、ハヤク! 私ノモト二引キズリ下ロシテ!」

●花盗人
 春爛漫、というには些か物々しいだろうか。
 ふっくらとした梟のぬいぐるみを腕に抱いたテテメア・リリメア(マーマレード・レディ・f25325)は、困ったように眉尻を下げて猟兵を窺いみる。
「猟書家に狙われたプリンセスを守り、黒薔薇に侵略された国を助けてくださらない?」
 各世界で一斉にはじまったという猟書家の侵略は、少しずつだが確かに進行している。その目論見こそさまざまではあるけれど、いずれにしても平和を脅かすことに違いはないだろう。
 それはアリスラビリンスにも言えることで、中でも猟書家・エンデリカは不思議の国を治めているプリンセスにご執心の様子だった。
「便宜上、春暁の国と呼びましょうか。小さな不思議の国だけれど、色とりどりの可憐な花が咲き誇る素敵なところよ」
 しかしいまは、その色とりどりの花たちも増え続ける黒薔薇に覆われんとしている。
 プリンセスの力によって春暁の国はなんとか侵攻を食い止めているものの、黒薔薇によって強化されたオウガたちの暴虐を前にその防衛もいつまで持つかは時間の問題だった。
「猟書家はもちろん、オウガたちもプリンセスを狙っているわ。彼女を守りながらの戦いはとても大変かもしれないけれど、充分に気を配ってあげてくださいな」
 黒薔薇を相殺できる彼女の力がなくては、より厳しい戦いになってしまうだろう。この侵略を防ぐ戦いの鍵は、間違いなくプリンセスにあるはずだとテテメアは説く。そして。
「──さあ、準備はよろしいかしら。プリンセスがきっとあなたを待っているわ!」
 どうぞ、お気を付けて。そう締めくくり、不思議の国へと続く道を示すのだった。


atten
お目に留めていただきありがとうございます。
attenと申します。

▼ご案内
【プレイング受付】
3月5日(金)8時31分~

舞台はアリスラビリンス、二章構成の猟書家シナリオとなります。
下記プレイングボーナスを上手く使っていただけると、有利に進むことが出来ます。
=============================
プレイングボーナス…… 空飛ぶプリンセスを守り続ける
=============================

★第一章:集団戦『リトル・マジックスペル』
幼いこどもの姿をしたオウガたちです。
黒薔薇の力によって強化されており、撃破するためにはプリンセスとの共闘が必要不可欠となります。
エンデリカの命令により、プリンセスを優先的に狙うようです。

★第二章:ボス戦『エンデリカ』
黒薔薇を自在に操る猟書家幹部の少女です。
空中戦となりますので、あらかじめご注意ください。
プリンセスに執着しており、プリンセスを優先的に狙うようです。

★プリンセス
春暁の国を治めているフェアリーのプリンセスです。
手乗りサイズ。


皆さまの素敵なプレイングをお待ちしています。
よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『リトル・マジックスペル』

POW   :    びりびりするよ
【手にした魔導書から稲妻】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    みんな、おいで
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【呪文で編まれた自らの分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    おいかけてあげる
【きらきら光る魔法文字】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メリー・アールイー
エンデリカ……いや、先にこっちの子どもからだね
倒すべき黒薔薇姫の名を呟いて
小さなオウガに目を向ける

恋鯉に乗せたReにプリンセスの護衛をしてもらおう
オウガの攻撃をおびき寄せてカウンター!
しつけ針の属性魔法を食らわせてやりな!

あたしは地上で【針嵐万花】を放つよ
針の嵐で風属性攻撃の範囲攻撃だ!
本も額の数字も串刺しに……苦しませたくはないんだ
悪さしてないで、早くお眠り

魔導書を使って上手く避ける子は
白眠も使って眠らせてから仕留めようか
あんたの動きはもうお見通しだよ

春暁の美しい花園の中、骸の海に消えゆく魔導書
……あんたの物語も終わらせてやらないとね

アドリブ連携歓迎



●乱れ咲き
 春は華やぎ、花は咲き揃う。しとしとと静かに降り注いだ春霖、その草木の芽を張らせる雨によって咲いた花は何よりも生命力に溢れているのか、すべてを侵さんとする黒薔薇にも屈することはなかった。それはきっと、今もなお戦い続けているプリンセスも同様に。
 そうして。
 仰げば見事な蔓薔薇を潜った先で、色とりどりに咲き誇る花園へと足を踏み入れたメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は小さく息を呑む。
「エンデリカ......、」
 それは宛ら、夜の帳が下りるかの如く。
 深く艶やかな黒き薔薇の少女は美しく見えるのに、得体の知れない悍ましさを覚えるのは黄金の翼から鳴り響く機械音のせいだろうか。メリーは思わずと一歩を踏み出した足を止めて、若草のような双眸を僅かに細めた。

「......いや、先にこっちの子どもからだね」
 倒すべき黒薔薇姫を守るように集う魔導書──否、徐々に形作られていく幼いこどもたちの姿。リトル・マジックスペルだ。
 その数は多く、エンデリカの命令を受けプリンセスを付け狙ってもなお余りあるオウガたちが壁となっていて、今の状態ではエンデリカを攻撃することは叶わないだろう。一瞥した後、メリーはゆっくりと視線をオウガたち、そしてそのまま流れるように空に走らせる。
「──Re、行ってきな!」
 青い空にきらきらと鮮やかに映る桃色のドレスは小さく、それがエンデリカに狙われているフェアリーのプリンセスであることはすぐに分かった。桜色のハート鱗が可愛らしい『恋鯉』空へと放ったメリーは、同じくして飛び出したからくり人形の『Re』の背を押すように号令を掛ける。
 虹にも似た輝きを放つ魔法の呪文で編まれたオウガの分身がプリンセスを捕まえるより早く、その軌道を遮るためだ。
「貴方様は......ッ!?」
「自己紹介は後さ。護衛はあたしたちに任せな、プリンセス!」
 プリンセスを背に庇うように恋鯉、そしてReが飛び立てば、誘き寄せたオウガの分身が放った魔法が眼前に迫る中あえて壁となって一撃を返す。素早いカウンターはメリーやReが最も得意とするしつけ針による魔法で、それは針に糸を通すように鋭いものだ。
「奪わせやしないさ、そのために来たんだからね。さあ──咲かせてみせよう、針の花!」
 プリンセスの護衛はこれで、問題ないだろう。オウガとプリンセスを引き離す間にも、メリーも大人しく待っているわけではない。プリンセスが持つ『優シイココロノ証』によって再び少しずつ黒薔薇が散っていくのを確認したメリーは、黒薔薇が消えた先から大小様々な針の嵐を起こしていく。
 本も額の数字も、ひと思いに串刺しに。苦しませたくない、そう思ってしまうのは幼いその身を思うが故だろうか。
「悪さしてないで、早くお眠り」
 おいで、おいでと誘うように宙で編まれた呪文が揺らいでいく。
 そうして幼いこどもが倒れ伏したときには、そこに残るのは草臥れた魔導書だけだった。けれど。
 その魔導書も、やがて再び咲き誇る黒薔薇に呑まれるように静かに消えていく。春暁の美しい花園の中、消えゆく魔導書の行く先は骸の海か──それとも。
 少しずつ数を減らしていくリトル・マジックスペル。睨むように先を望めば、その壁の隙間から覗いた黒薔薇姫と目が合ったような気がした。

「......あんたの物語も、終わらせてやらないとね」
 ──きっと、もうすぐ。
 その思いもしつけ針に乗って、彼女に届くだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
確かに黒い花は品があって美しいけれど
色んな彩りの中に在るからこそ
その美しさが一等際立つのでしょう?

――未だ、花の好さを勉強している途中なんだ
その機会を奪わないで貰いたいね

聞き分けの無い子どもは苦手
取り分け、それが面倒な相手であれば尚の事

じっとしては居られない落ち着きの無い子には
宙からの手痛い一筋をお見舞いしよう

視界を横切る翅の軌跡を見留めれば
嗚呼、彼女が例のプリンセスねと得心し

彼女の飛翔を邪魔しない様
軌道の邪魔になりそうな者を優先して撃ち抜こう

意識が此方に逸れれば御の字
どうせ僕の手が無くなった所で大した痛手には為らない

余所見していて良いの?
君たちが狙う彼女は、もうあんなに離れてしまったよ



「確かに黒い花は品があって美しいけれど、」
 色んな彩りの中に在るからこそ、その美しさが一等際立つのでしょう?
 そういって戦いに咲き乱れる花園に立つのは、旭・まどか(MementoMori・f18469)だ。どんな春よりも色鮮やかな花色の瞳を眇めて見上げた空は青く、麗らかな太陽の陽射しを遮るように手にした日傘をくるりと回す。
「──未だ、花の好さを勉強している途中なんだ。その機会を奪わないで貰いたいね」
 聞き分けの無い子どもは苦手だった。取り分け、それが面倒な相手であれば尚の事。
 それ故にきゃらきゃらと甲高い笑い声が耳に障るのを払うようにかぶりを振って、まどかはきらきら光る魔法文字──を通り越して、じっとしては居られない落ち着きの無い子を見通した。
「ほら、君のご自慢の其処を、貫くよ」
 宙から降り注ぐ流星は美しくも鮮烈な一条の光を帯びて、浮かび上がる呪文ごと貫くことだろう。子どもたちから逃れるように上空を泳ぎ、視界を横切る翅の軌跡を見留めれば、まどかは彼女こそが例のプリンセスであると得心した。
 その速度こそさほど早いものではないけれど、きらきらと輝くようなドレス姿で飛翔する彼女から零れ落ちる花びらは確かに黒薔薇を次々と消し去っている。咲くも散るもそれだけでは鼬ごっこでしかないものの、そこに猟兵の助力が加われば戦況は瞬く間に変わるだろう。
 しかし、まあ。いずれにしても。
「......僕はただ、星を降らすだけだよ。抗うことを決めたのは彼女の意思だからね」
 そう、これはあくまでも助力に他ならない。守るだけではなく共に戦うものとしてプリンセスの行く手を阻むもの、その背に追い迫るもの、それらの軌道を遮るように星を降らしてまどかは薄らと笑む。
 そうして、幼いオウガの意識が僅かだけでも此方に逸れたなら。
 まどかは自身に向かってきらきら光る魔法文字が綴られることさえ思う壷であると、緩やかに花色の瞳を細めて小さく首を傾げた。

「──余所見していて良いの?」
 君たちが狙う彼女は、もうあんなに離れてしまったよ。
 まどかがそう囁く間にも、プリンセスによって生み出された美しい花々が黒薔薇を掻き消していく。オウガの意識を逸らし、まずは少しでも多く黒薔薇の効果を失くす──そのための時間稼ぎができたならば、重畳というものだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅間・墨
「よ…よ…し…お願…し…す…ね♪」
小さくて可愛いプリンセスさんに微笑んで軽く挨拶を♪
花の妖精がもしいたらこんな可愛らしい姿でしょうか。

オウガ達はプリンセスさんの捕縛が最優先事項のようです。
ならばプリンセスさんを中心に私が円を描くように戦えば…。
「…ッ!?」
子供?子供のオウガ…いえ。プリンセスさんを護らなくては。
こんなことで剣が鈍っていては護れるものも護れなくなります!
…私は。私は。この方を護るために来たんですから!
「…退き…さ…」
オウガ達の挙動を視認と全身の感覚で警戒しつつ一応は言います。
頭などに乗って貰いたいですがそこはプリンセスの自由に。
刀に破魔の力を籠めた『国綱』の一刀で【鍔鳴】を。



 ふわり、ふわり。
 青空を仰げば翻る桃色の小さなドレス。フェアリーのプリンセスが宙を踊るように動く様は優雅に見えてその実、黒薔薇を少しでも多く散らすために尽力しているのだろう。ドレスが翻る度にこぼれ落ちる色とりどりの花々が黒薔薇に触れた端から、花園から黒色だけが音もなく消えていく。
「よ......よ、ろしく......お、願い......します、ね......!」
 囁くほどの声は、上空を飛び回るプリンセスには届かないかもしれない。
 けれど確かに、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)は敬意を示すように小さく微笑んで、軽い挨拶と共にプリンセスへとお辞儀する。
 花の妖精がもしいたら、こんなに可愛らしい姿なのかもしれない。そう思えるくらいに、プリンセスが踊る姿は花の如く可憐なものだった。
 ──そのプリンセスを守るためにも、今は力を合わせて戦わなくてはならない。
 こくりと固唾を飲んで、墨はプリンセスへと追い迫る稲妻を見遣る。絶え間ない雷鳴が花園に響き渡るのは、間違いなくオウガたちの成すところだろう。どうやら、エンデリカの命令を最優先としているのか、猟兵を前にしてもオウガたちはプリンセスの捕縛を第一に動いているらしい。
「......それ、なら」
 プリンセスを中心に円を描くように戦えば、彼らの追随を許すことなくプリンセスを守ることができるかもしれない。そうと思い至れば動くのは早く、墨は戦場へと足を踏み入れる。
「......ッ!?」
 動揺がなかったと言えば、嘘になるだろう。けれど。
 例え、対峙するオウガが子どもの姿をしていようとも、こんなことで剣が鈍っていては護れるものも護れなくなってしまう。そのことを、墨は嫌という程知っているのだから。
 踏み抜いた一歩目は思いに反して力強く、墨は『粟田口国綱』の柄に手を掛けて鯉口を切る。そうして。
「──鳴り響け、」
 退きなさい、と言うように風を斬る鈍色の一閃。
 破魔の力を込めた鋭い一撃によってオウガたちを退け、墨はプリンセスの自由を守るために前線を上げていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
春の国を襲う黒薔薇、ね
させない為に参ろうか

到着次第、この国の姫には簡単な挨拶を
貴女とこの国を侵略されぬため
微力ながら手を
どうぞ、力をお貸しくださいますか
自分の防御優先しつつ
できる範囲で、削いでいただけたら

手繰る瓜江は姫への攻撃の庇いを優先し
自身は、彼女への攻撃妨害の為に薙ぎ払いで牽制し
気を僅かでもこちらに向けさせ
また、相手の攻撃に当たらぬよう
残像交えたフェイントで、魔法の狙いをぶれさせ
狙いを定め、糸をマジックスペルに向け
捕縛と、攻撃を

散らせはしない、楽しげに咲くどの花も
この国も

私情だし、違うものとは知ってるが
いつかありすの世で見た黒薔薇は
守ための誇りの花だったから
其れで蹂躙されるのは、嫌なんだ



「春の国を襲う黒薔薇、ね」
 降り注ぐ色とりどりの花々と、散りゆく黒薔薇の花びら。
 猟兵の助力によって崩れた均衡は目に見えて現れ、黒薔薇の効果が消えたオウガたちは少しずつその姿を消していた。プリンセスに追い迫ることを優先してもなお余りあったはずの数は既になく、壁の如く塞がれていたエンデリカへの道も直に拓かれることだろう。
 一季咲きの艶やかな蔓薔薇が飾るパーゴラアーチを抜けて、花園へ足を踏み入れた冴島・類(公孫樹・f13398)は新緑の双眸をやわらかく細めた後に、黒薔薇が消えていく大地へふわりと降り立ったプリンセスに向き直る。
「──はじめまして、お姫さま」
 小さな小さな、手のひらほどの少女こそがこの国を治めるプリンセスだ。
 桃色のドレスを翻した傍ら、こぼれ落ちた色鮮やかな花によって黒薔薇だけを消していく『優シイココロノ証』の持ち主でもある。
「貴女とこの国を侵略されぬため、微力ながら手を......どうぞ、力をお貸しくださいますか」
「その助力に感謝します、親切な方。共に困難に立ち向かいましょう」
 宙を翔ぶ彼女と目線を合わせるように類が腰を折れば、プリンセスもまた優雅な仕草でドレスの裾を軽く持ち上げて微笑みを返す。ほんの少し、こぼれ落ちた花びらが地に触れるほどの短い邂逅は、しかし確かにプリンセスの心の支えになったことだろう。
 背を向け合うようにして迫り来るオウガたちを一瞥した類は、きらきら光る魔法文字が綴られきるよりも早くプリンセスを庇うために『瓜江』を手繰り、オウガ本体は類自身の手で薙ぎ払った。
「あなたの道にも、美しい花が咲きますように──!」
 その間にも、プリンセスがオウガたちの足元に咲き誇る黒薔薇を散らしていく。黒薔薇によって強化されていたオウガたちは、問題の黒薔薇さえ消えてしまえば忽ちと、魔法文字を綴る速ささえ落ちていくようだ。
 どうか無理はなさらずに、そう囁くほどの声音でプリンセスへと告げた類は、オウガたちが弱ったその瞬間を逃すことなく残像を交えながら距離を詰め──エンデリカを守るように残っていたオウガ、リトル・マジックスペルへと糸を手繰り向けた。そして。

「散らせはしない、楽しげに咲くどの花も──この国も」
 黒薔薇を前に、思い返すその心はきっと私情に他ならない。
 これが違うものとは知っている。けれど、それでも。類が思い出す黒薔薇というものは、誰かを傷付けるようなものではなかった。
 いつか、ありすの世で見た黒薔薇は──守るための誇りの花だったから。
「......其れで蹂躙されるのは、嫌なんだ」
 燃えよ、祓えよと。
 業火のような炎によって荼毘に付されるのは、もはや何も語らない魔導書たちだ。
 類が手繰る糸によって捕縛され、身動きが取れなくなった彼らは最後、絡繰糸から生じた炎に抗う術もなく、やがて静かに塵と還っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『エンデリカ』

POW   :    咲キ誇リナサイ
自身の【体を茨に侵蝕させること】を代償に、【機械の翅から召喚する黒薔薇蝶々の群れ】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【黒薔薇に体の自由を奪われる呪いの鱗粉】で戦う。
SPD   :    コレガ「自由」ノ形
【機械に侵蝕された姿】に変身し、武器「【機械仕掛けの翅】」の威力増強と、【羽ばたき】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ   :    ドウゾオ静カニ
自身の装備武器を無数の【戦意と生命力を奪う黒薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠メリー・アールイーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●interval
 カチリ、カチリと無機質な音が辺りに響いている。
 大きく開かれた機械仕掛けの翼が稼働する音だ。時折ギチギチと軋むような音が混じるのは、黄金に蔓延る蔓が引き攣れる音だろうか。
 華奢な黒色のレースに覆われた指先で色鮮やかな花びらを捕まえた少女──猟書家・エンデリカはすべての魔導書が骸の海へと還り、その下に咲いていた黒薔薇が散ろうとも陶然とした様子で微笑んでいた。
「アア、プリンセス。アナタッテ、ナンテ素敵ナノカシラ!」
 苦難を前にしても折れない心。国のために、誰かのために戦う優しい心。
 エンデリカには美しくも眩くも映るその心の証は、いまも目の前で輝いている。
「コノ国ヲ壊シタラ、アナタヲ丁寧ニ捕マエテ、少シズツ分解シテアゲマショウ」
 そうすることで、もっとあなたのことを理解できる気がする。
 そう言って、うっそりと弓なりに細められた瞳が見るのは彼女にとっての楽園。エンデリカとプリンセスがふたりで暮らす、幸せな未来なのだろう。けれど、それはエンデリカにとっての幸せでしかない。
 駆け付けた猟兵は焼き付くような視線を遮る形で戦場に立ち、ふわりと翅を震わせたプリンセスを背にして武器へと手を掛ける。
「親切な方。どうか──私と共に、この国を護ってくださいますか?」
 エンデリカの狙いはあくまでプリンセスだ。
 上空を飛び回るプリンセスを狙い、エンデリカもその機械仕掛けの翅もってして彼女に追い迫るだろう。それを守るか、あえて囮とするかは猟兵自身の選択になる。
 唯一黒薔薇を消し去る効果を持つ『優シイココロノ証』を武器に、やがてプリンセスは再び高い空へと舞い上がっていく。その跡を追いかけてエンデリカが翅を羽ばたかせた瞬間、最後の防衛戦がはじまるだろう──。
冴島・類
ええ、勿論
今までこの国を守っていたあなたに
助力になる、一葉になりに来たのですから

姫に狙いを優先させるなら
その間に、エンデリカに近づく隙は生まれやすいかもしれない

共に護るという言に託すと姫には目配せだけし
彼女が黒薔薇の力を打ち消す間に、守りが疎かにならぬよう
火の精くれあの縁を頼り、姫への攻撃を届かせぬか、弱めるため
多少なりとも結界をお願いし

自分と瓜江は姫へ執着しているエンデリカの隙に
放つ蝶の鱗粉と攻撃をなぎ払いで払いつつ接近
破魔込めた一刀で攻撃を

何かの美しさに憧れ、焦がれるのは自由だが
捕らえ奪う形で求めては
それは決して、君のものにはならない

黒薔薇もとても美しい花なんだ
こんな風に咲くのは…惜しいね


浅間・墨
エンデリカさんが飛び立つ前にケリをつけます。
飛び立つ直前の隙を狙って一気に間合いを縮めます。

懐へ飛び込んだら早業の2回攻撃で斬りかかります。
一度フェイントをかけた方が斬りやすいでしょうか。
扱うのは【刻呪『清姫』】。持続する呪いです。

一度でもエンデリカさんに刃が通ったら直ぐに退避を。
攻撃は見切りや野生の勘で回避してみます。
攻撃が他の方々の補佐になってくれればよいのですが。
…さて。呪詛の力がどこまで続くか…。


旭・まどか
嗚呼、美しい
二つの翅が描く軌跡は此処でしか見られない彩

このまま見て居たい気持ちもあるけれど
楽しい鬼ごっこをしている訳では無いから
惜しいけれど、軌跡を引くのは一本だけにしよう

重力に縛られた僕に空中を浮遊する彼女に対抗出来る力は無い
だったら
業と彼女たちが此方に来る様誘導しよう

平気だよ
僕が受けた傷はそのまま返るから

だから信じて
なんて

らしくもない言葉を吐き
お優しい彼女が安心して此方へ来れられる様薄い笑みを浮かべる

丁度彼女たちの間を遮る様に割り入り
此の身に受けるは羽搏きの一打

ほら、平気だと言ったでしょう?
僕の隸は優秀なんだ

傷ひとつ無い身体を彼女へ示す
避難の声が聞こえた気がしたのは目の前の彼女か、それとも


メリー・アールイー
【桜花泳夢】発動
願うは黒薔薇姫の終焉、ではなく

恋鯉に乗って跳び回ろう(おびきよせ)
こっちへおいでエンデリカ
あたしらを倒さんと、妖精のお姫さんは捕まえられんよ
桜の花弁が邪魔するからね

あんたの壊れちまった心、修復出来んかねぇ
プリンセスの優シイココロノ証と桜の花弁に包まれて
夢を叶えるドレスでエンデリカを抱きしめてやりたいよ
(慰め、手をつなぐ、環境耐性)

自分勝手に欲しがり過ぎだよ馬鹿娘
でもきっと優しさを知らなかっただけなんだろね

彩玉付きのしつけ針を魔法で操作して
彼女の心を貫こう
(属性攻撃、串刺し)

おやすみ、エンデリカ
今度生まれ変わった時には友達になろう

彼女の生まれ変わり(リメイク)を願って

アドリブ歓迎



●狂い咲き
 晴れわたる青い空に、色鮮やかな花びらが舞い上がる。
 吹き込んだ風は春一番ともいえる強風で、くるくると踊るかの如く髪を搔き撫でては背中を押すようだ。それゆえか、春風の中で翅を震わせた小さなフェアリーのプリンセスは、その上背とは裏腹にどこか大人びた力強いまなざしで此方を見ていた。
 程なくしてその瞳に応えるように、冴島・類(公孫樹・f13398)もまた大きく頷いてみせる。
「──ええ、もちろん」
 今までこの国を守っていたあなたに。
 謳うようなやさしい声はあたたかく、「助力になる、一葉になりに来たのですから」と繋いで紡ぐ言葉は地に根を張る大樹のように凛としている。
 そして、共に護るという言に託せば後は目配せを一度。
 春一番の風に乗って上空へと飛び立つプリンセスが安全に黒薔薇の力を打ち消せるようにと類が火の精『Clare』の結界を願えば、ちょうどその頃。跡を追いかけてエンデリカが羽ばたくのも、その瞬間だった。
 しかし、猟兵がその背を黙って見送ることはない。
 誰より早く反応を見せたのは、浅間・墨(人見知りと引っ込み思案ダンピール・f19200)だ。飛び立つ直前にできる僅かな隙を狙った墨は瞬くほどの間に一気に間合いを縮めて、エンデリカの懐に飛び込んでいく。
「護って、みせます......!」
 人の想いが、蛇に化けて。七重に巻かれて一廻り、一廻り──。
 清姫と名付けられた刻呪は心の臓を焼き尽くすまで消えない炎を纏わせて、まるでエンデリカが咲かせた黒薔薇ごと呪うようだ。
 反射的に伸びた黒薔薇が生命力を奪おうと狂い咲くのを前に墨は飛び退いて、夜の帳のように垂れた前髪の奥で僅かに目を細める。
「......この呪いが、他の方々の......補佐に、なってくれれば、よいのですが」
「大丈夫、おかげで時間を稼げたみたいです」
 呪詛の力がどこまで続くかは、分からない。そう不安を覗かせた墨に声を掛け、そのまま横を通り抜けた類は上空で色とりどりの花を降らすプリンセスの姿を確認する。
 エンデリカから充分な距離を取ることが、即ち彼女の安全に直結するからだ。フェアリーの体はひとに比べて小さい分だけ進む速さも遅く、エンデリカと距離を取るためにはそれだけ時間も掛かるだろう。
「プリンセス。アア、プリンセス! 退イテ、邪魔ヲシナイデ!」
 離れていく、離されていく。
 立ちはだかる猟兵はプリンセスとエンデリカの幸せを阻む壁のようで、機械の翅を憤怒に震わせたエンデリカは、炎に呪われた自らの体が茨に侵されることも抗わずに黒薔薇蝶々の群れを呼び出す。
 黒薔薇とよく似た蝶々は美しくも、どこか毒々しい。その鱗粉に触れてしまえば、たちまちと体の自由を奪われてしまうだろう。墨が見せた刻呪とはまた違った禍々しさを持つようで、眉を顰めた類は蝶々の群れに目掛けて一閃した。
「......何かの美しさに憧れ、焦がれるのは自由だが。捕らえ奪う形で求めては──、」
 それは決して、君のものにはならない。
 破魔の力をもってしても、その声は茨に覆われた彼女には届かないのだろうか。
 切り裂かれた翅が花びらのように舞い散る中、地に落ちた黒薔薇蝶々には一瞥をくれることすらなく、やがて上空へとおそろしい速さで飛び立っていくエンデリカに類と墨はそっと目を伏せた。
 
「嗚呼、美しい」
 二つの翅が描く軌跡は、此処でしか見られない彩と言えるだろう。
 このまま見て居たい気持ちもあるけれど、そうは言っていられない現実に旭・まどか(MementoMori・f18469)は小さく溜息を吐く。これが楽しい鬼ごっこであれば、どれだけよかったか。
「......惜しいけれど、軌跡を引くのは一本だけにしよう」
 エンデリカが上空にある以上、重力に縛られたまどかには対抗できる力はなかった。しかし、戦えないわけではない。思考すること一巡、瞬きの間にまどかはエンデリカ──否、プリンセスが此方に来るように誘導をはじめる。
 上空でエンデリカから距離をとるため飛び回っていたプリンセスも、戸惑いは少なからずあっただろう。しかし、このままではエンデリカに追い付かれてしまうのも時間の問題と思えば悩んでいる暇などなかった。それ故に。
「平気だよ。僕が受けた傷はそのまま返るから」
 ──だから、信じて。なんて。
 迷う仕草を見せたお優しい彼女が安心して此方へ来れるように、らしくもない言葉を吐いてまで、まどかは薄い笑みを浮かべる。
 そうしてプリンセスとエンデリカ、丁度彼女たちの間を遮る様に割り入ったまどかが受けるのは羽搏きの一打。茨、そして機械に侵食されたエンデリカの姿は可憐な少女からは程遠く、凄まじい羽搏きがまどかの身に打ち付けられる。
 それでも、まどかが倒れることはなかった。
「......ほら、平気だと言ったでしょう?」
 背に守ったプリンセスを振り返ることなく、まどかは静かに花色の瞳を眇める。「僕の隸は優秀なんだ」と言って傷ひとつ無い身体を彼女へ示せば、物言いたげな声が聞こえた気がしたのは目の前の彼女か、それとも──、

「アア、アア、プリンセス......プリンセス......」
 悲しげな声には、しかし伝う涙もない。
 機械に蝕まれて錆び付いた声音は、募る恋しさにひび割れたように鳴いているのにひどく無機質に響く。メリー・アールイー(リメイクドール・f00481)は困ったように眉尻を下げて、小さく呟いた。
「あんたの壊れちまった心、修復出来んかねぇ......」
 伸ばされた手を攫うように桜の花弁が吹いて、『恋鯉』に乗って空を泳いだメリーが代わりに手招く。「こっちへおいで、エンデリカ」そう呼ぶ声は険のない優しげなものだ。
「聞き分けの無い子どもが此処にもいたみたいだね」
「まったくさ。──自分勝手に欲しがり過ぎだよ、馬鹿娘」
 プリンセスの優シイココロノ証と桜の花弁に包まれて、夢を叶えるドレスでエンデリカを抱きしめてあげれば、その心の慰みにでもなるだろうか。
 纏わりつく炎の刻呪による消耗か、黒薔薇と機械に侵された体の限界か。ついに膝を着いたエンデリカの視線を合わせるように屈んだメリーの後ろでまどかは肩を竦めて、諦めきれない感情に動かされてプリンセスへと伸びる蔦を払い除ける。類の言付けどおりに傍らの火の精が結界を強化してしまえば、黒薔薇はもはやプリンセスに触れることもできないだろう。
「きっと、優しさを知らなかっただけなんだろね」
「黒薔薇もとても美しい花なんだ。こんな風に咲くのは......惜しいね」
「......はい。だからこそ、......此処で、終わらせ、ましょう」
 茨に侵され、機械に蝕まれて、少女の顔貌には見る影もない。
 なおも焦がれるまま伸ばされたエンデリカの手のひらに触れれば、それは驚くほど冷たいものだった。墨が刻んだ炎の呪いの方が、よほど熱がある。
 どうしてもその心の証が欲しいのだと藻掻き続けたエンデリカに、彩玉付きのしつけ針を魔法で操ったメリーは静かに目を伏せる。憧憬も、羨望も、渇求が過ぎれば毒にしかならない。
 焦がれるままに燃えゆく少女の最期に、メリーはただただ彼女を抱きしめるようにやさしく、その心ごと刺し貫くのだった。

「おやすみ、エンデリカ」
 今度生まれ変わった時には、友達になろう。
 黒薔薇から散っていく。機械から崩れていく。後に残るのはまるで普通の少女と変わらない、眠りに落ちた幼子へ向けてメリーは子守唄のように、そんなことを囁く。
 願うは黒薔薇姫の終焉、ではなく。
 ──彼女の生まれ変わり、リメイクを願って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月16日
宿敵 『エンデリカ』 を撃破!


挿絵イラスト