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孤独のホワイトデー

#キマイラフューチャー #猟書家の侵攻 #猟書家 #ミズ・ルチレイテッド #バーチャルキャラクター #ソリの日々

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 ホワイトデー。
 それは、バレンタインデーに女の子にチョコレートを貰って大喜びしていた男の子が、お返しをどうしたらいいのかと悩む日である。
 ……と断言してしまうのもどうかと思うが。
 少なくとも、今年初めて女友達からチョコレートを貰えたテレビウムの少年、ソリ・テュードにとっては、間違いなくそうだった。
 これまで何となく独りでいたソリには、誰かに何かをプレゼントしてもらうこともなければ、当然、お返しをした経験もなかったから。
 どうしたものかと考えて、考えて。
 街のとある一角に辿り着いていた。
「ここが、ホワイトデー向きなお菓子が出てくる場所……」
 きっかけは去年の今頃に製作されたという1つの動画。陽気なバーチャルキャラクターがおすすめとしてこの場所を紹介し、実際にコンコンコンして出てきたお菓子にアドバイスのようなコメントをつけているものを、ソリは見つけたのだ。
 お返しのお菓子に意味がある、なんてこともその動画で初めて知れた。
 そして、半ば教科書のようになったその動画が撮影されたここへ、ソリは足を運び。
「あら~? あらあらあら~?
 もしかしてアナタ、ホワイトデーのお返し考えるのにココに来てたりする~?」
 口調に反して野太い声に振り向くと、体格のいい男が黒いゴシックドレスを着て内股でくねっと立っていた。
 ノースリーブゆえにむき出しのゴツく幅広い肩も、フリルが揺れる分厚い胸板も、ふんわりミニスカートでカバーしきれないほどがっしりした腰も、蝶の刺繍をあしらった網タイツに覆われた筋肉質の脚も、違和感を生み出しながら何故かとても似合っていて。
 しっかり男の人の姿なのにドレスが似合うってすごいなぁ、と。ソリは動画の中で最初に見た時と同じ感想を改めて抱く。
 そう。唐突に出会ったこのおネエさんは。
「……ビューティー、さん?」
「あらあらあら~! アタシを知ってくれてるのね~。
 もしかしてもしかして、アタシの動画見てココに来てくれた子だったり~?」
 ぱあっと表情を輝かせたバーチャルキャラクター、動画の中で『ミス・ビューティー』と名乗っていた彼に、ソリはこくこくと頷いた。
「ありがと~。嬉しいご縁だわ~」
 さらに笑みを深めたビューティーは、ずいっとソリに顔を近づける。
「それじゃお礼に、アナタのホワイトデー、アタシがお手伝いしてあげる~」
「……え?」
「題して『ミス・ビューティーのお助けホワイトデー!』ってトコかしら?」
 ぽかんとするソリの前で、うんうんと満足気に頷いて。
「さあさあ、早速撮影開始よ~」
「ええええ!?」

 ちょうど同じ頃、別の場所で。
 とあるオブリビオンの前に漆黒の漿船が現れていた。
「な、何だこれは……宇宙船……?」
 ぽかんと見上げるオブリビオンに、漿船からの声が響く。
「私は『宇宙船団ルチレイテッド』の首領ミズ・ルチレイテッド。
 キング・ブレインの下で世界征服を実現する、悪の組織連合の1つを束ねる者だ」
 まるで宝石のように硬く、そして美しい声は、朗々と言葉を紡ぎ。
「お前は、クリスタルシップの改造ビームにより宇宙怪人となった。
 さあ、わが『宇宙船団ルチレイテッド』のため、そしてキング・ブレインのために、バーチャルキャラクター達を誘拐し……」
「ぃやったあぁ!」
 オブリビオンの歓喜の声に遮られた。
「俺が! 憧れの大首領様の部下に!
 地道な布教活動が実を結んだということか!
 くうぅっ。『KKKK』会長引き受けてよかったあぁ!」
 立派なたてがみを持つライオンキマイラのようなオブリビオンは、ものすごい量の歓喜の涙を流しながら、尻尾を揺らし、大きく両手を掲げて万歳する。
 その動きでひらりとはだけた上着の下に見えたシャツには、キング・ブレインの顔がプリントされていて。掲げた両手には『大首領さま大好き』『ブレブレブレって笑って!』と大きく書かれたアイドルうちわが握られていたから。
「ええと……『KKKK』って、何です……?」
 漿船からの声は、どこか呆然としたものになっていた。問いかけも的を外してる気がしますし、そもそも、演技をすっかり忘れた素の口調ですし。
 そんな変化を気にも留めず、『KKKK』2代目会長・カインは、よくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに胸を張り。
「キング・ブレインの活躍をキマイラフューチャーで見たい会!
 すなわち、大首領様のファンクラブだ! 絶賛会員募集中!」
「…………」
 言い切るカインに、漿船がすっごい微妙な空気を醸し出しています。
「部下ってことは、大首領様に会えたりもするんだよな!?
 うわぁ! うわぁ! どうしよう嬉しすぎるうぅ!
 あっ、そうだ! 大首領様に会うのに手ぶらでなんてありえない!
 早速何かいいものを探さないと!」
 そしてカインは1人で一通り騒ぐと。
 あっさり漿船に背を向けて、どこぞに走り去っていった。

「猟書家『ミズ・ルチレイテッド』にバーチャルキャラクターが狙われているよ」
 九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)はそう言ってから、多分、と曖昧な表情で付け加えた。
 ルチレイテッドは、宇宙パワーで洗脳したバーチャルキャラクターのアイドルに、悪の組織『宇宙船団ルチレイテッド』を広めさせようと画策している。
 そこで、バーチャルキャラクターがいる場所へ、配下の宇宙怪人を送り込んだのだが。
「……どうも怪人は、誘拐相手よりコンコンコンの方に夢中なようでねぇ」
 夏梅は困ったように告げた。
 そこは、コンコンするとホワイトデーのお返しにいい贈り物が出てくる場所。
 クッキー、キャンディー、マカロンなどの菓子類の他にも、アクセサリーや小物、お花なども手に入れられるらしい。
 バーチャルキャラクターは、ホワイトデーにちなんだ配信動画を撮影しようとその場所を訪れていて。怪人は、それを狙って追いかけてきた、はず。
 めっちゃコンコンしてプレゼント選びに全力注いでいますがね。
「まあ、何かの拍子に元の目的を思い出す可能性もあるし、オブリビオンなのは間違いないし……何より、背後に猟書家がいるわけだからね」
 何とか気を取り直したように、夏梅は猟兵達を鼓舞していく。
「配下を倒して、猟書家を引きずり出して、やっつけといておくれよ」
 にやり、と不敵な笑みを浮かべて。
 予知で見た詳細な状況を説明しようとした夏梅は、ふと思い出したように、告げた。
「ああ、そういえば。また彼が巻き込まれているようだよ」
 ……ソリ君、お祓いとかした方がいいんじゃないでしょうかね?


佐和
 こんにちは。サワです。
 ソリ君とミズ・ルチレイテッドは仲良くなれそうな気がします。
 苦労人枠。

 ソリ君は、ごく普通のテレビウムです。
 何となく独りでいましたが、友達ができて一緒にいろいろわいわいやってる模様。
 今回は、女友達2人へのホワイトデーのお返しを探しに来た、はず。
 ソリ君達について知りたい方は、タグを利用して過去の登場作をご確認ください。
 尚、未読で全く問題ありません。
 ソリ君に全然関わらないままでも充分いけますので。

 第1章は、一応『KKKK』2代目会長・カインとのボス戦です。
 憧れのキング・ブレインへの贈り物を探しに来ました。
 同じ場所にいるバーチャルキャラクター『ミス・ビューティー』が、なんやかんやで彼のターゲットになります。

 尚、このドタバタ劇の舞台は、コンコンコンするとホワイトデーのお返しによさそうなプレゼントが出てくる場所です。
 戦闘そっちのけでプレゼントを探してもよし。
 ソリ君やミス・ビューティーに声をかけてみるもよし。
 気にせずカインをぶっ飛ばしてもよし。
 カインと一緒に大首領様愛を語ってもよし?
 ボス戦なのは気にしすぎずお好きにどうぞ。何とかなりますきっと。

 第2章は、猟書家『ミズ・ルチレイテッド』とのボス戦です。
 なんやかやで漿船にご招待されての戦いとなります。
 こっちはちゃんと戦闘になる予定です。
 さすがに猟書家戦ですし。頑張って演技しますし。

 それでは、何か騒がしいホワイトデーを、どうぞ。
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第1章 ボス戦 『『KKKK』2代目会長・カイン』

POW   :    「大首領様は素晴らしい人なんだ!」
自身の【感情が昂り流す涙】が輝く間、【肉体が強化され、キマイラブキ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    手作り侵略蔵書「『KKKK』会誌」
【キング・ブレインへの興味】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【ファンクラブ会誌】から、高命中力の【洗脳光線】を飛ばす。
WIZ   :    「「「我ら!『KKKK』ゴールド会員!」」」
戦闘力のない、レベル×1体の【『KKKK』のゴールド会員】を召喚する。応援や助言、技能「【布教】」、技能「【一致団結】」を使った支援をしてくれる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は上野・イオナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 街の一角にある、ホワイトデーのお返しに向いたプレゼントが出てくる場所。
 ゆえにこの時期、お返しに悩む様々な人が訪れていて。
「さ~、ソリちゃん。早速コンコンいってみましょ~」
「あ、はい……」
 コンコンコン。
「あら~。可愛いピンク色の小瓶。中身はサクラの花びら入りのキャンディね~。
 ソリちゃん、キャンディのお返しの意味、覚えてる~?」
「ええと……『あなたが好きです』?」
「正解~。アタシの動画で勉強してくれたの、嬉しいわ~。
 それで、お返しする相手って、ソリちゃんの好きな人~?」
「えっ!?」
「やっぱり、ホワイトデーのお返し選びと言ったら恋バナよね~。
 ほらほら~。どんな子なの~? どこを好きになったの~?」
「いやっ、その、あの……」

 そんなテレビウムとバーチャルキャラクターの近くでも、コンコンコン。
「むむっ。これは上品なネックレス! 金のチェーンが繊細で美しい!
 だが、大首領様に献上するには些か華奢だな! 次!」
 コンコンコン。
「ふむ、リップクリームか! 乾燥するこの季節には嬉しい品だな!
 しかし、大首領様、唇あったかな? 次!」

 そして、コンコン音が響き続けるその場所の上空に、そっと迫り来る漆黒の漿船。
「私自身でバーチャルキャラクターを誘拐した方が早い気がしますね……
 いえ、今の私は、悪の組織の首領。首領は配下を使ってこそ。
 エメラルドお嬢様のためにも、私はこの役目を十全に果たしてみせましょう。
 ……っと、そうでした。また演技を忘れてしまっていますね。
 では、コホン……
 さあ、わが『宇宙船団ルチレイテッド』配下の宇宙怪人よ。
 この星を圧倒的な『美』によって征服するそのために、美しき者を、バーチャルキャラクターを、わが元へ連れてくるのだ!
 アハハハ、アハハ、アハハハハ……!」
 街の一角にある、ホワイトデーのお返しに向いたプレゼントが出てくる場所。
 ゆえにこの時期、お返しに悩む様々な人が訪れていて。
「さ~、ソリちゃん。早速コンコンいってみましょ~」
「あ、はい……」
 コンコンコン。
「あら~。可愛いピンク色の小瓶。中身はサクラの花びら入りのキャンディね~。
 ソリちゃん、キャンディのお返しの意味、覚えてる~?」
「ええと……『あなたが好きです』?」
「正解~。アタシの動画で勉強してくれたの、嬉しいわ~。
 それで、お返しする相手って、ソリちゃんの好きな人~?」
「えっ!?」
「やっぱり、ホワイトデーのお返し選びと言ったら恋バナよね~。
 ほらほら~。どんな子なの~? どこを好きになったの~?」
「いやっ、その、あの……」

 そんなテレビウムとバーチャルキャラクターの近くでも、コンコンコン。
「むむっ。これは上品なネックレス! 金のチェーンが繊細で美しい!
 だが、大首領様に献上するには些か華奢だな! 次!」
 コンコンコン。
「ふむ、リップクリームか! 乾燥するこの季節には嬉しい品だな!
 しかし、大首領様、唇あったかな? 次!」

 そして、コンコン音が響き続けるその場所の上空に、そっと迫り来る漆黒の漿船。
「私自身でバーチャルキャラクターを誘拐した方が早い気がしますね……
 いえ、今の私は、悪の組織の首領。首領は配下を使ってこそ。
 エメラルドお嬢様のためにも、私はこの役目を十全に果たしてみせましょう。
 ……っと、そうでした。また演技を忘れてしまっていますね。
 では、コホン……
 さあ、わが『宇宙船団ルチレイテッド』配下の宇宙怪人よ。
 この星を圧倒的な『美』によって征服するそのために、美しき者を、バーチャルキャラクターを、わが元へ連れてくるのだ!
 アハハハ、アハハ、アハハハハ……!」
ジード・フラミア
メリア『イヤァ、こんなステキな所があるトハ!何かいいプレゼントが出ないデスカネェ。』
ジード「オブリビオンをほっといていいの?流石に危ないと思うんだけど……」
メリア『エー、別にアイツ、プレゼントを探してるダケデ、今すぐ危なそうでは無いデスヨ。ソレにボクとしても、色んな人に配る用、何よりワタシ達用のプレゼントを探したいのデスガ……マァ、それなら先に仕掛けておきマスカ。』

コンコンコンと、自分用のプレゼントを探したり、ミス・ビューティーや一緒にいるソリ君に話しかけたりしつつ、
カインに『等身大キング・ブレイン立体像(爆弾内装)』をプレゼントします。

後は、まあ、カインが怪しい動きをしたら爆発させます。



 長い銀髪を揺らす白い服の男の子と、長い金髪を揺らす黒い服の女の子。
 並んで立つ2人は、じっと目の前の壁を見て。
 女の子が立つ側とは反対の手をそっと掲げた男の子が、コンコンコンと叩いてみる。
 途端、現れたのは、キャンディ入りの瓶。色とりどりの丸いキャンディが入った透明な瓶は、蓋のされた口の周りをぐるりと青いリボンで飾られて。そこに、白を基調としたミニブーケを支え留めていた。
 へえ、とそれを眺めた男の子……ジード・フラミア(人形遣いで人間遣いなスクラップビルダー・f09933)が青い瞳を瞬かせると。
『イヤァ、こんなステキな所があるトハ!』
 隣の女の子……の人形・メリアが、ぱかっと口を開けて喋り出した。
 そのままきょろきょろと辺りを見回す仕草をしながら、赤い瞳を見開いて。
『何かいいプレゼントが出ないデスカネェ』
 動いて喋る様子は、活発な女の子そのものだが。
 メリアは人形遣いであるジードが動かす人形で。その声も腹話術によるもの。
 見た目通りの仲の良い男女2人組ではなく、人形を操る男の子による1人芝居だった。
 だがしかし。多重人格者であるジードにとって、ジードとして動く人格と、メリアを動かしている人格は別人だから。
 2人はやはり、1人芝居ではなく、見た目通りの仲の良い男女2人組。
 メリアはジードの手から、ひょいとキャンディ入りの瓶を取り上げて。
『ヨシ。ジード、次はコッチをコンコンコンするデスヨ』
「うん。分かった」
 頷いたジードは、先ほどと同じ、メリアを操るのとは逆の手でコンコンコン。今度は、可愛らしい絵柄の小箱に入ったキャラメルが出てくる。
『面白いデスネェ。
 ソウいえば、お返しには意味がアルと言っていまシタカ?』
「ああ、そうだね。そんな話もあった」
 キャラメルとキャンディを並べ持ったメリアが楽しそうに首を傾げるのに、ジードも柔らかな微笑を浮かべて。
 どんな意味だろうね、と言っていると。
『聞いてみまショウ! オネエさーん』
 メリアが、近くにいたバーチャルキャラクターに突撃した。
「あらあら~。ホワイトデーのお返しの意味?」
『教えて欲しいデスヨ』
「いいわよ~。お安い御用っ。
 ええと、キャラメルは『あなたは安心できる人』で、キャンディは……
 ね? ソ・リ・ちゃん」
「ええと……『あなたが好きです』……」
「そうよ~。だからほら、ソリちゃんがそのキャンディを渡す子のお話っ。
 聞かせてちょうだい~。どんな子なの~? 出会いは~?」
「いやっ、その、あの……」
 わたわた慌てるテレビウムに、ずいずい詰め寄るバーチャルキャラクター。
 それを、ジードはどこかぼうっと、メリアはにこにこと眺めて。
『楽しいデスネェ』
 くるりと振り向き、別の壁を指差した。
『ワタシ達も、もっと色々探しまショウ。次はソッチに行くデスヨ、ジード』
「いいけど……オブリビオンをほっといていいの?
 流石に危ないと思うんだけど……」
 嬉々としてはしゃぐメリアに、少し顔を困らせたジードは、ちらりと視線を流す。
 そこには、金のネックレスを放り投げ、次の場所をコンコンコンする『KKKK』2代目会長・カインの姿があった。
 現れたリップクリームをまた放り投げ、狙っているはずのバーチャルキャラクターに一度も注目しないまま、カインは別の場所へと向かっていく。
 メリアも顔を動かしてその動きを追いかけ。
『エー、別にアイツ、今すぐ危なそうでは無いデスヨ。
 ソレに、色んな人に配る用、何よりワタシ達用のプレゼントを探したいのデスガ……』
 不満そうに言うけれども、ジードは困り顔のまま。
 だから、メリアはため息をついて、肩を竦めると。
『マァ、それなら先に仕掛けておきマスカ』
 ジードと共にカインへ駆け寄った。
『オニイさん、こんなプレゼントはどうデスカ? ホラ、可愛いデショウ』
 声をかけつつ、メリアが差し出したのは。
「おおっ! これは、等身大キング・ブレイン立体像!
 なんて素晴らしい! これなら大首領様への贈り物にもいいぞ!」
「そうかなぁ……?」
 嬉々として人形を受け取るカインに、困惑を深めるジード。
 だってほら、ユーベルコードで人形の可愛さと可憐さが増強されていますから、喜ばれるのは当然……かなぁ?
 ジードだけが正しい気がする状況ですが、カインはもう人形に釘付けです。
「しかし、この出来栄え……むしろ俺が欲しい!
 いつでもどこでも大首領様と一緒の気分が味わえるなんて最高じゃないか!」
『そうデショウそうデショウ。オニイさんが持っていたホウがいいデスネ』
「あー……うん……」
 メリアが煽り、ジードも止められずにおずおず頷く前で。
「ありがとう少女達! 君たちも大首領様の活躍が見れるといいな!」
 嬉し涙すら流しながら、カインは、渡された人形を……爆弾が内装された人形を大事に抱えながら走り去っていく。
 その後ろ姿を、2人は見送って。
『コレでヨシ。サァ、プレゼント探しに戻りまショウ!』
「……そうだね」
 再びコンコンコンに戻っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふえ?あのテレビウムさんはどこかで見たような・・・。
アヒルさん、美白の魔法の準備をお願いします。
何故か分かりませんが、あのテレビウムさんを見かけたら美白の魔法を使うのが正解な気がします。
それにしても、ここに現れるオブリビオンさんってあの人ですよね。
キングブレインさんって、ファンクラブができるほど人気があったんですね。
アリスラビリンスでお会いした時にサインでも貰ってくればよかったでしょうか?
ふええ、見つかってしまいました。
それに洗脳光線ってやっぱり有害な光じゃないですか。



「ふえ? あのテレビウムさんはどこかで見たような……」
 壁の陰からそっと覗き込んだフリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は、おろおろしているソリ・テュードの姿に首を傾げた。
 そのテレビウムは、ウェディングフェスやチョコレートフェスでフリルも顔を合わせたことのある相手だったけれども。その都度、なんやかんやと様々な騒動が巻き起こっていたから。事件に精一杯になっていたフリルにとって、彼の記憶はどこか曖昧で。
 それでも何故か強く確信できたことが、1つ。
「アヒルさん。『美白の魔法』の準備をお願いします」
 フリルは、揃えた両掌の上に乗ったアヒルちゃん型ガジェットにそう話しかけた。
 それは、紫外線等の有害な光から肌をケアする蒸気で、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす、フリルのユーベルコード『しっとり艶々なお肌を守る美白の魔法』。
 まだ戦いは始まってすらいないし、敵の攻撃も分からないのにと、どこか不思議そうに一声鳴いたガジェットに、フリルも眉を潜めて。
「何故か分かりませんが、あのテレビウムさんを見かけたら美白の魔法を使うのが正解な気がします」
 妙な予感に、むうっとなりながらも頷いて見せる。
 まあ確かに、以前の事件では、チョコレートとかビームとかの対策に役立ちましたけれども。今回も同じとは限らないわけなので。
 ユーベルコードを発動させたフリルに、ガジェットが呆れたように鳴いた。
 とりあえずこれで準備はOKと、フリルは改めて壁の向こうを覗き込み。
「あっ……あの人が、ここに現れると言われたオブリビオンさんですよね」
 今度は『KKKK』2代目会長・カインの姿に首を傾げる。
 ライオンの頭部と尾を持つキマイラのようなカインは、キング・ブレイン柄のシャツを着て、キング・ブレインを思わせるドクロマークの付いた靴を履き、キング・ブレインを応援するアイドルうちわと、等身大キング・ブレイン人形を持っていたから。
「キングブレインさんって、ファンクラブができるほど人気があったんですね。
 アリスラビリンスでお会いした時にサインでも貰ってくればよかったでしょうか?」
 かつて対峙したその姿を思い出しながら、フリルは赤い瞳に困惑の色を混ぜた。
 でもあの時は、気付けばフリルは人質にされていたし、手のひらサイズのガジェットと巨大化したキング・ブレインというどう戦えばいいのこれ的な状況で双方から助けを求められていたし、サインを貰う余裕なんてなく。
 というか、キング・ブレインからサインを貰うという発想自体がフリルになく。
 ガジェットもまた呆れたように、があ、と鳴き。
 その声に、カインがフリルに気付いた。
「むむっ!? その熱い視線……もしや、大首領様に興味があるのか!?」
「ふええ、見つかってしまいました」
 ずんずんとこちらへ向かってくるカインに、別にそんな熱くなんて見ていませんでしたと思いながら、フリルは大きな帽子の広いつばを引き寄せながら壁の陰に隠れるけれど。
「『KKKK』はいつでもどこでも新規会員募集中だ!
 詳しくはファンクラブ会誌を見てくれ!」
 気にせずカインは手作り侵略蔵書『KKKK』会誌を見せびらかすように掲げ、そこから洗脳光線を放った。
「ふえええ!?」
 唐突な攻撃に、フリルはその場で身を縮めることしかできず。
 キング・ブレインのファンになる洗脳光線をまともに受けてしまったけれど。
 光線はつるりとフリルの肌の上を滑るように反れて、弾かれる。
「何っ!?」
 カインの驚愕の声と共に、フリルの手の中でガジェットが諭すように鳴き。
 フリルはようやく気付いた。
「あっ、そうですね。洗脳光線って、やっぱり有害な光じゃないですか」
 予め発動させていた『美白の魔法』の効果は、有害な光を回避するものだったから。
 不思議な予感のおかげでカインの攻撃を防げたフリルは、ほっとしながら俯いていた顔をパッと上げて。
 ばちっとカインと目が合う。
「会誌を見るだけでもおぉぉ!」
「ふええ、ごめんなさい」
 そしてまたしつこく会誌を差し出すカインに、フリルは背を向け、逃げ出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
ホワイトデイお返し特化のコンコンコンか。何でもあるなぁ、この世界。
えーと、前に見たことのあるテレビウムの子と、保護対象のヴァーチャルキャラクタがそこのごつい人で、あれが討滅対象のKが一個多い組織の会長やってる怪人ね。
指差し確認。これ大事。

さて、お嫁さんたちへのプレゼントを仕入れなきゃね。やっぱり同じお菓子を4つ欲しいかな。後はまあ、メッセージカードでも添えよう。
お菓子は、ビスケットにしよう。みんな揃ってお茶会でもしたいものだね。

欲しいものは手に入った。お仕事に入ろうか。
怪人の人に空間断裂の刃を放つ。致命傷になるかな?
遺言があるのなら、聞いてあげてもいいよ。
じゃあ、とどめだ。おやすみ、いい夢を。



 コンコンコンと叩いてみれば。
 出てきたのは、5枚セットのメッセージカード。
 片手に乗るくらいの白い小さなカードは、外周部分に青いハートが描かれていて。
 それを入れられる大きさの青い封筒には『White Day』の文字が書かれていたから。
「ホワイトデイお返し特化のコンコンコンか。何でもあるなぁ、この世界」
 手にしたそれを面白そうに眺めながら、セシル・バーナード(セイレーン・f01207)はにっこりと微笑んだ。
 では早速プレゼント探しを、と動き出しかけたセシルは、一旦動きを止める。
「えーと」
 人差し指を立てた手をさり気なく動かして、そっと向けた先にいるのは。
「前に見たことのあるテレビウムの子と」
 何故か慌てて、おろおろしているソリ・テュード。
「保護対象のヴァーチャルキャラクタがそこのごつい人で」
 ソリの隣で楽しそうな、黒いゴシックドレス姿のミス・ビューティー。
 そして、指の向きをぐるっと変えて。
「あれが討滅対象の、Kが一個多い組織の会長やってる怪人ね」
 キング・ブレインの等身大人形を大事に抱えた『KKKK』2代目会長・カインを指差し確認。一応依頼ですから、これ大事。
 関係者を認識し、カインがソリ達から離れていくのを見てから。
「さて、お嫁さんたちへのプレゼントを仕入れなきゃね」
 ようやく、セシルはプレゼント探しに取り掛かった。
 未だ幼さも残る中性的な容姿のセシルが『お嫁さん』というと、冗談かお遊びかと思えてしまうけれども。肩口で揺れる金髪と同じ色の狐耳とふさふさの尻尾、そして妖艶で蠱惑的な緑色の瞳を見れば、真実と信じられてしまい。
「やっぱり同じお菓子を4つ欲しいかな」
 しかも、お嫁さん『たち』が、妻とその他の家族、ではなく、4人の妻、を表していることに気付いても、驚きは少ないだろう。
 聞いた者を驚かせる言葉をさらりと紡ぎあげたセシルは、周囲を気にもせず、むしろ驚いたりしてくれるのを楽しもうとする節すら見せて。
 気楽にまた別の壁をコンコンコン。
「いいね、ビスケットか。これにしよう。
 後は、メッセージカードも添えようかな。せっかく出てきたし」
 現れた可愛らしい缶の中身を確認すると、同じ場所から色違いの缶をあと3つ出した。
 中身は同じ、お揃いのプレゼント。セシルは満足気にそれを抱えて。
「みんな揃ってお茶会でもしたいものだね」
 妻達と5人で過ごす、楽しくそして愛に溢れた一時を思い、にっこり妖艶に笑う。
「それじゃ、欲しいものは手に入ったし」
 そしてくるりと振り向くと、こちらへと戻ってくるカインの姿が見えた。
 何があったのか、服やたてがみのところどころが焦げて煤けて、そして先ほど持っていたはずの人形は影も形もなく。改めてバーチャルキャラクターを狙いに来た、というよりは、逃げてきたという雰囲気で近づいてきたから。
「お仕事に入ろうか」
 セシルはビスケットの缶を抱えたまま、不可視無音の空間断裂を生み出した。
 何の動作も必要としない、念じただけで発動する見えない刃は、完全に不意打ちの形でカインを深く切り裂いて。
「ああっ! 大首領様のシャツがっ!」
 深く刻まれた傷よりも、シャツにプリントされていたキング・ブレインの顔がざっくりと切り落とされたことにダメージを受けて、カインはがくっと膝をつく。
 両手も地面について、さめざめと泣くその様子を見下ろしたセシルは。
 んー、と少し考えてから。
「遺言があるのなら、聞いてあげてもいいよ」
「Kは多くないっ! 『キング・ブレインの』『活躍を』『キマイラフューチャーで見たい』『会』だから『KKKK』で合ってるんだー!」
 問いかければ、どう考えても遺言じゃない答えが返ってくる。
 あっ。聞こえてたみたいですね。さっきの。
 しかしセシルはどうでもよさそうに肩を竦めると、またにっこりと微笑んで。
 空間断裂を生み出しながら、ひらりと手を振った。
「おやすみ。いい夢を」

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎です。

悪いこと始めなければ別にいいかなー、と思いつつ観察しています。
風評被害になりそうなお姉さん(ミズ・ルチレイテッド)は邪魔しますけどー。

それはそれとして、ホワイトデーゲリラライブを敢行します。
スピーカーの音量をアップ。
(差し支えなければ)バンドメンバーの分身(ドラムとベース)も召喚し、
むやみに【存在感】を発揮し【情熱】的に、【楽器演奏、歌唱、パフォーマンス、浄化】を駆使して指定UCを演奏です。
お客さんを【鼓舞】し【誘惑】しながらライオンの人の様子見です。
暴れ出すようなら【催眠術】と【精神攻撃】でちょっかいかけますが、そんなに悪いことを考えて居なければ大丈夫でしょー、たぶん。


木霊・ウタ
心情
二代目…ってことは初代がいんのか
すげぇ

兎も角倒すぜ
改造されたらしいから
倒すことで元に戻せるといいんだけど

戦闘
この状況だと
却って避難誘導はしない方がいいかも

ってわけでライブっぽい立ち回り

ホワイトデーだし
皆楽しそうだし
賑やかで楽しい曲を奏でる

でそのメロディに炎の属性を付与
指向性の紅蓮の音波として
コンコンしている二代目会長を火達磨に

オブリビオンには未来を創れない
大首領との望む未来は来ないぜ?

流す涙は地獄の炎がすぐに蒸発

事後
賑やかで明るい旋律を奏で続ける

もし海へ還ったなら
生命の伊吹を伝える鎮魂の調べとして

元に戻れたんなら
この先の未来を祝して

ソリ
渡すときの心込めた感謝の言葉
それが一番大切だぜ(ぐっ



 ホワイトデーに向けてコンコンコンをしに来ているのは当然ソリ達だけではない。
 仲間とわいわい来ている者や、1人でこそこそと隠れるように来ている者。より良いものをと吟味する者や、手にした傍からお菓子を食べてる者。
 そんな街の一角をゆっくりと歩きながら、様々な様子の主にキマイラの男の子達を、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は眺めて。
「ホワイトデー、か。皆、楽しそうだな」
 ふっとその口元に笑みを浮かべた。
 それは、誰かを思うからこその行動。そして、誰かのための光景。
(「この状況だと、却って避難誘導はしない方がいいか」)
 オブリビオンによる被害は防がなければならないけれども。
 できることなら、この優しい時間も壊したくないから。
 ウタはインカムをつけ、ギターを構える。
 注目を集めるように1度大きくギターを鳴らして。
「さあ、ホワイトデーライブの始まりだぜ!」
 賑やかで楽しい曲をと選び、奏で始めた。
「今日イベントなんてあったんだ」
「いいねー。何か勇気づけられる感じだ」
 コンコンしていた手を止めて集まって来る者もいれば。歌に背中を押されるようにしてプレゼントと向き合う者もいて。
 それぞれの楽しい時間を、ウタの曲が盛り上げていく。
 もちろん、ウタの狙いはそれだけではない。
 注目を集め、ショーのようにしておいた方が、キマイラフューチャーの住人達は、いざ戦いが始まった時に御しやすいと過去に経験していたから。
 戦闘に危機感を感じさせるよりも、イベントだと魅せた方が。危ないから逃げろと言うよりも、離れて応援していてくれと言うほうが。住人達は安全に退避行動をとってくれると知ったから。
 サウンドソルジャーとして。アーティストとして。
 ウタはその場の皆と一緒に、賑やかで楽しい時間を紡いでいく。
「僕と同じこと考えてる人がいたんですねー」
 そこにそんな声がかけられて。
 ウタの隣に並んだのはフローライト・ルチレイテッド(重なり合う音の色・f02666)。
 澄んだ宝石のように美しい、青みがかった緑色のダブルネックギターをかき鳴らし、ウタのそれに音を揃えた。
 その周囲をふわりと浮遊した野外スピーカーポッドが、赤いセンサーの光をリズムに合わせてちかちか点滅させながら音量アップ。さらにフローライトが召喚したバンドメンバーたる分身が、ベースとドラムの音を加えて、曲に厚みが増していく。
 野性的でどこか荒々しくもカッコいい、ウタの曲が終わったところで。
 次はそっちの番だと、ウタが無言のままにっと笑って見せれば。
 頷いて、ギターの音で応えたフローライトは、2曲目を奏で出した。

 踊りだせ歌いだせ
 拭って流した涙 辛い事も忘れて楽しむのさ
 目を閉じて夜を越え朝日がいつか来るように
 哀しい事も全て越えてゆこう

 背中の白い翼を広げ、肩口で揃えた銀髪をさらりと揺らし。髪色と同じ猫耳と、頭部の1本角をピンと立てて。ゆらりと猫尻尾でリズムをとりながら紡ぎあげるその歌は。同じギターメインの曲でも、ウタのものとはまた違った響きを広げていって。
「うおお。何か希望が湧いてきた!」
「俺、ホワイトデーにちゃんと返事するぞ!」
 悪意を砕く勇気の力を、明日を生き抜く希望の感情を、曲を聴いて心を震わせてくれた全ての者達に与えていく。
 盛り上がっていくライブに、ウタも楽しそうに笑みを深めて音を重ね。
 ふと、観客を見回した瞳が、ピンク色の小瓶をぎゅっと握りしめて憧れるような視線を向けてくれているテレビウムを見つけた。
 小瓶の中身であるキャンディに、そして、ホワイトデー向きと言われているらしいこの場所に彼が居る意味に、気付いたウタは嬉しそうに笑うと。
(「ちゃんとチョコレート、貰えてたんだな」)
 フローライトの歌声が終わるのを待ってから、声を張り上げた。
「お返しには何を選んでもいいけどな」
 それは、見知ったテレビウムに……今度はホワイトデーを楽しめているソリに向けてのものだったけれども。
「渡すときの心込めた感謝の言葉。それが一番大切だぜ」
 ぐっと突き出した手に、他の観客達もわあっと歓声を上げる。
 思った以上の盛り上がりにウタが少し苦笑を零せば、隣のフローライトも楽し気に、前髪の間から覗く金色の右瞳で笑いかけた。
 そこから2本のギターを合わせ、じゃあ3曲目は、と思ったところで。
「そうか! 大首領様に歌を贈るのもアリだな!」
 現れたのは、オブリビオン。
「俺は『KKKK』2代目会長・カイン!
 さあ、大首領様を讃える歌を作ってもらおうか!」
 2人の歌に鼓舞されてしまったのか、等身大のキング・ブレイン人形を両手で高々と掲げながら、観客達をかき分けて、ウタとフローライトへ迫ってくる。
(「2代目……ってことは初代がいんのか。すげぇ」)
 その言動に、どこかズレたところで感心してしまったウタだけれども。
「悪いこと始めなければ別にいいかなー、と思ってたけど」
 フローライトがギターの調べを変える。
「暴れるなら黙っちゃいないよ?」
 にっと笑って、音色に精神攻撃を乗せていくと。分身達が、演奏を続けながらも観客に声をかけ、またジェスチャーで誘導していく。
 駆け寄って来るカインに道を開けるように、まるでライブの演出を楽しみつつも邪魔をしないように、観客達が退いたのを見て。
「今度はあなたの番、ですね」
 フローライトはウタを促すようにコードを紡いだ。
 それは、フローライトの曲とは少し違う、最初の曲を思わせる、ウタの旋律。
 歌を出番を譲られたウタは、楽しそうににっと笑顔で飛び出して。
 豪快に奏で始めたメロディに、炎の属性を与えた。
 それは、ブレイズキャリバーたるウタの地獄の炎。
 紅蓮の輝きは指向性の音波となって、向かってくるカインを包み込み。
 そのまま一気に燃え上がらせる。
「ぅ熱っ! ちょっ、燃えてっ、って、俺ぇっ!?」
 慌てて炎を消そうとするカインだけれども、振っても叩いても消せるはずがなく。
 流す涙も、零れた先から蒸発しているような状況。
「ああっ! 大首領様のシャツにまで火がっ! これ作るの大変だったのにぃ!」
 そんな中でカインは、どこかズレた、緊張感のない悲鳴を上げて、どちらかというと自分自身よりも身に着けた服を炎から守ろうと必死になっていた。
(「確か、宇宙怪人に改造されたらしいと聞いたが……」)
 カインが無理矢理猟書家の配下とされているのなら、倒すことで元に戻せないものだろうかと思っていたことを、ふと思い出したウタだけれども。
「やっと見つけた大首領様っぽいドクロマークの靴も!
 せっかく貰った等身大キング・ブレイン立体像までがっ!?
 やめて俺の大首領様を燃やさないでぇ!」
 必死なその様は、洗脳とか以前の、カインの本質な気がしなくもない。
 確かに、キング・ブレイン崇拝は、何をされても変わらないと思いますね。はい。
 それならば倒すのみ、とウタは再びギターをかき鳴らし。
「オブリビオンには未来を創れない。
 大首領との望む未来は来ないぜ?」
 さらなる炎をカインへと放つ。
 フローライトのツインギターも音を乗せて威力を上げれば。
 地獄の炎は一際紅く燃え上がり。
 その炎で、キング・ブレイン人形が突如、爆発した。
 突然の展開に、フローライトが首を傾げ、視線でウタに問いかけるけれども。ウタにも心当たりはなく、こちらこそ驚きながら首を横に振るばかり。
 その場の誰も、人形内部に最初から爆弾が内臓されていたことを知らぬまま。
 特撮のような見事な爆発にカインは吹っ飛ばされていった。
「大首領様は素晴らしい人なんだぁぁ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

あの猟書家の人が怪人を御しきれてるのあまり見ないですね・・・
まぁ、しばらく適当にやってからにしますかね。

(とりあえず大量にお菓子を漁りまわして、その途中で見つけたソリ君とミス・ビューティーに声をかけて、最近おすすめのお菓子を聞いたり一緒に回ったり一通り堪能して)

さて、ちょっと相手してきますか

(憧れのキング・ブレインの魅力を語って欲しい理由をつけてお茶に誘い、大量のお菓子とティーセットでお茶をしながらUC『制約:征服者』を使って、気づかれにくいように力を奪っていき)

え、何か疲れた気がする、ですか?
きっと、熱を込めて語ったからですよ。
他には、どんな魅力があるのですか?



 コンコンコンに夢中になって。
 貰ったキング・ブレイン人形にはしゃいで。
 その奇異な行動を見つめる視線を勘違いして、勧誘しては断られて。
 そして、ゲリラライブに顔を輝かせて駆け寄っていく。
 そんな『KKKK』2代目会長・カインの姿を眺めた神咲・七十(まだ迷子中の狂食者・f21248)は、のんびりと、抱えたお菓子からマカロンを1つ、口に運んだ。
(「本当に、バーチャルキャラクターそっちのけですね……」)
 お菓子もスイーツも大好きで、甘い物中毒者とまで言われる七十にとって、ホワイトデー特化とはいえお返し用の菓子類が多々出てくるここはとても素敵な場所で。抱えたお菓子ももちろん、ここで手に入れたものばかり。
 途中で、バーチャルキャラクターのミス・ビューティーに声をかけ、最近のおススメを聞いて一緒に手に入れたりもして、甘い一時を満喫していたけれども。
 一応、ビューティーに接触したのは護る相手を確認する意味もあったし。お菓子巡りで歩き回って、地形の把握もできている。
 そう、七十はちゃんと依頼のためにも動いていた。
 眺めていたオブリビオン、カインとは違って。
 宇宙怪人に改造されているはずなのに、猟書家ミズ・ルチレイテッドの指示に欠片も従っていない。キング・ブレインへの忠誠心はあるようだけれども、その役に立つ行動をとっているとは思えない。
 七十は、中にチョコレートの入ったマシュマロを口に放り込む。
(「まあ、あの猟書家の人が怪人を御しきれてるのあまり見ないですけど」)
 そう思いながら、ライブの曲と共に火達磨になって、いきなりの爆発に吹っ飛ばされていくカインの姿をまた目で追って。
(「さて、ちょっと相手してきますか」)
 ふらり、といった感じに動き出した。
 路地を2つほど折れた先に、吹っ飛ばされたそのまま頭から地面に埋もれ、頭を下にした状態でぴくぴくしているカインを見つけた七十は。
 近くにあった椅子に腰掛けると、テーブルの上に持っていたお菓子、そしてティーセットを広げていく。
 2つのティーカップに紅茶を注いで、お茶会の準備を進めると。
「そこの会長さん。
 憧れのキング・ブレインについて、その魅力語りを聞かせてくれませんか?」
 赤い瞳を細めて、クッキーをそっと摘まみ上げながら、そう語りかけた。
「お礼にお茶を御馳走しますから」
「大首領様の魅力を知りたいのか!?」
 がばっと起き上がったカインは、焦げて煤けたそのままで、嬉々として七十に向かい合う椅子へ座って。『KKKK』会誌を取り出すなり語り出す。
 キング・ブレインの見た目や服装から、独特の特徴ある笑い声。尊大でいて細やかな心配りができる正確や、そもそもの戦いの様子まで。カイルは一気に喋って。 
「ふぅ……何だか疲れたな」
「おや。きっと、熱を込めて語ったからですよ」
 どうぞ、と差し出された紅茶を一気に飲み干した。
 実は、カインが疲れるのは、この場に七十が張った結界のせいで。じわじわと気付かれないように、生命力や力が奪われているからなのだが。
「他には、どんな魅力があるのですか?」
 そんなことをしていると欠片も見せず。七十は、身を乗り出すようにしてテーブルに両肘をつき、立てた腕に顔を乗せると、両掌で頬を包むような、話を楽しんでいるような恰好を見せて、話の続きを促すと。
 さらりと揺れる金髪の下で、にっこりと赤い瞳を細めた。
 ……カインがやっぱり変だと気付いて征服者のお茶会から逃げ出すまで、もうしばし、語りの時間は続いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

まつりんは会長…ライオンさんのところにいってみる?わたしはソリのところに行く

ソリ、元気そうに恋バナ中?
すすす、とミス・ビューティの傍へ寄っていき、ソリの好きな子をお聞きする体勢

ん、ソリ。バレンタイン振り
バレンタインのチョコは美味しく召し上がれた?
どんなチョコが爆誕してソリに与えられたのかお聞きしたい…(どきどき)

ミス・ビューティ、わたしもホワイトデーにソリがお渡しするもの選び、お手伝いしたい
参考までに、わたしが貰って嬉しいもの…
(コンコン)
(お肉が出る)
…お、お肉的なチョコがいい、という暗喩

ね、ソリが渡したい子を思い浮かべて
想いを込めて
さ、ソリ、コンコンどうぞ?


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!

ソリ、元気そうだね。よかったー♪
一緒にいるのは……父ちゃん? あ、違うんだ。
ドレス着た男の人だったから、父ちゃんなのかと思ったよー♪(←)

わ、ライオンキマイラ君だ。
えーと……デイン君、じゃないよね?
あ。(Tシャツ見た)
ひょっとして、ブレブレさんのファン?
おいらもおいらもー!(意気投合)

いいよね、ブレブレさん!
脳ビーム、カッコイイよね!
おいらね、ブレブレさんに扇ぶつけたことあるんだー♪(きゃっきゃっ)

あ、おんなじ扇、見たい?
おんなじぶつけられ方、してみたい??

りょーかーい♪
じゃあ、いっきまーす。
くらえー、白蓮の舞ー♪
(口の中へ扇を突っ込んで、白蓮ビーム!)



「さ~、ソリちゃん。
 楽しいライブは名残惜しいけれども、お返し探し、再開しましょ~」
「は、はいっ」
 ホワイトデーゲリラライブを楽しんでいたソリは、唐突な爆発パフォーマンスが終わった辺りでミス・ビューティーに促され、再びコンコンコンへと戻っていく。
「それじゃ~早速、この辺りから……」
「ソリ、見つけたー♪」
 そこにぴょこんと元気に飛び込んで来たのは、おひさま笑顔の木元・祭莉(まつりんではない別の何か・f16554)。
「元気そうだね。よかったー♪」
「ん、ソリ。バレンタイン振り」
 そして、その双子の妹の木元・杏(メイド大戦・f16565)も、続いて顔を出し。
 友人と再会に、驚いたソリが挨拶を返す、より早く。
「あら~。また猟兵に声をかけられるなんてっ!
 しかも、今度はソリちゃんのお友達なの? もうっ、すごいわね~」
 双子の正体に気付いたビューティーが感激に顔を輝かせた。
 金瞳をぱちくりさせる杏に、ソリが、ライブの前にお菓子好きな金色の髪の猟兵と少し一緒にいたんです、と説明。
 その間に祭莉は、銀瞳でビューティーをまじまじと見て。
「……ソリの父ちゃん?」
「あら、違うわよ~。そうねぇ、協力者ってトコかしら~」
「あ、違うんだ。
 ドレス着た男の人だったから、父ちゃんなのかと思ったよー♪」
「……? どういうことなのかしら~?」
 首を傾げるビューティーに、にぱっと笑った祭莉は。
「うん。ソリ、ウェディングドレス着てたから、お揃いだなって……」
「わーわーわー!」
 さらっと説明し始めたそこに、ソリが慌てて割り込んだ。
 とあるウェディングフェスで、祭莉は、当然のようにドレスを着せられていたソリと会っている。ちなみに、祭莉自身もミニスカウェディング姿でしたが、ソリと違って女装は気にならないようです。
 1人テレビ画面を真っ赤にして、必死に祭莉を遮るソリに。
 ふふっ、と微笑んだ杏が首を傾げ、肩口で揃えた黒髪をさらりと揺らすと。
「ソリ、バレンタインのチョコは美味しく召し上がれた?」
 問いかけに、今度はソリの動きがピタッと止まった。
「どんなチョコが爆誕したのかお聞きしたい……」
 どきどきしながら答えを待つ杏の脳裏に蘇るのは、前回バレンタインの頃にソリと会った時、一緒にいた女友達2人がしていたこんな会話。

『デインには買うよー。
 去年は作ったんだけどー。もう手作りは勘弁してくれって言われたんだー』
『今年はソリにあげてくれって言ってたっしょ』
『生肉好きかなってチョコに入れたんだけどねー』
『そういえば、バレンタインからしばらく会えなかったっしょ』
『そうそうー。すごくげっそりしちゃってたよねー。何でだろー?』

 あれからソリはどんな手作りチョコを貰ったのか。
 興味津々な杏だが、気付けば、ソリのテレビ画面が真っ青になっている。
「あら~? ソリちゃん、すごく特別なチョコレートを貰ってたの~?」
 バレンタインの顛末を欠片も知らないビューティーは、微妙に勘違いをしつつ。杏に並ぶようにしてソリにずいっと近寄れば。
「相手はソリの好きな子」
「まあまあまあ! 好きな子からの特別なチョコレート!?
 それ絶対本命じゃない~。是非是非聞きたい話ね~。
 ほら、恋バナも途中だったし~。喋っちゃいなさいな、ソリちゃん」
「恋バナ……わたしもお聞きしたい」
「どんな子なの~? どこを好きになったの~? どんなチョコレート貰ったの~?」
 杏とビューティー、2人はわくわくとソリに迫り、話を促していった。
 祭莉も止めずに、むしろ楽しそうににこにことソリを眺めて。
 その視界の端に、よろよろとこちらに歩いてくるオブリビオンを捉える。
「わ、ライオンキマイラ君だ。
 えーと……デイン君、じゃないよね?」
 一瞬、ソリの友人のホワイトライオンキマイラを思い出した祭莉だが、毛色の違いですぐに別人と判断して。
「あ! ブレブレさんのTシャツだ!」
 焦げて煤けて、さらに真ん中がざっくり切り裂かれてもいるけれど、それでも見紛うことのない柄のシャツを着ているのにも気付いた祭莉は。ぱあっと表情を輝かせてオブリビオン……『KKKK』2代目会長・カインへと駆け寄っていった。
「ひょっとして、ブレブレさんのファン?
 おいらもおいらもー!」
「ブレブレさん……おお! 大首領様のことか!
 そうか少年! 君も大首領様のファンか!」
 そしてあっさり意気投合する祭莉とカイン。
「いいよね、ブレブレさん! 脳ビーム、カッコイイよね!」
「そうだよなそうだよな! あの黄金の脳、憧れるよな!
 あと、スーパー怪人大全集(全687巻)がずらっと揃ってるのも凄いと思わないか!」
「うん。ずらーっと並んで、綺麗に揃ってたよ」
「そうだろうそうだろう……って、その口ぶり……
 まさか、大首領様にお会いしたことがあるのか少年!?」
「そーだよー。おいらね、脳ビーム撃ってもらった」
「なんて羨ましい! どんな風に撃たれたんだ!?」
「えーっと、自己紹介からお辞儀していきなりビーム! だったよ」
「くうっ。何て礼儀正しい大首領様! さすが!」
「びしっとお辞儀できるように、練習続けてたんだって」
「そのたゆまぬ研鑚の姿勢、素晴らしい!」
 2人は祭莉の体験談で大盛り上がりしていって。
「あとね、おいら、ブレブレさんに扇ぶつけたこともあるんだー♪」
「おお! 大首領様、何というファンサービス!
 それで、その扇とやらはどのようなものだ?」
「あ、おんなじ扇、見たい? おんなじぶつけられ方、してみたい?」
「大首領様と同じ……素晴らしい響き!
 ぜひやってもらいたいぞ少年!」
 きゃっきゃっと大はしゃぎする祭莉に釣られてか、変な方向に誘導されたカインは。
「りょーかーい♪ じゃあ、いっきまーす。
 ご覧じ入り奉り候へ。まずはふわり、ふわりと扇投げ!」
 無防備どころか自ら望んで、祭莉のユーベルコードを真正面から受けていく。
 ひらりと舞妓姿になった祭莉は、両手に持った舞扇の片方を開いて投げる。くるくる回って放物線を描いた扇は、歓喜に開かれたカインの口に収まった。
 そして、もごもごと扇の詰まった口を動かし、多分喜びの声を上げているカインに、祭莉はもう片方の舞扇をぱちんと畳んでびしっと向けると。
「くらえー、白蓮の舞ー♪」
 そこから照射された白炎が、白蓮の花弁の様に弾ける。
 それは、炎に爆弾に生命力吸収に空間断裂に、数多のダメージを重ねていたカインに、止めとなって。
「ぐあぁぁぁ! 大首領様万ざ……い……!」
 舞い散る白い花の中に、その姿は消えていった。
 祭莉はそれを見届けてから、元の姿に戻って振り返ると。
「ほらほら~。ソリちゃん、喋っちゃいなさいよ~」
「爆誕したチョコの話からでもいい」
「えっ、そのっ、あのっ……」
 妹達は、祭莉の戦いに気付かぬまま、まだわちゃわちゃしていた。
「話出し難いなら、先にホワイトデーのお返しを探す」
「そうね~。その選んだお返しを渡す気持ちを、まず教えてもらいましょ~」
「ミス・ビューティ、わたしもソリが選ぶのお手伝いしたい。
 参考までに、わたしが貰って嬉しいもの……」
 コンコンコン。
「……お肉、ね~。
 一応、青いリボンでホワイトデーラッピングされてるけど~」
「こ、これは……お、お肉的なチョコがいい、という暗喩」
「お肉的なチョコレートって何なのかしら~?」
「ソリなら分かる、はず」
「ぐっ……」
「あら、ソリちゃん。また真っ青だけど大丈夫~?」
 楽しそうに盛り上がるところに、祭莉がすちゃっと戻っていくと。
 杏が、お肉から目を反らして、ソリにふんわりと笑いかけていた。
「ね、ソリが渡したい子を思い浮かべて。想いを込めて」
 そっと目の前の壁を、お肉が出てきたのとは別の場所を、指し示す。
「さ、ソリ。コンコンどうぞ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ミズ・ルチレイテッド』

POW   :    インクルージョン・ウェポン
【掌から生成したルチルの弾丸】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    クロックパルス・イベイジョン
【水晶振動子を利用し、完璧なタイミングで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    クリスタライズド・バレット
【10秒間の集中】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【透明化させたルチル弾】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠椎宮・司です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 彼女は、独りだった僕に声をかけてくれた。
 ふわふわの銀髪を、揺れるネコの尻尾を、いつだって楽し気に揺らして。
 ぴんっとネコ耳を立てて、笑顔で僕を誘ってくれる。
 大切な、大切な……
(「大切な友達、だから。ちゃんとお礼をしないと」)
 ソリは、お返しを贈る相手を思い描きながら、そっと手を掲げる。
 彼女が喜んでくれるものが出るように、と願いながら。
 目の前の壁を、コンコンコンと叩こうと、掲げた手を少し自身へ引き寄せて。
 刹那。
 周囲の景色がぐにゃりと歪んだと思うと。
 気付けば、ソリ達は黒っぽい機械に囲まれた部屋にいた。
 壁だけでなく天井も床も武骨な金属で覆われ、計器らしきものやよく分からないランプの他に、ただその場所を照らすだけのライトが埋め込まれている。
 広場と言えるくらいのスペースはあるけれども、見えるもの全てが黒を基調とした無機質な機械、しかも見慣れたキマイラフューチャーの街並みのように楽しく飾って魅せるようなものではないからか、やたら狭苦しく、堅苦しく感じてしまい。
 まるで宇宙船の中に閉じ込められたような、感覚。
「なになに~? 一体どうなってるのかしら~?」
 きょろきょろと不思議そうに辺りを見回すミス・ビューティーの隣で、ソリも画面をぱちくりさせていた。
 すると。
「ようこそ。わが『宇宙船団ルチレイテッド』の漿船へ」
 宝石のように澄んだ美しい声が響き、部屋の一角にスポットライトが当たる。
 そこに立っていたのは、キラキラと不思議な輝きを見せる、執事のような服を着た、クリスタリアンのような女性だった。
「私は『宇宙船団ルチレイテッド』の首領、ミズ・ルチレイテッド。
 美しき者、バーチャルキャラクターよ。
 キング・ブレインの下で世界征服を実現するために、その美しき力を捧げよ!」
 右手を胸に当て慇懃に一礼したミズ・ルチレイテッドは、その手を大仰に前へ差し出すと、芝居がかった仕草でビューティーを示し、笑う。
 それは確かに、悪の組織の首領らしい振る舞いではあったけれども。
「え~? いきなり何なの~?」
 指名されたビューティーは、ピンとこない様子で首を傾げた。
「いや、いきなりでは……配下が誘拐に向かっただろう?」
「配下? 誘拐? 何のこと~?
 ソリちゃん、分かる~?」
「え? 僕も何がなんだか……?」
 話がかみ合わないのも無理はない。
 何しろ、ミズ・ルチレイテッドが送り込んだオブリビオンは、標的であるビューティーに1度も接触しないまま倒されてしまっていたのだから。
 それは、この場にソリとビューティーと共に転送されてきた、猟兵達の活躍ゆえ……というよりも、オブリビオンが全然誘拐のために動いてなかったからだけれども。何だかミズ・ルチレイテッドが可哀そうなので、指摘しないでおいてあげてください。
 そんなわけで、当然の如く、状況が理解できないビューティーは。
「あっ、もしかして~。ホワイトデーにお返し貰えないのを僻んでる、とか~?」
 間違った結論を導き出し、なるほどね~、と凄く納得する。
「いえ、それは全然違う……というか、ホワイトデーなんて関係ないですし……」
 思わぬ展開に、素に戻って慌ててしまうミズ・ルチレイテッド。
 その可哀想な様子に、ソリは何となく、親近感すら覚えてしまったけれども。
「……こほん」
 咳払い1つして、何とか立て直したミズ・ルチレイテッドは。
「兎に角。キマイラフューチャーを征服するために、その力、いただきましょう!」
 仕切り直すようにまた、びしっとビューティーを手で指し示すポーズを取った。
フリル・インレアン
ふええ、またしても部屋に飛ばされてしまいました。
・・・、あのアヒルさん、今回は出口を探さないのかって顔で見てますけど、私もバカじゃないんですよ。
ここはどうみても宇宙船の中です。そんなところで出口を見つけても宇宙空間に放り出されるだけです。
あの猟書家さんを倒して元の場所に戻りましょう。

ふえ?今、見えない何かが横切りませんでしたか?
というよりも、宇宙船の中でそんな攻撃をして壁に穴が開いたら大変じゃないですか。
ガラスのラビリンスで戦場を覆ってしまいましょう。
ガラスの壁で視認ができないから攻撃できないですよね。



 ポップでサイバーパンクなキマイラフューチャーの街並みから、黒く不愛想な機械壁に囲まれた宇宙船の内部のような部屋へと、一変した周囲を見て。
「ふええ、またしても部屋に飛ばされてしまいました」
 フリル・インレアン(f19557)は大きな帽子の広いつばを片手でぎゅっと引き寄せた。
 それでも、いつものおろおろした様子が少し落ち着いて見えるのは、もう何度もキマイラフューチャーで猟書家と対峙し、その度に、何だか最終決戦に良さげな場所に転送された経験をしていたからで。
 部屋の様子を、そこに佇む猟書家『ミズ・ルチレイテッド』を、そして、自身と同じ猟兵達と、黒ゴシックドレスを着た体格のいいバーチャルキャラクターの男と、何度も一緒に巻き込まれている馴染みのテレビウムの少年を、フリルはゆっくりと見た。
 すると、帽子を握っていない方の手の中で、フリルを見上げるアヒルちゃん型ガジェットが一声鳴く。
「……あの、アヒルさん。
 今回は出口を探さないのかって顔で見てますけど、私もバカじゃないんですよ」
 その視線に、むんっ、と少し怒ったような、そして任せてくださいと誇るような、そんな表情を見せるフリル。
 そう。場所は違えども、フリルは同じような状況を何度も経験している。
 ゆえに、転送させられたこの部屋から出れる出口など存在せず、猟書家を倒す以外に元の場所へ方法がないことを知って……
「ここはどう見ても宇宙船の中です。
 そんなところで出口を見つけても宇宙空間に放り出されるだけです」
 あれ? 根拠はそっちでしたか。
 宇宙船の中だからといって、その宇宙船が必ず宇宙にいるとも限らないのですが。
「あの猟書家さんを倒して元の場所に戻りましょう」
 とりあえず、目指すところは間違っていないからか、ガジェットはフリルをじっと見上げたままで……と、急に先ほどとは違う緊張感のある声で鳴いたと思うと、フリルの目の前を何かの気配が横切った。
「ふえ?」
 ガジェットの声に。そして横切った何かに。
 フリルは赤い瞳を瞬かせると、おずおずとガジェットを見下ろす。
「アヒルさん、今……見えない何かが横切りませんでしたか?」
 問いかけに頷くように、ガジェットがまた、鳴いた。
 肯定されたフリルは、何かが飛んできたと感じられた方向へ振り返って。
 視線の先に、ミズ・ルチレイテッドの姿を見る。
 そう、見えない何かとは、ミズ・ルチレイテッドのユーベルコード。透明化されたルチル弾による攻撃だったから。
 見えない襲撃に恐怖を覚え、フリルはガジェットを、縋るように抱きかかえた。
「宇宙船の中で攻撃をして、壁に穴が開いたら大変じゃないですか」
 あれ? 見えないから避けにくい、とかって怯えじゃなかったんですか。
 部屋の外は宇宙だと思っているフリルは、その壁の破損をこそ心配し。
 選んだユーベルコードは、ガラスのラビリンス。
 透明なガラスでできた迷路が生み出されていくけれども。
 フリルが狙ったのは、ガラスの迷路が壁となり盾となり、部屋を守ること。
「これで宇宙に放り出されることはないですね」
 満足そうに頷くフリルは気付いていないけれど、迷路はミズ・ルチレイテッドの視野を狭めており。フリルを視認できなくなったからこそ、追撃を防げているのだが。
 その効果に気付かぬまま安堵の息を吐くフリルを、ガジェットは黙って見上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フローライト・ルチレイテッド
アドリブ連携歓迎です。

お姉さん、例によっていつも通り邪魔しにきました!
イベント時期くらい大人しくしておいてください!

とりあえず本人をつつくだけつついてホワイトデーライブ第二弾へ。
スピーカーの音量を上げて、集中を(結果的に)妨害しつつ。
飛んでくる弾丸は広い空間を【地形の利用】でいい感じに使い、【早業】で回避。または【オーラ防御】で防御。
抱きしめた【情熱】を込めて【楽器演奏、歌唱、浄化、精神攻撃、鼓舞】を駆使して指定UCを発動。

平和と愛を希求する想いをグイグイ押しつつ、【パフォーマンス】で観客(ミズ・ルチレイテッド含む)を【誘惑】していきましょう。
多少持ってる【撮影】の知識で撮れ高もばっちりです。



「お姉さん。例によっていつも通り邪魔しにきました!」
 フローライト・ルチレイテッド(f02666)はにっと笑って、びしっとポーズを取った猟書家『ミズ・ルチレイテッド』へそう声をかけた。
 骸の海から滲出した過去の怪物であるオブリビオンは、倒しても別の過去を元に蘇る。
 それは猟書家であっても同じだから。
 フローライトは幾度となく、ミズ・ルチレイテッドと対峙していた。
 ちなみに、同じルチレイテッドの名を持つ2人ですが、特に関係性はないらしく。同じ苗字の人がいるのはそんなに珍しいことじゃないよね、といった状況のようです。
 まあ、フローライトが偶然の一致を気に留めて、追っかけよろしく何度も倒しにいっている、という一面では、関係性があるとも言えなくもないですが。それは兎も角。
 オブリビオンは骸の海へ戻る度に新たに生まれる。ゆえに、今ここにいるミズ・ルチレイテッドにとっては、フローライトは初対面の相手だけれども。
「ほう。他の私に会ったようだな。
 しかし、そう邪魔ばかりはさせぬ。
 キング・ブレインの世界征服実現のため、倒してみせよう!」
 オブリビオンとして自身の本質を知るミズ・ルチレイテッドは、フローライトの言動を受け止め、何度も蘇る悪の組織幹部らしく、返す。
 そしてフローライトを宝石のように輝く瞳で見据えると、意識を集中させて、透明化させたルチル弾を生み出し、四方へと放った。
 迫り来るクリスタライズド・バレットを素早く回避し、またオーラ防御で防ぎながら、フローライトはダブルネックギターをかき鳴らしつつ叫ぶ。
「イベント時期くらい大人しくしておいてください!
 いくらホワイトデーのお返しが貰えないからって、騒ぎを起こそうだなんて!」
「いえ、ですから違……」
 わざとそう決めつけるフローライトの言葉に、訂正しようと慌てるミズ・ルチレイテッド。必死すぎて演技を忘れたそこに、フローライトはスピーカーの音量を上げ。
「確かに、自分が貰えないものを他人が貰っているのは悲しいでしょう。
 でもだからといって、ホワイトデーを妨害していいはずがありません!」
「だから関係ないと……」
 さらに重ねた言葉で、爪弾くギターの音で、ミズ・ルチレイテッドの集中を乱し、次撃を放てないように妨害していく。
 ミズ・ルチレイテッドは、そんなフローライトの戦略に見事に嵌って、フローライトの思い違いを正すことにだけ意識を向け、攻撃が止まってしまっていたけれども。
「それに、もしかしたら。お姉さんが貰えないと思っているだけで、準備をしてくれている人がいるかもしれませんよ?」
「……え?」
 不意に優しく、穏やかに告げられた指摘に、はっと顔を上げるミズ・ルチレイテッド。
 別にホワイトデーなんて、と思っていても、その日に自分を思ってくれる相手がいる可能性を示されれば気にならないはずもなく。
「だからお姉さん。争いを求めないで。愛を忘れないで。
 いつだって、希望はあるのだから」
 ゆえに、手を差し伸べるようにして語りかけるフローライトに、いつしかミズ・ルチレイテッドは魅せられてしまい。
「いくよ、ホワイトデーライブ7曲目。『Precious pray~尊き祈り』!」
 さらにその意識を引きつけるように、転送される前のライブの続きとばかりに、フローライトは歌を紡ぎ始めた。

 争い続くこの世を嘆き悲しみ 人々は平和と愛を望み祈った
 教えて闇に浮かぶ希望はどんな色をしているの?
 いつか叶うといいと願った♪

 抱きしめた情熱を込めて。内からあふれ出す心のままに。
 分身たるバンドメンバー達と共に、フローライトは旋律を奏でていく。
 その美声で、ギターで、ベースで、ドラムで。
 そして何より、その愛と平和を希求する心で。
 ミズ・ルチレイテッドを魅了していく。
 もはや攻撃への集中どころか、攻撃そのものを忘れたような姿に。聞き入る曲が心を揺らし精神側から攻撃を加えていることにも、自身の周囲をガラスの迷宮が取り囲んでいくことにも気付かない様子に。フローライトは微笑んで。
 ライブの様子と一緒に、ミズ・ルチレイテッドの姿もそっと撮影しておいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシル・バーナード
こりゃまた雰囲気が変わったもんだなぁ。
『KKK+K』の人以外は全員いる? で、あっちの何か無理してるおねーさんが猟書家かぁ。一つお付き合いしたいくらいに素敵だね。キスしよって、「誘惑」「催眠術」をごく自然に。

さて、守りを固めようか。「範囲攻撃」の砂塵蹂躙を展開。ソリとミス・ビューティー、それから他の猟兵も、エアポケットを作ってまとめて防御する。
更にミズ・ルチレイテッドも砂塵の渦に巻き込んで、全身を削りにかかるよ。
その程度の火力じゃ、ぼくの防御は貫けないなぁ。
このまま削り殺そう。大人しく風化して朽ちるんだね。

早いところ元の場所へ戻らなきゃ。ホワイトデイのプレゼント、まだ揃ってなかったんだから。



 一変した景色を眺めたセシル・バーナード(f01207)は、艶やかに笑う。
「こりゃまた雰囲気が変わったもんだなぁ」
 宇宙船の内部へ一瞬にして招かれたかのような変化を面白がるように、ぐるりと周囲を見回して。確認は大事、とばかりにそこにいる人影を順に指差していく。
「テレビウムの子と、ごついヴァーチャルキャラクター。
 猟兵が1、2、3……8人、でいいのかな。
 ああ、『KKK+K』の人はもういなくなったんだね」
 軽い口調で呟いた通り、先ほど相手をしたオブリビオンの姿はなく。
 その代わりに現れていたのが、猟書家『ミズ・ルチレイテッド』だった。
「ふうん。あの何か無理してるおねーさんが猟書家かぁ」
 ライブに見惚れるようなその姿は、宝石のように美しく。真珠のように滑らかな白い肌も、異なる煌めきが混ざったような金色の髪も、そして真っ直ぐに曲を見つめて輝く緑の瞳も。全てが魅力的だったから。
「一つお付き合いしたいくらいに素敵だね。
 ねえ、おねーさん。キスしよ?」
 セシルは世間話のようにするりとミズ・ルチレイテッドを口説き、迫っていった。
「え? キス……ええ!? 突然何を言い出すのですか!」
 あまりの自然さに、ワンテンポ反応が遅れたけれども。
 すぐにミズ・ルチレイテッドはほんのり頬を染めてセシルから距離を取る。
 その姿は悪の組織の幹部ではなく、1人の初心な女性だったから。
「うん。可愛いね。
 このまま2人きりのホワイトデイを過ごそう?」
 追いかけるように距離を詰め、甘い言葉を耳元で囁き、誘惑していくけれども。
「……だっ、駄目ですっ! 私にはエメラルドお嬢様が!」
 必死に身を離したミズ・ルチレイテッドは、その掌からルチルの弾丸を生成した。
 針状の鉱物が閉じ込められた透明で美しい弾丸は、顔を反らして放ったからか、いつの間にか周囲に展開されていたガラスの迷宮のせいか、そのほとんどがセシルとは見当違いの方向へ向かっていた。
 でもそれはそれで他の猟兵達や、そして何よりテレビウムの子とごついバーチャルキャラクターへも飛んで行きかけたから。
「世界を閉ざす」
 笑みを浮かべたそのままで、セシルは呟くように唱える。
 その声に応じるように、セシルとミズ・ルチレイテッドの周囲の空間が、微細な粒子を含んで吹き荒れる砂鉄の暴嵐へと変化した。
 砂塵の渦はルチルの弾丸を巻き込み、飲み込んで。障壁のように仲間を守る。
「その程度じゃ、ぼくの防御は貫けないなぁ」
 移動力が半減するものの5倍となる装甲を誇る砂塵蹂躙に、セシルは微笑み。
「付き合ってくれないなら、おねーさんを倒して早いところ元の場所に戻らなきゃ」
 残念残念、と軽い口調で言いながら肩を竦めたセシルは。口説いていた時と同じ自然な様子で、攻撃へとその行動を変え。
 強固な障壁にミズ・ルチレイテッドを巻き込み、削りにかかった。
「ホワイトデイのプレゼント、まだ揃ってなかったんだから」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジード・フラミア
ジード「メリア!猟書家が来たよ!戦わないと。 ……メリア聞いてる?」

メリア『(ジードの話を聞かず)……フム、流石にプレゼント用の人形を爆発させたのは申し訳なかったデスカネ? 割りと、真面目に探していた見たいデスシ……ヨシ!代わりにルチレイテッドさんに渡しておきマスカ!ついでに彼女用のプレゼントも!』


【人形のおもちゃ箱】使用
前章でカインが投げ捨てていたプレゼントをキングブレイン型人形とプリンセスエメラルド型人形に変換します。

ジードは真面目にバラックスクラップで戦いますが、メリアは人形達を操り、ミズ・ルチレイテッドに送り付けます。とりあえずミズ・ルチレイテッド手に収まるように人形達は動きます。



「メリア! 猟書家が来たよ! 戦わないと」
 周囲の景色が一変したことよりも何よりも、ジード・フラミア(f09933)が慌てたのは猟書家『ミズ・ルチレイテッド』の登場そのものだったのだけれども。
 傍らに立つ金髪の少女の人形は落ち着いて、フム、と考え込む仕草を見せる。
『流石にプレゼント用の人形を爆発させたのは申し訳なかったデスカネ?
 割りと、真面目に探していたみたいデスシ……』
「……メリア聞いてる?」
 多重人格者であるジードの別人格が操る人形・メリアは、ジードの話を欠片も聞かず。見えないルチル弾を慌ててジードが回避したことも気にせず。再開したホワイトデーライブにも目をくれないまま。
 手にしたネックレスとリップクリームをまじまじと見つめていた。
 それは、『KKKK』2代目会長・カインがコンコンコンで手に入れ、だが目当ての者とは違ったのか、すぐさま放り出していたもの。
「……メリア?」
 何故それを拾ったのか。それを見つめて何を思っているのか。計りかねたジードは、おずおずとまたその名を呼びかけ。
 その目の前でいきなり顔を上げたメリアは、晴れやかな笑顔を見せた。
『ヨシ! 代わりにルチレイテッドさんに渡しておきマスカ!
 ついでに彼女用のプレゼントも!』
 そしていきなりユーベルコードを紡ぎ出す。
『サァ! 新しい人形達よ ワタシ達と遊びマショウ!』
 それは無機物を人形に変換し操作する、人形遣いとしてのメリアの能力。
 メリアが持っていたネックレスはキング・ブレインの、リップクリームはプリンセス・エメラルドの姿を象った人形へと変わっていき。
『ジード、行きマスヨ!』
「え? あ……うん」
 それまで落ち着いていたのが嘘のように、嬉々としてジードを引っ張っていく。
 もちろん向かう先は、砂塵の障壁を抜け出てきたミズ・ルチレイテッド。
 美しい宝石のような身体に無数の細かい傷をつけて、苦々しい表情を見せるミズ・ルチレイテッドは、だがすぐに迫り来るジードに気が付いて。迎え撃つために、透明なルチル弾を生み出そうと集中するけれども。
『ホワイトデーのプレゼント、デス!』
 ぽんっと無造作に投げ放たれた2体の人形は、メリアの気持ちと操作によって、ミズ・ルチレイテッドの胸へと飛び込んでいった。
 等身大ではないけれども、ぎゅっと抱きしめられる大きさのそれは。柔らかな素材ゆえの制限はあれど、出来得る限りに2人のオウガ・フォーミュラを再現していたから。
「こっ、これは、エメラルドお嬢様!
 そんな。エメラルドお嬢様が、私の腕の中にいらっしゃる……っ!」
 その出来栄えに心惹かれたミズ・ルチレイテッドは、受け止めた人形を抱きしめようとして、いやそんな恐れ多いと引き離し、でも可愛らしいと引き寄せ、無礼な真似は出来ないとまた離し……そんな葛藤を繰り返していく。
 ちなみに、もう1体のキング・ブレイン人形は何とかミズ・ルチレイテッドの手に持ってもらおうと、辺りをうろうろふよふよしています。
 うんうん、と満足そうにその様子を眺めて頷くメリアと。
 どうしたらいいのかと戸惑うジード。
「でも、猟書家だから……戦わないと、だよね?」
 それが正しいはずなのに不安が拭えぬまま。ジードはおずおずと、自分で組み合わせて作った奇怪なバラックスクラップを手にして。
 とりあえず攻撃しなきゃ、と投げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

神咲・七十
アドリブ・連携お任せ

貴女ってなんでこう・・・ポンコツというか、残念な感じが消えないのでしょうかね(お菓子もぐもぐ)
(まぁ、私も永久雇用(強制)がうまくいかないことが多いので人のこと言えないかもですが)

(UC『万花変生』を使用。ひとまず攻撃を防御するために蔓を大量に出して)

う~ん・・・人望的なのを見せれば雇用されてくれますかね?

(UCで呼び出した異形の海賊たちをさらに強化してルチレイテッドに突撃させます)

こんな感じに、永久雇用(強制)されてる方も結構いるのであなたも雇用されてみません?

(突撃させながら永久雇用(強制)の為に隷属させる植物を植え付けて人望とカリスマ性的なものを見せて隷属させようと)



 貝の形にふっくら膨らんだ可愛らしいマドレーヌを半分、口に入れれば。しっとりふんわり優しい甘さと、豊かなバターの香りが広がる。
 もぐもぐしてからもう半分も口にして。次のマドレーヌを手にしながら、神咲・七十(f21248)はどこかのんびりと、猟書家『ミズ・ルチレイテッド』を眺めていた。
「貴女ってなんでこう……ポンコツというか、残念な感じが消えないのでしょうかね」
 細かな傷で輝きを落とした宝石が、人形を手に喜んだり悩んだりする様子に、ついつい口元が緩んでしまう。
(「まぁ、私もうまくいかないことが多いので人のこと言えないかもですが」)
 マドレーヌを食べ終え、次はフィナンシェを手に取りながら、自嘲気味に思い。
 七十はその足元から大量の蔓を喚び出した。
 緑色ではあるけれども様々な色で、幅の広いものから長いものから丸いものからギザギザしたものから様々な形をした、多種多様な葉をつけた蔓。その多くは見たことがないもので、蔓であることは確かだけれども、未知の植物。
 七十を守るように茂る蔓は、相手に敗北の感情などを与えることで、相手を取り込み、隷属させ、召喚対象へと服従させることができるユーベルコード。
 しかし、なかなかその『永久雇用』は上手くいかないから。
「う~ん……人望的なのを見せれば雇用されてくれますかね?」
 考えた七十は、蔓をミズ・ルチレイテッドへ向かわせる前に、蔓で隠れてしまわない場所に、以前隷属させた異形を召喚した。
 人間のようなシルエットだが鱗を持ち、太い尾を揺らす爬虫類のような異形は、その身体から植物を生やし、さらなる異形の姿となっていて。
 七十に傅くように、命令を待つように、軽く一礼した姿で待つ。
「こんな感じに、永久雇用されてる方も結構いるので、あなたも雇用されてみません?」
 そんな様子をフィナンシェを持ったままの手で指し示しつつ、誘うように問いかけてみるけれども。ミズ・ルチレイテッドは、手にした緑色の人形を護るように抱きかかえ。
「私はエメラルドお嬢様に仕える身。
 あなたのような者に雇われる謂れはありません」
 迷いなく、答える。
 そこに奇怪なバラックスクラップが飛んできて。慌てて避けるミズ・ルチレイテッドを目で追いながら、七十はフィナンシェを食べて。
「駄目ですか?」
 ひょいと肩を竦めた動きに、異形達が一斉にミズ・ルチレイテッドへ突撃した。
 海賊を思わせる剣を振るう中で、異形に生えた植物が蔓となり、また七十の足元の蔓も伸びて、ミズ・ルチレイテッドを捕えようと向かう。
 しかし、見えないルチルの弾丸が迫り来る蔓を撃ち抜き。
 隷属の効果を退けていくから。
「う~ん……カリスマ制的なものも見せられれば良かったのでしょうか。
 やっぱり、うまくいかないことが多いですね」
 七十は抱えた袋へ、コンコンコンで集めたお菓子を求めて手を入れて。
 今度はクリームが挟まったサンドクッキーを、口に運んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
ミズ
皆のハッピーな時間に無粋な奴だな
ビューティの指摘が当たらずとも遠からずか?
贈り贈られる相手がいないから
無意識にこの日を狙ったとか
可哀そうに
今、海へ還してやる

ソリ&ビューティ
隅に隠れててくれ

戦闘
見えなくても存在してんなら…

自分を囲む炎壁を生む
炎壁に穴が空いたり
照らす炎が影を生む
なら防ぐのは簡単だ

で炎で俺の姿を視認できないから
追撃は来ない筈
一気に行くぜ

炎矢と化して炎壁を突き抜けて
瞬時に間合い詰め
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払いクリスタルを砕き溶かす

集中する暇なんて与えるもんか
もし弾を喰らっても身から噴き出す獄炎で
更にダメージ

事後
鎮魂曲
安らかに

ソリ>
自分の想いを伝えるのは相手の為だぜ
勇気を、な(ぐっ



「隅に隠れててくれな」
 ホワイトデーライブを楽しんでいたソリとミス・ビューティーに、戦いが本格化してくる気配を感じた木霊・ウタ(f03893)はそう声をかけた。
「あら~。めったに見れないショーなのだけど……仕方ないわね~」
 残念そうに言いながらもビューティーはしぶしぶ従ってくれて。
 それでも、操作する撮影機材はしっかりと猟兵達を捉え続けていた。恐らく『ホワイトデーを守る戦い! ミス・ビューティーは見た!』とか何とか編集して、後日動画をUPするのだろう。
「離れても、応援してるわよ~」
 投げキッスを送りながら、下がっていくビューティーに、ソリも続こうと踵を返し。
「ソリ」
 その背に呼びかけられて、足を止め振り返ると。
「自分の想いを伝えるのは相手の為だぜ」
 にっと笑いかけたウタが、ぐっと手を握り締めて見せる。
「勇気を、な」
「……はいっ」
 贈られたエールに、ソリは、ライブの最中の言葉も思い出し。しっかりと頷き返してから、ぱたぱたとビューティーを追って、隅の方に退避していった。
 それを見送ってから、ウタは改めて、猟書家『ミズ・ルチレイテッド』に向き直る。
 砂塵の障壁を越え、傷ついた宝石は、異形に、蔓に、追われながらも、ルチル弾を周囲にばらまいていた。
「皆のハッピーな時間に無粋な奴だな」
(「ビューティの指摘が当たらずとも遠からずか?」)
 その姿はやはり、ホワイトデーを楽しんでいる者を妨害しているように見えたし。
 贈られた緑色の人形を、どこか嬉しそうに抱えていたから。
 誰からも何も贈られないと思って拗ねて。
 贈り贈られる相手がいる者を嫉んで。
 無意識にこの日を狙った、と思えてしまったから。
 ウタは、刃に焔摩天の梵字が刻まれた巨大剣をミズ・ルチレイテッドへ向け、呟いた。
「可哀そうに」
「あっ、何だか今、憐れまれた気がしました。
 何度も言っていますが、私の行動にホワイトデーなんて関係ありません!」
 皆に散々言われたからか、敏感になっていたらしいミズ・ルチレイテッドが、即座にウタへ振り返り。否定の言葉と共に、見えないルチル弾を撃ち放つ。
 その弾は、内部の針状の鉱物をも透明化し、視認できないままウタに迫るけれど。
(「見えなくても存在してんなら……」)
 ウタは自分を囲むように炎壁を生み出した。
 すると、炎壁に幾つも穴が開いて。照らす炎が、その穴からウタへと向かうものの影を生み出して。見えない弾の軌跡をウタへ伝える。
「一気に行くぜ」
 ウタは地獄の炎を剣に纏わせ、薙ぎ払う動きでルチル弾を砕き溶かすと。
 そのまま紅蓮の炎を広げ、全身を覆いながら、炎壁から飛び出す炎矢のように、ミズ・ルチレイテッドとの間合いを詰める。
「焔摩天、転生!」
 刃を紅蓮に輝かせ、巨大剣『焔摩天』をさらに大振りな『大焔摩天』へと進化させて威力を上げ。走るというより飛ぶように、驚愕の表情へと迫ったウタは。
「今、海へ還してやる」
 穏やかに告げながら、抱えられた人形ごとミズ・ルチレイテッドを斬り伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

ソリやビューティ達のやりとりをじっと聞いて
…ん、わかった
ルチレイテッドはホワイトデーのお返し待ち中
ふふ、隠さなくてもいい
誰しもお返しをもらえたら嬉しいもの


そういえば、バレンタインデーにも猟書家の方々には色々頂いた、主に物理を
お返ししなきゃ、物理で

【どれすあっぷ・CBA】
お返しするからにはしっかりドレスアップでメイドさんに変身
ふふ、見惚れる余裕は与えない
うさみん☆、ルチレイテッドの集中を途切れさせるようにジャンプ、キック、目潰し…くすぐりも有効?ルチル弾不発を狙って

受け取って、わたしのお返し
近接して熱いパンチをお見舞する

あ、まつりん
わたしはお肉がいい…>お返し


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。

そっかー、チョコのお返しがほしかったんだ?
わかった。姉ちゃんの分、おいらが出したげる!(コンコンしてみる)
あれ?
あ、ココ、キマフューじゃないんだ? ←いまさら

姉ちゃん、猟書家さん?
じゃあ、ブレブレさんの怪人大全集に載ってたりする?(わくわく)

なあんだ。(がっかり)
じゃあ倒してもいっかな。
白い狼人、木元祭莉。参る!(びしぃ)

行け、メカたまこ!
あれ、姉ちゃん避けるの上手いね?

じゃあ。(きゅぴん)
行けたまこー、船の食料庫を攻撃だ!(コケー!)

ふふふー、船長さんは船を大事にするよね?
気を逸らしたところへ、踏み込んで正拳いっぱつ!

アンちゃん、お肉はなかったみたいだよー♪



 ライブが、砂塵が、炎が。宇宙船の内部のような部屋の中で巻き起こり。
 その合間に幾つもの会話が交わされていく。
 それらを見て、聞いていた木元・杏(f16565)は。
 状況を正しく把握すると、しっかり頷いて見せた。
「……ん、わかった。
 ルチレイテッドはホワイトデーのお返し待ち中」
「そっかー、チョコのお返しがほしかったんだ?」
 木元・祭莉(f16554)も納得したように、晴れやかなお日様笑顔を見せる。
「いえ、ですから。何度も言っている通り、私の行動にホワイトデーは……」
 炎壁にルチル弾を放ちながらも、耳ざとく双子の声を捉えた猟書家『ミズ・ルチレイテッド』は、律儀に否定の言葉を向けるけれども。
「ふふ、隠さなくてもいい。誰しもお返しをもらえたら嬉しいもの」
 杏は酷く優しい眼差しでミズ・ルチレイテッドに微笑み返し。
「わかった。姉ちゃんの分、おいらが出したげる!」
 祭莉が、任せて! と手近な壁をコンコンと叩いた。
 けれどもここは、ミズ・ルチレイテッドの言葉通りであるならば、『宇宙船団ルチレイテッド』の漿船内部。
 叩いても何も出さない壁に、あれ? と祭莉は首を傾げ。
「あ、ココ、キマフューじゃないんだ?」
 今更ながらそれに……悪の組織の本拠地に、捕らわれたかのように転送させられていたことに気付く。
 おおー、と感心する祭莉に、ミズ・ルチレイテッドは、今の自分が悪の組織の首領であったことを思い出すと。コホン、と仕切り直そうとして。
「その通り。もはやお前達に逃げ場はない。
 われらの世界征服のために、そこのバーチャルキャラクターを捧げ……」
「あーっ。ブレブレさん人形だ!」
 あっさりと祭莉にぶった切られた。
 ミズ・ルチレイテッドが抱える緑色の人形とは別に、その手に持ってもらおうとしつこく周囲を漂っていたもう1体の人形へ、祭莉は銀の瞳をキラキラと輝かせ。
「姉ちゃん、猟書家さん?」
「え、ええ」
「じゃあ、ブレブレさんの怪人大全集に載ってたりする?」
 わくわく期待に満ちた顔を、ミズ・ルチレイテッドはどこか申し訳なさそうに見る。
「いえ、私は怪人ではないので……恐らくは載っていないのではと……」
「なあんだ」
 返答に、祭莉はあからさまにがっかりした。
 その落胆っぷりに、ミズ・ルチレイテッドは酷く罪悪感を感じてしまい、戸惑うようにその宝石のように澄んだ瞳を彷徨わせるけれども。
「じゃあ倒してもいっかな」
 ぱっと顔を上げた祭莉は、すぱっと気分を変えていて。
「白い狼人、木元祭莉。参る!」
 あっさり立ち直ると白炎を纏い、ミズ・ルチレイテッドをびしぃっ! と指差した。
「守護神降臨! 行け、メカたまこ!」
 そして召喚される、戦闘用ニワトリ型ロボの群れ。
 それは杏が捕まえてきた野生の雌鶏をモデルにしたもので。世界一と思われる凶暴性もしっかりと再現されていたから。相手が自身より格段に大きな人間の姿をしていても、臆することなく襲い掛かっていく。
 百近いニワトリロボの、白い津波のような攻撃に、戸惑いながらもミズ・ルチレイテッドはひらりと回避を見せ。
「あれ、姉ちゃん避けるの上手いね?」
 こちらはニワトリロボの1体に突かれながら、驚く祭莉。
 杏も、本物の雌鶏がいる木元村ではよく見る光景を眺めながら。
「そういえば、バレンタインデーにも猟書家の方々には色々頂いた。主に物理を」
 ふと、思い出す。
「お返ししなきゃ、物理で」
 そしてユーベルコードを発動すると、桜の花びらを舞い散らせながら、くーるびゅーてぃー(当社比)な姿にどれすあっぷした。
 花のように美しいドレス姿へ変わった杏は、頑張ってキリッとした表情とポーズを作るけれども。その頑張りは、美しいよりも可愛いらしいもので。
 目指した方向と違うのに気付かないまま、どちらにしろ目を惹く姿で、くるりと踊るように回って魅せた杏は。
「ふふ、見惚れる余裕は与えない。
 ね、うさみん☆」
 うさ耳付きメイドさん人形の糸を繰り、ミズ・ルチレイテッドへ向かわせた。
 愛らしい見た目とは裏腹に、肉弾戦用に作られている人形は。
 新たなルチル弾を生成する隙を与えないように、次々と技を繰り出していく。
 ジャンプして。キックして。パンチして。目潰しを狙って。くすぐりもして。
 多様な攻撃に、だがしっかりと対応していくミズ・ルチレイテッド。
 その冷静な対応を見ていた祭莉は。
 きゅぴん! と何かに閃いて。
「それなら……行け、たまこー! 船の食料庫を攻撃だ!」
 祭莉の指示に、コケー! と威勢のいい鳴き声が響くと、白いロボ達が宇宙船の中に散っていく。
「なっ……!?」
「ふふふー、船長さんは船を大事にするよね?」
 気になるよね? と祭莉が狙った通り、ミズ・ルチレイテッドの気が逸れて。
「あ、まつりん。わたしはお肉がいい……」
 食糧庫と聞いた杏の気も逸れました。
「分かったー。
 でも、その前に」
 そんな妹ににぱっと笑った祭莉は、誘うような視線を杏に向けたまま、ミズ・ルチレイテッドへと踏み込んで。
「正拳いっぱつ!」
「受け取って、わたしのお返し」
 併せた杏と共に接近すると、熱いパンチを繰り出す。
 さらにそこに、炎を纏った剣士の一撃が追撃して。
「エメラルド……お嬢さ……」
 2体の人形と共に、ミズ・ルチレイテッドは、炎の中へと消えていった。
 そして猟書家が消えた空間は。
 来た時と同じようにぐにゃりと景色を歪ませると。
 元のキマイラフューチャーの街へと戻ってくる。
 さっと辺りを見回して、それを確認した杏は。
 ニワトリ型ロボを呼び戻していた祭莉へふわりと微笑んで。
「アンちゃん、お肉はなかったみたいだよー♪」
 にぱっと返ってきた答えに、がくっと崩れ落ちた。
「お肉……」
 心の底から残念そうに、声を絞り出す杏。
 しかし、そこへ。
「あ、あのっ」
 たたたっ、と駆け寄ったソリが声をかけた。
「これ……」
 おずおずと差し出されたのは、先ほどソリがコンコンして手に入れたキャンディ。
 ホワイトデーのお返しとして、出てきたもの。
「あー。いいなーいいなー。アンちゃんだけいいなー」
「ええと、これどうぞ」
「やったー! ありがとソリー!」
 ねだる祭莉にも同じものが贈られて。ソリはそのまま他の猟兵達へも向かう。
 いつもアヒルのガジェットと一緒にいる大きな帽子の少女にも。
 素敵なライブを見せてくれたギタリストにも。
 ドキッとするほど魅力的な幼い妖狐にも。
 近づくまで人形と気付かなかった女の子と仲良しの男の子にも。
 一緒にお菓子を探した赤い瞳が印象的な甘党の少女にも。
 いつも力強い言葉で背中を押してくれる黒髪の剣士にも。
 それぞれの手に、それぞれのキャンディが転がる。
 杏も、受け取ったキャンディを見下ろして、ふわりと微笑んだ。
「ありがとう、ソリ」
「い、いえ……いつも助けてもらってるのは、僕の方、だから」
(「ちゃんと伝えることは伝えなきゃ。相手の為にも」)
「ありがとう」
「ふふ。どういたしまして、ソリ」
 ソリの決意を感じたのか、杏はそう返してくれたから。
 照れながらも、ソリは伝えられたことに達成感を感じて、安堵の笑みを浮かべる。
「それで~? ソリちゃんの本命のお返しは~?」
「え……」
 そこに、ずいっと迫ってきたのはミス・ビューティー。
「キャンディは今配ってなくなっちゃったから、またプレゼント探さないとね~?
 その間に、あれもこれも話してもらわなくっちゃあ~♪」
 有無を言わさぬ勢いで、逃がさないと言うかのように、その力強い腕で、がしっとソリを捕まえたミス・ビューティーは。
 にーっこりと、酷く愉し気な笑みを浮かべた。
「話すまで帰さないわよ~」
「ええええ!?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月16日
宿敵 『ミズ・ルチレイテッド』 を撃破!


挿絵イラスト