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享楽の皿、悪逆の贄

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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――まずは一皿目。
 美しく華やかなエディブルフラワーを、透明なコンソメゼリーに封じ込めた前菜。一点の曇りもない宝石のような輝きに微笑みながら、そっと上部をスプーンで抉るとなんとも甘美な悲鳴が響いた。

――次に二皿目。
 きのことチーズのポタージュ。オーソドックスだが、それ故に素材と技術が光る逸品。そしてクリーム色のスープにくるりと描かれた赤の彩りも美しい。程よく混ざったところを救い取れば、爪が割れる程に鳥かごを掻き毟る様が見て取れた。

――更にメインデッシュ。
 じっくりとローストされた鴨肉に、ブラッドオレンジのソース。皮目はこんがりと、肉は柔らかくジューシーに。芸術的なまでの焼き加減にうっとりとしながらナイフを入れると、もういやだやめておねがいおねがいゆるして、と泣き濡れた声が漏れた。

――そしてアントルメ。
 飾り置きたいほどに美しい仕上がりのミロワール・ショコラ。“鏡”と名されるに相応しい、艶めいたチョコレートでコーティングされた表面に罅を入れる瞬間はなんとも贅沢で、崩れ落ちて泡を吹く様を見ながら口に運べば、舌が蕩けそうなほどに甘かった。


 食事の皿が取り換えられるたびに、目の前に置かれた銀の鳥籠もまた変えられていく。中にいるのはどれも美しく着飾られた人間だ。だが浮かぶ表情は皆一様に暗く、恐怖と苦痛に歪んでいる。そしてその姿に伯爵がほくそ笑みながら料理にカトラリーをつぷりと差し込むと、誰もが苦悶に喘ぎ苦しみだす。

掬い取ったゼリーは、脇腹を抉り取られるかの如く。
赤の混ざるスープは、内臓を掻き回されるかの如く。
ソース滴る肉料理は、四肢をもぎ取られるかの如く。

「ああ、私はなんていい拾いものをしたんだ。これで永遠に――愉しんでいられる!」
禍々しい黒の短剣を弄びながら、伯爵が次の皿を待つ。

そう、この世は並べて――我が享楽の皿の上だとも。


「やぁ、初めましてみんな。今日は僕のお話に付き合ってくれるかい?」
 真白の兎耳を揺らし、人当たりのよさそうな笑みでザジ・クルーシュチャ(箱の底・f19818)がグリモアベースに集う猟兵へと声をかける。
「ああ、勿論依頼のお話だよ。ダークセイヴァーでね、潜んでいるヴァンパイアの居城を見つけたんだ。」
 表向きは由緒正しい伯爵家とその城下町、となっているが実際に君臨してるのはヴァンパイアだ。そこで夜な夜な贅を尽くした晩餐会が開かれるのだが、そこで供される食材というのは――。
「人間だよ。正確には“人間の血を混ぜた料理”なんだけど、これにはちょっと仕掛けがあってね」
 まず伯爵は晩餐会を開く前に、必ず街から人を募る。名目は“招待客”だが、実情は皿に乗せる“食材探し”に等しい。そして選ばれた人間はそのまま調理に回される――わけではなく、まずは黒いナイフで指先から血を取ってから正装へと着替えさせられ、豪奢な人間大の鳥籠へと籠めて伯爵の前に供される。
「この伯爵が持ってる黒いナイフは“呪殺の黒曜”って呼ばれててね。ちょっとした呪いと曰くのアイテムなんだ。」
 本来は傷つけた相手の血を人形に垂らし、その人形を痛めつけることによって血の主に同じ苦しみと死を与えるという、藁人形的な呪い道具だったそうだ。だが、伯爵のふとした思い付きでその血を料理に混ぜた所、食べることでも血の主が苦しむことを発見した。そして料理では人形より効力が弱く、1度食べ終えてた程度は死なない――つまり気に入った贄はある程度“リサイクル”が効く、ということも。それ以来、伯爵の館で催されるのは悪逆非道を煮詰めたような晩餐会だ。血を混ぜた皿を喰らい、その血の持ち主が鳥籠の中で苦しむのを眺め愉しむ。苦痛をソースに、悲鳴をスパイスに、許しを請う声をガルニチュールにしたフルコース。
「けど、幾ら呪いがちょっと弱まるって言ったって、毎夜全身を蝕む苦痛にさらされたら…どうなるかは、わかるんじゃないかな。」
 四肢をもがれ、内臓を掻きまわされ、眼球をえぐり取られるような痛みと苦痛が絶えず続けば、並の人間ならあっという間に廃人になるだろう。実際既に幾人もが悲鳴すら上げられなくなり、伯爵に飽きられ無残に“処分”されているのだ。
「伯爵を慕うヴァンパイアや人間なんかは、客として一緒にその様子を楽しんでるようだよ。だから今回はまずそこに潜り込んでほしいんだ」
 晩餐会の開かれる日は、朝から城門で部下立ち合いの元“納品”が行われる。伯爵はとかく気に入れば何でも呼び込むので、入り込む余地は大いにある。“食材役”、“持ち込み役”、“招待客”。選ぶ役は何でもいい。とにかく懐に入り込むのが重要だ。
「ああでも、晩餐会はね。滞りなく進めなくちゃいけないんだ。入ってすぐ暴れちゃうと――先にいる“食材”たちが、死んでしまうからね」
 食材役が食べられた後に振り分けられる部屋に、既に納入された人間が囚われている。なので晩餐会の最中に暴れてしまうと、まずもってその人たちが殺されるだろう。だからひそかに準備を進めながらも、晩餐会は見届ける必要がある。それがどれほど醜悪で、悪趣味極まるものでも、だ。
「僕が見えたのはここまで。あとは現地で情報を集めつつ、になると思うけど…頼めるかい?」
 そういってザジが腰に下げた鍵束から、銀色の1本を手にする。それを虚空に差し入れてかちゃり、と回せば――悪逆の領地へと誘う、列車の扉が開かれた。
 


吾妻くるる
こんにちは、吾妻くるるです。
今回はダークセイヴァーにて
醜悪と悪趣味を煮詰めた晩餐会へご案内です。

●基本説明
構成:潜入作戦+晩餐会での騙し合い+囚われた人の救出と伯爵討伐
戦闘:判定【やや難しい】

★ご注意ください★
 このシナリオは性質上、残酷な場面が登場する可能性があります。後味の悪い結末になる場合もあります。ご了承頂ける場合のみの参加をお願いいたします。(なお表現は直接的なものは避け、匂わせる程度に留めます。)

●1章 潜入作戦
 晩餐会へと潜入するために、城門で行われる納入に向かいます。伯爵は常に新鮮な“食材”を求めています。以下の役割が望めます。

“食材”役。
 怯えた奴隷、攫ってきた貴族令嬢等が多い。気丈そうに振る舞う人間を折るのも好みだが、屈強な者よりはやはり女子供、着飾り甲斐がありそうな者や悲鳴の甘美さが優先して選ばやすい。そして伯爵は人の苦しむ姿を見るのが何よりのご馳走。つまり“食材”役と縁深い人間も、その人を食べる苦痛を担う役として潜入可能。

“持ち込み”役。
 食材を持ち込んだ人間も、望めば晩餐会に参加ができる。招待客になるか食材を口にする役になるかは、振る舞い次第。

“招待客”役。
晩餐会の参加者。身なりを整えて“趣旨”を理解した振り、伯爵を讃える様子を見せれば入り込みやすい。

●2章 晩餐会での騙し合い
 晩餐会の本番です。冒頭にて詳細な説明を致します。

●3章 囚われた人の救出とボス討伐
 会場の人間を庇いつつの戦闘となります。冒頭にて詳細な説明を致します。

★“黒曜の呪殺”について
 無事依頼を達成した場合につき、戦利品として入手可能です。こちらから提供できるのは【このシナリオにて入手した描写】のみになります。破壊、アイテム化、魔改造などご自由にどうぞ。但し1本しかありませんので、希望者が複数の場合は戦果+ダイス判定となります。ご了承ください。

それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『献上の宴』

POW   :    面白いものが見れると聞いたのです(堂々と客として潜入する)

SPD   :    ……(賑わいに紛れて潜入する)

WIZ   :    この珍しい品をご覧ください(売り手として潜入する)

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――おーうアルベルト様、今日も晩餐会をやるそうだな。」
「こんにちはマッテオ。そうなんですよ、お陰様で“食材”の仕入れと管理が大変で。」
「はっはっは、そうだろうと思って…ほーら、新鮮なのを持ってきたぜ。」
「ああ、助かります!…ふむふむ、相変わらずあなたのところは品質がいい。こんな上物、一体どこで狩ってくるんです?」
「ま、ま、それはいいじゃねぇか。こうして俺が仕入れてくれば、そちらさんは事足りるんだからさ」
「まぁそれもそうですね。ではこちらの金貨をどうぞ。」
「へへっ、毎度あり!」
 
――城門の前、いつも通りの朝の光景。会話だけならば働き者の商人と、城の執事のなんてことはないやり取りに聞こえる。だが、ほら!と言って投げ渡されるのは、生きた人間だ。ヒッ、と怯えた声をあげながらも枷を嵌められていては成すすべなく、幼い子供が地面に這いつくばる。それを何の感慨もなく見ていた執事が、奥に控えていたハウスメイドに“食材”を引きとるよう指示を送る。そのまま枷をひっつかんで引きずられていく子供たち扱いは、凡そ人間に対するものでは無い。家畜ですらない、ただただ消費され喰われるだけのモノ。

「ああ、新しい業者の方ですか?“食材”なら歓迎しておりますよ。それとも晩餐会にご参加の方でしょうか?」

 執事がにこやかに此方へと視線を送る。その口からは――鋭い犬歯が覗いていた。


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●補足情報

★城下町の人々
 女子供が減って、男性と老人の比率が高いです。城で何が行われているかは薄々感づいていますが、抵抗できるわけもなく従っています。鬱屈した空気が漂っており、家族を失った者が多いので情に訴えたり金を積んだりすれば、城に入るまでの協力者は得られるかもしれません。但し晩餐会には参加しません。

★人攫い
 晩餐会へ納品するために、周辺の街に頻出しています。“食材”役の潜入に利用可能です。

★城の警備
 見回り等はきちんと配しており、その殆どがあまり強くないとはいえヴァンパイアです。こっそり忍び込む、というのは理論上可能ではありますが、発見されれば伯爵の激怒は免れられません。その場合は城内に囚われた人間に甚大な被害が及びます。余り推奨される行為ではありません。

…他にも予想される状況、活用できる方策はあります。
皆さまの思うままにどうぞ。

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オブシダン・ソード
【黒剣】夕立/f14904
▼食材役+持ち込み役

こっちは人攫いの納入業者役
過酷であろう食材側に相棒を送り込むのは、心苦しいけど…仕事だからね
気にせず軽口は叩く
うんうん大丈夫、君ならコンテスト入賞間違いなしだよ

というわけで、彼を後ろ手に縛って奴隷商人風に連れていこう
え、縄抜けとかできるの君
じゃあ遠慮なくきつめに縛っとくから
真実味を増すためだよほんとほんと

納入場所についたら
掘り出し物が手に入ったんですよ、如何ですこの整った顔!透き通る肌!
旦那様もきっとお気に召すでしょう
みたいに売り込んでいくよ

お代は特別にお安く。その代わり私も是非『晩餐会』に―
ってね

いやあ、怪しい顔でへらへらするのが得意でよかった~


矢来・夕立
【黒剣】剣さん/f00250
▼食材役+持ち込み役

見ず知らずの人攫いに身を任せるより知人を巻き込むべきです。
いかにも怪しい男(剣さん)と顔のいい美少年(オレ)。
メインディッシュの座を狙っていくくらいでよいでしょう。十代男性部門は貰いました。

適当に縛ってもらえます?後で縄抜けするんで。
いえ緩い方が楽は楽なんでそれっぽいだけでいいんですけど趣味ですか?知らなかった 軽蔑しそう

まあしかし今は大人しくしています。
何せ綺麗系の美形なので物憂げにするだけで一幅の絵画待ったなし。
口を利かずともウソはつけるってことです。
胡散臭いのも怪しげなのも一概に悪いとは言えませんね。ほら誰も疑いませんよ。よかったですね。



「こういうのは見ず知らずの人攫いに身を任せるより、知人を巻き込むべきです。」
 暗く澱んだ空の下、雑木林の一角。街から城へとつながる道の脇にある樹の幹へと身を潜ませながら、矢来・夕立(影・f14904)がひそりとつぶやいた。
「そうだね、潜入した後にも色々手引きができるだろうし。賢明だと思うよ。」
 その言葉に同意するように隣立つオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)がうんうん、とにこやかに頷く。ここに来るまでの拠点で、本人の主張も合わせてオブシダンが奴隷商人を装って招待客に回り、夕立が食材として納入する手筈で話はまとまっていた。前情報を聞く限り、今回の割り当ては食材役の人間が最も過酷さを強いられる。実際に肉体を損なうのは軽微でも、疑似的に“喰われる”という精神的苦痛は計り知れない。その役割へと相棒を送り込むのは心苦しいが、これも仕事だからと自分を納得させて当の食材役の夕立へと視線を送ると。
「いかにも怪しい男と顔のいい美少年のオレ。…メインディッシュの座を狙っていくくらいでよいでしょう。少なくとも十代男性部門は貰いましたよ完全に。」
 いややっぱり心配とかいらないかもしれない。全然。全く。
「うんうん大丈夫、君ならコンテスト入賞間違いなしだよ」
 軽口には軽口で。そうやって遣り取りを返してる間にも、ひとり、またひとりと門内へ吸い込まれていくのが遠目にも見えて、そろそろ行きましょうか、とどちらからともなく声がかかる。
「というわけで適当に縛ってもらえます?後で縄抜けするんで。」
「え、縄抜けとかできるの君。じゃあ遠慮なくきつめに縛っとくから」
「いえ緩い方が楽は楽なんでそれっぽいだけでいいんですけどなんですかまさか趣味ですか?」
「いやいや、真実味を増すための致し方ない処置だよ。ほんとほんと」
「うわ…知らなかった…軽蔑しそう」
「聞いてる?」
 縛る間も奥様に…とか、性癖…等が聞こえた気がしたが、縛り終えれば口を噤んで夕立が愁いを帯びた表情を作り――仕事の顔へと変わる。
「それじゃ、行こうか」
 掛ける声に返事は無い。けれど横顔を見れば、夕立からの答えは十分に見て取れた。


「これはどうも、こちらが伯爵への献上品を納入する場所ですか?」
 何食わぬ顔で夕立を引き連れ、オブシダンが城門へと歩み寄る。丁度そこに検品中だったらしい執事服姿の男が、丁寧にこちらへと向き直り笑みを見せる。
「ああ、はいそうですよ。そういう貴方は?始めている顔の様ですが」
「何、私はしがない商人ですよ。今回たまたま掘り出し物が手に入ったので、伯爵に如何かと思いましてね。」
 へらりと口元に笑みを刷きながら、オブシダンがしおらしく俯く夕立の顎を掴んで執事の方へと向かせる。力加減は弱いが、その瞬間に合わせて夕立が柳眉を顰め、大げさに顔を跳ね上げて見せれば、正に奴隷を扱う商人と嫌々囚われた商品という印象を強くする。
「ほら。如何ですこの整った顔!透き通る肌!」
「ほほう、成程…異国の顔立ちをしていますね。確かにこれは珍しい」
「悲鳴も中々聞きごたえがありますよ。まだ細い少年の声でしてね」
 売り込む文句に合わせる様に、執事が夕立を見分するように覗き込む。そこへ苦渋を混ぜた憂い顔で視線を逸らせば、クク、と喉の鳴る笑い声が聞こえて――掴んだ、という感触を得る。何せ綺麗系の美形なので物憂げにするだけで一幅の絵画待ったなし、とは奴隷もとい夕立自身の自己評価ではあるが。

――口を利かずともウソはつけるってことです。

 その内心の読み通り、執事が一通り見終えてから満足げに頷いて、懐からじゃらりと重たい音を立てる袋を取り出した。
「ふむ…良いでしょう、こちら買い取りますよ。伯爵は近頃よく召し上がりますからね。特にこの身目なら、今日にも食卓に上がるでしょう。では、報酬はこれくらいで」
 差し出される数枚の金貨から、オブシダンが受け取るのは1枚きり。首をかしげる執事にわざとらしく人差し指を立てて、にこりと笑う。
「お代は特別にお安く。その代わり、私も是非『晩餐会』にご招待願えませんか?」
「…成程、かしこまりました。良い品を献上して頂きましたし、招待客のリストに貴方を記載しておきます。どうぞ――良い夜をお過ごしくださいませ」
 一瞬じろり、と品定めするような視線は送られたものの、品の良さとおどけたオブシダンの空気に毒気を抜かれたのか、程なく警戒を解いて執事が手元の羊皮紙にサラサラと何事かを書き込んでいく。そして次々と運ばれてくる“食材”と“持ち込み”、“招待客”たちの相手をするべく、控えていたメイドたちに指示をしながら離れた瞬間を見繕って、“奴隷商人”と“食材”が小声で成果を報告し合う。
「無事に入り込めそうだね。いやあ、怪しい顔でへらへらするのが得意でよかった~」
「胡散臭いのも怪しげなのも一概に悪いとは言えませんね。ほら誰も疑いませんよ。よかったですね。」
「それはそれは、お褒めにあずかり光栄だよ」
「変態なのはちょっと頂けませんが」
「なんて?」


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食 材 ……東洋風の顔立ちの少年

招待客 ……オブシダン・ソード

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
なんて悪趣味なのかしら!
残酷で醜悪でナンセンスで
えぇ、だからこそ――とっても素敵!
人間でもヴァンパイアでも
“人喰い”はみんな、メアリが殺すんだから

もちろん“食材”として潜入するわ
だって、メアリはアリスなんだもの
美味しそうって思われるのは得意なんだから

わざと人攫いに捕まり連れてこられた城の中
恐怖のあまり涙を浮かべて歯の根も合わない
それでもせめてもの反抗にと睨んでみせる
そういう活きの良い食材の【演技】をしてみせる

それと後ですぐ見つけられるよう
【獣の嗅覚】で他の子達の臭いを覚えておく

もちろん、ここまで連れてきてくれた人攫い
あなたの臭いも忘れないでおいてあげるから
いずれ復讐するその時まで、ね



「なんて悪趣味なのかしら!」
 暗澹とした空の下、人気のない街の路地裏に立ちながらメアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)が声高に言い捨てる。事前に聞いた依頼はまさに悪趣味を煮詰めたような内容で、人によっては聞くにも耐えない程だろう。
残酷で、醜悪で、ナンセンスで。
「えぇ、だからこそ――とっても素敵!」
 だか、メアリが浮かべるのは怯えでも軽蔑でもなく、凄絶なほどの笑みだった。人の売買も、悦楽のためだけに強いる苦痛も、何もかもが許し難い。中でも最たるものは、“人を喰らう”こと。それを愉しむというなら、人間でもヴァンパイアでも関係ない。
「“人喰い”はみんな、メアリが殺すんだから」
 ぺろりと唇を舐めて、加害者としての名を口にする。そうして城に潜り込むのに選んだのは、もちろん“食材”役だった。

――だって、メアリはアリスなんだもの。
美味しそうって思われるのは得意なんだから。

 幼い少女の容姿に、怯えたような泣き顔。迷子を装って路地裏をほっつきあるけば、案の上数刻を待たずに人攫いが親切めかして近寄ってきた。そのまま何にも知らないフリで人攫いに話を合わせ、連れて行かれた先はたっぷりと詰まった“食材”が啜り泣く、幌馬車の荷台だった。縛られる頃には恐怖のあまり涙を浮かべ、歯の根も合わない中でそれでもせめてもの反抗に睨んでみせる――そういう活きの良い演技も難なくこなしてみせる。その態度にいたく満足そうな人攫いの顔を見届ければ、馬車が待ちかねたように走り出した。ガタガタと揺れる荷馬車に運ばれる様は、まさに屠殺場に向かう家畜そのもの。自らの結末を悟った食材代わりの子らが泣き止まないのを見かねて、メアリが大丈夫よと慰めを口にする。実際今日の事が上手く運べばそれは慰めから真実に変わる。依頼のことは明かせなくても、今は後に繋げる為の働きを、と鼻をひくつかせて集められた食材たちの“匂い”を覚えていく。城で離れても必ず見つけられるように。加えてここまで連れてきてくれた人攫いの臭いも脳裏にしっかりと焼き付ける。

――いずれ復讐するその時まで、ね。

獲物を見つけて悦ぶ狩人は、果たしてどちらなのか。
それを知るのは、メアリただ1人だけだった。

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食 材 ……メアリー・ベスレム

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大成功 🔵​🔵​🔵​

尾守・夜野
私は女性人格で伺うわ

客人として潜入を試みましょう
馬車を御者として変装させた別の私(俺)に引かせ、私は貴族の様に黒纏をドレスに変形させた姿で伺うわ

「えぇ是非とも参加させていただきたいの
美食家であり、芸術…音楽(悲鳴)を好むと噂の伯爵様の晩餐会ですもの
とても素敵な物なのでしょうね!楽しみなのだわ!
最近私の領地からは優れた音楽家が皆消えてしまったのよ…毎夜の楽しみだったのに!」

エスコートに差し出された私(震えてる演技の俺)の手をあえて腕を覆ってる黒纏部分に触れさせ、絡み付かせ血を吸わせ悲鳴をあげさせるわ

…まぁ私からも血吸ってるんだけど外部からの方が吸うから見た目吸血鬼っぽく見えるでしょう



――ガタガタと、馬車が走る。

 伯爵の城へとつながる、街からの一本道。多くは徒歩か、あっても荷馬車が多い中、貴人を運んでいると一目でわかる馬車が駆け抜けていく。数多を追い越し辿り着いた城門で、御者が恭しく扉を開いて手を伸べれば、降り立つのは豪奢な黒いドレスを纏った貴婦人――尾守・夜野(墓守・f05352)の女性たる人格が、楚々と降り立った。
「御機嫌よう、こちらが晩餐会の受付かしら」
「御機嫌よう、美しいマドモアゼル。本日は出席をご希望で?」
 にこりと微笑み尋ねる執事に、勿論と頷いて夜野が期待に満ちた眼差しを向ける。
「えぇ、是非とも参加させていただきたいの。美食家であり、芸術…音楽を好むと噂の伯爵様の晩餐会ですもの。とても素敵な物なのでしょうね!楽しみなのだわ!」
 美食は苦痛に、芸術は残虐に、音楽は悲鳴に。置き替えられたものを知って尚素敵だと誉めそやすのは、この先に進むための虚言だ。
「最近私の領地からは優れた音楽家が皆消えてしまったのよ…毎夜の楽しみだったのに!」
 そういってぺろりと唇を舐めて見せれば、執事は勝手にそれがどういう意味かを読み取ってくれるだろう。更にダメ押しで、エスコートに差し出された震える御者の手を、あえて腕を覆ってる黒纏の部分に触れさせる。ぞわりと見せつける様に絡み付かせて、赤く滴る血を吸い上げて、少々派手に悲鳴をあげさせる。
「ぎゃあァァー!」
「ほら、もうこの子しか残っていないの。だから是非ともご相伴にあずかれません?」
 悲鳴を上げているのは分身体だし、本当は自分自身で血を吸うこともできるが、これはあくまで相手を納得させるための演技。なら敢えて分かり易く見せた方が吸血鬼として見られやすいだろう、との計算を兼ねていた。
「それはそれは、さぞかしお寂しいことでしょう。どうぞ、晩餐会にて無聊を慰めてくださいませ。伯爵様は同族を厚く遇しますので」
 そして読み通り素直に納得した執事が、羊皮紙に筆を滑らせていく。その様子に、目論見が上手くいった夜野が演技ではなく――本当に、微笑んで見せた。

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招待客 ……尾守・夜野

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大成功 🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
ダンピールのワタシは食材と招待客のどっちが自然デショウカ…どっちとも取れる感じで行ってみマスカ!

UC発動して城門の執事に話しかけマス。
あのう…ワタシ、ダンピールなのですがヴァンパイア(道中それっぽいのを殺して招待状を奪う等の行動が取れるならば取る※【先制攻撃】【暴力】)であるお母様から伯爵様の元へ迎えと命じられたのデス…伯爵様の催しはきっとお前のためになる、と。
これからどんな催しが行われるのか分かりマセンが、隠し子でダンピールのワタシなんかに勉強の機会を与えて下さったお母様の期待に応えるため!ワタシ!精一杯頑張りマス!

全部嘘八百デスが。UCが効果発揮したら招待客。しなければ…どっちデショウ?



「さて…ダンピールのワタシは食材と招待客のどっちが自然デショウカ…」
 暗く澱んだ空の下、城へと続く道の途中。あと少しで辿り着けるという位置に居ながら止賀茂・絆(キズナさん・f34084)がうーん、と頭を悩ませていた。ヴァンパイアの血統を継ぐとはいえ、半純潔のダンピール。純血種の彼らがそれを果たして“仲間”と見るのか“食材”として捉えるのかはいまいち判断がつかない。なら、ここは一つ。
「うーん…決めきれないので、どっちとも取れる感じで行ってみマスカ!」
 “臨機応変”。必要な仕込みはしつつも、その場の雰囲気に任せての随時対応、と作戦の方向を決める。ようは城に潜り込むことが肝心だ。中に入りさえすれば後はどうとでもなる、と腹をくくって背筋を正し、笑みを浮かべて城門へと歩み寄っていった。

「こんにちは、執事さん。ご招待の受付はコチラでよかったデショウカ?」
「やぁお嬢さん、晩餐会への参加を希望ですか?」
「ハイ!あのう…ワタシ、実はダンピールなのですが。ヴァンパイアであるお母様から、伯爵様の元へ迎えと命じられたのデス。…伯爵様の催しはきっとお前のためになる、と。」
「ほう…お母上からの命令ですか」
 その話でふと執事の胸内に過るのは、淡い疑念だった。晩餐会の内容を知って娘を送り出すとは、果たしてどのヴァンパイアだろうか。然し記憶を探ろうとすればするほどに、何故かふわりと執事の脳に霞が掛かっていく。――疑念を抱くものへと憑りつく、幽霊の惑わし。絆への好意と信頼を強制する催眠が、五感では感知できない領域からゆっくりと意識化に語り掛けていく。

――この娘が言うことの、何処を疑う必要がある?
――きっとさぞかし名高いヴァンパイアの娘なのだろう。
――なら、それだけでいいじゃないか。
――ああ、それ以上気にすることなんて、何もない。

「これからどんな催しが行われるのか分かりマセンが、隠し子のワタシなんかにまでこんな勉強の機会を与えて下さったのデス。お母様の期待に応えるため!ワタシ!精一杯頑張りマス!」
 にこやかに微笑んで、身振り手振りに無邪気さを装えば、一層深く催眠が浸透していって、執事の眼差しが見守るような穏やかさを帯びていく。
「ええ、今日の晩餐会はさぞかし良い勉強になるでしょう。可愛らしいお嬢さん――さぁ、どうぞたっぷりとお楽しみくださいませ」
 ふわふわと自覚できない意識のまま、執事が絆を案内するよう控えていたメイドに指示を飛ばす。

(まぁ、話した内容は全部嘘八百デスが。潜り込めたのなら上々デース!)

 こっそりとガッツポーズを決めた後、絆が丁重に城の中へと案内されていった。

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招待客 ……賀茂・絆

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大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィリヤ・カヤラ
【幸先】
食材役。

私は食材役だね。
折角だから黒のドレスでも着ていこうかな。
貴族令嬢に見えるかもしれないし。
そういえば伯爵はダンピールの血は大丈夫なのかな?
料理に混ぜてだから大丈夫かなぁ?

食べられる前の人間も見られるんだよね。
ワクワクするけど表情には出さないようにするよ。
やり取りや周りを少し不安そうにしながら見てようかな。
連れて行かれる時にはやっぱり不安そうに一瞬ハクさんを見てみるよ。
ハクさんはどうかな?楽しんでそうかな?

私は人間の血は吸ってるけど、
吸われる人がどんな気持ちで来るのかは知らないし。
自分でも体験できるのが貴重だよね!
……ここまで恐い事はしないから気持ちは違うかもしれないけど。


白神・ハク
【幸先】

んふふ。僕は運ぶ役をやろうかなァ。
この世界のみィんながどんな顔をして食事をするのか気になるよねェ。
僕ら妖怪は人間の感情がだァい好き。
おいしいものを食べている時の感情も楽しそうな顔もぜェんぶ本物か偽物か分かっちゃうよォ。

ヴィリヤちゃんを運んで様子を見ようねェ。
色んな感情があるなァ。んふふ。僕らの仲間の感情もあるね。
僕はどうやって取り入ろうかなァ。もっとおいしく食べる方法を教えたら喜ぶかなァ。
僕は妖怪だから人間の事はよォく知っているよ。

僕は感情にしか興味がないけど話を合わせておくよ。
ヴィリヤちゃんも上手くやっているかなァ。
ヴィリヤちゃんの様子も見るねェ
んふふ。無事みたいでよかったァ。



「んふふ。僕は運ぶ役だねェ。」
 昏く澱んだ空の下、城へと向かう道すがら。確認するように白神・ハク(縁起物・f31073)が、先の別れた舌を見せて問う。
「なら、私は食材役だね。これなら貴族令嬢に見えるかな?」
 折角だからと纏った黒のドレスをひらりと揺らし、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)もにこりと笑う。
「そういえば伯爵はダンピールの血は大丈夫なのかな?料理に混ぜてだから大丈夫かなぁ?」
 純粋な人間ではない身では嫌われないかと心配にもなったが、予測以上のことは分からず大丈夫だろう、と結論付けて置いておいた。
「しかし、この世界のみィんながどんな顔をして食事をするのか気になるよねェ。」
 ハクたち妖怪は人間の感情を好んで喰らう。
おいしいものを食べている時の感情も楽しそうな顔もぜェんぶ本物か偽物か分かっちゃうよォ。
「食べられる前の人間も見られるんだよね。」 
 自らが苦痛が乗せられた皿を前に、果たして人間がどんな感情をさらけ出すのか。それを楽しむのは伯爵ばかりではない、と思わず顔に好奇が滲みそうになるのを押さえて、ヴィリヤが口元を押さえる。
「ふふ、それじャあ乗り込もうかァ」
「じゃあ、暫くはしおらしい振りをしておかなきゃ」
 目の前には既に城門と、そこに待ち構える執事がいる。沸き上がる興味はひたと隠して、欺くための仮面を手に二人が進む。

「やァこんにちは、食材はここで卸せばいいのかなァ?」
 羊皮紙に目を落とす執事へ揚々と声をかけ、ハクが手にした鎖を引けば、ヴィリヤが躓きながらも前へと出る。
「おや、いらっしゃいませ。食材を下ろして頂けるとは有り難いですね…どれ」
 ヴィリヤの姿を見て、執事が見分するようにじろりと姿を向けてくる。どういったところを観察する積りなのか気になって、うっかりこちらからもまじまじ見返しそうになったが、ヴィリヤが思い直して怖がる演技に切り替える。
「ふむ、中々見目はよいようですね。」
「どォも。ねぇそれよりさァ、伯爵様は最近食事に飽きたりしてないかなァ?」
「飽きる、ということはないかと思いますが…しいて言えば趣向を凝らしたい、というご意志いつでもあるでしょうね」
「なら、もっとおいしく食べる方法を教えようか?僕は妖怪だから人間の事はよォく知っているよォ。」
 ちろりと覗く舌に、本当かどうか知れぬ言葉。胡散臭さがぬぐえず執事が僅かに怪訝そうな顔をして見せるが、“美味しく食べる方法”というのには少し興味を示した。
「ヨウカイ…というのが何かはわかりませんが、そんな術があるならぜひ学びたいものですねぇ」
「じャあ、お仲間にしてくれる?」
「…まぁ、良いでしょう。食材は頂きましたからね。くれぐれも粗相のないようお願いいたします」
 再度じろり、とハクを見分した後羊皮紙に筆を滑らせ、控えていたメイドにヴィリヤとまとめて他の食材たち連れていくよう命令する。
(色んな感情があるなァ。んふふ。僕らの仲間の感情もあるね。)
 連れていかれるのを見ながら、漂う感情の色に口の端をニィ、と吊り上げる。その姿を見てヴィリヤが楽しんでそうだな、と一息ついて、自分と同じように納入された食材たちへと視線を移す。
(これを全部平らげるなんて…伯爵はずいぶん大食漢なのね)
 ヴィリヤ自身も人間の血は吸っている。けれど吸うばかりで、吸われる人がどんな気持ちで来るのかは知らない。なら、逆の立場を味わえるというのはそれなりに珍しいチャンスともいえる。
(……ここまで恐い事はしないから気持ちは違うかもしれないけど。自分でも体験できるのが貴重だよね!)
 そんな期待を胸に、何とか大人しく振る舞っているのが遠目にも見えて。
「んふふ。無事みたいでよかったァ。」
 様子を窺っていたハクがそう呟きながら、ひそりと笑みを浮かべた。

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食 材 ……青い髪の女性

持ち込み……白神・ハク

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成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

イーヴォ・レフラ
十雉(f23050)と。
持ち込み役として侵入。

友達を食材役で送るのは心が痛いが、
潜入するためにはやらないとな。
話を聞いて納入しにきた事にしようか。
十雉の肌の色に合わせて白の手枷を付けて連れて行こう。

口減らしでな。ここなら金も貰えると聞いて連れて来た。
白磁の肌と白い髪に赤い瞳で声もいい。
男だが伯爵のお眼鏡にかなうと思ってな。
十雉の悪態には声を落として「すまない。」と、
嫌だけどこうするしかないんだと交渉相手に思わせるようにしてみよう。

貰える金は減っても構わないが大切な友達なんだ、
叶うなら客として中に入れないだろうか?

食べる側なら伯爵にも近いかもしれないし
観察するには良さそうなんだがどうだろうな。


宵雛花・十雉
イーヴォ(f23028)と
食材役として潜入

なんて悪趣味な…
想像しただけで吐き気を催しそう
人を食べるくらいなら食べられる方がましだよ

少し怖いけど、平気だよ
イーヴォなら大丈夫だって信じてるからさ
それじゃあ、行こうか

城門では貧しい身なりとおどおどとした態度
自分が食材になることは知らないていで

イーヴォ、演技上手いんだなぁ…と心の中で思いつつ
「友達?…ふん、随分な友達だよね」
と、友達に枷をつけて差し出すことに対して悪態をつく演技
その後はそっぽを向いてだんまり

余裕があれば、さり気なく他の食材役や持ち込み役のことも観察しておくよ



「なんて悪趣味な…」
 暗澹とした空の下、伯爵の城へと向かう一本道。歩く最中に聞かされた依頼の内容を思い起こし、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)が思わず呻くように言葉を零す。糧にするわけでもなく人を皿に乗せ、苦痛を与えて悲鳴を喰らう。悪趣味を煮詰めたような晩餐会は、想像しただけで吐き気を催しそうになる。そんなものを食べるくらいなら、まだ食べられる方がましだとこの役を引き受けるくらいには、それは余りに度し難い行為に思えた。
「ああ、本当に。然も潜入するには、こうして十雉に嫌な役周りをさせないといけないとは、な」
 潜入のためには仕方ないと理解しつつ、並び歩くイーヴォ・レフラ(エレミータ・f23028)がつきり、と刺さる胸の痛みを自覚する。十雉の纏う色に映えるだろうと選んだ白い鎖も、じゃらりと鳴るたびに存在を主張するようで気にくわない。つい少し険の乗った視線に、十雉がゆっくりと首を横に振ってイーヴォへと笑みをむける。
「少し怖いけど、平気だよ。イーヴォなら大丈夫だって信じてるからさ」
「…わかった、期待には応えよう。とりあえず話を聞いて納入しにきた事にしようか。」
「ん、話に合わせるよ。それじゃ…」
「ああ、乗り込もうか」
会話の聞える距離に入った城門を前に、ふたりが役割を演じて口を噤んだ。

「なぁ、ここが食材の納入場所…で合っているか」
 既に納められた“食材”たちを数えていた執事が、イーヴォの声に視線を上げる。じろり、と出で立ちや連れの様子まで見てからにこりと笑みを張り付け、執事がふたりへと向き直る。
「ええ、此方では買取りをしてますよ。して、貴方もそのご用向きで?」
「ああ、口減らしでな。ここなら金も貰えると聞いて連れて来た。」
 そういってほら、と手にした白い鎖を引けば、たたらを踏みながら十雉が前へと飛び出す。貧しさを演出するためのぼろぼろな身なりは逆に十雉の白色を映えさせ、何も知らなそうな顔でおどおどとした様子は加虐心をそそりたてる風情があった。
「白磁の肌と白い髪に赤い瞳、それに声もいい。男だが、伯爵のお眼鏡にかなうと思ってな。」
「ほう、中々見目はよいようですね。」
 じ、と執事が見分するように覗き込むと、一瞬イーヴォの演技の巧みさに感心してぼうっとしていた意識を引き戻し、訳が分からず身を引く素振りに切り替える。
「どうだろうか。」
「随分背も高いですが、まぁ良く啼くようなら伯爵も気に入るかもしれませんね」
「そうか。もし買い取ってもらえるなら、貰える金は減っても構わない。ただ、大切な友達なんだ…叶うなら客として中に入れないだろうか?」
「友達?…ふん、随分な友達だよね」
 執事へと要求するイーヴォの言葉に含まれた“友達”の言葉に突っかかって、枷の付いた腕を見せつける様に上げて十雉が悪態をつく演技をして見せる。「すまない。」と申し訳なさそうに絞り出すイーヴォの声にもそっぽを向いてだんまりを決め込めば、致し方なく売りに来た事情と友情の終わりが執事に印象つけられたことだろう。
「…ふふ、良いでしょう。仲良い友の今生の別れとあれば、伯爵から声がかかるかもしれませんしね。晩餐会に参加できるよう、取り計らっておきましょう」
「有難い、では頼む。」
 一先ず参加を認められ、イーヴォが執事へ白鎖を手渡し頷く。その渡っていく一瞬に十雉が向けた視線は――うまくいったね、と成果を喜び合うように細められた。

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食 材 ……白髪に明るい色の瞳をした青年
持ち込み……イーヴォ・レフラ

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

百鳥・円
【偃月】

夜のお貴族様!といったドレスにしましょ
華美な装飾に橄欖石のお守りを添えます

とても大変だと思いますが
与う痛みが僅かにでも和らげば、と願いを込めて
――どうかご無事で
ねね。しずくくんもドレスにします?

本日のわたしは『持ち込み役』です
ちょっぴり強引な演技をしますよう
恨み辛みは後ほどたあんとお聞きします

ご機嫌よう、良い夜ですね
とびきり珍しい人魚を捕らえたものでして
繊細ゆえに肉付きは良くありませんが
舌も蕩ける甘美な味わいとなるでしょう

悲鳴の演奏
恐怖に満ちた感情!
わたしもお零れをいただいてみたいものです


……なあんて


んふ、臭いますねえ
傲慢で醜悪な感情の臭いです
宝石糖にしたら、とんでもない色をしていそう


岩元・雫
【偃月】

演技は別段不得手で無い筈、なのだけど
今回許りは、振りすら上手く出来そうに無くて
見目で目を惹くのは、不本意ながら得意だし

まどかには嫌な役、任せちゃうけれど
御免なさいも、有難うも、後回し
遣るからには――『食材役』、全うするわ
大丈夫、任せて
あんたの願いを反故にするおれじゃあ、無い

えっドレス着るの おれ男なのに
……まあいっか、好きに飾って
今のおれはあんたの商品
折角なら、とびきり高値で売って頂戴?


声高な偽りの後ろで、唯唯黙って唇を噛み
手を渡る其の時には、弱弱しく睨め付けて見せる
おれも、あんたも、演技だもの
嘘偽りで在ろうとも、文句等言える訳が無い
――其れじゃあ
また、後でね
微かにわらって、暫しの別れ



「――夜のお貴族様!といったドレスにしましょ」
 城へ向かう前の身だしなみ、皿に乗せる為の下ごしらえ。幾つもの衣装に指を滑らせながら、百鳥・円(華回帰・f10932)が楽し気に笑みを浮かべる。赤に青にと迷った末に、選び取ったのは黒のドレス。体のラインに添う布地の上に、シースルーの布を重ねて。金銀のアクセサリを飾ってふわりとスカートのシルエットが浮かべば、正に貴族令嬢といった仕上がりに、傍らの人魚へ如何でしょう?と問う。
「ああ…うん、まどかは黒が似合うわ」
 それにどこか上の空な返事を返し、岩元・雫(儚の月・f31282)が金色の目を泳がせる。――阿鼻を美味に、叫喚を享楽に。今回の任務を聞いては如何にも気が晴れなかった。本来は演じることが別段不得手なわけでは無い。その筈だけど、今回許りは振りすら上手く出来そうに無い。それでも見目で目を惹くのは、不本意ながら得意ではある。だから極力務めを果たそうと思ったのに、未だ切り替えきれない。
「食材役は、苦痛が伴うと聞き及んでます。…とても大変だと思いますが」
 その様子に、円が片方の角からしゅるりと黒いリボンを外す。深く澄んだ緑石を讃えたそれを視線が下がった雫の首元へと結び、優しい微笑みを返す。
「――どうかご無事で」
 華美な装飾に潜ませた橄欖石は、願い込めたお守り。自らの角のリボン飾りと、危険な役を買って出た雫へ渡した石に、与う痛みが僅かにでも和らげばと願いを込めて添わす。その穏やかな輝きを金の瞳に写せば、どこか安らいだ気持ちになって。
「…まどかには嫌な役、任せちゃうけれど」
 喉元まで出かかった御免なさいも、有難うも、後回しにするべく呑み込んで。敵城へ乗り込むために必要な言葉を口にする。
「遣るからには――『食材役』、全うするわ。大丈夫、任せて。あんたの願いを反故にするおれじゃあ、無い」
 それだけは違えない、と頷いて見せれば、円も思うところをぎゅうと押し込めて、変わりに茶化した言葉を口にした。
「…ねね。しずくくんもドレスにします?」
「えっドレス着るの、おれ男なのに。……まあ、いっか。好きに飾って」
 今のおれはあんたの商品。折角なら、とびきり高値で売って頂戴?――そう託せば円の目が輝いて。それからも暫し、洋服選びに時間がかかった。

「ご機嫌よう、良い夜ですね」
 銀の鎖を片手に、さながらペットを連れたお嬢様のような出で立ちで、円がにこやかに城門の執事へと声をかける。
「おや、ようこそいらっしゃいました。貴女は…持ち込みの方でしょうか?」
「ええ、とびきり珍しいモノを捕らえたものでして」
 鎖をしゃらりと引いて、前に出た雫の姿は頭からかぶったレースの所為もあって一見ただの人の様に見える。一体どこが珍しいのかと首をかしげる執事を前に、円が悪戯っぽく笑みを刷いて首元のボタンをぷつりと外せば――レースがほどけて鰭めいた耳と、フリルの重なったスカートの先から煌めく魚鱗が現れる。
「ご覧ください、この麗しい人魚を」
「これは――なんと素晴らしい!」
 正体を見るや否や、執事が感嘆の声を上げる。喜びのまま不躾な手が伸びそうになったのを、円がそっと雫の顎をすくって顔を上げさせる振りで密やかにいなす。
「繊細ゆえに肉付きは良くありませんが、舌も蕩ける甘美な味わいとなるでしょう」
 声高に偽りを述べる隣で、雫もまた黙って唇を噛み、弱弱しく睨め付ける演技を見せる。その様子がまた気に入ったのか、執事がにこりと満足そうに微笑んだ。
「ええ、ええ!これはきっと伯爵様もお喜びになりましょう。人間はいくらでも手に入りますが、人魚はこれが初めてです。」
 いくらでもの言葉通り、ほんの少し後ろへ視線を逸らせば、そこには納入されゆく“食材”達の啜り泣く姿がみえる。それに眉を顰めないよう気を付けながら、円がわぁ!と喜ぶ振りを見せて。
「それにしてもすごい数ですね。これだけの悲鳴の演奏、恐怖に満ちた感情!わたしもお零れをいただいてみたいものです」
「おや、晩餐会にご興味が?でしたら今宵参加できるよう、貴女のことを伝えておきましょう。これほどの品を献上した方なら、誰も文句はないでしょう」
「それはそれは、光栄です。」
 そういって羊皮紙に筆を滑らせ、執事が機嫌よく雫を運ぶよう控えるメイドたちに命じる。余程気に入られたのか、他の食材より先に連れられ往く姿に視線を送ると、雫が唇だけで言葉を紡ぐ。

――それじゃあ また あとでね

 円にだけ伝わるよう乗せる仄かな笑みは、こっそりと返されるウインクで伝わったことが知れた。
「然し…んふ、ここは臭いますねえ」
 運ばれていく雫の背を見つめながら、誰にも聞こえぬようぽつりと呟く。鼻を鳴らさずともわかるほど、傲慢で醜悪な感情の臭いがあちこちに垂れこめている。もし宝石糖へと押し固めたら、一体どんな色をしているのか。知りたくなくても、この先へと進めばその一端を嫌でも味わうのだろう。

――離れて暫し後、雫が、円が、橄欖石に触れて。
零れる輝きに、互いの無事をそっと祈った。


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食 材 ……夜の色をした人魚

持ち込み……百鳥・円

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

枸橘・水織
人攫いにあえて攫われる…という選択肢もあったが…
そういう人を喜ばせるような事をするのも嫌
…との理由でやめ…城下町の人に協力を願う

『生活苦で苦渋の決断で売られる…騙して呼び寄せた遠縁の娘』という話で潜入

売られる時は、がんじがらめに縄で縛られて猿轡をされている
『水を織ったような髪』をアピールしてもらい高く売りつけてもらう
何気に本人曰く…『高く売って生活の足しにして』

【演技・変装・礼儀作法】で、器量の良い村娘を演じる
実は元は貴族令嬢の娘なので、着飾ると(当たり前だが)かなり様になったりする


潜入後
指定UCを使用…妖精達を使って城の中を探索・情報収集
囚われた人の場所や鍵の場所など役立ちそうな情報を集める



 暗澹とした空の下、重苦しい空気が街中に垂れこめる。すでに幾度となく晩餐会の名の元、招待客とは名ばかりの“食材集め”に使われ、何もかもが枯れていくばかりの城下町。その只中を、くたびれた姿の男がひとりの少女――枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)を伴って城へと向かう。殆ど襤褸にも等しい服装の男と違い、水織が纏うのは仕立ての良い白のドレス。猿轡をかませた上に縄で縛られたとあっても、楚々と歩く姿には器量の良さが感じられた。傍目には人攫いと売られゆく娘に見えて、実は――協力者と潜入者の共犯関係だとは、本人たちしか知らないことである。伯爵の城に潜入するにあたって、人攫いの前で鴨を演じて攫わせる、という手段も考えた。だが、それはどうしても選びたくなかった。

(…そういう人を喜ばせるような事をするのも、嫌)

 恐らく今日で収入を絶たれるだろう彼らだが、それでも1回とて喜ばせるような事はしたくない。だから街中で情報を集め、協力してくれそうな人物をあたり、ようやく見つけたのが今水織の縄を引いている壮年の男だった。既に嫁と娘を伯爵に奪われ、残るは幼い息子のみ。その子すらも奪われるのは今日か明日かと怯えているところに水織が協力を願い出れば、涙ながらに承諾を得ることができた。『生活苦で苦渋の決断で売られる、騙して呼び寄せた遠縁の娘』。そんな筋書きの元に城門へとたどり着けば、検品中の執事が水織たちを見止めて――にやり、と嫌な笑みを浮かべる。こんな組み合わせの2人など、吐いて棄てる程見たのだろう。そしてそのどれもが、生活に困って“食材”を売りに来た人間であることも。
「あ、あの…俺、下町のもんで。伯爵様にこちらの娘をけ、献上したく参りました…」
「ええ、ええ、良い心がけですね。伯爵様の城下のものはそうでなくては。それに、随分良い“食材”をお持ちのようで」
「はい…こ、この水を織ったような髪が、珍しいでしょう…これなら伯爵様もお気に召すんじゃないかと、思いまして」
「ふむ、年の頃も若そうですしね。…ふふっ、良いでしょう。こちら買い取りますよ。」
「は、はい…ありがとうございます…」
「では、お代はこれで。…金貨があれば、お前たちの生活も随分楽でしょうねぇ。あっははっ!」
「も、勿論です…恐縮でございます…」
 嘲りと共に渡される金貨を、男が奥歯を嚙みしめながら受け取る。そして引き渡す直前の水織を前にして、たまらず声をかけてきた。
「すっ、すまない…本当に…こんな…でもこれで、暫く生きられる…」
 ありがとうの言葉を呑み込んで涙を零す男に、水織がじっと静かに視線を投げかける。話すことは儘ならず、また執事の居る手前では慰めるような態度を取るわけにもいかない。でもこれは水織が自ら望んだことだ。だからどうか心を痛めないで欲しい、と――伝わるかは分からないけれど、真摯に想いを込めて見つめれば、男がやがて涙を拭いて立ち去っていく。その背中を見送りながら、執事の視線が離れた一瞬を見計らって、水織が密やかに自らの髪を妖精に変えて解き放つ。――目立たないで、密やかに。そしてどうか、救出と瓦解につながる情報を掴んで。水織の籠める想いに応えるよう、妖精たちがぱしゃりと影に紛れて飛んでいく。

こんな醜い宴は今日限り。要らぬ涙を流す人も、これで終わりに。
――そんな強い決意を以て、水織が消えて行く妖精たちを見届けた。

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食 材 ……水のような髪を持った少女

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大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【食材役希望】
たっく…胸糞悪りぃ…
周辺の街で軽く人攫いどもの【情報収集/偵察/視力/暗視/聞き耳】で探すぞ
よく出没するポイントがあるならそこへ向かう
一般人が向かってるようなら被ってた外套かけて逃すか

あ?なんで?んなもんターゲット好みの令嬢に【変装】してきてたからに決まってんだろうが
しかも肩幅を誤魔化す為に【化術】で髪も伸ばしておいたからな…
隙だらけにしてやったんだ、これで引っかかてくれないとマジで困る

気丈そうに振る舞ってターゲット好みの令嬢を【演技】するか
あ、声も高めにしとくぜ

(入り込む為とはいえめっちゃ屈辱…!この怒りは全部あいつらにぶつけてやる…!)

アドリブ、連携大歓迎



「たっく…胸糞悪りぃ…」
 暗く澱んだ空の下、周囲に聞き耳を立てながらアトシュ・スカーレット(狭間を歩く放浪者・f00811)が悪態をつく。街中だというのに活気はなく、石畳も整備が行き届かず歩きにくい。最早“街”としての機能を諦めてしまっている、若しくは人々にそれだけの気力がないように見える、鬱屈した空気。

「――聞いたか、ベンの所の娘が“城”に連れて行かれたらしい」
「ああ、ありゃ仕方ねぇ。街はずれの廃教会まで一人で出て行っちまったってんだからよ」
「長いこと家に閉じ込めて隠してたらしいが…まぁ、今じゃどこもそうか」
「ジョンなんか嫁も子供も攫われて…結局首吊っちまったしな」
「まったく…こう仕事もろくにないんじゃ、“城”に“食材”を下すのが一番手っ取り早いからなぁ。」
「昨日の仕事仲間が今日の人攫いなんて、笑えねぇ」

 通りすがる人々の会話も軒並みこんな内容で、聞いているだけで気が滅入りそうになる。けれど、耳を欹てていたおかげで欲しい情報は手に入った。
「街はずれの廃教会、か。」
 確かに人攫いからしたら絶好の場所だ。そこに何も知らない風でぶらつけば、奴らには葱を背負った鴨に見えるだろう――城への道筋は見えた。既に十分に仕込みを終えた身を外套で隠し、当たりを付けた方向へと足を向けていると、ふと目に留まったのはオロオロとした様子の少年の姿。
「よぉボウズ。今日はそっち行くのはやめておきな」
「え…でも…あっちに行けばお城に行った妹に会えるって」
 いきなり声を掛けられ怯えつつも、アトシュを少女と見てか警戒を解き、少年がおずおずと口を開く。
「あーそりゃ嘘だ。どうせ怪しいオッサンにでも言われたんだろ。つか妹はいつ城に行った?」
「えと、昨日の前の日…」
「一昨日か…まだワンチャンあるかもな。なら今日は無理でも、明日は合わせてやるよ。」
「ほ、ホント!?」
「今は絶対とは言い切ってやれねぇけどな。生きてさえいれば、絶対だ。」
 そういってニッと笑って見せれば、沈んでいた少年の顔に笑顔が差した。
「そういえばおねーちゃん…なんでマント被ってるの?」
「あ?なんで?んなもんターゲット好みの令嬢に変装してきてたからに決まってんだろうが」
「たーげ…変装…?」
「しかも肩幅を誤魔化す為に化術で髪も伸ばしておいたからな…これで引っかかてくれないとマジで困る」
 変貌の数々を呟きながらも、ひそかに後方から弄る様な視線を感じれば外套を外し、少年へと頭から被せる。
「よっし、なら今から振り返らずに全力で街に走れ。いいな?妹に会いたいなら猶更だ。家で待ってろ」
「…わ、わかった。」
 不承不承ではあるが、一先ず納得の意志を見せて少年が走り去っていく。懸念した人攫いもどうやら少年と令嬢風の少女とあっては後者を選んだらしく、じわじわと足音が迫ってくるのが聞こえた。

(しかし入り込む為とはいえめっちゃ屈辱…!この怒りは全部あいつらにぶつけてやる…!)

 密かに決意を固めながら、背後に立つ人攫いの気配に肩を戦慄かせる。それが小娘の怯えから来るものでは無いと知るのは、アトシュ自身だけだった。


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食 材 ……銀色の目をした貴族令嬢風の少女

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大成功 🔵​🔵​🔵​

カーバンクル・スカルン
【持ち込み役】
遠方から城へと向かう商人を狙い、木の上で【クリスタライズ】を使って待機。狙いの馬車がやって来たら飛び降り乗って、食材役の子以外全員を気絶させる。

そうして代わりに私が連れて行く。証明書のような物はぶんどれるし、門番には代理の者とか新人です、って説明すればいけるやろ? ついでに入れたら二重丸。

あとは……荷台の子に協力してもらうだけ。

私にはどれだけ傷つけられても一瞬で治す力がある。めっ……ちゃくちゃ痛いけどね?

さあ3択だ。私にのって一瞬死ぬほど痛い目にあう代わりに暫くの平穏を得るか、苦しみ続けて死ぬか、いつまた捕まるか分からない元手の無い逃亡生活を送るか、あなたはどれを選ぶ?


剣持・司
…下劣ね
色々と思うところはあるけれど、奴らの罪を裁くため、潜入するとしましょう
正義を、執行する

やるなら「食材」として潜入するべきね

町の酒場などで住民、特に最近娘や恋人を連れていかれた人物と接触できれば良いわね
連れていかれた人達がすぐに食材として供されてなければ助けられ、そうでなくても安否を確認できる筈と金も握らせて私を「食材」としてあの城に納入するよう説得し、手伝ってもらうわ

見目が良いほど受けるなら、質素ながら真新しい服に着替え化粧をし「容姿の良い町の女」に変装
武器はカガミに預けるわ

…そうね
「良い働き口だと騙されて連れてこられた馬鹿な女」設定で演技するわ
怯えた顔もバッチリとね

アド・連携 ○



――カァ、カァ、と鴉が鳴く。

 暗く澱んだ空の下。整備の行き届かない悪路を、ガタガタと馬車が行く。御者の男の顔は空と同じに昏く、時折気まずそうな表情を浮かべてちらりと荷台を盗み見る。其処に在る荷物は一つきり――いやたった“一人きり”だ。質素ながら真新しそうな服に身を包み、手足を縛られ俯く女。如何にも売られゆく可哀想な女性、という風情を醸しながら暫く揺られていると。

――ガタン!

 突然、大きく荷馬車が揺れた。車輪が石を轢いたにしては、衝撃の発生源は真上。音と同時に幌に出来た大きな凹みが、するすると御者席の方へ移動したかと思えば「ぐえっ!」という憐れな悲鳴と共に御者の男が倒れ伏す。
「――なぁんだ、御者と女一人か。あっけなかったな」
 御者席に仁王立ち、かぶっていた襤褸布を剥いで顔を出せば、そこに見えるのは輝くように明るい赤色の髪。城への潜入手段に“持ち込み役”を選び、今まさに御者となり替わろうと襲ったカーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)の姿だった。暫し隠れた人員はいないかと荷馬車を見分した後、危険がないと分かると女の方へと向き直り、獰猛な笑みを見せる。
「さて、悪いがここからは交渉だ。因みに私にはどれだけ傷つけられても一瞬で治す力がある。めーっちゃくちゃ痛いけどね?」
 不意打ちに意味はない、と示しながら見つめると、女もまたじっと見つめかえす。その視線に、カーバンクルを見定める意図があることはひた隠しにした儘。――“これ”は果たして敵か、若しくは同じ目的を持った同士か。
「さあ3択だ。私にのって一瞬死ぬほど痛い目にあう代わりに暫くの平穏を得るか、苦しみ続けて死ぬか、いつまた捕まるか分からない元手の無い逃亡生活を送るか…あなたはどれを選ぶ?」
 突きつけられるのは理不尽な3つの選択肢。だが、その言葉ではっきりと彼女がどちら側の人間か分かった。そこでようやく女が怯えたふりを解いて、口にするのは元より1つきりの答え。
「1よ。他はない。私は、その為にここまで来たんだから」
「…あら、あなたもしかして」
「ええ、私も猟兵よ。単独だったから、一先ず街の人に協力を仰いで城へ運んでもらう手はずだったの」

――遡ること数時間前。
 依頼を受けた剣持・司(正義を名乗る者・f30301)が城に忍び込む手段として選んだのは、“食材役”だった。最も苦痛を強いられるかわりに人員の消費が激しく、常に新鮮なものが求められるポジションは入り込みやすくもある。それにたったひと枠でも自分が埋めれば、その分の被害が減るかもしれない、と希望も込めてのチョイス。然しかといって城へ一人でのこのこ“食材です”と赴くのもおかしな話。そこで選んだのは協力者を得る道。街中で最近恋人や子供を連れ去られたものがいれば取り入って、安否確認と金を引き換えに自分を運んでもらうよう考えた。幸い街中にそんな人物はごろごろ転がっていて、交渉もあっという間にまとまった。打ち合わせもそこそこに、いざ城へ向かおうとした矢先に行き合ったのが――持ち込み役を求めたカーバンクルだった、というわけだ。

「…ってことは、あちゃー。今私が気絶させたのって人攫いじゃないのか」
 話が呑み込めてきたカーバンクルが、伸してしまった御者の男へ気まずそうな顔を向けて頭を掻く。
「まぁ…気の毒だったけど、こうなってよかったのかも。城に近づく以上はノーリスクとは言い難いし。お詫びの手紙を残して、彼には街へ引き上げてもらうわ。その代わり…」
「ああ、みなまで言うなよ。あとは私があなたを運べばいいってわけだ」
「そうね、元々『良い働き口だと騙されて連れてこられた馬鹿な女』って筋書きで納入してもらうはずだったの。それ、そのまま引き継げる?」
「了解だ、それじゃ後は任せといてよ“騙された愚かな食材”サン?」
「…ええ、その調子でよろしく頼むわ、“非情な人攫い”さん。」
 猟兵同士、同じ依頼を引き受けた者同士とあれば話も早く、近くの木陰に御者を寝かせて荷馬車が改めて城へと向かう。

城門は目前。けれど突破するためのピースは既に、十分彼女らの手に揃っていた。

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食 材 ……黒髪黒目の東洋風の女

持ち込み……カーバンクル・スカルン

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

釈迦牟尼仏・万々斎
我が店の給仕(f22865)

手土産を持参した招待客の体で行こう。
常の三つ揃いを上等な夜会服に変え堂々と、鈴鳴る銀鎖で君の首を曳いて行こう。
なに……案ずることはない。
多少華には欠けようが、古今東西エキゾチックな子供はこの手合いに受けると決まっているのだ。あらゆる意味でな。

どうだね。極東の桜煙る都で捕まえてきた妖精種族だ。
器量も上玉。怯える風情が愛らしかろう。
何よりこの年頃は、(鎖を曳き)……悲鳴が醜くないのがいい。
癒しの力があるのも伝えておこうか。他の食材の“長持ち”に使えるとでも言えば、向こうで何か機会が掴めるやもしれん。

サア気張り給えよ少年。
肉体が損なわれずとも、人は衝撃で容易く死ぬぞ。


雨野・雲珠
バイト先のマスターと/f22971
※この手の惨い仕事は初めて

マスターが邪悪すぎて引くんですが!?
これは腹をくくらないと最悪廃人のおそれ
…いえ!俺は助けにきた側。
時が来るまでは都合のいいようにふるまい、
正気を保たなくては

絞首台に上る前ってこんな気持ちかも…
黙ってされるがままにしていましょう。
前にヤクザに拉致された時の方が
まだ扱いが丁寧でしたね…商品として。
…震えが止まらない
演技いらずと言えば聞こえはいいけど

囚われた方にはまだ何も明かせない。
せめて背中を撫でたり、
極端に弱った方を花吹雪で回復させたり、
夜に備えてすこしでも出来ることがあればやろうと思います
今夜さえ凌げば、みんな助けられる…



「夜会か。となれば――こんなところかね」

――ぬらり、と漆黒が蠢く。

 たったそれだけで、身に纏う三つ揃えが装いを新たにする。拝絹付きのピークドラペルに、白ピケのダブル。白蝶貝のカフリンクスが美しく光沢を放つ、夜会に相応しい最上級の正装。瞬く間に再現された仕立ての良い衣装に、釈迦牟尼仏・万々斎(ババンババンバンバン・f22971)が満足げに襟元を正す。
「マスター、楽しそうですね。」
 その様子に、鈴付きの銀鎖で首をつながれた雨野・雲珠(慚愧・f22865)が、居心地悪そうにぽつりと零す。なにせ今二人が並び歩いて向かう先は、かの伯爵の城。しかも役割分担は万々斎が持ち込み役で、雲珠が食材役――つまり、事前に説明を受けたあの残酷な仕打ちを一心に受けるのは雲珠なのだ。
「なんだ、選ばれないことが心配か。案ずることはない!多少華には欠けようと、古今東西エキゾチックな子供はこの手合いに受けると決まっているのだ。あらゆる意味でな。」
「えっ怖…はぁ…これは俺、腹をくくらないと最悪廃人のおそれがありますね」
「ほほう、嫌なのか?」
「当り前じゃないですか……いえ!でも、嫌だの怖いだの言っていられません。今回は助ける側として来たんですから。」
 一瞬涙目で訴えかけたが、思い直して首を振り、ちりりと鈴を鳴らす。確かに嫌な気持ちも恐れもある。だが城にはすでにその恐ろしい行為を幾度も経験した人間がいるはずなのだ。それを助ける為とあれば、時が来るまでは相手に都合よく振舞わなくては、と気を引き締めて雲珠が前を向いた。
「…本当に、色々と育ったものだな」
「? マスター、今何か言いましたか?」
「さてな。それより、そろそろ会話の聞える距離だ。口を噤んでしおらしくしたまえよ。」
「は、はい…!」

「これはこれは、ご機嫌いかがかな。今日も伯爵の晩餐会は盛況と見える」
 城門にたどり着けば、納入の真っ最中だろう執事へ声を掛け、万々斎が大仰に歩み寄る。振り返るや否や、正装纏う姿にあっさりと客の誰かと見込んだのか、執事がにこやかな笑みを寄せる。
「おや、ご招待のお客様でしょうか?それと…お手持ちのそちらは?」
「いやなに、折角の楽しい宴だからな。花を添えるべく手土産を持参したのだよ。どうだね、極東の桜煙る都で捕まえてきた妖精種族だ。」
 勿体ぶった言い回しの末に、片手でくん、と銀鎖を引けば、成すがままの風体で雲珠が数歩前へ出る。俯き気味に震える姿は、怯えて抵抗する気も起きない奴隷のように見えるだろう。実際には、怯えも震えも演技ではないのだが。
「妖精ですか!また随分と風変わりな。然し…ほほう、これはこれは」
「器量も上玉。怯える風情が愛らしかろう。」
「ええ!それに加えて瞳の色も美しい…。」
「であろう?それに何よりこの年頃は――」
「…ひうっ!」
「……悲鳴が醜くないのがいい。」
 言葉の合間にじゃらり、と音を立てて鎖を引けば、雲珠が顔を顰めて苦悶を漏らす。見た目を裏切らない幼さと涼しさを纏った声音は執事も気に入ったのか、好いですねぇ、と笑みを深めて頷いた。その執事から向けられる表情に、余りにも堂に入った万々斎の演技(と思いたい)態度に、やがて降りかかるだろう苦痛に、雲珠がかたかたと震えを止められずにいた。何なら何時かの依頼でヤクザに拉致された時の方がまだ商品として扱いが数倍丁寧だった――!とここに連れてこられるまでの数々の理不尽を思い出し、じわりと目の端に涙がたまる。けれどそれが頬を滑る前に、雲珠の耳にしくしくと啜り泣く声が届いた。出どころを探って執事の後ろを覗き込むと、そこにはすでに“納入”されたであろう、襤褸を纏った少女の姿がみえた。大きな怪我はないようだが、やせ細った体に無体を強いられただろう古傷が痛ましく――苛立ちよりも心配が勝り、助け船を期待して視線を投げると、ため息交じりに肩を竦める万々斎の姿が映った。
「…ああ、そうそう。言い忘れたがその妖精には癒しの力もあってね。壊れやすい“食材”の管理は気を遣うことだろう。長持ちさせるのにそれを使うのはどうかね」
「ほう、本当に稀有な存在なのですね。素晴らしい!良いでしょう…こちら買い取らせて頂きますよそこな貴方、癒しの力とやらの行使を許可します。せいぜい他の“食材”の鮮度を保ってくださいね」
 付け足された言葉に、雲珠が僅かに瞳に色を取り戻して頷く。そのまま少女の元へと歩み寄り、背をさすりながら白い桜を降らせると、瞳を閉じるほんの一瞬――少女の顔に穏やかな表情が見えた気がして、ほっと息をついた。
(サア気張り給えよ少年。肉体が損なわれずとも、人は衝撃で容易く死ぬぞ。)
 自身は気ままな招待客の椅子へちゃっかりと滑り込みながら、万々斎が楽し気に雲珠へ密やかな応援を送る。それが聞こえたわけではないにしろ、今夜を凌げたら囚われた人々もまず命は助かる、その希望があるならきっとどんな仕打ちも耐えられる、と雲珠が自らを奮い立たせ。
「…頑張らなくては」
 誓うように、祈るように。雲珠が静かに決意を口にした。

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食 材 ……桜枝の角を持つ妖精種の少年

招待客 ……釈迦牟尼仏・万々斎

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…これ以上、犠牲を出す訳にはいかないもの
一時の間、その悪趣味な催しに付き合ってあげるわ

周辺の街の路地裏等を一人で彷徨い人攫いを誘き寄せ、
第六感が敵意を捉えたらUCを発動して闇に紛れた人攫いを洗脳し、
"食材"として城に潜入する為の協力者に仕立てあげるわ

…半魔半人のダンピールの娘なら"食材"の質は十分でしょう?
お前には私を"食材"として城まで運んでもらう手伝いをしてもらう

…奴隷でも令嬢でも闇の救済者でも設定は任せるわ
私は黙って気絶したふりをしておくから、上手くやりなさい

……ああ。それとお前達のような輩の隠れ家や緊急時の避難先は?
事が終わった後、お礼に"大掃除"をしてあげるから場所を教えて?


有栖川・夏介
アドリブ・絡み歓迎

悪趣味な晩餐会だとは思いますが、この世界ではそう珍しいことでもない…か。
(故郷のことを少し思い出して顔をわずかにしかめる)
過ぎたことを想っても仕方のないこと、私は私の仕事を遂行するだけです。

順当に考えるのであれば、食材役として潜入するのが妥当でしょうか。
あちらが好むような怯えたり、許しを請うような態度はとれないと思うので、食材として受け入れてもらえるのか不安ですが……(表情の変わりにくい顔を気にしつつ)
……痛みに耐性があるのも困ったものですね。

可能であれば、持ち込み役の方にそれとなくフォローしてもらえないか頼んでみるか。



「…これ以上、犠牲を出す訳にはいかないもの」
 暗澹とした空の下、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が街はずれを歩きながらぽつりと呟く。これから向かおうとしているのは、人間の苦痛を喰らう醜悪な宴。見るに堪えない行いだが、そこにヴァンパイアがいるというなら、リーヴァルディに否はない。
「一時の間、その悪趣味な催しに付き合ってあげるわ」
 そのためにもこうして一人、路地裏を彷徨い人攫いを誘き寄せようとしていた。油断を誘うように無防備に見えて感覚は鋭く、お陰で背後から伸びてくる敵意に満ちた手にもすぐに気づいた。口か、肩か、首筋か。狙いはわからないが、触れられるより早くリーヴァルディが自らの“魔性”を呼び起こす。
「『……限定解放。ひれ伏しなさい』」
「はぁ?何言って……ひっ!?お前唯のガキじゃな…い…あれ…?」
 すぐに当たりに満ちた香気が、襲おうとした人攫いの男から思考力を削いでいく。
「ちょうどいい、あなたを"食材"として城に潜入する為の協力者に仕立てあげるわ」
 ――“食材”。その言葉が耳に届いたのか、近くの壁から様子を窺っていたもう一人が、潜むのをやめて顔を出す。
「あの、すみません」
「――誰っ?」
 突然かけられた声に、思わずリーヴァルディが警戒して振り返る。その剣幕に僅かにたじろきはしたものの、敵意はないと示す様に有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)が掌を上げて見せた。
「あなた…猟兵ね?」
「はい、そしてたぶん同じ依頼を受けた者です。」
「そう、ならいいわ。ここへ来た目的は私と同じかしら?」
「恐らくは。…食材にと思ったのですが、受け入れてもらえるのか不安で……痛みに耐性があるのも困ったものですね。」
 声音だけは少し困った色を滲ませ、夏介が表情の変わらない自身の顔に触れる。
「然し聞いた限りでも悪趣味な晩餐会だとは思いますが、この世界ではそう珍しいことでもない…か。」
「そうね。ヴァンパイアがのさばっている限り、きっとこの手の悪夢は終わらない。」
 例えかつてがどうあっても、今この世界にいるヴァンパイアは皆オブリビオンだ。壊れ、歪み、在り方を変えられてしまったそれらは明確な世界の敵となる。そうして壊されていく人々の姿を想像すれば、故郷のことを少し思い出して夏介が顔をわずかにしかめた。けれすぐに首を振って為すべきことへと気持ちを切り替える。
「すみません、過ぎたことを想っても仕方のないことですね…」
「ええ、だからこそ狩りに行くのよ。」
「なら、私も私の仕事を遂行するだけです。改めて、私も城までご一緒させてもらえませんか。」
「…あなたも人間なら、きっと食材としては受け入れられると思う。中での振る舞いはあなた次第だけど、そこまでなら共に行けるわ」
「…ありがとう、助かります」
 頷き礼を言う姿を一瞥してから、リーヴァルディが人攫いに改めて向き直る。すっかり香気に当てられて、最早言うなりの状態の男に言い含める様に言葉を刷り込んでいく。
「そういうわけよ。…半魔半人のダンピールの娘に人間もいれば、"食材"の質と量は十分でしょう?お前には私たちを"食材"として、城まで運んでもらう手伝いをしてもらう」
「…はい、わかりました」
「奴隷でも令嬢でも闇の救済者でも、設定は任せるわ。私とこの人は黙って気絶したふりをしておくから、上手くやりなさい」
「了解…しました…」
 うつらうつらと香気に酔った顔で、人攫いの男が嫌がることなく承諾する。それを聞いた夏介が、食材に見えやすくなるよう偽装用のロープや荷台を漁る。
「……ああ。それとお前達のような輩の隠れ家や緊急時の避難先は?」
「…それは…なぜ…」
「事が終わった後、お礼に"大掃除"をしてあげるからよ。さぁ、場所を教えて?」
 協力するからと言って、過去の罪業を許すわけにはいかない。そうしていずれ来る裁きの時を知らず、男は素直にアジトの場所をリーヴァルディへと白状した。
 

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食 材 ……銀糸紫目の少女
食 材 ……緑髪赤目の少年

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成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エンジ・カラカ
【灰】招待客役

キレイなのはキライキライ
みーんなキレイになってる

アァ……仕方ないなァ…。
頭の高いヤツラの考えるコトだ
楽しみ方が賢くない

アァ……賢い君、賢い君…。
懐に隠した拷問具のアカイイトにこっそり話しかける。

懐かしい光景だなァ。
あのトキはどうした?

アァ……そうだそうだ…。
持ち込み役のトキワに目で合図を送るヨー

ハロゥ、ハロゥ。
ソコのヒト。血の臭いがするする。
楽しんでいるカナー?

コレは楽しいヨ。
こっそりと耳打ちするする。
頭の高いヤツラが自分は食べる側だと信じて楽しんでいる様子を眺めるコトが。

とーっても楽しい。

アイツらがアッチに行ったらどんな顔をするのカナー。
楽しくて仕方ないネェ。ネー。


神埜・常盤
【灰】持ち込み役

血統覚醒し吸血鬼に
髪は白く、背には蝙蝠翼が
少しは警戒も解けるかね

食材――うつくしき式神
「天竺」の腕を引き執事の許へ

御機嫌よう
饗宴が催されると伺ったが
招待状を持って居なくてね
こちらの娘を献上するので
私も混ぜては貰えないか

人形みたい?
そう、彼女は壊れている
聲も感情も喪った哀れな子だ
でも、そんな娘が今際にあげる悲鳴
聴いて視たくは無いかね
催眠を交えながら、禍の舌で言いくるめて

嗚呼、此方の紳士からもお墨付きを戴けたよ
私は君達の同類
血と退廃を愛す者さ
エンジ君と視線合えば、そう愉し気に笑う

はは、分かるよ
僕も俄然ワクワクして来たなァ
連中をディナァにする、その時がね
さァ、吠え面かかせて遣ろう



「――御機嫌よう」
 暗澹とした空の下、ぱかりと口開けた城門の前。羊皮紙に“食材”の数を書きつけていた執事に、ゆったりとした声がかかる。視線を上げた先にいるのは靡く白い髪に背に蝙蝠の翼をもつ“同族”の――血統覚醒によってそうと見せかけた、神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)の姿。同じ貉と思えば警戒は緩いもので、執事が笑みを浮かべて常盤に向き直る。
「ええ、御機嫌よう。ご招待の方でしょうか?」
「生憎と饗宴が催されるとは伺ったが、招待状を持って居なくてね。こちらの娘を献上するので私も混ぜては貰えないか」
 そう言って手を引き前へと連れるは、琥珀の髪を夜会に巻いた美しき娘。整った造作に凪いだ表情、今まさに売られようというのに眉一つ動かさぬ様子は、まるで。
「おや、中々に美しい娘ですね。しかし、これは…」
「人形みたい?そう、彼女は壊れている。聲も感情も喪った哀れな子だ」
 つい、と指を伸ばして頤を逸らせてみても、娘の顔には何の色も乗らない。まさに人形と形容するに相応しい在り様だ。――そしてその表現はあながち間違いではない。なにせ彼女は人間ではなく、潜り込むための餌として常盤が招いた、天竺との名を持つ“式神”なのだから。けれどそんなことはおくびにも出さず、紡ぐ舌先に、ちらりと投げ寄越す視線に、惑わせる意図を籠めながら常盤が嘘を重ねる。
「でも、そんな娘が今際にあげる悲鳴…聴いて視たくは無いかね」
「…ふふ、それは中々面白い趣向かもしれません。では有難くお受け取りいたしますよ、晩餐会への手土産としてね。」
 幻惑の淵にいるとは思いもしない執事は、上機嫌に常盤を参加者の一覧に書き加えていく。――その背をじろり、と覗く視線があることにも、気づかずに。

「キレイなのはキライキライ…なのにみーんなキレイになってる」
 城門の元、常盤と執事とはほんの少し離れたところ。ゆらり、ふらり。身なりを整えながらも、揺らぐ影のような印象を残しながら、エンジ・カラカ(六月・f06959)がそんな言葉をそらんじる。他に見える招待客らしき連中も、着飾り目化して次々と納入されていく“食材”に、好奇の目を向けている。常盤の連れた娘にもひそひそと声を交わし――“ああ、どんな声で啼くのか”と、舌なめずりをしていて。
「アァ……仕方ないなァ…。頭の高いヤツラの考えるコトだ。楽しみ方が賢くない」
 くるり、身を翻してエンジが詰まらなさそうな表情を浮かべる。
「アァ……賢い君、賢い君…。懐かしい光景だなァ。あのトキはどうした?」
 かつての光景を脳裏に思い起こしながら、懐に隠した拷問具のアカイイトにこっそり話しかける。返事があるのかないのか、それはエンジにしか分からぬこと。暫しぽつぽつと言葉を振らせた後、はっと何か思い出したような表情になって顔を上げた。
「アァ……そうだそうだ…。」
 視線を向ける先は、常盤の方。ゆらゆらと歩きながら気さくに手を上げて、“初めて見かけた人”の様に偽り話しかける。
「ハロゥ、ハロゥ。ソコのヒト。血の臭いがするする。楽しんでいるカナー?」
「嗚呼ほら、此方の紳士からもお墨付きを戴けたよ。私は君達の同類、血と退廃を愛す者だと」
 聞き慣れた声にそうとは悟らせず応じて、交じり合う視線に常盤が愉し気に笑って執事に一層“同族”だと印象を刷り込んでいく。
「コレは楽しいヨ。とぉっても。なんていっても……ね、とーっても楽しい。」
 肝心な部分はひそりと常盤の耳にだけ寄せて告げ、エンジがにやりと猫の笑みを浮かべる。

――頭の高いヤツラが、自分は食べる側だと信じて楽しんでいる様子を眺めるコトが。

 告げられる言葉にクク、と喉で笑い常盤が同意を返す。
「はは、分かるよ。僕も俄然ワクワクして来たなァ」

――皿を喰らう気の奴らが、自らが既に皿の上にいることに気づかぬ間抜けさが。
気づいたときの絶望を、ディナァに仕立て上げる瞬間が。

 同じようにひそりとエンジの耳に告げれば、頭の後ろで腕を組んで、エンジが城の方へと向き直る。
「アイツらがアッチに行ったらどんな顔をするのカナー。楽しくて仕方ないネェ。ネー。」
「勿論だとも。さァ、吠え面かかせて遣ろう」
 密談を知らぬ人波に乗って、ふたりが城門をくぐっていく。

――狂乱と絶望の宴が、はたしてどちらにとってのものになるか。
それが分かるのは、あともう少しあとのこと。

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招待客 ……エンジ・カラカ
持ち込み……神埜・常盤

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

渡塚・源誠
★招待客を装い参加


いやぁ、どうも

此方の噂を耳にして、遠路はるばる来た訳なんですけどねぇ


ああ失礼、私は此処から離れた所で人売りに携わる者でして

…おっと、食材は確かに今は持ち合わせておりません

いやはや、勝手も知らず適当に食材を見繕うのも失礼だと思いまして

伯爵様に常に最高の食材を提供すべく、まずは宴の何たるかを知らねばと考えた次第です


取るに足らぬ呪具を斯様な甘美な宴に拵える伯爵様の着想のなんと素晴らしいことか…是非ともご贔屓にしていきたいものです




――っていう具合に、【言いくるめ】気味に【演技】しようか

随時【コミュ力】も発揮しておくね




(正直、腹の虫の居所がまぁ悪いんだけど…時が来るまで暫く我慢、だね)



「いやぁ、どうも」
 曇天の下、重い空気を纏う城の門を前にして、渡塚・源誠(海風に誘われた旅路・f04955)が気負いなく挨拶を述べる。掛けられた声に、羊皮紙へと目を落としていた執事が顔を上げて、少々訝し気に源誠を見つめる。
「此方の噂を耳にして、遠路はるばる来た訳なんですけどねぇ」
「噂、ですか?そういう貴方は…」
「ああ失礼、私は此処から離れた所で人売りに携わる者でして」
 頭の帽子を取って胸元へと当て、少しでも良い印象になるよう笑みを浮かべて商売人を演じて見せる。
「そうおっしゃる割に、手土産のひとつもお持ちでないようですが?」
「…おっと、食材は確かに今は持ち合わせておりません。いやはや、勝手も知らず適当に食材を見繕うのも失礼だと思いまして」
 納入を担当してるせいか、正式な招待客ではなく、しかも手ぶらに近い源誠の姿に執事の視線は冷たい。それに対して申し訳なさそうに眉を寄せ、少し頭を下げて詫びて見せる。
「伯爵様に常に最高の食材を提供すべく、まずは宴の何たるかを知らねばと考えた次第です」
 捧げたい気持ちと学ぶ姿勢を見せて押せば、執事がほう、とほんの少し表情を和らげて、羽ペンをくるりと遊ばせる。
「それに取るに足らぬ呪具を、斯様な甘美な宴に拵える伯爵様の着想…なんと素晴らしいことか。是非ともご贔屓にして頂きたいものです」
 誉めそやし、持ち上げて――そんな具合に、言いくるめるよう演技を重ねる。そのかいあってか、晩餐会の趣旨の理解を決め手にして、執事がひとつ頷いて見せた。
「まぁ、良いでしょう。でしたら今回は特別に参加できるよう取り計らいます。なので是非とも次の時は、良い品をお願いいたしますね」
 若干不承不承、といったところは滲んだものの、執事が羊皮紙の一覧に書き込みを増やしていく。本当なら次などない、と言ってやりたいところだが、今はまだその時ではない。
(正直、腹の虫の居所がまぁ悪いんだけど…時が来るまで暫く我慢、だね)
 犠牲者を出さない為にも、晩餐会までは手を出すわけにいかない。そこを改めて思い起こし、腹の底に揺らぐ想いをぐっ、と押し込めた。

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招待客 ……渡塚・源誠

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成功 🔵​🔵​🔴​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻
持ち込み役

何故だ?!
サヨが
私の愛しい巫女が食材だなど
傷つかぬように結んだ赤縄をキツく握る

食すことは愛だと誰かが言うのを聞いた事がある
きみを食べるのは私だ
きみが私を食べるように
私だってサヨを…
きみの柔肌に噛み痕を遺し
微かに滲む血を掬いとる意味を知っているかと問いたい

わかっている
没落し大切な姫を売るしかなくなった貴族路線で行く計画だ

丹精込め私が育てた桜だから…最期まで見届けたい
如何なるように料理されるのか
主のお気に召すのか興味がある
晩餐会にご一緒させて頂きたいと血を吐く想いで告げる

形相が鬼気迫るのは仕方ない
サヨの悲鳴は演技でも耐え難く
辛さを噛み締める
私が死んだ方がマシだ

十分耐えているよ
サヨ!


誘名・櫻宵
🌸神櫻
食材役

意外と縛るの上手いわよね
傷つかぬように赤縄で結ばれた手足がこそばゆい

顰め面の神に笑みかける
カムイったらそんな顔をして
私のかぁいい神様を食べるのは私だけ

私の方が潜入しやすそうだし
龍を食べたがる者は意外といるのよ
美しいものを食べたがるものもね

優しい神が私の事で心を痛める事すら愛おしく美味しそう

カムイ
演技よ

か弱そうに肩を震わせ伏せた双眸をあげる
涙の滲む、蜜華の眼差しを這わせ
とろり
彼も晩餐会に参加できるように誘いかける
掴まれれば攫われた姫よろしくか細い悲鳴をあげ怯え…それでも気丈に振舞う仕草をすれば

神が死にそうな顔をしていた
今、食べられてますみたいな

…堪えてカムイ!
このまま潜入するわよ!



「カムイ、あなた…意外と縛るの上手いわよね」
 伯爵の城へ続く一本道、そこを少しそれた雑木林の中。手足に傷つかぬよう結ばれていく赤縄がこそばゆくて、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)が思わず漏れそうになった声の代りに、そんな軽口を声にする。
「…何故だ?!」
 それと反するように、抑えきれない苦しみを吐き出しながら朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)が是非を問う。
「サヨが…私の愛しい巫女が食材だなど」
 カムイを持ち込み役に、櫻宵を食材役に。城に乗り込むための経路を考えれば、この割り当ては正しいと言える。然し心情が伴うかどうかは別で、巫女へと繋がる赤縄の先をキツく握りながらカムイが苦悶を浮かべる。
「カムイったら、そんな顔をして」
 それを気遣うように、櫻宵がカムイの頬を撫でる。その手に巻き付いた赤縄を見て逸らす視線に、諭すような声が降る。
「私の方が潜入しやすそうだし、龍を食べたがる者は意外といるのよ。美しいものを食べたがるものもね」
 ヨモツヘグイ、同物同治、八尾比丘尼。かくて欲ある者は食すことに意義や呪いを求めることが多い。ならば龍の身など、ぜひとも皿の上に乗せたがることだろう。それは役割の分担を納得するには十分な理由だったが、理屈だけではカムイの胸の苦みは払拭されずにいた。
「食すことは愛だと誰かが言うのを聞いた事がある…きみを食べるのは私だ。私だけだ。きみが私を食べるように、私だってサヨを…」
 そこまで言って、ぎゅう、と喉の締まる心地がして口を噤む。――噫、きみの柔肌に噛み痕を遺す訳を、微かに滲む血に舌を這わせ掬いとる意味を、知っているのかと問うてしまいたい。でも本当は櫻宵もまた、そうして優しい神が心を痛める事すら愛おしくて味わいたく思っていることも、かぁいい神様を食べていいのは私だけだと食材役を買って出たことは秘めたまま、やわい笑みだけ差し向ける。
「そろそろ行きましょうか――カムイ、演技よ」
「…噫、わかっている」
 時間は刻一刻と過ぎていく。巫女の告げる声にふるりと首を振って、カムイが赤縄を手に歩き出した。

「…失礼する、ここが噂に聞く――晩餐会が開かれるという伯爵の城だろうか」
 滲む苦渋は隠し切れないまま、カムイが城門に立つ執事へと尋ね聞く。余りの様子にどうしたのか、と問いかけるような視線を投げながら、口上に応じるべく執事が向き直る。
「ええ、その通りですが。貴方は何の御用でしょうか?」
「――此度の宴に、二つとない花を添えたく馳せ参じた。ここでは見目良い人間を買ってくれるのだろう?」
 “没落した貴族が、大切に育てた姫をやむなく売りに来た”――事前に打ち合わせた設定になぞった事情を告げ、カムイがゆるりと赤縄を引く。すると櫻宵が楚々と前へ出て、か弱そうに肩を震わながら伏せた双眸をあげる。涙の滲む蜜華の眼差しを執事へ這わせ――とろり、と零して見せればそれはどんな蜂でも溺れる蠱惑の罠のよう。
「かの者が、竜の血を引く姫君だ。」
「なんと、竜ですか…!確かに角も翼も作り物ではないようですね。然も花を讃えているとは…いやはや、珍しいものをみました」
 まじまじと見つめる執事の瞳はどこか不躾で、美しいものを鑑賞するというよりも品定めに近い。晒されることにふるり、と震えを見せるのが櫻宵の演技と分かっていても、袖内へと引き入れて隠してしまい葛藤に刈られて、カムイが自らの手首をギリリ、と掴む。
「…ふむ、素晴らしい品ですね。ええ、ええ、良いですよ。此方喜んで買い取りましょう。」
「…それは、有難く。ただ一つお願いが。」
「願い、ですか?」
「この姫は、丹精込め私が育てた桜だから…最期まで見届けたい」
「はぁ…」
「如何なるように料理されるのか、主のお気に召すのか興味がある…だから、私も晩餐会にご一緒させて頂きたい」
 今にも喉を食い破って、かえせ、見るなと叫びたくなるのを何度も飲み下し、カムイが予定通りの台詞を述べる。その提案にふむ、と悩む表情の執事を見て、櫻宵ももう一押しとか細げに言い添える。
「あの、私からもお願い致します。…これが今生の別れとなるならば、見届けてほしいですもの」
「ははっ、貴女が上げる悲鳴と苦痛を最後に贈りたいと?随分いい趣味のようで」
「……ああ、いやっ…い、たいっ…!」
 執事が蔑むような笑み浮かべて手を伸ばし、櫻宵の手首に掛かる縄を乱暴に引っぱってみせる。ギリリ、と音を立てて食い込み櫻宵が悲鳴を上げれば、カムイの形相が鬼気迫るものへと変貌していく。演技だと分かっていても耐え難いそれを、血も出んばかりに唇を噛み締めてやり過ごす。こんなことなら死んだ方がマシだと腹の底を煮え滾らせた横顔に、櫻宵が見惚れそうになったのを袖で隠して、健気に振る舞い言葉をつづける。
「…その、とおりです。私の身は全て伯爵様に捧げますから、どうか。」
「ふふ、いいでしょう。席をご用意いたしますよ。彼のあの顔も随分と美味しそうだ。伯爵がお気に召せば、ご相伴にあずかれるかもしれませんね?」
 意地悪く告げたあとはポイ、と赤縄を手放し、執事が羊皮紙へ何事かを書き込んでいく。ようやく参加の権利を得られたことにはホッとたが、ここは未だ通過点に過ぎない。これからあと幾度、こんな思いをすればいいのかと脳裏に巡らせただけで、眩暈がしそうになってカムイが顔に手を当て苦悶する。
「…堪えてカムイ!このまま潜入するわよ!」
「十分耐えているよ、サヨ!」
 励まし気丈に先行きをひそやかと告げる櫻宵に、カムイが絞り出すような声で苦しみを告げた。

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食 材 ……桜の翼持つ龍の姫
持ち込み……朱赫七・カムイ

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャト・フランチェスカ
【紫桜】

首と名のつく部位に嵌った無骨な枷を
真白い衣装が不吉に飾り立てていることだろう

力無く項垂れた芝居
僕は専ら「綴る」側だから
役者が務まるかどうか
千鶴がどんな悪い顔してるか
見られないのは少しだけ残念

縺れそうな足取りで
鎖を引かれるまま

侮蔑と嫌悪の眼差しで
髪の間から執事を睨んでやる
引き結んだ唇は動かさずとも伝わるだろう

お前たちに喰われてたまるか

従順な食材にナイフを入れても
きっとそそらないでしょ

後ろ手で鎖を鳴らし抵抗を演出する
傍らの眼差しは捕食者のそれに似て
芝居にしては上手過ぎるみたい

僕を囓っても善いのはきみだけ
―だなんて、きみにも内緒だけどね


宵鍔・千鶴
【紫桜】

お初に御目に掛かる、執事殿
今宵の晩餐会に極上の食材を持ち込みたい
恭しい一礼
其処に人当たりの良い笑みを貼り付け

枷を嵌めて繋ぐ鎖を強引に引き寄せて
――ほら、もっと此方に来い
お前の貌をよく見て貰え

其処に落とした視線は
あくまで食材として冷ややかに
けれど、きみが繋がれる様に胸の裡では
ずきりと傷むのをひた隠す

御覧在れ、白き肌に紫陽花色を重ね
薄紅の春花咲かす麗しの乙女を
けれど眼差しは、……既にお分かりかと
怯むこと無く睥睨するシャトに
満足気に口上を述べる

噫、伯爵のお口に合う筈ですが
叶うなら極上の華、今一度客として

指先で彼女の髪を掬いながら
壮絶に微笑む口元には密やかな牙を覗かせ
嘘か真実か己でも惑う程の



「お初に御目に掛かる、執事殿」
 暗澹と幕の落ちる空の下、伯爵の城に続く門前。まるでぽっかり開けた獣の顎の如きそこに立って、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)が恭しく一礼をする。声掛けに振り向いた執事が、羊皮紙を手にした儘向き直ってにこりと微笑む。
「これはどうもご丁寧に。して、ご用向きは何でしょうか?」
「今宵の晩餐会に、極上の食材を持ち込みたい」
 そう言って人当たりの良い笑みを張り付けながらす、と千鶴が少し立ち位置をずらすと、手にした鎖の先にシャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)の姿が現れる。首と名のつく部位のひとつひとつに嵌められた無骨な枷を、纏った真白い衣装が不吉さをいや増して見せる。力無く項を垂れて、鎖の重たさを訴える様にずるりと身を捩り、いかにもな芝居を計算して打つ。けれど普段は専ら「綴る」側の身。果たして慣れない役者が務まるかどうか、とふと不安が浮かぶけれど、それも重ねられる言葉の冷たさが掻き消してくれる。
「――ほら、もっと此方に来い。お前の貌をよく見て貰え」
 浮かべた笑みにぞくりとするような酷薄さを滲ませ、枷に繋がる鎖をわざと鳴らして千鶴が強引に引き寄せる。その力に逆らわず縺れそうな足取りで、鎖を引かれるままシャトが前に出る。その姿にも千鶴が向ける視線はひたと冷たいまま、あくまで食材として見下してみせる。けれどシャトの白く細い首が、普段は只管にモノ綴る手首が、無骨な枷に繋がれた様には胸の裡がずきりと音を立てて傷む。それでも揺らぎそうになる視線を瞬き一つでひた隠し、今はこれこそが後の助けになると信じて、お披露目の口上を述べる。
「御覧在れ、白き肌に紫陽花色を重ね、薄紅の春花咲かす麗しの乙女を」
「これは、確かに美しい…!頭の花は飾りでなく、実際に生えた角なのですね。」
 不躾に桜へ触れようとする手には、侮蔑と嫌悪の眼差しで髪の間から執事を睨む。鎖してなお光を失わぬ瞳で見つめれば、引き結んだ唇が動かずとも秘めたる意図は伝わるだろう。

――お前たちに喰われてたまるか。

「性根は眼差しをご覧になれば……既にお分かりかと」
 怯むこと無く執事を睥睨するシャトに、千鶴が満足げに口上を述べる。それが手土産の態度にほくそ笑んだのではなく、心が折れてないことへの安堵から来るものだと悟るものは此処にはいないだろう。
「ふふっ…ええ、ええ。ずいぶんと気丈なようだ。この反抗的な態度が折れて崩れ落ちるのは、さぞかし伯爵好みの“ご馳走”になるでしょうね」
 血肉を満たすために食べるならば、皿の上の馳走だけで満足なはず。なのに態々あんな呪具を持ち出し愉しむというのなら――ただただ従順な食材にナイフを入れても、きっとそそらないでしょ?そんな意を込めてシャトが後ろ手で鎖を鳴らし抵抗を演出すれば、ほら、また執事が楽し気に嗤っている。今はそれに甘んじて、悔し気にほぞをかんだ振りをする。愉悦に口を開いたところを、裡から食い破られるとは知らずにいればいい。――ああ、でも。同じようにこちらへと向けるきみの眼差しは、捕食者のそれに似て、芝居にしては上手過ぎるね。
「噫、きっと伯爵のお口に合う筈ですが。叶うなら極上の華を味わう末席に、今一度客としてご相伴預かれますでしょうか」
「そうですね…良い品を仕入れて頂きましたから、此度は特別にご招待いたしましょう。」
「有難く存じます。――では、せいぜい伯爵に骨も残さず喰らわれると良い」
 指先でシャトの髪を掬いながら、千鶴が壮絶な微笑みを浮かべる。口元には密やかな牙を覗かせれば、そこにあるのは完ぺきなまでの捕食者の顔。――これは、演技。反意がないと欺くための、同族と知らしめるための、同じ穴の貉と印象付ける為の、偽りの仮面。なのに頤を逸らし見つめるシャトの顔にぞくりと背を這う感覚が、嘘と真実の境を惑わせる。掴み切れない心地を詳らかにしないうちに、シャトが執事へと手渡されていくと、自然と目が背中を追いかける。見えなくなる直前、僅かに開いたシャトの唇が何の音も載せずに閉じて、そのまま城の中へと消えてしまった。

――僕を囓っても善いのはきみだけ。
だなんて…きみにも内緒だけどね。

 今は未だそのことを口にしないまま、シャトの心裡だけに密やかに零れていった。

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食 材 ……桜の角持つ紫髪の女性
持ち込み……宵鍔・千鶴

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティア・メル
【猫飴】
食材役

ずーっとロキちゃんに食べて欲しいって
思ってたから、タイミングはばっちし!
あ、でも喜んじゃあダメなんだっけ
喜ばずに嫌がるフリをしなくちゃ
自分に嘘を吐くのは慣れてるからね
演技もどんとこいだよ
今だけは怖がる餌としての
ティア・メルになってみせるから

甘い悲鳴は蕩けるように
怖いよ
やだやだ
家に返して
逃げようと駆け出した足は
あまりに優しく絡め取られる
引き寄せられた体は小さく震えて
ああ、喜んじゃいそうな自分に蓋を

ロキちゃん、それは嘘?本音?
ふふふーどっちでもいっか
本当だと嬉しいから、本当だと思っちゃおう
なんて内心で垂れ流し

ロキちゃんにだけわかるように
あまやかに笑って魅せよう
食材役として、ね


ロキ・バロックヒート
【猫飴】
持ち込み役

ずぅっと君を食べてみたいって言ってたけど
本当に叶う日が来るなんて思わなかったよ
だって食べちゃったら居なくなってしまうでしょう
ここならティアちゃんがティアちゃんのまま食べられるんだって
こんな柔らかで愛らしい子を損なうなんて以ての外でしょう?
だから、ねぇ、俺様にも食べさせてくれない?
笑いながら執事へお願いする
これは演技?ううん、ほんとう
神様に倫理なんかないし

でもこの愛らしい悲鳴は演技?ほんとう?
どちらでも素敵だよ、ティアちゃん
こんな甘くて蕩ける声が聞けるなんて
ああ、逃げちゃだめだめ
歪な影の獣たちに捕まえさせちゃって
目の前に引き寄せて笑う

ねぇ、ティアちゃん
是非最高の君を味わいたいな



「ずぅっと君を食べてみたいって言ってたけど、本当に叶う日が来るなんて思わなかったよ」
 暗く澱んだ空の下、伯爵の城へと続く一本道。人を呑み込んでは返さない城門を遠目に、ロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)が嬉し気に細めた瞳を隣へと向ける。
「だって食べちゃったら居なくなってしまうでしょう。でも、ここならティアちゃんがティアちゃんのまま食べられるんだって」
「ぼくもずーっとロキちゃんに食べて欲しいって思ってたから、タイミングばっちし!」
 その視線を受けてしゅわりと蕩けそうに笑い、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)が足取り軽く歩いていく。今にもステップを刻みそうになったところで、ふと気が付いて歩みを緩める。
「あ、でも喜んじゃあダメなんだっけ」
 あくまでも今はロキが持ち込み役で、ティアはその手土産たる食材役だ。うっかり嬉しそうな姿を見られては、面倒な疑いを向けられかねない。上手く懐に潜り込むまでは、どれほど踊る心も隠して嫌がる振りをしなくては。でも、自分に嘘を吐くのは慣れてるから、演技なんてどうってことはない。瞬き一つで――ほら、不幸にも囚われた奴隷の顔に見えるでしょう?
「今だけは怖がる餌としてのティア・メルになってみせるから。上手に出来たら、あとで褒めてくれる?」
「もちろん、いーっぱい甘やかしたげる。――お腹いっぱいティアちゃんを頬張った後でね」
 風に揺れる桃色の髪を掬ってロキが微笑めば、ティアもまた隠し切れない嬉しさに一瞬だけ表情をほころばせた。

「やぁこんにちは、伯爵のお城ってここ?」
 気負うことなく手を上げて、ロキが城門に立つ執事へと声をかける。
「ええ、そうですよ。何か御用でしょうか?」
「とびっきり上等な食材を持ってきてあげたんだ。きっと舌も蕩ける程においしいよ?」
 そう言ってほら、と手を引けばたたらを踏んでティアがまろび出る。それは皿に乗る期待に胸寄せてる少女とは思えない、今にも涙の零れそうな姿で。

――怖いよ
――やだやだ
――家に返してぇ…

 俯き被りを振って、口からこぽこぽと逃げたがりで甘い悲鳴を蕩けるように吐きだして。その愛らしさにロキがわざと手の力を緩めれば、するりと逃げようと駆け出してゆく。

――いじらしくてかわいいティアちゃん
この愛らしい悲鳴は演技?ほんとう?
でも、どちらだって素敵だよ
こんな甘くて蕩ける声が聞けるなんて
晩餐会に感謝したいくらい

「ああ、逃げちゃだめだめ」
 縺れ惑うティアの背を歪な影の獣たちに追わせて捕らえ、目の前に引き寄せて笑う。その絡め取られた体が小さく震えているのは恐怖の所為ではなく、あまりに優しいふれ方に喜んだから――なんてことは、ティアだけの秘密だけれど。
「ああ、確かに愛らしい食材のようだ。この声ならさぞかし良く啼いてくれるでしょう。」
「でしょう?伯爵の呪具は便利だね。いくら食べたくても、こんな柔らかで愛らしい子を損なうなんて以ての外でしょう?でもここでならそれが叶う。だから、ねぇ、今夜は俺様にも食べさせてくれない?」
 ――これは演技?ううん、ほんとう。神様に倫理なんかない。執事にねだる声は、本当に欲しているのが分かる甘美さを含んでいて、喜んでしまいそうな自らに蓋をしながら、ティアがロキを見つめる。
 
――ねぇロキちゃん、それは嘘?本音?
ふふふー、どっちでもいっか。
本当だと嬉しいから、本当だと思っちゃおう。

口にできない想いを飴玉の様に転がして、内心でころりと甘さを味わう。そんな思惑など解さない執事は、ただただ目の前の食材の質に頷いて、羊皮紙へ羽ペンを滑らせる。
「まぁ、よろしいでしょう。食せるかどうかは伯爵の気紛れもありますが、晩餐会には出席できるよう取り計らっておきますので。どうぞ、夜をお楽しみくださいませ。」
「ありがとう。――さぁ、参加できるらしいよ。ねぇ、ティアちゃん。是非最高の君を味わいたいな」
 言葉と共に伸ばされる手が、ティアの頤をすくってぞくりとするほどの微笑みで告げる。それに怯えたふりをして、かたかたと肩を震わせながら。

――ロキだけに届く距離で、ティアがいっとう甘やかに笑って魅せた。

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食 材 ……薄桃の髪の少女
持ち込み……ロキ・バロックヒート

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼

人々を攫い、見世物に貶め、苦痛に喘ぐ姿を眺め嘲笑う歪んだ享楽
この世界で幾度となく繰り返された残酷劇
決して許すことは出来ないわ

わたくしはもう二度と悪意には屈しない
邪悪を挫くためならば、いかなる苦難にも耐えて見せましょう

ヴォルフと共に、質素な身なりをした村の夫婦を装い人買いに接近

ああ、どうか心配なさらないで
わたくしを売って得たお金で、村人たちは救われる
他の娘を売ることもなく、飢えをしのぐことが出来るのです
何よりわたくしは、貴方に生きていてほしい
貴方が無事でいてくれれば、何も後悔することはありません

周囲に気取られぬようヴォルフに目配せ
大丈夫、この後に待ち受ける悪意に立ち向かう覚悟は出来ています


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

ヘルガと共に貧しい村人を装い人買いに接触
俺はこの近くの村に住む猟師
だが、災害により畑の作物は不作で、森に住む獣も数が激減した
このままでは村人たちは皆飢えて死んでしまう

特にオラトリオは高く売れると聞いた
美しい白鳥の翼と歌声が自慢の妻
彼女一人の売り上げで多くの村人が助かると懇願されれば
俺に拒否権はなかった

……以上は敵を欺くための作り話だが
愛する妻を人身御供に捧げる苦悩は本物だ
別れを惜しむ姿を存分に見せつければ
「試食役」として俺にも招待の声がかけられることだろう

ヘルガ、すまない
この後お前に待ち受ける苦難を思うと胸が痛む
真の敵を討つ好機が出来るまで、どうか耐えてくれ
俺は必ずお前を、人々を救い出す



「…失礼、ここで人を買い取っていると聞いたのだが」
 暗澹とした空の下、ぱくりと口を開けた城門の下。羊皮紙に羽ペンを滑らせていた執事に、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が声をかける。普段は鎧をまとうことが多い身を、今は偽るために質素な装いへと変えて話しかければ、ある程度要件の見当がついたらしい執事がにこりと笑みを張り付ける。
「ええ、伯爵の好みそうな人間を、ではありますが。貴方も売りに来たので?」
「…俺はこの近くの村に住む猟師だ。だが、災害により畑の作物は不作で、森に住む獣も数が激減した。このままでは…村人たちは皆、飢えて死んでしまう」
「ええ、ええ、悲しいことですねぇ。“食材”が減るのは」
 同情に見せかけた醜い欲望を垣間見て、思わずヴォルフガングが顔を顰めそうになって慌てて眉間に力を入れる。そうすれば執事が勝手に苦渋に喘いだ表情とみて、一層下卑た笑みを浮かべる。
「特に…オラトリオは高く売れると聞いた。それで、彼女を…」
 言い澱んだのは一応の演技であり、然し隠しようがない本心も含まれていた。“猟師の自慢は、美しい白鳥の翼と麗しい歌声を持つ妻。彼女一人の売り上げで多くの村人が助かると本人から懇願されれば、拒否権なくここまで来た”。それが潜入の為に練ってきたシナリオだったが、実際に愛する妻を人身御供に捧げねばならないのだから、滲む苦悩は紛れもない本物だった。その苦痛を癒す様にヴォルフガングの背からす、と歩み出たヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が、柔らかく微笑みながら夫の頬へ手を添える。
「ああ、どうか心配なさらないで。わたくしを売って得たお金で、村人たちは救われる。他の娘を売ることもなく、飢えをしのぐことが出来るのです」
 美しい翼を背に、他人のために自らを売りに出すを厭わない。まさに聖女のような在り様に、執事がますますと笑みを深める。執事の後ろからは既に納品された“食材”たちのすすり泣く声が聞こえる。人々を攫い、見世物に貶め、苦痛に喘ぐ姿を眺め嘲笑う歪んだ享楽。この世界で幾度となく繰り返された残酷劇。それらを決して許すことは出来ない。

――わたくしはもう二度と悪意には屈しない。
それは夫に、そして自らの心にも誓ったことだ。
邪悪を挫くためならば、いかなる苦難にも耐えて見せましょう。

 今一度自らの想いを確かめ、ヘルガが言葉を口にする。
「…何よりわたくしは、貴方に生きていてほしい。貴方が無事でいてくれれば、何も後悔することはありません」
 ヘルガにとっての真実を絡めた言葉は嘘よりも説得力を以て、執事には虚偽を信じ込ませ、ヴォルフガングへは愛惜を伝える。それによっていっそう悲痛な表情を浮かべたヴォルフガングに、執事が今しがた思いついたように嘯く。
「ああ、いっそ貴方も晩餐会に参加なさってはどうですか?奥様を近くで見守れますし、もしかすれば金貨を弾んでもらえるチャンスに恵まれるかもしれませんよ」
 それは恐らく“試食”の役を指しているのだろう。けれどただの村人が内情など知らないとタカをくくって、執事がこともなげに提案を口にする。その悍ましさに内心唾棄しながら、ヴォルフガングが有難い、と参加する意を述べた。
「ヘルガ、すまない」
 それは、“妻を売る狩人としての謝罪”を装った、ヴォルフガングからヘルガに向けた真の謝りだった。役割分担はこれで正しい、それは理解できる。それでもヘルガにこれから待ち受ける苦難を思うと、どうしようもなく胸が痛む。真の敵を討つ好機が出来るまで、どうか耐えてくれ、と祈るしかできない。だからせめて去りゆく背中に、一瞬此方へと向けられる青い瞳に、守りとなるよう言葉を贈る。

(――俺は必ずお前を、人々を救い出す)

 唇だけで紡ぐ誓いに、ヘルガが愛し気に目を細めて小さく頷いた。

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食 材 ……翼と歌声の美しいオラトリオ
持ち込み……ヴォルフガング・エアレーザー

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
青(f01507)と
【食材役】
呪物や場に集うヒト達への興味半分、青への心配半分

最初は調達役として参加しようかとも思ったが【情報収集】するうちに方針変更
こっそりUCで青より少し年上の少年の姿に変化。得た情報を元に人攫いのいそうなところを何かを必死で探すようにうろうろ
「青ー?どこいっちまったんだ…?早く見つけてやらねぇと…」

無事攫われ合流すれば困惑する青を安心させるように抱きしめそっと耳元で合わせるように告げ
「大丈夫だぞ。にいちゃんがついてるからな」
(設定的には幼い弟と恐怖を押し殺しながらも弟を守ろうとする兄との兄弟的な)


迎・青
【要おにーさん(f08973)と】(アドリブ歓迎です)
【食材役】
「女子供が狙われる」…って聞いて、おねーちゃんがまよいこんでたらどうしようって
要おにーさんはボクが悩んでるのに気がついて、いっしょに来てくれた
…んだけど、はぐれちゃったよぅー!あうー!

「あうあう…要おにーさん、どこー?」
わざと半分、うっかり半分、人攫いの目につくところを怯えながらうろうろして捕まる
そこで姿を変えた要と合流し動揺
「…要、おにー、さん?」

要に言われた通り、話は合わせて兄弟を装う(装っている間は「おにーちゃん」呼び)
なんとかおにーさんだけでも逃げて、と、一人はコワい、の間でおろおろしているうちに、二人纏めて入荷される



――女子供が狙われやすいと聞いたら、いてもたってもいられなかった。

 薄暗く光の乏しい空の下、活気の失せた街の路地裏。何かを探す様に幼い少年――迎・青(アオイトリ・f01507)がきょろきょろと辺りを見回す。青のヤドリガミとしての器物となっている青い鳥の首飾り、その片割れ。長らく探している姉がもしこの街にいたら、と不安なところを向坂・要(黄昏通り雨・f08973)に見透かされ、ついてきてくれたまではよかった――。
「…んだけど、はぐれちゃったよぅー!あうー!」
 どうしてだか、姉よりも先に要を探す羽目になっていた。

 青がさ迷い歩いてるのと同刻、要は青探しと情報収集を兼ねて街をうろついていた。ここへ来た目的としては呪物や場に集うヒト達への興味半分、青への心配半分といったところ。加えて元は調達役として参加しようかとも思っていたのだが、不穏な情報ばかりが集まるのに辟易して、あっさりと方針を切り替えた。
「これは、食材に回った方が都合が良いか…なら、まずは背格好からだな」
 そういって人攫いが良く現れるという町の路地裏に踏み入る直前、丁度人目の切れたのを確認してからユーベルコードを発動する。躰をまるごと書き換える能力で調節し、背の高い青年姿から青の兄と名乗って不思議のないくらいの少年の姿へ。
「危ないなぁオニイチャン。今こんなところを一人で歩いてちゃ捕まるぜ…俺みたいなのにな!」
 ――あっという間に、人攫いが“罠”にかかった。

 疑念を抱かせない程度の抵抗をした後は比較的おとなしく人攫いの腕に収まり、連れていかれた先は荷馬車の止めてある街はずれ。恐らくこの先に件の伯爵の城があるのだろう、とひそり辺りを見ていると、何処か聞き覚えのある泣き声が耳に届いて、思わず名前を口にした。
「青、いるのか?」
「えっ!要おにー……あれ、要、おにー、さん?」
 呼ばれた声に慌てて荷馬車から顔を出すが、そこにいたのは似ているけれど明らかにいつもとは違う姿の要で、青が戸惑った。そのまま更に言葉を重ねようとしたのを見て、逸れていた弟が心配で居ても立っても居られない兄、という体で青に抱きついてそっと口を噤ませる。そして耳元に二人だけに聞こえる小声で話しかけた。
「そうだ、俺だ。こっからは青のにいちゃんの振りをするから、合わせてくれるか?」
「う、うん…わかったよ“おにーちゃん”」
「よし、それでいい」
 速やかに密談を交わし、弟の頭を撫でる兄と、それに安心して涙ぐんでしがみつく弟を暫し演じていれば人攫いも満足したようで、揃って荷台に放り込まれる。
「うう…怖いよぉ…」
「大丈夫だぞ。にいちゃんがついてるからな」
 ガタガタと馬車が出てからも、怪しまれないようそんな芝居を重ねていると。

「あんまり似てないが、ありゃ兄弟ってとこか。それなら…どっちも食材になるか、片方を食う役に回すか。伯爵様の差配が楽しみだなぁ」

――人攫いの男が、ぽつりと下卑た内容を口走った。


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食 材?……茶髪の少年

食 材?……銀髪隻眼の少年

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
《華組》
アドリブ歓迎

『聖痕』が疼き宿命を痛感

ええ
伯爵の所業より
人が人を売る方が悲しく感じます

ありがとう


一般人を極力巻き込みたくない


食材役

燦と私の装備は【救園】に隠し
『聖印』は光学迷彩で目立たなくする


燦と旅の修道女に変装

仲睦まじく賛美歌を歌唱し
人攫いに甘美な悲鳴を連想させ誘惑しおびき寄せ浚われる

その足で納品されないよう催眠術でアジトに向かわせる

人攫いが眠ったら
浚われた一般人をコミュ力で優しく慰め落ち着かせ【救園】に匿う


町へ戻ると別の人攫いに捕まるかもしれません
中で待っていて下さい


後は燦と手分けして人攫いへ
他に浚った人は納品済で
未納品は私達だけだと暗示をかけ
燦と鎖で繋がれたセット状態で納品される


四王天・燦
《華組》

食材役

シホ、聖痕が痛むんだね…

一緒に行かせてよ
シホの傍にいたい
それに呪物の浄化は巫女の勤めさ

旅のシスターに扮するよ
シホの聖印のレプリカを首に下げ二人一組感を出す
二人のロザリオに破魔と浄化の祈りを込め、付与を気取られないよう術的迷彩を施して御守とするぜ
武具はシホに預ける

仲良く讃美歌を謳いながら(アタシが若干下手)、近道するふりで人攫いをおびき寄せられそうな裏道を行く
掴まって人攫いのアジトに行きましょ

フォックスファイア・弐式を発動させ眠らせるぜ
一般人は―特に女の子は丁重に解放し、売物はアタシ達だけだと催眠術で誘拐犯の記憶をすり替える

値を上げる為、傷物にせず二人セットで納品するよう擦り込むぜ



「シホ、聖痕が痛むんだね…」
 暗澹とした空の下、澱んだ空気の満ちた街の中。シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が胸の聖痕を押さえて苦しむ姿に、四王天・燦(月夜の翼・f04448)が苦渋を浮かべてその背をさする。
「ええ…きっとこれは宿命なのでしょう。それに伯爵の所業より、人が人を売る方が悲しく感じます」
 悪逆を働くオブリビオンも勿論許し難い存在ではある。然しそれは倒せば止めることができる。それよりも、金のために、欲の為に、若しくは――愛する誰かを救うために。人が人を売る悲劇を想えば、病んだ心根があまりにも労しかった。
「一緒に行かせてよ、シホの傍にいたい。それに…」
 誰よりも人を守りたいと尽力し、それ故に今暗い表情を覗かせるシホへ、燦が力強く声をかける。そして背を伸ばしてパァン!と広げた掌に拳を打ち付ければ、明るく笑ってみせて。
「呪物の浄化は巫女の勤めさ!」
 並び立つ、そして必ず成し遂げる。そう言い切って見せる燦の姿に――有難う、とシホが愛し気に瞳を細めた。


――~~♬ ――~~…~~♪~~…――♬

 暗い路地裏の道に、美しい讃美歌が響く。旅のシスターに扮した二人が歌声を重ね合い、人いない方へと進んでいく。細く高く、低く優しく。シホの繊細で優美な歌声に、少し不安定ながらも愛らしい響き混じる燦の歌声が重ねれば、それは唯一無二のハーモニーとなって人の耳に届く。だが人気の少ない路地では、その声を聞くのは人攫いくらいのもの。加えてあどけない二人の歌声は、十分に甘美な悲鳴を連想させうるだろう。それが計算の上とも知らず、誘惑混ぜた声におびき寄せられた人攫いの男たちが、欲のままに下卑た手を伸ばし――二人を口を塞いで、悲鳴を上げる間もなく攫って行く。だが抱えあげられた一瞬にシホが人攫いの1人の視線を絡めとり、催眠術を掛ける。

――アジトへ行きなさい。城に行くのは、その後で。

「…なぁ、とりあえずアジトへ戻らねぇか」
「んあ?上玉2人なんだからとっとと城に連れてった方が…」
「いや、他にも捕まえたガキがいただろ。まとめて連れてく方が面倒が少ねぇし」
「あー、まぁ…んじゃ一回戻るか」
 その思考こそが術中に在るとは露ほども疑わず、人攫いの男二人がシホと燦を抱えてそのままアジトへと向かった。

――そのまま辿り着いた先は、街はずれの粗末なあばら家だった。他に仲間はいないようで、僅かな蝋燭灯りの元にいたのは縛られた“食材”らしき少女が3人。人攫いが全員纏めて運ぼうと一瞬縛る手を緩めると、燦がそれを逃さず狐火を招き寄せる。ぼう、と浮かぶ灯りに怪しむ声を上げる間もなく、醸し出される温もりに包まれた人攫いが二人そろってどう、と床に沈む。それを見届けてからシホが少女たちへと駆け寄り、猿轡と縄を外して優しく声をかける。
「もう大丈夫です。私たちは救助に来ました。貴方たちは城になんて行かなくていいんです」
「ほ、本当に…?私たち、食べられなくて済むの…?」
「ふ…ふええ…」
「よかった…ああ…怖かったよう…」
 助かったことを実感してさめざめと涙を流す少女たちを、燦が頭を撫でて慰める。
「いま街へ戻ると別の人攫いに捕まるかもしれません。できればこの中で待っていて下さい」
「え、中って…お袖の?それ、入れるの?」
「魔法か何か…かな…。」
「わかんない…でも、また攫われちゃうのはやだな…」
 ユーベルコードのことなど知らない村娘には、袖を示して入って、と言われてもピンとこなかったようで、暫しまごついた空気を見せた。それを塗り替える様にパン!と手を叩いて、燦が笑顔を見せる。
「だーいじょうぶ!このシスターは奇跡の御業が使えるんだぜ。見てなよ…ほら!」
 といって燦がウインクして見せると、心得たようにシホが袖口から武器を取り出して見せる。凡そ袖には収まりそうにないサイズのものを取り出すのを見て、少女たちが歓声を上げる。
「わぁ、すごい…!」
「だろ~?しかもこの中にはな、なんとご飯も用意して在るんだ!」
「ごはん!?」
 聞いた途端、立ち上がった少女のお腹がきゅるる、と切ない音を上げたので、思わず皆が笑い声をあげた。
「それに寝台もあります。今日中には必ず全てを片付けて、貴方達を家まで送り届けますから…信じて、この中で休んでいていただけますか?」
「…わかった、おねえちゃんたちはこうして助けてくれたんだもん。中で大人しく待ってるよ」
「ふふ、ありがとう」
 了承を得ると三人とも袖口に触れさせて、安全な【救園】へと匿っていく。待っている、信じている、と託されたことを実感しながら、シホと燦が目を合わせて頷き合う。
「…さて、これで安全は確保できたな。あとは…こいつらにアタシ達を運ばせるだけだ」
「ええ、城まで無事に届けさせましょう。」
 彼女たちに、怯えずに済む明日を届ける為に。人攫いたちを前に二人がいっそう潜入への士気をあげた。


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食 材 ……シスター姿のオラトリオの女性
食 材 ……シスター姿の獣耳獣尾の女性

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
妻の夕辺(f00514)と

自慢の嫁がビシッと決めとーて見惚れるば〜い
オイも濃紫の色紋付袴で出張ります

下手に喋りようとボロが出るかしら
場に馴染むよう気取った笑みば浮かべて澄まし込んでおきますばい

こがん悪趣味で回りくどか甚振りはなかね
肉ば食われる事なく糧とされることもなく、苦痛だけ味わわされるなん

まあとりあえず裏腹な態度とっとこう
「私が受ける苛みと言う名の悦びは、全て妻から齎されるものなのです」
「とは言えあの者達の苦悶ぶりは、羨望を覚える程だ」
陶酔心酔そがんな演技
ドMなんで とは心の内で

嫁から耳打ちされれば笑って
「へっへ。桜の様に優雅で素敵な、小梅ちゃんでしたよ」


佐々・夕辺
夫の有頂【f22060】と

上品な梅色の留袖を選ぶ
下手な洋物で場を壊したくはない
アルベルトとやらにまず声をかけてみましょう

「ごきげんよう」
「素敵な晩餐会が催されていると聞いて、夫と楽しみに来ましたの」

半分本当、半分は嘘
私は妖だから、人の生肉に興味はあっても苦悶する様子に興味はない

「夫は人間ですが、食材ではありません ごめんなさいね」
「私だけの大切な食料なので、お譲り出来ないんです」

本性を出して良いのでしょう?
うっそりと笑って、夫と腕を組む

無事に案内されれば重畳
ふうとため息をついて、夫に耳打ち

「私の桜の真似っこをしてみたの どう? 似てた?」



 暗澹とした空の下、城門へと向かう一本道。道中にぽつりぽつりと見える人は皆空の色と変わらぬ顔色をして、影が落ちたように暗い。攫われたもの、生活苦に家族を売りに行くもの、利益目的の人攫い。その殆どが洋装か、あるいは継ぎはぎだらけの襤褸ばかりの中で、ひときわ目を引くのは和装を纏った夫婦ものの姿だった。
「自慢の嫁がビシッと決めとーと、見惚れるば〜い」
 その片割れ――濃紫の色紋付袴を身に纏い、日東寺・有頂(手放し・f22060)が隣立つ妻へうっとりとした視線を送る。
「ふふ、有頂も本当に素敵。依頼の為なのが勿体ないくらい」
 上品な梅色の留袖を楚々と着こなす佐々・夕辺(凍梅・f00514)も、正装姿の夫へと見惚れる様に瞳を向ける。場に馴染むよう洋物をとも考えたが、下手な着こなしで身分を疑われるのも業腹だ。それならいっそ着慣れた和服を纏えば、演技に集中できるというもの。何より、一張羅の愛しい人が見れるのが嬉しいのは偽りない本心だ。
「こいが見たいんならいつでも見せるとよ!」
「嬉しい!じゃあその為にも…早く済ませちゃいましょ」
 聳えたつ宴の門はもう目の前。あとは打ち合わせのままに、と視線で語り合って2人が口を噤んだ。

「ごきげんよう」
「…ほう、これは。御機嫌ようマダム。本日は晩餐会へのお越しでしょうか?」
 艶やかな異国の装いに一瞬目を見開いてから、アルベルトと呼ばれた執事がにこやかに羊皮紙から二人へと視線を移す。
「ええ、とても素敵な晩餐会が催されていると聞いて、夫と楽しみに来ましたの」
 にこりと艶やかに微笑んで見せれば、それはそれはと執事も微笑み返してくる。――夕辺が口にした言葉の半分は嘘で、半分は本当だ。妖狐の身としては人肉に対する興味はあっても、苦悶や苦を肴に饗する性はない。それでもこの場はこういうのが奴らの好みに合うだろう、と躊躇いなく“楽しみ”だと口に乗せる。
「ふふ、美しいマダムのご参加とあれば主も喜びましょう。して…そちらは“手土産”ですかな?」
 そういって、執事が夕辺の横に立つ人間の男、有頂へと手にした羽ペンを向ける。その言葉によどみはなく、ごく当たり前のように有頂を――人間を“食料”だと言い切る。ヴァンパイア、それもここに住まうものにとっては、それこそが常識なのだろう。
「夫は人間ですが、手土産ではありません。ごめんなさいね。私だけの大切な食料なので、お譲り出来ないんです」
 私だけの、の言葉を強調するようにするりと腕を絡め――本性を出して良いのでしょう?と、心のままにうっそりと笑ってみせる。絡められる腕には心底喜びを覚えつつも、執事の言葉、そして饗宴の内容には思わず顔を顰めそうになって。
(こがん悪趣味で回りくどか甚振りはなかね)
 肉を食われるわけでなく、糧とされることもなく。ただ苦痛だけを与え、その様子にほくそ笑んで酒杯を乾かす。醜悪を煮詰めたような催しだが、それを今日限りにするためにも、と胸裡に湧く不快感は押し沈めて裏腹な態度を見せる。
「私が受ける苛みと言う名の悦びは、全て妻から齎されるものなのです」
 一心に妻を愛し、妻から与えられるものなら痛みも苦しみもすべて甘美な愛になる、と陶酔した風に語れば、「これは失礼しました」と執事が引き下がって肩を竦める。――実際ドMなんで、とは心の内でだけ呟いたけれども。
「とは言えあの者達の苦悶ぶりは、羨望を覚える程だ」
「はは、随分と趣旨をご理解のようだ。まぁいいです。お客にも人間はおりますからね。どうぞご一緒に参加なさってください。但し“摘まみ食い”にはお気をつけて」
 そう言って二人分の参加を羊皮紙に書き込むと、執事が新たに運ばれてくる食材の見分へ向かい、ふたりへと背を向ける。ようやく欺く相手の目が離れたことでふうとため息をつき、夕辺がそうっと有頂に耳打ちをする。
「さっきのね、私の桜の真似っこをしてみたの。どう?似てた?」
 先までの妖しげな気配はどこへやら。甘えを滲ませ期待に満ちた目で有頂へと尋ねる。
「へっへ。桜の様に優雅で素敵な、小梅ちゃんでしたよ」
 華やかな桜を真似ようと、香り高さは梅のものだと誉めそやせば――夕辺の頬が花の色へと染まった。

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招待客 ……日東寺・有頂

招待客 ……佐々・夕辺

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高塔・梟示
類(f13398)君と

趣味が良過ぎて気分が悪いな…
己と同じかたちをした者に
残酷過ぎる仕打ちだ、理解出来ないよ

有難う、紳士ではないさ
探偵なんて汚れ仕事も多いもの
類君こそ危険な役割をすまない
では、わたしは『持ち込み』役で
必ずまた君の手に戻すよと
得物預り上着に隠して
咎められれば商売道具と偽ろう

新入りの業者を装い
不自然でない程度に周囲を観察
食材役の彼の動きに、目を光らせる演技も忘れず

此処で仕事が貰えると聞いてね
…ほら中々の上物だろう?
今後の取引のため、伯爵の嗜好を知っておきたい
わたしも晩餐会にお邪魔出来ないだろうか

口八丁で交渉を進め
別れ際、彼の合図に小さく頷き返し
無事を心の裡で願いながら

晩餐会で、また


冴島・類
梟示(f24788)さんと

生きるために喰うなら兎も角
生存競争の範疇越え
弄び苦しむ様を調味料になんてのは、随分ですね

常は紳士的な梟示さんに、売人役をさせるのは申し訳ないが…
おや、勤めと性根は別の話ですよ
僕は『食材』役に
武装持ち込みはできないだろうし
合流時まで、短刀を預けてもいいですか?
有難うございます
ふふ、安心だ

食材役の間怯えた奴隷か身寄りない若者を装い
場の様子や、連れる彼とあちらのやり取りに注意
恐るように周囲を警戒、見回し
隙あらば脱走を試みそうな生きることを諦めぬ素振り

受け渡し後荒く扱われようと
別れる際
梟示さんだけわかるよう大丈夫を示す片目を瞑り
頼る仲間が潜る先にいる今、不安はないと

また、後で



「苦痛を喰らう、か。趣味が良過ぎて気分が悪いな…」
 暗澹と垂れこめる空の下、伯爵の根城へと向かう一本道の最中。ゆっくりと近づいてくる城門を前に、高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)がため息交じりに吐き出す。
「生きるために喰うなら兎も角、弄び苦しむ様を調味料になんてのは、随分ですね」
 本当に、と同意するように冴島・類(公孫樹・f13398)も頷いて、僅かに空を舞う鳥の姿を目で追った。人とて獣に襲われ命を落とすこともある。だがその場合は血肉が獣の糧となり、生命の巡りに還元される。そんな生存競争の範疇を越えて、ただただ享楽のために命を使い棄てる様は、オブリビオンが摂理に添わぬ存在だというのを象徴しているようだった。その歪な宴を止める為にも、二人がそれぞれに役を割り当てて城へと向かっている最中なのだが。
「紳士的な梟示さんに、売人役をさせるのは申し訳ないが…」
 そう言って、じゃらりと嵌められた手枷を見せて類が苦笑すれば、梟示が首を振って笑う。
「有難う、でも紳士ではないさ。探偵なんて汚れ仕事も多いものでね」
「おや、勤めと性根は別の話ですよ」
「…恐縮だね。それよりも類君こそ危険な役割をすまない」
「それこそ心配無用ですよ。でも、お気持ちは有難く」
 どういう扱いを受けるのか、そして直ぐに死ぬものでは無いと事前に分かっているなら、対応はいくつか思いつく。それに自らが一皿となれば、宴へ添えられずに済む人間が出るかもしれない。なら、食材役を担うことに否はない。
「ただ武装の持ち込みはできないと思うので…合流時まで、短刀を預けてもいいですか?」
「わかった、預かろう。必ずまた君の手に戻すよ」
「有難うございます…ふふ、安心だ」
 信頼を籠めて預ける様に、類が銀杏色の短剣を手渡す。それを梟示が上着の奥へと隠して、確かに、と頷く。咎められれば商売道具だと偽ろうとも、決して取り上げられまいと密やかに決意して。
「…っと、そろそろ会話が聞こえそうだな。類君、悪いが」
「大丈夫です、何かあれば躊躇わずに曳き回して下さい」
 そう言って一度だけ類が笑みを見せてから俯けば、梟示も肺の息をふぅ、と長く吐きだして、悪趣味な奴らに合わせた作り笑顔を張り付けた。

「御機嫌よう、此方が伯爵の居城かな」
 辿り着くや否や、梟示が城門の執事へとにこやかに声をかける。
「御機嫌よう、そのとおりですとも。そちらは見るに…食材を売りにおいででしょうか?」
「ああ、此処で仕事が貰えると聞いてね…これを、」
 引く力は痛みを与えないよう極力弱く、代わりにじゃらりと大きく鎖の音を鳴らせば、察した類が少し大げさ目に蹴躓く振りで前へと躍り出る。
「…ほら、中々の上物だろう?」
「ほう、中々見目の良い少年ですね。特にこの目」
 睨みつける緑樹の瞳を見定める様にぐい、と執事が顎に手を掛ければ、その手から逃れようと類が腕を振って抵抗を見せた。驚いて執事が離れた瞬間に、城門へ背を向け逃れようとするも、梟示が羽交い絞めに止めれば、悔し気に呻く声が類の喉から洩れた。――それが本当は転ばぬように、手枷で手首を傷めぬようにとの配慮だとは、二人以外が知る必要はない。
「…活きがいいのも、売りになるかな」
「ふふ…ええ、ええ!気丈な食材が崩れ落ちる様というのも、中々乙ですよ。良いでしょう、こちら買い取りますよ。金貨は…」
「いや、今回は結構だ。それより今後の取引のため、伯爵の嗜好を知っておきたい。わたしもその晩餐会にお邪魔出来ないだろうか」
「おや、興味がおありで。…良いでしょう、食材はいくらあってもいいですからね。今後とも良い品を下ろして頂けるなら、招待客の席をご用意しましょう」
 そういって手元の羊皮紙に何事かを書き込むと、後方に控えたメイドへ類を連れて行くように指示を飛ばす。その際に手荒く鎖を引くのが見えて、梟示が顔を顰めそうになるのを必死でこらえた。それでも視線だけはそらさずに居れば、去り際の類がこっそりと片目をつぶって見せる。――頼れる仲間が潜る先にいる今、不安はない。意図を込めた合図に梟示もまた類にだけ分かるよう、小さく頷いた。

――晩餐会で、また会いましょう。

無事と成功の祈りを込めて、ふたりが暫しの別れへと歩んでいった。

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食 材 ……白髪緑目の少年

招待客 ……高塔・梟示

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

張三・李四
【玉兎】

[主人格 鳥面の張三李四]
无刃々(んはは)!
食材役とは...とんだはまり役であるなぁ、リリー?
より食材らしく見えるよう自分が手助けしてやろう。

…少々きつく締めすぎたであろうか...まあ、いいか。この位の方がより“らしく”見えていいはずだ。

やぁやぁ、使用人。食材を持ち込むのはここであっているのであるか?
自分が持ってきた食材は品質、味、共に最高であるぞ。
自分自ら育てたのであるから、間違いない。
…あぁ、それと...彼女は酷く怖がりであるぞ、喰栖喰栖(クスクス)。
可能であるならば、自分も口にしたいが...叶うだろうか?

さて、また後でなリリー。策略がバレて殺されるでないぞ。


リリー・フォーゲル
【玉兎】

確かに〝食材役 〟ですけども…!
決して!!リリーがご飯だと認めた訳ではありませんから!!

…うぅ…でもリリーは上手く潜入をこなせるのでしょうか…?
それに痛くて苦しいのはいやです…ちょうさんと離れてしまうのも…とても心細くなってきました…

あぁ…ダメダメ…泣いちゃダメ……リリーは頑張れます。リリーは強い子だから…
大丈夫、大丈夫…

…いまはリリーができるせめてものことをしないと…ここまでの道を覚えておいてもいいかもしれません…うん、大丈夫!リリーはきっと出来ます…!



「无刃々!食材役とは…とんだはまり役であるなぁ、リリー?」
 暗澹とした空の下、昏く澱んだ街はずれには似合わない、明るい笑い声が響く。声の主たる張三・李四(MISSING・f29512)の目の前には、ぴるぴると震えながら弱弱しくにらみ上げるリリー・フォーゲル(みんなの食材(仮)・f30316)の姿があった。
「確かに〝食材役 〟ですけども…!決して!!リリーがご飯だと認めた訳ではありませんから!!」
 あくまで“役”であって“食材”そのものではない、と主張するものの、羊の角にウサギの耳、鳥の尾っぽに翼腕、極めつけに牛の足をしたキマイラあっては中々に説得力に欠ける。
「それは置いておくとして、より食材らしく見えるよう自分が手助けしてやろう。」
「横に置かないでくださいー!大事なことですからねこれ!」
 敢えてひょい、とものを退かすジェスチャーを見せた李四にリリーがかみついて見せるけれど、やろうとしてることには一応の納得をして、垂れた耳をよりしおしおとそよがせる。
「…少々きつく締めすぎたであろうか…まあ、いいか。この位の方がより“らしく”見えていいはずだ。」
 李四が手にしたロープでちゃっちゃと全身を縛り上げ、出来上がった姿にこれは…とうっかりリリーに含まれてない動物の料理名を言いかけた所で流石に口を噤んだ。
「…うぅ…でもリリーは上手く潜入をこなせるのでしょうか…?それに痛くて苦しいのはいやです…ちょうさんと離れてしまうのも…とても心細くなってきました…」
「なぁに、これだけ旨そうなら奴らも涎を垂らして食いつこうよ。そう落ち込むでない、自信を持て」
「自信って、何に対してのですかー!」
 涙をためたリリーの主張には、んはは、と笑って李四が明後日の方を向いた。

「やぁやぁ、使用人。食材を持ち込むのはここであっているのであるか?」
 大きな城門を前にして飄々と、伯爵の城へとたどり着いた李四がそこに立つ執事へと尋ねる。掛かる声に羊皮紙に落としていた視線を上げ、李四の手にした縄の先を見て執事がにこりと微笑みを浮かべる。
「ええ、然様ですよ。伯爵様の食材をこちらで検品しております。して、そちらが持ち込みの品でしょうか」
「そうとも、自分が持ってきた食材は品質、味、共に最高であるぞ。自分自ら育てたのであるから、間違いない。」
 そういって縄を引き、執事の前にさらされれば文字通り舐める様に見つめられ、リリーの瞳から思わず涙が零れそうになる。
(あぁ…ダメダメ…泣いちゃダメ……リリーは頑張れます。リリーは強い子だから…
大丈夫、大丈夫…)
「…あぁ、それと…彼女は酷く怖がりであるぞ」
 必死に自身を鼓舞するリリーの内心が分かったわけではないだろうが、李四が潤んだ瞳を見て喰栖喰栖(クスクス)と笑って見せる。まるで怯えていようと、それも取り入る一端になると伝わるように。
「ほぉ…飾り物ではなく、本当に獣の部位が混じった種なのですね。偶にこちらにも運ばれてきますが、いやはや確かにこれはそのままでも美味しそうな。」
 そう言って明らかに“食材”として値踏みされている様子にはやはり怯みを隠せない。然し、その態度こそが気に入られるなら、と不用意に隠さず居れば、執事から満足そうな声がかかる。
「いいでしょう、こちら買い取らせて頂きますよ。金貨はそうですね…」
「なんの、金など結構。それより可能であるならば、自分も口にしたいが…叶うだろうか?」
「晩餐会に参加したい、ということでしたら良い食材を入れて頂きましたし、結構ですよ。食べれるかどうかは…まぁ伯爵様の気分次第になりますが。」
「良い良い、では末席にでも座らせてもらうとしよう。」
 やり取りの末に執事が何事かを羊皮紙へ書き留め、控えのメイドにリリーを連れていくよう命令を下す。
(…いまはリリーができるせめてものことをしないと…城内の廊下を覚えておいてもいいかもしれません…うん、大丈夫!リリーはきっと出来ます…!)
 そのまま他の食材とまとめて連れていかれる最中にも、いじらしい心意気でリリーが目を見開く。その奥へと連れられて行かれる背を見送りながら。
「…さて、また後でなリリー。策略がバレて殺されるでないぞ。」
 李四がにやりと笑みを浮かべ、かろうじで叱咤と取れる言葉をつぶやいた。

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食 材 ……動物の部位を数多持つ少女
持ち込み……張三・李四

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
どォも
俺ァ参加者だよ。ほら、お揃い。鋭い八重歯してる
素敵なBGMを聞きながらのディナーって最高!
昨日の『夜食』は控えめにしてきたんだ
さぁ、通してくれ

――ヨゴレ仕事も悪役も得意なもンだが
いい気分じゃないね
ただ、人間も食えないこたないから
『そういう目』になればいいだけ。今はね
いつもならわめく役は俺だが
今回はエコーが囮
ゴマスリとかできないだろうし

伯爵、ご機嫌麗しゅう!
俺も人間の『歌』をバックに食べる晩餐が楽しみ
アー、特に、そうだなァ
『うんと俺好みの』人間にそうさせるのがいいンだ
特にこの――海色の瞳の美少年とか、さァ
お互いの無事確認に一旦接近
大丈夫か、エコー

ねえ伯爵、予約制とかってない?


エコー・クラストフ
【BAD】
食材役として参加
いつもこういうところで囮を買って出るのはエマの方だ
でも今回に限っては、ボクがどう動いてもエマ自身の苦痛を和らげられそうもない。だったら、ボクが餌をやろう

無知な人間を装って人攫いに話しかける
あの……わたし、ここのお城で素敵な催しがあるって、お友達から聞いたんですけど……
わたしみたいな子供でも入れるんでしょうか……?
――とか言っておけば、下卑た輩はほくそ笑むだろう
無知と無垢なる者を痛めつけるのはこの手の奴によくあることだ

首尾よく食材として入り込めたら、エマの接触を待つ
あぁ、大丈夫。気分もそう悪くはないよ。今は彼らの顔を覚えてるところ
いずれ殺して、派手に叫ばせるためにね



「どォも、執事チャン。俺ァ参加者だよ。」
 薄暗い空の下、伯爵の城へとつながる人の波は、まるで葬列の様に陰鬱だった。その中を順番もお構いなしにひょいと潜り抜けて、ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)が検品中の執事へと声をかける。
「ほら、お揃い。鋭い八重歯してる」
 口に差し込んだ指を引いてニィ、と牙を見せれば、それはあたかもあざ笑うかのような表情に見える。一瞬たじろいた執事も牙とハイドラの異様な雰囲気に納得したのか、ようこそお越しを、と納得した様子で羊皮紙へ筆を滑らせる。
「素敵なBGMを聞きながらのディナーって最高!その為にワザワザ昨日の『夜食』は控えめにしてきたんだ。さぁ、腹がなる前に通してくれ」
「…畏まりました、ではどうぞ奥のホールでお待ちくださいませ。すぐにメイドに控室へ案内させますので」
 元より出入りが多いからかあっさりと城の方を指され、ハイドラが揚々と城門をくぐっていく。然し人目が絶えた瞬間に浮かぶのは、苦みの混じった表情だった。

――ヨゴレ仕事も悪役も得意なもンだが。
今回のコレは、いい気分じゃないね。

 ハイドラ自身が人間を食べれないわけではない。なら今だけは同じだと騙すように『そういう目』になればいい。お陰ですんなりとホールへ通された。豪奢な扉を開けた先、煌びやかなシャンデリアの輝くホール。下見を兼ねてあちこち視線をやっていた、その瞬間。
「――伯爵、ご機嫌麗しゅう!」
 目の端に止まった、2階を通り過ぎようとする明らかに上位の存在を呼び止めた。
「…ああ、今日の客人か。」
「そォだよ!俺も人間の『歌』をバックに食べる晩餐が楽しみでさァ」
「それは何より。」
 影になっているせいで顔は伺い知れないが、矢張り今日の宴の主に違いない。
「アー、特に、そうだなァ。『うんと俺好みの』人間にそうさせるのがいいンだ。特にこの――海色の瞳の美少年とか、さァ」
 カツカツと靴音を鳴らしながら歩み寄るのはホールの一角。食材室へと納入される直前に集められた、攫われてきた人間たちの集まり。その中からひとり、そ知らぬふりで誰よりも愛しい――エコー・クラストフ(死海より・f27542)を指さした。

――ハイドラが辿り着いたより、ほんの少し前のこと。
エコーがいたのは城下町の外れ。食材役として攫われるべく、丁度“獲物”を探している最中だった。いつもこういうところで囮を買って出るのはハイドラ――エマの方だ。けれど今回に限っては、エコーがどう動いてもエマ自身の苦痛を和らげられそうになかった。だったらせめて、自身が餌をやろう、と互いに役割を分担しあった。そして見かけた如何にもといった風体の男に、無知を装っておずおずと話しかければ案の定ぶしつけな視線が向けられた。
「あの……わたし、ここのお城で素敵な催しがあるって、お友達から聞いたんですけど……」
「……あんた、催しの内容をしってるのか?」
「いいえ、でも帰りたくなくなるぐらい素敵だって。その、わたしみたいな子供でも入れるんでしょうか……?」
 ――とか言っておけば、下卑た輩はほくそ笑むだろう。無知と無垢なる者を痛めつけるのは、この手の奴によくあることだ。そんなエコーの内心の計算を手本にしたように、声をかけた男は醜悪な笑みを浮かべて手を伸ばしてくる。
「ああ、寧ろあんたみたいな子にうってつけの催しだとも。さぁ、俺が連れて行ってやろうねぇ」
 本当なら簡単にへし折れる腕を甘んじて受け入れて、容易く捉えられたという印象を相手に与える。そのまま暫し状況に耐えていれば――

――今こうして、唯一の羅針盤に指し示されたのだ。

 選んだ食材をつまみ上げる振りでエコーに歩み寄り、ハイドラがこそりと耳打ちする。
「大丈夫か、エコー」
「あぁ、大丈夫。気分もそう悪くはないよ。今は彼らの顔を覚えてるところ」
 ――いずれ殺して、派手に叫ばせるためにね。付け加えられるエコーの言葉に、ハイドラが惚れ惚れと安堵する。暫し検分の振りをした密かな逢瀬を交わした後は。
「ねえ伯爵、予約制とかってない?」
「はっ、食材は全部私のものだ。縁の深い者同士なら食わせ合って苦渋を味わうこともあるが、そなたらは今あったばかりだろう?」
「いやァ、今まで培ってきたものだけがゼンブじゃないだろ?情熱的で、抗いがたい衝動ってのも捨て難いものさ――ほら、一目ぼれってヤツ?」
 そう言ってハイドラがウインク一つを向けると、思わず微笑みそうになった口元をエコーが慌てて手で覆って眉を顰める。そうすれば周囲には怯えて震えたように繕ったうえで、ハイドラだけにはその言葉に喜んだ意が伝わる。――ああ、やっぱり誰にも食べさせてなんかやらない。エコーを喰うなら、それは俺だ。
「こぉんな晩餐会を開く浪漫溢るる伯爵なら、俺の気持ちも分かるだろ?」
「…ク、ハハ。まぁいい。そこまで言うなら札を掛けておいてやろう。幸い今日は食材が豊富らしいしな。但し、せいぜい上手くそれを“啼かせて”くれ給えよ?でなければ、食べ終わる前に――飽きて皿を落としかねんからな。」
 皿をやる代わりに悲鳴を供せ、とはっきり言葉にしてから、興味が失せたのか伯爵が奥へと去っていく。
「…勿論、誰よりも美しく啼かせてやらァ」
 指を立てたい気持ちを押し隠し、ハイドラがエコーの手を取って嗤う。
 
――海を宿した瞳が、異色の双眸を写して揺らめいた。

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食 材(予約済)……海色の瞳をした少年

招 待 客  ……ハイドラ・モリアーティ

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七那原・望
やっぱりわたしの外見だと潜入するには食材役が一番手っ取り早いですか。
下手に食材に紛れ込むよりも正規の手続きを踏んで食材になった方が良さそうですね。

演じるのは護衛とはぐれた盲目の令嬢。
ふらふらと、手を引いてくれる人もなく不安そうに振る舞います。

誰かー?誰かいないのですかー?まさか護衛とはぐれちゃうなんて……どうしましょう?わたし一人じゃみんなを探そうにも……誰かー?誰かー?

人攫いとしてこんなに美味しい獲物はいないでしょう?
盲目の令嬢らしく、足音を抑えられれば目の前まで来ないと気付かないフリをしますし、そちらが護衛のフリをするなら騙されてあげます。

拘束されても力ない盲目の令嬢を演じ続けましょう。



 暗澹とした空の下、城下町の人気のない路地裏。誰もが人攫いを警戒して通らないようなさびれた通路を、ふらふらと七那原・望(封印されし果実・f04836)がひとり歩く。目に巻かれた黒布は凡そ外界を見通せそうになく、ましてや容姿は幼い少女そのもの。余りにも危なっかしい状況だが、それは当の本人――望が作りだした“仕掛け罠”だ。

(やっぱりわたしの外見だと、潜入するには食材役が一番手っ取り早いですからね。)

 幼い容姿、封印を施された目隠し、この世界では時折みられるオラトリオとしての特徴。これだけ揃っていれば晩餐会の趣旨を理解して居る振りより、人攫いを捕まえる方が効率がいい――そう思って赴いたのが、この場所だった。他に人が居てはうっかり親切にされたり、下手をすれば巻き込む可能性がある。なのでなるべく人がおらず、人攫いが事に及びやすい路地裏はうってつけだ。あとは見つかることを祈って、すぅっと息を吸ってから、よく通る声で呼びかける。
「誰かー?誰かいないのですかー?」
 とぼとぼと不安そうに、そして何も見えずに困っているよう、路地をでたらめに歩きだす。
「まさか護衛とはぐれちゃうなんて……どうしましょう?わたし一人じゃみんなを探そうにも……」
 独り言をつぶやく声も涙を含んだように震わせて、不自由な貴族の令嬢らしく振る舞っていれば――背中にべったりと張り付くような視線を感じ始める。
「……誰かー?誰かいませんかー?」
 本来なら難なく避けられる壁にも時折ぺちん、とぶつかって盲目を強調しながらよたよたと歩きまわる。すると押さえられた足音がゆっくりと迫るのを感じて、尚気づかないふりをし続ける。
 
(人攫いとしてこんなに美味しい獲物はいないでしょう?)

 だからさぁ、早く、はやく、その手を伸ばすと良い――その望の狙いをなぞる様に、突然武骨な手に口元を塞がれて、ふわりと足元から地面の感覚が失われる。
「きゃ…んんー!?」
「悪ぃな嬢ちゃん、でもお前も悪いんだからな…こんなところを一人でほっつき歩いてるなんて…攫う他ないだろうが!」
 下卑た声の男に小脇へ抱えられたのを感じて、ほっと胸をなでおろす。獲物は掛かった、あとは気絶した振りでもして待っていれば、自然と城の中にたどり着くだろう。

――手招く狩人は、果たしてどちらなのか。
それが分かるのは、この場においては望ただ一人だけだった。


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食 材 ……盲目のオラトリオの貴族令嬢

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大成功 🔵​🔵​🔵​

蘭・七結
【比華】

招待客役

常夜の饗宴よ、あねさま
少々惨たらしいのは、この世界故かしら

見目麗しく清らかに
吸血鬼たちが好むように
とびきり美しく飾り立てましょう
――嗚呼、ステキよ。あねさま

漆黒と紅のドレスを纏い
黒のヴェールに、あかい花を飾る
あなたの彩に包まれるだなんて
なんて、甘美なひと時なのでしょう

ふふ、いけない
内側に往くまで――内側に至ってから
そこからが、お仕事だものね

ご機嫌麗しゅう
伯爵さまのご招待をいただいたの
悦なる演目を拝見出来るとお聴きしているわ
劈くような悲鳴の演奏が聴けるだなんて
胸が高鳴って仕方がないの

如何なるあかが、みられるのかしら

浮かぶ虚言を口にして
演ずる微笑を刷きましょう
往きましょう、あねさま


蘭・八重
【比華】

招待客

素敵な夜宴ね
この世界は淀んでいる。何時もの事よ

貴女とは対の紅と漆黒のドレス
紅のヴェールに黒花を飾って
仄かに肌を際立たせる

貴女よりも先に――美味に見えるように

私の彩に染まった妹
最後に貴女の唇に紅を指す
一一嗚呼、なんて麗しい
貴女の姿を見たなら、伯爵も他の輩も
飛びついて来ることでしょうね
いけない子ね

ご機嫌麗しゅう、素敵な殿方
素敵な御招待を頂き有り難う御座います
妹と素敵な食事を頂けると
この子も私も、楽しみにしてましたの
あら……女性だけでは、いけなかったかしら?

素敵なひと時を、私達も楽しみたいわ
あかは誰もが焦がれるもの

視線を外す事なく
微笑みは妖艶に、美しく

えぇ、往ましょう。なゆちゃん



「――常夜の饗宴よ、あねさま」
 ふわり、と夜を縫い上げたような黒いスカートの裾を広げ、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)が静かに告げる。
「そう、素敵な夜宴ね」
 刺繍の美しい袖口を透かし見て、蘭・八重(緋毒薔薇ノ魔女・f02896)がゆるりと笑みを刷く。
「少々惨たらしいのは、この世界故かしら」
 問いかける指先に赤を乗せて、七結がことりと首をかしげる。
「この世界は淀んでいる。何時もの事よ」
 艶やかなヒールに足を滑り込ませて、ふうと八重が息を吐く。

 七結が纏うのは、黒のドレス。赤い刺繍が映える衣装に、見目は麗しく清らかに装って。八重が着るのは、赤のドレス。黒いレェスが繊細に躍り、艶やかな一輪に仕上げていく。

――吸血鬼たちが好むように、とびきり美しく飾り立てましょう?

 そんな密やかな声を編んだように、七結が黒のヴェールにあかい花を飾って揺れる。ひらり、ひらり、黒と赤。それはあねさまの色。あなたの彩に包まれるだなんて――それは、なんて。
「なんて、甘美なひと時なのでしょう」
 吐息と共に零れる声を掬うように、八重が愛し気に瞳を細めて七結の唇に触れる。人差し指で右から左へ滑らせる、指先の紅は最後の仕上げ。同じ彩に染まった妹へ施す、まじないの色。
「――嗚呼、なんて麗しい」
 白肌に映える紅は、酷く蠱惑的な色を醸す。褒める言葉に笑みを浮かべたなら、なおさらだ。
「貴女の姿を見たなら、伯爵も他の輩も飛びついて来ることでしょうね。…いけない子ね」
 咎める声に反して瞳は甘く、罰の代りに自らへと彩を加えていく。頬紅は淡く、見惚れた少女を装って。目端の薄桃は、視線捕らえて離さぬように。何より――貴女よりも先に、美味に見えるように。美しい白肌に牙の這わぬよう、誘う蜜花を演じて見せる。
「――嗚呼、ステキよ。あねさま」
 晩餐会でも、誉めそやし五月蠅く囀る雀は居るかもしれない。けれど今この時、頬を染めて七結の口から溢れた言葉以上に、嬉しく感じるものはないだろう。
「ふふ、いけない。内側に往くまで――内側に至ってから。そこからが、お仕事だものね」
「ええ、くれぐれも気を付けましょう。私も貴女に見惚れないようにしないと、だけれど」
 装い笑い、見つめて微笑み、少女たちが夜へと踏み出していく。

「ご機嫌麗しゅう、素敵な殿方。素敵な御招待を頂き有り難う御座います」
「伯爵さまのご招待をいただいてから、楽しみで眠れませんでしたわ」
 ころころ鈴を転がす声音で、ふたりが執事へと挨拶を口にする。艶やかなドレス姿、高貴を感じさせる言葉端、そしてどことなく感じ取った“同族”の血の所為だろうか。特に怪しむ姿も見せず、執事が持て成す様に一礼をする。
「ようこそ、お嬢様方。ご足労戴き伯爵様もお喜びでしょう。」
「今宵は妹と素敵な食事を頂けるとか…この子も私も、楽しみにしてましたの」
「悦なる演目を拝見出来るとお聴きしているわ。劈くような悲鳴の演奏が聴けるだなんて…胸が高鳴って仕方がないの」
 七結がとろりと夢見る様に瞳を潤ませれば、八重が見守るように目を細めて七結の頬を撫ぜる。無邪気な妹と、淑女然とした姉。立場を同じくする他の招待客たちも、時折ため息交じりに二人を盗み見ていく。
「それはそれは、きっとご期待に添えると思いますよ。なにせ今日は上物が多いですから。…して、ご参加はお二人だけで?」
「あら……女性だけでは、いけなかったかしら?」
「いえいえ、けれど残念です。仕事がなければ、私が手を引く役を申し込みたかった」
「まぁ。お気持ちは分かりますけど、今日のあねさまの隣は私だけのものですから。お譲りできませんの」
「まぁ、この子ったら。…ふふ、でもお気持ちは有難く受け取りますわ。」
 腕にするりと添う七結に、八重が苦笑を浮かべながらさらりと零れる髪を撫でる。その様子を見れば、断られたことすら男としては勲章のひとつというもの。これは叶わない、と執事もどこか楽し気な笑みを浮かべた。
「それでは、お二人とも奥へどうぞ。ホールからはメイドが案内しますので。」
「ええ。素敵なひと時を、私達も楽しみませて頂くわ。あかは誰もが焦がれるもの」
「ふふ…如何なるあかが、みられるのかしら」
 虚言を口に、妖艶を纏い、浮かべる微笑みは余りに美しかった。それは果たしてどちらが享楽を食む側なのか、分からなくなるほど。
「往きましょう、あねさま」
「えぇ、往ましょう。なゆちゃん」

――手を取り合い並び立ち、あか添うふたりが城の中へと吸い込まれていった。

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招待客 ……蘭・七結
招待客 ……蘭・八重

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】食材役

周りにも目を遣るわ
このひとたちがみんな、「食材」だと?

ええ、良いの
ルーシーは女子供だし、適任でしょう?
ゆぇパパと目を合わせて頷く
微笑むことだってしよう

わたしが『ルーシー』になった時
ブルーベルのパパを食べてしまった時
わたしはその時の痛み思い知れば良いと思った、なんて
パパには絶対に言えないけれど

少し着飾って上品に振る舞うわ
持ち込み役に扮するパパにしがみ付いて
俯いて、怯えてみせるわ
貴族の育ちも怖いのも、ウソでは無いもの

ああでも、パパには
震える手が演技だって、思って欲しい

再び結ぶ視線に
言葉にせず、また頷いて

ええ、それでも行こう
パパが居て下さるのなら
ルーシーは
怖くても痛くても、へいきだもの


朧・ユェー
【月光】持ち込み役

本当に良いのですか?
しゃがんで彼女の目線に合わせる
死にはしないと言っても
痛み苦しみはある
それをこの子にさせたくは無い
でもこの子の意思も尊重はしたい

今晩は、こちらで食材を探していると聴きまして
こちらの子供は貴族の子といっても落ちぶれてた子
実は知り合いの子供でして

お金はいりません
嗚呼、もし宜しければ
この子が食される所を観てみたい
どんな風になるかをこの目で

再び目線を合わせる
どんな事があっても迎えにいくよと言葉にはせずに

さぁ、行っといで



「――本当に良いのですか?」
 暗澹とした空の下、ぱっかりと口を開けた城門の前。もう少しで納入の執事の元に届く、という位置で朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)がぴたりと足を止めてしゃがみこむ。
「ええ、良いの。ルーシーは女子供だし、適任でしょう?」
 合わせられる視線に強く頷いて見せて、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が気丈な言葉を返す。事前の打ち合わせ、聞いた依頼の情報からの結論として、ユェーが持ち込み役でルーシーが食材役というのは、納得できるものだった。だがそれは理性的な判断に過ぎない。食材役が追う役目は重い。死にはしないと言っても、耐えがたい痛みや苦しみはあるのだ。それをまだ幼いルーシーに味合わせたくなど無い。けれど、役割を買って出たのはルーシー本人だ。その意思も尊重をしたい、と思えば今一歩踏み込む気持ちを渋らせる。
「大丈夫よゆぇパパ。だってパパは、ルーシーを助けに来てくれるでしょう?」
 そう言って向けるのは、いつもと変わらない微笑み。信頼と親愛を籠めたそれを前には、ユェーも改めて覚悟を決めた。
「勿論。必ず迎えに行くよ。」
 そういって立ち上がり、ルーシーの手を取りユェーが城門へと再度歩き出す。その一瞬に、ふとルーシーの瞳に暗い影が落ちたことには気づかないまま。
 
――ほんとうはね、パパ。
わたしが『ルーシー』になった時
ブルーベルのパパを食べてしまった時
わたしはその時の痛みを、苦しみを
みんなが思い知れば良いと思った、のよ。
なんて、パパには絶対に言えないけれど。

 きゅう、と噤んだ口は怯えた演技の振りをして。今はなすべきことを為そう、とルーシーが隻眼を城へと向けた。

「今晩は、こちらで食材を探していると聴きましたが…間違いないでしょうか?」
 振る舞いは卒なく優美に、それこそどこかの貴族を思わせる完璧さでユェーが執事へと声をかける。その呼びかけに羊皮紙に落としていた視線を引き上げて、執事がにこりと笑みを浮かべる。
「ええ、合っていますよ。伯爵様はなにぶんよぅく召し上がりますので。して、持ち込みの方でしょうか?」
「はい、こちらの子をお渡ししたく」
 そう言って半身を引くと、ユェーの後ろにしがみつく様にしたルーシーの姿が現れる。握りしめた手は震え、戸惑う色の乗った瞳が揺れれば、何も知らずに怯えた子供に写るだろう。ああでも、どうかユェーにだけはこの震える手が演技だと思っていて欲しい。怖い気持ちが震わせているとは、悟らずにいて欲しい。誤魔化す様にふと視線を逸らすと、そこにいるのは先に“納入”された人々の姿がみえた。

(…――このひとたちがみんな、「食材」だと?)
 
 物の様に数えられ、猿轡や縄を巻かれて連れられて行く人々。中にはルーシーとそう変わらない年頃の姿も見える。みんなが伯爵に苦痛を味合わされるのか、と思うと恐れの中にも奮い立つ気持ちがわいて、逸らしていた視線を戻して執事を見つめ返した。
「元は貴族の子…といっても、没落した家のですが。実は知り合いの子供でしてね」
「ほう、確かに何処となく気品がありますな。ドレスも上手く着こなして…ええ、ええ、伯爵の好みそうな子です。…良いでしょう、こちら買い取りますよ。金貨はいかほどに…」
「お金はいりません。その代わりに、ですが晩餐会に参加させて頂けませんか?」
「おや、興味がおありで?」
「ええ、この子が食される所を観てみたいです…どんな風になるかを、この目で」
 笑みを刷いたまま、向ける視線には残酷な色を覗かせる。同じ穴の狢だと、皿の上の享楽に憶えがあると知らしめるように振る舞って見せれば、執事が納得したように頷いて筆を走らせる。
「畏まりました。良い品を下ろして頂きましたしね。参加できるように取り計らいましょう。では――ごゆっくりお愉しみを」
 最後ににやり、と下卑た笑みを浮かべて執事が次の食材の卸しへと移っていく。そして命じられたメイドが食材を奥へと連れていこうとするほんのわずかな間、ユェーとルーシーの視線が交わる。

――どんな事があっても迎えにいくよ。
さぁ、行っといで
 
音には乗せず、視線だけで告げる言葉を受け取って、ルーシーが小さく頷いた。

――ええ、行ってくるわ。
パパが居て下さるのならルーシーは
怖くても痛くても、へいきだもの。

 パパが居る。その“無敵の呪文”を胸に、ルーシーがメイドたちに手を引かれていった。

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食 材 ……金髪に青い隻眼の少女
持ち込み……朧・ユェー

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
あきら(f26138)と
食材味見役

随分と悪趣味な宴席だ事
酷く不愉快だけれど今はそれを出すべきでは無い
抱いだ嫌悪をも仕舞い込み、事を成そう

必ず僕が助ける
それまで無理をしないこと
良いね?
潜入前に突っ走りそうな彼女へ忠告を
得た眸を同じ熱量で見つめ返し強く手を握る

そうだよ
偶には僕にも格好付けさせて

事前に協力を仰いだ町人に売人のフリを任せ
仲の良い異母姉弟だと触れて貰おう

脅えた子どものフリをして彼女の背に隠れるように振舞えば
伯爵が“どちら”を食材に選ぶかなど明白

引き裂かれる際にも泣きじゃくり悲痛な叫びを聞かせれば
さぞ彼を愉しませられる事だろう
忌々しいけれど、ね

さぁ、僕らの術中に嵌っておくれ


天音・亮
まどか(f18469)と
食材役

…なんて惨い事をするんだろう
いくつもある世界の中
私が知らない悲劇はまだまだたくさんあって
その全てに手を伸ばせないのが酷く悔しくもどかしい

青ざめ震える拳に奥歯を噛んで
けれどきみがその手を握って
子供に宥め聞かせようとするように言葉を紡ぐから
解れた強張りはふふ、と笑みを溢すんだ

無理無茶が私の専売特許なのに?
…なんて
大丈夫だよ
信じてちゃんと待ってる

協力を仰いだ町人さんに
他のみんなも絶対助けると約束しよう
ヒーローとしてやるべき事をやる

ねえまどか
私は絶対にきみを食材になんかさせないよ
目一杯身綺麗にしてさあお披露目

弟を背に庇い睨む視線
ほら、美味しそうな空色でしょう

私を、選んで



「…なんて惨い事をするんだろう」
 伯爵の城へと向かう道すがら、ガタゴトと揺れる荷馬車の幌の下。依頼の説明を脳裏に思い返して、天音・亮(手をのばそう・f26138)がギリリ、と歯を食いしばる。
「…うん、随分と悪趣味な宴席だこと」
 亮の嫌悪に同意するように、旭・まどか(MementoMori・f18469)もためいきをこぼす。いくつもある世界の中、こうやって亮が知らない悲劇はまだまだたくさん存在する。叶うことなら全部取り除いてしまいたいのに、その全てに手を伸ばせないのが酷く悔しくてもどかしい。まどかも晩餐会には酷く不愉快を感じていたが、それを極力表情には出さずにいた。抱いだ嫌悪を仕舞い込み、事を成そうと緩く首を振ってから亮へと視線を向けると、青ざめた顔で震える拳に奥歯を噛んでいた姿が目に入った。それがひどく脆く見えて、まどかが亮、と声をかける。
「必ず僕が助ける。それまで無理をしないこと…良いね?」
 まるで子供を諭すような落ち着いた声音で、拳を解く様に包み込んで。とけていく強張りにようやく自身の緊張に気づき、亮がふふ、と笑みを溢す。
「無理無茶が私の専売特許なのに?」
 誰かを助けたい、泣かないでいて欲しい。白い部屋を明るく塗り替えるヒーローでいたい。それは嘘偽りない気持ちだけど、まどかに笑っていて欲しい想いも本当だから。
「…なんて。大丈夫だよ、信じてちゃんと待ってる」
「…うん、偶には僕にも格好付けさせて」
 拳でなく、互いのぎゅうと手を握り合って額を寄せ合い、同じ熱量を持った眸で見つめあう。その瞬間、ガタンと大きく跳ねて馬車が止まり、幌がひらかれた。
「…ついたよ。それじゃ悪いけど、縛らせてもらうから」
 協力を取り付けた街の人間が、縄を手に申し訳なさそうに二人へと近寄る。彼もまた娘を城へと取られた犠牲者だ。だからこそ罪悪感の少しでも減るよう、なんてことはないと軽く話しかける。
「わかってる。気にしないでほら、早く結んじゃって」
「大丈夫、私が娘さんも必ず探し出して見せるから!」
「…有難う、頼むよ」
 
「…ど、どうも執事様。」
 城門を前にして怯みながらも、協力者の男が気丈に執事へと話しかける。その声に羊皮紙から顔を上げて執事が男をじろりと一瞥すると、身なりから色々と察したのか蔑むような視線を投げかける。
「…ああ、下の街の者ですか?今日は何の用でしょう」
「それが、その…いい“食材”を見つけましてね、献上に来たんですよ。ほら」
 これを、と言いながら手にした縄を引いて、ふたりを執事の前へと見せつける様に押し出す。
「ほぉ、ふたりもですか。」
「え、ええ。それも腹違いの姉弟なんですよ。」
「姉弟…ふふ、それはそれは。」
 下卑た笑みを浮かべて、執事がへたり込む二人を覗き込む。顔をよく見ようとしてまどかに手を伸ばせば、それをけん制するように亮が間に割り込んで背に庇う。

――ねえまどか。
私は絶対にきみを食材になんかさせないよ。

 まどかに向ける柔らかな視線を瞬きの間に切り替えて、執事を見上げてギッと睨めつける。ほら、蜜色の髪に、美味しそうな空色の眸でしょう?きっと好みの声で啼いても見せるわ。だからどうか――私を、選んで。
「ははっ、姉の方は中々気丈そうですねぇ。加えて弟の気弱そうなこと…随分対照的なようで。」
 亮に合わせ脅えた子どものフリをして、彼女の背に隠れるように振舞えば、執事が頷きながら羽ペンを構えた。
「良いでしょう、こちら買い取りますよ。ふたり共ね。何方をどう選ぶかは伯爵様の気分次第ですが…まぁ、この様子なら姉が皿に乗りそうですね。」
 手元の羊皮紙にサラサラと何事かを書き込み、執事が懐から取り出した金貨を協力者の男へと手渡して追い払う。そのまま後ろに控えたメイドへふたりを別々に連れていくよう命じれば、まどかがハッとした表情を作って亮へと手を伸ばす。
「いやだっ…おねえちゃんいかないで!こわいよう…傍にいてよっ…おねえちゃん!!」
 引き裂かれること恐怖した演技で泣きじゃくり、悲痛な叫び声を上げる。その途端周囲にぽつぽつと姿の見えていた招待客や、執事メイドに至るまで皆がほくそ笑んで視線を送る。

――ふふっ、心地いい悲鳴だわ
――今夜にはもっと聴けるかしら?
――ああ、素敵
――今夜も愉しみね

 囀る鳥の様に重なる声、こえ、コエ。吐き気を催す内容に忌々しさを覚えながらも、喜ぶ様は計算通りだ。演技とも知らず、食べる側の気持ちで心地よく酔っていればいい。それは今日限りで終わる儚いものなのだから。

――さぁ、僕らの術中に嵌っておくれ。

蜘蛛の巣に掛かった獲物は果たしてどちらなのか。答えはまだ、ふたりの中だけに。

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食 材 ……金髪碧眼の姉
食 材 ……金髪薄紅瞳の弟 (メモ・試食役向き)

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎

_

俺は招待客として振る舞う方が潜入は容易いだろう
だが贄となる子どもの存在に気付いてしまえば無理だった
客として振る舞われる食事に
子どもが苦しむなど

かつて俺は孤児院の長兄役で
子ども達はオブリビオンの為の生贄で
結局俺だけ生き残り弟妹たちを救えず
だからこそ堪え難く
売りに出すのは己自身

決して壊れぬ精神、必ずや伯爵様を満足させられると
伯爵以外の者を誘惑と催眠術を用いて言葉巧みに惑わし
食材に選ばれるよう尽力
元来痛覚は敏く其れ故に酷く苦しむも
誰かが犠牲になるよりずっと良い
伯爵が悲鳴を好むなら
わざと噛み殺さず呻く

_
(然し屈せぬ心
失われぬ瞳の光
なのに苦悶に呻く姿に
漂う色香は止めど無く)



「――お初にお目にかかる、執事の方。」
 暗澹とした空の下、ぽかりと口を開ける城門の前。“食材”を前に何事かを書きつける執事へ対して、丸越・梓(零の魔王・f31127)が慇懃に声をかける。その声が耳に届けば顔を上げ、執事が些か不躾な視線を向けながら、一応の笑みを浮かべる。
「これはどうも。ご招待の方か…もしくは商人でしょうか?それにしてはおひとりに見えますが…」
「いや、売りたいのは俺自身だ」
「…ほう?」
 告げられた言葉に、執事がきょとんと目を丸くする。すらりと高い背に、端正な顔立ち。鍛えられ均整の取れた体つきを見れば、晩餐会の花を愛でに来た、と言われた方が幾分納得できそうな容姿だ。
「はは!まぁ金に困って家族の代りに、と自ら売られに来るのがいないではありませんが。いやはや、貴方のようなタイプは些か珍しいですね」
「ああ、恐らく伯爵の好みから外れているのは承知だ。だが、俺には売れるものが自身しかない…」
 実直に、いやいっそ愚直なほどにそう申し出て、梓が苦悶を滲ませて俯く。本当は招待客として振る舞う方が潜入は容易いだろうというのは、梓自身も痛感していた。だが贄となる子どもたちの存在に気付いてしまえば、それはどうしても選べなかった。客として振る舞われる食事の裏で、どれ程の子らが苦しみもがいているのだろうか。刻まれ抉られる痛みに耐えきれず命の灯を消してしまった子が、一体幾人いるのか。それを思うと凡そ演技でも、客の振りなどできそうになかった。
「…俺は、孤児院で長兄役をしていた。だが、もう院の経営は破綻寸前だ。このままでは妹弟を売らざる負えないと聞いて、変わりを買って出た。」
 それは半分は嘘で、半分は本当だ。かつて身を寄せていた孤児院があったのは本当で、今もある様な口ぶりが嘘。既にオブリビオンの贄として飲み込まれ、とうに消えてしまっている。その中で結局梓だけ生き残り、弟妹たちを救うことはできなかった。だからこそせめて、この苦難を堪え難くと決めてここまで来たのだ。――代償行為だと、自己犠牲だと、あとで罵られようが構わない。
「俺は頑健だ。決して壊れぬ精神を以て、必ずや伯爵様を満足させられる。」
 執事の前に片膝を付いて、乞うように梓が願い出る。
「…だからどうか、俺を買い取ってはくれないか。」
「随分と口は回るようですねぇ。さて、どうしましょうか」
 屈強そうな男がこうも懇願するのが珍しいのか、執事がぞんざいに梓の頤を掬って顔を上げさせる。見上げる瞳から光は失せず、心折れた様子も無い。なのに苦悶に呻く姿には、どこか漂う色香を匂わせる。それが果たして梓の言葉端に籠められた催眠術のせいか、梓自身に深く根差す誘惑の毒かは、騙されるだけの執事には悟りようがなかった。
「…ふふっ、いいでしょう。貴方を買い取って差し上げますよ。偶には伯爵様もこういう歯ごたえの有りそうなものを召し上がりたいかもしれませんし」
「…有難い。」 
「さぁ、それではメイドと共に奥へとお行きなさい。せいぜい長く持ってくださいねぇ」
 下卑た笑みで執事に見送られ、城の裏口へと連れられる一瞬、梓が唇だけで――そんな必要はない、と密やかに告げる。

――こんな晩餐会は、今宵限りで終わるのだから。

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食 材 ……黒髪黒目の長身の男

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大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
「1度の饗宴で即死する事はないと伺いましたし…他は演じられる気がしませんでしたから」
食材役で参加

痛覚耐性ないので演じるまでもなく怯えておどおど
「…っひ。いぎぃいぃいぃ~~」
「や、嫌、いやあぁあ゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛」
「痛い痛い痛い痛いぃぃ~」
顔歪め涙と涎撒き散らし本気で叫ぶ
(し、死なない死なない死なない死なない…後で回復できる出来る出来る出来る)
頭の中でそれだけ繰り返し終わるのを待つ

見張りが何処にも居なくなり他の食材役や先に捕まっていた食材の人々と合流出来たらUC「桜の癒やし」
自分の状態は浄化と医術で確認&治療
「これが後1回…憂鬱ですね」
次もメインディッシュになれば他者の被害が減ると自分を慰めた



「いよう執事サマ、今日も盛況だなぁ」
「おや、久しぶりに見る顔ですねぇ。てっきり人攫い家業は廃業したのかと思ってましたが」
「なぁに、伯爵サマが大喰らいなもんで獲物がめっきりへっちまっただけよ」
 暗澹とした空の下、伯爵の城の門前。内容に似つかわしくない明るい声のトーンで、城の執事と人攫いが会話を弾ませる。
「で、のこのこ顔を見せに来たということは…食材が見つかったんですか?」
「おうよ!それも中々の上物だぜ?…おらよっ!」
「…ぎゃああ!!」
 そう言って人攫いの男がぞんざいに背を突き飛ばせば、悲鳴を上げながら御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が執事の前に躍り出る。
「おや、これは珍しい…角、ですか?」
「そうそう、こいつ花の枝が角みたいに生えてんだ!路地裏でひとりほっつき歩いててるのをさらったんだが…しかも、ほら!」
「…っひ!いぎぃいぃいぃ~~痛い痛い痛い痛いぃぃ~」
 掛け声とともに桜花の腹を蹴り上げれば、悲痛な叫び声が溢れ出す。
「俺がちょっと声かけた時からこんな様子でさァ。良く鳴くんだ」
「これはこれは。伯爵の好みに叶いそうですなぁ」
 ははは、と笑い声をあげる男の足元で、桜花が苦悶に涎を垂らしながら喘ぐ。
(1度の饗宴で即死する事はないと伺いましたし…他は演じられる気がしなくて食材役を選びましたが、これは…)
 人を人として見ない扱いがここまで徹底してるとは思わず、恐怖に刈られてカチカチと震えて歯を鳴らした。
(し、死なない死なない死なない死なない…後で回復できる出来る出来る出来る)
「ま、いいですよ。こちら買い取りましょう。金貨は…これくらいですかね」
「お、ありがとサン。これでまた酒が飲めるってもんだ」
「またの持ち込み、お待ちしてますからね」
「おうよ!」
 相応の金貨を手渡され、人攫いの男が機嫌よく去っていく。その背中を見送ったあと執事がてきぱきと羊皮紙に書き込みながら、メイドにあれこれと指示を出す。
(今のは唯の納入で、これからが本番…憂鬱ですわね)
 食材としてメイドたちに連れられて行く一瞬に、桜花が物憂げな溜息をついて見せた。


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食 材 ……よい悲鳴を上げる桜角の女

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苦戦 🔵​🔴​🔴​

インディゴ・クロワッサン
「…なにこれ…食べてみたーい…」
おっと涎が…(ごし
他の猟兵から冷たい目で見られるかもしれないけど、僕は気にせず招待客側で行くぞー!
礼服を身に纏って、髪を高い位置で結っておけば…基本的な身なりはOK!
お貴族様相手だし、礼儀作法や口調とかにも気をつけて…(えへんごほん
「此方の晩餐会では、とてもとても美味な物を口に出来ると聞きまして」
いやぁ、流石は伯爵様だよねぇ… 僕も食べてみたぁい…
でも、念には念を入れて、空腹耐性を付けてからお城の中に入らせて貰うぞー!
お城の中に入れたら、晩餐会の参加者さん達とお喋りしながら(団体行動/読心術)、UC:馥郁たる藍薔薇の香 も使って情報収集だー!



「…なにこれ…食べてみたーい…」
 暗澹とした空の下、次々と“食材”が納入されていく城の門。怯え、惑い、蔑み、嗤い、負の感情が交差するそこでただひとり――インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)がじゅるり、と涎を垂らしてその光景を眺めていた。
「おっと涎が…」
 零れそうになった口の端を慌て手拭い、キリッと顔を取り繕う。何処からか同業者に冷たい視線を浴びせられた気もするが、今はひとまず置いておくとして。
(僕は気にせず招待客側で行くぞー!)
 改めて演ずる立場を確認し、インディゴが自らの姿を再確認する。食材たちが纏っている襤褸とは違うきっちりとした礼服を身に纏い、長い髪を高い位置で結っておけば基本的な身なりはクリアだ。口調の面でも丁寧を心がけ、いざ受付の管理をしてるとおぼしき執事へと話しかける。
「こんばんは、執事さん。今宵はお招きいただき有難うございます」
 咳払い一つにぺこりと頭を下げて、人のよさそうな笑みを浮かべてインディゴが招待客の演技をする。
「おや、ご招待の方ですか。ようこそいらっしゃいました。」
「此方の晩餐会では、とてもとても美味な物を口に出来ると聞きまして…いやぁ、流石は伯爵様だよねぇ… 僕も食べてみたぁい…おっと」
 うっかり溢れた本音には口を押えて取り繕うと、執事がくすりと笑って返す。
「はは、伯爵様の機嫌が良ければご相伴にあずかれる機会もあるかもしれませんよ」
「本当に!?」
「あくまで機嫌次第、ですよ。…まぁ、それ以外も十分お楽しみ頂けるでしょう。どうぞごゆっくりお過ごしを」
「はぁい、どうも有難う~」
 あっさりと通された奥へと歩きながら、インディゴが自らの腹をさする。
(ご相伴か…とはいえうっかりやらかしちゃ大変だから、しっかり空腹には耐えないとね)
「さ、中には入れたんだ。あとは…情報収集頑張るぞー!」
 一応周囲に聞こえないよう声を絞りつつ、気合を入れてユーベルコードを密かに発動させ、インディゴが招待客の集う一角へと飛び込んでいった。

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招待客 ……インディゴ・クロワッサン

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成功 🔵​🔵​🔴​

百舌鳥・寿々彦
トモ(f29745)と参加
アドリブ可

食材役

いやいやいや!マジで嫌!
手を引くトモに、散歩を嫌がる犬のように全力で踏ん張る
騙されたー!
美味しいもの食べさせてあげるから礼服で来いってホイホイついてきた僕が馬鹿だった!
力強いなトモ!
僕の必死の抵抗も虚しくズルズルと引き摺られていく

そりゃ、僕は死なないよ!
でも痛いものは痛いし
死ぬのも慣れないんだから

トモ楽しそうだな
そっか…できれば美味しく食べてね…

あぁ、もうこうなったらやけくそだ
借り物のスーツのジャケットを脱ぎ捨てる
ほら、ぴっちぴちの美少年だぞ!
いい感じに肉もついてるし、食べ頃だろ
僕を選べ
僕一択だろうが!

こうなったら絶対に選ばれて伯爵を殴り飛ばしてやる


七・トモ
すずくん(f29624)と参戦!
アドリブ大好きだよ~
勿論、トモちゃんは持ち込み役さ

ワハハなんて良い機会!最高の趣味してるじゃないかご主人

「トモちゃんもすずくんを味わいたい!」

るんるん!
すずくんの手を引いてやってきたのがこのお屋敷ってわけだね

今日のトモちゃんはいつもと一味違うのさ、真っ黒のセーラー服なんだよ
ゆめかわトモちゃんは封印さ、ふふん

いやあ、デッドマンってどんな味?
それより友達ってどんな味なのかなあ
トモちゃんは興味津々だったんだよ大丈夫、すずくん死なないし!

そういう訳なんだ、執事さん聞いていただろう?
どうか君のご主人の晩餐会の一皿にお邪魔させてもらえないかなあ
トモちゃんの、お気に入りをさ、



―――ずるずるずる…ずるずるずる…

 暗く澱んだ空の下、街から城へと続く一本道。その上を、重たく湿った何かを引きずる音が響く。

―――ずるずるずる…ずるずるずる…

 まるでたっぷり血と臓物の詰まった頭陀袋を引きずっているような音が延々と続いていく…と思いきや。

「ワハハ、なんて良い機会!最高の趣味してるじゃないかご主人」
「ど・こ・が・だー!」
 七・トモ(七不思議・f29745)の明るい笑い声と、百舌鳥・寿々彦(lost・f29624)の切実な叫び声がそれをかき消した。
「えーなんで?トモちゃんすずくんを味わいたいし!」
「いやいやいや!マジで嫌!…てか力強いなトモ!」
 るんるんステップ交じりのトモに対して、手を引かれた寿々彦は全力で連れて行かれまいと踏ん張って抵抗する。その姿たるや、引っ張られた首輪で顔がむぎゅーって潰れた散歩イヤイヤ犬の如し。しかしそんな努力も虚しく、また冒頭のずるずる音をさせながら寿々彦が城の方向へ引きずられていく。一体トモの細腕のどこからそんな力が出てくるのか。
「あ、それより見てみて!今日のトモちゃんはいつもと一味違うのさ…なんと!真っ黒のセーラー服なんだよ。ゆめかわトモちゃんは封印さ、ふふん」
「騙されたー!美味しいもの食べさせてあげるから礼服で来いってホイホイついてきた僕が馬鹿だった!」
 ひらりとご自慢の黒いプリーツスカートを見せるトモには目をくれず、ここに至るまでの悲しい経緯を吐露する寿々彦。会話は全くかみ合わないまま、一歩、また一歩と城門が近づいてくる。
「えーすずくんそんなトモに食べられるの嫌ー?」
「当り前だろ!?死ぬほどの激痛とか誰でも嫌だよ普通」
「大丈夫、すずくん死なないし!」
「そりゃ、僕は死なないよ!でも痛いものは痛いし、死ぬのも慣れないんだから」
「いやあ、デッドマンってどんな味?それより友達ってどんな味なのかなあ。トモちゃんは興味津々だったんだよ」
「ぜんっぜん聞いてないし…でもトモ、楽しそうだな…そっか…できれば美味しく食べてね…」
 必死の抵抗も虚しく、もはや見上げないと全容が見えないほどに迫った城門を前に、寿々彦ががっくりと首を堕として全てを諦めた。

「そういう訳なんだ、執事さん聞いていただろう?」
「…へ、何がです?」
 納入の順番が回ってくるや否や、そう切り出してトモが執事の前へぽいっと寿々彦を放り投げる。寿々彦がぎゃっ!と叫んだのを気にせずに、なんのこっちゃと首をかしげる執事もものともせず、にぱっと笑いながら自分の話を続ける。
「どうか君のご主人の晩餐会の一皿にお邪魔させてもらえないかなあ。――このトモちゃんのお気に入りを、さ」
 トモが浮かべる底抜けに明るい笑みの裏に、ほんの一瞬感じた虚ろに執事がゾ、と背筋を正す。あなたは一体何者か、と問いかけようとしたところで――いきなり目の前にババーン、とジャケットを脱ぎ捨てた寿々彦が立ちはだかって、すわ何のプレイかとギョッとたじろいた。
「こうなりゃヤケクソだ…ほら、ぴっちぴちの美少年だぞ!いい感じに肉もついてるし、食べ頃だろ」
「は?はぁ…確かに見目はよいようですが、あの」
「なら僕を選べ、僕一択だろうが!」
「は、はい…食材は常に求めてますので、それは構いませんが…ええ…?」
「ワハハ、なら決まりだね!じゃ、トモちゃんはごほーびに晩餐会へご招待ってことで!」
「あっ、ちょっと羊皮紙に勝手に書き込まないでくださ…ああー!」

――こうしてだいぶえげつないパワープレイの元に
トモは晩餐会への参加権と、寿々彦は食材の座(?)をゲットした。
 
「こうなったら絶対に選ばれて伯爵を殴り飛ばしてやる」
「ワハハ、でもそれトモちゃんが食べてからにしてね?」
「…ブレないんだ、ソコは。」

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食 材 ……やけに活きのいい白髪の少年

持ち込み…… 『トモちゃんさんじょー!👻ワハハ。』

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジェイ・バグショット
【五万円】
招待客

細身にミッドナイトネイビーのタキシード
濡羽色の髪を上げた姿は容姿も相まって貴族さながら
纏う香りは連れからの贈り物

食材の弱者を横目に薄く笑み
立ち振る舞いは”楽しむ側”

伯爵の開かれる晩餐会のお噂はかねがね
他では味わえぬ趣向を凝らした料理と余興を楽しめるとか…
連れがどうしてもとせがむもので。
いや、私以上に楽しみにしているのです
なんてニコリと品の良い笑みを向け

…ただの食事ですら億劫な俺に聞くか?
お前は飯まで効率重視かよ
それはそれで真らしい

あぁ、私と伯爵とでは些か好みが違いましたかな
これがなかなか気に入ってまして

弧を描いた口元から覗く牙が同類だと告げる

本日は我々も楽しませて頂きますよ


久澄・真
【五万円】
招待客

お初に御目にかけます伯爵
本日はご招待に感謝を

後ろに流し纏めた白磁
纏うスーツはダークパープルのスリーピース
足元は連れからの贈り物の革靴

いやぁ私お金に目がなくて
今回はとても“いいお仕事”があると聞き
無理言って同行させてもらいました

どこもかしこも
食う事に快楽求める奴ばかり
食事も料理も只の作業の一貫としか思わぬ口は
何が愉しいんだかとジェイにだけ聞こえる声で言い捨て

だが仕事となれば話は別
きっちりこなすさ
ビジネススマイルもお手の物
笑顔貼り付けたまま伯爵の耳元へ口を近づけ

斯く言う私も非力な人間の一人
彼の“非常食”らしいのです
ククッ、伯爵と違い趣味の悪い

では伯爵
今宵の悲鳴
愉しみにしております



「お初に御目にかけます執事殿。本日はご招待に感謝を」
 黒く濁った空の下、狂乱の宴の入口。ぱっくりと口を開けた城門の前に立ち、男が一人恐れなく嗤う。後ろに流し纏めた白磁に、纏うスーツはダークパープルのスリーピース。カツリ、と硬質な音を鳴らす足元は、連れからの贈り物の革靴。まさに夜会へ赴く出で立ちそのものに、久澄・真(○●○・f13102)が卒なく一礼をして見せた。その肩に手を置いて、ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)も執事へと視線を送る。色の白い細身に映える、ミッドナイトネイビーのタキシード。濡羽色の髪を上げた姿は、整った容姿も相まって貴族さながらに写る。鼻腔に届く甘やかな蜜毒の香りは、同じく隣立つ連れからの贈り物。食材の弱者を横目に薄く哂う様は、執事の目に見慣れたであろう“楽しむ側”の立ち振る舞いだ。
「おや、本日の晩餐会にご参加の方でしょうか。」
「ええ、伯爵の開かれる晩餐会のお噂はかねがね。他では味わえぬ趣向を凝らした料理と余興を楽しめるとか…」
 弧を描いた口元から牙を覗かせて、ジェイが言葉外に同類だと告げる。それをちらりと目に止めれば同じように牙持つ執事が納得して、にこりと愛想よい表情を浮かべた。だが、それはジェイにだけ向けたもの。皿の上の嗅ぎなれた匂いを感じるのか、真へと向ける眼光は何処か捕食者めいて鋭い。
「して、そちらの方は?」
「連れですよ。どうしても、とせがむもので。いや、実際私以上に今宵のことを楽しみにしているのです」
「いやぁ私お金に目がなくて。今回はとても“いいお仕事”があると聞いて、無理言って同行させてもらいました」
「はは、ご自身が“手土産”ではなく、ですか?」
 晩餐会にも多少は人間が参加しているとはいえ、ヴァンパイアにとってヒトなど血肉の詰まった革袋に見えるのか。こともなげにそんな問いを投げかけてくる。何一つ理解できない感性だが、これが仕事となれば話は別だ。ビジネススマイルもお手の物だと、冗談とも思えぬ言葉を吐く執事に真が笑顔を貼り付けたまま耳元へ口を近づけ、囁く。
「ええ、斯く言う私も非力な人間の一人。――然し彼だけの“非常食”らしいのです」
 わざとらしく眉根を寄せて、口元には笑みを刷いたまま苦笑を描く。そして視線を“非常食”食む口をニッ、と歪ませたジェイへ向ける。
「あぁ、私と伯爵とでは些か好みが違いましたかな。これがなかなか気に入ってまして」
 ツ、と指先を真の顎に滑らせて、そのまま横を向かせる。晒される首元に今にも歯を掛けそうに口を開いて見せると、執事が溜息一つで納得したように頷く。
「成程、既に“売約済み”ということですか。でしたら中でもつまみ食いされないよう、お気を付けくださいね。食材と間違われてもこちらでは責任が持てませんので。」
「ご忠告に感謝を。しっかり手綱を握っておくことに致します」
 ジェイの言葉を聞き届け、執事が手にした羊皮紙に目を落とし、何事かを綴り始める。その隙に真がちらりと辺りを見渡すと、雑に転がされた“食材”たちに、それを見て今日はどれが皿に乗るのかと好奇の目を向ける招待客が目について、思わずハッ、と鼻を鳴らす。
「どこもかしこも、食う事に快楽求める奴ばかり…食事一つにこんな手間暇かけて、何が愉しいんだか」
「…ただの食事ですら億劫な俺にそれを聞くか?」
「いいや?ただ本気でプレゼンするなら、コイツらには輸血パックにストローでも差してご提供差し上げたい所だ」
「お前は飯まで効率と金重視かよ。それはそれでらしいけど」
 聞こえぬように密やかに会話を重ねていれば、執事が書き終えた羽ペンを持ち上げて二人に告げる。
「…ああ、結構ですよ。両名ともリストに載せておきましたので、今宵はどうぞお楽しみを。」
「感謝します。では執事殿、今宵の悲鳴を愉しみにしております」
「本日は我々もじっくりと楽しませて頂きますよ」
 男が揃って、笑みを浮かべる。その下に隠した嘲りは、硬質な靴音と甘やかな香りで掻き消しながら。そうして無事に客と認められ城へと進む先、ふとジェイが真の首筋をなぞる。血を啜る場所としてポピュラーで、目に留まりやすく柔い箇所。
「一目でエサって分かるように、マーキングでもしとけばよかったか。なぁダーリン?」
「ククッ、伯爵と違って趣味の悪い。ひと齧り五万円なら考えてやってもいいぜ、ハニー」
 重い鉄扉を前にしても何一つ変わらず、軽口をやり合いながら二人がくぐっていった。

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招待客 ……ジェイ・バグショット
招待客 ……久澄・真

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『ヴァンパイアの夜会』

POW   :    真っ正面から敵に戦いを挑んだり建物等を破壊してまわる。

SPD   :    罠の設置や先回りして生贄のダッシュを行います。

WIZ   :    変装して侵入し話術によって敵を撹乱します。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 
――シャンデリアに火を入れて、カトラリーは磨きぬいて。
ほら、もう食材もお客様もそろっている。
はやくはやくと急かす視線が痛いほど。

始めましょう、晩餐会を。
享楽の宴を、悪逆の皿を。
悲鳴も絶叫も震えも嘆きも、一つとして取りこぼさないで。
今日はとっておきのご馳走が、たくさん並んで待っているのだから。




「――ああ、これは良かったな。」
 カチャリ、とフォークをテーブルに戻して伯爵が満足げに口元を拭く。
「中々心地よい声で啼く。…まだ生きているか?なら、それは『控えの間』に」
「畏まりました。」
 綺麗に平らげられた皿を下げると同時に、伯爵のテーブルの前に置かれた鳥籠の中、息も絶え絶えにのたうつ“食材”の少年が給仕役に抱えられ奥へと運ばれていく。
「では、次の皿を……ああ、これは」
「どうした」
「…次の皿の“食材”が、既に気絶しています」
 入れ替わるように運ばれてきた少女が、鳥かごに入る前にぐったりと床に臥している。執事に鎖につながれた首輪をじゃらりと鳴らされても、ぴくりともしない。かろうじで呼吸はしているが、真っ青な顔色から見ても最早生きているのが奇跡に等しいのだろう。けれどそんな少女に伯爵が向けるのは憐憫でも心配でもなく――強烈な不快感だった。
「…不愉快だ。それはもう使えんな。とっとと“屠殺部屋”に送って次の皿を出せ!」
 ダァン!と感情のままにテーブルを拳で打ち、少女と共に運ばれた皿を憎々しげに眺めた後、躊躇いなく割って落とす。主人の不興を買って一瞬身をこわばらせたメイドが、慌てて汚れた床に這いつくばって片し始める。
「大変失礼いたしました旦那様。では、すぐに次の皿を。――おい、これを連れていけ」
 一瞬肩を揺らした執事もすぐに気持ちを切り替えて、控えていた給仕役に気絶した少女を運ばせる。先ほどの少年より一層生き物としての扱いを逸脱し、ただただ血肉の詰まった革袋の如く引きずられていく。向かう先も暗く冷たい地下へ――肉として解体される、『屠殺部屋』だ。


――あら、あの子死んじゃったの?
――やぁねぇつまらない。
――しかし今日は城門で中々面白いものが見れたぞ。
――まぁ!それならこの後も楽しめるかしら。


 伯爵のテーブルをまるで管弦のステージの様に眺めながら、晩餐会の招待客たちが口々に囀る。豪奢な衣装、並べられた料理、何より伯爵が食べるたびに饗される悲鳴をうっとりしながら、食事に会話にと愉しみにいそしんでいる。

 ダンスホールも兼ねた大きすぎる会場は、あちこちに装飾品が飾られている。並べられたオブジェはどれも美しく磨き抜かれており、中でも一番数が多く目を引くのは――剥製だ。鹿の、狼の、兎の、梟の。頭部だけを飾ったものも在れば全身をそのまま飾ったものもあり、その毛並みはどれも生きているかの如く艶めいていた。然し、まじまじと見つめていると何かがおかしい気がする。

――鹿の蹄は、細く白い5本指だったろうか。
――狼が足蹴にしている白い玉に、落ちくぼんだ眼窩が見えやしないか。
――兎の耳は細長いはずなのに、なぜ蝶のような形のがついてるのか。
――梟の目玉は、あんなに小さく曇った色をしていただろうか。

 目が合うたび、剥製の存在を感じるたび、どこかそろりと背中を悪寒が這う。それこそここが、人の世の理が届かぬ異界だと思い知らされる。

今宵は享楽の晩餐会。
苦痛をソースに、悲鳴をスパイスに、許し請う声をガルニチュールにしたフルコース。
どうぞゆっくりと召し上がれ。

――決して、途中でお席を立ちませんように。





 
============================

●補足情報
 3章では戦場が3つに分かれます。そして1章で得た役割と2章の動きによって、3章で赴く戦場が分岐します。以下説明をご覧ください。


★戦場
 『晩餐会ホール』『控えの間』『屠殺部屋』の3つがあります。
 戦力的には
 『晩餐会ホール』6:『控えの間』2:『屠殺部屋』2 程度の分布になります。
 晩餐会ホールが最も大戦力、混戦必須になります。控えの間、屠殺部屋は猟兵以外にも食材として一般人がいますので、その人たちを庇いながらの戦闘となります。
 『控えの間』、『屠殺部屋』に1人も猟兵が配置されない場合は、その部屋にいる人間が皆殺しになります。ボス撃破さえできれば依頼自体は失敗にはなりませんが、後味は悪いものになります。


★食材役→行先:『控えの間』or『屠殺部屋』
 食材として伯爵のテーブルに乗ります。そこで伯爵に好まれれば『控えの間』に、気にいられなければ『屠殺部屋』に振り分けられます。伯爵は“よく悲鳴を上げる、叫ぶ、涙を零す”など反応が良いものを好んで『控えの間』へ運ばせます。逆に“黙っている、すぐ気絶する、反抗的な口を利く”などは嫌って『屠殺部屋』に送り込みます。

★持ち込み役・招待客→行先:『晩餐会ホール』
 ホールで他の招待客と共に晩餐会をやり過ごします。数多のヴァンパイアが招待客として周囲に居り、3章ではそれらすべてが敵です。後々の戦闘を有利にする仕掛けを施すチャンスとしてもご活用をどうぞ。然しあまり不審な動きは見とがめられて、依頼の失敗につながります。

★味見役を希望→行先:『晩餐会ホール』or『控えの間』or『屠殺部屋』
 皿の上の食材と縁が深い者ものは、希望するか縁を匂わせれば味見役になれます。また伯爵に上手く取り入れば、味見役になれるかもしれません。普通に食べればそのまま『晩餐会ホール』に残れます。親しいものを口にする苦痛に身を震わせれば『控えの間』に、糾弾や気にくわない態度を取れば『屠殺部屋』に振り分けられます。


★戦場の移動
 3章の行動次第で可能ですが、基本的に移動系のユーベルコードの使用か移動時間による不利が発生します。が、工夫次第ではそれも排除できるかもしれません。(※システムとしてグリモアでの移動は不可です。プレイング自体が採用されません。)

…他にも予想される状況、活用できる方策、不利を覆す為のアイディアは積極的にお寄せください。
皆さまの思うままにどうぞ。

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※なお2章からの参加もOKですが、やりたいポジションの明記をお願いします。
 加えて依頼成功時の報酬として予定される【呪殺の黒曜】の入手判定は
《参加した章の数分ダイスを振って、最もいい目を採用》とさせていただきます。
 
 
※追記①・衣服に関して
『食材役』の方は強制的にある程度着飾られます。どのような衣装が良いか希望があれば記載してください。お任せでも大丈夫です。その場合は大体ドレスや燕尾服などの洋装になる可能性が高いです。


※追記②・料理について
 伯爵が今回口にするのは『一般的な料理に食材役の人間の血を混ぜたもの』です。どのような料理になりたいか、もしくは食べたいか希望があれば記載ください。和洋中なんでも構いませんが、余りにマニアックなものやチープなもの、ポイズンクッキング系はマスタリングします。お任せでも大丈夫です。その場合はフレンチやフルコースの一品系になります。メインがいい、デザートがいい等の方向指定のみも可能です。

以下文字数節約にお役立てください。
👗…洋服お任せ
🍽…料理お任せ
旭・まどか
あきら(f26138)と
味見役

申し訳程度に身成りを整えられ
腕引かれ向かうは不快極まり無い宴席の一角

品定めと懐疑の視線が突き刺さり
顔を顰めてしまいそうになる

けれど今僕は『気弱な弟』
不快に舌打つ平生を恐怖の色で塗り潰し
調度の良い椅子にまごつく様を装えば周囲から零れる嘲笑の声

か細く震えテーブルの上に置かれたカトラリーに手を伸ばす

で、できない

ナイフを刺し入れようとするけれど
抑え切れない震えは手にした物を床に落とす

おねえちゃん、こわいよぅ

眸にたっぷりと溜めた涙を流して
籠の中に在る『おねえちゃん』に助けを求める
揃って悲哀の声を聞かせれば行き先は同じになる筈

黙って泣いていればまだ楽な道を選べるのに
馬鹿な子


天音・亮
まどか(f26138)と
食材役
👗🍽

先のホールでの出来事
すぐにでも駆け出したい気持ちを抑えるのに必死だった
泣かないで
怖がらないで
大丈夫、今助けるよ
そうやって手を伸ばしたかった

でも、震えるきみのか細い声と
カトラリーが床を叩く音に引き戻される
心の中では舌打ちしてるのかな、なんて

大丈夫だよ
お姉ちゃんは大丈夫
(私は、大丈夫)

この様子ならきっとまどかは控えの間に連れていかれる
それなら、

苦しむ姿を見て楽しむなんて悪趣味
私は絶対に泣かないし、悲鳴もあげない
きみ達の思い通りになんかなってあげないよ

決意宿した瞳で招待客を、伯爵を睨む
屠殺部屋へ行く為に

(ごめんね、まどか)

信じてるからこそ
私はきみと違う場所へ行く



――品定めと懐疑の視線が、あちこちから突き刺さる。

 フリルのシャツに、金の星を飾ったループタイ。客の前に出すのならばと着替えさせられた申し訳程度の衣装を纏い、執事に腕を引かれながら旭・まどか(MementoMori・f18469)が足を進めていく。煌びやかさで誤魔化してはいるが、会場は隠し切れない悪意や悪趣味で満ちていた。つい顔を顰めそうになる不快極まり無い宴だけれど、今まどかが演じるのは『気弱な弟』の役。不快に舌打つ真似は腹の底深くに沈め、恐怖に染まった表情で塗り潰す。ついでに調度の良い椅子に座るのをまごつく様を装えば、周囲から狙い通りに嘲笑の声が溢れた。その嘲りの声に、そしてその先にいるまどかに気が付いて、鳥籠の中の天音・亮(手をのばそう・f26138)が顔を上げる。レースを重ねた白いドレスに、裾を金糸の月模様が飾るのはまどかの装いに合わせたものだろうか。さらりと肌の上を絹が滑る感覚の中で、腕すらも通らない鳥籠の檻から、ただじっと料理の運ばれゆくテーブルを見つめる。皿に乗っていたのは鯛のヴァプール。柔らかく蒸された魚の上に、ほろ苦さのある柑橘を添えた一品だ。コトリ、と置かれたそれを見た伯爵が、漸くそろったピースに意地悪く笑んで手のひらをみせる。
「さぁ、冷めないうちに食べると良い。姉も首を長くして待っていたことだろうしな」
 早く喰らえ、そして悲鳴を供せ、と言葉裏にまどかを脅す。その言葉に一層肩を震わせた振りをして、並んだカトラリーを一つ手に取る。そのまま1秒、2秒と時間が過ぎ――。
「…で、できない」
 まどかが料理にナイフを刺し入れようとして、抑え切れない震えが手にした銀器を床に落とす。そして小さく、でも確かに聞こえる声で拒否を述べる。その姿を見て、思わず亮が鳥籠を握る力を強めた。――ふと、先のホールでの出来事が重なって見えたから。あの時は、すぐにでも駆け出したい気持ちを抑えるのに必死だった

――泣かないで
怖がらないで
大丈夫、今助けるよ。

 本当ならそう言って、手を伸ばしたかった。傍にいたかった。でも。
「おねえちゃん、こわいよぅ」
 眸にたっぷりと溜めた涙を流して、籠の中に在る亮に助けを求めるようまどかが手を伸ばす。その震えるか細い声と、ぽたりと零れる涙に、意識を引き戻される。今やるべきことは、それじゃない。何もかもを助けるために、これ以上誰も泣かせないために。自らが今やるべきことを思い出して、亮がまどかへと“姉”としての笑みを向ける。
「大丈夫だよ、お姉ちゃんは大丈夫」
 その言葉の裏に、“私”も大丈夫だと籠めて、慈しむ様に優しく呟く。――心の中では舌打ちしてるのかな、なんて思い当たりはするけど。この様子ならきっとまどかは控えの間へと連れていかれるだろう。それなら亮が行くべき場所は、そして次に口にする言葉は、一つしかない。
「――苦しむ姿を見て楽しむなんて、悪趣味」
「…ハァ?」
 それは、伯爵への叱責。自身を貶されるを何より厭う者へ、そうと知ってわざとカタチにする、亮の叫び。
「私は絶対に泣かないし、悲鳴もあげない。きみ達の思い通りになんかなってあげないよ」
 人を悲鳴を聞いて喜ぶ招待客たちを、幾人もを手にかけてきた伯爵を、決意を宿した瞳でつよく睨みつける。屠殺部屋へと送られるための言葉で、全てを糾弾する。
(ごめんね、まどか)
 同じ場所へはいけないことを、心の内で詫びる。それでも衒いなく違う道を選べるのは、何よりもまどかを信じてるからこそ。
「…ハッ、ならいいだろう。食事はもうやめだ。その“絶対”の強がりがどこまで持つか、試してやろうじゃないか。…おい、ソレを屠殺部屋に連れていけ!」
 怒りに任せた伯爵に語気強く命令されて、執事が慌てて鳥籠へと歩み寄り亮を引きずり出す。手荒にされても射抜くような視線を変えない姿に、まどかが一瞬憂いた表情を向ける
(黙って泣いていればまだ楽な道を選べるのに――馬鹿な子)
 本当は、同じ部屋を選びたかった。でも、それを許してくれる亮ではない。だからせめて信じてくれた心に添うように、おびえた子供の振りをした儘、まどかは控えの間へと大人しくつれられる。

――行先は分かれても、思い合ったことだけは同じだと、願って。

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白髪の弟
→控えの間に連れて行くように

金髪の姉
→屠殺部屋で速やかに処分せよ

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

メアリー・ベスレム
👗🍽『屠殺場』狙い

メアリを「美味しく」見せるなら、やっぱりお尻を魅せる服?
料理はアリスらしくお肉か甘い物かしら
そんなの、食べられる側にとってはどうだっていい事だけれど!

そうして料理として食べられる苦痛に
【激痛耐性】【雌伏の時】耐えながら
それでも泣き叫ぶ【演技】をしてみせて
このまま『控えの間』に……

そう、思っていたのだけれど
手酷く連れていかれる姿が見えたから
覚えのある臭いをしていたものだから

アリスの悲鳴に機嫌を良くしていた伯爵を
精一杯の反抗的な目で睨みつけ
「殺してやる」って恨みがましく呟いてやるの

……ふん、だ
こっちじゃ伯爵に復讐はできないかも知れないけれど
機嫌を損ねてやれただけでもいいかしら



(メアリを「美味しく」見せるなら、お尻を魅せる服かと思ったけど)
 執事に連れられてホールを横切りながら、メアリー・ベスレム(WONDERLAND L/REAPER・f24749)がちらりと自らに着せられた服を盗み見る。シックな黒でまとめられたマーメイドラインのドレスは一見普通に見えて、歩くたびに腰まで深く入ったスリットからメアリー自慢の尻のラインが覗く仕様で。
(…ま、悪くはないわ。)
 もっと大胆でもよかったけど、とは内心に留め置き、一先ずはしおらしく鳥籠へと籠められる。ガチャンと鍵が閉まる音を確認してから伯爵の元へ運ばれるのは、黒い球体の乗った皿。前菜かメインか、そもそも素材も分からず困惑する招待客を尻目に、伯爵が理解したように添えられたソーシエールを球体に傾けると、真っ赤なソースがずるり、と滑り落ちる。すると、パキリ、と音を立てて割れて中からチョコレートケーキが現れた。ダークチョコを薄い球体にし、温めたベリーソースで溶かし砕く、演出から凝ったアントルメ。――アリスに似合うのは、お肉か甘い物とは思ったけれど。
(そんなの、食べられる側にとってはどうだっていい事ね!)
 お披露目に湧く声にも、向けられる好奇の目にも、湧くのは冷ややかな感想だけ。それでもこの場に必要な事は心得て、瞳に怯えた色を乗せて伯爵を見る。それに満足したのか、伯爵がにたりと笑ってフォークをケーキへと突き刺す。
「っ、…ああっー…!!」
 全身が、ギシリと軋むように痛む。かろうじで思考が止まらないのは、激痛に対する耐性のお陰だろう。それを利用して気絶しないよう意識を保ち、濁音が混じりそうになる悲鳴を細く絞る。ナイフを入れる度、咀嚼する度襲う痛みに合わせて少女らしく涙を零しながら啼いて見せると、ますますと伯爵の笑みが深まっていく。
(このまま『控えの間』に……)
 十分な手ごたえを感じて、メアリーが微笑みそうになる口元を押さえる。気にいられて、とっておきを集めた部屋に連れていかれる。それでいいと思っていた。

――ずるり、と引きずられる小さな少女の姿がみえるまでは。

 恐らくメアリーより前に食べられて、耐え切れなかった食材だろう。ドレスの上からも分かるやせ細った体に、遠目からは生きてるかどうかも分からないほどぐったりとした姿。そこから、覚えのある臭いを感じてしまったから。

――やめた。気にいられるなんてまっぴらだ。

「――殺してやる」
 機嫌を良くしていた伯爵を、明確な殺意を滲ませてねめつける。それだけで湯を沸かしたように分かり易く伯爵が激怒する。これで屠殺部屋行きは恐らく確定した。そちらに回されれば復讐は容易でなくなるかも知れないけれど。

(…機嫌を損ねてやれただけでも、いいかしら)
 
――こちらへと伸ばされる手に、最後の抵抗で反抗的に笑って見せた。

============================
 
灰色の髪の少女
→屠殺部屋にて処分するよう

============================

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・桜花
服お任せ

「お願いします、お願いします。伯爵さまのために歌います、伯爵さまのカナリヤになります。だから、だから痛いことしないで下さいぃ」
連れていかれる間から涙ポロポロ
何度も頭を下げる

今迄此の世界を訪れる度に聞き集めた子守唄や恋の歌をか細いけれど良く通るソプラノで歌いながら料理にスプーンが近づくのを絶望的な表情で眺め
実際にスプーンが突っ込まれたら七転八倒し甲高い悲鳴を上げながらそれでも途切れ途切れに最後まで歌いきる

「お許し、下さいっ、お許し、下さいっ。痛いのは、痛いのは嫌ぁ」
歌い終わったら泣きながら何度も頭下げ許しを乞う

どの部屋でも蹲って泣く
落ち着いたら囚人にUC
脱出迄に少しでも体力を回復させる


渡塚・源誠
🍽
アドリブ等歓迎
適宜【演技・パフォーマンス】活用


一先ず役割に則って、メモを取りつつ招待客との歓談や食事風景の観覧に勤しむよ
密かにUCで館内図も作成…出来は心境からして「ないよりマシ」レベルも怪しいけど

とはいえ、人売りとして領主様に気に入られるには、味見役を希望するのは当然の流れかな


希望が通ったら…「いざ味見する場になって怖気づいた無様な男」でも演じようか

食材役のコを前に挙動が鈍る、料理には端をカトラリーで引っ搔く程度、これらの所業に悪びれもしない…

『屠殺部屋』はほぼ確約だろうねぇ
当然、それを狙っての振る舞いなんだけど


この演技で却って不都合な展開になりそうなら、大人しく普通に食事を頂いておくね



――お願いします、お願いします…!

 広いホールに響く、啜り泣き交じりの嘆願の声。帯めいた腰リボンに薄紅の布地を合わせたドレスを着せられ、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が鳥籠へと籠められていく。
「伯爵さまのために歌います、伯爵さまのカナリヤになります。だから、だから痛いことしないで下さいぃ」
 ぺたりと座り込んで縋る桜花の様は客たちの興をそそって、あちらこちらからせせら笑う声が耳に届く。もっと嘆け、もっと喚け、と囃す声に伯爵も気分を良くして、置かれた皿を前ににんまりと哂いながら、隣立つ男へと問いを投げかけた。
「それで――そこの者は味見を希望だったかね」
 話を振られて、これはどうもと笑みを浮かべて渡塚・源誠(千切れ雲は風の吹くままに・f04955)が前へと歩み出る。
「お聞き届け頂き感謝します、伯爵様。今後商品を卸すにあたって、伯爵様の好みを知れたらと思いまして…」
「殊勝な心掛けだな、悪くない。だが全ては貴様がアレをもっと上手く啼かせられれば、の話になるぞ。」
 そう言って源誠へ隣の席へ座るよう促し、執事に桜花の皿を目の前に運ばせる。置かれた一品はクリームチーズとサーモンのガレット。散らした塩漬けの桜に何処となく醤油が香るのは、恐らく桜花のオリエンタルな雰囲気に合わせてのことだろう。
「何、これをじっくりと平らげればいいだけなのだから、気楽なものだろう?」
 さぁ、とニヤニヤ笑って伯爵に勧められればカトラリーを握るほかなく、鳥籠の中でぽろぽろと涙を流す桜花を横目に、源誠が恐る恐るナイフで蕎麦粉の皮に触れる。
「――…ひぎっ!い、痛い、いたいいぃぃ…!!」
 たったそれだけで、桜花が七転八倒して苦しみを訴えだした。演じ欺く算段で構えていたはずの源誠も、余りに痛ましい声に思わず計算抜きでナイフを皿から引き離す。血の一滴、呪い一つでこれほどの効力なのか、と伯爵の悪辣さに対する呆れと桜花の憐れみの気持ちで皿をまじまじと見つめた。元々そのつもりだったとはいえ、「いざ味見する場になって怖気づいた無様な男」にその一連の行動がかちりと嵌り、伯爵が明らかないら立ちを見せて声をかける。
「…貴様、まだ一口も食べてないだろう。早く口にしろ。」
「ああ、はい…そうしたいのですが、いやはやこれは」
 濁す言葉を口に昇らせ、改めて手にするフォークも触れるか触れないかで空を切るばかり。煮え切らない態度の源誠に業を煮やして、唐突に伯爵が席から立ち上がってナイフを奪った。
「焦らすな…こうすれば良いだけだろう!」
 勢いよく振り下ろされるナイフが、鮮やかな色のサーモンをぐちゃり、と刻む。その途端布を割いたような悲鳴が桜花の喉から零れ、鳥籠がガチャガチャと戦慄いた。
「お許し、下さいっ、お許し、下さいっ。痛いのは、痛いのは嫌ぁ…歌います、うたいますからぁ…!!」
 苦痛から逃れるための必死さで、桜花が悲鳴の合間に歌を紡ぐ。今までに聞き集めた優しい子守唄を、切ない恋の歌を。か細いけれど良く通るソプラノで歌いながら許しを請うものの、伯爵は満足げに笑いながら料理へフォークとナイフを刺しいれるだけ。それでも暫くは気丈にも耐えて唄い続けたが、やがて悲鳴と身悶える以外には反応がなくなったのを見て、漸く伯爵が手を止めた。
「…ああ、これではもう歌えんな。然し良い声だった。まだ生きてるようならコレは控えの間に下げよ」
「畏まりました」
 控えていた執事に桜花の処遇を伝えると、メイドたちが鳥籠からぐったりとした桜花を引きずり出して奥へと引っ込んでいく。だが処遇を決めるべきは、彼女だけではない。
「して、問題は申し出て置いて一口も食さなかった貴様だな。」
「…大変申し訳ありません。どうにも臆病風に吹かれてしまいました。然し、伯爵様の手際たるや実にお見事でした。間近に出来ただけでもここに座った甲斐があります」
「…口だけは良く回る。然し、今は先ほどの悲鳴を聞いて気分がいい。寛大にも選ばせてやろうじゃないか――最高の食材を卸すと約束してホールに戻るか、屠殺部屋に行って貴様自身が皿を彩るかを、な」
 半ば脅すような低く響く声で告げられて、源誠が一瞬選択肢に迷いを見せた。

――元より屠殺部屋に行くつもりでの演技だった。
かといって、示された2つの選択肢の中。
自ら殺されるを選ぶ酔狂は余りに不自然だ。
なら、ここは。

「慈悲あるご処置、感謝致します。次にお会いするときは必ずや、伯爵様の舌を悦ばせる品をお運びすると誓いましょう」
 帽子を胸に深く一礼し、源誠がホールへと戻っていく。最初の思惑とは外れたが、一先ず無事なまま城の中には残ることができた。それなら、今は自らがいる場所で、出来る最大限を尽くすまで。

連れられた控えの間で蹲り泣きながらも、他の者たちを密かに癒している桜花も。
ホールに戻されてなお、館内のマップを秘密裏に描き続けている源誠も。

――全ては、宴の終わりを告げる一矢なのだから。
 
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桜色の髪の少女
→控えの間に連れて行くように。

味見を希望した男
→そのままホールへ。今後売りに来たら今日の事を引き合いに出して値切ると良い。

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オブシダン・ソード
【黒剣】夕立/f14904と
・招待客
上手く潜り込めたねえ
とりあえず僕は他の招待客と歓談しながらやりすごそうか

顧客開拓中の奴隷商人の気持ち
お近付きの印に、とか(仕込み入りの)赤い宝石を袖の下してご機嫌窺い
夕立が食べられるターンになったらあれは僕の商品で~とか言っておけばそれっぽいかな

相棒に痛い役を任せてる形なので心苦しいけど、ほらこれ仕事だから

痛かったら悲鳴を上げても良いんだよ
顔色が悪いねえ、気絶しちゃいそうかい?
とか野次混じりに声も掛けるよ
煽ってるんじゃなくて鼓舞だよ鼓舞

後はとりあえず地形と、優先的に斬りたい相手に当たりをつけておこう
夕立を『食べた』奴とか特にね

いやあ、作戦とはいえ、歯がゆいね


矢来・夕立
【黒剣】剣さん/f00250
👗🍽
食材役・屠殺部屋

監視の目の緩そうな【屠殺部屋】へ向かいたいところ。
しかし剣さんの立場もあります。
痛いものは痛いし、まあまあ素で苦しみまあまあ素で抵抗しときますね。
幸いにして気丈な食材として認識されているようでもあります
美味そうに食べるツラを睨んで「豚の食事」とでも言いましょうか。
悲鳴はあげません。ムカつくんで。あいつマジで心痛んでんのか?うそくさ…

本題はここから。脱走の準備をしましょう。
目立つような真似は避けて、小細工を二つ。
・ホール・屠殺部屋間の道順や高低差を大まかに覚える
・拘束される時、式紙を噛ませて拘束具との隙間を作る

言ったはずです。縄抜けは得意だと。



(さて、上手く潜り込めたねえ)
 きらびやかなホール、歓談中の招待客たち、BGMに流れる悲鳴。その中にひょっこりと混ざり込んで、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)があたりのようすを窺う。とりあえず目的のものはまだ見当たらないようなので、仕込みとやり過ごしを兼ねて適当なグループに混ざり込む。
「いやはや今晩は、美しいマダムたち。ご機嫌はいかがでしょう?」
「あら、今日は中々珍しい食材が多いから悪くなくてよ。ところで貴方は?」
「これは失礼。私こちらに食材を卸してる奴隷商人でして。こうして皆様の好みを勉強させてもらっているんですよ」
「良い心がけね。あたくしたちも伯爵様と一緒で、退屈は嫌いですもの。」
「是非とも良い品を卸して頂戴ね!」
「勿論ですとも。それとお近付きの印に、こちらをどうぞ」
 ご機嫌取りの会話に適当に付き合い、頃合いを見て懐から取り出すのは赤く目映い宝石。着飾るものに目がない婦人たちは、渡される石を一も二もなく悦んだ。それが魔力の籠った仕込み入りの爆弾だとは知らず、大事そうに懐へしまう。ちょうどその瞬間、ホールの扉が開いて次の食材が運ばれてきたのを見届けて、オブシダンがへらりと笑う。
「ああ、ご覧ください。あれが僕の持ち込んだ商品ですよ」
 そう言って指さす先にいたのは、一人の少年の姿。シンプルな三つ揃えの上から被せられる、裏地に赤を忍ばせた黒の打掛。裾を引きずりながら鳥籠へと籠められる、矢来・夕立(影・f14904)の姿だった。ガチャン、と鍵を閉める音の裏では冷静に、今後の動きを計算していく。
(できれば監視の目の緩そうな屠殺部屋へ向かいたいところ…しかし剣さんの立場もあります。)
 あまり無茶をやれば、夕立を納品したオブシダンにも何か不利が働きかねない。なのでここは程々に苦しむ姿と抵抗を使い分けて演じようと方針を決めた。考えてるうちに料理も運ばれてきたようで、伯爵の前に置かれるのは四角い漆塗りの箱。内を飾るのは美しく小さな手毬寿司。花咲くような色取り取りを見てほくそ笑みながら、内一つを伯爵が手に取って口にする。
「――ッ!」
 途端、夕立の体中に激痛が走った。かろうじで声は出なかったが、痛みの波が去った後もどこか痺れのようなものを感じる。成程呪いというのは確かなようだ、と身を以て実感し夕立が演技交じりに身を震わせる。それを客側から眺めていたオブシダンとしては、相棒に痛い役を任せてる形なので如何にも心苦しい、と前置きはしつつ――ほらこれ仕事だから、と割り切って言葉をかける。

――痛かったら悲鳴を上げても良いんだよ!
――顔色が悪いねえ、気絶しちゃいそうかい?

 招待客たちの蔑んだ嗤いに混じって、まるで肉体美を競う会場のような声が聞こえて夕立が思い切り鼻白む。それまでは演技の箔付けに多少は悲鳴でも上げようかとの計算はあったが、うっかりムカついたので絶対に一言も漏らすまい、と口を真一文字に結ぶ。
(いやあいつマジで心痛んでんのか?うそくさ…)
 しかも当の野次を飛ばす黒い塊にじとーっと視線を送ると、煽ってるんじゃなくて鼓舞だよ鼓舞、と言いたげに肩を竦めるのが見えて最早くさいどころかうそだと夕立が内心で断じた。ついでにその苛立ちを作戦の流れを利用して、伯爵にとばっちりさせる。
「…まるで豚の食事ですね。」
「何…?貴様、今何と言った」
「失礼。よく見れば豚に食べさせるのも気が引ける酷い料理ですね。」
「…ハッ、食べられている癖によく口の回る。然し私を馬鹿にしてただで済むと思うのか?――気分が悪い、コレをすぐに屠殺部屋へ送りこめ!」
 神経を逆なでされ、あっさり激怒した伯爵が夕立に屠殺部屋行きを告げる。上手くことが運んだことに密かに胸をなでおろし、手荒く引きずり出す執事の手にも目立った抵抗は見せずに従う。この後も部屋へ行く道順、階段や段差による高低差などの建物の構造を大まかに脳裏に書き留めていく算段だ。既に手錠と鎖の間には式紙を噛ませて、抜け出すための隙間も作ってある。
(言ったはずです。縄抜けは得意だと。)
 次の一手を抜かりなく描いてホールから去って行く夕立を見送り、オブシダンの方もホールの構造や人数構成を記憶していく。特にゆっくりと皿を味わった伯爵は、切りかかる当たりとしての順位は高い。
「いやあ、作戦とはいえ、今は如何にも歯がゆいね」

――そうとは口にはしつつオブシダンが浮かべるのは、やはり夕立ならずとも言葉通りには受け取れそうにない声の軽さと笑みだった。

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東洋風の顔立ちの少年
→屠殺部屋にて処分するよう

気前のいい奴隷商人
→そのまま会場でお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カーバンクル・スカルン
【持ち込み役】
皆様はじめまして、今回は私の商会の新商品の紹介をさせていただきたく。

それがこちら、カタリナの車輪と銘打っております。

そして適当に偶然近くにいた「食材」を括り付けて、豪快に鋸で手か足を切り落としてみせる。

その瞬間【不生不殺】で、激痛による悲鳴と共に体も心も切られる前に逆戻り! ただ吸血鬼共にはこれが「車輪の効果による物」だと切り落とした部位を見せながら説明する。

これさえあれば、寿命が尽きるまで気に入った人間をずっと食べ続けることが叶います! 完全受注生産のため、今回はこの一個しかありませんが、これよりここで受注受付をさせていただきます! 代金は先払いとなりますが、いかがですかー?



――会場は、客たちの密やかな期待に満ちていた。

 次々と変えられていく皿、その度に上がる悲鳴、苦渋、嘆き。踊りながら、雑談を楽しみながら各々が伯爵の指揮する音色に酔いしれていた――はずなのに。
「皆様はじめまして、今回は私の商会の新商品の紹介をさせていただきたく。」
 そこへ唐突に、威勢のいい声が割って入った。明るい髪を揺らしたカーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)が自信ありげに微笑む。
「それがこちら、カタリナの車輪と銘打っております。」
 そう言って背からドン、と自らの武器を下ろすと、驚き警戒した執事たちが集まって口々に叫ぶ。
「貴様!突然武器を売り込むとは何事だ!?」
「あ、いやこれは武器じゃなくて商品…」
「その凶悪な見た目で言い訳が通るか!何よりここは伯爵様の宴の場だぞ。わきまえろ!」
 確かにカーバンクルが持ち込んだ車輪は明らかに厳つい棘がいくつも付いており、殺傷を連想させるに十分なインパクトがあった。然も許可も取らずの唐突な商売に、何よりせっかくの食材の悲鳴を妨げられたとあっては――伯爵の不興を買うのは当然だ。
「…ほう、私の宴に横槍を入れるとは。ずいぶん無粋だな」
 
ガチャン。

 わざとだと容易にわかる音で、伯爵がカトラリーを床に落とす。その表情は腹立たしさを隠しもせず、カーバンクルを睨み据えている。
「…さて、ここで披露したがるのだから、それはこのナイフにも匹敵する効能があるんだろう?」
「え、ええ。どんなふうに食材を切り落としても、すぐに元通り!これさえあれば、寿命が尽きるまで気に入った人間をずっと食べ続けることが叶います!」
 めげずに口上を述べるカーバンクルに一瞬眉を顰めたものの、ふと残酷な笑みを浮かべて車輪を指さす。
「良いだろう、私が買い上げてやってもいい。このナイフに飽きることもあるかもしれんしな?」
「あ、ありがとうございます伯爵。流石お目が高い!」
「…但し、それに最初に張り付けられるのはお前だ。明日の前座に使ってやろう」
 その言葉を聞いて、カーバンクルが恐怖を装う顔を崩さず心の中で僅かな安堵を見せた。そのまま捕らえに来た執事たちに捕まり、薄暗い通路へ連れられながら先を思う。

――今嗤う奴らに、明日などないのだから。

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赤髪の商人
→武器ごと控えの間に。但し動けないように拘束と見張りをつけよ

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成功 🔵​🔵​🔴​

アトシュ・スカーレット
👗 🍽

ち、たとえ演技だろうが、あいつらに気に入られるのはお断りだわ
わざわざこっちになったのだって、痛い思いをする人を少なくする為だし

取り敢えず【激痛耐性/呪詛耐性】で出来るだけ軽くするか
まぁ、多少呻き声くらいは出るだろうけど、女の子の【演技】をする余裕は持たせとこう
睨むくらいはするがな

「…ぐっ…!!」
「…かぁ…!!」
「最高に趣味のいいことをなされていると思いますわよ、領主様?」

アドリブ、連携大歓迎



――会場は、期待に満ちた喧騒を見せていた。

 既に何人かの悲鳴を聞いて興が乗ったのか、ダンスや歌に興じるものもちらほらと見える。そんな中を執事に連れられ、アトシュ・スカーレット(狭間を歩く放浪者・f00811)がマリアヴェールの裾を引きながらゆっくりと鳥籠へと運ばれていく。かろうじで自分の足で歩かされてはいるが、首輪と手枷は確り嵌められていて逃げられないようになっている。ましてやヴェールに合わせた黒のドレスはたっぷりとレースが重ねられて歩きにくく、それだけでも十分に枷じみている。着る者の心地などまるで無視した、ただ見た目に華美なだけの衣装。そこからも晩餐会の底意が透けるようで、アトシュが舌打ちをしかけて慌てて首を振る。
(――ち、たとえ演技だろうが、やっぱりあいつらに気に入られるのはお断りだわ)
 ガチャン、と鳥籠に篭められてから一層感じる好奇の目。食材として運ばれたアトシュがこの先選べるのは『控えの間』か『屠殺部屋』行きだ。だがわざわざ食材側になったのは、痛い思いをする人を少なくする為なのだ。なら、明らかに扱いの悪いだろう『屠殺部屋』を選んでおけば、その願いはより強く叶うことになる。取り敢えず激痛と呪詛に対する耐性を利用して出来るだけ軽くし、料理が来るのを待つ。多少呻き声くらいは出るだろうけど、これで女の子の演技をする余裕は持てるはずだ。そしてようやく運ばれてきた皿は、大エビにコンソメのジュレと金箔を散らした煌びやかな一品。その出来栄えに伯爵が満足そうな笑みを浮かべて、早速とナイフを一刺し入れる。
「…ぐっ…!!」
 ゆっくりと皿の上の料理が切り取られると、やはり声は溢れてしまった。何とか耐えられる程度なのは耐性のお陰か、荒い息で肩を揺らしながら伯爵を睨み据える。然し咀嚼され、また切り分けられ、と何度も体の裡から痛みがわいてくるのは、如何にも気分が悪い。
「…かぁ…!」
 叫びそうになる声を、出来る限りか細く絞る。そして十分気分が良くなったところで、切り返す。
「ふふっ…最高に趣味のいいことをなされていると思いますわよ、領主様?」
「…なんだと?」
 まさか食材から話しかけると思っていなかったのか、伯爵が怒りと訝しさを混ぜた表情でアトシュをギリ、とねめつける。その強い視線にもひるまず、アトシュが言い棄てた。
「弱い者を嬲って、痛めつけて。ああ、もしかして…好んで女子供を選ぶのは、抵抗されたら怖いからかしら?慎重ですこと!」
 どうせ嫌われるための演技なら、高らかに笑って詰ってしまえ。そう思って思い切り馬鹿にすれば案の定伯爵が激怒して皿をガチャン!とひっくり返し、ホール中に響き渡る声で命じた。
「コレを屠殺部屋へ!形も残さずミンチにしてしまえ!」
 慌てて駆けつける執事に鳥籠から引きずり出され、アトシュが地下へと連れられて行く。
(――切り刻まれるのはそっちだ、バーカ)

――だがその最中に内心でついた悪態は、伯爵の遠くない未来を予知していた。

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黒髪の貴族令嬢
→屠殺部屋に放り込め

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大成功 🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
👗🍽

「食材」として運ばれていく間にダンスホールの装飾品が目に入ってくる
兎の剥製というだけでも嫌な気分になるというのに、あんなに歪な……
「……気味が悪い」
心の中で呟いただけのつもりが、思わず声に出てしまう。

「食材」としてテーブルについても表情は変わらず。
潜入する時からわかっていたことではあるが、
表情が変わりにくいことと、【激痛耐性】のせいで相手の望む反応ができない。
「……痛いと泣いて、貴方方に許しを請えば満足なのでしょうか」
……もとより演技をしてまで喜ばせるような反応をするつもりはないのですが。

気に入られなくても構わない。
……最後には全て処刑してしまうのだから。



――ホールに入った瞬間から、どうにも居心地の悪さがあった。

 黒い燕尾服の裾にあしらわれたフリルは、女王が塗れと命じた薔薇のように白く。用意された衣装を纏って、好奇の目に晒されながら鳥籠へと向かうのは、如何にも心細い。でも最初に感じた薄ら寒い感覚の源は、他に在った。通りすがる一瞬に目の端でとらえた、兎の剥製。兎、という時点でも十分嫌な気分になるというのに、蝶のように平たい耳を縫い付けられ、歪にゆがめられた姿は余りにも。
「……気味が悪い」
 心の内で零す筈が、思わず本心が声に出てしまった。「何か言ったか?」と執事から問いかけられ、慌てて何でもないと返して手で口をふさぐ。そのまま鳥籠へと籠められて、視線を上げればそこにはにやりと意地悪く嗤う伯爵の顔。運ばれてくる皿は、温かな肉汁滴るミートローフ。あれは一体何の肉で出来ているのかは、考えたくもない。
「…では、頂くとしよう。」
 食前の挨拶はきっと、食材への悲鳴の期待を込めた合図だろう。しかしずぷりとナイフを差し入れても、ぐさりとフォークを突き立てても、夏介の表情は変わらない。痛みが全くない訳ではないが、耐性に加えて元々表情の薄い性質では、悲鳴の一つもあげずにただ佇むばかり。余りに静かな在り様に、伯爵が咀嚼を重ね、料理を細かく切り刻んでみても、夏介の顔色は変わらない。ついにダン!とテーブルを拳で殴り、伯爵が怒りも露に尋ねる。
「貴様、痛覚がないのか?悲鳴の一つもないとはつまらぬ奴だ」
「……痛いと泣いて、貴方方に許しを請えば満足なのでしょうか」
「…何?」
 もとより演技をしてまで、会場の者を喜ばせるような反応をするつもりはない。なら、尋ねられた言葉にも素直に心のままを述べる。
「痛みは、私にとって意味がありません。それに、貴方がたの為に上げる悲鳴も、持ち合わせていません」
 静かに告げる夏介の声が、広いはずのホールに隅まで届く。一瞬呆けた伯爵も、言葉の意味を理解するにつれて憤怒の表情になり、あらん限りの声で執事へと命じた。
「コレを屠殺部屋に連れていけ!皿の料理と同じくミンチにしろ!」
 そう言って伯爵がミートローフを皿ごと床へと投げ落とし、慌てた執事が夏介を籠から手荒く引きずり出す。

それでいい。こんな奴らに気に入られなくても構わない。
――最後には全て、処刑してしまうのだから。

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緑髪の青年
→屠殺部屋に放り込め

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大成功 🔵​🔵​🔵​

白神・ハク
【幸先】

ヴィリヤちゃんと『控えの間』に行こうねェ。
ヴィリヤちゃんとの縁をにおわせなきゃいけないんだァ。
僕らは生き別れの兄妹だよォ。
生き別れの兄妹は珍しくないかなァ?
この会場で偶然出会ったんだ。びっくりしたよォ。
僕は妹の苦痛に歪む顔がみたいんだァ。

味見役を希望して怖がるふりをしなきゃねェ。
妹が苦しんでいるねェ。かわいそうだなァ。
怖がるふりをしながら笑うよォ。
強がっているように見えるかなァ?

ヴィリヤちゃんの様子も見ておくよォ。
作戦はうまくいったかなァ。控えの間に振り分けられたらいいねェ。


ヴィリヤ・カヤラ
【幸先】
食材役→控えの間
👗、🍽

食材で扱われるのって不安なような初めての感覚で不思議、
恐いってこういう感じなのかな。

ハクさんとは生き別れの兄妹って設定だから、
連れて来られた時は周りが見えてなくて気付かなかった事にしよう。
ホールでハクさんを見た時には不安だけど
嬉しいって笑顔を一瞬向けてみよう。

いつ痛みが来るのか、どんな痛みなのかドキドキしちゃう。
伯爵の食事が始まったら我慢しないでいこう。

痛い、苦しい、痛い、辛い。
ただ痛いと声も涙も自然に出るし、
近くの物に爪を立てちゃうのも初めて知ったよ。
戦ってる時とは違う痛みなんだね、
伯爵もハクさんも楽しんでもらえたかな?



――浴びせられるのは好奇の目、瞳、眼。

 纏う青藍のドレスを裾払いながら歩かされ、執事に鳥籠へと押し込まれる。ある程度の身動きは許された広さだが、やはり“籠”というだけあって立ち歩くほどの幅はない。仕方なく蹲っていると容赦のない視線が刺さって、ヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)がふるりと身を震わせた。頼りなく浮いたような感覚は初めてで不思議で――恐いってこういうことなのかな、と文字通り肌で感じ取る。次に運ばれてくるのは、美しく盛り付けられた一皿。伯爵の前に饗される、ホワイトアスパラガスと鯛のポワレ。そろえられた食材ににまりと嗤い、伯爵がいざナイフを入れようとした瞬間。
「やァ、伯爵様。」
 広い会場に在ってもするりと耳に届く白神・ハク(縁起物・f31073)の声が、料理を切り分ける手を止めさせた。
「…何だ、貴様は。」
「実は籠の中の子と僕は生き別れの兄妹だよォ。生き別れの兄妹は珍しくないかなァ?」
 訝し気に睨む伯爵にも臆さず、ハクがにやにやと笑みを浮かべて言葉をつづける。
「今日偶然出会ったんだ。びっくりしたよォ。それと僕は妹の苦痛に歪む顔がみたいんだァ。」
「突然何かと思えば…戯言を」
 見た目に似たところは見えず、ましてや今日奇跡的に出会ったという。いきなり信じるには性急な話を切り捨てようかとしたところで、見かねた執事が伯爵へひそりと耳打ちする。
「…成程、こいつがコレを持ち込んだのは確か、か」
 城門でのことを知らされて、伯爵が少し態度を和らげる。その一瞬の隙を、伯爵の視線がこちらへ向けられるのを機敏に察知して、ヴィリヤも不安を混ぜながらも嬉びの滲んだ笑顔を作ってハクへと向ける。――最も、その裏に与えられる痛みへの期待が込められているとは、流石に伯爵も読めなかっただろう。
「…まぁ、良い。コレをうまく啼かせられるなら血筋も何も関係ない。皿は譲ってやるから、せいぜい喰らうがいい。但し、余り私を失望させるなよ?その時は――皿が一枚増えるからな」
 悪辣込めた口調で伯爵がカチャン、とナイフを隣の席に放り、ハクに座るよう促す。与えられた椅子に感謝を述べながらハクが付くと、皿もまた目の前に動かされる。
「じゃあ、まずは一口――」
 ハクがカトラリーを手に切り分けるのは、アスパラガス。透明感すら感じるそれを薄く削いだ瞬間に、ヴィリヤの目からはほとり、と涙がこぼれる。

カリッと焼かれた皮目にナイフを入れる。――痛い。

柔らかな白身を舌の上でホロホロと崩す。――苦しい。

赤いソースをたっぷり救い上げて頬張る。――辛い。

 一口、また一口と勧めるたびにヴィリヤの口からは止めようもなく悲鳴が零れる。内側をぐちゃりと捩子回される痛みは涙を、指先から少しずつ切り落とされていく感覚には、失っていないか確かめる様に籠を血がにじむほど強く握りしめる。意識しては止められず、自然と溢れてくる自らの行動は戦闘では味わえないもので、苦しみの中でも新鮮な感触を覚えてヴィリヤがまたひとつ涙を零す。その様子に満足そうな笑みを浮かべる伯爵を確かめて、ハクが皿を食べきる前にカトラリーを置く。
「妹が苦しんでいるねェ。かわいそうだなァ。」
「どうした、まだ残っているぞ?」
「いやァ、見てみたいとは思ってたけど、実際に味わうと結構クるねェ」
 笑みは浮かべたまま、ほんの少し頬をこわばらせてハクが怖気ついた演技を見せつける。先程までの余裕の口ぶりとは打って変わった態度が気に召したのか、伯爵の口が一層弧を描いて吊り上がる。
「ははっ!威勢のいいことを言って、結局はその程度か。だがまぁ、中々良い悲鳴は聞けた。貴様もまだ腹が空いていよう?…褒美に、明日も美味な皿を食わせてやるとも」
 暗にもう一度妹を食わせよう、と囁いて伯爵が高笑いを上げた。それこそがふたりの狙い通りとは知らず、招待客の声も合いまった喧騒の中、ヴィリヤとハクが暗い表情の下にそろりとうまくいったことをほくそ笑んだ。
 
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生き別れの兄妹と名乗る二人

→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【灰】ホール

ハロゥ、ハロゥ
オイシソウ、オイシソウ

トキワに目配せをするする。
その間に拷問具の賢い君を戦場にこっそりと張り巡らせておく。
アァ……賢い君、賢い君…。

毒性のアカイイトをホール内に張り巡らせておく。
この食事。うんうん。
頭の高いヤツラの考えそうなコトだなァ……。

トキワ、トキワ。
目配せをして楽しむふり。
アッチでも悲鳴、コッチでも悲鳴。
たーいへんたいへん。

ソコのヤツ、楽しんでいるカ?
食事を見せながらトキワに話しかけようそうしよう。
機を伺うンだ。合図はコレの指ダ。

賢い君の巻きつけられた薬指を動かす。
ソレをトキワとコレの合図にしようそうしよう。
アァ……楽しいなァ…。
もっとあーそーぼ


神埜・常盤
【灰】ホール

引き続き吸血鬼の姿で

嘗て蝶の採集に狂った身だ
剥製にも興が惹かれたけど――
あァ、コレは美しくない
全く興覚めだ

エンジ君と目が合えば
彼が怪しまれぬようフォローに動こう
テェブルに上げられた式神
天竺を指差しながら
周囲の招待客へ得意げに自慢語り
彼等の気が逸れぬよう
科白を紡ぐ聲に催眠を滲ませて

アレは私が持ち込んだ娘なのですよ
うつくしいでしょう?
嗚呼、さぞ甘美な味わいに違いない

天竺も空気を読んで震えたり
苦悶にのたうってくれる筈
彼女の視線が若干痛いが……
なに、慣れっこさ

嗚呼、先ほどのきみ
楽しんでいるとも
この先もっと素敵なことが起こるような
そんな気がしないかね、ふふ

僕も早く食べたいなァ
連中のいのちを



――宴の会場は、嗤い声と悲鳴に満ちていた。

 くるりくるりと踊るもの、立食形式に用意された食事に口をつけるもの、そして調度品に目を奪われるもの。それぞれに狂宴を楽しむ招待客たちの中、その内の一人である振りをして神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)がにこやかな笑みを刷く。真白い肌に羽も携えた身では潜り込んだ何某と疑われることもなく、下見算段の視線も調度品を愛でるように取られただろう。実際に嘗て蝶の採集に狂った身としては、飾られる剥製には特に興が惹かれた。なので合間を見て近くにあった角の立派な鹿の剥製をじい、と眺め見てみる――けれど。
「あァ、コレは…」

 ――美しくない。
 
 思わず口に乗せそうになった音を飲み下し、周囲には言葉もないほど感嘆した風を装う。本来の在り様を捻じ曲げ、継ぎ接ぎ、飾り物にする。生前の姿を逸脱した姿にはとんと興も削がれて、ふいと視線を戻す。すると開けたホールをゆらりと横切る、お道化た猫のような影が見えた。
「ハロゥ、ハロゥ。オイシソウ、オイシソウ」
 踊る阿呆の合間をひょいと抜けて、エンジ・カラカ(六月・f06959)が宴を闊歩する。裏で密やかに爪弾くのは楽器でも悲鳴でもなく、アカイイト。結わえた指をちらりと見せると、すぐに意図が伝わったようで常盤が声高に指をさす。
「ああ、ほら皆さま。伯爵のテェブルをご覧あれ」
 よく通る声と身振りを合わせれば、当たりが一斉に伯爵の食卓へ視線を向ける。供される皿は三色の層を成すレバーのテリーヌ、そして鳥籠に篭められたのは髪を夜会に巻いた麗しい女性。着せられた藍色のレェスドレスは琥珀の髪が映えるような配色で、剥製と違いセンスを感じさせた。
「アレは私が持ち込んだ娘なのですよ。うつくしいでしょう?…嗚呼、さぞ甘美な味わいに違いない」
 ゆったりと抑揚付ける言葉に催眠を孕ませて、客からの視線を奪う。他を視ぬように、伯爵だけを見つめる様に――罠には気づかず、愚かなままでいる様に。

――まぁ、豪奢な髪だこと。
――見て、あの表情。さぞ苦痛なのでしょうねぇ…ふふっ!
――このまま耐えてくれれば、また顔をみれそうでいいな。
――でも、泡を吹いて倒れるのも良いと思わないか?

 伯爵が添えられたラディッシュと共にテリーヌを口に運べば、その度に天竺が苦痛に身もだえ震えて、周囲から熱を帯びた感想が聞こえてくる。最も、天竺の伏せた視線が如何にも鋭く咎めるようなのは、常盤にしか伝わらないことではあるが。そうして常盤がステージへと釘付けてる間に、エンジがテーブルに、椅子に、剥製にツツツと指を滑らせていく。その度に結わえられていく赤い糸は、獲物が掛かればすぐにも毒が回るだろう。けれど今は宴の最中、終わりまではまだ牙潜ませて、楽しむ素振りでテーブルの食事をひょいと取り分けた。
「この食事。うんうん。頭の高いヤツラの考えそうなコトだなァ……。」
 エンジがスン、と鼻を鳴らして皿の上のパイを嗅ぐ。焼きあがった香ばしいに、誤魔化しきれない醜悪さを感じ取ったのか、摘まむことはせずにやにやとした笑みだけを向ける。そのまままた会場を右に、左にとふらついていると、丁度天竺が控えの間に引き下げられていくのを見届けた常盤が目に留まり、声をかける。
「ソコのヤツ、楽しんでいるカ?」
「嗚呼、先ほどのきみ。楽しんでいるとも」
 慣れた顔にもしれっと素知らぬ顔をして、ふたりが嗤う。エンジが賢い君の巻きつけられた薬指を動かすと、うまくいったのかと常盤が頷いて薄い唇の弧を深くする。
「この先もっと素敵なことが起こるような…そんな気がしないかね、ふふ」
「機を伺うンだ。合図はコレの指ダ。」
 目の前には悲鳴に狂喜し、バタバタと忙しなく翅振るう蝶たちの姿。ここが既に張り巡らされた蜘蛛の巣の裡とは知らぬのが滑稽で、くつり、にまりと笑みが重なる。
「アァ……楽しいなァ…。もっとあーそーぼ」
「僕も早く食べたいなァ…連中のいのちを」

――絡めた糸で手ぐすね引いて。嗚呼、幕落ちる時が待ち遠しい。


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宴に興じるお客様方
→そのまま会場にてお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャト・フランチェスカ
【紫桜】
👗🍽食材役

悪趣味な部屋だ
絶え間ない阿鼻叫喚
血を抜かれたせいか少し朦朧と
檻越しに、きみを見つける

カトラリーが料理に滑り込む様は
奇妙な既視感を伴って映る
愚かな僕の自傷行為にも似て

ぁ、

肺腑を握り潰されたよう
檻を掴む手の骨が軋む程
耐えてやろうと思ったのに

ああ、ッぐ、

心臓を締め上げられるよう
煩いのは僕が床を叩く音

ああああ、――ッ!

喉が灼熱する
芝居の心算が無様なもの
内側を壊されるのは厭

やめてやめてもう許して

滲んだ視界
きみの眸だけ爛々と耀って

死ねるほど苦しいのに
きみが与える痛みだけは苦痛になり得ない
その矛盾に狂いそうで
本心で吼えた
早く、全部食べてよ

期待してしまうよ
本当に喰らい尽くして呉れるのを


宵鍔・千鶴
【紫桜】
🍽持ち込み+味見役

伯爵へ挨拶がてら
恭しく妖しいこの余興を楽しもう

檻に囚われた虚ろなきみと目が合う
噫、胸糞が悪い
動揺も怒りも凡て仕舞い込んで
料理に銀食器が触れる直前

伯爵、俺の自慢の極上品
召し上がる前に、先ずは御覧を
好い啼かせ方を識ってます

ナイフをゆっくりめり込ませ
刻んで掻き混ぜて嬲って
きみの呻く聲、劈く叫び
手が震える、止まらぬ
之は胸の痛みか、或いは高揚か
欠片を喰み広がるのは憶えがある
甘露のような味、まるで待ち侘びていた様

剥き出しの牙、獰猛な眸に映る
許しを乞うきみの喘鳴、潤んだ姿

…シャト、お強請り?
好いよ、もっと可愛く痛々しく啼いて
俺達を、いや、俺を満足させてよ

ヒト成らざるは、最早何方か



――悪趣味な部屋だと、思った。

 不躾に向けられる好奇の視線、苦痛と悲鳴を期待する下衆な会話、歪にゆがめられた剥製たちの虚ろな眼窩。晒されるそれらのせいか、夜の帳を縫い上げたようなベルベットのドレスはシャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)を美しく飾り立てはしたが、べったりと張り付くように重く感じられて足取りを鈍らせた。執事に連れられるがままに向かうのは鳥籠の中。既に血を取られた後だからだろう、シャトの意識は少し朦朧としていて、中に入るなりぺたりと座り込んでしまった。それなのに――籠越しであっても、人波の中に在っても、宵鍔・千鶴(nyx・f00683)の姿はすぐに見つけられた。伯爵への挨拶の最中らしく恭しく頭を下げながら妖しい余興を楽しむ振る舞いは、周りと見分けがつかないほどに馴染んで見えた。然しそれも檻に囚われた虚ろなシャトと目が合えばほんの一瞬、纏う仮面をガリリと剥がされる。
(――噫、胸糞が悪い)
 悪趣味で、悪辣で、悪虐な宴を象徴する人間大の鳥籠。その裡に在るシャトの姿も、それを見て愉し気に嗤う奴らも、何もかもが腹立たしい。それでも今優先すべきはそこにない、と残った理性で冷静さを引き戻し、動揺も怒りも凡て仕舞い込んで伯爵に向き直る。今しがたテーブルに置かれた皿は、メレンゲに血を混ぜた桜色のエスプーマソース添えた雉肉のコンフィ。一か所に纏めず皿全体に散らされたソースは、まるで桜吹雪のように見える趣向だ。見栄えの美しさに満足げな笑みを浮かべる伯爵が、いざカトラリーを皿へと差し込む直前に、千鶴がそっと手を添えてそれを押し留める。
「伯爵、こちらの食材は俺の自慢の極上品。召し上がる前に、先ずは御覧を。――好い啼かせ方を識ってます」
「…ほう、私よりも上手く啼かせられると?なら、とくと魅せてもらおうか」
 止められたことには伯爵が一瞬苛立った態度を覗かせたものの、啼かせ方には興味をそそられてか、すんなりと千鶴へ皿を譲った。手短に感謝を述べ、千鶴が手にしたカトラリーが料理に墜ちていく様は、奇妙な既視感を伴ってシャトの瞳に映る。それはどこか、自らの愚かな自傷行為にも似ている所為だろうか。然しそんな淡い感慨も、皿上の肉にナイフがゆっくりとめり込んでいけば、痛みと共に一瞬ではじけ飛んだ。
「ぁ、――」
 止めようもなく、シャト喉から声が溢れる。切っ先がほんの少し入っただけで、肺腑を握り潰されたような激痛が体中を奔る。それは耐えてやろうと決めた覚悟をあっさりと砕いて、檻を掴む手の骨を軋ませるほど。
「ああ、ッぐ、」
 ソースを掻き混ぜられれば、今度は心臓を締め上げられるよう。さっきからガチャガチャと耳に煩いのは、床を叩く音だろうか。そう言えば拳も痛む気がしてシャトが自らの手を見れば、皮が薄く破れて滲む血が見えた。
「ああああ、――ッ!」
 ぐちゃりと口の中で嬲られると、迸る絶叫に喉が灼熱する。芝居の心算なんて無様にも散り去って、籠の中で只管に身もだえる。
「やめてやめてもう許して」
 苦痛に内側を壊されるのは厭だと、許しを請うシャトの声は間違いなく聞こえている。それなのに、千鶴の手は震えながらも止まらずに肉を裂く。胸にどぷりと根差す之は果たして痛みか、或いは高揚か。小さく切り分けた欠片を喰み、口の中に広がるものは憶えがある。まるで待ち侘びていたように甘い、甘露の如き味。ソースをたっぷりと絡めとって千鶴が頬張って見せれば、シャトが相反する想いと痛みに揺れて胸を押さえる。死ねるほど苦しいのに、千鶴が与える痛みだけは苦痛になり得ない。その矛盾に狂いそうで――本心で吼えた。
「――早く、全部食べてよ」
 剥き出しの牙でかみ砕いて、獰猛な眸に映るのは願い乞うシャトの喘鳴と、潤んだ姿。早く解放してやりたいはずなのに、嗚呼、どうしてこんなにも喉が渇く。
「…シャト、お強請り?好いよ、もっと可愛く痛々しく啼いて。俺達を、いや――」

――俺を、満足させてよ。

 シャトにだけ聞こえるよう、密やかに零される声。演技の筈の微笑みは、千鶴自身でさえそれがもう“何方”なのか分からないほどに恍惚と凄絶に満ちていた。だから、つい期待をしてしまう。本当に喰らい尽くして呉れるのを。生への呪いと別れる瞬間を。

――焦がれた結びが、その手の裡にこそ在ればいいのに、と。

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桜の角持つ女
→控えの間に移せ

味見役の少年
→ホールに戻るならそのまま、希望があれば女と控えの間に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

釈迦牟尼仏・万々斎
少年(f22865)

吾輩実は料理人でしてな。是非ご相伴にと味見役を希望する。合流は建前だ。味見したい味見。

訓練を受けた兵士とて痛覚を消せるわけではない。況やただの子供をや。
控えの間を目指すなら完璧な悲鳴だが折角だ。口腔を作り牙を作り、噛み潰してみようか。さあさあ目が覚めたかね、啖呵の一つも切ってみせてくれたまえ。

ハッハッハッハ! 囀る囀る。誰に似たんだあの気の強さ。
噫……いいものを見た。やはり対象への興味と理解あってこそ。使い捨ての苦痛ごときを有難がる連中とは趣味が合わん。

持ち込んだ食材があれ程かましたのだ。仲良く屠殺部屋に連れ行かれよう。
恨みがましい目をするな。お楽しみはここからだろう?


雨野・雲珠
マスターと/f22971 👗🍽

屠殺部屋へ…抵抗しないと。あの子たちは?
痛くて何も考えられない

涙と脂汗で滲んだ視界に
見慣れた人がお皿つついてるのが見え(悲鳴)
しっ…信じられない…!
(格子を掴んでぐぐ、と体を起こす)

…お気の毒な領主さま。
形ばかりに固執して、…ぐ、
本当に満たされたことなんて、ないのでしょう?
お可哀想な方ですね
ほんとうに、お気の毒な方!
ふ、ふふ。だから俺、あなたを赦してさしあげます!

【呪詛耐性】赦しで呪いに抵抗を。
でも慈悲ではありません、
家畜以下の相手に上段から赦されるなんて
どんなお気持ちかなと思って!(泣きながら激おこ)

マスター、来てくださらなかったら化けて出てやりますから…!



「――吾輩、実は料理人でしてな。是非ご相伴をと味見役を希望する。」
 慇懃無礼に、されど内心は悟られぬように。運ばれてきた料理を頬張る伯爵へ向けて、釈迦牟尼仏・万々斎(ババンババンバンバン・f22971)が味見役を願い出る。訝し気な伯爵の睨みも涼し気にスルーして、空気の読めない押しの強さを醸すことで目的のものへと手を伸ばす――料理を食し、そして不興を買って狙う部屋へと合流することが最終的な目標だ。然し結局のところ、それは聞こえのいい建前に過ぎない。ようは――。
(少年の皿とあれば…味見したい味見。)
 ――万々斎の理由は、これに尽きる。若干うきうきした気持ちで返答を待っていると、見かねた執事が助け船のつもりか、何事かを伯爵へと耳打ちする。
「…貴様、あの食材を持ち込んだものか?」
 そう言って指さす先に在るのは、鳥籠。それも既に雨野・雲珠(慚愧・f22865)が籠められた檻だ。白の三つ揃えに桜踊る萌黄の着物を羽織らされ、ぺたりと座り込む姿は遠目にも生気が乏しく映る。既に雲珠の皿はその半分が伯爵の胃へと落ちている。その間悲鳴を上げ続け、苦痛に身を焼かれたのだからそれも無理からぬこと。顔を上げる気力もないようで、雲珠からは万々斎の姿にはいまだ気づいていない。
「ええ、まさに。あれを持ち込んだのは吾輩ですとも」
「フン、ならまぁ譲ってやってもいい。但し確りと悲鳴を供してくれ給えよ?黙られては興覚めだ」
「勿論、満足のいくものを聞かせよう」
 うっかり、よろこんで!と燥ぎそうになったのをぐっとこらえて、万々斎が勧められた席へとついて皿と向き合う。乗せられた料理は鶏肉のガランティーヌ。切り分けられた残りを前にして、ナイフを手にちらりと鳥籠を見る。訓練を受けた兵士とて痛覚を消せるわけではない。況や蹲っている雲珠はただの子供だ。控えの間を目指すなら今のままで完璧だが、そう、しいて言うなら――“折角”だ。あえて一口大には刻まず、噛み切らねばならない大きさの一切れをとって。それもタール蠢く体に態々口腔を作り牙を作り、カパリと口を開いて、放り込む。

(屠殺部屋 抵抗しないと …あの子たちは?)
 雲珠が考えを巡らせようにも痛みで朦朧とし、今にも落ちそうに意識が明滅しかけた、その時。

がぶり。

「あぐっ…!?」
 どうしてだか、先程までよりどこか痺れるような痛みを感じて身を捩る。伯爵の咀嚼とは違う、強烈でありながらも何処か背を叩かれたかのような、冴えた痛み。その理由を探して下を向いていた視線を持ち上げると、涙と脂汗で滲んだ視界越しに、喜々として料理を食べる万々斎の姿があった。
「!? しっ…信じられない…!」
 衝撃の余りに、なけなしの気力で以て雲珠が格子を掴みぐぐ、と体を起こす。
「ふむ、本来冷やして出す筈の品をあえて温めるとは。その分ソースの香りが立つが、これは…醤油か?成程、食材に合わせて少々オリエンタルに寄せてあるのかハッハッハ」
 ご丁寧な食レポ付きで聞こえてくる声はもう楽しさが前面に押し出されていて、雲珠が何とも言えない衝動のまま格子を握る手に力を籠める。それを見た万々斎が、雲珠にしか見えない角度でしっしっ、と払うような手の仕草を取る。
(さあさあ目が覚めたかね、なら啖呵の一つも切ってみせてくれたまえ。)
 声までは聞こえなかったが、発破をかけられたんだ、と意図は理解した。後で言いたいことは沢山あるが、今はそれに納得して声を絞り出す。
「…お気の毒な領主さま。形ばかりに固執して、…ぐ、」
 痛みに耐えきれず言葉が途切れたが、何とか台詞にはなった。その証拠に満足そうだった伯爵が、ふと顔を曇らせて雲珠の方を向く。
「本当に満たされたことなんて、ないのでしょう?お可哀想な方ですね…ほんとうに、お気の毒な方!」
「おい、貴様。一体何を言って――」
「ふ、ふふ。だから俺、あなたを赦してさしあげます!でも慈悲ではありません。家畜以下の相手に上段から赦されるなんて、どんなお気持ちかなと思って!」
 強がりと卑屈と意地と義務感と。全部をごちゃまぜにした、雲珠にできる精一杯の反撃。破れかぶれ、追い詰められた小型犬の鳴き声といった風情だが、それでも効能はあまりにも分かり易かった。
「…ああ、ああ、そうだな。最悪の気分だ!望み通り家畜以下の扱いで黙らせてやろう…苦痛なく死ねると思うなよ。早くコレを屠殺部屋に!」
 怒りに任せて伯爵が怒鳴ると、慌てた執事が鳥籠を開けて雲珠を中から引きずり出す。そしてすれ違う刹那に、がばっと顔を上げて万々斎を見つめる。
(マスター、来てくださらなかったら化けて出てやりますから…!)
 今にもがるる、と唸り声が聞こえそうな恨みがましい目を置き土産に、雲珠が手荒く奥の方へと連れ去られていく。それを見た万々斎が思わず人目を憚らず、高笑いを零した。
「ハッハッハッハ! 囀る囀る。誰に似たんだあの気の強さ。」
 急な笑い声に伯爵が訝しげな顔を向けたが、お構いなしにひとしきり笑う。笑って、哂って、呵い続けて。そうして最後にぽかんと口を開ける観衆へ向けるのは、“嗤い”だった。
「噫……いいものを見た。痛みを与えるなら、やはり対象への興味と理解あってこそ。使い捨ての苦痛ごときを有難がる連中とは趣味が合わん。」
 事ここに至ってはくだらないと冷ややかに、手にしていたナイフをポイっと棄て、手錠を待つかの如く両腕を差し出した。
「持ち込んだ食材があれ程かましたのだ。吾輩も仲良くその屠殺部屋とやらに連れ行かれようとも。」
 不遜極まりない態度で申し出れば、伯爵がまた顔に朱を昇らせるのが見えた。
(そう心配するな少年――お楽しみはここからだろう?)
 内心でこっそりとそんなことを付け足して。

――それが目論見通りとは露ほども知らず、伯爵がもう一度屠殺部屋行きを叫んだ。

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桜角の少年と味見役の不遜な男
→屠殺部屋で速やかに処分せよ

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

向坂・要
【青(f01507)と】食材役

腹違いの幼い弟(青)を守る為、恐怖を押し殺して、弟には手を出さな、と庇い食材役に名乗り出る兄を引き続き演じる(UC使用は継続)

事前に青と密かに打ち合わせし屠殺部屋と控えの間、より人数の少ない方へ向かう様に振る舞う

食材としての苦痛に対しては耐性で耐えながら演技
青への気遣いは忘れずに
「にいちゃんは、大丈夫だから、な?」

控えの間行きなら強がってみせるも耐えきれず苦痛の声をあげのたうち
屠殺部屋行きなら苦痛の声を飲み込み耐え続け力尽き

(なるほど、こんな感じですかぃ)なんて呪いへの好奇心と苦痛すら内心興味深く思うもそれは隠し
可能なら周りの様子も密かに探れれば御の字

アドリブ歓迎


迎・青
【要おにーさん(f08973)と】(アドリブ歓迎です)
【味見役】
(兄弟を装っている間は「おにーちゃん」呼び)
(行先は控えの間・屠殺部屋のうちより人数の少ない方へ調整できるように、おにーちゃんと示し合わせておく)

不安と恐怖でおにーちゃんにしがみつき、頼りきる様子を見せる事で、味見役にされる
「あう、やだ、おにーちゃ、やだよぅ」
(こんな事のために、一緒に来てもらったわけじゃないのに)
(ごめんなさい、ごめんなさい、ボクが悪いんだ――)

控えの間に行くなら、震えて泣き喚きながらも料理を口にする
屠殺部屋に行くなら、泣き喚きはするが食べる方は断固拒否し「おにーちゃんにひどいことした、ゆるさない」と怒って見せる



「…おにーちゃん、こんなの、いやだよぅ…」
 ほとほとと、幼い少年の眸から涙がこぼれていく。豪奢な席に座らされ、迎・青(アオイトリ・f01507)が悲しげな表情で俯いては、いやだいやだ、と重ねて零す。普通なら誰かしら空慰めの言葉もかかりそうな状況だが、雫が床に滴り落ちる度に周囲から溢れるのは、嘲笑を含んだ笑い声だ。

――もっと泣いたらいいのに。
――ああ、でも今からあの子が味見をするんでしょう?
――ええそう
――それなら

――「「「「たのしみね」」」」

人の不幸を、悲鳴を、苦痛を歓びとする悪徳の晩餐会。そんな場所に身を置いていると改めて自覚し、青が前を見ると――執事に連れられた要の姿がみえた。毛色に合わせた灰色めいた三つ揃いに、首には青いループタイ。着飾った姿で手を引かれ、籠められるのは青に程近い位置の鳥籠。視線の分かる距離にわざわざおいたのを確認してから、機を計らったように青の前に皿が運ばれてくる。盛り付けられた料理は鶏肉のフリカッセ。青の器物など知らぬはずの、意図せぬ悪趣味に身を震わせれば、怯えと理解した伯爵が「さぁ、早く」と促す。
「…ぐっ…!?」
 その瞬間、要の躰に激痛が走った。青の手にしたフォークで、そのまま身を刺されたように。咀嚼しかみ砕かれる鶏肉が、自らの体そのものであるように。耐性を巡らせてもなおリアルな痛みに、ぽたり、と脂汗が流れ落ちる。
(なるほど、こんな感じですかぃ)
 だが、要にとってはその苦痛すらも好奇の対象だ。喰われる度に降りかかる呪いを逆に飲み下し、味わって、興味深く思う内心を悟られないよう、苦しむ表情で覆い隠す。ただそれは必要な演技ではあったが、苦渋に耐える様子は食する青の心を抉ってしまい、瞳から涙を溢れさせてしまう。
「あう、やだ、おにーちゃ、やだよぅ」
(こんな事のために、一緒に来てもらったわけじゃないのに)
(ごめんなさい、ごめんなさい、ボクが悪いんだ――)
 姉が居るのなら助けたい――願ったことは、ただそれだけだった。それが、こんなひどいことになるなんて。自身を深く責め苛み、青の手がぴたり、と食べるのをやめてしまう。事前の2人のすり合わせで、人手の少ない方に赴くよう働きかける、との取り決めをしていた。今この場合は“控えの間”に行くべきだが、このまま青が食事を拒否すれば、恐らく伯爵の不興を買うだろう。それに、それ以上に単純な想いを胸に、要が精いっぱいの笑みを青へ向けて語り掛ける。
「…にいちゃんは、大丈夫だから、な?」
 ――青を、慰めてやりたかった。助けたいと思った心を、後悔しないで欲しい。それは決して、間違いではないのだから。その想いの全てが伝わったかは分からないが、笑顔を向けられた青が僅かに生気を取り戻し、改めてフォークを握り直した。伯爵もひと時は不満そうに向けていた表情を、苦痛に耐える要の演技と、多分に本心の現れた青の態度に、ゆっくりと笑顔へと変えていく。

――やがてどちらも控えの間に、と告げられるまで、そう時間はかからなかった。

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味見役の弟と鳥籠の兄
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロキ・バロックヒート
【猫飴】
味見役

今この時は嘆きさえも甘美に聞き惚れる
なんて素晴らしい晩餐会なんだろう
伯爵を讃えて取り入るよ

あ、ティアちゃんだ
ああお願いします、伯爵さま
大事な可愛いあの子を食べさせて
うんと鳴かせてきれいに食べてあげるから

とろりとしたソースがかかった苺のムース
フォークの先で薄いベールを引っ掻き
下品にならない程度にぐちゃりと絡める
裡を掻き混ぜられるのって気持ち良いでしょう
うっとりと口に運んで
うん、おいしい
ああ、ティアちゃん可愛いな
―羨ましい

ねぇ伯爵さま
私も食べて欲しいなぁ
甘い声と蕩けた笑顔で強請る

手を伸ばして助けを求める姿が
愛らしくて堪らなくて
今すぐ控えの間に行ってあげたい
労ってうんと愛でてあげなきゃ


ティア・メル
【猫飴】👗
食材役

ふいーん
この人が伯爵、ね
ぼくに痛覚なんて存在しないから
痛くないけれど、それじゃあだめみたい
セイレーンとしてどこでも自由に弄れる体
痛覚も機能させてみよっかな
物理的な痛みって、どんなもの?
期待に震える体は恐怖に怯えているよう

あ、ああ―――!
いたい、痛い
これが痛み
ひとの持つ大事な感覚

意識せずとも甘い声が悲鳴にすり替わる
何かを話すのも、呼吸すら苦痛で
涙が勝手にぼろぼろと零れてくる
心の痛みは知ってたけれど
物理的な痛みがこんなに辛いなんて知らなかった

控えの間に?
これは気に入られたって事でいいのかな
ロキちゃん、
たすけて
口がはくはくと動く
涙で潤んだ視界
君へと必死に手を伸ばした



(――ふいーん。この人が伯爵、ね)
 ランダムに縫われた裾のフリルは、まるで海底からのぼる泡のように。光沢のある薄青のドレスを纏って執事に連れられながら、ティア・メル(きゃんでぃぞるぶ・f26360)がちらりとテーブルの伯爵の顔を盗み見る。青白い肌、見下すように細めた瞳、そうあるのが当然といった傲慢の滲む顔。見てくれには特別どうと言う印象もないが、またとない機会をくれたことには感謝して、ティアがしおらしく俯いて見せる。
「――あ、ティアちゃんだ」
 変わってホールをうろついていたロキ・バロックヒート(深淵を覗く・f25190)がティアの姿に気が付くと、思わず顔を緩めて笑みを浮かべる。丁度今は鳥籠の中身を入れ替える瞬間、その皿を取り下げる僅かな暇を利用して、ロキがするりと猫の様に伯爵の傍に侍る。
「思わずうっとりしてしまう音色だったね、伯爵さま。…なんて素晴らしい晩餐会なんだろう」
「…ハッ、当然だろう。私が主催なのだからな」
「うん、とても趣味が良くて気に入ったよ」
 引きずり出されていく食材は必死に許しの言葉を口にしていたが、今この時は嘆きさえも甘美に聞き惚れる。取り入る為にも伯爵讃える言葉を更に重ね、遂にティアが鳥籠へと籠められたのを見届けてから、ロキがほろりと金の瞳を輝かす。
「――ああ、お願いします伯爵さま。大事な可愛いあの子をどうか食べさせて」
「大事な?…貴様、アレを持ち込んだものか。」
「そう、きっと今日を彩るに相応しいと思って。だから…ね?」
「…まぁ、いいだろう、とびきりの悲鳴を供すると約束するなら、譲ってやらぬこともない。」
「もちろん、うんと鳴かせてきれいに食べてあげるから」
 取り付けた約束に喜びながらロキが椅子へと座り、運ばれる皿を前にカトラリーを手にする。置かれたのは、とろりとしたソースがかかった苺のムース。なんて似合いの皿だろう、と嬉しそうなロキを鳥籠から遠目に見て、さてどうしようかとティアが思案する。――ティアには痛覚が存在しない。そのまま呪いを浴びても、何のこともなくやり過ごせてしまう。伯爵が望むのは苦痛に喘ぐ姿と憐れな悲鳴、でも知らないままでは演技もできない。それなら、セイレーンとしてどこでも自由に弄れる体に痛覚も機能させてみよう、と思い立って瞬きの間に体の裡を作り替える。物理的な痛みってどんなものだろう?と期待に震える姿は、皆には恐怖に怯えているように見えるだろう。ただロキだけが肩震わすティアの真意を汲み取って、ゆっくりと時間をかけながらフォークの先で薄いベールを引っ掻き、下品にならない程度にぐちゃりと絡める。その瞬間、ぐにゃり、とティアの視界が真っ赤に歪んだ。
「あ、ああ―――!」
 いたい、痛い、イタイ。初めて味わう感覚なのに、脳が直ぐに痛みを理解して苦痛で埋め尽くされる。意識せずとも甘い声が悲鳴にすり替わり、伯爵とホールの客たちを悦ばせる。何かを話そうとしても呼吸すら苦痛で、瞬く間に涙が勝手にぼろぼろと零れてくる。心の痛みは知っていたけれど、物理的な痛みがこんなに辛いなんて知らなかった。

――これが痛み。
ひとの持つ大事な感覚。

 脳髄を焼く苦痛に喘ぎながら、ティアが改めて痛みを咀嚼する。その合間にもロキはためらうことなく皿の上のムースをナイフでザクリと刻み、フォークでぶつりと突き刺し、スプーンでぐちゃりと掬って平らげていく。涙で溢れ、止めようもない悲鳴を零し、苦しむティアはどこまでも可愛くて愛しくて――焦がれるほどに、羨ましい。だからつい、願い出てしまった。
「ねぇ伯爵さま。私も食べて欲しいなぁ」
「…貴様を?」
「きっと好い声で啼いて見せるよ。だからソースの一滴も残さずに、ね?」
 誘惑滲ませた甘い声と蕩けた笑顔で、ロキが自らを口にしてほしいと強請ってみせる。苦しみを望むかの申し出に暫くは訝し気だった伯爵も、最終的には食材が増えるならと納得して執事に鳥籠を開けさせる。
「…ククッ、貴様も随分と悪趣味なようだ。そんなに食われたいというのなら、アレと共に控えの間に連れていかれるといい。明日じっくりと味わってやろう?」
 そう言って伯爵がにやりと意地悪く笑い、目の前でティアを先に控えの間へと連れて行かせる。すれ違う刹那に手を伸ばし、はくはくと口だけでたすけて、と涙零すティアの姿に、ロキがうっとりと目を細めた微笑みで見送る。

――ああ、愛らしくて堪らないティアちゃん。
裡を掻き混ぜられるのは気持ち良かったでしょう?
でも大丈夫、今すぐ控えの間に行ってあげる。
そうしたら労って、なぐさめて、うんと愛でてあげなきゃ。

 先の楽しみを描きながらぺろり、と舐めた唇は――酷く、甘かった。

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桃髪青目の少女
黒髪金目の少年
→どちらも控えの間に連れて行くように。

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

賀茂・絆
控えの間と屠殺部屋はご同業たちがなんとかしてくれそうデスシネ。ワタシはワタシの神の贄共の品定めをしておきマショウ。

城門でやったのと同じ手口で色んな吸血鬼たちに親しげに話しかけマス。晩餐会で緩いノリになってる吸血鬼は普通に乗ってくれるデショウし、警戒するタイプの慎重な吸血鬼はUCの餌食デス。遺憾ながら種族的に食事についての話も合ってしまうデショウシ、傍目には不審な感じはしないと思いマス。あ、普段はこんな悪趣味な料理は食べていマセンヨ。

プライベートなお話とかもできたらいいデスネ。殺す時に有益な情報かもデスから。
皆とお友達になれたら最高デスネ。友達に殺意を向けられて混乱する吸血鬼もいるデショウから。



(――控えの間と屠殺部屋は、ご同業たちがなんとかしてくれそうデスネ)
 すでに幾度か鳥籠の中身が入れ替えられた後。晩餐会のホールに客として紛れ込んでいた賀茂・絆(キズナさん・f34084)がふむ、と頷いた。普通の人間もいたが、それとなく同業者と分かる食材役の姿も何人か見えた。なら、自らは戦力を要するというホールに残るべきだろう、と算段を付けて絆が伯爵のテーブルに背を向けて歩き出す。
(ワタシはワタシの神の贄共の品定めをしておきマショウ。)
 幸い客商売を営むお陰か、親しげな顔をするのは得意だ。数人で固まって話すご婦人方の和にひょいと入り込み話に混ぜてクダサイな、と笑顔を振りまくと、宴の雰囲気に酔ったものはすぐに避けてスペースを開けてくれた。中には突然のことに訝し気な視線を向ける人もいたが、絆に対して『疑念』を抱くのは――『好意』と『信頼』を感じるに等しい。巫術によって呼ばれた霊体が視線を感じるや否や、すぐさま念波による催眠を掛けて友愛の眼差しへと変えてしまう。
「今日はずいぶん皿の数が豊富ね。変わった見目の子も多いみたい」
「でもさっきの子はすぐ気絶しちゃって、つまらないったらなかったわ」
「屠殺部屋行きでしょう?私、伯爵様におねだりしてみようかしら。啼かなくったって、まだたっぷり血は残ってそうだもの」
「それは良いデスネ。デザートワインにぴったりじゃないデスカ」
(――なんて、普段はこんな悪趣味な料理は食べていマセンヨ)
 と内心で独り言ちつつ、種族的な理解もあってか不審がられることもなく、見た目ばかりは和やかに会話が進んでいく。
「そういえば、あちらのタルトは召し上がった?とても美味でしたわよ」
「あら、それはぜひとも頂かなくちゃ!取ってくるわ……キャッ!」
「…おっと!大丈夫デスか、お嬢さん」
 話の途中で踵を返した一人が、ドレスに躓いてこけそうになるのを慌てて絆が支える。暫し硬直したあと、地面にキスしてないのを確認し、転びそうになった少女が体勢を立て直しながら絆へと向き直る。
「まぁ、ありがとう!…あなた、随分若そうな子ね」
「そうデスカ?」
「そうよ!だってここってマダムが多いでしょ?よかったぁ…貴女みたいに年の近い子がいて嬉しいわ」
「ふふ、ワタシもうれしいデスよ。せっかくデスから、タルトを取ってきたら一緒にお話ししまセンカ?」
「いいわ、そうしましょ!待っててね、貴女の分も貰ってきてあげるから!」
 話を持ち掛けられてそれほど嬉しかったのか、少女がぱっと笑みを浮かべてから料理の並ぶテーブルへと速足に去っていく。そして取り分けるよう頼んだメイドがあれこれしている間にも、絆の方を気にしてちらちらと視線を送っているのが遠目にも分かった。あれならきっとこの後も、友好的に話ができるはずだ。ユーベルコードの助けもあれば、たとえ少々不振がられることがあっても丸め込むことはできる。

――そうして裏切りの為の友情をはぐくむ算段を付けて、絆がにこりと笑ってみせた。

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銀髪の女性
→そのままホールでお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
👗
林檎を使った料理を希望

密かにオラトリオでアマービレを目立たない位置で振り、ねこさんを呼んだらその内の一匹に現地で追加召喚出来るようにアマービレを託し、オラトリオを使った筆談で結界術を駆使した殺されそうな人の保護と猟兵の支援をお願いをしてねこさん達に屠殺部屋へと潜入してもらいます。

あちらはねこさん達に任せわたしは控えの間入りを目指します。
引き続き盲目の令嬢を演じ、パニックになってるように振る舞って相手の嗜虐心を煽ります。

どこ?!ここはどこなの?!お願いだからみんなの所に帰してっ!

激痛には耐性がある。だからこそ落ち着いて、泣き叫んで痛みに悶えて、伯爵が一番好みそうな反応をしてみせましょう。



――ゆぅらりと、影が蠢く。

 晩餐会のホールへとたどり着く、少し前。メイドに手を引かれて歩く七那原・望(封印されし果実・f04836)が、自らに潜む影へとひそやかに命を下す。幸い後ろ側には人の気配がない。メイド一人しかつけられていないのが、見えないと侮ってのことなら都合がいい。そのまま足元から伸びるエクルベージュ色の影に白いタクトを握らせ、望の背中でそっと振らせる。鈴の音は首に嵌められた鎖をじゃらりと鳴らして誤魔化し、現れた魔法の猫には影を使った筆談で指示を伝える。

――屠殺部屋を探して。
見つけたら託したタクトで仲間を呼んで。
殺されそうな人は結界で守って。
猟兵が居たら支援を。

 なるべく手短に簡潔にやって欲しいことを伝えれば、足音もなく去っていく気配を感じて望が安堵する。これできっと屠殺部屋は大丈夫。なら、自らが目指すべきは控えの間だ。不安そうな薄幸の少女を演じて、伯爵に気にいられればいい。長らく歩いた末にガチャン、と金属の扉が開けられる音がして、メイドの手が離れる。きっと鳥籠に入れられたのだろう。それなら肌に感じる好奇の視線に応えようと、籠にしがみついてガタガタと揺らす。
「どこ?!ここはどこなの?!お願いだからみんなの所に帰してっ!」
 堰を切ってパニックになった風を装い、望が叫び声を上げる。たとえ目が見えなくても、誰よりも敏く状況は把握している。けど今伯爵が望んでいるのは、“訳も分からず怯える少女”のはず。それなら、その通りに振る舞うまで。やがて運ばれてきた林檎のシブーストに、伯爵が意地の悪い笑みを浮かべながらナイフをゆっくりと突き立てると、望の全身に痛みがほとばしった。
「ひっ…いやっ、痛い、なにこれ…やめてぇぇ!!」
 フォークで掬い上げられ、咀嚼し、また切り取られていく皿の上に合わせて、何度も痛みが襲ってくる。だが激痛に対する耐性のお陰で、望の思考にはいくらか冷静さを保てる余裕があった。それを駆使して意識を失わず、悲鳴を重ねて、痛みに苦しむ表情を作り続ける。そして、ついに皿の上が空っぽになって、伯爵が満足そうに告げる。

――控えの間へ運べと聞こえた声に、望がほんの瞬きの間、笑みを浮かべた。

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盲目の貴族令嬢
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​

剣持・司
【希望】
背中や胸元が空きスタイルの強調される服

和食

…どうして?
わ、私…良い働き口があるって聞いて…!
漸く弟妹達を養えると思ったのに!
…いやぁッ!い、痛い!
すみませんすみません…
許してください…!ああ…いやッ!
(激痛・狂気耐性で気絶を免れ、ボロボロ涙を溢しながら演技)

…こんなところかしら
成る程、痛みはこの位ね
もう慣れた
でも今までの被害者はこの痛みを受け続けたのね…
…殺気を圧し殺す方が大変だったけど瞬間思考力であの場にいた領主と猟兵以外の客、執事やメイド全員の顔と部屋の間取りは覚えた

全員、必ず裁く
一人も逃がさない

御者役だった人の身内の安否確認もしなきゃ
(控えの間の人達の状態確認、救助活動)

連携 ○



――衆目に晒される、というのはこういうことを言うのか。

 文字に表す様子をそのまま再現したように、じろじろと好奇の目が剣持・司(正義を名乗る者・f30301)の体を這う。スタイルの良さを強調するかのように、背中がぱっくりと開けられた黒のイブニングドレス。翻る裾の赤を引いて歩けば、囁き声がざわめきに代わる。訳も分からず怯えた様子は繕ったまま、そうして密やかに耳目を集めながら司が鳥籠へと籠められていく。ガチャン、と鍵の閉まる音と共に籠へ張り着き、どうして、と問う声に頬を涙が滑る。
「…どうして?わ、私…良い働き口があるって聞いて…!」
「これがそうだとも。好い声で啼けたなら、この城が貴様の住まいになるのだから。…まぁ、それも数日のことだろうが」
 尋ねる声には伯爵が喜色を滲ませ、悪意を込めた答えを返す。
「違う、そんなことを望んだんじゃないの!…漸く弟妹達を養えると思ったのに!」
「ハハッ、それは気の毒だったな。何、どうせすぐ逢えるとも。あの世でな」
 冷静さの上に構築された演技とは知らず、叫ぶ内容に伯爵が満足げに頷く。そして運ばれてきた皿には、今までと違う趣向を感じて感嘆の声を上げる。内側を朱塗りにした黒の漆椀。ドレスの意匠に合わせた器に添えられるのは海老と枝豆のしんじょ。流石に箸の心得はないのか、スプーンを手にして容赦なく種を抉るように掬う。
「…いやぁッ!い、痛い!」
 途端、司が身を捩って悲鳴を上げた。ガタガタと震えて自らの肩を抱き、訳が分からないといった表情を見れば伯爵がいっそう勿体ぶって料理を突き、切り取り、ゆっくりと咀嚼する。
「すみませんすみません…許してください…!ああ…いやッ!」
 いやだいやだと首を振り、ぽろぽろと涙を溢れさせ、それでも気絶しまいと肩に爪を食い込ませる姿はいたく観衆に気にいられたようで、あちこちから笑い声が響く。けれど司がその下品な視線の中で思うのは――こんなところか、という冷めた算段だった。
(成る程、痛みはこの位ね。もう慣れた)
 狂気にも激痛にも耐えうる体は、あっという間に呪いの痛みも覚えて波をやり過ごすまでになった。
(今までの被害者はこの痛みを受け続けたのね…)
 でもそれは司の技能があってこそできること。並の人間とあれば、そう何度も繰り返し耐えられるものでは無い。一体何人がこんな悪趣味な理不尽の元、命を散らしていったのか。それ想像し始めると、自然と沸き上がる殺気を圧し殺すほうが大変だった。だが宴は今宵限りだ。瞬間思考力で場にいる領主と猟兵以外の客、執事やメイド全員の顔と部屋の間取りは全て覚えた。これでもう狩るものと狩られるものの立場は逆転した。

(――全員、必ず裁く。一人たりとも逃がさない。)

 泣き濡れる演技の下に、ぐつりと煮える程の“正義”が眠っていることを知らず。自らが喰らう方だと信じてやまない鳥たちが、ぴぃぴぃと煩く囀っていた。

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黒髪黒目の女
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​

日東寺・有頂
妻の夕辺(f00514)と

あーんもお預け
晩餐会なん、いっちょん楽しゅうなか!
内心ぶーたれ 澄まして妻の隣に座ります〜

悲鳴に呻き すすり泣き
こがんよがりは聞いてられん
精神も肉体も深い絆で結ばれとーて初めてな?エス女とエム男ってのは互いに満ち足り(略)  
内心逸脱しつつ 妻の顔ばチラッとして同調
小娘の囀りを聴きながら小鳥の肉を喰らう
気の利いた演出ですな

さあて素知らぬ顔でUC発動しちょります
奴らん視界に入らんよう 念力で床スレスレを移動させ
極小毒針ば標的それぞれん足元に潜らせスタンバイ

配置完了 さあ俺達のメイン皿ば味わおう
妖の牙が食い込む この肉こそは糧
涯への糧
へへ、うまか?血汁滴るベリベリレアよ


佐々・夕辺
夫の有頂【f22060】と

流石に此処で「はい、あーん」は出来ないわね、貴方?

苦悶が聞こえる
知っているような知らないような誰かの声
嗚呼、今の悲鳴は良いわね
視線を感じて隣をチラリ
勿体ぶった同調に笑いを堪え

ところでこの赤ワイン、美味しいわ
隣の奥様もひとくちいかが?

狙うのは敵が水分を摂る時
スープ、水、ソース、ワイン、いくらでも好機はある
呪詛を抱いた見えぬ管狐たち
水を媒介に招待客の中に入り込み潜みなさい
気配を消して機を待ちなさい

空気に当てられたかしら
私も凄く…食べたいわ
言って、夫の片手を持ち上げると噛み付く
じわりと滲んだ血をぺろと舐めて

駄目よ、誰にもあげないわ
私だけのメインディッシュなの
あはは!



「晩餐会なん、いっちょん楽しゅうなか!」
 城に来た時のウキウキとした姿はどこへやら。表情こそ真顔を装いながら、東寺・有頂(手放し・f22060)が小さく拗ねた声を上げる。
「流石に此処で「はい、あーん」は出来ないわね、貴方?」
 不機嫌の原因を口にしながら、佐々・夕辺(凍梅・f00514)が優しげな声で夫を宥める。内心で膨らませた頬はしぼみ切らないまま、それでも役割は理解して有頂が大人しく夕辺の隣へと腰掛ける。――今は宴の真っ最中。伯爵が喰らう皿を演劇の如く鑑賞する、悪趣味な催し物が延々と続いている。ナイフで刻まれるたび、フォークで口へ運ばれるたび響く悲鳴は最早罅割れて、濁音交じりになっている。
(…こがんよがりは聞いてられん)
 ピッと真顔で固定しながらも、有頂が思わず顔を顰めそうになるような光景とBGM。無理やりに引き出された悲鳴に、望まず与えられる苦痛に、一体何の意味があるのか。
(そもそも精神も肉体も深い絆で結ばれとーて初めてな?エス女とエム男ってのは互いに満ち足り…(略))
「嗚呼、今の悲鳴は良いわね」
「…小娘の囀りを聴きながら小鳥の肉を喰らう。気の利いた演出ですな」
 うっかり内心で長々と思考したのを夕辺の振りでふと気を戻し、勿体ぶった答えを返す。その余りにいつもとかけ離れた口調に、夕辺の肩が笑いをこらえる様に少し震えていたのは、恐らく見間違えではないだろう。

――けれど、そうして楽しむ振りをしながら、ふたりは密やかに毒を仕込んでいく。

 有頂が素知らぬ顔でユーベルコードを発動させて、まずは極小の針をこそりと呼び寄せる。そのまま念力を使って視界にとらえられないよう、幾人もの足元に潜ませる。それを見た夕辺も仕込みを巡らせるべく、近くの給仕を呼び寄せワインを運ばせる。
「この赤ワイン、美味しいわ。隣の奥様もひとくちいかが?」
「あら、良いわね。じゃあ私にも一つ。」
 倣うように給仕からワインを受け取るのを見て、夕辺がにこりと微笑みを浮かべる。ワインは文字通り呼び水。狙うのは相手が水分を摂る瞬間。こと宴の会場とあればスープ、水、ソース、ワイン、といくらでも好機はある。

――呪詛を抱いた見えぬ管狐たち
水を媒介に招待客の中に入り込み潜みなさい
気配を消して機を待ちなさい

 言葉なく管狐へと命令を下し、あらゆる飲料に彼らを潜ませる。味も見た目も変わらぬそれが、既に伯爵の食べる皿よりも呪詛に満ちたものだとは誰も気づかない。足元に、一刺しで体の自由を奪われる毒針が仕込まれてるとは知らないで、ダンスの駆け引きに夢中になっている。そんな愚かな招待客を横目に、十分な仕込みを終えた二人が顔を見合わせて、今度こそ取り繕いのない、楽し気な笑顔で語り合う。
「さあ、俺達のメイン皿ば味わおう」
「ええ、私も凄く…食べたいわ」
 悲鳴を啜り沸き立つ空気に当てられたのか、仕事を終えた夕辺の頬がうっすらと火照っている。それを見た有頂が察したように嬉し気に腕を伸ばせば、かぷりと歯が食い込んで赤が滴る。――妖の牙が食い込む、この肉こそは糧。与えられる痛みに、喉を落ちていく温もりに、互いが互いを欲し合う。
「へへ、うまか?血汁滴るベリベリレアよ」
「最高よ、誰にもあげないわ。私だけのメインディッシュ!」

――血肉を喰らい、涯への糧を喜ぶ。赤く濡れて微笑み合う夫婦が、そこにはいた。

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和装のご夫婦
→そのまま会場でお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

七・トモ
すずくん(f29624)をパクパク!
アドリブ大好きだよ~

まだかなあ、まだかな~
さっきの子も可愛らしい悲鳴だったけれど
トモちゃんのお気に入りの方がきっと
もっと、素敵だよ?
そうやって隣の席のお兄さんに自慢してるんだ
ほら、
ごらんよ、美しいだろう?

わーすずくーん輝いてるよ~
手をぶんぶん振って、こっちこっち
さ、いっただきまーす!

なるべく細かく切ろうね
だって、悲鳴はたくさん聞きたいじゃないか
噛みしめて、味わって
いやあ、そんなに見つめないでおくれよ
しょうがないね、すずくんと目を合わせて
そうして飲み込んであげよう

勿論だよ、すずくん
トモちゃんは正義の味方だからね

忘れたことにやってくるのさ
ワハハ


百舌鳥・寿々彦
トモ(f29745)
アドリブ大歓迎
👗🍽
服?
うーん、いい感じに飾ってよ
僕っていう最高の素材を引き立たせるような奴
後…伯爵が好むように美味しそうにしてね?
ここまで来てお皿にも乗れませんでした
なんて屈辱だからさ

鳥籠に美少年って我ながら中々絵になるなぁ
部屋といい食事といいマジで悪趣味
どいつもこいつも楽しそうな顔してるのがムカつく
まぁ、いいさ
全員纏めてぶっ飛ばすからせいぜい楽しんでろ
トモも覚えてろよ
後でファミレスで奢らせるからな!

体を抉られる
切り刻まれる

耐え難い苦痛に言葉にならない叫びがあがる
頭の中が痛みで真っ赤に染められる
苦痛で涙が溢れる

痛い
苦しい

楽しげなトモを睨みつける
正義の味方なんだろ
助けてよ



「まだかなあ、まだかな~」
 カチン、かちん、と手にしたカトラリーを鳴らして、七・トモ(七不思議・f29745)がニコニコとわらう。ちょうど先に供された皿が終わったらしく、目の前で鳥籠からずるりと少女が引きずり出されていく。大層悲鳴を上げていたせいか、ぐったりとして立ち上がる様子もなく、床を引きずられるがまま下げられて行った。
「さっきの子も可愛らしい悲鳴だったけれど、トモちゃんのお気に入りの方がきっともっと、素敵だよ?」
 ねぇお兄さん、と控えている執事にスルーされても気にせずに、機嫌よく話しかける。そしてついに入れ替わりで連れてこられたお待ちかねの少年の姿に、空腹がごろりと音を立てる。
「――ほら、ごらんよ、美しいだろう?」
 明るく嬉し気な少女の声の筈が、なぜか一瞬執事がたじろいた。そのことには気づかず、トモ自身は一層目を輝かせて鳥籠へと入っていく百舌鳥・寿々彦(lost・f29624)へ手を振る。
「わーすずくーん輝いてるよ~」
 ホール中に響かんばかりの声援に、寿々彦が何とも言えない表情を浮かべる。トモの声援もそうだが、まず服がこそばゆい。確かに最高の素材としての自分を引き立たせるような、そして伯爵が好むように美味しそうな装いを、と注文は付けた。でもこうまでめいっぱいフリルレースをあしらったブラウスに、オーガンジー重ねたバックフリル付きのショートズボンは中々に退廃的で趣味が良いというか、正直物理的にも座りが悪かった。しかしここまで来てお皿にも乗れませんでした、なんて屈辱からは逃れられたし、鳥籠に着飾った美少年っていうのは我ながら中々絵になるなぁ…とちょっと悦にも入ってたりはしたので、結果オーライではある。
(まぁ、いいさ。全員纏めてぶっ飛ばすからせいぜい楽しんでろ。…トモも覚えてろよ、後でファミレスで奢らせるからな!)
 宴を楽しむヴァンパイア連中は勿論、ここに来るまでの経緯を何一つ忘れずに、寿々彦が幸せそうに運ばれてくる皿を見つめるトモにも啖呵を切った。心の中で。
「さ、いっただきまーす!」
 待ちかねたトモの目の前に置かれた一品は、子羊肉のパイ包み焼き。焼き目も香ばしく食欲そそる料理を前に、まずはナイフを――ザクリ、と容赦なく突き入れる。
「――あっ…えっ…?…ぎ、ああ―――――!!」
 一瞬呆けたかと思ったら、すぐに声も結ばないほどの絶叫が寿々彦の喉から迸る。体を抉られる、切り刻まれる。料理越しの呪いなのに、一滴も血は出ていないのに、痛みだけは惨いほどのリアルさを伴って体を蝕む。そうしてのたうつ寿々彦を前に、トモは手を休めるどころかいっそう喜々として細かく、こまかく、パイを刻んでいく。どうして、と視線だけで問う寿々彦には、こともなげに満面の笑みを浮かべて――言い放つ。
「だって、悲鳴はたくさん聞きたいじゃないか」

小さく刻んで。
――痛い。

噛みしめて。
――苦しい。

味わって。
――やめて、いたい痛いイタイ痛い!!

 口の端に付いたソースをぺろりと舐めることでさえ、寿々彦の全身を激痛が苛む。頭の中が痛みで真っ赤に染められて何も考えられない。苦痛で勝手に目から涙が溢れる。なのにその姿すらもご馳走と言わんばかりに楽しげに食べ続けるトモを、悲鳴の合間に睨みつける。

――トモ、トモは正義の味方なんだろ。
なら僕を助けてよ。

 絶え絶えな息の間を縫って、もう声も出ない唇だけでトモに語り掛ける。その一文字一文字を漏らさず見取って、こくりと頷きトモが――ワハハ、と声も聞こえそうな、いつもと何も変わらない笑みを見せる。

(いやぁ、そんな目で見つめないでよ。
でも勿論だよ、すずくん。
トモちゃんは正義の味方だからね――忘れたころにやってくるのさ)

――縋る様な寿々彦の視線を受けて、トモがごくりと喉を鳴らした。

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白髪の少年
→控えの間に連れて行くように

味見役の薄桃髪の少女
→そのまま晩餐会をお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

岩元・雫
【偃月】
❍可能なら控えの間へ


まどかの選んだドレスを纏って
あんたの添えた橄欖石に触れて
刃が膚を裂く其の刻を、耐える

死した身が未だ、赫い血を流す事
此様な形で、知りたく等無かった
弱弱しい脈が、鈍い痛みを訴える
此れから、もっと手酷い痛苦を抱くのに


――此の身は
痛苦を、知らない
知らぬ侭に、溺れて死んで
繰り返し見る悪夢の中ですら
苦楽より、恐怖の記憶が色濃くて


だから、
知らなかったの

しらなかった

臓腑を掬われた時の不快感も、
肉を抉られる熱さも、痛みも、
変成してしまった喉が、美しい聲以外を
絞り出す様な――濁音塗れの悲鳴を上げることも!


きみと、目が、合った時
思わず、手を伸ばしてしまう程に
おれが、俺の侭
弱い侭で居る事も


百鳥・円
【偃月】

醜悪な感情に塗れた空間ですね
あちらもこちらも
腐った感情の臭いが漂うかのようです

ああ、ついに始まるんですね
今のわたしは人魚の“運び屋”
執事は好反応を示していました
少しでも後に繋げられるように
主催へと取り入りましょう

ご機嫌よう!伯爵さま
人魚はお気に召しましたか
貴方に召し上がっていただく瞬間を
近くにて拝見したいものです

笑えないですね
なんて厭な空間
食事の香りにさえ嘔気がする

けれども
彼の想いを無碍にされないために
わたしの出来る事をするまでです

軽く掬って口付ける振り
苦痛が和らぐように、と
託した橄欖石へと願う

手を取れないもどかしさを
煮え滾る想いごと噛み潰す

――は、
今のわたしは、どんな顔をしてるのやら



「――醜悪な感情に塗れた空間ですね」
 煌びやかなダンスホールの只中で、スンと鼻を鳴らして百鳥・円(華回帰・f10932)が聞こえぬよう小さく吐き捨てる。嗤い、嘲り、詰り。招待客のあちらからもこちらからも、腐った感情の臭いが漂よってくる。思わず顰めたくなる顔に笑顔を繕って人の合間を縫っていると、ざわついた声が聞こえて事態を悟る。――かの人魚のお披露目だ、と。
(ああ、ついに始まるんですね)
 円の懸念通り、執事に連れられる食材へ不躾に無遠慮に、並んだ目玉からの視線が岩元・雫(亡の月・f31282)の肌に刺さる。幾重にも重なったフリルスカートからひらりと尾鰭がのぞけば、その度に歓声が黄色味を帯びる。向けられる声には不気味さしか感じないけれど、胸元の橄欖石が目に入ればほんの少し心が安らいだ。纏った衣装は、円が選んでくれたうつくしい鎧だ。初めは訝しんだドレス姿も、こうして衆目に晒されている今では、幾重にも守られてる気分になれた。そのまま鳥籠へと籠められると、雫が橄欖石に触れてじっと時が来るのを――刃が膚を裂く刻を、耐える様に待った。その姿に満足したのか、伯爵が運ばれてくる皿を見てにまりと嗤う。並ぶ料理は甘鯛のポワレ。パリッと焼かれた皮目の香ばしい色合いも、香ばしい香りも、普通なら食欲をそそるものだろう。然し料理の趣旨を理解してる円には、ただ吐き気を覚える醜悪なものにしか見えない。けれども、雫の想いを無碍にされないためには、出来る事をするまでと覚悟をくくって、必要なことを為そうと取り繕って伯爵に歩み寄る。
「ご機嫌よう!伯爵さま。人魚はお気に召しましたか」
「ああ、悪くないな。中々に見ものだ。…貴様が運んできたのか?」
「ええ!この日の為のとっておきですとも。ですからぜひ貴方に召し上がっていただく瞬間を、近くにて拝見したいものです」
「ハッ…良いだろう。そこで存分に楽しむがいい」
 示された隣の席に座り、円が心配を簸た隠した瞳で鳥籠を見つめる。ようやく整った食事の席に、喜々として伯爵がナイフを振り上げるのが見えて、雫が睫を震わせる――ああ、もうすぐだ。本当は、死した身が未だ赫い血を流す事を、此様な形で知りたく等無かった。弱弱しい脈が、まだ呪いも降りかからぬうちから鈍い痛みを訴える。此れから、もっと手酷い痛苦を抱くのに。

――此の身は、未だ痛苦を、知らない。
知らぬ侭に、溺れて死んで。
繰り返し見る悪夢の中ですら
苦楽より、恐怖の記憶が色濃く刻まれる。

 だから、知らなかった。しらなかったのだ。スプーンで臓腑を掬われた時の不快感も、ナイフで肉を抉られる熱さと痛みを。そして何よりも、変成してしまった喉が美しい聲以外を上げることを。
「あ゛ぐっ…いだ、う…あ゛あ゛あ゛あ゛―――!!!」
 絞り出す様な――濁音塗れの悲鳴を上げることも!痛むことを気遣う余裕もなく、ただただ泡の如く罅割れた歌が零れていく。そして心さえも鱗がはがれたように、むき出しの心地がした。それは円と目が合った時、思わず手を伸ばしてしまう程に。――おれが、俺の侭、弱い侭で居る事を知らしめられる。そしてその姿を見つめる円もまた、手を取れないもどかしさを覚えて、煮え滾る想いごと噛み潰す。その内なる葛藤を知ってか知らずか、伯爵が執事に命じて料理を取り分けさせて、円の前に寄越す。
「せっかくだ、一口分けてやろう。――食べたいだろう?」
「…ええ、勿論。有難く頂戴しますね!」
 ああ、今すぐこの皿を叩きつけてやれば幾分かスッキリするだろうに。それすらままならず、仕方なく円が軽く掬って口付ける振りをする。――せめて今だけは、苦痛が和らぐように、と託した橄欖石へと願いながら。その想いが届いたのか、伯爵が最後の一口を食べ終えると同時に、鳥籠の中でふつりと意識を手放した雫は、ほんの少しだけ安堵したような表情に見えた。
「…最後までは持ったようだな。元より珍しい食材だ、暫し愉しむとしようじゃないか。…ソレは控えの間に」
「畏まりました」
 ご満悦といった表情の伯爵が、手早く執事に命令し、ついで円へと顔を向ける。
「良い献上品だった。褒美代わりに、残りの時間も愉しんでいくがいい」
「…お言葉に甘えまして。――では」
 席を下がり、人波に紛れて、ようやく張り付けたような笑顔がはがれていく。瞬間、ずっと裡に目まぐるしく渦巻いていた嫌悪が、憤怒が、悲哀が溢れた気がして。

――は、今のわたしは、どんな顔をしてるのやら。

 知りたくもない答えを前に、円が唯去りゆく雫の背を静かに見送った。

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夜色の人魚
→控えの間へ連れて行くように

人魚の紹介人
→そのまま会場にてお過ごしいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
👗🍽

贄として具された晩餐会
嗜虐を秘めた客人たちの視線
そして……苦悩するヴォルフの姿

彼が料理を口にする度に襲い掛かる激痛と狂気に必死で耐える
これまでだって今以上の苦痛を、悪意を、屈辱を耐え抜いて来たのだ
お前たちのような外道を倒すために

でも、きっとわたくし以上に、本当に辛いのはヴォルフ

歌声が自慢の触れ込みで売られたのだ
伯爵に促されるまま歌う【不屈の歌】
少しでも苦痛を和らげ、潜入済みの猟兵たちやヴォルフに
再起のための癒しと鼓舞を敵に気取られぬよう巡らせながら

伯爵の不興を買ったヴォルフが屠殺部屋に送られるのを見届けた後
ふっつりと意識を失うように倒れ伏す
大丈夫
いつだって、わたくしたちはひとつ


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼

ヘルガを見送った後、俺もまた正装に着替えさせられ、
客人として晩餐会に招かれる
大方「味見役」として、彼女共々見世物にするつもりなのだろう
気に食わないが、これも任務のために必要なことだ

目の前には美しく着飾られたヘルガ
促されるまま料理を口にする度に悶え苦しむ彼女
恐らく対策はしているだろうが、それでも…

俺は何をしている?
彼女を守るのが夫の務めではないのか?

やめろ…やめてくれ!
彼女を返してくれ!

涙と共に声の限りに叫ぶ
ギリギリのところで狂気を堪えながら

伯爵の冷たい視線を感じる
恐らく俺も彼女と共に「屠殺部屋」に送られることになるだろう
だが、それでいい
最も救わねばならない人々は、きっとそこにいるのだから



 城に入ってまず通されたのは、衣装室だった。殆どが着の身着のまま売られる食材たちを無理やり着飾る為の、豪奢な衣服の並ぶ場所。狩人を装っていた服を此処で着替える様に示されて、ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が不承不承袖を通す。仕立ての良い黒の三揃えにきちんと髪を結わえれば、そこにいるのは誰もが“招待客”と認める美丈夫の姿。そうして装ってから招かれる先は、絢爛豪華な晩餐会のホール。下衆な好奇の目にさらされながら執事に促され、座るよう命じられたのは伯爵にほど近い席。そして目の前に置かれた鳥籠の中には――当然の様に最愛の妻、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の姿があった。まるで湖に踊る白鳥の様に、白い羽飾りと青い宝石をあしらったドレスはヘルガのかんばせをより美しく見せてくれる。例えその顔が贄として遇された晩餐会に、嗜虐を秘めた客人たちの視線に、そして何より苦悩を浮かべた夫の姿を目にして、憐憫に満ちていても。
 これはある意味予想通りの配置だ。最愛の妻を口にする味見役の夫。鳥籠の中で苦しむ小鳥に、食すたび苦悶を浮かべる男。どちらも同時に楽しめるのだから、奴らには都合のいい見世物だ。どうにも気に食わないが、これも任務のために必要なことだと言い聞かせて、ヴォルフガングが料理の運ばれるを待つ。
「さぁ、召し上がれ。貴様たちの為に用意した一品だ。――残さず食べ給えよ?」
 クックッ、と喉で笑いながら、伯爵が大仰に手を伸べて皿を指さす。

供されるのは、矢車菊を飾ったブッファーラ――真っ白な丸いチーズだ。

 とろりと掛けられたオリーブオイルの緑に、花の青と白いチーズ。たった三色で構成された皿に、ヴォルフガングが恐る恐るナイフをつぷり、と突き刺す。
「――っ、う、ああっ…!!」
 途端、零れたのは真っ赤な液体とヘルガの悲鳴。ぶよぶよとした柔らかいチーズを割って、内を満たしていたトマトのポタージュが溢れ出す様は、耳に届く苦悶も相まってまるで躰を切り開いたかのような感覚を刷り込まれる。余りの悪趣味にギリリ、と音が鳴るほど歯を食いしばるヴォルフガングに、実際に苦痛を与えられたヘルガが自らの肩を抱いて耐える。

――どれ程の痛みを前にしたって、私は屈しない。
これまでだって今以上の苦痛を、悪意を、屈辱を耐え抜いて来たのだ。
お前たちのような外道を倒すために。

 今こうしてヘルガが囚われることに甘んじているのは、ひとえに囚われた人々の救助のため。そしてその先に見据えた、享楽に酔うものを刈り取る為。そう思えば自らの身に降る苦痛は何の障害にもならない。けれど。

――でも、きっと今は。
わたくし以上に、本当に辛いのは。
ヴォルフ、あなたね。

 俯き、拳を震わせ、それでもヘルガと同じ目的を果たすために料理を口へと運ぶヴォルフガング。ナイフが当たるたび、咀嚼する度にどれ程の痛みがヘルガの体を蝕んでも、夫の苦悶の表情の方がずっと心を苛まれた。だから、ほんの少しでもその苦痛から解放してやりたくて、ヘルガが悲鳴を呑み込みそっと口を開く。

――やさしく、力強い、不屈の歌。

 会場にいるだろう、志同じくする者たちへ。今にも心折れそうになっている、食材と呼ばれる人々へ。そして何よりも、最愛の夫へ。明けぬ夜はないことを、止まぬ雨はないことを、ヘルガが唄に乗せて届ける。その声を聞き届けたヴォルフガングが、一瞬安堵の表情を浮かべてから、意を決して立ち上がる。
「やめろ…やめろやめろ、やめてくれ!もうたくさんだ!彼女を返してくれ!」
 ガチャン、とカトラリーを床へ投げ捨てて、力の限り叫ぶ。ヘルガの鼓舞を受けたことと、伯爵の不興を買う演技だと言い聞かせてかろうじで狂気は押し留められた。然し嘘偽りない本心から発せられる言葉は、会場を震わせるほどに凄絶な迫力を纏っていた。それは、伯爵が青筋を立てて激怒するほどに。
「…私に、否というのか?妻を売ったのは貴様で、最後の別れをと気遣ってやったのも私だというのに。――やめろと命じるのか!」
 ダン!とテーブルに拳を振り下ろし、伯爵が自分勝手な怒りを口にする。
「もう良い…不愉快だ。こいつは屠殺部屋へ送ってしまえ!」
「畏まりました、伯爵様。…おい、これを運べ!」
 呼ばれた執事が部下へと命じて、ヴォルフガングを数名が取り押さえる。抵抗の意思なく従う様子は、周囲に伯爵の怒りに心が萎えたからだと映っただろう。けれど本当は、計画通りに運んだからに他ならない。――屠殺部屋送り、それでいい。最も救わねばならない人々は、きっとそこにいるのだから。ただふと心配が募って、引きずられていく一瞬に、ヴォルフガングが未だ籠の中に囚われたヘルガへと視線を送る。それに気づいたヘルガが返すのは、小さな頷き。

――大丈夫。
いつだって、わたくしたちはひとつ。

 そうしてヘルガもまた夫の後を追うべく、ふつりと意識を失うふりをした。

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狩人の夫と、その妻。
→どちらも屠殺部屋へ送り込む様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イーヴォ・レフラ
十雉(f23050)と。
味見役→控えの間

十雉との縁は印象付けておいたから、もう一押しだな。
こんばんは、伯爵。
今回納品した食材に大切な友達がいるんだ、
最後の別れを近くでしたい……お願い出来ないだろうか?
その後で俺の出来る事であれば何でもする。

食材の十雉の事は心配だ。
友達が苦しむ姿を見るのは
心が掻き毟られるような気さえするけど、
十雉の方が何倍も辛いのだから
俺も自分の仕事はしないとな。

料理に手をつける前にどうしたら痛みが減るか考える。
考えても分からないかもしれないが……。
手が震えても昔抉られた右目の奥が痛むのも
気のせいと思っておく。

控えの間に行く途中で可能なら、
UCのドローンをいくつか置いていこう。


宵雛花・十雉
イーヴォ(f23028)と
👗 🍽

イーヴォと『控えの間』で落ち合おうって作戦を立てたんだ
伯爵に気に入られるように頑張らないと
ひ、1人だって大丈夫だよ

皿に乗せられてテーブルに運ばれれば身体が震える
情けないけど、これは演技じゃなくて本物だ
今まで食材にされた人たちも、きっと凄く怖かったんだろうな

演じるまでもなく、悲鳴も涙も溢れそうになるけれど
それを我慢せずにそのまま見せる

うぅ、痛い…血がこんなに
なんでオレがこんな目に…
助けて、お父さん

泣いて、叫んで、神に祈って

痛みと血の匂いで気持ち悪い
けど頑張らなきゃ
気絶するなら全て終わってからにしろ
そう心の中で自分を鼓舞しながら

ああ、オレってどんな味がするんだろ



 ホールの雰囲気をくるりと見て回ってから、イーヴォ・レフラ(エレミータ・f23028)が伯爵の様子を観察する。既に何皿か食べ終えて、特に先の食材は気にったのか機嫌は良さそうに見える。そして空になった鳥籠に次に篭められようとしているのは、宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の姿。黒い三つ揃えに何処かオリエンタルな柄の入った橙のローブを羽織らされ、顔に怯えた色を乗せたままガチャン、と扉を閉められた。遠くに運ばれてくる皿も見える。
(十雉との縁は印象付けておいたから、もう一押しだな)
 であれば畳みかけるにはいいタイミングだろう、とイーヴォがするりと伯爵のテーブルに歩み寄って笑みを浮かべる
「こんばんは、伯爵。」
「…ああ、招待の客か。私に何か用かね」
「今運ばれてきたのは、俺が今回納品した食材で…大切な友達なんだ。最後の別れを近くでしたい……お願い出来ないだろうか?」
「ハッ、せっかくの皿を横取りしたいというわけか?図々しいな」
「…代わりに、その後で俺の出来る事であれば何でもする。」
「…フン、その言葉を忘れるなよ。大事だというなら譲ってやろう。但ししっかり良い声で啼かせてくれ給えよ?」
 最初は渋ったものの、出された条件を前に伯爵が皿をイーヴォへと譲った。そのやり取りを籠越しに見て、十雉がぎゅっと拳を握る。
(イーヴォと『控えの間』で落ち合おうって作戦を立てたんだ。伯爵に気に入られるように頑張らないと…ひ、1人だって大丈夫だよ)
 そうやって自身を励ましてみても、実際にテーブルに皿が運ばれてくるのを見ると自然と身体が震えてしまう。情けないけれど、これは演技じゃなくて本物だ。――でも、それなら。
(今まで食材にされた人たちも、きっと凄く怖かったんだろうな)
 今日の食材にも、猟兵以外の人間はいた。そして既に幾人もが食材役を全うできず、死んでいることも語られている。ここで止めなければいっそう被害が増える、と思えばさっきよりは少しだけ耐えられる気がして、十雉が顔を上げる。イーヴォの前に置かれた料理はスープ・ド・ポワソン。深紅になるまで煮詰めたスープに、幾つもの魚介を沈めた贅沢な品だ。普段なら美味しそうだと思えるそれも、今は十雉の負担を推し量るばかりで凡そ感想は浮かばない。だが促す様に突き刺さる伯爵の視線を前に、憂いを滲ませたままイーヴォがスプーンでスープを掬う。
「――い、痛っ…!!」
 途端、痺れるよな痛みが十雉の全身を奔る。演じるまでもなく悲鳴も涙も溢れそうになるけれど、それを我慢せずにそのまま見せる。きっと、伯爵が望んでいるのはそうした態度の筈だから。
「うぅ、痛い…!血が、こんなに…」
 一口、また一口とスープが食べ進めてられていくと、今度はナイフで切られた箇所からぽたぽたと血が溢れて服を赤く染めていく。その姿に思わずイーヴォがスプーンをピタリと止めて、ギリリと歯を食いしばる。友達が苦しむ姿を見るのは、心が掻き毟られるような気さえする。でもそうして痛みに耐えている十雉の方が何倍も辛いのだから、自らの仕事はこなさねばと言い聞かせて、またスプーンを動かす。
「…ああ、嫌だっ…いたい、いたい…やめて…!」
 痛みの滲む十雉の声に、どうしたら痛みが減るか考える――回数を減らす為、成すべく多く掬って口に運ぶ。余り咀嚼はせずに、素早く飲み下す。それで本当にそれで効果があるのかは分からないが、少しでもマシであるよう祈ってイーヴォが手を動かす。手が震えても、昔抉られた右目の奥が痛むのも、気のせいと思いこませながら。
「なんでオレがこんな目に…助けて、お父さん」
 泣いて、叫んで、神に祈って。もう少しで空になる皿を前に、ぐらりと視界が歪んだ気がして十雉が首を振って眩暈を逃がす。
(痛みと血の匂いで気持ち悪い…けど頑張らなきゃ。気絶するなら全て終わってからにしろ)
 心の中で自分を鼓舞しながら、イーヴォの最後の一口を見届けて、ふと思う。

――ああ、オレってどんな味がするんだろ。

 食べ終えたという安堵からか、十雉が一瞬気を抜いてずるり、と鳥籠にもたれかかる。かろうじで意識は保っていたが、体に力が入らずぐったりとする。その様子にフン、と伯爵が鼻を鳴らして評価を下す。
「…ふむ、なかなか良い啼き様だったな。食べ終えるまで持ったのも悪くない。まだ使えそうだ、コレは控えの間に連れていけ」
「畏まりました。」
「それと味見役の貴様。」
「…はい、お呼びでしょうか。」
「皿を譲れば何でもすると言ったな?なら、明日は貴様があの友とやらに食されると良い。…文句はないはずだな?」
 意地悪くニヤリと嗤う伯爵に、イーヴォが内心では軽蔑を抱きながらも、上辺では戸惑ったような演技を見せる。そのまま控えの間へ連れて行こうとする執事には抵抗せず、項垂れた様子で従った。部屋へ向かう途中の道すがらには、ひっそりとドローンを飛ばし、内部の様子を探らせる。――今は未だ偵察だけだ。十雉も部屋に連れていかれ、他の人の安否も確認がいる。然し手をこまねいているだけの時間は終わった。十雉の苦痛を代価に、必要な条件は十分に整えられたのだから。

――共に目論見通りの部屋へ向かいながら、宴の終わりを静かに待ち望んだ。

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白髪の男と緑髪の男
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

丸越・梓
👗🍽
アドリブ、マスタリング歓迎

_

……俺は生まれつき、五感が鋭敏だった
聴こえてきた声を正確に聞き分け
瞳に眩く鋭い光が宿る
それは決して恐怖の為ではない
伯爵や客人らへの怒りの為でもない
屠殺などという
物騒な言葉が使われた部屋に送られる人たちを
絶対に殺させたりしないという覚悟の為に

やがて俺は伯爵の"皿"へ
痛覚も人一倍敏感故に
与えられる一つ一つが激痛となって精神を蝕む
脂汗を滲ませ
知らず艶が滲みながらも
奥歯が砕けそうなほど噛み締め
悲鳴はあげてやらず
強い意志を秘めた凛々の光灯す瞳は曇ることなく
狙い通りに屠殺部屋へ捨てられれば上々
伯爵側の人間が去ったことを確認した後
すぐにこの部屋にいる人たちの保護とケアを



――梓は生まれつき、五感が鋭敏だった。

 視線が肌を撫ぜる感触で、それが誰か分かるほどに。聴こえてきた声を、正確に聞き分けられるほどに。漆黒の三つ揃えに肩から羽織るマントは、裾に蝶の刺繍が躍る優美なもの。着飾った姿で見世物の様にホールを横切らされる中、丸越・梓(零の魔王・f31127)が耳をすませば趣味の悪い会話が届く。

――あら、珍しいタイプの子ね。
――本当に。ああして連れられてるからには食材…よね?
――ハハッ、伯爵もたまには歯ごたえのあるモノが食べたいんだろう。
――長く持つと良いわね。とっとと屠殺部屋行きなんてつまらないわ。

 届く言葉に、梓の瞳に眩く鋭い光が宿る。それは決して恐怖の為ではない。伯爵や客人らへの怒りの為でもない。屠殺などという物騒な部屋に送られる人たちが居ることを知って尚、絶対に殺させたりしないという覚悟の為のひかりだった。だがそんな梓の秘めたる思いなど知る由もなく、鳥籠に篭められたのを上機嫌に眺めた伯爵の前に、皿が運ばれていく。供される料理はフォアグラと牛肉のロッシーニ。まるで血のように赤く滴るソースを掬い上げながら、容赦なくナイフが入れられる。
「―――ッ!!!」
 その途端、梓の躰を激痛が駆け巡った。ただでさえ常人を廃人にするほどの痛み。それが痛覚が人一倍敏感なために、精神すら蝕むほどに増幅されて全身を苛んだ。それでも奥歯が砕けそうなほどに噛みしめて、悲鳴は一つとて漏らさない。普段なら啼かない食材などすぐにも屠殺部屋に送る伯爵が、暫し確かめる様に料理を食べ進めたのは――その苦痛に喘ぐ表情に宿る、艶めいた色のせいだろうか。脂汗を滲ませながらも、伏せる瞳の作る影は人の目を奪い、暫し観客からも溜息が零れた。だがそれも半分以上食しても一声もあげない梓に遂にしびれを切らし、蔑んだような声がかかる。
「…矢張りどうにも頑強なようだな。素直に折れれば生かしてやったものを、悲鳴の一つも無いようでは。…もういい、興覚めだ。ソレは棄てろ」
 飽いたおもちゃを投げる様に、伯爵がフォークをカチャンと音を立てて皿の上に落とす。未だ痛みの残る躰を押さえながらも、望んだ成果には人知れず梓が胸をなでおろす。この先どれ程手荒に扱われようと、まず優先すべきは部屋にいる傷ついただろう人たちだ。手厚い救助を施した上で、きっとまたここに戻ってくると誓い、鳥籠にずるりと寄りかかる。

――そして今嗤う者共は恐怖をもって知るのだろう。梓を示すもう一つの“名”を。


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黒髪長身の男
→屠殺部屋にて処分するよう

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大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

絶対に守ると誓った愛するきみなのに

演技でもサヨの涙に心が抉られる
叫び声なんて聴きたくない!
そんな世界は滅ぼしてしまえと思う程に
怒りも限界を超えれば、花冷えの凪のようだ

その桜は私が育て上げた
一口目は私に頂けないだろうか
どう味わえば最も美味であるかを私だけが知っているからと
味見役に名乗り出る

美しい私の櫻
…私の桜は咲いたかい?
ごめんねなんて言わない
きみが悪い
お仕置だよ
密やかに耳を噛んで告げ

喰らうなら首…喉だ
柔肌に歯を立てて、首輪を刻むように疵を遺す
夢にまでみた桜色を一欠片
真紅と共に転がして味わい
滴を舌で掬い舐めて

わらう

─私のものだ

美味しいよ
この世の何よりも
堪らなく凡てが欲しくなるほどおいしいよ


誘名・櫻宵
🌸神櫻
👗

カムイは大丈夫かしら
死にそうな顔してたもの
先ずは私ね
美味しそうに着飾らせられたものだわ

料理されるなら甘く蕩けるデザートがいい
死ぬ程甘く蕩け堕ちる愛の味に
魂ごと奪われるような

はらはらと桜雨のように涙を零し怯え震えて
この世の終わりのような顔をして叫びを歌いましょう
…しってるわ
私に喰らわれる前のもの達がこういう顔をしていた

カムイ!
愛しい者に縋る哀切の叫び上げあなたを乞う

食べられるならあなたがいい
口付けするように牙の無い歯が突き立てられたのは、首…喉

支配慾の現れが心地よい
溢れる血も
痛みすらも甘美

怯えと絶望の演技に掠れた悲鳴に歓喜が混じるのをやっと我慢する

私は美味しい?
ふふ
永遠に刻んであげる



――絶対に守ると誓った、愛するきみなのに。

 煌びやかさが鼻につく、晩餐会の会場にひとり立つ。表面上はなんの感情もうかがえない凪のようで、その実男は――朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)は、怒っていたのだ。これから起こるだろうことに、味合わされるだろう心地に、どうしようもないほどに。

――演技でも、サヨの涙など見れば心が抉られる。
ましてや叫び声なんて聴きたくない!

 いっそ、そんな世界は滅ぼしてしまえと思う程に苛烈な怒り。そこまでの煮え滾る想いに至って初めて、怒りが限界を超えると花冷えの凪のような心地になると知った。そうして暫し耐えて待っていると人波が割れて、見慣れた愛しい人の顔が見えた。桜翼が映えるようようぱっくりと背の空いた黒いドレスはずるりと床を擦り、腰に巻かれた桜刺繍のリボンはまるで帯のような意匠。和洋合わせたそれを着こなし執事に手を引かれながら、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)がはらりと目を伏せる。
(カムイは大丈夫かしら…死にそうな顔してたもの)
 鳥籠へと籠められながら、内心で想うのはカムイのことばかり。それでも怯えた姫の振りは続けて、はらはらと桜雨のように涙を零す。

――…しってるわ。
私に喰らわれる前のもの達が、こういう顔をしていた。

 望んだわけでなくとも、幾度も口にした人々の顔。親しみ、慈しみ、共に生きた者に喰われる悲しみの瞬間。この場で再現するに容易かったのはきっと、それが脳裏にこびりついて離れないからだ。その泣き濡れた姿に、観客も伯爵も楽しそうに嗤う中で、カムイだけは歯を食いしばりながら耐えていた。やがて伯爵の前に運ばれてくる皿は、たっぷりと桜色のショコラを絡めたルリジューズ。甘く蕩けそうな香りのそれに満足そうに頷いて、いざ伯爵がカトラリーを手にしようとしたところで――カムイが静かに止めに入った。
「伯爵、その桜は私が育て上げた。だから…一口目は、私に頂けないだろうか」
「ああ、貴様があの珍しいドラゴンを。…しかも余程縁があると見えるな」
 そういって伯爵がちらりと鳥籠を見ると、涙を零しながらカムイへひたと視線を寄せる櫻宵の姿が映る。
「…ハッ、なんなら一口と言わずこの皿ごと譲ってやってもいい。但し、私が求めるものは…分かるな?」
「噫…分かっている。どう味わえば最も美味であるかを、私だけが知っているから」
 悲鳴を供せ、と暗に求められてカムイが了承の意を返す。そうして席へ着いて皿と対峙すれば、櫻宵から切なる声が上がる。
「カムイ!」
「美しい私の櫻…私の桜は咲いたかい?」
 愛しい者に縋る哀切の叫び上げ乞う巫女に、神が言葉なく唇の形だけで告げる。

――“これは、お仕置だよ。”

 ざくり、とナイフを甘露へ突き刺す。その瞬間、櫻宵から痛みの滲む悲鳴が聞こえた。けれどカムイに謝るつもりは微塵もない。こんな想いをさせるきみが悪いと、知らしめるように小さく切り取って口へと運ぶ。ショコラの層を舌で味わい、焼き上げられた薄皮を食み、零れ出る真っ赤なベリーソースを飲み下す。一連の動きは呪いを伝って首の柔肌に舌を這わせ、ぶつりと噛み千切り、血を啜る痛みと感覚へ擦り変えられる。それの――なんと、甘美な事か。わたしのものだと笑い櫻宵を口にする、カムイの支配慾がこんなにも心地良い。今にも溢れそうに熱く巡る血も、当たられる痛みすらも、何もかもが酔いそうなほどに甘い。それは最早怯えと絶望の演技として零す掠れた悲鳴に、歓喜が混じるのを我慢するのが難しいほど。カムイもまた血の混じる皿を食べ進めるほどに、酒精などないはずの甘露へ、その桜色に酔いしれていく。そして一滴と残さず食べ終えた末に、十分な悲鳴を上げた櫻宵とその良き番となると判じられたカムイを、控えの間に連れていくよう伯爵が命令を下す。鳥籠から出された瞬間、席から引きずりおろされた刹那。連れられ行く僅かな間に、吐息も混じる近さで目があえば――どちらからともなく、とろけそうにあまい笑みが向けられる。
「カムイ、私は美味しかった?」
「美味しいよ、サヨ。この世の何よりも、堪らなく凡てが欲しくなるほど」
「ふふ、なら――永遠に刻んであげる」
 喰んで、飲み干して、いっそ他が何も食べられなるくらいに。舌に憶えた甘露に溺惑するように。互いが互いの鳥籠となるよう、引き寄せ捕らえて――永遠に、離さない。

――演目に送られる喝采を浴びながら、ふたりはただ、変わらぬ愛を誓い合った。

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桜龍の姫と味見役の赤髪の青年
→控えの間へ連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エコー・クラストフ
👗🍽
【BAD】
はぁ……控えの間に行く、か……演技にはあまり自信がないんだけどね
とはいえこれも経験だ。試しにやってみようか

えーと、エマの真似エマの真似……
い、痛い! やめて! 誰か助けて! あああ……!

……とかこんな感じかな。いや実際間違いなく痛いしムカつくんだけど、ホントに痛い時ってあんまり声を上げないタチだしな……

も、もう許してください……帰らせてください……
と、両手で目を覆う。これなら泣いているふうにも見えるし、自分の目も隠せる
ボクの目はあまり今回のオブリビオンには見せたくない。ボクはオブリビオン相手に殺意以外の目なんか向けられないからな

頃合いを見て倒れたフリをして控えの間に運ばせよう


ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
フツーにムカつく
演技とはいえエコーの可愛いところ
見せないといけないなんてね
【UNCANNYVALLEY】――使い魔たちにゃ、乱戦想定で会場内に潜んでもらう
エコーに行って欲しいのは控え室
まだ元気のあるやつらの方が着いてこれる

さて、エコー。打ち合わせ通りだ
俺がよくお前と戦闘訓練して情けねえ声上げてんの思い出して
真似っ子してみな
海色の瞳を見た時にピンと来た
イタリアンがいいよなァって
あら、素敵なカトラリーだこと
任せてよ伯爵
俺こう見えて「お上手」なんだ

腸を巻きとるように
口の中で腕を噛みちぎるように
でも丁寧に、味わうように優しく
ど?伯爵
上手って言ったでしょ♡

蛇一匹、エコーの懐にお届けだ
頼むぜ相棒



(――フツーにムカつく)
 思わず舌打ちしそうになって、ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)――エマ・クラストフがふるりと首を振る。今いるここは敵の本拠地、晩餐会の浮かれたパーティームードとはいえ、用心は必要だ。けど、矢張り内心ではついつい腐ってしまう。
(演技とはいえエコーの可愛いところ、見せないといけないなんてね)
 愛しい人の愛らしい一面は、誰だって自分だけの秘密にしたいもの。それをこんな衆目に晒さないといけないのだから、面白いはずもない。その腹いせ、というわけではないが唇の形だけで“おいで”と呼び寄せるのは【UNCANNYVALLEY】――ユーベルコードで招かれる蝙蝠翼持つ多頭蛇の使い魔たち。この後一番の乱戦が想定される会場への仕込みとして、テーブルの下へ、柱の影へ、とあちこちに潜んでもらう。そんな工作の最中、ふと会場のドアが開いたかと思うとエマが軽く口笛をヒュウ、と吹く。すらりとした白の三つ揃えに、水面思わす水色のヴェールを被せられたエコー・クラストフ(死海より・f27542)が現れたたからだ。
(はぁ……控えの間に行く、か……演技にはあまり自信がないんだけどね)
 妻の美しい装いに少しテンションが上がったエマとは対照的に、執事に鳥籠へと籠められるエコーの顔は憂いに満ちている。これから味わうだろう痛みも煩わしいが、これほどの人前で演技を披露するとなると、その方が如何にも気が重かった。最も、今この場においては物憂げな表情のほうが似合うのは幸いだが。そしてガチャン、と鳥籠に鍵が掛かったと同時にエマに執事から声がかけられ、伯爵にほど近いテーブルへと案内をされる。
「アレは貴様がわざわざ予約した皿だろう?料理は良いモノを作らせたのだから、有難く口にし給えよ」
「あら、素敵なカトラリーだこと。それにこの品…流石伯爵、わかってんじゃん」
 置かれたのは真っ青な皿に、新鮮な白身魚にビネガーソースを垂らしたカルパッチョ。青と白のコントラストは美しく、まるで波濤を思わせた。
「海色の瞳を見た時にピンと来た。イタリアンがいいよなァって」
 一度席を立ち、鳥籠に歩み寄ってエコーの瞳を覗き見る。その隙に僅かに伯爵からの視線が切れるよう位置取りをし、エマが語り掛けた。
(さて、エコー。打ち合わせ通りだ。俺がよくお前と戦闘訓練して情けねえ声上げてんの思い出して、真似っ子してみな)
 ぽそりと零されるヒントを聞いて、エコーがため息交じりに目を伏せて回想する。
(えーと、エマの真似エマの真似……)
 記憶を引き出してる間にエマがテーブルへと戻り、皿を前に改めてカトラリーを手にする。
「さぁ、約束だ。存分に啼き声を聞かせろ」
「任せてよ伯爵、俺こう見えて――「お上手」なんだ」
 にやりと得意げな笑みで、ナイフがざっくりと料理を切り刻む。同時に襲ってきた鋭い痛みには――大ぶりな攻撃はフェイントかと思いきや、半歩引いただけであっさり転がったときの声を真似て、エコーが叫ぶ。
「い、痛い!」
 腸を巻きとるようにフォークを回され、胎の底から沸き上がる痛みは――拳が当たったと油断した隙をついて、地面に投げ落としたときの嘆きとか。
「やめて!」
 口の中で腕を噛みちぎるようにしながらも丁寧に、味わうように優しく咀嚼する断続的な苦痛は――組み伏せから逃れられず、じたばたと足掻くときの喚きを。
「誰か助けて!あああ……!」
(……とか、こんな感じかな。)
 表面上は痛みに苦しむ様子を見せながら、内心は冷静に気にいられるだろう態度を選び取る。いや実際にも間違いなく痛いしムカつきもしているが、エコー自身本当に痛い時にはあんまり声を上げないタチなので、どうしても繕う必要がある。あとでエマに何か言われそうな気もしたが、それはそれとして置いておく。
「も、もう許してください……帰らせてください……」
 辛さの余りに、といった風を装ってエコーが両手で目を覆う。これなら泣いているふうに見みせながら、周囲から上手く瞳を隠せる。今浮かんでいるだろう眼差しは、あまりオブリビオンには見られたくはない。

――ボクはオブリビオン相手に殺意以外の目なんか、向けられないからな。

 そうやって思いごと隠したエコーの意図を、エマだけは密かに正確に読み取って、ゆっくりと皿の上を平らげる。ソースの一滴も残さずぺろりと口の端を舐めれば、機を窺っていたエコーがここぞとばかりに気絶した振りで鳥籠に寄り掛かる。その一瞬の隙に、エコーの袖口へと蛇が忍び込んだのは見て見ぬふりをして、エマが猫なで声で伯爵に話しかける。
「ど?伯爵。上手って言ったでしょ♡」
「…ふん。悪くはない、といったところだな。食べ終えるまでは気絶もしなかったようだし…いいだろう、ソレは控えの間に連れていけ」
「畏まりました。」
「貴様はそのまま好きに遊んでいると良い。何なら明日も招いてやるから、もう一度アレを口にするか?」
「あっは、素敵なお誘い。でも残念、明日は無理だなァ」
 
――明日には骸の海行きだと知らぬ伯爵に、エマが嗤って席を後にした。

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海色の瞳の少年
→控えの間に連れて行くように

黒髪の少女
→そのまま会場でお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蘭・八重
【比華】

なゆちゃんの手を取ったまま
伯爵の方へ

伯爵様、ご機嫌麗く
素敵な晩餐会の御招待有り難う御座います
わたくしも妹もこの日を楽しみにしておりましたわ

素敵な伯爵様のご厚意に感謝を

ふふっ、なゆちゃん
このお料理はとても美味しそうね

彼方此方から聴こえる悲鳴や罵倒など気にする事なく
口に運んでいく

嗚呼、真っ赤に染まる一皿
心が震える程美味しいわ

あら、なゆちゃんは飲み物だけなのね
貴女の猛毒なら安心だわ
大丈夫よ

なゆちゃんとの話を聴きながら瞳は違う方へ
えぇ、食事の後は殿方との戯れが待っていますもの

えぇ、とても楽しみね


蘭・七結
【比華】

あなたに手を引かれるまま
然れど己が脚にて歩んでゆくわ

御機嫌よう、伯爵さま
今宵の饗宴を心待ちにしておりました
愉悦に盈ちるひと時
嗚呼、愉しみでしてよ

優雅な一礼を披露し終えて
踵を返して往きましょう

わたしは飲みものだけで結構よ
惨い宴の主役
血混じりの食事では無いけれど
食事は帰ってからいただきたい

葡萄や柘榴の果汁はあるかしら
おひとつ、いただいても?
毒は――入っていないと思うわ

だいじょうぶ
わたしが猛毒にひずむことは無いもの
あねさまも、どうか御安心なさって
毒味ならば任せてちょうだいな

この時間を愉しむフリをしつつ
客間の広さと、人物の配置を確認しておきましょう
何方と一刃を交えようかしらね

ふふ、たのしみだわ



――妹の手を取り導いて、姉とふたり並び歩く。

 黒と赤に互いを染めて、見つめ合えば花の綻ぶように微笑み交わす。誰もが溜息を零し見つめる中、麗しい姉妹の妹の方――蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)が、テーブルに向かう伯爵へと声をかける。
「御機嫌よう、伯爵さま。今宵の饗宴を心待ちにしておりました」
 喜色を声へと乗せて、揺れるスカートを抓んでカーテシーをして見せる。
「伯爵様、ご機嫌麗く。素敵な晩餐会の御招待有り難う御座います。わたくしも妹もこの日を楽しみにしておりましたわ」
 妹のあいさつに続き姉――蘭・八重(緋毒薔薇ノ魔女・f02896)もまた淑やかさに期待の眼差しを込め、伯爵へと微笑みかける。主催する宴を心待ちにしていた、と誉めそやせば悪い気はしないもので、返される挨拶も傲慢さの伺える伯爵にしては至極丁寧なものだった。
「ようこそ、美しい方々。今宵もとびきりの宴になろう。どうぞ心ゆくまで楽しまれると良い」
「愉悦に盈ちるひと時…嗚呼、愉しみでしてよ」
「ええ、素敵な伯爵様のご厚意に感謝を」
 卒なく挨拶を済ませて優雅な一礼を披露し終えたなら、踵を返してホールへと足取り軽く進んで往く。鳥籠に好奇の瞳を寄せる客も、ダンスの相手を申し込みに来る誰かも、剥製を眺め嗤う姿も横目にすり抜けて、隅の空いた空間へとふたりが滑り込む。目につくテーブルにも招待客用に料理が並べられ、そのどれもが贅を尽くした彩りをしていた。
「ふふっ、なゆちゃん。このお料理はとても美味しそうね」
 そのうちの一つ、薔薇の形に焼き上げた真っ赤な林檎のタルトを指さして、八重が嬉しそうに笑って魅せる。その笑みに引き寄せられたように給仕係が皿へとタルトを取り分け八重へと差し出し、七結にも同じように供しようとしたところで、首を振って止められた。
「わたしは飲みものだけで結構よ。葡萄や柘榴の果汁はあるかしら」
「葡萄ならございますよ。」
「ならそれをおひとつ、いただいても?」
「勿論。直ぐにお持ち致します」
 言葉通りすぐに取って返す給仕の手には、深い赤紫を讃えた葡萄果汁のグラスが握られており、受け取るとにこやかに奥へと控えに行った。その流れだけを見れば、本当にただの夜会のようだ。けれど楽団の演奏の代りに流れてくる悲鳴が、惨い宴の主役を浮かび上がらせる。そんな中に在っては七結としては血混じりでは無いとしても、食事は帰ってからにしたかった。
「あら、なゆちゃんは飲み物だけなのね」
 けれど八重は彼方此方から聴こえる悲鳴や罵倒など気にする事なく、うっとりと赤く染まった皿に視線を寄せていた。そして切り分けた一口に運ぼうとして――ぴた、と七結が伸ばす手に止められる。そして僅かに顔を寄せて、七結が何かを確かめる様にす、と目を伏せる。
「毒は――入っていないと思うわ」
 既に口にした葡萄果汁も、特に変哲もないものだった。恐らく招待客には何の警戒もしていないのだろう。用意されてるのは本当に他意のない、客への持て成しとしての料理のようだ。結論を口にしてふと皿から顔を上げると、心配そうに眉根を寄せた八重の表情が見えて、ふ、と七結が口角を上げる。
「だいじょうぶ。わたしが猛毒にひずむことは無いもの」
「ふふっ…そうね。貴女の猛毒なら安心だわ。」
「まぁ。でもあねさまも、どうか御安心なさって。毒味ならば任せてちょうだいな」
「素敵。私の妹は、とても頼もしいわね」
 重ねる会話に笑い声を交えて、仲の良い姉妹が晩餐会に花を添える。その間にも七結の瞳がそろりと会場内の人々の立ち位置を掌握し、八重がひとりとて逃さぬようホールの配置を脳裏に納めているとは、誰も知らないまま。

――タルトも良いけれど、それよりこの先が楽しみだわ
――えぇ、食事の後は殿方との戯れが待っていますもの
――先ずは何方と一刃を交えようかしらね
――とっておきの一方を最後に残すのもいいかしら
 
 互いの耳に寄せた密やかな会話で、狩人たちが獲物を選りすぐる。
「ふふ、たのしみだわ」
「えぇ、とても楽しみね」

――今や宴のホールこそが鳥籠だとは知らず、囀る鳥たちを眺めてふたりが嗤った。

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姉妹連れの招待客
→そのまま晩餐会をお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
《華組》
🍽『聖血』の効果で極上

服は燦とお揃い


食べられる直前に待ったをかけ
余興に歌の披露を提案

最後まで歌えて気に入ったら
以前食したか既に気絶した人は一日食すのを待って欲しいと願う

私は医術の心得があります
皆を診させて下さい

極力一般人を守るのが目的

機嫌を損ねない様
願いは礼儀作法に読心術とコミュ力で注意し調整


のったら燦と手を繋ぎ鼓舞し合って【盾娘】と各種耐性で凌ぎつつ歌唱
最初は繊細で優美な歌声が
次第に涙を零し悲鳴の様なオペラへ変わり誘惑

痛い苦しい
けど
助けたい!


ケアを許されたら
医術と催眠術に『聖印』も使って心身を癒す
可能なら【祝音】も使う

燦…どうか謝らないで
誰かが傷つく事は不可避だから
巻き込んでごめん


四王天・燦
《華組》

🍽精気に満ちている

シホとお揃いのロングドレス風にした修道服
深めのスリットと開けた胸元で肌を大胆に露出させる
煌びやかに装飾

客の素行に表情が曇る
盗賊の方がまだ人間らしいね

シホの提案の折、手を取って震える
か弱さを演じるぜ

食に伴い歌声が上ずるよ
戦闘昂揚のない痛みはキツい!

シホの手を握り互いに鼓舞する
折れて堪るか!
激痛耐性と気合で歌う…泡を吹き白目を剥く悲痛のオペラだ

終われど動悸と涙が止まらない
慈悲を乞う目を向けるぜ
心と絆をブチ折る『次回のお楽しみ』を匂わせるよ

涙は本物だった
シホがこんなに痛い生贄の宿命を一人で受けていたことへの悔し涙だ
ごめんな

それともっと巻き込んでよ
一緒に贄の宿命を越えようぜ



――並び歩く乙女らに、好奇に満ちた視線が刺さる。

 揃いのロングドレスは黒地に白い装飾が施され、どこか修道服じみた印象を与える。然し深く切り込まれたスリットと、胸元を大きく開けて露出を増やしたデザインに、首元の真珠や裾のスパンコールの様に煌びやかな装飾も、神に仕える者の装いにはありえそうもない。その相反する背徳を、旅のシスターを装っていた四王天・燦(月夜の翼・f04448)とシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)に態々着せるあたりに、この宴の悪趣味さが透けて見えるようだった。不躾に肌を撫でる客の視線に、思わず燦の表情が曇る。
(盗賊の方が、まだ人間らしいね)
 明日食べるものを得る為に盗み売り飛ばす彼らと違い、今ここにいる者にとってこれは完全に“余興”だ。勿論精神を慰める娯楽は誰にだって必要ではある。しかしこれは――完全に、行き過ぎている。ほんの僅かな暇の愉しみに、まるで蝋燭の火を吹き消す様に命を弄ぶ。そんなことは許してはならない、と宿命帯びるシホの瞳が伯爵を見据える。やがて鳥籠へと籠められて、その狭さに二人が寄り添うように重なり合えば、一層下卑た笑い声が会場に満ちた。時間を同じくして伯爵の前に運ばれてくるのは2種のチーズケーキ。ベイクドとレア、それぞれに金木犀と菫の砂糖漬けが散らしてあるのは、恐らく燦とシホの色合いを模しているのだろう。その対比に満足そうな表情を浮かべ、早速フォークを手にした伯爵に、シホから静かな静止の声がかかる。
「伯爵様、今少しだけお待ちを…。」
 口をつける寸前に止められて、伯爵が一瞬不機嫌そうな表情を浮かべる。然し続く歌声には、僅かに目を見開いてその手を置いた。

――響くのは、美しい賛歌。人を、心を鼓舞するための、優しく響く声。

 シホの儚げな主旋律を、燦の力強い声がそっと支えて紡がれる歌。乙女の紡ぐ音楽に会場が暫し聞き惚れて、ゆっくりと歌い終えるまでの間、会場には静謐が満ちていた。
「…余興としては悪くはないな。何なら、食べている最中に悲鳴交じりで聞かせ給えよ」
 伯爵のあまりの言い様に、思わず燦の躰に力がこもる。自分だけならまだしも、シホにも苦しみを強要する言には、覚悟していてもやはり怒りが募る。それをシホがふるりと首を振って留め、言葉を述べる。
「望むのなら、そうなさっても構いません。ですがもし、ほんの少しでも気に入ってくださったのなら…今日食したか、既に気絶した人は明日一日食すのを待って欲しいのです」
「…なんだと?」
 持ち前の礼儀作法と機微を読んでいたためか、伯爵もすぐには激昂しない。だが、楽しみを取り上げるような発言にはやはり抑えきれない怒気がじわりとにじみ出ている。
「私は医術の心得があります。食材の皆を診させて下さい」
「…伯爵も、食材が長持ちするのは悪くないだ…でしょう?」
 シホの望みをかなえようと、燦も無理を押して口添えをする。然し伯爵としてはどうにも納得しかねるらしく、鼻白んだ様子で溜息を吐いた。
「話にならんな。私が買い上げた食材を、他人にどうこう言われる覚えはない。しかも貴様らも今や私が買い上げた食材だぞ?――身の程をわきまえよ!」
 そう言って、カトラリーからナイフを選ぶと、皿の上のケーキにぐさりと深く突き刺した。その瞬間、燦とシホの躰に激痛が走る。痺れるような、引きちぎられるような、苦痛を煮詰めた純粋な痛み。思わず溢れ重なる悲鳴に、伯爵の表情に僅かに笑みが戻る。そして、ふと思いついたようにひとつの提案を述べた。
「が、然し――貴様らの歌は悪くなかった。そうだな、この後皿が空になるまで途切れず唄い続けられたら、進言品内容を許可してやらんでもない。」
 その言葉を合図に、伯爵が早速とケーキを切り分けに掛かった。刻み、咀嚼し、飲み下すたびに、燦とシホの体を砕けそうになる痛みが奔る。けれど先の申し出を信じて、ふたりは手を握り合い歌を紡ぐ。最初は繊細で優美な歌声が、次第に涙を零し悲鳴の様なオペラへと変わっていく。

――痛い、苦しい。
けど、助けたい!

――痛みはキツい!
でも、折れて堪るか!

 身を寄せ合い、手を握り合い、それでも歌声は絶やさない。どれ程の試練であっても、シホには人を助ける為ならば厭わないだけの覚悟がある。だけど、付き合ってくれる燦には申し訳なさを感じて、歌詞のほんの少しの間に、謝りを口にする。
「巻き込んでごめん」
「むしろもっと巻き込んでよ。一緒に贄の宿命を越えようぜ」
 共にいると誓い合ったのだ。苦痛だって悲しみだって分け合って、何時かすべてを超えて見せる。そう力強く頷く燦に、シホが痛みの中に在っても信頼の笑みを寄せた。

――やがて満足した伯爵により、ふたりを控えの間に運ぶよう声がかかった。

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2人連れのシスター
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
👗🍽

事前にUCを発動し「典礼、呪避け、痛覚遮断、演者、道化師、迷彩」の呪詛を付与
各種の強化や猟兵の気配等を●迷彩で隠蔽しておき、
「黒耀の呪詛」の呪いを●呪詛耐性と●激痛耐性で受け流し、
激痛に耐える●演技による●パフォーマンスで耳目を集めた後、
吸血鬼流の●礼儀作法で皮肉り屠殺部屋に送られるように仕向ける

…っ、痛い。いたいよう…

ひっ…お、お願いです…ゆるして、許してください……なんてね?

滑稽な出し物だったわ。呪いが効いているか否かも見極められないなんて…

毎日毎日、同じ物を見ながら食事をしているから気付かなかったのかしら?
まるで芸を仕込まれた猿のようだと思わない?ねえ、目玉がガラス玉の領主様?



――静かに、密やかに、武器を纏う。

 たっぷりとレースを重ねた白いドレスを着せられたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が、その下にあらゆる装備をこっそりと仕込む。ユーベルコードで呼び出したあらゆる技能を迷彩の下に隠し、連れられるままにホールを進む。好機に満ちた衆目には怯えた食材を存分に演じて見せて鳥籠に篭められれば、期待の籠った声が届く。

――まぁ、可愛らしい子。
――きっと悲鳴も愛らしいでしょうねぇ。
――ああ、早く見たいわ。

 運ばれてくる皿はシンプルな牛肉のカツレツ。添えられたソースの赤が唯一の彩りとなるそれを目の前に置かれて、伯爵が満足そうに笑みを深める。そして容赦なくナイフを突き立て、肉を切り刻んでいく。
「…っ、痛い。いたいよう…!」
 一瞬、体中を痺れるような痛みが走る。然し我慢できない程ではない。防具の耐性は十分に機能していている。だからこそ身を捩って耳目を集め、細い悲鳴で観衆を引き付ける演技もこなせた。気を良くした伯爵が一層肉を細かくし、咀嚼して飲み下すほどに涙も零れんばかりの苦しみようを見せつける――けれど。
「ひっ…お、お願いです…ゆるして、許してください……」

――なんてね?

 今まで少女らしい悲鳴を上げていたとは思えない程、静かで冷静な声がリーヴァルディの口から零れた。
「…何?貴様、いま」
「滑稽な出し物だったわ。呪いが効いているか否かも見極められないなんて…」
 信じられないといった面持ちの伯爵に、怯えた表情さえもはぎ取ってリーヴァルディが呆れたように言い放つ。
「毎日毎日、同じ物を見ながら食事をしているから気付かなかったのかしら?」
 狭い鳥籠の中で、それでも出来得る限り背筋を伸ばして真っ直ぐに伯爵を捕らえて、唇が弧を描く。それは明らかな、蔑みの笑顔。
「まるで芸を仕込まれた猿のようだと思わない?ねえ、目玉がガラス玉の領主様?」
 くすり、と笑い声を零してリーヴァルディが止めを撃つ。度重なる暴言に煮え滾るほどの怒りを讃えていた伯爵が、最後の呼びかけでスゥっと表情を失った。
「もういい。下げろ。――そして肉片一つ残さず刻んで棄てろ!!」
 料理を見るのも不快だと言わんばかりに、伯爵が食べかけのそれを皿ごと払い落とす。

――それが少女の策略通りとは知らず、伯爵が望みの部屋への切符を告げた。

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灰色の髪の少女
→屠殺部屋にて処分するよう

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大成功 🔵​🔵​🔵​

リリー・フォーゲル
【玉兎】 🍽

真っ白のふわふわドレス。ヒラヒラの大きなリボン。キラキラの髪飾り。まるでお姫様みたいなドレス。こんな場所じゃなければとっても素敵なのだけれど…

なんて悪趣味な晩餐会…気味が悪い会場…美味しそうな料理も美味しくなさそう…
ちょうさんも食べるのかな…泣いてる…アランくん…?

ちょうさんは『控えの間』をめざしてるのかな…?ならリリーはそこでちょうさんと合流できるように頑張りましょう。
演技は必要ありませんね。だってリリーは痛くて辛いのは苦手ですから。
お望みの涙と苦痛の声を遠慮なく漏らしましょう。
でも我慢は必要ですね。意識は保って…気をしっかり…耐えてちょうさんと合流を…


張三・李四
【玉兎】
『鬼!悪魔!張三李四の馬鹿!うぅっ…リリーちゃんが可哀想だよぉ...』

脳内で喧しいぞ他人格よ
…なぁ、自分は少々疲れた
という事で食べるのは任せたぞアラン

[→IN 泣き熊お面のアラン]

えっ、ええぇ!?ぼく!?
無理だよぉ、リリーちゃんに痛いことできないよぉ...

すいません...
やっぱりリリーちゃんを食べるのは無しって出来ませんか...?
えっと、その...僕が育てていたから...“じょー?”がわいて...
出来ませんよねぇ、えーん...

うっううぅ...ごめんねぇ...
他の人に食べられるくらいなら僕が...うぅっ

ぐすっ、うえっ、味なんてわかんないよ...
もうやだぁ...ごめんねリリーちゃん...



(『鬼!悪魔!張三李四の馬鹿!』)
 会場中の誰もの耳に届きそうなほどの怒号が響き渡る。響き渡った――はずなのに、招待客たちは特に驚いた様子も無く歓談を続けている。それもその筈、張三・李四(MISSING・f29512)を咎める声は当人の脳内の反響であり、別人格の嘆きでしかないのだから。
『脳内で喧しいぞ他人格よ』
『うぅっ…だってリリーちゃんが可哀想だよぉ...』
 口は動かさず、頭の中で声をやり取りする。そのことに、というわけではないが、李四がハァと疲れたような溜息をついて、別人格たるアランにあっさりと後任を押し付ける。
『…なぁ、自分は少々疲れた。という事で食べるのは任せたぞアラン』
『えっ』
「――ええぇ!?ぼく!?」
 今度は正真正銘、声が喉を通って口から滑り出た。振り向き刺さる視線に思わず口元を押さえてそそくさと場所を移動する。
「無理だよぉ、リリーちゃんに痛いことできないよぉ…」
 案に代わってくれ、と内側に問いかけても、浮かび出た人格はアランのまま変わりそうにない。ぼろぼろと涙を零し、どうしようかと途方に暮れていると――人波が割れて、見知った人の着飾った姿がみえた。

――真っ白のふわふわスカート。ヒラヒラの大きなリボン。キラキラの髪飾り。
まるでお姫様みたいなドレス。

 綺麗で可愛くて、なんなら小躍りして喜びたいほどの装い。だがそれもひそひそと囁かれる会話に、ぷすぷすと刺さる不躾な視線に、食べられるための下拵えとしての衣装と分かっていては、リリー・フォーゲル(みんなの食材(仮)・f30316)の顔に笑顔は浮かばない。
(なんて悪趣味な晩餐会…気味が悪い会場…美味しそうな料理も美味しくなさそう…)
 元々垂れた耳がいっそうしょぼん、と下がりそうな薄ら寒い会場を、執事に連れられて横切り鳥籠へと籠められる。その最中にちらりと視線を巡らせて李四の姿を探したが、そこにいるのは見慣れた顔の泣き濡れた姿だった。
(…泣いてる…アランくん…?ちょうさんは『控えの間』をめざしてるのかな…?)
 控えの間に向かうには、伯爵に気にいられる必要がある。それなら喜々として食す李四よりも、泣いて嫌がるアランの方が向いているという判断だろうか。
(ならリリーはそこでちょうさんと合流できるように頑張りましょう)
 そう決意して、リリーが前へ向き直る。何、演技の必要なんてない。ただ与えられる痛みを、隠さず痛いと訴えればいい。リリーは、痛みもつらさも苦手なのだから。
「あのぉ…やっぱりリリーちゃんを食べるのは無しって出来ませんか…?えっと、その…僕が育てていたから…“じょー?”がわいて…」
「ハッ、だからこそ貴様が食べることに意味があるのだろう。何のためにこの役を譲ってやると思うのだ。つべこべ言わずにさっさと食せ」
「やっぱり出来ませんよねぇ、えーん…」
 涙を零して嫌がっても、伯爵に強く言われればアランに断る胆力はない。しぶしぶ促された席に着き、運ばれてくる料理に視線を落とす。皿の上に載っているのは、キャベツのファルシ。緑色の薄皮の下、幾つもの家畜を引き合わせた挽肉がたっぷりと詰まった一品だ。
「うっううぅ…ごめんねぇ…他の人に食べられるくらいなら僕が…うぅっ」
 せめてもの理由付けを糧に、アランが恐る恐るナイフを握り、料理へと突き刺す。
「――っ…いた、いたいっ…いやあああああ!!」
 途端、籠の中のリリーが悲鳴を上げた。全身を奔る激痛にもともと抑制する気はなかったが、想像以上の苦痛を前に喉が割れそうなほどの声量を上げる。それでも、意識だけは飛ばすまいと歯を食いしばってこらえる。
(我慢は必要ですね。意識は保って…気をしっかり…耐えてちょうさんと合流を)
「ぐすっ、うえっ、味なんてわかんないよ…もうやだぁ…ごめんねリリーちゃん…」

――失いそうになる意識を何度も食い止めて。
食べ進める手を止めそうになるのを何度も追い立てて。
伯爵が控えの間へ連れていくよう告げる声を、ふたりの耳が確かに聞き届けた。

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美味しそうな少女と泣き顔の味見役
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

久澄・真
【五万円】

食事も趣味悪けりゃ装飾品も趣味悪いんだな
飾られた剥製眺めながら思い
連れの提案にクハッと嘲ける
いらねーよ

俺が喰ったら共食いだなんだのと
さぞ盛り上がるだろうなぁ
さっきから会場内の客らの視線と話し声の煩い事
ウザ過ぎて煙草吸いたくなってきた…あー我慢我慢
勿論んな内心お首にも出さず笑顔と会釈を返し

んな人間クセェもんかね
すんと自分の手首を嗅ぐも人間臭なんぞわかる筈も無い
臭い?と戯れにジェイに問い掛けては暇潰し

情報収集は基本連れに任せ俺は務めて腰巾着を装う
話しかけられる事があれば適当に返すまで
社交辞令は慣れてる
人間と見下されようと正直どうでもいいしな
残念ながら自分の種族に誇り持つほどの甲斐性ねぇよ


ジェイ・バグショット
【五万円】

あの料理、興味があるならひと口味見でも申し出てみるか?
他人の血が混じった料理なんて"普通"なら気色悪ィだろう

共喰いねェ…
アイツらそういうの大好きだろ
すげー喜びそうでムカつくな
気怠げな嘲りは宴の喧騒に紛れて消える

アイツらの人間臭いって感覚は分かんねェけど…
戯れには真へ顔を寄せ、スンとひと嗅ぎ

お前って感じ。

緩り口角上げてただそれだけを

周りの招待客には礼儀正しくご挨拶
今宵の晩餐会は素晴らしいですね、なんて
無害なフリで気持ちよくお喋り相手しつつ
性格や癖など傾向を情報収集

あぁ、この男は私の非常食ですので。
やんわりと周りを牽制しつつ
つまみ食いなんてさせるわけねーだろ
俺ですらおあずけされてんのによ



「――食事も趣味悪けりゃ、装飾品も趣味悪いんだな」
 蹄に代わって五本指を持つ鹿、平たく蝶のように開いた耳の兎。何を継いだかは口にしなくも明らかな悍ましいオブジェを尻目に、久澄・真(○●○・f13102)が言葉ともなく溜息を吐きだす。
「あの料理、興味があるならひと口味見でも申し出てみるか?」
 冗談交じりにジェイ・バグショット(幕引き・f01070)が、伯爵の食べる様子を遠目に眺めながら真へと尋ねる。呪いのナイフで血を掬い取り、混ぜ込んで作られた料理の数々。そんなもの"普通"なら気色が悪いだろう――とアタリを付ければ案の定、嘲るように真がクハッと嗤う。
「いらねーよ。俺が喰ったら共食いだなんだのと、さぞ盛り上がりはするだろうがなぁ」
「共喰いねェ…確かにアイツらそういうの大好きだろ。」
 現に今も鳥籠に篭められた人間が泣き叫ぶのを聞いて、周囲が楽し気に嗤い声をあげている。そこにそんなネタを放り込めば、それはもう。
「…すげー喜びそうでムカつくな」
 悪趣味な歓声の上がる光景が容易に浮かぶが、金にならない相手をそこまで悦ばせてやる義理はない。ましてやそれがこの後でぶちのめす相手というなら猶更だ――然し。気怠い嘲り合いの内容は喧騒に十分紛れただろうに、さっきから向けられる視線と話し声が妙に煩い。

――ふふっ、こっちでも美味しそうな匂いがするわね?
――こっそり齧っちゃダメかしら。
――招待客なら伯爵様からお咎めがあるかも…でも人間だし、ねぇ?

 くすくす笑いながらの聞こえよがしな下卑た会話に、浮かべた外面用の笑みの下でジェイが鼻を鳴らす。真も粘度をもってまとわりつくそれらが鬱陶しすぎて、手が思わず煙草を探そうと伸びかけた所で、意識化に我慢我慢、と自制を敷く。
「…んな人間クセェもんかね」
 言われる側としては匂いだ何だと言われても、感覚は理解しがたい。試しにすんと自分の手首を嗅いでみても、人間臭なんてわかる筈も無い。
「アイツらの人間臭いって感覚は分かんねェけど…」
 半血とはいえジェイにも言われる匂いは分からない。でも――モノは試し、だ。戯れに真へと顔を寄せ、スンとひと嗅ぎする。
「臭い?」
「…“お前”って感じ。」
 ジェイが口にするのは、一言だけ。緩りと口角を上げて、ただそれだけを告げる。その答えを特に掘り下げるでもなく、ンなもんかね、と真が一応の納得を見せた。そんな暇つぶしを重ねる間にも、ふたりの視線は抜かりなく周囲を見回す。――客の人数、男女比、テーブルの配置、ホール自体の高さと広さ、伯爵までの距離。集められるだけの情報を、一つずつ少しずつ蓄積していく。時折掛けられる声にも内心などおくびにも出さずに笑って見せて、他愛無い会話の内に性格を、癖を、傾向を掠め取っていく。途中何度か人間如きと値踏みされ蔑むような扱いも受けたが、自分の種族に誇り持つほどの甲斐性もない、と自覚ある真はただただ柳の様にやり過ごした。そうやって情報収集にいそしんでいる幕間、ふとこちらへ歩み寄るドレス姿の女をジェイの目が捕らえた。また戯れに会話をしに来たのか、とそちらへ向き直ろうとして、気づく。女の向ける視線の先、ダンスに誘うにはあまりに怪しげな光宿す瞳が定めるのは――真の、首筋。まるで犬のリードでも引くような気軽さで腕を伸ばし、触れようとする直前でぐい、とジェイが真を懐に引き込み、にこりと牽制の笑みを浮かべる。
「あぁ、この男は私の非常食ですので。」
「…残念。もう“札付き”なのね?」
「ええ、まあ。それにマダムには、向こうのワインゼリーの方が優美でお似合いかと」
「…そうね、紛らわす程度にはいいかしら。では、失礼を」
 悪びれる様子も無く、寧ろ気分を害したというように女がぷい、とそっぽを向いて離れていく。
(――つまみ食いなんてさせるわけねーだろ。俺ですらおあずけされてんのによ)
うっかり指の一つも立てたい衝動を押さえて、ジェイが真に向き直ると、そこには意地の悪そうな笑顔が浮かんでいて。
「嫌味でも言われたか?可哀想にナァ」
「…そう思うだろ?なら慰めてくれ」
 いつも通りの軽口にすっかりと調子を取り戻して、ふたりがまた情報を懐に収めようと、夜会の只中へ踏み込んでいった。

============================
 
白と黒の紳士
→そのまま会場でお楽しみいただく様に

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーシー・ブルーベル
【月光】👗🍽

数多の招待客が居ても
ゆぇパパを見つけるのは一瞬
…うん、勇気が湧く

彼との縁を印象付けるわ

ユェーさん、ひどい
血は繋がって無くとも
わたし、お兄様みたいに想っていたのに
貴方は違って?

――例え演技でも今パパとは言えなかった

激痛と眩暈で天地が解らない
今どこが痛い?
立てた爪が割れ指が赤い
唇が噛み切れ血の味がする
そう、之が

それでも
悲鳴は極力抑える
明滅する世界で
耐えている様なパパのお顔だけは不思議と見える
こうなると知っても来てくれた優しい人だから
少しでもパパが痛く無い様に、微笑む

伯爵を嘲笑ってやろう
之の程度?
粗末な催しね
美食家が聴いて呆れるわ

これで上手く屠殺部屋に行けるかな

あの呪文を
また繰り返し


朧・ユェー
【月光】🍽
味見役

僕を兄と呼び非難する
縁を印象付けてくれているのでしょう

僕も妹の様に想っておりましたよ?
だからこそです
伯爵様、この子の味見をさせて頂けませんか?
娘の血を他の者が食べるなど
今すぐにでも殺してやりたい

口に運ぶ
苦痛に歪む娘の顔、必死に耐える姿
この子の意図がわかる
屠殺部屋の希望し
僕が悲しむのを嫌がる優しい子

お食事をありがとう御座います
ただ…これが貴族として?
悲鳴や苦痛を好み食す
それぞれですが
優雅ではありませんね
相手に懇願させ食されてる事もわかない程相手を魅了させてこそ
嗚呼、伯爵様は魅了させる自信がおありではないのでしょうねぇ

にっこりと微笑みながら

一ルーシーちゃん大丈夫、僕も其方に行くよ



――数多の招待客が居ても、姿を見つけるのは一瞬だった。

 腰に大きな黒いリボンを結わえた、真っ青な衣装。まるで不思議の国の少女の様なドレスを纏い、ルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が執事に連れられてホールを歩く。興味本位の衆目に晒されながらも、ほんの少し視線を上げただけでゆぇパパ――白いタキシードに身を包んだ朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)の姿はあっという間に見つけられた。ユェーもルーシーからの視線に気が付いて思わず呼びかけようとして、苦虫をかみつぶしたような顔で口を噤む。本当ならすぐにも名を呼んでやりたい。あんな見世物の様に扱われるくらいなら、抱き上げて連れて帰ってやりたい。でもここは敵の本拠地で在り、ルーシーは自身が申し出た役割をしっかりと果たしている。なら今ここでやるべきは何かと自らに問うて、鳥籠に入れられるルーシーを眺める観客のひとりを装った。
「ユェーさん、ひどい」
 ガチャン、と籠に縋りつき悲壮な表情を浮かべてルーシーが訴える。
「血は繋がって無くともわたし、お兄様みたいに想っていたのに…貴方は違って?」
 演技であってもこんな場ではパパと呼びたくなくて、関係性を兄にすり替え語り掛ける。その声にこたえて、壇上に上がるようにユェーが前へと歩み出て、仕方なさそうに肩を竦めて見せる。
「僕も妹の様に想っておりましたよ?――だからこそです」
 色素の薄い相貌に、酷薄な笑みを張り付ける。慕う少女を手ひどく裏切る姿は、さぞこの悪趣味な晩餐会には似合いだろう。案の定演出に喜んだ客たちからは、黄色い笑い声が聞えてきた。伯爵を盗み見ても満足そうな笑みが見えたので、雰囲気に乗じてユェーがここぞと名乗りを上げる。
「伯爵様、この子の味見をさせて頂けませんか?」
「ハッ、観衆の目の前で振った上に痛みまで与えようというのか…良い、気に入った。皿は譲ってやろう。」
「有難く存じます。」
 機嫌よく促されるまま、隣り合った席に着く。ルーシーの血を他の者が食べるなど、考えただけで今すぐにでも殺してやりたい気分になる。それを押し殺して待つ間に運ばれてくる皿はクリームブリュレ。カラメルを焦がした甘い香りに、黄金色のプリン液。そして添えられた飴細工の花が青いのは、ルーシーの色合いを真似たのだろう。普段なら称賛の一つも述べようアントルメも、娘に苦痛を与える呪いとあっては顔が曇りそうになる。それにも耐えて、手にしたスプーンで硬い表面を――バリン、と音を立てて割る。
「――――っ !!」
 声にならない悲鳴が、ルーシーの喉から溢れた。痛みが奔流のように脳髄を焼いて、体中を苛んでいく。具体的な痛みの個所どころか、眩暈で天地すらも解らない。
「ぅ…ぁ…―――っ…!!」
 苦痛に任せて立てた爪がパキリと割れ、指が赤く染まる。加減なく噛みしめた唇切れて、血の味がする。――そう、之が、いつかの“痛み”なのか、と。思考の端でほんの少し悟っても、また襲い来る痛みが掻き消していく。それ程の苦痛にあっても、ルーシーの悲鳴は抑えられたものだった。明滅する世界で、耐えている様なユェーの顔だけは不思議と見える。上辺だけは平気そうにスプーンを口に運ぶ姿は、鳥籠の内のルーシーにも劣らぬほど心の内をズタズタに引き裂かれているのが分かる。――こうなると知っていたはずなのに、それでも来てくれた優しい人。だから少しでもユェーが痛く無い様にと、ルーシーが精いっぱいの気力を搔き集めて微笑む。
「…こんなに人を集めて置いて、之の程度?粗末な催しね。美食家が聴いて呆れるわ」
 悲鳴の代りに口にするのは、伯爵への悪態。先程ユェーに向けたとは全く違う、冷めた嘲笑で詰る言葉を口にすれば、伯爵の空気が明らかに冷ややかなものになった。
「…貴様、余程死にたいと見える。泣きもせず悪態をつくというのなら、望み通り肉片すら残さず処分してやろう。――この皿を下げろ!!」
 自身の前に置いてあったカトラリーを投げ落とし、伯爵が激怒しながら命令する。慌てた執事とメイドが片づけにいそしむ中、ユェーだけがすべてを悟った表情で鳥籠を見つめる。

――この子の意図が、わかる。
苦しむ人の多い屠殺部屋を希望して
僕が悲しむのを嫌がる、優しい子。
なら僕は、その想いを汲むだけ。

 意を決し、手にしていたスプーンを置いて、未だ肩で息をする伯爵に静かに声をかける。
「お食事をありがとう御座います。ただ…」
「ただ、なんだ?」
「悲鳴や苦痛を好み食す。趣味はそれぞれですが…貴族として優雅ではありませんね」
 ルーシーの振る舞いで十分に不機嫌だった伯爵が、更なる油を注がれて顔を赤くする。
「相手に懇願させ、食されてる事もわかない程相手を魅了させてこそでは?嗚呼、でも伯爵様は――魅了させる自信がおありではないのでしょうねぇ」
 クッ、と喉を鳴らしてユェーが蔑むように嗤う。既に決まりかけていた屠殺部屋行きを揺るがぬものにして鳥籠から連れ出されるルーシーを視線でとらえ、今度はにこりと優しく安心させるように微笑んで見せる。

――ルーシーちゃん大丈夫、僕も其方に行くよ。

 言葉にせずとも伝わった意図に、ルーシーが頷きながらあの呪文を繰り返し呟いた。

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金髪碧眼の少女、皿を食した白髪の男
→屠殺部屋にて処分するよう

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

枸橘・水織
あまり気にしなくても大丈夫だとは思うけど…
『控え~』『屠殺~』の片方のみだが、猟兵もそれなりに来ているので、ゼロという事はない


行動
前章に引き続き、UCでの【情報収集】は続け、『控え部屋』『屠殺部屋』や通路の確認などを行う

食材役
青や白系の清楚なドレス(細かいところはお任せします)

【変装・演技・礼儀作法】でそれなりの教育を受けた娘(第一章での素性は知られている前提)を演じる

【演技・激痛耐性(痛みに耐えられず、気を失いそうな時に使用)
】で、“黒曜の呪殺”による効果を素直に表現

体に走る痛みには叫び・のたうちまわり…つつも、その身に降りかかる呪いの魔力を【情報収集・学習力】で知る事で気を紛らわせる



(あまり気にしなくても大丈夫だとは思うけど…)
 メイドに連れられて晩餐会のホールを横切りながら、枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)が思案する。身に纏うのは白いレースをたっぷりと重ね、端を青いリボンで縫われたドレス。髪を結ばず背に流したのは、きっとの珍しい水を織ったような光沢を映えさせるためだろう。“食材”として選ばれて、今こうして鳥籠にこめられている水織には、この先の道筋は2つ。気にいられて控えの間に行くか、嫌われて屠殺部屋に送られるかだ。
(猟兵は他にも居るから、きっとどちらもが空になることはない。なら、一先ずは気にいられるように)
 伯爵の前に運ばれる皿を横目で追いながら、水織が冷静に状況を判断する。置かれた品は、ふるりと柔らかなブラマンジェ。掛けられた木苺のソースが普段なら美味しそうに見えても、この悪趣味な宴の場に在っては血のように映って薄気味悪い。然しその趣向こそを喜ぶように伯爵がにんまりと笑みを浮かべて、水織を見据えながらぐちゃり、とスプーンで側面を抉る。
「あっ…!いっ……いたい…いや、いやぁぁぁ!!」
 声が悲鳴となって喉から溢れた。痛みへの耐性はある筈なのに、それでも全身を痺れるような激痛が走る。思わずガシャン、と手荒く鳥籠を叩いてのたうち回ると周囲からは悦びの歓声が上がる。もっと叫べ、もっと嘆け、次の食材も期待ができる――その下衆な声が、僅かに水織の思考に冷静さを取り戻させる。そうと気づかれないよう息を整え、咀嚼される度に襲う痛みには悲鳴を上げながらも、呪いに対する情報をゆっくりと脳裏で整理することで意識を保つ。

――料理自体、全てが痛覚と繋がっているよう。
でも咀嚼も切り分けもない間は、痛みが来ない。
これは魔力?呪い?それとも、もっと別の。
…分からない。けど考えていると、少し楽な気がする。

 ぐるぐると考えを巡らせて、気絶しないよう意識を保つ。こうやって耐えてる間にも、先に放った妖精たちはきちんとこの城の構造を調べてくれてるはず。あと少し、それだけでこの宴を終わりに出来る。そうしてこらえていると、ようやく空になったら皿を満足そうに見つめながら、控えの間へ連れていけ、と伯爵が告げる。

――その苦痛の終わりを知らせる声に、水織が密やかに安堵の息を零した。

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水の髪を持った少女
→控えの間に連れて行くように

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大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
👗
梟示さん(f24788)と

血を取られる際は
黒曜の実物と使われた場への道を覚え
他の籠も注意しておく

着替えさせられ会場へ
集う視線に籠の鳥の気分
異様さに怯え震えてみせ
伯爵の様子に、内心辟易

…が、他の籠を思い返したり
並ぶ客人の中に梟示さんが見えれば
あんな場に座らせてしまってるんだ、頑張るぞ
切り替え
捕まった子らの危機の火急度合い考え
屠殺部屋行きを狙う算段

何に混ぜられてるかはわからぬが
伯爵が料理を口に運ぶと襲う痛みに
突っ伏し呻き反応を見る
梟示さんが伯爵に近寄るのが伺えたら
食べるふりまで、邪魔せず

それさえ成せれば
伯爵睨みつけ悪態を
悪食め
痛みや叫びを飾り立て皿に望むなら
自分の血でやれば良い

まあ…本音ですね


高塔・梟示
類(f13398)君と
持ち込み役→味見役を希望

部屋の趣味も相当だな…
通されたホール見回し眉根を寄せて

主賓とは席も遠い筈
視界に入り難くて助かるよ
「此の世に不可思議など有り得ない」さ
足りない運は腕次第

幾つも檻を見送るたび
類君の様子が気に掛かる、が…
伯爵の機嫌を見計らい声を上げ

美しい料理ばかりだが見るだけでは退屈だ
苦労して食材を調達した此方にも
振舞って貰えないかね?

皿が寄越されれば、反応も気になるだろう
食べた振りで顔を顰め、独り言ちるように
…臭いな。豚の方が幾らかマシだ
伯爵は美食家と伺ったが貧乏舌であらせられるようだ

味覚の無いわたしが言うのも可笑しいがね
乱暴な扱いも想定内
屠殺部屋へ行けるなら構わんさ



「――部屋の趣味も相当だな…」
 ざわざわと賑やかなホールの騒めきに、高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)
が溜息交じりの言葉を紛れ込ませる。見まわしたホールには、視界の端を掠めるだけでも歪さの分かる剥製が並んでいる。まじまじと見つめる気にもなれず、ただ眉間の皺を深くする。幸い主賓席から今の位置は程遠い。だから多少渋い顔をしていようとも、頭をガリガリと掻き毟っても、さほど見とがめられはしまい。ただの一個人の癖の振りをして運気を招き寄せながら、梟示が鳥籠へ出入りする食材を見送る。力尽きた者、取り乱した者、泣き崩れる者。次々と引きずり出される人々に、余力を残した様子はほとんど見られない。それだけで、呪いのタチの悪さは十分に知れる。あれを味合わせてしまうのかと思うと、気が引けそうになる程度には。
(類君の様子が気に掛かる、が…――ああ、あれは)
 ちょうど意識をしたのと同時刻に、人の波が割れて――見慣れた顔が現れる。燕尾の揺れる三つ揃えに孔雀石のブローチと、ふわりと揺れる白く長いファー。執事に連れられながら、着飾った冴島・類(公孫樹・f13398)が人波をくぐって鳥籠へと籠められていく。刺さる視線には上辺こそ怯えた様子を見せてはいるが、内心は観客と伯爵の悪趣味さに心底辟易していた。華美に豪華に飾っていても、悪意も悪臭も透けるようなホールの只中。本当なら今すぐにも辞したいところだが、ここに来るまで幾度も聞こえた悲鳴が、そして瞳が捕らえた梟示の姿が、思いを切り替えさせてくれる。
(あんな場に座らせてしまってるんだ、頑張るぞ)
 血を取られるときに覚えた様相も、部屋への道筋も、全ては無事に人々を助け出す為の工作だ。そのために敢えて扱いの過酷だろう、屠殺部屋へと行く心積もりもしたのだ。なら、後はほんの少しの演技だけ。タイミングを計るようにちらりと視線を投げかけると、心得たように梟示も同じ目的へ動き出す。
「――御機嫌よう、伯爵殿」
「ああ、招待客か。御機嫌よう。…して、私に何か用でも」
「いえ、なに。美しい料理ばかりだが、見るだけでは退屈だ。苦労して食材を調達した此方にも振舞って貰えないかね?」
「…料理を寄越せ、と?フン、まぁ食材を持ってきたというなら、褒美に譲ってやってもいい。代わりにきっちりと啼かせて見せ給えよ、あの“鳥”を」
 一瞬訝し気な表情は見せたものの、最終的には運ばれてきた料理諸共に席を用意される。そこに置かれたのは、ホワイトチョコでコーティングされたベリーケーキ。全てを白く白く、ひかりすらも反射しそうに艶やかに仕上げられたそれは――まるで鏡面の様だ、と表現するのは皮肉なものだろうか。きっとこの表面に罅を入れるだけでも、痛みは類に伝播する。実際ためらいがちスプーンで突き刺せば、覚悟していたはずの類の躰ががくりと揺れて肩で息を繰り返す。だからせめて食べることはせず、口をつける振りに留めてそっとスプーンを皿に戻せば、今度は類が察して鎖していた口からとげとげしい声を発する。
「…悪食め」
「……は?鳥籠の、今何と?」
「痛みや叫びを飾り立て皿に望むなら、自分の血でやれば良い」
 凡そ怯えてたとは思えない強い口調で睨みつけ、類が伯爵へと悪態をつく。本音から生れた威力ある言葉に、暫し訝しんでいた伯爵が直ぐに激昂で身を震わせ始める。恐らく後3秒も待てば口汚く命令を下す言葉が溢れるだろうが、まだだ。それではまだ、足りない。
「確かに…これは臭いな。豚の方が幾らかマシだ」
 重ねる様に、印象付ける様に、カシャンとカトラリーを鳴らして梟示もまた罵る言葉を口にする。意識を向けていた類以外から突然刺されたこともあり、伯爵は驚く以上に油を得た炎の様に顔を赤くした。
「伯爵は美食家と伺ったが、貧乏舌であらせられるようだ」
 味覚のない身で味を評定を下すなど中々に可笑しい話だが、その妙が分かるのは自身だけでいい。類のナイフにも、梟示のフォークにも、十分に切り刻まれた伯爵が怒りで乾いた喉からようやく声を絞り出す。

――屠殺部屋に放り込めと叫ぶ命令が、ふたりの望んだものとは露ほども知らずに。

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緑瞳の少年と琥珀髪の男
→屠殺部屋で速やかに処分せよ

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大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『吸血鬼ディンドルフ』

POW   :    ダンスタイム
自身が【敵対心】を感じると、レベル×1体の【吸血鬼の犠牲者】が召喚される。吸血鬼の犠牲者は敵対心を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    ミラータイム
【対象のユーベルコードを複製すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【対象と同じユーベルコード】で攻撃する。
WIZ   :    ディナータイム
【「犠牲者の肉のスープ」】を給仕している間、戦場にいる「犠牲者の肉のスープ」を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアンネリーゼ・ディンドルフです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


――かくて宴は、緩やかに終わりへと向かっていく。

 数多いた食材たちも次々に下げられていき、残す一皿も今や空っぽになった。今日はずいぶんと奇妙な食材が多かった。珍しさも悲鳴も楽しめたが、その分妙に口答えを多く聞いた気もする。詰る言葉を思い出せば今も腹が煮えそうになるが、それももう過ぎたこと。無礼を働いた者たちは皆肉片と化してスープに混ぜられ、明日来る客の喉を潤すだろう。そして控えの間に下げさせたものはまた、明日も新鮮な恐怖と叫びを供するのだ。

そうして今日も、明日も、ずっとずっと永遠に。
死することなき体で、絶えることなき実りを。
――永久の享楽を貪り続けるのだ。

「会場の者たち、今宵も宴にご足労戴き感謝したい。明日もまた甘美な悲鳴を聞かせることを約束して、今日という日に幕を下ろすとしようか。」

ああ、今終わりの喝采を呼ぶ、最初の一音を伯爵が――吸血鬼ディンドルフが鳴らすべく、高々と手を上げる。

――それが果たして、何の終わりを告げるものか。
知らしめるべきは今、この瞬間だ――猟兵達よ。
 
============================

●補足情報
 場面としては宴の終わり、吸血鬼ディンドルフの閉幕宣言直後から始まります。今回の依頼成功条件は【ディンドルフの討伐】のみになります。一般人の生死は判定に含まれませんので、場合によっては死ぬ描写があります。立ち回りはお任せいたします。(何が何でも助けたい、別にどうでもいい、など皆様のお心に添った行動をぶつけてください)

◎!!Bonus!!◎
 『控えの間』『屠殺部屋』の割り振り人数が多かったことと、マッピングや仕込みが多数ありましたので、事前に提示した『移動による不利の発生・ユーベルコードの必要性』を【無くてOK】とします。各部屋での動きと会場での動きをそれぞれ書いて頂ければ、移動に関しては無記載で問題ありません。(初めは必ず【2章で提示された自身の居場所】からのスタートになります)

★戦場
『控えの間』
 館の2階。ヴァンパイアの侍女が入り口付近に5名、食材として体力を消耗した一般人が6名います。侍女はあまり強くはありませんが一般人を積極的に殺害及び盾に使うので、生かしたい場合は配慮が必要です。最低限の寝具が置かれただけの雑魚寝部屋ですが、広さはそれなりにあるので戦闘には困りません。なお追加戦力は来ないので、侍女を排除できた時点で一般人の生存と安全は保障されます。行動としては即時戦闘→会場へ移動で問題ありません。治癒等での部屋への残留はお任せします。

『屠殺部屋』
 城の半地下。処分・解体係のヴァンパイアが6名、意識がないレベルの一般人が5名ほどいます。こちらも戦力的にはあまり強くない代わりに、一般人の殺害や盾としての利用に躊躇がないので、生かしたい場合は工夫が必要です。石畳の広い部屋で戦闘に支障はなく、また追加戦力はないので敵を排除した時点で一般人の生存と安全は保障されます。行動としては即時戦闘→会場へ移動で問題ありません。治癒等での部屋への残留はお任せします。

『晩餐会ホール』
 此処に居るのはディンドルフを筆頭とした数多のヴァンパイアと猟兵のみです。ダンスホールも兼ねた広い舞台で、正装のまま、どうぞ心行くまで敵を狩り尽してくださいませ。奇襲と仕込みは十分に、後から来る追加戦力もたっぷりと。最早皆様の勝機は多大なもの。喰われるものがはたしてどちらか、存分に知らしめましょう。

★【呪殺の黒曜】
 ディンドルフが懐に隠しています。入手をご希望の方はプレイングに以下を記載いただきますようお願いします。多数いた場合は『参加した章の数だけダイスを振って、一番いい目が出た人』の手に渡ります。

黒曜を入手して持って帰りたい場合…🔪◎
黒曜をこの場で破壊したい場合  …🔪×

 なおこちらから提供できるのは『この依頼で呪殺の黒曜という曰くのアイテムを入手(or破壊)した描写』のみです。効果も『ナイフで傷つけ採取した血を依り代に垂らし、依り代を傷つけることで血の相手に苦しみを与える』以外のことは判明していません。実は宇宙の超技術だった、人によって呪いの質が変わる…等々は手に入れた方のお好きにどうぞ。

…他にも予想される状況、活用できる方策、宴を楽しむアイディアは積極的にお寄せください。
皆さまの思うままにどうぞ。

============================
 
シホ・エーデルワイス
《華組》
🔪×


敵に怪しまれない様
疲労困憊を演技しつつ控えの間に入れば
すぐ衰弱が著しい一般人優先で医術と催眠術に『聖印』も使って
心身を癒し元気付け鼓舞しながら
こっそり念動力の念話で救助方法を伝える

騒ぎが起きたら

伏せて!

と叫びつつ
味方と連携して一般人を庇い守る


制圧後
一般人を【救園】へ救助活動
彼らを治癒等する味方がいれば一緒に案内
燦も一旦中へ

私達の装備を救園から取り出し早着替え


燦…私も本当は痛い目に遭いたくない
けど
私達が日々他の生物から糧を命を頂く様に犠牲は付き物です
だから私の身で大勢が助かるなら
これ程誇らしい事はありません


『聖笄』で目立たなくなりホールへ

燦が敵の気を誘き寄せている間
私は敵と向かい合わない位置へ忍び足と空中浮遊で移動

敵が給仕しようとしたら
早業の先制攻撃でおかわりのスープごと
氷結属性攻撃の範囲攻撃誘導弾でスナイパーし
皿を武器落としで援護射撃

スープなんて見当たりませんが?
床に落ちた氷を振舞う等という不作法はしませんよね?


戦後
味方と協力して一般人を治療
帰る当ての無い人は人類砦へ案内


四王天・燦
《華組》

🔪×

先ずは一般人の救助活動だ
痛みで疲れた心を慰め、家に帰すことを約束する
弐式の炎で吸血鬼侍女も一般人も安眠させ、避難先の救園も温める
せめての慈悲だ、侍女達は夢見心地のまま楽に逝かせるよ

神鳴を受け取る
普段着に着替え二人一組のシスターから印象を変えるよ
治療と着替えの中シホと話をする

シホの生贄の宿命はあんな激痛を強いてたのか…それ以上なのか
自分の痛みより苦しいよ
もっと相談してよ、シホが痛い想いしなくても解決できるようにね
アタシは我儘なのかなぁ

重役出勤でディンドルフに会いにいくぜ
言いたいことがあるんだ

晩餐会は黒曜の呪殺がお前を使ってやらせてたんだってね
テメエの意思など何処にもない、ナイフ型の妖刀に魅入られてんだよ阿呆め!
吸血鬼の尊厳を全否定だ

シホの不在を気づかせないよう本音の挑発で逆上させるぜ

スープはいらねーよ
シホの射撃で給仕が途切れりゃ神鳴で斬ってやる
鏡を示し、この屋敷の給仕はボロ雑巾みてーな吸血鬼なのかと能力に疑念を持たせる

終われば治療を手伝うぜ
可愛い女の子にトラウマ残したくねーな


釈迦牟尼仏・万々斎
ふむ……満足だ。後は少年(f22865)の手助けに興じよう。
タールである吾輩にかかれば縄抜けなど、そら御覧の通り。体に沈めていた胡乱な箱宮を取りだし、生まれたての小鹿に返却しよう。最低限の身の安全は保障してやる。仕事の時間だ、気張りたまえよ。

人員は足りているな。人質は切り離した? よろしい。それでは皆食べてしまおう。変幻するは神話のキメラ。鰐の頭部に獅子の上体、河馬の下半身。私怨はないが喰ったように喰われるのは世の常だ。受け入れたまえ。君らはもはや手遅れだ。
ついでだ、原型を留めていないものは腹に収めてしまうか。……皮を剥がれ食肉にされた身内を見て、遺族が前向きに生きていけると思うかね。埋葬するにしても重労働だ。冬も近い。供養塔でも立てておけばよかろう。
気持ち。気持ちか……了承した。定型生命体の意見を聞き入れよう。(遺体の処遇は他へ一任)

制圧と回収が済んだら控えの間へ移動する。
背に乗りたまえ。民間人の回収に行くのだろう?


渡塚・源誠
(入手側の希望者がいない場合に限り)🔪×
アドリブ等歓迎

さて、猟兵としての本分はここからだね
…推測が確かならホール外に流れた同志さん方は多そうだ
ボクはここでの戦いに専念するべきかな


まず来客の数減らしだけど、今までの人売りの、情けない感じの【演技】を続けながら、彼らの死角に回って【暗殺】(しまつ)させてもらうとするよ


…で、問題は行動阻害を引き起こすスープの給仕で、こっちは少し仕込みがいるね

魔法手に魔力を込めた金属札と白ナイフを握らせて、手部分が片手に見えるように隠し持っておく
さらに魔法手のグリップはぐっと握ったまま…だけど、札の魔力で魔法手が伸びないようにしておいて準備OK

先に倒した来客から白系の手袋を片方だけ、もう片手にはめて、不自然さも薄めたい所かな

で、スープが給仕された直後に魔力を解除
ボクの身体の動きとは無縁の自立伸長する魔法手に握られた、【浄化】と【呪詛耐性】付の白ナイフの一閃が皿と種々の呪いごとスープを両断するっていう寸法さ



……折角弱みを握ったってのに、無駄になっちゃったねぇ


雨野・雲珠
マスターと/f22971
※【救助活動】最優先
 他の方々とも協力して回収と運搬役に務めます

ぐ……
痛くない、痛くない。怪我してないんだから大丈夫。
今は考えるな。
酷い匂いの正体も、この部屋で何が行われていたかも…

──もちろん。這ってでも…!
倒れた方々を【枝絡み】で覆って、人質にとれないように守ります。
意識のない方々を【一之宮】に匿いましょう。
頭上ですごい音と悲鳴が聞こえますが、
うまく切り離せたのか麻痺してるのか
なんだか遠い出来事のよう…(※一時的な解離状態)
あっ……ご遺体は駄目です!
駄目といったら駄目!気持ち的に!

マスター…ナイフはいいんですか?
は、はい。それはもちろん。…あれ?
有無を言わせぬ強引さに困ることは多いですが、
得意に徹させていただけるのはありがたいです…



終わった後は事後処理に加わります。
医療の足りてない世界ですから、
せめてこの方々の治療と身の振り方が決まるまで
こちらに留まろうと思います。


丸越・梓
アドリブ、マスタリング歓迎
NG:味方を攻撃する
🔪◎
_

一般人を絶対に死なせない、傷付けさせない
俺がどれだけ傷付いても構わない
然し膝をつくことだけは絶対に己に許さず
全身全霊で庇い護り、助ける

常と同じく冷静に戦況を把握しつつ
暗殺技術の応用として気配遮断・死角から無音の一閃を
一般人に伸びる手あればクイックドロウにて撃ち抜き
俺の身体に流れる吸血鬼の血より
知らず覇気や威厳を纏い
恐怖を与える

屠殺部屋を蹂躙し一般人の生存と安全を確認しケアを施した後
向かうはホール
相対するは伯爵
礼儀は忘れずとも
鋭い眼差しは真っ直ぐに伯爵へ

一曲お相手願えますかと
エスコートする様、展開するは我が支配下たる夜
共に戦場に在る猟兵達の援護と共に
例え複製されようとも己がこの力で捻じ伏せる

_

(──ざわり、空気が揺れる
夜を従え、君臨するは
魔の王なれば)


メアリー・ベスレム
ああ、こびり付いた厭な臭い
だけれどなんて見慣れた光景
いったいどれだけの人間(アリス)がここで屠殺され喰われたのかしら
どうせあなた達だっておこぼれに与ったんでしょう?
いいわ、さっきのはただの食事「ごっこ」だもの
こっちの方が復讐するに相応しい!

オーバーロードで半獣半人の真の姿に変身
本格的に戦い始めるよりも先に
隙を見てもう助からない、だけれど辛うじて生きている「肉」達に接触する
ねえ、あなた達はどうしたい?
これ以上苦しまずに殺してほしい?
それとも……せめて復讐したい?
助けてあげる事はできないけれど
それぐらいの願いは叶えてあげる

微かな答えに【聞き耳】立てて
同意したみんなを【感染する復讐心】で人狼に変える
さあ、復讐劇を始めましょう?

獣の爪牙と数を恃みに攻め立てて
メアリ自身は敵の攻撃を惹き付けるよう
【誘惑】しながら立ちまわ……もう、動きにくいったら!
とドレスの裾を引き裂いてから
【野生の勘】活かして立ち回る
敵の手足を狙って【部位破壊】
他のみんなが殺しやすいようにしてあげる

最期はみんなをお疲れ様と見送るの


旭・まどか
あきら(f26138)と

次々運ばれて来る人々の姿は様々で
眸に篭る彩で、彼らが“どちら”側なのかを知る

思いの外多かった此方側に小さく零すは安堵の息ひとつ
為れば僕自身がする事は左程多くは無かろうかと
庇護される側を強調し、なるたけ一般人の傍へ

か細く震える声が出せるなら未だ良い方
それすらをも出来ないのなら、そっと、手を伸ばそう
肩寄せ合えば震えも収まるかな

開幕の合図と共に掲げられる獲物
震える彼らを背に真白のシャツを鮮血で汚す

侍女の討伐は他の猟兵に任せ隸に命ずるは彼らの守護
彼らを護り抜くのが君達の仕事だと告げれば
彼らに迫り来る魔の手は少なく済む筈だ

道が拓けたのなら駆け出す背を見送り
未だ、その場で震える者に手を貸そう

なに、僕ひとりが居ない所で大した戦力差にはなるまい
君も彼らの腕っぷしは見ていたでしょう?
――それに、
他にも頼りになる“仲間”がいるからね、と

手当てを一通り終えたなら、頃合いを見てホールへと向かおう
きっと無茶をしたんであろう彼女を、労いに行かないといけないから

本当に、困った子
無事で良かったよ


天音・亮
まどか(f18649)と

部屋を見回す
この部屋で助けられなかった子達がいる
悔しさに歯噛みしながらも
今は目の前の子達を第一に
他に目もくれずその子達に駆け寄ろう

城までの馬車を引いてくれたおじさんに聞いてた娘さんの特徴
…ああ、見つけた。きみだね。
お父さんが心配していたよ
もう大丈夫、私達は助けにきたの
一緒にお家に帰ろう

絶対に誰一人死なせない
きみ達を想う歌を歌う
守るよ、助けるよ
きみ達が逃げるための脚がまた動くようにと

さあ、行こう!
怯える心が少しでも奮い立つよう目一杯に笑おう
不安なんて感じなくていいのだと
想い込めて手を伸ばそう

襲い来るヴァンパイアは武装ブーツで蹴り飛ばし
どれだけ傷つこうとあの子たちの命は渡さない
ヒーローとして、為すべき事を

無事逃げ切ったのを見届けてから
まどかの所に戻ろう
きみの顔を見たら緊張の糸が解けてへたり込んでしまいそうだけど
その手が、声が、何より私を安心させてくれるだろうから

ありがとう、まどか
(私らしく居させてくれて)


朱赫七・カムイ
⛩神櫻
🔪×

噫、甘美な巫女の
愛しいサヨの、その味が焼き付いてならない
可笑しいな、私は人喰いの神ではないというのに
之は、怒り故ということにしておこうとまた一つサヨに噛み痕をつける
気に食わないのはあんな可愛い声を伯爵に聞かせたことだ
……そう、では帰ってからだ

ひとの子は守るべき存在であるからね
不運の神罰を降らせてやろう、一般人を殺すはずの刃は不運にも仲間に突き刺さった、とかね?

結界を張り、彼らを保護して
すぐに捕縛の赫縄巡らせ侍女達の動きを奪う
一刀のうちに斬り捨てて仕舞おうか
…そうだよ、私は怒っている

永遠など、そなたには相応しくない
斯様な厄は約されてはいないのだ
もう私は我慢しなくていいんだね

早業で駆けふみこんで、斬撃波を広範囲に薙ぎ払い切断するよ
サヨの太刀筋に合わせ斬撃を繰り出して、かの龍眼を遮るものも打ち砕く

──再約ノ縁結

其れは赦さない

サヨ、そんなのを食べたらきみがお腹を壊すだろう
……きみに食べられるのは私だけでいいというのにな

サヨは懲りないね
……呪いではなく本当に私に食べられても知らないよ?


誘名・櫻宵
🌸神櫻
🔪×

いたっ、痛いったらカムイ!
そ、そんなに首筋噛まないで
怒り狂う神を鎮めるのも巫女の役割ではあるけれど、あんなに私を味わったというのに神の怒りは鎮まるばかりか激しいわ
おかげでそこらじゅう噛み痕だらけ
お仕置は…帰ってからうけるわ!
…だから我慢して
額をつんとつつく

まずはこの部屋の連中を何とかしなきゃ
一般人を盾にするなんて仕様がない子
カムイ
この子からお仕置すべきでしょ
喰華─桜と変える神罰を巡らせる
あなたも食べられてしまえばいいの
侍女を無力化したら直ぐに向こうは向かうわよ

さて、伯爵のおねむの時間だわ
沢山食べたあとはぐっすり永遠に眠らなきゃ
カムイのあんな表情をみられたのは美味しくて愛しくて感謝しているけれど
おかげで神様はご立腹

私、あなたの叫びだって堪能したいの

犠牲者の肉のスープは私が飲み干すわ
だって、私は人喰いの龍だもの
生命を喰らいながら、傷を抉って衝撃波をなぎ払い
桜化の神罰を巡らせる

さて
あなたは美味しいかしら?

別にあんなナイフなんてなくても
今度は直接食べてもらえばいいのだし
ねぇ
私の神様


百鳥・円
【偃月】

あ〜〜……やっっと終わるんですか、コレ
じゃあ、もう化けの皮は必要無いですね?
今まで上手〜く騙し通していたでしょ?

人魚を手配した極夜の運び屋から
『あなた』とお友だちのわたしへ

催しごとへの嫌悪感は隠せそうに無いです
お化粧は健在だと思うので、どうかお許しを
――さ、おんなじ痛みをあげましょうか

黒曜へと変じた翼で貫いて
固く伸ばした爪で掻き混ぜましょうか?
彼が受けた痛みをお返ししてあげます

あは、痛いでしょうねェ
劈く悲鳴なんて、心地良いものか
あーー……耳が痛い痛い

あーあ、ドレスが台無しです
ええ、ええ!
あなたたちからしたら理不尽でしょうね!
だってこれは、ただの八つ当たりですもの!

さて、粗方片付いたなら『彼』を探しましょう
控え室を目指して行けば――あら、ふふふ!
やっと会えた!しずくくん!
身体は痛みますか?大丈夫?

さあさあ、わたしたちの主役のお出ましです
とびきり残酷に、宴の幕を降ろしましょ


岩元・雫
【偃月】
ふつりと途切れた意識が戻る
つめたい寝具が、場違いな程に心地良い
熱の様に感じる程の痛みなんて、初めてだった

きちんと控えの間に来られたみたい
不幸中の幸いって奴かな
さて、手早く御仕事と行きましょうか

可哀想な人魚が、気紛れに歌を紡ぐくらい
屹度、だぁれも疑問に思わないでしょう?
そぅっと、傷付いた隣人達を労わる様に
横たわるひと達へ、優しく寄り添う様に

柔い音色を聴かせましょう
其は深き海へと堕つる合図
さあ、――しずめ
罪無きひとは、優しい眠りへ
罪深い怪物は、永遠の睡りへ

ゆっくり、聲で侵す様に、睡り堕ちた悪鬼を絡め取って
抗う力も、何もかもを――おれの呪詛で奪ってあげる
食べ物の恨みって恐ろしいのよ
今回許りは言葉通りに、ね
『食べ物』に抗われた気持ちは如何?
……なぁんて、侍女達に聞いても
返事は無いでしょうけど

痛いのって気分が良くないのね、随分気疲れしちゃった
ストレス発散がてら、歌いながらホールに向かってやろうかな
商人の皮を剥いだ『友達』が――待ってて呉れる、筈だから


ジェイ・バグショット
【五万円】
🔪◎

影のテフルネプが蠢き
敵を捕縛する為四方へ散る

刺激的な夜を過ごすには物足りず…
もう少し御付き合い頂けますか伯爵殿
にこりと作り笑い浮かべ

見事な糸捌きにはさすがと口笛吹いて
真の声になんだと振り返れば
ソレはあまりに予想外で目を丸くした
戯れを乗せたその言葉の意味を
俺が間違えるはずも無い

ギラつく瞳に滲む歓喜の色
あの"甘美な味"をもう一度味わえる
許しが出たのなら遠慮は無しだ
俺はこの男の言う『おあずけ』に利口な犬のように従ってきたのだから

引き寄せ無遠慮に牙を突き立てる
鼻先を掠める香りごと飲むように
他の連中なんてどうでもいい
優先事項は目の前のコイツだけ

あぁ、もちろん
疲れたなら休んでもイイぜ
ダーリン?

全て無駄なく糧として
奪った生命力に調子も気分も上がる

さぁて、お行儀良く振る舞うのは終わりにしよう
せっかくのダンスホールだ
誰か俺と踊ってくれるか?

拷問具『荊棘王ワポゼ』
七つの荊棘が踊るように跳ね廻る
罵詈雑言阿鼻叫喚すら心地好いBGMだ

全てが終われば連れの元へ
なァ、もう一回
図々しいのだっていつもの事


久澄・真
【五万円】

宴の幕引きの合図と同時に四方八方と伸ばす操り糸
挨拶代わりに何体かのヴァンパイアの首でも狙ってやろう

ああ、これは失礼
あまりに退屈な宴にいい加減辟易してきまして
そろそろ本当の血の宴を始めるとしませんか

人間ごとき
下等種族が
聞こえるBGMは変わりなく

クハッ!いい歓声だねぇ
捕食者と決めきっていた自分の立場が瞬く間に覆される
その時の顔が俺は大好物でな
なあ、俺の肉が欲しいか?血が欲しいか?
どうぞご賞味あれ
喰えるものならな

巡らせた操り糸は蜘蛛の巣めいて
絡め捕った獲物を操りヴァンパイア同士喰わせ合う
好きなんだろ?こういうの

ああ、そうだジェイ

振り向いた連れに気まぐれと戯れの色乗せ笑う
『よし』
おあずけ中の犬に許しを出すような言葉と共
ゆるり広げた“餌”としての襟元
走る痛みにも表情は変えず

喰った餌の分は
ちゃあんと働けよ?

言葉と行動はどこまでも軽薄でしかなく
取り出した煙草に火をつけ
従順な犬が遊ぶ様眺める

もう一回だのとほざく連れの顔に
吐き出す煙吹きかけ浮かべた笑み
そしてまた戯れにおあずけを強いるのだ
『まて』


蘭・七結
【比華】

ほんとうの宴のはじまりね、あねさま
御目当ての御方は見附けたかしら
――まあ、ふふ。伯爵を?
ならば、はやく向かわなくては

御機嫌麗しゅう、伯爵さま
此度で二度目の御挨拶かしら
あねさまは、あなたと戯れたいそう
手を取ってはくださらないかしら

わたしを食みたいだなんて
なんて悪戯なあねさまなのでしょう
あなたにならば幾らでも
そう告げるのは、終いを迎えてから

わたしを、と乞うあなた
気高き薔薇を傾倒させるだなんて
嗚呼、なんて甘美な響き
あなたへさえも告げない、わたしだけの秘かごと

愛おしいあねさま
ずっと、ずうと。わたしに溺れていて
醜い笑みを隠し通して
卑しい想いは、この胸の奥に

――さあ、終幕としましょう
最早、この宴に飽いてしまったの
あねさまとふたりきり
ゆうるりとした時間を楽しみたいわ

御食事は館へ戻ってから
ご一緒を、してくださる?


蘭・八重
【比華】🔪○

伯爵様が今日のディナーよ
えぇ、行きましょう

あぁ、伯爵様。素敵なディナーをありがとう御座いました。
でも残念ですわ
これは最高の食事とは言えなくてよ?

貴方の食事には愛が無いわ
私の最高のディナーはなゆちゃんだもの
なゆちゃんの苦痛、嘆き、哀しみ私じゃ無ければいけない
それを食せるなんて夢心地の様
それは愛しているから
ねぇ、私のなゆちゃん
えぇ、大丈夫。今のなゆちゃんを沢山堪能してから終いにね

貴方はそんな食事出来ますかしら?
愛のない他を食す。それは何て可哀想なお方

なゆちゃんの攻撃を受けられる貴方が羨ましいわ

伯爵の顔を両手で包み紅薔薇のキス
今度は貴方が苦しみ食される側
ふふっ、前よりも素敵なお顔よ

傍らに美しく咲く私の妹
嗚呼、早く愛おしい子が喰べたい
えぇ、帰りましょう
あの館へ


オブシダン・ソード
【黒剣】夕立/f14904と

炎属性の魔術を使用
火柱上げたり、僕の魔力を込めた宝石を爆発させたりして場を荒らしにかかろうか
整った場を滅茶苦茶にするのって楽しくない?
接近されたらオーラ防御の魔力障壁で受け流し

夕立が来たら器物をパス
悪いけど先に楽しませてもらってたよ。癖になりそう
場の荒れ方と伯爵の位置を教えて…
僕より君の方が鬱憤溜まってそうだし、料理はお任せするね

あっもしかして僕にも怒ってる?
まあまあその分働くから許してよ

はいはい、任せてよ相棒
こっちは呪いの剣じゃないけどね
その分きっと、よく斬れるよ

剣の振り方を口うるさく指導して、フォロー重視に立ち回り
後は斬撃に合わせてUCを発動
ぶった斬ってあげよう


御園・桜花
控えの間

「貴方達に皆さんを殺されては困るのです…ごめんなさい」
「戦闘が終わるまで、部屋の隅か床に寝そべって頭を庇っていて下さい」

UC「桜花の宴」
侍女達にダメージと麻痺与え一般人が盾にされたり殺されたりするのを防ぐ
敵に肉薄し桜鋼扇で心臓狙い背中迄ぶち抜く大穴開けるか首を叩き折って弾き飛ばす
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す

「最初は貴女達も被害者なのでしょうけれど。皆さんを害させる訳にはいきません。ごめんなさい…何時か願いのまま、骸の海から共存できる命として戻られますよう」

「皆さん、脱出しましょう。他の部屋やホールは、他の方々が制圧した筈です」
同室の6名を逃すのに注力
侍女達への鎮魂歌は後で小さく歌う


矢来・夕立
【黒剣】剣さん/f00250
移動:屠殺部屋→ホール

道を覚えてはきましたがざっくりなんで、ヒントがあるのは良いですね。
爆発音を頼って移動します。
まあ仕事はきちんとやりますから、剣さん。
それにしてもスゴイ滅茶苦茶ですが。楽しかったですか?
ここから先は掌中≪こちら≫でどうぞ。

怒るといえばそもそも。
黒曜の刃物がああも面白おかしく使われてるのが腹立たしいんですよね。
あの短剣がどうなろうとどうでもいいですけど、目障りです。
この場で最も強い黒曜、最も鋭い剣は、これなんで。

西洋剣の使い方は分かりません。前の一回っきりですよ。カバーしてください。
…口うるさいのも今だけは我慢してあげます。
叩ッ斬ってやりましょう。


有栖川・夏介
(正確に時を刻む懐中時計を眺めつつ)
時が…きましたね。それでは、はじめましょうか。
……処刑の時間です。

まずはここにいるヴァンパイア達を片付けなければ。
誰かを救うよりは、殺すほうが得意ではあるのですが……一般人を見捨てるわけにはいかない。
敵が一般人に手をかけようとしたら、すかさず間に入り【かばう】
護る動作を多めにすることで、敵に「一般人を護る動作に精一杯で攻撃できない」印象を与えておく。
その隙にナイフを投げ、攻撃力を上げた【姿なき猫が笑う】で攻撃
「さあ、サヨナラの時間です」

一般人等の治療のため部屋に残ります。
手遊びのようなものですが、一応医療の心得はあるので。
「あとは、まかせます……」


アトシュ・スカーレット
あー、やっと暴れられる!
【怪力/呪詛(腐敗)/属性攻撃(炎)】で枷を脆くさせて強引に外すわ
【早着替え】の魔法でドレスから普段着に変更、【化術】で誤魔化してた髪を元に戻すぜ

意識がない人たちに対して【結界術/マヒ攻撃】で触れようとしたら電撃が走る結界を張っておく
…まぁ、どこまで通用するかわかんねぇけどな

【2回攻撃/呪詛(腐敗)/瞬間思考力/早業/鎧無視攻撃】で最適解な装備で戦っていくわ
結界が破られてこっちが不利?
……そうだな、【属性攻撃(地)】で足元の岩を動かして10秒だけ【時間稼ぎ】するわ
そんだけありゃ…【指定UC】の発動には充分!

アドリブ、連携大歓迎


高塔・梟示
類(f13398)君と

暫く甘いものは避けたいが、首尾は上々

演技を続けつつ状況を見計らい
ドロップテーブルで室内の敵を吊上げる
食込む絞縄でマヒすれば良し
そうでなくとも僅かに時間を稼げる筈

素早く怪力で拘束を解き
預かっていた彼の得物を渡そう
やっとお返し出来たね
どういたしまして、さあ反撃開始といこう

一般人を狙う敵は吊るし
彼の術が編出す幻惑を利用しながら
手近から、鎧砕く怪力籠めた拳を叩き込む

敵を一般人に近寄らせないよう
攻撃は躱さず、痛みに耐えて受け反撃を
弱者を食い物にされるのも
煮込みになるのも遠慮したいのでね

戦闘後は、類君や他の猟兵の手伝いに
治療は出来ずとも彼等を運んだり
手当用の物資調達に役立てたらいい


向坂・要
🔪◎
青(f01507)と

心配する青に大丈夫、と安心させる様語りかけつつ一般人と侍女の間に入るよう心がけ

戦闘開始後は【念動力】や獣形態の夜華などとも協力し手早く味方と協力し侍女の排除

その後は会場へ

「えぇ、確かに」
青のお願いを聞き入れ待機
UC発動後に合わせる様に変化を解きつつ右眼の視線の先、と定義した空間(極力相手の体内を狙い)に極大の炎球を【全力魔法】で生み出し攻撃
炎球はその後、無数の火花となり四方が、追撃を

焼き加減のお好みはありますかぃ?
せっかく調理して貰ったんだ
お礼に吸血鬼のローストなんていかがで?

もっとも不味くて食えたもんじゃねぇでしょうが

常に場を俯瞰で見る様心がけ

アドリブ
絡み歓迎


ヴィリヤ・カヤラ
【幸先】
さっきの痛みはなかなかだったから
伯爵にお礼もしたいけど、
まずはここを何とかしないとね。

幸運が齎されるなら攻撃しながら人を守るのが良いかな。
守るのは他にも猟兵がいると思うし
全員に気を付けなくても大丈夫かな。
届く範囲の人は絶対守るように頑張るよ。
ハクさんの攻撃は当たらないように気を付けて、
出来れば一般人を後ろにして守る位置に立ちたいかな。
幸運で攻撃が避けられちゃうのも予想に入れておかないとね。
UDCの月輪を影で実体化させて侍女が近付かないように、
足を掴んで行動阻害したり縛って捕まえてみたり、
【氷晶】で侍女を倒していくよ。
ハクさんも攻撃に巻き込まれないように気を付けてね。


七那原・望
アマービレでねこさん達を追加召喚。先に屠殺部屋に送り込んだねこさん達と同様に侍女から一般人を結界術で護ってもらい、わたしは分離展開したセプテットの乱れ撃ちとオラトリオの早業で侍女達を手早く処理しましょう。

その後一部のねこさん達には介抱の為に残ってもらい、残りを引き連れ晩餐会場へ。

天井付近に分離展開したセプテットの制圧射撃で猟兵を避けながらヴァンパイア達を殲滅。
ねこさん達にも上から降り注ぐ魔法で支援してもらいます。

敵の注意が上に向いている間に世界で纏めて飲み込みます。

わたしは答えられるけれどお前達は答えられないですよね。
その世界がお前達用の屠殺部屋です。
つまり、不愉快だから苦しんで死になさい。


イーヴォ・レフラ
十雉(f23050)と。
🔪×

俺は何もされてないから大丈夫だ。
それより十雉が心配だよ、
痛みもだけど血も出ていたし
あまり無理はしないでくれよ。

十雉が一般人を守ってくれるなら俺は攻撃に集中しよう。
戦闘は得意じゃないがそうも言ってられないしな。
攻撃や近付いて来そうな敵を優先的に倒していこう。
十雉にはこれ以上の怪我はさせないように、
俺の後ろには絶対に行かせないからな。

ああ、その人たちは頼む。
そっちに一人でも通す気はないけどな。

侍女が何とかなったら伯爵だな。
一発当てられなくても嫌がらせくらいはしないと
気が済まないからな。
【呪殺の黒曜】は入手出来たら欠片も残さないように
電脳空間にでも放り込んでみようか。


迎・青
【要おにーさん(f08973)と】(アドリブ歓迎)
おにーちゃん…ごめんなさい、だよぅ

おにーちゃんを気遣い、【医術】で手当て
周囲の一般人の中に、姉と思しき少女はいないと確認後
一般人を庇いつつ、侍女を風と光の【全力魔法】で手早く倒し、会場へ

「…もってて、「おねがい」」
おにーちゃんに、自分の本体の首飾りを預ける

ききたい事が、あるんだよぅ
教えてくれたら、ボクを…たべてもいいよ

おじさんが食べた中に、ボクと似た子はいた?

――いない?なら…よかった。
(でも、そしたらボクは、要おにーさんをただ傷つけただけ――)

ディンドルフに敵対心を感じさせぬよう、自らを餌にして接触させ
【D.D.D.】使用、光に変じて敵を灼く


宵雛花・十雉
イーヴォ(f23028)と
🔪×

イーヴォ、よかった!
何もされてない?大丈夫?
オレもなんとか平気だよ
ちょっと痛かったけどね、はは…

残念だけど再会を喜ぶ暇も無いみたいだ
まずはこの『控えの間』の侍女を一掃しよう

一般人達の前に立ち塞がるように陣取る
オレは彼らを守ることを優先するよ

結界術を一般人の周囲に張って守護
彼らを攻撃しようとしたり、近付こうとする敵を優先してUCで攻撃する
これ以上絶対に傷付けさせないよ

大丈夫だよ、イーヴォ
オレが後ろにいるからね

侍女を全員倒したら会場へ移動して加勢するよ
うん、そうだね
このまま伯爵に何も出来ないままじゃオレも気が済まない
ぎゃふんと言わせてやろう
怨嗟の炎で料理してあげる


宵鍔・千鶴
【紫桜】

きみが痛み苦しむ姿
心痛に嘘は無い筈なのに
残る甘さも、また

藻掻いて血滲んだきみの掌を
懺悔みたいに掬い取って
もう、離さない、と生の温もり縋る

彼女の毒に斃れる侍女が歯向かうなら
一般人へ及ばぬように燿夜で斬り捨てよう



伯爵、彼女の悲鳴は心地良かった?
でも残念、シャトの一欠片、血の一滴渡す心算無いよ
噫、でも、屹度通ずるところは在る
だから己にも反吐が出る
だって、未だ渇きは癒えない

――惨めたらしく、啼いて叫んで懇願しろ
出来るだろう、憶えが在る筈だ
靜かに、闇を這う声音、嬲る鋏の金属音

此れが物語の主人公なら?
…いや、善悪の概念なんてかなぐり捨て

凡てはこびりついて反響したまま
彼女が上げた悲鳴の分の報いだ


シャト・フランチェスカ
【紫桜】
痛い許してって好きなだけ喚いて
苦しいのは生きている証
其れが良く味わえたよ

余所者にずっと囚われる筋合いもないの
千鶴、今度はきみが僕を捕まえておいてね?

握り返し微笑む
受け入れたのも
死にたくないと思えたのも
きみの牙に委ねたからだ

空っぽの万年筆で毒を穿つ
侍女はいずれ自滅する筈
一般人とは切り離すよう撹乱を試みる



桜の一皿は美味しそうに見えた?
嗜虐趣味も解らなくはないけれど

悲鳴を散々堪能してきた人だもの
きみの味もさぞや上等なんだろうね
言ったでしょ
解らなくはないって

勧善懲悪は物語のセオリーだ
尤も僕らは善なのか
…そんなの瑣末かな

宵の色したきみは美しく
捕食者ぶった傲慢を打ち砕く
僕はそんな話が見たいだけ


ヴォルフガング・エアレーザー
❄花狼
🔪×

食材として身も心も散々痛めつけられた挙句
無残に食い散らかされた犠牲者たち
そして何よりヘルガを傷つけ
その苦痛を嘲笑いながら貪り続けてきた貴様らを
【怒れる狼王】は決して許さない…!

地獄の焔を纏った状態で屠殺部屋の解体係に攻撃
一般人を盾に取られる前に割り込み庇い
人質は傷つけず、敵だけを跡形もなく焼き尽くす

人質の安全を確保したらヘルガと共に主の待つホールへ
並み居る配下を解体係と同様なぎ払い焼却
敵UCで召喚された「犠牲者」はまだ息があれば気絶攻撃
既にオブリビオン化し助からない状態なら諸共に焼き払い浄化

最後はディンドルフに全集中しとどめの一撃
貴様が愉悦として味わった人々の苦痛と恐怖、思い知れ!


ヘルガ・リープフラウ
❄花狼
🔪×

赤黒く染まった壁と血腥い臭い
それだけで、ここで行われた悍ましい所業が分かる
今日までどれほど多くの人々が
先刻のわたくし以上の苦痛と恐怖の犠牲になったのか

この黒くねじくれた享楽を
わたくしは決して許さない

祈り込め歌う【涙の日】
この光は大いなる天の意志
善き人々には救いを、悪しき者共には罰を齎す
人質になど取らせはしない
手出しさせる前に、眩き閃光でその邪眼を焼き尽くす

屠殺部屋の配下撃破後ヴォルフと共にホールへ

共に戦う仲間には癒しと鼓舞を
そして敵には目も眩むほどの光輝で視界を奪い神罰を
ディンドルフ、貴方の目の前にあるそのスープ
一匙たりとも飲ませはしない

黒曜の呪いが齎す残酷劇
今日で必ず終わらせる


リーヴァルディ・カーライル
…首魁の首は宴の場にいた猟兵達に任せて問題無さそうね

…ならば、私は今にも死にそうな彼らの確保と治癒を優先する事にしましょうか

拘束されていた場合は肉体改造術式を使い密かに間接等を外して抜け出しUCを発動
無数の亡霊蝶で屠殺部屋を覆い一般人には精神を浄化する治癒を、
吸血鬼達には犠牲者達の臨死体験をさせる精神属性攻撃を同時に行い、
敵が体勢を崩した隙に懐に切り込み"捕縛の呪詛"を流し込み動きを封じ、
全て終われば心の中で犠牲者達に祈りを捧げる

…お前達を簡単に殺したりはしない

…ゆっくり時間を掛けて味わいなさい
死んでいった彼らが受けた痛みを、ね

…もうこれ以上、苦しむ事は無い。眠りなさい、安らかに…


冴島・類
梟示さん(f24788)

さ、もう大人しくしている必要はない

拘束から解放され梟示さんから得物を受け取ったら、まず礼を
手に馴染むそれ
乗せた信ごと返していただけたことに、ありがとう

ええ、やっと
意識ない人へ視線はしらせ
晩餐会の幕を引きましょう

敵が人を盾や利用しようとする妨害に
鏡片を室内に撒き、彼らの視界を光で乱す
狙いの先からずらし、梟示さんの攻撃の機を作りたい

縄での攻撃と連携し、引き剥がされ吊られた隙に
吸血鬼と人の間に割り入り
庇いつつ破魔の力込めた刀で戦う

喰われるのも、喰わせるのも
ごめんです

戦闘後は
運ぶ手を借りつつ
意識を失っている人々の具合を診て
簡単な応急手当てを

黒曜も持ち主が違えば
違ったのかな

🔪◎


剣持・司
連携 ○

(カガミを召喚し武器を受け取る)
カガミ、結界術を一般人に施しなさい
その後、外から屋敷の窓や扉全てに結界を多重詠唱して張って奴らの逃げ場を奪え

(侍女達の首を斬擊波の弾幕で刎ねて控えの間を出る)

UC発動
私の影達よ
奴らは命の罪を犯した
命の罪は命をもって償わせる
人理で裁けない悪は私の正義をもって裁く

罪には罰を
悪には鉄槌を
1人の例外なく首を刎ねろ
正義を、執行する

(ホールに出たら客や使用人達を分身達が各々属性攻撃で焼き、感電させ、溺死させ、土塊で潰し、凍らせてから首を刎ねて心臓を貫く)

吸血鬼の犠牲者が召喚されたら浄化と破魔の衝撃波で全員を天に還そう
その後、分身達と一緒に奴に斬りかかり全身を切断する


朧・ユェー
【月光】🔪×

近く居る彼女に近く、無事だった事にホッとして

えぇ、どうやここは…
僕は大丈夫ですよ
いいえ、僕こそルーシーちゃんが苦しんでいるのに助ける事が出来なくてすみません
きっと痛かったであろうに僕を心配させまいとする優しい子
そっと頭を撫でて
指の爪を簡単にテープでくるり

帰ったらちゃんと治療です

えぇ、角の方に一緒に居て頂きましょうか
一般人とルーシーちゃんを背に護る様に

屍鬼
噛んだ指の血を飲ませてグールが鬼化していく
今度は君たちがディナーの番だよ

安全なのを確認してから
彼女の手をとってホールへ
さて伯爵はどんなお仕置きが良いでしょうか?
簡単には死なせない
苦しんで自分が喰べられる側を味わって頂かないとねぇ


ルーシー・ブルーベル
【月光】🔪×

薄れかけていた意識を無理やり引き戻す
無事、屠殺部屋に行けたみたい
近づくゆぇパパの姿に微笑んで
パパ、此処に来るまで酷い事されなかった?
…来てくれてありがとう
辛い思いさせてごめんね、パパ

うん…染みるかなあ

室内を見回し
一般人さんを護り易い位置に移動させましょう
壁側とか良いかな
割れた爪が痛むけど
今は構ってられない
『吊られた人』はせめて、下ろして

一般人さんを背に吸血鬼を迎え撃つ
後ろに攻撃は絶対通さない
近づかせないわ
『シロクロのお友だち』

部屋が開放されたらパパと手を取りホールへ
パパをお守りしながら狂った晩餐会に終幕を

主菜はもう並んでいる頃でしょうね
食べるのなら食べられる
それを教えてあげる


枸橘・水織
『控えの間』の状況を確認後、周辺の魔力の捕捉を開始
基本的に一般人の振り…をしつつも…他の一般人を庇うような位置にいて、真っ先に盾にされたりする、殺されそうな一般人を庇ったりする

室内の魔力の捕捉が終わり次第、攻勢に転じる
指定UCを使用して拘束具を創生して侍女の身動きを封じたり、侍女が一般人を殺そうと動いたりしたら、盾や壁などを創生してそれを阻む(究極…アイアンメイデンっぽいものを創生して、侍女を倒すまで一般人をその中に閉じ込めておくという事も…変な仕掛けはありませんw)

その後、一般人を連れて脱出するか、ホールへ援軍として向かう(ホールの魔力の捕捉→UCでの支援や攻撃を行う)
少ない方に参加


佐々・夕辺
夫の有頂【f22060】と

夫が手を振り上げる
私はそうせず、じっと招待客たちを見るわ
獲物の表情が歓喜から絶望へ変わるのを見たいから

あらあら、皆さん「どうなさったの?」
足がふらふらよ?
問いに応えた管狐は、敵の体内で梅の枝に変わって伸びる

ええ、そうよ
あんな紛い物の痛みでは私の夫は満足しないし
こんな調理された肉では私は満足できないの
痛みと血にまみれた肉こそが命を繋ぐのよ

ああ、有頂
もう聞こえていないみたいだわ
でも…呪詛で命を落とすって、なんだかロマンチックね

あらあら、私の夫は足癖が悪い事
往きなさい、管狐
呪殺の力を以て、殺せずとも相手の生命力を削ぐのよ

ところであなた?
其の血は舐めても良いって事かしら?


尾守・夜野
🔪◎
2章にいなかったけれど招待客としてきていたからホールにいるんじゃないかしら?
🔪に関しては興味が多大にあるわね
出来たらゲットしたいわ

「…閉幕にはまだ早いのではなくて?ふふふ悲鳴が聞きたらないの!えぇ本番は此れからでしてよ」
UC発動し、一気に距離をつめましょう
犠牲者は残念だけれど死んでるようなら無視するわ
全部は助けてられないの

立ち止まり皆(剣を鉄扇に変えた物)で切り裂き刻印で取り込み強化に回すわ

人の宿敵を取り込むような事はしないけど取り巻きは別よ

ずっと追いかけてくるなら中に入ってなさいな

直接の攻撃はそんなに得意な人格では無いのだけれど、よい悲鳴を戴く為のスパイスと考えると悪くはないのだわ


カーバンクル・スカルン
🔪◎
車輪ごと詰め込んだのが運の尽きよ……。

自分を指差して車輪を突撃させ、拘束具を破壊しつつ飛び乗って見張りを轢き飛ばし、ホールまで駆け戻るよ。伯爵の前では他の吸血鬼を轢かないように気をつけつつ、また伯爵がボロボロになるのを見計らって。

伯爵これは何事ですか! 突然同じ部屋に連れてかれた奴らが暴れ出して……このままでは! ……そうだ、こんな時こそこの車輪の真価をお見せする時! ぜひこれに繋がれてくださいな!

で、どさくさに紛れて拘束したら仲間の攻撃の渦中に叩き込む。

あれ、傷が治ってない!? あらま不良品だったようですねー、これは失敬。あの場で実演させていただけてれば気づけたんですけどねー?


張三・李四
【玉兎】
【→IN 張三李四】
さて、そろそろ自分の出番であろう。
...正直その辺の死にかけの有象無象などどうでも良いが...今回のリリーの頑張りに免じて、助けてやろうか。

[不意打ち]で侍女に近づき、[武器落とし]で安全を確保してから首を[切断]する
…リリー、これで終いではあらぬぞ?
会場にメインディッシュが残っておる

此度の宴、中々面白いものが見れると思ったが全くもって不愉快であった。死ぬが良い
ディンドルフに対してUCを使用する。

中々にくたびれる依頼であったなぁ...さて、帰りになにか美味いものでも食って帰るとするかリリー。


リリー・フォーゲル
【玉兎】

一般の方を助けないなんて選択肢はリリーにはありません!なのでちょうさんも勿論強制参加してもらいます!体はまだ痛むけれど、リリーは強い子だから我慢ができます!

盾に使われそうな一般人と[手をつなぐ]で守りつつ、[フェイント]で侍女を攻撃します。
ええ、もちろん、ここで守って満足なんてしていませんとも。

趣味の悪い晩餐会、苦しむ人々の波はここで断ち切らねば…
ディンドルフに対してUCを使用します。

もう二度とこんな役割はこりごりですね…ぇ…あれらを見てまだ食欲が湧くんですか…まぁ美味しいものに罪は無いのでたべますけど…!


白神・ハク
【幸先】

作戦は上手くいったみたいだねェ
僕らは守りに徹しようかァ。ヴィリヤちゃんは何ができるのかなァ?
僕はイイコトを齎すコトが出来るよォ
侍女にイイコトが齎すから悪いコトが起きるまでヴィリヤちゃんには頑張ってもらいたいなァ
僕も頑張るよォ。それでいいかなァ?

ヴィリヤちゃん。当たらないように気を付けてねェ
そうしないとヴィリヤちゃんに不運が向かっちゃうかも
僕よりも大きな刃で侍女に幸運の連鎖を齎すよォ
不運が訪れるまで待たなきゃねェ
僕は攻撃を避けながら様子を見ようかなァ

そろそろだよォ。不運が来るよォ
この不運があれば一般人は攻撃されにくくなるかもねェ
んふふ。りょおーかい


エンジ・カラカ
【灰】ホール

ハロゥ、ハロゥ。
やーっとコレとトキワの出番ダ。
うんうん。

指を動かして賢い君のアカイイトを
囮になってくれたカワイイあの子に結ぶ結ぶ。

アァ……賢い君は情熱的だろ…?そうだろう。うんうん。
毒のイト。支給するなら毒の茶がイイと思う。
トキワもそう思わないカ?

さっきまで高みの見物をしていたのに
今度は自分たちが見物をされる番!
頭の高いヤツラは絶対に自分たちはダイジョーブ
って思っているンだ。

アァ……それよりも遊ぶ?遊ぶ?
オーケー!

事前に張り巡らせておいたイトも使おうそうしよう
トキワ、トキワ
合図を覚えているカ?

うんうん。そうだそうだ。

アイツが遅くなっているうちに
もっともーっとあーそーぼ


ハイドラ・モリアーティ
【BAD】
🔪◎

【UNCANYVALLEY】、爆ぜろ

は・く・しゃ・く♡
あらあら、『お残し』はよくないねェ
バンバン屋敷が爆発しててびっくりしちゃう?
――俺の仕業なんだけども!
いやァ、悪いご趣味だ。どれもこれも綺麗に壊そう!
よく言うだろ?芸術は爆発だ!破壊は創造だ!ってね
リフォームして立派な墓地にでもしてやるさ
なんならあんたのお宝を貰う代わりに金を出してやってもいいな
俺は人間にゃ優しいンでね

ハァイ、エコー
痛みを引き受けてくれてありがとう、俺の婚約者ちゃん
そ。俺達グルだったってわけ
騙されてくれてアリガト!おかげで俺ァいつ爆笑しようか悩んでたんだが
こりゃいい。あんたの無様な悲鳴が聴けるなんてなァ!?


エコー・クラストフ
【BAD】
🔪◎

さて、つまらん演技までしてここまで来たんだ
せいぜい怯えてもらうぞ、吸血鬼ども

人質? 好きにしろ
ボクがいちいちそんなものを気にする善人に見えるか? まとめて斬り刻んでやる
……なんてな
【Σκότωσε την Ψυχή】
この剣は肉体を傷付けず、狙った相手の魂のみを斬り裂く
だから誰を盾にしようが無駄なんだよ。消えろ、オブリビオン!

やぁエマ。エマを囮にしなくてよかったよ。アレでも結構痛かったからね
さぁ、本当の宴の始まりだ
吸血鬼。お前の使う呪いとボクの剣、似ていると思わないか?
肉体は傷付けない。だが魂の削れる恐怖と痛みはお前に味わってもらおう
さぁ叫べよ。宴の客に聞かせてみろ。お前の悲鳴を


神埜・常盤
【灰】ホール

あァ、待ち遠しかった
漸く大暴れできるようだ

戦場に天竺を招けば
賢い君の絲を結いつけて
はは、可愛いじゃないか

名案だねェ、エンジ君
さあ天竺、茶を入れてくれ
賢い君の毒をエッセンスに
あ、僕のはそのままで――

吸血鬼諸兄も召し上がれ
毒入り紅茶を楽しめるならね
ティーカップを傾けながら
苦しむ様を悠々と高みの見物

ウンウン、遊ぼうか
勿論、覚えているとも!

エンジ君の指が動いたら
耽溺の爪を鳴らしつつ
吸血鬼どもに飛び掛かる

ほぅら、鬼事の時間だよ
次はお前たちが喰われる番だ
爪で串刺しにしてあげる
吸血で喉と命を潤して

ふふ、こんなんじゃ足りないよねェ
いっぱい遊んで狩り尽くそう
僕も未だ腹が減ってるし、ね


百舌鳥・寿々彦
トモ(f29745)
アドリブ大歓迎

ここどこ?
うーん
取り敢えずあの女の人達に聞けばいっか
出ちゃだめ?
なら、仕方ないか
『毒使い』を駆使して【黒蜘蛛の鎮魂歌】を使用
侍女を刀で斬りつけ刻印を刻む
一般人を殺害、盾にしようとしたら『かばう』

会場でチェンソーを振り回してるトモ発見
なんか凄く不穏な事を言ってるような気がしたけど
聞こえなかった事にしよう
伯爵は全力で殴る
ついでに刻印もおまけしてあげる
さっきのお返しだ
じわじわと身体を蝕む毒の痛み
あんた、そういうの好きだろ?

わー!トモ
やっぱり持って帰る気だろ
駄目!絶対駄目!
さっきの痛みを思い出して冷や汗が出てくる
捨てろー!
ほら、帰るよ
コンビニでアイス買ってあげるから


七・トモ
🔪◎
すずくん(f29624)と一緒さ
アドリブ大好きだよ~

感謝してるよ、伯爵
ともだちっておいしいねえ

セーラー服のスカートをつまんで優雅にカーテシー
食後のダンスでもどうだい?

『夕闇サプライズ』

なんてね

ぎゅいぎゅいーん!
ワハハびっくりした?
さ、悪は成敗しなくっちゃ

あ、来た来た遅いよ遅いよすずくん!
ほらチェーンソーくんが伯爵に襲い掛かっちゃってるじゃあないか!

でも、ナイスタイミングだよすずくん
そのまま捕まえてておくれ
どんな味がするかだけ、ちょっと試してみたいんだよ

ねえ たべられるって どんなきもち ?

安心しておくれよ
きみの悪趣味は、トモちゃんが引き継ぐとも

えー!やだやだ!もっかいやろうよすずくん!


日東寺・有頂
妻の夕辺(f00514)と

伯爵さんにあわせて血濡れた腕ば振り上げりゃあ
そん優雅なお御足に、斉しく極小針が突き刺さる

あがんチマい皿じゃ足りんばい
オイどん(俺達)猟兵健啖揃い
特にうちの嫁さんはくちン中に血汁ば溢れさせんと食うた気がせんのやって
ほれ 飢えと欲望がもたらす呪詛ば、アンタら飲み干したとやろう
な〜〜聴いとっと?
聴いたら皆々麻痺毒と呪詛で寝んね死なんね

流石の伯爵しゃんはまだ立っとっと?
立ってようが這いつくばってようがソバットor踏みつけでこっち見んなと猿真似阻止!
ばってん腐ってもディンドルフ
バフデバフ盛り盛りでオーバーキルさせて貰います〜〜!

代償の流血で嫁に悦んで貰いたかったんは内緒です



――軽く、手を叩いただけのつもりだった。

 だが会場に聞こえるはずの小気味いい音は、実際には誰にも届かなかった。簡単なことだ。それよりももっと大きくて、派手で、破壊に満ちた音が、拍手を待たずに会場中に響き渡ったからだ。それに合わせて鳥籠の歌声よりも一層耳障りな悲鳴が、ナイフが料理を刻むよりもけたたましく陶器の割れる音が、爆炎と共にダンスホールを包み込む。

明日もまた続くと信じてやまなかった宴が、今ここで終わりを見る。
何もかもを壊し尽す、終わりの宴が始まりを告げる。

――その事実を突き付けられた伯爵が、憤怒を持って牙を剥いた。



◆Side 控えの間◆
 宴の間で起こった爆発が、2階の控えの間にも振動と共に伝わってくる。――これはその、ほんの数刻前のこと。元は豪奢な貴族の寝室を、今は明日の食材を転がし雑魚寝させるために開放した「控えの間」。そこで侍女の目を盗んで、ひそかなやり取りが交わされていた。

 疲労困憊を装い部屋にたどり着いたシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が、四王天・燦(月夜の翼・f04448)の手を借りながらゆっくりと一般人らしき少年少女たちへ歩み寄る。中でも最も消耗が見て取れる金髪の少女へ近寄ると、その青白くこけた頬に思わずシホが涙を流した。いったい今までどれほどの仕打ちを受けてきたのか。苦し気に呻くのをほんの少しでも癒そうと、その手にロザリオを握らせて祈る。すると僅かに眉間の皺が和らいだようで、シホと燦が顔を見合わせて喜んだ。そのまま手持ちのポーチから幾つか包帯や薬品を取り出して治療に取り掛かろうとしたら、今までぺちゃくちゃと喋るばかりだった侍女のひとりがまぁ!と驚く声と共に歩み寄ってきた。
「ちょっと、貴女そこで何をしているの!」
「何って、治療だよ。」
「ハァ?治療ですって?一体誰の許しを得てそんな…」
「伯爵だ。食材として役目を果たした代わりに、ちゃーんと許可は得てるんだよ。食材を長持ちさせてやるんだから、いいよね?」
 嫌味を込めた燦の牽制に初めは訝し気な視線を向けていた侍女たちも、中にホールでのやり取りを覚えていたものもいたらしく、それなら…と渋々入口の警護、とは名ばかりのお喋りへと戻っていく。
“――大丈夫です、私達は貴方達を助けに来ました”
 その裏で念動力を応用した念話を介し、シホが集めた少年少女たちに優しく声をかける。初めて聞く思念での会話に驚いて声が出そうになった黒髪の少年には、燦が侍女に見えない角度からしー、と指に手を当てて、安心させるように笑って見せた。
“もう少ししたら、ここで戦闘が始まります。でも安心してください。ここにはあなた達を助けるために来た仲間がたくさんいます。絶対に貴方達を傷つけさせたりしません。必ず無事に、家に帰れます。…だから、もう少しだけ我慢できますか?”
 ゆっくりと冷静に真摯にシホが語り掛けると、もう二度と見ることの叶わないと思った希望を前に、ひとり、またひとりと子供たちが啜り泣きながら、こくりと頷く様子が見えた。
「ちょっと煩いわよ。静かにやってよね!」
「消毒液が染みたんだってさ。ま、大目に見てよ」
 侍女たちの非難も燦のフォローを盾に退け、シホが涙を流す子らを一人ずつ丁寧に治療していった。

 さめざめと零す涙の音が引き寄せたのか。岩元・雫(亡の月・f31282)がふつりと途切れていた意識を戻して、薄らと眼を開けた。横たえられたシーツは寝具というにはあまりにも簡素だったけれど、床に近いぶん冷たさを帯びていて、それが場違いな程に心地良く感じられた。それはきっと、痛みに体が火照ったせいなのだろう、と長い爪で腕をさすった感触でようやく分かった。――熱の様に感じる程の痛みなんて、初めてだった。忘れたことも、切り捨てたものもたくさんあるけれど、今を生きる身に刻まれた初めては、震えるほどに骨身に堪えた。それでも内を損なうほどのダメージになってないのは、幸いだった。きっとそれは喉元に光る橄欖石のお陰かな、なんてことも、今は思うにとどめるばかりだけれど。
(…ともかく、きちんと控えの間に来られたみたい)
 不安だった行先も、控えの間に下げろと言われていた幾人かの顔が見えて、ほぅと安堵の息をつく。不幸中の幸いって奴かな、と胸の裡でだけ小さく呟いて、唇に音として乗せるのは言葉でなく、唄。
(さて、手早く御仕事と行きましょうか――柔い音色を聴かせましょう)
不安そうに、儚げに。明日をも知れぬ人魚の手慰みに聞こえるよう、細くほそく。それが血を吸う鬼には毒だと知れぬよう、さめざめ泣く子らの体をゆっくりと温め癒すものだとわからぬよう。密かに甘やかにただひたすらに、部屋を満たす様に紡ぎ続けた。――其は、深き海へと堕つる合図。

―― ♬ ♪

 次々運ばれて来る人々の姿は様々で、最初は判別がつけられなかった。でも眸に篭る彩で、彼らが“どちら”側なのかが分かった。明日をも知れぬと暗く澱んだ瞳は、犠牲となった一般人の。そして怯えや悲しみを演じた底に、反骨の色を残すものは――目的を同じくする、猟兵の。ひふみの、と来るたびひっそりと数えて行けば、思いの外その人数は多かった。そのことに、旭・まどか(MementoMori・f18469)が小さく安堵の息を零す。これならば部屋の侍女と戦闘になったとしても、戦力差は十分だろう。為れば自身がする事は左程多くは無かろうと算段を付けて、未だ怯え震えた食材の振りをつづけた。庇護される側を強調し、治療を受ける振りをしてなるべく一般人の傍へと近寄っていく。傷をいやしてもらえた子らは、皆が涙を零し、小さく啜り泣いていた。――そうやってか細く震える声でも、出せるなら未だ良い。今啜り泣く子らはきっとここを越えれば、日常を取り戻せるだろう。だがその中に、声すら出ずに震えているおさげの幼い少女を見つけて、まどかがいっそう近くへと寄る。恐怖にすり切れたのか、治療を受けてもまだ暗く瞳に光の射さない様子に――そっと手を伸ばして、瘦せこけた手を握る。大丈夫だと、必ず助かると声を掛けるのは容易い。けれど疲弊しきった今の少女の心には、きっと何かを信じることすら苦痛に感じるのだろう。なら、今できるのはこうして寄り添うことだけ。傍にいることを、寒くて震えることが無いことを、ほんの少しでも伝える様に。暫しそうしていたら、細い肩から少しずつ震えが消えて、握る手に温かさが戻っていくのを感じた。

「おにーちゃん…ごめんなさい、だよぅ」
「気にするな、青」
 部屋で再会できたおりに、迎・青(アオイトリ・f01507)が向坂・要(黄昏通り雨・f08973)へ一番最初に述べたのは――謝罪だった。何の責めることもなく、青の話に付き合って、要はこんなに危ない場所まで来てくれた。食材役を買って出て、痛く苦しい想いもさせてしまった。なのに今部屋を見渡しても、探していた青の姉の姿はどこにも見えない。元々この依頼に飛びついたのだって、当てのない話だったのだ。かもしれない、もしかしたら、という不安に掻き立てられただけの先走り。それでも――何でもない、と許してくれる。やりたいように、と背を押してくれる要の心が嬉しくて、苦しくて。せめてほんの少しでも、食べられた時の痛みが和らぐように。青が要の手を優しく握りしめた。

「いたっ、痛いったらカムイ!」
 それこそ吸血鬼の如く、誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)の頸筋に歯を立てて、朱赫七・カムイ(厄する約倖・f30062)が溢れる血をぞろりと舐めとっていく。――噫、いま甘美な巫女の肉を食んでいる。先程ホールで味わった愛しいサヨの、その味が焼き付いてならない。あんな掠める程度では余計に欲しくなってしまうばかりで、制御しようにもつい噛み後が深くなる。
「そ、そんなに首筋噛まないで」
 周囲の目がある以上声量は控えているが、櫻宵の静止する言葉は届いているはずだった。なにせ耳元で囁いているほどの距離なのだ。だがカムイは止める気配を見せず、もう一度がりりと歯を立てる。怒り狂う神を鎮めるというのも巫女の役割ではあるけれど、つい先刻あんなに味わったばかりだというのに、怒りは鎮まるばかりか激しく猛る一方だ。
「…可笑しいな、私は人喰いの神ではないというのに」
 ほんの一瞬肌から離れた隙に、吐息と共に零すのはそんな是非を問う言葉。びくりと背を震わせてから、櫻宵がカムイの頬に手を当てて視線を合わせる。
「これがお仕置ってことなら…残りは帰ってからうけるわ!…だから今は我慢して」
 そう言って合わせる額の熱が、昏く澱んだ気持ちに僅かな光明を燈す。本当はまだ真意の一つも届いていないけれど――之は、怒り故ということにしておこう、とまた一つサヨに噛み痕をつけてから口を離した。

 部屋の対角では、鳥籠と試食係に別れた後の再会を喜ぶ友の声が上がる。
「イーヴォ、よかった!」
 心配を隠さない宵雛花・十雉(奇々傀々・f23050)の呼び声に、後から控えの間へと連れられたイーヴォ・レフラ(エレミータ・f23028)が気づいて歩み寄る。
「何もされてない?大丈夫?」
「俺は何もされてないから大丈夫だ。それより十雉が心配だよ、痛みもだけど血も出ていたし…」
 自らのことはそこそこに、案じる様に傷口を窺うイーヴォに十雉も苦笑を浮かべながら首を振って見せる。
「オレもなんとか平気だよ。ちょっと痛かったけどね、はは…」
 それは、ほんの少し強がりも入った返答だ。けれど怖かったことも痛かったことも事実だけど、こうしてイーヴォに再会できた今、心が落ち着いているのも本当だったから。だからこそ、苦くとも笑えているし、平気だと伝えられる。
「…でも残念だけど、再会を喜ぶ暇も無いみたいだ」
「ああ…そろそろ、だろうな。でもあまり無理はしないでくれよ。」
「うん、ありがとう。」
 互いへの気遣いもそこそこに、人数の増えた控えの間で、ふたりが静かに“開幕”の時を待つ。

「――シャト、」
 呼ばれる声に、思わずシャト・フランチェスカ(殲絲挽稿・f24181)の細い肩が跳ねた。知らず俯いていた視線を上げれば、急いて歩み寄る宵鍔・千鶴(nyx・f00683)の姿がみえた。
「怪我は、…――」
 大丈夫か、痛みは平気か、と問おうとして千鶴の喉がきゅうと詰まる。大丈夫なわけが、平気なわけがない。あれだけの苦痛を味わって、いや味あわせておいて、と自責の念を感じて千鶴が顔を顰めれば、シャトが察したようにふるりと顔を横に振る。痛い、許して、と喚きはしたけれど、そうやって好きなだけ口にできるのは、苦痛を苦痛ととらえられるのは、ひとえに生きているからこそ、だ。
「…苦しいのは生きている証。其れが…良く味わえたよ」
 そう言って目を伏せるシャトの様子に、千鶴こそが痛みを抱えたかのような顔で歯噛みした――シャトが痛み苦しむ姿には、軋むほど心が痛んだ。そのことに嘘は無い筈なのに、痛みが引いた後にまるで砂地に跡を残すような忘れがたい甘さがあることも、背けようがないほど本当で。懺悔するが如く頭を下げて、血が滲むシャトの手を痛まないように優しく、強く握りしめる。
「…もう、離さない」
 藻掻いた証の傷跡は、きっと暫く残るだろう。そう思えばやはりまた、胸に痛みと甘さが押し寄せる。だけど離さないと誓う今も本当だと重ねれば、シャトがぎゅうと手を握り返して微笑む。
「余所者にずっと囚われる筋合いもないの。千鶴、今度はきみが僕を捕まえておいてね?」
 ――受け入れたのも、死にたくないと思えたのも、きみの牙に委ねたからだ。ならば果てまで共に歩こうと額を寄せれば、千鶴が今一度その手を引き寄せた。

――さあ、――しずめ ♪

 そして時は巡り、その瞬間は訪れる。広間からの爆音と衝撃が伝わり、共に控えの間にいた者たちが不安と恐怖の声を上げる。だが悲鳴を上げたのは6人だけ。それ以外は機を悟ったように立ち上がるものがほとんどだった。目的を同じくして囚われることに甘んじた、猟兵たちの姿。そんなことも知らず爆音に慌てた侍女たちが扉に向かうのと、その背を狙って数人の猟兵が駆けるのは同時。
「伏せて!」
 シホによる事前の念話である程度の意志が伝わっていたおかげか、食材役の少年少女たちが掛け声に従って一斉に床に伏せる。
「ようやく来ましたか。…車輪ごと詰め込んだのが運の尽きよ……。」
 唯一拘束具で武器ごと部屋に収容されていたカーバンクル・スカルン(クリスタリアンのスクラップビルダー?・f12355)が、爆音に待ってましたとばかりに笑い声をあげて、自らを指さす。その動きに合わせてベルトでがっちりと封じられていた武器、カタリナの車輪が急にギャリリ、と高速回転をしながら自らとカタリナの拘束を同時に破壊する。
「ふぅ…ようやく抜け出せた。では、まずはホールの伯爵にコレを披露しないと!!」
 ぐっぱで体に傷がないことを確認すると、威勢よくカタリナの車輪に飛び乗って、侍女ごと引きかねない勢いでカーバンクルが扉に迫っていく。余りに突然で大ぶりな攻撃には侍女たちからギャア!と悲鳴は上がったものの、なんとか退いたようでこけるぶつかる以上のダメージは見えない。だが代わりに二度と開閉できないほどのダメージを扉に与えてから、カーバンクルが我先にとホールへと繰り出した。
 カーバンクルの脱出騒ぎに乗じて既にいつでも飛び出せるよう構えていた剣持・司(正義を名乗る者・f30301)が、一つ指で招き寄せるのは白い鴉。
「カガミ、結界術を一般人に施しなさい。その後、外から屋敷の窓や扉全てに結界を多重詠唱して張って。――奴らの逃げ場を奪え」
 カガミ、と名前を呼んで命じれば、鴉は委細承知とばかりに翼を広げて飛んでいく。まずは部屋で蹲る一般人への“守る為”の結界を。そしてそのままするりと窓を抜けて城全体に施すのは“閉じ込める為”の結界を。罪なき人は何に変えても守り抜き、悪しき者は何を差し置いても挫く。まるで司自身を体現したような結界が張り巡らされ、今や城はヴァンパイアにとっての牢獄となり果てた。そして一般人を守るための結界は、更に。
「ねこさん達、来てください!」
 鈴の付いたタクトを振るい、七那原・望(封印されし果実・f04836)が魔法を帯びた猫たちを呼び出す。にゃあと鳴き声を上げながら、呼ばれた彼らは望の命じるまま、事態を呑み込めずに怯える一般人を見つけるや寄り添って更なる結界をはっていく。そうして幾重にも守られたのを確認してから望が懐より取り出すのは七つの異なる銃で構成された武器、セプテット。幾つもに分離し空に展開させたそれらで入り口付近を乱れ撃てば、更なる奇襲に侍女たちが慌てふためき、またひとりが打ち抜かれて倒れ伏した。それでも致命傷にはわずかに遠かったのか、床を這いずり報復に迫る侍女の首を、颯の如き一線で司が首を跳ね落とし、叶わぬものとした。
「なによこれ、反逆!?」
「え、でも逃げた奴以外には武器なんて持たせて…」
「きゃあ!リヴィエラがやられたわ!!」
「うそっ、どうすれば…い、一応こいつら食材でしょ?」
「あんた馬鹿なの!?あいつら逆らってきたのよ!それならみんな――みんな殺しちゃえばいいのよ!!」
 今まで一度としてなかった食材たちの反逆に囀り慌てる侍女たちが、最後の一言で動転を殺意に、驚きを怒りへと変えて牙を剥いた。
「カムイ、まずはこの子からお仕置すべきでしょ」
「…噫、ひとの子は守るべき存在であるからね」
 未だ少し機嫌の直らないカムイも、櫻宵に促されて状況を見れば剣を振るうにやぶさかではない。既に十分施された一般人への結界に、更に幸を願う様に守り重ねれば、互いに背合わせで侍女へと向き合う。
「散々食べるところ見てきたんでしょう?――なら、あなたも食べられてしまえばいいの」
 ひとこと詠って櫻宵が微笑めば、桜に染まる瞳が蜜ととろけてひとりの侍女の視線を奪う。離せず、逸らせず、喘ぐように侍女が喉を毟れば、その度に櫻宵の纏う桜は美しさと数を増していく。――桜の下には死体が埋まっていると、まことしやかに紡がれる怪談の如く。そして奪われるだけを良しとせず、爪先伸ばして反撃にでた侍女の手も、ずっと守る様に控えていたカムイの一言で不発に終わる。
「不運の神罰を降らせてやろう…一般人を殺すはずの刃は、不運にも自らに突き刺さった、とかね?」
「ハァ?何言って…ギャッ!!?」
 確かに敵へと伸ばしたはずの手が、気づけば反転して自らの胸を刺し貫いている。そんな騙し絵のような光景にうそだ、とか細く呟けば、それが捕らえた侍女の最後の言葉となり――カムイが、ことりと首を跳ねて仕舞いとした。

――罪無きひとは、優しい眠りへ ♪

 血が舞い銃弾が飛ぶ最中にも、助けに回る者も多くいた。
 枸橘・水織(オラトリオのウィザード・f11304)もまた彼らに被害の及ばぬよう、部屋の隅へと呼び集めていく。
「大丈夫、私達は貴方達を助けに来たの。暫くは戦いになるけど、必ず守るから」
 安心させるようににこりと微笑みかければ、既に事態を飲んだ食材役の少年少女たちは大人しく誘導に従い、ベッドと壁に囲まれた位置へと落ち着いた。空いた一方には水織自身が壁となり立ちふさがって敵へと目を配る。いざとなれば床や壁を変形して、迎撃できる算段はある。きっと大丈夫と気をはって前を見ていると、そこへ歩み寄ってくる姿に思わず水織が一瞬身をこわばらせたが、その姿が侍女のものでは無く――先程まで同じように食材として振る舞っていた人だと気づいて、警戒を解いた。
「その人たちの守りなら、オレもそっちに回るよ」
 一所に集められた一般人を見て、十雉が結界術を張りながら敵との間へ庇うように立つ。その姿を見てイーヴォが更に前へと出て、十雉の守りよりも敵の牽制に回る立ち位置へついた。
「大丈夫だよ、イーヴォ。オレが後ろにいるからね」
「ああ、その人たちは頼む。そっちに1人も通す気はないけどな」
 背を預け、前を見据え、守るべきものは同じと並び立つ。その姿に水織がホッと胸をなでおろし、自身もまた周囲の警戒へと戻った。
「作戦は上手くいったみたいだねェ」
 緊迫した戦場にあっても、いつも通り伸びやかな声で、白神・ハク(縁起物・f31073)が隣立つヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)へと目くばせをする。
「さっきの痛みはなかなかだったから、伯爵にお礼もしたいけど…まずはここを何とかしないとね。」
 興味深い経験だったし、色々と味あわせては貰ったのだ。きちんと“お返し”はしたいところだと侍女たちが集まる扉を見れば、ハクがへらりと笑って指を立てた。
「僕らは守りに徹しようかァ。ヴィリヤちゃんは何ができるのかなァ?僕はイイコトを齎すコトが出来るよォ」
「幸運が齎されるなら、攻撃しながら人を守るのが良いかな。」
 ならば、ハクは水織と共に残って警戒にあたり、ヴィリヤが一歩前に出て迎え撃つ体制を取った。
「届く範囲の人は絶対守るように頑張るよ。」
「んふふ。りょおーかい」
「――なに、のんびり話してんの、よッ!!」
 味方同士のんびり話しているように見えたのが気にくわなかったのか、既に腕を撃たれて血を流しながらも、苛立ちを隠しもしない侍女が一人、人質の集まる一角へと飛び掛かってきた。雑にベッドを乗り越え、ぎゅうと人の押し込まれた壁際へ迫ろうと着地した途端――その足を、影が掴んだ。
「――きゃっ!?なに、これっ…!!」
「UDC、って言っても分からないよね。まぁどっちにしても関係ないかな」
 がっちりと掴まれ逃れられず、躍起になっている侍女を尻目に、ハクがくぅるりと指を回してヴィリヤへと告げる。
「そろそろだよォ。不運が来るよォ。ヴィリヤちゃん、当たらないように気を付けてねェ」
「ほら、もう終わりみたい。それじゃあ」
 それに合わせてヴィリヤも自らのユーベルコードで氷の刃を呼び出し、侍女へと向ける。ひやりと背筋の凍る死の予感に、遂には自らの足を切り落とし、場を逃れようとした――はずなのに。その途端天井ががらりと崩れて侍女に降り注ぎ、逃げることすら叶わなくなる。普段ならありえない、示し合わされた不運に歯噛みしたところで。
「さようなら、侍女さん」
「せめて苦しまない“幸運”に恵まれてると良いねェ」
 体を貫く刃が、血も肉も凍らせて――もう、何もかもが遅かった。

「リーゼリット!?もうっ、どうしてこんな…!!…さっきからずっと体がままならないのも、アンタたちの所為ね!?」
 ひとり、またひとりと仲間が倒れる様子に、赤毛の侍女が苛立ち紛れに叫びをあげる。そう、戦闘が始まる前から今日は妙に体が重い気がしていたのだ。おしゃべりをしていても疲れているのか、ふと歌が耳に届くたびに舟をこぎそうになるほどで。
「そう、ずっと聞こえてたのよ……、歌?」
「…ふふっ、ようやく気が付いた?」
 そういって涼やかな笑い声と共に、雫が臥していた褥からむくりと体を起こした。ずうっと続いていた細い細い、絹糸のような歌。明日失う命を嘆いて、故郷をしのんで歌う食材など今までも吐いて棄てる程いたから、侍女たちは気にも留めなかった。――そう。
「可哀想な人魚が、気紛れに歌を紡ぐくらい…だぁれも疑問に思わなかったでしょう?」
 くすくすと哂う雫の言う通りに、だ。

――罪深い怪物は、永遠の睡りへ ♬

「『食べ物』に抗われた気持ちは如何?」
「…こ、のっ!馬鹿にしてッ…!!」
 侵食してくる眠気にぐらぐらと頭を揺らしながら、ならばせめて逃げるだけでも、と鬼気迫る様子で扉の方へ突進する侍女の前に、隙を窺っていた御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)がおっとりとした雰囲気とは想像も付かない速さで肉薄する。そして申し訳なさそうに、拒絶の言葉を口にした。
「貴方達に皆さんを殺されては困るのです…ごめんなさい」
 メイドらしい所作と涼やかな声で謝りながらも、次の瞬間繰り出されるのは一撃必殺の大断撃。侍女へ向かって踏み込んだ一足は力強く、そのまま命を奪わんと振るう桜鋼扇はなお威力を纏い、狙いを付けた左胸から背中までをぶち抜く程の一撃を浴びせた。
「がっ…ゴフッ…!!」
 逃げ出すつもりがまさかの大ダメージを喰らい、侍女が喘いでがくりと膝を付く。
「最初は貴女達も被害者なのでしょうけれど。皆さんを害させる訳にはいきません。
ごめんなさい…何時か願いのまま、骸の海から共存できる命として戻られますよう」
「…ッ、いや!いやよ!まだ死にたくない!!こんな形じゃ死ねないわ!!」
 並の人間ならば即死でもおかしくない怪我を負いながら、そして骸の海より戻った命無き身でありながらも、尚も現世にしがみつかんとする侍女の叫び。その決死の思いが目の端に捉えたのは、鮮血に白いシャツを汚したまどかの姿。
「――せめて少しくらいは道連れにしないとねぇ!?」
 伸びる凶刃を前に、一般人を盾にされまいとして、まどかがわざと侍女の腕の内に囚われた。瞬間まどかの使役するヴァンパイアたちが助けに回ろうとしかけたが、あえてそれをまどか自身がさせないように念じて押さえた。常闇から呼んだ彼らに命じたのは、あくまでも一般人たちの守り。今こうして人質を取ろうと躍起になったものが居て、他にも生き残った侍女の姿がある以上、なおさら守護を薄くすることはできない。
 僅かに走った緊張の中、ただひとりエコー・クラストフ(死海より・f27542)だけは気にした様子も無く、すたすたと人質を取る侍女の前に歩み出た。そして明らかに威嚇ともとれる動作で剣を2度、3度と腕慣らしのように振るった後、どうでもよさそうに吐き捨てた。
「人質?好きにしろ。」
「…ハァ?」
 破れかぶれとはいえ、動けないだろうと踏んでの行為を、あっさりと切り捨てられて侍女が呆けた声を出す。
「あっ、アンタたちはこいつら助けに来たんでしょ!?だったら…!」
「正確には城主を倒しに、だ。それに…ボクがいちいちそんなものを気にする善人に見えるか?」
 心底呆れたように溜息をついて、冷めた青い瞳を細めて向ければ、交渉の材料にならないと悟った侍女がギリッと音が鳴るほどに歯噛みする。その――侍女の目が、ほんの一瞬逸れた時、エコーがまどかへと意図を込めて視線を送る。
(策はある。そのままでいろ)
 出入りの猟兵を瞳の彩りで読んでいたまどかが、エコーの意図を正確に読み取って、頷く代わりにゆっくりと瞬きを返す。そして直ぐに怯えた一般人の振りを続けて、侍女の腕に大人しく囚われていると。
「いいわよ、もう!なら――盾に使うまでよ!」
「じゃあ、まとめて斬り刻んでやる」
 羽交い絞めにしたまどかを前に押し出し、自らは爪を伸ばして侍女がエコーへと突進する。その動きを冷静にとらえて剣を突きだせば、まどか諸共に侍女が貫かれて――。
「……なんてな」
 先ほどまでの冷酷な物言いとは違った、してやったりの悪戯心が滲んだ声音。見た目には確かにふたり共がエコーの剣に貫かれたように見えたが、まどかには感じる痛みも傷口もなく、逆に侍女は悲鳴を上げながら崩れ落ちた。
「あああああああ痛い痛いああ!なんで!?なんでアタシだけこんな…!!」
「Σκότωσε την Ψυχή…この剣は肉体を傷付けず、狙った相手の魂のみを斬り裂く。…だから誰を盾にしようが無駄なんだよ。」
「な、によ…それっ…!」
「これ以上話すことはない。…消えろ、オブリビオン!」
 怒りに狂えどすでに満身創痍、ましてや魂にまで罅が入ったまま戦えるはずもなく――次に振るう斬撃で、侍女が悔しげな顔のまま絶命した。
「囮役助かった。驚いただろう?」
 まどかを崩れ落ちる侍女から引きはがしながら、エコーが何とはなしに尋ねると、思いのほか冷静な声が返ってくる。
「そんなところじゃあないかと思っていたから、平気だよ。彼らも無事だったし。…それよりも、戦闘は任せたから」
「ああ、彼らの守りはそちらに任せる」
 手短な確認と、小さな約束を交わして。二人がまた、各々の思う場所へと戻っていく。

「ここどこ?うーん…」
 他の者から明らかに猟兵だろう、と思われたのか。ベッドに転がされたままだった百舌鳥・寿々彦(lost・f29624)が騒がしさに耐えかねて、ようやくむくりと起き上がった。ひとまず当たりの状況を確認すると入り口付近の戦闘、幾人かの猟兵に守られた様子の一般人たちに、既にここが戦端の開かれた後の控えの間だと分かる。なら、寿々彦が行くべきこともやるべきことも、扉の先に在る。ひょいとベッドから飛び降りて、攻撃の機を窺っていた青い髪の侍女へとこともなげに――質問を投げかけた。
「ねぇ、こっから出ちゃだめ?」
「ハァッ!?い、いいわけがあるかっ…!!」
「そう。なら、仕方ないか」
 当たり前のように訊ねられて面食らった侍女へ、重ねて当然の様に寿々彦がトン、とその額を弾く。予備動作のなさに防ぎ損ねた侍女が下がって額をさするも、傷もなければ血の滴る様子も無い。だが寿々彦の目には侍女の白い額に刻まれた刻印が映る。毒を注ぎ込む黒い蜘蛛の印。それが一度ドクン、と脈打ったかと思うと侍女の体中の血管が蜘蛛の巣の様に怒張し、口からはごぽりと血が溢れ出した。
「…さて、そろそろ自分の出番であろう。」
 侍女が床を赤く染める姿の僅かに後方では、人格を城門前のものに戻した張三・李四(MISSING・f29512)がゆるりと立ち上がる。既に救助と守りの手を得た一般人たちに目を向けるものの、その色は酷く冷めている。
「…正直その辺の死にかけの有象無象などどうでも良いが」
「一般の方を助けないなんて選択肢はリリーにはありません!なのでちょうさんも勿論強制参加してもらいます!」
 巻き込まれても気にしないと言いたげな李四に、被せ気味にリリー・フォーゲル(みんなの食材(仮)・f30316)が否定の言葉を重ねた。
「体はまだ痛むけれど、リリーは強い子だから我慢ができます!」
「…ならば今回のリリーの頑張りに免じて、助けてやろうか。」
 溜息交じりに不承不承ではあるが、とりあえず助けることへ同意した様子の李四にリリーが満足そうに笑う。その僅かなやり取りの隙を縫って毒に侵され死にかけていた侍女が、破れかぶれに一般人に迫らんとする姿がみえてリリーが戦慄に耳を震わせる。だがその伸ばした爪先が一般人にふれるより早く、まるで騙し絵の様にとんっ、と侍女の首が落ちて毬の如く絨毯を跳ねた。
「…リリー、これで終いではあらぬぞ?」
 不意を突いての一撃でそっ首を落としながらも、尚揺らぎなく冷静に――いや、ほんの少し楽し気な色を乗せて李四がリリーへと笑みを向ける。
「ええ、もちろん、ここで守って満足なんてしていませんとも。」
 ホールにはまだ本命が残っている。そこへ辿り着くまではへばれない、と一層の気合を入れて、リリーが李四へと頷いて見せた。

 かくて控えの間にいた侍女たちは全て倒され、やがては死体も霧散するように消えて行った。暫し待機して様子を見るも部屋に送り込まれる新たな敵の気配はなく、また食材として囚われていた一般人の子らも守りに回った者たちの手と、手厚く幾重にも張られた結界のおかげで新たに傷を負うことはなかった。すぐに救護と彼らの保護へ回る者が数名名乗りを上げるのを見て、残る大半は任せたと後を託し、ホールへと駆けて行った。

「――おにいちゃんは、どこかいかないの?」
 幾人かと共に部屋に残って治療にあたっていたまどかが、先ほど寄り添っていた少女に尋ねられて、安心させる様に目元を和ませながら答えた。
「なに、僕ひとりが居ない所で大した戦力差にはなるまい。君も彼らの腕っぷしは見ていたでしょう?」
「うん、びっくりしたけど、みんなつよかったね」
 喋れるようになったのか回復の兆しか、まだ表情は固いながらも、まどかの言葉に頷く様子は普通の子供のように見えた。
「――それに、他にも頼りになる“仲間”がいるからね」
 そう言ってまどかが眼裏に描く色彩は、金の稲穂のような髪と、青空の瞳。きっと彼女も自らの役目を全うしているだろうと信じて、引き続きけが人の治療へと戻っていった。

◆Side 屠殺部屋◆

――薄れかけていた意識を無理やり引き戻す。
くるりと辺りを見回せば、何処か湿った空気の流れた石畳の部屋に寝かせられていることが分かって、不安と同時に僅かな安堵も覚えたルーシー・ブルーベル(ミオソティス・f11656)が密やかに息を零す。
「…無事に屠殺部屋に行けたみたい」
「えぇ、どうやここは…目的の場所のようです」
 小さく独り言を呟いたつもりが、思わぬ近くから返事があって驚いたようにルーシーが顔を跳ね上げる。が、すぐに瞳からは驚きがぬぐわれて、喜びと――ほんの少しの罪悪感が滲む色に塗り替えられた。
「パパ…よかった、近くにいて。此処に来るまで酷い事されなかった?」
「僕は大丈夫ですよ」
 会場の演技のように“兄”ではなく、いつも通りにパパと呼ばれて、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)もまた安堵したように少し瞳を細めた。
「…来てくれてありがとう。辛い思いさせてごめんね、パパ」
「いいえ、僕こそルーシーちゃんが苦しんでいるのに助ける事が出来なくてすみません」
 依頼の内容を聞かされた時から、互いにある程度の覚悟はしていた。それでもやはり実際に苦しむ姿を目にすれば、見せつけてしまえば、おのずから湧き出る想いには苦いものが混じった。ユェーがそれを無理に飲み下しながら、指先に血を滲ませたルーシーの手を取って、簡単にではあるがテープでの治療を施す。
「帰ったらちゃんと治療です」
「うん…染みるかなあ」
「かもしれません。でも…必ず綺麗に治りますから」
 苦く笑うルーシーの頭を撫でて、ユェーが少しでも痛まないようにと願う。その願いにも似た言葉に、ルーシーが頷きながら向けたのは――今日浮かべたどの表情よりも、優しいものだった。

「ぐっ…」
 薄暗い部屋、生臭い匂いの残る床の上で、呻き声を上げながら雨野・雲珠(慚愧・f22865)が体を起こす。実際に血を流したわけではないのに、状況確認に辺りを見回そうと首を動かすだけで内側から引き攣れるような痛みが奔る。つられて自然と歪む顔を一度真顔に戻し、意識を集中するべく目を瞑る。
「…痛くない、痛くない。怪我してないんだから大丈夫。」
 口の中で小さく、まじないの様に大丈夫、大丈夫と繰り返して波の様に訪れる痛みをやり過ごす。その内コツを得たように痛みを少し意識の外に置けるようになった。だが代わりに、一度深呼吸を挟んだことによってすぅ、と濃く匂いを感じ取って“しまった”。鉄錆た、粘度すら感じるほどに垂れこめた――血腥い、いきものの内側の匂い。反射的に脳裏に凄惨な様子を思い描きそうになって、慌ててふるりと頭を振る。
――今は考えるな。
酷い匂いの正体も、この部屋で何が行われていたかも、薄々分かってはいる。でも起こっただろう悲劇を深く掘り下げて仕舞えば、きっと自分は動けなくなる。だから、今は未だやるべきことがあるのだと決意を奮い起こして、恐れを飲み下した。その、顔を引き上げた瞬間に。
「ようやく起きたか、少年」
 聞き覚えのある声が聞こえて、雲珠が慌ててそちらへ視線を向けると、縄に囚われた以外はいつもと変わらぬ姿の、その人が居て。
「ま、マスター…」
「ふむ……今宵は満足だ。となれば後は、手助けに興じよう。」
 雲珠の呼びかけに答えたのかは微妙な呟きの後、囚われの身とは思えない通常運転ぶりで釈迦牟尼仏・万々斎(ババンババンバンバン・f22971)が頷いた。最も万々斎の顔色を読む、というのはそもそも難しい話ではある。のらりくらりとした性格もあるが、何といっても彼はそう――。
「タールである吾輩にかかれば…そら御覧の通り。」
 ――ブラックタールなのだから。手首に掛けられていた縄も何のその、ずるりと体を流動させてあっという間に自由を得る。そのまま見張りとしては油断しきった吸血鬼たちの目を一応遮るように雲珠の前へと回り、後ろ手に体に沈めていた預かりものの箱宮を取りだしてみせた。
「最低限の身の安全は保障してやる。仕事の時間だ、気張りたまえよ。」
 ユーベルコードの起点ともなる常の箱を前にして、雲珠の表情が僅かに和らいだ。その様子を揶揄するように添えられるのは、挑発の混じった万々斎の笑みと言葉。けれど怖気ることなく、箱を抱えるようにしながら雲珠が今できる精一杯の力強さで、力強く答えた。
「──もちろん。這ってでも…!」

 そして引き金の様に奏でられるホールの爆発音は、半地下である屠殺部屋には控えの間以上に大きく、ズズンと沈むような反動と共に伝わっていた。それに慌てるのは今にも届けられた“肉”を捌こうと準備をしていたヴァンパイアたちだけ。ここに届けられる食材たちは意識のないものがほとんどで、もしたとえ起きていたのだとしたら、それは――開幕の合図を待って静かに牙を研いでいた、猟兵たちに他ならないのだから。

「あー、やっと暴れられる!」
 それまではしおらしく石畳に臥していたアトシュ・スカーレット(狭間を歩く放浪者・f00811)が、爆音と同時に半ば叫ぶように切り出した。状況の急変についていけずびくりと驚くヴァンパイアたちをよそに、嵌められた手枷を腐敗と魔法の手助けで脆くし、そのまま手荒く引きちぎる。慣れない体勢に凝った肩をぐるりと回し、瞬きの間に押し着せられた華美な服を脱ぎ捨て、長く繕った髪を戻し、いつも通りの――すなわち“戦いやすい恰好”へと着替えてみせる。
「時が…きましたね。それでは、はじめましょうか。……処刑の時間です。」
 懐に隠していた、正確に時を刻む懐中時計に目を落としていた有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)も、それに倣うようにすっくと立ちあがり、凪いだ表情のままヴァンパイアへと居直る。今までしおらしかった、死を待つばかりの食材たちの変貌ぶりに訝しみながらも、自分たちの優位を疑わないのかヴァンパイアたちは高圧的に叫んで見せる。
「はぁ?処刑?何を言ってる、それは貴様らこそ――」
「…いいえ、させません。」
 ヴァンパイアが言い切る前に素早く夏介の手からは、風を纏って“何か”が放たれた。それは、身を刻み空を舞い踊る不可視のナイフ。威圧するように踏み出した巨躯のヴァンパイアの足を縫い留め、痛みに咽ぶ喉を掠め細やかに、けれど確実に相手の命を削るモノ。然しその刃は血に濡れてなお視認がしにくく、でたらめに捕まえようとしたヴァンパイアの手を嘲笑う様にすり抜けていく。まるで“いる”とは分かっていても居所のつかめない、御伽噺の猫の様に。ザクリザクリと裂かれる痛みに、逃れようと闇雲に手を振るっても巨躯の男の手は空を掴むばかり。その間にも夏介は後ろ手に動けない一般人の位置を把握しながら、適宜ナイフを放っていく。
「ああああ!!めんどくせぇ!見えないんなら…まずはてめーを、」
「――あーもう煩い!いい加減そろそろ黙ってろよ!!」
 ここにくるまでお仕着せられ詰られ痛めつけられ…と散々な目にあったうっ憤を晴らす様に、巨躯の男に向けてアトシュが指先から圧縮された呪詛を打ち放つ。――倒れ伏すものには守りの結界を、それに悪意を持って触れる者には雷の罠を。ヴァンパイアたちがただ闇雲に叫び散らす間に仕掛けられたそれらは全てアトシュの存在を世界に裏付け、10秒の存在証明を買い上げる。その対価として得た神の属性を帯びた呪詛は――傷に塗れたヴァンパイアから、残る命を吸い上げるに十分なものとなった。

「…首魁の首は宴の場にいた猟兵達に任せて問題無さそうね」
 爆音のこともあるが、先ほど会場でざっと感じただけでも、恐らく相当数の猟兵が居ることは肌で感じられた。なら、無理に応援へ向かうよりも確実にここを押さえよう、とーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が静かに決意を固めてヴァンパイアへ向き直る。既に戦端の開かれたと在っては秘匿遠慮は一切なく、すぅと一呼吸の後に部屋を埋め尽くすほどの亡霊蝶を招き寄せた。美しく妖しく舞う蝶を構成する根幹は、魂。この地に縫い留められ迷う、犠牲者たちの心だ。蝶として姿を与えられた彼らは、自然と想いを遂げる最後を理解しているのか、命じるよりも早く羽搏いていく。未だ命をとどめた食材たちには、同じ道をたどらせまいと惜しみなく治癒の力を注ぎ、変わりに無残に躊躇なく命を引きちぎった吸血鬼たちには――今際の際に見た絶望を、降り注がせる。
「――ギャアアァァァァァ!?いだ、痛いっ…こんな…?なん…で…!?」
「…お前達を簡単に殺したりはしない」
 新たに傷が刻まれたわけでもないのに、肉体のあちこちが痛む。精神から浮かび上がる責め苦に在って叫ぶ吸血鬼に、リーヴァルディが告げる言葉は凍てつくほどに低い。
「…ゆっくり時間を掛けて味わいなさい。死んでいった彼らが受けた痛みを、ね」
 逃れられるはずもない。今叫ぶ彼らの前に在るのは、“吸血鬼を狩る吸血鬼”なのだから。容赦はなく、慈悲もなく、伸ばされる手を手痛く振り払って睥睨する瞳は、ふと――滴る血の様に赤く輝いて見えた。

 今までありえなかった、いや考えたこともなかった食材たちの反逆。突然の状況を呑み込めずに呆けていた後方のヴァンパイアを、ずるりと天井から這う絞縄が自由と体力を奪わんと絡みついていく。
「ひっ、な、んだこれはっ…!くそっ、はがれねぇ!!」
「…暫く甘いものは避けたいが、首尾は上々のようだ」
 敵へと容赦ない絞首を命じた高塔・梟示(カラカの街へ・f24788)が、効果の程を確認してからゆっくりと立ち上がる。そして弱ったふりを演じる間に遠くから目星をつけていた食材――いや、共に門をくぐった仲間である冴島・類(公孫樹・f13398)に駆け寄りながら、見目に合わぬ怪力で以て手錠をバキリと壊してみせた。
「待たせたかな。…体は大丈夫かい?」
「ええ、さして問題なく。さ、もう大人しくしている必要はない」
 同じ要領で拘束を解いてくれる梟示に対しては、伯爵を詰ったときとはまるで違い、軽やかな笑みを寄せて類が手首をさすった。解いた手錠と共に、しおらしい食材役を装っていた枷まで解いたかのようで、梟示もつられるように僅かに笑う。そして懐から落とさぬよう、そっとあるものを取り出して類へと差し出す。
「やっとお返し出来たね」
 それは、食材役では持ち込めないだろうと梟示へ預けた、類の得物。組紐飾りを付けた、手に馴染む短刀。手と手を介し、信じた想いごと懐で守ってくれたことが分かって、受け取り握りしめながら真っ直ぐに、飾らずの礼を述べる。
「――ありがとう」
「どういたしまして、さあ反撃開始といこう」
 気負うことなく返した梟示が再び縄に命を下し、類もまた並び立って短刀を構える。偽る必要も、耐える暇も、今となっては全て無用のもの。類が編む幻術が吸血鬼へと迫れば、ひとり、またひとりと梟示の縄にからめとられて自由を奪われていく。――そうしてあとはただ、死神の宣告を待つだけの体が並んでいた。

 赤黒く染まった壁と、隠しようもなく漂う血腥い臭い。そして奥の部屋でゆぅらりと揺れる、天井からつられた何某かの塊。それだけで、ここで行われた悍ましい所業が分かる。――今日まで一体、どれほど多くの人々が犠牲になったのか。先刻味わった以上の苦痛と恐怖に飲み込まれていったのか。愛するものと引きはがされ、孤独のままにその命を終えて逝ったのか。そのことを想うと張り裂けそうになる胸を押さえて、ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)が苦悶の表情を浮かべた。そんな妻の様子にヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)が手を差し伸べてその身を案じたが、彼女の内に渦巻く悲しみは十分に理解できた。食卓で感じた自我もはじけ飛びそうな苦痛と、愛するものを手にかけられた怒り。それを一体どれだけの時間をかけて、数多の無辜の人々に味あわせてきたのか。そんな思考に深く沈みこめば、また腹の底が焦げ付きそうに煮え滾る。
「この黒くねじくれた享楽を、わたくしは決して許さない」
 だが悲しみの中に在ってもそれに屈せず、溺れず、清廉と言い放つヘルガの声に、ヴォルフガングも一度目を瞑ってから己のなすべきことを認識する。
「ああ。無残に食い散らかされた犠牲者たち、そして何よりヘルガを傷つけ、その苦痛を嘲笑いながら貪り続けてきた貴様らを…【怒れる狼王】は決して許さない…!」
 怒りは正しく、向けるべき者へと向ける。手を取り合い立ち上がれば、ふたりの視線が捕らえるのは元凶たる吸血鬼。居丈高に肉切り包丁片手に歩み寄るのを、激昂したヴォルフガングが押し留め、その間にヘルガがすぅ、と息を吸って歌を紡ぐ。無辜の者にはその身を癒し、罪人には痛みを伴う罰を下す聖歌。享楽に溺れ、清らかさとは一切の縁もない吸血鬼の身にそれは――あまりにも深く、突き刺さり果てていった。

 次々と猟兵たちが戦端を開く中、メアリーだけはすぐさま敵に向かわず、ちらりと奥を見てそのまま足を進めた。向かう先は何処かひんやりとした空気の流れる、食物の貯蔵に適した場所――“肉”の保管庫だ。用済みの烙印を押された食材たちを削いで吊るしただけの、原始的で、そして何よりも人としての尊厳を地に貶める、冒涜的な光景の只中だった。その中に在ってよく見れば何人か、未だ息のある者がいた。但しそれは鮮度を保つためだけに絶命を避けた、としか言いようのない扱いだった。手足は削がれ、血は流れ、吊るすためのフックを首に差される寸前の肉塊。もはや鼓動があることすら、ただの生理的反応の延長といっても過言ではない状態の人。それでもメアリーは迷わず静かに、力強く問いかける。――あなたはまだ、生きているのだと認める様に。
「ねえ、あなた達はどうしたい?」
 ペタリ、と青白い肌に触れる。唯人ならば目をそむけたくなるような有様なのに、メアリーに躊躇はない。その言外の肯定に、鼓動が僅かに力を帯びる。
「これ以上苦しまずに殺してほしい?それとも……せめて復讐したい?助けてあげる事はできないけれど、それぐらいの願いは叶えてあげる」
 きっとどんなユーベルコードの奇跡をもってしても、最早彼らを元の姿に戻すことは難しいだろう。せめてもの気持ちでメアリーが与えられるのは、瞬きの間の力だけ。それでも欲するかどうかを意志に委ね耳を欹てれば、ヒュウ、とかすれる息の間に、確かな答えを聞いた。

“このまま、何もできずに命を終えるくらいなら”
――“これ以上の悲劇を止める力を!”

「――いいわ、叶えてあげる。自らの意志で願ったんだもの!」
 同意した意志に感染するように、メアリーの放つユーベルコードがカタチを伴って彼らを取り巻いていく。失った手足の代りに、狼の毛皮と爪を。抜かれた歯の代りに、鋭く食いちぎる牙を。僅かに残った魂を燃やし尽くす、ひととき限りの人狼の姿。呼びかけに応えた、いや正確には“応えることが可能だった”のはたった2人きりだけだったが、それでも彼らの目に宿る意志は、同じ運命をたどった無念全てを背負うかのように強い。そして合図を待たずにヴァンパイアへと襲い掛かるのを見て、メアリーが察したように援護に動く。敵の腕にかみついた人狼を見れば、メアリーが引きはがそうとする逆の腕を跳ねのける。もう一人が爪を振るえば、逃げようとする敵の足を払ってその場に縫い留める。血飛沫が舞い、戦術は無きに等しい、正に獣の如き戦い様。それでも一振り、ひと噛みが彼らの命を削って繰り出されたものだと知れば、全てを届けさせてやりたくて。
「…もう、動きにくいったら!」
 スリットが入っているとはいえ、メアリーが纏うのは生地をたっぷりと使ったロングドレス。戦うには不向きな裾を、肌があらわになるのも構わずビリビリと豪快に破り捨てて、引き続き人狼たちの援護へと回る。やがて一人のヴァンパイアが人狼の猛攻にからめとられ、バリンと音を立てて頭蓋をかみ砕かれたのと同時に、人狼たちもぱたりと動きを止めた。――いや、寧ろ今まで動いていたのがユーベルコードの奇跡によるもの。執念を燃料に、絶望を原動に、一矢報いたところで文字通り尽き果てたのだろう。例えヴァンパイア一人を仕留めたとて、失われた命が戻ることはない。彼らへの仕打ちを思えば、この程度ではきっと贖うに安いはずだ。それでも、彼らは確かに――。
「あなた達は全力で、成したいことを成した。すごいことよ…お疲れ様。」
 ことりと床に落ちて、魂が還っていく姿を見届けながら。メアリーが憐れみよりも確かな称賛を述べて、ひと時の別れを惜しんだ。

 戦闘の余波をかいくぐりながら、天音・亮(手をのばそう・f26138)が気を失った一般人たちを安全な場所へと担ぎこんでいく。戦力差も実力差も十分、ましてや奇襲ともなればこの部屋での勝負は見えたようなもの。だからこそ、今自らがやるべきことは“救助”と“保護”だ。そう言い聞かせてあちこちに目配せすれば、自然と目に入るのは――最奥にある、保管庫。その扉の先から感じるのは、無視できない影と濃い血の匂い。この部屋で助けられなかった子達がいる。辿り着くまでに失われた命は、余りにも多い。何もかもを救うなんてことは出来ないと理性が甘く囁いても、目の前にそれを突きつけられれば心から悔しくて、思わずギリリと音がするほどに歯噛みする。けれどいま優先すべきは、目の前の子達だと自分に言い聞かせて、立ち止まりたい気持ちを振り切って蹲るその子たちへ駆け寄った。意識は薄く、怪我も衰弱も酷い。それでもまだ命をつないでいることに感謝して、優しく背をさすりながらもう大丈夫だと声をかける。ひとり、ふたり、こまかく状態を見ながら人数を確認していると。
「…ああ、見つけた。きみだね。」
「…だ…れ…?」
 赤い髪は母親譲りだろうか。でも優しそうな目元と僅かに浮いたそばかすが、間違えようもなくあの人に――亮たちをここまで運んでくれた父親に似ている。肩に手を置けば僅かに意識が戻ったようで、少女が眩しそうに目を細めながら訊ねてきた。
「もう大丈夫、私達は助けにきたの。お父さんが心配していたよ。」
「…おと…さ…、…また、あえる…?」
 そのかすれるような声に含まれた、ぬぐい切れない“まさか”といったニュアンス。それこそが彼女たちの置かれた絶望を色濃く語っていた。淡い希望を抱いては、幾度となく砕かれてきたのだろう。なら、今彼女に、彼女たちに必要なのは。
「会えるよ、絶対に。だから…一緒にお家に帰ろう。」
 ひかりの灯らぬ瞳に、また輝きが映るように。必ずかなえるからと約束を掲げて、亮が優しく歌を紡ぐ。

――絶対に誰一人死なせない。
そのために守るし、全力で助けるよ。
きみ達が逃げるための脚がまた動くように。
今こうして、歌うから。
 
 優しく、強く、温かく。耳朶に響く音がほんの少しでも聞くものに心地よいよう、祈りを込めて。紡ぐ歌に聞き入った少女が、先ほどよりも顔を上げて横顔を見つめるのを感じて、亮が笑みを向けて手を伸ばす。
「さあ、行こう!」
 怯える心が、少しでも奮い立つよう。不安なんて感じなくていいのだと、安心できるよう。めいっぱいの笑みで、力なく蹲る少女たちを励ます。歌に篭められた癒しの力も相まって、僅かに力の戻った少女が亮の手を取って立ち上がれば、それを追うようにひとり、またひとりと傷ついた子らが立ち上がっていく。その立ち直るに似た姿が気にくわなかったのか、前線の合間をぬった無骨な吸血鬼がひとり、叩き潰すかのごとくに剛腕を振り上げて子供たちへと迫り来た。
「どいつもこいつもうざってぇ…大人しく死んでりゃいいんだよ、てめーらなんか!!」
 吐き捨てる言葉に、城の吸血鬼の総意が見えるようだった。人など家畜であり玩具。糧にすることもなく遊び棄てるその有り様を――許すまいと亮が立ちはだかり、鉄を込んだブーツで蹴り上げる。
「この子たちには、絶対に触れさせない。」
 彼らはもう十分に苦しんだ。耐え抜いた。何より自らが駆けつけた以上、これ以上の悲劇なんて起こさせない。意志を込めてねめつける亮の眼差しと、その細身のどこから絞り出したか分からない力強い蹴りに一瞬吸血鬼が怯んだ隙に、死角から的確に弾丸が撃ち込まれて吸血鬼が苦悶の叫びを迸らせた。
「ああ、彼らは絶対に死なせない、傷付けさせない。」
 低く、厳かに響かせて。亮の言葉に同意しながら、丸越・梓(零の魔王・f31127)が手にした銃の弾倉を、目にも止まらぬ速さで入れ替える。気配を消す術に、冷静に戦場を見渡し的確に敵を削ぐやり口。それを目の当たりにすれば、身に着けた技量の高さが――暗殺に長けたものだとうかがえる。

――自らがどれだけ傷付いても構わない。
幾ら虐げられようと、膝を付くことなど自らに許しはしない。
この身を盾をして全身全霊で庇い護り、助ける。

 それは、梓に深く根差す病巣。揺るぎない自己犠牲と、他者への飽くなき献身。ひたと抱えた固い決意がにじみ出したかのように梓の纏う空気は重く、威厳すら感じられる。それは敵に畏怖を植え付ける代わりに、守られる側にとってはどこか清廉な騎士の如く映っただろう。
「ええ、それ以上この子たちには近づかせないわ――『シロクロのお友だち』」
 逃げる子供たちを背にして駆け寄ったルーシーも、抱えていたパンダのぬいぐるみを掲げて加勢に回る。くるりくるりと回り招かれる葉は、この場の無念と憎悪を清めるが如くに吸い上げて、その鋭さを刃物の様に研ぎあげて敵へと襲い掛かる。
「ぐあっ!くそっ鬱陶しい…!」
 振り払うに難しく、無視するには鋭すぎる葉の攻撃と、合間を縫って繰り出される亮の鋭い蹴りに徐々に疲弊していき、吸血鬼が焦りと苛立ちの滲んだ声を上げる。せめて食材をひと噛み出来れば力も上がろうかというのに、それもルーシー共々守るべく立つユェーに阻まれ手が届きそうにない。いよいよ肉切り包丁をでたらめに振るう他なく喘いでいると、静かに、厳かに、最後を告げる声が響いた。
「人員は足りているな。人質は切り離した? よろしい。それでは――皆食べてしまおう。」
 ずちゃり、ずるり、と湿った音を立てながら、ブラックタールが変質していく。鰐の頭部に獅子の上体、河馬の下半身へと変わった万々斎の姿は吸血鬼の目にも異質に映るらしく、ひっ、と上ずった声が響いた。
「私怨はないが、喰ったように喰われるのは世の常だ。受け入れたまえ。君らはもはや手遅れだ。」
 それは神話に語られる神か、それとも化け物“キメラ”か。判然としないままに吸血鬼の視界が黒く覆われて――ぶつり、と意識が途絶えた。

 すべての吸血鬼を狩り終えて、ここでもまた猟兵たちが向かう行先を分けた。ここに残り、生き残った者たちの保護と治癒にあたるもの。激戦の予想されるホールへと急ぎ駆けつけるもの。そして――。
「…ここでの仕事は終わったな。さ、早く背に乗りたまえ。」
「マスター…ナイフはいいんですか?」
 戦闘の終結とフォローに回る人の背を見て、万々斎があまりにも当たり前の様に救助活動に同行しようとする万々斎を見て、雲珠がおずおずと尋ね聞く。元々乗り気でなかった雲珠を捕まえて吊り上げて尻を叩く様にして此処に連れてきたのは万々斎の方だ。そしてその“お目当て”の大部分は伯爵が持っているという怪しげなナイフを手に入れる為――だと、少なくとも雲珠の印象ではその筈だった。それならこの後向かうべきは伯爵の居る広間の筈、だが。
「なんだ、民間人の回収に行くのだろう?」
「は、はい。それはもちろん。…あれ?」
 ならば早くしたまえ、と半ば強引に担がれるのを感じて、それ以上追及するのを放棄した。強がったとはいえ、まだ疲労の濃い体では長考に向かない――それもある。加えてなにせ押しの強さと強引さにかけては雲珠の知るところ、万々斎の右に出るものは少ない。そんな人がこれ程までに、雲珠に得意へと徹するよう動いてくれているのだから――敵うはずもないのだ、結局のところ。普段は困らせられることも多いけれど、こういうときには大いにありがたい、と素直に甘えることにして、担がれるままの雲珠が万々斎の足を借り、次の救助の場へと向かっていった。

「主菜はもう並んでいる頃でしょうね」
 すべての吸血鬼が消えたことを確認しながら、ルーシーも最早鎖すものが居ない扉を見つめて零す。同じく周囲の安全を確認していたユェーも、問題ないと分かるや彼女の手を取り、ドアへと導きながら悪戯っぽさを乗せた笑みで問いかける。
「さて、伯爵はどんなお仕置きが良いでしょうか?」
 まるで子供の悪戯を咎める様な物言いに、思わずルーシーがくすりと笑う。だが、伯爵にこれから下されるのは、咎める程度では済まない苦痛だ。
「苦しんで、苦しんで…自分が喰べられる側であることを味わって頂かないとねぇ」
「そうね、食べるのなら食べられる――それを、教えてあげる」
 そう言って優雅に歩みを勧めながら、全てを終わりにする鉄槌を穿つべく、ふたりが扉の先へと消えて行った。

走る、走る、奔る。

――既に控えの間にも、屠殺部屋にも、生きたヴァンパイアの姿はない。救護に残った者たちが任せて、と向ける視線を背に、皆がホールへと加勢に掛けていく。残してきた仲間を思い、悲鳴を嘲笑ったヴァンパイアを滅し、なによりも悪夢の首魁たるディンドルフに一矢報いるべく。各々が大扉へと向けて、城の廊下を駆け抜けていく。

享楽の宴を終えて数時間。それは最も空が暗くなる――夜明け前のこと。

◆Side 晩餐会ホール◆
 拍手代りの爆音は、ホールのあちこちに亀裂と悲鳴を生み出していた。穏やかに、いつもどおりに終わるはずだった晩餐会が、思いもしないカタチで崩れて、“終焉”の始まりを告げる。
「は・く・しゃ・く♡」
 わざとらしく、甘ったるく、だけど何処か底冷えした音を孕んで。ハイドラ・モリアーティ(冥海より・f19307)が金と銀の目を細めて弧を描く。
「あらあら、『お残し』はよくないねェ」
「貴様、一体何を…!?」
 爆発の余波でぐちゃぐちゃになった料理を目に、ぺろりと唇を舐めるハイドラに対して、伯爵が歯噛みをしながら状況の説明を求めた。――最も、この破滅的状況を前に、明らかな適役に是非を問うなど、それだけで十分に混乱と滑稽を体現しているのだが。
「なぁに?バンバン屋敷が爆発しててびっくりしちゃう?そりゃそうだよなぁ――ま、俺の仕業なんだけども!」
 手品の種明かしというにはあまりにも分かり易い告白に、伯爵が一層眉間の皺を深くする。しかし告げるハイドラ自身は意に介さず、ブーツを鳴らして居並ぶ“剥製”を眺めた後に、ピンと指ではじいて見せる。
「いやァ、悪いご趣味だ。どれもこれも綺麗に壊そう!よく言うだろ?芸術は爆発だ!破壊は創造だ!ってね」
 その言葉を体現するように、触れた端から兎の毛皮が、鹿の角が、端からポンポンと爆発していく。
「やめろ、触れるな!貴様、それ以上は――!!」
「心配しなくても城はリフォームして立派な墓地にでもしてやるさ。なんならあんたのお宝を貰う代わりに金を出してやってもいいな。俺は人間にゃ優しいンでね」
 捕らえようと伸ばしてくる伯爵の手を、栗鼠の剥製を爆発させながらヒョイと投げてハイドラがいなす。ダメージを恐れてのことではない。ハイドラに――いや、エマに断りなくふれていいのは、今この場にたった一人しかいないからだ。その時を見計らったように、何処かからするりと戻り来て腕を這う蛇が告げるのはたった今脳裏に描いた、何よりも愛しい共犯者の戻りだ。
「ハァイ、エコー。」
「やぁエマ。エマを囮にしなくてよかったよ。アレでも結構痛かったからね」
「それはそれは。痛みを引き受けてくれてありがとう、俺の婚約者ちゃん」
 入口から語り掛け歩み寄る姿に、手を取り合って視線を絡め、微笑みを傾ける様子を見れば誰の目にもその親密さは分かる。そして、伯爵が初めから――騙されていたという事実も。
「お前たち…そうか、初めから…!!」
「そ。俺達グルだったってわけ」
 悪びれる素振りもなく、ハイドラがじゃじゃーん、と哂って告げる。
「騙されてくれてアリガト!」
「そういうこと。――さぁ、本当の宴の始まりだ。よもや裏切りがボクらだけだなんて、思ってもないだろう?」
 エコーが言葉裏に馬鹿にしながら指さすのは、ダンスホールの全容。踊り、歌い、享楽に耽溺した愛すべきそこは、今や潜む必要のなくなった猟兵によって――蹂躙が始まっていた。

「ああ、ようやくほんとうの宴のはじまりね、あねさま」
 オーケストラの代りに、爆音と狂気で染め上げられていくダンスホール。その中でゆるやかに、そしてほんのり楽し気な色を含んで、蘭・七結(まなくれなゐ・f00421)が隣立つ姉へと問いかける。そうね、と赤い唇に笑みを浮かべて蘭・八重()も答えて見せるが、視線はどこか探るように遠い。
「御目当ての御方でも見附けたかしら」
 当て推量に引き戻される微笑みは一層深く、甘く、ええ、と八重が肯定を返す。
「伯爵様が今日のディナーよ」
「――まあ、ふふ。伯爵を?」
 声や視線を寄越してきたうちの誰かを摘まむのかと思いきや、姉が口にしたのはそれこそメインと呼ぶにふさわしいものだった。
「ならば、はやく向かわなくては」
 きっとかの首は、誰もが垂涎の一皿だ。なら、食べつくされてしまう前にと手を差し出して、七結と八重が足取り軽くホールの中方へ踏み出していく。

「さて、猟兵としての本分はここからだね」
 爆音の皮切りを耳に、ホールに潜んでいた猟兵のひとり――渡塚・源誠(千切れ雲は風の吹くままに・f04955)も行動指針を新たにする。もうしおらしく伯爵に追従することはない。今必要なのは戦力を見極めて、他の猟兵たちの波に乗って、敵を削ぐこと。ざっと立てた推測が確かなら、ホール外の部屋に流れた同志はかなりの数になる。ならば。
「ボクはここでの戦いに専念するべきかな」
 見渡す限り、このホールには客も使用人も含めてかなりの吸血鬼が集まっている。恐らくほかの場所よりもここが一番戦力を必要とされるだろう。
――なら、まずやるべきは来客の数減らしからか。
 冷静な算段の元、方針は変えつつも表面上の源誠の態度は変わらない。いや、油断を誘う為にあえて“変えない”ままでいた。今まで通り伯爵に媚を売っていた人売りの、情けなくも騒ぎに巻き込まれた風を演じる。すると深手を負いながらも逃げようとする、客らしき吸血鬼共の姿を見つけて、その後ろにするりと忍び寄った。――下すのは、ほんの一瞬。叫ぶ間もなく、気付く暇もなく、ただ一振りの元に骸の海へと返される。暗殺と呼ぶにふさわしい静かさで、ひとり、またひとりと吸血鬼が絨毯に体を沈められていく。
「…で、問題はややこしいスープの給仕か。こっちは少し仕込みがいるね」
 一先ず目に付く逃亡寸前の者たちを始末してから、源誠が次の算段にうつる。まずは片手に仕込んだ魔法手――マジックハンドに、魔力を込めた金属札と白ナイフを握らせて、手部分が片手に見えるように隠し持っておく。さらに魔法手のグリップはぐっと握ったまま、けれど札の魔力で魔法手が伸びないようにしておけば傍目にはただの手にしか見えないだろう。ついでに先に倒した来客をみると、白い手袋をした紳士が目についたので、片方だけ拝借して魔法手を握るとは逆の手にはめる。これでさらに不自然さも薄まった。――あとは伯爵の動き次第。ここぞというタイミングに合わせるべく、ひとたび慌てふためく客の仮面をかぶって、時を待つ。

 爆ぜて、焼けて、焦げ付いて。宴の幕引きの合図は唐突で派手なものだった。その様子に視線を奪われた吸血鬼たちが、なぜ、どうして、と口にするより早く、四方八方と伸びる操り糸が彼らの首をトンッ、と毬の如く落としていく。まるで弦楽器の演奏の如く優美に糸を繰るのは、久澄・真(○●○・f13102)の指先だ。
「何だこれは…貴様の仕業か!」
「ああ、これは失礼。あまりに退屈な宴にいい加減辟易してきまして。」
 謝意などまるでない口調で、口の端を吊り上げながら真が嗤う。そして見事な糸捌きに、さすがと口笛吹いて寄り添うのは黒い影ひとつ。
「刺激的な夜を過ごすには物足りず…もう少し御付き合い頂けますか、皆様」
 にこりと作り笑い浮かべ言い添えるのはジェイ・バグショット(幕引き・f01070)。上辺だけは丁寧だが、その裏にある蔑みは隠しようがなく、逆撫でられた吸血鬼たちがドレスも燕尾もお構いなしに臨戦態勢に入る。だが、爪を伸ばし、牙を剥き、いざ襲い掛かろうとしても足が動かない。――なぜ、どうして。知らず原因を探るように動いた視線が捕らえるのは、ぞろりと蠢く自らの影。それは爆発と動揺の裏で放った、ジェイの手駒の一つ。潜み縫い留めるテフルネプのカタチ。
「そろそろ本当の血の宴を始めるとしませんか」
 襲おうとして動けずの滑稽な吸血鬼たちの姿をよそに、卒なく誘う言葉はまるで宴の主が真へと移ったかのようだ。だがその印象はある意味正しいと言える。これから糸伝いに彼らへとダンスを命じるのは、真なのだから。

――人間ごときが我らに何を!
――下等種族が…!
――餌にしかならぬ家畜共のくせに!

 虚ろな存在とはいえ今は命の危機だろうに、耳に届くBGMはひとつも変わりない。踊らされ、刻まれて、同族同士で喰らい合うのはマリオネットの様に滑稽で、ジェイが煽るようにお上手なことで、と手拍子を入れる。蔑み、見下してきた傲慢さが奏でる、屈辱と恐怖を乗せた狂詩曲。
「クハッ!いい歓声だねぇ。でも好きなんだろ?こういうの」
 ぺろりと唇を舐めて、真が笑い声を零す。捕食者と決めきっていた自分の立場が瞬く間に覆される、その時の顔こそ最高のディナーだ。
「なあ、俺の肉が欲しいか?血が欲しいか?どうぞご賞味あれ――喰えるものならな」
 そういって真が無防備に手を広げて構えても、糸と影に縛られた吸血鬼どもには恨みがましい視線を投げるのがせいぜいだ。最も、例え襲い掛かったとしても一指触れる前に、笑みを乗せながらも油断なく見据える番犬が噛み千切ってしまうだろうが。
「ああ、そうだジェイ」
 血の匂いに満ちた中に在っても、ふと呼ぶ声音は些かの揺るぎもなく気安いもので。なんだ、と同じくいつも通りの顔で振り向いたジェイに、気まぐれと戯れの色を乗せて、笑う。
「――『よし』」
 真が発するのは二文字だけ、たったひとこと。それがあまりにも予想外で、ジェイがくるりと目を丸くした。おあずけ中の犬に許しを出すような言葉と共に、わざとらしいくらいゆっくりと真が自らの襟元を寛げる。浅黒い肌の下、首筋の腱がピンと伸びて、餌としての個所がシャンデリアの下で露になる。それがどれだけ場違いなことでも、戯れを乗せたその言葉の意味だけは間違えるはずも無い。ギラリと光の宿った瞳に滲む、押さえようもない歓喜の色。ああ、あの"甘美な味"をもう一度味わえる。今までの『おあずけ』に利口な犬のように従ってきたのだから、許しが出たとあれば遠慮は無しだ。撤回する間も逃げる隙も与えぬように、腰に手を回し引き寄せ無遠慮に晒された首へと牙を突き立てる。唇に熱がふれる、瞬きすれば睫が肌を撫でる。鼻先を掠める香りごと飲むように、喉を落ちる余韻すら漏らさぬように。――今この一瞬に、他の連中のことなんてどうでもいい。優先事項は目の前のコイツだけだと、求めるままに吸い上げる。ジェイが与える痛みにも表情は変えず、ツプリと牙の離れたのを感じれば、そのままの近さで真が囁く。
「喰った餌の分はちゃあんと働けよ?」
「あぁ、もちろん。疲れたなら休んでもイイぜダーリン?」
 唇に僅かに残った赤さえ惜しいと舐めとり、ジェイが機嫌よく頷いて見せる。全て無駄なく糧として、奪った生命力が廻れば調子も気分も上がるというもの。言葉に甘える様に動く気のない真を背に、ジェイが見つめる観衆へと一歩前へ出る。
「さぁて、お行儀良く振る舞うのは終わりにしよう。せっかくのダンスホールだ。誰か俺と踊ってくれるか?」
 上機嫌のまま腕を広げ、招き寄せるのは七つの荊棘。――拷問具『荊棘王ワポゼ』。敵と定めた相手を逃さぬ、痛みと苦痛を約束した鉄輪。それらはジェイが指さすままに、まるで鎖の解けた犬の如く踊るように跳ね廻る。その度に巻き込まれた吸血鬼たちが罵詈雑言を浴びせるが、舌に残る甘美な余韻を思えば阿鼻叫喚すら心地好いBGMにすり代わる。従順な犬の遊ぶ様子は煙草の片手間に眺め、1本吸い終える頃には十分に蹂躙しつくされたのか、目の前にあるのは最早肉塊ばかり。未だ呪い事を吐く首を遠くに蹴り込んでからジェイが真の元へと戻り、吐息の届く近さで――もう一回、と牙を見せる。ねだる連れの顔に目を細め、ふぅ、とたっぷり煙を含んだ息を吹きかけて、真が返すのは先ほどと同じようにたった一言。
「――『まて』」
 戯れに、いつものように、おあずけを強いる言葉だった。

「あ〜〜……やっっと終わるんですか、コレ」
 それまで少し物憂げな様子を見せていた少女が、爆発音を皮切りにぐい、と思い切り伸びをする。ドレス姿には不似合いに活発な動きにも、百鳥・円(華回帰・f10932)自身は気にする様子も無く、感じた視線にくるりと顔を向けて笑った。
「じゃあ、もう化けの皮は必要無いですね?」
 まるで本当に見えない皮をポイと投げ捨てたかのような仕草でもって、自らが猟兵だったことをからかう様に明かす。人魚を手配した極夜の運び屋から、『伯爵様』とお友だちのわたしへ。ころりと表情を変えながら、手際よく愛想よく演じていたことを告げて、唇をするりと指で撫でる。
「今まで上手〜く騙し通していたでしょ?」
 今までどれ程醜悪な宴に、悪辣な出し物に吐き気を覚えながらも、爪先ひとつも表情には出さなかった。けれどそれはひとえに積み上げたひとつひとつを生かす為、“彼”の受けた痛みを無駄にしない為。だからこそ、終わりと分かればここから催しごとへの嫌悪感は隠せそうに無い。化粧は未だ落ちず健在なので、それでご容赦願おう。
「――さ、おんなじ痛みをあげましょうか。」
 そう言って僅かに背を丸めれば、円の背から見える翼がパキパキと固く、黒曜に変じていく。そのまま踊るようにくるり、くるりとステップを踏めば客として招かれた吸血鬼たちの体を、柔らかな羽では叶わない深いところまで貫いて。次いで固く伸ばした爪で、開かれ覗く赤い奥を掻き混ぜまていく。丁寧に、ゆっくりと、一皿の料理を作るように。“彼”が受けた痛みを刻み込んでいく。
「いやぁぁ痛い!何、何よ、コレェ!!」
「あは、痛いでしょうねェ。」
 上がる悲鳴には、意地悪く嗤って頷いてやる。当然だ、その痛みを与えているのは円自身。けれど劈く悲鳴をさんざ浴びても、苦痛に歪む顔を幾ら並べられても、心地良さなんて微塵も感じられない。こんな宴を開く伯爵なんて、矢張りどうかしている。だからただ――ああ耳が痛い痛い、とかぶりを振って目の前の光景に蓋をする。
「あーあ、ドレスが台無しです。」
 ひらりと裾をつまみ上げれば、たっぷりと布があしらわれていたはずのスカートは今やあちこちが破れ血の染みまでついている。もう繕って何とかなる代物ではない。
「ええ、ええ!あなたたちからしたら理不尽でしょうね!だってこれは――ただの八つ当たりですもの!」
 高らかに悪びれず、隠さぬ嫌悪にただひと匙の憂いだけを隠して言い放つ。その声が果たして聞こえたかどうかは、ころりと転がる首の前にはもう、誰も分からなかった。

「ハロゥ、ハロゥ。」
 狂い、惑い、残響の響くダンスホールに、何処か場違いな挨拶が降る。エンジ・カラカ(六月・f06959)のつかみどころのない声が、爆音さえも裂いて不思議と耳に届く。
「やーっとコレとトキワの出番ダ。」
 ぴこぴことアカイイトの結わえられた指を動かし笑うエンジに、今まで他人の振りをしていた神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)もにこりと笑みを刷いて頷く。
「あァ、待ち遠しかった。漸く大暴れできるようだ」
「うんうん。」
 そ知らぬふりで潜り込み、駆け引きに嘘と虚ろを混ぜ込んで、あちらこちらと仕掛けを忍ばせる。そんな下拵えの時間もそれなりには楽しめたが、然しそれも今この瞬間を思えばこそのこと。ようやく引き剥いだ偽りの仮面の下、待ちかねた指をほぐす様にこきりと動かして、賢い君のアカイイトを囮になってくれたカワイイあの子――常盤が呼び寄せた天竺に結び付ける。
「はは、可愛いじゃないか」
 蝶々のカタチに結わえられたアカイイトを見て、思わず常盤が頷きながら言い添える。似合っていると褒めたつもりだが、どうにも向けられた天竺の視線が冷たい気がするのは気のせいだろうか。
「毒のイト。支給するなら毒の茶がイイと思う。トキワもそう思わないカ?」
「名案だねェ、エンジ君。さあ天竺、茶を入れてくれ」
 エンジの提案には、散々飲み食いをしてきた輩には似合いだろうと、皮肉を込めて愉し気に常盤が同意する。命じられた天竺も慣れた様子でテーブルに残った茶器から手際よく茶の用意を始める。
「あ、僕のはそのままで――」
 そう告げる常盤の声に、ぴたりと天竺の動きが止まった。イトから滴る毒が常盤の分のお茶に入る直前に見えたのは、囮に使ったことへのささやかな抗議か、はたまた唯のカンチガイか。かくあれ幾つも注がれたカップたちから一つ摘まみ上げ、たじろぐ吸血鬼たちにまるで宴の主人の様に優美に茶を勧めて見せる。
「さぁ、吸血鬼諸兄も召し上がれ――毒入り紅茶を楽しめるならね」
「ば、馬鹿じゃないの!?そんなもの飲むわけないでしょう!」
 勧められた内、比較的若く映るドレス姿の少女が憤慨しながらテーブルのカップを払いのける。乱暴な振る舞いにガチャン、と音を立てながら全てが割れた――かと思いきや、床に触れる直前にピタリと止まる。まるでそこに、見えない“イト”でもあるかのように。
「なに、何でカップが浮いて――んンっ!??」
「アァ……賢い君は情熱的だろ…?そうだろう。うんうん。」
 語り掛けながらエンジがひょいと指先を返すと、たちまちイトに絡んだカップは呆けた吸血鬼たちの口元へと運ばれていく。頭からかぶる者、口の端氏から流しこまれた者、振り払って割れたカップで傷ついたもの。そのどれもがじわりと毒に侵されて、苦悶の声を上げていく。傍目に笑うエンジは、苦しむ吸血鬼らを指さしてさらに唇の端を吊り上げる。
「頭の高いヤツラは絶対に自分たちはダイジョーブって思っているンだ。でも今はこのとーり。」
 さっきまでは悲鳴と嘆きのショーを高みの見物と決め込んでいたのに、今では自分たちが見物をされる番。飲まされた毒に喉は爛れ、臓腑は灼け、掻き毟る爪が赤く染まる様子は悲劇か喜劇か。ああでもまだだ。それくらいじゃあ足りない。たりない。タリナイ。
「アァ……それよりも遊ぶ?遊ぶ?」
 毒任せもいいけれど、それよりももっと残酷に、凄惨に、盛大に。広いダンスホールをもっとアカく染め上げるのも、きっと踊る様に楽しいはずだ。
「巡らせておいたイトももっと使おうそうしよう。トキワ、トキワ。合図を覚えているカ?」
「勿論、覚えているとも!」
「うんうん。そうだそうだ。それじゃあ――はじめよう!」
 宴の前に決めた、ふたりだけに分かる合図。ビィン、と張ったイトをエンジが指で引けば、弓から放たれた矢の如く、常盤が駆けて耽溺の爪を振りかぶる。
「ギャア!!」
「いやぁぁぁ痛い!!」
「ほぅら、鬼事の時間だよ、次はお前たちが喰われる番だ」
 毒に侵された躰では、エンジのアカイイトからも、常盤の鋭い爪からも逃れるに鈍い。腕を削がれ、足を削り、頬を掠めて――青白い肌が赤く化粧を帯びていく。
「ふふ、こんなんじゃ足りないよねェ。いっぱい遊んで狩り尽くそう。僕も未だ腹が減ってるし、ね」
「ダロゥ?だからアイツが遅くなっているうちに、もっともーっと」
 ――あーそーぼ、と。無邪気に、楽し気に。子供が遊戯に誘うかの気軽さで、死の舞踏は続いていく。

 あちこちから上がる爆発に紛れて、ひときわ明るい炎柱が見える。ひとつ、ひとつと燃えるたびに聞こえるのは、着飾った吸血鬼の婦人たちの悲鳴だ。それもその筈、火元となっているのは彼女らが宴の最中、“商人”から喜々として受け取った赤い宝石――オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)の魔力がたっぷりと籠められた逸品なのだから。彼が指を鳴らすたび次々と炎に巻かれる同胞を見て、そのことに気づいた婦人の一人が、懼れと怒りを綯い交ぜにした視線でオブシダンに尋ねた。
「何でこんなこと…アンタたち、宴を楽しみに来た客じゃないの!?」
「残念、ちがいまーす。それに猟兵としての依頼だからって建前もあるけど。ほら…整った場を滅茶苦茶にするのって、楽しくない?」
 フード越しに視線は伺えずとも、両手を広げた姿に明らかな愉悦滲む口元だけで、意図は十分に伝わっただろう。馬鹿にして、と激昂も露に爪を伸ばす吸血鬼を相手に、オブシダンは身動ぎ一つせず立ったまま。当然だ、避ける労力も、逸らす手間も、もはや何も必要ない。振りかぶり襲い来る彼らの後ろには――ひたりと黒い影が潜んでいるのだから。
「悪いけど、先に幾らかやらせてもらったよ」
 あと一手届かず床に臥していく吸血鬼たちには構いもせず、あっけらかんと上着でも放り投げる気安さで、こちらへと歩み寄る姿に剣をポイと投げる。
「道を覚えてはきましたがざっくりだったんで、ヒントがあるのは助かりましたね。」
 それを屠殺部屋からホールへと移動してきた矢来・夕立(影・f14904)が、渡されたオブシダンの剣を受け取りながらこともなげに告げる。正直あれだけの爆炎を見れば、操ってる張本人にたどり着くには十分すぎた。
「それにしてもスゴイ滅茶苦茶ですが。楽しかったですか?」
「楽しかったねぇ。癖になりそう。そっちの首尾は?」
「何も問題なく。部屋に残る人もいたので、一般人の方も心配ないでしょう」
 夕立の言葉は静かに的確に情報を伝えるだけのもの。だが、なんだかんだと付き合いを重ねてきたオブシダンは、その端に僅かな苛立ちを感じ取って首をかしげた。
「スムーズにいったって言う割りには君、イラッとしてない?あっもしかして僕にも怒ってる?」
「…怒るといえばそもそも。」
 溜息と共に視線を切って、夕立が新たに伯爵へと目を向ける。更にはその懐に眠っているだろう、呪殺の黒曜を睨み据える様に。
「黒曜の刃物がああも面白おかしく使われてるのが腹立たしいんですよね。」
 人を呪い、痛みを与え、苦しみを生み出す短刀。同種の石を元にしていても、まるで異なる在り様は、どうにも貶されている気がして神経を逆なでさせられる。
「あの短剣がどうなろうとどうでもいいですけど、目障りです。この場で最も強い黒曜、最も鋭い剣は、これなんで。」
 そう言って、手にした器物を――オブシダンの核ともいえる、黒曜の剣を握りしめて夕立が不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「そっか、なるほどねぇ。うんうん。」
 それに対しても一貫して浮かべるオブシダンの笑みは緩く、言葉端もへらりと掴みにくい。けれど剣を通して、確たる思いは伝わってくる。望んだ相手に力を貸し、つかみ取った相棒の願いを叶えるモノ。人の身を経ても、どれだけの人と時を有しても、その芯だけは何があっても揺らがない。
「西洋剣の使い方は分かりません。前の一回っきりですよ。カバーしてください。」
「はいはい、任せてよ相棒。こっちは呪いの剣じゃないけどね。その分きっと、よく斬れるよ」
 両手を広げて肩を竦めながら、構える夕立の背にくるりと回ってオブシダンがまじまじと姿勢を眺める。
「握り込みすぎると手首をやられるよ。あと重心はもう半歩引くといい。真っ直ぐ立てるより少し斜めに構えて、その分重さを乗せて振り下ろしてね!」
「…口うるさいのも今だけは我慢してあげます。――叩ッ斬ってやりましょう。」 
遠慮容赦なく構えを指摘するオブシダンに多少目を眇めはしたが、素直に聞き入れて夕立が切るべき相手を見据えなおした。

 ひとり、またひとりと猟兵たちがホールへ集結するのを見て、怯えた吸血鬼たちも多くいた。伯爵様は失敗したんだ、なら戦うよりも逃げて仕舞え。そうして生き延びたらそう、今度は自らが宴の主催になったって――!そんな下卑た思考をベースにそろりと扉へ向かう吸血鬼の体が、ドアノブに手を掛けた途端――一瞬で、燃え上がった。
「ギャアアア!!いやぁぁ熱い!熱い!なによ、これぇ…」
 プスプスとあっという間に灰になっていく同胞を見て、同じ様に逃げようとしていた吸血鬼たちが震えて足を止める。その扉の影から踏み込んできたのは司と、編み出された数体の分身たち。姿を同じくした中で、いっとう強い存在感を放つ本体の司が、厳かに、そして明確な怒りを込めて命令を下す。
「私の影達よ。奴らは命の罪を犯した」
 ダン!と床を鳴らすほどに踏みしめて、前に出る。
「命の罪は命をもって償わせる。」
 ひとりが、怯え反転する吸血鬼の脳天に、雷撃を直撃させる。
「人理で裁けない悪は私の正義をもって裁く」
 ひとりが、許してやめてと口にする女の頭を、水球に沈めて溺れさせる。
「罪には罰を、悪には鉄槌を」
 ひとりが、でっぷりと太った男の上に土塊を練り、落としてすりつぶす。
「1人の例外なく首を刎ねろ」
 ひとりが、逃げる脚を凍らせてから首を刎ね、更に心臓を貫く。
「――正義を、執行する」
 それは、蹂躙だった。正義の名のもとに、規律正しく行われる刑の執行。司の強固な正義への絶対視が、今人々を嘲笑った吸血鬼の口から、絶望の言葉を吐きださせる。ひとり、またひとりと消えて行く中、燃え残った吸血鬼が縋るように司の足に手を伸ばしたが――それも、瞬きの間に刻まれ消えた。

 開幕のベルよろしく上がった爆炎にあわせて、日東寺・有頂(手放し・f22060)が血に濡れた腕をぶん、と大きく振り上げる。まるでそれはオーケストラの指揮のようでいて、楽器の代りに奏でられるのは周囲の吸血鬼たちの喉だ。ドレスやタキシードの下の優雅なお御足に、斉しく極小針が突き刺さって各々が恥も外聞もない大声で悲鳴を上げる。
「あがんチマい皿じゃ足りんばい。オイどん猟兵健啖ぞろい」
 堕ちて割れた皿を指さして、有頂が肩を竦めて見せる。だが夫が手を振り上げるのを横目に妻の佐々・夕辺(凍梅・f00514)はそうせず、ただじっと招待客たちの方を見る。見つめる瞳に慈愛や憐憫の色はなく、乗せられるのは愉悦と好奇。獲物の表情が歓喜から絶望へ変わるのを見たいという、捕食者の欲がぎらりと光る瞳。
「特にうちの嫁さんは口ン中に血汁ば溢れさせんと、食うた気がせんのやって」
「ええ、そうよ。あんな紛い物の痛みでは私の夫は満足しないし、こんな調理された肉では私は満足できないの。」
 有頂の言葉に頷きながら、夕辺が近くの肉が零れた皿をつつ、と指でなぞる。何の肉で出来ているかは知らないが、こんな小さくお行儀よく盛り付けられたディナーでなんて、到底腹が満ちそうにない。
「痛みと血にまみれた肉こそが命を繋ぐのよ」
 ただ痛みを与え呪うよりも、生きたまま噛み千切って飲み下す温かみこそが馳走だと口にする夕辺の艶美な微笑みに、向けられた吸血鬼たちがぞくりと背筋を凍らせる。猟兵?吸血鬼?――はたしてどちらが化け物だというのか!
「それにしても…あらあら、皆さん「どうなさったの?」足がふらふらよ?」
 有頂の攻撃を受けて苦し気によたよたと歩き回る吸血鬼たちに、クク、と喉を鳴らして貴婦人よろしく夕辺が問いかける。いや、正確には問いを投げかけたのは管狐に対してだ。そして聞き届けた忠実なる彼らは、飲み干された敵の体内で急激に、梅の枝葉となって伸びる。柔い皮膚や血管が固い木枝に耐えられるはずもなく、ぎゃあ!ひぃぃ!と無様な悲鳴を伴って内側から突き破られていく。生きながらにして樹木へと変じていく如き苦痛に、なぜ、どうしてと視線だけで問う吸血鬼に。
「ほれ。飢えと欲望がもたらす呪詛ば、アンタら飲み干したとやろう」
 さも当然といったように、有頂がくい、と飲み物を啜る真似をしながらあっけらかんと答える。だが最早それを伝えたい相手は、見るも聞くもできない姿へと転じつつある。
「な〜〜聴いとっと?」
「ああ、有頂。もう聞こえていないみたいだわ。でも…呪詛で命を落とすって、なんだかロマンチックね」
 呪い、呪われ、死に絶えて。パキパキと音を立て這いつくばる肢体を前に、赤く血の色を纏った夫婦がくすりと笑って見下ろした。

 爆炎に紛れて、トタタタ、と軽い音が奏でられる。その音の軽やかさに反して、鳴るたびに吸血鬼たちが体に風穴を開けてひとり、またひとりと倒れていく。それは天井付近に展開された幾つもの銃――望のセプテットによる制圧射撃。精密な制御で猟兵達を避けながら、的確にヴァンパイア達を打ち抜いていく。反撃に来る吸血鬼にも、既に何匹も召喚しておいた猫達がフォローに回り、にゃあ、と鳴き声一つで上から魔法を降り注がせる。そうして上の方に分かり易く戦力を配したのは、敵の注意をそちらへ向ける為だ。恐れと怒りで足元がおろそかになっているうちに、望がくるりと吸血鬼たちを“世界”で纏めて飲み込んでいく。
「わたしは答えられるけれどお前達は答えられないですよね。」
 幼い見た目に反し、望の尋ねる声は鋭く冷たい。世界とはどのようなものかと問われても、皆醜い悲鳴を上げるばかりで凡そ満足できそうな回答は齎されない。
「その世界がお前達用の屠殺部屋です。つまり、不愉快だから苦しんで死になさい。」
 犯した罪には、相応の罰を。今まで苦しめた分だけの苦痛を味わう様にと、飲み込まれていく吸血鬼たちに望が冷たく死を宣告した。

――そうしてホールの客たちが、給仕係たちが、襲い掛かる猟兵たちによって急激にその数を減らしていく中。この宴の伯爵へと相対する猟兵もまた数多くいた。

「――まぁ、上手くホールには溶け込めてたわよね、私」
 ドレスの裾を払い、ふぅと息を吐きながら尾守・夜野(墓守・f05352)がぽつりと零す。会場に入ってからは時折かかる声をいなしつつ、壁の花を決め込んでいたが、今となってはそんな演技ももう必要ない。コツリとヒールの脱げないよう確かめてから、夜野が零すのは――笑い声だ。
「…閉幕にはまだ早いのではなくて?」
「――煩い、五月蠅い!私以外の者が勝手に私の宴の終わりを語るな!」
「あら、ふふふ…でも私、悲鳴が聞きたくてたらないもの!えぇだから、本番は此れからでしてよ」
 激昂する伯爵にはとんと構わずユーベルコードを発動し、保っていた距離を一気に詰める。途端伯爵を守るように現れたのは怯えた表情を張り付けた人間――恐らく、この城で犠牲になった憐れな者たち。だがそれもすべては伯爵の力が生み出した紛い物。もはやこの世に彼らはおらず、ただただ憐れなだけの幻には一切の無視を決め込む。
「ごめんなさいね、全部は助けてられないの」
 立ち止まり、手にした皆で切り裂き、目の前の者たちを残らず刻印で取り込み自らの強化に回す。見知らぬ誰かの宿痾を取り込むような事はしないけれど、それがユーベルコードで編まれた取り巻きとなれば話は別だ。
「ずっと追いかけてくるなら中に入ってなさいな」
 襲い掛かろうとした端から取り込み、飲み込み、喉を潤す様に力へと変えていく。今この場に寄越した夜野の人格は、直接の攻撃こそそんなに得意ではない。けれど。
「よい悲鳴を戴く為のスパイスと考えると…悪くはないのだわ」
 取り込み、混ざり合い、力となって狭窄されていくのを感じながら、夜野がくすりと微笑んで見せた。

「御機嫌麗しゅう、伯爵さま。此度で二度目の御挨拶かしら」
 戦場の最中に似つかわしくない挨拶を口に、七結がふわりと伯爵の前に躍り出る。
「何を白々しい。貴様とて宴に潜り込んだ鼠だろうに…!!」
 既に幾度か攻撃を受けている身にはそんな態度も鼻につくらしく、吐き捨て様に殴る手が飛んできた。だがその手が七結に届くことはなく、するりと間に割り込んだ八重によって躱される。
「あぁ、伯爵様。素敵なディナーをありがとう御座いました。でも残念ですわ、これは最高の食事とは言えなくてよ?」
 近くにあった皿を爪でカツン、と弾いて落とせば、零れる肉は一体何のものなのか。ただ八重が問うているのは食材の種類や質などではない。最高の食事、待ちかねて頬も蕩け落ちるような晩餐。そこに最も必要なスパイスを、伯爵は分かっていない。
「――貴方の食事には、愛が無いわ。」
「愛、だと?ハンッ、ふざけたことを…!」
「そうかしら。私にとっての最高のディナーは、なゆちゃんだもの」
 七結の醸す苦痛、嘆き、哀しみ。それらは全て八重のためでなくてはならない。しかもそれを食せるとあれば、まさに夢心地の様だ。そう感じられるのはひとえに――相手をあいしているからこそ。
「ねぇ、私のなゆちゃん」
 頬を染めて、蕩ける様に瞳を細めて、八重が七結を見つめ呼ぶ。その声にまた、七結もとくりと早まる鼓動を感じて口元をほころばせる。――わたしを、と乞うあなた。何よりも気高き薔薇を傾倒させるこの心地は、どんな甘露よりも甘く美しい。それは八重へさえも告げない、七結だけの秘かごとだけれども。
「わたしを食みたいだなんて、なんて悪戯なあねさまなのでしょう」
 くすりと佩く笑みは、今はまだお預けよと含みを持たせて。あなたにならば幾らでもと告げるのは、終いを迎えてから。
「――さあ、終幕としましょう。最早、この宴に飽いてしまったの。あねさまとふたりきり、ゆうるりとした時間を楽しみたいわ」
 七結の溜息にも似た終わりを告げる言葉に、招かれるのはあけの花嵐。――甘美な想いの奥ふかく。愛おしいあねさまが、ずっと、ずうと。わたしに溺れていて欲しいと希う、醜い笑みを、卑しい想いを。全て隠してしまうかのように、牡丹一華が舞い踊る。
「くっ…鬱陶しい…たかだか花びらごときが!」
「あら、なゆちゃんの攻撃を受けられる貴方が羨ましいのに」
 花に嬲られ喘ぐ伯爵に、八重が向けるのは羨望の眼差し。華の奥に潜む毒密は知ってか知らずか、花と同じ色に皮膚を染め往く伯爵の頬を両手で包み、そろりと口づけを落とす。紅薔薇のキスは毒を孕んで甘く、耐えがたい熱を帯びる。内から掻き毟るように、苦しみをじわりと染みこみ与えていく。
「が…あっ…!?いま、私に何を…!!」
「ふふっ、前よりも素敵なお顔よ」
 口の端からどろりと血を流す伯爵に、八重が悪戯っぽく誉めそやす。――牡丹と薔薇の、華二輪。寄り添い咲き染む姿はまるで、死者を儚む花束のようだった。

 毒に抉られ思わず見せた隙を、猟兵たちが逃しはしない。いち早く気づいたエコーが、剣を構えて伯爵の懐へと踏み込む。咄嗟に盾代わりの犠牲者を眼前に召喚するも、魔力で編まれた虚と在ってはエコーの突き出す剣に迷いはなく、薄皮一枚貫けば切っ先が届く距離まで肉薄する。
「くそっ、人間風情が…!」
「吸血鬼。お前の使う呪いとボクの剣、似ていると思わないか?」
「…ハッ?それが何だと…」
「この剣は肉体は傷付けない。だがそのナイフと同じように、魂の削れる恐怖と痛みはお前に味わってもらおう。…さぁ叫べよ。宴の客に聞かせてみろ。お前の悲鳴を」
 ぐぐ、と体重をかけて押し出せば、ぶつりと突き刺す音を伴って伯爵の躰に剣が突き刺さる。瞬間、体の深い深い内側から思い切り揺さぶられた感覚が全身を駆け巡り、思わず口から悲鳴が溢れた。卵を握りつぶすかのような不快な悲鳴に、エコーの方に頭を乗せながらハイドラがヒュウ、と口笛一つ。
「ここに入り込んでからずっと、俺ァいつ爆笑しようか悩んでたんだが、こりゃいい。あんたの無様な悲鳴が聴けるなんてなァ!?」
 愉悦を隠さない物言いに、伯爵がなけなしの気力でハイドラを睨み上げるが、それすら彼女にはただの愉しみの一つに過ぎない。
「大勢の観客の前でさァ、ぶちまけちゃえよ。そのナカミも悲鳴も――ぜぇんぶ♡」
 にたりと笑うハイドラの黒く染まる瞳に、伯爵が知らず背筋をぶるりと凍らせた。

 続けざまに、他の部屋からホールへと雪崩れ込んでくる猟兵達も、伯爵の姿を見つけるや攻撃の手を伸ばしてくる。それは控えの間から辿り着いたイーヴォと十雉も例外ではない。
「一発当てられなくても嫌がらせくらいはしないと、気が済まないからな。」
「うん、そうだね、このまま伯爵に何も出来ないままじゃオレも気が済まない。…ぎゃふんと言わせてやろう!」
 ぎゃふん、の物言いが面白かったのか、一瞬イーヴォが笑ったのを見て十雉がもう、と頬を膨らませる。――食事の時は恐怖しかなかったホールも、並び立てばこうも心が軽い。そのまま十雉が青い炎を呼び寄せ、イーヴォがくるりと不可視の銃を空間に配せば、下拵えは完了だ。
「怨嗟の炎で料理してあげる」
「なら俺は鉛玉でトッピングをしてやろう」
 合わせずとも呼吸が揃い、1,2の目配せで炎と銃弾が見舞われる。遠距離と不可視、それに乱戦の最中と在っては気づくに遅く――伯爵が、成すがままに調理されてゆく。

「伯爵しゃんはまだ立っとーかしら…っとぉ!!」
 尋ねるような口調ながら、有頂が繰り出すのは立ってようが這いつくばってようがお構いなしの全力を込めたソバット。速度も力も乗った一撃だが、大ぶりな分奇襲に気が付きかろうじで鏡写しの動きでディンドルフが応戦する。だが、そのまま踏みつける勢いで踏み込む有頂に、思わずたたらを踏んで後ろへと数歩下がった。
「くっ…!」
「耐えるとは流石!ばってんここは…バフデバフ盛り盛りでオーバーキルさせて貰います〜〜!」
「あらあら、私の夫は足癖が悪い事」
 悪いと指摘しながら、夕辺に凡そ咎める様子はうかがえない。寧ろころころと笑みを添えた姿は、もっともっととけしかけているようである。その証左に。
「往きなさい、管狐」
 笑みの合間に、するりと従えた管狐へと攻撃するよう言葉を下す。夫が望んだとおり、命じる呪殺の力を以て、例え殺せずとも相手の生命力を削ぐ。
「ところであなた?其の血は舐めても良いって事かしら?」
 戦いの合間、こそりと夕辺にそう囁かれて――代償の流血で嫁に悦んで貰いたかった内心を掬い取って貰えた喜びに、有頂が目を輝かせて微笑んだ。

 くるくると、まるで踊るように。伯爵が並居る猟兵たちに翻弄されていく。ただでさえ多対一、いくら召喚して頭数を増やそうとしても猛追の最中にはそれもままならない。攻めあぐね、防ぎそびれ、だからこそ――背中側など、最も隙が大きい場所で。
「嘘も縄抜けも得意ですが、何より僕は――闇に乗じるのが、一番得意です。」
 背後から静かに剣を振り上げ、狙い澄ました構え。それだけでも十分にダメージが乗るだろう所に、夕立が更に加えるのはひと言。
「…剣さん!」
「了解だよ――“さぁ行こうか、相棒”」
 オブシダンの呼びかける声が剣の軌道を導く様に、伯爵の背中へ吸い込まれて袈裟懸けの一撃を刻む。首を落とすことこそ叶わなかったが、高さを乗せた一撃は重く、ディンドルフが明らかに焦る様子を見せた。

 満身創痍になりつつある伯爵を前に、部屋を出た時とは打って変わって静かに潜んでいたカーバンクルが、ここぞとばかりに車輪ごと飛び出してくる。
「伯爵これは何事ですか! 突然私と同じ部屋に連れてかれた奴らが暴れ出して……! 」
「――…ああああ煩い!どうせ貴様もグルなんだろう!何を白々しい…」
「いえいえそんな!でもこのままでは……そうだ、こんな時こそこの車輪の真価をお見せする時! ぜひこれに繋がれてくださいな!」
「させるかっ!」
 押し切らんばかりの勢いで車輪につなげようとするカーバンクルに、当然の如く反抗して伯爵が蹴り飛ばす様に距離を取る。その最中、金具の部分にあたった手に擦り傷が出来たが、そのまま治る様子はない。
「あれ、傷が治ってない!? あらま不良品だったようですねー、これは失敬。あの場で実演させていただければ気づけたんですけどねー?」
 最後まで惚ける振りで、カーバンクルがおかしいなぁ、と首をかしげて見せた。

「さて、伯爵。そろそろおねむの時間でしょ?沢山食べたあとはぐっすり眠らなきゃ。――永遠に、ね。」
「眠る以外の永遠など、そなたには相応しくない。斯様な厄は約されてはいないのだ。それにもう、私はこれ以上我慢したくない」
 たっぷりと猟兵達からの“お仕置き”を喰らった伯爵を前にして、櫻宵とカムイが死神の如くにそう告げて見せる。ただ櫻宵自身は、この宴自体にはちょっぴり感謝もしているのだ。お陰でカムイの“あんな”表情をみられたのだし、それはそれは美味しくて愛しくてたまらなかったのだから。でもそのおかげで今神様は大変ご立腹だ。だからちゃあんと、味わった舌は切り落とさねばならない。――それに、なにより。
「私、あなたの叫びだって堪能したいの」
 くすり、と弧を描く唇は、紅よりも赤く染まって見えた気がして、伯爵がびくりとたじろぐ。苦し紛れに皿に並々と溢れる犠牲者の肉のスープを投げられても、櫻宵がくるりと器用に受け取って、そのまま――飲み干してしまう。
「サヨ、そんなのを食べたらきみがお腹を壊すだろう」
「大丈夫よぉ。だって、私は――人喰いの龍だもの」
 笑みを浮かべながら吐く言葉に、どれ程の痛みが焼き付いているかを、カムイとて知らぬわけではない。それでも今はこうして並び立てる奇跡を糧に、敵を撃つためと揺れる心を諫めて刀を構えなおす。
「さて、伯爵。あなたは美味しいかしら?」
「……きみに食べられるのは、私だけでいいというのに」
 尋ねた言葉尻を捕らえて、こんな戦場に在っても拗ねて見せる神様がおかしくて、思わず櫻宵がくすりと笑う。お仕置きに食べられるのは私だと思っていたけれど、と茶化して答えれば、一層カムイがむぅ、と口の端を下げる。
「別にあんなナイフなんてなくても、今度は直接食べてもらえばいいのだし。ねぇ――私の神様」
 ウインク交じりに櫻宵にそう零されれば、カムイが複雑な感情を絡めた溜息を吐いて返す。
「サヨは懲りないね。……呪いではなく、本当に私に食べられても知らないよ?」
 傍には脅しとも窘めるとも取れるカムイの言葉に、僅かに混ざった願望は隠すように目を伏せて。けれど本当はそれこそが櫻宵も願うところかもしれない、とは――ただ、神と巫女のみぞ知る秘め事なれど。今は眼前の敵を撃つべく心を切り替えて、並び立つ2人が神罰の剣戟を降り注がせた。

「要おにいちゃん…もってて、「おねがい」」
 伯爵を前にして、青が不安げに要へと言葉を切り出す。そして自分の本体たる首飾りを取り出し、預けるべく手を伸ばした。
「えぇ、確かに」
 指先の小刻みな震えを和らげる様に、一度その手ごとぎゅう、と握ってから要が首飾りを受け取った。そして猛攻の合間、ほんの一瞬此方へと距離が詰まった隙に青が伯爵の前へと滑り出て、服の裾を掴み懇願する。
「何だ貴様は…!」
「ききたい事が、あるんだよぅ」
「――ハッ、今更一体何を。」
「教えてくれたら、ボクを…たべてもいいよ。…おじさんが食べた中に、ボクと似た子はいた?」
 訝しげな表情は浮かべたものの、消耗の激しい中で転がり込んできた若い肉は、回復にちょうど良く思えたのだろうか。吐き捨てる言いざまではあったが、伯爵が質問に答えを述べた。
「…食材の顔などいちいち覚えてない。だが貴様の様によく啼いたとあれば憶えていようが、あいにくそんな記憶はないな」
「――じゃあ、いない?なら…よかった。」
 ホッとしたのもつかの間、青がまた顔を曇らせて、きゅうと胸を掴む。
(でも、そしたらボクは、要おにーさんをただ傷つけただけ――)
伯爵の返答によってあぶりだされた事実が、密やかに、けれど確かに青の胸を焦がす。それでも、今はなすべきをと気持ちを切り替えて、差し出す血肉の代りに光で以て伯爵を焼く。
「がっ!?…くそっ、矢張り謀ったか…!!」
「ま、当然といや当然でしょうねぇ」
 怒りに任せて手を伸ばす伯爵の動きを見て、後ろから見守っていた要が青の前に庇う様立ちはだかる。瞬間、それまで伏せていた右目を開き、伯爵の周囲の空間を“定義”する。そこに生れ落ちるのは、太陽と見紛う灼熱の塊。全力を以て編み上げる、魔力の炎。
「焼き加減のお好みはありますかぃ?せっかく調理して貰ったんだ、こっちもお礼に吸血鬼のローストなんていかがで?」
 そちらが人の血肉を振る舞うというのなら、こちらも同じことを返すまで。極大にまで膨れ上がった火球を背に、要が冷ややかに問う。
「もっとも不味くて食えたもんじゃねぇでしょうが」
 指先一つで迫る炎は、たとえ逃げようとも四方に散って追い込むよう仕込んである。迫り来る恐怖を前に、伯爵が細い悲鳴を一つ上げた。

 共に戦う仲間には癒しと鼓舞を。そして歩く先に憚る吸血鬼には目も眩むほどの光輝で視界を奪う。清廉さの中に強い怒りと秘めて、ヘルガが罪あるものに神罰を下していく。かろうじで息がある者も、ヴォルフガングが一刀のもとに薙いで焼き払っていけば、伯爵までの道すがらには吸血鬼の灰しか残らない。
「ディンドルフ、貴方の目の前にあるそのスープ。一匙たりとも飲ませはしない」
 やがて辿り着いた伯爵の前で、ヘルガが凛と言い放ち、テーブルに配されたスープを指さす。――既にその材料は知れている。ここで命を散らしていった者たちの血肉で贖われた、余りにも悲惨なスープ。たとえもう助けることは出来なくとも、せめてディンドルフの口には運ばせないと、ヘルガが固く誓いを乗せて歌を謳う。それに合わせてヴォルフガングもまた剣に猛々しく炎を纏わせ、全ての罪を問うべく立ち向かう。
「黒曜の呪いが齎す残酷劇…それを今日で、必ず終わらせる」
「貴様が愉悦として味わった人々の苦痛と恐怖、思い知れ!」
 白き鳥と黒い狼。奇跡を齎す歌と断罪の煉獄を以て、伯爵の身を深くふかく責め苛んだ。

「あ、いたいた。みーっけ!」
 戦場の緊迫感とはかけ離れた底抜けに明るい声で、七・トモ(七不思議・f29745)が、炎に巻かれ逃げる伯爵を指さして笑う。
「実はひと言言いたかったんだよねぇ。宴を開いてくれて感謝してるよ、伯爵。――ともだちっておいしいねえ」
 てくてく歩いて前へ躍り出ると、ぺろり、と唇に残る余韻を掬い取るように舌で舐める。そのまま自慢のセーラー服のスカートをつまんで、優雅なカーテシーを披露しつつ、ホールに相応しい遊戯へと誘う。
「さ、お礼に食後のダンスでもどうだい?」
「何を白々しい…!」
 幾度となく襲われている状況で、ダンスなど踊れるかと言わんばかりに、伯爵が犠牲者たちを呼び寄せ盾にしようとした、その瞬間。
「――なんてね」
 悪戯を明かした子供のような顔で、トモがわらって見せる。『夕闇サプライズ』――それはまさに、驚かせるための一芝居。
「ハァ!?何だ、それは…!?」
「ぎゅいぎゅいーん!ワハハびっくりした?」
 凶悪な回転音を上げるチェーンソーを振り上げて、トモがディンドルフへぶんと切りかかる。見慣れぬ武器を前に伯爵の眉間の皺がぐんと増えたが、そんなことはお構いなしだ。
「さ、悪は成敗しなくっちゃ」
 チェーンソーを遠慮容赦なく振り回して襲い掛かる図は、傍目にはトモが悪のように映らなくもないが、そんなことはお構いなしにえーい!と襲い掛かる。伯爵も伯爵で初めて目にする武器を前に防戦一方だが、掠り刻まれ少しずつダメージがたまっていく。そこに、更に援軍とばかり駆けつけるのはトモには見慣れた青年の姿。
「トモ!無事…は無事みたいだね。うん何も心配なさそう」
「あ、来た来た遅いよ遅いよすずくん!ほらチェーンソーくんが伯爵に襲い掛かっちゃってるじゃあないか!」
 先に一杯飲んでた、くらいの軽さでようやくホールに現れた寿々彦に向かってトモがぷんすこ怒って見せる。が、その手にギュインギュインうなりを上げるチェーンソーが握られているのも見えて、寿々彦がそっと目を逸らしかけた。
「でも、ナイスタイミングだよすずくん。やっちゃえやっちゃえ!」
「…しょうがないなぁ、じゃあ全力…でっ!!」
「――ガッ!!」
 トモの煽りを受けて、チェーンソーに気を取られていた伯爵へ向かって、寿々彦が全力の殴打を叩き込む。避け切れずまともに顔に受けて、伯爵がたたらを踏む。
「呪印付きだよ。さっきのお返しだ。あんた、そういうの好きだろ?」
 体の内から削がれるようなあの痛みを、じわじわと身体を蝕む毒の痛みに挿げ替えて。伯爵にプレゼントとばかりに刷り込めば、片足をついて苦痛に喘ぐ声が零れた。
「ワハハ!ないすぅ!じゃあそのまま捕まえておくれ。どんな味がするかだけ、ちょっと試してみたいんだよ」
 今なんか他にも凄く不穏な事を言ってるような気がしたけど、都合よく聞こえなかった事にした。脳が勝手に。そのまま捕縛の心持で寿々彦が伯爵を羽交い絞めにしてると、トモが上にのしかかって――パサリと髪が落ちる。影になった口元は、伯爵にも、寿々彦にも見えない。ただ、さっきより赤く見える唇が、ニィ、と三日月の様に吊り上がって。
「ねえ たべられるって どんなきもち ?」
 トモから向けられた瞳は、好奇心に輝いているように見えた。けれどシャンデリアを背にした前髪越しでは、ただただぽっかりと開いた深淵を覗き込んでいるような気分にもなった。痛み以上の“ナニカ”に胃の腑をギュウ、と締め上げられて伯爵が思わずがむしゃらに拘束を振りほどき、距離を取った。
「安心しておくれよ。きみの悪趣味は、トモちゃんが引き継ぐとも」
 どんな手際か、いつの間にかするりと伯爵の懐からスリ取ったらしい黒いナイフ――呪殺の黒曜を手に、今日一番のいい笑顔を見せるトモ。
「わー!トモやっぱり持って帰る気だろ!駄目!絶対駄目!」
 それを見た寿々彦が、さっきの痛みを思い出してツツーと背中に冷や汗を伝わせる。このまま持って帰らせたらきっと、たぶん、いや絶対に実験台にされる。それだけは嫌だ。
「捨てろー!」
「あーー!!」
 危機回避能力を全開にした寿々彦渾身のスティール&リリースによって、トモの悲鳴をバックに呪殺の黒曜が会場の何処かへと投げ捨てられた。

 激戦の場を僅かに逃れた伯爵が、ふと視線を巡らせ行きついたのは怯えた一般人の男の姿だった。視線が合えども襲い掛かる様子はなく、冷や汗をかいて後退るあれは確か商人だったか。
――いやそれはもうどうでも良い。
しかしこれ程傷ついた体で大勢と戦うのは分が悪い。
なら、そう、そうだ――人質を取ればいい。
所詮豚共は同胞ひとり傷つけられまい。
足止めにでも盾にでも使って逃げれば再び宴を開くのも叶うはず。
 そんな計算の元、伯爵がニィ、と口元を歪めて手元へとスープ皿を招き寄せれば、たぷりと零れそうなそれを商人――いや、猟兵の源誠に投げつけようとする。
「愚かな食材よ、我が為の贄となれ!」
「――残念、それはもう対策済みだよ」
 怯えた仮面を脱ぎ捨てて、源誠が手を伸ばす。それは動作の形容でもなく比喩でもなく、本当に“手”がぬるりと“伸びた”のだ。気づかれないよう片手に仕込んだマジックハンド。その掌に握り込ませた破魔のナイフが、飛んでくるスープ皿を込められた呪いごと断ち切る。ただの人だと侮っていた源誠からの思わぬ反撃を受けて、伯爵が思わずぽかんとした表情を浮かべるのを見て。
「……せっかく弱みを握ったってのに、無駄になっちゃったねぇ」
 にやり、とこれ以上ないくらい意地悪そうに笑って見せる。そのまま応戦もできるよう隙無く構える源誠を前に、目論見を大きく外した伯爵がぎりりと音が鳴るほど歯噛みした。

 着替えと武器の取り出しに時間を割いたため、燦がホールへ踏み込んだのは先陣に比べてだいぶ遅かった。だが、重役出勤で来たのは何もその為だけじゃない。遅れてディンドルフへと会って、一層印象を強くする目算もあった。
「よぉ伯爵、言いたいことがあるんだ」
「ああ次から次へと煩い豚共だ!何だというのだ!」
 既に幾度となく攻撃された身、余裕もなく問いかけに応じる様を見て、燦がニィと口の端を吊り上げて、とびっきり意地悪く答えた。
「晩餐会は、黒曜の呪殺がお前を使ってやらせてたんだってね。」
「――何を、言っている?」
「この宴にテメエの意思など何処にもない、ナイフ型の妖刀に魅入られてんだよ阿呆め!」
 それは、これ以上ないほどの侮辱で在り、気位の高い吸血鬼への尊厳の否定だった。使っていたと思ったものに、自らが使われている。真偽を確かめるすべはないが、そもそも“そのように侮られている”という事実が、魂も罅割れんほどに伯爵の神経を逆なでた。――怒りは、周囲への注意を曇らせる。不必要なほど煽って見せたのは、シホの不在を気づかせないようにするため。その甲斐もあって既に『聖笄』を使って目立たなくなり、視線を逃れて空を歩くシホは、これ以上ない位置に構えている。
「下賤がっ…!貴様らなど、同じ豚共の肉でも喰えばいい!!」
「――させません」
 たっぷりとスープが注がれた皿を燦に投げつけようとした瞬間、シホの的確な射撃が伯爵の手のひらごと皿を撃ち落とす。例え自身の動きを鈍らされようと、引き金一つで押し出された弾の速度は変わらない。
「がっ!?…クソッ!クソッ…!!」
「スープなんかいらねーよ」
「そもそも、スープなんて見当たりませんが?まさか…床に落ちたものを振舞う等という不作法はしませんよね?」
 痛みに喘ぎ悪態をつく伯爵を、ストン、と燦の隣に降りてきたシホが、降らせた氷よりも冷たい色を瞳に乗せて睨み据えた。

「伯爵、彼女の悲鳴は心地良かった?」
「桜の一皿は、そんなに美味しそうに見えた?」
 重ね、連ねて、並び立ち。千鶴とシャトが静かに伯爵へと問いかける。既に幾重にも刻まれ焼かれ、今にもずるりと皮膚がはげそうな腕を抱えて、伯爵が立ちはだかる二人に何を、と最早枯れた喉で問いかける。
「でも残念、シャトの一欠片、血の一滴渡す心算は無いよ」
 僅かにシャトの前へと出て、千鶴がきっぱりと言い放つ。――噫、でも、本当は。屹度通ずるところは、確かに在る。そう思える己だからこそ、千鶴が内心で反吐を吐く。未だ癒えない渇きがあることを、今は唯簸た隠して伯爵を睨み据える。
「悲鳴を散々堪能してきた人だもの。きみの味もさぞや上等なんだろうね」
 その、まるで宴の趣旨に理解を示すようなシャトの言葉に、憎々し気に見つめるばかりだった伯爵の瞳が、僅かに緩んで疑問の色を乗せる。
「言ったでしょ、解らなくはないって」
 あのナイフを突き立てられる瞬間、心の奥に悦楽がなかったと言えばうそになる。被虐の密やかな甘美さも、知らないわけではない。だが、勧善懲悪は物語のセオリーだ。今までの伯爵の非道を思えば、ここで粛清を受けるのは道理といえよう。ただ、そこまで思ってからはたと、ほんの少しの疑問がわいた。――今こうして命を奪わんとしているこちら側は、果たして善と呼べるのか。此れが物語の主人公なら、英雄と悪役、どちらの名を冠されるべきか?
「…そんなの、瑣末なことかな」
 考えてみれば作品の色一つとっても、読む者が違えば千紫万紅にその色を移ろわす。中には善と悪がひっくり返ることも、ままあるかもしれない。ならば、今ここで綴るのは善悪の彼岸よりも、自らの欲する物語で在るべきだ。
「“――宵の色したきみは美しく、捕食者ぶった傲慢を打ち砕く。”僕はそんな話が見たいだけ」
「なら、俺も善悪の概念なんてかなぐり捨てて、シャトが綴る物語の結びを贈ろう」
 美しい一節を語るシャトに、添えるようにと千鶴が構えるのは断罪の大鋏。遥かに語られる神の逸話をなぞる、蔦の這う壮麗な刃。
「――惨めたらしく、啼いて叫んで懇願しろ。」
 華奢な体躯から発せられたとは思えないほどの、低く冷たい命令の言葉。凡てはこびりついて反響したままの、シャトが上げた悲鳴の分の報いを強いる言霊。だがその言葉自体には、伯爵の耳にはようく聞き馴染みがあった。
「出来るだろう、憶えが在る筈だ」
 そう、憶えがあって当然だ。それは、幾度となく伯爵自らが口にしてきた言葉なのだから。蹲り、喚き散らし、悲哀に暮れる顔に向かって、幾度もそう罵ってきた。その時の絶望こそが、何よりも胎に溜まる愉悦だったのだから。だが今やこうして因果は巡り、鏡に反射して還されたかのような呪いの文言に添えて――甘く花の香りを漂わせ、鋏の金属音が嬲るように幾度も振り下ろされた。

 重ね、連なり、攻め手は休むことなく降り注ぐ。
「趣味の悪い晩餐会、苦しむ人々の波はここで断ち切らねば…!」
 リリーが、光の翼で以て皮膚を焼く様に。
「此度の宴、中々面白いものが見れると思ったが全くもって不愉快であった。死ぬが良い」
 李四が、殺意を持って四つの連撃を繰り出す様に。
「もうずいぶん食べられたみたいね、伯爵様。…まだまだちっとも、足りてないけれど」
 ルーシーが、シロクロのおともだちに葉で切り刻むよう命じるままに。
「ルーシーちゃんの仰せとあらば、貴方はもっともっと苦痛を味わうべきでしょうねぇ」
 ユェーが、招き寄せた屍鬼に肉を食ませるように。
「喰われるのも、喰わせるのも、ごめんです」
 類が、破魔の力込めた刀で切り刻む様に。
「弱者を食い物にされるのも、煮込みになるのも遠慮したいのでね」
 梟示が、鎧をも砕く拳で殴り臥せるように。

ひとつひとつが、伯爵から、吸血鬼から、ディンドルフから、命を削っていく。

――ああ、おわっていく。崩れていく。何もかもが、奪われていく。
捕食者の愉悦も、吸血鬼の矜持も、主催者の美徳も、全て。
今はもうこの手の上には、なにもない。
永遠に続くはずの宴は、おわってしまう。

 ボロボロになり果てた伯爵を見て、尚も礼節だけは崩さずに。前へと進み出た梓が、優美な一礼で以て願い出る。
「最後に一曲お相手願えますか、伯爵」
 エスコートする様に、返事を待たず伯爵の手を取り梓が踊る。その瞬間に展開するのは、己が支配下たる夜の領域。右に、左に、くるりと回って、ステップを踏んで。その度に床が黒く深く闇を讃え、歩いた奇跡に星明り零す蝶が舞う。傍目には美しいと思える夜空の光景も、伯爵にはただ梓のリードに翻弄されるばかりで、最早自虐の笑みしか浮かばない。四肢のどれもがまともには動かず、体の内からも絶えず痛みと苦痛が疼いている。きっとそのまま捨て置かれても、遠からず骸の海へと還るだろう。そんな身でくるくると踊る様は、まさに死の舞踏――ダンス・マカーブルのよう。ただふと沸き上がった疑問のままに、どうして、と動いた伯爵の唇が目に留まれば、スゥと梓の瞳が細められる。
「貴方が、人を虐げたからだ」
 ――ざわり、と空気が怯えたように揺れる。壮麗だった闇夜が、冷え冷えとした虚宙の色に変わる。今ここで夜を従え、君臨するのは吸血鬼ではなく、魔の王なれば。
「数えきれないほどの人を貶め、辱め、屈辱を与えて殺したのだろう?これは単に、そのつけが回ってきただけのこと」
 喰らう側だと奢っていた果ての罪過。何もかもを侮り見下し続けてきた懲罰。それが今、数多の猟兵の手で以て下されたのだ。
「そろそろ終わりにしましょう。――さようなら、伯爵。どうかその身の痛みが、骸の海まで焼き付いていますよう」
 裂かれ、打たれ、焼かれ、毒に塗れ。満身創痍の伯爵の手を、するりと放して梓が告げる。

――そしてディンドルフが伏した後の床には、僅かな血の跡と芥だけが残っていた。

◆そして宴は幕を閉じ◆

 全ての始末が終えたのは、空がうっすらと白んでくる時間だった。一先ずの安全を確認したのち、状況の把握と残った人たちを街へ返す為の算段を付けるべく、解放されたのは中庭だった。冷え込む早朝とあれば城の中での作業が望ましかったが、目ぼしい部屋はどこもかしこも戦闘の後が色濃く、また被害者たちがこぞって外へでたがったので結局中庭に落ち着いた。
 その中で猟兵たちはそれぞれが分かれ、事後処理に追われていた。被害者の救護にあたる者、残存した吸血鬼が居ないか城内を見回る者、遺体を少しでも安らかな状態にし、可能なら遺族へ還そうと尽力するもの。中には使い魔や使役した動物たちを使って、取り上げられただろう衣服や装飾品を集めて返そうとする者や、様子を見に密かに城門前に集まっていた人々へ事情を説明する者や、役に立てそうにないと早々に帰宅する者もいた。

 控え室を目指す足音がコツリ、コツリと廊下に響く。ある程度の当てを付けて歩いて行けば、ゆらり揺れながら歌う人魚の姿を見つけて声をかける。
「――あら、ふふふ!やっと会えた!しずくくん!」
 目当ての姿に駆け寄って、円が嬉しそうに笑う。繕うでもなく、欺くでもなく、ただ喜びと安堵を重ねた柔らかな笑顔に、向けられた雫もつられて目を細める。
「身体は痛みますか?大丈夫?」
「多少気疲れはしたけど、怪我はしてないよ。痛みも…今、平気になったかも」
 手を伸ばして気遣わし気に確認されたが、雫自身に目に見えたけがはない。徐々にひきつつあった内側の引き攣れたような痛みも、本当に円の顔を見た途端するりとつきものが落ちたように消えてしまった。それは単に、時間を経て呪いが効果を失っただけなのかもしれないけれど。
「ふふー、さてはわたしの顔を見て安心しましたか?」
「いや、お守りのお陰じゃないかな?…なんて、うん。ホントはそうかも。」
 とぼけて見せたあとに、雫が眉根を寄せて苦笑すれば、円の笑みにもからかいと喜びの色が乗る。
「さて、醜悪な宴の幕は降ろしました。あとはゆっくりと時間が解決してくれるでしょう。…というわけで、わたしたちは帰りましょうか!」
「そうだね。もう朝だけど…帰ったら少し眠ろうかな」
「ええ、すっかり徹夜してしまいましたからね。しっかり体を休めましょう!」
 そう言って、どちらからともなく手を伸べて、円と雫が城を後にする。――ほんの一瞬振り返って長く閉じた瞬きに、黙祷と再起の願いを込めて。

「シホの生贄の宿命はあんな激痛を強いてたのか…それ以上なのか」
 朝日の眩しさを目にしながら庭に並び立ち、燦がぽつりと隣のシホに尋ねた。痛みを伴う宿命、それでも投げ捨てずに歩んでゆく道。それは、一体どれほどの苦難を背負っているのか。思いやると胸がつきりと痛んだ。
「自分の痛みより苦しいよ」
「燦…」
「もっと相談してよ、シホが痛い想いしなくても解決できるようにね」
 伸ばす手に手を重ね、どちらともなく引き寄せ合って額を合わせる。仕事を終えた安堵もあって、触れる暖かさが心地よい。その泣きたくなるような愛おしい体温に、シホも心の内をそっと告げる。
「燦…私も本当は痛い目に遭いたくない」
 痛みは幾度味わっても、なれることはない。我慢して、やり過ごし方を覚えて、どうにか付き合ってはいるけれど、叶うなら痛まないでいてくれた方がどれだけいいか。でも、それでも。
「私達が日々他の生物から糧を命を頂く様に犠牲は付き物です。だから私の身で大勢が助かるなら、これ程誇らしい事はありません」
 その思いも本当だった。だからこそ耐えられる。歩みを止められずにいる。その在り様は余りに美しく、眩しく、思わず燦が目を細めた。――でも、もし。この先もずっと一緒に居られるのなら。何時かシホの想いと願いを、シホの痛み無しにかなえられないか――なんて。
「…アタシは我儘なのかなぁ」
「燦?どうかしましたか?」
「…んーん、何でもないっ」
 疑問と、願いと、希望を綯い交ぜにして胸に抱えたまま、燦がもう一度強くシホの手を握った。

 一先ず庭先までは出たものの、そのまま不機嫌そうに座り込むトモへ、寿々彦が宥める様に声をかける。
「ほら、トモ帰るよ。」
「えー!やだやだ!もっかいやろうよすずくん!ナイフさがそ!」
「い・や・だー!!」 
 不穏な要求に至極真っ当な拒否を示せば、トモがますます頬を膨らまして帰る気はありません!とばかりに背を向ける。だいぶ理不尽な気はするが、こうなっては仕方ない、と寿々彦がため息交じりに切り札を口にする。
「もー、ほらコンビニでアイス買ってあげるから」
「えっ、じゃあダッツェのストロベリーバナナとモナもち王とゴリゴリくんがいい!」
「そんなに食べたらお腹壊すだろ!?1つだけです!」
「えー!すずくんのけちー!」
 けち、とは叫んだものの、アイス自体にはつられたようで、トモが芝生から腰を上げて寿々彦に並び立つ。切り札万歳。そして――凡そ吸血鬼の討伐に来た猟兵とは思えない会話を繰り広げた後、友人ふたりは早々に城を去っていった。

 徐々に上っていく太陽に照らされて、少し安堵したように庭に出ていた雲珠がぺたりと座り込む。
「終わり…ましたね。」
「一先ず敵の排除とけが人の治療はあらかた終了したな。」
 結局あのあとも足腰は上手く立たないまま、万々斎に支えられながらの治療ではあったが、雲珠の出来得る限りはし尽くした。徹夜で続いた作業に、ぼんやりとし始めた頭でこれからのことを想っていると。
「さて、となれば原型を留めていないものは腹に収めてしまうか。」
 会話の流れでサラッととてつもないことを言い放ち、そのまま淀みなく遺体を安置してある裏庭へ行こうとする万々斎に、雲珠がギョッとしながら足に縋りついて止めた。
「マスター!だ、駄目です!」
「何故だね。……皮を剥がれ食肉にされた身内を見て、遺族が前向きに生きていけると思うかね。今は冬で、埋葬するにしてもあの数は重労働だ。何、後で供養塔でも立てておけばよかろう。」
 万々斎の言うことには確かに一理あるし、合理性もある。だが、凡そ雲珠としては納得できそうにない理論だった。正直目をそむけたくなるような姿のご遺体もある。それをそのまま遺族に引き渡していいのかと、悩む気持ちもある。でも、今ここで部外者が一方的に選択肢を奪ってしまうのは良くないという確固とした直感は合って。
「とにかく駄目なんです。…気持ち的に!」
 上手く言語化は出来ないまでも、真摯に止める言葉を口にすれば、それまで雲珠を引きずるように歩いていた万々斎がぴたりと足を止めた。
「気持ち。気持ちか……了承した。定型生命体の意見を聞き入れよう。」
 どこか探るよに視線を彷徨わせた後、意見が腑に落ちたのか。裏庭に向かうことをやめて万々斎が雲珠にはっきりと頷く姿を見せた。それにホッとして再度芝生にへたり込むと、ふと耳に泣き声が届いた。――庭のあちこちで、城下から集まった人が、助かった者が泣いている。それは無事だったことへの喜びでもあり、助からなかった者への嘆きでもあった。どんな形にせよ、きっと彼らにはまだまだ助けが必要だ。そう思い至れば、雲珠が今後のことを告げる。
「マスター、せめてこの方々の治療と身の振り方が決まるまで、僕はこちらに留まろうと思います。」
「ああ、好きにしたまえ。」
「ありがとうございます。あっ俺が留守の間、金五郎さんの畑の水やり代わってくださいね。」
「うーんこの。誰かをありありと彷彿させるしれっとした図々しさ。」
 承諾したは良いが、妙な頼まれごとをちゃっかり乗せられて、万々斎が朝靄の中でしきりに首をかしげる姿が、そこにはあった。

「終わったな…」
「終わりましたねぇ…」
 庭の壁際では朝日を浴びながら、ほう、とため息をついて張り詰めた気を緩めている李四とリリーの姿があった。
「中々にくたびれる依頼であったなぁ…。」
「もう二度とこんな役割はこりごりですね…」
 入るときの策と良い、ホールでの振る舞いと言い、最後の戦闘と言い。振り返れば中々にハードな内容だった。なら、ここは一つご褒美が欲しい所。
「さて、なにか美味いものでも食って帰るとするかリリー。」
「ぇ…あれらを見てまだ食欲が湧くんですか…まぁ美味しいものに罪は無いのでたべますけど…!」
 李四の肝の太さに仰天しつつも、食事と在ればご相伴預かるにやぶさかではない。ちゃっかり何を奢ってもらおうかと心の内で算段しながら、リリーが先ゆく李四の後を追いかけて行った。

 金色を含んだ髪が、朝日を浴びてふわりと風に舞う。その見慣れた後ろ姿を目の端に捉えて、まどかが静かに――見つけた、と口にする。
「よかった、そこにいたんだね」
「まど、か…!」
 掛けられた声に、亮が気づいて振り向こうとして、ぺたんと芝生に座り込む。慌ててまどかが駆け寄り肩に手を置けば、それは僅かに震えていた。
「怪我はない?」
「ないよ、平気。ただちょっと…安心して気が抜けちゃった」
 そう言ってへにゃり、と泣きそうな顔で笑うから、まどかが思わず仕方のない子だと眉を寄せる。今までずっと気をはっていたのに、まどかの顔を見たら全部解けてしまって、しばらく歩けそうにない。代わりにあそこ、と腕を伸ばして亮が示す先には、ふたりを送り届けてくれた男が子を抱きしめて泣く姿があって。
「城の様子が気になって、近くでずっと待ってたみたい。あの子と引き合わせてあげられて、本当に良かった」
「…うん。」
 朝日を見るよりも眩し気に、抱き合うふたりを見つめて亮が嬉しそうに微笑む。その姿を見てまどかも、今までの心配がほろほろと心からほどけていく心地を覚えた。暫しそうして眺めていたかと思えば、ふと亮がまどかへと視線を引き戻し、静かに感謝を述べる。
「ありがとう、まどか」
「うん?」
「…一緒に来てくれたこと、かな」
 それは心からの想いだった。でもほんの少し言い淀んだのは、秘めた想いもあるからで。それをうっすらと感じ取りながらも深くは追及せず、まどかが苦笑して頷いた。
「本当に、困った子。…でも無事でよかったよ」
 足が治ったら帰ろうか、と尋ねるまどかに、亮もそうだね、と明るく応える。
(ありがとう――私を、私らしくいさせてくれて。)
 心の中で密かに、本当の感謝を述べながら。亮が、肩に置かれたまどかの手にそっと自分の手を重ね、ゆるりと目を伏せた。

 梟示は物や人の運びを、類は怪我をした者への治療を。それぞれが得意な分野に回って一頻りの手伝いを終えた後、人手はもう足りそうかと遠目に確認した梟示が、ふと隣立つ類に視線を戻すと、その手には何かが握られていた。
「類君、それは…」
「ええ。実は戦闘が終わった後に、落ちているのを見つけたんですよ」
 それは、刀身から柄に至るまで全てが黒い、一振りのナイフ。伯爵が晩餐を開く所以となった呪わしき刃――呪殺の黒曜だった。
「持っている分には何も問題なさそうかい?」
「そうですね、今のところ変化は何も。それに、ほら」
 そう言って類が昇りつつ朝日に黒曜を翳せば、真意を測ろうと梟示がそれを覗き込み、それを見つけた。
「…これは、罅?」
「戦闘の間もずっと伯爵の懐にあったようですから。きっとその時に傷ついたんでしょう。」
 陽に透けた黒曜の刀身には、蜘蛛の巣のような罅が入っていた。不思議とそれ以上砕ける様子はないが、人を呪うナイフとはいえ、それはどこか不憫な姿に思えた。
「…黒曜も、持ち主が違えば違ったのかな」
 思わずぽつりと、類が零す。――道具は、その在り様を持ち主に大きく左右される。作られたときはただ一振りの剣であっても、稀代の英雄が振るえば名剣と呼ばれ、悪人が愉悦で刻めば妖刀と懼れられる。もしかしたら黒曜も、初めから呪う目的で作られたのではなかったのかもしれない。ヤドリガミとしての類には、ふとそんなことが脳裏を過ぎって顔が曇った。その胸中を、梟示が知ってか知らずか、思いついたことを言葉にする。
「さて、どうだろう。…ただせっかく今こうして類君の手元に来たんだ。これからそれを証明してみせる、というのも一興じゃないか?」
 投げかけられる提案に、類が一瞬きょとんと眼を見開く。そして僅かに目元をゆるめてから、手にした黒曜を今一度握る。
「…勝手に持ち帰ったとなると、探偵さんに見とがめられますかね?」
「何、依頼がなければ探偵なんて形無しだよ。持ち主も既に墓の下、と来てるしね」
「ふふっ、それはよかった」
 軽口を交わし、ふたりが朝日の下で笑い合う。――どう在れるか、どう付き合うか、今はまだ想い付かないけれど。もう少しだけ寄り添ってみようかと、類が黒曜をそっと懐にしまった。


*********

 そうして、享楽に染まった宴は太陽の下に燃え墜ちた。城は未だ聳え、傷ついた者は多く、帰ってこない者はなお多い。傷跡は深く長く街の者を苛み、恐怖を引きずるだろう。だが、それでもこの街ではもう、晩餐会は開かれない。理不尽な死を嘆く夜も、二度と逢えないと分かって手を放す苦しみを、味わうことはもうない。それはきっと、時間をかけてこの地に住まう民たちの心を救っていくことだろう。


ひらりと、城の窓から封筒が舞う。晩餐へ招待する文言が書かれた一通は、庭の芝生に落ちて直ぐに――朝露に濡れて、ぐしゃりと潰れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2022年01月23日


挿絵イラスト