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羅針盤戦争〜月盈則虧

#グリードオーシャン #羅針盤戦争 #七大海嘯 #カルロス・グリード #オブリビオン・フォーミュラ #一の王笏島

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#一の王笏島


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●一の王笏
 月が満ちれば、それは徐々に欠けていく。
 人の世も、悉く同じだ。
 冷徹に尖る濃紫の双眼は、万の波を越えてきた猟兵どもを待ち構える。
 この世界を再び「侵略形態」――大オーシャンボールへと戻すことは叶わないのではないか。
 カルロスは、闇を恐れず突き進んでくる猟兵どもを憎々しげに睨みつけ、大きく息を吐く。
「……ならば、最期まで足掻いてみせよう」
 紋章がカルロスを食い締める。昏く重い、禍々しい力が彼の身を包んだ。


 破竹の勢いで海図は大きく拡がって、顕になったオブリビオンどもの勢力――その喉元に刃を突きつけた。
 猟兵たちの進軍は止まらない。
「カルロス・グリードが、ダークセイヴァーの『紋章』の力を使ってるってのは、もう知ってるだろ」
 鳴北・誉人(荒寥の刃・f02030)は、大きく吐息をして猟兵たちを見る。
 一から六まであった王笏島――沈められた島もあれど、まだ制圧叶わない島もある。これらをすべて沈めなければ、オブリビオン・フォーミュラを斃せない。
「おめえらに行ってもらいてえのは、一の王笏島だ」
 カルロス・グリードは三種の紋章を宿して、猟兵よりも先手を打って動き出す。
 加えて、島全体を「視界を遮る黒い霧」が覆い、猟兵の自由を奪うだろう。
「けど、この霧で視界を奪われンのは、おめえらだけだ。カルロス・グリードはおめえらのことをはっきり見ることができてっからァ」
 対処が求められる。
 猛烈なる【餓える狼】、鋭敏なる【略奪者】、剛凍なる【凍影竜】――その三種の紋章の力を駆使して、牙を剥く。
「暗闇の中での戦闘だ。まして、相手はオブリビオン・フォーミュラのひとつ。回避を勘だけでどうにかしようなんて甘っちょろい考えは捨てろ。そんなもんでどうにかなる相手だと思うなよ――でもまあ、おめえらなら、なんとかすンだろ?」
 誉人の言下、掌の上に蒼球が浮かぶ。ぼんやりと光り輝くその真中で白いアネモネが開花する。
「頼んだぜ」
 繋がった先は、潮の香が満ち、闇霧垂れ込める暗黒の王の笏の前。
 猟兵が踏むのは、地――しかし、眼前に広がるは、黒く深い闇。一抹の光もない。


藤野キワミ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「羅針盤戦争」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
====================
プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードと「黒い霧」に対処する。
====================
当シナリオは「やや難」につき、難易度相当の判定になります。その覚悟でいてください。
藤野キワミです。
よろしくお願いします。

▼プレイング受付期間
・【OP公開直後】より受け付け開始。断章はありません。
・完結優先。
・受付終了は当マスターページおよびシナリオタグ、ツイッター(@kFujino_tw6)にてお知らせします。

▼お願い
『一の王笏』は、指定ユーベルコードと同じPOW・SPD・WIZにて先制攻撃を行います。
対策と指定UCのP・S・Wに矛盾のなきようお気を付けください。
技能の使い方は明確にプレイングに記載してください。
プレイングの採用の仔細、ならびに同行プレイングのお願いはマスターページにて記載しています。
そちらをご一読ください。

それではみなさまのカッコいいプレイングをお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『七大海嘯『一の王笏』カルロス・グリード』

POW   :    餓える狼の紋章
【紋章の力】を使用する事で、【身体のあちこちに牙を思わせる鋭い角棘】を生やした、自身の身長の3倍の【黒狼】に変身する。
SPD   :    略奪者の紋章
【筋力を奪う爪】【速さを奪う爪】【意志の力を奪う爪】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    凍影竜の紋章
戦闘用の、自身と同じ強さの【触れる者を凍てつかせる氷の身体のドラゴン】と【影に潜み精神を喰らう黒影のドラゴン】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。

イラスト:hoi

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クロス・シュバルツ
アドリブ、連携可

一の王笏、カルロス……そろそろあなたも、余裕がなくなってきた頃合いではないでしょうか
そして、ここでまた一つ削らせていただきます

自身の周辺の地面に鎖を張り巡らせ、音に集中。敵の移動音や鎖を踏み締める音を聞いたなら、その方向を向いて構える。『オーラ防御』で突進の勢いを殺し『怪力』で受け止めて『気合い』を込めて地面に叩きつける
敵が起き上がる前にピックを『投擲』、『貫通攻撃』に『串刺し』で攻撃して流血させつつ、『マヒ攻撃』『毒使い』でマヒと毒を与えて動きを鈍らせる

以後は敵の血の香りを『追跡』して暗闇でも敵を追い掛け、UCを発動した黒剣で『傷口をえぐる』ように攻撃、ダメージを与える



「一の王笏、カルロス……そろそろあなたも、余裕がなくなってきた頃合いではないでしょうか」
 クロス・シュバルツ(血と昏闇・f04034)から、カルロス・グリードの姿を見ることはできない。しかし、この声は、カルロスに届いていることだろう。
 幾度となく骸の海から甦ってきては、猟兵たちによって悉く海へと沈められてきた。眼前のカルロス・グリードは、何度目の生を受け、ここに立つのか。
 考えたところで詮無いことか――クロスは、漆黒の双眼を冷ややかに細め、尖らせた。
 幾度となく蘇ったところで、その命はやがて底を尽くのだろう。
 クロスは暗闇の先を見つめ、周囲の地へ《罪茨》の鎖を忍ばせる。これの上の音はクロスの耳にすべて届くことだろう。
 視界は封じられたが、聴覚は生きている。触覚も、嗅覚も健在だ。
 集中力は否応なく高まる。カルロスの移動する音が、うっすらとした像を闇の中に映し出す。
 鎖を踏んだ音が徐々に近づく――幾呼吸も猶予のある接近スピードではない。クロスは瞬時に音の方を向いて、オーラを堅牢な盾として展開、カルロスとの間に聳え立たせる。
 刹那、その壁へと凄まじい衝撃。いとも簡単に防壁が砕け散ったことを知覚。
 見えずとも、その存在感は痛いほどに感じられる。クロスの持てるすべての力を以てして、黒狼に生える凶悪な牙を思わせる角棘を掴もうと、その巨体を受け止めた。
 間近にある獰猛なあぎとから、低い唸り声が響く。自身を護るオーラを突き破った牙がクロスの腹に穴を開けた。
「……ぐッ」
 衝撃と激痛――否、それだけではない。
「捕まえ、ました」
 クロスの手に力が入る。凄愴たる怪力が黒狼の巨躯を引き倒した。
 カルロスの抵抗は凄まじかったが、クロスの決死の末の力が、その抵抗を打ち砕いたのだ。
 どうっ――と地が揺れ、隠し巡らせてある《罪茨》の鎖がギシギシと軋む。起き上がろうとしているのが判る。しかし、それを許してやるクロスではなく、闇を宿した《虚風》を彼の身へと突き立てた。
「俺が、動かない的だと思いましたか」
 《虚風》の刃先には、躰を内から蝕む麻痺毒を仕込んである。それが、どれほどの効力を発揮するか定かではないが、打てる手は尽くすに限る。少しでもカルロスの動きが鈍れば上々だ。
「その生命を斬獲しましょう」
 言って、《黒羽》を抜き放つ。
 【斬獲せし真影の刃】――ヴォーパル・ブレイド。 
 ピックを打ち込んだ傷――というよりも、最も濃く香ってくる血へと穿孔。
 生命力を食らう魔力を纏った黒剣が、カルロスの身に深々と突き刺さった。
 苦悶の声を上げ、クロスから距離を取ったのを知覚した。
「あなたの曇った表情が見られなくて、残念です」
 カルロスに血を流させた。それは、内なる吸血衝動を煽り立てる香りだ。これを見失うことはない。闇の中にあっても追いかけることができる。
「逃げなくてもいいじゃないですか。あなたの命、また一つ削らせていただきます」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
闘いは最終局面の真っ最中──詰める段階だ
誰一人生き残らせねえ…戦争は徹底的に勝ってこそだ
禍根なんて残さないで、根絶やしにしなきゃいけねえんだ
だから…お前にも滅びてもらうぜ

オイオイ、お先真っ暗…俺の人生かよ
いくら先が見えなくとも、爪が空気を切り裂く感覚は肌で感じ取れる
──『Sword dance』
俺の行動速度と反射神経を大幅にブースト
爪の軌道を視覚以外の感覚で【見切り】、避ける
続く2発目、3発目は【ダッシュ】で接近しつつ避ける
この視界の悪さをアドバンテージとする以上、奴は距離を取りたがるはずだ
僅かな動きから成る音を、空気の違いを逃さない
インファイトレンジで捕まえて、超高速連続攻撃で仕留めてやる


水衛・巽
アドリブ歓迎

戦争も大詰めですが
最後まで足掻く心意気は嫌いじゃありません
むしろそうでなくては面白くない
隠れずに済むのも逆にやりやすくて良い

式神使いにて玄武を召喚し警戒
自分を中心とした結界を可能な限り広範囲で張りましょう
玄武は後方に布陣させて死角を消し
第六感で方向を予測しつつ襲撃を待つ

結界が破られた瞬間に
速度を限界突破させた高速詠唱でUCを発動
玄武の尾で黒狼を拘束します

無傷で帰ろうなどとは考えていません
フォーミュラ相手にそれは虫が良すぎるというもの
ただし払った代償に見合う戦果くらいは
望んでも良いと思いませんか?



「オイオイ、お先真っ暗……俺の人生かよ」
「ツッコミを入れた方が?」
 気安い会話が、闇の中で響く。
「知っていますか、自虐ネタは息が短いんだそうです」
「お笑い芸人を目指してるワケじゃないから。それに俺は、ここに戦いに来たんだぜ」
「それは、私も同じですね」
「しかも最終局面の真っ最中──詰める段階だ」
「ええ。最期まで足掻く、あの心意気は嫌いじゃありません。むしろそうでなくては面白くない。でしょ?」
「ああ、よっくわかるぜ、巽」
 大きく頷いたヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は、水衛・巽(鬼祓・f01428)をちらりと流し見――たつもりであったが、真っ暗すぎて彼を見ることは出来なかった。
 しかし、隣にいるということは判る。なんせさっきからずっと声がするのだ。冷静に話す彼の声は、じっとりと闇に溶け消えていく。
 二人の会話を聞き、二人の姿を見ている敵が、この闇の向こうにいる。
「戦争には徹底的に勝ってこそだ。禍根なんて残さないで、根絶やしにしなきゃいけねえんだ」
 まさに七変化したカルロス・グリードだったが、その誰一人として生き残らせることはしない。ヴィクティムの心は決まっていた。
 次の争いを生む火種を残してはならない。根絶やしにできず取り逃してしまえば、新たな戦いが始まってしまう。そうやって戦火が広がるさまを見てきた。
「だから……お前にも滅びてもらうぜ」
 どこにいるのかはわからない。暗闇が晴れることもない。それでも一面の黒の向こうから、男の声がわあんと響いた。
「友か――ならば、共に逝かねば寂しい思いをさせてしまうな」
「余計なお世話です」
 言いながら、巽は式のひとつ――玄武を喚び出す。巽らの背後の警戒を命じると共に、可能な限りに広げた結界を展開した。
 ヴィクティムと巽を護るように、また敵の動きを感知できるようにと巡らされた結界だ。
 それに少しでも触れてみろ――その瞬間、巽は、カルロスを捕らえることができる。
 見えないが、声の方向からして、ヴィクティムとは背中合わせになっていることだろう。
 巽は思考を止めない。予測し、感知して、くすりと笑った。
「隠れずに済むのも逆にやりやすくて良いですね」
 小細工をしたところで、その一切合切を相手に見られているのであれば――そう、どこから見られているのかわからない以上、隠す必要性はない。
 その小細工は切り札たりえない。
 大きく空気が揺らいだのは、巽が、三度目の瞬きをしたときだった。
 結界に罅が入った――力を注ぎ修復するつもりは最初からない。いとも簡単に破られたと知覚した瞬間、風が巻き起こる。
 カルロスは無言を貫く。声を発することで位置を気取られないようにするためだろう。
 自ら視覚のアドバンテージを崩すわけがないか――迫る空気の揺れを知る。
 ヴィクティムを裂くための接近、振り上げられた爪、見えずとも動く空気は肌で感じ取れた。
「――っ!」
 来ると分かった瞬間には、肩は裂かれていた。どっと体が重くなる、舌打ち、筋力が衰え重く感じられるのか――慌ててその場から跳び退ったところへ、先回りされていた。二撃目。激痛が四肢を支配する。
 口をつくのは、相手を罵るスラング。
 ヴィクティムの声の先にカルロスがいる。巽は《霊符》を放った。当たれ。そうして僅かでも縛り上げろ。動く四肢を凍らせろ――彼の霊力がチリと燃えるように符に纏繞されて、奔る。
 その手は、カルロスから確と見えていた。取るに足りずとも、邪魔をされることが気に食わない。
 瞬時に黒狼へと変じる。牙が如き角棘の生える姿へとなり、迫りくる霊符を噛み潰す。
 わずかな時間が生まれた。
 体勢を立て直すにはあまりに短いが、この機を逃してはいけない。ヴィクティムは奪われた身体能力を取り戻して余りある力を解放する。
 非才の己が身にツルギを宿す。発動する拡張コードは、【Sword dance】――達人の領域に至るために、ヴィクティムの命を削る荒業だ。
 ゴーグルの奥に隠された青眼がぎらりと輝く。
 そうして巽には、カルロスが、《霊符・縛》の呪縛に怯んだ動揺が、俄かに伝わる。
「縛り穿て、玄武!」
 発動へのあらゆるプロセスをすっ飛ばし、極限まで速めた鮮烈な詠唱と同時に、玄武の蛇尾が放たれる。ドドっと地が振動する。こちらへ駆け来る足音であることが分かる。振動の間隔から、四本足――黒狼であることが察せられた。
 巽の声音と同時に玄武の尾たる黒蛇が、唸りを上げて、足音のする方へと瞬時に伸びる。喰らいついて無数の棘と水縄へと姿を変え、漆黒の巨体を引き倒した。
 否、鋭い爪が如き棘の前腕が薙がれた。
「させるか!」
 飛躍的にスピードが上がり、反射神経も鋭敏になったヴィクティムだからこそ、巽に迫りくる獰猛な一撃を見切り、それの軌道を遮るよう《エクス・マキナ・ヴォイド》を一閃させ黒狼の牙を一本砕いた。
 猛烈な殺気を感じ、ほとんど本能のように抜いた《川面切典定》の白銀の刀身で、いくらも弱められた腕撃の余波を受けきった。
「ありがとうございます」
「こっちこそ」
「傷は、」
「問題ないな、これくらい想定の内だ」
 短い会話のあと、ヴィクティムは頬に笑みを刻む。耳を劈くのは、他の誰でもない、狼の慟哭。
 【玄武捕縄】の成った今、【Sword dance】で拡張されたヴィクティムの連撃を躱すこと、それよりも闇に逃げることすら難しいだろう。
「距離つめられんのはイヤか?」
 散弾銃の発砲、生体ナイフは無尽に奔り、巨躯にアンカーを打ち込んで狼の拘束を強める。より速く。一層速く。
 超接近にて繰り広げる、持て得る武器全てによる容赦ない連続攻撃にカルロスは大きく吼え、水縄を引き裂きヴィクティムから逃れる。
(「またかくれんぼか?」)
 隠しもせずに溜息をついた。
「私も相応の覚悟でここに来ました。無傷で帰ろうなどとは、考えていません」
 腕の痺れはおさまった。握力は徐々に戻ってくる。なんとか取り落とさずに済んだ古太刀を鞘に納めた巽の青瞳は――玄武の尾蛇の捕縛を振り切り、闇へと逃げた黒狼を見据えた。
「フォーミュラ相手にそれは虫が良すぎるというもの」
 隣に戻ってきた式神には、気を緩めることなく黒狼への警戒を続けよと告げる。
「ただし払った代償に見合う戦果くらいは望んでも良いと思いませんか?」
 具体的には、そうですね、あなたの首とか――低く威嚇するような獣の唸り声を遮るように、巽は笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佳月・清宵
【影】
よう、奇遇だな――黙りこくっても無駄だぜ
(見えずとも手に取る様に解る表情に笑い)
手と背を貸してやろうってんだ、有難く思え
ああ、どさくさに紛れて人の尾を踏んでくれるなよ

軽口の裏で互いに背を利用し死角を潰す
暗視で視野補い他五感を第六感で補強し殺気警戒
此方も闇に紛れた暗殺を生業とする身
己ならば何処を狙うか考えつつ聞き耳で音広い索敵

――最悪肉を斬らせて骨を断つ心算で
地縛忍ばせ左手を敢えて隙ある様に見せた演技しフェイント
接敵の瞬間に敵へ鎖絡め位置掴む罠を

後はUCで氷溶かす序でに灯として反撃
乱舞させた炎を目眩ましに
早業の2回攻撃で親玉へ目潰しの毒仕込んだ手裏剣放ち意趣返し

此方も悪足掻きは十八番ってな


呉羽・伊織
【影】
(ある意味敵以上に嫌な気配――腹立つ笑顔してんだろう悪縁狐を察して距離取りかけるも)

隙あらば恩を売りつけようとすんな
敵と間違えて闇討ちされたくなけりゃ黙ってろ!

言いつつも利用出来るモノは利用する――互いにそういう感覚で、背合わせに警戒
忍としての暗殺と暗視の経験を糧に、多少なり闇の向こうを索敵しつつ――目が無理なら聞き耳と第六感で、音や気配の情報収集

覚悟と耐性秘す花明や氷溶かす檠燈を懐に忍ばせ耐久強め――周囲に鋼糸巡らせ敵が触れれば即感知出来るよう罠を

此方も最悪演技に乗ったフェイントで敵誘い鎖で竜縛り体勢崩し牽制
早業で反撃に転じ炎の影から闇属性UC放ち親玉諸共目潰し

此方も、足掻いてやるさ



 呉羽・伊織(翳・f03578)の赤瞳には、真黒の闇しか見えないが、背にある気配と僅かな熱に、こっそり――否、隠さず嘆息した。
(「ある意味敵以上に嫌な気配……」)
 きっと腹の立つ、綽然たる笑顔でそこにいるのだろう。姿を見ずとも思い浮かべることができてしまう悪縁が恨めしい。
「よう、奇遇だな――黙りこくっても無駄だぜ」
 聞き覚えありまくりの張りのある低い声は、無論、佳月・清宵(霞・f14015)のものだ。伊織は唇を歪めた。
「てめぇ、今、唇がへの字になってるだろう」
「なんでバレっ……」
 隠しきれなかった笑い声が漏れる。この暗闇にあっても手に取るように判る。伊織が今どんな表情をしているのか。なんと素直な――震えていた肩が静まって、
「手と背を貸してやろうってんだ、有難く思え」
「隙あらば恩を売りつけようとすんな、敵と間違えて闇討ちされたくなけりゃ黙ってろ!」
「ああ……」
 相槌は尾を引いて、また喉の奥でくつくつとした笑いになる。
「どさくさに紛れて人の尾を踏んでくれるなよ」
「尾だけで済むと思うなよ!」
「せめて着物の裾にしろ」
「聞けよ!」
「待て、着物も困るな――そうだなぁ、」
「こンの性悪狐め……!」
 二人の軽口の裏にあるのは、抜け目ない打算。
 背を預け合い、死角を潰し合う。有効打の領域は格段に広くなる。互いに利用できるモノは利用し尽くす――そういう算段だ。
 忍ぶ者としての経験を糧に、闇の向こうの気配を探る。カルロス・グリードの一挙手一投足のすべてを知ることができればなにも問題はないが、そういうわけにもいかず。
 耳を聳たせ、肌をひりつかせる。
 二人を中心に鋼糸を張り巡らせ、触覚にて敵の姿を追える罠をも仕込んだ。
(「――さて、俺ならこの状況、どこから狙うか」)
 獲物は暗闇の中、じっとして動かない。構えるのは、刀と暗器。警戒の間合いは広いわけではない――すべてが見えているという利を最大限に生かすには。
 巡る思考を止めずに、ゆっくりと一度瞬いた。
 僅かな光も届かぬとはいえ、幽かにでも視界を確保しようとすれば、カルロスの殺気が爆発的に膨れ上がったのはその時だ。
 まるで、手負いの獣そのものではないか――清宵の白磁のごとき頬に薄笑みが浮かぶ。
 闇に紛れ、暗殺を生業とする清宵からすれば、そのいかにも、ここにいるぞと主張する殺気があまりに稚拙に感じられたのだ。
(「ならば喰らってみろ」)
 《地縛鎖》を忍ばせた左腕をだらりと下げる――肉を斬らせて骨を断つ心算だ。
 オオオォォォ……と遠吠えにも似た咆哮が上がる。黒霧が凍りつくほどの冷気が押し寄せる。
「おでましか」
 伊織の声。懐の《花明》の加護を信じ、《檠燈》の熱を感じる。
 迫る冷気だけで肌が凍ってしまいそうだが、それは同時に氷竜があぎとを開けすぐそこにいるということではないか。
「――ッ!」
 脳髄へと突き抜ける激痛は、凶悪な氷に閉ざされ、清宵の喉をも凍てつかせる。しかしこれでいい。仕込んだ《地縛鎖》が氷竜へと絡みつく。
 あと一匹、黒影の竜がいるはずだ。厄介この上ない力を有した竜ときく。ふっと伊織は息を吐いた。
 氷竜が鎖を嫌がるように地を跳び暴れ、大地を氷結させていく。空気は一層冷えていくようで。
「じゃじゃ馬か! かわいくねぇな!」
「お似合いだよ」
 伊織が清宵へと注意を向けた瞬間、影が色濃く動く。警戒が緩んだと見せかけたのが功を奏した。伊織の腕へと黒爪を突き立てる。その身を貫くような痛みは、肉体的なダメージもさることながら、陰鬱と気を落とすような苦しさで身を絞られる。
「まったく、かわいくない、な!」
 伊織の張り巡らせた糸の悉くを避け、俄かに現れ腕を引き裂いた黒影竜へと、《地縛鎖》を巻き付け、大地に縫いとめた。
 鎖を伝って、情報が流れ込んでくる。障害物のない平坦な大地であること、闇霧が覆い隠し、息を顰めるだけで影となるカルロス・グリードの居場所、そこまで一直線に征ける方向。
「ったく、冷てぇなァ! 壊死したらどうしてくれる」
「その口も凍らせてもらえばよかったのにな」
「てめぇ、ぬけぬけと……さっさと行け」
 ごあっ。
 冷えた空気が熱を帯びて、一気に膨張する。僅かな光を見出そうとしていた瞳孔が、あまりの眩しさに閉じていくのを自覚するほどに、その光熱は鮮烈だった。
 清宵の腕に絡みつく氷を溶かしゆく狐火と、闇を裂く光の乱舞とで戦地を縦横無尽に奔る。
 突然の光に目が眩んだのは、カルロスとて同じだったか――清宵は無傷の右手に毒を仕込んだ手裏剣を持ち、狐火の乱舞の中を走る。
 傷にまみれ動かぬカルロスの右目を目掛け、手裏剣を放った。一投目は右の頬骨に、間髪入れずの二投目は、彼の濃紫の瞳へと突き刺さった。
 耳を劈く絶叫が上がって、二頭の竜が掻き消える。猟兵よりも地の利があったカルロスの視界を奪う。
「此方も、悪足掻きは十八番ってな」
 轟々と狐火は清宵の周りを駆ける。光の尾を引いて、闇を焼き締めて、熱を生み出す。
 光の届かない闇は、先刻からその濃度を変えたわけではないというのに、伊織には、よりいっそう闇が濃く重く沈殿しているように感じられた。
(「なら、闇の薄い方へ――今だけは!」)
 気に食わないが、仕方ない。
 ここにはいない飄然とした男直伝の護身符も、伊織を氷結から護ったものだ――気に食わないが、仕方ない。
 闇が焼け落ちる影から、伊織の魔を纏った暗器の数々が、嵐となってカルロスへと降った。もはや数の暴力に近い。清宵の穿った右目へ更に棒手裏剣が刺さる。
「――――――!!」
 四肢を裂かれ、穿たれ、刺され、目を潰され、苦悶の哭き声が黒霧垂れ込める大地に木霊した。
「此方も、足掻いてやるさ」
 あの暗澹たる気は、まだ腹の底に溜まっているようだ。それを吐き棄てるように言い放ち、伊織は赤瞳を尖らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



 ああ。
 あああ。
 憎らしい。猟兵が憎らしい。
 視界を奪ってなお、立ち向かってくる。その精神力が、憎らしい。
 恐怖はないのか。
 畏怖はないのか。
 根源的に暗闇を恐れることはないのか。
 憎らしい。その上、我が目を奪った。憎らしい。我の肉体に傷をつけた。憎らしい。
 消えるというのか。
 この王が。
 消されるというのか。
 あああ……。
 ああ……。
 憎らしい。
吉備・狐珀
手強い相手ですが見過ごすことはできません
皆、少々無理をさせてしまいますが協力お願いします

破浄の明弓を構え矢を放つ
魔を破り穢れを浄め明かりを取り戻す御神矢は、闇の中であれカルロスを果てまで追いかけ私達を導く一条の道を作る

激痛と氷結を和らげるオーラ纏わせさらに結界をはり準備を整えUC【神使招来】使用
ドラゴンが現れたら、全てを焼却する兄の炎と月代の衝撃波で応戦
後方からみけさんのレーザーで援護射撃しつつ継続的にダメージを与える
私は結界を張り続けることに集中
ウケ、光の道にそって御神矢を一斉に放つのです
ドラゴンの攻撃が弱まったら命中した証
ウカ、道の先にいるカルロスに四神の力全てを解き放ち斬りかかりなさい!



 吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は、凛然と背を伸ばし、敢然として地を踏む。
 決してやわい相手ではないことは判っている。手強いだろう。一筋縄でいかないことは、すでに知れている。
 だからといって、見過ごすわけにはいかない。これを斃さない限り、この世界に平穏は訪れないのだ。それだけに気は抜けない。
(「皆、少々無理をさせてしまいますが……協力、お願いします」)
 語りかけるのは、狐珀に付き従う狐たち。今はまだ返事はない――顕現していないから当たり前か。
 腹の底へと響くような、低い呻き声が闇の奥からする。誰の言葉もない。ただただ、低く獰猛な威嚇が、する。
 そうして、ひやりと空気が凍えていく。カルロス・グリードが召喚したドラゴンがこちらに向かってくるのだろう。黒影の竜は、闇に紛れているのか。
(「思ったより、はやいですね」)
 攻める手を急いているのは、余裕がなくなっているからだろうか。だとしても、こちらの準備が整っていないのは、事実。
 それでも狐珀は焦らない。細く息を吐きながら、霊力は形を成していく。
 激痛と氷結のダメージを和らげるオーラを纏い、さらに堅牢に結界を張り巡らせる。
 同時に構えるのは、《破浄の明弓》――それを闇に向け、弦を引く。魔を破り、穢れを浄め、明かりを取り戻す御神矢が指の間に現れて、燦然と白く輝く鏃には、霊力が収斂して眩く、ただ純真に白く発露する。
 傷を負うことは覚悟の上だ。
 冷気は明確に強くなる。
 闇は蠢いているようで、そぞろ寒い。
 オオオォォォ……と狼の遠吠えのような咆哮が上がる。
 矢を放つ。
 闇を裂いて光の道は、カルロスへと伸びていく。
「神使招来!」
 炎術に長けた兄の霊がすべてを焼き尽くす炎を纏い、疾駆した。
「月代! 兄様と一緒に!」
 甲高い声は、承知の意。月白の翼で闇を打ち据え、牙を剥く氷の竜へと飛翔する。
 燃え上がる炎は俄かに辺りを照らし出す。
 触れるものすべてを凍らせてしまう力を相殺すべく、爆発的に膨れ上がる炎と、凄まじい衝撃を孕んだ月代の羽ばたきが、鋭い光の中で激突した。
  その余波を受けた闇が大きく揺らめく。影に潜み、狐珀の精神を喰らおうとあぎとを開けた黒影竜の双眼を見た。
 瞬時にレーザーが発射される――後方に配置した、御食津神を宿した《みけさん》だ。援護することを学習したAIロボットは、寸分の狂いなく黒竜を穿つ。
 加護を高める結界を破られるわけにはいかない。狐珀は意識を集中する。
 ドラゴンの動きは鈍らない。それは、先刻の矢はカルロスに届かなかったということと同義。
 炎と氷が激突し、衝撃波が闇を振動させ、一直線に伸びる光線が竜を貫く。その猛攻を掻い潜る氷竜が肉薄――咄嗟に体が動く。眼前に迫っていた爪は寸でのところで、腕を掠めるだけにとどまった――否、それは、《破浄の明弓》を構える腕だ。
 主人の負傷に、月代が一哭き。己が凍る危険を顧みず狐珀との間に降り立った。
「月代……! 頼みます」
 結界内で、纏うオーラがなければ――この氷結は、どこまで侵蝕していったろうか。
 考えても詮無いことだと一蹴。寒さで震える右腕を伸ばす。
 人差し指の上に、輝く光は、狐珀の聖性を宿す御神矢の鏃。
 闇に隠れる陰湿なる、一の王笏。その身を穿つまで果てなく追いかけるだろう。そうして、破滅へと導く道になるだろう。
「私も、最後まで足掻きます。貴方を自由にすることはできません」
 純白に輝く矢が放たれた。一条の道が現れ、一瞬後、竜の姿が消えてゆく。
「ウケ、光の道にそって御神矢を一斉に放つのです」
 光道の先には、カルロスがいる。ドラゴンが消えたということが、なによりの証。
「ウカ、道の先にいるカルロスに四神の力全てを解き放ち斬りかかりなさい!」
 黒狐が抱く宝玉が烈々とした光を放つ。そこから溢れ出すのは、英霊たち。
 手に神器たる剣を手に、更なる強力な軌跡を作る。
 道の向こうへと雪崩れ込んだ、狐珀の持て得る最大限の戦力に、凄惨で痛々しい叫び声があがった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

香神乃・饗
他所の世界は侵略させないっす!
サムライエンパイアがどれだけ迷惑したか
解らせてやるっす

香神写しで武器を複製し
剛糸を自分の周りに張り巡らせてアンテナ代わりにするっす
暗殺されないよう気配を探り糸に反応があったら
苦無を高速回転させ竜巻を起こし、近づいてきた武器もろとも霧を払うっす

最後まで足掻くのは俺のほうっす
【筋力を奪う爪】【速さを奪う爪】これはどちらも最悪喰らっても仕方ないと覚悟をきめるっす
爪を喰らって弱っているだろうというフェイントをかけおびき寄せ
最後の爪をかいくぐり力溜めた苦無で斬るっす
ただ一つ「何があっても倒す」という意思が残っていたら
その喉笛を食い破るには十分っす
奪われる痛みを刻んでやるっす



 黒霧が体に纏わりつく。自身の指すら見えない暗闇だ。
 激しく明滅した炎の光も、突如として闇を裂いた光の筋もすでになく、また黒い空間へと閉じ込められた。
 一張羅の紅半纏の梅も、梅花が掘りつけられた苦無の刃も、まして仲間の猟兵も見えない。
 香神乃・饗(東風・f00169)は、己が身の周りに剛糸を蜘蛛の巣のように張り巡らせる。暗闇にあって、視覚を確保できないこの瞬間、張った糸の振動が饗の視覚となる。
 侵略形態――そんな物騒なことを許せるはずがない。まして、饗の故郷たるサムライエンパイアで、かのレディ・オーシャンがどれほど好き勝手に各地を水浸しにしたか――どれだけの迷惑を被ったか、計り知れない。
(「侵略させないっす! どれだけ迷惑をしてるか、ここで解らせてやるっす」)
 彼の意志は、剛健な糸へと伝播する。空気が揺れる。糸が震える、激しく、右側が大きく、張り詰めた。
 漆黒の瞳が暗黒を映す。見えずとも、視えた。
 剛糸に絡まることはなかったか――逆手に握った苦無ごとカルロスの爪が饗の腕を裂いた。
 防御が間に合わない。苦無を複製させる。鏡写しになるように苦無は増殖を続ける間も、凶爪は饗を狙いくる。
 一足、跳び退って距離をとる――着地の瞬間、驀地に駆ける。闇へと向かって走り出すのは、果たして容易であった。糸の感触は失われていない。
 それでもこちらの動きはカルロスに筒抜けている現状で、どこまで通用するかは判らないが――そう、饗がどこに駆け出そうとしているか、敵には見えているのだ。
 饗の脇腹が燃えるように熱くなる。裂かれた。その衝撃に、毒づいた。
 俊敏さを奪われ、あらゆる速度が落ちる。それは、とてつもなくもどかしい。
 筋力を奪われ、躰は重く感じられる。思うように力が入らない。
 しかし、これはすでに覚悟してきたことだ。腹を決めてきた。二撃に屈しようとも、饗の心は折れていない。
(「出来ることをやらないのは、ナシっす」)
 最善を尽くす。そのためにここへ来た。
「最後まで足掻くのは俺のほうっす」
 裂かれた傷から血が流れる。それと一緒に饗の力も失われていくようだ。立っているだけだというのに、ふらつく。
 見えているだろう。饗は今、弱っているように見えているだろう。しかし、最後の爪撃を喰らうわけにはいかない。
 足音がした。来るか。【香神写し】で増えに増えた苦無は、瞬時に饗を護るように体の周囲に展開、大渦と成して防壁へと変じ、饗の腹を抉りにきた最後の爪を弾き飛ばした。
 刃の竜巻の内側に閉じ籠り、ひとつ、ふたつと呼吸をし、カルロスが次にうつ手へと思考を巡らせる。思考がまとまらない。これも先に受けた爪撃の余波か――力を奪われ、いつも通りに己を操れない。
 しかし饗は、そんな躰に鞭を打つ。今、止まるわけにはいかない。
(「何があっても倒すっす。俺は、そう決めたんっす――俺が決めたんっす」)
 その強固な意志があればこそ。
 派手に動く竜巻の影に隠れるよう、地を這うように剛糸を奔らせた。果たしてそれは、カルロスの四肢を捕らえ、あっという間に首に巻き付く。この糸の先に首がある。饗は躊躇わない。
 増えた苦無は驟雨となってカルロスへと降り注ぎ、断末魔を上げさせた。
 それを聞きながら、唇を引き結び、苦無を握り直す。
「痛いっすか。痛いっすよね……当たり前っす。奪われる痛みを、お前にも刻んでやるっす」
 剛糸を辿るように、精確に突き込まれた苦無の刃先は、カルロスの喉笛を深々と穿った。
「――っ、――!」
 空気を求めて喘ぐ。血を吐いた音。
 これほどの近距離にいても見えないカルロスから力が抜けていく。饗が感じていた重みは、氷が解けるように失せていった。


 月、盈つれば、則ち、虧く――それこそが、世の理だ。
 始まりは小さな傷だったはずだ。不覚にも捕らえられ、それが徐々に深く大きく、斬られ穿たれ貫かれ、肌を焼く甚大な傷となり、光に灼かれた。
 そうして、今、カルロスの頬に触れるのは、冷たい冷たい地のざらつき。
 これが、強欲の果ての末路か。
 一敗地に塗れ、静寂は闇と一緒に垂れ込め、それでも将を失し、島は沈黙した。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年02月26日


挿絵イラスト