羅針盤戦争~ハングリー・シャーク
●海のレストラン島
テーブルの上に並んだ、たくさんのヤシの実の皿。
ほかほかと上がる湯気越しに、キマイラ達が遠巻きにその様子を見守っている。
「おいおいおい、どうなってんだよ! 飯が足りねえぞ!? 早くもって来やがれよ!」
その視線の先――どっぷりとした鮫の下半身をテーブルへと直接乗せて腰掛けた深海人が、ヤシの実の皿に乗った食事を皿ごと腹の口に放り込むと大きな声でキマイラ達に声をかけた。
「……えっ」
「きみ、行きたまえよ」
「や、やだよー」
「えー、なんで? ぼくがいくの?」
ご指名を受けたキマイラ達は、小声で相談をしてから大きなため息。
それから意を決した様子で、揉み手をしながら一歩前へ。
「あのう、すみません。もうご飯もありやがりませんし、一昨日来やがって頂きたいのですが……」
「あァーっ!? 何か言ったか!? え!? 何!? 今出ていけって聞こえたような気がするけど気の所為だよなァー!?」
だいぶ危うい敬語のキマイラへ凄んだ深海人が、ヤシの実の皿をぺっと吐き出し。
「はっ、はい! おかわり! おかわり持ってきますね〜!」
「早くしろよ」
慌ててぴゃっと尻尾を巻いたキマイラは、仲間たちの元へと戻って困った顔。
「困った客だー」
「困ったねー」
「最悪だよー」
また顔を見合わせると、口々に小声で悪態をつくのであった。
ここは海の真ん中。
キマイラフューチャーから落っこちてきた、小さな小さな島。
レストラン・アイランド。
超技術によってヤシの木を模した機械に生る実の中には色んなご飯が詰まっているし、電気も水道も通っている不思議でフューチャーな島。
すごい未来技術で生活に困らぬこの島で。
海へと落ちてしまったとは言え、キマイラ達は海賊なんかになったりして結構楽しくやってきていたのだ。
――深海人のコンキスタドール、カルカーロ・クレスがやって来る日までは。
●グリモアベース
「羅針盤戦争も大詰めっスね、センセ!」
小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)は頭を下げると、早速本題を切り出した。
――七大海嘯麾下の精鋭たる鮫深海人のコンキスタドール、カルカーロ・クレス。
彼女は今。
ある島で御馳走に舌鼓をうちながら、のんべんだらりと過ごしているようだ。
このまま放って置いても彼女は戦争には出てこないだろうし、戦況に変化は無いだろう。
しかし。
彼女を放っておけば、今後の憂いとなる可能性もあると言う事だけは予測ができている。
「ま、ま、ま、そういう訳で。敵を倒すついでに、島を奪われそうになっている海賊たちを助けて欲しいンスよ」
いすゞは指をぴっと立てると、首を傾ぎ言葉を継ぐ。
カルカーロは強いが、常に腹ペコの短絡的で頭のよろしくないコンキスタドールだ。
――例えばお腹いっぱいで動けなくなる位食べたとしたって、割とハッピーな顔をしているだろう、と。
「つよーい敵には、念を入れて仕込みをしてから挑んだほうが良いっスよね」
勿論真っ向勝負を挑んだって良いが。
きっとその前に大食い勝負なんて仕掛けられても、油断たっぷりで乗ってきてくれるようなコンキスタドールである。
お酒をたっぷり飲ませるのも良いかもしれない。
なんて。
くくくと喉を鳴らして笑ったいすゞは、コーンとぽっくり下駄を鳴らして。
「さあさ、センセ達。今回も頼んだっスよ!」
手のひらの中をぴかりと瞬かせた。
絲上ゆいこ
いつもお世話になっております、絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
こちらは一章で完結する、羅針盤戦争のシナリオとなります。
2月28日に採用をできるだけして完結予定です!
●デザートアイランド
南国風味の未来な島です。
島中に生っているヤシの実は、割るとほかほかご飯が出てきます。
今カブを想像されている方、いらっしゃいますか。ソレです。
●大食い勝負
カルカーロ・クレスにご飯をオススメしながらご飯をたっぷり食べたり、20歳より上の方はお酒を飲めたりするシナリオです。
20歳未満の方はノンアルコールしかでてきません!!
カルカーロ・クレスは大食い勝負だ! と言われた時点で急いで食べてくれています。
皆さんはマイペースにのんびり食べて貰ったり、勝負だーっとたくさん食べて頂ければ結構です!
戦闘行為はUCを設定をしておいてくれれば、最後にかっこよく使う事でしょう!
●プレイングボーナス
海賊達と協力する。
キマイラ海賊たちに頼めば、ご飯をたくさん持ってきてくれます。
ちょっと悲しい顔をしていますが、島を取り戻す為です。頑張ってもらいましょう。
キマイラが実を取りに行くお手伝いをしても喜ばれると思いますよ!
それでは、よろしくお願いいたしまーす!
第1章 ボス戦
『カルカーロ・クレス』
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POW : こいつの力を見せてやる!
装備中のアイテム「【『白亜の槍』をはじめとしたメガリス 】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。
SPD : てめえ! よくもやってくれたな!!
敵より【ダメージを負っている 】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ : ああ、もうめんどくせえ!!!
【怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
イラスト:撒菱.R
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠八津崎・くくり」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
御剣・誉
どこかで困っている人の声がした!…気がする
ふはは、ここはオレの出番と見た!
で、何すればいいの?ごはん食べればいい?違う?
大食い勝負かー、育ち盛り男子の胃袋に勝てるかな
…え?エリンギ(仔竜)も勝負するの?(あちゃー
しょうがないなーこれは接待大食い勝負だな
(敵にも手加減を要求
海賊サン、オレは基本白米があればいいけど、なんかおススメある?
エリンギは野菜残しちゃダメ
ちゃんと全部食べなさい(めっ
敵もめっちゃいい食べっぷりだな
オレも負けないぜ!
木の実を割ると色々出てきて面白いっ
エリンギ!割った分は責任もって食べろよっ
はー、いっぱい食ったなー幸せ
美味い飯は人生を豊かにするなー
じゃ、食後の運動でもするか(攻撃
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
直接戦争に参加しないけどやっぱりオブリビオンになった段階で迷惑っちゃ迷惑だよな。
しかしあの体だとちゃんと味わってんのかね?
とりあえずキマイラたちに声かけて倒すために、どんどん食事と酒を持っていこうか。
クレスにもいい食べっぷりだ。美味い飯には美味い酒だろって声かけて、強そうな酒見繕ってどんどん飲ませる。
(ヤシの木見て)…相変わらずキマフュの技術はよくわかんねぇな。
俺自身はあまり飲み食いしないようにして、キマイラたちの給仕の手伝いをしよう。
まぁ、オブリビオン居るとこで飯も何もって感じだし。
実際俺のは全部終わってからでいい。
ヴォルフガング・エアレーザー
【❄花狼】
住民たちが沈んだ顔をしているのは放っておけないな
実は……今日2月28日はヘルガの誕生日なんだ
もしよければ盛大に祝ってくれないか
そこまで高級な料理でなくていい
君たち流のもてなしでいい
ついでに酒もあるとありがたいな
今回の作戦概要を思い出し
件の鮫女が近づいたら自分たちの席に誘いかける
ここはひとつ、呑み比べといこうじゃないか
俺もこう見えて酒には強いんだ
心配するな、ヘルガ
お前がいれば俺は百人力だ
敵が降参したのを確認すると、緊張の糸が解けて
あ……何だか目の前が暗く……
……目覚めると心配そうに覗き込むヘルガの顔
すまない、せっかくの晴れの日に心配をかけて
ああ、お前の掌は
癒しの光は
温かい
ヘルガ・リープフラウ
【❄花狼】
ヴォルフ……わたくしの誕生日、覚えていてくれていたのね。嬉しいわ
二十歳になれば、わたくしもお酒を飲めるのかしら
島の皆さんにも祝福されて、本当に幸せよ
次々に運ばれるご飯はとてもおいしいけど
さすがにわたくしたちだけではこの量を食べきれないわ
ヴォルフから此度の作戦を耳打ちされ
それらしい鮫の人を目に留めて
そこのお方、ご一緒に宴席などいかがかしら?
幸せのおすそわけです
遠慮なさらず食べてくださいね
呑み比べに挑むヴォルフに
無理しないでと心配する思いを秘めつつ
頑張って、と鼓舞し見守って
倒れたヴォルフに膝枕で癒しの奇跡を
良かった……あなたにもしものことがあったら……
だけど、とても素敵でしたわ
ありがとう
サンディ・ノックス
大変だね、海賊さん達
他の同業者が大食い勝負をしている時に声をかけて、実を取る手伝いを申し出る
力はあるし運動神経もあるけど、勝手がわからないから教えてくれる?
例えばどの木の実がそうなのかとか、取るときは上って取ればいいのか木を振って落とす等のコツがあるのかとか
きっとたくさんたくさん必要だからほとんどの時間は手伝いに使う
大食い勝負も挑むよ
誰かと勝負したからもうできないなんてことないよね?と笑って
敵がひたすら食べている間に彼女が事前に空にしていた殻を海賊達には俺の横に積んでもらって俺もたくさん食べているよう見せかける
夢中の彼女にはバレないさ
お腹いっぱいで動けなくなった敵を動き回るUCで翻弄して倒そう
イコル・アダマンティウム
「困った、サメ……」
食べる時に……人に迷惑をかけるのは、ダメ
僕は格闘特化の愛機、キャバリアに搭乗して出撃する、よ
【協力申請:実の回収】
「ん……僕も、手伝う」
機体は歩幅ある分、機動力がある
手にキマイラ海賊を載せて運んだり
ジャンプで高い木にある実を回収してく、ね
「これに、ご飯が……入ってる?」
科学なの……?
不思議だ、な
沢山集める、よ
【大食い勝負】
一杯集まったら機体から降りて
サメに大食い勝負を挑む、ね
「大食いで、勝負」
急いで食べられても十分な数がある
マイペースにゆっくりと休まず一杯食べる、よ
僕は機体を動かすのに、僕のエネルギーを使う
お腹はしっかりと……空いてる
【指定UC】
[破鎧衝]
掌底を叩きこむ。
堺・晃
【毒豚】
僕は海賊達を手伝いましょうか
場所、教えていただけます?
優しい笑顔で語りかけ
あぁそれと、火は扱えます?
その場合諒太君にお肉を分けてもらいましょう
海賊達と集めたご飯の一部に遅効性の毒を仕込みます
それは麻痺毒の部類のもの
食材の色を変える事はありませんが
念のため焼き肉を乗せカモフラージュ
僕は毒罠使いの暗殺者、ですから
さぁどんどん食べてください
ペースではまだ諒太君が勝ってますよ
貴方の大食いはそんなものですか?
わざと焦らせ次々と毒飯を摂取させることで
効果が出た際の症状がより甚大になるよう言いくるめ
おやどうしました? 動けませんか?
それもそうでしょうね、あれだけ食べれば
なにをとは申しませんが
残念です
金子・諒太
【毒豚】
僕は食べればいいのか?
なんだ簡単だな
おいサメ、僕と大食い勝負だ!
脂肪をたゆんと揺らしながら
びしっと指さすぞ
流石に皿は、美味しくないから要らないけど
ご飯は持って来たものが一瞬で無くなる勢いで食べるぞ
火使えるなら晃に★詰め合わせ渡しとく
肉食べれるのは、僕も嬉しいからな
カロリー多い方が、美味しいし
勿論、ただ食べるだけじゃ、勿体ないからな
ちゃんと、味わって食べるのも大事だぞ
ご飯も炊き方で、全然味違うんだからな
ん、なんで急に苦しみだしたんだ?
あー、わかった、そんな皿なんて食べるからだぞ
消化できないものは食うなって、僕も皆に言われたぞ
え、晃なんか入れたの??
まぁいいや
とりあえず【指定UC】で倒すぞ
ティオレンシア・シーディア
なぁんかいかにも頭の中身軽そーな手合いねぇ。
大食い勝負でもそうそう負ける気はないけれど…あたしなら、やっぱりこっちかしらぁ?
ま、ほっといたら多方面に迷惑そうだし。ちゃっちゃと潰しちゃいましょ…二重の意味で、ね?
はぁい、コンキスタドールさん。ご飯もいいけれどせっかくだもの、お酒で一勝負、なんていかが?
あたしからも「とっておき」出しちゃうわよぉ?
(提供する酒の名は「ナティビアードの悪魔殺し」(参照シナリオid=10011)。
A&W世界においてその(悪)名も高き酒飲み殺しの酒である。
…ちなみにこの女、このスピリタスをさらにヤバくした酒を数十本単位で空けてなおシラフななんかもーアレなナマモノである)
アルデルク・イドルド
ディル(f27280)と
キマイラフューチャー絡みの島はこう…平和だよな…海賊も荒くれ者とは程遠い感じだし…だがそんな平和な島こそ守らないとな。
俺は大食いは向いてないと思うからそっちはディルに任せる。俺はディルに料理を運ぼう。
コンコンコンも便利だと思ったがキマフュの技術はやっぱり凄いな。
いろいろ種類もあったりするのか?
ディルの好きそうなのを選んでやるか…。
ん?どうしたディル?大食いに飽きた?
飽きちまったかー…。
ま、とりあえずデザートにするか?デザートはもちろん別腹だろ?
俺もそれくらいなら一緒に食べてやれるしな。
あとは【指定UC】でサクッと攻撃。
ディルク・ドライツェーン
アル(f26179)と
んーと、つまりアイツと一緒にご飯食って倒せばいいんだろ?
じゃあアイツと大食い勝負しにいってくるぜっ!
アルはご飯よろしくなっ
なぁなぁアンタさ、オレと大食い勝負しようぜっ
いっぱいメシ食えるしいいだろ?
最初だけちゃんと大食い勝負するけど、
途中で食べるのに飽きてピタっと食べるのをやめる
んー…アル、食べるの飽きた
甘いもの食いたいっ、デザート食べるっ!
うん、アル一緒に食おうぜ~♪(大食い勝負してたのを完全に忘れる)
デザートも食ったし、そろそろ倒そうぜっ
UC使用してぶっ倒すぜ
都槻・綾
大食いも快いけれど
味わって食べて頂けないのは
何だか悲しいですねぇ
腕いっぱい抱えた実を落としてしまったキマイラさんへ
慰めの声掛けをしつつ拾いあげ
運ぶお手伝い
欠けた器の己は
幾ら食せども満たされることはない
然れど
食事は心を潤すということを知っている健啖家故に
…貪欲さでは良い勝負なのかしら
ささめき笑って
腹ぺこさんへ捧げる一献
酒と肴の絶妙な組み合わせを知ってこそ
箸も皿も更に進むというものです
尤もらしく頷き
彼女が飲み干す度に
どんどん酒を注ぎましょ
相伴も勿論、喜んで
血赤に染まるよりも、ほら
酒精で染まる頬の
何と麗しいこと
交わす幾度目かの乾杯
すっかりご機嫌に酔うあなたに贈るのは
睦言めいた嘯きと
深い眠りへ誘う馨遥
月舘・夜彦
【華禱】
こうした時に店員と呼ぶべきなのか、海賊と呼ぶべきなのか……
それにしても皿ごととは、鮫らしく豪快な食べっぷりですね
皿ごと食べてしまうくらい美味しいという表現もあったような
大食い勝負ですか
も、勿論お酒は飲みませんとも
その分、頑張って沢山食べます
倫太郎が挑発をしている私は準備をしつつ
大食い勝負とは言え、やはりこの国の食事を楽しんでみたいものです
それに味わって頂かなくては作ってくださった方に失礼というもの
倫太郎、美味しいものはありましたか?
材料さえ揃っていれば、貴方でも作れるものはあるでしょうか
貴方が作れたなら、家の子供達にも振る舞えるのではと思いまして
他にも作れそうなものを探してみましょう
篝・倫太郎
【華禱】
店員?海賊?には事前に話を通しとく
皿ごとぐわっていった、ぐわって……
隣の夜彦にそう声を掛けて
夜彦の反応が素直で可愛い
いや、言うけど!
大食い勝負仕掛けよう
酒でもいいけど、あんた寝ちゃうデショ?
沢山食べなくてもいいよ、ちゃんと味わおうぜ?
イイ食べっぷりじゃねぇか
俺達と大食い勝負しねぇ?
挑発も使ってそう勝負を仕掛ける
仕掛けるけどマイペースにもぐもぐする
夜彦ー、これうまーい!
なんなら夜彦にあーんとかもしちゃう
食事とは、楽しみでもある
ぱっくんごっくんは作ってくれた人に失礼だもんな
これとか子供達好きそう……
ん-……全く同じは無理かもだけど
近い奴は行けそう……かも
あ、夜彦は?何かあった?
はい、あーん
朱赫七・カムイ
⛩神櫻
サヨ……
いつの間にこんなに飲んで
私が居るからまだいいが、きみは酒癖が…
…酔って甘えたになったきみが
可愛い私の巫女が他のものに甘える…想像するのも嫌だ
神罰では終われない
飲み過ぎだよ
私は神酒を飲みなれているし強いから
五月蝿い鼓動と夏のような熱さを誤魔化し抱き返して撫でて甘やかす
私も酔っているんだな
きっとそう
怒られても知らないよ、サヨ
邪魔されたくない一心でカルカーロに酒を勧める
サヨに飲み尽くされる前にこの酒を飲み干してくれ
飲めないわけないよね?
酔わせないで
よわせないで
隠していられなくなるから
私はきみの倖になりたい
吉兆に、祝いに
けれどこんな風に
とらえておけるなら
きみの厄災であっても構わない
なんて
誘名・櫻宵
🌸神櫻
お酒ー!お酒よ!カムイ
うふふ!食べて、飲んで飲んで飲んで宴よー!
え?だってあなたがいてくれるから
カムイの隣だから安心だもの
うふふふ
もっと撫でて
かぁいがって頂戴、カムイ
ぎゅうと抱きついて思い切り頬擦りをする
甘い梔子の香りを吸い込んで、噫……あなたがかえってきてくれたのだと安心させて
猫のように甘えてかかる
カムイは私が甘えられる唯一
酔ってないわ
よっているの
かぁいい人魚には内緒よ
あの子の前では格好つけていたいから
大きなお口の子が来たわ
どれだけ食べられるか競争よ
甘いも酸いも召し上がれ
私より甘いものを食べられるものなんて居るのかしら
甘いものでお腹も心もいっぱい
満たして頂戴
あなたはまるで
私の甘い災い
エール・ホーン
【絵空】
勝負勝負!
一緒におー!
うん、ボクら絶対負けないもの
一生懸命食べるからね!
わあ、本当。不思議っ
クラウのオムライス、おいしそうだねぇ
一緒にパシャパシャ
アンさんのは何だった?
好きなお料理、入ってたかな?と首傾げ
ボクのはお野菜いっぱい
へへ、嬉しいな
ボク、お野菜ならいくらだって食べれるよ
スイートポテト!美味しそうっ
甘いとしょっぱい
交互に食べたら無限に食べれるって聞いたことあるっ
しょっぱいソフトクリーム?不思議っ
ボクはねえ、マスカットのゼリーだっ
アンさんの瞳の色みたいにきれい!
交換もするっ
ちょっぴり可哀そうだけれどいいこと思いついちゃった
甘いものに激辛を潜ませ
隙が出来るようこっそり傍に置いておくね
クラウン・メリー
【絵空】
大食い勝負だ!
うおーと両手を上げてやる気満々!
海賊さん、いっぱいご飯持って来て!
大丈夫!俺達を信じて!
凄い凄い!ヤシの実を開けるとご飯が出てくるの?
ね!早速開けてみよ!ぱかりと開れば
見て見て、オムライス!
いただきまーす!ふわふわ美味しいっ!
どっちも美味しそう!
わ、ほんとだ!お子様ランチだ!
うんうん、乗せたい!海賊さん!旗はありますか?
こっちはスイートポテト!もりもり
ふふー、甘いものならいっぱい食べれるよ!
ね、こうかんこしよ!
エルルのマスカット綺麗!
アンのはしょっぱい!でも美味しい!クセになる味!
カルカーロも甘いもの食べよ!
エルルの忍ばせた激辛にひょえー!
間違えて食べないようにしなきゃ!
庵野・紫
【絵空】
大食い勝負!もりもり食べる!
おー!
アンもねー、こう見えて結構食べるんだよー。
えー!ヤシの実から出てくるの?!
やばくない?!写真とっていい?!
パシャパシャ
クラウンのはオムライス?!
エールのは野菜たっぷり?!
アンのはねーじゃーん!
からあげー!
ねね、オムライスと野菜とからあげってお子様ランチみたいじゃね?
オムライスに旗を乗せたいかも
こっちのはねー
ソフトクリーム!
このソフトクリームやばい。しょっぱい……!
クラウンとエールも食べてー!やばい!
スイートポテトもマスカットゼリーも美味しそう!
アンの目みたい?綺麗っしょ!
アンの見つけたソフトクリームも食べる?
最高に美味しいよー。
それともからあげにする?
ヴィクトル・サリヴァン
温厚そうなキマイラの口が悪くなる程の酷い客…
これは徹底的に殺ってやらないと…!
同胞という事で海賊達にフレンドリーにご挨拶。
あの困った客をとっちめる為にヤシの実欲しいから取るの手伝って欲しいんだ。運ぶのとか頑張るからさ。
準備後給仕人に紛れつつカルカーロに接近。
ここで余興を、俺…私に大食い勝負で勝てばもっと美味しい料理を持ってきますとか言い大食い勝負挑む。
ご飯はあるならお好み焼き屋焼きそば等粉もの中心に勧めつつ、ビールも美味しいよとどしどし勧めてみたり。
どれもお腹膨れやすいよねー。俺も割と真面目に勝負頑張る。
戦いはサメ相手なので空シャチさん存分に遊んで(もぐもぐ)あげてねー。
※アドリブ絡み等お任せ
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
ヤシの実ジュースかとそわそわヤシの実を開けてみる…が
現れたカレーライスを見れば思わず固まってしまうやもしれん
…固形…だと?
だが美味そうな香が鼻を擽れば肩を落としつつ口の中へ
?…辛味はあるが甘味…?パパイアと林檎バナナの甘さにココナツの香りが僅かにするだと…?
フルーツカレーと言う物だろうかと宵へスプーンを差し出そう
美味いか。ならば再現出来る様味を覚えて帰らんとなと表情を緩めつつ宵に差し出された大根を口へ
これも美味いな…帰ったら研究せねば
その後は敵に早食いを仕掛ける…も
宵のおでんはやらんと宵と敵の間に入り妨害を
宵の間接なんたらは俺の物だけ故…一口もやる訳にいかんのでな(もぐもぐ
逢坂・宵
ザッフィーロ(f06826)と
ヤシの実を割ったらカレーが出てきたかれの手元を不思議そうに眺めて
いやあ、キマフュはコンコンするといろんなものが出てきていたわけですが、すごいですねぇ
目に留まったヤシの実を割ってみたら
ほかほか湯気の立つ美味しそうなおでんが出てきて
焼きちくわ、柔らかいさつま揚げに味しみ大根
ふんわりゴボウ巻にゆで卵とこんにゃくにつみれ、その他諸々
うーん、だしがよく利いていておいしいですね
スプーンを差し出されたならそのままぱくり
うん、果物の甘みと程よい辛みが実に美味です
そのまま手元の味しみ大根もかれの口へ
早食いをはじめたかれと敵を応援しつつも
敵にはこちらにおでんもありますよと勧めましょう
フリル・インレアン
ふええ、迷惑なお客さんがいて困っているですか。
そうですね、ではこうしてみましょう。
お客様、実はすごいご馳走があるのですが、私達では届かない所にありまして、お客様のその槍なら届くかなと思いましたが、やっぱり無理ですよね。
どうみても、その槍の3倍の高さにあるから無理ですよね。
ふわあ、あんなに高いところにあったのに届くなんてすごいです。
それじゃあ、あそこにあるのも届いちゃったりします?
きっと、あれもすごいご馳走だと思うんですよ。
えっと、こんな感じでいいでしょうか?
お世辞の魔法を使った『働かざる者食うべからず』作戦でした。
●ごちそう日和
天気は晴天でも、海賊キマイラ達の表情は曇り空。
獣の尾をゆらゆら揺した彼は、両手に実を抱えたまま眉根をきゅっと寄せて。
「はー……、この調子だとさー、ぼくらの分なくなっちゃわない?」
「うーん、そうだねえー。でも逆らって、あの牙に噛まれるのはイヤだなあ」
「わかるなー、ウー。いつまでいる気なのかなー」
「もしかしてー、ずっと……?」
思わず言葉を失ったキマイラ達がとぼとぼと歩いていると、響く笑い声。
「――どこかで聞こえる、オレを呼ぶ声――! おぅ、どうやらお困りのようだな?」
それは王子様ムーブで手を差し伸べた、御剣・誉(焼肉王子・f11407)の朗らかな助けの声だ!
キマイラ達は目を見開いて――。
「えっ、何!?」
「変な人とはお話しちゃだめっておかあさんに教育されているのでー」
キャッチを断る動作とよく似た動きで誉の横をすりぬけて往こうとする。
「ちょっ、ま、まって! お、オレ達に作戦があるんだってー!」
わたわたとキマイラの背を追って、誉は猟兵の仲間たちに教えてもらった作戦を彼らに告げる。
……大食い勝負を仕掛けてカルカーロ・クレスの動きを鈍らせて討伐するという、とてもクレバーな作戦を。
「……それしかないの?」
「それしかない」
「そっかあ……」
誉の頭の上で赤い仔竜――エリンギもコクコク頷いている。
食料が減らされる事はキマイラ達だって本意では無い。
しかし強敵であるカルカーロを、自分たちで追い出す術が無いことは確かだ。
渋々と言った様子でキマイラは頷いて――。
カルカーロが居座っている食堂へと現れた誉は、ぴしっと人差し指を立てて。
「やいやい、オレ達と大食いで勝負だッッ! あっ、でもエリンギも勝負するの? あーーこんなに小さな竜が参加するなら仕方ないよなー、しょうがないよなー、エリンギの為に接待大食いで勝負だっっ!」
「なんで私がお前の竜に合わせるんだよ」
「あちゃー! そうだよねー!」
酒を呷りながら応じたカルカーロに、誉がしかたないなー! って顔で額を叩き。
それからカルカーロは、肩を上げて。
「でもまあ、そうだな。喰うことで私が負けるわきゃないが……余興としちゃァ、面白い。受けてやってもいいぞ?」
凶悪なギザギザの歯を剥き出したカルカーロがにんまり笑うと、その場にいた海賊――ディルク・ドライツェーン(琥珀の鬼神・f27280)が腕を上げてぶんぶん振った。
「えぇーっ、オレとも大食い勝負しようぜっ! オレも結構メシなら食えるぞっ!」
「はっ! 言うね、何人でもかかってきなァ!」
威勢よく応じたカルカーロが机を景気づけにびたんと鮫の尾で叩くと、机が弾け飛ぶようにバラバラと崩れ落ちて。
「あー、クソ、脆いな……。片付けておけよ、お前ら」
面倒くさそうに言った彼女は、別の机へと飛び乗った。
――メガリスも使っていない状態でも、この力だ。
正面から勝負を挑めば勝てないとは言い切れぬが、負傷者の数は増えるであろう。
「そんじゃ、決まりだっ! ご飯、よろしくなっ」
一瞬訪れた緊張感に気づいているのか居ないのか、ディルクがへにゃっと笑うとキマイラ達が慌てて駆け出して。
こうして猟兵対コンキスタドールの大食い大会は、開催される事と相成ったのであった。
ヤシの実の皿の中からはスパイシーな香り。
ごろごろじゃがいもに、大きなお肉。
大きく一口を頬張れば、広がるぴりりとした辛味と野菜の甘み。
「おお……、ちゃんと美味しいじゃん……」
実の中で作られた食事と言えど、不思議な技術で温かいしちゃんと美味しい。
UDCアースではまだ実現出来ていない謎の技術力のお味に、誉が思わずほうと吐息を漏らし。その横でエリンギは、丁寧に焼き鳥のネギを取り除いている。
「こらっ、エリンギ! 野菜を残しちゃダメ! ちゃんと全部食べなさいっ、そっちの割った分もちゃんと食べろよっ!」
誉がエリンギが取り除いたネギと、ついでにエリンギが先程割って横に避けていた野菜炒めの皿を引き戻すと、エリンギはめちゃくちゃ嫌な顔をした。
そこに響いたのは、皿の投げ出される音だ。
「おいっ、はやく次の料理をもってこい!」
「わ、わー、はあーいー」
皿ごと料理を平らげたカルカーロがわあわあ吠えると、キマイラが慌てて駆けてゆく。
「皿ごと食べてしまうくらい美味しい、……とは言いますが……」
その豪快な食べっぷりに、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が思わず食事の手を止めて。
小さく呟くと、ぱちぱちと瞬きを重ね。
「いや、言うけどさ……」
できたてのカリカリふかふかメロンパンを齧る篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は素直過ぎる夜彦の反応に眦を和らげて、言葉に笑いを混じらせる。
そんな彼の事を、倫太郎はたまらなく愛おしくも思うのだから。
「それにこうした場合、彼らの事は店員と呼ぶべきなのでしょうか、それとも海賊と呼ぶべきなのでしょうか……」
「あんた、結構そういう所に引っかかりがちだよなあ」
真面目な顔で更に夜彦が言葉を続けるものだから。
倫太郎は今度こそくすくす、しっかり笑いをこぼして。
別の皿の蓋をぱかりと開けると、揚げ物にとろりとしたソースのかかったものを一口齧った。
「!」
それからぴっと眉を上げ、咀嚼、咀嚼、嚥下。
「なあ、なあ、夜彦ー、これうまいぞ」
「ん、む……」
倫太郎が声を掛けながら揚げ物を持ち上げ。夜彦が彼へと顔を向けた瞬間に、そのまま口へと揚げ物が押し込まれて。
夜彦も暫しの咀嚼に、もぐもぐごくん。
「えぇ、とても美味しいですね」
「だろ? 子ども達も好きそうだよな」
「はい。……これは……、材料さえ揃えれば貴方でも作れそうでしょうか?」
「ん?」
夜彦の問いに首を傾いだ倫太郎は、少しだけ思考に視線を宙に泳がせ。
この触感的に魚のすり身に、何かイカなどで食感を加えているのだろうか。
和風のソースは、柑橘類の香りがあった。
それに――。
「あー、そうだな……、全く同じは無理かもだけど……、近い奴は行けそう、……かも?」
思いついた材料を指折り数えながら、倫太郎は答える。
「では、是非。――家の子ども達にも振る舞ってあげたいと思いまして」
ほっと眉を下げた夜彦が大きく頷き。
「ははっ、そだな。じゃあちゃんと味わいながら、色んなメニューを舌で覚えて帰らなきゃな」
「はい。では、他にも作れそうなものを探しながら、色々味わってみましょう」
『大食い』と言いながらもマイペースに、食事を楽しくのんびりと味わって食べようと。
頷いた夜彦に、倫太郎もまた頷いてから――。
「あっ、だからと言って、酒は飲んじゃだめですカラネ?」
「も、勿論お酒は飲みませんとも!」
夜彦は慌てて、手を首を横に振るのであった。
「よう、手伝ってくれてありがとうな」
両手両脇にヤシの実を抱えたアルデルク・イドルド(海賊商人・f26179)は、運ぶのを手伝ってくれたキマイラに軽く手を振って。
「なんというかあの世界から落っこちてきた島は、根が平和だよな」
――自らの世界の事ではあるが、荒くれ者の多い海賊達。
しかし同じ海賊でもなんとなく雰囲気が違う者も多い気がする、なんて。
ディルクに声をかけながらアルデルクがぱかりとヤシの実を割ると、中に詰まった食事から湯気が立ち上る。
「やっぱり世界ごとの特徴ってでるもんなのかな……、まぁ。また色々見繕ってきたぜ、たっぷり食べてくれ」
「そうだなー……」
自分は大食い向きでは無いからと、サポートに徹してくれているアルデルクがディルクの為に見繕ってくれた料理は、たしかにディルク好みだった。
苦くないし、食べやすい、美味しい料理達。
それでも、それでも。
「んー、…………なぁ、なぁ、アル」
蓋を開けられたばかりのたっぷりソースのかかった、殻まで柔らかなカニをディルクはじいっと眺めているばかり。
「ん? どうした、ディル」
何となくディルクの変化に気がついたアルデルクは、実を割る手を止めて。
「んー……、飽きた」
もう一度小さく唸ったディルクは、机に突っ伏したままアルデルクを目線だけで見上げて、小さな声で訴える。
「……あー、飽きちまったかー」
「うん、食べるの飽きたー……」
「そうかー……、飽きちまったかー」
そう、ディルクはこういう所があるのだ。
彼の事をよくよく理解しているアルデルクは、肩を竦めて笑い。
カニの皿をしれっとカルカーロの机の上に置いて戻ってくると、別の実を手に。
「まぁそれなら、とりあえずデザートにするか?」
アルデルクの開いた実の中には、ヒエヒエのアイスクリームが詰まっている。
「うんっ! 甘いものくいたーいっ! 食べる食べるっ!」
「はは、デザートはもちろん別腹だな」
「もっちろーん! アルも一緒に食おうぜ~♪」
すっかり勝負の事なんてスコーンと頭から抜けてしまった様子のディルクが、アイスを掬うと一口パクリ。
「うまーい! なあ、なあ、アル! 早く食べてみろよっ!」
「あぁ。分かったよ」
やれやれと眦を和らげたアルデルクもディルクの横へと腰掛けると、アイスへと手を伸ばした。
「うふふ、食べて、飲んで、飲んで、飲んで、飲んで、……もう、もう、宴ね!」
ヤシの実の器に満たされた甘い酒。
誘名・櫻宵(爛漫咲櫻・f02768)はすっかり酒を乾してしまうと、またうふふと笑って朱赫七・カムイ(約倖ノ赫・f30062)へとしなだれかかる。
「噫、いつの間にこんなに飲んで……、サヨ、きみは酒癖がよく無いのだから……」
やれやれと肩を竦めたカムイは、脳裏に一瞬嫌な想像が過ってかぶりを振った。
それは想像する事すら嫌な事、櫻宵が他の者に――。
腕に頬を寄せる櫻宵が、きょとりと瞬きを重ねて。
「え? だってカムイが隣にいてくれるでしょう?」
あなたの隣だから、安心なの。
櫻宵の言葉にカムイは息を飲んだまま、言葉を紡ぐことも出来なくなってしまう。
「……飲み過ぎだよ、サヨ」
なんとか絞り出した言葉はそれだけで。
カムイは杯を持つ手と逆の手で、甘える櫻宵の背を抱いて甘やかに撫でた。
――こんなに近づいてしまうと早鐘を打つ鼓動が、どっと高まった熱が、櫻宵に伝わりやしないだろうかと考えてから、カムイは気がついた。
噫、そうだ。私も酔っているんだな。
きっと、きっと、そうだ。
神酒を飲みなれているし、酒に強いと言ったって、酔う時は酔うものだ。
「うふふ、もっと、もっと撫でて、かぁいがって頂戴」
そんなカムイの胸裏も知らず。
頬擦りをしてカムイの梔子の香りを肺がいっぱい櫻宵は吸い込む。
――噫、あなたがかえってきてくれた。
薫る、馨る。甘い甘い、安心する、甘えられる梔子の香り。
「……そんなに飲んで、怒られても知らないよ」
「ふふ、酔ってないわ。――でも、かぁいい人魚には内緒よ?」
あの子の前では格好をつけていたいの。
――酔ってないわ、よっているの。櫻宵にとって、カムイは甘えられる唯一なのだから。
「……きみは、全く」
カムイは櫻宵の背を撫でながら、息を吐く。
薫る、馨る。甘く甘く、こひねがう。とらえておきたい、桜の香り。
「噫、うふふ、ねえ、大きなお口の子。たくさん食べる競争をしているのでしょう? 私も混ぜて欲しいわ」
甘いもので腹を満たす事ならば、誰よりも得意なの、と。
櫻宵がとろけた視線を上げれば、カムイは酒を掲げて。
「このままではサヨがここの酒を全て飲み干してしまいそうでね。……先にこの酒を飲み干してくれないかい?」
柔く笑んでカルカーロへと酒瓶を寄越すカムイは、其の胸裏に渦巻いているのが、今この時間を邪魔をされたくないと言う気持ちである事くらい自覚している。
――酔わせないで、よわせないで。隠していられなくなるから。
私は、吉兆に、祝いに、……きみの倖になりたいのに。
――けれど、けれど、こんな風にとらえておけるなら。
……きみの厄災であっても構わない、なんて、思ってしまうのだから。
甘い甘い、災いに。
「……これは……?」
立ち上る湯気は、スパイシーな香り。
ヤシの実から出てきたカレーの前で、ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は眼を丸くしていた。
確かに食べ物が出てくるとは確かに聞いていたが、ヤシの実のジュースが精々だと思いこんでいたのだ。
しかし出てきた食べ物は、正に食べ物然とした立派なカレー。
香りもカレー、見た目もカレー。
情報量と解像度に、固まったままカレーとにらめっこするザッフィーロ。
「いやあ、……コンコンコンをすると色々なものがでてくる世界から落っこちてきた島は、やっぱりすごいですねぇ」
自らもヤシの実を手にした逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は、そんなザッフィーロの横でぱかりと実を開いて。
ふんわり香る出汁のいい匂い、そのまま宵は出てきたおでんを迷いなく口へと運ぶ。
「うーん、おいしいですね」
竹輪もちゃんと焼いた跡があるし、大根だって蕩けそうなのに形を保ったままじゅわりと味がしみている。
それは様々な具材が並ぶ皿の中から、次は何を食べようかと悩んでしまう程のお味で。
「……美味い、のか……?」
宵があまりに美味しそうに食べるものだから、ザッフィーロは喉を鳴らして。
意を決してカレーを口へと運ぶ。
「ふむ……」
始めに鼻を通り抜ける鮮烈なスパイスの香り、その後からフルーツの甘さと、ココナツの香りが追いかけてくる。
辛味と甘さが複雑に絡み合うそれは――……。
「……フルーツカレー、と、いう、ものだろうか……?」
ザッフィーロが首を傾ぎつつ、宵へとカレーを一口差し出すと。
「うん、……果物の甘みと程よい辛みが、実に美味ですね」
「成程、美味いか」
「ええ、本格的な味と言った所でしょう。なかなか食べたことのない新鮮な味ではありますが……」
ぱくりと一口貰った宵が、今度はザッフィーロへと大根を差し出し。
「しかし宵が好きな味ならば、また再現が出来る様に味を覚えて帰らんとな」
「ふふ、それは楽しみです」
「……しかしこの大根も美味いな。――つゆも少し貰えるか?」
「はい、どうぞ」
研究をせねば、と意気込むザッフィーロに、宵はくすくすと笑って。
「……おや、そういえば大食いですっけ。ならばこのおでんもあの鮫さんに……」
「……待て」
思い出した様子で立ち上がろうとした宵を、ザッフィーロは肩を抱いて座り込ませ。
カレーをすごい勢いで口へと運び出す。
そう、大食いで、早食いではある。そうなのだけれども、そうなのだけれども。
「そのおでんは、あの鮫には一口にもやる訳にはいかんのだ」
――そう宵の関節なんたらを、あの鮫に譲る訳には――!
「……カレー、口の横についていますよ」
燃えるザッフィーロの口端を拭きながら、宵はまたくすくすと笑った。
●
「大食い勝負だーっ!」
暴れるぞーーっ!
両腕をうおーっと持ち上げたクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)が翼を広げて、閉じて。
「おーっ!」「おーーっ!」
もりもり食べるぞーっ!
クラウンに合わせて、エール・ホーン(ドリームキャスト・f01626)と庵野・紫(鋼の脚・f27974)も、合わせて拳を突き上げる。
そして机の上に並べられたヤシの実に紫は首を傾いで。
「……ねえ、それで……ご飯はどこ?」
「あっ、さっき持ってきてくれた海賊さんに聞いたよ、これをー、なんとカパッとあけるとー……」
にんまり笑ったクラウンが椰子の実を割ると――、それはピエロの手品のよう。
中にはなんと、ふかふかのオムライス!
「わあっ、不思議っ、不思議! おいしそうだねぇ」
エールが思わずぱちぱちと手を叩くと、紫もぴっかぴかに瞳を輝かせて。
「ええーっ! すごいすごい、なにそれなにそれ、やばくない?! 写真とっていい?!」
「うんうん、勿論!」
「わあっ、ボクも、ボクも写真とりたいー!」
紫とエールは、クラウンのオムライスの撮影会。
「ねえねえ、二人のは?」
「アンのはねー……じゃーん!」
「あっ、ボクのもねっ! ……じゃじゃーんっ」
クラウンの声掛けに、積み上げられたヤシの実から慎重に二人は選びぬき。
アンの皿の上には、たっぷり唐揚げの色んなタレのディップ付き。
エールの皿の上には、きらきら綺麗なお野菜に綺麗なソースのディップ付き。
「へへ……嬉しいな。ボクね、お野菜ならいくらだって食べられるんだっ」
エールが幸せ笑顔で応じると、紫だって負けずににへっと笑って。
「やったー! アンもからあげ好き! ねねね、合わせて写真とろー! なんかお子様ランチみたいでやばくない!?」
「わ、ほんとだ、お子様ランチっぽい! どこかに旗とかないかな? 海賊さーん、旗ありますかー?」
クラウンのオムライスに爪楊枝に作った手作りの旗を立てれば、立派なお子様ランチ(大)の完成だ!
「わーい、完成! やったー!」
「ええーっ、やばーい!」
「ふふ、何だか楽しいしかわいいねっ」
パシャパシャとお写真タイムが終われば、三人並んでいただきます!
口いっぱいに頬張れば、勝負だけれど、幸せで、美味しい時間。
「もう一つ開けちゃおうかな?」
「えへへ、いいねー」「開けちゃおう、開けちゃおう!」
エールがお野菜をつまみながら、そうっともう一つヤシの実へと手を伸ばすと、クラウンと紫ももう一つ。
そうして出てきたのは――。
鮮やかな緑色の、マスカットゼリー!
ほっくりほこほこスイートポテト!
そうしてまっしろな雪みたいな、ソフトクリームだっ!
「ねえ、ボクのこのゼリーアンさんの瞳の色みたいにきれいだよ!」
エールが瞳をぴかぴかさせながら、ソフトクリームを持つ紫の瞳とゼリーの色を見比べると、紫がにっと笑って。
「でしょでしょ、綺麗っしょ?」
ゼリーの器を持ち上げて瞳の横に並べて、ぷるぷる。
「ほんと、綺麗だねー」
ぱくりと一つスイートポテトを摘んだクラウンがコクコク頷いた。
器を机に戻した紫は、ソフトクリームを一口舐めて――。
「……えっ、やばい、なに、なに!?」
「えっ、どうしたのっ!?」
「なになに!?」
クラウンとエールがその声にビックリして紫を見ると。
「このソフトクリーム……しょっぱい!!!」
深刻な表情で、紫は二人にソフトクリームを差し出した。
そうっとクラウンとエールは一匙掬い。
「えっ、そんなー……わっ、ほんとにしょっぱい! でも美味しいね!」
「本当だっ、不思議……、でもクセになりそうな味だねー」
「うんうん、クセになる味っ!」
顔を見合わせて感想会。
「ね、このままこうかんこしないっ?」
「いいよー、勿論っ、からあげもあるよっ」
「甘いのとしょっぱいのを交互に食べたら、無限に食べれるってきいたことがあるけど……、本当に食べられちゃいそうだねっ」
クラウンの提案に紫がわあいと手を上げると、エールがふふふと花のように微笑んで。
それから、思いついた様子でね、と翼をはためかせた。
「ね、ね。……ちょっぴり可哀そうだけれどいいこと思いついちゃった」
「えっ、なになに?」
「……ひょええ、間違えて食べないようにしなきゃ!」
3人は顔を突き合わせて、内緒のお話。
そうして。
あまーいあまーいお菓子に、からーいからーいソースを混ぜると、こっそりこっそりカルカーロの机へと、置いて――。
●お手伝いの時
ヤシの木が立ち並ぶ広場で、キマイラ達がわあわあと走り回る中。
「そうですか、……味わって食べて頂けないのは何だか悲しいですねえ」
目一杯実を抱えてはしっていたものだから、転んでしまったキマイラに手を差し出した都槻・綾(絲遊・f01786)は、キマイラの愚痴にうんうんと頷いて。
「大変だね、海賊さん達」「うんうん、ひどい客もいたもんだよ」
別のキマイラ達の話を聞くサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)とヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)が、彼らをねぎらう様に声を掛ける。
「もう、もう、眼がまわりそうだよ~」
「うえーん、いっぱいとらなきゃ……」
声を掛けられたキマイラは眼をぐるぐる。
「俺達でも実は取れるかな? 手伝えそうなら、教えてくれる?」
腕っぷしも、運動神経も自信はあるんだ、と二の腕を軽く叩いたサンディに。
「そうそう、俺もキマイラだから、同胞を困らせるやつはとっちめてやりたいんだ」
幾らでも運ぶよ、とポーズを取るヴィクトル。
「それでは、私も運ぶお手伝いを致しましょう」
花のように笑う綾は、すでに目一杯腕にヤシの実を抱えている。
「わああ、それじゃあ、それじゃあ、このカゴいっぱいに向こうのヤシをとってきてくれるー?」
「上にぐっと押し上げるだけで、落ちてくるよ~」
「うーん、結構簡単そうだね。木は登っても大丈夫?」
サンディが質問を重ねると、キマイラはこっくり頷いてから少し頭を下げて。
「いいよー、実に触れるまで実のロックは取れないけれど、落ちて怪我しないようにね~。採る用の棒もあるんだけど、僕らで全部出ちゃってて……」
そんなキマイラの様子に、ヴィクトルはゆるゆると手を振って。
「ああ、いいよいいよ。俺達は体を動かすのは慣れてるからねー」
「うん、コツを教えてくれてありがとう。俺達もたくさんたくさん食べるだろうからね、たっぷり集めてくるよ」
サンディも穏やかに頷くと、その上空をざあっと風が薙いだ。
「――あ……、あれは……!」
それはイコル・アダマンティウム(ノーバレッツ・f30109)の搭乗した、キャバリア――T.A.:L.ONEの駆ける風。
「……ん、僕も、手伝う」
ずん、と地に降り立ったキャバリアから響く声。
「わああ、なにそれなにそれ」
「かっこいー!」
そこに生来格好良いものが大好きなキマイラ達が、わちゃわちゃとT.A.:L.ONEの足元へと群がって――。
「……あの、……ちょっと、足元から離れ、て……?」
ミッチリキマイラ達に群がれると、その場から動けなくなってしまうイコル。
「わああ、すごいすごーい!」「しゃべるじゃん! 変形するの!?」
「あの……」
「やあ、可愛らしい」
イコルは少しだけ困っているようだけれども、その様子に綾がいかにもおかしげに笑って。
「海賊さん達、あんまり近づくと戦闘用だから危ないよ」「そうそう、ちょっと離れてあげて、動けなくなってるからね」
更に盛り上がるキマイラ達を、サンディとヴィクトルは慌てて引き離すのであった。
「乗せてくれて有難う。そっちの高い場所は任せていい?」
「……ん」
「俺はこっちに溜まったヤツ、運んでおくねー」
「はい、随分とたくさん集めましたね。頑張りましょうか、キマイラさんたち」
「はーーい!」
猟兵達の機動力はキマイラ達よりも高い。
あっという間に山となったヤシの実を、イコルは一つ掲げて。
「――これに、ご飯が、……入ってるん、だ?」
これはきっとイコルの世界で言う所の『プラント』と同じような物なのだろうけれど。
不思議な形をしていると、まじまじと眺めるのであった。
――所は戻って、店内。
猟兵達は大食いという体を成すために食べる者たちと、給仕をする者たちに分かれて室内でそれぞれの作戦に勤しんでいた。
「はいおまちどおさまー!」
給仕をするキマイラと同じ服を纏ったヴィクトルが腹に膨れそうな粉ものを山程持って、カルカーロのテーブルへと近づいて行く横に、溜まりに溜まったヤシの実。
「……相変わらず、よくわかんねぇ技術だな」
あの実は全てが全て、別の料理が入っているそうで。
底なし沼のような勢いで食べ散らかす鮫女の腹からの食事は、味がしているのかすら定かでも無いけれども。
火がつくほど強い酒を手にした黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)は、摩訶不思議な未来技術にやれやれと瞳を細めて呟いた。
オブリビオンの居る場所で食事をするつもりにもならないもので、――瑞樹はエプロンを付けて給仕側として今回の作戦に参加している。
「良い食べっぷりだな。美味い飯には美味い酒がつきものだろ?」
精一杯のいつもの声を出した瑞樹は、カルカーロの机の上にどどんと酒を並べ。
「そりゃあそうだな! おお、酒もどんどん持ってきやがれ!」
「ああ、了解した」
――直接戦争に参加していないとはいえ、骸の海から染み出した『過去』が受肉してオブリビオンとなった時点で、彼らは明確な『世界の敵』と成っている。
その時点で放置しておけば、世界が滅びに向かうという事が確定しているのだから。
ならば、やはり。
――食事をするにしたって後で良い、まだ敵が目の前にいるのだから。
「全く、迷惑なやつらだな」
テーブルから離れて酒瓶を取りに潜り込んだバックヤードで、瑞樹はまた小さな小さな声で呟いた。
サンディの提案によって、猟兵達の料理の皿には予め空の器も用意され。
猟兵達の横へと積まれている皿は、食べている数の倍以上。
そうとも知らぬカルカーロは、猟兵達の空皿の量に焦っているのか。
流し込むように食べる速度を更に早めて、積み上げる皿の量が増えて行く。
「順調なようだね」
「……ん」
小さく笑ったサンディが、横に腰掛けたイコルと綾を見やると――。
イコルは空の皿の倍くらい普通にご飯を食べていたし、綾は更にその倍皿を重ねていた。
「……確かに美味しいけれど、……ふたりともよく食べるんだね」
「ええ、こう見えて健啖家ですもの」
瞬きを重ねたサンディに綾が応じると、イコルもこくこく小さく頷いて。
「ん……、機体を動かしたから……」
――どうやら、イコルは機体を動かすのに、イコル本人のエネルギーを使うようで。
しっかりお腹の空いた彼女には、もしかすると小細工なんて必要が無かったのかもしれない。
「そう、美味しい?」
「ええ、勿論」
「美味しい」
「そう、よかった」
少しだけ眦を和らげたサンディは二人の食べっぷりを眺めながら、コーヒーを一口。
ぺろりと新たな皿を平らげながら、綾はカルカーロを横目で見やった。
――欠けた器の己は、幾ら食せども満たされることはない。
然れど、綾は知っている。
食事はこころを潤すと言う事を。
――ああ、ならば。
「……貪欲さでは良い勝負なのかしら?」
なあんて綾は囁いて。
こころは十分に潤した、と立ち上がった。
フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)が、給仕服を纏っておずおずとカルカーロへと首を傾ぐ。
「ふええ、……お客様……あの、あの、実はすごいご馳走があるのですけれど……」
「……あ? だったらすぐ出せよ、何してんだよ」
「あのう、えっと……、私達では届かない所にありまして、お客様のその槍なら届くかなと思いましたが……」
「はあ? 客を働かせるつもりか?」
フリルの言葉に苛立たしげに料理を腹へと流し込むカルカーロ。
ふるふると首を振るフリル。
「そぅ、ですよねえ……どうみても、ご馳走はその槍の3倍の高さにありますし……」
「……はぁ? 届かねえ訳ねえだろうが」
「えっ、あんなに高い所にあるのに届いちゃうんですか!? すごいです!」
「ふざけんなよ、どこにあんだよその御馳走とやらはよ」
わあ、と持ち上げたフリルが微笑むと、カルカーロが席を立ち。
しれっと堺・晃(元龍狼師団師団長・f10769)がカルカーロの食べかけの食事へと近づいて行くと――。
「んー、何かあったのか?」
「いいえ、……ふふ、何を食べているのか見に行っただけですよ」
猟兵の中でもぶっちぎりの量を平らげている金子・諒太(戦える肉団子・f12789)が、ふーん、なんて尋ねておきながら余り興味が無さそうに更に料理を口へと放り込んだ。
――ヤシの実の中で作られた合成飯とは言え、元は全てがリゾート開発された世界の技術だ。味は勿論良いもので、ご飯は味わって食べる派の大食い諒太としてもまあまあ満足出来る味だ。
「……うーん、しかし、ご飯の炊き方がちょっと平坦だな。炊き方でもっとバリエーションがでるんだけどな」
「ふふ、そうですか。ああ、――中座している内に諒太君の方がサメさんの食べた量を追い抜いてしまいましたね」
「流石に僕は皿は美味しく無さそうだから要らないけれど、こんな簡単な仕事なら幾らでもしてたいな」
「諒太君らしいですねえ」
柔く笑んだ晃は肩を竦めて――。
「おい! お前の言う御馳走を取りに行ってる間に私が負けてるじゃねえか!」
「ふええ、ごめんなさい……お客様の事を思って取りに行ってもらったのですけれど……あっ、でも、お客様、あーんな高い所にあったのに届くなんて、本当にすごかったです」
戻ってきたカルカーロがフリルに噛み付くように吠えるが、フリルはお世辞の魔法でふんわりと笑って。
「おっ? そうだろ?」
「お客様ならすぐ抜き返しますよ、さあ、御馳走をどうぞ」
「ん、魚か。それならこの酒はどうだ?」
フリルがヤシの蓋を開くと、すかさず酒便を持ってきた瑞樹。
そこに綾も酒瓶を持って加わって――。
「こちらのお酒も、魚に合わせるのならば絶妙ですよ」
尤もらしく頷きながら、彼もまた彼女の杯へと酒を更に注ぐのであった。
「おおー、食って飲むぞ~~ッ!」
その連携に気分を良くしたカルカーロは、食べさしのご飯からがばりを腹へと流し込みだし。
――やあ、酒精で染まる頬の何と麗しいこと。
綾もご相伴に預かって、杯を乾し始める。
そんな様子を見た晃は、柔らかな笑みの口角をきゅっと擡げて――。
「僕も給仕を手伝いましょう。このままでは諒太君がストレートで勝ってしまいそうですからね」
「はあ!? お前……え、いいヤツ……いや、……うん? ありがとう!」
応援してくれているのかどうなのか、判断しかねたカルカーロが首を傾ぎ。
――蓋を開いたヤシの実に、晃は眼にも見えぬ程の速度で無味無臭の麻痺毒をふりかけては机へと並べ出す。
このチョロさならば、なんの工夫も要らないだろう。
晃は笑みを崩すこと無く、言ってのける。
「さあ、どんどん召し上がれ」
なんたって、晃は、毒罠使いの暗殺者なのだから。
●お祝いの日
――今日は愛おしい、愛おしい、妻の誕生日である。
ヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)はキマイラ達に頼んで用意をしてもらった料理を前に。
ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)の為に椅子を引くと、柔く笑みを浮かべた。
「――ヘルガ、今日はお前の大切な記念日だろう、本当におめでとう」
「まあ、ヴォルフ……。覚えていてくれていたのね、嬉しいわ」
「忘れる訳がないだろう、……お前の事を」
「……ふふ、ありがとう、ヴォルフ」
砂糖のように甘い甘い会話を交わすヴォルフガングとヘルガ。
そう。
今日はヘルガの、20歳の誕生日。
「オメデトー」「お酒のむ?」「ケーキどれだっけー」
幸せな空気に乗せてわちゃわちゃとキマイラ達もご飯を運んできてくれるものだから、ヘルガはくすぐったそうに花笑みを浮かべ。
「島の皆さんにも祝福されて、わたくし、本当に、本当に幸せよ」
「今日からお前も酒が飲めるが――」
小さな花の浮かぶシャンパンを掲げたヴォルフガングは、瞳を細めて。
――誕生日も勿論大切だが、今日の作戦を決行するが為にヘルガへと小さく小さく耳打ちをした。
「ねえ、そこのお方、ご一緒に宴席などいかがかしら?」
幸せのおすそ分けです、なんて。
ヘルガはたっぷりと並べて貰ったご飯を示すようにカルカーロへと声を掛けて。
「ああ? 宴?」
「そうだ。ここはひとつ、呑み比べといこうじゃないか。俺もこう見えて酒には強いんだ」
「はん、お前……そんな事いってすぐぶっ倒れんじゃねえぞ?」
「期待にそぐわぬ真似はしないと、保証するさ」
「はーん、良いけどよ。」
随分お酒も入っていい気分になっているカルカーロは、どっかりと座って杯を掲げ。
「ヴォルフ、頑張ってほしいわ」
「……心配するな、ヘルガ。お前がいれば俺は百人力だ」
「ええ、……信じているわ」
その空色の瞳の奥に揺れる心配の色に、ヴォルフガングは彼女の手を握って誓うように言った。
「あらぁ、呑み比べならあたしも混ぜてほしいわぁ」
くすくすと笑いながら、近づく女性の影。
それはアックス&ウィザーズでバーテンダーをしている、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)だ。
「お酒を飲むなら、美味しい飲み方をたっくさん知っているわよぉ」
勿論本職なのだから。
どうせ飲むのならば、とっときの美味しい飲み方で。
彼女はかの世界で悪魔をも殺すと言う悪名を思うがままにするという酒瓶を手に、机へとぐぐっと寄って。
「あたしの『とっておき』――、一緒に味わいましょぉ?」
丁寧に封を開けたティオレンシアは、瓶の先から綺麗な軌道を描いてカルカーロの杯へと酒を注いだ。
――放っておけば迷惑を駆けるのならば、ちゃっちゃと潰してしまえば良い。
酒でも、――敵としても。
「あなたのご飯に合わせるなら……こっちはどうかしらぁ」
なんてしれっと度数低めの酒瓶をヘルガに託して、ティオレンシアはいつもの微笑みを。
「ソレはね、あたしの世界で、お祝いの日に飲むお酒でもあるのよ」
「まあ! ……ありがとうございます」
はっと意図を理解したヘルガは酒瓶を優しく撫でて、こっくり頷いてヴォルフガングの杯へと酒を注ぐ。
「さあ、宴席の始まりねぇ」
「なんでお前がしきってんだよ、私に言わせろ、私に」
「はいはい」
「あー、なんだ、よくわかんねえけど、かんぱーい!」
カルカーロの音頭に合わせてかんぱい! と、ティオレンシアも自らの杯に悪魔殺しを注いで、掲げて。
――ちなみに蛇足では在るが彼女は別段酔い潰れたい訳では無く、飲みたいから酒を飲んでいるそうだ。
「乾杯」
「……ええ、乾杯」
なんだかんだでコンキスタドールにまで祝われてしまったヘルガは、ヴォルフガングに合わせて杯を掲げると彼を見やって眦を少しだけ和らげた。
●宴はいつか終えるもの
「はー、いっぱい食ったなー幸せだな……、美味い飯って、人生を豊かにするよなー」
まんぷくまんぷくと腹を撫でる誉とエリンギ。
「はあ、まだ飲みたりませんねぇ……」
ティオレンシアはこんな事を言っていますけれども、宴もたけなわというもので。
「はあ……、流石にちっと食いすぎたかな……」
カルカーロがふらふらと立ち上がり、酔い冷ましに置いてあったスイーツを口にした瞬間。
「……うぐ、おっ、何だこれ辛……っ!? あ、んぐ……?」
彼女はその場で、悶絶するハメと成った。
腹の中がカッカと熱い。
いいや、それだけでは無い。なんだか、酒だけでは無くて、この辛さだけでは無くて……立っていられないほど、なぜか気持ちが悪い。
「おばえら、もぢかして、……なにが、私に……っ?」
ぐらぐらと揺れる視界の中。
猟兵達に何かをされたのだと気づいた彼女は、槍を何とか構えようとするがすでにまともに立てやしない。あと食べすぎてお腹が重たい。
「はかったな……っ!?」
「だめよぉ」
なんとか槍を投げようとしたカルカーロの手のひらを、ティオレンシアが撃ち放ち。
「ヘルガっ!」
「……ッ! ヴォルフ!」
それでも投げつけられた槍の先。
――ヘルガをかばう形で立ちはだかったヴォルフガングが、盾で槍を弾いた。
「ああ、すっかり酔いも醒めてしまったようね」
すこしだけ悲しげに瞳を細めた綾が、いくつも生み出した馨を揺らし。
「……そのままさっさと、終わらせよう」
すらりと二刀を抜いた瑞樹が、すり抜けざまに刃の軌跡を生む。
「ぐ、うう……っ」
「おやどうしました? 動けませんか?」
がくり、と完全に膝を付いて呻くカルカーロに、ダガーを構えた晃は首を傾いで。
「……それもそうでしょうね、あれだけ食べれば」
なにをとは申しませんが、なあんて笑みを深めると。また一段と丸くなったように見える諒太も、瞬きを重ねた。
「……ん? なんで急に……。あっ、皿なんて食べるからだぞ! 消化できないものは食うなって、僕も皆に言われたんだからな!」
諒太の言葉に、笑みもそのまま思わず肩を竦めた晃。
「……いえ、そういう訳では……」
「えっ、晃またなんか入れたの??」
「ふふ、どうでしょうねえ」
「……まぁいいや、これで作戦は終わりだろ?」
「ええ、残念ですけれども」
頷いた諒太は、一気に地を蹴って。
文字通りの玉のように跳ねると、カルカーロへと向かってぶちかましをキメた。
「えっと……、迷惑なお客さんはお帰り願いましょう」
「そうだね、――さあ、行ってらっしゃい」
フリルの言葉に合わせてぴょこぴょこと飛び出したのは、サンディが放った小さな生物達の魔力砲であった。
「いて、いててっ!?」
「あ、じゃあ俺のシャチとも遊んでよ」
ビールを飲むヴィクトルが空を泳ぐシャチを呼べば、突かれながら屋外へと転がされてゆくカルカーロ。
「食後の運動の、時間だなっ!」
飛び出した誉が茨の剣を構えれば、地を転がるカルカーロの動きが突如ぴたりと止まった。
――それは倫太郎の放った、見えぬ鎖に彼女が囚われたと言う事。
「夜彦っ!」
「はい!」
眼にも見えぬのは、夜彦の放つ居合斬りも同じ事。
そうして誉の斬撃と同時に降り注ぐ居合斬りに合わせて、アルデルクの放つ魔法剣が空を駆けた。
「オレとも遊んでくれよっ!」
「踊る事もままならなさそうだけれどな」
オーラを纏った拳をディルクが叩き込めば、カルカーロはしたたかに跳ね飛ばされて――。
「うふふカムイ、行くわよ」「噫、いつでも」
櫻宵の願いに、カムイ災厄が花開く。
厄災が舞い降りる。厄を約して、――風が刃と成って、鮫を切り裂き。
「ザッフィーロ、仕事の時間ですよ」
「ああ、勿論」
ふう、とザッフィーロの漏らす吐息は毒の霧。宵の降り注がせる星の欠片は全てを焼き尽くすよう。
「いっ」「せー」「のっ!」
クラウンとエールと紫。
声をあわせた三人が、降り注ぐ流れ星と雷を降り注がせると――!
「……困った、サメは、おやすみなさい」
――そこにイコルの操るキャバリアが、掌底をばちんと叩き込んだ。
「……っ」
瞬間。
目の前が真っ暗になって、ヴォルフガングは膝を付いた。
きっと、緊張の糸が解けてしまったのであろう。
「――ヴォルフ!」
慌ててヘルガが彼へと駆け寄ると、美しき光の癒やしを与えて――。
一瞬意識を失っていたヴォルフガングは、ヘルガの手を柔く握り返した。
「……すまない、ヘルガ、せっかくの晴れの日に心配をかけて……」
「いいえ、……あなたにもしものことがあったら……、でも、良かった」
ふるふると首を振って応じたヘルガは、花のようにまた笑って。
「……だけど、とても素敵でしたわ。本当に、本当に幸せな誕生日になりました。……ありがとう、ヴォルフ」
「……どういたしまして」
ふ、と甘く笑い返したヴォルフガングは瞳を閉じて、彼女の温かさにその身を預けた。
――ああ。
お前の掌は、癒しの光は。
なんて、温かいのだろう。
大成功
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