羅針盤戦争〜カルロスのコスプレコレクション・不思議編
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「ようこそ我が六の王笏島まで。奇遇にも程がある。まさか我が誕生日じゃない日にやってこようとは」
頭の痛くなるような不思議の島の中、見目麗しい男が衣装棚を開く。
「この島に正気はいらない。なれば狂った装いで出迎えるのが礼儀だろう」
その中から、一見上物の礼服とシルクハットを取り出し纏い、さらに背中に大量の花とトランプを背負う男。それと共に、男の端正な顔が闇に包まれ一切の顔立ちが見えなくなる。
「我が強ければ諸君は困る。諸君が強ければ我は嬉しい。何もしなければそれでおしまい。さて、さっさと終わらせて妻と茶会でも催したいところだ。茶請けは世界の全てで良かろう。さてその時だが……」
どこまで本気か分からぬ調子で隣の棚を開く男。その中身はとても上物で可愛らしい……ただしある程度年齢が行った者が着るには大分苦しいアリス服。
「行けるか? いや頼めば着てはくれるだろうが……あれは何歳だったか? さすがに我とて妻に向かって「うわキツ」とか言いたくないぞ?」
現実を無視するには、彼は少々狂気が足りなかった。
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「皆さん、お疲れ様です……今日も、羅針盤戦争の、依頼です……」
アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵に頭を下げる。
「本日はオブリビオン・フォーミュラのカルロス・グリード、その本拠地の一つである六の王笏島へ向かっていただきます」
数字を持つ王笏島はこれで最後。カルロス・グリードの異世界コスプレもこれで終わりということか。
「六の王笏島はアリスラビリンスの力を持つ島。彼はそこで、帽子をかぶって皆さんを待っています……またオウガ・オリジンと同じ真っ黒な体になり、表情は見えなくなっています。折角のイケメンなのに……」
わざわざ帽子を引き合いに出すということは、あの絶対席につきたくない茶会を真似ているのだろう。顔についてはまあ、シルエット部分はイケメンのままなのでそれで妥協ということで。
「彼は二つのメガリスを鋏の形に変え武器にします。銀の鋏で自分を切って分裂したり、金の鋏でこちらのユーベルコードをコピーして使ってきます。また真っ黒な体を広げて全てを飲み込み、さらに分解吸収して自分の力として同化してしまう力も持っています。どうかしてます」
まさにどうかしているその力。ふざけているような言い回しだが、元の世界を考えれば大真面目に言っているようにも見えてくるのがあの世界の恐ろしい所だろう。
「もちろん、彼は先制でこれらを放ってきます……ですが、それ以上のことはありません。彼の言動に惑わされず、この先制を躱すことに集中してください」
他の王笏島は先制攻撃に加えて対処すべきものがあったが、今回はそれはないらしい。最もいかれたこの島が最も普通というのも不思議な話だ。あるいは、不思議だからこそか。
「見た目に惑わされず戦えば、きっと勝てるでしょう。あと、彼は元の世界に沿った言動をなるべく心がけているようですが、どうにも気恥ずかしさが勝ってしまうようです。背中を押してあげてもいいかも……」
恋人や子供に連れられて夢のテーマパークのアトラクションに参加させられた成人男性のような心持ちらしい。だから何だという話ではあるが、余裕があれば気にかけてやってもいいかもしれない。
「彼を倒してもやっぱりこの島は解放は出来ません。代わりに彼が奥さんとお茶会を楽しむための島が一つ解放されます。もし平和になった暁には行く機会があるかもしれませんので、よろしければ……」
その島はまともな島なのか、という不安も付きまとうが七大海嘯支配下とあれば奪い取らねばなるまい。
説明を終え、アレクサンドラは六の王笏島へ向けて船を進めるのであった。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。夢の国に行ったら自分の年齢は忘れるが吉。
今回のプレイングボーナスはこちら。
『プレイングボーナス……敵の先制攻撃ユーベルコードに対処する』
そろそろ説明する必要もなくなってきた気がする先制攻撃。今回の要求はそれだけです。他の島のような追加ギミックは一切ありません。今までのボス敵と同じように、先制に対処し戦って倒してください。
彼はアリスラビリンス風にわけのわからないことを言おうと頑張っていますが、知識が少ないのか気恥ずかしさが勝つのかいまいち徹し切れていません。もっと恥ずかしい恰好を散々しといて今更なんだとか言っちゃいけない。そこを思いっきりつついてあげたり、逆に彼の迷いを取るような格好をしていってあげるといい反応を返してくれるかもしれません。
最もこんなことを言っておいてなんですが、難易度は『やや難』です。実力は本物ですし判定もそれなりに厳しくしますので、遊び過ぎにはご注意を。
それでは、敵の首を刎ねるプレイングをお待ちしています。
第1章 ボス戦
『七大海嘯『六の王笏』カルロス・グリード』
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POW : メガリス『銀の鋏』
自身の【体をメガリス『銀の鋏』で切り裂くこと】を代償に、【新たな自分】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】で戦う。
SPD : メガリス『金の鋏』
【メガリス『金の鋏』の刃】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、メガリス『金の鋏』の刃から何度でも発動できる。
WIZ : 虚無なる起源
自身が【地面や床に足を付けて】いる間、レベルm半径内の対象全てに【全てを飲み込む『虚無と化した漆黒の体』】によるダメージか【飲み込んだ物体を分解吸収し力と為すこと】による治癒を与え続ける。
イラスト:hoi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シズホ・トヒソズマ
死者の力を奪うというのは奇遇ですね?
複数の人形を◆早業で◆操縦
先制「攻撃」ですし攻撃の対策もします
クロスリベルで反応を強化
バルの軌道変化弾で鋏を一斉に◆スナイパー撃ちし
攻撃をずらし回避
UCでウルカヌスの力を使用
幻影を纏いシュヴェラに力を注ぐ◆フェイント
UCに見せかけた◆重力属性光線を一斉発射
UCと思い切り裂いた金鋏の重さを増加
更にバルの狙撃で金鋏の持っている部分を撃ち衝撃で手を離しやすくし
クロスリベルの◆怪力拳で金鋏を奪います
これでやっと本物を放てます
髪を液体化した超高熱金属に変え放ち
残った鋏による防御をすり抜け敵を鋼で包み込み高熱を全身に与えます
全身攻めれば虚無だろうとどこかで通るでしょう!
カタリナ・エスペランサ
似合う。
間違いなく似合う。断言していい。
って言うよりは、うん。大事なヒトとそうやって羽目を外す時間っていうのは何にも替え難いものさ
……ま、生憎オブリビオンと猟兵な訳で。骸の海でお幸せに、ってね!
《第六感+戦闘知識》の直感と理論を組み合わせ敵の動きを《見切り》、三次元的な《空中戦》で速度を最大限に活用。
遠距離からの雷羽による《属性攻撃+弾幕》、近距離での《早業+怪力》によるダガーと体術を切り替え攪乱し《体勢を崩す》事で先制対策
折角だ、アタシもこの島の流儀に合わせるとしよう!
敵の防御を崩した上で【狂演】発動
アトミックな鮫の核分裂パワーを宿した一撃を叩き込んで爆発オチで〆ようか
連打してもいいね!!!
花が咲き乱れ色とりどり鳥が飛び、訳の分からない生物が飛び回る六の王笏島。その異常な世界に親しむかのように、帽子をかぶった礼服の男が鋏を持って猟兵を出迎えた。
「ようこそお客人。好きな席についてくれたまえ。最ももう席がないのだがね」
そもそも座る席など用意していない場所で男……カルロス・グリードが言う。あるいは彼の催す茶会に呼ばれるべきはただ一人。その一人ももう埋まっているということか。
「間違いなく似合う。断言していい。って言うよりは、うん。大事なヒトとそうやって羽目を外す時間っていうのは何にも替え難いものさ」
彼が招きたいだろうただ一人。そして彼女に着せようと目論んでいると思しき衣装を想像し、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)がそう告げる。それを聞いたカルロスは、真っ黒な顔でもわかるほどにあからさまに喜びの表情を作った。
「そうか、そうだな! うむ、年齢などこの際関係ない!」
それは妻への深い愛ゆえ……と、年甲斐もなくこんな格好をしている自分自身への言い訳も含まれているのだろう。
だが、例え肯定的な意見があってもこれからやることは変わらない。
「……ま、生憎オブリビオンと猟兵な訳で。骸の海でお幸せに、ってね!」
行うべきはこの狂った帽子屋に扮した男を倒すこと。カタリナに加え、シズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)も彼の動きに注視しながら戦いの構えを取る。
「死者の力を奪うというのは奇遇ですね?」
彼の持つ金の鋏は死者の力を奪うというメガリス『玉鋼の塗箱』を変じさせたものだ。オブリビオン自体が広義には死者に含まれると考えれば、その力を利用する技を持つ者としては同じ力を持った者、と見ても間違いではない。
「全く奇遇だ。ところで君はどんな死者なのかね? ああ結構、この鋏は特別製でね。これから死者になる予定の者も含めて力を借りられるのだよ」
そう言いながらカルロスは、これ見よがしに金の鋏を振り上げ猟兵へと切りかかった。
その動きは鋭いが、先制と呼ぶには余りにぬるい。誘っている、そう見るのが正しいだろう。
シズホは『クロスリベル』を用い自身の反応速度を強化、『バル』に軌道を変化する弾を撃たせ鋏に当てることで攻撃を回避する。
カタリナも空中に舞い、動きを見切って回避するが、一方で打ち込むのは難しい。まるでユーベルコードでなければ崩せないような防御を見せつけているかのようで腹立たしいが、実際こうも守りに入られると普通の行動だけで突き崩すのは難しいだろう。
「人形が吸いし過去の影、我が身に宿り力となれ。応報を持って因果を制す!」
それに応えるように、シズホが【幻影装身】で鋼神ウルカヌスの力を顕現、その力を持つが如き赤い熱線を放った。
「やっと来たか……ではそれを……!?」
打ち返そうと鋏で受け止めるカルロス。だが、持ち上げた金の鋏は突如として重さを増し、地を抉った。
その鋏に、操る人形たちの狙撃と拳が叩きつけられる。
「それじゃこっちもどう? ほらほらほら!」
そこに空中からカタリナも雷の連打を落とし、カルロスの鋏に畳みかける。さらに取り落とさぬよう踏ん張るカルロスの態勢を崩すべく、素早く降下しダガーと体術による近接の連撃も叩き込んだ。鋏の保持に手を取られていたカルロスは、最初と違い本当にそれを耐えるので精いっぱいになっている。
シズホが最初に対策として取ったのは、ユーベルコードを発動した上で関係ない攻撃を当てて相手のコピーを暴発させること。それでできた隙に、カタリナが乗じてカルロス自身に攻撃を叩き込んだのだ。本来強豪の先制を潰すことは出来ない。だが、相手の攻撃を受けることが条件となる技ならば、返されること前提で先に攻撃することもできるのだ。後は方向を誤らせる形で回避とすれば、一応の阻止は出来る。
「これでやっと本物を放てます」
守りが崩れたところに、シズホの髪が超高熱の液体金属となって襲い掛かる。これこそがウルカヌスの力、超高熱の液体金属による高熱攻めだ。
「全身攻めれば虚無だろうとどこかで通るでしょう!」
本家のオウガ・オリジンとて体への攻撃は通った。ましてや紛い物のカルロスなら。
熱に焼かれるカルロスに、カタリナが畳みかける。
「折角だ、アタシもこの島の流儀に合わせるとしよう!海原に鮫、草原に狼、天の原にはこのアタシ! ――今や一つ!!」
現れるのはグリードオーシャン名物の鮫。それも核分裂パワーを宿した超トンデモ鮫だ。
「いかん、そういう現実的な脅威はこの島には……!」
方向性が違う、と抗議するがもう遅い。アトミック鮫はカルロスに襲い掛かり、見事な大爆発を起こしたのであった。
「爆発落ちなんてサイテー?」
「不思議の国だし!」
不思議というよりトンデモ、あるいはB級と言うオチだが、ともあれカルロスから初戦を奪うことには成功したのであった。
大成功
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マリン・フィニス
「この」奴さえ倒せば、異界から……いや、「死者から」力を回収する事はもはやできない、という事か
(カルロスの妙な言動は完全にスルーします。田舎者なので)
ともかく、奴の攻撃は虚無の体を使うもの。
ならば……サメのサメットに騎乗、空中を泳いでひっかきまわし、奴の攻撃の回避を試みるぞ
足元の素材によるから賭けにはなるが……
初手を凌げたらUC、「範囲内の無機物を海へと変換する」【フラッドオブオーシャン】!!
奴の能力が地や床に足をつけている必要があるのなら……
その「足場」を、床でも地面でもない「海」に変えてしまうまでだ!
その後は水中戦だ。爆発属性バブルをばら撒き、隙を見ての剣で一撃を狙うぞ
※アドリブ他歓迎です
リーヴァルディ・カーライル
……無言でアリス服を銃撃するわ
…最終決戦の最中に気が抜ける漫才は謹んでもらいたい
…大真面目?なお悪いわ
"精霊石の耳飾り"を使い虚無の精霊の存在感を暗視して、
敵の行動を先読みして攻撃範囲を見切り離脱して受け流しUC発動
…例えお前達の愛が本物で、どれだけ怨まれたとしても、
世界を滅ぼす愛を認める訳にはいかない
…この世界の未来の為に、お前を討つ…!
全ての魔刃に虚属性攻撃の魔力を溜め武器改造を施し、
敵の虚無による吸収を同属性のオーラで防御して、
空中戦機動の早業で魔刃を乱れ撃ち虚無化した敵を切断する
…刃に宿れ虚無の理。我に仕え、我を助け、我が呪文に力を与え、
我に背く諸悪の悉くを斬滅せよ…!
「やれやれまったく、ひどい有様だ。バターでも塗れば治るかな?」
汚れた服をはたきそう言うカルロス。ここでもまだ仮装に合わせた振る舞いを心がけているようだが、マリン・フィニス(蒼海の騎士・f26997)はそんなもの理解できないし聞く気もなかった。
「「この」奴さえ倒せば、異界から……いや、「死者から」力を回収する事はもはやできない、という事か」
ほとんどのメガリスは終の王笏島にあると言うが、そこから選りすぐって持ちだした二つのメガリスのうち一つは死者の力を奪うもの。当然ながら猟兵が多くのオブリビオンを倒せばそれだけ『死者』の数は増えることになる。さらに彼が異界にまで手を伸ばせば、オブリビオン・フォーミュラや猟書家など、ようやく倒した様々な『死者』たちが彼の力となってしまうことになるのだ。
そんな考えなど知らぬげに、どこから出したか少女趣味で成人女性サイズのアリス服を手にカルロスは語り掛ける。
「さて、先に力強い言葉を頂いたのだが、君はこういった格好は何歳くらいまで許されると思う?」
一度背中を押してもらったがやはり不安があるのか、猟兵に問うカルロス。そのアリス服を、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が無言で銃撃した。
「あ、危ないな! かなり高いのだぞこれは!」
「……最終決戦の最中に気が抜ける漫才は謹んでもらいたい……大真面目? なお悪いわ」
敵の遊びに付き合うつもりもないし、こういった相手を煙に巻くふざけた言動は好まないリーヴァルディ。勿論相手の勢いをくじく精神攻撃という側面もあるのかもしれないとは分かっているが、戦いも大詰めの今こういった小芝居に付き合っている暇はない。現にカルロスはひらりとアリス服を振って銃弾をかわし、無傷のまままた何処かへとしまっている。彼の中でも、もう戦いは始まっているということだ。
「それではご案内しよう。ウサギ穴でなくて恐縮だがね」
言うが早いか、カルロスの体が地に着けた足を残して崩れ、広がっていく。それは真っ黒な空間だが、何にも形容することのできない、『虚無』と呼ぶしかない空間だ。
「ともかく、奴の攻撃は虚無の体を使うもの。ならば……」
マリンは改造鮫の『サメット』に騎乗、広がる虚無から一旦距離を取る。
リーヴァルディもまた『精霊石の耳飾り』で虚無の精霊の声を聴き回避を試みる。虚無に精霊などいるのか、という疑問もあるが、何がしかの力である以上どれかの属性には対応するはず。広がり行く空間の存在感を感知し、目いっぱい距離を取ることで回避を試みた。
それでも、じわじわとカルロスの虚無は広がっていく。速さは遅いがいずれ逃げ場はなくなるし、受け流そうにも武器を食われてしまってはまずい。そうなる前に、完全にこの技を一度返さねばならない。
「足元の素材によるから賭けにはなるが……」
マリンが狙うのは唯一虚無と化していないカルロスの脚……ではなく、それがついている地面。最初の虚無は躱したのだ、ならば今なら使えるはず。
「来たれ、母なる海よ」
射程内の無機物を母なる海へと返す【フラッドオブオーシャン】。それはカルロスの足がつく地面を海へと変え、カルロスをその中へ叩き落とした。それと同時に、広がっていた虚無も一瞬にしてカルロスの体へと戻る。
「……例えお前達の愛が本物で、どれだけ怨まれたとしても、世界を滅ぼす愛を認める訳にはいかない」
明らかに、七大海嘯の中でも桜花を特別扱いしているカルロス。立場や性格上明言しないとはいえその思い合いは本物なのだろう。だが、彼らがオブリビオンである以上、それを捨ておくわけにはいかない。
縮んだ虚無の代わりと言わんばかりに、リーヴァルディは自らの武器に虚無の力を湛えて沈みゆくカルロスへと切りかかる。
「……この刀身に力を与えよ」
【吸血鬼狩りの業・魔刃の型】で呼ばれた魔刃はどんな環境でも、例え水中だろうと自在に飛び回り、敵を切り刻むことができる。
水中のカルロスは鋏に足を乗せ、それを床扱いにすることで強引に再度虚無へと化そうとする。だが、そんな不安定な姿勢ではうまく発動もできず虚無の広がりも遅い。先に見た虚無の力を軽減するオーラを作り、魔刃を乱れ撃ってリーヴァルディはカルロスを水中に縫い留め、半端な虚無となった彼を切り刻んだ。
「……刃に宿れ虚無の理。我に仕え、我を助け、我が呪文に力を与え、我に背く諸悪の悉くを斬滅せよ……!」
そうして水中となれば、彼女のホームグラウンド。マリンはサメットと共に水中へと飛び込み、バブルワンドから泡を噴き出し彼を囲んだ。
「水は衝撃をよく伝える……知ってはいるだろうがな!」
噴き出されたのは爆発属性の泡。カルロスを囲んだそれはマリンの意思に応じて一斉に爆発、水中内でカルロスを激しく揺さぶった。
その衝撃で意識がもうろうとしたか、脱力したような格好で浮き上がるカルロス。その大きな隙を、マリンが見逃すはずもない。
「この海から消えろ、七大海嘯!」
水中で勢いを失わぬ一撃が、カルロスを切り裂いた。
それと同時にマリンのユーベルコードが解け、全員が地上に放り出される。
「……この世界の未来の為に、お前を討つ……!」
「虚無も海よりは狭かったようだな」
倒れるカルロスに、二人はそう言い放つのであった。
大成功
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ナイ・デス
生き残るとしたら、三つ目さんも生き残りそうなので、幼い姿に退化してもらうとか、どうです?
にゃんて。負けるつもり、ありませんが……!
【推力移動ダッシュ】で逃げ回り様子見【情報収集】
全てを飲み込む……けれど、銀の鋏で切り裂くことができている
地に足つけていられる
全裸にならないように……飲み込まないようにしてるものが、ある?
(服の上から、殴ってみましょうか!)
【だまし討ち】それまでと同じように、逃げ、とみせて
【第六感】で【見切り】避け、一気に踏み込む
【覚悟、激痛耐性、継戦能力】どこか飲み込まれても、仮初の肉体。怯まず
勇気で、攻める!
仮説、外れていれば飲み込まれるが
【勇気と浄化】の光込めた拳で、殴る!
ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ
【アドリブ・連係歓迎】POW
この世に真の「無」なんてないんだよ♪
事前に切り離す予定の『お肉みーと』に「肉体改造」を施し、超再生・倍増能力を付与して、自分と同じ形に加工するよ!
自分には「肉体改造」で投擲技術を身に付けて、加工肉を投擲!
囮作戦アンド敵がどのくらい飲み込めるかの確認!
後は【使用UC】で宇宙牛に変身・巨大化!
巨体なら飲み込まれずに済む!
もし飲み込まれてもUCを使いまくって倍化していけば、許容量を突破して破裂!
その巨体で王笏も何もかも圧し潰す!!
やっぱり無なんてないんだよ♪
勝利の暁には虚無肉で「宴会」だよ☆
「諸君らの攻勢は感心するが、もう時間がないのではないかね? 侵略形態(大オーシャンボール)まであと六日……おっと、時計が二日ほど遅れていた。あと四日しかないのだから」
あくまで余裕の姿勢を崩さずに言うカルロス。だが、彼の言う通りカタストロフまでもう時間がないのも事実。それでいて猟兵たちは、現状王笏島を二つと七大海嘯一人しかまだ倒すには至っていないのだ。
「生き残るとしたら、三つ目さんも生き残りそうなので、幼い姿に退化してもらうとか、どうです?」
だからナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)のこの提案も、カルロスにとっては真面目に考えるに値するものであった。
「なるほど……だがあれの魅力はあの憂いある年かさもその一つなのは間違いない。何より死なぬのだ、少し退化させたところで見た目が変わるものか? そもそも我より歳上の可能性も……」
かなり真剣に考えているが、ナイの方は別に本気で行ったわけではない。
「にゃんて。負けるつもり、ありませんが……!」
少なくとも、全ての王笏島を陥落させるのが勝利の最低条件なのだ。三つ目共々生き残らせるなどあってはならない。
そんな茶番劇を尻目に、ラヴィラヴァ・ラヴォラヴェ(ハラペコかわいいコックさん(可食・高栄養・美味)・f31483)は懸命に自分の巨大な肉を弄り回していた。
「この世に真の「無」なんてないんだよ♪」
ラスボス故の再生も膨張も可能な無限の肉。そのミート部分をこね回して自分と同じ形を作るラヴィラヴァ。さらに自分自身の体も弄り、腕と肩を強化して投擲能力を強化しておく。手軽な肉体改造はラスボスの特権とばかりに、即席の肉体を作り上げるラヴィラヴァ。
だが、カルロスもいつまでも遊んではいない。銀の鋏を自らに向けると、それで自分の腹を躊躇なく切り裂いた。
「では後は頼むぞ、我よ」
その裂かれた腹からもう一人のカルロスが這い出して来る。そのカルロスの体が崩れ、黒い虚無となって辺りを飲み込み始めた。
その虚無に、ラヴィラヴァは今作ったばかりのミート性ラヴィラヴァを放り込む。虚無はそれをあっという間に中に飲み込んでいくが、ラヴィラヴァはその様子から目を離さない。
虚無に削られたラヴィラヴァ肉は増殖能力で増えていくが、その増える端から虚無は飲み込んでいく。確かに、飲み込む力は相当なものだ。だが、全てを虚無に変じさせているわけではない。飲まれた中に、確かに肉はあるのだ。
ナイもまた、その様子を推力移動で逃げながら観察していた。
「全てを飲み込む……けれど、銀の鋏で切り裂くことができている。地に足つけていられる。全裸にならないように……飲み込まないようにしてるものが、ある?」
虚無と名乗るカルロスの体は確かに全てを飲み込んでいく。だが、そもそもの起動条件は鋏を自分で切ることだし、足を付けていなければ使えない能力もある。
腹から出てきたカルロスはその限りではないのかもしれないが、元のカルロスも死んだわけではない。深い自傷という代償を払い、強力な力を持つ自分を呼び出しただけなのだ。
即ち、狙うべきは元からいたカルロス。だが、その前にはすでに虚無が広がっている。
「嗚呼、世界はかくも美味しいのか! さぁどうぞ召し上がれ♪」
その虚無に、ラヴィラヴァが【膨張せし肉肉しい宇宙】を発動しながら踏み込んだ。飲まれた肉は虚無の中にある。何かがあるということはそこは無であって無ではない。ならばラスボスの特権たる繰り返される変身で、無を埋め尽くし踏み越えてくれようと言うのだ。
最初に飲ませた肉よりもさらに巨大な肉が虚無を越え、カルロスへと届こうとしていく。その無の中に、ナイもまた飛び込んだ。
「逃げるつもりではなかったのかね?」
そう言ったのはどちらのカルロスか。ともあれその言葉を無視し、ナイもまた無の中を進む。
事前の説明に合った通り、虚無は中のものをすり潰し、食らう。無限に増え続ける肉と、壊れても死なない仮初の肉体。虚無と言う概念を用いる反則技ならば、こちらも無限の再生と言う反則でやり返す。無と無限の規格外の場外乱闘。やがて、その無の縁に桃色の肉がはみ出して来る。
「お腹いっぱい、ついにはちきれたね!」
強引に虚無を乗り越えたラヴィラヴァの肉を踏み台に、ナイが飛び出す。
「勇気で、攻める!」
既に常識や理屈は捨て去られた戦い。否、ここの元となった世界に、そんなものはそもそもないのだ。これこそがこの場での王道たる戦い。そして、その不条理の極致、それが。
「勇気で攻め、気合で守り、根性で進む……一部の隙も無い、完璧な作戦、です……!」
綺麗事と精神論だけで作られた【勇者理論】、しかしそれは現実になった時、何をも超える最強の力となる。
(服の上から、殴ってみましょうか!)
服は体の入れ物、つまりその下には体がある。あるいは、衣装持ちなカルロスへの嫌がらせ。
カルロスの胸に光り輝く拳が叩きつけられ、その体を大きく吹き飛ばした。
それと同時にユーベルコードの力が切れたか、黒き虚無も薄くなり肉の下に消える。
「勝利の暁には虚無肉で「宴会」だよ☆」
虚無肉とは……というツッコミをナイは飲み込む。不思議が当然の狂った世界では、真っ当な意見はただ滑稽なだけなのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
いっそアリス服で行ってやるよぉ!
【高速詠唱】で【破魔】と【呪詛耐性】を乗せた【オーラ防御】で身を守り
足場にも破魔を乗せた★花園を生成し【浄化】の聖壁に
奇遇だね帽子屋さん
僕も今日は誕生日じゃないんだ
お祝いしないと、僕と貴方の素敵な日!
【空中戦】から氷魔法の【範囲攻撃】で敵の足場を凍結、転倒狙い
更に豆まきの如く破魔を乗せた大量の★飴玉を投げ付け
体勢を崩してる間に【多重詠唱】で植物魔法の【属性攻撃】
飴に宿る魔力を連動させ発芽
伸びる多量の蔓はカルロスを絡め取り宙へと持ち上げ足が地に付かないよう
だけど大変、ここには赤い薔薇が無い
女王様がお怒りだ
首を刎ねられるよ!
【指定UC】発動
赤薔薇の花弁で斬攻撃を
水桐・或
そのドレス、妹が生きていたらきっと似合っただろうな
使わないなら貰えませんか?
奪うモノのない"虚無"、これは天敵だな……
床から来るなら、略奪の腕の吸着力で高いところに避難
頭と腕さえ失わなければ略奪で肉体は補填できるが……
肉体を大きく虚無に呑まれて気絶し、UC発動
(以下、イヴ)
あら、あら、愚兄が死にかけておりますわね
カルロス殿の虚無の体に生命の水を無限に注ぎ混みましょう
全てを飲み込む体ならば無限の水も飲めるかもしれませんが、消化途中、貴方は生命に満ちて虚無ではなくなってしまうでしょう?
ただの人の体なら擬似生命の鮫でもけしかけて終わりですわ
さて、消える前に愚兄の体を生命の水で補填しないとですね
「ああ、やれやれ、ひどいものだ。だが大切な服が汚れなくてよかった」
汚したくないならわざわざ持ってこなければいいのに、成人サイズのアリス服を取り出し確認するカルロス。持っていても汚れる程に苦戦することはないという自信の表れか、あるいは精一杯に狂気を演じているだけか。
そんな彼の持つ服を、水桐・或(剥奪と獲得・f31627)は興味深げに見つめる。
「そのドレス、妹が生きていたらきっと似合っただろうな。使わないなら貰えませんか?」
自身に存在を与え消えた妹を思う或。だが、その願いにカルロスは首を横に振る。
「残念だが君の妹だと、恐らくサイズが合うまい。これは君自身より背の高いものに合わせて仕立てられている」
或の身長は160cm弱。やや背の高い女性なら追い越してしまうその身長には確かにそのアリス服はいささか大きすぎる。
彼の妹だというならもう少し小さいアリス服がジャストサイズだろう。そう。ちょうど今栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が着ているくらいのサイズのものが。
「いっそアリス服で行ってやるよぉ!」
そんなヤケ気味な決意のもと着てきたアリス服は、女性と見紛う彼の容姿にぴったりあっていた。最も彼は女性と間違われるのは本意ではないのだが、どうしてもそう言った服を着る機会が多く不本意ながらこの手の衣装を着慣れていた。
そして来たからにはと、彼は全力でカルロスのごっこ遊びに調子を合わせる。
「奇遇だね帽子屋さん、僕も今日は誕生日じゃないんだ。お祝いしないと、僕と貴方の素敵な日!」
その言葉と共に澪は聖痕から花畑を広げ身を守る。その身には、既に虚無と化したカルロスの体が迫っていた。
「奪うモノのない"虚無"、これは天敵だな……」
その虚無は同時に或にも迫る。略奪の悪魔として奪うことを主体に叩きを進める彼にとって、自身で言っている通り無とは正に最悪の相性。何でも奪うことができようと、奪うものが何もなければそれは無力と同じなのだ。
差し当たっては『略奪の腕』の吸着力で上方にある木の枝に吸い付いて難を逃れる。
だが、思いのほか脆かった枝は或の体重に耐えきれずべきりと折れる。そのまま或は、虚無の中へと飲み込まれて行った。
「しまった……!」
その様子を見て、澪は即座に空中を滑りながら氷の魔法をカルロスの足元にばらまく。そのまま滑って転んでくれれば……と思ったがカルロスの地の身体能力も相当高いのか、平然と氷上に立ち続けていた。その足元に、まだまだと豆まきの如く飴玉をばらまく澪。その飴玉を媒体に植物の育つ魔法をかけ、下からカルロスの足を絡めとる。
「くっ……!」
さすがに直に足を掴まれてはカルロスも姿勢を崩す。一瞬離れた足に虚無が戻っていき、その範囲を大きく狭めた。
「あら、あら、愚兄が死にかけておりますわね」
その虚無から、女の声が聞こえる。小さくなりゆく虚無から体を起こしたのは或……否、彼によく似た女性であった。
「ええ、ええ、愚兄に代わりましてこのわたくしが。生命の祖、海の体現、命を与える者、我はその再現者。命の水に還してあげますわ」
彼女の名はイヴ。戦前に或が口にした消えたはずの彼の妹。今、兄の意識が途切れたのをきっかけに顕現した彼女の力は『与える』こと。言葉通りに、彼女はカルロスの虚無に生命に満ちた水を注ぎこんでいく。
「全てを飲み込む体ならば無限の水も飲めるかもしれませんが、消化途中、貴方は生命に満ちて虚無ではなくなってしまうでしょう?」
虚無が奪うことの天敵ならば、与えることは虚無の急所。そこに何かがあれば、虚無はもう虚無ではない。虚ろで概念的な力は、言葉一つで容易にその絶対性は失われるのだ。
虚無が縮んでいく今を好機と見て、澪が植物たちにありったけの力を送る。氷の上、無理矢理に伸びた蔓はカルロスの足を縛り持ち上げ、ついにそれを地から放した。それはまるで蔓草に囚われ薔薇園の一部とされたようですらあるが。
「だけど大変、ここには赤い薔薇が無い。女王様がお怒りだ。首を刎ねられるよ!」
それなら急いで赤い花を用意せねば。澪扮したアリスはカルロスを指さし【Orage de fleurs】の薔薇の花弁で、彼のみを切り刻んだ。
「拍子外れに歌ってもいないのに首を斬るとは、我が女王よりずっと残酷なお客よ……!」
刻まれながらもカルロスはそう言う。それはまだ余裕があるのか、それとも最後まで役に徹するつもりなのか。
だが、そんな芝居もイヴにとってはどうでもいい。
「虚無より生まれたこの子に、最初の食事を与えましょう」
彼女がけしかけるのは、カルロスの虚無に注いだ生命の水から作り出した疑似生命体の鮫。鮫は容赦なくカルロスの黒い喉元に食らいつき、その首を食いちぎった。
「……虚無をもっと飲んでいけばよかったろう。虚無などここにはないがな」
ちぎれた首が消える前に一言そう言い、後はボロボロになった帽子と巻き込まれたらしきアリス服が地面に重なって落ちた。
「さて、消える前に愚兄の体を生命の水で補填しないとですね」
イヴはまだ気絶している或を抱え、水を灌ぐ。
「生まれてから出た中で、一番ばかばかしい六の王笏島だったよ、帽子屋さん」
物語の主人公が憤慨しながら言った台詞を、アリスに寄り添う帽子に向けて澪は言い、島から去るのであった。
大成功
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