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「ついにグリードオーシャンの戦いにも終わりが見えてきたようじゃな」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は海図での戦果を確認しながら、そう猟兵達の顔を見回した。戦争の勝利はもちろん、完全勝利も不可能ではないはずだ――ガングランは、改めて状況を説明した。
「今回、おぬしらに頼みたいのは七大海嘯『五の王笏』カルロス・グリードへの対処じゃ」
確実に戦争に勝利する、そのために――ガングランはそう厳しい表情で告げると、言葉を続けた。
「この五の王笏が使うのはアックス&ウィザーズの力じゃ、忌々しい事にな」
五の王笏はベルセルクドラゴンの鎧を着用し、高速思考及び超戦闘力攻撃を仕掛けて来る。それに加えて、大量の白骨化した古竜(スケルトン・エルダー・ドラゴン)が存在し、カルロスの命令に応じて攻撃を行なうという。ブレスなどの攻撃は行なわず、体は脆いもののそこは竜の攻撃力だ。五の王笏であるカルロスに対応しながら、スケルトン・エルダー・ドラゴンにも対応する必要があるのは、厳しい戦況だ。
「現在の五の王笏のカルロスは……そうじゃな、人の姿をしたドラゴン。そう思って対処する必要があるじゃろう」
鎧から放射される凶暴化ブレスや高速機動の一撃、狂える竜のオーラなどかなり凶悪なドラゴンの能力を持っている。これと相対して撃破するのは、かなり骨が折れる――スケルトンのドラゴンを相手にしなければならないので、冗談にもならないが。
「これに勝利できれば、迷宮がそのままやってきたアックス&ウィザーズ島が開放されるじゃろう。もうひと踏ん張りじゃ、よろしく頼むぞ!」
波多野志郎
ラストスパートです! どうも、波多野志郎です。
今回は五の王笏、アックス&ウィザーズの力を誇るカルロス・グリードと戦っていただきます。
プレイングボーナスは「敵の先制攻撃ユーベルコードに対処し、同時に「白骨化した古竜」にも対応する」となります。強敵との戦闘に合わせ、いかに邪魔な集団を対処できるかが鍵です。ぜひ、ふるってご参加ください。
※最後に
戦争シナリオの終結に関係ございます。【25日夜までに来たプレイングでマスタリングをしよう】と考えております。
最後に戦争に参加していこう、強敵と戦っておきたい、まだだ、おかわりだ! という方。ぜひ、最後までご参加いただければ幸いです!
第1章 ボス戦
『七大海嘯『五の王笏』カルロス・グリード』
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POW : アリエント・ドラゴーン
【鎧から放射される凶暴化ブレス】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD : エスパーダ・ドラゴーン
【鎧の身体強化】による素早い一撃を放つ。また、【肉体をドラゴン化する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : イーラ・ドラゴーン
【自身または竜に対する敵意】を向けた対象に、【負傷の分だけ威力を増す狂える竜のオーラ】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:hoi
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
メル・メドレイサ
SPD
絡み、アドリブ歓迎
最後までカルロスたっぷりですね
先制に対しては機関銃を【制圧射撃】【乱れ撃ち】することで相手の突っ込んでくる軌道を抑え、無駄に回り込みする必要を作ります
その上で【武器受け】【盾受け】【ジャストガード】で致命の一撃を防ぎましょう
古竜も流石にカルロスさんより早くは攻撃してこないでしょうし、先制を防いだ一瞬で【指定UC】発動
生み出すのは、『重力属性のハンマー』!
これを振り回して回転攻撃し【範囲攻撃】
脆くてでかい骨の皆さんを衝撃と重力で潰して壊します
さらにカルロスさんを重力の中に捕らえ「身軽になる」ことを阻止
こちらも鈍くなりますが機関銃の【零距離射撃】なら当たるでしょう!
菫宮・理緒
白骨化したドラゴン……ドラゴンスケルトンってやつかな?
さすがは元A&W、なかなかにファンタジーしてるね。
ならこちらも最後くらいは相応でお相手したいかな。
白骨竜戦では【風竜のバゼラード】は【受け流し】と【武器受け】で防御に使うね。
攻撃は【風竜の鏡盾】で【鎧砕き】を乗せた【シールドバッシュ】で白骨竜の骨を砕いて潰していくよ。
カルロスさんには、一転して、
風を纏わせた盾で攻撃を逸らしつつ、バゼラードで真空波を飛ばして攻撃。
一撃の威力はあまりないかもだけど、急所を狙って攻撃していきたいと思うよ。
相手の先制攻撃には、
【第六感】と【野生の勘】をフル動員。
直感したがって【見切り】って躱していきたいな。
黒川・闇慈
「……なんと申しますか、非常にダサ……いえ、素材の味が出ている鎧ですねえ。クックック」
【行動】
wizで対抗です。
先制攻撃への対処として、ホワイトカーテン、ブラックシェードの防御魔術を起動し、オーラ防御、激痛耐性の技能で耐えましょう。
また、相手は敵意に反応するようですが……敵意だなんてとんでもない。私にあるのは興味だけですよ。どれだけの強度を持つのか、どれだけ攻撃すれば無力化できるのか……そんな興味です。これを覚悟の技能で心に刻んでおきましょう。
高速詠唱、全力魔法、範囲攻撃の技能を用いてUCを使用。古竜達もカルロスも、全てをまとめて切り刻んで差し上げますよ。
【アドリブ歓迎】
クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可
この戦いも残りわずか。竜が相手であっても、臆する事なく、一つずつ戦力を削っていきましょう
先制攻撃の時点なら、敵の攻撃威力は上がっていない筈
真正面から闇の『オーラ防御』で竜のオーラを防ぎ、防げない分は『激痛耐性』で耐える
『ダッシュ』で骨ドラゴンへ接近。『ジャンプ』で踏みつけ砕き、その反動で再度の調薬を繰り返しつつ、ドラゴンを乗り越えてカルロスへと接近しつつUCを発動
更にピックを勢いよく『投擲』。『貫通攻撃』で鎧に傷を付け、その場所を狙った攻撃で『鎧無視攻撃』『鎧砕き』で鎧を壊しつつダメージを与える
敵の攻撃に対してはUCの効果で敵オーラを弱体化させつつ此方のオーラで受ける
ルフトフェール・ルミナ
人の姿をしたドラゴンのような存在。アックス&ウィザーズの力がこんなところで……ガングランさんが言う通り、これは業腹だよ。
島の解放のためにも、ここは戦いに出て戦況を変えたいよね。
先制攻撃は……白骨竜の身体にフック付きワイヤーを引っ掛けて引き寄せるか、僕自身が竜に隠れるかして、盾にできないだろうか(敵を盾にする)。
そして、魔術『大いなる冬』で動きをとめるよう試みるよ。止めてる間、誰かが攻撃してくれるなら良し。
僕自身は、属性攻撃を仕掛けたいけれど……骨竜には大地から生える棘、カルロスには切り裂く風で攻撃してみる。
防御は、星海の手袋から生成した魔法結界盾による盾受け、カウンターで対処できたらいいな。
ヴィクティム・ウィンターミュート
テメェのコスプレ大会も、そろそろ終幕が近いんじゃあねえか?
遺言状の一つでも書いておくといいぜ
それくらいの時間は与えてやらぁ──おっと、いらない?
あらそう、じゃあ死んでおいてくれ
ベルセルクドラゴンの特性上、最初から全力全開だろう
即ち、竜化という予備動作が加わる…その隙に、こちらも仕込む
どれだけ素早かろうが、その動作の一つでこっちの後出しが間に合うのさ
後はそう、鼻先の死と恋人になるだけ
さぁ、殺しに来いよ──ウィズワーム!
ありがとう、これで俺の手は完成した
『Dainslaif』
そこらの古龍ごと、この刃で薙ぎ払ってやるよ
テメェが丹精込めて作り上げた刃の味だ…心行くまで堪能していけ
天にも昇る気持ちだろ?
ヘスティア・イクテュス
五の王笏…ベルセルクドラゴン…
あの戦争は色々で参加してなかったのよね…
どれ位強かったのかは知らないけど…相手は王笏、油断せずに行きましょうか!
スモークミサイルで『目潰し』狙われるのを防ぎつつ、
混ぜてマイクロミサイルの『一斉発射』!【範囲攻撃】周囲の古竜達を吹き飛ばしたら
煙に紛れて光学『迷彩』、姿を消しつつティターニアで空へ【空中戦】
影で煙の中いるように見せかけるためにダミーバルーンを置いて…【フェイント】
不意打ってレッドキャップの上空からの『爆撃』!
竜のブレスより凶悪な一撃をぶつけてあげる!
ヴィクトル・サリヴァン
厄介なカルロスだねえ。
帝竜の力の鎧どこから引っ張ってきたのか知らないけど。そんなのまで持ってるとはまさしくコンキスタドールの王、だね。
高速詠唱で風の魔法使い向かってくるカルロスに突風をぶつけつつ念動力で俺自身の体をカルロスと反対側に反発させるようにし攻撃回避。
更に結界術とオーラ防御で俺の体覆う程度の大きさのバリア張って突破された場合でもダメージ軽減狙う。
白骨の竜達は可能ならカルロスの攻撃から逃れるために位置取り注意しつつ壁にしよう。
こっちのUC使えるようになったら空シャチ召喚。
バラバラのタイミングで襲わせて注意力乱し、できた隙に氷属性纏わせた銛の全力投擲ぶち当ててやろう。
※アドリブ絡み等お任せ
兎乃・零時
アドリブ歓迎
ついに終わりなのか…
あの世界の力…ってなるとなかなか大変だ
だからこそ!此処で負けるつもりはねぇって事だ!
よぉしそっちがその気ならこっちは全力でテメェの攻撃を回避したる!
UC! グリッター
物体変質〖輝光〗!
射程を半分
移動力を五倍
指定属性は光そのもの!
その攻撃の一切に触れずぶちかましてやるよ!
仮にダメージ受けたって知ったこっちゃねぇ!
光になって空中浮遊×空中戦
凶暴になても御してやんよ!
そんで攻撃をかわしつつ最大火力をお前にぶつける!
―――遍く光を此処に集い、内に響くは光の音!
奏で響かせ鳴りやまぬ!此れが光の大合唱!
全力魔法×光属性攻撃×衝撃波×零距離射撃
輝響《グリット=コール》ッ!
●狂戦士竜を纏う者
五の王笏島へ踏み込んだ猟兵達を出迎えたのは一人の男であった。
「我が島に来たか、猟兵」
「……なんと申しますか、非常にダサ……いえ、素材の味が出ている鎧ですねえ。クックック」
そう喉を鳴らしたのは、黒川・闇慈(魔術の探求者・f00672)だ。宿る世界の力によって姿を変えるカルロス・グリードのアックス&ウィザーズによる姿は、ベルセルクドラゴンの力を宿す鎧だった。
「厄介なカルロスだねえ。帝竜の力の鎧どこから引っ張ってきたのか知らないけど。そんなのまで持ってるとはまさしくコンキスタドールの王、だね」
「五の王笏……ベルセルクドラゴン……あの戦争は色々で参加してなかったのよね……」
ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)の言葉に、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は、思わぬ見える事の無かった敵との変則的な出会いに思いを巡らせる。ルフトフェール・ルミナ(空を駆ける風・f08308)も、しみじみとこぼした。
「人の姿をしたドラゴンのような存在。アックス&ウィザーズの力がこんなところで……ガングランさんが言う通り、これは業腹だよ。島の解放のためにも、ここは戦いに出て戦況を変えたいよね」
出会う事の無かった相手とも世界や立ち位置を変えて相まみえる――あるいは、これこそが世界を渡る猟兵の醍醐味なのかもしれない。
だが、敵として出会ったのならすべき事は一つだ。ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は、まっすぐにカルロスを見て告げる。
「テメェのコスプレ大会も、そろそろ終幕が近いんじゃあねえか? 遺言状の一つでも書いておくといいぜ。それくらいの時間は与えてやらぁ──」
カルロスは無言で、右手を軽く上げる。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……と地響きと共に、地を割って現れたのはスケルトン・エルダー・ドラゴンの群れだ。ヴィクティムは軽く肩をすくめ、笑みと共に返した。
「おっと、いらない? あらそう、じゃあ死んでおいてくれ」
「――それが遺言か?」
オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――! とスケルトン・エルダー・ドラゴン達の咆哮が、大気を軋ませる。それを見て、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は言ってのけた。
「白骨化したドラゴン……ドラゴンスケルトンってやつかな? さすがは元A&W、なかなかにファンタジーしてるね」
カルロスが、身構える。ギシリ、と狂戦士竜の鎧が軋みを上げる――それはまさに、身を沈め飛びかからんばかりに力を貯める竜を思わせた。
「ならこちらも最後くらいは相応でお相手したいかな」
「最後までカルロスたっぷりですね」
理緒の言葉に、メル・メドレイサ(蕩けるウサメイド・f25476)がクスリと冗談めかして笑みをこぼす。
「ついに終わりなのか……あの世界の力……ってなるとなかなか大変だ。だからこそ!此処で負けるつもりはねぇって事だ!」
羅針盤戦争最終局面、兎乃・零時(其は断崖を駆けあがるもの・f00283)の宣言と共に、この五の王笏島における戦いの幕が上がった。
●竜の軍勢と共に
スケルトン・エルダー・ドラゴンの群れが、一気に動き出した。その白骨の巨躯は脆く生前のそれに遠く及ばずとも攻撃能力だけは変わらぬままだ。
「この戦いも残りわずか。竜が相手であっても、臆する事なく、一つずつ戦力を削っていきましょう」
クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は跳躍、そのまま噛み付いてきたドラゴンの頭蓋骨を踏み砕く。ガゴン! と盛大な破砕音を立てて砕けたスケルトン・エルダー・ドラゴンの破片――その中を、一気に駆け抜けたカルロスがクロスに迫った。
「――ッ!」
ただ、無造作に繰り出した前蹴り。それだけで竜の膂力を得たカルロスの一撃が、クロスを吹き飛ばした。間一髪、クロスはガードにオーラを集中させたからこそ、地面を靴底で削りながら静止するのに成功できた。
(「まともに喰らえば、一撃で行動不能もありえる威力ですね」)
人のサイズに圧縮された竜の一撃は、貫通力が違った。クロスは慎重に、カルロスとの間合いを測る。
「まずは気勢を削ぎましょうか」
メルが機関銃を構え、ガガガガガガガガガガガガガガガガガガ! と弾丸をばら撒くように一斉掃射した。銃弾はスケルトン・エルダー・ドラゴン達を容易く砕くが、すぐに次の群れが牙を剥く。
「数が多いと厄介だねぇっと!」
ルフトフェールがフック付きワイヤーを投擲、一体のスケルトン・エルダー・ドラゴンの骨に巻きつけると、そのまま上へ跳んだ。骨の竜達の死角、頭上へ――そして、時空の裂け目を生み出した。
「我、己が体熱を代償に、異なる時、異なる地への途を開かん。三度の冬を経し世の吹雪、この世に阻めるものはなし」
ルフトフェールの魔術『大いなる冬』(ダレカ・アタタメテクダサイ)による異界の吹雪、それにカルロスが反応する。
「させるとでも?」
アリエント・ドラゴーンのブレスが、ルフトフェールの吹雪と激突。黒と白が互いを巻き込み、喰らい合ったように対消滅した。
「いえ、助かりました」
その間隙に、理緒は風竜の鏡盾を構え、突き出す! 風竜の加護を受けた小盾は風をまとい、その風圧で迫るスケルトン・エルダー・ドラゴン達を粉砕した。
「やってくれる――ならば!」
カルロスが、地面を蹴る。その直後、地面が震撼し大地を砕きながらスケルトン・エルダー・ドラゴン達が下から猟兵達へ襲いかかった。真っ向からでは対応される、そう読んでの奇襲だ。
「風の障壁よ!」
その地中からの奇襲を、風による圧力で仲間達を守ったのはヴィクトルだ。スケルトン・エルダー・ドラゴン達の動きが止まる、その刹那――。
「どれ位強かったのかは知らないけど……相手は王笏、油断せずに行きましょうか!」
即座にヘスティアのスモークミサイルと、それに混ぜたマイクロミサイルの一斉掃射の爆発が白骨の竜の群れを砕いていった。
「が、あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああ!!」
カルロスの喉から、人のそれとは違う咆哮が上がる。それを見て、ヴィクティムが身構えた。
(「ベルセルクドラゴンの特性上、最初から全力全開だろう。即ち、竜化という予備動作が加わる……その隙に、こちらも仕込む」)
カルロスの姿が、人竜形態へと変わっていく一瞬の隙に、ヴィクティムは覚悟を完了する。
「後はそう、鼻先の死と恋人になるだけ。さぁ、殺しに来いよ──ウィズワーム!」
――眼前のカルロスから、イーラ・ドラゴーンのオーラが放たれた。それを闇慈は、魔力を込めた白いカード――ホワイトカーテンをバババババババババババババババババ! と周囲へ展開、魔法障壁で受け止めた。
「……敵意だなんてとんでもない。私にあるのは興味だけですよ。どれだけの強度を持つのか、どれだけ攻撃すれば無力化できるのか……そんな興味です」
うずく殺意をそんな好奇心で押し殺し、闇慈が笑う。地面を砕いて動く人竜形態のカルロス、それを零時が迎え撃った。
「よぉし、そっちがその気ならこっちは全力でテメェの攻撃を回避したる!」
物体変質(マテリアルモデュヘケイション)によって自らを光へ変えた零時が、カルロスの拳の一撃を透過――そのすり抜けた威力は大地を削り、岩石を破砕する!
「ア、ギ、ル、ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
もはや、人形サイズの竜そのものとなったカルロスが、その狂戦士の力を振るって猟兵達へ襲いかかった。
●狂戦士竜の終末は――
一撃一撃、それが必殺。人竜となりベルセルクドラゴンの力を振るうカルロスは、もはや人サイズの災害そのものであった。
まだこのカルロスだけならば、対応は可能であったかもしれない――しかし、その狂気が伝染したように襲い来るスケルトン・エルダー・ドラゴンの群れが状況を容易くしてくれないのだ。目隠しで綱渡りをしているようなものだ、一歩踏み外せば死に真っ逆さま。正しく、生死の境界線に猟兵達は立たされていた。
だが、猟兵達は躊躇わない――迷えば死ぬ、それを知っているからだ。
「凶暴になっても御してやんよ!」
カルロスの竜による薙ぎ払いのような蹴りを光で透過し、零時は拳を繰り出す。狂戦士竜の鎧、その胸部に拳が届いた瞬間――。
「―――遍く光を此処に集い、内に響くは光の音! 奏で響かせ鳴りやまぬ! 此れが光の大合唱!」
全力魔法×光属性攻撃×衝撃波×零距離射撃――零時の、現在出来る渾身を持ってして放たれる、零距離大破壊魔法!
「輝響《グリット=コール》ッ!」
「アギィル、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
零時の光魔法とカルロスのアリエント・ドラゴーンが激突した。ブレスの一撃は、容易く光に飲まれかき消える――カルロスの体が、地面へと叩きつけられ五の王笏島を揺るがした。
「ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
カルロスを守るように、スケルトン・エルダー・ドラゴンの群れが集結する。牙を、爪を、尾を――襲い来る古竜の攻撃群をメルが迎え撃った。
「メルの魔法は何にでもなります❤」
メルのマジカルタクティカルウェポンによって生み出されたのは、重力属性のハンマーだ。メルはそのハンマーを構えて横回転、ヴォン! と重力による圧壊でスケルトン・エルダー・ドラゴンの群れを打ち砕いた。
「ガ、アアアアア――ッ」
自らにもかかる重力の一撃を竜の膂力で引きちぎったカルロス、その一瞬で死角へ忍び寄ったのはヴィクティムだ。
「ありがとう、これで俺の手は完成した――『Dainslaif』」
ヴィクティムの腕に生み出されたのは、Reuse Program『Dainslaif』(ゼンザハサッサトヒッコンデロ)による血の刃だ。カルロスは、竜の速度で振り返る――出現したスケルトン・エルダー・ドラゴンの群れも、それを阻もうと襲い来る!
「咲き誇れ致死の花。血風に踊れ銀の花。全てを刻む滅びの宴をここに。シルヴァリー・デシメーション」
そこへ、闇慈の銀嶺に舞え斬翔の花弁(シルヴァリー・デシメーション)による敵を切り裂く液体銀の花びらが滝のように上から――そして、ヴィクティムの血の刃が横一閃に薙ぎ払われた。
ズザン! と膨大な数の切断音は一つとなって、周囲を切り裂いた。その威力を受けて吹き飛ばされたカルロスへ、ヴィクティムが告げる。
「テメェが丹精込めて作り上げた刃の味だ……心行くまで堪能していけ。天にも昇る気持ちだろ?」
「ガ、ア、アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
カルロスが、体中に力を込める。切り刻まれた傷を強引に筋肉で塞ぐ――その力みの瞬間を狙って、理緒が風竜のバゼラードを薙ぎ払った。
「一撃の威力はあまりないかもだけど――!」
放たれた衝撃波は斬撃となり、カルロスの首筋を捉える。首筋から血を吹き出したカルロスに呼吸が乱れた。それは力みを緩めることに、他ならず――!
「隙有り、です」
投擲に特化した暗殺用ピック――【哭装】虚風をクロスは投げ放つ。胸部に突き刺さったピックは、バキバキバキ――! と狂戦士竜の鎧に亀裂を走らせた。
「アギ、ィ、ル、ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「白き闇が、全てを包み、飲み込み……溶かす」
即座に殺気を放つカルロスへ、クロスは白の銷魂(ディスペア・オブ・ホワイト)で相殺。黒と白が混ざり合い、霧散するその中を空シャチが空を泳いで迫った――ヴィクトルの空泳ぎたちの狂宴(スカイ・オルカ)によって召喚された空飛ぶシャチだ。
そのまま、空シャチの群れをカルロスは鉤爪で引き裂いていく。その隙間を縫うように、氷属性纏わせた銛をヴィクトルが投擲――クロスの一撃で脆くなった狂戦士竜の鎧を貫通し、動きを封じるように凍りつかせる。
「今です!」
ヴィクトルの合図に、ルフトフェールとヘスティアが同時に応えた。
「風よ――!」
「竜のブレスより凶悪な一撃をぶつけてあげる!」
ルフトフェールの風の魔法が旋風を生み出しカルロスを飲み込むと、その旋風の目である頭上を取ったヘスティアが対艦攻撃弾道弾運搬機レッドキャップ(エーエスビーエムコンテナレッドキャップ)による、対艦ミサイルを発射する犬の頭型ドローンによる爆撃を撃ち込んだ。
――爆音と共に、風が周囲に荒れ狂う。旋風が解け、狂戦士竜の鎧を完全に砕かれたカルロスが、その場へと崩れ落ちた。
「こ、れが……い、まの……猟兵、か……」
小さな称賛を残し、カルロスは息絶える。それは、五の王笏島の陥落に一歩近づいた、勝利の瞬間だった……。
大成功
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