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羅針盤戦争〜欲望の涯

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #終の王笏島

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●欲望と栄光の海の王
 グリードオーシャン、『終の王笏島』。
 絢爛なる王宮の最奥、玉座に在るのは他の世界の力と衣装に染まらぬカルロス・グリード本体。
 この島のカルロスこそが正体、全ての『王笏』の本拠地を制圧されない限り滅びはない。
 腰に鞭のように纏めた鉄鎖がじゃらりと鳴り、手にした舵輪とオーブが輝きを増す。それこそ数え切れぬ程のメガリスを有する彼には代償はあってないようなもの。
 次なるメガリスを求める航海への準備が完了するまであと少し。
 それまでの時を稼ぐ為に、終の王笏は猟兵達への迎撃態勢を整えていた。

「さて、とうとうグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラとの決戦だよ」
 シャチのキマイラのヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が集まった猟兵達へと呼びかける。
「場所は皆の頑張りでようやく発見された終の王笏島。そこにある王宮にいるカルロス・グリードの本体を倒してきてほしいんだ。オブリビオン・フォーミュラだけあって当然強敵、どれだけ頑張っても向こうが先に攻撃を仕掛けてくる不利な状況での戦いになる」
 けれどこれまで戦ってきたなら打開策はあるはずだと、ヴィクトルは言う。
「それで向こうの能力なんだけど、馬鹿みたいに大量に持ってるメガリスの中から三つ使ってくるみたいなんだ。一つは鉄鎖ドローミ、ユーベルコードを封じて対象の全身を縛り拘束する鎖だね。鎖といっても伸びるから単に距離とるとかじゃ対抗できないだろうね。そしてオーシャンオーブ、代償と引き換えにあらゆる行動に成功するようになるけどその代償はメガリス、腐るほど持ってるから殆ど無制限に使ってくるだろう。あとはさまよえる舵輪、空飛ぶ幽霊船と乗員のコンキスタドールを召喚してくるけど、そのコンキスタドール様々なメガリスで武装してるからかなり厄介だと思う」
 流石はこの世界の元凶に相応しい強さだね、とシャチはうんざりしたように言う。
「それから今回の戦いには直接関係ないけども、カルロス・グリードは他の七種類のカルロス・グリードも全滅させないと滅ぼすことはできない。だけれども他もだいぶ削れて来てるみたいだから今はこの戦場に集中してほしい」
 そして説明を締めくくると、ヴィクトルは首に掛けた鍵型のグリモアを手にし、終の王笏島へと向かう鉄甲船への転送の準備を開始する。
 向かう先は絢爛たる欲望の王宮。決戦は間近に迫っていた。


寅杜柳
 オープニングをお読み頂き有難うございます。
 数多のメガリスを操るオブリビオン・フォーミュラとの決戦です。

 このシナリオは『終の王笏島』の豪華絢爛な王宮で、七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリードと戦うシナリオとなります。
 また、下記の特別なプレイングボーナスがある為、それに基づく行動があると判定が有利になりますので狙ってみるのもいいかもしれません。

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 プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する。
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 それではご武運を。
 皆様のご参加をお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『終の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    メガリス『鉄鎖ドローミ』
命中した【対象1体のユーベルコードを封じる鉄鎖】の【全長】が【対象を束縛するのに充分な長さ】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
SPD   :    メガリス『オーシャンオーブ』
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【王宮にある大量のメガリス】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ   :    メガリス『さまよえる舵輪』
【様々なメガリス】で武装した【コンキスタドール】の幽霊をレベル×5体乗せた【空飛ぶ幽霊船】を召喚する。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御剣・刀也
さて、大将首との勝負
嫌がおうにも燃えてくるもんだ
さぁ、やろうか。俺かお前、どっちかが倒れるまで、存分に戦おうぜ

メガリス『鉄鎖ドローミ』は、刀と違い、鞭のようにしなり、直線的ではなく、思いもよらぬ動きで振るわれると思うので、第六感で鎖の溜めの一瞬を察知し、動きを感じとり、見切り、残像で避け、次の攻撃が来る前に勇気で恐れず、ダッシュで懐に飛び込んで捨て身の一撃で斬り捨てる。
「メガリスでもなんでもねぇが、こいつの切っ先に触れれば斬れるぞ?俺の一撃、受け止められるなら受け止めてみろ!」


レン・ランフォード
錬:尻尾まいて逃げようたってそうはいかねえ
れん:ん、お前はここで御終い…
蓮:ええ、骸の海に帰りなさい、カルロス・グリード!

人格は錬、発煙弾で「目潰し」し「ダッシュ」
仲間の鎖使いから得た「戦闘知識」に
「第六感」も合わせて「見切り」躱して接近、UCで斬る

…それが理想だが、六感で躱しきれないと見たら実現符を使い実体化
本体…蓮を「かばい」その身に鎖を受ける
「激痛耐性」と「気合」で耐えながら縛られる前に
鎖を掴み引き「時間稼ぎ」
どんな手を使っても勝つ…行け、私!

れんも符で実体化し援護、全力で接近
そして【剣刃一閃】を叩き込み、必ず仕留めます

ここまでです強欲の王
貴方という終を超え、私達はまだ見ぬ未来へ行きます



●王の鎖は縛るもの
 煌びやかな王宮に猟兵達が飛び込んでいく。
 グリードオーシャンを支配する七大海嘯、その中でも最強の大将首は今この場所にいて、それを討つために猟兵達は豪華絢爛な王宮に目をくれる事もなく走っていく。
(「さて、大将首との勝負、嫌がおうにも燃えてくるもんだ」)
 走りながら御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は思う。ここにいるのは最強の王笏、僅かな油断もできない強敵だが、それでも心は高ぶってしまうのだ。
 やがて辿り着いた広間にて、猟兵達は王たる風格のコンキスタドールと相対する事となった。
「尻尾まいて逃げようたってそうはいかねえ」
 そして白マフラーの忍者、レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)が荒っぽい口調でカルロスに相対する。
「ん、お前はここで御終い……」
 急にトーンが変わり、レンが続ける。多重人格者である彼女の中の二人、錬とれんがそれぞれ発した言葉遣いはどちらも主人格の蓮のとは異なり。
 けれど、言葉に込めた意志自体は三人とも同じ。
「ええ、骸の海に帰りなさい、カルロス・グリード!」
 蓮がそう言い切り日本刀を構え、さらに刀也が獅子吼という銘の日本刀を煌めかせ構える。
「さぁ、やろうか。俺かお前、どっちかが倒れるまで、存分に戦おうぜ」
『よかろう、王笏たる我の力をその身に刻むがよい』
 そして終の王笏カルロス・グリードはそのメガリスの一つを手にするのと同時、蓮が発煙弾を炸裂させ同時にダッシュ。
 展開された煙幕を突っ切り金属の鎖が伸長してくる音――鉄鎖ドローミだ。
 ユーベルコードを封じ対象を拘束するそのメガリスは、まず刀也を標的に定めたらしい。
 刀とは違い鞭のように曲線、変化する軌道で迫ってくる鉄鎖は刀也にとってもやり辛い相手だ。
 おまけにメガリスであるからか、超常の力で操作されているようで物理法則に反した軌道変化もやってくる。
 しかしその中にある僅かな溜め、それを第六感で察知し変化のタイミングを見切る事でどうにか回避をしていく。
(「思ったより早えな」)
 鉄鎖を警戒しながらタイミングを伺うレン。その表層に浮かんでいる人格は荒事担当の錬、仲間の鎖使いから鉄鎖との戦い方は知識にあるものの、このメガリスの鎖はカルロス・グリードが扱うだけあって段違いに強力。
 知識がなければこの煙幕の中であっても即座に拘束されていたに違いない、と背筋が冷たくなる感覚を感じその身を伏せるとその真上を鎖が横薙ぎに通り過ぎた音が耳に届く。
 鉄鎖は攻撃直後、特に伸びきった時の隙が非常に大きい、それを見切り一枚の実現符を取り出し『れん』の人格を実体化させるとレンは王笏へと飛び込んでいく。
 そしてその横薙ぎの鉄鎖で刀也が薙ぎ払われていた、がそれは残像。
 煙幕の中であり残像も本体と非常に判別し辛いのも助けとなっている。残像を払われた瞬間に刀也も一気にダッシュで飛び込む。
 カルロスの動いた気配は全くない。ならば煙で視界が悪くとも猟兵達なら問題なく捉えることができる。
 しかし駆けるレンの背後から鉄鎖が伸びてくる。メガリスの鉄鎖は引き戻さずとも標的に絡みつくまで伸び続けるもの、そしてその速度は全力で走るレンよりも早かった。
 それに気づいた錬の判断は早かった。もう一枚の実現符を背後に放り錬の人格はそちらに実体化、背後の蓮の人格に入れ替わったレンをかばう様に鉄鎖を受けとめる。
 命中した鎖は即座に錬の全身に絡みつき締め上げようとする。けれど錬は気合で堪えながら意識を保ち、鉄鎖の先端を逆に握り締め完全に拘束される事を阻む。
 それは数秒ともたないだろう。だが、それだけあれば蓮がやってくれると信じているからの時間稼ぎ、自分を犠牲にするような手を使ってでもカルロスに勝つという意志がそれを成さしめた。
「……行け、私!」
 錬の叫びと同時、蓮はカルロス・グリードの懐へと飛び込み日本刀型の対UDC用斬撃兵装に手をかける。
「ここまでです強欲の王」
 その剣の間合いから逃れんとカルロスが後退しようとするが、足を何かに噛まれ阻まれる。
 れんの操る白狼の霊――その援護を受けた蓮の剣刃一閃がカルロスの鉄鎖持つ片腕を切断し斬り飛ばす。
 そして息つく間もなく刀也が飛び込んできて。
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!!」
 後のことは考えない捨て身、全身を叩きつけるような勢いでユーベルコードを起動。
 上段に構えた獅子吼はメガリスでもなんでもないが、その鋭さは折り紙付き。
「俺の一撃、受け止められるなら受け止めてみろ!」
 そして刀也が裂帛の気合と共に上段から全力で振り下ろす。
 直前に回避された事で両断とまではいかなかったものの、深々と胴に刻まれた縦一線の傷口はその一撃の鋭さを物語っていた。
「……貴方という終を超え、私達はまだ見ぬ未来へ行きます」
『成程、だが我を倒すには程遠いぞ?』
 途端、斬り飛ばされた片腕の鉄鎖が伸びカルロスの逆の手の中へと納まって、即座に鞭のように振るう。
 刀で防いだレンと刀也だが、二人の体は大きく弾かれてしまう。
 同時にレンの二枚の実現符の効果も解除。離れていた二人の人格が体に戻ってきたのをレンは感じつつ、二人はカルロスを確実に仕留めるために一旦距離を取り態勢を立て直すことにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

カルロス・グリードの本体。分身体とは比べ物にならない力を感じますが、勝てない相手ではない
全力でお相手します

先制攻撃で召喚された幽霊には『戦闘知識』と『第六感』で攻撃を受けたら拙いメガリス持ちを察知。その攻撃は確実に避けてピックを『投擲』、遠距離から撃破
ある程度のダメージは『オーラ防御』で耐え『激痛耐性』と『継戦能力』で耐える

先制攻撃を凌いだらUCを発動し、周囲を闇に包む
カルロスは兎も角、周囲の幽霊達は『暗視』もできないだろうし、同士討ちを考えれば下手に動けないだろう
敵が混乱しているうちに『目立たない』よう『忍び足』『ダッシュ』でカルロスに接近、黒剣を『串刺し』に突き立てる


月夜・玲
何ていうか色んなカルロスシリーズ見てるとさあ…
プレーンカルロス君って…地味だね
いやそれでも派手だけど地味だね…
高校デビュー前かな???


EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
どんな道でも『悪路走破』出来る特注品だよ
それで可能な限り近付いて行こう
鉄鎖はバイクに受け止めさせて、その瞬間にバイクをターンして反対方向に走らせる!
鎖とカルロスがまだ繋がってるなら、こっちに引き寄せられるはず!
同時に私は飛び降りて鎖の効果から逃れよう
そしてカルロスに接近して【アームデバイス起動】!
掴んで地面に叩き付けてあげる

グッバイバイク…畜生修理代出せ!!
腰に纏めて鎖付けとくのは感心しないなあ、中学生じゃあるまいし



 煙幕が晴れ、傷ついた姿の王笏の姿が露になる。
「腰に纏めて鎖付けとくのは感心しないなあ、中学生じゃあるまいし」
 メガリスとはいえそのセンスは高校デビュー前かとツッコむのはバイクに乗った月夜・玲(頂の探究者・f01605)。
 彼女の見てきた数多くのカルロスシリーズ、もとい王笏達はそれぞれ個性的な衣装を纏っていたけれど、異世界の力を宿していないこのプレーンな状態の終の王笏はそれらに比べると地味に思える。
 一般的なセンスだと十分であるはずなのだが――比較とは怖いものである。
 だがその身から放たれる力はこれまでの分身達とは比べ物にならない、そうクロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)は感じる。
『――少々、不便だな。これを使うか』
 落ち着き払った声でカルロスが彷徨える装備した舵輪の力を開放すれば巨大な幽霊船が出現、王笏は切り飛ばされた自身の腕を持って甲板に飛び乗る。
 そして、一人の幽霊船員が切り飛ばされた腕の断面と断面とを合わせ首にかけた小さな十字架を翳せば、禍々しい輝きと共に断面が結合、その腕が機能を取り戻す。
 代償故か十字架の船員の頭部が鳥頭の異形に変形していくが、それはさしたる問題ではないようだ。
『我が敵を討ち滅ぼせ』
 カルロスのその言葉を合図に、幽霊船の船員たちが装備したメガリスの力を次々に開放していく。
 空に向けて長弓が放たれれば一本の矢が無数の光の矢に分裂し広間に矢の雨を降らせ、玲とクロスに襲い掛かる。更にひどく古い和風の剣が三本、変幻自在な軌道で空を舞いクロスを狙ってくる。
 知識にはないメガリス、だが全力を出せばまだ回避できる。光矢の雨は密度はそこまでではない、玲が十分に見切って範囲から逃れているのと同じくクロスは駆け、阻止せんとする三本の剣を見切り身を潜らせながら幽霊船へと距離を詰めていく。
 しかし、クロスに突如悪寒が走る。
 引き絞った何の変哲もない古い弓矢、あの矢はまずいと直感し即座にピックを投擲。放たれる前に矢を放とうとした幽霊を撃破する。
 その間も空からは光矢が降り続けている、オーラで直撃を避け痛みを堪えながら、クロスは機会を伺い続ける。
 そこに響くエンジン音。
 特製ガジェットの運用補助に開発した特注品のバイクを走らせ、戦闘の余波で生じた瓦礫を足場に幽霊船の甲板へと飛び跳ねる。
 チャンスは一瞬。
 限界まで加速させ衝撃と共に着地、急な路面の変化にも速度を落とさず向かう先ににはカルロス・グリード。
 咄嗟に鉄鎖が玲へと伸び迎撃せんとするが、鎖が前輪に触れた瞬間ウィリーしターン。鉄鎖がバイクに絡まりきり玲をも拘束する前に、玲はアクセル全開に固定したままバイクから飛び降りる。
『なっ……!』
 乗り手を失ったバイクは鉄鎖を巻き付けたままカルロスと反対側に向けて加速、鎖を手にしたままの王笏の体が一気に引っ張られ宙を舞う。
「デバイス転送。動力直結。攻勢用外部ユニット、起動完了!」
 その墜落地点で待ち構えていた玲が飛来するカルロスに向け跳躍しユーべルコードを起動、彼女特製のガジェットからアームデバイスが伸びて空中でカルロスの腕を掴むと、鎖による慣性で幽霊船の外へと投げ出された彼の体を王宮の床に頭から叩き落し床にめり込ませる。
 強烈な一撃、だがカルロスの受難はまだ終わっていない。バイクを止めるものは広間の壁以外に何もなく、地面に突き刺さったカルロスも減速どころか加速するバイクの勢いに引っ張られる形で壁に叩きつけられ、直後起こったバイクの爆発炎上に巻き込まれてしまう。
「グッバイバイク……畜生修理代出せ!!」
 特注バイクの修理費は如何ほどか――それ以前に自分が元凶なのにあまりに酷い言い草、言い返そうとしたカルロスの周囲に闇が立ち込める。
「霧よ、世界を包め。――この『霧』は俺の領域。容易くは超えさせません」
 それはクロスの禍つ影の領域、彼に敵対する者の力を弱らせる黒い霧は広間から炎上するバイクも含めた一切の光を奪う。
 光矢が降り注ぐがそれは闇を掃う事はできない。この状況に対応するメガリスももしかするとあるのかもしれないが、全員が所持しているわけでもないだろう。
 そうなれば同士討ちの危険があるから遠距離攻撃は迂闊に仕掛けられない。
 幽霊達が混乱に陥っている中、クロスは音もたてずカルロスへと接近し、自身の血を啜った事で姿を現した極薄の黒剣を背後から突き立てる。
 触れた瞬間、とっさに身を捩られた事で急所は穿てなかったが、それでも重要な部位を傷つけたことには間違いはない。
 闇を纏い黒に染まったロングコートを翻し、クロスは闇に溶け込み再び機会を伺う。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…これ以上、略奪を続けさせるつもりは無い
その秘宝を打ち破り、この島をお前の終の場にしてやるわ

"血の翼"を広げ空中戦機動の早業で敵陣に切り込み、
"写し身の呪詛"に精神属性攻撃のカウンターを仕込み、
分身を破壊した敵を洗脳して同士討ちするように武器改造を施し、
乱れ撃ちした無数の残像で敵の攻撃を受け流しUC発動

…敵の数が多いなら、その数を利用するまで
心を操る外法だけど…お前を討つ為ならば躊躇はしないわ

静止した時間の世界で大鎌で敵集団を乱れ撃ち、
集団敵の霊魂を大鎌に降霊して魔力を溜めてなぎ払い敵を切断する

…衆が寡を圧する道理は無い…と言っても、
お前達には何も聞こえず、何も感じる事はできないでしょうけど…



●闇と静止した時の中で
 一人の猟兵のユーベルコードで広間が闇に落ちた中、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は冷静に状況を観察していた。
 幸い光よりも闇の中の方を得手とする彼女はこの闇の中でも冷静に状況に対応できていた。
(「これ以上、略奪を続けさせるつもりは無い」)
 相対するは数多の秘宝を持つオブリビオン・フォーミュラ。その財の数々を打ち破り、この島を終の場にしてやることを彼女は決めていた。
 血の翼を広げ、幽霊船へと高速で飛び込んでいった彼女は即座に戦闘力のない残像を無数に創造し、幽霊達に攻撃を仕掛けていく。
 それは単なる幻影、しかしこの闇の環境下では幽霊か幻影かを判別する事は酷く困難。
 疑心は増幅され、幽霊の一体が残像へと血を啜る銛のメガリスを突き立てたのが災厄の始まり。途端、呪詛に込められていた精神汚染のカウンターが幽霊を洗脳し、出鱈目に周囲に武器を振り回し同士討ちを開始する。
 数が多いのであればそれを利用する――心を操る外法はあまり使いたくはないが、この終の王笏を討つ為ならば使うことに躊躇いはない。
「……聖痕解放。至高の天より、深淵の獄を賜わん事を……」
 同士討ちが本格的に始まった騒ぎに乗じリーヴァルディがユーベルコードを起動、左目の聖痕に異端の大神の力が降り注ぎその時間を支配する力が周囲を塗りつぶす。
 静止した時の世界――その中を動けるのは時間を操る能力を持つものだけ。
 大鎌をリーヴァルディが振るう。幽霊達の霊魂が刈り取られ、その大鎌に降霊され吸収されていく。
「……衆が寡を圧する道理は無い……と言っても、お前達には何も聞こえず、何も感じる事はできないでしょうけど……」
 手当たり次第刈り取ったリーヴァルディは幽霊船の下にまで近づいていたカルロスへと飛び込み黒き大鎌を全力で一閃。
 一撃ではまだ浅い。追撃を見舞おうとしたその時、幽霊船の上から何かの置物を抱えた幽霊がそれをカルロスに向けて放り投げる。
 形はメリーゴーランドだが、あれは周囲の時に干渉する類のメガリスだと幽霊の動作から直感。まずいと感じ一旦距離を取れば、置物に触れたカルロスが静止した時の中で動き出し膝をつく。
 同じ条件になった今ユーベルコードを起動し続ける事は数的な面でも不利、そう判断し異界の大神の力を解除すれば、広間の時がかちりと動き出す。
 あのメガリス効果がどれほど続くのかは分からないが、同じ方法は通用しないだろう。
 だが幽霊船の手数を削り、カルロスにも十分な傷を与えた。これなら十分役割を果たしている事に間違いはない。
 闇が立ち込める広間の中、リーヴァルディは血の翼を広げ次なる支援行動を開始するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
【宙花】
スモークミサイルを澪を避けるように発射し、煙で『目潰し』
さぁ!ここよ(澪は)ここにいるわ!!
あによ、そうやって接近拒めるんだから別に良いでしょ?
それに、貴女とわたし二人でアイツを倒しきれないとでも言うのかしら?

光学『迷彩』で姿を消し、こっそりティターニアで『空中戦』
澪…貴方の尊い犠牲は忘れないわ!
あぁ、タロスは一応貸しといてあげるから【盾受け・オーラ防御】

船の上にたどり着いたら後はマイクロミサイルにミスティルテインの『一斉発射』【範囲攻撃・爆撃・乱れ打ち】
というわけで弾は撃ち切ったから大将首は譲ってあげる!

(無言で手を差し出し)タロス貸出料で前の賞金はわたしのもので良いわよね?


栗花落・澪
【宙花】

カルロス相手でもブレないの凄いなって思うけど別に痺れも憧れもしません
はい

先制は【高速詠唱】で【破魔】と【呪詛耐性】を乗せた【オーラ防御】
同時に足元に破魔を乗せた★花園を展開、広げる事で聖壁生成
幽霊達とカルロス双方の接近を妨害、一歩でも踏み込めば足止め
遠距離攻撃は【聞き耳】で位置を聞き分け軌道を推測
【空中戦】も駆使して回避しつつ当たっても【激痛耐性】

はいはい囮は引き受けますよ
僕と遊ぼうか、カルロスさん

ヘスティアさんの幽霊船撃墜に合わせ
【高速詠唱】でカルロスを狙い光魔法の【属性攻撃】で目眩し
その隙に【催眠術】を乗せた【歌唱】で操る【指定UC】
動きを封じたうえで戦場の花々を操り【浄化】攻撃



●宇宙海賊と聖なりし歌
 血が、ぼたぼたと広間の床を汚していく。
 深々と胴を斬り裂かれて呼吸を荒くしたカルロスは、鉄鎖を操り甲板に己の体を再び引き上げる。
 幽霊船の船首、海神を象ったと思しき像が不気味に輝けば、降霊の大鎌に斬り裂かれた幽霊船員達が削り取られた傷もそのままに立ち上がる。
 だが全てではない。復活不可能な程に削られたものもかなりいたようで、頭数はかなり減っている。しかしまだ戦闘は可能だろう。
『改めて不埒者共を蹂躙せ――』
 カルロスが言いかけた時、甲板に一発のミサイルが撃ち込まれて炸裂、吹き出した煙は幽霊戦の甲板を中心に広間中に広がってその視界を潰す。
「命中! 流石ねわたし!」
「はい」
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)とちょっと目が死んでいるようにも見える栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。
 澪の周囲にはオーラが、そして足元には魔力を込めた聖痕を翳し生じた仇なすものを払う花園が広がっている。
 二つの守りは邪なるものを寄せ付けぬ聖壁といえるほどのもの。幽霊船の幽霊もカルロスも、どちらも迂闊に踏み込むには危険なものだ。
 鉄壁の守りの陣地に陣取り視界が極端に悪くなっている幽霊船の上、このまま向こうに攻撃の方向すら気付かせずに遠くから削りきるか――
「さぁ! ここよ! ここにいるわ!!」
 澪の背後に回り込んで、そんな事を大声で宣うヘスティア。いきなり台無しである。
 相手がこのグリードオーシャンのオブリビオン・フォーミュラであっても全くブレる様子の無いヘスティアは純粋に凄いとは思うがそこに痺れたり憧れたりはしない。
 精度は悪いが大雑把に狙いを定めただろう光矢が降り注ぐ中、澪はヘスティアを少しだけ恨めしげに見る。
「あによ、そうやって接近拒めるんだから別に良いでしょ?」
 確かにこの聖壁ともいえる守りは万全、近づいてきても相手が幽霊である以上通す事はないだろう。
「それに貴女とわたし、二人でアイツを倒しきれないとでも言うのかしら?」
 ――そんな風に信じる言葉を言われてはどうにも返しようがないではないか。
「はいはい囮は引き受けますよ」
 もうすっかり慣れっこに、ややぞんざいな口調でオラトリオの少年は答える。「澪……貴方の尊い犠牲は忘れないわ!」
 軽口を叩きながら、妖精の翅を象った白いジェットパックを起動させたヘスティアは煙と闇で酷く視界が悪い空へと飛び立つ。
「僕と遊ぼうか、カルロスさん」
 澪の声に向け、カルロスのものより一回り小さな鉄鎖が伸び捉えんとするが、その風切音はしっかり澪の耳に届いている。
 音から位置と軌道を推測、空に跳ねれば触れたものを拘束する鎖は精度が低いからか空を切り行き先を見失う。
 そこに五なる穂先を持った灼熱の槍が豪速で投擲される。だが澪を貫かんとしたその槍は鏡の如く磨き抜かれた盾型ドローン『タロス』に阻まれる。
 本来ヘスティアを護るための装備ではあるが、今は澪を護る為に貸し出されているそれ。
 その事に内心感謝しつつ、囮として澪は闇と煙の中放たれる幽霊船から襲いかかる砲撃やメガリスの攻撃を躱し、時には耐え囮の役割を果たしていた。
 そして光学迷彩を施し完全に煙に紛れていたヘスティアが音もなく甲板に着地、
「さぁ! 素敵なパーテイーを始めましょうか!」
 そう高らかに宣言し、非常に悪い視界の中、ジェットパックから五百以上のマイクロミサイルを周囲に発射しつつパックに繋がったビームライフルを高出力で発射する。
 接近戦は不得手な彼女、一人たりとも近づけぬように、この場で全弾を使いつくす程の勢いで幽霊達を打ち抜き爆散させていく。
 しかしそんな大暴れは当然長続きはしない。弾切れとなればその瞬間速やかに甲板から飛び立ちジェットパックで離脱。
「というわけで弾は撃ち切ったから大将首は譲ってあげる!」
 そう澪に呼びかければ、オラトリオは聖痕の力で広がりし花園に立つ澪は高速で詠唱を行って光の魔法を紡ぎ出し解き放つ。
 ヘスティアの真下、飛び立った彼女を見上げていたカルロスと幽霊達の視線の先に圧倒的な光量が弾け、視認した全ての目を潰す。
 闇から光、その強烈な揺さぶりにカルロスも思わず目を閉じてしまうが、そこに聞こえる少年の歌声。
 小瓶から取り出した羽の装飾のマイクで声を拡大し、広間中に奇麗な歌声が響き渡る。
 耳にした者を催眠に落とし込む魔力を込められたその歌声を振り払う王笏、しかしそれと同時に細かな刃に肌を裂かれる痛みが走り、端正な顔立ちが僅かに歪む。ようやく慣れてきたカルロスが見たものは歌声に合わせ舞う花園の花弁。
 聖なる花畑の花弁は当然邪を退ける力を持っている――それらは歌声に舞い、幽霊たちを次々に斬り裂いていく。
 この船に縛られているからか完全には浄化されないが、それでもカルロスを含め多くの傷を刻んだのは間違いない。
 そして澪の傍、花園に降下したヘスティアが無言で澪に手を差し出す。
「……タロス貸出料で前の賞金はわたしのもので良いわよね?」
 やはり彼女はとことんイイ性格だ、そんな風に澪が思ったかは定かではない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イスラ・ピノス
いよいよ本体だね
まだまだこの世界、回り足りないし僕の故郷もあるんだもの
奪わせはしないよ

敵の先制へはまずクリーピングコインに目くらまし目的で突撃して貰いながら距離を取り、回避を最優先。
直撃は受けないよう気をつけて余波はソーダオーラで防御、爆発物や触れるとまずい系のものは飛遊星の花火弾幕とアクアストローでの炎の泡で誘爆させよう!

準備が出来たらシェイプ・オブ・ウォーター!
場所を変えて空を飛ばれるアドバンテージをまず崩しちゃおう。
高速泳法・水中機動で絶えず動いてソーダ水槍と渦潮を仕掛けるよ。
攻撃は勿論、捕獲系のメガリスにも注意!
あと爆発物持ってるのが分かったら炎の泡で敵中で爆破させるのも狙うね


リリスフィア・スターライト
アドリブ歓迎、連携、苦戦描写OK

カルロスが使うメガリスは反則級のもの
ばかりだけれど全力で挑むだけだね

まずは空飛ぶ幽霊船を何とかしないかな
全力魔法による天体破局で太陽みたいに眩しい光を発生させて
敵船団の視界を奪うようにしたいかな
私自身が目が眩まないよう
電脳ゴーグルを装着して対策しておくね
爆発や煙に紛れて狙いを付けさせないように立ち回るね
多少のダメージを受けても耐え抜いてみせるね
順調にかく乱できたならカルロスに接近して斬り込むよ
牽制用にスタンナイフを投げつけて
隙を突いてから魔剣で斬り裂くよ
幽霊船が砲撃してくるようならカルロスを
盾にするような立ち回りで狙いを付けさせないようにだね


カシム・ディーン
終盤戦共闘希望
機神搭乗
最早決着はついた
僕は真面目に戦う気はありません
そういうのは他に任せます
「メルシー気づいているよ?ご主人サマったらカルロスを見送るつもりなんだ?」
うっせ

対SPD
【属性攻撃・名声・情報収集・視力・戦闘知識】
光属性を機体に付与
視認そのものを避けて存在自体を隠す
その上で周囲の状況と神殿の構造把握
更にメガリスの捕捉
何処にどんなメガリスがあるか把握
【盗み】
可能な限りメガリスを強奪してユベコの成功率を下げる
その上で癖を見切り
【念動力・武器受け】
可能な限り避けてそれでも正確に狙うなら念動障壁を展開して堪え
致命だけは避け

UC発動
召喚
メロディア・グリード
指示
カルロスの傍で共に最後を迎える


リゼ・フランメ
この羅針盤戦争の終わり
王笏を砕き、この海の世界に穏やかなる風と時を

戦蝶の風雅に、オーラ防御と火の属性攻撃を付与し
周囲に渦巻く火と陽炎のヴェールと化して身に纏って狙いを絞りづらくした上で、ダッシュ+残像で戦場を駆け抜けるわ
鎖は自在に伸びても、私自身を捉えられなければ空を切るだけでしょう

そして捉えようと十分以上に長くなり
つまりは巨大になって小回りが利かなくなれば、私の反撃
舞踏でターンを刻むように駆けるスピードそのままに鋭く身を翻して、劫火剣に破魔と焼却で聖なる炎を灯しながら切り込む

鎖が戻るより速くと、早業で放つは攻撃回数重視のUC
強欲の罪を切断で灼き、刻み
麗しの姫の元へと、その魂を送る剣の花の如く



●終の王笏、決着
 少し時を遡り。
 王笏と猟兵達が戦いを開始した頃、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は宮殿の中をキャバリアたる界導神機『メルクリウス』を駆り進んでいた。
 巨人並みの大きさの機体は商人と盗賊を加護する神の名に相応しく軽快に動き、付与された光の属性により周囲からの視認を阻害している。
 とはいえキャバリアの巨体、屋外なら誤魔化しもきくかもしれないが、屋内では気流が発生して気取られてしまう可能性もあるだろう。
『それにしてもご主人サマやるねー。戦ってる隙にメガリスを盗み出すなんて!』
 キャバリアのコックピットでカシムに可笑しそうに話しかける鶏の立体映像。
 そう、だからこそ。この血風吹き荒れる馬鹿騒ぎの間が最大のチャンスである。
「最早決着はついた、真面目に戦う気はありませんよ」
 彼の本業は盗賊、この場が王宮で財宝であるメガリスが大量にあってチャンスがあるならばやる事は一つだ。馬鹿正直に戦うのは他に任せればいい。
『メルシー気づいているよ? ご主人サマったらカルロスを見送るつもりなんだ?』
「うっせ」
 キャバリアのモニターに映る宮殿の情報を処理しつつ、カシムは鶏の映像と軽口を叩き合いながら宮殿内のメガリスの在処を探っていく。

 そして現在、広間。
 一月に渡る羅針盤戦争の終わりはもうそこに迫っていた。
 カルロスを乗せた幽霊船が高く浮かびあがる。船首に立つ王笏は猟兵達を睥睨するかのよう。
 これだけの攻撃を受けてなおその風格を崩さないのは数多の反則級の力を持つメガリスがあるからか、あるいはカルロス自身の力と矜持故か。
(「だけれど全力で挑むだけだね」)
 騎士の人格を表層に浮かべたリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は、見上げ、緋色の魔法剣を構える。
 その隣に並び鮮やかな赤の竜の女騎士、リゼ・フランメ(断罪の焔蝶・f27058)が優雅な所作で構えるは劫火剣『エリーゼ』。
 王笏を砕き、この海の世界に穏やかなる風と時を齎す、そんな彼女の意志を具現化したか如き焔の戦蝶は彼女に寄り添うように舞い、火と陽炎のヴェールとして周囲をふんわりと覆っている。
 この場にもう一人、ソーダ水の髪持つ冒険商人、イスラ・ピノス(セイレーンの冒険商人・f26522)は冒険が好きだ。
 利益を求め冒険を求め、大海原を巡る彼女だけれどもまだまだこの世界を回り足りないし、それに故郷もある。
 彼女の抱く探求への欲望はこの欲望の大海を支配する七大海嘯にすら負けていない――だから、奪わせはしない。
 幽霊船の側面が開き、大砲の砲口が猟兵達に狙いを定める。爆音、同時に三人は散開。
 即座にリリスフィアが電脳ゴーグルを目深に装着し術を紡ぎ始める。
 彼女の全力を込めたユーベルコードにより太陽の如き強烈な光を発生させようとする。が、その気配を察知した幽霊達は幽霊船の大砲からリリスフィアを目掛け次々に砲弾を放つ。
 多少のダメージは覚悟の上とはいえ、攻撃を受けながら制御の難しいこのユーベルコードを十全に発動することは難しい。一旦術を中断し砲弾の直撃を回避するが、次にメガリスらしきロングボウに矢を番えた幽霊が甲板の縁から彼女を狙っている。
 だがその幽霊に花火が直撃し炸裂、イスラの妨害だ。
 続けて彼女が金貨をばらまけば、その空飛ぶ金貨の群れは幽霊達に向けて散弾のように一直線に飛んでいけば、それに気を取られている隙にイスラとリリスフィアは幽霊船から距離を取る。
 闇は薄れ煙幕も消え去った戦場、幽霊達は地上の猟兵達に容赦なくそのメガリスの力を開放していく。
 さらに王笏カルロスはその手にした鉄鎖ドローミをリゼに向けて放つ。
 上空から恐るべき速度で一直線に伸びる鉄鎖――だが蜃気楼の如くリゼの像が揺らぎ、駆ける彼女の実像を捉える事能わず鉄鎖は床に突き刺さる。
 そしてそのまま地を這う蛇のようにリゼへと伸びていく鉄鎖、それを回避するリゼは速度も然るものながらステップを踏む際の優美さは蝶のようで。
 優雅に戦場を駆ける赤竜の騎士を捕えんと、空間そのものを拘束するかのように伸び続けていく鉄鎖ドローミ。伸びた分の重みが増す訳ではないようだが、それでも広間の床面を徐々に鉄鎖が覆い隠していく。あまり長く躱し続けるのは至難、そう判断したリゼはその速度を上げていく。
 速度を上げる彼女を捕えんと鉄鎖の操作にカルロスが気を取られる中、イスラは彼女のソーダ水の髪の間から小さなストロー、もとい杖を取り出し、怪しげなカード束による連続花火と杖から炎の泡を幽霊船の周りをぐるりと駆けながら放っていく。
 散発的な反撃が行われるが、距離もあってイスラを直撃することもなく、攻撃の余波も彼女の纏うソーダオーラを貫くことはできない。
 そして空飛ぶ金貨や花火の閃光に紛れつつ、マントで存在感を薄れさせながらリリスティアは幽霊船からの攻撃を躱しつつ機会を伺っていく。

 五分足らず、だが回避する当人には数十倍にも感じるほどの時間が経った時、扉から一機のキャバリアが飛び込んでくる。
 カシムの操るメルクリウスは空に浮かぶ幽霊船に向け淀みなく跳躍、船首で鉄鎖操るカルロスに向け巨大な鎌剣を振るう。
 奇襲にこれは逃れられぬと判断したか、王笏が対抗せんと取り出したるは蒼海の輝きを宿すオーブ。
 だが、
『なっ……!?』
 あらゆる行動――この場合は回避なのだが、それを成功させるメガリスの効果が発動した手応えがない。
 僅かに驚愕の表情を浮かべた王笏を見たカシムは作戦が上手くいったと判断する。作戦――彼が発見した王宮内の全てのメガリスを強奪し、外へと放り出す事だ。
 行動の困難さに見合った代償は王宮内のメガリス、それを強奪し所有権を奪った上で外に放り出したなら消費の対象からは外れてしまうはずだ。
 全てを見つけられたとは思ってもいないが、少なくともオーシャンオーブの機能は大きく損なわれている。
 その事実を理解したカルロス・グリードは完全回避を諦め、ダメージを減らしつつ甲板から落ちないようにする為にオーブの力を行使。
 まだ隠されていたメガリスを代償にして発動した結果、恐ろしい加速と共に飛び込んできた巨体の一撃を受けたにしてはその身に刻まれたのは酷く浅い傷。
 そして体勢を立て直した王笏はキャバリアに対し豪奢なカトラスで斬りかる。
 カシムとメルクリウスは念動力で強引に避けようとするがまるで引き寄せられるかのように力が働き回避しきれない。恐らくはオーブの力だろう。
 だからカシムは念動障壁を全開で展開。カトラスが狙った部位、おそらく致命傷になるだろう部位を確実にガードする。
 この瞬間、王笏の意識は真下にいた三人の猟兵達から完全に逸れていた。
 キャバリアを階段のように連続で跳ね、リゼが幽霊船の甲板へと飛び乗る。
 即座にドローミの大部分を床に残したまま先端を伸ばし飛び乗ったリゼを拘束せんとするカルロス。
 しかし、ターンを刻むようなリゼのステップの速度を捕えられず空を切って。
 更にカシムが杖型の砲撃兵装より弾丸を放ち牽制、カルロスの癖を見切った上で放たれたその魔弾の群を、カルロスは回避することはできない。
 恐らく隠していたものも含め、完全にこの王宮のメガリスすべてが代償に支払われてしまったのだろう。
 だが、ダメージにも王笏は鉄鎖を操る手を緩める事はない。
 そこに、地上からセイレーンの声が響く。
「ごあんなーい!」
 瞬間、天井からソーダ水の雨や水槍が次々に降り注ぎ幽霊船をも真上から襲う。豪雨のごとく降り注ぐソーダ水に幽霊船の船員は貫かれ攻撃を停止、それのみならず落ちた水は広間中をソーダ水で満たしていく。
 猟兵達が呼吸できないという事はない。そのソーダ水の雨と共に猟兵達は自由に動ける泡で包まれているから、深海と似た環境でも問題はない。
 一方の幽霊船は、ソーダ水の雨で満ち満ちた広間の中、働き続ける浮力に抵抗し続け動く余裕を失っている。
「唸れ雷光、轟け嵐、渦に飲まれ、全てを灰燼に帰せ!」
 泡に包まれたリリスティアの言葉と共にユーベルコードが起動、するとソーダ水の海が太陽の輝きに満たされる。
 太陽光を現象と見立て、光の属性を合成する事で極端に増幅、海の中に出現させたのだ。
 ソーダ水の領域が眩い光に照らされ幽霊と王笏の目が眩む中、イスラとリリスティアは幽霊船まで泡に合わせて浮上する。
 リリスティアの装着したゴーグルは光の中でも正確に狙うべきオブリビオン・フォーミュラの姿を捉えていて、カルロス目掛けナイフを投擲すると同時に包んだ泡を纏いながら切り込んでいく。
 ナイフはカルロスの手にした豪奢な刃に弾かれたが、次に襲い掛かる緋色の魔法剣には対処が間に合わず連続で切り裂かれてしまう。
 甲板上のカルロスを幽霊船が砲撃で支援する事も出来ず、大剣を手にした幽霊が眩む視界の中カルロスの助勢に向かおうとするがそれを泡に包まれた炎の泡が妨害する。
 ソーダ水の深海を自由に泳ぎまわるイスラ、幽霊達は完全に翻弄、妨害されてまともに手出しできない状態となっていた。
 視界が潰れたことで精度が甘くなったドローミ、今が頃合いとばかりにリゼは回避した瞬間に身を低くしドローミの先端を置き去りにして王笏へと一気に距離を詰めつつ彼女はユーベルコードを起動。
「閃くは赤、散るは花、咲き誇るは夢想の刃」
 手にした劫火剣の優美な刀身が閃き、かの王が体現する強欲の罪――それをも灼き祓う炎を宿す剣閃が恐るべき早業でカルロスの体を鮮やかに切り刻む。
 無数の斬撃に炎とは異なる紅に染めながら焔に包まれた王笏に、まるで麗しの姫の元へと魂を送るかのように剣の花が開き。
 そして、王笏が倒れ幽霊船がその乗員ごと姿を薄れさせ、消失した。

●ある王笏の最期の一つ
 ソーダ水の深海が解除され、広間には静寂が満ちていた。
 まだ終の王笏カルロス・グリードは消滅していないが、トドメすらなくとも消失することは間違いない。
 ふと、カシムがキャバリアを降りてユーベルコードを起動する。
「……帝竜眼よ……時空を操りし書架の王たる竜の力を今こそ示せ」
 それは対象に対して有効なオブリビオンを召喚するもので、召喚されたのは王笏の妻たる『桜花』。
 完全に再現できている感覚はない。あの恐ろしい無限再生能力等はまったく、他も常人と変わらぬ程度の能力だろう。
 けれど、この場にはそれで十分。一つの夫妻が最期の時を共に過ごすには能力の多少は関係ない。
 二人のコンキスタドールを遠巻きに猟兵達は眺める。語らいは静かに、内容を聞き取る事は出来ない。
 しかし、最期にしがらみを手放し消えゆく二つの姿は、欲望の海に君臨していた者とは思えない程に穏やかだった。

 グリードオーシャンを支配していた七大海嘯『王笏』の本体はここに潰え。
 主を失った宮殿に猟兵達の勝利の凱歌が響き渡るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月02日


挿絵イラスト