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羅針盤戦争〜憤怒の巨人王シュラヴィア

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #セルレアンクルセイド島

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#羅針盤戦争
#セルレアンクルセイド島


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●グリードオーシャン・???
 ――これは、グリードオーシャンに伝わる、ある伝説。

 嘗て、ある島に、人々を守りし憤怒の巨人王がいた。
 憤怒を原動力とする巨人王は、人々を苦しめるコンキスタドールへの怒りから、己が剣とメガリスを手にとり、日々戦い続けた。

 巨人たる王が振るう剣は、コンキスタドールたちを悉く斬り捨て。
 巨人たる王が行使するメガリスは、コンキスタドールたちを大波に呑み込み。
 人々は、巨人王の憤怒に守られ、平穏な暮らしを送っていた。

 だが、巨人王はある日、己が守っていた人々にその剣を向け、叫ぶ。
「我が民よ! 己が闇に呑まれよ!! 大海嘯に呑まれ果てよ!!!」
 巨人王の怨嗟と呪詛の言霊の意味を、人々が正確に理解する前に。
 巨人王が解放したメガリスは大海嘯を引き起こし、人々を、土地を悉く大波に呑み込み、さらっていき。

 ……やがて、島は地図上から消え果てた。

●『十字皇シュラヴィア』を撃破せよ!
「まあ、実はこの伝説、真実なんだけどな」
 グリモアベースの片隅で、伝説を語った後大きくため息をつきながら。
 グリモア猟兵森宮・陽太は、エメラルドの瞳で猟兵達を見つめ、呼びかける。
「で、この伝説の巨人王――自らもコンキスタドールに墜ちた『十字皇シュラヴィア』が、ある島を蹂躙しようとしていると、俺のグリモアが予知を齎した」
 既に戦争も大勢を決しようとしている今、あえて襲撃をかけるその意図は不明だが、予知にかかった以上は放っておくわけにもいかないだろう。
「皆には『十字皇シュラヴィア』を食い止め、撃破してほしい。頼めるか?」
 頭を下げて頼む陽太に、猟兵達は其々の想いを以て頷いた。

 陽太はその場に島の地図を広げ、説明を始める。
「巨人王は、島の北端の砂浜から上陸し、島中の街や人々を蹂躙しながら南下する」
 ――そして、最後には島を大海嘯に呑み込み、地図上から完全に消し去るのだろう。
「だから、今回は人々を巻き込まないように砂浜で完全に足止めし、撃破してもらうことになるんだが……正直、強いぜ」
 巨人王は、今や「七大海嘯」麾下の精鋭となっており、これまでとは段違いの力を持つ。猟兵だけで戦うと苦戦は免れない。
 しかし、この島を統治している「地元の海賊」の協力を得られれば、彼らの土地勘や兵器を使い、有利に戦えるかもしれない。
「島を守りたいのは、地元の海賊たちも同じだ。協力しない理由はねえ」
 もし海賊たちの協力が得られれば、全力を以て海岸に巨人王を押しとどめてくれるだろう。
 ……守りたい想いは、誰もが持ち得るものなのだから。

 ――なぜ、巨人王は守っていた人々に剣を向けたのか?
 猟兵達が示したその疑問に、大きく息をつきながら答えを提示したのは、陽太。
「巨人王は気づいていたのさ……守っている人々が己に向ける嘲りに」
 それは、巨人と人間という、種族の差から生じるものなのか。
 あるいは……メガリスを持ち、なお心を闇に呑まれなかった者への畏怖の裏返しなのか。
 いずれにせよ、守るべき人々から嘲られていたことに気が付いた巨人王は、最初はぐっとこらえていたのだけど。
 その声が静かに、留まることを知らずに広がるに連れ、巨人王の胸中には人々への失望と共に絶望が広がり……メガリスに心を蝕まれ、堕ちたのだろう。
「あくまでも推測にすぎねえが、あながちズレている気もしねえ……複雑だがよ」
 人々の嘲りを知り、コンキスタドールに墜ちた巨人王に同情の余地はあるのかもしれない。
 だが、コンキスタドールになった今、巨人王は人々への同情心を一切持ち合わせておらず、同情を向けられたらそれすら憤怒で踏み躙るはずだ。
「今の巨人王は、全てを呑み込み、全てを浚おうとする大海嘯……コンキスタドールだ」
 ……だから。
「ここで確実に討ち果たせ。頼む」
 静かに告げた陽太は、愛用の二槍で描いた転送ゲートに猟兵達を導き、戦場へと送り出した。


北瀬沙希
 北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
 よろしくお願い致します。

 戦争も終盤ですが、憤怒に囚われし巨人王が、平穏な島を襲撃せんとする動きを察知しました。
 猟兵の皆様、巨人王の怒りを鎮め、骸の海へと導いてあげてください。

 純戦想定ですが、プレイング次第で心情寄りになる可能性もあります。

=============================

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「羅針盤戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

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 状況は全てオープニングの通り。
 今回は冒頭の追記はありません。

●本シナリオにおける「プレイングボーナス」
【海賊達と協力する】とプレイングボーナスが付与されます。
 海賊たちの得物は弓矢のみですが、砂浜に足止めするには十分な数があります。

●プレイング受付期間
 オープニング公開直後から受付開始。
 受付締め切りはマスターページとTwitter、タグにて告知。

●【重要】プレイングの採用について
 早期完結を最優先しますので、必要最低限の採用とさせていただきます。
 合わせ・連携プレイングは採用致しません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『十字皇シュラヴィア』

POW   :    我が怒り知る必要なし。我が怒りに呑まれ果てよ!
敵を【完全開放メガリス「ストームクルシス」 】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
SPD   :    我が民よ、報いを受けるときだ!
【嘗て守りし超越した力を持つ悪しき人々 】の霊を召喚する。これは【嗜虐の満ちたナイフでの連続斬撃】や【肉体的・精神的苦痛を齎す陰湿ないじめ】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    古き友よ、今こそ約束を果たそう・・・・
【亡き無二の友、嵐を起こす魔剣の騎士 】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠白石・明日香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

栗花落・澪
人間は、自分達と違うものを無意識に拒むものだからね…
そこを上手く折り合いつけて共存できればよかったんだけど
シュラヴィアさんの気持ちもわかるだけにやるせないね

僕の詠唱の隙を
海賊さん達の連続攻撃で埋めてもらえれば

【呪詛耐性】を乗せた【オーラ防御】で身を護り
足場に【破魔】を乗せた★花園を広げ
【高速詠唱】で光魔法の【属性攻撃】
それでも通る攻撃は…【激痛耐性】で敢えて受けるよ
それが貴方の痛みなら
民の代わりに僕が受け止める

貴方も、霊となった人々も
もう、休んでもいいと思うよ
破魔を乗せた【指定UC】の【範囲攻撃】による【浄化】
全ての人々に…そして
貴方達の絶望に染まった心にも
どうかほんの少しでも
光あれ



●絶望に差し込む温かな光
 ――昔々、ある巨人が、緑豊かな島に辿り着きました。
 ――その巨人は、人々が悪しき海賊に苦しめられているのを見て、己が剣を取りました。

「人間は、自分たちと違うものを無意識に拒むものだからね……」
 怒れる巨人王『十字皇シュラヴィア』を目の当たりにした栗花落・澪(泡沫の花・f03165)の胸中は、複雑だった。
 相容れるようで相容れなかった者同士、異なるところを上手く折り合いをつけ、共存できればよかったのだけど。
 それは叶わず、ヒトが巨人王への感謝を忘れ嘲った先に辿り着いた結末は……堕ちた巨人王による島の壊滅。
 堕ちた巨人王は、コンキスタドールと化してなお、怒りを収めていない。
「シュラヴィアさんの気持ちもわかるだけにやるせないね」
 やり場のないやるせなさに理解を示しつつ、澪はその想いをそっと胸に押し込みながら、魔法を発動させるための言の葉を紡ぎ始めた。

「海賊さん達、お願い!」
「ああ!! 皆、撃てーっ!!」
 詠唱を始めた澪の隙を埋めるように、海賊たちが弓矢を居駆け、シュラヴィアを足止めする。
「この程度で我が止まると思うか!」
 射かけられた矢のほとんどは、シュラヴィアが一振りした昏き海の色を宿す大剣で叩き落とされるが、足止めの効果としては十分。
 その間に詠唱を終えた澪は、呪詛への守りを固め一気に近づく。
 澪の足元からは、魔を祓う白い花が咲き誇る花園が、少しずつ広がり始めていた。
「ほう、天使サマかい? 調教して高く売り飛ばしてやろうぜ!!」
「まずは言う事を聞かさねえとなあ?」
 澪に殺到した霊たちが、心無い言葉を澪に浴びせながら、手にしたナイフで澪の手足を斬り刻む。
 それは澪の命を奪う一撃ではなく、徹底的に甚振り、抵抗心を削ぐための陰湿な攻撃。
 さらに霊の1体が短い鞭を持ち出し、嗜虐的な笑みを浮かべながら、徹底的に澪を打ち据える。
 だが、澪は、己に向けられる攻撃――否、いじめを全て己が身で受け止めた。
(「それが貴方の痛みなら」)
「民の代わりに僕が受け止めるよ」
 シュラヴィアの気持ちに共感できるからこそ、澪はあえて嗜虐的なナイフを受け、鞭で打ち据えられ、言葉の暴力を真っ向から受け止める。

 ――それこそ、シュラヴィアが守って来た民衆から受けた仕打ちなのだろうから。

 耐え続ける澪の全身を、うっすらと温かな光が覆い始める。
「貴方も、霊となった人々も……」

 ――もう、休んでもいいと思うよ。

 澪の諭すような言の葉と共に、魔を祓い休息を齎す光が、半球状に広がり始める。
 いつしか砂浜を埋め尽くす程にまで広がっていた花園は、光に怯え始めた霊たちを捕らえ逃がさない。
「全ての人々に……そして、貴方達の絶望に染まった心にも」

 ――光あれ。

 優しき祈りが籠った温かみのある光が、澪を甚振っていた霊を呑み込み、他者を甚振るどす黒い感情ごと浄化した。
「く、あ……っ!!」
 光はシュラヴィアをも呑み込みながら、彼女の憤怒の根源たる闇を照らし、怒りを収めようとするが。
「この程度で、我が怒りは収まらぬ……!!」
 必死に踏みとどまるシュラヴィアの額には、脂汗が浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

久遠寺・遥翔
アドリブ連携歓迎

イグニシオンに【騎乗】
相手が巨人だというなら相棒の出番だ
対等な力を持った巨大な存在としてあんたを斬るぜ

もっともそっちが悪しき人々の霊を使役するように
こっちも地元の海賊に協力を取り付け
矢に焔を灯して亡霊どもを巻き込むよう【範囲攻撃】
ナイフを受けないよう距離をとりながら砂浜に押し留めてもらう

自身は島の上で【空中戦】
相手の攻撃は【第六感】で殺気、【視力】で動きを【見切り】
UCによる高速飛行で巨人王に斬撃を繰り出し一気に攻め立てるぜ

同じ視点で隣に並び立てるだけの存在がいればあんたもこんな結末にはならなかったのかもな。けれど過去が変わることはない。さよならだ



●漆黒の焔は霊をも浄化して
 ――巨人王は、悪しき海賊たちに敢然と立ち向かい、追い払いました。
 ――人々は、巨人王が守ってくれたことに、深く感謝しました。

 遠目から様子を伺う久遠寺・遥翔(焔黒転身フレアライザー/『黒鋼』の騎士・f01190)の目には、巨人たる『十字皇シュラヴィア』が立ちはだかる壁、そのもの。
「相手が巨人だというなら相棒の出番だ」
 遥翔は純白のクロムキャバリア「イグニシオン」を呼び出し、搭乗する。
 相棒たるフェンリルを上半身――オーバーフレームとすることで再設計された純白のクロムキャバリアは、漆黒のアームドフォートたる相棒とは正反対の印象を受けるが、大切な相棒「フェンリル」であることに変わりはない。
 全長5mのキャバリアの操縦席に乗り込んだ遥翔が外を見渡せば、ちょうどシュラヴィアの頭と操縦席が同じ程度の高さに来ていた。
 視線は若干遥翔のほうが高くなるのだが、少なくとも巨人と人間の体格差は埋められるはず。
「対等な力を持った巨大な存在として相手を斬るぜ」
 遥翔はイグニシオンの機神太刀"迦具土"を手に握り込み、駆け出した。

 シュラヴィアが悪しき人々の霊を使役するなら、こちらも地元の海賊に協力を取り付けるだけ。
「よーし、あの純白の巨人に当てないように撃てー!!」
 イグニシオンに乗り込む前に遥翔との共闘に同意していた海賊たちは、遥翔の依頼通り、矢の先端に焔を灯し、亡霊たちを巻き込むように一斉に射かける。
 焔の矢はイグニシオンに迫ろうとしていた亡霊たちの足元に突き刺さり、燃え始めるが。
「ウオォォォ……」
「熱い、あつぅい……」
 亡霊たちは焔に恐れをなし、それ以上近寄ろうとしない。
 遥翔としては、海賊たちにはナイフを受けないような距離を取りつつ、砂浜に押し留めてもらえればそれでよかったのだが、射かけた焔が亡霊除けとしては絶大な効果を発揮し、砂浜どころか1歩も動けない状態に追い込まれていた。
 そして、本能的に炎を恐れるのは、巨人とて同じなのか。
「くっ……熱い!!」
 怯んでいたのは、シュラヴィアもまた、同じだった。

 霊たちが焔で足止めされている間に、遥翔はイグニシオンを駆り、空中から一気にシュラヴィアに接敵。
「行くぜ相棒! 今はただ全霊を以てこの空を翔ける――ラグナレク・キャリバーッ!!」
 掛け声とともに機神太刀"迦具土"を大きく振りかぶり、高速飛翔で巨人王を翻弄しつつ、漆黒の焔がなびく剣で連続斬り。
「ぐぅ……っ! 重い!!」
 シュラヴィアも大剣で必死に漆黒の焔を宿す剣を捌くが、キャバリアとの重量差と手数の差で徐々に押され、焔に皮膚を焼かれながら防戦一方に追い込まれる。
 亡霊たちも遥翔に向けて何やら喚きたてているようだが、イグニシオンが外部から届く音を一時的にカットしたか、遥翔の耳には届かず。
 さらに亡霊たちがナイフでイグニシオンを切り裂こうにも、異世界の巨人――否、巨神には全く歯が立たない。
 打つ手のない亡霊たちは、シュラヴィアを追い込んだ焔の剣の連続斬りに巻き込まれてあっという間に消滅していった。

 焔の剣で亡霊を浄化し、シュラヴィアを追い込みながら、遥翔の口からふと言の葉が零れ落ちる。
「同じ視点で隣に並びたてるだけの存在がいれば……あんたもこんな結末にはならなかったのかもな」

 遥翔の言の葉がシュラヴィアに届くことは、おそらくないだろう。
 なぜなら、その言葉を届けたところで、過去が変わることは決してないのから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イコル・アダマンティウム
「ん……昔に怒ったのは、解かった」
でも、今の島を襲う理由は……ない、はず

僕は格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、よ

【共闘申請:共闘・怒声】
ん、一緒に戦ってほしい
僕が前に出るから、メガリスを使わせる隙を与えないように
絶えず弓矢で援護して欲しい、な

それから
敵に向き合ってあげてくれたら嬉しいな
「敵の怒りは、知らない……
けど皆は怒っても、いいと思う」

【格闘戦】
「この人たちと、この島の人たちは……違う」
前衛になる、ね
機体で敵に真っ向から格闘戦を挑む、よ
「皆……守るために、戦ってる
怒ってる」

【一撃必殺】
弓の援護等で敵に隙ができたら、渾身の一撃を叩きこむ、ね
「だから
王様が怒る必要は……もう、ない」



●巨人王の怒りを拳の想いで打ち砕き
 ――しかし、巨人王の計り知れぬ怒りは、いつ来るともしれぬ海賊たちに向けられています。
 ――守られたはずの人々は、護ってくれた巨人王に、言い知れぬ恐怖を抱いていました。

「ん……昔に怒ったのは、わかった」
『十字皇シュラヴィア』の怒りの理由を解したのか、イコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)は一つ頷いた後、すぐに首を振る。
「でも、今の島を襲う理由は……ない、はず」
 万に一つ、襲う理由はあったとしても、見逃せないことに変わりはないのだから。

 イコルは紺色のキャバリア、Tactical Armor-001:Last ONEに乗り込む前に、己が愛機を指差しながら、海賊たちに共闘を依頼する。
「僕が愛機に乗って前に出るから、メガリスを使わせる隙を与えないように」
 シュラヴィアにメガリス「ストームクルシス」を使わせる隙を与えぬ様、連携してタイミングをずらしながら弓矢を射かけるよう頼まれた海賊たちは、お安い御用よ、と請け合う。
 だが、イコルはもうひとつ、海賊たちにお願いごとをしていた。
「敵に向き合ってあげてくれたら、嬉しいな」
「どういうことだ?」
 イコルに敵を理解しろと諭されたと感じたのか、首を傾げる海賊たちに、イコルはその理由を告げる。
「敵の怒りは、知らない……けど、皆は怒ってもいいと思うから」

 ――そう。
 今のシュラヴィアの所業は、かつて己が守るために撃退した海賊たちの鏡写し。
 かつて己に向けられた嘲りを、今度は無力で無関係な民に振るおうとしているのだが、憎悪に、怒りに囚われるあまり、シュラヴィアは己が過ちに気づかない。
 ……否、コンキスタドールへと堕ちた以上、気づけないのかもしれない。
 ならば、この島の海賊たちにも、蹂躙されそうになる怒りをシュラヴィアにぶつける権利くらいはあるだろう。

 イコルの想いに気が付いた海賊たちは、深く頷いた。
「怒りとなるかどうかはわからんが、全力で援護させてもらう」
「ん、お願い」
 イコルはキャバリアに乗り込み、シュラヴィアに向かって駆け出した。

 シュラヴィアにメガリス「ストームクルシス」を使う間を与えぬよう、断続的に降り注ぐ矢を掻い潜りながら、イコルは愛機を駆って一気にシュラヴィアに迫り、格闘戦を挑む。
「姑息な海賊どもめ!!」
 シュラヴィアも真っ向から大剣を以て受けて立ち、イコルの拳を受け止めるが、拳に籠る想いの強さにたじろいだか、捌くだけで精いっぱい。
「この人たちと、この島の人たちは……違う」
「違わぬ! 我に怒り、嘲っているのは同じだろう!」
「皆……守るために戦ってる、怒ってる。」

 ――あなたの怒りとは、違う。

 力強く言い切るイコルの剣幕に、シュラヴィアは息を呑む。

 過去の裏切りと嘲りに怒り、島を蹂躙しようとするシュラヴィア。
 現在の襲撃と蹂躙に怒り、コンキスタドールを追い払おうとする島の海賊たち。

 海賊たちとシュラヴィアでは、怒りの本質が根本から異なる。
 だが、シュラヴィアがそれに気づくことは……ないだろう。

 ――過去と想いは、コンキスタドールに堕ちた以上、変えられぬのだから。

 己が故郷を蹂躙されまいとの海賊たちの想いと怒りが籠められた矢が、シュラヴィアの上空から滝のように降り注ぎ、昏き海の色の剣の行き先を戸惑わせる。
 その隙に、イコルは渾身の一撃を叩き込むため、大きく腕を振りかぶった。
「皆、この島を守るために、戦ってるから」

 ――王様が怒る必要は……もう、ない。

 島の守り手を引き受けるとの強い意志を籠めた矢と、怒りを鎮め、骸の海にて休めとの想いが籠った拳が、確実にシュラヴィアの動きを止め、胴を穿つ。
「が、は……っ!!」
 肺から空気を押し出されるような一打を浴びたシュラヴィアは、悶絶してその場に蹲った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
んーどこの世界も似たようなものなんだねー。
でもこれってどう考えても八つ当たりだし同情の余地なしだよね。

海賊さんにまず交渉、砂浜でどうにか仕留めてみるから弓矢のありったけで巨人狙って足止めしてほしいと。
巨人が来たらUCで空シャチ召喚、10頭ぐらいを島民護衛に回して残りを合体させて数字3のを30体にして強化。
更にその空シャチ達に結界術とオーラ防御で破魔、浄化の属性付与して召喚された悪しき霊達に対抗。
…空シャチ相手にナイフとかいじめできるなら根性は逆に凄いけど。
それやったら尾鰭で弾く空の旅コースプレゼントだよねー。
霊の数減らしたら巨人の周囲飛び回らせて攪乱、他猟兵の為に隙を作ろう。

※アドリブ等お任せ



●どこでもあり得る話だからこそ、同情できない
 ――巨人王の怒りは、おそらく己が未熟さからくる八つ当たりなのでしょう。
 ――いつしか、人々は陰で異種族たる巨人王を嘲るようになっていました。

 海賊たちと合流したヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が「十字皇シュラヴィア」に向ける視線は、どこか達観していた。
「んー……どこの世界も似たようなものなんだねー」
 数々の世界を渡り歩く猟兵、とりわけグリモアを所持するグリモア猟兵だからこそ、続けたヴィクトルの一言は容赦なくシュラヴィアに突き刺さる。
「でもこれってどう考えても八つ当たりだし、同情の余地なしだよね」
 ――この島の人々は、シュラヴィアの誇りを踏み躙っていないだろうから。
 それは、他の猟兵達と共に相対して来た海賊たちの反応を見ていれば、ヴィクトルにも一目瞭然。
 だが、目の前の「ヒト」が本当に誇りを踏み躙ったか否かは、怒りに囚われたシュラヴィアには既に関係なくなっているのだろう。
 ……だからヴィクトルは「八つ当たり」だと断言したのかもしれない。

 全身に無数の火傷と打撲傷を刻み、それでも大剣を杖代わりに立ち上がるシュラヴィアを目の当たりにし、海賊たちは畏怖と戦慄を覚えてしまうけど。
 それでも、己が島を守りたい一心で、ありったけの弓矢でシュラヴィアを狙い、足止めする。
「海ばかりと思ってたら痛い目見るよ」
 シュラヴィアが降り注ぐ矢で足止めされている間に、ヴィクトルは102体の空シャチを召喚。
 尾ビレの腹側に【1】と刻印された102頭の空シャチのうち、12頭は【1】の刻印のまま海賊や島民たちの護衛に残し。
 残り90頭は3頭ずつ合体させ、【3】と刻印された空シャチ30体に変化させ、さらに破魔と浄化のオーラを纏わせることで、召喚された悪しき霊たちに対する攻防一体の結界を施した。
 空に浮かぶシャチたちを一瞥したシュラヴィアは、怒りに任せ叫ぶ。
「我が民よ、報いを受けるときだ!」
 シュラヴィアの怒りに呼応し、彼女の周りに次々と召喚された霊たちは、なぜか毛皮の帽子と衣服に身を纏っていた。
 冬の厳しい自然と共存して来たであろう、毛皮服の人々の霊がヴィクトルやシャチたちに向ける視線は、悪しき心に囚われた今、嗜虐心を露わに、弱きものを甚振るそれへと変化していた。
「はっ! こんな海の生き物、全部俺らが斬り刻んで食い尽くすだけさ!」
「このシャチ全部、オレらのモノだ! 有難く解体されろよぉ!?」
 空シャチたちへの聞くに堪えない罵詈雑言を耳にし、思わず顔を顰めるヴィクトル。
 生前の霊たちは、おそらく自然の恵みに感謝しつつナイフでシャチを狩り、冬を越す糧としていたのだろう。
 だが、悪しき霊と化した彼らがナイフを持つ意味は、一冬越す糧を得る目的から、シャチたちを嗜虐的にいじめる目的へと変化してしまっている。
 人々のいのちを繋ぐためではなく、嗜虐心のままシャチをいじめるために。
 霊たちのナイフが、空シャチの腹を切り裂かんと一斉に振るわれた。
 しかし、邪な心が宿ったナイフは、空シャチの尾ビレであっさりと弾かれ。
 ――スパーーーン!!
 ナイフを弾かれ硬直した霊は、薄い浄化のオーラを纏った尾ビレで思いっきり叩かれ、お空へと旅立っていった。
(「空シャチ相手にナイフでいじめられる根性があれば逆に凄い、と思っていたけど」)
 まさかこんな霊が出て来るとは思っていなかった、と唖然としたヴィクトルに、空シャチの群れを掻い潜ったシュラヴィアが迫っていた。
「忌々しいシャチめ! 我が怒りの元に肉片と化せ!」
「おっと、そうはいかないね」
 ヴィクトルは油断せずに【3】の刻印を持つ空シャチたちを回遊させシュラヴィアを翻弄しつつ、他の猟兵が来るまでの時間稼ぎに徹していた。

 ――決着をつけるに相応しい猟兵は、他にいるだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イスラ・ピノス
やるせないお話。
でも、終わったものを続けるなら良いお話でなくちゃね。
せめて声の聞こえない所へお戻りよ。

海賊さん達と協力だね。
援護射撃して貰うのが一番良さそうだから無理はしないでそちらに集中するようお願い。
僕とそーちゃんが足止めに回るよ!

そういうわけでおいでそーちゃん!
砂浜前に陣取って、水を思い切り吸ってパワーアップ!
そのまま正面から迎撃いくよ。
剣での攻撃も大波もそーちゃんなら問題なし!
出来たら海賊さんにも声掛けお願いして連携していこう。
僕狙いで来たら高速泳法で逃げるのと、いよいよ危なければそーちゃんの中に入って回避&応戦!
終わった後も怒ってちゃ休まらないでしょ
そのお役目もここまでだよ!



●悲しいお話でも良い結末であってほしいから
 ――巨人王は人々の嘲りを耳にしながら、失意のまま過ごし。
 ――やがて、メガリスの囁きに心を蝕まれ、その力を守るべき人々に向けました。

(「……やるせないお話」)
 グリモア猟兵からの説明を「お話」のひとつとして聞いたイスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)が抱いた感想は、それだった。
 民が嘲る声が「十字皇シュラヴィア」の耳に入る限り、シュラヴィアの怒りが治まることは、おそらくない。
 一方、怒りに囚われたまま人々を滅ぼすという結末だからこそ、どこかやるせなさが残ってしまう。
「でも、終わったものを続けるなら良いお話でなくちゃね」
 イスラの口からふと零れた本音は、言霊として風に乗り、シュラヴィアに届く。
 冒険商人として各地のお話を見聞きするイスラだからこそ、このお話をバッドエンドで終わらせたままにはしておけないのだろう。
 それを聞いたシュラヴィアの想いは、イスラにはわからないけど。
 これ以上、お話を凄惨極まるものにはしたくないから。
「……だから、せめて声の聞こえない所へ、お戻り」
 イスラはぐっと拳を握りしめ、シュラヴィアの眼前に身を晒した。

 海賊たちには、無理に対峙させるより援護射撃してもらうのが一番よさそうと考えたイスラは、あえて海賊たちを下がらせる。
「無理はしないで、援護射撃に集中して!」
「わかった!」
 海賊たちが砂浜から離れて弓矢を射かけ始めるのを確認し、イスラは何かを招くように手を動かした。
「おいでそーちゃん!」
 イスラの呼び声に応え現れたのは、ソーダ水の巨人――そーちゃん。
 身長3mの、ソーダ水の身体を持つ透明な巨人は、そのまま砂浜にどかっと腰を下ろすと、徐に海水を吸い込み始める。
 ――ズズズ……ッ。
 潮が引いたかと見間違う勢いで海水を吸い込んだそーちゃんは、一回り大きくなりパワーアップ。
 そのままイスラとそーちゃんは、迫りくるシュラヴィアを真正面で待ち受けた。
 シュラヴィアも、怒りのまま待ち受ける巨人とセイレーンに対し、真っ向から大剣を振り上げ、叩きつけるように振り下ろした。
「我が怒りに呑まれ果てよ! そしてあるべき姿に戻るが良い!!」
 捨て身で振り下ろされた大剣は、咄嗟に避ける素振りを見せたイスラの動きをトレースしたそーちゃんの肩口に食い込み、そのまま胴を袈裟懸けに斬り下ろす。
 常人なら胴を二分され死に至る程の重い一撃だったが、そーちゃんのソーダ水でできた身体は、するりと大剣の刃を通した後、何事もなかったかのように元通りに復元された。
 立て続けにシュラヴィアが大波を召喚し、イスラともどもそーちゃんを流そうとするが、そーちゃんは逆に吸収し糧にするため、目立つダメージを負わせることができない。
 もっとも、イスラとそーちゃんは無事でも、海賊たちはしっかり大波をかぶってしまうため、イスラも海賊たちと連携を取りつつ、極力海賊たちを大波に巻き込まない様にシュラヴィアを誘導しながら、呼びかける。
「終わった後も怒ってちゃ、休まらないでしょ」
「我が怒りは留まることを知らぬ! 休みなどあり得ない!」
 イスラの目前で解放されたメガリス「ストームクルシス」から、イスラを細切れにせんと至近距離から痛烈な一撃が放たれる。
 だが、イスラはそーちゃんの中に潜り込み腕を交差させると、そーちゃんも腕を交差させてその一撃を受け止めた。
 結果、イスラを細切れにするはずだった一撃は、そーちゃんの腕を削り取るだけにとどまる。
「じゃあ、そのお役目もここまでだよ!」
 致命的な一撃をそーちゃんの中に入って回避したイスラは、そのまま拳を握り込み、シュラヴィアの顔面に叩き込んだ。

 ――ドカッ!!

 イスラの動きをトレースしたソーダ水の拳は鋼のように固くなり、シュラヴィアを大きく後方へと吹き飛ばす。
「が……あ……っ!!」
 既に他の猟兵たちにダメージを蓄積され続けられてきたシュラヴィアの身体は、そのまま宙を舞い、背中から砂浜へと落下。
 イスラが駆け寄る頃には、既に虫の息となっていた。

 かくして、島を大海嘯に呑み込まんとする巨人王との決着はついた。
 ――ついた、ように見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●情を寄せる物語から、宿縁を断つための物語へ
 ――巨人王を嘲った人々は、大海嘯に呑み込まれ、海の底へと消えてしまいました。
 ――しかし、怒りに囚われた巨人王は、未だこの世界を彷徨い続けているそうです。

 ある島に伝わる「十字皇シュラヴィア」の伝説は、このように締められている。
 だが、彼女は伝説としてではなく、メガリスに蝕まれ堕ちたコンキスタドール――征服者として、この世界に未だ存在していた。

 そして今日も、シュラヴィアは怒りのまま大海嘯を以て蹂躙しようと、ある島に上陸する。
 しかし、それを察知し駆けつけた猟兵達は、真っ向から彼女と剣を交えた。

 戦いの最中、シュラヴィアの怒りの根源は、猟兵達に確りと受け止められる。
 猟兵たちも、それぞれの信念と矜持を以て、確かな答えを提示した。

 ――受けた痛みを全て己が身で引き受けた、オラトリオの聖者。
 ――並び立つ者の不在を嘆き同情した、純白のキャバリア乗り。
 ――己が怒りと同程度、いやそれ以上の怒りを示してくれた、紺色のキャバリア乗り。
 ――どの世界でも「よくある話」だと諭した、海洋生物のキマイラ。
 ――「良い話」で終わらせたいと真っ向から挑んだ、セイレーンの冒険商人。

 皆が示した道は、いずれも正しく、いずれも本質を突き。
 一方でいずれも、力なき者を蹂躙せんとする征服者に対する怒りに満ちていた。

 そして、かつてシュラヴィアが抱いた怒りは、彼女の身へと跳ね返り。
 今、彼女は……虫の息のまま砂浜に仰向けに斃れ、骸の海に還る一歩手前で踏みとどまっている。

 このまま放置しておけば、シュラヴィアはやがて骸の海に還るだろう。
 彼女の怒りの炎は、既に燃え尽きようとしているのだから。

 しかし、シュラヴィアが背負う宿命は「謎」を残し逝くことを許さない。
 シュラヴィアがなぜ「十字皇」の二つ名を持っていたのか、その理由を明かさず逝くことを許さない。

 ……そう。
 これから語られるお話が導くのは、二つ名の「謎」に至りし結末。

 ――それは、ある宿命を背負う、猟兵との邂逅の物語。
白石・明日香
海賊たちには足止めしてもらうとして
終わりにしようぜ、巨人王!
残像で攪乱しながらダッシュで接近、攻撃範囲が広がっているだろうからそれを警戒しながら回り込むように接近、攻撃の軌道と範囲を見切ってかわし
間合いに一気に入り込む。攻撃の余波はオーラ防御と激痛耐性で耐える。
後は怪力、2回攻撃、属性攻撃(炎)、鎧無視攻撃で叩き切る!
お前の戦いはとうの昔に終わっている。だからさっさと眠るがいい・・・



●連綿と続く「十字」の宿縁を断つために
 ――巨人王は、「十字皇」の二つ名を持っていました。
 ――しかし、なぜ「十字皇」と称しているのかは、決して語ろうとしませんでした。
 ――なぜなら、その答えを知り得る者は、この世界にはいなかったからです。

「終わりにしようぜ、巨人王!」
 砂浜に仰向けに斃れ、骸の海へと還る時を待つだけと思われた「十字皇シュラヴィア」の耳に突如届いたのは、白石・明日香(十字卿の末裔・f00254)の好戦的かつ鋭い声だった。
 それは、海へと還りかけていたシュラヴィアのいのちを繋ぎ留める楔として穿たれ、さらにシュラヴィアの戦意を呼び起こす強心剤となる。
 なぜ、戦意を呼び起こされたか、シュラヴィア自身もわからない。
 ただ、新たに現れた猟兵だけは討たねばならない、と本能で察知していた。

 明日香は海賊たちに弓矢による足止めを頼み、全力でシュラヴィアに駆け寄る。
 シュラヴィアの海賊帽と海賊服の襟が、明日香が近づくに連れ光り出していた。
「やはり……!」
 どこか合点行ったかのように呻く、シュラヴィア。
 海賊帽と海賊服の襟に埋め込まれている十字の意匠が、かつて迷宮災厄戦で対峙した「麗しの十字姫シュラウレギナ」から明日香が奪った「欠片」に反応し、光り出したと察したのだ。
 ――まるで、明日香が十字と対峙する宿命を持つ者だと知らせるように。
「貴様か! 十字の者を狙い続ける猟兵は!!」
 明日香を一喝したシュラヴィアは、残る力を振り絞って立ち上がり、大剣を振り上げる。
 おそらく、十字が共鳴したことで、他の世界で「十字」の二つ名を持つオブリビオンが次々と討ち取られていることを察したのだろう。
 だが、明日香はあえてシュラヴィアの問いに答えず、残像で撹乱しつつダッシュしながらも、メガリス「ストームクルシス」を解放したシュラヴィアが予想外の間合いから斬ってくることを警戒し、砂浜をジグザグに駆ける。
 しかし、明日香を見下ろすように立っているシュラヴィアの目がある限り、ジグザグに駆けるだけでは完全にその目を欺くことはかなわない。
「ここで斬り伏せてやろう!!」
 シュラヴィアは明日香の移動経路を予測し、タイミングを合わせて大剣を頭から一気にかち割らんとすべく振り下ろす。
 だが、明日香は単調な大剣の軌道を見切って紙一重で躱しつつ、間合いに一気に飛び込んだ。
 返す大剣の斬り上げを、明日香は全てを喰らうクルースニクの刃で大剣を滑らせるように受け流しながらかろうじて逸らす。
 大剣の重さに、明日香の腕に鈍い痺れが走り抜けるが、次の大剣の一振りが来る前に己が得物を振りあげた。
「虚無に還るがいい!」

 ――緋燕十字斬!!

 欠片を得たことで会得した、唐竹割りと見間違う神速の斬撃は、シュラヴィアの魔法的な防護を破り。
 コンマ数秒おいて横薙ぎに振るわれた刃は、あらゆる物理防御を無にしながら、シュラヴィアの内臓をも分断するほどに、胴を深く斬っていた。
 見る者がぞっとするほどの歓喜の笑みを浮かべながら、明日香は歓喜と共にシュラヴィアに言い放つ。
「お前の戦いはとうの昔に終わっている。だからさっさと眠るがいい……!」
「その、剣技は……ガハッ……!!」
 致命的な一撃を受けたシュラヴィアの身体は、斬られた勢いのまま、砂浜に仰向けに倒れ込んていった。

 得物に付着した血を振り落とした明日香を見上げながら、シュラヴィアは震える声で言の葉を紡ぐ。
「十字の欠片を集める者……器の資格なき偽物よ、汝に災いあれ……!」
 シュラヴィアが吐き出した言の葉の呪詛は、明日香に対する呪いか。
 それとも……単なる事実を明日香に突き付けただけなのか。
「おい、貴様!!」
 明日香がそれを問いただすより先に、シュラヴィアの海賊帽と海賊服の襟にあしらわれていた十字の飾りが光に変わり、明日香の胸に吸い込まれる。
 茫然とする明日香の目前で、シュラヴィアの肉体は消滅し、骸の海へと旅立っていった。

 ――「十字皇シュラヴィア」撃破。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月08日
宿敵 『十字皇シュラヴィア』 を撃破!


挿絵イラスト