羅針盤戦争〜回帰の終着点
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『三つ目島』の浜辺に5mの巨漢が立つ。
「『桜花』と『鬼火』が王手を掛けられたそうだ。ここもヤバいんじゃねえのか? ハイレディン!」
「そうさオルチ兄、だがここは俺達の本拠地だ。それに俺達にはアレがある!」
赤髭の左頭が左腕の一本を使い、島の中央にある小山の頂上を指差す。
隻眼の右頭がそちらを向けば、そこには一本の石碑があった。
「踏み込んだ瞬間魔物に襲われてお陀仏ってわけか。やってやろうじゃねえか!」
「そうさオルチ兄、要は今まで通りの方法でグリモア持ちをブチ殺せば良い。そうすりゃ全てこっちのもんよ!」
左頭がそう言った途端、島一帯に怪光線が降り注ぐ。
――やがて浜辺には、巨大な甲殻類が姿を見せ始めるのだった。
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「グリードオーシャンでの戦い、お疲れ様です。いよいよ、『三つ目』との決戦ですね」
遠く浜辺で吠える双頭四腕の巨人を、猟兵達とクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)は鉄甲船の上から臨んでいた。
「あれが七大海嘯『三つ目』のバルバロス兄弟。……様々な敵から肉体の部位とメガリスを奪ってて来た、巨人のコンキスタドールです」
現在『三つ目島』の生物は赤髪の弟ハイレディンの眼下に埋め込まれたメガリス『オルキヌスの瞳』から放つ生物退化ビームにより、魔物の徘徊する魔境と化している。
「上陸と同時に襲って来るのは、蟹です」
退化により胸くらいまである大きさに成長していて、甲羅やハサミもトゲトゲしている。
食欲旺盛だが警戒心も強い。猟兵一人につき1~2体対処出来れば、他の個体は物陰に逃げ込むだろう。
「しかし彼等と交戦しているうちに、バルバロス兄弟もユーベルコードを仕掛けて来るでしょう」
両方の対処が追い付かなければ、苦戦は必至だ。
「そしてバルバロス兄弟は、島の中央にある「三つ目の石碑」から「オルキヌスの瞳」を増幅して放つ事もできます」
クララが小山の頂上を指差せば、そこには石碑が一つ。
「魔物を見てわかる通り、瞳に秘められた退化の力は確かです。……これは皆さんの心身にも及びます。こちらの使うユーベルコード次第では、対策が必要でしょう」
勿論、他のユーベルコードと素の高い戦闘力も侮れない。こちらもまた、熾烈な戦いになるだろう。
無策で倒せるほどに容易い相手ではないのは明らかだ。
「ですが、皆さんなら倒せると……そう、信じています」
どうか、よろしくおねがいします。そう言ってクララは頭を下げるのだった。
白妙
白妙と申します。
このシナリオは戦争シナリオです。1章で完結します。
『三つ目島』における、バルバロス兄弟との決戦です。
難易度「やや難」シナリオとなります。
●プレイングボーナス
「敵の先制攻撃ユーベルコードと、『原始の魔物』に対処する」です。
●補足
シナリオ公開と同時にプレイング受付を開始します。
お返しするかも知れませんが、その理由は内容ではなく此方のスケジュールとなります。
よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『三つ目』バルバロス兄弟』
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POW : フォーアームズ・ストーム
【四腕で振るった武器】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : 「オルキヌスの瞳」
【弟ハイレディン(左頭部)の凝視】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【肉体、精神の両面に及ぶ「退化」】で攻撃する。
WIZ : バルバロス・パワー
敵より【身体が大きい】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブOK
んー、大きな蟹に、退化する視線ねえ。
まあ、何とかしてみようか。
さて、まず寄ってきた蟹を二匹ほど発電器官から電撃を放って気絶させよう。
そしてすぐに蟹を怪力で片手に一匹ずつ持ち上げて、
バルバロス兄弟と島の石碑から体を隠す盾代わりにするよ。
原始の魔物にまで退化してるなら、これ以上退化して形が変わる事もないだろうし。
視線を防いだら【空雷火球】を発動。
自分の体より大きいプラズマの塊を吐き出して、視線を遮りながら攻撃するよ。
丁度いい盾があって助かったよ。
小細工なんて用意しない方が、アンタらは強かったんじゃないかい?
目前で戦闘態勢を取るのは、巨大な二匹の蟹。退化の末に厚みを増した甲殻は全体にトゲトゲしており、辺りに凄まじい威圧感を放っている。
「まあ、何とかしてみようか」
だがそれでもペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が落ち着いた態度を崩す事は無い。
横殴りに襲い来る鋏をペトニアロトゥシカは体を僅かに引いて回避。横合いから迫るもう一匹を広い視界を用いて捉え、これも回避。
直後。す、と翳されたペトニアロトゥシカの両手から電撃が迸り――たちまち二匹の蟹を感電させる。
『獲物が来たぜ! しかしなんだあいつは、ハイレディン!?』
『構うことはねぇオルチ兄! メガリスと石碑の力で獣に戻しちまえ!』
「よいしょ」
ペトニアロトゥシカは気絶した蟹の腹付近をむんずと掴み――そのまま片手で一匹ずつ、合わせて二匹を持ち上げた。
だが同時に島の浜辺を割って、無数の光線が辺りに降り注ぐ。
そのうちの一本がペトニアロトゥシカを直撃する寸前、彼女は二匹の蟹を翳した。
既に退化を経た蟹の体はオブリビオンの凝視を防ぎ止める格好の盾代わりだ。門扉の如くぴったりと閉じられた甲殻はペトニアロトゥシカを守って何事も無い。
「丁度いい盾があって助かったよ」
ペトニアロトゥシカは手に持つ蟹を左右に開いたと同時に……オブリビオンに向けて、その口から何かを撃ち出す。
それは、巨大なプラズマだ。体内の発電器官を用いて空気から生み出されたプラズマが、その竜の如き肺活量で撃ち出されたのだ。
巨大な白い火球の如き塊がペトニアロトゥシカの体を覆い隠しつつ、バルバロス兄弟へと迫る。
『うおっ!?』
バリバリィ! という音と共に、砂柱が上がった。
「小細工なんて用意しない方が、アンタらは強かったんじゃないかい?」
やがて砂埃が晴れた時、そこには感電により膝を折るオブリビオンを前に、相変わらず蟹ガードをがっちり固めているペトニアロトゥシカの姿があった。
大成功
🔵🔵🔵
大豪傑・麗刃
今回はトラックで戦場に来た。巨大蟹はひき逃げかまして異世界まで運搬(?)。無理そうならトラックから降りる。横歩きしかできない上に大振りだから動きを読むのも容易だ。ダッシュで逃げる。バルバロス兄弟の先制攻撃は荷物(後述)を下した後のトラックを犠牲にするか、動き読んでダッシュで回避。
これが蟹への対処法だ。
わかったカニ?
……
知ってる。きみらボス級はネタに対して塩対応かボケ殺しなんだ。
きみたちには失望した。
(伝説の超変態人発動)
ギャグを解さぬ敵への失望から、キャリバー用の剣や盾すら装備できるほどに巨大化、武人としての誇りにかけて斬りあう。しょせんきみらの剣術が自己流である事を思い知らせてやるのだ。
その時、辺りに居る全員が動きを止めた。
海にも戦場にもそぐわない、ブロロロという音が接近し始めたからだ。
音の正体を見極める為に方向転換を試みようとした巨蟹達が――次の瞬間、派手に吹き飛ぶ。
「トラックで来た」
……蟹の習性を見切る事でクレバーな轢き逃げをかましたのは、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)。
鋼鉄のトラックに撥ねられた蟹達は特に異世界転生するという事も無く、泡を吹いてそのまま消滅した。大きくなっても所詮は蟹。鈍重な上に横歩きしか出来ない悲しさである。
「馬力はともかく船よか小せえな。叩き出しちまおうぜ、ハイレディン!」
「そうさオルチ兄! ふざけた登場しやがって!」
怒り狂ったバルバロス兄弟は、その大きな歩幅でトラックに追い付き、力任せに滅多打ちを始める。
巨躯から繰り出される四つの武器による殴打は、前方の運転席から麗刃を、後方の荷台から何やら大荷物を吐き出させ……瞬く間にトラックをひしゃげた鉄塊へと変えてしまった。
そのまま砂浜へと転がり出た麗刃だが、特に悪びれる事も無くパンパンと砂を払うと。
「これが蟹への対処法だ。わかったカニ?」
……。
奇妙な間が生まれる。
「……知ってる。きみらボス級はネタに対して塩対応かボケ殺しなんだ」
半ば予想はしていたとはいえ、渾身のボケを叩き潰される悲しみと怒りは堪えるものがある。
「きみたちには失望した」
俯いたままの姿勢で麗刃の体が巨大化を始める。
みるみるうちに麗刃の身体は5メートルのバルバロス兄弟を追い抜き――気付けば見下ろす程になっていた。
麗刃は鉄屑と化したトラックの後方から転げ落ちた荷物――巨大な剣と盾――をひょいと拾い上げると、改めてオブリビオンと対峙する。
どう見てもキャバリア用の兵装なのだが、そこは武人。迷わず麗刃はバルバロス兄弟へと斬りかかる。
数合打ち合うも有利不利は明らか。対格差を活かして麗刃は豪壮な振り下ろしを連発。
『『何なんだこいつはぁぁぁぁぁー!?』』
「きみはつまらん」
麗刃は堂々たる武門の太刀筋を前面に押し立て、我流に過ぎないバルバロス兄弟を押し返しにかかるのだった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
ウォーマシンの巨躯とそれの●騎乗を可能とする馬力と重量誇る機械馬の突撃で原始の蟹を怪力で振るうランスや踏みつけで突破し兄弟と接敵
これまで各地で繰り広げた略奪もここまでです
七大海嘯『三つ目』…騎士として討ち取らせて頂きます
武装を振り回しつつ接近する速度をセンサーでの●情報収集で計測
●瞬間思考力でタイミングを●見切り機械馬のスラスター起動
太陽を背に●目潰ししつつ●推力移動による跳躍で5m以上の巨人を飛び越え攻撃回避
敵の頭上で馬から飛び降り身体を捻ってUC起動
●ロープワークで巧に●操縦する溶断ワイヤーで敵の手を斬り刻み●武器落とし
そのままワイヤーを手繰って頭に降り立ち大盾殴打からの剣を一閃し飛び降り
波を掻き分ける音が、砂を蹴立てる蹄の音へと変わる。
島へ上陸しようとする一人の騎兵を押し留めるべく、硬い甲殻と重量を備えた原始の大蟹が立ち塞がる。
だが馬上のトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が手に持つランスを一閃させれば、凄まじい衝撃と共に大蟹が吹き飛ぶ。
ウォーマシンの誇る巨躯と超重装甲。そして機械馬の馬力。それら全てが相俟って生み出される人馬一体の突撃は後続の蟹すらも突き飛ばし、踏みつけ、轢き殺し……『三つ目』の目前でようやく止まった。
「これまで各地で繰り広げた略奪もここまでです。七大海嘯『三つ目』……騎士として討ち取らせて頂きます」
『御伽噺の騎士サマが来やがったぜ。稼ぎ時なんじゃねえか? ハイレディン!』
『そうさオルチ兄、騎士様に海賊の戦い方って奴を教えてやろうぜ!』
オブリビオンは軽く下卑た笑いを上げたかと思えば――次の瞬間、その肉体を驀進させた。
吠え声と共に、嵐の如き猛攻を仕掛けようとする。
だが馬上のトリテレイアは静かだ。全身のセンサー群をフル動員し、敵の攻撃のタイミングを見切る事に注力する。
魔力以外のほぼ全てを感知可能なトリテレイアの情報分析を以てすれば、我武者羅な接近を単なる速度に変換する事など容易い。
風と共に左手の三又槍が横薙ぎされる。だがトリテレイアは僅かに身を引いて回避。
続く右手の斧が薙がれるタイミングを見計らい――機械馬のスラスターを起動する。
厚い鉄の刃が、前方で上がった砂煙を斬り裂く。
反射的に上方を見上げたバルバロス兄弟が見たのは、自分達の巨躯を超える程に高々と跳躍すると共に下馬し、空中で体を捻るトリテレイアと――その背で輝く太陽だった。
『クソッ、目潰……!』
オブリビオンが言い終える前に、両耳で、ヴンッと音が響いたかと思えば――即座に凄まじい熱さが腕を走る。
トリテレイアの肩部装甲から伸びる溶断ワイヤーが四肢に絡み付き、高速振動により傷を刻んだのだ。
苦悶の声と共に武器を取り落とすバルバドス兄弟。だがトリテレイアの攻勢は終わらない。ぐんっと引き寄せるようにワイヤーを手繰ると、両肩に足を乗せて着地。その巨大な質量に落下の勢いも乗せて、がら空きの頭部にシールドによる殴打を叩き込む。
たまらずオブリビオンが崩れ落ちる寸前、トリテレイアは長剣を一閃。敵の頭部に深々と傷を刻み込むと、ひらりと肩から飛び降りるのだった。
成功
🔵🔵🔴
劉・涼鈴
オリヴィア(f04296)とタッグマッチだ!
眼がたくさん、武器いっぱい、蚩尤みたいなヤツだ!
(オリヴィアのチャイナ服見て)ん、紅白で縁起いいね!
カニだー! 茹でて食べちゃうぞー!
ハサミに挟まれないように、覇王方天戟で薙ぎ払って足元を掬ってひっくり返してやる!
う~ん、焼きもいいかも~
バルバロス兄弟が襲ってきたら、覇王方天戟で打ち合うよ!
見切って受け流して直撃を受けないように!
コンビネーションで凌ぎ切る!
オリヴィアの雷キックでいい感じに体勢が崩れた!
ダッシュにジャンプで間合いを詰めて――こいつでぶっ飛べ!
劉家奥義・蚩尤激甚脚!!
オリヴィア・ローゼンタール
涼鈴さん(f08865)とご一緒に
蚩尤……魔物の一種でしょうか?
白き中華服の姿に変身
四肢と聖槍に雷の魔力を纏う(属性攻撃)
えぇ、お揃いですね
涼鈴さんがひっくり返したカニの腹を【串刺し】にし、電撃を流し込んで内部から焼く
たしかに食欲をそそる匂いですが……油断はいけませんよ!
叩き付けられる斧を聖槍で【受け流し】、鉄球を蹴り返す
腕と頭が増えようと身体は一つ
体幹に縛られているなら、人体の構造を超越した突飛な技はない筈
【全力魔法】で脚に白き稲妻を集束、【天霆轟雷脚】で三叉槍を蹴り飛ばし【体勢を崩させる】
魔眼が力の源ならば、激しい雷光による目眩ましは効果的な筈
――今です!
「カニだー! 茹でて食べちゃうぞー!」
押し寄せる原始の蟹を前に、劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)がバシャバシャと駆け寄る。
その巨大な鋏が振るわれるより先に、涼鈴は手に持つ覇王方天戟を下段一閃。
長柄の間合いから足払いを掛けられた蟹は綺麗に引っくり返る。
足をばたつかせる蟹の腹にすかさず槍の穂先を突き立てたのは、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
「――ふッ!!」
気合と共に白銀の柄を通して流し込まれた電流が蟹を内部から焼き……辺りには香ばしい匂いが漂い始めた。
「う~ん、焼きも良いかも~」
「たしかに食欲をそそる匂いですが……油断はいけませんよ!」
「だって~」
良い香りを前に思わずそんなことを言い合う二人だが、きっちりと蟹への対処は済ませている。
ふと涼鈴は紅の瞳をぱちくりとさせると、オリヴィアの体を眺めた後、口角をきゅっと上げた。
「ん、紅白で縁起いいね!」
オリヴィアの纏う中華服は穢れ無き白。四肢と聖槍には雷と思しき同色の魔力が迸っている。
どこか神々しさすら感じさせるその姿は、蹴撃に特化する為の変身を経た今でなくては見られない。
「えぇ、お揃いですね」
「ふっふ~ん♪」
涼鈴もまたチャイナドレスを纏っている。鮮やかな真紅の布地に金色の龍躍る刺繡は、活発な印象と抜群のプロポーションを併せ持つ涼鈴に良く似合う。
『こいつは上玉だ! 勿体無えけどしょうがねえよなぁ、ハイレディン!』
『おうよオルチ兄! 今は略奪する暇はねぇ。猟兵なら猶更だ!』
響いて来る下卑た声に振り向いた涼鈴とオリヴィアの視界を埋めるように――『三つ目』バルバロス兄弟の肉体が驀進して来た。
二人の反応は、早かった。
涼鈴は覇王方天戟を、オリヴィアは聖槍を突き付け、迎撃の準備を済ませていた。
『『行くぜ!』』
吹き荒ぶ四つの鉄の風と二条の穂先が幾度も交差し、派手に火花を散らす。
「眼がたくさん、武器いっぱい、蚩尤みたいなヤツだ!」
「蚩尤……魔物の一種でしょうか?」
蚩尤。伝説上の軍神だ。だが涼鈴がそう譬えるのもあながち間違っていないと言える程に、バルバロス兄弟の攻勢は激しい。
四本の巨腕から繰り出される攻撃は一見力任せに見えて、絶妙のコンビネーションで二人の体勢を崩そうとしてくる。
だがコンビネーションでは猟兵側も負けていない。
(「腕と頭が増えようと身体は一つ。体幹に縛られているなら、人体の構造を超越した突飛な技はない筈――」)
オリヴィアの予想通り、人間の体の制約に縛られた斧の軌道は、落ち着いて見れば十分に対処出来るものだった。槍で受け流し、続いて振って来るフレイルを蹴り返す離れ業すらオリヴィアはやってのける。
「たぁっ!!」
斬る、突く、薙ぐ。涼鈴もまた万能武器である覇王方天戟の特性を十全に発揮し、様々な武器による敵の攻勢を凌いでいた。
両者の戦いは一進一退を繰り返すも、天秤は猟兵側へと傾きつつある。
それでも止まらない二人の猛攻を前に、僅かにバルバロスの体勢が崩れる。それでも苦し紛れに繰り出された三叉槍に垣間見える隙を見逃さず――オリヴィアは鋭い気勢と共に、全力の蹴撃を繰り出した。
「偉大なる天の雷鎚よ! 我が脚に宿り、邪悪を打ち砕け!」
天を衝くが如き激烈さの、白き稲妻を纏った側踢腿だ。
『『うおっ!?』』
上空へと舞い上がる三叉槍。のみならず「オルキウス」は魔眼。激しい魔力の雷光がその視界を潰し、バルバロスの体勢を大きく揺るがせた、その瞬間。
「お願いします!」
「わかった!! ――こいつでぶっ飛べ! 劉家奥義・蚩尤激甚脚!!」
刹那、ズシン!! と凄まじい衝撃がバルバロスの胴体を真正面から走り抜け、その体を遥か後方へと吹き飛ばす。
長柄の間合いから一気に距離を詰め、跳躍と共に涼鈴が放ったのは、劉家の絶技。あらゆる護りを打ち砕く、天変地異が如き破壊力を秘めた蹴撃であった。
「私たちの勝利!!」
『『――』』
見事、苛烈な敵の猛攻を掻い潜り、致命的な時と箇所を捉えた二人の蹴撃。
それは砂浜と潮風に余韻を残し、バルバロス兄弟の暴虐の人生に終止符を打ったのだった。
大成功
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