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鬼に刃、魅惑の力

#サムライエンパイア #猟書家の侵攻 #猟書家 #『刀狩』 #妖剣士

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 サムライエンパイアの山中、篝火に照らされた洞窟の中。
「くっくく……もう終わり、かい?」
 長大な斬馬刀を肩に掛けた、白い鬼の女が笑う。
 その足元に転がるのは、手下であった羅刹の者たち。
「あんたたちが、あたしに色目を使うのが悪いのさ……おかげで血が騒いでねぇ。」
 血に染まった斬馬刀を一振りすれば、転がる羅刹たちへと振り払われる。
 彼らは全て、一刀のもとに斬り捨てられていた。
「まったく、何で……斬っちまったんだい、あたしは……。」
 どうして……と、目からこぼれる一筋の光。
 斬られた彼らとの日々が脳裏に浮かぶが……。
「……キヒヒ。」
 浮かんでくるのは、彼らが自分へと血走った目を向ける様子。
 色欲に塗れたその瞳で見つめられ、そして……。
「あたしに色目を使うなんざ、百年早いのさ。」
 気の触れた嗤いと共に、調子はずれの鼻歌を響かせて歩き出した。

 ところ変わって、グリモアベース。
「……というわけです。
 この方もまた、刀狩の意思を継いだものに操られています。」
 集まった猟兵たちの前で八咫が困ったような笑みを浮かべながらグリモアを輝かせると、白い女の鬼が嗤う姿が壁に映しだされていた。
 長大な斬馬刀を肩に掛け、降り積もった雪のように白い着物を開けた姿は……どこか妖艶で。
「元は山賊の女頭領だったようですが……刀に憑いたモノに惑わされて手下を全て斬り、姿も変わってしまっています。
 白い鬼……刹羅沢という里に住む鬼の伝承、その中で最も強い鬼の姿に。
 眉唾なものと言われるほどの強さを全て再現できているかは定かではありませんが、それでも決して弱くはないでしょう。」
 そう言うとゲートが開き、洞窟の前に繋がった。
「あのままでは、あの方は里へと下りて人を斬り始めてしまいます。
 ……皆さんは、あの方の刀を取り落とさせてください。
 そうすれば、あの方は正気に戻り、刀に憑いていたモノが現れるでしょう。
 大変な仕事になるでしょうが、よろしくお願いしますね。」


ヨグ
 ヨグです、サムライエンパイアの猟書家の物語をお届けします。
 刀狩の意思を継ぐものは、まだまだいるようです。
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第1章 ボス戦 『白鬼』

POW   :    颶風雷刀
予め【斬馬刀を担ぐ】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    あふなわるや
【自己暗示の祝詞による無念無想の境地】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    無明無月
自身の【狂気に染まる瞳】が輝く間、【暴風の如く振るわれる斬馬刀】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠刹羅沢・サクラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鍋島・小百合子
POW重視

人斬りの道は修羅へと通ずる地獄ぞ
刀さえ落とせばまだ救いが見えるな

「貴様の斬ってきた者らを思い出すがいい。同じ過ちを繰り返さぬようにな!」
白鬼の斬馬刀に対してわらわは薙刀で相対
最初は薙刀の武器受けとなぎ払いを併せた防御か残像を用いた回避を意識
特に敵の刀を担ぐ動作を見て以降は斬撃の太刀筋を戦闘知識として記憶し見切り回避に応用
動きを見破れば隙を突き烈火怒涛が如く薙刀の武技を叩き込む(鎧砕き、乱れ撃ち、咄嗟の一撃、カウンター併用)
怯んだ隙を見つければUC「災禍刺刀撃」発動
距離を一気に詰めては懐の小太刀で白鬼の持ち手から刀を吹き飛ばす勢いで攻撃(ダッシュ、切り込み、串刺し、破魔、衝撃波併用)


アリス・セカンドカラー
「斬り結ぶ……」
体感時間を引き伸ばす程に深い集中に潜り(催眠術/瞬間思考力/時間稼ぎ)
「刃の下こそ地獄なれ……」
その集中をもって己のパフォーマンスを最大限に引き出す(肉体改造/限界突破/リミッター解除)
「……踏み込み行けばそこは極楽」
現代スポーツでゾーンあるいはフロー体験と呼ばれるその境地。(降霊)
「神仏降霊神憑り」
暴風の如く振るわれる斬馬刀何するものぞ。
「妖の息吹 捌の型……」
洪水の如き暴力ですべてを押し流し蹂躙する剣戟結界術。
「……八岐大蛇」
八頭八尾の大蛇を再現する神域の剣術をとくとごらんあそばせ。
あ、結界の一部を武器改造で刀状にしてるから、折れてもすぐに再生できるわ。(継戦能力)



 洞窟の外に出た白い鬼。
 雪の残る山道に立ちはだかるのは二つの影。
「ふふふ、簡単に騙されちゃったようね?」
 クスクスと笑いながら呟くのは、珍しく刀を手にしたアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗のケイオト魔少女・f05202)。
 興味深げに鬼の肩に担がれた長大な斬馬刀を見つつ、
「元の人がちょろかったのかしら?」
「そういうでない、刀狩の信徒の力であれば仕方のない事であろう。だが、」
 アリスの軽口を窘めるのは、薙刀を構えた女武者、鍋島・小百合子(朱舞の女丈夫・f04799)。
 改めて、頭一つくらい背の高い白い鬼を見上げて言い放つ。
「人斬りの道は修羅へと通ずる地獄ぞ! 鬼へと堕ちる必要はあるまい!」
「キヒヒ……小娘どもが、何を言い出すかと思えば。」
 そんな言葉にも白い鬼はうすら笑いを浮かべ、その長大な斬馬刀を軽々と肩に担ぐ。
 あまつさえ、あいた手で手招きしながら、
「あたしを止めたいなら……解ってるんだろう?」
「ああ……では、参る!」
 薙刀を手に鍋島はそのまま駆け出し、刀を構えたアリスは目を閉じてその場に留まっていた。
「斬り結ぶ……刃の下こそ地獄なれ……。」
 自身への催眠術でより深い集中に入り、アリスの肉体から無意識のブレーキを外していく。

「まずは小手調べだ。」
 駆け寄った鍋島へと振り下ろされる斬馬刀。
 初手を薙刀の柄で払うが、その重量と膂力に鍋島の身体が弾き飛ばされそうになる。
「ちっ……なんと、重い。」
「ははは! あんたが軽すぎるのさ!」
 勢いのまま跳び退った鍋島に、すぐに次の刃が迫る。
 まるで小枝でも振るうかのように、白い鬼はその長大な刃を片手で突いてきた。
「取った! ……おや?」
 鍋島の腹を貫いたように見えたが、貫いたのは空気のみ。
「……残念じゃな、残像じゃ!」
「ちぃ!」
 素早い動きで横へ動き、鍋島の間合いを保ったまま薙刀で斬りつける。
「貴様の斬ってきた者らを思い出すがいい。同じ過ちを繰り返さぬようにな!」
「……喧しい!」
 一度、二度と白い鬼は斬馬刀で受け……そして三度の刃を力任せに弾いてきた。
(力は確かにすさまじいが、大振りじゃな。)
 弾かれた力に逆らわず、その勢いで鍋島が距離をとった時……振り払った斬馬刀の下を、小さなピンクの影が飛び込んできた。
「踏み込み行けば、そこは極楽……神仏降霊神憑り。」
「くっ!?」
 トランス状態に入ったアリスによって、その白い足が斬りつけられていた。
「……くふ、クヒヒヒ!」
 その痛みに気でも触れたかのように、白い鬼は狂気に染まった瞳を輝かせる。
 対峙するアリスの周囲には、いくつもの結界が広がっていた。
「お前は肉片も残さねぇ!」
「妖の息吹、捌の型……。」
 激昂して力任せに斬馬刀を振り下ろす白い鬼とは対照的に、アリスはただ真っ直ぐに刃を振るう。
「……八岐大蛇。」
 呼応するように結界からも刃が現れ、斬り結ぶ様は八頭八尾の大蛇のよう。
 暴風のごとく振るわれる斬馬刀を、数多の蛇が押し返した時……白い鬼の懐へと、鍋島が飛び込んだ。
「我は放つ、鎧貫く剛の一刺……受けよ!」
「くっ!?」
 懐に隠し持つ小太刀を抜き、斬馬刀を吹き飛ばす勢いで持ち手を貫く。
 だが……白い鬼は手を放さず、そのまま自ら後ろに跳んで距離をとる。
「キヒヒヒ……今のは効いたねぇ。」
「ちっ、まだ手放さぬか。」
「……そのようね。でも、次で終わりよ。」
 嗤う白い鬼へと、2人は改めて武器を構え直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

舞塚・バサラ
【刀狩】
やはり、あの刀の気配は…

まずはリダン殿が用意した服を纏い、目立たぬよう洞窟の暗闇に存在感と姿を消して機を待つで御座る
共に参加した皆様が相手の動きを止めるまで、冷静に相手をよく見るで御座る(地形の利用、目立たない、存在感、見切り、学習力、闇に紛れる)
皆様によって動きを止めたなら、そこが機!
全速力で接近し、刀に対してUCを使用するで御座る(ダッシュ、見切り、忍び足、早業、武器落とし、残像、フェイント)
敵は得物に操られている状態
ならば此方の手に一度渡ってしまえば、無力化は成る筈で御座る

久方振りに御座るな、姉弟子(奪った刀を見る)
さっさと姿を表すで御座るよ。七塚が六、稲荷塚!


ニコリネ・ユーリカ
【刀狩】
バサラさんの刀を見る目が鋭い
ミスターには邪気の正体が見えるのかしら

洞窟は山賊達のアジト、地の利は向こうにある
リダンさんお手製の衣装を着て移動は少なめに
篝火から遠い昏闇からアリシアさんの歌に歌(UC)を添え
窟内に二声合唱を響かせる

初めて聽く歌なのに郷愁を覚える筈
オブリガードにこの里に伝わる旋律を
仲間と歌ったかもしれない歌を織り交ぜたの
家族と親しんだ仲間の霊が慰められるよう
彼女の悲哀や後悔が癒えるよう祈り歌う

頬を伝った涙の跡を信じる
“貴女”を思い出して
刀に心を委ねないで!

狂気の揺らぎを見たらボタンぽち
光に私の位置を暴いて惹き付ける
お願いミスター、結ばれた射線に割り入って彼女から刀を離して!


アリシア・マクリントック
【刀狩】
心と体を蝕む妖刀……おそろしいですね……
同じく刀を使う者同士。みなさんの準備が整うまでは私が敵を抑えましょう。白鬼の気を引くよう名乗りを挙げます。
「私の名はアリシア・マクリントック!私が打ったこの刀剣とあなたの刀、どちらが優れているか……一曲お付き合いいただきます!」
想いを込めて歌い踊りましょう。
武器はあくまで己の願いを果たすためのもの。手にした妖刀ではなくあなたが主役の物語を見せて欲しい――と。
斬馬刀の一撃を受け止めるのは危険ですね。凰剣『ルシファー』の護拳を活かして受け流しつつ、鳳刀『暁』で反撃していきます。防御を重視して一曲歌い切るまではなんとか引きつけてみせましょう。


リダン・ムグルエギ
【刀狩】
ウチの社員&弟分の本懐のために全力で支援しにきたわ
今回ばかりは遊びはナシで行くわよ

戦いは皆にお任せ
アタシは【事前準備担当】だもの
戦闘中は真の敵たる『塚』との戦いに備え毒煙香水を撒きつつ潜伏

アリシアさんには見た人の狂気を和らげる(狂気耐性)色合いの強化改造済マントを
隠れやすいようバサラくんには迷彩柄の衣装を渡すわ

ニコの衣装も迷彩柄…だけど
ボタン一つで衣装に編み込んだダイオードが点灯し
『見た人の五感を狂わす催眠模様』が浮かぶようにしておくの

相手が暗い洞窟の中で歌うニコの存在を探し当てそうになる、その瞬間辺りが狙い目ね
衣装に模様を浮かび上がらせて相手の動きを一時的に封じれば

今よ、バサラくん!



「キヒヒ……やってくれるねぇ。」
 洞窟の外でふらりと白い鬼が立ち上がり、斬馬刀を肩にかける様を見つめる、いくつもの影。
「やはり、あの刀の気配は……。」
 特に深く闇に溶け、刀へと鋭い目を向けていた、舞塚・バサラ(變亡する陰陽・f00034)。
 その思わず漏らした呟きを聞きつけたのは、隣で機会をうかがうニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)。
「バサラさん、さっきからだいぶ怖い顔で刀を見てるけど……。」
「ああ、すまないで御座る。少し、某に縁のあるモノで。」
「ふぅん?」
「もしよければ、話してくれませんか? 何か、あの方を助けるヒントになるかもしれません。」
「ふむ……どこから話せばよいか。」
 横からアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)に問われ、舞塚は少し頭を巡らせるが……目の前で白い鬼が歩き出すのを見て、
「あまり長く話せそうにありませんな。ただ、一つだけ言うならば……近くの者の欲望を解放させる力を持つモノで御座る。」
「そう……心と体を蝕む妖刀、おそろしいですね。」
「まぁでも、今回やることが変わらないなら大丈夫よ。ちゃーんと準備したからね。」
 白い鬼に気取られないように静かに、だが力強く肩をたたいて笑いかけるリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)。
「みんなの服、ちゃんと言われたとおりに仕立てたんだもの。期待には応えられてると思うわ。」
「ええ、ありがとうございます。では、行きましょう。」
「御意。」
 足音もなく駆け出し、洞窟の中へと滑り込む舞塚を見送り、アリシアはわざと白い鬼に気づかれるように足を踏み出す。
「おやぁ……あんたもあたしを、倒しに来たのかい?」
「ええ、そうです。」
 すらりと刀と剣を引き抜き、刀を白い鬼へと突き付けて高らかに言い放つ。
「私の名はアリシア・マクリントック! 私が打ったこの刀剣とあなたの刀、どちらが優れているか……一曲お付き合いいただきます!」
「面白れぇ……やって見せろ!」
 対する白い鬼は狂気の笑みを浮かべ、一気に駆け出してきた。

「まずは一段階目ね。……さて、効くかしら?」
 物陰から覗いていたリダンの視線の先には、リダンの仕立てたマントを翻すアリシアの姿。
 見たものを穏やかな気分にさせる、綺麗な色のマントの揺らめきに、白い鬼の目に宿る狂気が和らぐのが見て取れた。
「……ちっ、調子狂うな!」
「ふふ、それはよかったです。」
 勢いはいいが、どこか力のこもっていない斬馬刀を剣の護拳ではじき、取り落とさせるように刀をたたきつける。
 しかし、まだ斬馬刀を握る力は衰えておらず、すぐに距離をとる。
「では、あなたの物語を見せてください。」
「物語、だと?」
「ええ、そうです。手にした妖刀ではなく、あなたが主役の物語ですよ。」
「はん、敵の前でそんなこと……。」
 歌い上げつつ剣を振るうアリシアへ、馬鹿馬鹿しいと言いたげに斬馬刀で薙ぎ払うが……その頬を伝うのは、一筋の光。
「なん、で……?」
「それこそが、あなたが人である証です!」
 戸惑う白い鬼の斬馬刀は勢いを無くし、それでもなお重い斬撃を躱して、アリシアは歌い続ける。

「よし、効いてるわ! ニコ、もっと続けて!」
「もちろん! さぁ、もっと物語に引き込まれてちょうだい。」
 物陰でガッツポーズをしながら、リダンはニコリネへと指示を送っていた。
 白い鬼と対峙するアリシアの歌に合わせ、ニコリネの歌をハモらせていく。
「オブリガードにこの里に伝わる旋律を、仲間と歌ったかもしれない歌を織り交ぜて……。」
 家族と親しんだ仲間を思い出させ、その霊を慰められるように。
 白い鬼の悲哀や後悔が癒えるよう、祈りを込めて。
「“貴女”を思い出して、刀に心を委ねないで!」
 感極まりながら歌い上げるニコリネの歌は、確かに白い鬼の心を掴んでいた。
 しかし、明らかに目の前にいるアリシアのものではない歌声へ目を向けた、白い鬼と洞窟の前に立つニコリネの目が合ってしまった。
「くっ……お、お前だったのか!」
「そうよ! 貴女はかつての仲間を思い出して!」
「うるせぇ! あいつらは……あいつらは!」
 下卑た笑いを浮かべたかつての手下たちが最初に浮かぶが……次に頭をよぎるのは、彼らと酒を飲み交わしながら笑う顔。
 そうだ……白い鬼となった彼女をよく慕ってた彼らは、それまで一度も、
「今まで、あたしに色目を使うことはなかった!」
 斬馬刀を構えながら、一気にニコリネへと駆け出す白い鬼。
 目の前で斬馬刀を振り上げた時……ニコリネはポチリと服に仕込まれたボタンを押す。
「ぐあっ!?」
 衣装に編み込まれたダイオードが一気に点灯し、白い鬼がたたらを踏んでバランスを崩す。
 光として浮かび上がるのは、五感を狂わす催眠模様……それをまともに見てしまったのだ。
「よし! 今よ、バサラくん!」
「応!」
 リダンの声に、舞塚は丁度洞窟の前に出た白い鬼へと滑り込み……斬馬刀の刃先にその指が触れる。
「……え?」
 気が付けば、目の前の舞塚の掌の上に斬馬刀が移っていた。
 するりと抜ける感触と共に、いとも簡単に。
「あ、れ?」
「はっはっは。某、小器用なのが持ち味で御座ってな。」
 仮面から覗く口元でニヤリと笑う舞塚の前で、あっさりと奪い取られて放心した白い鬼の姿が変わっていく。
 白から黒い髪へと、元々の山賊の頭領の姿へと……それと共に、手にした斬馬刀からも妖気が漏れ出すのを感じとる。
「久方振りに御座るな、姉弟子。」
 懐かしい気配に舞塚が目を向ければ、斬馬刀から煙が広がっている。
「さっさと姿を表すで御座るよ。七塚が六、稲荷塚!」
 叫ぶ舞塚の声を、まるで楽しむかのようなクスクスと笑う声と共に……煙の中から一人の人影が歩み出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『罰裁羅七塚』稲荷塚・バサラ』

POW   :    陰術:蠱惑に咲くは高嶺の華
【自分の存在そのもの】から【如何なる者も目を背けずにはいられない色気】を放ち、【欲と思考を暴走させる事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    陰我式:凄絶に咲け、大紅団扇
【取り込んだ妖『傾国狐』の力を解放し、】【視認するだけで虜になる程の強烈な色気と】【防御を真っ向から切り捨てる程の更なる技巧】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    技巧:淫靡に咲くは欲の華
攻撃が命中した対象に【自身を滅茶苦茶にしたいという強烈な欲求】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【欲で散漫になった意識の隙を突く刀での連撃】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は舞塚・バサラです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「なん、で……あたしは、あいつらを……。」
 白い鬼と化していた、女頭領の胸に浮かぶのは後悔の念。
 そんな彼女の元に降り立ち、微笑みかけるのは巫女のような姿の妖狐。
「それは私が仕向けたものですよ。」
「な、お前……!」
 女頭領が言葉に目を上げれば、凛とした立ち姿の妖狐が冷たい目で見下ろし、そのまま淡々と言葉を続ける。
「あなたの腕は確かだった……少しは誘惑されたとはいえ、手下の男どもは全てあっさりと斬り捨てたほど。」
「……。」
「ですが、ここまで情が深いとは思いませんでした。歌で彼らを思い出すとは……。」
「許さねぇ……。」
 ぼそりと呟く女頭領の目は、怒りに支配されていた。
 それは妖狐を滅茶苦茶にしたいという欲求……かつての手下へとかけられた術と同じもので。
「絶対に許さねぇ!」
「……できるものなら、ね。」
 ひったくった斬馬刀を振り上げた女頭領を見る妖狐の目は冷たく、懐から刀を取り出して……。
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。

ふむふむ、欲望は私の力の源よ。残念だったわね。
連撃で切り刻まれた肉体を結界術による化術肉体改造と限界突破した継戦能力で平然と再生しバサラの懐に潜り込む。
ふふ、あなたに植え付けられたあなたを滅茶苦茶にしたいという強烈な欲求、このままだと収まりがつかないわ。だから責任をもってアリスといいことをしましょ♪
そのまま組み付き化術肉体改造改造神罰で疑似フタ化させて体勢を崩すとそのまま組み伏せ、アマゾンプレスで捕食し房中術「玉女彩戦」で搾り取ってあげるわ☆搾り取った分は吸収してエネルギー充填よ。
魂まで吸い尽くしてあげる♡



「ふふ。いい殺意ね、気に入ったわ。」
「なっ!?」
 いつの間に妖狐との間に入ったのか、斬馬刀で袈裟懸けに斬られたのはアリスだった。
 そのままズルリと切断面から上半身の半分が滑り落ちていくが、楽しげな表情は何ひとつ変わらない。
「な、なんなんだ……あんた。」
「なんだって言われてもねぇ。私はアリス、ただのか弱い女の子よ♪」
 アリスの身体が時間が巻き戻るように斬られる前へと戻る様子に、女頭領はすっかり殺意が削がれてしまっていた。
「ふむ……人ではないモノですね。」
「ご名答♪ ……ふふふ、」
 そんな中でも冷静な妖狐の言葉に振り向いた、アリスの顔が惚けていく。
 妖狐の姿がとても妖艶なモノに……そして、それを、
「あなたを滅茶苦茶に……ふふ、どう鳴いて、くれるのかしら?」
「かかったか。」
 欲求のまま、断片的な言葉をつぶやきながら手を伸ばしてくるアリスを、妖狐は冷静に見下ろしていた。
 いつの間にか抜いた刀で、抱きつこうと歩み寄るアリスの胸を貫いていた。
「人ではないモノであっても、やはり欲には抗えないようですね。」
「ふっふふふ……本当、強烈な欲求よね。」
「……なに!?」
 気が付けば、そのままアリスが妖狐へと抱き付き、押し倒す形で倒れ込んでいた。
 刀は確かに心臓を貫いて、
「さっきのを見てたんでしょう? 私がそれくらいで死ぬと思ってたかしら♪」
「くっ、確かにそうね。」
「はぁ……ねぇ、このままだと収まりがつかないわ。そんな冷たいものじゃなくて、」
 すっかり組み付かれ、身動きの取れない妖狐は下半身に違和感を覚えていた。
 それと同時に、アリスの抱く欲求を理解する。
「……あ、あなた……私の身体を?」
「ふふふ……ねぇ、あなたの熱いモノを、頂戴?」
「あぁ!?」
 その場にはしばらくの間、湿った音と嬌声が響き渡る。

「……まったく、見せつけるモノじゃないだろうよ。」
 すっかり冷静になってしまった女頭領も顔を背けてしまっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ

同じ略奪者でも人間というだけで山賊は守られ
オブリビオンは討たれる。理不尽よね

守護霊の【ドーピング】で戦闘力増強。
邪魔されないよう山賊を【結界術】に閉じ込め
【オーラ防御・激痛耐性】でバサラの初撃に耐える

付与された欲求も【狂気耐性・気合い】で
私の力に変え『狂愛』で百人に分裂

【見切り・残像・空中戦】で追加攻撃を避け
密着し【吸血】しつつ【呪詛】を注ぐ【マヒ攻撃】
これで追加攻撃も行えない

私を誘惑した貴女が悪いわ♥

服の中に侵入し
乳、尻、局部を【慰め・生命力吸収】

ふと彼女が先程ふたなり化させられてた事を思い出し
分裂を解き【化術】で私自身がふたなり化。
【串刺し・乱れ撃ち】で滅茶苦茶にするわ♥



「全く、理不尽よね。」
「ん……んあ、なんだこれ!?」
 女頭領が呟きに目を向けようとした時、自身が結界に捕らわれていることに気が付いた。
 唯一自由に動く首を動かして見れば、険しい顔をしたドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の姿があった。
「人間というだけで山賊は守られ、オブリビオンは討たれる。略奪者としては同じなのに。」
「あんた、何を言って」
「でもそんなことはどうだっていいわ! ふふふ……こんなにかっこいい獣のお姉さまに会えたんだもの!」
「……は?」
 先ほどまでの真面目な雰囲気はどこへやら、目にハートでも浮かびそうな勢いでドゥルールは妖狐へと走っていった。
「ワイルドなお姉さまー! 私を滅茶苦茶にしてぇ!」
「またですか。……ですが、目が眩んでいるなら好都合。」
「あぁん!」
 目にもとまらぬ速度で引き抜かれた刀に、あっさりとドゥルールの首が刎ねられていた。
 ポンと飛んでいく首を見据えながら、やれやれとやや煩わし気に刀を納め、
「全く……しかし、男が私の色香に迷うならともかく、女ばかりがなぜ」
「ふふふ……そんなこと言わないで、お姉さま。」
「なに!? くっ!」
 ポンとドゥルールの身体が煙に変わったかと思えば、中から小さな姿になったドゥルールが大量に飛び出した。
 刀を抜く暇もなく、あっという間に取り付かれ……その一部が服の中に潜り込み、
「やめなさい!」
「だーめ、やめないわ。ふふふ、私を誘惑した貴女が悪いのよ。」
「あなた、何でそれを……あぁ!?」

「おいおい、またかよ……。」
 目の前の光景に、女頭領も少しげんなりした様子で呟いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

鍋島・小百合子
WIZ重視

この惨状を作った妖を討滅せねばな

バサラの攻撃でわらわに欲求が付与されたら狂気耐性をもって今一度己を思い返し落ち着きを取り戻せるよう善処す
刀の連撃には薙刀での武器受けによる防御か残像を纏いながらの回避にて激痛耐性と併せて受け流していく
バサラの攻撃を一通り凌げば今度はわらわが反撃の狼煙を上げ、UC「勇者乃武器」で己が勇気を具現化した光を薙刀に宿す
取り戻した落ち着きと理性を心の武器とし、我が薙刀の武技をもっておもてなしを披露してみせよう(なぎ払い、乱れ撃ち、破魔、神罰、鎧砕き併用)
「これが貴様の望みなのであろう?なればその欲望に抱かれたまま滅してくれるわ!」



「……終わったか、妖よ。」
「ええ……不本意ながらね。」
 妖狐へと薙刀を突きつけた鍋島の目に、明らかに疲れた様子の妖狐が映る。
 髪をかき上げながら答える様子に、武器を構える鍋島の心に苛立ちが浮かんでいた。
「随分と、余裕のようじゃな。」
「本来なら、色に狂う者の相手なんて簡単に終わらせるのだけど、ね。相手が悪かったわ。」
 戦いを前にして何をしておる、この妖狐は……と、今すぐにでも斬りかかりたい気持ちが浮かぶと同時に、はたと気が付く。
 隙の大きい姿をさらしながらも、妖狐の目は冷静にこちらを見つめ、刀はいつでも抜けるようにと手がかかっている。
 ……これこそが、この妖狐の戦い方だと。
「……わらわもまだ、未熟なようじゃの。」
 軽く息を抜くように自嘲しながら呟く鍋島の心は、すっかり落ち着いていた。
 それを見て取った妖狐の目が鋭く変わる。
「ふふ……それでも、気が付いたならましな方ですよ。」
「誉め言葉として受け取っておこう。……では、行くぞ!」
 鍋島の持つ薙刀に一筋の光が浮かび上がった時、一気に踏み込み、薙ぎ払う。
 妖狐は軽く跳び退って刃から逃れ、振り抜いた鍋島の懐へ飛びこみ刃を抜く。
 とっさに鍋島が薙刀の柄で受け止めようとするのを、それごと断ち斬ろうと居合一閃……。
「無駄じゃ!」
「なに!? くあっ!」
 刃に走ったのと同じ、鍋島の勇気を具現化した光があがると同時に刃を受け止め、そのまま体ごと弾き飛ばす。
 そして、体勢を崩した妖狐へと、大上段に構えた薙刀を振り下ろす。
「これが貴様の望みなのであろう? なれば、その欲望に抱かれたまま滅してくれるわ!」
「ぐあああああ!」
 肩へと振り下ろされるのをギリギリで刀で受けるが、得物の重さは如何ともしがたく……妖狐は肩から斬られ、一筋の血が流れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ
【刀狩】
バサラさん、あの方に勝てた事は?
……ただの一度も?(黙して首を振る様子で察する
ミスターに刀剣の技術と立ち回りを仕込んだ本人なら
手の内は知られているわね

優れた籠絡術を操る相手に怒りや恨みでは勝てない
女頭領の前に立って攻撃を押し留め、防禦に専念
刃撃は魔法で光壁を作り、屈折を利用して命中を回避

大丈夫
貴女と部下の仇を取れる唯一の人が此処に居る
貴女にはその瞬間を、そして未来を視る為に生きて欲しい

光壁が盾する間にUCを発動
月桂樹を土台に杜鵑を添えた不可視の花冠をミスターに捧げる

月桂樹の花言葉は「勝利」
ミスターに初めての勝利が訪れますように
杜鵑の花言葉は「秘めた意志」
姉弟子さんに思いの丈をぶつけて!


舞塚・バサラ
【刀狩】
"某ら"がここに居る意味はもう承知で御座ろう
__遍くを弄ぶ妖艶を罰し、悪辣なる行いを裁く
_罰裁羅の業を執行する

仲間の支援を受け、真向仕る
相手は某らに刀を仕込んだ師
故に素直に斬り結ばずにUCで手や足から小刀を生やし間合いを替え、捌き、受け、流し…隙を狙う次第
肝要は相手が他所へ注意を向ける余裕を与えぬ事
幾らか打ち合ったら、致命的な隙を敢えて作り態と刀を受け…UCで形作っていた体を解除し霊物体の体で刀を抑え
…肉を斬ると霊を斬るでは勝手が違うで御座ろう姉弟子
今に御座る、アリシア殿

…某らは姉弟子らを殺す為に、ここに居る
その為の是非は…問わぬ(刀で首を狙う)

(地面に落ちた仮面を拾い)…さらば、姉上


アリシア・マクリントック
【刀狩】
そういうことでしたら……私は影に徹するとしましょう。変身!マリシテンアーマー!
敵がこちらに注意を向ける前に速やかにカミカクシ・クロスで姿を消して息を潜めるとしましょう。この手の奇襲が通じるのは一度きり。最も効果的な、最も確実なタイミングを狙ってまずは敵の動きを観察して見極めましょう。敵の魅了対策になるかはわかりませんが、センリガン・ゴーグル越しにみることにします。
そしてここぞというタイミングで敵の背後から急所を狙って一撃!これで決着、というほど甘い相手ではないでしょうが……本命の一手を入れるスキを作るのが私の役目。こちらを「無視できない」なら十分です!


リダン・ムグルエギ
【刀狩】強い人ね
素直にそう思うわ

でも彼は特訓してきたのよ
アナタに勝つためだけに、ね

アタシは事前の克服訓練を補助したの
これでも支店長、社員を育て教える(学習力)のも仕事の内よ
UCも絡めて得手不得手を一時的に調整したわ

今じゃ年上も動物も慣れっこ
アタシのハグでも動じなくなったわ!

彼女を彼の好みではないと認識させ影響を減じさせるわ
色気に絶対は無いもの

加えて、彼自身の動きを撮影し
本人より高速&体に当たれば即死設定でVR上で動きを再現する事で
『自分より強く同じ流派の姉弟子』との立ち回りの訓練もしたの

迷彩柄の衣装は強化済
けど、手助けはそこまで
アタシはもう見守るしか出来ない

けど
勝てるって信じてるわ
バサラくん!



「……ほう?」
 歩み出た舞塚を見る妖狐の目が細く、鋭く変わる。
 その足取りと身なり、そして……顔に着けられた仮面に見覚えがあった。
「その姿……舞塚ですか。」
「如何にも。師匠、こうして相見えるのは久しぶりでありますね。」
「ええ、そうですね。息災で何より。」
 妖狐が向けるのは、かつての弟子を見る目ではなく、敵へと向ける殺気の篭もった視線。
 それを舞塚は真正面から受け止め、いつでも抜けるように刀の柄へと手を伸ばして、言葉を続ける。
「"某ら"がここに居る意味……もう、承知で御座ろう。」
「もちろん。」
「――遍くを弄ぶ妖艶を罰し、悪辣なる行いを裁く。」
 チャキ……と妖狐が刀へ手をかける音と同時に、舞塚は一気に踏み込む。
「――罰裁羅の業を執行する!」
「やって見せなさい!」
 一気に引き抜かれた妖狐の刀により、奇襲のために手にした小刀が舞塚の手から弾き飛ばされるが……別の手、そして足に生やした小刀が妖狐へと襲い掛かっていた。

 時は巻き戻り、妖狐と相対する前……一行は物陰から別の猟兵と妖狐の戦いを見ていた。
「バサラさん、あの方に勝てたことは?」
 問いかけるニコリネに、舞塚は黙って首を横に振る。
「……ただの一度も?」
「うむ。……あの方こそ、某らに刀を仕込んだ師ゆえ。」
「なるほど、そうだったのね。……ミスターに刀剣の技術と立ち回りを仕込んだ本人なら、手の内は知られているわね。」
「でもそれって、忍びの里に居た頃の話よね?」
 うーむ、と首を傾げてニコリネが考えていると、リダンがいつもの様子でツッコみをいれていた。
「そうで御座るな。」
「なら大丈夫よ。だって、いつだったか訓練してたじゃない? ほら、バサラくんの動きを撮って、VR上で再現して、それをだんだん早くして。」
「はは、その時は世話になりましたな。」
「そうよ、あの調整大変だったんだから。でも、自分より強くて同じ流派の姉弟子って設定した相手の動きに、ちゃんとしっかりついてきてた。だから、」
 リダンは舞塚の肩を叩き、不敵な笑みを浮かべて親指を立てて、
「アナタは勝てるわ、支店長として保証してあげる。」
「有難うで御座る……そこまで言わせてしまっては申し訳ないですな。」
「いいのよ、アタシのとこの社員が負ける所を見たくないだけなんだから。」
「ですが、それならもう一押し欲しいところですね……そうです、それなら」
 そんな様子を見て呟いていたアリシアの頭に、いい案が浮かんだようだった。

「腕を上げましたね、舞塚。」
「……これも、使命のためで御座る。」
 幾度かの打ち合い……妖狐が振るう刀から身を躱し、舞塚は手足の小刀を差し込もうとするが、それすらも悟られて弾かれて。
 ほんの一時、2人が距離をとって言葉を交わした瞬間、
「うおりゃああ!」
「……まだいましたね。」
 女頭領が斬馬刀を構えながら雄叫びを上げて突っ込んでいく。
 それでも視線も向けずに舞塚へと相対する妖狐へ、さらに怒りに駆られながら。
「あいつらの仇だ!」
「待ってください!」
「ぐあっ!?」
 横からニコリネに飛びかかられ、そのまま縺れて転がった2人の上に張られた光壁に、妖狐の刀が弾かれた。
「……見誤りましましたか。」
「某を忘れてもらっては困りますぞ。」
「ええ、もちろん……忘れてはおりませんよ!」
「おいっ、なんで邪魔しやがった!」
 再び剣戟の音が響く中、ニコリネへと叫ぶ女頭領の目は怒りに支配されている。
 しかし、次に感じた杜鵑草の甘い香りに、少しずつ和らいでいった。
「落ち着いて、邪魔したことは謝るわ。……だけど、止めなかったらあなたは斬られていたのよ。」
「……ああ、そのようだな。」
「あの人、人を籠絡するのが得意なの。怒りや恨みで立ち向かうと、その隙をつかれちゃうのよ。」
「ちっ……あの女狐め、そういうことかよ。」
 なだめるように言い含めるニコリネの真面目な様子に、なんとか女頭領が落ち着いてきたようだ。
 斬馬刀を握る手も緩ませながら、一つ息をつき、
「あたしじゃ、あいつらの仇は討てねぇ、か。」
「……残念だけど、そうね。だけど大丈夫、貴女と部下の仇を取れる唯一の人が、其処に居る。」
「ああ、確かにな。」
 2人の前で、妖狐と舞塚の斬り合いは続いている。
 四肢に着けた小刀で刀を受け、流して捌き、踏み込んで足で刺す……瞬間間合いを取られ、次の斬撃が足へと振り下ろされる。
 どちらもお互い以外を見ていない、目に入らない。
「貴女にはその瞬間を、そして未来を視る為に生きて欲しい。」
「情けないが、あんたの言う通りだ……仕方ねぇな、解ったよ。しかし、あいつも女狐の知り合いのようだが、なんで平気なんだ?」
「ふふん、それはアタシの特訓のおかげよ。一時的にバサラくんの好みから年上のお姉さんと動物を外して、無関心になるようにしてあげたわ!」
 いつの間にか横にいたのは、自信満々に言い放つリダン。
「……それ、大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、すぐに直るわ。人の好みなんて簡単に変えられないでしょ?」
「まぁな。」
 そんなやり取りをしていた瞬間、ザクリ……と肉に刀の食い込む音が耳に響いた。

「隙あり!」
「ぐあっ……!」
 足元に小石でもあったか、ほんの少しだけ舞塚の足が滑る瞬間を妖狐は見逃さなかった。
 しかし、斬ったはずの舞塚の腕が離れず刀に絡みつき……ニヤリと笑みを浮かべる舞塚の身体全てが霊物体となり、刀に纏わりついた。
「なにっ!?」
「……肉を斬ると霊を斬るでは勝手が違うで御座ろう、姉弟子。今に御座る、アリシア殿!」
「ええ、いきます!」
 瞬間、光学マントで姿を消して背後から近づいていたアリシアが、短刀を手に襲い掛かる。
 しかし、途端に妖狐は身を捩り、正確に心臓を狙う刃はわずかに逸れた。
「くっ、なんの……これしき!」
「いいや、ここで終わりで御座る。」
 霊体を脱ぎ払った舞塚の手が妖狐の肩を掴み、抜き払った刀を手に、
「……某らは姉弟子らを殺す為に、ここに居る。その為の是非は……問いませぬ」
「ふぅ……強くなりましたね。それに、」
 そのままちらりと妖狐は周りへ目を向け、アリシアやニコリネ、リダンの姿を見止めて呟いていた。
「良い仲間を持てたのですね。」
「ええ、勿体ないほどに。」
 最期に微笑んだ妖狐の首が刎ねられる。
 その身体が塵へと変わる中……何かが残っていた。
 舞塚が拾い上げたのは狐の面。
 どこか妖狐の面影のあるそれを懐に仕舞い、天を仰いだ舞塚の口から言葉が零れる。
「……さらば、姉上。」

 漏れ聞く噂によれば、かつて山賊として名を馳せた女頭領はこれを機に改心し、大刀を操る腕を生かして離れた村の用心棒をやるようになったという。
 新たな地で仲間として受け入れられ、末永く暮らしたかは……また、別のお話で。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2021年03月09日
宿敵 『『罰裁羅七塚』稲荷塚・バサラ』 を撃破!


挿絵イラスト